アンティーククロック・タイム
●桜とハロウィン・クロック
その島には、神秘の桜が咲いていた。
ひらひら、ひらひら舞う桜と――かち、こち、と整った音。
島のどこに居ても聞こえる、時を刻む針の音。
島自体の構成に、時計のメガリスが鼓動しているのだとこの海に落ちて以降、伝承として誰もが口伝する。
しかし――大本の時計の場所を、特定できた者はいない。
季節感を重視した、時計職人溢れる島となったのは一体何時からの事であっただろう。
不死の帝が収める帝都の賑わいに、この島の状態はどこか似ていた。
帝都と異なり、大正感のある文字はどうも踊っていないようではあるが――。
ユーベルコヲド使いなんて、海賊らか侵略者どちらかしか訪れない。
影朧救済機関のようなものは、この島にはないのだ。
独自の生活と発展が、そこら中に合った。
島の機械技師が積み重ねてきた技術もデザイン力も、どことなく、サクラミラージュで見かけるデザインとは些か異なるように映る。
アルダワなスチーム技術があったりするのも、そのため。
キマフュなパンクな絡繰り時計があるのも、そのためだ。
誰もが日々、時計を作り世界に音を響かせている。
影朧は――時折街の中に現れことがあった。
時計は全て、彼らのための慰めのために創られている。
未練抱える者達に、専用の時計を与えて寄り添える場所を与えるのだ。
●クロック・ボム
「……ハロウィン島、と呼ばれるようになった時計の島があるそうよ」
ジュウラ・ガイロストール(旋律の駆け手・f30194)がいうところには、去年無かったものが発生したことで、噂されている、という。
ハロウィンの時期が近づくにつれて、巨大カボチャが大量に発生している、らしい。
「島には伝承がひとつあるらしいの。"巨大カボチャが現れる年は島のメガリスの封印が解けて、メガリス亜種が大量発生する"ってね」
南瓜の発生は、メガリス覚醒の前兆なのだとか。
どれもこれもが、10月31日に勝手にジャック・オー・ランタンへ変貌する。
それがメガリスが確実に出現している合図、なのだとか。
「……この島がいつからあの海にあるかは誰も知らないようだけど」
海賊の行き来は、他の島と大差ないほどにはあるらしい。
それから、商人たちの往来も、そこそこにある。
この島はオーダーメイドの時計を作り、交易品として世に出しているのだとか。
「今の時期はハロウィン感のある時計を作るのに大忙しだったそうよ」
次の仕事はクリスマスに向けて。
だから、現在島は、どこもかしこも最終調整の時期であった。
「……そんな時期に、近辺海域からコンキスタドールが海賊行為に訪れそう、という報告があるの」
島のメガリス強奪を、視野に入れてるんでしょう。
「貴方達には、コンキスタドールを退けて欲しいのだけど……」
ただし、装いはハロウィン仮装が正装だ。
仮装なしの無法者達にはトリック・オア・トリートで撃退を。
「島の南瓜はお化けカボチャ。31日を越えたら全部夢のように消えてしまうから、妨害の手段として使って貰って構わないとのことよ」
おばけと言いながら実態はあるが、どれも時限爆弾のようなものと思っていい。
最後に触った者の"時間指定後"に炸裂する。
仮装した者がお化け南瓜に下手に衝撃を加えると、簡単にドカンだ。
「住人達も要請を受ければ協力に応じてくれるわ?」
必要に応じて、声を掛けてみるといいだろう。
「無事に退けたら、メガリスを探しに行くと良いと思うの。だってハロウィン当日しか、見つからないお宝だもの」
見つかるものはメガリス・クロック。
絶対時計だ、しかし大きさも、どのようなモノかも分からない。
「ただ、このメガリスはハロウィン前後でしか使用できないものらしいから……通常のメガリスとは扱いづらさが桁違い、かもしれないわね」
ジュウラが聞いた話を元にすれば。
時計のメガリスは、持ち主の望む時間を"疑似体験させる(見せる)"力があるのだとか。
ハロウィン前後では絶大な力を発揮して、それ以外では短時間のみ使用可の時間制限有りだという。ハロウィンから離れれば離れるほどその力の持続時間は短くなる。
しかしどの程度のちからが発揮されるかは、誰も知らないので分からないようだ。
「ああでも、買い物に出かけるのもいいのかも……でも貴方は、それもロマンといいたげね。島の平和を守るついでに、好きにしてくるといいのではないかしら」
住民たちも、それくらいは構わないというだろう。
仕事優先な者が多いのだ、邪魔者撃退をしてくれた者達を邪険に扱ったりはしない。
「じゃあ、……あとは、任せてもいいかしら」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
このシナリオは、【2章構成のシナリオフレーム】です。
グリードオーシャン、サクラミラージュ島。
依頼時間は、10月31日ジャスト中の出来事として扱います。
OP上に南瓜の状態、住民たちのことを記載しているつもりですのでご確認ください。
●集団戦。
いつかどこかで滅んだ国の王女さま。
時計の島近海で、最近一番バリバリ略奪を働いていたヒトです。
無残な死を経験した事があり、その時を無かったことにできるメガリスがあるとの話を信じて、島に上陸します。猟兵が出会うのは、上陸開始が始まった頃です。
冥府からの女王の凱旋。使う力は地獄から連れてきた炎の群れ。
彼女の傍には、火の玉の群れが漂っていることでしょう。
魂の下僕であり、配下です。
死を呼ぶ海賊団、と近海では囁かれている様子。
ハロウィン仮装や、ハロウィン系の作法は勿論"知りません"。
●冒険。
選べる行動、ざっくり二種類。
フラグメント無視は問題有りません。
(1)メガリス捜索。
町中かも知れないし、町外れ(砂浜や小規模な洞窟)にあるかもしれないです。
見つかるメガリスは、島の核である時計のメガリスでは"ありません"。
島のメガリスの、亜種・眷属と思って頂いて構いません。
貴方がそういう形だ、という想像を行った「時計のメガリス」が見つかるはずです。ひとりにひとつ、見つかることもあるでしょう。
(2)時計島で時計を購入する。
時計の島は、時計を販売する店と、工場のような場所だらけ。
街に留まり、自分専用の時計を購入したりすることが出来ます。(アイテム発行をこちらから行うことはありませんが、記念品な感じで描写を行います)。
標準的な時計であれば、この島に存在することでしょう。
アンティーク調、などの雰囲気指定も海賊たちの持ち込み等で他世界っぽい時計を扱っているお店も探せばあるようです。贈り物として等も良いかも知れません。季節限定ハロウィンな時計等も、探せば店先に並んでいるようですよ。
