「――なんや、あれ」
その日、ドートゥンヴォリは騒然となった。
「見てみいや、なんや物騒な船がぎょうさん来とる……」
「……いや、待て。ありゃ海賊ちゃうんか?」
「オアッ!しかもありゃ……巨人軍(ジャイアンツ)やないか!」
彼らが見たのは、海原に展開する大艦隊の姿であった。
海上に居並ぶ船はいずれもその船体に刃を生やし、そして剣の旗印を掲げている――それは、このグリードオーシャンの海を支配する七大海嘯が一派、“邪剣”の勢力に連なる者であることを示していた。
『ガアアアアーッ!!』
そして、邪剣船団の乗組員である骸巨人の兵団が咆哮する。その待機を震わすその声に、水面が震えた。
「どないする?」
「そらァやるに決まっとるわ!いてこましたれ!」
「ダーハマさん呼びぃ!ヨシュモトの連中に声かけてもらわなあかんぞ!」
「マーモットの旦那も呼んだれや!」
血気盛ん!義理人情に厚く、そして熱いドートゥンヴォリの人々は侵略の魔の手を許さない!彼らはすぐさま迎撃に打って出るべくその準備を始めたのだ。
「いくでえ!徹甲おろしに颯爽と!」
「――というわけだ。はっきり言うとこのままでは全滅する」
イリス・シキモリ(f13325)は坦々と告げる。
あらためて、イリスは猟兵たちに説明を開始した。
「グリードオーシャンで事件だ。七大海嘯の話はお前たちも既に知ってのことだろう」
七大海嘯――。
グリードオーシャンにその名を轟かせる強大なオブリビオンたちのことを指す。
「これまでのお前たちの活動で、連中の縄張りを引っ掻き回してやったからな。……相当頭にきているらしい。とうとう、縄張りの外に打って出て来たぞ」
そういうわけで、その七大海嘯旗下の大艦隊がグリードオーシャンの多くの島々に対して攻撃を企てているのだという。
「お前たちにはこれからドートゥンヴォリという島に行ってもらう。……この中に、行ったことのある者もいるかもしれないな。まあ、知っていようがいまいがかまわない。とにかく、お前たちは島に行け」
イリスは手元の端末を繰り、モニターに島の映像を映した。――ドートゥンヴォリはスペースシップワールドに由来する文化を持つ島だ。流石に往時の技術力や戦闘兵器を保持しているということはないが――それでも、多少なりの備えがある。
島の人々はそれを武器に、七大海嘯の艦隊を迎え撃とうとしているのだ。映し出された映像の中では、島の人々が虎を想起させる黒と黄のストライプ模様の旗を船に掲げていた。
「このまま捨て置けば島の人々は無謀に突っ込んで無意味に死ぬ。まずお前たちは島の人々のもとに赴き、彼らが死なぬよう支援するのだ。……実際、彼らも無力ではないからな。上手くやればお前たちの助けにもなるだろう」
彼らは義理人情に厚く、そして猟兵たちにも好意的で協力的だ。手を貸す、と言われて断ることはないだろう。
「敵は現在、島の包囲を固めながら襲撃の準備を整えている最中だ。実際に攻め込んでくるまでは若干の猶予がある。その間に、島の人々に協力を申し出て準備を整えろ」
――やるべきことも、できることも多い。防衛陣地の構築や、戦力となる船の強化。島の周辺地形の把握や島の人々の練度を上げる戦闘訓練。また、人々と交流することで信頼感を高めて支援を得やすくする――など。できることはなんでもやって戦いに備えよと、グリモア猟兵は言い添えた。
「それから、こちらで保有する鉄鋼船も戦力として使用できる。元々耐久性は高いからな。武装を積めば海戦にもじゅうぶん耐えうるだろう」
――というわけで、使えるものは何でも使って、敵の艦隊を潰せ。
それが今回の任務である。
「説明は以上だ。他に質問はないな?」
そして、イリスは頷いた。
「では行け。お前たちの勝利を祈る」
かくしてグリモアは光り、猟兵たちをドートゥンヴォリへと送り込むのであった。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。カノー星人です。
この度も引き続き侵略を続けさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『七大海嘯迎撃準備』
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POW : 港や海岸に防衛陣地を築いたり、鉄甲船を強化したり、島の商船や漁船を戦闘に耐えうるように改造します。
SPD : 島の周辺の潮の流れや岩礁などの地形を把握したり、島民の戦闘訓練や避難訓練をを行って練度を上げます。
WIZ : 海戦前に演説で戦意を高揚させたり、酒を飲んだり、宴会を開くなどして島民と猟兵の連帯感を高めます。
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♪徹甲おろし
徹甲おろしに 颯爽と
蒼海わたる 日輪の
星雲の覇気 麗しく
輝く我が名ぞ 繁神(はんしん)タイガス
オォ オォ オォ オォ
繁神(はんしん)タイガス
フレ フレ フレ フレ
……ドートゥンヴォリは異様な熱気に包まれていた。
港湾区画においては7.28ミリコスモガトリング機銃やスペースカルバリン砲といった武装を搭載した戦闘艇群――このドートゥンヴォリがスペースシップ・オッサカーとして星の海を航行していた頃の名残である遺産――の復旧作業が急ピッチで行われている。
それを担当するのは島でも最大の勢力を誇る自警的組織、ヨシュモト興業の若手たちだ。彼らは島を守るため、武装の整備や搬入・搭載を急ぐ。
だが、それはドートゥンヴォリにとってとうに失われたテクノロジーだ。彼らだけでは万全にはできないだろう。長い間平穏に過ごしてきた人々には、いずれの火砲も馴染みないものなのである。
それは武装の整備のみならず、実際の運用や戦闘経験も同様であった。
その一方、アッパーサイドの居住・商業エリアではドートゥンヴォリ島民たちによる決起集会が行われていた。
「どついたれ!」
「巨人軍(ジャイアンツ)なんぞハナクソや!」
「繁神タイガスの加護ぞあれ!」
「徹甲おろしに颯爽と!」
島の人々が軍歌めいた民謡を歌い上げる。それはかつて島を襲った巨人の軍団を撃退したという繁神タイガスの逸話、『徹甲颪』と呼ばれる戦闘技術にちなんだ歌であった。
この島で祀られている信仰、繁神タイガスはかつてこの島が星の海からグリードオーシャンへと落ちた際に人々をまとめ上げ、繁栄の礎となった偉大な人物であり、島の人々にとっては勝利と繁栄と平和の象徴なのである。
ドートゥンヴォリの男たちは、この勢いで敵を叩きのめしてやる、と勢いづく。
「ほんまに大丈夫やろか……」
大人たちが血気に逸る中、街角に店を構える女子供たちは不安げに呟いた。
白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
銀河焼きの味、覚えてまさ
ハタチにもなったトコですしな
今ならギンベロだって行けまさァ
ってなワケで、この島を荒らさせたとあっちゃ王の名折れ
エル、オーダー
これよりこの港を、猟団の臨時拠点と定義する
・かつてここでドンパチした時のと同じ『ワイルドハント号』で港に着け、海賊ルックで登場
・船甲板には自前のキャバリア『ストームライダー』をドーンと積んである
・モザイク空間をファッと投射してキャバリアのカラバリ変更
・『ストームライダー』を「白黒ストライプのボディ」と「黄に黒の虎縞模様」でデコり、もうすごい「虎!」って感じに仕立てる
・ドートゥンヴォリの人ってこういうのが好きなんでしょう?
エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
タスクを受領しました
これより会敵まで、ワイルドハントの下準備を開始します
(物九郎の船に海賊ルックで同乗してる)
躯体番号L-95
当機はスペースシップワールド系のテクノロジーの改修_及び_実運用に高い適性を発揮します
・マニピュレーターを操り、戦闘艇群の復旧に協力(メカニック+武器改造)
・なんならチューンとか射法レクチャーもやる
・作業協力に【マネギ・カーペンターズ(団体行動)】も召喚
・士気向上効果見込めそうだし、こいつらも黄に黒の虎縞模様で虎っぽい見た目にカラバリ変更しとく
モウカリマッカー
ボチボチデンナー
(無表情だが冷たいわけじゃないので島民の人達にちゃんとアイサツする)
「――座標データの一致を確認。目的地に到着しました」
「アア。間違いありゃあせん。ドートゥンヴォリっすわ」
ぱちり、と静かにパルスが爆ぜた。エル・クーゴー(f04770)は船体を覆うように展開していた電磁光学迷彩を解く。
そこに現れたものこそは荒れ狂う海をゆく王の船、白斑・物九郎(f04631)が曰くのワイルドハント号である。
物九郎は船を進め、港湾区域へと接岸する――。彼がこの島を訪れるのは二度目だ。見覚えのある風景に、物九郎は目を細めた。
「前に食った銀河焼きの味、覚えてまさ。やかましくて愉快な島でしたからな」
島に満ちているのは、以前彼が訪れた際の明るくにぎやかな喧騒ではなく戦を前にした物々しい空気だ。
「記録は当機も確認しました。ユニークな文化様式をもつ島と認識しています」
「おう。あとで実地調査でも記録なんでもさせてやりゃあすよ。その前にまずは仕事っすわ」
物九郎は船上より港湾エリアを見下ろした。
突然の闖入者に、ドートゥンヴォリの市民たちがざわついている。――敵ではないかと、警戒しているのだ。
「な……なんやお前ら!」
「どこのモンや!」
フリントロック・レーザーピストルを手にしたヨシュモトの若手が、敵対心を露わにしながらワイルドハント号へと恐る恐る近寄ってゆく。
そして、物九郎は――
「モウカリマッカー」
なんでもないような顔をして、ドートゥンヴォリの人々へと呼びかけた。
「……ボチボチデンナー」
このやり取りは、スペースシップワールドのカン=サ・イー船団の文化圏に今でも残る、敵意がないことを示すアイサツだ。言葉を返したドートゥンヴォリの男たちは銃を降ろす。
「俺めは『ワイルドハント』のシロブチ・モノクロー……。お前さん達が困ってるのを見て、助太刀にきた……ってトコっすわ」
物九郎は名乗りを上げ、そしてワイルドハント号から港へと降り立つ。
「この島に来るのも初めてじゃァありゃあせんしニャ。……ってなワケで、この島を荒らさせたとあっちゃ王の名折れ。力を貸しやすよ」
「……ほんまか?」
「はい、ホンマです」
しゅ、ッ。物九郎に続くように、エルが港へと降り立った。
「当機の分析では、敵性艦隊とこの島の戦力比は33-4程度と推察可能です。このまま正面からぶつかれば、間違いなく敗北するでしょう」
「なッ……!」
『絶対に、負ける』――。エルの告げる残酷な事実に、ヨシュモトの若手たちが狼狽する。
「っつーことっすわ。俺めがお前さんたちに手を貸しやしょう。七大海嘯だかコショウだか知りやせんが、さっさとお帰り願おうじゃねーっすか」
しかし、そこで物九郎はぱちりと指を鳴らした。
その瞬間である。――駆動音。鋼と鉄がぎりぎりと音をたてた。ワイルドハント号を揺らして、船上――その甲板に積まれていた一機のキャバリアが動き出す。
「あれは……!」
「俺めのマシンでさ」
『ガオオォォン!』
――その存在を誇示し、喧伝するように。船上で吼えるマシンはM96式『ストームライダー』。ネコの似姿をした機体である。
否、しかしてその躯体は今やネコ型ではなかった。機体表面のカラーリングは物九郎の手によって今回はテクスチャを貼られ、カラーバリエーションを大きく変更しているのだ!
「と……虎や!!!」
そう――ストームライダーの躯体は、黄色と黒のストライプ模様。すなわち、虎柄となっていたのである!
ドートゥンヴォリの人々にとって、虎は彼らの信仰である繁神タイガスと深い関りをもつ聖獣とされている。であるが故に、ここに姿を見せた虎そのものであるストームライダーはドートゥンヴォリの人々の心を強く惹きつけたのだ。
「おお……っちゅーことは、あんさんらがここに来たのも、きっとタイガスの導きなんやな……」
「わかった!あんさんらの気持ちはよーくわかったで!これからよろしゅう頼んます!」
掌を返すように、一転して歓迎するムードへと空気が変わる。人々は次々に物九郎とエルへと握手を求め、そして次なる戦いへの協力を仰いだのだ。
「ほんで、そっちのベッピンさんは?」
「はい。当機は躯体番号L-95。エル・クーゴーと呼称されています。当機はスペースシップワールド系のテクノロジーの改修_及び_実運用に高い適性を発揮します」
「ほおー……」
「アア、あのへんの船はスペワ製らしいっすからな」
物九郎は港湾区域に浮かべられた戦闘艇の群れを仰ぎ見る。
「そいつなら、復旧作業でも調整でも役に立つはずでさ。……そいじゃァ、エル。オーダー。これよりこの港を、猟団の臨時拠点と定義する。んで、早速拠点防衛の仕事っすよ。きりきり働いてもらいやしょう」
「了解。タスクを受領しました。これより会敵まで、ワイルドハントの下準備を開始します」
そして、物九郎はエルへと命令を下した。受諾したエルはゴーグルに光を走らせる。
「現地協力者の皆さん。モウカリマッカー」
「ボチボチデンナー」
――まずはアイサツ。彼女はドール特有の無表情さで眉根一つ動かさず人々に応対していたが、決して冷たいわけではないのだ。コミュニケーションは作業を円滑にするということも彼女は把握している。エルはしっかりとアイサツによる親睦を交わし、作業へと移ってゆく。
「では、当機と共に作業を開始してください」
そしてエルはそのように言うや否や、すぐさま復旧作業の行われる戦闘艇の方へと向けて移動を開始した――更に、その最中でエルは電脳空間ストレージを開く。内部データスペースに格納された作業用機体【マネギ・カーペンターズ】を質量化し随伴させたのだ。自律的に駆動し、復旧作業のサポートを行うマネギたちは作業効率を大幅に高めるだろう。そうして彼女はドートゥンヴォリの人々を伴いながら、作業場へと向かってゆく。
「――こっちも虎やんか!」
「うおー!なんやアガってきよった!」
余談であるが――招聘されたマネギドローンは、これまた黄色と黒のストライプ。すなわち虎柄へとテクスチャの貼替えでカラーバリエーションの変更が施されていた。その姿に士気を向上させるヨシュモトの若手たちは、その能率を格段に高めながらエル指揮のもと作業に取り組んでゆくのだ。
かくして――ドートゥンヴォリ防衛のための戦いが、始まるのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
気炎を上げるのは大いに結構だけど。ノリと勢い程度でどうにかなる連中なら苦労ないのよねぇ…
個人から数人までならともかく、大人数に指示するとかあたしガラじゃないし。そういうのは得意な人に任せて、あたしは○情報収集にまわろうかしらねぇ。
えーと、ヨシュモト、だっけ?そこが作戦本部っぽいし、アンサズ(情報)とラド(伝達)を組み合わせた通信機モドキを設置。ミッドナイトレースで周辺海域と沿岸の地形調べて逐一情報共有しましょ。その辺のデータ揃えれば推定侵攻ルートや防衛陣地の策定も楽になるでしょ。
なんだかんだここともそこそこ縁出来ちゃったし。なんとか守り切らないとねぇ…
仇死原・アンナ
ここに訪れるのは何度目だろうか…
非常時だろうと相変わらずここは元気で騒がしい場所だね…
…七大海嘯から彼らを護る為にも…行こうか…
[怪力]を発揮して
大きい荷物や重厚な武装、防衛用の資材等を運ぶのを手伝おう
[礼儀作法と優しさ]を用いて
女性や子供達に接して彼らの不安を少しでも取り除こう
血気盛んな事はいいが…お前達は危うい…皆死ぬ事になるぞ…
生まれ育った故郷でそういう光景を何度も見たからな…
貴様らの今の姿を見れば繁神タイガスも草葉の陰で嘆くだろうな…
暴走気味のヨシュモトの男共を抑える為にも
若手の中で一番の力自慢の者と力比べで対決し
【巨人力】でねじ伏せ[おどろかし恐怖を与え]て
彼らを落ち着かせよう…
「やったるでぇ!」
「おう!いてこましたらあ!」
「特攻じゃ!」
――ドートゥンヴォリの繁華街は、今や蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
何しろ、数十年振り――否、一世紀振りの戦乱である。男たちは右往左往し、商店街の人々は熱気の中に危うさを感じ取り、怯えすら見せる者もいる。
「ここに訪れるのは何度目だろうか……」
「そうねぇ、すっかり常連になっちゃったような気がするわぁ」
そんな最中、ストリートへと訪れたのは仇死原・アンナ(f09978)とティオレンシア・シーディア(f04145)の2人である。
彼女たちがこのドートゥンヴォリを訪れるのは、これで3度目になる。一度目は、人々の知らぬ間にオブリビオンを屠る任務として。二度目は、夏休みの休暇として。そして今回は――再び、戦うために。
「非常時だろうと……相変わらずここは元気で騒がしい場所だね……」
「そうねぇ。……とはいえ、空気は随分違ってるみたいだけどぉ」
喧騒の中、戦時独特のひりつくような雰囲気をティオレンシアは気取る。
――勇敢さと無謀さと危うさが綯い交ぜになった、合戦の素人どもが戦場に出る直前の混沌とした空気だ。
「徹甲おろしに颯爽と!」
そこらからがなり立てるように響く徹甲おろしの歌声が、ドートゥンヴォリを満たす。
「気炎を上げるのは大いに結構だけど。ノリと勢い程度でどうにかなる連中なら苦労ないのよねぇ……」
その様子に苦笑いするティオレンシアが、肩を竦めてみせる。
「なんだかんだここともそこそこ縁出来ちゃったし。なんとか守り切らないとねぇ……」
「ああ……彼らを護るためにも……まずは、作戦本部に行こうか……」
「えーと、ヨシュモト……だっけ?」
人の流れをかき分けながら、2人はドートゥンヴォリ義勇軍の指揮を執る自警的組織・ヨシュモト興業を目指す。
そうして。
「ごめんくださぁい」
「……邪魔する」
2人は、扉を叩いた。
ヨシュモト興業はドートゥンヴォリの中央区画に本部を構える、島でも最大の自警団的組織である。
猟兵の協力が得られる、という情報は既に彼らも掴んでいるところだ。
「いやぁ、遠いとこよう来なはりましたなあ」
――そこで彼女たちを出迎えたのは、サマンアカシャというヨシュモトでも古株の老戦士であった。
サマンアカシャは応接室へと2人を案内し、話しはじめる。
「あんさんらみたいなお人が手ぇ貸してくれはるならホンマ助かりますわ。こら皆喜ぶで」
「えぇ、もちろんこっちも手は尽くさせてもらうわぁ。……けど、ねぇ?」
ティオレンシアはここで一旦意味ありげに言葉を切り、アンナと横目で視線を交わす。
「……その『ねぇ』、っちゅーはどないな意味の『ねぇ』なんです」
「……不安だ、という意味だ」
怪訝な顔をするサマンアカシャに、アンナがすかさず答える。
「外の様子を見て来た……。お前の部下たち……血気盛んな事はいいが……危うい」
「……さいですか」
サマンアカシャは神妙な顔で眉根に皺を寄せる。
「ええ。はっきり言って『浮足立ってる』わねぇ」
「うん……。このままなら、皆死ぬ事になるぞ……」
「……」
短い沈黙が、室内を重苦しく包む。
「生まれ育った故郷でそういう光景を何度も見たからな……」
「……」
「彼らの今の姿を見れば……繁神タイガスも草葉の陰で嘆くだろう……」
「……おっしゃる通りでしょうなあ」
サマンアカシャが頷いた。
「俺もそう思っとります。若い衆はみんな血気に逸り過ぎとる。そりゃあ今まで経験したこともあらへん島の一大事や」
「それじゃ、どうするのぉ?」
「――いやぁ、ここはやっぱりあんさんらの指揮下に入れてもらうんが一番とちゃいますか」
そして、こともなげに言ってみせる。
「ま、言うてもいきなり傘下に入れ言うても若い衆は納得せんでしょう。ここは――」
「……言いたいことはわかった」
サマンアカシャを遮って、アンナが頷いた。
「私が若手の奴らのところに行って……力比べか何かで認めさせてこよう」
「話が早くて助かりますわ」
「うーん……指揮下ねぇ。そっちはあたしガラじゃないし、そういうのは任せるわよぉ」
その一方、ティオレンシアは軽くかぶりを振り、胸元のポケットから輝石をひとつ引き出した。指先にマナを込め、《アンサズ/知識・メッセージ・情報》と《ラド/旅・伝達・コミュニケーション》のルーンを描く。それは即席の術的通信機であった。
「こっちは情報収集にまわらせてもらうわぁ。データ揃えれば、敵の進行ルートの推定だとか、防衛陣地の策定だとか……そういうの、楽になるでしょ」
「ほおー!なんや、さすが色々できるんやなあ!」
「話は決まったな……なら、行こうか。私は若手の奴らのところに」
「あたしはひとっ走りドライブに、ってところかしらねぇ」
かくして3人は顔を見合わせて頷きあった。
――アンナの行き先は港湾区域だ。ヨシュモトの若手たちを抑えなくてはならない。
ティオレンシアは、愛機ミッドナイトレースを駆って沿岸部の偵察へ。
「頼りにしてますで、ホンマ!」
そしてサマンアカシャは出発する2人を送り出す。
ドートゥンヴォリを護るため、それぞれの戦いが始まるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミスト・ペルメオス
【POW】
今回は危機的状況への対処ですか。
無論、鎧装騎兵として出来る限り協力しますッ。
愛機たる機械鎧と共にドートンヴォリに降り立つ。
とはいえ愛機の出番はまだ先の事。まずは島の防衛態勢の構築に協力する。
――成る程、かつての時代の遺産。
港湾区画にて、古代兵器と化している戦闘艇群の復旧作業に手を貸す。
色々と勝手は違うものの、島の人達よりは多少は馴染みがあると言えるだろう。
情報収集・解析しつつ整備を手伝っていけばある程度は役立てるはず。たぶん。
最悪の場合は火器や装甲だけでも修復して防御陣地に転用するなり、大型の船にポン付けしてしまえばいい。
使えるものは何でも使え、でしょう?
※他の方との共闘等、歓迎です
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
(SPD)
ここの人たちにはお世話になったしね
海賊として恩返しさせてもらうよ!
ウィーリィくんと一緒に島の人たちに海賊流の『ずるい』戦い方を教え、戦力差を覆せるようにする
「ただ普通に殴るより、相手の鼻をあかしてからの方がスカッとするでしょ?」
【罠使い】で彼らの技術力で作れるトラップの作り方を教えたり(火薬があれば爆雷を仕掛けたり、浅瀬に誘い込んで立ち往生させたり)、伏兵による奇襲からの【ロープワーク】+【船上戦】で敵船を制圧して自分たちの戦力にしたり
あとは彼らの持ってるSSW時代の装備のメンテや使い方のレクチャーもね
【スナイパー】や【制圧射撃】、【乱れ撃ち】などボクの技術を教え込む
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
(SPD)
前に色々と美味いものをご馳走になったからな。お礼はさせてもらうぜ!
島周辺の地形(潮の流れや岩礁の位置)を把握し、それらを地図に書き込みながらシャーリーや島のみんなと打ち合わせて【地形の利用】でそれらを活かした戦術やトラップを考案。
「この島はあんた達が生まれ育った場所なんだろ? だったらきっとこの島もあんた達に味方してくれるぜ!」
とみんなを【鼓舞】しながら真っ向からの力押しじゃない戦い方へとシフトさせていく。
「戦の前の宴会では俺も【料理】の腕を振るわせてもらうからさ。楽しみにしてなよ!」
誰一人、犠牲を出さずに勝利する。
それが今回の目標だ。
「お二人もいらしていたんですね」
「あんたは……」
ミスト・ペルメオス(f05377)はウィーリィ・チゥシャン(f04298)とシャーリー・ネィド(f02673)の二人へと挨拶する。
ミストと彼らは特別面識があったというわけではないが――なにがしかの縁があるのか、時折同じ現場に居合わせることがあるのだ。
特に、前回・前々回とグリモア猟兵がここドートゥンヴォリにかかわる案件の際にも、この場の三人は全員がかかわっていたのである。
「あっ、もしかしてあの黒い鎧装騎兵の人!」
パイロットスーツを見遣ってシャーリーが声をあげた。
ミストと同郷であるシャーリーは、戦場を駆ける鎧装ブラックバードの躯体に故郷スペースシップワールドを思い起こし、すれ違い程度に見かけたその姿を記憶していたのだ。
「はい。ミスト・ペルメオスです」
「そういうことか。ってことは、今回も縁があったってことだな。よろしく頼むぜ」
「ええ。今回の任務は危機的状況への対処……無論、私も鎧装騎兵として出来る限り島の方々に協力していくつもりです」
「うん、ボクたちもここの人たちにはお世話になったしね!」
「前に色々と美味いものをご馳走になったからな」
「私も前回の祭りのときにここの郷土料理を頂きました」
「ああ、俺たちもそうさ。その分、お礼はさせてもらうぜ!」
「ボクも海賊として恩返しさせてもらうよ!」
3人は言葉を交わし合いながら、あらためてこの島を護るための決意を固める。
「私はこのまま港湾区画の方に向かう予定です」
ミストは普段からブラックバードという鎧装や手にした火器のメンテナンス作業を行う必要性から、特に武器の調整作業を得手としている。
彼はこれから港湾区画へと赴き、戦闘艇群の復旧作業に挑むヨシュモト興業の若手たちに協力するつもりなのだ。
「俺達もそっちに行く予定なんだよ」
「うん。無鉄砲に突っ込んでくだけが戦い方じゃないからね。海賊流のやり方を伝えようと思って」
一方、ウィーリィとシャーリーは島の人々に戦い方を伝授する心算であった。――何よりも大事なのは、島の人々から誰一人犠牲を出さないことだ。
「たしかに戦術は重要ですね……」
ミストは頷いた。――たとえ彼の助力で兵装を万全にできたとしても、それを扱う人々の技術が追いつかなければ宝の持ち腐れとなるだろう。
「お二人がそうしてくださるなら、こちらも復旧作業に集中できます」
「よし。それならうまく分担していけそうだな」
「よーし、それじゃあ気合入れていこー!」
拳を突き上げながら、シャーリーが声をあげる。――かくして、3人は港湾区画へと向かうのであった。
「――成る程、かつての時代の遺産」
「どないや?」
「いけそか?」
「はい。だいぶ古い型ですし、色々と勝手は違いますが……いけそうです」
ミストは港湾区域で兵器の復旧作業に励む島の人々たちの中に入り、火砲の整備作業を行っていた。
7.28ミリコスモガトリング砲は名前の通り7.28ミリ徹甲弾を使用する火砲だ。元々スペースシップワールドの兵器であり、宙間戦闘を念頭に作り出された兵器であるが、グリードオーシャンへと渡った際に調整が施されていたのであろう。ミストの見立てでは、重力下での使用にも十分耐えうるように見えた。
続けてミストはそれぞれの戦闘艇に搭載されたスペースカルバリン砲の状態も買う人してゆく。これもまたコスモガトリング砲と同様の状態である。
どちらの兵装も、大きな欠陥や致命的な故障は見られなかった。構造が比較的シンプルであることも手伝って、これであればミストの知識と技術でもっても復旧作業は不可能ではないだろう。
「構造的には破損は見受けられません。あとは内部の駆動系に積もった塵や埃を除去して……砲身内の清掃も必要でしょう。錆取りもいりますね。作業を進めておいてください。私は弾薬の状態を確認してきます」
「あいよぉ!」
「それから、戦闘艇自体の稼働状況も見せてください。動きのいいものとそうでないものを分けて、調子の悪いものは無理に使わず火器や装甲だけでも修復して防御陣地に転用するなり、他の船に部品を流用するなりしていきましょう。――使えるものは何でも使え、でしょう?」
――かくして、ミストの作業は続く。
「――よーし、それじゃ皆、あらためて海図は確認できたよな!」
一方、ウィーリィとシャーリーの2人は島の男衆を相手に戦い方の指南を行っていた。
「あたりきよォ!」
「この島はあんた達が生まれ育った場所だ。きっとこの島もあんた達に味方してくれるぜ!」
「うんうん。戦いっていうのはね、正面からとつげきー!ってするだけじゃないんだよ」
ウィーリィは壁に広げた島の周辺の海図の前で、戦術案を人々へと説明する。
「せやかて、ワイらやて戦えへんわけちゃうで!」
しかし――血気に逸る一部の人々は、感情任せに正面から敵にぶつかりに行くことを主張した。
「うーん……それもいいんだけどさ。でも、作戦を立ててくこともすっごく大事なんだよ?」
諭すように、男へとシャーリーが語り掛けた。
「それにさ――ただ普通に殴ったりするより、相手の鼻をあかしてからの方がスカッとするでしょ?」
「そうそう。出し抜いてやるんだよ、あいつらをさ!」
――正面からの激突は、猟兵たちが手を貸すにしても分が悪い。2人は無謀な特攻を抑えるため、戦略的な戦い方をするように仕向けてゆく。
「ボクたちも手伝うからさ。そうだね……罠を仕掛けるとか、相手の大きい船が座礁しちゃうような岩礁や浅瀬に誘い込むとか!伏兵を仕掛けて奇襲するとか……できることはたくさんあるよ!」
「もちろん、みんながやる気十分ってのはわかってる!けど、そこに更にしっかりと戦略をたてていけば、もっと力を発揮できるってことなんだ。俺達と一緒に、完全勝利を目指そうぜ!」
「……せやなぁ、たしかにアホみたいにまっすぐ行くっちゅうんも芸がないもんなぁ」
「ウチも賛成や。ここは坊ちゃん嬢ちゃんたちのカオを立てたろやないかい」
そして、2人の真摯な訴えに、島の人々も次第に考えを改め始めた。――ドートゥンヴォリの人々は、基本的に義理と人情に厚い性質だ。真剣に挑めば、同じように真摯に受け止めてくれるのもまた当然なのである。
「ほんなら、坊ちゃんたちのアタマ借りるとしよか」
「しゃあないなあ、タマ預けたるわ」
「ああ、任せてくれ!……準備が終わったら、壮行会……っていうか、宴会やろうぜ。俺も料理の腕を振るわせてもらうからさ、楽しみにしてなよ!」
人々の間から歓声が上がった。
――そして、ウィーリィたちはあたらめて島周辺の海図に向き合いながら取るべき戦術の検討を続けるのである。
「ウィーリィくん、ボク、向こうの様子も見てくるよ」
「ああ、頼んだぜ!」
その一方でシャーリーは戦闘艇と兵装の整備状況の確認にも向かう。スペースシップワールド出身の彼女は、ミストと同じくこの島に遺された装備にもある程度の馴染みがあるのだ。実戦経験も豊富であり、試射や演習にも手を貸すことができるだろう。
戦いへの備えは、着々と進んでゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
花月・グランドナンバー
サルファ・トクスホリック(CANDYMAN・f21766)と一緒
地元が!エラいことに!なっとるやんけ!
うーん男衆が浮き足立っとるし先ずは演説や。
サルファの兄ちゃん侍らせて登って大声で演説したるで!
おうおうおっちゃんども!
ウチは生まれも育ちもドートゥンヴォリの花月・グランドナンバーや。
卑怯もんの巨人軍が来たからってわーきゃー騒ぎ過ぎや!見てみぃお姉さんに奥さんに子供ら怖がっとるちゃうんかい。もし巨人軍のせいで誰か帰って来いひんかったらもっと泣くんちゃうんかい。
ええか
ウチらやこのべっこう飴の化け物の兄ちゃん猟兵達が正面の戦闘はこなす。せやから後ろでどっしり構えとるんやでおっちゃん達。
サルファ・トクスホリック
花月(f27064)のちんちくりんと一緒
うわァお前の故郷お前と同じでやッッかましィのな……
で 偶々鉢合わせて付いてきたはいいけどよォ何すンのこれ?
うわァ血筋だわ 間違いなくここの生まれじゃん……虎の子は虎だわ……
誰がべっこう飴のバケモンだちんちくりん 飴に漬けるぞ
……はァ まーーーーーいいや乗りかかった船だ おいオメェ後で甘いモン奢れよ たらふくな。
……なんかしらねェけど訓練だのすンだろ
"CANDYMAN"で相手してやらァ
物理耐性あげりゃまーー丁度いいサンドバッグになンじゃね?
ほれにっくき巨人のナンチャラだと思ってバット振れよ
スイング甘かったらシバいてやっからな そォいう甘さは要らねェんだわ
「地元が!エラいことに!なっとるやんけ!」
花月・グランドナンバー(f27064)は、ドートゥンヴォリの往来で思わず声に出してしまった。
「なんやなんや」
「……オッ、誰かと思たらカゲツちゃんやんか!」
「あらぁ、ひさしぶりやねぇ。アメちゃん食べる?」
「アーッ、ウーメダのおっちゃん!サイヴァシーのおっちゃんにコーヴェおばちゃん!ありがとな、でもいまそういう状況ちゃうねんやろ!」
――花月はドートゥンヴォリ出身の猟兵である。今でこそ彼女は猟兵として様々な場所に出入りしているが、本来はこの島が彼女の生きる場所だったのである。
ということはつまり、彼女の顔見知りも多いのだ。花月の姿を見つけた知り合いが次々に彼女に声をかけてゆく。
「うわァ、お前の故郷、お前と同じでやッッかましィのな……」
そして――その様子を何歩ぶんか引いたところからヒき気味に眺めていたのが、サルファ・トクスホリック(f21766)である。
「ゴメンなおっちゃん!いまウチ忙しいねん!あー、おばちゃんあとでな!え、このべっこう飴オバケ?カレシちゃうよ。んなわけあらへん――うっわ!」
「……なァ、ちんちくりん。偶々鉢合わせて付いてきたはいいけどよォ何すンのこれ?」
人並みの中から手を引いて、サルファは引っこ抜くように花月を引っ張り出す。
ここであらためて、サルファはドートゥンヴォリの風景を俯瞰した。
ドートゥンヴォリのメインストリートは、左右に商店が並んでアーケード街を形成している構造になる。
商店の間には万国旗めいて紐が渡され、そこからは黄色と黒のストライプ模様を描いた旗が無数に垂れ下がっている。――黄色と黒のストライプ模様は、この島の信仰として祀られている繁神(はんしん)タイガスのシンボルである。かつて星の海にあったこの島がこの世界に落ちて間もないころの混乱期に、人々をまとめ上げたタイガスは偉大な指導者として没後この島の守護者として祀られているのである。
「うわァ」
サルファはその情景にあからさまに嫌な顔をした。眉根にしわがきゅっと寄る。
「血筋だわ。こいつ間違いなくここの生まれじゃん……虎の子は虎だわ……」
「なんや、なんか文句あるんか!」
「いや――っつーかそれはいいだろ。さっさとやることやっちまえよ。どうにかすんだろ、ここを」
「ん……せやな」
花月は静かに息を吸った。
――見渡す故郷の風景は、彼女が見慣れた雰囲気とはまるで違ってしまっている。
祭りの前日のような、慌ただしくも熱を帯びた空気でありつつ――それでいて、肌を刺すようなびりびりとした緊張感と、剣呑さが満ちていた。
そこらじゅうから聞こえる男たちが徹甲おろしをがなりたてる声も、どこか虚ろだ。
「なにが巨人どもや!」
「皆殺しにしたるわ!」
「へへ、腕が鳴るのう……いてこましたるでコラ!」
そして何よりも、人々の間で交わされる言葉の危うさを、花月は感じ取っていた。
――あからさまに浮き足立っている。
「サルファの兄ちゃん、ちょっとこっち来てや」
「なんだよ、どこに連れてくって――」
「ええから!」
花月はサルファの腕を掴んで、往来の中心まで引きずっていく。
「よっこいしょ、っと!」
「おあッ!いきなり何だ!」
「ええからじっとしとき!」
そして、ぐいとよじ登った。
「……なんや?」
「大道芸かいな?」
身長230cmの長身を台がわりにして、花月はサルファの肩を足場に立った。往来の何人かが、その姿に目を向ける。
「おい、ちんちくりん――」
そして。
「――おうおうおっちゃんども!!おのれら何やっとんねん!!」
花月は、叫んだ。
「なんや!?」
「ウチは生まれも育ちもドートゥンヴォリの花月・グランドナンバーや!」
「なんや、花月ちゃん何やっとんの!」
「やめとき!」
轟く声に驚いた人々の中から、彼女を知る者たちが制止の声をあげる。
「ごめんな、おっちゃん、おばちゃん。でもウチ、言わなあかんねん!」
しかし、それを振り切って花月は言葉を続ける。
その双眸は浮き足立つ男たちへと鋭く向けられる。
「おっちゃんら、卑怯もんの巨人軍が来たからってわーきゃー騒ぎ過ぎや!ガキの喧嘩とちゃうねんで!!」
「なんやと!」
「あー……まァまァ、抑えて」
食ってかかろうとした男をサルファが抑えた。花月は更に演説を続ける。
「だいたい、おっちゃんらがそんなんでどないすんねん!いっぺん後ろ振り返って見てみぃや!」
「後ろ……?」
花月の言葉に、男たちが振り向いた。
そこは小さなブラックホール焼き(島で産出される小麦粉と近海で漁れる魚介を具材に、イカ墨で黒く色付けした生地を円盤状に焼き上げるコナモンと呼ばれる焼き料理の一種)の店舗である。ここは孤児の少年少女たちが食い扶持を稼ぐために毎日懸命に働く店であった。普段であれば子供たちの元気な呼び込みと笑顔が道行く人々を迎え入れる、ドートゥンヴォリの名物のひとつだ。
しかし、戦いを前に浮き足立つ男たちへと店番の少女が向ける視線は――明らかに、恐怖の感情を色濃く映していた。
そして、その隣の洗濯屋の奥さんも。飲み屋の看板娘も。食料品店のおねえさんも。
皆一様に、不安と怯えを含んだ瞳で男たちを見ていた。
「わかるやろ。お姉さんに奥さんに子供ら。みーんな怖がっとるちゃうんかい」
「う、っ……」
花月の指摘に男たちの気勢が削がれる。
「おっちゃんら、そんなんで戦い行ったら勝てる試合も勝てへんで。そんで、もし巨人軍のせいで誰か帰って来いひんかったら……みんな、もっと泣くんちゃうんかい」
気づけばストリートは水を打ったように静まり返っていた。
花月の言葉を聞いた人々が、我に返ったのだ。
「……けど、安心し!ウチと、このべっこう飴オバケの兄ちゃん達……猟兵が手ぇ貸したる!」
「誰がべっこう飴のバケモンだちんちくりん。飴に漬けるぞ」
「ええから!ここはノっとき!」
「……はァ」
サルファが眉間に深くしわを寄せ、ため息をついた。
「まーーーーー……いいや。乗りかかった船だ。おいオメェ、後で甘いモン奢れよ。たらふくな」
「ええで。せやなあ、じゃあリクロージさんとこのケーキでどうやろ」
「なんだそりゃ。まーいい。それで手ぇ打ってやる」
「……っちゅーワケや!最前線はウチら猟兵に任せて、おっちゃんたちは後ろでどっしり構えてくれたってや」
「……ほんまか」
「勝てるんか、あんさんら」
男たちが恐る恐る尋ねる。その声に、にやと笑った花月と変わらぬ仏頂面のサルファは、異口同音に口を揃えて「勝てる」と言った。
「……ンじゃ、納得した奴らはついてきな」
そしてサルファは花月を下ろし、のそのそと歩き出した。
「なんや、どこ行くねん」
「……なんかしらねェけど、訓練だのすンだろ」
サルファは指先を融かし、彼本来の“毒飴人間”としての姿を僅かに曝け出す。
「まーー丁度いいサンドバッグになンじゃね?おう。おっさんら、武器持ってついて来な。ちんちくりん。お前もぼーっとしてんじゃねえ。行くぞ」
「お、おう……」
「にっくき巨人のナンチャラだと思ってバット振れよ。スイング甘かったらシバいてやっからな。そォいう甘さは要らねェんだわ」
「よ、よろしゅうたのんます、コーチ」
男たちが頭を下げた。そうして、サルファに続いてぞろぞろと歩き始めてゆく。
「コーチだぁ?」
「あっははは!ええやんコーチ!そんじゃ、ウチはジャーマネやったるわ。ほな行こか!」
かくして、2人は戦いに臨むドートゥンヴォリの男たちを伴って動き出す。
「ありがとな、花月ちゃん」
その後ろ姿を、ストリートの人々が見送っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
喧嘩と祭りは海賊の華!!
この大海賊が来たからには大船に、いえ川に飛び込むつもりでいてください!
こういう元気で喧しい方々は好感が持てます
七大海嘯の部下が相手ならばやる気は十分ですが、この人たちをしっかりと助けたいですね
というわけで、とりあえず海戦中にやられたりしないようにいろいろ訓練をしてあげましょう
安心してください。36の海を駆ける大海賊。人の上に立つ者として訓練など朝飯前です
とりあえず航海術、海戦の心得、後は船上戦のコツなども教えておきましょう
ついでに、類まれなるコミュ力、礼儀作法で取り入って、宴会でもして団結力を上げましょう
敵を前にしてる今だからこそ、宴会をするんです!!!
羽月・姫香
…なんや親近感、とは違うような…そもそもウチ浪速やなくて丹波で育ったし!
まぁええわ、折角やしウチも一肌脱ごかっ☆
とりあえずは島の周囲の【情報収集】と【偵察】や。どこに何があって、敵がどんな進路を取るか知っておけば、戦う時に【地形の利用】もしやすいしなっ
そして「巨人軍」が通りそうな経路に【忍七つ道具】から爆弾を選択して【物を隠す、罠使い】で設置しとこか☆
さて、あらかた調べて罠も仕掛けたし…って、なんやろこれ?
海の中におじいさんの石像沈んでへん?
え? 昔無くなったはずの御神体? めっちゃフジツボとかついてるけど、そのまま引き上げて拝むん!?
やっぱりここの人たちって、よぉ分からんわ…
――ドートゥンヴォリ。港湾区域にて。
そこに集まった男たちは、修復作業を終えた火砲の試射や、白兵戦に備えた訓練を行っている真っ只中であった。
威勢よく響き渡る男たちの声。歌い上げるのはかつて島の繁栄のために尽くした英雄・繁神タイガスの勇猛さを湛える徹甲おろし。ギャリギャリギャリと音を鳴らし、コスモガトリング砲が7.28ミリ徹甲弾を撃ちだす音が高らかに鳴り渡る。
「やったるでえ!」
「巨人軍(ジャイアンツ)の連中に目にもの見せたら!」
「うん。いいですね。こういう元気で喧しい方々は好感がもてます」
「せやなあ、こういう空気はウチも親しみがあるっちゅーか、なんや親近感……とは違うような気はするんやけど」
そして、そこに訪れたのはシノギ・リンダリンダリンダ(f03214)と羽月・姫香(f18571)である。
2人はともに猟団ワイルドハントに所属する縁をもつ猟兵たちである。たまたまばったりいきあったが故に、なし崩し的にその場で合流の流れとなったのだ。
「で、おシノギちゃんはどないする?」
「もちろん決まっています。姫香様、いま私たちのすべきことは非常にわかりやすく、シンプルです」
「……とゆーと?」
「彼らが海戦中にやられたりしないようにいろいろ訓練をしてあげましょう。七大海嘯の部下が相手ならば私もやる気は十分ですが……この人たちをしっかりと助けたいですね」
「せやね」
「というわけで、今から出航ですよ。船をお借りしましょう」
「話が早いな!?ま、まぁええわ。せやな、ここは折角やしウチも一肌脱ごかっ☆」
2人は素早く行動指針をまとめた。
まずは、戦い慣れしていないドートゥンヴォリの人々に戦闘訓練を施すことを優先とする。海戦となる以上、そこでは単純な戦闘のみならず操船技術や航海術、砲雷撃戦――すなわち海戦の心得に、戦場白兵戦のコツなど、様々な技能が必要とされるのだ。
「というわけで参りましょう――さあ、演習の時間ですよ!」
ばさ、ッ――。シノギは羽織った海賊ジャケットを翻しながら、ドートゥンヴォリの男たちの前へと堂々進み出る!
「なんや!?」
「この姉ちゃんも猟兵なんか!?」
「ええ。そして私は猟兵でありながらも海賊でもあります。――そう。喧嘩と祭りは海賊の華!!この大海賊が来たからには大船に、いえ川に飛び込むつもりでいてください!」
カッ――!強烈な勢いで男たちをたじろがせるシノギは、有無を言わさず続けざまに指示を下し、復旧作業の終わった戦闘艇に乗船するよう差し向ける。
「だ、大丈夫なんか……?」
「安心してください。36の海を駆ける大海賊。人の上に立つ者として訓練など朝飯前です」
シノギが勢いのままに男たちを押し切った。アイアイ・マムと返事が返る。
「おおー……さすがの貫禄やな。大海賊なんちゅう名乗りしとるだけのことはあるわ」
姫香はその様子を一歩引いたところから眺めつつ、置いてかれないように急いで戦闘艇に乗り込んだ。
「では、出航します。姫香様、私は主に戦闘訓練を担当いたしますので、そちらは別のアプローチをしてください」
「合点承知や。とりあえずは、周りの海域の情報収集とー……偵察やな。あらためて地形の確認と、それから敵の進路の予想も立てたらなあかんし。……あー、せや。罠の仕掛けもやっときたいなあ!」
「そのあたりは委細お任せしましょう。……さて、操舵手はどなたが担当されますか」
「あ、じゃあ俺がやります……漁でいつも船は扱っとるんで」
「承知しました。では砲撃手にはどなたが――」
そして、船上のシノギはてきぱきと男たちへ指示を飛ばし、それぞれのポジションを割り振ってゆく。大海賊の名を自負するだけあり、こうした指揮は彼女の得意分野なのだ。シノギの指導のもと、男たちは船を動かし、そして海戦の技術を磨いてゆく。
「そんじゃ、こっちのおじさんはウチと一緒にこのへんの水域見てこか」
「押忍!」
一方、姫香は集めた十数人の男たちを指揮下に置き、島周辺の海図を開きながら周囲の風景と見比べる。
「……ははあん、なるほどなあ」
ドートゥンヴォリ周囲の海は、比較的穏やかで荒れることの少ない海域だ。そこから得られる海の恵みも多い。しかしその一方で、島のやや西側に位置する海域――アーハリマ灘と呼ばれる領域は水面下に形成された岩礁の影響で潮流の速い個所が存在する。
「おじさん、こーいう岩礁とか、あと流れのはやいトコとかって他にどんくらいあるん?」
「せやなあ。このへん中心の西側一帯がそうや。でっかい船でいくにはちとしんどい海やで。巨人どもが来るんやったら船進めやすい東か南からとちゃうんかな」
「なるほどなあ」
姫香は周辺の海域をよく知る漁師たちを中心に、情報を集めて整理してゆく。
「……それじゃ、なんとなくやけど進路の予測はできそうやね」
そして、姫香は文字通りに一肌脱いだ。水中での活動に適した衣装――すなわち水着の姿である。
「よし、もののついでや。おじさんら、ちょいっと待ったっとってな。ウチ、罠仕掛けてくるわ」
だいたいであったが、敵の艦隊の進路の予測がついてきたのである。であるが故に、彼女は先手を打って罠を張ることで、今後の戦いの優位性を確保する心算であった。
「おう、気をつけてな。猟兵のひとなら心配いらん思うけど、このへんはネルサンダスも出るんや」
「ネルサンダス?」
――ネルサンダスとは、ドートゥンヴォリ周辺に生息する巨大魚である。白くふっくらとしたユーモラスな見た目からは想像もつかないほどに攻撃的で危険な魚であるが、鶏肉に似た食感を持つ肉質は脂がのっており美味。フライにすると絶品の魚なのだ。しかして、ドートゥンヴォリにおいてはこのネルサンダスを水揚げした繁神タイガスが体調に不調をきたし、暗黒期に入ったという記録があることから“ネルサンダスの呪い”なる不吉なジンクスを持つ怪魚としても恐れられている。
「はー……そんな魚もおるんやなあ。けど、ウチなら心配いらんで。それじゃちょいっと行ってくるな!」
そして、姫香は飛び込んだ。
数時間後のことである。
「――それでは皆様、お手を拝借」
「『“大佐”の像』の帰還に!」
「繁神タイガスに!」
「我々の勝利を願って!」
海戦の訓練を終えた2人とドートゥンヴォリの男たちは、港湾区画でその手で杯を掲げていた。
戦いの前に宴会を開くことで、人々の団結力と士気を高めて戦力の底上げを図る、というのはシノギの弁である。
「こ、こんなんやっとる場合なんかな……」
「いいえ、むしろ今なのです。敵を前にしてる今だからこそ、宴会をするんです!!!」
困惑する姫香を、シノギが押し切った。
「さあ、いきますよ皆様――乾杯!」
「乾杯!」
男たちの歓声が響き渡る。そして、壮行会めいた宴会がここに開かれたのだ。
「……まあ、めでたいっちゃめでたいんやろけど」
成人を迎えて間もない姫香は、まだ飲み慣れない酒を舐めるようにやりながら眉根に皺を寄せる。
彼女の仰いだ先には、白い老人の像が立っていた。
――それは、失われたと言われていた『“大佐(カーネル)”の像』である。タイガスの活躍以前――このドートゥンヴォリがスペースシップワールドを航行していた頃には既に存在していたという記録が残る、かつての偉人の像なのだという。事故によってドートゥンヴォリの海に沈んだとされており、一説にはこの“大佐”が姿を変えたのが大怪魚ネルサンダスなのだとも伝えられていた。
「めっちゃフジツボとかついてんけど……」
像を見つけたのは姫香であった。敵の航路を予測つつ、水中に罠を仕掛けている最中に彼女はこの像を発見したのだ。ドートゥンヴォリの歴史に残る発見になるとちょっとした騒ぎになり、シノギの提案もあって祝い酒が振舞われることとなった結果が――現在の状況である。今開催されているのは、この歴史的発見の祝いと壮行会をまとめて執り行う宴会なのだ。
杯の酒を飲み干した男が像の前にやってきて、ぱちぱちと柏手を打って頭を下げた。
「やっぱりここの人たちってよぉわからんわ……」
「そうでもありませんよ。……愛郷心溢れる人々にとっては、故郷の歴史もまたお宝だということなのでしょう」
いつのまにか姫香の横にやってきていたシノギが、“大佐”の像を仰ぐ。
「そして同様に島の暮らしそのものもお宝です。あの程度の海賊などに奪わせるわけにはいきません」
――そして、シノギは鋭く沖へと視線を遣った。
そこに集結しつつあるオブリビオンの大艦隊は、島の包囲を固めつつあったのである。物々しい雰囲気に、猟兵たちは戦いが近づいてきていることをその肌で敏感に感じ取っていた。
「せやな……みんなで力あわせて、しっかり守り抜こな!」
かくして、猟兵たちと島の人々は決意を新たにしつつ、戦いへの備えを盤石なものにしてゆくのである。
戦端が開かれるその時は、もう間近にまで迫ってきていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クロエ・イレヴンス
ドートゥンヴォリの危機やて!?この夏めっけたおばちゃんの第二の故郷やないか!!
おばちゃんもこのセクシーボディで一肌脱いで助けに行くで!!待っててやー!
メテオ焼きとビールの思い出、忘れとらへんで!!
ネルサンダスのフリット食べるまでは諦めへんからな!!中年女の食欲なめたら痛い目見るで!!
ドートゥンヴォリのみんなー!おばちゃんが来たでー!!
そんじゃ、ワテは念動力でバリケード作るお手伝いしましょ
そんでもって、いらん瓦礫や漂着物を巻き込んだクライシスゾーンで巨人軍を阻害するバリアーを作るで!!
繁神タイガスの加護ぞあれー!!
みんなー!おばちゃんのために徹甲おろし歌ってくれへんか!バリアーを持たせるために!
「聞いたでぇ!ドートゥンヴォリの危機やって!」
クロエ・イレヴンス(f24879)は騒々しくドートゥンヴォリの地へと上陸した。
「この夏めっけたおばちゃんの第二の故郷……おばちゃんがいまこのセクシーボディで一肌脱いで助けに行くで!!待っててやー!」
クロエは前脚を振り上げながらどたばたと足音を立てて駆けこんでゆく。
今、彼女の記憶の中にうかぶのは今年の夏に訪れた祭りの際に味わったメテオ焼きとビールの味の思い出だ。
――それから、美味と噂のネルサンダスもまだ彼女は口にできていない。
「ネルサンダスのフリット食べるまでは諦めへんからな!!中年女の食欲なめたら痛い目見るで!!」
そして港湾区域に入ったクロエは、そこで島の防衛のために作業を進めるドートゥンヴォリの人々のもとへとたどり着く――
「ドートゥンヴォリのみんなー!おばちゃんが来たでー!!」
「なんや!?」
「なんやこの変な生き物!!」
そして、駆けこんできた見知らぬ生き物に男たちが困惑した。
閑話休題。
「そんじゃ、ワテはバリケード作るお手伝いしましょ」
「おう、助かるわ!」
「へんないきもののおばちゃん、よろしゅう頼むで!」
「まかしときー!」
持ち前のコミュ力と押しの強さ、そしてドートゥンヴォリ人に通じるノリでたちまち人々の輪に入ったクロエは防御陣地の構築作業に手を貸すこととなったのである。
「ぬぬぬぬ……といやッ!」
念動集中――サイキックの力が周辺の瓦礫や漂着物、あるいは水底に沈む鉄屑などへと浸透し、それを操作する。
「おお!」
「やるやんけ、あのおばちゃん!」
「ようわからんけど!」
「ええやろ!もっと応援してな!」
「よっしゃーっ!繁神タイガスの加護ぞあれ!」
かくして広がるクロエの念動力は周辺の海域へと伝わり、様々な物体を巻き込みながらバリケードを構築してゆく。念動防壁を重ねた不可視の壁が島の周囲を包むように展開されたのだ。
完成する念動障壁は強固なものとなり、効果的に敵の進路を阻むだろう。
「よおし、気分上がってきたで!みんなー!おばちゃんのために徹甲おろし歌ってくれへんか!」
「おおーっ!」
「徹甲おろしに颯爽と!」
「蒼海わたる日輪の!」
クロエの号令に倣うように、ドートゥンヴォリの男たちが声を合わせて唱和する。
徹甲おろしとは、かつて島を繁栄に導いた英雄タイガスのその活躍を称えて作られたと言われる歌である。地元の誇りとしてドートゥンヴォリの人々の間でも景気づけに唱和されることの多い曲だ。応援歌として歌われることも少なくない。
高まる熱気に気分を上げていきながら、クロエは更に念動出力を高めた。
――かくして時間は過ぎゆき、そして戦いのときは間近まで迫りつつあった。
島の周囲に展開するオブリビオン旗下の大艦隊は、間もなく行動を開始する。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』』
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POW : 誇りの一撃
単純で重い【巨大なクレイモア】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 戦神への信仰心
全身を【魔法に強力な耐性を持つオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
WIZ : 戦神の加護
【徐々に回復する体力の守護】【衝撃に強く仰け反り辛くなる体幹】【死ぬ程のダメージを受けても短時間動ける体】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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『ガアアアアッ!』
『ガアアーッ!』
――七大海嘯、“邪剣”が一派。骸の巨人騎士たちを主な構成員とする戦闘艦隊“ヨミューリ”は進む。
『グルルルゥ……』
『ガアアーッ!』
先頭をゆく船で得物を携えた骸巨人たちが吼える。
十分な準備期間を以って集結した戦闘艦隊ヨミューリは、数百隻を超える巨大な勢力となってドートゥンヴォリを完全に包囲していた。
巨人の軍勢は波間に咆哮を響かせながら、ドートゥンヴォリへと押し寄せる!
「……来たでぇ!」
「おう!」
その一方で、ドートゥンヴォリの男たちは迎撃の準備を整えていた。
猟兵たちの協力によって復旧を果たした戦闘艇群に男たちが乗り込み、7.28ミリコスモガトリングやスペースカルバリン砲の銃座につく。
エンジンに火が入り、戦闘艇が動き出した。
――単純な戦力差だけで見れば、数値化しておよそ33対4。はっきり言って、絶望的な状況だ。
しかし、ドートゥンヴォリの人々は諦めていなかった。
「いやあ、ぎょうさん来てはりますなあ。奴さんら、本気で島ァ潰す気でっせ」
先頭の戦闘艇で舵を取る男が、猟兵たちを振り返る。
「うちらだけじゃ、かなう相手やありませんわ。……あんさんらの助力がうちらの希望です。よろしゅう頼んます」
そして一度深く頭を下げてから――男たちは、見渡す限りの海原に広がる大艦隊にあらためて相対する!
「ほんなら、景気よくいきましょか!」
かくして――戦いは、今より始まる!
エル・クーゴー
●WIZ
多数の敵影を目視で捕捉しました
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
イテコマシタレー
・【ウイングキャット『マネギ』】MAX召喚(虎柄カラバリ変更済)
・己は敵戦線の展開を広く見渡せる港側に陣取り、マネギ全数を管制する電脳世界を展開
・「敵目掛け突っ込む班」こと『一軍』と「戦闘艇搭載兵器運用を補助する班」こと『二軍』に振り分ける用兵術を使用
・一軍は「ビーム・ハリセン」や「虎柄メガホン」等で武装し突貫させると共、視覚情報は己の電脳世界に巻き取り(撮影)、戦線展開状況の【情報収集】とする
・二軍はヨシュモト若手らの銃座運用をフォローし【誘導弾】化させたり、副砲座に着いてみたり
羽月・姫香
ははーん、あれが『巨人軍』やな…数は多いみたいやけど、それだけでゴリ押せるほどウチらとドートゥンヴォリの人らは甘ないでっ!
まずは【先制攻撃】として、さっき《26箇所》に仕掛けといた爆弾を敵船が《4隻》団子になって来たところで起爆して【破壊工作】。【罠使い】の本領発揮やっ!
敵が混乱したんやったら一気に畳み掛けるでっ!
ウチ本人も【忍者刀】で戦いながら【南洋手裏剣】を操作して【不意打ち】や【援護射撃】をしていくでっ!
え? 手裏剣操るんは魔法やないかって? これは忍法やから、ねっ☆
一応、敵の数が多いから【早業】や【見切り】、それに【第六感】も駆使して囲まれんように立ち回ろうかっ!
「多数の敵影を目視で捕捉しました」
「おーっ。ごくろーさんやね、エルちゃん。ほんでもって……」
エル・クーゴー(f04770)と羽月・姫香(f18571)は、港湾の防衛陣地より海原を臨む。
――敵が七分に海が三分、とはよく言ったものだ。展開した大艦隊は悠々と海を進み、今まさにドートゥンヴォリへと迫ってきている。
『ガアアーッ!』
『グオオオオッ!』
そして、それらの船に乗り込んだ骸の巨人たちの軍勢が、狂乱めいた咆哮を上げた。
「ははーん、あれが『巨人軍』やな……」
「はい。敵性艦隊の行動開始を感知しました。こちらも迎撃に移ります。姫香、そちらの行動指針を教えてください」
エルはバイザーに光を灯しながら、電脳空間ストレージへとアクセス。データ領域から再びマネギドローンのテクスチャを読み込み、マテリアライズを開始する。
「せやね、ウチは前にいくつもりや。さっき、海の方に罠も仕掛けてん」
「了解しました。では、そこの3番埠頭から間もなく戦闘艇が発進します。マネギを随伴させるので、そのまま前線に向かってください」
ぶみゃあ。――エルの周囲の空間で黄色く燐光が爆ぜる。その中からぼとぼとと落下するようにデータ領域から物質化してくるのは、羽をもつふくよかなネコ型ドローン【ウイングキャット『マネギ』】の群れである。――尚、これらのマネギドローンはいずれもドートゥンヴォリ住民へのウケと士気向上のためのタイガーカラー・ストライプ塗装を施したタイプだ。
「承知したで。そんじゃエルちゃん、例の口上よろしゅうな!」
「はい。それではこれより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
「おっし!それじゃ、気合入れていってくるで!」
そして姫香は走り出す。マネギドローンの群れを伴って、彼女は今まさに出撃せんとする戦闘艇へと乗り込んだ。
「了解」
一方、埠頭に立つエルはその姿を見送りつつ作戦の進行を開始する。
かくして決戦の火蓋は切って落とされたのだ。
「じゃ、おっちゃんたち!頼んだで!」
「おーよ!負けてられへんわ!」
「マネギちゃんたちもよろしゅうな!」
「ぶみゃあ」
ドートゥンヴォリより発進した戦闘艇が速度を上げて前進する。
いずれのワールドと比較しても高い水準の科学技術を持ったスペースシップワールドに由来するマシンである故に、その航行は軽快だ。
《前方に敵群。距離およそ1500。現在の航行速度では有効射程圏到達まで60秒ほどです》
マネギドローンを通じて、エルが姫香をナビゲートする。エルは港に立ったまま、周囲に電脳空間を展開し情報処理を行いながら戦場全域の把握に努めていた。
端末であるマネギドローンの観測データがエルの五感を代行し、彼女に戦域を見下ろす目を与える。エルはもたらされる情報を処理しながら、並行して無数に展開させたマネギドローンの挙動を管理する。
「見えとる見えとる。……けど、ここで一旦減速や!おっちゃん、ちょっと船止めてな」
「なんや、止まるんか?」
ここで姫香が操舵手を制した。怪訝な表情を浮かべながらも、戦闘艇は速度を落とす。
「まずは景気づけの花火でも打ち上げたろかと思てな――こうや!」
その瞬間である。
『ガアアアーッ!!』
轟音。同時に、水面からあがる水柱――。先頭を進んでいた巨人軍の艦が、ぐらりと揺らいだのだ。
「おーし、まずは一発!」
「なんや!?」
《水中機雷の起爆を確認。船底部付近の破損が観測されました》
それは、先んじて姫香が海域に仕掛けていた爆弾の罠である。それに気づかず通過を試みた敵艦は、その直撃を受けたのだ。
『ガ……アッ!』
『グガアッ!』
悲鳴めいた咆哮。――予期していなかった反撃に、敵は明らかに困惑していた。先頭の艦が沈み始めたことで、後続の艦隊が足を止める。
「よし、チャンスや!一気に畳みかけるでっ!おっちゃん、スピード上げてーな!」
「アイアイ!」
男たちが戦闘艇のエンジン出力を上昇させる――急加速!スピードを上げた船は、瞬く間に敵艦隊へと距離を詰めてゆく!
《ターゲット、有効射程圏に入りました。戦闘員各位、これより支援を行います。攻撃を開始してください》
「合点!」
同時に、エルはマネギドローンを通じてヨシュモトの若手たちへと攻撃開始を指示する。マネギドローンが射角調整と照準の補正を行い、男たちがトリガーを引く。スペースカルバリン砲の砲弾が、骸巨人を巻き込みながら敵艦の甲板で爆ぜた。
「当たったで!」
「よっしゃあ!ウチも負けてられへん!行ってくるで!」
そしてその次の瞬間、戦闘艇の甲板部から姫香が鉤縄を放ったのである。鉤は巨人軍の艦へと食いつき、続けざまに姫香はロープを伝って敵艦へとよじ登る!
《了解しました。では、そちらに『一軍』を随伴させます》
「一軍?」
《はい。今回の作戦におけるマネギドローン隊のコードネームとして設定しました。『一軍』は白兵戦への随伴を担当します》
「そんなら二軍もあるん?」
《はい。『二軍』は戦闘艇に残留し、搭載兵器運用の補助を行います》
「なるほどな――っと!」
『ガアアアーッ!』
通信による会話を打ち切って、姫香はすかさず飛び退いた。彼女が欄干を飛び越え甲板へと上がった瞬間、いきり立つ骸巨人たちが仕掛けてきたのだ!
「いきなり熱い歓迎やなあ!」
《陣形再編。『一軍』、背番号37番より69番、前へ》
「ぶみゃあ」
《イテコマシタレー》
しかし、それと同時にかかるエルの号令がマネギドローンたちを前進させる!その外見に見合わぬ機動力で空中を翔けるマネギたちは、一斉にその躯体に仕込んだ兵装を起動しながら巨人たちへと襲い掛かった!
バン、ッ!奔る閃光、短い破裂音!振るわれた兵装はビーム・ハリセンである。続けて震える大気が骸巨人の躯体をとどめた。音響兵器タイガーメガホンによる超音波音圧が炸裂したのである。
『ガアアアッ!』
「ウチのことも忘れんといてや!」
畳みかけるように、銀の閃光が迸った!【忍法・白南風】!姫野の投げ放った手裏剣が、骸巨人の身体を裂いたのだ。
「この技から逃げよう思ったらしんどいで〜っ♪」
『ガアア!!』
いびつな形状をした南洋手裏剣が魔法のように自在に巡り、そして回転装度を上げながら加速する。惑う巨人の群れに飛び込み、姫香は更に忍者刀を閃かせた。
『ガアアア――ッ!』
《周囲半径100メートル以内の敵性反応、消失。制圧の完了を確認しました》
「ふふっ、思ったより楽だったわ!」
瞬く間に骸の巨人たちは排除され、まず一隻目が制圧される。姫香は船上より戦闘艇の人々へと手を振ってから、次の艦へと飛び移る準備を開始した。
「それじゃ、どんどんやったろやないの!向こうの数は多いみたいやけど、それだけでゴリ押せるほどウチらとドートゥンヴォリの人らは甘ないでっ!」
かくして、マネギドローンの群れと戦闘艇の支援砲火を引き連れながら姫香は敵艦隊へと切り込んでゆく。
ドートゥンヴォリ周辺の海域における海戦は、このようにして始まったのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
数と質を揃えて潰しに来るとか、戦術としてはホント大正義もいいとこよねぇ。
けど、ま。虎の尾を踏んだ報いはきっちり受けてもらいましょうか。
…とは言ったものの。数体数隻ならともかく、あの数相手となると…そこまであたし大火力連発できないのよねぇ。ここは支援に回ろうかしらぁ?
榴弾砲でも投石器でも、なんなら漁船のバリスタでもなんでもいいから遠投できるモノかき集めて●酖殺を展開するわぁ。
相手の主力はアンデッド、「浄化の聖域」は覿面でしょぉ?
弾はゴールドシーンにお願いして量産できるし…これなら、「バラ撒けばいい」だけ。直接戦えない人たちも立派な「戦力」にできるわぁ。
舐めた連中に「一発いてこまし」てやりましょ?
仇死原・アンナ
来たか…巨人の軍勢…まさに巨人軍…
想像以上に多い…だが……それがどうした…!
ドートゥンヴォリを護る為にも…行くぞ!
[早着替え]で水着に着替えて
他の戦闘艇を巻き揉まぬよう先頭に立ち海へ飛び込もう
自身の身体を切り裂き【鮮血の海】による
地獄の炎を噴き出す血の海を敵艦隊が集まる海域へと流出させよう
[範囲攻撃と地形破壊]で海と共に敵艦隊を
地獄の炎と血の海で[焼却しなぎ払い]、沈没させて破壊してやろう
艦隊諸共巨人軍も血の海に溺れさせ[体勢を崩し]、
地獄の炎で焼き尽くし[蹂躙]してやろう…!
巨人共め…海の上で炎上するがいい!
ミスト・ペルメオス
【POW】
無論です。鎧装騎兵の力をお見せしますッ!
「ドートゥンヴォリへようこそ。
歓迎しよう。盛大になッ!」
愛機たる機械鎧に搭乗して戦闘に参加。
デバイス等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
スラスターを駆使して飛翔。海上スレスレから高空までを飛び回る立体的な戦闘機動を以て敵勢に挑む。
ビームアサルトライフル、セット。ヘルファイア・デバイス展開。
有効射程に敵を捉え次第【オープンファイア】!
常に飛び回り、時に牽制射撃を入れながら攻撃の機会を窺い、機を見て巨人に濃密な弾幕を叩きつける。
弾幕の投射範囲を絞ることで一度の射撃の威力を高め、一息に巨人を討たんとする!
※他の方との共闘等、歓迎です
「来たか……巨人の軍勢……。まさに巨人軍(ジャイアンツ)……」
「数と質を揃えた上で潰しに来るとか、戦術としてはホント大正義もいいとこよねぇ」
仇死原・アンナ(f09978)とティオレンシア・シーディア(f04145)は、海上に展開する敵艦隊の威容に短く嘆息する。
「想像以上に多い――だが……」
アンナはその手に妖刀の柄を握り、双眸の先に敵陣を見据えた。
「数が多いから……なんだという……。それがどうした……!」
「そうねぇ……。島の人たちだけだったなら、数で圧し潰せたんでしょうけどぉ」
ティオレンシアが微かに笑う。
――本来であれば、シンプルに保有する戦力の数での優位は戦場における大きなアドバンテージとなるだろう。
しかし、猟兵が戦力として参加するのであればまた話は異なる。
『――こちらブラックバード。これより戦列に加わります』
そして、2人の頭上を黒い風が奔った。――機動する鎧装はブラックバード。ミスト・ペルメオス(f05377)の愛機である。
「……それじゃ、あたしたちも遅れないように行かなくっちゃねぇ。虎の尾を踏んだ報いはきっちり受けてもらいましょうか」
「ああ……。ドートゥンヴォリを護る為にも……行くぞ!」
港湾区域に築かれた防衛陣地より、猟兵たちは戦闘態勢へと入る。推進剤の燃える軌跡を残すブラックバードを追うように、2人もまた迎撃作戦を開始した。
「……とは言ったものの、さすがにあの数相手となると……ちょっと手がたりないのよねぇ」
――しかして、ティオレンシアは足を止める。
「なら、支援だけでも……頼む。私は……先に行くぞ」
その一方、アンナは躊躇なく水面へ飛び込んだ。超人的な技術と体力で素早くアンナは海を渡る。その姿は素早く島から離れ、すぐに港から見えなくなるまでに加速していた。
「はぁい、いってらっしゃい。……そうねぇ、ここは支援に回ろうかしらぁ」
アンナの姿を見送ったティオレンシアは、出撃間際の人々へと声をかける。
「――なんや、そういうことなら俺らにまかしとき!」
「あんさんみたいなべっぴんさんの手助けできるなんて、いやあ光栄な話やで」
その中で、一艘の戦闘艇乗りたちが手をあげた。
彼らの駆る戦闘艇には折よくスペース榴弾砲が搭載され、支援砲火を行う方針での運用を予定していたのである。文字通りの渡りに船とばかりにティオレンシアはそこに乗り込んだ。
「それじゃ、よろしくねぇ。あたしに作戦があるわぁ。弾はこっちで用意するから、射程に入り次第撃ちまくってちょうだい」
「了解!」
エンジンに火が入り、戦闘艇は水面を行く。――その船上で、ティオレンシアは術式を繰りながら敵艦隊の姿を遠目に見た。
「じゃ、しっかり働くわよぉ」
『ぴきゅ』
【酖殺/リージョン】――それは聖水と聖塩、すなわち邪な存在を浄める清浄の力と、浄化のルーンを刻んだ輝石を用いて生成した榴弾を炸裂させることで、戦域に退魔の力を満たす、ティオレンシアのもつ手札のうちのひとつだ。その生成には彼女に付き従う鉱物生命のゴールドシーンくんも手を貸している。
「さて……。準備時間はあと1分、ってところかしらぁ?」
そして間もなく有効射程に入るか――ティオレンシアは更に船上にクレインクィン・アンダラを展開しながら手始めにとばかりに生成した術式榴弾をセット。目視距離に入った敵艦隊へと向け、狙いを定める。
「それじゃあ出血大サービスで大盤振る舞いといきましょ。逃げ場なんてつくらせないわよぉ?」
「よっしゃ!やったるで!」
今回は自分だけではなく、戦闘艇に乗り込んだドートゥンヴォリの人々にも協力を依頼した。ティオレンシアは採算度外視に手持ちの素材を惜しげなく消費して浄化弾を生成。そして島の人々にも砲撃を要請する。
「さあ、島を舐めた連中に『一発いてこまし』てやりましょ?」
「おっしゃ!」
距離よし。狙いよし。風向き問題なし。そして、スペース榴弾砲とクレインクィンが装填した浄化弾を一斉に投射した。
『ドートゥンヴォリへようこそ――歓迎しよう。盛大になッ!』
一方、先行して敵の艦隊へと交戦距離へ達していたブラックバードは、鋭い機動で敵の迎撃を躱しながら敵艦へと攻撃を仕掛けていた。
『ガアアッ!』
爆音!艦に据え付けられた砲台に火を入れ、骸の巨人たちがブラックバードを迎え撃つべく砲撃を開始したが――
『遅い!』
ブラックバードの機動力であれば、振り切るのは容易だ。砲火を躱すブラックバードはスラスター出力を巧みに切り替え、敵艦の頭上へと舞い上がったかと思えば海面ぎりぎりまで急降下してみせ、立体的な機動で攪乱するように敵の周囲を飛び回る。
『あの島の平和を乱そうというのなら……許しません!』
FCSリンケージ。火器管制チェック、オールグリーン。【オープンファイア】!ミストは操縦桿のトリガーを引き絞る。携行火器であるビームアサルトライフルが火を吹き、展開したヘルファイア・デバイスがばら撒くように光を放った。熱と閃光に撃ち抜かれながら、骸の巨人たちが呻きながら砕け散り、艦体に穴を穿たれてゆく。
『が、アアアグ、アッ!』
だが、ここで突然の奇襲!船内に隠れていた敵性が甲板へと上がってきたのだ。ミストは咄嗟に回避機動を取りながら銃口を向ける――。
『ガ……』
しかしその瞬間である――ブラックバードは頭上に接近する熱源と、それが炸裂したことを認識した。
破裂した榴弾は、内部からスペースシップワールドにおいては検知不能のエネルギー反応を周囲の空間に拡散させてゆく。それはティオレンシアの仕掛けた聖水・聖塩・ルーン術式の複合術式の発露であった。
雨のように戦域に降り始めたその力は、瞬く間に拡散する。――戦場に立つ骸巨人たちはアンデッド、いわば邪悪な存在だ。それらに対して、浄化の力は覿面に効果を発揮するのである。
『ガ……!』
だが、それでも戦う意志を失わぬオブリビオンが残っていた。半ばその身体を微塵に粉砕されながらも、その骸巨人は剣を掲げてブラックバードへと向き直り――
「……滅べ」
――しかして、一歩を踏み出すよりも先に船ごと燃え上がった。
急激に熱量を増しながら膨れ上がる熱源に、ブラックバードは警戒しながら距離を取る。ミストはコンソールを叩き、出現する反応の正体を確認した。
「我が血で前たちの穢れを洗い流してやろう……!」
燃え落ちる艦の甲板に穴を穿ちながら這い出したのは、アンナの姿であった。
アンナはその双眸で沈みつつあるこの艦よりもっとも距離の近い一隻へと視線を移すと、素早く身を翻し、そちらへと飛び移った。その最中で、アンナは手にした剣を自らの肌に這わせ、そしてその血を放つ。
【鮮血の海/プール・オブ・ブラッド】――。その血液を地獄の炎と化して燃え上がらせる、彼女のユーベルコードだ。アンナはその炎を放ち、巨人たちごと艦体の船を灼いてゆく。
『ガアアアーッ!』
だが、アンナの来襲を気取った骸巨人が抵抗を見せる。炎に半ばその身を焼かれながらも、アンナを船に入れまいと剣を掲げる巨人が襲い掛かったのだ。
『ガ――ッ!』
『――こちらブラックバード。これよりあなたを援護します』
しかし、その骸巨人をビームアサルトライフルの光が叩いた。ミストが素早くフォローに入ったのである。
「感謝する……。では……進もう。無辜の人々を脅かす巨人ども……地獄の炎で焼き尽くしてやろう……。海の上で炎上するがいい!」
そうして、ここに即席の共闘体制ができあがる。
ティオレンシアの仕掛けた『聖域』の術式によって戦域の骸巨人たちは大きく弱体化しつつあった。
ミストの駆るブラックバードは機動性を活かし、攻撃を加えながらも敵の目をひきつけ、攪乱する。そうしてミストが敵を引き受ける間にアンナの放つ炎が艦に致命的なダメージを与え沈めさせる――という塩梅である。即席の連携ながら、3人の猟兵は確実に敵の艦を破壊し、その戦力を着実に削ぎつつあった。
しかして、もとより敵は凄まじい数の戦力を用意してきた大艦隊だ。その脅威を完全に打ち砕くには、まだ時間を要するだろう。
猟兵たちの戦いは、続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
覚悟はしてたけど清々しいほどの戦力差だな。
つまりここで勝てば末代まで語り継げる伝説になるって訳だ。
その戦力差を逆手に取り【地形の利用】で潮の流れを利用して足並みを乱し、入り江に誘い込んで立ち往生させる。
そこへシャーリーに敵船まで運んでもらい、巨人軍相手に大立ち回り。
【足場習熟】で不安定な船上でもバランスを取り、相手のUCを【フェイント】で躱す事で奴自身の攻撃で敵船を沈めてもらいながら【飢龍炎牙】で船上の巨人を倒していく。
そうやって派手に暴れまわる事で敵の注意をこっちに集め、シャーリーやドートゥンヴォリの人達が攻撃するチャンスを作る。
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
さぁ、逆転劇の始まりだよ!
予め島の人たちに教えたように【罠使い】で仕掛けた罠に誘い込んで船を座礁させて動けなくなった船を障害物にして敵群の足を止めて、そこへ【エクストリームミッション】でウィーリィくんと一緒に先頭の敵船に乗り込んで【船上戦】を繰り広げる
【制圧射撃】で足並みを制しながら【乱れ撃ち】+【範囲攻撃】でまとめて撃ち抜き、パワードスーツの体当たりの【吹き飛ばし】で海に突き落としたり
そうやって暴れて敵戦力をボクたちのいる船に集中させてからウィーリィくんと一緒にこの船を沈めて敵を一網打尽
そして手薄になった船を占拠して島の戦力にしていく
クロエ・イレヴンス
フッ……おばちゃんの美しさが目映すぎて騎士さんらがくすんで見えとるわ
この美貌が悪さをしてまうんやな……おばちゃん、罪作りなべっぴんさんやわぁ
さて、気合い入れて騎士共蹴散らしたろかい!!
女の道は喧嘩上等じゃ!しばきたおしたるわダボ!!
……!!えらい重さのあるバッティングしはるやないの!
でもな、おばちゃんも負けてへんで!
念動力でちょいと足元浮かしてスッ転ばせたり、光の属性攻撃でフラッシュバンして目眩ましや!
決定打?ちぃと待ちや!!
戦いと焼肉はタイミングが命やで!
……よし、行けるわ!みんな!集まってやー!
UCでおばちゃん軍を召喚、止めれるもんなら止めてみいや!!
くたばれヨミューリ!!
「……相当沈められたはずなのに、まだあんなに残ってんじゃねえか」
覚悟はしてたけど清々しいほどの戦力差だな――。ウィーリィ・チゥシャン(f04298)は短く息を吐いた。
「そうだね……。でも、みんな一生懸命戦ってる。ボクたちも弱気になってられないよね!」
「ああ、その通りだ。それに……こんな大海戦、そう何度も起こるもんじゃない。つまりここで勝てば末代まで語り継げる伝説になるって訳だ」
「あはは!いいね、それ!それじゃ、2人で伝説になっちゃおうか!」
シャーリー・ネィド(f02673)がウィーリィと笑い合う。その瞳には一点の曇りもなく、敵艦隊との戦いに備えて闘志の炎が滾っていた。
「フフフ……。えぇねぇ、若いっちゅーんは」
「うわっ、何だ!?」
「おばちゃんやで」
突如足元より聞こえた声に困惑しながら、ウィーリィは視線を下げる。そこでニヒルに微笑むのは、黒い毛並みのカモノハシ――クロエ・イレヴンス(f24879)である。
「アッハイ、どうも……」
「フッ……また一人少年をおばちゃんの虜にしてしもたようや。この美貌が悪さをしてまうんやな……おばちゃん、罪作りなべっぴんさんやわぁ」
困惑するウィーリィをよそに、ナルシシズムに浸るクロエは身体をくねらせながら自己陶酔に輝く。
「むっ!ウィーリィくん!」
「いや、なってないからな!?それより、そろそろ出発しよう!」
睨みを利かせるシャーリーに慌てて弁明するウィーリィは、話を逸らして出撃間際の戦闘艇へと乗り込んでゆく。それにシャーリーとクロエが続き、3人を乗せた戦闘艇がドートゥンヴォリの港湾区域より出撃した。
「――それで、どないする?」
「ああ、作戦はもう決めてあるんだ」
「うん。えーっと……おばちゃんさんも一緒に行く?」
「渡りに船や!いやー、日ごろの行いやなあ!」
猟兵たちは敵艦隊へと近づく中で、短いブリーフィングを済ませる。――間もなく、戦闘艇に搭載されたスペースカルバリン砲の有効射程に入る。砲手を務めるヨシュモトの若手が、砲撃開始を叫んだ。
轟音――数秒を置いて、爆発音。戦闘艇の放ったスペースカルバリン砲が命中したのだ。
『ガアアアーッ!』
猛り狂う骸巨人たちの咆哮が響き渡る。――舵取り。海原を進む敵艦隊の進路が変わった。攻撃を仕掛けてきた戦闘艇を迎撃すべく、艦体のうち数隻が猟兵たちの乗る船を標的に定めたのである。
「よし、作戦通りだね……。手筈通りよろしく!」
「おうよォ!」
シャーリーの号令とともに、戦闘艇が舵を切った。急速な転進で敵の追撃から逃れるような軌道を取る。
『ガアッ!』
だが、逃がすものかとばかりに艦体の船は戦闘艇を追い、更にその速度を上げてゆく――。
しかし!
『――ガグオオッ!』
その進行が、ある領域に差し掛かったところで急停止したのである!
「かかった!」
「よし、今だよ!」
【エクストリームミッション】!シャーリーは敵艦が足を止めたその瞬間に、マシンを駆動させる。愛機ハイメガシャークの躯体が解けるようにパーツごとに分かれ、そこからシャーリーを中心として再合体。その装甲は戦闘力を押し上げるパワードスーツとなる!
ここまでは作戦通りだ。敵の艦を航行困難な地形へと誘い込み、座礁へと追い込むことでその足を止めさせるというプランは実にうまくいった。
――ここから先は、自分たちがカギだ。
「いくよウィーリィくん、おばちゃんさん!」
「ああ!」
「頼んだで!」
装甲にしがみつくウィーリィと、ウィーリィの背中に掴まったクロエを乗せながらシャーリーのパワードアーマーは出力を上昇させる。推進剤の光が尾を引いて、シャーリーは戦闘艇の甲板部から飛び出した。凄まじい加速度で空を翔ける猟兵たちは瞬く間に敵艦の甲板上へと到達する!
『ガアッ!?』
突然の座礁で混乱したところへ奇襲めいて現れる猟兵たち!骸巨人たちは騒然となる。
「さて――気合い入れて蹴散らしたろかい!!」
ウィーリィの背を離れ、甲板上へぴょいと降りたクロエが真っ先に啖呵を切る!」
「女の道は喧嘩上等じゃ!しばきたおしたるわダボ!!」
「俺達も行くぞ、シャーリー!」
業火!先陣を切ったのはウィーリィの放つ炎だ。【飢龍炎牙/グリード・ブレイズ】!包丁の纏う火が竜の姿をかたどりながら、骸巨人たちへとその燃ゆる牙を突き立てる!
「うん!逆転劇の始まりだよ!」
続けざまにシャーリーは引き金を引いた。弾幕めいた制圧射!爆ぜる弾頭が船の甲板を削り取りながら、骸巨人たちを圧倒してゆく!
『ウオオオーーッ!!』
だが、炎と弾丸の中を押し返すように、その中を突破する敵影!骸巨人たちの中でもひときわ大きな巨体が咆哮と共に炎の中を抜け、猟兵たちへと襲い掛かったのだ。
その男は生前にかつてゴディラー(一部の島で信仰される『巨獣の神』、『獣の王』の名。転じて、巨人族の中でも特に力の強いものに送られる称号の一つ)と呼ばれた強き巨人のひとり、マーツィその人であった。
骸巨人マーツィは力強い踏み込みで甲板を踏破すると、その両腕で握った大剣を力強くスイングする!
「くうう……ッ!」
衝撃――!激突に大気が震え、波打つ海に船が揺れた。
「えらい重さのあるバッティングしはるやないの!」
その剣を受け止めたのは、クロエの念動防壁だ。あまりにも強烈な打撃力に、クロエは目眩すらおぼえる。
「おばちゃんさん!」
だが、そこへシャーリーが急加速とともに駆け付けた。その速度を乗せたままに、シャーリーのパワードスーツは骸巨人マーツィへ激突!流石の巨体もその衝撃には耐え切れずたたらを踏む。
「こっちだ!俺が相手をしてやるぜ!」
続けざまにウィーリィが放った刃が、骸巨人マーツィの鎧を叩き砕いた。ガオンッ!咆哮と共に反撃の刃を振り下ろす骸巨人マーツィであったが、素早く身を躱すウィーリィを捉えることはできない。勢いあまって振り抜かれた大剣が、艦の壁を打ち壊していた。
『グ、ゴ……』
「よし、行けるわ――みんな!集まってやー!」
そして、次の瞬間――クロエが手でメガホンをつくり、そして声を張り上げた。同時に空間に生じる歪み。青白い燐光とともに、その歪みが門を開いた。そこから飛び出したのは――
『なんやの!』
『えらいけったいなとこやな!』
『見てみい!なんやおかしなのがぎょーさんおるで!』
人間。エルフ。妖怪。フェアリー。賢い動物。様々な種族の年かさの女性――すなわちおばちゃんたちを乗せた、アース文化圏などにおいて利用される大型車両である!
「なんだ!?」
「これがわてらの【おばちゃん快進撃】やっ!!」
ガァンッ!ギャリギャリギャリッ!甲板上に飛び込んだワゴン車の運転手である人間種のおばちゃんはアクセルベタ踏みで車両を急加速!
「くたばれヨミューリ!!」
『ガアアアアッ!!』
その勢いのままに骸巨人マーツィへと激突し、艦を破壊しながら諸共海面へと落ちてゆく!
「……やったみたい?」
「やったで!おばちゃんたちの大勝利や!」
沈む骸巨人を見下ろしながら、クロエが快哉を叫んだ。
「……っと、まだ喜ぶにはちょっと早いぜ!」
『ガアアアグッ!』
しかし、まだ最後まで決着がついたわけではないのだ。猟兵たちの立つ艦へと、更なる敵が押し寄せてきたのである。
「よし……来たね!それじゃ、ウィーリィくん。もうひと頑張りしよっか!」
「ああ!派手に暴れるぜ!」
「よーし、おばちゃんも手ぇ貸したげるからな!」
襲い来る敵の群れ――しかし、オブリビオン艦体の全体戦力は猟兵たちの活躍によって徐々に削がれつつあった。
そして、猟兵たちが攻勢を仕掛け敵の注目を集めることで同時にドートゥンヴォリの人々が敵艦隊から狙われるリスクを低減し、結果として彼らの攻撃を後押しすることに成功していたのである。今こうして彼らのもとに敵の増援が集まりつつあるのも、その成果のひとつと言えよう。戦力を一か所に集中させる分、他の場所が手薄になっているのだ。
かくして猟兵たちは戦い続ける。――そこから少し離れた場所で、ドートゥンヴォリの戦闘艇から放たれたスペースカルバリン砲の砲撃がまた一隻敵艦を沈めていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
サルファ・トクスホリック
花月(f27064)のちんちくりんと一緒
お前その呼び方やめろってお兄サンさっき言ってたの聞いてたちんちくりん??
脳みそはトラじゃなくてトリなの??
はーーまァいいや 食い出なさそォなのには賛成だわ。
物騒な鮫だこと まーじゃァ俺の毒でスパイスちょちょいと掛けてやるか 粘度上げた毒なら動き辛ェし鮫も食いやす……
鮫に噛まれろなんて言われたの産まれて初めてだが??バカなの??バカだったわ
鏡見た上でもっと乳つけて出直してこい
……チッ(強めの舌打ち)(毒性弱めた蜜飴を鮫に一粒。)腹壊すなよォ。
……オラ 食ってこい(骨に蜜飴べたぁ。)
あとでリクロージだかのケーキ倍な。
花月・グランドナンバー
サルファ・トクスホリック(CANDYMAN・f21766)と一緒
こっからが本番やな!!
さーてやったるでべっこう飴の化け物の兄ちゃん!!!
とりあえずウチの得意技で攻めたろか。
骨張って不味そうやけどな。
ユーベルコードは虎色鮫。
鮫を作り出して食わせる。以上や。
んでこの鮫は肉の味覚えてずっと追いかけ回すんで一回噛み付かせないとあかんのやけど…
お、べっこう飴の化け物の兄ちゃん、巨人共に味付けしてくれるん?ならその味覚えれば奴らに一直線や。
んじゃその味覚えさすから一回噛まれて?嫌?こんな美少女が頼み込んでも?
まあとりあえず鮫をたくさん描いて奴らに突撃や!ドートゥンヴォリに喧嘩売ったの後悔させちゃる!
「……そんじゃ、行ってくるで!」
「ああ、気をつけてな!」
花月・グランドナンバー(f27064)は戦域へと至る。ここまで送り届けてくれたドートゥンヴォリのおじさんたちに手を振ってから、戦闘艇の甲板を蹴ってジャンプ。敵艦の船壁面に取り付く。そこから素早く身を翻し、花月は敵艦の甲板部へと乗り込んだ。
「ったく、随分な数じゃねぇか……。面倒臭ぇ」
花月に続いてサルファ・トクスホリック(f21766)が敵艦へと飛び込んだ。
『ガアアッ!!』
『グオッ!』
しかして、その襲撃を察した骸巨人たちが迎撃に打って出る。船を揺らし、空気を震わす咆哮を伴って、巨人軍が集まり始めた。
「来よった来よった!こっからが本番やな!!」
しかし、花月は怯むことなく相対する。元気な声と唇に笑みを乗せると、その手に絵筆を握りしめた。
「さーて……やったるで、べっこう飴の化け物の兄ちゃん!!!」
「お前その呼び方やめろってお兄サンさっき言ってたの聞いてたちんちくりん??脳みそはトラじゃなくてトリなの??」
一方サルファは対照的なローテンションでため息をつく。
「まあまあ、気にせんといてな!とにかくやるで。ウチの得意技、見せたるわ!」
「はーーまァいいや。わかった、手伝ってやるから早くしろよ」
花月は絵筆を薙ぐように虚空へと彩を乗せる。黄色と黒の縞模様。そこに描かれるのは【虎色鮫】の姿だ。
「まずは一匹!こいつでみーんな食いちぎったる!……骨張って不味そうやけどな」
迫り来る骸巨人の威容を仰ぎながら、花月は呟いた。
「食い出なさそォなのは同意見だわ。ッつーか鮫も骨だけの奴なんか食うのかよ」
ここでサルファは鋭く冷静に指摘する。
『ガオォン』
虎鮫第一号もそれに同意するように鼻先を上下に動かした。
「……むっ。それはたしかに……そうやな」
「なんか対策は?」
「……あらへんが、気合いでなんとかしたる!」
ここで花月はグッと拳を握る。そして虎鮫とともに殴り込みをかけようとしたそのとき――
「わかったわかった、ちょっと待ってろ」
サルファがそれを制した。
「”味付け“してやるよ。まーじゃァ、俺の毒でスパイスちょちょいと掛けてやるか」
【Bitter, Sweet, Spice】。サルファはその身体を溶かし、真なる姿である水飴状の形態に変異してゆく。
「おー!さすがやべっこう飴オバケ兄ちゃん!味付けしてくれるんならバッチシや。そんならもーサメまっしぐらやな!」
『ガオオォン』
甘い獲物の香りに興奮してか、虎鮫一号が咆哮する。
「……物騒な鮫だこと。まァいい。とにかくまず俺があいつらに絡み付いてきてやる。粘度上げた毒なら動き辛ェし鮫も食いやす……」
「んじゃ、その味覚えさすから一回噛まれて?」
『ガオォン』
「は?」
そして続く花月の指示に、サルファは露骨に嫌な顔をした。
「えーか。ウチのこの鮫はな、獲物の味をおぼえることで、よりつよーく!よりするどく!敵に喰らい付くことができるよーになんねん。せやから、な?ちょっとだけでええから」
「ちょっとも何もねぇよ!『鮫に噛まれろ』なんて言われたの産まれて初めてだが??バカなの??」
「嫌?こんな美少女が頼み込んどるのに?」
「やっぱりバカだったわ。鏡見た上でもっと乳つけて出直してこい」
「えー!なんやの!兄ちゃんのケチ!べっこう飴オバケ!糖尿病まっしぐら!」
「ならねーよ!」
『ガオオォン』
言い合いながらも花月は虎鮫を描き、その物量を増やしてゆく。中空を泳ぐ虎鮫の群れが骸巨人たちと睨み合っていた。
「……チッ」
舌打ちするサルファは再びため息をひとつ吐き出してから、その手の中に飴玉を生成する。
「腹壊すなよォ」
そうしてから、虎鮫一号の口の中に放り込んだ。
「さーっすが!ウンウン。持つべきもんは頼れる兄ちゃんやな。いや、ここはむしろべっこう飴オバケにも言うこと聞かすウチの魅力というか……」
「バカ言ってねえでさっさとやるぞ」
そしてサルファは腕を振った。
琥珀色の腕からぷつりと途切れた腕の一部が放物線を描いて骸巨人の群れに浴びせられる。蕩けるように粘つきながら融解する腕のかけらが“着弾”し、そして爆ぜた。べとつく水飴状の身体が瞬く間に骸巨人たちを絡め取った。
「……オラ。これでいいんだろ。準備できたぞ、食ってこい」
『ガオオォン』
そしてサルファが指先を向け、糖蜜がけとなった巨人軍を指し示す。群れなす虎鮫たちが、応じるように巨人たちへと向けて襲い掛かった。
「おーっし!おおきにな、べっこう飴オバケの兄ちゃん!いけいけ、突撃や!ドートゥンヴォリに喧嘩売ったの後悔させちゃる!」
そして花月は更に虎鮫を描き続けた。飴の匂いを頼りに巨人の群れへと襲いかかる鮫たちは更に勢いを増し、一気呵成に押し寄せながら骸の骨を噛み砕き敵群を駆逐してゆく!
「よっしゃ!花月ちゃんたちがやってくれとる!俺らも負けてられへんでえ!」
「おおーッ!」
更に炸裂する火砲!猟兵たちの戦いぶりに触発され、奮起するドートゥンヴォリの人々が更に攻勢を仕掛けたのだ。そしてまた一隻、砲撃に敵の艦が沈む!
趨勢は既に傾き、勝負は既に決したといっても過言ではなかったかもしれない。
開戦時には海を埋め尽くさんばかりであった骸巨人たちの艦隊も、もはや十数隻ほどを残すのみとなっている。このまま続けば、猟兵たちとドートゥンヴォリの人々の勝利で戦いの幕は下りるだろう。
しかし――敵もまた七大海嘯が一派を名乗る者達である。
戦いはまだ終わってはいないのだ。
『グ、グ、グ……おのれ、人間ども……そして、猟兵ども……』
――地の底から響くような、底冷えのする怨霊めいたおぞましい声が、突如として戦場に響いたのである。
『よくも我がヨミューリの巨人軍(ジャイアンツ)を――許しはせんぞ!』
そして――海が、揺れた。
成功
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第3章 ボス戦
『幽霊海賊船合体カイゾクオー』
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POW : ガレオンバスター
【身体を構成するガレオン船に搭載した大砲 】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD : 派手に行くぜ!
【両手のカトラスを用いた海賊剣術 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : とんでもない奴ら
【亡霊海賊の中でも最強の5人チーム 】の霊を召喚する。これは【カトラスとピストルを用いた格闘術】や【チームワークが生み出す連携技】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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『貴様らに我ら邪剣艦隊の真の姿を見せてやる……!ゆくぞ、海賊合体!』
『ガアアッ!』
『ガオオォン!』
海原に響き渡る咆哮!水面を揺らしながら、残存する艦隊が結集を開始する。
そうして密集陣形を取ったオブリビオン艦隊は、艦を構成する建材を噛み合わせながら――文字通り、一つに合体してゆく!
『完成!カイゾクオー!』
♪幽霊海賊船合体カイゾクオーのテーマ(作詞・無限宇宙人 カノー星人)
錆びた錨を巻き上げろ 破れた帆を掲げたら
死線の先 あらたな冒険が始まるぜ
進め悪(ワル)の新航路 目指せ邪悪の宝島 一つになった おおきな野望
誰にも止められねえ!
Let's go Oh!カイゾクオー
Let's go Oh!カイゾクオー
化けて出てでも 掴みたい宝物(オタカラ)があるのさ
Let's go Oh!カイゾクオー
Let's go Oh!カイゾクオー
幽霊海賊船合体 カイゾクオー
それは、グリードオーシャンのオブリビオンたちが持つものの中でも特に大型の巨大戦力だ。その内部では、邪悪な魂たちが煌々と赤く燃え上がる!
『見よ!これこそ我ら巨人艦隊ヨミューリ……この俺、名誉船長(グロリアスキャプテン)・ガナマシーに与えられた無敵のカイゾクオーなのだ!』
その躯体を構成するのは十数隻のガレオン船。身の丈100メートルにも達する、超弩級の巨人だ!
「な、なんやあれ……!」
「なんちゅう巨人や……!」
「言うて、ここで引けるかいな!ここが踏ん張りどこやぞ!」
しかし、相対するドートゥンヴォリの人々は困惑しながらも戦い続ける意志を見せる。
『フハハハハ……!威勢だけはいいではないか。だが、このカイゾクオーは内部に乗り込み中枢部を破壊でもされない限り無敵なのだ!だがこのパワーの前には近付くことさえできまい!』
嘲笑うカイゾクオーが砲身を伸ばす。敵もまた戦闘態勢に入ったのだ。
かくして、ドートゥンヴォリ近海における七大海嘯との戦いは決戦の時を迎える!
白斑・物九郎
【血反吐】
・『ストームライダー(虎柄)』を【操縦】しエントリー
・【推力移動】で空をも駆け敵ボディへ取り付かん
・ネコパンチネコキック頭突きテイルスイング、ネコ格闘で攻撃
ちぃっ、どんだけデカいんですかよコイツ
エル、状況予測
とにかくあのデカブツへ攻め上れるルートと、脆弱部位を割り出して送――
……なんスか、このデータ?
全て見える
全て分かる
全て感じる
エルからのデータだけじゃねえ
何か、この海のことをよく知ってる『何か』が介在しているとしか思えねえような――
……まさか『繁神タイガス』……?
(※当シナリオ限定【野生の勘900オーバー物九郎】降臨)
味方してくれんならなんでもイイですわ
ザミエルシステム、起動ォ!
ミスト・ペルメオス
【SPD】
…敢えて言おう。
「そんなものか? 随分と“小さい”な」
愛機たる機械鎧を駆って戦闘継続。
巨人船団の奥の手とも言える大型戦力、もちろん脅威的だが…わざと、煽るように告げて。
(実際、故郷のフネはあのカイゾクオーより遥かに大きいとか)
ドートゥンヴォリの人達には荷が重いと判断、敵の気を引くべく派手にスラスターを駆使して飛翔。
ドレッドノート・デバイス展開、牽制目的の遠距離砲撃を敢行しつつ敵機体のデータ解析。
敵の中枢部位を確認し次第、【シュラウド・ジャンプドライブ】。サイキック・ゲート展開。
片方は重粒子砲の砲口に、片方は――敵中枢の至近に。
乗り込むまでも無い、全力の砲撃を直に叩き込んでやる…!
羽月・姫香
うわっ、でっかっ!?
せやけど弱点を解説してくれるんはありがたいなぁ…さてさて、忍の本領発揮やっ!
ひとまずは【忍七つ道具】から煙幕を用意、煙に紛れて【忍び足、目立たない】ようにするでっ!
あの剣も狙いが定まらへんのやったらそない怖いもんやないっ! 爆弾を取り出し、【投擲、破壊工作】で内部への突破口を作り出すでっ!
爆破で【体勢を崩す】ようやったら、鍵縄も活用して【ダッシュ、ジャンプ、早業、ロープワーク】で内部に忍び込むっ!
中枢部を見つけたら【45口径サブコンパクト拳銃】の出番やっ!
中に入られた状態のまま大人しくしてくれへんやろうし、ここは速攻っ! 【クイックドロウ】で全弾撃ち込んだる!
ティオレンシア・シーディア
【血反吐】
うっわあ、またお約束な…
けど、やること自体はシンプルになったわねぇ。
なんとかして突っこんで内側からブッ壊せばいいんでしょぉ?
ミッドナイトレースに○騎乗して轢殺・適応を起動、高機動モードで一気に○騎乗突撃かけるわぁ。
巨大化大砲の斉射とか、まともに受けたら一発で海の藻屑よねぇ。なんとか対処しなきゃ。
一発は軌道を○見切って躱し、一発はラグ(幻影)と摩利支天印(陽炎)による〇残像と迷彩で誤魔化して回避。
最後の一発は…エオロー(結界)で○オーラ防御の傾斜装甲を展開、高耐久モードへの切り替えと合わせてなんとか凌ぐしかないかしらねぇ。
乗り込めばもうこっちのもの。ペイバックタイムといきましょ。
仇死原・アンナ
さすがにでかい…が…
宙飛ぶ船の世界で見た星の獣に比べればあんな物はただの案山子…
行くぞ…ドートゥンヴォリを護る為にも!
水中よりイシュ・タブを召喚
下腹部の操縦席に乗り込み合体同化
【冥府の巨神】に変身しよう
[水中機動と高速泳法]で敵へ近づき
巨体にへばり付きよじ登りながら大剣を振るい
その身に搭載した砲台を[部位破壊と武器落とし]で破壊しよう
破壊し尽くしたら[鎧砕きと怪力]で外壁を打ち砕き
内部に潜り込みつつ周囲を破壊しながら中枢部へ突き進もう
中枢部を見つけたら大剣を[力溜めてなぎ払い]
[重量攻撃で串刺し]たり[暴力]の限りを尽くし
内部を滅茶苦茶にし息の根を止めてやろう…!
『フハハハハハ!ハーッハハハハハ!』
響き渡る哄笑がドートゥンヴォリの海を震わせる。
海原にそびえる巨人、カイゾクオーはその全身を構成するガレオン船に搭載されたカノン砲の照準を猟兵たちへと向ける。
そして、砲撃が始まった。
「うわっ、でっかっ!?団長、どないします!?」
「今考えてるとこっすわ!」
白斑・物九郎(f04631)が駆るキャバリア・ストームライダーの機上に取り付きながら羽月・姫香(f18571)が声をあげる。そのすぐそばで水面に着弾したガレオン砲撃が炸裂していた。
『フン……子猫一匹、この俺の敵ではないわ!』
更なる追撃!カイゾクオーは片腕を無造作に振り上げた。そして、その巨体相応に巨大なカトラスを叩きつけるように振り下ろす!
「俺めのキャバリアを子猫扱いたァ――どんだけデカいんですかよコイツ!」
「正面!団長、かわしてー!」
悲鳴めいた声音とは裏腹に、姫香は冷静に判断していた。準備していた忍び道具のひとつ、煙幕弾を姫香は放り投げる。炸裂する煙が目くらましとなり、ストームライダーを包んだ。
「ちぃっ!」
それと同時に物九郎は操縦桿を倒しつつ機体コクピットのコンソールを叩いた。コンバットマニューバ。機体を半回転させるように捻りながら側面へと躱す回避機動。煙幕のせいで狙いが定まらなくなった大カトラスは空を切りながら水面に叩きつけられ、巨大な水飛沫をあげる。しかしてカイゾクオーはすぐさま追撃の構えに入った。カトラス剣技と絶え間なく放たれる濃密な弾幕砲火が、物九郎の進路を遮る。
燃える榴弾が機体装甲を炙り、大カトラスが鼻先を掠めてゆく。煙幕によるサポートと物九郎自身の技量によって機体はまだダメージらしいダメージはもらってはいないが、それもどれほどもつか――焦れる物九郎の頬に汗が一滴じわと浮かんだ。
「なんという巨人だ……さすがにでかい……が……」
「うっわあ、またお約束な……」
その一方、ティオレンシア・シーディア(f04145)は波と砲撃を躱しながら機体の出力を上げた。愛機ミッドナイトレースは彼女のハンドル捌きに応え、空中で巧みにターンを描きながら火砲の合間を潜り抜け敵のもとへと距離を詰めてゆく。
「だが……宙飛ぶ船の世界で見た星の獣に比べれば、あんな物は……ただの案山子……」
タンデムする仇死原・アンナ(f09978)は、聳える巨人の威容を見上げながらも恐れることなくその戦意を向けた。
「そうねぇ、さすがにクェーサービーストと比べちゃ小物だけどぉ……」
『――ええ、その通りです』
ご――ッ。推進剤の爆ぜる音。ティオレンシアの頭上を、黒鉄の翼が奔る。ミスト・ペルメオス(f05377)――その愛機ブラックバードだ。宙を舞う黒鳥の羽は砲火の中を躱しながら、カイゾクオーの躯体へと迫る。
『羽虫如きがッ!このカイゾクオーにかなうと思ってか!』
迎撃!カイゾクオーの躯体から生える砲門の群れがブラックバードを迎え撃った。濃密な弾幕砲撃!しかし、ミストは冷静に操縦桿を捻り回避機動をとる。爆ぜる榴弾――直撃は免れている。損傷は軽微。ミストは爆炎の中から飛び出した。敵の注意を引くよう、周囲を旋回するように機動する。
『……敢えて言おう』
続く砲撃を躱しながら、オープン回線でミストはカイゾクオーへと呼びかける。
『そんなものか?巨人艦隊というのは――随分と“小さい”な』
『なんだとォ……!』
煽るような言葉は、敵の気を引くための挑発でもあるが――事実として、スペースシップワールドの出身であるミストはここに立つカイゾクオーよりも更に巨大な宇宙のフネを知っている。
そして何よりも惑星級の躯体をもつクエーサービーストとの戦闘経験すらあるミストにとっては、敵の奥の手である大型戦力という点での脅威性は感じてはいても、勝てる範疇を逸脱した相手であるとは感じられなかった。
『……』
『楽に死ねると思うなよ、羽虫がァッ!』
カイゾクオーは水面を滑るように前進した。同時に大カトラスを振り抜き、ブラックバードを狙う。
『ドレッドノート・デバイス展開……!』
FCSリンケージ。ミストはコンソールを叩き、遠距離戦闘対応の砲身を起動する。同時にスラスターの出力を上昇。カイゾクオーからは距離を離す方向へと機体を動かした。
「随分とスケールの大きい戦いになったわねぇ」
一方、ミッドナイトレースの機体を制御しながらカイゾクオーとの距離をはかるティオレンシアは、攻め込むタイミングを伺っていた。
「……とはいえ、我々も手をこまねいているわけにはいかない」
「手はあるかしらぁ?」
「奴が自分で言っていた……要は……乗り込んで、中枢を壊せばいい……」
「そうねぇ、言ってしまえばやること自体はシンプル……なんとかして突っこんで内側からブッ壊せばいい、ってことでしょぉ?」
「――ンなら、無理にでも突っ込むっきゃねーでしょうな」
ご、っ。ここでミッドナイトレースに並走するように、タイガー・カラーのキャバリアが合流した。物九郎の駆るストームライダーである。
「今はあのマシンが敵の注意を引いてくれとるとこやしな。“なんとかする”ならたぶん今やで!」
キャバリアに取り付いた姫香が頷き、その手に忍び道具を握る。
「それじゃ覚悟決めていこうかしらぁ」
「……同感だ。私も、キャバリアを出す」
「オウ。ンなら、こっちからデータ送りやしょう」
物九郎はコンソールを叩き、通信を送る。――副官である電子戦担当へと連絡を繋ぎ、戦域の情報を送るよう要請する。
「エル、状況予測。とにかくあのデカブツへ攻め上れるルートと、脆弱部位を割り出して送――」
「ありゃ、団長どないしたん!?」
だが、ここでストームライダーは不明なアラート・メッセージを発したのだ。
機体はエルからではなく、別の不明な発信先からのデータ受信を報告する。しかし、それは悪意あるデータではない。
データ受信と同時に、ストームライダーのコントロール・パネルには発信者不明のメッセージが表示された。
《虎よ》
《虎よ》
《我がドートゥンヴォリを護らんとする若き虎よ。虎の魂をもつ者よ》
《我が目を、我が耳を、我が指先をもって、汝に力を貸さん》
「……なんスか、こいつは?」
物九郎は眉根に皺を寄せる――しかし、この不明な発信者から送られ続けているデータは、ドートゥンヴォリ周辺の領域を完全に把握し尽くしたものだ。地形も海図も、戦域に展開した敵味方の位置も、波も風向きまでも――。
「なんなんすかね、この――何か、この海のことをよく知ってる『何か』は……」
「団長、それ、ひょっとして……」
キャノピー越しに覗き込んだ姫香が怪訝な表情を浮かべる。
「まさか『繁神タイガス
』……?」
「味方してくれんならなんでもイイですわ。――お膳立てしてくれるっつうなら、使わせてもらおうじゃねーですか!ザミエルシステム、起動ォ!」
《了解。システム起動します》
【狩猟の魔眼/ザミエルシステム】――。それは、彼の副官である電脳魔術士エル・クーゴーを支援機として据えることで、物九郎の五感と電脳空間内のデータ領域を接続するユーベルコードだ。
だが、今回に限ってはそのデータ領域に『不明な発信者』からの提供データが上乗せされたかたちとなる。
その不明な発信元を通じて、物九郎はこの戦場の全てを見た。全てを感じ、全てを理解した。
「エル、戦域の全味方機へデータリンク!」
《了解》
続けて物九郎は指示を下す。――電脳領域を通じて、物九郎は知覚するデータの全てを猟兵たちとドートゥンヴォリの人々へ伝達する。
「あらま。随分面白いことになってきたわねぇ」
「……繁神タイガスが、我々に味方している……ということなのだろう。ならば私も行くぞ……ドートゥンヴォリを護る為にも!」
アンナはここでタンデムシートから立ち上がり、そして水面へ向かって飛び込んだ。次の瞬間、波がさざめきその中に一機のキャバリアが立つ。アンナはそのマシン――イシュ・タブの操縦席の中へと身を滑り込ませると、その意識を繋げ機体と一体となる。
【冥府の巨神/イシュ・タブ・シバルバー】。巨神と化したアンナが、顔を上げる。
『データ受領……。なるほど、これがタイガスの目か』
電脳領域を通じて受け取ったデータから、アンナもまたタイガスの意志を感じていた。
すなわち、ドートゥンヴォリを護れと。
『巨人軍(ジャイアンツ)よ……。その無法もこれまでだ』
そして、アンナは水面を駆けた。
『これは……!』
その一方で、ブラックバードのコクピットにもデータが送り届けられた。――解析途中だった敵のデータを補うように、別視点からの分析情報がその中には含まれている。
『小うるさいゴミどもが……!まだ死なんのか!』
途切れぬ砲撃。カイゾクオーの砲弾を躱しながら、ミストはトリガーを引く。ドレッドノート・デバイスからの砲火が、カイゾクオーの躯体表面で爆ぜる。
『フン……どれほど撃ってもこのヨミューリ巨人艦隊最強のカイゾクオーはこゆるぎもせん!中枢部を破壊でもされない限りはな!』
『……なら、その通りにしてやろう』
ミストは短く呟くと、その精神を集中させた。
(アクセス……ッ!)
収束するサイキックエナジーが空間に干渉する――【シュラウド・ジャンプドライブ】。超能力によって作り出されたゲートが、虚空へと開く。
『なに……貴様、何をするつもりだ!』
『乗り込むまでも無い』
ジェネレイター出力上昇。ドレッドノート・デバイスへとエネルギーを送り込む。そして、照準の先は開いたサイキックゲートへと向けられた。
――サイキックゲートが開いたその先は、カイゾクオーの左胸部分。
解析データ上では最も熱源の高い部位であり、受領データの中に存在した霊的視情報においても最も邪悪な思念が渦巻く中心――即ち、躯体の中枢であると判断できる箇所であった。
『全力の砲撃を直に叩き込んでやる……!』
トリガー。砲身が咆哮し、重粒子砲が放たれる。
サイキックゲートを介して空間を飛び越えた一撃は、彼我の距離と照準を一切合切無視して、カイゾクオーの中枢部である左胸部で爆ぜた。
『ヌ、オ……オオオオオオ、ッ!?』
轟音とともにカイゾクオーの心臓部付近が爆発する――!最大出力で放たれた一撃は、間違いなくカイゾクオーの中枢部付近を破壊していた。
『な、何事だ……!?一体なにが……!』
「年貢の納め時、ってところかしらねぇ」
『……なに!?』
揺らぐカイゾクオーは視線を下げる。その視線が捉えたのは、いつの間にか至近距離へと迫りつつあったミッドナイトレースと、それを駆るティオレンシアの姿であった。
更に彼女の乗騎ミッドナイトレースは、新たに得た変形機構により高機動形態へと変わり、その速度を更に上昇させていた。【轢殺・適応/ガンパレード・インプルーブ】の発露である。
『おのれッ!猟兵どもめ!』
だが、敵もたた黙ってやられるだけではない。迎撃砲火!ガレオン船のカノン砲が無数に顔を出し、ティオレンシアを撃ち落とすべく迎撃の火砲を浴びせかける!
「っと――!こんなのまともに受けたら一発で海の藻屑よねぇ」
回避機動!ティオレンシアは迫り来る砲弾の弾道を見切り、そして躱す。同時にティオレンシアは術を励起した。《ラグ》のルーン文字と摩利支天印の真言を用いた魔術文字の術式だ。幻影・陽炎。光学迷彩めいてその姿を眩ます魔術で狙いを誤魔化し、砲火を避けながら彼女は疾走する。
『小癪な!』
だが、逆上するカイゾクオーはこれに対し、数を撃つことで対抗した。めくら撃ちでも数撃ちゃ当たる、の精神だ。面制圧的な砲撃がティオレンシアへと襲い掛かった。
「く……ッ!」
――命中。
ミッドナイトレースは空中で爆発の炎と煙に包まれ、そしてその姿は消え去った。
『フハハハ!跡形もないぞ!』
「――たかだか一発当てたくらいで、イキってんじゃねーですよ!」
しかし――その次の瞬間、カイゾクオーの躯体が揺らいだ!
『なに!?』
「勝負はまだまだこっからっすわ!」
物九郎のストームライダーである!出力を上昇させたマシンは空を駆け、加速の勢いのままにカイゾクオーへと激突したのだ。
『ヌウウーッ!ドラ猫風情が、よくもこの俺にィ!』
「はッ!どうやらその目も節穴らしいっすな……今の俺めは、ただのネコじゃァニャーですよ!」
反撃の一閃。カイゾクオーはカトラスを振り下ろし、ストームライダーを迎撃する。しかし、物九郎は素早く操縦桿を倒して回避機動をとった。続けざまにスラスター出力を再度上昇させて再加速!サイズ差をものともせず、果敢に格闘戦を挑む!
「今の俺らは……ドートゥンヴォリの虎っすわ!」
『ぐごォッ!!』
ネコ・パンチ!キャットタワーを登るネコめいてカイゾクオーの頭部へと迫ったストームライダーは、加速の勢いを乗せた前脚の一撃を叩き込んだのである。カイゾクオーの巨体が、ぐらりと揺らいだ。
「オウ【暗器担当】!そっちはちゃんとやってんでしょうな!」
「ばっちりやで、団長!」
『ああ――今、到着するところだ』
一方――アンナのイシュ・タブと、それに引っ付くかたちで同乗する姫香は、カイゾクオーの中枢部へと迫っていた。
ブラックバードとストームライダーがカイゾクオーの目を引きつけている隙に、2人はカイゾクオーの躯体をよじ登っていたのだ。
「それにしても、中枢が心臓のところなんて……」
『……随分と、安易だな』
ざ、ッ。先のブラックバードによる砲撃で開いたカイゾクオーの左胸へと、イシュ・タブは滑り込む。
「こっちとしちゃ、わかりやすくて助かったけどねぇ」
ここで、2人はティオレンシアと合流を果たした。――先ほどの砲撃の際、ティオレンシアはルーン魔術による防壁を張りつつ、咄嗟に乗騎を防御形態へと変形させることでダメージを最小限にまで抑えていたのである。そして物九郎が敵の目を引いている内に、ここへとたどり着いたのだ。
「乗り込めばもうこっちのもの。それじゃ、ペイバックタイムといきましょ」
そしてティオレンシアは銃を抜く。45口径コルトSSAカスタム・オブシディアン。その銃身がぎらりと光った。
「せやね。とはいえ、中に入られたまま大人しくはしてくれへんやろし……ここは速攻でいこうやないか!」
『ならば、このまま突き進むのみだ……行くぞ』
アンナが先行して前へ出た。キャバリアサイズの大剣を薙ぎ払い、カイゾクオーを構成する建材を破壊すしながら猟兵たちは中枢部を目指す。
『なに……!?まさかここまで乗り込んできたというのか!?』
たどり着いた中枢は、巨大な鉄籠めいた区域であった。
その籠の中に、赤々と燃える炎が揺らめいている――その炎の中には、醜悪に歪んだ男の貌が浮かび上がっていた。その男こそ、巨人艦隊ヨミューリを統べる名誉船長(グロリアスキャプテン)・ガナマシー――その残霊である。
「もう観念せえ!悪だくみもここで終いやで!」
「えぇ。それじゃ、終わってもらおうかしらぁ?」
『ああ……処刑の時間だ。息の根を止めてやろう……!』
『ヌウウ……ッ!』
イシュ・タブの叩きつける大剣が、鉄籠を揺らがせた。続けてティオレンシアが銃を抜く。同時に姫香が胸元から銃を抜き放った。45口径サブコンパクトハンドガン。2人は素早く引き金を引く――【クイックドロウ】!鉄籠の中に揺れる怨霊へと銃弾を叩きつけた。
「全弾撃ち込んだる!覚悟しいやッ!」
姫香は一心に引き金を引く!45口径弾頭が炸裂し、怨霊の炎を穿つ!
『この島は……ドートゥンヴォリは、お前たちにはやらせん』
更なる追撃を加えるように、イシュ・タブの振るうキャバリア用の大剣が再び鉄籠を打ち据える!轟音!衝撃!凄まじい威力に、カイゾクオーの躯体そのものまでもが揺らいだ!
『グオオオオオオオオッ!小癪なアアアアアアッ!』
ユーベルコード出力を叩きつけられたカイゾクオーの中枢部は、激痛に身を捩るように全身を震わせながら咆哮した。
しかし、鉄籠の残霊は深刻なダメージを受けながらもその怨念の炎を激しく燃え上がらせたのだ。悪しき怨念は強力な念動力を成し、衝撃となって猟兵たちを押し出すように放たれる!それは一種の防衛機構であった。凄まじい圧力が猟兵たちに襲い掛かった!
「なんかやらかしてくるとは思とったけど、こうきたかー!」
『なに……!』
「往生際の悪いことねぇ」
キャバリアの質量さえ押し出す強力な拒絶の力に、猟兵たちは中枢部から撤退を余儀なくされる――。だが、間違いなくカイゾクオーの中枢部には深刻なダメージを与えることができたはずだ。ミッドナイトレースとイシュ・タブが一旦後退し、態勢の立て直しを図る。
「首尾はどうすか」
「上々……やと思う!きっちり全弾叩き込んでやったで!」
一方、中枢部から放り出された姫香を物九郎のストームライダーが回収した。姫香はしっかりと戦果を報告すると、二本指でブイサインをしてみせた。
『はい、こちらの観測でも敵の損傷率は4割に達しています。態勢を立て直し、次で決着をつけましょう』
そして、殿を務めるブラックバードがカイゾクオーを牽制しながら後退する――。
かくして、戦局は猟兵たちが優位性を確保しながら推移してゆく。
ドートゥンヴォリ沖の海戦は、間もなく最終局面を迎えようとしていた。
成功
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シャーリー・ネィド
Σでかっ!?説明不要!
でも海賊のセオリーは変わらないよ!
「真正面から勝てなかったら乗り込んで制圧!」
ウィーリィくんと【手をつなぐ】事でお互いを鼓舞し合い、高めた意思の力でパワーアップさせた【エクストリームミッション】でカイゾクオーの頭上を飛び回って砲撃のタイミングを【見切り】回避しながらウィーリィくんの指示に従って【フェイント】+【罠使い】でカイゾクオーを足元が崩れやすくなっている場所に誘導
バランスを崩したらすかさずウィーリィくんを抱えあげてそのまま【部位破壊】で熱線銃で外装に穴を開けてそこから船内に突入
【宝探し】で中枢部を探してそこを目指して突き進む!
そこを破壊してミッションクリアだよ!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
まいったな、こいつ倒したら伝説間違いなしじゃないか。
けど、倒せなかったらバッドエンドまっしぐらだからやるしかないか。
作るぜ、伝説!
確か近くに脆い岩で出来た岩礁があったハズだから【地形の利用】でそれを利用し、島民やシャーリーに協力してもらってカイゾクオーをそこに誘い込む。
奴がそこに到達したら海に潜り、【料理の鉄刃】で【地形破壊】で岩礁を砕いてカイゾクオーの足場を崩し、その巨体をよろめかさせる。
そしてシャーリーに回収してもらいそのまま船内に突入。
ナビはシャーリーに任せて俺は大包丁の【二回攻撃】と斬撃の【衝撃波】で邪魔者を排除。
そして中枢部を【料理の鉄刃】で一刀両断!
花月・グランドナンバー
サルファ・トクスホリック(CANDYMAN・f21766)と一緒
来よったな卑怯もんの親玉が!
ウチらでどーにかするんやで!
ウチかて本気やで!これがおとんとおかんから教わった魔法や!
(魔力の籠もった指で空中に鮫の絵を描きながら)
まずは内部に乗り込まんと…
べっこう飴の兄ちゃん、ウチの鮫に乗ってく?とりあえず奴の腹ん中入らんと始まらんし
んでユベコは犀色鮫や!いったれ角と牙のコンビネーション…!だけやったら勝てへんわな。むこうでっかいし……
む、なんや兄ちゃん?分かったウチは出来るだけ派手に中で鮫暴れさせるさかい兄ちゃんが本命頼んだで!アンタがリリーフや
んじゃ、行くでサルファの兄ちゃん
…合ってるやろ?
サルファ・トクスホリック
◆花月のちんちくりん(f27064)と一緒
うわァ馬鹿でか
大味すぎねェか100mとかよォ?
つーか再三べっこう飴じゃねェつってンだろ婆臭ェんだよ呼び方が
あーーーー じゃァ途中までヨロシク
適当に本丸乗り込むからよォ 派手に押し出してやってくれや
リリーフとか柄じゃねェんだけどな……
あ?(暫し目を見開いて)
――オウ 合ってらァ
……しゃーーねェ行ってくっかァ じゃァな。
さーて
"CIGAR"。
無色無臭の可燃性毒気体に変異して
するっと奴さんの中に入ってやる
遠くまで押し出されたらきっと大砲ブッ放すよなァ?
花月の嬢ちゃんも派手なの好きだろ
――ンじゃァ
逆転満塁サヨナラホームラン
ゲームセットの花火だ
ド派手に爆ぜろよ。
『グオオオオオオオオッ!!』
咆哮するカイゾクオー!その怒りに満ちたパワーが砲撃となり、周囲の海域で炸裂する!
「来よったな、卑怯もんの親玉が!」
「うわァ馬鹿でか……目算でだいたい100メートルくれェか。……いや大味すぎねェか?」
花月・グランドナンバー(f27064)とサルファ・トクスホリック(f21766)は、戦闘艇の甲板部から聳え立つカイゾクオーの威容を仰いだ。
「でかーいっ!?説明不要!!」
「まいったな、とんでもない奴が出てきやがった……けど、こいつ倒したら伝説間違いなしじゃないか」
居合わせたウィーリィ・チゥシャン(f04298)とシャーリー・ネィド(f02673)もまた、その巨体を見上げていた。
「ええなー!伝説か。ウチもそーいうん嫌いやないで!」
「ハシャいでる場合じゃねーだろォがよ……。やられちまったら伝説もクソもねェんだぞ」
「わかってるさ。倒せなかったら伝説どころかバッドエンドまっしぐらだ。俺たちがやるしかない」
「せや、ウチらでどーにかするんやで!やってやれへんこたーない。ドートゥンヴォリの猛虎魂、見せたろやないかい!」
花月はウィーリィとハイタッチした。前向きな2人の気持ちに気合が入る。
「で、どーすんだよ。あんなん正面からじゃまともに戦えねェぞ」
「そこはもちろん、海賊のセオリーでいくよ」
シャーリーが元気に手を上げてから、ぎゅっと拳を握る。
「真正面から勝てなかったら乗り込んで制圧!」
「まあ、それしかねェよなァ……本人もそー言ってたし」
「そんなら正々堂々乗り込みにいこやないの!未踏領域に行かずんば星を得ず、や!」
危険を冒さなければ大きな成功は得られない。スペースシップワールド文化圏を下敷きとするドートゥンヴォリに残るスペースコトワザである。
「わかった。なら、俺に作戦がある。まずはこっちで奴の隙を作るから、2人はタイミングを見計らって突っ込んでくれ。シャーリー、手筈通り頼んだぜ」
ここでウィーリィは作戦を話した。――猟兵たちはその内容を確認しあい、そして行動へと移り始めてゆく。
「それじゃ、作戦開始だ!作るぜ、伝説!」
「おーっ!」
『ゴミどもめが……よくもこのヨミューリ巨人艦隊(ジャイアンツ)をコケにしてくれおって!』
ざ、ッ――!一歩踏み出すだけで水面が揺れる。その巨体を揺らしながら、カイゾクオーの躯体は進撃を再開したのである。
「――好き勝手するのも、もうおしまいだよッ!」
「ああ!この島は、お前なんかには渡さない!」
だが、その視界を遮るように眼前を何かが横切った――シャーリーである!【エクストリームミッション】!再びハイメガシャークをアーマー状に再構成し、その機動力でカイゾクオーの頭上へと至ったのだ。アーマーの背にはウィーリィも掴まっている。
「おっしゃァ!俺らもやるでぇ!全員、攻撃開始や!」
「おおッ!」
そして猟兵たちの戦いに感化されるように、ドートゥンヴォリの人々もまた攻撃を開始する。火砲支援!スペースカルバリン砲が一斉に火を噴き、カイゾクオーの躯体で爆ぜた!
『ヌウウ……ッ!おのれ、この俺にこんな屈辱をォッ!』
砲火!カイゾクオーの全身から生えたカノン砲の砲口がシャーリーを狙った。
「シャーリー、来るぞ!」
「わかってる!躱すよ、しっかりつかまってて!」
砲火!しかし、シャーリーは素早くスラスターを吹かして転進。飛来する砲弾を躱しながら、シューティングスターのトリガーを引く。熱線がカイゾクオーの頭部を灼く!
『煩い羽虫どもが……!』
怒りに燃えるカイゾクオーが転進する。身の程を弁えられない弱者たちを粛清しなくてはなるまい。両腕の大カトラスを構えながら、カイゾクオーはドートゥンヴォリの戦闘艇群とシャーリーを追った。
「……よし。作戦通りだね」
「ああ、乗ってきた。……じゃあ、ここで降りるぜ。シャーリー、回収よろしくな」
「うん!」
ここでウィーリィはシャーリーの背から飛んだ。そして――着水。その勢いのまま、ウィーリィは水底へと潜ってゆく。
『皆殺しにしてくれる!』
カイゾクオーはそれに気づかぬままに前進した。
――そして、その足はウィーリィが沈む領域へと踏み込む。
その時である。
(今だ――!)
ウィーリィは、全霊の力をもって包丁の背を岩礁へと叩きつけた。
【料理の鉄刃/ブレイドワーク・オブ・アイアンシェフ】。ユーベルコードの領域に達するまで鍛え上げられた包丁捌きは文字通りに岩をも砕く。
『ヌ、ゥ――!?』
そして、カイゾクオーが揺らいだ。
事前の調査によって、比較的脆い組成の岩で構成された岩礁地帯があることに気づいたウィーリィは、こんなこともあろうかと作戦を立てていたのである。
敵は巨大で、そして強力だ。本体に真正面から勝負を挑んでも、容易に倒しきれるものではない。
しかし、いかな巨人であろうともその身体が重力に従っている以上、足場となっている場所が崩壊してしまえば必然的に態勢を崩さざるを得ないのである。
『し、しまった……重心が!』
「よっしゃあ、押し込め!」
「やったれ!」
足元がぐらついたところに、ドートゥンヴォリの戦闘艇が更なる砲撃を仕掛けた。衝撃が更にカイゾクオーの躯体を揺らす――!
『グオオオオオオッ!』
結果――カイゾクオーは、背中から海へと倒れ込んだのである!
「倒れたぞーッ!」
「えへへっ。言ったでしょ、『鼻をあかしてからの方がスカッとする』って!」
快哉を叫ぶドートゥンヴォリの人々へぱちりとウインクを送ってから、シャーリーは水面から顔を出すウィーリィを拾い上げた。
「やるやん、あの2人!べっこう飴の兄ちゃん、こりゃウチらも負けてられへんよ!」
一方、その様子を戦闘艇上から見ていた花月とサルファは次なる行動を開始してゆく。花月は既に自らのユーベルコード出力をもちいて、空中に新たな鮫魔術を描きだしていた。【犀色鮫/ライノパターンカイトフィンシャーク】。描かれたのは、サイの角をもつ剛力の鮫である。
「あァ、せっかく作ってもらったチャンスだ。無駄にしねェでとっとと行くぞ――つーかお前、そろそろその呼び方やめろっつの。再三べっこう飴じゃねェつってンだろ婆臭ェんだよ呼び方が」
「えへへー。まぁええやん!で、兄ちゃん。ウチの鮫に乗ってく?とりあえず奴の腹ん中入らんと始まらんし」
花月は親指で犀色鮫を指す。
「あー――……じゃァ途中までヨロシク」
「よっしゃ、任せとき!」
花月とサルファは犀色鮫に跨って騎乗し、そしてカイゾクオーの姿へと視線を向ける。
「花月ちゃん、あんま無理はせんといてな!」
「ちゃんと無事で帰ってくるんやぞ!」
今まさに出撃しようとする花月へと、ドートゥンヴォリの男たちが声をかけた。
「心配いらへんて!ウチかて本気やで!おとんとおかんから教わった魔法もある。絶対勝って戻ってくるからな!」
「……おう!そうか、なら頼んだで!」
そして、男たちは飛び出す犀色鮫を送り出す。
徹甲おろしに 颯爽と
蒼海わたる 日輪の
星雲の覇気 麗しく
輝く我が名ぞ 繁神(はんしん)タイガス
花月を見送る男たちは、その戦いに声援を送るように、徹甲おろしを唱和していた。
『グ、グググ……!おのれ、おのれ猟兵ども……!』
その一方で、倒れたカイゾクオーは再び戦闘態勢に入るべくその身を起こそうとしていた。――急げ!花月は犀色鮫を鼓舞しながら、その速度を上げてゆく。
「このまま敵の弱点までひとっとびや!」
「あァ、わかった。――そんなら、俺は適当に本丸乗り込むからよォ……派手に押し出してやってくれや」
「む、なんや兄ちゃん?なんか作戦あるんか?」
「あァ。ちんちくりんのお前さんと違って勢いだけで生きてねェんでな」
「あっははは!せやな!……分かった。ウチはできるだけ派手にこいつ暴れさせたるさかい、兄ちゃんが本命や。頼んだで!アンタがリリーフや、っちゅうことやな!」
「リリーフとか柄じゃねェんだけどな……」
そして――接近。2人は間もなく敵の中枢部付近へと至る。
先の交錯において、猟兵たちが穿ったカイゾクオーの左胸の大穴――そこが中枢部への侵入路だ。
「よし、あっこからやな!んじゃ、行くでサルファの兄ちゃん!」
「あ?」
サルファは丸く目を見開いた。
――なんだ、名前くらい言えるじゃねェか。サルファは神妙な顔で表情をやや歪める。
「……合ってるやろ?」
「――オウ。合ってらァ」
サルファは犀色鮫の背の上で立ち上がり、そして一度だけ息を吐いた。
「……しゃーーねェ。行ってくっかァ」
「うん。頼んだで!」
「おう。じゃァな」
サルファはその身体を変異させながら、カイゾクオーの中枢部を目指して入り込んでいった。
「到着!そっちはどう?」
ここでウィーリィとシャーリーの2人もカイゾクオーの中枢部へと至る。
「ああ、いま1人中に入ったとこやで。ウチらもひと暴れするとしよか!」
「わかった。なら、突っ込むぜ!」
「うん。行こう、ウィーリィくん!」
かくして合流した3人もまた、敵の内部へと攻勢をかけてゆく!
『お、おのれ……おのれ、おのれ!何故だ、何故こうまでも……!』
そして――カイゾクオー中枢部。
左胸の内部に存在するこの鉄籠が、文字通りカイゾクオーの心臓だ。そこでは巨人艦隊の名誉船長・ガナマシー――その残霊である魂が燃えている。
「さァな。さんざん好き勝手やってきたんだろ。……年貢の納め時、って奴じゃねェの?」
その鉄籠の前に、サルファは相対した。
「とにかく、お前らはここで終わりってことだ。観念するといい」
飴色の身体を揺らしながら、サルファはゆっくりと更なる変異を続けていた。――【CIGAR】。その身体を、気体へと変える能力である。
『だが、入り込んだネズミ一匹……』
「一匹じゃねェよ。聞こえんだろ」
《ガオォン!》
「ここが中心だよ!」
「よし、これで決着だ!」
犀色鮫が、シャーリーが、ウィーリィがここへ辿り着いたのだ。猟兵たちは鉄籠で燃えるカイゾクオーの心臓部に対峙する!
『ヌウウッ!猟兵ども……!だが、まだ俺は負けたわけでは……!』
「いいや、負けだよ。俺がここにたどり着いた時点でな。……なァ、あんたら。そこから一発撃ち込んでくれ。そしたらすぐに脱出しろ」
サルファは後ろを振り返り、そして気だるげに言った。
「わかった。策があるんだな」
「それじゃ、任せるよ!」
2人はそれに頷いて、シャーリーが熱線銃の筒先を向ける。
「よし。それでいい――――ンじゃァ、逆転満塁サヨナラホームラン。ゲームセットの花火だ」
『なに……?貴様、なにを言って……』
「ド派手に爆ぜろよ」
そして、引き金は引かれた。同時に2人は後退を開始する。
シューティングスターから放たれた熱線は、空間を裂いてまっすぐにカイゾクオー中枢部の鉄籠へと向けて進む――そして、その途上において、その熱は“ある気体”に火を付けたのである。
それこそサルファがユーベルコードを用いて作り出していた、可燃性の毒性気体であった。
中枢部に充満していた可燃性気体は熱線によって点火し、そして瞬く間に爆発的な勢いで燃え広がりながら膨れ上がり、カイゾクオー躯体の内部を満たした。
そして――爆発する!
『ヌオオオオオオオオオオ―――ッ!!』
カイゾクオーの巨体の胸から、頭部から、腰から腕から足からあらゆる箇所から炎が噴き出した!爆炎は内部に搭載されていた膨大な量の榴弾と火薬に引火しながら更に巨大に燃え広がる!
こうして炎に包まれるカイゾクオーは瞬く間に崩れ落ち――かくして、その中枢で燃え盛っていた邪悪な魂ごと骸の海へと還ったのであった!
「……ッア゛ー、死ぬかと思った」
「おわっ!!なんやサルファの兄ちゃん、生きとったんか!!」
戦闘艇へと退避していた花月のもとへ、飴状の身体の体積を何割か失ったサルファが半ば煤けた姿で帰還する。
「あァ。まだリクロージだかのケーキってのも食ってねェからな」
「せやな、約束したもんな。ええで、いくらでも買うたるわ!」
「おう、そんなら俺らがおごったるで!戦勝記念の宴会もやらなあかんしなあ!」
2人のやり取りにドートゥンヴォリの人々が割って入った。それから、勝利を祝っての胴上げが始まる。
「いやー……今回はすげぇ戦いだったな」
「でも、勝てて良かったよ……ウィーリィくん、ボクおなかすいちゃった。島に戻ったら美味しい料理つくってよ」
「ああ、任せろ。宴会の料理も作らなくっちゃだな……やっぱりコナモンか?いや、前に食べた家庭料理も捨てがたい……」
「料理人はこれからが戦いだね」
そして、ウィーリィはドートゥンヴォリの島へと目を向けた。
――港湾区域には既に大勢の人が集まり、勇敢に戦った島の戦士と猟兵たちを出迎えている。風を受けて翻るタイガー・カラーの旗が、誇らしげに掲げられていた。
かくしてドートゥンヴォリを襲った七大海嘯の一派は猟兵たちの手によって撃破され、島には再び平和が戻ったのである。
だが、七大海嘯との戦いが終わったわけではない。
グリードオーシャンでの戦いと冒険の日々は、これからも続くのだ。
成功
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