17
空の海と飴花火

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#お祭り2021
🔒
#夏休み


0




● 空の海と飴花火
 水着コンテストの熱気に包まれていたカクリヨファンタズムの浜辺は、夜を迎えていた。
 猟兵たちを労うように用意されたのは、妖怪花火という不思議な花火。

「水着コンテストお疲れさまでした」
 盛り上がっていましたね、といつものように柔和な笑みで太宰・寿(パステルペインター・f18704)は猟兵たちを労う。
「妖怪親分さん達が、面白い花火を用意してくださったんです」
 危険のない案内は気が楽なようで、寿の声はどこか弾んでいる。
「グリモア猟兵さんたちが色んな案内をされていると思うのですが、私からも案内できたらなって。
 ひとつは打ち上げたイルカやクジラの形をした花火に乗って、数分間の空の旅です」

 花火に乗って海を泳ぐように、花火の咲く空を楽しめると言うことらしい。
「乗った花火は、ゆっくり降下していきます。最後は海に降りて花火が消えるようになりますから、濡れてもいい格好で乗ってくださいね。大体三名くらいまで乗れるみたいです。あ、乗る花火と一緒にご自身も打ち上げられる形になりますから、苦手な方は気を付けてくださいね。
 それから、もうひとつはこれです」
 そうして寿が見せるのは、ごく普通の線香花火だ。

「ただの花火に見えますよね? 飴花火と言うそうで、火の玉が飴になるんです」
 いわく、最後の火の玉が落ちた時その玉も飴玉になっているという寸法らしい。
「大きさは普通のサイズの飴になるんですけど、頭にイメージした形や色に出来るそうです。味は選べますから、花火を選ぶ時に決めてください。オススメはお口で弾けるラムネ味だそうです」
 不思議だけど綺麗で美味しいならいいですよね、なんて笑って。
「熱くないので、落ちる時は手でキャッチしても大丈夫ですよ。小瓶も用意してありますから、たくさん遊んで飴玉は持って帰っても構いません。色んな飴を作れば、小瓶をアクアリウムとかテラリウムみたいに出来たりもしそうですね」
 楽しんで頂けたら嬉しいです、と話を締め括ると、寿は集まった猟兵たちを浜辺へと案内するのだった。


105
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。105と申します。
 今回は一章完結の夏休みシナリオをお届けします。

●オープニング補足
 空の旅か、地上で花火がメインになります。
 空で乗る花火は、イルカやクジラ以外でも大丈夫です。希望があればプレイングでご指定ください。
 花火の乗り物が空から降りる時のイメージは、紙飛行機が飛ぶような感じです。すいーっと緩やかに降りて行きます。
 太宰・寿が同行します。お声がけ頂いた場合のみ登場しますが、空へはご一緒できません。

●短縮記号
 文字数削減にお使いください。冒頭にお書き頂けると助かります。
 🐬or空:空の旅にいく場合。
 🍬or飴:飴花火をする場合。
 ×:連携不可の場合。

●プレイング受付について
 オープニング公開後にタグ等でお知らせいたします。今回は受付や締切までゆっくり時間を取って進める予定です。受付前のプレイング送信も構いません。3名様くらいまででしたらタイミング次第ではありますが、可能な範囲でお届けします。流れてしまった場合の再送は歓迎です。その際は期間内に頂けると助かります。

 よろしくお願いいたします。
66




第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

薄荷・千夜子
【千夢】🍬
レモンもいいですね、オススメのラムネもいいかもしれませんね
なんて話をしながら智夢さんと
わぁ、猫さんは可愛いですね
それじゃ私は…そうですね、彗をイメージしてみましょうか
夏らしい青空色の鳥の形になるように

あら、澪君たちとと話をうんうん聞きつつ友人達の姿を思い出しながら
打ち上げ花火はまた趣が違いますからね
あちらも華やかで見応えありますがこちらも優しい光で素敵ですよね

取りこぼさないよう飴を取りながら
向日葵色…ふふ、ありがとうございます
お姉ちゃん嬉しいですよ
向日葵を選んでくれたのも姉と呼んでくれたのも嬉しくてニコニコと
それじゃ、いつも智夢さんが晴れやかでありますようにと青空飴と交換を


百鬼・智夢
【千夢】🍬

花火が飴になるなんて、不思議ですね…
味は……夏ですし、レモン、とか……?

ちらちらと薄荷さんを見ながら悩み
色も味に合わせて…猫ちゃん、作りたいです
いくつか遊べるのなら、カラフルに

ぱちぱち弾ける火花を見つめ
私…こういうの、初めてです
打ち上げ花火なら、一度だけ
澪君と恋人さんに見せてもらって…
音も、大きさも…全然違いますね
静かで、儚くて…とっても綺麗…

少しの風でも消えてしまいそうで
そっと片手で風を遮り
飴になったら慌ててキャッチ

よかったら1つ…交換しませんか?
あの、これ…ひまわり色…
薄荷さ……ううん
お姉ちゃんの色かなって

もし、嫌じゃなければ…
これからも、お姉ちゃんって…呼んでもいいですか…?




 味は花火を選ぶ時に選ぶように、と聞いていた薄荷・千夜子(陽花・f17474)と百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)は、屋台に並べられた飴花火の前でこてりと首を傾げ合う。
「花火が飴になるなんて、不思議ですね……。味は……夏ですし、レモン、とか……?」
「レモンもいいですね、オススメのラムネもいいかもしれませんね」
 智夢は、レモンの札が付いた箱からまず一本。智夢の言葉に笑顔で頷きながら、千夜子はラムネ味を一本。
「どれも美味しそうで、悩んじゃいます、ね……」
「ふふー、そういう時はここからここまで! ってしたらいいですよ」
 並ぶ飴花火をじぃっと見つめる智夢に、持って帰ってもいいのですし、と千夜子はひょいひょいと飴花火を手に取り笑う。その様子に目を瞬きながら、智夢も頷き小さく笑った。

 用意された蝋燭を借りて、早速砂浜へ。花火を手に取り、智夢はちらちらと千夜子の手元を見やる。千夜子は何を咲かせるのだろう、と気になっているらしい。暫く悩んで、智夢は蝋燭にそっと花火を近付ける。
「何を作るか決めました?」
「色も味に合わせて……猫ちゃん、作りたいです」
「わぁ、猫さんは可愛いですね」
 ぱち、と手を合わせ千夜子もまた蝋燭へ花火を寄せた。
「それじゃ私は……そうですね、彗をイメージしてみましょうか」
 飴花火の咲き方は線香花火に近い。だから、打ち上げ花火と比べたら華やかさには欠ける。繊細な花弁を咲かせて、漣の音の隙間にぱちぱちと優しい音を立てるのみ。それでも、智夢は嬉しそうに声を零す。密やかに、爆ぜる音が消えないように。
「私……こういうの、初めてです。打ち上げ花火なら、一度だけ」
 花火を見つめながら、いつかの打ち上げ花火を思い出しそう話す。話題に上がった友人の名前に、
「あら、そうだったんですね」
 千夜子は、彼らの姿を思い出しながら相槌を打った。
「打ち上げ花火はまた趣が違いますからね。あちらも華やかで見応えありますがこちらも優しい光で素敵ですよね」
「音も、大きさも……全然違いますね。静かで、儚くて……とっても綺麗……」
 さぁっと吹く海風は、優しい。それでも消えてしまいそうで、智夢はそっと片手で風を遮った。手の中が火の玉が、ちりりと縮んで揺れる。やがて、花が咲き終わるとちりりと音を立ててそれは透き通った黄色になる。
「あっ……」
 智夢が遮っていた手を慌てて火の玉の下に差し出すと、ころんと猫の形をした飴が手のひらに転がり落ちて来た。思わずほわ、と表情が緩む。
「ふふ、上手にできましたね!」
 智夢に笑いかける千夜子の手のひらにもまた、飴が乗っている。それは夏らしい青空色の鳥の形。イメージ通りの仕上がりだ。千夜子の言葉に、こくりと智夢が頷く。
 ひとつ、またひとつ小瓶の中に増えていくのが嬉しくて、からりころりと一色ずつ猫や鳥をふたりで増やして。

「よかったら1つ……交換しませんか?」
「あら、いいですね」
 千夜子の承諾を待って、智夢が差し出した飴は、
「あの、これ……ひまわり色……。薄荷さ……ううん――お姉ちゃんの色かなって」
 明るい太陽に向かって、ひたむきに咲く花。

 ――前を向いて、もっとずっと素敵な未来を掴みたい。

 そんな千夜子の思いに重なるような色を選んでくれた事が嬉しくて。何より、姉と呼んでくれたことが千夜子の心をより温かくしてくれるから。千夜子は自然と溢れる笑みをそのままに、智夢と向き合う。
「向日葵色……ふふ、ありがとうございます。お姉ちゃん嬉しいですよ」
 私からはこれを、と智夢の手のひらへ乗せるのは青空を思わせる飴。
「いつも智夢さんが晴れやかでありますように」
 受け取った飴をじっと見つめて、智夢はそろそろと花唇を開く。
「もし、嫌じゃなければ……これからも、お姉ちゃんって……呼んでもいいですか……?」

 ――智夢の問いに千夜子の返す答えは、真夏の太陽のような笑顔と共に。

 今宵華やかな一夜、小瓶にいっぱいの彩を集めて。それでもふたりの鮮やかな思い出には、きっと及ばないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戀鈴・イト
【硝華】
🍬

線香花火にしか見えないけれど
これがどうやらその妖怪花火らしい
ふふ、そうだね
一緒にやってみようか
子供のようにはしゃぐ君が愛おしくて
自然と眦が緩んでゆく
臆、味はお任せにしよう

大丈夫だよ、有難う
シアンも気を付けてね
シアンの肌に傷が残ってしまったら悲しいから
どんな飴玉にしようかと考えを巡らせて

ひとつ灯して、華の形に
ふたつ灯して―――ハートの形

あ、え、臆、うん
ひとつは僕たちみたいなものが出来たよ
完全に無意識でやらかしていた
こんなの君が好きって言っているようなものじゃないか…!
…どう誤魔化そう
口の中に放って証拠隠滅してしまおうか

ラムネの味がするよ、美味しいな
シアンの最後のは何の形だったんだろう


戀鈴・シアン
【硝華】
🍬

ようかいはなび……この線香花火が?
見た目は普通の花火のようだけれど
楽しそう
やってみようよ、イト
味はお任せで、幾つか貰えるかな

あ、火扱うのは気をつけて
イトの白い肌に火傷痕が残らないように
どんな飴玉にしようか……

ひとつ灯して、花の形に
ふたつ灯して、花瓶の形に

ふふ、見て、俺達みたいなのが出来た
イトはどんな形になった?
ハートだ
可愛い
可愛い、けど
――誰の事を考えていたの、なんて
過ぎっても訊けはしない
…なぜかイトも慌てているし

モヤモヤしていたら、みっつめの飴花火はえらく不格好になってしまった
見られる前にこれは自分で食べようかな
…うん、味は美味しい

綺麗に出来たひとつめは、きみの口元へ
美味しい?




 昼の喧騒とは違う賑やかさが満ちる浜辺。時折打ち上がる打ち上げ花火の隙間に、さざめく波の音。浜辺に並ぶ屋台のひとつ、花火を扱う店の前で戀鈴・シアン(硝子の想華・f25393)と戀鈴・イト(硝子の戀華・f25394)は、顔を見合わせた。
「ようかいはなび……この線香花火が?」
「線香花火にしか見えないけれど」
 見た目は普通の花火のようだけれど、とシアンは花火を一本手に取り目を瞬くと首を傾げた。
「不思議だね」
 不思議そうに、だけれど輝くシアンの瞳は楽しそう、とそわり。イトはそんな彼を見て可愛いらしいと密やかにくすり、笑みを零す。
「やってみようよ、イト」
 ――そう言うと思ってた、なんて。イトの眦は自然と緩んでいく。まるで子どものようにはしゃぐシアンが愛おしくて仕方ない。
「ふふ、そうだね。一緒にやってみようか」
 屋台に目を戻せば、苺に蜜柑、檸檬にラムネ。色々な札と共に、花火が並んでいる。
「沢山あって目移りしてしまいそうだね」
「臆、そうだね。味はお任せにするかい?」
 イトの提案にシアンは頷いて、店番の座敷童子の少女へと声をかける。
「味はお任せで、幾つか貰えるかな」
「はいな! いっぱい遊んでね」
 座敷童子の少女は、手早く花火を見繕うと満面の笑みでふたりに差し出した。

「あ、火扱うのは気をつけて」
 花火と共に受け取った蝋燭を砂浜に置いて、シアンはイトに声をかける。イトの白い肌に火傷痕が残らないように、そんな思いを滲ませた優しい声にイトは柔らかく笑んで頷く。
「大丈夫だよ、有難う。シアンも気を付けてね」
 イトだってシアンが心配なのだ。肌に傷が残ってしまったら悲しいから、返す言葉はやっばり優しく響く。

「どんな飴玉にしようか……」
 シアンは花火を手に、しばし悩んで火を灯す。ぱちぱちと控えめな音を立てて、やがて一輪の花となる。ふたつめは、花を咲かせた後に花瓶の形になった。
 イトもまた楽しそうにシアンの隣で、花火を咲かせる。小さく優しく爆ぜて、ひとつは繊細な華に。ふたつ灯せば――、
「ふふ、見て、俺達みたいなのが出来た」
 子どものように笑うシアンの声が、自然とイトの耳朶を打って。ころんと転がる淡いハート。
「イトはどんな形になった?」
「あ、え、臆、うん。ひとつは僕たちみたいなものが出来たよ」
 はっとして手の中に収まる華を見せるイトだけれど、シアンの視線はまさに今しがた転がり落ちたイトの心を見つめていて。
「ハートだ。可愛い」
 にこりと笑うシアン。
「(……可愛い、けど)」
 ――誰の事を考えていたの、なんて。胸の裡に過ぎる言葉は、訊けはしない。

 イトも無意識に零れた想いの形に、内心焦ってしまって。
「(こんなの君が好きって言っているようなものじゃないか……!)」
 ――この想いは秘密なのに。

 誤魔化さないと。
 焦ってひょいと口の中に放った想いは、彼と異なる想いでチクリと痛む胸に反して――随分と甘い。

 そんなイトの姿は、シアンの胸をモヤモヤとさせる。きっと、これも嫉妬なのだろう。何を思ってあの形ができたのだろう、なんて考えていたら、光を失った花火から出来た飴は随分と不恰好なものになっていた。
「(見られる前にこれは自分で食べようかな)」
 ぱくりと口に含んだ飴は、檸檬味。
「……うん、味は美味しい」
 シアンは口の中でころりと零れ落ちた想いを転がして、ひとつめの花をイトの口元へ寄せる。
「はい、イト」
「ん、なに」
 喋るために開かれた唇の向こうに、シアンは飴を差し出した。
「美味しい?」
「ラムネの味がするよ、美味しいな」
 ころんと転がりこんだ飴に、心臓が跳ねるけれど。イトはいつも通りの笑みを浮かべて頷いた。
「よかった」と笑うシアンを見上げて、最後の飴は何の形だったんだろう? イトの頭にそんな疑問がもたげるけれど。
「どうかした?」
「――ううん、なんでもないよ」
 互いに秘める想いはまだ溶け合わないけれど、確かな形となっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

唐桃・リコ
菊(f29554)と🍬

飛ぶのは菊の方が似合ってんだろ
…どっちかっていうと
アレ、食いてえ

…あ?コンビニ?
あーあーあー、アレな
うんうん、アレアレ
(覚えてるわ、肉まんだろ)
そんな事言ってたら、こんな形じゃん
はいはい、次もオレ、勝つと思うわ

ざらざら集めて
ひっくり返した帽子にぶち込む
こういうの、いーな

投げられた飴に飛びついて
咄嗟に噛んじまう
…食べ物投げんな、しょーがねえだろ
菊の横に座って
もう一個よこせ、って強請る
…菊の作ったやつ、ちょっとだけ酸っぱいな
口の中でちょっとだけ弾けて
最後は崩れちまう
全部作ったの寄越せ、オレが食う

あ?オレの食ってみろよ
片手で頬を抑えて
口の中に飴を突っ込む
どうだ、あめえだろ


菊・菊
リコ(f29570)と🍬

花火にされんのおもろそうじゃんリコ飛んで来いよ
ぎゃは!
…あー?花火食ってみてえの?ま、いーよ。勝負な。

線香花火片手に、リコと並んで座ってると
コンビニで屯してたの思い出す

な?
…てめえ忘れたって言ったらぶん殴るぞ
おい、どうなんだよ、ッア落ちた
今のノーカンだろ、おいッ、…もっかい!

んな、しょうもないこと話して笑って、気づいたら飴の山
勝って負けて、どんぐりの背比べ

ん、あま
あんだけ爆ぜてたくせにあつくねーの、おもろいな

食う?
はあ?口開けんな、手出せあほ
ひひ、
そう言いながら、投げてやる
おまえ噛むなよ大事に味わえってば、あー

お前に全部やるよ

口に突っ込まれたリコの飴がやけに甘く感じた




 静寂を割いて、大輪の花が咲く。夜空を彩る花を打ち出す大砲を指差して、菊・菊(Code:pot mum・f29554)はぎゃは! と笑った。
「花火にされんのおもろそうじゃん。リコ飛んで来いよ」
「飛ぶのは菊の方が似合ってんだろ」
 飛んで来い、と言われた側の唐桃・リコ(【Code:Apricot】・f29570)は、は? と返して地上の大筒を指差した。菊は一応視線を大筒に向けはするけれど、そのままついっとズラして。
「……どっちかっていうとアレ、食いてえ」
 どこか決まり悪げな口調で、菊はひとつの屋台を指差した。菊の指先を追ったリコの視界が捉えたのは、飴花火の屋台。
「……あー? 花火食ってみてえの? ま、いーよ。勝負な」

 線香花火のような飴花火。これで勝負となれば、どちらが火の玉を長く灯し続けていられるか。
「線香花火片手に、リコと並んで座ってるとコンビニで屯してたの思い出すな」
 「な?」と愉しげに笑って問いかける菊。
「……あ? コンビニ?」
 ジッと花火を見つめていたリコが、菊をチラッと見遣る。
「……てめえ忘れたって言ったらぶん殴るぞ」
「あーあーあー、アレな。うんうん、アレアレ」
「アレってなんだよ、おい」
「(覚えてるわ、肉まんだろ)」
 小さく笑うリコ。その一瞬に沈黙を感じて、菊はリコを見遣る。
「おい、どうなんだよ、ッア落ちた」
 ――火の玉は飴玉となり転がって、カツンと音を立てた。
 リコの火の玉も飴に変わってころりと落ちる。どこか肉まんみたいな形をしたそれに、菊は気づいていないようで。
「今のノーカンだろ、おいッ、……もっかい!」
「はいはい、次もオレ、勝つと思うわ」
 ぎゃんとリコをふり仰ぐ菊に、リコはけらりと笑って新しい花火を手に取った。

 負ければ軽く悪態をついてみたり、勝てばドヤってみたり。取り留めのない話をしては笑い合って、リコと菊どちらが多く勝って負けたかなんて分からなくなっていた。いつの間にかこんもりと山になった飴をざらざらと集めたリコは、ひっくり返した帽子の中に豪快に流し込む。じゃらじゃらと気前のいい音がして、ふたりでからから笑う。
「こういうの、いーな」
 そう言って帽子の中を覗き込むリコの隣で、菊が飴を一粒口へ放った。
「ん、あま。あんだけ爆ぜてたくせにあつくねーの、おもろいな」
 からころ口の中で転がして、
「食う?」
 尋ねる菊に、
「食う」
 即答するリコ。あ、と口を開けて待っている。
「はあ? 口開けんな、手出せあほ」
 ひひ、と笑う菊の表情は悪戯っ子そのもの。ひょいとリコの口目掛けて、飴を投げた。
 ぱく、と口で受け取ったリコだけど、勢いそのままガリッと音を立ててしまう。
「おまえ噛むなよ大事に味わえってば、あー」 
 一度噛んでしまったしと、そのままガリガリ噛み砕くリコ。
「……食べ物投げんな、しょーがねえだろ」
 そのままドサッと菊の横に座ると、今度は「ん」と手を差し出す。
「もう一個よこせ」
 強請る手のひらに乗せられた飴を、今度は噛まないように転がして。
「……菊の作ったやつ、ちょっとだけ酸っぱいな」
 甘さの中にほんのり感じる酸っぱさは、口の中でちょっとだけ弾けて最後は崩れてしまう。なんでだかそれは物足りないような、後を引くような、不思議な感覚。
「全部作ったの寄越せ、オレが食う」
「お前に全部やるよ」
 そんなに食えんのか? といつものように笑いながら、菊は転がる飴を拾い集める。
「あ? オレの食ってみろよ」
 リコは帽子の中から一粒摘むと、片手で菊の頬を抑えた。そのまま菊の口の中に飴を突っ込んだ。
「どうだ、あめえだろ」
「オイ、喉に詰まったらドォすんだよ」
 悪びれもせずニッと笑うリコ。自分の先ほどの行動は“ノーカン"なのか、菊はそんなリコをジト目で見る。やがて口の中に広がる味に、
「……あま」
 菊から小さく零れた声。そうだろ、とリコは満足気に笑った。

 やけに甘く感じるそれは、菊の中でほろりと溶けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード

さつま/f03797

俺はオススメのラムネ味で
さつまは何の味にしたんだ
……秘密か?

線香花火は初めてだ
とても奇麗だな
さつまもそう想うか
……ああ、つい見惚れて仕舞ったが
カタチもちゃんと考えないとな

余り想像力が無いので
さつまを眺めながら
浮かんで来たイメージをカタチに
軈て火の球が転じるのは
ピンク色をした肉球

さつまのは……
俺をイメージしてくれたのか
少し照れるが嬉しいな
――ああ、いつものアレか

口を開けてマスク外せば
想像通り飴が突っ込まれる
弾ける炭酸と相俟って少し苦しいが
俺の好きなコーラ味だ
上手かった、有難う

さつま、手
どさくさ紛れにラムネの飴を握らせて
さっきの礼だ、受け取ってくれ
旨かったか、何よりだ


火狸・さつま

じゃくさんf16475と

こっち見てない隙狙って
俺、これ!
ささっと味選ぶ
後のお楽しみっ
それは最初から決めてたコーラ味

ほわぁ…!きれー!!
おめめきらきら輝かせ
思わず魅入ってたけど
ハッ!かたち!
慌てて、きゅきゅきゅっっ!と成型に念を込める
キレイな♠️に作りあげればにっこにこ!
バッチリJの浮き彫り付!
みてみて、じしんさく!!

わっくわくしっぽ振りたくり
じゃくさん、あーん!
マスク開くタイミング見切り
早業でシュッッ!!!と突っ込む
おいし?
コーラも、おくちで弾けたら、良い、な

しっぽちたぱた振りつつ、きゅヤ!とお手!
俺に?わわ、ありがと!!
にくきぅ!可愛い!
いただきます!
ぱくんっと口に含めば弾けるお味
おいし!




「オススメはね、ラムネ味なのよ」
 そう言って店番の童女は空を見上げるように、ふたりの客を仰いだ。
「俺はオススメのラムネ味で」
 そんな童女にジャック・スペード(J♠️・f16475)はなるべく屈んで、視線を合わせる。
「はいな! ラムネさん、ひーとつっ」
「ありがとう」
 にこにこの童女からジャックが花火を受け取っている間に、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)の手がしゅばっ! と並べられた花火へ伸びる。
「俺、これ!」
「さつまは何の味にしたんだ」
 じゃん! と花火を見せるさつまにジャックは尋ねるけれど、
「……秘密か?」
「後のお楽しみっ」
 最初から決めていた味だけど、食べた時のお楽しみ! 楽しそうに笑うさつまに、ジャックはそうか、と簡潔ながらも柔らかな声で頷いた。

 手にした花火に火を灯せば、ちりちりと小さな火の玉を作り静かに花が咲く。線香花火は初めてだというジャックは、ほうと小さく息を零す。
「とても奇麗だな」
「ほわぁ……! きれー!!」
 さつまもまたその美しさに、声を上げきらきらと輝く青い瞳に爆ぜる光を映す。
「さつまもそう想うか」
「思うっ!」
 さつまは、瞳の輝きに負けないくらいの笑顔を浮かべてジャックの問いに応えるけれど、何かに気付いたように慌てて視線を花火に向ける。
「ハッ! かたち!」
 イメージしなければ色も形も定まらないかも! さつまは、わたわたきゅきゅきゅっっ! 思う形になぁれと念を込める。むむむ、と眉間に皺を寄せた真剣な表情に、ジャックは小さく笑みを浮かべて、
「……ああ、つい見惚れて仕舞ったがカタチもちゃんと考えないとな」
 余り想像力が無い、と自己評価するジャックは、一生懸命に念を送っているさつまを眺める。その姿から浮かんで来たイメージを、思うまま素直に思い描く。
 爆ぜる音が弱くなり、火の球がふるふると揺れる。やがて弱くなった光がころりと落ちれば、受け止めた鋼の手にはピンク色の肉球。
「さつまのは……」
「みてみて、じしんさく!!」
 ジャックがさつまに視線を向ければ、彼は満面の笑みで手のひらに転がるスペードをジャックへと差し出すところだった。キレイな形をしたスペードには、ジャックの“J"も描かれている。

「俺をイメージしてくれたのか。少し照れるが嬉しいな」
 ジャックの言葉に、さつまのしっぽがふわんふわん揺れる。わっくわく――そんな気持ちが隠しきれない表情で、さつまはあーん、と自分の口も空けながら、
「じゃくさん、あーん!」
「(――ああ、いつものアレか)」
 さつまの言葉に、ジャックの普段は口部分を隠しているマスクが開く。その瞬間を狙って、さつまが手にした飴を彼の口へ結構な勢いでシュッッ!!! っとした。予測を立てていたジャックでなければ噎せていたかもしれない、早業だ。
「おいし?」
 ジャックを見上げるさつまの瞳はきらきらで、どこかご褒美を待つ子どものようでもあった。
「(コーラも、おくちで弾けたら、良い、な)」
 そんなさつまの思いの籠った飴は弾ける炭酸と相俟って少し苦いけれど、ジャックの好むコーラ味。
「上手かった、有難う」
 そしてジャックは空いた己の手を差し出すと、
「さつま、手」
「きゅヤ!」
 しゅぱ、と条件反射のごとく繰り出される手。エスコートするように手が重ねられているように見え……なくもないが、これは所謂お手である。しっぽがちたぱたと揺れる様子が、それを物語っている。
 そんな中どさくさ紛れに、ジャックはさつまの手にラムネの飴を握らせる。
「さっきの礼だ、受け取ってくれ」
「俺に? わわ、ありがと!!」
 握られた手のひらを開けば、優しい色がころりと揺れる。
「にくきぅ! 可愛い!」
 ぱあっと笑顔を咲かせたなら、
「いただきます!」
 ぱくんっとお口へ。ラムネの香りが口いっぱいに広がって、ぱちりと弾ける。
「おいし!」
「旨かったか、何よりだ」
 しっぽをぶんぶん振って幸せそうに飴を楽しむさつまに、ジャックはふっと笑む。
「じゃくさん! 俺もっと花火したいっ!」
「あぁ、他の味も見てみようか」
 返ってきた言葉に、さつまは「!! 行こ!!」と屋台目掛けてぴゅんと駆け出して。ジャックはその後をゆるりと追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵雛花・千隼

【夏瓶】

あら、イディも初めてなのね
ワタシも見上げる物しか覚えがないものだから
どんな物になるか、一緒に初めてを満喫しましょう

ふふ、言葉にして頂くとこそばゆいけれど
アナタにそう見えているなら、嬉しいわ
ならワタシは、イディの瞳の色の飴玉を
味は甘そうな苺にしましょうか
夜に沈み灯る甘美な安らぎのような

ただ黙って見入る小さな火花
白く散る色と、淡く灯る苺色が少しずつ大きくなってゆく
ぽとりと瓶に落ちれば、声が零れて

綺麗なものね、ずっと見ていたくなるのだわ
折角ならばもう少し、飴玉を集めない?
一つきりではアナタへの贈り物に足りないわ

触れた感触に瞬き食んで
好きな味だわ、イディもいかが?
同じように戯れを返しましょう


イディ・ナシュ

【夏瓶】

花火自体話に聞くばかりで経験はないのですが
その火花が飴玉になるのです?
世の中に不思議の種は尽きないですね

折角ですので私は千隼様のイメージで花火を選びましょう
繊細で白みがかった火花を咲かせる薄荷飴
甘味は柔らかく幽く
涼やかな香りだけ残して消えるのが似ていませんか?
瓶で受ければかろんと軽く
雪のように積もっていきます

千隼様が私に重ねて選んで下さったそれは
随分可愛らしくて
気恥ずかしくもありますが
嬉しいものですね

紅白の火花が結実していく様に言葉を失って
けれども喋らなくても良い時間なのかもしれません
もっと、と欲張る提案には勿論賛成です
けれどもその前に味見も如何ですかと

彼女の唇へそっと当てる薄荷一粒




 花火とは、火薬の燃焼と金属の炎色反応により色や形を演出して楽しむものであり――破裂音を楽しむのも風情であるらしい。打ち上げるものや手持ちのものがあって、打ち上げ花火を見る時には特色ある掛け声をあげる、とも言われている、とかなんとか――。
「花火自体話に聞くばかりで経験はないのですが、その火花が飴玉になるのです? 世の中に不思議の種は尽きないですね」
 淡々とした語り口で摘んだ線香花火――によく似た飴花火なるもの――を見つめるイディ・ナシュ(廻宵話・f00651)に、宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)はくすりと唇に弧を描く。
「あら、イディも初めてなのね。ワタシも見上げる物しか覚えがないものだから。どんな物になるか、一緒に初めてを満喫しましょう」
 千隼の言葉に、イディは表情少なくこくりと頷く。だけれど、胸の裡にはそわりとした小さな高揚感が確かにあって。
「折角ですので私は千隼様のイメージで花火を選びましょう」
 いくつか用意した花火を収めた入れ物から、暫し悩んでイディはその一輪を選ぶ。
「この火につければ良いのですね」
「そのようよ」
 そっと花火の先端を蝋燭の火に寄せる。蝋燭から花火へ移った火は、やがて小さな火の玉を作り出す。ちりちりと優しく音を立てる様子に、
「優しい音がするのね。打ち上がるものは、もっと大きな音がしていたのだわ」
「これもまた風情というものでしょうか」
 繊細で白みがかった燈で咲かせる花を見つめて、イディは静かに言葉を紡ぐ。
「甘味は柔らかく幽く。涼やかな香りだけ残して消えるのが似ていませんか?」
「ふふ、言葉にして頂くとこそばゆいけれど。アナタにそう見えているなら、嬉しいわ」
 千隼から零れる笑みは、どこか軽やかに楽しげに。
「ならワタシは、イディの瞳の色の飴玉を……味は甘そうな苺にしましょうか」
 夜に沈み灯る甘美な安らぎのような、そんな飴を。イメージを脳裏に描いて咲かせれば、爆ぜる光は柔らかく散って。
「気恥ずかしくもありますが嬉しいものですね」
 千隼がイディに重ねて選んだ花は、随分可愛らしくてイディは少しくすぐったそうに吐息を零す。

 紅白の火花が結実していく様は美しく、過ぎる時間は穏やか。ふたりは言葉を交わすでもなく、静かに手元に咲く花を見つめる。ただちりりと爆ぜる花火の音と、さざめく波の音がふたりを包む。
「(けれども喋らなくても良い時間なのかもしれません)」
 ただ黙って見入る小さな火花は、少しずつ大きくなってゆく。やがてちりちりと立てる音が幽かになり、白い花は薄荷飴に。淡く灯る苺色の花はほのかに香る苺の飴に。
 じっと見つめるイディの手元でかろんと軽やかな音を立てて、それは静かに降る雪のように積もってゆく。
「綺麗なものね、ずっと見ていたくなるのだわ」
 千隼の手元でもぽとりと瓶に落ちれば、軽やかな音を立てて。小瓶の中で転がるのは、世界でひとつだけの彩。千隼は眦を緩めて、掲げた小瓶越しにイディを見た。
「折角ならばもう少し、飴玉を集めない? 一つきりではアナタへの贈り物に足りないわ」
「もっと、と欲張る提案には勿論賛成です」
 イディの口から紡がれる言葉も響く声も、裡から零れる思いが乗って。
「けれどもその前に味見も如何ですか」
 千隼の唇へそっと寄せられた指先には、薄荷飴。触れた飴の感触に千隼の瞳は瞬くけれど、ふわと緩めた唇を開いたなら、
「好きな味だわ、イディもいかが?」
 いたずらな色を乗せた声で、戯れを返す。
「甘酸っぱいですね。これは特別です。けれど、これほどの甘味ならば他の味も試したくなりますね」

 薄く開いた口に飴を転がせば、イディから零れる言葉がそわりと滲むから、
「次は何味になさる? たくさんの彩で満たした小瓶は、きっともっと魅力的なのだわ」
「違いありませんね。千隼様に差し上げるのなら、私は薄荷飴の白に合う彩を添えたく思います」
 素敵ね、と返す千隼の言葉もまた軽やかに弾むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティモール・アングルナージュ
【時計組】🍬

親分さん達の花火、面白いねー!
ホーラと空見上げキャッキャしちゃう

でもボクたちの目的はねー、線香花火!
なんで飴になるんだろーね?
え、飴になったホーラの精霊さん舐めちゃったら、溶けちゃわない!?
花火選びながらのお喋りも楽しいね!

線香花火って、ドキドキするよね…
慎重にと思ってもパチパチ綺麗で、わぁってはしゃいじゃって
でも、ぽとりと落ちても喜んじゃう
すごーい!飴になった!
小瓶で紳士的にキャッチするよ!

わ、ホーラの飴、ボク!?
えへへ、飴のボクもオサレ紳士だねー
ボクのはねーしゅわしゅわラムネ味!
オサレな歯車型だよー

うん、もっとやろ!
夏の思い出、いっぱい作ろー!
ホーラの飴と交換こもしたいなーっ


ホーラ・フギト
【時計組】🍬
きゃあっ、親分さんたちの花火、すごい!
今年の夏は一味違うわねっ

火の玉が飴になるなんて素敵!
仕組みが解れば、私の(精霊術の)火も飴にして舐め放題なのに
あの子は溶けても大丈夫!
火はまた点くもの(葡萄味を選ぶ)

線香花火のドキドキ
こうして眺める時間があるからかしら
あら、見て見てティモくん!
じゃーん、ティモくんのお顔ができちゃいました
(アバウトな形の飴)

わあ、ティモくんナイス紳士キャッチ!
歯車型の飴、綺麗ね……
ふふ、ラムネ味ってとこも、なんだかティモくんらしいわ

ねえティモくん、もっと花火をしましょ!
今年だけのたくさんの飴を創るの
交換……いいわね交換!
そうね、交換。交換こ(嬉しくて繰り返す)




 空に打ち上がる大輪の花は、赤に緑にピンクに黄色に――たくさんの色を灯して咲いては消える。響く破裂音はお腹の底まで響く音から、妖怪花火故の鈴の鳴るような涼やかで不思議な音まで様々で。
「きゃあっ、親分さんたちの花火、すごい!」
「親分さん達の花火、面白いねー!」
 きゃっきゃとはしゃぐ声はふたり分。ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)とティモール・アングルナージュ(時計仕掛けのマンゴー・f08034)の楽しそうな声は夜空を彩る花火に負けないくらい明るく花やかに浜辺に響く。
「ね! 今年の夏は一味違うわねっ」
 見上げる空には、ぱっと花のように咲く花火から妖怪親分を象ったらしき花火、枝垂れ落ちる柳みたいな花火。たくさんの形が咲いては消えて。
 だけど、今宵ふたりの目的は大輪の花にあらず! ふたり顔を見合わせて、ふふーっと笑うと揃って後ろ手からじゃん! と線香花火を出して。
「火の玉が飴になるなんて素敵!」
「なんで飴になるんだろーね?」
 ねー? とふたりで同じ方向に首を傾げる。
「仕組みが解れば、私の火も飴にして舐め放題なのに」
 ホーラの火とは、精霊術の火のこと。ホーラの言葉を聞いて、ティモールは瞳をぱちくり。
「え、飴になったホーラの精霊さん舐めちゃったら、溶けちゃわない!?」
 大きめのリアクションで仰反るティモールに、ホーラはにこにこ笑う。
「あの子は溶けても大丈夫! 火はまた点くもの」
「そっかぁ、じゃあ大丈夫だね!」
「さ、ティモくんはどれにする? 私は――これっ」
 ホーラが束にした線香花火からくじを引くように選んだのは葡萄味。
「じゃあ、ボクはこれー!」
「ふふっ、花火選びながらのお喋りも楽しいね!」
「うん、楽しーね!」
 えへへ、と笑ってティモールが用意していた蝋燭をホーラに差し出した。
「ホーラ、お先にどーぞ!」
「わ、ありがとう、ティモくん!」
 そっと火を花火につけたなら、やがてちりちりと出来上がる小さな火の玉。ちょっとの揺れや風でもぽとりと落ちてしまいそうな、淡い、けれど確かな光。
「線香花火って、ドキドキするよね……」
「こうして眺める時間があるからかしら」
 落ちて消えてしまわないように慎重にと思ってもパチパチと爆ぜる花は綺麗で、
「わぁ……っ」
 なんて、ついはしゃいじゃってしまう。普通の線香花火なら、ぽとりと落としたら寂しい気持ちになってしまうけれど、この花火は妖怪花火。
「あら、見て見てティモくん!」
「すごーい! 飴になった!」
 ぽとりと落ちても、ティモールの声は明るく弾んで。もちろん地面に落としたりしない、小瓶で紳士的にキャッチするティモール。
「わあ、ティモくんナイス紳士キャッチ!」
 ホーラの言葉に、えへへと人懐っこい笑みを浮かべるティモール。そんな彼にホーラは、ふふっと笑って両手を出す。手のひらに乗っているのは、
「じゃーん、ティモくんのお顔ができちゃいました」
 ちょっぴりアバウトな形だけれど、ティモールの顔をした飴。
「わ、ホーラの飴、ボク!?」
 ひゃあ! とティモールは嬉しそうに両手を挙げて、
「えへへ、飴のボクもオサレ紳士だねー」
 なんて、どこかご満悦。
「ボクのはねーしゅわしゅわラムネ味! オサレな歯車型だよー」
「歯車型の飴、綺麗ね……。ふふ、ラムネ味ってとこも、なんだかティモくんらしいわ」
 見て見て、と差し出された飴をホーラはうんうん、と笑顔で頷きながら眺める。
「ねえティモくん、もっと花火をしましょ! 今年だけのたくさんの飴を創るの」
 ホーラの提案に、ティモールはわぁ! と歓声をあげて。
「うん、もっとやろ! 夏の思い出、いっぱい作ろー!」
「じゃあ、次はどのお味にする?」
「どのお味にしよう? 悩んじゃうね!」
 ふたり花火を選びながら、あっとティモールが声をあげる。
「ホーラの飴と交換こもしたいなーっ」
「交換……いいわね交換!」
 ティモールからのとっても素敵な提案に、ホーラはぱんと手を叩いて楽しそうに笑う。
「そうね、交換。交換こ」
 なんだか嬉しくて、ホーラは交換という言葉を繰り返す。
「うん、交換こ!」
「ふふっ、それじゃうんと“オサレ"な飴を作らなきゃね!」
 ふたり選んだ花火に火をつけて、今年きりの宝物を作るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

萃神・むい
【甘涙】🍬
ティアが手招く方へナスターシャと
花火が飴玉になるなんて、不思議なの
まるで魔法みたい
うんうん、一石二鳥だね!

打ち上げ花火は大きくて
ほんとう、すっごくきれいなの…!
瞳が思わずきらきら輝く
花火を誰かと観るのは初めてだから楽しいの

競争?むい、できるかなぁ
ナスターシャはなんだか上手そうだよね
初めての線香花火はどきどきで
ぱちぱち光るその様子は
夜空に瞬くお星さまみたい

あ、落ちちゃった…
えへへ、ティアよりは長かったの!

手で受け止めれば、星の姿の飴玉に
桃味?美味しそうなの!
むいはね、ラムネ味だったよ
ナスターシャは何味だった?
それも美味しそう!

うん、いっぱい作っちゃおう!
すてきな思い出になるね


ティア・メル
【甘涙】🍬

ナスターシャ、むいっ
こっちこっち!とふたりを手招いて
飴花火っていうのが作れるみたいだよ
綺麗で美味しいなんて、一石二鳥だね

打ち上がる花火を見上げて恍惚の吐息
わあわあ、きれい!
花火を見上げるナスターシャとむいの横顔も
あんまり素敵なものだから、こっそり心のシャッターを切る
忘れん坊なわたしの、忘れたくない出来事

線香花火をして
誰か最後まで火を落とさずにいられるか
競走しようよ

じーっとしてみるけれど
あ、落ちちゃった
ナスターシャもむいも強いなあ

落ちた飴玉は桜色
味は…んに、桃の味がするよ
ふたりは何味だった?
にゃはは、いいねいいね
いっぱい持って帰って
今年の夏の思い出にしちゃおっか


ナスターシャ・ノウゼン
【甘涙】🍬

妾は花より団子がいいんじゃが……
なんと、花も団子(飴)もあると?
それは確かに一石二鳥じゃな

打ち上げ花火とはここまで迫力のあるものじゃったか
うぅむ、どんな配合なんじゃろうな?妾の炎で再現できるだろうか
くくく、きっと2人も喜ぶじゃろうて。ちぃと、考えてみるかのう

ほぉ、炎の扱いで妾に勝負を挑むと?よい度胸じゃ、受けてたとう!
2人にばれないように炎の勢いを魔力で調整して……ずるではない。高度な作戦と言ってほしいのじゃ
ほぉれ、やっぱり妾が1番じゃな!!

さて、出来上がった飴の味は、と
……ほぉ、これは柑橘系。オレンジじゃな?
2人の味も美味しそうじゃのう
よし、もっと作って持ってかえるか!




「ナスターシャ、むいっ。こっちこっち!」
 さざめく波が寄せては返す砂浜で、淡桜を揺らしティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)はぴょんぴょん飛び跳ねると、ナスターシャ・ノウゼン(召喚獣「イフリート」・f33989)と萃神・むい(まもりがみ・f33802)を手招く。
「妾は花より団子がいいんじゃが……」
 さらに言えば屋内の方が、なんて気怠さを隠さないナスターシャに、ティアはにぱっと笑って屋台を示す。
「飴花火っていうのが作れるみたいだよ」
「なんと、花も団子もあると?」
 割とあっさり興味を引かれ屋台に釘付けになるナスターシャの隣で、むいも屋台を見ながら首を傾げた。
「花火が飴玉になるなんて、不思議なの。まるで魔法みたい」
 そわりと瞳を輝かせるむいに、ティアも眦を緩めて。
「綺麗で美味しいなんて、一石二鳥だね」
「それは確かに一石二鳥じゃな」
「うんうん、一石二鳥だね!」
 三人顔を見合わせて、笑みを零す。
「見に行く?」
 なんて、ティアからの素敵な提案にもちろん答えは、
「うむ、それはいいな。賛成じゃ」
「むいも賛成なのっ」
 そんな時、どんっ! と破裂音がして真っ暗な空に花が咲いた。

 三人揃って自分たちを照らす光を追うように空を仰げば、続く花火はイルカやボーダーの浮き輪。と思えば、今度は大輪の向日葵が咲く。夏らしいモチーフである以外は気まぐれな花火のラインナップは、きっと妖怪たちの戯れだろう。響く大きな破裂音と共に、ちりちりと光が爆ぜ大輪を咲かせては消える。打ち上がる花火を見上げて、ティアはうっとりと吐息を零す。
「わあわあ、きれい!」
「ほんとう、すっごくきれいなの……!」
「打ち上げ花火とはここまで迫力のあるものじゃったか」
 ティアの言葉にこくこく頷きながらも、思わず瞳がきらきらと輝くむい。視線はすっかり夜空の花に釘付けだ。ナスターシャもまた、感心したように夜空を仰いでいる。
「花火を誰かと観るのは初めてだから楽しいの」
「じゃあ、今日はいっぱいいっぱい楽しまなきゃね」
「うむ、そうじゃな」
 ちらりと見た隣の横顔。花火を見上げるナスターシャとむいの横顔もあんまりに素敵で、ティアこっそりと心のシャッターを切る。
「(忘れん坊なわたしの、忘れたくない出来事)」
 そっと胸の裡に仕舞い込む宝物の一枚。

「うぅむ、どんな配合なんじゃろうな? 妾の炎で再現できるだろうか」
 ティアが大切に情景を収める隣、ナスターシャもまたふたりを思って考えていることがあるようで。
「んにー、どんなだろうね? でも、見れたら素敵だね!」
「うん、きっととっても綺麗なの」
「くくく、ならばちぃと、考えてみるかのう」
 だって、ふたりが喜ぶなら悪くない、なんてナスターシャは思うのだ。

 しばらく打ち上げ花火を楽しんで、三人は揃って飴花火の屋台を覗く。
「ねね、線香花火をして、誰か最後まで火を落とさずにいられるか競走しようよ」
「競争? むい、できるかなぁ」
 ティアの提案に楽しそうに、だけど自信なさげに首を傾げるむい。
「ほぉ、炎の扱いで妾に勝負を挑むと? よい度胸じゃ、受けてたとう!」
 彼女とは対称的に楽しげに、そして不敵に笑むナスターシャ。
「ナスターシャはなんだか上手そうだよね」
「当然じゃ! 妾はイフリートじゃぞ」
「じゃあ決まり! 花火はお店の人に選んでもらお?」
 味は出来てからのお楽しみ、とティアはぱちりと片目を瞑っていたずらに笑う。

 初めて手にした線香花火は、随分と儚く感じる。紙を紙縒って作られていることもあるのだろうか。むいがどきどきしながら火を灯せば、ちりりと花火の先が縮むように揺れてやがて火の玉になる。ぱちぱち光るその様子に、むいは思わず、
「夜空に瞬くお星さまみたい……」
 とため息を零す。
「……ホントに綺麗だね」
 じーっと動かず、しかし眦は柔らかく花火を見つめるティア。
 静かに花火を見つめるふたりの隣、ナスターシャはこっそりと線香花火の炎の勢いを魔力で調整している。
「(……ずるではない。高度な作戦と言ってほしいのじゃ)」
 誰に弁明するでもなく、しかし心の中でそっと言い訳めいた言葉を零すナスターシャだった。

「あ、落ちちゃった」
 ふるりと揺れた火の玉がぽろり。ティアの花唇から零れ落ちるのは、残念そうな声。
「ナスターシャもむいも強いなあ」
 ならばとふたりの勝負の行く末を見守るティア。次にぽろりと火の玉が飴に転じたのは、
「あ、落ちちゃった……」
 綺麗だったのに残念なの、とむい。
「えへへ、ティアよりは長かったの!」
 それでも初めての花火は楽しかったようで、ちょっとは上手にできたかしら、なんて嬉しそうに笑む。
「ほぉれ、やっぱり妾が1番じゃな!!」
 そうして最後まで火の玉を灯し続けたナスターシャが、満面の笑みでふたりを見る。
「ナスターシャ、すごいの」
「んにんに、圧勝だね」
「では、早速味見といこうではないか」
「賛成っ」
「賛成なのっ」
 それぞれが手で受け止めた飴玉を見せ合う。

 ティアの手の中に煌めく飴玉は桜色。ぱくりと口に含めば、ふわと華やかに香る。
「味は……んに、桃の味がするよ」
「桃味? 美味しそうなの!」
「ふたりは何味だった?」
 ティアの問いに、むいが笑顔で手のひらを開く。小さなその手にころんと転がるのは、星の姿の飴玉。ぱくりとむいも飴を頬張る。
「わ、しゅわってするの!」
 口の中で弾ける感覚に目を丸くして、
「むいはね、ラムネ味だったよ。ナスターシャは何味だった?」
「……ほぉ、これは柑橘系。オレンジじゃな?

「それも美味しそう!」
「ふたりの味も美味しそうじゃのう」
 せっかくなら、いろんな味を食べてみたいなと思うから、ナスターシャはふたりに向けてにっと笑う。
「よし、もっと作って持って帰るか!」
「いいねいいね。いっぱい持って帰って、今年の夏の思い出にしちゃおっか」
「うん、いっぱい作っちゃおう! すてきな思い出になるね」
 そんな提案にティアとむいも手を合わせて賛成して。何味にする? 色は? なんて、弾む会話のまま、甘くて不思議な一夜を満喫するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

周・助
【桜夢】
🐬
アドリブ、マスタリング歓迎

_

常のように男と偽ることなく
ありのままでいられることが楽しく
それ以上に大好きな友人である終夜くんとのお出かけが楽しくて
「花火に乗れる…ですか?」
花火は好きです、終夜くんと初めて一緒に見たものですから
けれど"花火に乗る"ということが上手くイメージ出来なくて

う、打ちあがるんですか…?
熱くないんでしょうか、落ちたりしないんでしょうか
最初こそ楽しそうだと思ったけれど
いざ間際になると恐怖が強くなり
思わず終夜くんの腕にぎゅうとしがみつきながら
目を閉じてその時を待つ

──ぶわりと打ち上がり
見えたその景色に瞳見開き
恐怖もどこへやら
終夜くん、と
輝く瞳のまま、はしゃぎ


空・終夜
【桜夢】
🐬
アドリブ◎

俺といる時
いつも素で居てくれる助を
今宵どんな楽しい事に連れてゆこうか考え
誘うは花火に乗れる催し
「俺も…花火の乗るのは初めてだ…
けど…」
楽しそうじゃないか?
ふ…と助と共にいる時だけなぜか緩む笑みを向けて

大丈夫だ
妖怪達を信じろ
落ちた時は…俺がちゃんと助ける
しがみつく助の頭を撫でて
打ちあがる時はしっかり彼女の肩を抱き
落ちないように引き寄せる

――舞い上がる2人
勢いよく上がると同時に見えるは
花火と海と…夜の美しい風景だ
ほら、大丈夫だった…
輝く瞳へと、今度こそ笑顔と呼べる顔で向き合う
楽しいな、助…

また助に楽しい思い出ができた…
勿論…俺も…
こうして助の輝く笑顔を見るのが――好きだから




 今日はありのままの自分でいられる日。
 だって、隣には大好きで大切な友達がいるから。

 日頃は剣を手に男として過ごす周・助(咲か刃・f25172)。それは自分で選んだことだから後悔も嫌悪もないけれど、それでも気を張る日々だから。偽りのないひとときは、故に心が弾むのだ。
 楽しそうに周囲をきょろきょろと見遣る助を友達である空・終夜(Torturer・f22048)が優しく見守る。終夜といる時は、いつも素の姿を見せてくれる彼女。だから、いつだって自分といる時は楽しい時間を過ごしてほしくて。今宵はどんた楽しいことに誘おうか、考える時間も終夜にとっては楽しい時間。

「助……あれに乗ってみないか?」
 空高くに打ち上がる花火を指差して、終夜は助の視線を誘う。
「花火に乗れる……ですか?」
 目を瞬いて空を見上げる助に、自然と終夜の表情が柔らかくなる。
「俺も……花火の乗るのは初めてだ……。けど……」
 ふ、と終夜に浮かぶ緩やかな笑みは彼女と共にいる時だけ。理由は終夜も分からないけれど、
「……楽しそうじゃないか?」
「楽しそう、です。でも、うまくイメージできなくて」
 へへ、と少し戸惑う笑顔を浮かべる助だけど。
「でも、花火は好きです。終夜くんと初めて一緒に見たものですから」
 だから乗ってみたいです、と助は笑って頷く。

