「ダークセイヴァーのオブリビオンの多くは支配者として君臨しているが、中には、己の正体を隠して潜伏しつつ、好き勝手に振る舞う者もいる。そして今回はそんな潜伏したオブリビオンの正体を突き止める機会が巡ってきた」
「その噂もきっと、裏に潜むオブリビオンが手を回したのだろうが。ある森の奥に、絆深きふたりで訪れないと辿り着かないという不思議な教会があり、その教会で祈り捧げれば救われると。けれどそれは、何の意図があるかは分からないが……オブリビオンの罠だ」
「この森は、以前までは普通の森であったようだが……オブリビオンの影響を受けて、現在は迷宮のようになっている。だが、唯一迷宮化せず森を進める方法がある。それは、ふたり一組で手を繋いで進むこと、だ」
「そして見つけた教会に入る条件だが。二人組であり、そして――どちらが赤い薔薇で、どちらが青い薔薇か。入る前に必ずひとつずつ選び、その胸に付けなければならないと」
「この薔薇の花粉は、強力な痺れ粉と睡眠粉だ。祈りを捧げている最中に動けなくなり、意識を失う。そして次に目を覚ませば――そこは、断崖絶壁にたつ時計塔の頂上だろう」
改めて猟兵達に頭を下げ、言ってから。赤と青の選択を突き付けられる常夜の世界へと皆を送り届けるべく、掌に満開桜のグリモアを咲かせる。
志稲愛海
志稲愛海です。
よろしくお願いします!
※ご連絡※ 第1章の受付は、1/16(土)朝8:31より開始します。
それ以前に送信のものは流れる可能性があります。
第1章の断章をOP公開後、追加掲載致します。
今回は、お二人一組での参加推奨です。
内容は以下となっております。
第1章:異端の森(冒険)
第2章:ひとつの試練(冒険)
第3章:叡智卿ヴェイン(ボス戦)
1章2章は、POW/SPD/WIZは参考程度に行動いただいてOKです。
第1章では、二人組で手を繋いでいないと迷子になる森の探索です。
手を繋いでいれば、特に何の変哲もない夜の森ですので。
ランプ片手に、他愛ない会話や作戦会議や、休憩などしつつ。
夜の森を思い思いに進んで頂ければと。
暫く歩けば、噂の教会に辿り着きますので。
まずは、どちらが赤い薔薇を、どちらが青い薔薇を選ぶか。
【赤】又は【青】を必ずご指定下さい。
未記入の場合は返金の可能性もあります。
そして教会に入り、祈り捧げ意識を失う場面までが1章の内容です。
メインは森の探索で、教会での行動は赤青の指定以外はなくても構いません。
第2章は、青の方が『選択者』となり、赤青の生死を問われますので。
気取られぬよう試練を受け反応を示し、敵の目を欺いていただければと。
詳細は断章にて記載致します、お手数ですが必ずご確認下さい。
リプレイは心情寄りになるかと思います。
第3章は戦闘です。
此方も詳細は断章に記載致します。
公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒は厳禁です。
締切等はMS個別ページやタグ、Twitterでお知らせします。
●お願い
二人一組での参加推奨です。
同行者の【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。
おひとりや3人以上でのご参加の採用は、プレイング次第ではありますが。
今回は依頼内容的に、返金になる可能性が高いです。
また、赤青が未記入でどちらかわからない場合等、今回はプレイングの内容によっては返金させていただく可能性もあること、ご了承く下さい。
失効日の関係上、同行者と送信日が離れすぎていたり、ご指定の同行者が参加していない場合も返金となります。
ですが、上記どうしても採用難しい場合以外は全員書かせて頂きたく思っています。
どうぞお気軽にご参加下さい!
第1章 冒険
『異端の森』
|
|
POW | 異常な特性など関係無いと、力業で突っ切る。 |
SPD | 異常を避けながら、速やかに森を抜ける。 |
WIZ | 森の特性を調べあげ、対策をとった上で森を進む。 |
👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 |
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
人間は脆すぎる。
だが……いや、だからこそ、心や絆というものに縋るのか。
そしてその感情というものに、やはり関心は覚えるが。
実験を重ねても、それは未だ謎のまま。
故に、それをより引き出し可視化するべく、さらなる実験を行おうか。
……さぁ、どうか俺に教えてくれ。
感情という未知なる謎を紐解くには、もっと沢山のサンプルが必要だ。
●異端の森
きっと、偶然手を繋いで森に入って、件の教会を見つけてしまったのだろう。
予知で視えた一般人の男女に、此処は人喰いの魔物が出ると伝えれば、思惑通り帰ってくれたから。
二人のかわりに……森を探索し、教会を探し出して。
赤か青かの薔薇を選び試練を受け、引き摺り出した黒幕を倒すべく。
猟兵達は、常夜の世界へとやって来たのだ。
そして足を踏み入れるのは――異端の森。
暗躍するオブリビオンの影響か、この森は迷宮化してるのだという。
けれど、唯一森が迷宮化しない方法。
それは――共に歩む人と、絆を結んで進むこと。
すなわち、誰かとふたり手を繋いで進めば、森は何の変哲もない本来の姿へと戻るのだという。
とはいえ、共に征く人との関係は特に問わない。
手を繋いで森の奥へと進めば、じきに教会に辿り着くだろう。
夜の森は暗いが、必要ならばランプが支給されるし、使い慣れた明かりを持参しても構わない。
事前に用意し持参した食べ物や飲み物を取りつつ、途中で休憩してもいいだろう。
森には、猟兵にとっては脅威ではない野生動物がいる程度。
けれどあまり騒ぐと、敵も異変を察知し警戒するかもしれないので。
相手と手を繋ぎつつ、此方の思惑を気取られぬ程度に。
足早に森の奥へと向かったり、他愛のない会話を楽しみつつ進んだり、これからの作戦を話しておいたりと。
思い思いに、予知された教会へと足を運んで欲しい。
そして――教会に入る必須条件は、ふたつ。
ひとつは、二人一組であること。
もうひとつは、赤い薔薇か青い薔薇か、差し出された生花でできた飾りを、どちらかひとつずつ選択して胸につけておくこと。
必ず、どちらが赤でどちらが青か――ここで選ぶ必要がある。
それが次の理不尽な試練に、大きくかかわる選択になるのだから。
それから薔薇のいろを選び終わり、中へと通されれば、あとは静かにふたり並んで祈りを捧げるだけ。
薔薇の花粉の効力で……そのうち、身体の自由が利かなくなり、意識を失うから。
敵の罠に敢えて嵌るのは癪だろうが、今はまだ敵に悟られぬよう、逆らわず静かにこなして欲しい。
慎重な敵が尻尾をみせる、その時まで。
●マスターより
お二人一組でのご参加推奨です。
第1章は、迷宮と化した森の奥にある教会へと赴いて頂きます。
この森は、二人組で手を繋いでいないと迷子になる森ですが。
誰かと手を繋いで進めば、何の変哲もない森です。
敵に思惑を気取られぬ程度に、お好きに夜の森をおふたりで進んでください。
そして手を繋いで進んでいれば、じきに教会に辿り着きますので。
入口で、どちらが赤い薔薇を、どちらが青い薔薇を選ぶか。
【赤】又は【青】を必ずご指定下さい。未記入の場合は返金の可能性もあります。
そして教会に入り、祈りを捧げ、意識を失う場面までが第1章の内容です。
下手に小細工などをすると気付かれてしまう可能性が高いですし。
薔薇の花粉に、後の戦闘に影響するような副作用等はありませんので。
ここは抗わず行動すれば、うまく事が運ぶかと。
メインは森の探索で、教会での行動は赤青のご指定以外はなくても構いません。
その他に関しましては、OPやOP公開時のマスターコメントをご確認ください。
送信締切等の連絡事項も、MS個別ページやタグ、Twitter等でお知らせ致します。
宮前・紅
【赤】
戎崎·蒼(f04968)と行動
手を繋いだ状態で森の探索をする
それと敵に悟られぬように小声で話すよ
事をスムーズに進める為に手を繋ぐ
俺も蒼くんも出来る事なら繋ぎたくはない方だろうし
俺は、蒼くんの反応が見たいから繋いでも構わないんだけど♪
蒼くん先導宜しく
俺は適当に周囲を見てるから
危なそうなものがあれば指先を噛む
出た血をブローチに垂らして、武器形態に変形したコンツェシュで対処しようか
後は教会を探す
蒼くんは嫌いそうだけど俺はこの『実験』嫌いじゃないよ
まあ此れは服従実験ではないけどね
寧ろカルネアデスの板の事象にも近しいと思うけど
人間"らしい"感情が見えるのはこういう時以外に他ならないしさ、楽しみだよ
戎崎・蒼
【青】
紅(f04970)と行動
さながら選択実験……いや、ある種ミルグラム実験とも相違ないのかもしれないな
真逆、絆や心という名状し難いものを知る為だけにこんな事を考えつくとは……今回のオブリビオンは趣味が悪いらしい
ともあれ解決の糸口を見出す為には、相手の思惑に乗っかってみるしかない
揶揄しつつ手を差し伸べる紅を見て、溜息が出そうなのを堪え手を繋ぐ
先導はするが、取り敢えずは教会を探さないとだろ、紅
支給されたランプを片手に歩く
野生動物が襲って来た時に銃で対応するのは危険だ。…僕の場合ここは魔女の錐で対応する
…僕はオブリビオンという逆らえない権威者がいる、という点において類似していると感じただけだ
行く先に広がるのは、ただ深い深い闇のいろ。
辛うじて常夜を照らす星や月さえも、こんもりとした森の木々で遮られている。
今、足元を照らす光といえば、戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)が手にしている、ゆうらり揺れるランプの灯火だけ。
「さながら選択実験……いや、ある種ミルグラム実験とも相違ないのかもしれないな」
今回の予知を聞いて蒼が思い浮かんだのは、服従の心理を研究した際の事象。
人は権威に命じられると、非人道的な行為にまで手を染めてしまうというものだ。
自らの命を握られた相手を前に、その心こそ痛めたとしても……結果、人はまるで悪の怪物の如き選択をしてしまうのかもしれない。
何せ、服従することは――頭を必死に動かし思考することに比べれば、遥かに楽な事なのだから。
けれど今回の敵の目的は、ただ服従させるだけではない。まさに、実験なのだ。
「真逆、絆や心という名状し難いものを知る為だけにこんな事を考えつくとは……今回のオブリビオンは趣味が悪いらしい」
……ともあれ解決の糸口を見出す為には、相手の思惑に乗っかってみるしかない、と。
蒼の表情が浮かないのは、敵が悪趣味であるからというだけではない。
事をスムーズに運ぶためとはいえ……繋がった、ふたりの手。
蒼もそして宮前・紅(三姉妹の人形と罪人・f04970)も、出来る事なら手を繋ぎたくはない方なのだけど。
絆深き者達――手を繋いだ者たちのみにしか、目的の教会に辿り着けないというのならば仕方がない。
とはいえ、森の探索をしながらも敵に悟られぬ程度の小声で、紅はすぐ傍を歩く蒼へと向けた瞳を細める。
「俺は、蒼くんの反応が見たいから繋いでも構わないんだけど♪」
……蒼くん先導宜しく、俺は適当に周囲を見てるから、と。
揶揄しつつも紡ぐそんな紅をちらりと見て、思わず溜息が出そうになるが。
ここはひとつ堪え、手を繋いだまま蒼は返す。
「先導はするが、取り敢えずは教会を探さないとだろ、紅」
静かな夜の森。けれど闇の向こうから感じる気配や視線。
森に棲む野生動物であるだろうが、今のところ襲ってくる様子はない。
きっと所謂、野生の勘というものだろうか。
ふたりがいつでも即座に、殺傷能力のある魔女の錐や赤垂らせばブローチから変わるコンツェシュを手にできることを察知しているかのように。
けれど周囲にも気を配りつつも、紅は教会を探しながら口にする。
「蒼くんは嫌いそうだけど俺はこの『実験』嫌いじゃないよ」
そして再び自分へと向いた漆黒の瞳を見つめ返しつつ、続ける。
「まあ此れは服従実験ではないけどね。寧ろカルネアデスの板の事象にも近しいと思うけど」
船が沈没し、浮かんでいる板。これにしがみつけば助かるが、しがみつけるのは一人だけ。この時、他の者を押しのけ、払うことは罪なのか。
いや……己の命がかかっているから仕方がない、という概念。
今回の『実験』とやらは、それに似ていると紅は思うと同時に。
「人間"らしい"感情が見えるのはこういう時以外に他ならないしさ」
――楽しみだよ、って……そうもう一度、自分を映す漆黒に笑んでみせる。
そんな紅に、蒼は再び溜息をつきたくなりながらも。
「……僕はオブリビオンという逆らえない権威者がいる、という点において類似していると感じただけだ」
先程よりもさらに声を潜め、紡いでから。
手を繋いだまま、眼前に現れた教会へと足早に進む。
そして、互いの名が示す通りの色をそれぞれ手に取って……その胸に、妖しくも美しい薔薇の花を咲かせる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日東寺・有頂
夕辺(f00514)と
へへ、燥いでみじょかねえ
しっかりと手ば繋いで、ご機嫌にしゃべる夕辺に目細める
うろ?ほ〜〜う
オイん分からん話ばかりばってん、生き生きとした声が愛おしか
こいつが幼えころ どがんして生きてきたか
想像して寄り添うてみる
一つ一つ教えてくれる事に耳傾けて、頷いてな
木立を笑って駆ける、狐耳の女の子を思う
良かっさ もっと聞かして
俺も、お前の時間に在りたいけん
気丈に健気に生きてきた手指と肌は
切ねえくらいすべらかだ
握って黙りこくる
お前の決意も俺の心も、互いに知って抱いているから
目を閉じる
…ああ 分かっとる
いいんだ
お前の為の痛みはすべて、悦びだ
そうするよ 夕辺
佐々・夕辺
有頂【f22060】と
【赤】
わあ、森だ!
私が森で人生の大半を過ごしたのは依然話したわよね
あの時は木のうろをお家にして過ごしたのよ!
大きなうろがあってね、大きくなっても困らなかったの!
あ!あの木の実は食べられるのよ!
あの草は煎じれば熱さましになるの
……あ
ついつい話過ぎてしまったわね……えへへ
いつも街の事を有頂に教えて貰ってばかりだから
ふふ、……あ!あのね、あの木!葉っぱを擦って煮るとね……
繋いだ手を振る
有頂の手は大きくて、とても安心する
私、この手が好きよ
だから、どんな手段を使っても護るの
ねえ、約束よ
貴方に選ばせてしまう事は本当に心苦しいけれど
……私を落としてね
視線の先は、何処までも続いているのではないかと思うような闇色。
それをより深く作り上げているのは、ざわざわと風に揺れては葉音を鳴らす森の木々。
シンと静寂広がる中、息を潜め此方を窺っている気配たち。
そんな夜の森は、よく知らぬ者からしたら恐怖を感じるのかもしれないが。
「わあ、森だ!」
人生の大半を森で過ごした佐々・夕辺(凍梅・f00514)にとっては、懐かしさすら感じる空気。
そして彼――日東寺・有頂(手放し・f22060)には、森と自分のことは依然も話していたのだけれど。
「あの時は木のうろをお家にして過ごしたのよ! 大きなうろがあってね、大きくなっても困らなかったの!」
実際に見て貰いながら改めて話ができることがまた、嬉しくて。
「うろ? ほ〜〜う」
「あ! あの木の実は食べられるのよ! あの草は煎じれば熱さましになるの」
ご機嫌に尻尾をゆらゆら揺らしながら喋る夕辺に、有頂は琥珀の瞳を柔く細める。
……へへ、燥いでみじょかねえ、って。
うろも木の実も草も、有頂にとっては分からない話ばかりなのだけれど。
でも、それでもとても十分、楽しくて嬉しいから。
(「生き生きとした声が愛おしか」)
――こいつが幼えころ、どがんして生きてきたか。
想像して寄り添える今が。
そして木立を笑って駆ける、狐耳の女の子を思えば……愛しくて、仕方がないから。
そんな一つ一つ話す事に、耳傾けては頷く彼に。
夕辺はハッと耳をぴこり、瞳を瞬かせるけれど。
「……あ、ついつい話過ぎてしまったわね……えへへ」
でもつい喋り過ぎちゃうけれど……やっぱり、とても嬉しいのだ。
「いつも街の事を有頂に教えて貰ってばかりだから」
今度は自分が、彼に色々なことを教えてあげられることが。
それに……もっともっと、自分のことを彼に知って貰える今が。
だから有頂も、彼女にこう返す。
「良かっさ、もっと聞かして」
……俺も、お前の時間に在りたいけん、って。
そんな彼の言葉に、夕辺は一等の笑みを向けて。
「ふふ、……あ! あのね、あの木! 葉っぱを擦って煮るとね……」
蜜色の髪と声を弾ませ、互いの体温が混ざり合いひとつになったその手を引く。
しっかりとふたり、繋いだ手と手。
有頂は小さな彼女の手を握り締めて。
(「気丈に健気に生きてきた手指と肌は、切ねえくらいすべらかだ」)
黙りこくり、そして目を閉じる。
――お前の決意も俺の心も、互いに知って抱いているから、と。
そして夕辺も彼と繋いだ手を振り、森を征きながらも思う。
(「有頂の手は大きくて、とても安心する」)
ふわり包み込んでくれる、彼の大きな手。
その手の温もりはいつだって、優しくてあったかいから。
(「私、この手が好きよ」)
――だから、どんな手段を使っても護るの、って。
夕辺は決して揺らぐことのない決意を胸に、自分をただ見つめる彼へと紡ぐ。
「ねえ、約束よ。貴方に選ばせてしまう事は本当に心苦しいけれど」
……私を落としてね、と。
これから先に待ち受けるのは、試練という名の理不尽な選択肢。
繋いだこの手と手を、無理矢理引き離すような……。
けれどたとえ、繋いだ手が離れてしまったとしても――護りたいから。
有頂は眼前に見える教会を前に、彼女の言の葉に頷く。
「……ああ 分かっとる」
――そうするよ、夕辺、って。
安心させるように優しく……耳元でそう、囁いて。
辿り着いた教会の入口で、青い薔薇を手に取る。
――いいんだ。お前の為の痛みはすべて、悦びだ、と。
すぐ隣にある藍の瞳を思わせる様な、そのいろを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
かれと手を繋いで森の中を進みましょう
グリモア猟兵から聞いた内容を心の中で反芻しつつ
物憂げなかれの横顔を見ていると、何を考えているか手に取るようにわかるのです
念を押すかれの言葉にはただ笑顔を返し
握った手に力を込めつつ歩いてゆきます
教会の前にたどり着けば、繋いでいた手を名残惜しげに離し
薔薇の花は【青】を選びましょう
きみのあざやかな髪のような色
青いバラは、不可能を可能にした象徴といいます
そうして教会の中へと入り、祭壇の前で祈りを捧げましょう
崖から落ちた僕が再び合流するまで、かれが無事であるように
そして―――ザッフィーロ、僕もきみとまったく同じ気持ちなんですよ?
ってね
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
『赤』
宵f02925と
宵と手を繋ぎ反対の手でランタンを持ち森の中を進む
何方かが崖の下に落とされる…か
俺が落ちる事になれば良いのだがとそう瞳を伏せ繋いだ暖かな手を強く握りなおそう
宵…必ず俺が落ちる様にするのだぞ
そう念を押しながらも、教会の前まで来れば確実に己が崖から落ちる様青へと手を伸ばす…も
先に宵に薔薇を取られれば宵…と声を投げつつ宵の紫の瞳から覗く色の一つであるその色を手に取ろう
…祈り等普段はせんのだが
だが…今回は、宵に怪我がない様
無事己が崖から落ちられるよう祈る…も相手の表情を見れば眉を寄せ身を寄せよう
常ならば幸せな事だというに今回ばかりは考えている事が解るというのも、本当に辛いものだ、な
星の輝きさえ届かないような、こんもり深い夜の森。
そんな森の中で逸れ、迷子になることは決してない。
確りとふたり、手と手をぎゅっと繋いでいるから。
逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は、ゆらり彼の手元で揺れるランタンの灯火を頼りに進みながらも。
聞いた予知の内容を心の中で反芻しつつ、灯りに照るかれの物憂げなかれの横顔を見つめる。
すぐ隣に在るかれが何を考えているかが……手に取るように、わかるから。
「何方かが崖の下に落とされる……か」
ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)はそうぽつりと呟きを落として。
銀の瞳をそっと伏せ、繋いだあたたかな手を強く握りなおしながらも、願って止まない。
――俺が落ちる事になれば良いのだが、と。
けれど、心の中だけで留めることなんてできずに。
「宵……必ず俺が落ちる様にするのだぞ」
そう念を押せば、ただ返るのは美しく柔い笑顔。
握り合った手に力が込もるのを、互いに感じながら。
そして並び、歩んでいけば……絆深き者たちのみが導かれるという教会に、難なく辿り着いて。
入り口で差し出されたふたつのいろの薔薇のうち、ザッフィーロが手を伸ばさんとするのは、青の薔薇の方。
確実に己が崖から落ちる様に、と。
――けれど。
「宵……」
繋いでいた手を名残惜しげに離し、迷わず先にそのいろを手にしたのは、宵であった。
それから、何か言いたげに見つめるかれに、宵は笑んでみせる。
「青いバラは、不可能を可能にした象徴といいます」
……きみのあざやかな髪のような色、と。
そして、残ったもうひとつ――彼の紫の瞳から覗く色の一つであるその色を手に取るザッフィーロ。
それぞれの色が決まれば、教会の扉が静かに開かれて。
祭壇の前に進んだふたりは、祈りを捧げる。
いや、祈りなど普段はしないザッフィーロだけれど……でも今回は、祈らずにはいられない。
――宵に怪我がない様、無事己が崖から落ちられるよう、と。
そんなかれの隣で、宵もその心に祈る。
――崖から落ちた僕が再び合流するまで、かれが無事であるように、って。
かれの髪のいろをした薔薇を、その胸に咲かせながら。
それから星瞬く深宵の瞳をふと向けて、続ける。
(「そして――ザッフィーロ、僕もきみとまったく同じ気持ちなんですよ?」)
そんな己に向けられた宵の表情を見れば、眉を寄せ身を寄せるザッフィーロ。
今回ばかりは、心苦しく思ってならないのだ。
(「常ならば幸せな事だというに……本当に辛いものだ、な」)
相手の考えている事が……互いに、手に取るように解るということが。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
檪・朱希
【黒蝶】
森の中では、はぐれないように手を繋がないと行けないみたいだね。繋いでいい、かな?
手袋は平気だよ。
この依頼、気になって……つい、連絡したのだけど迷惑、だったかな?
知人、いないことは無いけど、私が一緒に行きたいなと思って……協力とか、難しい所は頑張る!
えっと、分かったよ?
セプリオギナの事は、一番信頼しているから。
あ、勿論、他の皆も信頼してない訳じゃないよ?
薔薇は、どっちにしよう?
色だけだと、私は赤より青かな……でも、どちらも嫌だと『音』がする。負担が少ないのはセプリオギナが青で、私は【赤】で、私を助けるって言うこと、かな?
私は飛べるから、落ちても死なない。
だから、信じ……あ、う、うん……?
セプリオギナ・ユーラス
【黒蝶】
いいも悪いもないだろう。…手袋が気にならなければ好きにしろ。
迷惑ということはないが、他にもっとマシな知人はいなかったのか。少なくとも俺は自分が協力に向いているとは思わんが。
…ああ。いや、いい。頑張るな。
俺を一番にする程度しか信用できる知人がいないのは壊滅的だぞ。檪朱希、お前にはもう少しまともな人間関係の構築を推奨する。
……俺に“選ばせる”つもりか?
それでも構わんが、本当に自力でカバーできるんだろうな。仕事を増やされてはかなわん。なら【青】でいい。
分かった、それは信じないでおく。怪我をしたらその時診てやる。だがお前も少しは信じないことを覚えろ。俺がお前を助けるとは限らないとも思っておけ。
眼前に広がるのは、深い闇に包まれた静寂の森。
いや、檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)の耳には様々な『音』が聞こえていた。
ざわざわと不安定に揺れる葉音、闇に紛れ息潜める動物達の気配、そして――。
「森の中では、はぐれないように手を繋がないと行けないみたいだね」
……繋いでいい、かな?
そう見上げ訊ねる彼女に、セプリオギナ・ユーラス(賽は投げられた・f25430)はふとひとつ息をついて返す。
「いいも悪いもないだろう。……手袋が気にならなければ好きにしろ」
この森を征くためには、ふたり手を繋ぐ選択肢以外ないから。
「手袋は平気だよ」
朱希はそっと彼の手を取って、共に森の中へと歩み進みながら続ける。
「この依頼、気になって……つい、連絡したのだけど迷惑、だったかな?」
ひとりではこなせない今回の依頼。
森の奥にあるという教会に辿り着く為には、絆深き者同士……ふたり手を繋ぐ必要があったから。
だから、朱希は信頼する彼に声を掛けてみたのだけれど。
「迷惑ということはないが、他にもっとマシな知人はいなかったのか」
……少なくとも俺は自分が協力に向いているとは思わんが、と。
けれどもう一度溜息をついてみせる彼に返る声は、素直で真っ直ぐな音。
「知人、いないことは無いけど、私が一緒に行きたいなと思って……」
……協力とか、難しい所は頑張る!
そう、ぐっと気合いを入れ、大きく頷いてみせる朱希に。
「……ああ。いや、いい。頑張るな」
ふるりと微か首を横に振り言って聞かせるセプリオギナ。
そんな彼の言葉に、朱希は赤混ざる黒から覗く、いろの違う円らな双眸を一瞬ぱちりと瞬かせるけれど。
すぐに再び、素直にこくりと頷いて紡ぐ。
「えっと、分かったよ?」
セプリオギナの事は、一番信頼しているから、って。
……いや、そういうところが心配でならないのだ。
それに、自分で言うのはなんだが。
「俺を一番にする程度しか信用できる知人がいないのは壊滅的だぞ」
そう言わずにはいられない、セプリオギナなのだけれど。
「あ、勿論、他の皆も信頼してない訳じゃないよ?」
「……檪朱希、お前にはもう少しまともな人間関係の構築を推奨する」
やはり心から、そう思わずにはいられないのだった。
そして手を繋いで歩いていれば……難なく目的の教会に辿り着いたから。
聞いた予知を思い返しつつも、朱希は彼にそっと訊ねてみる。
「薔薇は、どっちにしよう?」
教会で差し出される薔薇の花。
ひとつが赤で、ひとつが青。まず最初の『選択』である。
そのふたつのいろを、じっと交互に見つめてみれば。
(「色だけだと、私は赤より青かな……でも、どちらも嫌だと『音』がする」)
朱希に聴こえるのは……美しく咲くふたつの薔薇、そのどちらも拒否する音。
けれど、どちらかを選ばなければ、教会の中には入れないというから。
「負担が少ないのはセプリオギナが青で、私は赤で、私を助けるって言うこと、かな?」
そっと小声で、そう予知の内容を思い返しつつ呟けば。
「……俺に“選ばせる”つもりか?」
ちらりと向けられる彼の視線と続く声。
「それでも構わんが、本当に自力でカバーできるんだろうな」
……仕事を増やされてはかなわん。なら、青でいい、と。
そしてそんなセプリオギナの言葉に、朱希はこくこく頷くけれど。
「私は飛べるから、落ちても死なない。だから、信じ……」
「分かった、それは信じないでおく」
遮られるように返ってきた彼の声に、思わずきょとり。
そんな自分を見上げる彼女へと、セプリオギナは再び言って聞かせる様に紡ぐ。
「怪我をしたらその時診てやる。だがお前も少しは信じないことを覚えろ」
……俺がお前を助けるとは限らないとも思っておけ、と。
そして朱希はひとつ、こてんと首を傾げつつも。
「……あ、う、うん……?」
彼の言葉にそう頷くのだった。
だって彼が自分へと向けるのは、やっぱり――信頼できる『音』だと、そう思うから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
西塔・晴汰
【晴ル】
ルーナと一緒に片手は繋いで、もう片手にランプを手に歩く
薄暗いけどオレは夜目が利くし大丈夫
休憩もありってならちぃっと休んでくっすか
持ってきたポットから暖かいお茶を出してルーナにも渡して
ドーナツを貰ってほっと一息
……こうしてるとホントピクニックみたいっすね
もっと楽しい目的なら尚良かったんっすけど
…分かってるっすよ!
って言っても落とされるのは逆の方なわけだから……
オレは思いっきりルーナを助けてくれって言や良いわけっすよね
なーにオレ嘘は好きじゃないけど、仕事で欺くための必要な演技は得意っすからね!
きっちり騙しきって見せるっすよ!
青の薔薇を身につけて
オレの全力で――ルーナを欺く覚悟を決めるっす
ルーナ・オーウェン
【晴ル】
そっと晴汰の手を取って進んでく
夜の森、静かで不思議
夜はお化けの時間、星もきれいだから夜は好き
こんなに静かだと、普通のおでかけみたいだけど
悪趣味な敵も、いたみたいで
うん、せっかくきたんだから
お茶を飲んでほっと息を
ありがとうね、温かいものを飲むと落ち着く
私はお菓子持ってきた
良かったら一個食べてとドーナツを差し出して
大丈夫? 晴汰
私はもう死んでるお化けだから、ちゃんと私を落としてね
落下してるのも、何度もあったから大丈夫
だからちゃんと選んでほしい
演技も、頑張る
表情は大きく変えられないけど、そう作られたけど、ちょっとずつわかってきたから
分かってるなら、いいけれど
私が選ぶのは赤い薔薇
私の瞳と同じ色
ざわりと風に鳴る葉音を聴きながら進む森の道は、まっくらやみ。
でもね、そんな夜は好き――だって、お化けの時間だから。
(「夜の森、静かで不思議」)
ルーナ・オーウェン(Re:Birthday・f28868)は、そっと手を取り進んでゆく。
西塔・晴汰(白銀の系譜・f18760)の持ってくれているランプの灯りと、繋いだ彼の手を頼りに。
照らす光のすぐ向こうは、深い闇が広がっているように見えるけれど。
「薄暗いけどオレは夜目が利くし大丈夫」
晴汰は目や鼻がよく効くし、なんてったって探し物は得意だから。
しっかりと迷わないように……異端の森に、惑わされないように。
手と手を繋いだまま、夜の森を並んで歩きながら教会を目指す。
この森にふたりが足を踏み入れた目的、それは。
(「こんなに静かだと、普通のおでかけみたいだけど。悪趣味な敵も、いたみたいで」)
そう……非道な実験を試みようとする敵を、誘き出すため。
けれど、あまり急いてもだから。
「休憩もありってならちぃっと休んでくっすか」
ふと聞こえた彼の声に……うん、せっかくきたんだから、と頷くルーナ。
そんな彼女に晴汰が差し出すのは、持ってきたポットから注いだ、あたたかいお茶。
それをひとくち飲めば、ほっと漏れるひと息。
「ありがとうね、温かいものを飲むと落ち着く」
ルーナはそう礼を告げた後、がさごそと取り出して、晴汰へと渡したお返しは。
「良かったら一個食べて」
「……こうしてるとホントピクニックみたいっすね」
やっぱり口に運べばほっとする、優しい甘さのドーナツ。
でも、ふと晴汰の口から零れるのは、こんな呟き。
……もっと楽しい目的なら尚良かったんっすけど、って。
それを聞いたルーナは、じっと彼を見つめて念を押しておく。
「大丈夫? 晴汰。私はもう死んでるお化けだから、ちゃんと私を落としてね。落下してるのも、何度もあったから大丈夫」
――だからちゃんと選んでほしい。演技も、頑張る、と。
「表情は大きく変えられないけど、そう作られたけど、ちょっとずつわかってきたから」
そう紡ぐ彼女に、晴汰はこくりと頷いて。
「……分かってるっすよ!」
改めて、聞いた予知を思い返し口にする。
「って言っても落とされるのは逆の方なわけだから……オレは思いっきりルーナを助けてくれって言や良いわけっすよね」
これから架せられるという試練は、非道な存在による理不尽な罠。
選択を迫られ、そして……口にした願いと、逆のことが起こるのだという。
けれど、これ以上の犠牲が出ないように。
ふたりは任務のため、此処に赴いているのだ。
「なーにオレ嘘は好きじゃないけど、仕事で欺くための必要な演技は得意っすからね!」
だから自分を見つめるルーナに、晴汰は笑って返してみせる。
……きっちり騙しきって見せるっすよ! って。
「分かってるなら、いいけれど」
そして十分に休憩を取った後、再び手を繋いで夜の森を歩いてゆけば。
程なく辿り着いた教会の入口で差し出されるのは――赤と青。
ルーナはふたつのうち、自分の瞳と同じいろの方を手にする。赤のいろを咲かせる薔薇を。
そして晴汰も、手にした青の薔薇を胸に咲かせながら、その心に思う。
改めて、きっちり騙しきって見せると。
オレの全力で――ルーナを欺く覚悟を決めるっす、って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
四王天・燦
《華恋》
燦が青
これは試練
シホへの啓示の主がアタシ達を試していると受け取った
聖痕痛ませてごめんな
催眠術の前に申し訳なさと優しさを込めた声で一言
『ごめん…それと助けに来るの待ってるぜ』
シホなら意味が分かるよ
にっと笑い、互いに無事帰られるよう指切りげんまん
とある覚悟を決め催眠を受ける
猟兵のこと、清史郎から仕事を受けたこと、選択に隠れた罠を忘却
手をつなぎシホの宿命に勝つべく教会を目指すよ
死の宿命を打ち消したら一緒に暮らして生きよう
教会にて
迷いなく青薔薇を選ぶ…シホに飾ってもらうよ
くるっと回ってお辞儀をひとつ
可愛いのも良いだろ?
アタシもシホの髪に赤薔薇を挿す
宿命に勝てますよう―
手を繋いだまま眠りに落ちる
シホ・エーデルワイス
《華恋》
赤を選択
前日譚
昨年のイヴに燦と恋人関係になったものの
何時も良い所で私の『聖痕』が激しく痛む
まるで二人の想いを阻むかのように…
そして
燦と歩みたければ
二人共猟兵の記憶を封じ
今回の依頼に参加するよう
啓示を受けました
ううん
私こそ私の宿命に巻き込んでごめん
ええ
必ず助けに行きます
現地到着直後
指切りで約束し
【潜霊】に燦を追跡させ
催眠術で猟兵に関する記憶を封じ
宿命の死を迎えない様
救いを求め
燦と手を繋いで行く
詩帆
私が呼ぶまで反応しないでね
燦と一緒なら平凡で貧しくても大丈夫
お互いの髪に花を飾り合う
男勝りな燦はかっこ良いけど
可愛い燦もステキだよ
主のお慈悲を賜れますよう
手を繋いだまま祈りを捧げ
眠っても離さない
いずれも、幻朧桜がひらり舞い降る中で告げた想い。
桜ドンして告白したあの夏の日は、桜花弁と戯れるかのように蛍が数多舞っていて。
結ばれたクリスマスイヴの日は、灯籠に浮かび上がる雪月花の中――想いが通じ合い結ばれ、恋人同士になったのだけれど。
「シホ、聖痕痛ませてごめんな」
「ううん。私こそ私の宿命に巻き込んでごめん」
四王天・燦(月夜の翼・f04448)の言葉に、ふるりと首を横に振るシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)。
昨年のイヴにふたり、恋人関係になったのだけれど。
何時も良い所で、シホの『聖痕』が激しく痛むのだ。
それはまるで――二人の想いを、阻むかのように……。
そしてシホは、啓示を受けたのだ。
燦と歩みたければ、今回のこの依頼に参加するようにと。
二人共、猟兵の記憶を封じて。
けれど、シホに聖痕を痛ませることは心苦しい……でも。いや、だからこそ。
(「これは試練。シホへの啓示の主がアタシ達を試していると受け取った」)
燦は、シホへの啓示の主の試練を受け、乗り越えてみせると、その心に決める。
シホとふたりで、一緒に。
だって、一緒に宿命を越えたい。一緒に生きたい、ってそう告げた言葉に嘘なんか欠片もないし。
理由が宿命なら諦めない、その気持ちは変わらないから。
燦は催眠術を受ける前に、申し訳なさと優しさを込めた声で一言、シホへと紡ぐ。
「ごめん……それと助けに来るの待ってるぜ」
――シホなら意味が分かるよ、って。
にっと笑ってみせて、互いに無事に帰られるよう……指切りげんまん。
「ええ。必ず助けに行きます」
そう強く頷き、小指を絡ませ合ったふたりは、啓示の通りに猟兵としての記憶を封じる。
猟兵のこと、この仕事を受けたこと、選択に隠れた敵の罠……その全てを、忘却する。
燦は、とある覚悟をその心に決めながら。
そしてシホは『潜霊』を発動させ、燦を追跡させながら。
「詩帆、私が呼ぶまで反応しないでね」
黒髪おかっぱの電子幽霊にそう伝えておく。勿論、黄身ボーロの約束と共に。
それからふたり、確りと手を繋いで教会を目指す――シホの宿命に、ふたりで勝つべく。宿命の死を迎えない様に、救いを求めて。
……死の宿命を打ち消したら一緒に暮らして生きよう、と。
記憶を忘れる直前に告げられたその言葉に、シホも頷いて笑み返す。
……燦と一緒なら平凡で貧しくても大丈夫、って。
そして絆深き者達だけが導かれるという教会へと、常夜の森を並んで歩く。
繋いだその手を、ぎゅっと互いに握りしめて。
それから程なく教会へと辿り着けば、最初の選択がふたりを待っている。
赤と青――どちらが、どちらの色を選ぶのか。
けれど燦が迷いなく選んだのは、青い薔薇。シホの手で、それを髪へと咲かせて貰えば。
「可愛いのも良いだろ?」
くるっと回ってお辞儀をひとつ。
そんな仕草に、シホは彼女の髪を飾るいろと似た瞳を細め、頷く。
「男勝りな燦はかっこ良いけど、可愛い燦もステキだよ」
そんなシホの銀の髪には、燦の手で赤い薔薇が。
それから中へと通されたふたりは、祈りを馳せる。
――宿命に勝てますよう。
――主のお慈悲を賜れますよう。
刹那、ふっと同時に途切れる意識。
けれど、決して離さない。眠ってもふたり……しっかりと繋いだその手は。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ディアナ・ロドクルーン
ルクセンディア(f24257)さんと行動
お付き合いさせて申し訳ないわね。一人で行くつもりだったけど、今回ばかりは相手がいないと駄目なので…
薄暗い森の中ランタンを持参して共に歩く。大きな手にそっ、と自分の手を繋いで
私は暗い所は慣れているけれども、ルクセンディアさんは大丈夫?
