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鈴々恋人遁走譚

#封神武侠界 #受付:23日(木)8:31~26日(日)23:59

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#封神武侠界
#受付:23日(木)8:31~26日(日)23:59


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●はじまり、はじまり
 とあるところに仙人がいました。
 彼は修業の果てに様々な事を悟り、そして最後に悟ったのは「己は孤独である」という事でした。
 ただ一人、仙界で修行を続ける日々のなんと空虚な事か。
 人間も仙人も一人では生きられぬと彼は悟ったのです。

 彼は己のつがいを作る事にしました。
 いえ、つがいでなくても良かったのです。隣り合って生きてくれる人が欲しかった。
 粘度を練って焼き型に入れ、心臓部には朽ちぬ宝貝と蓮の花を。
 性格は――大人しい人がいい。静かなのが好きだから。練丹を混ぜて、じりじりと強火で焼く事数日。
 なんということでしょう。型は自ずと開かれ、美しい女が現れたのでした。


●しかし、しかし
 仙女は下界を見ていた。
 幾重にも薄布を重ねた衣服をまとった麗人が装飾された丸窓から外を眺める様は、どのような絵画にも表し難い美しさだった。其の横顔は凛として、何処か儚げ。
 だが、彼女の意識は其処にはなかった。

 ちりりん、ちりりん。

 鈴鳴る音が聞こえる。ああ、それは鈴なのですか?
 人々が屋台と呼ばれる――私が知識でしか知らないものを広げて、軒先に硝子の鈴を吊るしている。幾重にも重なって、其れは誰かを呼ばうよう。
 私も一度見てみたい。
 触れてみたいし、鳴らしてみたい。どうせなら、あの人と揃いのものも作ってみたい。あの人は偏屈で、私を傍におくきりで何もしないから、私が何かしたら驚いてくれるかもしれない。

 ――良いじゃないか、と己の心が囁く。

 世界は開かれた。ならば少しくらい、良いのではないか? 自分の身体も少しくらい強くなっているのではないか? ほんの少しくらい、脚を踏み出しても――
「……そうね」
 もしこの身体が“砕けて散ってしまっても”、あの美しいものを見た後ならせめて美しい音が鳴るでしょう。
 仙女は椅子から立ち上がった。とくん、と左胸が鼓動した気がした。


●そこで、そこで
「ええと、何処から説明しようかね」
 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は羊皮紙を広げて、少しの間押し悩む。暫しして、決めたと頷く。
「うん。ええとね、封神武侠界で祭りというか、催しをやっているんだ。硝子細工を扱う店がいっせいに集まってね、作った細工を売るんだよ」
 なんでも、彼らは仙人から「継ぎ目のない硝子細工」の作り方を教わったらしい。其の美しさは人界随一とうたわれる職人たちが一堂に会して商品を比べ合うさまは見事なものなのだとヴィズは言う。
「まあ、この時期だと風鈴が一番多いけど……他にも重めに作った置物だとか、面白いものだと筆――硝子ペンだね。ああいうのとかを売っているらしい。欲しいものがあるなら、其の場で注文すれば作ってくれるんだとか」
 ただし、製法は秘密。けれど短時間で作って貰えるから、其の場で持ち帰る事が可能だ。掌に収まるサイズのものなら大体なんでも硝子で作れるらしい。硝子ペンを己の手に合わせて貰うなど、其の場で売っているもののカスタマイズも可能だ。

 一通り催しについて説明したところで、でね、とヴィズは次の話題に移った。
「其処に迷い込んだ仙女がいるらしいんだよ。仙女というか……宝貝を依り代に作った人間みたいな感じらしいんだけど。彼女は穢れに酷く弱くて、人界には降りてはいけないと言われていたんだ。代わりに人界を見る目をもらったんだけど、……まあ、そんなものを持ってしまったら実際に行きたくなるのが普通の心理だと、彼女を作った仙人は判らなかったんだろうねえ……」
 なので、硝子細工を見るついでに彼女を探してやってはくれないか。
 と、グリモア猟兵は言う。穢れに弱い彼女を狙う輩は少なくないだろう。例えば魂というものが希薄だからと身体を奪おうとするものもあるだろう。
「そうそう、これは予知でみた情報だが、途中で幻影が現れる。彼らは絆というものを知らない想いが仙界の霞と結びついたもので、お前たちの“大事なもの”を狙って来るよ」
 けれど、其れがどうして大切なのかを教えてあげれば引き下がるから、さしたる脅威ではないだろう。問題は、其の霞の奥にあるものかもしれない。そう魔女は言う。
 兎に角霞の濃い方へ進め。グリモアを展開しながら、魔女は一言お節介に言った。


key
 こんにちは、keyです。
 なんかやりたい事全部詰めみたいになりました。

●目的
「宝貝仙女を保護せよ」

●プレイング受付
 タグ・マスターページにてお知らせ致します。

●このシナリオについて
「硝子市を見て回る(お買い物OK)」
「幻影が現れるので頑張って通り抜ける」★
「仙女を狙うボスを倒す」

 の三章構成です。
 まずはご自由に硝子細工の市をお楽しみ下さい。仙界の技術を取り入れた様々な細工が貴方達を出迎えるでしょう。軒先に吊るされた無数の風鈴が涼やかな音を奏でる夏らしい市です。
 頼めばオーダーメイドの硝子細工も作れます。既に売ってある風鈴や硝子細工の加工も出来るようです。

★幻影について
 詳しくは2章断章にて記載しますが、貴方が物品(1章で購入した硝子細工でも構いませんが、普段使っている何かでも構いません)に込める想いを聞いてきます。
 其れは幸せな想いでしょうか。悲しみでしょうか。
 答えれば自然と幻影は失せ、道が開かれます。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。(合言葉がない場合、別れ別れになってしまう危険性があります)
 出来れば失効日が同じになるように投げて下さると助かります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『当たり前の日常を』

POW   :    美味しそうだ、見てみよう。

SPD   :    目を引く意匠だ、見てみよう。

WIZ   :    なぜか惹きつけられる、見てみよう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 りりん、りん、りりん、りん。

 鈴鳴る音が涼し気に。其処は極彩色。
 色とりどりに飾られた風鈴が、屋台の軒先で揺れている。一角では熱が熾り、硝子を熱して何か作っているようだ。
 往々にして屋台に並んでいるものを売っているようだが、中には屋台にあるのは見本にすぎず、オーダーメイドを主に承る店もあるようで。
 熱と涼しさが入り混じる、此処は果敢無くも美しい硝子の楽園。

 売る人がいれば、買う人がいる。
 風鈴を見繕う人、硝子ペンを物珍し気にみる人、硝子の置物の重さを確かめる人。
 商品の数だけ求める心がある。
 此処はおよそ硝子で作れるものが皆並んでいるといっても過言ではないだろう。

 この後の戦いを憂うなら、所々にいる預屋に預けると良い。
 ちゃんと名前の札を付けて保管してくれるから。ただ、忘れないようにだけ気を付けて。
鳴上・冬季
仕事で使える実用性と美しさを兼ね備えたガラスペンを数本購入
「壊れることまで含めての道具です。使うというのは、そういうことでしょう?」
嗤う

UCの式神放ち市場内探索
装飾用の小さな小さな風鈴がついた簪、耳飾り、根付け探しと女仙探しを並行して行う

女仙を発見出来なくても小さな小さな風鈴がついた装飾品は数点購入しておく
「人間最後に残るのは視覚でも味覚でも触覚でもない。最期に響く音になるのか、これから生きる縁になるのか…さて」

「女仙を探しに来ない程度の男なら。次はもっと意思の薄い、自動人形を作るでしょう。自分の下を勝手に離れた反逆を許せるわけがない。だから私は、彼女の自立を期待しているのですよ」
笑う




 さて、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)が目を止めたのは、硝子ペンが並ぶ屋台だった。装飾を重視したものから実用的なものまで、様々なペンが並んでいる。
 ほう、と一つずつ其れを取り上げながら冬季はこれを使う時を思案して、幾つか選んでゆく。実用性と美しさを両方兼ね備えたものが良い。
「壊れるまで含めての道具です。使うというのはそういう事でしょう?」
「お、兄ちゃん判ってるねえ。飾って貰ってばかりじゃ、こいつも退屈するってもんさ」
 店主が会計をしながら笑う。そうですね、と相槌を打ちながら、冬季はふわりと式神を放った。視認されにくいそれらは市中に広まって、仙人から降りてきた女仙を捜す。
 彼らが情報を持ってくる間にも、冬季は市を回る。簪、耳飾り、根付け。そして風鈴を売る店へとたどり着き、風にゆうらりと揺れるそれらを見上げた。
 立ち寄った店で買った装飾品には、全て小さな風鈴が付いている。振ればちりん、と鳴るように。
 ――人間が最後まで感じ取れるもの。其れは光景でも、味でも、香りでもない。……この音は最期に響く音になるのか、これから生きる縁になるのか。さて……

 不意に冬季は周囲を見回す。女仙の情報は残念ながら式神は持って帰らなかったが、妙な気配がある方向は把握できた。恐らくそちらに幻影とやらがあるのだろう。辿っていけば仙人に繋がる筈だ。
 ――冬季は期待していた。女仙が男から自立して、己の心をもって動いてくれる事を。女仙を作り上げた男が捜しに来ないという事は、女の逃走に興味がないという事だろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琴平・琴子
足元には使い魔の猫・市がうろうろと
そんなに気になるのかなとふくよかな体を抱き上げ辺りを見回してみる
風鈴、お店に飾ったら涼しげで良さそう…
ちりんと鳴る音に耳を傾ければ腕の中にいる市がにゃあと一鳴き

どうかしましたか市
その目線の先には硝子の金魚の置物
…可愛いけれど買ったらお前それ食べるでしょう
食いしん坊なんですからと呟けば腕の中から抗議の唸り声

あ、でもこれだったら…
硝子の風鈴に金魚の絵付けがされたもの
これならお前に食べられずに済みそうですね
なんて言えばじいと見つめて頬を体に擦りつけられておねだりの合図
仕方がないなと買ってあげれば
ひらり揺蕩う短冊に短い手が差し延ばされる
ああそっちでしたか…




