7
ブリンガー/マギステル(作者 やさしいせかい
4


#アポカリプスヘル  #ヴォーテックス・シティ 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
🔒
#ヴォーテックス・シティ


0



●怠惰な蟻
 欲望と混沌渦巻く罪過の都市――『ヴォ―テックス・シティ』。
 饐えた臭気が硝煙の風と共に運び込まれる中、継ぎ接ぎのように鉄板を纏い着る男は機械式の義眼で周囲を見回していた。
「……遅い。この俺が "上" に何を言われるのか、コイツらは分かってんのか?」
 ストン、と。
 スティールのボディを鈍く光らせた男はサッカーボールか何かの様に、足蹴にしていた頭骨を蹴り上げた。苛立ちを隠しつつ溜息を吐くこの男の名は『アレクサンドル』という。
 手下達が重機や奴隷の運搬作業に精を出している様を眺めながら、アレクサンドルは自身の境遇を嘆いていた。
 これまで、アレクサンドルというレイダー・キングはヴォ―テックスの下で大きな市場を任されていた。しかしそれも僅か数週間前――奪還者の集団に自身が手をつけていた『商品棚』を陥落されたことで、彼は無能の烙印と共にシティの端に追いやられてしまったのだ。
「面倒だ……作業工程を増やせばそれだけこの馬鹿どもは手の動きを止め、安易な指示を出せばやりたい放題する。クソが」
 それまで自分が育て上げた徒党を取り上げられ、末端の使い捨てレイダー達を押し付けられたアレクサンドルは組織としての機能の低さに頭を抱える。
 洗脳。あるいは別口でヴォ―テックスに回された下っ端も下っ端。まさしくそれは『雑魚』と言っていいだろう。そのような人材しかいない時点で、シティを追い出されていないだけ腕は買われているとしても前途を鑑みれば相応の苦労が目に見えていた。
 アレクサンドルは有能だ。個人の質で見れば決して高い戦闘力ではないが、他のレイダー・キング達が育成を投げた人員を上手く運用しているのだから。組織を束ねる者としては稀有な資質を備えたレイダーだろう。

 彼は、当面は手下の練度を上げる事ではなく、自らの下で仕事をするという義務感を植え付けるべきだと考えている。
(暫くは都市の機能整備に回しながら人狩りを並行させる。命令に背いた奴等を片っ端から殺して数減らしと教育を両立させるとするか)
 義体の腕をカリカリと引っ掻く真似をしてから、アレクサンドルは手下達にPHS端末で指令のメールを一斉送信した。この日の行動順と仕事内容が記載されたものだった。
 送信完了の文字が出たのと同時、銃声が曇天に轟いた。
「メールの着信音が聴こえなかった奴は速やかに名乗り出ろ。聴こえた奴等は確認後、次の作業に取り掛かれ……わかったか?」
 低い声が淡々と続く。次いで、その声に男達が雄叫びのように応答する。
 皆既に、仲間がこのアレクサンドルの『仕事前のひと手間』で何人も命を落としているのを知っていた。
 ギシリと軋みを上げる鉄板。ヴォ―テックスの空を見上げたアレクサンドルは息を肺に吸い込んだ。
「……人間狩りだ。とっとと終わらせようじゃねえか、ガキの7、8人を連れてくりゃそれでいいんだ」
 饐えた臭気が鼻腔をくすぐる。
 レイダー・キング。アレクサンドルは、自らの惰性を吐き出しながらヴォ―テックスの壁外格納庫へと向かうのだった。

●赤い悪夢
 ――視える光景に差は無い。
 ただ、赤々と燃える拠点の隅で蠢いている人と。人でないモノの形だけが赤く映し出されている。
 炎が渦巻く度、誰かの悲鳴が聞こえて来る。屑鉄寸前のバイクを走らせたレイダー達が奇声を上げ、銃弾を撒き散らし、放たれた怪物が敵味方関係なく喰らいまくる。
 悪夢だ。
 統率の取れたレイダー達は無駄な行動は取らずにただ暴れ、そして人を攫いその場を去って行く。殆ど戦闘行為を取らず、相手を傷付けて逃走に走る彼等は拠点に駐在していた『奪還者』を自称する者達でも止められない。レイダー側から放たれた奇怪な大型の甲虫が行く手を阻んでいる為だ。
 陽動と遊撃にも思えるこの連携がまさか、ただ各々が許された行為を何も考えずに実行しているだけだなどと。誰が気付くだろうか。

