大祓百鬼夜行㉕〜アイはさだめ、さだめはシ
●暗雲渦巻くUDCアースにて
──愛しきUDCアース。
──あなたを思う。私の愛は揺るがない。
──だから、私は帰って来たのです。
「……何なんだ。さっきの夢は?」
無造作に脱ぎ捨てられたスーツ、巷では虚無の酒と呼ばれる安価な高アルコール缶チューハイの空き缶が転がる部屋で無精髭姿の男が起きた。彼にとって、今日は残業続きの日々の癒やしとも言える貴重な休日であった。変な夢を見たおかげでゆっくり眠れなかったと悪態を付いていたが、壁に掛けられていた時計を見れば既に昼を過ぎた時刻である。
「……やけに外が静かだな」
まだまどろむ頭であったが、彼は周囲の異変に気付く。静かすぎるのだ。普段ならアパートの直ぐ側にある小さな公園にやってくる親子連れの声を目覚し時計代わりにしているが、それがまったく聞こえてこない。ジャージ姿に着替えた男は外に出て暫く練り歩くと、新たな異変に気づいた。
「誰も通行人が居ない。いや、人の気配そのものがないのか」
何が起きたのかとスマホのニュースサイトにアクセスすると、トップを飾る見出しにデカデカと『多数の工事現場で不発弾が複数発見! 急遽、都は住民たちに避難指示』と表示されていたのであった。
「つまり、寝ている間に逃げ遅れたってわけかい」
ま、俺には関係ないと言い聞かせながら、彼はあくびをしながらアパートに戻る最中に一台の黒塗りのワゴン車とすれ違った。
「まだ住民の避難は完了していない、か」
「いきなりアレが現れたんです。いくら警察消防、自衛隊などの様々な公共機関の協力があったとしても漏れは幾つか出ますよ」
怪しげな機材を満載した車内からマジックミラー越しに黒瓜主任が男の後ろ姿をみやると、上空に頭を向けた。一足早い梅雨入りのせいか、空は曇天に覆われている。しかし、その雲はまるで生きているかのように蠢いており、それは今や都の新たなランドシンボルとして定着したスカイツリーのてっぺんをも呑み込んでいる。
「準備はどうなっている?」
「万全です。あとはこの機材と最後まで調整してくださった主任を送り届ければ、何時でも発動できます」
人気のない都内を、黒瓜たちを乗せた車が走る。そうして着いた先は……新宿の都庁である。ツインタワー式高層ビルの下には、幾つかの仮設テントや車両に怪しげなケーブルで繋がりあった機械が所狭しと並べられている。そして、都庁の外壁にはツルが這ったかのように下にある機器から伸びたケーブルが、頂上付近にまで登っていた。
車から降りた黒瓜が都庁ビルの双塔の堺に視線を送ると、そこにも怪しげな機械が設置されている。透明なカプセルに収められているのは…ニノキン・ザ・ニノキンの栄光を賭けた全日本二宮金次郎選手権を制し、祝祭具となった水晶の二宮金次郎像である。全ては彼が黒瓜が所長を務める山間の辺境にあるUDC支部に訪れたのが始まりであった。
「流石、勤勉の象徴でしたね。まさかあの問題を彼が解決するだなんて、思ってもいませんでした」
「ああ。あの装置を試作した私も正直、悔しかったよ」
試作して実用化を目指していた超常光線砲『U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)』は、大祓骸魂の確認にまで完成に至らなかった。そんな中、支部を訪れたものが居た。あの二宮金次郎像である。
「皆さん、ご安心ください。私に最悪な事態を回避するための妙案があります」
彼が提示したプランは、U.D.Cの開発技術を転用した上空を照らす破魔の投光器であった。具体的に言えば、祝祭具となった自身の身体を触媒として増幅させ、その光を上空に向けて照らし出す。そうすれば、大祓骸魂に随伴する骸魂…すなわち、UDC-Nullらの活動を抑制できるというのものだ。とはいえ、既に時間がないのは確かで、こうして現地で準備をを行うグループとギリギリまで装置の開発を行うグループに分かれたのだ。
機材を力仕事は任せとけと協力してくれたUDC-Pらが運ぶ中、黒瓜は装置の制御車に乗り込むと見知った部下たちの顔が出迎える。
「主任、ニノキン粒子増幅光波照射装置のテストは問題なく終わりました」
ニノキン粒子。それは祝祭具となった二宮金次郎像から観測された未知のエネルギー粒子である。それらが骸魂の活動を抑制すると判明し、これを増幅させる為に突貫工事で開発したのが破魔の光を広範囲に照射する『ニノキン粒子増幅光波照射装置』である。
「みんなよくやってくれた。良い部下に恵まれて、俺は果報者だよ」
「それはこっちもですよ。職場は辺鄙な場所でしたが、いい上司に恵まれました」
もしかしたら、これが今生の別れとなるかもしれない。その場に居る者らはそう思ったが、互いに口にはせず笑いあった。
「では、これより我がUDC組織は猟兵への支援を開始する」
「了解。ニノキン粒子増幅光波照射装置、起動!」
黒瓜の号令の元、装置は唸り声を上げながら起動する。都内中の電力がスカイツリーに対面する都庁舎に集められると虹色にライトアップされ、双塔の頂から迸る光が灯台となって都内全域を照らすのであった。
●グリモアベースにて
「ついに大祓骸魂へ至る雲の道が繋がりました」
集めた猟兵を前にしてシグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)はそう告げたが、どこか言葉が何時もより重い。それもその筈で、カクリヨファンタズムのみならずUDCアースをも破滅への道へ巻き込んだ大祓骸魂の捜索は難航していた。ようやく確認できたものの、大祓骸魂は無数の骸魂を引き連れて当初の予想を大きく上回って強大な物へと至っていたのだ。
「この様子だと、何時カタストロフが起きてもおかしくありません。ですが、悪いニュースばかりではなく良いニュースもありました。UDCアースで我々猟兵と共に協力し、邪神復活を防ぐ組織であるUDCが一手を打ってくれています」
UDC組織が開発を進めていた超常光線砲『U.D.C』は完成に至らなかったが、祝祭具となった二宮金次郎像の助力によって、大祓骸魂に決定的なダメージを与えられないが活動を抑制させる装置『ニノキン粒子増幅光波照射装置』が急遽新造された。これにより大祓骸魂の活動が鈍り、今まさに逆転の好機が訪れようとしていると、シグルドは説明した。
「取り急ぎとなりますが、これより大祓骸魂との決戦の場。東京スカイツリー頂上に広がる暗雲の中でそびえ立つ高さ約140mの巨大構造物の『ゲイン塔』へ転送します。我々が到着する頃には、UDC組織による援護が開始されているはずです」
UDC組織は直接的な現地での支援は出来ないが、UDC-Pとして光の粒子となった二宮金次郎の水晶像が手助けしてくれるとシグルドは添える。そして彼は念じるとフォースよるゲートを展開し、猟兵たちを双方の世界を破滅に誘おうとする大祓骸魂の決戦場へ転送するのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
色々と身辺が建て込み続け、遅ればせながらの最終決戦シナリオとなりますがよろしくお願い致します。
●シナリオ概要
東京スカイツリーの最上部に設置された、アンテナが収納された高さ約140mの巨大構造物、それが「ゲイン塔」です。そのゲイン塔に「大祓骸魂(おおはらえむくろだま)」が現れ、最終決戦が始まります!
大祓骸魂は、その膨大な「虞(おそれ)」によって、東京上空を「カクリヨファンタズムが如き空間」に変化させようとしましたが、UDC組織と祝祭具となった二宮金次郎像によって活動が抑制されています。ですが、何れ押し返されるのは明白ですので、その間に大祓骸魂を倒しましょう!
よって、プレイングボーナスは、「UDC-PやUDC組織のエージェント達と協力して戦う」、となります。UDC組織は新宿の都庁舎から機材を操作しての援護となりますが、機材によって触媒となった宮金次郎像は呼びかけに応じて、光の二宮金次郎として現地で戦ってくれます。
また彼らが登場した戦争シナリオはこちらとなりますので、よろしければご参考ください。
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34946』
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=35117』
補足ですが、大祓骸魂は今まで戦ってきた骸魂に呑み込まれた妖怪のように救出できませんので、ご了承ください。
それでは、双方の世界の運命を賭けた最終決戦の熱気にも負けない熱いプレイングをお待ちします。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
|
POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
備傘・剱
二つの世界のピンチって奴、か…
なんだか、本当に世界を救ってるって自覚が出てきたぜ
さぁ、光の二宮金次郎と、組織の人間全員に護霊亀、発動!
コインを全員に渡して、身を守れる様にする
俺はオーラ防御で防御しつつ、誘導弾、呪殺弾、斬撃波、衝撃波、ブレス攻撃で攻撃しつつ、ダッシュで接近戦に持ち込み、結界術で動きを縛って、鎧砕きと鎧無視攻撃を二回攻撃に重ねて、攻撃していくぞ
そして、フェイントを交えつつ、隙が生まれたら、結界術で縛り、誘導弾、呪殺弾、斬撃波、衝撃波の零距離射撃に破魔をつけて叩き込んでやる
自己犠牲ってのは、俺は好きじゃないんだが…
やらなきゃいけないってのなら、容赦はできない
アドリブ、好きにしてくれ
大祓骸魂と周囲に渦巻く骸魂の積乱雲を乗り越え、猟兵らはその中核に位置する東京スカイツリーの頂上に出現したゲイン塔へ転送された。
「二つの世界のピンチって奴、か…。なんだか、本当に世界を救ってるって自覚が出てきたぜ」
雲の内部にそびえ立ち、稲光で禍々しき姿を映し出す塔を見上げながら、備傘・剱(絶路・f01759)はぽつりとそう呟いた。まるで怪物の腹の中にでも飛び入ったかのように、周囲で蠢く骸魂であろう暗雲が生々しく胎動している。そして、異界となったこの空気そのものは幽世で剱が何度も肌で感じたものであった。ここはUDCアースであるはずなのだが、まるでカクリヨファンタズムに居るかのような錯覚感は否応にも2つの世界を巻き込んだものと自覚されてしまう。
そんな中、それはゲイン塔の前に居た。おかっぱ頭に巫女装束といった神に仕える巫女然とした清純そうな少女であったが、探索者として様々な邪神の復活を阻止してきた剱にはすぐに理解できた。あれこそが人からも妖怪からも忘れ去られた古の邪神、大祓骸魂なのだと。
『愛するUDCアース……あなたを永遠にしたい』
侵入した侵入者である猟兵を気にする素振りはなく、それは懐に忍ばせていた合口を取り出すと、鞘を抜きながら自らの指先に刃を這わせて血が滴り落ちている。雲で出来た地面の下は仄かに虹色に染まっている。状況を分析すれば、この光は地上でUDC職員らが上空を照らす『ニノキン粒子増幅光波照射装置』という頭が痛くなりそうな名によるものであろう。それらを考慮した上で、彼女が何をしようとしているのかを剱は答えを導き出すと同時に、本能的に妖怪『霊亀』の描かれたメダルを外界へと投げ落とした。
「やらせるかよ!」
メダルは勢いよく雲を抜け、外界である新宿都庁へと至る。そして、それらは建物、機材、UDC職員らが乗る車両へ次々と貼り付けられていく。それが終わると亀の甲羅のような結界が周囲を取り囲み、バチリと何かが弾けるような音と衝撃が周囲の建物を振動させた。
『……邪魔、しましたね?』
「ああ、やるさ。お前はあいつらを呪い殺そうとしていればな」
新宿都庁から照らし出される破魔の虹光は、決定的な浄化は見込めなくとも着実に骸魂の活動を抑え込もうとしている。その骸魂を従える大祓骸魂本体としては、小賢しい抵抗をする彼らを疎ましく思い、自傷を代償にして相手を呪い殺す呪法を行おうとした。だがそれも、それを見破った剱によって事なきを得たのだが、必然的にその鉾先は彼へと向けられることとなる。周囲の暗雲が綿飴のようにちぎられると、それらが大祓骸魂が手に持つ懐刀『生と死を繋ぐもの』を形取る。鈍く光る切っ先が剱の元に向け一斉に放たれた。
「どうやら、気分を損なわせてしまったようだな」
剱はフォトンガントレットの出力を上げ、発生した力場によって懐刀の軌道を反らしながらエアブーツによる跳躍で一気に距離を詰めたい所であったが、雨あられのように縦横無尽に放たれる複製された懐刀によって阻害されている。呪殺弾や衝撃波などで突破口を作ろうとも試みたが、骸魂から複製され続ける懐刀は損失された分を直様に補充してきていると来れば、今は隙が生まれるまで防戦に徹するしか無い。だが、そんな彼の願いが通じたのか。それともこれも意図してなのか。大祓骸魂の背後が虹色に輝いたかと思うと、そこから眩い光を放つ物が雲の地面を突き抜けてきた。
「思わぬ妨害に随分と手こずらせましたが、お待たせしました。光の二宮金次郎、ここに推参です!」
厳密に言えばあれは二宮金次郎像そのものではなく、彼を触媒とした光の粒子が集まった謂わば集合体のようなものだ。しかし、その身から放たれる破魔の光は内部の骸魂らを祓いながら怯ませるのには十分なものであり、今まで飛び交っていた懐刀の複製もくずぐずとなって崩れたり動きが緩慢になったりとしている。
「自己犠牲ってのは、俺は好きじゃないんだが…。やらなきゃいけないってのなら、容赦はできない」
文字通りにその身を捧げた二宮金次郎像。少なくとも彼の自己犠牲によって骸魂らの勢いが削がれたのならば、それが与えてくれた千載一遇の好機を無駄にせまいと剱は攻勢に転じた。絶対的だった防衛網をエアブーツから得られる跳躍力で一気に跳び越え、突如としてゲイン塔の空域に乱入してきた二宮金次郎に意識を向けていた大祓骸魂の懐へと飛び込んだ。
『きゃっ!?』
それに彼女が気づいた頃には既に遅かった。零距離で放たれた斬撃を伴う衝撃波が大祓骸魂を構成する『虞』を破魔の力を宿す斬風で削ぎながら、彼女をゲイン塔へと吹き飛ばしてみせたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
魔女・ウィッチ
魔女灯箒に乗り、予め揮杖の精霊にUCの代理詠唱(高速詠唱・魔力溜め)を指示!
「我は偉大なる魔女!全世界を支配する大賢者なるぞ!我が所有物(予定)であるこの世界を破壊しようなど見過ごせぬわっ!」
魔女果実を食べて魔力を高め、魔女宝珠の式神使いで使い魔達を出来る限り召喚よ!キュウリ10本でも100本でもくれてやるからキンジロー像と一緒に死ぬ気で足止めなさい!…でも本当に死んだら承知しないんだからねっ!
敵の攻撃は魔女装束に込められた魔力で軽減、魔女導書へ吸収して掠奪ね!
限界まで詠唱したら属性攻撃全力魔法!
欲望具現術(ウィッチクラフト)……アルカナ・ブラスター!
削り取った分の骸魂を魔女宝珠に掠奪するわ!
『逶ョ縺後?∫岼縺後=縺√≠縺ゅ≠縺ゅャ??シ』
光り輝く二宮金次郎像から迸る光がゲイン塔を周囲を取り巻く骸魂を照らし出すと、言葉にならない叫び声が空間内に轟いた。本来であれば全日本二宮金次郎選手権を制して祝祭具として石像からクリスタル像へと変容した彼であったが、本来の姿ではこのようにはいかなかったかもしれない。一重に言えば、U.D.Cの完成に至らなかったとは言え転用させたUDC組織の技術が、それらを阻止せんと骸魂の妨害を防いだ猟兵の活躍が今こうして帰結したと言ってもいいだろう。
「はーっはっは! 我は偉大なる魔女! 全世界を支配する大賢者なるぞ! 我が所有物(予定)であるこの世界を破壊しようなど見過ごせぬわっ!」
胃の中に煮え湯を飲まされたかのように断末魔を上げる無数なる骸魂の周囲を、魔女・ウィッチは魔女灯箒に跨って飛んでいた。仰々しくも鷹揚とした素振りでマントを棚引かせながら、毒々しい色合い(色味はアレだが、とても甘いハロウィン用の色付きチョコ)で彩られた魔女果実をシャクリと齧ってみせた。
『繧「繧、繧ァ繧ィ繧ィ繧ィ繧ィ?√??鬲泌・ウ縲√リ繝ウ繝?リ繝ウ繝?シ?シ溘??鬲泌・ウ縲√さ繝ッ繧、??シ』
(うんうん、演技はバッチシ! 相手が怯んでいる間に食べた魔女果実で魔力をブーストして、魔女宝珠から使い魔達を出来る限り召喚して…やるんだから!)
骸魂の壁からあげられる声色から察して余裕綽々のウィッチであったが、その中核となる大祓骸魂は別であった。挑発を続ける彼女には一瞥もせず、自らの力の元でありUDCアースをカクリヨファンタズムに変容させてカタストロフを引き起こす骸魂の力を削いでいる張本人、光の二宮金次郎へ喉元に刃先を突き立てようと静かなる狂気を孕んだ殺意を向けていた。
『嗚呼、眩しすぎます。その光は、深淵の闇より還った私たちには眩しすぎます』
先程の猟兵より受けた傷から煙のようなものを立ち昇らせながら、大祓骸魂は異空間内を照らし出す二宮金次郎像に向けて恨めしそうに呟いた。その直後、煙の正体であり大祓骸弾を構成している『虞』がドクロ状に形取り、所々抜けて不揃いな歯を剥かせながら二宮金次郎へと喰らおうと襲いかかった。
「ああ、ちょっと! 私の方に来なさいって、もぅ! キュウリ10本でも100本でもくれてやるから、キンジロー像と一緒に死ぬ気で足止めなさい! …でも本当に死んだら承知しないんだからねっ!」
先程まで大魔女の演技をしていたウィッチであったが、思いがけない事態で容姿に見合った背伸びをしたくなる年頃である地が出てしまう。だが、今はそれを訂正する暇は無いのは事実で、慌ただしく取り出した魔女宝珠を投げるとつい先日のUDC-NullがUDC支部を襲撃した際に契約した妖怪が宙を浮かぶ宝珠より召喚された。
「任されただぁ。キュウリに見合った仕事はしっかり果たすべぇ」
間の抜けた声とともに召喚されたのは、日本を代表する妖怪(フェアリー)である河童だ。すぅっと息を吸い込んでカエルのようにお腹を膨らませると、頭の皿に蓄えられた水を圧縮させた水鉄砲を『虞』に向かって吐きつける。ウォーターカッターさながらの勢いで地面の雲ごとドクロ状の『虞』を真っ二つに切り裂いてみせる。
『貴方も……私の愛が成就するのを邪魔するのですね?』
大祓骸魂は頭を頭上に向け、箒で飛んでいるウィッチを越えてどこか遠くを見ているかのような目で彼女に視線向ける。その直後、大祓骸魂の周囲で一斉に咲き乱れた彼岸花からの花弁から無数の『虞』が種子を飛ばすかのように一斉に上空目掛けて放たれたのだ。
「ええ、邪魔するわ。そんな一方的で歪んだ愛なんて、あたしもゴメン真っ平なんだから!」
そう叫びながら迫りくる弾幕に向け、ウィッチは白紙の魔女導書を投げつける。本来はオブリビオンから奪った魔術知識やUCを記述した呪われし禁断の書物だが、投げつけたそれはまだ何も書かれていないまっさらな本である。しかしながら、絶えず新たなる知識を求める意思を持った呪われた書は『虞』の飛礫を吸収すると文字にと変えさせて、新たなるページを綴りながら吸収していった。そして、密かに詠唱を続けていたウィッチが最後の一句を唱え終えると、お返しとばかりに魔女揮杖を突きつけると魔力の渦が妖しくも光り輝きながら先端に集約されていく。
「欲望具現術(ウィッチクラフト)……いくわよ、アルカナ・ブラスター!」
極太な白炎色の破壊光線が放たれ、その反動で若干ぶれながらも大祓骸魂とその周囲を薙ぎ払っていく。未だ宙に浮かび続けている魔女宝珠は、二宮金次郎から放たれる光と彼女が放った渾身の一撃から迸る光を屈折させ併せながら、巻き添えとなって灼かれた骸魂の瘴気を帯びた煙を吸収していたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
貴女が大祓骸魂…
UDCアースが好きなら、なんで壊そうとするんだ。
UDCアースには、俺がお世話になってる旅団がある。
カクリヨファンタズムは、俺の故郷だ。
俺はどっちも守りたいんだ。
[野性の勘、第六感]で、周囲の状況と大祓骸魂の動きを[情報収集]しよう。
敵の攻撃は可能な限り[ダッシュ]で避けよう。
ダメそうなら[激痛耐性]で凌ごう。
チィも手伝い頼む。
UC【精霊共鳴】で力を増幅しよう。
光る二宮さんも、少しだけ力を貸して下さい。
可能な限り大祓骸魂に接近しよう。
狙いを外したくない。
月の精霊チィの浄化と、光る二宮さんの力を集めた[属性攻撃、多重詠唱、全力魔法]を出し惜しみ無しで発射!
当たれぇー!!
火土金水・明
「ついに『大祓骸魂』との決戦ですか。」「あの時のUDC組織のみなさんと協力しての戦闘ですね。こちらも全力で頑張りましょう。」
(UDCエージェントさん達とタイミングを合わせて攻撃を始めます。)
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【新・ウィザード・ミサイル】で、『大祓骸魂』を攻撃します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】【狂気耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に繋げます。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
「貴女が大祓骸魂……」
猟兵の手によりもうもうと大祓骸魂を形成させている虞が祓われる事で白煙が立ち昇る中、遠巻きながらも木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はゲイン塔を埋め尽くすように咲き乱れる彼岸花を一望した。この中心部から立ち昇る煙の中に大祓骸魂は居る。アレを祓えば二つの世界をカタストロフから救えるが、彼には理解し難いことがひとつだけあった。
──UDCアースが好きなら、なんで壊そうとするんだ。
彼はカクリヨファンタズム生まれでありながら、数奇な運命によりA&Wの地で育った。育ての親である猟師から猟兵としての素質を見出され、死別した哀しみを乗り越えて彼は外の世界へと旅立った。そんな中で月の精霊の子『チィ』や仲間の猟兵などの様々な出会い、別れ、世界の運命を賭けた旅路の果てに、彼は本当の故郷がカクリヨファンタズムであること。この世界に生みの親と血を分けた兄弟が居ること、此度の大祓百鬼夜行の最中に知り得たが、それでも育ったA&Wは今も彼にとってはお爺さんとの記憶が残る愛する故郷である。それだけではなく、人としての活動が不慣れなせいでヒトとしての感情には疎いが他の世界も同じく好きだ。好きだからこそ失いたくない。この一念の元で、彼はオブリビオンとの戦いに身を投じたとも言えるかもしれない。
──愛するUDCアース。あなたを永遠にしたい……。殺したものは過去となり骸の海で永遠となる、なまくらだけれど時間をかければ、誰でも、何でも殺すことができる、この懐刀『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』。あとひと刺しで、それが叶います。猟兵たちよ、止められますか?
だが、大祓骸魂は別である。愛するが故に殺す。滅ぼす。自らの一部とさせる。憎しみは愛と似ているとは言うが、彼女に関しては純粋な愛によるものが行動原理である。例えその果てに世界の死が待ち受けようとも、盲目的で猟奇的な狂愛だったとしても、古の邪神である大祓骸魂はUDCアースを愛している。相手を慈しむ愛ではなく、一途でありながらも他者の都合など考慮しない一方的な愛として。
「あの時のUDC組織のみなさんと協力しての戦闘ですね。あちらも総力戦の構えであるのであれば、こちらも全力で頑張りませんとね」
UDC-NullによるUDC支部の襲撃による防衛戦に居合わせた火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、共に協力し合って骸魂を撃破させた。開発中であったU.D.Cの実用化が間に合わずに打つ手を失われたと思われたUDCであったが、彼らもまた邪神の魔の手から救うと誓った精神の元で徹底抗戦に打って出た。それもひとえに、正義が喪われた世界であるUDCアースにおいて愛するものがある為、猟兵のような超常的な力が無くとも邪神との闘いに身を投じた戦士である。彼らが外部から照らす虹色の破魔の光、それを介して意思を持った光の粒子となった二宮金次郎像は、大祓骸魂とその周囲を取り巻く骸魂の力を、猟兵という打撃力を以って確実に削ぎ落としつつある。また、敢えて骸魂となった多くの妖怪たちも自らの世界だけではなくUDCアースをも救うために立ち上がったのだ。
この戦いは妖怪、UDC-P、UDC組織、猟兵が一つの意志として団結し、復活した大いなる存在で脅威である大祓骸魂という共通した物に立ち向かったものだ。彼らの意思を無駄にせずべく、明は魔法陣を多重展開させた。
「にゃー。使い魔が荒いご主人だにゃー」
「人語を話すのであれば、ただ乗っていないで多重詠唱の役立って貰いませんとね? クロ、全ての属性を収束して、今、放ちましょう!」
明の使い魔である黒猫の協力の元で、明は自らが扱っている属性魔法を全て操って放つ新・ウィザードミサイルを展開させた。八色になる魔法弾はニノキン粒子照射装置から発さされる虹光と同じ光の筋を描きながら、大祓骸魂の虞を削ぎ落としていく。だが、虞の再生力が勝っているのか、未だに消えようとはしない。その様子を見ていた都月が、手にした杖を強く握りしめて静かに瞼を瞑り詠唱をしていく。
(精霊様、チィ……そして、光る二宮さん。少しだけ、力をお貸しください)
その想いに応えたのか、光の二宮金次郎が再び光の粒子に戻り、都月の杖先にそれは集まっていく。
──狙いを外したくない。
恐らくこれは一発きりの勝負となる。確実に当てるため、都月は覚悟を決めて走り出した。彼岸花から虞の礫が放たれるが、それを上空から見た明が魔法弾の一部を咲き乱れる赤い絨毯に向けて放ち都月の援護を行う。カラフルな爆炎で視界が遮る中、その合間から視えた大祓骸魂に向け、光を湛えた杖を向けた。
「当たれぇー!!」
放たれた光弾は吸い寄せられうように大祓骸魂へと当たり、彼女は光の包まれる。
──どうして、どうして邪魔をするのです? こんなに、愛して、いる…のに……。
その言葉を最後に光が収まると、大祓骸魂の姿は塵も残さずに消滅していた。
「やった…のか?」
「チィ?」
「ええ、やりました」
へなへなと脱力する都月だったが、同時に空間が歪み始めゲイン塔が崩れ始める。危うくその下敷きになりそうだった都月だが、箒に乗って急降下する明が既のところで回収して、崩壊する異空間より転移して脱出を図った。
「対象に動きがありました。これは……? 主任!」
「ああ。どうやらまた、生き延びたようだな……」
スカイツリーの上空留まっていた暗雲が次第に霧散していき、黒々とした雲状の骸魂に亀裂が走って光が差し込んでくる。
世界は救われた。新宿庁舎の最前線で猟兵を支援していたUDC職員たちが、作戦成功の歓声の声を沸き立たせた。しかし、装置増幅の祝祭具としてカプセルの中に入った水晶の二宮金次郎像は微動だにしていない。彼は祝祭具として全てを全うした。力を使い果たして元の物言わぬ二宮金次郎像に戻った彼は、抱き合い喜び合う人々を都庁の上から見守るように静かに見下ろしていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