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闇属性が一番ワルいなんて誰が決めた!?

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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●魔界の少年たちは闇がお好き
「闇属性ってカッコイイよね」

 デビルキングワールドのとある街。
 スマホゲームに興じる一人の若い少年悪魔が投げかけると。

「光を飲みこむ暗黒の力だもんな、超カッコイイよな」
 それを横から覗きこむもう一人の悪魔、ポケットに両手を入れながらうなずいた。

 属性。
 火、水、風、大地といった、森羅万象を構成するとかつて信じられていた四元素に代表される、相性の表現。
 水は火を飲み込み、大地は水を糧とする。
 すなわち、水属性は火属性に強く、大地属性は水属性に強し。
 互いの属性はこのようにして強弱の均衡が保たれている。先の二人が眺めているゲームにおいても例外ではない。
 そして、そんな数ある属性に対する印象の話について、彼らの間で意見の一致を見せたのが先のやり取りだったというわけだ。

「ね。暗黒とか超いいじゃん!孤高な感じするしさ」

 いくら根が善良な魔界の住人とて、ワルを至上とするデビルキング法に長く触れれば好みも自然とそれに寄っていくことだろう。
 彼ら、おそらくそんな者たちの一部なのだ。

「な。そんでなんと言っても──」

「「一番ワルっぽいし」」

 二人が口を揃えて発する。
 と、次の瞬間、それまで存在しなかった威圧感が一気に場を覆った。

「ィ否ァァァッッッ!!!」

「「!?」」

 少年悪魔たちに突然に投げつけられた地響きのような怒号。すぐにその主が彼らの前に姿を表した。
 岩のように頑強そうな肉体、剣のように鋭い牙。
 明らかにその辺りにいる悪魔たちとは気配が違った。

「小僧どもォ!! 闇属性がワルいなどもう古いわァ!!!
 一番ワルいのは"破壊属性"だァァ!!!」

「はかっ……え?」

 呆気に取られる少年たちが理解する間も与えず、その怪物は言葉を継ぐ。

「破壊が至上!! 破壊こそすべて!!
 火も土も、破壊してしまえば無に帰す!!!
 そう!! 破壊属性の前には!! 何物もかなわぬのだァァ!!!!」

「あ、え……でも、このゲームにそんな属性ないですけど……」

「黙れェェェィ!!!」

 戸惑いのままに少年悪魔の一人がスマートフォンを見せると、巨体の持ち主は彼の手からそれをぶん取り、そのまま背後遠くへ放り投げた。
 スマートフォンの行方を反射的に手で追う少年。
 それを見た怪物は鼻息を吹きかけるように威圧していたのだった。

●巻き上げ事件に終止符を
「闇属性ってカッコイイよなあ」

 一方、ここはグリモアベース。
 アルゼブ・アズモリィ(玉座を見据えし悪魔・f31513)が腕を組んで周囲の猟兵に話しかける。

「あ。そうそう、仕事の話だったな。デビルキングワールドで、破壊属性こそワルだ一番だー、なんて難癖をつけてD(デビル)を巻き上げるオブリビオンが出たんだってさ。むちゃくちゃだよなあ」

 今回の仕事はそのオブリビオンの退治だ。
 アルゼブはそう言いながら組んだ腕を解き、次いで両の腰にあてた。

「巻き上げ事件の起きた街の近くにある城。ヤツはそこを住処にしてる。
 次の被害者が出る前に乗り込むことになるんだけど、そこはヤツの配下たちが守ってる。当然じっとはしてないだろうな。」

 ただ……。と、顎に指を添えてアルゼブが続ける。

「街の悪魔たちなら、もしかしたら城の中のことを知ってるかもしれない。
 そこでまずは、ちょちょいっとオレたち猟兵のワルさをアピールしてみようぜ。
 それともう一つ。オブリビオンの配下なんだけど、
 これがどうも必ずしも好き好んでヤツに従っているわけじゃないらしい。
 ということは、これもうまく利用すれば有利に攻め入れるかもな」

 オブリビオンの言う"破壊属性"とやらを越える属性を何か見せつけ、寝返らせる。
 これがアルゼブの考えであった。

「じゃあ、頑張ってくれよな! 悪カッコよくいこうぜ!」


比留川資源
 比留川です。

 闇属性よりも破壊属性がワルだぜ、なんて言い出したデストロイキングを倒すことが最終目標となります。

 必要ならば強引なこじつけも存分に駆使し、
 破壊属性よりもワルくて強い属性が何か、身をもって知ってもらいましょう。

 火や水など、一般的に属性として知られているものでなくても大丈夫です。
 岩属性でも漢(おとこ)属性でも、なんでもどうぞ。
 頑張ります。

●第1章
 スマホゲームに興じる少年悪魔たちのたまり場になっている街の広場で、猟兵のワルさをアピールしてみましょう。
 ここで好きな属性アピールをしたりしてもいいかもしれません。
 🔵が成功数に達すれば、彼らは何か有益な情報をくれるでしょう。

●第2章
 城を守る配下たちとの戦闘になります。
 破壊属性が一番ワルくてカッコイイと思っている(思わされている)彼らに、
 破壊属性を越えるワルい属性を教えてあげましょう。
 うまくいけば、第3章で味方としてたたかってくれるかもしれません。
 配下は普通に殴っても命を落とすことがないので、好きなように戦って下さい。

●第3章
 破壊属性が一番ワルくて強いと思っている破壊の王です。
 存分に戦って下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『猟兵のワルさを魅せつけろ!』

POW   :    己の身体でワルさアピール!

SPD   :    巧みな技術でワルさアピール!

WIZ   :    言葉巧みにワルさアピール!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●少年たちの嗜むもの

 『デビルズパレス』、このごろ一部の少年悪魔たちの間で流行っているスマホゲームの名がそれである。
 剣と魔法の世界を舞台にしたソーシャルゲームであり、六つの属性が存在する。
 火、水、風、大地の四属性は互いは強弱関係を構築し、聖、闇の二つの属性もまた一方の属性に対して有利になる、といった具合だ。

 デビルキングワールドのとある街にある広場。
 少年たちのたまり場となっているこの場所でスマートフォンを眺めている悪魔たちは、おおよそこのゲームを楽しんでいるか、メールのやり取りをしているかのどちらかだろう。

 乱暴なる破壊の王によるD巻き上げ事件が発生して以降、そこにいる悪魔たちの数は減っていたが、それでも数人から十数人ほどの青少年悪魔たちが一人で、あるいは友だちと思い思いに楽しんでいた。
 彼らのDを守れるか否かは、猟兵に委ねられた。
ミリアリア・アーデルハイム
ふふっ、こんにちは!
皆さん何してるんですか?あ、ゲームですか
え、強いじゃ無くて悪い属性ですか?
そうですねベタではありますが、やっぱり「神属性」じゃないでしょうか

ルールを制する者が世界を制すって言いますよ
生み出すも消滅させるも自由自在、
世界を創るのが神ならばルールを作るのも神って訳です

ところで、人に質問しておきながらゲームばっかりしているとは何事ですか⁉︎
私ちょっとイラッとしたので、これでも食らって下さいね!
UCで呼び出した黄金の騎士像が少年たちのスマホを叩き落す
それをクロウラー掃除機のローラちゃんがバリバリ食べる

あー、すっきりしました。
え、私?神族ですけど。それが何か?



●魔界よ神の怒りを見よ

 こちらには仲間と戯れ騒ぎ声を起こす者。
 あちらには開いた本を顔に午睡をむさぼる者。
 この時間帯は、広場に悪魔たちの姿の最も多くなるあたりだ。

 そこへやってきた黒髪の猟兵、ミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)が、スマートフォンを凝視する少年悪魔に晴れやかな声を発した。
 
「ふふっ、こんにちは! 皆さん何してるんですか?」
「ボク?ボクならこれ、スマホゲー。デビルズパレスっていうやつだよ」

 声をかけられた少年は警戒の色もそれほど見せず、スマートフォンを軽く持ち上げた。

「あ、ゲームですか」

 顔を傾けてゲームの画面を覗きこむミリアリア。
 そこでは味方パーティーが、炎をまとう大きな異形の化け物と対峙していた。

「うん、ゲーム。これを、こうやったりして倒すんだ」

 少年がタップやスワイプを繰り返すと、異形は水の流れに呑まれて消滅する。
 かなり前からプレイしているのだろうか、慣れた手つきだ。

「なるほど!」

 ミリアリアが頭を上下に振って納得する。

「へへ、水属性魔法ってワルいよねー。
 どんなものも流して呑み込んじゃうんだからさ。
 ねーちゃんは一番ワルそうな属性ってなんだと思う?」
「え、強いじゃなくて悪い属性ですか? そうですね……」

 少年悪魔による突然の問い。
 ミリアリアは顎に手を添えたのちに答えた。

「ベタではありますが、やっぱり『神属性』じゃないでしょうか」
「神属性?」
「ええ。ルールを制する者が世界を制すって言いますよ」

 生命をなし、摂理を伝え、原理を組み、罰を与える。
 大元たるルールの前には、いかなる属性も無力である。
 そういった旨を、ミリアリアは彼へ穏やかに説く。
 そして、このとき少年悪魔はまだ気づいていないが、目の前にいる黒髪の彼女こそ、世界こそ異なれど、そのルールを、世界の生命を創造せし種族の一人なのだ。

「ああー、言うね言うね」
「生み出すも消滅させるも自由自在、世界を創るのが神ならばルールを作るのも神って訳です」
「へえー」

 得意満面に語るミリアリア。
 しかし、少年の返事はどこかあっさりしていた。

 それもそのはず。彼の視線はすでに手元の、ゲームの画面に戻り釘付けになっていたからだ。
 これぞ、デビル・デジタル時代がもたらした負の実態。

「ちょっと! 人に質問しておきながらゲームばっかりしているとは何事ですか!?」

 たまりかねたミリアリアは激昂する。

「目の前の相手に生返事だなんて! これでも食らって下さいね!」

 天罰だった。
 猟兵の頭上に突如として現れた黄金色に輝く甲冑の騎士。
 その手から放たれる慈悲なき剣群。
 剣は少年悪魔の持つスマートフォンを器用に叩き払う。

「あっっ!?」

 弧を描き地面へと着地したそれを手で追おうとする少年。
 しかしすでに遅く、まばたき一つの後には、小さな機器は彼女の従える掃除機の餌食となっていた。
 ローラちゃんと名づけられたこの掃除機、かわいい姿をして厳酷苛烈である。

 あっという間の出来事に、時が止まったかのような沈黙が生まれる。
 近くにいた別の悪魔たちからも、何事かと視線が集まった。

「あー、すっきりしました」

 その沈黙を第一に破ったのはミリアリア。
 大きくついた一息とともに、少年に向けた怒りが幾分収まったようだ。

「ね、ねーちゃん……」

 亡骸すら姿を消したスマートフォンの持ち主が、わなわなと身体を震わせる。

「え、私? 神族ですけど。それが何か?」

 呼びかけに対してつっけんどんな言葉で応じ、ここで初めて自身のことを明かすミリアリア。
 スマートフォンを返してとでも言われるだろうか。
 質問をしたのに雑な扱いをした少年が悪い、と返す準備はできていた。

「すっげえー! ねーちゃんのそれカッコイー!!」

 少年悪魔から向けられる興奮。
 意外な言葉に一瞬の戸惑いを見せたのち、彼女は納得した。
 ここはワルをこそカッコイイとする魔界。そして彼はその住人。

「今のどうやったのそれ!?」
「容赦ないのやべえ! 神属性? 超カッコイイんだけど!!」

 周囲にいた別の悪魔たちからも称賛が集まる。
 かくして、ミリアリアは少年たちの心をがっちりと掴むことに成功した。

 ちなみに後日、少年のスマートフォンは一段も二段も性能のよいものとなって彼の手に戻ったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘇摩・瞬華
うーん、ワルいこと…ワルいこと…うまく思いつかないかも。
(基本いい子)
悪戯ぐらいならなんとかなるかもだから、そんな感じでやってみよっかな。

スマホに夢中になってる子の背後にハゼリダマを飛ばして、痛くなりすぎない程度の距離で爆発させてびっくりさせてみるよ。
驚いてあたりをきょろきょろしてるところを見て笑ってみせちゃう、って形でワルく見せてみるよ。
足りないなら、わたしに意識が向いてる隙にもう一発ハゼリダマを背後からどーん。
ふふっ、驚いた?驚いた?
(ちょっと楽しくなってきた)

ん、わたしは炎とか爆発属性が好きなのか、って?
ん-、それも好きだけど、一番好きな属性はー…幻、かな?



●あらゆる属性にひとしく訪れるもの

「うーん、ワルいこと…ワルいこと…」

 雪のような銀髪を人差し指に巻きつけながら、蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)は広場の少年悪魔たちを遠巻きに眺めつつ考える。
 視線の先はあいも変わらず賑わい、悪魔たちの声はときに彼女の耳にも届くほどだ。

「……うまく思いつかないかも」

 瞬華は巻きつけた髪を解いてつぶやいた。
 外の人間を寄せつけぬ里に生まれ、清らなる時の流れに長く身を預けてきた彼女にとって、あの罪なき悪魔たちにワルいことを見せるのはいささか抵抗があった。

「でも──」

 しかし、魔界は悪道至上。
 何かを思いついたように顔を上げ、広場へとおもむろに歩みを向ける。
 ワルいこととまでいかなくても、悪戯ぐらいなら、という内心を抱えて。

「あーもう! こいつ攻撃ミスるなー」
「今の編成なら範囲使って一つでも当たるのを期待するしかないんじゃない?」

 一方、眉にしわを寄せる少年悪魔とその友人。
 彼らもまたデビルズパレスにはまる者たちである。
 どうやら思わぬ強敵に難渋しているらしく、片方の悪魔は頭をかいている。

「あとこの敵、"風"だから火で攻撃したほうがいいよ」
「火で範囲かー。それじゃあ……」

 片方の少年は画面に指を這わせた。
 画面のカーソルが指したのは、"エクスプロージョン"。
 爆発によって複数対象にダメージを与える火の属性を持つ魔法である。

「よし、これでどうだ!!」

 青白いホオズキのような塊が画面の中に広がりはじめる。
 それは、触れたものをあまねく灰燼へと帰さんばかりに眩しく、激しく、膨れ上がり、やがて敵はおろか味方をも覆っていき──

「「おわぁーーー!?」」

 炸裂した。
 少年たちの背後で。
 
 思わぬ場所からの爆音、彼らは驚きのあまりほぼ同時にベンチから転げ落ちた。

「あはっ、びっくりした?」

 瞬華がベンチの背から顔を出す。
 今の音は彼女の妖術による悪戯だったのだ。
 片の掌に青白い人魂、少年たち笑うかのように揺れていた。

「な、なんだよー、狐耳のねーちゃんさあー……」
「ねえねえ、何見てたの? おもしろいもの?」

 尻をはたいて立ち上がった悪魔たちに小さく笑みを投げかける瞬華。
 一方の悪魔が思わず放り投げたスマートフォンを拾おうと腰をかがめながら答える。

「おもしろいものっていうか、スマホゲームの」

 再び破裂音。
 今度は頭上からだ。

「「ぎゃわー!?」」

 頭を押さえて腰を落とす二人。
 瞬華はその様子を見て一層笑った。

「ふふっ、驚いた? 驚いた?」
「もー! びっくりするじゃんかさー!」

 二度驚かされた彼らは悪戯心の満たされた彼女にぐいと身体を近づけた。
 しかしその顔は、満更でもなさそうであった。

「あはは、ねえ、その機械を見てたんだよね?」

 銀髪を揺らす少女が見せるあどけない笑顔に免じ、それ以上責めることをやめた少年悪魔たちは、デビルズパレスの説明をしはじめた。
 ストーリーから属性の話、さらにはワルい属性の談義が起こっていることまで、一通りを聞いて好奇心を満たされた瞬華はうんうんとうなずく。

「ワルい属性かあ」
「うん。
 狐耳のねーちゃんは、どれだと思う? さっきの爆発……やっぱ火属性とか?」
「ん-、火も好きだけど」

 彼女が少年に問われると、視線を空に向け、唇に指を添えた。
 そして答えるは。

「一番はー…幻、かな?」
「「まぼろし?」」

 空を見つめたまま、瞬華は一転して妖しげに微笑んだ。

 万物は無常。形あるものは変化し、生まれては消える。
 変えるべからざる理。火も水も光も、いつかは幻となって消える。

 幾百の年を生きる彼女から発される静かな語りは、不思議な説得力をもっていた。

「おおー! カッコイー! もっと詳しく聞かせてよ!」

 瞬華が言葉を終えた頃、悪魔たちの目は感動にすっかり潤んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

徳川・家光
「三日三晩考えましたが、誠に残念ながら、僕も、この世で一番格好良いのは破壊属性だと考えます……」
敗北感を滲ませながら家光は言い放ちます。

「なので……大変恐縮ですが……僕が、大いなる『破壊使い』のワルさとカッコよさを、今から貴様らに見せつけてやります!!!!!!!」
その言葉と同時に、広場中に、大量のサメを解き放ちます!!!
もちろん傷つけるような事はしませんが(悪魔ならちょっとぐらい大丈夫?)、真の目的は、この大破壊の後に

「カツアゲ? Dなどいりません! 破壊属性は、カツアゲ属性よりも圧倒的に優れているのですから!」
と言い放ち、高笑いと共に去り、オブリビオンによる現金強奪を阻む事なのです。



●破壊を超ゆるは破壊

 徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は広場の隅、摯実な眼を若い悪魔たちに向けながら話を聴いていた。
 侍の国の将軍が遠くよりこの地に降り立った理由。
 それは近頃この広場に出没する、強引な理屈を弄してはそれに駁する者を押さえつけDを巻き上げる破壊者から罪なき悪魔たちを守るためであり、まずはその情報収集というわけだ。

 対する悪魔たちのほうは、家光の頭に生えた角を見て親しみのようなものを抱きはしたが、匂わせる雰囲気からどこか自分たちとは違う存在であることを察し、恐る恐る、事件のあらましを話した。
 やがて、話が属性のことに至ると、家光は用意していた答えをいつでも出せるようにした。
 あらかじめ手に入れていた情報──あの破壊の王が"破壊属性"こそ最強でワルいとしていること。ここから、その破壊属性を超えうる属性が求められるであろうことをわかっていたからだ。

「格好良い属性ですか。……実は三日三晩考えたんですが」

 しかしながら、家光の歯切れは決してよくなかった。
 視線を下にやり、心苦しい現実を伝えた。

「誠に残念ながら、僕も、この世で一番格好良いのは破壊属性だと考えます……」

 曇った表情から出た答え。
 水も闇も、物理的な破壊の前にはやはり無力。家光もそう認めざるを得なかったのだ。

「うう……やっぱりそうなっちゃうか」

 悪魔は肩を落とした。
 彼の脳裏を、あのとき偶然目にした恐るべき破壊の王の勝ち誇った顔がよぎる。

「なので……大変恐縮ですが……」

 顔を上げる家光。
 それにあわせて視線を彼の目に戻す不安げな悪魔。
 と。

「僕が、大いなる『破壊使い』のワルさとカッコよさを、今から貴様らに見せつけてやります!!!!!!!」
「は!?」

 家光の突然の宣言に、目の前の悪魔は面食らった。
 次の瞬間、猟兵が突き出した掌の先からほとばしるようにして現れた無数の影。
 その正体は、鋭い牙と刃を持つサメたちだった。

「ちょえええぇえ!?」
「なんだあれ!?わぎゃーーー!!」
「来ないでぇぇえ!!」

 四分五裂に飛散して悪魔たちを追うサメの群れ。
 広場には阿鼻叫喚の絵図があっという間に広がった。
 あるサメはあちらに逃げる悪魔の背を鼻先で小突き、またあるサメはこちらに走る悪魔の尻にかぶりつく。
 地中に潜り穴を開けるサメ、尾ひれでベンチを蹴り上げるサメ。
 泳ぐサメ、回るサメ。
 サメ、サメ、サメ。
 若い悪魔たちのたまり場はサメによる破壊にしばし蹂躙されたのだった。

 時間にして5分ほどであったろうか。
 もうよかろうとばかりに家光が何かを引き寄せる仕草を見せると、サメたちは霧煙のように消えていった。

「おわかりになったでしょうか……」

 袖口に手を入れ、家光は肩で息をする悪魔たちを見ると。

「破壊属性には……より強い破壊属性で対抗するんです!!」
「「!!」」

 彼は大きく声を張った。

 一番格好良いのは破壊属性。
 先に彼が示した答えの意味を、悪魔たちはここにきて理解した。
 その意味とは、『破壊に屈せよ』ではなく、『破壊にはさらなる破壊を』。

「それに皆さん、オブリビオンがあなたがたにしたのは何でしたか?
 Dのカツアゲじゃないですか! そんなのただのカツアゲ属性じゃないですか!」
「「!!!」」

 悪魔が二度目の衝撃を受けた。

「カツアゲ? Dなどいりません!
破壊属性は、カツアゲ属性よりも圧倒的に優れているのですから!!!」

 演説のような力強さ。
 家光はそこまで語ると、目を伏せて背を向け、高らかに笑いながらゆったりと広場の外へ向けて歩みはじめた。
 "我々に任せて"
 彼の背中にそんなメッセージを感じた悪魔たちは、一人、また一人とそれを追いかけていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

比良坂・紗那恵
破壊属性よりカッコいいもの……私はそれを体現していますよ

すなわち、不死属性!

死を乗り越えたこの身体、どんな破壊であっても壊れません!
さぁ、そこの破壊自慢の人、私の身体を破壊してみるといいです

そういって破壊属性押しの人を挑発して、自分に攻撃させます
もちろん、それで腕が吹き飛ぼうがお腹に穴が開こうが、一度死んだこの身体は死にません

ボロボロのぐちゃぐちゃになろうとも、不敵に笑って、これが不死の力です
と大胆に宣言

ついでに、それで破壊され千切れた体の部位とかあったら、それを使ってデッドマンズスパーク!
自らさらに身体を爆破させて度肝を抜いてあげましょう

もちろんそれでも私は死にません

これが不死属性です!



●死を超えるということ

 魔界の住人集まる広場に、ひときわ異彩を放つ姿あり。

「破壊属性よりもカッコいい属性……」

 その声に反応するかのように、ひら、と包帯の端が風に揺れる。
 比良坂・紗那恵(黄泉返り勇者・f32521)がその者の名だ。

 赤黒い輸血パックの提がるガートル台を片手に若い悪魔たちと向きあっていたが、悪くカッコイイ属性のことを問われた彼女は、にやり。

「私はそれを体現していますよ!」
「へっ?」

 得意満面に言ってのけた。
 どういう意味かと首をかしげる悪魔たち。

「すなわち、不死属性!」
「ふし?」

 不死。
 それは、生命の営みを超越した概念。
 究極的な状態としてそれを追求する者があり、神の意志に反するとしてそれを忌避する者がある。

 そう。この紗那恵、形こそ生きた人間の少女のそれだが、その命を不幸にも一度絶たれた存在であったのだ。
 血の滞ったような鮮やかな薄紫色の肌がその証左である。

「そうです、不死! アンデッド!
 死を乗り越えたこの身体、どんな破壊であっても壊れません!」

 聴衆に対して胸を張る。

「壊れない身体? なんかワルそうだけど、それって一体……」
「そうですね、じゃあ……」

 悪魔が興味本位で尋ねると、対するこのデッドマンの少女は、広場をぐるり見渡す。
 そして、目が合った遠くの青年悪魔に手招きをする。
 駆け寄ったその悪魔は、彼らの中でもとりわけ強面、身の丈も紗那恵と比較して二回りも三回りも大きかった。

「ちょっと、わたしに攻撃してみてくれませんか?」
「は!?」

 思わぬ頼みごとに面食らう青年悪魔。
 悪道至上のデビルキング法がある世界の住人なれども、種として根に存在する優しさが躊躇を生む。

「大丈夫ですよ、わたしの不死の力を見せるだけですから。好きなようにやっちゃってください」
「す、好きなように……?」
「はい! 日頃のストレスを発散するためだと思って」
「そ、そこまで言うなら」

 困惑の視線が集まる中、青年悪魔は一歩間合いを取ると、紗那恵に向けてやや手加減気味にユーベルコードを放った。

 物理的に吹き飛ばされた彼女の身体が力なく宙を舞う。
 固唾を飲んでその行方を目で追う悪魔たち。

 そして身を地面に強かに打ちつけるかと思われた寸前、彼女はガートル台を杖のように操り、足から着地した。
 手加減気味とはいえ、なかなかの痛打だと思われた一撃。
 だが。

「そんなものでいいんですか? もっと思いっきりやってもいいんですよ?」
「ええ!?」

 紗那恵自身は、表情一つ歪ませていなかった。

「ほらほら、"不死"なんですから。普通の人なら死にそうになるくらいでもいいですし」
「ひえっ……」

 言われるがままに悪魔がユーベルコードを叩き込む、叩き込む、叩き込む。
 しかし、どんなに至近距離で、真正面にそれを受けようが、彼女の眉はわずかにも歪むこともなくけろりとしている。

 やがて、彼女の内にはある悪戯心が芽生えた。

 若い悪魔より最後とばかりに放たれた重い一撃。
 それを左肩で受ける紗那恵。
 すると、そこから伸びる左腕がなんと身体から離れ、ぽろりと落ちた!

「「わあぁーっ!?」」

 騒然となる広場。
 いくら彼女の頼みであったとはいえ、やってしまった、と青年は蒼白になる。

「あ、取れちゃった」

 が、対するこのデッドマンの少女は、まるでアクセサリでも落としたかのような軽い調子だ。

 と、次の瞬間。
 落ちた腕がジジ……と音を立て始めるや否や、石の砕けるような音を立て、腕から電撃が紗那恵に送られた。
 電撃を帯びた彼女の身体は小さく震え──

「「おわぎゃーーー!?」」

 突然の爆発!
 広場じゅうに空気の焼ける匂いが充満する。
 思わぬ事態に誰もが頭を押さえ、身をかがめた。

 爆音の余韻が消えたしばらくの後、煙が薄れ視界が晴れる。
 爆発の中心にいたはずの紗那恵はというと。

「びっくりしました? こんなことだってできちゃうんですよ」

 身に焦げ跡一つ残すこともなく。
 落ちたはずの片腕も、何事もなかったかのように肩から下がっていた。

 衝撃的な出来事の連続。
 腰を抜かした悪魔たちの理解はいまだ追いつかない。

「こ、こんなことだって、できちゃうんですか……」

 目の前の少女の言葉にオウム返しをするのが精一杯だった。

「はい! これが不死の力です!
 どんな物理的な破壊も、不死属性があれば安心です!」

 かくして、悪魔たちが落ち着きを完全に取り戻した後、紗那恵による強い不死属性推し語りが再開され、最後まで聴き終えた頃には、その魅力にすっかり惹きつけられていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
ん-、破壊属性よりすごい属性かぁ~
精霊術士としては、属性魔法を推したいけどね

ふふふ、一つの属性ではだめならね…
全部混ぜちゃえばいいのっ!!

ということで、6属性(火・水・土・風・光・闇)を複合させた属性を見せてあげるよっ♪
それじゃ、ちょっとどいてねー
直線状にいると、巻き込んじゃうからねー

ということで、じっくり詠唱を開始
複合属性でのヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストを披露だねっ!

さぁ、それじゃ、実演行くよーっ!!

…ちょっと町が大変なことになったらまずいから
空に向かって撃つね

ま、まぁ、魔力の反応でちょっと瓦礫ができたり
家が吹き飛んだりしたら…
ごめんね(てへっ)

属性使いの精霊術士を舐めないでね?



●破壊を破壊する希望の六芒星を見よ

 火は風に煽られ勢いを増し、水は火を呑みこみ煙とする。
 土は水を吸って生命を育み、風は土を吹き砂をさらう。
 光は闇を打ち砕き、闇は光をあまねく覆う。

 もし、この世界に創造主というものがいて、彼の意思によって世界をこれら六つの要素に司らせたとするならば、
 これを屠らんとする破壊属性なるものを掲げる者が現れようと、果たして想像できただろうか。

「ん-、破壊属性よりすごい属性かぁ~」

 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)は、かのオブリビオンの掲げる破壊属性を超えるすごい属性について、若い悪魔たちから意見を求められていた。

「そうなんだよ。何かないかなあ?」

 シルの答えはすぐに決まった。
 火、水、風、土、光、闇、それらを力で砕こうとする破壊に対抗するには──

「ふふふ、一つの属性ではだめならね…全部混ぜちゃえばいいのっ!!」
「!!」

 それは、極めてシンプルな答えだった。
 破壊には、"全て"をもって対抗すればよい。
 術士たる彼女には、それを証明する準備がすでにあった。

「それじゃ、ちょっとどいてねー。今から見せてあげるから」

 シルは、両手を外に広げるような仕草で、悪魔たちを誘導した。
 何が始まるのかと、言われるがままに距離をとった彼らを一つぐるりと見回すと。

「じゃ、行くよ!」

 青髪の少女は目を閉じた。
 呼吸ひとつ。
 沈黙をもって見守る悪魔たち。

「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、
 悠久を舞う風よ、母なる大地よ、
 暁と宵を告げる光と闇よ…」

 その沈黙を、シルの詠唱が穏やかに破った。

 突如、彼女の目線の先に小さな光の粒が生まれる。
 それは、夜、地上から見上げた星の光に似た、清き光の点。
 光は、点から線になり、線から形となり、やがて六芒の星をなした。

「おおっ……」

 悪魔たちの間に小さなどよめきが起こる。
 彼らもまた猟兵と同じくユーベルコードを操るが、魔界にあるためかこうした芸術的で清浄なる光は、その目に珍しく映るらしい。

 シルの描いた星の頂点に、火、水、風、土、光、闇、六つのシンボルが浮かぶ。
 観衆の中に覚えた既視感。
 彼らの嗜んでいたゲームの中に存在する六属性とリンクしたのだ。

「六芒に集いて…全てを撃ち抜きし力となれっ!」

 詠唱の声は、次第に大きくなり、ついに目を開いた彼女は高らかに叫ぶと、瞬間、シンボルから六つの具体が一直線に飛び出した。

 火球が煙を吹きながら飛び、水が鞭のようにしなやかに形を変え。
 風が空間を裂くように渦を巻き、岩が貫くように鋭く尖り。
 光が雷鳴のような音を立て、闇が禍々しく深く黒い色を放つ。
 全ての要素が絡まりあい、ねじれ、ついには一本の太い柱となりて、空を駆け上がっていく。

 悪魔たちは、それをただ目で追いかけていた。
 言葉を発するものはもはや一人もいない。

 虹のような光を放つ砲撃は、重力に従い落下しはじめる。
 その向かう先は──

「うわっ!」

 まばゆい光が一気に広がると同時、驚きの声が上がった。
 誰もが、光に目をやられぬようまぶたを閉じた。
 そうして、呼吸三つほどが経った頃、光も消え、悪魔たちが再びまぶたを開く。

 すると、広場の隅、先ほどまであったはずの巨大な岩の塊が、跡形もなく消滅していた。

「ふぅ……」

 一つの証明を終えたシルが満足そうに息をつく。
 
「……す、すっげー! こんなの見たことねーよ!!」
「属性を混ぜるってアイデアがあったなんて!!」
「超カッコイイ!!」

 若い悪魔たちは、すっかり興奮していた。

「ふふっ、属性使いの精霊術士を舐めないでね?」

 そんな彼らに対して、シルは小さくウインクをしながら応えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅月・美亜
「波動属性だろう」
 そんな属性は無い? 無いなら作れば良い。
「波動属性は全ての属性を内包する。火炎、電撃、破壊……そうだ、破壊属性など波動属性に比べれば下位互換よ」
 裏で先日発売したSTGのBGMを流しながら波動属性の多様性を主張していく。
「破壊、即ちパイルバンカー波動砲。衝撃波動砲、圧縮波動砲、炸裂波動砲、灼熱波動砲、災害波動砲……波動砲に不可能は無い!」
 立体映像大画面で先日発売したアレの映像を見せ付ける! 圧倒的な宇宙! 破壊! 波動砲!
「さあ、スマッホンゲームなどしている場合ではない! Rの帰還を称えよ! 宇宙に出撃せよ!」
 これが言いたかっただけ? それが何か問題か?



●科学は破壊に勝るか

「波動属性だろう」

 ふっ、と凛々しく笑った後、紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)は言った。
 灰のように白い肌は半魔半人の証。しかして、身にまとうものは、むしろ先進的なデザインが随所に仕込まれた軍服である。

「波動? そんな属性聞いたことないよ!?」

 彼女の答えを聞いた腕白そうな少年悪魔が、悲鳴にも近い声で応じた。
 彼の言葉ももっともである。
 しかし、かのオブリビオンが居丈高に掲げた破壊属性なるものだって、前代未聞であるに変わりはなかった。

「ないなら作ればいい」

 と、美亜は指を鳴らした。
 パチンという音に反応するようにして流れはじめる、未来的で勇ましい音楽。
 それは、彼女の住む世界で発売されたばかりのシューティングゲームのBGMだった。
 ドラムが、シンセサイザーが、ギターが、美亜の気持ちを一気に昂ぶらせる。

「えっ、えっ、なにこの音楽!?」

 突然の演奏に困惑する悪魔を一瞥、彼女は堂々たる調子で演説を始めた。

「波動、すなわちエネルギーの周期的な強弱パターン。
 それは、目に見えざるものから見えうるものまで千変にして万化──」

 数歩動き、語る。

「波動と科学は密接にして不可分。
 想像してみよ! 先進的なこの概念が属性になった場合のことを」

 また数歩。
 両手を広げて、悪魔たちを見る。
 彼らの視線は全て、美亜の目に集まっていた。
 掴みは今のところうまくいっている。
 彼女はそう判断し、続けた。

「波動属性は全ての属性を内包する。
 火炎、電撃、破壊……そうだ、破壊属性など波動属性に比べれば下位互換よ」

 と、ここまで言葉をした美亜は突然、悪魔たちの頭上に立体映像を映し出す。
 そこには、先鋭的なシルエットの機体の輪郭と、部位名称、スペックが映し出されていた。
 おおっ、と声を上げる悪魔たち。

 そのうち、機体はブループリントから剥がれるように浮き上がり、宇宙へと飛び出した。
 銀河をバックに速力全開、向かい来るポッド型の敵機を撃ち落としていく。

 先程まで美亜に集まっていた悪魔たちの注目は、この立体映像にすっかり移っていた。
 たとえ魔界の住人であろうとも、そこは多感な頃の青少年、この演出に心を鷲掴みにされぬはずがなかったのだ。

「見よ! この一大スペクタクル! 圧倒的な宇宙!!」

 腕を組み得意げに美亜は叫ぶ。
 と、映像の中の機体の前には、いつしか黒く不気味に光る惑星のような球体が登場していた。
 そこから繰り出される苛烈な攻撃を華麗なバレルロールを駆使して回避しながら、自機は接近する。
 そして。

「すべからく刮目せよ! 波動属性の集大成を!!」

 自機にエネルギーが蓄積され、砲身が青白く変わる。
 次の瞬間、激しい音とともに放たれた光の槍。
 一直線に伸び、禍々しい球体へと届き、貫いた。
 中央をやられたそれは、ショートした電気系統のようにバチバチと音を立てたしばらくの後、爆裂したのだった。

「「おおー!」」

 ひときわ大きな声が湧いた。

「どうだ、これぞ波動属性の力、パイルバンカー波動砲だ!」

 宇宙での一幕が終わり、立体映像は再びブループリントを映しだす。

「波動砲の種類は多岐にわたる。
 他にも衝撃波動砲、圧縮波動砲、炸裂波動砲、灼熱波動砲、災害波動砲……波動砲に不可能は無い!」

 美亜はバッと片手を突き出し、観衆にむけて再び声を張り上げた。

「さあ、スマッホンゲームなどしている場合ではない! 人類の勇気を称えよ! 宇宙に出撃せよ!」

 宇宙への出撃はさておき、猟兵の雄々しい弁舌を全て終えた頃には、広場には不思議な熱気に包まれていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ふむ、一番ワルな属性はナニかと言えばそれは“変化”ですな。破壊も闇も光も“変化”なくして成り立たぬ。
ゲームで言えば改竄ね、つまりチート。どのような攻撃も“変化”させ改竄してしまえば無効化でき、いかなる防御も“変化”させ改竄してしまえば意味をなさぬ。
え、『デビルズパレス』にそんな属性はない?ならあるように改竄してしまえばいいのよ、チート上等。だって不正改造データを使うのはとってもワルでしょ?(クスクスクス



●変化は破壊を否定する

 万物はメカニズムを持つ。
 "入力"に対する"出力"を持つ。
 火という"入力"があれば、焼けるという"出力"がある。
 光という"入力"があれば、反射するという"出力"がある。
 もしも、そのメカニズムが改変されたとしたならば──

 広場の悪魔たちは、デビルズパレスの画面と相変わらずにらめっこをしている。
 このゲームが流行るのにはそれなりの理由がある。
 グラフィックでかもしれないし、難易度のバランスかもしれない。
 あるいは、大ダメージを与えた爽快感かもしれない。

 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)は、ある悪魔たちのプレイ画面を横から覗いていた。
 ちょうど、巨大な天使のようなボスが、ブラックホールを思わせる黒い光に飲み込まれ消滅したところであった。

「ふーん、こんな感じなんだ」
「ね、面白いでしょ!
 これさ、色々属性があるんだけど、ねーちゃんは何の属性が一番カッコイイと思う?」

 悪魔の少年が尋ねる。

「属性かぁ」
「うん、実はさー……」

 少年は一段トーンを落とし、話し始めた。
 破壊属性こそ至上、それに従わねば破壊してやるという、オブリビオンによる言いがかり。そしてDの巻き上げ。
 殺戮こそまだ起きていないが、次に現れたならば、いよいよわからない。
 アリスにはすでに届いていた情報だったけれど、彼の言葉を真剣な表情で最後まで聴き通した。

「破壊属性なんて無茶苦茶でしょ?
 ねえねーちゃん、破壊属性なんかよりももっとカッコイイ属性を何か考えてよ!」

 懇願するように前のめりになる少年悪魔。
 対するアリス、これに対する答えはすでにあった。

「ナニかと言えばそれは“変化”ですな。破壊も闇も光も“変化”なくして成り立たぬ」
「変化、変化属性?」
「そういうこと。
 どのような攻撃も“変化”させ改竄してしまえば無効化でき、いかなる防御も“変化”させ改竄してしまえば意味をなさぬ」
「なるほど、言われてみればたしかに!」

 と、このときの少年の頭には、きっと空間を捻じ曲げる類の、いわば物理法則を否定する手段がおぼろげに浮かんでいたことだろう。
 しかし、アリスは彼にとって思わぬ言葉を出した。

 ふふ、といたずらっぽく笑った後、少年のスマホを指さす。

「ゲームで言えば改竄ね、つまりチート」
「ええっ!?」

 チート。
 それは、ゲームのシステムを根底から覆す禁忌の術、楽園にひっそりとなる知恵の果実。

「そ、それはダメじゃない!? そんなことしたら、ゲームが面白くなくなっちゃうよ!」

 慌てたように諌めようとする少年。
 対するアリスは指を振って。

「なーに言ってるの。
 ここはどこ? デビルキングワールドじゃない」

 あっ、と少年悪魔は声を上げ、口をつぐむ。
 優しき悪魔であったがゆえに、彼は今ようやく気づくこととなった。

「だって、不正改造データを使うのはとってもワルでしょ?
 ワルいことがカッコイイなら、チートだってカッコイイはずよ」

 つまりはそういうこと、破壊属性くらい、変化属性があればどうにでも否定できる。
 そういったことを平明に説いていく。

 アリスの提示した変化属性、それはメカニズムそのものの改変だった。

 未知の領域に踏み込んだような気持ちになった善良な少年悪魔がごくりと喉を鳴らしたのを、アリスは聞き逃さなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メナオン・グレイダスト
・POW

破壊属性か。うむ、確かに「悪」であるな。
しかし……敢えて言おう。お前達の前提は間違っている。
真なる「悪」は、属性などという小さな枠組みには収まらぬ!

我輩が証明してやろう。
【グレイダスト・レギオン】――出でよ、我が配下達。そして知らしめよ!

(膨大な灰色砂塵を放出、召喚するは人工生命体の手勢。
 異形の全身鎧か外骨格かといった外見の彼らは、
 一糸乱れぬ統率で周囲の少年悪魔達に迫り威圧する。
 自身は数名の手勢を側に置き、外套を変形・生成した椅子に座り悠然として)

我輩のこれは、強いて言えば「魔王属性」である。
悪のカリスマと言い換えても良い。

さて、改めて問おう。お前達が一番だと思う「悪」は何だ?



●外延としての破壊、内包としての悪

「破壊属性か」

 メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)は、短い言葉をつぶやき、目を閉じた。
 広場にある若い悪魔たちとおおよそ同じ年の頃とは思えぬほど怜悧で、落ち着いた少年猟兵。
 彼らと同じ悪魔の種にありて、その内には悪魔の王たる力を備えていた。

 破壊属性こそ最も悪辣にして最強。
 そんなこと強弁して去っていった破壊の王を恐れた悪魔たちは、目の前の猟兵に問うていた。
 破壊を超える悪き属性は何か、と。

「うむ、確かに『悪』であるな」

 しばらくの後、メナオンは再び口を開く。
 破壊は悪。表情こそ変えねども、彼も一旦はそれを認めざるを得なかった。

 目の前の悪魔は唇を締めて小さく首を縦に振る。
 少しの悔しさと少しの諦め、そんな空気が彼から伝わってきた。

「しかし……敢えて言おう。お前達の前提は間違っている」
「えっ?」

 が、ここにきて、再びまぶたを開いたメナオン。
 同時に出てきた言葉は、前提そのものに向く刃の先端。
 きっと悪魔たちをにらみつけて続けたのは。

「真なる『悪』は、属性などという小さな枠組みには収まらぬ! お前達に、今より我輩が証明してやろう」

 猟兵の高らかな宣言に、何が始まるのかと一歩下がる若き悪魔。
 対するメナオンがそれを確認したと同時、彼の周囲を砂煙が舞いはじめる。

「――出でよ、我が配下達。そして知らしめよ!」

 召喚の詞を契機に一気に濃くなり、生きた群れのごとく頭上へと吹き上がる砂塵。

「な、なに!?」

 驚く悪魔の前にそれが着地すると、凝縮し、徐々に人の形をなしていく。
 それは鎧のような、岩のような、硬く、雄々しい姿をしていた。
 一人、また一人とその数は増え、気づけばその数は大きな陣列を組むほどにまで膨れあがっていた。

 その物々しい様相、ざわつく悪魔たち。
 畏怖をもって見つめる者があり、躍る心をなんとか抑えながら見つめるものがあった。

 軍勢の中央に佇むメナオン、灰のような薄墨色をした外套を翻す。
 踊るようにして宙を返れば、地に着いた頃にはその姿は玉座へと変わっていた。
 灰の王は不敵にして昂然たり。
 そこに腰を掛け肘を掛ければ、鎧まとう配下が、そこへ寄りてひざまずく。

「見たか。我輩のこれは『魔王属性』である」

 メナオンの口が再び開けば、出た言葉は、かの破壊属性に対抗しうる答え。
 魔王こそ全ての悪道を極め、支配し、民に恐怖を与える。
 破壊属性など、あくまでもその具体・外延にすぎない。

「言い換えるならば、悪のカリスマである。
 吾輩が示したことで、お前たちもよく理解したことだろう」

 灰色砂塵の魔王は頬を拳に起き、続けた。

「さて、改めて問おう。
 "お前たちが一番だと思う『悪』は何だ?"」

 それまでよりも一つ調子を下げて問うた声は、悪魔たちの胸に言いようのない重量感を覚えさせた。

「い……一番は」

 若い魔王による証明にすっかり圧倒された悪魔たちは、様々な感情が混然とした末、一様の答えを示すばかりであった。
 "魔王属性"と。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒紅・真九郎
デビルキングワールド……聞いてた通り、独特な世界だね
でもゲームがあるなら話題は十分
そこの君たち、何をしているんだい?

