【猟】ライブにダンボールは不可欠であるからして
●キマイラフューチャー北二番街・野外ステージ「グリフィズ音楽堂」
キマイラフューチャーの北街区には、多数の音楽ホールや野外ステージが作られている。
今日もそのうちの一つ、北二番街の「グリフィズ音楽堂」にて、定期的に開催されているライブイベント「グリフィズ記念祭」が開催されていた。
著名なアーティストが多数出演することで知られるこのフェスで、今もまた、キマイラフューチャーではその名を知られたシンガーソングライター、ニカノール・リマンスキーが歌声を披露している。
「君の声を聞かせてくれよ、この声よりももっと遠くにー♪」
その歌声が会場に響くとともに、大歓声が音楽堂を包み込む。
と、その時だ。ステージの両脇から現れたのはダンボールだ。
否、ただのダンボールではない。ダンボールを頭に被った怪人だ。
「オープン!」
その言葉が響くと同時に、ダンボールの上面に据えられていた本が開く。
本が開くとともに、観客の歓声が徐々に、徐々にその本に吸い込まれるようにして消えていった。
●グリモアベース
「……音楽を愛する者の一人として、この状況は許しがたいな」
イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)は自身のグリモアを内包したガジェットから映し出した映像を猟兵たちに見せながら、不愉快そうに眉根を寄せた。
今猟兵たちが目にしたのは、イミが例によって夢で見た事件の概要だ。音楽がからむ現場、シンフォニアである彼にとっては特に許しがたいものがあるだろう。
不快そうな表情を隠そうともせず、イミは説明を始める。
「今先輩たちに見せたのは、キマイラフューチャーでの事件の一幕だ。俺が俺の見た夢を精査した結果、この事件に猟書家幹部が絡んでいることがわかった」
そう話しながら、イミは長い尻尾をたしたしとスクラップに叩きつけた。その様子からも、随分と猟書家幹部に憤っているのが分かる。
「リブロ・テイカー。感情を、それも正の感情を奪い取って力に変えるやつだ。生命のプラスの感情を得ることを目的に動くやつは、キマイラフューチャーで開かれるライブに目をつけた」
淡々と言いながら、イミはグリモアから映し出した映像を停止させる。そこにはアーティストの演奏の最中、会場に乱入するダンボール怪人の姿が見える。
「ライブというのは熱狂、歓喜、興奮とプラスの感情の坩堝だからな。やつにとっては都合がいいんだろう。そこでやつは怪人を投入し、プラスの感情を根こそぎ吸い出す作戦に出たわけだ」
小さく舌を打ちながらイミが吐き捨てるように言った。
無理もない話だ。彼はシンフォニア、音楽による魔法を以て敵と相対する猟兵だ。上には音楽を生業とする兄もいる。彼としても腹立たしいのだろう。
「このままでは間違いなく。フェスは失敗して観客が大変なことになるだろう。先輩たちには事態への対処、並びに猟書家の撃破をお願いしたい」
怒りを内に抑えながら話すイミに、猟兵たちがうなずきを返す。ここまで言われては断る理由もない。
猟兵たちの反応に表情を正しながら、イミが説明を再開した。
「今回尖兵として投入されるのは押し込みクーリエズ、頭がダンボールになっていて収納することに力を発揮する怪人だ。感情の収納、という点でも都合が良かったんだろうな。頭のダンボールの一部が本になっている」
曰く、その本がリブロ・テイカーの与えた本であり、それによって感情を吸収してしまうようだ。グループで行動し、連携の取れた行動をとってくる押し込みクーリエズ。その吸収能力が余計に面倒を引き起こすだろう。
だが、イミは小さく笑いながら指を一本立てる。
「こいつらは先に言った通り、プラスの感情を吸い込む。だが許容量はあるようでな。吸い込みすぎると大爆発を起こすんだ。現場にはライブに出演するサウンドソルジャーがいる、彼と協力してライブを盛り上げ、観客を熱狂させれば戦いやすいだろう」
そう言いながらイミが映し出したのは、ステージ上にいる一人のキマイラ男性だ。困惑した表情ながらも、演奏を止めないその胆力。戦力として期待は出来なくても、観客を盛り上げるのには一役買いそうだ。
このサウンドソルジャーとの連携や協力が、戦闘を有利にすすめる鍵になるだろう。
「リブロ・テイカーはライブ会場にいる。戦いはそのまま会場で行われるだろう。俺の見立てでは観客やアーティストを巻き込んで危険に晒すような攻撃はなさそうだが、アーティストの連中は守ってやってくれ」
そう話しながらイミが手元のガジェットを回転させる。確かに敵を倒せても、その敵によってアーティストが殺されては本末転倒、この先の動画視聴サイトの運営にも関わる事態だ。
アーティストたちを守りつつ、いかに戦い、そして観客の士気を上げるか。それが重要な要素となるだろう。
イミが手元で回転させたガジェットが止まると、彼の後方に転移用のポータルが出現する。それを背負いながら、ケットシーのグリモア猟兵は言った。
「こんなところか。いいか先輩たち、きっちり仕事を終わらせて帰ってきてくれよ。俺は待っているからな」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
ふっとネタが降ってきたのでオープニングをひねり出しました。
ライブの設営にダンボールって必須ですよね。色んな意味でね。
●目標
・リブロ・テイカー×1体の撃破。
●特記事項
このシナリオは「2章構成」です。第2章がクリアになった時点で、シナリオが完成となります。
キマイラフューチャーの「骸の月」の侵食度合いに、成功数が影響します。
会場は野外フェスとなっており、そのフェスに乱入した怪人は観客の歓喜や熱狂と言った「プラスの感情」を吸収しようとしています。
フェスに参加したサウンドソルジャーの力を借りて会場の熱気をさらに高めていくことで、戦闘を有利にすすめることが出来ます。
●戦場・場面
(第1章)
音楽イベント「グリフィズ記念祭」が開催されている、北二番街の野外ステージです。
会場に乱入した押し込みクーリエズのダンボールの一部が本になっており、この本で観客のプラスの感情を吸い込んでいきますが、許容量を超えると爆発を起こして大ダメージを負います。
(第2章)
第1章と同じく、北二番街の野外ステージです。
「グリフィズ記念祭」に参加したアーティストが全員出てきて演奏を繰り広げる中、リブロ・テイカーが猟兵たちを倒さんと迫ってきます。
●サウンドソルジャー
ニカノール・リマンスキー(キマイラ・男・25歳)
音楽イベント「グリフィズ記念祭」に参加したキマイラフューチャーで人気沸騰のシンガーソングライター。
グループを組まず単独で活動しているが、その歌声と声量には聞くものに訴えかける力がある。
それでは、皆さんの力の篭もったプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『押し込みクーリエズ』
|
POW : パック!
