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塁上の星

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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 荒々しさがありながらも、整理が行き届いた広い空間があった。
 空間は乾いた地面が剥き出しだが、周囲は壁に囲まれているようで、外の強風は内部にたどり着けなかった。
 砦の中の広場だった。
「――!!」
 割れんばかりの音が会場となった広場に走った。
 大気を震わせるほどの声と、手の打つ音。その合わさりを喝采と言う。
 しかし、広場ではまだ何も始まってはいなかった。
「…………」
 強いて言うなら、一人の軍服姿が壇上に上がっただけだ。その軍人も何も言葉を発していない。
 それなのに部下は熱狂の渦に包まれていた。否、麓にある街も、もっと離れた街もだ。この国の全てが不夜城となっていた。
 まるで自分達の前にいる人物が、必ずこちらに応えを与えてくれると知っているように。
 結果を称えるのではなく、期待が爆発しているのだ。
 そんな突風にも似た感情ははっきりとした言葉になる。
「さあ、将軍!」
 将軍。そう呼ばれた老兵が、口を開いた。
「――――」
 言う。


『今一度、我が国家L.S.の国歌を思い出してほしい。……そうだ、あの詩の通りである。一人の詩人が見た景色を記した詩の通りなのだ。――我らと、星の関係は』
 その中継を見て、L.S.の大統領は絶句していた。
『我らが貴ぶ星はただ一つ。砦の上に、自由の力と勇者が立てた星だけである。
 決して、“殲禍炎剣”などというまやかしの星ではない』
 己すら与り知らぬこの軍事的な周回は、一刻も早く阻止せねばならないと大統領は解っていた。
「……!」
 だが、中継画面とは別の画面、大統領の命を受けた特殊部隊を示す光点は今、最後の一つが消えたところだった。
 同時。
『――――』
 老兵の背後で赤いキャバリアが身を起こした。頑強で高火力なその姿はL.S.キャバリアの典型とも言える存在だ。
 要塞のようなその赤いキャバリアは、通常であればその背に巨砲を背負っているはずだが、違った。
 今、その背にあるのは、
「カタパルト……!?」
『私は、“殲禍炎剣”を破壊する手段を得た』
 キャバリアの上にもう一機のキャバリアがマウントされていた。異常な光景だった。


「皆様、事件ですの!」
 猟兵達の拠点、グリモアベースでフォルティナ・シエロは言う。
「現場はクロムキャバリア。人型機械である『キャバリア』が特徴的な世界ですわね」
 クロムキャバリアは、無数に分裂した小国家同士が体高五mの人型兵器『キャバリア』を主力に、生産施設『プラント』を奪い合う、荒廃した世界だ。
「オブリビオンの暗躍によりこの世界は百年以上もの間、戦争を続けていますの……」
 『オブリビオンマシン』として蘇ったキャバリアが、搭乗者を破滅的な思想に狂わせ、戦火を拡大させている為だった。猟兵以外はどれがオブリビオンマシンか識別できず、その状況を認識する事もできない。
 現地の様子を映した資料を提示しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「今回私が予知した未来は、“殲禍炎剣”によってある小国家の全てが焦土と化す光景ですの……」
 それは何故か。
「……オブリビオンマシンに思想を狂わされた一人のカリスマ軍人が、小国家の人々に対して“殲禍炎剣”の撃墜を宣言し、そして実行するからですの。
 自身と部下のキャバリアに搭載した“新兵器”で、それが実現できる……と」
 無論と、言葉は続く。
「無論、それは不可能です。その事をカリスマ軍人……将軍は本当に知らないのか、この国を破滅させるために嘘をついているのか。どちらかなのでしょうね」
 ええ、と。
「そんなこと不可能なのですが、“人類に空を取り戻す”という余りにも甘美なその提案に民衆の熱狂は最高潮に高まってしまいます。『失敗するかも?』なんて考えは将軍を統治する側も含めて、誰も持っていませんわ。
 無視できぬ程のムーブメントを感じた統治側……L.S.大統領は、将軍の暗殺と、軍事行動の鎮圧を発令します。軍部の最高司令官でもある大統領を無視した将軍の作戦は、国家の支配体制の揺らぎを意味するからです」
 ならば猟兵はどうするか。
「皆様には転移次第、大統領からこの命令を受諾していただき、作戦を開始していただきますの」
 しかし、それは同時にあることを意味する。
「統治側に立ち、民衆の支持を受けた“希望の軍”とも言える存在を撃破していただきたいのです。
 ……『キャバリア』に乗って戦いたい場合は、貸与してもらえますわ。L.S.の特殊工作組織仕様ですの」
 そう言い切ると、五指を開いた掌から光を生み出す。砂状のグリモアだ。
「――まとめますわ」
 空間に、文字が書かれていく。

 ・クロムキャバリアの小国家L.S.でオブリビオンマシンに思想を狂わされた者が、“殲禍炎剣”の撃墜を宣言。
 ・しかしこれは不可能であり、“殲禍炎剣”の反撃によって当該国家が全滅する未来が待つ。
 ・首謀者→不可能な作戦を本気で信じているのか、それとも国家を壊したいだけなのかは不明。
  民衆→信じてる。熱狂。
  統治側→信じてはいるが、国家の支配体制の揺らぎを警戒し、首謀者の暗殺を決意。
 ・猟兵は統治側に属し、民衆に支持されている首謀者側を撃破する。
 ・統治側からキャバリアを貸与して貰える(種別としては高機動型)

 転移の準備を進めながらフォルティナは顔を上げ、猟兵達の顔を見回す。
「まずは、民衆による熱狂の渦にある街で、ターゲット武装集団の包囲殲滅準備を行ってくださいまし。民衆に支持されている彼らは隠れることなく、街の中央にある砦に堂々と軍を展開していますわ。
 既に奇襲には極めて有利な状況ですが、より成功率を高める為に工夫したり、民衆になるべく被害が及ばないような準備をしてくださいまし。
 ――ご武運をお祈りしてますわ!」


シミレ
 シミレと申します。よろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・砦に陣取るオブリビオンマシン部隊の撃破。

 ●説明
 ・クロムキャバリアの小国家L.S.でオブリビオンマシンに思想を狂わされた者が、“殲禍炎剣”の撃墜を宣言。
 ・しかしこれは不可能であり、“殲禍炎剣”の反撃によって当該国家が全滅する未来が待つ。
 ・首謀者→不可能な作戦を本気で信じているのか、それとも国家を壊したいだけなのかは不明。
  民衆→信じてる。熱狂。
  統治側→信じてはいるが、国家の支配体制の揺らぎを警戒し、首謀者の暗殺を決意。
 ・猟兵は統治側に属し、民衆に支持されている首謀者側を撃破する。
 ・統治側からキャバリアを貸与して貰える(種別としては高機動型)

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 日常 『ダンシング・キャバリア!』

POW   :    ●『出力任せにパワフルに踊る』

SPD   :    ●『巧みな操作でテクニカルに踊る』

WIZ   :    ●『各種能力やアイテムで、キャバリアのダンスをサポートする』

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 『――諸君、今一度、国歌を唱えようか。L.S.の者が胸にするあの詩を』
 転移し、大統領からの要請を受諾した猟兵達の耳に入ってきたのは、スピーカーから聞こえる将軍の声だった。
 ピアノの音が続く。


“ああ、見えるだろう。昼も夜も、光も闇も無視する向こう側。
 我々が誇りの吠声を突き上げる空の、さらにもっと上だ。
 我々が打倒し、突破した砦の上に翻っている旗がある。
 大きな縞模様と星々。猛るようにたなびくそれらを皆が見る。
 深紅の光線が迸り、炸裂する熱波を浴びてなお、旗はそこにあった。
 ああ、我らが旗は不変だろうとも。自由の地と、勇士の元にあるのだから”


 やがて猟兵達が辿り着いたのは、件の砦を中心に置いた街だ。
「――!」
 皆が砦の方を見上げ、その瞬間を今かと待ちわびている。
 ストリートには屋台が並び、ダンスミュージックがかかっている。
「将軍万歳、将軍万歳!」
「さあ、皆踊ろうぜ!」
 熱狂的な声を挙げて、街の住民がキャバリアに乗り込んでいく。
 作業用、民間警備用、違法カスタム。レギュレーション無用のキャバリアダンス会場の出来上がりだった。
「…………」
 猟兵達は人々の中に、はたまたキャバリアに紛れていく。
 自分達が砕くことになるであろう期待と興奮に満ちた人々の中へ。
ワタツミ・ラジアータ
同じ事を信じていながら内輪もめとは余裕のある事でございますわね
ま、一介のジャンク屋にはどうでもいいお話でございますが

祭りに集まった商人達と共に
ジャンク屋をしつつ情報収集
知り合いの商人達がいたら客引きをする代わりに
大通りから外れた荒事があっても安全な所で開いてもらう

無関係な方を巻き込むのは本意ではありませんし
【SPD】
キャバリアでジャグリングをしつつ道化風ダンス
ジャンク品を手玉にする
齧ったり、投げ込まれる
増えた砲塔も使い、より高度なジャグリングをする
衆目を集めジャンク市の宣伝、群衆を移動させる
外装は一時的に動きが派手に見えるドレス風に変形
勝手知ったる商人達からのおひねりはジャンク品

アドアレ絡歓迎




 ワタツミは街を歩きながら、思考していた。
 ……同じ事を信じていながら内輪もめとは、余裕のある事でございますわね。
 今回の事件の事だ。“殲禍炎剣”の撃墜という衝撃的なニュースは、将軍のカリスマ性で国民の中に浸透している。一国民である大統領やその麾下もだ。しかしその強硬な手段は、統治側である彼らの反発を招いた。結果ではなく、手段が受け入れられなかったのだ。
「ま、一介のジャンク屋にはどうでもいいお話でございますが」
「……? あ!」
 呟きが聞こえていたようで、近くの商人がこちらへ振り向いた。すると、商人はこちらが誰かも気づいたようだった。
 顔馴染みの商人なのだ。
 なので己も軽く挨拶を返す。もう市場の中ほどまで踏み込んでいるが、用があるのは奥に座るここの顔役だ。
「どうも、場所を借りに来ましたわ。あと、皆様の移動もお願いしたく思いまして」
「…………?」
 最初、顔役は無言で、売り上げの取り分を示す指を数本立てようとしたが、言葉の後半を聞いて怪訝な色を露わにした。
 無理もない。場所を移せ、と自分はそう言ったからだ。
「ええ、ここは大通りに近いですわね。でももっと通りから外れた、“荒事”があっても安全な所で開いていただきたいのです」
「…………」
 互いに、知らない仲ではない。言葉の真意を測ろうとしているのか、顔役は変わらず無言だ。
「無論、損失補填として私が客引きもしますわ。客が来れば、他の場所の商人も河岸を変えて来るでしょう。その時、一等地を押さえておきたいのではございませんこと?」
「…………」
 しばらく無言だったが、顔役はやがて指を立てた。
 一本増えている。
「ええ、解りましたわ」
 了承し、大通りに面するエリアへ行くと、
「さて、では始めましょうか」
 己のキャバリア、“Heart of GearOrgan"を本格的に起動させた


 市場跡地に辿り着いた市民達は、皆圧倒されていた。
「……!?」
 有るはずの市場が無いこともそうだが、そこにキャバリアが一機、立っていたからだ。
 二足だが人型というには少し異形な機体は、素体である白の機体を覆うように暗色のドレス姿だった。素体自体を頑健に作るL.S.ではあまり見たことが無いタイプであり、流線を孕んだドレスのような外装なんて特にそうだ。
 だが、注目されているのは見た目だけではない。
「――――」
 市場があったはずの場所で、キャバリアが軽やかにパフォーマンスを始めたからだ。自分達の目の前で、大道芸をやってみせている。
 芸の種目はジャグリングダンス。キャバリアは鋭い手爪で鉄材などのジャンク品を器用に回し、足はおどけたようにステップを踏んでいる。
 道化のステップを彩るように、手爪の中で管楽器を転がしたような音が響いたかと思えば、次の瞬間にはそんな騒がしいボールが空を舞っている。
「お」
 と、ボールの数が追加された。
「おお……?」
 どんどん、どんどんと、増えていく。
 キャバリアのジャグリングともなれば、ボール代わりのジャンク品もそれなりに大きい。距離があるとはいえ、上空で取り回される重量物に、観客が思わず後ずさりした時だった。
「――!」
 ボールが、一際高く上がった。
 わあ、という声が人々から上がり、身を引いた瞬間。キャバリアの口が大きく開いてボールを丸呑みにした。
「…………」
 咀嚼音。
 キャバリアがどんどんと口の中にボールを放り込んでいく様を見て、一本取られたことを理解した観客が破顔して拍手する。
 と、キャバリアが食べるに合わせて、その外装が変わっていった。肩や腰といった場所から、砲塔など様々なパーツが生まれてくるのだ。
 物騒な代物だったが、先ほどのパフォーマンスもあって観客の目は期待の色に染まっている。
 やがて砲は真上を向き、
「――ボールだ!」
 見ていた子供が声を挙げた通り、そこからもジャンク品が上がって、キャバリアがまた高度なジャグリングを再開していった。
 拍手が生まれる中、キャバリアは踊りながらも、こちらへ道を譲るように身体を半身に構える。その背後にある物を見せるように。
「あ、ジャンク市、移動していたのか」
 市場から出てきた商人がおひねり替わりなのか、キャバリアの足下に適当にジャンク品を積んでいるのが見える。
「行ってみるか!」
 大通りから市場へと、人の流れが生まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
【WIZ】
「殲禍炎剣…かつては、アレの存在に疑問等なかった」
他世界を知ってから、空のアレが異常で有る事を知った。

破壊工作、密かにスピーカー機器に電流を流しショート、故障に思わせる
「どうにかしたい。という思うのは、きっと普通の事なのでしょう。」
自分も、彼等も。故に

独り言ながらデモニック・ララバイに搭乗操縦。偶々居合わせた風を装って、スピーカーにとって変わってダンスミュージックを流す
『……歌操せよ、ララバイ』

この国の歌や、曲に乗せて、ララバイの魔力を流し催眠術を施す。
砦から離れるように、軍の者へは、警戒心を和らげるように、
ゆっくりと、魔力を流す。

その想いを利用するマシンは、破壊しなくてはならない!