足元に気を付けてね
敵の思うように動かなくちゃいけないのは癪だけど、そうしないと辿り着けないから仕方ないわ
気取られないように頑張りましょうね
ふふ、随分と自信があるのね。でも今回はその通りだわ
超えて、敵をあっと言わせてやりましょ
なんて他愛のない話をしながら
件の教会に付いたら、私は【赤】の薔薇を選ぶ
予知の通り、抗う事なく意識を手放す
ルクセンディア・エールハイム
ディアナ(f01023)と一緒に行動しよう。
君からの誘いであれれば断らないさ。期待は裏切らんよ、任せろ。
こちらも外套とかは纏っていくとしよう。信頼しているし利き手をつなごう。
まぁ夜に行動するほうだ、専門的なのはないが自信はある。
そちらこそ、草や蔦に気をつけてな。足を怪我したらおぶっていくからな?
あえて敵の手の上で踊って、その上で超える。
面白いじゃないか。俺はそういうの好きだぜ?
笑って話に答えつつ、この先の選択についてを考えて。
件のバラは。【青】のバラを選ぼう。
さぁ、見せてみろ。
訪れた此処は相も変わらず、闇が支配する常夜の世界であるけれど。
それをさらに深く濃いものにしているのは、瞬く星や淡い月の光さえ届かせない森の木々。
風が吹くたび、迷子になりたくなければ引き返せと、まるで警告するかのように葉音を鳴らしている。
だが、ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)は迷子になどならない。
「お付き合いさせて申し訳ないわね。一人で行くつもりだったけど、今回ばかりは相手がいないと駄目なので……」
薄暗い森の中、手にしたランタンの灯りを頼りに……共に歩く彼の大きな手に、そっ、と。
自分の手を重ね、繋いでいるのだから。
そんな彼女の言葉に、今日もルクセンディア・エールハイム(不撓不屈の我様・f24257)は自信に満ちた笑みを返す。
「君からの誘いであれれば断らないさ。期待は裏切らんよ、任せろ。こちらも外套とかは纏っていくとしよう」
そして繋ぐのは、利き手。それは信頼しているという証。
そんなふたりが足を踏み入れたのは、侵入者を惑わす異端の森。
けれど確りと手を繋いでいるから。進む道行きは何の変哲もない、夜の森のもの。
ふたり会話を交わしながら、絆深き者たちのみが導かれるのだという噂の教会へと向かう。
「私は暗い所は慣れているけれども、ルクセンディアさんは大丈夫?」
……足元に気を付けてね、と。
そう気遣うディアナに、ルクセンディアは赤の瞳を細め、彼女へと返す。
「まぁ夜に行動するほうだ、専門的なのはないが自信はある」
……そちらこそ、草や蔦に気をつけてな。足を怪我したらおぶっていくからな? って。
彼と交わす会話に、ディアナも笑むけれど。
ふと微かその表情を変えると、溜息と共に呟きを落とす。
「敵の思うように動かなくちゃいけないのは癪だけど、そうしないと辿り着けないから仕方ないわ。気取られないように頑張りましょうね」
これから架せられるのは、選択。理不尽で、人の心を折る様な、非道なもの。
敢えてとはいえ、そんな敵の思惑通りに合わせるのは、やはりちょっぴり気に入らないけれど。
でもそれも……潜んでいる敵が、まんまと尻尾をみせるその時まで。
ルクセンディアは、耳に届いたディアナの声に笑ってこたえる。
「あえて敵の手の上で踊って、その上で超える。面白いじゃないか」
……俺はそういうの好きだぜ? って。
「ふふ、随分と自信があるのね。でも今回はその通りだわ」
ディアナは根拠はないが揺るがない彼の自信に、大きく同意する様にこくりと頷く。
……超えて、敵をあっと言わせてやりましょ、って。
そして、まさか目論見がお見通しだなんて思いもしていないだろう敵に一泡吹かせるべく。
この先の選択についてを、ふたりで共に考えてみる。
最初にふたりにつきつけられる選択は――赤か、青か。
差し出されたそれへと、ふたりはそれぞれ手を伸ばす。
ディアナは、美しく花を咲かせる、気高き赤い薔薇を。
ルクセンディアは、不可能を可能にしたと言われている、青い薔薇を。
そして予知された通りに、抗う事なくディアナは祈りを捧げる。意識を手放す、その時まで。
ルクセンディアも、手にした青い薔薇を胸にきちんと抜かりなく咲かせて。
彼女の傍で、まだ姿現わさぬ黒幕へと、気取られぬ程度に微か笑む。
――さぁ、見せてみろ、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐那・千之助
【青】
クロト(f00472)と
以前は私が赤だったから、此度はそなたが赤のばん
また怪我させるわけにいかぬし
落ちても治せる私が適任じゃしな
納得して頂けたらお手をどうぞ
…いとしいひと。随分優しくなったよう
…実は、この世界(故郷)で手を繋ぐのは少し心配
私に縁ある悪い者らに
大切な人を見咎められ、狙われぬかと…。
だから道ゆく先に浮かせる火も小さく
彼の言葉に火が揺らぐ
望まない、巻き込みたくない
これは私が臨むこと
なまえ…?
その手で運命の糸を紡ぐ“クロト”であるのなら
…そんなこと、言うな…
赤薔薇を彼の胸元へ
青、つけてくれる?
この世界の人々の心の支えである神に
教会で感謝を捧げる
きっと世界を救うから
それまでどうか…
クロト・ラトキエ
【赤】
千之助(f00454)と
納得じゃ無いですけどね!と手を繋ぎ。
…君が傷付かない方がいい。
それだけの我儘。優しいわけじゃ無い。
…実は、この世界には妙に既視感。
自分の様だから?
小さな火に目を細め。
なぁ。いつか言った事、覚えてる?
――俺は、神だって殺してみせる
悪い者だろうと何だろうと、
必ず。
君が、望んでくれるなら。
返り討ち程度、運命を手繰る程度出来ずして、
兵も、“クロト”も名乗れませんし?
それに…
――僕を生かすも殺すも、君次第
とも。
青を彼に。
全ては疾うに、君に。
己は。
救われる必要など無い。
赦しも癒しも不要。
傲慢。独善。それが自分。
故に。
何とも知れぬ誰かに祈るなら、唯一…
誰より君こそ、救われるよう
この世界はいつも闇に覆われていることが常だけれど。
進むべき先の道は、星や月の光さえも届かない深い漆黒の森。
そして森に在るという教会で、選ばなければならないという。赤か、それとも青かを。
いや、赤か青か、選択を迫られるのは初めてではない。
――以前は私が赤だったから、此度はそなたが赤のばん。
「また怪我させるわけにいかぬし、落ちても治せる私が適任じゃしな」
佐那・千之助(火輪・f00454)は、藍と紅重なる二藍に彼の姿を映して。
……納得して頂けたらお手をどうぞ。
そう、手を差し出せば。
「納得じゃ無いですけどね!」
……君が傷付かない方がいい、と。
クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の手が、千之助のものと重なって繋がる。
そして千之助は、繋がれた手から伝わり混ざり合う体温と彼の落とした声に瞳を細める。
……いとしいひと。随分優しくなったよう、って。
けれどクロトはそれにふるり微か首を振る。
優しいわけじゃ無い。君が傷つかない方がいい……それだけの我儘なだけだと。
これから征く深い闇の先は、迷宮と化しているという異端の森。
けれど、絆深きと相手とこうやって手を繋いで進めば、征く道はただの常夜の森になるのだというが。
千之助は……実は、少し心配であるのだ。
この世界でこうやって、彼と手を繋ぐのは。
今在る常夜の世界は、千之助の故郷。
「私に縁ある悪い者らに、大切な人を見咎められ、狙われぬかと……」
零れた心の言の葉は自然と密やかに。だから、道ゆく先に浮かせる火も小さいものに。
そんな千之助の隣を歩きながら。
クロトは……実は、妙に既視感を覚えていた。
夜と闇に覆われた、支配されし破滅へと向かうこの世界に。
(「自分の様だから?」)
そして、小さく灯る火に青の目を細めてから。
「なぁ。いつか言った事、覚えてる?」
そう問えば、自分へと再び向く視線。
クロトはそんな彼を見つめ返し、続ける。
「――俺は、神だって殺してみせる。悪い者だろうと何だろうと、必ず」
……君が、望んでくれるなら、って。
刹那、ゆらり揺らぐ灯火。
いや、揺らいだのは何も、その手に握る小さな火だけではない。
――望まない、巻き込みたくない。
これが、千之助の望むことなのだから。
けれど小さき火が照らす横顔に、クロトは笑ってみせる。
「返り討ち程度、運命を手繰る程度出来ずして、兵も、“クロト”も名乗れませんし?」
そして、なまえ……? と落とされた呟きに、こくりと頷く。
「それに……――僕を生かすも殺すも、君次第」
千之助は自分に向けられる整った笑みと言の葉に、ふっとひとつ小さく息をついて返す。
「その手で運命の糸を紡ぐ“クロト”であるのなら……そんなこと、言うな……」
これからふたりを待ち受けるのは、試練。
いや、試練という名の非道な敵の罠である。
けれど敢えて、敵が尻尾をみせる機会を逃さぬために、ふたりはその試練に身を置くのだ。
そして程なく辿り着いた教会で、最初の『選択』をする。
目の前には――赤と青。
千之助は手に取った赤のいろを、クロトの胸元へと咲かせて。
「青、つけてくれる?」
己の胸元に、もうひとつのいろをと促せば。
クロトはその手で聢と、彼を青のいろで飾る。
――全ては疾うに、君に、と。
それから教会の中に入ることが許されれば、ふたり並んで歩みを進めて。
千之助は感謝を捧げる。この世界の人々の心の支えである神に。
(「きっと世界を救うから、それまでどうか…」)
そしてクロトも彼の隣で、ふと青の瞳を閉じる。
(「己は。救われる必要など無い。赦しも癒しも不要」)
己が救われることなど求めてはいない。神に縋る気も。
――傲慢。独善。それが自分だから。
でも……だからこそ、故に。
何とも知れぬ誰かに祈るなら、唯一……。
この世界を救うと誓い、神に感謝を捧げる彼の隣で、クロトは祈る。
――誰より君こそ、救われるよう、って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
ヴォルフと二人、森の中を行く
繋いだ手を決して離さないように
思い出すのは遠い昔、今は亡き故郷
影の支配者たる吸血鬼が、わたくしを娶りたいと言った
わたくしは「家族も領民も『皆で幸せに』暮らしたい」と願った
あの男はその願いを踏み躙り……家族も領民も皆殺しにした
救世の願いが、皆を殺した
そして今、再びわたくしを待ち受ける罠
ヴォルフの無事を願えば、彼を奈落へ突き落としてしまう
逆にヴォルフを見捨てれば、彼だけは助けることが出来る
だけど、たとえ偽りでも彼に向かって手酷い裏切りの呪詛を
本当に吐くことが出来るの……?
そしてわたくしは【青】の薔薇を取る
今度こそ選択を違えぬように
ああ、ヴォルフ
この手を離さないで
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
ヘルガと二人、森の中を進む
決して引き裂かれぬようにしっかりと繋いだ彼女の手が
冷たく震えているのが分かる
此度の敵の話を聞いて、忌まわしい過去を思い出しているのか
善意を、願いを踏み躙られ、多くのものを失った悲しみを
ヘルガ、心配するな
お前はお前の信じる道を選べばいい
俺は決してお前を悲しませはしない
たとえこの先にどんな卑劣な罠が待ち受けていても
どんな悪意がお前を苛んでも
必ずお前を守り抜く
たとえどんな選択をしたとしても
お前の愛は決して揺らぐことはないと
俺は固く信じている
恐れるな
惑えば奴らはそこに付け込む
己の選択を、「俺が信じるお前」を信じろ
【赤】の薔薇を胸に
手放すものか
この手に伝う互いの熱を
ふたり並んで進みゆくのは、深い闇に包まれた漆黒の森。
この森は、足を踏み入れた者達を惑わし迷わせる異端の森であるという。
けれど、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は決して迷わない。
だって、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)と、確り手を繋いでいるから。決して、離さないように。
この森を進んだ先にあるという教会。
だが、そこに向かわんとする者達を森は試すのだ。絆深き者同士であるかを。
ヴォルフガングは、決して引き裂かれぬようにと。
ヘルガとしっかりと手を繋ぎながらも、伝わってくるのが分かる。
彼女の華奢なその手が、冷たく震えていることが。
そんな彼女の脳裏に蘇るのは……遠い昔の、今は亡き故郷。
そして、過去の記憶。
(「影の支配者たる吸血鬼が、わたくしを娶りたいと言った。わたくしは「家族も領民も『皆で幸せに』暮らしたい」と願った」)
けれど、それは叶わなかった。いや、叶わなかったどころか。
(「あの男はその願いを踏み躙り……家族も領民も皆殺しにした」)
――救世の願いが、皆を殺した。
(「此度の敵の話を聞いて、忌まわしい過去を思い出しているのか」)
ヴォルフガングは繋いだその手を包み込むように握りながら、隣の妻の美しくも何処か青褪めた横顔を見つめ思う。
彼女の心に今生じている思いは、きっと。
善意を、願いを踏み躙られ、多くのものを失った悲しみ。
それをヘルガに思い出させているのは、これから架せられるのだという試練。いや、それは試練とは名ばかりの。
(「そして今、再びわたくしを待ち受ける罠。ヴォルフの無事を願えば、彼を奈落へ突き落としてしまう」)
望みを奪う悪意、非道な敵の罠。
けれどもうこれ以上犠牲が出ないように、敢えてその罠に身を置かんと赴いているのだ。
それに予知により、敵の目論見は分かってはいる。
彼の無事を願えば、逆に彼の身が落とされてしまう。
だから逆に彼を見捨てれば、彼だけは助けることが出来る。
……でも。
(「だけど、たとえ偽りでも彼に向かって手酷い裏切りの呪詛を、本当に吐くことが出来るの……?」)
彼を落として自分を助けて欲しい、だなんて……いくら本心ではないとしても、口にすることなど――。
けれど、そう思わず俯いてしまった彼女の顔を再び上げさせたのは、ヴォルフガングの声。
「ヘルガ、心配するな。お前はお前の信じる道を選べばいい」
……俺は決してお前を悲しませはしない、と
だって自分達は、生涯寄り添うと誓い合った夫婦なのだから。
「たとえこの先にどんな卑劣な罠が待ち受けていても、どんな悪意がお前を苛んでも。必ずお前を守り抜く」
大切な人を守る決意は、疾うにヴォルフガングの心にいつだってあるのだ。
それに、はっきりと言えるから。
「たとえどんな選択をしたとしても、お前の愛は決して揺らぐことはないと。俺は固く信じている」
ヴォルフガングは、信じ愛する妻を見つめて。
こう続ける――恐れるな、と。
「惑えば奴らはそこに付け込む。己の選択を、「俺が信じるお前」を信じろ」
その証をみせるように……辿り着いた教会で、ヴォルフガングがその胸に咲かせるいろは、赤。
そしてヘルガはもうひとつのいろ、青の薔薇を取る。
――今度こそ選択を違えぬように、って。
それから繋いだ手を握り締め、すぐ傍に在る彼を見上げる。
……ああ、ヴォルフ。この手を離さないで、と。
そんな愛しき妻に、ヴォルフガングはこくりと頷く。
……手放すものか、と。
繋がり、混ざり合ってひとつになった――この手に伝う互いの熱を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
【狐々】
都月くんと手を繋いで森を進む
……手、大きいな
大太刀も軽々扱えそう、羨ましい
ぼんやり思いつつ都月くんの手をにぎにぎ
教会で何のお祈りをしようか
姉弟で救いを求めるような事は何だろう
禁断の恋、でも演じようか
ん、そうだよ……姉さんと都月は、恋仲。
(……何かとんでもない事を口走ってる気がするけど、これはお芝居)
私達が無事に結ばれるよう、お祈りをしに行くの
(……頬が熱い……けど、これはお芝居)
転ばないように、気を付けてね
(そっと手を引く、これはお芝居じゃない)
恥ずかしい、尻尾が揺れてしまう
教会で静かに祈りを捧ぐ
(都月くん、「禁断」の意味分かってないかも……元野生の狐さんだし)
薔薇は、瞳と同じ青を選ぶ
木常野・都月
【狐々】
クロムさんと手を繋いで、森を進みます。
クロムさんの手は、普段刀を握る引き締まった手。
でもやっぱり女の人の手で。
ちっちゃくて、柔らかい。
力を入れすぎないように気をつけたい。
……?(何か手をにぎにぎされてる)
えっと、俺達は姉弟の設定で、好き同士。キンダンの恋。
クロムさんの事は姉さん…覚えました!
(尻尾ぶんぶん)
そうだ、チィ。
これから仕事で、俺はピンチになる。
でも、敵を騙す為の演技だから心配しなくていいぞ。
(好き同士、何か心?心臓?が、むずむずする)
教会についたら、お祈り。
姉さんとのキンダンの恋が叶いますように。
(あと、作戦がうまくいきますように!)