 ――けれど、
「う、打ちあがるんですか……?」
 大砲と終夜を交互に見る助。花火に乗るには、目の前の大砲で打ち上がらなければならないと言われて、不安そうにしている。
「熱くないんでしょうか、落ちたりしないんでしょうか」
 話を聞いた時は想像できなくて、それでも未知の体験に心は弾んだ。それでもいざ間際になると恐怖が強くなってしまった。
「大丈夫だよ、乗って乗って!」
 猫又に半ば押し込まれる形で大砲に乗り込んだふたり。助は思わず終夜の腕にぎゅうとしがみつき、目を閉じる。見えなければ、少しこの恐怖も和らぐ気がして。そんな助の不安を感じ取った終夜が、そっと助の頭を撫でる。
「大丈夫だ。妖怪達を信じろ」
「……はい。でも、やっぱり怖くて」
 言葉にすればもっと怖くなってしまうかもしれないけれど、友達にだから零せる本音。
「落ちた時は……俺がちゃんと助ける」
 だから大丈夫だ、そう言って終夜は助の肩をしっかりと抱く。彼女の不安が少しでも軽くなるように、落ちても守るという気持ちが伝わるように。

「はーい、たーまやー!」
 猫又の軽い調子の掛け声が聞こえれば、次に聞こえるのはどんっという発射音。重量に逆らう感覚がして、
「……助、目を開けて」
 終夜の優しい声がして、助はぎゅっと閉じていた瞳をそぅっと開く。
「……わぁ……っ」
 星の輝く夜空がうんと近くて、目の前には咲き誇る大輪の花々。下を見下ろせば花火を映して煌めく海。
「終夜くん、すごく綺麗です!」
 先程までの恐怖はもうどこにもなくて、助は藍色の瞳に花火の煌めきを閉じ込めて声を弾ませる。
「ほら、大丈夫だった……」
 助の輝く瞳へ、今度こそ笑顔と呼べる顔で向き合う終夜。
「楽しいな、助……」
「はいっ!」
 助の満面の笑みが終夜に向けられる。
「(また助に楽しい思い出ができた……)」
 そして、それはもちろん終夜にとっても同じ。こうしてきらきらと輝く助の笑顔を見るのが――好きだから。

 宝物がまたひとつ、ふたりの胸に積もっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾宮・リオ
🍬
駒知さん(f29614)と

空への旅も楽しそうですが
飴花火を集めてのテラリウム
きっと、素敵ですよね

いくつか持ってきた線香花火
はい、と彼女に手渡して
やがて砂浜でぱちぱちと音が鳴る
その様をじっと見詰めて
落ちた火の玉を素手でキャッチ

全然熱くありませんよ
ほら、大丈夫です、と
心配してくれた彼女へ
優しく応えて掌を見せる
ひとつ味見してみましょうか
なんて悪戯っぽく笑ってみせた

最初の味はおすすめのラムネ味
口で弾ける味が、とても美味で
美味しいですね、駒知さん

爽やかな夏を味わいながら
ぽろぽろと落ちる火の玉を
ひとつずつ小瓶へ詰めてゆく
味も、色も様々なそれら
まるで思い出を詰めていくみたいですね
と自然に笑みが溢れ落ちた


明日川・駒知
🍬
リオくん(f29616)と
アドリブ、マスタリング歓迎

_

飴…花火?
馴染んだ夜の空気に一心地つきながら
テラリウムと共に興味惹かれ

「ありがとうございます、リオくん」
お礼と一緒にありがたく受け取り
隣に並んでぱちぱち燃やす
本当に熱くないのかしらとどきどき火玉見つめ
リオくんが躊躇なく素手でキャッチしたものだから思わず心配を
けれど彼の様子にほっと胸撫で下ろし
よかったと安堵すると同時私もと僅か緊張しつつ
えいと素手で受け止め口に含み
広がる爽やかなラムネの甘さに瞳輝かせながら

リオくんと共に小瓶に詰めていく
思い出を詰めるようだと穏やかに語る彼に
そうですね、とふわり笑み
小瓶の中の飴玉が
宝物のようにきらりと煌いた




 空を彩る花火は満開に咲いては消える。見上げた頭上に咲く不思議なその花火は、上を歩いたりもできるらしいけれど。
「空への旅も楽しそうですが、飴花火を集めてのテラリウム。きっと、素敵ですよね」
 尾宮・リオ(凍て蝶・f29616)は、明日川・駒知(Colorless・f29614)にそう語りかける。リオの言葉に、駒知はこくりと頷く。馴染んだ夜の空気にひと心地つきながら、駒知はリオの手元に用意された花火を見つめた。
「これが、飴……花火?」
「はい、いくつか選んでおきました」
「線香花火とそっくりですね」
「飴になる以外は殆ど同じみたいです」
 はい、とリオから差し出された花火に、
「ありがとうございます、リオくん」
 駒知はお礼を告げて受け取る。蝋燭に火をつけるリオに倣って、駒知もそっと花火に火を灯した。
 小さな火の玉からちりちりぱちぱちと音が零れる。散っては消える繊細な花弁。その咲いては散る様を眺めながら、ただ静かに時が流れる。それは決して息苦しいものではなくて、ごく自然なもの。
 やがて火の玉がふるふると震え始めたなら、リオは空いた手を静かに花火の下に差し込んで落ちてきたた火の玉を素手でキャッチする。
「(本当に熱くないのかしら)」
 躊躇なく素手で火の玉を捉えたリオの手を心配そうに見つめる駒知。その視線に気付いたリオが穏やかに笑みを浮かべて、手のひらを見せる。
「全然熱くありませんよ。ほら、大丈夫です」
 その手のひらは赤くなっても傷ついてもいない、ただ透き通った飴玉がひとつ転がっているばかり。
「よかった」
 駒知も眦を緩めて安堵する。そして、ちょっぴり緊張しながらもリオと同じように手のひらを花火の下へ。どきどきと鼓動が跳ねる中、駒知の手に触れるのは熱ではなく、ころんとした軽い落下の感触。
「……――本当、全然熱くないです」
「ひとつ味見してみましょうか」
 ふふ、と零れるリオの笑みは悪戯な彩を乗せていて。笑みを浮かべたままころりと飴を口へ運ぶと、リオの口の中で飴がしゅわりと弾ける。美味しそうに飴を転がすリオの様子を見て、駒知も手の中の飴をぱくり。ラムネの甘味は爽やかで、ぱちりと弾ければ駒知の瞳がぱっと輝く。その様子を見て、リオは優しい笑みを浮かべて、
「美味しいですね、駒知さん」
「はい、美味しいです」
 ふわっと広がる爽やかさに、頬を淡く染めて駒知は頷く。
「次はどれにしますか?」
 次の花火を差し出して尋ねるリオ。差し出された花火から一本選んで、
「これにします」
 花を咲かせれば、メロン味は葉の形に。
「僕はこれにしましょう」
 雨のように零れれば、薄荷味は水晶の形に。

 それらをひとつひとつ、大切に小瓶に詰めていく。味も彩も様々な飴を、ふたりで積み重ねていくと、それはまるで――。
「思い出を詰めていくみたいですね」
「そうですね」
 リオから自然に零れる笑顔は優しくて、駒知もまた柔らかく笑みを浮かべる。

 ふたり覗き込んだ小瓶の中の飴玉は、何にも変え難い宝物のよう。ぱっと空に咲いた花に照らされて、ふたりの瞳の中できらきらと煌いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月詠・黎
🌕望月
🍬

此の世界の花火は面白い物ばかりじゃのう
飴花火に思い馳せれば我を呼ぶ友の聲

ユエ、どうした?
覗けば線香花火
…ほう、此れが飴玉と成るのか
勿論、やらぬ理由の方が見つからぬよ
其の眼差しを見たのなら尚更
ふふ、我にも伝染ったかの

我も小瓶ひとつと花火を幾つか
足跡は機嫌良く残りて
形は矢張り月じゃろうか
他にも花や猫、鯱も佳いな
好きを沢山とは佳い発想じゃて

手の先でぱちと小さき花が咲く
ぱちぱちと小さく火花と煌めく華
うむ、静かだが心惹かれる物よ

静かに光閉じる代わりぽろりと零れた珠
柔く掌で受け止めるは蜂蜜色の満月
おや、揃いじゃの
少し大きさの違う満ち月の飴を友と見せ合って
未だ火に咲かぬ花火を揺らし次へ誘い之こう


月守・ユエ
🌕望月
🍬
飴が作れる花火
わぁ♪ここにも不思議な花火発見!

黎さん、来てきて!
この線香花火、楽しそうっ
燃え切った最後に火玉が飴になるんだって!
やってみない?
うずうず好奇心煌く眼差しで

妖怪から小瓶と花火を幾つか貰い
ご機嫌に海辺へと
飴の形は何にする?
月、星、魚もできるかな?
好きを沢山作りたいねっ

花火を燈すと小さく花咲く
ぱちぱち
きらきら
心惹く煌き

線香花火って可愛いね
小さく火玉が踊ってるみたい
気を緩め和んでいたら…あッ
ぽろりと落ちる火玉
慌てて咄嗟に掌に受ければ
掌に現るは蜂蜜色の満月

…飴になったっ
見て!と喜々と瞳輝き
お月様♪と飴を見せた
次も誘われると元気に頷き
心に宿る好きの形、1つ2つ
2人は作り上げていく




 打ち上がる花火が照らす浜辺。妖怪たちが思いのままに作り上げた不思議な妖怪花火は、種類も様々。打ち上がる花火も、浜辺で遊ぶ花火も、見慣れないものも珍しくなくて。
「(此の世界の花火は面白い物ばかりじゃのう)」
 浜辺を見回して、月詠・黎(月華宵奇譚・f30331)は小さく笑みを浮かべた。そういえば、この浜辺に並ぶ屋台のひとつにこれまたおかしな事に飴が作れる花火があるという。不思議なものだ、と黎が思いを馳せる時、
「わぁ♪ ここにも不思議な花火発見!」
 まさしくその屋台の前で、月守・ユエ(皓月・f05601)は好奇心に声を弾ませた。
「黎さん、来てきて!」
「ユエ、どうした?」
 呼ぶ声のする方へ黎が顔を向けたなら、満面の笑みでユエが手招きしている。誘われるまま、黎は彼女の許へと歩み寄る。
「この線香花火、楽しそうっ。燃え切った最後に火玉が飴になるんだって!」
「……ほう、此れが飴玉と成るのか」
 黎がユエの示す先を視線で追えば、並ぶ花火はよくある線香花火そのままの見た目で並んでいる。味を示す札を順に追えば、苺に檸檬、ラムネにはイチオシのポップ付き。ちゃんぽん、と書かれた札に黎は思わず目を見張るが、
「あっ、ちゃんぽん味じゃないよ! お楽しみになるように、色々混ぜてあるの」
 と店番の童女が説明してくれた。要はランダムという意味らしく内心ほっとしてしまった。
「やってみない?」
 ユエがうずうずと好奇心を隠さない煌く眼差しで黎に問いかければ、
「勿論、やらぬ理由の方が見つからぬよ」
 其の眼差しを見たのなら尚更な、と黎が首肯する。
「ふふ、我にも伝染ったかの」
 裡に疼く好奇心に、愉快そうに笑んだ。その笑顔にユエも笑みを返して、くるりと店番の童女に向き直る。
「店主さん、小瓶と花火くださいな」
「我も小瓶ひとつと花火を幾つか」
「わたしが味決めていーい?」
「任せよう」
「うん、オススメお願いしますっ」
「はいな! 夏の欲張りセットだよ」

 童女から其々に小瓶と花火を受け取ったなら、足取りも軽く海辺へと向かう。
「飴の形は何にする? 月、星、魚もできるかな?」
「形は矢張り月じゃろうか。他にも花や猫、鯱も佳いな」
 黎の言葉に、どれも素敵! とユエは頷いて、
「好きを沢山作りたいねっ」
「好きを沢山とは佳い発想じゃて」
 ユエの言葉に、黎は楽しそうにくつくつと笑う。

「早速やってみようよ」
「そうじゃな、どれ」
 ふたりでひとつの蝋燭から火を灯せば、ちりりと音を立てて小さく花が咲きはじめる。ざざん、とさざめく波音の隙間に、ぱちぱちきらきら囁くような音がする。心惹く煌きを、ユエはその瞳に映してそっと笑みを浮かべる。
「線香花火って可愛いね。小さく火玉が踊ってるみたい」
 火の玉が落ちてしまわないような囁き声で告げながら、手の先でぱちぱちと咲く花を見る。
「うむ、静かだが心惹かれる物よ」
 どこか慎ましやかに、けれど一等美しく煌めく花に黎もまた密やかにため息を零す。
 どこかほっこりするような優しい光に、つい気を緩めて和んでいたら、ぽろりと火の玉が落ちて光を失ってしまう。
「……あッ」
 それでもさすがは猟兵、気付いた瞬間手のひらを差し込めば、その手はしっかりと火の玉を受け止めて。ついぎゅっと閉じてしまった手のひらをそっと開くと、蜂蜜色の満月がひとつユエの手のひらに昇っていた。
「飴になったっ」
 ユエはぱあっと咲く笑顔で瞳を輝かせて、
「見て! お月様♪」
 黎に飴を見せる。
「おや、揃いじゃの」
 黎もまた、静かにぽろりと零れた珠を柔く手のひらで受け止めて。蜂蜜色の満月へユエの視線を導く。
「わ、本当だっ」
 少し大きさの違う満ち月の飴をふたりで見せ合って、笑いあう。
「さぁ、次の花を咲かせよう」
「うんっ」
 黎の言葉に、ユエは元気に頷く。
「次はどんな形となるかな」
「またお揃いになったりして?」
「それも面白いな」
 次に心に宿る好きは、どんな形になるだろう。

 ひとつふたつと花を咲かせて、ふたりの好きを小瓶に詰めて之く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
【花結】🐬

華やぐ聲に眦緩め
ええ
あなたとならどこまでも
繋ぐ手に招く聲に
引かれ惹かれ

幸抱く白鳩花火にふたり乗れば
彼の友たる獅子の背を想い出し
あの時とは前後が逆ねなんて咲む

己支え包むあなたへ柔く背を預けつつ
初めてお膝に乗せてくれた
あの日へも想い馳せれば
不意に籠る力に染まる頬と耳

ふわり降り往く感覚も夢のよで
濡らす水が抱き寄せるあなたの腕が
現だと教えてくれるから
雫纏う笑み咲かせ

とても素敵で夢心地
それにね何をしても
あなたとの日々を想い出すの
重ね重ねたふたりの今も嬉しくて

ええいつか
ホントの蜜月の日にはもっとゆるりと
花婿さんの晴れ姿だって
見せてくれるのでしょ?

恋い願うは己も同じ
彼の銀環へと口付け返し微笑みを


ライラック・エアルオウルズ
【花結】🐬

花火乗り空飛ぶ心地も
翼持つ君と同じ景色も
中々知れぬものだから
掛ける声も華やいで

かわいらしい花嫁さん
蜜月に空の旅は如何?
戯れに手を引き招き
白鳩花火を選びとり
ふたりと幸を乗せよう

今度は空往く友も喚ぼうと
馳せる記憶に約束を重ね
前座る君を支え、空へ
収まる身も揺れる白も愛しく
気が緩んで落ちそう、なんて
不意に確と抱くのは淡い悪戯

不思議な心地だけど
降りるも楽しいもの
流星のよな軌道で沈めば
溺れぬよう抱き寄せ乍ら
雫滴るかんばせを覗いて
ね、旅の御感想は?

ああ重ねた日々を想うと
蜜月がひととき限りでは
些とも物足りないねえ
次は、緩りと過ごそうか

我儘な夢を紡ぎ、笑い
ほんとの先を恋うように
君の銀環に唇を落とした




 花火に乗るとは、一体どんな心地だろう。空を飛ぶ時の景色だって、そう気軽に見れるものではないし。
 けれども、今日は翼を持つ君と同じ景色を見られるのかなと思うと――。
「かわいらしい花嫁さん。蜜月に空の旅は如何?」
 そう愛しい少女に声をかけるライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)の声は、常よりも華やいで夜の空の下に響く。そんな彼を愛しげに見つめて、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は白いベールをふわりと揺らし柔く首を傾ける。
「ええ、あなたとならどこまでも」
 戯れに引かれた手を握り返して、とくりと跳ねるティルの鼓動。幸せに眦は緩むばかりで、ほらまた貴方に惹かれている、なんて――ティルは胸の裡で暖かく零す。

 エスコートするライラックの選んだ花火は白鳩を模したもの。ふたりと幸いを乗せるのにぴったりのそれを選んだら、あっという間に空の上へ。ふわとした浮遊感から、ゆっくりと弧を描くように白鳩は空を滑って降り始める。
「わあ……!」
 髪とベールをたなびかせ、ティルが溢す感嘆の声は夏の空気に溶けていく。空を飛ぶことは、翼のあるティルなら珍しいことではないけれど。愛しい人と共にというのなら、それはとても特別なことに変わっていく。夜の帳に煌めく星と、ふたりを照らす大輪の花。
 ライラックはというと、頬を染めて景色に見惚れるティルの視線を追って美しく咲き誇る花を見るけれど。はしゃぐ彼女が愛らしくて、視線はついとティルを見つめてしまうようだ。

「あの時とは前後が逆ね」
 そう言って綻ぶように笑むティルの脳裏には、ライラックの友である獅子の背。
「ああ、今度は空往く友も喚ぼう」
 ライラックも笑みを浮かべて応じた。楽しそうに身動ぎするティルの淡い緑彩の髪が、冠る白いベールが揺れる。それがとても愛おしく思えて、ライラックの心に芽生える淡い悪戯心。支える腕に力を入れて、しっかりと抱けば白から覗く耳は紅色に染まっていて。
 ティルは跳ねる鼓動を感じながら、夢のようだなと思う。この浮遊感はきっと空を飛んでいるからだけではない。――頬の熱だって、夏の暑さのせいだけではないのだから。

 そんな夢のような時はあっという間に過ぎていき、ぱしゃんと音を立ててその身が水面に落ちる。抱き寄せてくれる愛しい腕がこれは夢ではないと教えてくれるようで、自然と笑みが零れるティル。ライラックは、濡れたティルの前髪を空いた手でそっと避けるとかんばせを覗き込む。
「ね、旅の御感想は?」
 尋ねる声は随分と甘い。
「とても素敵で夢心地。それにね何をしても、あなたとの日々を想い出すの」
 これまでに、重ね重ねたふたりの今も嬉しくてティルは頬を染めたままに笑みを浮かべる。
「ああ重ねた日々を想うと、蜜月がひととき限りでは些とも物足りないねえ。次は、緩りと過ごそうか」
 我儘な夢だろうか、なんて笑ってライラックはティルの銀環に唇を落とした。いつかの――ほんとの先を恋うように、そっと優しく。
「ええいつか。ホントの蜜月の日にはもっとゆるりと、花婿さんの晴れ姿だって見せてくれるのでしょ?」
 己の手を握る愛しい人に微笑んで、ティルもまた彼の銀環へと口付け返す。

 ――だって、恋い願うのは妾も同じだもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
【朱鶴】
🍬

チヅル、満開に咲いた花火が見事だね
空を見上げて、隣のそなたへ微笑む
花火と戯れるのもいいが、今日はいいものを見つけたんだ

飴花火らしいよ?
花火が飴になるなんて不思議だね
私は甘いものに目がなくてね
チヅルも甘いものは好きかい?

何の飴にしようかな…桃に檸檬に苺…赤、か
赤ならば私は、柘榴の味がいい
…私が好きというより、私の……大切な人が好きなんだ
そなたは柘榴飴ははじめてかな?

燃えるような鮮烈な赫を思い浮かべてからチヅルの花火へ視線をやる
ぱちぱちと綺麗だ
そなたの飴は何味になるのかな
よかったらわけっこしようか
二度楽しめて美味しいよ

それは名案だね
小瓶に夏の思い出ごと詰めて土産にしよう
笑顔が待ち遠しい


宵鍔・千鶴
【朱鶴】

🍬

夜空に咲く花を飽きず見詰め
傍らの彼にそうだね、って柔く笑み
いいもの?ふふ、なんだろ

見た目は線香花火だけど
最後は飴に…夢があるね…!
灯りが消えてもさみしくないし
俺も甘いの、大好きなんだ
わくわくそわそわ身体を揺らして

俺は何味にしようかなあ
花火を手にイメージは爽やかな檸檬
カムイは柘榴?俺、まだ食べたこと無い果物だ
大切な人が好きな味、自分もつい食べちゃうし
微笑ましいきみにふわり和み

ぱちぱち弾ける火花は金色
隣の赫もカムイのいろと相俟って凄く綺麗
わけっこ!勿論だよ、柘榴味楽しみ
ぽとり落ちた月の雫みたいな飴を渡して

折角だから瓶に詰めて飴をお土産にする?
きみとの想い出も一緒に持ち帰るんだ




 今宵の夜空は、千紫万紅。鮮やかに咲き誇る花々は、海辺をその時々に彩っては消えていく。儚い一瞬の彩は、それでも美しくて。
「チヅル、満開に咲いた花火が見事だね」
 朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は空を見上げてその花を楽しみながら、隣の宵鍔・千鶴(nyx・f00683)へ微笑む。千鶴もまた、夜空に咲いては散りゆく花を飽きることもなく見つめて、その瞳に彩を落とし込む。
 そうだね、と零れる千鶴の笑みは柔らかい。そんな千鶴に優しく笑んで、カムイは弾む声で語りかける。
「花火と戯れるのもいいが、今日はいいものを見つけたんだ」
「いいもの? ふふ、なんだろ」
 聞いてくれるかい? なんて言いたげなカムイに、千鶴はくすりと笑って首を傾ける。
「先程貰ってきたんだ。飴花火らしいよ? 花火が飴になるなんて不思議だね」
 カムイが差し出すそれは、見た目は線香花火だけど火の玉が最後は飴玉になるという不思議な花火。
「最後は飴に……夢があるね……! 灯りが消えてもさみしくないし」
「私は甘いものに目がなくてね。 チヅルも甘いものは好きかい?」
「俺も甘いの、大好きなんだ」
 カムイの尋ねる声に、千鶴の身体がわくわくそわそわと揺れる。
「なら決まりだね、共に楽しもう」
「うん、楽しみだ」
 海から少しだけ距離を取って、二人は浜辺にしゃがみ込む。並べた花火の味は様々で、カムイが求めてきた飴花火は手持ち部分の色で味が分かるようになっているものだ。
「何の飴にしようかな……桃に檸檬に苺……赤、か。赤ならば私は、柘榴の味がいい」
 深い赤を選んで、カムイは手に取る。
「俺は何味にしようかなあ」
 並べたれた花火の上で、千鶴の指は悩むように行ったり来たり。しばらく悩んで、花火を手にする。味は檸檬だ。きっと爽やかな酸味が楽しめるだろう。
「うん、これにしよう。カムイは柘榴?」
 好きなの? と問う千鶴に、カムイは眦を緩めてはにかんだ。
「……私が好きというより、私の……大切な人が好きなんだ」
「大切な人が好きな味、自分もつい食べちゃうし」
 微笑ましいカムイに千鶴の心はふわりと和む。
「そなたは柘榴飴ははじめてかな?」
「うん。俺、まだ食べたこと無い果物だ」
 火を灯せば、やがてぱちぱちと音を立てて火の玉が生まれる。カムイは燃えるような鮮烈な赫を思い浮かべて、千鶴の花火へ視線を向ける。
「ぱちぱちと綺麗だ」
「うん、カムイの花火はカムイのいろと相俟って凄く綺麗だ」
 千鶴が視線を向ける鮮やかな赫の側、千鶴の手元でぱちぱち弾ける火は金色をしている。
「そちらは金色か。そなたの飴は何味になるのかな」
「何味だと思う?」
 楽しそうに笑って尋ねる千鶴に、カムイはそれなら、と首を傾げて。
「よかったらわけっこしようか。二度楽しめて美味しいよ」
「わけっこ! 勿論だよ、柘榴味楽しみ」
 どんな味だろう、と鮮やかな彩に思いを馳せる。

 やがて千鶴の手のひらに、ぽとり落ちた月の雫みたいな飴。煌めくそれを、カムイへと差し出して。
「はい、カムイ」
「ありがとう、千鶴。……ん、これは檸檬味だね。すっきりした酸味が好ましいよ」
 ならば、とカムイが差し出す柘榴の飴を千鶴もぱくり。
「柘榴ってこんな味なんだね、ちょっと酸っぱいけどさっぱりしてて美味しい!」
「そうかい? それなら良かった」
 ふたり口いっぱいに広がる互いの好きを楽しんで、そうだと千鶴が口を開く。
「折角だから瓶に詰めて飴をお土産にする?」
 きみとの想い出も一緒に持ち帰るんだ、なんて笑うかんばせはあどけない少年のそれ。
「それは名案だね」
 カムイもまた楽しそうに笑って、傍らの小瓶を手にする。
「小瓶に夏の思い出ごと詰めて土産にしよう」
 笑顔が待ち遠しい、なんて。思いを馳せれば、カムイに自然と優しい笑顔が浮かぶ。
「渡すの楽しみだね?」
 なんて、カムイがあまりに微笑ましいからちょっぴり悪戯っぽく笑む千鶴。

 今は空っぽなふたりの小瓶は、きっと鮮やかに彩られるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
🎲🌸
🍬

にひひ。わたしも負けない!
たくさん咲かせようね

ぱちぱち爆ぜる花火
灯に照らされる横顔が格好良く
楽しそうに笑む彼につられ笑み咲く
わたしだけのもの
アナタだけのわたし

思い浮かべて
ころんと瓶に落ちたそれは赤く色付いたハート
直前まで考えてたものが見透かされるようで気恥ずかしい

うー…賽子にしたかったのに
ディイくんが傍にいるから仕方ないのです、うん
あ、ディイくんの桜色!わたしの彩だ
浮かべてくれたことが嬉しくてはにかむ

これまでも、これからも
ディイくんだけのわたしだよ
でもたまにぎゅーって閉じ込めてほしいな
わたしもディイくんを独り占めしたいんだもん

うん、これからもずっと
ふたりの時間も想いも重ねていこうね


ディイ・ディー
🎲🌸
🍬

志桜、こっちで線香花火やろうぜ
せっかくだ、ちょっとした賭けをしようか
いくぜ、どちらがたくさん瓶に花火の飴を集められるか勝負!

弾ける火の粒と、ころりと瓶に落ちる火
俺のは淡いさくらいろ。きっと何処までも甘い薄紅
いつのまにか俺の想いも桜彩に染められたみたいだ
花火の欠片が桜の飴玉になっていくのは可愛らしい

志桜のことも俺だけの小瓶に閉じ込めて独り占めできたらな
そしたら絶対に片時も離さないのに
なんて冗談
それも悪くはないが抱き締められなくなるから

この飴玉が俺達の思い出の形だとしたらさ
これ以上に、もっと一緒の時間を重ねていこうぜ

夏の夜に満ちる空気と花火の色彩が美しく思えるのは
きっと隣に君がいるから




 寄り添い並び立つ影が、打ち上がる花火に照らされて海辺に映る。
「志桜、こっちで線香花火やろうぜ」
「うんっ」
 ディイ・ディー(Six Sides・f21861)の隣で、荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)は弾む声で頷く。
「せっかくだ、ちょっとした賭けをしようか」
「賭け? にひひ。わたしも負けない!」
 悪戯な笑みで尋ねてくるディイに、志桜また悪戯っ子な笑みを返す。過ごす時を重ねる毎に、どことなく似る仕草もあるようで。
「ああ。いくぜ、どちらがたくさん瓶に花火の飴を集められるか勝負!」
「うん! たくさん咲かせようね」

 ほら、とディイから手渡された花火に志桜は火を灯す。ちりりと音を立てて縮まる火の玉から、ぱちぱちと繊細な花が咲く。綺麗だなぁなんて思いながらもちらと視線を向けるのは、隣の彼。端正な横顔は、淡い灯りに照らされて常とはまた異なる雰囲気。
「(かっこいいなぁ……)」
 なんて、つい見惚れてしまって。楽しそうに笑むディイに、志桜の表情も花のように綻ぶ。

 ――わたしだけのもの。
 ――アナタだけのわたし。

 胸の裡にじんわりと広がる甘やかな思いに、独占欲をひとしずく。
 思い浮かべた想いは形になって、かつんと小瓶に落ちる。

 ――それは赤く色付いたハートの形。

「……んんっ」
 まるで直前まで考えてたものが見透かされるようで、志桜は気恥ずかしさに思わず咳払い。
「うー……賽子にしたかったのに」
 でもでも、これは不可抗力。
「ディイくんが傍にいるから仕方ないのです、うん」
 好きな人が隣にいるのに、考えないわけがないのです。

 そんなふうにころころと表情が変わる志桜にくつくつと笑みを零すディイ。だけど見つめる視線は愛おしげに、己の小瓶にころりと落ちた飴を志桜へと見せる。
「ほら、俺のは淡いさくらいろだ」
 それは、何処までも甘い薄紅色をした飴玉。花火の欠片が桜の飴玉になっていくのは可愛らしくて、
「あ、ディイくんの桜色! わたしの彩だ」
 ぱぁっと嬉しそうに笑む志桜はもっと可愛い、なんて。
「いつのまにか俺の想いも桜彩に染められたみたいだ」
 小瓶を傾ければ、からんと軽やかな音が響く。

 小瓶の中の桜色を見つめて零れる言葉は、
「志桜のことも俺だけの小瓶に閉じ込めて独り占めできたらな」
 そしたら絶対に片時も離さないのに、なんて冗談めかしてディイは言う。その言葉に志桜はぱちぱちと目を瞬いて、やがて淡く微笑む。
「これまでも、これからも――ディイくんだけのわたしだよ」
 しゃがんだ膝に乗せた手の甲に頬を乗せたまま愛しい人を覗き込めば、桜色の髪がさらりと揺れる。柔らかく眦を緩めて告げる言葉に混じる本音。
「でもたまにぎゅーって閉じ込めてほしいな。わたしもディイくんを独り占めしたいんだもん」
「それも悪くはないが抱き締められなくなるからな」
 ディイは志桜の揺れる髪をひと筋掬う。こうして触れられなくなるのは、つまらない。
「この飴玉が俺達の思い出の形だとしたらさ。これ以上に、もっと一緒の時間を重ねていこうぜ」
「うん、これからもずっと――ふたりの時間も想いも重ねていこうね」

 ――夏の夜に満ちる空気と花火の色彩が美しく思えるのは、きっと隣に君がいるから。

 淡い灯りに照らされる志桜の花が綻ぶような笑顔を見つめて、ディイは己の裡が満たされていくのを実感するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月08日


挿絵イラスト