薔薇の紅は何ゆえに紅きなのか
●隠れても汚泥は汚泥
そこには噎せ返る程に香る紅薔薇が敷き詰められていた。
荘厳な祭壇の周囲を飾り彩る、目にも鮮やかな紅の中に混じるは、濁った赤黒く――そして場の薔薇の香があるからこそに、余計に生臭き血の臭い。
祭壇の上に涙の痕も新しい、無念と悲痛のまま命を終えられた人間があれば、その元が何であるかは分かるだろう。
そして祭壇の前には嬉々として手を血に染める者と、その順番に怯え寄り添う力無き民の存在があった。
「お前の血は私の血。私の血は私の血。さぁさ捧げよその血を! アハ、オホ、ウフ、アヘヘハハハハ!!」
――啜り泣く民は貴族階級の哄笑を聞き、そして希う。
どうか、贄となる以外の死でも良いから助けてと。
●刻み付けたき怒り
「化粧紅の色は何ゆえに美しいか? それは花摘みの女の血の結晶だからだ」
グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、普段使っている化粧道具を取り出し、艶やかな紅を見せつけながら語り出した。
唐突な彼女の格言めいた語りに場が硬直する中、彼女は化粧道具を仕舞うと。
「支配階級の傲慢さ。だからこそ、在るべき流れに血は流れなくてはならない」
――そして、その手に取った淡い金色の羽根ペン型のグリモアが、度し難き映像を映し出していった。
「さぁ語ろうか。舞台は生き血を啜る者が支配する闇の世、ダークセイヴァー! 君達には、民の血を啜る悪しき遺産を潰して欲しい」
ダークセイヴァーの強敵、第五の貴族やその尖兵達が宿している、寄生型オブリビオン――通称【紋章】の作成手段が判明した。
「どういう光景かは、今見せた通りだ。あのままだと、民は犠牲となり、あまつさえ強力な敵が現れてしまう」
その前に第五の貴族の屋敷に忍び込み、紋章の祭壇を潰す必要がある。
その為に祭壇に続く隠し通路があり、グリモアで示した場所から侵入できるという。
「だが……貴族も馬鹿じゃない。当然、警備みたいな者はいるのだが……」
そう言ってスフィーエは祭壇に続く隠し通路と、その中を警備する首の無い騎士の亡霊の姿が、狭い通路の中にひしめき、悍ましく怨嗟の声を響かせる光景を映し出した。
一体彼等がどういった存在であるかと問われれば、スフィーエは分かりやすく顔を歪めて笑ってみせて。
「……生贄に捧げられた民の怨嗟を抜き出した亡霊だ。実に【エコロジー】だとは思わないかね?」
曰く、生贄に捧げられた後もその魂や怨嗟を抜き出し、首無しの騎士として再構成して警備に当てているらしい。
猟兵の一人が説得でどうにか出来ないかと問えば、スフィーエは顔を顰め。
「残念だが単純な説得では止まらない……だが、そうだね、無駄にはならないだろう」
乗り越え進む為には何かしらの実力行使で捻じ伏せるなり、上手くやり過ごして行く他ないが――それでも、命を弄ばれ、その死後も隷属を強いられ続ける彼等を思う気持ちがあるならば声を掛けてあげて欲しいと語り。
「そして然る後、敵を蹴散らして貰いたいのだが……」
無数の紅薔薇が飾られる中、それを守る鎧騎士めいた彼等――背に紋章と【なりかけ】ている証の触手が生えているものの、特段、戦闘力は上昇している訳ではなく、普通に数で押してくる敵と考えて良いと語る。
だがそれよりも端にて怯える人間達――時に人狼やオラトリオも混じっているが――の姿が映し出されていた。
「既に捧げられてしまった者はどうしようもないが、救える命はあるのだよ」
出来ることならば彼等を守りながら戦って欲しいとスフィーエは語り。
助け出した後は、闇の救済者の拠点で保護して貰えるようにしてあるので、その辺りは大丈夫だと語り。
「その後は、第五の貴族がやってくる。そいつを倒して貰いたい」
紋章となりかけた敵を倒せば、異変に気付いた第五の貴族当人がやってくる。
半人半蜘蛛のような姿をした淡いピンク色の強大なオブリビオンは、【殺戮者の紋章】を装備しており、そこを狙わなければ攻撃の通りは薄いと語る。
「紋章の詳しい位置までは、残念ながら予知できなかった。ここだけはすまないが、現地で確認して欲しい」
ちなみに生贄の民には目もくれず、猟兵を優先して狙うことが分かっているらしく、貴族当人がやってくるまでの間に、物陰などに避難しておいて貰えばまず大丈夫だろうとも補足して。
「……血を啜られる者は、それで出来るモノを味わえない。残酷な格差社会だ」
一通りのことを語り終え、スフィーエは息を吐き出して頭を抱えながら残酷な格差というものが産み出す摂理を語り出した。
尤も、啜られる者が味わう必要のないものが産み出されるのだから、それもまた度し難きものがあるのかもしれないが……。
「だがね。救い出すことは出来る……どうか、尊い命を救ってあげて欲しい」
過去の遺物に過ぎぬモノと、今を懸命に生きる筈の命――どちらが大切かは分かるだろう、と皮肉めいた笑みの後に。
淡い金色のグリモアは悪しき祭壇に続く場所への道を、ゆっくりと開いていった。
裏山薬草
どうも、裏山薬草です。
強化アイテムを装備して新たな形態にパワーアップっていう展開は、状況次第ですがワクワクが止まりませんよね。
さて今回は紋章を産み出す祭壇まで行き、それを破壊するシナリオとなっております。
状況としては祭壇に続く隠し通路に入ったところから始まります。
●第一章『冒険』
第五の貴族の屋敷に忍び込む道ですが、道中を既に生贄にされた人々の亡霊が妨害してきます。
基本的に実力行使で行って貰いますが、彼等の無念を慰めるようなプレイングがあるとボーナスになりやすいです。
●第二章『集団戦』
紋章の祭壇で、紋章となりかけているオブリビオンの群れと戦います。
身体に触手を生やしたような姿をしていますが、特に戦闘力の増加などはありません。
また、生贄にされかけている人間もいるので、彼等を上手く守りながら戦うプレイングがあればボーナスです。
●第三章『ボス戦』
紋章を装備した強力なオブリビオンとの決戦となります。
殺戮者の紋章を装備しており、そこを狙うプレイングがあるとボーナスになります。
紋章の位置は断章にてお知らせします。
プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 冒険
『首なし騎士の亡霊』
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POW : 力でねじ伏せる。
SPD : 速さでねじ伏せる。
WIZ : 魔力でねじ伏せる。
👑7
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メリー・スペルティナ
やっぱりというか、案の定ろくでもない製造方法でしたわね…
しかもその犠牲者を警備兵に、とはつくづく趣味が悪いですわ
これで彼らが救われるかは分かりませんが、どのみち聖者でもないわたくしにできるのはこれぐらいですもの
……UC【死の先を往く者よ】
手首を切り、流れた血で描いた魔法陣を使い彼らの魂から、抱えている怨嗟、無念…彼らの魂を縛る昏く、重い情動を《捕縛》して切り離し、この血に取り込ませ奪ってしまいますわ
(※疑似的な《慰め・浄化》行為。奪った怨嗟等負の感情は《呪詛》として自分の血の持つ呪詛『呪血の澱』の中に抱える)
貴方達の怨嗟や無念は、わたくしが連れていきます
だから……貴方達はもう、おやすみなさい
●毒樹の果実
醜悪な存在を産み出す物が醜悪であることは覚悟の上であったが、かの悍ましき紋章を産む物が口に出すのも憚られる工程であるのは覚悟した上で尚、来るものがあった。
其処へと続く隠し通路の、誂えられたカンテラの灯に縦の巻髪を揺らし、下唇を噛み締め、然る御令嬢は体を震わせつつ往く。
(何と趣味の悪いこと……!)
御令嬢――メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)の足は只管に祭壇に続く通路を進んでいく。
数多の生贄を捧げられて出来る紋章の存在もさることながら、その祭壇へ進む為の道を阻みにやってきた、無数の騎士の亡霊の姿に、彼女はグリモア猟兵の話を思い出す――その生贄に捧げられた者の魂を、こうして冒涜する形で警備に当てているということを。
――彼等もまた犠牲者ではあっても、このまま引き下がることは出来る筈もなし。
表情すらも最早映せない首無、洞より怨嗟の声を響かすような威圧感を放っている亡霊を前に覚悟を決めると、メリーは波打つかのような刀身の刃を顕にし、其処へと手首を近づけ――。
「ッ……!」
手首に一瞬だけ走った熱。波打つ刃の抉る肌と肉の痛みは、彼等の無念を想う痛みに比べれば些末に過ぎず。
斬り裂いた手首を力強く振るい、傷口を撫でる空の痛みに表情を変えることを堪えては、飛び散る血液で彼女は床に幾何学紋様の陣を描いた。
「……死の、先を往く者達よ」
血で描いた紅き方陣が薄暗い通路の中に存在感も確かに輝くと、其処から無数の呪鎖が伸びていく。
それは道を阻む騎士達の、今も尚弄ばれ続けている魂へと伸びて掴む――彼等の苦痛の末に生贄とされ、死後の安らぎも奪われた悲しみと怒りの声<想い>を。
――辛い。助けて。痛い。もう眠りたい。苦しい。
響き渡るこの声は何と重く、そして昏きものなのか――下唇を歯で破り、涙のように紅を垂らしては、鎖で捉えた彼等の思いを切り離し、己が血へと取り込んでいき。
せめてもの、彼等の安堵の声を痛み止めとし、次々に崩れていく騎士鎧の間を通り過ぎていきながら。
「貴方達の怨嗟や無念は、わたくしが連れていきます。……だから」
ぐっと息を飲み、ぎこちなく震える最後の騎士が伸ばした、虚ろな籠手を両手でそっと握り、祈るように目を伏せて。
「……貴方達はもう、おやすみなさい」
程なくして魂の抜けた鎧がふつりと糸の切れたように崩れ堕ち、虚しく通路の中に金属音を響かせて。
メリーは己が胸に手を当て、脳裏に残る彼等の声を改めて魂に刻みながら、祭壇への道を急ぐのだった。
成功
🔵🔵🔴
四季乃・瑠璃
緋瑪「悪趣味な寄生虫だとは思ったけど、製法まで悪趣味だとはねー」
瑠璃「この警備も十分悪趣味だしね。…先ずはここでひと暴れするよ」
【ソウル・ブレイク】で敵の怨念と再構成している術式のみを対象に指定して攻撃。
UCの力を乗せたK100による銃撃や機巧大鎌による斬撃、ボムによる範囲爆撃で亡霊達の怨念を撃ち滅ぼし、吹き飛ばして魂を解放。
解放された魂にゆっくり眠るよう促すよ
瑠璃「私達が殺すのは貴方達を亡霊としている怨念・怨嗟のみ」
緋瑪「安心して。貴方達をそんな風にした吸血鬼はわたし達が必ず殺すから」
瑠璃「殺人姫の名に賭けて、必ず。だから、ゆっくりお休み」
「「安らかな死の眠りを、貴方に」」
●誠なる死の安らぎに
思えば思うほどに、度し難い強敵と変える数多の紋章と、時にそこから這い出る悍ましい虫の姿は嫌気がさすものだった。
一つの身体に宿る二つの魂を二つの肉体へと分け、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)とその半身の緋瑪は祭壇へ続く道を往く。
「悪趣味な寄生虫だとは思ったけど、製法まで悪趣味だとはねー」
足音の響きが不気味に渡る薄暗き中で、緋瑪の呟きには紋章を産みだす過程への嫌悪感が剥き出しになっていた。
生贄は確かに悪趣味だが――それと同じく、悪趣味な【警備兵】の足音に瑠璃が嫌悪を顔に浮かべ言葉を続けた。
「この警備も十分悪趣味だしね」
赤い片目だけを動かし、場に立ちはだかる首の無き鎧の騎士隊の――揺らめく暗き色合いのオーラや、その【動力源】を想えば、彼女達の闘志もより高まるもので、瑠璃が緋瑪に向き合うと。
「……先ずはここでひと暴れするよ」
「オーケー瑠璃!!」
――わたし達に殺せないモノは無い。
――全ては私達の殺意のままに。
二人で一人の殺人姫達より立ち上る魔力が彼女達の得物に宿る。
接近の前にと繰り出された、瑠璃からの二挺拳銃の弾丸による幕が死霊を押し留めながら。
緋瑪が勢いよく、確りと足を踏みしめ仕込まれた炸薬の爆ぜる加速を伴った大鎌で首無しの騎士達を斬り伏せていく。
されどその攻撃の全ては死霊達が宿る鎧や、それを突き動かしている魂魄の一切を傷つけることなく、やや狭い通路の中に満ちる死霊達の怨嗟の声と邪気を祓う。
「私達が殺すのは貴方達を亡霊としている怨念・怨嗟のみ」
「安心して。貴方達をそんな風にした吸血鬼はわたし達が必ず殺すから」
「殺人姫の名に賭けて、必ず。だから、ゆっくりお休み」
普段と変わらない静かに迅速に取り出される筈の、彼女達の爆弾の動きが何処か緩慢にも見えるのは錯覚か何かか。
されど微かな躊躇いもより確かな【殺し】の決意を以て振り切り、彼女達は爆弾を投げ放つ。
すれば使者への送り火のように、場に満ちる閃光と衝撃が連鎖的に広がっていき――死後の尊厳を弄ばれた亡霊達の、怨嗟と苦痛のみを巻き込み吹き飛ばしていく。
数瞬の後に爆風の収まった中で、瑠璃と緋瑪は静かに崩れ落ちた鎧のパーツへと黙祷し。
「「安らかな死の眠りを、貴方に」」
最後に重ねられた言葉が悲しく、ランタンの灯を揺らし――場を満たしていた騎士隊と瘴気への哀しい別れを告げて。
死<眠り>を弄んだ諸悪の根源への、殺人姫としての誇り<殺意>を強く胸に彼女達は先を急ぐのだった。
成功
🔵🔵🔴
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
…それでも、俺達は先に進まなくちゃならないんだ。
まだ救える命を救うために。
【覚悟】を胸に、シャーリーと一緒に亡霊騎士の守る道を進む。
襲いかかる亡霊騎士達の攻撃を鉄鍋の【盾受け】で防ぎながら【幻炎鎮魂斬】で斬り伏せ、魂を鎧に縛り付けている邪念を断ち斬り成仏させながら先を進む。
彼らへの謝罪の言葉と共に。
「ごめんな、救ってやれなくて」
「それでも、あんた達の無念はここで終わらせてみせる」
「だからもう、ゆっくり休んでくれ」
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
正直心が痛むけど、これ以上悲しい犠牲者を出さないためにもボク達は進まなければならない
行こう、ウィーリィくん
「ごめんね。でも他にあなたたちの苦しみを終わらせる方法がなかったんだ」
「あなたたちの悲しみは全部ボクたちが引き受けるよ。だから…さよなら」
【罠使い】+【ロープワーク】で向かってくる騎士たちをスネアトラップで転倒させ、身動きが出来なくなったところへ【ワールド・タイフーン】でまとめてやっつける
道を遮る騎士たちを倒したところで、傍のウィーリィくんを【慰め】るために【手をつなぐ】
心が痛いのはボクだけじゃないから、その痛みを分け合うために
「ちょっとの間だけでいいから、ね」
●選ばせる者の罪
がしゃり、がしゃり、と金属鎧の軋みが無数に重なり、閉鎖的な通路を満たす。
手には剣や斧槍を持ち、お世辞にも質の良くない、時には錆すらも見える鎧の騎士団は往く手を阻む警備兵。
――首の無い虚ろより響く、風の通る音が彼等の唸りにも見て、彼等の戦列は侵入者へと少なからず威圧するものがあった。
死者の尊厳、そして死後の安らぎも奪われ望まぬ隷属を強いられる所業をありありと見せつけられた形に、下唇を噛み締め体を震わせる少年ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)の背を、少女シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)はそっと押した。
「……行こう、ウィーリィくん」
「……ああ」
どう足掻いても立ちはだかれるほどに亡霊が在り、先導者がいても尚補充されるとならばどれほどの数の血が啜られ、そして死後も弄ばれているというのか――隠せぬ怒りに息を詰まらせつつも、彼等は改めて立ちはだかる亡霊達を見据え。
魂に刻まれた命のまま、侵入した者の中で御しやすいと感じたシャーリーを目掛け、首無し騎士の一人が真っ先に踏み込み剣を振り下ろす。
だがそれを、シャーリーの前に出でたウィーリィが鉄鍋で受け止め、金属と金属の打ち合う火花を散らす。
それを皮切りに、数多の騎士がウィーリィへ殺到し次々と得物を向けていくも、彼は鉄鍋と大包丁で弾いていく。
時折に振るわれる得物の動きに僅かなブレや、鎧の関節の軋みがぎこちなくなる様を見、ウィーリィは前髪に瞳を陰らせて呟いた。
「ごめんな、救ってやれなくて」
打ち合わせる度に、金属と金属の響きが首無しの騎士達の鎧を、得物を震わせて通路の中に物哀しい音色を広げていく。
彼等の宿らされたモノが響く様は、宛ら慟哭にも似――胸を打つかのような、重苦しい響きを心の臓へ染み入る苦痛を、歯を食いしばってウィーリィは耐える。
その間にもシャーリーは、ウィーリィが怨霊達をこうして引き付けている間に、戦場を駆け巡っていく。
――金属の響きが鎧の空洞を通り、虚ろな首から響く低音が忙しなく耳を侵しているのは彼女もまた同じこと。
それでも。
痛む胸と心を彼と同じように耐え抜き、進む為に彼女は罠を仕掛けていく。全ては進み、救える者を救う為にと。
そしてその想いはまた、ウィーリィも同じく――シャーリーの無言のアイ・コンタクトが仕掛けた罠を告げると、彼は頷き改めて死霊達へと己の決意を示す。
「それでも、あんた達の無念はここで終わらせてみせる。……シャーリー!!」
ウィーリィからの掛け声に頷くと、シャーリーは仕掛けた罠を発動する。
張り巡らされた括り罠が一斉に収縮し、戦場の最前列に在った騎士を盛大に転倒させると、そのままドミノ倒しのように後方の騎士をも巻き込み、次々と横転させていく。
「……本当にごめんね」
盛大に乾いた音が響いて、石畳の床に金属が打ち付けられて落ちていく――怨霊の悍ましい呻き声を伴いながら立ち上がろうとする姿に、シャーリーは絞り出すように言葉を紡いだ。
「でも、他にあなたたちの苦しみを終わらせる方法がなかったんだ」
そうと思わなければ、先には進めない。乗り越えて先に進んで、救う者を救わないといけないのに。
――今も、涙が零れそうになる。だけど、泣いてしまうのは後にしなければならない。
「あんた達の無念はここで終わらせてみせる」
「あなたたちの悲しみは全部ボクたちが引き受けるよ」
腰を落し、静かに大包丁を構え肩を震わせるウィーリィと、光り輝く曲刀を重々しく掲げるシャーリーの声が絞り出されていき。
「「だから……」」
――そして、彼等の思いが弾けるかのように、魂鎮めの技が繰り広げられていく。
「さよなら」
「もう、ゆっくり休んでくれ」
一気に広がっていく数多の鮫を象った刃は、弾ける涙の代わりに――立ち上がらんとした怨霊の機先を制するかのように、次々と打ち付けられ体を地へと伏せていき。
それと同時、更に弾かれるように――駆け出すと同時に大包丁から炎を盛らせ、ウィーリィが斬り込んでいく。
精緻な幾何学紋様を描いて飛び、悲しみも何もかもを全て喰らい尽す勢いの鮫型の光刃の中、声なき叫びを以て哀しみを捻じ伏せ炎の盛る大包丁が騎士を斬り伏せていく。
されど大包丁の刃が斬り伏せるは、死者の魂を縛り付ける邪念、命を弄び続けた悪辣な貴族の軛を断ち切り、何処までも駆け抜けていく――!
* * * * * * * * * *
程なくして通路を阻む全ての敵が倒れ――否、無事に解き放たれた中で、何かが抜けたように二人は肩を落としていた。
「ッ……、進まなくちゃ、ならないな」
時間はこうしている間にも無情に過ぎていく――死を想う暇は許されず、少なくとも今に救える命の為にと、拳を強く握り締め身を震わせ続けるウィーリィ。
倒れ伏し、息苦しさで満たされた邪気のような何かが祓われていることを感じながらも、その足取りは重く――そんな彼の震える拳をシャーリーの手が静かに取った。
「でも……ちょっとの間だけでいいから、ね」
「……ああ」
気付かぬうちに強張り過ぎていた拳を、包み込む温かな掌に解し、縋りつくかのようにそれを握り返し。
暫しの間、互いの胸に湧き上がる痛みを分け合うように手を強く強く握りあった後に――彼等は覚悟を決めて通路を抜け出すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『朱殷の隷属戦士』
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POW : 慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●薔薇の祭壇
悪趣味というにはあまりにも悪辣な警備兵を、幾許かの痛みと共に乗り越えた猟兵達。
それを作り出した貴族階級への怒りを顕にする者もいる中で、彼等が辿り着いた先は噎せ返る程に濃密な香を放つ、紅薔薇が敷き詰められた場所だった。
その中央に蝋燭の灯が鮮やかに照らす、銀の祭壇は赤黒く濁り、満ちる薔薇の香に混じるが故に、より嫌悪感を齎す生臭さはどれほどの血を吸ってきたのかは明白だろう。
その周囲を少し見渡してみれば、所々にボロ布のみを纏わされた老若男女を問わない、人間、人狼、オラトリオ……様々な無辜の民もいる。
憔悴しきった彼等が次の生贄に捧げられようとしているのは明白だろう――幸いにも、今からでも保護すれば無事に助けられるだろう。
だが、彼等を保護しようとした猟兵達に気付いたのか、祭壇を守っていた無数の黒騎士がやってきた。
その背からは触手が生え、彼等が只者ではない気配を感じる――紋章となりかけている証だろう。より強い怯えを見せる民が生贄と捧げられれば、恐らくは真に紋章と化し、より多くの不幸をばら撒くのだろう。
不幸中の幸いではあるが、戦闘力そのものはそう高くはない。
これ以上の不幸を産み出させない為、か弱き民の命を守る為に――猟兵達は戦いへと身を乗り出すのだった。
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
俺達の手は全てを救えるほど大きくない。
それでも、救える命は救いたい。
だから、生贄に捧げられようとしている人達を【かばう】形で割って入り、前に出て敵を押さえながら戦う。
フレイルの攻撃を【見切り】、【軽業】と【フェイント】で躱しながらシャーリーが罠を仕掛ける時間を稼ぎ、彼女の罠に敵が引っかかったところで【シールドバッシュ】で突き飛ばして転倒させ、シャーリーの攻撃に合わせて【飢龍炎牙】で敵を一掃する。
敵を片付けたら、保護した人達を安全な場所まで避難させる。
この後、また大きな戦いが控えているからな。
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
さぁ、海賊のお出ましだよ!
キミたちが捕まえていた人たちは、みーんな連れて行っちゃうからね!
【エクストリームミッション】を発動させて【制圧射撃】で敵を足止めして生贄の元に向かえない様にしながら猛スピードで飛び回って【吹き飛ばし】+【目潰し】で敷き詰められた紅薔薇を舞い散らして敵の目を晦ませて攻撃の手を止めて、それに紛れて【罠使い】+【ロープワーク】で足元にワイヤーを張り巡らせて転ばせてウィーリィくんのUCとタイミングを合わせて【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で一気にやっつけるよ!
敵をやっつけたら助け出した人たちを【慰め】、【元気】づけながら物陰などに誘導する
●手を伸ばす、例え掴めるモノが小さくともに
今にも生贄に捧げられんとする民は虚ろな眼で言葉の一つも発さずにその時を怯え、待つのみの状態となった所に――乾いた音が鮮烈に響き渡り彼等の眼を醒ましていた。
「さぁ、海賊のおでましだよ! キミたちが捕まえていた人たちは、みーんな連れて行っちゃうからね!」
金属音も高らかに戦士達が一斉に眼を向けた先に在った者は、両手を打ち合わせていた海賊風姿の少女シャーリーだった。
なれば、助けられる前に生贄として捧げる――背の触手を悍ましく蠢かせ、怯えた声を挙げる無辜の民へと、隷属戦士はフレイルを勢いよく振り上げる。
逃げようとしても疲弊しきった身には避けることも叶わず、振り下ろされたフレイルが民を肉片と変えてしまうか――そう思われたその時、火花が散った。
「もう大丈夫だ」
――おずおずと眼を開けた民の目に映ったものは鮮やかで燃えるような赤い背、大包丁と鉄鍋を剣と盾とし、颯爽と英雄譚の勇者のように民を守る姿があった。
少年料理人ウィーリィが民と隷属戦士の間に颯爽と割込み、攻撃を受け止めていたのだ。
割り込まれた形になったウィーリィに隷属戦士達は苛立ちを隠そうともせず、彼を目掛けて一斉にフレイルを振るっていく。
――確かに、自分達の手は大きく救うことはできない。それでも、救える命は救いたい。それが、あの悪趣味な道を乗り越える時に彼等に誓った決意。
「俺たちが、必ず助けてやる!!」
――確かな決意を込めた雄叫びが薔薇の花弁も、隷属戦士達の鎧もビリビリと震わせる。
それに弾かれるように、同じ決意を激しく昂らせたシャーリーが纏った鎧の背に誂えらているバーニアを噴き上げ、戦場を激しく駆け巡る。
纏うマスクのバイザーに透ける、強く燃え盛る覚悟の下に生み出された勢いは、彼女に音を超えた速度の飛翔能力を齎し、必然的に発生する風圧が敷き詰められた紅薔薇を鮮やかに散らしていく。
「覇アァァァアッ!」
舞い散った花弁に一瞬視界を奪われた隷属戦士達の下へ、烈昂なる叫びも高らかにウィーリィが斬り込んだ。
彼の纏う紅い衣はそのままシャーリーが舞い上げた紅薔薇に紛れる形に、その姿を紛れさせ戦士の一体をそのまま斬り伏せた。
されど戦士達はそれで完全に敵意をウィーリィへと向けたのか、一斉にフレイルを振りかざし向かっていく。
それは先に乗り越えた哀しい亡霊騎士と同じように、様々な方向から襲い来るフレイルの乱撃を正確に見据え、その軌道の全てを見切りながらウィーリィは攻撃の隙間という隙間を掻い潜り、時に鉄鍋で弾きつつ攻撃をいなす。
数で押し込もうとしても、狙い澄ましたかのように翔け抜けていく疾風、即ちシャーリーの存在が巧みに隷属戦士達を牽制する。
シャーリーが飛翔し翔け巡っていく度に、風圧と舞い散る薔薇が隷属戦士達に待ったをかけ、運よく潜り抜けた戦士の存在はウィーリィが確実に抑えていく。
そうして膠着の状態が続くかと思われれば、戦場を翔け巡りあるものを張り巡らせていたシャーリーが静かに目を向ける。
――準備オーケーだよ、ウィーリィくん。
――やってくれ、シャーリー!
これもまた同じく、一瞬のアイ・コンタクトを行えば、シャーリーは張り巡らせていた【それ】を掴み上げると――
「さぁ……ここから派手に反撃だよ!!」
張り巡らされたそれは縄、引っ張られたそれが張り詰めることにより硬度を得れば、それは隷属戦士達の足首を引っ掛け、隷属戦士達の体勢を崩していく。
重低音の響きも渡り、横転を見せていく戦士達であったが、ロープトラップに掛けての【一筋縄】では行かず、咄嗟に比較的揺らがなかった戦士達が支えんとするも。
「させるかよっ!!」
電光石火、一瞬の揺らぎも見逃さないウィーリィの鉄鍋による殴打が本格的に戦士を揺るがし、ドミノ倒しの如く戦士達を横転させていく。
全ての戦士達は転び、準備は整った。後は一気に撃ち滅ぼす――シャーリーの突き出した銃の口に眩いプラズマが、そしてウィーリィの周囲へと煌々と燃え盛る龍めいた形の業火が揺らぎ始めると。
「史上最大、空前絶後の鮫と龍の共同戦線、戦う覚悟は――」
「――否(いや)!! その覚悟すらも、喰らい尽す!!!」
立ち上がらんとした戦士の脚をシャーリーの放つ熱線が射抜いたかと思えば、弾かれるように指が踊り放たれる熱線は滝の如く注ぎ戦士達の鎧を溶かし、貫いていきながら。
闘志と決意も激しく盛る、龍を象ったウィーリィの放つ業火が吼え、その灼熱の顎門が戦士達の鎧も触手も何もかもを喰らい、灰すらも残さずに喰らい尽していくのだった。
「もう大丈夫だよ。もう少しで貴方達を安全なところに連れていってあげる」
一頻りの敵を倒し終え、改めて無辜の民に向き直りシャーリーとウィーリィは彼等を保護していく。
辛い目に遭ってきたのだろう、生贄予定の人狼の少女が精気を失いかけ光を失っていた瞳から零れ始めた涙をシャーリーは指先で拭うと、少女の背を優しく撫でて。
「でも、もう少し待ってて。しばらくそこの陰で大人しくしてて欲しいんだ」
「その代わり、後のことは俺たちに任せて欲しい」
シャーリーの優しい言葉とウィーリィの力強い言葉に、民達は素直に頷くと漸くに生気を取り戻した目で物陰へと隠れていき。
彼等の避難が無事に終わるまで二人は保護に全力で努めていくのであった。
大成功
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メリー・スペルティナ
やっぱりそっちを先に狙う気ですの!?
クロスボウで生存者に向かおうとする敵を撃ちますわ!
更に相手と彼らの間に『使い捨て血晶石』を何個か撃ち込み、《呪詛》を帯びた血を散らせ罠を張りますわよ!
そして、そういう相手なら大盤振る舞いですわ!
『ブルートヴァッフェ』の呪法を解いて大量の血溜まりに戻し、それを使ってUC!
無念や未練抱えし死者に仮初の器と戦う力を与え「再生」させますわ!
(再生した彼らには誰かを護りに行くも、敵に対し恨みを晴らすも好きに任せます)
後は相手の攻撃を《武器受け》たり《闇に紛れ》て回避しつつ、
『シュバルツシュテルン』で切りつけ傷を抉り、
更には呪詛を浴びせて弱らせ仕留めていきますわよ!
●浮世の恨み晴らします
紋章となりかけた亡霊(オブリビオン)の攻勢は止まることは無く、一つ見れば三十は確実ともいわれる虫にも似た、背に蠢く触手の生理的な嫌悪感が猟兵を煽る。
貴族に隷属せし錆付いた鎧の戦士達は今も尚、そこらに存在する生贄予定の民へとその魔手を伸ばす――が。
その手へと撃ち込まれた矢が、伸ばされた魔手を文字通りに射抜きその動きを止めていた。
「やっぱり先にそっちを狙う気ですの!?」
予想通りといえば予想通り、されど当たって欲しくはない――非道な隷属戦士達の行動に怒りを交えてメリーが叫ぶ。彼女の手に握られたクロスボウが、今正に隷属戦士の魔手を射抜いたのは明白か。
されど戦士は一瞥し、不快そうに矢を引き抜き放り捨てると、引き続き怯える民へと向かう。
「ああ、そうですわね!」
呼びかけに答える義理も無し、なればこちらも徹底的に抗い、そして斯様なモノならば猶更に遠慮する道理も無く。
生存者に向かわんとする戦士達へ容赦なくクロスボウを撃ち込み、宛らもぐら叩きのように一歩を踏み出せば打ち込むモノがそれを制し、後退させていく。
一進一退の攻防にも見えたがメリーが撃ち込んだモノは矢ではなく、赤赤と輝く結晶。それは彼女自身の血を固めたモノ――既に撃ち込んだ数は十二分。
メリーがこれを機と見ると、撃ち込まれた結晶が爆ぜ紅薔薇の敷き詰められた戦場を塗り替えるように、艶やかな血が広がっていき――メリーは今、その血を対価に解き放つ。
「この血を糧に、その遺志を遂げるための刃を与えます。その想い、果たして見せなさい!!」
――解き放ったモノは今正に、ここまでの道程で乗り越えてきた彼等の、無念、絶望、哀しみ、苦しみ……血に取り込んだ全て。
生ある者としての尊厳も命も奪われ、死後の安らぎも奪われ隷属を強いられ続けた者達の想いが、仮初の肉体を与えられ立ち上がっていく。
「大盤振る舞いですわ! さぁ、お行きなさいッ!」
号令の下に一時の命を得た彼等は往く。
メリーの血に由来する強力な呪詛という武器を持ち、自らを死に追いやった隷属戦士達に牙を剥く者もいれば、まだ助かる命を助けに行く者も様々に。
命を奪った憎悪や、同じ目に遭わせぬという決意の下に仮初の命は動き無念を果たしに行くのだ。
「……」
当然のことでもあるが、メリー自身もまた蘇った死人達に全てを任せている訳もなく。
闇に紛れその身を隠し、民に向かって翳されたフレイルを波打つ黒き刃で横薙ぎに流し。
返す刃の波打った刀身が齎す、抉るような傷口が戦士の身を苛めては流し込む呪詛がそのまま塵も残さずに戦士を消し去るのだった。
大成功
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四季乃・瑠璃
緋瑪「悪趣味な寄生虫の材料になってさせないよ」
瑠璃「全て刈り尽くしてあげる。容赦はしないよ」
瑠璃が人々の間に割って入る様に立って雷撃【属性攻撃】を付与したK100による早撃ち【ドロウ、早業】で牽制や敵のマスケット銃を弾き落とす様に銃撃。
その隙に機巧大鎌の機巧【推力移動】で一気に接近した緋瑪が敵の盾や鎧ごと大鎌で両断【切断、鎧無視、鎧砕き】し、敵の攻撃を【見切り】で回避しつつ、残った敵を接触式ボムによる一斉爆破で爆砕【範囲攻撃、鎧無視、鎧砕き、爆撃、蹂躙】。
瑠璃も遠距離からK100で緋瑪の援護しつつ、生贄狙いで近寄って来る敵を大鎌で首を刎ね飛ばし、ボムで爆砕して撃退。
全てまとめて狩り尽くしてやる
●殺して滅す
背中に触手を生やし、それを蠢かせた存在の群れを成して次々と湧き出る様は、一匹見れば何とやらな生理的嫌悪感の強い存在を思わせる。
それが今にも、棘の備えられた盾を前に突き出し、金属の軋みも賑やかに怯える民へと迫っていく――損失を防ぐ為にと。
だが棘付きの盾が民を無残な肉塊に変えようとしたその時、迸る紫電を伴った一つの弾丸が、隷属戦士の勢いを一つ制していた。
僅かな硬直の間に、颯爽と尾のように藍色を風に流し、血塗られたような赤い片目に凍てつくような殺意を宿し、殺人姫の片割れにして主人格は民と戦士達の間に躍り出ていた。
その手に改造大型拳銃を構え、機関銃もかくやなる銃撃の数々は、銃弾に纏わせた紫電が強かに鎧姿を打ち据え、彼等が持つ古式ゆかしいマスケット銃も取り落とさせていく。
その間に、戦士達の民の間に立つ瑠璃よりも前に勢いよく出でて戦士達に斬り込む姿が在った。
瑠璃とほぼ等しい姿をし、彼女から別たれた魂の半身、緋瑪がその手に死神の鎌が如き大鎌を持ち、仕込まれた炸薬を爆ぜさせ疾風の如く踏み込んでいた。
「悪趣味な寄生虫の材料になんてさせないよ」
「全て刈り尽くしてあげる。容赦はしないよ」
言うが早いか、一気に踏み込んだ緋瑪がその勢いのままに大鎌を振るい、構えられた盾ごとに鎧を両断する。
曲がりなりにも金属を相手にしたにも関わらず、美しき断面を見せる程に速く、そして鋭く弧を描く刃は次々と戦士達を斬り伏せて。
更に置き土産と言わんばかりに放った接触式の爆弾の大火力が、戦士達を粉々に吹き飛ばしていった。
それでも背後から緋瑪を叩き潰さんと、棘付きの盾で突進を試みたが、それは瑠璃が放った銃弾によって制されて。
「「絆が私の力……私達の絆は誰にも負けない!」」
――重なる声に隷属戦士達はたじろぎつつも思考を変える。この二人を相手にするよりも少しでも多くの血を啜ると。
だが伸ばされた魔手は届くことはなく、お見通しと言わんばかりの瑠璃からの大鎌の一撃が得物ごとその首を刎ね飛ばしていた。
「もう大丈夫だよ。こいつらはわたし達が殺す」
「これで終わりにしよう。その非道も、お前達の命も」
「「全てまとめて狩り尽くしてやる」」
その言葉を引鉄に続々と巻き起こされる熱と衝撃の圧が、血を啜り上げた証の悍ましい触手ごと、隷属戦士達の身体を塵も残さずに消し飛ばし。
数々の血を啜り上げて咲き誇るかのような、身の毛もよだつ美しき紅薔薇もまた爆発の余波に巻き込まれ花弁を散らし、灰となっていき――血腥い祭壇は風通しのよくなったかのように幾許か血の臭いも焼き尽くされていた。
大成功
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第3章 ボス戦
『深海蜘蛛アモウ』
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POW : ボクの世界へようこそ!
【吐いた糸】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に張り巡らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : きみはとてもおいしそうだ!
【血を欲する本性】に覚醒して【完全体の蜘蛛】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない
レベル×5体の、小型の戦闘用【毒蜘蛛】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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●殺戮の貴族
無事に無辜の民を守り抜き、紋章となりかけたオブリビオンを撃退した猟兵達。
囚われた民に死者は出ることもなく、後は彼等を連れ出せば、受け入れ先の拠点に任せられるだろう――だがその為には、後顧の憂いを絶たなければならない。
「何ということを!!」
そう考えていると、絹を裂くような悲鳴が響き渡った。
目立たない物陰に避難させた民に、この場から離れないようにと忠告すると、猟兵達はその声の下へ出でた。
「よくも、よくもよくもよぉぉぉくぅぅもぉぉぉっ!」
その声の主――まるで蜘蛛の上に人が合体したかのような姿。緩い癖のある薄紅色の髪は可愛らしく、仄かに光る様は美少女のようにも見える。
だが――隠し切れない嫌な血の臭いと、傲慢さを隠さない醜い声は、それが悍ましい怪物達の長であることを伺わせていた。
それは猟兵達の姿を見ると、その顔を途轍もなく醜く歪め、怒りに唾を撒き散らす。
「ここまで作るのにッ! どれだけ努力したと思っているんだ!? それを、無慈悲にッ……君達には情というものが無いのか情というものが!!」
悔しさと怒りに顔を歪ませ、第五の貴族こと【深海蜘蛛】アモウは猟兵達に無礼にも指を突き出して喚く。
猟兵達以外に眼中にない、といった顔で、迸る様な敵意と殺意が猟兵達に向けられる――余程のことが無い限りは、自分の紋章作成を台無しにした猟兵達の殺戮を優先するのだろう。
「こうなれば君達の血で多少は補って貰おうッ! 謝罪と賠償を請求するッ!!」
……敵は強大な第五の貴族。その上、紋章を狙わなければ攻撃はほぼ通らない。
よくよく見れば背中の辺りから、何やら不穏にして強大な気配が伺えるが、その位置にあるのだろうか。
いずれにせよこれ以上の悲劇を繰り返させはしない為に――第五の貴族との決戦が今、始まった!!
メリー・スペルティナ
お生憎様、わたくしは死者の声を聴くものですけれど
貴女のような輩にかける情なんかありませんわね!
……そんなに血が欲しいなら、『使い捨て血晶石』を投げつけてやりますわ
お望みの血ですわよ!呪詛を帯びてますけれどね!
後は……多分後ろを狙えばいいんですのよね?
向こうが糸を吐いてきたらそれを見切ってUC【強化呪式:紅の冥霧】!
紅い呪詛持つ霧に変わり、背後を取りますわ!
霧の状態なら攻撃等を抜けるのも楽でしょうし、足元の状態も無意味。そもそもこの霧はこの血と同じ、下手に触れれば想いを奪われ、呪詛を浴びる羽目になる
背後を取れればそのまま『シュバルツシュテルン』で思いっきり斬りつけて更に傷を抉ってやりますわよ!
●毒を喰らわば
まるで駄々を捏ねている子供のよう――傲慢を極めた存在がそうであることは珍しくも何とも無いが、癇癪を起こした哀れな子供めいた姿に声も出ないか。
そんな中に、漸くに口をメリーは開いた。
「……そんなに欲しいのでしたら、差し上げましょう」
――反吐が出る程に、実に嫌な存在にはそれで十二分に相応しい。
見開かれた目と同時、メリーの投げつけた紅い結晶が第五の貴族の前で弾け、淡い色合いの可愛らしくもある見た目を血で汚していく。
曲がりなりにも血は血、敵に塩を送ってしまうのか――そう思われたが、血を真っ向から浴びた貴族は、急に肌の熱く焼かれるかのような苦痛に身を悶えさせ聞くに堪えない叫び声を挙げた。
「ぐぁぁぁっ!?」
「お望み通りの血ですわよ! 呪詛を帯びてますけれどね!」
実に悪役めいた令嬢の笑い声が響きそうな、メリーの宣言にアモウは分かりやすく顔を鬼のように怒りで歪め、メリーを強く睨みつけるとおどおどろしく声を絞り出した。
「罪は重いよ……!」
損傷にしてそれほどでもない、されど求めるものと期待した僅かな喜びを、最悪の形で汚された怒りはそれ以上なのか。
ふつふつと湧き上がる怒りを紡ぎあげるように、アモウは糸を浮かべるとメリーを捉えるべくそれを放射状に解き放った。
だが――
「何ッ!? 霧化だって!?」
「ふふん、わたくしだってやれば出来ますのよ!!」
実際には強化の呪法の一つだが、それを態々に言う必要も無し――蜘蛛糸の解き放たれると同時、メリーの身体は紅い霧と化していた。
吸血鬼の持つ力、身を霧と変える力の前には、緻密な蜘蛛糸ですらも容易くに潜り抜ける――白い蜘蛛糸に映える紅い霧が抜ける様は、宛らに叶わぬ捕縛を煽るかのようにも見えた。
「ぐぅっ……! 容赦と加減というモノを知らないのか!」
無論、その霧は唯の霧に非ず――たっぷりと呪詛の込められた其れが通り過ぎていく度に、想いを奪われ呪詛に焼かれ行く羽目となる。
筋違いな苛立ちをぶつけるアモウに、実にハッキリと通る声でメリーはこう返した。
「お生憎様!」
――背後は既に取った。読み通り、緩いくせ毛の隙間から覗く悍ましい紋章の輝きが其処に在る。
「わたくしは死者の声を聴くものですけれど……貴方のような輩にかける情なんかありませんわね!」
ましてその死者の死後の安らぎすらも奪い、己に隷属させるような【エコロジスト】には猶更に。
気付き振り向こうとした時には既に遅く、アモウの背に蠢く紋章は波打つ刃の齎す凄惨な傷が肌と肉を悍ましく抉り出し。
流し込まれる報復の如き呪詛が、かつてない殺戮者に苦悶の叫びを挙げさせていた。
大成功
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四季乃・瑠璃
緋瑪「そっちの苦労なんて知った事じゃないけどねー」
瑠璃「情なんて言葉が吸血鬼から出るとは思わなかったね」
二人で敵の繰り出した毒蜘蛛を感知式ボム【範囲攻撃、爆撃、蹂躙】で爆破すると同時に爆煙に紛れて煙幕式ボムで煙幕を展開。
二手に分かれ、瑠璃が煙幕の中から凍結魔術【属性攻撃】を付与したK100による銃撃を浴びせて気を引き、緋瑪が背後から接触式ボムで背中の紋章を爆破。
前後から挟み撃ちして痛手を負わせ、前後からの焼夷式ボム(焼夷爆弾)で炎で包み、敵が炎に巻かれてる内に魔力をチャージ【力溜め、限界突破】。
ジェノサイドノヴァで消し飛ばしてあげるよ
緋瑪「幾つもの命の代価、支払って貰うよ」
瑠璃「賠償としてね」
●殺しの誓いに
「ボクがどれだけ苦労したか……寝る間も少しだけ惜しんで苦労して……ッ」
筋違いな逆恨みに怒りを迸らせ、蜘蛛の如き八本脚で地団駄を踏み鳴らすアモウの言葉を、投げ放たれた爆弾が強引に捻じ伏せた。
真面に当たっても尚、僅かに皮膚が赤くなった程度――されどそれは十二分にアモウの怒りを煽り、気を惹くに十分で。
「そっちの苦労なんて知った事じゃないけどねー」
「情なんて言葉が吸血鬼から出るとは思わなかったね」
背には魔導と機械の混成方式(ハイブリッド)の翼を広げ、得意とする爆弾の力を最大限に高めた二人で一人の殺人姫、瑠璃と緋瑪がそれぞれに言葉を紡ぐと、アモウは肩を震わせて。
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない……ゆ・る・さ・な・いぃぃぃっ!!」
怒りに任せ解き放つは無数の毒蜘蛛――総数にして千は下らぬ無数の毒蜘蛛。一匹一匹が人を殺めるに足る、猛毒を備えた存在が牙を打ち鳴らし紅薔薇を埋め尽くす勢いで広がる。
「別に許されるつもりも無いけど」
「これ以上、聞きたい声でも無いね」
されど有象無象の群衆など彼女達にしてみれば悪手も良い所、すぐ様に仕掛けた感知式の爆弾より放たれた熱風が容易くに文字通り【蜘蛛の子を散らす】
それに留まらず、爆風に紛れる形に投げ離れた煙幕が彼女達の姿を覆い隠す――例え攻撃そのものが効かなくても視界を封じられることに変りはない。
されど傲慢な貴族は、それを背後にだけ気を回していればいいと思ったが誤算、撃ち込まれた弾丸より体温を奪われ体を霜で覆われ始める。
それが煙幕に隠れた瑠璃の放った弾丸であることは知らぬが、隠せぬ苛立ちに注意が散漫としたが命取り。
背後からの痛烈な一撃――緋瑪がその隙に回り込む形で投げ放った爆弾が、アモウの紋章に痛打を与え膝を着かせ。
振り向けば今度は瑠璃の放つ爆弾が、またに振り向けば緋瑪が――挟み撃ちの形を呈し着実にアモウを追い詰めていきながら。
投げ放たれた爆弾の一つより広がる紅蓮が、アモウの身を包み込み、周囲の酸素を焼き払いながら呼吸を奪い苛める。
「幾つもの命の代価、支払って貰うよ」
「賠償としてね」
「「さぁ、今こそ殺人姫の誓いを果たす時!!」」
炎を漸くに振り払い、奪われ続けた酸素を取り込むのも一時、アモウの胸と背の両方を強く圧迫する、重たく不穏なモノが押し込まれていた。
それが殺人姫達が投げつけた、彼女達の全ての魔力を込めた殲滅の名を冠する必殺の爆弾であり――目を見開いた時には乾いた音を立ててカウントは終わり。
迸る光の柱は地下の天井も貫く程に強く立ち昇り、超新星爆発もかくやの熱量は血を吸い上げた悪しき結晶諸共に第五の貴族を灼いていった。
大成功
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ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
よくもまぁ、ここまで被害者ヅラ出来るもんだな。
言っておくがお前がしてきたのは「努力」なんかじゃない。「非道」だ。
だから、非道も悲劇もここで終わらせてやるよ。
シャーリーと協力し、アモウの弱点の紋章を狙う。
彼女が飛び回って挑発している間、俺は毒蜘蛛の群れを相手に劣勢を演じながらアモウが背中を見せる機を待つ。
奴が背中を見せた瞬間、【厨火三昧】の炎を紋章に向けて集中攻撃。
背中の紋章の位置さえわかればたとえ背中をこっちに向けなくても見当をつけて狙う事は出来る。
毒蜘蛛を大包丁の斬撃の【衝撃波】の【範囲攻撃】で蹴散らしながら、【厨火三昧】の炎を操作してアモウの背中の紋章をひたすら攻撃し続ける。
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
え、なにこのおっきなブーメラン!?
謝罪と賠償を請求したいのはボクたちだよ!
言葉が通じそうにないので問答を切り上げて【エクストリームミッション】発動
空中を飛び回って【空中戦】で糸を回避しながら背後に回り込もうとする事で【挑発】し、アモウがウィーリィくんに背中を向ける様に仕向ける
ウィーリィくんの攻撃が当たったらボクもビーム銃の【乱れ撃ち】+【目潰し】で隙を作ってその間に背後に回り込んで熱線銃の【スナイパー】+【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で熱線を一点集中!
逃れようとしても【エクストリームミッション】の猛スピードで回り込む
ボクの熱線からもウィーリィくんの炎からも、もう逃れられないよ!
●泥沼の如き怪物より吐き出さす血
戦いは佳境を迎え、場に迸る戦の熱は敷き詰められた薔薇を萎れさせるほどに高まりを見せていた。
数多の傷を負いながらも立ち上がり、殺戮者の紋章を背より悍ましく輝かせ闘気を滾らせるアモウは只管に地団駄を踏み続けていた。
「あああああああ! 酷い酷い酷いッ! か弱い者を一方的に虐げるというのか君達はッッ!!」
何処をどう見て、この貴族をか弱いと称せるのか、そして自分の為してきたことを気持ちの良いぐらいに棚に上げた姿に、シャーリーは驚きを隠せなかった。
「え、なにこのおっきなブーメラン!?」
「よくもまぁ、ここまで被害者ヅラ出来るもんだな。投げるどころか自分で自分に当ててるぞ……」
シャーリーの言葉にウィーリィが眉間に皺を寄せながら続ける。
ここまで来れば不快を通り越して呆れが湧いてくる――尤も紋章を産みだす過程と、【エコ】と皮肉られた【警備員】を思えば不快は消せないが。
二人からの心底に軽蔑めいた視線にだけはやたらと敏感に、肩を震わせたアモウは両腕を大袈裟に広げた。
「君達までボクを馬鹿にするのか……許さないぞ! ボクの今までを踏み躙った報いを受けるがいいぃぃぃっ!!」
背中の殺戮者の紋章が濁った輝きを放ち、戦場に千は優に超える無数の毒蜘蛛を産み出し、二人に嗾けられていく。
シャーリーは咄嗟に全身に纏った鎧のバーニアで空へと逃げるも、地に立つばかりのウィーリィは容赦なく追い詰められる。
ウィーリィも必死にて大包丁と鉄鍋を以て、果敢に毒蜘蛛を蹴散らしていくも、劣勢は隠せないと見えた。
「ほらほらほらぁ!」
なればと空を飛び回るシャーリーへと狙いを集中させ、蜘蛛糸を放ちづけるアモウであったが、空を自在に翔け巡り華麗に躱していくシャーリーの姿に、次第に苛立ちを強く見せ始めていった。
「こっちだよ! 捕まえてごらん?」
――冷静であればそれが挑発であったことに気付けただろう。
だが飛び回り悉く蜘蛛糸を躱していくシャーリーの存在は、確かにアモウを苛立たせ思考を乱していた。
故に――丁度ウィーリィの対角線上の位置へ飛んだシャーリーを身体ごと振り向いて追おうとしたことは、致命的なミステイク。
「言っておくが」
短く強く放たれたウィーリィの言葉と同時、言葉と同じくして強く振るわれた大包丁の刃と迸る衝撃が数多の蜘蛛を散らす。最初から劣勢は演技と示すかのように。
――大まかな位置は分かっていた。だがこうして背を見せてくれたことで、ハッキリとその存在は頭に刻まれた。
故に今こそと、ウィーリィは極めに極められた、原初の炎すらも従える料理人の妙技を以て炎を嗾け、アモウの背中を強く打ち据えた。
着弾の確かな質量を持つ程に圧縮された火炎と、当然、集約された熱量が確かに殺戮者の紋章を強く焼き、アモウに少なからぬ痛打を与えていた。
「お前がしてきたのは【努力】なんかじゃない。【非道】だ」
多くの血を吸い上げて欲望のままに悪しき道具を作り続け、吸い上げた命の死後の安らぎすらも奪い続けてきた。
乗り越えてきた道で味わった心の痛みは、鮮明に今も心を侵す――故に。
「だから、非道も悲劇もここで終わらせてやるよ!」
「謝罪と賠償を請求したいのはボクたちだよ!」
突き付けられたシャーリーのビーム銃から迸る、豪雨の如き閃光がアモウに降り注ぐ。
紋章に当てねば効果は薄いといえど、迸る光と熱が眼の前を過ぎれば、確実に視界は乱され僅かな硬直も産まれ。
その隙にバーニアの噴き上げる気流の圧も激しく、勢いよく背後に回り込んだシャーリーの放つ熱線銃の怒涛の如き攻勢がウィーリィの手繰る炎と同時に、次々と叩き込まれていく。
「くっ……!」
続けられる猛攻に流石にアモウ自身も危険と見たか、八本脚を以て強く地を蹴り逃れんとしたが。
「遅かったね? ……逃げられると思ってた?」
まるで予測していたかのように、アモウの真ん前に回り込んでいたシャーリーの姿は、纏う鎧の形からも宛らに不意を打つかのように現れた大サメが顎門を開いていたかにも見えて。
「史上最大・空前絶後のサメからは、逃げられないんだよ」
勿論、彼の炎からもね――その言葉が紡がれたのと同時、アモウの背をまたもやまたも、執拗に追い縋る炎が打ち据えた。
必死にて背を隠そうとも、的確に回り込んで容赦なく焼いていく炎から逃げようとしても、その先には常々に【サメ】が回り込む。
そして――その【サメ】の射抜くような眼差しは只管にアモウに被捕食者の立場を教え込まされるようで、回り込むと同時に放たれる熱線が身を貫き焼いていく。逃げ惑っても絶対的な狩人はそれを追い詰め、弱点である背を幾度となく苛める。
「畜生、畜生、畜生畜生畜生ッ!」
次第に崩れ行く体に命の終わりが来ようとしていることが否応なしに分かったとしても、我儘放題の貴族はそれを認められず。
八本脚の地団駄を只管に踏み鳴らし続けては、毒蜘蛛と蜘蛛糸を乱れ飛ばし続けるも、それはすぐ様に通り過ぎる光熱と炎熱が一瞬で灰と変えていた。
「焼き尽くしてあげるッ!! 覚悟の時間なんて、絶対あげないッ!!」
「お前が喰らって弄んできたみんなの命、希望、未来、尊厳、安らぎ……その全部、報いを受けろ!」
本格的に絶望に顔を歪めたアモウへと、二人の言葉が重なり、そして――滾り続ける原初の炎と、弾かれる引鉄が放つ流星群の如き熱線は。
苦悶の叫びすらも焼き尽くし掻き消すように盛り、殺戮者の紋章諸共に悪しき貴族を塵すら残さずに消し去るのだった。
●吐き出された血の果てに
ここに数多の命を弄び、吸い上げ続けてきた第五の貴族は潰えた。
失われた命は決して戻りはしないが、それでも彼等の命によって紡がれた悪しき遺産が蔓延ることもなく、死後にまで弄ばれ続けた命も安らかに眠れるだろう。
そして虐げられ続け、先人達の後を追わされそうになっていた民は、無事に幾つかの闇の救済者達の拠点で受け入れられていった。
彼等の受け続けてきた肉体的、精神的な苦痛は簡単には癒えるものではないのかもしれないが、人類の拠点で安心して過ごしていれば、遠からぬ未来に傷は癒えていくことだろう。
紋章。
ただでさえ強力な敵を強化し、猟兵達ですら苦戦を免れぬ強大な力を生みだす負の遺産。
その作成方法の悍ましさを知りながらも、紋章を産みだす拠点を一つ潰し、無事に守り抜いた民の存在を確かに、猟兵達は最早なにも産み出さず朽ちていくだけの祭壇を後にするのだった。
大成功
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