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羅針盤戦争~提督は天使がその義務を尽くすことを期待する

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #ネルソン提督 #舵輪島


●グリードオーシャン、舵輪島
 クレマンソー級空母の甲板上に彼は立っていた。
 名はネルソン。
 かつての子爵にして、今の提督。
 そして天使を伴う者。

「とうとうこの場所も見つけられたか。飛行を阻害した海を以っても猟兵の侵攻は食い止められず……俺は責務を果たせなかったか――いいや!」

 ネルソンは頭を振った。
 自身とて、不敗の提督ではなかった。
 右目を失い、右腕を失い、最後に死んだからこそ、自分は自分として終わり、そしてオブリビオンとしての自分が始まった。
「ここで責務を果たそう。それが七大海嘯『舵輪』ネルソン提督なのだから」

 やることは変わらない。
 甲板の上で優雅に歩き回るだけだ。
 あの時のように、そうあの海のように。
「天使共よ!」
 号令。
 従うは翼を授かった軍団。
 指揮者に奇跡を期待されず、そして――。

「提督は天使がその義務を尽くすことを期待する!」

 血肉となることを望まれたモノ達。

 決戦形態トラファルガー・モード。
 自らが終わり、そして始まった海の名を冠した姿でネルソン提督は立つ。
 あの時のように優雅に歩みながら。

●グリモアベース
 タイプライターのキーを叩く音が響く。
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は目の下に隈を作り、視線を向けた。
「いやはや、参ったね。天使全てと合体するとは思わなかったよ」
 立ち上がり、紙に打ち込んだ資料を皆へ配る探偵屋の姿が、いささか困った様に思えたのは気のせいだろうか。

「皆の努力の末、舵輪島を無事に見つけることが出来た。という事は分かるね? 決戦だ。勿論敵はネルソン提督、そしてあちらも十全に備えている」
 帽子を取り、頭を掻き、思考を整理し、そしてグリモア猟兵は言葉を発した。
「トラファルガー・モード。天使と融合することによる最大火力にて君達を撃破するつもりだ。そしてこれが厄介でね、痛みを感じないし状態異常の悪影響を受けない」
 息を吐き、そして訪ねる探偵屋。
「君達は無痛をどう認識する? 私は厄介だと思うよ、痛みを感じないことで天使と融合した自分の状態を冷静に把握できるんだからね」
 答えを待たずにタイプライターのレバーを倒し、ゲートを開く。

「私が視て、そして伝えられるのはこれくらいだ。自分が最も輝き、そして死んだ海の名を決戦形態の名にするくらいだ……今回は死闘と思ってくれ。それじゃ幸運を祈る」
 潮風の向こうからは硝煙と油と鉄の臭い。

 ――殺意が猟兵を待っていた。


みなさわ
 舵輪は自らの終わりと始まりの海を自らが信ずる最大の戦術の名とした。
 こんにちは、みなさわです。
 今回は七大海嘯『舵輪』ネルソン提督との決戦です。

●舞台
 グリードオーシャン『舵輪島』
 その港に係留した一隻の空母の上でネルソン提督は待ち受けています。

●決戦形態(トラファルガー・モード)
 天使軍団と融合した最大戦力による最大火力の決戦形態です。
 痛みを感じず、状態異常を無影響化します(喰らうが、悪影響を受けません)

●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃ユーベルコードと「決戦形態(トラファルガー・モード)」に対抗する』
 こちらを実行する事で戦いを有利に進めることが出来ます。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』

POW   :    天使の銃
自身の【肉体に吸収融合した天使の軍勢】を【敵に応じた『天使武装』】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    聖守護天使
【手から現れる天使達】で攻撃する。[手から現れる天使達]に施された【瞳を覆う聖なる帯】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    天使槍兵団
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【舵輪の脚から現れた天使達が放つ光の槍】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
大豪傑・麗刃
今回は遠距離戦を挑む。まずは遠くから大声で

ナポレオン・ボナパルトが骸の海にて再戦を所望すと言ってたし、早いトコ行ってやったらどうかね!

