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雨彩に謳えば

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 しとしとと、予報通りに降り始めた雨。
 貴方と道が別たれたあの日も、今日みたいに雨が降っていたけれど。
 でも今は、あの時とは違う。あの時と同じ想いは、もうしたくないから。
 傘の花を咲かせ風に乗って、雨空を翔けて――貴方に、会いにゆきます。
 今度こそもう二度と、離れないように。

●或る雨の日
 季節は梅雨、外出もつい億劫になるこの時期であるが。
 花開き色づいた紫陽花の様に帝都に咲き誇るのは、沢山の傘の花たち。
 そして、こんな雨の時期だからこそのお出掛けは如何、と。
 帝都の百貨店では、梅雨の時期ならではな数々の催しが行なわれているという。
 そんな、雨に濡れる心配のない百貨店内を巡るのも、また楽しいひととき。

 この百貨店の催事場で現在開催されているのは、『アンブレラマーケット』。
 沢山の傘職人が集い、様々な傘が咲き並び、それを手にすることができるという。
 レトロな番傘からキュートなドーム型のバードケージ、中にはハートの形をしたものなど変わったものも。そして、そんな傘たちを彩る色や模様も様々。シンプルな単色は勿論、開けば星空や虹空や花空、イルミネーションの景色が広がるもの等々。
 雨の日がむしろ楽しみになるような、お気に入りの1本と出会えるはず。

 そして、百貨店の最上階にあるのは、展望カフェー。
 傘の花と幻朧桜咲く雨のサクラミラージュの風景を臨みながら。
 この時期限定の『紫陽花のクリームソーダ』がいただけるという。
 しゅわり弾けるソーダに浮かんだバニラアイス。
 それに添えられるのは、青や紫やピンク、花のように煌めき咲く紫陽花ゼリー。
 ソーダの色は好みで選べるというので、自分好きないろに紫陽花色を添えられる。
 アイスは基本バニラであるが、申し出れば変更も可能だという。
 その他、カフェにあるようなものは、メニューにあるというので。
 買い物のついでに、クリームソーダは勿論、珈琲や紅茶等を飲みつつ一休みも良し。
 紫陽花の添えられたパンケーキやホットサンド、アイスクリン、ナポリタンなど。
 美味しい食事で腹拵えも良いだろう。
 またこの百貨店には、大型書店や雑貨屋、服や靴や服飾品、インクなどの文具等々。
 様々なものが購入できる店が沢山入っているので。
 ショッピングを全力で楽しむのもまた、ひとつの楽しみ方であるし。
 いわゆる、デパ地下を巡って、さらなる美味しいものを求め歩いても楽しい。
 誰かへの贈り物や土産、自分へのご褒美等……欲しい物がきっと見つかるに違いない。

 けれど、そんな雨の日の百貨店で。
 レトロなエレベーターを降りた女性は、そうっと周囲を見回した後。
 奥の階段から、屋上へと向かう。
 そして、ぱっと――あの日のように、雨空に傘の花を咲かせて。
 あの日とは違って……今度は『あの人』の元へと向かうべく、雨空へと舞う。

●雨彩に謳えば
「梅雨という時期だからこその外出も、良いものかもしれないな」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、そう集まった皆に微笑んだ後。予知に視たものの詳細を語り始める。
「サクラミラージュの世界で、影朧を匿っている民間人がいることが分かった。影朧は不安定なオブリビオンの為、ただちに危害を与えるとは限らない。だが間違いなくその存在はオブリビオン、その行動は放置すれば、いずれ世界の崩壊に繋がる。故に、影朧の居場所を見つけ出し、還るべき場所へと送って欲しい」
 今回、予知が視えた場所は、サクラミラージュの帝都にある大きな百貨店。
 どうやら、そこを訪れる女性が影朧を匿っているらしい。
 けれど、詳しい影朧の居場所などは分かっていないというので。
「皆にはまず、この百貨店に客として赴いて欲しい」
 清史郎はそう告げた後、さらに続ける。

「詳しい影朧の居場所は不明だが。匿われている影朧に至るまでに創られた空間を進むには、あるものが必要だということがわかった。それは『傘』だ。百貨店の屋上から傘を咲かせ、雨空の花道を舞い征くことになるようだ」
 季節は梅雨。
 この日、百貨店に皆が赴く際には、まだ雨は降り出していないというが。
 じきに、しとしとと小雨が降ってくる。
 そして影朧へと至る道は、雨が降り出してから現れるというので。
 それまでは、女性の動向を怪しまれぬよう探ったり、影朧探索の準備等をしたり等しつつも、百貨店の客を装い過ごして欲しい。
「影朧を匿っているのは、和花という名の20代の女性だ。彼女は百貨店の屋上へと、傘を手に向かうことは分かっている」
 彼女に怪しまれるような行動を取れば、逃亡したり日を改めるなどしかねないので。
 和花に気取られぬよう、まずは客として百貨店を楽しみつつも。
 雨が降り出し彼女が行動を起こし始めれば、そっとその後を追って欲しい。

 そして、梅雨時の外出は何かと億劫になるがちだが。
 むしろ百貨店では今、梅雨にちなんだ、様々な催しが行われているらしい。
「影朧を追うためには、傘が必要だと分かっているが。丁度今、この百貨店の催事場では、様々な傘が並ぶ『アンブレラマーケット』という催しが行われているようだな。サアビスチケットも勿論支給されるので、この機会に、好みの傘を新調するのも良いかもしれないな」
 勿論、持参した傘でも事足りるようであるが。
 百貨店の広い催事場で行なわれているという、『アンブレラマーケット』。
 様々な形状や模様、色を咲かせる傘が並ぶというので。
 傘を楽しく選んで、新調してみるのも良いかもしれない。
「それにこの時期だけ、百貨店の展望カフェーでは、『紫陽花のクリームソーダ』をはじめとした紫陽花メニューがいただけるようであるし。百貨店には様々な店が並ぶというので、買い物を楽しむのも良いかもしれない。デパ地下というところには、美味しいものも沢山あると聞いた。インクや万年筆などの文具を扱う店や大型の書店、服や靴やアクセサリーの店、玩具売場などもあるようだな。自分のものは勿論、贈り物などを探すのも良いかもしれない」
 とりあえずまずは、影朧へと辿り着くために。
 和花に怪しまれぬよう、百貨店で過ごして欲しい。
「匿われている影朧の討伐は勿論だが。百貨店巡りも楽しんできてくれ」
 清史郎は改めて皆に、よろしく頼むと告げた後。
 満開桜のグリモアを掌に咲かせ、雨空の桜の世界へと猟兵たちを導く。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 ※ご連絡※ 第1章は、6/6(日)朝8:31より受付開始します。
 第1章の追加冒頭はありません。。

 今回の依頼内容は以下です。

 第1章:百貨店に行こう(日常)
 第2章:雨彩の世界(冒険)
 第3章:獄卒将校(ボス戦)

 第1章と2章は、POW/SPD/WIZは気にせずOKです。

 第1章は、百貨店で過ごしていただける日常です。
 できることは、概ねOPの通りです。
 第2章では傘が必須となりますので、新調するもよし。
 カフェーで紫陽花メニューを堪能したり、デパ地下巡りや買い物したり等々。
 他にも、百貨店で出来ることであれば、ご自由にどうぞ!

 第2章は、傘を手に空を舞い、雨彩を翔ける冒険です。
 詳細は断章にて案内致しますが、傘が必須となります。
 第1章で買った傘でも、持参した傘でも、構いません。
 傘の花を咲かせ風に乗って雨空を舞い、花に飾られた雲を渡ってゆきます。
 お一人様で自由気ままにであったり、誰かと手を繋いだり、大勢でわいわい等々。
 雨空の冒険を、思い切り存分に楽しんで頂ければです。

 第3章は、匿われた影朧を倒していただく戦闘です。
 詳細は第3章断章にて、提示致します。

 公序良俗に反する事、他人への迷惑行為は厳禁です。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称推奨)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様書かせて頂きたく思っています。
 どうぞお気軽にご参加ください!
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第1章 日常 『百貨店に行こう』

POW   :    レストランやカフェテリアにいく

SPD   :    服を選びにいく

WIZ   :    宝石や貴金属の店にいく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

森乃宮・小鹿
ふんふふーん♪
傘を買ったその足で、ボクは展望カフェーに向かうっす
お目当てはなんといってもクリームソーダ!
季節もの商品はやっぱ押さえておきたいっすよね!
ソーダのお色は空模様とは正反対の爽やかブルー
パンケーキも注文して、しっかり写真と胃袋におさめるっす!

そんな一休みの最中、立て掛けた新品の傘を見る
お店で見掛けてつい買ってしまったのは
紫陽花風のフリルを縁にあしらった晴雨兼用の傘
ぱっと開くと内側に紫陽花模様が広がる様子に一目惚れ
……完全に衝動買いっす、通学用の傘買うつもりだったのに
学校には差していけないなぁと考えながらも
この傘に似合う服はどんなのだろうなんて
この後のお仕事は一旦忘れて贅沢に悩みましょう



 ふと見上げれば、どんよりとした雲に覆われた、生憎の空模様。
 これから雨が降り出すでしょう、そう天気予報でも言われているのを聞けば。
 外出するのが億劫だと、そう思う人も少なくないだろうけれど。
 ――ふんふふーん♪
 鼻歌交じりでウキウキと、軽い足取りで歩くのは、森乃宮・小鹿(Bambi・f31388)
 そしてその足が向かうのは、訪れた百貨店の最上階にある展望カフェー。
 手には、買ったばかりの傘を連れながら。
 そんな小鹿のお目当ては、なんといってもこれ!
「季節もの商品はやっぱ押さえておきたいっすよね!」
 新聞部部長たるもの、話題の期間限定のものはしっかりチェックしておきたところ。
 ということで注文するのは、勿論――紫陽花のクリームソーダ!
「ソーダのお色はブルーで。あ、パンケーキもお願いするっす!」
 選んだソーダは、今日の空模様とは正反対の爽やかブルー。
 青空にぷかりと添えられたバニラアイスと紫陽花ゼリーは、話題性も抜群。
 一緒に頼んだ紫陽花仕様のパンケーキと一緒に、しっかり写真と胃袋におさめます!
 そんなアイスが溶けた青空のようなソーダをしゅわりと口にして、パンケーキもはむりと味わいつつ。
 ほうっと一休みしている最中……ふと緑の瞳に映すのは、立て掛けている新品の傘。
 一目惚れ、だったのだ。ぱっと開けば、内側に紫陽花模様が咲いて広がる様子に。
 買ったのは、紫陽花風のフリルが縁にあしらわれた晴雨兼用の傘。
 いや、通学用の傘買うつもりだったのだけれど。
「……完全に衝動買いっす」
 ……学校には差していけないなぁ、なんて思うけれど。
 でも、この後の仕事は一旦忘れて。
 小鹿は首をこてりと傾けて贅沢に悩むことにする。
 この傘に似合う服はどんなのだろう――なんて。
 窓の外に見える雨が降りそうな空を、わくわくそわりと見上げながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

世母都・かんろ
【烟雨】

だいすきな帝都で、親娘デート
華やかなデパートに行くのは殆どなくて
未だに緊張してしまうけど

久しぶりに二人で遊びに行けるから
嬉しくてついわくわくしちゃう
は、はしゃぎすぎて、ないかしら

はい、傘は、洋傘、に、します
気分、や、服、に、合わせ、て
色んな種類、を、集め、たく、て!

どれも華やか、色とりどり
形も違ってつい気になってしまう

…あ

淡い黄色のバードゲージ型
ほろほろ零れるミモザ、端も少しふんわりと
雨の日に咲いたら、きっと素敵
帝都の街角のお散歩にも、似合うかしら

はい、これ、が、いいな、って…!
褒められ照れてる内にお会計が済んでて

もう少し、我儘がいいなら

あの、紫陽花、クリーム、ソーダ
飲みたい、です!


雲烟・叶
【烟雨】

最近頑張っている子へのご褒美ですよ

UDC職員として管理下に置いている彼女を、最早それだけに見ていないのは今更の話
義娘のように、不器用ながらに大切にも、している
だからこそ、彼女が頑張っているのなら、きちんと褒めてやりたいと
勿論、そんなこと本人には言わないけれど

甘露のお嬢さん、和傘は良いのをお持ちでしたからねぇ
今回は洋傘にしましょうか
ふむ、……自分用だとこの辺ですかね
男物の傘を一本
暗めの落ち着いたブルーグレー、ワンポイントにささやかに花が一輪
持ち手はシルバーなのが少しだけ華やかだ

お嬢さん、良いのは見つかりました?
おや、可愛らしい
お似合いですよ、と褒めながら、当たり前のように2人分のお会計を



 雨粒が滲んだ様な柔らかな紫のいろが、微かにそわりと跳ねて。
 しゃぼんの彩りが描く円らな瞳が映すのは、だいすきな帝都の風景。
 世母都・かんろ(秋霖・f18159)の心は、ドキドキでいっぱい。
 華やかなデパートに行くことは殆どないから、ちょっぴり未だに緊張してしまうけれど。
 でも何て言ったって、大好きなこの地で今日は、親娘デートなのだから。
 そんなそわそわきょろりと周囲を見回すかんろの姿を見つめながらも。
(「最近頑張っている子へのご褒美ですよ」)
 雲烟・叶(呪物・f07442)はそっと銀の彩を細める。
 最早それは今更の話、なのだけれど。
(「義娘のように、不器用ながらに大切にも、している」)
 UDC職員として管理下に置いている彼女を、最早それだけに見ていない――と。
 だからこそ、叶は思うのだ。
 ……彼女が頑張っているのなら、きちんと褒めてやりたい、って。
 でも勿論、そんなこと本人には言わない――今更なことだけど、でもナイショの話。
 そんな叶の視線に気づいて、瞳をぱちくりさせてから。
 かんろは心の中で、そうっと思う。
(「は、はしゃぎすぎて、ないかしら」)
 だって、ついわくわくしちゃうから。
 久しぶりに二人で遊びに行けることが、嬉しくて。
 そんなふたりが足を運んだのは、傘の花が咲き並ぶ催事場。
 アンブレラマーケットと銘打たれているだけあり、様々な意匠の傘が沢山。
 色も形も千差万別、全て見て回ればかなりの時間がかかりそうだけれど。
「甘露のお嬢さん、和傘は良いのをお持ちでしたからねぇ。今回は洋傘にしましょうか」
「はい、傘は、洋傘、に、します」
 今回ふたりが探すお目当ては、洋傘。
 傘は和傘をはじめ、何本か既に持っているかんろだけれど。
「気分、や、服、に、合わせ、て……色んな種類、を、集め、たく、て!」
 今日はどの傘を連れて出掛けよう、なんて考えるのもわくわくするし、選択肢が増えるのはより心躍るから。
 けれど逆に、新たな悩みが。
 あれもいいし、これも可愛い……って。
 どれも華やか、色とりどり。形も違ってつい気になってしまう。
 そう、色々な傘を手にしつつも悩むかんろの傍で、くるりと一通り見回してから。
(「ふむ、……自分用だとこの辺ですかね」)
 叶が手にしたのは、一本の男物の傘。
 開いてみれば、夜の様な暗めの落ち着いたブルーグレーに、ささやかに咲いたワンポイントの花が一輪。
 そんな閑やかな色たちをそっと彩るのは、少しだけ華やかさを添えたシルバーの持ち手。
 そして、かんろも。
「……あ」
 ぱっと開いた傘に咲いたいろを見上げ、ふと声を落とす。
 開いた刹那、ほろほろと零れ降るのは、ミモザの花の雨。
 淡い黄色のバードゲージ型の傘は、端も少しふんわり、優しく咲いた花弁のようで。
(「帝都の街角のお散歩にも、似合うかしら」)
 かんろは手にした傘を見上げる瞳を、そっと細める。
 ……雨の日に咲いたら、きっと素敵、って。
 だから。
「お嬢さん、良いのは見つかりました?」
「はい、これ、が、いいな、って……!」
 叶の言葉に、こくりと頷き返すかんろ。
 この子を連れて帰るって、決めたから。
 そんなミモザの花が降る傘へと銀の視線を向けてから。
「おや、可愛らしい」
 ――お似合いですよ、って。
 そう褒めながらもさり気なくかんろの選んだ傘を受け取って。
 当たり前のように叶が足を向けるのは、会計カウンター。
 そして褒められ照れている内に支払いが済んでいることに気付いて、かんろはぺこりと慌てて頭を下げてから。
 ちらり、彼を見つめて……もうひとつだけ頑張って、こんなお強請りを。
「あの、紫陽花、クリーム、ソーダ。飲みたい、です!」
 ……もう少し、我儘がいいなら、って。
 そんなお願いに返るこたえは、言わずもがな。
 だって今日は、最近頑張っている子へのご褒美なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
かつて軍学校に通っていた頃は、手を塞いで行動が阻害されるから傘を使うなって規則があったな
俺としても、流石に傘を片手に刀を振るう訳にもいかないし、それには一理ある
が、今は卒業した身だし、職業軍人でもない。緊急時はともかく、普段遣いする分には別に許されるだろう……という訳で、傘を買いに行こう

色とりどりの傘を見て、幾つかを手にとって。それこそ数年ぶりに手にする傘は驚くほど軽くなっていて
良い傘だからそもそも軽いのだろうけど、自分が少し変わったという事を感じたりもする……いや、そんな事を考えるなんてらしくないな。とにかく選んでしまうとしよう
最後に選んだのはシンプルな無地の黒い傘。こういうのが俺らしいよな



 この世界で雨が降る日なんて、もう数えきれないほど過ごしてきたけれど。
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)にとっては、ある意味、新鮮でもあった。
(「かつて軍学校に通っていた頃は、手を塞いで行動が阻害されるから傘を使うなって規則があったな」)
 それは鏡介にとっては、とても一理あるものだ。傘を片手に刀を振るう訳にもいかないから。
 だから、雨の日に傘をさす、という習慣もなかったのだけれど。
 でも今の彼は、軍学校は卒業した身であるし、職業軍人でもない。
(「緊急時はともかく、普段遣いする分には別に許されるだろう……」)
 だから、ひとつくらい持っていても日常で使う分には、もう誰にも何も言われないだろうと。
 賑やかな百貨店の中、鏡介は歩き出す。
 自分がさすための、傘を買いに。
 そして色とりどりの傘が並ぶ催事場を、ぐるりと見回して。
 試しにひとつ手にしてみれば、思わずちょっぴり驚いてしまう。
 それこそ、傘をこうやって手にするのはいつぶりか。
 自分の知っているものよりも、手にした傘は、ずっと軽くなっていて。
 そんな傘たちを見遣りながら、幾つか手にとって開いてみたりつつも。
 鏡介の心にふと生じるのは、こんな思い。
(「良い傘だからそもそも軽いのだろうけど、自分が少し変わったという事を感じたりもする……」)
 けれどすぐに、ふるりと微か首を横に振って。
 ぱたりと、開いてみた傘を閉じる。
 ……いや、そんな事を考えるなんてらしくないな、って。
(「とにかく選んでしまうとしよう」)
 色々な模様が彩られたもの、デザインが変わったもの、多色のグラデーションものなど。
 人の目を惹くような傘も沢山、この場には咲いているけれど。
 ――こういうのが俺らしいよな。
 鏡介が最後に手に取ったのは、一番しっくりときた……シンプルな無地の黒い傘。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇津木・絋
……:匿われた影朧、ね。
そういう影朧が原因でこんな身体になった身としては、匿う方も匿う方で理解ができない、かな。

……ダメ、まだここで怒りを覚えたらレギオンが出てきちゃう。今は抑えないと。それこそ僕が傷つける側になる。

というわけで、気分転換にカフェーに向かうよ。傘? 自前のでいい。それより甘味(眠たげお目目が開く程度には甘味好き

紫陽花のクリームソーダはもちろん、ケェキも食べたいところ。紫陽花にちなんだケェキとかもあったりするのかな

ん、やっぱり甘味は正義(無表情ながら満足げに頷く(髪に白い野薔薇がぽぽんと咲く



 やはりどこか、とろんと眠たげで無表情ではあるけれど。
 宇津木・絋(微睡む野薔薇の揺籃・f31067)がやって来たのは、おやすみするには向かなそうな賑やかな百貨店。
 雨が降りそうな中、わざわざ彼がこの場へと赴いたのは、請け負った依頼のため。
 聞いた予知によれば、この百貨店内にいるのだという。影朧を匿っているという人物が。
「……匿われた影朧、ね」
 ぽつりとふいに落ちる声。そして、ふるふると首を横に振る。
 だって、絋にはわからないから。
(「……そういう影朧が原因でこんな身体になった身としては、匿う方も匿う方で理解ができない、かな……」)
 むしろ、一時期化け物扱いされた原因を作ったそれらへと、ふつふつ湧いてくるのは怒り。
 ――けれど。
(「……ダメ、まだここで怒りを覚えたらレギオンが出てきちゃう。……今は抑えないと」)
 ぐっと、今はその感情を押し殺す。
 己の怒りに呼応した薔薇頭の騎士が今、出てきてしまっては……それこそ僕が傷つける側になる、って。
 だから、気分転換にもなるからと。
 絋が向かうのは、百貨店の最上階にあるという展望カフェー。
 途中、より人で賑わう、沢山の傘が買えるらしい催事場の様子を見かけたりもしたけれど。
(「……傘? ……自前のでいい」)
 絋の足が止まる事はなく、目的は決して揺るがない。
 だって、目指すカフェーにはなんてったって、甘い物が味わえるというのだから。
 傘よりも――それより甘味、と。
 脇目もふらずに最上階へと向かう彼は、そう……眠たげお目目が開く程度には甘味好きなのである。
 そして窓の外に見える帝都の風景よりも早速目を通すのは、カフェーのメニュー。
「……紫陽花のクリームソーダはもちろん、ケェキも食べたいところ……」
 ……紫陽花にちなんだケェキとかもあったりするのかな、なんて。
 ぽつりと呟くと同時に、ぺらりとお品書きを捲れば。
 眼鏡の奥の眠そうな瞳が一瞬、ぴかんと開く。
 紫陽花と傘のチョコレートが飾られた、一等甘そうな期間限定ケェキを見つけて。
 そして一見無表情ながらもわくわくそわそわ、運ばれてきた紫陽花の甘味たちを早速スプーンで掬って。
 ぱくり、口にすれば――ぽぽんっと。
「……ん、やっぱり甘味は正義」
 やっぱり無表情ながらも、満足げに頷く絋の焦茶色の髪に咲いたのは、白い野薔薇の花。

大成功 🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
【ミカエル・アレクセイ(f21199)】
百貨店中を回ってみるも買いたいものは見つからず
歩き疲れたのでカフェに入る
師匠も僕に色々買わせようとしないで欲しいもの買えばいいですのに?
いい加減に自分の部屋に家具置いた方が良いですよ

まぁ、傘は番傘が手に入ったので良いとしましょうか
安心して飲める珈琲を頼んで一息つきつつ、ぼんやりと店の外を眺めて行き交う人たちを観察する

出会いがあって別れがあって
それが当たり前でも、忘れられない人って師匠には居るんですか

そんな話をぽつりぽつりと交わしながら
いつの間にか注文されていたパフェを食べて

そう、過去のことだと切り捨てて貰えるなら
いつの日か僕は安心して先立てます


ミカエル・アレクセイ
【満月・双葉(f01681)】
こんだけ物が有るなら一つくらい欲しいものが見つかりそうなもんなのに
お前物欲を何処に落としてきたんだ
俺はいいんだよ、家具の件はほら…気が向いたらな
と言ったところで人のことは言えないなと黙り込む

結局俺が育てただけのことはあるんだろうと諦めて傘だけ買って休憩に

話をしながらも視線はそれとなく他の客や外を歩く者たちに向かう

さぁな、昔のことは忘れることにしてるから知らんな
長く生きるコツは忘れることだ

お前も俺を置いて逝くのは当たり前のこと
ただ、出来るだけ寿命で死んでくれ
それ以外はお前の好きにしろ、お前の人生はお前だけのもんだからな



 同じ年頃の帝都女子達は、色々な流行りの店の紙袋を幾つもその手に提げて。
 尚、あれもいいしこれも可愛いと、次の店でも早速目移りしているというのに。
「お前物欲を何処に落としてきたんだ」
 ……こんだけ物が有るなら一つくらい欲しいものが見つかりそうなもんなのに、と。
 ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)が目を向けるのは、目の前に居る愛弟子の姿。
 目的のものが何だって買えるだろう、大きな帝都の百貨店。
 ただし買うとしても、目的のものが何かあれば……の話で。
 とりあえずぐるりと百貨店内を巡ってみるも、特に買いたいものは見つからなくて。
 結局、歩き疲れた満月・双葉(時に紡がれた人喰星・f01681)が師匠と入ったのは、休憩するための展望カフェーであった。
 そして双葉は、自分を見つつも言った彼へとこう返す。
「師匠も僕に色々買わせようとしないで欲しいもの買えばいいですのに?」
 ……いい加減に自分の部屋に家具置いた方が良いですよ、って。
「俺はいいんだよ、家具の件はほら……気が向いたらな」
 けれどそこまで口にした後、ミカエルはそれ以上はもう、何も言わないでおく。
 だって、ふと思ったから。
 ……そう言ったところで人のことは言えないな、と。
 それに、よく考えれば納得もまぁ、できるのだ。
(「結局俺が育てただけのことはあるんだろう」)
 弟子が物欲を落としてきたのは、自分がそうだからかもしれない、と。
「まぁ、傘は番傘が手に入ったので良いとしましょうか」
 だから双葉の言う通り、とりあえず必要最低限、傘を買っただけでもきっと上等。
 他のものを買い物することは諦めて、素直に休憩することに。
 双葉は安心して飲める珈琲を頼んで、ふっと一息つきつつも。
 暫くぼんやりと店の外を眺め観察するのは、行き交う人たちの姿。
 ミカエルも彼女と共に、それとなく他の客や外を歩く者たちへと視線を巡らせて。
 ふたり、ぽつりぽつりと会話を交わし合う。
「出会いがあって別れがあって。それが当たり前でも、忘れられない人って師匠には居るんですか」
 今にも雨が降り出しそうな風景を眺めつつも、そう訊ねてみたのは双葉。
 いつの間にか注文されていたパフェを、はむりと食べながら。
 そんな問いに、ミカエルはいつかの梅雨の日のように。
 しれっと頼んでおいたミックスジュースも彼女の方へと何気に押しやった後、答える。 
「さぁな、昔のことは忘れることにしてるから知らんな。長く生きるコツは忘れることだ」
 ――お前も俺を置いて逝くのは当たり前のこと、と。
 双葉はその言葉に、彼へと視線を移してから。
 パフェをもうひとくち食べた後、ミックスジュースも飲んでから、こくりと頷いて告げる。
「そう、過去のことだと切り捨てて貰えるなら」
 ――いつの日か僕は安心して先立てます、って。
 外見に変化のない師匠を、自分は何時か追い越すのだろう。
 そして一見軽く見えるけれど、でもこの人はこれまでのように、責任を背負おうとするのだろう。
 だから、自分のことは過去であると。そう思って貰えるならと、紡ぐ双葉。
 そんな愛弟子の言葉に、ミカエルは敢えて直接的には何も言わないけれど。
「ただ、出来るだけ寿命で死んでくれ」
 ぽつりと雨が降り出したのか、傘の花が咲き始めた帝都の景色へと視線を戻しつつ続ける。
 ――それ以外はお前の好きにしろ、お前の人生はお前だけのもんだからな、って。
 いつか自分がその花言葉を教えたらしい紫陽花の花を、その瞳にも咲かせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

眞白乃守・とかげ
【アドリブ連携歓迎】
傘、か。そうか、確かに街中では必要な物だな。
今まで使ったことはないが、いい機会だ。あんぶれらまぁけっととやらで一つ見繕うことにしよう。

(多種多様に並ぶ鮮やかな傘に圧倒されつつ)
うっ、凄いなこれは……。傘ごときにこんなにも凝る必要性が、いや雨の日の憂鬱さを忘れさせる一助と思えば……いやどれもこれも派手すぎないか?一体どれが普通なんだ……
(他の意見が欲しいものの自分からは話しかけられない)

(なんとか最終的には一本を選び)
無駄に気力を費やしてしまった気がする……
いや、これはただの準備だ。気を取り直して、後はグリモア猟兵どのの言っておられた女性を探さねば。無論気取られぬように、な。



 じきに雨が降ってきそうな空の下、まるで燃える炎のような癖のある髪を揺らし歩きながら。
 眞白乃守・とかげ(火蜥蜴は果ての森を旅立つ・f33630)は、こくりとひとつ頷く。
 彼女がこの場所――桜の帝都の百貨店へとやって来たのは、依頼を受けたからであるが。
 ふと、聞いた話を思い出しつつも道行く人が持っているそれに、黄金の瞳を向ける。
(「傘、か。そうか、確かに街中では必要な物だな」)
 そう……それは、傘。
 深い森から出てきたばかりのとかげにとって、今まで使ったことのないシロモノであるが。
(「いい機会だ。あんぶれらまぁけっととやらで一つ見繕うことにしよう」)
 傘が手に入るのだと聞いた、あんぶれらまぁけっととやらに向かうことに。
 だが、深い森とは違って、やたら人が沢山いるし。
 まるで迷路のような百貨店のどこでその、あんぶれらまぁけっとという市が行われてるのかと。
 訊ねようにも、いわゆるコミュ障……いや、誇り高き孤高の女剣士のとかげは、きょろりと視線を巡らせるばかりで。
 でも何とか、それらしき場所に自力で辿り着けば。
「うっ、凄いなこれは……」
 他の売り場よりもより賑やかなその場の光景に、思わず瞳を見開いて呻いてしまう。
 多種多様に並ぶ鮮やかな傘に、圧倒されて。
 そして、そうっとひとつひとつ眺めてみれば、さらにびっくり。
(「傘ごときにこんなにも凝る必要性が、いや雨の日の憂鬱さを忘れさせる一助と思えば……いやどれもこれも派手すぎないか?」)
 傘とは、雨を凌ぐ道具。なのに、形も色も、めっちゃ派手。
 そんな個性的で自己主張強めの傘たちを見て、とかげはそうぐるぐると考えを巡らせつつ。
(「一体どれが普通なんだ……」)
 いわゆる、ベリーポピュラーなものはどれなのかを訊ねて……みたいのだけれど。
「…………」
 自分からはどうしても話しかけられず、そわり。
 なので、とりあえず何本かそろりと開いてみて。
 刀に似た握り心地の、手にしっくりくるものを真面目に選んでみる。
 そして、ワンポイントに小さな可愛い猫さんの顔がついてはいるが、何とか単色の派手ではないものを見つけて。
「無駄に気力を費やしてしまった気がする……」
 内心ちょっぴりドキドキしながらも会計を済ませれば、ドッと妙な疲労感が。
 けれど気を取り直し、猫さん傘をぐっと握りしめて。
(「いや、これはただの準備だ。後はグリモア猟兵どのの言っておられた女性を探さねば」)
 とかげはそっと、賑やかな人達が行き交う風景へと密かに視線を巡らせる。
 ……無論気取られぬように、な、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

ふむふむ、影朧を匿う女性か。件の女性も気になるが、久しぶりにサクラミラージュを楽しむのもいい。最近忙しくてそれどころじゃなかったからねえ。

奏は百貨店の展望カフェテリアに行きたい?まあ、奏ならそういうと思った。腹ごしらえといくか。

アタシはホットサンドと紫陽花のクリームソーダを頂こうかね。紫のソーダがいい。デザートを総制覇しそうな子供達を見ながら微笑む。楽しそうな子供達を見てるだけで幸せでお腹一杯だ。あ、珈琲を追加で注文するか。一杯動く前に補給しとかないとねえ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

んん、影朧を匿う女性の事も気になりますが、まずは百貨店を楽しみましょう!!私は展望台のカフェテリアに行きたいです(目をキラキラ)

紫陽花のクリームソーダ・・・・ピンクのソーダにバニラアイスクリーム!!最高です・・・・兄さん、パンケーキとアイスクリンも食べましょう!!あ、紅茶とナポリタンも!!まだまだ食べれるんですが、母さんの財布の限界もありますので。はい、これからに備えてパワー一杯付けときましょう!!(ナポリタンのソースが口の端に付いてる)


神城・瞬
【真宮家】で参加

そうですね、最近忙しくてサクラミラージュは随分久しぶりのような気がします。件の影朧を匿う女性も気になりますが、まずは百貨店、楽しみますか。
奏は展望台のカフェテリアに行きたい?まあ、奏ならそう言いますよね。行きますか。

ふむ、紫陽花のクリームソーダ。僕は青を頂きますか。え?アイスクリンとパンケーキも食べる。まあ、付き合いますよ。(ホットサンドと紅茶を頂きながら)奏、ソースが口に付いてますよ。(ナプキンで拭いてあげながら)はい、これから動くことになるでしょうから、しっかりパワー補給しておきましょうか。



 季節は梅雨、空を見上げれば生憎の曇り空。
 もう暫くすれば、雨がぱらりと降ってくるだろう。
 天気予報でも、そして予知でも、そう言われているのだから。
 けれど、一度中に入ってしまえば、雨が降っても問題なく楽しめる場所。
 帝都にある大きなその百貨店は、梅雨空のこの日も、相変わらず沢山の人で賑わっている。
 そんな沢山の人達が、思い思いに楽しんでいる様子を眺めながらも。
(「ふむふむ、影朧を匿う女性か」)
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、この百貨店の何処かにいるだろう、予知に聞いた女性・和花という彼女のことを思い返しながらも。
「件の女性も気になるが、久しぶりにサクラミラージュを楽しむのもいい。最近忙しくてそれどころじゃなかったからねえ」
 猟兵として大きな戦いをまたひとつ終えた今、この世界に今回やって来たのも依頼を請け負ったからではあるものの。
 まだ件の女性が動きを見せるまで時間もあることだし、何よりも折角の機会。
 きっちりとやるべき事を成すのは勿論のこと、家族で楽しめることは楽しむ。そんな時間も、大切だから。
「そうですね、最近忙しくてサクラミラージュは随分久しぶりのような気がします」
 響の言葉に、神城・瞬(清光の月・f06558)も頷いて続ける。
「件の影朧を匿う女性も気になりますが、まずは百貨店、楽しみますか」
「んん、影朧を匿う女性の事も気になりますが、まずは百貨店を楽しみましょう!!」
 それは当然、真宮・奏(絢爛の星・f03210)も同じ気持ち。
 いや……むしろ誰よりも、一番満喫する気満々なのは奏かもしれない。
 だって、話を聞いた当初からもう、その心は決まっているから。
「私は展望台のカフェテリアに行きたいです」
 そして、そう瞳をキラキラ、迷わずに言った奏の要望にも。
「奏は百貨店の展望カフェテリアに行きたい? まあ、奏ならそういうと思った。腹ごしらえといくか」
「まあ、奏ならそう言いますよね。行きますか」
 響と瞬にとっては予想通りのこと。
 それに、わくわく心躍らせる彼女の希望を聞かない理由なんてないから。
 3人揃ってレトロな雰囲気のエレベーターに乗り込んで、向かうは最上階の展望カフェー。
 カフェーから臨む帝都の空からは、今にも雨が降り出しそうではあるけれど。
 見下ろす景色はそれはそれで絶景であるし、雨が降り出せば、傘の花が沢山咲くことだろう。
 けれど何より、奏が嬉々と眺めているのは。
「紫陽花のクリームソーダ……私は、ピンクのソーダにバニラアイスクリーム!!」
 そう――今の時期限定の、紫陽花のクリームソーダ。
 最高です……と感嘆の声を落としながらも、真っ先にウキウキと注文した奏に続いて。
「ふむ、紫陽花のクリームソーダ。僕は青を頂きますか」
 瞬が選んだソーダの色は、青。
 いいえ、それだけではありません。
「兄さん、パンケーキとアイスクリンも食べましょう!!」 
「え? アイスクリンとパンケーキも食べる。まあ、付き合いますよ」
「あ、紅茶とナポリタンも!!」
 限定は当然外せないながらも、定番のアイスクリンやパンケーキ、ナポリタン、紅茶も張り切って頼みます!
 そんなデザートを総制覇しそうな子供達を見ながら微笑んで。
「アタシはホットサンドと紫陽花のクリームソーダを頂こうかね。紫のソーダがいい」
 響も注文を済ませれば、奏は店員に、以上でお願いします! と告げる。
「まだまだ食べれるんですが、母さんの財布の限界もありますので」
 全制覇もできそうなのだけれど、響の財布の中身を心配して、今はこのくらいに。
 そして暫く待てば、頼んだものがテーブルにずらり。
 ピンク、青、紫の色をした、しゅわりはじける3人のソーダは紫陽花のいろ。
 ぷかりと浮かぶバニラアイスとキラキラしたゼリーがまた、梅雨に咲く花の彩りを添えて。
 他にも腹拵えも十分できそうな、美味しそうな品も沢山。
 そして早速、いただきます、と食べ始める子供達を見つめながら、響は思う。
(「楽しそうな子供達を見てるだけで幸せでお腹一杯だ」)
 それから自分もホットサンドと紫色のクリームソーダを口に運びながら、ふとこう口にすれば。
「あ、珈琲を追加で注文するか。一杯動く前に補給しとかないとねえ」
 母の言葉に、子供達もこくりと頷いて。
「はい、これからに備えてパワー一杯付けときましょう!!」
「はい、これから動くことになるでしょうから、しっかりパワー補給しておきましょうか」
 ナポリタンを口にしながらも元気一杯に答えた奏に、ホットサンドと紅茶を味わっていた瞬はふと視線を向けてから。
 ナプキンを取ったその手を、彼女の口元へとおもむろに伸ばす。
 ――奏、ソースが口に付いてますよ、って。
 その口の端を、そっと拭いてあげながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
夜彦と一緒に百貨店を色々見た後、展望カフェーへ
勿論、買ったばかりの傘も一緒に

メニューを見る夜彦が楽しそうなのはいつもの事だけど
紫陽花って思い出深い花だから、余計にそうなのかも

夜彦は何にする?
俺はパンケーキと……折角だから色の変わるお茶
バタフライピーティは
色が変わる前も後も……紫陽花色だから
雰囲気あっていいだろ

そんな話をしつつ、届いたものを堪能

このパンケーキ、可愛くない?
小花や水滴に型抜きされたゼリーが散りばめられた生クリーム

普通でも可愛くても……
腹に入れちまえば一緒だけど
でも、可愛いのを見るとあんたがにこにこ楽し気だから
それだけで俺も気分がいい

ほら、あーん?
ん?うん、あんたのも美味そう


月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎と百貨店を見て回った後、傘を買ってから展望カフェーで食事

頼むのはホットサンドと紫陽花のクリームソーダ
思い入れがあるのは紫陽花だけではなくクリームソーダもです
2年前にスペースシップワールドで一緒にクリームソーダを頂いたでしょう?
初めて炭酸を頂いたのはあの時でしたから

倫太郎のバタフライピーティも綺麗ですよね
その飲み物も好きです

届いた食事をまずは観察
可愛くも綺麗なもので毎度ながら食べるのが勿体無いですね
暫く見た目を楽しんだ後に頂きましょう

パンケーキ、ありがとうございます
味も見た目に負けず美味しいですね
では私からもホットサンドを一口……はい、どうぞ
そして次はアイスの紫陽花のゼリー乗せです



 もうすぐ予報や予知通り、雨が降りそうだけれど。
 生憎の天気にも関わらず、沢山の人で賑わう帝都の百貨店。
 そんな様々な店が幾つも軒を連ねるデパート内をぐるり、一緒に色々と見て回った後。
 ふたりが向かうのは、帝都の風景が一望できるという最上階の展望カフェー。
 勿論、ふたりで楽しく選んだ、買ったばかりの傘も連れて。
 そして案内された席に座れば、じいっと篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は見つめてみる。
 窓の外の景色ではなく、楽しそうにメニューを見ている月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の姿を。
 いや、彼がこういったカフェーでお品書きを見ている時楽しそうなのは、いつもの事ではあるのだけれど。
 でも、やっぱり思うから。
(「紫陽花って思い出深い花だから」)
 ……余計にそうなのかも、って。
 2年前に一緒に見て、そして去年も共に眺めた花。
 巡る季節――あれからふたりの関係も、共に在る時間も、その重さも……そしてそれぞれが整理できた想いも。
 2年前とも1年前とも、また違うけれど。
 でも、この花を一緒に眺めるという事は、今年も変わらない。
 いやきっと、それは今年だけではなくて……。
 そんなことを考えながらも、倫太郎は眼前の彼に訊ねてみる。
「夜彦は何にする?」
「私は、ホットサンドと紫陽花のクリームソーダを」
 そう答えてから、夜彦は翡翠の瞳を細め続ける。
「思い入れがあるのは紫陽花だけではなくクリームソーダもです。2年前にスペースシップワールドで一緒にクリームソーダを頂いたでしょう? 初めて炭酸を頂いたのはあの時でしたから」
 あの時は初めてのしゅわしゅわ感覚が新鮮で。でも慣れていなくて、ストップをかけられたことを思い出す。
 紫陽花とクリームソーダ、そんな思い出深いふたつが一緒に味わえるとなれば、頼む選択以外ないだろう。
 そんな夜彦の言葉に笑って、倫太郎は何にしますかと逆に聞かれれば。
「俺はパンケーキと……折角だから色の変わるお茶。バタフライピーティに」
「倫太郎のバタフライピーティも綺麗ですよね。その飲み物も好きです」
 そう頷く夜彦に、雰囲気あっていいだろ、って。
 倫太郎はそう、向ける琥珀を細めてみせる。
 ――バタフライピーティは、色が変わる前も後も……紫陽花色だから、って。
 そしてそんな話をしつつも、注文したものが運ばれてきて並べられれば。
 じいっとそれらをまずは観察する夜彦を微笑ましく見つめつつ、倫太郎は口を開く。
「このパンケーキ、可愛くない?」
「可愛くも綺麗なもので毎度ながら食べるのが勿体無いですね」
 クリームソーダやバタフライピーティも紫陽花いろだけれど。
 小花や水滴に型抜きされたゼリーが散りばめられた生クリームで飾られたパンケーキも、可愛らしい梅雨仕様。
 夜彦は、ほわりとその可愛さを堪能しつつも。
「暫く見た目を楽しんだ後に頂きましょう」
 その後は勿論、美味しくいただきます!
 いや、正直、倫太郎にとっては一緒なのだ。
 普通でも可愛くても、腹に入れてしまえば。
 ……でも。
 じっと興味深々、可愛い品々を眺めている夜彦の姿を見れば、倫太郎は思わずにいられない。
(「可愛いのを見るとあんたがにこにこ楽し気だから」)
 ――それだけで俺も気分がいい、って。
 そして、手にしたフォークにも、パンケーキと甘い紫陽花を咲かせて。
「ほら、あーん?」
 夜彦へと、差し出す倫太郎。
 それをぱくりと口にして、ほわほわ。
「パンケーキ、ありがとうございます。味も見た目に負けず美味しいですね」
 夜彦はこくりと頷きつつ、よく味わった後。
「では私からもホットサンドを一口……はい、どうぞ」
 お返しの、あーんを。
 そんな向けられた、あーん返しも勿論。
「ん? うん、あんたのも美味そう」
 倫太郎は笑み返すと同時に、はむり。
 いや、お返しはそれだけではありません。
 夜彦がスッと、スプーンに掬い取って差し出したのは。
「次はアイスの紫陽花のゼリー乗せです」
 甘いアイスに咲いた、キラキラ煌めく二藍の花のいろ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
食べ物にすごーく気を惹かれるのだけど、最近ちょっと食べすぎ感があるから真面目に傘を探しに行きましょう…

ええ後ろ髪ひかれて逡巡して同じところを往復したりしながらよ?(未練たらたら)

気を取り直して。

青の紫陽花柄の傘を探すわ。
やっぱり雨の時に使うのだから、あった植物の柄の物が一番よ。
…水に濡れたら紫に変わる傘とかないかしら。

見かけ蒼いけど、紫外線で赤味を帯びるどこかの呪いの宝石に合わせるには最良だと思うから。



 思えば、先の戦争では、どれだけのものをどのくらい食べただろうか。
 いや、ヤドリガミなので太らない……のだとは思う、多分恐らく。
 それにやっぱり、食べ物にはすごーく気を惹かれるのだけれど。
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は、人で賑わう百貨店の中を何度か行ったり来たりしながら、散々悩んだ結果。
「最近ちょっと食べすぎ感があるから真面目に傘を探しに行きましょう……」
 そう、決意を声に出してみる。
 ということで、美味しいものが食べられる展望カフェーは、今日はお預け。
 傘を買いにいざ、アンブレラマーケットへ……。
 ……いえ、お客様! そっちはカフェー行きのエレベーターですよ!?
 そんな後ろ髪引かれまくりで逡巡し、決意した後も暫くは、未練たらたら……??
 同じところを往復したりしながらも、でも何とか気を取り直して。
 ようやく辿り着いた催事場で、ヴィオレッタは今度こそ真面目に傘探しを。
「やっぱり雨の時に使うのだから、あった植物の柄の物が一番よ」
 そんな彼女のお目当ては、やはりこの時期にぴったりな、青の紫陽花柄の傘。
 けれどどうせなら、雨をより楽しめるようなものが良いから。
 いくつか青の紫陽花が咲いた傘を試しに差して見つつ。
「……水に濡れたら紫に変わる傘とかないかしら」
 そう、ぽつりと呟きを落とせば。
 すかさずその声を拾った店員が持ってきたのは、まさに所望する、雨に濡れると色が変わるという傘。
 その、まだ青に咲く紫陽花の花をさしてみつつも見上げて。
 ヴィオレッタは、色の異なるふたつの宝珠をふと細める。
 青から紫に変化するという、眼前の紫陽花のいろ。
 それは――見かけ蒼いけど、紫外線で赤味を帯びるどこかの呪いの宝石に合わせるには最良だと。
 くるりと咲いた傘をそっと回しつつも、思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえええ、どうしましょう。
アヒルさんとはぐれてしまいました。
私、どうもこのエレベーターが苦手で降りたい階じゃないのに人混みに押されてエレベーターから降りてしまったり、降りたい階なのに降りれなかったりして、目的の階になかなかたどり着けないんですよね。
これってもしかして迷子ってことですか。
・・・、ふええ、急いでアヒルさんと約束していたアンブレラマーケットに行かないとアヒルさんに迷子放送されてしまいます。
アヒルさんに言葉が通じないとか関係ないですから、急がないと・・・。



 外出することに躊躇ってしまう様な、今にも雨が降りそうな空模様。
 けれど、雨が降っても楽しめる百貨店は、今日も買い物客でとても賑わっていて。
 沢山の人達が行き交う百貨店内を移動するべく、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、雰囲気溢れるレトロなエレベーターへと乗り込んだ……のだけれど。
(「ふえええ、どうしましょう」)
 大きな帽子のつばを押さえつつ、オタオタおどおど。
 エレベーターに乗っている客が数人であれば、何ら問題はないのだけれど。
(「私、どうもこのエレベーターが苦手で」)
 今、自分がいるのは一体、何階なのだろうか……。
 そう思いつつも、もう一度きょろりと周囲を見回してみるけれど。
 ……アヒルさんとはぐれてしまいました、と。
 状況を再度、自ら確認する。
 いや、エレベーターに乗ったものの……降りたい階じゃないのに人混みに押されて降りてしまったり。逆に、降りたい階なのに降りれなかったり。
 目的の階になかなかたどり着けない上に、一緒にいたはずのアヒルさんがどこを見回してもいないのだ。
 そう……すなわち。
(「これってもしかして迷子ってことですか」)
 迷子になってしまいました!?
 いや、フリルが今、一番心配していること……それは。
「……、ふええ、急いでアヒルさんと約束していたアンブレラマーケットに行かないとアヒルさんに迷子放送されてしまいます」
 この年になって、迷子放送をされてしまうかもしれないこと!
 とりあえず、まずはここは何階かを把握して。
 一刻も早くアンブレラマーケットが行われている催事場に辿り着かなければいけない。
「アヒルさんに言葉が通じないとか関係ないですから、急がないと……」
 フリルは、ふえええ、とおどおどしながらも、とりあえず駆け足で百貨店を巡ってみる。
 だって、あのアヒルさんなんです。
 きっと嬉々と、迷子放送するに違いないから……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソフィー・メイフィールド
傘かあ
ソフィーは濡れてもヘーキだから
使うこと、あんまりないケド

でもでも、せっかくだから
買ってもいいよね?

るんるん気分でアンブレラマーケットへ

えーっ!たくさんあって迷っちゃう!
ううん、いろいろあるんだなぁ

見てまわっていると
紫陽花と雫が彩るバードゲージが目にはいって

これステキ!
これにきーめたっ!

決まったら他の傘には興味も移らず
すぐ購入

選んだ傘を手に持って
次に目指すのはクリームソーダ!

紫陽花のクリームソーダだって
ソーダはパステルブルーでお願い

えー!かわいー!
映えそう!

一人でもテンションあがっちゃう

スマホでパシャり写真を撮れば
甘い紫陽花で優雅な時間

なくなっちゃうの、なんだかもったいなく感じちゃうな



 見上げる梅雨の空から、予報通りぽつぽつと雨が降り出してきたって。
「傘かあ。ソフィーは濡れてもヘーキだから、使うこと、あんまりないケド」
 人魚であるソフィー・メイフィールド(夢色・f27555)は傘いらず。
 だけど、リボンが彩る尾鰭をそわりと揺らして。
「でもでも、せっかくだから買ってもいいよね?」
 紫陽花の髪を小さく躍らせ、るんるん気分で。
 ソフィーが向かうのは、傘の花が咲き乱れるアンブレラマーケット。
 とても沢山、色々な種類の傘があるとは、話に聞いていたけれど。
 催事場に辿り着けば、ぐるり巡らせたオパールの瞳を、思わずぱちくり。
「えーっ! たくさんあって迷っちゃう!」
 ひとつひとつ、形も色もそれぞれ違う、数え切れないくらい並ぶ傘たちに。
 ……ううん、いろいろあるんだなぁ。
 そう、きょろりと色々な傘を見て回っていれば。
 刹那、ぱっと巡らせていたオパールに咲いたのは――紫陽花と雫が彩るバードゲージの傘。
「これステキ!」
 ――これにきーめたっ!
 そうと決まればもう、他の傘には興味も移らず、脇目もふらずに。
 ソフィーは、見つけたその傘を即購入して。
 選んだ紫陽花と雫の傘を連れて、次に目指すのは。
「紫陽花のクリームソーダだって」
 最上階の展望カフェーでいただける、クリームソーダ!
 優しいパステルブルーがしゅわり弾けるソーダの上には、白いバニラアイスと煌めく紫陽花色のゼリー。
「えー! かわいー! 映えそう!」
 しかも、心くすぐる期間限定。
 一人でも思わず瞳キラキラ、テンションもあがっちゃう。
 それからパシャリと、スマートフォンで映え写真もバッチリ撮った後。
 スプーンでひと掬いして運ぶのは、幸せ咲く紫陽花のひとくち。
 そんな甘い紫陽花で、優雅な時間を満喫しながらも。
 ソフィーはふと手を止めて、じいっと暫しクリームソーダとお見合いを。
 ……なくなっちゃうの、なんだかもったいなく感じちゃうな、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

憂世・長閑
巴(f02927)

広い百貨店は何だか迷いそうでせっせとついていく
一緒に傘を選ぶのは楽しくて巴が手にしたものに興味津々

「オレっぽい?」
淡いピンク、ネイビーのシンプル、空色
色々と探してくれるのが嬉しくて
ただにこにこと巴の言葉を聞いていたら
照れ笑いをする巴と目が合って、首を傾げて笑った

「空色だったら、巴の色だね
オレは――あっ、巴、みて。これ」

外側はシンプルなネイビー
けれど中は、星空にお月さまが広がって

ピンクや空色も、巴が選んでくれたなら嬉しい
でも、雨の日でもお月さまが見えたら
巴が喜んでくれるかなって思ったから

「お揃いにする?」

買った傘を手にふわふわした気持ち
「――ふふ。巴の気持ち、天気になあれ」


五条・巴
長閑(f01437)

へえ、色んな種類があるんだね
ドーム型から骨が多いものまで沢山
ネイビーのシンプルなものも品が良くていいな。
…あ、この淡いピンクは長閑っぽい
でも普段使いならもっとシンプルなものが…
うーん、濃すぎる色よりは淡い色の方が似合う。
いっそ空色くらいのが、

自分の傘を探すつもりがつい長閑に似合う傘を探してた。
思った以上に浮かれてることに気づいて、小さな咳払いと照れ笑いで誤魔化す

ね、長閑はどんな傘が気に入った?
見つけてくれた傘は内側に満天の夜空
一緒に見に行ったあの時の景色みたいで

自然と手が伸びた
僕、これにする。
お揃いなら、もっと嬉しいな。

月の見えない雨の日も、この傘があったら気持ちは晴れるね



 見上げた空はどんよりと雲に覆われていて、今にも雨が降ってきそうだけれど。
 訪れた帝都の百貨店は、雨模様の予報が出ているこの日も、沢山の人で賑わっている。
 憂世・長閑(愛し秉燭・f01437)はそんな百貨店内を見回すのもそこそこに、せっせとついていく。
 広い百貨店は何だか迷いそうで。五条・巴(月光ランウェイ・f02927)と、逸れないように。
 そしてふたりが足を向けたのは、百貨店の催事場。
 そこに広がるのは、様々な形や色が咲いた、傘いっぱいの風景。
「へえ、色んな種類があるんだね。ドーム型から骨が多いものまで沢山」
 試しにひとつ、巴が手に取ってぱっと咲かせてみるのは、落ち着いた濃紺色の傘。
「ネイビーのシンプルなものも品が良くていいな」
 夜の静寂の様な深い紺の色合いは、シンプルだからこそ、洗練された上品さが感じられる一品。
 ……どう似合う? なんて、ふとそれを差してみる巴に、長閑はこくりと頷いて返して。
 うん似合う、って、そう笑みが零れるのは、一緒に傘を選ぶのが楽しいから。
「……あ、この淡いピンクは長閑っぽい」
「オレっぽい?」
 清廉としたネイビーの次は、ほわり柔らかな淡ピンク。
 巴が手にする傘たちに興味津々、見つめるその瞳とお揃いの色。
 けれど、そうじぃっと自分っぽいと言われた傘を見る長閑の横で、巴はふと首を傾けて。
「でも普段使いならもっとシンプルなものが……うーん、濃すぎる色よりは淡い色の方が似合う。いっそ空色くらいのが」
 先程のシンプルなネイビーに、淡いピンク、それに空色……巴の腕が、あっという間に傘だらけに。
 そんな、色々と自分に似合うものを探してくれるのが嬉しくて。
 ただにこにこと巴の言葉を聞いていたら……ぱちり、と。
 彼と視線合えば、こてり首を傾けつつも長閑は笑う。
 小さな咳払いと照れ笑いをする巴の様子に。
 だって、はたと巴は気付いたから。
(「自分の傘を探すつもりがつい長閑に似合う傘を探してた」)
 思った以上に、浮かれていることに。
 それが何だかちょっぴり気恥ずかしくて擽ったくて、そっと誤魔化してみせつつも。
「ね、長閑はどんな傘が気に入った?」
 そう訊ねてみれば、長閑は巴が手にした傘のひとつに目を遣って。
「空色だったら、巴の色だね」
 やっぱり同じように、まず気になったのは、キミに似合ういろ。
 けれど、くるりと周囲を見回してみれば。
「オレは――あっ、巴、みて。これ」
 伸ばしたその手が取ったのは、巴が最初に開いた傘に似た、シンプルなネイビーのもの……?
 いや、パッと開けば――刹那広がるのは、散りばめられた星たちとぽっかり浮かぶお月さま。
 ピンクや空色も、彼が選んでくれたなら嬉しい。
(「でも、雨の日でもお月さまが見えたら」)
 ――巴が喜んでくれるかなって思ったから、って。
 そう笑む長閑と一緒に、小さな一面の夜空を見上げてから。
 自然と伸びた巴が手に取ったのは、同じ星月夜の傘。
 だってそれは、一緒に見に行ったあの時の景色みたいで。
 その時だってキミと一緒に、満天の夜空を見たのだから。
「僕、これにする。お揃いなら、もっと嬉しいな」
「お揃いにする?」
 やっぱり小さな夜空を咲かせるのも、一緒のお揃いに。
 そして買ったお揃いの傘を手にすれば、ふわふわした気持ちになって。
「月の見えない雨の日も、この傘があったら気持ちは晴れるね」
「――ふふ。巴の気持ち、天気になあれ」
 キミと一緒に傘をさせる雨が今、とっても待ち遠しい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドミニク・ブルームーン
オトモダチのトウカちゃん(f27645)と
いつもはバイト先のカフェーでお話してますが
偶にはお出かけ日和も良いものですネ
デートでしょうか?デートってやつデス!
どんどん楽しみましょ〜

旅する兎はエスコートするもの、
学生さん向けオススメ文具に書店に
憂鬱な梅雨を吹き飛ばしちゃう
アンブレラマーケットもやってますヨゥ
花咲くように色とりどりな傘が見頃で
まぁトウカちゃんは普段使いな番傘が
お似合いだとは思いますケド

最後は展望カフェーに登って
紫陽花メニューを楽しみマショ!
食べるのも飲むのも美味しくって
ウチのお店でも出してくれたら
良いんですけどネ〜
常連さんパワーでおねだりしてみては?
ふふ、半分程冗談なのデシタ


春夏秋冬・燈
同行:ご友人のドミさん(f33639)

学友との放課後とは
また違った雰囲気を感じてしまいますが…
デート。……そう!デートですね
頑張って参りましょうか…!(空元気

百貨店には余り行かないので
大きさ広さに気圧されてしまいそうなのですが
ドミさん兎に手を引かれ……
て、手慣れている…これが大人の余裕
というやつでしょうか…見習いませんと…
新しい傘を買ってしまいそうになりつつ
あの番傘はお気に入りのものなので
お褒め頂けてちょっと照れつつ嬉しいです!

最後に着いた展望カフェーは
景色にもメニューにも、ほわぁと感嘆し
雨と紫陽花の組み合わせ
なんと素晴らしいものでしょう…!
何度でも食べたくなってしまう美味しさでしたね



 予報でも、これから雨模様になるとは聞いていたけれど。
 そんな生憎の天気よりも、何よりも。
「いつもはバイト先のカフェーでお話してますが、偶にはお出かけ日和も良いものですネ」
 そうぴこりと兎耳を揺らすドミニク・ブルームーン(蒼月・f33639)と一緒に歩きながら。
(「学友との放課後とは、また違った雰囲気を感じてしまいますが……」)
 隣の彼女をそうちらりと見るのは、春夏秋冬・燈(まにまに・f27645)。
 学友と一緒とはまた違ったお出掛け……そう、これは。
「デートでしょうか? デートってやつデス!」
 ええ、デートです……!?
 そんなドミニクの言葉に、燈はぱちりと思わず瞳を瞬かせるけれど。
「デート。……そう! デートですね」
 ――頑張って参りましょうか……!
 そう空元気……もとい、張り切っていざ、デート頑張ります!
 そして何気にそわりとした様子の燈へと、ドミニクは手を伸ばして。
「どんどん楽しみましょ〜」
 ……旅する兎はエスコートするもの、と。
 くるり巡るのは、学生さん向けオススメ文具店に大型書店に。
「憂鬱な梅雨を吹き飛ばしちゃう、アンブレラマーケットもやってますヨゥ」
 やって来たのは、花咲くように色とりどりな傘が見頃の、傘の市。
 余り行かない百貨店は広くて大きくて……気圧されてしまいそうだと、そう燈は思いつつも。
 でも、ドミさん兎にぴょこりと手を引かれれば。
(「て、手慣れている……これが大人の余裕、というやつでしょうか……見習いませんと……」)
 兎さんのエスコートは、さすが完璧。
 手を引かれやって来たアンブレラマーケットに並ぶ傘たちも、とても魅力的で。
 つい、新しい傘を買ってしまいそうになる燈だけれど。
「まぁトウカちゃんは普段使いな番傘が、お似合いだとは思いますケド」
 そうドミニクの言葉を聞けば、思いとどまる。
 だって、ちょっと照れるけれど。
「あの番傘はお気に入りのものなので」
 褒めて貰えて、嬉しかったから。
 そして楽しい百貨店巡りの締めは、やはりここ。
「最後は展望カフェーに登って、紫陽花メニューを楽しみマショ!」
 梅雨の時期を満喫できる、最上階の展望カフェー。
 生憎の天気でも、窓の外に広がる桜の世界は絶景。
 いや、ほわぁと燈が思わず感嘆を零すのは、見下ろす景色だけではなくて。 
「雨と紫陽花の組み合わせ、なんと素晴らしいものでしょう……!」
 テーブルに並べられた、梅雨に彩られた期間限定スイーツたちもまた絶品。
 はむりと頬張れば、鬱陶しいはずの雨の日だって、ほわり甘い幸せに変わって。
「何度でも食べたくなってしまう美味しさでしたね」
「ウチのお店でも出してくれたら良いんですけどネ〜」
 ……常連さんパワーでおねだりしてみては?
 ドミニクは兎耳をぴこりとさせながら、燈にくすりと笑む。
 ――ふふ、半分程冗談なのデシタ、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
カティアさん(f05628)と

カティアお姉ちゃんとデートなのです!
え? 影朧さんですか? 
それもがんばりますですが、今日のメインはお買い物なのですよ!

依頼で傘が必要みたいですし、
カティアお姉ちゃんとおそろいの傘が欲しいのです!

傘は蛇の目がいいでしょうか。

カティアお姉ちゃんが白イメージ、わたしが紫なので、
わたしは白地に紫の蛇の目をみつけるのですよ!

えへへ、カティアお姉ちゃんとおそろいなのです♪

雨は降ってないかもですけど、
傘をさして、くるくるしてみたりしちゃいますね。
「雨が楽しくなりそうなのです!」

カティアお姉ちゃん、
次は『紫陽花のクリームソーダ』に行きましょう!
と、腕に抱きついちゃうのですー♪


涼月・カティア
奏莉さん(f32133)と

奏莉さんとデートです
はい、カティアお姉ちゃんですよ
とっても楽しみですね
後で影朧さんに会いに行かないといけませんが
でも、そうですね
今日はお買い物がメインで
奏莉さんを堪能しましょう

え?私とおそろいの傘、ですか?
ええ、とっても楽しそうです

奏莉さんの紫イメージと私の白イメージ

それなら私は紫地に白の蛇の目傘ですね
ふふ、おそろいですね

どうでしょう?似合いますか?
ちょっとどきどきします
奏莉さんとってもお似合いですよ
可愛くて食べちゃいたいくらい
今度は雨の日にお出かけしましょう

あっ、とそうでした
クリームソーダも食べないと
って、わわっ(抱き着かれて吃驚
もう、えいっ奏莉さんをキャッチです



 雨が多くて鬱陶しいはずの、梅雨の季節もなんのその。
 るんるんと軽い、菫宮・奏莉(血まみれもふりすと ときどき勇者・f32133)の足取り。
 だって、今日は。
「カティアお姉ちゃんとデートなのです!」
「はい、カティアお姉ちゃんですよ。とっても楽しみですね」
 楽しいデートなのだから!
 いや、此処を訪れた目的を、涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)は勿論忘れてはいません。
「後で影朧さんに会いに行かないといけませんが」
「え? 影朧さんですか?」
 奏莉は一瞬、彼の言葉にきょとりとするけれど。
「それもがんばりますですが、今日のメインはお買い物なのですよ!」
 折角だから、買い物デートを目一杯楽しむつもりです!
 カティアはそんな奏莉を見つめる青い瞳を細めて。
「でも、そうですね。今日はお買い物がメインで、奏莉さんを堪能しましょう」
 影朧退治もだけど、買い物も奏莉も、存分に一緒に堪能するべく。
 人で賑わう百貨店を、並んで共に歩いていれば。
「依頼で傘が必要みたいですし、カティアお姉ちゃんとおそろいの傘が欲しいのです!」
「え? 私とおそろいの傘、ですか?」
 そんな奏莉の提案に、瞳を瞬かせた後。
 言の葉と共に笑みを返す――ええ、とっても楽しそうです、って。
 ということで、ふたりがやってきたのは、催事場で行われている『アンブレラマーケット』。
 梅雨空を彩る色々な形や色の傘たちが、沢山咲いている中。
 きょろりと視線巡らせながら、奏莉は小さくこてりと首を傾けて。
「傘は蛇の目がいいでしょうか」
 探してみるのは、蛇の目の傘。
 いや、ただの蛇の目傘ではありません。
「カティアお姉ちゃんが白イメージ、わたしが紫なので、わたしは白地に紫の蛇の目をみつけるのですよ!」
 白と紫、ふたりのイメージ色で彩られたもの。
 そんな奏莉の言葉に、カティアも頷いて続ける。
「奏莉さんの紫イメージと私の白イメージ。それなら私は紫地に白の蛇の目傘ですね」
 そして様々ないろを咲かせている蛇の目傘の中からそれぞれ、白に紫、紫に白のものを手に取ってから。
「えへへ、カティアお姉ちゃんとおそろいなのです♪」
「ふふ、おそろいですね」
 ぱっと試しに開いて咲かせてみれば、思わず笑顔も零れ咲いて。
「どうでしょう? 似合いますか? ちょっとどきどきします」
 カティアは、ふふっと再び笑み宿す。
「奏莉さんとってもお似合いですよ」
 ……可愛くて食べちゃいたいくらい、って。
 そして奏莉ははしゃいだように、さしてみた傘をくるくる。
「雨が楽しくなりそうなのです!」
「今度は雨の日にお出かけしましょう」
 お揃いの傘をさして歩く、雨の日の楽しいお出かけの約束を。
 それから、大満足な傘をお揃いで購入すれば……次の楽しみは、これ!
「カティアお姉ちゃん、次は『紫陽花のクリームソーダ』に行きましょう!」
「あっ、とそうでした。クリームソーダも食べないと……って、わわっ」
 カティアは、急にぎゅうっと腕に抱きつかれて、思わず吃驚してしまうけれど。
 ……もう、えいっ。
 飛びつくように抱きついてきた彼女を、ぎゅぎゅっとキャッチです!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と手を繋ぎ百貨店の催事へと向かおう
エンパイアでは紙の物が多かったのだが…アースには様々な傘が有るのだな
そう周囲を見回しながらも鮮やかな青に、カンパニュラ・ポシャルスキアナと矢車菊が寄り添うように描かれた傘が目に入ればついぞ近づいてしまうやもしれん
その…なんだ。ついぞ俺と宵の様に感じられてな
そう照れ臭げに笑いつつ手にとればレジで買い求め宵へ渡そう
雨の日も宵を俺が護れればなど思った事は恥ずかしいゆえいいはせんが、な
宵に渡された傘を見れば一瞬驚いた後表情を緩めよう
ああ、本当に。長く共に在ると同じ事を想うのだな
とてもうつくしいな。大事にさせて貰おう
…だが…使用するのが勿体無い、な


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

かれと手を繋ぎ百貨店の催事へ
どこの世界よりも、多種多様なデザインのものがあるのはこの世界の特徴ですねと頷きつつ
布地の深い青から青紫へのグラデーションに金色の縁取りがなされた傘を見つけ

……雨の日にかれがさす傘が、これであればいいな
それから手に取ったそれを買い求めましょう
かれが購入したものには目を瞬かせ
ふふ、互いのことを強く思えばこそと思います
そう言って今しがた購入した移り変わる夜色の傘をかれへと手渡し

ぜひとも使ってください
僕の選んだ傘をきみが使ってくれると思うと、とても嬉しくなりますので
そう言って、かれが選んでくれた傘に目を落とす
―――大切に、しますね



 今日の予報も、いわゆる生憎の天気。
 仰いだ先は雲に覆われた、今にも雨が降り出しそうな梅雨空だけれど。
 晴れでも曇りでも、雨が降ってきたって、いつもと何ら変わらない。
 普段通りふたり手を繋いで、一緒に並んで歩いて。
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が向かうのは、大きな百貨店の催事場。
 会場に足を踏み入れれば、そこに咲き誇るのは様々な傘の花たち。
「エンパイアでは紙の物が多かったのだが……様々な傘が有るのだな」
「どこの世界よりも、多種多様なデザインのものがあるのはこの世界の特徴ですね」
 ザッフィーロが見慣れた紙の和傘だけでなく、ビニールのものや布張りのもの。形や色だって多種多彩。
 そんな和洋折衷様々な装いの傘たちを興味深々見つめるかれに、宵もそう頷いてから。
 ふと、巡らせた深宵の星纏う瞳が見つけたのは――彩が移ろう、1本の布製の傘。
 そうっとそれを開いてみれば、深い青から青紫へと変化する小さな空が広がって。それを縁取るのは、そうっと煌めく金のいろ。
 そして、そのグラデーションの彩を見つめる宵の心に、ふわりと開き咲いた想い。
 ……雨の日にかれがさす傘が、これであればいいな、って。
 だから、手に取ったその傘を買い求めることに。
 同時に、物珍し気に数多ある傘を見回していたザッフィーロも。
 不意に瞳に飛び込んできた、1本の傘へと視線を留めていた。
 それは、鮮やかな青色の傘。
 そして、星のように美しいカンパニュラ・ポシャルスキアナと放射状に咲いた繊細な矢車菊。開かれた青の世界に寄り添い咲くのは、花二輪。
 そのふたつの花が寄り添うように描かれた傘が目に入れば、自然と近づいてしまって。
 照れ臭げに笑いつつ、その手を伸ばす。
「その……なんだ。ついぞ俺と宵の様に感じられてな」
 それから共に、それぞれ見つけた傘を購入すれば。
 互いに渡し合って、贈り合いっこ。
 ザッフィーロから手渡された、ふたつの花が寄り添い咲いた鮮やかな青のいろを見た宵は、星のように目を瞬かせてから。
「ふふ、互いのことを強く思えばこそと思います」
 そう言って、照れ臭そうに笑ったかれへと差し出すのは、今しがた購入した移り変わる夜色の傘。
 そんな、美しく移ろう宵色の傘を見れば、ザッフィーロも一瞬だけ驚くも。
「ああ、本当に。長く共に在ると同じ事を想うのだな」
 すぐに、その表情もほわりと緩んで。
 自分の選んだ傘を嬉し気に眺める彼の美しい顔を見つめつつ、そっとその心に思う。
(「雨の日も宵を俺が護れれば」)
 でも……恥ずかしいゆえいいはせんが、な――って。
 それから、受け取った傘へと改めて目を向ければ、自然と咲く笑み。 
「とてもうつくしいな。大事にさせて貰おう」
「ぜひとも使ってください。僕の選んだ傘をきみが使ってくれると思うと、とても嬉しくなりますので」
 けれど、そう自分を映す星の瞳に、ザッフィーロはちょっぴりだけ悩んでしまう。
 ……だが……使用するのが勿体無い、な、なんて。
 そして宵も、選んでくれた傘にもう一度目を落とせば。
 まるで手を繋ぐかのようにきゅっと、大切にそれを握りしめつつも。
 かれへと、想いを噛みしめる様に紡ぐ――大切に、しますね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【彩夜】

晴れも雨もすき
アメって言うし甘いのかな?って
雨の日にお空に口開いてた事ある
ぜんぜん甘くなかった
十雉さんも?一度は考えてしまうよね

あんぶれらまーけっと楽しむぞー(おー!)
こ、小鉄さんもゆぇパパもカゼひかないでね?
コウモリカサは妖怪さん…知らなかった
苺はカサ初めて?なら、特別な一本になるわね

ルーシーも新しいのほしいけど
ステキなのばかり
でも…うん!これにする
青空に縁をぐるり囲む様に咲く向日葵のカサ
雨と晴れの日
一度に楽しめそうな一品よ

なゆさんのカサはキレイで…ふふ、本当に館の窓みたい
パパのは描けるの面白そう!たくさん描いていい?

晶硝子さんの言葉になるほどと
虹って7色だもの
きっと作れるわ
楽しみね


宵雛花・十雉
【彩夜】

雨の日か
ひとりで雨の中にいると、なんとなく寂しい気持ちになるんだけど
友達と傘をさして歩くのは楽しいよね
…いや、今回は飛ぶんだっけ

甘いアメが降ってきたら素敵だよね
オレも子供の頃に同じこと考えたことあるよ

オレはどれにしよう…
あれこれ目移りするうち、ピンときた傘があった
外側だけ見るとシックな黒い傘
だけどぱっと開けば内側は黄昏の空
オレンジと紫色のグラデーションに吸い込まれそうだ

葉っぱの傘とこてっちゃん…に、似合う
森の妖精みたいだね
なゆさんと苺ちゃんとルーシーちゃんの傘、3人並んで歩いたらきっと華やかだろうな
ステンドグラスの傘はすごく晶硝子ちゃんらしいね
ユェーの傘、何を描くか考えておかないとね


歌獣・苺
【彩夜】
雨の日のお祭りかぁ…!ふふ、いつもなら雨の日はしょんぼりしちゃうけどお祭りとなれば話は別だよね!いっぱい楽しむぞーっ!!(拳を高くあげて)

いつも雨の日は
部屋の中にいたから
傘、買ったこと無かったなぁ

えっ!
ルーシー雨食べちゃったの?
お腹、壊したりしなかった?
大丈夫?

ふふ、みんなと一緒に
お出かけした日の傘があれば
雨の日も楽しくなっちゃいそう…!
どれにしよっかな~♪

あ!これがいい!
選んだのは
カラフルなガーベラ付きの
ホログラムのビニール傘
透明なのにきらきら虹色に輝いて
私や、みんなみたい…♪

みんなが選んだ傘も素敵!
どれもみんな『らしさ』のある傘だね!

早くこの傘をさして
みんなと飛びたいな…♪


志島・小鉄
【彩夜】

ニンゲン様の姿で参加しマス!

アンブレラマーケットデス!
傘ヲ購入するのは何時ぶりでせうか。ワクワクしマス!
ワシの傘は葉っぱデス!雨が降ったら葉っぱを貰うのデス。ビショビショになりマス……!
此処デ立派な傘を買いたいデスネ〜。
ほほぅ。真っ黒でカッコイイ傘デスネ〜。なんとコウモリ!
ははぁ。この傘ハコウモリでしたカ。
ワシらの仲間でせうか。

七結はキレイな傘デス!
常夜ではキラキラしそうデスネ〜。
ミナさんの傘も見マス!

ワシの傘はジャーン!葉っぱデス!
葉っぱデスが傘デス!葉っぱの絵デスヨ〜。
いやはやニンゲン様は絵がお上手デスネ〜。
雨が降ったらミンナで傘ヲさしませう!


