5
災害少女~それでもエルフの森は焼ける~

#アックス&ウィザーズ #戦後 #エルフの森


●小洒落た酒場にて
「どう?この服。異国から取り寄せた最新のデザインよ!」
 ファンタジーな世界の酒場で、樽の上に座って足を組み自慢する少女がいた。
「そしてこれが機械の街で作られてる、まだ発売前の投影機!『ドローン』って言うの♪」
 魔法金属で作り上げられたらしい、キマイラフューチャーにありそうな機械の不思議な金属色ヴァージョンが浮遊し、手鏡の様な板を少女は自身に向けると、機械から幻の様な四角い映像がまろび出し、映像から少女の顔が大きく映る。
「ひゅー!姉ちゃんすごいな!」
「どこかの偉い商人か何か?」
 褒められる少女は、それはもう凄くすごく嬉しそうに。
「ほんと?あたしすごい?……でっしょー!」
 ドヤ顔の幻視映像が酒場中に広がった。
「でも商人じゃないの。これも、これも、ぜぇんぶあたしが『自分の足で』そこに行って、『自分の手で』手に入れて来た、この世に一つしかない特注品!あたしはすごいの!それはもうすごいの!あたしの手に入らないものなんて」
 そう自慢を振りまく少女は、ふと少女に取り巻く者達から遥か後ろ、綺麗な宝石を身に纏う不思議なエルフ……その懐で輝いたものを目にとめる。

「あたしが手に入らないものなんて、なんにも、なんにも、ないんだから……!」

 少女は酒場を出て、酒場を出るエルフを追った。
「ねえねえ、それ世界樹の葉だよね。それ、あたしにくれない?」
 少女がエルフを呼び止める。
「これはお守りみたいなものなので、渡すわけには。正確には世界樹から株分けした、聖なる木の葉ですが……。」
「いいじゃん!あたしが欲しいって言ってるの!」
 少女はエルフの懐に手をかけるが、電気が流されたような衝撃で弾かれる。
「あっ!?」
「残念ながら。この葉は心の清らかな者しか持てないのです。貴女には資格が無かったということで……。」
 そう言ってそそくさと、エルフは森へと帰っていった。

「そう。そう……あたしじゃ手に入んないんだ。」
 少女はエルフの跡をつけ、そして不思議な笛を取り出した。
「そんなのはもう、いらない。いらないわよ……!」

●エルフの住む森
 エルフの森。
 その中心、巨大なツリーハウスとなっている集合住宅に帰ってきたエルフだが。
「あの子、つけてきてるよ」
「大丈夫。ここはエルフ以外は通れない迷いの森。彼女が来る心配なんて……何だあれは」
 笛を吹いていた。
 笛の音に釣られたかのような、白いリザードの少女達がやってくる。
「ある冒険者から『もらって』きたの。ブリザードの笛って言ってね?氷トカゲのモンスターを操れるの……。」

 白い蜥蜴の軍勢と、それを指揮する少女は、恐ろしい剣幕でゆっくりと森に迫る。
 そこに先のエルフが飛び出した。
「またあなたですか。ですからこれはあげられないと。」
「もらえないんでしょ?知ってるわ。だからもうこんな森はいらない。」
 その少女は、笛の他、槍を持っていた。
 その見た目にそぐわなさそうな槍からドラゴンが現れ、エルフ達を睨みだす。

 羨ましい。羨ましい。
 何もかもが羨ましい。
 そのとんがり耳はなんなの?
 その落ち着いた綺麗なブロンド髪はどうしたらなれるの?
 あの森の木の上で、美味しそうに食べている果実は何?
 それに、それに……どうしてその葉っぱ一つ、あたしにくれもしないのよ!

「あたしの手の中に無いものは!何もかも壊れてしまえばいいの!ブリザード!」
 少女の号令で、蜥蜴の少女が息を吐き、森が凍り付く。
 手を付けた木々が凍り、割れて落ちていく。
 冷気を纏った白いリザードマンの様な少女が、緑の自然を白の自然に、冬の世界に変えていく。
「なんて事を、なんて事を!」
「やられてたまるものか!」
 ツリーハウスから身を乗り出して、エルフ達が応戦しに行く。
「きゃはは、あたしの手に入らないものは、みんなみんな、壊れちゃえ!」
 かくして少女と、エルフとの戦いが火蓋をあげた。

「違っ……あたしそんなつもりじゃ……」
 そこには燃え盛るエルフの森。
 焼け落ちる聖なる木。
 白き蜥蜴の少女達はそれに目をくれるも無く氷の爪でエルフ達を追い剥いでいる。
 氷と炎が盛る幻想的な世界の中、少女は自分がした事の重さを噛みしめた。
「違う!違うの!あたしのせいじゃ……わ゛ーっ!」
 そして焼け果てる森から一人逃げ出した。

●なぜだ!
 グリモアベース。
 このオープニングを読んでいる猟兵のあなた達は、猟兵達を集めた部屋の一室で、上記の一部始終の映像を見せられていた。
「お初に目にかかるか。私は十八夜・露丁(f30515)。グリモア猟兵だ。」
 説明をしている男の姿は文豪的な和服の爺だった。
「さて、今から猟兵殿に飛んでもらうのはアックス&ウィザーズ。その中の『エルフの森』という所だ。分かるな?」
 エルフの森とはエルフが住んでいる森である。
 そして良く何者かによって焼かれるのが定番となっている。

「主犯は『『嫉妬』のステラ』と呼ばれる少女だ。先の映像で聖なる葉だかに弾かれたのは、奴が過去の骸(オブリビオン)だからだ。」
 どうやら今回の聖なる木の葉はオブリビオンを寄せ付けない力があるらしい。
「かの女は名の通り嫉妬深い。それが気に入らなかったのだろう。襲撃し、略奪する過程で……色々あってエルフの森が焼かれる。」

 映像を見る限り彼女は氷属性の配下を連れていた。なのに何故森が焼けたのか。
「あの森は比較的寒冷地にあってな、良く乾いて、燃え易い。詳しくは資料(※マスターコメント)を見て欲しいが、その他可燃性の物資が豊富にある場所で……少しの火花でも燃えてしまう作りになっている。」
 なぜそんな森が今まで焼けていなかったのか。
「そもそもこの森を狙う奴が一人もいなかったからだ。エルフ達は今回が初応戦らしい。猟書家騒動の時も話題に上がらなかった程の森故な。」
 状況の酷さに絶句する猟兵もいるだろうか。

「ちょっとやそっとの火では木が一つ二つ燃えるだけで済むが、森の中央にある聖なる木が燃えれば全てが終わりだ。そうなる前に奴らを倒せ。」
 世界樹から根を分けた『聖なる木』が焼けてしまえば、連鎖的に森は焼け、滅びてしまうのだという。

「戦えば否応なく森は焼ける。鎮火するか速攻で行くかは任せた。では……月並みだが言わせてもらおう。『検討を祈る』」
 グリモア猟兵の持つ書物から転送の光が起こる。
 猟兵達は飛んでいく。エルフの森の中へと。


古塔
●目的
 エルフの森が焼かれるのを阻止しつつ、オブリビオンを倒す。

●進行
 1章は集団戦、2章でボスとの決戦。

●プレイングボーナス(全章共通)……エルフ達と協力し、共に戦う。
 森は迷いの森となっており、エルフ達の指示によって敵を迷わせ、誘導する事ができます。

●状況
 それなりにエルフとブリザードが交戦し、散った火花によってある程度エルフの森が焼けている所に転送されます。
 エルフは猟兵の事を知っているので、すんなりと協力してくれます。

●何故焼けるのか
 1章敵『ブリザード』によって周囲の空気が冷えて、乾燥し、燃えやすくなっております。
 今回のエルフの森はアックス&ウィザーズの中でも寒冷地にある森で、冬を越しやすいよう燃料になりやすい(燃えやすい)木々が生えている所に作られました。
 加えてこの森には火打ち石のような、衝撃で火花を散らす性質の石が至るところに転がっており、エルフの矢や剣も火打ち石で作られています。
 更にこの森の木々の樹液は油と同じ性質をしています。
 なんで今まで発火事故が起きなかったのか不思議でなりませんが、それ故些細な事で木が燃え、森が焼けます。
 森の中央にある『聖なる木』が焼けると、不思議な事に全ての木が一斉に燃え焼けて依頼失敗となります。ご注意を。
 ボス敵『嫉妬のステラ』はそんな事知らないので容赦なく攻撃してきます。
60




第1章 集団戦 『ブリザード』

POW   :    ブリザードクロー
【周囲の気温】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ダイヤモンドダストを放つ超硬質の氷爪】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブリザードブレス
【レベル×5本の氷柱を伴う吹雪のブレス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を氷漬けにして】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    人質策
【氷漬けにした被害者】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●それでもエルフの森は燃える
「あはは!降参してももう遅いわよ!」
 ブリザードの少女が吐きだす氷柱混じりの吹雪が、迷いの森の木々を凍らせては砕き、一直線にエルフ達の住むツリーハウスへと進んでいく。
「怯むな!こちらも応戦するぞ!」
「この森特産の黒曜石(だと思う)で出来た矢を喰らうが良い!」
 エルフ達から矢が飛び放つ。
 幾体か直撃を受ける蜥蜴少女達がいるものの、それでも尚進み続ける。
 ブリザードの1体が氷の爪でその矢を弾く。
 近くの木に火花を散らしながら逸れた矢が刺さる。
「そんなちゃちな弓矢で止まるとでも……えっ何これ、黒曜石!?(違う)こんなものまで持ってるのアンタ達……!」
 それを引き抜いて、どこかから取り出した弓でつがえる今回の主犯の少女、ステラ。
「そんなの、あたしだってできるんだから!」
 撃ち返される矢に、エルフ達の矢が激突し、撃ち落とされていく。
 飛び散った火花が森の木に煙を起こす。

「くっ、向こうからも撃ってきた……ここが正念場だよ!もっと矢を!」
 そうして白蜥蜴の軍勢とステラに対し、氷柱と矢が飛び交う射撃合戦が繰り広げられる。
 散った火花で焼け焦げて来た木々の一つが、木の芯に染み出る樹液(※油と同じ性質を持つ)に引火する。
「え?」
 燃え上がる爆音がステラの真横で発生する。
 そこにはダイナマイトの様に爆発してきのこ雲状の炎を放つ迷いの森の……木!
「え、ちょ、爆弾!?さっきのそんな感じじゃなかっ」
 一つ、また一つと、エルフ達の住処の木が炎の柱を吹き上げる。

「あっ、あいつ炎を使うのか……!?」
「やめなされ、我らの森を燃やすのは止めなされー!」
「あいつ許さん!よくも私達の森をー!」

「違っ……あたしそんなつもりじゃ……」
 邪魔なのはエルフ達だった。綺麗に凍らせて、後はブリザードに貪らせて、誰もいないあたしだけの森にして、それで終わり。
 ついでに聖なる木も怒りのままに砕けたらなーと思ってたステラは、自らの行いに困惑した。
 エルフの森が、燃えている。
 ここまでするつもりはなかったのに……。
リサ・ムーンリッド
【芋煮】で連携
●心情
まるで燃えるために存在してるような森だ…
そういえば、こことは別の遠い場所だけど森を焼くブームの中で実家は平気だったのかな
まあ、家出した身で帰る気も無いしいいけど

