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忘れていても、その鍛錬は裏切らない~ロスヴァイセ撃退戦

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #機甲戦乙女ロスヴァイセ #アリスナイト

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●とあるアリスの最期
「標的(ターゲット)、捕捉。カウントダウン、スタート」
 女性の機械的な言葉が響いてきた。いや、機械の女性の声?

 とっても他人事のようで。でも彼女の銃口は、私に、金森・八重(かなもり・やえ)に向いていた。

「最期に、記録に残したい言葉はありますか?」

 そう問われても。何を残せというのか。

 今、私の中にある記憶はこの不思議の国に飛ばされて来てからのもの。過去の、元いた世界の私の記憶はうっすらとしか無くて、言葉に出来るものはない。
 私と一緒に旅をしてくれていたぬいぐるみさんやグリフォンさん、お話するお花さんそして時計ウサギさんは皆、目の前の赤い天使の姿をした死神にやられてしまった。
 私を庇って。『仲間だから』と言って。
 彼らに、ごめんなさいと言う? それとも、ありがとう?
 そんな言葉しか出てこない。そんな、自分の終わりを残すことしかできない。

「カウントダウン、ゼロ」
 女性の言葉が響く。そして銃口からどうやってもかわせそうにない、銃弾が放たれた。

 とってもスローモーション。そうだ、死ぬ時は世界が止まって見えるって誰か言ってたっけ? でも……そんな風に見えていても、私はこのまま死ぬしかない。

 ――ああ。私は『無敵』だったはずなのに。

 ふと、そんな言葉が湧き起こる。
 無敵? なんの? そう、思ったら。芋づる式に記憶がよみがえってきた。

 ああ、そうだ。私は、自分の世界では『無敵』だったんだ。

 そんな想いと涙があふれ出た後。私の意識は完全に途切れてしまった。

 それは一人のアリスの死。八重は目の前にいる災厄(オウガ)が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』という名であることすら知らず、この地で命を落とす。

●グリモアベースにて
「今から行けば、予知が実現するその手前で八重と合流できるわ」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が険しい表情で集まってくれた猟兵たちに告げる。

 アリスラビリンスの猟書家『鉤爪の男』配下の『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。彼女の活動を冬香が予知で捉えたのだ。

「八重が狙われる理由はただひとつ。彼女が膨大な『想像力』を持つアリスナイトだからよ」
 しかし想像力が膨大すぎるがゆえに彼女の力は不安定だ。記憶を失っていることも相まってその力は発揮できているとは言い難い。
「そんな八重でも、殺して蘇らせば強大なオウガになると目論んでいるのね」
 八重がオウガと化せば、大きな災厄となるのは必至。だからこそここで助けなければならない。
 しかしそこで懸念となるのが、ロスヴァイセが持つ対アリスナイト必滅武器『シックザール』である。
「標的さえ決まれば自律稼動すら可能というスナイパーライフルでね」
 これを使い、ロスヴァイセは八重の抹殺を最優先事項として行動する。光を銃弾として放つシックザールを使われ続ければ、防ぐ手段は無い。いや、ひとつ。
「八重の膨大な想像力による【アリスナイト・イマジネイション】。これならいかに必滅と言えど防ぐことが可能よ」
 ゆえにロスヴァイセを後顧の憂いなく倒すには、八重の覚醒が必須となるのだ。

 しかし、今の八重は不安いっぱいの気持ちに押し潰されそうになっていて、無限の想像力を発揮できる状態に無い。
 この不安をどう払拭するか。
「さくっと八重と合流して、戦ってきて」
 冬香の言葉に『……は?』という顔をする猟兵たち。その様子に微苦笑しながら冬香が続ける。
「実は彼女。全国大会に出るくらいめちゃくちゃ強い合気道の選手なの」
 口癖は『私は無敵!』。もちろん負けが無いというわけではなく、それは彼女が積み上げてきた鍛錬から来る『自信』そのものだ。
 その自信を、今は技の出し方すら忘れている合気道のことを呼び起こすことができれば。彼女は覚醒する。

 その方法として、手合せ、組手、あるいは地稽古を行う。
「こういうのって体が覚えているものよ。自分が誰かってことを、ね」
 実践(と言っても稽古)を通じて、体が合気道を思い出せば、『戦い方』も思い出す。そうすれば芋づる式に自信も戻ってくるはず。
「自信と戦い方を思い出せば、彼女はアリスナイト。想像力の鎧が全てを防ぐわ」
 相手が物理法則を越えてきたとしても、想像力はそれすら組み伏せる。
「というわけで。ちょっと大変だけど、よろしくね」
 冬香はグリモアを取り出して猟兵たちをアリスラビリンスへ送る。

●とある女性の運命の分かれ道
「な、なんなの。あれ、なんなの!」
 八重が取り乱したように叫ぶ。強襲してきたロスヴァイセの攻撃、それをどうにか振り切って隠れることができた。
「わからないよ。でも八重を狙ってる」
「はやく、はやく。このウサギ穴を通って次の国へ!」
 愉快な仲間たちと時計ウサギが八重に避難を促す。言われるがまま、ウサギ穴に飛び込む八重。これであの空を飛び回る、翼持つ赤い女性から逃れられるはず。

 ……でも逃れられなかったら?

 不安が押し寄せる。どうすれば、どうすれば……!

「誰!?」
 先頭を歩いていた時計ウサギが叫ぶ。そこにいたのは猟兵たちである。
「……あ」
 八重が吐息を漏らす。この人たちは信頼して大丈夫だと。アリスの本能が告げていた。
 しかし駆け寄ろうとした八重を、猟兵たちが制する。

 ――戦おう。

「……はい?」
 猟兵たちの悪意の無い、しかし唐突過ぎる提案に思わず声を漏らす八重。

 ――手合せしよう。それで思い出せることがある……!

 静かに、そして強く伝えてくる猟兵たち。彼らの言葉に八重は……頷きを返す。
(何故、頷いたんだろう?)
 そんな疑問を持ちながら、それでも。猟兵たちの構えに対して『体が動く』。取った構えはもちろん合気道のそれ。

 名付けて『体が覚えているだろうから、とことん組手と手合せをしてそこから記憶を思い出してもらい、ついでに自信も取り戻してもらおう作戦』スタートである!


るちる
 こんにちはとかこんばんはとか、るちるです。お世話になってます。
 アリラビ猟書家シナリオのお届けです。
 ふっ、体は嘘つかねぇな! って感じで、八重に合気道を思い出させてあげてください。ちなみにるちるに合気道経験は無いので、専門すぎる用語はご遠慮いただくと助かります!(剣道とかなぎなたとかはやってました)

 シナリオ捕捉です。

●全体
 プレイングボーナス(全章共通)……アリスナイトを励まし、『アリスナイト・イマジネイション』の威力を増加する。
 愉快な仲間たちと時計ウサギは戦力外と思ってください。

●章
 1章は日常シナリオになります。やることがある程度決まっていますが、実質的にはフラグメント名の『みんなで遊ぼう!』の雰囲気でご参加ください。
 プレイングには、八重の体が覚えていることをどう呼び起こすかをお書きください。
 例えば、特訓とか。実際に戦ってみたりとか。合気道の稽古や基礎訓練などもいいと思います。なお、失った記憶の中かつ合気道に関することで思い出して嫌になる記憶はありません。
 八重と戦ったりする際は、切れる、刺さる等が出来る刃物はご遠慮ください(棒とか鞘とかで殴打はOK)
 1章に関しては、シリアスまたはコミカルの雰囲気で考えていただけると助かります。

 2章はボス戦。ロスヴァイセとの戦闘になります。詳細はまた2章開始時に捕捉します。
 こちらはシリアス寄りリプレイの予定。雰囲気がそうなるだけでプレイングについてはボケやコミカルに走っていてもOKです。

 八重のプロフィール:JK17歳。国内トップクラスの実力者。小鹿のようなという表現がよく似合う快活な女の子です。

 後は公序良俗をお守りいただき、楽しく参加いただければ嬉しいです。

 それではご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『みんなで遊ぼう!』

POW   :    自慢の力を見せちゃうよ!

SPD   :    速さなら負けないからね!