ふむ、悪い属性と。僕は麻痺とか束縛とか、身動きできない属性が悪いと思うな
どれだけ強い生き物でも、動けないなら何も出来ないからね

む、疑ってる?それじゃ君に少しだけ『証明』してみようか
――『身傀』の魔眼、解放(目を閉じて魔眼封じの眼鏡を外し、再び開く。輝く魔眼は赤と青のダイクロイックアイ)
ふふ、全く動けないでしょ?今の君はトイレも行けない、ご飯も食べれない、ゲームも遊べない
この属性、凄く悪いと思わない?(眼鏡をかけ、クイッと上げ)

まさか僕の魔眼が、こんな使い方をする日が来るなんてね



●闇も破壊も、傀にされれば

 頭上を燃えるような色の空が包み、乾いた熱気があたりを漂う。
 小さな山では絶えず火の手が上がり、ところどころに粗野なオブジェが立ち並ぶ。
 
「デビルキングワールド……聞いてた通り、独特な世界だね」

 黒紅・真九郎(普通という在り方・f00767)は、そんな世界に初めて降り立つ。
 ぐるり見回すまでもなく、彼の住む世界とまったく様子の異なることはすぐに理解した。
 もっとも、近頃若者たちの一部に特定のゲームが流行っているという点はその例外であったが。
 文化の異なるこの世界の住人といかにしてコミュニケーションを取るか。
 それを考える手間が省けることは大きい。

「この世界にもゲームがあるなら話題は十分。なんとかやってみよう」

 魔界にある広場の至るところ、悪魔の少年少女たちの姿あり。
 あちらを見ればダンスの練習。
 こちらを見ればつかみ合いじゃれ合い。
 そしてその中にぽつぽつと、手元のスマートフォンを覗く者たちがいた。

 広場に足を踏み入れた真九郎は彼らの元へゆっくり歩み寄る。

「やあ、そこの君たち、何をしているんだい?」

 小さく穏やかな笑顔で投げかけた。
 彼らが何をしているのか、真九郎にはおおかた察しはついていたが、まずは友好的に、段階を踏みながら。
 スマートフォンとにらめっこをしていた三人ほどの少年のグループが、声の主のほうに視線を移す。

「えっと、これ、ゲームやってるの。デビルズパレスっていうんだ」
「へえー、どんなゲームなんだろう? ちょっと見てみたいな」

 猟兵の青年は視線の高さを彼らのそれに合わせる。
 覗いた画面には、『互いの属性には強弱の相性があります。大ダメージを与えるチャンスです!』というアドバイスが表示されていた。
 やがて開始される小さな戦闘。
 悪魔の少年が骸骨型の敵をタップ。
 次いで、攻撃手段を選択する。
 闇属性なるこの敵が弱点とするのは光魔法だった。
 上から降り注ぐ稲妻が、骸骨を一発で破砕する。

「ほらね。こうやって有利な属性で戦うんだよ」
「なるほどね。面白そうだ」

 真九郎は首を縦に振った。

「にーちゃんって、闇属性より悪っぽい属性ってあると思う?」

 突然、少年の一人が真九郎に向かって尋ねる。

「ふむ、悪い属性と」

 呼吸一つの間ばかり目を伏せて考える。
 そして。

「僕は麻痺とか束縛とか、身動きできない属性が悪いと思うな」

 彼の出した答えは、動きを抑えつける属性。
 扱いやすい名をあてるとするならば、封印属性、硬直属性といったふうだろうか。

「どれだけ強い生き物でも、動けないなら何も出来ないからね」
「あはは! それ、バッドステータスってやつでしょ?
 ターン経過で回復できるし、それって本当に強いのー?」

 少年はころころと笑う。
 が、真九郎は目を閉じてにやり。

「む、疑ってる?
 それじゃ君に少しだけ『証明』してみようか」

 トップリムの眼鏡を、顔からゆっくりと離す。
 再び開かせた目。
 奥深くに潜む魔性が目覚めたしるしに、その瞳は赤と青のうっすら混ざったような色に輝いた。
 
「うわっ!?」

 瞬間、その瞳を直視していた少年の身が強張る。
 意識が肉体に伝わらない。
 まるで縄で固く縛りつけられたかのように、彼は動きを止めてしまった。
 物を言おうにも口が動かず、代わりに辛うじて見せる驚きの表情が何かを伝えようとしていた。
 無論、それがなにか真九郎にもわかっていた。

「あわわわ……」
「ふふ、全く動けないでしょ?」

 突然のことに止めに入ることすらできず、驚愕の面持ちで見る少年たちを尻目に、"身傀の魔眼"の使い手は笑う。

「今の君はトイレも行けない、ご飯も食べれない、ゲームも遊べない。ね? この属性、凄く悪いと思わない?」

 真九郎は、外した眼鏡を再び顔に。
 レンズを通して見えた瞳は元の落ち着いた色へと戻っていた。
 束縛を解かれ自由を取り戻した少年が、尻もちをつく。

「マジかよ……」
「封印属性、すげーワルイ……!」

 このとき、若い悪魔たちは確信した。
 この人たちならば、あの乱暴な破壊の王に一泡吹かせてくれる、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『悪魔のボディガード』

POW   :    ガードキャノン
自身の【デビルキャノン】から、戦場の仲間が受けた【攻撃の合計回数】に比例した威力と攻撃範囲の【暗黒の砲撃】を放つ。
SPD   :    護衛契約
他者からの命令を承諾すると【契約書】が出現し、命令の完遂か24時間後まで全技能が「100レベル」になる。
WIZ   :    トリモチシュート
【デビルキャノン】から【トリモチ弾】を放ち、【強烈な粘着力】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破壊の王に従う者

 若い悪魔たちによれば、破壊の王が住む城を守る兵たちも、元は彼らと同じ悪魔であるという。
 一瞬たりとも"破壊属性"なるものに心酔し、この城まで連れて来られた彼らは、頑強な鎧を着させられ、王に忠誠を誓うこととなった。
 ところが。

「あーもう、王様、人使いが荒すぎて参っちゃうぜ」
「シッ!」

 門の番をする鎧の悪魔二体。
 なにやら愚痴をこぼしている。

「つーか破壊属性もさ、あん時はカッコイイって思ったけど、よくよく考えたら微」
「だからやめとけって……! 聞かれたらどうする……!」

 片方の悪魔がまた一方をたしなめるが、すでにその心が破壊の王から離れかけている点では密かに共通していた。

「いっそ、こっそり逃げるか?」
「バカ! そんなのがバレてみろよ! 怒られるどころじゃ済まないぞ」
「だ、だよな……あーあ」

「「誰か俺たちを倒しに来てくれたら、どさくさにまぎれて逃げられるかもしれないのになァー……」」
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ふんふんふーんと鼻歌まじりに世界を“改竄”していく。
私の“理(ルール)”で世界を満たしていく。ああ、現実にチートコードぶっこむとかなんてワルなのかしら♪
あらあらあら、その鎧ダサくない?大丈夫?化術防具改造早着替えの魔術でさくっとデザインを変えちゃいましょ♪
あらあらあら、私に襲いかかるだなんて。でも、今の私の前ではあらゆる生命体・無機物・現象は私に対して無意識に友好的なのよね。さ、トリモチさん、その子達を捕縛してちょうだい♡
ま、魔改造した鎧も私の眷属(式神使い)になってるし、障害はないに等しいわね。
ふふ、私に忠義を誓うなら眷属にしてあげてもよろしくてよ♪



●悪魔たちにメルヘンな世界を

「お、おい」

 破壊の王が城、その門前を警固する堅き鎧の悪魔たち。
 うちの一方が、他方の悪魔の肩を叩いて呼びかける。

「あん? なんだ、どうし──」

 困惑した相方の視線の先を追うと。

「え!? なんだあれ!?」

 見慣れたはずのデビルキングワールドの風景が、別天地の色に染まっていく。
 枯れたはずの木々は生気が宿り健やかな緑の葉で満たされ、城へ続く灰色の道には行き交う者を見送るように白・赤・黄色の花が並ぶ。

「俺が知りたいわ! こっちに広がってきてるぞ!!」

 上書きされていく世界と世界の境目を、二体の悪魔は注視する。

「ふんふんふーん♪」

 それは、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)のしわざであった。
 やがて、城門へと至った彼女を門番の悪魔たちは引き止める。

「ま、ま、待てそこの娘! ここは我らが王の領地。許可なく立ち入ることはできんぞ」

 定型的な注意を一応促す悪魔たち。
 正直、ここの王にこき使われることに対しては嫌気が差しはじめていたので、内心は通してしまいたいくらいだったのだが。

「あらあらあら、その鎧ダサくない? 大丈夫?」
「う、うるさい! これは王から支給されたものだ!」

 純粋そうな声で発せられるアリスの言葉が悪魔たちを戸惑わせる。
 一歩引いたことで、暗い色のいかにも重そうな鎧がガキン、と音を立てる。

「もっと楽しげな感じにしちゃおう?」

 アリスが一体の悪魔を指さす。
 空気の弾けたような音とともに煙が悪魔を包む。

「うぶっ!?」

 格好の悪い声を発しながら悪魔は目を閉じたが、煙の晴れた頃に再び開くと、なんと自身が道化師のような服に身を包んでいることに気がついた。

「うわっ、なんだこれ!? ……素敵」

 姿を変えられた悪魔は一度は驚いたが、すぐの後にはまるで魂が入れ替わったかのようにその顔を緩めていた。

「なっ……娘、お前がやったのか!?」
「そうだよ? あなたにも、はいっ」

 にやり、とアリス。
 そうして、もう一体の悪魔にもかけられる着せ替え魔法。

「ぎゃー!? なんて、なんて……かわいいんだ……」

 こちらはクマの着ぐるみである。
 場はもはや仮装パーティの様相を呈しはじめていた。

「気に入ってくれたようでよかった。
 さ、トリモチさん、その子達を捕縛してちょうだい」

 アリスの元から放たれた粘着質な物体が悪魔たちに襲いかかると、べったり、彼らを地面に押し伏せてしまった。

「私の“理(ルール)”で世界を満たしていく。
 ああ、現実にチートコードをぶっこむとかなんてワルなのかしら♪」

 眼前で起こした事象、そして、ここに至るまでに上書きした風景。
 それらを一つ見回したアリスは、自身の力に惚れ惚れしていた。

「ふふ、私に忠義を誓うなら眷属にしてあげてもよろしくてよ♪」

 無邪気で、けれどもサディスティックな笑みが、身動きの取れなくなった悪魔たちに投げかけられたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルナ・ボーラ
……話は聞かせてもらったぜ。
どうやらまだ真の破壊属性を知らないようだな。

真の破壊属性、それは即ち混沌だ。
全てにおいて秩序なく破壊を極め、その有象無象全てを逸脱し孤高の頂きへと辿り着いたものこそが真の破壊属性となる。

それだというのに思い返してみろ。
お揃いの鎧を着せては自分を護るために兵隊を集め、保身に走るダサい大将の姿を。

けれどあんたらは違うだろ?
その胸に抱いた不平や不満、それはあのダサい奴が作り出した偽の破壊属性への反逆の産声に他ならないからな。

で、どうすんだ。
このまま破壊属性を騙る偽物にこき使われたままでいるか。
それとも偽りの秩序を打ち砕き真の破壊へと反逆の狼煙をあげるか。
さぁ、選べよ?



●真の破壊を目指すなら

 猟兵、ついに城内へ至る。
 目指す玉座は奥深く。
 カルナ・ボーラ(解体する眼差し・f14717)が入り口を抜けると、重き鎧を着た兵たちが迫る。

「ムッ! そこを動くな!」
「許可を得て入ってきたのか!?」

 三体ほどの悪魔がカルナの前後を囲み警戒する。
 が、彼のほうはといえば、この形勢にも平然としつつ狼のような耳を動かしていた。

「……話は聞かせてもらったぜ」

 カルナの開いた口から、澄んだ声が発せられる。

「なにっ、話、だって…?」
「なんでも、ここの王とやらは破壊属性ってやつを尊んでるらしいな」
「そうだ。それがどうしたというんだ!」

 居丈高にふんぞり返る前方の悪魔に対し、そこまで聞いた人狼の猟兵は両の掌を上に向けて見せる。

「どうやらまだ真の破壊属性を知らないようだな」
「なんだって!? どういうことだ!」

「真の破壊属性、それは即ち"混沌"だ」

 混沌。カオス。
 それは秩序と対極に存在する概念。
 カルナは続けた。

「では聞くが、あんたらの王は何を破壊するんだ?
 他の属性? たしかに、破壊属性こそ他の属性を超越するとかなんとか言っていたな」

 猟兵の弁舌は、悪魔たちの反駁する意気を確実に奪っていく。

「で、そいつはそれで破壊を極めたと思ってるのか?
 "全て"において秩序なく破壊を極め、
 その有象無象全てを逸脱し孤高の頂きへと辿り着いたものこそが真の破壊属性となるはずだ」

 カルナの言葉はついに氷の刃となった。
 彼は悪魔たち睨んでさらに続ける。

「それだというのに思い返してみろ。
 お揃いの鎧を着せては自分を護るために兵隊を集め、保身に走るダサい大将の姿を」
「保身っ…!?」

 保身。
 混沌に背を向け、秩序に与する行為である。
 鎧の奥の表情が強張っているらしいことは、覗きこむまでもなくわかった。

「けれどあんたらは違うんだろ?
 あんたら、本当はもう気づいてるはずだ」

 一度は共鳴した王の思想。
 しかし遣われるうちに目減りしていく忠誠。
 それこそ、悪魔たちの"反逆"の力の原点たりえることを、カルナは説いていったのだった。

 そして、仕上げとばかりに問う。

「さて、どうすんだ?」

 右にいる悪魔に視線を投げ、

「このまま破壊属性を騙る偽物にこき使われたままでいるか」

 背後の悪魔へ流し目を送り、

「それとも偽りの秩序を打ち砕き、真の破壊へと反逆の狼煙をあげるか」

 正面にいる悪魔の顔を覗き上げて。

「うぐっ……」

 言葉を継げないが、手を出してくる様子もまた見せない悪魔たち。
 彼らに一定の答えが浮かび始めたらしい。そう判断したカルナは一人、振り返ることもなく奥へと歩みを進めていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
いや、なんでそんなのについていったのよ…
そんなに破壊をしたいならね
…見せてあげるよ?(にっこり)

門番さん、もっとすごい属性、見てみない?
邪魔しないでいてくれたら、じっくり見せてあげるよ?

邪魔するなら…
巻き込んじゃうかもしれないから、気を付けてね?

応戦して来たら
二刀流の光刃剣と精霊剣で攻撃と【武器受け】で防御と
【残像】を生みつつ【フェイント】を絡めた回避で最小限の行動

回避・攻撃をしつつ
UCの詠唱開始
【多重詠唱】で時間を取りつつ…
じっくり【魔力溜め】も行いながら…
詠唱が完了したら
城に向かってヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストを撃つよっ!

言うこと聞いてくれてたら射線から退いているはずだからねっ♪



●"破壊"を超えるわたしのやり方

 門番たちの話を物陰にて盗み聞きしていたシル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)は、眉間を押さえていた。

(いや、なんでそんなのについていったのよ…)

 彼女が聞いていたのは、王に対する悪魔たちの愚痴。
 破壊の王は、その名から容易に連想しうる苛烈さ、横暴さ、そして破壊属性こそ最大のワルであるという主張によって、彼らを引き止めていた。
 彼女の疑問に対する答えがあるとすれば、この3つ目であろう。
 そして、今となってはそれもすでに熱が冷めはじめており、口にまでは出さずとも、あの門番たちと同様のストレスを感じている者が少なくなかった。

 城壁周辺を歩く警邏(けいら)の悪魔たちもそんなうちの一部であった。
 シルのいる側へと向かってくることに気づいた彼女は、物陰から飛び出した。

「む、こら! そこで何をしている!」

 王より任された務めを一応にでも果たそうと、二体いた悪魔のうちの片方が呼びかける。

「破壊属性に惹かれた悪魔さん。
 そんなに破壊をしたいならね…見せてあげるよ?」

 満面の、けれども、黒い笑みを浮かべて、シルは返す。
 その声色は妙に低く、恐ろしかった。

「ひっ……」
「ねえ、破壊よりももっとすごい属性、見てみない?」

 シルは明るい調子に声を戻して、悪魔たちに問いかけた。

「は、破壊よりすごい属性だと……?」
「そう。
 もし邪魔しないでくれるなら、じっくり見せてあげてもいいんだけどな」

 破壊よりすごい属性。
 この娘はいったい何をしだすのだろうか、と顔を見合わせる悪魔同士。
 そこへ、シルはもうひと押しとばかりに続けた。

「ただし、邪魔するなら……巻き込んじゃうかもしれないから、気を付けてね?」
「こら待て待て待て、わかった! 見る! 見るから!」

 再び黒い笑みを見せた猟兵の少女を、悪魔たちはただ言葉で止めることしかできなかった。
 両の手を振る警邏たちを見てにこり、彼女の顔に満足そうな笑顔が咲いた。
 シル・ウィンディア、あなどれぬ少女である。

 舞台は城の裏手に移る。
 簡易的な訓練場だろうか、人の形を模した木の的が並ぶ。

「いいか、くれぐれもそーっとやってくれよ。
 ……大事になったら怒られるのは俺たちだから」

 悪魔たちがシルに耳打ちをするようにして言う。
 彼女の笑みに負けてここまで連れてきたが、王の目もまた依然恐れていることには変わらなかった。

「大丈夫大丈夫、それじゃ、約束通りすごいものを見せてあげるねっ」

 シルが目を閉じて詠唱しはじめると、彼女の目の前に白い魔法陣が現れる。
 そして浮かぶ六つの要素、世界を構成すると信じられた四元素、そして光と闇のシンボル。
 広場に集うあの悪魔たちに見せたものと同じだ。

「おおっ、まるで芸術みたいだ……」

 後ろで見ていた警邏の悪魔たちが感心の息を漏らす。
 が、現れた魔法陣は異様に大きく、激しく輝きだした。

「ん? お、おい、本当に大丈夫なのかこれ!?」

 そして。
 巨大な魔法陣から放たれたあらゆる属性の集合体は波動砲となって木の的を捉え、その裏にある城の壁にも大きな穴を開けた。
 畢竟、大丈夫かと問われれば、大丈夫ではなかった。

「あれれー、やっちゃった! ごめんね♪
 わたし、ちょっと行って謝ってくるねっ」

 舌を出して可愛気のある表情を見せたシルは、そのままスタスタと穴から城内へ侵入していく。

 一方、烈火のごとく怒る王の顔が目に浮かび、追うこともできずに両膝をつく悪魔たち。
 いっそのこと、もうやっつけてきてしまってくれ。
 そう願わずにはいられないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リサ・マーガレット
属性…そういえば、猟兵書家の力を得るときそんなこと言ったよね。
だったらその副作用から属性を生み出せばいいかも!

そうだな、グリモアから割り出した方を天属性と、骸の力の方を冥属性とかどうかな?
天属性は多分慈悲の属性。全てを許す力を持つ
冥属性は多分破滅の属性。全てを壊す力を持つ
破壊ってやっぱり冥と同じかもね。
ユーベルコードオーダーに骸とグリモアの印の効果を合わせれば
天属性と冥属性のビームを打てる!
だから試しにどっかに打ってみようかな
慈悲に惹きつけられた人たちが集まり、門にいる人も、破滅の力に惹きつけられるでしょう。
そうしたら、集まってきた人に天と冥属性について延々と語りましょうか。



●天と冥は悪魔を惹きつけるか

 破壊属性なるものを信奉する王の城へと突入する猟兵たち。
 そこには、リサ・マーガレット(希望を満たし、絶望を与えし夜明け・f32587)の姿もあった。
 彼女は城の門をくぐり、中庭へと至る。

「もっと盛大なお出迎えがあると思っていたけれど、意外だね」

 リサは周囲に注意を払いながら、右手を握る。
 拳の周囲に発生する渦巻く気流。
 そこに清らかなる光と、禍々しい黒い霧が混じる。

「このまま目的の場所にたどり着いてもそれはそれで面白くないからね。ひとつ、びっくりさせてあげようかな」

 それは彼女がとある儀式にて得た力だった。
 触媒とするのは骸のシンボルとグリモアを表したイコン。

「名前をつけるなら、さしずめ"天属性"と"冥属性"と言ったところかな……!」

 暴風のような音が包む拳を勢いよく突き出した先は、庭にある無骨な彫像。
 放たれた光線はまばゆい光と深い闇が糸のように撚りあって一直線に伸び、岩の像をなぎ倒したのち壁に着弾したのだった。

「なんだ!? なんだ!?」

 この大きな音に気づかぬ者はさすがにいなかったらしく、五体ほどの鎧をまとった悪魔たちが中庭へと駆け込んできた。

「おっと。ごめんね、お邪魔しているよ」

 侵入者の少女に向けて悪魔たちは重そうな砲身を構えつつ、あたりを確認する。
 地面には、大小の岩石が散らばり、あったはずの彫像が台座もろとも姿を消している。
 明らかな破壊があったのだ。
 彼らはそう察すると、彼らは再びリサに視線を向けた。

「これ、お前がやったんだな!
 我が王に知れたらどうなるか知っていてのことか!?」
「まあまあ、ちょっと話を聞いておくれよ」

 警戒の色をますます濃くする悪魔に対して、リサは一切動揺することなく、友好的な笑顔で話しはじめた。

「なかなかの破壊っぷりでしょう?」
「やっぱりお前がやったんじゃないか!?」
「ははは! まあ、ここの王だって破壊属性が好きらしいし、これくらいは許してくれるんじゃないかな」

 その言葉に逡巡を見せた悪魔たちをちらりを見て、リサは、それはさておき、と続ける。

「僕が使ったのは、天属性と冥属性の力だよ。
 天属性とは、全てを許す慈悲の属性。冥属性とは、全てを壊す破滅の属性」

 グリモアの力と骸の力を合わせた光線を撃ってみたのだと説明する。
 その表情は余裕で満たされていた。

「なんなら、もう一度撃ってみてもいいんだけどね。
 そうしたら、慈悲と破滅の力に改めて惹きつけられるんじゃないかな」
「ま、待て!」

 悪魔の一人がそう声を上げると、横の悪魔となにやら小声で話しはじめた。
 うなずき、首を振り、下を向き、最後に互いにうなずきあうと、悪魔はリサに近づき。

「……コホン。もう一度くらいならば、撃たせてやってもいい。
 ただし、空にな。空に向けて撃つんだぞ」

 悪魔たちのまとう鎧の奥に、こころなしかそわついたものが見えた気がした。
 どうやら、目の前の猟兵が言う天属性と冥属性の力を、改めて見たくなったようだ。

 城の中央から、金色と黒の光が天に向かい伸びていったのは、そのすぐ後であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリアリア・アーデルハイム
この先に用があるのですが、通していただけませんか?
仕事だから無理、ですか。そうですよね(思案)
では、このお仕事は好きですか?
例えばお給料が出なくても、続けたいと思いますか?
城主さんが人使いが荒いんですか…お気の毒です

こういうのはどうでしょうか
箒に飛び乗り、ハイスピードで門番をかわし空中から全力でUC発動
蒼焔花を呼び出し門を燃やす

油断なくもう一度詠唱する構えを見せつつ
これで門は無くなりました。守るものが無くなったので貴方がたはクビです、
おめでとうございます
貴方達は好きじゃ無い仕事から解放されてハッピー、私も束縛を消滅させて満足
WINーWINという事で如何でしょう

応じなければ再攻撃



●使われる者の悲哀

 ミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)の姿は城門の前にあった。

「こんにちは。
 この先に用があるのですが、通していただけませんか?」

 にこやかに話しかけた先には、鎧をまとった悪魔二体。

「見たところ悪魔ではないな?
 王の命令により、素性の知れぬ者を通すことはできん」

 そのうちの一体が、追い払うように手のひらを振る。
 当然といえば当然の反応であった。
 友好的な王ならばいざ知らず、それが暴虐の王であれば、外部の人間を易々と招き入れたがるはずがない。

「無理、ですか。そうですよね」

 ミリアリアは残念そうに目を伏せた。
 が、この結果は想定通り。すぐに次の一手を出す。
 視線を再び悪魔に向けて問うは。

「えっと……では、このお仕事は好きですか?」
「む? なんなんだいきなり?」

 悪魔たち自身に関してだった。
 妙に気遣うような表情で訊かれた彼らは互いに一度目を合わせる。

「コホン……仕事とは好き嫌いの問題ではない。
 王に忠誠を誓うからこそこの仕事をしているのだ」

 いかにも崇高な精神に則っていることをアピールするように胸を張り、悪魔はミリアリアに答えた。
 しかしながら、彼女が続けて投げかけた言葉が、彼らをすぐに動揺させる。

「そうですか。
 例えばお給料が出なくても、続けたいと思いますか?」
「はっ……!?」

 その動揺はいやに激しかった。
 ミリアリアの内心にはっきりとした確信が生まれたのはこの瞬間。

「う、ううううるさい!
 今は我々をこき使おうとも、いずれこの働きを評価し良い地位を与えて──」
「人使いが荒いんですか……お気の毒です」

 悪魔が言い終えるのを遮るような形で、さらなる図星を突く。

「お、おい女よ! さっきからなんだというのだ!」

 悪魔は堪らず声を荒げた。
 猟兵の気遣いに、彼の中に押し込める本音が暴れだす。

「ならば、こういうのはどうでしょうか」

 手に持つ箒がふわり浮かぶ。
 ミリアリアがそれに飛び乗ると、悪魔の頭上をひらひらと舞いはじめた。

「あっ! こら待て!」

 動揺に動揺を重ねた悪魔は、彼女を手で捕まえようとするばかり。
 無論、彼女があえて捕まるような高度に下りるはずもなく。

「氷獄に現の花が咲くならば柵木に花を告うものか…咲け!」

 静かな詠唱の後に放たれる、青白き花。
 それが門に触れれば、冷ややかなる色のまま激しく燃え上がった。
 ぼうぼうと音を立てる妖しき炎は岩の門を黒く焼き焦がし、やがて消えた頃にはすっかり崩れ落ちていた。
 威厳の欠片もない姿である。

 見るも無残な有り様に、開いた口の塞がらない悪魔。

「な、なな、なんてことを……!!」
「はい。これで門は無くなりました。よかったですね」
「「いいわけあるかァーッ!?」」

 笑顔で言うミリアリアに、悪魔たち二体は同時にツッコむ。

「いいわけあるじゃいですか。
 あなたがたはここを守る門番で、その門が無くなった。
 無くなったものを守ることはできない。つまりあなたがたは門番ではなくなったのでクビです」
「「えっ!?」」

 "クビ"のたった一語に、悪魔たちは鼻の頭を殴られたような衝撃を受けた。

「おめでとうございます。
 あなたたちは好きじゃない仕事から解放されてハッピー。私も束縛を消滅させて満足。WIN-WINという事でいかがでしょう?」

「クビ……ハッピーな、くび……?」

 なかば上の空な悪魔たち。
 その耳には、ミリアリアの説明がどれだけ入っていっているのだろうか。

 王の怒る顔を思い浮かべた恐怖。
 そんな苛烈な王から解放されるという喜び。
 まだ1Dも受け取っていないという憤り。
 仕事を失ったら生活はどうなるという悲嘆。

 ぐちゃぐちゃな感情が頭の中を暴れる悪魔たちに、鼻歌高く城の奥へと進入するミリアリアの姿を追う余裕など生まれるはずもなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘇摩・瞬華
おー、いかにも物理って感じの悪魔さんたちだね。
でも、どんなに強い物理の力でも、壊せないモノはあるんだよ?

敵の攻撃は【仙術】で生み出した分身(【残像】)で狙いを混乱させ、分身の攻撃に紛れさせる形で杖から炎を浴びせて攻撃(【焼却】)。
どんなに強い破壊の力でも壊れず、惑わせ、逆に滅ぼしていく。これが破壊属性より強い属性、幻属性の力だよ。

分かってもらえたなら…あるべき処にお還りなさい、ね?
(往魂ホノアラシ発動、敵を帰すか追加攻撃)

まだ残ってる人もいるけど…ん-、良かったら、この先の王様やっつけるの手伝ってくれるかな?
とお願いしてみようかな。



●在るべき場所への誘い

 城の内部を行く蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)が足を踏み入れたのは、守衛の詰所であった。

「おー、いかにも物理って感じの悪魔さんたちだね」

 彼女の視界には、角張った重い金属の鎧に身を包む悪魔たちのこちらを見る姿があった。
 見える限りでも五体はいるだろうか。

「おい! 何者だ!?」
「誰の許しを得て入ってきたんだ!」
「牢に入れられたいのか!!」

 砲を構えた彼らは瞬華を威圧するが、彼女のほうは至って平然としている。
 それどころか悪魔たちに送るのは、愛玩対象を見るような妖しい視線。

「あはっ、強そう……。
 そのたくましい鎧なら、この壁だって楽に壊せちゃいそうだね。でも──」

 瞬華はそこまで口にすると、ゆっくり目を閉じた。

「どんなに強い物理の力でも、壊せないモノはあるんだよ?」

 次の瞬間、彼女の輪郭がぶれはじめたかと思うと、それは実体と変わらぬ彼女の生き写しとなりて並んだ。
 悪魔たちは吃驚する。
 視界の霞んだような錯覚から、はっきりと見えた分身。
 彼らは瞬華の仙術にすっかり惑わされていた。

「わたしを、捕まえられるかな?」

 無邪気な声で、部屋を飛び回りはじめる。
 その軽やかな姿が、合わせ鏡に映したかのように同時に動く。

「こっ、この!」

 動揺のまま悪魔の一人がキャノンを向け、ついに発砲する。
 一直線に勢いよく飛ぶ粘着質な弾が貫いたのは。

「ふふっ、ハズレだよ」

 彼女の分身のほうであった。
 中心を撃ち抜かれたそれは煙のように歪んで消えるが、しばらくの後に再生し、何事もなかったかのように瞬華の動きを真似る。
「じゃあ、今度はわたしの番だね」

 なおも舞い続ける瞬華は手に持つ杖に念じる。
 その頭を一体の悪魔に向ければ、ほとばしる炎が鎧に浴びせられた。

「あっ! 熱っ!!」

 熱さに悶える鎧、その様子に戸惑うその仲間。
 依然自身の残像を表したまま、仙狐は語りかけた。

「わかったかな?
 どんなに強い破壊の力でも壊れず、惑わせ、逆に滅ぼしていく。これが破壊属性より強い属性、幻属性の力だよ。」
「ぐぬっ……」

 キャノンを向けたまま、動きを止める鎧の集団。
 奥から苦々しい表情が伝わってきた。

「分かってもらえたなら…あるべき処にお還りなさい、ね?」

 そして、瞬華による降参の勧告。
 彼女の力を、また"幻属性"の片鱗を思い知った兵たちが、一人、また一人と武器を下ろしていく。

「な……なんだ?」
「わ、わわわっ」

 すると、武器を下ろした悪魔たちが次々と小さな竜巻に呑まれ、姿を消していった。
 残ったのは、ただ一人、いまだ武器を向けた鎧のみ。

「お、おい女! 何をやった!?」

 彼はその奇怪な現象に驚き、瞬華を問い詰める。

「あはは、大丈夫。
 おうちに返してあげただけ。痛いことは何もしてないよ」

 瞬華はなおも恐れを見せず、純真そうな調子で答えた。
 そうして、手を差し出しながら、続ける。

「さあ、あなたもあるべき処に」
「う、うるさい! 俺はまだ終わっちゃ……うごっ!?」

 抵抗の意気を見せた悪魔の身体が突風に巻き上げられ、天井に打ちつけられた。
 それは、誘いを拒んだ者への小さな罰。
 どうやら、彼は頭を打ったらしく、そのまま伸びてしまった。

「もう。痛くないほうが絶対よかったのに」

 気を失った鎧に歩み寄り、小さく呼びかける。

「よかったら、この先の王様をやっつけるの手伝ってくれるかな?……なんて」

 その表情はまるで、傾国の美女が枕元で何かを求むるときのそれに似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メナオン・グレイダスト
・SPD

(門番達と対峙した瞬間より、勘づかれない程度に灰色砂塵を散布。干渉するための仕込みをしておく)
ふむ。如何にも重装備、頼もしそうな配下と言えよう。
……だが、外見と内面が比例しているとは限らぬな。
我輩は灰色の魔王。破壊属性などと言うものは至上にあらず、と知らしめに来た。

証明してみせよう。我輩からの贈り物だ……【グレイダスト・ギフト】。
(戦闘に入ると見せかけて門番達の身体にUC使用。強化すると同時に身体の制御権を奪取し操ってみせ)

如何に優れた装備を持っていようと、十分に扱えなければ意味が無い。
破壊属性などはその程度にすぎぬ。この灰色の魔王に従属するのが相応であろう。
――お前達は、どう思う?



●灰に服せよ

 城内が次第に騒がしくなる。
 内外を守る鎧の兵たちがこれを確かめ、必要とあらば追い払うべく動き出したようだ。
 あちらこちらで、金属的な足音が響く。

「ふむ。如何にも重装備、頼もしそうな配下と言えよう」

 城の大階段へと至ったメナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)は、そんな兵たちに囲まれながら、小さくつぶやいた。

「侵入者め! この城に何の用だ!」

 一見して同じ鎧をまとう悪魔たち。
 中でも特に偉そうな振る舞いの一人がメナオンの正面に立ち声を荒らげる。
 苛烈な王の下にありながら、依然強い忠誠を誓う者もあるらしく。

「我輩は灰色の魔王。
 破壊属性などというものは至上にあらず、と知らしめに来た」
「なんだと! 王の前でもそんなことが言えるか!!」

 堂々たる名乗り、そして目的の宣言。
 問うた悪魔は怒りをあらわにした。

(……言えるなら言いたいよなあ……)
(……なあ、だって破壊属性って、なんかイマイチ……)

 と、どこから聞こえる小さなささやき声。
 それはメナオンの背後から発せられていた。
 が、正面の悪魔が声のほうを睨みつけると同時、それもすぐに止む。

「……なるほど。
 外見と内面が比例しているとは限らぬというわけか」

 数だけを見れば劣勢。
 しかしその中にありても、メナオンは極めて冷静に皮肉めいた言葉を放つ。
 露見せぬよう密かに、その地面にある下準備を施しながら。

「た、隊長! この者……どうも悪魔っぽいですが」

 兵の一人がメナオンを見て叫ぶ。
 悪魔というもの、その特徴こそ異なれども、互いに共通するそこはかとない"悪魔らしさ"は判るようだ。
 そして、隊長と呼ばれた個体は居丈高に答えた。
 
「悪魔でもなんでも構わん!
 ひっ捕らえて我が王の前に突き出せ!」
「は、はっ!」

 "隊長"の言葉にやや戸惑いを混ぜて答える部下たち。
 抵抗ひとつせずに立つメナオンとの距離を、警戒するようにじりじりと詰めていく。

「言葉のみでは信用せぬか。
 ならば証明してみせよう。我輩からの贈り物だ……」

 メナオンが掌を彼らに向ける。
 すると、悪魔たちの身体に違和感が生じた。

「うっ!」
「な、なんだ!? 身体が動かない!?」

 体内に何かが入りこんだような引っ掛かりを覚えたと同時、"隊長"を含めた悪魔たちの四肢の自由は一切効かなくなった。
 意思の上ではもがこうとするも、手も足も、自分の物ではないかのような感覚だ。

 メナオンはその様子を見て、冷たく放つ。

「身をもって理解せよ。
 如何に優れた装備を持っていようと、十分に扱えなければ意味が無い。破壊属性などはその程度にすぎぬ」
「こ、この……!」

 なおも抵抗を試みるさまを認めたメナオンは、手の指を曲げる。

「いでででで!!」

 悪魔たちの身体が、今度は揃って不格好な形に捻られる。
 もはや城を守る者の威厳もなかった。

「今の我輩にはこのままねじり折ってしまうこともできる。
 これこそ、破壊属性とやらを凌駕する"魔王属性"の力というものだ」

 そう言って、メナオンが手を緩めれば、悪魔たちの身体にようやく自由が戻る。
 しかし、それらは全て地に伏せたまま、肘をついて上体を起こすので精一杯だった。

「さて、それでもなお破壊の王についていくか?
 お前たち自身のためにも、この灰色の魔王に従属するのが相応であろう」

 灰の悪魔は階段を数歩上り、悪魔たちを見下ろす。
 その放つ威は、恐るべき魔王そのものであった。

「――お前達は、どう思う?」

 その問いに答えるように、その場にいた悪魔たちはすべて武器を手から下ろしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒紅・真九郎
既に何人か城に入ってるみたいだね
それじゃ王手と行こうか

君たち、僕もそこを通って良いかい?
――おっと危ない、少しピリピリしてるみたい。まずは落ち着かせよう
(攻撃を避け、眼鏡を外して魔眼を解放)
身傀の魔眼で一人を拘束、視線を動かさずもう一人に声をかけるよ

そっちの君。ここの王様、破壊属性が一番って言ってるんだよね
さっき君が撃った大砲の弾、ネバネバしたやつだよね
もう一つ質問いいかな。破壊属性、どこに行った?

ふふ、君みたいな勘の良い子は嫌いじゃないよ

君たち、僕らと一緒に王様と戦ってくれないかな
ほら。『反逆』ってさ、言葉の響きからして悪くてカッコよくない?
今なら君たち、反逆の騎士って名乗れるんだよ。どう?



●魔眼の力を知らば、反逆せよ

 破壊の王の城が、猟兵たちによって制圧されていく。
 黒紅・真九郎(普通という在り方・f00767)も、それに続くべく上階へ向かった。

「それじゃ王手と行こうか」

 極めて落ち着いた調子で、眼鏡を押さえながら。

 控えの間を目前にして、真九郎はいよいよ悪魔たちと遭遇する。
 玉座までそれほど遠くないこの近辺は、特に守備が厚くなることだろうと思われた。
 が、破壊属性に惹かれた悪魔に鎧を着せた程度の、そこまで訓練されていなかった者たちであるがゆえに今ひとつ統率が取れていないのか、あるいは混乱に乗じて逃げ出した者がいるのか、そこに待ち構えていたのは三体ほどであった。

「うおっっ、ついにここまでやって来たか!」

 それでも、務めとして侵入者から王を守らんと、真九郎に砲を向けた。

「君たち、僕もそこを通って良いかい? 王様に会いたいんだ」

 対して、にこやかな笑みで悪魔たちに話しかける真九郎。
 もっとも、そう言って簡単に通しはしないことは、彼にもわかっていた。

「行かせるか!!」

 声とともに繰り出される砲撃。
 猟兵はまっすぐ向かいくるそれを、ひらりかわし。

「おっと」

 すぐさま眼鏡を外して、一撃を放った悪魔を睨みつけた。
 禍々しい色で満たされた彼の瞳が、その身を縛りつける。
 それは、あの広場の悪魔たちにも披露した、対象を傀とする視線。

「うぐっ!?」
「やれやれ。せっかくの来客を驚かせるのがここのやり方なのか?」

 真九郎は視線を動かさぬまま、警戒する別の一体に語りかけた。

「ねえ、そっちの君。
 ここの王様、破壊属性が一番って言ってるんだよね」
「そ、そうだ。それがどうした!?」

 悪魔の答えに、ふ、と小さく笑って青年は続ける。

「じゃあ、もう一つ質問いいかな。
 さっき君が撃った大砲の弾、ネバネバしたやつだよね」

 先に砲撃した悪魔の向く先、その壁にはべっとりと、粘着質でいかにも重そうな物体が垂れ下がっていた。

「だからなんだというんだ!」
「破壊属性、どこに行った?」
「「なっっ!?」」

 守備隊の脳髄を襲う衝撃。
 動きを封じられていない二体の足が思わず後に引く。

「ふふ、君みたいな勘の良い子は嫌いじゃないよ」

 理解したと見た真九郎はもはやそれ以上の説明をしなかった。
 破壊に惹かれてついていったというのに、敵が来たなら何も破壊できないあんなトリモチ弾で迎えるだなんて。
 そんな言葉を投げる手間が省けたのだ。

「さて……君たち、僕らと一緒に王様と戦ってくれないかな?」
「なんだって!?」

 代わりに口から出たのは、悪魔たちにとって思わぬ誘いだった。

「わかるかい? つまり『反逆』だよ。
 ほら。反逆ってさ、言葉の響きからして悪くてカッコよくない?
 今なら君たち、"反逆の騎士"って名乗れるんだよ。どう?」
「反逆の、騎士……!」

 丁寧な調子で悪魔に語る真九郎。
 二度目の衝撃が、彼らを揺さぶった。
 彼を取り囲む鎧の中から、生唾を飲む音が聞こえたような気がした。

「考える時間ならあるよ。
 もっとも、そんなに長くは与えてあげられないけどね」

 眼鏡を再びかけ、悪魔たちの包囲を抜けて控えの間へと歩みを進める。
 悪魔たちは何も言えぬまま、その背中を見つめていた。
 反逆の騎士、その言葉を心の中で反芻しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅月・美亜
「次は実戦だ」
 召喚した機体を集約し、一機の次元戦闘機を成形し乗り込む。元のサイズだと大きすぎるので大体全長150cm程度に留めて【Operation;CYBER CORE】で乗り込む。
「そんな装備で次元戦闘機に挑むとは蛮勇にも程があるな」
 こちらは一発で死ぬんだが、当らなければいい。ザイオング慣性制御システムは前後上下左右自由自在に移動できる。STG自機の機動性を甘く見てはいけない。
 使う機体はR-9DH3コンサートマスター。上部の巨大な砲身は飾りではない。
「死ぬがよい。そしてさようなら」
 4ループチャージからの持続式圧縮波動砲Ⅲで薙ぎ払う。
「どうだ、波動砲は素晴らしいだろう?」



●波動は全てを解決する

 猟兵たちの奮闘により、城内は混乱を極めていた。
 破壊の王の仕打ちに耐えつつも城を守っていたはずの悪魔たちは今や、動きを封じられる者、切言に折れる者、どさくさに乗じて逃げる者がほとんどであった。

 紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)は城の前で、腕を組んでその様子を眺めていた。
 すでに統率も取れていない配下たちに継戦能力はあまり残っていないようだ。
 あとは、王への道をこじ開けるのみ。

「さあ、次は実戦だ」

 実戦。
 彼女にとって、先の若い悪魔たちに披露したものはあくまで"演習"の一環でしかなかった。
 美亜の声に応じて金属のパーツが集まっていく。
 キャノピー、ウイング、スラスター、そして巨大な砲身。
 シンプルで小さい機体はメタモルフォーゼ(変化)を重ね、やがて召喚主の身の丈ほどの戦闘機となった。
 美亜がそこに乗りこめば、スラスターが竜巻のような音を立てて青白い熱エネルギーを噴射する。

「往くぞ。目指すは中枢だ!」

 広い城内、機体の中から見下ろせば混乱模様が広がっていた。

「隊長! あっちの外壁に穴が開いてます!」
「なんだとぉ!?
 どうするんだ!? もう王に隠し通せんぞ!!」

 慌てた声が響いてくる。

「どうするんだと言われても!? 勝手に判断するなって言ったのは隊長じゃないですか」
「うぐぐ……俺もどうすればいいのかわからん!」

 もはや冷静さを完全に失っているようだ。
 が、遠から迫りくる猟兵の姿を視界に捉えれば。

「あっ、隊長! また侵入者が!」
「な、なに!? ええい! 撃ち落とせ!」
「は……はっ!」

 "隊長"の命令に従い、五、六人ほどの部下が一斉に砲身を向けた。

「ほう。そんな装備で次元戦闘機に挑むとは蛮勇にも程があるな」

 構えるキャノンを見て余裕綽々に美亜はつぶやく。
 その口径は鎧の顔の大きさほど。
 しかしこちらはそれをはるかに凌駕する。
 激しい砲撃迫りくる中にも怯むことなく、ブレイクやバレル・ロールを駆使し、悪魔たちを翻弄した。

「慣性制御システムを搭載した自機は前後上下左右自由自在。この機動性を甘く見てはいけない」

 美亜を乗せた機体は、まるでそれそのものに意思が宿っているかのようにして飛び回る。

「隊長! 弾切れです!」
「なんだと!?」

 いつの間にか、悪魔たちはその砲撃を一度も命中させることがなく、弾をすっかり撃ちきってしまったようだ。

 かくして、"演奏会"の準備は整った。

「さて、今度はこちらの番だ。
 この巨大な砲身が飾りではないということを今から証明してみせよう」

 機体上部の砲に青白いエネルギーが集まっていく。
 唸るような音とともに、光が大きく、激しくなる。
 砲の向く先は、対抗手段をほぼ失った悪魔たち。
 そして玉座の間へと続く道。

「行く手を空けよ。
 さもなくば──死ぬがよい」

 破裂しそうなほど膨張したエネルギーは咆哮となってまっすぐ放たれた。

「「うわぁぁぁ!?」」

 咆哮は悪魔たちの悲鳴と重なり、激しい爆発がすぐ後に続いた。
 城を貫き走り出るエネルギーとともに飛び出す岩。
 そして悪魔たち。

「どうだ、波動砲は素晴らしいだろう?」

 機体の中にある美亜の表情は揺るぎない自信に満ちあふれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『デストロイキング』

POW   :    デストロイキング軍
レベル×1体の【ビューティスパイダー】を召喚する。[ビューティスパイダー]は【女郎蜘蛛】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    デストロイ光線
レベル分の1秒で【背中の魔力角から破壊光線】を発射できる。
WIZ   :    デストロイウェポン
【腹部の巨大な口に取り込んだ物体】から、対象の【全てを破壊したい】という願いを叶える【破壊兵器】を創造する。[破壊兵器]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破壊の王、現る

「あンの役立たずどもがァァ!!!!!」

 憤怒に燃えて殴りつけた玉座の肘掛けにひびが入る。
 城の主たる破壊の王の耳には、何者かの侵入が、城内の混乱が、そして部下たちの不甲斐なき有様がすでに届いていた。

「ぐゥゥ……ッ、我の買いかぶりすぎであったというのか……
 理想に共鳴して我についてきたのではなかったのか貴様らぁ……ッ!」

 頭を押さえてうつむく姿は悲壮感を帯びる。
 が、すでにその前には猟兵たちが結集していた。

「もうよい……我が直々に教えてやろう」

 鼻息を次第に荒くしながら、王は玉座からゆっくりと立ち上がる。
 岩のように巨大な身体が、腹部の大きなる牙が、猟兵たちを見下ろした。

「火は破壊の前に潰え、水は破壊の前に粒となる!
 風は破壊の前に流れを乱し、地は破壊の前に砕かれる!!
 森羅万象あらゆるものは破壊属性の前に無力!!!
 全てのものに勝り優れる属性こそ最大、最強、最上の悪!!!
 それを凌駕せんというのならば、全力で示してみせるがいい!!!!」


 破壊の王と猟兵が対峙する玉座の間を、こっそりと覗き込む影あり。

「……うわあ、やっぱりめちゃくちゃ怒ってるよ、王……」
「ヤバいよ。今更謝りに行ったところでどんな罰喰らうか分かったもんじゃない」

 それは、決戦の舞台に漏れぬようにとばかりに、小さな声で話しあう。

「じゃあ、王の代わりに戦って許しを乞うか?」
「……」
「微妙だよな……」
「ここに来るまでの敵のあの戦い方、見ただろ?」
「ああ。
 俺、正直あっちのほうにつきたいくらいだ」
「……俺も」

 その場にいた鎧をまとう悪魔たちの考えは、ほぼ一致していた。
ミリアリア・アーデルハイム
屏氷万里鏡を展開し防御、撹乱

貴方がかつあげさんですか、はじめまして
破壊属性が一番悪カッコいいという事を伝道したくて活動していらっしゃるんですよね
能動的かつ主体的でとてもいいと思います
自分の好きな物は広めたくなりますよね

でも強引が過ぎたようですね
少年達や配下の方々が貴方からの強制力を感じていました
それに正しくない方法によりDを取得しましたよね
是等は皆、貴方による不当な束縛を受けているということになります

よって、誠に遺憾ながら解放属性の私としては、貴方に引導を渡さざるをえません。 魔法剣を携えUC発動

ちなみに、私が今一番推しているのは自由属性です。だって、自由でいるって本当に素晴らしいですよね?


アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

『変化』の概念そのものたる私には何者も勝てはしない。
勝利を得るための戦況の『変化』を握ってるのが私なのだから。
何者も抗うことなど出来ようはずもない。この世に居る限り時間も空間も常に流れ、『変化』し続けるものだから。
現状維持とて、周囲の『変化』に合わせて維持する方向に『変化』し続けなければならないのだ。
創造も維持も、破壊も再生も、『変化』なくして成り立たない。
破壊属性?破壊の為の力、いや、それ以前の破壊の意思そのものを『変化』させてしまえば何もできはしない。
ほら、ビューティースパイダーも私の眷属に『変化』したわ。
あなたも男の娘に『変化』して捕食するわよ♡


紅月・美亜
「お前か、破壊属性厨は」
 出撃するのは赤と黒で彩られた重厚な決戦兵器、R-9DP3ケンロクエン。
「お前に本当の破壊を教えてやる」
 チャージ中は避けに徹しなきゃならんが、機動性なら実証済み。
「喰らうがよい」
 パイルバンカー帯電式H型をブチ込む。波動エネルギーにより物理成形された杭は全てを貫く……本来であれば。
「ほう、耐えるか」
 それはそうだろう、そのケンロクエンは10機分しか使っていないのだから。
 その後方に私が乗ったR-9/02ラグナロック2。本命はこっちに集約している。
「私に45秒与えたら終わりだ」
 7ループチャージの最終波動砲で何もかも破壊する。地形も敵も全てを貫通し何も残らない。


カルナ・ボーラ
最大、最強、最上……そんだけ優秀なんじゃただの良い子ちゃんだろ。

全てのものに勝り優れる?
確かに高みを目指すにも悪かねぇ。
だが、悪かねぇってことはやっぱ良い子ちゃんだな。

従わないから捩じ伏せる。気に入らないからぶちのめす。
何かをぶっ壊したいってんなら、そんくらいシンプルで充分なんだよ。

そんじゃあんたのワルかっこいいところ、しっかりと見せてもらうぜ。
がっかりさせてくれんなよ?


シル・ウィンディア
破壊の王様、初めましてっ♪
猟兵、シル・ウィンディアですっ!

まずは小手調べ
【空中機動】で低空飛行しつつ【フェイント】の【残像】を生み出しての光刃剣と精霊剣の二刀流での【二回攻撃】!

回避は【第六感】を信じて
敵の動きを【見切り】【瞬間思考力】で回避と防御の判断を即時に行い行動
回避は【残像】を生みつつ【空中戦】を行っての三次元機動で回避
防御は致命箇所を重点的に【オーラ防御】するよ

属性を破壊っていうけど…
それじゃ、とっておきの属性魔法を披露しちゃうねっ♪

じっくり魔力を練り上げるから
【限界突破】で【魔力溜め】を行い、【多重詠唱】で術式を複合させてから【全力魔法】で《指定UC》

さぁ、まとめてふっとんじゃえ!


蘇摩・瞬華
破壊の力、確かに強いものではあるけれど…
でも、それだけ。
破壊できないものに出会った時、その限界が見えるもの。
破壊のできない幻の力、見せてあげる。

惑乱マホラマイ発動、周囲の瓦礫や調度品を炎の幻に変えて襲わせるよ。
勿論幻の炎だから、それ自体にダメージは無いけど。
それに紛れさせて【仙術】で起こした炎を浴びせるよ。
残った瓦礫の中にはハゼリダマに同じ瓦礫の幻を被せたものを紛れさせておいて、敵がユーベルコードで飲み込もうとした処を爆破。
「どれが本当でどれが嘘か分からない。これが幻の恐ろしさだよ」

最後は尻尾に同化してるアオカグヒさまをぶつけて【捕食】からの【焼却】。


メナオン・グレイダスト
・SPD

お前がそこまで執着する破壊属性とやら、悪であることは認めよう。
だが――破壊など結局は手段にすぎぬ。それを目的や理想とした時点で、お前は最上の悪とはなり得ぬ。
破壊属性を凌駕するものが何か、教えてやろう。【グレイダスト・オーバーロード】……!

能力を最大限に解放。音も無く溢れて渦巻く灰色砂塵を従え、敢えてデストロイキングに正面から挑む。
浴びせられる破壊光線は灰色砂塵を変化させた部分装甲を以て対抗。
装甲に、自身に損傷を受ける度に灰色砂塵の生成と変化により修復。
幾たび損傷しようと決して進撃を止めることなく、追加で生成した大剣を携えて。

どうだ。お前に、破壊に灰色の魔王を阻むこと能わず――跪けッ!



●破壊の王、怒りに燃ゆる

 デストロイキング、破壊に生きる王には、それ以外の名は不要だった。
 破壊属性こそ至上と強弁し、多少なりとも賛同した悪魔を配下へと取り込み、そうでない悪魔に対しては示威と恫喝、時には暴力をもってDを差し出させた暴虐の王。
 魔力を帯びるDを集めることは、魔界の頂点に近づくことを意味する。
 破壊の王にして魔界の王。
 オブリビオンがその座を手にしたならば、デビルキングワールドの未来がどうなるか、想像に難くない。

「お前か、破壊属性厨は」

 そんなオブリビオンに腕を組んでまず言ってのけるのは紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)だ。
 巨躯を前にしても、恐れは一切ない。

「いかにも、我こそが破壊の王である!!
 城を散々荒らし回ってくれたのは、貴様らか」

 対するオブリビオン、鼻息荒く、大上段から猟兵たちを睨みつける。

「破壊の王様、初めましてっ♪ 猟兵、シル・ウィンディアですっ!」
「貴方がかつあげさんですか、初めまして」

 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)が明朗に、ミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)が丁寧ながら険のある調子で続く。

「破壊属性が一番悪カッコいいという事を伝道したくて活動していらっしゃるんですよね」
「然り!! 破壊属性こそ全ての属性の頂点。天下無双にしてこれを穿つものなし……」
「ええ、"能動的かつ主体的"でとてもいいと思います。自分の好きな物は広めたくなりますよね」

 ミリアリアは頷くこともなく、オブリビオンに涼しげな視線を向けたまま一度は同意を見せる。

「……でも強引が過ぎたようですね」

 まったくの事実。
 かの、広場の若者たちや王につき従った者たちは、その圧力に怯える日々を送っていた。
 破壊の王の眉間がぴくりと動く。

「少年達や配下の方々が貴方からの強制力を感じていました。
 それに、貴方は正しくない方法によりDを取得しましたよね。
 これらは皆、貴方による不当な"束縛"を受けているということになります」

 束縛。
 かつて、身をもってその苦しさを味わったミリアリアにとって、それは何よりも忌むべき存在だった。
 ゆえに彼女は冷静ながらも語調を強め、毅然たる態度で。

「よって、誠に遺憾ながら"解放属性"の私としては、貴方に引導を渡さざるをえません。」
「解放だとォ? 笑止千万!!
 幾たび我が破壊の脅威から逃れようとも、さらなる破壊をもって支配するのみ!!」
「はっ、笑わせてくれるのはそっちのほうだ」

 オブリビオンの威圧に、カルナ・ボーラ(解体する眼差し・f14717)がやり返す。

「なにィ?」
「あんたさっき、最大、最強、最上っつったよな。
 そんだけ優秀ってことは、ただの良い子ちゃんってことだろ」
「ぬぅッ……!」

 思わぬ言葉に、破壊の王の表情が歪む。

「全てのものに勝り優れる?
 ああ、確かに高みを目指すって目的にしてみりゃ悪かねぇ。
 だが、"悪かねぇ"ってことはやっぱ良い子ちゃんだな」

 片手を放り出すような仕草で、カルナは追い打ちをかける。
 破壊の王は破壊を究めようとした。
 属性というシステムに破壊のほうを適用しようとした。
 しかし、その行き着く先は、完全ではあるが"ワル"ではない。
 そこに考えの甘さがあったというのだ。

「従わないから捩じ伏せる。気に入らないからぶちのめす。
 何かをぶっ壊したいってんなら、そんくらいシンプルで充分なんだよ」
「そういうこと。それにね──」

 蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)が後の言葉を引き継いだ。

「破壊の力、確かに強いものではあるけれど……でも、それだけ」

 その声は清らかにして冷厳。
 破壊の長けるものは力。しかし、もしその力の通用しないものが現れたとすれば……。

「破壊できないものに出会った時、その限界が見えるもの」
「仮に限界が見えないとしても、『変化』の概念そのものたる私には何者も勝てはしない」

 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)も続いた。
 ここに至るまでにも変化を操ってきた彼女。この決戦においても臆することなく、自信満々に言い放つ。

「なんたって、勝利を得るための戦況の『変化』を握ってるのが私なのだからね」

「破壊の王よ。
 お前がそこまで執着する破壊属性とやら、悪であることは認めよう」

 目を閉じて語るのは、メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)だ。
 灰色の外套が、吹き込む隙間風になびく。

「だが――破壊など結局は手段にすぎぬ。
 それを目的や理想とした時点で、お前は最上の悪とはなり得ぬ」

 その言葉は彼の声量以上に重く、破壊の王の精神を撫でる。
 手段としての破壊と目的としての破壊。
 それを取り違えたことこそ、この王の失態なのだという。

「ぐゥゥ……!! 言わせておけば貴様らァ、我を愚弄しおってェl!
 よかろう、二度とその口が開けぬよう、完膚なきまでに破壊してくれるわ!!!」

 オブリビオンはついに怒りを爆発させた。
 その覇気は衝撃となり、彼の玉座を後方へと吹き飛ばす。

「そうこなくっちゃな。
 そんじゃあんたのワルかっこいいところ、しっかりと見せてもらうぜ」

 カルナが応じ、戦いの鐘がついに鳴り響くこととなった。


●破壊の光線

「お前に本当の破壊を教えてやる」

 破壊をもって破壊を制す。
 美亜の宣言とともに現れたのは、紅の機体。
 堅牢さと刺々しさを両立したフォルムは、いかにもこの決戦に臨むにふさわしい。

「ほざけッ!! いかに鋼鉄の防御をもってしても、この攻撃を防ぎ切ることなどできぬわァ!!!」

 オブリビオンの背、波打つ刀身の剣にも似たいくつもの角が動き、鳥の翼のように開く。
 次の瞬間、走り出た禍々しい光線の束は美亜の機体に向かって飛びかかっていった。

「なるほど。だが防ぐばかりが能ではない」

 スラスターから青白いエネルギーを放出しながら浮遊した機体は一気に飛び上がり、破壊の王の先制攻撃を寸でのところで回避した。

 破壊の光線によって貫かれ他岩石の壁は、瓦礫となって降り注ぐ。
 雨のように襲う岩々の間を縫いつつ、美亜は攻撃の機会をうかがう。
 弓を引くような機体の動作がそれを意味していた。

「喰らうがよい」

 肉薄した美亜が指示を与えれば、重い音とともに先鋭した鋼鉄の塊が一気に押し出された。
 その質量が、おびただしい電荷が、頑強な腹部を直撃する。

「ぐぉおおゥッ!!!」

 呻きとも叫びともつかぬ声を発しながら、腹で受け止める。
 さすがの巨体も、その物理的なエネルギーに数歩押された。

「んんんンンンンン……!!」

 呼吸を落ち着かせるように、地響きに似た声を上げる破壊の王。

「ほう、耐えるか」

 至近にて穿つことを目的とした武装。
 しかし、オブリビオンはこれを防いたのだ。

 とはいえ、美亜にとっても、この結果は数あるシナリオの一つであったらしく、微塵も驚く様子を見せなかった。

 そこに追撃するは、メナオン。

「破壊属性を凌駕するものが何か、教えてやろう」

 外套を翻した彼の剣幕は鋭かった。

「グレイダスト・オーバーロード……!」

 冷え切った夜空のごとく体内の感覚が澄まされる。
 同時に巻き起こる砂塵は、メナオンの黒き衣と重なり、小さな銀河を形成しているかのようであった。
 灰の魔王、解放した力をもって、大いなる破壊の魔王に挑みかかる。

「その小さき身で我に勝てると思うてかァァ!!」

 背の角より再び発せられた光線がメナオンを追う。
 小さき身には、小さき身の利点があった。
 襲いくる光の束を巧みにかわし、オブリビオンへと一直線。

 ときにかすめる光線。
 破壊の王とだけあり、その威力は並ではない。
 メナオンの魔力により固められた砂の盾が身代わりとなる。

「大人しく当たれぇィ!!!」
「破壊を極めんとする王なれば、当ててみせよ」

 苛立つオブリビオンに、砂塵の猟兵は挑戦的な言葉をぶつけた。
 やがて光線が途切れると、破壊の王は息を切らせる。

「くっ……」

 一方のメナオンにも、その左腕にまっすぐな傷一つ。
 手を添えれば、砂塵が傷を包み、修復する。

 絶好の機会はまだ先だった。


●破壊の下僕たち

「おのれ……そちらが数で来るならば、こちらももはや手段を選ばぬ! ゆけ!!」

 何者かに合図を発する破壊の王。
 いくつもの空間の歪みとともに姿を表したのは、足の長い蜘蛛たち。
 しかしてその頭は美しき人のようでもあった。

「蜘蛛たちを喚びだして、その糸で私たちを雁字搦めにしようって腹ですか!」

 次々と増えるビューティスパイダーを見てミリアリアが叫ぶ。

「恫喝や暴力だけじゃなく物理的にも束縛しようとするなんて! いよいよもって我慢なりません!!」

 その拳がきゅっと締まった。
 束縛許すまじとする彼女の怒りがついに噴出したことの証左だった。
 次の瞬間、彼女の身に変化が起こる。
 現れたのは、彼女本来の姿。世界を創造する種としての威厳を伴った、人にして人ならざる彼女の正体。
 その右手に、神々しく光るまっすぐな剣が備わった。

 姿を変えたミリアリアに襲いかからんとビューティスパイダーたちから吐き出された糸。
 が、彼女の剣が横に大きく一薙ぎすれば、髪の切れ落ちるがごとくにはらりと力なく。

「捕まりはしません!」

 肩の塵を払うかのような仕草のミリアリア。

 その背後から、カルナが飛び出す。

「おいおい、破壊はどうした?」

 舞うように走るその手には身を覆わんばかりに巨大な斧。
 カルナは軽々振り回し、蜘蛛たちの身を次々と捉えていく。
 その力の源は、獣としての本能。獣としての血。
 そうした本能や衝動に突き動かされてこそ、身を預けてこそ、真なる破壊に近づくはずだ。
 理屈や小手先などいらない。
 であるのに、このオブリビオンはさてどうだ。

「俺たちに怖気づいたか? 王直々に向かってこいよ」

 猟兵たちの反撃と挑発に驚いたビューティスパイダーたち。
 今度は主を護らんとばかりに集まり、互いの身体を寄せあい、重なりあいながら壁を形づくっていく。

「そーんなことをしても、無駄だよ」

 そこへ挑発的に言葉を投げたのはアリスだった。
 その指が、まるで蜘蛛たちに催眠術でもかけるかのように回る。

「この世に居る限り時間も空間も常に流れ、『変化』し続けるもの。
 そして、わたしはそれをいくらか操ることができる。つまり、こういうこと」

 ぱちん、と指を鳴らせば、破壊の王の前にそびえていた壁がぐらり揺らいだ。
 かと思えば、それは天辺から、オブリビオンに向かって崩れていく。

「ぐオォッ!? なんだこれは! どうなっているのだァ!?」

 下僕だったはずのビューティスパイダーに四方八方から小突かれ、噛みつかれ、戸惑いの声を上げるオブリビオン。

「ほらね。ビューティースパイダーも私の眷属に『変化』したってわけ」

 対して、玩具を見るかのようにアリスはクスクスと笑った。

「ぬゥゥ! 小癪な真似をォォォォオ!!」

 デストロイキングが咆哮とともに腕を振り払うと、反逆の下僕は吹き飛び、空間の歪みに消えていく。
 かくして、玉座の間には再び猟兵たちと破壊の王の二者となった。


●破壊の炎

「どうやら、我は貴様らを見くびっていたらしい……
 ならば、見せよう! 我が真の破壊属性をォなァ!!!!!!」

 業を煮やしたオブリビオンがその青い肌に怒りの筋を立て、激しい哮りの声を上げた。
 次いで、腹にある巨大な口が開いたかと思うと、散乱する瓦礫を、調度品をみるみる吸いこんでいく。
 同時に、王が掌を上に向ければ、そこに丸みを帯びた黒い塊が生まれた。
 それは質量を取りこむごとに肥大化し、呼吸二つ三つほどの後にはオブリビオンの頭をゆうに超えるほどの大きさの、爆発物のような重い塊となっていた。

「おおっと、そんな危ないもの、出しちゃダメだよ!」

 青白い機体を持つキャバリア、ブルー・リーゼMk-Ⅱに搭乗して機をうかがっていたシルが、待ってましたとばかりに躍り出る。

「この地もろとも、吹き飛ばしてくれるわァァ!!!」

 一方の破壊の王、その巨大な塊を地面に叩きつけようと、力いっぱい身体を反らす。
 もしもこれが地を強く打とうものならば、直後に待っているのは付近一帯をあまねく焦がすほどの爆発。
 大惨事は免れない。

 そこへ、シルに目配せをした瞬華、踊るように手をひらりを翻す。

「破壊のできない幻の力、見せてあげる」

 オブリビオンにより取り込まれなかった瓦礫が静かに浮き、煙とともに姿を変える。
 現れたのは人魂のような小さな炎。
 瞬華が手を向ければ、火砕流のように次々とオブリビオンに降りかかっていった。

「グゥゥッ!!」

 視界を惑わされた王が苛立ちの声を上げる。

「びっくりした? これが幻の力だよ。どれが本物か、わかるかな?」

 無邪気な笑みを投げかける瞬華。
 襲いかかる炎の幻影、そこに"本物"の炎を紛らわせていたのだ。
 オブリビオンの肩が、脚が、メラメラと燃える。

「愚かな真似をォォ!! だが、もう遅いわァァ!!!!」

 瞬華の幻影に弄ばれた破壊の王は、ついにその手から巨大な塊を離した。
 が、いくらか体勢を崩しながら投擲されたことにより、恐ろしい破壊兵器はふわりと弧を描く形となった。

 そこに向かうはシル。まっすぐ、速力全開で飛びこんでいく。

「間、に、合えーーーっ!!」

 そうして、およそ人間の腰ほどまでに落ちてきたあたりだったろうか、キャバリアの握る光の剣は、爆発物を力いっぱい打ち返した。
 はるか上空にまで打ち上げられた破壊兵器、ついに炸裂。
 巨大な炎が、赤い空の色を一層濃くする。
 爆発の衝撃は破壊の王の城にも届き、その屋根のほとんどを吹き飛ばした。
 シルが展開していたドーム状のオーラによって猟兵は護られ、オブリビオンもまた腕で防ぐように突風に押されるのを堪えていた。


●反逆、そして決着

 爆風の止んだ頃、猟兵たちの背後から、がしゃ、と音を立てながら次々と現れる影。
 振り返れば、並んで立っていたのは破壊の王の配下、鎧の悪魔たちだった。

「むぅ!? 貴様ら、今までどこに行っていたのだァ!?」
「我が王……いや、破壊属性の怪物!」

 破壊の王の威圧に、悪魔たちの中でもっとも偉いと思われる一体が返す。

「破壊属性ってカッコイイと思ってあなた様についてきましたが……今をもって、考えを改めさせて頂きます」
「何だとォ!!」

 猟兵に向かってけしかけるはずだった配下たち。
 だが、思わぬ言葉に、破壊の王は動揺した。
 彼らに行ってきた数々の仕打ち、そして今、猟兵たちと対峙しながら、決着をつけられないでいる姿。
 王の求心力は、すでに尽きていたのだった。

「王のやっていることは口だけだ!」
「Dを払うという約束も一度だって果たさなかった!」
「王と戦っているこの者たちのほうがずっとカッコイイぞ!」

 この機にとばかりに、鬱積していた不満をぶつける配下たち。
 いや、彼らはすでに"配下だった"者たちでしかなかった。

「んんん……!!! 馬鹿にしおってェェェェ!!!」

 王の咆哮が天を衝く。

 "破壊属性"を掲げる王はすでに孤立無援。
 もはや破壊のみでは収まらぬ怒りに、動きは完全に乱れていた。
 対するは、それを超える属性を掲げる猟兵たち。

「それじゃ、とっておきの属性魔法を披露しちゃうねっ♪ まとめてふっとんじゃえ!」

 "全属性"を掲げるシル。
 その眼前にて色とりどりの光を溜めた六芒星の結界がまばゆく輝き、柱のような光線となってオブリビオンへ向かっていく。

「あなたも『変化』して捕食するわよ♡」

 "変化属性"を掲げるアリス。
 その手から、空間の裂け目にも似た黒い影を送り出す。黒い影はや牙のような形となり、オブリビオンを喰らわんとする。

「不当な束縛をしたこと、身をもって償ってください!」

 "解放属性"を掲げるミリアリア。
 真なる姿のまま握った光の剣、意志の強さに応じるようにして輝き増すそれを、オブリビオンの中心めがけて力いっぱい突き出す。

「どれが本当でどれが嘘か分からない。これが幻の恐ろしさだよ」

 "幻属性"を掲げる瞬華。
 その尾から何かが飛び出す。アオカグヒと名づけられた得体の知れぬ生物はそのまま跳ねながら、オブリビオンに向かい蒼き炎を放つ。

「私に45秒与えたら終わりだ」

 "波動属性"を掲げる美亜。
 聖戦の名を持つ蒼き機体の先端からエネルギーを射出。弾けんばかりの青白いエネルギーは神の雷。一直線にオブリビオンを撃ち抜かんとする。

「破壊すらも極められない、あんたの負けだ」

 "真の破壊属性"を掲げるカルナ。
 その身に流れる獣の血を沸き立たせ、飛び上がる。岩のように巨大なる斧は大上段から振り下ろされ、鋭く重い渾身の一撃を見舞う。

「お前の破壊、灰色の魔王を阻むこと能わず――跪けッ!」

 "魔王属性"を掲げるメナオン。
 灰の魔力で生み出した大剣。岩よりも鉄よりも硬く凝縮したそれを決意とともに握りしめ、オブリビオンの腹を横に薙ぐ。

「グ、オ、オ、オオオォォァァァァァァア!!!!!」

 畳み掛けられる必殺の攻撃。
 命中とともに、目を刺すほどの光が城中に溢れた。
 破壊の王は全身で受け止めようとしたが、光が去った後に残ったのは気魄の叫びの残響のみ。

 猟兵たちとオブリビオンとの戦いは、今ここに決着したのだった。


●新たな属性談義

 デビルキングワールドのとある街。
 その広場は、相も変わらず若い悪魔たちのたまり場となっていた。

「闇属性ってカッコイイよね」

 デビルズパレスに興じる一人の若い少年悪魔が投げかけると。

「えー、闇属性とかベタすぎ。カッコイイっつったら神属性じゃね?」
「波動属性でしょ、常識的に考えてさ」

 別の悪魔たちが口々に否定する。
 あの戦い以降、彼らのカッコイイ属性談義は火や風などの枠を越え、実に多彩なものが挙げられるようになったのだ。
 そしてそこには、変化属性や六属性まぜこぜ、魔王属性、幻属性などの名も出るという。
 それは、破壊を打ち砕きし者たちがかつて少年たちに説き、破壊属性よりもはるかに強くカッコイイということを証明したものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト