5
The Library girl

#アルダワ魔法学園

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園


0




●Talked by the witch who likes books
 私は本好きの魔女。
 私の図書館においで。
 あなたのお話、聞かせてほしいな。
 ずいぶん長くここにいるから、図書館の本はもう読み飽きちゃった。
 面白いお話を持って、私の元においで。
 でももし、ここの本を取ろうとするなら──。
 ──許さないよ。

●Librarian’s rumor
 近頃広まるこんな噂。
 気付かぬ内に現れる本。白紙が多いその中の1ページにだけ、可愛らしい字で簡潔に誰かの語りが記されている。
 いつの間にか消えてしまい、残るのは曖昧な情報だけ。
 地下迷宮のどこかにある図書館に眠る少女が書いたんじゃないか。そんな噂。
 声も姿も知らぬ少女は、生徒の中でいつしか『本好きの魔女』と呼ばれるようになっていた。

●In the Grimoire Base
「と、ここまでが広まっている噂話だよ」
 クラム・ドグマ(黒い読書家・f03711)は猟兵達に向け告げる。
 簡単なタイトルと簡潔な文が書かれた小さな本。聞けば作者はどれもCharlotte──シャルロットとなっているらしい。
 近頃その本の影響で、迷宮の探索に行く生徒が増えているらしいのだ。
「そしてここからが予知の範囲なんだけどね」
 そう続けたクラムは、神妙な面持ちで続ける。
 ──近く、そこでオブリビオンが暴れるだろう、と。
「どういう理由かはわからないんだけど、噂にある少女とはかけ離れた、山羊のようなオブリビオンが暴れるようでね。その正体を突き止めると共に、図書館のオブリビオンを倒してほしいんだ」
 そして肝心の図書館だが、それがどこにあるのか、正確な場所は未だわかっていないのだそう。洋館の迷宮の中に、図書館に行くための手がかりがあるということしか分かっていないのだと、クラムは語った。
「実際に向かった生徒も、みんな洋館の迷宮で詰まってしまうらしい」
 迷宮に入るとすぐにいくつもの部屋があるが、扉を開ける毎に部屋が入れ替わってしまう。そうして探索を続けていると、いつの間にか洋館の外に出てしまうのだそうだ。
「とはいえ、その部屋のどれかが図書館に繋がっているのは確かだ。みんな、頑張ってくれ」
 そう告げてから、クラムは転移の準備を始めた。


くらげ屋
 初めまして。あるいはお久しぶりです。くらげ屋です。
 ここまでオープニングを読んでいただきまして、ありがとうございます。ここからは各章の説明となりますが、お読み頂けると幸いです。

●第一章
 洋館の探索です。猟兵達は迷宮内部に転移した状態から始まります。
 図書館に繋がる道を見つける事が出来ればクリアとなります。
 フラグメントの記載以外の行動も喜んで受け付けますので、自由なプレイングをお送りください。

●第二章
 図書館の探索です。何かしらのアクションによってボスの元に辿り着ければクリアとなります。
 こちらも勿論自由にプレイングを送って頂ければ幸いです。

●第三章
 ボス戦です。少女と山羊のタッグとなります。オブリビオンをしっかり倒しましょう。

(注)
 くらげ屋はプレイングに記載が無くともアドリブや他のキャラクターとの絡みを行います。
 文字数が限られていますので、それらがOKだという方はその事を記載しなくても構いません。
 もしNGだという方はプレイングの最初に「×」と記載していただければそのようにリプレイを書きますので、お願いします(どちらかのみがNGだという方については「ア×」もしくは「か×」のようにお願いします)。

 長くなりましたが、以上になります。
 皆さんのご活躍を期待しています。
8




第1章 冒険 『洋館アンダーグラウンド』

POW   :    各部屋の仕掛けを力技で突破する

SPD   :    各部屋を足を使って隅々まで調査する

WIZ   :    各部屋に仕掛けられた魔術的な仕掛けや謎を解く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 洋館の廊下には、一冊の本が落ちていた。作者は──Charlotte。

●Welcome to Western style house
 ようこそ。
 あなたはお話を持ってきてくれた良い人?
 それとも、お話を持って行っちゃう悪い人?
アーチス・カーライル
たどり着けない図書館…謎の本…!これは神秘の香りがするわ!わくわくするわ!

入れ替わる部屋……何か規則性があれば解は見つかりそうだけれど。
まずは一部屋一部屋調査しない事にははじまらないわ!部屋が入れ替わる規則性か、仕掛けのタネが見つかればいいんだけれど…まずは足を使ってこつこつと、よ!

もし部屋に本があるならそれにヒントがあるんじゃないかしら…本好きの少女が図書館に眠っているなら、何か隠されててもおかしくなさそう…うーん


セルヴィ・アウレアム
「お話を持ってきてくれたいい人…ほーん、なるほどなるほど。」
「んーしかし、ただでくれてやるのも惜しいとこやなぁ。…ま、そのへんは顔を合わせてからでかまへんか。」

・行動【WIZ:各部屋に仕掛けられた魔術的な仕掛けや謎を解く】
まずはざっと大まかに部屋群を探索。意味深な一冊の本が迷宮の主の意向通りであるのなら、おそらく無碍に返すような真似はしないだろうとたかをくくる。
その上で、迷宮の形が変わっているーーもとい、『迷宮の主が自分に気づいている』ことを確認できたら、「やあやあシャーロット…ちゃん?でええんかな。おもろいお話がほしいなら、ウチを通してーな。世界各国の興味深い口伝を集めてきたで」と交渉します


グラデウス・ミースミ
隠された図書館探し・・・。
ちょっとしたファンタジー物のようですね。
せっかくですし、隈なく歩いてなぞ解きを楽しみたいですね。

隠し扉の定番といえば棚でしょうか。
埃のつもり具合で目星がつけられるかな?
キーはたぶん廊下の本でしょうか。
お話を持っていく、を素直に受け取るなら
本を持っていないと開かないかもしれませんね。
個人的にはまず熟読してみたいものです。



 洋館の中。扉が多く連なる長い廊下に、三人の少女がドアの向こうから出てきた。
  アーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)はわくわくした様子で辺りを見回す。
「たどり着けない図書館……謎の本……! これは神秘の香りがするわ!」
 ここまでどれくらいの部屋を探索しただろうか。これといって大きな成果を得られていないこの現状は、アーチスの知的好奇心をくすぐるようだった。
「確かに、ちょっとしたファンタジー物のようですね。せっかくですし、隈なく歩いてなぞ解きを楽しみたいですね」
 グラデウス・ミースミ(将来の夢は安眠。・f12178)もアーチスと並んでそう口にする。興味深そうな瞳は、彼女の知識欲の現れだろうか。
 一方セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は、廊下に落ちていた本を持ち、その短い文をじっくりと読んでいた。
「お話を持ってきてくれたいい人……ほーん、なるほどなるほど」
 何やら意味ありげに、セルヴィは口元を歪ませる。まるで相手を見定めるような目付きになった。
 セルヴィが本を持っているのに気付いたグラデウスは、そちらに視線を向ける。
「あ、その本私も見たいです」
「ええよ。ほら」
「ありがとうございます」
 本を受け取り、内容を熟読するグラデウス。ページを捲れど文が書かれているのはその一ページだけで、他はただの白紙。沁み一つ無いそれは、つい先程生み出されたかのようにすら思えた。
「んーしかし、ただでくれてやるのも惜しいとこやなぁ」
 本の内容を思い出しながら、セルヴィはポツリと呟く。ふむと考え、小さく「……ま、そのへんは顔を合わせてからでかまへんか」と続けた。
 やがて確認をし終えたのか、グラデウスは静かに本を閉じる。そして二人の方に向き直ると、
「それじゃあ、次の部屋に行ってみましょうか」
「あ、ウチは別行動で頼むわ」
 グラデウスの提案に片手を上げて返すセルヴィ。意外そうな表情を見せたアーチスは彼女に訊ね返した。
「あら、何か他にやりたい事があるの?」
「ちょっとな。ほな、また」
 そうしてセルヴィは、元来た道を引き返していった。
 それを見送り、二人は近くのドアを開け、中に入る。いくつかのランプで照らされた室内にあったのは、ダークブラウンのレトロなテーブルが一つと、同じ色のチェアが一つ。壁に備えられた背丈の小さな棚は何処か落ち着きのある雰囲気だった。
「もし部屋に本があったらそれにヒントがあるんじゃないかと思ったけど……ここにも無さそうね」
 落ち込んだ様子のアーチス。ここより前に探索した部屋でも同じことを思い、確認していたのだが、それらしき物を見つける事は叶わなかったのだった。
 その横で、グラデウスはふむと棚を観察していた。
 彼女が目を付けたのは、棚付近に積もっていた埃だ。
 普通であれば部屋の埃は一様に積もっていなければおかしい。現に、ランプの上や床のそれは幾分も違ってはいない。
 しかし棚の付近の埃だけは、僅かながら薄くなっていたのだ。まるで。
「……まるで、随分と前にこれを動かしたかのような跡ですね」
 顎に手をやり、小さく呟いたグラデウスは、アーチスに体を向ける。
「すみません、これを動かすのを手伝ってもらえませんか?」
「オッケー。じゃあ、こっち側に動かすよ」
 快く了承したアーチスは棚の片側に手を掛ける。グラデウスももう一方を持ち、二人でそれを動かした。
 案外容易に動かすことができた棚の奥。そこに隠れていたのは、小さな扉だった。
「これは……?」
「図書館への扉にしては、いささか小さすぎる気がしますが……」
 首をひねるアーチスに小さく返すグラデウス。驚きと困惑を浮かべた顔を見合わせて小さく頷くと、ゆっくりその扉を開けた。
 中に入っていた物をグラデウスが取り出してみれば、それは一冊の本。先程廊下で拾った物と同種であろうということは、見覚えのある作者の名を見れば明らかなことだった。
「おお! 本あったね!」
 アーチスは喜びを顔に表し、高らかに叫ぶ。そうしてグラデウスに目をやれば、彼女も嬉しそうに首肯し、緊張の手つきでその本を確認するのだった。

 一方別行動をしているセルヴィは、一つ一つドアを開けてはその中を観察していた。先程探索したはずの室内は、明らかにその構造が変わっていた。
(ちゅーことは、彼方さんはウチらに気付いているってことやろな)
 元々彼女は、あの本があったこと、そしてその内容からして、自分達を無碍に返すような真似はしないだろうと考えていた。きっと今も、どこかで観察しているのだろう。
 姿を見せない迷宮の主に向け、彼女は交渉を始めた。
「やあやあシャルロット……ちゃん? でええんかな。おもろいお話がほしいなら、ウチを通してーな。世界各国の興味深い口伝を集めてきたで」
 若干の胡散臭さも感じる笑顔を添えて、彼女は話しかける。だがそれに返答は無く
彼女の言葉は虚空に融けて消えた。
「……ダメか」
 はあと溜息を吐き、無表情に返ったセルヴィは、次の部屋のドアを開けた。

●My distant memory
 ここにはとても貴重な本がたくさんあるって、昔何かの物語で聞いた。
 そして本と図書館を、やぎさんが守っているって。
 だから私は、ここに来たの。
 ここにはいろんな本があると思ったし、やぎさんからたくさんのお話を聞けると思ったから。
 ああ、早く図書館に着かないかな? 早くやぎさんに会いたいな。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

弦切・リョーコ
ふんふん図書館、まだ見ぬ知識の貯蔵庫。とても興味深いね。この私が代わりに籠りたいくらいだ。
外の知識を得たいのかね、魔女は。ならば書を捨てて外に出よという言葉があるが…引きこもりなのか横着なのか、しかしそれで暴れられると困るねぇ。
折角だ、と学術書や歴史書等数冊を持っていく。

【世界知識】と【学習力】で迷宮の変化パターンや魔術・機械双方の仕掛けの特色を観測、解析し奥へ向かう道を探る。可能ならば【ハッキング】を応用して機械構造を把握したり魔術的な情報や精霊との対話ができるならそこから情報を得る。【視力】【暗視】で小さな違和感も見落とさない。途中で鍵がかかったような扉があれば【鍵開け】で先に進む。


デイヴィー・ファイアダンプ
図書館に眠る『本好きの魔女』の噂と、探索を続けていると洋館の外へと弾き出されてしまう事実。
つまり、その魔女に図書館へと招かれる必要があるのかもしれないな。
それならば図書館へと招かれるべき者としての礼儀やマナーを示してみようか。

そういうわけで転移前にどこからか手近な本を仕入れてきて、洋館の一室で読書をしてみるよ。
内容は特に気にする余裕もないだろうけど、出来れば静かに集中できるだけの面白さがあれば幸いだね。
そうでなくても静かに読み続けるつもりだけど。

本を読み終えたら椅子などを戻して、次への扉を開いてみるとするよ。


四宮・かごめ
かようなまでに些細な情報が人々を惹きつけ得るとは……
「魔女」とやら、正体はどうあれ本質を捉えるのが上手いと見える

【SPD】
それがしは仕掛けに気をつけながら、足を使って各部屋を隈なくまわってみるでござるよ
とはいえ、頼りは己の【視力】と【早業】のみ。駄目で元々。洋館の外に出てしまってもめげないでござる
同じ部屋に出たら前とは違う部屋に入ってみるなど
色々な組み合わせを試してみるでござるよ
試行錯誤を繰り返していくうちに【第六感】が働く事もあるでござろう

いつの間にか本が現れ、
いつの間にか本が消え、
いつの間にか道を見失う
狐……いや、山羊に抓まれているのでござろうか


ティル・レーヴェ
不思議な図書館へ続く洋館とは何とも浪漫ある迷宮じゃな妾もひとつ足を踏み入れてみよう
シャルロット嬢は新たな本を所望のようじゃ、折角じゃから鞄に一冊携えて向かうとするかのぅ

最初の廊下に落ちていたと同じような本が扉の先の部屋にも無かろうか
部屋に入ったら先ずは本を探してみよう
落ちているかもしれんし何処かに隠されているやもしれん
見つかればそこに記された言の葉から連想する行動を取るようにしてみる
もし本がなければ……そうじゃな、シャルロット嬢や山羊に繋がるものを探してみようか

部屋が入れ替わるなら1人で全ての謎は拾えぬじゃろう
他の者とも頭付き合わせて考えよう
隠された図書館に辿り着いて嬢に会ってみたいものよ



「ここは……外じゃのぅ」
 ドアを開けた先の風景を見て、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は小さく呟く。ここまでかなりの部屋を回ってきたように思えるが、図書館へ続く道は一向に現れなかった。
 長い緑色の髪を揺らし、はぁと小さく溜息を零す彼女の隣で、四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)は対照的に元気な声を上げていた。
「それがしはまだまだめげないでござるよ! さ、次に行くでござる!」
「……そうじゃの。それでは今度はこの部屋に入ってみるとしようか」
 薄く微笑んだティルは、次なる扉に手を掛ける。すっとそれを押してみれば、そこはまだ入った事がない部屋だった。
 揃って中に入る二人。キョロキョロと見渡すティルに、かごめは首を傾げた。
「ティルどのは一体何を探しているのでござるか?」
「本じゃよ。先程廊下にあったような物があると思ったんじゃが、なかなか見つからなくてのぅ……」
 部屋にあった机の引き出しを開けながら、ティルは返答する。引き出しの中には空色の花の髪飾りがあるのみで、本らしき物は無かった。仕掛けと言えるようなものも確認出来なかったので、ここにあるのはこれだけなのだろう。
 髪飾りも何かの手掛かりになればと鞄の中にしまう。その中には他に、『本好きの魔女』に見せる為の本も入っていた。
「かごめ殿はどうじゃ、何か気付いた事はあったかえ?」
 振り返りティルが聞けば、かごめはふむと考えてみる。
「そうでござるね……まだ確証が無いので、もう少し色々試してからまた話すでござるよ」
「そうかえ? それじゃあ別の部屋に行くとしようか」
 そう小さく返し、ティルは今さっき入ってきた扉を開ける。
 軋む音を立てながら開いた扉の先にいたのは、意外な人物だった。
「おや、アンタ達もここに辿り着いたのかい?」
 壁に手をやり閉じていた瞼を開いて確認した女性は弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)。そして椅子に腰をかけ本を読んでいた青年はデイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)だった。
「絶えず構造を変えるこの洋館の中で他の猟兵達に出会えるとは思っていなかったな。しかも二回も」
「二回というと、リョーコ殿もここに来た口かの」
 尋ねたティルにリョーコは首肯して見せる。
「ああ。とはいえ、私もついさっき来たところなんだけどね」
 そう呟き、達観した口調で、
「まったく、魔法の力で変わる屋敷ってのも厄介なもんだ」
「魔法……この洋館が姿を変える仕組みは、魔法なんでござるか?」
 今度はかごめが尋ねる。その様子に思うところがあったのか、わずかに眉を動かしたリョーコは「ああ」と答えた。
「精霊達はそう言ってたよ。機械仕掛けも疑ったが、それにしてはあまりに静かすぎるしな」
 右手の上を精霊達が浮遊するのを眺めながら、リョーコはかごめに聞き返した。
「それはアンタも気付いていたんだろう?」
「まあ、それがしのはただの勘でござるが」
 かごめは様々なパターンで入る部屋を考えていたのだが、そこにはまるで規則性が見つけられなかった。まるで自分達の行動や思考を読んでいるのではないかと思えるような変化に、彼女は「これは魔女の意志によって部屋が変わっているのではないか」と考えたのだった。
 その考えを三人に伝えてみれば、デイヴィーは面白そうに笑みを浮かべた。
「なるほど。そうしたら、僕がここで本を読んでいたのも間違いではなかったようだね」
 実はデイヴィーも、「図書館に行く為には魔女に気に入られなければならないのではないか」と考えており、この部屋で本を開いていたのだった。
 となれば、四人の猟兵達がこの部屋に集まった事にも、自ずと理由が浮かんでくるが。
「……あれ? こんな所に本なんてあったか?」
 デイヴィーが視線を向けた先には、小ぶりなテーブルの上に乗せられた一冊の本。少なくとも彼がこの部屋に来た時には無かったが。
 他の猟兵の物だろうかと視線を三人に移すが、それぞれに心当たりはないようで。かごめは本を持ってきていないし、ティルの本は鞄に入ったまま。リョーコも数冊の本を持ってきていたが、彼女の手元にある。勿論デイヴィーの物でもない。
 四人は本を覗き込む。その作者は――Charlotte。
 驚き目を見開く四人。デイヴィーが恐る恐るそれを手に取った、次の瞬間。
 空気が揺らぎ、空間が歪んだかと思うと、部屋は消え失せて、四人は廊下に立っていた。
「なっ!?」
「こ、これは……」
 思わず声を上げたのは誰だったか。しきりに周囲を見回し、目の前にドアがあるのに気付いく。どうやら、他の部屋を探索していた猟兵達もここに移動させられたようだった。
「いつの間にか本が現れ、いつの間にか本が消え、いつの間にか道を見失う。狐……いや、山羊に抓まれているのでござろうか」
 呟くかごめの台詞は、可笑しさすら含んだ口調。眉をひそめたリョーコもそれに続いて、
「これは……多分、図書館に繋がっているんだろうね」
 それと異なる考えを持っている者は、誰もいないようだった。
 ひとまず猟兵達は本を開く。そして読み終えた彼らは頷き合い、ゆっくりとそのドアを開けた。

●I would like to you be found me
 気に入った! 特別に、図書館に入れてあげるわ。
 でもね、そこに私はいないの。
 私がいるのはもっと奥。そこに着くには、図書館の仕掛けを解かないとね。
 それじゃあ、向こう側で待ってるね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『叡智なき書の迷宮』

POW   :    体力に物を言わせて踏破する。

SPD   :    蔦を使ったり、本を引き出し足場を増やす等の工夫で攻略する。

WIZ   :    本の並び等に規則性を見出し、出口を探す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 高く積み上げられた本に囲まれる空間。その中央で、一人の少女は小さく寝息を立てて眠っていた。
 その少女のそばに寄ってくるのは、一匹の白い山羊。頭を下げ、黒く伸びた角で少女の柔らかい頬を優しくつついてやれば、少女は小さく身じろぎした。
「んぅ……」
『シャルロットよ。客人だ』
「お客さん……? ふぁあ……」
 眠たそうな目をこすりながら、少女は山羊に問い返す。まるで、自分は何も知らないかのように。
「その人たちは、本を取りに来たの?」
『さて、どうだろうな。お話を届けに来たのかもしれない』
「本当!?」
 一気に目が覚めたのか、大きな声を上げる少女。それから笑顔で、逸る気持ちを抑えるように体を小さく揺らした。
「楽しみだなぁ。早く来てくれないかなぁ」

 図書館の中は本で満たされていた。
 無限に続くのではないかと思える程に広い空間と、高い本棚。そしてそこにびっしりと詰め込まれた本の数々だった。
 そして、入ってすぐの場所には静かに置かれた本。それを手に取り、猟兵達は中を覗いた。

●Where are we?
 ここが私達の図書館よ。
 さて、私達はどこにいるでしょうか?
 図書館の本は自由に触ってもいいよ。
 でも勿論、本を傷つけたり、ページを破ったりしちゃダメ。それを持ち出すなんてもってのほか。
 もしこれを守ってくれないなら、私とやぎさんで追い出しちゃうんだから。
 それじゃあ、早く私を見つけね。
デイヴィー・ファイアダンプ
傷つけることや奪うことを許さず、しかし与えられることを求めている。
魔女が残した言葉を見るに、もしかしたらこの本の一つ一つが魔女の心そのものなのかもしれないね。

そしてそうであるなら、その心の空白を埋めることが手掛かりになるかもしれないね。
ならば先ずはその空白を探すことにしようか。

図書館での空白? もちろん本棚の空きのことだね。
詰め込められた本棚の数々を観察して、どこかに隙間が無いか調べてみるよ。

見つけられたら落ちている本を収めてみたり、またはその隙間の手を伸ばしたりしてしよう。
なにか仕掛けがあるのか、それとも思い過ごしで本当にただの隙間なのか。
楽しませてもらうよ。



 魔女が残した本の内容を頭に浮かべるデイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)は、小さく呟いた。
「傷つけることや奪うことを許さず、しかし与えられることを求めている。魔女が残した言葉を見るに、もしかしたらこの本の一つ一つが魔女の心そのものなのかもしれないね」
 そうしてデイヴィーは、ぐるりと図書館を見回す。縦横に視線を動かす彼は、何かを探しているのだろう。
「そしてそうであるなら、その心の空白を埋めることが手掛かりになるかもしれないね」
 空白とは即ち、魔女の心の隙間であり、本棚の空きの事。
 ならばまずそれを探そうかと歩き始めるデイヴィー。本棚をよく見てみれば、すぐに一冊分差し込めそうな空間を発見した。そしてそのすぐ下には、丁度隙間に収まりそうな一冊の本が。
 試しに自分の手を本棚の隙間に入れてみるが、仕掛けらしき感触は無い。それなら今度は、と彼は落ちていた本を手に取り、軽く中を見てみる。そして内容を把握すると、本棚に差し込んだ。
 ぴったりと入ったその本。しかし、図書館に変化は感じられなかった。
「……まあ、落ちたままにしているよりは、魔女の機嫌も良い事だろう」
 そう口にし、本の背をそっと撫でて、デイヴィーは次の場所へ歩みを進める。
 去り際、彼は静かに思うのだった。
(あれだけ本を大事にしているような人物がわざわざ本を床に置いておいたということは、きっと誰かにそれを気づいてほしかったのだろうな)

●The girl has a boring time with the goat
 ここでの時間は案外早く過ぎて行って。
 図書館の本を全部読み終えたのは、どれくらい前だったかな?
 誰かここに、素敵なお話を届けてくれたら嬉しいのにな。
 でも、どうやったらみんなは来てくれるんだろう?
 私がここに来た時みたいに、何か面白いお話を聞かせてあげればいいのかな?
 ……難しい事を考えたら、眠くなっちゃった。
 それじゃあ、おやすみなさい。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーチス・カーライル
図書館!図書館だわ!!
あたし、本を見てもいいかしら?いいわよね!
あ、えーとほら……本の内容にも図書館の謎を解くカギが眠ってるかもしれないし、ね?

わぁ、こんな広いのならあたしが読んだことのない本も沢山ありそう…!
あ、あの本が気になるわ。あっちの本も、あれもこれも。あーもう!上の方の本に手が届かない!脚立か梯子はないかしら。
高いところから全景も見て見たいわ。と言うか時間が足りないわ!本好きの魔女がずっとここにいる理由もわかるわね。あ、もちろん本は丁寧に、と。

ねぇ、本の魔女、シャルロットさん?
あたしが知ってる世界のお話をしてあげる。だからこの不思議な図書館のことを教えて欲しいわ!どうかしら?



「図書館! 図書館だわ!!」
 奥行きが見えない部屋いっぱいの本を前に、アーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)は両手を広げて声を上げる。爛々と輝く瞳でしきりに辺りを見回す彼女の姿は、まるで遊園地に来た子供の様だった。
 大きな帽子を抑えながらあちらこちらと本を見るアーチス。世界の神秘の解明を目標とする彼女にとってこの空間はとても魅力的で、魔女がずっとここにいる事に共感を示していた。
 やがて上の方にある本に目をつけるアーチスだが、それはどうにも手が届く距離では無くて。
「うーん、脚立か梯子はないかしら……あ」
 小さく呟く彼女の目に止まったのは、奥に見える大きな脚立。かなり高いそれを運び、慎重に上っていった彼女は、やがて目当ての本の場所まで辿り着く事が出来た。
 落とさないよう丁寧に本を手に取る。その表紙をよく見たアーチスは、驚きの声を漏らす。
「この本、作者の名前が無いわ……!」
 今まで全ての本にあったCharlotteの文字は、これに限ってはどこにも見当たらなかった。
 不思議な思いを抱きながら、アーチスは本を開く。それを読み終わると、彼女の中に一つの仮説が浮かび上がってきた。
「これ、山羊の心なのかしら……?」
 文脈から推測したアーチスは、振り返り、ぐるりと図書館を眺める。
 本を愛する魔女を思わせる図書館。背丈に違いはあれど、たくさんの本棚と、そこにいっぱいに並べられた本が、そこからは確認出来た。
 そっと本を戻し、アーチスは姿の見えない魔女に向かって声をかける。
「ねぇ、本の魔女、シャルロットさん? あたしが知ってる世界のお話をしてあげる。だからこの不思議な図書館のことを教えて欲しいわ! どうかしら?」
 明るい問いかけに答える声は無い。だがどこかで、少女が笑った気がした。

