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変わらぬ光誰が為ぞ

#クロムキャバリア #皇洲連邦 #Coyote #狂月神機 #ディアーナ

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●白刃照らす夜半の月
 皇洲連邦が誇る大都市、帝都秋津。連邦の政と軍を司る眠らぬ街は今、月の白い光を受けて不気味なほどの静寂に包まれていた。
 市内に展開するは連邦を構成する自治領各藩州のキャバリア。そのうちの半数は自領の藩邸を守るべく防衛態勢を取っているが、残る半数はあろうことか自国の軍事の中枢たる帝都城を取り囲み、警衛にあたる元帥府大将軍直属部隊のキャバリアへ銃を向けている。
 軍事クーデターである。国家の方針に異を唱えた青年将校団が決起したのだ。既に帝都を支える発電プラントや国営民営問わぬ帝都中のあらゆる放送局、政府直属の軍警どもの基地はおろか政治中枢たる元老院すらも決起軍の手中に落ち、彼らの敷いた戒厳令が秋津の街を包む異様な静寂を齎している。
 各藩の州軍駐留部隊はどの部隊が決起軍に通ずる者かと疑心暗鬼に陥り、互いに互いを牽制しあって動けない。
 政府直属の近衛部隊もまた、迂闊に帝都で戦火を広げるを良しとせず帝都城の防衛に徹し、反乱部隊と臨時政府の交渉を待つ他に取れる手立てはない。
 決起軍だけが動き回ることが出来た初動の混乱、そしてその間に完成された、決起に与しない者たちへの包囲と相互監視による封じ込め。この状況を作り上げたのは一人の青年将校と彼に賛同する若者たちだった。
 国政を恣にし、皇帝の意向を蔑ろにする国賊奸臣に天誅を下し皇帝の下に挙国一致の統一政府を樹立する。これを即ち大政奉還、これによって足並み揃わぬ藩州制を廃し大陸列強に並ぶ強国、皇洲帝国を築き上げる。彼らはそんな理想を掲げて立ち上がったのだ。
『皇帝陛下の御意志を蔑ろにし、皇洲連邦国民の善意に甘え国政を私利私欲が為に弄ぶ奸臣とはいえ語る舌を持たぬとこの手で誅した我々に野蛮であると、非道であると誹りを向ける方も居られましょう。されど我々は手を汚すことを厭うてはならないのであります。本来この国家があるべきであった姿を取り戻し、皇帝陛下の御心が歪められること無く遍く国民に届く世を取り戻すために我々は起ったのです。どうかご理解頂きたい。我々は国家に仇為す者ではありません。我々が討たんとするは皇洲を蝕む国賊、然るに我々は真の愛国者なのであります!』
 制圧された国営テレビ局で血に濡れた刀を掲げて宣言する精悍なる青年の名は連邦軍帝都警衛師団が第二大隊長、加藤大尉。
 皇帝による政を補佐するはずの元老院首班のうち幾人かを斬って捨てた決起軍の中心人物の眼は、オブリビオンマシンの呼び込んだ狂気によって恐ろしい輝きを宿していた。
 そんな放送が響く帝都の空に月光を浴びてちらほらと雪が舞い始めた。帝都城の庭園から肩に落ちた雪片に気づき、空を見上げ僅かに足を止めた人影がある。ひととき冬空の月明かりを見上げていたそれであったが、先を行く者たちに急ぐよう呼びかけられて密やかに隠された秘密の通路へとその身を投じるのであった。

●雪華散らす夜半の月
「皆! 緊急やけん手短にブリーフィングは済ますよ!」
 猟兵たちを呼び止めた佳奈恵に、普段のような気後れの色はない。猟兵との仕事にも慣れてきたというのもあるが、今回の任務がそれほどに急を要する事態なのだろうと見て取れる。
「場所はクロムキャバリア、皇洲連邦。この帝都でクーデターが起こっとうごた」
 皇洲連邦といえば猟兵たちはつい数日前、オブリビオンマシンの影響で政府の統制を離れ隣国の領海を侵犯した強力なキャバリア艦隊を鎮圧したばかり。
 その時の印象から言えば、彼の国には忠誠心厚い武士の国という認識を抱くものも多かろう。そこで反乱とはまずもって穏やかならざる気配を帯びている。十中八九ふたたびオブリビオンマシンが蠢動しているに違いない。
「このまま放っとったら決起軍と政府軍が帝都で正面決戦ば始めてしまうけん、その前にオブリビオンマシンば止めないかん。もし決戦が始まってしまったら……」
 両軍の将兵だけにとどまらず、帝都市民にも少なからぬ犠牲が出る――だけではないと佳奈恵は云う。
「実は政府軍の反攻に呼応してこの国の皇帝陛下が帝都からの脱出ば試みらすとやけど」
 ――猟兵の介入無くば、佳奈恵の見た予知ではその皇帝を乗せた御座機がオブリビオンマシンの手で撃墜されるのだという。
 そうなれば全てが崩れる。皇帝への忠誠心は本物であったオブリビオンマシンのパイロット、加藤大尉は自らの手で皇帝を討ったことで僅かに残った正気をすら失い、もはやオブリビオンマシン諸共に葬る他に手立ては無くなってしまう。
 そうなる前に猟兵の手でオブリビオンマシンを破壊し、かつ皇帝の脱出を支援せねばならないという。
 オブリビオンマシンの影響から解放された後であれば、無事脱出出来た皇帝からの呼びかけで決起軍も投降するであろうというのが佳奈恵の予想であった。
「とにかく皆には皇帝陛下を守りつつオブリビオンマシンば倒して欲しかと。難しかかもしれんけど、どうかよろしくね」


紅星ざーりゃ
 おはようございます。
 いくらなんでも寒くなるにも加減とか段階ってもんがあるのではないかと昨今の気象に物申したい紅星ざーりゃです。
 例によってクロムキャバリア、今回は皇洲連邦でのクーデター鎮圧がお仕事です。
 一章では帝都から脱出を試みる皇帝一行を護衛し、無事に帝都から離脱してください。
 追撃部隊の攻撃に対し、猟兵の活躍でより多くの護衛機が生存できればそれだけ二章以降の戦闘にもダイスボーナスという形で反映させていただきます。
 二章は決起軍の精鋭部隊との戦闘です。祖国をより良くしたいという思いで蜂起した将校達との戦いは一筋縄では行かないでしょう。
 三章でいよいよ決起軍の首魁、クーデターを引き起こしたオブリビオンマシンとの決戦となります。強力なキャバリアを相手に、皇帝を庇いながら戦うことになります。
 困難な戦いですが、猟兵の皆さんならば必ずや勝利できるものと信じております。

 いずれも冒頭、マスターシーンの掲載直後からの受付開始となります。
 それでは皆様、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『国家元首を護れ』

POW   :    体を張って盾となって護る

SPD   :    遊撃隊として迎撃に出る

WIZ   :    影武者に立候補する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「何者かッ!!」
 帝都秋津の郊外、薄く雪化粧を施されたある外様武家の藩邸の庭に降り立った猟兵たちに鋭い誰何の声が向けられた。
 屋敷の奥から姿を現したのは、キャバリアパイロットの装束に身を包み拳銃を構えた兵たちと、腰ほどまである艷やかな黒髪を後頭部高くで一つに括った若い女武者であった。
 刀身さながらに鋭い容貌の女武者は腰の刀に手を掛け、いつでも猟兵たちへ斬りかかれるよう腰を僅かに沈ませる。だが、猟兵たちには彼女が敵でないことが判った。オブリビオンマシンの纏う禍々しい気配を感じなかったのだ。
 猟兵達の誰かが名乗れば、なるほど素直に女武者は刀から手を離す。やはりオブリビオンマシンに汚染された者ではない、ということは此処に送り込まれたことも鑑みて彼女らは皇帝の護衛であろうと想像はつく。
「葵よ、何事でおじゃるか」
 構えを解き、ひとまず追手の類でないと認めた女武者――葵と言うらしい――に向けて屋敷の暗がりから発された声に、彼女は振り返り雪の上へと膝をつく。
 続けて姿を現したのは白塗りの顔に烏帽子を被り、如何にも高貴な装いの公家然とした男。たっぷりと肉のついた身体を揺らして庭に降り立つなり、猟兵たちをジロジロと睨め付ける。
「何じゃこの者達は。葵よ、説明せよ」
「はっ。この者達は猟兵を名乗っております。然らばオブリビオンマシンの跳梁はもはや確実、加藤めの暴挙はやはり……」
 顎に手を遣り考え込む葵を鼻で笑って、男は猟兵達の前に進み出た。真っ白に化粧された顔をずいと猟兵に寄せて、男は云う。
「まあよいわ。加藤を討つならば麻呂らの味方でおじゃろう。ならば皇帝陛下への目通りを許す」
 ふん、と鼻息荒く猟兵たちを屋敷に引き入れようとする彼に続き、猟兵たちは動乱の帝都を脱しようとする皇洲の帝の前へと進み出る。

 ――軍事列強に名を連ねんとする有数の海軍国家。武家と称する軍閥貴族による自治州を束ねる象徴たる皇帝の容姿は、猟兵達の予想していた屈強なる軍人のそれとも、威厳ある賢王のそれともかけ離れていた。
 年の頃は十に至るかどうかという少年。臣下の謀反という状況に不安を抱いておらぬはずも無かろうに、それをぐっと堪える様に高貴なる者の凛とした気配の片鱗を見せる彼こそが皇洲連邦皇帝たる興徳帝であるという。
 その両脇に控える側近、白塗りの男は元老院副議長――議長が加藤大尉に斬られた今、事実上の元老院議長である――九重小路家当主、九重小路貴臣豊麻呂といい、件の女武者は皇帝直属の常備軍を預かり、有事の際は連邦統合軍の総司令官を務める元帥府大将軍の腹心にして実の娘である葵家令嬢葵旭陽と言うらしい。
 現在のこの国の事実上のトップ三人が集まるにしては手薄過ぎる護衛に、猟兵たちは疑念を抱かずには居られない。それを感じ取り、旭陽は猟兵たちに現状を改めて説明する。
「現在帝都全域に加藤麾下の反乱軍が展開しています。主要施設はほとんど反乱軍の手に落ちましたが、辛うじて帝都城に皇帝陛下を避難させることは叶いました。この帝都城は現在帝都に配備された皇室近衛と大将軍直属の常備軍精鋭部隊が防備を固めています」
 ならばそこで立てこもったほうが良いのではないか、と猟兵が問えば、豊麻呂が首を横に振る。
「葵が言うたでおじゃろうが。帝都に資源を供給するプラントもまた敵の手にあるのじゃ。兵糧攻めされれば如何に精兵であっても長くは持たぬ。それに加藤めは帝都警衛師団の出、帝都城の防備の委細を知る男でおじゃる。侵入され陛下を拉致されようものなら目も当てられぬと稚児でもわかろうものじゃがのう」
 つくづく猟兵を小馬鹿にしたような鼻につく態度の男ではあるが、これでも護衛対象の一人であると猟兵は湧き上がる「コイツは見捨てても良いんじゃないか」という気持ちを飲み下す。
「こほん。――ですので、我々は大将軍殿下とその直属部隊による帝都城の籠城戦を陽動として帝都を脱出します。まもなく帝都城の部隊が包囲する反乱軍に対し攻勢を掛け、うまく行けば陛下の御座機に偽装した囮の部隊が強行突破を、最悪の場合帝都城に反乱軍を引き込み消耗戦を挑む手筈。私達はこの藩邸に秘匿されたキャバリアを使い、帝都城が敵主力を誘引している間に帝都を脱し第二帝都葦原に向かいます」
 最悪の場合、葦原を拠点に各藩から戦力を抽出して帝都奪還を図ることになる。そうなれば――いや、この戦いで決着したとしても、流れる血の量は決して少なくないだろう。
 興徳帝はそれを想ってか悲痛な表情で猟兵に請うた。
「そち等が朕を護ってくれると言うならば、どうかもう一つ願いたい。朕の臣下、民もどうか護ってほしい。朕も加藤に戦いをやめるよう命ずるから、どうか」
 幼くとも決して軽くはない頭を下げようとする興徳帝を豊麻呂が制し、旭陽が改めて猟兵たちに深々と頭を下げる。
「私からもこの通りだ。どうか力を貸してくれ」


 雪の勢いが強まる中で、爆発音と閃光が夜の帝都を騒がせる。
 帝都城に籠城する政府軍主力部隊が反乱軍に対して反攻を開始したのだ。
「今だな。全機出陣! 振り返らず進め! 我が身を盾としても皇帝陛下をお守りするのだ!」
 旭陽の機体に同乗した興徳帝を守るように円陣を組んで屋敷から飛び出す七機のキャバリア隊。猟兵たちは彼らを守るべくそれに同行する。
『そこの所属不明機、直ちに武装を解除し停止せよ! 命令に従わぬ場合強硬手段を行使する!』
 ――流石に帝都城が猛烈な抵抗を開始したとはいえ、帝都全ての反乱軍をそちらに差し向けるほど敵も愚かではないらしい。盾を構え、突撃銃と刀で武装した量産型キャバリアの部隊がみるみるうちに集まり、並走し、あるいは追跡を開始する。
 脱出部隊の数倍以上の数だが、その数は決して対処しきれぬ程ではない。猟兵は七機全てを生きて帝都から脱出させるべく月下の帝都に踊り出る。
エデルトルート・ライゼンハイマー
(M・アドリブ連携歓迎)
心情:あのこちらを小馬鹿にした豚はどうでもいいですが、かの帝。その心意気は良いですわ。オーホッホホホ! であれば! このわたくしが全霊を保って生かしましょう!! そして元より煽動されただけであれば、敵機を殺す必要も無いでしょう

方針:元よりわたくしの機体に護衛等不向き。であれば遊撃にと動きましょう。全力で並走するこの戦場。そして目的は脱出。であればそもそも撃滅の必要も無し。我が両刀をもって、『オーバーブースト・マキシマイザー』にて追いすがる敵兵の足を斬りましょう。
機動力を失い停止した敵機等、この戦場においては捨て置いて問題ありませんことでしてよ


アリシア・マクリントック
撤退戦ですか……ふむ。移動しながらとなると防御の要である陣や罠は使いにくい……であれば、進軍をためらわせる一番有効な手段は伏兵でしょうか。
それなら私は私の能力を最大限活かすとしましょう。扉よ開け!ティターニアアーマー!敵戦列に突撃、一当てしたら少し離れて変身解除!そして待機させていたシュンバーに乗って皇帝一行の方へ移動です。

敵が進軍を再開してしばらくしたところで再度ティターニアアーマーに変身して一当てして離脱……というのを繰り返しましょう。
神出鬼没のキャバリアが繰り返し奇襲をしてくるとなれば行軍速度は落ちるでしょうし、こちらは敵を倒すのが目的というわけでも無いですからね。これが効率的なはずです


トリテレイア・ゼロナイン
※(量産機ベースだから上半身が新しい)ロシナンテⅣ搭乗

皇帝陛下は言うに及ばず
九重小路様も政治的空白を避ける為に必要なお方
護衛機の方々も後の戦闘を考えれば…
優先順位あれど一機も落とされたくはありません

葵様、帝都の地図情報をこちらに送って頂けますか
貴国を脅かす者に流すこと無きことをお約束します

此方が本命と悟られれば闇雲に追わず、袋の鼠とする為追っ手の配置を整えるやもしれません
多芸の自覚はあれど、貴人の護衛こそ私の正式な用途
信頼にお応えいたしましょう

彼らを●かばいつつセンサーでの●情報収集も合わせ
瞬間思考力動員しUCで立案
長距離狙撃も考慮しつつ(●スナイパー知識)リスクを抑えた脱出ルート●見切り先導




 藩邸を飛び出した脱出部隊は、旭陽の駆る皇帝御座機を中心に守るよう円陣を組んでまっすぐに駆け出した。
 猟兵たちはそれを更に護衛するよう陣形の外縁に自らを配し、脱出部隊に並走する。追ってきた反乱軍機はまず猟兵を突破せねばならず、流れ弾が皇帝を害してしまうかもしれないという躊躇から長中距離での機動射撃戦は選択しづらい状況にある。
 混戦に持ち込まれない限りはなんとかなる――だが、此処は反乱軍にとっても馴染み深い帝都。地の利は敵にもある以上、不意に護衛の只中に敵部隊が出現するといった奇襲を警戒しないわけにもいかない。
 トリテレイアはその生まれ持った要人護衛機という役割を存分に活かせる戦場に闘志を昂ぶらせ、皇洲連邦軍との交戦で破壊され新調したオーバーフレームが眩いロシナンテⅣの手綱を握りしめた。
「葵様、帝都の地形情報を送って頂けますか。叶うならば猟兵各機への共有もお許しください」
 この状況における地形情報とは、書店で買えるような単純な地図ではない。軍が秘匿するような、キャバリア戦において利用可能な抜け道や反乱軍に制御を掌握されてしまった場合を想定し接触を避けるべきである防衛システムの配置などを含む機密情報である。
 言外にそれを含ませたトリテレイアに、大将軍の娘として軍務経験豊富な旭陽はその意図せんとする内容を正しく理解し、それ故に躊躇する。猟兵は味方だという認識はあるが、しかし異邦人でありその在り方は傭兵に近いとも聞いている。その証拠に、先の下ノ瀬藩の謀反騒ぎでは人民平等会議軍について藤堂将軍の率いた艦隊と矛を交えた者も居るという。
 まさにその一人であるトリテレイアは、機械仕掛けの眼差しを真摯に旭陽に向け、ここで得た情報は決して皇洲連邦外に流すことはなく他の猟兵にもその意志は無いことを誓う。
「私としては貴方達であれば信じてもよいと考えていますが……」
「ならぬならぬならぬ! 我が国の重要軍事機密を異邦の者共に見せるなど外患誘致も同然でおじゃる!!」
 旭陽の言葉を遮るのは、円陣の後尾に付いた機体を肥えた身体から想像する様とは裏腹に軽快に走らす豊麻呂であった。
「此奴らは今は味方とて次もそうであると誰が保証できようか。ならぬぞ葵、麻呂は断固反対でおじゃ!」
 そのやり取りを耳にして、エデルトルートは常に絶やさぬ不敵な笑みの頬を引きつらせた。豊麻呂の言い分も理解できぬではないが、助けに来た猟兵を相手に何という言い草であろうか。
「この豚は……!」
 だからちょっとばかりノーブルでない発言がまろびでても仕方あるまい。貴族的には売られた喧嘩は買わねば恥、つまり此方を小馬鹿にした上無礼な態度を取り続ける豊麻呂にちょっぴりの暴言が出てもギリギリノーブルでOKだと自分を納得させ――そんなファッキンな豚野郎である豊麻呂を諌める興徳帝の姿に目を丸くした。
「やめよ、九重小路。そなたが朕と国を案じてくれているのはよく分かっている。しかし口論をする間にも加藤の手のものが迫っているのであろう? 朕は不要な戦いを望まぬ。葵よ、猟兵の者が望む物を見せてよい。朕が許す」
 あの豚に比べてこの幼い帝の心意気よ。
「オーッホホホ! 気に入りましてよ皇帝陛下! であれば! 貴方は! このわたくし、エデルトルート・ライゼンハイマーが全霊を以て生かしましょう!」
 ロシナンテから配信されたマップデータをコックピットの隅に表示させ、エデルトルートの駆る紅の騎士機、ゲフェンリヒメッサーが隊列を離れ追手のもとへと切り返す。
「ライゼンハイマー様、どちらへ!?」
 突然護衛部隊から離脱した機体に面食らったのはトリテレイアだ。奇襲を警戒しつつこのまま全機で皇帝機を守り脱出するつもりでいたところに突然進路を反転する機体が現れればさもありなん。
「愚問ですわよ貴方! 元よりわたくしの機体は護衛など不向き。であれば遊撃に徹し敵の足を鈍らせるのが最良と判断したまでですわ!」
 トリテレイアが受け取ったマップデータを参照すれば、しばらくは奇襲を警戒するような脇道もない。後方の敵小隊を軽く薙ぎ払ってから再度合流を図るのでも十分だろう。
「確かにエデルトルートさんの作戦は有効そうですね。決めました、私も一緒に行きます」
 逆走するゲフェンリヒメッサーに追随するアリシアのティターニアアーマー。速力にはやや劣る重装甲機だが、道を塞ぐのにこれほど適した機体もあるまい。
 敵部隊の方から此方に接近してくれるのだから、足りぬ機動力も考慮する必要がない。
「よい覚悟でしてよ! ならばこのわたくしに続きなさい!」
「ふふ……ええ、私達の王ではありませんけれど、陛下の信頼に応え貴族の務めを果たしましょう! トリテレイアさん、本陣の守りはどうぞよろしくお願いします!」
 離れていく二機の背中を振り返らず、トリテレイアは託された使命を胸に脱出部隊の前に出る。
 護衛機としての性能、これまでの戦闘経験、自らの知る全てを動員して脱出部隊をより伏撃のリスクが低く安全なルートに導くために。
「皇帝陛下は言うに及ばず、葵様も、そして九重小路様も政治的空白を避けるために必要なお方。護衛機の方々も後の戦闘を考えれば……」
 全機生存に拘り肝心要の皇帝に危害が及んではならない。ときに護衛機を見捨て切り捨てる判断も必要だが、それは最後の手段だ。
 ――エデルトルートとアリシアもまた、時間と状況が許す限り合流を待ちたい。トリテレイアは二人の無事を願い、そして機体を走らせる。

 一方の脱出部隊後方では、二機のキャバリアが追撃部隊を相手に大立ち回りを繰り広げていた。
 猛然と突進してくるティターニアアーマーは比較的鈍足に分類されるキャバリアだが、追撃部隊も相応の速度を出している以上相対速度は相当のものだ。
 その上敵は追撃部隊の量産機に比べてかなりの重装甲。正面衝突すれば機体がバラバラにされかねないとなれば、追撃部隊は陣形を崩してでもこれを回避せざるを得ない。
 そうして隊列が乱れた所を――
「エデルトルートさん、今です!」
「任されましたわ! 我が両刀の冴えをご覧あそばせ!」
 孤立した機体に目掛けて襲いかかる紅。ゲフェンリヒメッサーが腰部のスラスターバインダーに固定された鞘からスラリと二刀、双龍飛天を抜き放ち刃を閃かせる。
『くそっ、主脚をやられた! これ以上の追撃を断念する……!』
 さすれば二足を斬り落とされた敵機は地面につんのめり、それから先は追撃など不可能。
 そうして敵機の注意がゲフェンリヒメッサーに集中し、突撃と斬撃を切り抜けた機体がエデルトルートに斬りかかるころ、アリシアは待機させていた愛馬シュンバーに跨り再び進行方向に向けて移動する。
 キャバリアのようでありながら実際にはキャバリアではなく、変身によって展開される文字通りのアーマーであるティターニアアーマーの特性を活かして一当てしては変身解除し騎馬で先回り、そして再び突撃というサイクルは、同じ機体が同じ方向から何度も強襲してくるという強烈な印象で反乱軍の兵士たちにプレッシャーを与え続ける。敵は本当は何機いるのか。また来るのか。そういった混乱を突いて振るわれたゲフェンリヒメッサーの刃が次々と敵機を行動不能に叩き込む。
「このくらい叩けば大丈夫でしょう。オーッホホホホホ! 機動力を失い停止した敵機などこの戦場においては捨て置いても問題ありませんことよ。アリシアさん、そろそろ本陣に合流しても宜しいのではなくて?」
「そうですね、こちらも敵を全滅させるのが目的というわけでもありませんし。脱落した機体の救護に割く人員を考えればあの隊はこれ以上の追撃は不可能でしょう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「あの麻呂、ホントむかつく…殺す?瑠璃」
瑠璃「我慢だよ、緋瑪。皇帝と旭陽さんは助けてあげたいしね。特に、皇帝はあの幼さで立派じゃないかな」
緋瑪「むー…いつか理由できたら殺そう」

【破壊の姫君】で分身

デュアル・ジェミニオンに搭乗、二機(瑠璃機と緋瑪機)に分離。
空中からキャバリア仕様にしたジェノサイドボムで敵の足元に空爆を仕掛け、更にK100に雷撃付与【属性攻撃】して敵機に打ち込んで内部機構をショートさせて行動不能にしたり、機巧大鎌で敵の武装や四肢を両断してダルマにする等して可能な限り行動不能に。

緋瑪「臣下も守ってくれ、って言われたからね」
瑠璃「反乱軍も元は臣下だしね。まぁ、仕方ない」


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

幼い少年皇帝…
葵という女武者と…ついでに白塗りの男…

ともかく…彼らを護る為に行こうか…私は処刑人…!

生身で戦場に出撃、[存在感と殺気]を放ち
敵群を[挑発しおびき寄せ]護衛対象と護衛機への攻撃を逸らそう

戦って死ぬつもりだな…ならば死神が来るぞ…今ここに!

【リビング・アーマードゴーレム】で
[不意打ちで地形を破壊]しながら地中よりイシュ・タブを召喚
敵群を[おどろかし恐怖を与え]混乱させよう

鉄塊剣を振るい[怪力と鎧砕き]で
敵機の腕や脚を[切断し部位破壊]
イシュ・タブにはマカフトゥによる[範囲・重量攻撃]で
敵群を[なぎ払い、吹き飛ばし蹂躙]しよう…

逃がすまいぞ…我は処刑人…そして…死神だ!


槐・白羅
帝…皇帝…良いな
実にいい響きだ
俺が国を打ち建てる時は性を「皇(こう)」に変えるのも悪くはない

その時はモルス
お前を皇帝機としてやろう(微妙な抗議の気配

戦争ならば防衛戦もこなさないといけないな

【殺気】を放って牽制
敵の銃撃に対して常に皇帝と護衛達を庇い
【受け流し】でダメージを軽減

庇いきれない場合はUC起動

皇帝よ
今お前を襲う相手も守れとは中々に欲深い!
だが良い!
助けたければ丸ごと助ける
だが欲を満たすには考えねばならぬ事も多い
難しいよなぁっ!

接近してきた敵機は
【貫通攻撃】で破壊
但しコックピットは確実に外し

殺さぬ事は不満かモルス

それだけ死は恐ろしい物と言う事だ
それは良く判っているだろう?




 後方からの一隊が猟兵の奮戦で足止めされ、脱出部隊は新手が現れるまでとはいえ僅かな猶予を得た。
 が、それは後方に関してのみのこと。側面を並走する反乱軍部隊は、自らと協調して後方を押さえ半包囲を展開していた友軍が追撃を断念し脱落したことを察すると三部隊による包囲から二部隊での挟撃に切り替え、徐々に彼我の距離を詰めてきたのだ。
「ええいええい何をしておるのでおじゃるか! 敵が迫っておるぞ! 貴様らはよう迎え撃たぬか!!」
 牽制を加えながら機体を寄せてくる反乱軍部隊を指して豊麻呂が喚く。護衛部隊のキャバリアは反乱軍が背に置く帝都の町並みを、反乱軍部隊のキャバリアは護衛部隊が守る皇帝御座機を誤射せぬよう射撃はあくまで速度を緩めさせるための牽制として撃ち合えば、双方目立った損傷も無いまま徐々に乱戦の距離にまで近づいてゆく。
「陛下と麻呂に万一があってみよ、貴様らの責任問題でおじゃるぞ!」
 喚いたところで何が解決するでもあるまいに、言葉を矢弾に撃ち合う議会こそ戦場であったが為か舌先はよく回る豊麻呂に護衛部隊の面々もストレスを感じずにはいられない。今はそれどころではないのだ。皇帝御座機を守るために、そして豊麻呂を守るために神経を尖らせているパイロットたちの神経を逆撫でする白塗り公家の金切り声――に、ついに堪忍袋の緒が引きちぎれた者がいる。
「あの麻呂……ホントむかつく。殺す? 瑠璃」
 四季乃姉妹――姉妹という表現は厳密には正確ではないが――の片割れ、緋瑪である。
 一つ身体に複数の意志を宿す多重人格者にして、程度の差はあれ両者ともに筋金入りの殺人鬼。そんな緋瑪の虎の尾の上でタップダンスを踊る豊麻呂は、自身が今まさに味方から殺意を向けられている事に気づかず口角から泡を飛ばして敵部隊の迎撃を命じている。
 そんな豊麻呂機の背後にするりと忍び寄る緋瑪の機体、デュアル・ジェミニオン・ツヴァイ。
 隙だらけの機体を一撃で破壊し、コックピットをミンチにすることなど容易い――が、その衝動を片割れである瑠璃に止められ緋瑪は唇を尖らせる。
「駄目だよ緋瑪。あの幼さで立派なあの皇帝と旭陽さんは守ってあげたいじゃない? その麻呂を殺したら肉盾がひとつ減っちゃう」
「むー……いつか理由できたら殺そう」
 皇帝に敵が迫ったときにでも麻呂の機体を身代わりに蹴り込むか、と企む四季乃機は、二機で陣形の右翼側に割り込んだ。
「瑠璃、たしか臣下も守ってくれ、って言われたよね」
「反乱軍も元は皇帝の臣下だしね。まぁ、今回は仕方ないよね緋瑪」
 対人戦におけるジョーカー、人を狩ることにおいて指折りの実力者である二人が右翼側から迫る敵部隊に対してその得物を構える。
「いくよ、緋瑪」
「いこう、瑠璃」
 瑠璃の機体が跳躍し、頭上から威力を弱めた爆弾を撒き散らす。
 機体への損傷は殆どないが、爆風と閃光に怯んで足を止めたならばそれでよし。
 続くキャバリア用ハンドガンの銃撃は、弾丸に封じ込められた高圧電流で機体の制御機構をショートさせた。
 完全に動きが止まれば、一足で懐に飛び込んだ緋瑪の機体が大鎌を振るう。庭に蔓延る雑草を刈り取るように無造作に振るわれた刃は、追撃部隊の機体からいとも容易く四肢と首をもぎ取った。
『ひ、うわあぁぁッ!! 援護を、誰かッ!!』
 相手はふたりでひとりの殺人姫。ヒトの壊し方をよく知る少女たちは、人型を模したキャバリアとてヒト同然にバラして壊す。まるで自らの肉体を破壊されるような錯覚を覚えて絶叫する敵兵達の悲鳴をすら豊麻呂の喚きよりは心地よいと、楽しげに不殺の殺戮を繰り広げる二人を止められる戦力はもはや存在し得なかった。

 同じころ、左翼側にはアンナと白羅が展開し反乱軍を迎え撃つ態勢を整えていた。
「幼い少年皇帝……それに葵という女武者……」
 守るべき存在を確認するように呟くアンナは、耳障りな豊麻呂の喚きに眉根を寄せて仕方無しに護衛対象に白塗りの男を追加する。
「彼らを護るために行こうか……私は処刑人……!」
 ならば主君に仇為す罪人に罰を。接近した敵機の足元で舗装路がひび割れ、地中から土にまみれた巨大な手が伸び脚を掴む。
『な、何だッ!?』
 掴んだ脚を引きずり込むように、あるいはそれを手がかりに地獄から這い出るように。
 腐乱死体のような、木乃伊のような、白骨のような巨大な女が地中から這い出してくる。
「お前達、殺意は無くとも皇帝に刃を向けるということは戦って死ぬつもりだな……ならば死神が来るぞ、今ここに!」
 掴んで引き倒した敵機を手にした巨大な刃付きの木剣、マカフトゥで押しつぶし、下半身を粉々に叩き壊したそれ――アンナが使役するオブリビオンマシン、イシュ・タブが虚ろな喉から咆哮を上げれば左翼敵部隊は目に見えて狼狽える。
『なんだ……何なのだ、この機体は……!』
「鋼鉄の巨人よ……心の臓に地獄の炎を宿し、動くがいい……!」
 アンナの命に従いゆらりと動き出すイシュ・タブ。マカフトゥを力任せに振り回し、剣の腹で殴り飛ばした敵機を吹き飛ばす。
 倒れ込んだ敵を狩るのはアンナの役目だ。機体の上に飛び乗り、鉄塊剣で四肢のジョイントを叩き折る。
「逃すまいぞ……我は処刑人、そして……死神だ!」
 奇怪なキャバリアと不気味な女の手で次々と破壊されていく友軍機。追撃部隊のパイロットたちはその凄惨な光景に目を奪われ、竦んでしまっている。その好機を逃すまいと動き出した者もいた。
「おっと、俺を前に余所見とは貴様もしや相当の達人か? ――ということもなさそうだな」
 イシュ・タブの異様な姿に足を止めた敵機の一つを捉え、瞬く間に両肩を刺突で砕いたキャバリア。冥導神機『モルス』のコックピットで白羅は敵パイロットの実力を過大評価してしまったことに困ったような、嘲笑うような表情を浮かべる。
「しかし殺してはいけない、か。己を今まさに襲わんとする相手も守れとは中々に欲深い! それでこそ王者の器なのだろう! 助けたければ選ぶなどという真似をせず丸ごと助ける、良いではないか! だがその欲を満たすには考えねばならぬことも多いぞ? 難しいよなあッ!」
 反乱軍とて殺さぬよう願う皇帝のそれを甘さと見るか、帝位を持つ者が自らの所有物をたとえ不要であっても傷一つ付けずに棚に仕舞っておきたい我儘な欲と見るか。どちらであれそれはこの先辛い選択を皇帝に強いるだろう。
 イシュ・タブの齎した恐慌から立ち直りつつある敵部隊が散発的に反撃を寄越すが、これを受け流し護衛部隊のキャバリアを庇いながら一つずつ丁寧に刃を突き刺し無力化して白羅は笑う。
「何だ、殺さぬことが不満かモルス。何、それだけ死は恐ろしいものということ。知らぬお前ではなかろう?」
 機体が訴える不満を宥めて刃を振るう。死が形となった僚機を、そして右翼側の戦場を見るが良い。あれはもはや戦闘ではないもっとおぞましいものだ。
「お前の齎す死はああいうものではないだろう。しかし……皇帝、いい響きだな」
 俺が国を打ち立てた暁には皇を名乗るも悪くない。その暁にはお前も皇帝機だぞ、と笑う白羅は、今一度モルスから不満げな気配を感じるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
ハハハハ!良かろう!貴殿らの血路、我ら黄昏大隊が斬り拓くとしよう!

脱出部隊の直接の護衛は他の者に任せ、余は攻勢に出て足止めと撹乱を行う。
ヤークト・ドラッヘに【騎乗】、黄昏大隊・突撃部隊にて呼び出した突撃兵と共に敵へと吶喊する。
突撃兵は三機一組にて行動、それぞれ連携の上にて敵機へ突撃させこれを吹き飛ばし、可能ならば別の敵機へぶつけ諸共の転倒を狙う。
余は速度を以て敵集団の撹乱を試み、突撃兵の攻撃を支援。
敵の隙を見て、乗機搭載火器での【砲撃】や【誘導弾】で四肢を破壊しての無力化を試みよう。
コクピット部への攻撃は避け、可能な限り敵機搭乗者の殺害は回避。兵にも同様の旨命じておく。


東雲・一朗
▷アドリブ歓迎

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
帝都製キャバリアの桜花壱式に搭乗。

▷迎撃
遠き異世界、奇しくも我らが桜の帝都と似た国…これはあり得たかも知れぬもう一つの祖国。
「陛下、御身はこの帝都軍、帝都第十七大隊が必ずや御守りいたします」
同じ帝都防衛大隊、同じ大隊長として…加藤大尉、貴官の闇は私が祓う。
「帝都軍、東雲少佐ここに在り!」
まずは追撃部隊を蹴散らす。
桜花の霊気による【オーラ防御】を纏った桜花一式で【切り込み】をかけ、二刀で敵機を【切断】しながら敵集団を【戦闘知識】と【団体行動】経験で誘引、機を【見切り】【大隊指揮戦術『参』】の【集団戦術】で多数の敵機を追撃不能へ追い込む。




 脱出部隊の出現に即応した三つの部隊はこれで壊滅した事になるが、しかし彼らもその任務を十全とは言えぬまでも全うした。
 脱出部隊の行進速度を遅滞させ、さらなる反乱軍部隊の介入までの時間を稼ぎ出したのだ。三個部隊の全滅と引き換えに得られた数分の間に、帝都各所に伏せられていた兵力が次々と護衛部隊に喰らいつく。
『――あの者たちを帝都から出すな! 本物の陛下をお連れかどうかは止めてから検めればよい!』
『承知! しかし隊長、もしあれが影武者であったら?』
『本物はやはり帝都城に居られるということだ。加藤大尉の隊が陛下をお迎えに上がるだろう。が、此方が本物ということも十分にありうる! 中央の機体には傷を付けるでないぞ!』

 前後から挟み撃ちするように出現した敵部隊。これを示すようにレーダーに表示される光点は、そのどちらもが数個中隊規模の大規模部隊であることを示す。
「ぬぅッ……! これだけの数が反乱軍に加担しておじゃるか! 軍の統制はどうなっておるのじゃ!」
 豊麻呂の憤懣をぶつけられた旭陽は唇を噛む。一枚岩ではない各藩州軍だけでなく、父である大将軍直率部隊からも反乱軍に合流する者が現れていたのだ。
 帝都城を包囲する部隊の大部分は大将軍が編成した所謂国家の常備軍。彼らが城を護る精兵を抑えているがために、加藤大尉に呼応した藩州軍の部隊が思うままに帝都内を闊歩し進路を妨げているのだ。
「――斯くなる上は強行突破あるのみです! 全機、陛下と議長閣下の盾となれ! 此処が死に場所と覚悟せよ!
「承知! 皇帝陛下の御為に死ねるならば本望にございます!!」
 護衛部隊のキャバリアが鏃のような陣形で強行突破を選び、前衛の全てが撃墜されようと皇帝が座乗する機体と豊麻呂の機体の二機だけは前方の敵陣を突破させんと決死の覚悟を決める。
「いいや、それには及ばん!」
 だが、その覚悟を制する声が飛ぶ。
「ハハハハハ! 見事な覚悟、良かろう! 貴殿らの血路、我が黄昏大隊が切り開くとしよう!」
 二輪で駆ける重装鉄騎を駆り、帝都の舗装路を覆う薄氷を削り取るようなハンドル捌きで陣形の前に出るはヤークト・ドラッヘを駆るギージスレーヴ。
「ふむ――では後方から来る部隊は我々第十七大隊が引き受けましょう」
 薄紅色の機甲を唸らせ陣の後背に付き、足を止めてこれ以上は一歩も進ませぬと道を塞ぐは桜花壱式を駆る東雲少佐。
二人の指揮官が前後から迫る戦場を我が物であると宣言すれば、そこはもはや彼らの檜舞台も同然だ。
「ほぉう。ならば後方は任せるぞ、帝都軍の!」
「傭兵……皇帝陛下の身柄に万一のことがないようくれぐれも」
 互いに互いを優秀な指揮官であると認識し、自身の及ばぬもう片方の戦場を委ねて駆ける。
 ――戦争が始まった。
 最初に接敵したのはギージスレーヴが率いる黄昏大隊が精兵、突撃部隊だった。キャバリアには及ばぬとて歩兵の領域を超えた重強化歩兵装甲に身を包んだ兵士たちが指揮官の意思に忠実に前進する。
 大型バイクの速度に負けぬ行軍速度は彼らがその装備だけでなく存在すら尋常の兵ではないことを如実に物語っていた。
「総員傾注! 敵はキャバリアだ、一筋縄ではいかん。必ず三機一組であたり行動の阻害を目標とせよ!」
 いくら人外の能力を持つとはいえ、突撃兵の攻撃力ではキャバリアに満足なダメージを与えられるかは不確定要素だ。ならば最初から彼らの行動は支援に留め、脱出部隊が通過できるだけの封鎖線の穴を抉じ開けられればそれでよし。
「それから追加オーダーだ! 敵機の操縦兵は殺すな。クライアントたっての希望である! 厳守せよ!」
 無言で頷き、敵陣に切り込む重装兵たちを追い抜いて、ギージスレーヴがまず敵部隊に飛び込んだ。
『車両単機で挑んでくるか、命知らずな!』
 自らを凝視する敵部隊の無数の銃口。雪降るモノクロの夜の中でも一際に暗く黒い孔から出るのは死を齎す鉄片だ。
 それが自身の身体からほんの数十センチの距離に降り注ぐのを衝撃で感じ取りながら、戦争狂は砲弾の中を駆け抜ける。
 そうして駆け回るギージスレーヴに気を取られた機体に重装兵が激突すれば、敵機は凍った路面で踏ん張りも利かず姿勢を崩して地に沈む。
「地形状況の把握は戦争の初歩であろう。理想は高くとも戦争のやり方を知らぬのか、貴様らは」
 重装兵に引き倒された機体から順に、ヤークト・ドラッヘに搭載された火器兵装の餌食となって手足を吹き飛ばされてゆく。
 抉じ開けた道を、脱出部隊のキャバリアたちが駆け抜けてゆく――

「遠き異世界、とは些か信じがたい程に似ているな。これも奇縁か、我らが桜の帝都のあり得たかもしれぬ姿というものか」
 ならばこの皇洲連邦はその男にとって守るべき祖国も同然。
 サクラミラージュの帝国軍人、東雲一朗は乗機桜花壱式を操り佩いた刀に手を掛ける。
「陛下、御身はこの帝都軍第十七大隊が必ずや御守りいたします」
 遥か先に征く幼き皇帝に誓い、正面から接近する反逆の徒を鋭い眼光が睨みつけた。
「帝都軍、東雲少佐ここに在り! 忠誠を忘れ国家の安寧を乱す叛徒共よ、此処より先一歩たりと踏み込めると思うな!!」
 その並々ならぬ気迫を込めて放たれた名乗りに、反乱軍部隊の機体はたじろいだ。正面にて単機道を塞ぐ見慣れぬキャバリアを駆るのはただならぬ遣い手だと分かったのだ。
『皇帝陛下の温情を良いことに国政を恣にし私欲を満たした元老院と元帥府を討つことこそ真の忠義、貴様も忠を語る武者ならばそこをどけ!』
 その言に一朗は眉を顰める。彼らの言い分が真であったとして、しかし一方的に政府首班を処断し帝都に戦乱を齎した彼ら決起軍のやり方を認めることは断じてできぬ。
「皇帝陛下はこれ以上臣下が傷つく事を望んでは居られない。あの方は貴殿ら反乱軍も等しく案じておられるのだ」
 それを理解できぬと、断固闘争で以て皇帝陛下に自らの正当性を主張せねばならぬと言うならば――踏み込んだ桜花壱式の二刀が敵機のオーバーフレームを斬り飛ばす。
「貴殿らを殺しはしない。だが、貴殿らに銃を握らせたまま皇帝陛下の御前に征かせるわけにはいかん!」
『――ッ! 対キャバリア戦、敵は一機だ! 包囲して殲滅せよ!!』
 数の差が明白な以上、一朗を無視して進めば良かろうものを後背を脅かされるのを嫌って――そして彼の見せた達人的な技量を目の当たりにして警戒心を高めた敵部隊は、まず桜花壱式を排除するべく包囲を敷く。
 全方位から襲いかかる銃弾を、斬撃を二刀を振るって制した一朗は、その戦いの中で戦場を民家から離れた大型商業施設の駐車場へと引きずり込む。
「ここならば被害は最小限に抑えられるだろう。爆撃機隊……放て!」
 桜花壱式の尋常ならざる強さに気を取られていた決起軍の将兵は見た。殲禍炎剣に撃たれぬ超々低空飛行で帝都に侵入する旧式爆撃機の編隊を。
『馬鹿な……何処からこんな部隊を……ッ!!』
 ――驚愕の声を塗りつぶすような、天上から来る何かが風を切る音。はらはらと降る雪を押しのけ降り注いだ紅蓮の炎が、キャバリアの四肢を破壊し追撃不可能な損害を与えてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
なぁんだロリ皇帝じゃないのか…

拙者は護衛隊の進行方向に先行して包囲をぶち壊してくるから
護衛より暴れる方が爽快でござるからな!

帝都なら建物の群れなりあるだろう、なので拙者が本当の市街地戦闘を教えてやる
建物を遮蔽物にしながら敵部隊に接近、物陰から近くの一体に【流体金属】君を付着させる
すると流体金属君がコクピットにスゥーッと浸透してこれはありがたい…
ちゃんとパイロットに悲鳴をあげさせて部隊全体を浮足立たせるんでござるよ

後は流体金属君に次なる獲物を襲わせたり突然湧いてくる【地雷】を仕掛けて罠にはめたらりしながら各個撃破ですぞ
理想に燃えるしか能がない若造共を羽虫のように蹴散らすのは楽しいネ!


才堂・紅葉
(小さいのに良い度胸ね。嫌いじゃないわ、そう言うの)
幼い帝の胆力に感心する

方針
【礼儀作法】で許可を求め、旭陽または七機のいずれかの肩に生身で同乗させてもらう
【迷彩】ガジェットで身を隠し、金具と強靭な体幹による【怪力】で身を支え、戦況を見届けつつ市街図の【情報収集】
見通しの悪い市街戦だ。反乱軍が何処を防衛の要にするか、伏兵を置くかを【戦闘知識、拠点防衛】を活かして割り出したい

「はい、そこっ!!」
【地形を利用】しようとする相手を【見切り】、虎の子のUCで地形ごと破壊する【カウンター、先制攻撃】を狙う

「迦楼羅王!」
指を鳴らし、虚空に飛び出して搭乗
勢いを殺さず先陣を切りたい

「斬り込むわ。続いて!!」




「ねぇ才堂殿聞いてくれる?」
 追撃部隊を仲間たちが次々に打ち破り、あるいは後方で釘付けにしてくれている。彼らの奮戦で脱出部隊は今の所脱落なしとはいえ、次に命を捨てる覚悟で敵を食い止めるのは自分かもしれないという兵士たちの覚悟で戦場にはピリピリとした空気が漂っていた。
 それを打ち破るような気の抜けた髭男の声に、紅葉は一応聞いてあげますけれど、と前置きして話半分に耳を傾ける。ヒゲの戯言よりもキャバリアが接近する時の振動や駆動音を聞き分けるほうに意識を集中させたほうが幾分かマシだろう。
「いやね。拙者皇帝陛下のソプラノボイス聞いたときに思ったんでござるよ。ロリ皇帝キター!! って。でもさ……なぁんだ、ロリ皇帝じゃないのか……」
 ほうらみたことか戯言であった。割と不敬罪待ったなしの部類の。だいたい皇帝がショタではなくロリだったならどうだと言うんだ。
「きっきき貴様ァ! 皇帝陛下に何たる物言い、不敬でおじゃるぞ!! 打首じゃ打首!」
「今回ばかりは九重小路様殿に同意せざるを得ませんが後にしてください!!」
 エドゥアルトことヒゲを打ち首にせよと怒り心頭の豊麻呂と、それを宥めつつもヒゲへの冷たい視線が外気温を下回る域にまで急降下した旭陽。
「白塗りデブはともかく姫武将にそんな目で見られたら拙者ドキドキしちゃうでござるな……!」
「あー、彼とは面識があったかもしれないとかその程度の顔見知りなので一緒にしないでくださいね」
 そんなエドゥアルトをすっぱりと切り捨てた紅葉は、この良く言えば重い緊張感を吹き飛ばした、悪く言えば空気を読んでいない発言とそれに続く騒がしいやり取りに於いても――いや、思い返せば反乱軍部隊との接敵のときもそうであった――静かに旭陽の後席に座する皇帝に思いを馳せる。
 この状況ではどんな発言でも豊麻呂を逆撫でしそうなので口には出さないが、臣下の謀反で都を追われている立場ながら狼狽えること無く堂々としている皇帝の胆力を紅葉は好ましく思っていた。
 そんな皇帝の望みを叶えるために微力を尽くす。それが紅葉にできる全てだ。その為に、今彼女は先の突破攻勢で最前衛に付いた機体の肩に居る。
 忠義のために我が身を捨てる覚悟を持った勇敢な武士の、刀にも等しい機体に土足で上がり込む事を紅葉の良心は咎めたが、皇帝を守るためならばとパイロットは気持ちよく快諾したのだ。
「皇帝陛下もそうなら直属の護衛も皆立派ね。九重小路さんも少しは見習ってくれれば――おっと」
 聞き咎められる前に口を噤み、配信された帝都の戦略地図を頼りに先のような反乱軍の検問じみた封鎖線の位置を予測する。
 自分が敵ならば、決して多くはない手勢でどっちつかずの風見鶏を牽制し、現政権派の部隊を封じ込め、かつ皇帝の帝都脱出を阻止するのに都合のいい部隊の配置はどこだ。
 中立も敵も確保目標も、どの部隊が動いてもすぐさま対応できる部隊配置。それを見出したならば、その部隊が我々に最速で接敵を試みるタイミングは――
「エドゥアルトさん! 前方500、伏撃警戒!」
「おっと拙者の出番でござるかぁ~? これはカッコいいところ見せる好機!」
 紅葉の叫びと同時にエドゥアルトが重力を嘲笑うようなバグい挙動で前方に吹っ飛んでゆく。カッコいいかどうかで言えば、笑えるもしくは気持ち悪いと評される動きであった。さておきそんな物凄い動きでかつ手足を妙にバタつかせながら突っ込むエドゥアルトは嫌に滑らかな動きで着地すると、歩兵の体躯を活かして建物の陰に隠れ敵が潜んでいるであろうビルの後ろに回り込む。
「フフフ随伴歩兵もなしにおマヌケに突っ立ってやがる。ここは拙者が本当の市街地戦を教えてやるでござるよ。都市部では歩兵がマジで一番怖いって事をなァ!」
 背を向けたキャバリアにとろりと相棒の流体金属君を垂らせば、装甲の隙間から機内に浸透した銀色の液体が敵機のコックピットブロックの穴という穴から溢れ出す。
『何だ? うわっ、何だこれ!! ひっ、溢れ……くそ、脱出、ハッチが開かない!? 何でだよ、クソックソッ、何なんだこれガボッ、あぷっ、畜生誰か! 誰か出し――』
「うんうん流体金属君がコックピットにスゥーッと浸透してこれは……ありがたい……」
 敵部隊を逆上させ、あるいは浮足立たせて冷静な判断をさせぬよう敢えて悲鳴を上げさせるようにじっくりとパイロットを溺れさせた流体金属君が得物の失神を感じ敵機から取り抜け出していくのを見送り、エドゥアルトは次なる罠を仕掛ける。
 帝都のアスファルトに浮かぶ謎の数字。敵機の真下現れる8とか7といった数字は、地面にマス目を引いた時その周囲にある地雷の数を現している。地雷を処理するおなじみのゲームと同じ理屈だ。にしたって酷い配置の偏りだが。
「地雷の配置はランダムでござるから仕方ないよネ。あー理想に燃えるしか能がない若造共を羽虫のように蹴散らすのは楽しいネ!」
 踏み出せば地雷で脚部を吹き飛ばされ、とどまれば流体金属に侵食され気を失うまで溺れさせられる。
 反乱軍の待ち伏せ部隊は詰み――否、地雷に僚機が吹き飛ばされようとお構いなしに動くものがある。吹き飛ばされた戦友がその機体の道を拓くために這ってでも進んで地雷を処理し、その後ろを駆け抜けた複数の機体が流体金属君に触れられる前に跳躍したのだ。
 ビルの頭上を跳び越えて現れたキャバリア。しかしそれも紅葉の読みの範囲内。
 キャバリアに己を固定していた金具を片手で弾いて外し、すぐさまもう片方の手で構えていたリボルバーに添え引き金を引く。
 両の手に刻まれた刻印によって強化された銃弾が一機の頭を破砕し流体金属君が諸手を広げて待ち受ける地獄に墜落してゆくが、残りはその犠牲をも踏み越え前衛を飛び越え皇帝御座機を直接制圧するべく突き進む――
「迦楼羅王!」
 させるものか。紅葉の呼び声に呼応して虚空より現れた黒のキャバリアが、棍をくるりと回してそれらを押し留める。
 鍔迫り合いを繰り広げる迦楼羅王に飛び乗って、敵機を弾き返す紅葉。
「このまま先へ! エドゥアルトさんと二人、この隊を制圧してすぐに追いつきます!」
「かたじけない……どうかお二人もご無事で!」
 二人の猟兵が掻き回し引き裂いた封鎖を脱出部隊が次々突破してゆく――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
流石に見逃してはもらえないか。
任せなさい、蹴散らすわ。

スルトに搭乗して出撃
敵部隊の正面に歩み出て【逸鬼闘閃・鬼神咆哮】発動
堂々と名乗りを上げ、敵部隊へと闘気(プレッシャー)をぶつける
堂に入った名乗りと闘気は私を脅威と感じさせるに十分なはず……要はタゲを集めて囮になる
機体サイズこそ3m級と一般的なキャバリアよりは小さいけれど、分類上はスーパーロボット、装甲とパワーは並じゃない
噴進式鉄拳と頭部機銃、胸部熱線砲に徒手格闘術を駆使して反乱軍機の四肢と武装を破壊し、無力化した上で道を切り拓く

扇動されたとはいえ、陛下の臣民。
護ってくれと言われたからには、命までは取らないわ。
陛下の温情に感謝することね。




『逃すな! 動けるものの半数を追撃隊に! 残り半数でこの場の敵を殲滅する!』
 後方から聞こえる敵兵の怒声。戦術的な正誤はさておき、本来の目的に忠実な指揮官が隊を取りまとめていたらしい。
 猟兵の攻撃で行動不能となった機体も多いなか、残り少ない稼働機をかき集めて追撃に割く執念たるや。
「流石に見逃してはもらえない、か」
 紅の巨人、機煌炎神スルトのコックピットで掌に拳を打ち付け、そのままバキバキと指を鳴らす鬼貌の女。
 連動して拳を打ち鳴らすスルトがその場に踏みとどまり、脱出部隊に背を向ける。
「ここは任せなさい。追手は私が蹴散らすわ」
 キャバリアとしてはかなり小型のスルトだ。追撃する皇洲連邦陸軍の標準型量産キャバリア"群狼"と比較すれば大人と子供ほどの差がある。それでも女――つかさは怯まない。
 彼女は自身の強さに絶対の信頼を置いている。だからこそ此処を一機たりとて通しはしないと断言できるし、それを唯一実現できる。
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 我こそはワイルドハント"斬り込み担当"荒谷つかさ! いざ尋常に……参る!」
 小柄ながらに重みのある歩みで敵部隊の前に進み出たつかさの堂々たる名乗り。これを無視して駆けるは武士にあるまじき恥。
『――しかし我らは既にこの手を血に染めると覚悟した! 誉れなど最早無用!』
 政府首班とはいえ非武装の人間を斬った加藤大尉。彼に続くと誓い、既に現政権派の部隊を制圧するため交戦を経験した反乱軍のパイロットたち。
 そこに最早武士の矜持はありはしない。国家の過ちを糺し、皇帝陛下の下に正統にして正常なる国を再建する。そのためならばこの決起の後如何様にでも責めは負おう。そんな決意の若人たちは、つかさを無視して脱出部隊を追おうとする。
「――その覚悟や良し! けれど私も"敵"であることを見失うようではまだまだね!」
 スルトの脇を通り抜けようとした機体が殴り飛ばされ、紙屑のように宙を舞った。
『神野! ……くっ、構うな! 前へ――ひたすら前へ!』
 脱落した味方機に気を取られそうになる自分を、仲間を鼓舞して突き進もうとする機体の脚を頭部機関砲が斬り刻む。
『俺に構うな、行け!』
 墜落した機体から目的のために戦友を送り出す声。
「仲間が墜ちても覚悟は折れない、か。流石ね。でも……」
 肘から先を射出された拳が、上官の想いを受け継ぎ駆け出した機体を無情にも吹き飛ばす。
 パイロットを殺さぬよう出力を下げた胸部熱線砲の光が電装系に過剰な熱量を与えたことで機能停止した機体を足払いし、頭部を踏み潰して視界を奪う。
 全身全霊で立ち向かうつもりのない敵機など敵機ですら無い。そしてスルトを"無視して突破する"という選択をした反乱軍部隊は、その実スルトを"回避して突破する"ほかなく、そのためにスルトに少なからず注意を惹かれていたのだ。
 既に彼らは脱出部隊を見失っている。そも、つかさの手で既に分遣隊として現れたこの場の敵は壊滅状態であったが。
「本当なら此処からお仕置きをしてあげたいところなのだけど」
 皇帝陛下が臣民に害が及ぶことを望まないから、機体の継戦能力を丹念に破壊するだけに留めておこう。
「貴方達が敬愛する陛下の温情に感謝することね」
 そしてその優しい陛下が貴方達ではなく葵や九重小路といった現政権上層部の面々と行動を共にしている意味をもう一度よく考えなさい。
 諭すようなつかさの言葉を受け、スルトが立ち去った後もパイロットたちは雪積もる残骸の中で己が行いを省みるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎
【POW】S

「子供と美人に頭を下げられたんだ、頑張らないといけないね」

■方針
「誰も死なせず脱出させる。だから肩の力を抜いていこうか」
自機に搭乗
センサーで【戦闘知識】で部隊の状況を確認
【推力移動】で動きまわって脱出部隊のカバーに入る
機体もそれなりに頑丈だからね
いざという時は【覚悟】をもって盾にでもなるさ
敵機は可能な限りショットガンで【部位破壊】脚部や武器を狙う
民も臣下も護ってくれ、そう頼まれたんなら仕方ない

万が一、帝や黒髪の美人さんが弱気になってたら軽口で【鼓舞】
「怖い時はね、笑っておきなよ。そっちの方がもてる」とでもね
白塗り麻呂は…どうでもいいかな、死なない程度に好きにさせよう


ダビング・レコーズ
人類同士の損耗がオブリビオンの望む所か
国家の行き着く先がどうであれオブリビオンによって生じた誤りは修正されなければならない
それが我々の義務であり責任
アークレイズ、出撃する

直接の護衛は近衛部隊に任せ積極的な攻勢に出る
特に並走する目標を重点的に対処する
無作為な機動で撹乱しベルリオーズの速射で牽制
断続してルナライトのプラズマキャノンを発射しプレッシャーを与える
挙動が乱れた瞬間にブレードホリックで高速接近し格闘戦に持ち込む
回避運動中は後述の戦術意図に基づきソリッドステート形態とキャバリア形態の変形を頻繁に繰り返す
必要以上に派手に動き回る事で反乱軍の注意を護衛対象より引き離す




「更に接近する敵影、小隊規模――」
 レーダーが捉えた機影。明らかな戦闘機動で帝都の町並みを駆ける部隊からはこの状況下でおおよそ友好的な気配を感じ取ることなど出来ない。
「レーザー照射! ロックオンされている! 接敵まで残り200!」
 先導する脱出部隊の護衛機が身構える。その前面に割り込むように、白銀と闇色の二機が躍り出た。
「人類同士の内紛による戦力の損耗、これがオブリビオンの望むところか」
 白銀、アークレイズを駆るダビング。
「奴さんらの望みなんてわからんよ。俺は誰も死なせず脱出させるだけ。肩の力を抜いていこうぜ」
 闇色、プレケスを駆るヴィクター。
 鋼鉄の心身に違わず冷静に敵を見据えてその狙いを探るダビングに対して、ヴィクターはへらりと笑って不真面目のように見える。
 が、この任務に掛ける想いはそれぞれに真逆。
 方やダビングは皇帝の守護を護衛機に委ね、混乱の元であるオブリビオンマシンを倒すことを第一とし、対するヴィクターはただ眼前の脱出部隊を全員五体満足で帝都から逃がすことを何よりも優先すべきだと考えていた。
 互いに戦いの先に望む物は異なるが、そのどちらも目の前の敵を倒すことで初めて手が届く。だからこそ二人は急速に近づき武器を構える反乱軍機を相手に戦意を高める。
「国家の行き着く先がどうであれオブリビオンによって生じた誤りは修正されなければならない……」
「そういう小難しい話はいいじゃないか。子供と美人に頭を下げられたんだ。頑張らないといけない、戦う理由なんてそういうシンプルな話でいいのさ」
 アークレイズもプレケスも機動性に特化した機体、それが絡み合うような有機的な曲線を描きながら敵陣に斬り込んでゆく。
『なんだこの機体は! どこの所属――うあっ!!』
 アークレイズのリニアアサルトライフルが放った弾丸が敵機の盾を弾き、守りを崩す。
「そうら、戦場で脚を止めてちゃあ怖い怖いお化けに食われちまうぜ?」
 その盾を片腕で更に押し広げ、間合いを詰めたプレケスのショットガンが一発、二発と引き金を絞れば撃ち出されたスラッグ弾が手足を引きちぎった。
 高威力だがそれ故に当たりどころ次第ではパイロットを殺してしまう火器。皇帝に反乱軍将兵の命をも守ってくれと頼まれた以上は、絶対に殺さず止めねばならぬ――ならば、ダビングが牽制し隙を作ってくれるのを最大限利用するまで。
「言ったろ、誰も死なせないって」
 敵兵もその対象だとばかりに戦闘力を喪失した機体への追撃を行わず、倒れたそれを戦闘に巻き込まれぬよう蹴り転がすヴィクター。
 振り返れば、アークレイズはド派手な近接砲撃戦を展開している。
「当機は我々に課せられた義務と責任を遂行する」
『強いぞ……! 耳付きもやるが白いのも手強い!』
 リニアアサルトライフルの弾丸と、プラズマブレードを調整した射撃機構が敵機を追い立てる。しかし決起軍とて若くとも信じた大義のために刃を研ぎ澄ましてきた者たち。
 一機を囮にアークレイズを引き付け、複数がかりで回り込む。強力な個を相手に戦闘力で劣る多が取りうるシンプルにして最強の戦術を前に、いかなダビングとてその全てを迎撃することは至難。
 ――それが一対多であったなら。そして、相手が遥か宇宙にまで人類が版図を広げた世界の技術をも取り込んだ異形のキャバリアでなければ、決起軍の面々はアークレイズを討ち取り皇帝の身柄を押さえることも出来ただろう。
 だがそうはならない。
 アークレイズが戦闘機のような姿に変形するなり、後方に集約した推進器を噴かして急加速。
 その想定外の機動に虚を突かれた形の敵機の眼前に瞬く間に接近するなり、再び人型に変形したアークレイズがプラズマブレード、ルナライトを振るう。
 月のように青白い光がひらひらと舞う雪華を一瞬で蒸発させながら敵機の四肢を焼き落とした。
 そうして変形を繰り返し、キャバリアらしからぬ高機動で敵陣を壊乱させるアークレイズ。
 単独で部隊を殲滅する勢いだが、それもまた陽動であった。
『お前たちの挺身、無駄にはせん……! 奸臣九重小路を誅殺せよ! 葵の娘もだ!! 皇帝陛下を拐かした罪、ここで!』
「……ッ、葵……皆――!」
 腹心に向けられる剥き出しの悪意と殺意を目の当たりにして、皇帝が息を飲む。
「ひっ、ひぃぃぃぃ!! 貴様ら何をしておるのじゃ! はよう麻呂を守、いや陛下をお守りするでおじゃっ!!」
 豊麻呂の上擦った悲鳴を受けながら皇帝の盾となるべく割り込む護衛機だが、敵機の抜き放った実体剣は彼らの防御より早く機体を貫きパイロットたちを殺すだろう。
 させるものか。ヴィクターは殺人的な加速度に身体を叩き潰されるような感覚を捻じ伏せて敵部隊に追いすがる。
「……派手な戦闘を囮に本命を静かに狙う、教本通りの良い戦術だが……自分たちで言ってたじゃないか。耳付きもやる、ってさ!」
 ショットガンが数度吼え、決起軍の機体は半身を砕かれ沈黙する。
「よう、大丈夫だったかい陛下。怖いときはね、笑っておくものさ。そうすればどうにか耐えられるし、何より――」
 そっちの方がモテるぞ、と悪い大人はニヤリと笑んだ。
 ダビングが本隊を殲滅する頃には皇帝も元の落ち着きを取り戻し、豊麻呂も静かになった。
 帝都を制圧する敵部隊の勢力圏を脱するまで後少し。猟兵たちは最後まで気を抜かずに駆け抜ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『Coyote』

POW   :    RS-A『散弾砲』 / RX『ナイフ』
【至近からの散弾】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ナイフ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    RS『短機関銃』 / RS-S『ミサイルポッド』
敵より【ダッシュなどで高機動状態の】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    『Coyote』
【他のCoyote】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[他のCoyote]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。

イラスト:右ねじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 帝都城――それは皇洲連邦の軍事の中枢にして、有事においては国家要人の守護をその任とする帝都秋津の象徴たる城塞である。厳密には帝都城を含む帝都秋津そのものが皇洲連邦の国防における最大最強の要塞であるが、その内を守る帝都警衛連隊をはじめとした守備隊の蜂起においてはこの帝都城のみが皇洲連邦現政権の最大にして唯一最後の牙城であった。
 キャバリアの台頭以前に建造された要塞は幾度も改修を施され、巧みに配置された防御兵器は生半な攻勢を寄せ付けることはない。幾度も攻勢を仕掛けた決起軍のキャバリア部隊は城壁の銃眼から絶えず撃ち込まれる機関砲の前に戦線を押し上げること叶わず、また決死の覚悟で跳躍し城壁を越えようと試みた機体は城内に立てこもる皇室近衛の儀典用キャバリアが振るう長刀によって貫かれて屍を晒す。
 皇洲連邦全軍の過半が攻め寄せても耐え抜くと謳われた帝都城の護りはかくも堅牢であり、それを少数の決起軍が突き崩すことなど不可能。
 守勢に回る皇室近衛や将軍直属部隊はもちろん、攻勢を仕掛ける決起軍ですらその認識は共通のものとして持ち合わせている。
 だが、それでも決起軍は退くことを選ばない。頑迷に帝都城正門の正面突破を目指し手を変え品を変え攻めては逆撃に出た守備隊と交戦を重ねて戦力を磨り潰されてゆく。
 無理矢理に突破せずとも、帝都機能の八割以上を掌握した決起軍であれば、あとは帝都城を包囲封鎖し外から来るであろう親政権派の藩州軍を迎え撃てばよかっただろう。帝都城ほどではないが帝都を囲う防備は厚く、これを活用すれば外敵の撃退など容易い。無理に損害を出してまで帝都城陥落を望む理由は無いのだ。
 ある皇室近衛将校は決起軍のこの無謀な突撃を、彼らには説得力が足りぬからだと見ていた。
 政府首班を粛清――彼らの言うところの天誅を下し、退けなくなった以上は決起を完遂――完璧以上の結末で終わらせねば彼らは逆賊として処断されることになる。
 皇帝陛下の確保と元帥府大将軍殿下の排除。どちらか片方でも欠ければ、残った片方によってクーデターの正当性は覆され、皇洲連邦を構成する全ての藩が敵に回るだろう。武家諸侯は国家の象徴としての皇帝陛下は勿論、長きに渡る内戦を数世代かけて平定した将軍家への信頼も篤い。
 故に彼らがその言の葉で武家を纏め上げ、国賊討つべしの機運を作り上げる前に朝敵として将軍殿下を討ち陛下を"救出"せねば決起軍の勝機は完全に潰えるのだ。
「そのようなこと不可能であろうに。我らが護るこの帝都城は不落、貴様らは道を誤ったのだ」
『外道は承知。されど外道でなければ正道が偽りであると暴くことも出来ぬ故――』
 将校の呟きは閃光に呑まれて消えた。帝都城にいくつかのみ存在する防衛の手薄な"抜け道"、将軍直属部隊が護るそこから現れた金色のキャバリアの奇襲によって、皇室近衛の機体が次々に音もなくコックピットを焼き潰されて斃れてゆく。
『いざ、参る』
 正門前で苛烈な突撃に命を散らす同志の血を目眩ましに単独で帝都城に忍び込んだ金色が突き進む。その先に待つは元帥府大将軍。皇洲連邦軍の最高指揮官にして、類稀なる操縦技量で武家諸侯を心酔さす最強の武者。
 彼一人討ち取れず何の決起か。決起軍の首魁たる加藤紀靖大尉は、この決起を決心たらしめた金色武者の操縦桿を握り締め立ち塞がる敵機を鎧袖一触に駆け抜ける。



 一方帝都脱出を図る皇帝とそれを護衛する猟兵たちは、まもなく帝都を脱するというところまで達していた。
 最後の交戦からもう十数分ほど。あれ以降は敵の追撃もなく、足止めに転じた猟兵達も合流を果たし轟く帝都城の戦闘音を背に受けて一路葦原を目指す。
 そろそろ偽装脱出部隊が出陣した頃であろうか――彼らの命がけの行いが追撃の手を引きつけてくれているのであれば、皇帝を安全な地に送り届けることがその挺身への最大の報いであろう。
「幸いにもこれ以上の追撃は無いようです。このまま師木料金所から秋津スカイラインに乗ってしまいましょう」
「高速道路に乗るのでおじゃるか。目立つが地形の起伏を気にせず葦原に向かえるのは良い案でおじゃる」
 旭陽の提案に豊麻呂が首肯する。如何にキャバリアのコックピットシステムが優秀であろうと戦闘員ではない皇帝に山岳地形を長時間行軍させるわけにはいかない。
 敵に無防備な背を晒すことになろうと、平坦でかつ最短距離を突破できる高速道路を利用する判断は合理的であろう。
「うん、朕は葵の判断に任す。猟兵よ、今暫く伴を頼むぞ」
 皇帝直々の言葉を受けて駆け出した脱出部隊。だが――その進路上を薙ぐように何処からか飛来したレーザーが路面を焦がす。
「何事でおじゃるか! 者共、はよう陛下と麻呂を守れ!」
 狼狽え踵を返した豊麻呂機を掠め退路を塞ぐように放たれた二射目。遥か彼方に聳える雪化粧の山。その山頂に建つ首都電力網を担う鳴神山電力プラントに鎮座する何者かの狙撃が脱出部隊の行動を封じたのだ。
 進むも退くも許さぬと撃たれる光の矢。その上を瞬く輝きは――
「敵影多数、これは……航空輸送艦隊……ッ! 空軍まで決起軍に組みしたというのですかッ!?」
 殲禍炎剣に撃ち落とされる危険を顧みない低空飛行で瞬く間に接近する巨大なヘリウムの気球。その下面に吊るされたキャバリアが次々に切り離され、脱出部隊を前後から包囲する。
『これは最後通牒である! 直ちに投降し皇帝陛下の御身を此方に引き渡して頂こう!』
「駄目じゃ駄目じゃ! 貴様らのような逆賊に大事な陛下の御身を任せられようはずも無いでおじゃろうが! ええいええい斯くなる上は皆で血路を切り開け、ま、麻呂とてキャバリアに乗ったからには……や、やってやるわ!」
 腰の退けた豊麻呂が前に出れば、苦笑と共に護衛部隊の面々も武器を構える。
 狙撃手に睨まれたまま多数の敵機との乱戦。防衛というシチュエーションにおいて状況は極めて悪いが、連邦の未来を繋ぐためにも此処で敗れるわけにはいかない。
 猟兵達もまた己の得物を構え、血路を切り開くべく敵前に進み出る!
アリシア・マクリントック
豊麻呂公……見直しました。私も負けていられませんね。扉よ開け!ヘパイストスアーマー!
私も前に出たいところですが、機動力も対集団武器も無い私では包囲され封じ込められるのが落ち。ですから支援に回りましょう。
敵が数を武器とするならば……逆に利用するのです。味方が撃破した敵機の残骸等をキャバリア用の武具へと錬成しましょう。仲間から希望があれば内容も可能な限り応えます。
あまり複雑なものは難しいですが、欠けた剣や破られた盾の代わりならいくらでも作り出せます!これで当初の想定よりは戦線の維持がしやすくなるはず……!
民と誇りを守るための刃を打つ……鍛冶師としても貴族としてもここは腕の振るいどころですね!


トリテレイア・ゼロナイン
※小破 S

(土壇場で忠に燃える姿を拝見出来たのは喜んで良いものかどうか…※苦笑)
九重小路様、御身は皇帝陛下に仕える臣、いわば最後の護り
葵様と共に陛下のお傍に侍り、私達にお任せを

(背部コンテナから出した煙幕手榴弾を戦場外周に●投擲、狙撃手●目潰し)
…気休めとなるかどうか…
いえ、その数瞬で囲いを食い破るのみ!

護衛対象●かばいつつ迫る敵迎撃
センサーでの●情報収集で彼我の状況を俯瞰的に●見切り自機●ハッキングによる直結●操縦
跳ぶ、走る、しゃがむ、踏み越える、足払い…『立ち回り』で圧倒
剣を振るい、盾で防ぎ、サブアームのライフルで別々の敵を撃破

狙撃…そのタイミングは読めていました…!(※スナイパー知識)


荒谷・つかさ
機体に乗ったからにはと気炎を上げる、その意気や良し。
けれど今となっては、陛下だけでなく九重小路殿にも討死されてはならない。
貴殿が命を棄てるのは、もうそれしか手が無い時……即ち、我々猟兵を含めた護衛が全滅した時よ。
つまり、まだその時ではないわ。下がっていただけるかしら。

とは言ったものの、敵の数は多いし殺すわけにもいかないと。
こうなれば、ちょっと本気出すか。

敢えてスルトから降りて他の機体の影に隠れて接近
敵群の中に斬り込んで機体に取り付き【螺旋鬼神拳】発動
上下フレームの繋ぎ目を狙って殴り上半身排除、更にコクピットハッチを破壊
怪力で以てパイロットを引きずり出し無力化
これを可能な限りの敵機に対し行う




「豊麻呂公……」
 包囲陣形を取った決起軍のキャバリア――先の追撃隊と同様、陸軍主力機の座に君臨する量産機『Coyote』の皇洲連邦独自仕様、"群狼"に対して皇帝へは触れさせぬと前に出た豊麻呂の機体に、アリシアは彼への評価を改める。
 己の保身に固執し、護衛隊の兵を戦場にけしかけるだけの名ばかり貴族ではない。百点満点ではないが少なくとも九重小路豊麻呂という男には正しく高貴なる者の誇り高き青い血が流ているのだろう。
 尤も、そこで敢然と叛徒に立ち向かいこれを制圧できればよかったが豊麻呂は腰が引けている。忠誠心と誇りは認めるが、技量や闘志はやはり官僚貴族のそれと同等なのだ。
「九重小路様、御身は皇帝陛下に仕える臣。いわば最後の護りです」
 だからこそ、この場で豊麻呂を討ち取らせてはならない。腐敗しきっていない、そして法の正当性と民の意志が認める皇帝の補佐役たる元老院の長の椅子に今最も近い彼を失えば、幼い皇帝の求心力だけでは国家の先行きが危うくなろう。
 故にトリテレイアは豊麻呂の奮起を称賛しつつも彼の機体の前に出て、その闘志を制する。
「葵様と共に陛下のお傍に。この場の反乱軍は私達にお任せを」
「そういうことよ。貴殿が命を棄てるのは最後の最後、もうそれ以外に手が無くなってから」
 そして白騎士の肩に立つ鬼角の女がそれを首肯する。
「今討死されると陛下がお困りになるわ。此処は私達護衛に任せて下がって頂ける?」
 豊麻呂の覚悟を否定するつもりはない。ただ彼の御仁にとって忠義を示すべき戦場は此処ではなく議会の場であるということは誰もが思うこと。
 故に豊麻呂もそれに頷くしか無い。悔しさに唇を噛み、渋面を浮かべて一歩退がれば、護衛機が彼と皇帝を守るように壁を作る。
「それでいいのです。九重小路様、我々が全滅したらどうか皇帝陛下と旭陽様をよろしく」
「……麻呂に任されても困るわ! キャバリアの扱いに長けた貴様らが生き残らねばそこまでと言うことを忘れるでないぞ!」
 はじめはよい印象ではなかった。とかく軍人というものを野蛮人かなにかのように扱い、戦場に身を置くものに政争のことなど理解できまいと見下していた豊麻呂が、この僅かな逃避行の間に築き上げた信頼。
 保身と権力にしか興味のない典型的な官僚だと思われていた男がここ一番で見せた勇気に兵達も応えるべく、皇帝だけでなく豊麻呂をも命懸けで庇うことを選んだ。
『なるほど、貴様奸臣九重小路か! ならばその首、皇洲の新たな夜明けに焚べてくれる!!』
 至近距離で睨み合っていた決起軍機が踏み出す。
 護衛部隊と猟兵、そして反乱兵たちが入り乱れる戦いが始まった。やはり決起軍の目標は皇帝の奪還これ一点であり、それを為すべく数の利を活かして護衛部隊を縫い止め押し通ろうとする。対する護衛部隊も国家の象徴たる皇帝の側に控える事を許された精鋭中の精鋭、三、四機がかりで押し込まれようと互角の戦いを演じてみせるが――
「やはり敵の数が多すぎますね……!」
 空軍が誇る大型飛行船から降下してきた部隊は数個中隊、あるいは狙撃手の支援を受けて未だ上空を遊弋している艦隊にまだ後詰めの部隊が残っていないとも限らない。
 それも眼下の脱出部隊を威圧するブラフである――という可能性が無いではないが、非武装の航空輸送艦がいつまでも戦闘空域に留まる様は異様である。雪が降りしきるなか、サーチライトの光を浴びせるためだけにそこにいるというのも十分ありえるが、最悪を想定して動くべきだとトリテレイアは頭上への警戒も怠らず護衛機をすり抜けてきた敵機の進路を封鎖する。
『そこを退け! 皇帝陛下は九重小路のような売国奴と共にあるべきではないのだ!』
「先程の忠に燃える姿を見ていなかったのですか、貴方たちは……私は九重小路様を売国奴などとは思えません!」
 返答の代わりに叩きつけられた散弾を盾で受け止め――すぐさまステップで回避行動。
 群狼との交戦で足が止まった隙を狙って鳴神山から飛来した狙撃がロシナンテ四の白磁の装甲を掠めて焦がす。
「くっ、皇帝陛下の方を狙わないだけありがたくはありますが……厄介な狙撃です!」
 次々に飛来する狙撃を回避しているうちに随分と皇帝機から引き剥がされた。先程相対した機体は既に防衛線を抜け、更に皇帝に迫ろうとしている。
 だが追おうとすればレーザー狙撃がそれを阻むのだ。
「こうも縫い留められては防衛も儘なりませんか……ならば視界を塞ぐしかないでしょう!」
 友軍機に熱源センサへの切り替えを叫ぶと同時、ロシナンテの背部コンテナから射出された擲弾をサブアームが握りしめ投擲する。
 鳴神山と秋津スカイラインを阻むように展開した煙幕は、風に乗って戦場にも流れ込んで両軍の視界を猛吹雪の如き白に染め上げる。
 トリテレイアの渓谷が間に合い熱源センサを立ち上げた味方機は対応の遅れた敵機をいくらか倒したようだが、それでも包囲を破るには至っていない。
「ですが数瞬とはいえ時を稼ぐことは叶いました。今は囲いを食い破るのみ!」
 穴だらけの盾を投げ捨て、剣で敵機の首を狩りサブアームのライフルで手足を吹き飛ばし殴打で蹴脚で、騎士らしからぬ荒々しさすら覚える機体捌きで敵部隊を制圧してゆくトリテレイア。
 だが――狙撃手もただ煙幕に手をこまねいているだけではないらしい。飛来したレーザーをロシナンテは剣の腹で受け止める。
「そのタイミングで撃ってくること、読めていました……!」
 剣は半ばから赤熱し、そして雪降る冬の皇洲の風に急速に冷やされてゆく。
 これでは一合も打ち合えば折れてしまうだろう。そんな剣を置いて、それでも止まれぬとトリテレイアはレーザー狙撃を引き付けながら混戦の中に舞い戻る。

「私も前に出られれば……」
 激戦の最中、皇帝機と豊麻呂機を守るよう敷かれた防衛線の奥でアリシアは己の力不足を痛感していた。
 だが生身の己ではあまりにも非力。頼みのティターニアアーマーは重く狙撃の良い的にしかならず、また集団を相手に立ち回れるような兵装も積んではいない。
 そんな状況で何が出来るのか。否、そも出来ること自体が存在するのか。悩むアリシアの眼前で、両の主腕に備えていた剣と盾、双方を失いながらも皇帝を守るべく副腕の銃と徒手格闘で踏みとどまるロシナンテが滑り込む。
「――そうです。そうでした、私にはまだ出来ることが残っています」
 じわりとアリシアの足元に積もった雪が融けてゆく。
 ハイウェイのアスファルトがむき出しになったサークルの縁を彩るのは紅蓮の炎。
「豊麻呂公や護衛の皆さんが戦っている。猟兵の仲間たちも。ならば私は彼らのため、民と誇りを守るための刃を打ちます! 扉よ開け! ヘパイストスアーマー!」
 炎の円環が収縮し、アリシアを覆う。燃え上がる炎の中で、貴き血の少女は焔の如き赫の鎧を手に、巨大な槌を担いでそこに断つ。
「トリテレイアさん! いま少し待ってください!」
 決起軍がこの戦場にこれだけの数を投入してきたということは、裏を返せば撃破された機体も相応に多い。トリテレイアが討った機体の残骸を巨槌で打ち、アリシアは貴族ではないもう一つの顔――鍛冶師としての腕を振るう。

『何をするつもりか知らないがッ! みすみすやらせはしない!』
 戦線を維持する戦士たちの為己が戦場を見出したアリシア。その行いが何を齎すかは知らねど、見過ごす決起軍でもない。短機関銃を彼女に向けた群狼の一機に対し、猟兵も護衛隊も対応出来る機体はない。
 銃口がアリシアを捉え、パイロットの指がトリガーにかかる。
「それはちょっと、見過ごせないわね」
 そんな彼の耳朶を打ったのは軽快な銃声ではなく女の声音であった。柔らかな声はこの場にそぐわぬようで、しかし次の瞬間にはパイロットは戦車砲の直撃でも受けたかのような衝撃とともに全ての視界を喪失する。
 つかさだ。奮戦するトリテレイアの肩から飛び降り、戦闘の間隙を縫ってキャバリアに肉薄した彼女――とはいえ生身で戦闘機動するキャバリアの機動性に追いつくはずもなし、不用意に足を止める機体を待ち構えていたのだが――は、跳躍からの正拳突き一撃で群狼のオーバーフレームを破壊してのけたのだ。
 上半身を喪い立ち尽くす群狼のアンダーフレームの上に立ち、コックピットハッチの縁に指を掛けてメリメリと金属を折り曲げ抉じ開ける鬼神に、パイロットは目を白黒させ――しかし咄嗟に拳銃を抜いて発砲する。
 その弾丸をすらぱしりと掴み取って機外にパラパラと捨てて、つかさはパイロットの襟首を掴んで持ち上げた。
「あなたのそのスーツ、ベイルアウトには対応しているのよね? 十メートルくらいの高さからの落下なら耐えられるかしら」
 答えなさい、と促されてパイロットは首を縦に振る。プロテクターにエアバッグやら何やら、どことなく武者の具足めいたパイロットスーツは見た目同様の防御力を持つらしい。ならば怪我はすれども死にはすまいとつかさはパイロットを高架道路から投げ落とす。
 敵兵の悲鳴が遠ざかっていくのも戦闘音にすぐにかき消され、つかさは次へと挑んでゆく。
「連邦軍のスーツが優秀で助かるわ。この数を不殺で相手するのは大変だもの」
 また一機、護衛機との交戦で足を止めた機体が殴打され鬼の餌食になってゆく。

『なぜ奸賊を守る! 反乱であれば鎮圧すると、どちらに義があるかを考えもせぬというのか、猟兵ッ!』
「少なくとも此処に居る皆様には忠義があります! 皇帝陛下のご意思を蔑ろにしているのは貴方達でしょう!」
 戯言を弄すなと激昂する敵機が捨て身の突撃を仕掛けてくる。腰だめに構えたナイフは撃ち落とせたが、それでも無手で組み付いてこようとする敵機を懐に入れれば機動性を殺され包囲殲滅されるだろう。
 トリテレイアは選択を強いられる。敵の後続からも皇帝を守るため、此処で皇帝の意に反してコックピットを撃ち抜くか。
 あるいは後を仲間に託し、此処で斃れるか。
「そうはさせません! 受け取ってください!」
 そこへアリシアからの声。巨大な鉄槌をフルスイングで弾き飛ばしたそれは、ロシナンテの失われた盾と剣だ。
 それを受け取り、突撃する敵機の両脚を一刀両断。次いで撃ち込まれたレーザー狙撃を盾で受け止めれば、敵に喰らいつくつかさを援護するべく射撃で敵機の脚を止める。ロシナンテⅣの戦闘能力は完全に回復したのである。
「助かりました、アリシアさん!」
「何よりです。皆さんも! 銃や弾丸は難しいですが、剣や盾ならいくらでも用意します! 武具の温存は考えずにこの場を切り抜けてください!」
 補給の患いなし。UDCアースに存在したという伝説の将軍のごとく地面に杭のように打たれた無数の剣を陣地に見立て、狙撃で焼けただれた盾をすぐさま持ち替え護衛部隊は戦線を一歩も下げることなく敵勢を受け止め続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「へぇ…あの麻呂、意外と気概があったんだね」
瑠璃「意外だね。逃げようとするかと…」

UCで分身

ジェミニオン両機にミサイルポッド、魔導ライフルを換装。
弾切れを気にせず、全身各部のミサイル全弾、ライフル、ボムを一斉斉射し、圧倒的火力で敵機、輸送機を破壊。
【クリエイト】で弾切れになった武器や周囲の無機物(建造物等)、敵キャバリアの残骸等をミサイルやライフル、ガトリング等々、その都度必要な武装や無人武装ヘリ等の支援機まで様々な兵器に自在に変換→再構成。
常に弾切れ無しで最適な武装換装し、常に最大火力で圧倒するよ

緋瑪「悪いけど、私達は無尽蔵だよ♪」
瑠璃「倒せば倒す程、こちらの戦力は増加する。圧倒するよ」


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

今度は空から鉄の巨人が降ってきた…
だがな…皇帝陛下達を渡す訳にはいかないんだ…邪魔するならば!

生身で戦場を駆け抜け敵の攻撃を[見切り]つつ
[ダッシュとジャンプ]で回避して敵機に近づこう

鉄塊剣を振るい敵機の脚部を[切断、部位破壊]し行動不能にさせ
搭乗者を[威圧]し力尽くで引き摺り出そう

【巨人力】による[怪力]を発揮し
行動不能にした敵機を持ち上げ振るい回し
[範囲攻撃と鎧砕き]で敵群を叩きのめし[蹂躙]しよう…

ハンマーを投げるように回転しながら持ち上げた敵機を勢いよく
投げ飛ばし、空浮かぶ気球目掛けて投げつけ攻撃し
敵群を[おどろかせ、恐怖を与えて]やろう…!

貴様らをすべて鉄屑にしてやる…!


槐・白羅
さて…次は随分と殺気だってるな
成程…モルスと同じか
判るぞ…恐ろしい衝動だよな

くく、モルスよ…不満か?

さて
あの麻呂も恐怖を抑え尚皇帝を護ろうとする意気や善し!

俺達も力を尽くすとしよう

UC発動
ふむ…お前達もスピード自慢か
ならば俺も対抗するとしよう
モルスよ…その力を全力で引き出してもらう

高速で襲い掛かり
剣で切り裂きながらも【呪詛】を篭めて動きを封じ
敵の猛攻は剣や体術で【受け流し】
【貫通攻撃・重量攻撃】
突き刺し切り裂き
但し搭乗者は須らく生還させる

皇帝はお前達も護れと言っていた

その慈悲
尚お前達もまたこの国を支えし者と断じているその事実を噛みしめるがいい

(感情論だが合理でもある。人は財足りえるか




「く、来るならかかっておじゃれ! 麻呂では貴様らには及ばぬじゃろうが、刺し違えてでも陛下はお護りいたすぞ!!」
 防衛線を幾度も脅かす決起軍の"群狼"に対し、声を震わせながらも果敢に皇帝機の前に立ち続ける豊麻呂。
 此処までの逃避行で彼が戦力としては全くの員数外であることは承知の猟兵と護衛たちは、都度眼前の敵に背を向けてまで豊麻呂に向かう敵機を撃ち落とす。
「へぇ……あの麻呂、意外と気概があったんだね」
 踏み留まり忠臣のように皇帝を守る彼を見て、緋瑪が驚いたように目を丸くする。これまでの印象から我が身可愛さに真っ先に逃げるか命乞いをするような、自己保身に腐心する奸臣――というイメージはどうやら誤りであったらしい。
 決起軍の面々も似たような評価をしている辺りはあの男の普段の素行に問題が無いとは決して言い切れぬであろうが。
「意外だね。真っ先に逃げると思ってた……それか恐怖に耐えかねてやらかすタイプだと」
 だが彼は逃げも隠れもせず、眼前に敵が迫ろうと新兵のように取り乱して銃を乱射することもない。案外に肝の据わった男なのかもしれないと瑠璃は評価を改めた。なるほど、ならばこの決起で壊滅した連邦政府の担い手として、人間として信頼に値するかもしれない。
「じゃあ、麻呂は殺せないね」
「うん、仕方ないよ緋瑪。今日は我慢しよう」
 弾薬の残量を一切気にかけない全火力の投射。二機のジェミニオンが放つ鋼鉄の嵐は決起軍の機体を寄せ付けない。
『なんだこの火力量は! 市街地を離れた途端バカスカと――』
 狼狽えたたらを踏んだ機体に、小さな影が勢いよく飛びかかる。
「空から降ってきた鉄の巨人……お前たちに皇帝陛下達を渡すわけにはいかないんだ……!」
 味方の猛烈な弾幕を見極め、砲弾の隙間をすり抜けるようにその身を雪の夜闇に躍らせる黒い女。
 曳光弾やミサイルの熱源にセンサーが吸い寄せられる中でその存在に気づくことはほぼ不可能であった。決起軍の将兵がそれに気付くのは、機体に取り付かれ攻撃を受けたその瞬間。
 密集陣形で防御を固め、ジェミニオン相手に散弾砲で抵抗する群狼に踊りかかったアンナは、手にした巨大な剣を横薙ぎに叩きつける。
 群狼は決して強力な機体ではない。生産性と機動性だけが取り柄のような、数で相手を圧倒する機体だ。原型機に比べて関節の補強など、近接格闘戦性能を向上してはいるがそれとて劇的な性能向上とは言い難い。
 だがキャバリアには相違ない。それを人の身で、強力な火器兵装もなしに打ち砕く者があろうとは。
 片足を半ばから喪い地に崩れる機体。パイロットは何が起こったのか解らぬまま、突如制御できなくなった機体をどうにか立て直そうと操縦桿を動かすが、物理的に脚部が破断された機体はそれに応えられようはずもなく。
 そうして脱出より先に無意味な、しかし彼らにとって意義があると信じている抵抗を試みたパイロットは、彼が恐怖から逃れ得る貴重な数秒間を無駄にする。
 コックピットハッチが火花を散らし、機体が悲鳴を上げてその腹を開く。開かれてゆく。そうして吹き込んだ雪混じりの冷たい風に目を細めて、意思に反して開かれた外界との境に目を凝らせば烏のような面の黒い女がそこにいる。
『お前は、猟ッ……!!』
 咄嗟にサバイバルキットから引き抜いた拳銃は、分厚く巨大な真鍮色の刃に弾かれ機外に飛び出してゆく。
 無理やり銃を奪われじんと痺れる右手を庇うパイロットは、首根っこを掴まれ息もできずにジタバタしながら機体から引き摺り出されて――
「邪魔するならば容赦はしない。何処へなりと失せなさい」
 機外に投げ出され、唖然とするパイロットの前でアンナは奪った機体の無事な片足を掴んで持ち上げる。
 そのまま主なき巨人をぐるぐると振り回せば、密集陣形を組んでいた敵機は不運にも撃破されてしまった僚機が横腹を直撃してよろめきながら散開を強いられた。
『何だ!? 何が起こった!』
『我が方の機体が敵に奪われています! いえ、乗っ取られたのではなく!』
 混乱する敵部隊。それは猟兵たちを相手取るには致命的な隙を生み出した。
「モルスよ、分かっているな? あれも殺してはいけない……くく、不満か?」
 眼前に隙だらけの獲物がいる。弾幕に縫い留められ逃げることもできず、陣中に降って湧いた怪人に狼狽え無防備を晒す愚か者が。
 今ならばコックピットを一撃で貫き死を齎すことに何の障害もないだろうが、それはあの皇帝の意にそぐわぬ行いだ。等しく死の眠りを与える機体には我慢してもらうしか無いと宥めて白羅は敵陣へと斬り込んだ。
「聞け、叛徒共よ。皇帝は自らに弓引くお前たちでさえ護れと言っていた」
 白羅はその身に秘めたる潜在能力の門を開け放ちながら説く。
「その慈悲を、あの皇帝がお前たちの行いを前にして尚もこの国を支えし者と断じて護ろうとしている事実を噛み締めるがいい」
 パイロットの力に呼応してモルスもその性能を高めてゆく。散弾砲の一撃を剣で受け止め、ナイフで斬りかかってくる敵機を呪詛を込めた刃で返り討ちにして。
 二機のジェミニオンの弾幕とアンナの強襲で連携を欠いた敵部隊は次々に破壊され、しかし一人として死者を出すこと無く高架道路に屍を晒す。
 ――皇帝の言葉は感情論だ。あれも臣と呼び死なせたくないというのは、ともすれば護衛をいらぬ危険に晒す我儘に近い。だが合理でもある。逆らうものに死を与える君主は、その時点で信頼ではなく恐怖による統治を強いられる。戦場では慈悲を与え、然るべき場で法に則り厳しく罰することで彼はその支持を盤石なものとするだろう。
「王の器とはああいうものを言うのかもしれんな」
 敵機を討ち果たすモルスのコックピットで白羅が呟く。気づけば付近の敵はあらかた片付いたようで、ジェミニオン二機がすぐ側まで戦線を押し上げていた。
「これだけあれば十分だね、瑠璃♪」
「そうだね緋瑪。そっちの人、この残骸はもらっても良い?」
 白羅が首肯すれば、たちまちに撃破された群狼が解体され砲弾の予備や火器兵装に姿を変えてゆく。
「まだまだ集まってくるみたいだけど、悪いね。私達は無尽蔵だよ!」
「倒せば倒すほど此方の戦力は増加する。圧倒するよ」
 ライフルが弾切れになれば予備弾倉を生み出して。
 敵の反撃で武器そのものが破壊され、あるいは砲身加熱で使い物にならなくなれば新しい武器を――マシンガンやガトリングガン、ロケットランチャーまで――生み出して、数で優勢の敵を押し戻すジェミニオン。
「これなら届く。貴様ら全て鉄屑にしてやる……!」
 そうして敵陣をこじ開ければ、その穴からアンナが棍棒代わりに使っていた――既に上半身が原型を留めていない――機体を投擲する。
 夜空に放り投げられた群狼は、果たして上空を旋回する航空輸送艦の一隻に直撃してその気嚢を損傷させた。
 飛行船がガスを放出しながら徐々に高度を落としてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
うーんさっきから全体的にバグってるんでござるよね挙動が
敵味方キャバリアが集まりすぎて重たいんじゃないでござるか?こういう時は慎重に動かないと…ほら来た!
物理演算の神が襲ってきた降下キャバリア共で【変形合体】!
合体と言うよりキャバリア団子だが…よく見ると個々のキャバリアの手や足がネジ曲がったりしてる!

いやー神の仕業神の仕業、近づくと危険が危ないので味方は近づかないでくだされ
いいこと思いついた
狙撃された方向に向けて団子をドロップキック!拙者がバグるのは日常茶飯事だぜ!
物理運動を付与され狙撃手目掛けて散弾めいて異常な挙動で飛んでいくキャバリア団子With拙者!神の遊びに安置など無いと知れ!




 猟兵と護衛たちの激戦を一歩下がって見守っていたエドゥアルトは、降りしきる雪が掌に触れては溶ける様を見て憂うように呟く。
「うーんさっきから全体的にバグってるんでござるよね挙動が」
 市街地の脱出戦で物理神の加護を得たのがまずかっただろうか。妙に伸び縮みしながら震える手を見て、これだから戦場はとため息を吐く。
「敵味方キャバリアが集まりすぎて重たいんじゃないでござるか? こういうときは慎重に動かないと――」
 などと訳のわからないことを呟くエドゥアルトの眼前で、猟兵の攻撃を受け高度を落とす飛行船から後詰めのキャバリア中隊が降下を開始する。
 諸共に墜落する前に戦力を吐き出してしまおうという魂胆なのだろうが、エドゥアルトに見つかったのが運の尽き。
「あーあ言った側からキャバリア追加しちゃってどうなっても知らんでござるよ? ほら来た!」
 ほら来たとは言うが、どちらかと言えばエドゥアルトが呼び寄せたと言ったほうがよかろうか。ともかく低高度まで降りてきた飛行船から飛び出したキャバリアたちは、地面に触れるなり下半身を埋没させ上下に激しく振動しながら集合していく。
『な、なんだ機体制御が!?』
『駄目だ、操縦を受け付けない! クソッ!』
 パイロットたちの悲鳴にやれやれと首を振るエドゥアルト。こうなってしまえば再ロードするしかないが、現実世界でそれが出来るのはエドゥアルトのような人外に肩の辺りまで浸かったタイプの人間かバーチャルキャラクターくらいのものであろう。少なくとも決起軍の将校にそれを求めることは酷である。つまり彼らは詰みだ。
「駄目でござるよー処理性能に見合った容量で戦力追加しなきゃ」
 次世代機かPro仕様なら話は別でござったんですけどねーとか言って肩を竦めるヒゲの前で、第二次降下部隊のキャバリアたちがついに一箇所に集まりその装甲を触れさせ――
『う、うわぁぁぁぁッ!?』『ああっ!! なんだ、上下が掻き回されて――』『脱出、脱出を……脱出装置が動かない!!』
「うわぁ……物理演算の神ってば大はしゃぎでござるな……キャバリア共が変形合体してござるよ……」
 パイロットたちの悲鳴とエドゥアルトの引き気味の吐息。
 降下した"群狼"は、手足をおかしな方向に捻じ曲げながら絡み合い団子のように球状に"変形"していた。機械仕掛けの巨人たちはまるで生物のように痙攣しながら一塊になると、ぽんと弾かれるようにめり込んでいた地面から飛び出し地に転がった。
「いやー神の仕業神の仕業。あ、近づくと危険が危ないでござるからな、荒ぶる神が落ち着くまで味方は近づかないでくだされ」
 異様な姿に変貌した友軍機を救出しようとした決起軍機がキャバリア玉に触れるやいなや、頭まで地面に沈んだかと思うと高空から墜落しすんでのところでベイルアウトしたのを見て、護衛隊のパイロットが引きつった表情で機体の足を止める。
「あ。拙者良いこと思いついた」
 そしてエドゥアルトの頭脳が悪辣な作戦を捻り出す。
 厄介な狙撃手にこのバグ玉をぶつけてバグらせてやろう、と。
「いくぜ芋スナイパー! 神の遊びに安置など無いと知れ!」
 助走をつけてキャバリア団子にドロップキック。足裏が触れると同時、プロペラのように水平に回転しながらあらぬ方向に吹っ飛ばされるエドゥアルト。
 果たしてキャバリア団子はその重量とは裏腹の軽快さで飛翔し、鳴神山方面へと向かってゆく。
「拙者がバグるのは日常茶飯事だぜ!」
 などと言いながら回転しつつ落ち着き払って戦果確認をするヒゲの視線の向こうで、レーザーが何度か瞬きキャバリア団子を撃ち落とす。
 だがそれによって結合を解かれたバグキャバリアが電力プラント周辺に着弾し、狙撃手は一時的にその攻撃を中断せしめられるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

才堂・紅葉
UCは機動力5倍、射程半減を選択

「イグニッション!」
初手から真の姿の【封印を解く】
三節に畳んだ六尺棒を杭打ち機構に変換し、暴力的な機動力を発揮だ

・方針
狙撃の的を絞らせない機動戦を展開
奴等に勝る機動力を持って、【グラップル、早業】の蹴りや体当り等の打撃に重力【属性攻撃、重量攻撃】の威力を加えた【吹き飛ばし】で、個々の連携を妨げつつ破壊したい

「邪魔ぁッ!!」

この手の展開は反撃を恐れず捻じ伏せる【気合】が肝要だ

杭打ち機構は陛下や護衛の皆さん、ついでに麻呂さん狙いを【庇う】為に温存
危険の際は、【野生の勘】で間に入り、杭打ち機構で【ジャストディフェンス、受け流し、オーラ防御】でレーザーを斜めに逸らしたい


ダビング・レコーズ
決起軍の展開が正確かつ迅速過ぎる
情報が漏洩しているのか?
防衛側に内通者が?
具体的な根拠が無い現状では個人レベルでの警戒に留めておく以外に無い

護衛対象と敵軍の距離が狭まり過ぎた
戦術を迎撃主体に転換
運動性と速力を駆使し敵機と護衛対象の間に割り込み射線を遮る
機銃はEMフィールドで防御
ミサイルはルナライトで斬り払うかベルリオーズで撃ち落とす
迎撃手段としてキャプチャーバインドを使用
撃破せずに擱坐させ放置する事で敵機自体を防壁とする




『敵に速いのが二機いる!』
『突破されるぞ! 此処を抜かれたら葦原まで逃げられる!』
『葦原鎮台は我らに呼応しなかった! 逃せば決起が長引く、此処でなんとしても陛下の身柄を押さえねばならん!』
 散弾砲や機関銃、ミサイルまで使って二機のキャバリアを押さえ込もうとする決起軍部隊。
 ちょっと理解の外側にある攻撃で狙撃手の動きが一時的に止まった今こそ強行突破の好機と、前面に戦力を集中して突破口を形成するべく動いた紅葉とダビングは、その高い機動性を活かして高架上に布陣する敵部隊を翻弄していた。
「やはりおかしい」
 航空輸送艦に吊り下げられたまま上空から制圧射撃を行う敵機に向けて応射するアークレイズ。その機内でダビングは疑念を零す。
 地上に展開した敵部隊を徒手格闘で打ち据え陣形を叩き壊す紅葉は、その疑念に首を傾げた。
「なにか心配事でも?」
 ダビングは首肯する。決起軍の展開があまりに迅速すぎる。その上敵部隊は出現するなり皇帝の身柄引き渡しを要求してきた。このタイミングで帝都を脱出する少数部隊が皇帝を逃がすための精鋭部隊だと予想するのは分かる。
 だが、その少数部隊というのは帝都城を陽動に敵にギリギリまで感づかれない為の編成だったはず。
 帝都城はたしかに敵主力を釘付けにしてくれたが、しかし追撃隊といい眼前の部隊といい、明らかに皇帝奪還を目的とし、此方の部隊を捕捉した上で動いている。
 こちらの動きが敵に知られている。情報漏洩か、あるいは味方に内通者が居るのか――最も怪しかった九重小路豊麻呂は今まさに汚らしいが勇ましい悲鳴を上げながら敵を押しのけ皇帝の退路確保に尽力しているので違うと思いたいが、何しろこれは内紛である。内通者が居ておかしいということはない。 
 護衛隊の面々にすら気を許すわけにはいかない――が、今此処でそれを口にしたとて戦況が好転するでもなし。要らぬ疑心暗鬼で味方すらも連携を乱されるようであれば百害あって一利すらないだろう。
「いえ、何も」
 故にダビングは疑念を個人的な警戒に留め、それを紅葉にも伝えない。
「そ、なら良いですが些細なことでもこの国の未来に関わりますから、手遅れになる前に相談してくださいね」
 また一機、ナイフを突き込んで来た群狼を捕らえてその膝で腕部を圧し折った迦楼羅王。
 その勇戦に地上の部隊は崩れかけ、ようやく包囲に穴が開く。
「旭陽さん! 皆、今です!」
 紅葉の叫びに応じて、猟兵たちが抉じ開けた血路を脱出部隊が駆け抜ける。
「恩に着ます! 全機止まらず葦原まで走れェッ!!」
 次々突破してゆく味方機。だが決起軍もそれをただ見送りはしない。
 航空輸送艦に留まり空中で航空支援に徹していたキャバリアを切り離し、第二封鎖線をすぐさま構築したのだ。
『行かせはしない! 皇洲の夜明けが待っているんだ!』
『陛下、どうか我らと共に! 真に民を想うのは元老院ではなく加藤大尉であります!』
 護衛機に発砲し、その脱出を妨げる敵部隊からの訴え。
 旭陽は通信を遮断しようとするが、それを興徳帝がそっと制した。
「朕にはあの者たちの声も聞かねばならない義務がある。だから葵、たとえ恨み言であっても朕の耳を塞がないで」
「……承知!」
 漏れ聞こえてきたそんな会話に、紅葉は知らず微笑んでいた。
 やはり興徳帝は皇帝の器だ。なるほど決起軍が皇政復古を望み元老院と元帥府の排除を狙うのも解らないでもない。
 が、そのために血を流す選択をしたのが彼らの過ちだ。皇帝の意思に反した時点でどれほどの正論であろうとも逆賊に他ならない。政治が彼らをどう扱おうとも人が彼らを逆賊という呪いから解き放つことはないだろう。
 だからこそ、彼らは勝ってはならない。この国に楔を打ち込んだとしても、それに国を割らせてはいけない。
「邪魔ぁッ!!」
 迦楼羅王の蹴脚が敵機の首を刈り取り、体当たりが視覚を失った機体を地に倒す。散弾砲を納めた左腕部が突きつけられれば腕でそれを払い除け照準を逸らし、肩口を踏みつけ胴体との接続部を砕き折る。
『怯むな、撃てッ! 敵は少数、火力で圧倒せよ!!』
 乱戦の最中で四方八方からの銃撃。猟兵が補給する盾を使い潰しては交換してそれを受け止める護衛機だが、混戦となれば猟兵側も大火力で一網打尽とはいかぬ。
 機関銃の掃射を防御膜で弾き、向こうは遠慮も何もなく撃ちまくってくるミサイルをリニアライフルで撃ち落とし――迎撃をすり抜けた弾頭はプラズマブレードで切り払いながらアークレイズが敵陣を駆け抜ける。
 確固たる迎撃能力を有する自機を敵弾に対する囮とし、護衛隊への圧を減じることに成功した彼は、次なる一手として反撃に出た。
 アークレイズの火力と機動性ならば敵を撃破することなど容易いが、人死が望まれない以上は避けるべきだ。
 故にライフルを格納し、腕部に内蔵されたランチャーを照準する。
 グレネード――否、射出された擲弾は空中で内容物をぶちまけた。飛散する粘性の液体はキャバリアにまとわり付き、関節可動部に絡んでその動きを封じる。
 とはいえこの寒さ、スペック通りの拘束時間は望めない。粘着剤といえど凍結してしまえば容易く剥離してしまう可能性がある。
 ダビングは冷静に次弾を装填、発射された強靭なワイヤーネットが動きを止めた敵機を数機まとめて包み込むと、機体に絡まり完全に捕縛する。
 最初の部隊に比べると後詰めで急ぎ構築した感の強い第二次封鎖線は、当然のように猟兵達の活躍で突破されつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルナスル・アミューレンス
お、見えた見えた。
ちゃんと逃げては来られてるみたいだねぇ。
じゃあ、こっちもお手伝いと洒落込みましょうか。

鳴神山とは違うお山から、スナイパーのお仕事しましょうかねぇ。
ここからも十分に戦況が見えた、片っ端から『排除(ネラウ)』としますか。

――拘束制御術式、限定解除
山に根を張り、自分を固定。
第六感と戦闘知識で敵の行動を見切り、蹂躙していきましょうか。
先ずは、撃たれると思ってないであろう、鳴神山の大将からかな。
後々邪魔だろうし。
次は、運び屋の気球を駆除して、そこからキャバリアを吹っ飛ばしましょうかねぇ。

一方的に撃たれる恐怖を教えてあげるよ。
それに、狙い撃つなら狙い撃たれる覚悟も、ね。




 宝栄山。
 帝都秋津と第二帝都葦原を繋ぐ高速道路、秋津スカイラインを挟んで鳴神山の反対側に位置する山である。
 標高は鳴神山よりやや低いが、キャバリアの台頭以前にはかつて帝都守護の要衝の一つであった宝栄山塞が置かれていた歴史を持つ。
 要塞を設置され、そして砲台があった。つまり宝栄山は極めて射線を取りやすい絶妙な立地にあるのだ。戦場の全域を見渡せるその山頂、撤去され今は宝栄山塞の歴史を語る立て看板と要塞の土台しか残っていないそこで、アルナスルは突破を図る脱出部隊を見下ろしていた。
「お、見えた見えた。ちゃんと逃げて来られてるみたいだねぇ」
 防毒面の怪人は、纏った腕輪を大型の対物狙撃銃に変貌させて宝栄山塞の砲台跡に陣取った。敵も味方もよくよく見える。
「うん、いい立地だ。じゃあこっちもお手伝いと洒落込みましょうか」
 呟く彼の足輪が地面に根を張り、強固に狙撃手を固定する。これで大口径の狙撃銃を扱うに足る安定感を確保し、狙撃姿勢を取るアルナスル。
「進路を塞ぐ連中は片っ端から排除するとして……」
 やはり気になるのは鳴神山発電プラントに陣取る敵のスナイパーだ。
 見下ろして見ている限りでは、敵の主力機である"群狼"なる機体は実弾兵装がメイン。そのパワーからも大出力のレーザー兵器を運用できるスペックを見て取ることはできない。
 ということは鳴神山の狙撃手は上位機種を装備しているか、あるいは――
「狙撃に適したこっちじゃなくて鳴神山の方を選んだってことは、そういうことかな?」
 銃口を鳴神山に向け、スコープを覗き込む。
 雪降る夜の闇に航空障害灯の紅い光をちかちかと点滅させる発電プラント。空を飛ぶものなど最早飛行船とミサイル、キャバリアくらいしか残っていない世界で、その光はかつて確かに人類が空をその手にしていたことを想起させる。
 その建物を見回せば、プラントの真下で建造物を盾に長大なレーザーライフルを構える機体が一機。
 先の猟兵の奇襲攻撃を警戒して狙撃位置を変えたのだろうか。その割に鳴神山を移動していない辺り、アルナスルの予想はどうやら正解に近いようであった。
「あれ、多分プラントの電力を掠め取ってるよねぇ」
 ここからではプラント建造物が邪魔でその証拠はおろか機種を識別しうるほどの機体の外観すら見えはしないが、おそらくケーブルなりで発電プラントの大出力を引き込み長距離狙撃を実現しているのだろう。
 ということは、あの機体を鳴神山から追い出す、あるいは発電プラントとの接続部を破壊できれば狙撃の脅威は失われるはず。
「――拘束制御術式、限定解除」
 地に張った根をより強固に。狙撃銃をより長大に。弾丸をより強固に。
 脱出部隊を危険に晒す狙撃手は早めに摘み取るに越したことはない。
「自分が撃たれるとは思ってないでしょ。でもね、狙い撃つなら反撃される覚悟もしておかなきゃ」
 まずは牽制。物陰から敵機を追い出すべく、わずかに見え隠れする敵機の装甲の端を照準し――撃つ。
 轟音とともに放たれた弾丸が違わず目標を射抜けば、敵機はたまらず動き――
「へぇ、動かないんだぁ。肝が据わったパイロットなのかなぁ。それとも、怖くて身動きできないのか……」
 だったら、と次弾を装填。
「一方的に撃たれる恐怖を教えてあげるよ」
 照準、トリガー、着弾。照準、トリガー、着弾。何度も繰り返し送り込まれた弾丸は狙撃手を威圧する。装甲の端をじわじわと削り取られながら、狙撃手はついに動いた。
 その白銀を月下に晒し――直後放たれたレーザーが宝栄山塞跡を薙ぎ払う。
 あの距離から、キャバリアのセンサーに囚われぬよう隠れ潜んだ自身を数十センチの至近で掠めたレーザーにアルナスルは防毒面の裡でやるじゃないかと呟いた。
 されるがままに撃たれていたのは、此方の射点を見極めていたのだ。
 ――だが。
「もう狙撃はできないよねぇ。だったら皆逃げられる。僕の勝ちだよ」
 アルナスルの弾丸もまた、敵機が射撃する一瞬でその給電ケーブルを確かに射抜いていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
狙撃による遠方よりの一方的攻勢、その上での包囲乱戦。
…ハハハ!益々面白い!喰らい甲斐があるというものよ!

黄昏大隊・制空部隊発動。ヘリ部隊を呼び出す。
殲禍炎剣が反応せぬ程度の低空を飛行させ、地上の敵を各武装にて攻撃させる。狙撃を躱せるよう、可能な限り不規則な機動を行わせつつ。
余自身は引き続きヤークト・ドラッヘに【騎乗】、敵中を駆け回りつつ敵機の脚を電磁砲やミサイル(【砲撃】【誘導弾】)で【部位破壊】し撹乱を担おう。味方に当ててしまう可能性がある状況で狙撃はそうそう行えまい。
「余らに続くがいい!全軍前進!」


ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・S

なるほど白塗りの忠義は嘘ではないか、少し見誤ってたかな?
なら前に出られちゃ困るねぇ

「副議長殿は陛下の御身を守る最後の盾でありましょう。ここはお下がりを」

■方針
自機に搭乗
Henryの【戦闘知識】で狙撃手の射撃位置を確認し、周囲に情報を伝達
遠方の狙撃と包囲陣、教本通りのいいやり方だ
だからこそ付け込める

【制圧射撃】で敵の動きを制限しつつ、他猟兵や護衛に【援護射撃】
焦れて突出してきた相手に【推力移動】で接近して各個撃破する
ショットガンで可能な限り【部位破壊】脚部や武器を狙うのはかわらず

狙撃に機動部隊、主力では無いにしても包囲の展開が速い
…まだ続きはある、そう考えた方が良さそうだ


東雲・一朗
▷アドリブ歓迎

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
帝都製キャバリアの桜花壱式に搭乗。

▷迎撃
このタイミングと地形で仕掛けてくるか…流石と言うべきだが決死の強襲でもある、差し違える覚悟か。
なればこの東雲、1人の指揮官、戦術家として敵の更に上を行かねばな。
確かな【集団戦術】【団体行動】【戦闘知識】を用いて【瞬間思考力】を働かせ敵の戦術行動を【見切る】。
そして不意の狙撃を弾く【オーラ防御】桜花の霊気を纏い単騎で【切り込み】をかけ、敵が有機的な連携が出来ぬ立ち回りで【遊撃】しながら二刀【受け流し】からの【カウンター】【剣刃一閃】で敵を斬り捨ててゆく。
「最強の兵、それ即ち一騎当千の戦術家なり」
 




 猟兵の猛攻で包囲は崩され、皇帝を連れた脱出部隊は戦域を突破しつつある。
 そんな戦場において殿軍を務めるは三人の指揮官たち。
 桜花壱式を駆る東雲一朗、プレケスを駆るヴィクター・ホリディ、そして三人のうち唯一キャバリアではなく二輪の重装甲戦闘バイクに跨るギージスレーヴ・メーベルナッハ。
 三人の意見は一致している。
 高架道路という機動を制限される地形に脱出部隊が逃げ込むことを予見し、狙撃手を置き空挺機甲部隊すら手配した遣り手の指揮官が敵にいる。
「この地形でこの戦術、流石と言うべきだが降りてきた兵は決死だな」
「全く……手際が良くて嫌んなるね。まだ続きはある、そう考えたほうが良さそうだ」
 降下部隊もまた、戦略目標を達成するかさもなくば死に物狂いの脱出部隊に討たれるかの二択を背負って降りてきたのだ。ましてや相手が猟兵ともなれば勝機は薄かろうに、それでも忠実に作戦に準ずる武者たちに一朗は内心での称賛を向ける。刺し違えてでも護衛を引き剥がし、皇帝を奪還するのだという並々ならぬ決意を見て取ったのだ。
 同じ鬼気迫る気配を感じ取って、しかし一朗とは対象的にヴィクターは肩を竦めて苦笑する。
 ここまで此方の動きを読み切って罠を仕掛けた指揮官が、最後に数と闘志だけで押し切るだけのはずがない。
 間違いなくもう一手、秋津の勢力圏を脱するまでに何かを仕掛けてくる予感を覚えたのだ。ただでさえ不殺に徹して神経を使っているというのに、この上まだなにか仕掛けられては溜まったものではない。
「ハハハッ! まだ何か仕掛けてくるようなら益々面白い! 喰らい甲斐があるというものよ!」
 背中に隠した要人たちが全力で逃げる無防備な背を襲われぬよう、彼らと背中合わせにゆっくりと後退してゆく二機と一台。
 プレケスのショットガンから撃ち出された散弾が軽装甲の"群狼"たちを脅かし、追撃の速度を削ぎ落とす。
「狙撃手を置いて足止めしつつ無理やり乱戦に持ち込む……輸送車列を襲うなら教本通りでいいやり方だ、座学なら90点をあげてもいい」
 ヴィクターは姿の見えぬ敵指揮官を褒める。加藤某とかいう決起の首謀者が陣頭指揮を執っているのかあるいは彼の部下に切れ者が居るのかはわからないが、決起軍もどうしてただの青年将校団というわけではないようだ。
「だが教本通りの戦術はあくまで理想論、実際の戦場ではそのように事が進むことなど殆どありえない」
 一朗が呟けば、ヴィクターもそれに頷く。
「ならばこの東雲、一人の指揮官として、戦術家として敵の更に上を行かねばな」
「そういうことなら私は少佐殿の指揮下に入りましょうかね。せいぜいこき使って下さいなっと」
「――余は勝手にやらせてもらうぞ。一線級の指揮官ならばそちらで合わせてもらおう!」
 桜花壱式に歩調を合わせたプレケスの足元をすり抜けて、ギージスレーヴの駆る地竜が追撃する敵部隊に突入してゆく。
 散弾を警戒して機体同士の距離を開いていた敵部隊は、ヤークト・ドラッヘが滑り込む隙間に困ることはない。
 一瞬のうちに敵陣に斬り込んだ大型のバイクは、凍りついた路面を滑るように旋回しつつドリフト、敵機の脆い膝裏に対戦車ミサイルを直撃させて瞬く間に一機を行動不能に叩き落とす。
「ヒューッ、こりゃ凄いや。さて少佐殿、我々はどう動きますかね」
「事此処に至っては一騎当千の力量で追撃部隊を蹴散らすまで。ここから策を弄せば付け入る隙を与えるだけの状況だろう」
 そいつぁシンプルでわかりやすいことですな、と軽口を叩いてヤークト・ドラッヘが切り裂いた敵陣の隙間に滑り込むプレケス。
 ド派手に砲火を撒き散らしながら路面をくるりひらりと駆け回る小さな地竜を狙って短機関銃を下ろした敵機を狙い、路面をホバー移動して距離を詰めたプレケスは散弾銃で肉薄射撃を敢行する。
 足を狙えば散弾が不用意にギージスレーヴを害する可能性がある。狙いは肩口、腕を使い物にならなくすれば、見たところ敵機の頭部や胸部に固定武装の類はない。
「どうだいお嬢さん、こんな有象無象の坊やたちよりおじさんと踊らないか」
「ハハハハ! それは魅力的な誘いだが辞退させてもらおう。――もうダンスの相手は呼んであるからな!」
 二人が暴れるその頭上で、航空輸送艦が突如爆炎に呑まれて墜ちた。
 火だるまになって墜落していく大型飛行船。その陰から爆音とともに飛来したのは、低空を這うように匍匐飛行する戦闘ヘリの群れだ。
 対空ミサイルで航空輸送艦を撃墜した彼らは、続けて機関砲の掃射で地上の決起軍機を追い散らす。
「余らが後ろは支えきる! 全軍前進、突き進め!!」
 三人の猟兵を置き去りに、護衛部隊のキャバリアたちは速度を上げていく。しかしその最後尾、豊麻呂の機体がふと立ち止まった。
「止まるな、行け!! 副議長殿は陛下の御身を守る最後の盾でありましょう!」
「……ぬぅッ。貴様らに言うだけ無駄とは分かっておじゃるが、死ぬではないぞ! 加藤めから帝都を奪還するときにも貴様らの力を使うてやるからのう!」
 立ち止まったが振り返ることはなく、そして再び駆け出した白塗りの男を背中で見送って、ヴィクターは空と陸からの挟撃を繰り出すギージスレーヴの軍勢に滑り込み彼女の部隊に気を取られた敵機を確実に一機ずつ屠っていく。
 だが――
『我々にも意地がある! 誇りがある! 負けてはならぬ理由があるッ! 腕も足もくれてやる、全機最大戦速! 逃げる卑怯者どもの背に刃を突き立て皇帝陛下の御身を我らが手に!』
 散弾の直撃を受け、武装した片腕をズタズタに破壊された機体が。
 脚部を地上からの砲撃で破壊され、僅かな推進剤を浪費に近い出力で噴射して無理やり移動能力を維持している機体が。
 頭上からの掃射で頭部が潰れ、ろくに前も見えていないような機体が。
 絶対に諦めるものかと武器を握り締め、投降の機会を投げ出して脱出部隊の背に追い縋る。
 ヴィクターもギージスレーヴも予想外の展開であった。戦闘力を欠いた敵機はもはや敵機に非ずと放置していたが、損傷部位から誘爆するかもしれないリスクを背負ってでも作戦目標に従順な部隊だったとは。
 そしてそんな傷痍兵の如きズタズタのキャバリアの特攻を、まだ五体満足な機体が送り出すように二人の前に壁を作る。
「クソッ、一点突破で切り抜けるぞお嬢さん! 航空支援を寄越してくれ!」
「その必要はなかろう。あの東雲という男、将としてもやるが武人としてもそれなり以上だ」
 連中のような捨て鉢の死兵など中隊規模で掛かってもあの男一人に勝てるものか。ギージスレーヴの言った通り、桜花壱式は散弾砲の射撃を装甲と霊気の防御膜で弾き、舞踊の如く流麗優美な足捌きでゆったりとそれらの間を抜けながら二刀を振るう。
 ふぉんと冷たい空気を切り裂く音が響くたび、桜花壱式とすれ違った敵機が上半身と下半身を切り分けられて崩れ落ちた。
 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ――いくつもの機体が完全な鉄屑に戻るころ、ヴィクター達も敵を殲滅することに成功していた。
「最強の兵、それ即ち一騎当千の戦術家なり」
 敵部隊がそうしたようにヴィクターとギージスレーヴが乱戦に持ち込み足止めを行い、そして狙撃手がそうしたように隊列から離れたものをすぐさま狙って一朗がそれを斬り倒す。
 指揮官達の連携は、見事群狼の群れを蹴散らし後方の脅威を排除してみせたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『狂月神機『ディアーナ』』

POW   :    BSサテライトキャノン『三ツ星への愛』
【月面発電施設からの次元エネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大規模戦略級ビーム砲撃】で攻撃する。
SPD   :    報いの女神『猟犬の鹿狩り』
自身が装備する【FXRソードビット&FSBレーザービット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    対情報戦術機構『月の女神』
自身の【全身】から【月光の如く揺らめく光】を放出し、戦場内全ての【正気・理性・判断力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテラ・ウィンディアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 その日、帝都城が陥ちた。
 皇室近衛と、元帥府大将軍直率の精鋭という皇洲連邦で最も練度と装備に恵まれた部隊が守護する難攻不落のはずの城塞は、篝火のようにキャバリアが焚べられた炎に照らされていた。
 葺かれた瓦の屋根に雪が積もり、月光と戦火を受けて二色に輝いている。ただ一機のキャバリアの浸透襲撃によって生じた混乱を突かれた帝都城正門は、激戦を示す無数の鉄巨人の屍もそのままに決起軍機が刃を地に突き立て門番のようにずらりと立ち並び、かつての主に代わり外界に睨みを利かせる。
 決起軍はその正当性を証明するため皇帝の身柄を奪取するという第一の目的を達成することはできなかった――大将軍らが護る城内に控えていたのも、帝都城の最後の反撃に乗じて脱出を試み捕縛されたのも影武者であった――が、第二の目標である国家中枢機能の掌握に関しては此処に完全にその戦略目標を達成したのである。
 軍総司令部にして帝都最大の抵抗勢力の拠点であった帝都城が陥落し、政治中枢である元老院は既に制圧、奸臣たる議員や大臣の過半は捕縛され投獄または処刑された。帝都の生命線たる鳴神山電力プラントも決起と同時に加藤大尉の信頼する副官が掌握、帝都城の戦いが終結した今、彼女を支援しプラントを防衛するための戦力を抽出し出撃させたところである。
『唯一、皇帝陛下をお迎え出来なんだのが心残り、か』
 加藤大尉は機体の足に寄り掛かり、月明かりに白く濁る息を吐いて西――第二帝都葦原の方角を見遣る。
『よもやとは思ったが旭陽君、君が私の読みを正面から突き破るとはな。いや……君だけではあるまい。猟兵が動いているのだろう』
 この決起の供、そして加藤紀靖という男の死に場所たる金色の鬼神が憎々しげに動力部に溜め込んだ熱量をふしゅると吐き出した。どうにもこの機体は猟兵に対して並々ならぬ敵意を感じるのだが、それは国家の再生のみを望む加藤にとってどうでもよいことであった。
 むしろ元帥府大将軍、葵天道――旭陽の父だ――との交戦で機体が損傷を受け整備を受けねば戦えぬ状態であることに安堵すら覚える。 
 さもなくば猟兵に守られ帝都を脱したあの若き才女と敬愛すべき幼い君主を今すぐにでもこの金色の鬼神は追いかけ、猟兵とともに全てを焼き尽くすだろう。
 コックピットブロックを焼き融かされながらも鬼神の肩に刀を捩じ込んだその姿勢のまま朽ちた大将軍専用機を見上げて右手を挙げ敬礼の仕草を取りかけ、しかし決起に理想を燃やす自分より若い、学徒の年頃の将兵の視線に気付いてそれを外套のポケットに押し込んだ。
 ――帝都に雪が積もってゆく。


 航空輸送艦と空挺部隊による強襲を突破した猟兵たちは、皇帝を第二帝都葦原へ送り届けるべく高架道路をひたすらに駆けていた。
 後方に追撃の敵は無く、前方にも同様に敵影なし。帝都動乱の影響か、長距離輸送のトラックひとつ見かけない深夜の高速道路をキャバリアの一団は慎重に、しかし可能な限りの全速で走り抜ける。
 そうして距離を稼いだ一団がまもなく葦原鎮台の防空勢力圏に踏み込もうかと言う時、先頭を行く護衛が足を止め銃を構える。
 同時、突然レーダー上に出現した無数の光点に一行は息を飲んだ。
「ひぃっ!! このような数もう無理でおじゃる! まさか葦原鎮台め裏切ったか!!」
「もしそうならば朕が話をする。皆を殺させはしないから」
 狼狽える豊麻呂と声を震わせながら気丈に振る舞う興徳帝を背に庇い、護衛たちが円陣を組む。
「陛下、今のうちに九重小路殿の機にお移りください。この葵旭陽、父上の名代として生命に代えても陛下には指一本とて触れさせはしません」
 彼我の距離が銃撃の届くそれに近づく――その時だ。
「馬鹿野郎! ロックオンを外せ、殺されてぇのか!!」
 突如割り込んできた異国の訛りが強い言葉とともに、所属不明を示す黄色の光点が一気に友軍機を表す青色に裏返った。
「此方は経済連合軍アドバンスド・オーダー社外交三課だ! アシハラの意向でキミシマの皇帝を救出しに来た!」
 ステルスキャバリアを駆る異国の傭兵たちは、眼前で防御態勢を敷く小規模部隊こそがその皇帝と護衛たちであると理解するや迅速に帝都方面への防衛線を構築しながら葦原への撤退をエスコートし始める。
「…………葦原鎮台が傭兵を遣わしてくれたのですか。かの地の司令官には助けられましたね……陛下、今暫くのご辛抱ですが葦原に着けばようやく手足を伸ばしていただけるかと」
 旭陽がほうとため息を吐き、皇帝を気遣い言葉を掛ければ、皇帝は微笑みこくりと頷いた。
「ふん、ならば葦原鎮台の軍を寄越せばよかろうに。異人の傭兵とは出迎えの礼がなっておらぬわ」
 すっかりと調子を取り戻した豊麻呂は毒を吐きながらも、友軍の勢力圏に辿り着き大部隊の庇護を受けて強張っていた表情を緩ませる。
 だが、そこで護衛部隊の武者たちがぴたりと足を止めた。
 皇帝と旭陽、そして豊麻呂に敬礼を送り、そして踵を返す。
「無事に陛下と旭陽様、九重小路殿を送り届けた今、我らに思い残すことは唯一つ」
「武者として、将軍殿下の臣下として、陛下の命に背く不敬をお許し下さい」
「帝都で戦っている天道様の下へ馳せ参じ、賊軍討伐に加勢する誉れを……」
「なりません!」
 引き返し帝都の戦いに加わると望んだ兵達を一喝したのは、それまで凛々しくも穏やかだった旭陽であった。
「葦原鎮台とて心から信用できる相手かはまだ分からない。私はまだ未熟で、一人では陛下を護りきれぬかもしれない。お前たちの手が必要なのです。それにあの父上であれば、六機ばかりの加勢無くとも加藤らを鎮圧してみせることでしょう」
 だから最後まで伴をし、己の未熟を補い導いてほしい。国家の最重要人物の護衛に選抜されるほどの優れた武者たちに、将軍の娘は頭を下げた。
 ――その時だ。防衛線を敷きつつ緩やかに撤退していた経済連合軍の傭兵部隊の一角が同時に爆ぜ、戦線が崩れた。
「何事だ!?」
「クソッタレ! 何処からか撃たれて――うああっ!!」
 四方八方から浴びせられるレーザーに、ステルス機すらも逃れること叶わず次々に射抜かれ爆散していく。
「相手をするだけ無駄だ! 回避機動を徹底しつつ全速でアシハラに退くぞ! 皇帝陛下だけは落とさせるな!」
「ええいええい、加藤の手の者がまだ追ってきたでおじゃるか! しつこいやつめ……猟兵よ、麻呂から頼む! 追手を蹴散らしてたもれ!」
 豊麻呂の願いを受け、猟兵たちは撤退する部隊から離脱してレーザーの雨に飛び込んでいく。
 知っている光だ。これは、鳴神山の狙撃手と同じ――


『加藤くんはどうやら上手くやったようですね。こちらは作戦失敗ですが』
 撤退していく所属不明機――どうやら経済連合あたりが送り込んだ傭兵らしい――を淡々とビット兵器による飽和攻撃と、回避の隙を貫く狙撃で撃ち落としながら帝都警衛師団第二大隊第一中隊長、駒江槙中尉はわずかに渋面を浮かべた。
 皇帝陛下の奪還。そのために投じた戦力は猟兵の手で壊滅し、既に皇帝陛下は葦原鎮台の勢力圏。単騎駆けでこれを奪って逃げ延びることができると思えるほど、加藤大尉という高すぎる壁を前にした駒江中尉は自惚れられてはいなかった。
 白銀の鬼神、この決起に際して"何処かの誰か"から譲り受けた異国のキャバリア――彼女が鏡月と呼ぶ機体の性能をしても過信は禁物であると驕らず慎重さを忘れぬのが彼女の美点であり欠点でもあった。
 身を隠し鳴神山からの狙撃支援に徹したことで決起軍の切り札の一つである鏡月を温存し、今葦原鎮台の戦力の一角を担う経済連合の傭兵にも大打撃を与えたことは彼女の慎重さが齎した功であったが、その慎重さ故に決起の錦の御旗となるはずだった皇帝を確保できず逃してしまった。
『言い逃れはしません。昔から戦力の逐次投入、様子見が過ぎるのは悪い癖だと君には言われ続けましたがついぞ改善したと君に見せられずに今日が来てしまいましたね』
 駒江中尉の機体が加速し、月下に白銀躍り出る。
『ならば私に出来ることはひとつ。せめてここで一兵でも道連れに、加藤くんの大義の障害を取り除きます! 猟兵、貴方達の探し求めるオブリビオンマシンこそ此処に在り! 帝都警衛師団第二大隊第一中隊長駒江槙、いざ……!!』
 長大な狙撃銃と従順に付き従うビット兵器を操り、うら若き月の乙女が殿軍を務める猟兵へと襲いかかる!
荒谷・つかさ
ああもう鬱陶しいったらありゃしない!
狙撃もビットも耐えられなくないけれど、インファイトに持ち込むまでもつかどうか……
仕方ないわね、隠し玉を使わせてもらおうかしら。

あの手の長物は照準を合わせるのに時間がかかるはずだから、懐に飛び込んで至近距離で振り回せば怖くない
という事で【噴進式・螺旋鬼神拳】発動
ただし向けるのは敵機でなく地面
ブースター付き大型ドリルに変形した両腕で以て地面を掘り、地下へ身を隠す
(掘った跡は他の味方機の塹壕代わりに)
そのまま逆向きに放物線を描くように掘り進んで一気に彼我の距離を詰め、飛び出すと同時に【噴進式・螺旋鬼神拳】で殴打、或いは射出し攻撃

チャージなど……させるものかッ!!!


アルナスル・アミューレンス
とうとう腰を上げたかぁ。
なるほどねぇ、ビットにビーム、ハイテクだねぇ。
でも、だからこそ駄目だねぇ。
その臭い、その存在は、決して『断絶(トラエ)』て逃がさない。

――拘束制御術式、限定解除
狙撃ポイントを移動して、『排除(ネラウ)』状態を再度とるよ。
ああ、白い「月」はよく見えるねぇ。
お陰で、闇に紛れやすいや。

さて、やるのはスナイパーのお仕事……と言っても、これはまた別物だけどね。
放たれた弾丸は加速し続け、何処までも縦横無尽に追い続け、穿ち喰らう。
オブリビオンである、その機体を狙う確殺の魔弾さ。

ああでも、そのビームキャノンは優先で狙い撃ちさせてもらおうかな。
こっちとしても、街とかへの被害を鑑みてもね。




「とうとう腰を上げたかぁ」
 鳴神山と宝栄山塞跡、戦場を挟んだ二つ山の狙撃戦を繰り広げた敵機がついにその白銀を堂々現した。
 その後姿を捉えたアルナスルは、脱出部隊の後背を追う敵機の背を静かに追跡し始めた。
 あのレーザー砲、あれは鳴神山電力プラントという大出力の電源を失ってもなお脱出部隊にとっては無視できない脅威となる。
 現時点で唯一あれの姿を知り、あれの力を知る者として、アルナスルは危険な狙撃手を野放しにすることは出来ない。
 月光を浴びて眩く輝く機体を、宵闇に融けた怪人が追跡する――

 それからいくらかの時を経て、白銀――鏡月を駆る駒江中尉と相対する猟兵たち。
 撤退支援のため出撃した経済連合軍の傭兵部隊が脱出部隊を庇いながら弾幕を展開し、敵機を抑え込み猟兵が突撃する機を作り出そうとしているが、状況は思わしくない。
「しまっ――」
 また一機、目の前で経済連合軍のキャバリアが三方からのビット攻撃で動力部を射抜かれ爆散したのを見送るしかなかったつかさが歯噛みする。
「ああもう、鬱陶しいったらありゃしない!!」
 再度乗り込んだスルトの装甲であれば、ビットによるオールレンジ攻撃も耐えられぬものではない。スーパーロボットの装甲は伊達ではないのだ。だが、どれほど耐えられようと彼女一人で守れる相手などたかが知れている。
 皇帝を守る連邦の武者たちを庇うことに意識を割けば、全周囲から襲い来るビット攻撃より経済連合軍機まで護ることは不可能であった。
「傭兵なら覚悟もあるでしょう。金の為に戦うなら、引き際だって弁えているはず」
 だが、自分にそう言い聞かせようとも眼前の光景は変わらない。
 理想と大義を掲げた青年将校が駆るオブリビオンマシンによる一方的な蹂躙だ。こんなものを許せるか。許してなるものか。
 そんな逸る思いとは裏腹に、ビットに紛れて時折飛んでくる狙撃がつかさの足を止める。高出力のレーザー狙撃は、一撃までは耐えられても高精度で同一箇所を連続狙撃されれば流石のスルトとてただでは済まないだろう。
 そして敵機を駆るのは近接攻撃のためにスルトが接近するのを、ただの一度の狙撃と効きの悪いビットだけで迎え撃つような愚かなパイロットではない。
「……こうなれば仕方ないわね。奥の手を使う時が来たかしら」
 彼我は未だ砲狙撃戦の距離。なれどスルトは拳を握りしめる。
「正面から届かないなら……それ以外で懐に飛び込むまでよ!」
 拳を覆うように展開した装甲が高速で回転し、後端から噴炎を赤々と滾らせる。
 経済連合の部隊が決死で迎撃、陽動戦を展開し、それが破綻していない今こそ奇襲攻撃の好機に他ならぬ。
 スルトはドリルの如き拳を地に叩きつけ、その巨体を潜航させてゆく――

「やっと追いついたよ」
 只人の身であれば、戦闘機動を展開するキャバリアに追いつくなど不可能であろう。
 だがその狩人は猟兵であった。アルナスルは闇に潜んだまま、前方に展開するおそらく味方の大部隊を相手に有利に戦闘を進めている白銀の背中を視界に捉える。
「あぁ、白い"月"はよく見えるねぇ」
 眩く輝く鏡月は嫌が応にもよく目立つ。その輝きが生み出す闇は、アルナスルが身を潜めるのにこれ以上無い死角となった。
「さて――もう一度狙撃といこうか。と言ってもこれはまた別物だけどね」
 狙撃姿勢を取り、大型の狙撃銃を構え――その機関部に特製の砲弾を押し込んで、アルナスルは月を狙う。
「なるほどねぇ……」
 ビット兵器を縦横に飛翔させ、迎撃部隊を一方的に翻弄しながらここ一番で必中のレーザー狙撃を放つ。敵の戦術も性能も一級品だ。伊達や酔狂で決起など始めたわけではないらしい。だが、その苛烈な攻めこそ付け入る隙を生むはず。
「そのレーザーは優先して壊さないとね」
 あれこそあの機体の最大火力にして最大の脅威。
 一時的にでも使用不能にしなければ、味方の被害は留まるところを知らぬだろう。
 だから、アルナスルは引き金を引く。オブリビオンとパイロットの繫がりを、そしてかの機体が発電プラントとの接続を立たれてなお大出力の砲撃を繰り出せるカラクリを断つために。
「逃さない。これはその機体をどこまでも追い続け、穿ち喰らう魔弾さ」
 全くの死角から放たれた砲弾は、機動する敵機の死角を的確に飛翔してレーザーキャノンに命中し、かの機体の砲撃を可能たらしめる旧時代の月面発電プラントとの無線接続を一時的に喪失せしめた。
 だが、わずかに遅い。充填を間もなく完了するレーザーは、先の狙撃にて闇に姿を晒したアルナスルを銃口に捉えた。
『今の一撃、宝栄山の狙撃手ですか! 貴方は厄介ですので先んじて討ちます!』
 これはしまった。アルナスルは諦めとも取れる潔さで狙撃銃を下ろす。射撃の安定性を高めるため地に根を張った偽神兵器はそう簡単に移動することを許さない。
 そして今回は敵が照準を外すことも期待できそうにない。
 月光のように眩く白い光が――
「チャージなど……させるものかッ!!」
 銃口を跳ね上げる鉄拳。地面を突き破って土塊が柱の如く噴出し、その内から現れた鉄巨人の拳が砲身をかちあげる。
 最大出力に至らぬまま暴発を防ぐため放出され、夜空を切り裂き雪雲に穴を開ける閃光。
「狙撃手さん、あなたが気を引いてくれたおかげでこっちも打って出る準備が出来たみたいよ」
 背後から奇襲を仕掛けたアルナスルと、地中から強襲したつかさ。
 二人が駒江中尉を引き付けたことで経済連合軍を襲うビットの攻勢が僅かに緩んだ。
 その間隙を縫うように、猟兵達の駆るキャバリアが白銀の狙撃手へと一気に肉薄する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

槐・白羅
豊麻呂とやら
あれはあえて憎まれ役を演じているか
それで皇帝へのヘイトを…
見事な忠臣よ



お前…本当に凄いな

よりによって…そいつに乗って乗っ取られもせずこうして会話ができるのか

分かるぞ…そいつはモルス以上にお前を苛んでいるだろうに

それだけの絆…そして信念か

善い

その上で問おう

お前達にとっての国とは何かを

反乱を起こして尚望む国の在り方とはなんだ?