 足元をハチワレの猫がうろついている。琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)の使い魔、市だ。
 何か気になるものでもあるのかしら。琴子はふくよかな市を抱き上げて、周囲を見回す。屋台には漏れなく風鈴が吊るされて、風が吹くたびりんりんと大合唱。
 ――お店に飾ったら、涼し気で良いかも。
 にゃあ、と風鈴に負けじと市が鳴いた。
「どうかしましたか」
 気付けば市はじいっと、琴子の腕から身を乗り出す勢いで何かを見ている。視線を辿ってみると、硝子で出来た金魚の置物がある。中に一筋赤色が描かれて、傾ければ真っ赤に見えるという粋な仕組みが施してある。赤い置物の中に、黒い出目金風のものも入り混じっている其れを見て、可愛いけれど、と市を抱き直した。
「買ったらお前、これを食べるでしょう。食いしん坊なんですから」
 るるる。
 不満げに唸る市。使い魔だから飲み込んでも害がないとはいっても、食べられるためだけに置物を買うのは何か違う気がするのだ。
「――あ」
 琴子は市を連れて歩きながら、よいものを見付けて脚を止めた。数ある風鈴に紛れて一つ、金魚の絵が付けられたものが揺れている。
「これならお前に食べられずに済みそうですね」
 市がじっと風鈴を見つめると、ごろごろと喉を鳴らしながら琴子に身をすりつけてきた。これ買って、というおねだりの仕草だ。己の愛らしさを理解しているのだ、この使い魔は。
 ――仕方がない子なんですから。
 そう思いながらこれを下さいと片手で店主に風鈴を指差して告げる。あいよ、と店主が風鈴を外すと、にゃあう、と市が手を伸ばした。短い脚で撫でるのは、風鈴に付けられた赤い短冊だった。
 ああ、そっちでしたか。しかし買ってしまったものはしょうがないので、吊るす場所を考え始める琴子なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
WIZ
素敵な硝子細工。どれもこれも欲しくなっちゃうわ。
風鈴もいいけど置物もいいし……。
あらかじめ聞いていた仙女さんの事は念頭に置きつつも、でもやっぱりきらきらした硝子細工には目が惹かれるわ。
ああ、だからこそ彼女は降りてきたのかな。
私は綺麗なものをたくさん見たら自分も綺麗になれた様な気がするの。たとえ心の奥底に拭いきれないぐるぐるしたものや、淀んだものがあってもね。
ううん、今はそんなことよりも買い物ね。
でもどうせ購入するなら実用的な硝子ペンがいいかな。
重すぎず握りやすい大きさ太さ。道具は使ってこそ、あまり凝ったデザインでなくてもよいわ。
……いつか思うままに書き綴った手紙を届けられたらいいな。




「わあ……」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は大小さまざまな硝子細工を見て、思わず感嘆の声を上げた。風鈴に置物、ペンに……あれは何につかうのかしら? というものまで。どれもこれも欲しくなってしまう。
 風鈴はオーソドックスで良い。けれど、どうせなら置物を飾ってもみたいし。
 本命は仙女探しだとは判っているけれど、この屋台を楽しむなとは言われていない。きらきら陽光に煌めく硝子は本当に、どんな宝石よりも綺麗で、藍は其の眩しさに一瞬立ち止まる。
 ――嗚呼。きっとこの光景を見たから仙女は降りてきたのかしら。
 そう思わせる程、綺麗で。綺麗なものを沢山見ていたら、自分も綺麗になれたような気がして。クリスタリアンとしての特徴を余りはっきりと持たない自分だけれど、心の奥底に拭いきれないぐるぐるしたものや淀んだものがある自分だけれど、其れでも綺麗になれたような気がするのだ。
「……っと、いけない。買い物しなきゃ」
 どうせなら、この経験を何か物に託して残しておきたい。屋台を見て回っていると、硝子ペンを扱っている屋台に目が行く。触ってもいいよ、と店主がいうので、実際に手に取ってみると、案外重みがある。
 どうせなら使ってあげたいので、自分の手に馴染むものを選ぼう。藍が選んだのは、柄に蔦のデザインが為されたシンプルな硝子ペンだった。シンプルだが柄のお陰で質素に見えないのが良い。握りやすいし、手に馴染む。
 ――このペンでつづった文字は、一体どんな形になるのかしら。いつか思うままに手紙を書き綴って、届けてみたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
人界に降りた仙女が云々……ってのは何となく御伽噺っぽさがあるというか
もしかしたら過去、実際にあった事が話に残ってるとかかもな

とりあえず道場に飾る風鈴でも探しつつ、彼女を探してみるとしよう
……そういえば硝子ペンなんてのがあるのか。使ったことがないんだが、どんなものか試してみても?
ふむ、意外と面白いな。一本貰おうかな

おっと、別の物に気を取られてしまったが風鈴を買おうと思っていたんだ
風鈴は……お、あった。色も柄も多種多様で何を選んだものか悩ましいな
沢山買っても仕方ないし……そうだな、やはりその桜模様の奴がいい

っと、今見えたのは件の仙女か……?すまん、後で取りに来るから預かっていてくれ




「なんだか御伽噺みたいだな」
 人界に降りた仙女が云々だなんて、と夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は思う。もしかしたらあの御伽噺の類は、実際にあった事が話として残ったのかもしれないな、と想像してみる。そうだとしたら、とても興味深い。
 鏡介は取り敢えず、道場に飾る風鈴を探すことにした。人込みはかなり多く、仙女を捜しているだけでは疲れてしまうだろう。物見ついでに捜せば疲れもすまいと、屋台に揺れる風鈴を見て歩く。
 歩いていると、硝子ペンの屋台が目に入った。風鈴の先にペン先型の重りを下げていたのでペン屋だと判ったのだ。硝子ペンか、成る程。どうやって使うのだろう?
「兄さん、こういうペンは初めてかい?」
 店主の老婆が優しい音色で問う。ああ、と鏡介が頷くと、紙と瓶、其れから一本の硝子ペンを老婆は差し出した。
「要領はつけペンと同じさね。違うのは硝子ペンには溝がある事くらいかね。ペン先をこうやってインクに付けて、優しく余分なインクを落とすのさ」
 言いながら老婆は実践してインク瓶にペンを付け、そっと余ったインクを瓶のふちで落とす。紙にさらさらとうずを描くように書くと、青黒い線がくるくるり。
 ほう、と其れを見ていた鏡介は興味深い、と息をついた。試してごらん、と老婆にペンを差し出され、自分もインクを真似して付けて、さらりと描いてみる。太かったり細かったりする線がくるくる描かれる様は少し楽しい。
「面白いな」
「だろう? 好きなのを見て行くといいよ」
「一本買おうかな……っと、いけない。風鈴を買うんだった」
 つい惹かれてしまったが、そもそもは風鈴を見ていたのだったと我に返る鏡介。りりぃん、と応えるように風鈴が鳴る。どうせだ、この店で買っていこう。軒先に吊るされた風鈴の中から、桜模様のシンプルな風鈴を選んで老婆から買い取る。

 りん、りん。
 鈴鳴る中、ふと鏡介が視線を動かすと、ふわりと場に似合わぬ羽衣を纏った影が人込みの向こうに見えた気がして。
 あれはもしや、件の仙女ではないだろうか。
「っすまない」
「ん? どうしたね」
「其の風鈴、預かっておいてくれないか。後で取りに来るから」
「ああ、良いよ。おやまあ、あんなに急いで。何か欲しいものがあったのかねえ」
 老婆は袋を取り置きのカゴに入れながら、不思議そうに首を傾げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

せっかくですから、来てみましたー。とても綺麗ですよねー。

おや、陰海月も気になって?
見つけたのは、水色をしたクラゲ型をした蓋を持つインク壷と硝子ペン(ヒトデ模様)のセットで。

ふむ?こういうのもあるんですねー。買いましょうかー。
来たからには。何か一つ、品を買いたいですしねー。


陰海月、硝子に興味津々。気になるクラゲの蓋。ぷきゅ。
霹靂は、『自分だと商品割りそう』という理由で影にいる。




「まあ、綺麗ですねー」
 “疾き者”――馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一人格である彼は、のほほんと風鈴を見つめている。連れている陰海月はたくさんの硝子に興味津々で、ぷきゅぷきゅと屋台を賑わしている。一方、いつもなら一緒に居る霹靂は、己の爪や身体で商品を割ってはいけないから、と影から頑として出てこなかった。
「陰海月、何か気になるものはありますかー?」
「ぷっきゅ! ぷきゅ!」
 これこれ、と柔らかい触手で陰海月が差したのは、水色のインク壺だった。水色の蓋は海月型をしていて、成る程、置いているだけでも可愛らしい。
 あ、これも! と陰海月はヒトデ模様が描かれた硝子ペンを指差す。
「まあまあ、可愛いですねー。気になりますか?」
「ぷっきゅ!」
「でも陰海月、文字は書けますか?」
 ちょっと意地悪な問いを投げてみると、ぷっきゅ、と吃驚したような声を上げて、しょぼしょぼと陰海月はしょげてしまった。あらあら、ちょっと意地悪すぎたかしら?
「ごめんなさいねー。お詫びにこれ、買ってあげますからー」
「ぷきゅ……?」
「貴方が使えなくてもー、私が使えば良い事ですしー。ね?」
「ぷきゅ! きゅっきゅ!」
 折角来たのだ。仙女を捜すばかりでなく、何か買っておきたいし。海月蓋の瓶とヒトデの硝子ペンを買って、袋に入れて貰う。
 自分が持つんだ、と楽しそうに袋を受け取る陰海月を、義透は微笑まし気に見詰めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
カティアお姉ちゃん(f05628)と

わたし、硝子細工大好きなのです!
おねーちゃん一緒に行きましょうですよー!

仙女さんは、お店を見て回りながら探してもいいですよね。

砂時計や動物やお家のミニチュアもあるのですね。
きらきらですっごくきれいなのです♪

あ、これ、硝子細工体験?
作らせてもらえるのですね。これ、いきましょうなのです!

わたしはカティアお姉ちゃんにお渡しする指輪を作るのですよ。
お姉ちゃんの瞳の色に合わせて、ライトブルーにするのです!