彼者誰・晶硝子
【彩夜】

雨の日は、わたしも室内でばかり過ごしていたわ
雨音の旋律や、窓から見える雫に濡れた花がきれいで
ふふ、甘くなくても、飴みたいにきらきらで、好きだわ
傘を持って外に出たら、もっと近くで体験できるのね

まあ…、まるでお花畑のよう
色とりどり、大きさも様々な一面の傘は壮観で
わくわくするけれど、迷ってしまう、わ
鮮やかな植物の彩りも、何にも染まらない黄昏を抱く宵闇も、そして、自由に描けるまっさらな白も
どれも素敵だわ
ぐるりと見渡して、ふと慣れ親しんだ色を見つけ、手を伸ばす
光の色彩を閉じ込めた、ステンドグラスの傘
雨を楽しむには、すこし、派手かもしれないけれど…
空を駆けて、みんなで虹を作れるかしら


蘭・七結
【彩夜】

雨に魔法が掛かったのならば
外へと出掛けることが、楽しくなりそう

降り注ぐ雨を凌ぐ、傘の催事ですって
数多の彩を捉えられるかのよう
とびきりのひと品を手繰ってみましょうか
皆さんは、如何なるものを選ぶのかしら

つい彼方此方へと視線が移ろってしまう
眺めているだけでも、裡が満たされる
嗚呼、けれど――見ぃ附けた
指のさきを伸ばして、ひと品を寄せましょう

半透明の素材に咲く淡い花々
館の窓に嵌った色硝子のようでしょう
ちょっぴり回顧的な雰囲気があいらしい
わたしは、此方にしましょう

新緑の葉に、とりどりのガーベラ
鮮やかなヒマワリ、黄昏を抱く漆黒
七彩の硝子に、真白の傘

添えられる彩たちにふふりと笑む
さあ、購入しましょうか


朧・ユェー
【彩夜】

雨…
淋しい雰囲気もあるけど恵の雨でもある
素敵な傘を

七結ちゃんの傘はまるであの館の様に
小鉄さんは普段は葉っぱなのかい?でも風邪を引いてはいけないな
ルーシーちゃん、おや雨は甘くないですよ。向日葵さんが喜ぶ雨ですから。
苺は、君の元気な姿で雨は止んで虹になりますね
十雉くんはお友達も一緒には初めてかい?素敵な想い出、表は黒でも中身は綺麗
晶硝子ちゃんのステンドグラスの傘は宝石の煌めきの様だ

僕はこの傘にしましょう
真っ白な何も描かれてない傘。
でもこの傘は後から何でも描く事が出来るらしい
終わったら皆さんに何か描いてもらいましょうか
白に皆さんの彩を

嗚呼、皆さんの傘を持つ姿は愛らしいでしょうねぇ



 天気予報でも、そして聞いた予知でも、伝えられていたこと。
 今日の天気はこれから下り坂……雲で覆われた空から、じきに雨が降ってくる、と。
 季節は梅雨、1年の内で雨の日が多くなる時期ではあるけれど。
 雨に関して感じること、思い出すことは、その人それぞれであるだろう。
 そんな、今にも雨が降り出しそうな梅雨空をそっと見上げて……雨の日か、と。
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)はそう呟きを零した後、紡ぐ。
「ひとりで雨の中にいると、なんとなく寂しい気持ちになるんだけど。友達と傘をさして歩くのは楽しいよね」
 けれどすぐに、ふと小さく首を傾けてから、こう言い直す。
 ……いや、今回は飛ぶんだっけ、って。
 雨が降れば、外出することを億劫に感じる人も少なくはないだろう。
 けれど、もしそれが、ただの雨でなければ――。
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は耳に聞こえた十雉の言葉に、ふわり笑み咲かせる。
 ――雨に魔法が掛かったのならば、外へと出掛けることが、楽しくなりそう、と。
 だって、天から降り注ぐ今日の雨は、いつもとはちょっぴり違う、魔法が掛かっているみたいだから。
 そして魔法の雨空を飛ぶためには、大切なアイテムが必要なのだという。
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)も皆と歩きながら、空を見上げてみる。
(「雨……淋しい雰囲気もあるけど恵の雨でもある」)
 どこか淋しい気なような、けれど潤いが齎される恵みでもある雨。
 そんな雨の日に欠かせない、そして今回掛かけられた魔法の雨空を翔けるために必要なもの。
 ユェーは空に向けた金の瞳を、ふっと細める――素敵な傘を、と。
 そう……それは、ぱっと空に咲かせる傘。
 雨が降る前の今は、そんな傘の出番もまだもう少しだけお預けだけれど。
 ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は、晴れも雨もすき、って。
 そう天を仰ぎながらも、こんな話を。
「アメって言うし甘いのかな? って、雨の日にお空に口開いてた事ある」
「えっ! ルーシー雨食べちゃったの?」
 ルーシーの言葉に、思わず見開いた瞳をぱちくりとさせてから。
 歌獣・苺(苺一会・f16654)は、心配気に訊いてみる。
「お腹、壊したりしなかった? 大丈夫?」
「うん、でもぜんぜん甘くなかった」
「ルーシーちゃん、おや雨は甘くないですよ。向日葵さんが喜ぶ雨ですから」
 苺とルーシーのやり取りに、ユェーはくすりとふたりへと移した金のいろを細めて。
 逆に、ルーシーの話にこくりと頷くのは、十雉。
「甘いアメが降ってきたら素敵だよね。オレも子供の頃に同じこと考えたことあるよ」
「十雉さんも? 一度は考えてしまうよね」
 あまーいあめが空からぱらりと降ってくる、それはやはりわくわくするような浪漫でもあるし。
「ふふ、甘くなくても、飴みたいにきらきらで、好きだわ」
 口に含んでみた雨は甘くなかったかもしれないけれど、彼者誰・晶硝子(空孕む祝福・f02368)の言う通り、色々な彩りをした煌めき纏う数多の雫はまるで、飴玉のよう。
 そんなキラキラ輝く風景は、眺めるだけでも綺麗なのだけれど。
 晶硝子は星の輝き宿す瞳に空を映しながらも、待ち遠しく思う。
 ――傘を持って外に出たら、もっと近くで体験できるのね、って。
 そのためにはまず、雨空に咲かせる傘を手に入れることから。
 そんな梅雨の時期にぴったりの催しが、帝都で行われているのだという。
 雨模様という予報にも関わらず、足を踏み入れた百貨店は人でいっぱいで。
 買い物を楽しむ人たちで賑わう中、辿り着いた今回の目的地は。
「降り注ぐ雨を凌ぐ、傘の催事ですって」
 そう――巡らせた七結の瞳にも沢山咲いた、様々な傘たちが彩る空間。
「雨の日のお祭りかぁ……! ふふ、いつもなら雨の日はしょんぼりしちゃうけどお祭りとなれば話は別だよね!」
 どこか憂鬱になってしまいがちな雨だけれど、苺は賑やかな催事場の様子に瞳をわくわく輝かせて。
「あんぶれらまーけっと楽しむぞー」
「いっぱい楽しむぞーっ!!」
 ルーシーと一緒に、拳を高くあげて――おー!
 そんな気合い十分なふたりに、こくこく頷きながらも。
「アンブレラマーケットデス! 傘ヲ購入するのは何時ぶりでせうか。ワクワクしマス!」
 物珍し気にきょろり視線を巡らせるのは、志島・小鉄(文具屋シジマ・f29016)。
 そんな小鉄が、雨が降ればさすもの、それは。
「ワシの傘は葉っぱデス! 雨が降ったら葉っぱを貰うのデス。ビショビショになりマス……!」
 傘がわりの葉っぱ……!
 今は人の姿をとっているけれど、葉っぱの傘ではどうしても濡れてしまって。
 本来の自慢のもっふり毛並みも、しょんぼりへにゃりとなっちゃうから。
「此処デ立派な傘を買いたいデスネ〜」
 ちゃんとしっかり雨が凌げるものをひとつ、買っておきたいところ。
 そんな小鉄の言葉に、ユェーは小さく首を傾けて。
「小鉄さんは普段は葉っぱなのかい? でも風邪を引いてはいけないな」
「こ、小鉄さんもゆぇパパもカゼひかないでね?」
 ルーシーもそう、心配気に紡ぎつつも瞳をぱちくり。
 ということで、風邪を引かないためにも、アンブレラマーケットで楽しい傘選びのはじまりです!
 七結は並ぶ様々な傘をひとつひとつ、見つめてゆきながらも。
「とびきりのひと品を手繰ってみましょうか。皆さんは、如何なるものを選ぶのかしら」
 ……数多の彩を捉えられるかのよう、と。
 皆が選ぶ彩りを楽しみに、己の1本を探して。
「まあ……、まるでお花畑のよう」
 色とりどり、大きさも様々な一面の傘は壮観で――その光景は、色々な花が沢山咲いた花畑みたいで。
 晶硝子は、数多咲いた傘たちへと煌めく視線を巡らせつつも、こてりと小さく首を傾ける。
「わくわくするけれど、迷ってしまう、わ」
 あれもこれもと、うんと悩んでしまいそうで。
 そしてふと、小鉄の目に映ったのは。
「ほほぅ。真っ黒でカッコイイ傘デスネ〜。なんとコウモリ!」
 そう、それは定番中の定番、いわゆる蝙蝠傘というものだけれど。
「ははぁ。この傘ハコウモリでしたカ。ワシらの仲間でせうか」
 きっとこれは、傘のカタチをしたコウモリの妖怪だろうと。
 小鉄が抱くのは、親近感……?
「コウモリカサは妖怪さん……知らなかった」
 彼の言葉に、じいっと蝙蝠傘を見つめつつもぽつりと呟いた、ルーシーの隣で。
 しみじみと傘を眺めつつ紡ぐのは、苺。
「いつも雨の日は部屋の中にいたから。傘、買ったこと無かったなぁ」
「雨の日は、わたしも室内でばかり過ごしていたわ」
 晶硝子も窓の外から見ていた雨の風景や聞こえる音を思い返してみる。
 ……雨音の旋律や、窓から見える雫に濡れた花がきれいで、って。
 そしてルーシーはそんなふたりの話を聞きながら、苺へと瞳を向けて。
「苺はカサ初めて? なら、特別な一本になるわね」
「ふふ、みんなと一緒にお出かけした日の傘があれば、雨の日も楽しくなっちゃいそう……!」
 ――どれにしよっかな~♪
 苺はこくりと頷きながらも、うきうきとはじめての1本との出会いに心躍らせる。
 いや、初めての傘選びは勿論、わくわくするけれど。
「ルーシーも新しいのほしいけど、ステキなのばかり」
 初めてではなくても、とっても楽しいもの。
 ルーシーは色々ないろの傘をぐるりと見回した後。
「でも……うん! これにする」
 ふと伸ばしたその手が取ったのは、雨と晴れの日を一度に楽しめそうな一品。
 開けば広がる青空をぐるりと囲む様に向日葵が咲く傘。
「あ! これがいい!」
 そう同時に苺が手にしたのは、キラキラな彩り。
 カラフルなガーベラが咲いた、ホログラムのビニール傘。
 ぱっと咲かせてみたそれは、透明なのにきらきら虹色に輝いていて。
「私や、みんなみたい……♪」
「君の元気な姿で雨は止んで虹になりますね」
 苺がくるり空に廻らせ架けるのは、ユェーもそう紡ぐような元気な七色纏うもの。
「オレはどれにしよう……」
 さくっと決まったふたりとは違って、あれこれ目移りしていた十雉だけれど。
 迷っていた橙の視線が、ふとある1本を見つける。
 十雉がピンときて手に取った傘――それは、シックな黒い傘。
 いや、外側だけ見れば、夜のような静かな黒なのだけれど。
(「オレンジと紫色のグラデーションに吸い込まれそうだ」)
 ぱっと開けば……その内側に広がるのは、見上げる瞳と似た黄昏色の空。
「十雉くんのは、表は黒でも中身は綺麗」
 ユェーも彼が広げた移ろう黄昏時の小さな空に目を向け、紡ぐ。
 それをさして友達と歩けば、きっと素敵な想い出、と。
 そして小鉄も、気に入った1本を見つける。
「ワシの傘はジャーン! 葉っぱデス!」
 やっぱり、葉っぱ……!?
 いや、葉っぱは葉っぱなのだけれど。
「葉っぱデスが傘デス! 葉っぱの絵デスヨ〜」
 ……いやはやニンゲン様は絵がお上手デスネ〜、なんて。
 感心したように、葉っぱ柄の傘をご満悦に眺めて。
「葉っぱの傘とこてっちゃん……に、似合う」
 勿論、人間の姿をした今の彼にも似合うのだけれど。
 十雉は、普段のもふもふ獣姿な彼の姿も思い浮かべつつ、こう口にするのだった。
 ……森の妖精みたいだね、って。
「僕はこの傘にしましょう」
 そして、ユェーが手にしたのは……何の模様も入っていない、真っ白な傘。
 今は、何も描かれてないのだけれど。
 でもこの傘は、後から何でも描く事が出来るらしいから。
「終わったら皆さんに何か描いてもらいましょうか」
 ――白に皆さんの彩を、と。
 そう笑むユェーと彼の選んだ傘に、ルーシーと十雉も目を向けて。
「パパのは描けるの面白そう! たくさん描いていい?」
「ユェーの傘、何を描くか考えておかないとね」
 みんな色にする、終わってからのお楽しみにも心弾ませる。
 晶硝子も、次々とお気に入りの傘に出逢う皆の様子に笑み宿して。
「鮮やかな植物の彩りも、何にも染まらない黄昏を抱く宵闇も、そして、自由に描けるまっさらな白も……どれも素敵だわ」
(「眺めているだけでも、裡が満たされる」)
 七結はそう、数多の花を行き来する蝶の如く、つい彼方此方へと瞳を移ろわせてしまうけど。
 刹那、細くしなやかな指のさきをふっと伸ばす。
 ……嗚呼、けれど――見ぃ附けた、って。
 そんな七結が手繰り寄せたひと品は。
「館の窓に嵌った色硝子のようでしょう」
 まるでいつも集う彩夜の館を思わせる様な、透けたいろに淡い花々咲く傘。
 七結は広がった小さな世界を見上げ、笑みと共に紡ぐ。
「わたしは、此方にしましょう」
 ……ちょっぴり回顧的な雰囲気があいらしい、って。
「七結ちゃんの傘はまるであの館の様ですね」
「なゆさんのカサはキレイで……ふふ、本当に館の窓みたい」
「七結はキレイな傘デス! 常夜ではキラキラしそうデスネ〜」
 ユェーの言葉に同意するように笑むルーシーの隣で。
 小鉄も館の在る常夜に咲いたその傘の様を思い浮かべてみつつも、ミナさんの傘も素敵デス! と。
 それぞれが選んだ様々な彩の傘に、視線を巡らせれば。
「なゆさんと苺ちゃんとルーシーちゃんの傘、3人並んで歩いたらきっと華やかだろうな」
 十雉も、雨の中に並んで咲いた傘たちを思えば、容易に浮かぶのは華やかな彩り。
 そして迷っていた晶硝子も、ぐるりと見渡した後、そっとその手を伸ばす。
 光の色彩を閉じ込めた、ステンドグラスの傘――そんな慣れ親しんだ色を見つけて。
 それをふわりと広げ、星を宿す瞳にも、煌めき咲く色たちを映しながら。
「雨を楽しむには、すこし、派手かもしれないけれど……空を駆けて、みんなで虹を作れるかしら」
 そう言った彼女とその手に握られた傘を見て、ユェーと十雉は口にする。
「晶硝子ちゃんのステンドグラスの傘は宝石の煌めきの様だ」
「ステンドグラスの傘はすごく晶硝子ちゃんらしいね」
 そしてルーシーも、なるほど、とこくり頷く。
「虹って7色だもの。きっと作れるわ」
 ……楽しみね、って。
 七結はそんな皆を、くるり見回して。
(「新緑の葉に、とりどりのガーベラ。鮮やかなヒマワリ、黄昏を抱く漆黒、七彩の硝子に、真白の傘」)
 そして己が咲かせている、常夜の館のいろをした傘。
 そんな添えられる彩たちに、ふふりと笑んで。
「さあ、購入しましょうか」
 自分の1本にするべく、皆とともに会計へと足を向けて。
「みんなが選んだ傘も素敵! どれもみんな『らしさ』のある傘だね!」
「雨が降ったらミンナで傘ヲさしませう!」
「嗚呼、皆さんの傘を持つ姿は愛らしいでしょうねぇ」
 わくわく七結に続く皆に、ユェーもそう微笑んで。
 今までなら、降ってきたらしょんぼりしちゃっていた雨を、苺はうきうき待ち遠しく思う。
 ――早くこの傘をさして、みんなと飛びたいな……♪ って。
 魔法が掛けられた空に、たくさんの傘のいろを咲かせみんなと翔ける冒険を、楽しみに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
【KOR】
ぜひ傘の新調を

外側が黒、開くと内側に薔薇の花が散りばめられ
黒猫さん達が傘のフチをお散歩しているものを見つけ
わたくし、こちらに致します!

サクラコさまは、まあ、和傘…!お素敵でいらっしゃいます!
お色もサクラコさまのイメージにぴったりでございますね
幽兵さまは…ううーん…(小首傾げて)
…黒、系?はいかがでございましょう?
野球…?赤と白でございましたら
わたくしの衣服の色に似ておりますね

その後はカフェーで一休み
紫のソーダにバニラアイスのものを
サクラコさま、お詳しくていらっしゃるのでございますね
まあ、幽兵さまも、お召し上がりになられます?
アイスを一掬いし
幽兵さま、はい、あーん、なさってくださいませ


花屋敷・幽兵
【KOR】
傘か…新調して野球っぽいのにしようかな。
赤地に白のラインが入ったやつが野球のチームのカラーで鯉のぼりみたいだろう?
おっぱいシスターが何か言っているが黒の傘だと被るから対になる色がいい。
サクラコはイメージカラーのピンクだから似合うじゃないか。俺と勝負するかい。

カッフェーでなんか飲むか。
何ンか健康に悪そうな色のクリームソーダだな…。紫陽花?清史郎みたいな色だな。
紫のソーダも中々凄いな。どんな味だ。
映え…映えってなんだ。振り向かない事か。
俺にはわからん。おとなしくブラックのアイスコーヒーでも飲もう。
二人ともちょっと分けてくれ…あーんする26歳男性。(この辺ハートフルな描写で宜しく)


鏡彌・サクラコ
【KOR】
せっかくですし傘を選んで買いましょう
サクミラまで来たのですもの
おしゃれな傘を選ばなくては
サクラコに似合うのはやはり和傘
桜色の綺麗な蛇の目傘を選びます
ベイメリアさまの傘は黒猫がたくさんいて楽しげですねい
幽兵さまのそれは野球?鯉のぼりっぽいですねい

お買い物の後はみんなで展望カフェへ
紫陽花のクリームソーダ綺麗ですねい
この青色はバタフライピーかしら?紫陽花と同じく色が変わるかもしれません
サクラコもクリームソーダを
色は桜色でお願いしちゃいます
他の食べ物にも目移りしますがどうしましょう
メニューを見ながら真剣に考えます
幽兵さまにはアイスをひと匙珈琲に入れて差し上げます
コーヒーフロートでいす



 梅雨の季節らしい、雨の気配がする空模様だけれど。
 訪れた帝都の百貨店は、買い物を楽しむ人々でとても賑わっていて。
 雨が多いこの時期のお出かけを、億劫なものではなく少しでも楽しいものに、と。
 催されているのは、色も形も様々な傘たちが並び、手にすることができるという『アンブレラマーケット』。
 ということで!
「ぜひ傘の新調を」
「せっかくですし傘を選んで買いましょう」
 そう催事場へと足を運び、共に頷き合うのは、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)と鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)。
 この常桜の世界に赴いたのは、予知された影朧事件の依頼のためではあるのだけれど。
 雨が降り出していない今はまだ、影朧が匿われている場所までの道は現れないということであるし、影朧を匿っている人物を追うためには傘が必要だと聞いたし。
「サクミラまで来たのですもの。おしゃれな傘を選ばなくては」
 傘を選ぶのならば、洒落た一品を買いたい。
 サクラコはそうぐっと気合を入れつつも、沢山並び咲く傘たちをぐるりと早速見回してみて。
 ベイメリアも、気になったものを手にしては、試しに開いてみる。
 そして程なくして、ぱっと広げてみた傘を見上げて紡ぐ。
「わたくし、こちらに致します!」
「ベイメリアさまの傘は黒猫がたくさんいて楽しげですねい」
 ひょこりその声に覗いてみたサクラコは、ベイメリアが手にしている傘を見上げる瞳を細める。
 ベイメリアが決めた傘は、外側は黒の色をしているけれど。
 空に咲かせれば、内側に散りばめられ咲くのは薔薇の花。
 そして薔薇の舞う中、傘のフチをてくてくお散歩しているのは、黒猫さん達。
 それからサクラコも、さほど迷うことなく、1本の傘を手に取る。
「サクラコに似合うのはやはり和傘」
 そう様々な形や種類がある中で選んだのは、蛇の目傘。
 ぱっと広げれば、綺麗な桜色を湛えた、春のような彩りが咲く一品。
「サクラコさまは、まあ、和傘……! お素敵でいらっしゃいます! お色もサクラコさまのイメージにぴったりでございますね」
 ベイメリアも納得の、文句なしに似合う、サクラコにぴったりの傘。
 そして、ふたりと共に催事場にやって来た花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)も。
「傘か……新調して野球っぽいのにしようかな」
 ふと手にしたのは、赤地に白のラインが入った……野球っぽい、傘??
「幽兵さまのそれは野球?」
「野球……? 赤と白でございましたら、わたくしの衣服の色に似ておりますね」
 それのどこに野球要素があるのかと。
 やはり首を傾げるサクラコとベイメリアに、幽兵はこう続ける。
「野球のチームのカラーで鯉のぼりみたいだろう?」
「確かに、鯉のぼりっぽいですねい」
 そんな何だか赤ヘルをかぶりたくなるような、鯉のぼりっぽい色合いの幽兵の傘を見つめて。
「幽兵さまは……ううーん……黒、系? はいかがでございましょう?」
 小首傾げつつ、ベイメリアはそう提案してみるけれど。
「黒の傘だと被るから対になる色がいい」
 全身黒で保護色みたいになりそうだから、むしろ対になるような派手な色を選んでみました。
 そして、サクラコと彼女がさしている蛇の目傘を見て。
「サクラコはイメージカラーのピンクだから似合うじゃないか。俺と勝負するかい」
 何かの謎の勝負を挑む幽兵。
 ちなみに、傘で野球はできませんからね、しないようにね!
 そしてそれぞれ、選んだ傘を購入し終えれば。
「カッフェーでなんか飲むか」
 買い物の後は、みんなで百貨店の最上階にある展望カフェーで一休み。
 そんなカフェーで人気だという、期間限定メニュー。
「紫陽花のクリームソーダ綺麗ですねい」
「何ンか健康に悪そうな色のクリームソーダだな……。紫陽花? 清史郎みたいな色だな」
 そう、紫陽花をおもわせるような、クリームソーダ!
 クリームソーダだけでなく、お品書きに並ぶメニューはどれも、今だけの梅雨仕様。
「この青色はバタフライピーかしら? 紫陽花と同じく色が変わるかもしれません」
「サクラコさま、お詳しくていらっしゃるのでございますね」
 そう感心したように言ったベイメリアが選んだのは、やはり人気だというクリームソーダ。
「紫のソーダにバニラアイスのものを」
「紫のソーダも中々凄いな。どんな味だ」
「サクラコもクリームソーダを。色は桜色でお願いしちゃいます」
 色が選べるというソーダにますます首を傾げる幽兵を後目に、女性陣はそれぞれ、まずはそう決めて。
「他の食べ物にも目移りしますがどうしましょう」
 クリームソーダ以外のものも美味しそうな上に、紫陽花みたいで映えるから。
 サクラコはじいっと引き続き、メニューと真剣に睨めっこ。
 そんなサクラコの様子に、幽兵はぽつりと呟きを落とす。
「映え……映えってなんだ。振り向かない事か」
 もしかしたら、ためらわない事かもしれません。
 けれど結局、俺にはわからん、と。
 幽兵は、おとなしくブラックのアイスコーヒーでも飲もう、と決めたものの。
「二人ともちょっと分けてくれ……」
 注文を済ませ、紫陽花色の映える品々が運ばれてくれば……口をぱかり。
 そんな、あーんする26歳男性にも、ハートフルな感じに。
 サクラコはひょいっと掬ったアイスをひと匙、彼のコーヒーにぽちゃり。
「まあ、幽兵さまも、お召し上がりになられます?」
 ベイメリアも口を開けて待ち構えている幽兵の姿を見て、アイスを一掬いしてから。
「幽兵さま、はい、あーん、なさってくださいませ」
 26歳男子があーんされるという、ちょっぴりシュールな絵面もなんのその。
 とってもハートフルな感じに、多分ぽかぽか心温まるような、甘ーいお裾分けを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【紫桜】

帝都の百貨店
機会が無いと来ないし
憂鬱な雨も何のことはない
きみとの買い物日和だし
色々目移りしちゃいそうだ

折角だし雨の日も
楽しめる傘でも買いに行こっか
マーケットで花の様に咲く傘達の中から
広げては閉じ

透明に鳥籠柄が描かれた珍しい傘を見つけ
彼女の方へ傾け入れる
シャト、つかまえた。って戯れひとつ
ちゃんと囲って逃がしてあげないけど?

巡り乍気になったのは
屹度、きみが持つと似合うかなと選んだ彩
梅雨葵色の番傘を咲かせば
視界に降る桜吹雪

雨が降ってもいつでも桜が観られるから

…受け取って、貰える?
傘を口実にまたきみと
雨の日だって出掛けたいだけ
くるり回る竜胆色に微笑んで
お揃いならもっとわくわくしそうだね


シャト・フランチェスカ
【紫桜】

同感、僕もこういう所は
なかなか来ないかな
どこを見たらいいか判らなくなるよ
結構優柔不断なんだ、僕

傘の祭典とは珍しい
雨の日は景色が灰色になってしまうからね
こんな花を持っていれば
確かに楽しそう

…つかまった
振り向き見上げたきみに
ささやかだけど笑み咲かせ戯れをおかえし
籠の鳥にするのなら
ちゃんとつかまえて、逃がさないでね?

千鶴が持ってるの、綺麗だなって見ていたら
僕に選んでくれた彩だったなんて
勿論、喜んで
雨は桜を散らしてしまうけど
この花ならずっと満開だね

幸菱模様の番傘
シックな蝙蝠傘
実は僕も
きみを想って色々見てみたけれど
お揃いの傘が良いなあ…なんて
竜胆色を開いてくるくる回す

次の雨が楽しみになっちゃうね



 予報や予知通り、見上げる空は生憎の雨模様。
 けれど、足を運んだ帝都の百貨店は、買い物に訪れた人達の活気で溢れているし。
 きょろりと巡らせる宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の紫の視線に咲くのは、楽し気ないろ。
「帝都の百貨店、機会が無いと来ないね」
「同感、僕もこういう所はなかなか来ないかな」
 そう同じ様に周囲を見回すシャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)に、千鶴はそっと向けた瞳を細める。
「きみとの買い物日和だし、色々目移りしちゃいそうだ」
 ……憂鬱な雨も何のことはない、って。
 そんな千鶴に視線と言葉を返しながらも。
「どこを見たらいいか判らなくなるよ」
 ……結構優柔不断なんだ、僕。
 シャトはそう、紫陽花とお揃いの髪を微か躍らせつつも、そわり。
 それからふと、案内を見つけたのは。
「傘の祭典とは珍しい」
「折角だし、雨の日も楽しめる傘でも買いに行こっか」
 今の梅雨の時期だけ催されているという『アンブレラマーケット』へ。
 足を踏み入れれば、色々な形や色をした傘が数多咲き誇っていて。
 千鶴はそんな花の様に咲く傘達の中から、目についたものを広げては閉じ、手にしては咲かせてみて。
「雨の日は景色が灰色になってしまうからね。こんな花を持っていれば、確かに楽しそう」
 代わる代わる千鶴の手が咲かせる傘の花を見つめ、こくりと頷いて見つつも。
 くるりと、並ぶ傘たちを眺めてみれば。
「シャト、つかまえた」
 刹那――ふわり、千鶴に捕獲されるシャト。
「……つかまった」
 振り向き見上げた彼の手には、自分をすぽりと覆った、透明に鳥籠柄が描かれた珍しい傘が。
 けれど、紫陽花色の鳥はただつかまるだけではありません。
 ささやかだけど笑み咲かせ、戯れの囀りをおかえしを。
「籠の鳥にするのなら……ちゃんとつかまえて、逃がさないでね?」
 そんなうたう鳥さんに、悪戯っ子は首を微か傾けて笑み返す。
 ……ちゃんと囲って逃がしてあげないけど? なんて。
 それから、じゃれ合いながらも巡っていれば、ふと千鶴は足を止めて。
 伸ばしたその手が取って咲かせたのは、梅雨葵色の番傘。
 ぱっと開けば、小さな世界にはらりひらり、雨のかわりに舞い降る桜吹雪。
(「千鶴が持ってるの、綺麗だな」)
 そして――そう、自分が咲かせたいろをふと見つめているシャトへと。
「……受け取って、貰える?」
 千鶴は手にした番傘をそっと差し出す。
 だってこれは最初から、きっときみが持つと似合うかなって、選んだ彩だから。
 そんな彼の言葉に、ぱちりと瞬くシャト。
 ……僕に選んでくれた彩だったなんて、って。
 そして、迷わずその手を伸ばす――勿論、喜んで、と。
「雨が降ってもいつでも桜が観られるから」
「雨は桜を散らしてしまうけど。この花ならずっと満開だね」
 そう笑むシャトを見つめ、千鶴が思うのは、こんなナイショの言葉。
 ――傘を口実にまたきみと雨の日だって出掛けたいだけ、って。
 そしてシャトも、これは彼にナイショ。
 幸菱模様の番傘に、シックな蝙蝠傘……実はきみを想って色々見ていたことは。
 ……でも。
「お揃いの傘が良いなあ」
 そうくるくると、開いた竜胆の色を回しておねだりを。
 そんな咲いて回る花に、千鶴も微笑んで。
「お揃いならもっとわくわくしそうだね」
「次の雨が楽しみになっちゃうね」
 お揃いの傘を手に、会計へ。
 だって、どうせずっと満開なら、きみと同じ花を一緒に咲かせたいから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エア・ルフェイム
【赤青】
漁おじさんとおっでかけー!
折角だからお互いに傘えらびっこしよ!

こういうのは直感勝負
ビビッときた子が運命運んでくるんだよネ
ってなわけで…はい、これ!
シックな色合いのネイビーブルーの傘
最大のおすすめポイントは、
この仲良く寄り添う二匹の猫ちゃんです!
え~、なんで?
大人男子でも使いやすいデザインだよ!

てか、えっ。これエアに?
…………
めっっっちゃくちゃかわいー!!
おじさん最高すぎなんだけど!!
二人してねこねこお揃いで、
エア達めっちゃ仲良しこよしだね!

…もー!照れ屋さんなんだから!
でも楽しかったし、素敵な傘も貰っちゃったし!
紫陽花のクリームソーダで許してあーげる!
さっ、早くいこいこ!(手を引き)


夕間暮・漁
【赤青】
(断ると物凄く面倒な)おまさんの頼みじゃからの
迷子にだけは…って誰がおじさんじゃ!

長い溜息

似合う傘ち言われても
…難しいのう
後で「ヤダーダサーイ!」言うて
後悔しても知らんぞ

ぶつくさ言いつつ真剣に

渡された傘しげしげ眺め
…おん、えい色じゃ
おまさん奇天烈じゃが
見る目は間違いないのう

…前言撤回じゃ
儂にこがぁな柄の傘差せと!?

ま…色味は好みじゃし
使ってやらんでもない

ほれ、おまさんのじゃ
バードケージ型の赤い傘
開けば猫顔形の透明な窓つき
ハハ、小屋に入っとるみたいじゃろ

…無反応
お、おい、何か言え
矢張りと思いつつ内心焦り

揃いはたまたまじゃ
たまたま!
だー!わかった!もう何でもえい!

再びの溜息には安堵も含んで



 いつ雨が降り出してもおかしくない、雲に覆われた梅雨空。
 でも普段ならば、ちょっぴり外出することが億劫に思ってしまうような天気だけれど。
 夕間暮・漁(誰そ彼・f05693)が足を運んだのは、帝都にある大きな百貨店。
 そしてちらり、隣を歩くエア・ルフェイム(華焔・f02503)を見つつも紡ぐ。
「……おまさんの頼みじゃからの」
 断ると物凄く面倒な……と言うのは、視線だけで。
 だがそんな漁を後目に、エアの足取りはキャッキャはしゃぐように軽く。
「漁おじさんとおっでかけー!」
「迷子にだけは……って誰がおじさんじゃ!」
「折角だからお互いに傘えらびっこしよ!」
 自分の言うこともお構いなしな彼女の提案に、漁が吐くのは長い溜息。
 そして、沢山の傘が咲き並ぶ催事場に、ふたりやってくれば。
「似合う傘ち言われても……難しいのう」
 ……後で「ヤダーダサーイ!」言うて後悔しても知らんぞ。
 なんて、ぶつくさ言いつつも。何気に真剣に吟味し始める漁。
 そしてエアも、傘を選び……はじめたかと思った、瞬間。
「こういうのは直感勝負。ビビッときた子が運命運んでくるんだよネ」
 ――ってなわけで……はい、これ!
 フィーリングで、さくっともう選んじゃいました!
 そんなエアが差し出すのは、シックな色合いのネイビーブルーの傘。
 漁は渡された傘をしげしげ眺めつつ、ぽつり。
「……おん、えい色じゃ」
 意外にも落ち着いたそのいろを見ながらも、感心したように続ける。
「おまさん奇天烈じゃが、見る目は間違いないのう」
「最大のおすすめポイントは、この仲良く寄り添う二匹の猫ちゃんです!」
「……前言撤回じゃ」
 確かに開いてみればそこには、にゃーんと可愛い二匹の猫ちゃんが。
 ……いや、一瞬だけ感心したものの。
「儂にこがぁな柄の傘差せと!?」
「え~、なんで? 大人男子でも使いやすいデザインだよ!」
 キュートな猫ちゃん柄に物申すも、すぐにそう返されて。
 見つめられ、ずいっと差し出されれば。
「ま……色味は好みじゃし。使ってやらんでもない」
 再び漏れる溜息と同時に言って、シックな色合いの猫ちゃん傘を受け取る漁。
 そして……何気に選んでみた傘を、彼女へと手渡す。
「ほれ、おまさんのじゃ」
「てか、えっ。これエアに?」
 ぱっとそれを開いてみれば、見上げる緑色の瞳が、驚いたようにぱちくり。
 バードケージ型の赤い傘に、にゃあと。
 覗く透明な窓は、猫ちゃん顔のかたち。
「ハハ、小屋に入っとるみたいじゃろ」
 そう漁は言いつつも、ちらっと。
 彼女へと目を遣るのだけれど。
「…………」
 ……無反応。
 ヤダーダサーイ! すらもない、まさかの無反応??
 いつも常に賑やかな彼女なのに、よりによって無反応!?
「お、おい、何か言え」
 ……矢張り、なんて思いつつも。
 内心めっちゃ焦る漁。だって、予想外の無反応。
 言葉も出ないくらい、余程だったのかと……そう心の中で、あせあせ思っていれば。
「めっっっちゃくちゃかわいー!! おじさん最高すぎなんだけど!!」
「……は?」
 きゃーっ! と急に上がったエアの声に、思わずきょとんとしてしまうけれど。
「二人してねこねこお揃いで、エア達めっちゃ仲良しこよしだね!」
「揃いはたまたまじゃ、たまたま!」
 テンション上がりまくる彼女に、再びついた溜息と共に返す漁。
 そんな彼の心の内も露知らず。
「……もー! 照れ屋さんなんだから!」
 エアはそう、むうっと一瞬ぷくりと頬を膨らませるけれど。
 すぐに笑顔をぱっと咲かせると、彼のその手を引く。
「でも楽しかったし、素敵な傘も貰っちゃったし! 紫陽花のクリームソーダで許してあーげる!」
 ……さっ、早くいこいこ! って。
 そんなふいに握られた手に、強引にぐいぐい引っ張られながらも。
「だー! わかった! もう何でもえい!」
 漁はもう一度、深く大きく、はあっと吐くのだった。
 今度は、そっと安堵のいろも含んだ溜息を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
人に紛れて生きる…あの頃、そんな最中ならば。
踏み入る事もあったし。
己で評するのも何だが…楽しむ事もまぁ、上手い具合に出来ていたと思う。
けど…
自分の意思で、自分の足で…一人。
こういう場を訪うというのは、多分初めてでは?
少し、苦笑して。
向かう先は催事場。

外見はシンプルな方がいい。
でも黒はどうにも淋しいから…紺、いや、藍でしょうか?
ありがちですけど、開けば頭上に彩を。
紺青の天から地平へ、薔薇色へのグラデーション、
そして…地平線を浮かび上がらせる、皓
――夜明けを、贈りたくて。

あ、はい。そう…こちらは贈り物用。
自分のとなると…どうにも利便性(=改造してオシゴト用)重視で考えてしまうのは…
悪い癖、ですねぇ



 足を踏み入れたそこは、賑わいをみせる帝都の百貨店。
 いや、訪れること自体は、はじめてではない。
(「人に紛れて生きる……あの頃、そんな最中ならば。踏み入る事もあったし」)
 むしろ人が多い中、やるべきことをさくっとこなしたりとか。
(「己で評するのも何だが……楽しむ事もまぁ、上手い具合に出来ていたと思う」)
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、歩むその足を止めないまま。
 ――けど……と。
 現状を確認するように青の視線を巡らせ、思う。
 今此処に赴いているのは、自分の意思で、自分の足で……一人。
 改めて認識すれば、少し、苦笑してしまう。
(「こういう場を訪うというのは、多分初めてでは?」)
 そんなことを頭の中で巡らせながらも、クロトが向かう先は催事場。
 様々な傘が咲く、アンブレラマーケットへと。
 そして、くるりと視線を巡らせ、探してみる。
 外見はシンプルな方がいい。
「でも黒はどうにも淋しいから……紺、いや、藍でしょうか?」
 そうぽつりと呟きを落としながらも手に取ったのは、1本の宵色の傘。
 ぱっとそれを広げてみれば、頭上の小さな世界にに移ろう彩たち。
 ……ありがちですけど、なんて、クロトが見上げるいろは。
 紺青の天から地平へ、薔薇色へのグラデーション。
 そして……地平線を浮かび上がらせる、皓。
 ――夜明けを、贈りたくて。
 それから声を掛けてきた店員に、こくりとひとつ頷く。
「あ、はい。そう……こちらは贈り物用」
 そして、自分用のものもどうかと勧められ視線巡らせてみれば。
「自分のとなると……どうにも利便性重視で考えてしまうのは……悪い癖、ですねぇ」
 開きやすそうとか軽いとか――改造しやすそうとか、オシゴト用としてどうしても見てしまうことに、再びそっと苦笑してしまうのだった。
 あのひとに贈る夜明けの傘を、大切にそっと受け取りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メノン・メルヴォルド
そわそわ、する
色とりどりの傘を目の前にして、心浮き立つの
どれにしよう、かしら…
和傘風のモダンな柄もステキ

クラゲのようなバードケージ型も可愛いの(ポンッと開き
透明な傘から覗き見る世界
なんだかワクワクしてしまう

でも、これも、好き
差すと青空が広がるのね
柄をくるくる回せば、空も回って
雨の日でも傘の中だけは明るい
ん、これにしよう

新しい1本の傘を手に
そわそわするのは、もうひとつ理由があるの
――この後の約束
来て、くれる、かな?