●消火
聖なる木はききんさんが守るらしいので私は消火でも
UCの『レプリカクラフト(錬金術)』で炭酸水素カリウムの粉末を作り、消火剤として『マジック・メモリー』に記憶させていた風の魔法でぱーっと撒こう
エリカさんの動物たちも手伝ってくれるなら消火剤を配るよ
油火災にはこれだね
そしてルエリラさんの芋煮は相変わらず謎多い…

●戦闘
とりあえずUCと【薬品調合】と【毒使い】を活かして作った劇物をフラスコ瓶に入れて【投擲】するか…


暁・エリカ
【芋煮】で参加

自分から燃えそうなエルフの森は始めて見たな

消火なら数がいるね、【極めて屈強な小動物】召喚
ムキムキ鼠隊、バキバキ狐隊集合、貰った消火剤と芋煮で火を消したり燃えそうなものをどかしたりさせるよ
大丈夫、応援されて幸運になってるから炎の中でも安心だね

相手は氷の…トカゲ?なら熱が良いかな
狐火はダメだとして…芋煮をかける、その手があったか
残りの熱い芋煮を相手にかけ、相手が温まって怯んだ所で鼠隊、狐隊は一斉に突撃、相手を弾きだすんだ

ん…ききんが痺れてる、聖なる木の葉がダメだしたのか…私は触っても大丈夫そうだね
まあ特に必要ないから取らないけど…それよりも今はこっちだ
(いつの間にか芋煮を食べつつ)


ルエリラ・ルエラ
【芋煮】連携
まーたエルフの森が燃やされようとして…これ燃えない方がおかしいやつだ!今までよく何も起きなかったね
私達がここで食い止めてもいずれ燃える気がするけど皆と頑張ってみよ

というわけで【芋煮ビット】で敵にダバァ!燃えてるとこにダバァ!!ついでにききんに特に理由もなくダバァ!!
敵はあまりの熱さに動きを止めるだろうし凍ってる箇所も解けていい事尽くめ!
燃えてるとこは芋煮で鎮火!私の芋煮は環境に配慮された芋煮なのでダバァされた芋煮は栄養となって植物の成長を著しく促進させるんだよ。エリカの動物さんにも協力して手分けして撒いてもらえばより完璧
それにしても聖なる木の葉かー…(チラッチラッ
気になるよねぇ?


甘甘・ききん
【芋煮】連携

今回わたしは聖なる木のたもとで応援してれば良いらしいのでそうします。はぁ寒~、狐になっとこ

撒き散らせー!え!る!ふ!なにその白い粉!へいっ!
吹き曝せー!い!も!に!炎を止ーめーろ!へいっ!
屈強なー!け!も!の!わたしもまーもーれ!へいっ!

でも応援してるだけなのも意外と疲れるし暇だな……そっかーこれが心の清らかな者しか持てない聖なる葉っぱかー、なんか価値ありそう……お餅とか包んだらおいしそう……ヨシ!わたしなら行けるはず!

ぐわっ!ぐわあ~!この葉っぱピリピリする!なんかピリピリする!まさかわたしを拒んで……?しかし絶対に負けない!わたしはぜったいに聖なる木の葉をもぎって持ち帰ぐああー



●猟兵到着
 そこに4人の猟兵が転送された。
 彼らは猟兵の中でも特に芋煮に特化した者達。『芋煮会』のメンバーだ。

「まーたエルフの森が燃やされようとして…これ燃えない方がおかしいやつだ!今までよく何も起きなかったね」
 青髪で狼の耳と尻尾を付けるエルフの少女、ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)の声がした。

「この迷惑さ加減……今回の主犯がどこか気になって、皆に相談してやってきたけど…ま、まるで燃えるために存在してるような森だ…」
 金髪のエルフの錬金術師、リサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)はごちた。

「自分から燃えそうなエルフの森は始めて見たな…とりあえず、まずは消火しないと。」
 銀髪の妖狐、暁・エリカ(狐の賢者・f06763)が召喚の用意をしながら言った。

「へくちっ、うっわ寒。炎無かったらここ雪が積もってたりしてるんですけど。おまけに雑魚敵なんか氷だし。あぁやだやだ酷いわーこんな所に狐送るとか酷いわー。そうだわたし妖狐だったわ。狐になっとこ」
 甘甘・ききん(可哀想な 狐・f17353)
 燃え盛る森のせいで忘れそうになるがここはA&Wの中でも北方の寒い場所である。致し方はない。
「所で一番大事な聖なる木ってどこ?ツリーハウスとか開始地点じゃないの?」
 作戦として言えばききんが安全な場所で応援する手はずで、それは聖なる木になる筈だった。
 だが転送された場所は聖なる木からやや離れた場所、距離を詰めればブリザードとエンカウントするだろう。
「えぇ~グリモア猟兵しっかりしてよ。とりあえず身を隠しながら応援するっきゃないねー。」

 そうして木陰に隠れようとしたききんは、ぶにっとあるものを踏んだ。
「ん?なにこれうわっぷ!」
 キノコだ。何かめっちゃ赤い。同時に何か胞子的なものがぶわっとききんを包み込む。
「あっ、確かそれは……ちょっとの衝撃で爆発する発火性の強いキノコ」
 リサがききんを助けようとしたその時、ブリザードの吹雪が放たれる。
「うわわ!」
「まだ招集出来てないのに…しょうがないききん」
 エリカの放った陰陽符による結界で吹雪は防がれるが、流れ弾で同時に放たれたつららがききんをかすめる。
「えっちょ」
 そのうちいくつかの氷柱が近くの岩に当たり、火花が胞子に散らされると。
「ぐわあああああああああ!」
 ききんは爆発した。粉塵爆発である。
 良い子の皆は知っているだろうか。エルフの森は危険がいっぱいだという事を。
 その爆風の勢いで、聖なる木が祀られるエルフ達のツリーハウスへと飛んでいき……。

「こゃふん!ここは!?」
 飛びついた先でききんはエルフに囲まれた。
「なんだ!?」「狐が飛んできた!」「この森狐いたっけ…」
「え、狐いないの?FOXいないの?寒い所に狐が一匹。いないんだ~。へーぇふーぅん……あ、葉っぱあります?」
「「「狐が喋った!」」」
「何?そこからなの?ファンタジーでしょここ(A&W)狐喋れるでしょここ(A&W)。」
 そこにエルフの一人が話を纏めようと歩み寄った。
「事情はなんとなく察しました。猟兵ですね。我々の大事な聖なる葉を何にお使いになるかは分かりませんが……。」
 そうして狐に渡されたのは、光り輝く聖なる葉っぱだった。
「そっかーこれが心の清らかな者しか持てない聖なる葉っぱかー、いやとりあえず見ておこうかなと。うん……なんか価値ありそう……お餅とか包んだらおいしそう……ヨシわたしなら行けるはず!」
 ききんはためらわずその聖なる葉を……食べた。
 直後全身に迸る強烈な電流!
「ぐわっ!ぐわあ~!この葉っ…ビリビリする!なんかビリビリしぐああああ!まさかわたしを拒ん……ぐああああ!」
「大丈夫ですか!?」
 エルフ達が心配する。ききんはオブリビオンではないが普段から色々とアレな事をする妖狐。彼女のプロフィールを見ると大体背景に一面の鮫が出てくるくらいにはアレな狐。悪しき心が聖なる木の力で浄化されようとしているのか。
「し…しかし絶対に負けない!わたしはまけない!わたしはぜったいに聖なる木の葉を持ち帰ぐああー」


 エルフの集うツリーハウスの物見テラス、その上でなんか輝きながらもだえ苦しむ狐のききん。
 そうこうしてる間にも猟兵達の戦いは始まっていた。


『よし、ムキムキ鼠隊、バキバキ狐隊集合。消火にあたって。』
 燃え盛るエルフの森。
 エリカが筋肉ムキムキのマッチョアニマルを召喚し、支持を出して消火に当たる。
 具体的には体当たりでもみ消していく感じである。
 集団で燃え盛る木に集まっては蔽いかぶさる様なハグをすると、じゅうじゅうと火は酸素の行き場を無くして鎮火する。

 大丈夫。大丈夫だ。筆者は正気である。

 ここはA&W(アックス&ウィザーズ)。何が起きても不思議ではない君の目指したファンタジーの異世界。
 筋骨隆々な小動物達が群がって消火活動に赴いても普通の光景だ。何ならトカゲの擬人化らしき少女達が口から吹雪吐いてたりする世界だし。
『いけ!芋煮!』
 何……だと……!?
 青エルフ、ルエリラが突如として飛来する芋煮入りの鍋を操作して、勢いよく炎にぶっかけたではないか。
 すると火は瞬く間に消え、エルフの森の灯りが一つ消えた。

 どうなっているのだ、どういうあれでこうなのだ。
 芋煮ってアレだろう。油の乗った汁に燃えそうな有機物の芋や諸々が乗った料理のアレだろう。
 火に油どころか燃料になりかねないのにこんな!なぜだ!なぜ芋煮で、なぜ芋煮で炎が消える!?
「私の芋煮は環境に配慮された芋煮なのでダバァされた芋煮は栄養となって植物の成長を著しく促進させるんだよ。」
 どういう事だよ。
「ルエリラさんの芋煮は相変わらず謎多いね。」
 そこでリサが締めた。いいのか。それでいいのか。

「…っと、まともな方でも消火手段を用意しておかないと。」
 助かる。

 リサはレプリカクラフト(錬金術)によって元素を構成し、消火器に使われていそうな白い粉を生成。
 あらかじめ用意していたバケツに溜めてエリカの小動物達に配る。
「炭酸水素カリウムっていうんだ。油火災に効く薬だよ。使って!」
「わかった。」
 エリカの召喚したムキムキ鼠隊に消火剤が手渡される。
「芋煮も使って。」
「わかった。」
 エリカの召喚したバキバキ筋肉狐隊にルエリラの作った芋煮が手渡される。
 ばしゃり、ばしゃりと燃え盛る木々にかけられていく消火剤と芋煮。
 消火剤はたちどころに炎を消して鎮火させ。
「油火災にはこれだね。」
 芋煮もたちどころに炎を……いやよく見た。理解した。まず芋煮が木にかかり、芋煮パワーが木に吸収されて潤いを手に入れた水のある木に成長。炎を内部から疎外しているようだ。
 正気なのだろうか……。
「ルエリラさんの芋煮は相変わらず謎多いね。」
 そうだね。
 

「何なの、あいつら……その炎を消せる奴、どこで手に入れたの?欲しい……奪ってきなさい!ブリザード!」
 森の何処かからステラの号令が響いた。
「…………!!」
 同時に響いた笛の音、それに反応したブリザード達は鋭い呼吸音と共にエリカの召喚動物達に襲い掛かる!
 吹雪を纏い、硬き氷の爪で襲い掛かる。
「む……小動物隊、一旦中止。消火剤とか庇ってでも止めて。」
 筋肉動物と氷の蜥蜴少女。滑稽な事に両者の筋力は均衡。一見か弱く見えるブリザードという少女は、狩猟に秀でたインナーマッスルで筋肉動物と互角の力を併せ持つ。2つの群れがせめぎ合う……。
 だがブリザードの目論見は持っている消火剤だった。
 筋肉動物達がブリザードの腕を掴み止めるも、伸びた氷の爪がバケツを貫通し、白い粉が辺りに爆ぜていく。
「ギイイ!」
 一方で芋煮の鍋も破砕するブリザード達だったが、浴びた芋煮にやや怯み退散していく。
「このままじゃ、森が……!」
「ええ!ええ!お気になさらず!森はあたしが責任もって壊してあげるから、さっさとそれを頂戴!」
 ステラの号令で、ブリザード達が更なる追撃をかける!

