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ピリヲドを綴る(作者 吾妻くるる
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#カクリヨファンタズム  #再送のお願い  #再送日程:1月23日8時31分~ 


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#カクリヨファンタズム
#再送のお願い
#再送日程:1月23日8時31分~


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●ピリヲドを探して

“むかしむかし、あるところに――”

 とある書店の奥の部屋。窓辺で店主が読むのは、そんな在り来たりな書き出しから始まる一冊の本。年老いた庭師が城の姫君に恋をし、その想いを知った月の女神が、庭師に夜だけ若返る魔法をかけるというストーリー。月の輝く夜、花咲く園でふたりは出会い、ひそやかに言葉を交わす。しかし――

“これは月明かりの元でだけ叶う奇跡。
太陽の元では出会えず、身分も隔たる想いから、庭師はやがて――”

ここで文章は途切れてしまう。本の厚みはまだ中程なのに、そこから先は白紙のページばかり。羽ペンをくるくると回してみるものの、今日も先の話は浮かびそうにない。

「やっぱり僕には、荷が重いんじゃないかなぁ…。」

 この先は貴方が綴って、と未完成の本と羽ペンを贈られてからもう何十年経っただろう。幾度となく構想を練っては崩し、拾っては壊して。それなのにいまだインクにペン先を浸すことすら出来ないでいる。何よりも、筆が乗らない一番の理由は。

「読んでくれるはずの君が、いないんじゃ…ね。」

カクリヨで出会うことは叶わず、かといってこの本を棄てることもできず。資料集めと称して手を出した書籍と書き道具は、もはや売るほどになってしまった。そんな変わらない日々に、進めない今日に、ふう、と吐いた溜息を逃すように窓を開けたら。

そこには、君が居た。

ふわりと浮き上がる、記憶通りの姿の君。未練が見せた白昼夢かと疑うより早く、その白い手がこちらに伸びる。でも、ふれた冷たさが夢じゃないことを、そして元の儘の君が戻ってきたんじゃないことも教えてくれた。戸惑う内に背に回った腕にゆっくりと力が込められて、視界がどんどん暗くなる。でも、どうしても抵抗できなかった。

だって僕が書きたかったのは、君を喜ばせるための物語だったんだ。
だからこうすることで、君が嬉しいというのなら。
――もう終わりなんて、かけなくていい。


●終わりのない物語
「《“時よ止まれ、お前は美しい”――そんな哀しい滅びの詩が、詠まれました。》」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ、青い髪の少女が無機質な電子音声で語り掛ける。出どころは手にした薄型のデバイスだろう。彼女の口は動かないまま、指だけが雄弁に画面を滑って文字を紡ぐ。
「《場所は『カクリヨファンタズム』。とある妖怪が骸魂に飲み込まれ、その者が営む本屋ごと周囲が迷宮と化しました。》」
 そのせいか、迷宮内はありとあらゆる本が散乱している。螺子くれた回廊は、向かう先こそ察せるものの視界も道も悪く、時には途切れているらしい。
「《ですがそこは奇妙といいますか、僥倖と言いますか。この迷宮では周囲の書物に書き込んだことが、一時的に具現化する能力があるようですの。》」
 たとえば途切れた道がつながる様に、本の階段を創るとか。猫に変身して細い道をすり抜けるとか、ティーカップを船に水辺を渡るとか。書き込めばそういったことが可能となる。無敵になったりすぐ目的地に、といったことは無理だが、十分な助けにはなるだろう。
「《まるで物語の中に迷い込んで、その登場人物になったような。ちょっと不思議な気分になれそうですわね。》」
 不謹慎かもしれませんが、と付け加える少女の顔にはぬぐい切れない好奇心が浮かんでいる。目的の達成は大事だが、少しくらいはその心地を楽しんでもいいかもしれない。
「《その先で待ち受けるのは、魂の現身。虚ろな人形姿のオブリビオンです。こちらは戦闘による弱体化の他に、人形に取り込まれた妖怪への説得も有効なようです。どちらの手段を取るかは、皆様にお任せします。》」
 そして倒して迷宮化が解けた後、そこは元の本屋へと戻るだろう。そこは一風変わった本屋で、なんでも『結末のない本』しか扱わないという。
「《もとは店主がとある本を書き上げる為に集め出したのが始まりだそうです。ですが今ではさる文豪の未完結作や、誰かが綴るのを期待してわざと〆を書かずにおいて行った本などが集まって、売るほどになったとか。》」
 読むだけでも中々に面白く、買い求めて自ら続きを書くのも一興だ。
「《加えて書くためには道具も大事だと、古今東西からあらゆるインクや筆に紙を集めて、こちらも売り出しているようですわ。中には――》」
 こんな不思議なインクも、と少女が紙に何事かをインクで綴る。そして書き終えた文字をすっとなぞれば――ふわり、と光を纏った蝶たちが舞う。こんな風に魔力を籠めたり、摩訶不思議な花や鉱石を元に作られた書き道具たちは、様々な効力を持つそうだ。読むたびに花の香りがする紙や、きらめく情景が浮かび上がるインク、水にも文字を書ける万年筆などは、きっと贈り物にも喜ばれるだろう。試し書きのスペースもあるので、いろいろと眺めるだけでもきっと楽しい。
「《骸魂から引き上げられた店主は消沈しているでしょうが、長い時間をかけて作り上げた店は、大事にしてきた本と同じくらい宝物のはずです。どうぞ貴方の店はすばらしいものだと、思い出させてあげてくださいませ。》」
 そう締め括ると深く一礼し、少女が白い巻貝のグリモアを招き寄せる。

――これより先は、貴方の手に。物語を締めくくりにいきましょう。





第3章 日常 『想いを馳せる地にて』

POW迷い躊躇うことはなく、そのままの想いを馳せる
SPD自らに言い訳や偽りの言葉を聞かせつつ想いを馳せる
WIZ複雑な感情を抑え込もうとしながら想いを馳せる
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして集った猟兵たちの活躍により、虚ろな人形は骸の海へと還された。引き込まれていた貉の店主も、無事に助けることができた。迷宮化もすっかり解かれ、店にも被害らしい被害はない。――これにてめでたしめでたし、と仕切るのもいいだろう。

「うん、でもほら、せっかく助けてもらったみたいだからね。僕のお店でよければ、みていかないかい?」

 〆に待ったをかけたのは、当の貉の店主――名をぽん太、という。少しばかり疲れた様子もうかがえるが、たくさんの言葉を贈られたこと、そして叶わなかった別れの挨拶ができたおかげか、顔つきは寧ろ吹っ切れた様に穏やかだ。さぁこっちへ、と案内されるままに扉をくぐれば、そこは和風モダンな造りの本屋だった。

 巨人でも優に立てる大きな店内は、ぐるりとロの字型をしていて、その壁面全てに本が収められていた。大きさや装丁はまちまちで、内容も童話、絵本、小説、はたまた画集に建築集とバラエティに富んでいる。探せばきっと興味を惹かれるものが見つかるだろう。そして引き取る本を決めたら、必ず一緒に贈られるものがある。白いプレートに金の箔押しで“That`s at your deiscretion.”――あなたの手に委ねます、と綴られた栞だ。此処に在る本は全て例外なく結末がない。連載半ばで死した悲劇の文豪の作品、とある万能の天才が文筆業にも手を出したが飽いて放られたもの、そもそも誰かに続きを期待して余白を残した本…理由自体は様々だ。しかしそのどれもが、もし次の人の手に渡ったとき、その続きを書いてもらってもいいと、その許可を得たモノしか並べていないそうだ。――因みに書いちゃ駄目なものは店主の秘蔵コレクションとして大事にしまわれているとか。ともあれ、読んで毎回違う結末を想像するもよし、自ら書いて楽しむもよし、の一風変わった“本選び”が味わえるだろう。

 続けて少し奥に現れる、ステンドグラスの嵌った両開きの扉を開ければ、そこはインクと紙と筆の為の部屋。半分にはずらりと書き道具が並び、もう半分には試し書き用スペースとして、レトロなライティングビューローが何台も置かれている。試しにひとつ、手に取った紫色のインクで“菫の花束”と書き込めば、周囲にふわりと甘い花の香りが広がった。もひとつ試しに、半透明の紙を一枚光に透かせば、ゆらゆらと揺れ続ける水面の影が目に映る。最後にこれを、と何の変哲もなさそうな黒い万年筆で星のマークを書けば、周囲に流れ星の幻影が現れた。こんな風に、此処に在るものは本と同じく一風変わった書き味が約束されている。これぞというものをとことん追求するのもいいし、迷ったら貉の店主や、送り出した青い髪のグリモア猟兵に相談すると、ちょっとしたオススメを聞けるかもしれない。

「僕から出来るお礼はこれくらいだけど、せめてゆっくり楽しんで行ってね。」

 そう言って、店主がそっと扉に――“猟兵様 貸し切り”の札を掛けた。