WIZ   :    こういう時こそ知識が活きるね!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●刹那
 グリモア猟兵の転送で時計ウサギのウサギ穴に直送された猟兵たち。
 警戒する時計ウサギの横をすり抜けて、金森・八重が猟兵たちの前に立つ。その体が自然と『戦う』態勢を取ろうとしたが。
「二手に分かれる」
「了解」
 猟兵たちが二手に分かれた。ひとりを残して、猟兵たちの大部分が八重の後ろ、ウサギ穴の出口側に移動する。

 八重が振り向くと同時に、ぞわっとした悪寒が走る。
 その名を知らずとも『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が近付いてきていることを直感する。

「足止めするから。その間に」
「いこう!」
 ひとり残っていた猟兵が時計ウサギを促す。時計ウサギは八重を見て……八重が頷く。

 このウサギ穴を利用してロスヴァイセの足止めをする。足止め側の猟兵も交代していけば、長時間押し留めることができるはずだ。

 そのうちに。

 八重の力を取り戻して。
白峰・歌音
ただ思い出すんじゃ今が凌げても後の脅威に負けるかもしれない。だから、生ぬるい手合せではなく、真剣にぶつかるぜ!オレの実戦だけで鍛えた格闘がどこまで通じるのか試してみたいのもあるし、な。

真剣勝負の空気で手合せするために、挑発しながら組手をするぜ!
目の前で変身して、オーラを発して危機感をあおり
「かかってきな。『本気で戦わないと、あんたも仲間達も酷い目に合うぜ』」
と【挑発】。
思い出すまでは手加減しつつ
「そんなものじゃないだろ?もっと本気を出さないと『誰も守れないぜ!』」
と挑発気味に【鼓舞】して本気を引き出す。だんだん動きが良くなってきたら、こっちも本気度を上げて真剣に組手を行うぜ。

アドリブ・絡みOK




 ウサギ穴から飛び出てきた金森・八重とその仲間たち。時計ウサギは穴の出口で待機中(先導中)で。
「こっちだ」
 白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)が八重の手を取って、ウサギ穴からもう少し離れた場所まで走る。
 歌音と八重は同じアリス。アリスナイトの力を得ていることを考えるなら八重もまたアリス適合者かもしれない。
(ただ思い出すんじゃ今が凌げても……後の脅威に負けるかもしれない)
 アリスがアリスとして、そしてオウガにならずに元の世界に戻るには、少なくともこの後も旅を続けないといけない。留まる、という選択肢もあるだろうけれども、力があって困ることはないはずだ。
「あ、あの……?」
 八重の弱々しい声に、ハッとした歌音が手を離す。
 振り返るとそこには年齢相応の気弱そうな少女がいた。先ほどウサギ穴で相対した時とは雰囲気が違う。あれは猟兵たちの存在に釣られてのものだったのかもしれない。ならば、真っ向から当たれば。

 手を離して、少し距離を取った後。改めて八重と相対する歌音。八重の声に中断してしまった思考を再開する。それはすなわち『凌ぐための力では無く、戦うための力を』。

「開放(リベレイション)!」
 歌音が叫ぶ。声に応じて歌音が変身する。そのヒーローの名は<マギステック・カノン>。変身した歌音の戦う意思に呼応して、紫と紅のオーラ『イマジネイトオーラ『紫紅八極』』が彼女の全身に覆う。格闘と魔法を駆使して闘うのが彼女のスタイル。
 ちなみに「起動(イグニッション)」じゃないところがミソだったりする?
 さておき。

 歌音のその雰囲気に当てられて、八重が一瞬怯んだ後、しかしたどたどしくも構えを取る。それは歌音に応じるという心構え。
 それを見て歌音が微笑む。
「だからオレは生ぬるい手合せではなく、真剣にぶつかるぜ!」
 その裏側には『オレの実戦だけで鍛えた格闘がどこまで通じるのか試してみたい』という気持ちもあるが、それは密かにしておいて。

 ビリビリと張り詰める緊張感。それはさながら真剣勝負の。
「かかってきな。『本気で戦わないと、あんたも仲間達も酷い目に合うぜ』」
 歌音が不敵に笑い、指で仕草を入れながら挑発する。
 その様子に八重の体に力が入る。しかし、八重は動かない。それは怯んでいるのではなく、その視線はすっと歌音を見据えて。
 歌音の声に『嘘が無い』ことはわかっている。だからこそ八重の視線が言う。『させない』と。

「じゃあこっちからいくぞ!」
 歌音が仕掛ける。オーラを拳に集中させての、鋭い突きの一撃。
「きゃぁっ!」
 その拳をガードしながらもまともに受け止めてしまい、吹き飛ばされる八重。しかしなんとか立ち上がる。そこへ歌音が追撃、オーラを纏った拳の連打連打連打!
「くぅっ……!」
 何発も食らいながらも、しかし徐々に慣れてきたのか。八重が少しずつ身を翻し始める。それは合気道の、普段の型や鍛錬とは違うけれども、相手に合わせて動くという基本的な動き。体が覚えているソレだ。

 そして、歌音の拳をついに八重がかわす!

「お」
 かわされた拳を八重がつかもうとするその瞬間に、歌音が素早く跳び退る。
 
 息が荒くなっている八重に対して、歌音はここまで手加減しながら攻撃を加えていた。見た目はボロボロの八重、余裕の歌音。しかし、八重の目が死んでいないことも……分かっている。

 ――そんなものじゃないだろ?

 歌音が纏っているオーラがその発現を色濃くする。
「もっと本気を出さないと『誰も守れないぜ!』」
「やれるもんならやってみなさいよ……!」
 歌音の声に、八重が叫ぶ。それは挑発に対する反発でもあったが、歌音に対して八重が怯んでいないことの証左でもある。
(……こっちも本気度を上げていくぜ!)
 歌音が再度突撃! 今度は拳だけではなく、蹴りも交えての多角攻撃。徐々にテンションとペーストスピードを上げていく。
 それをどうにかかわしていく八重。
「そんなんじゃ……!」
「……そこ!」
 歌音の渾身の拳の一撃に対して。八重の動きが変わる。それは回避ではなく、『攻撃を引き込む』動き。
 突き出される拳に対して手を添えるように差し出し、袖口を掴むと同時に引き込み、歌音の体勢を崩しながら、足を払う。その勢いと流れを崩さずに、歌音を投げて地面に叩き付ける八重。
「っ!?」
「……!」
 びっくりする双方。側から見ていた愉快な仲間からすれば、歌音の渾身の一撃を回避しての八重が歌音を地面に叩き付けた、という感じだろう。

 はぁはぁ、と荒い息を吐いて、両手を見ながら『今自分が行った攻撃』を思い直す八重。

 まだたどたどしいけれども。相手の動きに、気に合わせて、動く合気道の動きが『出来る』ことを思い出した八重。
「……ふぅ」
 その事実を整理して八重が大きく息を吐き出す。
 その様子に歌音が後ろで、そっと微笑んでいるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●幕間
「はぁ……はぁ……」
 呼吸が荒い。この世界に飛ばされて来てからこんなに激しい運動をしたのは初めてかもしれない。それだけ危機が無かったということかもしれないし、それだけ守ってもらっていたということかもしれない。

 さっきまで手合せしていた猟兵が去り、交代で新しい猟兵が現れる。
 彼女らの目的は、わかった気がする。『私を死なせないように』行動している。不信感は無いけれども、何の意味があるのかわからなくて少し不思議だ。

 それでも。やるしかない。私は『この先』に希望を見出し始めていた。
クラリス・シドルヴァニス
アイキドウ、とはどんな武術かしら。興味深いわね。
なるほど…話を聞くに、相手の力を利用して体勢を崩したり
することができるみたいね。

取り出したるは30センチほどの木の枝
騎士の試練に挑む際に習得した、短剣術でお相手するわ。
《決闘》のしきたりに則って私と勝負しましょう。
【デュエリスト・ロウ】発動!
合気道の技を使って、私の攻撃を捌いてもらうわ。
あなたも、こういう一対一の戦いが得意なようね。
体は覚えている筈だから、訓練をするうちにきっと勘を取り戻せるわ。
敵は強力な飛び道具を使うというわ…
今のうちにあなたの戦い方を思い出してね。

