羅針盤戦争~安息の夜を守れ
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グリードオーシャンの洋上に浮かぶその奇妙な島は、年間を通して常に濃い霧で覆われている。島の上空もまた厚い雲に閉ざされており、昼間であっても薄暗い。一言で言って陰気な島だ。
名を『ブラックコフィン島』という。常闇の世界、ダークセイヴァーから「落ちて」きた島だ。
普段は島を訪れる者も極めて少なく、人狼やダンピールといった闇の住人がひっそりと暮らすこの島に今、コンキスタドールの魔の手が伸びようとしていた。
「あ、あの影は……ドラゴン!?」
見張り台に立って海の様子を窺っていたオラトリオの娘が、いち早く異常に気付いた。島の東側、上空から翼を広げて巨大な影がこちらへ迫って来る。
鳥ではない。ドラゴンだ。娘は敵襲を知らせるため鐘を激しく打ち鳴らし、海賊団を束ねる男の元へと飛翔した。
「あれは……吸血竜だ。俺の血の匂いを嗅ぎつけて来たか」
隠れ家の一室から姿を現したのは、黒のパイレーツコートに身を包んだ長身の男。始めから彼に狙いをつけていたかのように、翼持つ巨躯が悠々と地上に舞い降りた。
『グルルルル……見つけたゾ、闇の貴族の血を引く者ヨ!』
黒曜石のごとき鱗をもつドラゴンが、禍々しい瞳で海賊をじいと見据えた。そしてヒクヒクと鼻を鳴らし、男から立ち昇る闇の香気を嗅ぎ回る。
「お、お頭……」
「お前達は下がっていろ……奴の狙いは俺の『血』だ」
部下を後退させ、半吸血鬼の海賊は黒竜と対峙する。極上の獲物を前にして、ヴァンパイア食らいの魔竜は涎を垂らしながら咆哮をあげた。
「その血の匂イ! 良質のメガリスを体に取り込んだナ……最後の一滴まで飲み干してクレル! 光栄に思うがいい!!」
「騒々しい蜥蜴め。死者の眠りを妨げるものは、誰であろうと容赦はしない……」
ある日のグリモアベース。作戦会議室に集まった猟兵達の前で、ガーネット・グレイローズがキューブ状のグリモア片手に語り始めた。
「グリードオーシャンで、大規模な戦いが始まる予兆を視ることができた。『羅針盤戦争』の始まりだ!」
ついに本格的な攻勢に乗り出した『七大海嘯』。その尖兵を迎え撃ち、撃破することが今回の目的である。
「今回敵が現れるのは、ダークセイヴァーから落ちた島だ。出現するコンキスタドールは一体のみだが、七大海嘯直属の精鋭だけあってかなり手強い。なので、地元の海賊の協力を得て戦うといいだろう」
戦場となる『ブラックコフィン島』を統治しているのは、ダンピールの海賊エドワード。『キャプテン・カースブラッド』の異名を持つ、メガリスボーグである。
「島に転移したら、すぐにコンキスタドールが現れて戦闘が始まるだろう。まずは海賊達の協力を取り付けて、共同戦線を張ってくれ。彼らの警戒心を解き、うまく協力することができれば、必ず戦いを有利に運べるはずだ。よろしく頼んだぞ!」
そう言ってガーネットはグリモアの力を増幅させ、世界転移の準備に取り掛かった。
弥句
こんにちは、弥句です。このシナリオは戦争シナリオで、ボス戦一本のみの構成となっております。なお、このシナリオの結果は『羅針盤戦争』の戦況に影響をもたらします。また、以下の条件を満たすことで、判定に有利なプレイングボーナスを得ることができます。
プレイングボーナス…海賊たちと協力する。
海賊頭領の名はエドワード。二つ名は『キャプテン・カースブラッド』。海賊ですが、略奪行為はほとんど行わず、普段は墓守の仕事に勤しんでいます。データ的にはダンピールのメガリスボーグ×咎人殺し。呪いのワインを飲んだことで、血を武器として操る力を得ました。島の至る所に、彼自身の血液で生成したトラップが仕掛けられています。
ブラックコフィン島について:ダークセイヴァーの農村程度の面積の、小さな島。小一時間も歩けば一周できます。島内の廃屋や墓地は、海賊の隠れ家として利用されています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『吸血竜『ドラクル』』
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POW : 鱗、爪、そして牙。全てが血を得るに最適な鋭さ
【鱗、爪、牙のいずれか】が命中した対象を切断する。
SPD : 犠牲となったヴァンパイア達の遺志
自身の身体部位ひとつを【高貴なヴァンパイア】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 吸血鬼と竜の混ぜ合わせ、その戦闘能力
【竜とヴァンパイアの強靭な体力と戦闘能力】【自身から出血した血を硬化し、防御する能力】【血の匂いを遠くから嗅ぎ付ける追跡能力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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尾守・夜野
「羽蜥蜴ごときが…
てめぇが騒いでいい場所じゃねぇんだよ
…っとてめぇがここの頭か?」
一番わかりがいいのは利害の一致だろう
「俺様はこいつに土塊の味をプレゼントしてぇ
てめぇは俺様とこいつに出ていってほしい
なら手っ取り早く済ますために手組もうぜ
俺様は奴さん(ドラゴン)の固まるという噂の血がほしいのさ」
コミュ力・挑発その他諸々で丸め込み共闘を張る俺は破壊大好きな俺様
まぁそうはいっても墓は壊さんよ
墓「は」
何せんなことしたら俺様までこいつら(UCで呼び出したの)に巻き込まれるからな
体力が膨大でも無限じゃねぇ
流れた側から黒纏で奴さんの血は吸いとり
追い詰めて追い詰めて叩き落として翼をズタズタにしてやんよ!
ノイン・フィーバー
「コンにちワ―。ワタシは猟兵のノインと申しまス。あ、これお近づきの印にドウゾ」
と酒を皆さんに寄贈。
とりあえずそのドラゴンの敵ですヨ
基本:
距離をとって射撃。
身体の部位が変化したら変化が終わる前に銃撃を叩き込んで変形を可能なら止める。
UC:ガジェットショータイム発動。取り出したのは大量のスポンジで出来たハムスター型の生きた人形。
以下可能なら。無理ならダミー代わりに利用。
ぷいぷい言いながら寂しがり屋の彼らはばらまけばドラゴンの体中にはりつく。
そして、近くの血を全て吸ってしまう。スポンジだからね!
硬化する血も舐めとる血も先に吸われて今どんな気分? なムーブをする。
ノイン当人は容赦なく傷口を狙って射撃。
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暗黒の島、ブラックコフィンに突如舞い降りたコンキスタドールの正体は、七大海嘯の尖兵『吸血竜』ドラクル。ドラクルの狙いはメガリスを取り込んだ海賊の頭領、エドワードの血肉である。殺気立つ海賊団と血に飢えし黒竜、両者の間に張り詰めた空気が漂う。
「羽蜥蜴ごときが……てめぇが騒いでいい場所じゃねぇんだよ……っとてめぇがここの頭か?」
怒気を含んだ低い声が、不意に投げかけられた。振り向いたエドワードの視線の先に、やや小柄な青年が佇んでいた。多重人格者の猟兵、尾守・夜野(墓守・f05352)もまた、ダンピールの海賊と同様漆黒の髪と白い肌をしていた。
「如何にも、ここの頭は俺だ。そういう貴様は何者だ? この蜥蜴と関係があるのか」
「猟兵の尾守。あちこちの島で、こういう連中を狩って回ってるモンだ……俺様はこいつに土塊の味をプレゼントしてぇ。てめぇは俺様とこいつに出ていってほしい。なら手っ取り早く済ますために手組もうぜ。俺様は奴さんの、固まるという噂の血がほしいのさ」
突然の闖入者。不審もいいところだが、まずはドラゴンの仲間ではないことをアピールするのが先決だ。『敵の敵は味方』理論である。
「コンにちワ―。ワタシは猟兵のノインと申しまス。とりあえずそのドラゴンの敵ですヨ。あ、これお近づきの印にドウゾ」
夜野と対照的に、場違いに明るい声色で挨拶を交わすのはヒーローマスクのノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)。ノインは何処からか取り出したボトルワインや缶ビールを、手下の海賊たちに配っていた。
「おお、酒じゃあ」
「なあコレ、どうやって開けるんだ?」
テレビ頭のノインが物珍しいのか、海賊たちは彼のお土産を手に取って眺めている。
「……いいだろう。この蜥蜴を始末したら、久々に宴にするぞ」
流れは兎も角、一先ず交渉成立である。
「合わせて仕掛けよう。いけるか」
「おう! あのデカイ翼、ズタズタにしてやんよ!」
かくして、戦いの火蓋は切って落とされた。夜野とエドワードがそれぞれの得物を構え、斬り込んでいく。ドラクルが狂ったように叫んで繰り出した前足の一撃を掻い潜ると、二人は斬撃によって指先を斬り落とす。
「フン、これしきノ傷」
すると落下した指の一本がボコボコと不気味に細胞変異を引き起こし、やがてそれは巨大な『人の頭部』へと変じた。それはドラクルを『製造』する過程で投与された、血液の主たるヴァンパイア貴族のものだった。頭部は地面から大きく飛び跳ねると、捕食者の本能を剥き出しにして噛みついてくる!
