【サポート優先】世の中神より金ですわ!
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
●村人の努力の賜物――だが
「今年もどうにか、天のお恵みを頂くことができました。ありがたや、ありがたや……」
日も落ちて、篝火が囲む境内に村人達が集うと祭りもいよいよ最後の行事。神主が大幣を一定の間を取りながら左右に払い、村長が村の代表として神様へ感謝を述べる。
穀物も菜も大いに実った。日の出から始まった祭りでは収穫物をふんだんに使った汁物や赤飯などが振舞われ、神輿が村中を練り歩いた。元は小ぢんまりとした祈祷行事だったようだがいつからか神輿が現れて、それを見たさに人が訪れるたびに規模が大きくなって今の形になったそうな。
「村一同、厳しい寒さが参りますこの先も節度を守り、一層精進致します故、来年もまたお恵みを賜りたく、何卒、何卒……」
祭りは今年の豊穣を祝うと共に、来年の豊穣を願う場でもある。村人達にとっては生活の懸かった一大行事。皆、しんと鎮まり村長の声に耳を傾けて、神に祈りを捧げている。
だが、祭りは突如として礼節を弁えない不届き者に踏み荒らされることになる。
「明日の我が身を神頼みだなんて、さすが下民達のやることは違いますわね!」
天より甲高い声が降ってきた。勿論、彼らが祈りを捧げる神がやってきたのではない。金色に輝く派手な扇子を広げて社の屋根に立っていたのは。
「わたくし、ずっと疑問でしたの。神に縋らなければ生きられない蛆虫のような者達が、どうしてこの世界にいるのかと……そして気付きましたわ。そんな者達を駆逐することこそが、わたくしに与えられた使命なのだと!」
ばさっ、ばさっと扇子を振り回し、ロールした髪を揺らしながら演説する煌びやかな少女の姿を、村人達は呆気に取られて見ていたが。
「下民達、感謝なさい! このわたくしが直々に、明日を見なくてもいいように眠らせて差し上げますわ!」
俊敏に跳んでみせた少女は手始めに村長の正面へ着地すると、扇子を振り抜き丸い頭を刎ね飛ばしていた。
●サムライエンパイア・6thラウンド
「少し涼しくなってきましたね! この時期ですと、豊穣祭のようなものがサムライエンパイアの各地で行われているようなのです……が! 今回、そのうちの一つである村祭りにオブリビオンが出現することがわかりました!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が伝える事件の報に、猟兵達がちらほらと立ち止まる。
「そのオブリビオンは『蝶小路流忍者・たまき』と言いまして、ちょっと忍者っぽくないゴージャス忍者です! たまきは村の皆さんが一堂に会した行事の場に出現して、居る人全てを殺してしまいますので何としても止めなければなりません! ですが、お祭りそのものを取りやめるというのは村の風習だとか皆さんの願いだとか、そういった諸々がありましてできませんので、皆さんにはお祭りに参加してたまきを待ち構え、村の皆さんを逃がしながら戦い、倒していただきたいんです!」
ロザリアが視た通りに全てが進めば、たまきが現れるのは夜になる。それまではまだ結構な時間があるが、ロザリアが急ぎ情報を纏めてグリモアベースにやってきたのには訳がある。
「皆さんにお願いばかりでは申し訳ないので、今回は少し早めのご案内をさせていただきました。今はおそらくお神輿が村中を回って、村の皆さんがワイワイ騒いでいる頃かと思いますので、観光気分でお祭りを楽しんでみてください。お神輿は希望すれば一緒に担ぐこともできると思いますし、振舞われる料理もきっと美味しいものがたくさんあります! 村の人達にお話を聞いて、お祭りがどんな形で変わっていったか、なんてことを調べてみるのも面白いかもしれませんね! 楽しみ方はお任せしますので、目一杯お祭りを楽しんで、そしてたまきをやっつけてしまいましょう!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
お祭りなんて最後に行ったの何年前ですかね……。
●フラグメント詳細
第1章:日常『今日は祭り日和』
たまきが出現するとされる夜の行事まで時間がありますので、村を回りながらお祭りを楽しんでみましょう。
料理は色んなところで振舞われています。露店に近いものですがお金はかかりませんので自由に食べてください。
行事的なところではお神輿の他に境内で行われている餅つきとか、それから料理はずーっと作られていますのでお手伝いしつつ村の方々と交流、などといったことも可能かと思います。
第2章:ボス戦『蝶小路流忍者・たまき』
お金持ちの忍者です、多分。
戦闘吹っ掛ければ大体乗ってきます。速やかに退治できれば祭りの行事も再開して、無事に終われることでしょう。
第1章 日常
『今日は祭り日和』
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POW : 何事もノリと気合いで体験だ、と祭りに参加する
SPD : 見て、聞いて、味わって。見物客として見て回る
WIZ : 祭りの起源や歴史を紐解きながらじっくり祭りの風情を楽しむ
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月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●神様と山の幸
「わっしょい! わっしょい!」
月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)が転送されてやってきた村の一画は、今まさに男達が神輿を担いで練り歩きにやってきた場所だった。上下に激しく揺すられる神輿は金色の装飾がふんだんに使われた煌びやかなもので、担ぐ男達はおろか、周りで見ている者達も声を揃えて囃し立て、神輿の進行を盛り上げている。
「迫力が、凄いですね……」
「そうだろう? これから村をずーっと一周して、色んな神様を乗せていくんだ」
莉愛の話し相手になってくれたのは、民家の軒先できのこ汁を作り振舞っていた女性だった。右も左も分からず途方に暮れていたところに声を掛けられ、「とりあえずこれでもどうだい?」と渡されたきのこ汁の器を莉愛は今も手にしている。
湯気が立ち昇る出来立てだ。箸をそっと汁の中に伸ばすと、しいたけやぶなしめじ、きくらげと言ったきのこ達が顔を出す。試しにきくらげを箸先で掴んで食べると、こりこりとした食感に味噌ベースの味がほんわりと口に広がっていく。
汁を啜ると、今度は味噌の塩味の中にきのこの出汁がよく溶けだして濃厚な味わいになっていた。
「美味しいです……!」
「はっはっは、うちのばあさんの時代から伝わる秘伝のきのこ汁だからね。この村じゃどの家も『家庭の味』を持ってるから、神輿を追いかけがてら、色んな物を食べてみるといいさ」
「はい、ありがとうございます……!」
話している内に神輿は莉愛の目の前を通り過ぎていく。担ぐ男達は呼吸を合わせて神輿を盛り立て、その迫力と振動は莉愛の全身を打つように伝わってきた。
きのこ汁を食す手が止まり、しばし莉愛は神輿に見入る。神様が乗るというそれは神秘の一端だ。
やがて声は徐々に遠のき、莉愛は垣間見た神の世界から人の世界へと戻ってくる。
「ほら、追いかけないと、行っちまうよ?」
「あ、そう……ですね」
莉愛は少し慌て気味にきのこ汁を完食すると、残った器と箸を女性に返して礼を述べ、神輿を駆け足で追っていく。
その先にどんな神様とどんな食べ物が待っているのか。莉愛の楽しみはしばらく尽きそうになかった。
成功
🔵🔵🔴
フィンブル・テュール(サポート)
特に危険がないようなら、誰かの迷惑にならない範囲で思い切った行動をしたいと思います。他の方がしない事を探し、避難させたり、怪我の治療をしたり、差し入れをしたり、迷路の地図を作製したり。でも、人前に出るのは苦手なので演説とかは苦手です。陽動作戦は好きです。
●人の熱狂を君は見たか
男達が法被に鉢巻き、汗水流して金ぴかな何かをわっしょいわっしょい担ぎ上げる。上下するそれにフィンブル・テュール(オラトリオの聖者・f01804)の視線も合わせて動き、口にしようとしていた串団子は行き場を失っていた。
あっという間の出来事だった。フィンブルはグリモア猟兵に送られたはいいものの、祭りの楽しみ方がいまいちピンと来ていない。それで手持ち無沙汰にしていたところを村人の男に引き留められた。
「もうすぐすげぇモンが来るから、時間があるなら見ていきなって。あ、これよ、うちの『かかぁ』が作った団子でさ」
「ありが……とう」
胡麻味噌の付いた串団子。貰ったからには食べるべき、と口に持っていこうとしたが、俄かに村人達が盛り上がりを見せ、威勢のいい掛け声が聞こえてきた、というわけだ。
「な! うちの村の神輿はすげぇだろ?」
「あぁ……凄い、ね」
男達はじっと前だけを見据え、喉が枯れるまで声を張り上げ続ける。それに合わせて周りの村人達は手を打ち拍子を合わせ、やはり掛け声で男達を後押しする。
神輿は村の者達全ての情熱を燃やして動いていた。気迫が、躍動が、限りある人の命の刹那の輝きとなってフィンブルに真正面からぶつかっていた。
心が震えた。手に汗を握る――まさにその通りに、フィンブルの空いた片手は汗ばむ感動を握り締めていた。
「これが、祭り……!」
「おぅよ、分かってきたね、兄ちゃん。だったら次は神社に行ってみな。もうじき、舞の一つも始まる頃だろうよ」
「神社……! それは、どっちですか?」
「神輿が来たほうをずーっと遡って行きゃあ……人が続いてるからわかるだろうよ」
「ありがとう! ……あぁ、団子……」
頂き物を贈り主の前でそのままにしてはいけない、とフィンブルは急いで食べる。甘辛の胡麻味噌が甘く作られた団子によく合った。
「美味しかったです、ありがとうございます」
「そうかい、かかぁも喜ぶぜ。あぁ、串は貰っておくぜ? 兄ちゃんには邪魔になるだけだ」
フィンブルは食べ終わった団子の串を男に差し出し、頭を下げて感謝を示すと人垣に沿って道なりに進む。
グリモア猟兵に導かれた者達がどのように世界を感じているのか。導かれる側に立ったことで見えた景色は、普段の旅とは全く異なる色合いで。
フィンブルの足元は自然、駆け足に。まだ目にしたことのない世界を心から待ち望んでいた。
成功
🔵🔵🔴
六代目・松座衛門(サポート)
ヤドリガミの人形遣い×UDCメカニック。人形を用いて異形(オブリビオン)を狩る人形操術「鬼猟流」の使い手です。
ヤドリガミの特徴である本体は、腰に付けている十字形の人形操作板です。
普段は「自分、~君、~さん、だ、だろう、なのか?)」と砕けた口調です。
いつもは、大道芸として人形劇を現地の人たちに披露しています。
機械的な仕掛け(からくり等)に興味があり、各世界の技術を鬼猟流に取り入れようと努力してます。
●見られるも祭りの面白さ
この村の祭りには何かが足りない――ケチをつけたいわけではないが、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は心のどこかに引っかかるものを感じていた。
それが何なのか明らかになったのは、神社で巫女の舞が始まってからのこと。
芸事だ。芸事が足りない。巫女の舞も起源は神への奉納の儀であり、荘厳で神秘的ではあるが見る者を選ぶ節がある。子供達はどうだ、ぽかんと口を開けて見ているが、それが見とれているのか気持ちを失っているのかわかりやしない。花より団子という風で、舞より餅や赤飯に向かっている子供達も多い。
一肌脱がねばならないと使命のように感じていたが、舞は舞としてこの村の祭りのあるべき姿。それが一段落ついて、また場の熱が冷めた時、松座衛門はようやく動き出す。
「さあさあご覧に入れますは、昔々のそのまた昔――」
調子を付けた声に合わせて境内の隅より現れた松座衛門に村人達の視線が一斉に向いた。松座衛門が特に気に掛けていた子供達も、手にした箸を宙に留めて振り返る。
「なんだこれー!」
「おっと少年、こういう操り人形は見たことないのか?」
「うん! うわー! すげー!」
好奇心の塊みたいな少年が興味津々に松座衛門と人形の周りをうろつくと、釣られて大人子供がぞろぞろと。
「おぉ、旅のお方、何か見せてくださるのですかな?」
「そりゃあもちろん。この六代目松座衛門、出てきたからには人形劇の一つや二つ、華麗に披露してみせましょう。なぁに、自分にとっては手遊びのようなもの、どうぞゆるりとご覧あれ。さてさて、時は戦乱の世――」
物珍しさでまずは村人達の気を惹いた。子供達は最前に座り込んで瞳を爛々と輝かせ、後ろに大人達が立ち見の垣根を作って「どれ、一つ品定めでも」と挑戦的な視線を向けてくる。
それくらい食いつきがあったほうが松座衛門としてもやりやすかった。人形劇の内容はある若い農夫が一国の将になるまでの出世話。努力と才能でばったばったと強敵を薙ぎ倒すストーリーはチャンバラ好きな子供達に受けが良く、人形達の躍動感溢れる動きに大人達は目を見張った。
来る者は皆足を止め、人形劇が良く見える場所に陣取っていく。すると終いには大きな輪になり満員御礼。それでも見たい子供のために肩車する大人も出てきた。
「――こうしてめでたく、国は太平の世を迎えるのだった――」
松座衛門が人形と共にお辞儀をすると、巻き起こるは拍手喝采。
「こりゃたまげた、この人形劇を見れたのは一生物の自慢だなぁ」
「楽しかったー!」
「な、なぁ、もう一回やってくれねぇか? 今度は家のモン連れてくるからよ!」
「時間が許す限りいくらでも――とは言え、冷たい水の一杯くらいは、飲む時間を貰えると有難い」
熱狂冷めやらぬ境内には絶えず村人達が集まってくる。元より祭りの最後の行事のために足を向ける者が居たのは確かだが、それ以上に噂が噂を呼んでいた。
盛況も盛況、大盛況。松座衛門の公演はそれから三幕行われ、日の入りと共にようやく終わりを告げるのだった。
成功
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第2章 ボス戦
『蝶小路流忍者・たまき』
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POW : 頭が高くてよ!
【特注の刃となっている扇子】が命中した対象を切断する。
SPD : やってしまいなさーい!
【金で雇った部下達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 美しき蝶よ!力をお貸しくださいませ!
自身の身長の2倍の【揚羽蝶】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●たまきは見た
楽しい時間はあっという間に過ぎて、祭りもいよいよ最後の行事。神主が大幣を、とはすでに視た時間。違うのは、村人達に混じって猟兵の姿があるということだ。
「明日の我が身を神頼みだなんて、さすが下民達のやることは違いますわね!」
聞いた台詞だった。すたっと社の屋根に降り立った蝶小路流忍者・たまきは――村人達を一瞥し、その中に猟兵が混じっているのを目ざとく見つけた。
「あら、下民の中に、下民よりも気に食わない顔が居ますわね……そちらから手を掛けてしまいましょうか。下民達、これはわたくしの最初で最後の慈悲ですわ。悔いの無いように逃げ回り、そして喚きなさい!」
ラム・クリッパー(サポート)
搦め手は好きじゃないっすから、正面切って前線に出るっす!
一応、解体士の端くれなんで、敵の壊せたり、解体できそうなところは狙うっすよ。
なので、武器は解体工具を持ってるっす。
UCは指定されたものは、どれでも使用するっす。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしないっす。
公序良俗に反した行動はしないっす。
●忍者なれども堂々と?
「村の方達に逃げる時間を与えるなんて……案外、正々堂々としているところ、あるんっすね!」
「正々堂々? 虫唾が走りますわね……。『蟻』ごとき、いつでも踏みつぶせる――ただそれだけですわ」
村人達がぎゃーぎゃー騒ぎながら逃げ回る中、ラム・クリッパー(力自慢の少女解体屋・f34847)は人波を掻き分け前線に立ち、たまきを待ち構える。たまきが降りてきたところを村人達の逃走に乗じて奇襲、といった攻略手段もあっただろうが、ラムは搦め手を好まない。
たまきは社の屋根から飛び立つと、音無くラムの正面に着地する。互いに計る間合い。今はまだ共に射程の外。
ラムは曲がりなりにも魔獣解体士だった。解体できるものが何かないか――たまきの身ぐるみを見る限り、解体できそうなものは身に着けた忍装束くらいか。
「いきますわよ!」
宣言するのがたまき流。特注の刃となった扇子を手の中でくるりと返すと、ロールした後ろ髪をぶるんぶるんと揺らしながらラムへと突っ込んできた。見目は激しいが音は無く、忍者の面目を保っている。
たまきは扇子を水平に持ち、低い構えを見せていた。繰り出されようとしている扇子の一撃は紛れもなく「解体」の力を持つ――ラムとて伊達に魔獣解体士はやっていない。たまきの扇子の性質を見切ってフーリガンツールを薙ぎ払い、たまきの斬撃を受け止めようとしていた。
互いに運動するものの衝突――それは物体の質量も然ることながら、速度に大きく依存する。たまきの斬撃の出が早い分だけ加速して、真っ向からの衝突の後に空へ大きく弾き飛ばされていたのはラムのフーリガンツールだった。
「遅いですわね、頭が高くてよ!」
「ヤバイっす――!」
別の武器を取る暇はない。振り上げられたたまきの扇子はそのままの状態から一気にラムの頭上へと振り下ろされてくる。このままでは真っ二つ。何か策は――と考える間もなく出ていたのはラムの両手だった。
タイミングは一瞬しかなかったであろう。目線の先でバチンと打った両手の中に収まっていた、たまきの扇子の中骨。咄嗟過ぎてラム自身すら何が起きたか理解できていなかったが、真剣白刃取りの要領でたまきの扇子を両手で握り締めていたのだ。
「なっ――」
「握れたっす!? ……なら取り敢えず、持ち上げてから考えるっす!」
何を起こしたかを理解したラムは根深く埋まった牛蒡でも引き抜くかの如く、大きく上体を反らしながらたまきの扇子を持ち上げた。
扇子はどうあっても手放せぬ武器。たまきの体は扇子と共に持ち上がり、空を見上げるラムの眼前を通り過ぎて――。
「きゃあっ!?」
ずどん、と回転したたまきの体はバックドロップ気味に地面へ落とされ、背中と尻を強か打った。弾んだ勢いで扇子がラムの手を離れ、ラムは後ろへ倒れそうになる体をどうにか捻ってバランスを保つ。
「このわたくしを――ふぎゃ!?」
地面に倒されたたまきは素早く身を返して物言いたげにラムを睨んだが、そこへ先程たまき自身が弾き飛ばしたフーリガンツールが落下して頭を直撃。素っ頓狂な声を上げて、たまきは回る星を見上げるのだった。
成功
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ティモシー・レンツ(サポート)
基本は『ポンコツ占い師』または『本体を偽るヤドリガミ』です。
カミヤドリも魔法のカードも、「Lv依存の枚数」でしか出ません。(基本的に数え間違えて、実際より少なく宣言します)
戦闘についてはそれなりですが、戦闘以外は若干ポンコツ風味です。(本体はLv組で出せない、UCの枚数宣言や集団戦は数え間違える、UCを使わない占いは言わずもがな)
ヤドリガミの「本体が無事なら再生する」特性を忘れて、なるべく負傷を避けつつ戦います。
オブリビオンに止めを刺すためであれば、猟兵としての責任感が勝り、相討ち覚悟で突撃します。
でも負傷やフレンドファイヤ、代償は避けたいお年頃。
曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。
虚偽・うつろぎ(サポート)
世界問わず大歓迎
世界を超えて自爆活動さ
アドリブ連携等ご自由に
登場即自爆
自爆できれば台詞も活躍もいらぬ!
速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
そう、自爆だ
僕に自爆をさせるんだ!
僕もろとも鏖殺だ
これぞ鏖殺領域なり
ただ自爆するためだけに現れる存在
何かいきなり自爆する怪奇現象
もはや災害である
技能:捨て身の一撃を用いての
メッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆
射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
大事なのは自爆までのスピード
有無言わせぬスピードで自爆する
これ最重要だね
捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能
●散って咲かすは自爆の華
「このぉ~っ……! わたくし、ここまで虚仮にされたのは初めてですわ!」
と、たまきは叫ぶが、サッカーで例えるなら1点決められた後に1点オウンゴールしたようなもので、結局全て自らが招いた失態なのである。それを虚仮にされたとは被害妄想も甚だしい。
「こうなったら……お前達、やってしまいなさーい!!」
怒りを露にするたまきが次に何を繰り出すか――呼び声と共に周辺の藪から姿を現したのは黒い忍装束の忍者集団。たまきとは全く流派の違いそうな彼らだが、たまきは金で彼らを動かしていた。
「わわ、対処できますか? これ……」
「数は多いが……こういう乱戦は――」
『わかってんなぁ、律ぅ。オイ、俺も混ぜろや』
ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)がパラパラと器物――本当の本体であるカードを複製する傍らで、曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)が血色の薄い顔をさらに険しく顰めている。律の意識に関係なく現れるその者、絶は大勢の忍者集団を前にクヒヒと意地の悪い笑みを浮かべていた。
「僕が出せるのは……90枚くらい? 忍者1体を倒すのに5枚くらい使うとすると……」
ティモシーは自分のキャパシティを手計算――しかし前提が間違っているので正しい答えは出て来ない。出たとてその数は、明らかに相手取る忍者のほうが多かった。
猟兵達で協力体制を築かねばならなかった。そんな中、欲望が爆発寸前だった虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)は村人が全て去ったのを確認し、金で雇われた忍者の軍勢へ飛び出していく。
「あ、キミ――」
「僕は散るぞ! アディオス!」
律が声を掛けたのを遮って別れの挨拶を残し、忍者の軍勢に囲まれた直後。
ドガン! ダイナマイトの如く――いや、ダイナマイトさえ軽く凌駕する凄まじい爆音と熱と爆風を放ってうつろぎは自爆していた。自爆したくて堪らなかった彼は、何故このタイミングまで突入を待たずに村へやってきてしまったのかを呪いながら、ぺしゃんと潰れて戦闘不能に陥った。
誰もが茫然としていた。突然とは斯くも恐ろしい。そしてうつろぎの爆発力は凄まじかった。集まった忍者集団の大部分を散らし、残すは指で数えられる程度。
「……この数なら、私が受け持とう」
「チッ、ふざけやがって……だがまぁいい、俺はでけぇのを喰わせてもらうぜ」
律と絶は仲違いするかのように二手に分かれていく。律は残された忍者集団に対し「捕食者(ラプター)」を起動させ食いつくように殴り掛かった。忍者達が突き出してきた短刀に対し生身の拳をぶつける――それは当然血を招くが、それすら餌とし刻印は動く。
忍者の短刀を流血しながら殴り飛ばして無防備に変えると、刻印の火力を乗せた蹴りを見舞った。鋭い蹴りは忍者の胴体をへし折り飛ばしてまず1体。次いで背後に襲い掛かる気配を察知して振り向き様のカウンターパンチで2体目を潰す。
「僕も何かしなきゃ……とりあえず、いっけぇ!」
ティモシーがばらばらに操作するカード達は戦場を掻き乱し飛翔する。余計なものが視界に飛び込んできて短刀を突き出すのを躊躇した忍者が生じ、その隙を逃すことなく律が殴り伏せて3体。
「ちょ――わたくしに、纏わりつかないでくださいます!?」
たまきにまで飛んでいたカードは狙いこそ不確かながら、その不安定さが逆にたまきを翻弄していた。当たるようで当たらない、当たらないようで当たりそう。微妙な操作加減はティモシーの天然の産物だった。
「こうやって……あれ? どれを操作すればいいんだっけ」
首を傾げるティモシー。念力という糸がぐちゃぐちゃに絡まってしまい、カード達は宙に振り回されていた。予測不能なカードの軌道はたまきをも振り回す。急激に高度を落として地面スレスレを滑っていくカードに気を取られ、足元のバランスを崩す。
「ひあ――」
「待ってたぜぇ。っらぁっ!!」
「ぁぅぐ――!?」
よろめいたたまきの体が倒れた先には絶が居た。ティモシーの放つカードが絶のイライラを募らせ、それを纏めて吐き出すように放たれた蹴りがたまきの腹へと突き刺さり、たまきはそれこそサッカーボールのように、ぽーんと上空へ蹴り出されていた。
「――んぎゃっ!? げふっ! ごほっ! んぐぁぁ……」
急角度の放物線を描いて落ちてきたたまきの体は再度僅かに浮いて転がる。内臓を握り潰されたに等しい激痛と吐き気に見舞われ、呻くたまき。
部下となる忍者を雇った金は泥の塊同然になった。成し遂げたのはティモシーと律に絶の絶妙な連携、そしてうつろぎという尊くも破壊力抜群の犠牲があったからこそ。
体にも懐にも大打撃となったたまきは、再起しようと必死に地面に爪を立てていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
マユラ・エリアル(サポート)
『さて、そうであるかもしれないし違うかもしれない』
『まあ、私は嘘同盟だからな。嘘だが。』
『さあ、スタイリッシュにキメようじゃないか!』
表情の変化に乏しく、感情を読み取り辛い女羅刹
真顔で変にジョークを言うので、それが真実か嘘なのか判断が付き辛い点が周囲を惑わせる
戦闘は冷静に、淡々と敵と対峙する。
戦闘
中・遠距離では氷系統の魔法を操り、近距離では右手の鉤爪で敵を切り裂く戦闘スタイル
日常
真面目な表情で変なものを探したり、楽しんだりする。表情の起伏が小さいので分かり辛いが全力で楽しむ性質
冒険
冷静に、己の知識を活かして物事に対処。
小粋なジョークを挟んで周囲を困惑させつつ、解決に向かう
ハロ・シエラ(サポート)
私はハロ・シエラ。
戦う事以外は不得手です。
また、オブリビオンによる問題に対しては説得などより戦いで蹴りをつけるのを好みます。
口調は(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)。
基本的には誰に対しても敬語です。
戦術としては【第六感】と【見切り】を駆使して勝機を見出し【カウンター】や【鎧無視攻撃】で敵を仕留めるスタイルです。
真面目に戦いますが、強敵が相手なら【毒使い】や【投擲】、【物を隠す】による【だまし討ち】も視野に入れましょう。
ユーベルコードは戦況に応じて何でも使用しますが、味方や一般人は巻き込まない様に努力します。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●言葉は無用と見切っていた
ゴージャスが何度地に塗れたことか。いいように猟兵達の手に弄ばれて最早形無し。たまきは奥の手に次ぐ奥の手を出さざるを得なかった。
「美しき……蝶……どうか、お力を……!」
鉄の土の味を苦々しく噛み締めて、たまきは助けを乞う。すると天からの贈り物のように揚羽蝶がふわっと宙に召喚され、ゆっくりたまきの前に下りてくる。
「なるほど……私が刃を振るう意味は、まだあるということですか」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)はたまきが騎乗する揚羽蝶を見据えながら、魔力で変えて作り出した大鎌を手に取った。先の猟兵達の連携による一撃は強烈だったようだが、たまきを滅ぼすにはもう一押し必要だった。
「だが、もう彼女は虫の息――さあ、スタイリッシュにキメようじゃないか!」
マユラ・エリアル(氷刃の行方・f01439)の発言は終幕へ向けた決め台詞に見えて、実は揚羽蝶に虫をかけたジョークも兼ねている。だがマユラが真顔かつジョークが微妙に上手かったため、戦場を抜ける一陣の風と共に流れてしまっていた。
揚羽蝶は一つ羽ばたくと風を切ってマユラとハロへ突進してきた。背上ではたまきが力の限りに身を起こして扇子を取る。騎乗により戦闘力を強化した今のたまきなら、傷ついていようがその刃は必殺の一撃となり得る。
マユラとハロの中で役割分担は決まっていた。ハロが落ち着き払って大鎌を振り上げ飛び出すと同時に始まったマユラの詠唱は、端的でありながらその意思を明確に魔力へ伝える。
『氷よ、全てを凍てつかせろ』
マユラが掲げたルーンソードの先に氷の塊が生じ、ハロの背を追うように発射された。弾速は明らかにハロの足より速い。傍目からは同士討ちのように映るが、二人の呼吸はぴたりと重なり合っていた。
ハロはこの瞬間しかないというタイミングで軽鎧に換装し、空に向かって飛翔する。その背に迫る氷塊は触れるかどうかという限界ギリギリ。強靭に鍛え上げられたハロの第六感が神の如き業を可能としていた。
たまきの視点からはハロの体が陰となり氷塊が見えていなかった。ハロの飛翔に合わせてほぼ入れ替わるように現れた氷塊は至近から射出されたに等しく、
「避け――」
――られない。たまきが騎乗する揚羽蝶は突進の勢いのままに氷塊に激突し、後方へ宙返るように弾き出された。回転し天地が有耶無耶になる中で、たまきはきつく締め付けられる胸の痛みを覚えていた。
戦闘力を強化し、生命力を共有する騎乗形態は利点ばかりとは言えない。揚羽蝶の生命力が削られていけば、自ずとたまき自身の生命力も削られる。死なば諸共、は狙われる的の拡大も意味しているのだ。
たまきが回ればハロも真円を描いて回る。上空で一回転した飛翔の勢いで、宙に浮いた揚羽蝶とたまきに照準を合わせていた。
「痛い……で済めばよいのですが」
緩く空に伸びていく放物線の途中に在った揚羽蝶とたまきに、ハロの大鎌の一閃が射抜くように交差した。揚羽蝶の胴体と羽が上下に分かれ、揚羽蝶に接していたたまきの膝から下が半分ぞりっと削ぎ落とされる。地面を擦りながら着地したハロは完璧に大鎌を振り抜いており、死神すら身震いしそうな程に鮮やかに命を絶つ。
尤も骸へ還る命など、世界にとっては無価値に等しいが。
「蝶……消え
…………」
揚羽蝶が堕ちて死ぬ。意味するところは己の死だと、悟ってたまきは尽きたのだった。
成功
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