UC発動
【受け流し】で攻撃を受け流しダメージの軽減を図る

周囲のビットは【貫通攻撃・重量攻撃】にて迎撃するぞ

受けたダメージは死の閃光を以て神機のエネルギーを奪い回復に繋

同時に次元エネルギーチャージも無力化…できずとも威力の減衰を狙う

生命力の強奪だけは絶対に行わない


東雲・一朗
▷アドリブ歓迎

▷武装
帝都製キャリアの桜花壱式に搭乗。

▷月を落とす
なるほど、あれが襲撃部隊の指揮官、決起などと大胆な事に加わる割には慎重に過ぎる戦術、この辺りがオブリビオンマシンによる歪みなのやも知れぬ。
「無駄死には軍人として最も恥ずべき事だ」
【桜花の誓い】により全盛期の力を取り戻して迎え撃つ。
桜花の【オーラ防御】を機体に纏わせ【切り込み】、迎撃に放たれるビットや狙撃を【集団戦闘】と【団体行動】の【戦闘知識】を土台に冴え渡る【瞬間思考力】を用いて【見切り】、全てを斬り払い【受け流し】ながら二刀による【切断】【2回攻撃】の【カウンター】を浴びせ追い詰めせめてサテライトキャノンだけでも切り捨てねば。




「あの男……豊麻呂とか言ったか」
 白羅は遥か後方、友軍機に護られ敵機の追撃から逃れた機体を振り返り呟く。
「あれは見事な忠臣よ。敢えて憎まれ役を演じて敵意を一身に引き受けるとは」
 果たして彼の性根が敵を作りやすいというのもあるだろうが、この状況にあって皇帝への忠義を違えず誰かに媚びることもしない彼の有り様は、白羅の理解の通りの自ら矢面に立たんとする高潔なそれなのかもしれない。
 だからこそ、決起軍に追いつかせるわけにはいかないのだ。
 あの男はきっとこれからの皇洲連邦に無くてはならぬ重臣、忠臣となる存在。決起軍は皇帝はこそ殺さないだろうが、旧体制派の高官やその縁者は容赦なく処刑するであろうから、彼らのところに駒江中尉を行かせてはならない。
「あれが襲撃部隊の指揮官。なるほど決起などと大胆な行動に加わる割には慎重に過ぎる戦術、あれもオブリビオンマシンによる歪みなのか」
 モルスと並び撤退する友軍の背を護るべく立ち塞がる桜花壱式。一朗が駒江中尉の戦術と決起軍の戦略の歪さを指摘すれば、それに白羅は首を横に振る。
「あの機体は知っている。鏡月などと名付けたようだが、あれはディアーナに違いない。確かにあいつはパイロットを歪ませるが――」
 だが、駒江中尉のそれはディアーナの齎す狂気とは違う。あれはもっとおぞましい、人を人でない何かに変えてしまうマシンだ。
 駒江槙という女が未だに決起軍に与する青年将校団の一人としての自我を保ち続けているというそれが、白羅にとっては驚嘆に値すると同時に一つの事実を突きつける。
 鏡月を、ディアーナを破壊したところで駒江中尉は"狂気"から解き放たれることはない。彼女は極めて正気で決起に加担しているのだ。
「戦う前に少しだけ言わせてくれ」
 だから白羅は問う。ともすれば己と同じく、狂神の侵食に耐えうる稀有なパイロットに。もしかしたら戦友に成り得たかもしれぬ女に。
「よりによって……そいつに乗って心を乗っ取られず会話ができるとは思わなかった。分かるぞ……そいつは俺のモルスと同じか、それ以上にお前を苛んでいるだろうに」
 だから、問おう。
「お前とあの加藤という男にはそれだけの絆と信念があるのだろう。その上で、お前達にとっての国とは何だ。この反乱の先に、同胞の屍と血で造った路の向こうにお前達はどんな国の在り方を望むんだ?」
 白羅の問いに駒江中尉は静かに息を吸い、そして敢然とその問いに答える。
『皇洲の夜明けを。この国の腐り膿んだ病巣を、この決起にて切り落とすために私達は起ったのです。皇帝陛下には正しく在るべき国を治めていただく』
「そのために死ぬことも厭わないというのか」
 一朗の問いに、鏡月を首肯させて中尉は応えた。
「無駄死には軍人として最も恥ずべきことだぞ」
『無駄ではありませんよ、少佐殿。私は祖国の未来のため、そして加藤くん……好いた男の為に死ぬ。軍人として、女として、これ以上の冥利はありません!』
 両者が言葉を交わす間、わずかに停滞していた戦闘が再び動き出す。
 無数射出されたビットの群れがモルスと桜花壱式を取り囲み、レーザーの檻を形成して剣のような飛翔体を次々に送り込む。
「好いた男のために死ぬだと? それを加藤が望むと思っているのか、お前は!」
『加藤くんならば分かってくれると信じています! 私の命一つで国と彼が報われるなら、どんな死に方だって喜んで受け入れてみせる! たとえ地獄に落ちようと……ッ』
 飛来するビットを剣で受け流し、モルスから放たれた閃光に触れたビットが内包するエネルギーを奪われ減速、下降してゆく。
 そこを剣で貫き、あるいは叩き落として迎え撃ち、負った傷はビットから奪ったエネルギーで補修する。
 それでもじわりじわりと損傷が積み重なっていく。駒江中尉から生命力を奪えばそれも癒えるだろうが、神機級のオブリビオンマシンを御するほどの稀有なパイロットを殺す選択を白羅は選べない。
「お前は俺を甘いと嗤うか、モルスよ。だが俺はあの女を死なせたくはないんだ」
 それは親近感か、憧れか、あるいは同情か。だからモルスはその想いを託して一朗を送り出す。
「ビットは俺が引き受けた! モルスではあの女も殺してしまう、だから!」
「……承知した! 国を愛すその信念、路こそ違えど理解も共感も出来る。故に私は全力で貴殿に相対しよう――」
 帝都よ永遠なれ。
 ――全ての人々に永久の平穏あれ。
 帝都に咲く無数の幻朧桜を想い、それをこの皇洲の帝都と重ねて想う。
「サクラサクラ……桜花の如く散るとも、我が愛する全てを護る為に!」
 初老の将校が桜色の光に包まれ、みるみるうちに最盛期の姿を取り戻す。精悍な青年将校は肉体への負荷も構わず機体を進出させ、モルスが引き受けいくらか手薄になったビットの攻撃をオーラの護りで弾いて距離を詰める。
 抜けきれる。なにより白羅の陽動が凄まじい。ビットの半数以上を引き付け無力化した彼のおかげで、一朗は抵抗を容易くすり抜け斬り伏せ距離を詰めた。
『この二機、手強い……! でもッ! だからこそ私は此処で斃れるわけにはいかないッ!!』
 斬撃の距離だ。一朗は油断なく刃を振るい、白羅もまた一朗の背を狙うビットをモルスとともに叩き落とす。
 誰もが二人の勝利を信じて疑わず、事実一朗の刃は鏡月の右腕に深傷を負わせるに至った。
 ――が。執念の、狂愛の為せる業か。機体をも盾としてレーザーキャノンを庇った駒江中尉は、斬撃直後の桜花壱式を掠めてその大出力砲撃を放つ。
 高出力レーザーによってプラズマ化した大気が桜花壱式の脇腹を焦がし、自身のビットすら飲み込み突き抜けた閃光の余波がモルスさえも巻き込みその姿勢を崩させる。
 二機の奮戦はオブリビオンマシンに大きなダメージを与えたが、しかしその迎撃を敵機は真っ向から打ち破ってなおも追撃を強行する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ダビング・レコーズ
貴官はその機体がオブリビオンマシンだと知った上で搭乗していると
搭乗者に及ぼす影響も既知しているものと解釈してよろしいのでしょうか
目標確認
これより該当機体を破壊します

遠近2タイプのビットによるオールレンジ攻撃に対処
回避・防御・攻撃を並列して行う
左右と前面へのクイックブーストを繰り返し包囲を阻止
ベルリオーズで牽制の弾幕を展開し回避運動先への予測攻撃はEMフィールドで防御
ブレードビットはルナライトで迎撃し狙撃砲が効果を成さない相対距離まで接近
「友軍機へ、退避及び衝撃閃光防御を」
減速せずフィールドを纏った状態で突進
プラズマバーストを起動
アークレイズを包囲するビット諸共敵機を破壊する


才堂・紅葉
「これで最悪は脱せたかしら」
幼帝の確保と言う敵の大方針は挫いた
あちらの考えは少しでもこちらの戦力を削る事だろう

(こっちとしても、あの機体が向うに温存された方が困るから有難いわね…)

戦果を稼げるのは追撃戦なのでその判断自体が誤りではないが、前のめりな印象もある
今は明瞭な判断に見えるが、精神汚染も考慮し、帝への狙撃も警戒だ

方針
「コード・ハイペリア」
真の姿の【封印を解く】
纏った超重力場を薄く広く展開し、重力【属性攻撃、結界術、捕縛、範囲攻撃】
ビット達に重力負荷をかけ、その整然とした動きを乱したい
連携を乱し狙撃の精度を落す狙いだ

「絶ッ!!」
相手に乱れがあれば、一息に飛び込み杭打ちの一撃をお見舞いしよう




 光の尾を曳いて飛翔する箒星の如きビット群。
 それらは撤退戦を展開する経済連合軍機を一機ずつ取り囲み、各個に包囲殲滅しながら脱出する皇帝座乗機への道を抉じ開けようとする。
 とはいえオブリビオンマシンを操る駒江中尉が自認する通り、此処に至って彼女が単機皇帝にたどり着いたところでその身柄を帝都に連れ戻すことは不可能であろう。彼女に出来るのはただ皇帝を護ることを親政権派の部隊に強要し、その上で生じた隙を突いてその戦力を漸減し来たるべき帝都決戦に向け敵戦力を弱体させることのみ。
 そこに彼女自身の生還という目標はない。片道の旅程、帰れぬと承知で機体の全てのリソースを全力機動と葦原鎮台の傭兵、経済連合軍部隊の撃滅に集中させる――ともすれば狂気的な判断だが、補給や戦力の確保が確約されていない決起軍に所属する一騎当千の兵として可能な限り多くの敵を道連れにすることは理に適っている。
 短期決戦を望むにあたって彼我の戦力差を可能な限り埋める。皇帝の身柄という錦の御旗を得た親政権派に味方する藩は多かろう。だがその戦力が葦原に集結する前に決着を付けるならば、葦原鎮台の部隊を減らすに越したことはないのだ。
 故に葦原も自軍の戦力ではなく、雇い入れた経済連合の傭兵部隊を前面に展開し戦力の温存を図ったわけであるが――この状況を俯瞰し、二人の猟兵は駒江槙中尉という人物の理性を見て取った。
「次の戦いのために追撃戦で戦果拡張を狙う、判断自体は正しいですが前のめりではありますね。まるで自分が墜とされても構わないとでもいうような……」
 紅葉の理解は正しい。もはや駒江中尉は自らの命を勘定に入れてはいない。皇帝奪還の失敗で決起軍がその大義がどうあろうとも賊軍の誹りを免れなくなった今、なりふり構わず反乱の成功のために策を尽くす姿はとてもオブリビオンマシンの狂気に侵された狂人のそれとは思えない。
 尤も、あの機体――鏡月なる白銀のオブリビオンマシンを温存され、帝都奪還のための決戦に横槍を入れられるより此処で討てるならばその方が此方にとってもありがたいですけれど。と紅葉は思考する。
 あれが厄介なのは鳴神山からの一方的な超長距離狙撃とこの撤退戦で数に勝る経済連合軍のステルスキャバリアを一方的に撃破してのける殲滅力を見れば嫌でも分かる。
「どのみちあの敵機の脅威は無視できません。これより該当機体を破壊します」
 淡々と事実を述べるダビングの声音に同意し、アークレイズと迦楼羅王、二機のキャバリアが猛追するオブリビオンマシンの進路を塞ぐべく進出する。

 ライフルの銃弾が味方機を捉えたソードビットを撃ち落とし、それをも追い越し飛翔した閃光がレーザービットを切り捨てる。
 アークレイズの強襲で経済連合軍傭兵部隊のキャバリアを包囲していたビットの一角が崩れれば、そこから戦場に飛び込んだ迦楼羅王の放つ重力場が残存したビット達の機動を押さえつける。
『また新手ですかッ! この機体でも手こずるとは……猟兵、本当に厄介な相手ですね! 貴方達さえ居なければ!』
 機体側の自動制御で大量動員していたビット群を一旦引き戻し、手動で操れる限界の数まで絞って再度射出する鏡月。
「貴官はその機体がオブリビオンマシンと知った上でそれに搭乗していると。つまりは機体が搭乗者に及ぼす影響も既知であると解釈してよろしいのでしょうか」
 苛立ちを感じさせつつもやはり理性ある駒江中尉の声音に、ダビングはビットの機動を制限する迦楼羅王を守りつつ猛攻を迎え撃つ手を止めずに問う。
 射撃のため滞空したレーザービットを弾丸で撃ち抜き、斬り込んできたソードビットは腕部に展開した光刃で切り払う。
 そのすべてを捌き切ることは難しい。迦楼羅王を狙うものを優先して迎撃すれば、ダビング自身、アークレイズを狙うものはどうしても対応が後手に回る。
 それでも縦横に瞬発的な機動を繰り返す機体制御と展開した防御フィールドで致命傷を避けつつ包囲網を切り崩すダビングに、破壊された側から次なるビットを射出し時折レーザーライフルで牽制射撃を加える鏡月。
『この機体がどんなものかなど元より承知の上、今はたとえ悪鬼羅刹の手を取ってでも為さねばならぬ義があるのです!』
「その義とやらが為すことが政府要人の粛清ですか」
 脱出に成功した豊麻呂を除けば、元老院議員の過半が決起軍によって捕縛され処刑されたという。仮に決起軍の面々が言うように彼らが皇帝の権威を悪用し私腹を肥やす奸臣であったとしても、司法に拠らぬ私刑に等しいそれが義であるなどダビングには到底承服しかねる話であった。
『国民の為を思えばこそ加藤くんはその手を汚す覚悟をしたのです! 彼の苦悩を知らないで傭兵風情が義を説くなど!』
 舌戦を交えたことで駒江中尉の意識がアークレイズに集中する。この好機を彼は待っていた。手動操作のビットは駒江中尉の敵意に感応し、ダビングに狙いを集中させた――これこそ彼の狙いだったのだ。
「友軍機へ、対衝撃閃光防御を」
 ビットの群れを引き連れ鏡月へ突進するアークレイ図が、その身を覆う防御フィールドを固定していた力場を消失させる。
 身を守るための防御膜は、そのカタチを維持していた力を喪い、超高温のプラズマ爆発となって四散した。――鏡月のビットを根こそぎに巻き込んで。
 だが、その閃光はより多くのビットの撃墜を狙ったが為に鏡月本体には届かない。
『判断を急きましたね……!』
 故に、駒江中尉はレーザーライフルの照準をアークレイズの胸部に合わせる。通常のキャバリアならばコックピットブロックを納めているそこを一撃で射抜く。
 せめて苦しまず蒸発させるという慈悲。それが引き金を引く刹那、閃光を貫き黒い機影が疾駆する。
「――コード・ハイペリア!」
 閃光にセンサーを灼かれぬよう、頭の前で両腕をクロスしてプラズマの奔流を突破した迦楼羅王。
 それが爆発の閃光を飛び出し、首を覆うマフラーのごとき炎をより赤々と滾らせ、胸に紋章を輝かせて鏡月に肉薄したのだ。
「……絶ッ!!」
 防御姿勢を解き、迦楼羅王の腕部に装備された杭打機がその機能を発揮する。
 鋼鉄が砕ける音。咄嗟割り込んだ鏡月の左腕が前腕の半ばから砕け、マニピュレーターが機体から脱落して宙を舞う。
 同時に放たれたレーザーが、被弾の衝撃と先んじて交戦した猟兵が与えた右腕の傷が齎す動作異常でアークレイズから逸れ地を這うようにのたうつのを二機は迅速に離脱して回避する。
 片腕を奪い、ビットも多くを損耗させた。敵機は未だ撃墜には至らずとも、二人はその戦闘能力を大きく消耗させたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

眩しいね…あの鉄巨人…
どこの誰だか知らないが…
邪魔するならば消えてもらう…!


[地形を破壊]しながらイシュ・タブを地中より召喚
下腹部の操縦席に乗り込み合体同化
[封印を解き]もう一つの真の姿、【冥府の巨神】に変身しよう

[殺気と存在感で恐怖を与え]つつ
砲撃での攻撃を邪魔する為に
大剣を振るい回し[怪力と鎧砕き]で狙撃銃を攻撃
[武器落としと切断]で狙撃銃を叩き落そう

武器を落としたら、拳や蹴りによる[暴力と踏みつけ]で
敵が動かなくなるまで攻撃し続け、最後は[捕食]し敵機の喉元に喰らいつき
[傷口をえぐりながら]食いちぎり、そうして頭部をもぎ取ってやろう…!

…月下に去ね!


エドゥアルト・ルーデル
やる気出てきた!!

足が必要でござるな!あるだろ良い機体が
護衛隊の機体に潜り込んで【ドット絵】状態で【ハッキング】!制御系に体を潜り込ませて全速前進DA!良い機体だな少し借りるぞ!
中の人は知らない

人機一体な今ならロボットであろうが【忍び足】も造作も無し!ステルスしながら接近、コクピットを鉄の拳が叩いて砕く!拙者が本当のロボットプロレスを教えてやる!
見よ!東方は赤く燃えている!!

怯んだスキに組み付き、自機体から敵機に乗り移りコクピットの隙間に潜り込んで中でパイロットとご対面!
とにかく拷問だ、拷問にかけろ!女パイロットで幹部クラス、捕らえて情報を吐かせるっきゃ無いっしょ!!!SENKAしちゃる!!!




 猟兵との交戦で損傷してもなお、掲げた大義を成就させるべく不退転の戦いを繰り広げる鏡月。
 葦原から出撃した経済連合軍の傭兵部隊が足止めを試みるべく次々に挑むのを、残り少ないビットと威力を抑え負荷を軽減し速射性を高めたレーザーライフルであしらい次々に焼け爛れた鉄塊に変えながら猛追する白い機影に、エドゥアルトは舌打ち混じりに悪態を吐く。
「ちょっとしつこすぎでござるよー拙者そういうのノーセンキューなんで」
 苦虫を噛み潰したような、それでいてどこか相手をおちょくるような表情で振り返った髭面は、しかし流麗な白銀の機体から発される通信に目を丸くし、喜色を浮かべて笑みを作る。
 経済連合軍機が投じる降伏勧告に対して拒否の意を示す声は、知的さを滲ませる若い女のそれだ。
「女パイロット、それもオブリビオンマシンに乗ってきたあたり幹部クラス……これは大当たりのボーナスキャラ出現でござるな? やる気出てきた!! あわよくばSENKAしちゃる!!」
 あれを撃墜し、パイロットを捕らえることができれば決起軍との決戦で優位に立てる何かしらの情報を抜き取れるかもしれない。
 エドゥアルトの抜け目ない傭兵としての眼が、好色めいた振る舞いの裏でギラリと鋭く鏡月を捉えた。
「しかし流石の拙者といえど戦闘中のキャバリアをとっ捕まえるのは無謀でござるからなあ……あ」
 あるではないか。エドゥアルト好みの機体が、そこら中に。
 射撃戦を繰り広げながらも徐々に追い込まれ行く経済連合軍部隊へと、エドゥアルトの魔の手が迫る。

 頭上を砲弾とレーザーが飛び交う中、薄く積もった白雪を踏みしめ黒衣の処刑人は戦場を闊歩する。
 曳光弾の緋色とレーザーの月色の光が交互に照らすその表情は、烏のような防毒面に遮られて伺い知れぬ。
「眩しいね……あの鉄巨人、どこの誰だか知らないが……」
 彼女――アンナは、担いだ真鍮色の巨剣を引き抜くとそれを振りかぶる。
 無論これで鏡月に挑もうという無謀ではない。彼女もまた猟兵であるゆえにやって勝てぬではなかろうが、長距離射撃機相手に圧倒的にリーチで劣る生身の白兵戦を挑むことが不利であることには変わりない。
 然らば、何故。その答えは彼女自身がすぐさまに証明してみせた。
 刃を地に突き立てる。此は冥府の門を抉じ開ける鍵なり。剣を中心に広がった亀裂。ひび割れ脆くなった地面を突き破るように飛び出した腕がアンナを掴むと、地中から這い出した巨大な女……イシュ・タブのオブリビオンマシンがその胎へと主を押し込める。
 死から始まる生の逆回しがそこにあった。アンナの身は母のように肚を守るイシュ・タブに融け、そうして死体のような巨人が生気を取り戻してゆく。
 乾いて毛羽立った黒髪は艷やかな紅蓮の赤に染まり、落ち窪んだ眼は強い光を宿した黒い瞳が輝いている。
 痩せこけ肉の削げ落ちた頬に血の気が戻れば、それはアンナによく似た貌をしていた。
「そこのお前、どこの誰だか知らないが……邪魔するならば消えてもらう……!」
『此方のセリフです。私達の決起の邪魔は誰であろうと認めない……!』
 両機が殺意と狂気をぶつけ合う。方や生きるもの全てがひれ伏し竦むような、女の形をした死が放つ強烈な死の恐怖を伴う殺意。
 方や見るもの全てを狂乱の淵に叩き落とすような、理性を狂わす月の狂気。
 それらが激しくぶつかり合い、互いを殺し合う不可視の前哨戦は戦場に展開する有象無象のキャバリア達を遠ざけた。
「……月下に去ね!」
『――いざ、参ります!』
 放たれたレーザーの速射をイシュ・タブ――正しくはそれとアンナの合一した冥府の巨神が大剣で受け止める。
 高熱を伴う光を黒曜石の刃で防ぎ止めれば、それを振り回して単純な質量の暴力で鏡月を牽制する。
 狙撃銃に引っ掛けでもしてこれを破壊できれば僥倖だが、なかなかどうして隻腕のキャバリアはこれを巧みに躱して両者の戦闘は膠着状態に陥る。
 互いに決め手を欠いたまま一進一退の攻防。これに一石を投じたのは、一機の経済連合軍機であった。

 そのパイロットは、傭兵として職務に忠実であった。受け取った金の分の仕事は果たす。葦原鎮台の総督が依頼した、帝都のクーデターから脱出してくるであろう要人の出迎えと護衛。それは果たされた以上、追撃に現れた怪物のようなキャバリアを相手に踏みとどまる必要はない。葦原まで早々に撤退し、なおも追ってくるようなら葦原の軍に相手をさせればいい――そも、皇洲のクーデター、お家騒動のようなものに自分たち経済連合のサラリーマンたちが命を張る価値などないのだ――という持論を部隊長に一蹴されながらも、さり気なく部隊の後方に位置取りしていざとなればいの一番に離脱できるよう準備をしていた。
 それ故に僚機とやや離れた立ち位置に居たことが彼の不幸であった。突如キャバリアの制御系がダウン。幸いにもビット兵器はあの不気味な女型のジャイアントキャバリアの奮戦で此方に飛んでくることは無いようだが、あれが落ちれば棒立ちの機体などたちまち破壊されてしまうだろう。
 そんな焦りを浮かべる彼の眼前で再点灯したコンソールには、子供の落書きをモザイク調にしたようなドット絵が表示された。迷彩服の髭面の男のように見えるそれは、機体のスピーカーを勝手に鳴らして身勝手に告げる。
「いい機体だな少し借りるぞ! 全速前進DA!」
 機体が再起動するなり、怪物同士の戦場へと最大戦速で突っ込んでいく。
 ――男の悲鳴はあんま滾らねえんでござるよなー。
 エドゥアルトは電子化した自らを経済連合軍キャバリアに潜り込ませ、その制御を強奪した身でそう宣った。
 悲鳴を上げるパイロットなど知ったこっちゃないとばかりに生身には少々キツいマニューバで機体を隠しつつ、さらに幸運なことに搭載されていた高性能なステルスシステム――流石に光学迷彩などは付いていなかったが――を全力稼働で、冥府の巨神と一進一退の攻防を繰り広げる鏡月に忍び寄る。
「拙者が本物のロボットプロレスを教えてやる!」
 そうして横合いから飛び出したエドゥアルト機が、鏡月のコックピットブロックを目掛けて鉄拳を繰り出した。
 直撃、跳ね飛ばされるコックピットハッチ。月下に姿を見せた二十歳もそこそこの若い女性士官の姿にエドゥアルトは拳を握ってガッツポーズ。
「とにかく拷問だ、拷問にかけろ! ぐふふふ怯えないでェ……優しく早くするからぁ……!」
『な、何ですか貴方は……ッ!! 近寄らないで!!』
 抵抗する鏡月を押さえつけ、いざステルス機を脱ぎ捨て生身の体でパイロット――駒江中尉とご対面、その後はお楽しみ……と妄想をふくらませるエドゥアルトだったが、そうはいかなかった。
 動きを止めた敵機を冥府の巨神が見逃そうはずもなかったのだ。
 邪魔だとばかりにまだシステムと同化したままのエドゥアルト(と哀れにも殺気と狂気にあてられ泡を吹いて失神した経済連合の傭兵)諸共、キャバリアを剣で弾き飛ばして組み付いた巨神。狙撃銃を装備した、損傷した右腕を肩口から掴んで封じ、その喉元に喰らいついた。
 野生の獣の如き一撃。オイルや冷却液を撒き散らしながら、頭部と胸部をつなぐケーブルやフレームを引きちぎり貪る姿は悍ましくもどこか美しい。
『変態と野人……こんな連中に加藤くんの戦いを阻ませるわけには……!』
 頭部が脱落し、メインセンサーが死んでも幸いというべきか、ハッチが弾け飛んだコックピットからの目視照準で攻撃はできる。そして駒江槙という女は、こと砲術においては人並みより優れた才覚を持っていた。
『離してもらいます……!』
 押さえつけられた姿勢のまま巧みに角度を変えて放たれたレーザーの一射が巨神の肩を焼き、怯んだ隙に蹴脚で反撃して拘束を脱したのだ。
 片腕に続き頭をも失った、死霊の如き機体が道連れを一人でも増やすべく雪原を駆ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
L
狙撃にビット……性能を活かされれば近づくのもままなりませんね。であれば奇襲を仕掛けるまで。ハイヤー!シュンバー!
あれもキャバリアであるならば、対人性能はそこまで重視してはいないでしょう。利用するようで少し気が引けますが、味方の影を利用しながらシュンバーである程度距離を詰めます。程々の距離まで近づいたら下馬してティターニアアーマーに変身です!
接近した以上、こちらは優先的に狙われるはず……ここまでは計算通り。ビットの攻撃を耐えつつ、本体からの攻撃を待ちます。
本体からの攻撃が来たら機体から脱出、変形・ディアナアロー!これで相手の場所はわかりました!あとはどちらの月がより明るく輝くか……勝負です!


四季乃・瑠璃
緋瑪「今回のオブリビオンマシンって首謀者の一機だけじゃなかったんだね」
瑠璃「あの長距離砲、射程も威力も厄介だね」

UCで分身

二機で全身各部のミサイルポッドを全弾【一斉発射】による【弾幕】を放ち、敵本体とビットを攻撃し各部ポッドをパージ。
UCで機体を強襲殲滅装備へ瞬間換装し、二機でライフルをビームモードで連射しながらフルブーストで高速接近。
敵機を挟み込む様にボムとライフルで連続波状攻撃を仕掛け、極力コクピットへ被害を出さない様に武装や機体の四肢、動力部等を狙って破壊していくよ。

緋瑪「彼女も決起軍ってコトは一応臣下なんだよね」
瑠璃「なら、なるべく殺さない方が良いね。皇帝狙う様なら容赦しないけど」




 あれもキャバリアであるならば。
 ことにクロムキャバリア世界のそれであるならば、主敵はあくまで同級のキャバリア。絶対的に君臨する戦場の王者であるなら、どこかの世界最大にして最強の警察国家の如く歩兵に対して偏執的なまでの対策を講じることもないだろう。
 その上敵はメインセンサーたる頭部を失っている。生身の己を察知する術はそう多くはなく、そして索敵の大部分をパイロットによる目視に依存している今、その対人感知能力は極めて低いと予想できる。
 盾にするようで気が引けますが――と見上げた二機のジェミニオンの頼もしい背中に隠れ、アリシアは愛馬シュンバーと共に雪原を征く。
「わたし達が囮っていうのは納得がいかないけど……そんなことより瑠璃、今回のオブリビオンマシンって一機だけじゃなかったんだね」
「もう一機がどんな機体かはわからないけど、あの機体の狙撃は射程も威力も厄介だね」
 だからこそ、此処で仕留める。あちらも退く気はなさそうだが、それでも万が一ということもある。確実に息の根を止め――無論、オブリビオンマシンの話だ。パイロットは生かして返す。皇帝との約束を二人は忘れていない。
「一応臣下なんだよね?」
「うん、なるべく殺さないほうが良さそうだね。皇帝を狙うようなら容赦しないけど」
 二人はくすりと笑って、同時に機体の各部にマウントされたミサイルポッドから多連装ミサイルを一斉射した。白煙を曳いて飛翔する無数の誘導弾、損傷した敵機に回避は困難だろう。
 が、それを敵機、鏡月はレーザーによる撃ち落としとビットによる相殺で迎え撃つ。
 全弾迎撃は出来ない。足元に着弾したミサイルの爆風が白銀の機体の進撃を止めるが、それでも致命傷だけはすべて回避してみせた。
「わ。やるね、緋瑪」
「まだまだ! 行くよ瑠璃!」
 空っぽになったミサイルポッドを投棄して軽装の強襲仕様に切り替えた二機のジェミニオンが、左右から挟み込むように迂回機動を取って鏡月に襲いかかったのだ。
『この二機、動きが違う!』
「だってさ瑠璃、わたし達強いんだって」
「そうだね緋瑪、だからこのまま押し切っちゃおう」
 左右から浴びせられるビームの嵐。
 片腕を喪いバランスを欠いた鏡月はこれを満足に回避できないまま動きを封じられ、続くグレネードの投射で装甲を削り取られてゆく。
 だが二人の猟兵にも想定外がひとつあった。先の戦闘でコックピットを損傷した敵機は、パイロットが剥き出しなのだ。不殺を心がける二人にとって、不意の被弾で駒江中尉を殺しかねない状態はあまりにも神経を使うのだ。命中しても、あるいは敵機の回避が失敗し予想外の部位に着弾してもできるだけパイロットに害が及ばない攻撃。そんなものに気を回していては、せっかくの挟撃が有効に活用できない。それに苛立ちながらも、皇帝の望みを叶えるために二人は不殺を徹底して慎重に攻める。
 そこに駒江中尉は活路を見出した。生きるための道ではない、この場を切り抜けより多くを道連れにするための道だ。
 射出されたビットが二人の機体を狙う――が、これを間一髪防いだのは二人を囮に距離を詰めたアリシアであった。
 身代わりになってもらった借りを返すとばかりに、手にした大弓から光の矢を放ちビットを撃ち落とす白の戦乙女。
「――変身、ティターニアアーマー!」
 そして二機のジェミニオンの危機を退けるや、大弓が変形した大型の機動装甲を身に纏い鏡月の正面に陣取った。
「今こそ受けた恩を返す時! どちらの月がより明るく輝くか……勝負です!!」
『恩義が戦う理由だというならば私だって負けはしません! 月の光はいずれ傾き消えるもの……貴女とて例外に非ず!』
 レーザーが直撃し、堅牢なティターニアアーマーが一撃ごとに大きくダメージを負ってゆく。
 何よりアリシアを苦しめるのは、この劣勢で徐々に駒江中尉を蝕んでいく機体の狂気が、至近距離でその攻撃を受け止めるアリシア自身にも伝わってくることだ。
 正気が失われてゆく。理性が磨り減ってゆく。自分が此処に居る理由を見失いそうになる。
 ともすれば呑まれそうになる自我をしっかりと保たせるため、アリシアは唇を噛んで鏡月にぶつかり、己の装甲でコックピットの開口部を塞いで閉じた。
「今です、おふたりとも――私ごと!」
「……わかった、やるよ緋瑪」
「了解! やろう、瑠璃!!」
 ティターニアアーマー諸共、ジェミニオンの最大火力一斉投射が鏡月を爆炎に飲み込んでゆく。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※損傷L

機体の自覚…帝都はどれ程オブリビオンに汚染されていたのか…

刺し違えても私達を討つその覚悟、騎士として阻ませて頂きます

機体の格納銃器やサブアームのライフルでビット武器落とし
狙撃銃から味方かばいつつ接近

故郷と違い『下』を気にせずとも良いのが救いですね…!

追い付けずとも近接攻撃の圧で行動選択肢制限
味方を援護

…発射など、させるものですか!

熱源センサー●情報収集でチャージ●見切りUC使用
剣盾、背部コンテナ投棄
●推力移動併用
間合い詰め脚撃で銃身蹴り飛ばし砲撃を空へ

私達人型機械は…四肢を使ってこそ!

限界突破機体の怪力の四腕殴打を自壊前提乱打

汚染から解放されれば、この方も帝都奪還の力に…
後は…頼みます




「そんな状態でまだ戦うというのですか。それは勇気でも忠義でもありません、蛮勇、自死でしか……」
『今更ですよ、猟兵。オブリビオンマシンなどというモノの力を借りてまで起った我々に、死に方の高潔さを説く意味はありません』
 抗戦の愚かさを説こうとしたトリテレイアの眼前で、大破寸前の鏡月から駒江中尉が笑う。
 諸共にぼろぼろになった猟兵の大型機を退かし、隻腕の首なし機は暫し前まで白銀であった、煤けてひび割れ泥に塗れた装甲を月下に晒した。
「その機体がオブリビオンマシンであるという自覚がお有りなのですね。帝都はどれ程オブリビオンに汚染されて……」
 少なくとも駒江中尉はオブリビオンマシンをそれと認識できる程度に知見を持っている。それが何故かを知る術は無いが、最悪の場合駒江中尉と加藤大尉以外にも決起軍に加わったオブリビオンマシンパイロットがいる可能性もある。
 そんなトリテレイアの懸念を否定したのは、他ならぬ駒江中尉であった。
『私達を見損なわないで頂きたい……供与されたオブリビオンマシンのうち、この鏡月と加藤くんの機体以外は投じていませんとも。この力は……ぐっ、ぅ……危険すぎますからね……』
 そこまで分かっているならば何故と問おうとするトリテレイアを制して鏡月がビットを展開する。
 最早両手の指で数えるに足る程度のビットだが、数が絞られたことでその全てを手動制御できるのならば脅威度はさして変わらぬと言ったところか。
 フォースナイトやウォーマシンたちのオールレンジ攻撃と比較して、戦場が地上であるだけ下方を気にしないで済むのが救いだと、トリテレイアはロシナンテⅣを走らせた。
 四方から飛来するソードビットに副腕のライフルから弾幕で牽制を展開しつつ距離を詰めようとするロシナンテだが、これに対して鏡月のレーザーライフルの迎撃が接近を許さない。
 盾でレーザーを受け止め、しかし鳴神山からの狙撃のように一撃でそれを溶断するほどの威力がないことに安堵しながらトリテレイアはじわじわと距離を切り取ってゆく。
 そうして一息に駆け抜けられる距離まで詰めた時、レーザービットからの包囲射撃がトリテレイアを襲った。
 四方からのレーザーが背部コンテナを撃ち抜き、誘爆する前にそれを切り離す。副腕にも損傷を受けたならば、トリテレイアはためらいなくそれすらもライフルごと切り離した。
『厄介な武器はこれで封じましたね……!』
「それはこちらも同じことです! その主砲、発射など……させるものですか!」
 副腕を奪った駒江中尉と、犠牲を払ってビットが使えぬ距離まで詰めたトリテレイア。鏡月はチャージされたレーザーライフルを、ロシナンテは握り締めた拳を武器に交錯する。
 果たして月に届かんばかりに夜天に光の柱を立ち上げた鏡月。銃身を蹴り上げ照準を無理矢理に逸したロシナンテはそのまま両の手足を自機が損傷するのも厭わず叩きつける。
「私達人型機械は四肢を使ってこそ! 貴女を汚染から解放すれば、きっと帝都奪還の力に――」
『舐めるな、猟兵……ッ!!』
 マニピュレーターが潰れ、足首関節が異音を立てるほどのダメージ。それほどの乱打を受ければ、鏡月とて無事ではすまぬ。
 レーザーライフルはひしゃげ、上半身に唯一残った右腕はもはや仰角を取ることすら叶わない。
 コックピットの中で揺さぶられた駒江中尉は破損した計器の破片で負傷したのか、血を流しながらもロシナンテを憎い仇敵を見るように睨み、壊れかけたライフルの銃身を肩口に突き立てた。
『この機体の狂気が無くったって、私が加藤大尉を……彼を裏切ることなんか、ありはしない!』
 トリテレイアはその声を聞いて、理解した。
 狂ったから彼女は決起に参加したのではない。決起に参加するために、彼女は狂気すら飲み込んだのだ。
「ならば、貴女は本当に……くっ、機体損傷が限界値を超えましたか。後は、頼みます……!」
 四肢を大破させ、膝をつくロシナンテ。その側を幽鬼のようにふらつきながら抜けてゆく鏡月。
 言葉では止められぬ。止めようなどという考えでは彼女を阻むことは至難であろう。
 だから、トリテレイアは託すのだ。駒江槙というひとに安らぎを取り戻すことが出来る者が、まだこの戦場に居ますように、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
其の身は既に不退転、か。
良かろう、なれば望み通りに引導を渡してくれよう。

ヤークト・ドラッヘに【騎乗】、加減速とハンドリング、短時間の【空中浮遊】、機体の機銃と【誘導弾】による迎撃を組み合わせビットの狙いを躱しつつ敵機へ接近。
狙撃を主眼とする機体ならば、まずは懐へ潜り込むが得策であろう。ビットは敵の回避選択肢を狭める為の布石、故に狙いの裏を掻くような対処を念頭とする。

狙撃の間合いより内へ入り込めたらば、次は余の番だ。
機甲武装・殲滅火砲、攻撃回数重視でガトリング砲を召喚。以て敵の駆動系を中心に打撃を加えてゆこう。

黙し滅ぶが良い『逆賊』。遠からず、加藤とやらにも後を追わせてやろう。




 駒江槙にとって、加藤紀靖という男はその生涯を捧げるに足る全てであった。
 下級士族の両親は槙が幼い頃に起こった藩同士の小競り合いで戦死し、槙は軍人になることを宿命付けられた士族の血を引きながらそのための教育を受けられなかったのだ。
 両親の残した少ない蓄えは、藩主である大名武家に吸い上げられた。教育の機会を奪われ、その血の役目を果たすことも認められず、成人すればどこぞの嫁に嫁がされ跡取りを産むだけの未来を押し付けられ、士族でありながら農民より貧しく不自由な暮らしを強いられた幼年期。それを救ったのが元帥府大将軍葵天道とその直属部隊としてやってきた、当時まだ新人少尉だった加藤だ。
 長い内戦で皇家の臣としての本分を忘れた大名武家の綱紀粛正を掲げ介入を開始した元帥府の直属軍で、加藤は多くの腐敗を見た。
 その象徴の一つが駒江槙であったのだ。
 醜悪な大名武家は将軍の手で取り潰された。多くの者は将軍こそ悪しき統治者から民を救う皇帝の代行者と讃えたが、地獄から救い出された槙にとってはそうではない。
 確かにあの大名を倒したのは葵将軍だが、暗く未来のない場所から槙を助け出したのは、直接暖かな手を差し伸べた加藤だった。
 だから槙は加藤の為に生きると決めた。加藤の力となるべく士族教育を受け、士官学校は次席卒業という好成績を納めた。
 加藤と同じ戦技教導団に選抜されるだけのキャバリア操縦技術を修め、そして彼が教導団を辞し帝都警衛師団に移るときにはその後に続いた。
 恩返し、というのは些か烏滸がましかったのかもしれない。
 槙のささやかな力など無くとも、加藤の理想は、そのための力はどこまでも気高く眩しかった。
 だから、想いはいつしか義務から希望へと変わっていったのだ。
 加藤の最も側で彼を支えたい。彼の作る、新しい皇洲が見たい。
 ――これを恋と言わずして、何と呼べばよいのだろう。
 駒江槙は恋をしていた。そして、士族として受けた教育は恋のために殉ずる覚悟を彼女の魂に刻みつけていたのである。


「……なるほど」
 眼前に現れた鏡月の姿に、ギージスレーヴはその覚悟を見た。
 頭部は無く、左腕も肘より先は失われている。残った右腕には砲身の融け落ちたレーザー砲の基部だけが接続され、それもあちこちから火花を散らしている。装甲すらも有って無いようなもの。白銀の美しいキャバリアは、半死人のような有様でよろめきながらも前進を止めることはない。
「其の身は既に不退転、か」
 降伏を勧告しながら鏡月を取り押さえようとする経済連合軍機をたった二つばかりのレーザービットで撃ち落とし、止まらぬ歩みを続ける機体。
 その正面に、ヤークト・ドラッヘに騎乗したギージスレーヴは立ちはだかった。
 もし敵がまだ皇族への忠誠心を抱いているならば。国家の為の義心によって立つ、大多数の決起軍将兵と同じならば、彼女は機体をのみ完全破壊し"逆賊"駒江中尉を殺すことで駒江槙を生かそうと考えていた。
 だが、これは駄目だ。眼前に立つのは、加藤への想いに拠って立つ駒江槙という女。鏡月を墜としても、彼女は正気のまま再び加藤の下に帰るだろう。
 あるいは加藤がオブリビオンマシンの狂気に囚われているなら――いいや、それならばこの女が加藤を止めたはずだ。この二人は互いに正気のままに決起を画策し、オブリビオンマシンすらも利用して計画を実現したのだろう。ならば、もう生かして捕らえるなどと考えるだけ無意味。ギージスレーヴはそう判断した。
「その覚悟やよし。良かろう、なればこそ余は貴様に不名誉な生を強いはせん。改めて名乗れ、忠義の逆賊よ」
『……帝都警衛師団、第二大隊第一中隊長。駒江槙中尉』
「駒江中尉、貴様の望み通りここで引導を渡してくれよう。だが、これ以上の道連れはやらん」
 周囲に転がる経済連合軍機の残骸。駒江中尉一人のために、傭兵部隊の多くが此処で討たれ命を散らしている。
 金で動く傭兵といえど、今の皇洲政府軍には貴重な戦力。これ以上鏡月の餌食にさせれば、帝都奪還の戦力が足らぬということも在り得る。
 ならば、もうこれ以上を墜とさせはせぬ。アクセルを踏み込み、ギージスレーヴは満身創痍のキャバリアに挑む。
 ――バイクとオブリビオンマシンと化したキャバリア、彼我の戦力差は明白。本来ならば勝ち目の薄い戦いだったかもしれぬ。
 だが敵はもはや攻撃すらままならぬ満身創痍。ギージスレーヴに負ける要素は無い。
 眼帯に隠されておらぬ片目を瞑ってでも勝てるような状況だ。だが、ギージスレーヴはそれ故の手加減など考えない。誇りを持って死にゆくを認むるならば、それを汚す行いなど笑止であろう。
ビットが交錯しながら進路を阻むように照射するレーザーを、急加速で切り抜け、僅かな隙間をハンドリングで潜り抜け、あるいはバイクを跳躍すらさせて回避しながら機銃の掃射と誘導弾の連射で本体を追い立てる。
 猟犬同士の咬み合いの如き機動戦は、当然の如くギージスレーヴが勝利した。
 それとて駒江中尉は承知していた。まともにやり合えば勝てる見込みはまったくないのだと、この状況で理解できぬ者が決起軍の副官など、加藤大尉の右腕などできるものか。
「懐に入り込んだぞ。これでビットも、そのレーザー砲も使えまい。尤も、ビット以外の武器は使いたくとも使えぬであろうが」
『ええ、そうですね。ごく僅かな勝ち目さえこれで潰えました』
 破れたコックピットに規格外兵装――キャバリア用の大型ガトリングガンの照準を合わせ、ギージスレーヴが勝利を告げる。
 駒江中尉は傷からの失血と冷え込む冬の外気で血の気を失った顔でこくりと頷くと、でもと首を横に振る。
 ギージスレーヴの隻眼と駒江中尉の目が合った。その目に宿る光は、一人の女が好いた男に、自分を救い出し未来を与えてくれた人間に向ける崇拝と慕情と忠誠の光は消えていない。諦めていない。
「貴様、何を……!」
『言ったでしょう、勝てないのは最初から承知、せめて一兵でも道連れにすると。死出の旅路、付き合ってもらいますよ』
 右腕のレーザーライフル基部が激しく火花を散らし、外殻を弾き飛ばして小規模な爆発を繰り返す。
 月面の発電プラントからのエネルギー給電機能。かの機体が持つ、最大時には戦略規模とまで言われる高出力レーザー砲を支える無限に近いエネルギーが臨界を迎えようとしている。
 自爆だ。それを許せばギージスレーヴはもとより、下手をすれば葦原領の半分近くが消滅しかねない。
『加藤くん、先にいって待っています。貴方の願いがせめてより良い形で――』
 だから、撃った。撃たざるを得なかった。ギージスレーヴはむしろ、駒江中尉がわざと撃たれたと感じたが。
 ガトリングの砲弾が剥き出しのコックピットブロックに吸い込まれ、鏡月の機体を内側から食い破りズタズタに引き裂いてゆく。
 制御系が機能を停止し、月面プラントへの給電要請が中断される。
 爆発寸前のレーザー砲は、地を薙ぐように一度月光の如き光を照射し、その反動で機体が仰向けに斃れると夜空に美しい光の柱を描いて沈黙した。
「…………地獄で待て、遠からず加藤とやらにも後を追わせてやる。今は黙し滅ぶがいい"逆賊"駒江槙よ」
 原型を留めぬほどに破壊されたオブリビオンマシンの屍を背に、ギージスレーヴは撤退する傭兵部隊に続き皇帝らの後を追って戦場を後にする。
 大地に眠る屍を、冬の雪が覆い隠してゆく。
 まるで戦いなどなかったかのように、一人の女の望んだ死が白く白く塗りつぶされてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月29日


挿絵イラスト