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籠の鳥は空を夢見た

#UDCアース #【Q】 #UDC-P

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 楽園においでよ、一緒に歌おう♪
 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ♪
 楽園にいこう♪
 楽園にいこう♪
 楽園にいこう♪

 ――でも、楽園以外に世界はないのかな?
 皆が食べてる真っ赤なものは気持ち悪くて、本当はこっそり萎びた木の実をを食べていたんだ。
 楽園の外には別の食べ物もあるのかな。
 別の景色もあるのかな。
 もっと楽しいこともあるかもしれない。
 行ってみたいって思うのは……悪いことかな?

 そんなことを言ってしまったら、きっと私が真っ赤なものになってしまう。
 なんとなく、そんな気はしていたんだよ。


「集合お疲れ様。今回はUDC-Pの救出をお願いするよ」
 猟兵達に緩い笑みを向けながら、レン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)が口を開く。今日の依頼はUDCアースが舞台のようだ。
「UDC-Pについては知っているかな? 彼らは怪物でありながら人に害を与えず、悪意を抱かない特異な存在だよ。そんな子がUDC怪物の群れにいるのが分かったから、助けてきてあげて欲しいんだ」
 UDC-Pを無事に保護出来たのならば、今後のUDCアースにおける邪神対策に関して新たな発見が見込めるかもしれない。
 そうでなくても――助けを待つ存在がいるのならば、手を差しのべてあげた方がいい。

「UDC-Pがいるのは廃棄された遊園地、そこにある大きな迷路だ。迷路の内部は異空間になっていて、見た目よりも道のりは長くなるだろう。それ以上に気を付けなければいけないのは……」
 笑みはそのまま、レンはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……迷路の内部には強力な呪いがかけられている。内部を歩く人を狂気に導く呪いがね」
 狂ってしまえばどうなるかは分からない。
 悍ましい幻覚を見聞きする、過去のトラウマに苛まれる、感情が異常なまでに表出する等々、人によって様々な状態に陥ってしまう可能性があるだろう。
 それらをどうにか対処しつつ、先へと進む必要があるようだ。

「迷路を抜ければ、そこは怪物達の楽園だ。UDC-P以外の怪物は君達も、裏切り者も殺そうとするだろう。自分達の安全のためにも、敵は全滅させて来て欲しいよ」
 説明と同時に、レンはグリモアで怪物達の姿を映す。
 そこにあったのは鳥のような人のような存在だ。
「目的地にいるUDCはこんな姿をしているよ。通称『楽園の鳥』、人を喰らいその姿を真似る怪物だ」
 鳥達は自分達の居場所を楽園に作り替え、そこに人々を招き入れる。
 迷路によって狂気に陥った人々は、その苦しみから逃れるために喜んでその身を捧げていたようだ。
 UDC-Pはきっと――そんな光景に胸を痛めていたに違いない。

「僕はUDC-Pに広い世界を見せてあげたいんだ。皆が彼女を無事に連れ出せることを祈っているよ」
 先程よりも柔らかな笑顔と共に、レンは猟兵達をじっと見つめる。そこにあったのは信頼の色だ。
「全部が終わったら、担当者がUDC-Pを迎えに来るけど……それまでの間、彼女と話をしてくれるかな。この子、外の世界にとても興味があるみたいで……でも組織の外には中々出れないだろうから、君達の話で外の世界について教えてあげて欲しい」
 外についてのイメージが上手く持てなかった場合は、脱走等を企てる危険性もある。
 今のうちに彼女の知的好奇心をある程度満たしてあげることも必要だろう。
「色々とお願いすることになるけれど、皆ならきっと大丈夫だよね。それじゃあ、今回もよろしくお願いするよ」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 空に憧れる鳥を助けてあげてください。

●一章「狂気空間へようこそ」
 異空間と化した迷路を進みます。
 この迷路は進めば進むほど猟兵の正気を削ります。結果として幻覚や幻聴、トラウマの想起、感情の爆発など様々な症状に見舞われるでしょう(内容はお任せします)。
 上手く耐えながら進んで下さい。

●ニ章「楽園の鳥」との集団戦
 UDC -P以外の敵を倒しきって下さい。
 怪物達は猟兵は勿論、場合によってはUDC-Pにも狙いを定めてきます。
 守ってあげるのもいいでしょう。

●三章「UDC-P対処マニュアル」
 保護したUDC-Pは外の世界に興味津々です。このままだと脱走も企てる可能性があるでしょう。
 それを阻止するために、彼女に話をしてあげて下さい。
 どんな話が好きなのか反応を試してみるのもいいですね。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『狂気空間へようこそ』

POW   :    自我を見失いながらも、強靭な精神力を全力で発揮することで狂気を振り払う

SPD   :    正気を損ないながらも、現実を感知し冷静さを取り戻すことで狂気から抜け出す

WIZ   :    理性を削られながらも、自らの術や智慧を駆使することで狂気を拭い去る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達は目的の遊園地、そこにある巨大迷路へと足を踏み入れた。
 歩いて暫くは何も起きなかったが――進めば進むほど、じわじわと頭の中が何かによって蝕まれるような感覚に陥っていく。

 楽園においでよ、一緒に歌おう♪
 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ♪

 迷路の奥から響く歌声は、少しずつ猟兵達の正気を失わせていくだろう。
 それにどうにか耐えながら、とにかく奥まで進まなくては。
朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。こりゃ楽しい。いいよォ、楽しィく狂いながら歩こうか。ああ、俺は体力がないンでね。眷属の《獣》からシカを喚んで乗せてもらおう。俺が乗れるデカいやつさ。かわいいね。仔はみィんなかわいい。生きていても、死んでいても…。仔だけじゃねェ、"いのち"はみィんな大好きさ。そりゃア俺は死だし暗がりだが、だからって赦(*あい)さないわけがない。無はこそ有をいとしむものさ、対の関係なんだから。虚無をもって存在を言祝ごう。みィんないとおしい。あいらしい。なにもかもぜェんぶ赦している。だからみィんなどうでも好い。どうあっても。腐り果てたって可愛いよ。
行動)(症状・愛情の爆発。シカの背で出口まで運ばれる)




 ひ、ひ。こりゃ楽しい。
 小さく身体を震わせながら、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は迷宮の中を突き進む。
 視線を下方へ向ければ、そこにいるのは大きな鹿だ。その背に悠々と腰掛けながら、逢真は不思議な感覚を愉しんでいた。
「いいよォ、楽しィく狂いながら歩こうか。こうやって進めるのもお前さんのおかげだねェ、かわいいねェ」
 ふわりと鹿の背を撫でてみれば暖かな感触が返ってくる。この仔は自分の眷属だから、他の獣に比べれば直接触れても問題はない。
 けれど、そうでなくても。仔はみィんなかわいい。それが生きていようと、死んでいようと。
 聞こえてくるのは鹿の足音に、遠くから響く鳥の歌声。
 一緒に歌おう、楽園は素敵だよ。誘う歌声に身を委ねるのも悪くない気分だ。
「この迷宮を進むやつも、奥にいるのも……"いのち"はみィんな大好きさ。かわいい、かわいい」
 くつくつと声を零しつつ、逢真は更に楽しく笑い続ける。
 自分の存在は死で暗がりだけれど、だからといってすべてを赦(あい)さない訳がない。
 無はこそ有をいとおしみ、対の存在らしく虚無をもって存在を言祝ぐ。
 帳尻合わせの任があるからいのちの接する訳じゃない。自分が彼らに近づくのは、そのいとおしさ故だ。

 迷宮を進めば進むほど、歌声は更に強くなる。
 けれど鹿の足取りは歩まず、ただ淡々と先を目指しているようだ。
 一方、逢真の方は、堪えきれずにからからと笑いつつ空を見上げていた。
 微かに見えたシルエットは楽園を飛ぶ鳥だろうか。そちらに少しだけ手を伸ばし、手を振って。
「うんうん、みィんないとおしい。あいらしい。なにもかもぜェんぶ赦している。好い気分だねェ」
 一際大きな笑い声をあげたあと、ふ、と――逢真の表情が、瞳が、色を無くす。
「……だからみィんなどうでも好い」
 いのちはかわいい。いとおしい。愛すべき存在だ。
 けれど――それを生きたまま愛でる必要なんて、どこにもないのだ。
 すべてのいのちはどうあろうと、腐り果てたって可愛いのだから。
「奥にいる仔達も赦してあげないとなァ。どんな風に愛でてやろうか」
 再び耳に入る歌声に身を委ね、逢真の表情はゆるゆるとした笑みに戻っていく。
 ああ、分かってる。これだけ気分が好いのはこの歌声の影響だって。
 それでも、根っこの部分までは変わらない。皆を愛おしく感じるのなら、そのままでいいのだろう。
 死は全てを赦し、包み込むものなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

エスタシュ・ロックドア
楽園、な
牢獄の間違いじゃねぇか
外へ憧れるまま飛び出した身としちゃ、
お節介も焼きたくならぁ
そんじゃお迎えにあがろうかぁね

迷路は【第六感】頼りに進む
【呪詛耐性】【狂気耐性】で耐えながらな
それでも無理なら『群青業火』でFree soulに火ぃつけて一服
【落ち着き】を取り戻す
鎖の付いた足枷は【怪力】で無理やり引きずっていく
――枷?
ああ、こう来たか
気が付きゃ首にも手にも似たようなのがぶら下がってやがる
どこに繋がってるんだか
フリント振るっても砕けやしねぇ
ジャラジャラうるせぇ、耳障りだ
引っ張られても踏ん張って耐える

いいだろう、そのまま行ってやるよ
鉄の塊がぶらさがってるだけのこった
俺を邪魔するものは何もねぇ




 響く歌声を耳にしつつ、エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)は迷路をひたすらに突き進む。
 足取りは緩めないようにしつつ、思い返すのは事前に聞いた説明だ。
「楽園、な」
 そんなの、牢獄の間違いじゃねぇか。
 隠れ里での生活を良しとせず広い世界へ飛び出したエスタシュにとって、籠の鳥の立場には思う所が多々あった。
 嘗ての自分のような存在がいるのなら、お節介も焼きたくならぁ。
「そんじゃお迎えにあがろうかぁね」
 勘を頼りに、エスタシュはただ道を進んでいく。
 ――少しずつ深まる歌声が、どこか不可思議だった。

 迷路の内部はそこまで複雑でもなさそうだ。
 数々の冒険を経てきた猟兵からすれば、道に迷う危険性は少なそうに見えている。
 ならば気をつけなければいけないのは歌だろうか。エスタシュは懐から愛用の煙草を取り出すと、口に咥えて己の炎で火をつける。
 群青色の炎によって火を灯された煙草からは馴染んだ香りが伝わってきていた。
 そのまま肺にも煙を入れて、一息ついて。この感覚も香り豊かな煙草の味わいも、日頃から馴染んだものだ。
 だからこのまま進んでいこう。足の枷だって慣れたもの、このまま羅刹の怪力で引きずって――。

「――枷?」
 不意に抱いた違和感を確かめるべく、エスタシュは自分の足元に目を向ける。
 そこにあったのは、鈍く輝きを放つ鎖付きの枷だ。
「ああ、こう来たか」
 もう一度煙草を吸おうと手元を見れば、そこにも重い枷が嵌められている。首元にも鎖の影が見え隠れしていた。
 念の為に鉄塊剣『フリント』を鎖に向けて振るってみるが、ただ金属同士のぶつかり合う音が響いただけだ。
 一体この鎖はどこに繋がっているのだろう。その先に目を向けても、見えるのは深い闇だけだ。
 けれど、どこかに繋がっているのは間違いない。急に引っ張られる感触を感じ、エスタシュはすぐに足を床へとつけた。
「ああ、ジャラジャラうるせぇ、耳障りだ。けどよ……いいだろう、そのまま行ってやるよ」
 こんなものに足を止められてなるものか。鉄の塊がぶらさがってるだけのこった、俺を邪魔するものは何もねぇんだ。
 身体にしっかりと力を籠めて、エスタシュは更に迷路の奥へと進んでいく。
 重いものを振り払ってここまで来たのだ。俺の自由はこんな鎖で縛られやしない。
 羅刹の青年は、しっかりとした足取りで目的の場所を目指していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オルト・クロフォード
【POW】

……外の世界への憧れ、カ。
なんだか他人事とは思えなイ……

外の世界は興味深いものに溢れているということを教えたいものダ。

そのためにもまずは……ムムム……狂気……これもまた狂気カ……この世界のこういうのは未だに慣れないナ……

……何か見えル……私の、真の姿……
時計の針の羽……感情のない顔……

そうダ、私はこうなるのが怖イ。
どうしてなのか理由は分からないガ……感情を無くしてなお動くという事ガ、ただの人形になることガ、私にとって、恐ろしイ……

……落ち着こウ。私は真の姿に今なっていないシ、怖いと思えているならまだ大丈夫ダ。そう言い聞かせて【元気】を取り戻しながら進むゾ!




「……外の世界への憧れ、カ」
 ぽつり、呟きを零しつつオルト・クロフォード(クロックワーク・オートマトン・f01477)は迷路を進む。
 自分はいつの間にか外に出ることが出来ていたけれど、もしそのきっかけがなかったら。
 まるで嘗ての自分のようなUDC-Pを思い、オルトは微かに目を伏せる。
「外の世界は興味深いものに溢れているということを教えたいものダ」
 顔を上げ、明るい表情を浮かべつつ気を取り直して。
 けれど迷路を進めば進むほど、不気味な歌声が身体へと響いてくる。
 その響きは頭の中もぐわんと揺らし、目の奥がチカチカするような感触すら浮かび上がっていた。
「ムムム……狂気……これもまた狂気カ……」
 広い世界は美しいけれど、このような狂気には未だ慣れない。
 眉を顰めた瞬間、オルトの緑色の瞳は――ひとつの影を捉えていた。

「……あれハ、私の、真の姿……」
 見間違えるはずもない。進む先に立っているのは、オルト自身の別の姿だ。
 背中には時計の針のような羽根が生え、虚ろな瞳は世界を見ても煌めかない。
 ただひたすら『人形』のような自分を見遣り、オルトは小さく頭を振った。
「そうダ、私はこうなるのが怖イ」
 認識するのは自分のこころ。理由は分からないけれど、ああなってしまうのはとても怖い。
 感情をなくしたままで動いてしまったとしたら。ただの人形になってしまったら。自分はどうなってしまうのだろう?