なんだかワタシ浮かれてるみたい
誰が見ているわけではないけど、ひとりで頬を染め
ぱたぱたと手で顔を扇ぐ

限定の『紫陽花のクリームソーダ』をいただこう
しゅわしゅわソーダで心を落ち着かせるために



 雨の日の外出は億劫だって、そう言う人も少なくはないかもしれないけれど。
 むしろ、雨の日だからこそのおでかけに……そわそわする、と。
 色とりどりの傘を目の前にしたメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)は、わくわくと心浮き立っていて。
「どれにしよう、かしら……」
 和傘風のモダンな柄もステキ、と目移りしつつも。
 ポンッと開いてみたのは、クラゲのようなバードケージ型の傘。
 そんなふわり空に咲いた傘に、可愛いの、と笑み零してから。
 見上げる瞳に映るのは……透明な傘から覗き見る世界。
 なんだか自分だけの小さな世界にワクワクしてしまって。
「でも、これも、好き」
 ――差すと青空が広がるのね、って。
 次に傘を咲かせてみれば、今度は明るい空が広がって。
 くるくると柄を回してみれば、見つめる空もくるりくるり。
 どんより曇った雨の日でも、傘の中だけは明るいから。
「ん、これにしよう」
 メノンはそうこくりと頷いて、会計へ。
 そして出逢った新しい1本を手に、再びそわそわ。
 だって――この後の約束。
(「来て、くれる、かな?」)
 それが嬉しいそわそわの、もうひとつの理由。
 それから、はっと瞳をぱちくりさせて。
 ほうっと息をついてから、両手で頬をそうっと押さえる。
 ――なんだかワタシ浮かれてるみたい、って。
 誰が見ているわけではないのだけど、ひとりで頬を染めて。
 熱を帯びた顔を手で、ぱたぱた。
 そして気を取り直して向かうのは、最上階の展望カフェー。
(「限定の『紫陽花のクリームソーダ』をいただこう」)
 甘くて冷たいしゅわしゅわソーダで、火照った顔やそわそわの心を、落ち着かせるために。
 選んだ明るい空色を、一緒に連れながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『雨彩の世界』

POW   :    ひたすら前へと進んでみる

SPD   :    効率よく進んでみる

WIZ   :    様々な工夫を凝らしつつ進んでみる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 常桜の世界にひとつ、またひとつ咲き始めたのは、傘の花。
 天気予報の通り、雲に覆われた空からぽつりぽつりと降り出した雨。
 雨脚はこれから徐々に強まるようではあるが、今はまだ霧のような小雨。
 星が寄り添うかのように咲く紫陽花の花たちも、天からの恵みの雫を纏って、艶やかさを静かに増している。
 けれど、百貨店で買い物を楽しむ人の中で、雨が降り出したことに気付いているのは極僅か。
 たとえ気付いたとしても、次の瞬間にはもう気にも留めずに買い物を続ける客が殆どであった。
 猟兵達と、そして影朧を匿っているという和花以外は。
 展望カフェーがある最上階から階段を上った先……百貨店の屋上は、展望テラスとして解放されている。
 だが勿論、雨が降り出した今、屋上に人の姿はない。
 けれど、降り出した雨を待ちわびていたかのように。
 紫陽花色の傘を手に、足早に屋上へと向かう和花。
 だって、雨が降り出したら、ようやく架かるのだから。あの人へと会いに行くための道が。
 そしてぱっと、空に傘を咲かせた瞬間。
「博樹さん……今、会いに行きます」
 ふいに吹いた一陣の風がふわり、傘ごと彼女を雨空へと攫ってゆく。

 ふたりが出会ったのは、雨の日の帝都の駅であった。
 傘を忘れて佇んでいる彼女に、傘を差しだしたのが彼であった。
 御礼などいいと、その時は傘を押し付けて走り去った彼だけれど。
 次に偶然出会ったのは、雨の日の図書館。
 その時に彼女が連絡先を強引に聞いて……ふたりは、度々会うようになった。
 紫陽花で満たされた花手水が美しい、雨の日の神社。
 アンティークランプが灯る、窓越しに雨の帝都が臨める古民家カフェー。
 雨と共に桜花弁がはらりと舞い降る、桜並木を一緒に歩いたりもしたし。
 自分達が逢う日は何故かよく雨が降るから……って。
 彼が贈ってくれたのが、この傘だった。
 いや、むしろ、彼女は雨の日が好きだった。
 ふたりでひとつの傘に入れば、照れ屋な彼とも、いつもより距離も近くなれるし。
 雨音を耳に、他愛のないことを話しながらする雨宿りは、とても楽しかったから。
 そして――ふたり別たれたあの日も、雨が降っていた。

 風に乗ってひらり舞う雨空には、沢山の雲の小島。
 そのひとつひとつに、ふたり過ごしてきた雨の日の風景が映し出されていて。
 それを見る度に、彼女の気持ちはより強くなる――早く会いたい、って。
 だから彼女は、眼下に広がる雨の帝都の景色も、雲に浮かぶ思い出の風景も、架かる美しい虹の橋も、ただちらりと見るだけで。
 傘を手に、運んでくれる風へとお願いする。
 一刻も早く――彼の元へと連れて行って、と。


●マスターより
 第2章は、傘を広げて空を飛ぶ冒険です。
 百貨店の屋上で傘を広げると、風に乗って空へと舞い上がります。
 最初は人によってはバランスなど取るのにコツがいるかもしれませんし。
 つかまえた風の気まぐれで、寄り道や遠回りすることもあるかもしれませんが。
 傘を差していれば、最終的には風が影朧の元へと運んでくれるので。
 途中で落ちたり、影朧の元へ辿り着けないというようなことはありません。

 途中、沢山の雲の小島が空には浮かんでいます。
 その花咲く雲の小島に降り立って、雨宿りや休憩などもできます。
 雲の小島には『誰かの記憶にある、雨の日の風景』が映し出されています。
 自分のものでも同行者のものでも、複数人共通の思い出の景色でも構いません。
 断章に記載されている和花のものでも、誰のものかわからないものでもOKです。
 とにかく、雨の日の景色でしたら、どんなものでもどの世界のものでもOKです。
 ただし、それはあくまで幻であり、そこには皆様以外の人の姿はありません。
 少し休憩しつつも、他愛のない話や雨の日の思い出話をしたり。
 傘を一旦閉じて、ゆっくり雨宿りしたり。
 また、雲には構わずに、ひたすら雨空を飛ぶことを楽しんで進むのも勿論OK。
 帝都の景色を眼下に臨みながら、風に乗って楽しく空の旅を楽しむ感じでも。
 キャッキャ楽しくでも、しっとり静かにでも、おそるおそるそうっとでも。
 わくわくどきどきでもお好きな様に、傘で飛ぶ空の冒険を自由に楽しんで下さい。

 傘は、第1章で買ったものでも、持参したものでも、構いません。
 ひとり1本は勿論、二人でひとつだったり。
 複数人でひとつでも、持てていれば可能です。
 手を繋いで、などでも構いません。
 和花との接触は第2章ではまだできず、何か声を掛けるならば第3章になります。
 その他に関しましては、OPやOP公開時のマスターコメントをご確認ください。
 送信締切等の連絡事項も、MS個別ページやタグ、Twitter等でお知らせ致します。
フリル・インレアン
ふぇぇ、どうにか迷子放送は阻止して、水色の傘を買うことができましたけど、傘で空を飛ぶって本気ですか?
空を飛んでいて急に落ちたり・・・
って、アヒルさん勝手に傘を広げないでください。
ふえ?目をつぶってないで前を見ろって
ふわぁ、私空を飛んでいるんですね。
すごいです、すごいですよ、アヒルさん。
そういえば、アヒルさんは自分の翼で飛べるのに、どうして私の側にいてくれるのですか?
ふえ?私が落ちそうになったら突くためって、そんな私はおっちょこちょいじゃ・・・。
ふええええぇ・・・。



 ただでさえ広い百貨店に、沢山の買い物客。
 その間を分け入って、アンブレラマーケットに辿り着いたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、どうにか免れる。いまにも迷子センターへと向かいそうになっていたアヒルさんが、迷子放送をお願いしに行くことに。
 そして何とか買うことができたのは、手にしている水色の傘。
 予知通り雨が降ってきたのを確認して、フリルはアヒルさんと共に屋上へと足を運んで。
 ふと前を見れば、恐らくこの依頼の鍵を握る女性・和花の姿が。
 けれど傘を広げた刹那、ふわりと舞い上がって翔けていったその姿に、フリルは思わず瞳を見開く。
「傘で空を飛ぶって本気ですか?」
 空を飛んでいて急に落ちたり……なんて、おどおどきょろりとしてしまうけれど。
 そんな呟きと同時に、ふわっと突然浮かび上がる身体。
「って、アヒルさん勝手に傘を広げないでください」
 アヒルさんがぽちっと、水色の傘が開くボタンを押したから。
 そして開いた傘が風をつかまえれば、フリルとアヒルさんを待っているのは雨空の冒険。
 でもやっぱり怖くて、思わずぎゅうっと目を瞑ってしまうフリルだけれど。
「ふえ? 目をつぶってないで前を見ろって」
 アヒルさんにそう言われ、おそるおそる瞳を開いてみれば……ぱあっと開けるのは、空から臨む雨の帝都の絶景。
「ふわぁ、私空を飛んでいるんですね。すごいです、すごいですよ、アヒルさん」
 さっきまでは少し怖かったけれど、それも吹き飛ぶほどの空からの風景。
 雨に濡れしっとり艶やかで、幻朧桜と紫陽花と傘の花がその景色に彩りを添えていて。
 思わず魅入ってしまいそう……になりつつも。
 ふとフリルは、生じたこんな疑問をアヒルさんに訊ねてみる。
「そういえば、アヒルさんは自分の翼で飛べるのに、どうして私の側にいてくれるのですか?」
 それから返ってきた答えに、瞳をぱちくり。
「ふえ? 私が落ちそうになったら突くためって、そんな私はおっちょこちょいじゃ……」
 その時――絶妙のタイミングで、悪戯な風がぶわっと吹いて。
 ぐんとスピードを増せば、フリルは慌てて水色の傘とアヒルさんををぎゅうっと握りしめる。
 ふええええぇ……と思わず声を上げながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

外国の小説に傘で飛んでやってきた家政婦がいたと聞くが・・・本当に傘で飛ぶ日が来るとは。奏は瞬が見てくれるし、お気に入りの紫の傘を広げて空中散歩といくか。

まあ、迷子にならないよう三人離れ過ぎないようにね。長い間飛ぶと疲れるから小島で一休み。そこには紫陽花園で家族で楽しんでいる風景が写し出されて目を細める。懐かしいねえ。

空を飛ぶのは慣れてるが、流石に雨の中は経験ないねえ。子供達がうっかり風に吹かれて飛んでいかないよう注意しながら飛ぼうか。目指すは王子様の元へ急ぐお姫様の元だ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

件の方は傘で飛んで行ってしまいましたか。傘で飛んで追いかけるんですか!!凄くワクワクします!!お気に入りのピンクの傘を広げて、と。さあ、空へ!!

空飛ぶのは慣れてるんですが、うっかりを防ぐ為、兄さんと手繋いで飛びます。えへへ、嬉しいな。

小島で一休みしてれば、家族で紫陽花園にいった思い出が映し出されます。ああ、あの時も楽しかったですねえ。

一休みしたら再び空の旅へ。うっかり風で手を離して瞬兄さんに掴まえてもらったり。色々ありますが、目指す場所に向かっていざ、です!!ああ、楽しいなあ。


神城・瞬
【真宮家】で参加

傘で飛んで行ってしまったなら同じ方法で追いかけるのが道理ですね。自前の青い傘を広げて、と。奏、ただでさえどこかに行ってしまう危うさがありますので、手繋いで行きましょう。心配ですし。

母さんの提案にしたがい、小島で一休みすれば、家族で紫陽花園で楽しんだ思い出が映し出されます。あの時は楽しかったですね。

飛ぶのに夢中になる余り、風に乗って飛んで行ってしまう奏を慌てて掴まえたり、色々ありますが、折角の空の旅、存分に楽しみますかね。さあ、目的地はもう少しです。



 屋上へと続く階段を上り切れば、見上げた空から降る雨。
 それはまだ霧の様な、小雨であったけれど。
 そっと後を追っていた彼女・和花の傘が空に花開いた刹那。
 その姿は雨空へとふわり浮かび上がり、吸い込まれるように翔けてゆく。
 そんな様子を目で追いながらも。
「件の方は傘で飛んで行ってしまいましたか」
 言った真宮・奏(絢爛の星・f03210)の声に、神城・瞬(清光の月・f06558)は頷いて。
「傘で飛んで行ってしまったなら同じ方法で追いかけるのが道理ですね」
「傘で飛んで追いかけるんですか!! 凄くワクワクします!!」
 ――さあ、空へ!!
 自前の青い傘とお気に入りのピンクの傘が同時にぱっと開けば、ふわっと感じる不思議な浮遊感。
 そしておもむろに、瞬はその手を伸ばして。
「奏、ただでさえどこかに行ってしまう危うさがありますので、手繋いで行きましょう」
 ……心配ですし、と。
 そっと掴まえるのは、奏の手。
 空飛ぶことには慣れているのだけれど、でもうっかりを防ぐ為にしっかりと手を繋いで。
 ふたり並んで、空の冒険へ。
 奏はピンクの傘の合間からそっと瞬を見つめて。
 ひやりと感じる霧雨の中、あたたかさが伝わるその手を握りしめ、瞳を細める。
 ……えへへ、嬉しいな、って。
「外国の小説に傘で飛んでやってきた家政婦がいたと聞くが……本当に傘で飛ぶ日が来るとは」
 それは、物語の中だけのことかと思っていたけれど。
(「奏は瞬が見てくれるし、空中散歩といくか」)
 子供達の様子を見ながらも、真宮・響(赫灼の炎・f00434)が広げるのは、お気に入りの紫の傘。
 そしてふたりを見守るように、響も傘を片手に空へと舞い上がる。
 家族みんなで、紫陽花のような傘の花を咲かせながら。
 手にした傘で風をつかまえて、ふうわりふわり。
 眼下には、幻朧桜や紫陽花、そして何より沢山の傘が咲き誇る帝都の景色。
 そんな、いつまでも眺めていられる空からの絶景を、ずっと見るのも良いのだけれど。
(「まあ、迷子にならないよう三人離れ過ぎないようにね」)
 響は仲良く手を繋いで飛ぶ奏と瞬に、こう声を掛ける。
「長い間飛ぶと疲れるから、小島で一休みしようか」
 それから、目の前の雲の小島にぽすんっと降り立てば。
 ぱあっと刹那、咲き乱れるのは……紫陽花の花。
 そんな紫陽花に満ちた景色は、3人にとって見覚えのあるもの。
「懐かしいねえ」
「あの時は楽しかったですね」
 目を細め言った響の言葉に、瞬もそう続けて。
「ああ、あの時も楽しかったですねえ」
 奏もぐるりと周囲を見回し、雨に濡れてより艶やかな色を讃えるその花たちを、見つめる瞳にも咲かせる。
 そう……映し出されている雨の風景は、家族で紫陽花園に赴いた時の思い出。
 それは懐かしく、とても楽しんだ雨の日のひととき。
 またあの時と同じ景色を眺めながら、雲の小島で一休みを。
 そんな思い出の風景も名残惜しくはあるけれど……3人は再び、傘の花を開いて。
 紫陽花咲く雲の小島から、雨空へと飛び立つ。
「空を飛ぶのは慣れてるが、流石に雨の中は経験ないねえ」
 手に握る傘で雨は凌げるし、風任せにしていれば問題はなさそうだけれど。
 響は改めて、雨がはらりと降る中のちょっぴり珍しい空の散歩を楽しみつつも。
(「子供達がうっかり風に吹かれて飛んでいかないよう注意しながら飛ぼうか」)
 そうふと、ふたり手を繋いでいる奏と瞬へと目を向けた……その時だった。
「! あっ」
「……!」
 びゅうっと気紛れな風が吹いた瞬間、うっかり握っていた手が離れてしまって。
 飛ぶのに夢中になる余り、違う方向に飛んで行ってしまいそうになる奏だけれど。
 咄嗟にぐんと伸ばした手で、瞬は慌てて再び彼女を掴まえて。
 事なきを得れば、3人でそっと、ほっと安堵の溜息を。
 そんな、ハラハラドキドキな空の冒険だけれど。
(「色々ありますが、折角の空の旅、存分に楽しみますかね」)
 瞬は奏と手をしっかりと手を繋ぎながら、雨空を楽しむべく上手に傘で風をキャッチして。
「さあ、目的地はもう少しです」
「色々ありますが、目指す場所に向かっていざ、です!!」
 奏もピンクの傘を手に、瞬と並んで空を征きながら、ぱっと笑みを咲かせる。
 ……ああ、楽しいなあ、って。
 そんな色々あるけれど、でも何よりも楽しそうな子供達の様子を響は再び見守りながらも。
 空中散歩にもすっかり慣れたように紫色の傘を傾け、空を征く速度を上げる。
 ――目指すは王子様の元へ急ぐお姫様の元だ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
傘で空を飛ぶ…ええと、スカート姿はまずいわ。
何とか問題ないように服装の準備をしてから空の旅に出ましょう。

…落ちないわよね?
いざとなったらキャバリアで飛べばいいかしら。

ちょっと不安を抱えながらふわりふわりとのんびり空の旅よ。
あまりびしょ濡れにはなりたくないから、雨が強くなったら小島で休憩。

私、基本屋内にいたことが多いから雨の風景って記憶にないのよね。
他の人の記憶を除くのもちょっと避けたいからその辺は素通りしましょう。

さて、影朧はどこかしら?



 ふと百貨店の窓から外を見遣れば、いつの間にか雨が降り出していて。
 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は予知で聞いた通り、屋上の展望テラスへと向かおうとするけれど。
 ふと、これから身を投じる冒険の内容を思い返し、寄り道を。
(「傘で空を飛ぶ……ええと、スカート姿はまずいわ」)
 きっと地上からは、自分が空を飛ぶ姿は見えないだろうけれど。
 風に乗ってふわり空を飛ぶことを思えば、何とか問題ないようにと服装の準備をして。
 対策し心配事もなくなれば、いざ空の旅へ!
 先に何人か、猟兵だろう人たちが空へと舞い上がってゆく様子を見つつも。
「……落ちないわよね?」
 思わずぽつりと零す呟きに滲むのは、空を飛ぶことへの不安。
 けれど……いざとなったらキャバリアで飛べばいいかしら、なんて思い直して。
 ちょっぴり不安を抱えながらも、ぱっと傘の花を開けば。
 瞬間、ふわっと浮き上がるヴィオレッタの身体。
 そして手にした傘が、風をつかまえれば……ふわりふわり。
 のんびりと雨空の旅を。
 けれど、いくら霧のような小雨で、傘もさしているとはいえ。
 少しだけ雨脚が強くなった気がして、すとんとヴィオレッタが降り立ったのは、すぐ近くに浮いていた雲の小島。
 あまりびしょ濡れにはなりたくないから、と小島でひとやすみすることに。
 そんなもふもふした雲の上に映し出されるのは、雨の中に楚々と咲く紫陽花の風景。
 けれどそんな景色からヴィオレッタは視線を逸らし、スタスタと素通りする。
「私、基本屋内にいたことが多いから雨の風景って記憶にないのよね」
 これは自分が見たものなのか、誰か別の人が思い描いた雨の風景なのか、それも確認すらせずに。
 だって、自分の中に雨の記憶なんてものもさほどないし、他の人の記憶を覗くのもちょっと避けたいから。
 だから、雲の小島の幻惑にではなく。
 雨空の下に広がる帝都へと、ヴィオレッタは藍と紫のふたつの色を湛える瞳を向ける。
 少しだけ小島で雨宿りをしつつ、雨露をさっと払いながら。
 ――さて、影朧はどこかしら? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

満月・双葉
【虹星】
アドリブ歓迎

そう言えば師匠は傘買わなかったけど…もう手をつなぐ年でもないし等と考えているときに肩に担がれ
僕…荷物違う!
思春期で女の子であることも意識し始めて、女の子扱いされないことにプンスカ

暴れていると島に降りてしまい
燃え落ちた屋敷にあの女性の遺体と焦げ臭い師匠
思わず抱えていた本人を見上げると無表情にそれを眺めていて
なるほどこれが件の思い出の再現かと感心し
敵さんもいい趣味してるなと呆れつつ
この程度でこの人の覚悟は折れたりしない

『貴方が恨みを背負って生きると決めたなら、僕はそれに付き合いますよ』
だから遠慮なく僕も貴方を赦さない
貴方を呪っている僕に、それでも寿命まで生きろと思えますか


ミカエル・アレクセイ
【虹星】
アドリブ歓迎

別々にさしてはぐれたらいけないし、傘は俺が持って双葉は………担ぐでいいか
ガキじゃあるまいし手を繋ぐのもな
うるせぇ馬鹿弟子、俺に女扱いされてなんか嬉しいのかよ

暴れて落としそうなので途中で休憩して担ぎ直すつもりで降りれば見えたものに、そうか、あの火を消したのは雨だったかと

慕っているものも大勢いた
彼女が苦しみの連鎖の中に堕ちたのは元といえば俺がいたらなかったから
誰も許すな、恨みを背負って生きていくと

『面倒くせぇな…弟子が師に気を使うんじゃねえ』
恨みを一億背負ったところで大したことねぇから、お前はお前の人生を好きに生きていけ
俺は俺でやりたいように生きるだけだ

そうして弟子を担ぎ直す



 それほどまだ雨脚は強くはないが。
 展望カフェーから眺めていた景色は、すっかり窓を伝う雨粒たちに遮られてしまったから。
 休憩を終え、屋上へと赴いた満月・双葉(時に紡がれた人喰星・f01681)はふと思い返す。
 家具は勿論、共に百貨店を巡った師匠は、本当に何ひとつ買わなかったことに。
 双葉も色々見て回ったけれど、特に欲しいものがなかったので、人の事は言えないが。
(「そう言えば師匠は傘買わなかったけど……」)
 何とか、今空へと開かんとしている番傘だけは買ったのだ。
 だってこれから先へと進むために、それは必要だと言われていたものであるから。
 いや、ひとつあれば先へと征くのは可能なようであるが。
 双葉はちらりと何気に師匠……ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)を見遣りつつも考えを巡らせる。
 同じ傘にふたりで入れば、傘がひとつでも事足りる。事足りる、のだけれど。
(「……もう手をつなぐ年でもないし」)
 そう思っていれば――ひょいっと。
 傘を開く前なのに、浮き上がる双葉の身体。
(「別々にさしてはぐれたらいけないし、傘は俺が持って双葉は………担ぐでいいか」)
 所謂、お姫様抱っこ? それとも縦抱き??
 いいえ、まるで米俵かのように、無造作に愛弟子を肩に担いだミカエル。
「僕……荷物違う!」
 双葉は一瞬瞳を見開くも、そうプンスカ抗議しつつジタバタ。
 だって、思春期の女の子……それを意識し始めている彼女にとって、女の子扱いされないことが少々心外で不服なのである。
「うるせぇ馬鹿弟子、俺に女扱いされてなんか嬉しいのかよ」
 一方……ガキじゃあるまいし手を繋ぐのもな、と。
 彼が取った選択がこれであったわけであるが。
 いまだ抵抗してバタバタしている愛弟子にも構わずに、ミカエルは彼女を抱えている方とは逆の手でぱっと咲かせる。
 風をつかまえるために雨空へと、先程双葉が買った番傘を。
 そしてふわりと浮かび上がり、絶景を望みながらの空中散歩……と行きたいところだが。
「だから、僕は荷物じゃ……!」
「おい、少しは大人しくしろ。アホ毛ひっこ抜くぞ、馬鹿弟子」
 やはりまだ激しく手足をバタつかせる双葉。
 そんな暴れる弟子を落としそうだと、ミカエルは休憩しつつ担ぎ直すべく……すとん、と。
 眼前に漂う雲の小島のひとつに降り立って。
 いざ、彼女の身体を抱え直そうとした……瞬間だった。
 ぴたりと一瞬、動きが止まってしまって。
 それから見えたものに、思うのだった――そうか、あの火を消したのは雨だったか、と。
(「慕っているものも大勢いた。彼女が苦しみの連鎖の中に堕ちたのは元といえば俺がいたらなかったから」)
 ……誰も許すな、恨みを背負って生きていく、と。
 そんな雲の上に映し出される雨の記憶は勿論、双葉の瞳にも映っていた。
 燃え落ちた屋敷に、あの女性の遺体と焦げ臭い師匠――。
 そして双葉は察する。
(「なるほどこれが件の思い出の再現か」)
 思わず見上げた先……抱えていた本人が、無表情にそれを眺めているのを見て。
 同時に、敵さんもいい趣味してるなと呆れつつも、彼をじっと見遣り思う。
 ――この程度でこの人の覚悟は折れたりしない、って。
 先程、彼は自分に言った。
 出来るだけ寿命で死んでくれ、と。お前も俺を置いて逝くのは当たり前のことだと。
 お前の人生はお前だけのもんだから、お前の好きにしろ……と。
 そしてその覚悟がわかっているからこそ、双葉は彼へとこう告げるのだ。
「貴方が恨みを背負って生きると決めたなら、僕はそれに付き合いますよ」
 ……だから遠慮なく僕も貴方を赦さない、と。
「貴方を呪っている僕に、それでも寿命まで生きろと思えますか」
 そう肩の上で紡ぐ彼女に、ミカエルはひとつ息を落としつつも、やはりこう返す。
「面倒くせぇな……弟子が師に気を使うんじゃねえ」
 ……恨みを一億背負ったところで大したことねぇから、お前はお前の人生を好きに生きていけ、と。
 それから、改めて弟子を担ぎ直しながらも続ける。
 ――俺は俺でやりたいように生きるだけだ、と。
 あの火を消した雨を遮るかの様に、火の消えた焼け跡を視線に入れないかの様に。
 再び番傘を、雨空へと咲かせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

眞白乃守・とかげ
アドリブ連携歓迎


和花どのといったか、彼女はもう行かれたようだな……。
傘だけが頼りのこの通い路に、何の疑いもなく身を任せるあたり
相手の影朧をよほど信頼しているのか、好いているのか……。

……(私もいつかは、そんな感情を抱く相手に出会えるのだろうか?)

先程購入した傘を開き(お気に入りのかわいいワンポイントの猫さんにうむと頷き)飛び立とう。
思っていたよりも安定感はあるが、それより風景がすごいな!街とはこんなにも広く、どこまでもひしめき合っているものなのか。信じられん……。
雨でなければもっと楽しい道行になるのでは、などと思うのはきっと野暮なことなのだろうな。
私も今ひと時、この雨の光景を楽しむこととしよう



 傘で空を飛ぶ、そう聞けば、まるで物語の一幕かのようにロマンティックなものに聞こえるけれど。
「和花どのといったか、彼女はもう行かれたようだな……」
 ぽつりぽつりと降り出した雨を合図に、屋上へと赴いた眞白乃守・とかげ(火蜥蜴は果ての森を旅立つ・f33630)は。
 雨空に咲いて遠ざかってゆく傘の花を見上げつつも、ふと思う。
(「傘だけが頼りのこの通い路に、何の疑いもなく身を任せるあたり……相手の影朧をよほど信頼しているのか、好いているのか……」)
 実際に、手にした傘で空を飛ぶ、なんてことになれば。
 真っ逆さまに落ちやしないだろうかなどと不安が過ぎって、腰が引けたっておかしくないのに。
 若い娘が、何の躊躇もなく吹く風に……空に路を架ける影朧に、その身を委ねる。
 それは相手を心から信頼して、不安よりももっと大きな気持ちが、そこにはあるからこそだと思うし。
「…………」
 とかげは言葉を切り、霧のような雨がはらりと降る天を仰ぐ。
 ――私もいつかは、そんな感情を抱く相手に出会えるのだろうか?
 なんて……そんなことを、思いながら。
 それから、パッと雨空に咲かせるのは、先程購入した傘。
 それから、うむ、とひとつ満足気に頷いて。
 お気に入りのかわいいワンポイントの猫さんを見上げ、猫さんと一緒に、ふわりと空へと飛び立つ。
 風をつかまえて空を飛ぶ、それは思っていたよりも安定感があって。
(「それより風景がすごいな! 街とはこんなにも広く、どこまでもひしめき合っているものなのか」)
 ぐるりと、眼下の帝都へと瞳巡らせてみれば。
 信じられん……、と思わず落ちる言の葉。
 深い森の大きな木の上も、確かに高いのだけれど。
 緑あふれるその景色とは全く異なる、見たことがない帝都の風景。
(「雨でなければもっと楽しい道行になるのでは、などと思うのはきっと野暮なことなのだろうな」)
 とかげはそう、上手に猫さん傘で風をつかまえつつ、燃える炎の如きくせ毛を雨空に靡かせながらも。
 物珍し気にもう一度、くるりと黄金の瞳を巡らせてみる。
 ――私も今ひと時、この雨の光景を楽しむこととしよう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕間暮・漁
【赤青】
そん傘よっぽど気に入ったかえ
ほーん…天才か…えい響きじゃ…
むず痒いが悪い心地はせん

ふふふ儂は最初からぜーんぶ分かっとった
おまさんの好みなんぞ筒抜k

こらぁ!勝手に行くなや!

(飛ぶ用に持参していた折畳傘を思い)
…仕方ない
猫が寄り添う傘を開く

しっかし
こがぁな傘で風の旅らぁてメルヘン過ぎんかえ
2匹の猫を恨めしく眺めていると
いつしか雲の島

…雨、か
濡れるのも厭わず傘下ろし
ああ、鬱陶しいのう

世界から色が薄れ
雨音が遠くなり
取り残されていくような

儂は、また…

手を掴まれ吃驚するも振り払いはせず
ッ、おまさんはいっつも急すぎるんじゃ!

母ちゃんみたいなこと言いよって
確かにエアが居れば
退屈せんで済みそうじゃがの!


エア・ルフェイム
【赤青】
うーん。やっぱりこの子(傘)めっちゃ可愛いネ!
おじさんもしかして天才だったのでは??

…でも何か少し悔しいので
自慢げなおじさん置いて、傘を開いてお空へぴょん
ほら早くー!
エアのチョイスも最高だってところみせて!

足元ふわふわで不思議なカンジ
タンポポの綿毛ってこんな気分カナー
ねぇねぇどう思う?
って、あれ?

気がつけば小島の中
しとしと降る雨。静かで、寂しい色した景色
そっか、記憶。―でも、誰の?

……おじさんっ!
ぼんやり佇んでた漁の手をしっかり掴んで
そのままばびゅんと島抜け、空へ

大丈夫、大丈夫
エアちゃんが一緒にいるからネー!

だからそんな迷子みたいな
泣きそな顔しないでよ
いつもみたいに、ほら、笑って?



 紫陽花のクリームソーダもしゅわり、美味しくて満足したのだけれど。
 エア・ルフェイム(華焔・f02503)は、まるでもう空を飛びそうなくらい軽い足取りで、屋上への階段を上がりながらわくそわ。
「うーん。やっぱりこの子、めっちゃ可愛いネ!」
 早く、大のお気に入りになったこの子……つい先程、夕間暮・漁(誰そ彼・f05693)と選び合いっこした、めっっっちゃくちゃ可愛い傘を使いたくて。
 そして、そんなるんるんな彼女の様子をちらり見遣って。
「そん傘よっぽど気に入ったかえ」
「おじさんもしかして天才だったのでは??」
 返る言葉に、ぼそりと呟きを落とす漁。
「ほーん……天才か……えい響きじゃ……」
 褒められまくってむず痒いけれど、自分が贈った傘にすごく喜んでいるようであるし。
 何より……悪い心地はせん、と。
 そう満更でもない表情を浮かべる漁であるけれど。
 そんなちょっぴり得意げな彼の様子をちらりと見てから。
「ふふふ儂は最初からぜーんぶ分かっとった。おまさんの好みなんぞ筒抜……」
「ほら、おじさんも早くー!」
「こらぁ! 勝手に行くなや!」
 傘をぱっと開いたエアは、自慢げな彼を置いて、お空へぴょん。
 広げたバードゲージの猫さん窓の赤い傘は、やっぱりとーっても可愛いけれど……でも何か少し、悔しかったから。
「エアのチョイスも最高だってところみせて!」
 風をつかまえながら、そう雨空から声を。
 そんな勝手に空へと飛び立った彼女を見上げた後、漁はふと飛ぶ用に持参していた折畳傘を思うけれど。
「……仕方ない」
 ひやり霧のような雨が降る空へと広げたのは――仲良く二匹の猫ちゃんが寄り添う、彼女が選んだ傘。
 そしてふわり、エアを追って空へと舞い上がるも。
「しっかし、こがぁな傘で風の旅らぁてメルヘン過ぎんかえ」
 ちらり恨めし気に見上げる視線の先にはやっぱり、にゃあと可愛い猫さんたち。
 そんなぶつぶつ呟く漁を振り返って。
「足元ふわふわで不思議なカンジ。タンポポの綿毛ってこんな気分カナー」
 ……ねぇねぇどう思う? なんて聞き返そうとした、瞬間。
「って、あれ?」
 ――ぽふりっ。
 エアは思わず瞳をぱちくり。
 気がつけば、雲の小島の中にいたのだから。
 それは、2匹の猫を眺めていた漁も同じで。
 いつしかふたりは、雲の島に降り立っていた。
 しとしとと、静かで、寂しい色した――雨の景色の中に。
 そんな景色にきょとりと瞳を巡らせた後、エアはふと聞いた話を思い出す。
(「そっか、記憶。――でも、誰の?」)
 雨空に浮かぶ雲の小島に映し出されるのは、雨の日の誰かの記憶だという。
 そしてこの風景に、エアは見覚えがなかったから。
 こてりと首を傾けた、その時だった。
「……雨、か」
 不意に雨のようにぽつりと落とされたのは、漁の声。
 そして差されていた傘がふと下ろされる。濡れるのも厭わぬように。
 ――ああ、鬱陶しいのう、と。
 刹那、薄れてゆく世界のいろ。耳に聞こえていた雨音も、遠くなって。
 そう、それはまるで……取り残されていくような。
 そして雨の中佇む彼から零れ落ちるのは、
「儂は、また……」
 あの時や、あの時みたいに、また自分は置いて――
「……おじさんっ!」
 瞬間、ハッと顔をあげれば、失われかけていたいろが眼前に戻って来て。
 ぼんやり佇んでいた掌に感じるのは、しっかりと掴まれた手の感触と温もり。
 エアは漁の手を掴んで、そしてそのまま、ばびゅんと島抜けて再び空へ。
 漁は思わず掴まれたその手に吃驚するも、振り払うことはせずに、彼女へと目を遣れば。
「大丈夫、大丈夫。エアちゃんが一緒にいるからネー!」
「ッ、おまさんはいっつも急すぎるんじゃ!」
 いつもの調子で紡がれた言の葉に、エアは笑みと共に返す。
「だからそんな迷子みたいな、泣きそな顔しないでよ」
 ――いつもみたいに、ほら、笑って? って。
 ひとり、置いていくわけなんてない。
 だって自分達は、二人してねこねこお揃いの、めっちゃ仲良しこよしなのだから。
「母ちゃんみたいなこと言いよって」
 そんなエアの言葉に漁はそう、ふっと溜め息をついてみせてから。
 ねこねこな傘を再び雨空へと咲かせ、いつも通り瞳を細めて続ける。
 ――確かにエアが居れば、退屈せんで済みそうじゃがの! って。
 迷子にならないようにふたり、その手を握ったまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
先程買った傘を広げて空へ
夜色の空に舞う花を描いた洋傘
落ち着いた色合いと小さく飾られた花が愛らしい

帝都の景色を見下ろし、普段は見られない美しさに目を見張る
吹く風も流れに乗れば、それも楽しい

楽しんでいると傘を握っていない手を握られる
……倫太郎?
どうしたのかと尋ねようとする前に相手の言葉に察して
はい、では一緒に入りましょう
しっかり掴まっていてくださいね?

一つの傘に二人で入って景色を楽しむ

雲の小島に見えた紫陽花と花菖蒲、蛍
……倫太郎も気付きましたか?あれから、もう二年です
時の流れは早いものですが考え方も在り方も変わるものですね
それから……貴方との関係も
しみじみと今の幸せを噛み締め、次へと向かう


篝・倫太郎
【華禱】
買ったばかりの
内側に星が散りばめられ天の川の掛かった洋傘を広げ
手を繋がずに空へ

なんか、変な感じ……(空いた手をわきわき)
気を付けないとはぐれそう

なんて言ってた端から
風に攫われそうになるものだから
無意識に手を伸ばして夜彦の手を摑まえて
ほっと一息

あぁ、もう!傘邪魔!
夜彦、あんたの傘に入れて?

返事を聞く前に傘を閉じ
夜彦の腕にぎゅっと縋って風任せ

雲の小島に紫陽花と花菖蒲、そして蛍を見つける

夜彦、あれ……あんたと最初に見た夜祭の紫陽花……
その先に綺麗な主と夜彦が姿を模した彼の幻想を観た、あの紫陽花
そう思えば自然と夜彦を見遣る

けど、あの時のような苦渋は一切なく
それに安堵して、小島を見送り先へ――



 綺麗だったり、可愛かったり、美味しかったり。
 やっぱりふたりで一緒に、そんな紫陽花咲くカフェーでのひとときを存分に堪能してから。
 雨が降り出したのを確認して、屋上へと足を運んだ篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、雨空に一瞬にして架ける。
 開いた洋傘に広がる小さな夜空に、星が散りばめられた天の川を。
 そして月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も、彼と揃いの広げた夜色に咲かせる。
 はらりひらりと舞う、小さな花たちを。
 そんな落ち着いた色合いと小さく飾られた花たちの愛らしさを見上げ、夜彦は翡翠の瞳を細めた後。
 倫太郎と同時に風をつかまえて、それぞれ雨空へとふわり舞い上がる。
 けれど、倫太郎は何処か落ち着かず、そわそわ。
(「なんか、変な感じ……」)
 ……気を付けないとはぐれそう、と。
 琥珀の視線を彼に向けつつも、空いた手を所在なさげにわきわき。
 そんなちょっぴりそわりとしている倫太郎に見つめられつつも、夜彦は思わず目を見張る。
 眼下に広がるのは、桜と紫陽花と傘の花が咲き誇る、雨で艶やかさの増した帝都の風景。
 そんな帝都はまさに絶景、見下ろせば、普段は見られない美しさで。
 吹く風をしっかりとつかまえて風の流れに乗れば、それもわくわく楽しくて。
 興味津々、キラキラ翡翠の瞳を巡らせていたのだけれど。
 ぶわりとちょっぴり悪戯するかのように強めに吹いたのは、一陣の風。
 それからふいに感じた熱に、空の旅を楽しんでいた夜彦は彼へと視線を移す。
「……倫太郎?」
 無意識に伸ばされた倫太郎の手に、掴まえられて。
 そしてほっと一息ついた後、倫太郎は差していた傘をぱたりと閉じながら夜彦へと紡ぐ。
「あぁ、もう! 傘邪魔! 夜彦、あんたの傘に入れて?」
 はぐれそうだと言った端から、風に攫われそうになるものだから。
 返事を聞く前に傘を閉じて、彼の腕にぎゅっと縋って……いつも通りふたり手を繋いで、ふわりふわりと風任せ。
 そんな様子に、どうしたのかと。そう尋ねようとする前に、夜彦は聞こえた言葉と見つめる姿に察して。
「はい、では一緒に入りましょう。しっかり掴まっていてくださいね?」
 今度は倫太郎と雨の帝都の美しい景色を楽しむ。一つの傘に、二人で一緒に入って。
 それからすとんと、風がふたりを運んだのは、雨空を揺蕩う雲の小島のひとつ。
 そこでふたりは見つける。楚々と咲き誇る紫陽花と花菖蒲、そして光り舞い飛ぶ蛍たちを。
 それは今でも胸の中にずっと残っている、あの日のもの。
「夜彦、あれ……あんたと最初に見た夜祭の紫陽花……」
 倫太郎はそう口にしつつも、思い返す。
(「その先に綺麗な主と夜彦が姿を模した彼の幻想を観た、あの紫陽花」)
 そう思えば、自然と夜彦を見遣るけれど。
「……倫太郎も気付きましたか? あれから、もう二年です。時の流れは早いものですが考え方も在り方も変わるものですね」
 ――それから……貴方との関係も、と。
 しみじみと今の幸せを噛み締めるかのように先を見つめる翡翠の瞳に、倫太郎はそっと安堵する。
 あの時のような苦渋はもう一切ない、穏やかで心凪いだそのいろに。
 二年前の思い出も勿論大切な宝物のひとつだけれど。
 でも、夜彦も自分も、そしてふたりの在り方も、あの時とは違うから。
 ふたり決して離れないように手を繋いで、再び雨空へ……先へと。
 あの二藍の紫陽花が咲く小島を、見送って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雲烟・叶
【烟雨】

話には聞いてましたが、傘で空を飛ぶなんて本当に御伽噺みたいですねぇ
ふふ、甘露のお嬢さんはお好きだと思いましたよ
何でしたっけ、……メリーポピンズ?
お好きでしょう、あんた

デパートで買った傘を開いて、屋上の床を蹴る
ぐらりと揺れるバランスを何とかポーカーフェイスで保つのは、自分のことより共に飛んだ相手の状態が気に掛かるからだ
甘露のお嬢さん、大丈夫です?
嗚呼、お上手ですねぇ
きちんとスカートにも気を配る辺りが、この娘は本当にきちんとした少女だと思う

帝都が一望出来ますね
ほら、大通りがあんな遠くまで見渡せる
こりゃあ良い絶景だ
素敵な景色のお供は少女の歌声
機嫌良さそうに口遊まれるそれに、表情が和らいだ


世母都・かんろ
【烟雨】

ど、う、しよ、叶、さん
わく、わ、く、して、仕方、ない、の!
はい、あの、映、画、みたい、だわ

ふわり足が地面から離れて
ミモザの傘が冒険の頼り
風を纏ってバランス取って踊るように
スカートの裾が広がらぬよう抑えて
【空中浮遊、ダンス

はい、だい、じょうぶ
上、手、かし、ら
叶さん、も、素敵、だわ

最初は飛ぶことに集中していたけど
彼に言われて視線を景色へと向け

わ、ぁあ!
桜が、満開で、わた、あめ、み、たい
街、も、ミニ、チュア、みたい、で!
とっ、ても、とって、も、綺麗…!