できあがったら……わたしがお姉ちゃんに指輪をはめたら、
おねーちゃんからも指輪をもらって、真っ赤になっちゃいますです。
いまは練習ですけど、いつかはちゃんと、なのですよ


涼月・カティア
奏莉(f32133)さんと

「……ん゛っ」
久しぶりの奏莉さんが可愛すぎて

はい、一緒に行きましょう
ふふ、奏莉さんの好きなものを知れて私も嬉しいです
お仕事も大切ですけども
まずは私たちが楽しみましょうね

あっちこっちへちょこちょこ動き回る奏莉さんを
後ろからほんわか眺めつつ

硝子細工も綺麗ですけど、
奏莉さんが可愛すぎてお姉ちゃんは嬉しいです

硝子細工体験、ですか?
ええ、楽しそうです
いいですよ

奏莉さん何を作っているんですか?
え?指輪?私の?

えっと、その、あの……家宝にします!!

それでは『いつか』の約束の代わりに
私も奏莉さんにプレゼントです
透明に紫を入れた菫のハーバリウムみたいな硝子の指輪
奏莉さんお手をどうぞ




 菫宮・奏莉(血まみれもふりすと ときどき勇者・f32133)と涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)は二人、りんりんと鳴る風鈴に目を奪われていた。
「わあ……! わたし、硝子細工大好きなのです! おねーちゃん、一緒に行きましょうですよー!」
「ン゛ッッッ」
 奏莉の愛らしさに思わずカティアは鼻を押さえる。大丈夫。まだ出てない。オッケー。久しぶりの奏莉の愛らしさに鼻血が出るかと思った。
「仙女さんは、お店を見ながら探しても大丈夫ですよね」
「そうですね。奏莉さんは硝子細工が好きなんですね、好きなものを知れて嬉しいです」
 お仕事も大切ですけど、まずは私達が楽しみましょうね。
 そうカティアがいうと、うん、とはにかむ奏莉。思わず天を仰ぐカティア。可愛い……(心の声)
 あれもいい、これも可愛い、と、砂時計や動物の小さな置物などを見て歩いていた奏莉だが、ある張り紙に目が留まって、カティアを嬉しそうに手招きした。
 愛らしいものを見守る奏莉こそが愛らしい、と見守っていたカティアが何事かと彼女の傍に行くと、其処には“工房体験有”の文字が。
「作らせて貰えるのですかね? これ、いきましょう! なのです!」
「硝子細工体験、ですか。楽しそうですね、いいですよ」

「あつかった~~~!!!」
「ふふ、……そうですね、死にそうに暑かったです……」
 ぐったりとした二人は、それぞれ戦利品をもって工房から出て来る。硝子は溶かして固めるものだから、工房はとてつもなく暑いのだ。
 でも、と奏莉は手に持った“それ”を見る。とても良い仕上がりになったと思う。ライトブルーの彩を湛えた小さくてシンプルな指環。余り子どもっぽくならないように、平たいデザインにしてある。
「お、お姉ちゃん!」
「はい?」
「これ、……これ! どうぞ、なのです!」
 勇気を出して指環を差し出す。ああ、プロポーズする男の人ってこんな気持ちなのかしら?
 カティアをこそっと伺いみると、吃驚したように目を丸くしていた。そうして震える手を奏莉の手に添えて、そっと指環に触れ……
「か」
「か?」
「家宝にします!!」
「ええ!?」
「奏莉さんが私の為に……! これは家宝まったなしです! でも、なんだか奇遇ですね」
 私もこんなものを作ったんです。
 そう言ってカティアが奏莉に差し出したのは、小さな指輪だった。宝石の代わりにぷくりと丸い箇所があって、紫のペイントが硝子の中に。其れはまるで、水の中に菫を閉じ込めたみたいな美しさで。
「さあ、お手をどうぞ」
「……~~~~!」
 恥ずかしくて顔を覆ってしまう奏莉。
 ああ、これは『いつか』の予行演習。いつか、もっと大人になったら。そうしたら、もう一度指環を君に贈るよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
硝子市に辿り着けば
ちりんちりんと風鈴の音色がお出迎えしてくれる
良いよねぇこの音、涼しげでさ
ちょっと、そういう情緒のないこと言わないの

梓の腕を引いてあちこち見て回る
風鈴ってまんまるな形のイメージだったけど
こうして見ると色んな形や色のものがあるなぁ
せっかくだから何か1つくらい買っていきたいけど
こうも種類があるとどれにしたものかと悩む
…あ、と目に留まったのは、紅い蝶のガラス細工の風鈴
さっきまで悩んでいたのが嘘のように
よし、これしようと決定
こういうの運命の出会いって言うのかな~

俺が悩んでいる間に梓はオーダーメイド頼んでたんだ
あっ、これもお会計宜しくねー
自分が選んだ風鈴もすかさずスッと差し出し


乱獅子・梓
【不死蝶】
大量の風鈴が並ぶ光景、なかなかに壮観だな
うーん、綺麗な音色なのは認めるが
音だけで涼しくなれるもんか…?

風鈴に悩む綾の横で、俺はガラスの置物を眺め
…そういえばオーダーメイドも出来るんだったな
思い切って「赤いドラゴン」「青いドラゴン」のガラスの置物を注文
言わずもがな俺の可愛い相棒竜の焔と零のイメージ

そして出来上がったのは、東洋のドラゴンの置物
あ、そうか、この世界のドラゴンといえばこれになるか
だが、クオリティは見事なもので
焔と零がこの世界の生まれだったらこの姿になるのかもな
これはこれでありだなと、結果的に大満足
少々値は張ったが喜んでお買い上げ

おい、なにちゃっかり一緒に買わせようとしてんだ!




 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は綺麗だねぇ、と漣のように鳴る風鈴を見て言う。黒髪がふわりと靡けば、呼応するように鈴が鳴る。
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の銀髪もさらりと靡くけれど、彼は少し首を傾げる。
「綺麗な音色なのは認めるが、音だけで涼しくなれるもんか……?」
「ちょっと、そういう情緒のない事言わないの。音って結構大事なんだよ」
「そうかあ……?」
 市に踏み入り、様々な細工を見ている間もりんりんと鈴の音が鳴る。綾が梓の腕を引き、あれがいい、これもいい、とあちこちをうろうろ。軒先を見れば風鈴と一口にいっても、様々な形のものがあるのが判る。あれは海月の形かな? こっちは鈴の重りが星の形をしてる。
 折角だから何か一つ買っていきたいな、と思っていると、引っ張っていた梓の腕が重くなった。あらら? 何か良いものを見付けたのかな。
「梓、何か良いもの見つけた?」
「いや、……オーダーメイドが出来るって話だったよな」
「うん。何か頼む?」
「……そうだな」
 決心したように梓が店主に注文したのは、“赤いドラゴン”と“青いドラゴン”の置物。少し時間がかかるよと店主は言ったが、其れでも構わないと梓は頷いた。いいよな? と一応綾に確認する。綾は勿論大丈夫だったので大丈夫だよと頷く。其の間自分の買い物に付き合って貰おう、と軒先の風鈴を見上げてみると、……あ。
「これが良いな」
 それはなんてことない風鈴だ。特に形が奇異な訳ではない。ただ、鈴の重りが赤い蝶をしていて、風鈴にも羽搏く赤い蝶がペイントされている。
 見た瞬間、これだ、と思った。
 さっきまで綾を悩ませていた風鈴たちが一瞬で記憶から消え去る。背の高い綾は其れを自分で外す事が出来たので、外して目の前で揺らしてみる。りんりん、鈴の音。うん、やっぱりこれが良い。

 おまちどうさん、と二人に声を書けた店主が、かなり濃い色で赤と青に染められた硝子細工を梓に差し出す。――けれど。
「あ」
 そうか、しまった。と梓は思った。そのドラゴンは長い蛇のような身体に、手には球を持っていて。そう、この世界でのドラゴンは東洋の“龍”なのを梓はすっかりと忘れていたのだ。
 けれど、仙界から技術を伝えられたという細工は見事なものだった。小さな鱗一つ一つにまで模様がついていて、これはこれで価値がある。もし焔と零がこの世界で生まれていたのなら、きっとこんな姿だったのだろうと思わせる出来。
「これはこれでありだな。じゃあ主人、会計を」
「あ、じゃあこれもおねがーい」
 ひょい、と二つの硝子細工の横に置かれる赤い蝶の風鈴。
「こら! なにちゃっかり一緒に買わせようとしてんだ!」
「えー? 良いじゃん、ついででしょついで」
「ったく、後から払えよな……」
 ぶつぶついいながらも其の場ではちゃんと一緒にお会計してくれるんだから、本当に面倒見がいいよねー。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヤクモ・カンナビ
f32793津崎どのも、随分と風流な催しを見つけたの
誘われて参ったが…ふむ、スペースシップには無い意匠も多い故、目移りして仕舞う
尤もわらわは何方かと云うと実用品を求めて仕舞いがちじゃが…偶には実用性を忘れるのも悪うは無いの
其れに…好い加減、大祓百鬼夜行の時の番組出演景品のたわしで弄られてばかりも敵わんわ!
…と云う訳で、津崎どのの風鈴要望は半ば右から左に通しつつ、わらわもコップ選びじゃ
青地にとりどりの星…黄の星はわらわで緑は津崎どの、と云うた処かの
…って、何じゃ、髪ゴム?
其れ、此処でつけるの恥ずかしゅう成るんじゃが!?
ええい、津崎どのには此の黒べこ文鎮がお似合いじゃ…渡して、わらわは逃げるぞえ!


津崎・要明
f00100:ヤクモさんと
折角だから依頼ついでに要るものを買おう
ヤクモさん楽しんでるかな?(ちらっと確認)
この金魚鉢に金魚が泳いでる柄の風鈴どうですか?旅団に飾りましょうよ。
今、たわししか飾ってないしね。
自室用に紺から透明にグラデーションしているコップを見繕って、装飾品コーナーへ

この薔薇のつぼみにピンクのリボンが付いた髪ゴム可愛くないですか?
付けてみてくださいよ。嫌ならいいですけど絶対似合いますよ。
(いつもクールカラーなのはこだわりがあるのかな、可愛いのは恥ずかしいとか?)