【味方に声掛けをしてタイミングを合わせて】から【一斉に突撃してダンボール箱やロープ】を放ち、【無理やり梱包すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ライド!
【味方の押す台車に乗る(※危険です)】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : デリバリー!
いま戦っている対象に有効な【グッズ(プレイングで指定可能)入りの箱】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
●勇気があるというのは無条件で誰かを愛すること
ステージ上にも、観客席にも、多数出現したダンボール頭の集団に、観客は恐怖し身じろぎも出来ないでいた。
「な、んだ、あれ
……!?」
「う、動けない……」
プラスの感情を本の中に吸い取られたがゆえにだ。歓声を上げることも出来ず、棒立ちになってステージ上を見つめている。
そんな状況をステージ上から、ニカノール・リマンスキーは困惑しながら見ていた。戸惑いながらもマイクに向かって声を張り上げ、手を振り上げてみせる。
「お、おいおいオーディエンス! どうしたんだ、盛り下がってるじゃないか! なら俺がもっと盛り上げてやる! 次の曲行くぞ、『バーニングハート』!」
ちょうど曲の切れ目だ、指を観客席に突きつければ、アップテンポなハードロックが流れ出す。ニカノールが歌声を響かせれば、観客席からの歓声が少しずつ戻ってきた。
吸い込まれるなら増やせばいい。その判断は正しかっただろう。ダンボール頭の押し込みクーリエズも動き出す。
「パック!」
「パック!」
段ボール箱やガムテープ、ロープを放ち、ニカノールを捕縛しにかかる。歌いながらもニカノールはその攻撃を次々に避けていった。
「うわっと……!」
ふと、足元がよろける。そこに一本のロープが投じられた。
狸塚・雅紀
今回は狐塚のみ参加、
戦争で従者総出の時に一人留守番の分活躍してやるっすよ。
おーっと、そこまでっす怪人達っ!
ニカノールさんの動きを止めようとする梱包道具を【どろんはっぱ】で切り裂くっすよ。
とはいえ俺は歌は普通なんすよねぇ、なので【ダンス】と【功夫】を組み合わせてダンボール頭と戦う事で魅せていくっすかね。生歌の中で戦うってのも舞台とかであるけど実際やるとアガるっすねっ!
調子に乗ってファンサ的にウインクや手を振り【誘惑】、更に【幻乱乱舞】でアンプやセットを使った飛び蹴りとかしてハデに吹っ飛ばして盛り上げるっすよ。
勿論ニカノールさんの歌の邪魔はしないっすよ。
あくまでニカノールさんの防衛目的ですし。
●どんなに悪い状況になっても、人生を完全に絶望視するのを食い止める何かがあるのよ
テープが、ロープがニカノールに迫る中、彼を守るように狸塚・雅紀(キング・ノーライフの従者・f29846)の立ちはだかった。
「おーっと、そこまでっす怪人たちっ!」
手にしたどろんはっぱで切り裂き、バラバラに寸断して見せながら、雅紀は力強く声を張った。その声に観客も、ハッとした表情を見せる。
戦争の際にはなかなか活躍できなかったのだ。ここが自分の腕の見せ所である。
びしりと指を突きつけてくる押し込みクーリエズの一人が声を上げる。
「フーアーユー!?」
「狐塚・雅紀、しがないヒーローっすよ!」
その声にどろんはっぱを突きつけて返す雅紀だ。ニカノールをかばいつつ、しかし彼の邪魔をしないように前へ。そんな雅紀へと、台車に乗ったクーリエズが叫んだ。
「シャラップ!」
その台車が仲間の手によって押され、雅紀に向かって突っ込んでくる。それを弾いて避けながら、雅紀は後方のニカノールに視線を投げた。
「お……っとぉ! あ、ニカノールさん歌はそのままお願いするっす! 生歌の中で戦いつつダンスってのも映えるっしょ!」
「あ、そ、そうだな! ……よし!」
その言葉に目を見開いたニカノールがマイクを握る。スタンドからマイクを外していつでも避ける準備は万端。雅紀とクーリエズがステージ上を飛び回る中、人気曲「バーニングハート」のメロディが流れ出す。
「熱く滾れ燃やせ爆ぜろ、俺のお前のその心! この熱はもう止められない、弾けて溢れて止まらないー♪」
「わ……」
「わぁぁ……!」
その歌声に、ダンスと功夫を組み合わせた雅紀の華麗な戦い方に、観客から歓声が上がりだす。徐々に歓声は大きく、大きくなり、再び熱狂が戻ってきた。
台車の上に乗っていたクーリエズが、急停止の反動で転がり落ちる。舌を打つ音が聞こえた。
「シット!」
「……っし、そんじゃこうして、うおらーっ!」
その隙きを雅紀は見逃さなかった。ステージ上、組まれたフレームを駆け上っていく。程よい高さまで上がったらそこからフレームを蹴ってドロップキックだ。もろに食らったクーリエズが吹き飛んでいく。
「ノォーッ!」
「へへ、舞台とかであるけど実際やるとアガるっすねっ!」
ニカッと笑い、ポーズを決めた雅紀が観客に手を振る。端正なマスクの雅紀に観客から黄色い声援が飛んだ。ラスサビ前の間奏に入ったニカノールもノリノリで、会場を盛り上げにかかる。
「イェイ! ハジけてるぜ! よーしオーディエンス、ラスサビいくぜー!」
「「うわぁーーーーっ!!」」
その声に、割れんばかりの声がステージへと届けられる。雅紀の足が再びステージを蹴った。
成功
🔵🔵🔴
ミリアリア・アーデルハイム
ニカノールさんのプログラムで、私が演出協力できそうな曲を教えて頂きましょう。
ええと、蒼い焔を上げる氷の花と、さまざまなものを映す氷の欠片を上空から降らせることができます。どの曲だったら盛り上げられそうでしょうか?
打ち合わせが済んだら、
スケルトンマントで姿を隠し、箒で縦横無尽に飛びながら氷の鏡を撒いて、キラキラエフェクトでバンバン盛り上げていきます。
ステージ上の演者を鏡に映したりするついでに、クーリエズを探し出して蒼焔花で、放つ段ボールやロープも燃やしてしまいましょう。
キャパオーバーになった所で着火して、爆発と同時に花と氷を沢山舞わせれば演出ということで誤魔化せるんじゃないでしょうか?
●どんな風になりたいかを考えるより今を生きたいの
ライブの合間、ニカノールの短い休憩時間の間に。ミリアリア・アーデルハイム(永劫炉の使徒・f32606)はニカノールとステージ裏で打ち合わせをしていた。
「ええと、蒼い焔を上げる氷の花と、さまざまなものを映す氷の欠片を上空から降らせることができます。どの曲だったら盛り上げられそうでしょうか?」
「んー……そうだな」
ミリアリアの言葉を聞いて、ニカノールが小さく考え込む。氷、炎、その欠片。そのキーワードから演出にふさわしい曲を選び出し、セットリストを組み替えていく。
「よし、『アンダー・ザ・ファイアー』でいこう。曲のイメージにも合う」
「分かりました、頑張ります」
ニカノールの真剣な表情に、ミリアリアもこくりと頷いた。さらりと黒髪が揺れる。それを嬉しそうに見ていたニカノールが、ステージに飛び出す最中にミリアリアの方を向き直った。
「じゃ、いいな? この曲はイントロが長いから、その間にスタンバってくれ。タイミングは任せる」
「はい、大丈夫です。盛り上げてみせます!」
その言葉に箒を握り、ミリアリアは力強く床を蹴った。同時にスケルトンマントを身体に羽織る。観客にもクーリエズにも、ニカノール一人がステージ上に出てきたように見えただろう。
「オーケーオーディエンス! 盛り上がってきたじゃないか! それじゃこのままの勢いで次の曲行くぜ、『アンダー・ザ・ファイアー』!!」
ニカノールが高く手を伸ばしたタイミングで、組み替えられたセットリストのとおりに「アンダー・ザ・ファイアー」が流れ出す。重低音がズンズンと響いてしばし、弾けるようにギターサウンドが鳴り響いた。
そのタイミングでミリアリアもステージ上に飛び出した。ちょうど曲はニカノールが歌い出すところ、タイミングもバッチリだ。
「それっ、行きますよ! 氷獄に現の花が咲くならば柵木に花を告うものか……咲け!」
さっと手を動かしながらステージ上を横切ると、ニカノールの周囲を取り囲むように氷の鏡の欠片が現れた。細かく散った鏡が光を反射し、ステージ上を一気にきらびやかにしていく。
「ファッツ!?」
「オゥアッ
……!!」
そしてそれを邪魔しようと飛び出すクーリエズが鏡の欠片に触れれば、その欠片がぼわっと燃え上がる。ダンボールも、ロープもガムテープも、次々に燃えて使い物にならなくなっていった。
そうする間にもミリアリアは次の鏡を撒いていく。ニカノールの姿を反射した鏡がステージ上に多数撒かれて、非常に華やかだ。
「いいですね、狙い通りにダンボールもロープも燃やせています……よし、今です!」
そしてクーリエズがキャパシティオーバーでにっちもさっちも行かなくなり、曲はラスサビ直前。いい頃合いだとミリアリアは鏡を起爆させた。
途端に、連鎖爆発を起こした鏡が一気に燃え上がり、ステージ上に蒼い炎を撒き散らした。炎に飲まれたクーリエズが、ダンボールの端を焦がしながら逃げていく。
「燃やせ燃やせ、心を燃やせー♪ その身も脳も魂さえも、猛る炎の名のもとにー♪」
「オーゥッ!!」
「「わぁぁぁぁーーっ!!」」
一気に燃え上がったステージに観客のボルテージも最高潮だ。気持ち炎が多すぎる気がしないでもないが、ステージに落ちた分はミリアリアが消している。大丈夫だろう。
「うーん……まあ、このくらいなら演出ということで誤魔化せるでしょう……そうですよね?」
そう言いながら、炎の最中で歌うニカノールの安全を確認するため、目を凝らすミリアリアだった。
大成功
🔵🔵🔵
徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
●誰かに認めてもらうことが人生の目的じゃない
ニカノールの演奏するステージには、猟兵が次々に飛び込んでくる。徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)もまたその一人として、サムライ装束の裾をはためかせながら堂々とステージに立った。
「民の楽しむ催しを邪魔するとは捨て置けませんね! この家光、悪は決して許せぬ!」
異国の装束を身にまとった堂々たる立ち姿に、観客からどよめきが起こる。ニカノールもその威容に目を見開いて、しかしマイクに向かって声を張り上げた。
「え、えぇと……まぁいいや、結果オーライ! オーディエンスどうだ、どんどんテンション上げていこうぜー! それじゃ次の曲、カモン!」
彼の掛け声に合わせ、始まるのはメロディアスなバラード。これまでのニカノールのロックテイストの曲調とは打って変わっておとなしい曲目に、家光も目を細めて笑った。
「いい演奏ですね、僕もみなぎってくるというものです」
腰に佩いた大天狗正宗をすらりと抜いて、家光はステージの端を見る。そこから、押し込みクーリエズがステージに上ってニカノールの邪魔をしようとしていた。
「シット!」
「スタップ!」
取り出してくるのは段ボール。それを開くと、中から飛び出すのはメジャーに鉄パイプだ。それを手に手にクーリエズが振りかぶったところで、家光は大天狗正宗の刃に指を這わせた。
「刃の囀り月をも酔わす……静粛にどうぞ」
軽く擦れば、かすかに響く刃鳴りの音。それが広がるや、クーリエズが次々にその場に崩れ落ちていく。
「ウ……」
「ウン……」
ばたばたと倒れていくさまはまるで魔法のようであっただろう。しかし息はある。眠っているだけだ。
「はい、邪魔な人たちにはご退場いただきましょうねー」
眠りこけているクーリエズを抱えあげて、家光はステージから撤退していく。その最中にニカノールに振り返って言った。
「あ、この人たちは僕が片付けておきますので、ニカノールさんは演奏を続けて下さい」
「お、おぉ……ありがとな!」
あまりの手際の良さに呆気にとられるも、ニカノールはギターを鳴らして演奏を続ける。眠りに落ちたまま運ばれていったクーリエズは、家光の刀によって呆気なく首を飛ばされた。
成功
🔵🔵🔴
富井・亮平(サポート)
【解説】
オブリビオンと戦うという設定のヒーローマスク。
マスクを被るとボディの人格が変わるような感じ。
謎のオブリビオン文明の話とか、地球侵略を狙うオブリビオン星人の話とか、適当な事を言いながら頑張る。
関係なくてもオブリビオンのせいにして行動する。
行動そのものはマトモ。
【行動】
ヒーローっぽい行動であれば何でもします。
戦闘は主に魔法剣士スタイルですが、機械も扱えます。
ガジェット形状は固定していません、必要に応じ自由に変なメカを使わせて下さい。
UCを使うと「黒幕が出てきて敵を改造する」「謎のお助けキャラが登場する」などのヒーローっぽいイベントも発生させられます。
「このイェーガーレッドに任せておけッ!」
●楽なものは求めてはいない。楽なものは自分を成長させない。楽なものは自分を考えさせてくれない
ステージ上方から、富井・亮平(イェーガーレッド・f12712)が飛び降りてくる。くるくると空中で回転しながらステージに着地した亮平は、びしりとポーズを決めながらニカノールをかばうように立った。
「猟兵戦隊イェーガーレンジャーッ! ただいま参上ッ!」
突然現れた戦隊モノヒーロー。観客からもクーリエズからもどよめきが起こった。
「ファッツ!?」
「ヒーロー!?」
掴みは上々。亮平はそのままの勢いでクーリエズに向かってポーズを決めた。
「悪の秘密結社オブリビオンの手先め! ニカノールを我が物にし、人々の喜びを壊し、おのが目的を果たそうというのだろうが、そうはさせないッ!」
その堂々とした口調はまさしくヒーロー。ニカノールもテンションを上げるべく両腕を振り上げながら観客を鼓舞する。
「こいつはすごいぞ、イェーガーレンジャーの登場だオーディエンス! 我らがヒーローの勝利を、オーディエンスも応援してくれ! 頼んだぜ!」
ニカノールの言葉に観客も声援で応えた。亮平を、イェーガーレンジャーを応援する声がどんどん大きくなる。観客席に手を振りつつ、亮平はニカノールに視線を向けた。
「声援ありがとう! ならば次の曲をお願いしたい、盛り上がるやつをだッ!」
「任せな! 『セイクリッド・ペイン』、ミュージックスタート!」
亮平の言葉を受けたニカノールが手を掲げれば、アップテンポで激しいサウンドが会場を支配する。観客の盛り上がりがますます高まる中、クーリエズも動き出した。
「パック!」
「パック!」
段ボールやロープ、ガムテープを放ってニカノールと亮平をまとめて封じ込めようとする。演奏するニカノールをかばうように立ちながら、亮平は構えを取った。
「搦め手を使ってくるか、そうはいかないぞ! ファイヤーモード、チャージオン!」
魔力を集めた彼の手の中に炎が灯り、それが剣の形をとる。それを大きく振りかぶって、亮平は叫んだ。
「せぇいッ、フレイムソード!」
剣をステージに叩きつけると、そこから爆発が起きた。吹き飛ぶ段ボールにガムテープ、焼ききれていくロープ。そしてクーリエズも吹き飛ばされていく。
「ノーウ!」
「おぉ……すげえ」
その様を、演奏しながらニカノールは驚嘆して見ていた。なかなかに派手だ。観客も驚きに目を見開いている。
「このイェーガーレッドに任せておけッ! とうッ!」
その爆発を背にした亮平がポーズを決める。そしてくるりと宙返りすると、彼はステージ上から消えていった。
成功
🔵🔵🔴
青原・理仁(サポート)
人間
年齢 17歳 男
黒い瞳 金髪
口調 男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)
性格面:
やさぐれ、ぶっきらぼう
積極的な人助けはしないが、見捨てきれずに手を貸してしまう
戦闘:
武器は使わず、殴る・蹴る・投げるなど、技能「グラップル」「怪力」を生かしつつ徒手空拳で戦う
構え方は古武術風
雷属性への適性があり、魔力やら気やらを雷撃に変換し、放出したり徒手空拳の際に纏わせたりします
●私だって天才じゃないから。ベストを尽くすだけよ
だんだんと盛り上がっていくステージに、青原・理仁(青天の雷霆・f03611)が気だるそうに首元を掻きながらやってくる。いかにも、面倒事に巻き込まれたと言いたげな表情だ。
「ったく……たまたま通りがかったらめんどくせえことに巻き込みやがって。だがオブリビオンの問題だってんなら放っておけねえな」
そう言いながら、ステージ上に乗り込んでくる押し込みクーリエズを見やって拳を打ち鳴らす。その手元からパチリ、と閃光が走った。
理仁の姿を見て、ニカノールがにこやかに笑って言葉をかける。
「おっと、あんたもどこかから駆けつけてくれたのか? なら助かった、手を貸してくれ!」
「分かってる。巻き込まれないようにだけ気をつけてくれ」
彼の笑顔に少し眉間のシワを深くしながらも、理仁は頷いた。助けに来たのだ。困っているなら手を貸さねば。
理仁が古武術風の構えを取る中、ニカノールがマイクに声を張り上げる。
「よーしオーディエンス、次の曲行くぜ! 最高に盛り上がっていこうじゃないか! 『レイジーマンデイ』!」
彼の声に合わせ、流れ出すのはチルアウト系のゆったりしたギターサウンドだ。ニカノールがゆったりと歌い出すのを、一人のクーリエズが飛びついて止めようとする。
「シャラッ――」
「はっ!」
だが、そこに割り込んだ理仁が真っ直ぐに拳を突き出した。彼の拳が胴体に突きこまれ、同時にクーリエ図の身体を貫いて雷撃がほとばしる。
「オゥッ!?」
「ジャマだ!」
身体が硬直したクーリエズを、理仁は掴んで一気に投げ飛ばした。身動きの取れなくなったその身体が、空中に舞い上がってそのまま消滅していく。
困惑したのはクーリエズの方だ。何事か、と言わんばかりにその動きが止まる。
「ワッ――」
「そこっ!」
その隙きを理仁は見逃さない。一気に距離を詰めてさらに一撃。同時に雷の閃光がその身体を貫いていく。
ニカノールが一番のサビを歌い終える頃には、ステージ上には身動きの取れないで倒れ伏すクーリエズが何人も転がっていた。
「さあどうした、お前らの力はこんなもんか!」
「グ……」
「ノゥ……」
雷の破壊光線にその身を貫かれ、全身が硬直しているクーリエズが弱々しく声を漏らす。その最中、二番の前の間奏に入ったニカノールが口笛を吹いた。
「ヒューッ、こいつはスペクタクルだ! さあオーディエンス、もう一発盛り上がっていくぞ!」
「「うわぁぁぁぁーーーっ!!」」
彼の言葉に合わせ、観客が大きな歓声を上げる。ここまで盛り上げたら、ライブとしては上々だろう。
「ふん……ま、いいか。おらぁっ!」
「グハッ
……!!」
理仁はすんと鼻を鳴らしつつ、倒れたクーリエズの身体を掴み上げて投げ飛ばした。段ボールが吹き飛び、何事もなかったかのようにライブ会場からいなくなって、消えた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『リブロ・テイカー』
|
POW : 君もこういうものに感動するのかな?
【本に記録していた“プラス感情を生んだ物”】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 君のものも記録しよう。それじゃあ貰うね?
自身が装備する【プラス感情を奪う羽ペン】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : これが僕の力、僕のコレクション
見えない【記録済みのプラス感情】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
●私のストーリーを語れるのは私だけ
ニカノールが持ち曲の「レイジーマンデー」を歌い切る。観客席からは割れんばかりの歓声が響いた。
と、そこにパチ、パチと気の抜けた拍手をしながらステージに歩み寄ってくる人物が一人。耳から小さな羽をはやした姿はキマイラらしいとも言えるが、その表情は実に剣呑だ。
猟書家幹部、リブロ・テイカー。彼は微笑を浮かべながら、携えた本を開いて言った。
「お見事、お見事。実に素晴らしい『歓喜』でした。僕の記録が追いつかないほどだ」
リブロ・テイカーがステージに上ってくる。そしてニカノールに手を差し伸べながら、柔らかな笑みを見せつつ告げた。
「これだけの『歓喜』の感情を生み出せる貴方なら、さぞ素晴らしい記録が取れることでしょう。是非とも僕のものにしたい」
彼の言葉に、一瞬の静寂が流れる。しかしそれを、ニカノールの声が遮った。びしりと相手に指を突きつけながら叫ぶ。
「ハ、お断りだ! 俺の歌は誰か一人のためのものじゃない、みんなに届けるためのものだ!」
ニカノールの発言に、一瞬だけリブロ・テイカーの表情が曇った。途端に彼の周囲に、羽ペンが複製されていくつも浮かぶ。
「そうか、実に残念だ」
その言葉とともにリブロ・テイカーが羽ペンを飛ばしてきた。感情を奪う羽ペン、それをすんでのところで避けながらニカノールが声を張る。
「オーディエンス、それと仲間たち! 俺が負けないように、お前たちの力を貸してくれ! この巫山戯た野郎を一緒にぶちのめそうじゃないか! 皆で一緒に行くぞ、即興曲!」
気付けば「グリフィズ記念祭」に参加するアーティストが全て、各々の楽器を携えてステージ上に姿を見せていた。リブロ・テイカーとクーリエズがやって来たことで盛り上がりを奪われ、彼らとしても不完全燃焼だったのだろう。
盛大な音色が、誰からともなく発せられる。そして万雷の拍手と歓声の中、猟兵たちはリブロ・テイカーに挑みかかった。
●特記事項
・ステージ上にはニカノールの他、「グリフィズ記念祭」に参加したアーティストが集って演奏を繰り広げています。彼らは極力戦闘に巻き込まれないように立ち回りますが、守っていただける場合はプレイングで指定ください。
月影・左京(サポート)
アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱改変・その他OK!
「はわっ!?……大丈夫。私も手伝うから♪」
一人称:私
口調:女性的でラフ(〜よね、なの?、あら〜等)
口癖:はわっ!?
性格:おっとりのんびり。「わぁ!頼りにな……る、の?(笑)」な印象
基本戦法:【忍び足】で敵の死角に入りメイスによる【気絶攻撃】を【2回攻撃】。【鎧砕き】も狙う。
敵の攻撃は【聞き耳】を立てて【第六感】も使い、【見切り】ます。
※不意打ちを受けた時など、「はわーっ!?」と叫ぶ傾向あり。
指定したUCを何でも使用。
但し負傷した猟兵がいれば戦況次第で攻撃より【祈り】の力と【医術】及び【救助活動】で治療。
後はお任せします。よろしくお願いします。
●私だって天才じゃないから。ベストを尽くすだけよ
動き出す猟兵の中、メイスを携えた月影・左京(夫婦ゲーマーのはわっ担当・f06388)が一歩前に進み出た。
「はわっ!? 敵さんが登場なのね? それなら私もお手伝いするわ!」
たまたま現場に居合わせた彼女だが、猟書家幹部が出現したと言うなら無視もできない。そんな彼女を見て、リブロ・テイカーが面白そうに目を細めた。
「ほう? 興味深いですね、勇ましくもなく、力強くもない。しかしその内に秘めた『プラスの感情』は素晴らしいようだ」
左京のうちに秘めたる、異種族への憧れ、大好きな人、趣味、仕事。好きなもの、愛しているものへの感情を読み取ったリブロ・テイカーが羽ペンをさっと動かした。
「ならば見せよう、これが僕の力、僕のコレクション」
彼の手の内から飛ばされてくるのは、あるいは新しいゲームを手に入れた時の喜びだったり、大好きな人と共に過ごした時の暖かな気持ちだったり。そうしたプラスの感情を質量に変えて放ってくる。
「はわっ!?」
その見えない感情の弾丸を、すんでのところで躱した左京が声を漏らした。弾丸の嵐を回避していく左京の耳に、ニカノールの歌声が聞こえてくる。
「ヘイガール、そんなところで立ち止まってていいのかい!? 前を向いて進もうぜ、明日はきっと待っている!♪」
「そ、そうね! ありがとうございます!」
歌の歌詞を自分になぞらえて投げかけてくる彼へと、笑みを向けながら左京は前へと進んだ。弾丸をかいくぐりながら徐々に前へと進み、そして一気に死角に回り込む。
「む……!」
「そこっ!」
リブロ・テイカーが左京を見失った瞬間に、メイスを一振り。その一撃がリブロ・テイカーの頭をとらえ、脳を揺らされた彼がステージ上に膝を付いた。
その時こそが好機だ。左京がさっと耳元に手を当てる。
「今ね! エネルギー充填、完了!」
飛空戦艦ワンダレイにアクセス、主砲展開。エネルギーは充填済み、いつでも放てる。人の多いライブ会場だから、なるべくエネルギーは絞った上でリブロ・テイカーに狙いを定めた。
「ごめんなさい演者の皆さん、危ないのでステージの端に寄ってちょうだいね! 発射!」
言うやいなや、左京が飛び退いた。次の瞬間に主砲から放たれたビームがリブロ・テイカーを直撃し、その身体に多大な衝撃を与えていく。
「うわ――!」
「うわーっ!?」
同時に発生した衝撃波がステージ上の演者たちに向かっていった。エネルギーを絞ったために突風が吹き付けた程度で済んでいるが、ステージにはくっきりと着弾跡が残ってしまっている。
「はわっ!? 少しやりすぎてしまったかしら?」
ステージ上でぐったりと倒れて、しかしまだ息があるリブロ・テイカーを見ながら、左京はまたも声を漏らした。
成功
🔵🔵🔴
キング・ノーライフ
狐塚が楽しそうなので我も【主従】として参加させてもらうか。
【鼓舞】で「キマイラフューチャーの諸君、我が来たっ!」と煽り、【従者転身】で鼬川に変身して「つー訳で、オレがやっつけてやるぜっ!」と【演技】、音楽家達に「オレ達に似合う最高の音楽を頼むぜ」と【誘惑】。
事前に狸塚が音楽家を守ると言ってたのでそこを信じ、後は狐塚と協力して楽しむような【ダンス】しながらカマイタチでペンを撃ち落として最後は猟書家に合体技とシャレ込むか。
一しきり暴れた所で後ろから抱きしめられる。
見知らぬキマイラの音楽家…狸塚か?
目が普通じゃないがどうした?
「二倍お得とか…おい、待て」と言いつつ可愛がられて連れ去られる。
狸塚・雅紀
狐塚)真の姿解放二人の要素の混ざった姿に変身…ってやると狸塚君も入ってくるんすね。
狸塚)ええ、ご主人様とも話は付いてます。三人でやっつけましょう。
狸塚)沢山の羽ペン、感情を奪って逃げる為に音楽家の人にも来るでしょう。なので僕は【離魂】で女音楽家に憑依してまぎれて飛んできたのを中から【仙術】で守ります。
狐塚)俺はご主人様と一緒に【ダンス】の動きを合わせ、【どろんはっぱ】を投げまくって羽ペンに対抗。射線が通ったらあっちのカマイタチと【仙術】の合体技でズドンっす。
狸塚)理性が飛び気味になってご主人様を見つけるとそのまま抱きしめ、「ご主人様なのに鼬川君…好きな物二倍でお得ですね」とお持ち帰ろうと逃走。
●私はタフで野心があって、自分の欲しいものが何かはっきりと分かっているわ
ぶわりと、雅紀の狐尻尾が太さを増して狸の尻尾に変化する。雅紀と泰人、二人の要素が混ざった姿に変身しながら、雅紀が言った。
「二人の要素の混ざった姿に変身……ってやると狸塚君も入ってくるんすね」
「ええ、ご主人様とも話は付いてます。三人でやっつけましょう」
泰人が雅紀の中からそう言えば、後から合流してきたキング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)がこきりと手首を鳴らした。
「そういうわけだ、邪魔をするぞ、狐塚、狸塚」
「了解っす!」
「よろしくお願いします」
自分たちの主人の登場に、雅紀も泰人も笑みを見せながら返事を返す。そしてここで、会場の観客に向かってキングが勢いよく手を伸ばした。
「さあキマイラフューチャーの諸君、我が来たっ!」
「ここにおわすは機械の王、皆の身近なところにいる神様っすよー!」
キングの鼓舞の言葉を、雅紀が盛り上げるように囃し立てる。会場から歓声が上がる中、雅紀はさっとキングを布で隠した。
「そしてこうして……と。せーの!」
「転身完了! つー訳で、オレがやっつけてやるぜっ!」
その布を落とせば、従者転身で鼬川・瞬太へと姿を変えたキングが映る。まるでマジックのようなその変化に、観客からより一層の大きな声が上がった。
掴みは上々。キングがステージ上の演者に向けて指を向ける。
「そんじゃ演者さんたち、オレ達に似合う最高の音楽を頼むぜ!」
「よっしゃ、任せなボーイズ! ミュージックスタート、ヒアウィーゴー!」
キングに声をかけられたアーティストが音頭を取れば、ハイテンポなダンスミュージックが流れ出す。そのリズムに乗って動き出すキングと雅紀。と、そこで泰人が雅紀に声をかけた。
「それじゃ、こちらはお任せください」
「頼むっすよ」
言葉を交わし合って、雅紀の身体から泰人が抜け出していく。霊体化して他の生き物に憑依する、悪霊ならではのユーベルコードだ。
そんな事になっているとは露知らず、リブロ・テイカーが羽ペンを無数に複製する。
「面白そうなトリックだ、記録のしがいがあるね……それじゃあ貰うね?」
言うやいなや、大量の羽ペンがステージ上を乱れ飛んだ。その羽ペンが自身に向かってくるのを見ながら、しかし雅紀もキングも動じない。
「おっと、させないっすよ!」
「オレたちの連携プレー、見せてやるぜ!」
雅紀はどろんはっぱを投じて、キングはカマイタチを投じて羽ペンを打ち砕いていく。その攻撃は止むことを知らず、次々に羽ペンを消し飛ばしていった。
だが、その羽ペンは二人だけに向かうものではない。アーティストたちにも羽ペンは飛んでいった。今も、ステージ上でギターを掻き鳴らす女性アーティストに向かって羽ペンが一直線に飛んでいく。
「あ――!」
「(おっと、やはり来ましたか)」
声を上げる女性アーティストだが、その身体に泰人が潜り込んだ。その瞬間女性の目の色が変わり、泰人の手によって放たれた仙術が羽ペンを消し飛ばした。
「く、なかなか厄介な……!」
キングと雅紀の猛攻に、リブロ・テイカーは一転して防戦一方になっていた。羽ペンはどんどん数を減らしていく。そして遂に、射線が通った。
「おっと、通ったぜ狐塚! 行けるか!?」
「行くっすよ鼬川君、せーのっ!」
二人で息を合わせれば、放たれるのは仙術を上乗せしたカマイタチ。炎をまとった風の刃が一直線に飛び、リブロ・テイカーの身体に激突して爆発を起こした。
「ぐわ……!」
その爆発を受けて、リブロ・テイカーの身体が吹き飛び、ステージ上の装飾を支える鉄骨にぶつかって止まる。それを見てキングが、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「へへっ、どう――」
「んふ……」
「えっ」
だが、そのキングを泰人が憑依した女性アーティストが抱きすくめる。理性が削られたのか、熱を帯びた瞳がとろんと蕩けていた。
「狸塚か? 目が普通じゃないがどうした――」
キングが様子がおかしい、と泰人に目をやるも、既に遅い。泰人は瞬太の姿をしたキングを、これでもかと言うほど撫で回し始めた。
「ご主人様なのに鼬川君……好きな物二倍でお得ですね……」
「えっ」
雅紀はもう呆気にとられるしか無い。そのまま泰人はキングの身体を抱いて、ステージ裏に引っ張り込んでいった。
「な、二倍お得とか……おい、待て、おい」
文句を言うキングだが、泰人は聞いてくれない。そのまま二人はステージ上から去っていって、後には雅紀だけが残された。
しばしの沈黙。ぽかんとする雅紀だったが。
「えーと……それじゃ俺たちはこれで!」
あんな状態の泰人を放置してはおけない。すぐさま追いかけるべく、ステージ上から去っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミリアリア・アーデルハイム
記念祭の搬入引受け業者さんですね?
