大祓百鬼夜行㉕〜みをつくして、恋ひわたらん
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東京スカイツリーの最上部に設置された『ゲイン塔』。
骸魂の元凶たる究極妖怪にして、UDCアースの大いなる邪神でもある存在、『大祓骸魂』はそこに舞い降りた。
眼下に広がるのはUDCアース。この地こそが彼女の目的地、否、目的そのもの。
――ああ 愛しきUDCアース(あなた)
大祓骸魂は吐息とともに、言葉を紡ぐ。それは募りに募った想いの丈でもあり、UDCアースに対する呪詛でもある。
大祓骸魂の愛は揺るがない。それはとても美しいものだけれども、時にそれは狂気となり得る。
すらり、と引き抜かれる懐刀、その銘は『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』。鈍(なまくら)だけれども、時間をかければ……誰でも、何でも、殺すことができる。例え、生き物でなくとも。
――殺したものは過去となり 骸の海で永遠となる
『生と死を繋ぐもの』の切先は真っ直ぐUDCアースに向けられて。
大祓骸魂の髪と瞳の色をした刀身が虚空を伝ってUDCアースに差し込まれる。大祓骸魂の手に返ってくるのは突き刺した感触とUDCアースの鼓動。その鼓動の力強さが彼女の想いをさらに募らせる。
――ああ 愛するUDCアース(あなた) あなたを永遠にしたい
あとひと刺し……あとひと刺しで それが叶う。
そうすれば、あなた(UDCアース)が永遠となる。
――ともに 骸の海を揺蕩いましょう
この想いは決して、何人たりとも阻むことはできない。できようはずもない。
ゆえに大祓骸魂はこう告げる。
――猟兵たちよ 止められますか
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「ヒトの恋路を邪魔するほど野暮ではないつもりなんだけど」
緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は困ったような微苦笑で話を始めた。
「ごめんなさい。馬に蹴られる覚悟で臨んでもらえる?」
それを預けてしまう自分に申し訳なさを感じつつ、冬香は猟兵たちにお願いする。
「大祓百鬼夜行、最終決戦よ」
そして予知で得た内容を話し出すのであった。
事態はひっ迫している。
大祓骸魂は既にUDCアースの東京スカイツリー最上部に到達している。そこで行っているのは、UDCアースの殺害。
「世界をどうやって殺すのかって話だけど、それは彼女が持っている懐刀がポイント」
『生と死を繋ぐもの』。この懐刀は時間さえかければ何でも『殺して』しまう。
死んでしまったなら。そのモノの時はそこで終わり。進み続ける現在(いま)についていけず、過去となった後は骸の海に行くしかない。それが例え、UDCアースという世界であっても。
「彼女が何故そこまでUDCアースを殺したいのかと言うと、なんだけど」
ここが冬香の微苦笑の原因。
大祓骸魂はUDCアースに対する絶対なる『愛』を持っている。だからこそ、UDCアースを永遠としたいのだ。しかし、現在から未来は不確実で変化し続ける。変化と永遠は相容れぬもので、変わらない過去(じじつ)こそが永遠となり得る。
「大祓骸魂はその『愛』の元、世界を滅ぼそうとしている、ってことね」
そして今この時、大祓骸魂はトドメのひと刺しを行おうとしている。
だが猟兵としてそれをさせるわけにはいかない。
「そんな私たちのことを大祓骸魂も察知しているみたい。『待っている』わ」
東京スカイツリー最上部『ゲイン塔』。そこを決戦の場として、大祓骸魂は猟兵たちを待っている。
「大祓骸魂は、その身に纏った膨大な『虞(おそれ)』で、東京上空を『カクリヨファンタズムが如き空間』に変化させるの」
それによって大祓骸魂はこの戦争に存在した『あらゆる手段』を行使して襲い掛かってくる。
しかしそれはこちらにも利点がある。
「こっちは全部知っているわけだから」
『存在した』あらゆる手段が敵の得手なら、それに対応した手段を猟兵たちは既に知っている。
「最後まで、しっかりお願いね」
そう言って、冬香は猟兵たちを送り出すのであった。
るちる
まいどお世話になってます、るちるです。
『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえ』と言いたいところですが、ちょっと愛が重すぎる件について。
大祓骸魂以外は幸せになれない愛をどうか止めてあげてください。
●全体
1章構成の戦争シナリオです。
リプレイはシリアス寄り、心情寄りになります。ギャグ寄りネタ寄りの依頼は気力が持てばまた別に。
以下のプレイングボーナスがあります。活用してください。
『プレイングボーナス』
(1)(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)
●1章
ボス戦『大祓骸魂』との戦闘です。
ちゃんと戦闘してくださいねー。
というわけで、戦闘系ではないプレイングボーナスを選んだ場合、戦闘の前にその場面が差し込まれ、何故か大祓骸魂も攻撃をしてこないというシーンが発生します。会話などを行いたい場合は狙ってみてください。
ただし、必ず最後には戦闘が発生するのと、当シナリオの大祓骸魂はギャグ化ネタ化しない(コミカルな仕草くらいはするかもです)というのは絶対とします。
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採用人数は決めていませんが、執筆スケジュールを以下の通りとします。
5/31の20時時点で大祓骸魂の攻略が不確実な場合は6/1朝の完結を目標に採用人数を最低限として動きます。
上記の時点で攻略が確実な場合はのんびりプレイング締切に従って執筆していく予定です。
それでは皆さんの参加をお待ちしておりまーす。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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水鏡・多摘
㉓お金で買えそうな(以下略)
狂える愛に付き合う道理もない。
己の愛のみに殉ずる狂気こそ邪神、それは我等が打ち滅ぼさねばならぬ。
ここで終わらせる!
吹き出すお金の御殿に買いたいと願うのは…芸術作品。
曼荼羅を作れる数と種類の仏像を買って…まだ足りぬ…!
ならば場所を考え東京タワーを買えぬか試す。そのものがいけるならいいが駄目なら権利書で試す。
強化されたら降霊術で仏像に式神を降ろし妖怪達を撹乱、
統率乱れた隙に空中浮遊と空中機動で一気に大祓骸魂へと距離を詰める。
十分接近したら爆発の魔力込めた符を大祓骸魂の足元に投げ破壊し体勢崩す。
そして強化された力全てを込めたUCを叩き込んでくれよう。
※アドリブ絡み等お任せ
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時刻は誰そ彼刻。
東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』。そこに佇むのは『大祓骸魂』。その手にある『生と死を繋ぐもの』の刃を指でゆっくりと撫でて、最後のひと刺しの刻を待つ。
されど、それを許さぬのが猟兵。
ゆえに水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は告げる。
「狂える愛に付き合う道理もない」
と。
多摘の声を受けて、大祓骸魂がゆっくりと振り返る。『止めにきた』のだと認識した瞬間、大祓骸魂は口元に無表情ながら獰猛な笑みを浮かべて。
(己の愛のみに殉ずる狂気こそ邪神、それは我等が打ち滅ぼさねばならぬ)
敵には、邪神には容赦せぬ、と自身の力を解放する多摘。
「ここで終わらせる!」
そう言って戦闘へと突入するのであった。
周辺の光景が変わる。それはこの戦争において実際に在った戦場『バズリトレンディ御殿』。湧き出る金をいかに使うかが戦いの焦点となる戦場。
自身に集まってきた虞(おそれ)によって、それを把握した大祓骸魂は集まってきた配下オブリビオンたちに告げる。
「己が欲望に 従いなさい」
集まってきた妖怪たちが己が欲望に従って金を消費していく。その使った分の金額が大祓骸魂に力を与えていく。
対して多摘も負けじと願う。
(願うのは……芸術作品)
曼荼羅を作れるほどの数と種類の仏像を買って、買って……。
「まだ足りぬ……!」
欲望は尽きぬ。じゃなかった、強化が足りない。
(ならば……)
多摘の思考に入ってきたのは東京タワー。ここを買えるなら膨大な額が使えるはずだ。そのものがダメでも権利書や所有権やネーミングライツとか。
だが。
「くっ……ダメか」
調べてみたら法人でした。確かに金で買えそうなものと言えなくはないが、そもそも売り物じゃないし、合意なく『人』を買うのはいかがなものか。バズトレ御殿のそういう判断があった模様。
「仕方あるまい」
今ある強化だけで片を付ける。見れば使った金額は多摘の方が上のようだ。
まずは降霊術で仏像に式神を降ろし。
「ゆけ」
と妖怪たちを放ってかく乱。統率の乱れた妖怪たちを尻目に、多摘は竜神の力で空を飛び、一気に大祓骸魂との距離を詰める。
「くらえっ!」
間合いに入るや否や、爆発の魔力を込めた符を大祓骸魂の足元に投げつけ、足場を破壊。大祓骸魂の体勢を崩す。そこへ肉薄する多摘。
「彼岸に還るがいい」
ゴージャス度によって強化された力の全てを込めた尾の叩きつけの一撃――【龍尾撃】が大祓骸魂を捉えるのであった。
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
馬に蹴られる覚悟でとは言うが、寧ろその程度で済めば御の字んじゃないか?