…そう、今の刺突はそうやって受けるのね。
私にも、何だかできそうな気がしてきたわ。




 歌音と金森・八重の手合せを、少し離れた場所から見ていたクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は、ひとり頷いていた。
(なるほど……相手の力を利用して体勢を崩したりすることができるみたいね)
 『アイキドウ』という単語。『どんな武術かしら』と興味深く観察していたのだが、八重の最後の一撃に、なんとなく理解が出来た気がする。

 そしてクラリスはゆっくりと歩き出す。
「ふぅ、はぁっ……」
 荒い呼吸を整えるかのように深呼吸を繰り返す八重はまだクラリスに気付かないけれども、立ち上がった歌音はクラリスと交代するようにウサギ穴の方へ。まだあと少し、ロスヴァイセにはウサギ穴の中にいてもらわねば。

 すれ違い、八重の方へ進むクラリス。その手には普段のクロスクレイモアではなく、先ほど拾った30センチほどの木の枝がある。

 かさり、とクラリスが断てた足音に八重が振り向き、クラリスの姿に目を見開くも、身構える。
 その様子に微笑ながらこくりと頷き、クラリスもまた構える。
「騎士の試練に挑む際に習得した、短剣術でお相手するわ」
 敵を断つ剣のみが得手では無い、とその構えには油断も隙も無く。
「《決闘》のしきたりに則って私と勝負しましょう」
「……!」
 騎士が放つその単語の重みに、八重の体にも思わず力が入る。
 そして、クラリスが一度目を閉じてから……開き、再び八重を見据える。
「合気道の技を使って、私の攻撃を捌いてもらうわ」
 それは【デュエリスト・ロウ】。決闘を告げる開始の合図にしてこの場を支配するルール。
「な、いきなり何言って……」
「言っておくけど。従わないなら痛い目を見るだけよ」
 動揺する八重にクラリスが告げる。その言葉に嘘が無いとわかる程度には伝わったらしい。口をつぐみ、改めて身構える八重。

 真剣勝負。

「いくわよ」
 すっ、と流れるようにクラリスが仕掛ける。最小限の動きから鋭く繰り出される短剣の一閃。シンプルが故に速くて……強い。
「あぅっ?!」
 合わせきれずに直撃、腕を強かに打ち付けられる八重。だが、それでも腕を跳ねあげて木の枝をくぐりぬけるようにして踏みこんでくる。本来ならともかく、今は木の枝。ならば、と。
 懐へ繰り出された八重の攻撃を一歩下がって回避しながら、後ろに出した足を支点に今度は刺突の一撃。真っ直ぐな一撃を今度は八重も腕の回転を使って弾き飛ばす。
(あなたも、こういう一対一の戦いが得意なようね)
 八重の動きから目を離さず、内心で。まだ八重の攻撃は微塵も届こうとしていないが、少しずつタイミングが、気が合ってきている。
 もう少し。しかしまだ届かず、クラリスの追撃に慌てて飛び退る八重。
(体は覚えている筈だから、訓練をするうちにきっと勘を取り戻せるわ)
 そう考えながらも、手は抜かずに木の枝で鋭い攻撃を繰り出し続けるクラリス。

 そう、敵は、ロスヴァイセは強力な飛び道具を使う。この程度の攻撃が防げなくてどうするのか。

(今のうちにあなたの戦い方を思い出してね)
 クラリスの思いやりは、密かな特訓の形で八重に注がれているのだ。

 地力でいえばクラリスの方が格段に上。しかし【デュエリスト・ロウ】の中での戦いであれば。
 徐々に拮抗し始める戦況。それはすなわち、八重に攻撃のチャンスが出来てきたということ。遂に八重が完全に、クラリスの攻撃をいなす。しかしこのまま攻め込ませるわけにはいかない!
「かわせるかしら!」
 素早く一度。距離を取ってからの、フェンシングのような姿勢でクラリス渾身の突き!
「……っ!」
 軌道はともかく、その纏った気迫と威力。その速度と鋭さに『これは手では捌けない』と直感が八重の脳裏に走り、そして閃く。それは記憶でもあり、想像でもあり。『普段使っていた』モノ。
 八重の手に生まれる……それは想像力で生み出した杖。それを両手で操り、クラリスの刺突に合わせて横から払う。弾き飛ばさず、絡め取るように杖を操り、くんっと下方向に力を入れて。
 するとクラリスの態勢が崩れる。そこへ杖の石突きを突き付ける八重。
「……そう、今の刺突はそうやって受けるのね」
 木の枝を手放して両手をあげるクラリス。
「私にも、何だかできそうな気がしてきたわ」
 それは決闘の終わりを告げる言葉。
 クラリスと八重の『決闘』という名の稽古は、ようやくひと息ついて。
 視線の合ったクラリスと八重は思わず微笑を浮かべるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
思い出させる方法が分っているのは良いけど。
俺は合気道(というか武術全般)
の知識がないんだよね。
でも「考えていても仕方ないか。」

「一つお相手を頼むよ。
八重は自分の思うままに動いてくれればいい。
俺も戦いの経験はあるから思いっきりやってくれて構わないよ。」

万が一にも怪我をしない様に素手で立ち合う。
【読心術】や【見切り】で
八重の反応を確かめて、何か思い出せそうな
形が分かればそこから攻め込んで行き
調子が出てきたら忘れない内にもう一度同じ形で立ち合う。
恐らく何度も投げられたり関節技を決められたりするだろうが。

座り込み
「普通の女の子にこれだけやられると
少し自信がなくなるよ。
でも、これで何か思い出せたかな。」




 クラリスとの決闘(という稽古)に勝負がついたのを見届けて。今度はフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の番である。クラリスとすれ違い、八重の方へ向かうフォルク。

 とはいうものの。

(思い出させる方法が分っているのは良いけど)
 軽快な足取りとは真逆にフォルクの心は晴れない。
(俺は合気道の知識がないんだよね)
 というか武術全般、そんなに詳しいわけではない。術士であり研究者であるフォルクに必要かと言われれば、たぶん必要ない。ゆえに知らなくても何の問題も無いのだが、今日に限って言えば困る。
 でも、とも思う。
「考えていても仕方ないか」
 それもまた危機に至っては正しい心の境地なのである。

「はぁっ、はぁっ」
 2つの稽古を連続して終えた金森・八重の息はとても荒い。普通であれば休憩のひとつも入れてあげたいところだが、事態は迫ってきている。
 汗を拭う八重がフォルクの気配に気付いた。鋭く視線を遣る八重の雰囲気は、予知で聞いたものとは異なり、戦う意思を纏っている。
「一つお相手を頼むよ」
 と立ち止まり、八重に話しかけるフォルク。
「八重は自分の思うままに動いてくれればいい」
 両手を広げて無手を示し、フォルクが続ける。
「俺も戦いの経験はあるから思いっきりやってくれて構わないよ」
 まだ息の荒い八重の返事を待たずに、フォルクもまた戦闘態勢に入るのであった。

 相対する二人。しかし、容易には動かない。合気道は相手の動きを始点とするがゆえに。フォルクは無手での戦い得手ではないがゆえに。

(……ふむ)
 向かい合って動かない八重の表情などから読心術で様子を窺ったフォルクは心の中でひとり頷き。
(攻めるか)
 その方が何か思い出すきっかけになりそうだ、と確信する。直後、フォルクが地を蹴る。
「せいっ!」
「……っ」
 得手では無いとはいっても歴戦の猟兵である。その拳は鋭く八重に迫る。その一撃を体捌きでかわしながら、その腕を掴もうと手を伸ばす八重。そうはさせないとフォルクが素早く拳を引き戻しながら飛び退る。掴み損ねた八重は躊躇うこと無くフォルクの襟元を狙って踏み込んでくる。
 今度はフォルクが肩からの体当たりで八重の踏み込みを相殺する。そのまま体格差を利用して八重を弾き飛ばすフォルク。数歩後退させられたものの、八重もまたたたらを踏んで踏みとどまる。

 これまでの猟兵との特訓の成果もあり、攻撃を受けた時の自然な体捌き、体の動きは流れるように出来るようになってきたようだ。しかし初見の相手にはまだまだタイミングが合わない。

(それじゃあ)
 反復させるのみ。調子が乗ってきている内に、様々な『八重が初見と思われる』パターンでの攻撃を仕掛けるフォルク。拳、蹴り、はたまた連続攻撃やだまし討ち。そのようなパターンを続けざまではないけれども、何度も何度も仕掛けるフォルク。

 そして。
(これは、どうだ!?)
 初見となるはずのダッシュからの両手掌底突き。体が深く沈む分だけ対応が難しいはずだ。
 その攻撃を、八重が捉えた! 体を横にずらしながら下から腕を跳ねあげてフォルクの腕を掴みとる! そのままフォルクの体の勢いを利用して地面に叩き付ける八重。
「ぐはっ」
 『恐らく何度も投げられたり関節技を決められたりするだろうが』と覚悟は決めてきたものの、実際投げられるととても痛い。

 そして。

「だ、だいじょうぶですか?」
 地面に座り込んでいるフォルクに八重がおそるおそる声をかける。
「普通の女の子にこれだけやられると少し自信がなくなるよ」
「えっと……」
 術士であるフォルクが素手で戦っていること自体が理不尽だと思うのだが、まぁ女の子相手だと思うこともあるのだろう。
 調子が出てきてばんばん投げた八重としては大変申し訳なく。
「でも、これで何か思い出せたかな」
「……はい」
 フォルクの言葉に力強く八重が返す。八重の瞳に自信の光が少し戻ってきた瞬間であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

田抜・ユウナ
もう時間はなさそうだけど
他の猟兵もいるし、軽く推してやるだけで十分かな?
緊張を解してやるくらいのつもりで、

向かい合わせに両手を繋ぐ
「重軽石って知ってる? 見た目は普通の石なんだけど、持ち上げてみると予想よりも重かったり軽かったりするのよ」とか言いつつ、繋いだ手に体重をかける
「――田抜流遊び稽古、重軽石」
強めに、と見せかけて軽く
軽く、と見せかけて全体重を
あるいは、押すと見せかけて引っ張ったり
手押し相撲みたいなイメージで、相手を翻弄して体勢を崩そうとする

合気道でいうなら「崩し」かな
技を受けることで体感覚を取り戻して貰えれば




(もう時間はなさそうだけど)
 少し遅れて、アリスラビリンスへ転送されてきた田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)が出現した場所は、金森・八重が特訓(?)を行っている広場のすぐ近くであった。八重を指定してグリモア猟兵が転送した結果だろう。
 目的の八重を発見して、ユウナは周囲を見渡す。他の猟兵たちの姿が見えない。そしてロスヴァイセも姿を見せていない。……ということは他の猟兵たちが足止めをしているということだろう。
 改めて八重の様子を距離を取って窺う。

「ふぅ……はぁ……」
 荒い呼吸を整えている八重。髪の乱れ具合やセーラー服についている木の葉の数、そして顔に小さくついている傷などから察するに、これまでも他の猟兵たちと手合せをしていたのだろう。
 そこまで確認してからユウナが歩き出す。
 かさっ、と落ち葉を踏む音。その音でユウナの存在に八重が気付く。素早く遣った視線は素人がびっくりして振り向いたというより、近付いてきた気配に対して探りを入れるように見据える視線。
 その視線に一度立ち止まり、ユウナは今度は正面からゆっくりと観察する。
(これはもう、軽く推してやるだけで十分かな?)
 言葉は悪いが、徐々に『仕上がっている』ようだ。

 八重が警戒を解いたことを察して、ユウナが再び歩いて近づいていく。
 八重もまた本能的に目の前のユウナがこれまで手合せしていた他の人と同種の、猟兵であることに気付いていたのだろう。
 ユウナを微笑で迎える八重。

 ここからはユウナの特訓時間である。

 ユウナと八重が向い合せに立って手を繋ぐ。言われるままに八重が手を差し出し、その手の上にユウナが自身の手を重ねる。
「重軽石って知ってる?」
 ユウナの言葉に首を横に振る八重。
「見た目は普通の石なんだけど、持ち上げてみると予想よりも重かったり軽かったりするのよ」
 と説明をしつつ。首を傾げる八重に対して、ユウナは実践する。
「――田抜流遊び稽古、重軽石」
「!?」
 くんっ、と。繋いだ手を真下に向けて体重をかけるユウナ。その行動に反応『してしまった』八重は咄嗟にユウナの手、体重を支えようとするが。
 今度はユウナが『引く』。結果、抵抗力が無くなった分、釣られて体が浮き上がってしまう八重。体勢が崩れる。崩れたならば。
「ハッ」
「あうっ」
 ユウナの小さな呼気と共に、八重の体が一回転する。地面に投げられる八重。
「合気道でいうなら『崩し』かな」
 受け身を取って起き上がってきた八重に対してユウナが告げる。
 強めに、と見せかけて軽く。軽く、と見せかけて全体重を。あるいは、押すと見せかけて引っ張ったり。
「手押し相撲みたいなイメージ、と言えばわかるかしら?」
 そういったモノで相手を翻弄して体勢を崩すのだ、と。

 ユウナの狙いは、八重の体感覚だ。例え、どれだけ体の動かし方や技を思い出したとしても。その思考に体がついていかなければ何の意味も無い。
 心技体が揃ってこその武術、武道。それは決して精神論では無く、れっきとした備えであり、装備なのだ。
(技を受けることで体感覚を取り戻して貰えれば)
 と考えて、八重の態勢をひたすら崩して投げるユウナ。しかし八重もただ投げられているわけではない。精度が怪しかった受け身が徐々にキレを増していく。
 侮ることなかれ。受け身こそは武道において最も大切な要素である。それが戻ってきたのなら、体のキレも彼女の思うように動くだろう。
 この調子でいけばすぐに取り戻せそうだ。

 ロスヴァイセとの戦いが徐々に迫ってきている。

「まだまだいくわよ」
「はいっ!」
 ユウナの言葉に八重が快活な声で返事をするのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と。
興味はありますが体術や柔術の類は未経験ですね。
なので八重さんの所作を観察する形になります。
…そういうことはロベルタさんにお任せしますね。

八重さんの体捌きや足の運びをじっくり見ます。
興味があることもありとても面白いのでとっくりと。
私の技(UC)の習得時の参考にもなるかも…です。
私も武芸者。目で追えない速度でないはずなので。
…。
…ぶ…ぶげいしゃ…は大袈裟でしたね。未熟者が。

き…基礎だけでも教えて戴くと嬉しいです…ね。
……私には凄い難関です…が…はうぅ…無理…。
無理なので技を盗むために注視します。はい。
…ロベルタさんよくあんな風にできます…ね。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。

あい…きどー?な に そ れ ! !
おぉ!体術の種類のことなんだね~!!
僕の習得してるのは脚…とゆーか蹴りだね。
しゅーは?うーん…よくわからん無いじぇ。

相手の間合いに踏み込む足の動きは興味あるね。
八重ねーに合気道の基礎を教えて貰いたいじぇ♪
手合せしたいけどお互いに勝手が違うだろうからね。
難しいかもしれないけどお願いはしてみるじぇー。

もし手合せを受けてくれた場合はまず感謝の言葉を。
そして当然UCを使用した技を使わない蹴りを使うよ。
そうそう。勿論寸止めで身体に触れないようにいく。
多分僕がボロ負けだろーねぃ。彼女の方が強い!!




 ユウナとの特訓を終えた金森・八重は稽古をしていた広場で正座(シートは作り出しました)して瞑想をしていた。
 そう、そんな。気を落ち着けることすら忘れていたのだ。

 猟兵たちの助力によって、こと合気道に関することならかなりのことを思い出してきた。いや、体がそのように動くようになってきた、というべきか。
 このまま決戦の時を待つ……前に。

 浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)とロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)が姿を現わしたのである。

 敵意のない気配に、ちらり目を開いた八重。視認したのは目をキラキラさせながら突進してきたロベルタであった。
「あい……きどー? な に そ れ ! !」
 大興奮である。その勢いに若干八重がびくっとするくらい。
 かくかくしかじかと概要を説明すると。
「おぉ! 体術の種類のことなんだね~!!」
 こくこく、納得した様子のロベルタ。年相応の元気いっぱいさに八重も思わず微苦笑する。妹がいればこんな感じだったろうか?
「何か、武術をしているの?」
「僕の習得してるのは脚……とゆーか蹴りだね」
 八重の問いにびゅんびゅん、と蹴りの素振りをするロベルタ。ちなみに宗派とかはよくわからないらしい。ロベルタもまたアリス適合者。八重と同じような状況と聞けば、それも仕方なし、と八重が笑う。

 そんな様子を墨さんは少し離れた場所から見守っていました。決して忌避しているわけではなく。
 剣の道をゆく墨ではあるが、体術や柔術の類は未経験。もちろん興味はあって、『基礎だけでも教えて頂くと嬉しい』とは思っているのだが。
(……私には凄い難関です……が……はうぅ……無理……)
 とのことである。引っ込み思案&人見知りがクリティカルしていた。
 なので、直接のやりとりはロベルタにお任せして、墨は八重の動きや所作を観察態勢である。
 作戦(?)通り、墨の前で八重とロベルタが稽古を始めるようである。

「八重ねーに合気道の基礎を教えて貰いたいじぇ♪」
「いいけど……大丈夫?」
 ロベルタ的には『相手の間合いに踏み込む足の動きは興味ある』らしい。思ったら即実行なロベルタに八重は快諾するが、ちょっと不安げ。
 合気道は相手の動きに合わせて動く武道。対して宗派はわからないがロベルタの蹴りは自身の攻めを起点にしているようだ。
 つまり真逆の動きが起点となる。となると、手解きも難しいかもしれない。ロベルタとしても。
(難しいかもしれないけどお願いはしてみるじぇー)
 的な軽い感じだったのだが。
「それじゃ……まず投げられてみる?」
「!?」
 衝撃的な八重の申し出でした。

 そんなわけでむしろ出稽古(他の道場に稽古に出ること)か? という趣きで向かい合うロベルタと八重。
「ありがとう八重ねー♪」
「どういたしまして。今からだけどね」
 じりじりと間合いを詰める両者。そしてロベルタの蹴りの間合いに八重が入った瞬間、ロベルタの鋭い蹴りが飛んだ。

 それは見ていた墨からすると、一瞬の攻防だった。蹴りを放ったロベルタの体が次の瞬間にはくるっと回っていたのである。
 ロベルタの蹴りが当たる直前に、八重は身を翻しながら体を外へ。蹴りをかわしつつ、蹴り脚を押して流し。自身は外側からロベルタに肉薄。流されたことで体勢を崩したロベルタの体を掴み、足を払って、ぽーんと投げたのである。

「……!」
 八重の体捌きや足の動きをじっくり見る墨。未経験だし興味はあるしでとても面白いので、本当にとっくりと。
(私の技の習得時の参考にもなるかも……です)
 蹴りを躱す時の体捌きとか。同じ中段蹴りでもかわし方は何通りもある。外に身を翻すこともあれば、蹴り脚を跳ねあげて内に飛び込むこともある。
(私も武芸者。目で追えない速度では……)
 とそこまで思って、墨はそっと視線を伏せた。
(……ぶ、ぶげいしゃ……は大袈裟でしたね……)
 アレです。未熟者が思わずやっちゃった感。
 気を取り直して。
 墨はもう一度、ロベルタと八重の稽古を観察。
(直接ご教授戴くのは無理なので、無理なので技を盗むために注視します。はい)
 『ロベルタさんはよくあんな風にできますね』とか思いながら、見稽古するのでした。

「寸止めとかしない方がいいよ? その瞬間に『掴め』ちゃうから」
「うぇっ?!」
 八重にそう言われてロベルタがびくっとする。手加減しているつもりはないのだが、やはり直接当てるのは気が引けるのか思わず寸止めしていたのだ。
「遠慮せずにおいで」
「うー、そう言うなら全力でいくじぇ♪」
 全力で振り抜いたロベルタの蹴りを八重はかわすも、今度は掴みに行けない。
「おっと。やるじゃない」
「へへ♪」
 意外に均衡している八重とロベルタの攻防。見ている墨も含めて、3人の仕上げ稽古は順調に終わったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』

POW   :    モード・ラグナロク
【リミッターを解除して鏖殺形態】に変形し、自身の【寿命】を代償に、自身の【攻撃力・射程距離・反応速度】を強化する。
SPD   :    ヴァルキュリアバラージ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装備武器】から【全方位への絶え間ない射撃】を放つ。
WIZ   :    死天使の騎行
レベル×1体の、【翼部】に1と刻印された戦闘用【少女型支援機】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギージスレーヴ・メーベルナッハです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●取り戻したモノ
 猟兵たちとの手合せを経て。金森・八重は深呼吸する。
「ありがとう。猟兵さん」
 その顔には笑みが浮かんでいた。記憶はともかく『取り戻したモノ』がとても大きい。八重の振る舞いは最初の不安そうな、おどおどしたものから、年齢相応の少女のものに変わっていた。それは言うなれば、そう……小鹿のような快活さ。
 八重の瞳には取り戻した……自信が宿っていた。

 この後の展開は……彼女の想像力次第。

 その時は刻一刻と迫っていた。

●決戦の刻
「もうムリだよぉ~~~猟兵さんたち出てきてー!!」
 時計ウサギが叫ぶ。どうやら先導とごまかして待機するのも能力の限界らしい。声に呼ばれるようにして急いでウサギ穴を脱出する猟兵たち。
 そしてウサギ穴の中が骸の海へ変じる……その直前。ウサギ穴から真紅の飛翔体が飛び出してきた。
 滞空しながら時計ウサギと猟兵たちを見降ろすその影は『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。
 しかしその視線はすぐに逸らされる。否、本当の標的を捉えたのだ。視界に映らずとも、彼女の持つ対アリスナイト必滅武器『シックザール』が、金森・八重の存在を捉えている。
「シックザール、起動。チャージ、不要。カウントダウン、ゼロ。ショット」
 機械的にシークエンスをこなしていくロスヴァイセ。シックザールが彼女の手を離れ、空中にその銃身を固定させる。そして発射。

 光の弾丸が全てを貫き、八重に迫る!

 しかし。
「……捉えたっ!!」
 八重は迫る光の弾丸の気配を『完全に捉え』て、合気道の動きで射線から自身の軸をずらすようにしてかわす! しかしシックザールもまた『必滅』の名を冠する武器。その銃弾は銃撃ではありえない軌道を描いて八重の元へ戻ってくる!
「てやーっ!!」
 その軌道に対して八重は迎え撃つように掌底突きを放つ!
「……!!」
 ロスヴァイセの元へ行こうとしていた猟兵たちが息を飲む。猟兵たちの特訓で彼女はアリスナイトの力は存分に引き出せるようになったはずだ。それでも『もしかしたら』という不安は拭えない。
 しかし。
「こんなところで前に読んだ漫画が役に立つとは思わなかった! あれ合気道って言ってるけど、絶対合気道じゃないよね!」
 そんなことを言いながら全く無傷の八重がそこにいた。どうやら漫画で見た技を参考に、対策を実現させたらしい。
「光の弾なら闇で食べてあげればいいのよ、うんうん」
 ふふん、と自信ありげに言う八重。次々と飛翔する光の弾丸を闇のオーラを纏った掌底突きで撃墜していく。
「どうせ当たる! だったら当たった瞬間に闇で吹き飛ばす!!」
 最初に相対した頃の様子が嘘のような自信の塊である。なので。
「私ったら、無敵な上に天才なのかも?」
 とか言い出す始末。
「私、大丈夫よ猟兵さん! ここで皆を守るから……アイツをお願い!」
 次々と迫るシックザール(死の運命)をその手で叩き落としながら、八重は笑顔で猟兵たちを送り出す。

 ならば。猟兵たちのやることはただひとつ。『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を倒すこと。
 必滅の攻撃を避け続ける八重を狙ってロスヴァイセが飛来する。

 決戦の時が訪れた!


※シナリオ捕捉
 戦闘場所は森の中でぽつんと開けている広場。戦闘の際に邪魔になるようなものはありません。
 ロスヴァイセの初期位置は空中ですが、思いっきりジャンプすれば届く距離にいます。

 八重が【アリスナイト・イマジネイション】で自身と愉快な仲間たち(時計ウサギ含む)を守っていますので戦闘の余波で巻き込まれる心配はしなくて大丈夫です。

 シックザールは空中に浮いたまま固定砲台のように一定間隔で八重を狙います。シックザールに八重の護りを突破する力はありませんが、八重の力は想像力から生成されるため、疲れてくると精度が落ちる可能性があります。
 シックザールの射撃を妨害することで八重の補助が可能です。シックザールは破壊できませんが、照準をずらす、銃口を跳ねあげる、射線に障害を置く等で妨害可能とします(プレイングボーナス有り)。
 あと、プレイングボーナスはマスコメの通りですが、加えて『褒める』とか『称賛する』といった行為で【アリスナイト・イマジネイション】の威力が増加します。
フォルク・リア
「今の八重は確かに無敵だよ。
それも君の才能と努力の結果かな。
なら、安心してあいつを倒す事にしよう。」

冥雷顕迅唱を【全力魔法】で使用。
大気を雷の魔力で満たし空に浮かぶ敵に電撃の
プレッシャーをかけ。
自分は地上から雷を操り迎撃の構えをとる。

再度冥雷顕迅唱を発動。
今度は積極的に敵に当てる事を意識し
雷を直撃させてダメージを与えると共に
雷弾を操り【誘導弾】として敵の周囲に展開、
八重との間に割り込ませて射線を妨害しながら。
敵の支援機には大気に満たした雷で対抗、
一体ずつ落としていく。

戦いの中でシックザール発射のタイミングを【見切り】
その瞬間に大地を蹴って敵に迫り。
纏った雷を銃口に向けて放出、狙いを逸らす。




 対アリスナイト必滅武器『シックザール』。その狙撃を防ぎ続ける金森・八重の様子を視認して。
 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は空から八重を強襲すべく、空を滑空する。

 瞬間。

 天から落雷、地から放出される雷。天地の間を上下に迸る雷がロスヴァイセを遮る。飛来する雷の弾を回避行動ですり抜けながら、再び滞空するロスヴァイセ。
「今の八重は確かに無敵だよ」
 その声は雷の起点から。フードを被ったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の表情は良く読み取れないけれども。
「それも君の才能と努力の結果かな。なら、安心してあいつを倒す事にしよう」
 しかし声は八重への安堵と信頼に満ちていた。

「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成し。その荒ぶる閃光、我が意のままに獣の如く牙を剥け」
 フォルクの声が響き渡る。【冥雷顕迅唱】の全力詠唱。パリパリっとフォルクから漏れ出る雷の鋭さが先のものとは全然違う。
 フォルクから放たれるプレッシャーを無視するわけにもいかず。ロスヴァイセは死天使の騎行を呼び出す。ロスヴァイセの背後に翼持つ戦闘用少女型支援機がずらりと並び。
 翼を広げ、滞空するロスヴァイセの横をすり抜けて、少女型支援機がフォルクと八重に向かって飛翔する!
「どこにいくというんだ?」
 フォルクの声に応えて天から降る特大の雷が少女型支援機の数機を飲みこみ、焼き尽くす。その特大の雷を飛行して回避しながらさらに突撃してくる少女型支援機に、フォルクは手をかざす。今度は雷の弾がフォルクの指示に従って、大気中に満ちる雷の魔力をレールに少女支援機へ誘導弾として放たれる。その回避行動すらも織り込んだ攻撃に、次々と撃墜されていく少女型支援機。

 その間もシックザールから八重を狙う光の銃弾が放たれ続けているが、雷のカーテンが干渉してそもそもが八重に届いていない。少女型支援機の突撃も雷の誘導弾で叩き落とされている。
 しかし八重もまた油断すること無く、構えていて。それをちらり一瞥して確認したフォルクは意識をロスヴァイセへと戻す。
「標的(ターゲット)、優先順位を変更」
 八重を仕留めるにはフォルクの存在が邪魔だと認識したロスヴァイセが残っていた少女型支援機を全て合体させて、自身の隣にひとりの死天使を創り上げる。
(来るか……!)
 とフォルクが思った瞬間。全く同時にロスヴァイセと死天使が急降下してくる。誘導弾は……間に合わない。ならばと全方位に迸る雷で以て迎撃するも、その間を軽やかにすり抜けてくるロスヴァイセと死天使。
 二人のビームブレードがフォルクを捉える! ……ことはなく。
「……どうやら俺にも多少効果があったらしい」
 鋭いがゆえに直線すぎる二人の攻撃を、フォルクはするりとかわしていて。武術全般、そんなに知識が無いと言っていたフォルクであるが、八重との特訓に付き合ってたせいか、回避行動のキレが少し上がっていた。
 高速飛翔からの必殺の一撃をかわされたロスヴァイセと死天使に驚愕と言う名のわずかな隙が生まれる。その隙を逃すほどフォルクは手を抜いているつもりはない。
「トドメだ……!」
 天地に満ちる雷の全てをロスヴァイセと死天使に叩き付けるフォルク。雷に焼かれた死天使が地に落ち。
「武装、一時停止。緊急離脱」
 感電したことで翼以外の機能が停止しかけたロスヴァイセは慌てて戦線を離脱したのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田抜・ユウナ
応用と発展、自由な発想。頼もしい限り、ね
私も負けてられない

先の遊び稽古。受け手の体感覚を養うのに使ったけど、仕手として私の稽古でもあった
『重軽石』の肝要は、力のベクトルを読ませないこと。
重いか軽いか、強いか弱いか、前か後ろか左か右か。虚実混交、フェイクを交えることで幻惑し、敵の情報処理能力に負荷をかける

〈妖刀封じの留め金〉を限定解除し≪ドーピング≫
両手で掴みかかったら、
左は天への押し上げ、右は地への引き落とし。左右で別々の『崩し』を同時にかけるそれは、合気道にも同名が存在する
――柔術、天地投げ!
地面に叩き落とす……は無理でも、姿勢を崩させ、射撃妨害や味方の攻撃チャンスを


白峰・歌音
最初とイメージが全然…でも、いいイメージだぜ八重姉!
「無慈悲な死の宣告のカウントダウン!マギステック・カノンがその時間を壊して止めてやるぜ!」

<愉快な箒「相棒」>に乗って、遠ざかろうとしても即肉迫できるように空を飛んで【空中戦】インファイトだぜ!
射線妨害の位置取りをして突っ込み、【オーラ防御】だけで防御し多少の怪我も厭わぬ【覚悟】でとことん殴る!
八重姉が弱ったら「八重姉、思い出せないとしても、今まで自分の積んできたものを信じろ!『積み重ねてきた自分は、決して裏切らない!』」と叫んで【鼓舞】する!
「そして…どれだけお前が脅威的でも、オレの積み上げてきた『勇気』は決して打ち砕けない!」

アド共闘OK


クラリス・シドルヴァニス
八重さん、どうやら完全に元の調子を取り戻したみたいね。ここまでくればあと少し、力を合わせてあの敵を撃退しましょう。
【ドレスアッププリンセス】を発動し、空中に浮かび上がり、《空中戦》の技能であの光の矢に対応していくわ。剣を振るい、シックザールの弾道に合わせて《武器受け》したり、ハートを飛ばして支援機の動きを妨害します。プリンセスらしく《威厳》と《存在感》を示し、八重を《鼓舞》するのも忘れずに。アリスの力の源は、自分の心の中に。いつまでも自分の可能性を信じて、道を歩んでいくのね。
ロスヴァイセ、今のあなたでは八重の命を奪うことはできない。聖印の加護を受け、《神罰》の一撃をお見舞いしてあげるわ。




 無限の想像力を持つアリスナイト、金森・八重を狙う『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。しかし彼女は猟兵によって放たれた戦場に満ちる雷によって一時撤退を余儀なくされる。
 その様子を油断なく見守りながら、八重の身辺についていたのはクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)、白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)の3人であった。
 3人の視線は自然と、対アリスナイト必滅武器『シックザール』に向けられる。主人が離脱した今、シックザールがどうなったか。
 直後、3人の猟兵たちの間をすり抜けて光の銃弾が迸る。どうやら自動起動は伊達ではないらしい。
「はぁっ!!」
 しかし八重にも油断は無く。光の銃弾を想像力の鎧で受け止めた後、闇纏う掌底突きで吹っ飛ばす八重。
「はー! キモチイー!」
 とにこやかな笑顔でのたまう八重さん。

「八重さん、どうやら完全に元の調子を取り戻したみたいね」
 その様子を見てクラリスが復活を言祝ぐ。
「最初とイメージが全然……」
 そしてその横で呆然というかびっくりというか。そんな様子の歌音であったが。
「でも、いいイメージだぜ八重姉!」
 びっ、とサムズアップして八重の変化を喜ぶ。
「応用と発展、自由な発想。頼もしい限り、ね」
 ユウナも同様に、口元に笑みを浮かべて。
 そして視線を空に遣る。そこにあったのは態勢を立て直し、もう一度飛来したロスヴァイセの姿。
「ここまでくればあと少し、力を合わせてあの敵を撃退しましょう」
 クラリスの言葉は、歌音とユウナ、そして八重に。
「はい!」
 元気よく叫んだ八重。
「よし、やろうぜ! 八重姉!」
 そんな八重の肩をぱむっと叩く歌音と。
「私も負けてられない」
 と小さく呟くユウナ。
 4人の視線が空から様子を窺うロスヴァイセに向けられる。

「開放(リベレイション)!」
 歌音の変身を告げる声が、戦闘開始の合図となったである。


「無慈悲な死の宣告のカウントダウン! マギステック・カノンがその時間を壊して止めてやるぜ!」
 歌音がロスヴァイセを指差して宣戦布告。しかしロスヴァイセはそれに言葉を返さず、代わりにリミッター解除。自身の体を鏖殺形態に変形させる。攻撃力・射程距離・反応速度が跳ね上がったロスヴァイセはその衝動のままに空を飛翔する。
 不意を打つかのような地面スレスレの飛翔&突撃。動じることなく、歌音とロスヴァイセの間に割り込んだのはユウナ。両手を突き出し、ロスヴァイセを受け止めようとする!
「……っ」
 わずかにゆがむ表情。反応速度が合わない。ユウナの両手がロスヴァイセの体を掴むことは無く、しかし触れた手が無理矢理ロスヴァイセの軌道を方向転換させる。
 ユウナの渋い表情はどうやら『思惑』通りにいかなかったようで。

 再び空に上がってから再度突撃してくるロスヴァイセ。
 しかしそのタイムロスは、クラリスと歌音にとって十分な時間である。
「相棒、頼むぜ!」
 『愉快な箒『相棒(飛行進化)』に跨って歌音が叫ぶと、箒の先っちょがジェスチャーで頷きを返す。アリスラビリンスで出会ったという共に旅する相棒が空を一直線に飛んでロスヴァイセに迫る!
 箒に体を固定して手を離す歌音。制御は相棒に任せておけばいい。手が自由になるならば。
「ここからは空中戦、インファイトだぜ!」
 オーラを纏った拳がロスヴァイセを殴りつける。反撃のロスヴァイセのビームブレードを軽やかに回避して、歌音とロスヴァイセは空中で睨み合う。

 その間にもシックザールから放たれる光の銃弾。銃口から八重に向けて直進するそれを。
「それはどうでしょう?」
 クラリスの声が遮る。
 自動発射、自動追尾する光の銃弾と言えど叩き落とせば終わり、ということは八重自身が証明している。
 【ドレスアッププリンセス】を発動したクラリスもまた空中へと浮かび上がり、空中戦の態勢。光の銃弾へと飛翔して射線に突き出したクレイモアで銃弾を受け止め。発射された次弾も剣の一撃で叩き落とす。

「そっちにいったぞ!」
「ええ」
 歌音の声に振り向くことなく応えるクラリス。どうやらロスヴァイセの標的がこちらに移ったらしい。
 もう一度光の銃弾を斬り伏せてから、体の向きを変えるとそこに在ったのは、背後に死天使の騎行を従えるロスヴァイセ。
 ロスヴァイセの指示によって飛翔する死天使たちに、ハートを飛ばして進路妨害していくクラリス。
「私の前を許可なく通れるとでも?」
 その様は聖騎士のようで、プリンセスらし威厳と存在感を示して。

 入れ替わり、歌音がシックザールに突撃する。
「くぅっ!」
 八重への射線を遮りながら、自動発射された光の銃弾をオーラ防御で受け止める歌音。猟兵でも防げないと言われている光の銃弾。それを真正面から体で受け止める歌音も無傷とはいかない。だが、そこには多少の怪我も厭わぬ覚悟がある!
「その脅威、絶対にオレは通さない……!」
 【リベレイション・マキシマムブレイズ】。『対峙する脅威から、守りたいものを守り抜く』誓いによって歌音がその力をさらに増す。

 八重への攻撃を封殺しながらロスヴァイセにダメージを与えていく猟兵たち。
 順調すぎる戦況に油断も無く、このまま……。
 そんな瞬間にロスヴァイセが打った一手は、『八重たちの真上に死天使の騎行を呼び出す』ことであった。


 真上から急降下する死天使の騎行が八重たちに迫る!
「「「……!!」」」
 3人が同時に息を飲むが、すぐに対応できる距離では無い。
 ならば!

「八重姉、思い出せないとしても、今まで自分の積んできたものを信じろ!」
 歌音が叫ぶ。
「『積み重ねてきた自分は、決して裏切らない!』」
 それは歌音の鼓舞。
「アリスの力の源は、自分の心の中に」
 声は静かに、しかし確実に届けたいと言う想いを乗せて。
「いつまでも自分の可能性を信じて、道を歩んでいくのね」
 クラリスが示すのはアリスナイトとして、とても大切な『在り方』

「くぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁっ!!」
 八重が叫ぶ。2人の鼓舞を受けて、その想像力を全てから護る鎧と化して、死天使たちの騎行を押し留める八重。
「標的、ロック」
 だが、完全に身動きが取れない時間でもある。
 そこへロスヴァイセが追撃しようと、これまでにない最大速度で突撃する!

 歌音とクラリスの間をすり抜けて、飛翔するロスヴァイセ……の前に立ち塞がったのはまたもやユウナ。
 初手の後、ここまで沈黙を保っていたのはひとえに『計る』ため。
(先の遊び稽古。受け手の体感覚を養うのに使ったけど、仕手として私の稽古でもあった)
 先の八重との特訓。
 『重軽石』の肝要は、力のベクトルを読ませないことであった。

 ――重いか軽いか、強いか弱いか、前か後ろか左か右か。

 虚実混交、フェイクを交えることで幻惑し、敵の情報処理能力に負荷をかける。それによって出来た『隙』を捉えることが狙い。

 そう、掴みさえすれば。

 刹那、ユウナは『妖刀封じの留め金』を限定解除。されど刀身を抜き放つことは無く。【無刃の誓い】によって妖刀の力を抑えながら、自身を戦闘知識とドーピングで強化する。
 タイミングは先ほど見た。そこから計算される速度を完璧に捉えて、今度こそユウナの両手がロスヴァイセを掴む。
 間髪を入れず。左手は天への押し上げ、右手は地への引き落とし。左右で別々の『崩し』を同時に仕掛ける。
(これは、合気道にも同名が存在する……!)

 その名を――柔術、天地投げ!

 飛んできたロスヴァイセの勢いもそのまま巻き込んで、彼女の体を地面に叩き落とすユウナ。完全に捉えられたロスヴァイセは抵抗する暇も無く、地面に激突する!

 その隙を逃す歌音とクラリスでは無い!
「どれだけお前が脅威的でも、オレの積み上げてきた『勇気』は決して打ち砕けない!」
 【リベレイション・マキシマムブレイズ】で増したオーラの力を全て拳に集めて。
 立ち上がろうとしたロスヴァイセに突撃する歌音が、相棒の出してくれた勇気の速度を乗せて、渾身の拳を叩き付ける! その一撃に吹き飛ばされるロスヴァイセ。
「ロスヴァイセ、今のあなたでは八重の命を奪うことはできない」
 その先に立っていたのはクラリス。剣を天にかざし、それに応じて聖印が光を灯す。それはクラリスの意志に光の紋章が反応した証。
「神罰の一撃をお見舞いしてあげるわ」
 声とともに放たれたクラリスの一撃がロスヴァイセを完璧に捉えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
蹴りは届かないだろーから特殊な方法で行く。
剣の刀身を紅野薔薇に変える【紅妃舞】だじぇ。
封印を解いた限界突破で花弁の数を増やすよ。
花弁の数を増やすことで視界を悪くできないかなと。
あー。視界悪くなったら面倒になって乱射しそーだねぃ。
あと上手くいくか判らないけど…。
誘導弾の効果を花弁にかけてみよーかなって考える。
ヴァイセねーちゃんの攻撃を明後日の方向に…って。
明後日の方向にできなくても威力を拡散できるかも?

