急募!アルダワ魔法学園の臨時講師
「皆さん、この度もお集まりいただきましてありがとうございます。新米グリモア猟兵の土御門泰花(つちみかど・やすか)と申します。よろしくお願い致します。」
泰花は集まった猟兵たちを見渡して、優雅に一礼した。
「さて、今回の依頼ですが……ああ、そのように身構えなくとも、この度ばかりはどうぞ気を楽になさってくださいね。実は今回は、アルダワ魔法学園より、皆さんへ『求人』が届いているのです。」
そう告げて泰花は、集まっている猟兵たちへ学園からの求人票を配布した。その内容は……。
☆勤務地「アルダワ魔法学園とその迷宮」
☆給与「猟兵様方のご希望に応じます」
☆勤務時間帯「全日制」
☆勤務内容「この世界で最も優秀な人材を育成する為の実技講座の実施(委細お任せ)」
☆年齢・服装規定等「無し」
☆資格「猟兵であること(来訪歴・活動歴等不問)」
……などなど。
「要するに、アルダワ魔法学園としてはこの先も優秀な人材を輩出する為、彼らにとっての真の英雄である、大魔王を打倒した存在である私たち猟兵に臨時講師となってもらうことで、生徒たちの安全を確保しつつも本物の実戦経験を積ませて鍛えよう……というのが目的のようです。」
しかも、本来のアルダワ魔法学園の生徒のみならず、猟兵の大活躍を耳にした世界各国の有力者の子女たちや、成績優秀な生徒たちが、「是非とも猟兵の皆さんから指導を受けたい!何とかしてくれ!」と押し寄せてきているのだとか。
「ただ、求人票に記載されています『☆勤務地』の迷宮には、残存勢力である災魔の集団が棲みついています。生徒たちは猟兵の私たちほどの戦闘能力は持たないので、災魔の攻撃から保護しつつ、実際に交戦する体験をさせることで実戦の心得や戦法、各種技術などの指導をするようお願い致します、とのことです。」
また、戦闘能力には乏しいとしても、生徒たちは教わった内容を基に、迷宮の仕掛けを駆使するなどして頑張って一緒に戦おうと意気込んでいるようだ。実戦経験を積ませるという意味では、彼ら彼女らの意気込みもある程度は尊重してあげるほうが良いだろう。
「臨時講師として学園に向かいましたら、まずは自己紹介を兼ねて生徒たちと交流を図り、信頼や親しみを抱いてもらうようになさってください。教師と教え子の関係が良好でないと、生徒たちのやる気も削げてしまいましょう。今は季節的にも夏ということで、氷を用いた食べ物や飲み物を作り、仲を深めるのがよろしいでしょうか。もちろん、飲食物に限らなくても、生徒たちの信頼や親しみを得られるものなら何でも良いかと存じます。」
ただし生徒たちは基本的に未成年ですから、間違ってもお酒は作らないでくださいね、と泰花は釘を刺す。ノンアルコールカクテルなどの、『本来ならお酒が飲める年齢の人向けの飲み物』もダメなようだ。
その代わり、本来アルダワ魔法学園では知られていない異世界の、氷を用いた料理やお菓子、飲み物などを作るといったものは歓迎されるという。
一例を挙げれば、彩り豊かなかき氷を作るも良し、グラスに砕いた氷を注いでソーダフロートのような飲み物を作るも良し、氷を器の形に削り出してその中にフルーツポンチを盛るというのも良いだろう。
「生徒たちと仲を深めることができましたら、いよいよ迷宮で実戦訓練です。私の察知したところでは、容姿に何らかのお悩みを抱えている男女が、魔法で何とかしようとしたものの裏目に出てしまった結果、災魔となったもののようです。皆さんを自分より整った容姿をしていると彼らが判断すると、迷宮のどこからでも現れ見境なく『お前も同じ末路を辿れ!』とばかりに魔法で襲ってきますので、生徒たちの安全に配慮しつつ、確実に撃破してください。」
ひとしきり説明を終えたところで、やや緊張気味の猟兵に向け、泰花は小さく笑った。
「今回の依頼は、そこまで深刻にお考えにならず気を楽にして臨んでくださいませ。もちろん、今回察知致しました災魔の集団は確実に全滅させるようお願い致しますけれども。……では、アルダワ魔法学園へと転送致しますね。生徒たちの指導、どうぞ楽しみながら頑張ってください。」
月影左京
こんにちは、または初めまして。新米マスターの月影左京です。
今回はアルダワ魔法学園でのお話です。
これまでの私のシナリオに比べると、気楽に挑戦できる雰囲気かと思います。
また、日常パートから始まる2章構成の短いシナリオですので、その点も気楽にご参加ください。
生徒たちは皆、それぞれに猟兵に憧れており、教わったことを身につけようと熱心に頑張ります。
教える内容は公序良俗に反するものでなければほとんどの場合、問題ありません。
1人で複数の生徒を担当するのも構いませんが、実戦訓練として迷宮にて戦闘することを考えますと、あまり欲張らない方が良いかな……?とは、思います。禁止はしません。
以下、今回の章の構成です。
●第1章「真夏の奇跡」
氷を活用して、生徒たちと楽しみながら信頼や親しみを得るようにしてください。
一応の選択肢はありますが、それに囚われず自由な発想でどうぞ。
できるだけ多くの方にスムーズに第2章にも参加していただくために、第1章は🔵が達成できていても、サポートプレイング以外が届いていれば可能な限りリプレイを作成致します。
●第2章「マジカルダイエッターズ」
集団戦となります。
第1章で信頼や親しみを獲得した生徒を連れて迷宮に入り、災魔たちと戦闘していただきます。
この際、生徒たちの安全をどう確保するか、生徒たちにどのような指示を出して実戦経験を積ませるかは、公序良俗に反しない限り、皆さんの自由です。
●補足説明 迷宮について。
様々なトラップがあちこちに施されていますが、引っかかっても即座に命を脅かすほどのものはなく、どちらかといえばコミカルな展開になるトラップが多いです。
例えば通り抜けようとすると上からタライが落ちてきたり、硬い地面だと思ったら踏み抜いてしまって泥だらけになったり……そんな程度です。
第2章で迷宮に入りますが、メインは災魔との集団戦ですので、トラップはそこまで戦闘を不利にするものではありません。あくまでも生徒が活用して敵をトラップにはめ込んだり、トラップの見抜き方を実演で生徒に教えたり、見抜けなかった生徒がハマって悲惨な見た目に……などという程度のものを想定しています。
私も楽しいリプレイをお届けできるよう頑張りますので、皆さんどうぞよろしくお願いします!