●The monologue of the goat
 シャルロットと名乗る少女がこの図書館に来たのは、何年前だっただろう。彼女の本を愛する純粋な心に、私は魅かれた。
 この図書館を一緒に守りたい、という突拍子もない事を言われた日には、流石に驚いたが。
 住人の想いが無意識に本と化すこの図書館で、感情豊かな少女の想いは次々に本棚を埋め尽くしていった。
 だが、少女は元々あった本をすぐに読み終えてしまう。何度も読み返している内に、少女は眠る時間が多くなっていった。
 今はこの部屋で眠る少女を、外に出してやりたい。そもそも彼女は本来、ここに居るべきではないのだ。
 だがそれを提案したところで、彼女は断るだろう。私が消えたとて、彼女はここに残り、書を守り続けるだろう。
 誰か、ここの書を守ってくれる新しい者が来てくれると良いのだが。
 ……そういえば、猟兵という者達の話を聞いたことがあったな。確か、災魔を倒しているのだとか。
 私も災魔と同じ分類だ。猟兵と名乗る彼等が私を倒し、そしてこの図書館を守ってくれるのであれば――。

成功 🔵​🔵​🔴​

弦切・リョーコ
魔女は私達の行動を見張っているようだが…知ったことじゃない。折角図書館に来て、これだけの蔵書だ。全部頭に収めていくぞ。案外ここの本に飽きたら奥の蔵書に案内してくれるかもしれんしね。

魔女のことも気になるが、自分の知識を増やしたいという欲望が勝ち、【世界知識】と【学習力】に物を言わせて片端から本を読破していく。落ちている本など、変わった場所に配置されているものがあったら優先的に読む。その中でどういう本が多いかを分析して、傾向があったり人となりが見えてくるようなら仲間に伝える。
興味ある分野は歴史や自然、魔術に関する分野。

もう面白そうなものがないとなったら魔女におかわり要求でもしてやろうか。



 ゆっくりと歩き回り、本を手に取っていくのは弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)だ。
 彼女にとって、魔女に見られていることは興味の対象ではない。それよりも、目の前に多く並ぶ本の方がはるかに興味をそそられたのだ。
 目についた本を一冊ずつ読んでいくリョーコ。この部屋に来た時軽く周囲を見てみたのだが、落ちていたり妙な置かれ方をしていたりという本は先の一冊しかなかった。その為、彼女は興味がある本を片っ端から読んでいるのだった。
 本を読み終わり、リョーコはふむと考えてみる。
「どうやら、貴重な本が多く保管されているという話は本当のようだね」
 何処かの研究者の論文から始まり、神話のような話、更には太古の魔術など、幅広い分野の書物があるようだった。
「これを悪用するような人物がいてもおかしくは無い。となれば、魔女がこの図書館を守っているのにも説明がつくだろう」
 自分の興味のある分野の本は粗方読み終わったリョーコ。まだ読み足りない。そう考え、魔女に向かっておかわりでも用意してもらおうかと思った時、ふと一冊の本が目に入った。
「これは……?」
 どうやらそれは、とある災魔――オブリビオンについての資料のようだった。
「恐らく、件の山羊の話だろう。後で他の猟兵達にも情報を共有せねばな」
 内容を確認したリョーコは、足早にその場を後にするのだった。

●The investigation
 とある図書館の迷宮に住まう山羊のような災魔。
 書物を愛する性質から、太古より迷宮で書物の管理をしていた。
 普段は温厚だが、本を盗む者に対しては容赦が無いという。
 また、その他にも特定の人物及び集団を目にすると途端に暴れるという事象も確認されているが、詳細は不明である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四宮・かごめ
洋書がこんなに
なんだかすごい場所でござるな。
ワクワクして来たでござるよ

【SPD】
本を引き出して、空いた所を足場に、本棚の上などなるべく高い所に登り、
そこから二人の居場所を探すでござる。
駄目なら離れたポイントで同じ事をやってみて、
何か変わった所を見つけたら、仲間に報せるでござるよ。
山育ち故【クライミング】には自信があるでござる。



「洋書がこんなに……なんだかすごい場所でござるな。ワクワクして来たでござるよ!」
 四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)は腕を大きく伸ばして口にする。ここまでたくさんの本h普段見ることが無いため、彼女は言葉通り胸を熱くさせていた。
 首をほぼ垂直にまでして、かごめは本棚を見上げる。どうにかしてこの図書館の全容を確認したいところなのだが。
「棚に足を掛ければ上まで登れそうでござるな」
 元々彼女は忍びであり、山で育った身だ。かなり高い場所ではあるが、彼女にしてみれば造作もないことだった。
 本を傷つけないよう注意しながら軽やかに上がっていくかごめ。あっという間に一番上にたどり着いた彼女は、ぐるりと部屋を見渡した。
 いくつもの本棚が綺麗に並んでいる図書館。何処までも続いているように見えたが、端と呼べるような場所は確かに見えた。
「ここからでも二人は見えないでござるか……おや?」
 かごめの目に留まったのは、規則正しく並ぶ本棚から外れた場所にポツンと立っている本棚だ。壁際のそれは、彼女に確かな違和感を与えていた。
「おーい、皆!」
 猟兵達に大きな声で呼びかけ、かごめはひょいと飛び降りて説明するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

辰神・明
WIZ

持ち運び出来る、漢字辞典を、持って行きます……です
メイは、まだ、あんまり……漢字がわからない、から

本がいっぱい、いっぱい、です……!
じゃなくて、えっと……本の、タイトルの順番が、
ぐちゃぐちゃになっている、ところはある、でしょうか
そんな本があれば、元に戻してあげたら……
魔女さんも、嬉しいですし……何かわかるといいな、と思う、です

本を通して、魔女さんに声を……掛けられない、でしょうか

魔女さん、魔女さん
メイは、魔女さんと……お話が、してみたい、です
好きな絵本のお話も、今までメイが楽しかった、お話も、たくさんあります、です
だから……たどりつけたら、その時は、いっぱいお話、しましょう、ね?


グラデウス・ミースミ
WIZ 本の並び等に規則性を見出し、出口を探す。

本と図書館を、やぎさんが守っている・・・。
はじめは山羊のみで魔女は後から?
すべての本を読み終えて、しかしながら図書館を離れた気配がない。
新しい物語をまた探し求めて行くわけではなく、あくまでこの場所で持ってきてもらうのを待っている・・・。
白紙の本に一文だけのメッセージ。
秘匿されたSOSの可能性も視野に入れるべきかしら。

