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心待ちの絶望

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●温泉郷の眠り子
 帝都から半日程、東北方面へ鈍行列車で揺られていくと、少しばかり規模の大きな温泉地がある。
 湯煙と古い町並みで独特の情緒を醸し出しているその温泉郷を、三人の親子連れが湯治に訪れていた。

「母様、ここの温泉に浸かればきっと病気も良くなりますよ」

 夕刻──温泉旅館が建ち並ぶ石畳の路面をのんびり歩きながら、少年が母親に振り向いた。厳密にいえば、その女性は血の繋がった母親ではなく、継母だった。
 だが、少年にとっては本当の母親として愛しい存在だった。
 女性は不治の病に侵されており、余命は後数年程度と医師から宣告されていたが、この温泉郷の湯が女性の患っている病に良く効くということで、親子三人で帝都から足を延ばしてきた。
 少年は明るく気丈に振る舞ってはいるが、愛する母と、後数年で今生の別れをしなければならぬという事実は到底、受け入れられなかった。
 だからこそ、少年の父は妻の為に方々を調べ回って、漸くこの温泉郷に辿り着いたのである。
 いつまでも親子三人で末永く、幸せに生きてゆく為に。

 ところが、事件が起きた。
 少年が、温泉旅館内でいきなり何の前触れも無く、意識を失ってしまったのである。
 両親は慌てて温泉郷の地元医師を呼んで診察に当たらせたが、少年は昏々と眠り続けるばかりで、全く意識を回復させる気配を見せなかった。

●所在不明の影朧
 グリモアベースのブリーフィングルーム。
 呼び集められた猟兵達は、ティーカップを片手に黒板前で首を捻っているアルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)に早く話を進めろと、口々に文句を並べていた。
 セバロスはそれでも尚、数分程度は悩ましげな表情を浮かべて低く唸り続けていた。

「う~ん、やっぱり何か、引っかかるんだよなぁ」

 これ以上考えても結論は出ないと意味不明なひとり言をこぼしてから、そこで漸く、セバロスは猟兵達に振り向いた。
 如何にも、腑に落ちないといった様子だった。

「帝都から少し離れた温泉郷で、少年が意識不明になった。ただ、その温泉郷自体には影朧がもともと潜んでいたっていう気配は無いんだよね。でも、存在自体は感じるんだよ」

 猟兵達も顔を見合わせた。セバロスが、何をいっているのかよく分からなかった。
 だが少年が眠り姫の如く意識を失ったことと、影朧の気配が結びついていることだけは間違いない。そして更に、セバロスは奇妙な説明を加えた。

「少年は、正体不明の影朧からおかしな具合に執着されている様子でね。理由は分からないけど、兎に角相当なご執心のようだ」

 その影朧の出現が少年の昏倒と何らかの関係がある、とセバロスは断定した。
 先ずは温泉郷で、少年を監視すること。
 しかし下手に影朧絡みで動けば、湯治客の足が遠のいて温泉郷には経済的な打撃となり得る。だから、猟兵であることを知られずに監視活動に入る必要があった。

「ま、ちょっとした湯治旅行と思って、望んでくれたら良いよ。勿論、お仕事も忘れずにね」


革酎
 こんにちは、革酎です。

 今回は、温泉郷に潜む影朧との戦いが主筋となります。
 少年が突然意識不明となったことと、影朧が密接に関係しているということですが、これが何を意味するのかは現時点では分かっていません。
 そこでまず湯治客や他の一般人を装って温泉郷に足を運び、影朧の出現を待ちながら少年を監視して下さい。いずれ遠からず、影朧が姿を現すでしょう。

 第一章は、影朧の出現待ちです。不自然にならないよう、一般人として温泉郷に溶け込んで下さい。
 第二章は、集団戦です。黒幕が放った影朧の群れが襲い掛かってきます。
 第三章は、ボス戦です。遠慮無く倒してしまいましょう。
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第1章 日常 『夜櫻温泉郷』

POW   :    熱い湯でも関係ない。じっくりと、入って温まろう

SPD   :    効率のいい入り方で、じっくりと疲れをとろう。

WIZ   :    人目を気にせず、のんびりと入ろう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

浅海君・惟春
たまの休暇で湯治に、と思えば、影朧の気配、ですか。
いえ、微力ながらご助力いたしましょう。

気配なく存在感だけが漂っている、と言うことはまだその旅館の中に影朧はいない。前触れもなく倒れる、ということは、ここまでの途中で既に少年に仕掛けを打ったのでしょうか。
ともかく、思惑が読めない事には軽率には動けませんね。

気を詰めすぎるのも却って動きが鈍りますね。近くの宿で気配を探りながら、湯治で体を整えておきましょう。
何か、お部屋に甘味を用意してもらい、浴場へ。
秋と言えば実りの秋。思わず口が潤ってしまいますね。
湯に浸かっている間に事件が進展して、お預けにならないよう祈りばかりです。

アドリブ連携歓迎


外邨・蛍嘉
アドリブ歓迎。

んー、その少年、影朧に魅入られてるってことかな?幽霊でもそういうことあるし、見たことあるよ。
それに、その家族構成…。いや、今は先入観持つべきじゃないね。

となれば、自然にしながらの監視だね。私は湯治客だよ。年齢的にもおかしくないはずだしね。
『藤流し』は隠し持ってもわからないだろう。それ以外は、不自然にならない程度に部屋に置いておこうか。

…しかし、いい温泉郷だね。故郷を思い出すよ。
監視しつつも、しっかり温泉は楽しんでおこうか。
…しっかし、やっぱり…気になるねぇ…。


水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
持ち込まれた可能性が高いのでしょうか。意図的であるなら、行動を妨害される可能性もありますね。警戒しておきましょう

案内人の類を探して声をかけます。
「私、実は医師でして。不治の病に効くと伺い、医学の発展の一助になればと参りました。宿を案内頂けませんか?」
宿帳にも医師であることを明記。意識不明の方がいるなら診察を頼まれる可能性は高いはず。UCを使用し、医学的見地と異なる異常部分を判別し手段を推測します。ご両親からも意識を失った時の状況を詳しく聞いておきます。影朧の情報に繋がると良いのですが。
「すぐに、というわけにはいきませんが、必ず意識を取り戻しますよ。安心してください」


臣上・満澗
アドリブ連携ご自由に

ゆっくりと、というのも久々か。束の間の休息だが、満喫するとしよう。

そうだな、事件の温泉宿……いや、見張るには、隣か、向かいの宿に部屋を取っておこうか。
出来るだけ外の音が聞こえるように、露天の風呂があれば良い。

冷えるようになってきたな。
夜桜に秋の風、湯の煙。ああ、風情だ。
来る冬の雪の重さを思うと億劫だが、夏よりは過ごしやすい。

っと、想いに耽ってばかりはまずいな。

他の猟兵がいれば情報交換を、一般客がいれば軽く話を聞いて距離をとろう。爪が届く距離に居たくはない。

……人は多いだろうな。月が明るくなければ良いが。


アイ・リスパー
「少年を監視するために温泉郷で監視活動ですか。
猟兵だと気付かれないように細心の注意を払わないと」

温泉饅頭を食べながら、温泉街を散策してみますね。
むむ、あっちの足湯とか怪しいですね。
体験して調べてみないと!

「んー、いい湯加減ですねー」(お仕事忘れてる)

足湯だけでもこれだけ気持ちいいのです、きっと宿の温泉は最高に違いありません!
早速、高級そうな宿にチェックインして浴衣に着替えてリラックスです!
必要経費は帝都桜學府持ちですよね?
タダならば、全力で楽しむとしましょう!

「んー、この露天風呂、気持ちいいですねー!
胸が大きくなる効能とかないですかねっ」(ありません

……あれ、私、何しに温泉に来たんでしたっけ?



 その温泉街は、山間を流れる清流に寄り添うようにして、ひっそりと鎮座していた。
 街道から集落へと入る街の玄関口には、ようこそ白桜温泉へ、という看板が湯治客を出迎えてくれる。そこかしこでもうもうと立ち上がる湯煙が、風に舞う白い桜の花吹雪に似ていることから、白桜温泉と名付けられたということらしい。
 温泉街に足を踏み入れ、綺麗に整った石畳の街路をのんびり歩きながら、外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は僅かに目を細めて左右を見渡した。
「良い温泉郷だね。故郷を思い出すよ」
「風情のある街並みって、良いですねぇ。さぁ、どこから攻めていきましょうか」
 たまたま温泉街の入り口で連れ合いになったアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)も、温泉で先ずはゆっくりしようと頭の中であれこれプランを練っていた。
 土産物屋に隣接する茶屋で購入した温泉饅頭を片手に、やれ足湯が怪しいだの、やれ高級そうな旅館は見捨てておけないだの、完全に旅行気分丸出しではしゃぎ回っていた。
 一方、蛍嘉はアイのはしゃぎっぷりに苦笑しつつも、内心では別のことを考えていた。
(しかし件の少年と、その家族……何だか、気になるねぇ)
 猟兵の任務として監視せよとの依頼を受けているのだから、気になるのは当然だ。だが蛍嘉が心の内で抱いているのは、仕事に対する責任感とは別のところから湧いてくる一種の疑問といって良い。
(まさかねぇ……でも、あり得ない話ともいえないかな)
 まだ実情は何ひとつ分からない。兎に角、湯治客を装って自然に振る舞い、少年とその家族が逗留している宿とその近辺を監視するところから始めなければならないだろう。
 年齢的にもおひとり様での湯治は決して、不自然ではなかったのだが、偶然に若い連れ合いが出来たことで、極自然に客のひとりとして振る舞うことが出来るだろう。
 さて、一方のアイはといと──。
「こちらのお宿が、良さそうですよ~」
 アイが呑気に、蛍嘉を手招きしていた。必要経費は全て、帝都桜學府持ちだということに対して何度も念を押して、この温泉郷を訪れたアイである。
 全力で楽しもうという魂胆が見え見えであった。

 アイと蛍嘉が宿泊帳に記帳しているその傍らを、先に宿泊客として同じ旅館に部屋を取っていた浅海君・惟春(帝都桜學府所属ホテルズドアマン・f22883)がのんびりと通り過ぎてゆく。
 つい先程まで部屋で甘味をじっくり堪能し、実りの秋を楽しんできたばかりである。惟春は続いて、裏手にある大浴場へ足を運ぼうとしていた。
(いやはや……実に豪勢で、それでいて雰囲気のある良い旅館ですね)
 マシュマロのように柔らかそうな頬を満足げに緩ませながら、惟春は大浴場へと続く廊下をのんびり進む。
 しかし、ただ湯治を愉しむだけではない。惟春は件の少年の身に起きた謎の現象に、思案を巡らせていた。
(前触れも無く突然倒れるということは……道中既に少年に対して何らかの仕掛けを打ったのでしょうか)
 誰が一体、何の為に。
 惟春はまだ情報が少な過ぎる時点では軽率に動くべきではないと判断し、先ずは敵の出方を待つことにしていた。
 脱衣所から、手拭い以外のものを全て取り去って大浴場から露天風呂へと進む。
 僅かに傾き始めた陽光に手をかざしながら進むと、見るからに猟兵と分かるひとりの巨漢が、割りと熱めの湯に涼しげな表情で浸かっている姿が見えてきた。
 臣上・満澗(月の獣・f22984)であった。
 恐ろしく鍛えに鍛え抜かれた素晴らしい体躯の持ち主であったが、実は穏やかな書生という意外な面を持つ満澗ではあったが、この場は猟兵らしく静かなる緊張感を漂わせている。
 温泉客を装ってのんびりと気楽な雰囲気を醸しているが、その瞳の奥には僅かな気配の変化も決して逃さぬという集中力が見え隠れしていた。
「冷えるようになってきたな」
「しかしながら、その寒さがまた気持ちの良いもので……」
 満澗の笑みを受けて、惟春は軽く会釈を返しながら湯舟へと身を沈める。一気に疲れが吹っ飛ぶような心地良さが、何ともいえぬ倦怠感を生んだ。
「件の少年の宿には、誰か向かっているのか?」
「お医者の猟兵がひとり、潜入を果たした模様です」
 休暇中でありながら、ついついドアマンとしての丁寧な態度が僅かに滲み出てしまう惟春。しかし満澗は然程に気にした様子も無く、小さく頷いて天を仰いだ。
 透き通るような青空は次第に、紫を帯びた夕刻の天へと色合いを変じつつある。幸い、今夜は新月のようだ。満澗にとっては動き易い夜となりそうだ。
「夜桜に秋の風、湯の煙……実に良い風情だ。来る冬場の雪の重さを思うと億劫だが、夏よりは過ごし易いだろうな」
「夏の温泉も、それはそれで良いものですけども。湯上りの氷菓子は最高ですよ」
 惟春の予想外の返しに、満澗は軽く笑った。

 件の少年とその両親が逗留している宿は、惟春と満澗が湯の熱さを堪能している露天風呂から、丁度裏手の塀を一枚隔てただけの、僅かな距離に位置していた。
 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は、温泉街の案内人に連れられるままに、その宿の奥へと足を踏み入れてきた。
 一見すると年若い青年の怜悧だが、人格ロキが表面に出ている今は、その見た目以上に落ち着いた、成熟した大人の雰囲気が漂っている。
 今回、怜悧は医師として不治の病に効くと噂を聞きつけ、この温泉街を訪れたという体であったが、同時に昏睡中の少年に、極々自然に近づける身分でもあった。
 その目論見通り、少年の両親が怜悧の室を訪ねて来て、我が子を診て欲しいと懇願の声をあげた。
「良いでしょう。ご案内願えますか」
 怜悧は少年が眠り続けている部屋へと通された。心なしか、室内の空気が妙に澱んでいるように感じられたのだが、影朧の気配といい切れるだけの判断材料は無い。
 兎も角、まずは少年を診てみないことには分からないと、怜悧は布団の傍らへと腰を落ち着けた。
(成程……)
 怜悧は、すぐに原因を見切った。少年は、特殊な力を持つ影朧の精神制御下にある。だが、影響を受けているのは飽くまでも精神のみで、肉体には何の害も無い。
 但し、犯人たる影朧を討伐しなければ、少年は永遠に眠り続けることになるだろう。問題は、その影朧がどこに潜んでいるのか、であった。
「先生、如何でございましょう……?」
「ご安心を。直ぐに、という訳にはいきませんが、必ず意識を取り戻しますよ。どうぞご安心を」
 勿論、この応えには必ず自分達猟兵の手で原因となっている影朧を討伐してみせる、という暗黙の意思表示がその根底にあるのは間違い無かったのだが。

 女湯の方から、嬌声が響いてきた。
 アイが露天風呂に勢い良く飛び込んだのだが、男湯に居る惟春と満澗には、ただ元気な娘が露天風呂ではしゃいでいるようにしか聞こえなかった。
「んー、良い湯加減ですねー。とっても気持ち良いですー。胸が大きくなる効能とか、ないですかねっ」
「……流石にそれは、聞いたことないねぇ」
 アイに応じた声は蛍嘉であった。
 全く湯に入らぬというのも湯治客として不自然だからと、一応浴場に足を運んだものの、然程に長い時間、湯に浸かる意図は感じられなかった。
 その時、惟春と満澗は旅館の玄関方向に影朧特有の黒い気配の様なものを感じた。
 女湯の方でも何か勘づいたらしく、先程までの嬌声が嘘のように、ぴたりと声がやんだ。
 どうやら、敵も徐々に姿を見せようとしているらしい。
「……やれやれ、折角のんびり出来ると思いましたのに」
 惟春は至極残念そうに、湯船から体を引き上げた。

 自室に戻った怜悧も、同様の気配を素早く察知していた。
 影朧本人か、或いはその眷属が、温泉街の街路付近を彷徨っているような気配が感じられる。確実に迎撃するには、旅館を出る必要がありそうだ。
「……ひとつ、御尊顔を拝見といきますか」
 軽く呟きながら、怜悧は腰を浮かせて廊下へと出た。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

御園・桜花
「知りたい、のではないでしょうか。何がと言われれば困りますが。敢えて言うなら…ふしあわせにならぬ理由かも、と思います」
「私、もしかしたら会っているかもしれませんので。居場所等分かったら、お互い連絡しあうのは如何でしょう」

逢魔ヶ辻で消えた記者の関与を疑う
図書館等で小笠原菊子名義の本を探し借り受け
足湯や立ち寄り湯を回りながら、著作時期順で一気に流し読み
但し後書きや解説等はじっくり読む
自分が猟兵とばれていることを考え、UC「蜜蜂の召喚」で家族の動向を探らせるも自分は近づかない

「武幸くん自体に憑いたか、家族を俯瞰しているか。どちらかのような気がしますので、そういうところを探っておきますね」



 まるで温泉街全体が霧に覆われたかのような錯覚を受けたが、そうではない。
 湯煙だ。各温泉旅館や足湯所、或いは源泉棟から漏れ出る湯煙が、温泉街の街路や上空を乳白色に染め上げているのである。
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、築百年以上は数えるであろう古い旅館の数々を左右に眺めながら、しかし決して旅行気分には浸らず、己が全うしようとしている任務についてのみ、思考を巡らせていた。
(知りたい、のではないでしょうか。何がと言われれば困りますが。敢えて申し上げるなら……不幸せにならぬ理由かも、と思います)
 この白桜温泉を訪れる前に、桜花は思うところがあって、帝都某所にある図書館を訪れていた。
 そこで、ある女流作家の書籍を片っ端から選んで借りてきた。桜花はそれらの書籍を一冊ずつ手に取り、足湯や休憩所を訪れながら流し読んでいた。
 内容もさることながら、桜花が特に気にかけたのは、あとがきや解説といった、本編以外の部分であった。
(私……もしかしたら会っているかも知れませんね)
 グリモアベースで説明を受けた時から、そんな予感が胸中に湧き立っていた。
 だがその為には、ある人物の動向を探らねばならない。果たして、この地に来ているのかどうか。
 その為に桜花は温泉客を装いつつ、自身の手足となる蜜蜂を召喚し、温泉街を縦横に奔らせていた。
 そして、見つけた。
 見覚えのある記者風の男が、複数の影を従えて、とある温泉旅館前に佇んでいたのである。となると、昏倒した少年が誰なのかも、自ずと特定出来るというものだ。
 矢張り、件の少年とは武幸少年だったのだ。
(武幸君ご本人に憑いたか、或いは……家族を俯瞰しているか)
 だが、事態はどうやら、そうのんびりもしていられない状況に転がりつつあるようだった。記者風の男が従えている複数の影とは即ち、影朧だったのだ。
「ご夫人はご子息を失うと同時に、ご主人をも失うことになる」
「それが……俺達を呼んだ理由か」
 影朧は、記者風の男に仏頂面を向けた。
「あんた方は殺戮が大好きだ。そして俺は、殺めて欲しい御仁が居る。利害一致じゃないか」
「何が望みだ?」
 影朧のうちの一体が、くぐもった声で訊いた。記者風の男は、口角を吊り上げた。
「絶望だよ。ご夫人の絶望を、心待ちにしている。影朧に身を墜とす程の絶望をね」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『『夜香影』灼岩』

POW   :    攻勢活性
【傷を得ても即時強化回復する超活性状態】に変形し、自身の【寄生先、その人体の限界】を代償に、自身の【戦闘能力】を強化する。
SPD   :    迅速石火
【自壊する程に速度へと自己強化を施す】事で【高速かつ高機動の戦闘状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    鎧纏防壁
対象の攻撃を軽減する【溢れた血液を、自在に凝固融解し武装】に変身しつつ、【自己強化した体術と作り出した武装】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「何だろう……玄関の方が騒がしいが……少し、見てこようか」
 昏々と眠り続ける少年の傍らで、父親が腰を浮かしかけた。が、母親がその膝元をそっと手で押さえた。
「わたくしが見て参ります。あなたはどうか、武幸の傍についていてあげて下さいな」
 そういって、母は廊下に出て、温泉旅館の玄関へと向かった。
 歩を進めるごとに騒ぎがどんどん大きくなってくるのが分かる。
 同時に、胸の奥から突き上げるような不安が、次第にその勢いを増していった。
 やがて──不安の正体が分かった。
 温泉旅館の玄関口から街路付近では、温泉客や旅館従業員らが恐怖にまみれた形相で、逃げ惑っていた。
 不気味な影が、そこかしこで徘徊していた。
 ひと目見て、それらが影朧であることが分かった。同時に、母はその影朧の群れの中に見覚えのある顔を見つけた。
「やあ、奥さん。あんたをこっちの世界にご招待しようと思ってね。ご主人と坊っちゃんを、始末しに参りましたよ」
 それは、愛してやまない夫と息子を彼女から奪ってみせるという、死の宣告だった。
外邨・蛍嘉
(衣服もろもろを整えて)
ああ、やっぱり。外邨家の仕事は終わってはいなかった。続いてたんだね。

私がここに来たのは簡単な理由さ。『私は相手を知っている、相手は私を知らない』んだよ。
あのときは、半ば弟子の身体乗っ取りだったからねぇ…。今ここに兄がいないのもそれが理由さ。兄は知られてるし。

生命力吸収とUCつきの『藤流し』を投擲しての攻撃だよ!
こちらの攻撃を軽減する。言い換えれば軽減しかできない。
私のこれ、傷をつければいいんだよ。この傷は癒せないしね。不幸はね、連鎖するんだよ…!
攻撃は第六感で避けるよ。


水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
狙いは旦那さんとお子さんですか。20cm程の妖精人形に意識を移します
「護衛はこちらで。外は任せます。ヒトは食べちゃダメですよ」
言い含めて部屋へ戻ります。羽はUDC液体金属ですから盾に使えますし、魔銃から水砲を撃ち攻撃も出来ることを伝え、落ち着くよう声をかけておきましょう。宿の方もなるべく同じ部屋に集まっていて貰います。

人格:アノン
「わーってるっての」
ロキに返し、UDC液体金属で耳と尻尾、爪を象ると外へ。
「何か熱そうなヤツだな」
高速攻撃を真正面から迎え撃つ。熱は激痛耐性で耐え、怪力で掴んで投げ飛ばす
「ハハッ、脆ェ!」
自壊している部分を殴り壊して仕留めるぜ



 温泉旅館の玄関口から、衣服を整え終えた外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)が落ち着いた足取りで石畳の街路へとゆっくり進み出た。
 白い湯煙の中を、颯爽と進み抜けてゆく。路地を廻り込み、一分とかからずに影朧の群れが屯する件の温泉旅館前へと到達する。
(私で正解だったね)
 影朧の群れの中に、見覚えのある記者風の男の顔を見た。向こうは、蛍嘉の存在に気づいていない。
(あの時……相手は私の顔を見てなかったからね)
 だからこそ、敢えて蛍嘉ひとりで問題の少年の監視に就いた。
 その判断は正しかった。他の影朧共も、蛍嘉を逃げ惑う温泉客のひとりだと認識しているらしく、全くといって良い程に警戒心を向けてこなかった。

 旅館内。
 外の騒ぎとは裏腹に、少年が眠り続ける室内は静かなものだ。だが、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は既に敵の到来を察知していた。
 怜悧は傍らに妖精人形を置いた。すると見る見るうちに、その妖精人形の肌に血色が満ちてきて、両の瞳の意思の輝きが灯った。
 人格ロキが、妖精人形へと意識体を移動させたのである。
「護衛はこちらで……外は任せます。ヒトは食べちゃ駄目ですよ」
「わぁーってるってぇの」
 怜悧本体の肉体内で覚醒した人格アノンが、面倒臭そうに手を振った。その指先にはUDC液体金属で模られた鋭利な爪が伸びている。
 否、獣の耳や尾も同様に、UDC液体金属が造り出していた。
「他の方々も、さあこちらへ」
 妖精人形姿のロキに対し、最初は驚きを隠せない従業員や温泉客達であったが、どうやら怜悧がユーベルコヲド使いであると理解し始め、ロキの言葉に従って一室内に身を寄せる様になっていた。
 一方、アノンは大型の肉食獣の如き俊敏さを発揮して、一気に温泉旅館の玄関先へと飛び出した。
 そこに、少年の母が膝から崩れ落ちて座り込んでいる姿が見えた。
「ひとつ物語を披露しようか」
 記者風の男が、人格アノンの鋭い眼光を真正面から受け止めつつ、口角を吊り上げた。
「ある女が、親友を死に追いやった。女は親友の死に責任感と罪悪感を感じ、その親友の子を継母として育てることにした。ところがその親友の子は、女を本当の母として慕う様になった」

 記者風の男の死角へと廻り込みながら、蛍嘉は藤色の棒手裏剣を手早く放った。
 手近で身構えていた影朧が、完全に虚を衝かれて蛍嘉の奇襲を浴びる。即座に受けた傷を回復しようと目論んだ影朧だったが、しかしすぐに、驚愕の表情で傷口を凝視した。
「生憎だね。私のこれ、傷さえ与えられれば、それで良いんだよ。何せ、絶対に癒せないからね。不幸ってのは連鎖するもんだよ」
 影朧は怒りの咆哮を轟かせて蛍嘉に迫ろうとしたが、蛍嘉が更に放った棒手裏剣が脳天へと突き刺さった。怒りに我を忘れなければ、簡単に躱せただろう。
 だが、蛍嘉のいうように不幸が連鎖した。影朧はその場に昏倒した。

 人格アノンが操る怜悧の体躯は、超人的な速度で影朧の群れの間を駆け抜けた。そのうちの一体が、機関車にでも撥ねられたかのような勢いで弾かれ、石橋の欄干へと叩きつけられた。アノンの怪力で、瞬く間に一体が屠られた格好であった。
「ハハハッ! 脆ぇッ!」
 更に別の一体がアノンの背後に廻り込もうとしていたが、それよりも早くアノンが空手でいうところの貫手の形に揃えた爪先で、その影朧の脆くなった肩口を一撃で貫いた。
 だが、敵の数はまだまだ多い。
 蛍嘉やアノンが一部の個体を仕留めている間に、他の個体がのっそりとした足取りで旅館内へ踏み込もうとしている。その全身から放出される炎熱が、木造の旅館に劫火を張り付けようとしていた。
 このままでは旅館全体が炎に巻き込まれ、他の温泉客や従業員もろとも、少年とその両親を焼き尽くしてしまうだろう。
 記者風の男は尚も、語り口を止めない。
 まるで己が、今回の事件の語り部だといわんばかりに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御園・桜花
「お可哀想に。物書きになれず、物書きに憧れ、物書きとその家族を不幸にして、自分が上回ると思いたかった。怪我が治るように、ヒトの悪意はヒトの善意で止められると知らぬまま。影朧の貴方も…ヒトの善意を、知るべきだと思います」


「奥様、悪いのは悪を為す人です!此処で座り込んでいては武幸くんも旦那様も守れませんよ」
彼女をしっかり抱えあげUC「精霊覚醒・桜」
武幸くん達の所まで飛ぶ
攻撃は第六感や見切りで躱す

「仲間が逃がした筈ですが、部屋を確認してから避難します」
「貴女が武幸くんの母です!菊子さんもそれを知って逝かれました!貴女が母として妻として家族を支えなければ、誰が家族の心を支えるのです?」
抱き締め勇気づけ


浅海君・惟春
【連れ行き】

あ、そのままでは!
仕方がないですね、フレーバーでオール・ワークス発動して、羽織を投げ渡します。

光陰流水で敵の動きを苛みます。出来れば火の手も。
ええ、私とてお客様をお迎えする身。焦げた店先など許してはおけません。
この屋構いにもさまざまな方が想いを込めたもの。捨て置くことなどできません。

あなたの助けとなりましょう。一言二言交わしただけの彼ですが、信頼には足りるでしょう。

彼が動きやすいように、桜吹雪で破魔の制圧射撃。
少しでもあの家族が逃げられるように。そして逃げる彼らを追う大元をあぶりだすように。

誠心誠意努めましょう。
この身果てようとも。

アドリブ歓迎です。


臣上・満澗
【連れ行き】
 人、人、人。
 殺すべき、殺して良い人間だ。

 月が満ちていれば、狂気のままに飛び出していただろう。だが幸いの新月。
 投げられた羽織を手早く腰に巻いて、我先に灼岩へと突っ込み『月食ミ』巨大な獣の腕で【薙ぎ払う】。
 旅館に隣接する場所を破壊し延焼を防ぎながら、【怪力】で灼岩を殺す。

 湯で会った猟兵。時を止めたのか、いや、遅くなっている。
 なら、確実に対処していこう。狙うのがあの母親、そして父子を害する事なら、この雑兵どもをのさばらせて置けば、彼らの逃げ場を失う。

 己が傷を受けようと火に焼けようと、殺し尽くす。
 笑う。
 ああ、殺していいんだな。

アドリブ歓迎



 露天風呂の男湯でも、猟兵達が影朧出現を気配で察していた。
 湯舟から勢い良く飛び出す、臣上・満澗(月の獣・f22984)。
 無駄を一切省いた筋肉の峰が、街燈が灯す仄かな光の中で神々しく映える。だが流石に一糸纏わぬ姿で戦場に躍り出るのはモラル的に問題があろう。
「あ、そのままでは……これをッ!」
 同じく露店の浴槽から飛び出した浅海君・惟春(帝都桜學府所属ホテルズドアマン・f22883)が、満澗に羽織を投げて寄越した。満澗は惟春から受け取った羽織を半ば無意識のうちに腰回りへと巻き付けながら、街路へと走った。
(ひと、ひと、ひと……)
 殺すべき、否、殺して良い人間が居る。
(いや、人間ですらないか)
 満澗は相手がひとならざる影朧であることに、内心で苦笑を漏らす。今の満澗には、冷静に己を省みるだけの余裕があった。
 月が出ない新月の夜。それが満澗には幸いした。敵は裏手の旅館に集結しつつある。そのまま何の迷いも無く湯煙の中を駆け抜けていった。
 それから少し遅れて、薄手の浴衣で手早く身支度を整えた惟春が、後に続いた。
 街並みのそこかしこで、火の手が上がり始めている。影朧共の放つ灼熱が、風情ある温泉街を焼き払おうとしているのだ。
(私とて、お客様をお迎えする身……焦げた店先など、許してはおけません)
 古い旅館の数々は、その屋構いに様々なひとびとの想いが、込められている。惟春にとっては決して、捨て置くことが出来ない事態だった。

「奥様、どうかお気を強くお持ちになって」
 旅館の軒先で膝から崩れ落ちた格好のままで項垂れていた母親を、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が傍らから強く抱きしめ、そしてゆっくりと立ち上がらせた。
(お可哀想に……物書きになれず、物書きに憧れ、物書きとその家族を不幸にして、自分が上回ると思いたかった。怪我が治るように、ヒトの悪意はヒトの善意で止められると知らぬまま……)
 憐憫の色が、桜花の瞳の奥に宿る。
 甘いといわれようが、構わない。桜花には、全ての者を優しく包み込む情の強さがあった。
 影朧でさえも、ひとの善意を知るべきだというのが、桜花の訴えであった。
「奥様、悪いのは害を為し、ひとに不幸を与える者です! 此処で座り込んでいては、武幸君も旦那様も、守れませんよ!」
 そんな桜花の叱咤を打ち消すかのように、影朧の一体が間合いに踏み込んできた。が、桜花は僅かにも動じることなく、鋭い眼光を敵に向けた。
「我は精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさん!」
 直後、渦を巻いた桜吹雪が敵の視界を遮った。その間に桜花は、母を抱きかかえたまま旅館内へと一気に走った。
「仲間が逃がした筈ですが、部屋を確認してから避難します!」
 桜花の強い口調に、母は漸く意思の光が灯る視線を返してきた。
「貴女が武幸くんの母です! 菊子さんもそれを知って逝かれました! 貴女が母として妻として家族を支えなければ、誰が家族の心を支えるのです?」
 思いがけない名を突きつけられ、母は驚くと同時に、いよいよその瞳に強い意志を宿し始めた。
 何としてでも、夫と息子を守り抜く──か弱い女ではなく、家族を守る母としての使命感が湧き起ころうとしていた。
 不意に縁側から漆黒の巨体が飛び込んできた。敵が一体、先回りしてきたのだ。
 が、その直後、妙な現象が生じた。
 敵の動きが極端に鈍り、まるで壊れた活写映像のように、動作が遅くなっていた。

 旅館前の街路では、満澗が影朧の群れをその怪力で次々と薙ぎ倒していた。
 その勢いで旅館に隣接する家屋の一部を破壊し、延焼を同時に防いでいた。極めて冷静な計算の上に成り立った戦闘であるといって良い。
(む……湯で会った猟兵、時を止めたのか)
 敵の動きが極端に鈍っているが、完全に動作が停まった訳ではない。
 光陰流水──惟春が仕掛けた時間結界の中では、敵の動きは極度に制限される。特に速度は、致命的なまでに抑え込まれるのだ。
 桜が舞い吹雪く中で、敵は動こうにも動けない。満澗の破壊的な力の到来を、ただじっと見つめながら待つしか無いのだ。
(あの母親は、無事に脱したか。残るはこの雑兵共……父子を害するならば捨て置けん)
 敵の肉体が放つ劫火の如き炎熱にも耐えながら、満澗は敵を葬り続ける。
 その傍らで惟春は、じっと精神を集中させる一方で、記者風の男の存在に気づいた。
(あれが、黒幕ですね)
 猟兵としての直感で、即座に見抜いた。そしてその男の全身から噴き出る瘴気に、ただならぬ強さを感じた。敵としては相当に手強いと見て良いだろう。
(ですが、誠心誠意、努めましょう。この身果てようとも)
 惟春は奥歯を噛み締めて、腹を括った。
 敵もまた、惟春を真正面から見据えている。厄介な敵だと認識したのだろう。
 その時、旅館の裏手方向で大勢の足音が聞こえた。恐らく桜花が、旅館内で息を潜めて隠れていた客や従業員らを脱出させたのだろう。
 当然その中には、あの親子も含まれている筈だ。
 その証拠に、記者風の男の顔色が見る見るうちに怒りのどす黒い色へと変貌していった。出来ればすぐにでも追跡したいのだろうが、惟春の結界の中では思う様に動けない。
 猟兵達の連携で、この場は完全に影朧との純粋な戦場と化した。
 やがて、炎を放つ影朧は一体残らず、動かぬ骸となって屍の海を広げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『超人ゲオルグ』

POW   :    超・イービルアイ
【奇石「宙の眼」から超エネルギー光線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    超・クレアボヤンス
技能名「【追跡・暗視・視力・情報収集・失せ物探し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    超・パイロキネシス
【奇石「宙の眼」による千里眼】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【体内から発生する凄まじい業火】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ユーベルコヲド使い共め、余計なことをしてくれる……。
 折角、もう少しで新たな仲間を迎え入れることが出来たというものを。
 こうなれば、貴様ら全員を始末し、改めてあの女に絶望を植え付けるとしよう。
 絶望は、我等の同属を容易く生み出してくれる。
 例え憎悪の矛先が誰であろうと、構わぬ。
 愛する夫と息子を殺した俺を憎む余りに、その負の感情で己の理性を焼き尽くす。そうやって我等の同属へと墜ちさえすれば、それで良いのだ。
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
引き続きご家族と宿の方々の護衛をします。追い付かれないよう誘導しましょう

人格:アノン
憎悪だか何だか知らねェが、ぜってームリだ諦めろ。なんせロキが付いてるからな。んなことより殺しあいしよーぜ
「てめェの相手はオレだ、無視してんじゃねーぞ」
引き続き人狼のような姿で敵の前に立ちふさがる。それでも追うってなら容赦しねェ、殺気を放って恐怖を与え、怯んだところを狼の腕で額の石をぶん殴る。何か勘で殴りやすそうだったからな
そのまま怪力で掴んで柔らかそうな場所を喰い千切るぜ
「でけェのは喰いでがあってイイよなァ、ヒャハハハハ」


外邨・蛍嘉
(敵なので、二人称は『あんた』になっている。仲間へは『キミ』)
とらぬ狸の皮算用って言葉、あんたに送るよ。

さて、グリモア猟兵と兄任せられてるんだ、負けるわけにはいかないさね。
早業で藤流し(UCつき)を投擲。傷がつけばいい。
不幸の連鎖もそうだけど、ダメージ蓄積もできるからね。
業火は気合いで耐えるしかないんだよね。まあ、その間も投擲攻撃して生命力吸収するんだけれど。

…強い恨み、憎悪…それを抱いて絶望しながら死んだとして、必ずオブリビオンになるわけじゃないよ。
…あんたの目の前にいるだろう?オブリビオンに対して強い憎悪を抱き死にながらも、猟兵である者が。



「さぁ、今の内です。行きましょう」
 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)から分離した妖精人形姿の人格ロキが、大勢の旅館客や従業員を引き連れて温泉旅館の裏手へと抜けようとしていた。
 武幸少年とその両親も、硬い表情で人格ロキの後に続いている。今は何も考えず、人格ロキの言葉に従っていれば良いと腹を括っている様子だ。
 既にある程度の安全圏まで抜けることが出来たが、まだ油断はならない。敵は、遂に本性を現したのだ。
 後方で、木造建築が派手に壊れる音が響いた。
 ひとびとは不安げな表情を浮かべていたが、しかし誰ひとりとして足を止める者は居なかった。

 影朧『超人』と化した記者風の男は、目の前で幾分斜に構えた格好で佇む怜悧をじろりと睨みつけた。
 今の怜悧は、人格アノンだ。人狼の如き、気高く、そして凶暴な姿で超人を静かに凝視する。その不敵な笑みの奥には、己の肉体に対する絶対の自信が伺えた。
「憎悪だか何だか知らねェが、ぜってー無理だ。諦めろ」
「ふふん……貴様如きに、何が出来るッ!」
 超人の額に輝く真紅の眼から熱線が放たれるも、怜悧は僅かな所作で難無く躱した。
 その隙に、超人は人格ロキが傍らについている筈の少年の元へと走ろうとしたが、それよりも早く人格アノンが行く手を塞いだ。
「てめェの相手はオレだ。無視してんじゃねーぞ」
 全身から噴き出る殺気に、超人は僅かにたじろいだ。気合で、人格アノンに押されている。その事実を決して認めまいと、超人は唸るような咆哮を放った。
 だがそれよりも早く人格アノンが超人の間合いに飛び込んだ。と思った次の瞬間には、額の邪眼を疾風よりも速い拳突で鋭く打った。
 超人は苦痛とも怒りともつかぬ雄叫びを上げて、慌てて後退しようとした。が、出来なかった。
 両脚の太腿裏面からふくらはぎにかけて、棒手裏剣が何本も突き刺さっていたのである。
「あんた、やること為すこと片っ端から裏目だねぇ……ま、捕らぬ狸の皮算用に酔ってるような輩じゃあ、無理もないか」
 超人の退路を遮るかのように、次なる投擲姿勢で身構えている外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)の姿が超人の後方にあった。
 瞬間的に、超人は蛍嘉に劫火の一撃を浴びせたが、蛍嘉は強靭な意思の力で耐え抜くと同時に、更に数撃の棒手裏剣を足元に叩き込んだ。
「強い怨み、憎悪……それを抱いて絶望しながら死んだとしても、必ず影朧になるって訳じゃあないんだよ」
 蛍嘉の薄い笑みに、超人は理解不能といった様子で面を醜く歪ませた。
 いっても無駄か、と経過は内心で肩を竦める。
 蛍嘉自身、オブリビオンに対して強烈な憎悪を抱きながら命を落としたが、影朧どころか、見事に一介の猟兵として影朧達の前に立ちはだかっている。
 その事実を知れば、目の前の超人は何を思うだろうか。
 超人は、蛍嘉に対して更に熱線を放つ。蛍嘉は華麗な身のこなしで舞う様に躱した。
「おいおいおい、オレを無視すんなっつってんだろーが」
 人格アノンが操る怜悧のしなやかな体躯が、宙空に舞う。超人は振り向きざまに劫火の力を怜悧の体内へと噴射した。
 炎の息吹をまともに浴びた人格アノンは一瞬で弾き飛ばされ、石畳上に叩きつけられた。
「どうだ、思い知ったかッ!」
「ぐあぁぁぁぁぁ……なぁんてな」
 だが人格アノンは、涼しげな顔でのっそり立ち上がった。超人はまさか、と驚愕の色を浮かべる。
「ロキがあの坊っちゃんの診察をした時に、もう見抜いてたんだよ。敵の力が呪いなんかじゃなく、超能力の類だってな。力の根源が分かってりゃあ、簡単に耐えられるってもんだぜ」
 超人はぎりりと歯を食いしばり、次なる熱線を放とうとした。だが、出来なかった。蛍嘉が次々と撃ち込んでいた棒手裏剣による累積の浸食打撃が、今になって超人の力を奪い始めていたのである。
「おやおや、運が悪かったねぇ。よりにもよって、あぁんな怖そうな人狼さんの前で動きが鈍るなんざぁ、余程日頃の行いが宜しくないってことなんじゃないかい?」
 蛍嘉の澄ました声が、終わるか終わらないかというタイミングで、再び人格アノンが超人の懐に飛び込んできた。
 その豪腕で超人の動きが鈍った足元を盛大に掬い上げると、その脇腹に堆積した肉を瞬時に食い千切った。
「でけェのは喰いでがあってイイよなァ。ヒャッハハハハッ!」
 人格アノンの嬌声が、白い湯煙の中で殷々と響き渡る。
 あの人狼さんだけは敵に廻しちゃいけないねぇと、蛍嘉はひとり静かに苦笑を漏らしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユージィーン・ダイオード(サポート)
『目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する。』
『状況終了(ゲームオーバー)通常モードに移行する。』
〇性格
自称:くそ真面目の男
鉄面皮の無表情キャラ。
本人は笑ったつもりでも周りからムスッと怒っているように畏れられる系。
子供や動物好きだけど好かれない。
推理のできない鉄面皮脳筋。

〇行動
戦闘:武装を展開し、武器の使い捨てながら【一斉発射】と【制圧射撃】の【爆撃】で殲滅する火力バカ。


御園・桜花
「この業火は貴方の憎悪。貴方が影朧となった縁でしょう。でも私には、これが貴方の涙に見えるのです」

UC「幻朧の徒花」使用
業火に焼かれながら最前線で桜鋼扇使用し殴り合い
激痛耐性はないが回復しながら血反吐吐きつつ一歩も引かず殴り合う

「あの方を選んだのは、あの方の境遇が貴方に似ていたからではないですか。誰への憎悪でも良いから影朧にしたかったのは、分かりあえる仲間になれるかもしれないと、期待したからではないですか。教えて下さい、貴方のことを。独りが淋しいのは、ヒトも影朧も変わりません」
手を伸ばす

「憎悪を抱え骸の海へ還るより、どうぞこの地で転生を。今度はきっと変わりますから」
慰めと破魔乗せた鎮魂歌で送る



 超人は、まだ倒れない。
 猟兵による攻撃は確実に超人の肉体を打ちのめしていたが、何かに対する強靭な意思か、或いはもともと恐ろしい程の耐久力が具わっているのか、超人は湯煙漂う石畳の上で仁王立ちになったまま、尚も猟兵達との対峙を止めようとはしなかった。
 その超人の前に、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が厳しい表情で佇む。いつもの穏やかでのんびりした桜花ではなく、影朧の堕した魂を救いたいと望む、決死の覚悟を決めた悲壮な美貌の桜の精が、そこに居た。
 桜花の傍らに、個人で装備し得る限界に近しい火力を携えたユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)が佇んでいた。桜花とは対照的に、その代名詞ともいえる鉄面皮は冷たい程に無表情で、一切の感情が見られない。
「目標確認。殲滅戦、待機中」
 ユージィーンは桜花が少し待って欲しいとの合図を出した為、銃口を超人に向けたままの態勢で僅かに位置を後退させた。
 桜花は一瞬だけ、目線でユージィーンに礼を述べる。だがその直後には、再び硬い表情で超人と静かに向き合った。
「この業火は、あなたの憎悪。あなたが影朧となった縁でしょう。でも私には……これがあなたの涙に見えるのです」
「涙だと?」
 超人はその醜い面を奇妙に歪めて問い返した。
 その時、桜花の足元から静かに、そして次第に獰猛な勢いへと変じつつ、桜吹雪が舞い上がり始めた。
「あの方を選んだのは、あの方の境遇があなたに似ていたからではないですか。誰への憎悪でも良いから影朧にしたかったのは、分かりあえる仲間になれるかもしれないと、期待したからではないですか」
 問い詰める桜花に対し、超人は低く、唸るような調子で馬鹿な、と呟いた。
 桜花には、超人がいささか混乱気味に陥っている様に見えた。自分自身でも分かっていない、といった様子であった。
「教えて下さい、あなたのことを。独りが淋しいのは、ヒトも影朧も変わりません」
 桜花は静かに手を差し出した。
 確かにこの超人は、武幸少年のふたりの母に対して、決して許されるべきではない仕打ちを加えた。それでも桜花は、目の前の影朧を救いたかった。
 澄み切った魂へと浄化させ、新たな生命へと転生させてやりたかった。
「憎悪を抱え骸の海へ還るより、どうぞこの地で転生を……今度はきっと、変わりますから」
 だが──超人は桜花の想いを拒絶した。額に輝く真紅の眼から熱線を放ったのである。尤も、それすらも桜花にとっては想定の範囲内であった。
 恐らくこの超人は、自分でも訳が分からないままに攻撃し続けてくることだろう。だからこそ、自分達猟兵の力が必要なのだ。
「これより殲滅戦を開始する」
 ユージィーンが動いた。これ以上待たせるのは失礼だと、桜花も漸く戦闘開始の合図を送ったのである。
 温泉街には似つかわしくない轟音が激しく鳴り響く。弾丸を射出する乾いた連続音、弾頭を撃ち出すガスの噴射音、そして着弾、或いは爆発の、熱量を伴った震動。
 そこは一気に戦場と化した。
 超人にとっては、まるで想定外の圧倒的な火力が一気に襲い掛かってきた。
「桜の下には死体が埋まっているといいますけれど……幻朧桜の下に埋まっているのは違うものですの。さぁ、咲き誇れ徒花。敵の力を我が糧に!」
 熱線を肩口に浴びて、鮮血が噴き出る。それでも桜花は前進を止めない。受けた傷が深ければ深い程、桜花の力は何倍にも膨れ上がる。
 超人は、一向に怯む気配を見せない桜花に対し、明らかに狼狽していた。そしてユージィーンの人外とも呼ぶべき火力──完全に勢いで、押し込まれていた。
 不意に、桜花の姿が消えた。目に見えぬ程の速度で超人の背後へと廻り込んでいた。そしてその白椿よりも白い指先が超人の背にそっと触れる。
 ほとんど一瞬で、膨大な量の生命力が桜花の指先へと吸い取られた。超人は足元から力が抜ける様に、がくりと崩れて跪いた。
「鎮魂歌よ……どうかこの哀れな魂を救って下さい」
 慰めと、そして破魔の力。
 桜花の想いは、影朧にほんの僅かではあったが、安らぎを与えたように見えた。
 だが、それでも超人は尚も立ち上がる。最後の抵抗を見せようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナナシ・ナナイ(サポート)
『どうしたどうしたぁ~!こんな攻撃かすりもせんわ!』

わいの本業は傭兵!金次第で何でもやるで!あ、猟兵としての仕事なら金は取らへんで。目的達成のためなら恥もプライドも捨てるで!

戦闘で使う武器は基本『突撃銃型アサルトウェポン』や。ユーべルコードは指定したもんは全部使うで!高慢ちきな敵はとりあえず煽っとくわ。

基本的には力押しやけど、敵を倒す為にはどんなせこい手も使わせてもらうわ。

戦う意思のない奴、殺しちゃいけん奴は銃床で殴って気絶させるで。堪忍な。

わいは基本ポジティブ思考や!明るく楽しく気楽に行くわ!でも空気は読むで。
この関西弁はキャラ付けやから適当やで。
誰でも名前+ちゃん呼びや!
あとはおまかせや!


バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』

年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?

下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も

アドリブ、連携歓迎



 更に別の方角から、銃弾を射出する乾いた連続音が鳴り響いた。
 ナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)が肩付けに構えた突撃銃型アサルトウェポンから、空になった薬莢が幾つも吐き出されている。
「おぅおぅおぅッ! エラい気ィ入っとるやないかぁッ! せやけど、わいも負けてへんでェッ!」
 ナナシはまるで超人を挑発するかのように、弾丸をばら撒きながら哄笑を浴びせかける。
 超人は憤怒の表情で、額の眼から熱線を放った。
 が、ナナシは戦場で鍛えた足の速さを存分に駆使して街角の陰から陰へと走り込み、超人をひたすらに攪乱し続けた。
 更に超人がナナシの飛び込んだ建屋の壁に熱線を叩き込もうとした時、背後で何かが這いずり回るような不気味な音が響いた。
 何事かと超人が振り向くと、下半身が蛇、上半身が見目麗しい美女という明らかに人外の存在が、左拳にライオンの頭部を出現させて勢い良く迫ってくる姿があった。
「全く、こんな風情のある温泉街を滅茶苦茶にしちゃって……少しは情緒ってもんを覚えなさいな」
 バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)の左拳で獅子が鋭い咆哮をあげた。と思った直後には、その鋭く獰猛な牙が超人の頭上から振り下ろされてくる。大蛇の突進力を活かしたバジルが一気に跳躍し、超人をも凌駕する上背の高さから拳を突き下ろす要領で、獅子のひと噛みを浴びせてきたのだ。
 超人は、低く唸るような悲鳴をあげた。数々の必殺能力を生み出す額の眼が、獅子の牙によって完全に噛み砕かれてしまったのだ。
「面倒なのは始末したわよッ! 後は宜しくねェッ!」
 バジルが錐もみ状態で螺旋を描きながら着地すると同時に、再びナナシが建屋の陰から飛び出し、最後の掃射を叩き込んだ。
 超人は、叫んだ。
 意味不明の言語の羅列が、湯煙の中で殷々と響き渡る。
 だが、それも長くは続かなかった。超人はその場に轟音と共に崩れ落ちた。
「どや……やったか?」
 銃口を下げながら、動かぬ骸と化した超人の傍らへと歩を寄せるナナシ。バジルも、倒れ込んだ巨躯を挟んで反対側から距離を詰め、頸動脈の辺りをそっと触れた。
「……もう、こいつが弱者をいたぶることは無さそうだね」
 バジルが手を離すと同時に、超人の巨体は黒い煙と化し、文字通り雲散霧消した。
 ナナシにしろバジルにしろ、この超人が出現した経緯はよく分からない。だが、ふたりにとっては最早、どうでも良い話である。
 影朧は確かに、討滅した。
 ここから先、この影朧にまつわるどのような物語が展開されようとも、それは当事者達だけの話だ。これ以上猟兵が関わる必要は無い。
 任務は、終わった。
 そこかしこから恐る恐る顔を覗かせている湯治客や旅館従業員らの視線を背に受けつつ、ナナシとバジルは戦いの場を後にした。

 やがて、少年は目を覚ました。
 超人は斃され、ささやかな幸せが少年とその家族の元に、戻ってきたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年10月04日


挿絵イラスト