 だがその時である。ムキムキ鼠とバキバキ狐は突如薄い光に包まれ、途端に動きが良くなる。
 ブリザード達の氷爪の攻撃を、受けるのでなく完全に避け出した。
 筋肉動物隊はブリザード達の腹に蹴りを入れ、悶えさせる形で無力化していく。
「な、なんなの急に!?」
「これは……」
「始まったみたいだね」

「吹き曝せー!い!も!に!炎を止ーめーろ!へいっ!」
 ききんがツリーハウスの上で応援していたのだ。
「屈強なー!け!も!の!わたしもまーもーれ!へいっ!」
 狐の身振り手振りの応援で、大変縁起の良い光を受け、猟兵達は、筋肉動物達は強化を受け、戦況を優位にしていた。
「撒き散らせー!え!る!ふ!なにその白い粉!へいっ!」
「あっ、これですか?聖なる葉を粉末状にしたもので……。」
 えっ?「えっ?」
 気づくとききんの頭上からエルフが聖なる白い粉を撒いていた。
「!?、ぐわあああ、ぐわああああ~!からだが!からだがしびれっなぜにゆえっぐああー!」
 ごろんごろんと身もだえるききん。
「先程爆発で怪我を負ったと思いまして、こうして粉末をかければ早く治るかと……。」
「くっ……先のやり取りをまるで見て無いかの様な親切心!でも負けない!わたしぜったい」
 するとそこにブリザードの放つ流れつららが飛んできた。
「あっ!ツリーハウスを接合している金具(火打石製)に氷柱が!」
 エルフが叫ぶ!
「わかりやすいフラグがたったね!?」 
 このエルフの森なんで今まで事故が起きなかったのだろう。
 直後、衝撃であがった火花。
「あっ」
 密集した聖なる葉の粉に火花がかかる。
「あっ」

 直後、ききんは爆発した。粉塵爆発である。
「ぐあああああー!」
 何という事だろう。最大の敵は味方にこそあったのだ。

「あ、ききんこっちに来るよ」
「えっ?」
「手の空いてる鼠隊狐隊、ききんきゃっちお願い。」
「ただいーまぁー」
 爆風で芋煮会の所へ飛んできたききんに。
「ぁうぶぶば!?」
 ブリザードの吹雪のブレスが直撃する。
「あっききんが。」
 氷漬けになったききんをブリザードがキャッチ。盾として構えて猟兵達に迫りくる。

「ふふーん。さっきからあっちへこっちへしてる狐は頂いたわ!」
 どこかから聞こえるステラの声。
「でも足りないわ。ブリザード!この狐を盾に攻撃しなさい!人質作戦よ!」
 氷漬けとなったききんを盾にブリザードが、吹雪のブレスを吐きながら迫ってくる!
 当たれば同様に氷漬け。避ければ散った氷柱による火花で燃え盛る木々の炎に焼かれる。
 そしてまともに攻撃すればききんの命が危ない。酷いぞ!どうする猟兵!
「これはもう芋煮しかないな。食え!」
 真っ向からルエリラの芋煮がききんに炸裂した!!!

「ぐああああ!」
 ダバァという音を立てて大量のあつあつ芋煮が濁流の如くブリザードとききんを飲み込むと、あっという間に氷が溶け、芋煮の熱に包まれるききん。
「あっつあつひゃふふ!ひ、ひどい……なにもわるいことしてないのにどうして……」
「追いダバァ!」
 更に芋煮がききんに降りかかる!
「ぐああああ!」
「まあそういう時もある。所で二ついいかな。」
 芋煮の中からルエリラがききんをひっつかむ。
「なにー?」
「今のききん、焼かれて熱されて芋煮まみれで美味しそう。」
 いわゆる香ばし焦がし芋煮狐漬け状態である。
「ちょっ止め!ストップ反対!わたしはわるいきつねじゃないよきつねなべはまだはやいよ!」
「もう一つは……聖なる木の葉、持ってきた?気になるんだよねぇ。」
 ちらっちらっと狐の抱きかかえてる物を見やる。
「ふっ……わたしの手癖をなめてはいけません。正直死ぬかとおもいました。」
 それは奇跡か根性か。狐の手の中には、芋煮まみれで何か電流が流れてるが、しっかりと数枚聖なる木の葉が優しく包まれていた。


 さてそんな彼女らの一幕の最中、リサとエリカは襲ってくるブリザード達とクライマックスを迎えていた。
「氷属性が相手なのに迂闊に火を使えないのは厳しいね。」
 いつの間にか芋煮を食べながらもエリカは筋肉動物達に指示を出して対応している。
「ええい!その良く分からない郷土料理なんてこうよ!ブリザード!」
 筋肉動物達と均衡している者達とは別のブリザードが、飛び上がって吹雪のブレスを吐き出した。
「これ以上森を燃やしたくないけど…。」
 エリカが迎撃しようとした所で、陰からフラスコ瓶が放たれる。
「何、衝撃がダメなら溶かせばいいんだよ。それっ!」
 フラスコは空中で爆発すると即座に溶解。中から溶解性の毒液がぶちまけられる。
「ギイイ!?」
 ブリザード達のブレスは凍る事なく、毒液に逐一溶かされて消え。
「もう一度!追いダバァの真似って所かな!」
 毒入りフラスコが更に追い打ちでブリザード達にぶつけられ、ブリザード達はその身を溶かして倒れていく。
「…かけて、溶かす、その手があったか。」
 エリカは何かを思いつくが、その時筋肉動物達を押しのけて飛び掛かってくるブリザードと対峙する。
「よし、行け。芋煮」
 ブリザードに今食べていた熱い芋煮をぶっかける!
「グギイイ!?」
 アツアツと美味しい芋煮をぶっかけられたブリザードは、身悶え……いや待て、何か体に付いた芋煮を食べ始めたぞ。
 冷気で程良く冷やして火傷しないようにして食べ始めたぞ。
「ん……もしかしてもっと欲しい?」
 エリカは更に配給されていた芋煮をひっつかみ、ぶっかける。
「ギイイ!」
 ブリザードは今度こそと見切り、芋煮を吹雪のブレスで凍らせ……。
 そのまま食べ始めた。
「もしかして、お腹空いてた?」
「クルルルル……。」
 他のブリザード達もよく見ると芋煮を食べてるぞ。なんだろう。
 そういえば笛の音でエルフの森にやってきて、散々全力で戦っているブリザード達は飲まず食わずの状態である。
「そうか……お腹空いてたんだ……。」
「シュウゥゥゥ……。」
「ちょ、ちょっと、あんた達……くっあたしまでお腹が空いて……ちょっと待ってなさい!そんなのあたしだって……!」
 どこかから響く声。と同時に笛の音が……止んだ!
 制御が途切れ、お腹いっぱいに芋煮を平らげ、満足そうにし始めたブリザード達は戦意を喪失し。
「よし、全員突撃。」
「ギイイィィ!?」
「それはそれとしてここにいて良い相手じゃないからね。」

 エリカの筋肉動物達の体当たりで、ブリザード達は森の外へとはじき出されていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

マキナ・エクス
アドリブ・ほか猟兵との絡み歓迎
しかしまあ…なぜエルフの森ってのはこんなにもよく焼かれる運命にあるんだろうね?

嫉妬の感情を持つのは別に構いはしないが、それをコントロールできなければただの子供だね。

さてとにもかくにもまずはあいつらを始末することが先だね。ほかのエルフたちにお願いして、敵を複数体できるだけ開けた場所に誘導してもらおう。敵がある程度集まってきたらUCを使って【範囲攻撃】でまとめて倒してしまおう。

あとは、残ったそのあたりに単独でいる敵をからくり人形に持たせた鎌で倒していく【遊撃】に回るとしよう。



●降り立つ者
「しかしまあ…なぜエルフの森ってのはこんなにもよく焼かれる運命にあるんだろうね?」
 困惑しながらも猟兵達の戦いを様子見ていたエルフ達のツリーハウスに、女性型の機械人形(ミレナリィドール)が現れた。
 名はマキナ・エクス(物語の観客にしてハッピーエンド主義者・f33726)。
「さて、とにもかくにもまずはあいつらを始末することが先だね。開けた場所にあの敵を誘導してくれない?」

「よしわかった。それならいいものがある。」
 エルフ達は何やら聖なる木からもって来た聖なる葉を掲げ、呪文を唱えながら振る。
 するとブリザード達の目前に肉が現れた。
「……!!」
 ブリザード達はお腹が空いていた。燃え上がる森の中、不自然に現れた肉へと飛び掛かる様に駆けていく。
 だが一向に距離が縮まらない。エルフ達による魔法の幻覚であるからだ。

 ようやく肉にありつけたと思ったブリザード達は、いつの間にか森の中でも開けた場所に誘導されていた。
「ここなら飛び火も抑えられるだろう。『偽典閲覧、伝承認識、神具構築。汝月の女神の威光を見よ……』」
 偽典の本が開かれて、マキナのユーベルコードが発動する。
 周囲の火打岩は銀に変わり、銀が更に矢に変わる。マキナはそれを浮遊させブリザード達に向けて一斉に、放った。
「!!??」
 突如落とされた無数の銀の矢に貫かれ、1体、また1体とブリザード達が倒されていく。

「この調子なら。」
 だが突如現れたブリザードの1体が出した氷塊に、見ていたエルフが慌てる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「んっ!?」
 ブリザードの1体は、氷漬けになったエルフの少女を空に向けて掲げていた。
「あいつ、買い物に行ったきり帰ってこないと思ってたら……!」
「ステラとか言う奴の入れ知恵か、厄介な。」
 そう言うとマキナは銀の矢を放つのを止め、アンティークなデザインの大鎌を持つメイド型のからくり人形と共に、広場へ駆けだし、跳んだ。
「まあそれなりには掃けた、あとは個別で対応するとしよう。」
 舞い降りたマキナに残ったブリザード達が敵意を向ける。
「今はキャバリアは無しだね。森を壊しかねない。」
 二丁拳銃を携え、メイド人形と背中合わせになったマキナは。
「人質も無意味な遊撃に回るとしよう!」
 氷漬けのエルフを盾にするブリザードに立ち向かった。