●その他。
気持ちゆっくりめの運用になると思いますが、タグから状態をお知らせの予定です。仮装はイラストの指定でも構いません。
例:2021南瓜SD 等です。
指定が無ければ想像を駆使して、それっぽい姿のアドリブ力を働かせます。
簡単に文字での説明も、問題有りません。
素敵なハロウィン時間が、過ごせますように。
第1章 集団戦
『亡国の死神王女』
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POW : メイド・イン・ヘル
無敵の【冥府の死神】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : ウィル・デス・ユー
装備中のアイテム「【冥府のトリアイナ】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ : タルタロス・ラプソディ
召喚したレベル×1体の【冥府のピラニア】に【地獄の炎】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
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夜刀神・鏡介
仮装:黒いジャケットとスーツにシルクハットにマント。モノクルなど用意して怪盗紳士的なスタイル
サクラミラージュから落ちた島、か。まあ、別にそれ自体に思う所がある訳じゃないけど
なんにせよ海賊行為は見過ごせないな
識の型【炯光】――敵の得物は俺より射程が長いとは言え、振るう動作を見極めれば捌くのは容易い
鉄刀を抜いて、刀による受け流しや回避で凌ぎつつ、密かに南瓜爆弾を起動
爆発のタイミングにあわせて敵を誘導し、怯ませた所で切り込んで撃破
世界の何処かにはアンタ達の望むものだってあるのかもしれないが……過去を変えようなんて大抵上手くいかないか、碌でもない結果にしかならないのが定番だ。止めておけ
●侵略を諦めろ
潮風と、桜の花弁が舞い踊る不思議と落ち着く町並みに。
場違いな侵略者が、船をつけて上がりこんでくる。
『お宝目掛けて前進あるのみ!どこまでも、進め!進め!』
不敵な笑みを浮かべ、ビーチに上がり込み"メガリス"を求めて、女王は鼓舞と信念を胸に、行動を開始した。
ふぉん、と振り回す三叉槍を手に冥府からの連れ合いである下僕たる炎の群れを引き連れて。
とにかく島を蹂躙せんと女王は歩きだす。
そこら中の南瓜に目もくれず、かち、こち、と聞こえ続ける音に苛立った様子を見せながら。
『なによ、この音……やかましいわね!どこの何が原因なの!?』
静かなハロウィン島で、大声を張り上げるのだ。当然、自分が侵略者だと自己紹介しているに等しい。
その様子を、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はシルクハットを被り直しながら見ていた。モノクルの鎖が顔にかからないように注意して、ポケットに白のハンカチを添える。
「サクラミラージュから落ちた島、か」
黒いジャケットに袖を通し、落ち着いたスーツが花吹雪を弾くよう。
――確かに、この雰囲気は故郷に似ているな。
現在の、よく知る帝都に似た雰囲気な島に仮装の怪盗紳士なスタイルはよく映えた。かち、こち、と時を刻む音は、鏡介からすればどことなく心地いい。
古い時計のような、静かな音だ。
「まあ、数ある一つだ。それ自体に思うことがある訳ではないけれど」
近場のお化けカボチャに、軽く触れる。
「なんにせよ、海賊行為は見過ごせない」
――だいたい、三十秒後。
――この場に引きつけるように、立ち回るなら、驚かせる行為の意味を出せるだろうか。
ひとつ、ふたつ、みっつと路なりに順番に時間指定を想像しながら触れて。
鏡介は海賊の行脚を、阻止すべく進路の先に身を翻した。
「今日は良い日取りだな?だが、アンタの探しものは俺が先に頂こう」
同業者はお断り。勿論それは、演技での話だ。
モノクルをキランと輝かせて、不敵に笑って、挑発する。
『なんですって……!?此処のお宝、その正体を知ってるですって!?』
冥府の闘気とも言えるオーラ――殺意ばかりが籠もった炎を燃やした海賊女王は、冥府のトリアイナをふぉんふぉんと強気に回す。
軽々と振り回される三叉槍は、炎を纏って鏡介を、狙った。
『じゃあ教えなさい!そして、この言葉と共に没する自分を想像しなさい!』
ウィル・デス・ユー。
踏み込むと同時に、間合いが伸びる。
幻覚か?――鏡介の見ていてた三叉槍の柄の長さがぐんと伸びた。
決して幻ではない、冥府へ運ぶ終わりの三叉槍が、眼前に迫る!
射程も威力も少し離れた場所からぐんと伸ばして、首を狩らんと伸ばされるのだ。
「それだけか?」
じぃ、と見ていたその瞳は敵の体捌きから己の業として振るう愛用の武器の癖を読み取った。
――槍で、敵を、刺し貫くように急所を狙う。
――必ず、振り回してから。
「既に観えている。付いてくると良い……!」
狙われた首への攻撃を、鏡介は躱す。必ず首だと、見極めたのだ。
――次点で狙われるのは、胸か、足。
――行動力から潰しに来るだろうな。
『……!?なによう、逃げる気!?』
――俺より射程が長いとはいえ、行動の癖は簡単には変更できまい。
「逃げてはいない。ただ……」
『ただ?』
鉄刀を抜き、飛び上がって振り下ろしてくる重たい一撃を刀による受け流しで捌き――凌ぐ。
回避はせず、受け流しを行う事で時間を稼ぎ先程仕掛けたポイントに海賊女王を誘導したのだ。
「今日の天気は桜時々、驚かす音が響くそうだ」
どかん。
お化けカボチャは高威力で仕掛けられた時差分連続で、爆発する。
トリック・オア・トリック。いたずらするか、いたずらするぞ。
陽気にケタケタ笑いながら、仕掛けられた時限爆弾は、爆音を轟かせる。
『……ひゃあっ!?』
爆発のタイミングに怯む人物性ではないか。鏡介の予想はピタリとあたっていた。
女王は勇敢で、たしかに勇ましかったが――ハロウィン島でのハロウィン作法を識らなかった。
「世界のどこかにはアンタたちの望むものだってあるかもしれないが……」
ひるませた所で、身を低く駆け、腹部を思い切り切り込んで斬り倒す。
苦悶の表情を浮かべた女王がそのまま倒れ込み、鏡介は頭上から言葉を贈る。
「過去を変えようなんて大抵上手くいかないか、碌でもない結果にしかならないのが定番だ」
ハロウィンに叶えようと動き回ることじゃない。
目の前にした彼女にその言葉は届いただろうか?
「止めておけ。止めて貰えるだけ、まだ幸福なほうだ」
斬った痕跡を払うように刀を一度強く振って、すぅ、と鞘に納めて後にした。
伏した女王がどんな顔を最期に浮かべていたか。
その顔を、想像する日ではないのだ――今日という日は。
大成功
🔵🔵🔵
月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
●合言葉は
「……戦いは既に始まってるようですわね」
響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)が鍔広帽子を強めに被り、衣装の不備がないか確かめながらもうひとりの猟兵に確認するように呟く。
ルナティク・クリスタの映える魔女衣装。
今年新たに新調した衣装は、以前の衣装と違い年齢に合った大人っぽさが抜群だ。
「……そのようです、ね」
リズの言葉に答えた月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)は人見知りながら、同じ旅団に属する仲間だと知って、気持ちを落ち着けている。
オラトリオで上流貴族同士の出会い。
「物音と声の方角から、そろそろ私達の前を通っていく頃合いですね」
自分より年下の莉愛がどう動くのか、それを気にしているようだ。
――私の方がお姉さんでしょうから。
「……はい、私は"歌姫"に変身して、飛んでいきますからその後のサポート、援護をお願いできないですか」
小さめに発声練習を行う莉愛は、歌声で勇気を奮い立たせて胸の前で手を組んだ。
かち、こち、と聞こえる音は耳馴染む。
落ち着くのに最適な時計の音が、メトロノームのような一定を刻むのだ。
この島には音がある。安らぎの音が――。
「分かりました、そちらは私が受け持ちましょう。攻撃の音ではなく歌声が聞こえたなら、この島に住んでいる人々も顔を覗かせる筈です」
作戦は端的に。
役割分担を、お互いに置く。
「危険なことはないわ。私たちの背中には」
純白の翼が――あるのだから。
大きく息を吸って、莉愛の好きな歌を口ずさむ。
神秘的な音節を、強弱をつけて楽しげに。
「月夜、私を導いてください。そしてその力を私に貸して下さい」
月下天舞(ゲッカテンブ)の音色を、声に乗せれば莉愛の姿は、普段着よりも清楚で純粋な歌姫の姿へ変わる。
純白な衣装に倍に膨れ上がった透け感のあるレースが、ひらり。
仮装、というよりは変身なのだが、今回に限りテーマを"白い魔女"な姿を意識した。白い白い鐔広帽子を被りながら、手に握るは月光の聖銃。
翼を大きく広げて、侵略者たちの元へ飛んでいく。
歌声を、高らかに響かせながら。建物を超えて、まっすぐに。
「……なんだぁ?」
「誰の声だぁ?」
ドアを開けて外に顔を出した島民たちに、おしとやかに声を掛けるリズは、慎ましく微笑んで会釈する。
「ごきげんよう皆様。ハロウィンのお化けカボチャの話をお聞きしたのですが……」
矢継ぎ早に、敵襲が始まっていること。
迎撃に協力を願いたいことを告げると、時計職人達は一斉に仕事を放棄した。
「ああ、そいつなら小柄の小さな南瓜爆弾を使うのが良い」
手に差し出してきた南瓜に耳を近づけてみると、かち、こち、と微かに音がする。
「時限式調整は、そとで自生してるのより細かく調整できる」
「何故こんなものが、って顔だな。これは俺らの襲撃者敵対用の手榴弾の一種だよ」
なるべく季節感に合うようなモノを、時限爆弾として備えているらしい。
ハロウィン時期なら南瓜を。正月時期なら餅を。
時計らしくない時計も、オーダーされればどんなものでも作り上げる。
職人気質の一端をリズは見た気分だった。
「タイミング指示を私に出来ますでしょうか……」
「時限爆弾とはいうが、厳密には手にしている(した奴)の指定に従順だ。だからな……」
ハロウィンらしい言葉を言ってくれ。合図を聞いて、皆で一斉に投げるからよ。
彼らはそう言って、住処周辺の住人たちに声を急ぎ声を掛け始めた。
「仕事の妨害はお断りなんだ、場所を教えてくれ――先導を頼めるか?」
「分かりました、皆さん宜しくおねがいします」
リズは彼らを引き連れて、先を急いだ莉愛の元へ急ぐ――。
輝く月の光の魔力は、冥府のピラニア相手に炸裂してた。
地獄の炎を灯して空中を泳ぐ狂気の群れを率いる海賊女王をその場に押し留め、援軍の到来を待つために。
攻防一帯の、白色の閃光、冥府色の暗い輝くが、町中で侵食し合っている。
『なによう!邪魔しないで!』
愛用武器の三叉槍で莉愛を狙う死神女王は、死者の冒涜だと罵詈雑言を口にした。
『私の下僕を滅ぼしておいて!逃げられると思わないことね!』
「思って……いませんよ」
聖なる銃での応戦だけでは、押し留めきれない。
でも、莉愛の耳には届いていた。
「そうです。逃げるのは私たちではないのです」
『援軍!?』
「私はそうでも、少なくとも此方の皆様は……」
リズの後ろにぞろりと仕事途中な服装の時計職人達が手元を隠して並んでいた。
「静かに仕事に集中したいそうなので、お引取りを願えないでしょうか?」
『関係ないわ!私は欲しい物を得るために、進軍する!』
「今日が何の日か、ご存知で……?」
「皆今日が、忙しくてたまらない日なんですよ……?」
リズと莉愛と順番にヒントを出すようにいうのだが、死神女王は何を言われているのか分からない。
謎解きなんて以ての外。お宝絡みの謎と関係ないクイスは苦手なのだ。
『……え?』
「時間切れです、莉愛さん。声を揃えて教えて差し上げましょう」
「はい。今日この日、仮装した人がいうべき言葉は一つですから……」
戦神のご加護を(ゴッド・ブレス・ユー)。演説の言葉に同意できるのは、ハロウィンをキチンと理解するものだけ。
投擲力をぐんとあげよう。ハロウィンの洗礼を、言葉と衝撃で憶えていっていただこう。光のオーラを集まった者達を含めて与えて、リズはニコリと笑うのだ。
"トリック・オア・トリート"!
二人の魔法の言葉を切欠に、時計職人は一斉にお化けカボチャを投げる。
かち、かち、どかん。
答えを識らなかった女王には、派手めな悪戯で追い払おう。
ちょっと威力が強いかも知れないけれど。
海賊行為と仕事妨害分をおまけに付けました。勿論それで、構わないでしょう?
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リンカーベル・ウェルスタッド(サポート)
主よ、いと気高き万軍の王よ、どうか私たちを喜びの歌と共に朝を迎えさせて下さい――。
と言う訳で! アーメン、ハレルヤ、デストロイです!
殲滅速度重視で、戦況や敵の種類を考慮して最も効果的なユーベルコードを使用。
武器はその場その場で有効に使用出来るものを選択して使用。
近距離で殴りあう必要が無ければ、弓や銃で狙撃を行う。
周辺に利用できそうな物があれば何でも使って攻撃。
他の猟兵がいれば協力したり支援したりする。
物腰(だけ)は柔らかな聖職者見習い。
無用な争いは好まないため、可能な限りは会話や情報収集でことを進める。
それらが難しい・時間のロスが激しい・他猟兵の目的遂行の邪魔になる場合は力技で解決する。
●鉄拳制裁(神の御心のままに)
「どうかしました?」
先に行動を開始した一団が倒されたことで出鼻をくじかれたように立ちすくむ亡国の死神王女は突然話しかけかけられる。
一見大人しそうな、聖職者はニコリと柔和に微笑んでいた。
「私で良ければ聞きましょう」
リンカーベル・ウェルスタッド(ルーベル・アニマ・f01718)は、手を差し伸べようとしていた。
「主よ、いと気高き万軍の王よ、迷える者へ正しき道を示し給え」
――喜びの歌と共に朝を迎えさせて下さい。
ハロウィンを越えた明日という世界に、光を。
『……この島にはメガリスがあると聞いたのよ。それもとても強力なやつが!』
「ふむふむ」
『でもどこにあるかわからないというじゃない?野草の果実がこんなにあるし、うーん……』
南瓜だらけで移動の邪魔だ、なんでこんなに映えているんだと素朴な疑問も含まれる。彼女が探すメガリスは、誰も見たものはいないらしいと情報を得ている。
住人を捕まえて、宝の在り処を吐かせることはどんなに努力と残虐さを示しても無駄だろう。
「そんな貴方におすすめなのは、サーチアンドデストロイでしょうか」
『……え?』
「デストロイです」
立ち止まるなんて以ての外。
やってやってやりきって当たって砕けろ。駄目だった時にこそ挫けて還れ。
やらないまま、弱音を吐くなんて負けているも同然だ。
リンガーベルの主張は、だいたいその言葉を短い"デストロイ"に含んだ。
「アーメン、ハレルヤ――心より願うのならば、神様はその道を示すでしょう」
その願いを阻むもの、障害を越えられぬのならば。
願うに値せず、神は貴方を見向きもしない。
「私は殺し、また生かす、私は傷つけ、また癒やす――と、神様が言っています」
さあ膝を奮い立たせて戦いなさい。
聖水を自分に容赦なく掛けて、その両手に神聖な力(自称)とやらを宿したリンガーベルは時間の猶予を許さない。
やるならやる、やらないなら滅びの道を。
独特の型で殴るフィームを取り、死神女王の出方を数秒だけ待った。
『……成程?これは試練ね、試練なのね』
冥府の死神を用いて、"白き翼を此処に(アラエ・アルバエ)"を越えられたなら。
欲しくてたまらないメガリスは、手に入る可能性が高まる。
地獄の力を集約し死神女王は、周囲に大鎌を持つ骸骨従えて。
無敵であると、信じて差し向ける。
『さあ、首を撥ねてあげなさい!』
「ひいふうみい……数を揃えて、負けないという意志を示してきましたか」
ぶわあ、と純白の翼を生やし"天使の仮装"を自称して、リンガーベルは飛翔する。
その両手には破魔の力を宿し、形亡き死者だろうがお構いなしだ。
まっすぐいって、ぶっ飛ばす。
暴力的な程真っ直ぐな神罰を拳で叩き込み、散らす。
無敵だろうが、滅べば無力。
「強力な存在でしょう、私に刃が届いたならば。でも……これらの力を創り出せても、貴方は弱い。そうですね?」
にっこり笑って。
信仰心(という名の敵対心)を強めて、己は無力だ、と押しのける。
「此処での過去改竄を、神様はお認めになりません」
ですから、ここでお帰りを。
「此処から先は、貴方を惑わすばかりです。弱気ものには、早すぎる」
冥府の果てで、実力を積んでから再び挑んでごらんなさい。
絶望という名の感情を貼り付けた死神女王へ、最高速度で振るわれたデストロイ(顔面に叩き込む拳)。
相手にした女王は、見事に海までふっ飛ばされてどぼんと落ちた。
再び上がってくる事もなかったが、それこそが神様のお導き――。
成功
🔵🔵🔴
レパル・リオン(サポート)
こんにちは!あたしはレパル!またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ!よろしくね!