 けれど今は大丈夫。顔をぺたぺたと触ってみれば、自分の表情が動いているのはよく分かる。
 背中に妙な重みもない。あるのはいつも着ているローブの感触だけだ。
 落ち着こう、と深く意識しつつオルトはしっかりと前を見据える。
「……大丈夫。怖いと思えているならまだ大丈夫ダ」
 そう、今抱いている恐怖こそが道標。
 こんな風に感じるこころがある内は、自分はまだまだ大丈夫。
 迷路の奥には自分を待っている存在もいるのだ。ここで立ち止まる訳にはいかない。
「よし、元気を出しながら進むゾ!」
 ぱぁっと明るい笑みを浮かべ、幻を振り切るようにオルトは進む。
 怖い気持ちも、ワクワクする気持ちも、誰かを助けたいと思う気持ちも。
 全部引っくるめて進んでいけるなら、自分はまだ自分らしくあるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオ・ウィンディア
迷路ってどうやって攻略すればいいかしら
・・・初めはそんなことを考えていた

◆SPD
幻聴
「なんでお前だけっ・・・!」
これは男の子、確かそう
「私はそんなの・・・幸せじゃなかった!」
これは私の声、確かそう
今でも疼いている怨恨と愛情
ズキリと痛い

ふ、ふふ、はははは!
長い髪をふわりと波うたせ、くるりと回ればそこが私の舞台
悲劇、喜劇、今更なんだというの
感情が私を昂らせてくれるなら、私はそれを歌にする

楽園へきたよ、一緒に歌おう♪

遠い過去、ある日は潮の匂い、ある日は熱砂の匂い。
いろんな私がいたけれど、今は一番墓土の匂いが愛おしい
あの日のトラウマさえも、今は愛おしい
激情があるかぎり私の歌は絶えないのだから!




 きょろきょろと周囲を見回しつつ、リオ・ウィンディア(Cementerio Cantante・f24250)も道を進む。
 不気味な歌声が彼女を奥へ奥へと導き、行く手だけは教えてくれている。
 大きな迷路なんてどうやって進んでいけばいいのだろう。そしてこの先に待っているのは何だろう。
 最初はそんなことを考えながら進んでいたが――次第に歌声とは別のものが聞こえてきていた。

「なんでお前だけっ……!」
 最初に聞こえてきたのは、子供の声だ。
 ううん、違う。私はこの声を知っている。これは男の子の声だって。
「私はそんなの……幸せじゃなかった!」
 返す言葉は私の声。記憶は少し朧げだけれど、それでも確かに覚えてる。
 渦巻くのは怨恨と愛情。ずきりと痛むように、まだ胸の奥に疼いている。
 鳥達の歌声に合わせ蘇る記憶は――リオを不思議な衝動へと突き落とした。
「ふ、ふふ、はははは!」
 くるりくるり、踊るように身体を回せば、長い髪がふわりと波打つ。
 そうか、ここは舞台だったんだ。鳥の歌声がリオを導き、湧き上がる感情はひたうらに身体を突き動かす。
 悲劇、喜劇、今更なんだというの。過去はただ感情へと昇華され、それが自分を昂ぶらせるのなら――私はそれを歌にする。

「楽園へきたよ、一緒に歌おう♪」
 響く歌声に合わせ、リオは高らかに声を合わせる。
 記憶と同時に蘇るのは強烈な匂いだ。ある日は潮の匂い、ある日は熱砂の匂い。その遠い過去すべてに私がいたけれど、一番好きなのはそれじゃない。
 大好きなのは墓土の匂い。あの匂いが愛おしくて、それが今の私を形作ってくれている。
 だから――思い出したあの日のトラウマだって、今は愛おしい。
 狂気が、トラウマが、溢れる衝動が身体を蝕んだとして何だと言うのだろう。
「激情があるかぎり私の歌は絶えないのだから!」
 両手を広げ、スカートの裾をくるくると揺らしつつリオは進む。
 さあ歌声よ導いて。私を楽園へと迎え入れて。
 そして一緒に歌を歌って――そこから先は、一番好きな場所へと連れて行ってあげるから。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒影・兵庫
(『狂気耐性』と『呪詛耐性』を付与した『オーラ防御』で身を護りながら迷路を『ダッシュ』で駆け抜ける)
トラウマや幻覚に苛まれるとのことですが特に何も起きないですね?
(「...そうね」と頭の中の教導虫がか細い声で返答する)
?せんせー?
(「ううん!何でもない!さ!早く抜けよう!黒影!」)
はい!
(教導虫には夕日が沈む海岸で車椅子に座った老人が自分にしがみつきながら「死にたくない、一人にしないでくれ」と懇願している光景が繰り返し流れている)
(「...なにか楽しい話でもしない?黒影」)
はい!せんせー!ではこの前の美味しいシュークリームの話でもどうでしょうか!?
(「あぁあれね。いいね。聞かせて?」)
はい!




 歌声に導かれるように真っ直ぐに。
 淡い光に包まれながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)はひたすらに迷路を進む。
 自身に施した防御のおかげか、兵庫の調子はいつもと同じく明るいままだ。
「トラウマや幻覚に苛まれるとのことですが特に何も起きないですね?」
 きょろりと周囲を見渡しつつ、声をかけるのは脳の中にいる教導虫『せんせー』だ。
 せんせーだってきっといつも通りのはず。そんな兵庫の予想とは裏腹に、返ってきた声はどこかか細かった。
『……そうね』
「? せんせー?」
 投げかけられた不安げな声に対し、せんせーが小さく息を呑んだような気がした。
『ううん! 何でもない! それよりさ! 早く抜けよう! 黒影!』
「はい、分かりました!」
 よかった。せんせーも大丈夫そうだ。兵庫はぱっと笑顔を咲かせると、再び迷宮を駆け出していく。
 ――自分の脳の中で何が起きているかなんて、分からないのだから。

 見えたのは夕日が沈む海岸だった。潮の香りは懐かしいけれど、それよりも強く自分を掻き立てるのは――。
「死にたくない、一人にしないでくれ」
 老人の、やせ細った腕が肩を掴む。
 その人は車椅子から立ち上がることが出来ないから、自分が屈むことで高さを合わせた。
 きっとその腕を振り払うより、その人が砂の上に倒れ伏す方が嫌だったから。
「死にたくない、一人にしないでくれ」
 老人は何度も肩を揺さぶり、何度も悲痛な懇願の言葉を叫ぶ。
 その時、私は――。

『……ねえ黒影、なにか楽しい話でもしない?』
 記憶を振り払うように、せんせーが愛しい教え子へと声をかける。
 出来るだけいつものように、彼が何も気づかないように。
「はい、せんせー! ではこの前の美味しいシュークリームの話でもどうでしょうか!?」
 帰ってくるのは明るい声。ああ、よかった。この子がいつも通りなら、私もきっといつも通りでいられる。
『あぁあれね。いいね。聞かせて?』
「はい! お店に並んだ時は大変でしたよね……」
 ここから続くのは楽しいお喋り。それはきっと迷路の終わりまで続く。
 兵庫の声が聞こえていれば、懇願の叫びだってかき消されるはずだから。
 こうして歌声に紛れるように、迷路には弾むような少年の思い出話が響くのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
楽園ねぇ
…まあ、言うのは無料ですから別にいいんですけど、楽園の定義とかその人次第でしょうよ

助けられなかった人の声が聞こえる
目の前で朽ちていく人を思い出す
どうして?なんで?を何度も繰り返す
流れる自分以外の血が溜まっていく
空気が渦巻き、息が詰まる
その全てがこちらに向かって手を差し出し…

まー知ったこっちゃないですけどね(ケラケラ)
結局今から動こうと間に合わないものは間に合わないんですよ

どーせ最初から、正気なんて残ってないのです
削れても誤差よ誤差

(アドリブ絡み歓迎)




「楽園ねぇ」
 この手の案件にはそういう言葉がつきものだ。呆れるように呟きを零しつつ、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)も道を進む。
 楽園。えらくふわふわとした概念だ。言うのは無料だから別にいい、でもその定義は誰が定めるのか?
 少なくともUDCの言うような楽園は、自分にとって決して良いものではないだろう。
 そう思う拓哉を呑み込むように、ひたすらに歌声が響いていた。
 そしてその中に紛れるように聞こえてきたのは――人の声だ。

 どうして助けてくれなかったの。
 ああ、これは間に合わなかった人の声だ。
 どうして手を取ってくれなかったの。
 これは目の前で朽ちた人の手。
 なんでもっと早く来てくれなかったの。
 俺としては精一杯頑張ったんですけどねぇ。全部が上手く行く訳ではないですから。
 なんで。どうして。なんで。どうして。
 気がつくと足元の感触が妙だ。
 どこかどろりとした赤黒い液体が靴を、ズボンの裾を汚している。
 これは自分以外の人達が流した血だ。
 むせ返るような匂いが肺を冒し、空気が渦巻き、息が詰まってしまいそう。
 そして血の道から飛び出した腕がゆっくりと身体を掴んで――。

「まー知ったこっちゃないですけどね」
 けらけらと笑い声をあげながら、なんともない風に腕を振り払い拓哉は進む。
 過去が自分を蝕んだとして何になるのだろう。全ては終わってしまったことなのに。
「結局、今から動こうと間に合わないものは間に合わないんですよ。だから俺はこーやって前に進むんです」
 救えなかった人達よりも、今助けを求めている者に意識を向ける方がよっぽど建設的だろう。
 迫る腕をどんどん払い、血の海を蹴散らしながら拓哉は更に道を往く。
 歌声に紛れて人々の声は未だに聞こえてきていた。そんな風に考えるお前は狂ってしまっているって。
「……どーせ最初から、正気なんて残ってないのです」
 怪物がこちらの正気を削ってしまおうと、そんなのはもう些細なこと。
 それよりもさっさと楽園とやらを見せてくれ。しっかりと目で見定めて、笑って帰ってやるのだから。
「さー、どんどん行きましょう。猟兵のお仕事もばっちりこなさないといけませんからねぇ」
 足取りは軽やかに、幻覚を全て振り切って――探偵の男は迷路の奥をひたすらに目指すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼桐・相馬
●WIZ
迷路へ踏み込んだら直ちにUCを発動
狂気の侵蝕や駆除による自己強化を狙う

己が進む方角、周囲の音や視覚的な状況、自らの変化
[落ち着いて情報収集]し出口を目指すよ

正気を削られ顔を覗かせるのは俺本来の嗜虐性と送り込まれる負の力だろう

己を抑えつける必要はない
力を求めろ
他者を狩り甚振れ

装備品で制御され雁字搦めのこの躰と精神
二つの力を宿す為とはいえ理不尽に感じた事もある
そして何よりこの衝動を悪くないと思う自分がいる、質が悪い

不知火鼬の柔らかな炎と温かな感触
それに正気を繋げ、強化陣に加え自身の[狂気耐性]も繋げて行く

褒美のナッツを鼬に渡しながら考える
UDC達がつくりあげた楽園はどんなものなんだろうか




「支援は頼んだぞ。……出来るだけ早く抜けたいところだな」
 肩に黒鼬を乗せながら、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は迷路の奥を静かに見据える。
 空間の内部では常に歌声が響いているが、鼬の作り出す結界陣がその音を和らげてくれていた。
 出来るだけ落ち着いて、呼吸を整えつつ相馬は進む。
 迷路の造り自体はそれほど複雑でもなさそうだ。聞こえてくる歌声、空気の流れ、自らの経験。それらを駆使していけば、道に迷うことはないだろう。
 それよりも気にかかるのは――自分自身の変化だ。

 可愛らしい歌声が心に触れる度、その表面が削れていくのはよく分かる。
 そこから顔を覗かせるのは、自分の本当の顔。隠していたい殺戮を好む嗜虐の性分。
 同時に見え隠れしているのは、自分自身のものではない冥府の力。均衡を保つためとはいえ、悪意に似た力に晒され続けるのは決して良い気分はしない。
 そう思っているはずなのに――心の内から響いてくる声はそうじゃない。
 己を抑えつける必要はない。
 力を求めろ。
 他者を狩り甚振れ。
 本当はそう望んでいるんだろう。

 内からの声に反するように、相馬の纏うコートは呪いを発する。
 躰にかかる重みも気になるが、それ以上に精神が拘束される感触が不愉快だった。
 『善悪の境界門』である以上、冥府と天獄の板挟みになるのは仕方がない。だからといって、それを理不尽だと思わないことだって難しい。
 そして何より、自分自身が湧き上がる衝動を悪くないと思っているのだ。
 門番としての自分。猟兵としての自分。衝動を抱える自分。ありとあらゆる自分がぐちゃぐちゃになり、境界線がぐらりと揺らめく。
 一体自分が本当に望んでいるのは、何なのか。
 軽く額に手を当てた瞬間、目に入ったのは黒鼬が灯す柔らかな炎だ。

 見れば鼬は心配そうに相馬の顔に身を寄せていた。ふわふわとした温かな感触は心も柔らかくしてくれる。
「……心配させてすまないな。もう大丈夫だ、ありがとう」
 懐からナッツを取り出せば、鼬は一鳴きしてからそちらの方へと飛びついた。
 平穏な日常のような光景は相馬を更に正気へと導いてくれた。少しクリアになった頭で思うのは、迷路の奥だ。
「UDC達がつくりあげた楽園はどんなものなんだろうか……」
 その楽園はきっと自分の望むようなものではないけれど、それでも先には進まなくては。
 再びしっかりと足を踏み出して、相馬は道を進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花菱・真紀
幸也さん(f13277)と
廃遊園地ってなんとなく魅力的ですよね。
この迷路ですね…【狂気耐性】を意識して、と。
行きましょう。
慣れてるから大丈夫っていったら前に幸也さんに怒られちゃったけど。やっぱり慣れってのもあって。自分のトラウマは客観的に見れるようになった…あぁ、でも今日は珍しいな。お前の声が聞こえるなんて。趣味が合うとか言われてたくさん遊んで、でも騙されて裏切られて…だけど幸也さんとお前は違うよ。

そうだ、幸也さん大丈夫かな。
マフラー役に立ってるみたいでよかった…でもやっぱり苦しそうだ。
大丈夫。
俺はどんな幸也さんでも大好きで居ますから。
幸也さんは俺のマブダチ。でしょ。
(優しく背を撫でようと)


十朱・幸也
真紀(f06119)と
アドリブ歓迎

廃遊園地の巨大迷路、か
UDC以外にも、こう……
何か出そうな雰囲気はするよな

まだ冷え込むし『青いストールマフラー』を巻いて
【狂気耐性】で凌ごうと試みるぜ
真紀、マジでキツそうだったら言えよ?