第1章 日常
『真夏の奇跡』
|
POW : 氷を細かく削って食べる
SPD : 砕いた氷を飲み物に入れる
WIZ : 大きな氷を器に冷菓子を作る
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
朔・來
ふむ、臨時講師か……。
來に講師が務まるかどうか分からぬが、未来ある若者達との交流に尽力するかの。
このところ料理を振る舞う機会も無かったゆえ、愉しみも少なかったのじゃ。
羽衣人の朔來と申す。浮遊しておることが多いが、よろしゅうに。
交流と言えばやはりあれじゃろ、皆で流し素麺。氷から切り出した細長い器を繋ぎ、冷たい流水で素麺を流し、各々掬って食す。薬味は様々用意しよう。
ちなみに流すものは素麺に限らぬぞ。氷結果実やわらび餅、水饅頭も良かろう。
來は超級料理人でもある。式庫から食材を取り出して【玉食恵養】で多くの品を用意し、体調の思わしくない者がいればたちどころに癒やそう。
よいか、何をするにも身体が資本ぞ。
(ふむ、臨時講師か……。來に講師が務まるかどうか分からぬが、未来ある若者達との交流に尽力するかの。)
事前説明を受けて、朔・來(花紅柳緑・f32970)はゆらりふわりと学園へ向かった。大概のことにさほど興味を示さない傾向があるものの、今回は唯一愉しみとしている料理を振る舞う良い機会と捉えたようだ。
案内された教室に着くと、既に臨時講師を待ちわびる生徒たちが浮き足立っていた。そこへ來が現れると、彼女へと視線が集中する。
「わぁ……!お綺麗!」
「あっ、もしかして臨時講師の先生かな!?」
生徒たちは來について小声で話しつつも、お行儀よく姿勢を正す。
「羽衣人の朔來と申す。他者からはそのまま朔來と呼ばれる。浮遊しておることが多いが、よろしゅうに。……さての、交流と言えばやはりあれじゃろ、皆で流し素麺。」
流し素麺、と聞いた生徒たちは、知っている者も知らない者も居るようで、再び場が賑やかになった。
その間にも、來は学園側が用意してくれていた氷を用いてそれを切り出し、細長い器を作っては繋ぎ、素麺を流す用意を整えた。
「冷たい流水で素麺を流し、各々掬って食す。薬味は様々用意しよう。……ああ、ちなみに流すものは素麺に限らぬぞ。氷結果実やわらび餅、水饅頭も良かろう。」
手際の良さや流される食べ物に、生徒たちはすっかりはしゃいでいる。
「朔來先生!すごいです!こんな、氷の中をさらに冷たい水で流す流し素麺なんて、初めてです!」
「これは、今日のような暑い日にはぴったりですね!朔來先生!」
來は仙人であり、かつ超級料理人でもある。式庫から食材を取り出して【玉食恵養(ギョクショクケイヨウ)】によって瞬く間に素麺や果実、さらに古今東西の様々な品を用意しては上流から流していった。
生徒たちは勇んで素麺や冷たい果実、わらび餅などへ箸やフォークなど使い慣れた食器を伸ばし、美味しそうな表情で和気あいあいと食べ始める。
やがて冷たいものを一気にとった為に体調を崩しかけた生徒には、來の作り出した料理に状態異常を治療する効果を持たせ、食べさせることで癒してやった。
「よいか、何をするにも身体が資本ぞ。」
「はい!慌てて食べて体調崩さないように気をつけます!『腹が減っては何とやら』とは言いますが、それで戦えなくなったら意味が無いですもんね。……ご指導ありがとうございます、朔來先生!」
來としてはたったひと言の「指導」だったが、生徒には十分に心に響いたようだ。これなら、信頼も親しみも得ることに成功したと言えよう。
成功
🔵🔵🔴
藍沢・織姫
氷を使ったメニュー…
先日のカクリヨでも屋台で大量に食べたかき氷!あれ美味しかったなー。
という訳で、氷を削れる食品加工用ガジェットをお借りしましょう。
かき氷が無いなら「かき氷シロップ」も無さそうなので、ジュースやコーヒー等の飲み物で味付け。果物やお菓子を添えても美味しいですよー
っと、あまり早食いすると頭が痛くなるので要注意です!
講座…シンフォニアなので歌い方とか?
感情の込め方とか共感が得られる歌詞とかがわからなくても、まずは好きな歌を歌ってみましょうか。
「氷を使ったメニュー……。ああ、先日のカクリヨでも屋台で大量に食べたかき氷!あれ美味しかったなー。」
藍沢・織姫(紺碧の歌姫・f03959)は、そんな事を考え巡らしながら学園へと足を運んだ。
折角なら学園へ集まった生徒たちにも、あの美味しさを体験させたかったのである。
案内された教室に着くと、そこでもまた先程とは別の生徒たちが臨時講師の来訪を待ち構えていた。
「初めまして、私は藍沢織姫です。呼び方は好きに呼んでください。よろしくお願いします。……さて、まずは講座の前に楽しみましょうか。」
簡単に自己紹介をした織姫は、氷を削れる食品加工用ガジェットを用いて、学園が用意してくれた氷の塊をガリガリと削り、ふわふわシャクシャクとしたかき氷を次々に器へよそった。
かき氷が無いならかき氷にかけるシロップも無いだろうと、味付けにはジュースやコーヒーを使う。
「果物やお菓子を添えても美味しいですよー。」
生徒たちは早速夢中になってかき氷を食べている。
どこかの世界でかき氷を食べたことのある生徒にとっては、ジュースやコーヒーで味付けされたかき氷が新鮮らしく、かき氷を食べたことの無い生徒にとっては、簡単に心身に心地好い涼感がもたらされていく感覚にはしゃいでいる様子だ。
しかし、かき氷といえば、定番とも言えるのが「頭がキーンとなる現象」。
そしてお決まりのように、ある生徒の1人が鼻を抑えてそれに耐えていた。
「……っと、あまり早食いすると頭が痛くなるので要注意です!」
「うぅ、そうなんですね……あまりにも美味しかったので、つい。気をつけます、織姫先生。ありがとうございます!」
かき氷を通して、生徒たちはすっかり織姫へ親しみを抱いたようだ。
そこに、向上心満々な生徒の1人が織姫へ「指導」を請うた。
「織姫先生!この後の実戦訓練で役に立つ戦い方とか、織姫先生の普段の戦い方とか、簡単にでも良いので教えてください!」
その期待に応じるべく、織姫は逡巡する。
(うーん、私はシンフォニアなので歌い方とか?感情の込め方とか共感が得られる歌詞とかがわからなくても、まずは好きな歌を歌ってみましょうか……。)
「では、歌を練習してみましょうか。何か好きな歌を歌ってみましょう。それを聴きながら、どうすればもっと実戦で活用できるかを、お伝えしてみますね。」
そうして、織姫はまずは歌の指導をしてみたのだった。既に織姫に信頼を持っていた生徒たちは、意欲的な姿勢で歌に聴き入り始めた。
成功
🔵🔵🔴
アンジェリカ・ヘインズビー
お仕事です、臨時講師…頑張りましょう。
交流を兼ねた料理…そして氷…それなら塩と氷の凝固点降下を用いたアイス作りが良いかも知れません。
あれなら誰でも簡単にできますし、出来上がるまでの間談笑も可能です。
アイスクリーム以外にジュースを使用してシャーベットを作っても良いですね。
講座は…迷宮の罠に関してならある程度説明できますね、…決して良くかかっているからという訳ではないですが。
罠の例を出し注意するべき点やどう対処するべきか教えましょう…一応かかった後の対処法も。
斑鳩・椿
学校に通ったことがない私が学校の先生?
少し不安だけれど頑張らなきゃ…先生が不安を見せちゃダメよね。
…はじめまして、椿です。ええと…私も皆から教わるつもりで来たの。よろしくね?
冷茶の淹れ方を教えようかしら。急須にお茶っ葉と氷を入れて30分くらい待つと、旨味の強い冷茶が完成するの。
氷が溶けるまで…生徒の恋の話を聞いてしまおうかしら。悩みには印象を良くする身振りの方を伝えるつもり。ターゲットの情報、周知の環境、相手と視線を合わせて……ね、恋でも実践でも使えるでしょ?その場での判断も重要だけど、まずは情報を活用すること。頑張ってね。
「お仕事です、臨時講師……頑張りましょう。」
アンジェリカ・ヘインズビー(寡黙でサイボーグなバーバリアン少女・f11144)もまた、アルダワ魔法学園を訪れていた。
(交流を兼ねた料理……そして氷……。)
教室へ向かいつつ、アンジェリカは考える。そして、それなら塩と氷の凝固点降下を用いたアイス作りが良いかも知れないと思い至った。
アイスクリームなら誰でも簡単にできる上、出来上がるまでの間談笑も可能だ。
それに、応用としてジュースを使用してシャーベットを作っても良いだろう。
教室へ着き、早速興味津々な様子の生徒たちへ、簡素な自己紹介の後、手順を説明しながらアイスクリームの元を作り、冷凍庫へ。
「へぇ……!アイスクリームって、自分で作れるんだ!」
「すごーい!ジュースでシャーベットが作れるんですね!」
アンジェリカの手際の良さと、生徒たちの「初めて自分たちで手作りした」という興奮とで、教室は瞬く間に賑やかになる。 普段は無表情で寡黙なアンジェリカも、話しかけられ続けるので何とか応じていく。
その中で、話題は不意に「実戦講座」の話になった。
「アンジェリカ先生!先生はどんな戦い方がお得意ですか!?」
「例えば迷宮は探索したことがありますか!?」
生徒たちの意欲的な質問に、アンジェリカは逡巡する。
「……そうですね、迷宮の罠に関してならある程度説明できますね。」
それは、決して普段からよく罠にかかっているからではない……と、アンジェリカの名誉のために記しておこう。
「例えば暗闇では……。後は、敵によっては、こう力いっぱいに……。」
自身の体験談をもとに、生徒たちへ淡々と語っていくアンジェリカ。しかしそれはかつてのアルダワ魔法戦争の頃の記憶もあるようで……どことなく、力技というのか、何と言うのか……。
それでも、生徒たちは大真面目にノートをとったり次の質問をしたりしていた。
「……あ、そろそろアイスクリームができます。」
「わぁ!楽しみです!私が作ったのもちゃんとできてるかな〜?」
アンジェリカがふと冷凍庫から取り出せば……綺麗な白いアイスクリームや、色とりどりのシャーベットたちがお目見えした。
その様に、初めてアイスクリームを見た生徒も、初めて自作した生徒も、狂喜乱舞している。
「美味しい……!今日みたいな暑い日には最高!」
「ジュースでこんなこともできるなんて!」
生徒たちは完成した品を手に、早速その涼感や素材ならではの甘さを楽しんでいる。
「アンジェリカ先生!この後もよろしくお願いします!」
アンジェリカもまた、生徒たちと無事に打ち解けられたようだ。
――ところ変わって、別の教室では。
(学校に通ったことがない私が学校の先生?少し不安だけれど頑張らなきゃ……先生が不安を見せちゃダメよね。)
斑鳩・椿(徒花の鮮やかさ・f21417)が、やや緊張しながら入ってきたところだった。
「……はじめまして、椿です。ええと……私も皆から教わるつもりで来たの。よろしくね?」
「はい!椿先生!よろしくお願いします!」
生徒たちも、礼儀正しく一礼した。もしかしたら、椿の緊張が伝わって、お互いにちょっと緊張してしまっているかもしれない。
それでも、まずは打ち解けてもらえるように何かしらやってみようと、椿は生徒たちへ冷茶の淹れ方を教えてみることにした。
「急須にお茶っ葉と氷を入れて30分くらい待つと、旨味の強い冷茶が完成するの。」
「えっ?急須に……氷?」
「意外です……!急須にいれるのは絶対熱湯だと思ってました。」
椿の手元を、生徒たちは人垣を作って不思議そうに覗き込んでいる。
「……うん、後は待つだけよ。そうね……その間、『恋』のお悩みでも受けようかな?」
「恋バナですか!?」
恋……それは、お年頃の生徒たちにとって切実であり、楽しみでもある話題だ。もちろん、大人になっても恋は恋で、切なるものを抱える人がいる。
「じゃあ、椿先生!あの……片想いの人を何とか振り向かせたいって時は、どうしたらいいですか!?」
「椿先生、あの、気になってる人の好みのタイプを知るにはどうしたら
……!?」
次から次へと、好奇心旺盛な質問が飛ぶ。
椿はそれに対してひとつずつ、丁寧に答えていった。
「まずは、印象の良い身振りができないとね。それから、ターゲットの情報、周知の環境、そういったあらゆる情報を多方面から集めて……。相手と話す時は、ちゃんと視線を合わせて……。」
そしてひと通り話し終えると、30分はあっという間に過ぎ去った。
「……ね?恋でも実践でも使えるでしょ?恋も戦いも、その場での判断も重要だけど……まずは情報を活用すること。頑張ってね。」
「はーい!」
ひとまずの〆として椿が告げると、生徒たちからはすっかり和んだ返答があった。
そして、急須から生徒たちのお湯呑みやカップへ冷茶を注いでいく椿。
「わぁ……!美味しい!お茶って冷やしてもこんなに美味しいんだぁ!」
「紅茶でもできるかなぁ?やってみよう!」
冷茶もまた、生徒たちに好評のようだ。
こうして、椿もまた、生徒たちとの交流を通して信頼を得ることに成功したようだ。
……さて、皆がひとしきり交流を終えて、次の講座は。
(いよいよ、災魔退治をしながらの実戦講座ね……。)
生徒たちを見て、椿は気を引き締めた。
他の教室で生徒たちからの信頼を得た「臨時講師」の猟兵たちも、同じ思いだろう。
迷宮の中で、生徒たちの安全を守りながら、実戦経験を積ませつつ、災魔も倒す……やることは多いが、その分貴重な体験になりそうだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『マジカルダイエッターズ』
|
POW : 見下される気持ちを味わうといいわ!
攻撃が命中した対象に【重力魔法】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【身長が縮み続ける超重力】による追加攻撃を与え続ける。
SPD : そんな出っ張りは引っ込んでしまえばいいのよ!
【魔力壁によって形を変形させる能力】を籠めた【空間魔法】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自慢のスタイル】のみを攻撃する。
WIZ : リンゴ体型なんて言われてうれしいと思う!?