●作戦会議
 シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は会議室の机上に腰を下ろした姿勢のまま、集まった猟兵達に簡単に予知した内容を伝えた。
「ヴォ―テックス、シティ……か。凄い所だな、人の中でも分かり易い悪ってカンジがする。
 さっき言った通りだ。このアレクサンドルとかいう連中のやり口は猟兵が事前に介入しないと被害ゼロを達成するのが難しい相手だと思う。
 潜入して、奴等が荒野に人間狩りに行く前にその『足』をぶっ壊すしかない」
 目を細めたシックは続ける。
 彼女が見た限り、敵の機動力は主にクルマに依存している。惨劇を回避するならばアレクサンドルの徒党が備える車両を破壊し尽くすしかないだろう。
 幸いにも相手は末端組織のようだ。潜入するならば隠密に徹するか、上手く陽動を行い仲間の手を滑り込ませるか、自ら愚者の中に混じり工作するかに寄るだろう。
「……手間はかかるだろうがやり方はいつも通り、あんた達に任せる。
 分かってると思うけど蟲型のオブリビオンには気をつけろよ? ……あれは、シンプルに厄介だ」





第2章 ボス戦 『アカメ』

POW ●【のたうつ災厄(The Berserk)
【怒りに任せ、体内の血流】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
SPD ●拠点喰らい(Base Eater)
【地表付近の地中を潜行し、地中からの強襲】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を破壊し、地盤沈下を引き起こす事で】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ ●アカメ(Fake Oblivion Storm)
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【砂塵で確実に殺害し、赤い目のオブリビオン】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ユウキ・スズキです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●赤い眼――
 ヴォ―テックスシティの空を暗雲が覆う。
 彼の街には幾つもの旧文明から残るプラントが存在する、だがそれを動かす者達はロクな計算も整備も行わず。ゆえに巨大工場から流れ続ける科学薬品がその揮発性から強烈な汚染された雨を降らすのだ。……ただでさえ、この荒野には悍ましい放射能の雨が降り注いでいる時もあるというのに、である。
 これから雨が降る。
 まさに都市の中が慌しくなろうとしていた時、燻り続けていた火種は最良の期を狙って炎を上げた。
 ヴォ―テックスシティの下位区画。壁外にまで伸びる下部組織の人狩り用マシンや格納貯蔵庫が軒並み吹き飛んだのだ。
 否。ただ吹き飛んだだけならば、まだどうにか出来たかもしれない。
 問題なのはマシンを集中的に破壊された事だ。連鎖的に起きた小規模の爆発は大量の負傷者を出し、同時に近隣への被害が少なかったが為に周囲にこの異常事態が察知されなかったのである。
 すべては奪還者組織が、ひいては猟兵達の望んだ展開だった。
 囚われた者達が逃げ出す隙には充分。そして、猟兵達が逃走する時間も十二分にあった。
「……何だ、コリャァ」
 ――もしこの作戦に難所があるとするなら、それはレイダー・キングの存在だろう。
 キング・アレクサンドルは爆風の熱波を浴びながらも、猛る炎の中で何が起きているのかをハッキリと視認した上で理解する。侵入者は既に仕掛けを終え、この場から距離を取ったばかり。即ち今、この場で追撃と捕縛を遂行できなければ彼はこのヴォ―テックスシティからいよいよ追放されかねない事態が起きていた。

「ボス……ッ!! 俺達のシマにあったマシンが……」
「おせーよ無能どもめ。壁外の格納庫は元々オレの所有物だった、これを探り当てられたってのはお前達下っ端どもの隙に付け入られたんだよ」
 配下のレイダーが息を飲む。アレクサンドルは冷静さを失っていないが、しかし怒りの頂点にあるだろうことは察せられた。
「頭を使うんじゃねえ、いちいちビビッてる暇があんなら消火を急がせろ。怪我人は無視しろ、どうせ換えは利くんだからな」
「了解!」
「ああ、待て。そっちの奴に指揮させろ」
 アレクサンドルが別の配下に行かせると、報告に来ていた配下のレイダーは内心首を傾げた。
「俺に何か……?」
「悪いなァ」
 銃声。
 大の男が地面に薙ぎ倒された後に数瞬遅れて飛び散る血潮を見下ろし、アレクサンドルは懐から端末を取り出して素早く操作していく。
 デジタル画面上に映し出されているのは、何かの昆虫の幼体にも見える画像だった。
「……システムダウンされてるか。制御装置無しじゃァどっちみち人狩りは当面無理だな」
 舌打ちをすること数回。
 レイダー・キングのアレクサンドルは継ぎ接ぎの鉄板に覆われた肌から焼けた肉の臭気を漂わせ、端末を暫く操作してから天を仰ぎ見る。ここが分水嶺だと、半ば確信しながら。

「てっきり俺は、いつかこのクソッタレの世界で誰かに撃ち殺されるんじゃねえかと思ってたんだがな……分からねえもんだ」
 死ぬものか。
 訳も分からず、自らの不手際以外の要素でただの天災に遭うかの様な最期を迎えるわけには行かなかった。
 アレクサンドルは――蟲共が侵入者達のいずれかを喰ってくれることに期待しながらその場を後にするのだった。
黒木・摩那
整備場の爆破はうまくいきました。
あとはシティから脱出するだけですね。

しかし、またすごい追手がやってきたものです。
それだけ怒っているんですかね、やっぱり。

このまま逃げ切るのも手ですが、あの巨体がのたうつと被害も馬鹿にはなりません。
ここで叩いておきましょう。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
UC【偃月招雷】でヨーヨーを帯電。それをアカメにぶつけます。
取り巻きは【なぎ払い】で片付けます。

地下から攻撃してくる敵なので、ビルなどの建物の上に陣取りながら戦います。
建物間は【ジャンプ】やヨーヨーを使って移動します。



 かくして、猟兵達の作戦は半ば成功した。
 レイダー達含め、人狩りマシンに携わっていた要員の過半数に打撃を与えた。これで後は稼いだ時間分だけ安全に都市からの脱出を図るだけだった。
「……あとはシティから脱出するだけですね」
 しかし、何事も上手くいくばかりではないと黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は察する。
 彼女は他の猟兵と同様、事前にあった情報を頼りに怪しい格納庫や整備場を爆破しておいたのだ。それも念入りに、件の『大型車両』に収められているであろう"中身"にも衝撃が入るように設置したのである。
 だが。
「――しかし、またすごい追手がやってきたものです。それだけ怒っているんですかね、やっぱり」
 ヴォ―テックス・シティの下位区画を抜け出そうとしたのも束の間。摩那の背後から鉄板が唸りを上げて転がり飛んで来たのだ。
 瞬時に掌中へと超可変ヨーヨー【エクリプス】を引き寄せ、摩那のステップと同時に鋭角に幾何学模様を描きワイヤーを伸ばして鉄板――焼け焦げた鉄扉を絡め取って宙に縫い止める。
 彼女は鉄扉を捉えた後方に、暴れ狂う巨大ワームの姿を見つけた。
(このまま逃げ切るのも手ですが、あの巨体がのたうつと被害も馬鹿にはなりません)
 指先が動く。同時に彼女の意思が揺れる。
 連動して、宙に縫い止められていた鉄扉が跳ね上がり、弩の如く分厚い鉄扉が熱を持ったまま射出された。
 投げ返された鉄扉は銅鑼のような音を奏でて鮮血と共に突き立つ。

――【ギ、ュィイイイイッッッ!!!!】
 炎を上げる大型車両から這い出て、のたうつ、赤い眼から蒸気を滾らせる巨大甲虫。
 それは牛の腸に似た巨大なワーム型のオブリビオンだ。恐るべき巨体はその質量さながらの破壊と、悪意の塊ともいえる異能を宿していた。

 格納庫の近辺にいた事で爆発に巻き込まれたレイダー達の中で、【アカメ】の傍に転がっていた者達を赤い瘴気が包む。
 摩那の牽制によって怒り狂っていたワームは、その牙を"伸ばす"べく。意識の無いレイダー達を体内から噴き出した赤い砂塵によって命を奪い、彼等を自らのしもべとなるオブリビオンに造り変えてしまう。
 恐ろしい咆哮を上げ、のたうち、僅か二分も経っていない時。
 摩那の眼前で屍人のようにレイダー達が立ち上がり、殺意を奔らせた。
「なるほど」
 ――たった一言。
 小さく口の中で呟いたその言葉と同時に摩那の操るエクリプスが駆け抜け、ワイヤーが一直線に伸びて動く屍と化したレイダーたちの間を通り抜けて行く。
 空中で急制動が掛かりアクセルが跳ね返る。
 屍人を捉えたエクリプスを紅雷が伝い走り、次の瞬間。摩那の繰り手に応じてワイヤーが電流の爆ぜる音と共に屍人たちを薙ぎ払ってみせたのだ。
 取り巻きを瞬時に無力化と同時に遠ざけた彼女は更なるサイキックエナジーを励起させ、エクリプスの破壊力を増幅させる。
(『あれら』は以前に相対したモノに近い存在でしょう。幸いにも生物としての機構はそれほど変わっていない様子……特別、警戒すべきはあの巨虫ですね)
 パン、と掌に返るアクセルを握り。念動力も併せた脚力でその場から摩那は飛び退く。
 ほんの数瞬後に地響きが起きたかと思えば、土砂が十数メートルも撒き上がった。
 摩那が立っていた地面を吹っ飛ばして顔を見せたのは、やはりアカメなる巨大ワーム。彼女が取り巻きの屍人を薙ぎ払った一瞬の隙を衝いて地中に潜っていたのだ。
(地中に潜っている本体の熱源反応から考えられるに……車両に収まっていた時よりも大型化しているようですね。甲虫の幼体と同じく体を折り畳んでいたのでしょうか?)
 冷静に分析と考察を続けながら、摩那は近くのビルの壁面を駆け上がって屋上へと跳躍する。その際に身を捻ってエクリプスを放った彼女は既に眼下にアカメが迫って来ているのを確認していた。
 紅雷が伸び、サイキックによる回転エネルギーを保ったエクリプスが巨大ワームの赤い眼の一つを抉って見せた。
 三度目の咆哮。
 しかし今度は悲痛な、突然のカウンターに驚いたかのような鳴き声だ。

 ――膨張する、ワームの巨体。
 摩那はその様子を見て奇襲の気配を感じ取ると、即座にビルの屋上から別の家屋の屋根に向かって跳ぶ。
 アカメの巨躯が15mを越えるものだと分かったのは、摩那が飛び退いた後のビルに突如立ち上がったワームが突っ込んだ時だった。
 衝撃からの濛々と立ち昇る粉塵の奥で再度アカメの気配を見通した摩那は、周辺被害を抑えるべく自らの立ち回りを限定する。
(この下位区画にいるのは、レイダーばかりとも限りませんからね)
 仲間の猟兵が囚われた人々に接触したと聞いているのもあり、摩那は今暫くこの場に留まることを決めていた。
 華奢な体躯が宙を水平に滑る。
 紅雷が糸を引く毎にその体は空中で加速、跳躍する。着地の隙は見せず、摩那の繰り手から弾かれたエクリプスは正確無比に地上を蹂躙するアカメを打ちのめして行った。
 ドン、という鈍い音。
 それは摩那の【偃月招雷】により帯電したエクリプスが赤い眼を、肉を爆ぜ飛ばした音だ。
 高速で飛び回り、時にはワイヤーを伸ばし空中で軌道を変えて翻弄する彼女をアカメは捉えられない。
 次々に潰されて行く赤い眼。それらが地中で更に挽き潰され、激痛と自らの血液で訳も分からずさらに制御を失ったアカメは、やがてその動きを止める事となる。

 数分の時が経った頃。
 レイダー・キングの追手がその場に殺到したが、そこに残されていたのは瓦礫と――焼け焦げて転がっていた巨大ワームの死骸だけだった。
大成功 🔵🔵🔵

木霊・ウタ
心情
こいつが人喰らいの蟲野郎か

命を
未来を喰らう奴をここで還してやる

攻撃
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

振る瞬間
刃からの爆炎で剣速を加速

甲ごと肉を砕くつもりだけど
狙いは飛び散る火の粉や延焼する炎だ

砕いた甲から
或いは蟲の穴から
獄炎を蟲内部に広げる

血液を蒸発させて力を削ぎながら
中からこんがり焼いてやるぜ

地中に逃げても
燃え上がる炎で
居場所は丸わかりだぜ

のたうち回る蟲へ紅刃一閃
灰に帰す

防御
地中からの攻撃を振動で察知

巨大剣で受け流したり
爆炎の反動で回避

砂塵を剣風で相殺
人を出来るだけ庇う

虜囚なら勿論
下衆なレイダーだって
オブリビオンになることはないからな

事後
鎮魂曲を奏でる
あんたもストームの犠牲者だよな
安らかに



 赤々と燃える炎の中。
 そこで動いているモノを目の当たりにしながら、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は【大焔摩天】を手にしたまま外套を脱ぎ捨てた。
「……こいつが人喰らいの蟲野郎か」
 話には聞いていた。グリモア猟兵が視たという、人狩りの際に大勢を喰ったという怪物。
 巨大な牛の腸に似た、巨大ワーム型のオブリビオン……【アカメ】。
 ウタは元より、この怪物が爆発から生き延びるような事があれば必ず成すと決めていた事があった。
「命を――未来を喰らう奴を、ここで還してやる」
 きっと、ここで見逃せば時間をかけてでも巨虫は人を喰うだろう。彼はそれだけは絶対にここで阻止すると決めていたのだ。
 バチバチと爆ぜる火花。
 大型車両には何らかの機材でも積まれていたのだろうか、爆弾によって破壊されたそれは何度か火花を散らしたあとアカメの体躯に潰されて完全に沈黙した。
 その、一瞬の震動からの沈黙は合図だった。
 ウタの手から広がるように伸びた焔は光刃と化した焔摩天を覆い、彼の意思に応じて更なる質量と丈を増して熱を放つ。対峙する巨虫が頭部とも尾とも定まらぬ赤い眼を閉じた先端を地中へ突き立てた瞬間、紅の一閃が濛々と立ち昇る黒煙と火災をまとめて薙ぎ払った。
 切り裂かれた大型車両の残骸が赤く燃えて両断される。しかしそこに巨虫の骸は無く、僅かに散った火花から掠り傷しか負わせていない事をウタは悟る。
「ッ……!」
 爆ぜる。
 自身の足下が揺れたと思った直後、ウタは振り被っていた大剣から獄炎を噴出させた反動で数メートルの距離を滑る。同時に突き立つ巨虫――アカメの姿を再度捉えた彼は身を捻り、反動を活かした遠心力そのままに剣を振るって炎を走らせた。
 爆炎が駆け抜け、土砂を焦がしながら巨虫の分厚い甲殻を砕く。
 耳を塞ぎたくなる様な鳴き声が木霊する。だがウタの大剣は、己が身から湧く焔は止まらず、熱い意志のままに踏み締める足に次いでアカメのもとへ殺到した。

 それは一陣の粉塵、生者を亡者へと変える悪意の霧。
 ウタの一撃によって悶えながらアカメは巨躯から夥しい量の赤い粉を振り撒いていたのだ。
「させるか! 蟲野郎!」
 二撃。袈裟斬りからの逆袈裟に放った一閃が巻き起こす剣風によって掻き消される粉塵。
 近辺の虜囚やレイダーの身をも案じたウタはアカメの凶行から庇い、それを無効化して見せたのだ。
 しかしそれさえも時間稼ぎに利用される。ウタの剣風が粉塵を散らしている間隙を狙い、アカメは地中へと姿を消していた。
 恐るべき潜行能力だが、ウタは大焔摩天を脇に構えたまま意識を集中させてアカメの姿が消えた地中付近を睨んでいた。
 ――揺らぐ白煙。地中から僅かに香る獄炎の"気"。
(ここだ……!)
 ウタの瞳が一瞬、燃える焔の如く揺れたのと同時。突如アカメが爆炎と共に地中から飛び上がって来た。
 眼前を覆う赤い影。それは赤き粉塵をアカメが出しているのではなく、ウタが先に放った一撃を通して甲殻と肉の間へと滑り込ませていた地獄の炎が巨躯を覆うほどに拡散させていた為だ。既に白みを帯びていたアカメの甲殻は黒々と変色しており、あまりの熱量に焼け焦げた肉質の下を流れる血液さえ蒸発させられていたようだった。
 のたうつ巨虫の姿は見るに堪えないものを感じさせるが、ゆえにこそウタは一切の加減なく刃を奮っていく。
「わかってるつもりだ」
 紅蓮の光刃と化した焔摩天が空を切り裂き、その重量ゆえにウタの体躯が遠心力によって宙を滑るように駆ける。
「あんたもストームの犠牲者だよな」
 のたうつ巨体から繰り出された……否、偶々振り抜かれた尾の一撃をウタは地面に突き立てた光刃を使って受け流し。切り上げの動作によって浮いた自身を背部から金色の獄炎を噴くことで重心を落として縫いつける。
 返す刃で焔摩天から奔る劫火を伴った斬撃が巨虫の焦げた甲殻を吹き飛ばす。
 ついに耐え切れずそのまま連鎖的に甲殻が爆裂したアカメが悲鳴を上げた刹那、ウタの焔摩天が音を置き去りにして駆け抜けた。
 真一文字に走る紅蓮。
 次いで。それまで響き渡っていた苦鳴が金切り声に近い、断末魔のそれと変わった直後。一瞬だけ金色の獄炎がアカメを包み込んでから、その場に灰の雨を降らせるのだった。

 眠れ、と青年は静かに降りしきる灰に向けて告げる。
「――安らかに」
 あんな化け物でも、かつてはこの世界を生きる自然の一つだったのだろう。
 アカメの消滅を見届けてからウタが去り際に奏でた鎮魂曲は……そんな『彼等』への手向けだった。
大成功 🔵🔵🔵

アレクシア・アークライト
あれがシックの言っていた蟲型のオブリビオンね
確かにあんな奴らが幾つも飼われていたんじゃ、私達猟兵でもなければそう簡単にちょっかいを出すわけにはいかないわね

本当なら群れをなして襲ってくるんでしょうけど、今はバラバラ、本能のままに動いているみたい
ってことは、戦況を分析してあいつらを指揮するような奴はいないと見ていいかしらね
敵が指揮系統を取り戻す前に退治させてもらうわ

・敵の攻撃を回避するために念動力で空中へと移動
・周囲に展開した力場で周囲の状況の把握と防御を行いつつ、光珠で攻撃
・敵の動きが鈍ったならば、力場で防御しつつ接近。UCを叩き込む

アカメ――
貴方みたいな怪物にその名前はもったいないわ



 ヴォ―テックスシティの壁外。
 ほぼ荒野に等しい、幾つかのマシンやレイダーの徒党が屯しているその場所で轟音が鳴り響いた。
 マシンの故障や事故によるものではない。それは明確な悪意と敵意を以て行われた破壊工作だった。
「逃げろー! 【アカメ】が格納庫から出て来やがった!」
「ボス……ボスに連絡を!」
「勝手にやってろ、俺は逃げるぞォッ!!」
 炎と煙に巻かれて次々に逃げ出すレイダー達。しかし彼等の後ろにある地下へ続く階段から、この世のモノとは思えない奇声が上がってくる。
 『アレクサンドル』の徒党が管理していた人狩り用のマシンを格納していたそこには、大型車両型の運搬格納庫が存在していた。巨大ワーム型のオブリビオンだ。人狩りにあたって効率よく敵対組織の戦闘員を喰らう事を目的とした、いわば生体兵器である。
 幾つかの車両に拘束されていたアカメは爆発や炎によって死に絶えたものの、それでも都市内部にて管理されていた個体や一部の爆発のダメージが軽度だったものが車両に搭載されていた制御装置を破壊された状態で野放しになってしまっていた。
 逃げ去ったレイダー達を追う様に現れる巨虫が鳴き叫ぶ。
 蟲の巨体に開いた穴々から漏れ出る赤い噴霧はそれそのものが猛毒よりも悍ましい能力を有している。加えてその巨体がもたらす質量は甲殻の硬度含め恐ろしい破壊力を身に纏っていた。
「あれがグリモア猟兵の言っていた蟲型のオブリビオンね。
 確かにあんな奴らが幾つも飼われていたんじゃ、私達猟兵でもなければそう簡単にちょっかいを出すわけにはいかないわね」
 土砂を撒き散らし、地下格納庫の火災から生じた黒煙と共に這い出て来た体長15メートルにも及ぶ巨躯をアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は見据える。
 足下で呻いているレイダーを無視して、アレクシアは周囲を薄い【力場】の膜を張り巡らせた。それは不測の事態を防ぐ為であり、彼女が戦闘に入る前の下準備だ。
 気絶しているレイダー達を踏み越えて。赤い髪を湿った風に揺らして歩みを進める。
 アカメは負った火傷のダメージに怒り狂い、暴れている。オブリビオンながらにその様を遠巻きに見たアレクシアは焼かれる虫が悶える姿と重ねたが、あれは怒りによるものとは別だったかと何となしに思う。
 湿った空気に混ざる醜悪な香り。
 暴れる狂うアカメから溢れ出た赤い霧は今も広がり続けているのだ。アレクシアは自らの力場を使い、その霧が戦域から都市へ流れ出ないように不可視のカーテンを一帯に展開した。
 都市の内部からだろうか。遠方からアレクシアの眼前で鳴き叫んでいるアカメと同じく、不快な金切り声が響き渡って来る。
 アレクシアの羽織るコートの中で猟兵達に持たされた端末が震える。懐から念動力で取り出したアレクシアが端末に送られて来た情報に目を通して、それから再び端末を仕舞いながら彼女は足を一歩前に進めた。
「本当なら群れをなして襲ってくるんでしょうけど、今はバラバラ、本能のままに動いているみたい……ってことは、戦況を分析してあいつらを指揮するような奴はいないと見ていいかしらね」
 大地を揺るがすアカメの巨躯はオブリビオンの中でも相当に厄介なタイプだ。その巨体ゆえに統率が取れれば相応の脅威となっていたに違いない。
 だが、それは叶わない。少なくともこの場においては。

 アレクシアが踏み出したその足は地を踏むことなく、空中に置かれた力場を用いて宙へと身を躍らせる。
 そんな彼女の視界の中央で土砂が柱となって撒き上がる。
 猟兵であるアレクシアの気配に気付いたのだろう。アカメは地中に潜り、その巨体を躍りくねらせ猛烈な勢いで彼女の立っていた位置まで一気に突っ込んで来た。
(……? へぇ、思っていたより賢いのね)
 半身を逸らす。
 直後、アカメを拘束していた物と思われる鋼鉄製の歪んだリングがアレクシアの傍を通り抜けて行った。
 まさか狙ったとは思えないが、しかし展開させていた力場を巡る反応を感じ取ったアレクシアは敵の知性を裏付けるものとして肯定した。
 眼下の地中から勢いよく飛び出したアカメが、土砂に紛れて単車サイズの岩石を弾き飛ばして来たのだ。
 アレクシアの体を覆っていた力場が収束する。次いで彼女の周囲を囲むように展開された【光珠】が回転して、飛来した岩石や土石を絡め取るようにして軌道を逸らしてみせる。
 雨雲の奥で雷鳴が唸りを挙げる。
 軌道を逸らした岩石をアレクシアの光珠によって導き、幾度か回転させた後に強力な遠心力を纏ってアカメに投げ返した。
 吹き荒れる暴風に次ぐ爆撃めいた衝撃波が連続し、叩きつけられた岩石によってアカメの巨躯が地中に戻される。
 悲鳴か怒声か、アカメが叫ぶ。その点々とさせた赤い眼から噴霧を垂れ流し、アレクシアに向かって地中から跳び掛かった。
「あの程度の爆弾で傷を負っていたわりに硬いわね。その状態、長くないんでしょう」
 中空で対面する巨虫。その姿は、最初に見た時よりも明らかにその巨大な体を一回り大きく太く、膨張させていた。
 血流操作、或いは生物としての位階を自ら底上げする能力だろう。アレクシアの揮った手から放たれた念動力の奔流がアカメの突撃を払いのけ、後から続いた土砂の柱を引き裂いた。
 湿った空気の中を轟く叫び声。
 弾き返されて大地に叩きつけられたアカメの全身から赤い噴霧が奔る。
 岩と岩がぶつかり合うような衝撃音が鳴り響き、地団駄踏むように暴れるアカメは再度その巨躯を地中に潜らせる。
 アレクシアの張った力場のカーテンがそれら挙動を掌握する。念動力で地中の巨体を圧殺できやしないかと試みたが、まるで効かない。物理的な衝撃ではビクともしないのだろうと彼女は目を細める。
 宙を舞う光珠がアレクシアの周囲でその配置を変える。

 ――【ギ、ュィイイイイッッッ!!!!】

 アカメの咆哮と重なって、アレクシアの周囲から三対の光珠が放たれた。
 超高温にして超高密度のエネルギーであるアレクシアの光珠は念動力による誘導も手伝い、高速にして変則的な動きでアカメを翻弄する。
 硬い甲殻をスプーンで掬うかの如く抉り、削る。しかしその内部の肉まで深く食い込まず、空中を飛び回るアレクシアを捉えようと跳躍を繰り返して荒野の固い大地を耕して荒らしまくっていた。
 ヴォ―テックスシティの傍で破壊が撒き散らされる。
 しかし、それもアレクシアが予見していた通り。長くは持たなかった。
「時間ね」
 地中に飛び込むように落ちて行ったアカメの変化をアレクシアは見逃さない。ほんの一瞬、それまで好戦的だったアカメが初めてアレクシアから逃げるように距離を取る動きを見せたのだ。
 刹那。曇天の下で眩い閃光が弾けて広がる。

「――アカメ―― 貴方みたいな怪物にその名前はもったいないわ」

 アレクシアの背中で配置を変えていた光珠が彼女の言葉と共に前面に来る。
 急速回転する光珠の中央で歪む空間。生み出された閃光は収束、虚空から突如溢れ出した光の奔流と化して地に潜ったアカメを飲み込んだ。
 刹那にアレクシアの赤い瞳が瞬く。
 ほんの一瞬だけ彼女が放った"分解"の術法……【ディスインテグレート】が輝きを増した直後、何の前触れもなく光が消えた。
 粉塵すら起こらず。アレクシアの分解を受けた大地とアカメは光の奔流が通った場所だけが切り取られたかのように消滅していた。
 アレクシアは、自らの分解で開いた力場の穴を即座に再構築してから戦闘が終わった事を確認した。

「さて、と。まだやることはあるわね?」
 空中で踵を返した先、ヴォ―テックスシティの鉛色の壁が視界に広がる。
大成功 🔵🔵🔵