金のU字金にパープルのスクエアガラスを並べたスティック留めの髪飾りが目に止まる。このくらいなら可かな?後で渡そう。




 ヤクモ・カンナビ(スペースノイドのサイキッカー・f00100)と津崎・要明(ブラックタールのUDCメカニック・f32793)は二人、風鈴の下で市の中ほどを歩いていた。
 ――ヤクモさんは楽しんでいるかな。
 ちらりと要明が隣を見ると、ヤクモはきょろきょろと周囲を見回している。ヤクモはスペースシップワールドの出。実用を極めたものしかなかった世界とは違う遊び心満載の様々な物品が珍しいのだろう。硝子ペン、置物。風鈴などきっと最たるものではないだろうか。
 ――わらわはどちらかというと実用品を求めてしまうしの……たまには実用性を忘れるのも悪うはない。それに、
「ほら、ヤクモさん。この金魚鉢に金魚が泳いでる柄とかどうですか? 風鈴。旅団に飾りましょうよ。今、たわししか飾ってないでしょ」
 ――ほら!!! こうやって弄ってくる奴がいるからの!!
 右から左にたわしのワードごと聞き流しながら、ヤクモは進む。ちなみにたわしとは前回の戦乱で番組出演した際の景品である。数か月経ってるのにいまだに弄られているとはおいたわしい。
 ずんずん進んでいたヤクモだったが、ふとあるものが目に入って立ち止まる。ゆるりと追いかけていた要明も其れに視線を落とす。コップだった。成る程、実用的だが遊び心があっても良いもの。沢山あっても困らないし、良いかもしれない。
 二人はあれやこれやと手に取って選ぶ。
「ん、これなんぞどうかの」
「星柄ですか?」
 ヤクモが持っているコップは青地に色とりどりの星が眩しいコップ。
「んむ。黄色の星はわらわ、緑は津崎どの、というた処かの」
「成る程……俺はこれにしようかな」
 要明が選んだのは紺から透明にグラデーションするコップ。シンプルだが匠の技が光る一品だ。そして要明がふと移動すると、ヤクモに一つ差し出した。
「これ可愛くないですか?」
「髪ゴム?」
 薔薇の蕾にピンクのリボンが愛らしい髪ゴムだった。ゴムの色も桃色と洒落ている。けれど、ヤクモのセンスに適うかというとそうではなく。
「付けてみて下さいよ。嫌ならいいですけど、絶対似合いますよ」
「此処で付けるのは恥ずかしゅうなるんじゃが!? 桃桃しすぎじゃろ! ええい、津崎どのにはこの……この……あっ、この黒べこ文鎮などがお似合いじゃ!」
 けれど硝子製品なので、渡す時は慎重に。そっと要明に文鎮を渡すと、ささっと逃げるように会計に行ってしまったヤクモ。其れを見送り、似合うと思ったのになぁと髪ゴムを眺める要明。そういえば彼女はいつもクールカラーを使っている気がする。そっちにこだわりがあるのかも? あと、可愛いのは恥ずかしいとか? 判らないなぁ。
 ――と、判らないなりに、U字金にパープルのスクエア硝子を並べたスティック留めを見付けたので、文鎮・髪ゴムと其れを交換して要明も会計に向かう。これならどちらかというとクールな方だし、貰ってくれるかもしれない。
 後で渡してみよう。其の時の表情を想像して、少しだけわくわくする要明なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『面影鬼』

POW   :    ここは桃源郷
【己が何者であったかを忘れさせる桃の香】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD   :    もはや帰れぬ桃源郷
戦場全体に、【強い眠気と記憶障害を誘発する桃の木】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    失われた桃源郷
【強い風とともに、闘争心を失わせる桃の花、】【困難に立ち向かう克己心を失わせる桃の実、】【生への執着心を失わせる桃の木の枝】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ふうわり、と柳の木が揺れる。
 市場を抜けて森へ進むと、徐々に霞が広がり始める。其れは穏やかで優しく、柔い部分を守ってくれるような気配がした。

 “――きみたちは”

 家族の幻影が見える。幸せそうに笑う幼子、穏やかに笑う女。其れを見守っていた顔の判らない男が、顔を上げて猟兵たちを見た。

 “――なにか、大事なものを持っているかな”

 男は問いかける。他の家族は、男が別の方向を向いている事に気付いていないように戯れ続ける。兄妹が走り回り、母がたしなめる、優しい家族の幻影。

 “聞かせておくれ。そうしたら、私も聞かせよう”
 “大事なものを得ようとして、危機にさらされている稀有な天女の話を”

 どうやら「彼」は、宝具仙女の行き先を知っているようだ。
 彼の望みを叶え、大事なものの自慢をしてみよう。

(ユーベルコードは関係なく、戦闘は発生しません。この章のみのご参加もOKです)
夜鳥・藍
かつてを思い出されるわね。私の場合姉弟になるのだけども。

大事なもの……今抱えてる想いはあるけどこれはもう誰にも言わないって決めたの。
伝えるのはただ一人。それができないなら最後まで抱えていくわ。

でも同じくらい大事なものはあるの。
銀色の水晶とカラーレスサファイヤのベビーリングを通したネックレス。
ベビーリングは違う種族に生まれた私をそれでも愛してくれた両親からの想い。
水晶は過去の私からの誓い。
私はそれらに応えなきゃ……いいえ応えたいの。
まったく違う特徴を持って生まれた私を弟と分け隔てなく育てて愛してくれた事と、何があっても人を想う事を忘れないようにって過去からの願いに。




 其の幻影に、藍はかつての懐かしい日々を見た。自分の場合は姉と弟だったけれども、きょうだいの在り方というのはどのように世界が変わっても変わらないものなのだろう。
 大事なもの。
 幻影に問われて、藍は考える。大切な想いならあるけれど、これは吐露する事が出来ない。誰にも言わないって、伝えるならただ一人って決めているから。もし伝えられなかったら、最後まで抱えていくと決めているから。

 でも、と藍はそっと首元に触れる。
 銀色の水晶とベビーリングが通されたネックレス。ベビーリングはカラーレスサファイアでシンプルに彩られている。銀のスプーンの代わり。食べ物に困らないように。どうか幸せでいてくれるように。生まれて最初に貰った贈り物。
 サクラミラージュという世界で生まれたクリスタリアンの藍を、其れでも両親は愛してくれた。リングは其の想いの形。
 水晶は、過去の己からの誓い。
 応えなきゃいけない。ううん、応えたい。そう藍は紡ぐ。種族が違っても、生まれ変わりだったとしても、其れでも両親が「私達の子だから」と愛してくれた事に。
 そして、何があっても人を思う事を忘れないようにという、過去からの願いに。

“ああ、其れがあるなら大丈夫だろう”
 幻影の男は静かに頷く。気を付けて、と一言添えて。
“宝具の彼女は、君たちを君たちたらしめるものを持たずに生まれた。其れは魂に隙が出来るという事なんだ。其れを狙う者がいる。どうか助けてあげて欲しい”

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

大切な物ですかー。
ふふ、先程の市で買った硝子製品もそうですが、陰海月もですよー。
『私たち、四人で一人』の悪霊は、陰海月に癒されてるんですから。最近は、増えた友だちの霹靂もですがー。
内緒話してる二匹、可愛いんですよー?

ええ、悪霊とて、時に癒されることは大切ですから。そうでなければ、堕ちてしまう。
それを与えてくれる陰海月と霹靂には、感謝しかありませんよ。
ですから、大切なんです、大事なんです。


陰海月、袋を大事そうに持ってる。わたさないもん。
大切と言われると照れる。ぷきゅう。
霹靂、名前を呼ばれたので出てきたら、大切と言われた。こちらも照れる。クエェ。




「大切な物ですかー」
 義透――“疾き者”は僅かに思案して、ええ、と頷く。
「先程の市で買った硝子製品もそうですが、陰海月そのものもですよー。」
 私“たち”は四人で一人の悪霊。時に己を見失いかける事もある。そんな時、陰海月は癒しに、楔になってくれる。ああ、まだ現世に存在しているのだという証明になるのだと。
 最近増えたヒポグリフの友達「霹靂」と、内緒話をしている事もあるらしい。
 可愛いんですよー、と惚気る義透に、呼ばれたかと影から顔を出したヒポグリフは再び引っ込んでしまった。恥ずかしがり屋さんなのだろうか。
「悪霊とて、……いえ、悪霊だからこそ、癒される事は大切なんです。そうでなければ、堕ちてしまいますからー。其れを与えてくれる二人には、感謝しかありませんよ。」
 大切なんです、大事なんです。
 ね、と陰海月に声をかける義透。ぷきゅ、と陰海月は返事をして、何故か硝子製品の入った袋を抱きしめた。渡さないぞ、と言っているらしい。
“大丈夫、君の大事なものを取らないよ”
 幻影の男は笑った。ような気がした。
“……君は少し、宝具の彼女と似ているかもしれないね。彼女もまた、何か寄る辺を必要とするべき存在なんだ。仙人は彼女を完璧なものだと見ていたようだけれど、其れは違う。其れはきっと、今回の騒動で仙人の知るところとなるだろう”

大成功 🔵​🔵​🔵​

琴平・琴子
これはね、親から貰った大事な防犯ブザー
親が子を心配して、何事も無いようにと思って渡されたもの

本当だったら要らないけれど
何かがあってからじゃ駄目だからって持たされたの
それがね、一度も役に立ったことはないの
良い事なのですけどね、それが何だか少し寂しい

でもね
そうやって両親が私を心配してくれていること
この子が一度も使われた事ないこと
とても誇らしいし、嬉しいの

それはこの子がちゃんとお仕事できていなくても
私の安全がこの子にとっても、両親にとっても良い事だから

その時が来る時のためにお手入れだって……
(糸引っ張っても鳴らない)
あれ、電池切れてるかも
本当はね、私よりもうるさい音を鳴らすんですよこの子




 大切なもの。
 そう問われた琴子が真っ先に手に取ったものは、黄色くて丸い防犯ブザーだった。薄く「K」の文字が記されている。其れは間違いなく、琴子の頭文字。
「これは、両親から貰ったんです」
 大事に両手で包んで、琴子は言う。
「本当だったら要らないけれど、何かがあってから駄目だからって、渡されました。でも、一度も役に立ったことはなくて」
 其れは幸せで、でも少し寂しいと琴子は言う。
 使われなかったという事は、琴子が危険な目にあった事はないという事だから。
 でも、折角貰ったのに使わないままなのは、なんだか忍びなくて。
 でも、でも。
 両親が心配してくれている。其れがこうして形になっている。
 そして其れが一度も使われる事なく、琴子は健やかに生きている。
 其れがとっても誇らしくて、嬉しいのだと。
「なあう」
 市が揺れるストラップを見て鳴く。駄目ですよ。これは大事なものなんですから。
「この子がお仕事出来ていなくても、其れは私が安全だという事だから。其れは両親にとっても、この子にとっても良い事だから。あ、でも、ちゃんと其の時が来た時のためのお手入れは――」
 欠かしてないんですよ、と証明しようとして紐を引っ張ってみるが、おや? 鳴らない。振っても揺すっても鳴らない。
「電池切れかも。本当はね、私よりもうるさい音を鳴らすんですよ?」

“――君は、ご両親に愛されているんだね”
 男は嬉しそうに言う。幻影の子どもが男にまとわりつく、その頭を撫でながら。
“……ああ、でも、ならば。この先に進むのは考えた方が良いかもしれない。明らかに敵意を持った存在が、君を迎えるだろう。……其れが使われる事のないように、私はまぼろしの身ながら願っているよ”

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヤクモ・カンナビ
大事なもの?
無論決まっちょる…わらわの母船『アメノトリフネ』じゃ
嘘を吐くな、じゃと…?
まさか、船を護る為に生まれたわらわに、其れ以上大切な…

…否
確かに、わらわは嘘を吐いて居ったの
津崎どのからの髪留めを開封し、暫く眺めた後に、意を決して髪に挿す事に致すかの
偶には、気障な事をするでは無いかえ…普段は空回りばかりが目立つと云うに

此の掻き乱される感情の正体が判らぬ程わらわは純朴では無いが、自らの中で折り合いをつけられる程狡猾でも無い
第一に、実は津崎どのの側からは其の積もりは無うて、わらわだけが勘違いをしちょったら全てが毀れて仕舞う
思春期特有の病として無かった事に致すのが“正しい”遣り方なのじゃろか…?




「大事なもの? 無論決まっちょる」
 ――母船“アメノトリフネ”。
 ヤクモは其の操舵の為に生み出され、操舵して生きてきた。宇宙を飛ぶ天津神の船。其れがヤクモの大切なもの。
“本当に?”
「何?」
“君は役目に囚われて、心を見失ってはいないかい”
 子どもを抱き上げながら、顔の判別できない幻影がヤクモに問いかける。確かに己の母船は大切なものかも知れない。でも、考えてみて。これまで駆け抜けてきた中で、何か大切なものを見付けたりはしなかった?

「……」

 ぐっと黙り込んで、やがて諦めたようにヤクモは溜息を吐く。

『付けてみて下さいよ。嫌ならいいですけど、絶対似合いますよ』
『此処で付けるのは恥ずかしゅうなるんじゃが!? 桃桃しすぎじゃろ!』

 持っていた髪飾りを、梱包の袋から出す。薔薇の蕾に桃色のリボン。きっと似合わないって、今でも思っている。――けれど。
 ヤクモは髪飾りをするりと外すと、白い髪を手で梳いて片耳の下へと集め、桃色の髪ゴムで結んだ。其の蕾は花開かぬけれど、ヤクモの心の中で、僅かに綻んでいる。
「気障な事をすると思うたものよ。普段は空回りばかりが目立つというのにの」
“そう。其れが君の――大切なもの、なんだね”

 心を掻きむしりたくなる。
 この感情の正体が判らない程、ヤクモは純朴ではない。でも、知識としてしか知らない。自分の中できっぱりと折り合いを付けられるほど狡猾にはなれない。
 そもそも、向こうにはそんなつもりなんてないのかもしれないじゃないか。自分だけが勘違いをしていたらなんて思うと、苦しくて息が詰まりそうになる。
 多感な思春期特有の病だと、無かったことにすればいいのだろうか。其れは“正しい”のだろうか? ――アメノトリフネは応えてくれない。はぐれてしまった相手も、また。

“奥にいる彼女を作った仙人も君と似ているよ。胸に熾る感情――彼は心の裡に仕舞ってしまう事にしたみたいだけどね。だから彼女が仙界を降りても、其れを追う事はしなかった。自由でいて欲しかったから、なのかな。――さあ、行くと良い。君ならきっと、彼女の心に寄り添えると思うんだ”

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
なるほど。話に聞いていたが、これが亡霊……

俺の大切なものは数多くあるが、分かりやすいのはこれだろう。と、鞘に収めたままの神刀を腰から外して掲げる
これは一族に伝わる『力』であり、俺と親友との絆の証
そして、俺が戦う理由そのものでもある――本当は、俺なんかが持っていていいものじゃないんだが、アイツの意志を継ぐと決めた
だから、俺が戦えるうちはこれを持ち続ける

おっと、悪いがこいつは渡せない……勿論、単純に武器として強いってのはあるが
それ以上に、大切なものだからな。例えナマクラだとしてもだ

そういえば、あんた達にも大切なものがあるのか?
……いや、それを聞いている時間はないか
悪いな、それじゃあ、俺は先に行くよ




「お前たちは……亡霊なのか?」
 鏡介は問う。余りにも普通の家族然としていて、逆に訝しく見える彼らを相手に。
“亡霊かもしれないし、ただの幻かもしれない。私達は何処から来たのかを忘れてしまった。ただ、家族といられるのが幸せだから”
 そのような事はどうでもいいのだと、男は子どもたちを母の元へと送り出しながら言った。母親らしきまぼろしが幼子を抱える。わたしも、ともう一人がぐずる。
“それで。 ……君の大切なものというのは、なんだろう”
「ああ。なかなか一つに絞るのは難しかったが――これだな」
 ちきり。鞘に納めたままの刀、其の一振りを腰から外して掲げた。
「これは一族に伝わる“力”で、俺と親友との絆の証なんだ」
 そして、鏡介が戦う理由そのものでもある。――本当は、きっと自分が持つべきではないのだ。アイツが持つべきだったと、今でも思わずにはいられない。けれど、アイツの意思を継ぐと決めたから。だから、腰に再び刷く。決意の証はずしりと重いようにも、羽根のように軽くも感じる。
「おっと、悪いが渡せないからな。勿論、武器として単純に強いってのもあるが、其れ以上に大切なものだからな」
“ふふ。なまくらだったら渡したのかい?”
「いいや」
 鏡介は頭を振る。そうだろうね、と幻影は頷いた。
「そういえば、あんた達にも大切なものがあるのか?」
“……私の大切なものは、此処にある”
「……」
 穏やかな女。きゃあと走り回る子どもたち。鏡介は、そうか、と呟いた。
“先へ進むと良い。君のようなヒトでなければ、彼女を救う事は出来ないと思う”
「……それはどういう意味だ?」
“君のように確固たる意志を持った人間でなければ出来ない事もあるという事さ、さあ”
 そういうと家族の幻影は失せ、道が開かれる。霞はそのままだが、ほのかに禍々しい気配がする。
 ――急がなければ。
 鏡介は脚を踏み出した。友人との絆を抱いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「私は物自体に大事と言う感覚を持てませんが。今に至る記憶と、洞門の掟は大事ですね」

「この世界で輪廻転生は実証されるものの分類に入っておらず、それを語るのは妄言の部類に見なされますが。一尾の野狐から始まって、七度の生を経て仙骨を育て尾を増やし、七尾の妖仙に至る。他者から見れば妄言で、私にとっては命の軛から外れるために追い求め努力した真実です。七度の生の間の記憶、家族はどれも代えがたい宝です。そして私を迎え入れ、仙の修行をつけて下さった師と兄弟子達も。彼らがどれかが一つ欠けても今の私はありません。深い感謝と想いがあって当然だと思いませんか?」

「私は妖仙であることに、この上なく満足しているのですよ」




「ふむ、難しい問題ですね」
 冬季は唇に指を当て、少しばかり考えた。
 そして、形のないものでも良いのなら、と前置きをする。
「私は物に大事という感覚を持てません。が、……今に至る記憶と、洞門の掟は大事だと思っていますよ」
“洞門? 君は――”
「ええ。これでも仙人です。この世界では輪廻転生は実証されるものの分類に入っておらず、語ると妄言と片付けられますが……とある一匹の野狐が、七度の生を経て仙骨を育て、尾を増やし、七尾の妖仙に至ったと言ったら、信じますか?」
“――。成る程。にわかには信じがたい事だが、獣が仙人にまで登るという話は人の間にも伝えられているね”
「ええ。私は其の体現です。他者から見ればきっと妄言ですが、私にとっては命の軛から外れるために追い求め、努力した結果であり真実です。七度の生の間の記憶――七つの家族、友人、兄妹はどれも代えがたい宝ですよ。そして勿論、野狐だった私を迎え入れ、仙の修行を付けて下さった師と兄弟子たちもね」
 其れ等はパズルのピースのようなもの。どれが一つ欠けても、今の冬季を形成し得ないもの。深い感謝と想いがあって当然ではありませんか、と冬季は言う。
“そうだね。……しかし七度巡っては、最初のご家族は既に……”
「ええ。ですが、私はこの経歴の通り、輪廻転生を信じている身なので。いつか何処かですれ違い、或いは友として出会っていると信じています。私は妖仙である事に満足しています。だから、何も失ったとは思っていません」
“……そうか。彼女を作った彼も、君のような人だよ。ただただ只管に、彼は悟りを追い求めていた。心の平穏か、其れとも単なる探求心かは私には判らない。だが、彼は最後に悟った”
「何をですか?」
“仙人でさえ、独りでは生きられないという事だ。だから彼は彼女を作った”
「……成る程。しかし其の彼女は人界へと」
“ああ。彼は彼女の意思を尊重しているのか、単に修行ばかりで気付いていないのか、其れは私にも判らない、ただ”
「ただ?」
“前者であればいいと思っている”
……冬季は口端を上げた。
「私もですよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

津崎・要明
霧の中で逸れてしまった。そこに居るのは誰だ!?

旅団に入り浸ってる俺を見て、ヤクモさんが自室を持つ事を提案してくれた。その準備の一環としてコップを買ったんだけど
無意識に選んだそれは、ものの見事に「彼女の色」だった。ガラスには小さい気泡が入っていて紺から透明へ、即ち「藍から白へ」とグラデーションしている。

好きか嫌いかで言えば当然好きでしょう
というレベルを既に越えてしまっている事を、俺は横目で認識している。

UDC社宅は特に帰りたい場所では無かった。でも、反帝は放浪を当然として来た俺の「帰りたい場所」になりつつある。
だからこの小さなコップは、かけがえのない物なんだ。

ヤクモさんは無事かな?




「……はぐれてしまった」
 要明はぽつねんと独り立ち竦む。一緒にいた少女は何処にも見えず、周りは霞ばかりで、霞んだ森が見えるだけ。
 はて、と取り敢えず歩いていると、前方に誰かの気配がした。
「誰だ!?」
“はて、誰と言われると困ってしまうな。ただの亡霊かもしれないし、幻覚かも知れない”
 其れは漢服を纏った男だった。どうやら彼も独りのようだ。
“この霞はとある妖が生み出したものでね。戦う覚悟のない一般人を追い返す為に、私はこうして監視をしている”
「助けないのか?」
“助けられない。私は戦えないからね。……君に一つ問おう。大切なものはあるか?”
 其れはとても簡潔な問いだった。要明ははっとする。グリモア猟兵の言のうちに、そのようなものが現れるという予知があったからだ。
「……俺の、大切なもの」
“ああ”
「……。今日、コップを買ったんだ」
 ぽつり、ぽつり。要明は確かめるように話し始める。
 旅団に入り浸っている自分を見て、とある少女が――ヤクモが自室を持つ事を提案してくれたのだと。その準備の一環として、コップを買った。
 其の色は藍色から透明へのグラデーション。ものの見事に“彼女の色”だった。「藍から白へ」と移り変わる其の色合いは、彼女の眸と髪の色。

 好きか嫌いかでいえば、当然好きに決まってる。ううん、そんなラインすら、きっと飛び越してしまっているんだ。
 今はまだ横目にしか見られないけれど、いつか正面向かってその感情に向き合えるはずだと、要明は信じている。

 UDCの社宅は味気がなかった。ただ戻り、食事をして眠る。それだけのための場所だった。でも、ヤクモのいる旅団は違う。放浪を当然としてきた要明の“帰りたい場所”になりつつあるのだ。
 だから、このコップは彼の第一歩。かけがえのない、確かな第一歩なのだ。

 要明が語り終えると、そうか、と幻影が微笑んだような気がした。彼の顔はぼんやりとして、視認できないのに。
“君は大切なものを見付けたのだね。――藍色と白の少女なら、既に先に進んでいるよ”
「本当か!?」
“ああ。だから……この霞が濃くなる方へ進むと良い。きっと其処に全てがある。君たちの探し物も、君の求める人も”
「濃くなる方へ……」
“無論、其れは危険に身を投ずるという事。どうか気を付けて”
 男は背を向けて、歩き出す。要明は思わず彼を呼び止めた。
「何処へ行くんだ?」
“……。行くんじゃない。帰るのさ。家族の元へ”
 私の大切なもののところへね。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『屍仙女』

POW   :    白骨仙女
自身の【美しい上半身の肉】を捨て【絡み合う白骨の身体を持つ怪物】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD   :    雲身变化
自身の身体部位ひとつを【雲】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    宝貝「芭蕉暴嵐撃」
自身が装備する【芭蕉扇】から【暴風】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【窒息】の状態異常を与える。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 割れた硝子細工の破片が、周囲に散らばって七色に輝いていた。
「……ッ…」
「こぉんな処に、こぉんな娘が何のようだい……? 見たところ、人間じゃないようだねぇ」
 大樹にもたれかかるように座り込んだ女と、宙に浮いて彼女を見下ろしている女がいる。
 どちらも仙女だと見てわかる羽衣や様相をしているが、其の気質は全く逆のものに見えた。宙に浮いている女の周囲には霞が沸き上がっているが、性質は邪悪そのもの。何故霞がどす黒くないのか不思議なほどだった。
 反面、座り込んでいる女は清浄な気を纏っていた。いうなれば深窓の令嬢に似た、何も穢れを知らぬ清浄さだ。
 宙に浮いた女――屍仙女はじいっと女を見下ろしていたが、ああ、と得心して美しい唇で弧を描く。
「お前、もしかして造られたものかい。道理で身体と魂がくっつききってないと思ったよ。いいねぇいいねぇ。つまり、アタシが見付けたってことはぁ……其の体を頂いても良いんだろう?」
 屍仙女が手を伸ばし、宝具仙女の胸元に触れる。途端、びくんと宝具仙女の身体が震えて、ばたばたと暴れだした。
「……ッ! や、め……!」
「アハハハ! なんて取りやすい魂だこと! っと」
 暴れた拍子に屍仙女の手が払われ、宝具仙女は這う這うの体で逃れる。しかし魂に直接与えられた傷はそう簡単には癒えない。もう歩く事すらままならない状態だった。
「……わた、し、は……」
「もう逃げるのはおよしよ。仙界が嫌で降りてきたんだろう? なら、人界で死ねて満足じゃないか? アタシが其の体、有効活用してやるから」
「ちがう……! 私は、あの、人に……」
 教えてあげたかった。
 人界にはこんなに素敵なものがあると、見せてあげたかっただけなのに。

 誰か。
 誰か――助けて。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風
吹っ飛ぶのほほん。

仙女と私たちが少し似ている、ねえ?
なれば、急がねば。陰海月、影へ退避なさい。

見つけ次第、早業での指定UCつき漆黒風を投擲。こちらに気づかせます。
私に気をとられてるうちに、霹靂を仙女の守りへ派遣しましょう。

白骨。なるほど、なれば四天結縄の私対応厄災『大風』封印解除+天候操作で風にて遮るものを吹き飛ばし、強制的に太陽光を浴びせますよ。
そのときに再度、指定UCつき漆黒風投げてもいいでしょう。

彼女は彼女だ。あんたが好きにしていいものでもない。


陰海月、袋持ったまま影に引っ込む。護衛は霹靂に任せた。
霹靂、守る気満々。友だちな陰海月からのバトンタッチ。




「陰海月、私の影へ退避なさい」
 影の中へふわふわと海月は隠れ、疾き者は霞の中を駆ける。前を阻む霞、其の濃い方へ、濃い方へと進めば――女が二人いた。一人はぐったりと樹にもたれかかるように。一人は優雅に扇を揺らして。
「っ!」
 吐息は鋭く、義透は棒手裏剣を投擲する。ぱりん、と邪仙の柔らかい骨が折れる音がして、はっと美しい顔が振り返った。
「誰だ!」
「さて。貴方に名乗る名は、生憎持っておりませんので」
「……さては、仙界からの追っ手かい……このお姫さんが目当てかい? 駄目だよ、こいつはアタシが貰ったのさ! 美しい身体に剥がれやすい魂、身体を乗り換えるにはピッタリだ!」
「其の体は貴方には似合いませんよ。貴方の醜い心では、跳ね返されてしまうのでは?」
「言いおるわ! アタシが醜いのは身体だけよ! こんな骨ばかりの身体……! ああ、速く乗り換えてしまいたいのに!」
 女が皮を脱ぎ捨てる。肉すら脱ぎ捨て、骨の上半身を晒す。蛇の骨が絡み付く其の姿は、まさに邪悪の一言に尽きる。
「……! ひ……」
「大丈夫ですよ~。少し待っててくださいねぇ」
 怯えた様子を見せた宝具仙女に義透は告げる。そっと彼女を護る影がある事に、仙女は気付いた。翼を持つ獅子のような、奇妙な動物だった。もう大丈夫だと、安心させるように寄り添っている。
「ああ、醜い……こんな姿見せたくないのに! アンタの所為だよ!」
「私の所為にされても」
 馬の足で義透へと突進する邪仙。奇妙な動物――霹靂には気付かず、邪魔者を排除する事に全力のようだ。
 足を振り上げ、落とす。生き物ならばこの一撃で大体は死ぬ、はずだが。
 目の前の人間は其れに動じることなく、何処からともなく取り出した縄の結び目を一つ、解いた。

 ――竜巻!

「あああああ!?」
 仙女が上げた悲鳴は二つの意味がある。
 一つ。義透が四天結縄の一つ“大風”を解いたために起こった竜巻にまかれ、大きくバランスを崩した事。
 二つ。風の所為で霞が晴れ、太陽光が差し込んできた事。
 太陽光に骨は焼かれる。苦しんで手をめくらめっぽうに振り回す邪仙に、義透は再び漆黒風を投擲した。

 ばぎんっ!

 折れる音。下半身の大きく太い骨が折られて、邪仙が大きくバランスを崩す。
「……くそ! お前、まさか……猟兵……!」

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴上・冬季
「美しい宝貝に心惹かれるのは当然ですが、それを労せず強奪しようなど片腹痛い。もっとも尸解仙など、その程度なのかもしれませんが」
嗤う

「行けい、黄巾力士火行軍!」
召喚した112体の黄巾力士を9体9組10体3組に編成
更に3組1隊で編成し各組に下記命令
砲頭からの火線で鎧無視攻撃
砲頭からの実体弾で鎧無視攻撃
砲頭からの実体弾で制圧射撃
その4隊で屍仙女包囲し殲滅戦
残り1体にオーラ防御で宝貝仙女庇わせる

自分は竜脈使い黄巾力士強化
自分への攻撃は普段から連れている黄巾力士にオーラ防御で庇わせる

宝貝仙女に風鈴付簪、根付等渡し
「今回は貴女の興味を慮らなかった作り手が悪い。これに懲りず、世への興味を忘れぬように」
笑う




「美しい宝具に心惹かれるのは当然ですが――」
 ざ、と冬季が大地を踏む。骨と化した邪仙を見て、鼻で笑った。
「労せず強奪しようなどと片腹痛い。まあもっとも? 尸解仙など、其の程度なのかもしれませんが」
「言うじゃないのさ。美しいものを求める気持ちは同じだろう? 美しいものを欲する心はみな同じだろう」
「――美しいものは、あるがままが美しいのです」
 冬季は肩を竦めた。話の通じない人だな、と言いたげに。
「其れを無理に手に入れようなどと、烏滸がましい」
「うるさい! じゃあアンタの魂を抜いて、其処に入ってやろうか!?」
 手に持った扇を一つ振るえば、かまいたちが冬季を襲う。其れでも冬季は笑うのをやめず、ぱちんと指を鳴らした。
「私を? 其れこそご冗談を。 行けい、黄巾力士火行軍!」
 召喚された力士をより分ける様をイメージする。
 9体を9組。そして10体を3組。更に其れ等を3体1組として――
「撃て!!」
「人形程度が邪魔を! アタシだって伊達に仙人やっちゃいないんだよ! 水剋火!」
 邪仙が扇を翻すと、霞が舞う。水を含んだ霞は黄巾力士そのものを蝕んでいく。しかし其の間に黄巾力士は携えた砲から火を噴かせた。
「ああああッ! これは…実弾!?」
「こちらとて、伊達に仙人をやってはいないんですよ」
「ちいッ!」
 邪仙の水持つ霞が実体を持つ刃となって、冬季を狙う。
 しかしそれも黄巾力士に阻まれて届かない。砲の音が響き渡るなか、冬季は宝具仙女に歩み寄り、膝を突いて袋を渡した。
「……? あの、これは……」
「今回は、貴方の興味を慮らなかった作り手が悪いのです。貴方が悪かったなどと思わず、世への興味を忘れないように」
「まあ、……でも、こんな、頂けません。仙人様の大切な……」
「良いのです。では命令しましょうか?」
「……。いえ、……では、頂きます」
 其れで宜しい、と冬季は頷く。自我を持ちつつある彼女を、命令で台無しにしたくはなかったから。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍
鳴神を二人の間に割って入るように念動力で操作します。
まずは危険の排除を優先です。
引き離せたら青月を構え雷公天絶陣を放ちます。
相手の暴風には鳴神の天候操作で軽減を。嵐の竜王を呼ぶ鳴神にとって暴風を御せないはずがないでしょう。

宝具仙女さんにも言いたいことが。
貴女の大切な人は貴女の言葉を聞いてくれない人ですか?降りてくるのならばあらかじめ伝えるべきだったのではないでしょうか。
少なくとも「伴侶」とはそういうものだと私は思います。お互いがきちんと自分の意見を言い合える対等な関係。
例え造られた存在でも想う心は貴女の物です。だから大切にして欲しいのです。
報われても報われなくてもその想いは尊い物なのですから。




「――貴方の大切な人は」
 青月を構えた藍が宝具天女の前に立ちながら、問うた。
「貴方の言葉を聞いてくれない人ですか?」
「……え?」
 邪仙が風を巻き起こす。お前の息など止まってしまえと竜巻を巻き起こす。腰に携えた鳴神が呼応して、藍と宝具天女を襲う風を解いていく。藍もまた青月を振り上げ、天からいかづちをよぶ。ごろろろ、と音がしたと思うと、ぴしゃん! と撃ちつける。邪仙は馬の骨した身体で身軽に其れをかわしながら、扇で鎌鼬を放つ。
「……ッ! ……降りて来るのなら、あらかじめ伝えるべきだったのではないでしょうか」
 藍は言う。少なくとも「伴侶」とは、「つがい」とはそういうものだと。お互いがきちんと自分の意見を言い合える対等な関係なのだと。
 鎌鼬を青月で斬る。身体に細かな切り傷がついてひりりと痛むけれど、藍は宝具仙女の前を動こうとしない。動かない。此処を護ると決めたから。
「たとえ造られた存在でも、想う心は貴方のものです。だから、大切にして欲しいのです」
「笑わせるよ! もうすぐ心なんてなくなるってのにさァ!」
「いいえ、なくならせなどしません。――報われても、報われなくても……其の想いは尊いものです。だから、私が守り抜きます」
「……。私は……」
 深く考え込んでしまった宝具天女を背後に、藍はいかづちを落とし続ける。風と雷の応酬は収まる事なく、まるで嵐のような様相を見せる。

成功 🔵​🔵​🔴​

琴平・琴子
素敵な光景は確かに誰かに見てもらいたいですよね
見せる前に居なくなってしまったりしまうので速さ勝負ではあったりしますけども

そんな誰かから何かを奪うのは乱暴すぎます
だって誰にもそれを奪う権利は無いのだから

ぱっと傘を開いてUC発動
傘は普通のものですけども暴風が吹こうと雨が降ろうとか構いません
吹き飛ばされてしまいそうです踏ん張ります
息苦しさは合唱部で鍛えた肺活量がありますので耐えます

――ねえ、その雲の中にいるのは何かご存知?
私は全く知らないのですけども
神罰の雷
雨と暴風と合わさって嵐みたいになって
骨ごと撃ち抜く雷が仙女に当たる
ばちばちと煩いけれどその分威力はきっと大きい筈

撃ち抜かれる痛みは如何?




 ――素敵な光景は、確かに……誰かに見て貰いたいですよね。
 琴子は思う。見せる前にいなくなってしまったりしまうから、速さ勝負ではあるけれども。
「そんな誰かから、貴方は奪おうというのですね」
「奪うだなんて人聞きの悪い。アタシが有効に使ってやろうといってるのさ。見たところ潤沢に力もありそうなのに、この女、全く術の心得がないじゃないか。勿体無いねえ。アタシにくれたらそりゃあもう、金銀財宝を起こして見せるよ?」
「……貴方はそんなのだから、邪仙に落ちたのですね」
「アハ! 欲しいものは欲しい! そう思って何が悪い? 確かに仙人の教えとは違う。だけどね、無欲では生き物は生きられないんだよ。其れがアタシの至った悟りさ!」
「……そんなのは」
 悟りでも何でもない。ただの開き直りだ。
 言っても相手は聞きやしないと、琴子は口を噤み、ぱ、と傘を開いた。――さあ、と雨が降り始める。琴子は宝具仙女の傍に寄り、雨を凌いでやる。
「あ……ありがとう、ございます」
「いえ」
 宝具仙女は何かを考えている様子だった。其れで良い、と琴子は思った。きっと今まで彼女は、己に疑問を持たずに生きてきただろうから。己の在り方を考える時間が仙人にだって必要なのだと思う。
「――っ」
 雨は烈しさを増す。琴子は傘が吹き飛ばされそうになるのを耐える。
「酷い雨だねえ……」
 仙女は風を使って雨をかきわけ、憐れな少女と仙女を見下ろす。ごろりと真っ黒な空に、不自然な霞舞う真っ白な大地。一思いに両断してやろう。この小娘をすぱんとやっちまえば、きっと仙女だっていう事を聞く気になる。
 邪仙が扇を振り上げた、其の時。

 ――ぴしゃあん!!

 雷が降って、まるで鞭で叩くように邪仙に落ちた。
 邪仙は眼を白黒させる。其れは文字通り、骨の髄まで届くような一撃。
「――私は全く知らないのですけども。雲の中にいる何かが、怒っているようですね?」
 雲の中に住まうは竜神。雲隠れしても尚、其の怒りは消えず。仙人たるは何かを見失った邪仙へと、二度、三度、裁きの雷を落とす。
「……!」
 言葉なく邪仙は焼き焦げて、麗しい衣装に炎が灯る。其の炎は直ぐに雨にかき消されるが、雷の痛みを緩和してくれる訳でもなし。
「……」
「……? 何か」
 じっとこちらを見つめる宝具仙女に、琴子は問うて。
「まるで貴方も仙人みたい」
 そういうものだから、少し笑ってしまった。私はただの王子様なのに。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
危ない所だったが、なんとか間に合ったか
神刀の封印を解除。斬撃波を放って牽制しつつ屍仙女との間に割って入り、敵に刀を突きつける

注意を引きつける為に
「発見者が貰って良いなら、先に見つけたのはそもそも俺達の方だっての」とか
「(敵UC使用時)性根と同じく見事な怪物っぷりだ」等と煽ってやろう

直接攻撃は刀で受け流し、仙術なら神刀に破魔の力を込めて切り払う事で防御

機を窺ってから、神気を強く込めた参の型【天火】の一閃で叩き切る
太陽光ではないが、浄化の光は中々効くだろう?

仙女には一つ伝えておこう
思う所があるのなら、ちゃんと言葉にして真っ直ぐに伝えると良い
あんたが大切に思っているのであれば、きっと分かってくれる




 鏡介は二人の姿を認めた瞬間、駆け出していた。神刀を片手の指で軽くなぞり、見えぬ封印をぱりんと解く。
 解き放たれた神刀で宙を斬ると、其の斬撃が形を以て邪仙へと放たれた。さあて、と宝具天女の方を振り返った邪仙だったが、斬撃波を馬骨の下半身でさっと避ける。
「きゃあ!」
 斬撃波が樹を揺らし、怯え切った宝具仙女が悲鳴を上げる。鏡介は二人の空いたスペースに滑り込み、宝具天女の前に立つ。
「すまない。……なんとか間に合ったか?」
「あ……」
 この人も助けに来てくれたのだろうか。
 不思議そうに見上げる宝具天女の視線が、そう物語っている。そうだ、というのも何だか気恥ずかしくて、鏡介は邪仙へと視線を移した。
「次から次へと鬱陶しいねえ! そんなモノがそんなに大事かい!」
「少なくともモノ扱いするよりは大事に思ってると思うがな。其れと、知らないのか? こういうのは見付けたもの勝ちだ。俺たちが先に見付けたんだから」
「そんなの知らないね! アンタたちがその身体をうまく使える訳がない!」
「さあ、どうかな?」
「この……!」
 邪仙が扇を振りかざす。
「いけません……! あれなるは風を操る扇……!」
「大丈夫さ」
 か細いけれど喋れる程度にまで回復した宝具仙女が告げるも、鏡介はいつもの調子で言う。
「……ああ、そうだ」
「?」
「思う所があるのなら、ちゃんと言葉にして真っ直ぐ伝えると良い。あんたが大切に思っているのであれば、……そいつだって、きっと判ってくれるだろ」
「……!」
 彼もそうだ。己を助けてくれた人は皆、己の事情を知っているかのように助言をくれる。不思議と暖かくなる心臓部を抑え、宝具仙女は鏡介の横顔を見上げた。
「真っ直ぐに、伝える……」
「そうだ。……まあ、其の前に掃除が先だけどな」
「なにをくっちゃべってるんだか! 吹き飛ばしてやるよ!」
 邪仙が扇を振るうと、暴風が吹き荒れる。宝具仙女の長い髪が風に舞い、ぶわりと巻きあがった。
 ――三つ。鏡介は数える。暴風に紛れたかまいたちの三撃を彼は見逃しはしない。神刀は風をも切り裂く。牽制の一撃、誘引の一撃を無視して、本命の一撃のみを裂く。一歩、二歩、大きく三歩前に出る。
「このッ……!」
 邪仙が再び扇を振りかざした隙を、鏡介は見逃さない。
 四歩、五歩。其れは邪仙に視認出来たかどうか。大上段から振り下ろす、参の型――“天火”。神刀に破魔を込めた其の一撃が、邪仙を大きく切り裂く!
「アァァァアアアッ!」
 まるで太陽に焼かれたように、じゅうっ、と焦げた香りがする。破魔の清らかさが邪仙を焼いて、苦しむ彼女は回復するために己の肉を脱ぎ捨てる。
「ああぁ、こんな、クソッ……!」
「性根と同じく見事な怪物っぷりだな。浄化の光はなかなか効くだろう?」
「貴様……!」
 鏡介は肩をすくめ、再び構え直す。邪仙の傷は深いが、超回復力で骨にまで刻まれた傷は癒え始めていた。
「このままじゃ肉を纏えないじゃないか……この代償は高くつくよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

津崎・要明
f00100ヤクモさん!
無事で良かった。
あ、髪飾り・・・。
分かってますって「仙女を助けるのが先」でしょ?
宝貝仙女とヤクモさんに手裏剣サイコビットを飛ばしてバリア(結界)
あまり保たないけれど無いよりはマシのはず。でも、早く決着をつけなければ。
屍仙女が変幻して隙が見つからない!暴風の威力が強くて息ができないばかりかこのままじゃ躰が千切れ飛びそうだ。
風が途切れた・・・今だっ!
UC(高速詠唱、鎧無視攻撃、浄化、範囲攻撃込み)を両仙女に
Axion Laserなら宝貝仙女を傷つけず、穢れだけを浄化できるはず。
ヤクモさんが居なければ無理でした、ありがとう。
ああ、髪飾り似合ってますね。とっても可愛いですよ。


ヤクモ・カンナビ
f32793津崎どのを見失うた時は如何なる事かと思うたが、斯様な処に居ったのかえ、心配したぞえ…
(視線に気付いて)はっ、髪飾りを付けた儘じゃった…!

…等と照れるのは後じゃ!
穢れに身を焼かれたあの仙女が助かるのかは判らぬが、全ては事が終わってからじゃ!
津崎どの、恩に着る…此れで三界改変にて大気の粘性及び質量パラメータを書き換える時間が作れるの
暴風の威力を低減、此の隙じゃ津崎どの…ってまるで此れでは好きじゃって申して仕舞うたみたいでは無いかえ!?
兎も有れ、此れで勝ちは決まった様なものかの?
仙女どのも大事が無ければ佳いが…
…って、折角誤魔化したものを思い出すで無い!? こそばゆう成るでは無いかえ!!




「ヤクモさん、無事でよかった!」
「おお、津崎どの。見失うた時は如何なる事かと思うたが、斯様な処で出会うとは。心配したぞ、え……?」
 じいっ、と要明が一点を見ているのが気になって、ヤクモは手で其の視線の先を辿ってみる。かちり、爪に触れたのは、
「(し、しもうたー! 髪飾りを付けた儘じゃった!!)」
 後悔先に立たずなんですよね。
「て、照れるのは後じゃ!」
「照れるんですね」
「……!!!」
「いえいえ、判ってますって。“仙女を助けるのが先”でしょ?」
 殴りかかろうとしたヤクモをどうどうする要明。どうどう。
「んん、其の通りじゃ。穢れに身を焼かれた仙女が助かるかは判らぬが、全ては事が終わってからじゃ!」
「ん、了解です」
 言うと、要明は手裏剣型のサイコビットを座り込んでいる仙女とヤクモへ投擲し、簡易の結界を張り巡らせる。
「ウウ……おのれ……!」
 自己治癒をあらかた終えた骨の邪仙が、悔し気に動き出す。扇を手に振り上げて、風を集め始めた。
「これは……結界?」
 不思議そうにする宝具仙女。ヤクモは其の隙に、己のユーベルコードにて周囲環境への介入を始める。
「少し時間がかかる! 仙女を第一にじゃ、津崎どの!」
「判ってます!」
 要明は駆けると、宝具仙女を護る結界の前に立つ。其の結界がどれだけ強く、どれだけ脆いか知っている。だから第一に己の身体で彼女を護るのだと。
「折角のアタシの身体がボロボロになってしまった……これはいよいよ、其処の身体を貰わなければならないわ!」
 扇が暴風を引き起こす。周囲の霞が激しく渦を巻き、ヤクモと要明の呼吸を難しくさせる。更に放った鎌鼬が要明を切り裂いて、僅かに血がしぶいた。
「津崎どの! もう少し……もう少しじゃ……! ネットワーク接続、プログラム注入……!」
 要明もビームキャノンで邪仙に応戦するが、当たる前に雲に変化されて巧く当たらない。息が詰まって、狙いがブレる。吸って、吐く。其れだけの事が、風の渦巻く此処ではとても難しい。
 だが、其れもヤクモがプログラムを構築するまでの間。
「――今こそ、わらわの名をもって! 今じゃ津崎どの!」
「……! はいッ!」
「か弱いねえ、人間は。じゃあお次は竜巻を……んぎっ……!?」
 邪仙が悲鳴を上げた。持ち上げた扇が、まるで水飴を巻き付けたように重かったからだ。みし、と上半身の骨が鳴る。
「無駄じゃ。たった今わらわがこの場を書き換えた! 此処の大気は粘性を持ち、重い! 其の体では持ち上げる事すら困難じゃろう!」
「なん……ッ!?」
 空間を書き換えるなど、上等な仙人でも難しい業だ。其れをこの小娘は、息をするように行ったというのか……!?
「この隙じゃ、津崎どの!」
 ――って、まるで此れでは「好きじゃ」と申しておるみたいではないか!?
 そんなヤクモの乙女心を他所に、邪仙が驚きに硬直している其の隙を、要明は見逃さなかった。照準を合わせる。最大出力。其処までにかかる時間はおよそ100分の1秒。瞬きにも満たない時間で今度こそ邪仙の心臓部に照準を合わせて、要明は撃った。
「――あ」
 あ、あ、あ、あ、あ。
 あああああ、あああああああああ!!
 心臓部を貫かれたと邪仙が知るまでに数秒かかった。そうして判った瞬間、己の命が潰えた事を知ると悲鳴を上げて、邪仙は崩れ落ちる。おのれ、おのれ、おのれ。赦すものか、赦すものか――!
 要明へと馬の下半身が駆ける。青黒い灰になりながら駆けた邪仙はしかし、相手を弾き飛ばす直前に、彼の後ろから放たれた閃光の弾を受けて――儚い灰となってばさり、散った。

「……」

 要明が後ろを振り返る。
 宝具仙女が驚いたような表情で、己の手を見ていた。其れから、己がした事を確かめるように要明とヤクモを交互に見て。
「……なんじゃ、戦えるのではないか」
 安心したようにヤクモが目を細め、微笑んだ。
「穢れは大丈夫かえ?」
「は、……はい。さっき、男の方に撃たれて……」
 其処で仙女は要明を見上げる。どうやら彼は邪仙を打つ前に、宝具仙女にも浄化の一撃を撃っていたらしい。穢れを祓われた宝具仙女は、すっきりとした顔をしていた。
「ヤクモさんがいなければ無理な作戦でした、ありがとう」
「うむ。しかし津崎どのがおらなんだら勝つ事には繋がらなんだ。こちらこそ、」
「あと其の髪飾り、良く似合っています。とっても可愛いですよ」
「……! せ、折角誤魔化したものを思い出すでない!?」
 こそばゆう成るでは無いかえ!
 かしましいヤクモ、其れを見て穏やかに笑う二人。其処に新しく、一つの足音が加わる。思わず警戒して振り向いた二人だったが、宝具仙女が先に声を上げた。
「! ……主人様!」



●After
「……」
「……」
 仙人は、静かに晴れゆく霞の中を歩く。
 抱えられた宝具仙女は、何か言いたげに彼の顔を見て、……でも何も言えなくて、口を閉じた。
「……」
 沈黙の道中。
 仙人は猟兵たちに礼を述べると、すぐさま宝具仙女を抱き上げて来た道を戻り始めてしまった。宝具仙女が彼らにいえたのは、ありがとう、の一言。

 ……言わなければ、伝わらない。

 其れは猟兵たちに言われた言葉。例えこの身体を割って壊されようとも、私は――
「……主人様」
「……」
「……其の、……ごめんなさい。勝手に外に出てしまって」
 きっと、自分はもう用済みだ。隣にいれず、人界へと行ってしまう伴侶など、きっと必要ないのだ。彼はあらゆる悟りに至った仙人。切り捨てるのは容易いはず。
「……何を」
 だから、彼が声をかけた事に少しの間、気付かなかった。
「……え?」
「何を、求める?」
「……何を……ですか?」
「硝子市があるだろう」

 行かないのか。其れとももう荷物があるから、要らないか。

 穏やかに問う仙人に、宝具仙女は目を丸くして、……其れから大粒の涙を黒曜の眸に溢れさせた。
「主人様、わたし、……風鈴が、欲しいです」
「其の手荷物にはないか」
「あります。けれど、貴方と一緒に選びたい」
「……そうか」
「あと、……もう少しゆっくり歩いて下さいませんか」

 貴方の腕の暖かさを、もっと感じていたいのです。

 神仙二人は穏やかに帰路を行く。其れは宝具仙女の初めての我儘。
 仙女だからと全てを諦めなくていい。もっと自我を持ってもいい、もっとやりたい事をやっていい。
 そう教えてくれた猟兵たちに、宝具仙女は蓮花の心で感謝の言葉を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月29日


挿絵イラスト