そして薔薇の選択。
俺は赤い薔薇を取りたい。
足を踏み入れた者を迷わせる、異端の森。
けれど唯一、森の奥にある教会へと難なく辿り着ける方法があるという。
それは、絆深き者同士だという証をみせること……互いに手と手を繋ぎ、進むこと。
(「……手、大きいな」)
……大太刀も軽々扱えそう、羨ましい、と。
クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は、そうぼんやりと思いつつも。
繋いだ木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の大きな手を、にぎにぎ。
そして都月もまた、繋いだその手の感触に思う。
(「クロムさんの手は、普段刀を握る引き締まった手。でもやっぱり女の人の手で」)
……ちっちゃくて、柔らかい、って。
だから、力を入れすぎないように気をつけたいって、そうそっと握るけれど。
「……?」
ふと都月は、こてりと首を小さく傾ける。
――にぎにぎ。
何だか、手をにぎにぎされていると。
そんな彼の手をにぎにぎしながらも、クロムは考える。
「教会で何のお祈りをしようか。姉弟で救いを求めるような事は何だろう」
森の教会へ赴く目的……それは敵の罠にかかったように思わせて、その尻尾を掴むこと。
だからそれまでは、怪しまれないように行動する必要があるから。
姉弟が、教会で祈り馳せる自然な理由――。
クロムは隣を征く彼を見上げ、思いついたこんな提案をしてみる。
「姉弟で好き同士の……禁断の恋、でも演じようか」
「えっと、俺達は姉弟の設定で、好き同士。キンダンの恋」
都月はそう、演じる設定を確認するように反復してから。
ぴこりと耳を立て、こくこくと首を縦に振る。
「クロムさんの事は姉さん……覚えました!」
ばっちりだと言わんばかりに、尻尾もぶんぶんさせながら。
そんな彼の声に、頷くクロム。
「ん、そうだよ……姉さんと都月は、恋仲」
いや……何かとんでもない事を口走っている気がするけれど。
でもこれは、お芝居なのだ。
「私達が無事に結ばれるよう、お祈りをしに行くの」
何だか……頬が熱い……気もするけれど。
これはお芝居だから。
「転ばないように、気を付けてね」
そっと手を引いて、彼に声を掛けるクロム。
そう、これはお芝居じゃない。
姉妹の設定も、好き同士の恋仲も、受けた依頼のための演技。
演技、なのだけれど。
恥ずかしい、って……そわりと尻尾が揺れてしまう。
そんなクロムの隣で、都月は狐の精霊のチィに言って聞かせる都月。
「そうだ、チィ。これから仕事で、俺はピンチになる。でも、敵を騙す為の演技だから心配しなくていいぞ」
姉妹で恋仲というのは、敵を騙す為の設定。
ちらりと自分に視線を向け、そうっと揺れるクロムの尻尾にこそ気付かない都月だけれど。
ふと瞳をぱちくり、数度瞬かせる。
ふたりは――好き同士。
(「何か心? 心臓? が、むずむずする」)
感じたことのない、胸の擽ったさに。
それから予知通り、教会へと辿り着けば。二人並んで祈りを捧げる。
「姉さんとのキンダンの恋が叶いますように」
ちゃんと設定や演技は、忘れていませんし。
(「あと、作戦がうまくいきますように!」)
そうそっと心の中で付け加え、祈る都月の胸に飾られているのは――赤い薔薇。
クロムも、己の瞳と同じ青い薔薇をその胸に咲かせて。
静かに祈りを捧げつつ、もう一度、隣の彼へと何気に視線を向け、ふと思う。
(「都月くん、「禁断」の意味分かってないかも……」)
……元野生の狐さんだし、って。
まだおさまらない頬の火照りを、密かに感じながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と
【赤】
道を見失いそな森
有難う存じます
彼の手に己の其を添え
お放しにならないで?なんて
暗闇をランプの灯りがぼうと照らす
風情がありますね
わたくしは大丈夫
昏い場所は親しいの
むしろ此処は生命の気配が濃くて賑やかに感じる位
そう言えばそうでした
あの時は今こうして
二人で夜の森を歩いているだなんて、想像も
わたくし達は教会にご縁があるのかもしれません
アルフィードさんは流石
祈る姿が堂に入っておられます
お手本にわたくしも
信じておりますよ?
神様より余程――と、此処では不謹慎かしら
貴方様は如何?
応えは微笑みのみ
では、赤を
立ち上る赤薔薇の香り
暗転する寸前にあたたかな腕
あらまあ
…お優しいこと
アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と一緒に
【青】
ここは迷いの森だって
離れないように手を繋いでいようね
彼女の手を握ってにっこり笑う
うん!大丈夫!離さないよ!
夜の森にランプの灯りって綺麗だよね!
環ちゃん大丈夫?怖くない?
そうそう、環ちゃんが迷子になってくれて俺の教会に来てくれたんだよね
なんか昨日の事みたい
あっ、この教会かな?
今回も教会で運命を感じるね
この教会も綺麗だねぇ
他の場所で祈るって変な感じだけど、
俺神父だから違和感無いかな?
君は俺を信じますか?なぁーんて
俺も信じているよ
神や悪魔よりも
青薔薇を迷う事なく取り
意識を失いそうになりつつも
彼女が冷たい地面にそのまま倒れない様に自分の身体で受けとめて倒れる
これから征くべき道は、深い漆黒が静かに支配する真っ暗闇。
星や月の光さえも届かない、こんもりと木々が多い茂る森の中。
……道を見失いそな森、と。
ぐるり視線巡らせる雨絡・環(からからからり・f28317)に、アルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)はいつもの様に笑みを向ける。
「ここは迷いの森だって。離れないように手を繋いでいようね」
そう、此処は足を踏み入れた者たちを拒むかのように迷宮と化した異端の森。
けれども唯一、共に歩む者と手を繋いでいれば……森は、何の変哲もない常夜の森となるのだという。
環は手を差し出す彼に、有難う存じます、と告げた後。
大きな掌に彼の手に己の其を添えながら、笑みと共に紡ぐ。
――お放しにならないで? なんて。
そして、重ねられた細くしなやかな彼女の手をぎゅっと優しく握って。
「うん! 大丈夫! 離さないよ!」
にっこり笑み返すアルフィード。
深い闇に包まれた森を征く今、頼りになるのは、互いに繋いだ手と暗闇を照らすランプの灯火。
そんな、ぼうと揺らめく光を見つめて。
「風情がありますね」
「夜の森にランプの灯りって綺麗だよね!」
その灯火が導くまま歩きながら、アルフィードは環に訊ねてみる。
「環ちゃん大丈夫? 怖くない?」
「わたくしは大丈夫。昏い場所は親しいの」
静寂広がる夜の世界は、眩き陽が指す刻よりも落ち着くし。
環はもう一度、銀の視線を夜闇へと巡らせ、瞳を細める。
「むしろ此処は生命の気配が濃くて賑やかに感じる位」
風に揺れざわめく森の木々に、闇に紛れつつも此方を静かに窺う様な気配たち。
そんな森に息づく様々なものを感じながらふたり、言葉交わしつつ暫し並んで歩む。
迷子にならないよう、手を繋いだまま。
そしてアルフィードはふと、思い出し口にする。
「そうそう、環ちゃんが迷子になってくれて俺の教会に来てくれたんだよね。なんか昨日の事みたい」
「そう言えばそうでした。あの時は今こうして二人で夜の森を歩いているだなんて、想像も」
今は、逸れて迷子になってしまったら大変だけれど。
でも環が迷子になってくれたからこそ、今があって……それは思えば、不思議な縁で。
アルフィードは刹那、視線の先に見つける。
「あっ、あの教会かな?」
今回の目的地である、森の奥に佇むその姿を。
――今回も教会で運命を感じるね、って。
そんな彼の言葉に、環もこくりと頷く。
「わたくし達は教会にご縁があるのかもしれません」
そしてふたりは祈りを捧げるべく、辿り着いた教会の中へ。
アルフィードは、この教会も綺麗だねぇ、ときょろり周囲を見回してから。
「他の場所で祈るって変な感じだけど、俺神父だから違和感無いかな?」
……君は俺を信じますか? なぁーんて、と。
そう笑んで見せれば、環もくすりと笑み返して。
「アルフィードさんは流石、祈る姿が堂に入っておられます」
彼に倣って祈りつつも答える。
……信じておりますよ? って。
「神様より余程――と、此処では不謹慎かしら」
それから、今度は彼に問う。貴方様は如何? と。
「俺も信じているよ」
……神や悪魔よりも、って。
そう返ってきた言の葉への応えは、嫋やかに宿した微笑みのみ。
それから、祈りを捧げていれば……ふわり、胸に飾った赤薔薇が香った瞬間。
くらりと暗転する環の視界。
それは迷う事なく青薔薇を取って身に着けたアルフィードも同じで。
けれど、意識を失いそうになりつつも己の身体で受けとめる。
倒れんとする彼女の身体を……冷たい地面にそのまま倒れない様にと。
そんな彼の温もりに、あらまあ、と声を落として。
……お優しいこと。
彼と共に、環の意識はそこで途切れる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と
親子的関係
絆深き、ねぇ
ま、ソレでアンタの気が済むなら構わないケド
と、さして興味の無さそな素振りながらも手はしっかりと繋いで
縁結びって神社仏閣じゃああるまいし……
とまあ、どれもこれも全部演技なワケだけど、とは心の内で
ランタン片手にお散歩気分てのは悪くないし
ああ、おやつでも持ってくれば良かったかしらねぇナンて本音溢せば
目の前に差し出された煎餅に思わず吹き出す
あらまあ、気が利くコト
常夜の森には賑やかな音立て往く
ほらほら、あんま燥ぐと手ぇ離れるわよ
教会に辿り着いたなら、相方より先に選ぶのは【青】
無邪気に祈るのを隣で聞きながら、呆れた様に溜め息ひとつ
バカね
握る手に今一度力籠め
火狸・さつま
コノf03130と!
コノ、コノちゃん!
おてて差し出し
ん!絆深き!
にっぱ~と自信満々の笑顔向けて
はぐれちゃうと、大変、だから!ね!
しっかりと繋がれた手に御機嫌
いざ!縁結教会探しー!
あ、救われる?だた?
尻尾ふりふり
らんららんら足取り軽く
えっ?お手製おやつない、の?
ちょと、期待、してた……
俺はね、持てきた、よ!
はい!コノちゃんの!
口元へお煎餅ずずぃ
野生動物さん見えれば手を振って
道はむこうかなあっちかななんて動物と話す
おてて、はなさない
きゅっとしっかり繋ぎなおす
じゃ、俺、こっち!
コノと、ずと一緒、いれますよーに!
【赤】を取って祈りを捧げる
意識失う僅かな時間
ふにゃり笑顔向け、もう一度しっかとコノの手を…
これから足を踏み入れるのは、この常夜の世界の中でも闇のいろが深い森の中。
侵入者を惑わせんとする、異端の森。
けれども、森の奥にあるという教会へと辿り着くことを唯一許されるのは。
「コノ、コノちゃん!」
瞳をキラキラ、おててをいそいそ差し出して。
尻尾を嬉しそうにぶんぶん振りながら、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は続ける。
――ん! 絆深き! って。
そう……教会へと導かれるのは、絆深き証を示した、手と手を繋ぎ歩む者達だけ。
「絆深き、ねぇ」
……ま、ソレでアンタの気が済むなら構わないケド、と。
コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、さして興味の無さそうな素振りをしながらも。
にっぱ~と自信満々な笑顔向けるさつまの手を取ってから。
しっかりと手と手を繋いで、並んで歩き出す。
「はぐれちゃうと、大変、だから! ね!」
そんなぎゅっと繋がれた手に、さつまはるんるん御機嫌に。
「いざ! 縁結教会探しー!」
「縁結びって神社仏閣じゃああるまいし……」
いや、まぁ親子みたいな関係ではあるし。
どれもこれも全部演技なワケだけど、とは心の内で思いながらも。
呟きを落とすコノハに、さつまは相変わらずうきうきな様子で、こてり首を傾ける。
「あ、救われる? だた?」
目指すは、森の奥にあるという教会。
けれど、ゆうらり揺れるランタン片手に、お散歩気分というのは悪くないし。
「ああ、おやつでも持ってくれば良かったかしらねぇ」
なんて、コノハが本音溢せば。
尻尾ふりふり、らんららんら足取り軽く歩んでいたさつまの足が一瞬、ぴたりと止まって。
「えっ? お手製おやつない、の?」
……ちょと、期待、してた……って。
ぴこんと一度立ったおみみが、ぺたり。
けれど、コノハのお手製お菓子こそないけれど。
気を取り直し、がさごそと。
「俺はね、持てきた、よ!」
――はい! コノちゃんの!
さつまが取り出し、コノハの口元へとずずぃと差し出すのは、お煎餅。
そんな目の前にえっへん突き出されたおやつに、思わず吹き出しながらも。
「あらまあ、気が利くコト」
賑やかな音立て、さつまとふたり並んで常夜の森を征くコノハ。
……ほらほら、あんま燥ぐと手ぇ離れるわよ、って。
野生動物さんに手を振って、道はむこうかなあっちかななんてお喋りしていたさつまは、そんな声に再び視線を戻して。
――おてて、はなさない。
きゅっと、しっかり握るその手を繋ぎなおす。
そんな確り手を繋いでいた甲斐もあり、難なくふたり教会へと辿り着いて。
赤か青――最初の選択に、先に手を伸ばしたのはコノハであった。
青の薔薇を、その手に取って。
「じゃ、俺、こっち!」
さつまも、もう一方の赤い薔薇を取って。
通された教会で、一生懸命祈りを捧げる。
――コノと、ずと一緒、いれますよーに! って。
そんな無邪気に祈る声を隣で聞きながら、バカね、って。
呆れた様に溜め息をひとつ落としながらも。
意識失う僅かな時間でも……ふにゃり笑顔向け、もう一度確りと手を握ってくるさつまの手を、コノハは握り返す。
今一度、ぎゅっと――力を籠めて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒柳・朔良
我が主(f29142)と
絆深き二人を引き離すこともだが、そのやり方が悪趣味極まりない
我が主、碧唯様も同じことを思っていらっしゃるだろう
……手を繋いで隣を歩くのは畏れ多いことだが、今は致し方ない
危険はないとは思うが、選択UCの影人形を放っておいて周囲の様子を探らせよう
念の為、影人形たちも二人一組で手を繋いで行動させたら迷わないだろうか
薔薇は迷わず【赤】を手にする
主である碧唯様を差し置いて私が選択するなどおこがましいにも程がある
碧唯様には辛い選択をさせるだろうが、いざとなれば碧唯様の中の華織様か夜宵様が選択なされるだろう
あの方々は元々その為に碧唯様が作り出した人格なのだから
神在月・碧唯
我が影(f27206)と
主人格:碧唯
全く持って悪趣味極まりないですわね
しかし、そのおかげで朔良さんとこうやって手を繋いで歩けるのですけれど
朔良さんが影人形を放ってくださいましたが、教会へ辿り着くまでは危険なことはないのでは?
慎重で心配性なところは昔と変わりませんのね
ただ、もう少し自分を大切にしていただきたいですわ
薔薇は赤を手にしようとしたところを朔良さんに先に取られてしまいました(【青】を手にする)
あなたはそうやっていつもわたくしに選ばせるのですね
わたくしとしてはたまにはあなたに選択を委ねたいと思っていますのに
しかしどのような場合でも、あなたはわたくしを生かす道を選ぶのでしょうね
赴いたこの世界は、夜と闇に覆われた常夜の世界であるけれど。
静かに煌めく星や月の光さえも遮るように、ざわりと風に揺れる森の木々たち。
そんな深く濃い闇の中を征きながら。
(「絆深き二人を引き離すこともだが、そのやり方が悪趣味極まりない」)
……我が主、碧唯様も同じことを思っていらっしゃるだろう。
そうすぐ傍に在る主と共に歩むのは、黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)。
唯一無二である己の主は、大人しくて優しすぎるから。
そしてそんな朔良の、思った通りに。
「全く持って悪趣味極まりないですわね」
予知に聞いた敵の非道さにふるりと小さく首を振るのは、神在月・碧唯(その優しさは時に残酷で・f29142)。
足を踏み入れたこの森も既に、敵の手の中。
ふたりが目指すのは、森の奥にある教会であるが。
教会に辿り着けるのは、絆深き者達だけなのだという。
そして、その絆を示す証は――繋がれた手と手。
(「……手を繋いで隣を歩くのは畏れ多いことだが、今は致し方ない」)
(「しかし、そのおかげで朔良さんとこうやって手を繋いで歩けるのですけれど」)
手を繋がなければ、ふたり離れ離れになって迷ってしまうのだというから。
ふたりも、互いに手を繋いで、森の奥へと進んでゆく。
手を確りと繋いでいれば、何の変哲もない夜の森。
けれど、危険はないとは思いながらも。
朔良が深い闇へと放つは、影の支援者――周囲の影から現れる小さな影人形たち。
影人形たちも念の為、迷わぬよう二人一組で手を繋いで行動させて、異変などないか様子を探らせる。
そんな朔良の影人形たちが闇に紛れる様を見つめながら、碧唯は微か首を傾けつつも。
「教会へ辿り着くまでは危険なことはないのでは? 慎重で心配性なところは昔と変わりませんのね」
そう、己の影へと向けた藍色の瞳を細め、続ける碧唯。
……ただ、もう少し自分を大切にしていただきたいですわ、って。
そして確りと手を繋いで歩んでいれば、何事もなく無事に教会へと辿り着いて。
入り口で差し出されるのは、赤と青――最初の選択。
碧唯はふたつのうち、赤を咲かせるその花へと手を伸ばそうとしたけれど。
主がそれを手にするよりも先に、迷わず赤い薔薇を選ぶ朔良。
聞いた予知によれば……青を選んだ者が『選択者』だというのだから。
(「主である碧唯様を差し置いて私が選択するなどおこがましいにも程がある」)
あくまで己は、主の影。影が選択をする権利など、分不相応であるから。
いや、分かってはいるのだ。
主は優しすぎるから、きっと辛い思いをさせてしまうだろうことも。
けれど、朔良は知っているから。
(「碧唯様には辛い選択をさせるだろうが、いざとなれば碧唯様の中の華織様か夜宵様が選択なされるだろう」)
副人格である『華織』や裏人格である『夜宵』が、選ぶべき判断を下してくれることを。
……あの方々は元々その為に碧唯様が作り出した人格なのだから、と。
そんな手にした赤い薔薇を胸に飾る朔良に、碧唯は残った青い薔薇を受け取りつつも紡ぐ。
「あなたはそうやっていつもわたくしに選ばせるのですね。わたくしとしてはたまにはあなたに選択を委ねたいと思っていますのに」
けれどそう言う碧唯も、分かっているのだ。
どの様な場合でも、我が影が常に迷わず選ぶことはひとつ。
――あなたはわたくしを生かす道を選ぶのでしょうね、と。
選択する者が纏う青のいろを、その胸に咲かせながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
篝・倫太郎
【華禱】
灯りを手に
いつものように手を繋いで森を往く
なぁ、どっちの色を選ぶ?
あんたはどっちでも似合いそうだなぁって思って?