お祭りとかイベントとか友達と遊んだりとか、とにかく楽しい事大好き!
あたしが戦うのは、怪人(オブリビオン)から人々と平和を守るため!そのためなら、ケガをしたってかまわないわ!
(強敵相手だと少し怯えるが、表には出さないように努める)
得意なのは肉弾戦!ダッシュで切り込んだり、ジャンプやオーラ防御でよけたり、激痛耐性でガマンしたり、怪力パンチ&キックでぶっ飛ばしたりするわ!
ユーベルコードに怪人の弱点属性を組み合わせてパワーアップさせたりもするわよ!
頭を使うのは苦手かな。でも、パワーとスピードでなんとかするわ!
●魔法少女が来たからには、お家に還って貰いましょう!
「はぁいそこのあなた!」
こんにちは、と明るい声を掛けたのは、踊り子な衣装でやってきたレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)。ヒラリと薄い紗を揺らしながら、私の仮装どう?どう?と興味津々に返事を待った。
『なによう。あなたも私の邪魔をしようってワケ?』
ガッ、と地面に突き立てる三叉槍・冥府のトリアイナの刃に描かれた顔は、どちらもしょんぼりした顔だ。
敗戦に没しそうだと、心が認めているのかも知れない。
だが探しものを見つける。
その痕跡を見つけるまでは、調べ尽くそう冥土・in・HELL!!
『そうはいかないわ!ハロウィン?だか、トリック・オア・トリートだか識らないけど!私には関係ないのよ!』
いらっしゃい、無敵の死神たち!
ぞぉおと周辺地域の温度が下がる。冬でも無いのに、霜柱がそこら中で立ち始める。刃を持つ死神たちが冥府の炎を宿して、無敵属性を得たことで霊障が環境に影響を及ぼしているのだ。
しかし、レパルはもふもふ属性持ち。
寒い?そんなのへっちゃらだ!
『やっちゃいなさい!足止めしながら、目標を探しなさい!がんがん進めー!』
注文の多い女王の指示を、まずはレパルの行動を抑えることから彼らは始めた。
物事は一つずつ、当然だ。そうでなければ完璧さは求められない。
「ハロウィンなのにお仕事?大変だねー……上司?偉い人?ブラック勤務を命じちゃうんだー」
お祭りの日だというのに勿体ない。
コンキスタドール(オブリビオン)なのだから、おばけの一種。今日という日だけは、面白おかしく魔法の言葉を言ってもバチは当たらないというのに。
「ねえ、真面目な戦闘員さんたち。お喋りは得意?」
ウィンクしながら尋ねるが、返答は大鎌を振り下ろす魂を刈る行動のみ。
言葉は冥府に置き去りなのかもしれない。
「そっかあ、残念だなー」
『その子達だけが敵と思ったら大間違いよ!私は女王だから、後から攻めるの、当然でしょ!』
「ん?大丈夫だよ、あたしちゃんと皆のこと見てるうからね!」
勿論足元付近に生えている、南瓜のこともお見通し。これが噂のおばけ南瓜だ。ハロウィン限定時限爆弾が生えている、というのは何なんだ?
――頭を使うのは苦手だから、よくわかんないけど。
島もハロウィンが好きなのだろう!
素早く死神女王にカボチャ・ボムを投げつけて、一撃離脱。
時間をしなかった時限爆弾は、数秒でどかん。
女王の下僕たちは無敵で無傷でも、彼女は無敵ではない――ダ無傷では済まない。
攻めきれずに、逆にカウンターを受けた気持ちはどうだ?
「今日はお祭り騒ぎするのはいい日なんだよ、島に被害を出そうっていうならこの……イェーガー・レパルが相手よ!」
変・身!
誰もが内に秘める生命誕生のパワーが、レパルを覚醒させる。
ハロウィン気分を壊しちゃうなんて、駄目だよ!そんな言葉をオブリビオン相手に言える子は摩訶不思議に空中に現れた火の輪をくぐることで、ライオンをモチーフにした魔法少女"サンライズライオン"へと、姿を一時的に変えることが出来る。
此処で見たことは、女の子の、ひみつだよ!
「一気に攻めるよ!主張があるなら聞くけど、お早めにね!」
ダッシュでぐぐっと距離を詰め、怪力パンチを問答無用に叩き込む。ぐっと握られた拳による攻撃は、避ける動作さえする前に死神女王の腹部に華麗にヒット。
『ぐふっ……女王なの、私は。死んではならなかったのよ』
「後悔?そっか……」
でも同情は世界を、相手を、救わない。
「じゃあ、一度還って、また目指すと良いんじゃない?欲しい物を探そうという意志は誰も否定できないから!」
振り下ろされた三叉槍をオーラを腕に集めて防御して、空いた右手で、顎を殴り上げる!
仰け反ったのを確認して、蹴り上げて。
気合を込めたジャンプで、レパルは高所を取った。
「それじゃあね!今度は達成出来たら良いね!」
もう一度渾身の一撃を――貴方に。
レパルはビーチで戦っていたのだが、砂浜に着弾したと同時に沢山の砂が激しく巻き上がる。冥府の死神たちが流れるようにかき消えて、レパルの拳を受け止めた誰かが其処に居た痕跡は――人型の跡が残るのみで、影も形もどこにもなかった。
成功
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第2章 冒険
『宝探しをしよう』
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POW : 数打てば当たる!たくさん探す
SPD : 唸れ文明の機器!道具を使い探す
WIZ : たぶんあっち!勘で探す
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●アンティーク・クロックアワー
ハロウィンの洗礼(物理)で追い返し、死を呼ぶ海賊団の侵略を阻止した。
帝都によく似た町並みに、いつもどおりの時間が戻ってくる。
ひらり、はらりと、安らぎの花弁が頬を撫でて。
かち、こち、と聞こえる音は変わりなく時を刻み、時間の移り変わりを告げる。
そこら中に自生しているお化けカボチャだって、触らなければ穏便なジャック・オー・ランタン。島中がハロウィン一色であるものの、戦闘に協力してくれた職人たちも感謝の言葉を述べて工房へと戻っていく。
「もしよければ、君たちも時計、いらんかね?」
納品分を譲ることは出来ないが、店先に並べたモノはどうかと尋ねられる。
「ああそれとも、毎分を正確に刻むあの音の方が気になるかい?」
「我々もこの島にずっといるが、大本のメガリスは知らないんだ」
どんな形なのかも、どんな大きさなのかも。真実は闇の中。
メガリスを入手したとして、ハロウィン期間が遠ざかればあまり役に立つものでもないだろう。
思い出に浸る、思い出を観る。そのくらいでしか、用途はないかもしれない。
「でも我々だって知ってるよ。この島は時計に溢れてる。だからきっと大本だって、時計なのさ」
時計に影響を与えて、持ち主の人生に華を添えて影響を与える。
効力の範囲だって手に入れられなければ、分からない。
けれど。
「探して見つけたモノ(メガリスらしき時計)は、記念にお持ち帰りよ」
それは決して、我々が手をかけて作り出したものではないからお金なんて、要らないという。メガリスが派生させているもの。
ハロウィンだけの悪戯(おたから)だ。
「店頭の奴は意匠を凝らした普通の時計だから、今日限定の言葉を言ってくれたら値引きしようかね?君も、今日という日のキーワードが、分かるだろう?」
"トリック・オア・トリート"。
"ハッピーハロウィン"。
仮装もしていたら、時計の値段は更に値引き。
"猟兵"ならもっと値引きする、と誰もがニコリと笑って答えてくれた。
助けてくれたお礼だ、お祭り騒ぎの無礼講。
ただし仕事は妨害しないでくれよな。
職人気質な彼らは、気さくに猟兵達に感謝と歓迎の意を示すだろう。
さあ君は――どこへ足を伸ばそうか?
ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)
探しものは疑似妖精(UC使用時)か占い(外れる)で頑張りますが、多くの場合は有効活用を思いつけずにマンパワーで探します。
猟兵としての体力は、可もなく不可もなく。
「本体が無事なら再生する」性質を忘れがちのため、普通の人と同じように危険は避けます。
●ポンコツ鎮魂曲
「むむ、むむむ……」
メガリスの話を聞きつけて、手にした水晶玉をずぃいと覗き込みティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)は唸っていた。
探知妖精を召喚し、怪しい力の発生場所を特定すべく探しものに案内してくれる疑似妖精頼りに島の西側へ、東側へ。不思議な力を感じる気がしてあっちでもない、こっちでもない、とトコトコ街中を歩き回りながら占ってみたが、おおよそ見当外れ。
水晶玉より大きな壁掛け時計には興味を惹かれたが、今は一番大きなチアkらが溢れる不思議の場所を特定したいティモシーだった。
「此処には、幻朧桜があるから……どうも不思議な力が溢れているよね」
独り言。誰も聞く相手はいないけれど、どうも幻朧桜がある以外の要因があるような気がする。
そうでなくても今日はハロウィン当日。島中の様子がおかしいと話には聞いていたがお化けカボチャが道端でケタケタ笑っているのはどうだ?
ヤドリガミ人生的にも面白おかしい不思議の光景で思わずクスリと笑ってしまう。
だって――"そんなことあるわけがない"。
ガタガタ。カタカタ。ケタケタ。
足元のお化けカボチャが一斉に笑い出した。
まるでティモシーの言葉に反応するようなタイミングで。
「分かった分かった、僕の話を聞いてくれていたんですよね。君たちの正体は力の弱い……"影朧"なんじゃないかと思ってるのだけど?」
カタカタ揺れるお化けカボチャたち、全てがこの島に寄り添って集まっていたモノではないか。
姿を表す力さえ不安定な、影朧。
随分と癒やされて、転生を選ぶ踏ん切りが付かない者達。
この島では影朧の慰めに時計が用いられてると、小耳に挟んだ。
オーダーメイドの製品を、時計技師が丹精込めて贈る。
時計技師は――どの人物の頭にも桜の枝が伸びていた。
そう、桜の精である。丹精込めた人生の最後の贈り物を、時計師達は創り出す。
しかし幻朧桜に寄ってきた彼らに等しく創り出される時計が、何処でどうなるのかをティモシーは聞いていない。
『――!』
「あ。あんぐりと口を開けましたね。びっくりした?」
自生するお化けカボチャは、31日を過ぎたら消えてしまうらしい。
「あなたたちは、そうやって転生を促されてるんでしょう?」
トリックオアトリート。お菓子か悪戯か、色んな有耶無耶した気持ちをぱぁっと爆発力に変えてお祭り騒ぎに乗じて、気分を晴らす要素をも担っている催しだとティモシーは推測する。ハロウィン・ボムが時限式なのは、そもそも――時計を根源に抱えているからだろう。
人生時計の余剰を過ごす彼らに、"使って困る余生の時間"なんてない。
「本物のサクラミラージュとはちょっぴり違う生活をしてるんだな、って思います」
かち、こち。かち、こち。
一定のリズムが等しく流れるこの島で、のんびり過ごして来た影朧の旅立つ日。
この島では、それがハロウィンと重なる。
今年は近年稀に見る魂がこの地に留まっていたから、ハロウィン・ボムは歴代最大数を越えた。島のメガリスも後押しして、旅立つ魂が寂しくないように亜種メガリスをぽつぽつと点在させたのだ。
"本物はどれでしょう"、なんて悪戯を仕組む悪戯っ子のように。
「時限式の別れ、なんて洒落が聞いていますね」
でも残念――僕は仮装を忘れていました。
ティモシーを驚かしても、お菓子は貰えずティモシーが触れても時限爆弾として驚き(瞬間的最後の置き土産)を届けられない。
「まぁでも良いじゃないですか」
皆でおそろいのお化けカボチャになって"憂いなく仮装を楽しんで"。
「人生、楽しく終えられたほうが来世はきっともっともっと楽しくなるように出来てるんですよ」
この島の不思議の出どころは。
島中に、町中に恐ろしく自生していた南瓜そのものだった。考えてみれば、そうだ。一日だけ"お化けカボチャ"になるだなんて不思議でしかない。
「一般的なおばけにだって羨ましがられるでしょうね?ハロウィン・ボムが本来悪意のない可愛い悪戯だって、誰でも思いますよ」
成功
🔵🔵🔴
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ハーイ! ワタシがサポートに来た、バルタンデース!」
支援しマース! アドリブ連携歓迎デース!
普段の口調:片言口調で(ワタシ、アナタ、デス、マス、デスネ、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】と【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ!
荒事であれば武装を使用してクリアしマース!
移動中や探し物など、その他冒険なら適切な技能でくぐり抜けマース!
単独で進んでもOK、他の猟兵の方の補佐に回ってもOKデスヨー!
公開しているアイテムはどれを使っても大丈夫デース!
バルタンズのお小遣いも支払いマスので、心置きなくどうぞデース!
よろしくお願いしマース!
●にゃにゃにゃん行進曲
「タイムイズマネーとも言いマスからネー!」
歩いていても聞こえるあの音は。
キビキビ働き、歩めと聞こえる。
では進もう、キリリとした誇り高き凱旋でするべき緊張感ある表情ではなく。
「善は急げ、シャーマンズゴーストは歩みを止めずデース!」
ハロウィンなオレンジ色と黄色なカラーリングを取り入れたオリジナル衣装。
頭には、奇妙な形状と名高い特徴的なお面を横被り。
本物にはたてがみがあるが、それはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の特徴でもある緑の髪がその役目を果たすだろう。
本日、戦場ではないため普段着はお休みだ。
「ハロー!ワタシは旅のシャーマンズゴーストデース!」
特徴的な手袋で、器用に籠からお菓子を振りまくその女。
『――』
ケタケタと、笑うお化け南瓜達に挨拶代わりにお菓子を直接ご提供だ。
仮装するバルタンが触ったのではドカン、なので。
穏便な交流は、こうした物理投擲がモノをいうのである。
「トリックオアトリートを聴けないのはなかなか不思議なモノデスが……いえ!」
時計のメガリスを探しに行く。それはとてもロマンある行動だと思った。
だが、あえてバルタンはそれを選ばず、仮装をして南瓜の声(幻聴)を聞きながら要望に答える事を選んだ。
――この地が、サクラミラージュの様相があるのナラ……。
この地には、影朧が存在する。
本来の地より更に弱く、桜の精以外に視認されることもきっと少ないのだろう。
得意な荒事を手に、メガリス探しの冒険に乗り出すのはやや趣向が異なるのではないか、と思ったが故。
時計造りの作業をしてない程度に、騒いでも構わないはずだ。
作業妨害は、"迷惑行為(海賊行為)"だからこそ問題なのだ。
――では、楽しい催しになるように、努めるのも一興デショウ!
ばっ、と南瓜なバスケットから探り当てるのは、愛用の一品。
あえて隠しておきました。こんな、ことも、あろうかと!
四本それぞれ違う色の、メモリーを即席インストール――及び同時展開開始。
模倣様式・幽世幻想(イミテーション・アヤカシオヤブン)。
「にゃふふふ、それじゃあもっと派手にさを求めるかにゃ?」
とはいえ、あまり見た目に影響が出る感じで姿を変えてしまっては、折角の仮装が映えないからと。
それっぽい部位がぴょこんと増える。
にょろぉんと、誰かを思わせる四つの尾。
それからもっふりとした獣耳。
カクリヨファンタズムが一角、東方親分『山本五郎左衛門』の面影を、ユーベルコードにて幻想として出没させ、驚かし力の異常力を爆発的に上げる。
バルタンの口調は、対応したメモリの記憶分やや引きずられた。
「たくさん楽しむ顔が見られたら嬉しいにゃ?」
そこらに佇む南瓜衆。自発で動かず、ケタケタ笑う本物の幽霊(影朧)たちは、百鬼夜行の道連れとしよう。
「儂……いえ、ワタシが先導しマース!」
妖怪も、幽霊も、それから影朧も。
淡く朧げな存在なことには変わらない。
ならば――強い畏れを放つ存在に続け、続け。
「今日この日は、お化け南瓜の魂代わりのどろんな怪火を引き連れて、にゃにゃっとと驚け皆の衆!」
驚いたなら、特製お菓子の洗礼と――驚いた分の報酬を頂こう。
ワタシ(バルタン)の分、それからその辺り周辺の仲間たち(お化け南瓜)達に。
笑顔と楽しさ、それがハッピーハロウィンである合言葉だ。
さあ声を揃えて時計より大きな音で叫ぶのにゃ――トリック・オア・トリートと!
成功
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夜刀神・鏡介
今の俺は怪盗スタイル。そして怪盗はお宝を探すもの……だが、別に時計のメガリスの事は良いかな
そりゃ、見たい光景がないと言えば嘘になるが
方向性は違うにせよ、彼女らの望みを否定した俺が、そういったものを見るのもなんか違うだろ
というわけで、普通の時計を買いに行くとしよう
さて、どんなものが良いか……怪盗といえば何故か懐中時計のイメージがあるし、そうしよう
ちょっとレトロな奴。サクラミラージュだけに、桜の彫刻がされた奴とかはどうだろう
トリック・オア・トリート。だがこの場合「時計をくれなきゃ悪戯するぞ」が適切なのか?
あ、怪盗風だからと言って勿論盗んだりはしない。軽くなんて冗談でも言っておこう
●ファントムシーフ装飾曲
無事に事件を収束させた夜刀神・鏡介は考えるように、近くの壁に背中を預けた。
まずは考える時間を持とう。
黒いジャケットとスーツにシルクハット、それからマントだ。
これからするべきことは、「ハロウィンといえば」と言われる事が相応しい筈。
――うん、被害は何処にもないな。よかった。
怪盗紳士が、するべきこと。それは。
――盗み?いや、それは違うな。
悪戯から逸脱する事をするべきではない。
きらんとモノクルを輝かせて悪巧みな顔を、キメて観るがなにか違う。
「怪盗なら盗みもしくは、お宝を求めるモノだろうが……うん、そうだな」
誰も知らない時計のメガリス探し。
それは鏡介の中で求めるモノとして映らなかった。
「別に時計のメガリスの事は、まあいいかな」
メガリスの名が示す、この海の秘宝の一つに並ぶだろう。
しかもハロウィン限定超すごい力を発揮するらしい。
でも鏡介は気にかかるのだ――先程女王へ向かって言った"自分"の言葉が。
「そりゃ、見たい光景がないといえば嘘になるが」
現在無くて、過去にあったモノは指を折って数えられる気がした。
――"あの時"どんな顔をしていたか、だとか。
――嬉しい言葉を聞いた"あの日"をもう一度、だとか。
「俺にも分かる。見たいモノの方向性が違うにせよ、考えを否定した俺が手にするわけにはいかないってな」
――望みを否定した俺が、そういったモノを観るのは。
なんか違うだろ。なんか違うんだ。
女王が欲しがったメガリスを見つけたとして。
鏡介はそれを、使うことはない。心が違うと否定するから、使わない。
これぞ"宝の持ち腐れ"という奴だ。
探すだけの時間が徒労――探す必要はないだろう。
「そういうわけだ。俺は普通に、買い物へ出かけよう」
ひらり。マントを翻し、直感の働く道へ足を向ける。
はら、はらり。時間帯にして夕刻へ移りそうな時刻だ。
幻朧桜の花弁が、日差しを遮るように落ちてくる様子と時計の音がなんだか不思議な調和を生んでいて。
「どんな時計があるだろう?」
『なんだ、桜は好きかい?にーちゃん』
枝垂れた桜の枝を頭に生やす技師が、手を振って呼んでいた。