僕も気に掛けるけど八重ねーのことは墨ねーに任せる。
墨ねーならしっかり護ってくれてるはず!
それはともかく八重ねーの力は…想像力は凄いねぃ。
すっごく硬い!


浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と共闘。
今回私は後衛で護りに徹したいと思います。
ロスさんの攻撃は極力私の【鏡映】で無効化します。
狙いは八重さんのようなので基本彼女の近くに居ます。
【鏡映】は八重さんの障害になると思うので。
ロベルタさんが攻撃する時の盾にもなります。

相殺しきれなかった場合は見切りと第六感で回避を。
怪我の対策として身体にオーラ防御を纏っておきます。

広場のどこにいても八重さんに気を払っておきます。
もしもの時にはすかさず八重さんの補佐ができるように。
一人で護るのは荷が重いでしょうから支えになります。
えと。私は…話すのは苦手なので…態度で…はい…。




 自動起動し続ける、対アリスナイト必滅武器『シックザール』。その存在はいまだ失墜することなく空にあるが。
 その主たる『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は猟兵たちの攻撃、そして神罰の一撃で以て、かなりの機能が低下していた。手にしていた武器も破損し、自慢の翼もヒビ割れて、十全に動かない。
 それでも金森・八重を『殺す』という意思だけは健在だった。

 再び突撃しようと空へ向かうロスヴァイセ。
 しかし。
(蹴りは届かないだろーと思ってたけど!)
 そこへ飛び込んだのはロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)であった。この高さなら、『届く』! ロベルタが真正面からの蹴りでロスヴァイセを吹っ飛ばす!
「墨ねー! そっちまかせたじぇ!」
「……(こくり)」
 ロベルタの言葉に頷きを返す浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)。

 対ロスヴァイセと八重防衛と。墨とロベルタは二手に分かれてこの戦況にピリオドを打とうとしたのである。


 先の蹴りは八重から距離を引き離すため。
 それを察知したロスヴァイセが不完全な翼を広げて空へ飛びあがろうとしている。狙いはロベルタを飛び越えていこうとする行為。
「そうはさせないじぇ!」
 元々、『空にいる』ロスヴァイセ戦を想定していたのだ。ロベルタに対策は、ある!
「Smontare il corpo...」
 詠唱と共に、精霊属性を宿す魔法剣『プリンチペッサ・ロッソ』の刀身が紅の薔薇の花弁へと変化する。剣の切先を突き付けるような仕草によってロベルタが放つのは【紅妃舞】による薔薇の嵐。
「……!」
 飛翔しようとしていたロスヴァイセの視界を完全に塞ぐ薔薇の花弁に、ロスヴァイセの体が切り刻まれていく。
(上手くいったねぃ)
 こっそり仕込んだ限界突破。普段より花弁の数は増しているのだ。ロスヴァイセの視界を塞ぐことなど造作もない。
「死天使の騎行(ワルキューレ)」
 ロスヴァイセがひと言呟く。それは彼女にとっても最後の力を振り絞った一手。自身の背後に戦闘用少女型支援機である死天使を呼び出す。その数は、呼び出せる最大。
「騎行、開始」
 ロスヴァイセの言葉に応じて、死天使が二手に分かれる。
「……!」
 今度はロベルタが息を飲む番。自身に向かってきた死天使は薔薇の花弁を呼び戻して対応できるが、もう一方は……八重の方。
(……八重ねーのことは墨ねーに任せる)
 気に掛けないわけではないが、距離と役目の問題だ。墨ならしっかり護ってくれてるはずだ。それに。
(八重ねーの力は……想像力は凄いねぃ。すっごく硬い!)
 彼女なら大丈夫だ、と。
 ロベルタは目の前の死天使の数を減らしていくことに専念する。


 飛来する死天使の群れ。
 それを見据えるのは八重の側についていた墨である。

「……今回、私は、後衛で護り、に……」
 とロベルタに、戦闘前に伝達済。八重の近くで護りに徹することは作戦通りだ。
 ゆえに死天使の群れが押し寄せてくることも墨の想定内といえる。

「映し返せ……」
 ユーベルコード【鏡映】。墨が両の掌を突き出すとその前に魔力の鏡が作り出される。そこから放たれるのはロスヴァイセの死天使の騎行。幾度も仲間が受けてきた攻撃を見ているのだ。その精度は格段に上がっている。
 空中で激突する死天使同士。対消滅のような形で死天使たちを撃ち落としていくが、それでもするりと抜けてくる個体がある。
 しかしそれも墨の想定内。その第六感と視線が既に死天使を捉えている。
「……っ」
 それを声にもならないほどの呼気とともにオーラを纏わせた『粟田口国綱』で受け止める墨。その横をさらに1体すり抜けて。
「ちぇすとーっ!!」
 それ、剣術! とロベルタがいたらツッコんだだろうけども、それはさておき。
 八重の掌底突きが死天使を、自身に触れる前に撃墜していく。
 その瞬間を狙ったシックザールの一撃。
「……?!」
「だいじょう、ぶ」
 慌てて体勢を立て直そうとした八重に、すっと墨が進み出て。【鏡映】で以て光の銃弾を相殺する。
(一人で護るのは荷が重いでしょうから……支えになります)
 その意志で以て八重の側に立ち続ける墨。その想いを込めて視線を八重に遣るが。
「……?」
 残念、正確に伝わっていないようだ?
「えと。……はい……」
 墨さん的には話すより態度で示す方が楽らしい。
 そんなわけで八重の側で彼女を支え続ける墨であった。


「イイ感じだねぃ!」
 ロベルタの蹴りが死天使を屠る。その間にも誘導弾のごとく空を舞う薔薇の花弁が飛翔してくる死天使を撃墜していく。
 八重の方に向かった死天使の騎行も墨の【鏡映】が相殺してその脅威を払っていく。

「最終リミット、解除」
 ロスヴァイセが最後の一撃を放つべく、全てのリミットを解除する。高速で飛翔してくるロスヴァイセ!
「ヤバッ!?」
 八重はその突撃を一度は想像力の鎧で弾き返すも、徐々にその鎧が削られていく。
 しかし。
「映し返せ……」
 二人の間に割り込んだ墨がロスヴァイセの眼前で【鏡映】。ロスヴァイセの突撃の衝撃をそのまま彼女に弾き返す。
 突撃の勢いと、反対方向からの衝撃と。勢いが相殺してロスヴァイセの動きが、止まる。
「てやーっ!!」
 その声はロスヴァイセの上から。体を捻りながらその力を全て足に伝えて。真上からの回し蹴りを叩き付けるロベルタ。
「……ッッ!!」
 強烈な蹴りに地面に叩き付けられるロスヴァイセ。機械的な音声すらも発声できないほどの衝撃に地面にめり込む。
 それでも立ち上がろうとしたロスヴァイセを。
「……」
 墨が無言で粟田口国綱を引き抜く。目にも止まらぬ居合い一閃。
「……機能、停止。任務」
「これはこれまでの分!」
 最後に八重がその想像力で強化した掌底突きをロスヴァイセに叩き込む。
「…………敗北を、認めましょう」
 最後にそれだけを残して。

 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は骸の海へと叩き返されたのである。


 そして、金森・八重の記憶を求める旅はまた始まった。
 この先に訪れる未来、選択肢をどのように掴みとるのかは、彼女と彼女の想像力次第……だけではなく。
 きっと側にいてくれる仲間たちの支えによるものもある、と。

 そんな予感を胸に、猟兵たちは帰還するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月04日
宿敵 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』 を撃破!


挿絵イラスト