どう考えても大祓骸魂は馬より強いだろ――と馬鹿な事を一瞬考えてから、気を引き締める
心を落ち着かせて、神刀の封印を解除。清浄なる神気を身に纏う事で真の姿に姿を変える(IC参照)
捌の型【水鏡】の構えで妖怪軍団に大祓骸魂と相対
落ち着いて妖怪達の攻撃を受け流し、浄化の神気を込めた一刀で、妖怪に取り憑いた骸魂のみを切断、支配から解放する事で間接的にも敵UCの効果を弱めていく
大祓骸魂への道をこじ開けて、一気に接近
冷静に敵の行動を見極めて、大祓骸魂にも一刀ずつ確実に攻撃を与えていく
――やっぱり、馬より強いよな。なんて改めて考えてしまう
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戦いは佳境に突入している。
東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』にいる『大祓骸魂』。
その前で『神刀【無仭】』を鞘から抜き放ちながら、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は大祓骸魂を見据える。
(馬に蹴られる覚悟でとは言うが……寧ろその程度で済めば御の字んじゃないか?)
脳裏によぎったのは出発前にグリモア猟兵が言っていた言葉だ。ことわざになぞらえて伝えられた言葉だが、実際に目の前に立つと冗談以外の何物でもない。
(どう考えても大祓骸魂は馬より強いだろ)
と思ったのも一瞬。
鏡介は大祓骸魂の周りに集り始めたオブリビオンと化した妖怪たちを見て、気を引き締める。
深呼吸ひとつ。
心を落ち着かせて、神刀の封印を解除すれば、解き放たれるは清浄なる神気と、それを身に纏う鏡介。その姿が荒々しいものと化す。
「我が太刀は鏡の如く」
そして小さく言葉を紡ぎながら【捌の型【水鏡】】の構えを取る。
ゆらりと切先が揺れて。
その動きに触発された妖怪たちが鏡介に向かって飛び掛かる。しかし、その動きは鏡介の想定内だ。相手の動きに合わせて太刀筋を変え、妖怪たちの攻撃を受け流し、返す刀で一撃を叩き込んでいく。浄化の神気を込めた一撃は、神刀の力で以て骸魂のみを切断していく。骸魂が消えたことで解放された妖怪たちはすぐさまこの場を退避して、大祓骸魂の戦力が徐々に減っていく。
そして。眼前に開くは大祓骸魂への道。
一気に接近しながら、しかし鏡介は冷静に大祓骸魂の動きを見極めて。『生と死を繋ぐもの』をかわしながら、確実に攻撃を与えていく。
(――やっぱり、馬より強いよな)
大祓骸魂の攻撃をかわしながら、鏡介はそんなことを思うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
ボーナス:おまじない
"名を別ける"
関ヶ原の切欠になった程の、衰退と敗北を齎すおまじない
私の『大』事な人達の為にも、お前を此処で『祓』って見せる
『骸』の海に還るのは、貴女一人だけでいい
押し通るならば、精『魂』尽く迄相手になる
UC発動
▲焼却の劫火纏い、「流水紫電」の足捌きで
変幻自在に▲早業の斬撃と火災旋風を浴びせる
琴美さんも
塵塚御前も
花蓮さんも
皆、哀しい出来事を振り切って
顔を上げて歩き出したばかり
彼らの世界を、貴女の未練で潰させはしない
おまじないを見抜かれぬ為
旗色悪化は重圧のせいと勘違いするよう▲騙し討ち
懐刀は▲咄嗟の一撃で弾き
弾けぬ懐刀は浅く受け、焔纏わせた胴薙ぎ一閃で斬り捨てる
※アドリブ他歓迎
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戦いは続く。いまだ『大祓骸魂』は東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』で健在であり、大祓百鬼夜行は終わりを見ない。
その終わりを突きつける役目は猟兵にしかできない。
クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は大祓骸魂の前に立つ。
「琴美さんも、塵塚御前も、花蓮さんも……」
クロムが紡ぐ名前はこれまでにこのUDCアースで縁のあった者たちだろう。彼女らの顔を思い浮かべながら、クロムはさらに続ける。
「皆、哀しい出来事を振り切って顔を上げて歩き出したばかり」
ゆえに、ゆえに、だ。
クロムが大祓骸魂に突きつける。
「彼らの世界を、貴女の未練で潰させはしない」
「未練では これは 私の生きる目的ですから」
永遠に交わることのない主張が火花を散らして。
「十面埋伏。埋め火の恐ろしさ、身を以て知れ」
クロムがユーベルコード【灼落伽藍・敷火】を解き放つ。
触れれば深い火傷を刻み付けるほどの激しい憑紅摸の焔を纏ったクロムが高速移動。『流水紫電』――仙狐式抜刀術の要とも言える足捌の秘奥を以て、目にも止まらぬ斬撃を大祓骸魂に放ち、その刃が大祓骸魂を斬り裂く。
「ふふ ふふふ」
しかし大祓骸魂は動揺すらせず、手にした『生と死を繋ぐもの』を一瞬で複製して、一斉に解き放つ。数え切れない数の懐刀がクロムに殺到して。
「くっ!」
高速移動で回避しつつも全ては捌けず、その身に切り傷を負わされていく。雪崩れ込むような懐刀の数に徐々に押されていくクロム。
「私の『大』事な人達の為にも」
しかし押されっぱなしではない。素早く距離を取ったクロムは刀を一閃。火災旋風を巻き起こし、視界内の懐刀を弾き返す。
「お前を此処で『祓』って見せる」
「……」
クロムの言葉に、無言で生と死を繋ぐものを再び解き放つ大祓骸魂。
「……っ!」
だが一度見た技を何度も喰らうほどクロムも策無しではない。素早く大祓骸魂の背後に回り込み、不意打ちの一撃。
「『骸』の海に還るのは、貴女一人だけでいい」
不意打ちの一撃は生と死を繋ぐものの本体で受け止められ。大祓骸魂はそのままクロムの刀を受け流しながら刺突の一撃。
「ちっ!」
それを咄嗟の一撃で弾き返しながら、しかし体勢を崩したクロムは大祓骸魂に振り払われる。
「状況を おわかりですか」
懐刀を構えたまま、油断なくゆっくりと接近してくる大祓骸魂。
今の状況はどう見てもクロムの劣勢。先の『言葉』とて虚勢にしか聞こえない。
されど。
「押し通るならば、精『魂』尽く迄相手になる!」
クロムが『最後の言霊』を告げる。
それはまじない。呪い(まじない)転じて呪い(のろい)だ。『"名を別ける"』という、過去大きな大戦の切欠にもなったという衰退と敗北を齎す、まじない。
大祓骸魂の名は竜神親分が与えたもの。『大祓』という言霊によって弱体化を余儀なくされているのだ。その大祓骸魂に新たな『言霊』をクロムは与えた。
名を別けるということは、力を別けるということだ。
「!!」
突然、がくんと大祓骸魂が跪く。複製して纏っていた生と死を繋ぐものが虚空に消えていく。大祓骸魂がまじないの効果を認識する、前に。
クロムは既に肉薄している。
「今の状況、わかってる?」
先ほどの言葉をそのまま叩き返して。
クロムは焔を纏わせた胴薙ぎの一閃を放つのであった。
大成功
🔵🔵🔵
空亡・劔
あたしは最後まで言い続ける
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!
真の姿を晒す
赤き太陽の如き日の玉を背景として背負う姿
それは百鬼夜行の…
神殺しの魔王発現
ああ
とてつもない力の高まり…これはそれだけあんたの愛が世界の脅威であることを示している
【天候操作】で猛吹雪を引き起こし妖怪達と大祓骸魂を分断
更に【結界術】で結界を展開し妖怪達の接近を妨害
超高速で飛び回り
【戦闘知識】でそれぞれの攻撃方向を【見切り】
無数の【残像】を残しながら攻撃を回避
避けきれない時は【念動力】で障壁を展開しダメージ軽減
神を殺す魔剣による【二回攻撃】による【切断】
最後に異変を起こす!
【天候操作】で太陽を昇らせる
●
戦いは続く。いや、ようやく折り返し、というところか。
『大祓骸魂』のその身は最初に比べれば傷だらけ。纏う虞(おそれ)も比べ物にならないほどに減っている。それでもいまだUDCアースを『殺す』ほどの力を秘めて、大祓骸魂は『生と死を繋ぐもの』を握る手に力を入れる。
それを止めんとするのが猟兵の役目。
「あたしは最後まで言い続ける……この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!」
空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)が啖呵を切る。それは彼女にとって紛れもない事実なのだろう。
それが児戯のようなものであれば大祓骸魂も無視をしたのだが、そうではないということは彼女もまた知っている。
「生意気でも 愛とはそういうものですから」
大祓骸魂がゆっくりと応える。その身に纏う虞を放ちながら。
「……っ!」
その虞に飲み込まれそうになりながら、劔は真の姿を解放する。
それは、赤き太陽の如き日の玉を背景として背負う……。
さながら百鬼夜行……否、神殺しの魔王の発現。
(ああ……)
大祓骸魂の虞をいなしながら、劔は嘆息を吐く。
(とてつもない力の高まり……これはそれだけあんたの愛が世界の脅威であることを示している)
だからこそ退くわけにはいかない。
「邪魔はさせません 集いなさい」
大祓骸魂が声をあげれば、オブリビオン化した妖怪たちが彼女のもとに集う。
「そうはいくかっ!」
だが態勢が整うよりも早く、劔が仕掛ける。
真の姿の力によって、巻き起こった猛吹雪が大祓骸魂と妖怪たちを分断する。さらに結界を展開して自身への接近を妨害する。
後は……仕掛けるのみ!
「我が身、我が存在……今こそ、その意義を果たす時!」
真の姿をさらに凍てつく赤き太陽の如きオーラが覆う。【神殺しの魔王「空亡劔」】によって得た飛翔能力で超高速飛翔。大祓骸魂に肉薄する。
無造作に振るった大祓骸魂の生と死を繋ぐものの一撃を見切ってかわし、そのまま残像を生み出してかく乱。劔を捉えることが出来ず、大祓骸魂の視線が泳ぐ。
「……」
大祓骸魂が気付いた時には。彼女の身が劔によって斬り裂かれていた。
「我が名は空亡剱! 世界の脅威を滅ぼす者なり!!」
それは劔の神を殺す魔剣『殺神魔剣『空亡・紅』』による二連続の斬撃。
「異変を起こすのは あんたの専売特許じゃない」
そう言った劔の背後には、本物の太陽がその姿を見せていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・エアレーザー
真の姿:青い毛並み持つ巨大な狼――大神(オオカミ)
愛する者との永遠を望む心、分からぬではない
だが、微笑みも温もりも、未来への希望も奪われ
標本のように囚われ愛でられるだけの「永遠の停滞」に何の価値がある
愛を知らなかった俺は「彼女」との出会いで変わった
移ろう時の中で俺たちは寄り添い、歩み、成長する
彼女と共に「愛するこの世界」を守るために
周囲の妖怪たちは殺さないよう牽制し威圧
この女の望みが叶えば、この世界にお前たちの居場所はなくなる
死の臭いに浸された永劫の虚無
それでもまだ従うというのか!
受けた攻撃は激痛耐性、狂気耐性、覚悟で耐え
鎧砕きの力込めた牙を突き立てる
たとえ迷い足掻くとも
それこそが生きてゆく証
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UDCアースの全てを骸の海に引きずり込まんとする『大祓骸魂』。その身がいかに傷つこうとも、東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』から虞(おそれ)を振り撒いてゆっくりと世界を蝕む。
それはただただ、UDCアースへの愛ゆえに。
ゆえにヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)はこう告げる。
「愛する者との永遠を望む心、分からぬではない」
その言葉は大祓骸魂の注意を引くには十分だった。『生と死を繋ぐもの』を手にしながら、しかし興味深そうにヴォルフガングの方へ視線を遣る大祓骸魂。
その視線を受けて、しかしだからこそヴォルフガングには言わねばならぬ言葉がある。
「だが、微笑みも温もりも、未来への希望も奪われ、標本のように囚われ愛でられるだけの『永遠の停滞』に何の価値がある」
「……」
その言葉が、真に心の底から出た言葉でなければ。大祓骸魂も流してUDCアースへの愛を深めていたであろう。
だがヴォルフガングは違う。彼は、戦いの本能のみで生きていた獣は、出会いと愛によって人狼の騎士へと生まれ変わったのだから。
(愛を知らなかった俺は『彼女』との出会いで変わった)
変わるということは時が進むということだ。
「移ろう時の中で俺たちは寄り添い、歩み、成長する」
彼女と共に『愛するこの世界』を守るために。
ヴォルフガングの想いは大祓骸魂とは相容れない思想だ。ゆえに大祓骸魂は小さく目を見開き、そして元の表情に戻ってから告げる。
「永遠になる そのことに意味があるのです」
想いの平行線。
大祓骸魂が解き放った膨大な虞に対抗するように、ヴォルフガングが真の姿――青い毛並み持つ巨大な狼――『大神(オオカミ)』を解放する。
交らわぬならば。ヴォルフガングと大祓骸魂の戦いが始まった。
「さあ おいでなさい」
大祓骸魂の元にオブリビオン化した妖怪たちが集う。集えば集うほど、彼女らの力は強化される。
それをさせんと手にした剣から衝撃波を放って牽制。
「この女の望みが叶えば、この世界にお前たちの居場所はなくなる」
その上で言葉で威圧すれば、妖怪たちの動きが少し……鈍る。
「そこは死の臭いに浸された永劫の虚無。それでもまだ従うというのか!」
裂帛の叫びとともに再び放たれる衝撃波。その一撃を受けて戦線から離脱する者もいるが、決定打にはならない。
オブリビオン化によって正気を失っているに等しい状態。やはり言葉だけでは。
(ならば)
剣を構えて妖怪たちの群れに突撃するヴォルフガング。
「おろかな」
大祓骸魂が手を振り下ろし、妖怪たちに迎撃を示唆する。
激突するヴォルフガングと妖怪たちの群れ。だがヴォルフガングに妖怪たちを殺す意味はない。ゆえに殺さないように彼らの攻撃をその身で受ける。痛打、刺突、爪による切り裂き、果ては精神攻撃まで。集いに集った妖怪たちの攻撃は千差万別。
だが、ヴォルフガングは、【守護騎士の誓い】は折れない。
(我は誓う。牙無き者の祈りに応え、この身を盾と成し……命を懸けて守り抜くと!)
その誓い、そして覚悟が彼の持つ耐性を際立たせて。妖怪たちの攻撃を耐えしのぐ。そして、愛する者と無辜の民――妖怪たちを守護する。ヴォルフガングのその想いを受けて、ユーベルコードの力が解き放たれる!
それは一瞬。
ヴォルフガングの振るったバスタードソードの一閃が彼に群がっていた妖怪たちの骸魂を纏めて砕き。
そして彼らが地面に倒れるよりも早く。ヴォルフガングの足が地を蹴って、大祓骸魂の懐を捉える。
「くらえ」
大祓骸魂に防御の態勢すら取らせず、ヴォルフガングがその口を開き、鎧すら砕かんとその力を秘めた牙を大祓骸魂に突き立てる!
「……」
その身を食いちぎられ、大祓骸魂の無表情が歪む。
「たとえ迷い足掻くとも……それこそが生きてゆく証」
大祓骸魂に決別の言葉を放ち、ヴォルフガングは追撃の一閃を放つのであった。
大成功
🔵🔵🔵
牧杜・詞
あなたのしていることは、あなたの目的のためには正しいと思うわ。
自分以外のものを『永遠』にしようと思ったら、
殺して、その存在を自分の内に閉じ込めるしかないからね。
でもそれはあなただけの想い。
愛は本物でしょうけど、だからそれでいい、とはならないわ。
それでもしたいのならば……自らの意志を、全ての意志とする権利を得てからになさい。
つまりUDCアースを殺す前に、わたしを含めた全てを殺してから、ということよ。
すぐに行くから、殺し愛を楽しみましょう。
懐刀は【識の境界】を発動させて回避。
避けきれないものは【新月小鴨】で弾いていくわ。
「良い殺気ね。心地良いわ」
思いきり近づいてから【逆鱗】を狙わせてもらおうかな。
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殺し愛、という言葉がある。いや、もちろん辞書に載っているような言葉ではない。されど、UDCアースには確実にその言葉がある。
愛の形とは千差万別で、愛しみ、慈しみ、相手を尊重することだけが愛ではない。殺すことが愛の表現であることだってあるのだ。
牧杜・詞(身魂乖離・f25693)はどちらかと言えば『そちら側』。だから、『大祓骸魂』のこともよくわかる。
「あなたのしていることは、あなたの目的のためには正しいと思うわ」
東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』で、詞は大祓骸魂にそう告げる。それは心の底からそう思って。
その声音に大祓骸魂も振り向かざるを得ない。止めに来たはずの猟兵から肯定の言葉が出たのだから。
耳を傾ける大祓骸魂に詞は次の言葉を投げかける。
「自分以外のものを『永遠』にしようと思ったら、それしかないからね」
きっと、詞には大祓骸魂のことがとても、とてもよく理解できるのだろう。だからこう言っている。
――殺して、その存在を自分の内に閉じ込めるしかないわ。
カフェでお茶を飲んでいる時の話題なら。周囲にドン引きされていたとしても、女同士の共感で済んだかもしれない。もしかしたら友達になったかもしれない。
だが事はそうではない。詞はかぶりを振る。
「でもそれはあなただけの想い。愛は本物でしょうけど、だからそれでいい、とはならないわ」
詞と大祓骸魂の主義主張の違いをあげるとすれば。少なくとも詞は相手の反応を見る、らしい?
「それでもしたいのならば……自らの意志を、全ての意志とする権利を得てからになさい」
ゆえに詞と大祓骸魂は対立する。詞が手にするのは『鉄和泉』。抜き放った刀身が濡れたような深い緑に輝いて見える。
「つまりUDCアースを殺す前に、わたしを含めた全てを殺してから、ということよ」
「いいでしょう あなたも永遠にして差し上げます」
詞に応じて、大祓骸魂も『生と死を繋ぐもの』を大量に複製。その切っ先の全てを詞に向ける。
――さあ、殺し愛を楽しみましょう。
大祓骸魂の懐刀が弾幕のように詞に迫る。
「根源を示せ」
その中で詞は小さく短く呟き。【識の境界】を越えて『衝動』を解放、殺人鬼モードに変身する。
身体の芯から沸き起こる衝動のままに、爆発的に増大したスピードと反応速度で詞が移動。懐刀の弾幕をかわし、それでも追いすがってくる生と死を繋ぐものの複製を白鞘の短刀『新月小鴨』で弾いていく。
「良い殺気ね。心地良いわ」
大祓骸魂の膨大な虞(おそれ)も今の詞には涼風に等しい。そんな中を泳ぐように、流れるように詞は大祓骸魂に接近する。
「……」
対して大祓骸魂も腕の中に迎えるかのように、生と死を繋ぐものを差し出してくる。それは目にも止まらぬ刺突。
「……」
それを詞は無言で腕で受け止めて。さらに肉薄する。
「【逆鱗】を狙わせてもらおうかな」
そう言って詞は愛(殺意)を込めて、大祓骸魂を鋭く刺し貫くのであった。
大成功
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グレアム・マックスウェル
⑱おまじないを完成させるため行動
以前電話ボックスで戦った白ヘビ女といい
狂った愛が帰結する先は決まって「相手の殺害」
馬鹿みたい
結局それって相手の自由や意志を奪ってでも
自分の快楽を優先したいだけのエゴじゃないか
インターネットに接続し「呪詛返し」の術を検索
宗教儀礼、都市伝説、紋章学……
流れ込むあらゆる情報から瞬間思考力を駆使し最適解を導き出す
ネットにダイブしている間の僕は
UCにより実体を持たない情報生命体と化している
どんな攻撃も妨害も通用しないよ
情報を元に敵を拘束し呪詛を反射する結界を形成
クランケヴァッフェの貫通でとどめの一撃
チェックメイトだ
未来への進化を捨てた諦念と退廃の果てに
永遠なんてあるものか
●
『大祓骸魂』の纏う虞(おそれ)が削り取られていく。それは猟兵たちの猛攻によるもの。されど、いまだ大祓骸魂は東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』に在る。
「以前電話ボックスで戦った白ヘビ女といい……」
戦いの場に到着した グレアム・マックスウェル(サイバーバード・f26109)は、呼吸を整えながら吐き捨てるように言う。
「狂った愛が帰結する先は決まって『相手の殺害』……馬鹿みたい」
グレアムの言葉に、猟兵の到着を知った大祓骸魂は、しかし反応を示さず。向き直りながらゆっくりと『生と死を繋ぐもの』を抜き放つのみ。無言は肯定だろうか。少なくとも否定ではあるまい。
「結局それって……」
ゆえにグレアムは言葉を紡ぎ続ける。
「相手の自由や意志を奪ってでも自分の快楽を優先したいだけのエゴじゃないか」
直後。
大祓骸魂から放たれる虞。
グレアムは、おそらく大祓骸魂の対極にある者だ。アセクシャル(無性愛者)。彼は他者に対して友情や信頼関係は抱けても恋愛感情は抱けない。
そんなグレアムの言葉だからこそ、先の言葉は『破壊力』を増す。叩きつけられた言葉に、反撃の虞を放つほどに。
だがここで退くために、グレアムはここに来たのではない。戦いに、大祓骸魂の暴挙を止めに来たのだ。
虞を受け流しながら、グレアムは電脳ゴーグルを通じて電脳世界を展開した。
グレアムの視界内に広がる電脳世界。それは大祓骸魂からは見えない世界(もの)でありながら、おそらく今のUDCアースの背骨(なか)にあるもの。
(検索ワード、『呪詛返し』)
グレアムがその言葉を意識した瞬間、電脳世界へ瞬時に彼の走査が広がっていく。そしてそれを伝って返ってくる情報。それは宗教儀礼、都市伝説、紋章学にまで至り、情報をかき集めていく。電脳戦・電子戦に特化した彼にとって、この方法が『最適解』。
何故なら。
大祓骸魂から見ればグレアムが直立したまま静止しているように見えたであろう。その隙を逃す彼女ではない。生と死を繋ぐものが彼女の手元でいくつにも複製されていく。
「ゆけ」
小さく大祓骸魂が呟くとともに、複製された全ての生と死を繋ぐものがグレアム目掛けて飛翔し……しかし。
「……」
大祓骸魂がわずかに目を見開いた。
(ネットにダイブしている間の僕は、実体を持たない情報生命体と化している)
ユーベルコード【電脳新人類】。電子と情報の海に泳ぐ時、グレアムの精神は肉体の枷から解放される。そしてどこまでも自由に、その海を征くのだ。
(だから、どんな攻撃も妨害も通用しないよ)
生と死を繋ぐものがいかにグレアムの体を突き刺そうとしても、その全てがすり抜ける。そうして、大祓骸魂のあらゆる攻撃をいなしながら、グレアムが『答え』を構築する。それは彼に流れ込むあらゆる情報から、瞬間思考力を駆使して処理して導き出した『最適解』の到達点。
呪詛を反射し大祓骸魂を拘束する結界だ。
「!」
大祓骸魂の動きが止まる。指先ひとつ動かせないほどの強烈な拘束。それは大祓骸魂の愛(のろい)が形を変えて、彼女に返った証拠。
直後、グレアムはユーベルコードを解く。体に響くわずかな反動は実体化によるもの。だが『戻ってきた』証拠でもある。すぐさまその手にクランケヴァッフェを握って、グレアムが大祓骸魂に向けて駆ける。
「チェックメイトだ」
告げる言葉は貫通の一撃とともに。大祓骸魂にかわす術はなく、グレアムのクランケヴァッフェがその体を抉る。
「まだ UDCアースを永遠とするまでは」
「未来への進化を捨てた諦念と退廃の果てに……永遠なんてあるものか」
クランケヴァッフェを引き抜いたグレアムは、大祓骸魂の言葉を斬り捨てるように再度攻撃を叩き込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
魔女・ウィッチ
真の姿で戦う(🔴不要)
いずれ到る姿、偉大なる魔女【グランソルシエール】
あんたの企みもここまでよっ!
魔女果実を食べ得た大いなる魔力を使って、魔女宝珠と式神使いでありったけの使い魔オブリビオンや悪魔を召喚して戦わせ、その隙に、欲望具現術のテレパシーでUDCアースとカクリヨの両方に呼びかけるわ!
魔女装束姿で箒に乗って魔女導書を開き、揮杖を構える!
『聞こえる!?今、二つの世界に滅亡の危機が迫っているわ!これは悪戯なんかじゃない、本当の事よ!それを阻止する為に、限界まであたしに魔力を寄こしなさい!もう、誰も死なせたりなんかしないと決めたのっ!』
『UC詠唱セリフ』
魔力溜めした属性攻撃全力魔法を発射!
アルフレッド・モトロ
アドリブ絡み歓迎
ボーナス:【かぐや姫(東方妖怪)の大群に対処】と【真の姿を現す】
◆真の姿
右半身を中心に、水中でも燃え続ける超常の炎「溟獄の蒼炎」を全身に纏う。古傷痕や新たにつけられた傷からは、血ではなく青い炎が噴き出し、ダメージを受けるほどに火力が増していく。
UDCアースと無理心中かい?
独りよがりな愛は感心しねえなあ
敵のPOWで集まった妖怪(かぐや姫)の大群は
UCで作った渦に巻き込んで散らす!
散らすついでに
【水中戦】【サーフィン】【水中機動】で
俺自身も渦に乗って移動だ!
目指すは大ボス、大祓骸魂!
【気合い】火力を上げた炎を纏い【捨て身の一撃】!
心中は中止だ、骸玉の嬢ちゃん!
●
戦いは廻る廻る。『大祓骸魂』はいまだ健在。されど猟兵たちの攻撃が通じていないわけではない。その証拠に大祓骸魂の体は傷だらけ。再生不能なダメージすらある。
だが、彼女はまだ愛(えいえん)を諦めていない。だからその手にある『生と死を繋ぐもの』をUDCアースに向けて振るおうとする。
それを阻止すべく、立ち塞がる新たな猟兵がふたり。
「あんたの企みもここまでよっ!」
響く声に大祓骸魂がゆっくりと振り向けば、そこにいたのは魔女・ウィッチ(偉大なる魔女のサーガ・f33446)とアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)。
「UDCアースと無理心中かい? 独りよがりな愛は感心しねえなあ」
「……」
アルフレッドの言葉に、しかし大祓骸魂は応えない。
代わりに。
「「……ッ!」」
ウィッチとアルフレッドが同時に息を飲むほどの虞(おそれ)を振り撒く。その膨大な重圧に、猟兵としての本能が二人に真の姿を顕現させる。
「話を聞く耳は無いみたいだな」
真の姿の顕現、超常の炎『溟獄の蒼炎』を全身に纏ったアルフレッドが呟く。その右半身を中心に蒼炎が激しく盛り、大祓骸魂の虞を押し返す。
「望むところよっ!」
アルフレッドの言葉を受けてそう叫んだウィッチもまたその姿を変じる。それは彼女がいずれ至る、偉大なる魔女【グランソルシエール】を冠するモノとなって、虞を受け流し。
「止められますか」
大祓骸魂はそうとだけ告げて。生と死を繋ぐものを振り上げる。
大祓骸魂の合図を察知してか、オブリビオン化した妖怪たちが彼女のもとに集う。元はおそらくこの戦争で大量に生まれた小さなかぐや姫。だがオブリビオン化と大祓骸魂の力でその力は先の戦場とは比べ物にならない。
「そうはさせねえっ!」
集いきる前に。アルフレッドが左手を突き出せば、掌より生まれるのは複数の巨大な渦潮。アルフレッドの手から放たれた【狂騒海域】は螺旋を描くように大祓骸魂に迫り、その道中でかぐや姫たちを巻き込んで蹴散らしていく。
「いくわよっ!」
遅れはしまいと、ウィッチは取り出した『魔女果実』を齧って、果実が持つ大いなる魔力を手に。次いで『魔女宝珠』を取り出し、召喚術。いま呼べるありったけの使い魔オブリビオンと悪魔を差し向けて、かぐや姫の軍勢を押し留めていく。
次々と際限なく集まってくるかぐや姫たち。それに対してアルフレッドの放つ巨大な渦潮とウィッチ配下が合流を妨げ、骸魂を破壊してかぐや姫を解放、大祓骸魂の戦力を徐々に削るも、戦況は膠着状態。
しかし、この隙こそがウィッチの狙いだ。魔女宝珠を包む両手に魔力を集めて。――【欲望具現術「魔女の終束白炎魔砲」】発現。
それはウィッチに呼びかけと願いを叶える力を与える。世界レベルの危機の時だけ行使が可能というその術でウィッチは叫ぶ!
「聞こえる!? 今、二つの世界に滅亡の危機が迫っているわ!」
彼女が呼びかける相手は、UDCアースとカクリヨファンタズムに住まう生命、否、今を生きるモノたち。
「これは悪戯なんかじゃない、本当の事よ! それを阻止する為に、限界まであたしに魔力を寄こしなさい!」
いきなり無茶苦茶なことを言い出すウィッチ。それゆえか、ふたつの世界たちはすぐに応えない。おそらくは……戸惑っているのだ。その戸惑いはそのまま魔力が集まってくるまでの時間となる。それは大祓骸魂にとって『狙い目』だ。
「UDCアースは 私のものですよ」
勝手に使うな、と、神智を越えた虞を解き放つ大祓骸魂。
「……っ!」
欲望具現術の最中で思うように身動きが取れないウィッチ。『やられる』、そう思った瞬間、ウィッチの前に割り込んだのは蒼き炎。
「させるかあっ!」
アルフレッドである。交差した両手で大祓骸魂の虞を受け止めるも、切り裂かれ、打ち付けられ。少なくないダメージがアルフレッドに襲い掛かる。だがその傷口から溢れ出るのは溟獄の蒼炎。それによって纏う炎の量と勢いが増す。
アルフレッドの視線が大祓骸魂を見据える。自身の虞によって周辺の地形を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし、その上を移動しようとする大祓骸魂を。
「"クライマックス"はここからなんだよ!」
アルフレッドの手から再度【狂騒海域】が放たれ、巨大な渦潮が周辺のヒガンバナを駆逐する。
「ついでだ!」
と叫んだアルフレッドが飛び乗るのは自身が呼び出した渦潮。アルフレッドはエイ(自称?)。水中戦はおろか、サーフィンだってお手の物だ。
(目指すは大ボス、大祓骸魂!)
一直線に波の上を突き進み、大祓骸魂に肉薄するアルフレッド。その拳に全身の蒼炎を集わせて、その上に気合を乗せて。
「くらえっ!」
サーフィン突撃の勢いでそのまま突っ込みながら防御を考えない捨て身の一撃!
「!!!」
生と死を繋ぐものでその一撃を受け止める大祓骸魂だが、何ひとつしのぐことはできず、溟獄の蒼炎で焼かれながら後方へ吹っ飛ばされる。
「今しかねえ! 早くしろ!」
完全に大祓骸魂が体勢を崩したことを告げるアルフレッドの叫びに、ウィッチがもう一度、ふたつの世界に向けて、叫ぶ!
「もう、誰も死なせたりなんかしないと決めたのっ! だから……さっさと協力、しなさいってばぁーーっ!!」
ウィッチの想いが迸る。そして。
世界が応えた結果が集う。それは魔力という形でウィッチのもとへ。
「……!!」
それを感じたウィッチは、『魔女灯箒』にまたがり、『魔女装束』をはためかせて空へと舞い上がり、そこで『魔女導書』を開く。構えるは『魔女揮杖』!
「闇だけでなく光すらも統べる、偉大なる魔女であるあたしがこの世界を救ってあげるわ!」
溜めに溜めた魔力に、ふたつの世界から集めた魔力を混ぜ合わせて。ウィッチが属性攻撃全力魔法を発射する!
「!!」
体勢を立て直そうとしていた大祓骸魂がその魔力の奔流に飲み込まれる。
「まだ 私は諦めない」
「心中は中止だ、骸魂の嬢ちゃん!」
魔力の奔流をギリギリで耐えた大祓骸魂に、再び渦潮に乗って突撃してきたアルフレッドの蒼炎の一撃が直撃するのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィランサ・ロセウス
【⑲踏切が終わらない】
ああ、ああ!貴女にそれ程の想いを向けられるこの世界が羨ましいわ
だからそのひと刺しはやらせない。この世界を過去にさせてあげない!
だって私は―
飛来する懐刀はUCで加速と反応速度を強化した上で、動きをよく観察して【見切り】、またナイフによる【武器受け】で回避
多少の被弾は狂気ゆえの【呪詛耐性】【激痛耐性】で無視する
増大したスピードで翻弄しつつ、妖怪踏切の近くまで誘導。
フックシューターを放ってワイヤーで絡め取り、そのまま【怪力】で力任せに踏切の中に投げ入れる。
“好き”だから、殺(アイ)して永遠にしたい。その気持ち、私はよくわかるわ。
だって私も、この手で貴女を永遠にしたいもの!
●
膨大な虞(おそれ)を纏う『大祓骸魂』。しかし、膨大とは有限であり、虞は使えば使うほど薄れていく。補充すれば元に戻るも、猟兵たちの活躍がそれを許さない。
「あとひと刺し それで」
想い(さつい)が叶うのだ。大祓骸魂は諦めない。
ゆえにその手にある『生と死を繋ぐもの』を振りかぶる。
その時。
終わらない愛(さつい)を形で表すかのように、ゲイン塔の周辺が数百本の線路や踏切に囲まれた。その変化が彼女の思っていたものでは無かったのだろう、大祓骸魂がわずかに眉をひそめて。
「ああ、ああ!」
声が響く。猟兵の、フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)の恍惚とした声が。
「貴女にそれ程の想いを向けられるこの世界が羨ましいわ」
大祓骸魂の目の前に降り立つフィランサ。至近距離。それでも両者の間にあるのは敵意ではなく……共感。
フィランサはその出自ゆえ、自分の感情を動かすものを好悪問わず『好き』と認識してしまう。
彼女にとって、好きは壊すと同じ意味だ。愛(こわ)す……それが彼女なりの愛情表現。
その二人が邂逅したのなら、その手が止まるのもおかしなことではない。
でも。
「だからそのひと刺しはやらせない。この世界を過去にさせてあげない! だって!」
――私が貴女を愛(こわ)すのだから。
「それは叶いません 私が愛しきUDCアースを殺すのですから」
膨れ上がるフィランサの愛情(さつい)に対して、大祓骸魂が生と死を繋ぐものを複製して纏うように展開する。その切っ先はすべてフィランサに向けられて。
「死んでください」
わずかに時間をずらしながら断続的に発射される懐刀。
「あはっ」
しかし、フィランサは指をパチンと鳴らして。【クロックアップ・スピード】――スピードと反応速度が爆発的に増大した高速戦闘モードに変身。
寿命を削ることなど厭わず、懐刀を回避し続けることにだけ集中するフィランサ。それはまるで懐刀を回避することが、大祓骸魂への愛だと言わんばかりに全てを注ぎ込んで回避する!
だが数が多い。回避しきれない懐刀はナイフで素早く受け止めて弾き返す。それでもしのげない数の懐刀の中を。
「ふふ、アハハハハ!!!」
フィランサは突撃する!
懐刀がその身を切り裂こうとも、その愛(狂気)ゆえの耐性でそれらの全てを無視する。無視して、血まみれになりながらフィランサは大祓骸魂の元へ辿り着くことだけに執着する。
「……」
その様子に大祓骸魂の表情が無表情ながらわずかに揺らぐ。それは動揺。
その隙を逃すフィランサではない。
「そこね!」
高揚した声で叫びながらその手から放つのはフックシューター。放たれたワイヤーが大祓骸魂を絡めとり、そのまま怪力で以て、力任せに踏切の中に放り投げる。
踏切の中は変異したルールに支配されている。
いかな大祓骸魂といえど……そこを渡ろうとすれば妖怪列車に跳ね飛ばされる!
「!」
回避できず、妖怪列車の直撃を受けて大祓骸魂が吹っ飛ばされる。
「“好き”だから、殺(アイ)して永遠にしたい。その気持ち、私はよくわかるわ!」
「!!」
そこへ肉薄するフィランサ。それに対して大祓骸魂が改めて生と死を繋ぐものを構える……その前に。
血まみれのフィランサが彼女の懐へ潜り込んでいる。
「だって私も、この手で貴女を永遠にしたいもの!」
「!!!」
その想い(さつい)とともに、フィランサのナイフが大祓骸魂の体を刺し貫くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
葉山・鈴成り
【幽幻】
UDCアースを大事に想ってるのは
俺たちも君と一緒ッスよ
だってこの世界が大好きだから
でも俺たちが好きなのはたくさんの人たちが
生きてるUDCアースなんっス
この世界が無くなるのは嫌っすから
止めさせてもらうっスよ
プレイングボーナス:真の姿を晒して戦う
鈴成の魂と俺の魂を一つにし真の姿『ナリキリ』となる
化け術のクオリティが上昇すると同時に
一人の体で互いの化け術を繰り出す
そうだな鈴成
やれるさ、俺たちなら!
ナリキルのは雷纏う竜神
竜神が放つ紫電は時間が経つに連れて
バチバチと激しさを増していく
「迸れ雷電。どこまでも速く!」
雷撃を放つと黒き暴獣へ即変化
疾風の如くその道を駆け抜ける
俺と鈴成二人の一撃が敵を穿つ
葉山・鈴成
【幽幻】
あれが究極妖怪「大祓骸魂」だってさ
UDCアースのことが大好きらしいぜ
ひゃっはは、俺たちと同じだ
だって故郷だもんな
絶対に君を止めるッスよ
だって誰も居ない世界を手に入れたって寂しいから
プレイングボーナス:真の姿を晒して戦う
二つの魂を一つにすることで鈴成りと融合
真の姿『ナリキリ』となり化け術のクオリティが爆上がり!
鈴成り、連携攻撃で畳掛けようぜ
互いの化け術を上手く使えば強烈な一撃入れれるよな?
独り言のように見えて二人で会話
ナリキルのは超攻撃特化の黒い化け猫
影より濃い黒がずしりと大地を踏みしめる
ぶわわと毛が逆立ち巨大な獣が咆哮
口から吐く豪炎は広範囲を焼き払う
敵の攻撃は分厚い毛皮でガードし防御
●
東京スカイツリーの最上部『ゲイン塔』で繰り広げられる激戦。
『大祓骸魂』の愛、UDCアースの殺害を阻止せんと猟兵たちが叩き込み続けた攻撃が大祓骸魂の虞(おそれ)を削り取り、その身に回復が追い付かないほどの傷を刻み込んでいく。
だが、まだ。大祓骸魂の愛は折れない、諦めない。
「あとひと刺し まだ時は残っています」
ゆっくりと。その手に握る『生と死を繋ぐもの』へ力を注ぐように、胸元に刀身をさらす大祓骸魂。
その前に現れたのは二人の猟兵……いや。
「あれが究極妖怪『大祓骸魂』だってさ」
その言葉は葉山・鈴成(右魂・f28041)のもの。
「UDCアースのことが大好きらしいぜ。ひゃっはは、俺たちと同じだ」
と視線を遣るのは隣にいる相方……という言葉はふさわしくない。片割れ、魂の片割れだ。
「だって故郷だもんな」
という鈴成の言葉に、葉山・鈴成り(左魂・f28040)は頷きを返す。
「UDCアースを大事に想ってるのは俺たちも君と一緒ッスよ」
そして鈴成りの言葉は大祓骸魂に投げかけられる。
「だってこの世界が大好きだから」
UDCアースを好き、という現象か、あるいは二人の存在か。鈴成りの言葉に反応した大祓骸魂は視線だけを鈴成と鈴成りに向ける。
そこに在ったのは黒と白。あるいは右と左。彼らは二人で一人の新しい妖怪。鏡合わせのような鈴成と鈴成りは同時に拳を突き出して、大祓骸魂に告げる。
「でも俺たちが好きなのはたくさんの人たちが生きてるUDCアースなんっス」
「絶対に君を止めるっすよ」
「この世界が無くなるのは嫌っすから」
「だって誰も居ない世界を手に入れたって寂しいから」
言葉は千差万別なれど、間にあるのはひとつの想い。
――いま『在る』UDCアースを大切に思う心。
その想いの迸りを感じて、大祓骸魂は表情をわずかに歪める。
「愛しきUDCアース あなたは永遠になるのです」
そう言って大祓骸魂が生と死を繋ぐものを振り上げる。それは宣戦布告の合図。
同時に大祓骸魂から、今なお残っている膨大な虞が放たれる!
「「……ッ!」」
その虞に飲まれ、しかし猟兵としての本能が真の姿を現す。変化する外見、湧き上がる力。それで以て、二人は虞を振り払う。
「「いくぜ!!」」
気合を入れ直して、鈴成と鈴成りは大祓骸魂に立ち向かうのであった。
元は一つであったはずなのに、いつの間にか二人で一つの妖怪と成った鈴成りと鈴成。
だからこそ、真の姿では『再びひとつになれる』。
魂の片割れ同士は手を繋ぎ、その根源を融合して、ひとつの『ナリキリ』という妖怪へと変化する!
「コイツで化け術のクオリティが爆上がり!」
『テンションも爆上がり!』
ひとつの体から響く、ふたつの声。それは独り言のように見えて、鈴成の声に鈴成りが応えているのだ。
「鈴成り、連携攻撃で畳掛けようぜ。互いの化け術を上手く使えば強烈な一撃入れれるよな?」
鈴成が鈴成りに声をかける。
視線の先にいる大祓骸魂はオブリビオン化した妖怪たちを自分の元へ集わせて、その力を増そうとしている。だが、それに臆するナリキリではない。
「そうだな鈴成。やれるさ、俺たちなら!」
鈴成りが鈴成の声に応えて。
今の彼らなら、一人の体で互いの化け術を繰り出すことだって出来る!
「オレから仕掛ける!」
鈴成が叫び、その姿が威風を纏い灼炎を放つ化け猫、曰く、『超攻撃特化の黒い化け猫』に変化する。化け術【ナリキリ・暴獣『荒御魂』】。影より濃い黒がずしりと大地を踏みしめ。
「グルルルゥゥ……ガルルァァァ!!」
ぶわわと毛が逆立たせながら巨大な獣が咆哮する。
そして大祓骸魂と妖怪たちに向けて疾走。動くもの全てを風と炎でなぎ払い、妖怪たちを振り払い、大祓骸魂に肉薄するナリキリ。
「!」
大祓骸魂が迎撃に動くよりも早く。黒き獣は口を開き、豪炎を吐いて周囲を焼き払う! その炎に大祓骸魂の動きが止まった瞬間。
『次はオレが!』
ナリキリの姿が変化する。その姿は『雷光纏う竜神』。
まずは一撃。紫電を纏う拳を叩きつけて。大祓骸魂の反撃を許さず、二撃三撃と叩き込んでいく。そして纏う紫電は刻一刻と時間の経過とともにバチバチ激しさを増す。
「!!」
やられっぱなしではない、と大祓骸魂が神智を越えた虞を放つ。
「『くっ
……!』」
その攻撃にナリキリの連続攻撃が遮られる。吹っ飛ばされるように後退し……しかし、彼らは『動きの止まった大祓骸魂』を逃さない。
『迸れ雷電。どこまでも速く!』
鈴成りが叫び、雷撃を放つ!
「交代だ鈴成り!」
鈴成が叫び、直後、ナリキリの姿が黒き暴獣へ変化。疾風の如く、大祓骸魂までの道を駆け抜ける。
「!!!」
雷撃を受け止めているその一瞬に。肉薄された大祓骸魂にナリキリの攻撃を防御する暇(いとま)は無く。
「『くらえっ』」
鈴成りと鈴成の、竜神と黒き化け猫の同時攻撃が大祓骸魂の体を捉える。その強烈な一撃が大祓骸魂を吹き飛ばすのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メリー・ブラックマンデー
【⑱】
(アドリブ連携歓迎)
その問いにはこう返しましょう
―止めてみせるわ、大祓骸魂!
人は時と共に成長し、次の時代へと世界を繋いできた。
たとえ終わりに死が待とうとも、歩み続けたその軌跡は
時が、私がずっと見てきた尊きもの!
【病める時も、健やかなる時も】!
その懐刀で人の時を終わらそうとするならば、私が人の前に立ち防いでみせる。
『ラケシス』で速度を鈍らせた懐刀を、『クロト』の<斬撃波>で叩き落とす!
時は人を見てきたけれど、人もまた時を見てきた。
此処には人がいる。故に―我が神力に不足無し!
生きる者の時の<存在感>を以て<リミッター解除>、
『竜の吐息』を宿した『アトポロス』よ!
この一刀で大祓骸魂に終わりを!
●
「愛しきUDCアース あなたを思う 私の愛は揺るがない」
何も、何も変わらない。例え『生と死を繋ぐもの』を失おうとも、あるいは猟兵たちの攻撃でその身が滅びそうになったとしても。
「愛するUDCアース あなたを永遠にしたい」
その愛は、想いは何ひとつ変わらない。
だから、ここまで追い込まれてなお、『大祓骸魂』はこう告げる。
「猟兵たちよ 止められますか」
風に乗って流れたその言葉は、東京スカイツリーのゲイン塔へ舞い降りた少女、メリー・ブラックマンデー("月曜日"がやって来る・f27975)の耳に届く。
「その問いにはこう返しましょう」
そう告げるメリーの瞳が示すのは、人ではなく、竜神――神力の顕現。
「――止めてみせるわ、大祓骸魂!」
その言葉とともに、月曜日の竜神は竜の尾と角、翼を顕し、周囲に3本の神器が纏うかのごとく浮遊する。
メリーの言葉を受けて。大祓骸魂の顔にわずかに浮かぶ苛立ち。かつて相対した竜神たちを思い出したのか。
「……」
明確な敵意とともに、生と死を繋ぐものを振り上げる。その動きに応じて、大量に複製された生と死を繋ぐものを自身の周囲に纏って。
「骸の海に 沈みなさい」
無言で振り下ろした懐刀に沿って、複製された生と死を繋ぐものがメリー目掛けて飛翔する。
自身に向けて飛翔する懐刀たちを見据えてメリーは言葉を紡ぐ。
「人は時と共に成長し、次の時代へと世界を繋いできた」
同時に回避行動。直進する懐刀を容易く回避しながら、そのまま弧を描く軌道で大祓骸魂に迫るメリー。そのメリーを挟撃すべく、懐刀たちが軌道を変える。後方からの追撃と進路上からの進撃。
メリーが傍らに在る神器に手を伸ばす。
「その人の時を終わらそうとするならば、私が人の前に立ち防いでみせる」
掴んだのはアーミングソード『分針剣『ラケシス』』。分針を模した刀身が振り抜かれ、進路上の懐刀を切り払う。開いた進路を突き抜けるメリーに、しかし弾かれた懐刀がそれでも、と空中で軌道を変えてメリーに迫る。
第六感でそれを察知したメリーがラケシスを握る手に力を籠める。
「たとえ終わりに死が待とうとも、歩み続けたその軌跡は……」
解き放つのはラケシスの『刻の性質を司る』力。波動のごとく放たれた神力が周辺の刻を減速させる。直後、その速度を鈍らせる懐刀たち。
「時が、私がずっと見てきた尊きもの!」
メリーが叫びとともに、新たな神器を掴み取る。刻の始まりを告げる『時針剣『クロト』』、そこから放たれた斬撃波が、宙に浮く懐刀のことごとくを叩き落す!
「【病める時も、健やかなる時も】!」
そう、いかなる『時』も。
観測されて時は時足り得る。そのヒトの息災の証――メリーはここに『在る』。
「ならば私が此処にいる限り、世界に希望は残されている!」
直後、メリーの姿が掻き消える。
大祓骸魂が目を見開き、しかし再びメリーの姿を捉えるよりも早く。
「!!!」
大祓骸魂の体が何かに囚われた。それは大祓骸魂の上空、その地点に転移したメリーから放たれた『竜の吐息』。彼女の一挙一動に宿る神威の顕現。
「時は人を見てきたけれど、人もまた時を見てきた」
大祓骸魂の前に降り立ったメリーはゆっくりと立ち上がりながら、大祓骸魂に告げる。
それは単なる事実のようで――関係性。メリーにとっては切っても切れない絆のような、繋がり。
その繋がりを確かに感じながら、メリーがその手に『秒針剣『アトポロス』』を握る。刻の終わりを定めるその刀身に竜の吐息が伝い、神威を纏っていく。
「此処には人がいる。故に――我が神力に不足無し!」
そして。先の繋がり――このUDCアースに『生きる者の時の存在感』を以て彼女は最後のリミッターを解除する。メリーの言葉に応じて、アトロポスの刀身が力に輝く。
「この一刀で大祓骸魂に終わりを!」
裂帛の気合とともに竜の吐息を宿したアトポロスを振り下ろすメリー。
「……」
その一撃は確実に、そして深く、袈裟懸けに大祓骸魂を捉えて。大祓骸魂が生と死を繋ぐものをその手から零す。
メリーが紡いだ言霊のごとく。その一撃はこの戦いの終焉を告げる、最後の一撃となったのである。
大成功
🔵🔵🔵
文月・統哉
一緒にお茶でもどうかな?
穏やかな笑顔で宴会に誘う
用意するのは緑茶と桜餅
美味しい?
妖怪の友達に作って貰ったんだ
俺が彼らに逢えたのは
君が居たから
君が幽世を作ってくれたから
だから一言お礼が言いたくて
ありがとう
桜、綺麗だね
永久に続く輪廻の輪
でも、散る花弁も咲く花も
同じものは一つもない
永遠とは違う
君は望まないかな?
それでもね
これも一つの可能性
君の虞が生み出したこの空間に
この木があるという事は
君もまたこの幻朧桜の存在を
認めているという事だから
俺は桜の精じゃないけどさ
それでも願うよ
この桜の導くその先で
君もまた愛する世界と再び出会う
そんな未来を
だからこそ全力で戦って斬る
大祓骸魂という存在の根幹たる
その『愛』を
●
戦いは終わった。
猟兵たちに『止められますか』と投げかけた『大祓骸魂』はその言葉を糧とした猟兵たちに、自身の『愛』を止められた。
「ああ 愛するUDCアース(あなた)」
その手から零れ落ちた『生と死を繋ぐもの』が崩れるようにして消えていく。そして彼女自身もゆっくりと塵のように崩れ去ろうとしている。
「愛するUDCアース あなたを永遠にした かった」
その声は消え入りそうなほど小さく。だが抑揚はなく。後悔など一切ないけれども。
彼女が憂いているのか悲しんでいるのかもわからない。
だから。
「やあ」
文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)は自身の旅団員に話しかけるかのように、大祓骸魂に話しかけた。
「一緒にお茶でもどうかな?」
それは敵に向けているとは思えないほど、穏やかな笑顔で。
「……」
その振る舞いに、不思議なものを見たような目をして大祓骸魂が視線を向ける。
消え去ろうとしている大祓骸魂からは周辺を支配する虞(おそれ)が薄れていく。残滓ともいうべき力の破片が統哉の言葉に反応して。
周辺が幻朧桜の丘へと変化した。
「…………」
自身の制御を離れた周囲を見つめて、大祓骸魂は不思議そうに辺りを見渡す。すると、いつの間にか野点のような場所が出来ていて、統哉はそこに座っていた。
手招き。
どうしてか、誘われるようにそちらに進む。見えてきた統哉の手元にあるのは、緑茶と桜餅だ。もちろん大祓骸魂の分もある。
「食べなよ」
差し出される桜餅。統哉に敵意はなく。この桜餅もただの桜餅だと、あらゆる力を失おうとしている大祓骸魂であっても理解できるほどに。
そのせいだろうか。誘われるまま座って、桜餅を手に取り……口に運ぶ。
「美味しい?」
「……」
無言。
それでいい、と統哉は笑う。
「妖怪の友達に作って貰ったんだ」
そう言って統哉も桜餅を口元へ運ぶ。
奇妙な無言の時間がしばし続き、その間もくもくと黙って桜餅を食べる統哉と大祓骸魂。不思議な、とても不思議な時間と空間。
しかし残された時間はそう多くない。統哉は言葉を紡ぐ。
「俺が彼らに逢えたのは君が居たから」
「……」
大祓骸魂の視線が統哉に向く。何をバカな、と視線が語る。
けれども。
「君が幽世を作ってくれたから。だから一言お礼が言いたくて」
――ありがとう。
その時、風が一陣舞う。それはさながら、その一時(いっとき)を心に刻むように。
「桜、綺麗だね」
統哉の声と視線に釣られるように、大祓骸魂が上を見上げる。そこにあるのは無数の桜と、風に舞う桜吹雪。
「永久に続く輪廻の輪。でも……散る花弁も咲く花も同じものは一つもない」
それは『永遠とは違う』と統哉は言外に告げる。大祓骸魂がUDCアースに求めるものとは違う、と。
「君は望まないかな?」
統哉が微苦笑する。
大祓骸魂は反応を何も返さず、ただただ無表情で統哉を見るのみ。
「それでもね……これも一つの可能性だ」
大祓骸魂の虞によって変化するこの空間に、幻朧桜があるということは少なからず大祓骸魂がこの桜の存在を認めている、ということだ。
ここからは猟兵のみが知る話。邪神である大祓骸魂には関係のない話。決して救えない、と言われている以上、彼女は救えない。
それでも。統哉は言葉を紡ぐ。
「俺は桜の精じゃないけどさ。それでも願うよ」
サクラミラージュという世界でならば。叶うかもしれないその奇跡を。
――この桜の導くその先で
君もまた愛する世界と再び出会う
そんな未来を――
ゆっくりと統哉が立ち上がる。その手にはいつの間にか、漆黒の刃を持つ大鎌『宵』が握られている。
これから起こるであろう事態は想像に難くない。されども、大祓骸魂は統哉の一連の仕草をじっと見つめる。
――宵闇に美しい軌跡を残しながら、放たれるのは【祈りの刃】
統哉の祈りと願いを籠めた一撃が、大祓骸魂の身体を斬り付ける。その刃がすっと大祓骸魂の身体に吸い込まれて。本来肉体を傷つけないはずの一撃であるにもかかわらず、彼女のカタチを霧散させていく。
「安らかに」
統哉の手には確かに斬った手応え。それは大祓骸魂の根底にある『愛』を断ち切った証。
統哉の言葉とともに、大祓骸魂の全てがUDCアースから掻き消えていく。
この一撃で彼女の『愛』を断ち切れたかどうかはわからない。何故なら彼女は既に骸の海の住人――永遠なのだから。
それでも、いまこの場に『在った』彼女の想いは断ち切られ、いま一度骸の海に還った。
このUDCアースに彼女がどのように顕れるかは……今はまだわからない。それが未来なのだから。
大成功
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