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僕のかわゆい少女ボス

#デビルキングワールド #にゃんこ #わんこ #一人称リレー形式

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#デビルキングワールド
#にゃんこ
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#一人称リレー形式


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●デビルキングワールドにて
 とある町のとある豪邸。
 それはとても判りやすい建物だった。悪趣味かつ豪奢な門構え、凶悪な顔のガーゴイル像、鋭い忍び返しがずらりと並ぶ高い塀、その他諸々――それらが雄弁に物語っている。『ここに住んでいるのは極悪人ですよー』と。
 そして、その極悪人も実に判りやすかった。
「おーほっほっほっほっほっ!」
 獣の耳と尻尾を有した娘だ。手の甲を口元にあてるという判りやすいポーズを取り、判りやすい笑い声をあげ、見るからに高慢な顔つきで以て雄弁に物語っている。『わたくしは悪役令嬢ですわ』と。
 判りやすい彼女がいる場所は判りやすい豪邸の地下室……いや、かなりの広さを有しているので、地下ホールと呼ぶほうが相応しいかもしれない。壁際にはD(デビル)の札束やDの刻印がついた黄金のインゴットが乱雑に積み上げられている。金庫等に保管していないのはビジュアル的な判りやすさを優先したためか?
 置いてあるのは金ばかりではない。
 悪役令嬢の前には数十個の動物用のケージが並べられていた。中に入っているのは子犬や子猫たち。犬種と猫種は様々であり、雑種らしきものも少なくない。
「愚かな畜生たちよ! 悪役令嬢たるわたくしに捕らえられた運命を呪い、絶望に泣き叫ぶがいいわ!」
 自称『悪役令嬢』は肩をそびやかし、冷ややかな目で犬猫たちを見回した。
 しかし、泣き叫んでいる犬猫など一匹もいない。
 犬の約半数はきょとんと首をかしげ、残りの約半数はすやすやと寝息を立てている。
 猫の約半数は我関せずとばかりに毛繕いに励み、残りの約半数はやはり丸くなって眠っている。
「……」
 憮然とした面持ちを思わず晒してしまった悪役令嬢であったが、三秒で気を取り直し、またもや高笑いした。
「おーほっほっほっほっほっ! あなたたちはわたくしの悪行の贄にして悪名の糧! 金儲けのために強引に繁殖させたり、虐待映像をネットにアップしたり、『余命三ヶ月の子猫ちゃん』とかいうお涙頂戴の嘘っこドキュメント映画を撮って話題を集めちゃったりしてやりますわー!」
 なんたる悪逆。
 なんたる非道。
 しかし、犬猫たちは――、
「……」
「……」
「……」
 ――あいかわらず無反応だった。

●グリモアベースにて
「デビルキングワールドの食い物って、なんかケバケバしい色してるのが多いよなー。さすがの俺も食欲が減退しちまうぜ」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前で珍妙な色合いのカップ麺(スープは深紫、麺は濃緑、具は漆黒)をすすっていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 スープ一滴さえ残さずにカップ麺を食べ尽くすと(本人が思っているほど食欲は減退していなかったらしい)、JJは本題に入った。
「今回の任務はデビルキングワールドのオブリビオン退治だ。そのオブリビオンの名はイレーヌ。『悪役令嬢』を自称しているイタい小娘なんだが、企んでいる悪事もけっこうイタいぜ。沢山の犬や猫を集めて、色々と虐待するつもりなんだとよ」
 なぜ、イレーヌは動物を虐待しようとしているのか?
 それにはとても深い事情が……なかった。
 なに一つなかった。
 デビルキングワールドの模範的な『悪役令嬢』として悪事を働きたいだけなのだ。
「ぶっちゃけ、小悪党だな。しかし、厄介なことにイレーヌは金持ちなんだ。Dをかなり貯め込んでやがるんだよ」
 魔界の通貨であるDには魔力が宿っている。その魔力を大量に集めれば、カタストロフ級の儀式魔術をおこなうことができるという。
 つまり、オブリビオンに大金を持たせておくのは危険ということだ。
「つーことで、イレーヌを倒し、Dをすべて奪い取り、ついでに犬や猫たちも助け出してやってくれ。イレーヌはそんなに強力なオブリビオンってわけでもないから、腕利きの猟兵たるおまえさんたちにとっては朝飯前……とはいかねえんだな、これが。奴さんは金にものを言わせて、野獣のごとき姿をした堕天使どもを雇ってやがるんだ。それも大量によぉ」
『野獣のごとき姿をした堕天使ども』は、判りやすいイレーヌが住む判りやすい豪邸を判りやすく警護している。各々の戦闘能力はさして高くないが、判りやすいほどに数が多いので、判りやすい強行突破を試みるのは得策とは言えない。
「見つからないように密かに侵入したりとか、使用人や御用聞きに変装したりとか、なんらかの方法で出し抜かなくちゃいけないだろうな。あるいは――」
 JJはニヤリと笑い、別の作戦を提示した。
「――自分のことをイレーヌ以上のワルだと思い込ませて従わせるという手もアリかも。デビルキングワールドの住人の御多分に漏れず、その堕天使たちもワルに憧れてるからなー」
 猟兵たちは心中で自問せずにいられなかった。
(はたして、自分たちに悪役令嬢を超える悪人の振りなどできるだろうか?)
 答えはすぐに出た。
(できるんじゃね)


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 本件は、ゴクアクなオブリビオンを倒して大金を奪い取り、その金でおいぬ様やおねこ様に御奉仕するシナリオです。

 第1章は集団戦編ですが、オープニングでも言及されているように普通に戦うのは得策ではありません。敵の注意を余所に向けたり、上手く騙くらかしたりして、豪邸に侵入しましょう。
 大悪人の振りをすれば、悪のカリスマで敵を従属させることもできるかもしれません。
 もちろん、参加者全員で作戦を統一する必要はありません。

 第2章はボス戦編。敵はちょっとオマヌケさんな悪役令嬢。前章と違って純戦ですが、ギャグっぽい戦闘になると思われます。敵のキャラやユーベルコード的に。

 第3章は日常編。捕らえられていた子犬や子猫たちを可愛がってあげてください。イレーヌが貯め込んでいたDがありますので、高価なペットフードやペット用玩具とかを買いまくることもできます。
 お声がかかれば、JJもお手伝いします。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 集団戦 『地獄の野獣団』

POW   :    地獄の穿孔「えーい!」
【「こつん!」と、ゆる~い頭突き 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクション】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    地獄の突撃「ロケットアタァーック!」
【「ロケットアタァーック!」と叫びながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【一緒に叫んでくれる者(敵でも可)】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    地獄の呪縛「トモダチに……なりたかっ……た……」
自身が戦闘不能となる事で、【可愛いものが好きな 】敵1体に大ダメージを与える。【瞳をウルウルさせて、あざとい言葉】を語ると更にダメージ増。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 猟兵たちは物陰に身を潜め、イレーヌの豪邸の様子を窺っていた。
 豪邸の周囲では、体長三十センチほどの有翼の生物たちが守りを固めている。
 彼らや彼女ら(性別は判然としなかった)こそ、JJが言うところの『野獣のごとき姿をした堕天使ども』だ。
 翼以外に堕天使の要素はないが、野獣の要素はある。
 猫だのリスだのフェネックだのといった可愛い小動物が『野獣』と呼べるなら……。
 そう、彼らや彼女らは可愛かった。丸みを帯びた小さな体に、前述した動物たちの特徴が凝縮されている。しかも、ふさふさのもふもふのふわふわ。首回りの飾り毛も、耳の房毛も、尻尾の被毛もボリュームたっぷりだ。とくに尻尾のボリュームは並外れており、体積の半分を占めているかのように見える。
 しかし、見た目がいかに可愛らしくとも、その堕天使たちは悪を尊ぶデビルキングワールドの住人。交わす言葉も実に極悪なものであった。
「ボスがまた悪事を企んでるだってね」
「うん。犬や猫をいじめるつもりらしいよ」
「どんな風にいじめるのかなー?」
「判らないけど、とてつもなくザンギャクないじめかたをすることだけは間違いないね。だって、ボスだしー」
「ボス、すごーい! ボス、わるーい! ボス、かっこいー!」
「僕もボスみたいな極悪人になりたいなー」
「なーりーたーいーなー」
 実にゴクアクなものであった。
 
ドロシー・オズマ
…なんて可愛らしいの!?

こんな子たちをケガさせたりできないわ!

まずは見つからないように…
たぶん地面を歩いてくるって考えてると思うわ

だったら空を浮いてやり過ごせんるんじゃないかしら?

マジックパレードパラソルでゆっくり飛び越えるわ♪

上からゆっくり眺めていても……
やっぱり可愛らしいわっ☆

…大きな声で気づかれちゃった?
近寄ってきちゃうとやっぱりかわいいっ♪

ねぇみんな
このままじゃ子犬さんや子猫さんがかわいそうな目に遭うわ?

だから見逃してほしいの

…ダメ?
でもケガしてほしくないし

キイロイレンガノミチで通せんぼしちゃうわね♪

お城にたどり着いたら出られるようにしてあげる☆

イレーヌちゃんとも仲良くなりたいわ♪


フクス・クルーガー(サポート)
彼女はヤドリガミなのでトラックが入り込めないような狭い場所を除いて基本的には本体であるトラックに乗り込んで戦います。

戦い方は敵味方入り混じる乱戦ならトラックに使われてる武装や盾替わりの外装をUCで複製しUCで出した腕に持たせて援護することを主軸に戦います。もしくはUCの腕だけで格闘戦や掴んで相手を拘束することも出来ます。

トラックに乗れない場合は上記と同じように動きます

敵味方が分かれている集団戦なら一番槍もしくは切込み役としてトラックで相手に突撃します。その時に猟兵を後ろの荷台に乗せて足替わりにすることも出来ます。

修復機能も備えているため盾や足場として扱ってもOKです。



●ドロシー・オズマ(アリス適合者のプリンセス・f20255)
 わたしは塀の角に隠れて、イレーヌさんとやらの豪邸を見ていた。
 正確に言うと、豪邸じゃなくて、その周りにいる小さな生き物たちを見ていた。
 もっと正確に言うと、ただ見てたんじゃなくて、見入っていた。
 見入られてから十数秒か数十秒(さすがに数分ってことはないと思うわ。たぶん……)くらい経った頃、低いエンジン音が後ろから聞こえてきた。
 振り返ったわたしの目に入ったのは大きなトラック。それはスピードを徐々に緩め、歩道に寄せて停まった。バツマークが描かれた駐停車禁止の標識が傍に立っているんだけど、別に構わないわよね。悪事を美徳とするデビルキングワールドでは「駐停車禁止」すなわち「停めるなよ? 絶対、停めるなよ?(停めろ!)」ってことだろうから。
「やあ」
 運転席の窓を開けて、作業帽をかぶったお姉さんが顔を覗かせた。ヤドリガミのフクスさんよ。なんでも、このトラックが本体なんだとか。
「敵の様子はどんな感じ?」
「どんな感じもなにも――」
 フクスさんの問いに答えながら、わたしはまた視線を戻した。
 豪邸の周りにいる小さな生き物たちに。
 イレーネさんの手下である『野獣のごとき姿をした堕天使ども』に。
「――可愛すぎるぅ~っ!」

●フクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)
「可愛すぎるぅ~っ!」
 痙攣するかのように身を震わせながら、ドロシーちゃんが高周波張りの黄色い声をあげた。
 まあ、無理もないよね。ドロシーちゃんのような十歳前後の女の子にとって……いえ、それ以外の多くの層にとっても、あの堕天使(と言っていいものやら)たちの姿は堪らないだろうから。
 かく言うワタシもちょっと萌えてる。堕天使たちときたら、外見ばかりじゃなくて所作も可愛らしいんだから。小さな体の周囲に球体や双四角錐のカラフルな石(魔力が込められたジェムみたいなもの?)が浮遊しているんだけど、仲間たちと談笑しつつ、それらを鼻先でツンツンとつついたり、肉球でペタペタとさわったり、尻尾でコロコロと転がしたりする様がなんとも……。
「あんなに愛らしい子たちをケガさせたりできないわ! 穏便な方法で侵入しないと!」
『穏便な方法』とやらに使うであろう得物をドロシーちゃんは構えた。剣を抜き放つ騎士さながらに。
「じゃあ、行ってくるわね!」
 ドロシーちゃんがその得物――可愛い日傘を開いた途端、彼女の体はふわりと舞い上がった。アリスラビリンスでおなじみの空飛ぶ傘だったのね。エプロンドレスに白銀の靴という出で立ちの女の子が魔法の日傘で飛んでる光景はなかなかにメルヘンチック。
 さて、ワタシも行こうかな。
 メルヘンならざらるやり方で。

●再び、ドロシー
 只今、わたしは飛行中。不思議な日傘『Magic Parade Parasol』を差して、堕天使さんたちの頭上をふわふわと通過してるの。堕天使さんたちも空を飛べるから、気付かれないように高度を大きく取ってね。
 それにしても……空から眺めていても、堕天使さんたちはやっぱり可愛らしいわっ! 任務中でなかったら、何時間でも眺めていられるでしょうね。いえ、眺めているだけでは満足できない。きっと、抱きしめて頬ずりして、ついでに肉球をぷにぷにしちゃう。
「あれ? 誰かがこっちに来るよー」
「ボスの敵かな? ねえ、敵かな?」
「だったら、止めないとね!」
「うん! 僕たちはボスの用心棒だから!」
 堕天使さんたちが騒ぎ始めた。
 でも、わたしに気付いたわけじゃない。
 彼らが注意を向けた対象は、角を曲がって現れた大きなトラック。そう、フクスさんの本体。
 堕天使さんたちは豪邸の門の前に集まり、バリケードでも築くようにずらりと並んだ。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 勇ましい(つもりなんだろうけど、やっぱり可愛らしい)声をあげる堕天使さんたち。
 それに構わず、トラックは猛然と突っ込んだ! ……なんてことはなく、あっさりと停止した。
「どうもー。クルーガー運送でーす」
 と、運転席の窓を開けて、フクスさんが堕天使さんに挨拶した。
「イレーヌさんにお荷物をお届けにあがりましたー」
 堕天使さんたちは一斉に首をかしげて、『お荷物?』と異口同音に復唱した。
 そして、そのうちの一人が尋ねた。
「差出人はどこの誰?」
「三丁目のデビルキング百貨店です。イレーヌさんに直に手渡すように指示されてるんですよ」
 よどみなく答えるフクスさん。
 だけど、いくらなんでも、そんな嘘は通用しないでしょ。
「ふーん。じゃあ、通ってもいいよ」
 え? 通用した!?
 どうやら、この堕天使さんたちは思っていた以上におバカみたいね。
 だけど、そういうところがまた――
「――可愛いーっ!」
 あ? 思わず叫んじゃったわ。

●再び、フクス
 おばかかわいい堕天使ちゃんたちがバリケードの隊列を解いて門を開けてくれたので、ワタシはクーちゃん(ワタシの本体であるトラックのことだよ)をゆっくりと前進させて、邸内に乗り入れた。
 難関突破。てゆーか、難関と呼べるほどのものじゃなかったね。この調子だと、他の猟兵さんたちも簡単に侵入できそう……と、思った矢先に甲高い叫び声が空から降ってきた。
「可愛いーっ!」
 聞き覚えのある声だなー。
 玄関の前まで来たところでワタシはクーちゃんを停め、ドアを開けて半身を乗り出すようにして空を見てみた。
 案の定、声の主はドロシーちゃんだった。感極まって叫んじゃったんだろうね。
 その叫びを聞いたのはワタシだけじゃなかった。何体かの堕天使ちゃんが彼女の侵入に気付き(全員じゃないところがまたおバカっぽい)、青みを帯びた白いもふもふの翼をパタパタ動かして近付いていく。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 ワタシの時と同じことを言ってる。
 ドロシーちゃんのほうは危機感を覚えてないみたい。それどころか、さっきよりも喜んでるように見える。
「うわー! 近くで見ると、やっぱり可愛いっ!」
 やれやれ……。
 とはいえ、喜んでる場合じゃないってことは本人も判っているらしく、少しばかり真面目な顔をして訴えかけた。
「ねえ、あなたたち。見逃してくれない? このままじゃ、子犬さんや子猫さんがかわいそうな目にあっちゃうの」
「ダメダメ! 見逃さないよーだ!」
「犬や猫のことなんて、知ったこっちゃないね!」
「だって、僕らは極悪人だもーん!」
 本当の極悪人は『だもーん』なんて語尾は使わないんじゃないかな。
「うーん。じゃあ、しょうがないわね」
 交渉が決裂すると、ドロシーちゃんは靴の踵を鳴らすような動作をした。コンコンコンと三度。もちろん、空に浮いているから、実際に音はしなかったけど。
 次の瞬間、黄色い煉瓦で構成された大きな建造物が空中に出現した。そして、ドロシーちゃんと堕天使ちゃんたちはワタシの視界から消えた。前者は建造物に遮られて。後者は建造物に閉じこめられて。
 きっと、これはアレだね。ほら、頑健な迷路を戦場に作り出すタイプのユーベルコード。
「うわー!? なにこれー!」
「出してー! 出してよー!」
「皆、落ち着け! 壁を突き破っていけば、脱出できるはずだよ!」
「よーし! 必殺のパンチで突き破ってやるぅ! ……って、痛っ!? びくともしないよぉー!」
 迷路の外壁越しに堕天使ちゃんたちの情けない声が聞こえてくる。暫くは出られそうにないね。
 一方、迷路に遮られていただけのドロシーちゃんはすぐに姿を現して――
「ごめんなさいね。すべて終わったら、出られるようにしてあげる」
 ――堕天使たちに語りかけながら、ワタシの傍に着地した。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メナオン・グレイダスト
・SPD

ふうむ……。
……このような小悪党も容赦なく叩き潰す。それもまた悪であろうな。

大量の護衛か、数の多さは脅威的である。
……その数を逆に利用できれば良いのだが。試してみようか。

敢えて正面より侵入を試みる。魔王らしく堂々と。
強引な突破は困難であることは承知している、搦手を使うべきであるな。
【グレイダスト・ギフト】。我輩を阻むものすべてに、我輩からの“贈り物”だ。
効果は身体能力の強化。しかしその対価は、強化された身体の制御権。

「灰色の従者」展開。制御を補佐させつつ……かの獣の堕天使どもを、片っ端から同士討ちさせてやろう。
道を開けよ。「ロケットアタァーック!」……で、あるな(無表情かつ無感情に)


アサル・レイハーネフ
動物を悪事に使うなんて、酷いねぇ。このイカれ商人にはとても出来ない。本当さ。
それに、どうせ売るなら、警備の子達の方が高値で売れるんでないの?本体もさる事ながらあの翼。加工したらいいアクセサリーに…おっと、いけない。これ以上は他の猟兵に怒られそうだ。あひゃひゃ!
【忍び足】で【闇に紛れ】て忍び込む。見つかったらひとまず【言いくるめ】てみよう。
待っとくれ。あたしは悪事を働きに来ただけなんだ。この屋敷を滅茶苦茶にして、デビルを全て奪い、イレーヌを社会の荒波の中に放り込もうとしているだけなんだ。通してくれない?
ダメ?じゃあクリーピングコインの【範囲攻撃】とUCで、キミ達も滅茶苦茶になってもらおう。



●アサル・レイハーネフ(黄色い狂人、旅する商人・f31750)
 あたしは塀の角に隠れて、イレーヌとやらの屋敷を見ていた。
 門構えから玄関に通じる広くて長い道。その上空には、ドロシーのユーベルコードの産物――黄色い煉瓦でできた大きなキューブ(中は迷路になってるらしい)が浮かんでる。シュールな光景だねぇ。
「な、なんなの!? アレはなんなのぉ!?」
「四角い隕石だ!」
「なんで隕石が空中で止まってんの? 普通、落ちてくるでしょ?」
「UFOかもしれなーい!」
 ちびっこい堕天使(といっても、堕天使にも天使にも見えないけどさ)たちがキューブを見上げて大騒ぎしてるよ。
 ただし、ごく一部のメンバーだけ。
 他の連中はのほほんと構えてる。
「なんか浮かんでるねー」
「ボスがやったのかな?」
「さあ? わかんなーい」
「まあ、魔界ではよくあること」
 泰然自若……というか、状況が理解できてないだけか。
「ふうむ……」
 なにやら真面目な顔をして、あたしの傍にいた猟兵が唸った。彼の名はメナオン。灰色の髪と青い瞳の坊やに見えるけど、普通の人間じゃないらしい。なにせ、自称『灰色の魔王』なんだから。
「このような愚かな小悪党どもも――」
 真面目顔をキープしたまま、メナオンは堕天使どもを見回した。大騒ぎ組とのほほん組の区別なく。
「――容赦なく叩き潰す。それもまた悪であろうな」
 おうおう。魔王の貫禄たっぷりじゃないか。悪人ならぬ商人のあたしにゃあ、とても真似できないよ。いや、ホントに。

●メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)
「イレーヌってのは悪人を気取ってるらしいけど、悪知恵には欠けてるようだねえ」
 ニヤニヤと笑いながら、我輩の傍にいた猟兵が言った。彼女の名はアサル。金髪金眼の若い女に見えるが、まっとうな人間ではないらしい。なにせ、自称『イカれ商人』だからな。
「普通の犬や猫なんかよりも、あの堕天使たちを利用したほうがよっぽど儲かるってのにさ。本体もさることながら、背中に生えてるモフモフの翼! ちょいと加工してやれば、いいアクセサリーに……おっと!」
 アサルは口をおさえて我輩を見た。倫理観に欠ける発言を咎められると思ったのか、少しばかりばつが悪そうな顔をしている。
「他の猟兵さんの前でこんなことを言うのはマズかったかな? あひゃひゃひゃひゃ!」
 いや、ばつが悪い思いなどしていないようだ。
 ひとしきり笑った後、イカれ商人は我輩に問いかけた。
「で、魔王さんはどうやってイレーヌのところまで行くつもり?」
「あえて正面より侵入を試みるつもりだ。魔王らしく堂々とな」
「本気かい? 見ての通り、けっこうな数の堕天使たちが警備してんだよ。おばかな連中とはいえ、そう簡単に通してはくれないと思うけどねぇ」
「確かに数の多さは驚異的だな」
 アサルをそこに残し、我輩は歩き始めた。
 堕天使の群れが守るイレーヌの邸宅に向かって。
「しかし、その多さを逆に利用できるかもしれぬ」

●再び、アサル
 止める間もあらばこそ(とか言って、ハナっから止める気なんかないけどさぁ)、アサルは歩き出した。宣言通り、『魔王らしく堂々と』ねぇ。
 もっとも、すぐに足を止めることになったけど。堕天使たちに行く手を塞がれたから。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 まぁーた、フクスの時と同じリアクションだよ。実は侵入者への対応マニュアルみたいなものがあって、それに載ってるテンプレ台詞を言ってるだけだったりして。
「屍を越えるまでもない。おまえたちが一人残らず屍となっても、それらが我輩の前に積み上げられることはないだろうからな」
 メナオンは右手をゆっくりと上げて――
「我輩の『グレイダスト・ギフト』を受け取るがいい」
 ――振り下ろした。
 きっと、『グレイダスト・ギフト』ってのはユーベルコードの名前だったんだろうね。効果は覿面。行く手を塞いでいた堕天使たちが苦しみだしたよ。
「うわー!?」
「な、なんだか体がヘンな感じだよー!」
「力が漲ってきたぁー!」
 ん? 苦しんでるわけじゃなさそうだねぇ。力が漲るとか言ってるし……もしかして、パワーアップ系のユーベルコード? なんで、そんなものを敵に使ったのさ?
「さて、そこをどいてもらおうか」
 メナオンは悠然と言ってのけたけど、パワーアップした堕天使たちが従うわけがない。
「どいたりするもんか! 食らえ、ロケットアタァーック!」
 ほうら、大声をあげて、メナオンに体当たりを仕掛けたよ……って、あれ? メナオンじゃなくて、別の堕天使にぶつかった。
「痛ぁーい! なんで僕を攻撃するのぉ!?」
「ごめん! 体が勝手に動いちゃったんだよ!」
 もしかして、あのユーベルコードは対象をパワーアップさせるだけじゃなくて、自由に操ることもできるのかな?
「ロケットアタァーック!」
「ロケットアタァーック!」
「ロケットアタァーック!」
 他の堕天使たちも次々と叫びを発して体当たりを敢行したけれど、メナオンのところまで飛んで行けた子は一人もいなかった。全員、同士討ち。
 あっちでごっつんこ、こっちでごっつんこ……と、堕天使たちがぶつかり合う中、メナオンは再び歩き出した。
「ロケットアァーック……で、あるな」
 と、一ミリも感情が込められてない声で呟きながら。

●再び、メナオン
『グレイダスト・ギフト』で堕天使どもを同士討ちさせながら、我輩は門をくぐり、邸宅の敷地に足を踏み入れた。
 大きな玄関の前に到着したところで振り返ると、アサルの姿が見えた。塀の角から出てきたのだ。
 さて、どうやって侵入するつもりなのか……と、思っている間に彼女は行動を開始した。同士討ちの混乱に紛れ、気配を殺し、足音を忍ばせ、物陰から物陰へと素早く移動。
『ロケットアタック』とやらの激しい応酬をしている(正確には『している』のではなく、我輩が『させている』のだが)堕天使どもはそれに気付いていないようだ。
 しかし、別の堕天使ども(我輩といえども、すべての堕天使を『グレイダスト・ギフト』の標的にすることはできなかったのだ)は気付いた。もっとも、気付いた頃にはアサルは玄関の目と鼻の先まで来ていたが。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 先ほどの奴らと同じことを言いながら、堕天使どもはアサルの行く手を阻んだ。玄関に近付こうとしているアサルよりも、玄関にまでたどり着いている我輩への対処を優先すべきだと思うのだが……まともな判断力を持ち合わせていないのか?
 一方、お世辞にも『まとも』とは言えないが、人並み以上の判断力を持ち合わせているであろうアサルのほうは落ち着いたもの。
「ちょっと待っとくれ」
 と、堕天使どもに語りかけた。腰のあたりに手をやりながら。場合によっては、腰に下げた袋の中の武器――おそらく、クリーピングコインの類を使うつもりでいるのだろう。
「あたしは悪事を働きに来ただけなんだ」
「悪事だって?」
 堕天使の一人が聞き返すと、アサルは軽薄そうな笑みを浮かべて頷いた。
「そうさ。この屋敷をメチャクチャにして、貯め込まれてるデビルをすべて奪い、イレーヌを社会の荒波の中に放り込もうとしているだけなんだよ」
「シャカイノアラナミ? うわー! それって、すごくワルっぽーい!」
「だろ? だから、通してくれない?」
 笑みを『軽薄そう』から『軽薄極まりない』にレベルアップさせるアサル。交渉の成功を確信しているらしく、手は腰から離れている。
 実際、交渉は成功だった。堕天使たちは――
「この人、ボスより悪人かも!」
「ワルい人、だーいすき!」
「がんばってねー!」
 ――わいわいきゃっきゃっと楽しげに騒ぎながら、道を開けたのだからな。
 どうやら、奴らが持ち合わせていないのは判断力だけではなかったらしい。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ブレイバー・ジャスティス
ギャクタイなんて、悪い奴だ! 絶対やっつけてやる!

まずは堕天使をやっつけ…堕天使、堕天使?
もっと怖い感じだと…、かわいい…

えっと、イレーヌに会いに来たんだ。通してくれないか?
(油断して正面から話しかける)

なんで通してくれないんだ!君たちだって捕まってる犬や猫と同じ、動物だろう!?

え、違う?

ううん、でも帰らないぞ!だってギャクタイしようとしてるんだ!そんな悪い事許せないじゃないか!

なんで、逆に喜んで…、悪い事がしたいのか。そんなに悪い事がしたいなら、ボスを裏切ってぼくを通すとか、そういう悪い事したらどうだ!

え、いいの? ううーん?
(良く分からないけれど、通っていいなら通してもらう)


バスティオン・ヴェクターライン(サポート)
戦闘スタイルは盾群付右義腕による【盾受け】や剣による【武器受け】で敵の攻撃の受け止め+気迫と鬼気迫る眼力で【恐怖を与える】事による敵の注意の引きつけ
護りに徹し味方に攻撃が向かないように立ち回る
集団戦の場合出来るだけ多くの敵を自分に引きつけるようにする、または自分を越えなければ先に進めない状況を作る。
UC【テリトリー・オブ・テラー】で広範囲を一気に威嚇したり、UC【フォーティテュード・フォートレス】で作った壁で通れる場所を制限したり、護りに徹するならUC【バリアブル・バリアー】で作った盾ドームで安全地帯を作ったりする

その他お任せ・他猟兵との絡みやアレンジ歓迎



●ブレイバー・ジャスティス(あこがれヒーロー・f32926)
 ぼくは塀の角に隠れて、イレーヌとかいう悪者のアジトを見ていた。
 メナオンさんに同士討ちさせられて混乱している堕天使もいれば、アサルさんの口車に乗せられて職務放棄した堕天使もいて、アジトの周囲はカコスかつコミカルな状況になってる。
 だけど、ぼくは正義のヒーローだからして、カオスな空気に戸惑ってなんかいないし、コミカルな流れに呑まれてもいない。それどころか、イレーヌに対する怒りはより激しく燃え上がってるぜ。
 心の中だけで燃やしておくのはもったいないから、声に出しておこうかな。ヒーローらしく、カッコよく。
「動物をギャクタイするなんて、本当に悪い奴だな! 絶対、やっつけてやる!」
「お、おう……」
 と、頷いたのはバスティオンさん。見るからにベテランの傭兵って感じの眼光鋭いおじさんだ。サイボーグ化した右腕がカッコいい!
 でも、ちょっと覇気が足りないというか、まごついてるように見えるな。
「どうかしたの、バスティオンさん?」
「いや、どうしたもなにも……」
 バスティオンさんは言葉を濁した。
 なぜか、ぼくをチラチラと見ながら。

●バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)
 ツッコむべきか、スルーすべきか……迷った末に俺は後者を選んだ。
 いや、ブレイバー君のことなんだけどね。
 声音と体格だけで判断するなら(というか、声音と体格以外に判断材料がないんだけど)、彼は十歳前後の男の子。でも、その正体はブギーモンスターらしい。
 ブギーモンスターは布を被ってると相場が決まってるが、ブレイバー君が頭に被ってるのはポリバケツだ。それだけでも珍妙なのに、首から下の格好もインパクト抜群。体を覆っているのはブリーフとマントだけ。しかも、そのマントはただのバスタオル。おまけに携えている武器はダンボール製の剣と来たもんだ。
 だけど、まあ、気にしないでおこう。スルーすると決めたからにはねぇ。
「さてと――」
 俺は改めて邸宅のほうを見やった。
「――どうやって攻める、ブレイバー君?」
「正攻法でいくぜ。小賢しい策を労するのはヒーローの道に反するからね」
 正攻法か……なにやら、めんどくさそうな感じだねぇ。
 しかし、めんどくさいことを引き受けてくれるのはありがたい。おかげで、こっちは援護という簡単なおしごとに徹することができる。
 もしかしたら、簡単とはいかないかもしれないけど……。

●再び、ブレイバー
「じゃあ、俺があの堕天使たちの注意を引きつけとくからさ。その間にブレイバー君は正攻法ってのをやっちゃってよ」
 そう言って、バスティオンさんはアジトへと向かった。足を踏み出す度、機械の右腕に装着されてる何枚もの鱗状の盾が『ガチャン!』と音を立てて展開していく。
 その音を耳にして、姿も目にして、堕天使たちがバスティオンさんの前に集まってきた。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 このパターン、何回目だっけ?
 バスティオンさんは立ち止まった。けれど、堕天使たちの剣幕に恐れをなしたわけじゃないだろう。そもそも剣幕と呼べるほどのものでもないし。
「『屍を越えて行け』なんて言うからには――」
 盾の集合体と化した腕を構えて身を守りつつ、バスティオンさんは堕天使たちに話しかけた。
「――屍になる覚悟はできてるんだよねぇ?」
 後ろに控えているぼくにはバスティオンさんの背中しか見えない。それでも確信できた。ただでさえ鋭い眼光をより鋭くして、彼が凄みを利かせていることが。
 いや、眼光だけじゃない。ユーベルコードを使って、鬼気というか恐怖のオーラみたいなものを放射してるんだと思う。
 だって、堕天使たちが――
「ひえー!?」
「こ、こいつ、なんか怖いー!」
「ボスよりも怖いかもー!」
 ――怯えまくっているから。何匹かは空中で失神し、地面に落ちた。
 ちなみに失神した奴らは皆、漫画みたいに目がバツの形になってる。どこまで可愛いんだか。
 グリモアベースでJJさんから話を聞いた時はもっと怖い感じの敵を想像してたんだけどなぁ。

●再び、バスティオン
 ブレイバー君がやってきて、俺の横に並んだ。
「止まれ! 止まれぇーっ!」
「ここは通さないぞ!」
「どうしても通りたければ、僕らの屍を越えて行けぇーい!」
 俺に威圧されてビビりながらも、おなじみの言葉をブレイバー君にぶつける堕天使たち。ポリバケツ&バスタオル&ブリーフというスタイルに当惑している奴はいないみたいだ。デビルキングワールドの住人だから、この手の異質なキャラは見慣れているのかな?
「君たち……」
 と、『異質なキャラ』であるところのブレイバー君は堕天使たちに語りかけた。
「ぼくはイレーヌに会いに来たんだ。ここを通してくれないか?」
 おいおいおいおい。真っ正面から真っ正直に頼んでどうすんの。もしかして、『正攻法』ってのはこのことだったのかい? 俺の威圧の援護は意味なかったような気がしてきたよ。
 当然のことながら、堕天使たちはブレイバー君の頼みを聞かなかった。
「通すわけないだろー!」
「なぜだ!? 君たちだって、イレーヌに捕まってる犬や猫と同じ動物だろう!?」
「いや、僕らは動物じゃないしー。堕天使だしー」
「あ? そういえば、そうだったね……」
 気勢を削がれたブレイバー君。
 だけど、すぐにまたテンションを復活させて、堕天使たちに詰め寄った。
「でも、君たちが何者であれ、イレーヌのやってることは許せないだろ? 動物のギャクタイだよ、ギャクタイ!」
「許せるよー! だって、僕らは悪いこと大好きだもーん!」
「そんなに悪いことが好きなら――」
 数秒の溜めを置いて、ブレイバーくんはとんでもない提案を口にした。
「――イレーヌを裏切って、ぼくを通せばいいじゃないか! 裏切りほど悪いことはちょっとないぞ!」
 うーん。悪事が大好きの堕天使といえども、そう簡単にイレーヌを裏切ったりはしないんじゃないかなぁ?
 と、思いきや――
「裏切り!? それ、わるーい! それ、かっこいー!」
「極悪人としてステップアップできそう!」
「げっこくじょー♪ あ、そーれ、げっこくじょー♪」
 ――あっさりと受け入れ、はしゃぎ始めたよ。
 彼らに裏切りを唆したブレイバーくんは呆然と立ち尽くしていたけれど、やがて俺のほうに顔を向けて(といっても、ポリバケツで顔は見えないけどね)自信なげな声で尋ねた。
「これでいいのかな?」
「まあ、いいんでない」
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『悪役令嬢・イレーヌ』

POW   :    やっておしまいなさい!
戦闘力のない、レベル×1体の【取り巻き】を召喚する。応援や助言、技能「【精神攻撃】【物を隠す】【略奪】」を使った支援をしてくれる。
SPD   :    自分がこの場にふさわしいと思っておいでかしら?
対象への質問と共に、【自分の背後】から【取り巻き】を召喚する。満足な答えを得るまで、取り巻きは対象を【あんまり痛くない攻撃か、冗談のような罵倒】で攻撃する。
WIZ   :    ちゃんと話を聞いていたかしら!?
【指さした指先】を向けた対象に、【眩しいけどあまり痛くない稲妻】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニャコ・ネネコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 デビルの札束や黄金のインゴットが壁際に積み上げられ、子犬や子猫を閉じこめられたケージが所狭しと並ぶ地下ホール。
 銀行の大金庫と悪質ペットショップの舞台裏を混ぜ合わせたようなその場所に猟兵たちは足を踏み入れた。裏切りという悪なる行為に魅せられた堕天使たちをぞろぞろと引き連れて。
「あらあら。外がなにやら騒がしいと思ったら……小汚い賊が侵入していたのですね。おーほっほっほっ!」
 高笑いで皆を出迎えたのは、獣の耳と尻尾を有した娘。
 彼女こそ、悪役令嬢イレーネであろう。
 それにしても、この状況で笑う意味がよく判らない。猟兵の闖入や堕天使たちの裏切りに動揺していないというアピールか。あるいは、彼女にとって高笑いは呼吸も同然なのか。
「どこの馬の骨だか牛の肉だか知りませんが、このわたくしに挑むとは片腹痛いペインですわ。笑止千万を通り越して笑止億兆でしてよ」
 堕天使たちがそうであったように、彼女もまた頭は良くないようだ。
「あなたたち――」
 頭のよろしくない悪役令嬢は背後を振り返り、ケージの中の子犬や子猫たちに語りかけた。
「――少しお待ちになってね。この賊どもをかたづけた後で、『高級なウェットタイプのペットフードの匂いを部屋中に充満させた状態で安物のカリカリを食べさせる』という超極悪な拷問を味あわせてさしあげますわ。おーほっほっほっほっほっ!」
 子犬や子猫たちは無反応。
 いや、そもそも彼女の言葉など聞いていなかった。
 
レイン・ファリエル(サポート)
『さぁ、貴方の本気を見せて下さい』
 人間のサイキッカー×ダークヒーローの女の子です。
 普段の口調は「クールで丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、機嫌が悪いと「無口(私、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は落ち着いてクールな感じのミステリアスな少女です。
人と話すのも好きなので、様々なアドリブ会話描写も歓迎です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ドロシー・オズマ
フクスさん以外もいたの?

ならまず自己紹介ね!
わたしドロシー♪よろしくね☆

堕天使さんたちかわいかったわ♪
…みんな、ひどいことしてないわよね?

イレーヌちゃんもかわいいわ☆
ねぇ、お友だちにならない?

ダメ?
ここにいる資格?
ドレスコードかしら?
ごめんなさい
しらなかったわ

ステキナユメノマホウでドレスアップ☆
これでどうかしら?
(白銀のドレスアーマーに翠水晶の飾り
靴はレッグアーマーに
爪先は槍のように尖り
少し浮いている)

動物さんにかわいそうなことしないでってお願いしたのに
なぜか怒ってる?

空中機動でかわしながら
コミュ力で話しかけるわ

誰かを傷つけてうれしいの?
みんなでしあわせにならなくちゃ♪
(牽制にランスチャージ)



●ドロシー・オズマ(アリス適合者のプリンセス・f20255)
「わたし、ドロシー! よろしくね!」
 イレーヌちゃんに自己紹介。相手は御令嬢だから、エプロンドレスの裾を摘んでカーテシーしといたわ。これで第一印象はばっちりね!
「外にいた堕天使さんたち、みんな可愛かったわ。イレーヌちゃんもかわいいね。ねぇ、おともだちにならない?」
「はぁ?」
 あららー? ばっちりじゃなかったみたい。イレーヌちゃんってば、細い眉を判りやすく八の字にしてる。
「上品で上流の上位なわたくしが下劣で下賤な下衆のあなたたちとおともだちになるわけないでしょう。冗談はそのプアくさい衣装だけにしてくださいな」
「冗談なんかじゃないよ」
 わたしは食い下がろうとしたけれど――
「なにを言っても無駄です」
 ――と、黒い外套を纏った猟兵に止められた。
 彼女はサイキッカーのレインさん。お嬢様っぽい雰囲気を漂わせたお姉さんよ。イレーヌちゃんもお嬢様だけれど、お嬢様レベルはレインさんのほうがちょっと勝ってるかな?
「どんなに見た目が愛らしかろうと、あの娘はオブリビオン。私たちにあるのは『倒す』という選択肢だけですわ」
「おーほっほっほっほっほっ!」
 レインさんの言葉を聞くと、イレーヌちゃんは手の甲を口にあてて、おなじみの笑い声を聞かせてくれた。
「見た目が愛らしいのは間違いありませんが、選択肢云々については大間違いですわね。あなたたちの選択肢は――」
 口にあててないほうの手が前に伸ばされて、指先がレインさんに突きつけられた。
「――『倒される』オンリーですわ!」
 突然、閃光がピカッと閃いた! イレーヌちゃんの指先から稲妻が放たれたの。
 それを受けて、レインさんはよろめいたけど――
「レインさん、だいじょーぶ!?」
「はい。問題ありません」
 ――すぐに体勢を直した。
「とても眩しい光でしたし、少しばかりダメージも受けましたが……痛みはほとんどありません」
「おーほっほっほっ! そうやって強がっていられるのも今のうちですわよ!」
「いえ、強がってるわけではなく、本当に痛くないのですが?」
「お黙りなさい!」
 イレーヌちゃんは体を捻って、後ろに並んでるケージに指先を向けた。
「物理的に痛くないというのであれば、精神的な痛みをプレゼントしてさしあげますわ! 哀れな畜生どもが苦しみ悶える様を見せつけることで! おーほっほっほっほっほっ!」
 えー!? ケージの中の動物さんたちに稲妻をぶつけるつもり?

●レイン・ファリエル(クールビューティー・f17014)
「うわー! これって、動物たちがビリビリッと感電死しちゃう展開?」
「ひどーい! わるーい! かっこいー!」
「さすが、元ボス! よい子にできないことを平然とやってのける。そこにシビれる! あこがれるゥ!」
 子犬や子猫たちに指先を向けたイレーヌさんを見て、堕天使たちが歓声をあげています。こちらに寝返ったことなど忘れているようですね。
 もちろん、私も忘れてはいませんよ。
 猟兵としての務めを。
「シビれるのは貴方たちではなく――」
 イレーヌさんの指先から稲妻が迸るよりも疾く、私は両手を突き出しました。
「――彼女のほうです」
「きゃん!?」
 子犬めいた悲鳴を発するイレーヌさん。ケージに指を突きつけた姿勢のままで硬直しています。そう、私が使ったユーベルコードはサイキックブラスト。
「『プアくさい衣装』とかいうのはお気に召さないようだから、ここのドレスコードに合わせてみるね」
 痺れて動けぬイレーヌさんに話しかけながら、ドロシーさんがジャンプしました。天井を突き破らんばかりの勢い。もちろん、あくまでも『ばかり』であり、本当に突き破ったりはしませんでしたが。
 そして、落下して床を突き破ることもありませんでした。空中でピタリと止まったのです。まるで、見えない床の上に立っているかのよう。
「こんなのはどうかしら?」
 空中に留まったまま、くるりと回転するドロシーさん。
 一瞬にして、その身を包む衣装が変わりました。ドレスを思わせる白銀の鎧に。
 目にもとまらぬ早着替え……というわけではなく、衣装を創造するユーベルコードを使ったのでしょう。得物は日傘(そう、この邸宅に侵入する際に使用した日傘です)のままですが。
「どうして、イレーヌちゃんは悪いことをしたがるの? 誰かを傷つけるのが楽しいの? そんなことより、みんなでしあわせになるべきだって思わない?」
 矢継ぎ早に問いかけながら、ドロシーさんは空中をジグザグに走って高度を下げていきます。
 イレーヌさんは痺れから解放されたようですが、ドロシーさんの動きを目で追うので精一杯らしく――
「はぁ? うっせぇですわ!」
 ――ユーベルコードではなく、ただの罵声で迎撃しています。
 もちろん、そんな迎撃が通じるはずもありません。
 その罵声を笑顔で受け流して、ドロシーさんは一気に降下しました。
「ねえ? みんなでしあわせになりましょうよ!」
 ランスのように突き出された日傘がイレーヌさんの体を抉り抜く……かと思われましたが、イレーヌさんは後方に飛んで、それを躱しました。あるいはドロシーさんがわざと外したのかもしれません。今のランスチャージならぬパラソルチャージは攻撃ではなく、牽制のように見えましたから。
「みんなでしあわせですってぇ? おーほっほっほっほっほっほっほっ!」
 ドロシーさんの配慮に気付いていないのか(気付いたとしても感謝はしないでしょうけれど)、イレーヌさんはまたも嘲笑を響かせました。
「片腹どころか両腹ペインですこと! この悪徳の都で幸せになるべきはただ一人――悪役令嬢たるわたくしですわぁーっ!」
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アサル・レイハーネフ
馬の骨でも牛の肉でもなくイカれ商人さ。笑うのが好きなら、一緒に笑ってあげよう。あひゃひゃひゃひゃひゃ!
ペットフードが必要?商人が売ってあげるよ。ケージの予備も必要なんじゃないかな。目の前に捕まってないケモ耳がいるしね。それと、キミが今1番必要としていそうな『馬鹿につける薬』は取り扱いがないんだ。ごめんね!
痛っ!なんで怒るのさ!?あたしはキミのためを思って言っただけなのに。あひゃひゃ!
よーし、そっちがその気なら反撃だ。キラークイーンで【2回攻撃】しつつ、金塊の山でバレないように周囲にクリーピングコインを展開。準備が出来たらUC『術奪う金の檻』!
ありゃ、ケージは必要なかったかもねぇ。あひゃひゃ!


メナオン・グレイダスト
・POW

ふむ……山と積まれた財貨に囚われの獣たちか。
いずれも、我々に解き放たれるためにあるようなものではないか?

手勢とはこのように用いるものだ、小さき悪よ。身をもって学ぶがよい。
【グレイダスト・レギオン】……。みな、かかれッ!

(召喚するは灰色砂塵――ナノマシンで構築された、身体を有する人工生命体の手勢。
 半数はイレーヌとその配下に当たるための完全武装の歩兵部隊。
 もう半数は――身軽さを活かして場を縦横に駆け巡り、攪乱する軽装部隊。
 歩兵部隊はイレーヌ達を容赦なく集団での制圧射撃や斬り込み戦法で蹂躙する。
 一方、軽装部隊は隙あらば溜め込まれた財貨を奪い、檻を開け放って犬猫を解放しようと試みる)



●メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)
 ふむ。山と積まれた財貨に囚われの獣たちか……いずれも我輩たちに解き放たれるためにあるようなものではないか。
 解き放つために倒さねばならぬ相手はといえば――
「おーほっほっほっほっほっ!」
 ――高らかに笑っている。ドロシーの攻撃を避けることができたので(ドロシーはわざと外したのだろうが)、調子に乗っているようだ。レインのサイキックブラストを食らったことも都合よく忘れているのだろう。
 その愚者の嘲笑に狂者の哄笑が重なった。
「そんなに笑うのが好きなのかい? じゃあ、一緒に笑ってあげるよ。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
『イカれ商人』ことアサルだ。愚者たるイレーヌを挑発しているのか、あるいは本気で笑っているのか……それは我輩にも判らんが、彼女の笑い声は効果覿面だった。さすがのイレーヌも毒気を抜かれて笑うのをやめたのだからな。
 その心の隙を衝くようにして、アサルが語りかけた。商人らしいセールストーク。
「さっき、ペットフードがどうこうとか言ってたよね? あたしが売ってあげるよ。あ、そうそう。ケージももう一つ必要なんじゃない? まだ捕まってないケモ耳が目の前にいるから」
「は? ケージに閉じこめられていない子なんて一匹もいませんわよ」
 首をかしげるイレーヌ。『まだ捕まってないケモ耳』というのが誰のことなのか判っていないらしい。愚かであることがまた証明されたな。
 そんな反応に構うことなく、アサルは語り続けた。
「だけど、キミがいちばん必要としている商品はないんだよねー。ホント、ごめん」
「必要としている商品? なんのことですの?」
「決まってるじゃないか」
 アサルはにんまりと笑い、片側のこめかみをつついてみせた。
「馬鹿につける薬だよ」
「ぬぅわんですってぇーっ!」
 怒りに顔を紅潮させて、イレーヌが吠えた。自分が馬鹿にされたということを(実際、馬鹿なのだが)今回はちゃんと理解できたらしい。
「そんな薬、わたくしに必要ありませんわぁーっ!」
 誰よりも薬を必要としている者は怒声とともに指を突き出し、稲妻を放った。レインにも使った雷撃のユーベルコードだ。
「痛っ!? なんで怒るのさ? あたしはキミのためを思って言っただけなのにぃ。あひゃひゃひゃひゃ!」
 あの笑い声をまた発しながら(最初に『痛っ!?』と悲鳴をあげたが、本当に痛みを感じているようには見えなかった)、アサルが精霊銃を素早く抜いて連射した。
 イレーヌはそれを紙一重で躱したが――
「そんな攻撃、わたくには通用しませ……んわぁ~ん!?」
 ――情けない声をあげて体勢を崩した。
 無数の金の礫が四方八方から飛来してきたからだ。
 それらはアサルのクリーピングコイン。どうやら、金塊の山に紛れるようにして周囲に展開させていたらしい。抜け目のない商人だ。

●アサル・レイハーネフ(黄色い狂人、旅する商人・f31750)
「いたたたっ!?」
 横殴りの金の雨に打たれながら、イレーヌは後退した。
 そして、安全圏までなんとか逃げ切ると――
「きぃーっ!」
 ――ハンカチの端を噛みしめて、悔しそうに呻いた。こんな芝居がかった所作を現実に見たのは初めてかも。てゆーか、芝居でも見たことがない。
「わたくしを怒らせてしまいましたわね! もう許しませんことよ!」
 なにを今更って感じだね。さっきからずっと怒ってたくせに。
「皆さん! この礼儀知らずな下層階級の連中をギャフンと言わせてあげなさいな!」
 首が埋もれんばかりに肩をそびやかし、ひっくり返らんばかりに胸を張って、イレーヌは叫んだ。
 それは召喚系のユーベルコードのトリガーであったらしく、『皆さん』とやらが次々と彼女の周囲に実体化した。全員、女の子。イレーヌと同じような空気を漂わせているけど、キャラとしてのパンチは弱め。意地悪なお嬢様の名もなき取り巻きってところかな?
 で、その取り巻き女子のモブ軍団は『ギャフンと言わせ』るべく、猛攻撃を仕掛けてきた。
 猛攻撃といっても――、
「んまぁー!? なんてお下品な人たちなんでしょう!」
「吐瀉物よりもひどい悪臭がいたしますわ!」
「イレーヌ様に喧嘩を売るなんて五億年早くてよ!」
「さっさと貧民窟に帰りなさい! この野良犬ども!」
「さもないと、愛用のトウシューズに画鋲を入れて、ドブに捨ててやるんだから!」
 ――興奮した猿の群れみたいにキィキィ喚いてるだけなんだけどね。どーでもいいけど、最終的にドブに捨てるなら、画鋲を入れる意味なくない?
「騒がしい連中だ……」
 静かに呟いたのは、トウシューズなんか履いたことなさそうな(でも、履いてるところをちょっと見てみたいかも)『灰色の魔王』ことメナオンだよ。
 猿どもの罵詈雑言を鉄仮面のごとき無表情で跳ね返して、魔王サマは悠然とした足取りで前進した。
「小さき悪よ。身をもって学ぶがよい。手勢とは――」
 突然、メナオンの周囲――なにもないはずの空間から砂とも灰ともつかぬものが流れ出してきた。滝のように。流砂のように。
 そして、それらは瞬く間に何十体もの人型へと変わった。
「――このように用いるものだ」
 メナオンが足を止めた。
 でも、進軍は止まらない。砂だか灰だかで構成された人型の群れが取り巻きたちに向かっていく。いえ、襲いかかっていく。同じく砂だか灰だか(もしかして、ナノマシンとかいうヤツ?)で構成された武器を手にして。
「な、なにをなさるつもり!?」
「この野蛮人!」
「きゃー!?」
 罵詈雑言を悲鳴に変えて、取り巻きたちはあっという間に全滅した。モブVSモブの戦いとなれば、武器を持ってる側が勝に決まってるよね。
「どうだ? よく学べたか?」
 孤立無援となったイレーヌにメナオンが問いかけた。あいかわらずの無表情。
 イレーヌのほうは無表情じゃない。さっきみたいにハンカチを噛みしめてこそいないけれど、ものすごぉーく悔しそう。
 笑う余裕のない彼女に代わって、また笑ってあげようかな。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! ねえ、メナオンも一緒に笑わない?」
「断る」
 あ、そう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赤星・緋色(サポート)
なんやかんやで事件を解決に導こうとします
フリーダムかつアグレッシブなアドリブも可

合わせ等も自由にどうぞ


吉柳・祥華(サポート)
『妾の存在意義とは何ぞや?何ゆえに此処に在るのかぇ?』

旧き時代に祀られていた龍の化身で在ったが
護るべき国は民は既に無いのに何故…自身が現世の『神』として顕現したのかを思案と模索する戦巫女

物腰は柔らかく絶えず微笑を湛える優美な女性であるが
過去の出来事から人(他人)に対しては意外に辛辣…
優美に微笑を浮かべるが実は目が笑っていない

ユーベルは指定した物をどれでも使用
その辺はMSの采配に任せます(意外な使い方とか参考になるから)

基本、他の猟兵に迷惑をかける行為はしないが
必要なら悪乗りはする流れ(他の猟兵と同意と言う設定で)
まぁ…流石に依頼の成功の為と言えど公序良俗に反する行動はNG

連携アドリブ等はお任せ



●赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
 地下ホールに響くアサルさんの笑い声。
 それを聴いて、堕天使たちが興奮してる。
「うわー! この笑い方、悪人っぽーい!」
「僕らもこんな風に笑ったら、一端のワルになれるんじゃない?」
「じゃあ、真似して笑っちゃおー!」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
 笑い声の大合唱が始まった。
 そんなカオスな状況の中でも、メナオンさんが召喚した砂の兵士たちはせっせせっせと働き続けている。いや、イレーヌの取り巻きたちはとっくに倒してるよ。今は壁際の札束を奪ったり、ケージを開けたりしているんだ。
 ケージから解放された子犬や子猫たちは一目散に逃げ出す……なんてこともなく、あいかわらずマイペース。じゃれあったり、毛繕いしたり、自分の尻尾を追い回してくるくる回ったり、『なんなの、こいつら?』といような顔で私たちを見上げたりしている。
「どの子も可愛い。構ってあげたいけれど……その前にイレーヌをとどめを刺さなくちゃね」
 と、私が話しかけた相手は祥華さん。東洋風の人派ドラゴニアンといった感じの外見をした綺麗なお姉さんだけど、実は神なんだって。比喩とかじゃなくて、本当の意味での神だよ。
 神サマだけあって、彼女はクールな姿勢を保っていた。眉一つ動かさず、冷然とイレーヌを見据えて……あれ? べつに冷然じゃないし、平然でも悠然でもない感じ? それに見据えている対象も違うね。足下にいる子犬や子猫たちに視線を向けている。
「どうかしたの、祥華さん?」
「……」
「ねえ、聞いてる?」
「……」
「もしもーし!」
「……え?」
 祥華さんは我に返り、目をぱちくりさせながら、私のほうを見た。神サマらしからぬ、きょとんとした顔。
「もしかして、子犬や子猫たちに魂を持っていかれてた?」
「ま、まさか! 妾(わらわ)は龍の化身にして戦巫女。戦いの最中に小動物に気を取られることなど、あろうはずが……」
 祥華さんが慌てて否定していると――
「おーほっほっほっ!」
 ――と、イレーヌがワンパターンな笑い声で割り込んできた。さっきまではメナオンさんに圧倒されてたけど、なんとか自分のペースを取り戻したみたい。
「龍の化身だろうがなんだろうが、わたくしから見れば、ただのザコ! 直にお相手するまでもありませんわぁーっ!」
 イレーヌの周囲に何人もの女の子が出現した。全滅したはずの取り巻き軍団。そう、あの召喚系ユーベルコードをまた使ったんだ。
 だけど、祥華さんは動じなかった。いつの間にやら神サマらしい余裕ある態度を復活させて、微笑を浮かべている。
「妾も同じことを思っていました。おぬしごときの敵ならば――」
 祥華さんの前に何者かが現れた。
 床に映る彼女の影から滲み出るように。
「――直に相手をする必要はありません」
 その『何者か』は女の人だった。祥華さんに似ているようで似ていないけど、似ていないようで似ている、不気味な女の人。
 そして、ただ不気味なだけでなく、大きかった。
 身長は三メートルを超えているね。

●吉柳・祥華(吉祥龍彩華・f17147)
 妾は白刃刀を抜きました。これは木剣ですが、刀身が光を帯びており、名前の通りに白く輝いています。
 妾が召喚した存在――妾に似て非なるモノが動きをなぞり、同じように刀を抜きました。似て非なるモノの身の丈は妾のそれの約二倍。故に刀の大きさも二倍です。
「な、なんですの、このバケモノは!?」
「見苦しい……いえ、醜いですわ!」
「髪がちっとも手入れされていませんし、肌の色も気持ち悪ぅーい!」
「あっちに行きなさいな!」
 イレーヌの取り巻きたちたちがなにやら喚き散らしていますが、耳を貸す道理などありません。
 妾は白刃刀を横薙ぎに払いました。微笑を浮かべたまま。
 似て非なるモノがまたも動きをなぞり、二倍の長さの刀を一振り。
 取り巻きたちの体がまとめて両断され、血を流すこともなく、煙のように消え去りました。
「次は貴様の番じゃ」
 と、おどろおどろしい声でイレーヌに告げて、似て非なるモノは前進しました。
 いえ、前進したのは妾自身。似て非なるモノはあいかわらず動きをなぞっているだけ。おそらく、表情もなぞり、微笑を浮かべていることでしょう。後方にいる妾には背中しか見えませんが。
「やれるものなら、やってみなさいな! おーほっほっほっ!」
 虚勢を張ってることが一目ならぬ一聞きで判る高笑い。
「では、やってあげましょう」
 イレーヌめがけて妾は刀を突き出しました。もちろん、似て非なるモノも。
「遅いですわ!」
 イレーヌは素早く地を蹴り、刺突を躱しましたが――
「遅くないよ!」
 ――懐に飛び込んできた赤い影を避けることはできませんでした。
 影の正体は緋色。ヴァーチャルキャラクターの少年です。軌跡が赤く見えたのは頭髪とレガリアスシューズの色のせい。
 そのレガリアスシューズによる蹴りを受け、イレーヌは無様に落下。一方、蹴りを放った緋色のほうは華麗に着地し、振り返りざまに蒸気ガトリングガンを構えました。
「ひっさーつ!」
 緋色が叫びました。
 そして、連射音が轟き、ガトリングガンの横から大量の蒸気と空薬莢が排出……されるかと思ったのですが、あにはからんや、銃声は一発分だけ。故に空薬莢も一つだけ。
 しかし、そのたった一発の銃弾はイレーヌの左胸を撃ち抜きました。
「……うっ!?」
 左胸を押さえ、呻きを漏らすイレーヌ。緋色を睨みつけてはいるものの、その目には先程までの力強さはありません。
「きょ、今日のところは……引き分けということに……し、しておいてさしあげ……ます……わ……」
 負け惜しみの言葉を残して、自称『悪役令嬢』はこの世から消え去りました。あの取り巻きたちと同様、煙のように。

 さて、イレーヌを倒すことはできましたが……任務が終わったわけではありません。
 やるべきことがまだ残っています。
 似て非なるモノを消し、妾は改めて見回しました。
『やるべきこと』に深く関わる者たちを。
 もふもふな子犬や子猫たちを。
「祥華さんってば、やっぱり――」
 と、緋色が声をかけてきました。
「――魂を持っていかれてるよね?」
 ええ、今回は認めましょう。
 根こそぎ持っていかれました。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『薄汚い獣たちに地獄を見せろ!』

POW   :    骨と皮ばかりのスリムな体型を維持できると思うなよ! 栄養たっぷりのご飯をたんと与えて堕落させてやる!

SPD   :    小汚い畜生め! ぬるま湯とドライヤーの灼熱地獄を以て、その穢れた身を浄化してくれよう!

WIZ   :    泣いても喚いても無駄だ! キャリーケースに幽閉し、獣医さんという名の拷問者のところに連行してやるわ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 戦争によって地下室は惨憺たる有様となったが、子犬や子猫の中に傷ついた者は一匹もいなかった。皆、あちこちに散らばり、思い思いに過ごしている。
 目をきらきらと輝かせながら、その様子を堕天使たちが見つめていた。猟兵の中にも同じように見入っている者がいたが、目を輝かせている理由には天と地ほどの差がある。
「さあ! 今は亡き元ボスに代わって、この動物たちをヒドい目にあわせようか!」
 堕天使の一体が口火を切ると、他の堕天使たちも次々と楽しげな声を出した。
「異議なーし!」
「動物をギャクタイしまくって、極悪人になろう!」
「でもでもぉー、どうやってギャクタイすればいいのかなー?」
「それは新しいボスたちに教えてもらおうよ」
「うん。極悪人の上を行く極々悪人の新ボスなら、きっと凄いイジめかたを知っているはずだよね」
 堕天使たちは犬猫から『極々悪人の新ボス』に視線を移した。
 目の輝きが増している。


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●JJからのお知らせ。
 第三章はお待ちかねの(?)のモフモフタイム! 子犬や子猫たちの相手をしてやってくんな。イレーヌが貯め込んでた札束だの黄金だのがあるから、高級ペットフードとかも買い放題だぜ。
 ただ、悪いこと大好きな堕天使たちが期待に目を輝かせて見守っているから、なるべく「動物を虐待する振りをして可愛がる」という方向性で頼むわ。あくまでも「振り」だからな? 本当に虐待しちゃダメだぞ。
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ドロシー・オズマ
イレーヌちゃんとお友だちになれなかったのは残念だわ

でも子犬さんや子猫さんたちがわたしたちを待ってるのね!

しっかりとかわいがって……
堕天使さんたちが期待した瞳で…

か、かわいがるって違うの
イジワルするって意味だから!
(あわてて大げさな手振りで)

……こまったわ
どうしたらいいのかしら?

そうだわ!
イレーヌちゃんが準備してた高いペットフードをたくさん食べさせてあげるわ♪

誰に対するイジワルかっていえばイレーヌちゃん!

逃げ出しちゃった(死んだと思ってない)後に
自分の用意したエサを
逆の目的に使われたなんて

知ったら泣いちゃうわっ♪
(せいいっぱい悪っぽく)

なんてね♪
美味しそうに食べるのが
見てるだけでいやされるぅ~☆


赤星・緋色
ふははははー
いつの間にかこんなところにいたし、せっかくだから貴様らまとめて屠ってやるのだー

ひっさつガジェットショータイム!
この魔導蒸気の力で噴射される洗浄剤と適温シャワーを使って、まとめて洗い流してくれるわー
そいやー(ぶしゃー)
ふっふっふー苦しかろう
くくくくく、これを味わったら、もうコレなしでは生きられないなってしまうよ
更にこれで毛先を切り刻んで野性味を全部消し去ってやるわ!
(シャンプー洗いシャワーで流した後、トリミングで毛並みを整えていく)

まあ、そんな感じ!
これでもうこの子たちは昔の姿とはおさらばで
悪の手先に身を染めてしまったね!


メナオン・グレイダスト
・SPD判定

みな、ご苦労であった。
(可能であれば奪った財貨を他の猟兵達と山分けしつつ)

あとはこの獣たちをどうするか、であるが。
あの小さき悪が十分に世話をしていたようには見えぬ。となれば……。
堕天使たちよ、まだいるのなら手を貸せ。この獣たちに手ずからギャクタイを加えさせてやろう。
さしずめ水責めと熱風責め、といったところであるな。

(などと言いつつ、堕天使たちに協力させて子犬達や子猫達を入浴させる。
 ぬるま湯で優しく洗い、ドライヤーで丁寧に乾かし。マイペースな動物たちを時になだめたりあやしたりして)

……うむ。これでよい。
(毛並みがふわふわになった子犬を撫でつつ。無表情・無感情ながら何だか嬉しそう)



●赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)
「みな、ご苦労であった」
 メナオンさんが仲間たちを労いの言葉をかけた。子供とはいえ(いや、私もたいして年齢は違わないんだけどね)、魔王を自称するに相応しい貫禄と威厳が漂ってる。
 もっとも、周囲にいる子犬や子猫たちは貫禄にも威厳にも圧倒されることなく、元気に走り回ったり、呑気に毛繕いしたりしてるけど。
「さて、イレーヌの財貨を山分けするとしよう」
 砂の兵士たち(戦闘中にメネオンさんが召喚した軍団だ)が札束や金塊を地下室の中央に積み上げ、あるいは並べていく。
 これだけの大金を前にすれば、誰でもテンションが上がっちゃう……というわけでもないらしい。メネオンさんは無表情だ。まあ、彼はいつだってそんな感じだけど、ドロシーさんの様子もちょっとおかしいかな? 首を垂れて、溜息をついているよ。
「どうして戦いに勝って大金を手に入れたのに、しょんぼりしょぼしょぼ状態なの?」
「戦いに勝ったからこそよ。イレーヌちゃんとお友だちになれなかったのが残念でならないの。だけど――」
 ドロシーさんは顔を上げ、子犬や子猫たちを見回した。
「――くよくよしていたってしょうがないわね。イレーヌちゃんの分まで、この子たちをしっかり可愛がってあげましょう」
 実に前向きな意見。
 でも、それを受け入れることができない連中もいた。
 イレーヌの手下……もとい、元・手下の堕天使たちだ。
「なんで可愛がるのぉ!? てっきり、イジめまくるものだとばかり思ってたのにぃー!」
「もしかして、君たちはワルじゃなくない?」
「がっかりだー! 元ボス以上の極悪人だと思ったから、寝返ったのにぃー!」
「僕たちの信頼と憧れを返せぇーっ!」
 やいのやいのと騒ぐ堕天使たちに向かって、ドロシーさんはしどろもどろに弁解した。大袈裟な身振りを交えて。
「い、いえ、違うのよ! わたしが言ってる『可愛がる』っていうのは『イジワルする』って意味だから!」
 ちょっと無理があるような気がする。
 でも、堕天使たちは――
「なんだ、そうだったのかー!」
「じゃあ、ボクらも可愛がろう!」
「うん。イヤっていうほど可愛がってやるぅ!」
 ――あっさりと納得した。
 あいかわらず、おつむがユルいね。

●メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)
「でも、困ったわねえ。どうしたらいいのかしら?」
 堕天使たちに聞こえぬように小さな声でドロシーが呟いた。子犬や子猫を虐待する(という態で可愛がる)手段について模索しているらしい。
 その様子を堕天使どもが見つめている。そわそわと。わくわくと。
 そして、暫しの後――
「よし」
 ――ドロシーは手をポンと打って頷くと、彼女のことを極悪人だと信じる堕天使どもに指示を出した。
「確かイレーヌちゃんは『高級なウェットタイプのペットフードの匂いを充満させて云々』という拷問のことを言ってたわよね? その高級ドッグフードを持ってきてちょうだい」
「元ボスが考えていた拷問をやるの?」
 堕天使の一体が尋ねると、ドロシーはかぶりを振った。
「いいえ。高級ペットフードを子犬さんや子猫さんたちに食べさせてあげるのよ」
「えー!? それって、ぜっんぜんワルくないじゃーん」
 不満げに唇を尖らせる堕天使たち。愚かな連中だと思っていたが、餌を与えることが虐待ではないということが判る程度の知恵は持っていたらしい。
「いいえ。これはとぉーってもワルいことなのよ」
 ドロシーは唇の片端を微かに吊り上げた。悪人めいた微笑を浮かべているつもりなのだろう。
「だって、考えてもみて。匂いを嗅がせるためだけに用意したドッグフードを正反対の目的に使われたと知ったら、イレーヌちゃんはきっと泣いて悔しがるでしょ?」
「なるほどー! 動物たちじゃなくて、元ボスに対するイジワルなんだね! ワルーい! えげつなーい!」
 例によって例のごとく、堕天使たちはあっさりと納得した。前言は撤回しよう。やはり、こいつらには最低限の知恵もない。

 小一時間後、饗宴が始まった。
 高級なドッグフードおよびキャットフードが盛られて、床のそこかしこに置かれた器。
 それらかに群がる子犬や子猫たち。
 犬のほうは無言だが、猫の多くは『んなんなうぅ~』と独特の唸り声を発している。『うまい! 美味い! うまーい!』という歓喜の叫喚か。あるいは『これは俺の分だ! おまえらは食うなよ!』という威嚇の咆哮か。
 ちなみに言っておくと、皿に盛られているのはイレーヌが用意していたペットフードだけではない。量が足りなかったので、より高級なペットフードを買い足してきたのだ(小一時間もかかったのはそのためだ)。
 もちろん、イレーヌから奪った金を使って。

●ドロシー・オズマ(アリス適合者のプリンセス・f20255)
 一つの器の周りに複数の子犬さんと子猫さんが集まり(お皿の数よりも子犬さんと子猫さんの数のほうが多いの)、頭をぶつけ合うようにして一心不乱にペットフードを貪ってる……ああ、可愛い! 見てるだけで心が癒されるぅ~!
 でも、癒されてることを堕天使さんたちに悟られるわけにはいかないわ。綻びそうな口許に力を込めて、悪役っぽい微笑をキープ。
「イレーヌへの嫌がらせはもういいだろう。そろそろ、動物たちへの本格的な虐待を始めようか」
 すべての器が空っぽになると、メナオンさんが動き出した。あいかわらず無表情だけれど、わたしのようにそれを意識的にキープしているわけではないみたい。
「おまえたちも手を貸せ」
「喜んでー!」
 と、堕天使さんたちが一斉に答えた。メナオンさんとは対照的に表情が期待に満ち満ちている感じ。
「で、どんなギャクタイをするのー?」
「水責めと熱風責めといったところかな」
 ペットフードと一緒に買ってきたアイテム――ドライヤーやシャンプーをメナオンさんは堕天使さんたちに配り始めた。
「では、私も水責めといこう」
 そう宣言した緋色さんの横に蒸気仕掛けらしき奇妙なガジェットが出現。ユーベルコードで召喚したのかしら?
「貴様ら、まとめて屠ってやるわー!」
 いかにも悪役といった感じの台詞を口にして、緋色さんはガジェットに付いているシャワーヘッドみたいなものを掴んだ。
 そして、傍にいた何匹かの子猫さんたちにそれを向けて――
「そいやー!」
 ――お湯を放出した。『シャワーヘッドみたい』じゃなくて、まんまシャワーヘッドだったのね。
「う゛み゛ゃあ゛ぁぁぁーっ!?」
 子猫さんたちは絶叫し、逃げ惑った。猫っていうのは水に濡れるのが苦手だものね。
「どうだ、魔導蒸気の力で噴射される洗浄剤&ぬるま湯は? 一度でも味わってしまうと、もうコレなしでは生きられなくなってしまうぞぉ」
 容赦することなく、お湯を浴びせ続ける緋色さん。
 そんな彼にやんややんやと喝采を送りつつ、堕天使さんたちが子猫さんたちを追い回しては捕まえ、お湯の餌食にしている(当然、堕天使さんたちもびしょ濡れで泡まみれになってるんだけど、ちっとも気にしてないみたい)。
「こんな凄まじいギャクタイを思いつくなんて……さすがだね、新ボス!」
「これこそ、僕らが求めていたワルの生き様だ!」
「いやいや、あっちの新ボスも負けてないぞ!」
 堕天使さんの言う『あっちの新ボス』とはメナオンさんのこと。堕天使さんたちの別の一団に手伝ってもらいながら、子犬さんたちを入浴させてるわ。
 悲鳴を響かせている子猫さんたちと違って、子犬さんたちはおとなしく洗われてる。猫ほどには水が苦手ではないから……だけじゃなくて、メナオンさんの手付きが意外と優しくて丁寧だからかな?
 もっとも、子猫さんたちのほうもいつの間にかおとなしくなってるけどね。体を洗ってもらうことの気持ち良さを知って、緋色さんの予言通りに『コレなしでは生きられなくなって』しまったのかも。
「くくくくく。お次は毛先を切り刻み、野性味をすべて消し去ってやるわ!」
 緋色さんはトリミング用の小さな鋏を取り出して、子猫さんたちの毛並みを整え始めた。それを見て、堕天使さんたちはまたも『すごーい! ワルーい!』と大喝采。どこらへんがワルいのか、私にはもう判らないけど……。
 あ? メナオンさんの作業は仕上がったみたい。ふわふわの毛並みになった子犬さんたちを順番に撫でてるわ。満足げに笑いながら……なんてことはなく、いつも通りに無表情。
 でも――
「――どことなく嬉しそうに見えるのは気のせいかしら?」
 私が思わず声に出して呟いた。
 それが聞こえたらしく、緋色さんがメナオンさんをちらりと一瞥。
 そして、にっこり笑って、私に言った。
「気のせいじゃないと思うよ」

「ギャクタイって、楽しい!」
 無表情を貫くメナオンさんの心を代弁するかのように、彼と一緒に子犬さんを撫でていた堕天使さんが叫んだ。
「もっともっとギャクタイしたいなぁーっ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月26日


挿絵イラスト