「シィィィ!」
 ブリザードは開幕初手、エルフの少女が閉じ込められた氷塊を、蹴り飛ばした。
「うっ!?」
 焼けた地面を滑る氷エルフをマキナは咄嗟に受け止めてしまう。
 にやりと微笑んだブリザードはその隙を突かんとばかりに、2体が左右から氷の爪で襲い掛かる。
「スペクテイター、左は頼むよ。」
「!?」
 ブリザードの1体は、途中で切り裂かれ、倒れた。
 いつの間にか背後に回っていたメイド人形が大鎌で切り裂いたのだ。
「はっ!」
 下手に銃弾を放って森を燃やさぬ様、マキナは2丁拳銃の銃口を握る。
 もう1体のブリザードの攻撃を躱しながら、顎に勢いよく銃のグリップを叩きつける。
 グリップの重量による一撃はさながらハンマーの様。
「グギッ…!」
 怯んだブリザードに、矢継ぎ早にグリップハンマーを打ち付けると、遂に意識を手放してブリザードは倒れ、消えた。
「後は?ああまだ1体残ってるか。」
「シィィィイ!」
 氷は燃え盛る森の炎が溶かすだろう。一旦横に氷のエルフを置いたマキナは、孤立した最後のブリザードの1体に飛び掛かる。
「っ、まだ残していたんだ。」
 そのブリザードに、突如ブリザードが増援でもう1体現れると、更に別の氷漬けのエルフを盾に……否。
 焼け鉢にか、氷漬けのエルフで力任せに殴ろうとしてくる!
「さっきまで騒いでたあの少女が沈黙してるのが変に不気味だけど。」
 だがそれを物ともせず、メイド人形が正確な斬撃で氷漬けのエルフに大鎌を振るう。
「とりあえず言うだけ言わせてもらおうか…嫉妬の感情を持つのは別に構いはしないが」
 中のエルフだけ器用に傷つける事なく氷を削り、ブリザードに氷を手放させると。
「それをコントロールできなければただの子供だからね。」
 マキナは2体同時に、2丁拳銃のグリップハンマーを叩きつけ、吹き飛ばすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイシャ・ソルラフィス
ゆかりさん(f01658)と一緒に行動します

ボクがまだ幼い頃。何らかの理由で世界樹の枝を一本だけ遺して両親は亡くなり、ボクはソルラフィス家に引き取られました。
そのボクの両親のルーツを知りたいと思っていた矢先に、今回の世界樹炎上の話を……炎上? 凍ってるのに??
まあいいや! とにかく、ボクの杖は燃えにくい性質をもってるから、たぶんこの世界樹はボクの杖とは無関係だと思うけど、でも放置はできないよね!

ゆかりさんが来てくれるなら心強いよ! ゆかりさんの陣の完成までユベコで水の精霊を召喚して防衛!
その後は火事と氷結対策に、《属性攻撃》と使えそうな技能を組み合わせた水流魔法でゆかりさんを援護します。


村崎・ゆかり
同行:アイシャ・ソルラフィス(f06524)

ああ、そういえば、アイシャにとっては世界樹って大事なものだったっけ。
一人で行かせるのもなんだし、一緒に行きましょうか。

それじゃあ、陣を張りましょう。十絶陣は派手なのが多いから、森を巻き込まないとなると――
「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」「仙術」「道術」で落魂陣展開。
アイシャは、消火に当たるのかしら? まあ、彼女に攻撃が及ばないようにしましょう。
森のいたるところに垂れ幕のような大判呪符を配置して、光線でブリザードの魂魄を消し飛ばす。
この陣なら、木々や土壌に当たっても被害はないはずよ。これでいいんでしょ、アイシャ?

このまま親玉まで討滅しちゃう?



●世界樹に想いを馳せて
 それは遠い昔の話、一人のエルフの少女がいた。
 そのエルフはまだ幼い頃、エルフの集落で両親共々仲睦まじく暮らしていた。
 しかしある日、ある理由によりエルフの集落から逃げる事になったのだという。
 そうして世界を渡り、UDCアースに流れ着いたエルフの家族だが、その後まだ幼い娘を残して、両親が他界してしまうのであった。
 間もなくソルラフィス家に引き取られるその少女に、両親は世界樹の枝を一本だけ遺して……。


「偶然小耳に挟んでやって来たこの依頼、ボクの杖と違って燃えやすいみたいだから、関係薄いと思うけど……。」
 金髪のエルフの少女、アイシャ・ソルラフィス(f06524)。
「ああ、そういえば、アイシャにとっては世界樹って大事なものだったっけ。」
 次いで黒髪の陰陽師、村崎・ゆかり(f01658)が転送されて、エルフの森にやって来た。
「うん。世界樹って聞いたらつい気になっちゃって。それに両親のルーツを知りたいっていう気持ちが……。」
「手がかりが見つかると良いんだけどね。一人で行かせるのもなんだし、一緒に行きましょうか。」
「ありがとう!ゆかりさんが来てくれるなら心強いよ!」

 それにしてもとエルフの森の惨状を見やるアイシャ。
 ブリザードによって凍っている木々が、あちこちで燃えている。
「炎上?凍ってるのに??」
「確か木の中に油が染み込んでるって話だったわね。内側か、氷の隙間に火種が入り込んだとすれば。」
 雪灯籠と言うものもある。氷はただ水が固まった存在とするならば、実の所炎と同席しても不思議ではないのだ。
 氷の木の内側から炎が上がり、まるで炎で出来た木が氷漬けになって輝いているようなそれはどこか幻想的な……。
「とにかく!放置なんてできないよ。何とかしなくちゃ。」

 すると白き蜥蜴の少女、主犯のステラが召喚したブリザード達が、アイシャ達を剥ぎにやってくる。
 結構沢山いる。
「炎を消しながらこの敵と戦うには……。」
「それじゃあ、陣を張りましょう。それまで敵は任せた。」
 ゆかりはアイシャの後方に陣取り、大判呪符の束を取り出す。
『「全力魔法」に「結界」を敷いて「範囲」を絞り、組み合わせる。「仙とタオの術式」を、「古の十絶陣の一つ」として書き込み――』
 大判呪符が宙に浮き、ゆかりの詠唱と共に触れずして文字が書き上げられていく。
 それを好機とブリザード達が、氷の爪を生み出して切り裂きに来る。
「陣が完成するまで、防御は任せて!『地・水・火・風・雷、天地開闢から天壌無窮に存在する精霊たち……。』」
 アイシャはゆかりを守る様に祈りを捧げると、周囲に水の気流が生み出され、二人を守る様に渦巻く。
『どうか弱きを助け、邪悪を払う力をボク達に……』

 ブリザードが二人を切り裂かんと振り放った氷爪は、まずアイシャの操作した激流に弾かれた。
 次に氷爪に、更に冷気を込めてブリザード達は激流を切り裂かんとした。
 激流はたちまち凍りつき、宙に軌道を描いた氷が出来上がる。
「もっと、もっと、たくさん……!」
 大量の激流が氷爪からアイシャ達を守っていく。
 ついには何重にも重なる氷の層ができ、今や二人の周囲はドーム状の氷に覆われていた。
「おかしなことになっちゃったけど、これなら時間を稼……!?」
 がつんがつんと、巨大な氷塊を作り出したブリザードによる叩きつけで、ドームの氷に衝撃が走る。
 それはあっという間にドームをひび割れさせ、遂には、砕く。
「そ、そんな!」
 砕き割られた氷のドームにブリザードが侵入し、襲い掛かろうとする!
「もう一度…!」
 だが再び祈ろうとしたアイシャより、ブリザードの方が速そうに見えた。
 喉首を引き裂きそうな鋭利な氷が伸びようとしたその時。
『我ここに呼び覚まさん。心身支える三魂七魄の悉くを解きほぐし、天上天下へと帰らしめん。疾!』
 ゆかりが呪符から光を放ち、襲い掛かろうとした者、周囲にいる蜥蜴少女、それらを貫いていった。

「……!!?…………」
 光線に当たったブリザードは突如白目を向き、意識を落として倒れていった。
「対象の魂だけを吹き飛ばす、十絶陣の一つは落魂陣(ラッコンジン)。これなら木々や土壌に当たっても被害はないはずよ。これでいいんでしょ、アイシャ?」
「え、あ、ゆかりさん、ありがとう。森に気を使ってくれて。」
「仕方なくよ。依頼の達成に最適な手段を取っただけ。」
「これなら……!」
 崩れた氷のドームから飛び出したアイシャは、勇敢にも燃える森へと飛び込み、精霊を纏う。
「アイシャ、消火に当たるなら、あたしの呪詛の射線には入らないでね。予告線は出しておくから。」
「わかったよ!」
「さてと、あたしも次の手を打っておこうか。」

「火事に……氷に……とりあえず対処したいのは二つ。」
 下手に衝撃のある技を放てば、自身も森の放火に一役買ってしまう。
 アイシャは祈りの力で、やはり水と、地の力を操作した。
 燃え上がる木々に放水の如く水をかける。
 更に地面から土を盛り上がらせ、木々を覆う。
 土にも水をかけていく。土はドロドロになって、泥の水流となっていき、炎を包むとあっという間に消火していった。
「ブリザードは……!」
 火を消すアイシャにぎろりと目を寄せたブリザードがやってくる。
「熱湯で対処しよっか!火と水の精霊さん……!」
 今度は氷を溶かすような熱い水流をブリザードに放っていく。
「あっ!?」
 だがブリザードは氷の盾を作り、それを防ぐ。……恐ろしい事に、その盾は熱湯で溶けないどころか。
「防がれ……う、うそっ!こおって……!」
 防いだ氷の盾にかかった水がたちまち凍っていき、水を伝ってアイシャの方へと向かっていく。
「と、止まって!嫌……!」
 祈りを捧げるアイシャに水気を通して、氷が伝わっていこうとしている。
 燃え盛る氷のエルフの森で、新しいエルフの少女の氷像が出来上がろうとしていた。
 その時。
「!!!?」
 氷が止まった。氷の盾を作っていたブリザードに、あらぬ方向から光が射しこんだ。
「間に合ったみたいね。」
「ゆかりさん!」
 気づくとゆかりが森中に呪符を張り巡らせていた。
 光に当たったブリザードはもう冷気を込める事無く、魂が抜け去り、力なく倒れていった。

「ここまで張り巡らせていれば雑魚敵は大丈夫でしょ。消火活動に専念して。
「今日のゆかりさん、ほんっとうに心強いね!」
「……ちょっと照れるわね。陣を敷いただけだから。まだ。」

 そうしてアイシャは精霊の力で森を消火していき、ゆかりは次々とブリザードの魂を吹き飛ばし、無力化していくのだった。
「さてと、このまま親玉まで討滅しちゃえればいいんだけど?どこにいるのかしら。」
 こうして活動を続けていれば、その内彼女は姿を現すはずだ。

 そしてそれは意外と早くやって来た。
 森の一角、輝く金髪の少女を、猟兵達は見つけ出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『『嫉妬』のステラ』

POW   :    あたしすごい?ほんと?……でっしょー!(ドヤ顔)
戦闘力のない【動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【視聴者の応援】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    そんなの、あたしだってできるんだから!
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    違っ……あたしそんなつもりじゃ……
【槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【召喚ドラゴン】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●『嫉妬』のステラ
 収まりつつあるエルフの森の火災。
 人知れぬ森の中、「何かざわめく、邪なもの」をエルフが見たと報告があり、猟兵達はそこへと向かう。

