4
バッドラック・リターンズ(作者 やさしいせかい
7


#アポカリプスヘル 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル


0



●平穏
 どこかで風が吹いた気がした。
 気がした、というのは。そこは『凪』で囲われた空間だったからだ。
 黄昏が荒野を包む中、金髪の男は上等なクッションを敷いた車椅子に背を深く預ける。男がいる場所は【崖上の鳥籠】と呼ばれる小さな『拠点』だ、断崖絶壁に並んだ斥力発生装置と自走砲や戦車が囲む中にある事からそう呼ばれていた。
 防衛手段はたった数両から成る砲撃隊しかない。傍目に見て貧弱な拠点、それが金髪の男が抱いた感想だ。
 この集落めいた拠点は他にも、空域の敵対者を防ぐ名目で複数の斥力による壁で囲んでいる。が……それも空爆クラスやミサイル、『荒野の怪物』の侵入を防ぐ事は難しい。
(ふつーなら俺様がこんなトコに身を置くのは有り得ないんだがな。だがもうバイクの燃料も少なかったし、ぶった切られた腕を繋いだばかりで感覚も戻ってない……しゃあねえってやつだな)
 男は今、防護服や強化外骨格のアーマースーツを着ていない。
 確かに防衛機構は貧弱だし、立地も悪く、物資に乏しい。拠点と言うには発展途上にも程があるが、どこも最初はそんな物だと彼の経験が許容を示していた。それに彼は断崖絶壁という悪立地を好意的に見る事にした。これは逆に考えればレイダーや怪物の襲撃は通常よりも少なくて済む、そんな淡い理由だった。
「奪還者さま」
 男の後ろから少女の声が掛かる。
「お体に障ります……そろそろ休まれた方が良いのではないでしょうか」
「やーあ、お嬢さん」
 そっと車椅子に触れて来るように近付いて来たのは、男とは違う赤みを帯びたブロンドの髪の少女だった。
 齢は未だ冬を十三越したばかり。金髪の男からすれば若過ぎる手合いだったが、しかし奪還者を持て成すセオリーを半ば理解した連中が運営していた為にあてがわれた、拠点からの接待役だ。
 自らの身を案じてくれる少女を振り返り、金髪の男は何となしに作った笑顔で迎えた。
(膨らみも肉付きも足らんが……まあ、将来的に見れば器量良しってヤツだしな)
 少女の身体は細く、華奢に過ぎる。
 腰に差している拳銃も軽量化の改造を施されている事から、筋量も少ないと見える。それでも金髪の男が邪険にしないのは、少女の気性が得難いものだと知っていたからである。
「お嬢さんも見ておくといい。荒野の空は変わりやすい……斥力に護られたこの拠点の内や外から見て分かるように、太陽が出ていない時は頻繁に観察すべきだ」
「汚染された雨雲や砂嵐を回避する為ですね」
「その通りだ。あれの何が性質悪いかと言えば、時にその嵐の中心部にとんでもない怪物が潜んでいる事がある点だ」
「荒野の怪物……ですね」
「そうさ。俺みたいな凡人は逃げるか、遠くから銃弾をばら撒いて援護する事しか出来ないような化け物だな」
 話ながら、車椅子を少女が押す。
 背後の方から慌ただしい声が聴こえて来たからだ。物資か装備のどちらかが運び込まれたのだろう、大型装甲運搬車が大きな駆動音を響かせてコンテナを下ろしている様だった。
 これである。
 この少女はただ、金髪の男の話が遮られる事を恐れて気を利かせてくれる。腕の怪我を案じて車椅子を用意してくれる。熱にうなされた時など、一晩を費やして傍に居てくれる。
「存在が嵐の様な恐ろしい怪物どもだが、なんてことはない。そういう連中が来る時は必ず前兆があるし、空の色を変える……充分にアンテナを張ってりゃ逃げる時間はあったりするもんだ」
「さすが奪還者さまです。生まれも分からない私ですが、荒野で生活している時間は多分長い方です。なのに奪還者さまに言われた『空の色』というのは……どうしてもよくわかりません」
「そりゃ、経験ありきだからな。つっても意識しなきゃ得られない経験だ、お嬢さんも繰り返す事で自然と身に着くだろうぜ」
 見上げれば、幼くも整った少女の顔には真剣な表情が浮かんでいる。
 荒野で戦い、旧文明の遺跡を探索しては拠点に持ち帰る『奪還者』の経験則から得た話だ。彼女にしてみれば今後を生きる上で参考にしなければならない。
 ただ……それにしても。
(良い娘だ)
 金髪の男は夜天を見上げ、それから包帯に巻かれた腕を見下ろす。
 "通り過ぎる"には惜しいものを見つけてしまった彼は、今後の予定を少しだけ変えつつあった。
(銃を握れる程度に回復したら、暫くこの拠点で活動するのも悪くない)
 男は少女の寄り添う手に手を重ね、その細く白い指先が傷ひとつない事を確かめると静かに笑った。
「お嬢さんはイイ女になるぜ」
 願わくば、この手が荒野の土で汚れる事が無いように。
 そんな淡い想いを乗せて。

●打倒、撃滅、駆除
 グリモア猟兵のシック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は順を追って話始めた。
「感覚的に今回は、予知夢に近い奴だと思う。
 断崖絶壁にある小さな拠点をオブリビオンが襲うみたいなんだ。襲撃者は識別名【荒野の王】……ストームから蘇った独裁者のオブリビオンだね、此奴の目的は崖上の拠点を制圧して自身の所有していた巨大戦艦の主砲を設置するつもりだ。
 多分だけどこの拠点から近く……もしかすると遠いかも知れないが、いずれにせよ砲撃の射角に相応しいんだと思う。放っておけば現場の拠点ともう一つの拠点が潰される可能性が高い」
 シックは真剣な表情で「必ず阻止しないといけない手合いだね」と言って、次いで別の猟兵達に向き直る。
「拠点の住民は全員皆殺しにされる。行った先で手遅れってことはないと思う……けど、この予知には続きがある。
 この拠点から逃げ出した人達がすぐ近くで別のオブリビオンに襲われてるんだよ。どれも【荒野の王】みたいな、強敵だ。だから逃げ出せても結果的に言えば一人も助からない。
 どんな因果が重なった結果か知らないけど、こんなの小さな拠点じゃなくても潰されておかしくない。運が悪すぎる」

 ――機械化武闘集団【機拳流】の強襲。
 ――飢えた獣、【ガブリエル・ラチェット】の来訪。

 十二人から構成された、戦車すら打ち砕く武術家の集団に加え。長い間猟兵達に討伐されてこなかった為に成長した個体のオブリビオン。
 シックは朧気な、霧がかった夢の内容を説明して行く。
 オブリビオン【荒野の王】に勝利しても次なる敵とは確実に連戦になると告げて――。


やさしいせかい
 初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。

「シナリオ詳細」

『第一章:ボス戦』
 単騎の強敵とのボス戦です。
 断崖絶壁にある拠点を襲撃して来たこれを皆様には迎え撃つと共に撃破して頂きます。
 強力なPOW型の突撃能力、猛攻のSPD型の至近・中距離戦闘能力を有しており、メタ的に言えばWIZ型のUCの演出描写はこれらの複合となっています。
 自らを最強の戦術機と称するだけの破壊力に秀でている相手です。見過ごせば拠点の住民等が犠牲となります。

『第二章:集団戦』
 強力なオブリビオンとの戦闘の余波を感知して寄ってきた集団との戦闘です。
 詳しい能力や描写は開幕時のOPで描写予定。体術に秀でた強敵が猟兵に襲い掛かります。
 この章では拠点内の協力者がおり、皆様から支援を要請されればフレーバーながら支援砲撃と囮役を買って出てくれます。

『第三章:ボス戦』
 第二章からほぼノンストップで始まるボス戦です。
 獰猛にして静寂。残虐的で、野性的な勘に長けた獣。その他詳細は三章になってからのOP開始時に描写等で判明します。
 第三章では協力者は不在の為、戦闘には参加できません。

 前章参加済みの方など、希望があればダメージや疲労が蓄積している状態を描写します。(【疲労orダメージ有】などの表記のあるプレイングに対応します)

●当シナリオにおける描写について
 三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。
 また、三章通して戦闘オンリーなシナリオになると思われます。

●プレイング受付につきまして
 各章OPの描写送信から、約三日以内に送信されたプレイングから執筆・納品の順番となります。
 その為、同行者がいる場合を除き他参加者との共闘描写が無いまま進行する可能性があります。
 プレイングが流れる事の無い様にするため、速度と品質維持のための対応となります。ご了承下さい。(それでも流れてしまった場合は恐縮ですが再送して頂ければと思います!)

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております……!
19




第1章 ボス戦 『荒野の王』

POW ●覇王の刻印(ロード・オブ・ハイペリア)
全身を【覇王の刻印のもたらす超重力の力場】で覆い、自身の【混沌の荒野を恐怖で統治し、秩序を築く意志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD ●この私こそが我が軍の保有する最強の力なのだよ
【戦車砲を軽く弾き返す無敵の肉体と反応速度】【伝説の黙示録CQCと冷静沈着な判断力】【片手に持った支援重火器による激烈な弾幕】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ ●殲滅が望みならば応えよう
【執務を行う陸上戦艦“凱王”を殲滅形態】に変形し、自身の【持つ統治者としての最後の慈悲の一欠片】を代償に、自身の【指揮する機甲死人大隊と試作超能力強化小隊】を強化する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は才堂・紅葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●――不運の始まり――
 まずそれは、レーダーが捉えた。
「何だ……? やたらデカい金属反応が警戒網に引っかかったぞ?」
「ドローンを出せ。対象の進行速度は?」
「520.08km/h……全長90メートルの鉄塊だと!?」
 テントの中でモニターを見ていた男達がそれぞれ顔を蒼くして立ち上がる。
 飛び出した彼等の行動は早かった。すぐに防衛兵器の管制役に指示を出し、拠点を包む斥力発生装置の出力を上げるように命令を出して行ったのだから。
 拠点を囲うように配置されていた自走砲の砲塔が索敵機とデータ連動し、『飛来してくる』敵影に向けて即座に砲撃を始めた。
 しかし本来なら視認出来る距離ではない空中で、発射された無数の砲弾が爆発した。
 誤爆ではない。
 砲塔が向いた瞬間に攻撃を察知した敵が急加速して、砲撃のことごとくを迎撃したのである。

「……嘘だろう」
 その悪夢の様な光景を見たのも、何が起きているのかを察したのも一人だけだった。
 高速で動き回るモンスターが出没する事は珍しくない。ゆえに拠点が有する防衛装置はいずれもそれらを捉えられる様に、データ連動による情報蓄積を以て行われる演算によって自動で敵を砲撃するように設定されていた。
 その自走砲や対空砲が、首を振り乱すように右往左往しながら拠点直ぐ傍の上空を撃ちまくっては紅蓮の花火を連続させていたのだ。
 それを見ていた金髪の男は高性能な機械ゴーグルを頭部から外して。それから車椅子から素早く立ち上がり背後のテントの中へ入って行った。
「奪還者さま……?」
「逃げるぞ」
 テントの中では、長いブロンドの髪を濡らした少女が毛布の中から出て来ていた。
 不安気に男を見上げながら問いかけて来る彼女に、男は短い言葉を告げながら防護服を身に着け始めていた。包帯を巻いていた腕にもアーマーのガントレットを装着した彼は激痛に顔を顰め、しかしそれでも無理矢理にベルトを締めて見せる。
 テントの外で大きな爆発音が鳴り響く。
 鼓膜だけでなく大気も震わせるような尋常ではないその轟音に、少女が短い悲鳴とともに目を瞑った。
「いったいなにが……奪還者さま!?」
「ここはもうダメだ。一刻も早く逃げなければ死ぬ」
「待って下さい、せめてそれを父に報せないと……!」
「俺の足で逃がせるのは一人だけだ」
 再度の大爆発に次いでテントの外から転がり込んで来た、焼けた鉄屑を金髪の男が包帯を巻いていない方の腕で殴り付けて弾き返す。
 火花が散り、鉄塊が飛んで来た余波でテントが裂けて弾ける。叫ぶ様に少女が再び金髪の男を呼ぶが、男は濛々と黒煙が立ち込めて来る方向を見ながら脂汗を流して言った。
「どうせならお前を逃がしたい。それだけだ!」
 荒野で着る為に作られた防塵の外套を少女の頭に被せ、訳も分からず叫ぶ娘を抱き上げて男は走り出す。
 その背後で、巨大な主砲らしき物体を浮かせた何かが空間を歪ませ、直後に防衛装置の並ぶ中へ突撃していた。頑丈な鋼鉄の兵器が砂の城でも崩すかのような気軽さで破壊され、たちまちに辺り一帯が火の海になってしまう。
 地獄と化した拠点から一台のバイクが崖を滑り降りる。
 包帯がはみ出たアーマー越しに抱かれた少女は外套の中でくぐもった悲鳴を漏らしている。数十メートルに渡って滑落同然の速度と浮遊感に包まれる恐怖は計り知れない、何よりも家族同然の日々を過ごしてきた拠点の人間が消えてしまう恐怖は年若い彼女にとって重過ぎた。
 金髪の奪還者はそんな少女を包帯の巻かれた腕で抱き寄せ、片手でバイクの姿勢制御に集中していた。
(あれが何かなんて知るか! 畜生、なんつー化け物だ……逃げた奴を追う程のシリアルキラーじゃない事を祈るしかねぇ……!)
 背後から猛烈な熱風が押し寄せる。
 金髪の男はバイクに搭載した索敵機の反応を伺いながら、夜闇の荒野をライト無しで駆け抜けて行く。万一にも灯りを点けた事で追撃される事を恐れたからだった。
(普段からツイてるとは言わねぇが、だからって文句も言わねーよ! 頼むぜカミサマ、嫁にくれなんて二度と思わねぇから……コイツは助けてやってくれよ!)
 男は震える手を強張らせ。折れそうになる心を叱咤するようにバイクを加速させるのだった。


●――全てはこれから――

「何だ……? やたらデカい金属反応が警戒網に引っかかったぞ?」
「ドローンを出せ。対象の進行速度は?」
「520.08km/h……全長90メートルの鉄塊だと!?」
 テントの中でモニターを見ていた男達がそれぞれ顔を蒼くして立ち上がる。
 飛び出した彼等の行動は早く。防衛兵器の管制役に指示を出し、拠点を包む斥力発生装置の出力を上げ、全ての自走砲が敵影に向けて即座に砲撃を始めようとした。
 だが、そこで場の空気が変わる。
 拠点の後方の居住スペースから見知らぬ集団が現れたと騒ぎになっていたのだ。
「何者だ、こんな時に……!」
「それがどうも自分達は助勢に来たと……飛来物の対処は任せろと言っていますが、どうします?」
「戦争の兆しから逃れようとヴォ―テックスシティから逃げてきた俺達だ、今さら逃げ出せるものか。それにまさか荒野の怪物を前にして俺達の背中を撃つ事も無いだろう。
 何者かは後だ、管制システムを支援砲撃に切り替えろ! そいつらに合わせて我々は援護する!」
 拠点のリーダー格の男は汗を流して指示を出して行った。

 慌ただしい夜。
 猟兵達は拠点【崖上の鳥籠】のテントが並ぶ中に到着すると、すぐさま戦いへと足を運ぶのだった。

「……なんだあいつら」
 車椅子に座って見ていた金髪の男は機械ゴーグルを頭から外すと、唖然とした様子でそう言った。



※第一章について
 ボス戦です。支援砲撃や奪還者の協力をフレーバーではありますが皆様は要請できます。
 判定に直接影響するほどのパワーはありませんが、皆様の演出にお役立ちできればと思います。

※プレイング締切につきまして
 本日より『9/20(月曜日)…【8:30】』までのプレイングを優先・速筆で執筆致します。
 いただきましたプレイングが流れる事はほぼ無い筈ですが、本年度の当方は余りにも不運が過ぎるので念のため、参加者様が御許し頂けるようでしたら再送ください。
 以上。
 引き続き、よろしくお願いします。