鏡介はゆるりと頷いて、招かれるまま、店先で透明ケースに仕舞われた時計の数々を目にする。
「わあ……」
まず、彫り込みの意匠の細かさに、息を呑んだ。
置き時計は一つ一つの花弁が彫り込まれた絵画のような透かしの入った盤面が使用されていた。
思わず目を――奪われる。
『ハッハ、俺っちの目は間違ってなかったな。此処のはお眼鏡に叶うかな?』
「ええ。桜は、馴染み深いので……」
置き時計。壁掛け時計。色んな種類があったが――どれもこれもが銀製。
シルバーメタリックが、キラリと光っていた。
――この服装にも、合う色合いだな。
――安直な発想かもしれないが、怪盗といえば何故か懐中時計のイメージがある。
「……あ!」
思わず声が出た。
桜の一輪を抱くような大きな翼が蓋に彫刻された懐中時計が、あったのだ。
細かめの柔らかな鎖と、所々に桜の花弁の意匠。
どことなく何となく想像していた、レトロな雰囲気で。
サクラミラージュだけに、桜と考えていた分、なんだか目を奪われる。
『お?気に入ったか?』
「……トリック・オア・トリート」
――この場合は、時計をくれなきゃ悪戯するぞ、が適切だろうか。
『強盗か?ハハ、そんな正面からくる柔らかな物腰の怪盗なんていねぇよ』
「怪盗風だからと言って勿論盗んだりはしない」
ノリの良い桜の精は、わかってらぁ!と返事を返して。
島の窮地を救ってくれた鏡介に、破格の値段を提示した。
殆ど帝都で買えるお菓子くらいの、値段だ。
二つ購入してもお釣りが来るほどの――。
『困ったなあ、悪戯されると仕事が滞るんで、そいつで勘弁してくれや』
動作不備。不良品の交換。なんでも承ろう。
『そいつは俺の自信作なんだ、もし他に欲しい奴がいたなら連れてくると良い』
意匠違い、揃い。オーダーメイドの特権だ、格安で承ろう。
『……それとも、それ、誰かに贈るのか?』
「内緒ですよ」
丁寧口調で誤魔化して。怪盗はシルクハットを脱ぎ、最敬礼で返すのだ。
キラリ輝く時計を入手して、ポケットに収めようかを考えながら。明日へ進む時間を刻む時計に、わくわくするような自分の胸の音と足音を加えながら。
大成功
🔵🔵🔵
シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ歓迎
仮装:海賊(仮装の定番だろう
…メガリスに亜種が存在するとは
使用制限はあるが、この時期にしか出回らない希少価値のある物らしい故に
幾つか所持しておきたい
時計メガリスの形等お任せ
疑似体験は父親(名はマクシリアン)が或るコンキスタドール(名はクイーター)に殺される所を見る
情緒不安定の母が幼い自分に何度も語り聞かせた話
時系列は自分が誕生した時の頃
故郷の島(島の名お任せ)に突然来襲したコンキスタドールを島の統治責任者な父が最前線で交戦
父は死に、コンキスタドールが暫く島を支配
母は父の死んだ場面を見て病んだ
父の外見は宿敵イラに酷似
性格は真面目
不器用な所もあるが民に信頼されてる
母は銀髪ロングで優しい
●或る海賊の序章(オーバーチュア)
男は街の賑わいを横目に、遠くまで良く見える眼鏡である一点を見据えた。ビーチからは一番遠く。飾り気のない、岩場に輝くものを視た。
小さい洞穴らしいモノを見つけて、目星をつける。とりあえずの目標と男は定めて島の騒動には我関せずで良いと判断し、堂々と歩いていく。
飛び交う南瓜の時限爆弾?知るものか。
コンキスタドールな女の叫び?醜悪な声の海鳥だろう。
仮装した猟兵が横を駆けていく音を聞きながらも、シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は振り向かない。
だがそんな彼も、ある一点だけ普段と異なる様相だった。
片腕に薄く透き通る氷のような色合いのバンダナをぎゅっ、と巻いているのだ。ひたすら無言で押し通り、男は一つ心の内でのみ主張する。
――定番の仮装だろう、海賊は。
誰もこの島に別の海賊が訪れたと思うまい。
「……誰も語りかけてこないとは」
それほど仕事に追われる島なのか?幻朧桜が促すかのような導きで。
ひたすらに、短針、長針と戯れることが重要か。
――どいつもこいつも好き好んでやっている事だろう。
「私には関係ないな」
此処では時計の購入も出来ると聞いた。だが普通の時計など今や特注だろうと珍しさに欠ける――何処ででも手に入ろう。
「それよりもだ」
気になる単語は歩きながらの考察でも十分拾える。
「……メガリスに亜種が存在するとは」
――本物に迫る、本物から枝分かれしたものか?
そんな話ついぞ耳にした事はないが。
――強力すぎて、余波で発生したモノ?
使用に関する制限。能力の使用期間、その最大範囲。
ハロウィン限定と、制約の付き方も妙だ。
「この時期にしか出回らないものではあるのだろう」
亜種だろうと、真偽等誰にも鑑定出来ないだろう。希少な価値のある代物(宝)。それだけが事実として残れば、此処へ来た意味もある。
――幾つかの所持が、叶うだろうか。
やかましいほど聞こえる、かち、かち、と一定の刻を刻む音。何処を歩いていても、遮られるモノなしで聞こえるこの音は一体なんの為に。
島中の南瓜がお化けカボチャになるように、シェフィーネスは洞窟に入りすぐにキラリと光るモノを見つける。
先程、輝いたのはこれだろう。
ひと気のない洞窟に、在っていてはおかしいもの。
「――」
拾い上げて、所持者が辺りにいない気を張る――当然誰もいない。
それは、内部に秘された振り子がゼンマイを廻す原動力となる自動式懐中時計。質量があり、少し重みがある。
金縁に、銀色の蓋を備えた無機質の――いや違う。
シェフィーネスの隠すオウガの力が蓋の上になにかを描こうとした。炎や熱に反応する、異質なモノ。普通の時計では考えられない反応を見て、一瞬躊躇う。
これは普通の時計ではない。
――ではこれが、話に聞いた亜種、か……?
かち、かちり。周囲の音が突然無くなった。静寂が洞窟の中に広がって、懐中時計の小さな針の音だけが手元に音を伝えてくる。
手元の懐中時計が持ち上げられた事で時間を刻みだしたのだろう。
誰にも識られず眠っていたメガリスが。
――だからといって、周囲全ての音が聞こえなくなるなど。
――……違う。
周囲に置き去りにされたのではない。
――これは、何処だ?
シェフィーネスが時計のメガリスの疑似体験に巻き込まれたのだ。
刻(とき)の標、シェフィーネスの――記憶の底に沈む時刻へと。
* * *
『――……クイーター、何故此処へ』
それはよく聴けば、生真面目そうな、男の声だった。
服装からも律儀な様子を見て取れる。
押し入った存在に怯むこと無く対処を試みようとする、その男。
どちらも銃を向けていた。指は既にトリガーへ。
意識すればどちらかの体に穴が開く。
そのような張り詰めた空間にシェフィーネスは識らずのうちに放り込まれている。
『引け』
銃を向け、敵対する様子が直様想像できた。
相対する存在が、ニヤニヤと統治責任者たるマクシリアンに迫る。
――……これは。
『その通りに成す奴がどこに居る?』
『目の前に』
コンキスタドールはそれさえも愉快に笑い飛ばしてきた。
そんな馬鹿げた奴がどこに居るんだと。
――……記憶?