歌声を耳にする度に
音に近づく度に、忘れ掛けていた『渇き』が喉を焼き尽くす
――何故、本能のままに血を啜らないのか
同じ髪の色をした男が、俺を見下している様な気がした

ああ゛っ、くっそ……!
おふくろ喰い殺したテメェみたいに、なりたかねぇんだよ
うぜぇんだよ……!さっさと失せろ、クソ親父!

あー……真紀、悪ィ
心配掛けちまった、か?
大人しく背を撫でられつつ、ほっと安堵の息を溢した




 転移された先の巨大迷路は、何の変哲のないものだった。
 けれど内部に漂う何かの気配と歌声を察知し、十朱・幸也(鏡映し・f13277)は微かに眉を顰める。
「廃遊園地の巨大迷路、か。UDC以外にも、こう……何か出そうな雰囲気はするよな。ホラーゲームだとよくありそうって言うか」
「確かにそうですけど……でも廃遊園地ってなんとなく魅力的ですよね。都市伝説とか、こういう場所にもいっぱいありますし」
 幸也の隣でどこか楽しそうな声をあげるのは花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)だ。
 しかし二人とも表情は真剣だ。聞こえてくる鳥の歌声は確かに自分達の心を蝕んでいるのだから。
 季節もあってか、迷路の内部はどこか肌寒い。幸也は懐から青いストールマフラーを取り出しつつ、真紀の方をじっと見つめる。
「真紀、マジでキツそうだったら言えよ? 慣れててもキツいものはキツいんだからな」
「あ、そのマフラー使ってくれるんですね! ……大丈夫です、怒られたことはきちんと反省してますから」
「それならいいんだけどな……。歌も少しずつ強くなってる。気をつけていこうぜ」
 はーい、と返事と返す真紀を引き連れ、幸也は更に奥へと進む。
 彼の言葉通り――響く歌声は、少しずつ大きくなってきていた。

 歌声が強くなる度に、猟兵達の様子も少しずつ変わっていく。
 幸也は喉元のマフラーを押さえつつ、その奥――喉の異変に気付き始めていた。
「(……やたら、『渇く』な)」
 忘れかけていた種としての本能が、歌声によって呼び覚まされる。
 それと同時に迷路の奥には誰かが佇む姿が見えた。

 真紀の瞳も人影は捉えているのだが、幸也が見ているのとは違う人物のようだ。
「(……あぁ、でも今日は珍しいな)」
 影が発するのは自分を嘲る声。
 最初のきっかけは同じ趣味。そこから意気投合して、ずっと仲良くやれると思っていた。
 たくさんたくさん遊んだ時は楽しかったし、互いの気持ちに嘘偽りはないと信じていた。
 ――だけど、騙されて、裏切られた。
 あの時の声がリピートして、歌声に紛れて真紀を嗤う。
 そして影は言うのだ。お前の隣にいる男も、自分と同じように裏切るぞ、と。
 しかし――どれだけ影に言葉を投げかけられても、真紀の表情は揺るがない。
「やっぱり慣れたのかな。自分のトラウマも客観的に見れるようになったし……何より」
 黒い瞳で真っ直ぐに影を捉え、はっきりとした口調で真紀は告げる。
「幸也さんとお前は違うよ」
 その言葉によって、幻は霧のように消えていった。
 一息吐いて気を取り直し、真紀は前方へと視線を向ける。
「……俺はこれで大丈夫。幸也さんの方は大丈夫かな?」
 そこには――マフラーを押さえつつ、苦しむ友人の姿があった。

 見えていた影はより大きくなり、よりはっきりと姿を現していた。
 ――自分と同じ、藍色の髪の男が自分を見下ろしているのだ。
 何故、本能のままに血を啜らないのか、と。
「ああ゛っ、くっそ……!」
 殆ど無意識の内に溢れてきたのは罵声だった。
 こいつだけは許さない。こいつとだけは同じになるものか。
「おふくろ喰い殺したテメェみたいに、なりたかねぇんだよ。うぜぇんだよ……! さっさと失せろ、クソ親父!」
 叫んで、腕を振りかざしても父親の影はなかなか消えない。
 身体を動かせば動かすほど、喉の乾きはより強烈になっていく。
 このまま衝動に突き動かされてしまっては、取り返しのつかないことになるのは十分に理解している。
 けれど本能のまま血を啜れたら。例えばすぐ側にいる青年から血を啜れたら。
 そんなことを考える自分も嫌になって、頭の中がぐちゃぐちゃになって――。

「幸也さん、大丈夫です」
 ふいに背中に触れた、暖かな感触が幸也を現実へと引き戻す。
 少し後ろを振り返ってみれば、柔らかな笑みを浮かべた真紀の姿があった。
「俺はどんな幸也さんでも大好きで居ますから。幸也さんは俺のマブダチ。でしょ」
 優しい言葉。暖かく背中を撫でてもらう感触。その二つを実感しつつ、幸也は大きく息を吐く。
「あー……真紀、悪ィ。心配掛けちまった、か? あんなこと、言ってたのにな」
「そこはお互い様ですよ。俺だって幸也さんのお陰で落ち着けているんですから」
 一人きりだと道に迷ってしまうのならば、互いの存在を道標にすればいい。
 一緒に進む誰かがいれば、狂気に屈してしまうことだってないはずだ。
「……ありがとうな。おかげで助かった」
「こちらこそ。さあ、どんどん進んでいきましょう!」
 気を取り直し、青年達は再び迷路を進んでいく。
 歌声に心を削られたとしても、共に進んでいけばきっと大丈夫。
 二人が談笑し合う声は、狂気の歌声を掻き消していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御乃森・雪音
【またたび】
迷路を抜ければ良いのよね…何か嫌な感じがするわ。

暫くは普通に歩いて…聞こえるの、歌…よねぇ。
聞いてるうちに視界が揺れる。え?今…見たくないもの、が…。
目の前に立つ、若い女性の身体の一部を継ぎ合わせた、首のない歪な人影。過去の記憶。取り込まれかけた恐怖と混乱。
涙が浮かぶ。怖い。怯える姿なんて見せたくない。見たくない。
前、を向かなきゃ…どうやって?どっちを向けば良い?
闇雲に手を伸ばす。ここに居るのは自分だけじゃない、から。お願い、今だけ手を貸して。
探してたら目を覆う何か、その温かさに意識を向ける。見なければ平気、進める。
御免なさい。有難う。手を取られた感覚だけを頼りに迷路を抜けるわ。


ルキヴァ・レイヴンビーク
【またたび】

ふむ…今回のレスキュー、真面目にやりマスよ
バードの名を持つUDC-P、楽しみデス

ワタシに狂気など…いえ、意外とコレは宜しくナイ
聞こえるのは音――ただただ神経を障る不協和音
成る程、それぞれオーダーメイドの狂気がプレゼンされマスか
メンタルよりフィジカルに刺さる感覚
込み上げてくるのは…いや流石に此処でリバる様なヤバい真似は致しマセンが

ふと見れば雪音の様子の方が深刻デスか
Ms.ブルーローズ、失礼…今はその美しい瞳を伏せる時デス
人の手から一部変化させた手羽先の羽根で彼女の顔を覆い
ソーリー、ことは…道先案内はユーに頼りマス
もう片方の手を伸ばし繋いで
この借りは後でキチンとお返しいたしマスからね


言祝・ことは
【またたび】
SPD

狂気に誘うは失った仲間達の恨みの声
どうして帰ってこなかったの
その中で呼ぶ愛しい人の存在に少しだけ揺れ


…俺は進みたいんだ
その為に正気を眠らせて、残酷な世界なんて無いんだって夢想してる
だから、どうか夢を醒さないでくれよ
ごめんなぁと笑い幻覚を振り切って

…っていうかほら、おにーさんこれでも年上だから
震える麗しき美女と、放っておくとヤバそうな鴉放置して狂ってられねぇんだわ
あ、これはマジメな話ね?

痛む心は下がった尻尾に隠し取り繕い

さ、引く波の時間だぜ

羽衣で手繰る様に雪音を包み、片方をルキヴァに掴ませ手を繋ぎ
これで迷子防止ってな
道案内は任された
先頭に立って、二人の手を引きながら出口を探すぜ




 進むべき迷路の造りはシンプルで、だからこそ響く歌声が耳に障る。
 周囲を不安げに見回しつつ、御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)は迷路を進む。
「迷路を抜ければ良いのよね……何か嫌な感じがするわ」
「雪音もそう思うのか。歌もそうだけど……妙な気配も漂ってる感じがするよな」
 彼女の言葉に言祝・ことは(海神の御伽噺・f25745)も頷き、共に迷路の奥を見遣る。
 二人の後ろではルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)が小さく唸る。
「ふむ……今回のレスキュー、真面目にやりマスよ。バードの名を持つUDC-P、楽しみデス」
 楽しみだ、と言う割には彼の表情は真剣だ。
 UDC-Pには会いたいけれど――その道程は決して平坦ではないだろうから。

 猟兵達は出来るだけペースを揃えて進んでいたが、次第にその歩幅は乱れていく。
 最初に異変に気付いたのはルキヴァだった。
「……意外とコレは宜しくナイ」
 自分に狂気なんて、と思ってはいたけれど、予想以上に鳥達の歌声は心の奥を揺さぶっているようだ。
 歌声は次第にただの音へと変わり、それが神経を障る不協和音へと変わっていく。
 雪音とことはも不安げな表情はしているものの、不快感に眉を顰めていたりはしないようだ。
「成る程、それぞれオーダーメイドの狂気がプレゼンされマスか」
 きっと自分に対しては、心よりも身体を害す方が効果的だと思われたのだろうか。
 腹の奥から何かがこみ上げてくる感触もあるが、ここで戻すような真似をする訳にはいかない。
 だってそんなの格好悪いじゃないか。まるで自分の内側まで晒すようで、そんなヤバイことはしたくない。
 何より――二人のことが心配なのだ。自分は折れる訳にはいかない。
 呼吸を整え、ルキヴァは静かに仲間達へと意識を向ける。

 次に異変を察知したのはことはだった。
 鳥達の歌声に紛れ、何かの声が自分を呼んでいる。
「……?」
 振り返って見てみれば、そこに立っていたのは嘗ての仲間達の姿だ。
 彼らはことはへ向け、淡々と言葉を投げかける。
 どうして帰ってこなかったの。どうしてお前だけ。
 それだけならまだ良かった。仲間達の中に紛れ――愛しい人の姿を見てしまえば、思わず心も揺れてしまう。
 ああ、きっとお前さんは俺のことを待っていてくれたんだろうな。
「……でも、俺は進みたいんだ」
 自分にも他人にも嘘を吐いて、正気を眠らせて、残酷な世界なんて無いんだって夢想して。
 そんな夢を見ながら、俺は今ここに立っているんだ。だから、どうか夢を醒さないでくれよ。
「ごめんなぁ。おにーさん、ここにいる二人より年上だからさ。あ、これはマジメな話ね」
 意識を周囲へと巡らせれば、震える雪音と明らかに顔色が悪いルキヴァが見える。
 二人を放置して、年長者の自分が狂っていられるものか。
「……だから、おやすみ」
 消える幻を振り切りながら、ことはは仲間の元へと歩み寄っていく。

 その頃、雪音は――ゆらゆらと揺れる視界を前に、ただ立ち尽くすことしか出来ていなかった。
「どう、して。なんで……?」
 最初は普通に歩いていたはずなのだ。けれど気がついたら……見たくないものが、目の前に立っていたから。
 若い女性の身体の一部を継ぎ合わせた、首のない歪な人影。そのシルエットを決して忘れたことはない。
 鮮明に蘇るのは過去の記憶と、取り込まれかけた恐怖と混乱。
 それらが呼び起こされるほど身体の芯が凍りついたような感覚に陥った。頭を動かしたいのに、瞼を閉じたいのに、身体が言うことをきかないのだ。
 殆ど無意識の内に涙が溢れそうになる。嫌だ、仲間に怯える姿なんて見せたくない。
 けれどそれ以上に、怖い。目の前のものが見たくない。
 前を向かなきゃ。でもどうやって?
 どっちを向けば嫌なものを見なくて済むの。どうすれば怖い思いをしなくて済むの。
 雪音は身体中の力を振り絞り、どうにか腕を前へと伸ばす。
「……お願い、今だけ手を貸して」
 すぐ側にいるはずの二人へ向け、祈るように囁きを零して。
 それに呼応するように――暖かな感触が雪音の身体を包み込んだ。

「Ms.ブルーローズ、失礼……今はその美しい瞳を伏せる時デス」
「さ、引く波の時間だぜ。ゆっくり呼吸して。大丈夫、俺達がついてるから」
 雪音を包んでいたのはルキヴァの羽根とことはの羽衣だ。
 ふわふわとさらさら。異なるけれど、確かな仲間の感触が瞳を覆い隠し、見たくないものから守ってくれる。
 そのお陰か、雪音も少しずつ落ち着きを取り戻したようだ。
「二人とも……御免なさい、有難う。見なければ平気、進めるわ」
「見たくないものが見えていたようデスからネ。これで一安心デス」
「また何かあればすぐに知らせてくれよ。ルキヴァもな」
 心はまだズキズキと痛むけれど、それ以上に仲間のことが心配だ。
 下がった尻尾を隠しつつ、ことはは更に羽衣をさらりと手繰る。
 雪音を包んでいるのとは反対側の羽衣が差し出されれば、ルキヴァも素直にそれを握った。
「ソーリー、ことは……道先案内はユーに頼りマス」
「これで迷子防止ってな。道案内は任された」
 俺はおにーさんだから、と笑いながらことはは二人の前に立つ。
 その後ろに雪音がついて、隣にはルキヴァが立って。
「この借りは後でキチンとお返しいたしマスからね」
「私も……必ず力になるわ。だから、今だけは少し、頼らせて」
 本当はルキヴァも未だに胸の内に気持ち悪さを抱えているし、雪音は過去の記憶に苛まれている。
 歌声は鳴り止まず、奥に進むまで影響は消え去らないだろう。
 けれど――それ以上に互いの感覚を強く意識して、その暖かさをしっかりと受け取っているから、きっと大丈夫。
 足取りはゆっくりだけど着実に。猟兵達は手を取り合いながら、迷路の奥へと進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『楽園の鳥』

POW   :    楽園においでよ、一緒に歌おう♪
自身の身体部位ひとつを【食べた人間】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ
【夢と希望に満ちた『楽園の歌』を歌う】事で【高速で空を飛ぶ戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    楽園にいこう、体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ
【おぞましい叫び声】【楽園を賛美する演説】【食べた対象の知性を真似た声でのお願い】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達はどうにか迷路を進み、その奥まで辿り着くことが出来た。
 そこにあったのは――UDC怪物が作り上げた楽園だ。

 楽園の正体は不気味な森のようだった。
 真っ赤な空を鳥達が飛び回り、生える木々は歪な形に伸びている。
 その隙間から見え隠れしているのは、犠牲となった人々のものと思しき衣服や荷物だろうか。
 それらを覆い隠すように、『楽園の鳥』は自由に森を飛び回る。

 楽園においでよ、一緒に歌おう♪
 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ♪

 楽しげな歌に紛れて聞こえるのは小さな声。
 縋るような、祈るような、助けを乞う声。
 その声を発していたのは、痩せ細った小さな『楽園の鳥』だ。
 彼女こそがUDC-Pだろう。そして彼女はきっと仲間達から異端視されて――もうすぐ殺されてしまう。

 UDC-Pを助け出すため。偽りの楽園を潰すため。
 猟兵達は、戦わなければならない。
黒影・兵庫
(「ねぇ黒影。アイツらはアタシが倒したいんだけど、いいかな?」と頭の中の教導虫が尋ねる)
え?あ、はい!もちろんです!せんせー!
(「ありがとう。じゃあ『念動力』で周りの木を振り回して攻撃するからアイツら捕まえてくれるかな?」)
はい!ではUC【誘煌の蝶々】で敵の注意を引き付けて、その隙に『迷彩』効果で『目立たない』ようにした『オーラ防御』の檻で『捕縛』します!
(「わかった。よろしくね?」)
はい、せんせー!
...それにしても珍しいですね
せんせーが自分の手で敵を倒したいなんて
先ほどの迷宮で何かありましたか?
(「ちょっとね?ほんの些細なことよ」)




 姿を現した楽園を前にして、黒影・兵庫は戦いの姿勢を整える。
 そんな彼の脳裏からは、いつもと違った『せんせー』の声が聞こえていた。
『……ねぇ黒影。アイツらはアタシが倒したいんだけど、いいかな?』
 普段の戦いでは兵庫が直接敵と戦い、せんせーは助言を行うのだが……今日に限ってはそうではないらしい。
 最初はキョトンとしていた兵庫だが、すぐに顔を綻ばせ頷いた。
「あ、はい! もちろんです! せんせー!」
 今日はせんせーの戦いぶりが見れるんだ。そのことを兵庫は純粋に喜び、改めて姿勢を整える。
 素直に提案が受け入れられたからか、その提案の真意が伝わっていないことに安堵したのか。せんせーも安堵の息を零しつつ、更に言葉を紡いだ。
『ありがとう。じゃあアイツら捕まえてくれるかな?』
「はい! ではすぐに準備します!」
『わかった。よろしくね?』
 せんせーの期待を受け、兵庫はぐっと拳に気合を入れる。
 そのまま大きく声をあげ、呼び出すのは頼もしい支援兵達だ。

「支援兵の皆さん! ご足労頂きありがとうございます! あの鳥達を引きつけて下さい!」
 ぶわり、不意に兵庫の影から無数の影が飛び出していく。
 その正体は可憐で儚げに舞う蝶達だ。彼らは不気味な森の中だろうと美しく煌めき、周囲を舞い踊る。
『あのちょうちょは何だろう?』
『楽園によく似合うよ。捕まえちゃおう』
 楽園の鳥達も蝶の様子に興味を引かれ、次々に集まっているようだ。
 彼女達の大きな翼が蝶達を捕らえようとした瞬間――。
「……今だ!」
 兵庫はオーラによって大きな檻を作り上げ、一気に鳥達を中へと収める。
 かなり大掛かりな攻撃ではあるのだが、鳥達が蝶に惹かれている間から展開し続けていたのだからこれで十分。
 檻の鳥となった怪物達へ向け、せんせーも鋭い殺意を向けていく。
『それじゃあ、潰しちゃおうか』
 せんせーは不可思議な念動力で森の木々を引き抜くと、それをハンマーのように大きく振るう。
 その衝撃は檻ごと鳥達を叩き潰し、彼女達の断末魔も掻き消していった。

「……それにしても珍しいですね」
 激しい蹂躙の様子を見守りつつ、ぽつりと兵庫が呟く。
「せんせーが自分の手で敵を倒したいなんて。先ほどの迷宮で何かありましたか?」
『ちょっとね? ほんの些細なことよ』
 気にしないでね、と笑うせんせーの声がいつも通りのようで、どこか寂しくも聞こえて。
 だからこそ、兵庫もそれ以上は聞いたりしない。ただせんせーの活躍を楽しげに見つめるだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)ああ、狂うのも飽きた。こっから常態でいこうかィ。狂気に浸るもヒトのマネ。こちとらヒトじゃないンでね。正気はハナから持ちあわせンさ。
行動)さァさお行きよお前たち。俺の《毒・病》をたっぷりやろう。腸詰めみてェに詰めてやろう。《鳥・獣・虫》どもよ。お行き。空飛び、口に飛び込んでおやり。樹木かけ登り食いついておやり。死出の送りに歌っておやりな。ただひとり、歌わぬ鳥は襲うんじゃアない。俺を襲うやつは放っておきな。この《宿》は疫毒のカタマリ、触れれば寸瞬に腐り果てるさ。




 先程まで鹿の背でくつくつと嗤い続けていた朱酉・逢真だが、いざ『楽園』へと辿り着けば彼の様子はけろりと転じた。
「ああ、狂うのも飽きた。こっから常態でいこうかィ」
 今度は普段どおりの笑みを浮かべ、逢真は森をざっと眺める。
 飛び交う怪物達は興味半分、警戒半分といった様子でこちらを眺めていた。
 彼女達は獣に近いのだろうか。だからこそ――逢真か何かを感じ取ったのか、すぐには襲いかからない。
 窺うような視線と共に投げかけられるのは愛らしい歌声だ。けれどその歌はもう逢真を揺さぶることはないだろう。
「狂気に浸るもヒトのマネ。こちとらヒトじゃないンでね。正気はハナから持ちあわせンさ」
 だから、ここからは一方的な蹂躙の時間だ。
 逢真は眷属たる鳥を、獣を、虫を楽園へを放ち、大きく腕を広げる。
「さァさお行きよお前たち。俺の《毒・病》をたっぷりやろう。腸詰めみてェに詰めてやろう」
 眷属達が楽園の中を駆け抜けていけば、その度に空気がぞっと重くなるような気がした。

 楽園の鳥達は食らった人間の真似事は出来ていたが、本質的には獣に近い。
 彼女達は自分が喰らえそうな獲物を見つければ、嬉しそうに飛びつくだろう。
 或いはとっておきの歌を聞かせるために大きく息を吸い込むだろうか。
 どちらにしても――怪物の口や嘴が開かれていけば、そこに飛び込んでしまうのは容易だ。
 最初に倒れたのは虫を食らった鳥だった。彼女の身体は一瞬にして病に侵され、どさりと地面に倒れ伏す。
 異変に気付いた別の怪物は翼を広げて空へと逃げようとしたが、それよりも早く数羽のカラスが飛びかかり、毒の翼で怪物を覆い尽くした。
 不気味な木々の合間に隠れた子は様々な獣の腕に引きずり降ろされ、すぐに自らの運命を悟る。
 森に響くのは怪物自身の断末魔のような歌だ。そんな中で――痩せ細った怪物だけが戸惑っている。
 眷属もそちらへと向かおうとしたが、それは逢真がすぐに制した。
「歌わぬ鳥は襲うんじゃアない。賑やかなのだけ死出の送りに歌っておやりな。それから……」
 また別の怪物が逢真を喰らおうと嘴を開き、真っ直ぐに飛びかかる。
 けれどその先端が彼の身体に触れた瞬間、怪物はぐずりと溶けて腐れ落ちた。
「俺を襲うやつも放っておきな。こうなっちまうからなァ」
 疫毒のカタマリに触れてしまえば怪物だろうとひとたまりもない。
 例えどんなに美しい楽園だろうと、そこにあるのが生き物である限り――病毒には敵わないのだから。
 ゆるゆると笑う神の周りで、楽園の帳尻合わせは続いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
趣味の良い楽園とは言い難いな

〈軍用鞄〉の〈ヘキサドラゴン〉に声を掛ける
モモ、先に行って彼女を守れ
危なくなったら元の姿に戻って戦え
[結界術]の障壁を纏わせ幼生体のまま急ぎUDC-Pの元へ向かわせる
〈冥府の槍〉で進路上の敵のみ倒しつつ合流

助けに来た、恐ろしければ耳を塞ぎ目を閉じていてくれ
彼女にモモを寄り添わせ言う
凄惨な光景をあまり見せたくないんだ

敵の致命傷となる攻撃は[武器で受け]つつ他の攻撃は己が身で受ける
狩れると思わせる為と俺の火力を高める為
敵が多数群がったところでUC発動、身体の炎や延焼により纏めて[焼却]

彼女を恐怖に陥れていた仲間という敵も
血のような赤い空も
紺青の炎で塗り潰せばいい




「……趣味の良い楽園とは言い難いな」
 広がる『楽園』を一瞥し、鬼桐・相馬は眉を顰める。
 ここは人を喰らう怪物の園だ。響く歌声も不気味な景色も、決して心地の良いものとは言えない。
 相馬は懐の軍用鞄を軽く叩き、中で眠るヘキサドラゴンの『モモ』へと声をかける。
「モモ、先に行って彼女を守れ。危なくなったら元の姿に戻って戦え」
 そう話しつつ相馬は少し遠くを指差す。そこには恐怖に蹲る痩せた鳥の姿があった。
 モモは小さな翼を広げ、主人が示した方向へと勢いよく飛び立っていく。その背に結界術を施しつつ、相馬も『冥府の槍』をしっかりと握りしめた。
 怪物達も侵入者の存在に気付いたようだ。翼を広げ、ヒトのような声をあげつつ相馬の元へと向かってきている。
「邪魔だ」
 進む先を邪魔する怪物を槍で蹴散らし、相馬が目指すは鳥の方向だ。
 彼女に迫る怪物もいたが、そちらはしっかりとモモが蹴散らしてくれている。
 しばらくすれば――猟兵と鳥はすぐに合流することが出来た。

「助けに来た、恐ろしければ耳を塞ぎ目を閉じていてくれ」
 手短に事情を伝えれば、鳥はこくこくと頷きを返す。
 小さな腕にモモを抱かせれば、彼女も怖がらなくて済むだろうか。
 そしてこうしていれば――彼女は凄惨な光景を見ずに済むだろうか。
「……モモ、頼んだぞ」
 幼生体の頭をそっと撫で、相馬は再び戦場へと躍り出る。
 身を晒すように堂々と踏み込む相馬のことを、怪物達はあっという間に取り囲んでいく。

 そこから先は、相馬の言うように「凄惨な光景」が続いた。
 怪物達は鳥の嘴で、或いは人間の口で、次々に相馬の身体へと食らいつく。その様子は傍から見ればまるで鳥葬のようだ。
 心臓や感覚器といった部分だけは喰らわれないよう気をつけつつ、相馬は敢えて自らを喰らわせる。
 心身を縛る軍服には次々に血が滲み、精悍な四肢は少しずつ形を失う。
 その痛みに相馬も小さく呻き声をあげるが――瞳に宿る強い意志は決して衰えていなかった。
「ここまでやれば、お前達はこう思うだろうな……こいつなら、狩れるだろうと」
 少し獰猛な笑みを浮かべ、相馬は怪物達をじぃと見つめる。
 その気配に何かを察したのか、数羽の怪物が翼を広げ逃げようとしたが、もう遅い。
「お前達はよく燃えそうだ」
 突如、相馬の身体が紺青の炎に包まれていく。
 その炎は彼に群がっていた怪物達も巻き込み、悪意と共に燃え盛る。

 籠の鳥を恐怖に陥れていた仲間という敵も、血のような赤い空も、紺青の炎で塗り潰せばいい。
 楽園が冥府のような景色に変わっていく中で、相馬はただその光景を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルト・クロフォード
ムム……楽園という割にはとても不気味な場所だナ……

悲しくも苦しくもなくなル……カ。
それはつまり、何も感じなくなるということではないだろうカ。
なら私は絶対にお断りだナ!

戦う前にUDCpには少し声をかけておくゾ。これから騒がしくなると思うから出来れば耳を塞いでおくといイ、とジェスチャー付きでナ。

そしてUDCpを庇うような立ち位置に立ったなラ、噛みつきをしにこちらに向かってくる敵を狙イ、【クロックワーク・ボム】を攻撃力重視で当てていくゾ!(【スナイパー】併用
攻撃だけでなく、爆煙で視界を悪くする事も狙いダ。UDCpの居場所を分かりにくく出来ればト。

それにこれなラ、彼らの誘いも聞こえにくくなるだろウ。




 楽園においでよ、一緒に歌おう。
 誘う歌と、ただただ広がる不気味な光景。そんな楽園の実態を目の当たりにし、オルト・クロフォードは小さく唸った。
「ムム……楽園という割にはとても不気味な場所だナ……」
 そんな彼の言葉を聞いたのか、怪物達はオルトへ向けて次々に歌声を向けていく。
 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ、と。
 その歌詞を聞き入れて、オルトは静かに目を伏せる。
「悲しくも苦しくもなくなル……カ」
 そうなってしまえば――何も感じなくなってしまう。なりたくない自分になってしまう。
 悲しみだって苦しみだって、自分の心を示すための大切なものだ。
 だから、こんな楽園なんて。
「私は絶対にお断りだナ!」
 力強く顔を上げ、オルトは痩せ細った鳥の側へと駆け寄る。
 今は怯えるこの子にも、広い世界を知って沢山の気持ちを抱いて欲しい。そのためにもこの子は守りきらなければ。
「これから騒がしくなると思うから出来れば耳を塞いでおくといイ。大丈夫、君は怖い目に遭わせないかラ」
 オルトが耳を塞ぐ仕草をすれば、鳥も同じように耳を塞ぐ。
 これでこの子は大丈夫。あとは――偽りの楽園を歌う怪物達を蹴散らすだけだ。

 怪物達は鳥の嘴と人の口を開きつつ、オルトの元へと飛びかかろうとしているようだ。
 相手が向かってくるなら好都合。オルトは懐から『クロックワーク・ボム』を取り出すと、飛来する怪物へ向けて勢いよく投げつけた。
「3、2、1、そラ、ドカンと来るゾ!」
 時計型の爆弾は次々と炸裂し、爆炎は怪物達をあっという間に呑み込んでいく。
 怪物達の断末魔も不気味な歌も、爆弾の破裂音が全て掻き消してくれるから怖くない。
 更には黒煙が自分を覆い隠してくれている。オルトは大胆に動き回りつつ、次々に爆弾を取り出していく。
「あの子も私もこんな楽園には閉じこもらないゾ。外の世界には楽しいことがいっぱいあるからナ!」
 仮にここが本物の楽園だったとしても、きっとオルトは否定していただろう。
 苦しみがあるからこそ楽しみをより強く痛感できて、美しい世界をより大切に思えるのだろう。
 そんな風に感じられるのは――広い広い外の世界を見ることが出来たから。
「だかラ、邪魔はさせないゾ!」
 オルトの熱い意志を示すように、時計型の爆弾は次々に怪物を撃ち落としていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

波狼・拓哉
楽園…楽しいようには見えませんね
いや、別に魅かれて来たわけじゃないんでどーでもいいんですけど

さて…その助けは聞き受けました
こんなんでも一応探偵してますからね、依頼されりゃ遂行しますよ

そういうわけで、ミミック行って来ーい(敵に向けて投擲)
化け侵しな?さあ、楽園崩落の時ですよ
まーこれだけいればねぇ…仲間内で潰しあってくださいな?
…まあ、一番の利点は味方しか殴らなくなる所ですが
異端視されてる者が味方とは言えないでしょうし

自分は衝撃波込めた弾で適当に
戦闘知識、第六感、地形の利用で動き回りつつ、弾幕張りつつ制圧射撃と行きましょう
…ああ、もちろんUDC-Pの位置だけはしっかり確認です

(アドリブ絡み歓迎)




「楽園……楽しいようには見えませんね」
 不気味な空や森を一瞥し、波狼・拓哉は単純な感想を述べる。
 いいや。別に魅かれて来たわけじゃないからどうでもいいのだけれど。
 むしろ気になるのは、隅で震える痩せ細った鳥の方だ。
「さて……その助けは聞き受けました。こんなんでも一応探偵してますからね、依頼されりゃ遂行しますよ」
 だからこそ、拓哉はUDC-Pをじっと見る。彼女の答えを待つように。
 痩せ細った鳥もその視線に気がつくと、小さくこくりと頷いた。
「了解ですよ。さてさて、お仕事の時間です」
 拓哉はにっこりと笑みを浮かべ、連れ立った箱型生命体ミミックを小脇に抱える。
 そしてそのまま高く掲げて――。
「そういうわけで、ミミック行って来ーい! 化け侵しな?」
 投げつけられたミミックから溢れるのは、楽園に蔓延るものより恐ろしい狂気だ。

 騒動を察したのか、怪物達は次々に嘴を開きミミックへ迫る。
 ミミックも負けじと体内から様々な武器を取り出せば、どんどん怪物達へと応戦しているようだ。
 そのまま戦いが続けば――その様子はどんどんと変わっていく。
「さあ、楽園崩落の時ですよ。まーこれだけいればねぇ……仲間内で潰しあってくださいな?」
 ミミックに傷を刻まれた怪物達は、拓哉の言うようにどんどん仲間を攻撃し始めているのだ。
 傷口から侵入したミミックの力は、相手の記憶や認識を『化けさせる』。
 そうすれば、あとは仲間が美味しそうな肉に見えるだけだろう。
 これで怪物達の矛先が自分やミミック、そしてUDC-Pに向くことはないはずだ。
 あとはじっくりゆっくり、楽園を終わらせるだけ。

「っとと、依頼人さんは俺の後ろにいて下さいね?」
 混乱に乗じ、拓哉はUDC-Pの元まで駆け寄り庇うように立ち塞がる。
 幸いなことに敵はミミックが『化けさせて』いるのでこちらに向かうことはないだろうが、それはそれとしてUDC-Pを巻き込む可能性は極力避けたい。
 依頼人を守ることだって、探偵の大切な仕事だろうから。
 拓哉はカラフルなモデルガン『バレッフ』を取り出すと、騒ぐ怪物達へと銃口を向ける。
「賑やかなのはいいですけど、ちょっと賑やかすぎますからねぇ」
 バレッフに力を籠めて引き金を引けば、放たれた衝撃波の弾丸は次々に怪物達を撃ち抜いていく。
 その度に歌声のような断末魔が耳に入るが、その光景も楽園の終わりを示しているようだ。
「所詮怪物の造る楽園なんてこんなもんですよ。崩れる時はあっさり崩れるものです」
 からからと笑いつつ、拓哉は怪物達を終わりへと導く。
 狂気の園は、より強い狂気によって潰されていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エスタシュ・ロックドア
いっちょまえに囀るじゃねぇか
だが残念な事に閉園時間が迫ってら
真っ赤な空がお誂え向きだな
カラスといっしょに帰ろうぜ
お前らは骸の海にだがよ

『金剛嘴烏』発動
子分の烏どもに、敵を啄み引っ掻くよう指示する(【動物使い】【動物と話す】)
必ず複数羽で四方八方から絶えず攻撃しろよ
あとそこで大人しくしてるUDC-Pは突くな
俺ぁUDC-Pをかばいに行く
敵がUDC-Pを狙ってきたら【野生の勘】【第六感】フル稼働で【カウンター】
フリントを【怪力】で振るって【重量攻撃】
【なぎ払い】【吹き飛ばし】だ
俺に向いた攻撃も同様
喰らっても血の代わりに青い業火垂らしつつ【激痛耐性】で耐える

もうちょっと待ってくれな
すぐ片付けるからよ




「いっちょまえに囀るじゃねぇか。だが残念な事に閉園時間が迫ってら」
 楽しげに歌う怪物へ向け、エスタシュ・ロックドアは獰猛な笑みを向けていた。
 こんな場所を楽園と称し、人を惑わし、喰らい、同族すら手にかけようとする。
 そんな怪物の有様には反吐が出そうだ。ならばさっさと終わらせてやろう。
「真っ赤な空がお誂え向きだな。カラスといっしょに帰ろうぜ――お前らは骸の海にだがよ」
 エスタシュの怒りを示すかのように、彼の身体から鮮やかな青の炎が立ち上る。
 その中から姿を現すのは三十七羽の烏達。彼らは罪人を苛む地獄からの死者だ。楽園の怪物達を裁くには適任だろう。
「此処に示すは我が因業、烏三十七羽は我が配下、以て開くは獄ノ門。――出番だぜ野郎ども、仕事に掛かれ」
 エスタシュの命を受け、烏達は翼を広げ怪物達の元へと飛び立つ。
 ここから先は裁きの時だ。

 烏達は連携を取り合い、次々に怪物へと襲いかかる。
 相手が素早く空を翔けようとするのなら、自分達は四方八方から相手を囲む。
 少しずつ動きを制限したのなら――あとはひたすら啄んで、引っ掻いていくだけ。
 きっと怪物達もそのように迷い込んだ人を追い込み食らったのだろう。
 意趣返しのようだな、と呟きつつエスタシュは鉄塊剣『フリント』を構えて走る。
 彼が目指したのはUDC-Pの方だ。
「もう大丈夫だ。俺の後ろに隠れてな」
 UDC-Pがこくりと頷き身を屈めたのを確認し、エスタシュは前を睨む。
 視線の先には烏が囲みきれなかった怪物達がいるようだ。彼女達は狂ったように歌声をあげながら、エスタシュとUDC-Pに食らいつこうと迫ってきていた。
「させるかよッ!」
 飛び込んでくる敵は片っ端からフリントによって叩き潰し、受けた傷は地獄の炎で補って。
 エスタシュもまた怪物を裁くべく、ひたすらに己の力を振るい続けた。

 戦いの最中、ちらりと足元へ目を向ければ――痩せ細った鳥が自分の影で小さく震えている。
 その頭にぽんと手を置き、エスタシュは優しく笑顔を向けた。
「もうちょっと待ってくれな、すぐ片付けるからよ。終わったら一緒にここから出ていこうぜ」
 彼の言葉に鳥は頷き、瞳に希望と期待の色を灯す。
 ああやっぱり。この子は外に出たがっているのだ。
 それなら尚更気合を入れなければ。
 エスタシュは確りとフリントを振り回し、更に敵をなぎ倒していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花菱・真紀
助けを乞う声…あの痩せ細った子でしょうね。
UDCとしては異端ゆえに味方に排除される。
その前に保護しないと…。

楽園では無いけれど君を否定しない場所へ行こう。君が君として生きられる場所へ。
少なくとも仲間にいつ殺されるかなんて不安はなくなるよ。
楽園には案内できないけど一緒に行こう。
保護をした後は【かばう】ように立ち塞がる

幸也さんもこの子も俺が絶対守ります…!
UC【絶対防御の壁】

えー!忘れないですよ!いいこと言ってますよ幸也さん!
ふふっ、照れなくていいじゃないですか。


十朱・幸也
真紀(f06119)と
アドリブ歓迎

前に会ったUDC-Pと違って
今回の奴は意思疎通出来そうだな
満足に食事も出来てねぇんだろうな、あれは……

説得は真紀に頼んで
俺は千薙を操り、他の奴等の相手をするぜ
さあて、見たくもねぇ面拝ませてくれた礼だ
加減無しで刻んでやるよ、覚悟しとけ

UC:戦姫
【切り込み】【なぎ払い】【切断】で
真紀とUDC-Pに近付こうとする奴から
各個撃破を狙い、確実に潰していくぜ
ま、ダチが怪我する所はみたくねぇしな?

楽園の外がどんな場所だろうと
外の世界を見てみたいって気持ちが間違ってるとは
俺は思わねぇし、諦めなくていいと思うぜ
……なんか恥ずかしくなってきたから忘れろ、忘れてくれ頼む




 楽園での戦いの最中、花菱・真紀と十朱・幸也は森を見遣り、そこに痩せ細った鳥の姿を見る。
「助けを乞う声……あの子でしょうね」
 UDCとしては異端ゆえに味方に排除される。そうでなくても、ここではまともに生きることすら難しい。
 そんな彼女の在り方を思い、真紀の声色には重いものが宿っていた。
「前に会った奴と違って今回の奴は意思疎通出来そうだな。けど……満足に食事も出来てねぇんだろうな、あれは……」
 幸也も静かに目を伏せ、震える鳥のことを思う。
 でも、だからこそ。
「……必ず助けてやろう、俺達で」
「はい、幸也さん!」
 猟兵達は力強く顔を上げ、共に森の中を駆けていく。
 二人が抱く気持ちは同じ。あの子を助けて、一緒に外に出ようと。

「真紀、あの子は任せても大丈夫か? 敵は俺がなんとかするから」
「任せて下さい、しっかり保護してきます!」
 幸也がからくり人形『千薙』を取り出し戦う姿勢を整えたのを確認し、真紀はUDC-Pの元へと駆け出していく。
 これで向こうは大丈夫だ。走る友人の背を見送り、幸也は静かに呼吸を整える。
 先程まで自分を打ち据えた怒りは、そのまま終わらせたりしない。
 母が友と呼んだ人形と共に、せめて少しでも思いを晴らせたら。
「さあて、見たくもねぇ面拝ませてくれた礼だ」
 加減無しで刻んでやるよ、覚悟しとけ。千薙に蓄積された呪詛と共に、幸也は迫る怪物の元へと切り込んでいく。
 不気味な歌を口ずさみつつこちらへ向かってくる個体は、動きこそ速いもののまだ対処しやすい。
「踊り狂え、千薙」
 幸也が糸を手繰れば、千薙は舞い踊るように怪物の方へと向かう。
 重い呪詛は怪物の身体を無理やり地上へ引きずり下ろし、人形が手にする薙刀は怪物の喉を、翼を切り刻む。
 彼女達が二度と歌えないよう飛べないように。これ以上誰かを惑わさないように。
 けれど敵は全てが自分の方へと向かっている訳ではない。別行動している真紀やUDC-Pの元へと向かおうとする個体もいるだろう。
「ま、ダチが怪我する所はみたくねぇしな? そっちには行かせねぇよ」
 そんな悪い子にはすかさず衝撃波を送ってやる。
 怪物達の歌はきっと真紀も惑わしたはずだ。その報いは充分に受けてもらわなければならない。
 父への怒りをそのまま力に、母の形見と共に幸也はひたすら怪物達を斬り伏せていく。
 
 一方、真紀の方はというと。
 駆け寄る彼の姿にUDC-Pはびくりと震えたが、構わず笑顔を浮かべてまずは挨拶だ。
「大丈夫。俺達は君を助けに来たんだ」
 一言一言を噛みしめるよう、ゆっくりと。優しい言葉に痩せ細った鳥も微かに顔を上げていた。
「楽園では無いけれど君を否定しない場所へ行こう。君が君として生きられる場所へ」
 ここから出れば仲間に殺されることにも、やりたくないことにも怯えなくていい。
 外の世界には楽しいものが、素敵なものが沢山あるのだから。
「楽園には案内できないけど……一緒に行こう」
 言葉と共に、真紀はそっと手を差し伸べる。
 UDC-Pもおずおずと羽根を差し出し、互いの手が触れれば――真紀の顔にぱっと笑顔が花咲いた。
「手を取ってくれてありがとう。君のことは必ず守るから、俺の後ろに立っていて!」
 鳥を庇うように真紀は立ち、電脳ゴーグルを起動する。
 これは一つのゲームだ。助けるべき鳥も、頼もしい仲間も傷つけさせない、そんな一つの命がけのゲームだ。
「絶対に負けられない、絶対に幸也さんもこの子も俺が守る。だから……この壁は【絶対】壊れない!」
 真紀は埒外の力を発動させ、自身の周囲に防御壁を展開していく。
 幸也もそのことを確認すると、そちらの方へと駆け寄った。

「その様子だとUDC-Pは大丈夫そうだな。真紀も平気か?」
「ばっちりです! 幸也さんがどんどん敵を倒してくれてますから!」
 防御壁の中で猟兵達は互いの無事を確認し、笑顔を向け合う。
 UDC-Pの方も真紀の足元から幸也の顔を窺っているようだ。その視線に気がつき、幸也もまた目を合わせる。
 興味半分、恐怖半分。そんなUDC-Pの瞳を見つめ、幸也はゆっくりと口を開いた。
「俺達はお前の助けを聞いてここに来た。だから怖がる必要はないんだぜ」
「そうですよ。助けて、とか外に出たい、とか、そんな風に思った気持ちは大事にして欲しいんだ」
 二人の言葉を受け、こくりと頷くUDC-P。その瞳には、少しずつ希望の色が宿っていく。
「楽園の外がどんな場所だろうと、外の世界を見てみたいって気持ちが間違ってるとは俺は思わねぇし、諦めなくていいと思うぜ」
 だから、一緒に行こう。
 幸也もUDC-Pへと手を差し出そうとしたが――自分の言葉を思い返し、少しだけ目を逸らした。
「……なんか恥ずかしくなってきたから忘れろ、忘れてくれ頼む」
 頬を微かに赤く染める幸也へ向け、真紀はずずいと顔を寄せる。
「えー! 忘れないですよ! いいこと言ってますよ幸也さん!」
「うるせぇ! 恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!」
「ふふっ、照れなくていいじゃないですか。俺だって同じ気持ちですよ」
 にこにこ笑顔を浮かべる真紀を見遣り、UDC-Pも微かに笑みを浮かべたようだ。
 そんな二人の様子には安堵したものの、幸也の顔はまだ赤い。
「あー、とにかくさっさと敵を倒す! そんで脱出するぞ!」
「はい、頑張りましょう!」
 楽園の終わりまであと少し。猟兵達は気合を入れ直し、再び戦いへと没頭していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御乃森・雪音
【またたび】
…冷静に。幻なんかに負けたりしたくない。うん、大丈夫。
迷路を抜けたのは良いけど、嫌な感じの森…よね。今までどれだけの犠牲が居たのかしら。
早くUDC-Pの子を探さないと。

歌の隙間の声を聴き分けて、その子を探すわ。
狙ってるらしいから見つけたら上の鳥たちが来るのよね…まあ、仕方ないわね。
ことはに回復もしてもらったし、頑張るわ。
La danza della rosa blu
今回はパートナーが沢山居るわねぇ。歌はことはに合わせて、ルキヴァが動きやすいように青薔薇の鎖で地に落としてあげる。
頼もしいお兄さん方もいる事だし、守りは気にしないで出来るだけ数を多く引き落とせるように動こうかしら。


ルキヴァ・レイヴンビーク
【またたび】
このフォレスト、流石にこの鴉も好みではありマセンね
ヘルプすべき雛鳥にはパラダイスどころかヘルそのものデショウ
雪音、ユーの耳なら聞き分けられるのでは?
救いを求める、あのSONGの在処を

ことはの歌に合わせて指揮者の如く手を動かしUC発動
我が眷属達、歌と共に征きナサイ
偽りの楽園を我らが闇で塗り潰せ
彼らが人間にそうした様に、喉を引き裂き目玉啄め
ただし優しき雛鳥の視界は羽根で覆いナサイ
ハードな光景をルックさせるのは残酷デショウ

混戦を縫って迫る分は両手に対の片鎌槍を構え迎撃
ははっ、残念デスがその雛鳥にもお二人にも近づけさせはしマセンよ
そんな歌よりも、イイ声でお鳴きなサイ?
容赦は致しマセンから


言祝・ことは
【またたび】

漸く本命、かね
二人とも迷路で参っていたみたいだし、ここで調子を戻して貰わねぇと

後方でUCを使用し、雪音、ルキヴァを回復するぜ
雪音にみつけてもらったUDC-Pが射程範囲内なら声を届けて、気力の足しにでもして貰いてぇな
お前さんはそれでいいんだよ。お前が思い描くものを、俺は肯定し祝福する。
今度は間に合わせるから…だからもう少し待っててくれな

「乞われる声には掬いの御手を。壊れる声には失落の翼を」

敵の声を打ち消すように言葉を響かせて、逆に言葉の呪いで敵の動きを鈍らせて

灰被りの報復に青薔薇の舞手、良い詞になりそうだ
二人とも、存分にやっちまいな

酸も苦いもあってこその現で、だからこその希望なんだよ




「漸く本命、かね」
 辿り着いた楽園を見渡し言祝・ことはがぽつりと呟く。
 異様な空間の中では先程よりも強く怪物の歌が響いているが、こちらは迷路にいた時よりも呪詛としては弱いようだ。
 後ろを振り返ってみれば、まだ少しだけ顔色が優れない御乃森・雪音と森を睨むルキヴァ・レイヴンビークの姿も見える。
「さっきの迷路で二人は参ってたみたいだが……大丈夫か? ここで調子を戻して貰わねぇと」
「……大丈夫。幻なんかに負けたりしたくない。ちゃんと歌えるわ」
 呼吸を整えつつ、雪音が頷く。そんな彼女に同意するように、ルキヴァも緩く笑みを浮かべた。
「ワタシの方も大丈夫デス。むしろ……このフォレスト、流石にこの鴉も好みではありマセン。ヘルプすべき雛鳥にもパラダイスどころかヘルそのものデショウ」
「ああ、そうだな。UDC-Pもこんな所に居たら参っちまうだろ。どうにかしてやらないとな」
「嫌な感じの森……よね。今までどれだけの犠牲が居たのかしら……早くUDC-Pの子を探さないと」
 三人とも同じ気持ちを抱きつつ森を改めて一瞥するが――戦闘が激化している影響だろうか。UDC-Pの姿は簡単には見つからない。
 彼女は怯えて何処かに隠れているのだろうか。それとも戦乱に紛れて身動きが取れないのだろうか。
 何にせよ、早く保護してやらなければ。
「雪音、ユーの耳なら聞き分けられるのでは? 救いを求める、あのSONGの在処を。邪魔する輩は尽く蹴散らしてやりますカラ」
「支援なら俺に任せてくれ。この森に響く不気味な歌も……俺達ならかき消せるだろうから」
「分かったわ。あの子は絶対に助け出す。この楽園も終わらせましょう」
 決意を固め、猟兵達はそれぞれの役割を果たそうと走り出す。
 怪物達の不気味な歌声を切り裂くよう、力強く。

「さて……やっぱり俺はおにーさんだからな。しっかり二人を支えてやらないと」
 先程は仲間達を心配していたことはだが、彼の心にも傷は確かに刻まれていた。
 けれど、今は。前を向いて進むしかないのだから。
「祓え、払え。乞われる声には掬いの御手を。壊れる声には失落の翼を――この声はまじないのウタ」
 ことははゆっくりと呼吸をしながら、言葉を紡ぐ。
 手に入れた呪いの言葉は敵を穿つ矛とする。
 今の自分でも生み出せる寿ぎは仲間を守る盾とする。
 怪物達の歌を打ち消すよう、ことはは一言一句を丁寧に言葉を響かせた。

 その寿ぎに合わせるよう、ルキヴァはゆるりと腕を動かしていた。
 指揮者のような優雅な動きに合わせ、姿を現すのは彼の眷属たる鴉達だ。
「我が眷属達、歌と共に征きナサイ。偽りの楽園を我らが闇で塗り潰せ」
 彼らが人間にそうした様に、喉を引き裂き目玉啄め。
 主の命を受け、鴉達は次々に不気味な空を飛んでいく。
 怪物達も異変に気付き口を開くが、彼らが呪詛を放つより鴉が飛びかかる方が速かった。
 鴉達の嘴は怪物達の身体を啄み、鋭い爪は肉を削ぐ。
 響き渡る歌声のような断末魔を聞きながら、ルキヴァは一羽の鴉にだけ別の命令を告げた。
「優しき雛鳥を見つけ次第、彼女の目を羽根で覆いナサイ。ハードな光景をルックさせるのは残酷デショウ」
 命を受けた鴉は小さく一鳴きすると、森へと向かう雪音に追従するように飛び立った。
「あの子が見つかればワタシも少し暴れまショウか。ふふ、愉しみデスね」
 対の片手鎌『フギン』と『ムニン』を構えつつ、ルキヴァは不敵に嗤っていた。

 ルキヴァが放った鴉と合流しつつ、雪音は森を駆けていた。
「あの子はどこに……あ」
 少し空を見上げれば、数羽の怪物がこちらへ向かっているのが見えた。
 彼女達の狙いは自分でもあるだろうが――もしかしたら、近くにUDC-Pも隠れているのかもしれない。
「まあ、仕方ないわね。ことはの言葉も聞こえているし……アタシも一曲、歌おうかしら」
 大丈夫。あの時とは違う。今のアタシは戦って、誰かを助けることが出来る。
 それに困った時に頼れる仲間だっているのだ。弱い所は出来るだけ見せたくないけれど、共に背中を合わせて戦うのなら大歓迎だ。
 勇気を奮い立たせつつ、雪音は優雅に一歩を踏み出す。
 そのままステップを踏み、ゆるりと森を舞い踊りつつ歌うは『La danza della rosa blu』だ。
「次のパートナーは貴方かしら?」
 雪音の歌は青薔薇の鎖へと変わり、その美しい輝きは彼女を守るように跳ね回る。
 鎖は空を飛ぶ怪物達に茨のように絡みつくと、次々に地面の上へと叩き落としていく。
「トドメはルキヴァに任せればいいかしら。歌はことはの言葉に合わせると歌いやすいわね」
 頼もしいお兄さん方もいる事だし、自分はやるべきことに集中すれば良さそうだ。
 青薔薇の鎖と共に、雪音は更に森の奥へと進む。
 そこには――震える小さな鳥の姿があった。

「もう大丈夫よ。助けに来たわ」
 雪音が柔らかく笑みを向ければ、鳥は安堵したように小さく鳴いた。
 ルキヴァの鴉がそっと鳥の顔を覆い、彼女を惨劇から遠ざけていく。
 ことはもその様子を確認し、そちらの方へと駆け寄った。
「よかった、そっちは無事だな……なあ、そこの小さなお前さん」
 その言葉に鳥は小さく頷く。こちらの言葉は理解出来るようだ。
「お前さんはそれでいいんだよ。お前が思い描くものを、俺は肯定し祝福する。そのために来たんだ」
 だから――今度は間に合わせるから。
 ことはが紡ぐ優しい言葉はUDC-Pだけでなく、きっと別の人達にも向けて投げかけられていた。
 けれどそれは過去に囚われた哀愁ではなく、未来へ進むための希望の一歩だから。
「酸も苦いもあってこその現で、だからこその希望なんだよ。それを学ぼうとするお前さんを、俺達は祝福するよ」
 この言葉に不思議な力はないかもしれない。
 けれど、この言葉こそが――きっと、雛鳥にとっての寿ぎになるはずだ。

「……それにしても、灰被りの報復に青薔薇の舞手、良い詞になりそうだ。もっと存分にやっちまいな」
「勿論よ。ことはの歌のお陰でアタシも踊りやすいわ。偽りの楽園は皆で壊しましょうか」
 ことはと雪音は顔を見合わせ、再びそれぞれの歌を奏でていく。
 災い招く呪い言葉は怪物達の羽ばたきを弱め、それに合わせて青薔薇の鎖が怪物達を地に堕とす。
 そこにすかさず飛び込むのは――獰猛な笑みを浮かべるルキヴァだ。
「ユーは雛鳥やお二人に近づこうとしていたようですが……ははっ、残念デスが近づけさせはしマセンよ」
 羽ばたくような勢いで倒れ伏す怪物の元へと飛び込み、ルキヴァは対の片鎌槍を構える。
 怪物は最後の力を振り絞り狂気の歌を奏でようとするが――それより早く、槍の穂先が喉元へと突きつけられた。
「そんな歌よりも、イイ声でお鳴きなサイ?」
 容赦は致しマセンから。
 愉しむように、嘲笑うように。ルキヴァの振るう片鎌槍の一撃は、怪物達を次々に裁いていった。

 このまま戦いは続き――無事に全ての怪物を倒し切ることが出来た。
 互いの損害が軽微なのを確認し、猟兵達は安堵の息を零す。
 ようやく視界が開けたUDC-Pも雪音にくっついているようだ。
 その様子が小さな子供のようで、何だか可笑しくて。猟兵達は笑顔を浮かべつつ、森を抜けていく。
 後は――楽園を出るだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『UDC-P対処マニュアル』

POW   :    UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す

SPD   :    超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す

WIZ   :    UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達が森を抜け迷路を抜ければ、異常な空間も消え去ったようだ。
 迎えに来ていたUDC組織のスタッフにより、猟兵達とUDC-Pはとあるオフィスへと案内される。
 あとで別のスタッフがここまで来て、UDC-Pを別の場所へと連れ出される予定らしい。
 彼女はそこで保護を受け、安心出来る生活を提供してもらえるようだ。

 しかし、スタッフが迎えに来るまではまだまだ時間がある。
 UDC-Pも今は安心しているのか、外の世界に興味津々だ。
 それだけならいいのだが、このまま彼女が興味を示し続けていけば――もしかすると、自力で外へ出ようとするかもしれない。
 そんなことになってしまっては大事件だ。阻止するためにも、今のうちに彼女に外の世界のことを教えておいた方がいいかもしれない。

 例えば今までの思い出とか。
 例えば自分の好きな場所の話とか。
 例えばこれから行きたい場所だとか。
 そんな話を、UDC-Pにしてみよう。
黒影・兵庫
無事に保護できたようで安心しました!
(「まだ終わってないわ黒影。きちんと彼女に外の世界について話してあげないと」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!どんな話がいいでしょう?
(「さっきの迷宮でいっしょに話した楽しい話を聞かせてあげたらどうかしら?」)
あぁあの美味しいシュークリームの話ですね!
あの迷宮を乗り越えられるぐらい楽しい話ですからピッタリです!
ついでに『催眠術』でどれだけ美味しいか追体験させてあげましょう!
(「えぇ、きっと喜ぶと思うわ」)
よぉーし!そうと決まれば早速話しかけに行くとしましょう!
(UC【脳内教室】発動)




 UDC組織のオフィスにて、猟兵達は保護されたUDC-Pと対峙していた。
 ここの光景はUDC-Pにとって初めて見るものばかりだろう。彼女はソファに腰掛けているが、どうもキョロキョロしている様子。
 そんなUDC-Pの様子を見遣り、黒影・兵庫はニカッと眩しい笑みを浮かべた。
「無事に保護できたようで安心しました!」
『まだ終わってないわ黒影。きちんと彼女に外の世界について話してあげないと』
 そうハキハキと告げる兵庫に対し、彼の脳内の教導虫・せんせーの返答は冷静なものだった。
 その言葉を受けて、兵庫も思わずハッとした様子。
「はい! せんせー! どんな話がいいでしょう?」
 外の世界の話題、といっても話したいことは沢山あった。
 例えば今までの自分の戦いとか、好きな物事とか、ちょっとした思い出話とか。
 どれから話せばいいのだろう。悩みながら唸る兵庫へ向け、せんせーはそっと声をかける。
『さっきの迷宮でいっしょに話した楽しい話を聞かせてあげたらどうかしら?』
「あぁあの美味しいシュークリームの話ですね! あの迷宮を乗り越えられるぐらい楽しい話ですからピッタリです!」
 その言葉を受け、兵庫も表情を明るくさせる。
 そうだ、あの怖い迷路を抜け出せたのは楽しい気分になったから。
 心の拠り所になる思い出があれば、心を惑わす異界だって怖くない。
 UDC-Pにもそんな思い出を作って欲しいと願い、兵庫は彼女へ向けて声をかけた。

「改めて初めまして! 俺は黒影・兵庫って言います!」
 兵庫の挨拶にUDC-Pはぺこりと頭を下げる。最初の挨拶はばっちりのようだ。
「せっかく知り合ったんだから、俺の好きなものの話を……あ、そうだ。せんせー!」
『どうしたの?』
「せっかくだから、どれだけシュークリームが美味しいかを催眠術で教えてあげてもいいですか?」
『えぇ、きっと喜ぶと思うわ。それなら私も手伝おうかしら』
 咄嗟に閃いたアイデアを実行すべく、兵庫とせんせーは互いの念動力を重ね合う。
 そうして生まれるのは――不思議で暖かい幻の空間だ。
 そこで兵庫が手を差し出せば、飛び出したのは思い出の中のシュークリーム。
「これ、シュークリームって言って俺の好物なんです。これは幻なんだけど、味とかは体験出来るから是非どうぞ!」
 UDC-Pは恐る恐る羽根を伸ばし、そっとシュークリームを受け取ったようだ。
 兵庫も自分の分のシュークリームを生み出して、一緒にいただきますと声に出して。
 これはUDC-Pにとって初めての甘味で、兵庫にとっても大切な思い出の欠片。
 そこから生まれる楽しい、嬉しい気持ちは――皆の胸をいっぱいにしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エスタシュ・ロックドア
好奇心旺盛で重畳重畳
そんなら色々話してやろうかぁね

おっと待て待て
飛び出して自分の目で確かめたい気持ちは痛ぇほどわかるが、
俺ぁそれやって痛い目見たわけよ
何にも準備しなかったから山ん中で何日もまともに飲まず食わず
飢えと渇きに耐えかねて口に入れたモンが、
腐ってたり毒だったりでのたうち回ったりしてな
いや、怖がらせるつもりじゃねぇんだが
外の世界は危険もあるってこたぁちゃんと知っておかねぇと
でもな、そーいう目にあっても俺ぁ外に出て良かったと思ってるぜ
広い世界をあっちこっちバイクで走り回ったり、
いろんなうまいモンを味わったりな
この世界はうまいモンがたくさんあって良いぞ
お前も後で食べさせてもらえ




 ソファに腰掛けつつもキョロキョロと周囲を眺めるUDC-Pを見遣り、エスタシュ・ロックドアは緩く笑みを浮かべていた。
「好奇心旺盛で重畳重畳。そんなら色々話してやろうかぁね」
 彼の言葉に反応し、UDC-Pががたりと立ち上がる。
 足はそわそわ、翼はぱたぱた。目を離すとそのままどこかへ駆け出しそうだ。
 そんな彼女を宥めつつ、エスタシュは隣の席へと腰掛ける。
「おっと待て待て。飛び出して自分の目で確かめたい気持ちは痛ぇほどわかるが、俺ぁそれやって痛い目見たわけよ」
 思い出すのは十二の時、隠れ里を飛び出したあの日のこと。
 当時の自分もきっと――目の前の彼女のように、広い世界に思いを馳せていたはずだ。
 だからこそ、伝えられることがあるだろう。記憶を辿り、エスタシュはしっかりと言葉を紡ぐ。
「俺も小さい時に故郷を飛び出したんだよ。でもなぁ、何にも準備しなかったから山ん中で大変な目に遭ったんだぜ」
 今でも鮮明に思い出せる、あの時の飢えと乾き。
 植物についた僅かな露で喉を潤し、飢えを凌ぐために食べたものは腐ったり毒があったりしたこともあった。
「誰もいない山の中で、一人でのたうち回ったりしてな……。ああ、でも怖がらせるつもりじゃねぇんだが」
 強烈な実体験を聞き震えるUDC-Pに向け、苦笑いを浮かべつつエスタシュは更に言葉を続けていく。

「外の世界は危険もあるってこたぁちゃんと知っておかねぇと。でもな、そーいう目にあっても俺ぁ外に出て良かったと思ってるぜ」
 大変なことは沢山あった。
 先程の体験は勿論、神隠しを通して様々な経験をしてきたのだから。
 でもその分、楽しいことや嬉しいことだって鮮明に思い出すことが出来る。
「広い世界をあっちこっちバイクで走り回ったり、いろんなうまいモンを味わったりな」
 里にいたら決して食べることの出来なかった様々なもの達。
 特に今の自分とUDC-Pの住まうこの世界には、多種多様な食べ物が存在している。
 仲間と違い人の肉の美味さを理解できなかった分、UDC-Pには他のものを楽しむ嬉しさを知って欲しいと願う。
「この世界はうまいモンがたくさんあって良いぞ。お前も後で食べさせてもらえ」
 そっとUDC-Pの頭を撫で、エスタシュは微笑む。
 彼女が外の世界に慣れてきたら、自分の好きなものを一緒に食べるのもいいかもしれない。
 もしかすると共にバイクで駆ける機会だってあるかもしれない。
 嘗ての自分のように――彼女に広い世界を楽しんで欲しいと、エスタシュは心から願うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
なあ、やってみたいことはできたか

他の猟兵の話を聞き彼女にもそういったものが出来たかもしれない
彼女の話の後に[落ち着い]た穏やかな口調を意識して諭すように話そう

外の世界はお前にとって驚きに満ちたものだろう
だが、その全てが友好的であるとは限らない
この世界の事を学び知る事
お前の思う「やってみたいこと」を叶える為に必要なことなんだ、わかるな
俺達が来る迄ひとりで頑張っていたお前なら出来るよ

〈ヘキサドラゴン〉のモモも拾った当初それはもう大変だった
思い通りにならないと噛みつく、暴れる、引っ掻く
ふと思い出して苦笑いしてしまうかな

以前保護した小さな白い信徒型UDC-P
彼らが出逢うことがあればいい友達になれそうだ




「なあ、やってみたいことはできたか」
 そわそわと猟兵達から話を聞くUDC-Pへ向け、鬼桐・相馬はそっと声をかける。
 ここまでの話からも彼女は外の世界の美しい景色に美味しいもの。様々なものを知ることが出来た。
 保護した時よりも明らかに表情が華やかなUDC-Pを見遣り、相馬の表情も柔らかなものへと変わる。
 けれど、だからこそ話さなければならないこともあるだろう。相馬は静かに呼吸を整え、金の瞳で小さな鳥をじっと見つめた。
「外の世界はお前にとって驚きに満ちたものだろう。だが……その全てが友好的であるとは限らない」
 それこそ、彼女を縛り付けていた楽園のように。
 世界は美しい、だけど残酷だ。これから先、UDC-Pが辛い目に遭うことだってあるはずだ。
 けれど外の世界に出ることが出来た彼女なら、それに立ち向かうことだって出来る。
「この世界の事を学び知る事。お前の思う『やってみたいこと』を叶える為に必要なことなんだ、わかるな」
 その言葉にUDC-Pはこくりと頷く。
 ああ、これなら彼女は大丈夫だろう。瞳に宿った意志を見遣り、相馬は再び表情を和らげていく。
「俺達が来る迄ひとりで頑張っていたお前なら出来るよ」
 UDC-Pの頭をそっと撫でようとした瞬間、相馬の鞄がもぞもぞと動き出した。
 中から飛び出してきたのは――ヘキサドラゴンのモモだ。
 先程の戦いで自分を助けてくれた小さなドラゴンを目にし、UDC-Pの瞳がきらきらと煌めいた。

「そうだな、俺の話もしようか。こいつを……モモを拾った当初はもう大変だったな」
 今でこそ頼もしい相棒同士である相馬とモモだが、最初から仲が良かった訳ではない。
 何かにつけて気に食わないと暴れだし、時に噛み付いたり引っ掻いたりしてきた小さなドラゴン。
 当時のやんちゃぶりを思い出し、相馬は小さく苦笑いを浮かべる。
 けれどそこにあったのは――間違いなく、友人を大切に思う気持ちだ。
「お前も友達を作るといいかもしれない。この組織には、他にも保護されたUDC-P達がいるからな」
 言葉を口にし、相馬が思い出すのは過去に保護した白いUDC-Pの姿だ。
 あの子もきっと、目の前の鳥に会えば喜んでくれるだろう。
 人に害を為さず純粋に外の世界に憧れ、何かを大切にしてきた者達。
 そんな彼ら彼女らが楽しく過ごせますように。
「友達と『やってみたいこと』をするのだって楽しいはずだ。お前にとってこれからの生活が良いものになることを祈っているからな」
 改めてUDC-Pの頭を撫でて、相馬はそっと微笑んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

言祝・ことは
【またたび】
めでたしめでたしの幕間って感じかねぇ

そうやって懐かれてると仲の良い兄弟みたいじゃねぇ?もしくは親子?
なんて自分は他人事で微笑ましげに

外の話ねぇ
そしたらとある青い鳥を探して兄妹が色んな世界を旅する話はどうだい?
作り話って馬鹿にしちゃいけねぇ、実は本当にあった話かもしれねぇぜ?
なんて、皆で見聞してきた世界を交えつつ話し

うん、空はいいな
お前さんがどこかで見上げた空は、俺らもやっぱり何処かで見てるんだよ
だから自由だし、何処に至っていつかは届く
良い子にしてればお前さんだって同じさ
…なんて、ちと浪漫が過ぎるかねぇ

名があるのなら呼びたいな
それは呪で、祈りだから
お前の行く先が、どうか自由である様に


御乃森・雪音
【またたび】
さて。懐かれてるのは可愛いわ、妹位…娘って程ではないわよねぇ。

何から教えてあげようかしら…空。
この世界の空は綺麗よ、って見える所に連れて行ってあげたいんだけど。
勿論、外には出られないの分かってるから天窓とかある部屋があればで。
ルキヴァとことはと3人で、今まで見てきたものを教えてあげたり…水晶の森、宝石の海辺に桜と銀河。
これから貴女が生きる世界にはとても綺麗なモノが沢山あるのよ。

後、ちょっと気になってるのは…名前ってあるのかしらこの子。
ひとくくりでUDC-Pじゃなくて、個人として扱ってあげたいのよね。
誰かがつけてるならその名前を。もしつけられていないなら彼女が望む音を。


ルキヴァ・レイヴンビーク
【またたび】
フフ、確かに雪音とはシスターのようデスねぇ…微笑まシイ
雛鳥、少しは落ち着きマシタか?
ハンガーストライキなすってたのデスからお腹も空いてる事デショウ
ビスケットとお茶くらいなら出せマスかね?
手本にイートしてみせて…ほら、ユーもどうぞ

空の事、世界の事なら、ワタシも色々見聞を重ねておりマス故
西はロンドンから東はジャパンまで、見てきたままを語り
ふふ、行きたい顔してマスね
しかし雛鳥はまだ巣から飛び立つにはまだまだ未熟デス
スマホの動画で景色をエンジョイ出来るものをお見せしつつ
いずれ許可される日が来るまで、想像の翼で飛び回って練習しておきなサイ

名前…確かに
つい雛鳥と呼んでおりマシタしね、ワタシ




「めでたしめでたしの幕間って感じかねぇ」
 案内されたオフィスのソファに腰掛けながら、言祝・ことはがゆるりと笑う。
 そんな彼の目線の先では、保護したUDC-Pに懐かれる御乃森・雪音の姿があった。
「そうやって懐かれてると仲の良い兄弟みたいじゃねぇ?」
「フフ、確かに雪音とはシスターのようデスねぇ……微笑まシイ」
 ことはの言葉にルキヴァ・レイヴンビークも頷き、雪音達の様子をのんびりと眺めている。
 雪音本人もどこか安心するように、UDC-Pには好きにさせているようだ。
「懐かれてるのは可愛いわ、妹位……かしら?」
「もしくは親子?」
「……娘って程ではないわよねぇ」
 他人事のように笑うことはを見遣り、雪音は小さく首を傾げる。
 その一方で、ルキヴァはUDC-Pへと視線を向けていた。
「雛鳥、少しは落ち着きマシタか? ハンガーストライキなすってたのデスからお腹も空いてる事デショウ」
 ごそごそと、懐から取り出したのは小さな猫型ビスケットにお茶のセット一式。
 初めて見る物体にUDC-Pの興味は津々、戦いに疲弊していた猟兵達も思わず視線をそちらへ向ける。
「これはワタシ達がよくイートしてるものデス。ほら、ユーもどうぞ」
「そうだな。簡単なお茶会でもしようか」
「こうやって皆で美味しいものを食べると、楽しい気持ちになるわよ」
 猟兵達に促され、UDC-Pもビスケットやお茶に口をつけていく。
 彼女の表情がぱっと華やいだのを見遣り――猟兵達も思わず笑みを零していた。

 ある程度お茶会が落ち着いてきたところで、猟兵達は顔を突き合わせて思案する。
 UDC-Pに外の世界の話をしてみようと思ったのだけれど、まずは何から話せばいいものか。
「例えば……とある青い鳥を探して兄妹が色んな世界を旅する話はどうだい?」
 最初に話を切り出したのはことはだ。
 紡ぐは有名な童話の話。だけどその物語は、様々な世界を巡る猟兵からすれば決して他人事ではない。
「作り話って馬鹿にしちゃいけねぇ、実は本当にあった話かもしれねぇぜ?」
「そうね。アタシ達も色々な場所を巡ってきたもの」
 水晶の森、宝石の海辺、桜が咲き誇る美しい街、そして見渡す限り広がる銀河。
 今までの冒険を思い返し、三人は思い出話に花を咲かせる。
 UDC-Pも全ての話に興味を示し、食い入るように聞いているようだ。
「勿論この世界にも面白い場所はいっぱいありマスよ。ワタシも西はロンドン、東はジャパンまで色々見聞を重ねてきマス故」
 同じ世界でも、地域が違えばそこの暮らしは全く異なる。
 そんな異文化から触れてみることもUDC-Pにとっては良い刺激になるかも知れない。

「でも……どの世界でも、どの場所でも。空はいつも綺麗デシタね」
 ふと、ルキヴァがぽつりと呟く。
 その言葉に何かを思ったのか、雪音は部屋の中を見回し――ブラインドで閉じられた窓を見つけると、そちらの方へと歩み寄った。
「ここから見える空だってきっと綺麗よ……ほら」
 がらり、とブラインドを開けてみると、そこに広がるのは微かに茜色へと染まる空。
 『楽園』の空とは全く違う美しさに、UDC-Pも思わず興奮しているようだ。そんな子供のような様子を眺め、ことはは楽しげに笑みを浮かべていた。
「うん、空はいいな。もうすぐ夕暮れ時みたいだし、夜になれば星も見える」
「この子、空が好きなのかしら。アタシもそうよ、この世界の空はとっても綺麗だもの」
 窓辺に歩み寄ってきたUDC-Pを見遣り、雪音はそっと微笑む。
 けれどここで話を止めてはいけない。UDC-Pにとって外の世界は美しいものだけれど、まだ飛び出してはいけない所なのだから。
「ふふ、行きたい顔してマスね。しかし雛鳥はまだ巣から飛び立つにはまだまだ未熟デス」
 そう言いつつルキヴァが取り出したのはスマートフォンだ。
 そこには彼が旅してきた様々な世界や国の様子が映し出されていた。UDC-Pは空とスマホを交互に見つつ、どうにもそわそわしている様子。
「いずれ許可される日が来るまで、想像の翼で飛び回って練習しておきなサイ。この写真はいつでも見せにきマスから」
 その言葉にUDC-Pはこくこくと頷く。聞き分け自体は良い子のようだ。その様子に猟兵達もほっと胸を撫で下ろす。
 それに――暫くUDC組織から出られないとはいえ、猟兵達とUDC-Pの繋がりまで途絶える訳ではないのだ。
 ことはもUDC-Pの側へと立ち、桃色の瞳でじっと彼女の方を見つめる。
「お前さんがどこかで見上げた空は、俺らもやっぱり何処かで見てるんだよ。だから自由だし、何処に至っていつかは届く」
 紡ぐのはUDC-Pを救うための言葉。
 この言葉は自分自身を救うためのものでもあるかもしれない。
 けれど、こうやって祝福を紡ぐことがきっと何かに繋がると信じているから。
「良い子にしてればお前さんだって同じさ……なんて、ちと浪漫が過ぎるかねぇ」
「あら、アタシはそういうの嫌いじゃないわよ?」
「ワタシもいいと思いマスよ、気持ちは大切デス」
 少し恥ずかしそうに頬をかくことはに向け、雪音とルキヴァは優しく笑みを向ける。
 そんな彼ら彼女の仲睦まじい様子も、UDC-Pにとって暖かな何かを伝えてくれていた。

 再び皆で席につき、お茶やビスケットを楽しみつつ。
 その最中、ふと何かに気づいたように雪音が声をあげた。
「後、ちょっと気になってるのは……名前ってあるのかしらこの子」
「名前……確かに。つい雛鳥と呼んでおりマシタしね、ワタシ」
 確かにUDC-Pは小さく、雛鳥のようにも見える。
 『楽園の鳥』という通称の名前はあるけれど、それはあくまで種族を指す名前。
 これから先、UDC-Pには固有の名前が必要かもしれない。
「そうだな。名があるのなら呼びたい。それは呪で、祈りだから」
 言葉の大切さを知ることはから見れば、これから新しい生き方を探すUDC-Pにとって、名付けということの重大さはよく分かっていた。
 願わくば、彼女の行く先がどうか自由である様に。
「良い案はありマスかねぇ?」
「何かあなたの望む音はあるかしら?」
「良ければ名前を贈らせて欲しい。これが俺達からお前さんへ贈る言祝ぎになるからな」
 猟兵達はUDC-Pと顔を突き合わせ、共に名前を探していく。
 この子が気にいる言葉が、音が、何かがこの世界にはきっとあるはずだから。
 そうやって刻まれたUDC-Pの名は、きっと彼女の心を支えてくれる。
 そしてそれは、いつか広い世界に出た時にも――きっと彼女を導いてくれるはずだ。
 こうやってたくさんの暖かな贈り物が、楽しくUDC-Pへと贈られていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花菱・真紀
幸也さん(f13277)と
『外の世界への興味』
自力で外には行かないようにってなると結構厳しいものになる様な気がすると思うんですが…。
素敵な場所を知れば知るほど行きたくなるものじゃないですか?
でもこの子がUDCである限り自由に行けるところは限られている。
だけど外は怖いってだけいうのも違うと思う
写真とか映像もたくさん見せて上げたい。
まだ外に出られない真実も伝えておく。
世界遺産やリゾート素敵だと思う。
けどね、俺は大切な人がいる場所が一番好きだな。
大切な人がもし出来たらそこがきっと一番の場所になるよ。
大切な人を亡くしてからじゃ二度と戻ってこない場所だからね。
今いる場所が一番幸せな場所になれば嬉しいな。


十朱・幸也
真紀(f06119)と
アドリブ歓迎

自力で外に行かない様に、か
ちと、酷かもしれねぇけど……
他のUDCから守る事に繋がると思えば仕方がねぇか

出張先の写真なら幾つかあるぜ
流石に、海外までは行った事ねぇけどな
桜や紅葉とか、季節ならではの風景の写真を見せる
つか、真紀……リゾートとかめっちゃリア充思考じゃね?

あとは、こういうのも有りか?
スマホでインターネット検索掛けて【情報収集】
本物に限りなく近い風景画を探して、UDC-Pに見せる
真っ白な紙の上に
自分が見たいと思う絵を書くのも、楽しいんじゃねぇか?

外の世界は綺麗に見えて
嫌な部分もあるかもしれねぇけれど
こいつと居たら楽しい、って思える様なダチが出来るといいな




 案内されたオフィスにて、花菱・真紀と十朱・幸也は顔を突き合わせつつ思案を巡らす。
 自分達のすぐ側に腰掛けるUDC-Pと何を話すべきか。彼女の状況を踏まえつつ、二人は真剣な表情を浮かべている。
「『外の世界への興味』……自力で外には行かないようにってなると結構厳しいものになる様な気がすると思うんですが……」
「ちと、酷かもしれねぇけど……他のUDCから守る事に繋がると思えば仕方がねぇか」
 素敵な場所を知れば知るほど、小さな鳥の憧れは更に大きくなるかもしれない。
 けれど世界は素敵なだけではなく、大変なことだって沢山あるのだ。それを踏まえ、猟兵達は年長者として話すべき内容を吟味していた。
「確かにこの子がUDCである限り、自由に行けるところは限られていますよね。でも……外は怖いってだけいうのも違うと思います」
「ああ、それは俺も同じだ。確かに外の世界は綺麗に見えて、嫌な部分もあるかもしれねぇけれど……けど、今は出来るだけ楽しい思いを膨らませてあげたいな」
 自分達も様々な世界を巡り、色々な思いを抱いてきているから。
 だからこそ、今日は楽しい話をしよう。
「そうだ、写真や映像で綺麗な景色を見せてあげるのはどうでしょう?」
「それなら……こんなのはどうだ?」
 真紀から提案を受け、幸也が取り出したのは愛用のスマートフォンだ。
 そこからアルバムのアプリをタップして、選択するのは様々な写真が納まるフォルダだった。
「出張先の写真なら幾つかあるぜ」
「わあ、俺も見たいです!」
 弾む真紀の声に反応したのか、UDC-Pも二人との距離を詰めている。
 一緒に顔を見合わせて写真を見れば、ちょっとした旅行気分にもなれるだろう。
「ここは桜の名所でな。ちょうど春の出張で……こっちは紅葉が綺麗だった所かな」
 幸也がどんどん画面をスワイプしていけば、映し出されるのは日本の四季折々の光景だ。
 『楽園』の不気味な光景とは違う、本物の自然を目にすればUDC-Pの瞳もきらきら煌めく。
「凄いですね……! 世界遺産とかリゾートとかの写真もあったりします?」
「いやいや、流石に、海外までは行った事ねぇけどな。つか、真紀……リゾートとかめっちゃリア充思考じゃね?」
「えー、いいじゃないですか。南国の海とか絶対楽しいですよ!」
 賑やかに話題を膨らませる二人を見遣り、UDC-Pもゆるく微笑む。
 そんな彼女の様子には真紀と幸也も胸を撫で下ろしていた。

「あとは、こういうのも有りか?」
 幸也は再びスマートフォンを操作して、今度はウェブブラウザを開いていた。
 真紀の言葉にヒントを受けたのか。彼が検索するのは地球上の様々な風景だ。
「リゾートっていうのはこういう場所でな。あとは山なんかでも凄く綺麗な所があるんだぜ」
「森だって、本当は綺麗な場所なんだよ。きっと気に入る場所があると思うんだ」
 言葉を紡ぎつつ、幸也が更に別の道具も取り出していく。
 それは真っ白な紙と数本のカラーペンだ。
「こういうのを参考にして、自分が見たいと思う絵を書くのも楽しいんじゃねぇか?」
 想像を膨らませ、何かを描く。自分にとって初めて見聞きする物事にUDC-Pの瞳は再びきらきらと輝きだしていた。
 外に出ることは出来なくても、これからは自由に行きたい場所を思い描き、いつか旅立つことも出来るかもしれない。
 そんな希望がUDC-Pの胸には確かに宿り始めていた。

「こう、色んな場所の話をしたけど……俺の一番好きな場所のことも話そうかな?」
 UDC-Pへ向け、真紀もそっと笑顔を向ける。
 彼の頭の中に浮かぶのは、共に過ごしてきた人達の顔だった。
「……俺は大切な人がいる場所が一番好きだな。きっと君にとっても、大切な人がもし出来たらそこがきっと一番の場所になるよ」
 今はまだ分からないかもしれないけれど。けれどきっと、いつか分かる時が来るだろうから。
「……大切な人を亡くしてからじゃ二度と戻ってこない場所だからね。だからこそ、今いる場所が一番幸せな場所になれば嬉しいな」
 幸也も真紀の言葉に頷き、柔らかく笑みを浮かべていた。
「そうだな。こいつと居たら楽しい、って思える様なダチが出来るといいな。そうすればどこに居たって楽しくなれるぜ」
 二人の言葉を受け、UDC-Pはじぃっと猟兵達を見つめている。
 彼女は言葉を発しないけれど、なんとなく言いたいことは伝わっていた。
「……俺も幸也さんといると楽しいですよ。こんな風に一緒にいられる友達がいると、本当に」
「俺も真紀と色んな所に行きたいぜ。遊びに行く時でも事件を解決する時でも……俺達が参考になるなら嬉しいかな」
 少し照れくさそうに笑う猟兵を見遣り、UDC-Pもゆるりと笑う。
 彼女にとっても猟兵達は初めて出来た友達になるだろう。彼ら彼女らとの思い出が、きっとUDC-Pの心を支えていくはずだ。

 美しい景色、美味しいもの、かけがえのない友人達。
 『楽園』では決して触れることの出来なかったものに触れ、UDC-Pの心は確かに前を向き始めた。
 いつか彼女が外に出る時には――猟兵達の顔を思い出すはずだ。
 そしてその思いは、同じ空の下で繋がっているだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月19日


挿絵イラスト