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筍、人界に伸暢す

#封神武侠界


●最大与党
「成長のためには修行あるのみ!」
 深き竹林の中、若き武侠が槍を振るう。その動きは早くも正確であり、乱立する竹に当たることなくその間を鋭く何度も行き来していく。
「流した汗、苛めた体は裏切らない。ただ真っ直ぐに努力を積み重ねてこそ成長があるんだ! そこに限界などない、人が神仙に劣るなど誰が決めた!」
 自分に言い聞かせるように声を上げながら素振りに励む若者。
 彼は己の限界を試し、越えるために修行に励み続ける武人。百年にも満たぬ人の生、その中で強さを極めるため、愚直なまでに修行を続ける者。
「……だが、空気をついてばかりで強くなれるわけはない。そろそろまたどこかに武者修行に行こうか」
 素振りを止めて武器を下ろし、一呼吸整える男。その心に思い描くのはまだ見ぬ強者。
 彼はまだ知らない。その望み通り強者が彼の元に今まさに向かっていることを。
 そして彼は思いつかない。強さとは実直さの中だけにあるのではないということを。

●公克単価稍贵
「あなたのメルでございます。暑い中お仕事お疲れ様です」
 そう言ってメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)は猟兵たちにタケノコご飯を配る。
「先日に続き今回も封神武侠界での依頼です。今回はいかにもこの世界らしく、武林にて修行に明け暮れる人間の若者をお手伝いいただきたく」
 どうやら今度は人界での依頼となるようだ。
「お手伝いしていただきたいのは笋弟(スンテイ)という宿星武侠の男性です。彼はどこまでも強くなりたいと己を鍛えているのですが、その修行の一環として武者修行に出ようとしたところでオブリビオンに襲われてしまうようで」
 近頃封神武侠界では人界仙界問わず若き英傑をオブリビオンが強襲する事件が多発している。裏に何があるのか定かではないが、これもその一つということだろう。
「彼も決して弱くはないのですが、今回の相手はいささか相性が悪くて。とにかく実直で正攻法を好む彼に対して、今回のオブリビオンは特殊な拳法や搦手を得意とする者たちが相手となるのです」
 彼はとかく真っすぐすぎる性質故無意識に相手にもそれを求めてしまうらしい。誠実なのは悪いことではないが、それだけで切り抜けて行けるほど戦い、そして人生は甘くない。
「幸い彼に接触してからオブリビオンが来るまで少し間があります。その間交流を兼ね、彼の修行に付き合ってあげてはいかがでしょう」
 武人として手合わせするもよし、異世界の戦い方を見せるもよし、戦術論などの座学をしてみるのもいいだろう。相手が自分より強いとなれば彼も素直に言うことを聞くはずだ。
「そうして一汗かいたらオブリビオンの来襲です。まず来るのは『明道参式』という女性型をした宝貝の集団です。彼女たちは主命を遂行することを至上とする『明道』なる流派を用いて戦います。目的遂行のためなら文字通りにあらゆる手段を用いる流派のため取り得る戦法は多彩。一筋縄ではいかないでしょう」
 どんな手段も躊躇なくとる反面、何があっても主命遂行を諦めない強い意思も持っている強敵ということだ。
「そして彼女たちを退けたら次の敵、『私服を肥やす奸臣達』が現れます。彼らはいかにも悪徳役人と言った風体で、実際見た目通りに命乞いや贈賄をかけてきます。もちろん笋弟さんもこれをつっぱねるでしょうが、それこそが彼らの狙い。懇願を拒絶した者の速度を低下させたり、財産を代償にあらゆる行動を成功させるなど、彼らの悪行は既にユーベルコードの域にまで達しています。あるいはそういった邪拳使いと思った方がいいかもしれないくらいですね」
 愚かな俗物と侮ればその術中に嵌められてしまう。彼らが恐るべきオブリビオンなのだと言うことを忘れないよう心掛けるべきだということだ。
「実直なのはいいですがそれだけでは対処できないことが世の中には多くありますし、耐え切れなくなれば簡単に折れてしまいます。彼もまだ伸びしろ多い若者。是非いつか花咲かせることができるよう、どうか手助けしてあげてください」
 そう言ってメルはグリモアを起動し、猟兵たちを武林へと送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。
 今回は封神武侠界にて、己を鍛える若者を手助けしていただきます。
 前作『茸、仙界に繁茂す』と対になっている依頼ですが、今回はまだ接点はないので該当シナリオを読む必要はありません。

 第一章では竹林にて修行する武侠とともに修行していただきます。彼に合わせて正統派な武術で相手取るもよし、まるで知らないような戦法を見せるもよし、スポーツ理論や人体工学など学問的なアプローチをしても良いでしょう。効果のほどが分かれば拒絶はされません。

 第二章では『明道参式』との集団戦。彼女たちは『若き英傑を殺す』という主命をどんな手を使ってでも遂行しようとします。様々な武器や宝貝、技能を使い攻めてくるので臨機応変な対応が必要となるかもしれません。

 第三章では『私服を肥やす奸臣達』との集団戦。彼らは一見すれば非常に弱く愚かそうに見えますが、その外見や言動すらも相手を惑わすために利用し術中に嵌めてきます。本質は冷酷な悪人ですので騙されないように。

 戦闘時には武侠が仲間として戦ってくれます。中々強いですが搦手に弱いので、その辺りを気を付けつつ利用してください。
 以下武侠詳細。

 笋弟(スンテイ) 人間の宿星武侠×ヴィジランテ(16歳)
 緑の短く立てた髪に180cmを超す長身。槍術や棍術を得意とし、細身だがしなやかな肉体を持つ。名前は『タケノコ小僧』という意味合いの通称だが、本人は一夜で成長するタケノコにあやかれると気に入っている。
 鍛錬によって仙界の不思議さえ超える力を得るべく修行に励んでいる。竹を割ったような素直な性格だが融通が利かず、効率よりも量と時間を重視して修行する癖がある。たとえ険しいだけの道でも直進してしまうタイプ。
 やや視野狭窄の気があり、無意識に他人にも真面目さを求めてしまう。それ故奇策や搦手などに非常に弱く、力で跳ね返せないと意外と簡単に折れてしまうことも。
 自分が最強と自惚れたりはしておらず、強い者の意見はきちんと聞くし学ぶことはできる。

 こちらは前作と違いコミカル要素薄めの戦闘中心シナリオとなりますが、特に気にせず思うままにプレイングをお書きください。

 それでは、伸びゆくプレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『修行の時間』

POW   :    全ての資本、身体を鍛える

SPD   :    自らの習熟している、或いは新たに習得したい技術を鍛える

WIZ   :    魔力の研磨、或いは、仙術の勉強などを行う

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「ふっ、はっ、てりゃあっ!!」
 武者修行前の追い込みとしてか、激しく槍を振るう若き宿星武侠笋弟。
 その早く鋭い突きは彼が若くして達人の領域に至っていることを如実に物語るが、同時にその真っ直ぐさが彼の危うさの現れにも見えてしまう。
 脇目も降らず日々鍛練に励む彼は、一対一の正々堂々とした果たし合いなら並の相手には遅れをとることはないだろう。だが、戦場という非情の場に置いてそうしたクリーンな戦いの機会が一体どれ程あるだろうか。
 それを知る時こそが彼の試練の時となるだろうが、それ以前にオブリビオンによってその芽を摘まれてしまえば育つものも育たない。
 幸いにして芽に水をやる時間はまだ僅かながらまだありそうだ。
 猟兵よ、前だけ見続ける若者に世界の広さと戦いの奥深さを教えてやろうではないか。
アリス・フォーサイス
なるほど。搦め手を教えるならぼくが適任かもね。

「おはよう。」
拱手で挨拶するよ。
「ぼくも修行中の身なんだけど、お手合わせ願えないかな。」

踏み込みにあわせてバナナの皮を投げるよ。すべって転んだところに魔王笏の先を首につきつけるよ。
卑怯?スポーツをやってるんじゃないんだよ。これが剣ならもう死んでるよ。

不意打ち、奇策、奇襲。正攻法では対象できない攻撃を重ねるよ。

悪いけど、キミの戦い方じゃ、オブリビオンに殺されるだけだよ。今の型を捨てる必要はないけど、搦め手にも対処できないと。



 今封神武侠界で多発している、オブリビオンによる若き英傑の襲撃事件。今回そのターゲットとなった宿星武侠笋弟は実力は確かだが真っ当な戦い方しか知らず、その外から来るような攻撃には対処できないどころか想像すらもしていないという。
「なるほど。搦め手を教えるならぼくが適任かもね」
 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)はその彼に危険を知らせ、そして彼に『修行』を付けさせるためその前へと立った。
「おはよう」
 拱手を作り挨拶するアリス。拱手さえできれば氏素性は問わないという封神武侠界の常識通り、笋弟も同じく拱手を作りそれに答えた。
「あ、ああ、おはよう。だが一体誰だ? 俺に何か用か?」
「ぼくも修行中の身なんだけど、お手合わせ願えないかな」
 ここは武を志す者が集う武林、修行中のものがそこにいるのは不自然なことではなく、自分自身がそうであるように強そうな者を見つければ手合わせを願い出るのも当然の事。笋弟はそれを快諾し、自らの得物である槍を構えた。
「いいだろう。丁度強い相手と手合わせしたいと思っていたところだ。さあ、どこからでもかかってこい!」
 一目でわかる隙のない構え。それを見たアリスは、それでも表情を変えず彼に告げる。
「それはどうも。だけど先手は譲ってあげるよ」
「ほう、言ったな。後悔するなうおぉ!?」
 繰り出される無駄のない鋭い踏み込み。それに合わせアリスは笋弟の足元にバナナの皮を放り投げた。勢いよくそれを踏み、そのまま思い切りバランスを崩す笋弟。その首元に、アリスは魔王笏をぴたりと押し付けた。
「な……卑怯だぞ!」
「卑怯? スポーツをやってるんじゃないんだよ。これが剣ならもう死んでるよ」
 笑顔のまま、冷たく告げるアリス。それは紛れもない事実だが、これを練習試合と思っていた笋弟には受け入れがたい。
「そ、その通りだが、これは修行で……」
「それは何のための修行なのかな?」
 そう言いながらアリスが立ち上がるのを促すよう手を差し出す。笋弟がその手を取り立ち上がろうとした瞬間、下側へ体重をかけ再度彼を転ばせ今度は頭に笏を突きつけるアリス。
「敵が出した手を軽々しく取るものじゃないね」
「く……おのれ!」
 歯噛みしながらも今度は自分の力では寝起き、矢継ぎ早に突きを繰り出す笋弟。聞いていた通りその動きは鋭く、大真面目に正面から相手取ろうとすれば猟兵やボス級には及ばずとも、集団型一体にはまず負けることはないだろう。
 だが、そもそもその仮定自体がありえない話。それを教えるべく、アリスはその突きをかわしつつ反撃に出る。
「ぼくにかかれば、なんでも作れるよ」
 アリスは【類推的手法による物質変換】を使い、笋弟の足元の石を形を変え一纏めにし、彼の足を引っかける。バランスを崩しながらも槍を杖のようにし笋弟は踏みとどまるが、さらに杖の穂先を斜めに曲がった形に変えてそのまま転ばせた。
「ぐぐ……」
 そこからも不意打ち、奇策、奇襲。正攻法では対象できない攻撃を重ねていくアリス。流石に同じ手に二度引っかかるようなことはないものの、少し手を変えればまるで対処できず地に伏せられるその姿は、彼がそうした戦法をいかに想定できないかを如実に物語っていた。
 やがて体力付き、大の字に転がる笋弟。
「悪いけど、キミの戦い方じゃ、オブリビオンに殺されるだけだよ。今の型を捨てる必要はないけど、搦め手にも対処できないと」
 アリスの言葉に何か言い返そうとするが、言える言葉が出てこずに唇を噛む笋弟。全てはその通り、彼女がその気になれば何度だって自分を殺すことができたのだ。
 この完膚なきまでの敗北、それを糧にすべきなのだろうと笋弟は悔しさの中で確かに感じていた。そしてそれを否応なしに実践せねばならぬ時が来ると、アリスは彼が再び立つのを待つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
過ぎたるは猶及ばざるが如し、ですねぇ。

『神仙』相手の動機も有る様ですし、彼を狙う方が既に斥候等を送り込んでいる可能性も有りますねぇ。
では、彼に役立ちそうな『宝貝に似た道具』で稽古のお相手をしつつ、把握可能な情報を最小限に抑えましょう。
『FAS』で飛行し【宝創】を発動、嘗て『猟書家』が使っていた『メガリス』である『ブリューナク』と『天之麻迦古弓』を複製、『槍』を前で直接お相手させつつ『弓』で遠距離から叩くと共に、『経験の浅い武器を選ぶ』ことで『強化条件』を満たす形でお相手しますぅ。
必要に応じ他の品も『複製』、様々な『型』を見せつつ『FAS』以外の『祭器』は秘匿しますねぇ。



 竹林の中、懸命に修行を続ける若き宿星武侠笋弟。ただただ汗を流し修行に打ち込むその姿を、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は複雑そうに見た。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し、ですねぇ」
 その真っすぐな姿勢は決して悪いものではない。だが、効率も現実性も度外視したそのやり方、考え方は結局彼自身の成長を妨げているのではないか。
 そう考えながら、るこるは次の修行相手として彼の前に立つ。
「では次は私と」
「何だ、また誰か来たのか……目的はなんだ? まあいい。挑まれたなら受ける、それが武人というものだ」
 再度槍を構える笋弟。精彩欠かぬその構えは彼のスタミナが高いことを示しており、それに対しるこるは背にオーラの翼『FAS』を装着し浮き上がる。
「浮けば逃れられると思ったか? 甘い!」
 即座に構えを変え、浮き上がる軌道に合わせ対空突きを放つ笋弟。自身は人間でありながら飛ぶ相手に動揺せず即座にそれに合わせた動きをしたことで、るこるの彼に対して抱いていた印象は確信に変わる。そしてそれならばと、予定していた戦法を出すことにするるこる。
「大いなる豊饒の女神、その名の下に宝物を形作り捧げましょう」
 突きを躱しながら【豊乳女神の加護・宝創】で作り出したのは、かつて異世界で戦った猟書家が用いたメガリス、『ブリューナク』と『天之麻迦古弓』。まずは一度放たれれば必ず標的を穿ち戻るというその槍を、るこるは笋弟めがけて放った。
「槍の宝貝か? 俺も槍には自信はある!」
 真っ直ぐ飛来するその魔槍を、笋弟は自身の槍を縦に振り打ち落とした。そして先の一戦で学んだかあるいは槍を武器とする相手との試合における知識か、その柄を踏みつけて再度跳ね上がるのを抑え込む。
 さらにそこに後ろから、天にも届くと言われる強弓を射かけるるこる。
「次は弩か、当たれば恐ろしいな!」
 その一射にも今度は槍を横ぶりにし、太く重い矢を弾き飛ばす笋弟。ただ早く正確なだけでなく、勢いを威力に転化できるしなやかな動きとその力を生み出すだけの筋力。相手が宝貝……正確にはメガリスという不思議な力であっても、正面から己の理解できる形でくれば十全に対応できるその技量と判断力に、るこるは彼の特徴と、それ故の危惧を改めて思い浮かべた。
(『神仙』相手の動機も有る様ですし、彼を狙う方が既に斥候等を送り込んでいる可能性も有りますねぇ)
 完全に何の能力もない人間のみを相手に想定しているなら、飛ぶ相手や宝貝への対策は取れないはず。だがそう言ったものを卑怯とも謗らず相手をして見せたと言うことは、少なくとも封神武侠界に遍在する程度の特殊能力自体は彼の狭い想定の中に入っていると言うことだ。そしてそれならばどこからが想定外になるのか、搦手や奇策を得意とするという敵が既に情報収集に走っていてもおかしくはない。るこるがメガリスを用いつつもあえて真正面から挑んだのは笋弟の力量を確かめるためであり、同時に敵の情報戦に対する牽制とカウンターの意味合いもあった。るこるは笋弟と試合うと同時に、すでに先の敵に戦いを挑んでいたのだ。
 だがそんな盤外の戦いなど知らず、笋弟は踏んでいた槍を側方へ蹴り飛ばし弓を封じようと大きく距離を詰める。
「近づけば弩はもたつくだろう、ましてそれほどの強弓!」
 弾いたときに弓の強さを感じ取ったか、強い弓ほど引き辛いという考えのもと接近戦を挑む笋弟。それに対し、るこるはさらにもう一つのメガリス……敵を倒すまで自動で戦い続ける『勝利の剣』を複製しそれを手に取る。
 元々るこるは剣豪でこそあるが弓や槍の扱いはさほど習熟していない。さらに勝利の剣も普段使っているのとは違う西洋剣ということで練度は下がり、その不利な行動がメガリスの性能を後押しし不慣れを相殺する。
「剣では槍に勝てない……などと奢るつもりもないぞ!」
 一人で動く勝利の剣の太刀筋を達人の『型』と見て、槍の柄を棍として使いそれを受ける笋弟。やはり彼は想定内の戦いにおいては、猟兵でないものとしてはという但し書きが着いた上で指折りの達人なのだろう。それを示すかのように、視界の端からひとりでに飛び掛かったブリューナクを大きく体を反らして躱す。
「やはり宝貝……それくらいはしてくるか!」
(宝貝が勝手に動くというのも想像できる、と)
 このくらいまでは封神武侠界の『強者』のイメージ通り。そしてこれ以上の情報を露出させるのは好ましくないと、るこるは彼に合わせた戦い方での稽古を続けていく。
 彼はこれだけの動きができる、故にそれをさせぬよう絡めとってしまえばいい。何処かで見ているかもしれぬ敵にそれを伝えその方向に誘導すべく、るこるは彼の底を測り、しかし見せ切らぬよう『手合わせ』を続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風

わざと無手なのだが。その実直さは好ましいものである。
ただの、それだけでは足らぬのよ。
手合わせをしてみようかの。わしも無手ながらまっすぐにいく。そう、わしなら、な?

※いきなり人格交代※
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

搦め手。それは忍の十八番ですからねー。
前からではなく跳躍してからの後ろから。しかも地の砂も利用しての目潰しとかねー。
何で槍(黒燭炎)を得意武器とする彼(侵す者)が無手だったか。それは交代を悟られないためですよー?
ええ、ここで私が漆黒風を突きつけてもよいですがー?

そういうものですよ、戦いって。



 猛者との実戦稽古を終えた笋弟の前に、また一人の猟兵が現れた。笋弟とは親子ほどにも年の離れたその男は豪快に、なれど決して乱雑ではない姿勢で笋弟の眼前に立つ。
「わざと無手なのだが。その実直さは好ましいものである。ただの、それだけでは足らぬのよ」
 その男、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はにこやかに、それこそ師、あるいは父の如くそう語り掛け、そして己の手を見せた。その手の皮膚は分厚く、幾度も破れそして蘇ったことを示す武人の手。その手を見た笋弟は彼がまさに武の天才と呼ぶべき存在であり、あえて武器を持っていないというのも偽りないことだと確信する。
「それが理由か? 俺など武器を使うまでもないと?」
 笋弟の問いには答えず、無手での構えを取る義透。
「手合わせをしてみようかの。わしも無手ながらまっすぐにいく。そう、わしなら、な?」
 それに合わせ笋弟も槍を構えた。相手が自分さえ上回るであろう武辺者なのは向かい合えばわかる。そして真っ直ぐ来るつもりというのが偽りない事であるというのも、その構える姿勢、力の入れ方から察しはついた。
 一度地に伏させられたことで多少は疑うことを覚えた笋弟だが、正面から来ると確信できる相手ならば正面から迎え撃つのがやはり礼儀。いかに強者とて武器術を得意としながら無手となった者に後れを取るわけにはいかぬと、正面に槍を構える。
 そしてしばしの静寂の後、二人は同時に動いた。
「せやあっ!」
 気合の声とともに繰り出される一閃突き。それは真っ直ぐ来る義透の腕よりはるかに長く伸び、その体を突き崩す……はずだった。
「搦め手。それは忍の十八番ですからねー」
 声が聞こえるのは頭上から。とっさに槍を振り上げ対空に切り替えるが、越えの下場所にもう相手はいない。代わりとばかりに、その場所から降ってきた砂が上を向いた笋弟の目を直撃した。
「ぐっ……!」
 思わず片手で目を抑える笋弟。全くの無防備になるわけにはともう片手で槍を振り回すが、既にその間合いよりはるか内側に相手は入り込んでいた。
 そして軽く押される背中。その意味するところを笋弟は既に知っている。即ち、今自分は命を取られたのだと。
「……なぜ。あの構えに偽りはないと見たのに……」
 ある種当然の問い。それを問われることを見越していた義透は、しかしあえて少しずれた答えを返した。
「何で槍を得意武器とする彼が無手だったか。それは交代を悟られないためですよー?」
「そういう意味では……交代?」
 そもそも、馬県・義透は一人ではない。四人の悪霊が一つの体を交代で使う存在であり、一にして四と言える存在。最初に笋弟と見えたのは業火の如き武の天才『侵す者』であり、実際に彼と一手合わせたのは疾風の如き忍『疾き者』。実際に侵す者は本当に笋弟と戦うなら真正面から行くつもりであったし、彼自身そう言った侵略するが如き攻めを最も得意としている。だが、四人の中でも唯一忍者である疾き者はそのような戦法を好まず、その疾さにて惑わせ、駆け抜け、死角を取る。それこそを得手としていた。
 手合わせ前に侵す者のあえて言った含みのある言葉。それを深読みできればあるいは『嘘ではない仕掛け』にもう少し警戒できたかもしれない。
「ええ、ここで私が漆黒風を突きつけてもよいですがー?」
 のほほんとした口調とは真逆の鋭い動き。侵す者が愛槍『黒燭炎』を持たなかった故、彼の手には棒手裏剣『漆黒風』が握りこまれている。武器を持たぬは慢心でも手加減でもなく、そこまでが策のうちだったと言うこと。
 敵は目の前にのみいるのではない。嘘がないからと言って真実が全て明らかになっているのではない。見えているものに惑わされれば、その影にあるものを見失う。
「難知如陰……古い教えと聞き流していた俺が愚かだったか」
「そういうものですよ、戦いって」
 2000年先にすら残るその言葉を、二人の義透は古き時代の若者に刻むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「随分強さに夢をもっていらっしゃる」
嗤う

「出でよ、黄巾力士金行軍」
「空気以外を突いてみたかったのでしょう?」
黄巾力士109体を12隊に分け
4隊が砲頭から延々制圧射撃
4隊がオーラ防御しながらスクラムで前進
回避した笋弟目掛け4隊が波状で突撃

その間いつもの黄巾力士にオーラ防御で自分庇わせ薬品調合
笋弟を10分ほど麻痺させる粉末作成
完成したら式神で笋弟の真上で散布
自分も功夫と仙術で仙丹を指弾

「人として本当に強いのは、大量の人と物流を動かせる人脈と金と知略です。その正当な強さを求めないなら、一対多の戦法を磨き、風下に立たず、妖物狩人の道でも極めれば良いでしょう。一対一など、破落戸との戦いでもあり得ません」



 幾度となく知らぬ発想、知らぬ戦法を見せつけられる笋弟。その彼に、一人の男が声をかけた。
「随分強さに夢をもっていらっしゃる」
 鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はそう笋弟に嗤いかける。
「ああ、強さを積み上げ、極めることが俺の夢、俺の目指す道だ」
 それにはっきりとそう答える笋弟。どこまでも真っ直ぐな彼には分からないだろうm冬季のその笑顔の意味などは。
 冬季がすっと間合いを開けたのを見て、笋弟はまたも槍を構えた。目的ははっきりとはしないが、ここに来るものは皆己に修行をつけに来ているらしいことは既に分かっている。彼もまた自らの武を持って己に向き合おうとしているのだろうと、笋弟はそう考えたのだ。
「出でよ、黄巾力士金行軍」
 それに対し冬季の取った答え。それは【黄巾力士・五行軍】にて109体の黄巾力士を召喚することであった。その姿は複数の小型戦車を人型に重ねたかの如く、ヒーローズアースやアポカリプスヘルならばいざ知らず、封神武侠界に置いては全くの異形とも言える兵士たち。さらには本来の金行だけでなく全ての五行に成ることもできるが、この場にいるのは基本の金行のみである。
「こ、これは……!?」
「空気以外を突いてみたかったのでしょう?」
 お望みの修行相手だ、そう言わんばかりに黄巾力士たちを展開させる冬季。その広がり方は無作為ではなく、統制の取れた動きで12の正体に分かれ笋弟を取り囲む。
「どういう仕掛けか知らんが、木偶を並べただけで俺に勝てると思うなよ!」
 圧倒的な物量。だがこの不利な状況に笋弟の心は燃え上がり、この状況を切り抜けんと相手の動きを見極めんとする。
 それに対し、まずは取り囲む4体がその砲塔から一斉に制圧射撃を放った。それは笋弟のいる場所を含めた辺り一帯を纏めて吹き飛ばし、回避するためのスペースすら残さない勢いで爆炎に包んでいく。さらにその爆炎の中、スクラムを組んだ別の4体がそれぞれにオーラを展開、それを重ね合わせることで巨大なオーラを纏ったかの如き塊となって、砲撃から自分の身を守りつつ中にいる笋弟を押し潰すかのように前進をかけてきた。
「ここしかないか……!」
 笋弟は横への回避を諦め上空へ跳ぶ。制圧砲撃の降り注ぐ空中を飛びあがれるその身のこなしは見事だが、彼は飛行能力など持たない一介の人間。当然のこととして、跳べばいずれは落ちてくる。その落ちてくる場所を目掛け、最後の4隊がタイミングをずらし波状で突撃をかけた。
「ぬぅぅっ!」
 着地際を刈ろうとした1隊は蹴りつけて再度飛び上がる。その小さな跳躍を目掛けてきた次の1隊は次々と足場とすることでその場を凌がんとする。だが、その間も制圧射撃は続くしスクラム部隊もゆっくりと自分を追ってくる。その焦りからかさらに続く隊の突撃は捌き切れずに地に落とされ、そのまま最後の一隊の突撃が笋弟を大きく跳ね飛ばした。
「がっ……は……」
 圧倒的な物量。だが敵の手はこれで一度尽きた。今度はこちらの番だと、笋弟は力を振り絞り地に足をつける。
 だが、反撃に出ようとしたその体は上手く動かなかった。ダメージがあるだけではない。手足がしびれ、槍を持つことすらままならない。
「こ……れは……」
 よく見れば、周囲の空気がどこか曇っているように見える。その原因は宙に舞う微細な粉末。その正体を探る笋弟の目に、呼び出されたものとは別の黄巾力士に守られた冬季の姿があった。
 その手にあるのは何かの道具。そこには粉が付着し、混ぜ合わせるための棒のようなものが。詳しくはないが、その正体は何となく察しが付く。
「薬……!」
 冬季は黄巾力士たちが戦う間ただ見ていたわけではない。笋弟を10分間麻痺させる薬を作り、それを自分を守りながら式神に空中から散布させていたのだ。ちょうど黄巾力士たちの波状攻撃がひと段落着いた時にその薬は効果を発揮し、立ち上がった彼をただ立つだけの木偶へと変えた。
 そして、最後の一射が冬季自らによって放たれる。功夫の技術で放たれた指弾。その弾丸である仙丹が笋弟の体に突き刺さり、その体の内外から彼の動きを止めた。
 そのまま仰向けに倒れ、目を見開いたまま動かない笋弟。冬季は彼にゆっくりと近づき、最初と同じ笑顔のまま告げた。
「人として本当に強いのは、大量の人と物流を動かせる人脈と金と知略です。その正当な強さを求めないなら、一対多の戦法を磨き、風下に立たず、妖物狩人の道でも極めれば良いでしょう。一対一など、破落戸との戦いでもあり得ません」
 世界を支配し、動かすのは何なのか。真に世界を征する力とは何か。一人で一人を倒す力を極めたところでそれで何ができるのか。笋弟の脳裏にほんの少し昔に最強、無双と呼ばれた飛将、美髯の末路がよぎる。
 『戦』に置いて、『戦場』に置いて本当に強いとは何か。それを知らず倒れる若者に、冬季は冷たく嗤いつづけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

死絡・送
SPD
「初めまして、俺は猟兵の死絡・送だ宜しく頼む」
と名乗り笋弟に挨拶する。
ロボは使わず生身で修行に付き合う。
「組手形式で君の武術を受けつつ見せてもらいたい」
と頼み組手を申し込む。
索敵で相手の動きを見つつ「良い技だがわかりやす過ぎる」
とアンカーで受け流しで攻撃を捌く。
忍者出身なので搦手は得意、地形利用で動き回りつつアンカーを捕縛で相手の足に絡めたり土埃で目潰しから暗殺で奇襲。
残像を見せて回避からの二回攻撃などの技を相手を傷つけないように配慮して仕掛ける。
「君がこれから戦うであろう相手は、色んな事をしてくるから真っすぐな技以外でも勝負できるように試そう」
相手の美点を褒めつつ、提案して稽古する。



 強さとは。真っすぐ目指してきたはずのそれを揺らがされ、笋弟の心もまた揺れていた。その彼の前に、真正面から一人の男が現れた。
「初めまして、俺は猟兵の死絡・送だ宜しく頼む」
 死絡・送(ノーブルバット・f00528)は愛機であるスーパーロボットには乗らず、生身のままで彼の前に姿を見せ名乗った。その鍛えられた体に笋弟は相手が相当にできることを見て取り、拱手をもって答える。
「笋弟だ。よろしく」
 それに拱手を返し、送は彼に対し提案をした。
「組手形式で君の武術を受けつつ見せてもらいたい」
「組手? 構わないが、俺の得意は槍だ。拳法もできなくはないが……」
「構わない。何でも使ってくれ」
 自分も武器を使うと、『ノーブルアンカー』を見せる送。やはり封神武侠界にない武器だが、それが武器だと認識できれば興味の方が勝るのか珍し気に笋弟はそれを見つめる。
「それは槍か? 斧か? まあいい。その動き、見せてもらう!」
 構え、そして正面から突きを放つ笋弟。それを送は穂先にアンカーを当てて受け流すが、笋弟もすぐに槍を戻し下段、中段と続けて突きを放つ。
 その動きはまさにお手本通りの、何万回と繰り返された練習を一切の乱れなく再現する完璧な動き。
「良い技だがわかりやす過ぎる」
 完璧ということはその動きが見ずとも想像ついてしまうということ。それを示すように、送は槍の向かう場所に先んじてアンカーを置いてその突きを防いでいた。
 そして数手受けたら今度はこちらの番。ここが竹林であることを利用し、相手と自分の間に竹が挟まるよう動き回る送。
「そのくらいで!」
 だがここで修行していた笋弟にとっても竹にぶつけず突くなど朝飯前。的確に竹と竹の間を抜け送に向けて槍を突き出す。
 そしてもちろん、彼がそうできるだろうことも送の計算の内。竹を抜けてくると分かれば元々読みやすい軌道がさらに制限され躱しやすくなる。身をかわしつつアンカーの鎖部分を笋弟の足元に絡め、そのまま足を取ろうと巻き取りをかけた。
「させん!」
 ステップを踏むような素早い足さばきでそれも躱す笋弟。やはり彼は正面から来る手にはとことん強い。ならばそろそろかと、送は足元の土を跳ね上げた。
「やはり……!」
 その手は別の猟兵に一度使われている。とっさに槍を払い直撃することを免れたが、その槍を再びつこうとしたとき、送の姿は既に前には無かった。
「どこだ!?」
 上か、後ろか、長物の利点を生かし大きく振り回すことで死角をカバーし迎え撃とうとするが、その槍が送を捕らえることはない。
「……そこ!」
 再びの前。そこに一瞬見えた陰に、笋弟は槍を突き出した。その突きはその影を間違いなく貫く。が、そこに手ごたえは何もない。
 同時に前に移した体重を利用されるように背を押され、突きの勢いのまま笋弟は前に倒れ込んだ。そしてその首筋が軽く抑えられる。
「……無念」
「良く対応した。きちんと学べるのならまだ先はある」
 搦手を得意とする忍者の出身である送。本気を出せばもっと見えない、あるいは汚い手も使えるが、このレベルで留めておいたのはどこまで反応できるか試すためでもある。
「君がこれから戦うであろう相手は、色んな事をしてくるから真っすぐな技以外でも勝負できるように試そう」
 たとえ想定できる範囲が狭くとも、教えたことはきちんと学び活かすことができる。彼の想定の範囲内に多くのものを詰め込めれば、それに対しては自らの力での対処が可能となるポテンシャルは確かにあると送はそう考えた。
「もう一度だ。真っすぐぶつけた時の君の力は間違いなく強い。その形に持ち込めるよう視界を広く持つんだ」
 拘束を解き、再び笋弟を立ち上がらせる送。
 それからも送は相手の美点を褒めつつ様々な手の存在を覚える稽古を提案し、自らその相手をなおも務めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ホーク・スターゲイザー
アドリブOK

物陰から姿を現す。
「なに、敵ではない。警戒する事はない」
槍術を見ていた事を話し指摘をする。
「今後を考えれば伸びる可能性はある。しかし柔軟性に欠いている」
炎状にした六天道子の祀器を三又槍に具象化させ、手合わせを。
その中で絡めてへの対処や弱点を教えていく。
「相手の手に乗るのも必要だ。お前は嫌がるだろうが鉄壁の守りを破るには必要な事もある」
あえて乗る必要性も説く。
正面から攻めるのが戦術ではない事も教える。
「水の如き動作と風の如き速さ、武器を己の身体の一部とせよ。そうすれば強くなるだろ」



 様々な形で猟兵に稽古をつけられ、自身の知らぬ戦い方、知らぬ考えをその身に刻まれた笋弟。今まで疑いもなく猛進してきた道に岐路を示され、己の手に持つ槍をじっと見る。
 その彼に、物陰から現れた男が声をかけた。
「なに、敵ではない。警戒する事はない」
 反射的に槍を構える笋弟をそう制し、その男、ホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)は彼の槍捌きを見ていたことを告げる。
「今後を考えれば伸びる可能性はある。しかし柔軟性に欠いている」
 この若さで既に一般人としては達人レベルにまで達し、その上でさらに己の限界を定めず鍛錬を続けている。さらに敵の武器を踏む、相手を蹴って跳ぶなど、正面での勝負に限ればある程度実戦的な戦法も取れることも彼の動きからは見えていた。
 だがその上で、彼の動きは所詮真正面からの戦いの中でしか考えられていないという弱点が明確にあった。それを教えるため、炎の覇気『六天道子の祀器』を三叉槍の形にして見せて彼の前に立つ。
「宝貝……いや仙術か?」
 非物理の力そのものの存在は知る笋弟は、その武器を不思議なものと見れど驚くようなことはない。武器を出されたのを見て、今までの相手と同じように自分と手合わせをするつもりだろうと槍を構える。
 そうして打ち合ってみることしばし。やはり笋弟の槍術そのもののレベルは高く、その突きは鋭い。だがホークとて猟兵、見切れぬ動きではない。その鋭い突きに穂先を合わせ、三叉の中に相手の槍を入れて絡めとる。
「くっ!」
 槍をねじり、力比べて取り落とさせようとする笋弟だが、同じ方向に上手く力を合わせることでそれをホークは受け流す。
 さらにもう一度と今度は逆に槍が捻られた時、ホークの手が槍か離れた。
「よし!」
 そのまま槍を大きく振るい、穂先が絡まったままの三叉槍を振り回し横へ投げ捨てる笋弟。そしてその構えのまま、石突による胴突きを繰り出し一気に征さんとするが。
「残念だが」
 その一瞬の間に、その意思突き部分は抑えられホークの手刀が彼の喉元に突きつけられていた。
「一つ一つの動作に全力を込めすぎている。訓練ならそれでもいいが敵が何人いるか分からない実戦では持たない」
 ここまで多くの猟兵と手合わせしてきた疲労。それが無意識に隙や無駄を生んでいたと指摘し、いい意味での『手の抜き方』を知らないという弱点を指摘する。
 荒く息をつきながらそれを聞く笋弟。そして相手を制した格好のまま、ホークはさらに驚くべきことを告げた。
「ところでこの構え、幾許か賂をくれれば解いてやるし何ならお前の勝ちということにしてやっても良い」
「な……!?」
 突然の贈賄要求。今までなかったことに明らかに笋弟の表情が変わり、一瞬呆けた後怒りの表情に変わる。
「ふざけるな! 貴様俺をどこまで見くびれば……」
「顔に力を込めると他が疎かになるぞ」
 詰め寄る笋弟の手に握られた槍、石突を捕らえられてもしっかり握られていたものが怒りに任せて雑な握りになった所で、器用に力の方向を変えその握りを外しホークはその槍を彼の手から奪い取った。
 武器が手から離れはっとした瞬間、当てられていた手刀が押し込まれ笋弟は仰向けに倒れる。
「相手の手に乗るのも必要だ。お前は嫌がるだろうが鉄壁の守りを破るには必要な事もある」
 最初に三叉に捕らえられた槍を振り相手の武器を奪った笋弟。そこからここに至るまでの一連の流れはすべてその時ホークが武器をあえて手放したところから始まったのだ。
 正面から攻めるだけが戦術ではなく、あえて敵の誘いに乗ることも必要となる。嫌い、不得手と言っている場合ではない。相手を嵌めようとする盤外の戦術は、時にあえて嵌りにいくことで相手の考え、行動をそちらに制限することができるのだ。
 そうした頭脳戦の上で不利を被らず対等に立てれば、そこからは鍛えた武がものを言う。
「水の如き動作と風の如き速さ、武器を己の身体の一部とせよ。そうすれば強くなるだろ」
 本来の持ち味はそちらなのだ。故にそれを最大限活かせる知略を。
 その実践の機会は、最早否応なしに近くに来ているのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『明道参式』

POW   :    明道は滅びません、命令を完遂するまで現れます
他者からの命令を承諾すると【「出現する敵の数×1体」の明道参式の増援】が出現し、命令の完遂か24時間後まで全技能が「100レベル」になる。
SPD   :    明道は進みますどこまでも、命令を遂行するまでは
非戦闘行為に没頭している間、自身の【主人の命令を遂行するために必要な行動】が【成功するまで専念し続け】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    明道は道具を選びません、万全に準備しています
自身の【主人の命令を完遂するために、用意した道具】を【命令を果たすために必要な機能を持つ宝貝】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
👑11
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 突如現れた集団に、今までの己の価値観、やり方を根底から覆される経験をした宿星武侠笋弟。
 その衝撃はすぐに順応できるものではない。だが今までどこかに見えていた壁や蓋が取り去られるような、そんな手ごたえもどこかで感じていた。
 そんな彼の元にまた一人の少女が現れる。
「この武林一の英傑笋弟様とお見受けします」
 そう言って拱手し恭しく一礼する少女。それに対し笋弟も拱手で答える。
「武林一……もう虚しい名だ。俺に何か?」
「私はある国の官吏に仕える者にございます。主命により笋弟様をお迎えに参りました」
「俺は誰かに仕える気はない。他を当たれ」
 すげなく言う笋弟。実際今の彼はそれどころではない。新たな修行の道、それを否応なしに探さねばならぬという現実を突きつけられたばかりなのだ。だがそう言われても少女の表情は変わらない。
「お望みならば何でもお与えするとの仰せです。金子、食事、修行のために必要なものがあれば全てご用意いたします。あるいは……」
 少女はそう言って元々少し開いていた胸元を広げる。その行動が、彼の怒りの琴線に触れた。
「くどい!」
 怒りに任せた如き槍の一振り。しかしそれは、大きな金属音と共に打ち払われた。
「……今のを払えるのか。皮一枚で止めてやるつもりだったが」
「聞いていたより冷静でいらっしゃるようですね。仕方ありません。共に来ていただければ可能な限り楽に終えるつもりでしたが」
 槍を打ち払った姿勢のまま変わらぬ声で言う少女。服から大きく露出したその足は、脚絆を着けているのではなく完全に金属のそれであった。
 少女が指を均すと、どこに潜んでいたか同じ姿の大勢の少女が現れ笋弟を取り囲む。
「我ら『明道参式』、主命により『明道』にてお相手仕ります」
 一斉に構えを取る少女達。その形は様々で中には戦闘に明らかに不向きなものまであるが、命賭して己が任を完遂する意思は全員に満ち溢れていた。
 猟兵は知っている。彼女たちは意志持つ宝貝であり、下された主命とは若き英傑の息の根を止めていくことだと。
 猟兵よ、今まさに新たな成長の道を掴みかけた若者を守り、彼女たちの任を挫くのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
さて、次は実戦ですねぇ。
始めましょう。

【炳輦】を発動、『防御結界』で笋弟さんを包み共に飛行すると共に、『時空切断の嵐』による攻撃を仕掛けますねぇ。
相手は[空中機動]や[空中戦]等のスキルを100Lvで使える分追っては来れるでしょうが『その為の【UC】』の速度には届きませんし、『空中』『防御結界』という条件下では、使える『仕掛け』は極めて少ないですぅ。
後はその『仕掛け』を笋弟共々『瞬間移動』で回避しつつ『FGS』のみ配置、『重力弾』と『嵐』で叩いて参りますねぇ。
『嵐』を突破して来る個体が居たら、敢えて『中』に入れ、緊急時は此方で助ける想定で笋弟さんのお相手を願いましょう。



 戦う構えを見せたオブリビオンと化した宝貝『明道参式』たち。相手がやる気とあらば笋弟も遠慮はしない。槍を構え集団を迎え撃つ構えを見せる。
「さて、次は実戦ですねぇ。始めましょう」
 その相手に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も来るべき相手が来たと戦いの構えをとった。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
 敵が何かをしてくる前にと、るこるは【豊乳女神の加護・炳輦】を発動。防御結界の中に笋弟を入れ、そのまま空中へと退避した。
「すでに主命は了承されております。参式、追加します」
 そのるこるを、参式たちは増援を呼びつつ飛翔し追いかけた。その飛翔はただの跳躍ではなく自在に空中を駆ける浮遊術。それも極めて速く、正確な追尾で宙を舞うるこるに追いすがっていく。
 だが相手がそうやって追ってくること自体は想定の内。時速一万キロを超える速度でるこるはさらに高く、早く飛び回り参式たちの追撃を回避した。
 それでも追いすがり、防御結界に対し破魔、呪詛の力を当て破壊しようとする参式たち。それらも一端の神仙よりはよほど強力な力であり並の結界ならば容易く破られてしまうであろう。
 その仕掛けに、周囲の空間に真空の刃を放つことで物理的な破壊をかけるるこる。さらにその上で錘型の魔王笏『FGS』を配置、重力弾を放つことで空中の参式たちを叩き落としにかかった。
 全ての技能が強化されている参式に対し、呪術的な能力を物理で破壊し、自身を追える力をそれを超える能力で振り切る。その目論見自体は有効に働き参式たちはるこる、そして笋弟に近づけないでいた。
 だが、当の守られている笋弟は苦い顔をしている。相手の高い能力は分かった。自身の実力がまるで及ばないことも思い知った。だが、まるっきりかばわれ守られていることは、彼にとってはどうしても屈辱を感じざるを得ない状態であった。
 笋弟のその表情を察した参式たちは、そちらに聞こえるよう声をかける。
「やはり、一般の人間とは一線を画する方がいらっしゃる模様で」
「構いません。こういった者を突破すれば人間たる笋弟様も考えを改めるでしょう」
 分かりやすい挑発。だが、元より彼女たちの目的は笋弟なのだ。そちらさえ釣りだせればそれで良いし、ある程度の事前情報は持っているのか彼がどうしても直情家であること、正面の勝負にこだわる性格であることは分かっているのだろう。
「言わせておけば……!」
 その挑発に乗り、結界から出て行こうとする笋弟。彼にとっては残念な話だが、どうしても彼の実力は人間レベル。猟兵にすら通じるレベルまで高まった技能による挑発は、例え分かりやすくとも彼の精神で抗し切れるものではなかった。
 急ぎ斬撃の嵐を起こし参式を黙らせるるこる。その合間をぬって躱す者もいるが、そう言ったものは自ら突進し結界の間を開け、その中に取り込むことで寸前で笋弟の前へと放り込んだ。
「言ってくれたな。俺が守られているだけか見るがいい」
 その参式に対し、己の槍術を持って立ち向かう笋弟。怒りに満ちてはいるが多くの猟兵たちから教えられたことを守ってか、その動きはどこか冷静さが残っている。本来騙し討ちなどの技能も高まっているはずの参式だが、取り込まれたのが一体な上結界の後ろは斬撃の嵐とあっては彼を正面から相手取らざるを得ない。そうなれば前評判通り、集団型である参式一体を笋弟は己の槍捌きで圧倒していく。
 その状態で結界の中オブリビオン相手の実戦稽古を笋弟に取らせつつ、それを妨げそうな他の参式たちをるこるは地に伏させ、嵐に巻き込み切り刻んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

勿体ないわね。
貴方が要らないなら
私が彼女達をいただくわ♥

明道達の色仕掛けに乗るも
捕縛されれば【怪力】で拘束具を壊し
遠距離攻撃には拳圧の【衝撃波】
数の暴力には【地形破壊・範囲攻撃】の地割れ。
目潰しには【第六感・索敵・見切り・カウンター】で対処

貴方が求めていた強さは、これでしょう?
卑怯な相手に卑怯な戦術で対抗する必要は無いの。
そもそも正々堂々やって勝てないから小細工するんだし

あ、ちっぽけな人間には真似できないか。
私は吸血鬼だから。アハハッ!

彼を挑発する事で【鼓舞】しつつ
UCで召喚した霊111人と共に【誘惑・催眠術・ハッキング】で
明道達に御主人様は私だと認識させ【慰め・生命力吸収】



 最初から取り合うつもりがなかったとはいえ、笋弟は参式の誘いを拒絶した。その決定打となったのは、誘いの最後にほのめかした色仕掛けだ。そう言ったことを嫌う理由があるのか定かではないが、ともあれそれに怒りをあらわにし、彼は武器を持って交渉を決裂させた。
 だが一方そう言ったものを好む者もいるわけで。
「勿体ないわね。貴方が要らないなら私が彼女達をいただくわ♥」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はどんとこい、とばかりに参式の前に現れ、彼女たちに迫った。
「またしても。然らばこちらは笋弟様に用いるつもりでしたが、貴女方のような方に用いるには威力不足でしょう。明道は道具を選びません」
 参式たちが取り出した道具を振るうと、それは見る間に形を変えていく。遊興のための扇子は刃の如き縁の鉄扇に、柔らかく音ばかり高そうな鞭は肉を裂き骨を砕く硬い皮鞭に、頭を蕩かす香水は意識を混濁させ四肢をしびれさせる仙薬に。笋弟が誘いに乗ってくれば用いたであろう享楽の道具が戦いのための宝貝へと変じ、それを用いてドゥルールへとかかる。
 その相手に、ドゥルールは一人の参式の広げられた胸元に吸い寄せられるようしなだれかかっていった。
「このままで」
「了解」
 その参式がドゥルールをあえて抱き留め、他の者が手に持った鞭で二人を纏めて戒めた。鞭は強烈な力で引かれ、参式もろともドゥルールをへし折らんばかりに二人を締め上げていく。
「ふんっ!」
 その戒めを、ドゥルールは強引に内部から鞭を引きちぎって解いた。共に絞められた参式の腕に深くひびが入っている所を見るに相当な力であったはずだが、それすらも上回る怪力ということか。
 だが体制が整わぬうち、刃の鉄扇が一斉に投げつけられる。扇は戦輪の如く飛来しドゥルールの体を切り刻まんとするが、それに対してもドゥルールはその怪力の腕を振るい衝撃波を起こし、まるでただの扇であるかのように鉄扇を跳ね返していく。
 さらに舞い散る鉄扇に紛れ飛来する瓶。それはドゥルールの足元で砕け、桃色の粉を舞い上がらせた。人吸いすればそれは意識を溶かし体を痺れさせ、舞い散る粉そのものも視界を閉ざす。その中でドゥルールはあえて目を閉じて息を止め、直感と直前までの敵の動きからその位置を察しての反撃で襲い来る参式たちをなぎ倒した。
 笋弟は知らぬことだが、普段の彼女らしからぬ正統派な武術家じみた戦い方。その流れに感心していた彼に、ドゥルールは向き直って声をかける。
「貴方が求めていた強さは、これでしょう? 卑怯な相手に卑怯な戦術で対抗する必要は無いの。そもそも正々堂々やって勝てないから小細工するんだし」
 知る必要はある。なれど変える必要はない。例え否定されることがあれど己の道を進むドゥルールからの言葉。それに対し頷きかけた時、ドゥルールはわざとらしくその表情を嘲笑へ変えた。
「あ、ちっぽけな人間には真似できないか。私は吸血鬼だから。アハハッ!」
 大声で笑い、笋弟を嘲るドゥルール。彼女を知る者ならやはりこちらの方が本意かと思うだろう。人を憎む彼女が人を鼓舞などするはずないと。現に笋弟は、顔を険しくし槍を力強く握った。
「人を舐めるな……化生!」
 だがその穂先が向かう先はドゥルールではなく参式たち。穂先にて鞭を切り裂き、縦横に振り回される長柄が鉄扇を叩き落とし、そして風車の如く槍を回し舞い散る薬を飛散させる。その域にまで人の身で至ってくれよう、その意志を込めた戦いは、あるいは彼が人の言葉の裏を読めるようになってきた成長の兆しか。
 その姿を見た後、ドゥルールは一体の参式を抱き寄せる。
「死霊術とは不変不朽の美。その真髄は永遠の愛!!」
 【私達の楽園】で呼び出した111体の霊たちと共に、彼女に愛を囁き宝貝としての機能さえ侵し、己が主だと書き換えんとするドゥルール。
 これが己の邁進すべき道なのだと、ドゥルールは己の言を己で示すが如く参式の力を吸い上げていく。
 道そのものは交わるまい。なれど征く姿はこうあるべきと、ドゥルールのオブリビオンに対する愛を彼がそう捉えられるか。それはまだ分からないことだし今愛すべきはこの娘と、ドゥルールは楽園の中に参式を迎えるべくその力を啜るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クライド・エント
「随分と可愛い娘たちだな、俺とも遊んでもらおうかなー」
【ソロ希望】【SPD】
取り敢えず【怪力】【切り込み】でどんどん攻めて、相手の攻撃は【武器受け】で流してく
「力自体は大したこと無さそうだな…」
戦況を優位に進めていることを確信するが、いきなり胸元をはだけて色仕掛けをされると、ついつい動きを止めて食い入るように見てしまう
油断しているところを背後から別の明道参式に抱き締められて、武器も落とし動けなくなってしまう…
色仕掛けに弱いことを見抜かれて、更に正面からも抱き締められキスされて、背後からは甘い囁きで力が抜けてしまう
抵抗しようとしても、柔らかかな感触や囁きでうまくいかず、そのまま流されるままに…



 倒されれど次々と現れる明道参式たち。主命を果たすか全滅するまで、彼女たちが止まることはないのだろう。
「随分と可愛い娘たちだな、俺とも遊んでもらおうかなー」
 その彼女たちの前に、クライド・エント(だらしない海賊・f02121)が現れた。参式たちの姿を見るその目は、一見すれば好色で軽薄そうだ。
「おい、こいつらは……」
 彼をどこかから迷い込んだ者だとでも思ったか、笋弟は彼を止めようとする。が、それよりも早くクライドは彼の脇をすり抜け、バスタードソードで参式に切りかかった。
「おらっ!」
 気合の声とともに振り下ろされる剣を、参式は両手を掲げて受け止めた。宝貝であり生身の肌ではない故に切り裂かれ血が流れることこそないが、その細腕は剣の重さに負けるように徐々に下がっていく。
「あなたは目的ではありません。お下がりください」
 そのままクライドを追い払うように蹴りつける参式。それを剣の柄で器用に打ち払い、一度引いてから再度打ち込みをかけた。
 そのまま連続で相手に切り込んでいくクライド。その動きは力任せで乱雑ながら、それこそが持ち味と言わんばかりに体制を整える暇を与えずどんどん参式を押し込んでいく。
 脇から現れる増援の参式も、肩からぶつかっていくことで強引に跳ね返し自分の攻めを止めさせない。
「力自体は大したこと無さそうだな……」
 相手は様々な道具と作戦こそが持ち味。強引な力比べに持ち込めればそれを封じつつ攻め切ることができそうだ。
 相手を見定め、荒々しい攻めの中でそれを確信に変える戦い方。軽薄な態度の裏に隠されたそれによって優位を取れたことをクライドは確信する。
 そしてその荒い剣が参式の胸元を切り裂いた。
「おおっ!」
 その剣は相手の服を切り裂き、その肌が露になる。恐らく『そういう』手段のためのものでもあるのだろう。その体は一見すれば人間と変わらぬ艶めかしさを持っていた。
 思わず食い入るようにそれに見いるクライド。そうして手を止めてしまったことで、今度は相手に自分を見定める時間を与えてしまった。
「もう一度言います。お下がりください。ただでとは言いません」
 そう言って自ら胸を曝け出す参式。それをついつい動きを止めて食い入るように見てしまったところに、さらには後ろからも別の参式が抱き着いてくる。
「え、あ……」
 最初の軽薄な態度は半分はポーズとしても、もう半分は本気だった。そこを突かれ思わず動けなくなったところに、命令遂行のための非戦闘行為としての色仕掛けで無敵状態となった参式に迫られ、そのまま素早く武器を叩き落とされてしまう。
「逞しいお方ですね。よろしければあちらで」
 後ろの参式が甘く囁き、前の参式が口づける。すっかりそれに骨抜きにされてしまったクライドは、後はもう流されるまま……
「へへ、それじゃ、皆で楽しもうか……」
 結局そのまま戦闘を放棄し、竹林の向こうへ消えていくクライド。だが最後に、他に控える参式にも声をかけていく。
「そっちのかわいこちゃんたちも来てくれよ。皆で楽しもうぜ」
 それは実際心からの言葉だが、同時に少しでも敵を自分の方に連れて行こうとする最後の抵抗。そのままだらしない顔で連れて行かれるクライドを、笋弟は苦々しげに見つめていた。
「ま、お前にゃまだ早い。こうなるなよ、坊主」
 誘惑と快楽に屈した姿を見せることがせめてもの教示になってくれることを祈りつつ、クライドは魅了の底に沈んでいくのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アリス・フォーサイス
意志持つ宝貝か。初めて見たな。

さすがに一人で相手するには数が多そうだね。何人かはこっちで引き受けるよ。

ちびアリスを大量召喚。人流で明道参式を足止めするよ。
「あそぼー。」
「ただ、ながされていくのです?」

さて、意志持つ宝貝、調べさせてもらおうかな。


馬県・義透
『侵す者』に交代済み
武器:黒燭炎

はあ、本当に手段選ばぬのだな、相手は。
なれば…生きる者を守るが、わしらの誓い。

【四天境地・火】よ。炎の狼たちよ、相手を喰らえ。若者を狙うものを最優先でな。
ああ、若者が間に入っても問題はない。何せこの炎、オブリビオンしか燃やさぬし。
延焼は…敵同士なら許容だの。
さっきの戦い、わしは何も見せてはおらぬに入るから、まあ突然の刺突もやろうかの?

それに、内部三人が四天霊障にて結界張っておるからの。簡単には抜けぬよ。



 事前には聞いていた話だが、任務遂行のためならば一切手段を択ばない明道参式たち。味方諸共の攻撃や恥じらいもない色仕掛けなど、効果があると見ればその選びうる選択肢に節操など全くない。
「はあ、本当に手段選ばぬのだな、相手は」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はその姿勢にそう息をついた。その口調から分かる通り、今の彼は最初に笋弟と見えた時と同じ、武の天才である『侵す者』だ。
 まさに主命のためなら自らのあらゆるものを捧げる滅私奉公の心。だがそれは己の意思がない故ではない。主命遂行を至上とする頑なな意思に裏打ちされた、一心不乱に目的を遂行するための頑迷なる柔軟性。
「意志持つ宝貝か。初めて見たな」
 その強すぎる意思を持つ宝貝という稀有なる存在を、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は興味深げに見た。
 だが、他者からの己への興味など明道参式たちにとっては知ったことではない。せいぜいそれを足止めか幻惑に利用できるかどうかといった程度の所だろう。
「それではお相手させていただきます。明道は進みますどこまでも、命令を遂行するまでは」
 参式たちは一斉に進み、笋弟を取り囲もうとする。しかしその歩みは、彼の後ろに控える義透の気迫に押され一旦止まることとなった。
「なれば……生きる者を守るが、わしらの誓い」
 馬県・義透四人の共通する誓いの下、侵す者は己の力にてこの場を侵略せんとその身から炎を立ち上らせる。
「わしに流れていた力よ、形になれ」
 巻き起こる炎。それは戦場を赤に揃える紅輝の魔断狼。炎の狼たちが一面に広がり、その一体を紅蓮に染め上げた。
「【四天境地・火】よ。炎の狼たちよ、相手を喰らえ。若者を狙うものを最優先でな」
 それは一見すれば竹林に炎を放つという暴挙。竹林全てに炎が回れば確かに逃げ場のない攻撃になろうが、もしそれに笋弟が巻き込まれ焼け死ぬことにでもなればそれこそ参式たちの目的は達される。その為ならば彼女たちは喜んで炎に巻かれるだろう。
「ああ、若者が間に入っても問題はない。何せこの炎、オブリビオンしか燃やさぬし。延焼は……敵同士なら許容だの」
 そして武の天才がそれを考えていないはずがなかった。この炎はオブリビオンだけを焼く炎。人も、猟兵も、竹林も燃やすことなく参式たちだけに燃え移っていく。
 己の体が燃えること自体は構わないが、それで任務を失敗することは許容できない。参式たちは燃える体を押し、笋弟へと近づいた。
「その槍でこの炎に近しいものが産めましょうか。その秘術、我らがお教えしましょう」
 笋弟に縋り説得を始める参式たち。それと同時に炎に炙られるその身への延焼が止まる。戦闘によらぬ手段に訴え始めたことで、それ以上のダメージが遮断されたのだ。
「今更そんな戯言聞くと思うか!」
 槍を振ってそれを拒絶する笋弟。今度は止めるつもりのない振り払いだが、その槍が直撃してなお傷のついた様子はまだ見えない。
「さすがに一人で相手するには数が多そうだね。何人かはこっちで引き受けるよ。いでよ! ぼくの分身!」
 このままでは埒が明かない。アリスはまずは敵を分断するべく【アリスの世界】で自身の分身ちびアリスを大量に召喚した。
「お好きなように。相手にしていられません」
 そのちびアリスたちに、参式は無視を決め込む。どうせ何をされようと攻撃は受け付けないのだ。むしろ相手にしてしまえばその無敵も切れてしまう。
 それが分かっているのか、ちびアリスたちは攻撃するのではなくまとわりついてゆっくりと参式たちを押し始めた。
「あそぼー」
「ただ、ながされていくのです?」
 まとわりつき、相手に対して延々と話しかけ、そしてゆっくりと相手を押して笋弟から離そうとする。殺傷能力など一切ないが、とにかく煩わしい行動で相手のしたいことを邪魔するちびアリスたちに参式たちも焦れ始める。
 そしてとうとう無視できないところまで来たか、ついに参式たちは持っていた扇を巨大化させ突風を巻き起こし、炎とちびアリスをなぎ払いにかかった。
「仕方なし……落ち着いてからまたお話ししましょう」
 宝貝となった扇の風は炎を消し、ちびアリスを次々吹き飛ばしていく。笋弟も顔を抑え身を低くして吹き飛ばされぬよう耐えるが、参式の狙いはその後ろにいる義透だ。
「あなたも吹き飛んで……」
 近距離とはいえ徒手では届かぬ位置からの暴風を放ち、義透を遠くへ飛ばそうと大きく扇を振りかぶる参式。その扇が振り下ろされるその瞬間。
「さっきは見せられなかったが、これがわしのやり方よ」
 一瞬のうちに突き出された黒き槍『黒燭炎』が、その参式の胸を貫いた。まるで早撃ちの如き突然の刺突。それを槍でやってのけるこの姿こそが、武の天才侵す者の真骨頂であった。
「動如雷霆、見事……!」
 その動きを笋弟は素直に賞賛する。自身と手合わせした時から見せなかったそれをここ一番で放つ。その札の切り方もまた己の学ぶべきことととったのだろう。
「さて、意志持つ宝貝、調べさせてもらおうかな」
 そして無敵の切れた他の参式に、生き残ったちびアリスたちが一斉に纏わりつく。今度は本気の、内部機構まで抉りださんとする全力の群がりだ。
「見ているだけか? 若者よ」
 敵の足並みが乱れた今が好機。統制の取れた軍団戦では一つの崩れから瓦解が始まると、試合でない戦における一気呵成を支持する義透。それに応えるように、笋弟は参式の間を鋭く動き、次々と彼女たちを突き倒していった。
「それに、内部三人が四天霊障にて結界張っておるからの。簡単には抜けぬよ」
 無論攻勢とて守りを捨てるわけではない。他の三人が無念の霊障を守りの力と変え、己や守るべきものを守っているのだ。そして守りがあるが故、多量のちびアリスたちも参式の反撃に散らしきられることなく彼女たちを抑え込んでいき、そして動けぬうちに参式は炎にまた焼かれていく。
 なりふり構わぬ手すらも貫き、砕いた戦い。この一戦にて何を学び、見せられたか。それはそれぞれの胸の内にあるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ホーク・スターゲイザー
アドリブ・絡みOK

相手の行動を第六感で予測し伝える。
「……その主の処に行けばいいんだな?」
誘いに乗る様に話す。
「さすがに戦意の無い相手を攻撃するのはあれだろ?」
考えがあるとウインクで教える。
服に隠した失楽園を抜ける状態で様子を伺い、危険だと直感すれば武器で守り、両者を離す。
「主とやらに連れて行ったとして、首を取らないとでも?」
誘いに乗り、無防備になったところを仕留める術も兵法。
戦闘になってもアシストしつつ失楽園による二刀流、六天道子の祀器を三又槍に形成して念動力で操り、なぎ払い等の攻撃を行う。
「人ではない。これらもその主も」
敵であると話す。



 何度倒しても、明道参式は尽きることなく現れる。主命を受けたからには最後の一人までかかってくるつもりなのだろう。元より集団系オブリビオンには全滅するまで進軍を止めないものは少なくないが、彼女たちはその中でもとりわけ意志が固く自らの身も顧みない部類に入るのは間違いあるまい。
 無論、相手がオブリビオンである以上最終的には相手を滅さねばならないのは変わりないことだが、相手は効果があると見ればどんな手でも用いてくる。それは直接交戦のみならず、籠絡や誘惑といった戦闘を伴わない方法も含まれている。言い換えれば、効果があるなら『疲れない』手段を取らせることもできるのだ。
 それを察したホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)は敵が全滅するまで戦うつもりであろう笋弟を制し、一歩彼女たちに向かい踏み出した。
「……その主の処に行けばいいんだな?」
 相手の意思を確認するように言うホーク。それに対し笋弟をは目を見開くが、ホークは彼に素早く目配せする。
「さすがに戦意の無い相手を攻撃するのはあれだろ?」
 そう言って片目をつぶるホーク。さっき教えたことを思い出せ。その意を込めたその仕草は、笋弟に冷静さを取り戻させる。
「……いいだろう。だが俺の気は変わらない。その主とやらに直接断りを入れてやる」
 この言い方が恐らく嘘の苦手な彼なりの精一杯。だがここでいきなり誘いを承諾するのも不自然であり、自分より強い者に説得されて不承不承という風にも見せるこの姿勢の方がある意味彼らしく自然な格好にもなっていた。
「構いません。主のお話を聞けばきっとお考えも変わるでしょう」
 その姿勢に、あっさりと戦闘の構えを解く参式。元より目的は笋弟を誘い出し殺すことである。それさえ達せられるならここまで仲間を倒されてきたことへの遺恨などあるはずもない。
 そしてそこから離れ、二人を先導するよう歩き出す参式たち。やがてしばし行ったところでホークへと声をかける。
「申し訳ありませんがお連れ様はここでお待ちください。その間の饗応は我らが」
 分断するつもりなのだろう。一人が笋弟を連れて離れようとし、他の参式たちがホークをもてなすかのように彼にしなだれかかる。
 そうして案内役の参式が背を向けた時、いつでも抜けるよう服に隠していた『失楽園』を抜き打ちにし、ホークがその女の背を貫いた。
「主とやらに連れて行ったとして、首を取らないとでも?」
 武器を戻し、饗応役であった参式も続けざまに刺し貫くホーク。一度先頭を止めた状態だったことで参式たちの陣形は伸び切り、細かな連携を取るには不向きな位置取りとなっている。
 誘いに乗り、無防備になったところを仕留める術も兵法と、その姿を持って彼は笋弟に教える。
「かような卑劣な戦術、武林一の英傑たるあなたが真似ようというのですか」
 参式は笋弟にそう問いかけ、同時に非戦闘行為によるダメージ遮断も試みるが、笋弟はそれを鼻を鳴らし一蹴する。
「そうしなければ俺は死ぬ。ここにいる者たちとお前らが嫌という程教えてくれた」
 武林一、それはもう彼にとってはおだてにすらならない言葉だ。あるいはその名こそが彼の頭の上に被っていた土のようなものであったのかもしれない。
 言葉が通じないとあれば無敵を解いてでも実力行使しかない。だがそう動き出した瞬間、アシストの機械を窺っていたホークの『六天道子の祀器』の三叉槍が彼女を貫き、二刀流で振るわれた失楽園が割り込もうとした参式を切り捨てていく。
 それでも増援がすぐに駆け付けてくるが、既に一度解かれた囲み、到着する順が乱れていれば笋弟でも順にそれを討っていけるし、ましてやホークならば少人数で連なってきた者でも纏めてなぎ払える。
 やがて増援も一旦止まり、その場には動かなくなった参式が何体も転がった。
「人ではない。これらもその主も」
 血の一滴も流さぬ彼女たちが人はもちろん神仙の類ですらないのは見ればわかること。だが彼女たちを遣わした主もまた人ならぬ恐ろしき存在であり、それが明確に彼の命を狙う敵となっているのだという事実。
 修行ではない、手など選べぬ『本番』が既にその身に降りかかっているのだということを、ホークは若き英傑に教えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「ふむ。私も他仙の作る宝貝には興味があります。出でよ、黄巾力士・金行軍」

109体の黄巾力士召喚
108体を3隊に分け
1隊は実体弾、1隊はレーザーで鎧無視・無差別攻撃で蹂躙開始
残りの1隊にオーラ防御で攻撃する2隊を庇わせる
残した1体は、いざという時笋弟をオーラ防御で庇うよう命じる
自分は元々連れていた黄巾力士に庇わせ竜脈使い黄巾力士の継戦能力高める

「例え攻撃能力が上がろうと、こちらも竜脈の力を引き出して強化を行っているのです。そう簡単に押し負けると思われては困ります」
合間には雷公鞭振るい敵を雷属性で攻撃

「貴方より弱かろうと、貴方の命を望む者はいるわけですが。命を刈る強さはお持ちですか、笋弟さん」



 死して骸の海に落ち、そこから世界を破壊する意思に染められて現世に舞い戻った者、それがオブリビオンである。悪人がそうなりやすいという傾向はややあるものの、中にはヒーローなどの善人や悪意でなく哀しみを抱いて死んだ者、動物や植物など強い自我や知性を持たない存在もオブリビオン化することは少なくない。
 だがそう言った多種多様に存在するオブリビオンの中でも、今回の敵である明道参式は封神武侠界の法具宝貝がオブリビオン化したという稀なケースである。
 クロムキャバリアのオブリビオンマシンならいざ知らず、そのような稀有な存在に鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は興味を示す。
「ふむ。私も他仙の作る宝貝には興味があります。出でよ、黄巾力士・金行軍」
 意思を持ち、オブリビオンとなるまでに至った宝貝。その出来具合はいかばかりか。冬季は【黄巾力士・五行軍】にて黄巾力士たちを109体召喚、その内の108体を36体ずつ三つの隊に分け参式たちの前に布陣させた。
「今までになく多いですね。こちらも残る我ら全てを投入しましょう。最後の一体が主命を完遂できればそれで我々の勝利です」
 一気に100を超える参式たちがその場に現れた。恐らくこれが全ての参式、ここで総力戦をかけ何としても目的を達成するつもりなのだろう。
 その参式たちを、黄巾力士たちの2隊が射撃で迎え撃った。1隊は実体弾、1隊はレーザーとそれぞれ属性の違う射撃を撃ちかけ、均一な手段で防御できないよう交差射撃をかけていく。
 参式たちの一部は防御が間に合わず打ち倒されていくが、レーザーに対し高熱耐性、実弾に対し見切りやオーラ防御といった適切な防御が間に合ったものはそこからの反撃として攻勢に出る。
 だが広がって射撃をする2隊の間に待機していた残り1隊が、一斉にオーラ防御を展開しその進軍を阻んだ。36体がそれぞれのオーラを繋ぎ合わせるように広く展開することで、まるでそれは全体を包む防壁のようになり他2隊を包んでそちらへの敵の進撃を許さない。
「一人でも、突破すれば……!」
 参式の何人かは捨て身の勢いでオーラにぶつかっていき、それを無理矢理にでもこじ開けようとする。そうして開いた僅かな隙間から後続が乗り込んでいこうとするが、そこに実弾やレーザーが次々と浴びせられ次々と入ろうとしたものが倒されて行った。
 そうして多くの参式が倒れる。だが、射撃の嵐が僅かに緩んだ時、最後に残った数体の参式が一気に突破をかけてきた。先に倒された者たちは全て最後の一体をかばうための捨て駒、それを盾に死攻撃能力に特化させた彼女たちが突撃し笋弟の命を取る、その算段であったのだ。
「例え攻撃能力が上がろうと、こちらも竜脈の力を引き出して強化を行っているのです。そう簡単に押し負けると思われては困ります」
 ついに黄巾力士たちを乗り越えた参式だが、それは冬季が振るった雷公鞭の雷によって結局は進むことを阻まれた。彼はただ後ろで指揮しているだけではない。敵を鏖殺するため打ちえる一手を打つべく備える、前線にいる仙の者なのだ。
 その雷によってほぼすべての参式は倒れた。だが、最後、たった一人残った者が歪んだ足、焦げた体を無理矢理動かして笋弟にその拳を突き出した。
 そしてその手は大きな音を立てて当たる。ただ一体、笋弟の護衛に回っていた黄巾力士の作ったオーラの壁に。
 弾かれ拳は砕け、そのままぐらりと倒れていく最後の参式。
「我ら……明道は……主命を……」
 言い切ることなくその体は地に倒れ、そして粉々に砕け散った。
 敵味方双方が100を超える、最早小規模な戦とも言えるような一戦。人を、数を動かす真なる強さの中何もできなかった己の手を、笋弟は呆然と見つめる。
「貴方より弱かろうと、貴方の命を望む者はいるわけですが。命を刈る強さはお持ちですか、笋弟さん」
 今、ここに来た相手そのものは命持たぬ絡繰人形のような存在であった。だが、その目的は笋弟の命を奪うことであり、それを命じた存在が確かにいる。そしてそう言った者の命を絶たねば、戦いは終わることはない。
 強さ、武力の結局の行きつく果ててである命の奪い合い。真に強さを求めるなら必然にそこに至る覚悟を決める必要が出てくる。そしてその残酷な世界に踏み込まねばならぬときが、すぐそこまで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『私服を肥やす奸臣達』

POW   :    御馳走を食わせるから…み、見逃してくれぇ…!
【今までに口にしてきた豪勢な食事】を給仕している間、戦場にいる今までに口にしてきた豪勢な食事を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD   :    金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【不正により懐に蓄えてきた財産】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    協力すればどんな願いも叶える!儂の命だけでも…!
【自身を助けたくなるような魅力的な条件】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
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 猟兵たちによって、オブリビオン化した宝貝『明道参式』たちは全て破壊された。
 その骸が消えゆく中、何人かの男が姿を見せる。
「こ、これはこれは……なんとお強い方々でございましょう。いやはや全く御見それしまして……」
 骸骨の如くやせ細った者、逆に豚の如く肥え太った者、猜疑に満ちた目で相手を睨め上げる者。着ている衣は上物だが、その外見はいずれも醜悪だ。
「お前たちがあの女どもを遣わせたのか」
 男たちに槍を向ける笋弟。幾度となく主命と口にした彼女たちの後に現れたのだ、彼らがその主だろうということは誰でも疑う所である。
「い、いやはやその、あれはそのあの娘たちが勝手にその……」
「そんな話信じると思うか。……思われていたかもな。数刻前の俺なら」
 自嘲気味に呟く笋弟。
「ど、どうかお見逃しを! これはほんの迷惑料にございまして……そ、そうだ、お腹はお空きではありませんか!? もしお望みならもっといい女もいくらでも……」
 どこから出したか金銀や豪華な料理を見せ、見苦しく許しを請う男たち。彼らを心底軽蔑し切った目で笋弟は見るが、その目は見通せているだろうか。男たちの下劣な言動、卑しい目の奥にある暗く冷たい真の悪意を。
 彼らは悪行の果てオブリビオンと化した『私服を肥やす奸臣達』。世界の破壊を目的に書き換えられた彼らの懇願を受け入れたものは、その懐に飲んだ小さな刃でその喉を掻かれることになるのだ。
 猟兵よ、捨て置けぬ巨悪の一部と化した奸臣たちを、実直なる若者と共に誅するのだ!
鳴上・冬季
「笋弟さん。あれは貴方より弱くて強かで、貴方より強い者達ですが。ご自分で打ち倒せますか」

「貴方に1つだけ助言しましょう。彼らの話を聞いてはいけない。どんな興味を持とうとも。多分貴方は守れないでしょうが」
嗤う

「蹂躙せよ、黄巾力士」
黄巾力士に敵の上を飛来椅で低空飛行させソニックウェーブの無差別攻撃
自分は少し離れた上空から八卦天雷陣書き笋弟の様子を見ながらUC発動
敵が黒焦げになって消滅するまで使用予定だが笋弟が敵に屠られそうなら中断
功夫と仙術で縮地し笋弟掴んで一気に上空へ

「道の石を蹴り飛ばす以上の意味などないのですよ、貴方と彼らには。そして策と言葉は戦う前に済ますものです。今は殲滅のみに注力なさい」



 見苦しい動作で許しを請い諂いを見せる奸臣たち。その姿を笋弟は汚らわしい者でも見るような眼で見ていた。
 だが、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の彼らを見る目はまた違う。
「笋弟さん。あれは貴方より弱くて強かで、貴方より強い者達ですが。ご自分で打ち倒せますか」
 そう言って彼は嗤う。
「見るからにさっきの女たちより弱いだろう。近くに伏せている兵もいない」
 冬季が教えた強さ。兵力、財力、物量。確かにそれを動かす力は持っていそうに見えるが、それが役に立つのは弓を射ち槍を合わせるそれより前の事。その準備のないままに前に引き出された彼らを打ち倒すなど造作もない。そう考え笋弟は槍を彼らに向ける。
「貴方に1つだけ助言しましょう。彼らの話を聞いてはいけない。どんな興味を持とうとも。多分貴方は守れないでしょうが」
「興味など持つはずもない」
 如何な条件を出されようと甘言には乗らぬ。その意思とともに笋弟は油断なく槍を構え、奸臣たちへと近寄っていった。その姿を見て、冬季はただ嗤っていた。
「ど、どうかお見逃しを……命だけでも……!」
 震えながら命乞いする奸臣。
「わ、儂に用意できるものなら何でも用意します。ここよりさらに大きな武林を知っておりますし、今よりずっと良い槍、良い暮らしを……!」
 地に頭を擦り付け、ひたすら様々な条件を出しては許しを請う。その姿を汚らわしいものを見るような眼で見て、笋弟は槍を握りしめた。
「かような輩……刺しても槍が汚れるだけだ……」
 最早殺す気も失せた。相手にしたくもない。槍を握る手から力が抜けていく。
 その時。
「蹂躙せよ、黄巾力士」
 笋弟の頭を飛び越え、黄巾力士が飛来し奸臣に向けて衝撃波を放った。ソニックウェーブが直撃し、奸臣は仰向けに転がって笋弟から離れる。
「な……!」
 突然の攻撃に笋弟は一瞬あっけにとられ、そしてすぐに槍を握り直した。
「既に貴様は我が陣の中。野鼠の如く逃げ惑え……八卦天雷陣」
 その様子を見ながら、冬季は【八卦天雷陣・青天の霹靂】を使用する。既に攻撃を受けていた奸臣に雷が落ち、その体を燃え上がらせた。
「ひっ、ひぃぃ……!」
 さらにそのまま連続で雷が落ち、奸臣の体を焦がしていく。一撃落ちるたびに奸臣の体が跳ねるが、やがてそれすらもなくなった。
「言ったでしょう。興味を持つなと」
 離れた場所にいたはずの冬季が、笋弟の真後ろで声をかける。万一彼に何かあればそのまま空中へと連れ去り退避させるつもりだったが、その必要すらもなかった故に縮地にて後ろを取るのみにとどめたのだ。
「俺は興味など……」
「ならなぜ何も聞かず一突きにしなかったので?」
 そういわれて笋弟ははっとする。命乞いに呆れ、彼は殺す気すら失せていた。それは言い換えれば助命を受け入れていたということ。無意識に相手の願いを了承してしまっていた笋弟。あの見苦しい姿、それそのものが奸臣の策であり、ユーベルコードだったということだ。そしてその先に何があったかは、消し炭と化した奸臣の傍らに転がる短刀が示していた。
「道の石を蹴り飛ばす以上の意味などないのですよ、貴方と彼らには。そして策と言葉は戦う前に済ますものです。今は殲滅のみに注力なさい」
 ただ応じる、それすらが失策となることすらあるのが戦というもの。一度切ると決めたら一切心を裂かず無心になるべきである。彼はそうすべき敵に狙われてしまっているのだ。そしてこれから、その敵は否応なしにこの世界に跳梁していくことになる。人と、仙と、そしてオブリビオンとの戦はいかにあるべきかを、冬季は彼に三度にわたって教えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
お食事は魅力的ですが、置いておきまして。
まずは対処しますすねぇ。

『FMS』のバリアを展開、私と笋弟さんの全周囲を覆う様に配置しますぅ。
これで『速度』は遅くなっても、彼らはまず手出し出来ません。
その上で笋弟さんとお話を。

「『正攻法』『変則手』問わず、様々な戦い方が有る環境への対応法の一つは、自らの戦い方に引き込む事」
「その為にも様々な情報を得、また相手に情報を与えない事」

そう告げて【燦華】を発動、全身を『光』に変えて光速の斬撃で[範囲攻撃]、奸臣達を切裂きますねぇ。

そして最後に一言、微笑みつつ「私の手の内が、これで全てだと思います?」
結局『F●S』の大部分は不使用ですし?



「ひぃぃ……ど、どうか……ご馳走を差し上げますから、お見逃しをぉ……」
 一人が打ち倒されたことでより恐怖を増したが如く、ひきつった顔で大量の中華料理を並べていく肥え太った奸臣。どこから出したかは分からないが大量かつ上等なその料理を見つつ、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が笋弟に並ぶ。
「お食事は魅力的ですが、置いておきまして。まずは対処しますすねぇ」
 その大量の料理に心ひかれつつも、るこるは円盤『FMS』を周囲に配置。自分と笋弟をバリアで囲み奸臣から隔離した。
「さて笋弟さん。『正攻法』『変則手』問わず、様々な戦い方が有る環境への対応法の一つは、自らの戦い方に引き込む事」
 その状態で、るこるは敵への攻撃ではなくまず笋弟に対しての話を始めた。
 笋弟は自身のフィールドに置いては間違いなく強い。だが、そんな相手に対してわざわざ土俵に上がっていく正直者などいないのだ。
 ならば自分から相手に合わせ変幻自在に戦い方を変えるべきなのか。もちろんそれを得意とする者もいるが、笋弟はそういうタイプではないし、何より彼のいままで鍛えてきた技を活かさないのは勿体ないというものだ。
「あれが一騎打ちを申し込んで受けるようには見えないが」
 いかに戦に置いて相手にも無意識に正道を求めてしまう笋弟とはいえ、そもそも戦いそのものに向かない、拒絶する者がいることは知っている。そしてそう言った者であれ『敵』となり得るということは、奇しくもあの奸臣たちの登場で分かっていることだ。
「そうですねぇ。普通にお願いしてもだめでしょうねぇ。ですので、そうせざるを得ない状況に持ち込むところからですねぇ」
 もちろんそれは相対してからの即興で簡単にできることではない。戦いとは戦う前から始まっている。そう言うことでもあるのだ。
「その為にも様々な情報を得、また相手に情報を与えない事」
 猟兵にはグリモア猟兵の予知という絶対的優位はもちろんあるが、それがなくとも相手の評判や風聞、過去の戦いの履歴などから情報を仕入れ、戦前戦中にどのように動きどのような戦法を好むかを知るのは軍隊、個人双方の戦いにおいて非常に重要である。
 もちろんそれは相手にとっても同じこと。それ故に自身の情報は徹底的に秘匿し、時には誤った情報さえ流すことで相手を見誤らせる。笋弟は当然知らぬことだが、ある天下無双と呼ばれる侍もその無双を支えたのは情報戦だったと言われるくらいだ。
 敵前で笋弟に説くるこる。この会話は、常の5分の1の速度で行われていた。奸臣たちが出した料理は楽しまぬものの速度を下げるユーベルコード製のもの。その効果範囲の中でこのような話をしていれば、当然ながらその効果はもろに受けることになる。
 だが、奸臣たちは話を遮ることはない。意図してしないのではない。ただできないのだ。るこるは先にバリアを張って自分と笋弟に防御を纏った。奸臣たちの直接の戦闘力は集団型としても下の部類。この防御を破る力などないことは分かり切っていたのだ。
 先にそれを知っていたからこそ、ユーベルコードではない装備を用いるだけで安全を確保できた。言葉のみならず実例を伴う教えが、情報戦の大切さを笋弟に伝えていた。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 伝えるべきは伝えた。るこるは【豊乳女神の加護・燦華】を発動し、高速での体当たりで奸臣の肥えた体を切り刻む。
「ぶひいぃぃぃぃぃぃ!?」
 例え5分の1だろうと元が光の速さ。上位のオブリビオンならそれに対応してくる者もいるが、身体能力の低い奸臣にそんな真似ができようはずもない。的の大きいその体を切り裂かれ、あっけなくその奸臣はその場に倒れた。
 敵が倒れたのを確認し、るこるは光から戻り微笑みながら一言告げる。
「私の手の内が、これで全てだと思います?」
「……違うのだろうな。そう聞くということは」
 実際彼女は浮遊兵装の大部分を一度も見せていない。敵を騙すにはまず味方から。言葉だけでないその姿勢に笋弟は彼女と一戦し敗北したかのような心持ちで答えた。
 なれど、この負けは彼の糧となる。この襲撃の一応の首謀者である奸臣の存在さえ、るこるは若き英傑の修行の一助としたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
 へえ、面白いユーベルコードを使うね。学ばせてもらおうかな。

 ぼくが望むのはハッピーエンド。手伝ってもらえるかな?見逃す?そうだね、その方が美味しそうなら、そうするよ。

 ところでさ、最近、若き英傑が次々と襲われてるんだって。それをハッピーエンドにするにはどうしたらいいと思う?
 違うね。正解は、黒幕を倒すことだよ、そう、キミたちをね。きっと手伝ってね。

 相手のメリットをちらつかせながら、自分の除く方向に持っていく。こんな感じかな?


ホーク・スターゲイザー
アドリブ・絡みOK

「金か……」
少し考える素振りを見せて返す。
「全財産、それで考える」
全財産と命を秤に掛けさせる。一銭残らず出すという事も付け足す。
「助けると約束した覚えはない」
呼び出すのは青紫色の肌に四本の腕、白い蛇を首に巻いた破壊と再生を齎す炎の聖霊、シヴァ。
「清き業火に撒かれよ!」
三又槍を振い炎による攻撃を繰り出す。
「忌むべき悪よ、燃え尽きよ!」
額の目から光線を撃ったりする。
「人の子よ、何故強さを求める?」
人の営みに興味を抱く故に問う。
「強き願いは奇跡を呼ぶ。真に想う願いは我すら救えぬと思った瘴気を浄化する力を我に与えた」
可能性を信じる故に言葉をかける。



 すでに二人、奸臣たちは倒された。仲間が倒されたことに臆したように残りのものもへたりこんでいる。
「な、なんでも、いくらで差し上げます故! 儂らも所詮はただの役人、国主様には逆らえませんのです!」
 そこら中に金銀をばらまきながら命乞いするやせ細った奸臣。またそれに従うようにもう一人の若い奸臣も、懸命に頭を下げている。
 今回の事件の直接の首謀者が彼らだというのは分かっている。もちろん同様の事件が各地で起こっている以上それも大きな動きの一つには過ぎないのだが、いもしない上役を出してそこに責任を擦り付けようとするのはある種彼らに相応しい浅ましい動きだ。
 そうしてぶちまけられた金銭を、ホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)はじっと見る。
「金か……」
 その様子は、まるでその条件に惹かれているようにも見える。だが笋弟は彼を止めようとはしない。彼が二度笋弟に教えた『敵の誘いに乗る』。それを正に実践しているのだとそれを察しているのだ。
「全財産、それで考える」
 普通なら拒絶の意を示すために表す無茶な条件。だが、その条件に奸臣はがくがくと頷く。
「は、はい……全て捧げさせていただきます!」
 見る間に奸臣の持つ金が消えていく。その量を見て、ホークは頷いた。
「いい心がけだ。俺は約束を違えん。お前を殺すことはしない」
「は、はい……」
 そうして奸臣は平伏しながら下がる。
 この金銭の消滅は彼のユーベルコード。これが消えたということは彼の行動は一つは絶対に成功するということだ。実際、ホークは隙だらけで下がる彼に追撃はしない。
「へえ、面白いユーベルコードを使うね。学ばせてもらおうかな」
 その様子を見て、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)が興味深げにつぶやいた。ユーベルコード、という言葉に若い方の奸臣がびくりと震える。
「い、いやその、も、もちろん金子だけではありません。土地や官位など我々が用意できるものなら何でも……」
 どうにか話をすり替え誤魔化そうとする若い奸臣。それにアリスは笑顔のまま答える。
「ぼくが望むのはハッピーエンド。手伝ってもらえるかな? 見逃す? そうだね、その方が美味しそうなら、そうするよ」
「はい、はい! 何なりと!」
 アリスが望むのは『美味しい』話を聞くこと。元よりその為なら手段を選ばない。己の望むハッピーエンドの条件についていろいろ考えるアリス。
 一見すれば奸臣の思う通りに交渉が進んでいるようにも見えるこの状況。だが、その裏ではむしろ猟兵の方にこそ準備は整っていた。
「力を貸してくれ」
 ホークの傍らに青紫色の肌に四本の腕、白い蛇を首に巻いた破壊と再生を齎す炎の聖霊、シヴァが現れた。
「ひっ!?」
 突然現れた物騒な存在に奸臣はひきつった声を上げる。
「俺はお前を殺さない。だが他の者はどうか?」
 言ってしまえば屁理屈だ。だが、絶対成功のユーベルコードであっても成功の範囲は様々である。果たして奸臣が失った財産で、本当に猟兵全てから殺されないという広範の成功を成り立たせられるだろうか。
「ところでさ、最近、若き英傑が次々と襲われてるんだって。それをハッピーエンドにするにはどうしたらいいと思う?」
 それを見ながら、アリスも若い奸臣に問う。
「そ、それは……その英傑殿を安全な場所へ退避させる、とか……」
 その為の場所を用意しましょう。そう言おうとした口は、しかし別の言葉でふさがれた。
「違うね。正解は、黒幕を倒すことだよ、そう、キミたちをね。きっと手伝ってね」
 そこに乗せられるのは【能力解析】で跳ね返された、友好反応を起こす奸臣のユーベルコード。
「忌むべき悪よ、燃え尽きよ!」
 それ故に、シヴァが振るう三又槍、放つ光線を止めに行くことはなく、ただ嬲らせるままだ。
 それでも、ホークが召喚した存在故にかその苛烈な攻撃でも老いた奸臣はまだ生きている。そしてそれも承知の上とホークは笋弟に目配せし、即座にそれに応じた槍が奸臣の胸を貫いた。
「俺はお前を殺さない。俺は、お前をな」
 その言葉と共にシヴァとホークの攻撃が、一瞬にして若い方の奸臣をも屠り去った。彼の力の及ぶところはアリスのみ。仲間と連携すれば、安い誤魔化しなど簡単に乗り越えられるのだ。
「相手のメリットをちらつかせながら、自分の望む方向に持っていく。こんな感じかな?」
 今のが相手の話に乗りつつ最後は自分の都合のいい結果に誘導する戦いの実践だと、笋弟に告げるアリス。
「人の子よ、何故強さを求める?」
 そしてホークではなくシヴァからの笋弟への問い。
「……俺は、人の限界を認めたくない。人が神仙に劣るという考えを打ち払いたい。人界の技が天界の秘術に劣らぬと示したい。人は強いと、この中華全てに知らしめたいのだ」
「強き願いは奇跡を呼ぶ。真に想う願いは我すら救えぬと思った瘴気を浄化する力を我に与えた」
 強き願いは不可能を可能にする。もちろん願うだけでは何も変わらないし、意志が強いのと頑迷なのはまた違う。
 それでも、多くの猟兵から教えを受けた彼ならと、ホークとアリスは彼の先の物語を思うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
黒燭炎の炎は成長している…

はあ、わかりやすすぎる輩であるの。
それに引き替え…ふふ、若人の成長はよいものよ!

ところで。わしに対する魅力的な条件とはなんであろうの?
ま、確かに武を振るう場所というはそうではあるのだが。

残念だがの、それは『わし一人』に対する条件であるし、何より『わしら』はオブリビオンが嫌いなのでな。
狼たちよ、いくがよい。この数多くの狼たちも、オブリビオン嫌いなれば。

そして…陰海月と霹靂よ。陰と雷の名を持つ二匹の友よ、下から急襲せよ。
わしは真っ直ぐに突くゆえに。


陰海月「ぷきゅ」
霹靂「クエッ」
二匹は友だち。『難知如陰』と『動如雷霆』司る生者。



 多くの猟兵たちに己の見識の狭さや、戦いというものの及ぶ範囲の広さについて教えられた笋弟。彼は間違いなくこの短い時間で成長していたが、何も成長するのは若者、未熟者だけの特権ではない。
「黒燭炎の炎は成長している……」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一人、『侵す者』は己の愛槍を見てそう呟いた。
 無限に成長する電流を受け一度は砕かれたその槍は、甦った時成長し続ける炎をその身に宿した。その炎が先の戦いから明らかに成長している。あるいはそれを用いる己もまた。
 そして前を見れば、まさにその成長の芽を摘むことを目的とした浅ましき者どもの姿が。
「はあ、わかりやすすぎる輩であるの」
 今時物語でも出てこないような、俗欲にまみれた醜い悪徳役人。恐らく生前から立場を利用し私欲を貪っていただろう彼らは、むしろオブリビオン化し世界に敵する今の方がまだ目的だけなら純粋とすら言えるかもしれない。
「それに引き替え……ふふ、若人の成長はよいものよ!」
 一方隣に目を移せば、未熟ながら教えれば根が水を吸うようにそれを吸収し、どこまでも伸び行く若者の姿が。
 なれば、その未来を阻む者は廃せねばなるまい。燃える槍を手にする義透の前に、最後に生き残った奸臣が縮こまる。
「ど、どのような命にも従いまする。命さえ助けて頂ければ他に何も望みませぬ!」
 相変わらずの命乞い。他の者がそれをして聞き入れられなかったのを見ていなかったわけではあるまい。
 なれど、命中する、つまりただ聞かせるだけで相手から友好的な反応を引き出せるとっておきとも言える技がある。最後の奸臣はそれを持って義透の籠絡を図った。
「ところで。わしに対する魅力的な条件とはなんであろうの?」
 それが命中したことを示すかのように、義透は相手に自身に何を差し出すかを尋ねた。
「見れば貴方様も武門の方。そちらの英傑様ともども存分に武を振るえる場所を……」
 それは明道参式たちが最初に笋弟を誘うときに出したのと似たような条件。その時はただの誘い故に容易に跳ね返すことができたが、今はその魅力に寄って相手の無意識を操作するユーベルコードだ。一度その術中に嵌りかけた笋弟は慌てて義透を止めようとする。
「聞くな、こいつは……!」
「ま、確かに武を振るう場所というはそうではあるのだが」
 鷹揚に頷く義透。だが、それはただ頷いただけ。
「残念だがの、それは『わし一人』に対する条件であるし、何より『わしら』はオブリビオンが嫌いなのでな」
 義透の周囲に炎が灯り、それが狼の形を成した。
「わしに流れていた力よ、形になれ」
 オブリビオンのみを焼く、【四天境地・火】の魔断狼たち。それは瞬く間に竹林をかけ、奸臣たちを取り巻いた。
 例え一人が魅力的な条件で動きを止められようと、義透には中からそれを蹴り飛ばしてくれる嗜好も思考も違う三人がいる。そして四人が四人ともが、オブリビオンという存在を激しく呪い、嫌っているのだ。
「狼たちよ、いくがよい。この数多くの狼たちも、オブリビオン嫌いなれば」
 炎の狼たちが容赦なく奸臣を喰らっていく。その炎は怒りによって敵を侵略するが如し。
「そして……陰海月と霹靂よ。陰と雷の名を持つ二匹の友よ、下から急襲せよ」
「ぷきゅ」
「クエッ」
 さらなる呼びかけに答え、義透のイメージに合わぬ可愛らしい声と共に現れた巨大海月とヒポグリフ。陰の如く潜み、雷の如く襲い掛かった命ある友たちもまた、義透の心を全て分かっているかの如く奸臣の足を払い、腕を絡めとった。
 そして全ての戒めにて曝け出された奸臣の胴を、宣言通り真っすぐ突き出された黒燭炎が貫いた。『わしならまっすぐ行く』。その言葉が十全に実行された時の姿が、まさにここにあった。
「あ、あ……ああああ……」
 最早命乞いもなく、内外からの炎に喰らわれ奸臣は崩れ落ちた。
「掠郷分衆、廓地分利、懸權而動……俺に出来るか」
「目指すところにないのならば無理に旗に掲げる必要もない。強さを極めるために真っ直ぐ以外を知る必要は無論あれど、根を曲げては意味がない」
 この若者が目指すは天をも超える武人。その道を広げるため、道の外にあるものを取り込ませたのだ。
 敗北の雨と共に教えられたことを糧とし、若者が伸びることを侵す者は願っていた。

 この封神武侠界に若き英傑は多くあり、人界仙界を問わず彼らは明日の中華を担う力として日々伸びている。
 なぜオブリビオンはその芽を摘もうとするのか。ただの偶然か、あるいは未だ予知にさえかからぬ大きな何かがあるのか。
 今はただ若き力を守り伸ばすため、猟兵は今日も封神武侠界を征く。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月13日


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#封神武侠界


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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挿絵イラスト