あまり時間がない可能性もあるかもしれませんが、
本を開いて斜め読みしてみましょう。
他にも何らかのメッセージが残っているかもしれません。

本を持って帰ろうとすれば向こうから出てきてくれたりとも思いましたが
現状ではリスクが高そうですね



 奇妙な位置の本棚の前に立つグラデウス・ミースミ(将来の夢は安眠。・f12178)と辰神・明(双星・f00192)。
「本がいっぱい、いっぱい、です……!」
 大きな漢字辞典を抱え驚く明の横。本を取り出し中を確認していたグラデウスは、ふむと声を漏らす。
「本と図書館を、やぎさんが守っている……。はじめは山羊のみで魔女は後から?」
 図書館を離れず、一文だけを残している魔女を思えば秘匿されたSOSのようにも思えたが、山羊の独り言のような本の話を聞けば、その考えはすぐに否定された。
「そもそも山羊と魔女は、親しい仲にあるのだろうな」
 だが、その二人の居場所が未だに分からない。本に軽く触れたグラデウスは一つの案が頭に浮かび、そのまま小さく呟いた。
「本を持って帰ろうとすれば、向こうから出てきてくれるでしょうか……」
「そ、それは危険、ですよ……!」
 びっくりしたように顔をグラデウスの方に向ける明。グラデウスは「分かっていますよ」と苦笑した。
 ほっとした様子の明は、続けて本棚の一角に指を向ける。
「それより、ここの本、順番が逆になっている、んです……」
「あら、本当ですね」
 つられて視線を向けてみれば、確かにそこの本だけ順番がおかしなことになっていた。
「これを、戻してあげたら……魔女さん、嬉しいです、よね」
 そう口にした明は、ぐっと背伸びをして本を取り出す。まだ背の低い彼女には高い箇所にあった為、取るだけでも一苦労のようだった
 ようやく本を取り出せた明。グラデウスはそれを覗き、彼女に尋ねた。
「それ、何の本でしょうか?」
「えっと……絵本、みたい、ですね」
 あまり漢字が多くないからだろう。嬉しそうな明がそう返し、その物語を開く。
 二人で並んで読むこと数分。やがて読み終わり、グラデウスは、
「なるほど。魔女が昔聞いたという物語は、このことだったんですね」
 そして明は、小さな体でその絵本を抱きしめ、語り掛ける。
「魔女さん、魔女さん。メイは、魔女さんと……お話が、してみたい、です。好きな絵本のお話も、今までメイが楽しかった、お話も、たくさんあります、です。だから……たどりつけたら、その時は、いっぱいお話、しましょう、ね?」
 言い終え、明はグラデウスと目を合わせる。頷き合った二人は、揃って本を元の場所に、正しい並びで戻した。
 次の瞬間。図書館を地震のような激しい揺れが襲う。
「わわっ!」
「おっと……あ、本棚が動いている……!」
 よろける明を支えたグラデウスの目の前で、本棚がゆっくりと横に動いた。
 その後ろから現れたのは、一つの扉。
「この先に、魔女さんがいる、のでしょうか……?」
「恐らく、そうでしょうね。……行きましょうか」
「はい……!」
 すっと真剣な表情になった二人は、静かに扉を押し、その先の部屋へと足を踏み入れた。

●Once upon a time
 むかしむかし、あるところに、大きな図書館がありました。
 そこには、とても大切な本がたくさんあったのです。
 そしてその本と図書館を、一匹のやぎが守り続けてきました。
 やぎはとても物知りで、世界中のさまざまな物語を知っていました。
 やぎは今も、一匹で図書館を守っているのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ライブラリーマスター・シャルロット』

POW   :    おしおきディクショナリー
単純で重い【鋼で強化された分厚い辞典の角】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ふたりの夢の王子様
自身が戦闘で瀕死になると【白馬に乗った王子様】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    やぎさんゆうびん
【大量の子ヤギ】の霊を召喚する。これは【噛みつき】や【タックル】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が足を踏み入れた先にあったのは、真っ白な広い空間。
 本が積み上げられるその中央には、少女と山羊がいた。
「ようこそ! 私はシャルロット。そしてこっちにいるのが……」
 嬉しそうにしゃべり始めた少女――シャルロット。続けて隣の山羊も紹介しようと体を向けた時、彼女は異変に気付いた。
「……やぎさん? どうしたの?」
 心配そうに覗きこむシャルロット。しかし、山羊はそれに答えない。その視線は、猟兵達に向けられている。
 息を荒らげ、彼等を睨みつける山羊。その様子を見て、シャルロットも鋭い眼差しに代わる。
「そう……あなた達、悪い人なのね。じゃあ、私とやぎさんも、容赦はしないよ!」
 宣言するシャルロット。
 山羊は猟兵達を見た瞬間に湧き出た彼等に対する猛烈な敵意の中、僅かに残る理性でシャルロットに向けて思考した。
(シャルロット……すまないね……)
アーチス・カーライル
ねぇ……ねぇ、あたし、本音を言えばさ…キミたちと戦いたくない…
図書館が好きなのよね?物語が、本が好きなのよね?
だって素敵な図書館だったもの!山羊も、シャルロットが好きなんでしょ?そんなキミたちを悪い人って思えないよ…!

外の世界に出よう。シャルロット、キミの知らない素敵な物語が沢山あるわ。

それでも…それでもオブリビオンだから倒さなきゃいけないって言うなら…【エレメンタル・ファンタジア】で真っ向勝負、するしかないじゃない。
でも気を付けてね、あたし、まだ未熟者で…加減なんて出来ないんだから――!



 つい先程まで穏やかだった表情を一変させ、猟兵達を鋭い眼光で睨むシャルロット。
 アーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)は悲しげな表情で不器用に笑って、シャルロットと、彼女の隣で息を荒らげる山羊と対峙した。
「ねぇ……ねぇ、あたし、本音を言えばさ……キミたちと戦いたくない……」
 アーチスの心から湧き上がる訴えに、シャルロットは小さく瞳を揺らす。少女の小さな動揺には気付かず、アーチスは更に続ける。
「図書館が好きなのよね? 物語が、本が好きなのよね? だって素敵な図書館だったもの! 山羊も、シャルロットが好きなんでしょ? そんなキミたちを悪い人って思えないよ……!」
 悲痛とも言えようアーチスの叫びに、今度はクシャッと顔を歪ませる。
 そんなシャルロットの変化にはっきりと気付いたアーチス。手を伸ばし、迷子の少女を導くように呼び掛けた。
「外の世界に出よう。シャルロット、キミの知らない素敵な物語が沢山あるわ」
 彼女の声に、シャルロットは大きく心を揺さぶられる。
「やぎさん……?」
 本当に彼女らは悪い人なのだろうか。若干の迷いを持って山羊に視線を移すが、その様子は何ら変わりが無い。
 それだけで、シャルロットの心の迷いを晴らすには十分だった。
 再度真剣な眼差しでアーチスに向かうシャルロット。彼女の様子に悲哀を浮かべたアーチスは、「そっか……」と短く首肯する。
 ならば彼女に残された道は、真っ向勝負のみ。静かに構えた彼女は、小さく呟いた。
「でも気を付けてね、あたし、まだ未熟者で……加減なんて出来ないんだから――!」
 伸ばした手から【エレメンタル・ファンタジア】によって生成された雷の槍が、シャルロットに向けて放たれる。
 地を割るような音を立て、刹那の間に少女へと向かう稲妻。その切っ先が彼女の体を貫こうとした、その寸前だった。
 シャルロットの前に飛び出してきた白い何かが、稲妻の一撃を受け止める。勢いのまま地面に落ちていったのは、一匹の山羊だ。
 先の山羊かと思われたが、小刻みに痙攣しているのは一回り小さいもの。シャルロットの隣には、それと同じ大きさの仔山羊を無数に構える山羊の姿があった。
 そしてその瞳は、全てアーチスに向いていた。
 まるで、シャルロットに手出しはさせまいとでも言うように。
「くっ……」
 その威圧的な様に、アーチスは後ずさりするしかないのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

辰神・明
WIZ

普段は、戦いはアキラおねえちゃんに、頼んでいるけれど
今回は……メイが、頑張ります、頑張りたい、です

たくさんの、子ヤギさん達には……
大切なともだち、で、対抗します、ね
くまさん、りすさん、メイに……話す時間を、作って下さい、です

メイや、他の猟兵さんへの攻撃は、くまさんと、りすさんで【かばう】
回避には【第六感】を使って、メイが、サポートします
隙を見て、子ヤギさんの霊に【カウンター】を

初めまして、です、シャルロットさん
メイは、メイ達は、ヤギさんを……助けにきました、です
ヤギさんが、大事にする本を、ヤギさん自身が、傷付けてしまう、から
シャルロットさんの気持ちを、大事な本を……メイは、守りたい、です


四宮・かごめ
ふむ、困ったものでござるな。
それがし、元より正邪の念より遠い場所に居るものなれば
それを操る術を知らず。
後へも引けぬとなれば、容赦はしないでござる。
四宮かごめ、参る。

まずは【早業】を活かして飛び退き、距離を取るのが先決。
以降は遠距離からシーブズ・ギャンビットで【援護射撃】を行い、味方を支援するでござる。
【スナイパー】や【投擲】、【だまし討ち】などの技能も活かし、確実に体力を削っていくでござる。
積み上げられた本に隠れるなどして、忍びらしく立ち回るでござるよ。にんにん。

礼は尽くしてある筈。
かくなる上は、両断あるのみ。



「くまさん、りすさん、メイに……話す時間を、作って下さい、です」
 辰神・明(双星・f00192)は【大切なともだち】で彼女の背丈程もあるクマとリスを召還し、それらに話しかける。普段は戦闘は姉の『アキラ』に任せている彼女だが、今回は勇気を振り絞り『メイ』としての戦闘だった。
「それがしも支援するでござるよ」
 四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)が仔山羊の霊から距離を取り、ダガーナイフを投げ付けながら声をかける。突進してくる仔山羊に次々とダガ―が刺さっていけばそれらは消えていくが、その数はまだ少なくはなっていないようだった。
 かごめのサポートを受けつつ、自分に向かう仔山羊はクマとリスを操作して攻撃をかわす明。
「ありがとう、ございます」
 と小さくお礼を述べてから、鋭い視線を向ける少女に向き合う。
「初めまして、です、シャルロットさん。メイは、メイ達は、ヤギさんを……助けにきました、です」
「助けに……?」
 先の事もあり、その場に立ちつくすシャルロット。小さく頷いた明は、にっこりと微笑んで続けた。
「ヤギさんが、大事にする本を、ヤギさん自身が、傷付けてしまう、から」
 その言葉で、シャルロットは山羊の方に顔を向ける。明らかにいつもとは様子が異なるその姿は、彼女に確かな不安を抱かせていた。
 今の山羊は本の守護という役割ではなく、ただ目の前の敵を倒すという使命によってのみ動いているようで。このままでは明の言葉通り、本が壊れてしまうのも時間の問題だろう。
「シャルロットさんの気持ちを、大事な本を……メイは、守りたい、です」
「でも、どうやったら……?」
 シャルロットの当惑した声。救いを求めるその声に、明は答えるべきか否か迷う。
 山羊を助けるとは、すなわちオブリビオンたるその存在を撃破する事だ。そしてそれは、シャルロットとの永遠の別れを意味する。
 そんな残酷な事を、自分の口から伝えてもいいのか。明が口ごもっていると、どこかで何かが倒れるような音がした。
「――やぎさん!?」
 シャルロットが目を見開いて叫んだその先には、苦しそうに倒れこむ山羊の姿。その腹部にはかごめが投擲したのであろうダガ―が刺さっており、鮮血が滴っていた。
 慌てて駆け寄るシャルロット。山羊の様子は、どう見ても瀕死状態だ。
「やぎさんを助けてくれるんじゃなかったの!?」
 痛切に叫ぶその声に、明は答える事が出来ない。ぐっと歯を食いしばったシャルロットは、嘆きを響かせた。
「絶対……絶対、許さない!」
 叫ぶと同時、声に呼応したように空気が揺らぐ、何処からともなく現れたのは、白馬に乗った王子だった。
「メイどの、危ないでござる!」
 立ちつくす明を抱え、その場から飛び退くかごめ。つい一瞬前まで明がいた場所には、王子の振るう剣の一撃が落とされていた。
 積み上げられた本に隠れ、かごめは標的を王子と白馬に変更して攻撃する。右へ左へ、スナイパーの如き一投も交えながらのダガ―による攻撃は、王子を近づかせる事すら許さない。
 王子に、また白馬にダガ―を幾本も突き刺していけば、あっという間に彼等は姿を消してしまった。
「メイどの、大丈夫でござるか?」
「はい……でも……」
 尋ねるかごめにそう返す。明の視線は、弱々しく息をする山羊に、必死に声をかけるシャルロットがいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

弦切・リョーコ
災魔だからねぇその山羊は。猟兵と敵対するのは避けられないってことか。残念だよ。
依頼内容はオブリビオンの正体を突き止め、倒せ。それを違えるつもりはないがね。

シャルロッテは相手にせず、山羊に語りかけ戦う。
山羊の災魔の事前情報を頭に叩き込んだ上で、敵UCを観測し片っ端から『結合分解』で無効化して味方の攻撃のスキを作るとともに周囲の貴重な本を守る。

博識な災魔とのことだが、脳みその容量じゃ負けるつもりはないよ。
この図書館の、この世界の知識を頂く。アンタからも学ばせてもらう。
その上で斃す。
……こうしてアンタが守ってきたものの価値はよく分かってる。せめてそのまま、ありのままで引き継いでやろうかね。



 シャルロット、山羊、そして仔山羊の霊をぐるりと眺める弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)。目を瞑り、考えた彼女は、ふっと息を吐いた。
「観測完了。解析完了」
 解析を終えたリョーコは薄く目を開ける。解析の結果によれば、先程の白馬と王子は山羊のユーベルコードのようだった。想いを反映するこの空間が、シャルロットの思いに応えたという事なのだろう。
 そしてユーベルコードを使う余力は、山羊にはもう残っていない。まだ倒されていない仔山羊の霊達も、今は棒立ちの状況だ。
 リョーコは、山羊に寄り添うシャルロットに目を向け、静かに呟く。
「災魔だからねぇその山羊は。猟兵と敵対するのは避けられないってことか。残念だよ」
 山羊に向け、本当に残念そうにそう語り掛ける。
 とはいえ、依頼はオブリビオンの正体を突き止め、倒すこと。それを違えるという選択肢はリョーコには無い。
 右手を前に出し、【世界演算『結合分解』】により、結合分解を起こす力場を仔山羊に向けて放つ。
 淡い光を放って、声も上げずに一斉に消滅した仔山羊。山羊に手を掛けるには十分すぎる隙を他の猟兵達に与えられた事だろう。
 仔山羊の消滅を一瞥したリョーコは、山羊に向かって話しかける。
「この図書館の、この世界の知識を頂く。アンタからも学ばせてもらう。その上で斃す。……こうしてアンタが守ってきたものの価値はよく分かってる。せめてそのまま、ありのままで引き継いでやろうかね」
 落ちていた本を、積まれた山の一番上に丁寧に置く。リョーコの声に、山羊は小さく喉を鳴らして喜びを表したように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グラデウス・ミースミ
望みは解放、ということでしょうか。
なんとも物悲しい物語になりそうですが、
読み始めたのならば読み終えるのが礼儀というもの。

私たちと相対すればどうなるかは山羊さん自身もご承知のことと思います。
であればなおのこと、
心を通わせた相手には自身の言葉で伝えるべきだったと思います。

と、戦闘に入る前に声を掛けます。
出来れば戦わずに済ませたいものです。

でもきっと、戦闘は避けられないでしょうから
戦うのであれば、館内を荒らしたくないので
慎重に狙いを定めてジャッジメントクルセイドを撃ちます。


デイヴィー・ファイアダンプ
オブリビオンが暴れるから倒してほしいと言われている。
双方にどんな思いがあるにせよ、猟兵として立つ以上は戦わないと、と表面上は体裁を保っておこう。
ただの災魔として終わらせてあげる気はないからね。

今からやることを表情で悟られても困る。姿を肉体のない亡霊のものに変えて、嘆きで動きを止めさせてもらうよ。

何度か使ってわかったことだけど、この技は精神を切り刻むようなものだ。
だから強い心で立ち向かえばなんとなるだろう。
そして、想いが無意識に本と化すこの場所でこの技を使えば何かが起こるかもしれない。
抗うために想いを吠えるか、それとも本として想いを残すか。
何れにせよ、どこかで想いを伝える機会はあるだろう。



 猟兵達と山羊、そして少女のみになった部屋の中。その戦いは、終わりを迎えようとしていた。
「望みは解放、ということでしょうか」
 山羊の願いを汲み取り、そう口にするグラデウス・ミースミ(将来の夢は安眠。・f12178)。シャルロットははっとした様子で山羊を見つめる。
「やぎさん……そう、なの?」
 体力か、或いは理性が足りないのか。声を発しない山羊は、代わりに弱々しく首肯して見せる。
「そんな……」
 瞳を揺らし、拳を強く握りしめるシャルロット。悲し気に目を伏せたグラデウスは、山羊に向けて呟いた。
「私たちと相対すればどうなるかは山羊さん自身もご承知のことと思います。であればなおのこと、心を通わせた相手には自身の言葉で伝えるべきだったと思います」
 その言葉に、山羊は小さく自嘲の笑みを浮かべる。成る程確かに、シャルロットに伝えていればこのように少女を悲しませる事態を避ける事が出来たかもしれない。
 だがもう遅い。そう諦めを示す山羊を、デイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)はグラデウスの隣で見ていた。
「君を、ただの災魔として終わらせる気はないよ」
 誰に聞かせるでもなくそう呟く。これからの行動を表情で悟られては困ると、自身の姿を肉体の無い亡霊のものに変えた。
「囁くは苦しみ。潰えし祈りを怨嗟の声にて唱えよう」
 手に持った器物を掲げるデイヴィー。中から禍々しさすら感じる死霊の群れが飛び出してきたかと思えば、精神を苛むような悍ましい声を上げながら山羊に纏わりついた。
 途端にピタリと動きを止める山羊を、シャルロットは焦るままに揺する。
 それがどのくらい続いたか。死霊が虚空に消え、山羊は再び動き出した。
「やぎさん!」
 安心したように顔を緩ませるシャルロット。ぎゅっと抱きしめる彼女のそばには、いつの間にか現れた一冊の本。
 それを取り、デイヴィーはシャルロットの顔の前に差し出した。
「これが、山羊のキミに対する想いだよ。読んでくれるかい?」
 尋ねる声におずおずと頷いたシャルロットは、本を開き、中を確認した。

●For your happiness
 シャルロット。君に伝えるのが遅くなってしまって、すまなかった。
 図書館の本を読み終え、退屈そうに眠る君を、私は外に出してやりたかった。
 だが君は、私がこの図書館を守る限り、共に留まり続けるだろう。
 だから私はここで消え、この図書館と本を、『猟兵』と称される彼等に任せようと思う。
 心配する事は無い。私が彼等に対して強く反応したのは、一種の本能のようなものだ。
 彼等は皆心優しく、そして正義感に満ちている。必ず、この図書館を守ってくれるはずだ。
 シャルロットは外の世界に戻り、ここには無かったさまざまな経験をするといい。
 君の幸せを、私はいつまでも願っていよう。


 読み終えたシャルロットは、ボロボロと涙を流し、山羊に語り掛ける。
「やぎさん……私、やぎさんと一緒に居られて、とても幸せだったよ。やぎさんと一緒なら、ずっとここに居たって平気だもん!」
 でも。震える声で、シャルロットは無理やり笑顔を作って続ける。
「でも、やぎさんがそう言うなら……私、外に行くよ。図書館の事も、やぎさんの事も……絶対忘れないからね」
 彼女の言葉に、山羊は小さく喉を鳴らした。その毛並みを軽く撫で、シャルロットはデイヴィーに視線を移す。
「ありがとう、猟兵さん」
「ああ。それより、早くその子を楽にしてあげよう」
 そう答え、デイヴィーはグラデウスに顔を向ける。
 本当に良いのか。確認するようにグラデウスはシャルロットの方を向くが、彼女は肯定を示すように力強く頷いた。
 頷き返し、グラデウスは手のひらを山羊に向ける。天から降ってきた光が山羊の体に当たれば、いくつもの光の粒となり、やがて山羊は空に消えていった。

 噛みしめるように手を閉じ、開きを繰り返すシャルロット。それが終わると、彼女はすっと立ち上がり、涙を拭う。
 猟兵達に連れられ、真っ白な部屋を後にする。
『ありがとう』
 去り際、そんな声が聞こえたような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月02日


挿絵イラスト