――私の記憶のなのだとするならば。
反論の言葉、会話。幾つかが聞こえてきたがどれも相容れぬ物だった。
その合間に――急にずどんと銃声を、連続数回聞いた。
『銃の引き金をか、成程成程』
欲しがりか、もっと早くいえば良いものを。
銃口から上がる熱量を吹いて、コンキスタドールが男の命を奪う。
島から責任者が奪われた。どしゃり、と斃れ、嘲笑う声が木霊する。
――これは、母が話していた……?
――……何かが、異なる。
その光景を、目の当たりにしたのは長い銀髪を揺らす女であったという。守られているべき場所、その省庁が陥落した。
女の理解は、足をその場に留め赤子のなく声すら耳に届かない。
『……――!』
誰かが避難しろと声を掛けていた。コンキスタドールが統治者を討ってそれで済ますわけがない。
良いから逃げろ、と何度も声を掛けていて。
ようやく女は赤子を抱えて逃げ出した。
――確かに、母は情緒が不安定だった方だ。
それは、シェフィーネスの父が没した日の話。
突然の崩落が、立場を貶めたきっかけだった日。故郷の島に突然来襲したコンキスタドールを、父が決着を付けんと最前線で戦った話。
――島の名は。
――コンキスタドールが勝手気ままに変更して弄んだとも聞いた。
アマネセル、エストレヤ、シュバルツシルト……他にも押し付けられた名が在った。どれもが絶望の名を関していなかった事に些か疑問は残る。
――ゼーンズフト。
その名が、最初に付いていたと母は言っていたはずだ。
影も形も無くなった、別の名を与えられた故郷の島には。
「……では。母を逃したのは、誰だった?」
知らずの登場人物。幼いシェフィーネスにはそこに声のみだが確かに"いた"と理解できなかったのだろう。
――不器用な所がありつつ、民に信頼されていた父がほぼ目の前で。
親愛なる母が心を病んだのは当然の巡り合わせだったのかもしれない。
――話をする横顔も、話す声も。
――全てがとても……優しかったから……。
急激な喪失を、受け止めて行ける人柄ではなかったと今では思う。
* * *
どことない既視感。違和感に、シェフィーネスが瞳を閉じた時。
かち、かち、かち。すう、と島中の音が戻ってくる。
いつの間にか手元の懐中時計の蓋が開いていた。
炎が踊るように盤面に色を添える――これが持ち主たるシェフィーネスの体温に応じた色だと気がついたのはだいぶ経っての事だ。
シェフィーネスが観た光景、その時間は一体何だったのだろう。
「……私が、これを観たいと願ったと?」
疑念を時計に向けた所で言葉は帰らず。
「違う。願っていたのは複数個の、時計の所持だ」
疑似体験の真実は、何処に?
「……?」
拾った時計は一つだった。それは確実だ。
しかし、ポケットの中にいつの間にかハロウィン・クロックが潜んでいる。生き物ではないのに。拾った覚えがないのに。
「探す手間が省けたな」
亜種と不名誉の名が付くのだから、時計技師が直せない可能性も含まれる。似たような色合い違いの形状なのには、疑問の余地しか無いが。
空想の現(イマジナリー・リアリティ)により、シェフィーネスが独自に亜種をさらに虚無から引き出されて形を持って懐中時計は留まった。
これに疑問を感じた途端に、「唯一」以外は脆く容易く霧散する。そんな予感を抱えながら、ハロウィンの時間に不思議な体験をした海賊が居たらしい。
●エピローグ
猟兵達が、この島を去った後。
もうそろそろ、31日の魔法が解ける時間。
かち、かち、――か ち り。
島のメガリス(時計)が一斉に時間を刻むのを止めた。
同時に、メガリスの力が発動し、島中全ての時計が真逆にぐるぐる!
ハロウィンに一番力を発揮して、――島のメガリスの記憶。
本来の世界から零れ落ちる前の時間を再現しはじめて、からからと乾いた音を立てて時計はすごい速さで刻を廻す。
"幻朧桜"は何処へ紛れ込んでも変わらぬ桜。
影朧がいつの間にか道端に膿まれた逢魔が辻で震えている心を、遠く離れた今は時計の音で癒そう。
さあ、還るといい。
転生を促す言葉と、"過去の疑似体験の世界へお化けカボチャ達は消えていく。夢のようにぽわぽわと。導かれるように、寄り道せずに。
君たちは個でありながら現在を生きる生き物ではない。
影朧は十分に、桜の精の癒やしを受けてきた――だからもう、転生を選んでいいのだ。旅立つ時(日)がやってきただけのこと。
この世界ではなく、"正しい世界へ"誘わん。
きっと、我が疑似体験の縁を辿って、たどり着けるだろう。
帝都の幻朧桜は、何処にでも在って。どれもが幻朧桜だから。
過去の記憶の幻朧桜も、現在で聳えるそれそのもの。
影朧が望むなら、桜は花弁を揺らして暖かく迎える。
逸れた我が仔を抱くように――優しく。
アンティーク・クロック・タイム。
時計がメガリス、刻まれた名は「骨董品・クロックタイム」。
この島は、いや島だと思われているこの場所は。上空高く飛ぶものがあれば、分かったはずだ――巨大な南瓜の形をしていたから。
ハロウィン時計は、生きる時間を正確に刻む。立ち並ぶ場所が翳を映すことで時間を知らせる日時計だ。巨大すぎて持ち主がいないメガリスだ。だから正確に「毎日、自分に触れるもの全ての時間」を刻み続ける。
疑似体験の力を使っている間。
島の全時計を止めて我は汝が望む世界を見せよう。
己が望むモノ以外、外の世界(正しい)は息を潜めたように停まる。
我が上に住まう者達は、我がどこに居るものかを知らぬ。
当然だ。刻む音のみで、我がメガリスの姿を知らぬのだから。
これからも知ることはない。
知られず、奪われずの島そのものでもあるメガリスでいいのだ。
もし、我が断片を入手したものがいるのなら。
望むのならば――誰も知らぬ、場所を時間(過去)を見せてやろう。
我が力の断片でも、小規模で似たような事は成されよう。
ただしハロウィン以外ではそう多くの時間を再現できまいが……。
魅たい、魅せたいものがあるのなら、伝える手段とは成ろう。
疑似体験の過去をどうせ変えることなど誰にも叶わぬのだから。
現実時間への干渉、パラドクスは起こらない。起こせないのだ。
このメガリスは極めて局地的な利用しかできない。
非常に扱い辛い秘宝に属するだろう。使おうとしなければ唯の時計だ。
――さあ、道は示されたのだ。
もう行くと良い、転生に夢を抱いた者達よ。
ハロウィンを知った弱い魂よ。
いつかまた――この楽しい世界へ戻ってくると良い。
我は此処から、ただひとり。遠く向かう君たちを見送ろう。
そして停まった時(刻)は、11月1日へ至ったと同時に長く短く止めた息を吐き出して誰もが呼吸を再開した。
かち、こちといつもどおりの時間を刻む音と共に。
島から消えたものは、そこら中の全ての南瓜たち。いつの間にか消え去ったそれの行き先を、島民たちは――誰も知らない。
大成功
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