先制攻撃で天使が来るが、距離をとったので到着まで時間があるので種子島、ガトリング砲、拳銃等飛び道具でスナイピングし、ユベコ解禁までの時間を稼ぐ。
解禁後は三日月と範囲攻撃、薙ぎ払いを組み合わせた必殺の

超長射程広範囲薙ぎ払い攻撃

で天使たちをまとめて一掃。しかるのち三日月で本人を狙い撃ち。これなら相手が痛みを感じなくても問題はあるまい。
せっかくナポレオンの名を借りたので、公の得意とする砲撃戦にならわせてもらった。そしてネルソンの死因は流れ弾に当たった事らしいし、と。


緋翠・華乃音
……成程。確かに紛れもない脅威だ。
たった一手でも読み誤れば詰むだろうな。


だったらどうするか――なんて、知れたこと。
合理の最善手を打ち続けるだけだ。
次に挑む者へ必殺を託す為に、狙撃手としての仕事をこなすのみ。

如何に優れた決戦存在であっても、単騎で戦局を覆せる程に戦場は甘くない。……君はそれを知っている筈だろうに。

遠く離れた装甲船から狙撃を行う。
先制で天使が創造されるのを見越しての戦術だ。

こちらへ飛翔する個体から順に墜としていく。
無限に生み出せる訳でもないんだろう?

銃爪を引けば終わるこちらの方が攻撃は速い。
“星辰の瞳”の範囲内全てが殺傷圏内だ。

その姿――捉えたぞ、提督。そこは既に狙撃手の掌中だ。



●火蓋は遠くより切って落とされる

 遠くの山より聞こえるそれは鬨の声か、いや。
「ナポレオン・ボナパルトが骸の海にて再戦を所望すと言ってたし、早いトコ行ってやったらどうかね!」
 明らかな挑発。
「残念だが、その申し出は拒絶しよう。今の俺は『舵輪』だからな」
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)の言葉に対し、返答と共に添えるのは

 ――天使

 勿論、麗刃とて備えていないわけではない。
 種子島、ガトリング砲、拳銃、そして――距離。
 先制の不利に対し、自分が自由に布陣できるというアドバンテージを以って狙うは遠距離狙撃。
 狙うは天使。
 種子島が火を吹く中、天使が飛びぬけ、そして落ちていく。
 戦況を眺めていたネルソンは勝利を確実にするために更なる天使を生み出し……。
「――!?」
 咄嗟にそれを海へと放った。
 視線の先にあるのは鉄甲船。
 狙撃手はもう一人いたのだ。

「……成程。確かに紛れもない脅威だ」
 to be alone.
 独りで戦うと決めた男がスコープ越しに天使を見つめる。
「合理の最善手を打ち続けるだけだ」
 次に挑む者へ必殺を託す為に緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)はスナイパーライフルの引鉄を絞った。
 火薬が炸裂し、天使は堕天する。
「如何に優れた決戦存在であっても、単騎で戦局を覆せる程に戦場は甘くない」
 華乃音の傍に熱を持った薬莢が転がっていく。
「……君はそれを知っている筈だろうに」
 同じタイミングで麗刃の蒸気ガトリング砲が煙ともに鉛を吐き出す。
 正確な狙撃と、嵐のような弾幕がネルソンのユーベルコードを相殺していき、そして……。
「……無限に生み出せる訳でもないんだろう?」
「だが君達を押しきるに充分な天使共は投入できる」
 蝶の言葉を提督が否定した。
 出し惜しみする理由など舵輪にはないのだから。
 聖なる帯を解いた天使の軍勢が一斉に飛び掛かった。
 だが……時はもう来ていた。
 月が放たれる時が!

 Crescent
 三日月!

 麗刃の薙ぎ払いと共に放たれるは三日月の衝撃。
 それは戦場を呑み込み天使達を吹き飛ばし、そして――余波でネルソンが体勢を崩す。
「せっかくナポレオンの名を借りたので、公の得意とする砲撃戦にならわせてもらった」
 奇人たる武人が振りぬいた刀を納める。
「そしてネルソンの死因は流れ弾に当たった事らしいし、と」
 それは予言であり、確信であった。
「その姿――捉えたぞ、提督」
 狙撃手たる蝶がその隙を逃すことは無かった。

 Sphere Iris
 星 辰 の 瞳

 人の理を外れた異能による精密射撃はまるで連携したが如く、体勢を崩したネルソンのこめかみを正確に射抜いた。
「そこは既に狙撃手の掌中だ」
「……やるな」
 華乃音の言葉に答えが返ってきた。
「天使共の肉を使ってもこのままでは1時間も持たない」
 羽が舞い、たたらを踏んだネルソンが手を掲げる。
 意に応え、天使の軍勢が再び猟兵へと襲い掛かった。

「融合した天使で負傷を補ったのか」
 狙撃者たる蝶は状況を正確に把握し、呟く。
「その上で損害を把握している――けれど、無限でないなら」
 武人の言葉に続くのはただ一つ。

 ――次に続く者へ必殺を託す!

 戦いの火蓋は遠くより切って落とされた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──悪くねぇツラしてるな
覚悟を決めた戦士のそれだ……こっちも身が引き締まるぜ
猟兵とテメェ、どっちが先に進むか…ケリを着ける時だ
俺の小細工は効かねえようだしよ…真っ向勝負だ

手から天使が現れた瞬間、こっちも【早業】で札を切る
───『Sword dance』
行動速度、反射神経をフルブースト
天使からの攻撃を避け、弾いて、受け流す
攻撃を攻撃で消し去るように、ナイフもクロスボウもショットガンも使う
おいネルソン…早く俺を殺さないとやべえぞ
ギアはこうしてる間に、際限なく上がり続けてるんだ
均衡が崩れちまえば…向かう先はテメェだ
まずは天使を出す手と、逃げられないように足を削る
地の果てまで決して逃がさねえッ!



●限界は既に遥か向こうへ

「──悪くねぇツラしてるな」
 天使達が遠巻きに見つめる中、ネルソンの視界に現れたのは影――いや、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)。
「覚悟を決めた戦士のそれだ……こっちも身が引き締まるぜ」
「貴様こそ――泥を啜り、泥を被り、その上で戦場にて死者であろうとする目だ……むしろ何故、生きている?」
 提督の言葉をヴィクティムは鼻で笑う。
「悪いが答えられねえ。今は猟兵とテメェ、どっちが先に進むか……ケリを着ける時だ」
「……そうだな」
 空気が張り詰める。
 ネルソンの右腕が動くと同時に端役の目が輝いた。

 最初に空気が震え、次に金属が甲板にゴトリと落ちた。
 速さは同じであったか、並ぶものであったか。
 だが、先に天使はヴィクティムの左腕をもぎ取り。引き換えに猟兵は一体を堕天させた。
 だが端役はカードを切るのを諦めない!

 Extend Code『Sword dance』
 非才の我が身に剣を与え給え

 自ら死に近づくことにより至る領域。
 行動速度と神経反射は人の領域を超え、天使の軍勢に勝る手数をヴィクティムに与えた。
「痛みがねえっていうのは便利だな?」
 肉の無い腕を持つ端役が転がった左腕を足で掬い、右腕でキャッチする。
 触れていれば、回路は繋がる。
「触覚は生きてんだから、どんな状況か分かる。テメエの無痛はそういうためのもんだろ?」
「分かっていたか」
 ヴィクティム・ウィンターミュートの指摘に対しネルソンは否定をしなかった。

 痛みがないと損傷を把握できないと思われがちだが、それは正しくは無い。
 それは無痛を無傷と勘違いした結果だ。
 だがもし、痛みが無く。
 そして、損害を冷静に判断できる知性があれば。
 疼痛に精神を摩耗させず、能力のかぎり戦えるであろう。

 散弾とクロスボウの矢が雨霰と空を支配し、天使は古の戦列歩兵が如く死地へと飛び込んでいく。
「おいネルソン……早く俺を殺さないとやべえぞ」
 だがそれもヴィクティムの呼びかけを切っ掛けに崩れ始める。
 ショットシェルが次々と転がり、矢はあっという間に穿たれる。
 羽が次々と舞い散り戦場は端役が支配する舞台へと変わった。

「テメエがこれ以上攻めきれないなら、こっちは際限なくギアを上げていく」
 これはトラファルガー・モードとSword danceの相性。
 最大火力で一気に攻め立てるネルソンに対し、時間を追うごとに行動回数が増すヴィクティムのユーベルコードは攻勢を打ち消せれば、優位に働く。

 ――結果

「地の果てまで決して逃がさねえッ!」
 ナイフ片手に飛び込むヴィクティム・ウィンターミュートの接近を許すことになる。
 咄嗟に手に持ったマスケットの引鉄を引くネルソン。
 だが、銃声は響かず、代わりに指が転がり。
 返す刀で端役の刃が提督の膝の腱を断ち切った。

 最大の火力は今、限界を超えた力で凌駕された。
 魂と引きかえに……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

御桜・八重
ネルソンさんのこと調べてみたよ。
弾丸の雨の中を悠然と歩いて味方を鼓舞したって。
すごいけど怖くなかったのかな?

怖くないわけない。
きっと勝利のため、仲間のため、耐えたんだ…って思う。

痛いのは嫌だし怖いけど、その先に求めるものがあるなら
頑張れる。強くなれる。
…ネルソンさんも知ってるんじゃないかな。

花疾風の襷を締めて、桜ぽっくりで水面を全力疾走。
オーラで身を護り、相手の射撃の瞬間、
刀を突き出し錐揉み状に飛び込む。
(被弾面積の最小化と最速突破)
無傷で済むとは思わない。
でも、その先に掴みたいものがあるなら、強くなれる!

彼の足元に着地、すかさず右腕の古傷に全力の【花旋風】。
痛みを思い出させて決戦形態を解く!



●雨の向こうに見えるのは

 敵を調べるのも戦い方の一つ。
 御桜・八重(桜巫女・f23090)もそれに習い、ネルソンという男を調べ上げていた。
「弾丸の雨の中を悠然と歩いて味方を鼓舞したって……すごいけど怖くなかったのかな?」
 呟いて、すぐに被りを振った。
「怖くないわけない」
 きっと勝利のため、仲間のため、耐えたんだ…と八重は考え、そして海より港を見た。
 桜色の襷紐を締め、幻朧桜のぽっくり下駄で海面に立つとオーラが波紋となって、水面に映り、桜巫女を立たせる。
「痛いのは嫌だし怖いけど、その先に求めるものがあるなら」

 頑張れる。強くなれる。

 ネルソンもそれを知ってるかと思いつつ、八重は海を走った。

「……来たか」
 マスケット片手に『舵輪』は海を疾走する影に右手を向けた。
 引鉄を引く指は失ったが、それでも肉となった天使が武器となる。
 背後より出でるのは銃砲五門。
 数と引きかえにするのは――膝腱を切られて存分に動けない脚。
 だが、問題はない。
 猟兵を殺すに充分な火力に数を重ねねば、圧倒は可能なのだから。

 銃声が鳴り響き、空気が震えるのを八重は感じた。
 無傷で済むとは思わなかった、けど――
「その先に掴みたいものがあるなら、強くなれる!」
 桜の巫女の決意と共に下駄――桜ぽっくりから噴出するオーラが海面を跳ね上げ、疾走から跳躍へと変化させる。

 螺旋!

 桜色のオーラが花弁となりて貫くは一意専心。
 その白い肌を銃弾が霞め、赤く切り裂くも錐揉みに飛び込む八重の勢いは止まらず、着地の衝撃と下駄の歯が擦れることで甲板が悲鳴を上げる中、少女はネルソンの目の前で一歩踏み込む。
 跳ね上がるは――

 ハナツムジ
 花旋風

 舞う様に回転し、空へと跳び上がる二刀の斬撃が肉を、右腕を、斬り落とす!
「やるな……だが!」
 しかし『舵輪』も転がった右腕に目もくれず、左手に持ったマスケットを棍棒代わりに振り回し、桜の巫女を吹き飛ばす。
「まだだ! 痛みは思い出しても! ここからが俺だ!」

 ホレーショ・ネルソン、最後の戦いに赴いた彼の姿は隻眼にして隻腕と知られている。

「ここからが始まりだ! 腕を失っても『責務』を成し遂げるのが……ネルソンなのだから」
 故にこれが始まりであった。

「責務……」
 天使を従えておびただしい出血の中、立つ男。
 御桜・八重は弾丸の雨の向こう側へたどり着き、矜持に触れることで男のそれを知った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
無痛……傷は負うのなら、それは……
最期まで戦う為、なのでしょうね

【推力移動】「ダイウルゴス」も飛ばす推力を、生身で使って
死角からも【第六感】で【見切り】回避専念
受けても【激痛耐性、継戦能力】私は、死なない。死ねない……だから痛みも【覚悟】でねじ伏せて
折れていようが千切れていようが【念動力】で肉体動かして、ネルソンさんを
ネルソンさんが従える、天使達をみる

『光をここに』
あなたの、あなた達の義務は、世界の滅びを助けることでは、なかった筈

状態異常を無影響化するネルソンさんは、無理でも
天使さん達だけでも
オブリビオン化で、変わってしまった心、義務だと、思うから
どうか

【生命力吸収】力を束ね【レーザー射撃】



●守護天使は微笑まない

 空気がぶち破られ、衝撃が響いた。

「無痛……傷は負うのなら、それは……最期まで戦う為、なのでしょうね」
 遠くよりキャバリアを飛ばすほどの推力で飛ぶのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。
 彼の呟きはトラファルガー・モードにおける無痛の意味を正確に捉えていた。

 ネルソン一人に戦力を集中させた場合、例え火力が上回っていても負傷は免れない。
 そして痛みは筋肉を緊張させ、精神を減耗し、行動を制限する。
 最大火力を発揮するうえで邪魔になる要素であった。
 引き換えに長期の戦闘に耐えうることは出来ないがそれは問題では無かった。
 最初から最大限の攻撃を以って圧倒すればいいのだから。
 今迫ってくる猟兵もそうやって撃破しよう。
 決断と共に残った左腕を向ければ、誘われた天使の軍勢が突撃を敢行した。

 ――轟!!

 高速で何がが激突する衝撃が波となり、空母を揺らした。
 高出力推力を阻む、絶対的な天使物量及び瞳の開放による強化。
 視聴嗅味触を超える感が致命傷を避けれども、死角からの一撃に、正面からの勢いに、ナイ・デスというものを構成する要素は千切れ飛び、胴は肉片となり、首が甲板へと転がった。
 その首へ向けて荒い息を整えつつネルソンはマスケットを向ける。
 確実な勝利を手にするために。
 視界が交錯した。
 続いてナイは提督の瞳の奥に居る『モノ』へと呼び掛けた。
「あなたの、あなた達の義務は、世界の滅びを助けることでは、なかった筈」

 Regenerate
 光をここに

 その言葉と光は天使へ――届いた。
 ネルソン自身は状態異常に対する悪影響を受けない。
 ならば、天使はどうなるであろうか?
 答えは今、示される。

「そういう事か、こちらの『兵力』を奪う。猟兵の視点は侮れないな」
 舵輪は自らの力を失ったことを悟りつつ、銃の引鉄に力を入れる。
 刹那、光がネルソンの胸を貫いた。
 ナイによるレーザーを介しての生命力吸収。
 突然の攻撃に射線は逸れ、火皿から漏れる火薬の煙が一瞬だけ提督の視界を塞ぐ。
 煙が晴れたころにはヤドリガミの姿は消え、そして自らの血肉となった天使も残り少なくなった。

 奇跡を期待しなかった男は奇跡により、力を奪われた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミネルバ・レストー
痛みを捨てた? ああ、そこまでの覚悟ってわけ
なら本当にこの海に沈んでも、恨み言はなしよね

どうあがいても、光の槍の弾幕が邪魔になる
下手に全弾迎撃しようとしたらキリがないから
その軌道を「瞬間思考力」で読んで、間隙を見出したら
「空中浮遊」で身体を浮かせてそこに思い切って飛び込みましょう
時には「念動力」で無理矢理身体を動かしてでも、避ける
かすってもいいわよ、死ななきゃ安いって言うでしょ?

【氷花は逆境にて咲き誇る】、防戦一方の今こそ発動させるわ
アブソリュート・ウィッチを氷の槍に変えて提督へぶん投げる!

わたしだって、わたしの「責務」を果たさなきゃならないのよ
生きて帰って報告するまでがセットなの、よろしくね


トリテレイア・ゼロナイン
戦力の集中投入…戦の初歩であり王道でありますね
七大海嘯『舵輪』最大戦力…討ち取らせて頂きます、提督

この大盾に体躯
相手が護り貫く攻撃求めるは必定

物理的な●目潰しとして射線遮る大盾●投擲
避ける方向は右?左?

読みを越えられるか…?

投げる直前に見せた身体の重心の傾きを脚部スラスター●推力移動で無理矢理修正
前傾姿勢で前進

その次弾が…私に放つ最後の弾です!

大盾弾き銃爪に掛ける提督の指の動きと銃口の向きを情報収集と瞬間思考力で把握
発砲タイミング
着弾点見切り

UC起動
ハッキングで力場出力限界突破
剣の武器受けと怪力で受け止め、射手…スナイパーの技量で反射角調整

無痛の意味なさぬ最大火力
トラファルガーの一撃で撃ち抜き



●『責務』は海に沈み、そして……

 港の向こう、海原の気温が下がっていく。
「痛みを捨てた? ああ、そこまでの覚悟ってわけ」
 海面スレスレを飛行しながらミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は呟いた。
「なら本当にこの海に沈んでも、恨み言はなしよね」
 その言葉が聞こえたのか、聞こえなかったのか。
 ネリーが自らを覆う影に気づき、頭を上げる。
 空には先を超える舵輪が陽光すら遮断し、現れた天使達は空を舞う『それ』を足掛かりに光の槍を構える。
 閃光の雨がミネルバに降り注いだ。

「戦力の集中投入……戦の初歩であり王道でありますね」
 クレマンソー級空母の甲板にて戦況を見つめていたネルソンにかける声がある。
 振り向いた先にはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「彼女は囮か?」
「いいえ、ほんの偶然です」
 提督の問いに答える騎士の振る舞いは上官と部下を思わせる。
 それだけの敬意と――
「七大海嘯『舵輪』最大戦力……討ち取らせて頂きます、提督」
 脅威を以ってトリテレイアは立つ。

 最後の戦いはここに始まった。

 槍の間隙をネリーが縫うように飛ぶ。
 支えるのは瞬間思考。
 どうあがいても邪魔になる光の槍を下手に全弾迎撃しようとしたらキリがない。
 ならば飛び込んで抜け出していく!
 けれど、その決意は物量が押しつぶす。
「こ……のォ!」
 槍の雨の通りぬけたところを狙った天使の一撃を念動力によって自らの軌道を強引に修正させて回避する。
 けれど、まだ攻撃は終わらない。
 頬をかすめ、青いポピーの髪飾りが吹き飛び、留めていた髪が乱れる。
「……っと」
 すんでのところでそれを髪飾りを受け止めたネリー。
 そこへ――光が降り注いだ。

 大盾を構え、騎士が迫る。
 圧倒的な体格差、天使を失った今、物量で攻めるのは得策でないと悟ったネルソンが選ぶのは攻撃力。
 祝福を与えられたマスケットは銃身が伸び、どんなものとて打ち破る螺旋を解き放つだろう。
 直後、その視界を盾が塞いだ。
「小細工を」
 提督は左に跳ぶ、そうしないといけない理由があった。
 右腕を失い、右膝の腱を断たれた今、身体を支えるのは左足なのだから。
 片腕でマスケットを構える『舵輪』
 それを支えるように肉が絡みつき、禍々しい炎を吐いた。
 空気の流れが変わる。
 スラスターを噴かしたトリテレイアが身を屈めて直進する。
 直後、鉛が貫通し、銃創によって戦機の左肩が吹き飛ぶ。
 けれどネルソンは臆することなくフリントを起こした。
 氷の花が空に咲いたのはその時だった。

「わたしだって!」
 花の名はミネルバ・レストー。
 その身は光に焼かれ、赤に染まっていた。
 それでも潜り抜けたのは――
「わたしの『責務』を果たさなきゃならないのよ」
 自らが成し遂げるものの為!

 Frigit――Avenger!!
 氷花は逆境にて咲き誇る

 逆境にて光るそのユーベルコードは生を掴み、果たすべきものの為に、今、こおりのむすめを提督の元へと誘う。
 その手に持つのは雪と氷の概念体アブソリュート・ウィッチ。
 結晶は持ち主の意に応え、今、氷の槍と化す!
「ちぃっ!」
 舌打ちと共に引鉄を引くネルソン。
 強烈無比、最大火力の弾丸が螺旋を穿いてネリーを襲おうとしたところにトリテレイアが立ちはだかった。
 その手に持つのは儀礼剣。
 だが、今は力場を形成する発振体。

 Reflection Shield Generator
 個人携帯用偏向反射力場発生装置

 何物もを跳ね返すAegisの剣によって弾丸は正確に『舵輪』へと向かい。並ぶように氷の槍が飛ぶ。
 それはまさに彼の終わり。
 二条の氷と鉛がネルソン提督の『トラファルガー』を終わらせ、空母ごとネルソンの身を海へと引きずり込む。

「生きて帰って報告するまでがセットなの、よろしくね」
 沈みゆく『舵輪』の死体を見下ろし、ネリーは告げる。
 かつて提督は死することで責務を果たし。
 そして猟兵は生き残ることで責務を果たす。
 ならば、ここに立つのは誰なのかは決まっていた。

 七大海嘯はここに死に、猟兵は勝利を以って生還を果たした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年02月20日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト