大祓百鬼夜行⑩~おーい、デリバリー!
●『お~い、でりばりーっ。でりばり屋台~♪』
カクリヨファンタズムの夜。どこからともなく現れる屋台街にて、どこからともなく歌詞こそ違うが、知っている人だけ脳裏に浮かぶ謎の曲が流れてくる。
柔らかな提灯と、屋台を照らすオレンジ色の電灯に活気溢れる屋台街。
その途中。開かれた一際大きな広場に用意されていたものは、何十人も座れそうな程に用意された、複数人掛けの丸机と木製の椅子。
その付近を一体のオブリビオン――正確には、一匹のヒーンベという馬埴輪とそれに跨がったオージという埴輪のオブリビオンが、全力で駆け回っていた。
「はにゃ! オージにまかせてー。新しい焼きそば持ってきたよー」
「ふにゃ。オージが持ってるこれはヒーンベお勧めのかき氷ですぞー」
どうやら、ここのオブリビオン『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』は自分が料理を出来ない代わりに、オブリビオンになった瞬間に生まれた、この『もてなし衝動』を全力で発散すべく、跨がるヒーンベの足を生かして、妖力により、客を屋台ではなくここの広場に集めては、屋台街にいるオブリビオンが同じく『もてなし衝動』で作った料理を、全力でデリバリーしてきているようだった。
届けられる品物は、すべて屋台料理。
作りたての熱々が届けられ、欲しいものは注文も受け付けてくれて、テーブルまで持ってきてくれるという至れり尽くせり(ただし注文の品は、よく間違えて届けられる)
――しかし、料理が多い。
持ってくる料理が、とにかく多い。
「はにゃ?」
広場は胃に自信のあるチャレンジャー以外は、もはや既にグロッキーでテーブルに撃沈したり、加減を知る者は途中で我に返って新しい客に席を空けたりしている。
その有り様は、わんこそばならぬ『わんこ焼きそば』『わんこたこ焼き』『わんこかき氷』――。
テーブルの上は、ちょっとした惨劇と化していた。
●グリモアベースにて
「屋台街の気運によって高まっている『もてなし衝動』を、食により限界突破させ、昇華させてきてほしい」
その様子を短く語り、予知をしたグリモア猟兵レスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)がそう告げる。しかし『具体的にはどうしろと?』 そう流れた空気に、少し考え直して、その言葉を言い直した。
「屋台から、広場に場所を変えて屋台食を、わんこそばの勢いで全力で客に食べさせているオブリビオンがいる。その心はオブリビオン化した際の『もてなし衝動』によるものなので、悪意そのものではないのだが……。
――それに呑み込まれた妖怪救出の為に。屋台食を手当たり次第に食べることにより。新たな食事を運ばせ、走らせ、過労を極めさせ、二度と足腰立たない程にこき使って欲しい。そうすれば、疲労により呑み込まれた妖怪を助け出す事も出来るはずだ」
次いで、と。オブリビオンを放置し、屋台街そのものに繰り出して、根源となっている屋台のオブリビオン達による料理を直に食べ尽くすという手段もありだとか。
「一見奇妙な戦いではある。だが今回は、自由に息抜きするも、胃を破裂限界まで追い込むも良し、たまにはこのような時もあるだろう」
と、そう告げて、予知をした猟兵は静かによろしく頼むと頭を下げた。
春待ち猫
春待ち猫と申します。どうかよろしくお願い致します。
一度はやってみたかった、屋台の食べ歩きと己の限界までの胃袋チャレンジ。
どうぞ、ご自由にお過ごしください。可能な限りご期待に添えさせていただければ幸いでございます。
プレイングは、シナリオ公開と同時に受け付けさせていただきます。
プレイングボーナスに一切の支障がなくとも、そちらを含め増しての全採用が行えない可能性があります。予めご容赦いただければ幸いです。
プレイングボーナス……屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
それでは、どうか何とぞ宜しくお願い致します。
第1章 ボス戦
『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』
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POW : だいじょーぶ、オージにまかせて
自身の【カタストロフに発展するほど騙され易い性格】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : ヒーンベ、いっしょにがんばろうよ
【コミカルなのにやたらと威力のある】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【いつもお腹を空かせてるヒーンベ】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ : ふぇー、むずかしくてわかんないよー
【小難しいことを言われても理解できない困惑】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11
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榎・うさみっち
屋台飯食べ放題と聞いて!!
お祭りに行くたびに
「ここに並んでいる食べ物、片っ端から食い尽くしたい…」
と指を咥えていた
その夢を叶えられるわけだな!
しかもタダだぜ!タダより安いものはない!素晴らしい!
へい、店長!たこ焼きと焼きそばとイカ焼き頼むぜ!
んーっ、出来たては最高だぜ!
……うぇっぷ……(グロッキー
クッ、なめていたぜこの戦場…!
しかもかき氷で口直ししようとしたら
焼きそばが追加で来たんだけど??
俺一人じゃ厳しいな…それなら
UCでやきゅみっち軍団を召喚!
こいつらは食べ盛りのスポーツマンだからな
特に肉や炭水化物は大好物だろう
さぁお前たち!どんどん食らえ!
そして力を付けて、全国大会優勝だー!!(おーっ
●希望(やきゅう)の星
榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は、その存在が形取られた時から悩んでいた。
正確には、心の内に蟠る衝動と、いつも死線を巡る争いを続けていた。
――色華やかな祭に行くたび。
屋台をひとつひとつ巡る都度。いつも、
「ここに並んでいる食べ物、片っ端から食い尽くしたい……」と――。
指を咥えて見つめていた。よだれも少し出ていたかも知れない。とにかく羨望の眼差しで見つめていたのだ。
しかし、食べるにはどうしても先立つものが必要だった。その理性だけは、本能との死闘の末、最後まで手放さずに存在してきたのである。
そのような中に於いて。今回は、ついに夢叶うときがやって来た。
屋台飯食べ放題!! ――実際には若干異なるが、まあ間違ってはいない。
「ついに、その夢を叶えられるわけだな!
しかもタダだぜ! タダより安いものはない! 素晴らしい!」
思わずうさみっち、ひとりスタンディングオベーション。しばらくして、満足いくまで拍手すると、さっそくうさみっちは、屋台という名の楽園へと赴いた。
「へい、店長! たこ焼きと焼きそばとイカ焼き頼むぜ!」
「おお! オージとヒーンベも頑張ってるけど、直に来てもらえると嬉しいねぇ! ついでに揚げ餅もオマケでつけちゃるから持ってきな!」
既に『もてなし衝動』で、正気をあまり保っていないオブリビオン達であるが、それに伴う気前の良さは、今のうさみっちにとっては『天国に行ったら、さらに食事のフルコースがサービスで出て来た』レベルの感動があった。
そして、噂の広場で一息。
小さな身体、体高18.5cmでも食べる量はひとと同じ。
おしぼりと、妖精サイズに屋台主がその場で削ってくれた箸を持ちながら、うさみっちは勢いよくそれを食らい尽くしていく。口は小さいが、そこからは想像も出来ない消費量だ。
「んーっ、出来たては最高だぜ!」
美味しい、美味しい。とにかく美味しい。心の中は、既にそれで一杯だ。
しかも――ふとテーブルから目を離すと。なんと次の瞬間には、埴輪の影と共に、新しい屋台料理がみるみる追加されていくではないか。
ここは、真の楽園に違いない――そう感極まりつつ、うさみっちは全力で屋台料理を食べまくった。
しかし、三十分後――減らない料理に、ついに空腹中枢が悲鳴を上げ始めた。
「……うぇっぷ……」
テーブルの上では、先程まであれだけ元気に食べていたうさみっちが。今、薄青色の羽根を上にして、うつ伏せになり死に体で転がっていた。
完全な、グロッキー状態である。
だと言うのに――オブリビオン『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』の猛攻……もとい、シルエットだけを残し、この瞬間も鮎の塩焼きを追加していくという、鬼畜なもてなしは止まらない。
「クッ、なめていたぜこの戦場…!
――しかもかき氷で口直ししようとしたら、焼きそばが追加で来てんだけど?? しかも、俺鮎の塩焼きとか頼んでねぇし!!?」
流石に、いくら何でもこれはおかしい。
うさみっちは、姿を見せる一匹と一体の埴輪を何とか捕まえると、ようやくその二体で一匹のオブリビオンから、まとめて話を聞くことに成功した。
「まあまあ、オージは働き者ですからなぁ。
まだまだ来ますぞ~! 今日はセール『わんこ焼きそば』の日ですからな!」
「あ、かき氷あるよぉ。普通のだけじゃ物足りないと思ったから、ぼく『シロップだけじゃ物足りない! こんな時だけ具だくさん! 果実と練乳で限界まで甘くフルーティにした贅沢大盛りかき氷』を持ってきてあげたんだよぉ。口直しに丁度良いよねぇ」
「ぴゃぁあああ!!」
いくら食べるとはいえ、ここまでそれを凌駕しさらに上回れば、流石のうさみっちからも悲鳴しか出ない。
「そうですぞ! うさぎの妖精さん。屋台のサービスで、お水代わりにオレンジジュース2リットル持って来ましたぞ! ささ、かき氷と一緒に!」
「……」
げんなりどころの騒ぎではない――こればかりは、さすがのうさみっちも血の気が引いた。このままでは、本当に胃が拡張どころか、物理で破裂してしまう。
「さ、さすがにこいつぁ、俺一人じゃ厳しいな……それなら!」
うさみっちが、手にした箸を天にカッ! と、高々と持ち上げる!
次の瞬間、うさみっちのユーベルコードの光(演出)が稲妻のように小さなテーブルに突き刺さった!
【こんとんのやきゅみっちファイターズ(ウサミノ・ジショニ・スポーツマンシップナド・ナイ)】テーブルにモクモクと立ち上がっていた煙(演出)が消えた先――そこには、いつの間にやら、うさみっちをふくめ9名の釘バットや鉄球を構えた野球服うさみっち団が存在していたのだ。
せっかくなのでうさみっちも、どこからともなく取り出した野球服に、しっかり着替えをしてみる――ウエストが、看過できないほど苦しいのは、きっと気のせいに違いない。
そうして。
テーブルの上に現れた八名は、最初に手にしていた【釘バット】やら【鉄球】などの、スポーツマンシップなど欠片もないアイテムをテーブルの上に落とすと――代わりに、その手にはどこからともなく現れた【いつか栄光に至る箸(ドコニデモアル・フツウノ・ワリバシ)】を掲げて手に持った!
喚び出したやきゅみっちのメンバーは、今現在絶賛食べ盛りのスポーツマンである――ならば、肉や炭水化物の処理などは大好物のお手の物であるに違いない――。
「「うおおおお!! 肉ー! 炭水化物ぅー!!」」
そのうさミッチの読みは的中した。やきゅみっち達は、テーブルの上に溢れんばかりにあった、焼きそば、ケバブに、ミニカルビ。その他の様々な食べ物に全力で食らいついたのだ。
「さぁお前たち!どんどん食らえ!
そして力を付けて、全国大会優勝だー!!」
そのうさみっちの掛け声に、やきゅみっちの全員から、既に勝利を確信したかのような雄叫びが上がった。
『目指せ! うさみっち軍団!!』
皆、一丸となってその想いを掲げ、さらに屋台食を食らい尽くしていくうさみっち達。
――釘バットと鉄球が生かせる全国大会の仔細は不明だが、しかし人生における勝負など、食欲と気力さえあれば、大体何とかなるものだ。
場の一同は信じた。その先には、必ずや希望の勝利があると――!
「これは、がんばりがいがあるねぇ、ヒーンベ」
「これは、もっともっと持ってこなければなりませんな、オージ」
うさみっち達のそんな様子を、手に食事を持ち見守っている存在がいる――。
UDCアースのどこかのよい子番組でみた既視感を覚えるような、埴輪オブリビオンの心にも、うさみっち達のそれらの輝きは、さらなる『もてなし衝動』に火を付けた。
――斯くして。グロッキーとなる客は、これを機に更に加速度的に増えていくのだが。
この可愛らしくも凶悪なうさみっち軍団の存在を前にしては、それはあまりにも些事なものだといえるだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
鬼河原・桔華
●POW
なんつーか、こりゃあ死屍累生って有様だな
祭りの屋台で喰う飯は別腹って言うが、いくらなんでも限度ってもんがあんだろうが
にしても、空いた席の時間差追加注文なのか、こんなに山積みにして勿体ねぇな
もったいないオバケが黙っちゃいねぇぞ
そんなら、ちと知恵を使おうじゃないか
祭りの醍醐味と言えば、つるんだ仲間と一緒に遊び倒すことだ
なら、盛大に楽しもうじゃないか
『あやかし百鬼夜行捕り物帳』…別に一人で食わなければならねぇルールはないんだろ?
骸魂を取り込んじまって戻ってきた舎弟、その子分達の労をねぎらうがてら、いい機会だし箸をつつき合おうじゃねぇか
さ、今宵はパーッと夜通しで宴会だ
いっちょ盛り上がろうぜ!
●労をねぎらい勝利を願う
「なんつーか、こりゃあ死屍累生って有様だな……」
鬼河原・桔華(仏恥義理獄卒無頼・f29487)が、目も当てられない光景に、少しの覚悟を決めて広場を見渡す。
すると、その全てではないが、まばらと言うには少し多い範囲で、あちこちにちらほらと、テーブルに客が突っ伏して動けないでいる痛ましい光景が目に入ってくる。
屋台街のムードが大きく手伝い、まだまだ見た目に反して葬式通夜の雰囲気こそ漂っていないが、これは確かに異様な光景だった。
「祭りの屋台で喰う飯は別腹って言うが、いくらなんでも限度ってもんがあんだろうが」
何をやったら、胃袋でここまでグロッキーになれるのか。
いくら何でも、この状況は呆れ返るしかない。
しかし、そういえば――ここには妖怪が呑まれた『もてなし衝動』によって、あくせく働くオブリビオンが入ると聞いていたが、
「あれか」
桔華がふと視線を上げた先。そこには明らかに場違いな埴輪『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』の姿があった。
最初は、死に体になっている客を介抱しているのかと思った――のだが。
「おきゃくさーん、こんな所で寝ちゃだめだよぉ。はいっ! 瓶サイダーを箱ごとダースで持ってきてあげたよ! 元気出してー」
「さあさ、寝た後は人も妖怪も、おなかがすくらしいですな!
ここにベビーカステラ一籠分を用意してきましたぞ! さあ、共に用意致しましたサイコロステーキと一緒に――。
ああ、お客さん! どうして逃げてしまわれるのですかぁー!」
「……あぁ」
なる程、そういうことか――惨劇が今この瞬間も生まれている状況を理解した桔華は、そっと。見なかったことにして目を伏せた。既に倒れ伏した者を助ける手段は、桔華には持ち合わせていない。
どうやら、テーブルに突っ伏している客は、その『もてなし衝動』の前には『もう食えません、死なせて…』ではなく『空腹になったらまた食う!』と認識されているようだ。
そこに重なるように溢れる、只でさえ胃に残る屋台食の過剰サービス波状攻撃――それは死ぬわ。流石に桔華も、この辺りはもう呼吸するように理解せざるを得なかった。
「しっかし――にしても、空いた席の時間差追加注文なのか、こんなに山積みにして勿体ねぇな。もう少し何とかならねぇのかね」
桔華は、次は出来る限り大局を判断すべく、今度は広場の全体を見渡してみる。
見渡せば、空きテーブルもそうでないものも。どのテーブルにも、手を付けていない屋台料理が山ほど溢れ返っていた。
結構まだ『生きている』客もいるのだが、そうでもない客が命からがら逃げ出していった後の片付けがまだ追いついていないらしい。
テーブルには『わんこたこ焼き』が実践された途中であったり、アメリカンドッグが5本山積みにされていたりしている。
(こんなの、もったいないオバケが黙っちゃいねぇぞ)
確かに――これらがもう二度と食べられることの無い食材であると考えるならば、もったいないオバケが裸足で助走を付けて殴りつけて来ても、何らおかしくないレベルである。
「お客さ~ん」
そんな中。かっぽかっぽと、ヒーンベとそれに乗ったオージが桔華の前に姿を現した。
オブリビオンだというのに、恐ろしい程に敵意がない。
近づいてみれば、それらは幼い子供を思わせる愛嬌たっぷりだ。その目にも悪いものを感じられないのを察する。それは桔華にも、対オブリビオンとして警戒こそ忘れないが、悪いものとはとは思わせない何かがあった。
「……見れば見るほど平和ボケなツラしてるねぇ」
しみじみと実感を呟く。対処はすれども、これと争わずに済むのであれば、今回の依頼も悪いものではないだろう。
「おねえさんも、食べていってよ~。屋台のおじさんおねえさんたちも、退屈しちゃってるんだー」
「そうなんですよ、毒は入っていないというのに、皆さんこんなに動かなくなってしまわれて!」
――それは、胃に破裂しそうなまでに物が入っていれば、そうもなるに違いない。
だが『もてなし衝動』を前にして、その正論が成立すれば苦労はしないのだ。
桔華は、しばし視線を中空に向けて思案し――これならばと、一つの試案を打ち出した。
「そんなら、ちと知恵を使おうじゃないか」
「はにゃ?」
「ふにゃ?」
桔華の言葉にニ匹が首を傾げる。
「祭りの醍醐味と言えば、つるんだ仲間と一緒に遊び倒すことだ。
なら――数には数だ。盛大に楽しもうじゃないか!」
桔華が、持ち上げた指を景気よく鳴らす。次の瞬間、それはユーベルコード【あやかし百鬼夜行捕り物帳(アヤカシヒャッキヤギョウトリモノチョウ)】発動の合図として高らかに響き渡った。
「呼びやしたか、総長!」
「呼びやしたか!?」
どこからともなく、その音を聞いた獄卒の総長の名に相応しい桔華の元に、直属の舎弟とその部下たちがわらわらと集まって来る。
「……別に一人で食わなければならねぇルールはないんだろ?」
桔華の口端が嬉々とした様子で大きく持ち上げられる。
「今回の勝負で骸魂を取り込んじまって、それでも無事戻ってきた舎弟ども!!
――その労をねぎらう快気祝いだ! 目についたモン、ありったけ食い尽くせ!!」
空気を震わす、桔華の内より響く気合い溢れる声。
それを聞き、意思の統一が更に強固になった一同を寄せ、場は一気に歓声に包まれた。
そして優先的に、テーブル上の可食物が一掃されれば――そこから更に飛び交い始めるのは、舎弟達によるおびただしい注文の嵐、嵐、嵐。
「おーい酒持って来ーい!! 珍しいやつ寄越せー!」
舎弟達の胃袋は留まるところを知らない上に、理不尽な注文も少なくなければ、その数はとにかく多く、かなりの熾烈を極めていく。
それをヒーンベとオージは自身のユーベルコードで、息を切らしながらも、全力でこなしていった。
「さ、今宵はパーッと夜通しで宴会だ!
いっちょ盛り上がろうぜ!」
「うおおおお!!」
あちこちで跳ね上がる【姐さーん!!】コールと【総長ぉー!!】コール。
これならば、当分の間は『もてなし衝動』がフル回転していても、もったいないオバケが出てくるような事態にはならないだろう。
「充実しておりますなぁ。さぁ、ワタクシ達も、もっと働きますぞー!」
「うん、がんばろぉ!」
――賑やかなのは良いことだ。
心地良い疲労で、この二体も気持ち足が鈍ってきたが。
それでもオブリビオンは、さらなる『もてなし衝動』で盛り上がりに色を付けようと。体力を使いつつも、一層元気に働き始めたのである。
大成功
🔵🔵🔵
三刀屋・樹
――おめー訴えられたら勝てねーぞ……
ま、サービス精神旺盛なンは悪く無いと思うよゥ?
【如何様】で二人分、コキ使わせて貰っちゃうねェ。
アノね、ダメ。何がダメかってその動きナ!
もてなしッてンは作った料理を運ぶだけじゃねーのョ。
(≪言いくるめ≫るよに過労を与えてみよーかァ。)
お前のもてなし精神は中途半端だねェ。
まずは水!御絞!撃沈者の介護に次客用のテーブルの片付け!
料理が無くなったら素早く下げル、そして運ぶ!
床に落ちたモノの清掃、溢しやカスの取り除き!
一番はこのご時世だ、クソデカ広場全体を常に清潔に安全に保て!
ホラホラ働け馬車馬の様に、そン見た目は飾りかァ?
※絡み、アドリブOK
●選んだ瞬間は震えました。
「はにゃ! お酒ご注文って聞いたから、日本酒ワインにウイスキーにウォッカと……これ全部! 屋台のおじさんが箱ごと入れてやるから持って行けって!
こういうのを『利き酒する』っていうんだよね。おとなってすごいなぁ」
「ささ、こちらは『わんこお好み焼き十五枚目』のサービスでついている揚げアイスですぞー!
こってりな屋台油で揚げられた、つめたーいアイス。絶品間違いなしと聞いてワタクシ急いで持ってまいりましたぞ!」
他の猟兵のお陰で、広場の一部に活気が灯っている。どうやら、テーブルに放置されていた屋台料理の類から優先して放置されている食事を片付けているらしく、グロッキーな人々が生みだした、屋台食大量放棄は大幅に改善されつつあった――が。
もしかしたら、今回は――他に、改善されなければならない、存在が、もっと根本的なところにあったのかも知れなくて。
「――おめー訴えられたら勝てねーぞ……」
そんな、一所懸命に屋台と広場を往復している埴輪のオブリビオン『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』に向けて、三刀屋・樹(C10H14N2・f00414)は、容赦なくその『真実』とも呼べる言葉の刃を突き立てた。
そう――いくら健気でも。いくらつぶらな眼差しでも。当時から、そして結構前の復活をして尚、年齢関係無く当時の子供達に愛されそうな外見をしていても。
「はにゃ?」
「ふにゃ?」
この愛嬌を振りまくオブリビオンは、存在しているだけで非常に危険ものなのである……主に、手が後ろに回りそうな意味で。
「あー……――ま、サービス精神旺盛なンは悪く無いと思うよゥ?」
その樹の言葉は本当である。確かにこの純粋さは、実際に戦闘に荒んだ心には響くものがある。心をくすぐるものがある。
樹から見れば――嗜虐心を誘う、というか。
「ほんとう!? 嬉しいなぁー」
「褒められたですぞ、オージ!」
「嬉しいねぇ、ヒーンベ!」
そんな樹の心情など知らず、二体でひとつのオブリビオンはとても喜んでいる。
(――じゃ、まずは二人分、コキ使わせて貰っちゃうねェ)
何も知らないその二体の傍らで――樹は、自身のユーベルコード【如何様(ペテン)】を発動させた。
己の右腕を軽く横に振れば、それと同時に『完全にそっくりな自身』と呼んでも差し支えのない、瓜二つの樹の分身が姿を現す。
「わああ、おねえさんが二人だよー!」
「ほほー、これは凄いですなー!」
その事情を何も考えずに、ピュアな眼差しで喜ぶ二体。
樹の心に罪悪感という言葉はない。今回は依頼という意味もある。
そう――まずは、このオブリビオンを物理的に動かさなくては、呑み込んでいる骸魂を切り離すことは叶わないのだ。
「………………」
樹は、オージとヒーンベの無邪気な様子を見て思案する。
……人は、可愛いものはいじめたくなるものだ。それは既に抗えない本能にも近い。
ましてや、そうしてほしいと。猟兵の依頼という形で頼まれているのであれば。
今回。このつぶらなゴマ目の存在を、心赴くままにこき使うのは――『合法』である。
「じゃあ、おねえさん。何食べたい? ぼく持ってきてあげるよー」
オージの言葉に、見分けが付かないほど綺麗に二人に分かれた樹が、ぴしゃりと動きを合わせてその指を突きつけた。
「アノね、ダメ」
「!? え、え、なんで?」
「何がダメかって、まずはその動きナ!
もてなしッてンは作った料理を運ぶだけじゃねーのョ」
樹二人の言葉がハモる。オブリビオンは『ガーン!!』という、文字で見える擬音と共に、盛大なるカルチャーショックを受けた。
このオブリビオン生において、今まで、そのような事はいわれたことがないオージとヒーンベは動揺を隠しきれない。
「ど、どど、どうしたらいいかなぁ、おねえさん……!」
「どうしたら、すばらしい『もてなし心』を手に入れられるようになりますかな?!」
(よォーし。まずは、言いくるめるよに過労を与えてみよーかァ)
私心はない。全ては依頼のためである。
「まず、お前のもてなし精神は中途半端だねェ。
――動かなくなった客でも、客は客! そこまでちゃんと見てやってこそ『もてなし』の精神ってヤツだ!
こんなんじゃ、リピーターがつかねーぞォ!」
「ええぇっ!?」
「なんと! あなたさまは、屋台でありながらリピーターさんのことまで考えてくださっておられたのですかぁー!」
オブリビオンは、まさに稲妻で撃たれたかのような衝撃を受けた。その言葉によって『もてなし心』と『もてなし衝動』が、振れ幅をガツンガツン移動するメーターの如く揺さぶられたのだ。
「いいかィ?
まずは水!
それと、御絞!」
二人の樹から矢継ぎ早に飛ぶ指示に、オージとヒーンベは血相を変えてあたふたと動き始める。
広場はイートインスペースの為、本来その辺りは気にしなくても良いラインなのではあるが、このオブリビオンは、何故かぎゃくたいのしがい――もとい、接客のイロハを叩き込んでみたくなるのである。
「そして、なにより撃沈者の介護!」
――ここに至っては、結構冗談を抜きにして切実であった。
あの様子では、本当に食べ過ぎで放置した者の中から死人が出かねない。
「が、頑張って今、ひとり、救護テントさんの所に運んで来たよぉ……!」
「オラ、休んでる暇があるとでも思ってるんかィ!?
次、客用のテーブルの片付け!」
――現状となっては、皆がオブリビオン化している中、次の客は来ない方が安全なのだが、今回はとにかく地獄を見せるが如く働かせるのが肝要だ。
「そして、屋台料理とはいえ――。
料理が無くなったら素早く下げる、そして運ぶ! キリキリ運ぶんだよォ!」
「ひぇえええ!!」
そろそろ、オージとヒーンベから悲鳴が上がり始めた。
しかし、樹二人は次々に問題点を見つけては、さらに二体に突きつける!
「そしてゴミだ! 屋台はとにかくゴミが出やすいんだからよォ!
床に落ちたモノの清掃、溢しやカスの取り除き!
一番はこのご時世だ、クソデカ広場全体を常に清潔に安全に保て!」
――このご時世、清潔潔癖こそが正義である。それを守らずして、どうして飲食が提供できよう――!
「わ、ワタクシもう疲れたでございます……オージ……」
「ヒーンベ……! いっしょにがんばろうよ……っ」
ついにヒーンベの方まで泣き言を言い始めた。これは、かなりイイ感じでこき使えた気がする。
しかし、ここで手を休めてはならない。休息を与えてはならないのだ。
樹は強く思いを傾け、心を鬼にすることを誓う――依頼のためだ。決して、この二体に徹底的な可愛がり甲斐を見出した訳ではない、と思われる。たぶん。
そもそも、実際に樹には引き受けた依頼は完遂こそさせども、それ自体には、ここまでの徹底させる義理もない。ならば――やはりオージとヒーンベには、ただならぬイジメ甲斐があったのかも知れない。
そうして――樹は一応建前にある依頼完遂の為に、駄目押しに声を張り上げた!
「ホラホラ働け、馬車馬の様に! あ? そン見た目は飾りかァ?」
「――うわぁぁん!! 助けてーぇ! もう、お休みしたいよぉ!!」
ついに、ニ匹は過労から地面にべたんと座り込んで、びーびー泣き始めた!
猟兵達の尽力により、ここまで来れば依頼はほぼ完了の領域であろう。あと一息――!
大成功
🔵🔵🔵
黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
おやおや、オージとヒーンベが屋台でオモテナシをしてるとは
ハニワ王に聞いてたのとは異なる成長ぶりにミコさん感激なのです
折角なので私自身ももてなして頂きましょうかね
二人ともメニューを端から端まで全部お願いします(キリッ)
お腹を空かせていて正解でしたね(【黒竜の美食】を発動し)
焼きそばはまだですかー(【念動力】で皿を受け取り)
かき氷も全然足りませんよー(【薬品調合】した食欲増進薬をがぶ飲みする)
・
・
・
(疲れ果てて正気に戻った二人を確認し)
二人ともハニワ王が心配してましたよ?
私が道案内しますから故郷の古墳に一緒に帰りましょうか
◆補足
他猟兵との連携、アドリブ大歓迎
●ひとつ、しあわせになりました。
夜も完全に更けた頃。
それでも大祓百鬼夜行の影響により、屋台街には数少ないお客さんにも、無限なまでの『もてなし衝動』を発散しようと、その殆どに煌々とした灯りがともっていた。
「日常時でしたら、屋台を堪能したいところなのですが……」
そのような中、ひとりのブラックタールが、道の中央をピョンピョンぷにぷにしながら飛び跳ね歩いてくる。
周囲からは、大きな客引きの掛け声。
しかし、依頼で聞いているオブリビオンは、主にこの先の広場にいるという。
つい、その移動姿に見る方がほのぼのとしてしまう、見た目が完全に弾力性ある形状のスライム――黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は、跳ねつつ軽く頭、目と口の付いている辺りをほんの少し申し訳なさそうに下げながら、広場へと向かっていった。
そして、広場の入り口に差し掛かったとき、ミコは視界に入った光景に少し驚いたように、その可愛らしい横棒状の目を少し太くした。
「おや、あれは」
広場の中まで広がっている屋台の一つに、ミコは見覚えのある姿を見出した。
『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』である。
元は、ミコがカクリヨファンタズムの旅の途中で立ち寄ったとある古墳。そこで、一族を代々預かる『ハニワ王』から聞いていた、自分の跡継ぎである王子ハニワとその従者の馬ハニワが、ミミズがのたくったような文字で刻まれた粘土板――ある意味、器用ではある――に『成長したいから、旅にでます』と、言葉を残して消えた出奔事件。
その話の仔細を聞いて、王子と従者馬とも面識のあったミコは、もし旅の途中で出会ったらその心配を伝えると約束していた。
だが、見れば――。
「おやおや、
オージとヒーンベが屋台で『オモテナシ』をしてるとは」
ハニワ王は「我々は形が変わらないというのに『巨大になって帰って来る』という意味の成長であったらどうしよう」と嘆いていたが。
――それが、一所懸命に広場に食べ物を配膳し、間違えまくるが注文を聞き、覚えて頑張っている――目に見えるその姿は、精神的成長というのが妥当なのではないかと思われた。少なくとも、知り得る限り二体は元からボケ気質の埴輪であった。それが、巨大ハニワになる意図がないと分かっただけ、過去の二体を知るミコとしては感激すら覚える。
「――さっきは流石にしんじゃうと思ったけど、屋台のひとに助けてもらえてよかったよぉ……」
どうやら先程の状況より、屋台の店主という余計な邪魔が入ったらしい。二体はそれらに感謝をしつつ、どうやら恩返しでこちらの仕事を手伝っているようだった。
「これはこれは――どの状況にしろ、ミコさん感激なのです。
オージ、ヒーンベ」
ぴょんと跳ねて声を掛ければ、二体は即座にそれに気付いた様子でこちらを振り向いた。
「オージ! ミコさんが、ミコさんがおられますぞ!!」
「ハッ! ミコさん!」
「二体とも。ハニワ王が聞いて心配していましたよ」
「うぅー……でも、まだ帰りたくないよぉ。ここで『もてなし心』をたくさんはっきして、皆にたくさん屋台を振る舞うんだー」
これは、どうやら骸魂に呑まれてしまって、完全に心は『もてなし衝動』でいっぱいになっているようだ。
――見た感じ、これはこれで幸せそうではある。が、
「依頼で聞いた特徴のオブリビオンであることには間違いなさそうですし……このままではいけませんね」
二体がオブリビオンである以上、放置は出来ない。ならば、とミコはスライム形態では存在していない眉部分をきゅっと上げた。
「折角なので、私自身ももてなして頂きましょうかね」
それが、ミコの出した決意であった。スライムのため、丸くゆるやかな体格ではあるが、一度大きく飛び跳ねて椅子に座り、横棒な瞳をキリッと鋭くしながら告げる。
「二人ともメニューを端から端まで全部お願いします」
「屋台メニュー
……!!」
ざわっ。
その言葉は、二体のみならず、聞いた屋台の作り手達までを震撼させた。
「あの伝説の屋台食事一覧を纏めた『368種類』を、端から端まで――!?」
あ、やってしまった――そのおぞましい数を聞いた瞬間、流石のミコもそう思った。しかし、ここで引くわけにはいかない。覚悟を決めて正面を見据える。
そもそも、ミコ本人にも、その生き方に二言と言う文字は無いのだ。
『いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第参の竜よ!』
小声で唱える、己の制御術式の解放呪文――。
「――お腹を空かせていて正解でしたね」
周囲に気付かれないように『早食い大食いを効率良くこなす為に』必要なユーベルコード【黒竜の美食(コクリュウノグルメ)】を発動させる。
そして、ミコは前触れもなくテーブルに置かれ始めた屋台料理を、瞬時に消し去るように食べ始めた――まるで胃の中にブラックホールを置いたかのようなその食べっぷりに、二体を含む周囲からは驚きの声が上がる。
「わぁ、ミコさんすごいー! もっと持ってきたよー!」
「流石でございますな! ささ、もっとお食べくださいませ!!」
――開始二十分、止まらぬその勢いは、周囲の驚きを圧倒的な歓声へと変え始めた。
「遅いですよー。焼きそばはまだですかー」
これでもオージとヒーンベは頑張って運び。屋台のオブリビオン達も必死になって作っている。だが、ミコの食べる速度の方が、圧倒的に早いのだ。
ぱん、と。スライム形状のミコは、念動力で前の焼きそばソース味の紙皿を畳み、次のしょうゆ味の山盛りにされた皿も、やはり念動力で受け取って、ペロリ。
歓声は、屋台のオブリビオン達の闘争意欲をより一層に掻き立てた。
「み、ミコさん、ぼくつかれたけど、もっと持ってきたよー!」
そうして、既に通常ではまず出てこない量の屋台食をさらに平らげたミコが、屋台とテーブルの往復運動の極みで、息を切らせたオージとヒーンベに告げる。
「はいはい、デザート系はまだですか?
かき氷も全然足りませんよー」
――かき氷も溶ければ、ただのジュースだ。その辺りを食べながら、ミコは天下一品以上の腕によって作り上げた食欲増進薬を、こっそりとながらさらに容赦なく自分の胃の中に流し込みながら、追加の料理を鬼のように要求していく。
「ひぃぃぃぃっ!!」
光景としては『輝かしい地獄』と表現するのに近しいものがある。しかし、そのような場に更なる往復を課されたオージとヒーンベからは、さらなる悲鳴が響き渡った――。
そして、黒玻璃・ミコ。
――屋台『368種類』メニュー完食の偉業、達成。
「も、もう動けないよー……!」
「さすがのワタクシも、もう限界でして……!」
周囲からは惜しみない拍手。そして、傍らではもう疲れすぎて目を回しているオブリビオンの二体に、ミコがスライムの体からミョンと手を伸ばして、いたわるように優しくポンポンと撫でてあげる。
すると、呑み込んでいた骸魂が追い出されるように弾き出され、そこには普通の妖怪であるオージとヒーンベだけが残された。
「つ……疲れ――アレ……? ぼくたち何をやってたんだろう」
「んー、なにやら、楽しくて悪い夢を見ていたような気がしますな……?」
こうして。
過労死直前まで働かされた二体が無事に救出され。とんでもない『もてなし衝動』からも解放されている事を確認したミコは、二体に優しく話し掛けた。
「二人ともハニワ王が心配してましたよ?
私が道案内しますから故郷の古墳に一緒に帰りましょうか」
「大変だぁ、おとーさんにおこられるかなぁ……」
「大丈夫ですよ。心配していましたから、きっと喜んでおかえりなさって言ってくれると思いますよ?」
そう告げて、小さく二体の先を促すように、ミコはぴょんと椅子を降りる。
それについていくように、ヒーンベがしみじみと呟いた。
「こうしてみると――ワタクシたち、自分から骸魂に呑まれるなんてとんでもないことをしましたなー。オージ」
「うん、でも。こわかったけど、すごくたのしかったなぁ。
帰ろうかー。でも、ぼくお腹すいたよー」
「――では、ここではなんなので、道中で何か食べていきましょうか。
私もまだまだ余裕はありますし」
「やったー!」
そして――ミコが道案内を引き受けて、普通の妖怪に戻ったオージとヒーンベは、幸せそうな足取りで故郷の古墳へと戻っていった。
「ハニワ王との約束も守れますね」――旅の途中で見たら伝えるとはいったものの。こうして無事に連れて帰ることが叶ったならば、その心はとても晴れやかなもので。
ぴょんぴょん跳ねて、二体の埴輪を誘導し。その心温かにミコは歩いていく――。
斯くして『もてなし衝動』に溢れ返る屋台騒動は一件落着した。
胃の破裂した客も今のところは確認されていない。
カクリヨの屋台は世界の魅せ場。
その存在は『大祓百鬼夜行』に勝利し世界が救われれば、まだまだこれから先も、客をまぶしく楽しませていくに違いない。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年05月12日
宿敵
『『埴輪妖怪』オージとヒーンベ』
を撃破!
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