さっきまで居た百貨店も
お気に入りのカフェも
全部がきらきらして見える

とっても贅沢な空の旅
ふいに口ずさんでしまう歌を
彼は聴いてくれるかしら



 ひとつまたひとつ、開いては空を舞い彩ってゆく傘の花たち。
 そんな先行した他の猟兵たちが傘咲かせる雨空をふと見上げて。
「話には聞いてましたが、傘で空を飛ぶなんて本当に御伽噺みたいですねぇ」
 そうしみじみと口にした雲烟・叶(呪物・f07442)は移した視線の先、一等キラキラと咲いたしゃぼん玉のいろに瞳を細める。
 だって、分かっていたから。
「ど、う、しよ、叶、さん……わく、わ、く、して、仕方、ない、の!」
「ふふ、甘露のお嬢さんはお好きだと思いましたよ」
 誰よりも、自分の隣にいる世母都・かんろ(秋霖・f18159)の心がわくわくと踊って仕方がないだろうことに。
 そして微かに首を傾けつつも連想するのは、あのワンシーン。
「何でしたっけ、……メリーポピンズ? お好きでしょう、あんた」
「はい、あの、映、画、みたい、だわ」
 けれどこれは、スクリーンの中だけの、憧れの夢物語ではないから。
 ふたりも、ぱっと共に手にした傘を開けば……ふわり、風をつかまえて。
 叶は同時に、タンッと軽快に屋上の床を蹴って、雨空へと舞い上がる。
 落ちる事はなさそうだが、でも最初は慣れなくて、ぐらりと揺れるけれど。
 バランスを取って何とかポーカーフェイスで保つのは、気に掛かるから。
「甘露のお嬢さん、大丈夫です?」
 自分のことよりも、共に飛んだ相手の状態の方が。
 けれど、それは全くの取り越し苦労で。
「はい、だい、じょうぶ」
 雨粒に滲むいろをふわりふわり、躍らせながら。
 咲き零れるミモザの傘が、冒険の頼り。
 けれど、心配するどころか、シャボン玉の瞳はキラキラと紫陽花を艶めかせる雨粒のように輝いていて。
 風を纏って踊るように、ひらりふわりと、雨空の冒険を楽しむかんろ。
 だって、あの映画で何回も予習済だし。傘と一緒に冒険することだって、慣れたものだから。
「上、手、かし、ら」
「嗚呼、お上手ですねぇ」
 そうくるりと振り返って訊ねるかんろに、叶はこくりと頷いてみせて。
「叶さん、も、素敵、だわ」
 その心と同じく、弾むように……傘の花を咲かせ雨空を踊る姿に、思うのだった。
 ふわっと風に煽られ、スカートの裾が広がらぬよう抑える所作を見て。
 ――この娘は本当にきちんとした少女だと思う、と。
 それからふと、風に身を任せながら。
 眼下に広がる景色へと視線を向けてみれば。
「ほら、大通りがあんな遠くまで見渡せる。こりゃあ良い絶景だ」
 まさに叶の言う通り、そこには、幻朧桜と紫陽花と傘の花が咲く絶景の帝都が。
 そして空を飛ぶことに集中していたかんろも、届いた彼の声に瞳巡らせてみれば。
「わ、ぁあ! 桜が、満開で、わた、あめ、み、たい。街、も、ミニ、チュア、みたい、で!」
 ――とっ、ても、とって、も、綺麗……!
 雨で煌めく帝都のいろに、ぱあっと笑顔を咲かせる。
 だって、さっきまで居た百貨店も、お気に入りのカフェも……全部がきらきらして、特別に見えるのだから。
(「とっても贅沢な空の旅」)
 かんろはそれから、ふと思う……彼は聴いてくれるかしら、って。
 同時に、自然と和らぐ叶の表情。
 雨音と一緒に聞こえてくるのは、まるで魔法の呪文のような。傘で空を飛ぶ時に、ふいに口遊んでしまいたくなる楽しい歌。
 そしてそんな機嫌良さそうな少女の歌声は、ふわふわきらきら――素敵な景色のお供にぴったりだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
傘を広げて空を飛ぶ、か――子供の頃は傘で空を飛べるのではと考える奴がいたものだけど、本当に飛ぶ事になるとは思わなかったよ

先程購入した傘を使い、時折小島に降り立ちつつ先へ進む

雨の日、傘もささずに屋外で一人立ち尽くす少年の姿……これは俺の記憶じゃない
いや、似たような事はあったから、それが影響してこんなものが見えたんだろうな

あの時の俺には迎えに来てくれる人はいなかったが、この風景に映る彼はどうなんだろうな
これは記憶。過去の出来事である以上、こんな事を思ってもなんの意味もないだろうけど

彼を迎えに来てくれる人がいる事を。――或いは、今の俺のように、彼がそんな人を得られる事を、祈っておくとしよう



 幼い頃、誰しも一度は考えたことがあるかもしれない。
「傘を広げて空を飛ぶ、か――」
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が辿る記憶の中にも、確かに覚えがある。
(「子供の頃は傘で空を飛べるのではと考える奴がいたものだけど」)
 そして手にしたシンプルな傘へと一瞬視線を落として。
 改めて、思うのだった。
 ――本当に飛ぶ事になるとは思わなかったよ、と。
 そう、傘で空を飛ぶ……それが、影朧へと辿り着くために架かる道だから。
 鏡介も霧雨降る空へと傘を広げれば、刹那、ふわりと感じる浮遊感。
 そして上手に風をつかまえれば、見慣れているはずなのにいつもと違う帝都の景色が、ぱっと眼下に広がって。
 ふわり漂う雲の小島に時折降り立ちつつも、先へと進んで征く鏡介。
 それからまたひとつ、ぽふりと雲の小島に足をおろせば。
 ふいにぐるりと、巡らせてみる視線。
 そして黒の瞳がふと捉えたのは――屋外に一人立ち尽くす、少年の姿。
 雨が降っているのに、傘もささずにただ茫然と。
 けれど、ふるりと鏡介は首を微か横に振る。
(「……これは俺の記憶じゃない」)
 少年も、雨が降るこの風景も、見覚えはないのだけれど。
 でも――不思議と覚えるのは、既視感のような感覚。
 そして鏡介は思い直す。
(「いや、似たような事はあったから、それが影響してこんなものが見えたんだろうな」)
 雨が降る中、この少年みたいに……ひとり佇んでいたことが、自分にもあって。
 そんな昔の己と眼前の彼を重ねているのかもしれないし。
 だから、こんなことをふと思ってしまうのだろう。
(「あの時の俺には迎えに来てくれる人はいなかったが、この風景に映る彼はどうなんだろうな」)
 けれどすぐに、再び首を振る。
 だって、誰のものかは分からないけれど……これは記憶なのだ。
 雲の小島が映すものが雨の日の記憶である以上、現実に起こっていることではない。
 ……でも。
(「過去の出来事である以上、こんな事を思ってもなんの意味もないだろうけど」)
 鏡介は再び傘を雨空へと咲かせ、少年が佇む雨の風景を後にしながらも。
 そっと、こう祈るのだった。
 彼を迎えに来てくれる人がいる事を――或いは、彼がそんな人を得られる事を、と。
 ……今の俺のように、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

かれの選んだ傘で相合傘をして
ふたりで傘を持ちながら、風をつかまえ飛びましょう

ふわふわ、ゆらり行く先は風の気の向くまま
雲の小島に降り立ったなら、ふと目に留まったもの
それはいつもの、何気ない日常のひとコマで
僕とかれが依頼に向かうその日も、今日のように雨だった
住まいとする館の玄関で、コーギーの愛犬と黒猫の愛猫に見送られながら、かれとともに傘をさして出かける風景

ああ、些細な幸せというものは
このようなことをいうのでしょうと微笑みましょう
そしてかれと目と目を合わせて
それからゆるやかに飛び立ちましょう

きみとなら、向かいゆく先が雨だとしても
幸せでしかたがないのでしょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵の傘に入り共に持ちながら風に乗り空を行こう
宵と共に在る為だろうかあまり揺れぬ…否、むしろ心地よいその歩みは雨の日に共に傘をさし宿へと歩くその様を思い出し思わず頬が緩んでしまうやもしれん
だからだろうか。宵と共に雲の小島に降り見えた風景が、雨の日に宵と共に依頼に向かう為並び歩く景色だったのは
ついぞ笑みを漏らしながらも、宵と目が合えばあの時は帰った後、おやつを強請られ大変だったなとそう懐かしげに声をなげながら愛おしい相手の腰に手を回し宵と共に空へと飛ぼうと試みようか
お前が共にある日々は過去も未来も全て美しく眩しいものゆえに
さて、次はどのような景色がみられるのだろうな



 ぽつりぽつりと、予報通りに雨が降り出した帝都を彩るのは。
 幻朧桜と紫陽花と、街行く人たちが咲かせた色とりどりの傘の花。
 そんな雨の帝都を見渡せる屋上の展望テラスへと足を運んで。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が開くのは、かれに選んで貰った鮮やかな青の傘。
 いや、それを天へとさすのは宵だけではない。
 傘を持つ宵の手に掌を重ね共に握るのは、その傘を彼へと贈ったザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)。
 そして、見上げる自分達だけの青の世界に寄り添って咲く、カンパニュラ・ポシャルスキアナと矢車菊の花の様に。
 すぐ隣で相合傘をして、ふたりはつかまえる。
 空へと導いてくれる、一陣の風を。
 刹那、地から足が離れて浮遊感を覚えれば、慣れぬその感覚に少しは不安を抱いてしまう……かと、思ったのだけれど。
(「宵と共に在る為だろうかあまり揺れぬ……」)
 むしろ、思わず頬が緩んでしまうザッフィーロ。
 だって、こうやってふたりでひとつの傘を握って相合傘をしていると、思い出すから。
 雨の日に共に宿へと歩く心地良さを。
 だからだろうか、ふわふわ雨空を進み、ゆうらり風の気の向くまま辿り着いた雲の小島に降り立てば。
 ふとふたりの目に留まったもの……それはいつもの、何気ない日常のひとコマ。
 共にふたりで依頼に向かう為、並び歩く景色。
(「僕とかれが依頼に向かうその日も、今日のように雨だった」)
 宵が星纏う瞳で映しているその場所は、住まいとする館の玄関。
 尻尾をふりふりする愛犬のコーギーと、すりっと何気に甘えるような愛猫の黒猫を撫でてあげながら。
 いってきます――そう、かれとともに傘をさして出かける風景。
 それはごく当たり前の日常だけれど、同時に、ふたりにとってとても大切で何よりの幸せ。
 ザッフィーロは見つめる銀の瞳を細め、笑み漏らしながらも、隣の宵へとふと視線映せば。
「あの時は帰った後、おやつを強請られ大変だったな」
「ああ、些細な幸せというものは、このようなことをいうのでしょう」
 ぱちりと瞳同士が仲良く交わり、ふたり微笑み合う。
 そんな懐かしげに声を投げながら、ザッフィーロはその腕を伸ばして。
 愛おしい彼の腰にするりと手を回し、目と目を合わせた刹那、一緒に風をつかまえる。
 再び共に、空へと飛ぶために。
 そして雨空へとゆるやかに飛び立ち、雲の小島の風景に見送られながらも。
 ふわり風に乗って、先へと進み征く宵とザッフィーロ。
 握るその手を重ね合って、ふたり一緒に。
「お前が共にある日々は過去も未来も全て美しく眩しいものゆえに」
 ――さて、次はどのような景色がみられるのだろうな。
 雨の帝都の絶景を眼下に望みながら言ったザッフィーロの声に、宵は柔く笑み返す。
「きみとなら、向かいゆく先が雨だとしても。幸せでしかたがないのでしょう」
 晴れの日でも曇りの日でも、例え雨が降っていたとしても、億劫だなんて思わない。
 だってふたりこうやって歩める時間はいつだって、幸せのいろで満ち溢れているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

憂世・長閑
巴(f02927)

わあ
お揃いの傘を開けば浮かぶ身に小さく声をあげる

すごいとはしゃぎたくなるけれど
バランスを取るのが難しくてうまく風に乗れない

自分が不器用なのは知っているから
はぐれないようにと彼を見れば
ともえ
ありがとうっ

空の島だっ
傘、難しかったけど、楽しかったね

過去へ遡るほど、雨の記憶は薄い
ただ屋根を、窓を打つ雨音だけを子守唄のように聞いていた日々
だから、この景色はきっと巴のものだ
知ってる場所?
小さい時?
辺りをくるりと見渡して
うん、巴の思い出の場所、行きたいな

歩いた先で切り替わった景色は去年の思い出
そうだねと頷く
雨がきらきら
あの日を輝かせてるみたい

そろそろ行く?
ちゃんと影朧の元へ
辿りつかなきゃな


五条・巴
長閑(f01437)

お揃いの、雨でも月を見れる傘を広げて
ふわりと1歩、宙を歩く

すごいや、空を歩くなんて初めて
ふらり傾く長閑を支えて
はぐれないようにゆっくり行こう

ふう、小島まで来れた
慣れない感覚で確かに疲れたなあ
難しかった、風に煽られるとふらついちゃったね

小島で映されたのは
しとしと、窓打つ雨が部屋から見えて
外から見える景色に変わる
暗い、夜雨
これは、僕が小さい時にいた場所だね
うーん、楽しめそうな場所はあったかな?
いつか行けたらいいなあ

それから先に見えた景色は、僕らが紫陽花を見に行った場所
色鮮やかな、明るい場所

ねえ長閑
雨の日でも、嬉しいと景色は霞まないんだね
雨の日でも、楽しいね

うん
そうだね、行こうか



 ふと見上げた空に今見えるのは、霧のような雨雫を降らせる灰色の雲たち。
 まだ夜には早いし、きっと日が落ちても、この調子だと雨は止まないだろう。
 けれど、五条・巴(月光ランウェイ・f02927)は見ることができる。
 お揃いの傘を雨空に咲かせれば、一番好きなお月さまをいつだって。
 そしてさした傘が風をつかまえれば、今日の彼が歩くのは宙のランウェイ。
 そんな巴と一緒に、憂世・長閑(愛し秉燭・f01437)もぱっと彼とお揃いの傘を開けば。
「……わあ」
 風に攫われるようにふわりと浮かぶ身に、思わず小さく上がる声。
「すごいや、空を歩くなんて初めて」
 そうすぐ傍で聞こえた巴の言葉に、一緒にすごいとはしゃぎたくなるけれど。
 地に足がついていない空の上、バランスを取るのが難しくてうまく風に乗れなくて。
「――わ」
 まるでつるりと水溜まりに足を取られたかのように、ふらりと揺れる長閑の身体。
 自分が不器用なのは知っているから……迷子にならないようにと、そう顔を上げて隣の彼を見れば。
「ともえ、ありがとうっ」
「はぐれないようにゆっくり行こう」
 前は一緒に転びかけたけれど、今度はそんな長閑を支え、そう声をかける巴。
 そして慎重にバランスを取りながらも、身を任せてゆらりふわり。
 そんな気紛れな風がふたりを運んだのは。
「空の島だっ」
「ふう、小島まで来れた」
 ぽっかり浮かぶ、雲の小島のひとつ。
「慣れない感覚で確かに疲れたなあ」
「傘、難しかったけど、楽しかったね」
「難しかった、風に煽られるとふらついちゃったね」
 最初に比べれば、随分上手にはなったけれど。
 ふらふらと揺れる感覚は不安定でちょっぴり疲れるけれど、でも面白くて楽しい。
 そうふたりで顔を見合せ、笑い合った後。
 ふと、ふたりは眼前の景色へと視線を向ける。
 映し出されているのは――部屋から見える、しとしとと窓打つ雨。
 それが刹那、外から見える景色へと変わる。
 お月さまもみえない……暗い、夜雨。
 長閑はその光景をぐるりと見回してみるけれど。
 そもそも、過去へ遡るほど、雨の記憶は薄くて。
 子守唄のように……ただ屋根を、窓を打つ雨音だけを聞いていた。
(「だから、この景色はきっと巴のものだ」)
 それはわかったけれど、長閑は彼に聞いてみる。
「知ってる場所?」
「これは、僕が小さい時にいた場所だね」
「小さい時?」
「うーん、楽しめそうな場所はあったかな?」
 巴はそう首をこてりと傾けつつ、記憶をふと辿ってみるけれど。
 広がる光景を見つめつつも、呟きを落とす。
 ――いつか行けたらいいなあ、って。
 長閑も辺りをくるりともう一度見渡してから、こくりと頷いて返す。
「うん、巴の思い出の場所、行きたいな」
 そんなことを話しながら並んで歩いていれば、いつの間にか映るその景色は変わっていて。
 それは、長閑にも覚えがあるもの。
 色鮮やかな、明るい場所――ふたりで、紫陽花を見に行った場所。
 煌めきいっぱいの不思議な国で咲いた、雨の中の思い出。
 不思議な雨空を見上げれば、今度はみえるお月さま。
 去年も眺めたそれを見つめた後、巴は隣にいる彼へと視線を戻して、紡ぐ。
「ねえ長閑。雨の日でも、嬉しいと景色は霞まないんだね」
 ……雨の日でも、楽しいね、って。
 そして届いたその声に長閑も再び頷く。
「雨がきらきら、あの日を輝かせてるみたい」
 ……そうだね、って。
 雨の日でも、ふたりで一緒ならこんなに楽しくて。
 きっと今日の雨も、またいつかふと思い出すだろう。
 雨粒を纏った紫陽花のようにきらきらした、ふたりの思い出として。
 そんな雫の宝石煌めく雨の散歩も、楽しいのだけれど。
「そろそろ行く?」
 ちゃんと影朧の元へ辿りつかなきゃな、と。
 言った長閑に、巴も頷いて。
「うん。そうだね、行こうか」
 再び雨空へとお揃いの傘をさして、ふわり風をつかまえる。
 一緒に先へと、進む為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
カティアさん(f05628)と

おそろいで買った傘、さっそくの出番ですね!

風に乗るときは、お姉ちゃんとはぐれないように。
手を繋いでから傘を広げますです。

バランスを崩しながらふわふわ、といいますよりは、
ふらふら飛んでいきますですが、
手を繋いでいますので、なんとかなってますのです。
「ありがとうございます、なのです!」

……頭重いとか言わないでください。

しばらくしたら東屋のある雲島でちょっと休憩。

これはどなたの思い出なのでしょうか。
霧雨に虹が架かって、すっごく綺麗なのです!

帰りましたら、こんな景色、
いっしょに探しに行きたいですね!
虹の下でおそろいの傘を広げたいのです♪

と、こてん、と頭を預けちゃいます。


涼月・カティア
奏莉さん(f32133)と

さっそく大活躍ですね蛇の目傘
それではいきましょうか
手を繋いでデートの続きです

傘を開いて風に乗ってゆらゆらと
バランスを取るのが難しいですが
奏莉さんと手を繋いでいるのでそこを基点に
「こちらこそ頼りにしてます」
え?頭が重い?
それならお姉ちゃんが抱っこしてあげますよ?
一緒に飛べば怖くありません

でもちょっと休憩ですね
はふ、とひと息つきながら
霧雨に架かる虹を見つつ
大喜びする奏莉さんを見てほんわか

あらあら
そんな風に寄りかかってきたら
食べちゃいますよー?(お人形みたいに抱っこしてぎゅー

蛇の目傘での雨の日のお出かけ
とっても楽しそうですね
そのためにもしっかり依頼を終わらせましょう
ね?



 楽しくふたり仲良く買い物をして、紫陽花クリームソーダも堪能した百貨店デート。
 そしてカフェーから見える外の景色に、傘の花が咲き出したことを見れば。
 ふたりが向かうのは、屋上の展望テラス。
 雨が降り出したテラスは、他の一般客は誰一人いないけれど。
「おそろいで買った傘、さっそくの出番ですね!」
「さっそく大活躍ですね、蛇の目傘」
 はぐれないように、ふたりしっかりぎゅぎゅっと手を繋いでから。
 ……それではいきましょうか、と。
 言った涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)が、菫宮・奏莉(血まみれもふりすと ときどき勇者・f32133)と一緒にぱぱっと咲かせるのは、ふたりのイメージのいろ――紫と白の、お揃いの蛇の目傘。
 そしてふわり風をつかまえれば、楽しいデートの続き……今度は空飛ぶ、雨彩のデート。
 でも空をゆくその姿は、ふわふわ、というよりは、ふらふら……?
 バランスを取るのがなかなか難しくて、ゆらゆら大きく揺れたりしちゃうけれど。
 しっかりと手を繋いでいるから、大丈夫。
 逸れて迷子になる心配はないし、繋いだ手を基点にしてなんとかなっているから。
「ありがとうございます、なのです!」
 そう礼を告げた奏莉に、カティアも笑み返す。
「こちらこそ頼りにしてます」
 けれどやっぱり、ぐらりとバランスを崩しちゃって。
 奏莉はぼそりと呟きを落とす。
「……頭重いとか言わないでください」
「え? 頭が重い?」
 そんな彼女の呟きを拾って、青の瞳を瞬かせた後。
 カティアは柔くその目を細め、続ける。
「それならお姉ちゃんが抱っこしてあげますよ?」
 ……一緒に飛べば怖くありません、って。
 そして暫く雨空をふたり揺蕩って、少し空のお散歩にも慣れてきた頃。
「ちょっと休憩ですね」
 ぽふんっと降り立ったのは、東屋のある雲の小島。
 空に浮かぶ雲の上で見るという風景は、どれも雨が降っていて。
「これはどなたの思い出なのでしょうか」
 こてりと首を傾けた奏莉の言うように、誰かの思い出の景色なのだという。
 そして楽しいけれど慣れない空の旅に、はふ、とひと息つきながらも。
「すっごく綺麗なのです!」
 聞こえた奏莉の声にカティアもふと顔を上げてみれば、仰ぐその青色にも架かる七彩。
 そして、そんな霧雨に架かる虹をうんと背伸びするように大喜びして見上げ、ぱあっと笑顔を輝かせる隣の彼女へと視線映せば、ほんわか。
「帰りましたら、こんな景色、いっしょに探しに行きたいですね!」
 ……虹の下でおそろいの傘を広げたいのです♪
 そう、おねだりするように、こてん。
 気を許し頭を預けてくる奏莉に、カティアはくすりと笑みながらも。
「蛇の目傘での雨の日のお出かけ、とっても楽しそうですね」
 ……そんな風に寄りかかってきたら、食べちゃいますよー?
 普段はしっかりした子だけど、自分の前ではすっかり甘えん坊な彼女を、お人形みたいに抱っこしてぎゅー。
 そして再びふたり仲良くおそろいで、紫と白の傘の花を咲かせる。
 もう少しだけ一緒に、雨空デートを楽しむために。
 そしてカティアは奏莉の小さな手をそっと取って、ぎゅうと優しく握りながら微笑む。
「そのためにもしっかり依頼を終わらせましょう……ね?」
 またこうやって、おそろいの蛇の目傘をさしながら――今度はふたりの思い出の虹を、探しに行きたいから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

志島・小鉄
【彩夜】

ニンゲン様の姿で参加しマス!

ほほぅ。傘で飛ぶのでせうか!
いやはや。ニンゲン様の姿で飛ぶ日ガ来ようとは!
妖怪の姿でシタラ軽々飛べマス!
ミナサマ空ノ散歩は楽しゐでせう!
ワシは大好きデス!

雲が見えマシタ!アチラで休憩ヲしませう!
雨ノ日ノ思い出でさうか。
ワシの思い出ハ楽しゐ思い出デスヨ!
妖怪友達のミンナと一緒ニ雨踊りを踊りマシタ!
雨踊りとはその名ノ通り雨を降らせる踊りデス
こうやって踊るのデス!(うねうねぽんぽんと踊りマス)

いやはや楽しかったデスネ〜
アレはわしの雨踊りの思ゐ出デス!

休憩ヲしたらミナサンと一緒に飛びマス!
ワシの葉っぱ傘が大活躍デス!
雨水ヲ含んで元気一杯ニなりマシタ!


宵雛花・十雉
【彩夜】

い、いよいよ空を飛ぶんだね
百貨店で買ったばかりの傘を開いて
こうなったらひと思いに行くしかない
せーのっ

すごい、本当に空を飛んでる…!
手を離さないようにしっかり傘を握って
見下ろせばさっきまで立ってた場所がどんどん小さくなっていく
鳥ってこんな気持ちなのかな

大丈夫だよ
確かにちょっと怖いけどね
万が一落ちたら助けて貰っていいかな…
ユェーがいれば皆無事に帰れそう

あの雲の上だね、分かった
まさか雲の上でひと休みできる日がくるなんてなぁ

雨の日の思い出か
子供の頃、よく水溜りを踏まないように跳ねて帰ったっけ
さ、さすがに今はもうやらないけどね

虹の麓か、いいね
オレも行ってみたいな
皆とならどこまでも飛んで行けそうだ


歌獣・苺
【彩夜】

それっ♪

翼を使って飛ぶ時のように
ぴょんっと跳ねて
勢いよく虹色に輝く傘をさせば
ふわ、ふわりと優しい雨空の旅

翼を使わずに飛ぶって新鮮!
みんなも飛ぶの上手~!
楽しそうな笑顔が
雨空に負けないくらい眩しい…♪
ーーそういえば
ときじ…大丈夫?怖くない?
この前落としちゃったから
空がトラウマになってないと
いいんだけど…
…うん!その時は
また必ず助けてみせるよ!

柔らかい雲にそっと腰を下ろし
へぇ~!雨踊り、楽しそう~!
今度館のネモフィラ畑で
みんなで踊ってみようよ!

雨打つ音に合わせて歌うたえば
ほんの一瞬だけ虹が見えた
皆は見えたかな?

私は今日が
素敵な雨の日の思い出だよ…♪

そうだねなゆ!
行こう!まだ見ぬ世界へ!


蘭・七結
【彩夜】

透けた彩に咲く淡い花々
ぱっとひらいた傘を掲げて――いざ、
天上の旅を始めましょうか

先ほどまで見上げていた景色たち
それらの姿がちいさくなって、離れてゆく
風に乗って、何処まで往けるのかしら

ふうわりと浮き立つような
不思議な感覚に胸が踊るかのよう
嗚呼、とても。たのしいわ

綿雲を貫通しないか、ちょっぴり不安ね
踵を降ろすのは慎重に、控えめに
……まあ、ふふ。やわらかい

雨の日の思い出は、そうね
数多の世界でアジサイの花を眺めたわ
とりどりの彩を持つ、不思議なお花
しとしとと降り頻る雨音が心地好いの
雨天のお花見も、とてもステキよ

傘を打つ音色が心を逸らせるよう
さあ。先へと進みましょうか

空の旅は、始まったばかりだもの


ルーシー・ブルーベル
【彩夜】

青空ヒマワリがパッと開く
カサが風を受け止めて
お空へ招いてくれる
百貨店があんなに小さく!
きっと何処までも行けるわ
小鉄さんはいつものお姿だと飛べるの?いいなあ

雲の小島ってこれかしら
足つけたらスポッて落ちたりしないよ、ね?
ふかふか、ふしぎな感じする
ちょっと楽しい
晶硝子さんの周りがキラキラしてる!きれいね

ルーシーの雨の日の景色はね
おにゅーの長ぐつでお散歩した日
雨にぬれて透明になるお花をみつけたの
特別のお花よ
うん、とてもキレイだった!

みんなの思い出も色鮮やかで虹のよう
もしかしたら今
妖怪さんが雨踊りをしているのかも

ね、とっても楽しい!
さあ、もうひと飛びしましょう
もっと雨空に色を咲かせるんだから!


彼者誰・晶硝子
【彩夜】

ぱっと開く傘は空に咲いて
翼を広げるのって、こんなかんじなのかしら
ゆらゆら足が揺れて、ぐんぐん空が近くなって
普段から空を飛べる子たちを参考にしたら、うまく飛べるかしら?
楽しくって夢中になってしまうけれど、思うように飛ぶのはむつかしいわ、ね

まあ、雲に乗れるなんて
せっかくだから、堪能したいわ
ふふ、おふとんよりも、ふかふか
輝石の足元を陽の光がきらきらと、雲に虹色に映して
いつかの、天気雨の空いっぱいにかかった虹を思い出す
あんな虹に、わたしたちもなれているかしら、なんて

再びの空の旅路に、ステンドグラスの傘は翼になる
すこうし上手くなってきた、かしら
空の果て、虹の麓、そんなところまで、行けそう、ね


朧・ユェー
【彩夜】

おやおや、この傘で飛ぶのですか
それは楽しそうですねぇ

皆さんが飛ぶのを拝見して後から
傘が皆さんの翼の様ですね

小鉄さんの雨踊り?それは見てみたいですね
ルーシーちゃんの透明になる花、それは綺麗でしょうね
七結ちゃんと紫陽花見ましたね、他の世界も美しいでしょうね
虹?虹は綺麗ですね、晶硝子ちゃんの傘が更に虹の様
十雉くん落ちた?それは、怖いのなら無理せず
おやおや、苺も無邪気に。貴女も落ちない様にねぇ

まぁ、誰も落とすつもりもありませんが
誰一人欠ける事なく
雲の上に乗るのを見届けてそっと上に
本当にふかふかですね

こんな雨の日も楽しいですね
雲の上、皆さんの姿と色とりどりの傘の彩
嗚呼とても美しい



 楽しい買い物を済ませた皆が足を向けたその先……辿り着いたのは、大きな百貨店の中でも一番空に近い場所。
 屋上の展望テラスへと赴けば、まるで霧の様にひやり、触れた頬を撫でる雨。
 テラスから眼下を望めば、桜の世界に咲く傘の花たち。
 道行く帝都の人達は、降り出した雨を凌ぐために傘を開くのだけれど。
 刹那、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)もその手で、ぱっと咲かせる。
 色硝子のように透けた彩に咲く、淡い花々を。
「いざ、天上の旅を始めましょうか」
 そう――掲げた傘で風をつかまえて、空を翔けてゆく為に。
 そんな館の窓を思わせるような花を咲かせた七結の隣で。
 またひとつパッと開いたのは、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が握る、青空ヒマワリ。
 雨と晴れをどちらも独り占めできる傘はふわり、吹く風を受け止めて。
 ぐるり咲く向日葵たちを連れて、ルーシーもお空へと招かれる。
「ほほぅ。傘で飛ぶのでせうか! いやはや。ニンゲン様の姿で飛ぶ日ガ来ようとは!」
 続いて葉っぱ……いや、葉っぱ柄の傘を開いた志島・小鉄(文具屋シジマ・f29016)も、慣れたようにひょいっと空へと飛び立って。
「小鉄さんはいつものお姿だと飛べるの? いいなあ」
「妖怪の姿でシタラ軽々飛べマス!」
 羨ましそうに言ったルーシーに、こくりと頷いてみせる。
 そして歌獣・苺(苺一会・f16654)も、翼を使って飛ぶ時のように。
 ――それっ♪
 ぴょんっと跳ねて、勢いよくさすのは、虹色に輝く傘。
 刹那、まるで空に七色を架けるかのように、ふわ、ふわりと。
 風が導くのは、優しい雨空の旅。
 そんな次々と空へと舞い上がる皆を見上げてから。
「い、いよいよ空を飛ぶんだね」
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)はどきどきそわり、ちょっぴり緊張したような面持ちで呟きを零すけれど。
 ……こうなったらひと思いに行くしかない。
 そう、こくりと意を決した様にひとつ頷いてから。
 ――せーのっ。
 仰いだ天へと広げるのは、黄昏の空。
「おやおや、この傘で飛ぶのですか。それは楽しそうですねぇ」
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)がそう、様々ないろが咲く雨空に瞳細める隣で。
 彼者誰・晶硝子(空孕む祝福・f02368)がぱっと広げるのは、多彩の煌めき。
「翼を広げるのって、こんなかんじなのかしら」
 雨粒でさらに輝きを増す傘は今日だけ、空を飛ぶためのステンドグラスの翼に。
 そして風に攫われた瞬間、ゆらゆら足が揺れて……ぐんぐん近くなる空。
「傘が皆さんの翼の様ですね」
 そんな皆が飛ぶ姿を見守っていたユェーも、真白の傘の翼を広げて。
 いざ、空の冒険へと出発です!
「百貨店があんなに小さく!」
「すごい、本当に空を飛んでる……!」
 眼下の景色を見下ろし、声を上げたルーシーと同じように。
 手を離さないようしっかりと傘を握りながらも、十雉が続ければ。
 ちいさくなって離れてゆく、先ほどまで見上げていた景色たち。その様を瞳に映しつつ、七結は微笑んで。
「風に乗って、何処まで往けるのかしら」
「きっと何処までも行けるわ」
 こくりと、頷いて返すルーシー。
 それからそうっと、改めて帝都の風景を見下ろせば、先程まで自分が立っていた場所がどんどん小さくなっていって。
「鳥ってこんな気持ちなのかな」
 白い髪を雨空に躍らせながら、十雉は傘の中の空に似たいろの瞳を細める。
 そして晶硝子も、ステンドグラスの傘で悠々と空を飛ぶ……とは、ちょっぴりだけまだいかず。
 楽しくって、思わず夢中になってしまうけれど。
「思うように飛ぶのはむつかしいわ、ね」
 何とか傘を傾けつつ、バランスを取りながらも。
 共に空飛ぶ皆へと、ふと視線を巡らせ、小さく首を傾ける。
「普段から空を飛べる子たちを参考にしたら、うまく飛べるかしら?」
 そんな飛び慣れている皆をお手本にするべく、晶硝子はくるりと視線を巡らせて。
「翼を使わずに飛ぶって新鮮! みんなも飛ぶの上手~!」
 ――楽しそうな笑顔が、雨空に負けないくらい眩しい……♪
 苺も今日はみんなと一緒に、傘で空を飛びながらも。
 ふと思い出したように十雉へと目を向ける。
「――そういえば、ときじ……大丈夫? 怖くない?」
 ……この前落としちゃったから、空がトラウマになってないといいんだけど……。
 そしてちらりと、ぎゅっと傘を握りしめている彼を見れば。
「大丈夫だよ。確かにちょっと怖いけどね」
 十雉は苺へとそう返した後。
 ふと眼下の帝都の景色を改めて見遣りつつもそうっと、こう付け加える。
「万が一落ちたら助けて貰っていいかな……」
「……うん! その時は、また必ず助けてみせるよ!」
 苺はそんな彼の言葉に、頼もしくも大きく頷いてみせて。
「十雉くん落ちた? それは、怖いのなら無理せず。まぁ、誰も落とすつもりもありませんが」
「ユェーがいれば皆無事に帰れそう」
 心強い皆と一緒ならば、何だかすごく大丈夫な気がしてくる十雉。
 小鉄はそんな緊張した表情を少し緩めた十雉や皆へと視線を巡らせて。
「ミナサマ空ノ散歩は楽しゐでせう! ワシは大好きデス!」
「嗚呼、とても。たのしいわ」
 七結はくるり、つかまえた風に身を任せ、笑み咲かせる。
 ……ふうわりと浮き立つような、不思議な感覚に胸が踊るかのよう、って。
 それからきょろり、小鉄が雨空を見回してみれば。
「雲が見えマシタ! アチラで休憩ヲしませう!」
 見つけたのは、ぽっかりと浮かぶ大きな雲。
「あの雲の上だね、分かった」
「雲の小島ってこれかしら」
 こくりと頷く十雉とルーシーは傘を傾け、それぞれ小鉄が指す雲へと進路を取りつつも、続ける。
「まさか雲の上でひと休みできる日がくるなんてなぁ」
「足つけたらスポッて落ちたりしないよ、ね?」
 傘を握る今は、風が自分達を運んでくれているけれど。
「綿雲を貫通しないか、ちょっぴり不安ね」
 ルーシーがちょっぴり心配気に言った言葉に、七結もこてり首を傾ける。
「まあ、雲に乗れるなんて。せっかくだから、堪能したいわ」
 けれど休憩も必要だし。何より、晶硝子の言うように、雲に乗れる機会なんて滅多にないから……皆で顔を見合せ、頷き合ってから。
 一緒にそっと踵を降ろしてみる。慎重に、控えめに、雲の上へと。
 そう足を乗せて踏みしめてみれば――ぽふんっ。
「ふかふか、ふしぎな感じする。ちょっと楽しい」
「……まあ、ふふ。やわらかい」
「本当にふかふかですね」
 ルーシーと七結は、同時に笑み零して。
 ユェーも皆が雲の上に乗る様子を見届けた後、ふかふかな雲の感触に瞳細めて。
 彼の言葉に笑み咲かせながら、足元の雲の感触を確かめる晶硝子。
「ふふ、おふとんよりも、ふかふか」
 そんな彼女へとふと視線を向けたルーシーは、ぱちくりと瞳を瞬かせつつ、声を上げる。
「晶硝子さんの周りがキラキラしてる! きれいね」
 輝石の足元を陽の光がきらきら零れ落とせば、雲に映るのは虹のいろ。
 そして晶硝子は思い出す……いつかの、天気雨の空いっぱいにかかった虹を。
「虹? 虹は綺麗ですね、晶硝子ちゃんの傘が更に虹の様」
 それから、そう言ったユェーに笑み返した後、こう続ける。
 ――あんな虹に、わたしたちもなれているかしら、なんて。
 星を宿す瞳の裡に残る七色を、思いながら。
 雨空に浮かぶ雲の小島、そこに映る光景は――雨の日の記憶、だという。
「雨の日の思い出か。子供の頃、よく水溜りを踏まないように跳ねて帰ったっけ」
 十雉が思い返すように紡げば、ふといつの間にか……眼前には、沢山の水溜まりが……?
 そんな光景に、十雉は瞳をぱちりと瞬かせてから。
 皆をぐるりと見回しつつ、慌ててこう紡ぐ。
「さ、さすがに今はもうやらないけどね」
「雨の日の思い出は、そうね。数多の世界でアジサイの花を眺めたわ」
 刹那、見つめる七結の瞳にも、ふわり紫陽花のいろが咲き誇って。
 ……とりどりの彩を持つ、不思議なお花、と。
「しとしとと降り頻る雨音が心地好いの。雨天のお花見も、とてもステキよ」
「七結ちゃんと紫陽花見ましたね、他の世界も美しいでしょうね」
 ユェーも、雨粒を浴びて静かに煌めき増す、咲き誇る藍や紫の花を、あの時みたいに一緒に眺める。
 そしてふいに再び風景が変われば、それはルーシーの雨の日の思い出。
 おにゅーの長ぐつでお散歩した、あの日。
「雨にぬれて透明になるお花をみつけたの」
 ……特別のお花よ、って。
 きょろり視線を巡らせてみてから。
「ルーシーちゃんの透明になる花、それは綺麗でしょうね」
「うん、とてもキレイだった!」
 ユェーの言葉に頷き、微笑んで返すルーシー。
 そして、ぴょこぴょこと。
「雨ノ日ノ思い出でさうか。ワシの思い出ハ楽しゐ思い出デスヨ!」
 ――妖怪友達のミンナと一緒ニ雨踊りを踊りマシタ!
 そう小鉄は、雲の上で踊り出す。
「雨踊りとはその名ノ通り雨を降らせる踊りデス」
「小鉄さんの雨踊り? それは見てみたいですね」
 そしてユェーの言葉に小鉄は、うねうねぽんぽん。
 ……こうやって踊るのデス! って、雨踊りを披露します!
「へぇ~! 雨踊り、楽しそう~!」
 柔らかい雲にそっと腰を下ろし、そう言った苺に。
「いやはや楽しかったデスネ〜。アレはわしの雨踊りの思ゐ出デス!」
「今度館のネモフィラ畑で、みんなで踊ってみようよ!」
 雨打つ音と雨踊りに合わせて、歌をうたってみれば。
 ぱちりと刹那、瞳を瞬かせる。
 だって、ほんの一瞬だけ見えたから。
「虹、皆は見えたかな?」
 そう思わず身を乗り出して天を仰ぐ苺に、ユェーはくすり。
「おやおや、苺も無邪気に。貴女も落ちない様にねぇ」
 けれど一瞬架かった虹のいろは、きっと勘違いなんかじゃない。
 だって、みんなの思い出も色鮮やかで虹のようだから。
 ルーシーは楽し気に踊る小鉄を見つめ、笑み宿す。
「もしかしたら今、妖怪さんが雨踊りをしているのかも」
 いや、過去の思い出だけではなくて。
「私は今日が、素敵な雨の日の思い出だよ……♪」
 苺の言う通り、雨空の冒険も、皆と一緒の楽しい思い出に。
 そして十分に、雲の小島で休憩すれば。
「ワシの葉っぱ傘が大活躍デス! 雨水ヲ含んで元気一杯ニなりマシタ!」
「さあ。先へと進みましょうか」
 傘も彼自身も元気いっぱいな小鉄を微笑まし気に見つめながら、七結はそう皆へと声を。
 だって、心を逸らせるようだから……傘を打つ音色が。
 そんな七結の言の葉に、ルーシーと苺は同時にこくこく頷いて。
「ね、とっても楽しい! さあ、もうひと飛びしましょう。もっと雨空に色を咲かせるんだから!」
「そうだねなゆ! 行こう! まだ見ぬ世界へ!」
 ふわり、雨空に咲かせた傘で再び風をつかまえて。
 再びの空の旅路に、晶硝子のステンドグラスの傘も翼になる。
 ……すこうし上手くなってきた、かしら、なんて。
 上手にふわふわ、雨空を舞いながら。
「空の果て、虹の麓、そんなところまで、行けそう、ね」
「虹の麓か、いいね。オレも行ってみたいな」
 晶硝子に続きながら、十雉はそっと瞳を細める。
 ……皆とならどこまでも飛んで行けそうだ、って。
「こんな雨の日も楽しいですね」
 やはり皆を見守った後、最後に雲の小島を飛び立ったユェーは、眼前に咲く傘たちを見つめる。
 雲の上、皆さんの姿と色とりどりの傘の彩――嗚呼とても美しい、と。
 そして先ゆく七結も、くるりと皆を振り返って、映るいろたちに笑み零す。
 ――空の旅は、始まったばかりだもの、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
【KOR】

新調した傘にて
この風に乗って参りますれば、良いのでございますね
サクラコさま!はぐれぬようお手をお繋ぎ致しましょう!
幽兵さまはお一人でもきっとうまく飛んでいかれる事でございましょう
それこそ、鯉のぼりのように!

こちらの雲、本当に
降り立つ事が可能なのでございましょうか?
おそるおそる、足を乗せて
まあ、雲、とは、このような感触なのでございますね

幽兵さまとも合流致しましたら
先ほどの百貨店にて購入した紫陽花の和菓子をお出しして
少し、休憩いたしましょう
まあ、サクラコさま、ご用意の良い事…!

和花さまの思い出を拝見し
なんだか、影朧をお倒し申し上げますのが憚られますね…
お二人が、とても頼もしく感じられます


鏡彌・サクラコ
【KOR】
傘で空を飛ぶ?
おっかなびっくり買ったばかりの和傘を開いて
風が吹けばうわわわわ!
やっぱり怖いでいすー!
飛んでるけど方向がちがーう!
あわわわベイメリアさまありがとうでいす!
手を繋いでもらってちょっと安心

ええー?!そんなふわふわに乗るんですか?
幽兵さまにキャッチしてもらい
乗れました!
でも落ち着きませんねい

和菓子!さすがベイメリアさま用意がいいでいす
遠足に水筒は付き物と冷たい麦茶は用意してます
一つしか用意がありませんので回し飲みになりますが
遠慮せずどうぞ

お二人の逢瀬こうして眺めるのは出歯亀のようでございますねい
ここは数々の影朧を救ってきたサクラコの出番
良い具合に解決してあげましょう!


花屋敷・幽兵
【KOR】
屋上で傘か…。ふ、鯉は空に昇る物だぜ!
手繋ぐのか…ん?俺は?
おい、スカート掴むぞコラ(言いながら飛んでいく感じで)
雲降りれんの?
危ないかもしれんから先に降りるぞ、どっこらしょ。
何なら手を貸すぞ。ほら、どっちでもこい。
ここで和菓子を?ふむ、普通では味わえない絶景だな。
しかし飲み物がなかったな。…回し飲み!そういうのもあるのか。
無駄に緊張するな。(ハートフルに)

和花?ああ、あの娘か。
憚られる…確かにそうだが、俺達にはやらなければならない事があるかな。
汚れ役は慣れている、任せろ(決め顔)
俺たち3人の連携見せてやろう(かっこいい雰囲気を醸し出します)



 百貨店で買い物したり、ハートフルにカフェーで休憩を楽しんでいれば。
 ぽつりぽつりと降り出した雨。
 そんな天から落ちる雨を合図に、そっと皆で足を向けたのは。
「屋上で傘か……」
 花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)が言う様に、百貨店の屋上にある展望テラス。
 そしてその手には、鯉みたいな彩りをした傘が。
 それをしゃきんと構えつつ、幽兵は雨空を見上げ言い放つ。
「ふ、鯉は空に昇る物だぜ!」
「この風に乗って参りますれば、良いのでございますね」
 ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は、ひやり霧雨混じりの風を感じながら、改めて確認するように紡ぐ。
 アンブレラマーケットで新調した傘を空へと広げて――これから臨むのは、そう。
「傘で空を飛ぶ?」
 雨空を傘で飛ぶ、冒険である。
 予め聞いていたとはいえ、でもやっぱり、いざ飛ぶとなるとちょっぴりだけ腰が引けてしまいつつも。
 鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)がおっかなびっくり咲かせてみるのは、買ったばかりの和傘。
 そして、桜色の綺麗な蛇の目傘が吹く風をつかまえれば。
「うわわわわ! やっぱり怖いでいすー!」
 ……飛んでるけど方向がちがーう!
 そう慌てるサクラコへと、咄嗟に薔薇と猫さんの傘を広げたベイメリアは手を伸ばして。
「サクラコさま! はぐれぬようお手をお繋ぎ致しましょう!」
「あわわわベイメリアさまありがとうでいす!」
 ぎゅうっとつかまれたその手を握り返せば、ちょっとひと安心。
 そして、鯉のような傘を開いた幽兵も……?
「手繋ぐのか……ん? 俺は?」
「幽兵さまはお一人でもきっとうまく飛んでいかれる事でございましょう」
 ……それこそ、鯉のぼりのように!
 そうサクラコと共に空に舞い上がるベイメリアに、さくっと置いて行かれそうになる幽兵だけれど。
「おい、スカート掴むぞコラ――」
 ――びゅうっ。
 吹く風が絶妙に空気を読んで、それ行けと言わんばかりに。
 空を泳げと、幽兵もいざ出発です!
 そんな風に乗って、暫く雨空をふわり進み征けば。
 ふわふわ眼前に浮かぶのは、小島のような大きな雲。
 それからふと、ベイメリアは聞いた話を思い返す。
「こちらの雲、本当に降り立つ事が可能なのでございましょうか?」
「ええー!? そんなふわふわに乗るんですか?」
 ふわふわな雲へとおりたって、すっぽ抜けて落ちたりなどしないだろうかと。
 そんな不安げな様子のサクラコを後目に、幽兵は首を傾けてから。
「雲降りれんの?」
 雲へと近づいて、その上に足を降ろしてみる。
「危ないかもしれんから先に降りるぞ、どっこらしょ」
 そして、ぽふりと難なく乗れれば。
 ……何なら手を貸すぞ。ほら、どっちでもこい。
 今度こそ伸ばした手で、サクラコをキャッチ!
「乗れました! でも落ち着きませんねい」
「まあ、雲、とは、このような感触なのでございますね」
 ベイメリアも、おそるおそる、足を乗せてみて。
 ふわふわぽふぽふ、何だか不思議な感覚。
 けれど暫く歩けば、雨は降っているものの、綺麗に紫陽花が咲く神社の風景が浮かび上がって。
 屋根のあるところで雨宿りをしつつも、ベイメリアは取り出して並べる。
「少し、休憩いたしましょう」
 一休みしながら、百貨店で購入しておいた紫陽花の和菓子を。
「和菓子! さすがベイメリアさま用意がいいでいす」
「ここで和菓子を? ふむ、普通では味わえない絶景だな」
 ぱっと瞳輝かせるサクラコの横で、幽兵も頷くけれど。
 ふと首を傾げ、こう続ける。
「しかし飲み物がなかったな」
 いえ……それも、心配無用。
「遠足に水筒は付き物と冷たい麦茶は用意してます」
「まあ、サクラコさま、ご用意の良い事……!」
「一つしか用意がありませんので回し飲みになりますが、遠慮せずどうぞ」
 しっかり飲み物も用意してきています!
 そしてサクラコの言葉に、幽兵の瞳がキラン。
「……回し飲み! そういうのもあるのか」
 けれどいざ、ひとつしか水筒を手渡されれば。
 そっと、ふたりを見遣りつつ、ちょっぴりどきどき。
(「無駄に緊張するな」)
 はい! ここ、ハートフルシーンです!
 そしてお茶と和菓子とハートフルを存分に堪能し、休憩し終えてから。
 サクラコは紫陽花咲く境内で仲良く寄り添う男女の姿を見つけ、ぽつりと呟く。
「和花さまたち、お二人の逢瀬こうして眺めるのは出歯亀のようでございますねい」
「なんだか、影朧をお倒し申し上げますのが憚られますね……」
 ベイメリアも、そう見つめる先にいるふたりの姿に、そう紡ぐけれど。
「和花? ああ、あの娘か。憚られる……確かにそうだが、俺達にはやらなければならない事があるかな」
 幽兵はそう言った後、ふっと決め顔で続ける。
 ――汚れ役は慣れている、任せろ、と。
 そんな決め決めな彼を後目に、サクラコもびしいっ。
「ここは数々の影朧を救ってきたサクラコの出番、良い具合に解決してあげましょう!」
「俺たち3人の連携見せてやろう」
 そしてベイメリアは、眼前に映る和花の思い出から視線を移して。
 サクラコと、何だかかっこいい雰囲気をめっちゃ醸し出している風な幽兵を交互に見つつも、頷く。
 ――お二人が、とても頼もしく感じられます、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
メノンさん【f12134】と

お待たせ!
駆け付ければ彼女の笑顔が咲き、彼女の空が咲いた。

浮かび上がるメノンさんの手に手を伸ばす。
きゅうと力む指先を離すまいと固く、柔く。
ああ大丈夫と余裕で返すも……少しっぱかり怖いけど。
雨粒に囲われ青空を広げて飛ぶ不可思議に、すっかり燥ぎだすんだ。

途中雲の小島に降り立って、お話に耳を澄ませよう。
隣で佇むお姿が、雨中の森にあらわれた。
ふふ。あなたは自然を愛し、自然に愛されているの。
葉を叩く露玉のダンス。生命の水に緑薫る其処で、メノンさんが微笑んでいるから。

俺の好きなもの、知りたいの?
それなら教えてさしあげる。
いいえお願い。聴いてほしいの。
俺が好きな、──は…………


メノン・メルヴォルド
バンリちゃん【f10655】と


心待ちにしていた人を笑顔で迎えて
青空の傘を広げるのよ

ふわり足元が浮く
きゃっ…バンリちゃん!(手を差し出し

不器用だからバランスを取るのが難しくて、よろり
思わず繋ぐ手にチカラが入ってしまう
…バンリちゃんは、大丈夫?

ん、一緒なら怖くはないの
伝わる温もりに微笑んで
慣れてくれば漸く楽しむ余裕
すごい、の!

少し寄り道
自分の記憶にある森の中の風景
ワタシ、ね…雨も好きなの
雨音や雫の跳ねる音、木々が揺れる音
心が落ち着くのもあるけれど、自然の息吹を感じるから、かしら

バンリちゃんは?
アナタの好きなものも、知りたい、な

傍らで話を聞いてくれる優しい彼女を見つめ
ナイショ話をするように耳を寄せる



 一番そわそわして、そしてぱあっと笑顔が咲き誇ってしまう瞬間。
 ――お待たせ! って。
 来てくれたバンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)……心待ちにしていた人を迎えることが、嬉しくて。
 メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)は駆けてくる彼女を迎えつつも、雨空へと咲かせる。
 青空が広がる、買ったばかりの傘を。
 刹那、メノンだけの小さな空が、一陣の風をつかまえて。
 ふわりと足元に感じる、浮遊感。
「きゃっ……バンリちゃん!」
 咄嗟に伸ばされたその手に、バンリもすかさず手を伸ばし返して。
 きゅうと力む指先を確りと優しく絡ませる。離すまいと固く、柔く。
 それから何とか、風には乗れたものの。
 メノンはふらりよろりと、不安定に揺れる。
 不器用だからバランスを取るのがなかなか難しくて。
 だから、繋いだ手にも思わずぎゅぎゅっとチカラが入ってしまって。
 そうっと彼女を見つめながら、訊ねてみる。
「……バンリちゃんは、大丈夫?」
「ああ大丈夫」
 そう頷いて返すバンリがみせるのは、さすがの余裕……?
(「……少しっぱかり怖いけど」)
 いえ、怖いなんて思っていることは、秘密だし。
 ぐるりと周囲を見回してみれば、すっかり燥ぎだしてしまうから。
 雨粒に囲われ青空を広げて飛ぶ、この不可思議に。
 そして、繋いだ手から伝わる温もりがじわりと混ざり合うのを感じながらも。
「ん、一緒なら怖くはないの」 
 メノンは、ほわりと微笑んで。
 少し空を飛ぶ感覚が掴めて、慣れてくれば。
「――すごい、の!」
 巡らせる瞳をキラキラ、漸く雨空の冒険を楽しむ余裕が。
 けれど、お空の散歩ばかりではちょっぴり疲れちゃうから。
 ほわほわ浮いている雲の小島に、少し寄り道を。
 そんな雲の小島に映る風景は――森の中。
 それは、メノンの記憶にある風景。
「ワタシ、ね……雨も好きなの」
 そう、ぽつりと言の葉を降らせ始めた彼女の話に、バンリは耳を澄まして。
「雨音や雫の跳ねる音、木々が揺れる音。心が落ち着くのもあるけれど、自然の息吹を感じるから、かしら」
「ふふ。あなたは自然を愛し、自然に愛されているの」
 隣で佇む姿を、雨中の森にも見つければ、自然と零れる笑み。
 だって――葉を叩く露玉のダンス。生命の水に薫る緑。
 其処で、メノンが微笑んでいるのだから。
 それからふと、メノンは傍らで話を聞いてくれる優しい彼女を見つめて。
「バンリちゃんは?」
 そう、訊ねてみる。
 ……アナタの好きなものも、知りたい、な、って。
 そんなおねだりに、バンリは瞳を細めてから。
「俺の好きなもの、知りたいの? それなら教えてさしあげる」
 けれどすぐに、ふるりと首を振った後、こう言い直す。
 ……いいえお願い。聴いてほしいの、って。
 そして、雨音が聴こえる小さな青空の下で。
「俺が好きな、――は…………」
 耳を寄せてそうっと、ふたりだけのナイショ話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宇津木・絋
【POW】

ん……やっと行けるんだね。
甘味も食べられたし、その分ちゃんとお仕事、やりにいかないとね。

自前の、模様も何も無い、ただただ真っ白な傘を手に、空へ。
雲の小島には目もくれず、まっすぐ影朧の元へ。

……とは言っても空を飛ぶとかあんまりしたことないから、最初は慣れない感覚にフラフラしちゃう……かも。

でもだんだん風に揺られて行く感覚が……気持ちよく感じるようになって……寝そうに……あっ(傘を手放しそうになるも、腕が変化した茨で傘の持ち手に捕まる

落ちるかとおもった……こんな体になったのを良かったって思う日が来るなんてね……



 最後のお楽しみにとわくわく残していた、一等甘いケーキに飾られた紫陽花チョコをはむりと口にしてから。
 白い野薔薇が再びほわほわ、ぽぽんっと咲いた後。
 ようやく目を向けた窓の外の景色を見て、宇津木・絋(微睡む野薔薇の揺籃・f31067)は呟きを落とす。
「ん……やっと行けるんだね」
 先程までは降っていなかった雨が、いつの間にかぽつぽつと降り出していて。
 雨の帝都を飾るのは、幻朧桜と紫陽花と、人々がさす傘の花。
 そんな外の景色を眺めるのもそれなりに。
(「甘味も食べられたし、その分ちゃんとお仕事、やりにいかないとね」)
 絋が向かうのは、展望カフェーからほど近い階段から行ける、屋上の展望テラス。
 雨が降り出した屋上は、一般客の姿は勿論、誰のものもなかったけれど。
 ぽんっとおもむろに咲かせるのは、やっぱり白い花。
 花は花でも、雨空に絋が咲かせたのは……自前の、模様も何も無い、ただただ真っ白な傘の花。
 そして手にした真白の傘が風をつかまえれば、ふわりと空へ。
 風に身を任せていれば、時々ぽかりと浮いている雲の小島を見かけたけれど。
 そんな雲たちには目もくれずに、まっすぐ影朧の元へと浮かう絋。
 ……いや、とは言っても。
(「空を飛ぶとかあんまりしたことないから、慣れない感覚にフラフラしちゃう……」)
 最初はちょっぴり、ゆらゆらフラフラ、バランスを取ることになかなか慣れない。
 でも、だんだん風に揺られていくこの感覚を、気持ちよく感じるようになって。
(「……寝そうに……」)
 ついうとうと、こてり。
 大きく揺れた――瞬間。
「……あっ」
 刹那、空に咲かせた傘を手放しそうになるも。
 咄嗟に腕が変化した茨が、傘の持ち手をがっしりとキャッチ!
 そしてしゅるり再び傘をその手に引き寄せつつ、絋はホッと安堵するけれど。
「……落ちるかとおもった……」
 でも同時に、雨空をふわふわと飛びながら、思わず苦笑もしてしまうのだった。
 ――こんな体になったのを良かったって思う日が来るなんてね……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャト・フランチェスカ
【紫桜】

ひとりまた一人浮かび上がって空を歩く
飛べるんだ、本当に
揃いの傘を開き、千鶴の瞳を見上げ
屋上から飛んだら
僕の小説では墜落死にしかならないよ…
怖くない?
なんて手を伸ばし
ふふ、でーと…って、思っていいの?

雲が見せる風景は
雪に成りそこねた酷く冷たい雨
僕が目を覚ました冬の日
己を識らぬ儘
生きていかなければならないことを悟った
空虚な決意

…千鶴、千鶴
底冷えするような記憶を振り払い
きみが今ここに居るのを知りたくて
僕はその大切な名と、指先に縋る

今は
迎えに来てくれる人が
待っててくれる人が
名を呼んでくれる人が居るから

傘の内側には満開の桜
僕こそ有難う
雨に潤むのは土ばかりでなく
きっと、心も

うん
僕も、その先へ往くよ


宵鍔・千鶴
【紫桜】

屋上から踏み出す一歩は
ぎこち無く霄へ旅立つ
きみと揃い傘をくるり廻して
悲劇の死の物語も然りだけど
怖くないよ、此れでね
伸ばしてくれた手を握り返して
空の上でデートなんて
ロマンチックじゃない?なんて

雲に視せられるのは
泥濘む地に、冷たい雨を浴びて
咆哮する己
泣くことしか出来なかったモノ

名を呼ばれ忘れた息を吐く
彼女の視線に応えるように
重ねるのは指先とこころ
…シャト、
傍に居てくれて、有難う
きみが縋ってくれるから
俺もきみに甘えられる

見上げた傘の空は桜が咲くから
雨が降っても
もう冷たさは感じないし
いつか、降り止むだろうと
希望を持てるようになれた気がする

シャト、行こう
きみの手を引ける自分で在れるように



 ぽつりぽつりと雨が降り始めれば、それが冒険のはじまりの合図。
 そしてふたりが足を向けるのも、大きな百貨店の中で空に最も近い場所。
 屋上の展望テラスへとやって来たシャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)は、霧雨降る天を仰いで。
「……飛べるんだ、本当に」
 思わずそう呟きを落とすのは、シャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)。
 見上げる空は、灰色の雨雲に覆われているけれど。
 ぱっと咲いた鮮やかな傘の花たちが、雨空に彩りを添えて。
 ひとり、また一人と浮かび上がっては空を歩くその姿。
 予知で聞いてはいたのだけれど、でもやはり、実際に空を飛ぶなんてことは夢物語のような気がして。
「屋上から飛んだら、僕の小説では墜落死にしかならないよ……」
 ……いや、物語でも、ものによっては普通に事件になってしまうもの。
 そして、そんなことを紡ぎながらも、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の瞳を見上げて。
 シャトが咲かせるのは、彼と揃いの傘。
 それからふと手を伸ばしてみる――怖くない? なんて。
 千鶴もくるり、彼女と揃いの傘を廻して。
 刹那、吹いた風をつかまえて、屋上から踏み出すその一歩は……ふらり、ちょっぴりぎこちなくはあるけれど。
「悲劇の死の物語も然りだけど。怖くないよ、此れでね」
 伸ばしてくれた手を握り返して、共に霄へ旅立つ。
「空の上でデートなんて、ロマンチックじゃない?」
「ふふ、でーと……って、思っていいの?」
 なんて、ふたりで笑み咲かせながら。
 そして暫くは、傘任せの風任せ。
 ふわりゆらりと雨空のデートと洒落込んでいたのだけれど。
 風の悪戯か……ふと降り立ったのは、雲の小島。
 雲が見せる風景は、誰かの雨の日の記憶だというけれど。
 ふたりがみるのは――くらくて、つめたい。
 シャトはそれに、覚えがあった。
 身を静かに打つのは、雪に成りそこねた酷く冷たい雨。
(「……僕が目を覚ました冬の日」) 
 その時、シャトは悟ったのだ。
 己を識らぬ儘、生きていかなければならないことを。
 それは、そう――空虚な決意。
 そして千鶴は、ないていた。
 いや、眼前に在るのは、咆哮する己。泣くことしか出来なかったモノ。
 泥濘む地に、冷たい雨を浴びて。
 ――けれど。
「……千鶴、千鶴」
 底冷えするような記憶を振り払い、シャトは彼の名を呼ぶ。
 きみが今ここに居るのを知りたくて……そして、縋りたかったから。
 大切なその名と、触れる指先に。
 ……違う。この時とは。
 だって今は、ちゃんと居るから。
 迎えに来てくれる人が。
 待っててくれる人が。
 名を呼んでくれる人が。
 そしてその名を呼びたいと思う人が、居るのだから。
 そんな雨音の中、幾度も響いた己の名に。
 千鶴はふっと、忘れていた息を吐いてから。
「……シャト、」
 彼女の視線に応えるように――重ねるのは、指先とこころ。
 千鶴は彼女の名を呼んでから。そして、紡ぐ。
「傍に居てくれて、有難う」
 ……きみが縋ってくれるから、俺もきみに甘えられる、って。
 シャトも、冷たい雨ではなく、はらりと傘の世界に降る満開の桜の下で。
「僕こそ有難う」
 彼に告げつつも、思う。
 雨に潤むのは土ばかりでなく――きっと、心も、って。
 だって、見上げたふたりだけのお揃いの空には、雪解けを告げる春の花が咲いているから。
 だからもう、冷たさは感じないから。
 千鶴も、こころに咲く言の葉を紡ぐ。
「いつか、降り止むだろうと。希望を持てるようになれた気がする」
 そしてそれは、シャトだって同じだから。
 彼の言葉にこくりと頷いて、その指先をそっと伸ばす。
 ――うん。僕も、その先へ往くよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獄卒将校』

POW   :    獄卒刀斬り
【愛用の軍刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    影朧軍刀術
自身に【影朧の妖気】をまとい、高速移動と【影朧エンジンを装着した軍刀からの衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    同志諸君!
【かつて志を同じくした帝都軍人】の霊を召喚する。これは【軍刀】や【軍用拳銃】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雨脚が、強まってきた。
 ふたりはゆるやかに、でも確実に、距離を縮めていって。
 言の葉には綴らないけれど、互いに想っていた。
 ――この人と、一生を添い遂げたい、と。
 けれどふたりの間では何の問題もなかったけれど。
 和花の親が、それを良しとしなかった。
 彼女の父は貿易業を生業としたいわゆる成金の富豪、軍人である彼ではなく、商業の人脈となるような相手との結婚を望んでいた。
 勿論、家業をさらに拡大させるためでもあったが、父親として娘が不自由なく暮らせる、そんな幸せも願ってのこと。
 だからふたりは――今、彼女が辿り着いた、帝都の外れの山間にあるあばら家でおちあうことが多くなった。
 女性の足では、山を登ることは辛かっただろうけれど。
 それよりも、彼と会いたい――そう思う気持ちの方が、ずっと強かったのだ。
 だが……あの日も、この場所で、そして同じように雨が降っていた。
『戻ってきたら、一緒になろう』
 そう告げて軍人としての任務へと向かった彼は、戻ってはこなかった。
 そして彼が任務中に命を落としたことが彼女の耳に入ったのは、奇しくも父の情報網であった。
 父はそんな娘を心配し、良い縁談をいくつか持ちかけたりもしたけれど。
 勿論、和花の心が動く事などなく。
 いつか彼が戻ってくるのではないかと、この場所に通い続けたのだ。
 彼に貰った、紫陽花の傘をさしながら。
 けれどある日――彼は、この場所に戻って来たのだ。
 そして、ここまで登るのは大変だろう、と……雨の日に架かる道を作ってくれた。
 雨の帝都を見下ろせる、よく二人でデェトした百貨店の屋上で傘をさしてごらん、って。
 だから今日も和花は彼に会いに、雨空を飛んでやって来たのだ。
 和花はぽたりと紫陽花の傘を閉じ、いつもの様に、何もない奥の広間で雨の景色を眺めている彼へと、声を掛ける。
「博樹さん。貴方の好きな百貨店のお饅頭、買ってきました」
 彼が好きだったものを、いくら毎回土産に持っていって、置いて帰っても。
 それが食べられていることが一切ないことに、気付いていながら。
 いや……気付かないふりをしながらも、今日も和花は雨彩に願うように謳う。
 ――もう離れたくない……ずっと一緒にいてくださいね、って。
真宮・響
【真宮家】で参加

ああ、事情は良く分かる。アタシの実家も名家で、アタシは箱入りだった。いずれは良家の子息と結婚する人生だったんだろう。

・・・まあ、夫と駆け落ちして今にいたるが、和花の場合は相手が軍人のこともあって世界の状況がそうさせなかっただろうね。今の状況では和花が命を落としかねない。やるしかないか。

和花の安全の確保は奏に一任。アタシは【目立たない】【忍び足】で敵の背後に回り、【オーラ防御】【残像】【見切り】で敵の攻撃を凌ぎ、敵の攻撃の軌道を【戦闘知識】で見切り、【カウンター】気味に【気合い】【怪力】で浄火の一撃を。

逢瀬を邪魔して悪いが、今のアンタは影朧だ。悪く思わないでくれ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

はい、亡くなった愛する方の傍に居たい気持ちは分かります。将来を誓った相手なら尚更です。でも、和花さんも察しているようですが、この方はこの世にいてはいけない存在なんです・・・いずれ博樹さんが和花さんを手にかける可能性も否定できませんので。

風の妖精騎士を囮に【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】で防御を固めながら、和花さんを影朧の元から離すのに注力します。少々手荒くなりますが、和花さんを抱えてでも引き離しますよ。和花さんを【かばう】しながら説得します。良く見てみてください。貴方の愛する博樹さんは、あんな凶悪な振る舞いをする方でしたか?


神城・瞬
【真宮家】で参加

僕もヴァンパイアの父と人間の母との間に生まれた身ですし、色々と困難のある愛する方と一緒にいたい気持ちは凄く良くわかるんですが、目の前にいる方は影朧です。博樹さんの姿をしていても害を及ぼす存在ですので。

想い人が拘束される姿を和花さんに見せたくないですね。いつもの結界は控えましょう。その代わり、月読の同胞にて召喚される軍人に真正面から立ち向かいます。僕は【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を併せた【援護射撃】で同胞の攻撃を援護します。攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。念のために【オーラ防御】【結界術】で和花さんを保護しときましょう。



 霧の様な小雨も、気付けば本降りになっている。
 傘が導いた空の先、そこは静かな帝都の外れにある山の中であった。
 そして眼前には、こんなに雨が降れば雨漏りするのではないかというほど古びた、あばら家。
 金持ちの別荘か何かだったのか、帝都を一望する高台にあるその造りは、それなりに豪華であった片鱗はあるけれど。
 今はただのだだっ広い廃屋になりかわり、雨が激しく打つ音がする度に、今にも朽ちて崩れそうである。
 けれど、だからこそ……誰も、自分たち以外にこの場を訪れることはなかった。
 ――はずなのに。
 廃屋の最奥で、雨の帝都を眼下に臨む窓の外をただ見つめていた男が、ハッと顔を上げる。
 その様子に気付いて、彼女……和花はふと首を傾けるけれど。
「博樹さん? ……えっ、貴方達は……!?」
 ふたりだけで過ごす、静かな雨の日のひととき。
 でも今日はそうはいかないと、ようやく気付くのだった。
 自分を追って空の道を翔けて来た、猟兵達の存在に。
 そして猟兵達が何を成す為に、此処にやって来たかを。
 想いは通じ合っているのに、結ばれることを良しとされなかったふたり。
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、素早く廃屋へと家族と共に踏み込みながらも――ああ、事情は良く分かる、と。
 和花を見て、そうふと昔の己と重ね合わせる。
「アタシの実家も名家で、アタシは箱入りだった。いずれは良家の子息と結婚する人生だったんだろう」
 けれど、響はそんな人生を歩まなかった。
(「……まあ、夫と駆け落ちして今にいたるが、和花の場合は相手が軍人のこともあって世界の状況がそうさせなかっただろうね」)
 響が選んだのは、結ばれたいと思った相手と歩む人生。
 それまでの何不自由なかった名家の箱入り娘であった生活よりも、そう選択したのだ。
 けれど勿論、自分達と眼前のふたりの、置かれている状況や世界も異なるし……それに、何よりも。
(「今の状況では和花が命を落としかねない。やるしかないか」)
 彼女の元へと戻って来た彼は、影朧なのだから。
 このような静かな逢瀬も、きっと近い未来、悲劇にかわってしまうだろう。
「貴方達は……私達を、引き離しに来たの?」
 警戒する様にそう言葉を紡ぐ和花。
 そんな彼女へと声を掛けたのは、真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
「はい、亡くなった愛する方の傍に居たい気持ちは分かります。将来を誓った相手なら尚更です」
 奏はまだ自分自身がそういう経験をしたわけではない。
 けれど分かるのは……奏が、共に歩もうと将来を誓い合った父と母の間に生まれた子だから。
 いや、和花だってきっと分かってはいるのだ。
「でも、和花さんも察しているようですが、この方はこの世にいてはいけない存在なんです……いずれ博樹さんが和花さんを手にかける可能性も否定できませんので」
 奏が言うように、戻って来てくれた彼が、以前の彼ではないと言う事は。
 神城・瞬(清光の月・f06558)も、黙ってしまった和花へと言葉を届ける。
「僕もヴァンパイアの父と人間の母との間に生まれた身ですし、色々と困難のある愛する方と一緒にいたい気持ちは凄く良くわかるんですが、目の前にいる方は影朧です」
 困難のある愛。周囲がどう言おうと、どんな境遇であろうと、惹かれ合った者同士の心が容易く離れることはないのだろう。
 戻れなくなっても尚、こうやって彼女に在る博樹の姿をみれば。
 けれど瞬は、はっきりと現実を告げる。それは、彼ではないと。
 ――博樹さんの姿をしていても害を及ぼす存在ですので、と。
 そんな3人の声に、和花はふるりと小さく首を振るけれど。
「私は……それでも、彼と一緒にいたいの。ね、博樹さ……! きゃっ」
 刹那、小さな悲鳴を上げる。
 スラリと刀を抜いた博樹が、3人目掛け大きく地を蹴ったから。
 そして彼がまず狙うのは、和花と同じ女性のふたりではなく、男性である瞬。
 戦場に現れるのは、軍刀や軍用拳銃を手にした、かつて彼と志を同じくした帝都軍人の霊。
 けれどそんな軍人霊たちに慌てる事など一切なく。
「想い人が拘束される姿を和花さんに見せたくないですね。いつもの結界は控えましょう」
 ――月読の同胞、力を借ります!!
 その代わり、真正面から立ち向かうべく瞬は召喚する。月読の同胞を。
『……!』
 博樹は思わぬ月読の同胞達の反撃に、瞳を大きく見開いて。
 けれど退く事なく、進軍を指示するけれど。
 そんな軍人霊の振るう刀の斬撃を守りの気を漲らせ防ぎ、放たれる銃弾を第六感をもって躱しながらも。
 瞬は正面から敵に相対する月読の同胞を、もてる技能をいくつも駆使した誘導弾で援護して。
 念のためにと、和花にも結界術で守りの気を纏わせ、保護しておく。
 そしてそんな彼女が戦闘に巻き込まれないようにと。
 ――風の妖精さん、力を貸して下さい!!
「! 博樹さん……っ」
 和花を影朧の元から離すのに注力するべく動くのは、奏。
 風を纏う妖精騎士を囮にして、己の成せる技能を使ってしっかりと防御を固めながら。
(「少々手荒くなりますが、和花さんを抱えてでも引き離しますよ」)
 戦闘の余波が及ばぬ場所まで、強引に彼女を避難させる。
『和花……、っ!』
 そんな彼女へと、影朧は一瞬意識を向けるけれど。
 目立たぬよう忍び足で背後に回っていた響に気付き、咄嗟に獄卒刀斬りを繰り出すも。
 ――その邪な心、アタシの情熱で焚き上げてやるよ!!
 その斬撃を守りの気を纏い、残像を成して見切って凌いだ響は、気合と怪力を乗せたカウンターの一撃を逆にお見舞いする。
 燃える情熱を籠めた、邪心を打ち砕く浄火の一撃を。
「逢瀬を邪魔して悪いが、今のアンタは影朧だ。悪く思わないでくれ」
「博樹さん……!」
 息の合った家族の連携で揺らぐ影朧に、堪らず声を上げる和花だけれど。
 奏はそんな彼女を庇いつつも、説得するようにこう言葉を紡ぐ。
「貴方の愛する博樹さんは、あんな凶悪な振る舞いをする方でしたか?」
 ――良く見てみてください、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
幸せの形は人それぞれ。駆け落ちでもなんでも、俺が口を挟むべきじゃない
……が、相手が影朧なら話は別だ
悪意の有無に関わらず、その存在は世界に悪影響を与える。だから、あんた達には悪いが、倒させてもらう
――それに、生者にとっても死者にとっても、過去に拘り続けるのは良いことではないだろう……というのは口には出さないけれど

傘を畳んで、適当な所に仕舞った代わりに鉄刀を抜き、捌の型【水鏡】の構え
自身の刀の動きで敵の太刀筋を誘導、受け流して反撃。まずは確実にダメージを与えていく
敵が焦れて大振りで仕掛けてきたなら、冷静に見切り、大きく弾き飛ばす
隙を作った所で、力強く切り込んで渾身の一撃を叩き込む

……悪いな、本当に



 誰もが、幸せになりたい、幸せになって欲しいと……そう、それぞれが願った結果。
 互いにその思いがすれ違ってしまう、そういうことは珍しくはない。
 和花と博樹の一緒になりたいという想いも、娘の幸せを願い反対したという彼女の父の気持ちも。
 とはいえ、理想はやはり、本人たちが良いようにすることかもしれない。
 たとえどんな困難が待ち受けていても、共に歩んでいこうと、自分達で決めたことならば。
 けれど、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、そこに言及する気はない。
(「幸せの形は人それぞれ。駆け落ちでもなんでも、俺が口を挟むべきじゃない」)
 ふたりの選択に異を唱える気も、逆に大手を振って賛同する気もない。
 その人にとって何が幸せかなんて、他人が……ましてや自分が干渉する筋合いなどないから。
 ――けれど。
 すぐに鏡介は、そっと首を横に振って紡ぐ。
「……が、相手が影朧なら話は別だ」
 これがただの男女の逢瀬であるならば、踏み込むなんて野暮なことはしない。
 だが、眼前に在る彼は、和花の知る博樹ではもうないのだ。
 それは彼女も頭のどこかでは分かっているだろう。この世界で生まれ育った者ならば。
 だから鏡介は、はっきりと言葉にする。
「悪意の有無に関わらず、その存在は世界に悪影響を与える。だから、あんた達には悪いが、倒させてもらう」
 ふたりは共に在れない、在ってはならないことを。
 そして真新しいシンプルな黒い傘から、刹那抜いた、何の変哲もないが使い込まれた刀へと持ち替えつつも。
(「――それに、生者にとっても死者にとっても、過去に拘り続けるのは良いことではないだろう……」)
 殺気纏い軍刀構える影朧と、そんな彼を不安げに見つめる彼女へと視線を巡らせつつも鏡介は思う。口には、出さないけれど。
 そんな鏡介が鉄刀を手にし、取る構えは――捌の型【水鏡】。
 踏み込み振るわれる影朧の太刀筋を、自身の刀の動きで誘導して。
 ひゅっと鋭い風を鳴らし、受け流して刃を返していく。
 まずは確実にと、そんな生じた隙をついて斬撃を繰り出してくる鏡介の立ち回りに、影朧は微か顔を顰めながらも。
『お前も……俺達の邪魔を、するのか』
 刹那、ぐっと握る軍刀から放つは、強烈な獄卒刀斬り。
 けれどむしろ引くどころか、鏡介はしっかりとその太刀筋を見据えて。
『……! は、っ』
 斬撃を見舞わんと唸りを上げる軍刀を大きく弾き飛ばした瞬間。
 生じた敵の隙目掛け、力強く切り込む。
 そして決して手を抜くことなどなく、容赦なく渾身の一撃を叩き込みつつも。
 激しくあばら家の屋根を打つ雨音と、彼を呼ぶ悲痛な彼女の声を聞きながら。
 ぐらりと堪らず揺れる彼へと、鏡介はこう、言の葉を落とすのだった。
 ……悪いな、本当に、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「例え幸せな夢だったとしても、夢の中でずっと生きていくわけにはいかないのよ。だって」

それは生きていないのと同じなのだから。

銃を構えて立ち向かう。
WIZだから敵はかつての同志を呼び出すのね?
なら霊たちごとユーベルコード【マルチプルバレット】の500発の弾幕で撃ちぬくわ。
相手の攻撃は可能な限り見切って、直撃弾だけオーラ防御で凌ぐ。
「こんなことに呼び出すなんて、同志への冒涜じゃないかしら」

いっしょに居たい…叶わぬだけでなく害となる夢は覚ましてあげましょう。
例えそれが望まぬものだったとしても。
だってそれが私たち猟兵のお仕事なのだから。



 屋内にいたことが多かったヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)にとっては、雨というものに対して思い入れなどはないけれど。
 眼前のふたりの思い出を彩り、奏でてきたという雨の音。
 空を翔けていた時は、それはひやりとまだ心地良い程度のものであったけれど。
 いつの間にかその雨脚は強まり、今にも崩れそうなあばら家の屋根を容赦なく打っている。
 まるで、これからの激しい戦闘を彷彿とさせるかのように。
 いや、雨の景色や音は、ふたりだけの世界に浸れるものなのかもしれないけれど。
 いつかは雨は止むものであるし。
「博樹さん……! いやよ、もう離れるのは……」
 他の猟兵によって安全圏へと保護されつつも、そう声を上げた和花に。
 ヴィオレッタは視線を向けて、告げる。
「例え幸せな夢だったとしても、夢の中でずっと生きていくわけにはいかないのよ。だって」
 ――それは生きていないのと同じなのだから、って。
 彼女だって、本当は分かっているのだ。
 眼前の彼が、自分が愛した博樹ではないことを。
 この世界に存在してはいけない影朧だということを。
 けれどやはり、それでも……帰ってきた彼と一緒にいたいと。
 そう思ってしまうのだ。それが、ヴィオレッタの言うように、幸せな夢であると知りながらも。
 だが、ヴィオレッタは躊躇することなく、彼へと銃口を向けて立ち向かう。
 そんな姿に影朧は殺気を漲らせ、戦場に召喚するのは、軍刀や軍用拳銃を持った帝都軍人の霊。
「敵はかつての同志を呼び出すのね?」
 ヴィオレッタは軍人の霊たちを見遣り、そう紡いでから。
 ――遠慮しないで受けてみなさい。
 なら霊たちごと撃ちぬくわ、と……撃ち出すのは、雷の如き500発の弾幕。
『……く、っ!』
 次々と撃ち倒されていく軍人霊の様に顔を顰めつつ、影朧も引き続き指示を出し仕向けてくるけれど。
 可能な限りそれらを見切り、直撃弾だけ守りの気で凌ぎながら、ヴィオレッタは口にする。
「こんなことに呼び出すなんて、同志への冒涜じゃないかしら」
 そして容赦なく、握る銃の引き金をぐっと引く。
「いっしょに居たい……叶わぬだけでなく害となる夢は覚ましてあげましょう。例えそれが望まぬものだったとしても」
『……!』
 瞬間、雨の音をかき消すほど激しい雷の銃弾をその身に受けて。
 大きく揺らぐ彼へと、ヴィオレッタは続ける。
 ――だってそれが私たち猟兵のお仕事なのだから、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
かれとともに降り立ったそこに見えるものをみとめて
繋がれたおおきな手が強く握ってくるのを感じればかれを見上げましょう
その思いつめたような横顔が何を考えているのかが、少しわかる気がして