 騒がしい街の中、小枝子は空を見上げていた。
 夜空だ。街の喧騒を吸い込むような静かなそこには、ある物が存在している。
「“殲禍炎剣”……」
 静寂とは正反対の凶悪な兵器だ。今は見えないが、条件を満たせば否が応でも目に入る。
「かつては、アレの存在に疑問等なかった」
 太陽と月と星、そして暴走衛星。雲の上にそれらがあるのはこの世界の常識だった。
 だが、猟兵となってから気付いた。様々な世界を幾度か渡れば、すぐにこの世界の異常を知る。
 空に上がることが出来ないのだ。
「どうにかしたい。という思いは、きっと普通の事なのでしょう」
 自分も、彼らも。


 故に、小枝子は動き出した。
 街のあちこちにはスピーカーある。家の屋根の上、組まれた櫓の頂点、バーのカウンターに置かれたコンポ。ありとあらゆる場所からダンスミュージックや将軍の声が繰り返し流されている。
「…………」
 己はそのうちの一つに密かに近づき、手に隠し持っていた装置を近づけた。
 瞬間。鋭いスパーク音が鳴り響いた。
 装置から流れた電流が、スピーカーをショートさせたのだ。
『――――』
 ハウリング音を挙げて沈黙したスピーカーに、人々は首を傾げたり、落胆の吐息を吐く。
 また故障か、と。
 そうして皆の視線がスピーカーに向いているときに、キャバリア、デモニック・ララバイに搭乗。
 偶然その場に居合わせた風を装って立ち止まると、落胆している人たちに向け、短い電子音を数度放つ。
「?」
 何事かと振り向いた彼らに浴びせられるのは、彼らが望んでいた物だ。
「!」
 音。音階とリズムに彩られ、アップテンポなそれは、ダンスミュージックだった。


 この国の歌や曲をデモニック・ララバイから流しながら、小枝子はユーべルコードを発動した。
「……歌操せよ、ララバイ」
 メロディに乗せて、魔力を流したのだ。ゆっくりと、警戒されないように徐々に、徐々にだ。
「――――」
 やがて音楽を媒介として、魔力はある術を為していく。
 催眠術だった。
 催眠音楽とも言うべきそれを聞いていた者達は、自分達の意識が制限されていくことにも気付かない。
「さあ、皆。砦から……」
 離れさせていく。
 術の影響下にある民衆は、踊りながら、歌いながら、無意識に砦から距離を取っていった。
 そしてキャバリアという存在は、体高五メートルを有する。それだけの高さを持った物体から音楽を放てば、離れた位置にいる者達にも聞こえていく。
「…………」
 砦へ続く道を警備していた軍人らの顔から険しさが消え去り、皆どこか呆けたような表情に変わっていく。
 準備は整った。
「どうにかしたいと、そう思うのは普通の事なのでしょう……」
 しかし、
「その想いを利用するマシンは、破壊しなくてはならない……!」
 ここに転移されて最初に呟いた言葉をもう一度繰り返し、決意を新たにした。

成功 🔵​🔵​🔴​

播州・クロリア
権力闘争に巻き込まれた感は否めませんが
放置するわけにもいきませんね
まずは民衆に被害が及ばぬよう細工をしましょう
ちょうどよいダンスミュージックもかかっていることですし
踊るには最適な環境ですね
({舞狂人形}に搭乗し、{舞狂人形}で肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
上手ですよ。舞狂人形。上達しましたね
後は踊っている他のキャバリア達をUC【蠱の力】で故障させていきましょう
けが人が出ない程度に抑えないといけないので神経を使いますね
この仕事が終わったら私も一踊りするとしましょうか




 クロリアは街の中を歩いていた。そこかしこから音楽が鳴り響く騒々しい中だが、一番身体に“響く”のは、音楽ではなかった。
「……!」
 地響きだ。あちこちでキャバリアがダンスをしているので、その振動が足裏から伝わってくる。そんなリズムを感じながら、己は思う。
 権力闘争に巻き込まれた感は否めませんね……
 オブリビオンマシンが一枚噛んでいるとはいえ、自分達はこの国の統治側に属し、内患を払えと言われているのだ。
 しかし、この国家にこれから起こる出来事を考えれば、放置するわけにもいかないのも事実だった。
「まずは民衆に被害が及ばぬよう、細工をしましょう」
 民間人を巻き込むのは避けたい。なので人払いをするために己が取れる手段を考えたところ、
「……そうですね、ちょうどよいダンスミュージックもかかっていることですし、こうしましょう」
 思いつくのはやはり、“それ”だ。
「――“舞狂人形”」
 呼び出したジャイアントキャバリアに、己は搭乗していく。
「ええ、踊るには最適な環境ですね」


 街の人々はそれを見た。
「……?」
 流線型の装甲を纏った一機のジャイアントキャバリアが、構えを取ったのだ。
 誰もが踊りを持つこの場での構えは無論、踊りの始まりを意味する。
『――脱す』
 肩幅ほどに足を開き、手はアンダーフレームを、大腿部をなぞっていく。ゆっくりと焦らすような動きに釣られ、キャバリアの上体も上がっていく。
「……っ」
 誰もが目を奪われたところで、そのキャバリアの上体が完全に起こる。そして、“目が合った”。
 そこからは圧倒的だった。
「――!」
 全身を使って己を表現していったのだ。
 地を踏む足は、音楽、己、そして見ている者の鼓動を打っていく。
 地面を打撃し、足裏から伝えていくのだ。高く波打つ鼓動に合わせて、心臓に訴えかける。
 私を見ろ、と。
 そうして視線を挙げれば、そこにあるのは上体だ。
 振られる腕は、その先端である手指すら使って感情を表していく。
 鋭く振られる腕は勢いを、開いた五指は広がりをそれぞれ意味する。
 勢いをもって広がるものを何というか。
 火炎、とそう言う者もいるだろうが、そうではない。それだけでは不足だからだ。
 地を打ち震わせるほどの力を持った炎。それだ。
「紅蓮……」
 誰かの呟きは、熱気の上昇に飛ばされ、言葉を追うように皆がそのキャバリアの頭部を見た。
『……!!』
 その場にいる全員が紅蓮の魅力に囚われ、目を離せなくなっていた。


「……!」
 突然のダンサーに向けられた称賛の拍手。それをコックピットの中で受けながら、クロリアは満足していた。
「上手ですよ、“舞狂人形”。上達しましたね」
 このキャバリアはある事件の報酬として得たものだ。暴走の危険性から、元の持ち主である小国家は持て余していたようだったが、己はこの機体と直接対話し、問題に気付き、あるものを教えることで合意した。
 それは、踊る楽しさだ。
 約束していたそれを今、己は“舞狂人形”に与えることが出来た。
 実際に踊り、その真価を発揮したのだ。踊った自信、それを見ている者に充足を与えるということを。
 “舞狂人形”はどう受け止めるでしょうか……。
 染み入るように受け止めてくれたら良い、とそう思う。静かに、だが余すことなく受け止めて欲しいと。
『よおし、俺達ももう一丁踊――、んん……?』
『どうした? って、あア? どうなって……』
 と、今まで“舞狂人形”の踊りを見ていた周囲が、異変に気付いた。
『何か、動きがぎこちねえ!』
 上手くいったようですね……。
 踊りながら送った仕込みが、効果を発揮したのだ。
 ユーべルコード、“蠱の力”。ダンスによって生み出された旋律のエナジーを相手に放つこの技は、精密に操作することも可能だ。
 なので踊りながら、観客たちのキャバリアに細工をしたのだ。と言っても、怪我人が出ない程度に故障させただけだが。
『チッ。興ざめだな……。踊りすぎた、とも言えるが』
『まあ、最後のあの踊りを土産にするか!』
 “舞狂人形”の踊りは丁度良い“締め”として扱われ、人々はその場から帰路についていく。帰路につかずとも、ここから離れてくれればそれでよかった。
「砦に近いですからね、ここは」
 一礼して人々を見送れば、さらに“締め”としてそれらしく、動き出す人は多くなる。
「…………」
 そうして、礼から頭を上げた後、
「この仕事が終わったら私も一踊りするとしましょうか」
 砦を見上げ、小さく呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
L.S.――いつぞやの彼らが言ってた場所ですか。

あの後、どんな沙汰が下されたかは分かりませんが。
鴛鴦の門出の先が荒野とならぬよう、微力を尽くしましょう。


ひとまず砦近くへ。
部外者が内部に通して貰えるとは思えませんし、周辺を観察。

門や搬入口など、突入に適した場に当たりを付けておきます。

後は屋台などで買い物のついで、L.S.のキャバリアについてどんな性能を誇るのか、分かる範囲で聞き込みを。

下調べが済めば【霊剣詔刀】で遠くに待機させていた大蛇麁に指示。
【天候操作】で砦付近に雷雨を招くよう命を下します。

雨や稲妻を厭って砦近辺の人々が離れてくれるよう誘導しつつ、大蛇麁も近くへと移動させておきましょう。




 足を運んだことは無かったが、景正にとってこの小国家は既知ではあった。
「L.S.――、いつぞやの彼らが言っていた場所ですか」
 以前、この世界の事件を解決した際に名前を聞いたのだ。
 確かあの時は、ここが新婚旅行の行き先と……。
 正面から打ち倒し、説得することで敵の洗脳を解いた者の一人から、そういった情報を聞き出せたのだ。それによって、その者が愛する相手も己は説得することが出来た。
「あの後、どんな沙汰が下されたかは分かりませんが……」
 すわ戦争か、という一大事件だったのだ。可能な限りの尽力はしたが、二人の処遇に関しては当局の預かりだ。
 もしかすると二人は離れることになったかもしれない。だが、もし今も連れ立っているのだとすれば、
「鴛鴦の門出の先が荒野とならぬよう、微力を尽くしましょう」
 街の中へ、足を踏み入れていった。


 景正がまず向かったのは、やはり件の砦だった。
 こちらが攻めるにしろ、向こうが打って出てくるにしろ、周囲の状況や環境は知っておかねばならない。
 まあ、部外者が内部に通して貰えるとは思えませんし、観察できるのは周辺だけですが……。
 優先的に確認するべきは、門や搬入口など、突入に適した場所だ。
「ふむ……」
 砦は険しい山の上にあり、全方向から昇って攻めることが出来るというわけでは無い。防衛の事を考えれば、進むにしろ迎えるにしろ、兵が進める場所というのは限られている。
 ぐるりと山を一周というよりは、そういった砦に繋がる幾つかの“道”を確認し、その先にある搬入口などの場所と、警戒の様子は確認できた。
「まあ、いざとなれば崖すらも踏破すれば良いか」
 馬で崖を駆け降りた先人もいるのだ、況やユーべルコードや大蛇麁を持つ己であれば、その逆も選択肢のうちの一つだろう。
 何はともあれ、経路や敵の位置など突入の際に必要な情報は揃った。
「あとは、倒すべき相手の情報ですね」
 それを得られるのは背後、砦を囲むように構えた騒がしい街の中だ。


「……?」
 景正は祭りの最中とも言える街の中を歩きながら、疑問していた。
 祭りの場であれば、在っておかしくない店や場所が存在しないのだ。
 何故……。
 大通りであれば、“そこ”は必ず目にするはずだ。“加護”のおかげで、異世界の文字や看板と言えど見落とすことも無い。
 だが、無い。
 ……こういう時は人に尋ねるのが一番でしょう。
 旅、と言えるほど気楽な要件で来たわけでは無いが、出先ではある。現地の者に聞くのが一番だろう。
「失礼」
「……?」
 なので、通りに構えた雑貨屋に入り、中で煙草を吹かしていた店主に声をかける。
「聞きたいことがあるのですが」
「…………」
 黙って品物を指さされたので、一つの商品を手に取って、支払いを済ます。
「何が聞きたい?」
「幾つかありますが――」
「幾つかなら、幾つかだ」
「…………」
 幾つかの商品を選び、支払いと共に渡せば、赤黒い肌の店主は破顔した。
「ハハ! 身なりの通りに金払いが良い。それで何を知りたい? 何でも答えよう」
「これを知り、得るためならば、ある程度の出費は覚悟の上です」
 言う。
「――酒が売っている場所は何処に?」
「無い」
「…………」
 単刀直入にそう聞けば、店主は即答した。
「……無い?」
「それも質問のうちか? その調子だともう少し商品を買わないと――、冗談だ。怖い顔をするな……。
 ああ、でも無いぞ。本当にな」
「……何故、祭りの場なのに酒を売る店が無いのですか?」
「祭りは関係無い。二十四時間三百六十五日だ。
 何故か? 禁酒を政府が決めたから。夫の酒乱に耐えきれなくなった女達の抗議運動に、プラントの不調が重なってな。食糧事情が少し逼迫した。
 結果、議題に上がり、可決。大統領も、承認。晴れて、“禁酒法”、の出来上がりだ」
 区切るような話し方の最期は、手で署名を走らせる動きで締めくくられた。


「禁酒、法……」
 “映画”という娯楽を親しむ景正は、その言葉を何かで聞いたことがある。異世界の国で、実際にその名の通りの法があったということも。
 戦いの前だ。呑むか否か、土産として買うか否かなどは置いておいて、単純に品として興味はあった。
 情報を収集する場合でも、好みの物品の方が店主とも打ち解けやすいだろうとは思っていた。
 が、
 ……まさか、無いとは。
 それに加えて、映画の内容を思い返すと、
 手に入れるならば、密輸か密造品か……。
 吐息を一つ吐いて、首を振った。そのような不正な品物に関わるのは、気が進まなかった。
 しかし、
「酒が飲めないとなると、兵の士気に影響があるのでは?」
「ああ。皆、意気消沈さ。激しい戦いの後を癒す物が無くなったんだから。だから、今回の将軍は久しぶりの良いニュースだ!」
「激しい戦い? この国の兵は勇ましいのですか?」
「騎士みたいに? 激突するかって? ハ! いつの時代だ。
 むしろ逆だ。勇ましいのはキャバリアというより、そこに背負う砲だな。大量生産されたキャバリアから、同じく大量生産された砲弾を、ひっきりなしに撃ち込む。
 将軍が乗るような重厚な機体も、その部下の軽量な機体も、皆同じだ。砲がいっぱい」
「それは……接近されたらどうするのですか? 砲雨を掻い潜って来る者もいるでしょう」
「近づかれない。近づかれる前に潰すんだ。
 正面から突破は出来ないし、回り込もうにも大量生産だ。別の仲間や砲がカバーする」
 でもまあ、と店主は言う
「近づかれたら、一巻の終わりだな。『帝国』の騎士機体や『龍商連』の格闘機体、戦争中そういったのに近づかれて無事だった試しが無い」


 ……ふむ。
 店を出て、景正は思う。必要な情報は収集できた、と。
 雑貨屋で買った品物を手の中で転がし、懐へしまうと、空いた両手で印を切っていく。
「――確か、こう」
 四縦五横だ。
 印は切ることで術となり、術は己の念を遠くに控える式神へと伝える。
 ――大蛇麁。
 名を呼ぶだけで、街の外で待機させていた式神憑きの巨甲冑、大蛇麁は動いた。否、距離があるのでその姿を実際に見たわけでは無いが、臨んだ結果がすぐに来たからだ。
 前方、砦の上空に暗雲が立ち込めている。
「……!?」
 突然の気象変化に怪訝な顔をする人々は、その雲から稲光や激しい雨が一気に振り出すのを見て、慌てた様子だった。
「ああ、もしかしたらこっちに来るかもしれません。キャバリアに落ちたら厄介ですね」
「……!」
 聞こえるようにそう言えば、店の前の通りが一気に騒がしくなった。
 踊りや祭りを楽しむために、皆が場所を移し始めていくのだ。
 人が移れば、店が移り、店が移れば、人も移る。途端に人の影はいなくなり、それから誰も砦の方へ近づこうとしなくなった。
 そこに、念で指示を与えた大蛇麁が到着した。
「これで準備は整った」
 砦の様子も、敵の情報も、己の愛機も、全て持っている。
「いざ……」
 後はそれを振るうだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
上から下までアホ揃いじゃねーか!どうせ別口でやらかしますぞ!こんな国滅しちまえばいいだろ!

まいっか
踊リ損ねて転んでいるキャバリアに近づき全身を【ドット絵】に変換、ペラい身体を機体内に滑り込ませるでござる
更に電子化した肉体を【ハッキング】で制御系統に潜り込ませたら準備完了ですぞ

では聞いてくだされ、UMA憑依伝説でござる
ハッキングで中枢にUMAタッチ!
制御を乗っ取り機体にUMA憑依!キャバリアで人間めいたステップ踏みつつ走り出すでござるよ!
適当なタイミングでパイロットを排出したらハチャメチャ踊りながら他のキャバリア達に激突!
暴走と勘違いした客が逃げたのを見計らって自爆のセッテングをし脱出でござる




 エドゥアルトは状況の理解に努めようとしていた。
 ……ええと? オブリビオンマシンに思想を歪められて“殲禍炎剣”の撃墜を決意……。
 ここまでは解る。まあ、超常の存在からの洗脳だから、ただの人間にはどうする事も出来ないだろう。
 で、その布告を民衆が信じて……。
 ↑コレ、もう少し疑った方がいいでござるよ。
 んで、上層部も一応信じてて……。
 ↑???
「…………」
 一拍。
「凄い、カリスマ性でござるな……」
 頷きながら、言葉を出す。
 荒唐無稽な布告でも、“あの者なら出来る”と全員が思っているのだ。並大抵の信頼ではない。
 もしくは上から下までアホでござるかな……。
 個人的にはこっちだ。少しは疑え。
 だが、
「成敗はする、と……。しかし成敗した後どうするんでござろう……」
 “希望”が潰えるわけだから民衆は黙っていないだろうし、上層部だって一応信じてはいるのだ。
「ああ、別に統治側が完遂したらいいでござるな」
 必要なのは将軍が言葉にした“新兵器”であるから、カリスマ性のある軍人ではない。将軍の独断専行を諫め、荒れる民心は“殲禍炎剣”撃墜成功という報をもって治める。そんなところだろうか。
「んで、自国の政府が殺したってバレたらマズいから多分、子飼いの非正規部隊で他国の工作員装ってテロとか、まあそこら辺で……あ、それって今の拙者たちじゃん!」
 履歴書に書けない経歴がまた増えたでござるな……、とか思いながら、
「ていうか結局、コレ終わった後、別口でやらかすんじゃねえかなあこの国」
 色々不安だ。例えば、とそう思った時だった。
「……んン?」
 気づいた。
 待てよ、と。
「……将軍を倒しても、“他の連中はまだ“殲禍炎剣”を落とせると信じている”……?」


 エドゥアルトは思う。洗脳されているのは将軍と、その配下だけなのだ。彼らしかオブリビオンマシンに乗っていない。
 それ以外は、純粋に信じてる。
「…………」
 将軍がいなくなれば統治側が将軍の作戦を行おうとし、民衆も反対自体はしないだろう。新兵器であるキャバリアを破壊しても、思想が残っていたら、結果、どうなるか。
「…………」
 辺りを見回し、踊り狂ってるキャバリア達を見る。もしかしたら数時間後にはここが全て焼け野原になることを知らずに。もしくはそれは数年後かもしれない。さらに改良された“新兵器”を伴って。
 ……こんな国、滅しちまえばいいのでは!?
 と、思わず口をついて出そうになったが、流石にやめておく。
「――ま、いっか」
 この国がどうであり、これからどうなろうと、少なくともグリモア猟兵から依頼を聞いた時は“そう”思ったから、己は今ここにいる。
 なので、行く。
 目的を果たしにだ。


「チッ。あー、しくじったな……」
 男は一人、呟いていた。
 祭りだ。己も皆と同じくキャバリアで踊っていたが、踊り損ね、転倒したのだ。
 ま、すぐ戻るか……。
 祭りは始まったばかりだ。地に手をついて、鋼の身体を起こそうとしたが、
「!?」
 その手の甲に、何かがいた。一瞬気付かなかったが、それは“何か”が余りに“薄すぎた”からだ。
 薄いというか、平面的だ。まるで空間投影されたディスプレイのように、“真横”からは見えない。
「……!」
 振り払おうと手を払ったが、一瞬のうちに機体内部へ潜り込まれた。
「新手のウィ――」
 ルスか、という叫びは、無意味だった。
 正にその通りだったからだ。


 エドゥアルトは己を最適化していた。熱いところで薄着になり、寒いところではその逆となるように。己の姿を適した姿に変えたのだ。
「電脳空間に住むなら、やっぱこれでござるよなー!」
 己の身体をドット画にしたのだ。情報が高速でやり取りされるキャバリア内部を、簡素なデータとして駆け巡っていく。
 と、世界全体が洗われるように光が走った。
 スキャニングだ。異物の位置を検索して位置を特定次第、階層ごとに閉じ込める気なのだろう。恐らく内部データの破損も厭わずに。
「ほいほい」
 だがそういったカウンターに対しては自分だって想定している。左腕部の戦闘支援ツールを使えば、
「……左腕の情報が少なすぎる……」
 左腕を見てもツールをどう操作すればいいか分からない。点で表されてる。右腕も全体的に棒とボールみたいでござるな……。
 ともあれ、最適化されてるのだ。思考として念じれば、それを為そうと身体も応じるだろう。
「待てよ? これ拙者のお脳を含めて数キロバイトになってるでござるな?」
 とんでもない圧縮技術だ。自我を喪失していない。でも気づいてしまったら何だか怖い。
「というわけでキャバリアの脳をハック……!」


《CAUTION!!》
《許可されていないアプリケーションを検知しました。このアクセスはコンピュータに悪影響を及ぼす可能性があります。
 許可しますか?
 ◆いいでござるよ ◆オッケーでござるよ》


「!?」
 踊っていた男達は、倒れていたキャバリアが動き出したのを見た。
『――では聞いてくだされ、UMA憑依伝説でござる』
 異常なことをのたまいながら。


 何か、大変なことになってるでござるな……。
 ハッキングしたキャバリアの視覚素子から周囲を見て、エドゥアルトはそう感想した。
「……!? ……!?」
 周囲も、そしてコックピットにいるパイロットからも困惑が伝わってくる。
 今、機体はキャバリアから外れた動きを、人間のような生々しいステップを踏んでいるからだ。
 UMA憑依タッチで脳を乗っ取った拙者にとっては造作も無いこと……。
 動かしているのは自分なので、コックピットにいるパイロットには理解が出来ない現象が続いており、相手は半狂乱になっている。恐らくコックピットも含めて周囲に流れている電波ソングも原因だろう。流してる拙者もこの歌詞意味解らんでござる。
 ともあれ佳境だ。歌で言うならサビ。ダンスも一層盛り上がり、ついてこれそうにないので、パイロットはそこらの家屋の屋根上に摘み出す。
『うおおおおおおお!!』
「!?」
 そして、走り出す。引き気味のキャバリア集団に向かって、一直線だ。そうすると当たり前だが、集団は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
 閑散。
 その二字となった広場中央で踊り続けながら、己はあることをする。
『これでよし……、と』
 入力したコマンドは、機体の自爆コマンドだ。すぐにドット化していた己の身体を機体から排出し、急ぎ離れていく。
「足が! 足が遅い!」
 具体的に言うと上下左右の方向にしかうまく進めず、カーブとか斜め移動が難しい。
 ドット化を解除すればいいことに気付いたのと、背後で爆発が生じたのはほぼ同時だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月夜・玲
オブリビオンマシンにカリスマが狂わせられるなんてよくある事
けれども、そうしてするのが集団自殺というのは…うーん
どーにもね
戦略方針でも変わったかな?


まあ住む人には少しの間不便な生活を強いる事になるけど、それも仕方ないか
この街には少し眠って貰おう
砦が中心にあるから…そっから南側の街の端にこっそり移動
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:A.M】起動
雷刃形成
砦を巻き込むように半円状に剣を『なぎ払い』回路を焼き、制御プログラムを壊し機能不全に陥らせる
念入りに2度斬り『2回攻撃』

後は停電だとでも煽りながらのんびり砦に向かおう
その際に住民を街の外か北部に移動するよう煽るかな




 玲は疑問していた。
 ……オブリビオンマシンにカリスマが狂わせられる、か。
 今回の事件の発端だ。しかし、それ自体はよくあることだった。気になるのは、そこから先だ。
「そうしてするのが集団自殺というのは……」
 オブリビオンマシン、即ちオブリビオンの目的は現在を過去で埋め尽くすことだ。“殲禍炎剣”で小国家を滅ぼすのも、理由としては適ってる。あの暴走兵器の力を使えば、小国家の一つなど消滅させることなど容易い。
 だが、以前までのこの世界では、洗脳されたカリスマ軍人は他国への侵略や武器密売などの、明らかな“不正義”を実行させられてきた。結果として同じく人類に対する破壊活動とはなるが、今回は“正義”を実行しようとしている。
「うーん、どーにもね……」
 違和感だ。
 戦略方針でも変わったかな? とそんな風に呟くが、どこか胸にしこりを残したような感覚があった。


「さて、と」
 そうして、玲が人目を避けて足を運んだのは街の南側、それも街の端とも言える部分だった。
 見る。街は中央に砦がある山を据えているため、自分の視界、上空と言っていい場所には山の上に建つ砦が見える。
 その山は高度にして数千メートル級だ。空を刺すような頂は果てしなく感じるが、
「――――」
 しかし己は臆せず、刀を引き抜いた。“《RE》Incarnation”、そして“Blue Bird”。自身が有する数ある武装のうちの二振りだ。
 それらを両手に構えながら、思う。
 今から己がやろうとしていることにとって、あの山の高さはさしたる問題では無いと。
 まあ、住む人には少しの間不便な生活を強いる事になるけど……。
 オブリビオンを倒すためだ。それも仕方ない。
「この街には少し眠って貰おう。――“Code:A.M”、起動」
 砦を見上げながら放った言葉は、両の武装に力を与えた。
「――!」
 力は、光だった。
 夜の街の端に潜むようにいるとはいえ、街は祭りの最中だ。あちこちで電飾が飾られ、煌びやかな光を放っている。だが、たった今生まれた光にはどんな光も見劣りしていた。
「蒼雷展開」
 二振りの武装から生まれた光は、鋭く裂くような光だった。
 閃光。そして断続的なスパーク音から、それが雷光だということは一目瞭然だ。
 二つの雷光は、二つの雷刃を形成していく。
 準備は整った。両の武装を引き絞るように振り上げ、
「――!」
 一気に、振り切った。


「!!」
 街の一角で踊りを楽しんでいた者達の中で、僅かな者達がそれに気づいた。街の南、そこから生まれた鋭い光が、山を切り裂くように走ったことをだ。
「な……」
 閃光は一瞬だったが、まるで地上から山を薙ぎ払うような逆袈裟の軌道であり、それは明らかに砦を狙った一発、
 否、
「二発目……!?」
 返す刀のように、似た閃光がもう一度空を走った。
 自分達は離れていたからこそ解ったが、南の住民には頭上の事で、砦の者達にとっては一瞬の事だろう。
 気づくとしたら、攻撃の結果が現れてからだ。
 見る。
「明かりが!」
 消えていた。街の南や砦の至る所で、照明が喪失しているのだ。
「何かマズい予感がするな……! ――逃げろ逃げろ! 北の方だ、南には近づくな!」


「ふぅ……」
 玲は、己の作戦の結果を見ていた。
 ユーべルコード、“Code:A.M”。単純に言えば雷刃を生み出す技ではあるが、その雷刃が通常のそれとは違う。
 特殊な稲妻とウィルスプログラムで、対象の電子回路及び制御プログラムのみを攻撃するのだ。
 そしてその射程は、
「現状一万メートル以上……っと。まあ、流石に調整したけど」
 高山であれど余裕で間合いに収まる。“《RE》Incarnation”と“Blue Bird”を納刀し、人目に付かない道からどんどんと大通りへと出て行く。
 たった今、その雷刃で砦と街の一部を“断った”。砦はともかく、街の方は被害の程度は低いようだった。
 精々、街灯が消えたりスピーカーが止まったり、踊っていたキャバリアが止まる程度だ。
「どうやら停電みたいだね。あーあ、こんな良いニュースの日に……」
 砦の方へのんびり向かいながら、街の者達に声をかけていく。
「……待てよ? キャバリアまで止まるなんて、おかしいな……。もしかしたらこれは敵国の工作かもしれない! 皆、用心しなくちゃ!」
「ええっ!?」
「EMP兵器ってやつだ! こんな明かりが少ない場所は危ない。街の北や、なんだったら外まで逃げた方がいい!」
「そんな……! い、急がなきゃ!」
 今まで祭りの気分だっただけに怯えが強く染みるのか、街の南にいた人々皆、急ぎ避難していった。
「……さて」
 誰もいなくなったメインストリートの中央で、前方の山を見上げた。
『――!』
 砦が、にわかに騒がしくなり始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『機動殲龍『空翔』』

POW   :    ブリッツウィング
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【ミサイルと機銃による追尾攻撃】を放つ。
SPD   :    オーバーブーストマキシマイズ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリアを更に加速。敵に近づき翼】から【敵機を吹き飛ばす衝撃波】を放つ。
WIZ   :    ダブルバレルカノン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【鋼鉄をも貫くビームカノンによる連続攻撃】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 将軍は演説を続けていた。
『国歌、国旗と等しく尊い物、国章を思い出していただきたい。そう、鷲である。
 国土の上を自由に飛び回る鷲は、皆の心にいつでも思い起こされるであろう。しかし、かような暴走衛星が生まれる前は人々も同じだったのだ』
 赤いキャバリアの背に、もう一機のキャバリアをマウントさせながら。
『自由に、空を飛んでいた。人間もどこへだって行けた。どの国にも、星にだって行けた。過去のL.S.には鷲の名前を冠した飛行機だってあったのだ。今となっては遠い昔だが』
 しかし、と言葉は続く。
『――しかし今、鷲は竜として生まれ変わった』
 赤い機体に背に背負われたキャバリアは、人型からは大きく外れたような造形をしていた。
 腕は翼となり、脚部も必要最低限だ。何より鋭利な頭部が大気を切り裂く形状をしていることは、一目見れば直感的に解った。
『機動殲龍“空翔”……。この機体には我が精鋭たる部下達が搭乗している。
 必要十分な高度を有するこの高山から、この機体を私のキャバリアで高速射出することで、必ず空の道は開ける』
 将軍が、右手を挙げた。
『誓おう。私は空を取り戻すと!』
「……!」
 全ての観客から、放送を見ていた者から、感嘆の声と拍手が生まれたが、それもすぐに別の衝撃で掻き消された。
『……!?』
 麓の街で、爆炎が上がったのだ。


「……!」
 L.S.中の誰もが、息を飲んだ。中継が映す街の様子はキャバリア一機分の小規模な爆発だったようだが、人々の目を奪うには十分なショッキングな映像だった。
 そしてその直後だった。
「――――」
 中継の画面上に二度、眩い閃光が走ったかと思えば、街の一部の照明が消失し、何より、
「砦も……!」
 暗闇に包まれていた。
 何者かによる攻撃が行われたのは、明白だった。


「――敵襲!」
 将軍は鋭く叫んだ。
「“空翔”は出せるか!?」
「先ほどのの電磁攻撃で格納庫がロックされています! コンピュータだって! それに“空翔”はこの作戦に――」
「隔壁、格納庫、搬入口。邪魔なものは爆破してでも開け!」
 砦のあちこちで爆発が上がった。指示がすぐに成された証拠だった。
「“要塞”にマウントされてる一機を除き、残りの“空翔”は全てスタンドアップ! この一機を守り抜け!」
『――!!』
 砦のあちこちから、爆炎や黒煙、瓦礫を踏み越えて“空翔”が現れた。
『a隊、了解。……チッ、さっきの攻撃でまだフラついてる』
 将軍は彼らに指示を出していった。
「すぐに出れるのはa隊だけか……。よし、敵の詳細は不明だ。数も武装も何もかもだ。
 だが、解っていることはある」
 それは何か。
「奴らが猟兵で、我々の崇高な目的を妨害しようとしていることだ! 撃滅しろ!」


 a隊は行った。
『――!!』
 砦がある山肌から零れるように、落下していく。
『a1から全機へ、地表を再定義。“殲禍炎剣”を刺激しないよう“低空”での飛行をしろ』
 そして次の瞬間には機体を持ち上げ、まるで山肌を舐めるように柔らかな動きで、山にぐるりと輪を描いていく。
 山肌を地表として、その上を低空飛行をしているのだ。
『山を循環しながら、砦に繋がる道を常に封鎖だ。俺達は時間さえ稼げばいい。残りの隊も直に来るし、何より将軍なら必ずやってくれる』
 そして、
『俺達の損失よりもこの機体の損失を避けろ。これは人々の未来を背負った新兵器だ。俺達が敗れても、この機体さえ残っていれば、誰かが遺志を継いでくれる』
 通信はそれ以上続かなかった。
『……!』
 猟兵の接近を知らせるセンサーが、ひっきりなしに鳴り響いたからだ。
 砦に繋がる道を、駆け上がって来る。
月夜・玲
お、高起動型か
聞いていたとはいえなるほどこれなら、空も欲しくなる
まあとはいえ、私はキャバリアは遠慮しとくけどね
陽動を仕掛けて、本丸の方に行かせて貰おう



出し惜しみ無し、何せ正式な依頼だからね
充電代は経費で申請
【Code:P.D】起動
サイズは最大サイズで指定
12体、全召喚

雷龍それぞれバラバラに行動
なるべく南方の人の少ない方に
それぞれが『ブレス攻撃』で空に稲妻を吐き空翔の足を止めて1機ずつ翼を雷の牙で『串刺し』にして落としていこう
パイロットはまあ生かしてあげておいて
機体は再起不能にしといてね

その間に私は混乱に乗じて砦へ移動
抜き足差し足『忍び足』
さて馬鹿げた祭は終わりにしよう
不条理のお出ましだよ




「お、高機動型か」
 玲は砦に向かいながら、現れた敵勢を見た。
『――――』
 山を覆うように展開している軍勢は、飛翔型のキャバリア“空翔”の部隊だ。夜の闇に、暗色の装甲が溶け込んでいる。
「聞いていたとはいえなるほどこれなら、空も欲しくなる」
 機体は今は安定した飛翔を見せているが、翼の基部にある二発の加速器を見るに最高速はかなりのものだろう。
 高山から、別のキャバリアからの加速を得て、天上へ。そんな夢を見るのもむべなるかな。
「まあ、とはいえ、私はキャバリアは遠慮しとくけどね」
 空に浮かぶキャバリアを見上げながら、思う。件の作戦を阻止するためには、連中が封鎖している道を突破し、砦にいる将軍の元へ行かねばならない。
 このまま道を直進すれば間違いなく“空翔”に捕捉され、接触する。そして相手は発射までの時間を稼ごうと足止めをしてくるだろう。
「なら陽動を仕掛けて、本丸の方に行かせて貰おう」
 そのままでは突破が難しいのであれば、敵を退かせばいいのだ。
「カートリッジロード」
 懐から取り出したエナジーカートリッジ、それを装填しながら唱えた言葉は、ユーべルコードの発動の合図となった。
「プログラム展開。――雷龍召喚」
 刹那。空に向かって跳ね上がった光は、街で放ったものと同じく雷光だった。
 うねるように、藻掻くように空を走りながら、一つの形を作っていく。
『……!?』
 それは、龍の姿だった。
 ユーべルコード、“Code:P.D”。コードの二字が示す通りの雷龍が夜の空に燦然と輝いた。
 しかも、それは一体ではなかった。
『十二体……!?』
「出し惜しみ無し、何せ正式な依頼だからね」
 全長五メートル。南の空に突如として出現した巨大な十二の龍が、一斉に“空翔”へ突っ込んでいった。


 戦闘が一瞬にして始まり、そして様変わりしていくのを、a隊の面々は見た。
「――!!」
 まず、龍の顎が開いたと思えば、そこから生まれた雷の吐息が自分達目がけて一直線に走ってきた。
『散開!』
 正面から迫るブレスを、全機が寸前のところで躱す。自分達が今までいた空間に、大気の焼かれる焦熱音が残った。
『固まると一網打尽だ!』
 山肌を滑るように砦に繋がる道を守っていたが、そんな陣形から一転、各自の自由裁量に任せて空を飛んでいく。
『くっ……!』
 だが、雷竜はブレスやその巨体で明確にこちらの移動を制限して来ており、思うように動けない。
 南の空に固めようとしているのか……?
 聞けば、街の南部は猟兵の工作によって人がいないと聞く。この龍が猟兵の生み出したものだとするなら、相手の狙いは人的被害の軽減か。
『小癪な……!』
 人民の安全を保障するのが自分達軍人であり、今回の作戦だってそうだ。それなのに敵は作戦を阻止しようとしながらも、同時に人々を避難させている。
 これではまるで、
『私たちの作戦が失――、が!』
 怒りで気が散ったのか、戦闘が始まって以来、初めてa3が敵の痛打を受けた。雷のブレスを放たれ、進路を妨害されたところを狙って体当たり受けたのだ。
「――!!」
 雄叫びを挙げながら突撃した龍は、その牙で一気にa3の翼を砕いた。
 失速する。
 垂れるように落ちていくa3を狙ってもう一体、さらにもう一体と龍が群がっていく。
「……!」
 夜空に雷光が弾ける音と、鋼鉄が噛み砕かれる音が響いていった。
『な、クソ……!』
 僚機が撃墜されたことに焦ったa2は、背後から迫る影に気付かなかった。
 すれ違いざまに翼部を砕かれたことでa2の推力バランスが狂い、その場で旋回していくが、直にバランスは取れた。
 逆翼も砕かれたからだ。
 a3とa2が激しい音を立てながら、大地へ不時着していく。
『……!』
 一瞬のうちに隊の二機を砕かれた。緊迫した空気の中、a1は二つの事を理解した。
 一つは、敵が一機ずつ仕留めにかかっているということ。
 そして、もう一つは、
『来るか……!』
 次は己の番だということだった。


「お」
 玲は警戒が薄くなった道を進みながら、隣の空で行われている戦闘を見た。
 最後に残った“空翔”、恐らく部隊の隊長機が雷龍に目がけて突っ込んで行ったのだ。
『――!』
 山肌や、南の街並みを地上として定義した低空を保ちながらも、あの尋常ならざる速度はユーべルコードの発動に間違いない。
 音速などとうに超えた速度で走れば、大気干渉によって大気は弾ける。突撃し、翼からの衝撃波で攻撃するつもりだったようだが、しかし雷光という不定の姿で出来た龍らには効果が薄かった。
『……!』
 極度に接近しすぎたせいで、機体の制御がショートしたのが遠目からも解った。
「パイロットは生かしておいてあげてね」
「……!」
 返答代わりなのか、龍は雄叫びを空にぶち上げながら隊長機を追い、やがてその先で追いつき、両翼を噛み砕いた。
 大地を抉りながら不時着した“空翔”は全機、原型をとどめないほどに砕かれていたが、その内部にいるパイロットは無事だったようだ。
『……!? ……?』
 互いに顔を見合わせながら信じられない顔をしているのは、生きていることが信じられないのか、それとも別の理由か。
「ともあれ」
 自分の準備は、済んだ。この混乱に乗じて砦へ潜入することに成功したのだ。
 見つからぬよう慎重に移動したおかげで、まだ誰にも気づかれていない。
『……!』
「ん? 増援か……」
 丁度、扉が吹き飛んだ近くの格納庫から、残骸を蹴散らしながらまた新たな“空翔”隊が出てきた。
 そして発進していく。
 そんな光景を横目に見ながら
「あれは他の猟兵に任せるとして……。さて、馬鹿げた祭は終わりにしよう」
 己は武装に手をかけた。
「不条理のお出ましだよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワタツミ・ラジアータ
機動殲龍、でございますか
ドラゴンを名乗るには恐ろしさが足りない様な気がしますわね
他所の事は言えませんけれど

外装を戦闘用に換装
要塞がUCの射程に入る距離まで外装の防御に任せて、低空飛行で突貫
外装の破損は無視

【WIZ】
回避よりも修復速度に任せた固定砲台
外れミサイルの浸食した土地を立つことでミサイルと自己修復が無制限に可能
浸食金属による土地の支配を敵に強調し、要塞への攻撃で防御に回る敵の撃墜を狙う
撃たれた敵は、ワタツミとキャバリアの材料に成り果てる
時間があればあるほど浸食地域は増えてゆく

ご心配なく、事が終わればお返ししますわ
※全部返すとは言っていない

自身の持ち場が落ち着いたら空翔の味見をする




 ワタツミは新たに出現した敵の様子を見ていた。
「機動殲龍、でございますか……」
 前方上空、砦へとつながる道を守るキャバリアは力強さや雄々しさというよりは、細く、鋭利な姿をしていた。
「ドラゴンを名乗るには恐ろしさが足りない様な気がしますわね。まあ、他所の事は言えませんけれど」
 と、己のキャバリア、“Heart of GearOrgan"へ振り返った。機体外装はドレスから一転、既に戦闘用である竜型に変化していた。
 それはつまり、既に準備が整っているということだった。
「始めましょう」
 戦闘を。


『警告!』
 増援で来たb隊は突撃してくる敵を見た。猟兵だ。暗色の装甲を纏った一機のキャバリアが低空飛行で、こちらに、否、砦に向かって一直線に突っ込んでくる。
『――!』
 なので自分達は即座に砲撃を放った。鋼鉄をも貫く光線はb隊の全機から、連続で放たれていく。
 飛沫くような音が幾度も空に走り、やがて猟兵のキャバリアに衝突。竜のような外装を砕き、貫いていくが、
『止まらないか……!』
 突撃は継続だ。猟兵の機体は低空といえど飛行中であり、貫通の衝撃で揺れはするが、それまでだった。
 機体が地に触れることはなく、止まらない。むしろ、こちらに応射を返してくる余裕すらあった。
『……金魚!?』
 猟兵の機体から突如として放たれたミサイルは、まさにそのような造形をしていた。放たれた勢いそのままに、空中を泳ぐように接近してくる。
『……っ!』
 意表を突かれたが、全機はすんでのところで回避。干渉し合わないように編隊を組み直す最中、それを見た。
 さっきのミサイルが……。
 外れて、地面に落下した。と、着弾の衝撃で地表にあるものがぶち撒けられた。それは爆風でも火炎でもなく、白銀の金属だった。
「――――」
 金属が、地形を侵食していく。確かにそんな異常な光景を見たが、次の瞬間にはそこに目がけて、竜が滑り込んできた。
 急制動をかけ、竜が向くのは上空にいるこちらではなく、
『砦狙いか!』


 砦が射程に収まったことを確認したワタツミは、“Heart of GearOrgan"は姿勢を整え、砲を展開した。
「――侵略機海が祝詞を告げる!」
 大地に撒いた浸食金属の上に立ち、砲から雄叫びのような音を発した。
 金属が噛み合い、ぶつかり合い、削れ合うような騒がしい音は、己の口からも発せられる。
「――ZigZagZigZagGyyaRaGyyaRahRagarrrr!」
『……!!』
 金魚型のミサイルは、先ほど放った時よりずっと早く装填され、連射されていった。
 爆撃のように砦へ降り注がんとするミサイルを撃墜しようと、“空翔”らが砲を向けるが、
『くそ……!』
 ミサイルは連射されているのだ。砦に向かうものだけでなく“空翔”に対しても放たれており、それに対応できなかった一機が撃墜した。
『足場の金属から補充してるのか!』
 連射速度が飛躍したこちらの原因に気付くが、気づいたところでミサイルの壁は厚いままだ。
『……ッ!』
 再度の砲撃を放っても、貫通した傍から外装が修復されていく。接近する事なんてもってのほかだった。
 時間が経てば経つほど浸食領域は広がり、撃墜された“空翔”もその餌食となっていく。
「ご心配なく、事が終わればお返ししますわ」
 装甲も砲も一気に浸食され、“食われ”ていくのだ。


「ふぅ……」
 やがて、戦場に静けさが戻った。
 一息を吐いたワタツミは、“Heart of GearOrgan"から離れ、浸食金属の表面を歩く。
 全ての“空翔”は撃墜され、増援が来るまでしばらくあるだろう。
「少し時間があるようですし……」
 撃墜された“空翔”の元まで足を進めると、足元に落ちていた装甲を拾い、
「――――」
 口に運んだ。
 唇を開き、歯で咀嚼していく。
「……ふむ、軽いですわね」
 かなり口当たりが軽い。思い立ってキャバリアの残骸を叩いてみたら、響く音がした。中空だ。
 空を飛翔するという構造からか、恐らく見た目より機体重量は軽いのだろう。
「それじゃあ次は……」
 新たな発見を得ながら、また別の部品を探していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
空を取り戻したいのはわかるけど、でも、それで自分たちが滅んだら意味ないよね
止めるため、いくよ、ブルー・リーゼ!

高度に注意して、推力移動で加速してからの空中機動で空中戦を挑むよ
相手が空戦機でも、こっちも空戦は得意だからっ!

ホーミングビームの一斉発射で攻撃
避けられることを前提に動くけど、何体か当たったりしてね

避けた敵はビームランチャーとツインキャノンで撃ち抜いていくよ
敵の攻撃は、第六感で殺気や敵意を感じて、敵の動きを見切り、瞬間思考力で瞬時に回避・オーラ防御を選択して行動

接近した敵はビームセイバーで一閃!
翼を落とせば…

敵が包囲して来たら…
高速詠唱でのエレメンタル・シューター!

コックピットは避けます




 シルは転移が済み次第、機動を開始した。
「いくよ、ブルー・リーゼ!」
 己のキャバリアの名を呼びながら、L.S.の地上を低空飛行していく。目指すは無論、現場である街中央にある砦だ。
 低空とはいえ、速度は出ている。眼下の街の明かりは前から後ろへ、忙しなく流れていく。到着は間もなく果たされるだろう。
 空を取り戻したいのはわかるけど……。
 “殲禍炎剣”という存在はこの世界の住人にとって重大だ。それを払い、突破することができれば、どれほどの偉業であろう。
「でも、それで自分たちが滅んだら意味ないよね」
 止める。その一念を新た抱けば、しかしそんな思いを砕こうとする動きが来た。
『新手だ!』
 “空翔”という名のオブリビオンマシンだった。砦に繋がる道を封鎖していた彼らは、接近してくるこちらを確認すると、急ぎ迎撃態勢を整えた。
 編隊を維持したまま乱れなく機動していくその様子から、空戦に特化した機体なのは見て取れた。
「でも、こっちも空戦は得意だからっ!」
 己はブルー・リーゼをさらに加速させた。
『戦闘開始!』
 行く。


 接近してくる猟兵を迎撃するために出撃したc隊は、光を見た。
『――――』
 “空翔”のメインモニターに生じた光は、位置としては正面で、数は複数。そして、色も複数だった。
 虹。
 夜に有り得ざる光は、高速で自分達の方へ迫ってくる。それは光線の斉射だった。
『散開しろ!』
 迫る光を回避しようと全機が加速を振り絞ったが、しかし光も追ってきた。
『ホーミングか……!』
 単純に逃げれば追いつかれ、撃墜される。なので機体を回し、山の向こう側へ回っていった。山肌で光線を防ぐことで難を逃れつもりで、実際それは果たされたが、全機が全機、そう出来た訳ではなかった。
『くっ……!』
 背後、ホーミングレーザーを避けきれなかったc3が、大口径の光線と二連の光線で一気に喰われたのが見えたが、それも一瞬だった。
 すぐにc3からの連絡が途絶したことを、隊長機であるc1は知る。生体反応は返されて来るが、もうc3は撃墜されたのだ。
 残るは己と、c2だけだった。
 山を回り、向こう側へ回っていく。己が山の上側で、c2が下側だ。同時に山の影から飛び出し、猟兵にアタックを仕掛けていく。
 仕掛けた。


 来る……!
 前方、山の向こう側から二機が飛び出して来る前から、シルは敵の目的に気付いていた。
 なので回避した。その場から機体を移動させたのだ。
 その直後だった。
『何……!?』
 山影から飛び出して来た敵は、飛び出すと同時に肩部の二連砲から砲撃を放った。抜き打ち気味の一発は正確だったが、しかしそれが貫くのは、先ほどまでブルー・リーゼがいた場所だった。
 第六感によって殺気や気配を読み取った回避の正しさが、証明された瞬間だった。
 だが、
「まだ……!」
『……!』
 敵の砲撃は連射だ。絶え間なく放たれる砲撃は、こちらへ怒涛の勢いで迫って来る。
 光が見えた次の瞬間には自分の元へ迫る。そんな一瞬のやり取りの中、己は選択を誤らなかった。
「――!」
 ブルー・リーゼの前面にオーラ防御を展開し、敵砲撃の全てを防いだのだ。
 砕けた光が散り、前方は判然としなくなった。僅かに敵が見えるが、しかしそれは一機だけだった。
『おお……!』
 光の向こう側から、敵が突撃して来る。砲を連射をしながら、オーラ防御に激突していくのだ。
「ぐっ……!」
 ブルー・リーゼはその衝撃で揺らいだが、何とか持ち直し、手に持った光剣、エトワールを振り抜き、敵機の翼を断つ。
 断った。
 そこで気づいた。
 もう一機は……?
 敵は二機残っていたはずだ。今、大地へ落下していくもう一機とは別に。
 刹那。
『貰った……!』
 背後から声が聞こえた。敵はこちらの後方へ回り込んでいたのだ。
 後方に敵機、そして前方は山肌だ。包囲された。それに気づいたとき、自分は迷わなかった。
「――精霊達よ!」
『!?』
 高速の詠唱で呼び起こすのは、一つのユーべルコードだった。
 “エレメンタル・シューター”。己を中心として約百メートル圏内に近づいた敵へ、大量の魔力弾を放つユーべルコードだ。
 火、水、風、土。様々な属性の光弾が一斉に生まれ、背後のキャバリアへ向かって飛翔していった。
 果たして、背後の結果は音として知らせられた。多重の衝突音と破砕音、その多重奏は、
『――――』
 地上への墜落音を終止符として、それまでだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

朱鷺透・小枝子
「斯様に飛ぶ機体…これは、壊すべきだ」
デモニック・ララバイで。威嚇射撃と不協和音を流し、おびき寄せ。
シールドを全周囲展開、オーラ防御でビームカノンを受け流し、UCを発動する。

「疾く、壊し尽くせ。……ディスポーザブル…!」
戦場を覆う霊物質の呪詛で敵機を無力化し念動力で捕縛。
透明化迷彩で待機させていたディスポーザブル02群を遠隔操縦。
透明化維持のまま、02群からの電磁音波範囲攻撃と、灼熱の光剣の属性攻撃で敵機集団を解体する。

02に乗り換える。前に、ララバイで声を届かせる。
「空は、自分達にはまだ早いのです」
説得等といえるモノではありませんが…せめて、注告ぐらいは。

02、高機動機体で砦へ向かいます。




『!!』
 将軍の配下、“空翔”部隊のd隊は異常を検知した。
 警備していた自分達に目がけて、攻撃が飛来したからだ。
『何だ……!?』
 攻撃は電撃の連射だった。しかし狙いは甘く、殆どが有効射ではない。
 威嚇射撃。そんな単語を脳内に思いながら、側を掠めていく射撃をやり過ごし、反撃するために発射源へ砲を構えた。
 敵はどこか、視線を回したが、相手の正確な位置は視覚ではなく別の感覚素子から知った。
『舐めた真似を……!』
 それは音だった。
「――――」
 射撃を放ってきた猟兵のキャバリアは、不協和音を流しながら戦場に立っていたのだ。
 まるで自分の位置を誇示するかのように。


『――!』
 小枝子は、砲撃が怒りの感情と共に迫るのを見た。“空翔”隊全機からデモニック・ララバイ目がけて、一斉射が来たのだ。
 砲撃の軌道は前方やサイドなど様々だ。その全てを防ぐため、己は機体全周にシールドを展開。オーラ防御の障壁は果たして砲撃の全てを受け止め、別の方向へ受け流していった。
「…………」
 障壁を展開したまま、その向こう側の敵機を見る。砦に繋がる道を塞ぐように低空飛行しているキャバリア“空翔”は、浮遊した状態からの砲撃であっても姿勢に乱れは無かった。
 斯様に飛ぶ機体……。
 あれを用いて“殲禍炎剣”を砕くのだという。
 もしそんなことをすればどうなるか。結末を知っている自分達猟兵には、そんなキャバリアは看過できない存在だった。
「これは、壊すべきだ」
『一旦離脱して、もう一度仕掛けるぞ!』
 砲撃を防がれたことに気付いた敵は、加速器を吹かしてこちらから逃れようとしていっている最中だった。
「――疾く、壊し尽くせ。……ディスポーザブル……!」
 だがそれは叶わなかった。
『!?』
 突如として戦場を覆いつくしたものがあるからだ。それは不定形の霊的な物質であり、それ自体に拘束力があったわけではない。しかし、そこから生じる呪詛によって“空翔”隊の全てが無力化され、そこを己の念動力で捕縛したのだ。
『……!?』
 機体の出力も低下し、失速していく。もつれるように地上へ墜落、というより落下したところを狙って、更に攻撃を送った。
「――ディスポーザブル02群」
『な……!? どこだ!?』
 落下地点を予測して待機させていた別の機体、ディスポーザブル02の群れを遠隔操縦で突撃させたのだ。透明化迷彩を施した高機動型の多腕機群は、一斉に敵勢へ襲いかかっていった。
『……!!』
 まず“空翔”隊を襲ったのは音波攻撃だ。電磁属性が乗った音波が全方位から放たれたことで、“空翔”の身体のあちこちでショートが起こる。
 電磁気系統が完全に破砕され、もはや完全に身動きが取れなくなった相手にとって、後はもう抵抗の手段はなかった。
「…………」
 デモニック・ララバイが、身動きの取れない“空翔”隊の元に立った。その手には灼熱の光剣、メクサラがあった。
 そして、次の瞬間には光剣が振り下ろされていた。
 “空翔”の手足や翼、加速器を潰すためだ。
 潰していく。


 小枝子は解体作業に手間取ることは無かった。刀身に付着した“空翔”の破片が蒸発していくのを見切りながら、納刀。
 デモニック・ララバイから降り立つ。
 すると、
『く、そ……!』
 スクラップ同然となった機体から漏れる声が聞こえた。苦痛とも憤慨とも取れる声だった。そんな言葉に対し、ディスポーザブル02へ乗り込む前に言葉を送った。
「……空は、自分達にはまだ早いのです」
『何……?』
 それだけを告げると、新たな機体へ完全に搭乗した。
 時間も押している。説得といえるものではないただの注告だったが、しかし伝えたかったのだ。
「――――」
 ディスポーザブル02を始動。先ほどの遠隔操縦から同じく、機体に問題は無かった。高機動型らしく順調に加速し、速度に乗っていく。
 それを確認するとさらに出力を送り、一気に機体を進めていった。
 砦へ。

成功 🔵​🔵​🔴​

播州・クロリア
({舞狂人形}に搭乗したまま爆炎を眺め)
始まったようですね
では私たちは他の猟兵の皆さんが動きやすいように敵のキャバリア部隊を引きつけましょうか
({舞狂人形}がその場で直立し目を閉じて祈るようなポーズをした後{渦流の旋律}で『ダンス』を始める)
千変万化する水の流れのようなこのリズムで敵を絡めとりましょう
({渦流の旋律}のダンスにのせた『催眠術』で操縦者の方向感覚を狂わせ、UC【蠱の珠】で作った空間へ誘導する)
そちらの空間は新兵器とやらの破壊作業の観覧席になります
最後までじっくりとご観覧ください




「始まったようですね」
 クロリアは“舞狂人形”に搭乗したまま、街で生じた爆炎を見た。
 キャバリア一発分の爆発、それは、この小国家にいる全ての存在に対して十分なメッセージを持っていた。
「……!?」
 にわかに騒がしくなる街を後にし、己は砦へ続く道を進んでいく。
 もう、戦闘は必須だ。自分達猟兵はこのまま砦へ進み、将軍の撃破を狙う。だが敵は敵でこちらの迎撃を狙ってきている。作戦に使うはずだった“空翔”を割いてまで、だ。
「…………」
 見上げる。
 砦への道を封鎖するように浮遊している“空翔”隊は、猟兵の出現を見逃さないように目を皿にして警戒している。
 このままではあそこで足止めを受け、敵に猶予を与えてしまうのは間違いなかった。
 あの道を突破する必要があった。そして、それは最速でだ。
「――では私たちは他の猟兵の皆さんが動きやすいように、敵のキャバリア部隊を引きつけましょうか」
 猟兵は自分以外にもいるが、ここには己一人しかいないが、しかしもう“一人”、いる。“舞狂人形”だ。
 言葉を送ると、機体は身動きをもって応えた。祈るようなポーズの後に、己の名を体現していくのだ。
 舞っていく。


 ……!?
 “空翔”部隊は異変に気付いた。道を封鎖している自分達と街との間に現れたキャバリアが、踊り始めたからだ。
 しかし自分達が感じた異変はその舞踏そのものに対してではない。サイキックが当然としてあるこの世界だ。戦場で舞っている者がいても、侮りは抱かない。
 事実、異変はもう自分達の機体に生じていた。
 否、
『おかしいのは俺達か……!? くっ!』
 異変は、パイロットである自分達に生じていた。
 方向感覚の狂いや、意識の混濁。それらが今、ここにいる全員を襲っているのだ。
『サイキックか!? くそ、距離を取れ!』
 あの踊りを視認していればいるほど、自分達は冷静ではいられなくなる。何とか操縦桿を握り、離脱しようとしたが
「――無駄です」
 と、猟兵のキャバリアからそう聞こえたのは幻聴か否か。だが言葉通りだったのは確かだった。
『――!』
 もう、方向感覚は完全に消失していた。距離を取ろうとして操縦したところで味方機と激突し、宙で回る。
 視界が回る中、猟兵のキャバリアは姿が増えていた。まるで分身をしたように自分達の全周にいる。
 ……いや、これは自分達が回っているからか……?
 分からない。自分達が回っているのか、それとも意識だけが混濁しているのか、どちらかすらも。
 ただ、敵の踊りは常に視界に入っていた。
「――!」
 川の流れのように、自然な動作で踊り続けていた踊りはやがて激しさを増していく。
 引き絞った両腕は叩きつけるように振り、弾けるように外へ流れる。ストライドの大きな足運びはどみなく動き続け、ただの一度も留まりはしない。
 激しさと緩やかさが間断無く差し込まれ、見ている者を圧倒していく。
 丸太を流し、巨岩をも削る流れかと思えば、石同士の微細な隙間すらにも入り込む流れでもあった。
 両極の流れは、しかし等しい結末を得る。辿り着く先は同じなのだ。
 それはどこか
『天……』
 流れを追うように、頭上を見上げた。
 そして見上げる動きは、やがて天を求める動きとなった。
 浮遊だ。それが止まらなかった。


 クロリアは、敵が己の術中に嵌ったことを確認した。
 催眠効果のある踊りで誘導したのは、敵の頭上だ。そこにはユーべルコードで発動した異空間が広がっていた。
 ユーべルコード、“蠱の珠”。踊りを示す旋律に沿った現象が生じる異空間に、敵勢は自分達から飛び込んだ形となる。
 そこで、踊りは終わりだ。
 “舞狂人形”が一礼するのを見届け、己が送るのは見送りの言葉だ。
「そちらの空間は新兵器とやらの破壊作業の観覧席になります。最後までじっくりとご観覧ください」

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
へーそれぐらい低空なら撃たれないんだ!知見を得たでござるな

飛べるんなら飛ぶだろ!空を飛ぶのはストレス解消に良いとされますぞ!
ホイ【軍用機】召喚、今日は"蜂"が飛ぶでござる

高度は敵機の高さを見て上げすぎないように…一定高度で上下だけしてるとシューティングめいてるでござるな
推力全開!アフターバーナーバンバン炊いて敵陣に殴り込みでござる!乱戦は楽しいからな!残弾気にせずミサイルも機銃もブッパでござる!ケツ取るとかしないで見えたら撃つぐらいでいいんだ
時折基地の方にも長距離ミサイルを撃ち込んで嫌がらせですぞ!

ぶんぶんぶん はちがとぶ
ばくえん きらきら
てっきが おちるよ
ぶんぶんぶん はちがとぶ




 エドゥアルトは敵を見て、知見を得ていた。
「へー、それぐらい低空なら撃たれないんだ!」
 なので即座に自分もそうした。


『……!!』
 将軍麾下の“空翔”部隊、そのf隊は、自分達と同じ空間に敵が現れたのを見た。
 空。低空とはいえ、地上から離れた位置に辿り着けるのは、この世界ではそういない。高度や速度を見誤れば、“殲禍炎剣”に撃墜されるからだ。
 だが、自分達以外の者がいた。
『あれは……!』
 猟兵だ。遠く、未だ点としか見えない姿だが、解る。キャバリアでもなく、ましてや生身でもないその姿は、この世界では希少極まる姿だからだ。
『……将軍が言っていた。かつて“鷲”の名を冠した機体があったと』
 識別する。
 敵機は自分達の国の過去の機体とよく似ていた。
 “空翔”は機体内部のデータから類似機体を算出し、その名前を画面に表示した。
『――交戦……!』
 “蜂”。
 その一語を認め、全機が戦闘を始めた。


 エドゥアルトは敵を見ながら、速度を得ていた。
「飛べるんなら飛ぶだろ……!」
 “蜂”のコックピットの中、くぐもった声はフルフェイスのヘルメットゆえだ。
 顔面が圧迫され、酸素供給はあるが息苦しい。そもそも全身が重力で引っ張られ快適な環境とは言い難いが、空を飛ぶのはストレス解消に良いとされているでござる。
「Fooo~~~~!!」
 なので些事は気にせず、飛ばしていく。
 高度と速度、二つの危険な要因のうち己は速度を選んだからだ。
「だって高度は、敵に合わせたらいいってことじゃん!」
 だからそうした。
 山に繁る木々の高さぎりぎり、機体の腹がこすれる高さだ。そこを音速超過で飛ばしていけば衝撃波によって梢など一瞬で吹き飛んだが、そんなことを気にしている場合では無かった。
「まあ、飛びやすくなってヨシ!」
『――!!』
 敵と交戦しているからだ。最初の衝突、互いに正面切って撃ち合い、向こうの一機を落としてから、共にもつれるようにこの低空を戦場としている。
 相手も音速などとうに超えている。真下の木々も、遥か彼方の雲も、前にあったものが一瞬で後ろへ流れ去っていく。そんな速度域だ。
「……!」
 だが、全員がそれを当然としていた。一瞬でも気を緩めれば山肌に激突する中、相手の隙を突いて砲火を交わし、躱していくのだ。
 三機から二機になっても落ち着いてるでござるな……。
 敵の連携に淀みは無い。ミサイルと機銃を雪崩のように絶え間なく発射し、こちらを圧迫してくる。
 対するこちらは不慣れだ。高度を相手に合わせ、その高度も僅かに上下させる程度しかクリアランスが無い。
「……なんかこんな風に上下してると、シューティングゲームめいてるでござるな」
 全弾を回避。
 制限されたエリアの中を、皆でじゃれつくように飛んでいる。幸いここは、敵が今回の“作戦”に選ぶほどの高山だ。高さと同じく裾も広い。高度さえ気を付ければ左右はある程度広く使える。
 山肌を地表として上空数メートル。そんな平面的な空間をエリアとして、自分達は機体の腹を山に傾けて周回していく。もう、山を何周したかなど覚えていなかった。
 だが、己がゲーム相手に選んだのはじゃれつく三機では無かった。
「推力全開……!」
 アフターバーナーを全開にし、今まで以上に速度を得た。加速のGが身体を軋ませるが、構わない。
 山肌を回っていく。機首は山頂の方を向いている。
 その先に、砦があった。
『マズい……!』
「おーい将軍! お前も入ろうぜー!」
 驚愕の気配を置き去りにしながら、迷わずミサイルを撃ち込んだ。


 砦に撃ち込まれ、しかして全力で迎撃れたミサイル一発を皮切りに、戦場は混沌としていた。
「――!」
『……!』
 “蜂”と“空翔”隊、そこに砦からの応戦が加わり、爆炎が山のあちこちで描かれていく。乱戦だった。
 そんな光景を、離れた麓から街の者達は見ていた。
「くそ、また……!」
 三機いた“空翔”はたった今、一機が落とされた。山を逆走し、奇襲を仕掛けたところをカウンターで撃墜されたのだ。
 爆炎が上がる。
 対する“蜂”は今も健在だった。目に着いた相手を手あたり次第、砲火という針で刺していく。残弾なんて気にしないかのように盛大にばら撒いていくそんな様子は、活き活きとしているようだった。


「ぶんぶんぶん はちがとぶ
 ばくえん きらきら
 てっきが おちるよ
 ぶんぶんぶん はちがとぶ……」

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
疑問が解けました。
いかにオブリビオンマシンとて、国全土に影響を齎せるのか。
そこまで将軍とやらの言葉は絶対なのか。

不可解でしたが――禁酒法が恐らくすべての元凶。

酒も飲めぬと冷静な判断など不可能でしょうからな。あな怖ろしや。


さておき。
【式神使い】の術で大蛇麁に進撃の命を。

【残像】を残した機動で狙いを狂わせ、太刀の【斬撃波】で砲弾を払い、打ち漏らしや爆風は【結界術】で耐えさせます。

その隙に私は夙夜と共に【鬼騎乗崩】にて死角より跳躍。
機体の背に飛び移り、翼や砲身を【怪力】の一閃で断ち切り、無力化していきましょう。

搭乗者の命を奪う気はありませんが……落下傘や脱出装置、しっかりとありますよね?




 景正は納得していた。
「禁酒、法……」
 自分で呟いた言葉に納得したように、一度頷く。
「成程」
 疑問していたのだ。
「いかにオブリビオンマシンとて、国全土に影響を齎せるのか……。
 そこまで将軍とやらの言葉は絶対なのか……と」
 不可解だった。だがそれも、先ほどの店主の言葉を聞いて氷解した。
 禁酒法だ。
「――この法が恐らくすべての元凶。
 酒も飲めぬと冷静な判断など不可能でしょうからな」
 あな怖ろしや。


『――来たぞ!』
 砦までの道を守る“空翔”部隊、そのg隊は猟兵の接近を察知した。
『地上にいる! 反応、二!』
 探知器の結果を肉眼で確かめれば、確かにそこに二体の敵がいた。
「――――」
 一体はキャバリアかと思ったが、違う。藍色のその機体は甲冑であり、キャバリアに比べれば少し小柄だった。恐らく三メートル半と少し。
 小柄な躯体が俊敏に山道を駆け上がって来る。
 そしてもう一体は、
『馬……!?』
 騎兵だった。鎧を纏って本物の馬に跨っている。自分達にとってその姿は、あまりに過去の光景のように思えた。
 そして、そんな一体と一騎が共に突撃してくる。
『進ませるな!』
 叫びと共に放った一斉に攻撃を放った。機銃から放たれた弾丸が大気を切り裂き、それを追うようにミサイルは白煙を棚引かせる。
「…………」
 面として迫りくる攻撃に、甲冑が前へ出た。逃げも隠れもせず、佩いた太刀に手を掛けているのが見えた。
『な――』
 まさか、という言葉は続かなかった。
 刹那だった。
「……!」
 鞘から太刀が抜き放たれ、その抜刀の勢いから生まれた衝撃波が宙を突っ走っていった。
 鋭利な衝撃波は、その性質のままに砲火と正面からぶつかり合い、全てを切り裂いた。
『嘘だろ!?』
 弾丸は真っ二つにされ、同じく切り裂かれたミサイルもその場で炸裂した。
 だが、通常であれば花のように散る赤と黒の色は、甲冑の前に生じた結界で防がれ、壁のように広がった。そして、煙はやがて晴れる。
「――――」
『……っ』
 防げたのも全てではなく、幾らかはダメージを結界の向こうへ通したはずだ、とそう思いたかったが、無傷で太刀を構え続ける甲冑の姿を見たことで、それが有り得ないことなのだと知った。
 と、
『……待て』
 そこで、一人が気付いた。
『騎兵はどこだ!?』
『!?』
 甲冑と共にいた騎兵が、姿を消していた。
 だが肉眼で見失ったとしても、キャバリアにはレーダーがある。なので急ぎ確認しようとしたその時、
「遅い」
 声が、聞こえた。


 景正は愛馬と共に駆けていた。敵の正面を大蛇麁の自律的な戦闘に任せ、自分達が向かうのは敵の死角だった。
 爆炎を目晦ましにしたとはいえ、砦に繋がる道は大蛇麁と敵勢に封鎖されている。正面は無理だ。なので道を横に外れ、そこを夙夜で駆けていく。
 高山特有の乾いた岩地を踏み締め、
「跳べ!」
『……!?』
 次の瞬間には跳躍した。大地を踏み切り、一気に宙へ跳び上がったのだ。
『く……!』
 隣に並ばれた“空翔”が慌ててこちらへ振り向こうとするが、自分の方が早い。
「命を奪う気はありませんが……」
 夙夜の鞍から、振り向かんとしているその鋼の背へ、一拍の間も無く飛び移る。
「――この機体に、落下傘や脱出装置はしっかりとありますよね?」
『何……!?』
 答えを待たず、手に持った刀を機体へ振り下ろした。
 両翼で二度、砲を落とすのに一度。それだけ銀閃が翻れば、次の瞬間にはそれらの部位が“空翔”の身体から分離された。
『……!?』
 墜落していく。
 内部から騒がしい音が連続するのは、脱出装置の作動音だろうか。そんなことを考えながら機体から跳び退り、さらにもう一機へと飛び移った。
「同じく、ですね」
『くそ……!』
 最初の機体から搭乗者が射出されるころには、もう一機の両翼と砲を断ち終わっており、
「――!」
 さらにもう一機の背に立っていた。
 銀閃が、翻った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『Fortress』

POW   :    要塞からの火力支援
【背部に背負った多連装ミサイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同じく背部に背負った主砲】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    要塞への接近阻止
【足の間】から【重機関銃の乱射】を放ち、【弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    要塞による掃討
【両腕のグレネードランチャー】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 砦内部は騒然としていた。迎撃に出た“空翔”隊の全機が撃墜された報を受けたからだ。
 ――何故、猟兵が阻止しに来るのか?
 ――阻止するに足る理由があるのか?
 ――本当にあれらは猟兵なのか?
 様々な憶測や懸念砦内部の軍人達の間でも上がっていた。
 そして、
「――本当に、作戦は成功するのか……?」


「――――」
 その質問に、誰もが息を詰めた。それが決定的な質問だったからだ。
 誰もが思い、しかし口にするのを憚られ、だがしかし今、世に出た。
『…………』
 Fortress。要塞の意味を持つその機体のコックピットに今、将軍はいる。Fortressの背に背負われた“空翔”に搭乗した者も、将軍と同じく、コックピットの中で沈黙を保っていた。
 作戦の要はもうこの二人しか残っていない。だが今、二人はキャバリアの中だ。外から表情も見えず、沈黙されれば皆からは何も解らなかった。
「将軍……?」
『…………』
 今まで全員の前で雄弁だった将軍が一言も話さず、姿も見せなくなると、皆は途端に不安な気持ちになった。頑健で逞しい、いつも皆に安心を与えてくれる赤のキャバリアが、いつもとは違って見えていた。
『――ダグ』
 その時、将軍が口を開いた。


『ダグよ、カタパルトの加圧は間に合わなかったな』
『この戦闘に勝てばよろしいかと』
『勝つ、か。主はどちらに味方をするだろうか』
『我々です将軍』
『我々とは誰だ?』
『愛する国家の為に、挺身する者達です』
『愛する国家とは何だ?』
『偉大なるL.S.です』
『それはどこにある?』
 一拍の後、ダグはFortressの背で答えた。
『“過去”です。我々の愛する国家は、“過去”にしかありません』
『同感だ。――来るぞ、猟兵だ』


「!!」
 砦に正面から近づいていく猟兵達は、それを見た。
 砦の広場、その中央に赤のキャバリア、Fortressが鎮座するように構えているのをだ。
『――――』
 背負った“空翔”の二連砲が、元の巨砲の替わりのように差し向けられていた。
 と、
『猟兵諸君、私だ』
 そこで通信が来た。L.S.の大統領からだった。
『後は将軍を倒すのみだな。ああ、倒すんだ。少なくともあのマシンは必ず破壊しろ。完膚なきまでに』
 Fortressと“空翔”。オブリビオンマシンと化したあの二機を破壊さえすれば、パイロットの二人も正気に戻る。
 彼らが悪しきマシンに支配されている事を暴き、国民に周知できれば最良だろうが、大統領から受諾したこの“依頼”にとって、それは究極的には関係無い事だった。
『――健闘を祈る』
「……!!」
 大統領の言葉を最後に、そして戦闘が開始された。
朱鷺透・小枝子
敵だ。あれが、自分の敵だ!!

ミサイルを避けながらディスポーザブル02で推力移動特攻、
瞬間思考で避けきれないと判断後即乗り捨て。
02を盾にディスポーザブル01を呼び出し、操縦
フォースウィップを伸ばし、決して吹き飛ばされぬよう敵機と自機を繋ぐ。

「戦え、壊せ!ディスポーザブル!!」
敵と自身の闘争心でUCを発動。
継戦能力、真正面から、前進。駆ける。
ミサイルを、砲撃を受けながら、構わず前へ進む。

希望をへし折る為に、これが尋常ならざる戦いであるが故に

「オブリビオンマシンを、壊せぇええ!!!」
至近距離からの電磁音波マヒ攻撃。
ブラストナックルの属性攻撃を、パワークローの怪力を叩き込んで敵機を壊してゆく。




 ――敵だ。
 小枝子は、その一語を視線の先に認めた。
「あれが、自分の敵だ!!」
 ディスポーザブル02の中で吼え、推進器を全開。特攻していけば、敵も鋼の吠声を返してきた。
『来たか、猟兵……!』
 Fortressのミサイルハッチが開く音が連続し、そこからミサイルが一斉に飛び出して来たのだ。
 推進剤が炸裂する甲高い音が砦中に響き、白煙をたな引かせたミサイルが、前進する02を狙って飛翔してくる。
 数は複数。前方の空間を埋め尽くさんとするミサイルを見て、まず思考をよぎるのは回避という選択肢だ。
 己の機体は前進しているとはいえ推力移動の最中だ。その機動力を持ってすればと。しかし、速度が乗っているということは、両者の接近は相対速度で一瞬だ。
「――――」
 瞬間的な思考で回避を切り捨て、それと同時に02も捨てた。
 乗り捨てたのだ。
 開いたハッチから転がるように飛び出した己の身体は、慣性のまま背後へ流されていく。
 次の瞬間、爆炎が生じた。ミサイルをその身に受けた02が、爆発と破砕を連続させていく。
「01!」
 今まで自分が乗っていた機体を盾とした裏で、呼び出したのはもう一機のキャバリア、ディスポーザブル01だ。急ぎ搭乗していく。
 そうして01に乗り込み、コックピットのハッチを締めた瞬間、02は完全に爆散した。
 ミサイルを浴びて脆くなった装甲を、Fortressが背負った“空翔”の二連砲が刺し貫いたのだ。
 それは、チャンスだった
「逃さない……!」
 大きく広がった爆炎に01の手を翳したのは、突風から機体を守るためではなく攻撃のためだ。黒煙を目晦ましに、向こう側にいるFortress目がけて、掌からフォースウィップを射出する。
 高速射出された鞭の先端は、敵機の一部へ巻き付き、確かに両者を繋いだ。
 準備は整った。
「……!」
 なので己は再び前進した。01の推力をフルパワーに、どんどんと加速していくのだ。
『また特攻……。何度やっても同じだ!』
 黒煙が晴れた先、02の残骸の向こう側では、Fortressがミサイルや“空翔”の砲を再びこちらに向けていた。
『――!』
 当然、次の瞬間には全てが発射された。先ほどと同じ攻撃は同じ結果を辿る。すなわち全弾の命中だった。
 01が爆炎の華を抱いた。
 だが、
『何……!?』
 軽装甲の02とは違い、堅牢な01であればその全てに耐えることが出来た。無論、衝撃は有り、吹き飛ばされそうにもなるが、互いをフォースウィップで繋いでいる。それを頼りに足を踏み締め、
「――戦え、壊せ!」
 雄叫びと共に、前進していく。
『くっ……!』
 追撃の砲が放たれた。02を砕いたそれは、01の装甲にも直撃したが、やはりそれだけ。
 01の走りが止まることは無かった。
 前進する。
 希望をへし折る為に、これが尋常ならざる戦いであるが故に。
『なっ……!?』
「ディスポーザブル……!!」
 砲火をものともしないそんな01の直進は、やがて敵の懐にまで辿り着いた。自分自身の胸元を見下ろすFortressから、驚愕の気配がありありと伝わってきた。
 そして、
「――オブリビオンマシンを、壊せぇええ!!!」
『が……!!』
 振りかぶった腕を、一気にオブリビオンマシンへ叩きつけた。ブラストナックルが装着された重厚な拳は、敵の装甲を砕くばかりか、そこから電磁音波を放った。
 “空翔”との戦闘でも放った電磁音波攻撃は、Fortressにも同じく通用した。砕かれた装甲から音波が反響し、装甲の下は更に破滅的になっていった。そうして、露出した内部回路へ電流が流し込まれていくのだ。
『……!?』
 しかし攻撃はこれで終わりではない。砕かれ、抉られたそこへ、更に力を叩き込んだ
 パワークローだ。腕に装着されたそれはパイルバンカーを内包しており、
「おぉ……!!」
 一気に力を、Fortressの内部で開放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワタツミ・ラジアータ
今度は食べ甲斐のある機体のようですわね
最後の足掻きで空に向けて飛ばれても困りますし
一切合切食べ《侵略》させていただきますわ。