あの段ボール、ちゃんと仕事を理解していませんでしたよ!
監督不行き届きではないでしょうか
リブロさんが妨害を始めたら
出演者へ飛んでくる物をローラちゃん(掃除機)にお掃除してもらいます(掃除、捕食、破魔)
はい、これは何でしょう〜
と書道セットを取り出し
屏氷万里鏡を巡らせ、箒で空中機動、先制攻撃
墨汁と筆を手にUC
星なき夜の黒曜の玉(ぎょく
古代の王の墓所の路石(みちいし
我が手にするは 黒の舞姫
塗り潰せ 疾く! 『墨液噴霧』
手にした本を墨汁で塗り潰そうとする(部位破壊など)
あれ?呪文『毒液噴霧』だったでしょうか。まあ、問題ないですよね!
通常攻撃のホーミング魔法弾を叩き込む
●私はずっと人気者であると同時に嫌われ者
リブロ・テイカーの姿を見て、ミリアリアはぽんと手を打った。
「ああなるほど、記念祭の搬入引受け業者さんですね?」
「んっ」
その言葉に、ぐっと言葉に詰まるリブロ・テイカーだ。確かに押し込みクーリエズを手配したのは自分だし、引受け業者と同じことをやっていると言えばその通り。否定はできないだろう。
彼に向かってミリアリアが、びしりと指を突きつけながら言う。
「あの段ボール、ちゃんと仕事を理解していませんでしたよ! 監督不行き届きではないでしょうか」
「んっ。あ、えぇとあれらは」
その言葉に言いよどみながら、リブロ・テイカーは自分の手元の本を開く。言うことが理論的に間違っているわけではないが、それだとしても、どうにも収まりが悪い。
「え、ええい何しろここでどうにかしてしまえばこちらの勝ちだ! 容赦はしないよ!」
そう発しながらリブロ・テイカーが自分の手に入れたプラスの感情を見えない弾丸として、四方八方にばらまき始める。当然演奏を続けるアーティストたちにも飛んでいくそれを、ミリアリアは見逃さない。
「ローラちゃん、お願いしますね」
オブリビオンを吸い込む自律式掃除機、クロウラー式掃除機ことローラちゃんにお願いして、オブリビオンの気配がするものを根こそぎ吸い込んでもらう。これで人知れず、相手の攻撃を無効化することができるだろう。
その上でミリアリアは、とある物を取り出した。
「はい、これは何でしょう~」
「え……」
彼女が取り出したものを見て、リブロ・テイカーは顔を青ざめた。それはどこからどう見ても、墨汁と筆。書道セットであったからだ。
さっと筆を走らせながら、ミリアリアが詠唱を唱える。
「星なき夜の黒曜の玉、古代の王の墓所の路石、我が手にするは黒の舞姫……塗り潰せ、疾く! 『墨液噴霧』」
そう発しながら撒き散らした墨汁が意思を持ったかのように動き、リブロ・テイカーへと襲いかかった。正確には、彼の手に持った本へと襲いかかり、そのページを墨汁で塗りたくる。
「うわっ!?」
ページが墨汁まみれになったリブロ・テイカーは、思わず本を取り落した。役目を失った本が、さらさらと砂になって虚空へと消えていく。
「あれ? 呪文『毒液噴霧』だったでしょうか。まあ、問題ないですよね!」
キョトンとした様子で首を傾げるミリアリアだったが、すぐに気を取り直した。魔法弾を生み出しては、満身創痍のリブロ・テイカーへと叩き込んでいく。
「く、くぅ、こんなので……!」
魔法弾を全身に食らったリブロ・テイカーが、倒れ伏しながら虚空へと消えていった。それを目にしていたニカノールが、ヒュウと口笛を一つ吹いてマイクを握る。
「ヒューゥ、ナイス! 実にグラフィカルだったぜ、お嬢さん!」
「えっ、うふふ。ありがとうございます!」
彼の言葉にくすっと笑いながら、ミリアリアはステージ上でくるりと回る。大歓声が、グリフィズ記念祭のステージを包み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