大丈夫ですよ、ザッフィーロ
ひとりにはしませんし、ひとりにはなりません
ええ、そして長い永い時をともに過ごすのです
そう背中を押すように微笑んでから
前へと歩む彼の背を見て

敵には「高速詠唱」でつむいだ【ハイ・グラビティ】を仕掛け
身動きを封じられれば
目論見が成功したならかれへと合図を
ええ、もちろんです
僕とかれはこれからもともに、歩みゆく予定ですから
―――あなたを乗り越えて、ね


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と共に降り立てば手を繋ぎつつ飛んできた傘と宵を見遣りながら周囲を見回そう
大事な者が戻ってくる、か
ふと脳裏をよぎった前所有者の顔と共に、宵を亡くす想像をしてしまえば思わず繋いだ手に力をこめてしまうも
宵の言の葉を聞けば自然と硬くなっていた表情が僅かに緩むやもしれん
そうだな。朽ちる時は共に、だったな
そう声を投げれば前衛に立つよう足を進めメイスを構えよう

戦闘時は足元から伸ばした【穢れの影】にて敵の動きを止めんと試みつつ『怪力』を乗せたメイスで攻撃を
軍人たちが召喚されたならば盾を構え宵と己を『かばい盾受け』を
これから長い悠久の時を宵と過ごす予定ゆえに
ここでやられてやる訳にはいかんのでな



 傘に咲いた二輪の花たちのように寄り添い、しっかりと手を繋いで。
 ひとつの傘をふたりで手にして翔けてきた空に降る雨は、霧の様にひやりと心地良かったくらいであったが。
 再び地へと降り立ち、辿り着いた廃屋へと共に足を踏み入れたと同時に。
 小雨から本降りになったのだろう、急に聞こえてくる雨音が激しくなる。
 そんな雨の音を耳にしながら傘を閉じ、あばら家の最奥へと足を踏み入れれば。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)の星纏う瞳に映るのは、仲間達に保護されつつも、愛し合った人の姿をした影朧の名を呼び続ける女性の姿。
 ……もうなくすのはいや、と。
 それからふと、隣のかれ――ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)を微か見上げる。
 繋がれたその手から宵は感じたから。おおきなかれの手が、ぎゅっと……より強く、己の手を握りしめたことを。
(「大事な者が戻ってくる、か」)
 ザッフィーロがそっと銀の視線を落とすのは、宵の手に握られた、まだ雨粒落ちる傘。
 そして傘と宵を見遣った後、周囲を見回せば……ふと脳裏をよぎり、思わず繋いだ手に力をこめてしまう。
 前所有者の顔と共に、宵を亡くす想像をしてしまって。
 ふたり一緒であれば空を飛ぶことだって一切不安はなかったし、共に在る日常の風景を見れば改めて幸せだと心から感じた。
 でも、だからこそ……別たれる時のことを思えば、眼前の彼女達の姿に自分達が重なる部分もあって。
 どうしても、複雑な想いが心の中に生じてしまう。
 ……でも。
「大丈夫ですよ、ザッフィーロ」
 耳に届いたのは、美しく柔らかに響く宵の声。
 再び自分へと向いた銀の瞳を見つめながら、宵はかれへとこう続ける。
「ひとりにはしませんし、ひとりにはなりません」
 宵には少しわかる気がしたから。その思いつめたような愛しいひとの横顔が、何を考えているのか。
 そして彼の言の葉に、自然と硬くなっていたザッフィーロの表情も僅か緩んで。
「そうだな。朽ちる時は共に、だったな」
「ええ、そして長い永い時をともに過ごすのです」
 そう微笑み頷いた宵に背中を押されるように、前へと出てメイスを構えれば。
 そんなかれの背を見て、宵も星の如く煌めく魔力を空へと編み出し紡いでいく。
『……邪魔をする者は排除するのみ』
 刹那、影朧が戦場に召喚するのは、軍刀や軍用拳銃を手にした帝都軍人の霊たち。
 けれど咄嗟にさらに躊躇なく前へと出て、構える盾で宵と己を守りながらも。
 ――赦しを求めぬ者には何も出来ぬ。……生きる限り纏わり積もる人の子の穢れを今返そう。
 足元からザッフィーロが伸ばすのは、その身に溜めた、赦しを与えてきた人々の罪と穢れの影。
『! くっ』
 そんな己の身体を捉えんと迫る影に、影朧は抗わんとするも。
 ――星元来の重力を生み出すのは少々骨が折れるので……動かないでいただけますか。
 宵が高速詠唱でつむぎ上げ、すかさず放つのは、宵色と星の杖の先端から放たれた不可視の重力波。
 そして敵の身を地面へと押さえつければ、かれへと合図を。
『ぐ……ッ!』
 同時に、怪力を乗せて振り降ろされた強烈なメイスの一撃が、動きを封じられた影朧へと容赦なく叩きつけられる。
 そして自分達へと迫る軍人霊達を薙ぎ払い、叩き伏せて。
「これから長い悠久の時を宵と過ごす予定ゆえに、ここでやられてやる訳にはいかんのでな」
 そう紡ぐかれと共に、絶妙の呼吸で敵の群れへと仕掛け、攻撃を見舞っていきながらも。
 ええ、もちろんです、と……宵は再び、こくりと強く頷く。
 ひとよりも長いものであるとはいえ、いつかは朽ちる時がくるだろう。
 けれども、それでも自分達は別たれない。
 朽ちる時は共に……そして傍に在り続け永久を揺蕩う、その時までは。
「僕とかれはこれからもともに、歩みゆく予定ですから」
 宵はそう己の盾となるかれの背を守りながら、星降る宙のいろを細め続ける。
 ――あなたを乗り越えて、ね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

世母都・かんろ
【烟雨】
和花さんの心を動かせるよう声掛けを

離れ、たく、ない、気、持ち
す、こし、わか、り、ます
でも
このま、ま
あな、たの、心、が、止まって、いた、ら
博樹さん、も、困って、しま、う、わ

だって本当は
わかっているはずだから
これは、後押しのお別れの歌
【歌唱、浄化、全力魔法、パフォーマンス

♪明日はあおいろ明後日むらさき
きみが回したあじさいの色
涙の味が沁みるのは
もうすぐ梅雨が明けるから

明日はしろいろ明後日ピンク
てるてる坊主がゆらゆらと
雨が胸に沁みるのは
もうすぐきみが眠るから
もうすぐ虹が、見えるから♪

歌で雨が叶さんと管狐を濡らさぬよう意識しつつ水たまりを作る
【天候操作

和花さんが彼を想うなら
転生を願ってほしくて


雲烟・叶
【烟雨】

彼女のことは甘露のお嬢さんにお任せしましょうかね
という訳なんで、男同士ちっとばかし話しましょうよ、影朧の君

召喚された帝都軍人たちは管狐たちにお任せしますよ
お話の間、ちと頑張ってくださいね

離れたくなかった、それは当然のことでしょうねぇ
でも、死後に舞い戻って来ることに問題がないとは、流石に思ってらっしゃらねぇでしょう?
このままだと、彼女は精神を狂わせることになるでしょう
今まで、影朧に心を砕いたひとたちのように

……愛してらしたんでしょう
死後も忘れ得ぬほどに
なら、きちんとお別れして差し上げてくださいな
お別れして、また何時か、新しいあんたで戻っていらっしゃい

【呪詛】で、そっと眠るような終わりを



 ふわりと傘が風をつかまえて、心躍る雨空の道を踊るように翔けたその先。
 そこは、気が付けば本降りになってきた雨を凌ぐのがやっとではないかと思ってしまうような、山間の古びたあばら家であった。
 けれどふたりにとっては、関係を咎められる帝都よりもずっと、心安らぐ場所であるのだろう。
 いや……心安らぐ場所であった、のだと。
「博樹さん……!」
 響くのは、愛する人の名を呼ぶ、和花の声。
 けれど彼と引き離され猟兵に保護されている彼女は、今にも彼に駆け寄らんとしつつも……その足は留まったまま。
 目の前で殺気漲らせ刀振るう影朧の姿を、真っ直ぐに見つめながらも。
「離れ、たく、ない、気、持ち。す、こし、わか、り、ます」
 そんな和花の心を動かせるようにと、懸命に言の葉を紡ぐのは、世母都・かんろ(秋霖・f18159)。
 雨の日に、お気に入りの傘をさして歩くだけでも、わくわく心躍るというのに。
 隣を歩くのが大好きな人であったら、さぞ楽しいだろう。
 離れたくない……そう想う彼女の気持ちは、ちょっとだけ分かる気はするのだけれど。
 でも、雨粒に滲む髪をふるりと揺らし、かんろは首を横に振って。
 自分へと瞳を向けた彼女へと、こう続ける。
「でも、このま、ま……あな、たの、心、が、止まって、いた、ら。博樹さん、も、困って、しま、う、わ」
「……心が、止まっている」
 告げた言葉をぽつりと口にし、俯く和花。
 その姿を見て、かんろは思う。
(「だって本当は、わかっているはずだから」)
 ひとであった彼と過ごした最後の逢瀬。
 その刻に、ずっとその心が置いてけぼりになっていることを。そしてそれを、彼女自身も気付いていることを。
「彼女のことは甘露のお嬢さんにお任せしましょうかね」
 雲烟・叶(呪物・f07442)はちらり、銀の瞳で和花の様子を窺った後。
 敵意を顕わにしている『彼』へと視線を移し、湛える銀のいろを細める。
「という訳なんで、男同士ちっとばかし話しましょうよ、影朧の君」
『……お前も、俺達を引き離そうとするのか。そうは、させない』
 けれどそう紡いだ彼はどうやら、大人しく話をする気はなさそうで。
 刹那、物騒な軍刀や軍用拳銃を構えた帝都軍人の霊を召喚し、問答無用で邪魔をする者達の排除に動く。
 だがそれも想定内、話に水を差されるのも良しとしないから。 
 ――おいで、お前たち。
「お話の間、ちと頑張ってくださいね」
 ゆうらり燻る煙が管狐となり、煙の爪牙が軍人霊を引き裂いて。巻き付く呪炎が燃え盛り、向けた呪詛が敵の呼吸を奪ってゆく。
 同時に美しく響き渡るのは、かんろが歌う『霖雨』。
 和花の心に届くようにと、ありったけの魔力と浄化の力を纏った歌を響かせ、伸ばせる限りうんとその手を広げ紡いでゆく。

♪明日はあおいろ明後日むらさき
 きみが回したあじさいの色
 涙の味が沁みるのは
 もうすぐ梅雨が明けるから――

 そう、これは気持ちをいっぱいに込めた、後押しのお別れの歌。
 そして戦場にぱらりと注がれるのは、歌声に呼応した降りしきる雨粒。
 勿論、その雨で叶と管狐を濡らさぬよう雫たちを操りつつも、ゆらり鏡のように煌めく水たまりを作って。
 かんろの歌雨に打たれる彼へと、叶は微か首を傾けつつもこう問う。
「離れたくなかった、それは当然のことでしょうねぇ。でも、死後に舞い戻って来ることに問題がないとは、流石に思ってらっしゃらねぇでしょう?」
『俺は……戻ると、約束した』
 ふいに落ちた呟きは、自分の声に答えたわけではないのかもしれない。
 だって彼は、もうひとではないのだから。
 けれど、もしも彼に聞く耳が少しでもあるとしたら。
 だから叶ははっきりと告げる。容易に想像ができる未来を、彼へと。
「このままだと、彼女は精神を狂わせることになるでしょう」
 ――今まで、影朧に心を砕いたひとたちのように、と。
『和花は俺と一緒にいたい、それは俺も同じだ』
「……愛してらしたんでしょう。死後も忘れ得ぬほどに」
 彼の言葉に偽りはないだろう。
 一緒にいたい、互いにそう強く想っていたからこそ……彼は、戻ってきてしまったのだけれど。
「なら、きちんとお別れして差し上げてくださいな。お別れして、また何時か、新しいあんたで戻っていらっしゃい」
 叶は彼へとそう言の葉を送る。響き渡るかんろの歌声を聞きながら。
 天から降る外の雨音も、まるで一緒にお別れの歌を奏でているかのように、リズミカルに屋根を打って。

 ――明日はしろいろ明後日ピンク
 てるてる坊主がゆらゆらと
 雨が胸に沁みるのは
 もうすぐきみが眠るから
 もうすぐ虹が、見えるから♪

 叶が彼へとそっと眠るような終わりを贈ると同時に、かんろもさよならを謳う子守歌の如き歌を彼女へと贈る。
(「和花さんが彼を想うなら、転生を願ってほしいから」)
 雨降る思い出から一歩前へと、その心を進めて欲しい、って。
 だって――雨があがった心の空にもきっと、綺麗な虹が架かると、そう思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
別れたまま終わる方がいいのか
相手が以前と違っていても逢えた方がいいのか

……いえ、きっと逢えた方がいい
逢いたいという渇望を癒せるからこそ今の状況なのです

接近戦にて勝負
視力と見切りにて動きを読み、敵の攻撃で何を重視するか判断
攻撃力には残像にて回避、命中率と攻撃回数には武器受けにて対処
いずれも凌いだ後に反撃

倫太郎と連携して攻撃し、私の納刀を合図に敵の狙いを彼へ向けます
狙いが変わった所で早業の抜刀術『静風』

世界は違えど此の悲しみはどの世界にも在って、きっとこの先も在る
ですが終わらせなければならない
逢えても共に居ても、以前のように言葉を交わせないのは
やはり辛いでしょう……?


篝・倫太郎
【華禱】
ずっと一緒に居たい……
その気持ちは嫌って程判る
判るんだけど、な

自分達のそれとは異なる『一緒に居たい』という願い
寿命の違いと生者と死者……異なっても
その根底にあるものが同じだから判る
それが叶わないのがこの世の常なのも
だから、終わりをちゃんと作ってやんねぇと

防御力強化に篝火使用
和花が安全圏に居る事を確認してから
衝撃波と乗せた華焔刀でなぎ払いの先制攻撃
刃先返してフェイントを交えて2回攻撃

夜彦への攻撃は挑発し
こちらに意識を向けさせて対処
待てよ、まだ俺との勝負ついてねぇだろ

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時と回避する事で夜彦に攻撃が及ぶ場合は
オーラ防御で凌ぎ
以降は生命力吸収も攻撃に乗せてく



 いくら周囲に関係を咎められていたとしても。
 この場所で逢瀬を重ねていたふたりは、その時は思いもしなかっただろう。
 愛する人と別たれる時が、こんなに早くくるなんてことは。
 人目を憚りながらでも、もっと沢山一緒に、傘をさして並んで雨の中を歩けると。
 どんなに激しい雨が降ろうとも、ふたりで歩んでゆけると……そう、思っていただろう。
 そして篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)には、その気持ちがよくわかるのだ。
「ずっと一緒に居たい……その気持ちは嫌って程判る。判るんだけど、な」
 同じ様に、大切な人がすぐ傍にいて。
 そしていつか……恐らく己が置いていくことになることを、知っているから。
 そして倫太郎の隣で、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も彼らを見て思う。
 ……別れたまま終わる方がいいのか、相手が以前と違っていても逢えた方がいいのか、と。
 けれどすぐに、こう口にする。
「……いえ、きっと逢えた方がいい」
 待ち続けて逢えなかった人を、ずっと夜彦はすぐ傍で見守ってきて。
 想い焦がした人に告げたかったことを、知って見て欲しかったことを、聞いて見て貰えたから。
 だから、夜彦には分かるのだ。
 ……逢いたいという渇望を癒せるからこそ今の状況なのです、と。
 そんな夜彦の横顔をちらりと見遣ってから。
 もうこれまで共にした時間を経て、大きく心揺れはしないけれど。
 でも改めて、倫太郎は眼前のふたりを見て思う。
 ――自分達のそれとは異なる『一緒に居たい』という願い。
(「寿命の違いと生者と死者……異なっても、その根底にあるものが同じだから判る」)
 けれどそれと同時に、知ってもいるから。
(「それが叶わないのがこの世の常なのも」)
 それに輪廻の理に反してまでも想いを貫くのが良いといえば、それは否だ。
 このままだと、ふたりが望まぬ結末が訪れる。近い未来、確実に。
「だから、終わりをちゃんと作ってやんねぇと」
 そう紡ぎ、和花が安全圏に居る事を確認した倫太郎は迷いなく動く。
 ――祓い、喰らい、砕く、カミの力。
 災魔を喰らう水の神力を得て、守りを施した倫太郎は、手にした華焔刀を振るう。
『! 俺と和花の邪魔は……させない』
 唸り迫る衝撃波に、影朧も握る軍刀で対抗戦とするけれど。
 そんな相手の太刀筋を見据え、倫太郎はすかさず刃先を返し、反撃の連撃を繰り出して。
 同時に地を蹴り、一気に影朧との距離を詰めた夜彦は、確りと敵の動きを詠むべく翡翠の瞳を凝らして。
『何……っ』
 放たれる強烈な斬撃を残像を駆使して躱し、倫太郎とともに反撃の刃を繰り出していく。
 そして……閃かせていた銀の月を夜彦が納刀したその一瞬を、確りと目にして。
 息のあった攻撃に微か顔を顰めつつも眼前の彼へと再び刃を振るわんとした影朧に、倫太郎は声を投げる。
「待てよ、まだ俺との勝負ついてねぇだろ」
『……勝負、だと?』
 ……これは勝負などではない、邪魔者の排除だ、と。
 夜彦から倫太郎へと視線を移し、軍刀を再び振るう影朧。
 見切りと残像でその衝撃からの回避を試み、躱せぬ衝撃は守りの気で凌がんと立ち回る倫太郎であるが。
 でも、ちゃんと知っているから。
 ――狙うは、刹那。
『! ぐ……っ!』
 再び抜き放たれ、鋭さと速さを増した研ぎ澄まされた風の刃が、敵を叩き斬るだろうことを。
 夜彦の閃かせた早業の抜刀術『静風』をその身に受け、堪らず揺らぐ影朧。
 そんな彼へと、夜彦は振るう風を止めぬまま、言の葉を紡ぐ。
「世界は違えど此の悲しみはどの世界にも在って、きっとこの先も在る。ですが終わらせなければならない」
 ――逢えても共に居ても、以前のように言葉を交わせないのは、やはり辛いでしょう……? と。
 そしてそれが、分かっているから。
 だから迷わずに、夜彦は眼前の敵を斬るべく刃を振るうのだ。己の盾である、倫太郎と一緒に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、止まれません。
結局、あのあとずっと風に流されたまま恋?物語も発動して突入する形になってしまいました。
だから、本気ですかって言ったのに。
ふえ、それは私が鈍くさいからってひどいですよアヒルさん。

それにしても、あの人は影朧さんですよね。
もうすでに亡くなっているんです。
還る場所に還って転生してきてください。
さて、言うことを言いましたし、アヒルさん逃げますよ。
もうユーベルコードも使ってしまいましたし、私にできることはありませんよ。



 天へとさした水色の傘がつかまえた、風の気の向くままに。
 ふらりゆらり、雨空へとわたわた流されていたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)であったけれど。
 気紛れな風のいたずらで、色々とあちこち、寄り道したり遠回りした気はするものの。
 何とか、影朧が匿われているという目的地へと到着……したかと、思った瞬間。
「ふええええ、止まれませーん。そこの人、どいてくださーい」
『……!?』
 その勢いのまま、最奥の部屋まで突撃です!?
 いえ、結局ずっと風に流されたまま――何故か発動してしまった『衝撃?的な出会いから始まる恋?物語』の勢いで、影朧へと突っ込むかたちになったフリル。
 そして、どしんっと影朧と激突し、ようやく止まることができた後。
「だから、本気ですかって言ったのに」
 そう、アヒルさんを見遣るけれど。
「ふえ、それは私が鈍くさいからってひどいですよアヒルさん」
 ツンツン突かれながらも聞いたアヒルさんの主張に、そう返しつつも。
 ふと自分が激突した彼へと、ようやく視線を移すフリル。
「それにしても、あの人は影朧さんですよね」
 そう……眼前には、軍刀を握る影朧の姿が。
 自分との約束を果たすために戻ってきてくれたと、彼を此の場所で匿っていた和花。
 けれど彼はもう、彼女の知っている博樹というひとではないのだから。
 フリルはぎゅっと大きなつばの帽子を押さえつつも、影朧へと紡ぐ。
「もうすでに亡くなっているんです。還る場所に還って転生してきてください」
 ……そして。
『何、お前も俺の邪魔を……、!?』
「さて、言うことを言いましたし、アヒルさん逃げますよ」
 いかにも斬られたら痛そうな刀を握る影朧にくるり背を向けて。
 アヒルさんと、素早く逃げます!?
「もうユーベルコードも使ってしまいましたし、私にできることはありませんよ」
 激突して何気に衝撃も与えたし、言う事も言ったし。
 あとは、逃げるが勝ちなのです……!?

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡彌・サクラコ
【KOR】
帝都桜學府には連絡済み
和花さまには一時耐えて貰わなくてはなりませんが
転生を目指して目標を討伐に参るでいす

ハクナキを操り人形遣いの本領発揮
薙ぎ払えでいす!
召喚された帝都軍人たちをハクナキの日本刀で一刀両断
敵からの銃撃も刀で弾きます
おかっぱ無表情ハクナキかっこいい
さらにUC発動
銅鏡で幽兵さまやベイメリアさまへの攻撃を受け止めます

幽兵さまの視線が気になりますがチラリズムは絶妙な角度で銅鏡が隠したりしますので無し
よそ見が過ぎるようでしたら銅鏡で叩きます

博樹さま和花さまがお待ちでいす
戦場より帰る潮時ですねい
捨て身にてハクナキの白刃一閃

皆さまお怪我はございませんか?
伸びをしつつ振り返り微笑みます


ベイメリア・ミハイロフ
【KOR】

ああ、和花さま、いけません…!
亡くなった方は、お見送りせねばならぬのが条理なのでございます
どんなに、どんなに悲しくとも

赤薔薇の花びら(クリーピングコイン)にて
和花さまから、視線を覆うように
博樹さま―の影朧から遠ざけるようにしつつ
また、戦闘のさまを見えぬようにしながら
Red typhoonにて、同志諸君を巻き込むように攻撃を

戦いのさ中
幽兵さまとサクラコさまのやり取りに
なんだかなごむ気持ちを抱きつつ

転生を願いながら
どうか、紅い花びらに包まれて
お眠りくださいませ…!

サクラコさまに微笑み返しつつ
もし幽兵さまやサクラコさまが影朧になられました際には
わたくし、きちんとお見送りできますでしょうか…


花屋敷・幽兵
【KOR】
ふむ…幽世との逢瀬か。
たとえ死んでも逢えるなら逢いたいと。
悪いがそれは見過ごせないな。俺達はゴーストバスターズなんだ。
スチームエンジンで強化し、先頭に踊り狂う。
和花はベイメリアとサクラコの二人が見え難くする様な配慮をしているだろう。
俺はただ槍で清史郎…いや影隴を叩く。
二人に攻撃が出来るだけ行かない様に攻撃を叩き込む。
パンチラとか胸とか足とか真剣な表情とか。
俺はそれをエネルギーに戦う(描写でお仕置き願います)
真面目にやらんと殺されるかもしれんな。銅鏡は華麗にかわす。
なに、力を合わせれば何とかなるもんだな。マスクを脱いで爽やかイケメンスマイルで返す。



 霧のような小雨が本降りとなって、激しく屋根を打つ雨音が耳に響く。
 けれど、そんな雨の音も……激しくぶつかり合う衝撃音でかき消されて。
「博樹さん……!」
 彼の名を必死に呼ぶ、和花の声。
 雨空を翔けた先、山間の廃屋で人知れず逢瀬を重ねていたというふたり。
 いや、それがただ、周囲から関係を咎められている男女というだけならば、野暮なことはしない。
 ――でも。
「ああ、和花さま、いけません……!」
 ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は、ふるりと大きく首を振って続ける。
「亡くなった方は、お見送りせねばならぬのが条理なのでございます」
 ……どんなに、どんなに悲しくとも、と。
 そう……和花の元へと戻って来た彼は、彼女の愛したひとではない。
 いずれ彼女の精神を狂わせる、影朧であるのだから。
 抜かりなく、既に帝都桜學府にはこの場所や状況は連絡済み。
「和花さまには一時耐えて貰わなくてはなりませんが、転生を目指して目標を討伐に参るでいす」
 あくまで猟兵としての任務を果たすべく、鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)は影朧をそう見遣って。
「ふむ……幽世との逢瀬か。たとえ死んでも逢えるなら逢いたいと」
『それを邪魔するのなら……排除する』
 花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)は、軍刀や軍拳銃握る軍人霊を戦場へと召喚しつつも言った影朧へと、言葉を返す。
「悪いがそれは見過ごせないな。俺達はゴーストバスターズなんだ」
 蒸気エンジンを搭載した鋼鉄の槍の破壊力を、スチームエンジンを展開し増し、増しにしつつも。
 颯爽と地を蹴り、敵前と踊り出る。この世の存在ではない影朧を退治するために。
 そして幽兵が動くと同時に、戦場を覆い尽くすかの如く意志を持って舞うのは、大量の赤い薔薇の花びらたち。
「!? きゃっ」
 ベイメリアが舞わせた赤薔薇の花びらが、和花の視界を覆って。
 博樹という彼の想い人であった影朧から彼女を遠ざけるようにしつつ。
 戦闘の様子を、和花には見えぬようにしながらも。
『……!』
 ――紅の聖花の洗礼を受けなさい……!
 はらり手にしている得物が解けるように深紅の薔薇の花びらとなって、影朧や軍人霊達へと逆巻けば。
「薙ぎ払えでいす!」
 人形遣いの本領発揮、サクラコが操るハクナキが、迫る帝都軍人たちを一刀両断。
 敵からの銃撃も刀で弾き飛ばして。
「おかっぱ無表情ハクナキかっこいい」
 さらに召喚した銅鏡で、幽兵やベイメリアに向かう攻撃も確りと受け止めれば。
 和花への配慮は完全に任せ、幽兵はただ握る鋼鉄の槍をもって、鈍く光る刃の鋭撃を叩き込む。
 二人に攻撃が出来るだけいかない様にとさ……ええ、眼前にいる影朧へと。
 そして、きりっと表情を引き締めて、幽兵は戦うエネルギーにせんとする。
 パンチラとか胸とか足とか真剣な表情とか……!?
 いえいえ、それはメッ、ですよ!
 というかそもそも、彼の考えることや行動は、サクラコにはお見通し。
 幽兵の視線が気になるけれど、絶妙な角度でさっとそれをすかさずガードし、隠す銅鏡。
 それでも頑張って目を凝らそうと、あまりにもよそ見が過ぎるならば。
 がつんと銅鏡で、一発ぶん殴ります!?
「真面目にやらんと殺されるかもしれんな」
 でも銅鏡で撲殺のお仕置きは、ちょっと今の状況ではおいしくないから。
 一応、銅鏡は華麗にかわす幽兵。
 そんな戦いのさなかの、幽兵とサクラコのやり取りに、なんだかなごむ気持ちを抱くベイメリア。
 けれど、猟兵としてやるべきことも勿論、忘れてなどいません!
「博樹さま和花さまがお待ちでいす。戦場より帰る潮時ですねい」
「どうか、紅い花びらに包まれてお眠りくださいませ……!」
 サクラコの操るハクナキが、捨て身にて白刃一閃。
 同時に、ベイメリアが転生を願いながら舞わせる紅が、彼を在るべき場所へと導かんと激しく舞い踊って。
『……くっ!』
 軍刀から衝撃波を繰り出さんとした影朧へと、幽兵の槍の鋭撃が唸りを上げる。
 そして攻撃をたたみかけた敵の身が揺らぐのを見遣りつつも。
 サクラコは微笑みながらも、ふたりへと声を掛ける。
「皆さまお怪我はございませんか?」
「なに、力を合わせれば何とかなるもんだな」
 幽兵も颯爽とマスクを脱いで、キランと。
 サクラコへと返すのは、イケメンスマイル!
 ベイメリアも、サクラコへと微笑み返しつつも。
 ふたりを交互に見つめながら、ふと思うのだった。
(「もし幽兵さまやサクラコさまが影朧になられました際には」)
 ――わたくし、きちんとお見送りできますでしょうか……、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミカエル・アレクセイ
【虹星】
置いて逝く方の気持ちはこの先も分からなそうだが
置いて逝かれるのも、遠い昔は辛かった気もするが
…まぁ、思い出と割り切って忘れるしかねぇよなぁ
過去に囚われて、周りが見えなくなってるのはいけねぇと思うぞ、お嬢さん

取り敢えず、お前の想い人には一端消えて貰わなくちゃならない
恨むならそれでいい、それでお前の気が済むなら
戦場に立つ以上、恨みを背負う覚悟はできてるさ

さて、亡霊には亡霊でもぶつけておこう
あの影朧の動きも攪乱させておく
女の目の前で討つことになるなら俺がやった方が良いか
双葉はまだ幼い

双葉が影朧の注意を引いているなら、一瞬の隙をついて槍を投擲、その動きに隠してヴィクトリアを隠投擲し急所を狙う


満月・双葉
【虹星】
僕はいつか置いて逝くし、ほかの皆さんを置いて逝くかも知れない
姉に目の前で死なれたことは有りますし、そのあとしたことも褒められることじゃないでしょう
だから、いいとも悪いとも思いません(所詮他人だし)
貴方たちは後悔しませんか

師匠が召喚した猫たちにビビりつつ
攪乱するなら僕のユーベルコードも使いましょう
貴方は過去、過去は歴史の中に消えて、未来に託してみては如何でしょう
そうすれば、このように逢瀬を邪魔されることも有りません

主戦力は僕
早業で動き回ってダメージを重ねようとしつつ
自身のダメージは激痛耐性で無視
僕だって戦場に立ってきた
恨みを背負う覚悟は…悪いとこ盗りする背負い癖は変わらなそうですね、師匠



 傘の導きのままに辿り着いた廃屋に在るのは、愛し合ったふたりの男女。
 置いて逝ったモノと、置いて逝かれた者。
 そして自分達もいつか、置いて逝ったり、置いて逝かれたりするのだろう。
「僕はいつか置いて逝くし、ほかの皆さんを置いて逝くかも知れない」
 満月・双葉(時に紡がれた人喰星・f01681)は、己はどちらの立場にも成り得ると、知っている。
 いや、現に置いて逝かれたことはあるのだけれど。
「姉に目の前で死なれたことは有りますし、そのあとしたことも褒められることじゃないでしょう」
 ――だから、いいとも悪いとも思いません、と。
 飄々と口にする。所詮他人だし、なんて思いながらも。
「貴方たちは後悔しませんか」
 和花と影朧を交互に見遣り、そう問うてみる。
「……後悔、なんて」
 そして双葉の言葉に、そうふるりと首を振って呟きを落とす和花と。
『邪魔をする輩は、排除するのみ』
 殺気漲らせ、軍刀をただ構え口にする影朧。
 そんな『置いて逝ったモノ』へと視線を向けながらも。
(「置いて逝く方の気持ちはこの先も分からなそうだが」)
 ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)は一瞬だけ、過去を思い返してみるけれど。
 置いて逝かれることも、遠い昔は辛かった気もするが。
「……まぁ、思い出と割り切って忘れるしかねぇよなぁ」
 そう口にしつつ、今度は和花へと言葉を投げる。
「過去に囚われて、周りが見えなくなってるのはいけねぇと思うぞ、お嬢さん」
 割り切って忘れて、そして背負って……彼はこれまでそうやって、いきてきたのだから。
「取り敢えず、お前の想い人には一端消えて貰わなくちゃならない」
 またもうひとつ、背負おうとするのだ。
 ――恨むならそれでいい、それでお前の気が済むなら、って。
 今更もうひとつくらい増えたところで、それで彼女の気が済むのならば構わないし。
「戦場に立つ以上、恨みを背負う覚悟はできてるさ」
 そんな覚悟は、疾うの昔にできている。
 だから、彼女の愛した彼を、在るべき場所に還すべく。
『邪魔は、させない……!』
「さて、亡霊には亡霊でもぶつけておこう」
 影朧が帝都軍人を召喚すれば、それに対抗するべくミカエルが戦場へと喚ぶのは。
 ――ホント、意味解らねぇ。
 刀と機関魔銃で武装した紅目の黒猫の幽霊たちを乗せた、自立稼働する大型バイク……!?
『……!?』
「……!」
 そんな突然の猫さんたちに、驚きビビる影朧と双葉。
 けれど、敵を攪乱する師匠にすかさず続いて。
 攪乱するなら僕のユーベルコードも使いましょう、と……双葉も戦場に躍らせる。
 裸眼による視線を向けた影朧へと、虹薔薇の静踊を――虹色のオーラ纏う、無数の薔薇の花弁たちを。
 それから双葉は、影朧の彼へと言い放つ。
「貴方は過去、過去は歴史の中に消えて、未来に託してみては如何でしょう。そうすれば、このように逢瀬を邪魔されることも有りません」
 そして、双葉が影朧の注意を引いているなら、と。
(「女の目の前で討つことになるなら俺がやった方が良いか」)
 ――双葉はまだ幼い。
 そう一瞬の隙をついて、ミカエルが槍を投擲した刹那。
『く、こんな槍如き……、っ!』
 すかさず鋭撃を躱した影朧の急所へと隠投擲されるは、主と共に数多を斬ってきた刃。
 最初の投擲に隠し、睡りから呼び覚ましたヴィクトリアが敵の身を穿って。
 双葉は大きく地を蹴り、素早く動き回って衝撃を重ねんと立ち回る……主戦力は僕、と。
 振るわれる軍人霊の刃も、激痛耐性で無視しながら。
「僕だって戦場に立ってきた」
 ちらりと彼を見遣り、雨の如き虹の色を降らせながらもこう続けるのだった。
 ――恨みを背負う覚悟は……悪いとこ盗りする背負い癖は変わらなそうですね、師匠、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
メノンさん【f12134】と

離れないよ。あなた方ふたり。
経年にも何者にも、奪われん世界で雨は降る。降り続ける。
和花さんと博樹さんの其処は、失われない。
万象が過ぎ去る中で俺たちの心ってのは、そういうものだろう?

【HERE WITH ME】
呟く様に歌い出せばメノンさんを振り返って笑う。
雨空の冒険も、枝葉の雫を見つめる彼女も、抱きしめているから。俺は失ったりしないよ。
俺たちは、失わずにゆける。
だからこそ聴いて。あなた方ふたり。
雨が止んだ明日の晴れ間を、和花さんお一人でゆくの。

虹かかる空に歩み出そう。
博樹さんと過ごした雨降りを胸に
いつか再び出逢う雨降りを想いながら。


メノン・メルヴォルド
バンリちゃん【f10655】と


恋焦がれた人…
失いたくない人…
ずっと一緒に居たいと思える、そういう人に出会えたならば、きっとそれは『奇跡』なの

和花さんと博樹さんの事を想うと泣いてしまいそう

揺らぐ心
届く歌声
顔を上げればバンリちゃんが振り返る

――ああ、アナタという人は…

強く優しい、その笑顔に包まれる

そう…ね、降り続ける雨もいつかは止むものだから
本当は、ご自身も気づいているのでしょう?
和花さんには晴れた空を、今度は虹の架け橋を渡って欲しいのよ

エレメンタル・ファンタジア
お二人の明日を願って

博樹さん、今は待っていてあげて…
アナタが愛した人を
どうか、連れて行かないで?

奇跡は再び起こる
ワタシは、信じている、わ



 傘を手に翔けてきた、雨空の先で。
 ふたりは今まで、静かに逢瀬を重ねてきたのだろう。
 初めてふたりが出逢った時。互いの事を意識し、恋に落ちた時。
 その想いが、同じであったと知った時。
 そして……別たれたと思っていたのに、ふたり再びこの場で出逢えた瞬間。
「恋焦がれた人……失いたくない人……ずっと一緒に居たいと思える、そういう人に出会えたならば、きっとそれは『奇跡』なの」
 それは、『奇跡』だと。
 メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)はそう思うからこそ。
(「和花さんと博樹さんの事を想うと泣いてしまいそう」)
 ひとつひとつ大切に、思い出や想いを重ねてきたふたりのことを考えると……緑色の瞳が潤んで。
 思わず、心揺らいでしまいそうになるけれど。
「離れないよ。あなた方ふたり」
 刹那耳に聞こえるのは、そうはっきりと紡がれた言の葉。
 さらに、バンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)は続ける。
「経年にも何者にも、奪われん世界で雨は降る。降り続ける。和花さんと博樹さんの其処は、失われない」
 ――万象が過ぎ去る中で俺たちの心ってのは、そういうものだろう? って。
 そして、メノンの顔を上げさせたのは、歌声。
 呟く様に歌い出されたのは『HERE WITH ME』――無敵の肉体と侵されぬ精神を、ここに共に在る己と彼女へと授ける戦歌。
 そんな歌をうたいながら、バンリが振り返って笑ってみせれば。
 ――ああ、アナタという人は……。
 強く優しいその笑顔に包まれて、メノンにも笑みが咲く。
 そしてふたり、顔を見合わせて笑いあった後。
「雨空の冒険も、枝葉の雫を見つめる彼女も、抱きしめているから。俺は失ったりしないよ。俺たちは、失わずにゆける」
 ……だからこそ聴いて。あなた方ふたり。
 そう語り掛けるように、願うように。バンリは歌に乗せ、彼女へと届ける。
「雨が止んだ明日の晴れ間を、和花さんお一人でゆくの」
「私、ひとりで……」
 バンリの声に、そう呟きつつも俯く和花。
 そんな彼女へと、メノンも続ける。
「そう……ね、降り続ける雨もいつかは止むものだから。本当は、ご自身も気づいているのでしょう?」
 ふたりで過ごしてきた、思い出が沢山ある雨の中を並んで歩くのもいいけれど。
 でもきっともうじき、雨は上がるから。
「和花さんには晴れた空を、今度は虹の架け橋を渡って欲しいのよ」
「虹かかる空に歩み出そう。博樹さんと過ごした雨降りを胸に、いつか再び出逢う雨降りを想いながら」
 晴れ空に架かる虹の橋を、雨の日の思い出を抱きつつも渡って欲しいのだ。
 今度は、和花がひとりで。
 けれどそれはやっぱり勇気がいるし、寂しいことではあるのだけれど。
 メノンは、バンリの歌に乗せるように、魔力で引き合わせた属性と自然現象を眼前の彼へと向けながらも。
 ふるりと微か首を振り、紡ぐ。
「博樹さん、今は待っていてあげて……アナタが愛した人をどうか、連れて行かないで?」
 少しの間、ふたりは別々に歩むことになるけれど。
 でも、メノンは信じているから――奇跡は再び起こる、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

憂世・長閑
巴(f02927)と

巴の優しい声が届く
それでもオレが影朧に思うのは

愛しいもの
護りたいもの
傍に在りたいもの

分かるよ
でも、それが偽りでも?

嗚呼、とても不思議
だから、ひとの心が分からないと言われるのだろうか
だから、対の彼にも嫌われてしまうのだろうか
――じゃあ?
ううん、なら、仕方ないね

愛したひとの香りも
あの日の温度もない
全部嘘なのに、なぜ?
ねえ、それは――なぁに?

君は、違うの?
そっか
そう
そうなのだとしたら

とても、残念で

ごめんね、と柔く告げる
盾で受けとめた力を放つ前
少しだけ、巴の姿を認めようとした

君がどう思うかと一瞬だけ過って
迷いはなかったけれど

そう過ることが――
自分自身の変化に、息がつまりそうだった


五条・巴
長閑(f01437)と

傘が雨を弾く音が少しづつ増えて
視界が悪くなってきた

紫陽花の傘
その花は僕にとっても大事な花だ
散らしたくないなあ

君の傘も雨の日に架かる橋も素敵だ
互いを想いあってるんだね
どんな姿であっても

このまま楽しく居られたらいいのにね
わかっているだろう?
そこにいる彼は影朧だ
いずれ害をもたらす

長閑の声音がいつもと違ったように聞こえるけれど、
傘を指しているせいで君の顔は見えない

隣から聞こえる言葉は
嘘に縋るひとには刺さるだろう
でも、虚しさを重ねてしまうより
優しいと思う

傘より大きな海月が宙を舞い、触手が君たちに触れる
お願い、そこから動かないで

視界が悪い
はっきり見えないくらいが今はいいのかもしれない



 ひやりと心地良い霧のようであった雨は、いつからだろうか。
(「傘が雨を弾く音が少しづつ増えて、視界が悪くなってきた」)
 五条・巴(月光ランウェイ・f02927)は、気付けば本降りになっている雨を一瞬見上げてから。
「紫陽花の傘。その花は僕にとっても大事な花だ」
 ……散らしたくないなあ。
 そう彼女が咲かせる傘の花に、そっと瞳を細めるけれど。
「君の傘も雨の日に架かる橋も素敵だ。互いを想いあってるんだね」
 和花へと続ける――どんな姿であっても、と。
 そんな彼の言の葉に、一瞬だけ微か身を震わせる和花。
 そして巴は……このまま楽しく居られたらいいのにね、と。
 彼女へと優しく笑みを向けながらも。
「わかっているだろう? そこにいる彼は影朧だ。いずれ害をもたらす」
 はっきりと、現実を……近い未来に起こるだろうことを、口にする。
 けれど、明言しながらもやっぱり、届く彼の声は優しくて。
 それでも、憂世・長閑(愛し秉燭・f01437)が影朧に思うのは。
「愛しいもの、護りたいもの、傍に在りたいもの。分かるよ」
 ――でも、それが偽りでも?
 そう和花へと問うてみるのだけれど。
「私は……博樹さんと、もう離れたくないの」
 返ってきた答えに、こてんと微か首を傾げる。
 ……嗚呼、とても不思議、って。
 愛しいもの、護りたいもの、傍に在りたいもの。
 けれどそれは偽りで。偽りは、偽りでしかないはずなのに。
 長閑はそれを分かっていながらも縋ってしまう彼女のことが、やっぱり不思議に思えてしまうけれど。
(「だから、ひとの心が分からないと言われるのだろうか。だから、対の彼にも嫌われてしまうのだろうか」)
 ふと、そう考えつつも――じゃあ? と。
 今度は己に問うてみれるけれど、考えるまでもなく出てくる言の葉は。
「ううん、なら、仕方ないね」
 でも、どうして彼女がそう思うのかを少しでも知れれば――。
 だから長閑はもう一度、訊いてみる。
「愛したひとの香りも、あの日の温度もない。全部嘘なのに、なぜ?」
 ……ねえ、それは――なぁに? って。
「全部嘘、だなんて……そんなこと、ない。彼は、約束通り戻ってきてくれたの」
『……何でもいい、邪魔をするなら排除するだけだ』
 迷いがみえる彼女の言葉にかぶせるように言い放たれる、影朧の声。
 そんなふたりを見遣って、長閑は再び首を傾ける。
「君は、違うの? そっか、そう」
 でも……そうなのだとしたら、と。思えばそれは、とても、残念で。
 巴は、届く声色に思う。
 いつもの彼のものとは、違ったように聞こえるけれど。
 でも……そんな君の顔は、見えなくて。
 それでも、やはり優しいと思うのだ。
(「隣から聞こえる言葉は、嘘に縋るひとには刺さるだろう」)
 でも――虚しさを重ねてしまうよりは、って。
 だからふわりと宙に揺蕩わせる。傘よりも大きな海月を。
 そして触手が彼らに触れれば、やっぱり優しい声色で巴は紡ぐ。
「お願い、そこから動かないで」
 長閑も、ごめんね、とそう柔く告げてから。
 盾で受けとめた力を放つ前――少しだけ、巴の姿を認めようとして。
 息が、つまりそうだと。
 迷いはなかったけれど、でも……君がどう思うか、なんて。
 一瞬だけ過って、そしてそう過ることが――。
 そんな、自分自身の変化に。
 そして巴はもう一度、ふと呟きを落とす。視界が悪い、って。
 それから、激しく降りしきる雨の世界を映す瞳を細めつつも、思うのだった。
 嘘でも偽りでもない、ほんとうであっても。
 ――はっきり見えないくらいが今はいいのかもしれない、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャト・フランチェスカ
【紫桜】

きみは和花さんと云うひとを
確かに愛していたのだろうね

傘を閉じて
雨に濡れそぼつも厭わない
実は雨も嫌いじゃないよ
涙さえ隠してくれるだろ

―千鶴、愛し猫、花の騎士
刀瘢や銃槍が僕の四肢を散らそうと構うものか
って普段は吐き捨てるところだけど
千鶴に甘えてもいいかい
その美しい刄で暫し
護っておくれ

何がいけなかった?
きみが軍人だったこと
彼女の父が頑なだったこと
それとも戦そのもの
きみと和花が惹かれ合ったこと

そんな筈があるか
誰も何も悪くない

誇り高き将校よ
彼女の前でだけは
ただのきみで居られたんじゃないか

今も彼女を此処に縛るのが
本当の望みなら僕は邪魔しないよ
それが、きみの愛ならば

…僕はきっと
安心して泣いてしまうな


宵鍔・千鶴
【紫桜】

空に道を架けたきみの
彼女を想う気持ち
もう一度、と希う心は…理解るよ

紫陽花色のきみが雨露に濡れるなら
滴る雫を指先で掬って、己も傘を閉じる
俺も雨は嫌いじゃない
…でも、きみの涙を隠してしまうのは厭、かな
だって、哀しいとき傍に在れない

はらり、はらり
薄紅は彼女の周りを花舞って
刃は耀き月に成る
ふふ、良く言えました
甘えてくれるなら、喜んで?

――シャト、行っておいで

きみに将校からの切っ先が届くことは無いよ
凡て俺が薙ぎ払う
聲を聴け
愛を識る悲しい軍人の貴方

そうだね、誰も悪くない
今度はきみが和花さんの元へ
降り注ぐ優しい雨に成って
寄り添って、あげて欲しい

ねえ、シャト
もし俺が雨になったら
きみの泪を隠す役割を頂戴



 空を翔けて彼の元へと向かう和花の心は、さぞ踊っていただろう。
 けれど、それはきっと、彼女だけではないはず。
 本降りになって漏れ落ちる雨の音を聞きながら、シャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)は眼前で軍刀構える彼へと紡ぐ。
「きみは和花さんと云うひとを、確かに愛していたのだろうね」
「空に道を架けたきみの、彼女を想う気持ち。もう一度、と希う心は……理解るよ」
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)もそうこくりと、すぐ隣から届いた声に頷いて。
 そうっと、その指先を伸ばして掬い取る。
 雨に濡れそぼつも厭わない……そう傘を閉じた、紫陽花色のきみに滴る雫を。
「実は雨も嫌いじゃないよ。涙さえ隠してくれるだろ」
「俺も雨は嫌いじゃない」
 千鶴は己の指先の行方に瞳細める彼女へと、そう笑んで返してから。
「……でも、きみの涙を隠してしまうのは厭、かな」
 己も傘を閉じ、共に雨露に濡れながら続ける。
 ――だって、哀しいとき傍に在れない、って。
 けれど、雨の音を打ち消すかのように。
『皆、俺達を引き裂こうとするが……そうは、いかない』
 影朧が言い放てば、軍刀や軍用拳銃を構える帝都軍人の霊が戦場に喚ばれて。
 シャトは隣の彼を見上げ、口にする。
「――千鶴、愛し猫、花の騎士。刀瘢や銃槍が僕の四肢を散らそうと構うものか……って普段は吐き捨てるところだけど」
 ……千鶴に甘えてもいいかい、って。
 はらり、はらり、周りを花舞う薄紅に。彼の手の内で月に成る、刃の耀きに。
「ふふ、良く言えました。甘えてくれるなら、喜んで?」
 ――シャト、行っておいで。
 千鶴はその背中を、優しい言の葉で送り出して。
「きみに将校からの切っ先が届くことは無いよ」
『何を……っ、!』
 ――聲を聴け、愛を識る悲しい軍人の貴方。
 刹那、月が零し狂い咲く雫は、雨ではなく燿夜の桜涙。
 そしてシャトは響かせ綴る。
 詩情をのせた声で……語ろう、雨が止むまで、と。
「何がいけなかった? きみが軍人だったこと。彼女の父が頑なだったこと。それとも戦そのもの、きみと和花が惹かれ合ったこと」
『皆……俺達の、邪魔をする。和花以外、排除すべき邪魔者だ』
「そんな筈があるか。誰も何も悪くない」
 影朧の言の葉に、シャトは大きくふるりと首を振る。
 誰もが、彼女の幸せを願って。そして彼女も、彼と共に幸せになりたかった。
 そして逢瀬に選んだこの場所は、ふたりだけの世界であったはずだから。
「誇り高き将校よ。彼女の前でだけは、ただのきみで居られたんじゃないか」
『ただの……俺? 誰も、悪くない……?』
「そうだね、誰も悪くない」
 シャトの言の葉に揺れ動くその声色に、千鶴も頷いて。
「今度はきみが和花さんの元へ。降り注ぐ優しい雨に成って……寄り添って、あげて欲しい」
「今も彼女を此処に縛るのが、本当の望みなら僕は邪魔しないよ。それが、きみの愛ならば」
 シャトは、彼の想いを尊重する。向けた声が届いていると、信じながら。
 そしてそんな彼女へと――ねえ、シャト、って。
 千鶴は共に濡れそぼっている彼女へと笑んで、こう紡いでみる。
「もし俺が雨になったら、きみの泪を隠す役割を頂戴」
 そしたら哀しいときだって、すぐ傍に在ることができるから。
 そしてそんな彼に滴る雫を、今度は伸ばした指で掬ってあげながらも。
 シャトは、咲かせた笑みと言の葉を彼へと返す。
 ……僕はきっと、安心して泣いてしまうな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
カティアさん(f05628)と

たどり着いたあばら屋の前で、カティアお姉ちゃんを見て、
つないだ手に、思わず力がこもってしまいますのです。
「わたしもお姉ちゃんといっしょでないといけなさそうなのですよ」

博樹さんも和花さんも、
叶えてはいけない想いだということは、解っていらっしゃると思うのです。

カティアお姉ちゃんの言われたとおり、
お二人が想いを遂げるということは、世界を壊すということなのです。

わたしたちは、それを止めなければいけません。

それにわたしにも大事な人がいますのです。
その人とまだまだいっしょにいろいろしたいのです。

だから、とカティアお姉ちゃんに微笑んで、

お二人の想い、わたしたちで背負いましょう。


涼月・カティア
奏莉さん(f32133)と

傘と虹の力を借りてあばら屋まで
奏莉さんを見つめながら手をぎゅっと
これから私たちが行うことはきっと…それでも…

「奏莉さん、一緒に行ってくれますか?」

和花さんと博樹さんに伸ばすのは【賢者の影】
「この影は、問いに真実を言わない者を殺します」
と少しだけ強く

わかっています影が解除されることくらい
和花さんに博樹さんへの愛を問うても肯定とともに

だから博樹さん教えてください
「貴方は和花さんが世界を壊すのを望みますか?」
きっと…『望まない』と、そして影も解除されるでしょう

その気持ちがわかるからこそ
「奏莉さん、ちょっとだけ勇気を分けてください」
ええ、貴女と一緒なら…背負える気がします



 傘と虹の力を借りて辿り着いたのは、山間のあばら家。
 雨脚が強くなった雨の音だけが、耳に聞こえてくるけれど。
 中へと足を踏み出すその前に――これから私たちが行うことはきっと……それでも……、と。
 涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)はそう呟きを落とすけれど。
 菫宮・奏莉(血まみれもふりすと ときどき勇者・f32133)を見つめながら、その手をぎゅっと握って。
「奏莉さん、一緒に行ってくれますか?」
 そう紡げば、返ってくるのは、同じ様に思わず力がこもって握られる手の感触と。
「わたしもお姉ちゃんといっしょでないといけなさそうなのですよ」
 己を映す奏莉の円らな瞳と、紡がれる声。
 そしてふたりで顔を見合せ、心を決めてから。
 足を踏み入れたあばら家の最奥に在るふたり――和花と博樹へと刹那、賢者の影を伸ばして。
「この影は、問いに真実を言わない者を殺します」
 少しだけ強い口調で、言葉を投げるカティア。
『……!』
「え……っ!?」
 そして同時に顔を上げ、瞳見開くふたりへと視線を向けながら、奏莉は思う。
(「博樹さんも和花さんも、叶えてはいけない想いだということは、解っていらっしゃると思うのです」)
 それでも一緒にいたい、そう願うふたりへとカティアは影を伸ばしたけれど。
(「わかっています影が解除されることくらい」)
 ……和花さんに博樹さんへの愛を問うても肯定とともに、と。
 けれど、だからこそ、カティアは彼へと問う。
 博樹さん教えてください、と。
「貴方は和花さんが世界を壊すのを望みますか?」
『……何を言っている? そんなことを、俺が臨むとでも?』
 瞬間、思った通り、しゅるりと解除される影。
 けれどその様子を見守っていた奏莉は、彼へと告げるのだ。
「カティアお姉ちゃんの言われたとおり、お二人が想いを遂げるということは、世界を壊すということなのです。わたしたちは、それを止めなければいけません」
 たとえ、彼の告げた答えが真実だとしても。
 でも、それでは駄目なのだ。
 このままでは、和花に待っているのは、彼の望まない未来だから。
 いや、ふたりだけではない。
「それにわたしにも大事な人がいますのです。その人とまだまだいっしょにいろいろしたいのです」
 奏莉にだって、そういう大切な存在がいるから。
 そしてすぐ隣にいる彼を見上げ……だから、と微笑んで。
 奏莉はしっかりと思いを口にする。
 ――お二人の想い、わたしたちで背負いましょう、って。
 カティアも、ふたりのその気持ちがわかるからこそ。
「奏莉さん、ちょっとだけ勇気を分けてください」
 そうこくりと頷いて、笑んで返す。
 ――ええ、貴女と一緒なら……背負える気がします、って。
 ぎゅっと握った手を繋いで。共にであれば、きっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

眞白乃守・とかげ
アドリブ連携歓迎

……和花どのが彼の死をわかっていようと、目の前にその姿が在れば喜びの方が勝るのは当然のこと。
私とて、たった一人の家族を亡くしたときは世界が終わったように思ったさ。
でも、そうじゃなかった。足を踏み出せば外にはまだ無限の世界が、未来があると
そう示してくれたのは当の祖母の遺言だ。
祖母は還ってこなかった。それが祖母の強さだったのだと今は分かる。
だから──和花どのを離せずその未来を貪る影朧よ。お前が弱さゆえの存在だということも、わかるのさ。

小細工はなしだ。全力でUCを発動し、全ての霊とその攻撃を灼き尽くす
まさか和花どのへ危害は加えぬだろうが──影朧は、彼女の悲しみこそ己の業だと悟るがいい



 猫さんの傘が導いてくれた、雨空の道の終着地。
 それは今にも朽ちはて崩れ落ちそうな、山間のあばら家であった。
 そしてその最奥に――ふたりはいた。
 こうやって人目をはばかりながら、ずっと逢瀬を重ねていたのだろう。
 だが、和花の愛する博樹という彼は、もうこの世に在ってはならない存在で。
 彼女もそれに気付いていながらも、この場所へと赴いているのだ。
 けれど、眞白乃守・とかげ(火蜥蜴は果ての森を旅立つ・f33630)はそんな彼女の想いを否定しない。
(「……和花どのが彼の死をわかっていようと、目の前にその姿が在れば喜びの方が勝るのは当然のこと」)
 ……私とて、たった一人の家族を亡くしたときは世界が終わったように思ったさ、と。
 ふと思い返すのは、失ったあの日のこと。
 けれど、とかげはすぐに、燃える炎のようなくせ毛をふるりと揺らして首を横に振る。
 ――でも、そうじゃなかった、って。
 足を踏み出せば外にはまだ無限の世界が、未来があると。
 決して、己の世界は終わってはいないと……そう示してくれたのは当の祖母の遺言であった。
 そんな祖母は、とかげの元へは還ってはこなかった。
 でも、今なら分かるのだ。
(「それが祖母の強さだったのだと」)
 そしてとかげは、この場所へと戻ってきてしまった影朧へと言い放つ。
「だから――和花どのを離せずその未来を貪る影朧よ。お前が弱さゆえの存在だということも、わかるのさ」
『……何? っ!』
 ……小細工はなしだ。
 刹那、発動し燃え盛るのは――炎術・弐式拾伍番『白き猟犬』。
 影朧もすかさず、帝都軍人の霊たちを召喚し対抗せんとするも。
 戦場を照らす白き浄化の炎が、全ての霊とその攻撃を灼き尽くして。
『ぐ……!』
「! 博樹さんっ」
 和花の叫ぶような声を聞きながら、軍刀握りつつも呻く影朧へと、とかげは誇り高き黄金のいろを向ける。
 白き炎を手向けに――彼女の悲しみこそ己の業だと悟るがいい、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇津木・絋
……事情とか、そういうのは知る気は無いよ。ただ影朧を確実に仕留める気でいるから。

……だって、事情を知って、影朧を匿う人を理解してしまったら……僕をこんな体にしたアイツらも、許さなくちゃ行けなくなる気がして、嫌だから。
だから、さっきは小島を見ないようにしてた。

……軍人さん達が相手なら、多分まとまって集団で攻撃してくる気がする……だから、【ミゼリコルディア・スパーダ】で包囲攻撃。一網打尽にして、氷の属性纏う魔法剣による【属性攻撃】で……進軍してくる前に、銃を構える前に、まち針みたいに縫い止めて、本体諸共黙らせるね(【早業】併用



 白い傘の花を咲かせ、風の導きで辿り着いた山間のあばら家。
 此処に影朧がいる、宇津木・絋(微睡む野薔薇の揺籃・f31067)にとってはただ、それだけ。
 甘い物には、それはもうとても興味はあるけれど。
「……事情とか、そういうのは知る気は無いよ」
 雨音に紛れて、そう淡々とぽつり紡ぐ絋。
 だって、知らなくても良いことだから。
 ……ただ影朧を確実に仕留める気でいるから、と。
 いや、知る気はないのだけど……知りたくは、ないのだ。
(「……だって、事情を知って、影朧を匿う人を理解してしまったら」)
 それからそっと、絋はふるふると小さく首を振る。
 影朧も、元はひとであったことは、わかっていて。
 だからこそ、知りたくはないのだ。
 だって、嫌だから。
 ……僕をこんな体にしたアイツらも、許さなくちゃ行けなくなる気がして、って。
 だから、さっきも見ないようにしていたのだ。
 誰かの……もしかしたら影朧のものかもしれない、思い出を映すという小島の風景を。
『……おまえも、俺の邪魔をするのか』
 むしろそう殺気を漲らせてくれた方が、ずっといい。
 だから絋はいつも通り、確実に影朧を仕留めるべく動く。
(「……軍人さん達が相手なら、多分まとまって集団で攻撃してくる……よね」)
 影朧が召喚した帝都軍人の霊たちの動きを読んで、一網打尽にする。
 軍人霊たちが進軍してくる前に、銃を構えるその前に。
『――!』
 凍てつく氷の魔力纏う魔法剣の包囲攻撃を、絋は躊躇なく容赦なく、ちくちくと仕掛けていく。
 ……まち針みたいに縫い止めて、本体諸共黙らせるね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【彩夜】

楽しいお空の旅だった!
そう、この道は和花さんが大好きな人に会う為のものだったのね
はなれたくないと目を閉じてしまう気持ち
分からないとは言わない
言えない、けれど
それでも

さあ、目覚めて
目を開いて
お二人の世界が本当に花開きますように
みなさんに護りの花菱草を
少しでも害するものが届かぬよう
博樹さんへは祓いの蒼芥子を
あなたが再び歩めますよう

みなさんが居るから
ルーシーは刀も銃もこわく無いよ
居るっていうのは現に限らないの
心の中にいるということ
お二人にとっても
互いが『そう』じゃないかな

雨は花が咲くための恵み
流れた雫を抱きしめて
いつか空を向いて咲くための

また雨が降ったら
カサを持って出かけしましょうね
みんなで


宵雛花・十雉
【彩夜】

楽しい空の旅を終えて、辿り着いたその場所は
2人の大切な場所だったんだね
けど、好きな人と隠れて会わなきゃいけないなんて…悲しいな

和花さんはきっと分かってるんだろうけど…
本当のことを認めたくない気持ち、オレにも分かるよ
認めてしまったらその人が遠い世界へ旅立ってしまいそうな気がして

でも、いつかはありのままを見つめなきゃいけない時が来るんだ
雨が降ってるなら傘を差しながらでいい
和花さんも軍人の彼も、また歩き出さなきゃ

オレは後方からの支援に回る
【兵ノ言霊】で皆を鼓舞するよ
皆ならきっと大丈夫だって信じてる

その後は攻撃を受けそうになった人の周囲に『結界術』で障壁を張る
大好きで大切な皆をオレが守るんだ


歌獣・苺
【彩夜】

和花さん、貴女にも愛する人がいたんだね
別れが辛いのは痛いほどわかるよ
私も失ったことがあるから
他でもない愛する人を
でもね、ずっと俯いていたら
いつ貴女の素敵な顔を彼は見られるんだろうね

どれだけ過去を振り返って
俯いて
泣いてもいいけれど
最後はしっかり顔を上げて
前を見て笑うの
…大丈夫。彼を信じてあげて
そうすれば、きっといつまでも
貴女の側にいてくれるはずだから

私は信じてる。
館のみんなも、愛した『彼』も。
これから誰ひとり欠けることなく
みんなで彩夜の館に帰るの
だから貴方も
ーー『おかえりなさい』。

貴方のあるべき所へお帰りなさい
そして『おかえりなさい』と
謳ってもらえますように。


朧・ユェー
【彩夜】

沢山の美しい彩傘を見れて、皆さんと空の旅はとても素敵なひとときでしたね
ここもとても美しい場所
貴女と彼の大切な場所なのですね

大切な人を待ちたい、そして逢って傍に居たいと
その願いは今の僕はわかります
大切な子達、この子達が欠けてしまったら
僕も同じだ事をしていたかもしれません
でもそれは…

貴女の本当の心はどちらですか?
ずっと一緒に居たいと願いつつも本当は迷っているのでは…
だから貴女の嘘を喰べましょう
真実を見つけて、二人が幸せになれる道を選んで

前を進めて、どんなにツラくともきっと真実の彼は寄り添ってくれるでしょう
それを気づかせてくれた大切な子達

この子達のそれぞれの想いを受け取って


彼者誰・晶硝子
【彩夜】

虹の橋を渡って、いとしい人の元へ
それは、心弾む道行きなのでしょう
わたしたちも、同じ道をきたから、わかる気がするわ
でも、待ち人が朧でいるのなら…
祈りを捧げるようなもの
心が慰められるなら、前へ進めるのなら、お前にとっての糧になる祈りになるのだろう
けれど、囚われて、留まり続けてしまうなら
どれだけかなしくても、そこにばかりはいられない

どうか、どうか、
いとしいという祈りは、届いていると
信じて
いとしいひとを、君自身を
大切な思い出を、心強いお守りにして、進めるように
わたしからも祈らせて

朝の光が、みんなに降り注ぐように
いつか虹になるように

空に掛かる思い出があるのなら、
ええ、雨がもっと好きになれる、わ


蘭・七結
【彩夜】

心躍るような愉快なひと時を得たわ
雨粒を弾く傘も、見事なことね

眼前の光景を捉えて、そうと眸を伏せる
――嗚呼、そう。そんなにも
あなたの心は、彼に添っているのね

紅の嵐を呼び起こして
共にあるあなたたちへと纏わせましょう
治癒のちからなら、お任せあれ
存分に、腕を奮ってちょうだいな

止まった歩みを、再び進めてゆくこと
決して、安易なことではないでしょう
雨に打たれ続けて
幾度の涙を溢しても
何時の日にか、ソラは晴れるわ

虹の彩はお好きかしら
わたしからは、この彩りを
あかいいろを授けましょう

ふうわりと舞う愉しさを
屹度、忘れることはないでしょう
次なる雨天は、何時になるのかしらね

つい、待ち遠しくて
心が逸ってしまうよう


志島・小鉄
【彩夜】

ニンゲン様の姿で参加しマス!

傘ノ旅ハ楽しかったデスネ〜。マタ飛びたいデス!
ほほぅ。事情が有るノデスネ。
デスがワシも妖怪友達も手加減はシマセン!
ココ掘れワンサンズ!行きませう!

妖怪友達のワンサンズは土属性の攻撃ヲシマス!
ワシもワンサンズのお手伝いヲしますゾ〜!
ミナサンが攻撃ヲしやすゐやうにワンサンズと連携ヲして誘導もシマス!
ワンサンズは土を掘って落とし穴ヲ作りマス!

エイッ!エイッ!ホネホネ攻撃!(べちべちと投げます。)
ワンサンズにあげる骨ヲ投げマス!
ニンゲン様の姿ハ不便デスガワシもやりマスゾ〜!



 雲に覆われた雨空を彩ったのは、それぞれが咲かせた七つの傘の花。
 虹のような……いや、それは普通の虹よりももっと。
 華やかな七色を空に架けた、彩夜の虹。
「心躍るような愉快なひと時を得たわ。雨粒を弾く傘も、見事なことね」
 ぱたりと閉じた傘を伝う煌めきは、天から降り注いだ雨粒たち。
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はふるりと蕾の如き傘の雨露を落としながら、かわりに柔い笑みを咲かせれば。
「傘ノ旅ハ楽しかったデスネ〜。マタ飛びたいデス!」
「楽しいお空の旅だった!」
 志島・小鉄(文具屋シジマ・f29016)とルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)も、うんうんとすぐに頷いて。
「沢山の美しい彩傘を見れて、皆さんと空の旅はとても素敵なひとときでしたね」
 朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はそんな皆の声に笑み宿し、くるりと視線を巡らせた後。
 空を翔け辿り着いた先――本降りになった雨の音を耳にしながらも、眼前に在る彼女を見つめて。
「ここもとても美しい場所。貴女と彼の大切な場所なのですね」
「楽しい空の旅を終えて、辿り着いたその場所は、2人の大切な場所だったんだね」
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)もそう、ふたり――和花と、彼女が博樹と呼ぶ影朧の姿をその瞳に映す。
 傘が導いてくれたのは、山間にひっそりと佇む古びたあばら家。
 今にも朽ちそうな廃屋の窓からは雨の帝都の風景が広がり、ふたりの世界に静かに響くのは雨の音だけ。
 彼者誰・晶硝子(空孕む祝福・f02368)も和花へと、星の耀き宿す瞳を向けて。
「虹の橋を渡って、いとしい人の元へ。それは、心弾む道行きなのでしょう。わたしたちも、同じ道をきたから、わかる気がするわ」
「そう、この道は和花さんが大好きな人に会う為のものだったのね」
 皆と一緒に、傘を手に翔けてきた道行きを思い返しながら、ルーシーも紡ぐけれど。
「貴方達も、博樹さんを……? いや、いやよ」
 これまでの猟兵の攻撃を受け、大きく上体を揺らす彼を悲痛な表情で見つめつつも。
 そう、言の葉を絞り出すように紡ぐ和花。
 どうしてみんな、私達を引き離そうとするの……と。
 ふたりが思い出を重ねたこの場所は、彼女や彼にとって大切な場所であるのだろうけれど。
 彼女の声を耳にした十雉は、ぽつりと呟きを落とす。
「けど、好きな人と隠れて会わなきゃいけないなんて……悲しいな」
 互いに惹かれあっても、共に在ることを良しとされなかったふたり。
 何の憂いもなく出会えていた場所はいつしか、此処だけになっていたのだろうけれど。
「でも、待ち人が朧でいるのなら……祈りを捧げるようなもの。心が慰められるなら、前へ進めるのなら、お前にとっての糧になる祈りになるのだろう」
 そして晶硝子は、和花へと告げる。
「けれど、囚われて、留まり続けてしまうなら。どれだけかなしくても、そこにばかりはいられない」
 そう――憂いがない逢瀬だと言えていたのは……眼前の彼が、和花の知っている博樹であった時の話。
 そんな晶硝子の言葉に耳を傾けるも、複雑な表情を宿しつつも俯く和花。
 けれど口を噤んだ彼女へと続けて声を掛けるのは、歌獣・苺(苺一会・f16654)。
「和花さん、貴女にも愛する人がいたんだね。別れが辛いのは痛いほどわかるよ。私も失ったことがあるから」
 ……他でもない愛する人を、と。
「でもね、ずっと俯いていたら、いつ貴女の素敵な顔を彼は見られるんだろうね」
 和花はそんな苺の声に導かれるように、ハッと顔を上げてから。
 鋭い軍刀を握る朧の彼へと、目を向ける。
 その姿を見ながら、十雉は彼女の心に理解を示す。
「和花さんはきっと分かってるんだろうけど……本当のことを認めたくない気持ち、オレにも分かるよ」
 ――認めてしまったらその人が遠い世界へ旅立ってしまいそうな気がして、と。
 分かっているのだけれど、怖いのだ。
 二度と手が届かないところへ、大切な人が攫われてしまうことが。
 けれど同時に、十雉は知っている。
「でも、いつかはありのままを見つめなきゃいけない時が来るんだ」
 怖いけれど、悲しいけれど……目を背けてばかりはいられないことを。
 だからといって、一度に全てを受け入れなくたって構わない。
「雨が降ってるなら傘を差しながらでいい。和花さんも軍人の彼も、また歩き出さなきゃ」
 一歩でも半歩でも、たまには雨宿りするために立ち止またっていい。来た道を振り返ることもあるだろう。
 でも少しずつ、現実を見つめ受け入れながらも……互いに前へと進もうと、一歩を踏み出すことが大事なのだ。
 相手のことを、大切に思うのならば。
「大切な人を待ちたい、そして逢って傍に居たいと。その願いは今の僕はわかります」
 そしてその大切に思う気持ちをユェーに教えてくれたのは、巡らせた瞳に映る子達。
「大切な子達、この子達が欠けてしまったら、僕も同じ事をしていたかもしれません」
 和花のように、自分も大切な存在を失った時、朧に縋ってしまうかもしれない。それだけ、大切だから。
 けれどすぐに、ユェーはふるりと首を振って言の葉を落とす。
 でもそれは……って。やはり、大切な子達だからこそ。
 苺はようやく顔を上げた和花にこくりと頷いて。もうひとつだけ、教えてあげる。
「どれだけ過去を振り返って、俯いて、泣いてもいいけれど」
 ――最後はしっかり顔を上げて、前を見て笑うの、って。
 そして笑うために、彼女にしてほしいことを晶硝子は告げる。
「どうか、どうか、いとしいという祈りは、届いていると。信じて――いとしいひとを、君自身を」
 ……大切な思い出を、心強いお守りにして、進めるように。わたしからも祈らせて、と。
 そんな晶硝子の声に続いて、苺も言の葉を届ける。
「……大丈夫。彼を信じてあげて。そうすれば、きっといつまでも貴女の側にいてくれるはずだから」
「彼を、信じて……」
 そう噤んでいた口を再び開き、真っ直ぐに彼を見つめる乙女の眼差し。
 七結は眼前の光景を捉えた紫の眸を、そうと伏せる。
「――嗚呼、そう。そんなにもあなたの心は、彼に添っているのね」
 彼を想う気持ちは真摯ないろを見れば、一切の揺れはないのだけれど。
 複雑な感情が入り乱れているだろう、和花の心。
『和花と俺の、邪魔をするのなら……全員、排除する……!』
「! 博樹さんっ」
 彼女も分かっているのだ、いくら自分の名を呼んでくれていても……悪鬼の如く刀を握り、殺気を漲らせる影朧は、自分の求める彼とは違うことは。
 それでも、やはり。
 和花はぎゅっと思わず瞳を瞑ってしまう。でも離れたくない、って。
 そんな彼女に、ふたりに、そして皆に……ルーシーが贈るのは。
「はなれたくないと目を閉じてしまう気持ち、分からないとは言わない。言えない、けれど……それでも」
 ――さあ、目覚めて。目を開いて。
 お二人の世界が本当に花開きますように。
 みなさんに護りの花菱草を……少しでも害するものが届かぬように、って。
『……!』
「博樹さんへは祓いの蒼芥子を」
 あなたが再び歩めますよう……そう、其々に炎の花を。
「治癒のちからなら、お任せあれ。存分に、腕を奮ってちょうだいな」
「皆ならきっと大丈夫だって信じてる」
 ――おしえて、繙いて。
 ――大好きで大切な皆をオレが守るんだ。
 刹那、金環浮かぶ紫の双眸が映す皆へと七結が纏わせるは、呪詛や狂気を祓ういのちに添わす花びら。
 そんな紅の嵐に乗って、戦場に響き渡り皆を鼓舞する、十雉の兵ノ言霊。
 そして結界術で障壁を張るべく、敵の動きを確りと見据える。影朧の刃で大好きな皆が傷つかぬように。
『く、邪魔をするな……!』
 そうぎりっと歯を食いしばり、影朧も戦場に軍人霊を喚び出すも。
「ほほぅ。事情が有るノデスネ。デスがワシも妖怪友達も手加減はシマセン!」
 ……ココ掘れワンサンズ! 行きませう!
 刹那、負けじと戦場を駆けるのは、小鉄の召喚した数多の地獄の妖怪犬・ワンサン。
 そんなワンサンたちを誘導しながら連携し、小鉄も颯爽と皆が攻撃をしやすいよう、立ち回る。
「ワシもワンサンズのお手伝いヲしますゾ〜!」
 ここ掘れワンサン! 
 土を掘ってつくるのは、そう……落とし穴!
 けれど、落とし穴に落ちなかった軍人にも抜かりはありません。
「エイッ! エイッ! ホネホネ攻撃!」
 ――べちべち!
 ワンサンズにあげる骨を投げて撃退する小鉄。
「ニンゲン様の姿ハ不便デスガワシもやりマスゾ〜!」
 そんな勇ましく軍人霊に立ち向かう小鉄やワンサンズの姿に、ルーシーは頼もし気に笑み向けた後。
 和花へと、こう声を投げる。
「みなさんが居るから、ルーシーは刀も銃もこわく無いよ」
 ――居るっていうのは現に限らないの、心の中にいるということ。
「お二人にとっても、互いが『そう』じゃないかな」
「私は信じてる。館のみんなも、愛した『彼』も。これから誰ひとり欠けることなく、みんなで彩夜の館に帰るの」
 そして苺は、心を結んで笑い合うのだ。
 この言葉をいつだって、贈るために。
「だから貴方も――『おかえりなさい』。貴方のあるべき所へお帰りなさい」
 ――おかえりなさい、って。
 そして苺はこう願う。あるべき所へと還った彼が……『おかえりなさい』と謳ってもらえますように、って。
 楽園の詠唱を目一杯、ありったけの気持ちを込めて届けながら。
 それからユェーはふと和花へと視線を向け、彼女へと訊ねてみる。
「貴女の本当の心はどちらですか? ずっと一緒に居たいと願いつつも本当は迷っているのでは……」
「……え?」
「だから貴女の嘘を喰べましょう」
 ……真実の姿だけ魅せて、と。
 真実を見つけて、二人が幸せになれる道を選んで欲しいから。
『!』
 ユェーは無数の喰華を喰らいつかせる。眼前の朧の彼へと。
 そして晶硝子が降らせる煌めきは、夜明けの光。
 ――きみにしあわせあれ。
 宝石の身に宿す夜明けの光が、きみに贈る祝福が、軍刀や軍拳銃を向けられた皆に降り注ぐ。
 いつかしあわせの虹になるように、そう祈りを乗せて。
「止まった歩みを、再び進めてゆくこと。決して、安易なことではないでしょう」
 雨に打たれ続けて、幾度の涙を溢しても。
 それでも、七結は知っているから。
「何時の日にか、ソラは晴れるわ」
 そして雨が上がった晴れ空に架かるのは、美しいいろ。
 ……虹の彩はお好きかしら、七結はそう咲って。
「わたしからは、この彩りを。あかいいろを授けましょう」
 最後に彼に贈るのは、ゆるし紅。
 金環浮かぶ紫が今度は、こころを穿つ留め針を以って紅を咲かせて。
『……ぐ、はっ! わ、か……こんどこそ、ともに……』
「! 博樹さん……!」
 七つのいろに導かれ、最後に彼女へと贈った傘のように。
 一瞬だけ笑み咲かせ、在るべき場所へと還ってゆく彼。
 そして他の猟兵が手配していた帝都桜學府に保護されながらも。
 愛した人の名を呼ぶ和花の、瞳から零れ落ちる雫を見つめ、ルーシーは思う。
(「雨は花が咲くための恵み。流れた雫を抱きしめて、いつか空を向いて咲くための」)
 ユェーも最後にこう、和花へと告げる。
「前を進めて、どんなにツラくともきっと真実の彼は寄り添ってくれるでしょう」
 そして、くるりと再び周囲へと巡らせた瞳を、そっと細める。
 それを気づかせてくれた大切な子達……この子達のそれぞれの想いを受け取って、と。
 そんな自分を柔く見つめる彼や皆に、ルーシーは笑んで。
「また雨が降ったら、カサを持って出かけしましょうね。みんなで」
「次なる雨天は、何時になるのかしらね。つい、待ち遠しくて、心が逸ってしまうよう」
 七結もこくりと頷く。
 傘を手に、皆で冒険した雨空を。天に架けた、自分達だけの七つの色を。
 ふうわりと舞う愉しさを――屹度、忘れることはないでしょう、って。
 そして晶硝子も、己の心に宿る鮮やかないろに、星纏う瞳を細めながら紡ぐ。
「空に掛かる思い出があるのなら、ええ、雨がもっと好きになれる、わ」
 だって、皆と翔けた雨空の冒険は、こんなにも楽しかったし。
 いつの間にか雨が止んだ、窓の外の晴れ空のように――雨の後には、美しい虹の橋が煌めくのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月30日


挿絵イラスト