【SPD】
外装を前方に脱ぎ捨て弾幕への囮にする
内側に入り込み、暴走形態の素体から侵略兵装を発動
機体を侵略しつつ目障りな武装を無差別に破壊する

【真の姿】
理性低下によりワタツミが変貌
機体から降り、敵の主目的である“空翔”の破壊を目論む
自身を中心にすべての物質を金属化する広域浸食兵装を展開

真の姿:白磁の肌に赤いドレス、手足に長い白銀の爪が生えた異星の機神
理性低下により、記憶は曖昧
人の命に無頓着
不安定故、強めの衝撃で正気にもどる

私一人も落とせないようではまだ色々足りませんわ




 今度は食べ甲斐のある機体のようですわね、というのが敵を目の前にしたワタツミの抱いた感想だった。
 視界の中央、砦内部の広場で堂々と待ち構えている赤の機体は、今回の元凶であるオブリビオンマシン、Fortressだ。
 重厚な機体は大きな四つの足で身体を支え、身体のあちこちには装甲版や火器が潤沢に搭載されている。
 そして、敵は一機だけではなかった。
「“空翔”……」
『…………』
 本来であれば巨大な砲が乗っている背には、先ほども戦闘した機体がマウントされている。ただでさえ重厚な機体が二機一対となり、その圧迫感は凄まじかった。
「最後の足掻きで空に向けて飛ばれても困りますし、一切合切食べ《侵略》させていただきますわ」
『ほざけ……!』
 そして、プレッシャーはさらに増幅した。
 四足で地面を踏み締め、安定を得たFortressが荒れ狂っていくのだ。機体下部にある機関銃をこちらに差し向け、連射してくる。
『……!』
 宙を突っ走り、飛来してくる大口径弾丸の数は無数。一瞬と言う間もなく到達するそれらを、“Heart of GearOrgan"は全て外装に受けた。
 被弾。
「――――」
 被弾し続けていく。


 将軍は、Fortressの内部でそれを見ていた。自分が放った重機関銃の射撃が、次々と猟兵のキャバリアの外装へ着弾し、騒々しい音を奏でていく様子を。
 しかし、射撃の結果はそれだけだった。
「いない……!?」
 そこにあったのは外装だけなのだ。肝心の中身である、あの“素体”とも言うべき白の異形機体がいない。
 ならばどこにいるか。
『左です、将軍!』
「……!」
 ダグの言う通り、自分達の左手側から疾走してくる影がある。“素体”だ。前方へ放るように脱ぎ捨てた外装を囮とし、その隙にこちらへ接近しようとしているのだ。
 しかも、その見た目は大きく変わっていた。外装が無くなっただけでない。紅いドレスを纏ったその姿は、先ほどまでとは違う形態なのは明白だった。
「く……!」
 迎撃しようと、重機関銃を含めたあらゆる武器を急ぎ向き直そうとしたが、その時にはもう手遅れだった。
『……!!』
 咆哮のような大音は“素体”から生じた。そこに発動されたのは、今まで見たことが無い兵器だった。
『――歯車機構出力制限解除。"ScrapSea"起動セヨ』
 声がそう響いたかと思えば、次の瞬間には恐らくその兵器、"ScrapSea"がFortressを一気に“喰らっていた”。
「な――!?」
 侵略されているのだ。鉄が錆びて腐食するように、マグマが岩を溶かすように。Fortressのあちこちで変形や破損、異常が続いていた。
 それは機体が金属化していった結果だった。無論、Fortress自体金属の塊だ。だが、そうではない部分すらも金属になってしまえばどうなるか。
 一瞬のうちに、機関銃やグレネードランチャーが使い物にならなくなった。
「おのれ……!」
 背に背負っていたミサイルランチャーも浸食されれば、側にある“空翔”への被害は間近だ。
 重機関銃を“喰われた”際に脚部も被害を受け、動かせば異音が鳴ったが無理やり四足を動かし、何とか距離を取ることに成功。
 これ以上の攻撃から逃れ、態勢を立て直そうとした。
 その時だった。
「――――」
 Fortressの膝の上に、女がいた。


 “Heart of GearOrgan"から飛び降りたワタツミは、真の姿になっていた。
 白磁の肌に、紅いドレス。手足から長い白銀の爪が生えたその姿は、この星の生命体として非ざる姿だった。
 異星の機神。その性質が色濃く表れてはいるが、反面、己の意識は判然としていなかった。
「…………」
 暴走形態に移行した機体に長くいた影響か、理性が低下し、そのためこの状態になった。と、そう己は考えている。記憶も曖昧なのだ。
 ただ、内から来る欲求があった。それに従って身体を運ぶ。赤のキャバリアの膝を蹴って、肩へ跳躍。
 見下ろす。
 そこにいるのは、もう一機のキャバリアだ。
 直後。
『な……!?』
 “ScrapSea”を再度起動した。己の身体を中心に、広域浸食兵装が猛威を振るっていく。
 全てを金属化していくのだ。足下のFortressや“空翔”、そのさらに下にある大地や、
『がっ……!?』
 周囲の空気さえも。Fortressと“空翔”の内部から、引き絞るような声が聞こえた。
「…………」
 喘ぐような、痛苦に満ちた声が聞こえていたが、己は別段、その事に頓着をしなかった。ただ、足元にある“空翔”を破壊しようと、そう考えていた。
 だからそうした。
 “空翔”のあちこちを金属化し、稼働しないようにしていく。その対象にパイロットも含めて。
 だが、
「――――」
『……!』
 酸素が不足した将軍が藻掻いたのか、それともこちらを振り下ろそうとしたのか。Fortressが激しく暴れ回り、両腕を棍棒のように振り回してきた。
 衝突。
 だがその寸前に、Fortressの腕の可動部を“固めた”ことで、勢い自体は殺されている。手足の爪で受け、背後に吹っ飛んで着地。
「…………」
 頭を振って、姿勢を整える。もう、その時には意識ははっきりしていた。
「私一人も倒せないようでは、まだ色々足りませんわ」
 機神から、ワタツミへと戻ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

月夜・玲
ふーん、どうすっかな
将軍倒しても体制側も出来ると信じてるなら
敵が私みたいに底意地の悪い考えを持っているなら
今度は体制側で事を起こして猟兵の信用を落とすんだけど…

…ま、いいか
ケセラセラ…だね


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【断章・機神召喚】起動
召喚した腕を『念動力』で浮かし右腕とリンク
ミサイルは左手で『斬撃波』を放って直撃コースのみ迎撃、爆風は『オーラ防御』で防ぐ
右手で腕を操り機体を斬りつけていく
後は腕の高度を上げて念動力をカット
重力+質量で『串刺し』に!

なるべくコックピットは避けて斬ろう
将軍も無理な夢は見ない事だね
後大統領も、同じ事するなら叩き斬りにくるからしくよろ~




 玲は騒然とする砦に潜んだまま、敵を見ていた。
「ふーん、どうすっかな……」
 小さく呟くのは、懸念があるからだ。オブリビオンマシンを倒し、暴走した将軍らを止める。これを大前提としても、まだ懸念がある。
 将軍を倒したとして、『“殲禍炎剣”の撃墜は可能』と体制側も信じているのだとしたら、
「“敵”が私みたいに底意地の悪い考えを持っているなら、今度は体制側で事を起こして猟兵の信用を落とすんだけど……」
 オブリビオンマシンが起こす事件、そのアプローチ方法が変わっていることは先ほどからも引っかかっていた。
「どうすっかなあ……」
 最初に呟いた言葉をもう一度呟き、
「……ま、いいか。ケセラセラ……だね」
 と、気楽な声を吐いて、抜刀した。
「――偽書・焔神起動」
 街にいたときと同じだ。
 “《RE》Incarnation”と“Blue Bird”、その二刀を手に持ち、右腕だけを頭上に掲げる。
「断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
 唱えれば、言葉は目に見える力へと変化した。
「――――」
 虚空より、巨大な機械の腕が召喚されたのだ。
 位置は掲げた右腕の側。大きさとしては三メートル越えだ。鋼の腕は右腕を再現するように、天に伸びている。
 そしてその拳には己が握っている模造神器も握られていた。再現されているのだ。
 三メートル越えの腕に相応の剣。巨大な物体が突然現れたことで生まれた風が、髪をくすぐった。
「――――」
 軽く、身じろぐように右腕を動かせば、機械腕も全く同じ動きをした。
 ユーべルコード、“断章・機神召喚《フラグメント・マキナアーム》”。己の右腕の動きや武器をトレースする機神の腕が、確かにそこにあった。


 玲は力を振るった。今まで潜んでいた砦の一角を吹き飛ばしたのだ。
「……!!」
 建物の壁も乾いた大地も、等しく砕かれた。建材は吹き飛び、大地が抉れ飛んでいく。
「ふぅ」
 一気にクリアになった自分の視界の中、正面にいるのはオブリビオンマシンだ。
『――!』
 瞬間。ミサイルによる射撃を即座に放ってきた。
 見的必殺、警告も会話も無い攻撃は、斉射だった。
 ミサイルの数は左右合わせて二十四発。弧を描いて飛翔してくるそれらは、こちらを中心とした周囲ごと爆撃する狙いだ。
 だがそんな力の圧を前にしても、己は臆さなかった。
「……!」
 模造神器を構え、一気に振り抜いた。機械の腕が連動する右腕ではなく、左腕だ。
 薙ぎ払うような一振りは模造神器の刃から斬撃波を生み、自分を狙った直撃コースのミサイルを砕いていった。
 爆発する。爆発は連鎖し、巨大な衝撃波となる。
 至近で広がったそれを己はオーラ防御で受け凌ぎ、
「――!!」
 右腕一発。視界を塞ぐ黒煙に構わず、その奥にいるFortressに向けて突き込んだ。通常であれば間合いの外だが、今の己には機神の腕がある。
『ぐっ……!!』
 煙で見えずとも、手応えは音でれた。五メートルの鋼の塊に、三メートル越えの武装で攻撃したのだ。大質量の衝突音が響き渡った。
 そして腕を引き抜く動きで煙が振り払われ、装甲を切り裂かれたFortressを見た。
 返す刀で、即座に二撃目をぶち込んだ。
「まだまだ……!」
 攻撃は止まらない。
 刺突、斬撃、打撃。
 右腕を前へ前へと繰り出し続け、その度に赤の機体は砕きを得ていく。
『おのれ……!』
 懐に入り込んだこちらを排除しようと、Fortressは足下の機銃を差し向けるが、その時にはもう己はそこにいない。
「ここだよ」
『!?』
 Fortressの四脚、その膝上へ跳び上がった己は、右腕を最初と同じく天に掲げた。すると当然、機械腕も釣られて高さを得る。
『――――』
 見上げた二機のキャバリアの頭上に、模造神器の切っ先があった。
「――念動力カット」
 直後。力を失った機神の腕が重力に従い、Fortressらに目がけて落下していった。
『……!!』
 将軍は腕部のグレネードランチャーを掲げて身を守ろうとしたようだが、間に合わない。
「貫け!!」
 機械腕の質量と重力落下の勢いの合成がFortressを一気に刺し貫き、背に背負った“空翔”ごと地面に縫い留めた。


『が……!』
 玲は、声を聞いた。足元のFortressからだ。
「お、生きてた」
『く、このっ……!』
「いやまあ、コックピットに当てないように狙ったけども」
 何とか抜け出そうと二機が藻掻く様子から、将軍らが無事な事を知る。
 だが、
『――――』
 模造神器が刺さったままなのだ。藻掻けば藻掻くほど、機体が帯びた傷は大きくなる。Fortressのあちこちから破砕の音が鳴り響いていた。
 それを見下ろしながら、吐息を一つ。
「まあ、将軍も無理な夢は見ない事だね。――後、大統領も。同じ事するなら叩き斬りにくるからしくよろ~」
『…………』
 言葉の後半は貸与された通信機に向けてのものだ。
 そこからの返事は無かったが、別段、聞く必要も無かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
どうにか突破できたようですね。
後は私と大蛇麁のみで、夙夜は待機させておきましょう。

さて、将軍。問答を許されよ。
貴公は本当に空を取り戻せると考えておられるか。

仮に空の先へ翔けたとして、その後は?
放った部下たちの帰路や回収について如何に?

――いずれにせよ、まず私の剣を砕いて頂こう。


大蛇麁に【騎乗】し、接近を開始。
ミサイルは速度や射角を【見切り】、回避するか太刀の【斬撃波】で纏めて切り払い。

その間に【天候操作】で再び雷雲を招き、【神罰】の雷で撃ち落させましょう。

隙あらば間合に押し入り、【羅刹の太刀】で搭乗席は外して一閃。

――将軍。
まさか過去(禁酒法成立以前)を思って斯様な仕儀に出られたか。




 将軍は、猟兵を前にした。
 正対だ。キャバリアとは違う人型の兵器を纏った男は今、目の前にいる。
 だがそんな敵を前にして、己は未だ攻撃をしていなかった。
『――さて』
 男が言葉を送ったからだ。
『問答を許されよ』
「…………」
 答える必要性を感じなかった。返答代わりに砲やミサイルをぶち込もうと思ったが、しかし、
『――貴公は本当に空を取り戻せると考えておられるか』
 相手の言葉の方が速く、鋭かった。
「…………」
 操縦桿のトリガーに、指は掛かり続けている。


『――無論だ』
 景正は低く、重い声を聞いた。Fortressの拡声器を通した声は将軍の声だ。
『確信している。空を取り戻し、偉大なるL.S.をここに。しかしどうやら、貴様らは我々と、否、L.S.全国民と考えを異にしているようだ』
 声は続く。何故だ、と。
『何故、貴様ら猟兵は我々を止める? 止めるに足る根拠があるのか? 確たる思いを持つ我々に、不確かな貴様らは強襲を仕掛けてきた。
 ――不正義はどちらか』
 将軍の語りは饒舌であり、それは個々に至るまでの演説を思い起こさせた。
「…………」
 ちらりと、視線を周囲に張り巡らせれば、幾つかのカメラがこちらの姿を納めていた。映像は中継されているのかそれとも録画か、少なくとも相手の意図は瞭然だった。
 だが問答を求めたのはこちらだ。口を閉じろと言えないし、そしてそんなことは別に言わずとも良いことを己は知っていた。
「その背の“空翔”を天上へ打ち上げ、あの星群に対抗する……。貴公はそう言った。
 ならば仮に空の先へ翔けたとして、その後は?」
 そして、
「打ち上げた部下たちの帰路や回収について如何に?」
 聞けば、答えはすぐに来た。
『愚問である。“空翔”一機でも“殲禍炎剣”の撃滅は可能と確信している。無論、一機ともなれば、その戦いは長い戦いになるだろう。だが我々は、挺身の後に砦の上に掲げられた旗と同じなのだ。
 ――紛い物の星を粉砕し、そして最期には輝く星の一つとならん……!』
 答えは、ミサイルの発射と同時だった。


 砦内部に甲高い、耳をつんざくような大音が走った。将軍にとって慣れ親しんだ音だ。ミサイルの燃焼剤が発火し、噴煙していく音だった。
 数は左右それぞれ十二発。白煙は大きく弧を描き、外骨格スーツに身を包んだ猟兵を半球状に狙っていった。
 二十四方向からの標的となった猟兵だったが、しかし焦ることも臆することも無かった。
『――――』
「何……!?」
 その全てを見切っていたからだ。
 まず、背後へ大きく跳躍。飛ぶような一歩は優に数メートルを稼ぎ、追い切れなかったミサイルが互いに激突や地面への墜落を描く。
 何とか軌道を修正し、猟兵を追うものもあったが、軌道としては当然最短距離を選ぶ。
 見る。
 方向転換したミサイル群の始点は、先ほどまで猟兵が立っていた位置だ。
 そしてそんなミサイル群の終点は、そこから直線上に退いた猟兵だ。
『は……!』
 鋭い呼気と共に、敵は一気に抜刀した。当然のようにそこから生まれた斬撃波は、固まって一直線に追うミサイルへ正面から衝突。
 誘爆による大きな火柱が上がった。
 が、
「ダグ!」
『……!!』
 次の瞬間には柱が割れた。部下が乗る“空翔”からの砲撃だ。
 二連の光条が火柱を割り、その奥にいる敵を即座に貫かんとしたが、もうその時には敵は跳び退っていた。
『神罰よ……!』
 猟兵が掲げた刀の刃が、一瞬煌めいた。
 それは空からの閃光だった。
 白く、眩い。
 そう思った直後。
「……!?」
 Fortressと“空翔”に、天上から雷が落ちた。
 確かな指向性を持った雷撃は、突如として現れた黒雲から次々と降り注いでくる。
「!? くそ、システムが……!」
 少し前にも生じた黒雲が、目の前の猟兵の術だということには嫌でも気付かされたが、今さら気付いてもどうしようもなかった。
 大規模のエネルギーがひっきりなしに両機を打撃しているのだ。電気系統は瞬時にエラーを起こし、閃光で視界が、爆音で聴覚がままならない。
 故に、自分達は気付かなかった。
『覚悟』
 猟兵が、一気に懐へ詰め寄ってきたことを。


 景正は行った。数歩で距離を詰め、その手に握られた刀は今や姿を変えている。
 巨大化しているのだ。全長にして四メートル近く。大蛇麁より巨大なそれは、刀から野太刀に変化していた。
 ユーべルコード、“羅刹の太刀”。通常より体力を消耗する技だが、間合いは無論、斬撃力も増幅される一刀は容易くキャバリアを割った。
「はぁ……!!」
 咆哮一閃。
 Fortressの重厚な赤い装甲が、大きく断たれていた。
「ぐ……!」
 割断され、火花を散らす装甲の向こうに、老兵の姿があった。
『将軍!! くっ……!』
 焦りの声を発した“空翔”の操縦士、ダグに太刀の切っ先を向けて牽制。
「…………」
 そして暫くの間、砦に沈黙が続いた。
 退いていく雷鳴と、将軍とダグの荒い息遣い。それだけが場を支配する中、
「……将軍」
 己は、口を開いた。
 最初の問答はまだ続いているのだ。


 問う。
「――まさか過去を思って斯様な仕儀に出られたか」
 過去とは、禁酒法成立以前の事だ。
 これは、景正にとって重要な問いだった。


「……?」
 将軍は疑問していた。
 それが、あまりに当然の問いだったからだ。
 ――過去を思って、だと……?
 そんなこと、当然だった。
 この小国家L.S.は、自分達の思い、願い、望み、そして身すらも捧げる価値があった。
 そのために己は、部下らと共にここまで生きてきた。戦ってきた。
 しかし、それは“過去”のL.S.だ……。
 今のこの小国家は、自分が望んでいたものとは大きくかけ離れたものになっていた。
 変わってしまったのは何時からだろうか、何が原因だろうかと、そう考えもした。
 『帝国』との戦争における敗北だろうか。
 その戦争の余波で不調となったプラントの食糧危機だろうか。
 そんな厳しい現実から逃避するように荒れる国民だろうか。
 荒れた国民を律しようと制定された禁酒法だろうか。
 ……私は下戸だから、酒の何がいいのかよく解らないが。
 人を堕落させる代物であるとすら思っている。主が与えたもうた人間に対する試練だとも。規律が乱れるので自分の隊にも一律禁止にして、件の投票の時だって禁酒派の党に入れた。
 あの法がこれ以降も続くと良いが……。
 ともあれ、様々な理由が思いついた。だが皆から尊敬される軍人と言えど、一人の人間に全てを解決する方法などなかった。
 ただ、いつもと同じようにFortressの操縦室に座った時だった。
 突然、この“殲禍炎剣”撃墜作戦を思いついたのだ。そしてその実現のために全てを投げ売った。
 皆に希望は与えられると、そう確信したのだ。
 ……あの旗のように。
 国内で、そして各地の戦場で幾度となく目にした自分達の旗は、激しく戦闘したというのに未だ無傷で砦の上をはためいていた。
「――――」
 旗を見て、自分はどういう表情をしたのだろうか。
 解らない。
「……将軍」
「ああ……」
 ただ、ダグの声に促され、頷きを持って猟兵に答えた。
 最初の問答の時と同じ言葉だ。
「――無論だ」
 と、そう答えれば。
「――なんと」
 猟兵は息を詰めたような表情を見せた。だが同時に、どこか得心がいったような表情でもあった。
「何を驚く必要がある? 我々はこのL.S.に未練は無い。我々が求めるのは“過去”のL.S.だ。我々の挺身であの偉大なる日々が戻されるのだ。
 ――ああ、未練は無いとも……」
「……なんと、そこまでの覚悟を……」
 猟兵は小さく言葉をそう呟いたきり、深く考えるように押し黙ってしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
あれが新兵器…あにさんの機体と同じ重装甲のキャバリアですが
火器類が充実していますね
では誘爆による内部からの破壊を狙ってみましょうか
({舞狂人形}が肩幅ほどに足を開き、深く息を吐くように全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で『ダンス』を始める)
このリズムは一瞬
早々に仕事を終わらせて踊りたい我々の気持ちを表しています
あぁ貴方達は我々の踊りに付き合う必要はないので
どうぞごゆっくりと
(UC【蠱の宴】を発動し敵の動きを阻害すると敵の死角に回り込み{霹靂の旋律}で生み出した雷撃を纏った『衝撃波』で『属性攻撃』と『貫通攻撃』を行う)
良いリズムですよ。舞狂人形
このまま続けて
星を照らす炎の柱を作りましょう




 クロリアは思う。あのキャバリアはあにさんのと同じですね、と。
「重装甲。だけど火器類が充実してますね」
 己の大切な人の愛機との決定的な差異。それはすぐに実感することができた。
『猟兵か……!』
 ミサイル、機銃。そして背負った“空翔”。搭載されているあらゆる火器がこちらに向けられたからだ。
 一瞬だった。
 将軍らがトリガーを引き、その砲口から様々な火力を生み出す。それよりも早かった。
「――――」
 “舞狂人形”が、踊りを開始した。
 肩幅までに開いた脚、深く息を吐いたように脱力した全身。そして次の瞬間には一瞬でステップを刻む。
『……!?』
 虚を突かれた敵が目で、首で、身体や砲で追おうとするが、間に合わない。その時にはもうそこにいない。
 この旋律が、今までとは違うからだ。全てを照らす紅蓮より眩く、岩をも穿つ波濤より鋭く、そして一瞬で過ぎ去るもの。
 それは何か。
「雷です」
 雷光を纏った“舞狂人形”がステップを踏めば、実際にそれは地で足を踏み鳴らすということだ。
 轟音一発。雷が落ちたような音が響き、誰もがそこを見た。だがそこに残っているのは抉れた大地だけだ。
「……!」
 そしてまた、轟音が一発。
 否、
「……!!」
 二発、三発。
 背後で、左右で、あちこちで雷鳴が続いていった。その度に土の抉れが広がっていく。
 良いですよ“舞狂人形”……。
 良いリズムです、と。心の中で“舞狂人形”に対して言葉を送る。
 この旋律は、この仕事を早々に終わらせて踊りたい自分達の気持ちを表している。仕事が終わった後には一踊りをしようと、最初にそう約束したのだ。
 将軍の元まで辿り着けた今、決着は目前であり、自分達は早急の決着を望んでいる。
 ならば、一瞬だ。
 だから、それが連続していく。
『く……!?』
 Fortressはこちらの居場所を探ろうと周囲を捜索するが、重厚なキャバリアだ。身を回すのには不得手だ。なのでレーダーや探知機に頼ってこちらを探し、
『――そこだ!』
 火器を差し向けてくる。取り回しを最優先とし、向けてくるのは脚部の間にある重機関銃だ。銃口が“舞狂人形”を狙おうと旋回して来る。
 だが、
「あぁ貴方達は我々の踊りに付き合う必要はないので。
 ――どうぞごゆっくりと」
 その瞬間、己はユーべルコードを発動した。


 リズムが、跳ね上がった。
 何……!?
 その事に気づいた将軍は驚愕していた。今までも十分に速さを刻んでいた相手のリズムが、今では尋常ではない速度になっていったからだ。
 轟音がひっきりなしに連続していたのが以前までだとしたら、今はもう音同士が重なり合っている。
『――!!』
 雷が落ちる音は感覚が狭まったことで多重となり、抉れた土が弾けて舞うのも多重だ。
 だが、そこで気づいた。
 相手の速さが、変わっていない……?
 探知機上に描かれる敵のデータは先ほどまで変わらない。そして何より、
「部品が……!?」
 砦にある何某かの機械のパーツか。余波で吹き飛んだそれが地面にバウンドしても尚、速さを失っていなかった。
 否、確かに勢いが殺されたことで減速はするのだが、その減速の様子がおかしい。
 高速で転がったと思えば、すぐに停止。まるで早送りのような、“歪な高速”となっているのだ。
『――私達が遅くされています、将軍!』
 同じ結論に達したダグは、言葉を続ける。
『こちらの認知や判断、あらゆる行動にディレイを――』
 恐らく“外”から聞けばディレイによって間延びした声に聞こえるだろう言葉は、しかしそれ以上続かなかった。
『――良いリズムです、“舞狂人形”』
「……!!」
 真後ろに回った敵が、こちらに攻撃をぶち込んできたからだ。
 それは拳か蹴りか、それとももっと別の何かか。死角に回り込まれた自分達には解らなかったが、その攻撃が雷撃を纏った貫通攻撃であることと、それによって引き起こされることは嫌でも理解できた。
「くそ……!」
 雷撃で機体内部に引火したのだ。
『さあ、星を――』
『機体温度急上――』
 早送りのような女の声も、悲鳴のようなダグの声も聞こえなかった。
 引火した内部兵装が爆発したことで、等しく掻き消されたからだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
山脈を抜けたらそこは巨大ボスだった、壊しがいがあるでござるな
なんでもぶっ壊せば楽しいのだ!エンジョイ&エキサイティング!

相手がデカイと潜り込みたくなるでござるな…お気軽に暴れるために【流体金属生命体】を身体にIN!メタルクロヒゲ爆誕!
パニックホラーモノにしてやる!流体ボデーを不定形にして地を這いミサイルを避けつつ進撃!直撃しても物理攻撃は効かねぇでござるしな!機体にたどり着いたら取り付いてやりますぞ!

敵機の装甲などの隙間から内部に潜り込んでスクラップ&スクラップ!全てぶっ壊すんでござるよ!
特にエンジンやら弾薬庫が良いでござるね!弾ければ派手にぶっ飛びますぞ!

次は国家でもぶっ壊してぇでござるな




 “蜂”から降り立ったエドゥアルトは山道を歩いていた。航空機用の滑走路など放棄して久しい世界だ。なので“蜂”から適当に飛び降りて、パラシュートで着地したのがつい先ほどだ。
 目的地への方角は覚えている。荒れた山道をしばらく歩き続ければすぐにその姿は見えた。
「山脈を抜けたら、そこは巨大ボスだった……」
『死ね』
 赤の巨体は、砦入口に立つこちらへすぐに砲撃してきた。
 ミサイルだった。多連装のそれが、視界を埋め尽くしていく。


『全弾の着弾を確認』
 将軍は、管制役であるデグの声をコックピットの中で聞いた。
 砦の正面入り口、猟兵が立っていた場所はいまや爆発で埋め尽くされている。押し退けられた荒々しい大気がFortressとぶつかり、背後へすぐさま過ぎ去っていく。
 爆炎と土砂の向こう側に、猟兵の姿は未だ見えなかった。だが、自分達は一切気を緩めなかった。
 相手は猟兵だ。どれだけミサイルを撃ち込もうが、迎撃や回避、防御など、ありとあらゆる対抗手段が考えられる。だから視線は前方から離さず、レーダーはフル稼働だった。
 現状、猟兵はレーダーから消えている。だがそれはさしたる問題ではなかった。回避、隠蔽、誤認。何にしろ予想はしていたからだ。
 何が起ころうと、対処する。そう思っていたのが功を奏したのか、それともそれが原因で虚を突かれたのか。
「……!? 何だアレは!?」
 爆炎と土煙が薄まった先を確認すれば、そこには己の理解を超えていた光景が広がっていた。
 地面が、動いていたからだ。まるで波打つように、地表が揺らでいる。
「――――」
 違う。煤や土煙が完全に晴れば、その正体が解った。
 揺らいでいると思ったそこは、鈍く光を反射させていた。それは、金属特有の表面だった。
『――姿を変えたのか!!』
「そうでござるよー?」
 液体金属だった。そこから気楽な声が聞こえたかと思えば、次の瞬間には人の姿が生えてきた。
「――!」
 金属化した猟兵が走って来る。それが今、目の前の事実だった。


 エドゥアルトはミサイルの第二射を確認した。
『……!』
 既に第一射は回避済みで、追撃である“空翔”の主砲もつい先ほど回避した。
「こんな風になあ!」
 瞬間。己は身体の結合を緩ませ、一気に軟化、そして液体化した。
 液体金属となった身体で地面へ広がればミサイルは頭上を通り過ぎていく。よしんば直撃したとしても、
「うムうム、実ニよク馴染む……」
 己は無事だった。ただ単純に身体が金属となったわけではないからだ。
 ユーべルコード、“Innovator《マタノナヲアタラシキモノ》”。それが発動したことによる結果だった。
「拙者達は……ワカり会えタ……。判り合ウ事ガできタ……。――可愛い女の子いいよね!」
 己が持つ流体金属と肉体を融合させる。その効果としては、自身がメタル黒ヒゲになるでござる。以上。
「まあ後は、状態異常と物理とかを無効化出来るんでござるが……」
「――!!」
 その通りだった。爆発的な圧力、文字通りのそんなエネルギーを頭上からどれだけ加えられようが、己の身体は傷も異常も得ることは無い。
 爆発の衝撃に脚を止める事すらせず、進みを再開していった。人型に戻らず液体のまま、地面を流れるように進んでいく。
『く……!?』
 もう、Fortressの足下のすぐ側だった
「パニックホラーモノにしてやるかあ!」
『!?』
 言うやいなや、すぐにFortressの脚部に取り付き、流体の特性を活かして装甲を這って、その結合部から機体内部へと侵入していった。
『な……!? この……!』
 将軍がFortressを激しく操作してこちらを振り落とそうとするが、もう遅かった。
「うっほほーい! うっほほーい!」
 まず脚部の駆動系を破壊した。ギアやピストン、アクチュエーターなどを流体金属で浸食したり、砕いていったのだ。
『が……!』
 足の一つが砕けたことで、Fortressは機体を傾かせる。姿勢制御に気を取られているうちに、己が向かうのは上半身だ。
「エンジン~♪ 弾薬庫~♪ どこだ~♪ 見つけた~♪ ――オラ!!」
 直後、身体を広げてそこへ向かわせるとすぐに攻撃を開始した。重要部位なので強固に守られてはいたが、まさか内部からこのような攻撃を受けるとは想定していない。
 すぐに突破は果たされ、エンジンは露出し、弾薬庫も剥かれた。
「それ」
 躊躇することなく、そこに手を突き込んだ。
 高速の抜き手によってケーシングが砕かれ、飛散する可燃物は生じた火花に引火。
『……!!』
 一気に、炸裂した。火炎が生まれ、その火炎が次の可燃物を燃やし、次の爆発を誘う。そうすれば炸裂は爆裂となっていき、果たして、その風圧は砦の広場を一気に洗い流していった。
 爆心地近くにあった者は真上へ跳ね上がり、離れていたものは押されるように吹き飛んでいった。
 そんな突風に運ばれている、火炎や鉄片だけではなかった。金属化した自分自身もだった。
「……次は国家でもぶっ壊してぇでござるなー」
 液体化した身体を荒れる気流で適当に震わせながら、そう呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月22日


挿絵イラスト