【魔法杖】から【風魔法】を放ち、【相手の体を膨張させること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
朔・來
次は実戦訓練か。
迷宮にはトラップがあるゆえ、生徒の中で探索や斥候が得意もしくは得意になりたい者にその役目に集中するよう指示するかの。最初から一人で何でもは出来ぬ。仲間と協力し合って、各々が己の役目を果たせば、自ずと良い結果は得られやすい。
足下、頭上、壁。微かな音や感触、匂い、五感を研ぎ澄ませるのじゃ。事前に合図の仕方を決めておいて、気付いた事はすぐに伝達せよ。
何かあったときには助ける、案ずるな。
何じゃ、災魔か。
ふむ……予期せぬトラップを誘発してもなんじゃしの、地形に影響の少なそうな攻撃を選択しよう――宝貝「艶ノ蜷局」
よいか、戦場に於いては、情報収集と共有、そしてそれに基づいた選択が大切じゃ。
いよいよ、迷宮の中での「実戦訓練」が始まることとなった。
(迷宮にはトラップがあるゆえ、生徒の中で探索や斥候が得意もしくは得意になりたい者にその役目に集中するよう指示するかの。)
來は、1人の生徒を連れて迷宮へと踏み込んだ。
探索や斥候としての経験を是非とも積みたいと熱望した生徒だ。
「最初から一人で何でもは出来ぬ。仲間と協力し合って、各々が己の役目を果たせば、自ずと良い結果は得られやすい。」
「はっ、はい!各々が役目を……私も、探索には多少自身があるので、頑張ります!」
來の助言に、生徒は闘志を漲らせた。やる気は十分。あとはこの緊張感のある訓練で、どこまで活かせるかだ。知識があっても戦闘経験が浅ければ身体がついてこないということはままあるのだから。
「足下、頭上、壁。微かな音や感触、匂い、五感を研ぎ澄ませるのじゃ。事前に合図の仕方を決めておいて、気付いた事はすぐに伝達せよ。」
「分かりました!朔來先生!……事前の合図、どうしよう……そうだ!私が魔法を先生に放ってお知らせします!上手くいくか、ちょっと自信が無いですけど……。」
「何かあったときには助ける、案ずるな。」
來は、先生らしく生徒へ助言するのみならず、安心感をも与えて励ましていった。
それから幾度かのトラップ――例えば一見頑丈な岩場に見せかけた泥沼や、通過しようとする度に頭上からタライが落ちてくるといったものを、生徒の「探索活動」で看破しながらある程度進んだ頃。
「お前たち、いいプロポーションをしている……許せん、俺たちと同じ目に遭ってもらおう!」
どこからともなく声が響いたと思ったら、マジカルダイエッターズが次々と姿を現した。
「ひえっ、何この相手……!」
探索のために先行していた生徒は、どう頑張っても外見を褒めることはできない相手を前に思わず後ずさり、來の近くへ逃げてきた。
「何じゃ、災魔か。ふむ……予期せぬトラップを誘発してもなんじゃしの、地形に影響の少なそうな攻撃を選択しよう」
來は、泰然自若とした雰囲気で、敵の殺気に飲まれることも無く【宝貝「艶ノ蜷局」(パオペエ・エンノトグロ)】を発動させた。
「愛い奴であろ?」
「……!?」
來が装備している八岐大蛇の分岐頭の一つ「傾国」から、「佳い香りの毒霧」が放たれ、マジカルダイエッターズを包んでいった。
「ちょっと、何よこれ!」
敵もまた、自身の魔法杖から風魔法を放とうと試みる。それによって來や生徒の身体を膨張させ、動きを妨害しようとしたのだ。
しかし、それは敵にとっては思いもかけず、不発に終わる。來のユーベルコードによって、既に自身のユーベルコードは封じられていたのだ。
そんな動揺しきった敵たちを、來は属性の力を宿した仙術によって着々と屠り、生徒もまた、トラップの位置を報告しながら懸命に攻撃を加えた。
「うむ、良い調子じゃ。……よいか、戦場に於いては、情報収集と共有、そしてそれに基づいた選択が大切じゃ。」
「本当ですね……!実戦って、模擬戦の練習と全然違う。勉強になります、朔來先生!」
こうして、生徒と來はじりじりと敵の数を減らしていった。生徒にとっても、実戦における自身の動き方を学ぶ良い経験となったようだ。
成功
🔵🔵🔴
藍沢・織姫
命に関わるものではないとは言え、転べば隙が出来るし、顔に何か掛かれば視界を奪われる。迷宮のトラップに気を付けながら進むに越したことはないですね。長い武器や棒等の道具でつついて調べましょう。
そして戦闘…敵が複数出て来るという事は、範囲攻撃が有効でしょうかね。今回私が使うブレイズフレイムは、変な所に引火しても自分の意志で消せるという優れもの!
それと敵からの攻撃に生徒の皆さんが巻き込まれるといけないので、武器で受け止める等してかばいます。その間、後方から援護を頼んでおきます。きっと1章で歌を練習させた生徒から、応援する気持ちや歌が好きな気持ちが伝わって元気が出る事でしょう。
(命に関わるものではないとは言え、転べば隙が出来るし、顔に何か掛かれば視界を奪われる。迷宮のトラップに気を付けながら進むに越したことはないですね。)
続いて、織姫も生徒を伴って迷宮を進んでいた。連れている生徒は、歌に関する指導を一際熱心に学び、「援護」として立派に機能するほどに上達を見せた生徒だ。
とはいえ、歌で人の心を揺さぶることはできても、無機物……それもトラップ相手に効果を発揮できるほどではない。
「トラップは、長い武器や棒等の道具でつついて調べましょう。あなたは、いざと言う時に『歌』で私を援護してください。励ますなり、元気づけるなり……要は味方へのバフをかけるつもりでやってみてください。」
「分かりました、織姫先生!やってみます!」
かくして、慎重にトラップを暴いたり無効化したりしながら、2人がそれなりに迷宮の奥へ進んだ頃。
「お前……良い顔立ちをしている……許せない、私と同じ目に遭うがいい!」
百歩譲っても「整った顔立ち」とは言い難い、魔法によってかえって大変なことになったマジカルダイエッターズの群れが現れた。
(範囲攻撃が有効でしょうかね。でも、変な所に引火させる訳にはいかないから……。)
織姫は思考を纏めると敵の群れへ【ブレイズフレイム】を放った。これなら、たとえ変な所に引火しても自分の意志で消せるという優れものだ。
「あちっ!?……な、なにしやがる!」
「……っち、こうなったら、あなたも『見下される気持ちを味わうがいいわ!」
敵の1人が、ほんの僅かに見せた生徒の隙をついて、ユーベルコードを放ってきた。しかし、その一撃が生徒を襲うことは無かった。
織姫は、自身の持つ「鉄塊剣『einherjar』」にて、敵の攻撃は受け止め、生徒をかばうように誰もいない方向へいなして躱す。
「あなたは、私の後方から援護をお願いします!さっき教えた『歌』を、実戦で使ってみてください!」
激しい攻防を続けながら、織姫は生徒へ指示を出した。それまで、先生が慣れた調子で戦うのをつい呆然と見やっていた生徒も我に返る。
「はい!やってみます!上手くいくかな……」
すぐに返事をして、先生はのびのびと歌を歌い始めた。自身のお気に入りの曲を、先生に指導された通り、思いを込めて歌う。
元気になれ、先生も私も強くなれ、私だって力になりたい……そんな、様々な願いが詰まった「歌」は、織姫の心に更なる闘志を与え、攻撃力や防御力を強化した。
「そう、その調子です!ありがとう!あなたのことは私が護るから、その調子を忘れずに頑張って!」
織姫は褒めながら礼を述べ、目の前に現れた敵たちを着実に減らし続けた。
成功
🔵🔵🔴
アンジェリカ・ヘインズビー
実戦です。
罠に関しては探索が得意な生徒と私が前に出て(物理的に)処理、他の生徒達には弓や遠距離で戦える武器を構え前方以外の警戒をしてもらいながら進みます。
災魔との戦闘ですが…前衛として私が魔法を防ぎ、後衛の生徒達に攻撃してもらう形をとりましょう。
相手が攻撃してくる瞬間こそ狙うべきタイミングです、生徒達に指示して攻撃してもらい、敵の魔法は私が受けもちましょう。
今回教えられるのは【タイミング】、攻撃するべきタイミングはとても大事です。
前衛として私が武器(靴)で防いで見せるので回避や防御のタイミングも学べるかも知れませんね。
…それと武器に魔法を付与されたとしても災魔を倒せばちゃんと元に戻りますよね?
「実戦です。」
アンジェリカは、端的に宣言した。彼女に従って来たのは数名の生徒たち。生徒たち皆の表情に、やる気と緊張が漲っている。
まず初めに探索が得意な生徒、後衛からの遠距離攻撃による援護が得意な生徒に分け、それから迷宮の中へ踏み込んだ。
「……罠は、ちゃんと探索して処理です。」
「はい!アンジェリカ先生。……コツはありますか?……って、早速罠です、先生!」
「見ててください。」
アンジェリカは、生徒と共同して発見した罠を前に、一旦皆を制して立ち止まった。それは、電撃を発生させて身体を麻痺させ、行動を阻害する罠。それに対して……
「罠は、物理的に処理です。」
ガツン☆ゴンッ☆バキッ☆
凄まじい音を立てて、発電装置がボコボコに凹んだ状態で露見した。アンジェリカがやったのは、ごく単純。見た目からは想像もつかない重さを誇る、超重の合金製ブーツで踏み潰しただけだ。
「……。」
「ね、簡単でしょう?」
ポカンと口を開けて呆然とする生徒たちへ、アンジェリカはしれっと答えた。
「罠だけ見てたら、ダメです。後衛は、罠以外を警戒してください。」
「あ、は、はい!」
アンジェリカの言葉で我に返った生徒たちは、今一度気を引き締めて役割分担通りに道を進んでいった。
探索によって罠が見つかる度、アンジェリカを手本に生徒もまた「物理的に」処理していった。例えば、上から金ダライが降ってくる罠には、落ちてくる前のタライを天井へ叩きつけて潰すなど。
順調に進んでいたその時。後衛の生徒が咄嗟に告げ知らせた。
「先生!敵です!」
「分かりました。」
すぐさま立ち位置を変え、アンジェリカが後衛の生徒たちと入れ替わるように進み出た。
「良いわね、あなたたち……スラッとした身長で……」
現れたのは、身長を気にするあまり魔法に頼り、逆に妙なリアル感をもってデフォルメされたかのように縮んだ背丈のマジカルダイエッターズだ。
「後衛の皆さん、相手が攻撃してくる瞬間こそ狙うべきタイミングです。今回、攻撃を引き受けるのは私がやります。指示をしたら、すぐに攻撃をしてください。」
「はい!アンジェリカ先生!」
アンジェリカが言うやいなや、それを開戦の合図と受け取ったか、マジカルダイエッターズはひとりひとりに狙いを定めて、それぞれに技を放った。
「『見下される気持ちを味わうといいわ!』」
しかしそれをアンジェリカは見事に合金製ブーツで受け止めてしまった。
「今です!」
「はい!」
敵が一瞬怯んだのをアンジェリカは見逃さなかった。即座に生徒たちへ指示を出し、待機していた生徒たちからすかさず矢が飛び、魔法が飛び、マジカルダイエッターズを襲う。
アンジェリカもまた、後衛たちの攻撃で与えきれないダメージを補完するべく、ユーベルコードを放つ。その名も【足技(スゴクオモイブーツノキック)】。
「全力です」
「確実に当てます」
「まだ終わりませんよ」
「ふぎゃ!?」
「へぶっ!?」
「みぎゃっ!?」
合金製ブーツによる超重量の蹴り技で、敵たちは情けない声をあげて地に伏した。
「このように、攻撃するべきタイミングはとても大事です。」
「はい!今のでよく分かりました!」
「……攻撃だけではなく、回避や防御のタイミングも学べたでしょうか?私が防いでみせたのが参考になったなら、ですが。」
「何となくですが、はい!何事もタイミングが大事なんですね!」
「はい、とても大事です。」
そう答えながら、アンジェリカは内心で魔法を受け止めたブーツを心配していた。
(…… 武器に魔法を付与されたとしても災魔を倒せばちゃんと元に戻りますよね?)
なかなかの重さの魔法で、身長が縮み続ける追加攻撃の効果が……あったはずだが。
「きゅう……」
敵たちが雲散霧消していくとともに、魔法の感覚も消え去った。どうやら、ブーツは無事なようだ。
こうして、迷宮に潜む災魔はまた数を減らしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
羽堤・夏(サポート)
あたしは夏!防人の夏!
度胸根性、向日葵娘ってな!
火力とステゴロがメインのオラトリオだ
特技は【庇う】こと!
あたしはタフだからな、盾になるのも防ぐのもどんとこいだ!
あとは…ユーベルコード【夏姉ちゃん属性チェンジ】で、状況に合わせて姿を変えることができるぞ!
パワーが必要なら炎を操る真っ赤な猛火の姿に、速度が必要なら氷を操る青い吹雪の姿に変身だ。
…それでも足りない?
なら…必殺【アライズサンシャイン】!
夏姉ちゃんの、怒りの鉄拳食らいやがれ!
もしもの時は【解き放て、内なる焔】で自爆もできるぞ!
あたしは基本的に公序良俗ってのに反することはしない
あと…正直下品なのはちょっと…
緋月・透乃(サポート)
『今日も元気に食べて楽しく戦おうね!』
人間で22歳の女性です。
いつも元気で、強敵との戦闘、食べる、スリルを味わうことを好みます。
基本的に自分の楽しみのために行動し、敵味方問わず他人の心情等には配慮しません。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します。
戦闘では真っ正面からの突撃を好み、負傷は気合いで耐えれば良いと考えています。
戦闘以外のことも大体気合いと力でなんとかしようとします。
脳筋です。
武器は主に『重戦斧【緋月】』を使用しますが、他の武器の方が有効そうならそちらを使用することもあります。
クロムキャバリアでも生身で戦います。
不明な点はおまかせします。よろしくお願いします。
サーシャ・ペンローズ(サポート)
バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
グァンデ・アォ(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》
「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」
通常はだいたいイラストの通りのキャラクターです。
好奇心の向くまま、あちこちウロチョロ飛び回っては、なんやかんやで状況を動かします。
念動力でその場にあるものをなんやかんやしたり、ウロチョロ飛び回ってなんやかんやしたり、危険な行為に勇気を出してなんやかんやします。
「サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」
マシンヘルムに変形して誰かに装着してもらう(攻性ユニット化)場合に限り、口調と人格が大人のそれになり、装着者の行動をアシストします。
さて、生徒たちと臨時講師の猟兵が着実に連携プレーを見せて災魔を減らす中、単純に猟兵として迷宮に入っていった者も数名。
遅れて学園に着いた為に生徒たちと親睦を深める時間もそもそもの生徒たちも残っておらず、「臨時講師を補佐する臨時講師」として援軍に来てくれた訳である。
羽堤・夏(防人たる向日葵娘・f19610)は、先陣を切って迷宮の中を進んで行った。誰かを守ることを得手とし、また使命のようにも感じている彼女にとって、サポートに回って生徒や臨時講師の盾となる役割は燃えるところなのだろう。
(あたしはタフだからな、盾になるのも防ぐのもどんとこいだ!)
実績に裏打ちされた自信を笑みに湛え、生徒たちが進入して行ったルートを追いかけていく夏。
「わぁ〜、待ってよ〜!」
その後をさらに追いかけているのが緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)。強敵も美味しい食べ物も無いのは残念なところだが、いつどこでどんな戦いが待っているか分からないスリルに惹かれた様だ。
2人は、ある程度進んだ先で合流を果たし、足を止めた。
「出たね、災魔。」
「わぁ、ちびっ子だらけ……。」
「チビ言うな!!」
夏はともかく、透乃の言葉には怒髪天を衝く勢いで言い返してきたマジカルダイエッターズたち。やはり魔法に無闇に頼ったせいであろう、皆一様に歪な等身で小さいのだった。
「あんたたちもチビになって見下される気持ちを味わえばいい!」
敵たちが一斉に透乃と夏へ重力魔法を放ち、身長を延々と縮ませようと試みてきた。
「任せな!アタシが盾になるよ!」
「はい!任せたよ!じゃ、突撃ぃ!」
夏が咄嗟に翼を広げて庇い、透乃は反射的に重戦斧【緋月】を構え敵へと突進して行った。
「くっ!」
「お返しいるよねっ!」
苦い顔で斧を受け止めた相手に、透乃は嬉々として【被刃滅墜衝(ヒジンメッツイショウ)】を見舞った。防御の姿勢からそのまま高命中高威力の反撃を繰り出された相手はひとたまりもない。重力魔法にも負けない重たい一撃に轟沈させられ姿を消した。
「コイツっ……!」
「あんた、アタシは無視?」
仲間を叩き潰された敵は透乃へとさらに矛先を向けようとするが、夏がまたしてもそれを許さなかった。
1人の女性へ群がろうとする敵集団へ、いざと言う時の一撃――自爆技を放つ。
「吹き飛び……やがれっ!!!」
夏はできる限り多くの敵に自らの身体のどこかが触れるように飛び込み、【解き放て、内なる焔(オープンマイヒート)】を発動。太陽の力を宿した身体から放たれる、自爆と同時にあふれる灼熱によって、敵の多くが焼け焦げ、雲散霧消していった。
残党も一瞬のできごとに戦慄した隙を透乃の容赦の無い突進で殺られ、見る間に居なくなった。
――さて、一方別の道では。
「はぐれちゃった生徒さん、いませんかー?大丈夫ですかー?」
「あ、ねぇねぇ!オネーさん、アレ何なの?」
「わ!?びっくりしました……あれは、気にしちゃダメです。折角回避した罠ですよ。そもそも、あなたがなんやかんやして破壊してたじゃないですか。」
「へ〜!さっきの罠、あんな風になってたのかー!壊してみると面白いかたちだなぁ。」
サーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)が、やたらうろちょろ……もとい、無邪気に好奇心を働かせるグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)と共に慎重に生徒を探しながら進んでいた。
万が一にもはぐれたり、気合を入れすぎて「予習」と称して先行した為に窮地に陥っていたりする生徒がいないとも限らない、と予測したのかも知れない。
あっちへふらふら、こっちへちょびちょび……。自由気ままに飛んではなんやかんやで罠を無効化したり障害物を木っ端微塵にしたりするグァンデに気を揉ませられつつ、サーシャもなんやかんやと後をついて行く。
「……ちょっと。ずいぶんスタイル良いじゃない。憎たらしい。」
「そっちのメカも、スタイリッシュよね。当てつけのつもり?」
不意に、賑やかなやり取りを冷たい声が遮った。
「……来ましたね。」
「ん、敵だね。まずはボクがなんとかするよ!」
敵を視認するや否や、サーシャに構わずグァンデは【スカイステッパー】を繰り出した。魔力の壁で空間を変形させることでスタイルの良い身体を破壊しようとする空間魔法を放つ時間も与えられず、敵は87回転による威力補正のかかった蹴り技を喰らい、何体かは無様に地を這い姿を消す。
「くっ、そんなでっぱり、潰してやる!」
「させませんよ。……グァンデさん、あんまり独断専行しないでくださいね。危ないですから、共闘しましょう。」
サーシャも、敵が焦りを見せた様子を落ち着いて捉え、【バトルキャラクターズ】を詠唱。85体の戦闘用ゲームキャラクターたちを召喚した。
「共闘だね、オネーさん!…… 攻性ユニット支援用AIへ形態転換します。対象の装着許可受信……サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします。」
バラバラに動くゲームキャラクターたちを的確に指揮して戦うことは、その技に熟達していたとしてもなかなかに大変な行為である。グァンデはその点でサーシャと「共闘」することにし、マシンヘルムに形を変えると判断力や戦況把握の面で支援すると決めた。
「なっ、何だコイツら……!どこから湧いて
……!?」
「敵は完全に狼狽しています。数の暴力による一掃が可能な状況です。」
慌てふためく敵たちが再度ユーベルコードを詠唱しようとするも、即座にサーシャの操るゲームキャラクターたちが押し寄せ、次から次へと果敢に挑んでいく。徒手空拳で、刀剣で、鈍器で、術式で……様々な方法で的確に苦手を突かれた敵の集団は、あれよあれよと沈黙していった。
「戦闘終了。サポート解除します。お疲れ様でした。……オネーさん!お疲れ様だよ!全滅だね!」
「……はい、サポートありがとうございました、グァンデさん。……最初は、マスクなんてびっくりしましたけど、グァンデさんもお疲れ様でした。」
やがて4人はある開けた場所で合流することとなり、マジカルダイエッターズが残っていないか探りながら臨時講師と生徒たちの気配を辿って……遂に「実戦訓練」を無事に終えた猟兵たちと喜び合う生徒たちの集う出口へ辿り着いた。
「お!みんな元気そうだな!」
「はー、若いって良いなぁ。元気だ〜。でも、なんだかんだ私も楽しかったー!」
「残敵もいなくて良かったよー!」
「生徒さんたちも、自信がついたみたいですね。いつかこの中から大物が現れたりしたら、本当にすごいです。」
臨時講師の奮闘と、さらにその補佐の為に駆けつけた彼ら彼女らの協力、そして何より「少しでも猟兵の先生から学んで強くなりたい!」と願った生徒たちの熱意によって依頼にあった災魔は駆逐され、ひと時の平和と喜びの時が訪れた。
――遠い未来か近い将来か、生徒たちの誰かがこの経験を糧に期待の新星とならんことを。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