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【Q】雪と仮装とお料理と。

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン #状態変化

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「皆様、此度の迷宮災厄戦はお疲れ様でした。」
 ドライプラメ・マキナスアウト(自称銀河帝国随一の管理AI・f25403)は招集に応じた猟兵達に労いの声をかける。
 迷宮災厄戦ではオウガ・オリジンだけでなく猟書家も交えた三つ巴の戦いが展開された。戦いの末に数名の猟書家を逃してしまったものの、オウガ・オリジンの討伐に成功し消滅の危機に陥っていたアリスラビリンスを救う事に成功した。
 しかし、戦争後にグリモア猟兵達が敢行した儀式魔法【Q】によりオウガ・オリジンの置き土産がある事が判明したのだ。

「オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードにより改変された不思議の国が見つかりました。」
 ドライプラメの声に呼応する様に彼女が宿るロボットの周囲に複数の空間モニターが投影される。空間モニターにはしゃべる南瓜ランタンが至る所に飾り付けらた地平線の彼方まで続いていたそうな雪道が映し出されていた。
「今回見つかった不思議の国は『ハロウィンの国』と呼ばれています。」
 ドライプラメの言葉に猟兵達が沸き立つ。奇しくも今はハロウィンが目前に迫っている。ハロウィンパーティをするにはこれ以上ない程に都合が良い国であった。
「但し、これらの国々は現在オウガ達に支配されています。」
 これらの国々は元々オウガ・オリジンが悲劇を作る為に生み出したり国であるという。オウガ・オリジンはこれらの国の支配者として自身の力を分け与えたオウガを配置していたのだ。
 ドライプラメはオウガ・オリジンがオウガ達に分け与えた力について説明を始めた。

「力の弱いオウガ達はコスプレ衣装を身に纏う事によりその力を強めています。」
 ドライプラメの言葉と共に空間モニターに雪の降り積もった木々の間から様々な衣装が飛び出す光景が映し出される。奇天烈な光景に猟兵達が目を丸くする中、森から飛び出している衣装こそがオウガ達に分け与えた力の一端であるとドライプラメは説明する。
 衣装を身に纏ったオウガは能力が大幅に強化されているという。ハロウィンの国は強力なオウガが跋扈する国なのだ。
「なお、コスプレ衣装は猟兵が着ても力を強めてくれます。」
 分かりやすく言えば森から飛び出してくるコスプレ衣装さえ身に纏えば能力的な不利は覆せるのだという。予想以上に危険な国の状況に緊張を強めていた猟兵達はドライプラメからの補足に脱力した。
「森から飛び出してくる衣装はランダムですが、不本意な衣装を我慢して纏えばより強力な効果が得られるようなので覚えておいてください。」
 森から飛び出す衣装の説明を終えたドライプラメは続けてこの国の支配するオウガに与えられた力の説明を始める。

「この国を支配するオウガは『無敵化』しています。」
 ハロウィンの国を支配するオウガには単純な攻撃は勿論の事、あらゆるユーベルコードが通用しないという。極めて強力な能力だが代償として致命的な欠点もオウガに与えたという。
「オウガはこの国で作られた料理を食べずにはいられないようなのです。」
 オウガの傍らには何故か食材が完備されたキッチンが設置されており、キッチンに置かれた食材で作られた料理を目にするとオウガは食べずにはいられないという。明らかに不味い事が分かる料理や危険物と化した料理であれば抗えるようだが、その料理に気持ちが籠もっていれば結局抗い切れず食べてしまうという。
「料理を食べるにつれてオウガは段々と微睡んでゆき、最終的に眠りにつきます。」
 眠りについたオウガは無敵化が解除されてどんな攻撃でも一撃で倒される状態になるという。オウガもその事は理解しているので料理をしている猟兵を優先して狙ってくるという。

「最後に皆様が向かう事になるハロウィンの国の特徴について説明します。」
 ドライプラメの言葉に一部を除く猟兵達が首を傾げるが新たに空間モニターに映し出されて光景に顔を引き攣らせた。空間モニターに映し出されたのは大量の雪が降り注ぐ光景だったのだ。
「このハロウィンの国では常に雪が降っています。」
 どうも改変前は極寒の国だったようでオウガ・オリジンによって改変された後も降り注ぐ雪と寒さが残ってしまったらしい。
 当然、露出の多い衣装を身に纏えば寒さに震える羽目になり、料理を作っても瞬く間に冷めてしまうだろう。
 最後の説明を終えたのかドライプラメは転送装置を起動させた。
「それでは、皆様の健闘を祈ります。」
 こうしてドライプラメは猟兵達は雪の降り注ぐハロウィンの国へと送り出すのであった。


野根津
 皆様、こんにちは或いはこんばんわ、野根津です。
 今回はハロウィンパーティに向けた準備的な戦いとなります。
 以下、補足事項です。

●シナリオフレームについて
 本シナリオは集団戦とボス戦で構成された2章構成となります。
 更に10/31までに成功したシナリオの本数に応じてハロウィンパーティ当日とやがて勃発する「アリスラビリンスでの猟書家戦」に影響を与える可能性があります。

●第一章
 森から飛び出してくるコスプレ衣装を着る事によりプレイングボーナスを得られます。
 更に不本意な衣装(男装、女装等)を着ればより多くのボーナスが得られます。
 なお、本シナリオで扱うハロウィンの国が雪止まない極寒の世界なので水着等の露出の高い衣装は自動的に不本意な衣装として扱われます。
 加えて、プレイング内に衣装の指定がない場合は大惨事表によって決定しますのでご注意願います。

●第二章
 無敵化中のオウガは攻撃してもダメージを与える事は出来ません。
 ですが美味しい料理を食べさせ続ける事により無敵化を解除して一撃で倒せる状態にする事ができます。
 この章において猟兵達が取れる行動は基本的に『オウガの攻撃を凌ぐ事』と『美味しい料理を作る事』の2つとなります。
 1章と同様に止む事のない雪と寒さが料理を瞬く間に冷ましますが料理に気持ちが籠められていれば特に対策をしなくて問題はありません。

●その他
 例の如く状態変化の要素があります。変化過程の描写等で盛大なキャラ崩壊等が起こる可能性がある為、それを踏まえた上で参加して頂けると幸いです。
 故意にやられるプレイングを行う場合は断章で提示された条件を満たす様なプレイングを盛り込んであれば成功として扱います。

●プレイングの受付期間について
 原則として各章の断章投稿後から受け付け開始、締め切りはマスターコメントにて提示予定です。
 受付期間中に投げられたプレイングは余程の内容でない限り採用しますがスケジュールの都合で執筆が間に合わず流してしまう事があります。プレイングが流れてしまった場合は再度プレイングを投げて頂けると有り難いです。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『パティシエ『ビスケットシールダー』』

POW   :    怖いですぅぅ~~!!
【アリスが封じられたクッキーの盾】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【複数のクッキーシールダー】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    使い捨ての犠牲者
【アリスが封じられたクッキーの盾】による素早い一撃を放つ。また、【攻撃や防御によって盾が破壊する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    貴方もクッキーに…!
【装飾がないクッキーの盾】から【甘い不思議な粉】を放ち、【クッキーの盾へ封印すること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「うぅ…寒いですぅ……。」
「ビキニなんて着ていたら当然だと思いますよ?」
「だって……暖かい服がでなかったんだもん……。」
 雪の降り注ぎ様々な衣装が飛び交う森の開けた場所でビスケットで出来た盾を持つ少女達が集まっていた。
 広間では際どい水着を着て寒さに打ち震える少女をもふもふな服を着た少女達が呆れた様子で見ている。
 暫くして見ていられなくなったのか、もふもふな少女達が押し競饅頭の如く水着の少女を囲み始めた。

「こうすれば暖かいですよね?」
「ありがとですぅ!」
「代わりにあなたが獲物の封印をお願いね?」
「わかったですぅ!」
 端から見れば微笑ましい光景だが少女達が持つ盾には絶望に染まった表情を浮かべたアリスが浮かび上がっている。
 気弱な見た目をした少女達は脆く崩れやすいビスケットの盾にアリスを封印し装飾にする事を趣味とする悍ましいオウガなのだ。
 盾の装飾にされたアリス達は身も心も完全にビスケットに成り果てており助ける事は叶わない。猟兵にしても盾に封印されてしまえば自力での復帰は困難だろう。
 そして、衣装により強化された少女達は猟兵相手でも臆することなく巧みな連携で猟兵達をビスケットの盾の装飾に変えようとするだろう。

「みんな、誰かが迷い込んできたみたいですよ!」
「皆で盾の装飾に変えにいくですぅ!」
 新たな獲物の来訪を察知した少女達は獲物を盾の装飾にする為に移動を始めた。
 その歩みは複数人が寄り集まっているとは思えない程に早かった。

●補足事項
 少女達は衣装により連携能力が著しく強化されています。盾に吹き飛ばされたり攻撃を防がれたりする事により出来る隙を確実に狙われます。
 成功判定条件は森から飛び出してきたコスプレ衣装を着ている事をです。
 コスプレ衣装を着る前に故意にやられる行動を行った場合、苦戦や失敗の判定となる恐れがありますのでご注意願います。
花羽・紫音
【ソロ希望】【アドリブ歓迎】【クッキー化希望】

「アリスをクッキーに変えるオウガ、アナタ達の悪行もここまでよ!!」
転送と同時に【スーパージャスティス】を使用してビスケットシールダーへと戦うわ

「こ、こんなバニーだなんては、恥ずかしいわ」
でも途中で飛んできた白パンスト+紫バニー服(紫手袋&紫ブーツつき)にあたってコスプレをして恥ずかしくなってしまう

そして恥ずかしさで不注意になったところで盾に吹き飛ばされ、反撃しようとしたところでクッキーになったアリスの顔を壊せずに受け止められて隙を作ってしまいそうだわ

そうなったら時間をかけて少しずつ嬲られてクッキーの盾になってしまいそうだわ




「雪の降り注ぐハロウィンというのも中々良いものね。」
花羽・紫音(セラフィローズ・f23465)は雪としゃべる南瓜で彩られた街道を歩く。雪の降り注ぐ街道は冬や雪に関する仮装をする者達がはこれ以上ない程に映える光景だろう。
「それにしてもオウガ・オリジンも厄介な置き土産を残してくれたわね。」
 今回紫音が訪れた不思議の国はオウガ・オリジンが悲劇を作る為に作り上げた国であるという。今もオウガ・オリジンが望んだ悲劇を生み出す為に彼女から力を与えられたオウガ達が獲物を待ち受けているのだ。
「アリスをクッキーに変えるなんて、許すわけにはいきませんわ。」
 紫音はグリモア猟兵が断片的に見いだす事の成功したこの国に潜むオウガの所業に対し怒りを露わにする。アリスをただ喰らうのではなく、辱めながら自身の力として利用するその有り方を紫音は到底許す事が出来なかった。

「改めて見ると凄い光景ですね……。」
 暫くして街道が途切れると引っ切り無しに様々なコスプレ衣装が飛び出している森が見えて来た。紫音はその光景に苦笑しながらも全身に黄金のオーラを纏った。
「ここからは敵の領域、油断せず行くわよ!」
 紫音は地を蹴り、森の中へと突入した。


「今回はどんな子が来たのかな?」
「わたしは可愛い男の子がいいですぅ。」
「どんな表情で装飾になってくれるのか今から楽しみです。」
 紫音が森へと突入した頃、ビスケットシールダー達も衣装の飛び交う森を進んでいた。和気藹々とした様子だがその会話の内容はこの世界に迷い込んだ者をどんな盾の装飾にするかという悍ましい内容であった。
「……みんな、何か聞こえないですぅか?」
「わたしには何も聞こえないけれど……。」
「気のせいじゃないかな?」
 ふと、中心でもふもふなシールダー達に暖めて貰っていたビキニのシールダーが何かに気づいたのか自身を暖めてくれている仲間に問い掛ける。しかし、暖かな衣装を着たシールダー達は一様に首を傾げ気のせいではないかと言う。
 そして、そんなビスケットシールダー達に黄金のオーラを纏った紫音が突撃した。

「アリスをクッキーに変えるオウガ、アナタ達の悪行もここまでよ!!」
「「「きゃあぁああ!?」」」
コスプレ衣装の力で強化されたビスケットシールダー達だが流石に最大速度6300km/h……約マッハ6で突撃してくる紫音を察知し避けるのは厳しかったようだ。
 紫音は突撃でビスケットシールダー達だけでなく軌道上にあるあらゆる物をなぎ倒してゆく。少しして紫音は緩やかに速度を落とすとビスケットシールダー達の元へと舞い戻る様に軌道修正をしてゆく。
「この私が成敗してあげるわ!」
 そして、ビスケットシールダー達を見下ろす紫音の姿は紫のバニー服を身に着けていた。


「兎さん、なにするんですぅか!」
「……兎? な、なんですのこれは!?」
 並の生物なら爆散するであろう突撃を受けてボロボロになったビスケットシールダー達が紫音に抗議の声をあげる。その声を聴いて紫音は自身の衣装の変化に気が付いた。
 どうやら全速力で突撃している間に森に飛び交う衣装に触れてしまっていたらしい。
 体の起伏を浮かび上がらせる紫色のレオタードに純白のパンスト、更に紫の手袋とブーツを身に着けており、とどめに頭とお尻には紫色のウサ耳と毛玉の様なシッポが生えている。それは正しくバニー服であった。
「こ、こんなバニーだなんて……は、恥ずかしいわ。」
 紫音は変化した自身の姿に顔を赤らめ腕で胸元を隠す。胴体部の露出に限れば普段のヒーロー服の方が多いようにも見えるのだが、そこは気にしてはいけないのだろう。

「なんだか知らないけど、隙だらけですぅ。今の内に反撃するですぅよ!」
 羞恥に悶える紫音をビスケットシールダー達が放置するわけがなくお返しと言わんばかりに反撃に転じた。ビスケットシールダーの一人がビキニ姿のビスケットシールダーの脚を掴むとその場で回り始めたのだ。
 回転の段々と勢いを増してゆきビキニ姿のシールダーの身体が宙に浮き地面に対して水平になってゆく。そして、回転が限界に達した瞬間にビキニ姿のシールダーが紫音に向けて投げ放たれた。
「これでも喰らうでうぅ!」
「っ!? 避けきれない……きゃぁ!?」
 不本意な衣装で注意力が散漫になっていた紫音はビキニ姿のシールダーが構えたアリスの姿が浮かび上がる盾を避けきれず直撃してしまう。その衝撃はシールダー達が協力していた事も相まって凄まじく、紫音はオーラを維持できずそのまま墜落を始めた。
「これで受け止めてあげるですぅ!」
「油断しましたわ……。まずは態勢を立て直さないと!」
 地面にむけて落ちてゆく紫音、その眼下にはいつの間にかビキニ姿のシールダー無地の盾を構えて待ち構えている。このままでは追撃を受けると考えた紫音は落下の勢いも利用して一気に打ち砕こうと拳を構えた。
「これでも喰らいなさい!」
「や、やっぱり怖いですぅううう!」
 紫音の拳が盾諸とも敵を打ち砕こうとした瞬間、無地の盾と入れ替る様にアリスの浮かび上がる盾が突き出された。盾に浮かび上がる絶望に染まったアリスの顔を見た紫音の拳が止まった。

「駄目……私にアリスを砕く事なんて出来ないわ。」
 ビスケットシールダーによって盾の装飾にされてしまったアリスを元に戻す事は叶わない。仮に元に戻せたとしても心が完全にビスケットに成り果てている為に後に残るのは身じろぎ一つしない廃人だ。
 しかし、そんな状態であってもアリスは生きている。例え助ける事が叶わない状態であろうとも紫音にアリスを傷つける事は出来なかった。
「隙ありですぅ!」
「しまっ!?」
 そして、ビキニ姿のシールダーへ攻撃する事を躊躇した紫花に甘い香りの漂う粉が襲い掛かった。


「不覚ですわ……。」
ビスケットシールダーが持つ無地の盾から放たれた魔法の粉を浴びた紫音は身体を身じろぎ一つできなくなった。見えない何かに掴まれているかのように宙に留まった紫音にビスケットシールダー達が集まって来た。
「この子はどんな装飾にしようか?」
「立派な胸は是非とも強調させたいですぅ。」
「折角だからクッキーに変える前に柔らかさを堪能するですぅ。」
「い、一体何を……あぁん! そんなに強く揉まないで……。」
 ビスケットシールダー達は紫音の四肢を掴むとまるで人形のポーズを変えるかの様に動かし始めた。更に一部のシールダーは紫音の抵抗を妨害するかのように豊満な胸を代わる代わる揉みしだいてゆく。
暫くして妙に艶やかなビスケットシールダーが離れればなったやがて紫音は両腕を頭の後ろに回した状態で胸を突き出し、膝立ちで脚を僅かに開いたポーズになっている。そして、紫音の顔は散々胸を揉みしだかれたせいか僅かに憔悴と蕩けの入り混じった表情で項垂れていた。
「最後の仕上げですぅ!」
「い、嫌……クッキーになんてなりたく……。」
 ビスケットシールダー達は無地の盾を紫音の背中側から押し付けると紫音の身体が盾の中へと沈んでゆく。盾は薄いにもかかわらず盾に呑み込まれた紫音の四肢が裏側から突き出す事はない。
 やがて紫音の上腕と大腿の半ばと背中の一部が盾に沈み込むと紫音の身体が盾と同じ色のクッキーへと変化してゆく。

「兎さんな盾の完成ですぅ!」
 突撃によりビスケットシールダー達の陣形を崩す事に成功した紫音であったが不本意な衣装に対する羞恥と犠牲者となったアリスへの中途が原因で敗れ、クッキーの盾に成り果てた。
 その表情は敗北の屈辱と胸を揉みしだかれた事による快感が入り混じっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

龍・雨豪
つまりは、そこのオウガ達を倒せばパーティの準備が整うってことね。
じゃあ、まずは衣装選びから始めるとして……、この黒と赤のドレスなんて良さそうね。蝙蝠の羽型ヘアバンドで角を隠せば吸血鬼っぽさ出るかしら?

次に必要なのは会場の掃除ね。オウガ達に囲まれないように立ち回りながら全員一撃で仕留めていければ、一対一の繰り返しに過ぎないわ。
思った通り大したことない連中ね。このまま全員、って防がれた?
強い個体でも混じってたのかしら。それに何よ、この粉。折角の衣装が粉塗れに……あら?
体が動かないわね。ちょっと、私に何したの。真っ向勝負しなさいってば!
や、やだ。噓でしょ?お菓子になんて――

※アドリブ歓迎、WIZ判定




「つまりは、オウガ達を倒せばパーティの準備が整うってことね。」
 龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)は衣装の飛び交う森を進みながら今回の依頼の概要を整理していた。この不思議の国は雪が降り注ぐという要素こそあるがハロウィンパーティを行う上で好都合な国だ。
 しかし、この国にはオウガ・オリジンから力を与えられた強力なオウガが跋扈している。オウガを殲滅しない事にはパーティを行うのは困難であろう。
「まずは衣装選びからね。何を着ようかしら?」
 雨豪は頭上を飛び交う衣装を品定めする。コサック服にサンタ服等の寒さを確実に防げそうな服やビキニにバニー服等の明らかに寒さを防げないものまで多種多様だ。飛び交う服の割合が露出の多い物に偏っているのは極寒の世界で薄着を着させる事により凍えさせようというオウガ・オリジンの策略だろうか?

「これなんて良さそうね。テーマは吸血鬼かしら?」
 雨豪はふと目についた赤と黒のドレスを手に取った。すると雨豪の衣装が夜空色のチャイナドレスから手に取ったドレスへと変化する。
 サイズ等は特に考えずに手にしていたがまるで雨豪の為に仕立てたと言わんばかりにぴったりであった。
「吸血鬼をテーマにするなら角は邪魔ね。これで角を隠せば吸血鬼っぽさ出るかしら?」
 コレクションボックスから取り出した手鏡で自身の姿を確認した雨豪はその頭から生えた黒い角を撫でる。創作においては角の生えた吸血鬼も少なくはないが、雨豪の木の枝を思わせる龍の角はそれを踏まえてもミスマッチであった。
 このままではいけないと再びコレクションボックスの中から蝙蝠の羽根を模したヘアバンドを取り出すとそれを被る。すると蝙蝠の羽根が龍の角を見事に隠した。
「これで一先ずは良いわね。それじゃあ、次は会場の掃除ね。」
 衣装が定まった雨豪はオウガが待ち受ける森の奥へと足を進めた。


「皆、大丈夫ですぅか?」
「私は大丈夫だけど、盾が壊れちゃった。」
「それならこの盾を使うですぅよ!」
「ありがとうですぅ!」
 雨豪がオウガを目指して森を進み始めた頃、ビスケットシールダー達は襲撃による被害状況の確認をしていた。表立った被害は数名のクッキーシールダーと逸れてしまい、当初の密集陣形がとれなくなった事と数名のクッキーの盾が砕けてしまった事だ。
 幸い、襲撃者を新たな盾に変える事は出来たものの盾を失った者はそれ以上に多い。それ故に多くのシールダー達が予備の盾を取り出そうとした直後、雨豪が現れた。

「見つけましたよ。さぁ、龍の一撃の前に沈みなさい!」
「は、はや……ぐふぅ!」
 雨豪は何故か盾を持っていないシールダーの一人に狙いを定めるとその衣装からは想像できない速度で接近する。そして、懐に潜り込んだところで人型と化して尚衰える事の知らない龍としての剛腕を振るう。
 剛腕はシールダーの鳩尾を抉り遥か彼方へと吹っ飛ばしてゆく。その手応えはシールダーに確かなダメージを与えたと確信できるものであった。
「見た目は動き辛そうなのに全然動きを妨げないなんて、流石はオウガ・オリジンの力の一端と言った所かしら?」
 雨豪はオウガを殴り飛ばした腕を動かしながら感心する。今の雨豪は普段の動きやすいを重視したチャイナドレスとはほぼ対極に位置するプリンセスタイプのドレスだ。
 ふんわりとしたスカートは足を完全に覆い隠す程に大きく、フリルも相まって激しく動けば足がもつれて転びかねない。しかし、実際にはスカートが雨豪の脚の動きを妨げる事はなく、もしかすると普段のチャイナドレスよりも動きやすいかもしれない。
「この戦いが終わったら、そのまま持ち帰っても良さそうね。」
 そうときまれば早々に掃除を終わらせるに限ると雨豪はビスケットシールダー達を次々と殴り飛ばしてゆく。ビスケットシールダー達も雨豪を囲んで封殺しようと動くが雨豪の動きについていけず囲む事が出来ない。
時折、アリスが浮かび上がる盾を構えるシールダーもいるもののアリスを助けられない事を知る雨豪はせめてオウガの辱めからは開放してあげようと、諸ともに打ち砕いた。


「思った通り大したことない連中ね。このまま全員、って防がれた?」
「そう簡単にはやらせないですぅよ!」
 オウガを順調に殴り飛ばし調子づいて来た雨豪は次なる獲物として何故かビキニ服を身に着けたオウガを見定めると一気に接近した拳を振り抜いた。しかし、拳には帰ってくる感覚は柔らかな肉を抉る感触ではなく硬いナニかにぶつかる感覚が帰って来る。
雨豪の龍の一撃はビキニ姿のオウガが構えたバニーガールな盾に防がれていた。更に攻撃を防がれた直後にオウガが構えた無地の盾から放出された甘い香りのする粉が雨豪を包み込んだ。
「攻撃を防いだうえに粉を浴びせてくるなんてあなたは強い個体みたいね。」
「そんな事を言っていられるのは今の内ですぅよ!」
 攻撃を防がれた雨豪は余裕の表情を浮かべるビキニ姿のオウガから距離を取ると自身の状態を確認する。やはりというべきか赤と黒のドレスは盾から放たれた粉に塗れていた。
「折角の衣装が粉塗れに……あら?」
 そして、雨豪はドレスについた粉を払いのけようとした所で自身の身体が動かなくなっている事に気が付いた。


「体が動かないわね。ちょっと、私に何したの。」
「何って魔法の粉をかけてあげただけですぅよ?」
 身体を動かせなくなった雨豪にビスケットシールダー達が集まってくる。その表情は一様に笑顔であり、目の前の獲物をどう料理してやろうかという意志に満ち溢れている。
「この子はどんな装飾にしようか?」
「このドレスだとあまり大胆なポーズは取れないですぅよ。」
「何の相談をしているのよ!? 真っ向勝負しなさいってば!」
「嫌です。真っ向勝負なんてしたら殴り飛ばされるに決まっているですよ。」
 不穏な相談を始めたシールダー達に雨豪は抗議の声をあげるが、当然聞き入れられない。それどころか雨豪の目の前でどんなポーズの装飾にするのかの多数決を始めてしまった。

「相談の結果、あなたをシンプルな装飾にする事に決まったですぅ!」
「待って、その盾を使って私に何をするつもり?」
「何ってこの盾にあなたを封印するだけですぅよ?」
 無地のクッキー片手に迫るビキニ姿のシールダーに雨豪が問い掛ければシールダーは親切丁寧に雨豪の状態と共にやろうとしている事を明かしてゆく。それは自身の辿る末路を語る事により恐怖心を煽ろうというオウガの策略であった。
「今のあなたは押し付けられた物に馴染みやすくなっているですぅよ。だから、この盾を押し付けてあげればあなたの体は直に盾に馴染んでクッキーの装飾になるですぅよ。」
「や、やだ。噓でしょ?」
 自身がクッキーの盾にされる事を告げられた雨豪は顔を青褪めて必死に逃れようと藻掻く。しかし、粉の魔力で動きを封じられた雨豪は逃れる事が出来ず、無情にもその背中に無地の盾が押し付けられた。
 無地の盾に押し付けられた雨豪の体は盾の中に沈み込んでゆき、身体の半分が盾に沈んだ辺り停止する。更に沈み込むのが止まった雨豪の身体が盾と同色に染まっていった。
「お菓子になんて――。」
「吸血鬼な盾の完成ですぅー!」
 こうして雨豪は数名のシールダー達を撃破した末に多くのアリス達と同様に絶望の表情を浮かべたクッキーの盾に成り果てるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

美波・蜜香
(WIZ)
森から飛び出してきたのは正義のヒロイン的に不本意きわまりないコスチューム…
そう、黒の戦闘員タイツ!
しかも体の線が出ちゃうくらいの極薄のぴっちりスーツ!
水着よりはマシだけど、む~…

でも、これも正義のため!
戦闘員スタイルでむんっ、と【気合い】を入れて【スーパー・ジャスティス】でオウガたちを【怪力】と【なぎ払い】でバッタバッタとやっつけちゃうよ!

でも多勢に無勢で取り囲まれてクッキーの盾にお尻を突き出す形で封印されて…

見てぇ…あたしのおっきなお尻、もっと見てぇ…




「うぅ、よりにもよってこのコスチュームを引き当てるなんて……。」
 衣装の飛び交う森の中、美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)はオウガと接敵すらしていないのに既に憔悴していた。というのもオウガと戦う為に身に纏った衣装が正義のヒロイン的な意味で不本意極まりなかったからだ。
「なんで黒の戦闘員タイツなんて飛んでいるのかな!?」
 蜜香が引き当てた衣装、それはヒロインにとって欠かせない存在にして相容れる事が決してない悪の組織の衣装であった。しかも、悪の幹部や怪人ではなく戦闘員が着るスーツである。
「不思議ときつくはないけれど、体の線がこれ以上ない程に出ているんだよ……。」
 スーツは蜜香の体に不思議と馴染んでおり、いつも以上に体を動かしやすいかもしれない。だが、その布地は肌が透けて見えるのではないかと思える程に薄く、蜜香のボディーラインが完璧に浮かびあがる程に密着していた。
「寒くない分、水着よりはマシだけど、む~……。」
 蜜香は羞恥で顔を真っ赤にしながらも想定する最悪である水着を引かなかっただけ良かったと自己弁護に走る。ここで引き当てたのが水着であれば肌を大胆に露出する事に対する羞恥と雪の降る中で水着を着る事による寒さの両方に苛まれていただろう。
「不本意だけれどこれも正義のため! こうなったら一刻も悪者をやっつけてこの衣装を脱ぐんだよ!」
 蜜香はむんっと気合を入れると森の奥へと駆け出した。


「思ったのだけど、この子達って明らかにアリスじゃないよね?」
「私もそう思っていた所ですぅ……。」
 数名の仲間を犠牲にしながらもどうにか猟兵の一人の無力化に成功したビスケットシールダー達はここにきてこの世界に訪れた者達がアリスではない可能性に至ったいた。普通に考えれば音速を超える突撃で蹴散らされた時点でその可能性に至るべきなのは今更である。
「ビスケットシールダー、見つけたんだよ!」
「わわっ! また来たですぅ!?」
「みんな、応戦するですよ!」
 そんなビスケットシールダー達にスーパー・ジャスティスのオーラを纏った蜜香が飛来した。見慣れた黄金のオーラを纏った襲来者にシールダー達は慌てふためきながらも突撃してきた蜜香を弾き返そうと陣形を組むと盾を構えた。
「これでみんなまとめて薙ぎ払ってあげるんだよ!」
「「「うひゃぁああ!?」」」
 相手が明らかに突撃を受け止めるのに最適な陣形を組んだのを見た蜜香はシールダー達の一歩手前に着地すると地面を巻き込む様に全力の回し蹴りを放つ。すると蜜香の怪力により蹴り上げられた雪と土砂が即席の弾丸となってシールダー達を薙ぎ払い陣形を崩した。
 蜜香は散り散りになったシールダー達に素早く接近するとオーラを纏った拳で豪快に殴り倒してゆく。見た目は戦闘員な蜜香だが、その暴れ要はまるで悪の怪人や幹部の様である。

「この調子で一気に殲滅するんだよ!」
「待つですぅ! これ以上悪者の好きにはさせないですぅよ!」
 一刻も早く戦闘員スーツを脱ぐ為に蜜香は更に攻撃の勢いを強めようとする。しかし、そんな蜜香に一人のシールダーが立ちはだかった。
 バニーガールを装飾とした盾を構えるシールダーはその身にビキニという雪が降る中では明らかに不本意と言える衣装を纏った強敵だ。しかし、蜜香はそんなシールダーの姿を気にする前に彼女の発した言葉に反論した。
「あたしは悪者じゃなくてヒロインだよ!」
「わたし達を次々と殴り飛ばしている時点で悪者だと思いますよ?」
 正義のスーパーヒロインである蜜香にとっていくら戦闘員スーツを着ているとはいえ悪者扱いされる事を看過できるわけがない。しかし、そんな蜜香の反論をいつの間にか蜜香の背後に立っていたドレスを纏った女性を装飾とする盾を手にしたシールダーが否定する。
 シールダー達にとって仲間達を次々と殴り倒してゆく蜜香は衣装を抜きにしても悪者でしかないのだ。そして、二人のシールダーは仲間達を守る為に蜜香に突撃した。
 

「それ、本当にビスケットなのかな?」
「当たり前ですぅ! 素材が特別なだけですぅよ!」
 蜜香は先程まで殴り飛ばしていた個体と比べて明らかに強いシールダー達に内心舌打ちをする。二人のシールダーが構える盾は脆く崩れやすいクッキーで出来ている筈なのに蜜香の殴打を受けても傷一つつかないのだ。
「こうなったら拳にオーラを集中させて……危ないかな!?」
「力を貯める時間なんて与えませんよ。」
 拳にオーラを集中させた渾身の一撃を放てば盾を打ち砕く事は出来るかもしれない。しかし、渾身の一撃を放とうとすれば狙われていないシールダーが突撃してそれを妨害した。
「このままだと何時まで経っても終わらないんだよ。」
「それなら諦めてクッキーの盾になるですぅ!」
「そんなのお断りだよ!」
 蜜香は明らかに強力なシールダー達の打倒を後回しにして他のシールダーを倒しに向かおうとする。だが、二人のシールダーは息の合った連携でそれを許さない。
 気が付けば戦闘は膠着状態に陥っていた。しかし、その膠着状態も直に終わりを告げる事になる。
「漸く見つけたですよ。」
「おぉ~、待っていたですぅよ!」
「援軍がきたんだよ!?」
 そう、猟兵の攻撃によって散り散りになっていたビスケットシールダー達が戦闘音を聞きつけて駆けつけてきたのだ。新たに駆けつけた事によって蜜香が接敵した時の倍近い人数となったシールダー達は依然として戦闘を続ける二人のシールダーと蜜香を囲む様に円陣を組むと無地の盾を円陣の中心へと向けた。
「みんなで一斉に魔法の粉をかけるですぅ!」
「そんな、避けきれない……きゃぁあああ!?」
 そして、蜜香は甘い香りのする粉に全身を包まれた。


(……動けないです。)
「さて、この悪者はどうしますか?」
 あまりにも大量の魔法の粉を浴びてしまった為に身体を動かす事は愚か声をあげることも出来なくなった蜜香をビスケットシールダー達が取り囲む。その顔は散々仲間を殴り倒された恨みを晴らせる喜びに満ちている。
「凄く恥ずかしいポーズの装飾にするですぅ!」
「恥ずかしいといってもどんなポーズにするの?」
「こんな恰好をするくらいだから、生半可なポーズじゃ逆に喜びそうだよね。」
(好き勝手言わないで欲しいです!)
 あくまでも蜜香を悪者として扱い罰と称して辱める方向で相談を進めるシールダー達に蜜香はヒロインおわりましたモードに陥りながらも怒りを露わにする。だが、粉の効力によって身体を動かせない蜜香にそれ以上の行動を起こす事が出来ない。

「いい事を思いついたですぅ!」
「何を思いついたのですか? 聞かせて欲しいですよ。」
 やがてビキニ姿のシールダーが何かを思いついたのか他のシールダー達を集めるとその身を寄せ合い話し合いを始めた。やがて話し合いを終えるとシールダー達は蜜香の元へと駆け寄るとポーズを付け始めた。
「まずは両膝を合わせて曲げるです。」
「次は頭を地面につけるように傾けるですよ。」
「後は手の位置と頭の向きを調整すれば……おねだりポーズの完成ですぅ!」
(恥ずかしいです……。)
シールダー達の手によりナニかをねだる様にお尻を突き出したポーズを取らされた蜜香は羞恥に顔を真っ赤に染める。そんな蜜香をシールダー達はにやけ顔で見つめながら次に行おうとしている事の説明を始める。
「これからあなたをお尻を突き出した状態で装飾にしてあげます。」
「あなたはおっきなお尻を敵に見せつけて沢山叩いて貰う盾になるですぅ!」
(そんなの嫌です!)
 シールダー達から告げられた自身の末路に蜜香の顔が恐怖に歪み、全力で逃れようと藻掻くがやはり蜜香の身体は動かない。やがてシールダー達は蜜香の身体が持ち上げられると露わになった胸とお腹に無地の盾を押し付けられた。
「今の内に生身の身体にお別れするといいですぅよ。」
「顔が沈み込まない様に注意するです。」
 無地のクッキーに押し付けられた蜜香の身体が段々と盾に沈み込んでゆく。そして、ある程度盾に沈み込んだところで蜜香の身体がクッキーへと変化した。

「悪者の盾の完成ですぅ!」
「早速叩き心地を試すです。」
(うぅ、クッキーにされてしまいました……はぅ!? なんですかいまの感覚は!?)
 ビキニ姿のシールダーは恐怖に染まった表情でお尻を突き出す盾となった蜜香を抱えると仲間達に見せつけてゆく。そして、徐に見せつける様に突き出された蜜香のお尻を叩いた。
 するとただのクッキーに成り果てた筈の蜜香の身体に甘い衝撃が迸り、蜜香は思わず喘ぎ声をあげてしまう。
「中々の叩き心地です。」
「これなら敵に叩きつけても良さそうですぅ。」
(あぁん! は、激し……激しすぎるますぅ!)
 シールダーが称賛と共にお尻を叩く度に蜜香は甘い衝撃に喘いでゆく。更にシールダー達も蜜香の状態を知ってか知らずかお尻を叩く速度と強さを段々と早めていった。そして、尻叩きが終わる頃には蜜香はお尻を叩かれる事によって生じる快感の虜になっていた。
「それじゃあ、次に敵が来た時には頑張るですぅよ?」
(見てぇ……あたしのおっきなお尻……お尻を……あたしのおっきなお尻を沢山叩いてぇ……。)
 新たな盾を得た事にシールダー達が喜ぶ中、クッキーの盾に成り果てた蜜香はやがて現れる自身に快感を齎すであろう猟兵を待ち望むのでった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
「見つけたわよ! 雪降るところで、このゾーヤさんに勝てると思わないことね!」
 少女たちの前に、『魔法少女』の仮装で飛びだすわ。肌が透けるくらい薄いフリフリのドレス、身体のラインがはっきりのインナー、謎のステッキ。

 すっごく恥ずかしいのは我慢しながら、【UC:絶対零度の眼差し】(WIZ)を発動よ。隊列が崩れたらすかさず〈属性攻撃〉を撃ち込んで凍らせていくわ。

「わたしは絶対、クッキーなんかに負けたりしないわ!」
 ポーズを決めて、自信満々に言い放つわ。この衣装は恥ずかしいけれど、力が強化されるってのは本当みたいね。今のゾーヤさん、もしかして最強かしら?

(アドリブ連携負傷状態変化等々全て歓迎です)




「これは……魔法少女の服かしら?」
 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)はオウガ達と戦う為の準備として身に着けた衣装に対し首を傾げた。それは俗に魔法少女と呼ばれる者達が身に着ける衣装であった。
「魔法少女の服って随分と過激なのね。」
 ピンクを基調としたドレスはフリフリだが生地は肌が透ける程に薄く身体のラインがはっきと見える白いインナーが見えてしまっている。修道女を思わせる人狼装束を着慣れていたゾーヤにとってこの衣装はまさに未知の領域であった。
「尻尾が妙に重いわね……この服、尻尾用の穴がないわ!?」 
 ふと尻尾に違和感を感じたゾーヤが尻尾を確認しようと後ろを振り向いてみれば尻尾がスカートの後ろ側を豪快に持ち上げている光景が目に入った。そう、この衣装には尻尾を出す為の穴があいていなかったのだ。
 尻尾が飛び出す為の穴がない以上、尻尾がスカートを押しのける事は避けられない。それは必然的に背中側からはスカートに隠された下着が丸見えになる事を意味していた。
「いくら何でもこれは恥ずかしすぎるわ……だけど、仮装していないとオウガと戦えないし。」
 ゾーヤはあまりにも恥ずかしさにすぐにでも元の修道服に着替えたいという衝動に駆られる。しかし、この森に潜むオウガ達と対等に戦うには仮装をして戦わなければならない。
 葛藤の末にゾーヤはこの衣装をきて咎人達と戦う決意をした。下着が丸見えなのは後ろから見られた場合のみ、ならば背中側を見られる事なく咎人を倒せばよいと考えたのだ。
「そうと決まれば急いで咎人達を殲滅よ!」
 ゾーヤは何故か装飾過多な謎のステッキに変貌した守護の長剣片手に森の奥へと突撃した。


「あちこちで戦闘が起きているみたいですね。」
「もしかして、噂に聞く猟兵が来たのかな?」
「それなら早く他の子達と合流しないと危ないですよ!」
 ハロウィンの国の森の中では猟兵達とビスケットシールダー達の戦いは本格化していた。森の至る所で戦闘音が響き渡り、時折ビスケットシールダーの悲鳴や不本意な衣装を着た猟兵の嘆きの声が木霊する。
 そんな戦場と化した森の中を数人のビスケットシールダーの一団が駆けていた。彼女達は仮装こそしているが不本意な衣装を着た者がいるわけでもなく、かといって強力な盾を持っているわけでもない。
 生来の性格故に仮装をした猟兵と遭遇すれば負けるかもしれないという不安に駆られたシールダー達は不安を拭う為にも他の仲間達との合流を優先していた。しかし、そんなシールダー達の一団の前にゾーヤが勢いよく飛び出した。

「漸く見つけたわよ!」
「あぁっ! 見つかったですよ!?」
「こうなったらわたし達だけで迎撃するしかないです!」
 ゾーヤに補足されてしまった事により逃れる事は叶わないと考えたのか、シールダー達は盾を構えると陣形を組み始めた。瞬く間に小規模ながらも堅牢な陣形を組んだシールダー達に対しゾーヤは鋭い視線を向ける。
「雪降るところで、このゾーヤさんに勝てると思わないことね!」
「大きな氷が降ってきたですよ!?」
 ゾーヤがシールダー達に敵意の篭った視線と共にステッキを振り降ろせば天から氷塊が降り注ぎ始めた。その氷は普段ゾーヤが降らせる氷塊とは比べ物にならない程に大きい。氷塊が直撃したシールダーは盾諸ともに押しつぶされた。
「力が強化されるってのは本当みたいね。今のゾーヤさん、もしかして最強かしら?」
 シールダー達が陣形の維持も忘れて逃げ戸惑う中ゾーヤは自身が降らせた氷塊の大きさに感心する。目の前で降り注ぐ氷塊は普段なら全力でいかなければ降らせる事の出来ない大きさなのだ。
「いい感じに陣形も崩れたね。それじゃあ、そろそろお休みの時間よ!」
「ひゃあ!?」
 降り注ぐ氷塊によってシールダー達の陣形が連携を取る事が叶わない程に崩れたのを見届けたゾーヤは杖を振るえば杖の先から吹雪が噴き出した。吹雪はまるで逃げ戸惑うシールダー達を包むと瞬く間に氷漬けの氷像に変えてゆく。
 そして、吹き荒れる吹雪が降り注ぐ雪の中に混じりあう頃にはゾーヤと対峙していたシールダー達は一人残らず氷像に成り果てていた。


「この辺りにもう咎人達はいないようね。」
 ゾーヤは辺りを見回しシールダーの生き残りがいないか確認する。辺りは天から降り注いだ氷塊によってその様相を大きく変貌させていた。
 森の木々が軒並みなぎ倒された為に大きな広間となり、なぎ倒された木々の代わりに砕ける事無く残った氷塊とビスケットシールダーの氷像が立ち並んでいる。
「これなら直に咎人を殲滅できそうね。これで衣装が恥ずかしくなければよかったのに……。」
 ゾーヤは目の前の光景を作り上げるに貢献した魔法少女の衣装を改めて見る。
スケスケで体のラインが丸見えな上に尻尾穴がないお陰で常に下着が見られる恐れのあるゾーヤの羞恥心をこれ以上ない程に刺激する衣装だ。しかし、それを抜きにしても衣装に宿る力は魅力的であった。
 この衣装が他の世界でも効果を発揮するのかは不明だが。ハロウィンの国奪還後に衣装を持ち帰る事が出来るようであれば手直しをしても良いかもしれないとゾーヤは考えた。

「そろそろ次の咎人達を探さないと。大丈夫、衣装のお陰で負ける事はないわ。」
ゾーヤはステッキを掲げポーズを決めると森へと駆け出した。
「そう、わたしは絶対、クッキーなんかに負けたりしないわ!」
 自身満々に言い放つゾーヤだが気の高ぶりによって忙しなく動く尻尾によりスカートの中が大変な事になっている事に気づいていなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

在原・チェルノ
ふええっ!?
よりにもよってハイグレ、じゃなくてハイレグ水着!?
どう考えたって悪意しか感じないチョイスよね!
でもパワーアップしたのは確かだから速攻でやっつけるわよ!
流星忍姫チェルノ、参ります!

【残像】と【迷彩】で敵を攪乱しながら【暗殺】で死角に回り盾で防御出来ない位置から【先制攻撃】の【雷刃無尽】で次々と仕留めていく
どう?これが忍者の戦い方よ!

…甘かった
寒さは覚悟してたけど身体冷えちゃったからその…自然が呼んでるのよね
早く敵を倒してお花摘めるところ探さなくっちゃ!

※NGなし・アドリブOKです




「ふええっ!?」
 ハロウィンの国の森の中を在原・チェルノの声が木霊する。
オウガを倒す為には仮装をする必要があると聞いたチェルノは迷うことなく森の木々から飛び出す衣装を無造作に手に取った。事前に飛び出す服はランダムであると聞いていたもののチェルノは酷い衣装に当たる事はないだろうと高をくくっていた。
「よりにもよってハイグレ、じゃなくてハイレグ水着!?」
 しかし、チェルノが身に纏った衣装はハイレグ水着であった。それは雪が降り注ぐ極寒のハロウィンの国においてチェルノが来たくない衣装であった。
 実の所、外見的にはアクセントとなる模様が消えてピンク一色になっただけとそれほど変化はない。しかし、外見に反して宇宙服に分類される為に寒さを完璧に防いでいたピンク・ファントムと異なりハイレグ水着は寒さを全く防げておらず森の寒さがチェルノの身体を蝕み始めていた。

「どう考えたって悪意しか感じないチョイスよね! でも、パワーアップしているのは確かなのよね……。」
 チェルノは既に亡き者となったオウガ・オリジンの悪意の片鱗に怒りを感じながらも普段よりも身体を動かしやすくなっている事も実感していた。今なら普段は難しい動きも楽に出来るという確信があった。
「こうなったら速攻でやっつけるわよ! 流星忍姫チェルノ、参ります!」
 チェルノは寒さの影響が深刻化する前に片を付けるべく森の奥へとその身を投じた。


「さっきから皆の悲鳴ばかり聞こえてくるです。」
「一体何人の猟兵がここにきているですぅか……?」
 ビキニ姿の個体が率いるビスケットシールダー達の一団は引っ切り無しに聞こえてくる仲間達の悲鳴に怯えながら森を進む。
この森に襲撃をかけて来た猟兵はアリスとは比べ物にならない程に素晴らしいクッキーの盾になってくれる。しかし、その盾が1つ出来上がるまでに多くの仲間達が犠牲になってしまうのだ。
 いくら素晴らしいクッキーの盾が出来ても自分達が全滅しては元も子もない。ビキニ姿のシールダーが率いるこの一団は猟兵達が目的を果たしこの国を去るまで身を隠す為に拠点を目指していた。
「あとどのくらいで拠点につくのかな?」
「そろそろ目印が見えて来る筈ですぅ。」
 シールダー達は各々が森で迷った時に備えて覚えた置いた目印を頼りに拠点を目指し突き進む。
 拠点に逃げ込めても生き延びられる保証はない。しかし、このまま森を彷徨っていれば待っているのは全滅する未来だ。
 故にシールダー達は僅かな可能性にすがり拠点を目指していた。だが、そんなシールダー達を嘲笑うかのように猟兵の魔の手が迫っていた。

「後ろにいた子はどうしたのですぅか……?」
「えっ? あれ、何処に行ったのかな?」
 異変の始まりは隊列の最後尾を歩くシールダーが忽然と姿を消した事だ。
 シールダー達は襲撃時に直に防御陣形を組めるようにそれほど間を空けていない。例え最後尾であろうと襲撃を受ければ即座に全員察知できる筈なのだ。
 故にシールダー達は最後尾の者が途中で逸れてしまったと判断、はぐれた仲間を不憫に思いながらも先を急いだ。だが、その後も一定間隔で最後尾のシールダーが消えていった。
「明らかにおかしいですぅ! 陣形を組んで警戒を強めるですぅ!」
 謎の失踪を遂げたシールダーが5人を超えた時点でシールダー達は襲撃を受けていると判断し陣形を組んだ。シールダー達は陣形さえ組んでいれば襲撃を受けようと一撃は確実に防げるという自負があった。
 しかし、シールダー達にとっての恐怖はここからが本番であった。

 ドサッ!

「むむ? 一体どうしたです……か?」
「し、死んでるですぅ!?」
 突如として陣形の一角を担うシールダーが倒れた。当然他のシールダー達は倒れた仲間の元に集まるのだが倒れた仲間を見たシールダー達は戦慄した。倒れ伏したシールダーは息絶えていたのだ。
 それは堅牢な陣形を組んだシールダー達の眼を盗み暗殺を成し遂げた事を意味している。当然、不可能な筈の暗殺を成し遂げられたシールダー達は恐慌状態に陥った。

「みんな落ち着くですぅ!」
「ま、また誰か倒れたですよ!」
「怖いですぅううう!」
 恐慌状態に陥ったビスケットシールダー達は次々と何者かの攻撃を受けて息絶えてゆく。ビキニ姿のシールダーは必死に仲間達を宥めようとするがその度に誰かが息絶える為に宥める事が出来ない。
「落ち着かないとそれこそ全滅しちゃうでっ!?」
 そして、仲間達に再三の呼びかけを試みようとした所でビキニ姿のシールダーは自身の背後に誰かがいる事に気が付いた。この時、ビキニ姿のシールダーは自身の死を覚悟した。
 だが、ビキニ姿のシールダーが覚悟を決めた直後に背後と取った何者かは忽然と姿を消した。理由は定かではないが命拾いした事を悟ったビキニ姿のシールダーはその場に座り込んだ。


「……こ、ここなら大丈夫よね?」
 衣装の飛び交う森の一角、猟兵とビスケットシールダー達の戦いの音が遥か彼方に聞こえる場所でチェルノは辺りを見回す。
 ビキニ姿のシールダー率いる一団を恐怖のどん底に突き落としていたのは何を隠そうチェルノに他ならない。衣装の力により能力が向上したチェルノはビスケットシールダー達に対し暗殺を仕掛けていたのだ。
「折角忍者らしく決める良い機会だったのに……。」
 衣装によって向上した身体能力を活かしビスケットシールダー達の死角に潜り込んだチェルノは雷刃無尽でシールダー達を次々と暗殺した。そして、最後の仕上げとして一団のリーダー格を暗殺しようとした所でチェルノの身体を蝕んていた寒さが牙をむいたのだ。

「身体冷えちゃったからその……自然に呼ばれても仕方ないわよね?」
 そう、チェルノはリーダー格を暗殺する直前になって寒さが齎す生理現象に抗えなくなってしまったのだ。
 リーダー格撃破の名誉と乙女の尊厳。究極の選択を突き付けられたチェルノが選んだのは乙女の尊厳を守る事であった。
 周囲に誰もいないと判断したチェルノは最寄りの茂みに潜り込むと花を摘み始めた。
「ふぅ……これで一安心です。」
「それは良かったです。」
「えぇ、あと少しで目も当てられない事になっていたわ。」
「具体的にどうなっていたですか?」
「具体的にってそりゃあ…………えっ?」
 気が付けばチェルノの目の前にはビスケットシールダーが立っており、笑顔で無地の盾を構えていた。
「ですぅ~♪」
 そして、チェルノは盾から噴き出した甘い香りのする粉に包み込まれた。


「みんな、犯人をクッキーにしてやったですぅよ!」
「ほ、本当ですか?」
「良かったですぅ……。」
 仲間が次々と暗殺される事により恐慌状態に陥っていたビキニ姿のシールダーの率いる一団は下手人の無力化により収まった。
 はしゃぐシールダーが手に持つのはクッキーの盾に成り果てたチェルノだ。羞恥に染まった顔のチェルノはしゃがみ込んだ状態で股を大きく開いたまるで用を足そうとしている姿で盾の装飾と化している。
 そして、大きく晒された股間部からは黄色い蜜が滴り落ちていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

音月・燈夏
料理は得意な方ですけど、仮装……ですか。不本意な物ほど強くなれるようですが、肌を晒すようなものは遠慮したいですね。
このゴスロリと呼ばれていたものなら許容範囲ですかね。ロリ色が強いのでちょっと恥ずかしいですが、これくらいは我慢しましょう。

今回のオウガは近接型でしょうか。接近される前に極力数を減らしたいですね。
盾で防げるのは一面だけですから、狐火をあらゆる方向に放ってオウガを全周囲から攻撃するように操作します。

封印された猟兵を見かけたら助けに行きます。攻撃されにくいように宙を蹴りながら盾に近づき、封印の解除を試みましょう。UCの解除は困難ですが、味方が減ってしまえばじり貧ですからね。

アドリブ歓迎




「料理は得意な方ですけど、仮装……ですか。」
音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)が衣装が飛び出す森の入り口で考え込む。
 この国を支配するオウガを倒すには料理を作らなければならないという。燈夏は家事が得意な方なのでオウガの攻撃さえ凌げれば問題のない相手だ。
 燈夏にとって本当に問題があるのは戦う為に仮装をする必要がある取り巻きの方であった。
「肌を晒すようなものは遠慮したいですね。」
 森を飛び交う衣装は着る物が不本意に思う程齎す力が増すという。燈夏にとって最も不本意と言える衣装は肌を晒す衣装であった。
 今となっては神に仕える巫女としての厳しい修行の反動で見ず知らずの男性をからかい遊ぶ様になった燈夏だが、今でも修業時代の教えはその身に沁み込んでいる。そんな、彼女の中に残る教えの最たるものとして『神に仕える巫女としてみだりに肌を晒す事は恥ずべき行為』というものがあった。

「慎重に選びたいけれど、細かい判別は無理そうね。」
 燈夏は困り顔で頭上を飛び交う衣装を見上げる。衣装はその殆どが綺麗に畳まれた状態となって飛び出している。
 飛び出す速度はかなりのものだが水着等は明らかに小さい為であれば容易く見分ける事が出来る。しかし、そうでない服を見分けるのは燈夏では困難であった。
「こうなったら出たとこ勝負です!」
 これ以上悩んでもどうにもならない事を悟った燈夏は意を決して大き目な衣装を手に取った。すると次の瞬間には燈夏は手に取った衣装を身に着けていた。
「これは……ゴスロリですか?」
 燈夏が身に着けた衣装、それはゴシック・ロリィタと称される衣装であった。黒を基調に大量の白のフリルで装飾したドレスに白の手袋とハイソックスで構成されたその衣装は燈夏の懸念していた肌の露出は最低限である。
「ちょっと恥ずかしいですが、このくらいは我慢しましょう。」
 過剰な程のフリルで飾り付けられ膝より少し上までしか隠せていない少女趣味なデザインのドレスに燈夏は顔を赤らめるが水着よりはマシであると我慢する事にした。

「それでは、いきましょう。」
 ゴスロリを纏った燈夏は森の中へと突入した。


「既に戦闘が本格化してきているみたいですね。」
 燈夏は耳を澄まし周囲の気配を探りながら森の木々を飛び移る。
 森の至る所で戦闘音が響き渡り、時折ビスケットシールダーの悲鳴が聞こえてくる。シールダー達の悲鳴と同じくらいの頻度で不本意な衣装を引き当てた猟兵達の嘆きも聞こえてくるが燈夏が向かった所で助けられるとは思えないので無視する事にした。
「今回は接近される前に倒したい所ですね。」
 この手の敵とはそれなりに戦っている燈夏は相手の手口と対策は凡そ把握している。今回の相手はその中でも対処が楽な部類であった為、そろそろ敵にやられる事無く事を済ませたいと思っていた。
「今回は狐火で焼く事にしましょう。暖もとれて一石二鳥です。」
 燈夏はその手から無数の狐火を展開すると自身の周囲に漂わせる。狐火の熱は衣装が変わった事により少しだけ寒さに晒されやすくなった体を暖めてゆく。
 だが、狐火の発する光は薄暗い森の中ではこれ以上ない程に目立つ照明にもなる。森の中に現れた照明に惹かれてシールダー達が近寄って来るのは当然の帰結であった。
「どうやら察知されたようですね。それでは、焼くとしましょう。」
 自身に近づいてくるビスケットシールダーの一団を察知した燈夏は周囲に漂わせていた狐火の一部を差し向ける。狐火は森の木々を器用に避けるとシールダーの一団に襲い掛かった。


「火の玉が飛んできたですよ!」
「まだハロウィン本番には早いですよ!?」
 わざわざ居場所を知らせてくれた獲物をクッキーにしようと接近をしていたシールダー達は突如として飛来してきた狐火に慌てふためく。その隙を燈夏が逃すわけがなく、手近なシールダーに狐火を纏わりつかせ焼いてゆく。
 そして、狐火に敵が混乱している間に燈夏はシールダー達を見渡しやすい位置にはえた木の上に飛び乗った。
「落ち着いて盾で防ぐですよ! 熱っ!?」
「盾で防げるのは一面だけ。全方位からの攻撃は防ぎきれないでしょう?」
 燈夏はシールダー達に見つからない様に気を付けながら盾で狐火を防ごうとするシールダーを複数の狐火を嗾けて焼いてゆく。複数人で協力して防ごうとすれば囮役の狐火で盾を釘付けにしている隙に別方向から飛来した狐火がシールダーを容赦なく焼いた。
 暫くしてビスケットシールダー達は燈夏の操る狐火に焼き尽くされ、アリスの成れの果てであるクッキーの盾だけが遺された。


「あら? この盾の装飾、どこかで見たような……。」
 ビスケットシールダーの一団の殲滅した燈夏は次の一団の殲滅する為に移動を開始しようとする。しかし、ふと目に入ったクッキーの盾に浮かび上がる装飾に既視感を感じた為に先へ進む前にそれを調べる事にした。
「あっ……この人以前に依頼で一緒になった事がある人ですね。」
 狐火によって焼き焦げた盾にはハイレグを着た女性が屈辱的なポーズで装飾にされている。問題は羞恥に塗れた表情でクッキーに成り果てた女性が過去に同じ依頼に赴いた事のある猟兵である事だ。

「予想はしていましたが、クッキーの盾にされた人がかなりいるようですね……。」
 燈夏は改めて周囲を見回してクッキーの盾にされた猟兵が思ったよりも多い事に苦笑する。
 森の至る所で聞こえてくる音を聞く限り猟兵達がビスケットシールダー達に敗北する事はないだろう。しかし、ビスケットシールダーはあくまでも前座であり後にはこの国を支配するオウガの親玉との戦いが控えている。
 親玉を倒すうえで美味しい料理を作る必要がある。しかし、料理を作ろうとすればオウガが妨害にやってくるのは確実でありオウガに狙われれば料理を作る所ではなくなるだろう。
 それを防ぐ為にもオウガの攻撃を耐え忍び料理担当を守る者達が必要であった。

「味方は少しでも多い方が良さそうですね。」
 燈夏は行動方針をオウガの殲滅からクッキーの盾にされた猟兵達の救助に変更した。幸い、燈夏は治療用のユーベルコードを使う事が出来るのでビスケットの盾にされた猟兵達を復帰させる事が可能であった。
「それでは、治療を始めます。」
 燈夏はクッキーの盾にされた猟兵を一か所に集めると神気を篭めた神楽鈴を鳴らし治療を開始した。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリス・ブランネージュ
【アドリブ・絡み歓迎・NG無し】
酷い…可愛らしい見た目ですけど注意が必要ですね
本当にビスケットに装飾されて…
なんとか助けてあげないと!

偶然目の前に飛び込んだ衣装に着替えましたけど…
な、なんですかこれは!?
身に纏った衣装は『牛柄ビキニチア』
際どい三角ビキニに股下数cmのミニスカートにニーハイと恥ずかしすぎる衣装

恥ずかしすぎます…でも迎撃を!
命中重視で攻撃をって動くと水着が!
ひゃ、食い込んで…ん♥
変な声出て…え、甘い匂い…
――っ、しまっ!
一度離脱を…きゃぁ!?
やめ、ずらさないで…
く、身体動かない…そん、な…
いや…いやぁ…
こんな恥ずかしい恰好でビスケットに、なんか…なりたく、な…ぁ…




「オウガと戦うには仮装する必要があると聞きましたが、迷いますね。」
 衣装の飛び交う森の中、セリス・ブランネージュ(暖かな癒し手・f29379)は頬に手を当て頭上を飛び交う衣装を眺めている。
 セリスはオウガと戦う上で仮装が必要な事は理解していたものの、木々の間を飛び交う衣装があまりにも多種多様であった為にどれを着れば良いか迷っていた。
 そして、迷った末にセリスは偶々目の前に飛び込んできた衣装を着る事にした。後にセリスはその決断を深く悔いる事になる。

「な、なんですかこれは!?」
 セリスが引き当てた衣装に名前を付けるとしたら牛柄ビキニチア辺りが最適だろう。
 際どい牛柄の三角ビキニに股下数センチのミニスカート、足にはニーハイと露出が非常に激しい。更に三角水着はセリスの体格に対して明らかに小さく、セリスの身体に食い込んでいた。
「は、恥ずかしすぎます……!」
 セリスは余りにも破廉恥な衣装に思わずその場に蹲ってしまう。しかし、蹲った所で破廉恥な衣装がまともな衣装に変化するわけがない。
「恥ずかしいけれど……行かないと……。」
 暫くして羞恥から立ち直ったセリスは腕で上半身を隠しながら森の奥へと進み始めた。


「酷い……本当に盾の装飾にされています……。」
 木の影に隠れたビスケットシールダー達が持つ装飾に息を飲む。
 セリスは森に突入して間もない時に出会った猟兵から一部のシールダーが猟兵を封印した盾を使用している情報を得ていた。その情報に対しセリスはまさかと思っていながらも実際に遭遇したシールダー達の盾を見てみれば確かに依頼説明の時に見かけた猟兵達を装飾としたクッキーの盾が混ざっていた。
「なんとかして助けてあげないと!」
 猟兵ならばクッキーにされようと元に戻る事が出来る。だが、土台となっているクッキーの盾が砕けてしまった場合、万が一という事があるかもしれない。
 魔法使いにして聖職者でもあるセリスにそれを看過する事は出来なかった。セリスは羞恥心を強引に抑え込むとビスケットシールダー達の前に躍り出た。

「皆を返してもらいます!」
「返り討ちにしてあなたも盾の装飾にしてあげますぅ!」
 セリスは極力盾を傷つける事無くシールター達を殲滅する為にシールダー達に指先を向けるとジャッジメント・クルセイドを発動させる。天から降り注ぐ光はセリスの目論み通りにクッキーの盾に致命的な傷をつける事無くもふもふな衣装を着たシールダー達を焼いてゆく。
「その程度の攻撃でわたしを倒せると思わないで欲しいですぅ!」
 だが、猟兵の盾を持つ水着姿のシールダー達が盾を傘代わりにする事によって耐えていた。体を僅かに焼かれながらも天からの光の範囲外に逃れたシールダー達はそのまま散開すると様々な方向からセリスに向けて突撃を開始した。

「今度はこちらの番ですぅ!」
「ここは一旦退いて……はぅっ!?」
 様々な方向から突撃してくるシールダー達の猛攻を凌ぐ為にセリスはシールダーのいない方角に向けて駆けだした。しかし、駆けだしてから少ししてセリスは突如として体に迸った快感に甘い声をあげてしまう。
「み、水着が……食い込んで……んぅっ♥」
 激しく動き始めたせいなのか、元よりきつかった水着がセリスの敏感な所に食い込んでしまっていた。お陰で体を動かす度に水着が股間部や胸の先に擦り付けられてセリスの身体に快感を齎す為に思う様に動く事が出来ない。
 そんな状態でシールダー達の追跡から逃れられるわけがなく、セリスはシールダー達に包囲されてしまった。
「変な声出て……え、甘い匂い……。」
「追い詰めたですぅよ!魔法の粉を喰らうですぅよ!」
「し、しまっ!」
 シールダー達に包囲されたセリスは成す術もなく甘い香りのする粉を浴びせられた。


「これでもう逃げられないですぅ!」
「く、身体動かない……そん、な……。」
 魔法の粉の効力により動けなくなったセリスの周囲をシールダー達が小躍りする。シールダー達は隙だらけだが、身体を動かせない今のセリスではそれをただ見る事しか出来ない。
「さて、この子はどんなポーズにするですぅか?」
「むむっ? 股間部の水着が湿っているですぅ。」
 小躍りを終えてセリスをどんな装飾に変えるか相談を始めたシールダーがセリスの水着の異常に気が付いた。水着が食い込む事による快感によってセリスの股間部は蜜を滴らせてしまっていたのだ。
「まさか、逃げながら水着を喰い込ませて感じていたですぅか?」
「仲間を助けるといいながら、自身を慰めていたなんて変態さんですぅ!」
「私は……私は変態じゃ……あぁん♥」
「ちょっと弄っただけで喘いでいたら説得力皆無ですぅ。」
 シールダー達は罵りの言葉を否定しようとするセリスの胸の先を遊ぶ。シールダー達は否定の言葉を中断し代わりに喘ぎ声をあげるセリスの反応を楽しんでゆく。
「仲間をダシに快感を貪る変態さんに相応しいポーズを思いついたですぅ!」
 シールダー達は弄ばれ過ぎて最早声を出す事も出来なくなったセリスの身体を動かしポーズをつけてゆく。
 両脚を掴むとV字を描く様な形となるまで持ち上げると両手で脚を握らせる事により固定する。続けて胴体を前傾気味に曲げる事により顔、胸、股間部が見えやすい様に整えた。
「厭らしい場所を見えやすくするですぅよ。」
「やめ、ずらさないで……。」
 続いてシールダー達はセリスが身に着けている水着に手をかけたかと思えばあろうことか水着をずらし始めた。当然、セリスは水着をずらさない様に懇願するが無視されてしまい快感に尖った胸の先と僅かに綻びて蜜に垂れ流す股間部が曝け出されてしまった。
「これでポーズは完成です!」
「後は盾を押し付ければ完成ですぅ!」
「いや……こんな恥ずかしい恰好……いやぁ……。」
 そして、恥ずかしい部分を余すことなく晒されてしまったセリスの背中に無地の盾が押し付けられた。セリスの身体は僅かにクッキーの盾に沈み込んだかと思えば直に盾と同色のクッキーへと変化を始める。
「クッキーに、なんか……なりたく、な……ぁ…………。」
 こうしてセリスは仲間を助けようと奮闘したものの、恥ずかしい部分を余すことなく曝け出すポーズでクッキーの盾の装飾に成り果てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

よ…よし!まずはコスプレ衣装…ですね…
何でも来いなのですよ!あ…できれば女物とかがいいなー…?

ともあれコスプレ衣装はバッチリ!今度はオウガ達を倒さなければですね!
【あま~いちょこれーとらびりんす】で閉じ込めてみんなチョコで固めてあげましょう♪
わたしも巻き込まれないように脱出して…ひゃわ!?なんだかチョコとは別の甘い匂いが?
あっ…しまっ…身体がクッキーの盾に!?
早く脱出しないと…で…出来ない…身体がクッキーに侵食されて…あっ…ぁっ…
(物悲し気な兎のレリーフを象ったクッキーの盾、その後にも彼女ごとチョコに巻き込まれてチョコ菓子のようになってしまう)




「雪が降る中でのハロウィンも中々ですね。」
 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)はオウガが潜むという森を目指しながらも雪が降り積もったハロウィンの街道を見回しながら進んでいた。可愛くもおどろおどろしい南瓜で飾られた街道に雪という要素が加わる事によって出来上がった光景はテフラにとって新鮮であった。
 しかし、この不思議の国でハロウィンパーティを行う為にはこの世界を支配するオウガ達を倒さなければならない。テフラはオウガ達が潜む森を目指し駆け出した。

「よ……よし!まずはコスプレ衣装……ですね……。」
 テフラは様々な衣装が飛び出す森の入口で一人気合を入れる。
オウガと戦うにはまずはこの森から飛び出す衣装で仮装をする必要がある。森から飛び出す衣装は多種多様であり、場合によっては不本意を通り越して悲惨な目に遭う恐れがある為に多少なりとも衣装を見極める必要があった。
 だが、テフラは衣装を見極めるつもりがさらさらなかった。何故ならテフラはその性癖故に生半可な寒さや羞恥で動じず逆に悦びを感じてしまうからだ。
「何でも来いなのですよ! あ……できれば女物とかがいいなー……?」
 そんなテフラが強いて不本意に感じる衣装とは男物の衣装である。尚、テフラは少女を思わせる可愛らしい見た目だが性別は男である。
 意を決したテフラが目についた衣装へと手を伸ばし捕まえる。するとテフラの衣装が手にした衣装へと変化した。
「これは……チャイナ服ですか?」
 テフラが引き当てた衣装、それは満州服あるいはチャイナ服と呼ばれる物であった。桃色を基調にしたワンピース状の衣装には花の刺繍が施されておりスリットからはテフラの褐色の太腿が伺える。
 男物か女物かの判別が今一つかないが色と刺繍が明らかに男性向けではない事から女物であると判断した。
「それじゃあ、いきます!」
 こうしてチャイナ服を身に纏ったテフラはオウガを倒す為に森の中へと突入した。


「妙に静かですね……。」
 テフラは長い兎の耳を盛んに動かしながらも首を傾げた。森の中が不自然なまでに静かなのだ。
 テフラは自身よりも先に森へ突入した猟兵の姿を見ている。普通に考えれば猟兵とオウガが戦う音が聞こえてもおかしくないのだ。
 しかし、いくら耳を澄ましてもそれらの音が聞こえてこない。その事実にテフラは困惑しながらも森の奥へと進んでゆく。
「配下のオウガ達はもう殲滅されたのでしょうか? ……んんっ?」
 先駆けて森に突入した猟兵によって配下のオウガは全滅したと考えたテフラは親玉が待ち受ける森の奥へと進む事に下。しかし、戦いの跡が残る広間を通り過ぎようとした直後、テフラのキマイラとしての第六感が警鐘を鳴らした。
「……何か見落としている気がします。」
 普段はまともに働かない第六感からの訴えにテフラは何か大きな見落としがあると考え、広間を調べてみる事にした。

「このクッキーの欠片って元はアリスだったんですよね……。」
 広間では一際激しく戦闘が行われていた様で至る所にクッキーの破片が散乱している。破片の中には人の体の一部を思わせる形状の物も混ざっており、これらの破片が過去にオウガの餌食となったアリスの成れの果てであったという事実をテフラにつきつけてゆく。
 広場に散らばるクッキーの欠片を見ていられなくなったテフラが視線を逸らした先には墓標の如くクッキーの盾が立ち並んでいた。ここでテフラはそれら盾が明らかにおかしい事に気が付く。
「この盾、なんで無傷なんですか?」
 テフラが見つけたクッキーの盾は無傷だったのだ。クッキーにされたアリスが砕けるのを嫌った猟兵が守った可能性はあるものの、それでも罅一つ入っていないのはおかしいとテフラは考えた。
 そして、テフラが立ち並ぶクッキーの盾を調べようと近づいた瞬間、盾の後ろから人が現れたのだ。それはテフラが全滅したと思っていたオウガ、ビスケットシールダーであった。


「見つかってしまったですぅ!?」
「そんな……さっきまで全く気配がなかったのに……って、よく見るとその盾の装飾猟兵じゃないですか!」
「わたしが足止めをするから皆は早く逃げるですぅ!」
 ビスケットシールダー達はテフラに見つかった事に驚愕しテフラもシールダー達が持つ盾の装飾が依頼説明の時に見かけた猟兵である事に気が付き驚愕する。
 そんな中でビキニ姿のシールダーだけが冷静に他のシールダーへと声をかけてゆく。そして、ビキニ姿のシールダーの声に平静を取り戻した他のシールダー達は四方へと散っていった。
「戦意はないようですが、逃がすわけにもいかないですよ。」
「それはわたしを倒してから言うですぅ!」
 シールダー達の目的が森から抜け出し何処かへ潜伏する事である事を悟ったテフラは仲間を救い、後の禍根を絶つ為に追おうとする。だが、ビキニ姿のシールダーが見た目からは想像できない身のこなしでそれを妨害する。
「あなたと戦っていたら逃がしてしまいそうですね。ならば逃げられない場所に閉じ込めてチョコで固めてあげましょう♪」
 このままではシールダー達に逃げられてしまうと考えたテフラは手遅れになる前にユーベルコードを発動させる。するとテフラを中心に地面が巨大な板チョコに変化してゆきあっという間に衣装の飛び交う森がチョコレートで出来た迷路に変貌した。

「なんですかこれは!」
「あま~いちょこれーとらびりんすです! そんなことよりも後ろに注意した方が良いですよ?」
「後ろ……? きゃぁ! なんですかこれは!?」
 テフラが発動させた『あま~いちょこれーとらびりんす』は内部に存在するチョコ以外の物をチョコレートに変えようとする恐るべき迷路だ。今もビキニ姿のシールダーが偶然から湧き出したチョコスライムに襲われその身を包まれようとしている。
 テフラは現在進行形でシールダーに襲い掛かっているチョコスライムから距離を取りながら耳を澄ませる。するとテフラの耳にシールダー達の戸惑う声や悲鳴が聞こえてくる。
「どうやら全員迷宮に招く事が出来たようですね。」
 シールダー達の逃亡阻止が成功した事を悟ったテフラは安堵する。
 この迷路に迷い込んだ者が無事に出るには迷宮を破壊するか迷宮の何処かに存在する出口を見つけ出すしかない。前者の方法を実行するには猟兵やオブリビオンであっても困難なので必然的に後者を選ぶしかない。
「それでは、わたしも巻き込まれないように脱出して……ひゃわ!?」
 自らが生み出した迷路の危険性を良く知るテフラは巻き込前れない内に脱出すべく移動を開始しようとする。だが、移動を開始した直後に背後から飛来した甘い香りのする粉をばらまくクッキーの盾に押しつぶされた。


「しまっ……身体がクッキーの盾に!? 早く脱出しないと……か…身体が動かない……。」
「……よし……命中ですぅ……。」
 ビキニ姿のシールダーはその身をチョコスライムに呑み込まれながらも諦めてはいなかった。過去に自身が餌食にしたアリスが似たようなユーベルコードを使ってきた事を覚えていたのだ。
 その時はアリスをクッキーの盾に変える事によってユーベルコードを解除する事が出来た。故にテフラをクッキーの盾に変えることさえできればチョコの迷路が消えると考え、最後の力を振り絞って魔法の粉を湛えた無地の盾をテフラに向けて投げつけたのだ。
 そして、投げつけられた盾は見事テフラに命中し、テフラはクッキーの盾にその身を呑みこまれようとしている。
「身体がクッキーに侵食されて……あっ……ぁっ…………。」
「これで……迷路が消える……筈ですぅ……。」
 テフラがクッキーの盾の装飾に成り果てるのを見届けたビキニ姿のシールダーはこれで助かると安堵する。だが、テフラがクッキーの盾に貼り果ててもチョコの迷路は消えず、シールダーを呑みこもうとするチョコスライムの動きも止まらなかった。
「そんな……なんで!?」
 ビキニ姿のシールダーは一つ大きな読み間違えをしていた。確かにこの手のユーベルコードは使用者が一方的に有利となる場を作る代わりに使用者の戦闘不能に陥ると解除される事が殆どだ。
 だが、テフラが作り上げた『あま~いちょこれーとらびりんす』は味方は愚か、テフラ自身にも牙をむく味方殺しの技だったのだ。味方殺しと言う大きなデメリットは迷路にテフラが戦闘不能に陥ろうと内部にチョコ以外の物が存在する限り決して消えないというメリットを得ていた。

「いや……チョコになんて……なりたく……。」
 目論見が外れ迷路を消す事が叶わなかったビキニ姿のシールダーは成す術もなくチョコスライムに全身を呑みこまれチョコ像に成り果てた。更に迷路を彷徨っていたシールダー達もある者はチョコ沼に足を踏み入れ、またある者は溶けたチョコの壁に押しつぶされる等して次々とチョコ像にされてゆく。
 そして、物悲し気な表情でクッキーの盾の装飾にされたテフラもチョコスライムに呑み込まれていった。

 暫くしてチョコ以外の存在がいなくなった為にチョコの迷路が消えれば後にはビスケットシールダーであったチョコ像とチョコがけクッキーの盾に成り果てたテフラを筆頭とする猟兵だけがのこるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『アイスメーカー『クリーメル』』

POW   :    『アイスゴーレム』よ、私にアイスを持ってきて
自身の身長の2倍の【地形や対象を氷菓に加工するアイスゴーレム】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    『極上アイス』のお味はいかが
【(作者以外が食べるとアイス化する)アイス】を給仕している間、戦場にいる(作者以外が食べるとアイス化する)アイスを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    『レッツ・アイスメイキング』♪
【アイス作りの歌とダンスを披露すると】【戦場と対象に歌詞通りの事が起こり】【アイスに作り変えられていく魔法】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ビスケットシールダー達の退治を終えた猟兵達はクッキーの盾の装飾にされた仲間達を救助しながらも森の最奥に到達した。
 森の最奥に辿り着いた猟兵達を出迎えたのは雪が激しく降り注ぐ雪原だ。
 しかし、猟兵達は雪原に立ち並ぶものを見て顔をしかめる。雪原には沢山のキッチンに混ざって大きな氷菓が飾られていた。
 これらの氷菓には例外なく人型アイスが添えられており、人型アイスの表情は一様に恐怖や絶望に染まっていた。
 先程の森での戦いから猟兵達はこれらのアイスがオウガの餌食となったアリスの成れの果てである事は明白であった。
 そして、雪原に少女の喜びの声が響き渡る。

「こんなに沢山の人が森を抜けて来たのは初めてだわ!」
 猟兵達が声の聞こえた方向を見るとそこには一人の少女が立っていた。エプロンドレスに2段重ねのアイスクリームを模した帽子を被ったその少女の手にはアイスクリームディッシャーが握られている。
 どうやら、あの少女がこの不思議の国を支配するオウガらしい。

「ここまで来たご褒美にあなた達を素敵な氷菓にしてあげる。」
 多種多様なコスプレ衣装を身に纏った猟兵達を見渡した少女は笑みを浮かべ舌なめずりをする。少女の顔には極上の獲物を見つけた喜びに満ちている。
 少女が指を打ち鳴らすと傍らにアイスで出来たゴーレムが現れ、雪原の至る所にアイスクリームを使ったお菓子の置かれたテーブルが飛び出してゆく。
 テーブルに置かれたお菓子はとても美味しそうだがそれ以上に危険な気配がある事を猟兵としての第六感が訴えていた。
「さぁ、あなた達はどんなアイスになるのかしら?」
 少女が猟兵達に歩み寄るのに合わせゴーレムが行進を開始した。

●補足事項
 オウガはキッチンに置かれた食材で作られた美味しい料理であれば基本的に抗えません。
 降り注ぐ雪と寒さにより完成した料理は急速に冷めてゆき、場合によっては凍り付く恐れがあります。
 料理をする際に自身やオウガのユーベルコードを利用しても構いません。
 成功判定以上の条件は『オウガの攻撃に対する対抗を試みる』と『雪と寒さの対策を施した料理か気持ちの篭った料理を作る』の何れかを行っている事です。
 どちらの行動も行う事無く敵にやられる行動をとった場合、苦戦や失敗の判定となる恐れがありますのでご注意願います。
音月・燈夏
さてさて本番ですね。さっさと料理を食べて貰って寝ていただきましょう。
オウガの事は基本的に他の方に任せつつ、更に神気で攻撃を軽減している間に作ってしまいます。ハロウィンですし、パンプキンスープにしましょうか。

早さ重視で作ります。南瓜を切ってレンジで温めてから、潰したものを煮込みつつ味付けします。
後はゆっくり煮込むだけ……なのですが、体が冷えてきましたね。手が白くなって来てますし、衣装もチョコのように固くなってきてます。そろそろ時間切れですね。
スープは冷えてしまわないように弱火のまま点けておき、スプーンと器の用意をします。

私はここで一回休みですね。残った人がオウガに止めを刺してくれるでしょう。




「行きなさい。アイスゴーレム! あの人達をアイスに変えるのよ!」
 クリーメルの号令にアイスゴーレムが猟兵達をアイスに変えようと迫る。対する猟兵達もアイスにされまいとユーベルコードを行使し対抗する。
 そんなゴーレムと猟兵達が戦う最中を燈夏はキッチンを目指し駆けていく。ゴスロリ衣装のお陰か身のこなしが軽くなった燈夏は掴みかかるゴーレムの腕を搔い潜り、猟兵の放った攻撃に巻き込まれない様に躱しながらキッチンへと辿り着いた。

「さてさて本番ですね。さっさと料理を食べて貰って寝て頂きましょう。」
 燈夏はキッチンの一角に準備された食材置き場から目的の食材を探し始める。食材置き場には野菜に始まり果物や肉類、更には各種調味料に加工食品と事前情報通りにあらゆる食材が揃う中、燈夏が手に取ったのは南瓜だ。
「ハロウィンですし、南瓜を使った暖かい料理を作りましょうか。」
 燈夏はハロウィンといえば南瓜だし、常に雪が降り注ぐ中でアイスを食べるよりは健康的だろうと考え暖かい料理を作る事にした。
「攻撃された場合に備えて神気を纏って……それでは料理を始めましょう。」
 燈夏は神気を纏い毛色を純白に染めると料理に取り掛かるのであった。


「これは凝った料理を作るのは無理そうですね……。」
 煮込みやすくする為に包丁で切った南瓜が凍り始めているのを見た燈夏は顔を顰める。この雪原に来てから雪の勢いが増した事は察していたが寒さが予想以上に強くなっていたのだ。
「ここは早さ重視でパンプキンスープにしましょう。」
 悠長に料理を作る暇はないと考えた燈夏は当初予定していた凝った料理を諦めてシンプルなパンプキンスープを作り始めた。

「まずは刻んだ南瓜を電子レンジに入れて……これで確実に時間短縮です。」
 燈夏は包丁で刻んだ南瓜を耐熱ボウルに詰め込むと電子レンジで温め始めた。電子レンジで温める事によって雪の寒さの影響を受ける事無く南瓜を潰しやすい柔らかさにしようとしているのだ。
「いい感じですね、後は凍る前に急いで潰しましょう。」
 燈夏は温めが終わった電子レンジから手早く耐熱ボウルを取り出し、フォークを使い潰してゆく。そして、十分に潰れた南瓜を鍋の中に入れると牛乳を注ぎ込みコンロに火をつけた。
「後は煮込みながら味付けをすれば完成です。」
 燈夏は一安心と言わんばかりに鼻歌交じりに木べらで南瓜を煮込み始めた。


「ほらほら、逃げてばかりいないで私に攻撃してみたらどうかしら?」
 燈夏がパンプキンスープを煮込み始めた頃、クリーメルはアイスゴーレムが猟兵達を追いかけ回す光景を楽しんでいた。
 ただでさえその身に宿す能力から接近戦には滅法強かったアイスゴーレムが本体と言う名の不安要素から解放されているのだ。結果としてアイスゴーレムを止める事が困難となり猟兵達も逃げ回りながら時折攻撃して足を止める程度の動きしか出来ずにいた。
 生前では考えられなかった光景に高笑いをするクリーメルであったが、ふと嗅ぎなれない匂いが雪原に漂っている事に気が付いた。
「何だか良い香りがするわね……料理をしている子がいるわ!?」
 クリーメルは雪原の片隅に設置されたキッチンで料理をしている燈夏に気が付いた。料理が致命的な弱点である事を把握しているクリーメルが慌てて燈夏の元へ向かおうとすれば猟兵達がクリーメルに向けて攻撃を始める。
 猟兵の攻撃を受けたクリーメルは当然ダメージは受けないものの、攻撃に伴う衝撃や地形の変動によって燈夏の元に向かう事が出来ない。ここにきて猟兵達も自身の弱点を把握している事にクリーメルは気が付いた。
「なんであなた達が私の弱点を知っているのよ? 近づけないなら……レッツ・アイスメイキング♪」
 自身の弱点が把握されている事に焦りを隠せずにいるクリーメルが指を鳴らすと何処からともなくどこかで聞いたような軽快な音楽が流れ始めた。そして、音楽に合わせクリーメルが踊りながら歌い始めた。

「魔法の粉糖をまぶしましょ~♪」
「これは! ……どうやら気づかれたようですね。」
 燈夏は突如として神気の減りが早まった事に驚く。同時に手が白く染まり始めている事からクリーメルから攻撃を受けている事に気が付いた。
 だが、既に料理は煮込む工程だけである事からそのまま調理を続行する事を選んだ。
「まぶし終えたら冷やして固めましょう♪」
「身体が冷えて……服も固くなってきました……。」
 四肢が真っ白に染まると共に急激に身体が冷えてゆき、同時に衣類がチョコレートの如く硬くなってゆく。それでも燈夏は軋む身体を強引に動かし衣類が砕ける事も気にせずに作業を続けていく。
「冷え切ったら出来上がり♪」
「そろそろ……時間切れ……ですね。」
 更に冷え込む身体に意識も朦朧としてくる中、燈夏は最後の力を振り絞りコンロの火を弱火に切り替えると食器の準備しようとする。だが、器とスプーンを手にした時点で神気が尽き、燈夏の思考は凍り付いた。


「可愛いくて少しエッチなアイスになりましたね♪」
 暫くして猟兵達の妨害を突破したクリーメルは燈夏の姿に笑みを浮かべる。燈夏は両手に皿とスプーンを持ち、その身を黒いチョコで飾り付けたバニラアイスに成り果てていた。
 完全にアイスにされるまで抵抗した為かゴスロリ衣装を模したチョコは所々が砕けてその下に隠されたバニラアイスの肌や同じくチョコで出来ていて所々が砕けた下着を晒してしまっている。
 そして、アイスとなった燈夏を味見すべく近づこうとした所でクリーメルは顔を引き攣らせる。冷めない様に弱火の火で温められたパンプキンスープの入った鍋に気づいてしまったのだ。
「こ、これは……完成している……!」
 完成したパンプキンスープを認識してしまったクリーメルは燈夏の手から器とスプーンを奪い取ると鍋の中身を器に注いでゆく。そして、パンプキンスープを飲み始める。
 その顔は悲痛なものであり、スープを飲む事が不本意である事がこれ以上ない程に分かった。
「南瓜がしっかりと溶けていて口当たりが良い素朴な甘さだわ……!」
 器に注いだスープを飲みほしたクリーメルはそそくさとその場から退散した。後に残されたあられもない恰好のアイスとなった燈夏の顔はやりとげた表情をしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

人の形をしたアイス…もうこれそういうものじゃないですか…!?
これ…元に戻せるのでしょうか?

ともあれ調理組の皆さんが頑張って作っている間に、わたしは冷気が調理組に巻き込まれないように立ち回りましょうか!
前回に続いて【あま~いちょこれーとらびりんす】で調理組と耐久組とクリーメルと分断させましょう!
これで何とか時間稼ぎできれば…!
(アイス化希望・チョコチップチョコアイス化)




「人の形をしたアイス……もうこれそういうものじゃないですか……!?」
 森の中ではチョココーティングなクッキーにされてしまったものの、無事に救助されたテフラは雪原に点在する氷菓に驚愕した。氷菓に添えられたアイスがどうみても人間である事からテフラはこれらアイスがこの国に迷い込んでしまったアリス達の成れの果てである事を悟った。
「これ……元に戻せるのでしょうか?」
 テフラはアイスにされた者達の状態を確認しながら呟く。
 単純に衣類諸ともアイスにされたものやパフェの果物を衣類代わりにされたアイスとなったものはマシな方だ。酷いものになると球形のアイスにされたものや一糸纏わぬ姿でメロンソーダの中に沈み、身体が少しずつ溶けているものすらある。
 アイスと化した身体の状態を抜きにしても猟兵ではない者達が長期間アイスにされて正気を保っていられるのかと言えば聊か怪しい。それでも少しでも可能性があるのならば助けなければならないとテフラは決意した。


「まずはオウガを倒さないといけないですね。」
 アイスにされた者達の状態を一通り確認したテフラは改めて戦場を見渡す。戦場では猟兵をアイスに変えようとアイスゴーレムが暴れまわり、クリーメルが歌って踊る事により猟兵達の料理を阻止しようとしている。
 猟兵達もある者はその身を囮にしてキッチンへと接近するアイスゴーレムに引きつけ、ある者はダメージが与えられないと分っていてもクリーメルを攻撃する事により歌と踊りを妨害する。そして、戦場の数か所に置かれたキッチンでは料理が得意な猟兵達がクリーメルを倒す為の料理を作っていた。
「ここは料理組の負担を減らす様に立ち回りましょうか!」
 多少は料理の心得のあるテフラであったが生憎と雪原に設置されたキッチンが全て使用中であった。故にテフラは料理組の負担を減らす為に行動を開始する。
 現時点でアイスゴーレムは抑える事が出来ているので狙うは歌と踊りで料理組を攻撃しているクリーメルだ。
「クリーメルから離れてください!」
 テフラはクリーメルに接近しながら既にクリーメルに対し接近戦を試みている猟兵達に離れる様に声を掛ける。そして、クリーメルの間近に接近したテフラの足元を中心にチョコレートの迷路が再び顕現した。

「この迷路はあなたの仕業かしら?」
「その通りです! ここから出るには出口を見つける以外に方法はないですよ。」
 チョコレートで出来た迷路のなか、クリーメルとテフラは対峙する。実の所、クリーメルを迷路の中に引きこめた時点でテフラの目的は半場達成されている。
 なんせこの迷路は仕掛けが敵味方関係なく襲い掛かる代わりテフラが戦闘不能に陥ろうと消える事はない。言い方を変えればテフラがクリーメルに敗れてアイスにされたとしてもチョコレートの迷路は消えないのでクリーメルが迷路から脱出するまでの時間を稼ぐ事が出来るのだ。
「本当か試してあげるわ。行きなさい、アイスゴーレム!」
「そんなの当たりませんよ……うわぁ!?」
 しかし、そんな事を知らないクリーメルがテフラの言う事を信じるわけがない。手っ取り早く迷路から脱出する為にアイスゴーレムを新たに呼び出すとテフラへと嗾ける。
 テフラは振り下ろされるアイスゴーレムの腕を寸での所で回避する。そして、テフラに回避された腕はチョコの床に叩きつけられた直後、アイスゴーレムを中心に周囲一帯の床が砕け散りチョコの沼が顔を出した。


「危なかったですぅ……。」
「まさか、敵だけでなく主も餌食にしようとする迷路を作るなんて……あなた正気?」
 クリーメルはチョコ沼へと沈んでゆくアイスゴーレムを足場代わりする事より無事に安全な足場へと逃れていた。そして、チョコ塗れになりながらもチョコ沼に沈む事は辛うじて回避したテフラを呆れ交じりに見下ろしている。
「しょ、正気です! そんな事よりも早く出口を探したらどうですか? もっとも、わたしは全力で邪魔させて貰いますが。」
「自滅しかけた癖に言うじゃない。それなら、あなたをアイスにしてから出口を探すまでよ……レッツ・アイスメイキング♪」
 自滅しかけた癖に余裕を崩さないテフラにクリーメルは内心で頭を抱えながらも指を打ち鳴らした。すると何処からともなく軽快な音楽が流れ始めた。

「たっぷりチョコで包みましょー♪」
「あわわ! チョコの津波ですぅ!?」
 クリーメルが水を掻き出す様に手を動かせば、チョコの沼から巨大な津波が現れた。チョコ津波はテフラに容赦なく襲いかかりチョコ沼の中へと押し流してゆく。
「チョコチップでデコレーション♪」
「あっぷ……な、なんとかして出ないと……ごぽっ!?」
 チョコ沼に落ちたテフラにチョコ津波が壁にぶつかった際に砕けたチョコ壁の破片が降り注ぎ、全身をチョコ沼の底へと沈めた。テフラが沈んだチョコ沼からは少しの間気泡が発生するがそれも直に止まった。
「冷えた棒で引き上げればぁ~出来上がり♪」
「…………。」
 クリーメルが何時の間にか手にしていた冷気の漂う棒をチョコ沼に突っ込み引き上げれば棒の先にはチョコチップの散りばめられたチョコアイスと化したテフラが突き刺さっていた。


「さてさて、出来はどんな感じかしら?」
 クリーメルは棒付きアイスとなったテフラを見分する。
必死に沼から脱出しようしたのか四肢は藻掻くような形で固まりチャイナドレスは豪快にめくれて衣類として役目を放棄している。更にチャイナドレスが捲れた事により露わになった股間部では下着をかき分けて棒が穴に突き刺さっている様子が伺える。
 その姿はクリーメルを迷路に閉じ込めた不躾者の末路に相応しい無様な姿だ。だが、テフラの表情を見たクリーメルは首を傾げる。
「なんで悦びに満ちているのよ?」
 クリーメルの想定ではアイスに成り果てたテフラの表情は絶望に満ちたものであった。しかし、実際に引き上げられたテフラの表情は蕩けた悦びに満ちた表情をしていた。
 これはテフラの重度の被虐嗜好が原因なのだが迷路の性質と同様にクリーメルがそんな事を知るわけがなく、只々困惑するばかりであり。
「……無力化には成功したのだから、少しでも早くこの迷路から脱出した方が良いわよね。」
 テフラが悦びに満ちた表情に釈然としなが、それ以上に迷路から脱出する方が大事である事を思い出したクリーメルは棒付きアイスを担ぐと出口を求め迷路を彷徨い始めた。
 そして、無事に迷路を脱出したクリーメルを待ち受けていたのは完成した料理を手にした猟兵達であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリス・ブランネージュ
【アドリブ・絡み歓迎・NG無し】
一品目はピリ辛のホット海鮮リゾットです!
寒い時には暖かくて少し辛い物がいいですよ?

魔力の盾でアイスゴーレムの攻撃をなんとか防いでいますが…
うぅ、ゴーレム関係なく寒いです…でも、負けません!
あの恥ずかしい状態から助けて貰えたのですから…それに、料理は大好きですからね♪
次は…孤児院の子供たちも大好きなあれにしましょう
ミルクシチューです!

そ、んな…ミルクが凍ってるなんて…
い、いや…冷たい…ゴーレムの手が、あ、ああ…
いや、そんな…私の身体、かわって…だめ、こおる…
つめたく、て…こねられ、まぜられ…あ、あぁ…




「うぅ、色んな人に見られてしまいました……。」
 ビスケットシールダー達との戦いにおいてクッキーの盾に封印されてしまったセリスは後から駆けつけて猟兵達に救助され事なきを得ていた。しかし、誰かに救助されるという事は盾の装飾となった自身の姿を見られる事を意味している。
 助けられる代償として恥ずかしい部分を余すことなく見られてしまったセリスは顔を真っ赤に染めながらも雪原へと辿り着いた。

「戦況はこちらがやや有利といったところでしょうか?」
 暴れまわるアイスゴーレムを猟兵達が必死に抑える中、戦場の至る所に置かれたキッチンからは調理の音が聞こえてくる。そして、この国を支配するクリーメルは涙目で料理を食べていた。
「抑え役は余裕があるようですし私は料理を作りましょう。」
 状況を把握したセリスはクリーメルを眠らせる為の料理を作るべく誰も使用していないキッチンを目指す。セリスが料理担当に回る事にしたのは料理が得意だからであって、決して牛柄ビキニチアのまま戦って再び喘いでしまう事を恐れているわけではない。
「それでは料理を始めましょう。」
 セリスはキッチンの食材置き場に置かれた食材を手に取った。


「一品目、完成です!」
 調理を始めてから少しして、セリスは一品目の料理を完成させた。出来上がった料理は米料理、海老やイカ等の海鮮が赤く染まったお米の海を泳いでいる。
 それはセリスが厳しい冬の寒さを乗り切る為に作る料理の一つ、隠し味として加えられた香辛料が美味しさの秘密だ。
「ピリ辛のホット海鮮リゾット、寒い時には暖かくて少し辛い物がいいですよ?」
 リゾットを皿に盛りつけたセリスは続けて2品目の料理を作ろうとする。しかし、ここにきて雪原に降り注ぐ雪がその激しさを増した。
 セリスは咄嗟に降り注ぐ雪がリゾットに掛からない様に蓋をかぶせる雪の勢いと共に更に冷たさを増した風がセリスとリゾットに容赦なく襲い掛かる。

「うぅ、凄く寒いです……でも、負けません!」
 衣装のせいで無駄に露出の高い身体を蝕む寒さにセリスはその身を震わせるがそれでもくじける事はない。何故なら恥ずかしい姿でクッキーにされてしまった自身を助けて貰った恩を今もクリーメルを抑え共に料理作る仲間達に返せていないのだ。
「……それに、料理は大好きですからね♪」
 そして、何よりも日頃から孤児院の子供達の為に振るってきた料理の腕を不思議の国を救う為に使える機会をセリスは見逃すつもりはなかった。セリスは雪原の寒さで少しだけ冷めたリゾットの温め直しも兼ねて電子レンジへ避難させると次の料理に取り掛かる。
「次の料理は……孤児院の子供たちも大好きなクリームシチューにしましょう!」
 セリスが次に作る料理はクリームシチュー、寒い冬に食べる暖かい料理の定番だ。
 そして、手早くクリームシチューの材料を食材置き場から移動させたセリスが食材を斬ろうとした直後、セリスの間近で轟音が響き渡った。


「そんな! アイスゴーレムがなんでここに!?」
 轟音の正体はアイスゴーレムが保険として展開させていた守護者の盾に拳を叩きつけた音であった。セリスは間近にまでアイスゴーレムが接近したという事実に驚愕する。
 アイスゴーレムは猟兵達に足止めされてセリスが使用するキッチンよりも遥か遠くにいた筈なのだ。慌ててセリスが雪原を見回してみれば件のアイスゴーレムとは別に新たに数体のアイスゴーレムがキッチンに襲撃をかけているではないか。
 そして、先程まで料理を食べていたクリーメルは欠伸と共に目を擦りながら新たなアイスゴーレムを召喚している。そう、クリーメルはアイスゴーレムを複数体召喚可能だったのだ。
「わたしに多重召喚させた事を後悔しなさい!」
 アイスゴーレムは単体の時と比べて明らかに動きが悪い。しかし、それ以上に数が多く、足止めをする猟兵の数が足りず、キッチンに到達する個体が現れていた。
 守護者の盾に現在進行形で拳を振り下ろし続けているアイスゴーレムもそんな個体の一体であった。

「あまり長くはもちそうにありませんね……急いでシチューを完成させないと!」
 ゴーレムの攻撃によって守護者の盾が軋みをあげるなか、セリスは料理を再開する。幸か不幸か現在セリスが作ろうとしているクリームシチューは難易度の低い部類であり、孤児院の子供達の為に幾度となく作ってきた経験が調理の細かい要素を感覚で補う事に一役買っていた。
 セリスは手早く残りの材料を切り刻むと鍋に入れて炒めてゆく。そして、材料を炒め終えれば次は鍋に水を注ぎ煮込み始めた。
「アクはしっかりと取り除いて……後はミルクを加えれば……っ!?」
 守護者の盾に罅が入り始めている事に焦りを感じながセリスは料理を作る上で必ず必要なアク取り作業完遂する。そして、仕上げとして牛乳を注ごうとした所でセリスは硬直した。
「そ、んな……ミルクが凍ってるなんて……。」
 軽量カップに取り分けられておいた牛乳が雪原の寒さで凍り付いていたのだ。それは調理の際に必要な材料をすぐ使えるようにと材料置き場から運んでしまったが為に起きた悲劇であった。
 そして、クリームシチューを作る上で最も重要な物が使えないという事態にセリスが唖然とする中、守護者の盾が限界を迎えた。


「い、いや……冷たい……ゴーレムの手が、あ、ああ……。」
 守護者の盾を打ち砕いたアイスゴーレムの手は勢いそのままにセリスを掴むとキッチンから遠ざけてゆく。セリスも必死に逃れようとするが雪原に吹き荒れる風とは比べ物にならない程に冷たいゴーレムの手はそれを許さない。
「いや、そんな……私の身体、あいすに……かわって……。」
 ゴーレムから逃れようと動かしていた四肢が突如として動かなくなった事にセリスが疑問を抱き四肢を見てみれば四肢は白いアイスに変化していた。身体がアイスになり始めている事実にセリスが青褪める中、追い打ちをかける様にアイスゴーレムが新たな動きを見せる。
「つめたく、て……こねられ、まぜられ……あ、あぁ……。」
 アイスゴーレムは両手を使いセリスを捏ね始めたのだ。アイスに成り果てた四肢は関節を無視して捻じ曲がり、胴体部もアイスとなれば同様に歪んでゆく。
 セリスは苦痛とも快感とも違う不快感に苛まれながら自身の身体が捏ね繰り回され成形されてゆく事に絶望する。
 そして、頭が胴体部に押し付けられるのと同時にセリスの視界が純白に染まった。

「……今回は料理を食べずに済みそうね。」
 セリスがアイスゴーレムに捕まってから暫くして、クリーメルがキッチンに足を踏み入れる。クリーメルはキッチンの傍に佇むアイスゴーレムの元に向かう最中、キッチンの状態を確認して安堵する。
 鍋の傍らに凍り付いたミルクが置かれている事から鍋の中身が調理途中の未完成品である事は明らかだ。事実、鍋を見た直後は湧き上がっていた料理を食べたいという衝動も鳴りを潜めていた。
「さて、肝心のアイスは……やっぱりこうなっているわよね……。」
 アイスゴーレムの元へと辿り着いたクリーメルはアイスゴーレムの足元に置かれたセリスの成れの果てをみて見て顔を顰める。アイスに変貌する最中にアイスゴーレムに捏ね繰り回されていたセリスは歪な球形のアイスと化していた。
 四肢や胴体が関節を無視して複雑に絡み合ったそれはお世辞にも美しいとは言えない。更に捏ね繰り回される最中に衣装が脱げてしまったのか胸と股間部が再び曝け出され、セリカの顔を挟み込んでいる。
 唯一絶望に染まったセリカの顔だけはクリーメルの好みであった。

「これだから複数召喚するのは嫌なのよね。ここからは私自らアイスに変えていかないと……。」
 クリーメルは複数召喚に伴い自動操縦へ移行したアイスゴーレムに対する愚痴をこぼしながらその場を後にしようとする。だが、クリーメルがキッチンに背を向けた直後にキッチンに置かれた電子レンジから電子音が鳴り響き、クリーメルに再び衝動が沸き上がる。
 そして、衝動に駆られキッチンへ舞い戻ったクリーメルが恐る恐る電子レンジの扉を開けば中で温め直されたリゾットが湯気をあげていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

龍・雨豪
料理なんて作ったことないけど、食べさせないと倒せないって話だったわよね。私の場合は、願えば勘で作っても絶品料理が出来るのは間違いないし、作ってみようかしら。
作るならやっぱり肉料理よね!
私も食べたいからたくさん作りましょ。

下ごしらえも焼き加減もソースも全部直感でおいしそうと思った通りに作っていくわ。結果は決まっているのだから、それで問題ないのよ。

動作が遅くなったのは敵のUCかしら。でも、その分速く動けば……流石に元の速度には到底及ばないわね。
いや、あんたのアイスなんかいらないわよ。何で出来てるか分かったものじゃ――んぐっ。
う、うまく払い除けられないし。ちょっと、いらないってばー!

※アドリブ歓迎




「料理なんて作った事ないのよね……。」
 クリーメルを打ち倒す為に猟兵達が足止めや調理に奮闘する中、雨豪はキッチンの前でただ立ち尽くす。雨豪は生まれてこの方まともに料理を作った事がないのだ。
 龍であった頃はお腹が空けばそこらにいる獣を喰らえばそれで事足りた。人となり異世界に迷い込んでからは多種多様な美味しい料理で空腹を満たす事が出来るので自ら料理を作る必要がなかった。
「でも、食べさせないと倒せないって話だったわよね。」
 雨豪が視線を横に逸らせばこの不思議の国を支配するクリーメルにユーベルコードではなく出来立ての料理を振る舞う猟兵の姿が見える。端から見れば正気を疑う光景だが今回ばかりはこれが正しい光景であった。
「出来れば抑え側に回りたかったけれども、ちょっと相性が悪いのよね。」
 実の所、雨豪は当初の予定では抑え役として動くつもりであった。しかし、蓋を開けてみれば相手は触れたものをアイスに変えるゴーレムを使役している上に戦いの舞台も雪が常に降り注ぐ極寒の国であった。
 得意の接近戦を挑めばアイスにされるのが目に見えており、水を使おうにもすぐに凍ってしまって使い物にならない。
 雨豪に残された選択は料理を作る事だけであった。

「今回は願いの力に頼るしかなさそうね……。」
 雨豪は願う事によってあらゆる行動を成功させるユーベルコードを使う事が出来る。しかし、願いを叶える代償が重すぎる為にここぞという時にしか使えない能力でもあった。
 しかし、料理の経験が全くない雨豪が美味しい料理を作らなければならないという現状は正にここぞという時だ。幸い、料理を作るだけならば代償も大した問題にはならない。
「願いの力を使う以上、絶品料理が出来るのは間違いなしよ。」
 雨豪は改めてキッチンへと向かい合った。


「作るならやっぱり肉料理よね!」
 願いの力を使うとはいえ初めての料理、折角ならばと雨豪は自分が好きな肉料理を作る事にした。自分が美味しいと思う料理なら相手もきっと美味しいと思う筈だし、戦いが終わった後には残った料理を食べられると考えての選択だ。
「肉以外の材料は……適当に選んでも問題ないわよね?」
 雨豪は見るからに高級そうな牛肉を真っ先に確保すると後は目についた食材を適当に取ってゆく。
 食材選びは料理において極めて重要な工程だ。下手すると劇物が完成する切欠にもなりかねないその工程において雨豪の行動は余りにも危険と言える。
 しかし、今の雨豪は願いの力であらゆる行動が成功してしまう。現に雨豪が手に取った食材は偶然にも肉料理では求められるものが殆どであった。
 そして、食材選びは重要な工程だがあくまでも下準備にすぎない。雨豪の願いの力に頼った料理はここからが本番なのだ。

「確か肉を焼く前に下ごしらえをすると美味しくなるのよね?」
 雨豪は牛肉の塊を食べやすい大きさに切り分けるとすりこぎで叩いてゆく。その斬り方は勘に頼った適当極まりないものだが不思議な事に切り分けられた肉には筋に沿った切り目が入っていた。
「今回はスパイシーな味付けにしたいわね。」
 下ごしらえが終われば次は味付けだ。雨豪は牛肉にブラックペッパーを筆頭とする各種スパイスをすり込んでゆく。スパイスの量は勘に頼った目分量だが雨豪はこれで問題ないと信じて疑わない。
「折角だしソース作りにも挑戦してみるわ。」
 牛肉を焼き始めた雨豪はただ待つのも暇なので肉料理にかけるソースを作り始めた。最初に確保した肉以外の材料を適当に刻んだうえで纏めて煮込むという料理人が見れば全力で止めに行くであろう凶行だ。
「仕上げにフランベをすれば完成よ!」
 そして、雪原に天まで届かんばかりの火柱が上がった。


「ちょっと! あなた何を作っているのよ!?」
 突如として立ち上る火柱に雪原で戦っていた猟兵達が唖然とする中、真っ先に雨豪の元に駆け付けたのはクリーメルだ。この不思議の国で作られた料理を余程の理由がない限り食べなければならないクリーメルにとって危険物を作ろうとする者を止めるのは当然の事である。
「何って、肉料理よ。大丈夫、絶品の料理が出来る事は確定しているから何の心配もいらないわ。」
「そんな火柱あげるような奴の言葉を信用できるわけないでしょ!?」
 大丈夫、問題はないと言わんばかりの態度で返された雨豪からの返答をクリーメルは全力で否定する。ここで雨豪の所業を放置すればダークマターを食べる羽目になりかねないのだ。
 例えダークマター食べたとしても無敵化のお陰でクリーメルが死ぬ事はないだろう。だが、無敵化が守ってくれるのは命のみであり味覚は守ってくれない。
 もしも味覚が破壊されてしまえば後々色んな意味で辛くなる事は確実。故にクリーメルが雨豪の料理作りを必死に阻止するのも仕方のない事であった。

「料理作りをやめるつもりがないなら、あなたをアイスに変えて止めてあげるわ!」
 クリーメルの宣言に合わせる様にキッチンの周囲にテーブルが飛び出してきた。テーブルの上には沢山のアイスを使ったお菓子が置かれている。
「なにこれ……動きが……遅く……?」
 テーブルが現れた直後、火柱を維持しながらフライパンを振るっていた雨豪の動きが遅くなってゆく。クリーメルが呼び出したテーブル、その上に乗ったお菓子こそがクリーメルの力の一端であり、アイスを食べる事を楽しまない者の動きを鈍くする能力が備わっているのだ。
「多少鈍った所で……その分早く動けば……あら……?」
 動きが鈍くなった雨豪は龍としての身体能力でそれを補おうとするが、どういうわけか力が入らない。まさかと思いお尻と頭に手をやれば龍の角と尾が消えていた。
 そう、ここにきて願いの力を行使する事による代償が発動したのだ。願いの力を行使する代償、それは雨豪の龍としての力の一時的な消失であり、代償期間中の雨豪は身体能力が一般人以下となり龍としての力を振るう事が出来なくなってしまうのだ。
「さぁ、料理なんてやめて私の極上アイスを楽しみなさい!」
 当然、弱体化している上に動きが大幅に遅くなった雨豪がクリーメルに対抗できるわけがない。フライパンはあっさりとクリーメルに奪われてしまい火柱も雪をかけられる事により消化されてしまった。
 そして、フライパンを奪われた雨豪にクリーメルがテーブルの上から拝借したアイス片手に迫る。


「いや……あんたのアイスなんか……いらないわよ。何で出来てるか……分かったものじゃ……んぐっ!?」
 クリーメルが差し出してきたお菓子に不穏な気配を感じた雨豪は食べる事を拒否した。しかし、クリーメルは雨豪の動きが鈍くなっている事を良い事に言葉を発しようと口を開けた瞬間を狙ってお菓子を強引に口に入れて来るのだ。
 そして、お菓子が口に入った瞬間に雨豪は二つの意味で驚愕する。1つは食べさせられたお菓子が形容する言葉が思いつかない程に美味しい事、そしてもう一つがお菓子を食べた直後から四肢の先が青く変色し始めた事だ。
「どう? あまりの美味しさに人である事すら忘れちゃうでしょう?」
「う、うまく……払い除けられない……。ちょっと……いらないってば!」
 クリーメルの手により強引にお菓子を食べさせられる度に雨豪の身体が青く染まってゆく。雨豪は必死にアイスを払いのけようとするが一般人以下の身体能力に行動速度低下が重なった雨豪ではクリーメルの猛攻を防ぐ事が出来なかった。
「後一口であなたもアイスの仲間入りよ♪ はい、あ~ん。」
「いや……アイスになんて……んぐっ!? …………。」
 顔以外が青く染まった雨豪の口にクリーメルがお菓子を放り込めば、青色の浸食は顔にまで及び、雨豪は青いアイスに成り果てた。

「……そういえば、フライパンの中身はどうなったのかしら?」
 雨豪をアイスに作り替えてご満悦なクリーメルはつい数分前に雪をかぶせて鎮火した雨豪の肉料理の事を思い出した。調理途中で雪をかぶせられた以上肉料理は到底食べられない失敗作に成り果てている筈なのだが何故か失敗している気がしないのだ。
「……念の為に中身を確認しておきましょうか。」
 そのまま放置しても良い気がしたが万が一にも他の猟兵に利用されたら困るのでクリーメルはフライパンの中身を処分する事にした。そして、フライパンの中を覗き込んだクリーメルは驚愕する。
「な、なんで美味しそうなステーキが出来上がっているのよ!?」
 なんとフライパンの中には熱々のステーキが収まっていたのだ。何を隠そう火柱に包まれ黒焦げの肉に変貌しようとしていた牛肉が大量の雪で火柱が鎮火された結果、丁度良い具合で加熱が止まったのだ。
 雨豪の行使していた願いの力は最後の最後にクリーメルを利用する事によって料理を成功に導いていたのだ。
「ああああ! ……だめ……怪しすぎるのに手が止からないわ……!」
 あり得ない方法で完成した料理を前にクリーメルは戦慄するがその手はステーキを食べる為に伸ばされる。こうなった以上クリーメルは怪しいステーキを食べるしかない。
「なにこれ!? 柔らかくてジューシーで凄く美味しいわ!?」
 そして、ステーキを食べたクリーメルの口から絶賛の声があがった。

成功 🔵​🔵​🔴​

在原・チェルノ
この状況で料理しろっていうのも無茶な話よね
だから調理組のためにあたしは時間稼ぎに徹する
流星忍姫チェルノ、参ります!

【残像】と共に動き回って攪乱しながら【先制攻撃】で【目潰し】や手裏剣の【乱れ撃ち】を放って敵の歌とダンスを邪魔してUCの発動を妨害
隙を見せたら【暗殺】で死角に潜り込み【サイキックブラスト】の電撃で痺れさせて動きを止める
恥ずかしい思いをさせたツケは払ってもらうからね!
アイス化が進行しても意識が残っている限り【念動力】で抵抗を続ける
たとえどんなに恥ずかしい目に遭ったって、最後に勝つのはあたしたちなんだからね!

※NGなし・絡め&アドリブOKです




「今度からは事前に済ませてから戦いに赴くの……。」
 クッキーの盾にされながらも仲間に救助された森を歩くチェルノの歩みは遅い。森での戦いでは花を摘みに行った事原因で敗北してしまった。
 それは情けないにも程がある敗北理由であり出来れば二度と味わいたくないものだ。チェルノは同じ敗北を繰り返さない為にも戦闘区域に入る前に済ませておく事を心に誓うと雪原へ向かう歩みを速めた。

「この状況で料理しろっていうのも無茶な話よね……。」
 チェルノは雪が降り注ぐ空を見上げる。雪原は森の中以上に雪の勢いが強く、吹き付ける風が湛える寒さも強い。こんな状況下では生半可な料理は瞬く間に冷めてしまうだろう。
 調理を担当する猟兵達はそんな極寒に対抗して冷めないようにする工夫を凝らしたり、そもそも冷める心配のない料理を作ったりしている。中には火柱を挙げてしまう者もいるがそこはご愛嬌と言うべきだろう。
「あたしは時間稼ぎに徹するよ!」
 チェルノは元々化身忍者の再現を目指し生み出された実験体だ。施設を脱出してからもヒーロー活動に明け暮れていた為に料理とはほぼ無縁であった。
 少なくとも極寒の中で美味しく食べられる料理を作ることは難しいと考えたチェルノはクリーメルによる調理担当への襲撃を妨害する事にした。
「流星忍姫チェルノ、参ります!」
 チェルノはアイスゴーレムと猟兵達が戦いを繰り広げる戦場へと突入した。


「また一つ素敵なアイスが出来たわ!」
 雪原にクリーメルの喜びの声が響く。彼女の目の前にはアイスと化した猟兵と焼き過ぎで炭のようになった料理が置かれている。
 クリーメルは猟兵達がアイスゴーレムの対応している隙を狙いキッチンで調理をする猟兵達に襲撃をかけていた。今も料理を完成させる寸前のキッチンに狙いを定めて見事料理を阻止すると共に新たなアイスを作り出す事に成功していた。
「見つけたわよ!」
 クリーメルが次に襲撃をかけるキッチンを決めようとしている所にチェルノが駆けつけた。抑え担当の猟兵達がアイスゴーレムにかかりきりになっていると思っていたクリーメルは自身の元に駆け付けたチェルノに対し意外そうな面持ちで問い掛ける。
「アイスゴーレムをほっといて良いのかしら?」
「アイスゴーレムなら仲間が抑えてくれているわ。だから、私はあなたを足止めさせて貰うよ!」
「あらあら、一人で私を抑えられるのかしら? まぁ、追いすがられても面倒だから先にアイスにしてあげるわ。」
 チェルノの返答に対しクリーメルは笑みを浮かべると指を打ち鳴らす。すると何処からともなく音楽が流れ始めた。そして、クリーメルが対象をアイスに変える歌と踊りを始めようとした瞬間にチェルノはクリーメルに飛び掛かった。

「その技の種は見切ってますよ!」
 チェルノは残像が残る程の速さで動き回りながら四方八方から手裏剣を乱れ撃つ。手裏剣によってダメージを与える事は出来なくても当たった際の衝撃で相手の体勢を崩す事は出来る。
 クリーメルのアイスメイキングは歌と踊りの両方が揃って初めて発動するユーベルコードだ。チェルノからの激しい攻撃によって上手く踊れない今、ユーベルコードが発動する事はなかった。
「あぁもう! ちょこまかと……!」
「隙ありです! 森で恥ずかしい思いをさせたツケは払ってもらうからね!」
 思う様に踊れない苛立ちにクリーメルが癇癪を起した瞬間を狙って、チェルノは両掌から電撃を放った。チェルノはクリーメルを感電させて動きを封じる事によって時間を稼ごうとしたのだ。
「森の事に私は関係ないのだけど、八つ当たりはやめてくれないかしら?」
「そんな、何で動けるの!?」
 しかし、クリーメルは電撃が直撃したにも関わらず平然としており、不満げな顔で身体に纏わりついた電撃を弄んでいる。無敵化が感電というダメージを無効化してしまい、感電に伴う行動の阻害が発動しなかったのだ。
 チェルノはクリーメルが感電しなかった事に驚愕し攻撃を止めてしまった。
「隙ありよ……レッツ・アイスメイキング♪」
 クリーメルはチェルノの晒した隙を見逃さず、歌と踊りを開始した。


「パチパチキャンディーで飾りましょう♪」
「私の電撃が飴に! か、身体が……痺れる!?」
 クリーメルの歌声に呼応する様に纏わりついていた電撃が沢山の飴の欠片に変化するとチェルノに纏わりついてゆく。見た目は変化しても電撃としての性質はそのままなのか飴に纏わりつかれたチェルノは感電して動けなくなってしまった。
「形の整え特性容器に詰め込んでぇ~♪」
「ちょっと……やめ……押し込まないで……!」
 クリーメルは感電し動けなくなったチェルノの四肢を折りたたむと地面から突き出してきた氷で出来た容器に頭から詰め込んでゆく。容器に詰め込まれたチェルノは身体が急速に冷え、身体が四肢の先から段々とアイスに変化してゆくの感覚で感じ取っていた。
「仕上げに棒を挿し込めばぁ~……。」
 勿体ぶる様なクリーメルの声と共に容器に詰め込まれたチェルノの臀部に平らな棒が宛がわれた。

「んぅ!? お、お尻に……何か入って……!」
 容器に詰め込まれてしまい身じろぎ一つできなくなったチェルノは後ろの穴にナニかが入り込もうとしている感覚に喘ぐ。必死に耳を澄ましてみればどうやらクリーメルはチェルノの股間部に棒を挿し込もうとしているらしい。
「大人しくアイスにされると思ったら……大間違いよ!」
「出来上が……ちょっと! これじゃあ完成しないじゃないの!」
 チェルノはアイスキャンディにされまいと念動力を行使して僅かに挿し込まれた棒を押し出した。当然クリーメルは棒が抜けた事に気がつき、自らの手を持って棒を挿し込もうとする。
「無駄な抵抗はやめてアイスになりさない!」
「はぅ!? ……お断り……ですよ……あんっ!」
 棒がチェルノの股間の穴に僅かに挿し込まれ念動力で押し出される工程が幾度となく繰り返される。棒が出入りする度にチェルノは快感で喘いでしまうが猟兵としての意地で根元まで挿入される事だけは防いでゆく。
 だが、攻防を繰り広げる間にもチェルノ身体のアイス化は進行してゆき、チェルノは段々と意識が朦朧として行く。当然意識が朦朧とすれば念動力を操る事も難しくなり、棒が深く挿し込まれてゆく。
「奥まで挿し込んでぇ~出来上がり!」
「あひぃっ!? ……さ、さいごにかつのは……あたしたち……なんだからね…………。」
 そして、棒がチェルノの身体に根元まで押し込まれた。


「……思ったよりも時間がかかってしまったわね。」
 クリーメルは目の前で小刻みに震える巨大なアイスキャンディメイカーを見下ろしながらため息をつく。本来な早々にチェルノをアイスに変えて次のキッチンに向かうつもりだったのだが、予想以上に粘られてしまったのだ。
 やがて、アイスキャンディメイカーの振動が止まるのを見届けたクリーメルは容器に取り付けられた棒を優しく引き抜いてゆく。そして、引き抜かれた棒にはパチパチキャンディーが埋め込まれたアイスキャンディとなったチェルノが突き刺さっていた。

「四角くてまっ平な身体になった気分は如何かしら?」
 チェルノの身体は容器に強引に詰め込まれた関係で容器の形に合わせて四角形に変形していた。
 クリーメルが詰め込む前に折りたたまれた四肢は腕が胸の下に回され胸を押し上げる様な状態になっており、脚は股間部が良く見える様に開いたような形になっている。
「あらあら、こんなに拡がっちゃってなんて厭らしいわね。」
 股間部は後ろの穴に棒が突き刺さる一方で残る2つの穴も横に大きく拡がっていた。どうやら、チェルノの必死の抵抗の際に棒は股間部の3つの穴に満遍なく挿し込まれてしまっていたらしい。
 クリーメルはチェルノであったアイスキャンディをキッチンに立て掛けると徐に欠伸をする。それはクリーメルの身体が眠りに近づいている事を暗に示していた。

「残るキッチンは僅か、眠気が限界を迎える前に皆アイスに変えてあげるわ……。」
 クリーメルは次のキッチンを目指して移動を開始する。そして、アイスキャンディにされたチェルノは蕩けた顔でそれを見送るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

美波・蜜香
ううっ、料理は食べるのなら得意なんだけどなあ…(家庭科:超ニガテ)
なので料理は他のみんなにお任せしてあたしはオウガの押さえに回ります

【オーラ防御】で冷気を防ぎながらむんっ、と【気合い】を入れて【スーパー・ジャスティス】の飛翔能力で飛び回って傘の様に開いたアリスランスの【盾受け】でオウガの妨害から料理している人達を【かばう】
ゴーレムは【怪力】で足を掬ってひっくり返したりして足止めする

あたしが持ちこたえられる間にお願い…!

※エッチなアイス化希望・アドリブOK・NGなし




「うぅっ、料理は食べるのなら得意なんだけどなぁ……。」
 蜜香はクリーメルを眠らせる料理を作る為に猟兵達が奮闘するキッチンを遠い目で眺める。
実の所、蜜香は学校の通信簿において家庭科の成績が2以上を取ったことがない。加えて手作り料理を作るとそれなりの確立で大惨事に発展する程度には料理が下手であった。
 そんな蜜香なので調理担当に回りたいとは思えず、調理を妨害するクリーメルとアイスゴーレムの抑えに回る事にした。

「思ったよりも押されているんだよ……。」
 気を取り直した蜜香は猟兵とアイスゴーレムが戦いを繰り広げる雪原を眺めると顔を顰める。猟兵とアイスゴーレムの戦いは優勢であった最初とは打って変わり猟兵側が劣勢に陥っていた。
「まさか、触れるだけでもアウトなのかな?」
 アイスゴーレムは何処に触れてもアイス化が進行する為に接近戦ではまとも戦えない相手だったのだ。しかも、アイスゴーレムが複数体に増えてからは遠距離からの攻撃では倒しきれなくなっており、身のこなしに自身のある猟兵が危険を承知で近接戦を挑み囮になる事によって辛うじて戦線が保たれていた。
「あたしとは相性が悪そうなんだよ。でも、何とかして抑えないと皆やられちゃうんだよ!」
 蜜香はまともな遠距離攻撃手段を持っていない為、接近戦でアイスゴーレムを抑えなければならない。それでも仲間を助ける為に蜜香はむんっと気合を入れるとアイスゴーレム達に向け飛び出した。


「直接触れるのが駄目なら別の手を使うまでだよ!」
 黄金のオーラを纏い飛翔する蜜香は花弁型のアリスランス、シュテンペランツェを構えるとアイスゴーレムに向け突撃する。ランスの矛先はアイスゴーレム……ではなくその足元の地面だ。
「えぇーい! みんな、今だよ!」
 ランスを地面に突き刺した蜜香は気合いの篭った掛け声と共に地面を掘り起こす。足元の地面を掘り起こされたアイスゴーレムは足を掬われ転倒した。
 そして、蜜香が合図と共にアイスゴーレムから距離を取れば遠方の猟兵からの攻撃によって転倒したゴーレムが破壊された。
「今の所順調だけど、やっぱり数が多すぎだよ!」
 蜜香は他の抑えに回った猟兵と共にアイスゴーレムを次々と破壊してゆくが倒した傍からまた新たなアイスゴーレムが生成されてゆく。しかも、アイスゴーレムが生成される場所は定まっておらず偶然キッチンや猟兵の間近に生成される事もある。
 当然、アイスゴーレムがすぐそばで生成されてしまった猟兵はアイスゴーレムの奇襲を受ける事になる。抑え担当の者であれば攻撃を回避する事はそう難しくはないのだが、調理担当の者は調理に夢中でアイスゴーレムの生成された事に気が付けず捕まってしまう事やアイスゴーレムの攻撃を回避出来たものの作っていた料理が台無しにされるという事が少なからず起きていた。

「危ないんだよ!」
 蜜香は調理担当の猟兵を捕らえようと伸ばされたアイスゴーレムの手を傘の如く開かれたシュテンペランツェで受け止める。展開されたシュテンペランツェは満開の花の様でありアイスゴーレムはシュテンペランツェを掴む事が出来ずそのまま弾き返された。
 そして、手を弾き返され体勢を崩したアイスゴーレムに猟兵の攻撃が殺到しそのまま撃破された。
「アイス化が深刻になってきたんだよ。」
 調理担当の猟兵からのお礼を受けながら次のアイスゴーレム目指し飛翔する蜜香はシュテンペランツェを一瞥する。シュテンペランツェの柄は至る所がアイス化していた。
 シュテンペランツェはアイスゴーレムの攻撃を受ける度に受けた部分からアイス化の浸食を受けていた。アイス化した部分が正常な部分を浸食する事に関しては黄金のオーラにより防げているものの、既にアイス化していない部分の方が少なく蜜香の怪力やアイスゴーレムの攻撃に耐えられるのか怪しい状態であった。

「そろそろ、持ちこたえるのも難しそうなんだよ。……また料理担当の人のそばにアイスゴーレムが現れたんだよ!」
 シュテンペランツェの状態に不安を抱く蜜香を嘲笑うかのようにアイスゴーレムが調理担当の直傍に生成された。周囲にいる他の抑え役は間に合いそうになくアイスゴーレムから調理担当を守れそうな猟兵は蜜香だけであった。
 蜜香は覚悟を決めて料理担当の猟兵とアイスゴーレムの手の間に飛翔するとシュテンペランツェを展開した。
「あぁっ!?」
 そして、アイスゴーレムの手はシュテンペランツェの花弁を突き破り蜜香の身体を鷲掴みにした。


「いや……身体が……アイスに……。」
 蜜香はアイスゴーレムに触れた部分から身体がアイスへと作り替えられてゆくのを感じ取る。このままでは不味いと運よく鷲掴みにされなかった腕を怪力任せにアイスゴーレムの手に叩きつける事により脱出に成功する。
 しかし、アイスゴーレムに鷲掴みにされた胴体と脱出の際にアイスゴーレムの手に叩きつけた腕は白いアイスに変化していた。変化した部分は感覚こそそのままだがうまく動かす事が出来ず、強引に動かそうとすればアイス化した部分がずれるのを感じた為に蜜香は慌てて動かす事をやめた。
「激しく動けそうにないんだよ……でも、アイスゴーレムの注意は引けたみたいなんだよ。」
 幸いと言うべきかアイスゴーレムは自身の腕を破壊した蜜香を標的に定めたようで蜜香に向けて無事な方の手を伸ばしてゆく。蜜香はアイス化した体を庇いながら伸ばされた手を避けてキッチンから離れればアイスゴーレムも蜜香を追ってキッチンから離れてゆく。
「あたしが引きつけている間に料理を完成させて……!」
 武器が使用不能となりアイス化により思う様に動けなくなった蜜香は調理担当の猟兵を守る為に最後の手段を実行する。最後の手段、それは自身を囮としてアイスゴーレムを引きつける事であった。
 
「いい加減……倒れてくれないかな?」
 蜜香は背後から伸びて来る手をギリギリで避けながら悪態をつく。蜜香が囮を始めてから少しして猟兵達によるアイスゴーレムへの攻撃が開始されていた。
 しかし、アイスゴーレムの近くに蜜香がいる為に猟兵達は強力な攻撃を放つ事が出来ず、アイスゴーレムも既に使い物にならなくなった腕を巧みに使い猟兵の放つ攻撃を耐えていた。
「あと少しで……そんなっ……むぎゅっ!?」
 仲間との合流が叶うかと思った所で蜜香の目の前に新たなアイスゴーレムが生成された。蜜香は目の前に現れたアイスゴーレムに動揺し上半身を鷲掴みにされてしまう。
「だめ……脱出できない……!」
 蜜香はアイスゴーレムの手から逃れようと藻掻くが先程と違い腕まで鷲掴みにされている為に逃れる事が出来ない。更に蜜香を追いかけていたアイスゴーレムも追いつき、蜜香の下半身を鷲掴みにする。
「や、やめ……引っ張らないで……はぅっ!?」
 身体が引っ張られる感覚に蜜香は止めるように懇願するがアイスゴーレムがそれを聞き入れるわけがない。そして、お腹の辺りから迸る強烈な痛みを切欠に蜜香は意識を失った。


「器に盛りつければ~出来上がり♪」
(あれっ? あたし……確かアイスゴーレムに捕まって……。)
 蜜香はクリーメルの歌声と共に目を覚ました。状況を確認しようとするが体は愚か視線を動かす事すら出来ない。
 唯一知る事が出来た事はクリーメルが目の前で嬉しそうな様子で蜜香を見ている事だ。この時点で蜜香は自身がアイスにされてしまった事を悟った。
「あなたを見つけた時には凄く慌てたけれど、結果的に凄くいい感じのアイスになったわね。」
(慌てる……? 何だか嫌な予感がします……。)
「そうね、折角だからあなたがどんなアイスになったのか見せてあげる。」
(……えっ……なんですかこれは!?)
 蜜香の視界に銀色に光るスプーンが入り込んだ。スプーンは丁寧に磨き抜かれており鏡の如く蜜香の姿を映し出していた。
 スプーンに映し出されていたもの、それは4つの球形のアイスであった。

「如何かしら? 形を整えるのに意外と苦労したのよ。」
(まさか、これがわたしなの?)
 スプーンに映る白、茶色、ピンク、緑のアイスのうち茶色のアイスには目を見開いて口を歪な形で結んだ蜜香の頭が浮かび上がっていた。自身の顔が浮かび上がるアイスを見た蜜香はこれが今の自分の姿であると受け入れざるを得なかった。
「……まだ気づいていないみたいね。私が駆けつけた時、あなたの身体は真っ二つになっていたのよ。」
(真っ二つ? まさかあの時に身体が千切られちゃったの!?)
 例え猟兵であろうと致命傷と成り得る事態に陥っていた事に蜜香は驚愕する。同時に胴体部がアイス化していた為に助かる余地が生まれていた事を知り蜜香は少しだけアイスゴーレムに感謝した。
 そして、蜜香は分断された下半身がどうなったのかという疑問に至った。クリーメルは笑みを深めると更なる言葉を紡いでゆく。
「そのまま2つのアイスにしてあげても良かったのだけど、あなたが素敵な衣装を着ていたから少し勿体なく思ったのよね。」
(勿体ない? ……まって、まさか!)
 蜜香は慌てて残る3つのアイスに注視する。
 ピンクと緑のアイスにはドーム状の盛り上がりがあり、その頂点には突起が付いている。更に白いアイスには桃を思わせる大きな割れ目が付いており、その割れ目の間に更に小さな割れ目のついた盛り上がりが挟まっていた。
 蜜香はこの時点である可能性に至るがそれを必死に否定していた。だが、そんな蜜香に対しクリーメルは止めの言葉を投げ放つ。
「だから、あなたの厭らしい体を別々のアイスにしてあげたわ!」
(い、いやあぁああ!?)
 そう、クリーメルは蜜香の恥ずかしい部分を分断した上で夫々アイスに変えて氷で出来た器に盛り付けたのだ。否定したかった可能性を肯定されてしまった蜜香は声なき悲鳴をあげる。

「恨むならそんな厭らしい姿でアイスゴーレムの足止めをして回った自分を恨みなさい。」
(まって!? せめてスプーンで隠してぇ!)
 クリーメルは厭らしいアイスに成り果てた蜜香を嘲笑するとキッチン目指し移動を始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 こんな寒い中でアイスだなんて、いくら美味しくても身体が冷え切ってしまうわ!

