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アポカリプス・ランページ⑩〜数学的宇宙が秘めしもの

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑩


 数学的に存在する全ての構造は物理的にもまた存在する。

 さる多元宇宙論の研究者が提唱した数学的宇宙仮説は、そのように説明されている。その可能性は無限であり、検証不能であり、そしてほとんどの数学的構造は我々の物理学的常識と相容れぬように見えるのではあるが。
 しかし邪神『ポーシュボス』に支配された、アメリカ航空宇宙局――所謂NASAのヒューストン宇宙センターの地下では、それら実在できぬはずの『数学的宇宙』が、密かに育まれつつあるのだという。
 ヤクモ・カンナビ(スペースノイドのサイキッカー・f00100)曰く。それは目にするだけで超宇宙の恐怖に囚われ発狂するほどの恐るべき宝石、『宇宙の幼生』の中に含まれていた。それらも数学的宇宙の幼生は、見る者に異質な時間と空間の概念を植えつける。

「高次元幾何学の宇宙を垣間見た者は、空間3次元+時間1次元しか無い世界に囚われて居る自分自身がもどかしくなり、高次元世界に解放される為に死を選びとうなるやも知れん。
 巨大数の宇宙に魅入られた者は、此の世が36の多元世界の過去から未来全てを足し合わせても矮小だと気付き、無限なる骸の海へと漕ぎ出したい衝動に駆られるやも知れん」

 いずれにせよ……『宇宙の幼生』が生み出す狂気に抵抗できねば、待っているのは破滅そのものだ。そしてポーシュボスは恐怖と破滅を糧として、オブリビオンを変異強化する『ポーシュボス化』を引き起こす。

 壊さねば、恐怖が人々を駆逐する。
 壊さねば、狂気が世界を破壊する。

 ゆえに――狂気に耐え、宝石を破壊する。それがアポカリプスヘルを救うため、猟兵たちに課せられた使命だ。狂気に耐える方法は、恐らくはヤクモが何か言わずともは、それぞれの猟兵たち自身がよく知っているだろう。
 とはいえ、ヤクモは付け加えるのだ。
「もしも対処の方法を思いつかぬようならば、頭に入れて置くと佳い話は在るやも知れんの」
 と。
 宝石内の宇宙を常識と見較べて理解しようと欲すれば、こちらの常識が破壊され狂う。であれば、何も考えず知覚もせぬように事に当たるか、逆に異質さを正しく理解して、明確にこの世と数学的宇宙が異なるもので在ると認識するかすればよい。
 中途半端に解釈を求めてしまうのが最も悪い……だとしても、可能な限り解釈を求めたくなるのが人の性。
 そんなポーシュボスの罠を乗り越えられるのは、今は猟兵だけなのである。


あっと。
 あっと。でございます。小難しいことは書きましたが、早い話が私に(こいつ数学わかってるな)もしくは逆に(こいつ数学理解する気が一切ないな)と思わせるプレイングになっていれば狂気に対抗できるのでボーナスです!
 それさえできていれば、フラグメントの選択肢はあまり気にせずともかまいません。

 数学的宇宙の幼生はたくさんありますので、例示した『高次元幾何学の宇宙の幼生』や『巨大数の宇宙の幼生』以外にも、お好きな数学的構造をお選び下さい。
 思いつかなければ以下の例をご利用下さい。

●整数宇宙の幼生
 小数や中途半端な状態を認めない宇宙の幼生です。囚われれば、感情を含めた非デジタルな概念を許容できなくなるでしょう。

●タクシー宇宙の幼生
 斜めの概念が全て縦+横に置き換わる、タクシー幾何学に則った宇宙の幼生です。囚われれば、斜め方向にあるものを認識できなくなるでしょう。

●p進数宇宙の幼生
 無限小数とは逆に大きいケタが無限に続く宇宙の幼生です。囚われれば、有限と無限、正と負の境界が曖昧になるでしょう。
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第1章 冒険 『宇宙の幼生』

POW   :    強靭な気合いで狂気に耐える。

SPD   :    なるべく宝石を見ないようにしつつ破壊を試みる。

WIZ   :    魔術や薬を使い、狂気を抑える。

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朱酉・逢真
心情)0と1で埋め尽くされた空間だ。あるいはこれもまた1の内側なのか…。電子の世界は0と1で構築されるたァいうが、俺から見ればアナログなものとて0と1の集合体に過ぎん。色はRGBの数値で表され、RGBそのものこそ無数の1か0かの色素集合だ。無限次元だろうが波動関数が収縮しなかろうが根本は1と0。言ってしまえばそれだけで、ヒトに認識できるのは1だけだ。感情なんて究極的じゃないかね。高次多元まで跳ぼうが、自身の存在は変わらず1のままだろうに。マ・神とは物質として存在しないままヒトの認識に存在する矛盾だ。0であり1である俺にその狂気は効かないよ。
行動)幼生を掴んで、病毒で腐り溶かす。



 こちらを覗く宝石を覗き返せば、そこはどこまで行っても0と1ばかりの空間だった。否、『0と1』というのはヒトの身でこの宇宙を解釈した存在に過ぎず、より正確には『有(いち)』が存在するか否かのみから成る云わば“1の内側”とでも呼ぶべき世界であろうと朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は理解する。

 ブール代数の宇宙。

 数々の『宇宙の幼生』の中でも恐らく最もシンプルな部類に入るであろうこの宇宙は、あまりにも単純化されすぎているがゆえに常人の認識を拒む。しかし、逢真は知っている――それは余計な情報を持たぬがゆえに、認識の側で如何様にもできるのだ、と。
(色はRGBの数値で表され、RGBそのものこそ無数の1か0かの色素集合だ。音は周波数成分ごとの強度で表され、その強度情報もまた同じ。電子の世界は0と1で構築されるたァ言うが、俺から見ればアナログなものとて0と1の集合体に過ぎん)
 無限次元も量子の重ね合わせも、どうせヒトには認識できぬのだ。ヒトが認識した時点でそれは1。認識できねばただの0。自我? 感情? それらこそ“1のみの世界”の極致と言えよう――高次多元に跳ぼうがそのことに違いは生まれぬ。自身の存在は変わらず1のままであろうに!

 本質的にはそんなヒトの認識の中にのみ存在しうる“神”だからこそ、0と1の世界は逢真にとって、むしろ心地よいほどだった。あたかもヒトの認識に作用して、存在せぬはずの病を創り出す瞬間のように、逢真は宝石へと手を伸ばす。
 無限に広がらんと欲していた二値のみの空間が、歪み、溶け、崩れていった。全てを無へと腐らせる病毒が、生まれたての宇宙を0のみに初期化する。

 存在そのものを失った0の世界へと、“外の世界”が雪崩れ込んできた。逢真のネイティブな認識が、ヒトの意識を通したものへと変わる。
 その不快さにどこか安堵を感じ、逢真は再び歩き出した……まだこの領域に残っているだろう、次の幼生に病をもたらすために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
………何を言っとるか全く理解出来んが、とにかく宝石をぶっ壊せばいいんじゃな。

【POW】
人が一番恐れるもの…それは未知じゃ。意味不明な数字の羅列や理屈は恐い。
じゃからこそ、気持ちを強く持って飲み込まれぬようにするぞ。
精神に入り込んで来るというなら魔術的なものじゃろうから、オーラ防御で全身を固めて抵抗力を上げ、狂気山…耐性で耐えるのじゃ。

恐怖が増して来て挫けそうな時は自分が一番強い状態…褌一丁になってUC発動じゃ!なんか文句あるか?
そして、拳で宝石を叩き割るぞい。

「某宇宙的恐怖のTRPGで一番強いキャラクターはな、何にも分からないがSAN値が高くて戦闘だけは強い脳筋キャラじゃ!」

アドリブ歓迎じゃ。


高柳・零
【POW】
すうがくてきうちゅう…要は物理的にあり得る宇宙は全て存在する可能性があるという事でしょうか?
「って、法学部のガチガチ文系人間にこんなもの理解出来るか!!!…は!自分は何を言っているのでしょう?」

「うーん、これは恐怖に囚われる前に一気にカタを付けた方が良さそうですね」
アポカリプスヘルの人々を守る思いと共にUCを使い、全力で狂気耐性を高めて気合いを入れて飛びます。

何かあやふやな物や中途半端な物が許せない感情が入って来ますが、揺らぎが無い世の中なんて面白くありません!
「人族というあやふやな存在を否定なんてさせませんよ!」

そして、高速で一気に接近してメイスで幼生を叩き潰します!

アドリブ歓迎!



「つまり……解らん!」
 山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)は一言そう叫び、手近な宝石を手に取った。
 意味不明な数字の羅列。正体不明の何かの理屈。そんな未知なるものが怖いのは、人としての当然の感情である。
 だから、兎に角気持ちを強く持つ。未知に呑み込まれぬようにする。幸いにも敵の遣り口そのものは概ね把握できている……宇宙を記述する数式やら定理やらを見せて理解を求めるわけではなく、“見た者の認識そのものを、自身を記述する数学に合わせて書き換える”。早い話が、何らかの魔術なり何なりの超常的作用を発揮しているというわけだ。
「ただの精神攻撃じゃとさえ解っておれば、わしの十八番といったところかの」
 つまりは難しいことなど考えようとせず、普段どおりの精神防御に徹すればいい。そのために……彼はおもむろに道着の帯に手を掛ける。

 するりと脱ぎ捨てた道着の下には、燦然と褌が輝いていた。
「わしの無敵の精神を蝕みたければ、まずはわしの自信の源である自慢の肉体を砕くところから始めるがいい!」
 相手が女子供であればわーきゃー叫ばれたかもしれないが、所詮、相手は無機物にすぎぬ。玄信には今見ている宇宙がそもそも何を意味しているのかすら解らんが……なればこそ、相手も玄信の力の源を理解できぬであろう。
「はぁッ!!!」
 勢いよく叩きつけた鋼の拳は、いともあっさりと宝石をその宇宙ごと破砕した。含まれていたおぞましい気が薄れゆき、同時に玄信の魂を喰らわんと欲してた外力が収まってゆく。
 その様子を知覚しながら、玄信は、勝利の要因をこう語るのだ。
「かのTRPGで一番強いのは、INTが低く何にもわからないがPOWが高くて正気度はあり、戦闘だけは強い脳筋キャラじゃ!
 ……さて。今頃零殿はどうしておるかのう……?」

 そんな疑問を隣に向ければ、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)のテレビは砂嵐に覆われて、耳障りなノイズ混じりの声を垂れ流していた。
「すうがくてきうちゅう……要は数学的にあり得る宇宙は全て存在する可能性があるということでしょうか……って、法学部のガチガチ文系人間にこんなもの理解出来るか!!! ……はっ」
 不意に砂嵐と雑音が途絶えたかと思えば一瞬にして、まるで誰かに憑かれていたかのようだった彼は零本来の姿へと戻っていた。はて、今のは何だったんだろう……よくわからないけど今のはきっと、異なる宇宙を垣間見てしまった影響なのだろう。つまり全ては『宇宙の幼生』のせいに違いない!
「うーん、これは恐怖に囚われる前に一気にカタを付けた方が良さそうですね」
 よくわからないなりに零はそう結論付けた。恐るべき宇宙的存在の正体が何か、そんなのは今は知る必要はない。判っているのは――為すべきことはたったの一つ、アポカリプスヘルの人々を守るという聖騎士としての役目を果たすため、邪悪を打ち砕かねばならぬということだけなのだから!
 その時整数的宇宙の幼生は、さぞかしほくそ笑んでいたことだろう。何故ならその時の零は単純な善悪二元論へと陥っており、幼生の望むファジーさを一切含まぬ論理を体現していたからだ。
 にもかかわらず次の瞬間……彼は感じた勝利は誤りだと知った。
「揺らぎがない世の中なんて面白くありません!」
 凄まじい正義の怒りとともに、勢いよく振り下ろされる雷のメイス。何故――確かに支配したはずの理性の裏に、不条理に満ちた想念が燃え盛っている。
「人族というあやふやな存在を否定なんてさせませんよ!」
 そう主張する今の零には小数的あやふやさなど含まれてはおらぬのに、それが全力であやふやさを礼賛するという矛盾!

「矛盾やあやふやさと折り合いをつけてこそ、人というものなのですよ――」
 それにより生まれる悪もあることを、零はよく知っていた。しかし、その中でも正義を選べるからこそ、人という存在には価値がある。
 その道中にある状態を許せぬ宝石なんて、砕け、消えるのが宿命なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花澤・まゆ
えっと、数学的狂気に耐え、宝石を破壊すればいいんだよね?

説明聞いたんだけどね
あたし、算数ってすごい苦手なんだよね
帝都桜學府で勉強を教わってたときも
算数だけは本当に苦手で毎回追試だったなあって

なんで数字って文学的な行間を読まないんだろうね
あるじゃない?
しっかり文字にしなくても漂う空気とか雰囲気とか
それを数字にしちゃうのって無粋だと思うんだよね
そこに「ある」ならふんわり「ある」ってことを認識して
それでお互いいいんじゃないのかなあ

あ、この宝石を割るの?
一応UCで割っておくね、えいや
あたし、まだまだ数学には言いたいことがあるんだけど
此処で語ってもいいのかな?

アドリブ、絡み歓迎です


藤・美雨
整数宇宙の幼生と対峙しよう
ふむふむお前は中途半端なものを認めないんだね
じゃあ私とか滅茶苦茶腹が立つだろう!
生きてる死者だからね!

頭の中に色んな考えが流れ込んでくるけれど
ぶっちゃけ何も分からない!
だって小数だって数じゃん!孤児院でそう習ったし!
中途半端って定義も分かんない
数字は数字でしかないじゃん
それ以上のことは全然分かんない!

ニコニコ笑顔を浮かべて浮かぶ考えをスルーしていく
私の脳味噌の造りはシンプルだからね
「分からない」を楽しむ才能くらいはあるけれど
だからこそ己の感情の揺らぎを捉え、それ以上は理解しない

ああ、でも答えはシンプルだ
お前を上から叩きのめすだけだから
小難しい話はおーしまい!



 ――が、しかし。
 いかな『宇宙の幼生』といえども、まさか抵抗を要求する段に進む機会すら与えられぬことがあるとは思わなかったろう。
「どうしよう……聞いた説明そのものも解らない……」
 ああ、これが桜學府の試験だったらまた追試になるな。そんな暗澹とした気持ちが花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)の中にわだかまる。
 数学どころか算数と呼ばれていた時代から、まゆは追試の常連だったっけ。なんで数字って行間を読まないんだろうね。別に数式になんてしなくったって、ぱっと見で直感的に出てくる答えを信じればそれでいいじゃない。
「なのにそれを数字にしちゃうのって、無粋だって思わない?」
 追試への恐怖が数学そのものへの怒りへと変わる。まゆの手のひらの中できらきらと光る宝石は――なんというか、どこか肩身が狭そうだ。

 どれだけ常識と異なる概念でまゆの認識を穢そうとすれども、それ以前に彼女は正しく概念を認識してすらくれそうになかった。
 厳密なはずの定義と疑いようもないはずの論理を突きつけたはずなのに、まゆの中ではいつの間にか定義自体が曲解されて、論理を無視して結論が生まれる。間違いを許さぬためにある厳密な記述が、根本的にエラー検出に役立たない。常識を破壊する側だったはずの存在が、逆に非常識に襲われる。

「そこに『ある』ならふんわり『ある』ってことを認識して。それでお互いいいんじゃないのかなあ」
 そんなわけあるか――それでいいのはまゆだけで、先生はさぞかし自身の無力さを痛感したに違いなかった。『宇宙の幼生』も存在意義を打ちのめされた側だ……この人間に恐怖を与えていることだけは間違いないのだが、その内容は自分とは全然関係のない過去のトラウマでしかない。
「そういえば、この宝石を割らないといけないんだったっけ?」
 今更本来の目的を思い出したまゆの独り言は、むしろ『宇宙の幼生』にとっては救いであったかもしれない。
 だって、今すぐにこの場で破壊されねば、幼生は延々とまゆの数学に対する言いたい放題の愚痴を聞かされる羽目になっただろうから。

 ――ではもしも、そんな“怪異の無力化”プロセスをもう少し意図的に発生させることができたなら?
 宝石のひとつを手に取った藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は宝石箱の隅に腰掛けて、この上なく楽しげににその表面を撫でる。
「ふむふむ、お前は中途半端なものを認めないんだね?」
 うっとりと目を細め、からかうように囁いて。果たして自分は何者か、逆に宝石に読み取らせようとする。

 離散値。整数。デジタル値。呼び方は幾つもあるけれど、その本質はたったのひとつ、『中途半端な状態を認めない』、だ。
「で、それってどういうこと? 小数だったらダメだってこと? 小数だって数だって孤児院で習ったし!」
 だから美雨にとっては『整数』自体が、『数』の小数点以下がない特別な状態でしかない。『整数だけの世界』なんてものがあるとはつゆも思わない。だって割り算すればいくらでも小さな数が作れるでしょう?

 ただ美雨がまゆと少し違ったところは、自分は『宇宙の幼生』の宇宙を理解できないしするつもりもないけれど、相手もまたこちらを理解できないらしいとだけは解っていたことだった。
「じゃあ、私とか滅茶苦茶腹が立つだろう! 何せ私は殭屍で、生者と死者の間の生きてる死者だからね!」
 宝石からは依然として何故小数の存在を考えていないのかの説明が流れ込んでくるようだったけど、美雨は特に気にせずニコニコ顔を崩さない。『わからない』を……『謎』を、楽しみはする。でもそういった正の感情だけで満足することにして、それ以外は片っ端から馬耳東風。死体というネガティブな体を持っているのに、心までネガティブになってしまったら生き返った価値がないから。

 先に論理の違いに音を上げたのは、もちろん『宇宙の幼生』のほうだった。存在せぬはずの小数概念が、生と死の狭間より流れ込む。整数的構造が崩壊し、実数宇宙へと相転移し消える。
「よし、おーしまい!」
 美雨は晴れやかな表情で、軽やかに宝石箱から立ち上がってみせた。小難しい話はもう十分だから、あとは面白そうな『わからない』だけつまみ食いしよう。幸いにもこの地下領域は、その題材にだけは事欠きそうにない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リサ・ムーンリッド
マキナ(f05106)さんと探索に来たよ
●対策
私は詭弁を展開して矮小化を図ることで、理解を一時放棄しよう

そういえば数字は身近な生活で用いる、数という実用目的の意味の表現が始まりと言われている
それはやがて事象の予測と再現を目的とした、仮設から導き出した命題として利用されはじめたが
過程に対する趣味にせよ、実利目的にせよ、結局は意味だ

事象として観測できなければ、果たして空想とどう違うのであろうか?
…というわけで、この宝石を物理面から調べるため削ってみようか

●心情
正直、理論に心は惹かれるが…ひとつの事に囚われるのは趣味ではないないからね
考察は後にして、今回は表層的な部分…サンプル採取のみに留めよう


マキナ・マギエル
ムーンリッド(f09977)様と連携致しましょう

「成る程。とても興味深い。」

例えば此方の「整数宇宙」
此処に感情をデジタル化した数字として持ち込んだらどう変化するのか…
ムーンリッド様はどう思われますか?

…結局の所、これらの新宇宙が如何に興味をそそられるモノで在ろうとも、観測基点となる「我々の居る宇宙法則」との相違故に惹かれるのですよ
それ故、その基点を脅かすのであれば速やかに排除しましょう

【ガジェットショータイム】です
対象たる「私の好奇心」に有効な「記録媒体」にて新宇宙を記録し、今この瞬間は一切の好奇心も理解への階梯をも破棄し狂気へと対抗
いつか我々の理解が及ぶ段階迄至った折に、改めて検証しましょう



「成る程。数学的構造を物理的に再現するとはとても興味深い」
 その先に生まれ得る知見はさぞかし、マキナ・マギエル(機械仕掛けの魔術師・f05106)の探究を高みに導くに違いない。
「例えば、先程の――」
 まだ壊されずに残っていた『整数宇宙の幼生』を視界に入るか否かの状態に留め、はて、どうすればこちらからこの中に情報を持ち込めるのかと、首を傾げてみせる。
「もしも整数宇宙の中に感情を、デジタル化した数字として持ち込んだらどのような変化が起こるのか。ムーンリッド様はどのようにお考えですか?」
 傍らのリサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)に水を向ければ、彼女も興味津々に宝石を眺めて溜息を吐いた。
「心惹かれる理論だね」
 と。そして同時にこうも追加する。
「ただし、この宝石は私の趣味ではないね。これは見る者を、自身の概念に引きずり込みすぎる。知っているだろう? 私がひとつのことに囚われるのを好まないということを」
 では、速やかに排除しましょうか。重ねてそう訊ねた魔導人形。対してしかし、エルフの錬金術師は首を振る。
「なに、深く研究すれば危険だというだけだ。表層的な研究だけならば試したいことなど幾らでもある」
「では、準備はお任せ下さい――」

 マキナが自身の中から取り出したそれは、ひとつの不格好な記録装置のようだった。マキナの瞳の色をした記録媒体に、見聞きし感じたもの全てを保存する小宇宙。
 それはいわば“もう一人のマキナ”が、ただ只管に感じたものを書き残すだけの自動手記だった。
 結局のところ『宇宙の幼生』が魔術師を惹き込む理由は、観測基点となる“我々のいる宇宙の法則”とは違うものであるからであろう。観測基点自身が観測対象と同化するのであれば、魔術師は観測対象に何ら価値を見出だせなくなってしまうことになる――ゆえに用意した“観測のためには同化されてしまってもよい基点”が、マキナの用意したガジェットだ。

「見事な仕事だ。事象としての観測ができなくなれば、それは空想と変わらないからね」
 そのガジェットに観測用の魔力を流し込みつつ、リサの演説は始まった。
「そういえば数字というものは、身近な生活で用いる『数』という実用目的の意味の表現が始まりと言われているね。それはやがて事象の予測と再現を目的として、仮設から導き出した命題を記述するために利用されはじめたわけだが」
 それは今更語るには無意味な講義であって――しかし、『宇宙の幼生』を観測する際には重要なものだ。
「過程に対する趣味にせよ、実利目的にせよ、結局は“意味”だ。人類はそれを概念空間に独立した存在とすることで、“目に見える現象”と“仮説”を分離せしめたわけだ」
 ある種の詭弁とは言えるだろうが、そう宣言することにより『宇宙の幼生』による影響を、認知上のサンドボックスに隔離することができる。

 リサが宝石に触れ、削り、魔力を注ぎ込む度に、マキナのガジェットには“彼”が感じたもの全てが記録されていった。ということは、後ほどその記録を精査する際には、記録を取り出した者が『宇宙の幼生』によるのと同じ精神汚染効果を受けてしまうことも意味するはずだ。
「良いのですか?」
 訊ねるマキナ。もっとも、答えは聞かずとも判ってはいるが。
「もしも問題が起こるとしたら、それは引き時を見誤ったということだとも」
 それは囚われるべきでない仕事に対し、必要以上に囚われすぎたということだ。どうせ誰かがまた新たにポーシュボスを召喚でもせぬ限り、他者に研究成果を先越されることもない。ならば他の仕事の合間に安全な範囲で記録を引き出しながら、ゆっくりと研究を進めてゆけばいいではないか。
「では、全てはいつか我々の理解が及ぶに至った時に」
 頷いてマキナがガジェットを止めれば、リサの指先が宝石を向いた。
 ここからは魔術師としての仕事を離れ、猟兵としての仕事を為すべき時だ。
「未知の宇宙よ、またいつか」
 放たれた魔力は宝石を貫いて――『宇宙の幼生』を、亜原子単位へと崩壊させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

中小路・楓椛
ドーモ、ダゴン焼き屋です。私は数学分野は管轄外ですので。

幼生さんの知性確認として他の世界で懸賞金掛かった数学の問題に挑戦して貰って…ナヴィエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさとバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想を…解けますか、脱帽です。

では次の問を。セラエノから借りた石板に描かれた問題が幾つかありますが…これも解かれますか。

最後に、先程の石板を参考に次の「式」を解いてみて下さい…解けますか?…解いてしまわれましたか?
これは此方側の世界に未だ存在しない式でして、敢えて命名するなら神性怪異を混沌に還す「逆クルースチャ方程式」になりますが…まだ思考は維持できてマス?(石に接近し物理破壊)



 地下空間の最奥は、いつしか出汁の効いた湯気の香りに満ちていた。
「はっはぁ。私は数学分野は管轄外でして、そのような話を聞きますと見事なものだと感心するほかありませんなぁ」
 そこには、名状し難い宝石を相手に朗らかに談笑する妖狐。名は、中小路・楓椛(戦争期間中のみマレボレントスレイヤー・f29038)。牽いてきた屋台は小さな厨房になっており、はい、と差し出したるのは『ダゴン焼き』――早い話が『卵焼き』またの名を『明石焼き』の、リーズナブルさを重視して各世界用にカスタマイズしたバージョンだ。
「おや、これはナヴィエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ問題の解法ではないですか。こちらはバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想の……これは脱帽です。まさかこんな概念を経由することで、より一般化された形で鮮やかに解けるとは」
 楓椛の相手する『宇宙の幼生』が何という数学的構造から生まれたものなのか、人類は説明する言葉をいまだ持たない。ただ一つだけ確かであることは……楓椛は最初からその全てを知っていたようだということだ。
「――では」

 不意に楓椛の眼光が鋭く変わり、屋台内の棚の中からひとつの石版を取り出した。
「これは所謂『セラエノの石版』……ここに描かれた問題も――ああ、これも解かれてしまいますか」
 今度は石版を元の場所へと戻し、領収書用紙の余白に何やら描く。その記述は石版のものの応用であり、そして遥かに複雑なもの。
「解けますか? ――いいえ、解いてしまわれましたか?」
 瞬間、宝石内の世界はぐにゃりと歪み、『宇宙の幼生』は悲鳴を上げた。狐のしがないダゴン焼き屋は、まるで京人のように上品に笑う。
「これは、こちら側の世界にはいまだ存在しない式でして。敢えて命名するならば、神性怪異を混沌に還す、『逆クルースチャ方程式』とでも申しましょうか?」
 幼生は、最早その声を聞いてはおらず。ただ、ひび割れ色をくすませるだけ――。

 ――かくして数学的宇宙の幼生たちは、全てが猟兵たちにより打ち砕かれり。
 そのことがアポカリプスヘルに支配の手を伸ばす邪神ポーシュボスの権能をどれだけ抑え込む力となったかは、恐らくは、その時が来れば明らかとなるに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月08日


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#アポカリプスヘル
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト