●武林
強者達が集いし山中。
木と竹に囲まれし地で若者が汗を流す。
「ウェイィィィィッ!!」
化鳥の叫びと共に放たれる雷鳴が如き蹴りが大木を粉砕した。
汗を拭い、深呼吸と共に自らの武を確認した若者。
彼の名は剣。
今は萌芽の時を待つ英傑は趣味である茶の湯に嗜まんと、湯呑を緑色の液体で満たし両膝、頭、そして両腕に乗せる。
温熱が疲労した身を癒し、程よく熱が冷める……その機まで心をいやす。
だが、茶の湯を飲む機会は無い。
何故なら、彼を狙う獣の軍勢が英傑を襲うのだから。
そんなこともつゆしらず、剣は身体に湯呑を乗せていた。
●グリモアベース
「時機到来! グリモアが君達の力を欲さんと呼び掛けた」
最初の四字熟語は中国語のつもりなのだろう。
それに関しては本題からずれるので割愛。
「人界における武の集まり、武林において修行している若い英傑がオブリビオンに襲われるらしい。みんなは彼を助けて敵を蹴散らしてほしい」
グリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)が本題を切り出した。
「敵は複数、数で攻めて来る。でも、俺達猟兵なら問題はない。問題があるとすれば……英傑と呼ばれる若者も武術に身を捧げた男、普通に話すだけじゃ多分納得しないし、独りで戦おうとするだろう」
そこでグリモア猟兵は拳を握り、突き出す。
正拳。
それが意味するのは。
「彼と武術で交流してほしい、一緒に修行をしても良いし、彼と手合わせしてもいい。拳がその持ち主の心を表すというのなら、きっとみんなの想いを受け取ってくれる」
道を交わす標。
同じように武術を嗜む少年のグリモアが輝けば、開かれるは戦いの道。
「彼は今、茶の湯を楽しんでいる頃だ。今から行けば彼と共闘できるし、罠や砦も作り上げることができる……みんなよろしく頼む」
全てを託す若者の目には緊張の色が見えていた。
みなさわ
●タイトルは明らかな嘘言語です。
こんにちは、みなさわです。
今回は若き英傑の危機を救う武術譚を皆様と共に。
●舞台
封神武侠界にある武術の社交場『武林』の一つ。
森林と竹林に囲まれた真ん中に簡素な小屋があるだけの場所です。
●英傑
『剣』という名前の若者です。
いずれ英傑として萌芽する機会があるでしょうが、それは未来の話。
十三の形象を模した武術を使い、興奮すると活舌が悪くなるという悪癖があります。
●章構成
第一章:若者との交流です。一緒に修行したり手合わせをすることで彼に脅威を伝え、敵に備えてください。
第二章:オブリビオンの襲撃です。
第三章:続、オブリビオンの襲撃です。連戦を利用して猟兵達を丹念に揉み潰そうとするでしょう。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
それでは皆様、よろしくお願いします。
第1章 日常
『武を磨く』
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POW : 肉体を磨く
SPD : 武器の腕を磨く
WIZ : 特殊な技術を磨く
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●嵐直前静寂
遠くより迫るは獣の軍勢。
其は妖獣。もはや人で無し。
其は残滓。封神されし過去からの邪悪。
一方。
未来の英傑は茶を嗜む。
頭、両腕、両膝に湯呑を乗せ、満たした茶の湯を揺らさないように。
乱れが揺らぎを生むのなら、心を静かな水面のように。
さすれば鏡となりて、敵と己を知るのだから。
椀が揺れた。
修業は一時の中止。
湯呑をゆっくりと卓へ置くと、君達へ向き直った。
「用件を聞こうか? 武を競うか? 覇を競うか? それとも私に智を学べと? 無理は言わないでくれ、ワタスハブニヨシャシャゲッタンダクァラー」
舌が回らなかったことに若き英傑――剣は赤面し、口元を抑えた。
堆沙坑・娘娘
※アドリブ・連携歓迎
(拱手にて礼)私は堆沙坑・娘娘。
グリモア猟兵という未来を知る術を持った賢人からあなたの危機を知らされ助太刀に参りました。
しかし、いきなりこんな話を聞かされても簡単には信じられないでしょう。
ですので、あなたが私を信じるにあたり必要なことを教えてください。
私はあなたが課す全てをこのパイルバンカー(による【貫通攻撃】)で果たしてみせましょう。(※剣が課してきたことなら手合わせでも修行でも雑用でも受け入れます)
交流の結果、信じてもらうことができたら身外身の法で分身たちを出し、剣の意見を取り入れ彼が戦いやすい戦場と罠を大勢で作ります。
私はどんな戦場や罠であっても敵はただ貫くのみです。
●我貫你
始まりは拱手から。
「私は堆沙坑・娘娘」
堆沙坑・娘娘(堆沙坑娘娘・f32856)が礼節に則り名乗り。
「俺は剣、今はそれが俺の名だ」
剣と名乗りし若き拳士が湯呑を一つずつ卓へと置く。
礼を以って接する相手には礼節で応えるべきと信ずるがゆえに。
その姿に過剰な警戒は無いと悟った娘娘は早速とばかりに用件を切り出した。
「グリモア猟兵という未来を知る術を持った賢人からあなたの危機を知らされ助太刀に参りました」
「俺が危機に……と?」
若者の顔に不安の色は無く。
「それは面白そうだ」
武の下に隠された刃の性が現れる。
「だが、それを信ずるには少々心もとない。鬨の声も聞こえず、軍勢の足音も聞こえないのだから」
けれど拳士は刃を納め、予知という物に対する不確定さを問う理知も持っていた。
「いきなりこんな話を聞かされても簡単には信じられないでしょう」
故に彼よりもはるかに年上である杭の求道者は剣の言葉を肯定し。
「ですので、あなたが私を信じるにあたり必要なことを教えてください」
求め。
「私はあなたが課す全てをこのパイルバンカーで果たしてみせましょう」
そして構える。
「なるほど」
自らの分野へと歩み寄られては若者も断ることは出来ない。
「ならばその技を――見せてくれ」
何よりもパイルバンカーという槍が気になった。
「この一拳が……通じるか、知りたい」
娘娘は頷き、互いに間合いを取った。
土を踏む音、呼吸の震え、視の緊張。
全てを森が包み込む。
二人の拳士の拳と杭が互いに向けられ――息をする僅かな暇が間合いを消した。
鉄と肉がぶつかり、骨と杭がせめぎ合う。
だが決着は――『射出』というもう一手を持つ杭の求道者が信念を貫き。
未知の技に吹き飛ばされた剣はパイルバンカーを信ずるに至った。
「それにしても……お主は神仙か何かだったのか」
娘娘の闘気が生み出した分身が森の中に罠を仕掛けるのを見つめつつ剣は杭の拳士へと問うた。
「私は……」
自らの現身が動く様を見つめつつ、娘娘は右手に持ったパイルバンカーへと視線を落とし、そして答えた。
「どんな戦場や罠であっても敵はただ貫くのみです」
若者は敗北によって求道を知った。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
初めまして。
木常野都月です。猟兵です。
その、俺に稽古をつけてくれないか?
俺は猟兵で、敵と戦う事はよくあるけれど…
その、俺は精霊を使う術師なんだ。
だから、あまり拳や足で戦う機会が少ないんだ。
狐の身体ならともかく、妖狐の身体1つで戦った事が、殆どなくて。
いい機会だし、剣さんに稽古をつけてもらえたら嬉しいな。
剣先生には役不足かもしれないけれど、俺、頑張るから!
精霊様も、チィも手出し無用だ。
精霊術で工夫するのはいつでも出来る。
でも俺が、この身体で強くなる事が大事、だと思うんだ。
よし、剣先生、よろしくお願いします!
張・西嘉
俺も武を極めんとするものの一人だからな。
その若者には好感を抱く。
これからのある若者だオブリビオンになんぞに消されてはたまったもんじゃない。
修行に励むのもよいが…茶の湯まで修行にするのは少し頂けないな。いや、それを修行にするのは悪くはないのだが休む時にしっかり休むと言うのも大事だぞ?
言葉を噛むのも焦るからではないか?
せっかくだから俺も修行に付き合ってみるか…お前は他にどんな修行をしてるんだ?
俺もそれをやってみよう。
●若者、修練によって智を得る
「修行に励むのもよいが……」
剣の背後から武侠の声が聞こえた。
「茶の湯まで修行にするのは少し頂けないな」
振り向けば張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)がそこに居た。
「いや、それを修行にするのは悪くはないのだが休む時にしっかり休むと言うのも大事だぞ?」
言葉は窘めるようだが、そこにあるのは若者への好感と未来への期待、それを砕かんとする邪悪への不義に対する怒り。
「言葉を噛むのも焦るからではないか?」
「噛むのは性分なんだ、何せそんなにヒトトゥハナスタコトギャナイ……人と話したことがほとんどないからな」
頭を掻きながら剣は湯呑に手を伸ばした。
「とりあえず温くなる前に飲もう。茶はいっぱいある」
「初めまして。木常野都月、猟兵です」
続いて茶を手に取った木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が出自を名乗ったのは――
「その、俺に稽古をつけてくれないか?」
自らを高みの道へと歩むため。
「俺は猟兵で、敵と戦う事はよくあるけれど……」
狐は戦うがゆえに
「その、俺は精霊を使う術師なんだ。だから、あまり拳や足で戦う機会が少ないんだ」
己を知り
「狐の身体ならともかく、妖狐の身体1つで戦った事が、殆どなくて」
不足を埋めることを求める。
「いい機会だし、剣さんに稽古をつけてもらえたら嬉しいな」
「なら、俺も修行に付き合ってみるか」
都月の言葉に西嘉も声を上げる。
「教えるのも修行だろ? 他にどんな修行をやっているんだ?」
武侠の言葉に剣は頷き、木人へ向かって歩き出した。
「なら、これで技を磨こう」
木人とは正式には木人椿と呼ばれる修行法である。
木で出来たそれは三本の腕と一本の足を持ち、相手の攻撃を見立て、実戦を想定し、打撃を磨く。
「本来なら、基本の技を教えるものなのだが」
手本を見せるように若者は木人へと拳打を打ち込む。
「それには正式な師の元で継続的に学ぶことで身に着けるもので、俺が手ほどきするものではない」
最初は速く、次はゆっくりと。
「なので、俺は動きの兆しと流れを教えようと思う」
若者は都月、そして西嘉へと視線を向け。
「それでいいだろうか?」
二人とも頷きを返し、木人椿へと励む。
狐の動きはぎこちなく、武侠は水が流れるがごとし。
けれど二人の動きは次第に習熟、洗練されていく。
見取りという稽古がある。
動きを見て、技を再現する。
普通の人ならば、時間を要する修行だが、都月は野生が西嘉は長年の蓄積がその下地となり、荒々しい狐と猛々しい武侠の技が次々と木人へと叩き込まれる。
稽古は続き、若者は修練によって人を知る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩瑠・翼
リュートくん(f34116)
僕、なんでここ居るんだろ…
(いつも笑顔で修行を促す兄貴分は不在なのにと遠い目するも)
リュートくんはやる気満々なの?!
(年下(*年上だと思ってない)には負けてられない)
そ、そうだね!
オレも、強くなりたいから頑張る!(ぐっと拳握り)
剣さん、手合わせお願いしま…え、拳と拳で?
オレの拳が光って唸るとかのカッコいい技は…ないの?
素手で? それって痛いよね?(思わず後ずさりするヘタレ)
…って、それも修行? そんなぁ
(へっぴり腰で挑むもしっかりボコられた)
座禅茶会かぁ
お茶飲むのも修行になるんだね(お茶好きなのでほっこり)
…って、リュートくん、へいじょーしん、平常心だよ!(あわわ)
リュート・アコルト
なあ翼(f22017)
修行ってすげぇな!
飯食ってスイカ割っただけなのにすげえ強くなったぜ!(10→71)
こんなに強くなれんだ
過酷な修行すればもっと強くなれるのも道理だぜ
頑張ろうな翼!(拳ぎゅ)
俺も剣と手合わせするぜ!
クロ(相棒竜)はそこで見ててくれよな
俺はこうでっかくなって拳にドラゴンの闘気を纏わせて…ってなりてえ!
とはいえ拳法を習ったことない野生児
果敢に挑むもボコられて
すげぇな剣!今の技どうやんだ?
修行を終えて休憩
茶を飲むのも作法があるのか
膝を組んで湯呑を乗せて
クロも翼もやろうぜ
大きい順に並んで座禅茶会で修行の疲れを癒す
…小さいから二番目なのは内心悔しい
ぜってーでっかくなってやる!(きー!)
●若者、組手にて猟兵を知る
彩瑠・翼(希望の翼・f22017)の目は武林の遥か向こう。
「僕、なんでここ居るんだろ……」
仙界まで届かんほどの遠い目で今の状況から逃避しようとしていた。
「なあ翼、修行ってすげぇな!」
そんな彼を現実に引き戻すのはリュート・アコルト(竜騎士・f34116)。
「飯食ってスイカ割っただけなのにすげえ強くなったぜ!」
ひと夏の経験によって大きくなった少年は自らを知ることで強さを知った。
「リュートくんはやる気満々なの?!」
小さき竜騎士の言葉にアリスの騎士はツッコミせざるを得なかった。
けれどリュートの熱弁は続く。
「こんなに強くなれんだ、過酷な修行すればもっと強くなれるのも道理だぜ」
更なる強さを求めるために。
「頑張ろうな翼!」
二人で一緒に。
「そ、そうだね!」
翼は一瞬、迷ったが……
「オレも、強くなりたいから頑張る!」
強くなりたいのは自分も同じ。
二人の騎士は拳を握り、心に決めた。
「まずは俺だぜ!」
最初に出るのはリュート。
「クロはそこで見ててくれよな」
相棒の竜に見ているように告げ、竜騎士は構える。
「俺はこうでっかくなって拳にドラゴンの闘気を纏わせて…ってなりてえ!」
「闘気を纏わせるか……感覚を鍛える修行が必要だな」
合わせるように剣は構え、そして。
「俺がその兆しになれれば、それに勝るものはない」
強さを望む者へと関わる栄誉を口にする。
「行くぜ!」
飛び掛かるは野生の如く。
リュートが距離を詰めれば、合わせるように若者は一歩踏み込み。
「三の型、獅子吼」
カウンターの拳打一撃で吹き飛ばした。
若き竜騎士は背中を叩きつけられ、転がり。
「すげぇな剣!」
自らが受けた技に驚く。
「今の技どうやんだ?」
「敵の攻撃を恐れず飛びこんで、拳を打ち込む」
問われた拳士はリュートの手を取り立ちあがることを助け
「勇猛果敢なお前なら必ず出来るだろう」
兆したる一打とその秘訣を伝えた。
「剣さん、手合わせお願いしま……え、拳と拳で?」
次に退治する翼は拳を構える剣の姿に格闘戦であることを解釈する。
「武器を使っても構わないぞ」
「いえ……大丈夫です」
何かを諦めたようにアリスの騎士も拳を握った。
「オレの拳が光って唸るとかのカッコいい技は……ないの?」
「人それぞれに相性がある、俺は雷の如き拳を打つ技を知ってはいるが、まだ体得に至ってない」
翼の拳を受け流し、拳士は蹴りを放つ。
思わず距離を取るアリスの騎士。
「そこは間合いを詰めて受けた方が攻めやすいぞ」
「素手で? それって痛いよね?」
剣のアドバイスに対し、翼は思わず後ずさりした。
槍や剣を振るう騎士であっても、素手で攻撃を受けるのはやはりためらうものだから。
「そうだな、だから痛くないように鍛えるか、技を覚えるか……どちらにしても修行になるな」
「……って、それも修行? そんなぁ」
気が付けばアリスの騎士の視界がひっくり返り、少年は投げ飛ばされていた。
「茶を飲むのも作法があるのか」
中腰になった姿勢でリュートは湯呑を乗せられて興奮を隠せない。
「座禅茶会かぁ……お茶飲むのも修行になるんだね」
そして茶と聞いてほっこりする翼。
しかし、両腕と両膝、頭に湯呑を乗せられてから茶会の意味に気づく。
「零さないように、心を落ち着けるんだ」
「いや、これ、茶会じゃないですよね?」
湯呑に茶を注ぐ剣に対し、アリスの騎士は問い、そして若者は満面の笑みで頷いた。
その一方で竜騎士は不満げだった。
並んだのが背の大きさの順番だった故
大きいことが正義である彼にとってはそれが不満だった。
「ぜってーでっかくなってやる!」
「……って、リュートくん、へいじょーしん、平常心だよ!」
リュートの叫びに慌てる翼。
そして、椀の中味が零れるのは避けられない事態だった。
若者は少年たちと触れ合い、自らの今を知る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
劉・涼鈴
おっすおっす! 私は劉家拳の涼鈴だよ! あなたが剣だね?
拱手しながら挨拶だ!
ここで良くないことが起こるって卦が出たらしくてね、ちょっとばかりお手伝いに来たんだ
私の腕前が信用できない? じゃあ……手合わせといこうか!
形意拳、動物の動きを模したアレだね
私のも大きく分類すればそこになるかな?
さぁ、【功夫】の比べ合いだ!
大木を粉砕する蹴り――それは見た!
インパクト直前に脹脛に手の甲を当てて打点を逸らす!
体勢を崩したところを肘打ちで【吹き飛ばし】!
こっちも鳥を模した技で追撃だ!
【劉家奥義・鷹爪嵐迅脚】!
ふふー、これで私の実力は分かってもらえたかな?
これがいずれ江湖に名を知ら示す、劉家拳だよ!
荒谷・つかさ
ふうん、中々面白そうな人じゃない。
用件があるといえばあるのだけれど、それは一旦後回しでも構わないかしら。
貴方の武、どれ程のものか……私に見せて下さらない?
(彼の修行を見て戦闘狂の血が疼いてきたらしい)
徒手空拳にて手合わせを挑む
ただし持ち前の「怪力」は打撃への受けや踏ん張り等、防御面にのみ使用し、攻め手については加減の効く寝技・関節技重視で闘う
(流石に本気の打撃技を出したら彼を殺しかねないため)
もし手加減を見破られて文句言われたなら、適当な方向へ【破界拳】を放って見せて「本気」を見せるわ
殺し合いに来た訳じゃないから、これで満足してもらえるかしら。
……用件?
あ、そういえば忘れてたわね……
●若者、武を交わし高みを知る
今を知った者が未来を知りたがるのは当然の事だろう。
それには高みの存在に触れあう必要がある。
「中々面白そうな人じゃない」
羅刹が……立っていた。
「用件があるといえばあるのだけれど、それは一旦後回しでも構わないかしら」
荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)が一歩、二歩と歩み寄れば、伝わるのはプレッシャー。
「貴方の武、どれ程のものか……私に見せて下さらない?」
「無論」
互いに持った狂を感じ、剣は一言で返した。
あとは、もう交わすだけ。
「四の型、豨勇!」
力強い踏み込みから放たれる若者の体当たり。
「――っ!」
勢いにタイミングを狂わされつつも、つかさはその当て身両腕で受け止め、衣を掴んで引き倒す。
「ぬぅ、擒拿術か!?」
流れるように上を取った羅刹が腕を奪った時に技に気づいた剣は咄嗟に身を翻し、上体の発条と捻りで捕縛から逃げ出す。
作られた間合いを再び詰めるは拳士。
「九の型、豹足」
獣の如き俊敏さから放つ拳をつかさは流れるように絡めとり、その肘へと体重を乗せる。
――脇固め
柔の技術が若者を制し、剣は自らの肩を叩き敗北を認めた。
「思ったのだが……」
若き英傑は肩を抑え、立ち上がる。
「擒拿を使わなくとも、お主の膂力なら違う戦い方も出来たのではないか?」
その言葉につかさは片目を瞑り、森へと拳を振るった。
――破界
概念が破壊され、木々が根元を残し失う。
「殺し合いに来た訳じゃないから、これで満足してもらえるかしら」
「なるほど……しかして、用件とは?」
羅刹の拳に言葉を失いつつ、そして拳士は彼女が口にした言葉を思い出す。
「……用件?」
その言葉につかさは首を傾げ。
「あ、そういえば忘れてたわね……」
ややバツが悪そうに頬を掻いた。
「なら、私が説明しよう!」
場に現れるのはキマイラの武侠。
「おっすおっす! 私は劉家拳の涼鈴だよ! あなたが剣だね?」
劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)と名乗った少女は拱手しつつ名乗りを上げ
「ここで良くないことが起こるって卦が出たらしくてね、ちょっとばかりお手伝いに来たんだ」
猟兵として来た用件を告げる。
「ふむ、先程も同じような用件で来た者がいたな」
剣が横目で見れば徐々に砦が作られていた。
「しかして、信用にたるものか?」
諧謔の笑みを浮かべ、若者は答えた。
こうすれば返ってくるのものがあると気づき始めていたのだから。
「私の腕前が信用できない? じゃあ……手合わせといこうか!」
劉家の公主は期待に応えた。
互いに見せるは獣の相。
名は象形、強きものの姿を模ることでその強さを発揮する。
「形意拳、動物の動きを模したアレだね」
その動きから涼鈴は知りえる技と見抜く。
「私のも大きく分類すればそこになるかな?」
「残念だが、少し違う」
剣は苦笑し、新たに構えなおした。
「俺の拳は心意拳の流れではあるが、更なる技へと発展させるべく違うものへとなった」
「なら――!」
快活に応えるのは劉家の公主。
「功夫の比べ合いで、刮目だ!」
もう一つの交わりが始まった。
ぶつかるは拳打、蹴足の応酬。
短く鋭い、技を繰り出し、回転力で流れを掴み、大技へとつなげていく。
先に道筋をつけたのは――剣。
「象形複合! 雷鳴破蹴!」
繰り出すは稲妻が大木を割るが如き蹴り。
「ウェイィィィィッ!!」
「それ――は見た!」
化鳥の叫びを耳にしつつ涼鈴の瞳は英傑の動きに注視し、水が流れるが如くその手が蹴り足を受け、軌道を逸らすと踏み込みから肘をカウンターで叩き込む。
「ぐっ!」
くぐもった声と共に、吹き飛ばされる若者。
追い込む様に足を踏み切り、劉家の拳士は空を駆けた。
劉家奥義
鷹爪嵐迅脚!
追撃の蹴りは剣の顎を揺らした。
「ふふー、これで私の実力は分かってもらえたかな?」
胸を張る涼鈴に剣はただ一言。
「見事」
称賛するのみ。
「これがいずれ江湖に名を知ら示す、劉家拳だよ!」
公主の言葉に耳を傾けながら、若者は武術の高みを知った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
まずは拱手で一礼
私の用件は端的に申しますと戦の下準備への協力要請です
貴方を狙う獣の軍勢、それを撃退したといたしましょう
もし生き延びた者がいて…貴方がその者だとお考え下さい
…再起図るオブリビオン
その矛先が在野の罪なき民草に向かわぬ保証は無いのです
この地を彼らの死地に
一人の騎士として、ご協力願います
…武侠の一種とお考えください…
(騎士の概念がこの地に無くて寂しい)
木や竹の幹にUC発振器を数多く投擲
防御力場展開
空中に突如現れる壁に床、囲めば檻に、そして…
枝を投げ力場を展開
ギロチンの如く切断
罠として使う為に
剣様が知る地の利を活かして頂きたく
設置作業の合間に、消える足場用いた空中戦の修練でも致しますか?
●若者は理を聞き、義勇に立つ
空中に浮く、見えない足場に拳士と騎士は立つ。
「私の用件は端的に申しますと戦の下準備への協力要請です」
拱手にて礼を終えたトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)が儀礼剣を構え、同様に若者も刀を持つ。
「貴方を狙う獣の軍勢、それを撃退したといたしましょう。もし生き延びた者がいて……貴方がその者だとお考え下さい」
武器を打ち合わせる二人の足元に次々と作られる力場。
発振器より形成される見えない力が壁となり檻となる。
「……再起図るオブリビオン、その矛先が在野の罪なき民草に向かわぬ保証は無いのです」
儀礼剣を振るうトリテレイアが説くのは、生き残った敵が起こすであろう非道の行い。
「この地を彼らの死地に、一人の騎士として、ご協力願います」
「騎士……俺は馬には乗れないが?」
全身の発条で刀を振り回しつつ、剣は首をかしげた。
「……武侠の一種とお考えください」
戦機はこの世界のおける騎士という言葉がただの騎兵という一兵種にすぎないことに少々寂しさを抱いた。
「ところで、この見えない床は凄いな。場所が分かれば優位に戦える」
「それだけではありません」
拳士が力場に感嘆を示せば、騎士は枝を空に投げる。
展開した力場が断頭台の如き鋭さで木を切断した。
これこそが見えない壁を作りし、トリテレイアのユーベルコード
――多機能型電磁障壁発振器射出ユニット
「罠として使う為に、剣様が知る地の利を活かして頂きたく」
「そうだな、色々と教えてくれるとありがたい」
剣の言葉に戦機は頷いた。
「勿論」
若者は理を知り、自らが戦う理由を知る。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
肉体の鍛錬こそ経験はあるが、本格的な武術の心得は無いもので
さて、どうしたものか……
此処は素直に「武術の何たるか」の教えを請うとするか
拱手の後、手土産の紅茶の茶葉を掲げ持ち
己は普段剣と魔法……仙術のようなものの使い手だと自己紹介
自らの肉体を活かした戦い方は君の方が先達故に
恐れ入るが、ひとつ俺でも出来そうな技を一つ教えては貰えぬか
「礼儀作法」を欠かさずに、丁寧にお願いをしてみよう
聞き入れて貰えたら、本気で身に付けるつもりで稽古に励もう
若い身空で此れだけの覇気、身のこなし……
紛れも無い「本物」ということかと感心しながらも集中を
剣殿、此れならばどんな脅威が迫ろうと恐るるに足らず
必ずや難局を乗り越えよう
●若者は教えを請われ、教えを学ぶ
拱手に始まった出会いは拱手で終わる。
ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が礼を交わし、掲げるのは茶葉。
「俺はニコ・ベルクシュタイン、剣と魔法……仙術のようなものの使い手だ」
自らの出自を名乗ったニコは持ってきた茶葉を湯に浸し、急須を天高く掲げて
茶を注ぐ。
「そのような茶の淹れ方があるのか……」
時計卿のジャンピングに剣が感心する中、彼の前に置かれる琥珀色の液体。
つまり――
「紅茶か……久しぶりに飲むな」
「こちらでは珍しいのか?」
久しぶりの紅茶に目を細める若者にニコは問いかける。
「ああ、武林にこもってからは味わっていない……で、お主はどうしたいのだ? ただ茶を振る舞いに来たわけではあるまい」
すでに猟兵との出会いを経た拳士には時計卿が何を申し出るかを待つのみ。
「自らの肉体を活かした戦い方は君の方が先達故に」
ニコ・ベルクシュタインはこれでも練達の徒だ。
少なくとも実力に不足はない。
それでも……だからこそ
「恐れ入るが、ひとつ俺でも出来そうな技を一つ教えては貰えぬか」
自分に足りないものを知ろうとする努力は忘れない。
「難しいな」
だが、剣の顔に浮かぶのは渋面。
「何せ、お主とは会ったばかり。仙術のようなものと剣の使い手と言われてもどんなものが知らなければ、役に立たないものを教えるかもしれない」
若者が卓から離れ、地に刺さった刀を抜いた。
「見せてくれ、お主の技を」
武器を向ける拳士に対し、ニコが断る理由は無かった。
金属がぶつかり合う音が響く。
「その二つの刃に火と氷の術が施されていると」
双剣と刀が交錯する中、若者は時計卿の得物が持つ特性を見る。
「ならば、それを同時に活かすのはどうだろう? 氷の術で足を封じ、炎の刃で一撃を与える」
剣が刀の切っ先を足元、そして胸へと向ける。
「出来れば、そのタイミングがほぼ同時が良い」
「同時か……」
呟きながらニコは目の前の英傑を見た。
若い身空とは思えない覇気と身のこなし……紛れも無い『本物』なのであろうと。
「剣殿、此れならばどんな脅威が迫ろうと恐るるに足らず」
確信を得たニコ・ベルクシュタインが拳士へと告げる。
「必ずや難局を乗り越えよう」
これは自らに降りかかる脅威も含まれていると悟った剣は深く頷いた。
若者は教えを請われ、そして教えられた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『虹色觔斗雲の獏羊武侠』
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POW : 如意觔斗突撃術
【觔斗雲】を操縦中、自身と[觔斗雲]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
SPD : 睡眠拳奥義『天下平穏午睡日和』
【寝ぼけているかのような体術で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 虹色夢供召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【虹色皿の河童導師】と【虹色蹄の豚拳師】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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●屠所之羊
凶事は到来する。
足音は無い、けれど影が覆う。
大群が空を占拠し、群を成してきているのだ。
けれど描く影は黒くない。
むしろ七色を描いていた。
――虹色觔斗雲
天の光を受け、多彩な色彩を見せる雲に乗るのは、多才なる獏羊の武侠。
力においては雲と共に在り。
技においては睡眠を貪るような体術を見せ。
そして術においては二人の同輩を呼び寄せる。
凶事は空より襲い来る。
見えない砦の城壁へとぶつかり、罠を潜り抜ける。
多大なる犠牲を伴いつつも武侠は棍を片手に若者へと襲い掛かろうとしていた。
「来たか……」
拳士は笑う。
凶事に、難敵に、試練に!
これこそが武に至る道ならば進むが英傑。
「オモシュロィ……スベテウチャッチャルジェ!!」
若き拳士――剣はまた口元を手で覆った。
トリテレイア・ゼロナイン
先に仕掛けた力場の壁、乗る雲を用いた突撃に彼らが専念すれば破られるようですね
残った力場は彼らに近づく足場として用いましょう
先陣は私が務めます
発生させた力場を●踏みつけた三角飛びで戦場を移動(地形の利用)
脚部スラスターの推力移動も用い空中での移動の軌道を変えることで突撃を躱しつつ敵の筋斗雲に降り立ち
多少の地の利の劣位…跳ね除けてこそ真の騎士というものです
先の手合わせで使った儀礼剣から持ち替えた電脳剣と大盾
怪力で振るい、棍を圧し折り打撃与え下の拳士の元へ落とし
剣様、後はお任せいたします!
(活舌には努めて聞こえぬふり)
マルチセンサーの情報収集で健在な敵の位置見切り、先の空中強襲からの叩き落しを続行
●騎士、雲を駆ける
「先に仕掛けた力場の壁、乗る雲を用いた突撃に彼らが専念すれば破られるようですね」
状況を分析しつつも、トリテレイア・ゼロナインの演算回路が過去のデータからある事柄を見出す。
「残った力場は彼らに近づく足場として用いましょう――先陣は私が務めます!」
予想される第二波、そして特攻にも近い突撃による城壁破壊。
――何者かの指揮が介在している。
それを見極める必要があるが、今は脅威を取り除く時。
何故なら、自らは騎士で、戦機で、人の肉より硬い鋼なのだから。
電磁発振器による不可視の壁と足場。
故にオブリビオン達は数に任せて飛び込み破壊にかかっているが、猟兵には問題なし。
皆、既に位置は知っているし、壊れていても作った本人の目には『視えていた』
トリテレイアは巨体に似合わないパルクールで見えない足場を蹴り、空を駆けるのは、まさしく剣舞。
机械骑士战场回旋曲――機械騎士の戦場輪舞曲
舞うが如き足取りとスラスターの噴射で武侠の筋斗雲に乗れば、電脳剣を一太刀!
獏羊が咄嗟に構えた棍を意図的に斬らず圧し折り、武侠の肩へと一撃を叩き込まん!
「剣様、後はお任せいたします!」
すかさず、大盾でオブリビオンを雲から叩き落し英傑へと後を託す。
「ミャカシェロ! ウェイィィィィッ!!」
落下していく獏羊武侠の頭へと天を貫く勢いで蹴りを放ち、そして虹色が散った。
猟兵と若き英傑が力を合わせれば、彼らに敵無し、まさしく無双。
連携が上手くいったことを確信したトリテレイアはまた別の雲に乗って電脳剣を振り下ろす。
ちなみに若者の言葉に対して聞こえない不利をしているのは彼なりの優しさだった。
成功
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荒谷・つかさ
……なんだか目がちかちかするわね、あの色。
剣は……まあ、あの様子なら心配ないか。
護りをすり抜ける突撃術は確かに厄介。
ならどうすればいいか?
簡単な話よ……殴られる前に殴れ、ってね。
【轟烈鬼神熱破】発動
予め罠や障壁の位置は情報を共有しておき、敵の移動経路を読んでピンポイントに収束タイプの波動をブチ当てていく
あれだけモコモコしてれば、よく燃えるでしょ多分
基本的には近寄られる前に全部撃ち落とすつもりで戦うが、撃ち漏らして懐に入られても慌てず「怪力」で捕縛
がっしり捕まえたままゼロ距離で波動を叩き込んで燃やす、或いは力任せに首を捩じ切って倒す
近づけばどうにかなるとでも思って?
甘いのよ。
木常野・都月
(羊……ふわふわ触りたいって思ったらダメだよな?敵だし虹色だし。)
でもこちらには、何人も猟兵がいるし、何より剣先生がいるんだ。
虹色に遅れは取らない。
仕事だし少しズルはするけど、武術で戦ってみるか。
[野生の勘、第六感]と風の精霊様に頼んで敵の動きを[情報収集]しよう。
確か見取り…だったな。
相手の動きをしっかり見るんだ。
[カウンター]で反撃出来れば、そこそこ敵と渡り合えるかも?
風の精霊様には俺の空気抵抗を減らして貰おう。
拳と蹴りに風の[属性攻撃]を載せて…
風…空気の流れを読めば、そこそこ動けるはずだ。
ここぞという時はUC【狐火】を拳や蹴りの風と併せて繰り出せたら羊はよく燃えるんじゃないかな。
●羅刹と狐、炎熱を振るわん
荒谷・つかさが二度、三度、瞬きをする。
「……なんだか目がちかちかするわね、あの色」
虹色とは名乗っているが実際は千と六百八十万の色彩はあるだろう。
少なくとも目には優しくない。
「剣は……」
つかさが肝心なところで噛んだ若者を気に掛ける。
「ウェイィィィィッ!!」
「……まあ、あの様子なら心配ないか」
視線の奥では若き英傑が敵に向かって蹴りを放っていた。
――羊……ふわふわ触りたいって思ったらダメだよな? 敵だし虹色だし。
木常野・都月は虹色のもふもふに思考を奪われ、そして首を振って己を取り戻す。
「でもこちらには、何人も猟兵がいるし、何より剣先生がいるんだ」
「ウェイィィィィッ!!」
「虹色に遅れは取らない」
こちらも若き拳士が叫ぶのを聞きつつ戦いに備えていた。
「護りをすり抜ける突撃術は確かに厄介」
つかさの視界を塞ぐ影は極彩色。
「ならどうすればいいか? 簡単な話よ……殴られる前に殴れ、ってね」
突き出した両掌が螺旋を描けば一条の波動が虹色に覆われた空を打ちぬいた。
咆哮恶魔热吹――轟烈鬼神熱破
それは偏差射撃と呼ばれるものであった。
罠や障壁の位置を共有したつかさにはオブリビオンの軌道は大体予測が着く。
後はその行先にユーベルコード――炎熱波動を撃ち込めばいいだけ。
豊かな毛におおわれた虹色の武侠は冬は暖かく夏は涼しいであろう羊毛を燃え上がらせ、次々と大地へ落ちていった。
「仕事だし少しズルはするけど、武術で戦ってみるか」
一方で都月は精霊の声を聴き、風を読む。
「確か見取り……だったな」
思い出すは学んだ技、言葉。
「相手の動きをしっかり見るんだ」
そして結実するは――武。
無数の炎が球体となって浮かび上がれば、降りて来る一つを――蹴った!
鬼火の名は――狐火
空気抵抗が失われた中、走る火球がオブリビオンへと命中すると獏羊の丸焼きが一つ。
猟兵の攻撃に対し虹色の武侠が術を使い導師と拳士を召喚したその隙だった。
風の精霊の誘いに乗った狐が距離を詰め、その手足に炎を纏わせた。
豚拳士に叩き込むは鬼火の拳。
河童導師へ振るうは狐火の蹴り。
武を知った都月は次々と武侠を打ち倒し、新たなる段階への一歩を踏み始めた。
「ふぅん……やるじゃない」
狐の振る舞いに羅刹の女が笑みを浮かべる。
誰であろうと強くなる姿を見るのは嬉しい。
そこへ飛び込む虹色武侠。
だが、つかさが振り下ろされる棍を掌で弾くと体勢を崩した獏羊の頭を片手で掴む。
「近づけばどうにかなるとでも思って?」
羅刹が笑う。
骨が軋む。
「甘いのよ」
つかさの右手が轟き唸れば、オブリビオンの頭が蒸発し、屠殺された獏羊がそこに転がった。
「…………」
都月と
「…………」
剣は
互いに目を見合わせ。
頷き。
そして目をそらして、虹色の武侠達へと立ち向かった。
そう……まだまだ敵は多いのだから。
戦いは始まったばかりだった。
成功
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彩瑠・翼
リュートくん(f34116)と
いやこんなカワイイっぽい羊を魔獣って……っ!
ていうか食べるの?食べる気なのリュートくん?!(あわわわ
いや、脳みそ食べるとか無いって!ないってば!(叫
空中戦してるリュートくんはめちゃくちゃかっこいいけど!
かっこいいけど!
まさにヒーローって感じだけど!
羊肉はいらないよー?!(涙目
…って、叫んでも仕方ないよね
お、オレはオレでできることをする!
えっと、オレは、剣さんをかばうことに専念するよ
スキルとか無いけど、ここは[気合い、勇気、覚悟]を決めるね
オレの鎧は羊の攻撃なんかに負けない、強い鎧なんだ!
(言い聞かせながらかばおうとし
余力あれば[ランスチャージ]で攻撃を試してみる!
リュート・アコルト
羊か
羊肉も旨いよな
あの毛は織物にもなるし
よし翼(f22017)魔獣の解体は俺に任せろ!
修行が終わったら羊肉で宴会だ!
翼には羊の脳味噌を食わせてやるよ
香味野菜と一緒に煮込むと旨いぜ?
剣にもやるから頑張ろうぜ!(悪気ゼロ
剣の護衛は任せた!
空中戦なら俺の出番だな!
来いクロ!
成竜の姿になったクロノスに騎乗して空を飛んで羊狩りだ!
カラフルポン菓子を構えて羊に向けて制圧射撃
動きを牽制したらクロノスを駆って内懐に飛び込んでスカイソードで切り込む!
剣も言ってたよな
恐れず飛び込んだ先に道はある!
羊肉を抉り取って口にすると、力が漲ってくるのが分かる
クロと同じ姿になって、氷のブレスで氷漬けだ!
どうだカッコいいだろ?
●少年達は獏羊と戦い、堪能する
リュート・アコルトが腕を組み見えない城壁に脚をかけると、武侠の集団を前に笑っていた。
「羊か!」
獏羊です。
「羊肉も旨いよな」
美味しいですね、ラムは臭みが少なく柔らかく、マトンは旨味があります。
「よし翼、魔獣の解体は俺に任せろ!」
食べる気ですね?
「いやこんなカワイイっぽい羊を魔獣って……っ!」
彩瑠・翼がツッコむのだけど、あれってオブリビオンだから。
「ていうか食べるの? 食べる気なのリュートくん!?」
あわわわとツッコむ翼。
「ああ、羊肉で宴会だ!」
だが、リュートは快活な笑顔で答えた。
「翼には羊の脳味噌を食わせてやるよ、香味野菜と一緒に煮込むと旨いぜ? 剣にもやるから頑張ろうぜ!」
「俺は火鍋かクミンで炒めるのがいいな」
若き英傑はどうやらそっち側だった。
おそらくは強さを求めて獣を喰らったのだろう。
「よし! じゃあ剣の護衛は任せた!」
「いや、脳みそ食べるとか無いって! ないってば!」
アリスの騎士の叫びは黒竜に跨った竜騎士には届かなかった。
「空中戦なら俺の出番だな!」
少年一人が騎乗するに充分な大きさとなったクロノスが同意の嘶きを上げる。
黒竜が羽ばたく中、構えるのはガトリング。
レバーを回すと破裂音が響き渡り、味の異なる色とりどりのポン菓子が弾幕となって虹色の獏羊がいる空間を染め上げた。
「行くぜ、クロ!」
愛竜クロノスに跨り、リュートが抜くのは天使核が光る一振りのロングソード。
――恐れず飛び込んだ先に道はある!
英傑の言葉を思い出し、天空の刃が獏羊を切り裂いた。
剣に絡むはオブリビオンの肉。
竜騎士はそれを口に含むと空へ駆けた。
騎士は竜となり、空を支配する。
龙变萬化擊――竜変万化撃!
最強的最高黒竜が吐くのは凍てつく寒さのブレス。
獏羊のオブリビオンはたちまち凍り付き、そして大地へと落下した。
勿論、全てを捕えたわけではない。
潜り抜けた者もいる。
だが、そこには翼が立っていた。
「空中戦してるリュートくんはめちゃくちゃかっこいいけど!」
視線の向こうにはポン菓子を放つ騎士。
「かっこいいけど!」
アリスの騎士の視界には剣を振るうリュートの姿。
「まさにヒーローって感じだけど!」
そして暴れる巨大黒竜。
「羊肉はいらないよー!?」
けれど涙目になっての叫びが届くことは無い。
代わりに殺到するのはブレスを掻い潜った獏羊武侠達。
「……って、叫んでも仕方ないよね」
少年は覚悟を決め。
「お、オレはオレでできることをする!」
心に勇気を
「オレの鎧は羊の攻撃なんかに負けない、強い鎧なんだ!」
身体に鎧を纏い、剣を守るように立ちふさがった。
爱丽丝骑士・想像――アリスナイト・イマジネイション
想像から創造されし戦闘鎧はオブリビオンが振るう棍の一撃を弾き飛ばす。
「今だ!」
「――うん!」
英傑の言葉に応え、アリスの騎士は槍を振るう。
白銀槍による突撃!
修練を重ねた翼の一撃は武侠を貫き、そして勢いは獏羊を吹き飛ばした。
戦いは続く。
彼らが羊料理にありつけるかは未だ分からぬが……多分、その方が幸せな気がするのは言うまでもない。
大成功
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張・西嘉
(盛大に言葉を噛んだ剣に苦笑しながら)
いまいち締まらんが…気概は伝わった。
俺も微力ながら力を貸そう。
随分と彩の多い敵だな。まさしく虹色。
だがその分目にはつく。
姿を見逃すようなことはないだろう。
青龍偃月刀での【なぎ払い】や【武器受け】からの【カウンター】を交えつつ交戦
体術としては面白いが。
さて全て避けられるかな。
UC【乱戦遊戯】
劉・涼鈴
雲に乗って棒術……孫悟空のマネっ子だね!
私も分身の術とかできるようになったよ! ツノ的に牛魔王だけどね!
如意棒を戟で【受け流し】て、体勢を崩したところへ蹴りをかまして……妙な動きで避けられる!
酔拳……じゃなくて、睡拳か!
戟で【なぎ払ったり】叩き付けたり(重量攻撃)、派手な大暴れをして、それを避ける羊の動きを観察して……
術理の要、体重移動にありと見た!(功夫)
短い手足、明らかに人間とは違う身体バランスによる撹乱!
でももう【見切った】!!
神速で懐に踏み込み(ダッシュ)、【劉家奥義・飛龍轟天撃】!!
回避の癖を覚えて、その避ける先に拳を叩き込む!!
どっせーい!!
●武侠、矛戟を交わす
戦い続ける猟兵、奮闘する若き英傑。
「イバダ! ウェイィィィィッ!!」
未だ言葉を噛む拳士の姿に張・西嘉は苦笑を隠せない。
「いまいち締まらんが……気概は伝わった」
けれど振り回す青龍偃月を握る手には力が漲っていた。
「俺も微力ながら力を貸そう」
大地を踏み鳴らし、そこへ立つ姿はまさしく星に導かれし武侠そのものであった。
「雲に乗って棒術……斉天大聖のマネっ子だね!」
一方、虹色の獏羊と対峙するのは劉・涼鈴。
「私も分身の術とかできるようになったよ! ツノ的に大力王だけどね!」
牛の角と耳を具えたキマイラの少女は鼻歌を歌いつつ覇王方天戟を振り回した。
一方のオブリビオンも棒を片手に身体を揺らす。
拳士と武侠の戦いが今――始まる!
「随分と彩の多い敵だな。まさしく虹色」
西嘉が運足を以って敵の棍を捌き、大刀を振るう。
「だがその分目にはつく」
その刃は棍を軌道として獏羊の首を狙う。
けれど青龍偃月刀がオブリビオンを殺めることはない。
微睡む様に揺れた虹色の武侠が宿星の武侠の斬を避け、仰向けに転がり、そして起き上がる。
「体術としては面白いが……さて全て避けられるかな」
微睡みの拳に苦笑を浮かべながら、西嘉は大刀を振るい近くにあった椅子を石突で引っ掻け、獏羊の顔面に投げつけた。
混战游戏――乱戦遊戯
その場に有る物を武器に変える、ユーベルコード。
戦場において地の利を得てしまえば、幻惑の体術と言えど、掌の上の獲物。
刃を虹色武侠の腹に突き刺し蹴り飛ばすと、宿星の武侠は機を伺おうとしたオブリビオンへと向き直った。
「目につくその姿、見逃すようなことはないだろう」
張・西嘉のその言葉はすぐに現実となった。
涼鈴を襲う棍、すかさず方天戟で受け流した劉家の公主は流れるように身を翻しての後ろ回し蹴り。
だが、その踵は獏羊を打ち抜くことは無く、空を切る。
その場に倒れたオブリビオンが寝返りを打つように転がって、距離を詰めてきた。
「おおっとぉ!」
流石にやばいと思った涼鈴が跳躍。飛び越えた空間を棍が貫ぬく。
「酔拳……じゃなくて、睡拳か!」
異質な拳に戸惑うどころか面白いと笑みを浮かべ、劉家の公主は戟を振るう。
攻める、攻める、攻める。
得物の長さで薙ぎ払い、刃の重さを叩きつけ、激しい動きで虹色武侠の攻め手を潰す。
勿論、オブリビオンもただでは行かない。
微睡む様に避け、寝転ぶように地を這い、足元を狙わんと寝返りを打つ。
涼鈴の足を狙う棍。
だが猟兵は空を舞い、獏羊の頭を踏んで飛び越えた。
「術理の要、体重移動にありと見た!」
断言するは劉・涼鈴。
全ての攻めはユーベルコードの秘を探る布石であったのだ。
「短い手足、明らかに人間とは違う身体バランスによる撹乱!」
異形故の特異性を発揮したが故の体術の理を把握すれば。
「でももう見切った!!」
もうそこに居るのは、ただの羊。
劉家の公主が間合いを詰めれば、避けようとする武侠の頭が吸い込まれるように拳へと近づいた……いや、そうするように動きを見極められたのだ。
劉家奥秘・飞龙激动天擊――劉家奥義・飛龍轟天撃!
「どっせーい!!」
獏羊は天を仰ぎ、轟くような一撃を以って、その存在を失われた。
戦いの天秤は傾きを見せていた。
大成功
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ニコ・ベルクシュタイン
剣殿、落ち着いて欲しい
最後の方は何と言っているのかさえ怪しいぞ
さて、折角教えを賜ったは良いが如何せん集団戦には向かぬか
ならば今の俺が切れる手札で勝負をしよう
其方も虹か、奇遇だな――俺も虹の使い手なのだよ
仲間を呼ぶとは小賢しい……とは言えぬな、此方も複数人だ
こういう時は「範囲攻撃」で一気に相手取るに限る
双剣を構えて【花冠の幻】を発動、炎の剣で大きな花弁の嵐を起こし
もう片方の氷の剣は獏羊武侠本体を狙って「スナイパー」よろしく
投げつけながら花弁に変え、召喚体の早期解除を目論む
本体を上手く狙えない場合は、己は牽制や露払いに徹し
本体への攻撃を剣殿に依頼したく思う
危険が及ばぬように配慮はするが、頼めるか?
堆沙坑・娘娘
滑舌の悪さには原因があります。舌や顔の筋肉に力がない、もしくは呼吸の方や姿勢が悪い場合に発音がボソボソしたり声が篭ってしまったりするのです。まあ、生まれつき舌が短いからという身も蓋もない理由である場合もありますが…原因が前者だったなら、あなたの滑舌の悪さは鍛錬で解決できます。この戦いが終わったら試してみましょう。
数を増やす術ですか…しかし私もその手の術は使えるので欠点は分かっています。射線上の全てを貫く杭の射出による【貫通攻撃】で召喚された異類も召喚主も貫いてやりましょう。敵の配置を直線にするための罠を剣と仕掛けていましたしね。罠の位置を知る彼なら私の攻撃に巻き込まれることもないでしょう。
●猟兵、英傑と共に敵を打ち倒さん
「ザァア゙、ドコカラデロカカッデコイ!!」
戦いの流れが傾いたのを悟り、若き英傑は吠える。
「剣殿、落ち着いて欲しい」
ニコ・ベルクシュタインがこの気勢に危機を感じ、若き拳士に冷静さを求めた。
「最初の時に至っては何と言っているのかさえ怪しいぞ」
「すまない……『全て打ち倒してやるぜ』と言ったつもりだったのだが……」
間違わないように一節ごとに言葉を区切り、剣は気恥ずかしそうに答えた。
「滑舌の悪さには原因があります」
そこへ堆沙坑・娘娘が間に入っていく。
「舌や顔の筋肉に力がない、もしくは呼吸の方や姿勢が悪い場合に発音がボソボソしたり声が篭ってしまったりするのです」
「不足があるという事か?」
自らの口元を覆い、英傑は呻き。娘娘は言葉を続ける。
「まあ、生まれつき舌が短いからという身も蓋もない理由である場合もありますが……原因が前者だったなら、あなたの滑舌の悪さは鍛錬で解決できます。この戦いが終わったら試してみましょう」
「娘娘殿、落ち着いてほしい。聞こえやすいが早口だ」
改めてニコが冷静さを求めた。
「それにもう少しで、戦いを終わらせられるのだから」
時計卿の言葉に頭を向けた二人の視界には残り少ない虹色の獏羊が再度集結している姿が見えた。
「さて、折角教えを賜ったは良いが如何せん集団戦には向かぬか」
口惜しそうにニコが呟く先には、武侠の軍勢多数。
「ならば今の俺が切れる手札で勝負をしよう」
視界を塞ぐ虹に口角が釣りあがった。
「其方も虹か、奇遇だな――俺も虹の使い手なのだよ」
双剣の内、炎の長剣を振るえば巻き起こるは虹の薔薇。
花冠幻想――花冠の幻
虹の薔薇が刃と化して、描く幻想は死への夢。
たちまちに動きを止めれば、オブリビオンも術を結び、虹色皿の河童導師と虹色蹄の豚拳師を召喚し、側背へと回り込ませる。
「仲間を呼ぶとは小賢しい……とは言えぬな、此方も複数人だ」
呟きとともに時計卿の左手にあるのは氷の短剣。
それを虹色の武侠めがけて投げつければ、獏羊の視界を薔薇が覆いつくし、骸を一つ大地に転がす。
同時に召喚された導師と拳士も術が解け、その姿を消した。
花弁による攻撃に対し危険を察したオブリビオンは雲から地上へ降り、大地を走る。
「行ったぞ、娘娘殿」
だが、それは猟兵の絵図通りの展開であった。
地上に降り立った虹色の武侠がまた仲間を呼び、軍勢と化して武林に迫る。
だが、その歩みは途中で止まった。
――空堀
人が腰まで落ちる深さの堀がオブリビオンの足元を一瞬だけ止めた。
それだけで充分であった。
「数を増やす術ですか……しかし私もその手の術は使えるので欠点は分かっています」
堀の端から女の声がした――娘娘だ。
「配置を直線にすれば、全てを貫きます」
杭の拳士の言葉通り、武侠達は一直線に並んでおり。
全てが……貫かれた。
――射出!
パイルバンカーから放たれた杭は射線に並んだ全てを逃がさない。
獏羊も河童も豚も何もかも。
虹が弾け、術は解け、そこに立つのは傷ついた獏羊のみ。
英傑が、時計卿が、杭の拳士がそこへ殺到し、全てが打ち倒された。
戦いは終わり……ではなかった。
遠くより心を震わせる咆哮が戦場に響き渡ったのだから……。
大成功
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第3章 集団戦
『虎』
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POW : 虎視眈眈
予め【敵を睨みつけて唸る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 猛虎幻翼
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : 三回攻撃
【爪・爪・牙の連続攻撃】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●月下咆哮
太陽が下り月が昇る頃響き渡ったのは獣の遠吠え。
音もなく歩むのは人でも化生でもなく――虎。
其れは武人が武人が己が強さを証明するために挑む難敵。
其れは狂を発したものの変わり果てた様。
其れはただの獣。
この虎達が如何様な道筋を経てオブリビオンとなったかは分からない。
だが、奴らは迫る。
城壁を壊し、空堀を埋めた獏羊の骸を乗り越え。
獣は迫る。
戦い、疲弊した、猟兵と英傑をその歯牙にかけんと。
これは肉食獣の狩りではなかった。
純粋なる虐殺への行進であった。
「……やれるか?」
ゆっくり、慎重に、剣は呟き、前に進む。
退くことは考えてなかった、一匹でも生き残れば虐殺の因となりうるのだから。
退くことは考えてなかった、己が武はこういう時の為に振るわれるものだと悟ったから。
英傑は萌芽し、翼を得て、今、武侠となった。
猟兵よ、獣を断ちて、邪を退ける時が――来た!
張・西嘉
虎退治か…武人にとってはよい武勇伝になるだろうな。相手にとって不足はない!
どんなに威嚇されても圧され気はないぞと睨みつける虎を逆に【威圧】し
攻撃は【武器受け】をして流して
力で来るならこちらも力で応えよう。
【怪力】を持ってUC【地砕撃】を発動
うむ、今回の依頼は俺にとっても良い修行になった。
礼を言うと剣に拱手。
堆沙坑・娘娘
共に戦いましょう、剣。
『虎殺し』は武侠にとって分かりやすい自慢話になりますよ。酒の席での話のネタを増やすとしましょうか。
私を見つめて喉を鳴らしてくれるとは…可愛いものですね。ほら、来なさい。
相手は戦闘力を上げてきている。そして私は相手をパイルバンカーで貫くためにその強化を敢えてさせて不利になっている。なので私の能力も高まります。
そうなると、最終的には相手の動きが見破りやすくなるだけのこと。襲い掛かってくる動きを見破り強化された身体能力で迎撃。勿論パイルバンカーによる【貫通攻撃】です。どんどん片付けていきましょう。剣の方に数が行きすぎないようには気をつけます。
剣、助力は必要ですか?
…滑舌改善の。
●月下虎討
虎の軍勢。
その先駆けたる少数が猟兵に迫る。
数は少ないが全てが獰猛。
恐れを知らぬが故に最前に立つ。
迎え撃つは武侠に拳士。
手に携えるは青龍偃月の大刀と鉄杭の射出機。
張・西嘉と堆沙坑・娘娘、その人であった。
「共に戦いましょう、剣」
娘娘が若者をいざなう。
「『虎殺し』は武侠にとって分かりやすい自慢話になりますよ。酒の席での話のネタを増やすとしましょうか」
苦笑しつつ若き英傑は杭の拳士の隣に並んだ。
「私を見つめて喉を鳴らしてくれるとは……可愛いものですね。ほら、来なさい」
剣が速攻にて虎へと挑みかかるなら、娘娘は獣と対峙し挑発する。
挑発に応えるように虎は睨み、殺意でその牙を、爪を、研ぎ済ませていく。
そして同じように杭の拳士の鉄杭が貫く機会を狙っていた。
唸りつつ歩む四本の肢。
静かに歩む二本の脚。
足音は無かった。
獣の殺意と人型の狙う機が競うように張り詰め――そして交わる。
虎が跳ねた。
人が届かぬ獣の間合い。
肉食獣だからこそ出来る人外の歩。
鋭き爪を備えた前肢で引き倒し、牙にて止めを刺さんとその殺意を伸ばし、人型に触れる直前に何かに縫い留められたように勢いは止まった。
――信念
貫くというたった一つの言葉。
それを成し遂げるためならば、困難すら力に変える。
そう、虎が殺意を増せばますほど娘娘の身体は研ぎ済まされ、逆に一撃で仕留めようと飛び掛かった獣は大きな隙を作る。
その綻びを……後は貫くのみ。
「剣、助力は必要ですか?」
「いや、無用だ」
仕留めた虎が地を揺らす中、杭の拳士が問いかければ若き拳士もそれに応える。
「……滑舌改善の」
娘娘の言葉に、剣は苦笑を浮かべるしかなかった。
「虎退治か……武人にとってはよい武勇伝になるだろうな。相手にとって不足はない!」
西嘉の口角が上がり、笑みに近い武人の相が浮かぶ。
その姿に英傑は言葉をかけるのを止め、自らの戦いに取り掛かる。
もうこの舞台は武侠と獣のもの。
其れ以外の何者も上がることは許されない……。
低く唸る声が響く。
虎視眈眈と睨む殺意は西嘉の首へ。
けれど武侠は意に介さず。
無論、虎の視線が急所を突き刺すのも分かる。
だが、かと言って怯む理由はなく。
むしろ此方が圧をかける。
……武の道を歩んで培われた威のこもった圧か、獣としての技に繋げるための睨みか、二つの視線は交錯し、そして先に動くのは
――虎。
唸りは消え、音は無く、獣の姿は消え、爪が伸びる。
何かがぶつかる音がして、青龍偃月刀の柄がしなり、そして大刀が弧を描くと西嘉の姿は虎の視界から消え、力は水のように流され空を切る。
別の唸り声が聞こえた。
いや違う。
それは息吹。
人が力を発露する武の咆哮。
地面粉碎――地砕撃!
轟!!
鈍い音が響き、怪力によって振り下ろされた単純で重い武器の一撃。
足元にクレーターが出来るほどの衝撃に虎は頭を垂れ、そして胴から離れ、地面へと転がった。
「うむ、今回の依頼は俺にとっても良い修行になりそうだ」
感触を確かめ、そして英傑へ視線を巡らせる西嘉。
戦いが終わったら礼を交わす必要を感じつつ、またもう一体、向かってくる獣へと武侠は大刀の刃を走らせた。
先駆けたる虎の精鋭はここに駆逐され、そして本体たる群れが迫る。
だが……猟兵も既に備えていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
人の理の外の獣相手ならば…この武器もある種の礼儀でしょうか
(盾と剣を背負いUCを構え。クロスボウ“型”なので矢を納めた弾倉装填)
仮に逃げても背を撃てます…尤も、相手にその気は無いようです
私は索敵と狙撃を
剣様は近づく獣をお願い致します
特に弾…でなく矢の再装填時には厳に警戒を
マルチセンサーで情報収集
熱源、動体反応、そして暗視機能で所在を見切り
月光に輝く虎達の瞳
連射モードの乱れ撃ちスナイパー射撃で撃ち抜き
気付きましたか?
攻勢の波の変化を
弾倉の矢の本数を覚えたようです
再装填の間隙
武侠を抜いて迫る獣にチャージしていた一射で迎撃
弾倉交換時、常に銃の薬室に矢を残しておりました
虎の子…でなく隠し球という訳です
木常野・都月
虎相手でも武術で……!
と言いたい所だけど、流石に相手が悪いか。
ここは俺本来の…精霊術師としての仕事をしよう。
虎は力も強くて、何より素早い。
見取りをしながら動きを[情報収集]しつつ、動きを封じ込めれば。
仮に封じ込めが無理でも動きを鈍らせれば、勝機はあるはず。
UC【精霊召喚】で召喚された精霊様に虎を抱え込んで貰おう。
見取りを知った今の俺なら、冷静に虎の動きを追えるかも。
例え素早く飛び回っても、[野生の勘、第六感]と風の精霊様の加護で対応出来ればいいな。
地の精霊様の[カウンター、属性攻撃]で重力操作をしよう。
飛び回ってもダメだ、地面に落ちろ!
必要があれば[援護射撃、2回攻撃]で虎を追い詰めていこう。
●月下狩猟
「剣様!」
トリテレイア・ゼロナインの叫びを聞き、若き英傑は先駆けの場から離れる。
「準備は?」
「万事整っております」
駆け寄った拳士の言葉に騎士は無論とばかりに答えを返す。
「虎相手でも武術で……!」
一方で木常野・都月は拳を握り。
「と言いたい所だけど、流石に相手が悪いか」
それを解き、深く息を吐く。
無理もない、連戦である以上余裕はないのだから。
「ここは俺本来の……精霊術師としての仕事をしよう」
「何か、考えがあるのか?」
都月の言葉に剣が問いかければ狐は強く頷いた。
「虎は力も強くて、何より素早い」
都月が敵の能力を的確に分析する。
「動きを封じ込めれば……もし仮に封じ込めが無理でも動きを鈍らせれば、勝機はあるはず」
「なるほど、常道だな……さて来たぞ!」
狐の言葉を頷いていた若き英傑は敵の気配を感じ、警告を発す。
「精霊様……ご助力ください!」
反応した都月が技を紡ぐ。
武術とも魔術とも違う、精霊との対話。
召唤灵魂――精霊召喚
風が虎を受け止め、見えない何かが獣を抑え込む。
大気を司る精霊は俊敏なオブリビオンを広く捕え、大地の精霊が操る地の重さ――重力が虎を圧し潰す。
これも全て修行で知り、戦いの中で身に着けた見取りが為す成果であった。
「捕まえた」
「お見事」
狐の言葉に騎士は称賛し、巨大な弩から伸びるケーブルを自らに繋いだ。
「人の理の外の獣相手ならば……この武器もある種の礼儀でしょうか」
虎を獣と括れば、トリテレイアの持つ武器は狩りの道具。
狩猟民族であれば信仰する生き物への敬意の為の祭具となろう。
最も……彼の手にあるのは戦の為の武器なのだが。
「仮に逃げても背を撃てます……尤も、相手にその気は無いようです」
クロスボウに矢が装填された弾倉を嵌め、照門を照星を合わせた先では精霊の呪縛から抜け出そうとする虎の姿。
「私は索敵と狙撃を剣様は近づく獣をお願い致します」
ゆっくりと戦機が引鉄に指をかければ、クロスボウ――正確にはレールガン甲高い音が響いた。
「特に弾……でなく矢の再装填時には厳に警戒を」
そう、それは弩ではない。
正式な名称は
直接连接超電磁砲――コアユニット直結供給式対人・対艦兼用電磁投射砲!
風を切る音がした。
弓矢が放つ音とは違う、異質の何か。
劳仑兹方程式――ローレンツ式に基づいて加速する矢が獲物を狙おうと月光の下、輝く獣の眉間を射抜く。
それだけでは終わらない。
休むことなく降り注ぐ矢の雨の中、一匹の獣が抜け出し歯牙にかけんと猟兵に襲い掛かった。
「ウェイィィィィッ!!」
そこに放たれる裂帛の蹴り、剣だ。
「気付きましたか?」
肩で息をする若き英傑へ緑色のカメラアイを光らせて騎士が話しかける。
「攻勢の波の変化を……弾倉の矢の本数を覚えたようです」
口調に焦りはなく、淡々と事実を告げるのみ。
「……その不動の心、あやかりたいものだな」
「それは為さらぬのがよろしいかと」
トリテレイアの様子に感心する剣、だが戦機の言葉は肯定ではなかった。
そこへ間隙を縫って虎が飛び掛かる。
矢は撃ち尽くし、再装填中。
ならばと英傑が向かった時、その横を風が走った。
「弾倉交換時、常に銃の薬室に矢を残しておりました」
振り向けば、そこにはレールガンを構える騎士。
「虎の子……でなく隠し球という訳です」
トリテレイアの諧謔に若き拳士は苦笑を以って返した。
言葉の奥にある鉄の心は、おそらく、それ以上は触れてはいけないものなのだから。
遠くよりの攻撃は終わり、戦いは乱戦に突入する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リュート・アコルト
何言ってんだ翼(f22017)?
虎みてえな肉食獣…食うに決まってるじゃねえか!
強え奴を食えば強くなれるんだぜ?
肝臓や目玉は薬にもなるって
じっちゃが言ってた!
虎の脳みそは滋養強壮に効くって言うからな
羊と一緒に食わせてやるよ!
来いクロノス!(騎乗)
あの虎は睨む時間で強くなるんだろ?
なら速攻だ!奴の懐に飛び込んで一撃食らわせてやる!
剣が教えてくれた力、分かりそうなんだ!
突進してくる虎の攻撃を回避してカウンターを叩き込んだ腕を噛まれて
クロと引き離されて宙に浮く
相棒はいつだって俺と共にあるんだ!
竜の闘気を纏わせた剣を叩き込み
や…ったぜ!
俺はできたぜ!
よし虎と羊で宴会だ!
怪我治す為にも食わなきゃだからな!
彩瑠・翼
リュートくん(f34116)と
虎…!
まさかリュートくん、アレも食べるとか言わないよね?
肉食獣の肉って臭みがあって美味しくないらしいし…
(当然食べたことはない
(だってUDCアース出身の現代っ子だもん!
え、食べるの?ホントに?
いやいやいや、オレは肝臓とか目玉とか食べたくないよ?!(涙目
ていうか下手すりゃ逆に食べられちゃうから?!
正直とっても逃げたい
けど剣さんみたいに、オレだって守りたいから
怖いけど頑張るんだ
再びUCの鎧をまとい、
ペガサスのウィンに乗って飛行
上空から[ジャンプ、ランスチャージ]で虎を攻めるよ
リュートくんの攻撃が通りやすくなるように動けるようにするね
虎も羊ももうお腹いっぱいだよ…(涙
●月下天翔
精霊と矢の猛威を潜り抜け、虎は迫る。
その様子に彩瑠・翼は眉をしかめていた。
……敵の脅威にではない。
「虎……!」
先ほど戦った獏羊より、明らかに動物の形をしていた獣の姿を見て。
「まさかリュートくん、アレも食べるとか言わないよね?」
翼は友に問いかけた。
そうなるよね。
「肉食獣の肉って臭みがあって美味しくないらしいし……」
最後、自信なく言葉が小さくなるのは気のせいだろうか。
ちなみに畜産動物でも成長したら臭みはあるよ。
「何言ってんだ翼?」
リュート・アコルトは何を言っているんだと言わんばかりに首を傾げた。
「虎みてえな肉食獣……食うに決まってるじゃねえか!」
ですよねー!
「え、食べるの? ホントに?」
「強え奴を食えば強くなれるんだぜ?」
アリスの騎士の言葉に竜騎士はさも当然とばかりに応える。
「肝臓や目玉は薬にもなるって、じっちゃが言ってた!」
「いやいやいや、オレは肝臓とか目玉とか食べたくないよ」
リュートの言葉に流石に翼も拒否の姿勢を見せる。
「ていうか下手すりゃ逆に食べられちゃうから!?」
「虎の脳みそは滋養強壮に効くって言うからな、羊と一緒に食わせてやるよ!」
けれどアリスの騎士の言葉が届くことは無い。
「来いクロノス!」
「あ~! やっぱり聞いてないよー!?」
相棒の黒竜に騎乗するリュートの背中を見た翼を声を上げ、若き英傑はその肩をそっと叩いた……。
空を駆ける黒竜。
天を見上げ虎は唸り声を上げる。
「あの虎は睨む時間で強くなるんだろ?」
だが、竜騎士には獣の術は既にお見通しであり。
「なら速攻だ! 奴の懐に飛び込んで一撃食らわせてやる!」
対抗する方法も知っていた。
轟音と共に竜が降下し、衝撃で虎が一匹吹き飛ぶ。
「剣が教えてくれた力、分かりそうなんだ!」
切欠は言葉、道筋は戦い。
命を奪い合う行いが余計な思考を削り、答えを導き出そうとした時……虎が迫った。
「邪魔だあ!」
獣の突進を避け、一撃を叩き込めば引き換えに捕らえられるリュートの右腕。
噛みつかれた――と思った時には既に遅し。
竜騎士の姿は空を舞い、愛竜との絆も引き離され、虎達が止めを刺さんと跳躍する。
だが、少年はくじけない。
「相棒はいつだって俺と共にあるんだ!」
見えない糸が繋いでくれているのだから。
その糸を通して竜の闘気を剣に込めた時。
「リュート君!」
もう一人の少年の声が響いた。
逃げたかった。
現代日本に生まれた少年にはこの世界は怖い。
だが心に決めたのだ。
家族や大切な人達を守れるようにと。
肩を叩いた英傑のように守りたいと。
意志は力となり想像は創造を――生む!
爱丽丝骑士・想像――アリスナイト・イマジネイション!
無敵の鎧に身を纏い天馬に跨れば、飛び込むのは虎の軍勢。
「いっけえええええええええええええっ!!」
天空からのランスチャージがリュートに群がろうと跳躍した虎を吹き飛ばし、竜騎士の道を作る。
「今だよ!」
「分かった!」
翼の言葉に頷いた少年が黒竜の闘気を纏った剣の力を――解き放つ!
竜装――双覇撃!!
大上段から振り下ろされた剣が獣の頭を叩き割った。
「や…ったぜ!」
リュートが拳を握る。
「俺はできたぜ!」
少年は掴みとったのだ、答えを。
「よし虎と羊で宴会だ!」
だから宴会をしよう。
「怪我治す為にも食わなきゃだからな!」
食事は大事なのだから。
「虎も羊ももうお腹いっぱいだよ……」
そんなリュートの姿に翼は涙を流すしかなく、英傑はやはりその肩を叩いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
荒谷・つかさ
虎、ねぇ。
ええ、大丈夫よ。むしろ読み通りだわ。
こんなこともあろうかと……用意してきたブツがあったのよ!
(どこからともなく引っ張り出される大量の麻袋)
麻袋を放り投げながら【荒谷流抜刀術・神薙の刃】発動
刀から放たれる真空の刃で袋を切り裂けば、そこから飛び散るのはキマイラフューチャー産最高級マタタビ
うちの猟団長もべろんべろんにする代物をそれこそトン単位で散布してやれば、虎もネコ科動物、只では済まないでしょうし睨みも唸りも出来ないはず
まあ効くにしろ効かないにしろ、どちらにせよ後は首を落とすのみ
苦しませずに逝かせてあげましょうか
なんでこんなもの用意してたのかって?
勘よ。筋肉を鍛えれば勘も磨かれるのよ。
●月下虎惑
先駆けは撃退され、本隊は矢と精霊に勢いを削がれ、少年達の強襲を受ける。
だが、軍勢は未だ健在。
ならばどうするか……次は搦め手の時間であろう。
「虎、ねぇ」
荒谷・つかさが前に出た時、どこかで金属同士がぶつかり合い、銅鑼を叩くような音が響いた。
「ええ……大丈夫よ。むしろ読み通りだわ」
何か雰囲気をかき乱された気分の中、呟きながら引っ張り出すのは
「こんなこともあろうかと……用意してきたブツがあったのよ!」
大量の麻袋。
また銅鑼のように金属音が今度は三度、ぶつかり合った。
「来たわね」
大量の麻袋を縄で結わえ、片手で引きずりながら、つかさは虎の軍勢を睨む。
何気ない動作で、地面を耕す様に引きずられていた袋が飛び、羅刹の女は腰に差した刀を抜く。
上帝・切断――荒谷流抜刀術・神薙の刃!
刀から放たれる真空の刃で袋を切り裂けば、そこから飛び散る粉に……
「ふにゃご~ん……ごろごろごろ」
虎は腰砕けになり、地面に身体をこすりつけるように身をよじった。
「これはうちの猟団長もべろんべろんにするキマイラフューチャー産最高級マタタビ」
猫に木天蓼とは日本の諺にあるが、虎に効くとはさすがは未来のマタタビである。
「それこそトン単位で散布してやれば、虎もネコ科動物、只では済まないでしょうし睨みも唸りも出来ないはず」
トン単位もどうやって手に入れたかは聞かずとも分かった。
多分、筋肉を振るわせて超振動でコンコンしたのだろうから。
閑話休題
今は戦の時。
木天蓼に酔った虎へつかさが近寄ると右手に持った刀を一閃!
一頭、また一頭と一刀のもとに切り捨てられ、首が転がる中、同じように刀を振るていた剣が何かを思い出したように問いかけた。
「しかし、よくこのような物、用意できたな?」
「なんでこんなもの用意してたのかって?」
繰り返す様に羅刹の女は答え、左手で右の上腕部を叩く。
ちょうど力瘤のあたりだが、見た目には女の細腕。
「勘よ」
一言、応え。若き英傑は目を丸くする。
「筋肉を鍛えれば勘も磨かれるのよ」
「筋肉を鍛えれば勘も……なるほど、鍛えることで空気の震えを感じるという事だな」
筋肉的羅刹の言葉に剣は自分が知りうる知識の限界を以って応えた。
ちなみに間違っているのは言うまでもない。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
何の狙いがあって剣殿を襲撃するのかは分からぬが……
将来英傑たらんとする有望な若者を芽のうちに刈るというのならば
……其れは手遅れだったと言わせて貰おう
剣殿の教えは的確であったと、俺こそが示そう
虎よ、何頭でもまとめて掛かって来い
双剣の氷を下に、炎を上に、水平に構えて
一気に薙ぎ払えるように狙いを定める
飛び掛かって来たら【氷炎剣舞】の出番だ
一体ずつなら確実に、複数同時なら「範囲攻撃」で
氷の短剣で後ろ脚を凍らせつつ、可能な限り同じタイミングで
炎の長剣による致命の一撃を繰り出す
そう、此れこそが剣殿の教えより生まれた「技」だ
最初は無理かと思ったが、いざとならば何とかなるものだな
さあ剣殿、格好良く決めておくれ
劉・涼鈴
武侠の前に出てくるなんていい度胸だ!
いざや打虎将!!
虎視担々麺! 終わったら担々麵食べよっと
剣も一緒にどう? そのためにも勝って帰るよ!
こっちも睨み返して吼えて威嚇だ! がおー!!
跳び掛かってきたら戟で【なぎ払って】叩きのめす!
うーん、なんか雑……じゃないな、濁ってる、かな?
無用の殺意が爪牙を鈍らせてる
食べるために殺す、だから餓えた虎は強い
でもお前たちは殺すために無駄に殺す、だからナマクラなんだ
タイマン張って倒しても、あんま自慢になりそうにないね
一気にカタを付けるよ! 来世ではこの奥義を破ってみせな!
漲る【覇気】を掌に凝縮! 【劉家奥義・獅吼爆裂覇】!!
●月下終局
数々の攻勢を受け、最早虎は軍を成さず、群となる。
けれど終わらない。
全てを倒すのが――猟兵と英傑がそうである理由なのだから。
「何の狙いがあって剣殿を襲撃するのかは分からぬが……」
意図的な襲撃。
真相を知るには獣相手には難しいとニコ・ベルクシュタインは悟りつつも
「将来英傑たらんとする有望な若者を芽のうちに刈るというのならば……其れは手遅れだったと言わせて貰おう」
策謀の終焉を宣言する。
「武侠の前に出てくるなんていい度胸だ!」
一方で劉・涼鈴は明快だ。
「いざや打虎将!!」
虎を打つ。ただそれだけなのだから。
だが、それ故に求めるものは深いだろう。
「虎視担々麺! 終わったら担々麵食べよっと」
虎視……担々麵?
「剣も一緒にどう? そのためにも勝って帰るよ!」
「あ……ああ、食べよう虎視担々麺」
若き英傑もなんか空気読んだ。
武侠が求めるものは深い……と思う。
「グゥルルルルルル……」
「ガァアアアアアッ!!」
「がおー!!」
三者三様。
虎の群れが次々と唸り声を上げれば睨み返すのは劉家の公主。
怯んだのかそれとも殺意が先走ったのか、一匹の虎が飛び掛かり前肢を伸ばす。
刹那、叩き込まれるのは覇王方天戟。
鼻っ柱を強く打たれた獣が怯んで距離を取った。
「うーん、なんか雑……じゃないな、濁ってる、かな?」
涼鈴が眉をしかめた。
無用の殺意、それが爪牙を鈍らせていた。
食べるために殺す、その飢餓たる精神が今の虎には無い、故に……
「お前たちは殺すために無駄に殺す、だからナマクラなんだ……もうお前たちは虎じゃない」
そこに居るのは獣にも殺し屋にもなれなかった、哀れな猫。
「タイマン張って倒しても、あんま自慢になりそうにないね」
言葉が重い。
満たされなかった故か、それとも獣がただの殺しの道具に使われた憐憫故か。
「一気にカタを付けるよ! 来世ではこの奥義を破ってみせな!」
いずれにしてもその手に覇気が漲れば、劉家拳の奥義が獅子となる。
刘家之奥秘・狮吼爆炸覇――劉家奥義・獅吼爆裂覇
獅子吼が走り、虎は消えた。
「…………」
涼鈴が方天戟を手に取れば、戦場から背を向け去っていく。
次なる戦場を求めて……。
一方、別の虎がニコへと迫る。
「剣殿の教えは的確であったと、俺こそが示そう」
だが時計卿に恐れはない。
教えが、これまでの経験が、勝利を導き出せると計算出来たからだ。
「虎よ、何頭でもまとめて掛かって来い」
双剣に氷が、炎が、宿り、魔剣と化す。
二刀並列、水平に構えた二つの刃の間からニコは眼鏡の向こうから機会を伺った。
人と獣、互いに機を探り、呼気を聞き取り、肉の動きを広い視野で捉える。
やがて――虎が跳ねた。
狙うは三連、両の爪で獲物を捕らえ、技を封じ、牙で殺す。
だが、その爪は時計卿に届くことは無かった。
冰焰剑舞――氷炎剣舞
間合いに跳び込み、虎の後肢を切りつけ凍結させたニコが間髪入れずに長剣を振り上げる。
炎が舞い、獣の首が転がり落ちると、巨体は音を立てて崩れた。
「そう、此れこそが剣殿の教えより生まれた」
さらに迫る一頭を切り捨てると時計卿は一言。
「――技だ」
そう言って再び二刀を構えると思わず笑みが浮かんだ。
「最初は無理かと思ったが、いざとならば何とかなるものだな」
そして視線は若き英傑へ。
「さあ剣殿、格好良く決めておくれ」
剣が頷き、そして跳んだ。
「飛翔、大鷲の如く。技巧、蝗の如く。力、鹿の雷鳴!」
さらに進化した象形拳――その結晶である飛び蹴りが
「ウェイィィィィッ!!」
最後の虎を打ち倒した。
「君達には世話になった」
戦いが終わり、改めて若き英傑は猟兵に礼を述べる。
その顔は晴れやかであり、一つの殻を破った男の姿でもあった。
「もし俺で良かったら、いつでも呼んでくれ――ソドドゥクヴァディカラディナドゥ」
緊張が解けたのか、言葉を噛む拳士。
どうやら真の英傑の道はまだまだ遠い様だ。
ここに猟兵と拳士の道の交わりは終わり、再び道は分かれる。
その後がどうなるかは不明だが英傑たる者が一人生まれるのは後に聞くであろう話の一つ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