 ということで〈料理〉よ!
 ゾーヤさんが大得意なボルシチを作るわ。彼女が攻撃してきたら、【UC:無敵氷砦】(POW)を発動よ。迫り来る攻撃は全部弾いて、〈属性魔法〉〈高速詠唱〉で、料理が完成するまで耐え抜くわね。

 そうして完成したボルシチには当然〈氷結耐性〉が宿ってるわ、身体の芯から温まること間違いなしよ。運ぶ時にはUCを解除して、自分の身を盾にボルシチを〈かばい〉ながら、冷めないように彼女に届けるわ。

 わたしのボルシチの美味しさは、氷菓になったとしても変わらないんだから!

(アドリブ連携負傷状態変化等々全て歓迎です)




「こんな寒い中でアイスだなんて、いくら美味しくても身体が冷え切ってしまうわ!」
 ゾーヤは雪原の至る所に佇むアイスを見て怒りを露わにする。
 雪原の至る所に佇むアイスに不自然に欠けた部分がある事からゾーヤはクリーメルがこの雪が降り注ぐ中でアイスクリームを日常的に食している事を察した。そして、極寒の中で体を冷やす事の愚かさを良く知るゾーヤには例えオウガがしている事であったとしてもそれを許す事が出来なかった。

「ということで料理よ! ゾーヤさんが大得意なボルシチをご馳走してあげるわ!」
 キッチンに立ったゾーヤが作る料理はウクライナ発祥の伝統料理であるボルシチだ。
 ゾーヤは手始めに塩コショウで下味をつけた豚肉と長ネギを水と共に圧力鍋に入れて煮込み始める。更に食材置き場から取り出した人参、じゃがいも、ビーツ、玉葱等の野菜を切り刻みバターとオリーブオイルで炒めてゆく。
「そろそろブイヨンが出来上がるわね。」
 野菜を炒め終えたゾーヤは圧力鍋の蓋を開くと手早く長ネギとアクを取り除き、代わりに炒めた野菜とホールトマト、調味料を加えてゆく。そして、再び蓋を閉めると鍋の圧力を上げた。
「さて、後はじっくりと煮込めば出来上がりだけど……そう簡単にはいかない様ね。」
 調理を一通り終えたゾーヤはコンロの火が弱火である事を確認すると額の汗を拭い振り返る。振り返った先ではアイスゴーレムがその拳を振り上げていた。


「この守り、砕けるものなら砕いてみなさい!」
 アイスゴーレムと向かい合ったゾーヤは掛け声と真の姿である白色赤眼の人狼になるとその身に細やかな氷を漂わせ始める。細氷はゾーヤの掛け声に応じる様にゾーヤに向けて振り下ろされたアイスゴーレムの拳の前に滑り込んだ。
 無数の細氷目掛けて振り下ろされたアイスゴーレムの拳は細氷を砕く事が出来ず、そのまま弾き返される。攻撃を弾き返されたアイスゴーレムは今度こそと言わんばかりに拳を振るうがその度に細氷が割り込んで弾き返してゆく。
「細氷がアイスにされようと新たな細氷を供給すれば良いだけよ。」
 アイスゴーレムの拳を受け止めた細氷は粒状のアイスとなり落ちてゆくがすぐに新たな細氷がゾーヤの身体から発生し供給されてゆく。ゾーヤが展開した無敵氷砦はその場から動けなくなる代わりに無数の細氷があらゆる脅威からゾーヤを守る防御用ユーベルコードだ。
 キッチンでボルシチが煮えるのを待つだけで現状において無敵氷砦はこれ以上ない程に効果を発揮していた。そして、幾度となく攻撃を防がれたアイスゴーレムが両手を振り下ろそうとした瞬間、キッチンへの襲撃を察知した猟兵の攻撃によりアイスゴーレムが破壊された。

「ありがとう、もう少しで完成するからそのまま護衛をお願いね!」
 ゾーヤを執拗に攻撃していたアイスゴーレム崩れ去るのと同時にキッチンにアラーム音が鳴り響く。アラームを停止させたゾーヤは鍋の圧力を下げると鍋の蓋を外した。
 蓋が外れると共に暖かな湯気と共にビーツの香りがゾーヤの鼻を擽る。念の為に味見も行い満足のいく出来である事を確認したゾーヤは高速詠唱によって加護を付加したレードルでボルシチの具材を掻き混ぜて加護をボルシチに注ぎ込んでゆく。
「特性ボルシチの完成よ!」
 雪原に料理の完成を告げる掛け声が響き渡った。


「加護はちゃんと機能しているようね。」
 ゾーヤは小皿に盛り付けたボルシチの状態を確認しながら頷く。雪原の雪と寒さは容赦なくボルシチに襲い掛かっているのだがボルシチが覚める事無く暖かい湯気を上げている。
 ゾーヤがボルシチに注ぎ込んだ加護、それは氷結に対する耐性を与えるものであった。加護が与えられたボルシチはそれこそ強力な氷結のユーベルコードでも叩き込まれない限り冷める事はないだろう。
「問題はどうやってクリーメルにボルシチを届けるかね。」
 ゾーヤの視線の先には半目になった眼を必死に擦りながら無数のアイスゴーレムの影で震えるクリーメルの姿があった。どうやらクリーメルも限界が近いようで雪原に料理の完成を告げる声が響き渡った直後から無数のアイスゴーレムで築き上げた即席の防衛網の奥に籠もってしまったのだ。
「どうやら覚悟を決めるしかないようね……。」
 ボルシチをクリーメルの元に運ぶ上で無敵氷砦を使う事は出来ない。かといって無数のアイスゴーレムの猛攻からボルシチを守りながら抜ける事は至難の業だ。
 仲間の猟兵を頼ろうにもキッチンへの襲撃は依然として続いているので限界がある。考えた末にゾーヤはその身を犠牲にしてでもボルシチをクリーメルに届ける決意をした。

「よし、行くわよ!」
 2つの容器を手にしたゾーヤはアイスゴーレムの防衛網に向けて走り出す。走り出した直後からゾーヤの背後に控えていた猟兵達による防衛網への攻撃が開始された。
 ゾーヤの横をすり抜けた攻撃は防衛網の最前線を構築するアイスゴーレムの動きを鈍らせ破壊してゆく。ゾーヤは猟兵の攻撃によってアイスゴーレム達が足止めされている隙をついてアイスゴーレム達の最初の防衛ラインの突破に成功した。
「ここまでは順調ね。だけど、本番はここからね。」
 最初の関門を突破して一息ついたゾーヤの視線の先には更なるアイスゴーレムの一団が待ち構えていた。猟兵からの援護攻撃はゾーヤを背後から狙うアイスゴーレムに対する妨害に費やされており頼る事は出来ない。
 迫りくるアイスゴーレム達に対してゾーヤは氷属性の魔法を放つ。氷の魔法はアイスゴーレムに命中するとその動きを少しだけ鈍らせた。
 ゾーヤは動きの鈍ったアイスゴーレム達を見回すと人が通れそうな隙間目掛けて駆け込んでゆく。そして、振り下ろされるアイスゴーレムの腕の隙間を縫ってゾーヤは防衛ラインを突破した。
「やっぱり無傷とはいかないわね……。」
 ゾーヤはアイスゴーレムの腕が掠った事によりアイスに浸食されつつあるスカートを見下ろしながらため息をつく。ゾーヤは自分の体まで浸食される前に衣装のアイス化した部分を破きそれを阻止した。
「ボルシチを届け終えるまでに衣装が残っているといいのだけど……。」
 若干スカートが短くなったゾーヤは更なるアイスゴーレムの防衛ラインを見据えると再び駆け出した。


「特性ボルシチ……お届けにあがったわ……。」
「そんな、防衛ラインを越えて来るなんて!」
 クリーメルはアイスゴーレムの防衛網を突破してきたゾーヤに戦慄する。
 ゾーヤの姿は惨憺たる有り様で最早は生身の部分の方が少ない程にアイスに浸食されている。衣装も完全にアイス化した上でボロボロになっており、同じくアイスとなった下着が曝け出されている。
 それでも料理の詰まった容器とそれを掴む手は生身の状態を保っていた。
「今……最後の仕上げをするから……待っててね……。」
 ゾーヤは覚束ない動きで2つの容器の蓋を外すとボルシチにサワークリームを盛りつけてゆく。ボルシチにとってサワークリームは欠かせない物であり、運ぶ最中に混ざる事を防ぐために分けて運ばざるを得ない物でもあった。
「これで出来上がり……わたしのボルシチ……とっても美味しいから……味わって……食べて……ね…………。」
 そして、クリーメルにボルシチを手渡したゾーヤの手がアイスに浸食された。

「これ以上食べたくないのに……手が止まらないわ……。」
 クリーメルは完全にアイスと化したゾーヤを恨みがましく見つめながらもその手はボルシチを掬ってゆく。掬い取られたボルシチは雪と寒さに曝されているにも関わらず湯気を上げて冷める様子はない。
 クリーメルはこれ以上食べれば眠りに落ちるかもしれないという恐怖に震えながらもボルシチを口にした。
「あっ……。」
 クリーメルの口の中に煮込まれた豚肉と野菜の旨味とコクにビーツの甘みが広がってゆく。続けてサワークリームと一緒に口にすればサワークリームの酸味がビーツの甘さを中和してまた別の味わいを作り出してゆく。
「うぅ……美味しいわぁ……。」
 アイスゴーレム達が見下ろす中、クリーメルは呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
ウィーリィくんとペア参加という名目で、料理の邪魔をしようとするオウガの対処を担当する
【乱れ撃ち】+【制圧射撃】+【クイックドロウ】で熱線の弾幕を張ってオウガをキッチンに寄せ付けない
UCの影響で動きが鈍っても【クイックドロウ】のスピードと手数の多さでカバー
アイスになる前にウィーリィくんの料理が完成すればボクたちの勝ちだよ!
だから出来上がったらボクにも食べさせてね?


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
まずオウガに確認を取る。
「最初に聞いておくぜ。あんた、猫舌か?」
いや、こんな寒いとこにいるんだったらあったかい料理も食べたいだろうからさ。

オウガの対処はシャーリーに任せて俺は【料理】に専念。
料理の間【厨火三昧】の炎をいくつか周囲に飛び交わせて食材が冷えないようにする。
作るのは、保温性の高い石の器を【厨火三昧】の炎で熱した石焼ラーメン。
伸びにくい太麺に冷めにくい様にとろみをつけた辛めのスープ、そして挽肉と熱を貯めやすい豆腐を具に使った麻婆豆腐風ラーメンだ。
普通だったら熱くて食べられないけどこの寒さだったらちょうどいいだろ?
むしろ火傷しないように気をつけてな。




「ウィーリィくん、今回は何時に無く張り切ってるね。」
「美味しい料理で平和を取り戻せるなんて滅多にない機会、張り切らずにいられるわけないぜ!」
 何時もの戦闘厨衣ではなく魔法使いの衣装を着たウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)はシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)の指摘に対し笑顔で答えた。
 ウィーリィは争いに疲れた人々が笑顔になる光景をみて料理人となる事を志し、理不尽から笑顔を守りたいという想いから猟兵に覚醒した過去を持つ。そんな彼にとって料理を作る事が不思議の国の平和を取り戻す事に繫がる今回の依頼は日々の修行で培ってきた料理人として腕を振るう絶好の機会であった。
「それじゃあ、ボクもウィーリィ君が料理に専念できるように頑張らないといけないね。」
「よろしく頼むぜ、保安官さん?」
「本官に任せるであります! ……なんてね?」
 シャーリーがキッチンの防衛に努める事を表明すればウィーリィはシャーリーを茶化しながらキッチンの防衛を任せると食材置き場へ移動を始める。シャーリーが森で手にした衣装は西部の保安官の衣装であった。
 宇宙スク水はウェスタンシャツ、ダスターコート、ジーンズとなり腰にはガンベルトが完備されている。更に海賊帽もキャンペーン・ハットとなりガンベルトには何故かリボルバー銃に変化したシューティングスターとスターボースプラッシュが収まっている。
 銃の変化には流石のシャーリーも慌てたものの、取り回しを除く性能に変化はなかったので森での戦いを経てすぐに慣れる事が出来た。

「材料はこれでよしだ。後は……おぉ~い! クリーメル、あんた猫舌か?」
 今回の料理に使う食材の選択を終えたウィーリィはアイスゴーレムを再びキッチンへ嗾け始めたクリーメルに問い掛ける。その意図はクリーメルの体質に配慮した料理を作る為であった。
 ウィーリィはこれまでにクリーメルが食べた料理からアレルギーの類は心配する必要がない事は把握していた。だが、今回ウィーリィが作ろうとしている料理は猫舌に配慮する必要があった為に確認する事にしたのだ。
「ふわぁ……あまり熱いのは無理……って、そもそも料理を作らないでよ!?」
 クリーメルも大分眠気が強くなり判断が鈍っていたのかウィーリィの問い掛けに律儀に答えた。しかし、すぐに正気を取り戻すと多数のアイスゴーレムを率いてウィーリィの立つキッチン目指し侵攻を開始した。


「うわぁ……凄い団体さんで来たよ。」
 シャーリーは雪を撒き上げながら迫るアイスゴーレムの軍勢に呆気にとられる。アイスゴーレムの数が他のキッチンと比べて明らかに多い上にクリーメル自身も軍勢に加わっているのだ。
 恐らくはウィーリィがクリーメルに問い掛けて彼女の気を惹いてしまったのが原因だろう。周囲の手が空いている猟兵達が援護に駆けつけようとしているものの、アイスゴーレムがキッチンに到達する方が先だろう。
「あぁもう! 料理が出来上がったらボクにも食べさせてね!」
 シャーリーはガンベルトから銃を取り出すと迫りくるアイスゴーレム達に乱れ撃ちによる制圧射撃を開始した。幸い、的は大きいのである程度の狙いをつければ熱線が外れる事はなかった。
 熱線は射線上にいるアイスゴーレム達を纏めて貫くが1発1発は細くアイスゴーレムに然したる影響を与えない。それを補う様にクイックドロウの効果による毎分5400発を超える数の暴力がアイスゴーレムの進行を食い止めていた。
 シャーリーがクリーメルの嗾けるアイスゴーレム相手に奮闘する中、ウィーリィも己の役割を果たそうとしていた。

「どうやらクリーメルは猫舌みたいだな。それなら石焼の器はやめた方が良さそうだな。」
 クリーメルからの返答を聞いたウィーリィは当初予定から少しだけ軌道修正をする必要性を感じながらも料理を進めていた。
 厨火三昧の火力を活かしごま油で炒めた豚ひき肉と長ネギを豆腐と共に鶏がらベースに豆板醤や甜麺醤等の香辛料を加えたスープに入れ煮込んでゆく。更にある程度材料を煮込んだ所で水溶き片栗粉を加えてスープにとろみをつけてゆく。
「石焼の器が駄目なら、厨火三昧で周りを暖めるんだぜ!」
 ウィーリィは当初、雪原の寒さ対策として石焼ラーメンを作ろうとしていた。しかし、石焼の器は冷めづらい代わりに常人でも火傷しかねない熱さを齎すので猫舌相手には悪手であった。
 故にウィーリィは石焼の器を諦める代わりに厨火三昧で器の周辺を暖かく保つ事によって冷めづらくする事にした。食事中にクリーメルが厨火三昧で火傷しない様に火力の調整に気を付ける必要があるものの、火加減の鍛錬に繋げる事が出来るので面倒だとは思わなかった。
「シャーリー! あと少しで出来上がるから頑張ってくれ!」
 ウィーリィはスープと麺の状態に気を遣いながらもシャーリーに間もなく完成する事を告げた。


「良い匂いだね。ウィーリィくんは何を作ってくれるのかな?」
 シャーリーはアイスゴーレムに対する弾幕を続けながらもウィーリィが作る料理に思いを馳せていた。だが、そんなシャーリーの動きが突如として鈍り始めた。
 どうやら、クリーメルがシャーリーの直傍にアイスの満載されたテーブルを召喚してきたようだ。
 テーブルに乗せられたアイスを食べようとしないシャーリーの動きは本来の2割程度にまで落ちている。これを解除するにはアイスを食べる必要があるのだが、アイスゴーレムが迫る中でアイスを食べる暇はない上にそもそもアイスを食べればアイス化してしまうので食べる事は事態が論外である。
「多少動きを鈍らせただけでどうにか出来ると思わないで欲しいんだよ!」
 シャーリーは動きが遅くなっても動じることなくアイスゴーレムへの弾幕をはり続ける。動きが遅くなった事により連射速度は目に見えて落ちているがそれでも軽機関銃並の毎分1000発を超えている。
 更に連射速度の低下に伴ってアイスゴーレムの接近を許した結果、狙いをつけやすくなっている。シャーリーはアイスゴーレムの関節部に狙いを定め転倒させる事によって連射速度の低下をカバーしていた。
 しかし、アイスゴーレム達がある距離に到達した瞬間に突如として動きを停止した。シャーリーが動きを止めたアイスゴーレム達を訝し気に見る中、アイスゴーレム達をかき分けて眠そうな様子のクリーメルが姿を現した。

「アイスゴーレム達を足止めしていたのは……あなたね?」
 クリーメルがシャーリーに向ける眼差しは眠気によって鋭さは失われているが明確な敵意が籠められている。どうやら、アイスゴーレム達では埒が明かないと考えたようでクリーメル自らシャーリーをアイスに変えに来たようだ。
 当然、大人しくアイスにされる気のないシャーリーはアイスゴーレムの動向に注意を払いながらもクリーメルに向けて熱線を撃ち込み始める。しかし、クリーメル目掛けた発射された熱線はクリーメルに当たる直前で見えない壁にぶつかったかのように霧散してゆく。
 クリーメルは覚束ない足取りでシャーリーへと近づき始める。その手にはいつの間にかに美味しそうなアイスが握られていた。
「そんな豆鉄砲……無敵化した私には……通じないわよ?」
「そ、そんな……あたしに近づかないで!?」
 不気味な笑みを浮かべ近づいてくるクリーメルにシャーリーは更に熱線を撃ち込むがやはりクリーメルに当たる直前で霧散してゆく。こうなると残る手段は後ろに下がる事のみだがこれ以上後ろに下がればゴーレム達がキッチンへ攻撃する事を防げなくなってしまう。
 結局、クリーメルの動きを止める事も後ろに逃げる事も叶わないシャーリーはクリーメルに押し倒されてしまった。
「捕まえた……さぁ、美味しいアイスを……召し上がれ?」
「むぅ~っ!!?」
 スプーンを使いアイスを食べさせようとするクリーメルに対しシャーリーは口を堅く閉じる事により対抗する。そんなシャーリーに対してクリーメルはスプーンを握っていない手で鼻を摘まんだ。
「ほらほら……早く口を開かないと……窒息するわよ?」
「むぐぐ……ぷはぁっ!」
 鼻を摘まれた事によって息が出来ず苦しむシャーリーにクリーメルは嗜虐的な笑みを浮かべる。やがて、限界を迎えたシャーリーは口を開いてしまった。
「怖がらないで……キッチンにいる子も……すぐに後を追わせてあげるから。」
「いやぁ……たすけて……ウィーリィ……。」
 クリーメルは鼻を摘まんでいた手を素早く開かれたシャーリーの口に押し込み閉じられない様に抑えると改めてスプーンにのったアイスをシャーリーの口へ近づけてゆく。そして、アイスがシャーリーの口に入ろうとした瞬間にキッチンから威勢の良い声が響き渡った。


「デザートを食べるにはまだ早いぜ!」
「ウィーリィくん!」
 キッチンから響き渡った威勢の良い声の主はウィーリィでありその手には2つ丼が乗ったお盆が握られている。料理を持って現れたウィーリィにシャーリーは歓声をあげクリーメルの顔が蒼白になった。
 例えあと少しで新たなアイスが作れたとしても料理が出てきてしまえばクリーメルはそれ食べる事を優先しなければならない。クリーメルはシャーリーの口に入りかけていたスプーンをアイスの器に戻すとシャーリーを解放した。
「立ったまま食べるのは辛いよな? 席の準備をしておいたからそこで食べてくれよ。」
 ウィーリィはクリーメルとシャーリーをキッチンの一角に設けられた即席のカウンター席に案内すると二人の前にお盆に乗せられていた丼を置く。
 丼の中身は赤いスープのラーメンであった。沢山のひき肉が使われたそのラーメンは一見すると担々麺の様だがひき肉に混じってサイコロ状に切られた豆腐が浮かんでいた。
「麻婆豆腐風ラーメンだぜ。火傷をしない様に気をつけてな。」
「わかったよ、ウィーリィくん! それじゃあ、いただきます!」
「気を付けて食べさせてもらうわ……いただきます。」
 キッチンの周囲が厨火三昧で程よい温度で保たれる中中、シャーリーとクリーメルは麻婆豆腐風ラーメンを食べ始めた。

「はふっはふっ……豆腐が熱いけれど味が染み込んでいて美味しいよ!」
「ふぅーふぅー……うふふふふ……麻婆の辛さで身体が暖まっていくわぁ……。」
 シャーリーとクリーメルの二人は厨火三昧の熱とラーメンの辛さによる体温の上昇で汗をかきながらもウィーリィの料理を食べてゆく。シャーリーが瞳を輝かせながら味を評価する一方でクリーメルは虚ろな瞳で料理を評価する。
 クリーメルにしてみれば美味しい料理を食べる度に眠気と言う名の死神の鎌が迫って来るので仕方ないとも言える。それでもクリーメルは眠気に屈する事無くウィーリィのラーメンを完食した。
「ねぇ、ラーメンを食べ終えたのだから……デザートに冷たいアイスを食べましょう?」
「えぇっと……もうお腹一杯でこれ以上は食べれないや……ごめんね?」
 強まった眠気により目に見えて動きがおかしくなり始めたクリーメルが最後のあがきと言わんばかりにシャーリーにアイスを食べる事を提案する。しかし、シャーリーは申し訳なさそうな顔でそれを断るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「やー、何か色々と大惨事っすか? それはそうと、料理を作りに来たっすよー」
そんな感じのノリで現れたのは狐のお面。飛んでくるコスプレ衣装は衣装に合った人型の【霧影分身術】で作った分身に着てもらい、ノリよく着こなす。

「それにしてもおいしそうなアイスっすねー」
とか言って分身を合計90体近く出し、クリーメルのアイスを食べてみる。分身がアイスを食べたらどうなるか、姿によってアイスの実為や味が変わるのか、その結果を『楽しみ』、できたアイスは料理としてクリーメルにあげるっす
で、その間にちゃんと料理。作るのはクリームブリュレ。表面をあぶって溶かした砂糖が表面で冷えてパリパリっす。後は甘いものに合うお茶でも




 雪原における猟兵とクリーメルの戦いにもいよいよ終わりが近づいて来た。
 クリーメルは沢山の料理を食べた事による強烈な眠気で新たなアイスゴーレムを作りだす事が困難になってきている。一方で猟兵達もアイスゴーレムの物量やクリーメルの攻撃によってその多くがアイスにされてしまい無事な者は両手で数えられる程しかいなかった。。
「やー、何か色々と大惨事っすか?」
 猟兵側の生き残りの一人であるヒーローマスクのリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は誰も使用していないキッチンを探しながらも呟く。大量に発生していたアイスゴーレムが減った事により雪原の様子が良く分かるようになっていた。
 雪原には至る所に猟兵の成れの果てであろうアイスが鎮座している。それらのアイスは衣類がボロボロだったり消失していたとしても人の原型を保っているモノはマシな方であり、酷いモノだと捏ね繰り回されて球体に成型されていたり棒付きアイスにされている者すらいる。
 リカルドはそれらのアイスに苦笑をしながらも華やかな浴衣を纏った宿主の少女と共に誰も使用していないキッチン目指し移動を始めた。

「さてさて、キッチンを確保できたので早速料理を作るっすよー。」
 雪原をある事暫くして無事にキッチンを確保する事が出来たリカルドは食材置き場から卵、砂糖、牛乳、生クリームを取りやすい位置へと移動させてゆく。
 リカルドが作る料理はクリームブリュレだ。それは今まで回ってきたキッチンで猟兵達が作っていた料理の多くが温かい料理であったことからそろそろクリーメルもデザートを食べたいであろうというリカルドの予想に基づいた選択であった。
「まずは卵黄と卵白を分けるっすよ。」
 こうしてリカルドの料理が始まった。


「おぉーと、なんだか動き辛くなってきたっすね。あー、これっすか……。」
 料理を作り始めて間もなくしてリカルドの動きが目に見えて鈍り始めた。何事かと思い辺りを見渡せばいつの間にかリカルドの背後には大量のアイスが乗せられたテーブルが出現していた。
 そのアイスを認識した者の行動速度を大幅低下させる効果があり、クリーメルの繰り出す技の中でも特に対処の難しい物であった。
 行動速度を元に戻すにはアイスを食べるしかないのだが、アイスを食べた者はアイスに変化してしまうのだ。かといって食べる以外の方法でアイスを消そうものなら行動速度を戻す事が出来なくなりアイスゴーレムやクリーメルの攻撃を捌ききれなってアイスにされてしまう。
 テーブルの上に置かれたアイスはその見た目に反して凶悪なユーベルコードであった。

「それにしてもおいしそうなアイスっすねー。」
 テーブルの上に山盛りとなったアイスは色彩豊かでただ見ているだけでも暇を潰せそうだ。更にクリーメルが言うには人である事を忘れアイスになる程に美味しいという。
「ちょっと食べたくなってきたっすよ。」
 ここにきてリカルドの好奇心が顔を覗かせた。あのアイスはどんな味なのか、そしてアイスを食べる者によって変化後の姿に違いはあるのか。
 リカルドの好奇心は一度顔を出したら最後、それを満たさない限りまず収まる事はない。更にリカルドには目の前のアイスの山を対処する方法に心当たりあった。
「よし! 食べてみるっすよー。」
 リカルドが目の前のアイスを食べる事を決意するのにそう時間はかからなかった。


「夢か現か幻か、とくとご覧あれっすよ!」
 リカルドの詠唱と共に周囲に霧が立ち込める。この霧こそがリカルドの発動させた術の要であり、その効果はすぐに現れる。
 最初に霧の中から現れたのは漆黒のコートを着た男性だ。更に男性に続く様に巫女服を着た少女や白いヒーロースーツを身に着けたフェアリーが霧の中から現れた。
 霧の中に現れる者達は性別、背丈、種族、同じ姿の者は1人としていない。しかし、皆一様に青い髪を持ち白い狐の仮面を身に着けていた。
 これこそがリカルドが誇る忍法・霧影分身術。戦闘用の霧を元に過去にリカルドを身に着けた者達の分身を作り上げるユーベルコードだ。
「好きなアイスを確保するっすよー。」
 リカルドの声を聞いた分身達はアイスが満載されたテーブルに集まるとアイスを確保してゆく。大体の分身がアイスを1つだけ確保しているものの、中には大量に確保している食い意地のはった者もいた。
 なお、今回リカルドが召喚した分身は90人以上いるのだが、アイスを確保できずに終わる分身は1人もいなかった。予想以上に大量に盛り付けられていたアイスにリカルドは内心冷や汗を流しながらも分身達に更なる指示を送る。
「それじゃあ、味わって食べるっすよ!」
 リカルドの指示を受けた分身達が一斉にアイスを食べ始めた。

「おぉ~これまた壮観っすねぇ……。」
 リカルドは泡だて器で卵黄と砂糖を混ぜながらも目の前の光景に感心する。リカルドの目の前にはクリーメルのアイスを食べる事によって身体がアイスと化した分身達で埋め尽くされていた。
 スーツ姿の男性は澄ました様子でコーヒー色のアイスとなり、巫女服の少女は笑顔でアイスを頬張った姿でピンク色のアイスになっている。
 どうやらクリーメルのアイスを食べる事による変化は食べたアイスに依存しているらしい。味に関しては分身が味を語る前にアイスとなった為にリカルドは知る事が出来ずじまいだが、アイス化した分身達の殆どが笑みを浮かべている事から絶品である事には間違いないらしい。
「ん~? どうやらゴーレムはアイスを壊す事が出来ないみたいっすねぇ。」
 雪原の一角を見てみればアイスゴーレム達が無数のアイス化した分身の前で右往左往している。どうやらゴーレム達はアイスを壊す行為が許されていない様で図らずもアイスゴーレムの脅威を防ぐ事に成功していた。
「いや~、本当に食べれないのが残念でならないっすねー。」
 そして、アイス化した分身達を羨みながらもリカルドはクリームブリュレを湯煎焼きする準備を始めた。


「何これ……なんで……笑顔なの?」
 クリーメルは目の前に広がる光景に困惑する。クリーメルの眼前には数分前まで影も形もなかったアイスが無数に存在しているのだ。
 雪原に乱立するアイスは同じ容姿の者は1人としていない。だが、何れのアイスも狐の仮面を着け、笑顔でアイスを食べていた。
 クリーメルは自身の作ったアイスの味に絶対の自信を持っている。しかし、いくら絶品であろうと雪の降る中、笑顔で食べられるかと言われれば首を傾げざるを得ない。
 ましてや食べればアイス化する事を承知の上で笑顔で食べる者は今まで一人としてみた事がなかった。故に笑顔のアイスが無数に存在する光景にクリーメルが混乱するのも無理はなかった。
「あぁもう……いくらなんでも多過ぎよ……!」
 クリーメルは雪原に乱立するアイスに触れて崩さない様に注意しながら進んでゆく。しかし、アイスの数が異常なまでに多い為に多く思うように進む事が出来ない。
そして、どうにかしてキッチンに辿り着いたクリーメルを出迎えたのは今まさにバーナーによる仕上げの作業を終えたリカルドであった。

「おぉ! 丁度良いっすね。たった今クリームブリュレが完成したっすよ!」
「えっと……もうお腹一杯で……食べられないわ……。」
「えぇっ!? そんな……折角クリーメルの為に一生懸命作ったのに酷いっすよぉ……。」
「うっ!? ……わ、わかったわよ……。」
 もはや眠気の限界が近いクリーメルはどうにかして料理を食べる事を拒否しようとする。しかし、リカルドが拒否された事に対し悲しめばクリーメルの身体から食べたいという衝動が際限なく強まってゆく。
「うぅ……カラメルの食感が良いアクセントになっているわぁ……。」
 やがて、身体からの衝動に抗い切れなくなったクリーメルはリカルドからクリームブリュレを受け取ると美味しく召し上がるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凍雪・つらら
【アドリブ歓迎・NG無】
ひっ、ひううっ...さぶ...さぶいいっ...
皆凍ってるよぉ...さむ...しぬ...

もうこれしかありませんっ、ゴーレム達で、アイスを作っちゃいます!
戦場にあるチョコやお菓子や蜂蜜、甘い物を大量にかき混ぜて、滝のようなシロップをアイスゴーレムにぶっかけちゃいますよ!
ゴーレムの動きを止めたら、【獄炎も凍る絶対零度】で凍らせますっ!
ゴーレムさんっ、私の気持ちと凍結の呪いを込めた、美味しいアイスになってくださいっ!

ふう、美味しそうなアイスになりましたねっ
ひあっ!しまっ、オウガが後ろに...あま...さむ...いぃ...
(凍えながら、蜜を絡めた甘~いアイスにされてしまう...)




「ひっ、ひううっ……さぶ……さぶいいっ……。」
 衣装の飛び交う森の中、凍雪・つらら(凍える雪狐・f14066)の声が木霊する。常に冷気を纏う体質と寒がりになる呪いによりいつも寒さに身を震わせているつららだが、今回は更に追い込まれていた。
「あんなに大きいなら……くしゅんっ……温かい服だと思ったのにぃ……。」
 雪が降る程に寒い環境で特性の防寒着を脱ぐ事はつららにとって自殺行為に等しい。しかし、衣装を着なければ森に潜むオウガによってクッキーの装飾にされてしまう。
 悩んだ末につららは少しでも温かい衣装を引き当てる事を祈る事にした。そして、森を飛び交う衣装の中でも一際大きな塊を形成する衣装を手にしたのだ。
「なんで……なんで、タオルに包まれた水着なんて……飛んでいるのですかぁ……。」
 つららが身に纏った衣装、それは紺色のスクール水着であった。ワンピースタイプで前面に水抜き穴が付いた旧仕様な水着の胸元には『つらら』の名前が入った白いゼッケンがついている。
 当然、四肢が完全に露出している上に生地の薄いスク水に防寒性能は皆無だ。せめてもの抵抗としてつららが誤認する原因となったプールタオルをポンチョの如く羽織るが焼け石に水である。
 こうしてつららは水着姿という普段からは到底あり得ない恰好で森を突き進む。なお、森に巣くうオウガ達はつららが森に突入した時点で既に全滅していたのは秘密である。

「皆凍ってるよぉ……。」
 普段の倍以上の勢いで身を震わせるつららは雪原の光景に唖然とする。雪原に猟兵の姿は見当たらず、無数のアイスで埋め尽くされている。
 アイスは雪原の寒さで完全に凍り付いており、つららが軽く触れた程度ではびくともしない。それはアイス化した者達を食べるのに相応の労力が必要であり早々に食べ尽くされる事を意味しているのだが、アイス化した者達がそれを喜ぶかと言われれば微妙な所だ。
「さ……さむ……しぬ……!」
 雪原に吹き込む風につららは思わずその場で飛び跳ねる。雪原に吹く風は森の中にいた時とは比べ物にならない程に冷たいのだ。
 現につららの身体はあまりの寒さに動かし辛くなり、心なしか意識もぼやけてきている気がする。
「早く……料理を作らないと……。」
 このままではクリーメルに襲われる前に戦闘不能になりかねないと考えたつららは慌ててキッチンに駆け込むと料理を始めた。


「アイスクリームを……作ります。」
 つららが作ろうとしている料理はアイスクリームだ。それはクリーメルがアイスを好む魔女である事から多少不格好であっても食べてくれるであろうという打算もあった。
「ま、まずは……卵を割って……あぁっ!?」
 卵黄を確保する為に卵を割ろうとすれば寒さに震える手が勢い余って卵を何個も潰し、上手く罅を射れる事が出来ても白身と分ける段階で卵黄を潰してしまう。卵黄の確報に成功する頃にはつららの背後に卵の残骸が山を形成していた。
「次は……材料を混ぜる……うぅう……さむぅ……。」
 どうにかして確保した卵黄と砂糖を泡だて器で混ぜようとするが寒さで震える身体では思う様に混ぜる事が出来ず、材料がボウルから零れてゆく。掻き混ぜ終わる頃にはボウルの中の材料はかなり減ってしまっていた。
「あぁー……暖かいですぅ……。」
 掻き混ぜた材料と牛乳、生クリームを鍋で煮込み始めればコンロの火の温かさの虜になってしまい、気が付けばコンロの中身は沸騰していた。
「後は冷やせば……完成で……す…………。」
 そして、嫌な予感を感じながらもつららがアイスの素を容器に詰め込み、雪原の寒さで冷やせばガチガチに凍った茶色い塊が出来上がった。それはだれが見ても茶色の氷塊としか認識できない失敗作であった。

「ふ、ふふふ……あはははははは!」
 雪原の中をつららの狂ったような笑い声が響き渡る。ただでさえ雪の降る中スク水姿でいる事によって多大なストレスに晒されていたつららの精神が料理の失敗という結果によって限界を迎えてしまったのだ。
 限界を迎えた精神を守る為に分泌された脳内麻薬がつららに多幸感を齎し、正常な思考を奪ってゆく。つららは焦点の定まらない眼で周囲を見渡すとある一点でその動きを止めた。
「うふふふふふ! わたしぃなんて無駄な事をしていたんでしょ~?」
 視線の先には周囲をアイス化した猟兵に囲まれて身動きの取れなくなったアイスゴーレムの姿があった。つららは立ち往生するアイスゴーレムに対して笑みを浮かべる。
「あのゴーレムでぇ……アイスを作れば良かったんですぅ!」
 アイスゴーレムに向けられたつららの笑みは狂気に染まっていた。


「まずは材料集めですぅ!」
 狂気に囚われたつららは普段からは想像できない程に軽快な動きでキッチンの一角に置かれた巨大な鍋にチョコやお菓子、蜂蜜等の甘いものを投げ込んでゆく。やがて、食材置き場から甘いものがなくなればつららは両手で鍋を持ち上げた。
 鍋はつららどころか大人が丸ごと入る程に大きく、大きさに見合った質量もあるのだがつららはまるで木の籠を持ち上げているかのように軽々と持ち上げている。それは脳内麻薬と不本意にも程がある衣装を着る事による強化がつららに尋常ではない身体能力を与えた結果であった。
「集めた材料を混ぜますぅ!」
 雪原中のキッチンから甘いものをかき集めたつららは鍋に火を灯すとキッチンの作業台の上に立つと巨大なしゃもじで鍋の中身を掻き混ぜてゆく。そして、火にかけられしゃもじで掻き混ぜられた甘いものは熱で溶けて混ざり合ってゆきやがてむせ返るような甘い香りを漂わせるとろみのある液体に変化した。
「特性シロップの完成ですぅ!」
 つららはシロップの詰まった鍋を再び持ち上げるとアイスゴーレムの元へと駆け出した。

「これ以上は……本当……無理……。」
 クリーメルは限界寸前であった。ここまで沢山の料理を食べた事によって齎された眠気によりクリーメルは最早意識を保つだけでも精一杯なのだ。
 そんな状態でキッチンに赴き料理を妨害する事など出来るわけがなく、最後の1体となったアイスゴーレムの足元に隠れるのが精いっぱいであった。
「なにあれ……鍋!?」
 眠らない様に必死に眠気に耐え忍びながら周囲を見渡していたクリーメルは巨大な鍋が接近している事に気が付いた。実際には鍋を掲げるように持ち上げたつららなのだが、鍋が大きすぎる為につららの姿は完全に隠れている。
 クリーメルは鍋の中身が料理ではないかと怯えゴーレムに迎撃を命じた。
「遅いですぅ! さぁ、特性シロップをぶっかけてあげますぅ!」
「いやぁ……なにこれ……甘ったるいわぁ……。」
 クリーメルの命令を受けたアイスゴーレムは鍋目掛けて拳を振り下ろすがつららはそれを跳躍する事により回避する。そして、アイスゴーレムの頭上まで跳躍したつららは鍋の中身をアイスゴーレムにぶちまけた。
 鍋の中身である特性シロップはアイスゴーレムとその足元に隠れたクリーメルに降りかかり、雪原に甘ったるい香りが広がってゆく。そして、特性シロップを全身に浴びたアイスゴーレムにつららは絶対零度の呪われた吐息を吹きかけてゆく。
「わたしぃの為に美味しいアイスになるですぅ! ふ~っ!」
 絶対零度の吐息はアイスゴーレムの関節部に潜り込んだシロップを凍結させてアイスゴーレムの動きを止めてゆく。そして、つららが着地するのと同時に関節を動かせなくなったアイスゴーレムの倒れ込む音が雪原に響き渡る。
「アイスゴーレムのシロップ掛けの出来上がりですぅ!」
 つららの視線の先には地面に倒れ込んだ衝撃でバラバラになったシロップ塗れのアイスゴーレムが横たわっている。無事にアイスゴーレムを料理する事に成功したつららは喜びの声をあげた。


「ふう、美味しそうなアイスになりましたねっ。後はクリーメルに料理を食べて貰えば……ひうぅっ!?」
 料理を無事に完成させた事により少しだけ平静を取り戻したつららは強烈な寒さに身を震わせる。
 実の所、正気を失ったつららが得ていた恩恵は身体能力の向上だけではなかった。つららに狂気を齎していた脳内麻薬は身体能力の向上に加えてつららの身を蝕む呪いを凌駕する程に温感を鈍らせていたのだ。
「さささ……さむすぎぃ……。」
 平静を取り戻した事によって脳内麻薬の分泌が収まったつららの身体は温感を取り戻していた。更に調理の最中激しく動いまわっていたつららの身体は汗に塗れており、結果としてつららは雪原に突入した時以上の寒さに襲われ身動きが取れなくなっていた。
「これじゃあ……クリーメルを探す所じゃ……ひあっ!」
 そして、つららにより調理されたアイスゴーレムはまだ完全に活動を停止していなかった。アイスゴーレムは残されたわずかな力を振り絞り唯一無事であった腕でつららを鷲掴みにするとつららの身体を捏ね繰り回し始めた。
「しまっ、まだ動けたの……あま……さむ……いぃ…………。」
 アイスゴーレムの手に掴まれたつららの身体は瞬く間にアイスとなりその姿を歪ませた。更にアイスゴーレムの手はつららが作った特性シロップに塗れておりその手に捏ね繰り回されたつららの身体にもシロップが練り込まれてゆく。
 そして、活動を停止したアイスゴーレムの手から甘い蜜が練り込まれた雪だるまの様なアイスとなったつららが零れ落ちた。

「うぅ……酷い目……あったわ……。」
 つららがアイスに成り果ててから少しして、アイスゴーレムの残骸からクリーメルが這い出してきた。その身体は特性シロップに塗れているが無敵化の影響なのか絶対零度の吐息に晒されたにもかかわらず凍り付いてはいなかった。
 周囲を見渡し、誰もいない事を確認したクリーメルは安堵するとアイスゴーレムの残骸に寄りかかった。
「もう……誰もいないわよね? これで漸く安心できそうだ……わ?」
 人がいないからにはこれ以上料理を食べる事がないと考えたクリーメルは森の中の拠点へと帰ろうとした。しかし、クリーメルの脚は動かず何故かその視線はアイスゴーレムの残骸に釘付けになっていた。
 この時クリーメルは自身の身体が目の前のアイスゴーレムの残骸を料理と認識してしまっている事に気が付いた。
「まって……あれはただの残骸よ……料理じゃないわ!?」
 クリーメルはアイスゴーレムの残骸を食べようとする身体を必死に抑えようとする。しかし、つららの完成宣言を聞き、完成した料理を目にしてしまったクリーメルの身体は止まらない。
 そして、アイスゴーレムの傍らに立ったクリーメルは懐からアイス用のスプーンを取り出すとアイスゴーレムを食べ始めた。
「あまい……あますぎるわぁ……。」
 様々な甘いものから作り出された特性シロップに塗れたアイスゴーレムは暴力的な程に甘かった。ただでさえ鈍ったクリーメルの思考が甘いという感情で埋め尽くされてゆく。
 それは常人ならとうてい食べていられない味であったが、アイスには尋常でないつららの狂気に満ちており食べるのをやめる事が出来ない。
「あっ……すやぁ……。」
 そして、ある程度アイスゴーレムの食べ勧めた所でクリーメルの眠気が限界を迎え、クリーメルは眠りに落ちた。


 雪原は静寂に包まれている。辺りには嘗てアリスや猟兵であったアイスが立ち並び、クリーメルはアイスゴーレムの残骸を枕代わりに眠っている。
 本来ならオウガが料理を食べて眠りについた時点で誰かが止めを刺さなければならない。しかし、この不思議の国の戦いにおいてはそれが不要であった。
「…………。」
 この不思議の国は常に雪が降り注ぐ極寒の国であり、極寒の中で対策なしに眠れば生物は低体温症を患い死に至る事がある。それが無敵化の解除されたクリーメルに適応されたのだ。
 極寒の中で眠りについたクリーメルは無敵化が解除された直後に重度の低体温症を発症し昏睡した。そして、そのまま筋肉硬直と心室細動によってクリーメルは永遠の眠りにつき骸の海へと還っていった。
 こうして雪の降り注ぐ不思議の国の戦いは終結し、後には無数のアイスだけが残されるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月22日


挿絵イラスト