「働かざる者食うべからず、ですネ」
背負っていたアームドフォートを起動させ、ノインは後方からガトリング銃とビーム砲の複合射撃を浴びせる。猛々しく砲声が吠え猛り、アームドフォートは食らいついてきたヴァンパイアの下顎を吹き飛ばした。
「なかなか面白い攻撃だな、ええ」
腹部の鱗を『怨剣村斬丸』で斬りつけながら、夜野が凶暴な笑みを浮かべた。手数を重視した猟兵達の攻撃は、的確にドラクルにヒットし鱗を傷つけていた。ドラクルはドラゴンとヴァンパイアの両方の特性を併せ持ち、高い生命力を持つコンキスタドールである。まともに戦えば、なかなか有効打を与えられずにいただろう。
「馬鹿ナ……!」
「傷の治りが遅いのだろう。傷口から俺の血を注ぎ込んでいるからな」
呪いを帯びた鮮血で作り上げたエドワードの海賊刀が、ドラクルの再生を阻害しているのだ。そこでドラクルは流れ出した血液を硬化させ、体表をコーティングすることで防御を向上させる作戦に切り替える。
「そうきますカ。ではお見せしまショウ、ワタシの【ガジェットショータイム】ヲ!」
がさごそと鞄の中をまさぐると、ノインは魔導機械『ガジェット』を辺りに次々と投げてばらまいた。取り出したそれは、ハムスター型のユニークな人形だ。
「ぷいぷいぷいぷい……」
プイプイと甲高い声で鳴く自動人形が、ドラクルの体を駆けあがると瞬く間にわらわらと群がっていった。人形はスポンジ素材であるため、吸水性抜群。実にホラーな、吸血ハムスターである。
「ええい、鬱陶シイ!」
足でノインのガジェットを払いのけようとするドラクル。太く逞しい爪は巨木をなぎ倒す威力を誇るが、無数の小型ガジェットを払いのけるには適しておらず。魔竜はやむなく舌で舐めて払い落とそうとする。
「ほら、余所見していていいのか? 次はこいつらを放つぜ――」
夜野の愛剣に滲んだ呪詛が触媒となり、UDC『黒妖犬』の群れが放たれた。その数、実に460体。
「あまり派手に暴れると、墓場が荒れるぞ」
「まぁそうはいっても墓は壊さんよ、墓『は』」
死の気配を纏った黒妖犬は、遥かに巨大な相手にも物怖じしない。彼らはその獰猛な牙を剥き、墓場を駆け抜けて標的――竜へと殺到する。
「グオオオオオッ!」
たとえ膨大な体力をもつ相手だろうと、無限じゃないならば必ず殺せる。不気味な咆哮を響かせる黒き獣たちは巨竜の全身に無数の噛み傷を残して、やがて嵐のように去っていった。
大成功
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名張・辿
いい啖呵だね、キャプテン、ここは一つ協力しようかい
【山神の手慰み袋】を使用、メダルを自分に付けた状態で敵の挑発を試みるかね
海賊たちから聞いた罠の場所に誘導したり、他の仲間が攻撃しやすいように囮をしてみるよ
戦争に託けて手前のやりたい掠奪かい、確かに騒々しい蜥蜴って表現があうね、自覚なさそうなのがより小物らしいぜ
自分の衣服には特に経口摂取で害が出そうな毒を選んで含ませておこうか、
自前の毒耐性を頼りに、いざ噛まれた時に相手にもダメージを与えられるようにしておくよ
いよいよ危ない時はメダルを投擲して代わりに海賊の誰かに付けて貰うかね
事前に話して、さっさと逃げてさっさと外すくらいの一時の囮を頼んでみようか
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「我々の島に不用意に踏み込めば、こうなる」
鮮血で出来たカトラスの切っ先を向け、海賊エドワードは射抜くような視線をドラクルに送った。
「いい啖呵だね、キャプテン、ここは一つ協力しようかい」
「お前も猟兵の仲間か?」
現れたのは、渡世人風の装束を纏った男。ビーストマスターの名張・辿(鼠遣われ・f04894)は前に進み出ると、吸血竜に向かって馴れ馴れしく話しかけた。
「戦争に託けて手前のやりたい掠奪かい、確かに騒々しい蜥蜴って表現があうね、自覚なさそうなのがより小物らしいぜ」
見え透いた挑発。ヴァンパイアと同等の知性を持つドラクルは、本来ならばこんな挑発には乗らない。しかし――今は目の前の辿が、ひどく癇に障った。
「黙れ、人間ガ! 貴様の血など要らん、八つ裂きにしてやるワ!!」
怒号と共に咆哮し、ドラクルは辿へとターゲットを変更した。彼の持っている妖怪メダルを利用したユーベルコード【山神の手慰み袋】の効果である。
「そいつを林に誘導しろ」
そういう意図で、エドワードは無言で雑木林の方角を指さしてみせた。辿は無言で頷くと頭巾を深く被り、するりと木立を縫って林の奥へと分け入っていく。
「待テ!」
怒りに我を忘れたドラクルは、辿の後を追って林の中を這うように進んでいった。その先に、海賊たちが仕掛けたトラップがあるとも知らずに。
「兄貴、ドラゴンが来ましたぜ」
「よし。今だ、弾ァ込めろ!」
林の中に潜伏していたのは、配下の海賊達数名。彼らは草むらに隠したキャノン砲で、ドラクルを狙撃する手はずを整えていたのである。
「追い詰めたぞォォ!」
辿は道中わざとチンタラ歩くなどして時間を稼ぎ、発射の準備が整うのを待っていた。その狙撃に用いる砲弾というのが、特別製なのである。
「お頭の血から作り出した特製の砲弾を! 食らいやがれぇ!」
「おっと……!」
辿が地面に伏せた次の瞬間、耳を劈く砲声と共に海賊船用の大砲が火を噴いた。爆炎と共に放たれた砲弾は狙い違わず、ドラクルの体を撃ち抜いていた。大量の血液が飛び散り、真っ赤な雨が林に降り注いだ。
「やったぜ兄貴、ドンピシャだ!」
「おっしゃ、これで俺らの仕事は終わり。さっさとずらかるぞ!」
ドラクルに一撃を与えた人狼の兄弟(非血縁)はフサフサの尻尾を揺らしながら、意気揚々と走り去っていった。
「大砲のタマにも使えるのか……結構エグイ能力だな」
「やってくれたなァアァ
……!!」
穿たれた傷口から血を流しながらも、ドラクルは辿の追跡を止めない。手負いの獣こそ、警戒すべき危険な敵である。辿は戦場を離脱し、次の猟兵に託すことにした。
大成功
🔵🔵🔵
エィミー・ロストリンク
【POW】
海賊さん大丈夫だよー、わたしは協力者だよー!
血を吸っちゃう悪い竜は一緒に退治しちゃおうねー!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
墓を荒らそうとするドラクルに対して両腕のガトリングキャノンの射撃で削る
吸血竜との対決姿勢を見せることで地元海賊との協力体制を取りつける
ガトリングキャノンでの牽制射撃を維持しつつ、エドワードに血液トラップが配置された場所に誘導していく
動けなくなったらUC「姫君を守護する灼熱の鋼鉄騎士」を発動させてガトリングキャノンの威力を上げて一転集中射撃の後に、近づいてバーニングナックルを叩き込む
どれも切断するなら、狙うは傷口だー! 肉体なら大丈夫でしょー!
朱鷺透・小枝子
回点号に搭乗、操縦。
血を啜らんと来たのか、オブリビオン。
自分は朱鷺透小枝子!…故あって助太刀する!!死ねぇええオブリビオン!!
海賊達へと声をかけながら、
オブリビオンへの闘争心と敵意を叫び、吶喊する!
細かく話している時間も、言葉も自分はもってない!行動で示すのみだ!!
シールドバッシュ、シールドを纏った機体で吸血竜を殴り飛ばす!
『劫火戦塵』オブリビオンは尽く!!
瞬間思考力、オラトリオ達の誘導に従って、推力移動、吸血竜を掴み
トラップが仕掛けられた所定位置へと押しつける!
撃滅する!!あああああ!!!
オーラ防御で、犠牲ヴァンパイア達の噛みつきを弾き、
部位破壊、吸血竜を手刀で切断する。
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「なんだありゃ。巨人か?」
「鉄の巨人だ!」
海賊たちが暮らす集落の中に、機動兵器の駆動音と足音が響き渡った。ざわめく海賊達に向かって、セイレーンのエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)はスーパーロボット型メガリス『アカハガネ』の中から、海賊達に元気よく語りかけた。
「海賊さん大丈夫だよー、わたしは協力者だよー! 血を吸っちゃう悪い竜は一緒に退治しちゃおうねー!」
「血を啜らんと来たのか、オブリビオン。自分は朱鷺透小枝子! ……故あって助太刀する!! 」
敵意露わに眼前の黒竜に叫ぶのは、アンサーヒューマンの戦士である朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)。既に死亡し、悪霊となった今もキャバリア『回点号』に乗り続ける彼女にとって、戦闘こそが自らの存在意義。海賊との共闘体制を敷くため、まずは言葉より態度で示すのだ。
「死ねぇええオブリビオン!!」
「あっ、小枝子ちゃん待って」
小枝子が早速ドラクルに攻撃を仕掛けようとしたとき、エィミーはエドワードが懐から何かを取り出したのに気がついた。
「あれは、リンゴ?」
見ればエドワードは、真っ赤に熟れたリンゴを手に持ち、それを二人に分かりやすいように見せながらドラクルの追跡から逃れようとしている。
「む。確かにこの集落の北側に、果実畑があるな。……ククク、そこに向かえということか!」
「あの樹の方角に誘導する作戦だね! 任せて!」
かくして二騎のキャバリアは連携を組み、リンゴの樹の方角へと敵を誘導する手筈を整えて攻撃を開始した。まずはエィミー機がガトリングガン「Black・Breaker」オルトロスを連射し、ドラクルが移動する方向を調整しながら体力を削る。続いて、小枝子がBXシールドを纏わせたアームで黒竜を殴りつけてエドワードとの間に割り込み、格闘戦を敢行。突き押し相撲の要領で、ドラクルを果実畑の方向へと追い込んでいく。
「……調子に、乗りおって!!」
苛立たしげに叫ぶと、ドラクルは自らの前肢をボコボコと変形させ、ヴァンパイアの頭部へと作り替えた。船の装甲をも噛み砕く牙を以て、回点号の肩口に食らいつく。
「……劫火戦塵。オブリビオンは尽く!!」
ドラクルは損傷したキャバリアの部位を介して、パイロットである小枝子の生命力を吸収しようとていたのだ。だが、これしきで怯む小枝子ではない。任務成功のためには、多少の被弾も覚悟の上だ。
「撃滅する!! あああああ!!!」
そして懐に潜り込んで機体を加速させ、最後の一押し。その勢いのまま、ドラクルの体を一本のリンゴの樹にぶつけることに成功した。するとリンゴは激突の衝撃で樹から落下すると、あろうことかドラクルの頭の上で『爆発』した。
「グアアアアアアッ!!」
頭部に爆撃を受け、絶叫を上げる吸血竜。すなわち、樹に生っている美味しそうなリンゴは、エドワードが作り出した手製の爆弾だったというわけだ。
「よし、今がチャンス! アカハガネちゃん! 一気に決めに行くよ!」
ドラクルが動きを止めた隙を見計らい、エィミーは愛機アカハガネの武器性能を【姫君を守護する灼熱の鋼鉄騎士】で増強させた。オルトロスから銃弾の雨を浴びせながら距離を詰め、真っ赤に燃える『バーニングナックル』を握り締める。黒竜の体は全身鋭利な部位で出来ているため接近戦にはリスクを伴うが、勝利のためならエィミーは躊躇しない。
「今できる最高の攻撃を! 狙うは傷口だー!」
銃撃を受けて黒鱗が剝離した箇所に、アカハガネの鉄拳と回点号の手刀が、同時に突き刺さった。
大成功
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「久し振りの海ね。バカンスだったら良かったのだけれど……。棺島に吸血竜……風情も何もないわね」
「吸血竜、ですか。吸血する必要がある竜、というのは少々情けなく感じますね……」
蓮・紅雪(新雪・f04969)とアイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)にとっては、久方ぶりのグリードオーシャンとなる。しかし戦場が陰鬱なダークセイヴァー由来の島ともなれば、バカンス気分も削がれるというものだろう。ましてや、今はグリードオーシャンを全域を巻き込む戦争の最中なのだ。
「闇と光が合わさり最強ってヤツよ! よーし、頑張って敵を倒すぞ!」
そんな羅刹の少女と対照的にやる気に満ちているのは、『幸運の流れ星』を自称するフェアリー、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。自分が来たからにはもう安心だ、と言いたいわけである。
「いやあ、あたしも墓守の友達がいるからね! 他人事には思えなくてね! 誰かを助ける理由なんてそんなもんよ!」
「そんなもんか」
「そんなもんよ!」
フィロメーラの行動原理は至ってシンプルだ。助けたいから、助ける。海賊稼業に付きものの、面倒な利害関係とは彼女は無縁なようだ。
「貴様らァ! 逃がさんゾ……! 大人しく我が糧となレ……!」
猟兵達の背後から、吸血竜ドラクルが迫る。これまでの戦闘で少なからぬ傷を負っている筈だが、メガリス――つまりエドワードへの執着が彼を突き動かしているようだ。
傷口から血を流しながらも、執拗にエドワードを追い続ける。
「ちっ、まだ追ってくるか。……場所を変えよう、そこでケリをつける」
そう言ってエドワードは、猟兵を先導しながら移動を再開した。この島のことは、海賊の頭領である彼が一番知っている。ドラクルの追撃から逃れるフリをして、トラップを仕込んだ地点へおびき出すのだ。
エドワードが血から生成した短剣を投げつけ、それに合わせてアイビスが攻撃魔法を放ち、ドラクルを牽制する。そうやって、頭領が逃げるための時間を稼いでいるような雰囲気を演出しているのだ。
「それにしても、面白いメガリスの能力ね。私も鬼の力で血は操れるけれど、罠を作って張り巡らせるなんて出来ないわ」
「それなりの代価は払ってきた。メガリスとはいえ、必ずしも万能ではないからな」
島内を走り続けるうち、一行はやがて墓地の前にやってきた。粗末な墓石がぽつぽつと並ぶだけの、一見みすぼらしい墓地だ。
「逃げても無駄ダ……! この爪と牙で、引き裂いてくれル!!」
赤く血走った目でエドワードを睨み付け、ドラクルが発達した前肢を振り上げる。アイビスが矢継ぎ早に魔道書から火炎や衝撃波を叩きつけるが、ドラクルはそれらをものともせず鉤爪を振るう!
「……今だ、やれ!」
研ぎ澄まされた鉤爪が、猟兵達を竜巻のごとくなぎ払う瞬間のことだった。
「いくぞーっ! 成層圏! 重力隕石落とし!!!」
流星の煌めきを描きながら、高重力を纏ってフィロメーラが竜の頭上から落下した。単純ながら超重の一撃が、ドラクルの頭上から叩きつけられる。
「ガハァッ……!」
その衝撃に反応して、予めこの地点に設置されていた落とし穴式のトラップが発動した。フィロメーラがドラクルの半身を地中に叩き落とし、そしてその中に仕込まれていた真紅の槍が、竜の体を深々と貫いたのだ。
「オノレ、貴様この時を狙っテ……!」
「巨人の襲撃にも対応できるように、深めに掘ってあるんだ。まんまとかかったな」
半身を穴の中に埋もれさせたまま、ドラクルが苦悶の咆哮を上げる。無数の血槍に貫かれた彼を、エドワードは冷ややかに見つめている。
「逃げ道は塞ぎます。……後は任せましたよ、紅雪」
「まだまだ動き足りないのよね。存分に斬らせてもらうわ」
アイビスが自らの電脳空間にアクセスし、戦場一帯を『図書館』と同じ環境に作り替えたのだ。もはやこの戦場は、アイビスの意のままだ。墓石のようにそびえ立つ書棚の天辺に佇んでいるのは、黒刀を握りしめた紅雪。トラップ発動の瞬間、【蒼紅の軌跡】によってアイビスの傍らにテレポートしていたのだ。
「おのレ……猟兵……貴様等さえいなけれバ……!」
それが、吸血竜ドラクルの最期の言葉となった。愛刀を手に書棚から飛び降りながら、紅雪はドラクルの体を袈裟懸けに切り裂いていく。鋭刃に体を両断されながら呪詛を呟くと、黒竜は血だまりへと沈んで事切れた。
――こうして、猟兵達の手によって邪悪なコンキスタドールは討たれ、ブラックコフィン島には平穏が戻った。
「この島は小さいけれど、静かで良い島ね……何か特産品とかあるのかしら」
「これといって儲けになるものは無いが……俺の部下が育てた野菜がある。持って帰ると良いだろう」
島を去るとき、エドワードはカボチャや芋の入った袋を猟兵達に手渡してくれた。ささやかなお礼に、ということだろう。
「よかったですね、紅雪」
この島は日照条件がよくないので、獲れる作物も養分が不足しており小粒だ。それでも、厳しい条件で海賊たちが丹精込めて作った野菜には、彼らの真摯な心がこもっているのだろう。
「……ありがとう、アイビスに料理してもらうわ」
紅雪の感謝の言葉に、エドワードは背中越しに手を振って応えた。クールに見える男だが、本当はただシャイなだけかもしれない。
フィロメーラ・アステール
「闇と光が合わさり最強ってヤツよ!」
よーし、頑張って敵を倒すぞ!
え、警戒心を解く?
この小さな妖精に警戒するところなんてあるかな!?
いやあ、あたしも墓守の友達がいるからね!
他人事には思えなくてね!
誰かを助ける理由なんてそんなもんよ!
なんやかんやで敵を迎え撃つぞー!
敵の狙いは頭領みたいだろ?
そこで罠のある場所に誘いこもうぜ!
罠はねえ、落とし穴の中がトゲとか血のプールとか?
敵を落とす事で有利になる感じのヤツ!
頭領と敵が相対した所で【迷彩】魔法で隠れていたあたしが【成層圏・重力隕石落とし】で【踏みつけ】る!
そうやって地形(この場合は落とし穴のフタ的な部分)を破壊しつつ叩き込むワケよ!
後は袋のネズミさ!
蓮・紅雪
同行者:アイビス
久し振りの海ね。バカンスだったら良かったのだけれど…。
棺島に吸血竜…風情も何もないわね(溜息)
それにしても面白いメガリスの能力ね。
私も鬼の力で血は操れるけれど、罠を作って張り巡らせるなんて出来ないわ
今回はトリッキーな戦法でいこうかしら。
私は囮になるわ。アイビスの誘導があれば、まさか囮だとは気付かないでしょう。
それに皆の援護があれば大丈夫でしょう?
敵と一緒に罠にかかった瞬間UC発動。
アイビスの元にテレポートすれば無傷よね。
動けなくなった敵への攻撃は、もちろん刀で。
まだまだ動き足りないから存分に斬撃を放つわ
特産品とかあるのかしら?
帰りに余裕があれば聞いてみましょう
アドリブ歓迎
アイビス・ライブラリアン
同行者: 紅雪(f04969)
吸血竜、ですか
吸血する必要がある竜、というのは
少々情けなく感じますね……
さて。まずは海賊とどう協力するか、ですね
ガーネット様の情報では、島中に罠があるとのこと
海賊の方にも協力いただき、
罠に誘導するように動いていきましょう
高速詠唱+属性魔法、念動力、衝撃波で
紅雪や海賊の方をサポートするように攻撃
攻撃パターンは誘導していることを
悟られないよう変えていきましょう
罠に追い詰めたところでUCを発動
本棚で逃げ道は塞ぎますので、止めは任せましたよ紅雪
特産品……あるとよいですね、紅雪
アドリブ歓迎
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「久し振りの海ね。バカンスだったら良かったのだけれど……。棺島に吸血竜……風情も何もないわね」
「吸血竜、ですか。吸血する必要がある竜、というのは少々情けなく感じますね……」
蓮・紅雪(新雪・f04969)とアイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)にとっては、久方ぶりのグリードオーシャンとなる。しかし戦場が陰鬱なダークセイヴァー由来の島ともなれば、バカンス気分も削がれるというものだろう。ましてや、今はグリードオーシャンを全域を巻き込む戦争の最中なのだ。
「闇と光が合わさり最強ってヤツよ! よーし、頑張って敵を倒すぞ!」
そんな羅刹の少女と対照的にやる気に満ちているのは、『幸運の流れ星』を自称するフェアリー、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。自分が来たからにはもう安心だ、と言いたいわけである。
「いやあ、あたしも墓守の友達がいるからね! 他人事には思えなくてね! 誰かを助ける理由なんてそんなもんよ!」
「そんなもんか」
「そんなもんよ!」
フィロメーラの行動原理は至ってシンプルだ。助けたいから、助ける。海賊稼業に付きものの、面倒な利害関係とは彼女は無縁なようだ。
「貴様らァ! 逃がさんゾ……! 大人しく我が糧となレ……!」
猟兵達の背後から、吸血竜ドラクルが迫る。これまでの戦闘で少なからぬ傷を負っている筈だが、メガリス――つまりエドワードへの執着が彼を突き動かしているようだ。
傷口から血を流しながらも、執拗にエドワードを追い続ける。
「ちっ、まだ追ってくるか。……場所を変えよう、そこでケリをつける」
そう言ってエドワードは、猟兵を先導しながら移動を再開した。この島のことは、海賊の頭領である彼が一番知っている。ドラクルの追撃から逃れるフリをして、トラップを仕込んだ地点へおびき出すのだ。
エドワードが血から生成した短剣を投げつけ、それに合わせてアイビスが攻撃魔法を放ち、ドラクルを牽制する。そうやって、頭領が逃げるための時間を稼いでいるような雰囲気を演出しているのだ。
「それにしても、面白いメガリスの能力ね。私も鬼の力で血は操れるけれど、罠を作って張り巡らせるなんて出来ないわ」
「それなりの代価は払ってきた。メガリスとはいえ、必ずしも万能ではないからな」
島内を走り続けるうち、一行はやがて墓地の前にやってきた。粗末な墓石がぽつぽつと並ぶだけの、一見みすぼらしい墓地だ。
「逃げても無駄ダ……! この爪と牙で、引き裂いてくれル!!」
赤く血走った目でエドワードを睨み付け、ドラクルが発達した前肢を振り上げる。アイビスが矢継ぎ早に魔道書から火炎や衝撃波を叩きつけるが、ドラクルはそれらをものともせず鉤爪を振るう!
「……今だ、やれ!」
研ぎ澄まされた鉤爪が、猟兵達を竜巻のごとくなぎ払う瞬間のことだった。
「いくぞーっ! 成層圏! 重力隕石落とし!!!」
流星の煌めきを描きながら、高重力を纏ってフィロメーラが竜の頭上から落下した。単純ながら超重の一撃が、ドラクルの頭上から叩きつけられる。
「ガハァッ……!」
その衝撃に反応して、予めこの地点に設置されていた落とし穴式のトラップが発動した。フィロメーラがドラクルの半身を地中に叩き落とし、そしてその中に仕込まれていた真紅の槍が、竜の体を深々と貫いたのだ。
「オノレ、貴様この時を狙っテ……!」
「巨人の襲撃にも対応できるように、深めに掘ってあるんだ。まんまとかかったな」
半身を穴の中に埋もれさせたまま、ドラクルが苦悶の咆哮を上げる。無数の血槍に貫かれた彼を、エドワードは冷ややかに見つめている。
「逃げ道は塞ぎます。……後は任せましたよ、紅雪」
「まだまだ動き足りないのよね。存分に斬らせてもらうわ」
アイビスが自らの電脳空間にアクセスし、戦場一帯を『図書館』と同じ環境に作り替えたのだ。もはやこの戦場は、アイビスの意のままだ。墓石のようにそびえ立つ書棚の天辺に佇んでいるのは、黒刀を握りしめた紅雪。トラップ発動の瞬間、【蒼紅の軌跡】によってアイビスの傍らにテレポートしていたのだ。
「おのレ……猟兵……貴様等さえいなけれバ……!」
それが、吸血竜ドラクルの最期の言葉となった。愛刀を手に書棚から飛び降りながら、紅雪はドラクルの体を袈裟懸けに切り裂いていく。鋭刃に体を両断されながら呪詛を呟くと、黒竜は血だまりへと沈んで事切れた。
――こうして、猟兵達の手によって邪悪なコンキスタドールは討たれ、ブラックコフィン島には平穏が戻った。
「この島は小さいけれど、静かで良い島ね……何か特産品とかあるのかしら」
「これといって儲けになるものは無いが……俺の部下が育てた野菜がある。持って帰ると良いだろう」
島を去るとき、エドワードはカボチャや芋の入った袋を猟兵達に手渡してくれた。ささやかな恩返しに、ということだろう。
「よかったですね、紅雪」
この島は日照条件がよくないので、獲れる作物も養分が不足しており小粒だ。それでも、厳しい条件で海賊たちが丹精込めて作った野菜には、彼らの真摯な心がこもっているのだろう。
「……ありがとう、アイビスに料理してもらうわ」
紅雪の感謝の言葉に、エドワードは背中越しに手を振って応えた。クールに見える男だが、本当はただシャイなだけかもしれない。
大成功
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