俺もどっちでもいいんだけどな
どっちを選んでもあんただし俺だから……
はは、ありがと
あんたの色だなぁってずっと思ってたけど
似合ってたなら嬉しいや
盗み聞きの可能性も視野に入れ
一応警戒して夜彦に体を寄せて
耳元でそっと告げておく
どっちでもいいけど
決定権を持つ可能性があるのなら
そこは、ちゃんと聞いておきたいから
夜彦、あんたの選ぶ色はどっち?
その後、どっちを選ぶ?
俺、本当にどっちでも構わないんだけど
あぁ、でもやっぱり夜彦には青かな?
あんたの選択をいつだって信じてる
だから、俺は【赤】を選ぼう
月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎と手を繋いで森を歩きます
これからオブリビオンとの戦いですが条件が条件ですからね
少し緩い感じにはなってしまいますが仕方ありません
私は青が好きなので青でしょうか
倫太郎も赤が似合いますが、この間の青を入れた服も似合っておりました
貴方も赤だけでなく青も似合うのでしょうね
私も赤は貴方の色と思うと、選びたくもなります
どうしたものでしょうね
体を寄せられ、自然と体を傾ける
はい、何でしょう
……そうですね、そこが本題なのですよね
赤を選び、そして……貴方ならそれを選ぶ理由が分かるでしょうね
きっと私と同じ選択をするのでしょうから
だからこそ、青を選びます
選ぶのは私
戦いに於いても大きな判断は私
【青】を選ぶ
一緒に赴き降り立ったのは、闇に覆われた常夜の世界。
ただでさえ、広がる暗闇が延々と何処までも支配しているというのに。
こんもり生い茂る木々たちが、静かに降る星や月の輝きさえも遮っている。
ふたりが足を踏み入れたのは、侵入者を惑わし迷わせる異端の森。
けれど、進み征くその足に迷いなどない。確りといつものように、手を繋いでいるから。
目指すは、森の奥にある教会。
互いに手を繋ぎ合った、絆深き者達のみが辿り着けるという場所。
「これからオブリビオンとの戦いですが条件が条件ですからね」
……少し緩い感じにはなってしまいますが仕方ありません、と。
いつものように生真面目に口にする、すぐ隣の月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の顔をふと覗き込むように。
「なぁ、どっちの色を選ぶ?」
篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はそう訊いてみながらも。
……あんたはどっちでも似合いそうだなぁって思って? と、彼を見つめる琥珀の瞳を細めて。
「俺もどっちでもいいんだけどな」
小さく首を傾けた後、続ける。
――どっちを選んでもあんただし俺だから……と。
そんな倫太郎から向けられた問いに、夜彦はこう返す。
「私は青が好きなので青でしょうか」
そう……ふたりはこれから、選ばなければいけないのだ。
――赤か、それとも青か。
けれど夜彦にとって、青は好きな色ではあるけれど。
「倫太郎も赤が似合いますが、この間の青を入れた服も似合っておりました」
……貴方も赤だけでなく青も似合うのでしょうね、と。
「はは、ありがと。青はあんたの色だなぁってずっと思ってたけど、似合ってたなら嬉しいや」
「私も赤は貴方の色と思うと、選びたくもなります」
自分を思わせる好きないろもだけど、相手を思わせるいろだって愛しいから。
……どうしたものでしょうね、と。
ふたり手を確りと繋いだまま、顔を見合わせて微か笑みあう。
とはいえ、どちらかはどのみち選ばないといけないから。
倫太郎は盗み聞きの可能性も視野に入れ、一応警戒するように。
体を寄せ、夜彦、と耳元で囁く様に名を呼べば。
……はい、何でしょう、と夜彦も密かに彼へと自然と体を傾ける。
そしてそんな夜彦へと、倫太郎はそっと告げておく。
「どっちでもいいけど、決定権を持つ可能性があるのならそこは、ちゃんと聞いておきたいから」
「……そうですね、そこが本題なのですよね」
ただ、好きな色を選ぶだけではない。
これは、最初の選択にすぎない。最初で、そして今後の運命を決める選択肢。
自分達であれば、どちらでもいいとは思ってはいるけれど。
でもだからこそ、倫太郎は改めて訊いておく。
「夜彦、あんたの選ぶ色はどっち?」
……その後、どっちを選ぶ? って。
そう改めて問われた声に、夜彦は紡いで返す。
「赤を選び、そして……貴方ならそれを選ぶ理由が分かるでしょうね」
……きっと私と同じ選択をするのでしょうから、と。
そして、それが分かっているから。
「だからこそ、青を選びます」
夜彦が選ぶと告げたのは、青のいろ。
「俺、本当にどっちでも構わないんだけど」
倫太郎はそうは言いはするけれど、でも、彼の選択を聞いてこくりと頷く。
――あぁ、でもやっぱり夜彦には青かな? って。
だって、いつだって倫太郎は信じているから。夜彦の選ぶ道を。
だから、俺は赤を選ぼう、って……そう笑えるのだ。
そして夜彦も分かっている。
――戦いに於いても大きな判断は私。
選ぶのは、自分であると。
辿り着いた教会で迷わず手に取るのは、青のいろを咲かせる一輪。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一一・一一
アスカ(f03928)と行動します
関係は恋人、呼び方はアスカさん、基本敬語でしゃべってます
薔薇の色は赤を選択、お互いのマフラーの色ですね
手をつないでいることに対してちょっと顔を赤くしながら、たわいのない会話をします
こんなところで二人で一緒に昼寝できたら、気持ちよさそうだし、リフレッシュできそうですよね
教会で祈る内容は「アスカさんと一緒に歩けますように」
種族の違いとか、価値観の違いとかありますけど、家族になって一緒に歩いていければ、幸せだろうなって
眠らされたら、決してアスカさんを離さないようにして
アスカさんを抱きしめるように、倒れます
アドリブなど歓迎です
アスカ・ユークレース
一一(f12570)と
関係:恋人、最近同棲し始めた
選択:青
こうしてみると本当にただの森ね……美味しい澄んだ空気に鳥の声、木の葉の擦れる音……つい普通にお散歩デートしてるような錯覚に陥ってしまいそう、実際そうなんだけど……
森林浴を楽しみつつ教会を目指すわ
捧げる祈りは『一一が幸せに過ごせますように』
ところで教会で祈りを捧げるのって結婚式みたいじゃない?
思わぬところで予行演習ができたわね
祈ったならば睡魔に身を任せて眠りましょう
不安だけど二人で指を絡めて寄り添えばきっと大丈夫
最後は彼を安心させようと精一杯微笑んで落ちるわ
アドリブ歓迎
赴いた此処は、夜の闇に包まれた常夜の世界。
いまだ明ける事のない漆黒の空には、小さな星が微か瞬いているけれど。
足を踏み入れた深い森の中には、そんな僅かな光さえも届かない。
そして広がるのは、ただひたすら夜の静寂。
いや……一見、進みゆく森の中は静かなように思えるのだけれど。
アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は、色合いの異なる宝石の如き双眸をぐるりと巡らせ、聴こえてくる様々な音たちに耳を澄ませる。
「こうしてみると本当にただの森ね……」
冴え渡り澄んだ美味しい夜の空気に、美しく囀る鳥たちの声、風に揺れ木の葉の擦れる音。
それはアスカの言うように、何の変哲もない森の様子に思えるのだけれど。
(「……つい普通にお散歩デートしてるような錯覚に陥ってしまいそう、実際そうなんだけど……」)
この森は、侵入者を惑わせ迷わせるという異端の森。
けれども、森の奥にある教会に迷わず導かれる方法がひとつだけあるという。
それは、絆深き者同士が手を繋ぎ赴くこと。
一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)の顔が仄かに赤く染まっているのも、恋人の柔らかな手の感触や温もりが、繋いだ手から伝わってくるから。
そんなアスカとふたり、手を繋いでいることは少し照れてしまうけれど。
「こんなところで二人で一緒に昼寝できたら、気持ちよさそうだし、リフレッシュできそうですよね」
交わすのは、いつも通りの他愛のない会話。
ふたり手を繋いでいれば、不思議な力が働いているらしいこの森も、ごく普通の常夜の森。
アスカが思ったように、まさに夜のお散歩デート、と言っても間違いではないだろう。
「空気も澄んでいて、夜風も心地良いですね。アスカさん、寒くないですか?」
「大丈夫、寒くないわ。見て、動物や鳥も沢山いるのね」
夜に吹く風は微かひやりと頬に感じるけれど。
でも……繋いだ手から、相手の温もりを感じるし。
首にはくるりと、互いにマフラーも巻いているから。
そのマフラーの色は――赤と青。
森林浴をふたり楽しみながらも、何事もなく辿り着いた教会の入口で。
それぞれが手に取った薔薇のいろも、マフラーの色と同じもの。
そして通された教会で、ふたり並んで祈りを馳せる。
青の薔薇をその胸に咲かせたアスカが捧げる祈りは、隣に在る彼の幸せ。
……『一一が幸せに過ごせますように』、って。
そしてそう祈りながらも、そっと瞳を細め紡ぐ。
「ところで教会で祈りを捧げるのって結婚式みたいじゃない?」
……思わぬところで予行演習ができたわね、と。
聞こえた彼女の言葉に、赤い薔薇を飾った一一もこくりと頷いて返す。
「種族の違いとか、価値観の違いとかありますけど、家族になって一緒に歩いていければ、幸せだろうなって」
そんな彼が捧げる想いは……『アスカさんと一緒に歩けますように』。
そして程なく、くらりと互いに世界が回って。
遠のく意識に抗わず、眠るようにその場に倒れ込む。
けれど、決して一一は離さない。一緒に歩きたいと願った、彼女のことを。
敵の罠に嵌ることは、やはり少し不安だけれど。
……でも。
(「二人で指を絡めて寄り添えばきっと大丈夫」)
アスカは守ってくれるような温もりを感じつつ、互いに指絡めた手をきゅっと、改めて強く握り締めながら。
彼を安心させるべく精一杯微笑みを向け、そして意識を手放す。
確りと手を繋いだまま、抱きしめてくれた彼の腕の中で、一緒に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ブーツ・ライル
【DRC】
アドリブ、マスタリング歓迎
矛盾点や解釈お任せ
薔薇は【青】
_
くつりと喉奥で笑い
何を言っている。絆は深いだろう?
あれだけの夜を共に過ごしてきたのだから。
…なんて、全て徹夜仕事の件だが。
軽口を叩きつつ、導こうとする燕の手を取り、俺がエスコートしよう。
アリス以外の手を、俺が?
さあ、どうだろうな。なんて瞳細め
口には出さないが、手を離したくない者は此処にいる。
伝えればきっとお前は離れてしまうだろうから。
だから、少なくとも今だけは。
お前が、──俺が、
迷子にならぬよう。
構わない。お前の命、俺が預かる。
フと微笑み
この手は確りと包み込むように、燕の手を握る。
金白・燕
【DRC】
アドリブ、マスタリングは大歓迎です
薔薇は【赤】
絆深き……
私で良かったんですか?ブーツ。
でもええ、そうですね
貴方以上の濃いお付き合いの方はいないかも知れません
さあ手を貸してください
ここは導いて差し上げますよ
こうしてアリスではなく、
知り合いの手を引くと言うのは……
何だか、不思議な気持ちですね
ヘンゼルとグレーテルでしょうか
ブーツはアリス以外にも誰かの手を引いていた経験がありそうですね
きっと彼は私が手を離したとしても
私の手を離さないでくれるのでしょう
……苦労する性分ですよね、貴方
すみませんね、ブーツ
選択者を貴方に押し付けてしまって。
それでも私は赤い薔薇以外は選べないのです
眼前に広がるのは、深く濃い夜の闇。
導かれた常夜の世界の中でも、木々が覆い茂る森のいろは、より静けさを纏う漆黒に沈んでいて。
足を踏み入れんとするものを惑わせ、迷わせる。
けれど、絆深き者達であれば、森の奥にある教会に辿り着けるのだという。
その絆の証……互いに手と手を繋ぎ、森の中をゆけば。
「絆深き……私で良かったんですか? ブーツ」
そう耳に届いた問う声に、ブーツ・ライル(時間エゴイスト・f19511)はくつりと喉奥で笑って返す。
「何を言っている。絆は深いだろう?」
……あれだけの夜を共に過ごしてきたのだから、と。
そんな彼の言葉に、金白・燕(時間ユーフォリア・f19377)も赤の瞳を細め頷く。
「でもええ、そうですね。貴方以上の濃いお付き合いの方はいないかも知れません」
そう……共に過ごした夜はこれまで数え切れない。
(「……なんて、全て徹夜仕事の件だが」)
目にクマを作って日夜、互いに仕事に勤しんでいるのだから。
そんな軽口を叩きつつも。
「さあ手を貸してください。ここは導いて差し上げますよ」
そう差し出された燕の手を取る、ブーツだけれど。
導こうとする彼を逆にエスコートし、共に常夜の森を歩き出す。
誰かをこうやって案内することは、互いに慣れてはいるのだけれど。
「こうしてアリスではなく、知り合いの手を引くと言うのは……何だか、不思議な気持ちですね」
その相手がアリスではないということは、妙に新鮮で。
……ヘンゼルとグレーテルでしょうか、なんて。
まるで童話の子らの如く、互いの手を引きながら、暗い森をふたり歩んで。
そしてふと燕は、自分をエスコートする彼へと改めて視線を向け、紡ぐ。
「ブーツはアリス以外にも誰かの手を引いていた経験がありそうですね」
「アリス以外の手を、俺が?」
ブーツは燕の言葉に、一瞬だけ微か首を傾けるけれど。
――さあ、どうだろうな。
すぐにそう、相手の姿を映した赤い瞳を細める。
……いや、口には出さないけれど。
(「手を離したくない者は此処にいる」)
けれど、ブーツは分かっているから。
それを伝えてしまえば。
(「きっとお前は離れてしまうだろうから。だから、少なくとも今だけは」)
……お前が、――俺が、迷子にならぬよう。
ブーツは繋いだその手を、決して離さない。
そしてそんな姿を見つめながら、燕は思う。
(「きっと彼は私が手を離したとしても、私の手を離さないでくれるのでしょう」)
それから、いつも人のことばかり気を遣う彼へと、こう口を開く。
「……苦労する性分ですよね、貴方」
現に……これからだって、そうなのだ。
辿り着いた教会で迫られる、最初の選択――赤を選ぶか、それとも青か。
燕は視界の先に見え始めた教会へと歩み止めぬまま、ブーツに告げる。
「すみませんね、ブーツ。選択者を貴方に押し付けてしまって」
そう申し訳なく思いはするけれど……それでも。
(「私は赤い薔薇以外は選べないのです」)
汚れた赤に塗れた自分が選ぶいろは、それ以外はないのだと。
そう告げる燕に、フと微笑んで。
「構わない。お前の命、俺が預かる」
ブーツはこくりと頷いてみせる。
いつだってそうなのだ。燕は己を犠牲にして、赤を選ぶ。
でも、そんな燕を迷子になど、させないから。
ブーツは繋いだ彼の手を改めてぐっと握る――確りと、包み込むように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
無間・わだち
モバコ(f24413)
【青】
ひどく悪趣味で、おぞましい遊びだと思う
だって右眼が震えているから
隣の彼女は、あまり気にしてないだろうけど
足元、気をつけて
暗いですから
空いた手で明かりを携え
歩幅をあわせて歩く
とはいえ普段から微妙に浮いてるような彼女が
小石に躓いて転ぶとも思えないが
で、俺が選べばいいんですよね
俺が「助かる」選択肢を
…まぁ、モバコがそうしたいなら
俺はどちらでも
選択権はどっちがもってるんだか
はじめから、こうなる気はしていた
なにより彼女は
俺が嘘をつくのが苦手なことを
よく知っている
桃色珊瑚の髪が
闇の中であわく揺れている
モバコには
赤色が似合いますよ
繋いだ手の体温は
元々、どちらのものも冷えきっていた
海藻場・猶予
わだくん(f24410)と
【赤】
選択をさせた上でそれを反故にする、と
さすれば生物は学習性無気力という状態に陥ります
よくある実験手法だと云えば――右眼の『貴女』は哀しむでしょうか
ええ、ご心配なく
仰る通りわたくしは、常々この世界から浮いておりますので
――塔から落ちる役は此方が適任かと
わたくしが命乞いをしてみせるか
貴方がわたくしを庇って下さるか、です
何方にせよ貴方は嘘を吐かずに済む
さて、薔薇の色はどうしましょう?
……異論ありません
仮令茶番であろうとも
運命を選ぶ側は貴方が似合っている
三文芝居は得意ですよ
こうしてゆっくり歩いているのも、もう少し並んでいたいが為の演技です
なんて云ったら……嘘に聞こえます?
つい先日も、ふたり並んで描いた星を見たけれど。
今宵の星は常夜の世界の空にある、作ったものではない光たち。
けれど眼前のこんもりとした森には、その瞬きさえも届かない。
深く沈んだ眼前の暗闇は、これから身を投じる試練とやらを思い起こさせるようないろで。
(「選択をさせた上でそれを反故にする、と」)
海藻場・猶予(衒学恋愛脳のグラン・ギニョル・f24413)は、聞いた予知の内容を思い返す。
死が目前に迫る極限状態で選択させ、そしてそれとは逆のことを起こす。
試練とは名ばかりの、理不尽な敵の罠。
そして、そうされた人間はどうなるか。
(「さすれば生物は学習性無気力という状態に陥ります」)
猶予はそれからふと、隣に在る彼――無間・わだち(泥犂・f24410)をちらりと見遣る。
……よくある実験手法だと云えば――右眼の『貴女』は哀しむでしょうか、って。
いや正確に言えば……彼女のものであるという、そのおおきな瞳を。
予知によって前もって自分達は、その内容を知っているけれど。
もしも何も知らずに、こんな『実験』されてしまえば。
(「ひどく悪趣味で、おぞましい遊びだと思う」)
わだちはそう思う。だって、彼女のものである右眼が震えているから。
それから、隣をゆく猶予へと視線を映して。
「足元、気をつけて。暗いですから」
そう声を掛けつつも、心の中でわだちは呟く。
……隣の彼女は、あまり気にしてないだろうけど、って。
そして空いた手で唯一闇を照らす明かりを携え、歩幅を合わせ歩きながらも。
「ええ、ご心配なく」
「とはいえ普段から微妙に浮いてるようなモバコが、小石に躓いて転ぶとも思えないですけど」
わだちは返ってきた声にそう言った後、本題に入る。
「で、俺が選べばいいんですよね」
――俺が「助かる」選択肢を、と。
そんな彼の言葉に、こくりとピンクの髪を微か揺らし頷く猶予。
「仰る通りわたくしは、常々この世界から浮いておりますので」
――塔から落ちる役は此方が適任かと、と。
そうなるために取る行動は、ふたつ。
「わたくしが命乞いをしてみせるか、貴方がわたくしを庇って下さるか、です」
選択したものと逆のことが実行されるのだから。
そして猶予はわだちへと視線を向け、紡ぐ。
「何方にせよ貴方は嘘を吐かずに済む。さて、薔薇の色はどうしましょう?」
赤か青か――それがまず、最初の選択。
彼女は、自分が落ちる選択をするべきだと言っているけれど。
「……まぁ、モバコがそうしたいなら、俺はどちらでも」
そう言いつつも、わだちはそっと肩を竦める。
(「選択権はどっちがもってるんだか」)
……はじめから、こうなる気はしていた、と。
それに彼女が口にしていたように、何よりも。
(「彼女は、俺が嘘をつくのが苦手なことをよく知っている」)
だから、わだちが彼女へと返すこたえはこれ。
「モバコには、赤色が似合いますよ」
「……異論ありません。仮令茶番であろうとも、運命を選ぶ側は貴方が似合っている」
猶予はこくりと頷き、彼に続ける――三文芝居は得意ですよ、と。
闇の中で、桃色珊瑚の髪をあわく揺らしながら。
そしてそのいろを見つめるわだちに、もうひとつ、こう付け加える。
「こうしてゆっくり歩いているのも、もう少し並んでいたいが為の演技です」
――なんて云ったら……嘘に聞こえます? って。
足を踏み入れた者たちを惑わさんとする、異端の森をゆきながら。
迷わずに教会に辿り着けるように……元々、どちらのものも冷えきっているその手を繋いで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンデ・リューゲ
【凛夜】
青
ヨルの小さな手に
当たり前のように指を預ける
思ったより暗いねぇ
はぐれたら流石のヨルも大変だ
頑張ってね
俺を見つけて貰うの前提な口ぶりはいつものこと
緊張なんて何処吹く風と
ランプを掲げてきみの表情を楽しみ
出発前に散々言い含めてきた姉の真剣な様子を反芻する
姉さんは俺が傷つくことを厭うからなぁ
分かったって返事をする他無かったけれど
演技はね
きっとたぶん俺の方が得意なんだ
これが教会かぁ
わ〜綺麗な薔薇だね
俺も青かなぁ
ヨルの瞳に近い色だもの
いいよ〜本気の勝負だ
じゃーんけーん
やった〜
パーのてのひらでえいえいもぐもぐ
ヨルの手を包み込む
大丈夫だよ
そう伝えるために
さあ、『かみさま』に会いに行こう
ティヨル・フォーサイス
【凛夜】
赤
いくわよ、リンデ
手を差し伸べる
幼い頃に何度も繰り返した動作
楽しい散歩ではないと知っているから少し緊張
リンデに悟らせるわけにはいかないわ
そう、緊張している演技よ
もしかして縛られるかもしれないけれど
それでもいざとなったら飛べるんだから、わかるわね
私にしなさい
そう言い含めてあるけれど
結局、どちらが青を手にするか決めていない
弟分に嫌なことを任せたくはないから
青いバラを手にしたいとは思っているけれど
……あった
青か赤をえらぶの?
初めて知った振り
私は青が好きだわ、リンデは?
(そうなるわよね)
公平にじゃんけんをしましょう
グー
苦い顔をしちゃダメ
隠さなきゃ
なら、私が赤ね!
包まれた拳を突き上げるようにして
いつだって、もう迷子にさせるわけにはいかないって、そう思っているから。
「いくわよ、リンデ」
当たり前のようにまた、ティヨル・フォーサイス(森のオラージュ・f14720)は手を差し伸べる。
それは幼い頃に何度も繰り返した動作で。
リンデ・リューゲ(يقبرني・f14721)も目の前の小さな、でも頼り甲斐のある手に、当たり前のように指を預ける。
けれど真っ暗闇の森を歩く目的が、楽しい散歩ではないと知っているから。
少し緊張してしまうティヨルだけれど。
(「リンデに悟らせるわけにはいかないわ」)
……そう、緊張している演技よ、って。
姉らしく、胸を張ってみせる。
そんなティヨルと手を繋ぎながら、リンデはきょろりと緑色の視線を巡らせて。
「思ったより暗いねぇ。はぐれたら流石のヨルも大変だ」
……頑張ってね、なんて、見つけて貰うこと前提な口ぶりはいつものこと。
ゆらり掲げたランプ揺らして、緊張なんて何処吹く風。
灯火に照る彼女の表情を楽しむように見つめながら、歩いてゆく。
そんなリンデに、ティヨルはしっかりと念を押す。
「もしかして縛られるかもしれないけれど。それでもいざとなったら飛べるんだから、わかるわね」
――私にしなさい、と。
それは出発前からもう、散々言い含められていること。
そんな姉の真剣な様子をリンデは反芻する。
(「姉さんは俺が傷つくことを厭うからなぁ」)
だから、こう返事をする他無かったのだ……分かった、って。
でも――。
ティヨルはリンデに、何度も言い含めてはあるのだけれど。
……赤か、それとも青か。
(「結局、どちらが青を手にするか決めていない」)
けれどやっぱり、弟分に嫌なことを任せたくはないから。
手にしたいと思っているのは、青を咲かせる花。
そうこう思いながら、互いに手を繋いで歩んでいれば。
「……あった」
「これが教会かぁ」
辿り着いたのは、森の奥に佇む教会。
そして入口で差し出される、いろの異なる薔薇の花。
「わ〜綺麗な薔薇だね」
「青か赤をえらぶの?」
首を傾けて見せつつ、初めて知った振りをして。
ティヨルはリンデへと視線を向け、そして訊ねてみる。
「私は青が好きだわ、リンデは?」
「俺も青かなぁ。ヨルの瞳に近い色だもの」
その答えに、そうなるわよね、と心の中だけで呟いて。
ティヨルはこんな解決法を提案する。
「公平にじゃんけんをしましょう」
「いいよ〜本気の勝負だ」
単純明快、文句なしのじゃんけん勝負。
――じゃーんけーん。
ぽん、と。勝負の手を勢いよく同時に繰り出せば。
「やった〜、俺が青」
「なら、私が赤ね!」
グーを出したティヨルの拳を、えいえいもぐもぐ。
リンデはパーのてのひらで包み込む――大丈夫だよって、そう伝えるために。
そして……さあ、『かみさま』に会いに行こう。
開かれた教会の扉を、ふたり一緒に潜って、中へ。
ティヨルは赤い薔薇を揺らしながら、そっと思う。
(「苦い顔をしちゃダメ、隠さなきゃ」)
本当は青を取りたかったけれど……でも、それを悟られぬようにと。
そして、そんなすぐ傍にある彼女の表情を見つめ、リンデは改めて思うのだった。
――演技はね、きっとたぶん俺の方が得意なんだ、って。
選択する者のいろ……青い薔薇を、その胸に咲かせながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宵雛花・十雉
【蛇十雉】
返す言葉も無いけど
なつめだってどっか行っちゃいそうだよ
だからオレもちゃんと捕まえておくんだ
ああ、この手の傷のことだね
たまに痛むけど、平気だよ
え?…もう、責任取るだなんて大袈裟だなぁ
傷は男の勲章って言うし、気にしないで
そういうのは可愛い女の子に言ってあげなよ
わぁ、綺麗な薔薇だね
赤も青も違う魅力があるけど…
オレは【赤】にしようかな
眩しい赤が目印になるかと思って
…うん、本当のこと言うと置いてかれるのは嫌だよ
それっきり帰って来ないんじゃないかって思うし
でも、仕方のないことだから
待ってるね
名前も知らない神に祈りを
どうか臆病な自分に
この人を信じる勇気をください
唄夜舞・なつめ
【蛇十雉】
…ん。
(すっと手を差し出し)
お前、捕まえてねーと
すぐどっか行くだろ
手ェ貸せ
ン、おりこーさんっと
さて行くかァ
……この前俺が噛んだ傷…どー?
まだ、痛むか…?
…悪かったなァ…
もし…治りそーになかったら
責任取っから…(ぼそぼそ申し訳なさそうに)
…ンだよ、人がせっかく
心配してんのによォ。
お、これが教会か
んーと、薔薇、薔薇……
お、これか
ときじ、お前どっちがいー?
じゃー俺【青】な
…なァ、俺
お前のこと1回置いてくけど
ぜってー迎えに行くから…
信じて待っててくれっかな
祈る。誓う。
俺はこいつを、
俺のーーーーを守り抜くと。
導かれた世界は、いつだって常夜の闇に覆われているけれど。
眼前の暗闇は、風にざわめく森の木々のせいで、余計に深く濃くなっていて。
足を踏み入れれば、途端に迷子になってしまいそうだけれど。
いや、此処は実際――自分達を惑わし迷わせんとする、異端の森だから。
……ん。
すっと、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の前に差し出されたのは、掌。
そしてきょとりと自分へと視線を向ける彼に、唄夜舞・なつめ(夏の忘霊・f28619)は続ける。
「お前、捕まえてねーと、すぐどっか行くだろ」
だから……手ェ貸せ、と。
そんな彼の声に、返す言葉も無いけれど。
「なつめだってどっか行っちゃいそうだよ」
そう言いつつも、眼前のその手を取る十雉。
――だからオレもちゃんと捕まえておくんだ、って。
そして重ねられた手に、なつめは瞳を細めてから。
「ン、おりこーさんっと。さて行くかァ」
森の奥にあるという教会を目指し、十雉と並んで歩き始める。
決して迷わぬように確りと、手と手を握りながら。
そんな、繋いでいる手だけれど。
「……この前俺が噛んだ傷……どー? まだ、痛むか…?」
そう、ちらりと視線を向けつつも訊いてきたなつめに、十雉は答える。
「ああ、この手の傷のことだね。たまに痛むけど、平気だよ」
そんな十雉に……悪かったなァ……、って。
改めてなつめは負わせた手の傷のことを謝った後。
申し訳なさそうに、ぼそぼそ。
「もし……治りそーになかったら、責任取っから……」
その言葉に、十雉は一瞬、ぱちくりと橙の瞳を瞬かせるけれど。
「え? ……もう、責任取るだなんて大袈裟だなぁ。傷は男の勲章って言うし、気にしないで」
……そういうのは可愛い女の子に言ってあげなよ、なんて笑んで返せば。
もう一度ちらりと十雉を見遣りながら、呟きを落とすなつめ。
「……ンだよ、人がせっかく心配してんのによォ」
傷に障らないように、何気にそうと手を握りながら。
此処は、暗くて深い迷いの森。
けれど、手と手を繋いだ絆深き者達だけが辿り着くのだという。
「お、これが教会か」
森の奥に佇む、教会に。
そしてなつめはきょろりと視線巡らせ、探す。
赤か、それとも青か。
「んーと、薔薇、薔薇……お、これか」
「わぁ、綺麗な薔薇だね」
それは、架せられる最初の『選択』。
教会の入口で、赤か青か……差し出される薔薇のどちらかひとつを、それぞれ選ばないといけないというが。
「ときじ、お前どっちがいー?」
「赤も青も違う魅力があるけど……オレは、赤にしようかな」
……眩しい赤が目印になるかと思って、と。
十雉が手に取り、その胸に飾ったのは――鮮やかな赤い薔薇。
「じゃー俺、青な」
なつめも青の薔薇へと手を伸ばし、そのいろを胸に咲かせてから。
開かれた扉の向こう、教会の中へと歩みを進めながらも十雉へと告げる。
「……なァ、俺。お前のこと1回置いてくけど、ぜってー迎えに行くから……」
――信じて待っててくれっかな、って。
そんな彼の声に……うん、と。十雉はこくりと頷くけれど。
「本当のこと言うと置いてかれるのは嫌だよ。それっきり帰って来ないんじゃないかって思うし」
……でも、仕方のないことだから、と。
呟きを落とした後、なつめへとこう紡ぐ――待ってるね、って。
置いて行かれるのは嫌だけれど……それを引き留める勇気も、ないから。
だから、せめて。
――どうか臆病な自分に、この人を信じる勇気をください。
十雉は祈りを馳せる。名前も知らない神に。
そんな彼の隣で、なつめも祈りを捧げてみる。
俺の願いは神に届くことはない……そうは思うのだけれど。
だからこそ、願うのではなく、誓うのだ。
(「俺はこいつを、」)
……俺のーーーーを、守り抜くと。
青のいろに咲いた薔薇を、その胸に微か揺らしながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
【狼兎】【赤】
後の為に翼は隠し森を歩く
…うん、大丈夫
僕は飛べるし痛い事にはならないよ
それに…選択は委ねちゃうけど
僕は赤を選ぶつもりだから
紫崎君の色
敵の罠でもあり…僕のお守り
それにしても…慌てる演技もした方がいいのかな
口元に指をあて首を傾げつつ
だって僕も紫崎君も…ねぇ?
(初めから全部覚悟のうえ
もし我儘が言えるなら
残される辛さは知ってほしくないから、僕が後だといいなとか
紫崎君になら殺されても幸せだなとは思うけど
多分きっと、僕も紫崎君も…目の前で相手が死んだって
取り乱す事はないんだろうな
ほんの少し、悲しくなるだけ)
考えていれば返された答えに柔らかく微笑み
ん…そうだね、任せるよ
僕はただ、いつも通りに
紫崎・宗田
【狼兎】【青】
翼を完全に収納して自分の足で歩く分
体力的にも歩幅的にもどうしても遅れがちな澪に合わせ
歩くペースを落としながら小さな手を包み込むように繋いで森を進む
どうせ離れないならランプは俺が持てば充分だろ
本当に、お前が落ちる側でいいんだな
別に俺でも構わねぇんだぞ
これでも元傭兵なんだ、怪我くらい慣れてるが
縛られ方次第では羽出せねぇかもしれないだろ
とは思いつつ、横目で表情を伺えば覚悟はわかるから
口には出さずにそうか、とだけ答え
演技なぁ…
いつも通りでいいんじゃねぇの、お前は
必要だと思うなら演技でもなんでもすりゃいい
強気に出るとしても疑われないようフォローくらいしてやる
だから自分の心配だけしとけ
ふたり並んで征くのは、深く濃い闇で満ちた常夜の森。
一見、何の変哲もない森に見えるが……此処は、敵の力の影響が及んでいるという異端の森。
だから後の為に、背中の翼は隠して歩く栗花落・澪(泡沫の花・f03165)だけれど。
体力的にも歩幅的にも、どうしても遅れがちになってしまう。
そんな澪に合わせ、歩くペースを落としながら共に進むのは、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)。
小さな澪の手を包み込むように、確りと繋いで。
「どうせ離れないならランプは俺が持てば充分だろ」
暗闇の中、ゆらり揺れる灯火の持ち手を担う。
この森は、足を踏み入れた者を惑わせるというけれど……ひとつだけ、迷わずに森の奥にある教会に辿り着ける方法があるという。
それは、絆深き相手と森を征くこと……ふたり手と手を繋いで、森を歩くこと。
まずは敵の尻尾を掴むべく、森の教会を目指しているふたりであるけれど。
宗田は足元を灯火で照らしつつ、改めて澪に訊く。
「本当に、お前が落ちる側でいいんだな」
揺れる灯りに照らされた横顔へと、視線向けながら。
「別に俺でも構わねぇんだぞ。これでも元傭兵なんだ、怪我くらい慣れてるが」
「……うん、大丈夫。僕は飛べるし痛い事にはならないよ」
宗田の声にそうこくりと頷いてから。
澪は隣を征く彼を見上げ、続ける。
「それに……選択は委ねちゃうけど、僕は赤を選ぶつもりだから」
……紫崎君の色、って。
聞いた予知によれば、辿り着いた教会の入口で最初の選択を迫られるという。
赤か、それとも青か。
それが後に、試練という名の理不尽な実験に大きく影響してくるのだというが。
(「敵の罠でもあり……僕のお守り」)
澪は、赤を選ぶと……そして落とされるのは自分だと、そう改めて彼に告げる。
そんな澪へとちらりと視線を返してから。
(「縛られ方次第では羽出せねぇかもしれないだろ」)
宗田はそう思いはするのだけれど。
でも……横目で表情を伺えば、覚悟はわかるから。
返すのは、そうか、と一言だけ。抱く思いの丈は口には出さずに。
「それにしても……慌てる演技もした方がいいのかな」
敵が尻尾をみせるまでは、猟兵として赴いた目的を気取られるわけにはいかない。
澪は口元に指をあて、こてりと首を傾げつつも、呟きを落とす。
……だって僕も紫崎君も……ねぇ? って。
それからふと、心の内で思う。
(「初めから全部覚悟のうえ。もし我儘が言えるなら……残される辛さは知ってほしくないから、僕が後だといいなとか。紫崎君になら殺されても幸せだなとは思うけど」)
でも同時に、澪はこうも思うのだ。
(「多分きっと、僕も紫崎君も……目の前で相手が死んだって、取り乱す事はないんだろうな」)
――ほんの少し、悲しくなるだけ、って。
もしも相手が目の前で死んだとしても、それを受け入れるだろう。
きっと、涙を流すなんてこともなく。
……そんなことを、考えていれば。
「演技なぁ……いつも通りでいいんじゃねぇの、お前は」
返ってきた彼の声に、再びその顔を上げて。
「必要だと思うなら演技でもなんでもすりゃいい。強気に出るとしても疑われないようフォローくらいしてやる」
……だから自分の心配だけしとけ、と。
向けられた眼差しと言の葉に、澪は柔らかく微笑んで頷く。
「ん……そうだね、任せるよ」
そして宗田の大きな手を、改めてそっと握りながら。
仄かに照る明かりと繋いだ彼の手を頼りに、森の奥へと進んでゆく。
――僕はただ、いつも通りに、って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葬・祝
【彼岸花】
んふふ、カフカと手を繋いで歩くなんて何時振りでしょうね?
本当、君はすくすく大きくなりましたよねぇ
カフカと手を繋いで、傍らには淡い光を零す朱蛺蝶を共に森を進みましょう
朱蛺蝶のお陰でそれなりに見えますし大丈夫ですよ
話し歩きながら、カフカの手と指を絡めて、手の甲を指先で擽って、ちょっとした悪戯
だって、君の反応が面白くて
……ほら、ね?
とりあえず、青薔薇は君にお任せしますよ
はい、付けてくださいね
私は赤薔薇を付けておくので
絆深きふたりじゃないと辿り着けないそうですよ、着いちゃいましたねぇ教会
……祈る、なんて変な気分ですけど、ま、やりましょうかね
ふふ、歩く厄災が何ぞに祈るだなんて面白いですよねぇ
神狩・カフカ
【彼岸花】
ガキの頃以来だろうなァ
下手すると数百年単位だぜ
なんつーか…改めて繋ぐとむず痒ィもンだが…
お前さんは大きくなったり小さくなったり不定形だもンな
ほう、おれがやった蝶が役に立つたァな
ちょいちょいと指で突っついて
先導は任せたぜ
――!
…っ……お、おい…お前…その触り方…
ったく、緊張感のないやつ
暗闇に赤い顔を隠すようにふいっ
おれが青なのか…
まあ、いいけどよ
(どうせするのは演技だろうし、死ぬわけはないし
…けれど)
あっさり辿り着いちまったな
(わかっちゃいたけど、こいつと改めて絆が深いと判定されると複雑なものがあるのも事実で)
はあーぁ…
ま、なるようになるだろ
隣で祈りを捧げる
(神が何に祈るってンだか)
足を踏み入れた森は、深く沈むような闇がひたすら広がっていて。
侵入した者を惑わせ迷わせんと、虎視眈々と静かに狙っているけれど。
でも、絆深き者ならば、森の奥の教会に迷わず辿り着けるのだという。
ふたり、確りと手と手を繋いでいれば。
「んふふ、カフカと手を繋いで歩くなんて何時振りでしょうね?」
そうまるで宵闇の散歩を楽しむかの如く笑み零すのは、葬・祝( ・f27942)。
そして、それが一体何時だったかと思い返してみれば。
「ガキの頃以来だろうなァ。下手すると数百年単位だぜ」
それはそれは随分と、昔々のことで。
森で迷わぬ為とはいえ、神狩・カフカ(朱鴉・f22830)は落ち着かない様子で、何処かそわり。
「なんつーか……改めて繋ぐとむず痒ィもンだが……」
「本当、君はすくすく大きくなりましたよねぇ」
そう色付いた唇で薄らとわらい、見上げる祝に。
「お前さんは大きくなったり小さくなったり不定形だもンな」
カフカもちらり、視線を落とした後。
ひらり、ふいに目の前で舞った秋色を、金の視線で追う。
それは暗闇の中、淡い光を零す山神の眷属。
「朱蛺蝶のお陰でそれなりに見えますし大丈夫ですよ」
「ほう、おれがやった蝶が役に立つたァな」
カフカは伸ばした指で、ちょいちょいと舞う朱を突っついて。
先導は任せたぜ――そう、灯るそのいろを祝と共に追いかける。
握る手と手は勿論、繋いだまま。
手を繋いでさえいれば、この森はただの常夜の森だというから。
共に話し歩きながらも、祝は不意に、彼の手と指を絡めて。
手の甲を指先で、こしょこしょ。
ちょっとした悪戯を仕掛けてみれば。
「――! ……っ……お、おい……お前……その触り方……」
一瞬大きく瞳を見開いた後、祝へと視線を向けながらも口にするカフカ。
そんな様子に、思わず祝はわらって。
「だって、君の反応が面白くて」
「ったく、緊張感のないやつ」
紅き蝶に照らされてるからか、いやきっと、それだけではなく――。
カフカは赤い顔を暗闇に隠すように、ふいっ。
祝は、顔をそむけた彼に向けた銀の瞳を、より愉快気に細め紡ぐ。
……ほら、ね? って。
そうこうしているうちに、現れたのは――森に佇む教会。
そして入口で、赤い薔薇と青い薔薇、咲くふたつのいろが差し出されれば。
「とりあえず、青薔薇は君にお任せしますよ」
――はい、付けてくださいね、って。
「私は赤薔薇を付けておくので」
祝が手にした薔薇のいろは、赤。
「おれが青なのか……まあ、いいけどよ」
そしてカフカは、残った青の薔薇を手に伸ばしながらも密かに思う。
(「どうせするのは演技だろうし、死ぬわけはないし……」)
――けれど、と。
そうそっと呟きを落としつつも、青のいろを胸に咲かせれば。
「絆深きふたりじゃないと辿り着けないそうですよ、着いちゃいましたねぇ教会」
「あっさり辿り着いちまったな」
楽し気に言った祝に、複雑な思いを抱いてしまうカフカ。
いや、わかってはいたし、実際の絆云々はさして重要ではないとは聞いてはいたけれど。
でもそれでも……。
(「わかっちゃいたけど、こいつと改めて絆が深いと判定されると複雑なものがあるのも事実で」)
そう思いつつも、これも猟兵の仕事。
「……祈る、なんて変な気分ですけど、ま、やりましょうかね」
……ふふ、歩く厄災が何ぞに祈るだなんて面白いですよねぇ、なんて。
開かれた教会の扉の先を進み、祈ってみる祝。
そんな彼の隣で、大きく溜息をつきながらも。
「はあーぁ……ま、なるようになるだろ」
カフカも祝と一緒に、意識を失うまでの間。
――神が何に祈るってンだか。
それっぽく、祈りを捧げてみるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎/薔薇【赤】
ん、ひづ
さっさと繋いで行くぞ
ランタン代わりにスマホのライトでいいだろ
…おー、それもいいな
夜の森っつーからもっとホラーテイストかと思ってたが
案外悪くないかもな、木の間から星もたまに見えるし
それに……お前とこうして、手ェ繋いで歩けるし
うっせェ、バァカ!!
今のはナシだ!!
ったく…作戦決めんぞ
俺は演技とかめんどくせーから
ひづに任せる
あと決めとかねーといけないのは
どっちが落ちるか、か
落ちても最低限は念動力で…
お前の念動力のコントロール考えたら、余計なケガが増えるか
後のこと考えるなら、俺が落ちる方が楽だな
ん、じゃあ俺が落ちる、と…すぐ追い付くから待ってろよ?
氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ歓迎、薔薇は【青】
わかってるって
ゆーくんと夜の森デートとか
マジでバイブス上がるわー、ってね?
普通の森じゃなさそうだし……
折角二人きりだから、コレも使っちゃう?
灯り代わりに、UC:煌花を
こういうのもロマンティックだよね……って
ゆーくん、今のもう一回
もう一回だけ!お願い聞かせて!(嬉しかった模様?
【演技】【言いくるめ】お任せあれ
断崖絶壁らしいから
マトモに落ちると結構痛いかもね
あはは……まあ、戦闘のコト考えたらそっちの方がいいかも
それじゃ、そういう方針でいこっか!
(本当は俺が落ちる気満々だケド、ナイショ)
(……そっちの方が楪へのドッキリになるし、楽しそうじゃん?)
眼前に広がる静寂の森は、足を踏み入れたら迷子になってしまいそうだけれど。
でも……絆深き者であれば、迷う事はないという。
「ん、ひづ。さっさと繋いで行くぞ」
そう差し出された月待・楪(Villan・Twilight・f16731)の手を、わかってるって、と取って。
「ゆーくんと夜の森デートとか、マジでバイブス上がるわー、ってね?」
「ランタン代わりにスマホのライトでいいだろ」
「普通の森じゃなさそうだし……折角二人きりだから、コレも使っちゃう?」
――ほら、綺麗だろ? って。
氷月・望(Villain Carminus・f16824)が灯り代わりにと咲かせたのは、ぱちりと弾けるあたたかい彩。
「おー、それもいいな」
そんな望が生み出した煌花を映し、楪は瞳細めてから。
不意に、ぐるりと視線を巡らせつつも紡ぐ。
「夜の森っつーからもっとホラーテイストかと思ってたが。案外悪くないかもな、木の間から星もたまに見えるし」
――それに……お前とこうして、手ェ繋いで歩けるし、って。
「こういうのもロマンティックだよね……って」
望は届いた彼の声に、瞳をぱちくりとさせてから。
ぱあっと笑み咲かせ、繋いだ手を嬉し気にぶんぶん。
「ゆーくん、今のもう一回。もう一回だけ! お願い聞かせて!」
「うっせェ、バァカ!! 今のはナシだ!!」
楪はそう、嬉しそうにねだる望に、ぷいっと視線を逸らすけれど。
ちらりと、視線を戻してから続ける。
「ったく……作戦決めんぞ。俺は演技とかめんどくせーから、ひづに任せる」
「演技、言いくるめ、お任せあれ」
そして得意気に言った望に、頷きながら。
「あと決めとかねーといけないのは、どっちが落ちるか、か」
「断崖絶壁らしいから、マトモに落ちると結構痛いかもね」
「落ちても最低限は念動力で……お前の念動力のコントロール考えたら、余計なケガが増えるか。後のこと考えるなら、俺が落ちる方が楽だな」
そう一緒に、最良の選択を考える作戦会議を。
「あはは……まあ、戦闘のコト考えたらそっちの方がいいかも」
望も素直に、こくこくと首を縦に振って同意する。
――それじゃ、そういう方針でいこっか! って。
そして話しながら歩いていれば、いつの間にか目的の教会が見えてきたから。
「ん、じゃあ俺が落ちる、と……すぐ追い付くから待ってろよ?」
そう言った楪に、望はもう一度頷いて笑んでみせる。
教会の入口で差し出されたふたつの薔薇のうち、青のいろを取りながら。
……演技、言いくるめ、お任せあれ。
赤い薔薇を胸に咲かせる楪を見つめ、そっと細める。
彼を飾るそのいろと、同じ色の瞳を。
(「本当は俺が落ちる気満々だケド、ナイショ」)
だって、望は思うから。
そっちの方がきっと――楪へのドッキリになるし、楽しそうじゃん? って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ライラック・エアルオウルズ
【花結】
先の選択を知ればこそ
凪ぐ心で森を往ける
然し、それを選び取る君は
きっと胸の騒ぐ想いだろう
森を探る爪先だけでなく
君の心が惑わぬようにと
絡めた指を、繋ぎ直して
照らす顔に、笑み湛えて
ねえ、僕は大丈夫
君の元に戻らない選択は
僕の裡の何処にもないから
選ぶのは君だけではなくて
僕もね、共に選び取るから
自らでは君を置いていけず
失うことも出来ない僕のため
君に選択肢を与えたこと
申し訳無くも思うけれど
君の決めた優しい選択に
傷付くことは、ありはしない
祈り捧げど叶わないなら
代わりに誓い立てようか
神ではなくて、添う君だけに
往く先も必ず共にあろうと
――僕も、愛しているよ
【赤】薔薇を、花詞を胸に
君にだけ届くよう、誓いを
ティル・レーヴェ
【花結】
手を繋ぎゆく森の中
あなたと繋ぐ手はいつも通りなのに
少し緊張してしまうのは
この先に待つものを知っているから
選択に迷いは無いのに
選ぶ先を受け入れると
そう語った言葉に偽りはないのに
起こることを想像すれば
心は波立ちそうで
繋ぎ直される手に
届く言葉に眸向けて
あゝあなたはいつも
そうして添い護ってくれるのね
紡ぐ一言一言が
どれほど妾を救っているか
あなたはご存知?
きぅ、と繋ぐ手に力を込めて
潤ける眸であなたを映す
繋ぐまま想いを籠めて
涙隠すよに抱きついても
愛するふたりの抱擁と
眺むる相手には映るかしら
――ねぇ、あいしてる
囁く詞に全てを籠めて
あなたの赤き誓いを裡に刻み
どうか無事でと声なく祈り
選び飾るは【青】き薔薇
共に赴いたこの世界の夜は、まだ明けぬことを知らないけれど。
そんな闇のいろがより深く濃く沈みゆく、静寂の森の中。
歩むライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)の心は凪いでいた。
それは、先の選択を知ればこそ。
けれど、いや、だからこそ……同時に思わずにはいられない。
(「然し、それを選び取る君は、きっと胸の騒ぐ想いだろう」)
掲げた小さき灯火に照る隣の横顔を、そうと見つめてみれば。
迷いこそ見えないけれど、でも、どこか緊張したようないろ。
それは彼だけでなく、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)自身にも分かっていた。
(「あなたと繋ぐ手はいつも通りなのに」)
……少し緊張してしまうのは、この先に待つものを知っているから、って。
(「選択に迷いは無いのに。選ぶ先を受け入れると……そう語った言葉に、偽りはないのに」)
けれどやはり、その心は波立ちそうになる。起こることを、想像すれば。
ふたりが往くのは、侵入者を惑わすという異端の森。
でも森を探る爪先だけでなく、君の心が惑わぬようにと。絡めた指を繋ぎ直せば。
……ねえ、僕は大丈夫、と。
ふと己を見上げた円らな藤の眸に、ライラックは紡ぐ想いと湛えた笑みを返してみせる。
「君の元に戻らない選択は、僕の裡の何処にもないから。選ぶのは君だけではなくて」
――僕もね、共に選び取るから、って。
どちらかが選ぶのではない、選ばせるのではない。一緒に、と。
ティルはそんな彼の声に、繋ぎ直される手に、また救われる。
……あゝあなたはいつも、そうして添い護ってくれるのね、って。
けれどそれは、彼も同じで。
いや、むしろ――申し訳無く思うのだ。
(「自らでは君を置いていけず、失うことも出来ない僕のため、君に選択肢を与えたこと」)
でも決して……自分が傷付くことは、ありはしない。
君の決めた選択は、優しいのだからと。
それを決めた君は、心配なくらいに……優しすぎて、そして強いのだと。
そしてティルも、彼の横顔に問う……あなたはご存知? と。
だって自分がそう在れるのは、誰でもない貴方がいるから。
――紡ぐ一言一言が、どれほど妾を救っているか、って。
共に征くと決めたからには、祈り捧げど叶わぬことも承知の上。
けれど……ならばと。
ライラックは、代わりに誓いを立てる。
――神ではなくて、添う君だけに。往く先も必ず共にあろうと。
きぅ、と繋ぐ手に、想いと力を込めて。
涙隠すように、そんな彼にティルが抱きついても……きっと、相手にはこう映るだろう。
それは、愛するふたりの抱擁だと。
だからティルは、そうと想いを口にする。
――ねぇ、あいしてる、って。
囁く詞に、全てを籠めて。
彼の胸に咲く赤き誓いを裡に刻みながら……どうか無事で、と。
内緒の祈りを、青のいろ咲かせた胸の内に秘めながら。
そして、ライラックも笑んで返す。
――僕も、愛しているよ、と。
赤に咲く薔薇を、その花詞を胸に……彼女にだけ届くよう、誓いを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーファス・グレンヴィル
マコ(f13813)と
薔薇の色は【赤】
ほら、と手を差し出した
迷子になったら大変だろ?
揶揄するように笑って
しかし本当に静かだな
お前の息遣いまで聞こえそうな気が
…──ふは、真に受けんなよ
冗談だって、悪い悪い
繋いだ手でマコを引き寄せて
髪をわしゃわしゃ掻き乱す
他愛もなくじゃれあうのは
きっと、この後の選択が
彼を苦しめることを知っているから
オレが目の前で死んだら
きっとコイツは壊れる
それだけは絶対にさせねえ
どんな選択をしようと
何があっても、オレが守るよ
──なんて言わねえけどな
森を抜け奥深くの教会へ
扉の前に示された薔薇が二輪
彼が選んだ青を見て目を細めて
じゃあオレが赤か
似合ってるだろ、と
薔薇をドヤ顔で胸に付けた
明日知・理
ルーファス(f06629)と
アドリブ、マスタリング歓迎
薔薇の色は【青】
_
…ルーファスを迷子になんてさせねえよ。
こんな状況でなければ、貴方と手を繋げることにもっと楽しかったが。
これから待ち受ける選択、展開に対し表情も声も無意識に固く
──ルーファスが突き落とされなす術もなく見送るなんて、絶対に出来ない。させない。
例えフリだとしても…俺の手の届かぬところで傷付くなんて御免だ。
ルーファスを、護る。何があっても。
そう決意新たにしつつ、彼の冗談を真に受け髪を掻き乱され
驚いて目を丸くして笑い
教会にて、迷いなく選ぶのは青薔薇。
赤薔薇を身につけた彼にフと微笑み
赤薔薇の花言葉を思い出しながら
「…よく似合ってる」
常夜の世界に静かに広がるのは、深い闇を抱く異端の森。
その暗く沈む漆黒は、足を踏み入れた者たちを迷わせる。
けれど絆深き証を示す者達であれば、迷わずに森の奥の教会に辿り着けるのだという。
だから……ほら、と。
手を差し出したのは、ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)。
「迷子になったら大変だろ?」
そう揶揄するように、明日知・理(月影・f13813)に笑って。
「しかし本当に静かだな。お前の息遣いまで聞こえそうな気が」
重ねられた手を取り歩みながら、ぐるりと視線を巡らせるけれど。
「……ルーファスを迷子になんてさせねえよ」
……こんな状況でなければ、貴方と手を繋げることにもっと楽しかったが、と。
理の表情も声も、無意識に固くなる。これから待ち受ける選択や展開を思えば。
(「――ルーファスが突き落とされなす術もなく見送るなんて、絶対に出来ない。させない」)
だって、自分の手の届かぬところで彼が傷付くなんて御免だから。
それが例え、フリだとしても。
――ルーファスを、護る。何があっても。
そう決意を新たに固める理の横顔を、ちらりと見てから。
「……――ふは、真に受けんなよ」
ルーファスは繋いだ手をぐっと引き寄せて、わしゃわしゃ。
理の髪をじゃれるように掻き乱す……冗談だって、悪い悪い、って。
理はそんな彼の手の感触に驚いて一瞬、目を丸くするけれど。
わしゃわしゃされながらも、笑って。
共に並んで森の中を征きながら、ルーファスは思う。
こうやって他愛もなくじゃれあうのは……きっと、この後の選択が彼を苦しめることを知っているからだと。
(「オレが目の前で死んだら、きっとコイツは壊れる。それだけは絶対にさせねえ」)
だから決して死ねないし、死ぬつもりもない。
どんな選択をしようと……何があっても、オレが守るよ、って。
繋いだ手から感じる温もりとすぐ傍にある横顔に、ルーファスは紅蓮の瞳を細める。
(「――なんて言わねえけどな」)
そして迷うことなく導かれた、森の奥に佇む教会の扉の前で。
示されたのは、薔薇が二輪。
咲き誇るいろは、ふたつ……赤と青。
そして迷いなく先に手を伸ばしたのは、理であった。
彼が選んだのは、青のいろを咲かせた薔薇の花。
「じゃあオレが赤か」
ルーファスは残った花と同じいろの瞳をもう一度細めてから。
己の胸に赤を咲かせる――似合ってるだろ、とドヤ顔で。
理はそんな彼にフと微笑んで返して。
青い薔薇を同じ様に胸に付けつつも、紡ぐ。
「……よく似合ってる」
彼を飾る赤い薔薇の花言葉を、思い出しながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
千鶴(f00683)さんと
迷わぬよう、手を繋いでくれますか?
夜目は利く方ですが…
言いかければ差し出された手
ふわり笑んでそっと結ぶ
最近
このあたたかな手に引いてもらうことが増えた気がする
そんなことを思い
蝶の灯りに照らされる彼を見やる
んん…難しいですねぇ
千鶴さんは?
花は何かしら
人の心に残していくのですねぇ
ふふ、それは嬉しいですねぇ
その隣に千鶴さんがいてくれたらもっといいですねぇ
なんて
入口で選ぶは【赤】
選択を委ねるのは彼への信頼ゆえ
この後何があろうとも
彼を護るという意志は揺るがないから
あら、そうなのですか?
千鶴さんの…どんな夢かしら
ええ…もちろん
薄れる意識の中
貴方の手を求め握り返し
小指を絡めて約束を
宵鍔・千鶴
千織(f02428)と
……千織、勿論だよ
御手をどうぞ?
俺の手を離しては駄目だよと
彼女の温もりを確りと
靜かなる常世の森へ
導には淡い紫纏う
幽世蝶をそうと飛ばして
灯火を
ざわめく木々のおとの中
ねえ、千織
きみは赤と青の薔薇なら
どちらがお好み?
何でもない世間話めいた調子
俺はどちらも好き
赤も青も綺麗に咲いて
誰かの心に残る同じ華だ
千織は薔薇も似合うだろうけど
穏やかな山吹の香りと
やっぱり櫻の下で咲ってるきみが一番、かな
辿り着いた教会で
選ぶ【青】
青薔薇はね、夢が叶うって
意味も在るんだって
俺の願いは今はきみの隣にと
何があろうと守るよ
信じて、と
願うように繋いだ手を
ぎゅうと握って
そっと絡めた小指は約束の証
これから進みゆく道を見れば、其処は深い漆黒に覆われた真っ暗闇。
足を踏み入れる者を惑わせ、迷わせんとする異端の森。
けれど、迷子になんて、きっとならない。
「迷わぬよう、手を繋いでくれますか?」
夜目は利く方ですが……と。
そう橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)が言いかければ。
「……千織、勿論だよ。御手をどうぞ?」
宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が彼女のご所望通り、すかさずその手を差し出したから。
……俺の手を離しては駄目だよ、って。
そんな彼にふわり笑んで、千織がその手を重ねて。
ふたりで確り結べば、じわりと伝わる相手の温もり。
そして手と手を繋ぎ、並んで歩み出す。靜かなる常世の森へと。
ざわりと揺れる木々たちが、森を覆う闇を一層濃くするけれど。
暗闇の中、ふたりを導くのは、そうと千鶴が飛ばした淡き灯火。
ひらり紫のいろ纏う、華宵の翅。
そんな蝶を追いかけながら、淡紫の灯りに照らされる彼を見遣り、千織は思う。
――最近、このあたたかな手に引いてもらうことが増えた気がする、って。
そう心に巡らせていれば。
「ねえ、千織」
風に鳴る葉音の中、名を呼ばれて。
橙の視線向ければ、何でもない世間話めいた調子でこう問われる。
「きみは赤と青の薔薇なら、どちらがお好み?」
けれど千鶴の声に、千織は首を傾けて。
「んん……難しいですねぇ。千鶴さんは?」
逆にそう訊ね返せば、すぐに返ってくるこたえ。
「俺はどちらも好き。赤も青も綺麗に咲いて、誰かの心に残る同じ華だ」
「花は何かしら、人の心に残していくのですねぇ」
そうほわりと笑む千織に、千鶴はこくりと頷きながらも瞳細めて。
「千織は薔薇も似合うだろうけど」
――穏やかな山吹の香りと、やっぱり櫻の下で咲ってるきみが一番、かな。
紡ぐのは、眼前で笑うきみを思わせる花のいろ。
「ふふ、それは嬉しいですねぇ」
千織はそう、微笑みを咲かせながらも。
もっとその花が咲き誇る方法を彼へと紡ぐ。
……その隣に千鶴さんがいてくれたらもっといいですねぇ、なんて。
そして辿り着いた教会の入口で、最初の選択が提示される。
赤と青、美しく咲く二輪の薔薇の花が。
千織が手に取るのは、赤のいろを咲かせた薔薇。
(「この後何があろうとも、彼を護るという意志は揺るがないから」)
それは彼への信頼ゆえに胸に飾る、選択を委ねるいろ。
千鶴も青い薔薇をその手に取って、胸に咲かせながら紡ぐ。
「青薔薇はね、夢が叶うって意味も在るんだって」
「あら、そうなのですか? 千鶴さんの……どんな夢かしら」
そう首を微か傾けた千織に、千鶴は告げる。
「俺の願いは今はきみの隣にと。何があろうと守るよ」
願うように繋いだ手を、ぎゅうと握りながら――信じて、と。
千織も、そんな彼に笑んで返す。ええ……もちろん、と。
くらりと薄れる意識の中……その手を求め、握り返しながら。
そっと小指と小指を絡めて、ふたり――約束、って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
館野・敬輔
【青】
陽太(f23693)と
理不尽な選択を強いた上で心を折りにかかるか
悪趣味極まりないオブリビオンめ
この手で徹底的に斬り刻んでやる
ひとまず手を繋いで進むか
まあ、陽太となら気にしない
念のため、作戦会議は小声だ
俺としては、赤を選んで俺が落ちるつもり
俺より陽太の方が演技は上手いから
残ってもらうなら俺より陽太だ
だが陽太に指摘され呻く
まあ、それも一理ある
登るだけで一苦労だろう
って陽太、何を言う!?
驚くが口が動けばいいと聞いて納得
…確かに悪魔を召喚できれば早く戻れるだろう
わかった、演技はどうにかする
…何とか、なると思いたいが
青薔薇選び祈りを捧げて意識を失う
祈る最中、オブリビオンへの憎悪を静かに滾らせながら
森宮・陽太
【赤】
敬輔(f14505)と
ったく、また悪趣味なオブリビオンの娯楽かよ
選択を強いた挙句、それを踏み躙りやがって
ひとまず仲良く手を繋いで進むか
そうしねえと先にすら進めねえからな
歩きながら作戦会議
念のため小声で
敬輔
てめえ、命乞いして自分が突き落とされるつもりだろ
俺が突き落とされるよりましだ、ってな
だが、落とされた後、どうやって登ってくるつもりだ
崖でもよじ登るか、ん?
いい考えがある
選択の場で俺を生き残らせると言え
そうすりゃ落ちるのは俺だ
なあに、口さえ動けば俺はどうにかなる
だから、絶望するような演技、忘れるな?
…信頼してるからよ
赤の薔薇を選んで祈りを捧げ意識を失う
一応、花粉の効力に抵抗するフリはする
この世界を支配する輩は、やはり悪趣味が過ぎると。
常夜の地に降り立ち、聞いた予知を思い返しながらも、ふたり感じるのは憤り。
「ったく、また悪趣味なオブリビオンの娯楽かよ」
……選択を強いた挙句、それを踏み躙りやがって。
そう吐き捨てる様に言った森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)に、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)も頷く。
「理不尽な選択を強いた上で心を折りにかかるか。悪趣味極まりないオブリビオンめ」
……この手で徹底的に斬り刻んでやる、と。
けれどそのためにはまず、敵のみせる尻尾を掴まないといけない。
敵の拠点を突き止めるべくまず進むのは、暗闇が広がる異端の森。
しかもこの森は、迷宮化しているというが。
目的地である森の奥の教会へと、難なく辿り着ける方法がある。
……それは。
「ひとまず仲良く手を繋いで進むか。そうしねえと先にすら進めねえからな」
絆深き者だと示す為、共に進む相手と、手と手を繋いで歩むこと。
……まあ、陽太となら気にしない、と。
差し出された彼オン手に、敬輔も己のものを重ねて。
念のため小声で交わすのは、作戦会議。
けれど敬輔は、前もって決めている。
(「俺より陽太の方が演技は上手いから、残ってもらうなら俺より陽太だ」)
……俺としては、赤を選んで俺が落ちるつもり、と。
でもその思考は、お見通し。
「敬輔、てめえ、命乞いして自分が突き落とされるつもりだろ。俺が突き落とされるよりましだ、ってな」
そして陽太はすかさず指摘する。
「だが、落とされた後、どうやって登ってくるつもりだ」
……崖でもよじ登るか、ん? と。
そんな彼の言葉に、思わず頷いてしまう敬輔。
「まあ、それも一理ある。登るだけで一苦労だろう」
だから陽太は、いい考えがある、と……こう提案する。
「選択の場で俺を生き残らせると言え。そうすりゃ落ちるのは俺だ」
「って陽太、何を言う!?」
「なあに、口さえ動けば俺はどうにかなる」
思わず陽太の言葉に驚きの声を上げる敬輔だけれど。
口が動けばいいと聞いて納得する。
……確かに悪魔を召喚できれば早く戻れるだろう、と。
そんな敬輔に、陽太は笑ってみせる。
「だから、絶望するような演技、忘れるな?」
……信頼してるからよ、って。
それから辿り着いた教会を目前に、敬輔はこくりと頷く。
「わかった、演技はどうにかする」
……何とか、なると思いたいが、と心の中で紡ぎつつ。
教会の入口で、作戦会議通り、青い薔薇を手に取る。
そして残った赤い薔薇を手にして。
教会の中で祈りを捧げていた陽太は、抜かりなく花粉の効力に抵抗するフリをして。
祈る最中、オブリビオンへの憎悪を静かに滾らせる敬輔と共に、意識を手放すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
ハルア(f23517)と
及び腰のハルアにひとつ溜息をつきしっかり手を繋ぐ
ほら行くぞ、しゃんとしろ
森の途中に開けた場所があれば小休憩を
静かな夜の空を見上げたいな
故郷は極寒の地、空気が澄んで綺麗な空だった
彼女との距離を縮め二人しか聞こえない声量で言う
俺が青い薔薇を選ぶ
青は俺の方が合うだろ
そう言い紺青の炎を手に纏わせるよ
例え演技だとしても嘘が下手な彼女では表情や態度に出てしまう
そして自らの選択によって落ち逝く体の俺を見て己を責めるだろう
そんな思いはさせたくない
教会では【青い薔薇】を受け取って祈りを捧げる
獄卒が神に祈るなんて滑稽だが
ハルアが倒れる際、床に身体を打ち付けないよう庇う位ならできるだろうか
ハルア・ガーラント
相馬(f23529)と
夜の森は怖いです
変な鳴き声がしたり突然何かが飛び出したりするもの
繋がれた相馬の大きな手が強固な枷のようにも、思え……
〈星灯りのランプ〉に手近な花をかざし灯を燈して進みます
小休憩では〈白い腰かばん〉から水筒を取り出し相馬と温かいお茶を飲みつつ夜空を見上げます
温かいお茶と相馬がすぐ隣にいる事実に恐怖が和らぎそう
最近こうやって空を見上げる事、なかったなあ
薔薇の選択
解ってる、青色が似合うのは彼だなんて建前
本当はわたしに自分のせいだって思わせない為でしょう?
泣きそうだけど堪えて頷き【赤い薔薇】を受け取ること、了承します
教会では静かに祈りを捧げますね
神様、どうかわたし達猟兵に祝福を
訪れた常夜の世界の中でも其処に広がるのは、深い深い闇。
眼前の森の木々たちが星や月の光さえも遮り、より濃くなった夜のいろ。
……夜の森は怖いです、と。
暗闇広がる視線の先を恐る恐る見遣るのは、ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)。
(「変な鳴き声がしたり突然何かが飛び出したりするもの」)
きょろり新緑の瞳を巡らせるハルアの腰は、完全に引けている。
そんな及び腰にひとつ溜息をつきつつも、しっかりと手を繋いで。
「ほら行くぞ、しゃんとしろ」
鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は彼女のその手を引くけれど。
ハルアは密かにこうも考えてしまう。
……繋がれた彼の大きな手が強固な枷のようにも、思え……と。
しかも予知に聞いた話では、此処は侵入者を惑わせ迷わせる異端の森なのだという。
でも同時に、迷わず森の教会へと辿り着く方法も、ふたりは知っているから。
手と手を繋いで森をゆけばいい、と。
手さえ繋いでいれば、広がる風景は何の変哲のない森。
ざわりと大きな音を木々が立てれば、やっぱりハルアは怖くなってしまうけれど。
手近な花をかざし灯を燈す。集めた星の光を灯しだすという、星灯りのランプに。
それから暫しふたり、並んであるけば。
夜の森を進む途中、開けた場所で小休憩を。
そしてハルアが白い腰かばんから取り出した水筒の温かいお茶を、ふたり飲みつつも。
……静かな夜の空を見上げたいな、って。
(「故郷は極寒の地、空気が澄んで綺麗な空だった」)
ふと、相馬が夜空を仰いでみれば。
「最近こうやって空を見上げる事、なかったなあ」
ハルアも彼の視線を追って、ほうっとひとつ息をつく。
温かいお茶と彼がすぐ隣にいる事実に恐怖が和らぎそう……なんて、思いながら。
そんな、先程より怖い気持ちが薄れている様子の彼女と距離を詰めて。
相馬は内緒話をするかのように、二人しか聞こえない声でハルアへと告げる。
「俺が青い薔薇を選ぶ」
……青は俺の方が合うだろ、って。
刹那その手に纏わせるのは、冥府の炎――紺青のいろ。
いや、彼には解っているから。
(「例え演技だとしても嘘が下手な彼女では表情や態度に出てしまう。そして自らの選択によって落ち逝く体の俺を見て己を責めるだろう」)
だから、そんな思いはさせたくない……と。
そしてハルアも、解っているのだ。
(「青色が似合うのは彼だなんて建前。本当はわたしに自分のせいだって思わせない為でしょう?」)
そう思えば、泣きそうになってしまうけれど。
こくりと、彼女は泣くのを堪えながら頷き了承する。赤い薔薇を受け取ることを。
それから再び手を繋いで夜をゆけば……姿をみせるのは、森の奥に佇む教会。
相馬はハルアに言った通り、青い薔薇を手にし胸に飾って。
(「獄卒が神に祈るなんて滑稽だが」)
開かれた教会の扉の向こうへと、彼女と共に歩み進め、祈ってみる。
そんな彼の隣で、ハルアも静かに祈りを捧げる。
――神様、どうかわたし達猟兵に祝福を、と。
そして……その身体が、ふらりと大きく揺れれば。
同じく意識を失いかけながらも、相馬は咄嗟に腕を伸ばして彼女を受け止める。
床に身体を打ち付けないよう、庇う様に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鎹・たから
【❄🌸】
【赤】
こんな所業、許せません
どれほどの人々が犠牲になったのか
想像しただけで怒りがわく
…ですが
大切な人の命より、自分の命を選ぶ時
どんな気持ちなのでしょう
死にたくないという想いを
悪だとは思わない、けれど
あたたかい手
男の人にしては細い指が
やわらかく握り返してくれた
冬毛でふあふあの尻尾が
体に触れる度に不安が融けた
彼はいつだって
春みたいにたからを愛おしんでくれるのです
大丈夫ですよ、なびき
猟兵ならちょっと痛い程度で済むでしょうし
たからはジャンプと着地が得意ですからね
今回は演技も必要になりますが
精一杯がんばります(ふんす
なびきには、少し悲しい思いをさせてしまいますが
二人で必ず悪をほろぼしましょう
揺歌語・なびき
【❄🌸】
【青】
うわーまっくら
全然見えないねぇ
ランプが心許ない気がして
なるべく彼女の足元を照らす
満月じゃないのは助かるが
義憤に駆られる顔が
少し俯いたのはすぐわかった
そうだね
きっと、すごく苦しいだろうね
たからちゃんは雪みたいにまっしろで
心が清すぎるから、痛むのだ
ちいさく幼い掌はひんやり冷たい
おれの体温で火傷しやしないだろうかといつも思う
この子は
絡めた指が本当はどんなモノかなんて
なんにも知らないんだよなぁ
その思考を裏に溜息混じり
彼女が落ちるのを謝る
はぁ…適材適所だもんねぇ
ちゃんと受け身とるんだよ?
うん
二人で倒そう
(なんて、嘘ついた
きみは演技ができないから
慣れてるおれが嘘をつく
落ちるのは、おれだよ)
訪れたこの世界が、いつだって夜の闇に覆われていることは知っているけれど。
「うわーまっくら。全然見えないねぇ」
足を踏み入れた森の中は、深く濃い漆黒のいろが広がる真っ暗闇。
けれど、揺歌語・なびき(春怨・f02050)にとっては、むしろ助かるくらいだ。
どうしても恐れを抱いてしまう、満月じゃないだけでも。
でも、手元で揺れるランプの灯火では心許ない気がして。
なるべく彼女の足元を照らし、歩く。
そんななびきが揺らす灯火を頼りに、森を進みながら。
「こんな所業、許せません」
……どれほどの人々が犠牲になったのか、と。
想像しただけで怒りがわきあがる、鎹・たから(雪氣硝・f01148)だけれど。
予知に聞いたことを思い返しながら……ですが、と。
ふと、言の葉を落とす。
「大切な人の命より、自分の命を選ぶ時、どんな気持ちなのでしょう」
――死にたくないという想いを悪だとは思わない、けれど……って。
なびきは桜の瞳でそっと、小さな灯火に照るその横顔を見つめながらも。
すぐに、わかったのだった。
義憤に駆られる彼女の顔が少し俯いたことは。
そして、心が清すぎるから、痛むのだと。
「そうだね。きっと、すごく苦しいだろうね」
……たからちゃんは雪みたいにまっしろだから、と。
繋いでいるちいさく幼い掌は、今日もひんやり冷たくて。
いつもなびきは思うのだ。
……おれの体温で火傷しやしないだろうか、って。
けれど今、たからがその手に感じているのは、じわり染みる様に伝わる彼の体温。
(「……あたたかい手」)
この手をやわらかく握り返してくれるのは、男の人にしては細い指。
それに、冬毛でふあふあの尻尾が体に触れる度に、不安も融けてゆくから。
そう……彼はいつだって、雪解けの温もりをくれる。
――春みたいにたからを愛おしんでくれるのです、って。
けれど彼はむしろ、純白の冬を愛しむ。
(「この子は絡めた指が本当はどんなモノかなんて、なんにも知らないんだよなぁ」)
そしてその思考を裏に、溜息混じりに謝る……彼女が落ちることを。
そんな彼の謝罪に、たからはふるりと首を振って。
「大丈夫ですよ、なびき。猟兵ならちょっと痛い程度で済むでしょうし。たからはジャンプと着地が得意ですからね」
ぴょこりと、その場で飛んでみせる。
「はぁ……適材適所だもんねぇ。ちゃんと受け身とるんだよ?」
「今回は演技も必要になりますが、精一杯がんばります」
そしてそう、ふんすと気合いを入れながらも。
彼を見つめ、こう続けるたから。
「なびきには、少し悲しい思いをさせてしまいますが。二人で必ず悪をほろぼしましょう」
「うん、二人で倒そう」
そんな彼女の声に、なびきはこくりと頷きながらも。
だって……やっぱり、雪みたいに君はまっしろだから。
(「きみは演技ができないから、慣れてるおれが嘘をつく」)
清すぎる彼女のかわりに、彼は嘘をつく。
真実を紡ぐのは、その心の中だけ――落ちるのは、おれだよ、って。
大成功
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