 森のやや開けたその場では、何事か料理をしていた。
 芋を煮たものである。

 先の戦いで旅団「芋煮会」にほだされ、戦闘そっちのけで芋煮を作っていたのだ。
「……う。」
 そこには少女がいた。グリモアベースで見た、あの金髪の少女である。
 少女だけではなかった。グリモアベースで見た、あの酒場の取り巻きの者達もそこにいた。
 A&Wから取り寄せた肉や野菜を運ばせたのである。
「うまく……ない……さっきブリザードに当たった奴を味見したけれど、あれみたいな味じゃない……!」
「まあまあ、真似できただけでも大したものですぜあ゛あっ!」
 少女は鍋を蹴り上げた。
「ふざけないで。」

 少女の手元には壊れた笛があった。
 ブリザードの笛は、操れる容量を超えて吹いた結果壊れてしまった。もう使う事はできない。
 それを丹念に、丹念に踏み砕き。
 ……目の前にやってくる猟兵達を見据えた。

「何故か燃えてしまった森は、どうしてもう収まったの?」
「どうしてあたしの使役した白蜥蜴より良いものを持ってるの?」
「料理だってすごいのに、どうしてあんた達の方が美味しいのを作れるのよ……!」

「何もかも、何もかも気に入らないわ!」
 手を挙げ、周りの取り巻きに合唱させる!
「あたしはステラ!あたしは!」
「「すごい!」」
「あたしは!」
「「かわいい!」」
「あたしにかかればこの世の全ては!」
「「ステラ様のもの!」」
「それでも、手に入らないものはどうするべきだと思う……?」

 指をパチンと鳴らせば、魔法金属で出来た沢山のドローンがその場で浮遊し、エルフの森中に巨大で生意気なステラの顔の幻視映像を見せる。
「あんた達はそこで見てなさい。」

『嫉妬』
 その感情が彼女の行動力に変換されていく。
 最早グリモアベースで見た様に逃げ出そうとする気も起きない。
 猟兵達に歩み寄る少女は、完全に戦闘モードだった。

「ブリザードの笛なんてもういらないわ……折角の憂さ晴らしを台無しにしたあんた達もいらない。」

「そこの狐が持ってる葉っぱも!」
「芋煮のレシピも!」
「そこのエルフの意味わかんないご都合主義な薬も!」
「ムキムキマッチョの軍団も!」
「そのへんてこなお人形も、そのおっきな銀の弓矢も!」
「そこのエルフの珍しそうな杖も!」
「あの人間のビームが出る紙も!」

 ぶんと武器を振るう動作を見せれば、その手にはドラゴンを模した槍を手にしていた。
「全部あたしが使った方がすごいって事、分からせてあげるわ……分からせて、やるんだから!」
 よく見ると目尻に涙を浮かべている。手中に無いのがそんなに悔しいのか。
 ともあれ、今回の主犯『嫉妬』のステラは、猟兵達の力を、所持物を、のして奪わんと襲い掛かってくるのであった。
マキナ・エクス
アドリブ・他猟兵との連携歓迎

やれやれ、とんだわがままお嬢さんだ。
これはお仕置きが必要だね。
まあ、本当は説教の一つでもしたほうがいいんだろうけど、残念ながら私はそこまで弁が立つほうじゃないからね。
そこは他の猟兵方に任せて、私はげんこつでもくらわすとしよう。

わざわざ開けたところに出てきてくれたんだ、遠慮なくこいつを打ち込めるよ。UC発動。文字どうり雷が落ちるってね。

相手の槍は魔術糸を使って【捕縛】しよう。
基本的に戦闘スタイルはブリザード達の時と同じように、からくり人形と連携して【フェイント】で翻弄しながら敵を攻撃する。
やりすぎかと思って短剣は今回は使用を控えておく。

骸の海で反省するんだな。



●ドラゴンの槍は、こうやって使うんだから!
「やれやれ、とんだわがままお嬢さんだ。」
 マキナは鎌を持った人形と共に戦闘態勢に入る。その手には二丁拳銃。
「嫉妬の感情を持つのは別に構いはしないが、それをコントロールできなければただの子供だね。」
「うぐっ…なんですって!」
「わざわざ開けたところに出てきてくれたんだ、遠慮なくこいつを打ち込めるよ。」
 マキナは指先を天に向ける。遥か天空に暗雲が立ち込めると。
『偽典閲覧、伝承認識。人よ天を仰げ、そして畏怖せよ。雷霆(ケラウノス)顕現。』
 この広場を埋め尽くさんとする、必殺の巨大雷が作り出され。
「これこそは最高神の威光、万物を粉砕する裁きの雷……仕置きの時間だよ。」
 次いで指先を向けた対象、ステラに落とされた!

「骸の海で反省するんだな。」
 森が吹き飛ばんとする程の衝撃、また火災が起きそうになるほど地面が赤熱し、弾けるような土のクレーター。
 だがその中心に、ステラは平然と立っていた。
 槍を上に掲げて、立っていた。
「雷を吸収した?」
「残念ね。あたしの槍は属性を吸収するの。」
 そう、ステラは手に持つドラゴンの槍を避雷針にしていなしたのだ。
「そしてこの槍は……古代遺跡の冒険者から譲ってもらった特別なこの槍は!ドラゴンになるのよ!行きなさい!」
 ステラはどこからそんな力を持ってたのか、槍を抱えてぐるんと回し、勢いよくマキナに向かって投げつける。
「成程、しょうがないね。『スペクテイター』、行くよ。今回は『短剣』は無しだ。
 マキナはその槍に向かって飛び込む。
 ぶつかる直前に体から糸を射出し、飛んできた槍を絡め取っていく。
「魔術糸【アリアドネ】起動。没収させてもらうよ。」
「あはは!かかったわね!やっちゃえドラゴン!」
 すると槍が変形する。それは軟体生物の様ににゅるりと糸の隙間から這い出ると、ドラゴンの形を取り、炎を吐いて糸を焼き切る。
「むっ、これもいなすのか?侮ったかな。」
「ああ、本当ムカつくわ!そんな余裕が出る程いいのを持って!さっきのお返しよ!ドラゴン!」
 ステラが指示をすると、何とドラゴンが強力な雷を帯び始める。
「これは、そうか。さっきのを吸収したな。」
「オオオォォォ!!」
 ドラゴンが、マキナのいる場所を吹き飛ばす程の強力な雷の爆発を放つ!
 爆音と共に放たれる、最高神の雷霆(ケラウノス)を彷彿とさせる様な、超高圧にして必殺の雷の衝撃。
 マキナは銃撃と共に一旦大きく飛び退き離れるしかなかった。
「ふふん、すり抜け様になんか銃を撃ったみたいだけど、あたしの自慢のカッコいいドラゴンはそんなの効かないんだから!ドラゴン!もう一発!」
 今度はドラゴンから、先の雷と炎の混ざったブレスがマキナに放たれようとする。
 だが。
「グ……ォォォ……ォオ!?」
 ドラゴンはその場でのたうち回り、苦しみだした。
「ちょ、ちょっと、ドラゴ…ン…っ!?」
「やれやれ。あまりに見苦しくなるから使わないと決めていたが、ドラゴン相手ならまだいいかな。」
 マキナが放っていたのは銃弾だけではなかった。
 出そうとして隠していた猛毒の短剣『ヒュドラの牙』をドラゴンの喉元に投げ刺していたのだ。
 泡を吹き、悲しそうな顔をして、「どうして…」と言わんばかりの哀愁と助けの目をステラにくべるドラゴン。
「ち……違っ……あたしそんなつもりじゃ……」
 ドラゴンは絶命した。狼狽えて隙ができたステラへの好機を見逃さないマキナではなかった。
「『スペクテイター』!」
 密かに距離を詰めていた、マキナのメイド人形が大鎌を振りかぶりステラを襲う!
「う、うわああっ!」
 だが強力な金属音と共に鎌の斬撃は相殺される。
「あ、ありがとう!……っふっふーん、どうよ!あたしまだまだいけるんだから!」
 そこには、槍が!
 それも今しがたこっそり後ろから酒場の客が渡した、新しいドラゴンの槍が!
「何本もあるのかい?厄介だね。」
 だがマキナもこの隙にステラを射程範囲にとどめる程の間合いに近づいた。

「本当は説教の一つでもしたほうがいいんだろうけど、残念ながら私はそこまで弁が立つほうじゃないからね。」
 マキナとメイド人形は、銃と大鎌で、オブリビオンの力か高速で槍を振り回すステラと何度も打ち合い、追い詰める。
「なっ……何よ何よ!仲良しで、ムカつく!」
「そんな事言うなら、君もそっちの人達と連携して来たらどうだい?」
「挑発して!そんなのあたしが許さない!超絶可愛いあたしが!自分の手で壊さないと!」
「そう?さっきはブリザードの力を借りたのに。」
「あっ」
 隙が出来た。
 それを何とか見繕おうとステラが横なぎに槍を振るう。
 だが打ち合おうとしたメイド人形は一瞬後ろへ引いてフェイント、その際に追撃しようとしてくるマキナの銃撃を慌てて槍ではじく。
 否、銃撃ではない。地面の石を跳ね上げたのだ。火花が散り、反射的に目を閉じるステラ。
「うっ…どこ、どこよ!」
「ここさ」
 後ろに回ったマキナからの。
「ぎゃん!!?」
 拳銃『フィニッシャー』によるグリップハンマーの一撃を脳天に喰らわせた!
「げんこつ一発。まだまだ、もう一撃――」
 放とうとした際、それは空を切る。
 代わり、目の前にドラゴンの頭が見える!
「『スペクテイター』!んっっ!」
 槍を変化させたドラゴンのブレスをもろに喰らい、転げ回って消火するマキナ。
 その間に大鎌を持ったメイド人形が、ドラゴンの首を斬り裂いて消滅させ、追撃は事なきを得た。
 ステラは、どこに?
 ふと空を見上げた。上空にいた。
「やってくれるじゃない……!」
 ステラは槍を地面に突き刺して捨て、魔法金属の浮遊ドローンに掴まって上空へ避難していたのだ。
 その目には涙を浮かべている。頭にこぶができる程の痛みを、嫉妬の力でやせ我慢しているようだ。

「どうして中々、お嬢さんのなりでそこまでやるか。」
「でっしょー!もっと褒めてもいいのよ!このドラゴンの槍、ここまで集めて使いこなすのに苦労したんだか……うわっと!」

 げんこつは一発食らわせた。だが作戦の範疇外の事を何度も喰らわされてしまった。
 間合いを取ってドローンから落ちたステラは、次なる猟兵の攻撃に対応せんと動き始めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

村崎・ゆかり
同行:アイシャ・ソルラフィス(f06524)

あなた、見た顔ね。確か二回くらい。今のあなたにとっては初見だろうけど。
覚えておけとは言わないわ。だって、あなたはこれから、骸の海の底に沈むのだもの。

ここまできたら、もう絶陣を張るまでもない。あなたの相手なら、これで十分よ。
「高速詠唱」で不動金縛り法。槍を投げてくる前に、羂索で縛り上げる。もし先手を取られて槍が投げつけられても、薙刀で叩き落とす。
後は、縛り上げたステラを、薙刀で「貫通攻撃」「串刺し」よ。

最後の仕上げはリサに任せるわ。しっかり片を付けてちょうだい。この世界に二度と顕現しないようにしてやって。

補助ありがと、アイシャ。森も静かになったわね。


アイシャ・ソルラフィス
ゆかりさん(f01658)と一緒に行動します

……うわぁ。嫉妬って怖っ……
オブリビオンだからしょうがないかもしれないけれど、ここまで嫉妬に狂うと哀しいね
だけれどその嫉妬、ここで終わりにしてもらうね!

《全力魔法》と《属性攻撃》を組み合わせて『精霊魔法』として、枝や蔦とかを操作してステラさんを拘束
さらにボクのユベコでゆかりさんの[不動金縛り法]を強化します
とどめはリサさんだね! お願いします!!

あとはステラさんはなんか無差別に森を攻撃しそうな雰囲気だから、《全力魔法》や《盾受け》などを組み合わせて『魔法障壁』として展開し、自分自身と森を守るよう防御します



●交錯し交差する、私達の戦い
「……うわぁ。嫉妬って怖っ……」
 アイシャはドン引いた。
「オブリビオンだからしょうがないかもしれないけれど、ここまで嫉妬に狂うと哀しいね。だけれどその嫉妬、ここで終わりにしてもらうね!」
 イルミンスールの杖を構え、聖なる力を籠めるアイシャ。
「あなた見た顔ね。確か二回くらい。今のあなたにとっては初見だろうけど。」
「は?何よそれ」
 ゆかりは宿縁があるわけではないが、これまでにステラと2回戦い、倒していた。
 苛立つステラにゆかりが薙刀を構える。
「覚えておけとは言わないわ。だって、あなたはこれから、骸の海の底に沈むのだもの。」

「良く分かんないけどさっきの紙からビーム出した人間ね!許さないわ。私よりすごいのを持って!」
 開口一投、龍の槍が投げられるが。
「もう絶陣を張るまでもない。あなたの相手はこれで十分よ。」
 ゆかりの生み出した羂索(独鈷とかいう槍の穂を付けた縄)が、槍を絡め取り。
「まだよ!あっ!?」
 ドラゴンに変化しようとした所を薙刀で叩き伏せられてしまう。
 更に羂索はステラへと伸び、その身体を絡め取る。
『ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン……』
「うっ!何これ!?ちょっ動けな……嫌!たっ助けてえぇ!」
 柄にもない悲鳴をあげてもがくステラ。
「さてと、とりあえず一発串刺しに」
「大丈夫かステラちゃん!」
 そうしようとした矢先、なんと冒険者が飛び出てきた。
 先の酒場の取り巻き達だ。
 彼らはせめてもの手助けをと剣で羂索を切り落とし、身を引かせてステラに間合いを取らせる。
「あっあんたたち!」
「見てろって言われたけど、流石に負けそうな所は見られねぇぜ!」
「頑張れ!応援してるぞ!」
 手を振りながら新しい龍の槍を渡し、見えない所にまで退散していく冒険者。

「さあ仕切り直しよ!あんたの攻撃は今ので大体分かったんだから!ぶっ潰してやるわ!」
「厄介ね。見た所オブリビオンでもないし。」
 冒険者達は見えない所に退散したが、見えてるのだろう。
 ステラが放った魔法金属製のあの「ドローン」とかいうので、逐一情報を流しているのだ。

「アイシャ、手はず通り協力していくわよ。……アイシャ?」
「あ、あ、あああ……!」
 ふとゆかりは慌てるアイシャを見た。そしてアイシャのはるか後方も見た。
 森が、燃えている。
「しまった、まだそんなに仕掛けてないつもりだったけど。」
 交戦すればするほど、どこかしらで火花が散り、どこかの木々に火が移る。
 徐々に徐々に蓄積された火が、爆発するように再び森を炎に包もうとしている。

「ごめんなさい!一旦」
「わかってる。消火活動に専念して。ステラの方は、何とかしてみる。」
 イルミンスールの杖を地面に着けてひっかきながらアイシャは燃える木々に向かった。


「樹よ、大地よ…」
 イルミンスール。
 アイシャの手に持つこの杖もまた、世界樹の枝から取ったもの。
 これを地面に着け、詠唱する。
「少しの間ボクに、力を貸して……!」
 地面から蔦や枝を急成長して伸びる。
 炎の木々を包み込むように、新たな太い木々が覆わんとする。
 だが、覆った所から更に燃え広がった。
「そ、そんな!!」
 ふとアイシャは、鼻に通る刺激臭を感じた。
 油だ!
「っ、分かった。燃えやすいだけじゃなくて、木の一つ一つに油が沢山入ってるんだ!どうしよう……。」


「なんだか良く分かんないけど、また森が燃えてる……。」
「そうね。」
 しゃん。
「そっか。この森が燃えたのってあんた達の仕業ね。それは好都合。あんたたちをぶっ潰して、ついでに潰れたエルフの森もあたしのものにしてやる!」
「そううまく行くかしら。」
 しゃん。
「あんたのお友達は無謀にも火の中に入っていったわ。あのまま焼け死ぬんじゃない?助けに行かなくていいの?」
「そんなにヤワな娘じゃないわよ。それに。」
 しゃん。
 薙刀が錫杖の如く鳴り響く。
 気が付くとゆかりは巫女服を纏い、薙刀の他に神楽鈴を手にしていた。
「あなたの相手は私。……冒険者がファンみたいについて回るなら、2回目の時の手で行ってみましょう。」

『神霊顕現 巫覡載霊の舞』

 ――しゃん。
 燃え盛る炎の森をバックに、ゆかりが舞う。
 薙刀を振るい、鈴を鳴らして、優雅にして繊細、神秘の籠る、巫女の舞。

「な、なによ急に。頭おかしくなった?」

 ――しゃん。
 時が鈍化し、炎が揺らめく。
 この場のドローンがステラでなく、広々と空を映す炎の平原で、静かに回り、振るい、音も無く跳ねる、ゆかりに映像が行ってしまう。

「っ……こんな……の……」
「き……綺麗だ……」
「あっ!?」
 ふと気が付くとステラの横で冒険者達が、ゆかりの方に目を奪われていた。
 咄嗟に映してしまったゆかりの行う、陽炎の如き静寂の神楽舞に、興味をひかれている。
「あ、あんた達……忘れたの!?一番はあたし!かわいいは!」
「「「ステラ様!」」」
「だけど……ああ、だ、だけど、あの娘は、また別に見える!」
「はぁ!?」
「ステラ様が可愛くて聡明な方であれば、あの方は綺麗で優雅……別方面の凄さが!」
「ど、どっちも倒れて欲しくない……!」
「俺達は、どっちを応援すればいいんだ……!」
 困惑する。冒険者達は、今やステラの味方だけをする状態から傾きつつあった。

「あ、あんな舞一つで……!そんなのあたしにだって!」
 するとステラは冒険者カバンから、なにがかと器具を取り出していく。
 魔法金属で出来たマイクや、マイクスタンド、そして巨大な箱がいくつか。
「ど、どこからそんなものが!?」
 それはキマイラフューチャーなどで見かけるスピーカーの様だった。
 更に魔法金属で出来た弦楽器……エレキギターのようなものまで取り出した。
「綺麗で、優雅ね。だったらそれを超えるあたしのかわいさを見せてやるまで!ここで食い下がれるものですか!」


「何かないかな、何かないかな……。」
 アイシャは持てる精霊の力を万象に頼み込み、どうにかして火を消そうとする。
 さっきの要領で、水と土の精霊さん、お願い!
 地面が盛り上がり、湿った土が泥の様になり、沢山の木々を包み込んで、泥の木として消火していく。
 しかし一部の木は勢いが強く、乾燥してひび割れた泥の中から炎が漏れて吹き出てくる。
「うわっ!」
 魔法障壁を咄嗟に張って炎から自身を守るも、その間にどんどんと炎が燃え広がっていく。

「こ、このままじゃ……!」
 アイシャは諦めない。
 地から取り出したイルミンスールの杖を、ぐっと掴み、祈る。
 何度も、何度も、強く、強く。
「お願い。このままじゃ、森が、皆が、いなくなっちゃう。誰か力を貸して……イルミンスール……大樹の精霊……神様……尚くん……!」
 その時、聖痕が一層輝いた。

 目の前に、巨大な木が見えた、様な気した。
「これ、って……。」
 全てを包み込む様な暖かさ、神羅万象に居るだけで触れ続けているかの様な感覚。
 アイシャの想いを受け入れるかの様に、強い光が木から放たれ、包み込んでいく。

 エルフの森が、伸びだした。
 ただ包むだけでは意味が無いからと、更に巨大で、麗しく、神秘的に光り輝く世界樹の様な巨大な木が。
 燃え盛る木々を次々と飲み込んで、寒き土地など関係なしに潤いを保ち、ぐんぐんと育っていく。

 大樹に包み込まれ、酸素の消えた炎達は、次々と消えた。
 後には一層大きくなったエルフの森があるばかり。


「あたしはステラ!あたしは!」
「「すごい!」」
「あたしは!」
「「かわいい!」」
 戦場広間はライブをするかのような熱狂に包まれていた。
 ギター片手に必死で歌い、神楽舞のゆかりの気をひこうとするステラ。

 ――しゃん。
 ――しゃん。
 空の揺らめきに合わせるように、ただひたすら優雅に揺れ動く、ゆかりの神楽舞。
 それらは全て魔法金属のドローンがスキャンし、巨大な映像としてエルフの森に映し出された。
「ああ、もう、らちが明かない、わねっ!」
 突如ギターを投げ捨てて、ステラが龍の槍を手にした。

 ――しゃん。
 それに応じるかの様に、ゆかりが神楽鈴を付けた薙刀を振るい、切り払っていなす。

 切り結ぶ。
 切り結ぶ。

 鈴の音と、金属音と、燃え盛る熱狂の戦場。
「お、おい、見て見ろよあれ……!」
 冒険者の一人が指さした。
 ゆかりの背後とステラの背後に、オーラ的なものが見えたのだ。

 それはただの幻覚ではない。どちらも更なる一手を行う為に、槍と薙刀で切り結びながら準備していたものだ。

 ステラの側には先程よりもさらに増えたドローンが。
 それは何やら魔法の光を蓄え、レーザーを撃ちださんとするかのよう。
 そんな機械に囲まれて踊る様に戦う彼女は、可愛さと無邪気さ、冷酷さを掛け合わせた機械の姫様の様だった。

 ゆかりの背後には無数の白い札が、等間隔に宙に並べられる。
 先の十絶陣を彷彿とさせる、光を放ちそうな札による列陣。
 その様子は遠くから見た冒険者にとっては、神殿の様にも見えた。
 ゆかりはまるで白き札の神前にて、舞い踊り、森を守らんとする巫女の様に……。

 両者拮抗し、更なる光の戦火が上がろうとした、その時である。
「あっ!?薙刀を振ってる方!何か出てき……か、……神……!?」
 突如、全てを飲み込まんとする、大樹の女神のような光の幻覚がゆかりの背後に立ち上がったのだ。
「な……何よそれ。本当に神様でも顕現したって――。」

「ごめん、待たせたよ!」
 その力の主はゆかりの後ろでぴょこっと現れた。
 アイシャだ。
「――ああ、分かるわ。森が静かになったわね。アイシャ。」
 ゆかりはここで、後ろに舞っていた白札を、取り止め、消した。
「えっ、何で……あっ!?」
 そんな事をしたら、こちらのドローンに取り付けた、最新鋭の魔導レーザー(ドワーフ製)で撃ち貫くだけなのに。
 そう思った時には遅い。
 ゆかりは取り消した白札の一つを手に取り、再び輝く羂索に変化して、ステラに投げ入れたのだ。
「しまっ……!」
『ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン』
 羂索が再びステラに巻き付いていく。
「ちょ、ちょっとあんた達!早く手を貸し……」
「い、いや。」
「やっぱり俺達、こんなもの見せられたら、攻撃出来ない……!」
「ご、ごめーん!」
 冒険者達は何か悪い事をしてしまったかの様に、一目散に逃げだしていった!
「ちょ、ちょっとー!……ま、まだよ。残ったこの槍をこうすれば」
 巻き付いて痺れかかる体で、ステラは槍を地面に突き刺す。
 と同時に槍がドラゴンの姿をとり、ステラに巻き付いた羂索を爪で切り裂かんと。
「だめーっ!」
「うぐううぅぅ!!?」
「ゴアアァァァ!!?」
 アイシャがイルミンスールの杖に祈りを込めると、羂索が強く光り出す!
 強化された羂索が辺りに電撃を放ち、ドローンを破壊して落とし、ドラゴンを消滅させていく。
「う……うぐ……そんな……そんな……!」
「補助ありがと、アイシャ。さてと。」
 ゆっくりとゆかりがステラに近づいていく。
「う……うう……友達もいなくなっちゃった……ドローンも……ど、どうして……わ、わたし、弱いの……?」
「まあ、あなたがどういう人かって、嫉妬ばかりする迷惑な奴としかこちらも認識してないんだけど……。」
「う、わっ!」
 ゆかりが薙刀で器用にステラの服を突き刺し、抵抗もできぬまま中吊りにし。
「強いか弱いかは関係ない。ここで骸の海に沈み、なさい!」
 ぶんと、明後日の方へとステラを投げつけていった。

「えっ、ゆかりさん!?」
「アイシャ、ここで私達がとどめを刺すわけにはいかないわ。」
 ゆかりは一仕事終えたかの様に札をしまっていく。
「え、なんで?」
「彼女と縁がある人、来てるみたい。これで3度邂逅したけど、ここで年貢を納めてもらうわ。」
「それって……!」
 縛られたステラがもがき飛んだ先。そこから芋煮の匂いが漂ってくる。
 4人の人影が、そこで彼女を待ち受けていた。


「最後の仕上げは任せたわ。しっかり片を付けてちょうだい。リサ。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リサ・ムーンリッド
【芋煮艇】
【言いくるめ】と【ブームの仕掛け人】で嫉妬心を煽りながら、UCでお金を生む意味の錬金術でもやろう
ききんさんとルエリラさんを【薬品調合】や【料理】の技能で手伝いつつ、二人が用意したものを支援金を募る名目で販売
A&W製なのか気になるので、ドローンも一つ【取引】として要求

そして、なんと自分の武器で傷つかなくなる不思議な指輪!と、刃先が引っ込む玩具のナイフで実演しながら玩具の指輪も売りつける
試してみようと自分に槍をぶつけたら自分を対象にドラゴンが出てきて自滅するはずだ

追加の反撃用ドラゴンを出されても、そっちはエリカさんが対策してくれるっぽいし騙されて出した方のドラゴンにやられてもらおう


暁・エリカ
【芋煮艇】

欲しがりさんなのかい?この子達はダメだけど召喚術のやり方を教えてあげよう
陰陽術の方式でいいかな?

五芒星をこの通り地面に正しく、綺麗に書く
五芒星は力の循環を意味し地面に描く事で…上手く書けない?そういう時はこの召喚用の陰陽符を代わりに置いておく
そして呪文を唱える、呼びたい式神の名前を唱えて最後に急急如律令…がやりやすいかな

因みに私はこうやる…こゃーん…こゃーん…
すると何処からか大量に【狐達】がこゃんこゃんと出てくる
ただこの子達は悪戯大好きで…ステラさんが埋もれた
召喚ドラゴンもおしくらまんじゅうされてるな、まあ動きが止められたから良いか

…こら狐たち、芋煮を食べるのは終わってからだ


甘甘・ききん
【芋煮艇】

助かった、毛皮をよこせって言われなくて良かった。わたしの毛皮は一品物の最高級品だからな。なに葉っぱ?どうぞどうぞつまらないものですが。帰りにまたむしればいいしね!

こっちはエルフ謹製の粉末タイプの葉っぱで純度百パー!紙を巻いた筒等で鼻からお吸い下さい。トぶぜぇ~
こっちの生タイプはコリに効く!薬事法OKな表現です。背中や腰に貼り付けてお使い下さい。粘着って書いておいた(UC)ので不思議な狐パワーでベタッとくっつきます。二度と剥がれないくらいになぁ~

欲しがりガールもドラゴンも聖なる力で行動不能にしてやんよぉ~。でもわたしも触ると痺れるから慎重に扱わないとふぇぷしっ。あっあっ粉が粉がへくしっ


ルエリラ・ルエラ
【芋煮艇】
すごい?かわいい?どうやら私を呼んだようだね。そう、芋煮艇1…いや、全世界一可愛い美少女の私を!
それはさておき私は感動した!嫉妬しながらも自分で芋煮を作る姿やレシピが欲しいと嘆く姿に
でもレシピは私の頭の中にしかないんだ。めんご。でもそんなものなくてもステラは立派な芋煮職人になれるよ

というわけで、特別に美味しい芋煮をご馳走してあげよう。私は寛大だから味を盗むのはどんどんやってほしい
ヘイ、カモン芋煮!ゴー【芋煮ビット】!今回はご当地食材?聖なる葉っぱも入った特別製だよ
ほーらほら、たーんとお食べー(ダバァ)しっかり食べて美味しい芋煮を作れるようになってほしい。ついでにききんにもダバァ!



●飛ばされた先で
「きゃあっ!」
 ステラは縛られたまま森の一角に投げ飛ばされ、落ちた。
「何なのよ、何なのよ……うわ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!」
 そしてついに泣き出した。
 もがきながら痺れ、ダメージを受ける羂索(※5色の糸で編まれた縄)を、何とか振りほどく。
 しかし周りに4人程の猟兵の気配を感じたステラは、急いで反撃の準備を整えようとする。
「ムカつく、ムカつく、ムカつく……凄くてかわいいこのあたしが、どうして、どうしてこんな目に……!」
 嫉妬の迷惑人、ステラはもう戦う意思より、反撃して生き延びる方針に心が向かおうとしていた。
 涙目で必死にカバンの中を漁る。
 これまでの戦いで取り巻きも逃げた。ドローンも大破した。
 あと、ステラに残っているものは……。

「ドラゴンの槍と……」
「ドラゴンの槍と……」
「ドラゴンの槍と……」
「ドラゴンの槍……!」

 ドラゴンの槍しかない!
「なんでこんなに余ってるのよこの槍!?というかあたしの取り巻きそれ以外の全部持ってったの!?ふざけないでよ!?」
 槍な上にドラゴンを秘めているこの武器は重く、かさばり、持ち運びには辛い。これだけ置いていくのも無理はないだろう。
「もういい、もういい!ここよく燃えるし腹いせに火を付けながら……今日はもう帰ろ……。」
 悲観に包まれたステラはその時、4人の猟兵に囲まれている事をふと忘れ。
「お困りの様ですな。」
「え?うわきゃあぁ!!」
 もう目と鼻の先で【芋煮の鍋】を用意している彼女らに気づくのが遅れてしまった。

 そう、お分かりだろう。エルフだ。エルフと狐だ。
 先程の【芋煮会】……失礼した。旅団【芋煮艇】のメンバーだ。

「どうやら私を呼んだようだね。」
 ぐつぐつ煮える芋煮を抱えながら青い髪のエルフが言葉を発する。
「え?いや呼んでない」
「そう、芋煮艇一…いや、全世界一可愛い美少女の私を!」
「いや呼んでないし!?というか世界一可愛いのはあたしよ!?」
「それはさておき私は感動した。先程嫉妬しながらも自分で芋煮を作る姿やレシピが欲しいと嘆く姿をばっちりサメビデオ(※サメ型の小型ビデオカメラ)に録画しておいた。」
「いつの間に!?いやサメビデオって何!?」
「でもレシピは私の頭の中にしかないんだ。めんご。でもそんなものなくてもステラは立派な芋煮職人になれるから。」
 だから、と。

「私達の芋煮レクチャー&ショッピングを受けるが良い」
「芋煮レクチャーと芋煮ショッピング……!?」
 こうして最終決戦は不穏なTV番組の体でやってきたのだった。

●スーパー芋煮レクチャータイム(狐もいるよ)
「まずは私から、取れないレシピは盗むが良い。特別に美味しい芋煮をご馳走してあげよう。」
 するとルエリラの背後から夥しい数の芋煮がどこからともなく飛んできた。
「うわっ!さっきの……ちょっと多い多い多い!!」
「たーんと、お食べ。」
「ぎゃああぁぁ!?」
 何故かルエリラに口を開けられダバダバと芋煮を入れられるステラ。
「しっかり食べて美味しい芋煮を作れるようになって欲しい」
「あっ熱……味が!あひが!ひた……はわばばばば!?」
 芋煮が熱すぎて美味しさが良く分からない。

「おっと待ちなそこの芋エルフ。」
 止めたのは第二の刺客、狐のききんだ。
「隠し味を忘れてるぜぇ~?こいつを投入すれば熱くてもイチコロよ。」
 芋煮に先程手に入れた聖なる葉、それを粉状にしたものを混入していく。
「ひ、いや、それ確かめっちゃバチバチする……あわばばば!?」
 それをルエリラは特に気にする事もなく、聖なる葉を薬味にした芋煮をドバドバとステラの口に流し込んでいく。

「こちらはエルフ謹製の粉末タイプの葉っぱで純度百パー!できれば芋煮でなく紙を巻いた筒等で鼻からお吸い下さい。トぶぜぇ~?」
 既に場は地獄の芋煮流しパーティーと化している中で、両手に聖なる葉っぱを掲げたききんが淡々と商品説明を続ける。
「こっちの生タイプはコリに効く!(薬事法OKな表現です。)背中や腰に貼り付けてお使い下さい。ささどうぞどうぞ。とりあえず試用してごらん?1度くらいはサービスするよ?sir(さあ)」
「ぐっ……けほっ……」
 ききんが二足歩行で近寄り、ステラの後ろから聖なる葉を貼り付けようとする。
 その葉にはマジックみたいな文字の印で「粘着」と書かれている。この狐のユーベルコードである。
(くっくっく……粘着って書いておいた(UC)の不思議な狐パワーで欲しがりガールの背中にベタッとくっつけば、もう二度と剥がれねぇや。バチバチして踊(ダンス)る姿をこのわたしに見せなぁ~!)
 しかしその時である、だばだばと雑に零れる芋煮からの葉っぱ粉が、ききんの鼻をくすぐった。
「あっ粉がふぇぷしっ。あっあっ粉が粉がへくしっ」
 くしゃみの反動で前足に持った聖なる葉が落ち、風に揺れてききんのお腹に張り付いてしまう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
 貼りついた聖なる葉の力で転がるききん!
「だれか、だれかとってえ゛え゛え゛え゛!」
「芋煮」
 ルエリラがききんを芋煮鍋で掬う!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「これは狐入りの芋煮。臭みをそれなりに美味しい。これもしっかり食べて役立てて欲しい」
「いや生よねそれ!?っていうかあんたの仲間じゃ……えっ何大丈夫なの!?」
「へっ……そこのわんぱくワント(欲しがり)ガール……君がわたしを必要としなくて本当によかった……狐の毛皮を寄越せと言わなくて……。」
 何か霞んでそうな細目で鍋の中からききんがステラを見る。
「わたしの毛皮は一品物の最高級品だからな……聖なるリーフよりよっぽど価値が。」
「あ、いや、あんたの毛皮はいいや。」
「」
「もう芋煮漬けで台無しだし……なんか臭そうだし……。」
「ほあぁぁぁ!?ちょっと聞きましたか奥さん今聞き捨てならない事を」
「芋煮」
「ほ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
 追い打ちで芋煮を流し込まれるききん。
「あと、さっきエルフの人が『もうこれ以上葉っぱ渡せない』とか言ってた」
 横からにゅっと顔を出す銀髪妖狐のエリカ。
「そこの迷惑少女さんを撃退するために特別2枚程とかで、普段は軽く渡しちゃだめって」
「え、ちょ、聞いてないんですけど!!粉末にお腹のあっ芋煮でふやけてきた……これもう全部使っちゃったんですけど!やめてよぉ~そんなあと出しで言うのほんとにも~。ちくそうもう薬味として使えないじゃん。こうなったら帰り時にこっそりもう数枚ギるか」
「芋煮」
「ほ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
 追い打ちで芋煮を流し込まれるききん。
「さあ良い狐の出汁が取れたよ。飲んで」
「えっ今のフリでとか絶対いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
 有無を言わさず芋煮で拘束され、狐の出汁と葉入りの芋煮を流し込まれるステラ。


「次は私かな?」
「げほっ…えっ、何……」
 あまりのカオスさに忘れそうになったがどうも今は次々と芋煮艇の商品紹介を受ける流れの様だ。狐の次は金髪のエルフがやって来た。
 しかし何だろう。矢継ぎ早に現れた次の刺客であるこの金髪エルフ。何かすっごい心根に引っかかるのだけど。
 具体的には……過去に何か因縁なかった……?
 宿敵的な……関係性とかなかった……?

 疑問に思うばかりのステラだが、当のリサ、実はなんとも思っていない。
 『嫉妬』のステラは7つの大罪を模した世界の迷惑人オブリビオン。
 リサも含めて、各々が各々で各地でドタバタを起こす存在。
 ……ただ気質が似ていて、彼女が騒動に加わればここで消える運命にある、それだけの関係なのだ。
 先の黒髪の猟兵殿には申し訳ないが。本当に申し訳ないが。

「さあさあこの私が取り出したるは、なんと自分の武器で傷つかなくなる不思議な指輪!」
「えっ、嘘、そんなのあるの!?」
「あるのだよー。ちょっと実演してみよう」
 そう言うとリサは指輪を付けて、自身の手にその場にあったナイフを突き刺す。
 その手は全く傷が付いていない切れていない。
「くっ……でも、こんなところでそんな物手に入れた所で。」
「いやいや、実に有用な物だよ。これを使えばそこの槍を自分に突き刺して自由に使役できるドラゴンも使えるよ!」
 ふとステラは地面のものを見やる。
 残り4本のドラゴンの槍を、投擲でなく自身に使えば。
「自分にドラゴンの力を取り込んで超パワーアップ、してみたくないかな?」
「こっ心を見透かさないでよ!でも、うん……本当にいいの?急に美味い話が飛んできたわね?」
「先のルエリラさんが芋煮だから戸惑ったと思うけど、もう私達に敵対の意志はないよ。思う存分ショッピングして欲しい。」

「ね、値段はどのくらい?」
「このくらいは」
 リサが言いくるめる様に値段表を見せる。
 指輪1つにしてはやや高めのものだ。
「うっ……今、あんまりない……。」
 ステラのその言葉を聞いてリサはにやりと微笑む。
「ではでは、先程使ってたドローンと交換で如何かな?おひとつだけで十分だよ。」
「ドローン?……残骸になってるけど、良いの?」
「おっと!?(……後で調べるだけ調べてみるか……)いいともいいとも。これで取引成立だね。」
 ステラは壊れたドローンを何とか1つ持ってきて、ドローン1つと、リサの指輪が交換された。


「最後は私だね。召喚術を教えてあげよう。陰陽術方式でいいかな?」
 そこには先程もにゅっと顔を出していた銀の妖狐、エリカがいた。
 今のセリフ通り、最後の刺客の様だ。
 エリカは筆を取り出し、膝を着いて地面に筆を向ける。
「五芒星をこの通り地面に正しく、綺麗に書く……。」
「え、えっと、こう……?」
「五芒星は力の循環を意味し地面に描く事で…上手く書けてないな。」
 そこにはよれよれの五芒星が地面に描かれていた。
「仕方ない、この召喚用陰陽符を代わりに置いておこう。そして呪文を唱える。」
 陰陽的な札を置くと。
「呼びたい式神の名前を唱えて、最後にこう叫ぶ。急急如律令……。」
「ふうん、へえ。地面を書くとか言った所でちょっと意味が分からなかったけど、そういう事ね?試しにドラゴンを呼んでみるわ!」
 ステラが呪文を唱え、急急如律令を言おうとした時。
「因みに私はこうやる…こゃーん…こゃーん…」
「へ?う、わっ!?」
 こゃーん。
 こゃーん。
 ステラが唱え終わる前に、どこからともなく大量の狐が出てくる。
 こゃん。
 こゃん。
 こゃっこここここゃゃゃゃ。
「む、むぎゅう!?」
「ただこの子達は悪戯大好きで…ステラさんが埋もれた」
 そう言い終える前にステラは大量の狐におしくらまんじゅうされていった。
「わ、わひゃひ!?狐が、狐が服の中に!」
「ああ、仲良くなってるようで何よりだ。」

「…それで、これ、どうかな?陰陽符と召喚法。セットでもう1ドローンつけたお値段、でいいかな。」
「……ふざけないで。」
 埋もれた狐達の中から声がした。
「さっきの狐は毛皮がどうとか言ってたけど、あたしが羨ましかったのは……」
 狐達の中から手が出てくる。
「そんな特別なものを、あたしをのけものにして、あんた達だけのうのうと手に入れてたのが許せないのよ……!」
 必死の力で剥いでて、懐からドローンをぶん投げるステラ。
「おっと」
 びっくりするもなんとかドローンをキャッチするエリカ。
「召喚法ありがとう。そっちの指輪もありがとう。でも、憎いわ。羨ましいわ。あたし、あたし、今どうしようもなく『嫉妬』しているの!」
「どうしてあんた達ばっかり、そんなすごいもの、持ってるのよーっ!」
 狐を跳ねのけ、ステラが激高する!

「これだけのものが手に入ったんだから、同じものを持ってる、同じもので輝いてるあんた達なんていらない!壊れろ!壊れてしまえ!」
 ステラが手にドラゴンの槍を持って突撃を仕掛けてくる!

●嫉妬との決着は、既に。
「第一陣吹き飛ばされたか。続いて第二陣…こゃーん…こゃーん…」
 エリカが再び狐達を召喚する。
 しかし彼らは一目散にルエリラの方へと駆けて行ってしまう。
「…こら狐たち、芋煮を食べるのは終わってから…ああもう」
 第一陣の向かって来る狐達を跳ね飛ばしながら、ステラが目指しているのはルエリラだ。
「ひええ、怒ってますぜ旦那ぁ~。ルエリラ君何か策はあるの策は」
 芋煮鍋の中でいつの間にか寛いでるききん。
「うん?策というかもう手は……いやまあ、芋煮を食べさせるだけだよ。」
 芋煮を構えるルエリラ。

「その芋煮、ムカつくのよ。あたしの芋煮だけで世界は十分!」
 ステラは芋煮に対し、飛び上がると、自身のお腹にドラゴンの槍を突き刺した!
「今しがた手に入れた指輪の力でドラゴンになって!あんたの芋煮は全て焼き尽くし……てっ……かはっ……!?」
 血反吐を放つステラ。
 ドラゴンの槍はざっくりとダメージを与え、ステラの腹を貫通していた。
「……どう……いう……。」
 ステラは空中で、おぼろげにリサを、見やった。

 てへ☆という声が聞こえそうな顔をして
 そこには先程のナイフで自身の手を突き刺すリサ。
 そのナイフは当たる前に刃が引っ込んでいた。
「……だ……騙しっ……!」

 ステラの宿敵、リサ。
 そうだ。彼女もまた、錬金術と口八丁で嵐を巻き起こす、A&Wのエルフ。
 そうだ、そうなのだ。他の者達をこれからやけくそでよしんば何とかできたとしても。
 それを挫いて引っかける、彼女こそが、一番の――。

 ステラは地に落ちた。生まれたドラゴンと共に。
「い……いやだ……。」
 ドラゴンは刺された者に対して敵意を放つ。
「ごめんね。芋煮もまた生者(サバイバー)の道……」
 ルエリラらしき声が聞こえた気がした。
「こ…んな……欲しかったものに騙されて……今まで手にしたものに……やられるとか……やめ……」
 ドラゴンの炎が、ステラの全身を焼き尽くす。
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!」
 涙をこぼしながら、灰になるでなく、光となって、全身が消えていく。
 純粋な人でなく、過去の骸(オブリビオン)であったが故に。
「もっと、もっと、あたし、欲しいものが、あっ――。」


 エルフの森は焼けた。
「「「「あっ」」」」
 最後のドラゴンの炎は、ステラの怒りを買って、燃えやすい木から木へと次々に燃え移り、円陣を描きエルフの森を焼いていく。
 猟兵達は時に芋煮を使いながら、消火活動へと赴いていく事になる。

 だが、もうこの地で火を放つ者はいなくなった。
 聖なる葉に嫉妬をする者も、いざこざを起こす笛の音も消えた。
「魔法金属のドローンかぁ……A&W製ぽいね。ドワーフが作ったって言ってたけど、気になるねぇ」
「その金属使って新しい芋煮鍋とか作れる?」
「それはちょっとわかんないなぁ。

 エルフ達は火を消していく猟兵達に次々とお礼を言う。
「もう燃えない様に対策をしておきなさい?」
 等という声も上がったが、それが成されたかどうか確認する前に猟兵達は帰還した。

 数日後の事である。
 エルフの森で、芋を煮た料理が流行り出したのは。
 この地を救った英雄達の料理として。
 今度は森を焼かないように、繊細な火加減を用いながら。

 その世界に、嫉妬の少女の怨念が火をつける事は、もう、なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月09日
宿敵 『『嫉妬』のステラ』 を撃破!


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#戦後
#エルフの森


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リサ・ムーンリッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト