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追憶の音色に満ちる想い(作者 湊ゆうき
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●追憶の音色
 町のあちこちから涼やかな音色が聞こえてくる。まだ暑さの残るこの時期に、風鈴の音色は涼を感じられて心地よい。
 この土地では毎年この時期に風鈴祭りが開催されるのだ。
 古風な着物を着た黒髪の女妖怪――小夜は、その音色に耳を澄ませ、その音から呼び起こされる懐かしい記憶に思いを馳せた。
 あれは何年か前の風鈴祭り。店で売られている美しい音を響かせる風鈴に惹かれて思わず手を伸ばした。物を掠め盗るその腕には無数の目――彼女は百々目鬼だったのだ。
 風鈴を盗んだことにより店主と口論になったのだが、小夜の盗んだ風鈴の代金を払ってくれた人がいた。狐の耳と尻尾を持つ妖狐の青年は初対面のはずの小夜をかばってくれた。なんとか店主を言いくるめて、小夜は解放された。
 かばってくれて嬉しかったけれど、手癖の悪い自分が恥ずかしくもあり、その時の自分はきちんとお礼を言えただろうか。風鈴はくれると言ってくれたけれど、払ってくれたのはそちらだからと突き返して。それでも嫌な顔一つしないで優しく微笑んでいたその顔を今でも思い出す。
 風鈴の音を聴けば蘇るその淡い想いを胸に歩いていた小夜は、思わず目を見開く。
 目の前に今しがた思いを馳せていた青年がいたから。
「あなたは……」
 記憶の中の優しい姿のままだった。そうだ、あの時は恥ずかしくて逃げるように自分からその場を去ってしまって、名前も聞けなかったから。
「あなたの名前は?」
「風早」
 ああ、ようやく聞けた。もう一度会えて嬉しい。だって、彼も自分を求めてくれているから――。
 大きく優しい腕が小夜へと伸びて――そしてひとつになる。
 骸魂に飲み込まれたとしても小夜の胸に広がるのは幸福感。この満たされた気持ちがいつまでも続けばいいのに……。

 ――時よ止まれ、お前は美しい。

 それが世界の終わりを告げる滅びの言葉だとは気づかずに思わず呟いていたのだった。

●グリモアベースにて
「みんな、集まってくれてありがとう」
 またひとつ大きな戦いを終えて頼もしくなった猟兵たちへと笑顔を向けると、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は今回の予知の説明を始める。
「カクリヨファンタズムでは、毎日のように世界の危機が訪れているけれど……滅びの言葉によって崩壊しそうな世界を救ってほしいの」
 人間の感情を食糧としている妖怪たちにも自分たちにとっての大切な思い出がある。その想いの末に起きた事件を説明しながら、エリシャも複雑そうな表情で呟いた。
「大切な人と再会できて、幸せに満たされたと思ったのに、それが世界を滅ぼすことに繋がるなんて思わないわよね……大切な人との時間は永遠に続いてほしい……そう思う気持ちは痛いほどわかるもの……」
 胸に手を当て自らの思いを重ねるようにそう言ってから、エリシャは顔を上げ言葉を続ける。
「ただ、彼女が再会したのは彼女が想っていた青年ではなく、その青年を取り込んだ骸魂だったの。骸魂を降ろす為に作られた失敗作の人形は、飲み込んだ人物になりきろうとしているの。彼以外にもたくさんの妖怪を飲み込んでいるみたい」
 世界の崩壊を止めるには、骸魂を倒さなければならない。それが再び彼女たちをバラバラにすることだとしても。
「ちょうどこの場所では風鈴祭りが開催されていてね。骸魂がいる場所へと向かうにはたくさんの風鈴が吊るされた回廊を通っていかなくてはいけないの。ただ、妖怪たちの願いや想いがこめられたここを通過する際に、みんなも自分の過去の記憶と向き合う必要があるの」
 楽しかった記憶や、辛い記憶。忘れられない思い出。それらが先へ進むのを阻むので、過去に囚われず前へと進んでいかなければならない。
「そこを抜ければ骸魂の元に辿り着けるわ。足元が徐々に崩れて世界が崩壊を始めているでしょうから、骸魂を倒して世界の滅亡を阻止してほしいの」
 それは世界のためでも、妖怪と骸魂の解放の為でもあると信じて。
「何が正解かは立場によって違うのかもしれないけど……あたしたちは黙って世界が滅ぶのを見ているわけにはいかないから。全てが無事に終われば、風鈴祭りを楽しんで来たらいいと思うわ」
 世界が滅んでもいいと思えるほどの想いがあったとしても。その世界で大切な誰かと笑いあえる他の者たちの幸せまで奪うわけにはいかない。
 エリシャは信頼の眼差しで猟兵たちを見つめると、星型のグリモアを出現させ、転送を開始した。





第3章 日常 『思い出綴り』

POW高い場所に飾り付ける
SPD近い場所に飾り付ける
WIZ風鈴の音色を楽しむ
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※連絡事項※
第三章のプレイング受付は、導入文挿入後、9/25(金)8時半からを予定しています。
 
●希望の音色
 猟兵たちによって骸魂から助け出された妖怪たちは、取り込まれている間の記憶は少し曖昧なようだったが、外傷などもなく皆無事のようだった。
「そうだったのね……」
 一体何があったのかを猟兵たちから聞かされた小夜は、たくさんの妖怪たちを見渡して頷いた。
「わたしが見たあの人は骸魂が姿を変えたもの……でもあの人も飲み込まれていたのね。世界を危険にさらしてしまったことは申し訳ないけど、そのおかげでまたあの人に会えたことには感謝してるの」
 もちろん、あなたたちにもと小夜は猟兵たちに微笑んで。そっと骸魂を悼むように彼方を見やってから、何かを決意したように妖狐の青年――風早の元へと向かう。
「ねえ、風早……さん。わたしの名前は小夜よ。覚えているかわからないけど、数年前の風鈴祭りであなたに助けてもらったの。あの時はお礼を言えなくてごめんなさい。でもとっても嬉しかったの……ありがとう」
 その言葉に、小夜の記憶のまま優しい笑顔で微笑んだ風早はゆっくりと頷いた。
「もちろん覚えているよ。お節介だったかと、あなたに嫌な思いをさせたのではと心配していたけれど……そう言ってもらえてよかった」
 ああ、やっぱりあの時の優しい彼のままだった。そしてだからこそ骸魂に飲み込まれてしまったのだと。
「風鈴の音色を聞くたびに、少しの後悔と共にあなたのことを思い出していたんだ。でも……これからは嬉しい記憶になる」
「ね、ねえ。せっかくだから一緒に風鈴祭りを楽しみましょう? 今度はあなたが欲しい風鈴をわたしが贈りたいから……」
「じゃあ、お互いに好きな風鈴を贈りあうということで」
 その言葉に小夜は心から嬉しそうな笑顔を浮かべて。猟兵たちにも声をかける。
「あなたたちにも風鈴祭りを楽しんでいってほしいわ。良かったら案内するわよ」
 世界の危機が去ったところで、風鈴祭りは無事開催され、屋台の準備も進んでいるようだ。願いを綴った風鈴を好きな場所に吊るすもよし、多種多様な風鈴からお気に入りのものを見つけて購入するもよし。お祭りの屋台もたくさん出ているので、好きに楽しむのもいいだろう。
 妖怪たちの様々な願いを乗せて、平穏を取り戻した世界を祝福するようかのように、吊るされた風鈴たちが澄んだ音色を響かせていた。
空澄・万朶
皆を無事救出出来て本当に良かった……

さて、では折角だし、オレもこの間仕立てた浴衣を着て参加しようかな

店(旅団)へのお土産用と、願い事を書いて吊るす用の風鈴を買いたいな
動物が描かれているような風鈴はあるかな?
(※何の動物が描かれているかはお任せします)

書く願いはシンプルに【商売繁盛】かな
まさに店長職に就いている人って感じでしょ?
……自分の記憶は自力で思い出すって決めたからね、『願い事』にはあえて書かない事にするよ

救出された妖怪さんの内の誰かがいたら声を掛けたいな
「お怪我が無かったようで何よりです。あ、宜しければ一緒に屋台を回りませんか?」
色々食べ歩きながら世間話でもしたいな

※アドリブ歓迎


●願いを叶えるために
「皆を無事救出することが出来て本当に良かった……」
 妖怪たちで賑わう風鈴祭りの様子を見れば、この世界が滅亡の危機に瀕していたなどと思えないくらいだけれど。
 日常を取り戻した幽世の風景に、空澄・万朶(忘レ者・f02615)は心から胸をなでおろす。いくら世界滅亡の危機が日常茶飯事だとしても、猟兵たちが行動しなければ止めることができない。ここは万朶にとっても大切な故郷なのだ。決して失いたくはない。
 骸魂に飲み込まれた妖怪たちもこのお祭りを楽しんでいるようだ。先ほどまで一緒だった妖怪の一人を見かけ、万朶はその背中に声をかけた。
「お祭り、楽しんでいますか?」
 振り返ったのは猫又の妖怪。二本足で立つ三毛柄の猫又は人より少し背丈が低いが風流な着物を着こなしている。着物の裾から延びる尻尾が二股に分かれているのが猫又の証だ。
「ああ、先ほどの。ありがとうございました」
 すぐにこちらに気付き、丁寧に頭を下げる猫又の様子に万朶も安心したように笑顔を浮かべる。
「お怪我が無かったようで何よりです。あ、宜しければ一緒に屋台を回りませんか?」
「いいんですか? では……」 
 山吹という名の猫又の青年と自己紹介を済ませて風鈴祭りの会場を歩いて行く。竹で組まれた風鈴棚や辺りに植わった木々にたくさんの風鈴が吊るされている様は壮観だ。涼やかな音色が響く中を歩いていると、山吹が万朶の方を向いては金色の目を細めた。
「万朶さんの浴衣素敵ですね」
 せっかくだからと、この間仕立てた浴衣を着てみたのだが、そう褒められるとやはり嬉しいもので。黒一色の浴衣はシンプルながら品が良く、瞳と同じ青い色の帯に桜模様が散りばめられていて趣のある逸品だ。
「ありがとうございます。ああ、屋台を巡る前に風鈴を見たいと思っているんだけど……」
「あっちのようですね。行ってみましょう」
 そうして二人はたくさんの風鈴がぶら下がっている売り場へとやってきた。
「願い事を書くんですか?」
「それもありますが……店へのお土産用にも欲しいと思っていて」
 目の前には多種多様な風鈴の数々。色や形も様々で、ガラス製以外にも陶器や金属でできたものまである。
「お店? お店を開いているんですか?」
「物を売っているんじゃなくて、配達業なんですけどね。ここにもたまに配達に来ますよ」
 そう言いながら、たくさんの風鈴たちを眺める。できれば動物が描かれているものがあればいいと思いながら。
「そうなんですね。では、届けたいものがあれば僕からもお願いしますね」
「はい、喜んで」
 そうしてせっかくの縁だからと、店へのお土産の風鈴は猫又が描かれたものを選ぶことにした。
「願い事を書く風鈴はこちらですね」
 それはいたってシンプルな風鈴で、願い事を書くための短冊がついている。
 大きく『商売繁盛』と書いた万朶は満足そうに頷く。穏やかでマイペースな万朶であるが、こと仕事に関しては妥協を許さない。その様子を見て、山吹も万朶の仕事に対する並々ならぬものを感じ取ったのだろう。
「万朶さんは店長さんなんですね」
「わかってしまいましたか。山吹さんは何を?」
「……ちょっと迷っているんです。どうも骸魂に飲み込まれて半年ぐらい経っていたみたいで……ちょっといい仲の相手がいたんですが、もう僕のこと忘れてるんじゃないかと思って……」
 半年の空白の時。幼少期の記憶がない万朶にも、不安な気持ちは理解できる。
「山吹さんが会いたいのなら会いに行ったらいいと思います」
「そうですよね……そうですよね……ありがとうございます!」
 背中を押されたように、何度も何度も頷く山吹。二股の尻尾がせわし気に揺れていた。そして書かれたのは『恋愛成就』の文字。
 願いはきっと自分の行動で叶うものだから。だから、万朶は敢えて記憶を取り戻したいという願いは書かなかった。それは自力で行動して、思い出すと決めたからだ。
 願いを託した風鈴を思い思いの場所に吊るすと、二人はいい香りが漂う飲食の屋台へと足を向ける。
「何かおすすめの食べ物はあるんですか?」
「僕は個人的にたい焼きが好きですね」
 ならばと一つ目小僧が切り盛りする屋台でたい焼きを買って頬張れば、なんだか懐かしい味がする。それはここが幽世だからなのだろうか。
「次はどうしましょう? あっちは焼きそばで、あっちは綿菓子ですね」
「せっかくなので、いろいろ食べ歩きしましょう」
 二人は世間話をしながら、風鈴祭りの屋台を楽しむ。あちこちで妖怪たちが声をかけてきては、平和を取り戻したことへの感謝を告げられる。本当に、世界が無事でよかった。
 いつかきっと記憶を取り戻すのだ。この故郷を今よりもっと懐かしく思えるように。
大成功 🔵🔵🔵

榎木・葵桜
UCで田中さん(霊)召喚
私は浴衣コンテストの浴衣を着用

小夜さんと風早さん、再会できてよかったね
ふふ、お二人のお邪魔虫はせずに、
私は私で楽しんじゃうよー

風鈴の音も綺麗だし、素敵だよね♪

そいえば田中さん、いつも全身鎧兜だけど、風通ししないとまずくない?
(兜の中を覗き込もうとして制止され

もー、もう5年ものつきあいなのに、
顔見せてくれないとかどんだけ照れ屋なのー?(むくれ

じゃあ、田中さん願い事は?
折角だし風鈴に願いを…
(全部言う間もなく、頭を撫でられ

どゆこと?
気遣い不要ってこと?
んー、まいっか
それじゃ、今日は私が田中さんをエスコートするよ!
拒否権はなしだかんね?
(にっこにこで田中さんの手をとり歩き出し


●言葉はなくても
 骸魂に飲み込まれた妖怪たちも無事助け出され、それぞれが思い思いに風鈴祭りを楽しんでいる。
「小夜さんと風早さん、再会できてよかったね」
 二人並んで売り物の風鈴を眺めている姿を見て、榎木・葵桜(桜舞・f06218)はにっこりと微笑む。
「ふふ、お二人のお邪魔虫はせずに……私は私で楽しんじゃうよー!」
 お祭りを案内すると言ってくれたけれど、せっかくの二人の時間を邪魔するのも悪いと遠慮して。葵桜は今年の浴衣コンテストでも着たお気に入りの浴衣姿で祭りを楽しむことした。この浴衣はその昔母が着ていたもの。臙脂と白の縞模様に、満開の桜が咲き誇る浴衣は初めから葵桜のために仕立てたようにぴったりで。大好きな母から譲り受けた浴衣を着ればお祭りもより楽しいものになる。
「ね、田中さん。風鈴の音も綺麗だし、素敵だよね♪」
 隣にはユーベルコードで召喚した古代の戦士の霊・田中さんの姿。葵桜の大のお気に入りで、どんな場面でも頼りになる心強い存在なのだ。でも戦いだけでなく、こういった日常も田中さんには楽しんでほしい。
 風鈴棚に並ぶたくさんの風鈴たち。そのひとつひとつに願いがこめられ、風が吹くたびに涼やかな音色が奏でられる。その音を聴くだけでも心が洗われるような気持ちになる。
「そいえば田中さん、いつも全身鎧兜だけど、風通ししないとまずくない?」
 ふと思いついて葵桜は田中さんに問いかける。古代の戦士の霊である田中さんは常にその身を鎧兜で覆っている。こんなときぐらい脱いだっていいし、風鈴の音もよく聞こえるのではと葵桜は提案し、その兜の中を覗き込もうしたのだが……やんわりと手で制止されるのだった。
「もー、もう5年ものつきあいなのに、顔見せてくれないとかどんだけ照れ屋なのー?」
 別に召喚するUDCは田中さんでなくてもいいのだが、葵桜は田中さんが気に入ってずっとその力を借りている。短くもない付き合いなのに、まだ一度も顔を見たことがない事実に、むくれてしまいたくもなるというもの。
 葵桜の言葉に、ちょっと申し訳なさそうな雰囲気を漂わせていた田中さんだが、表情が読めないので実際何を思っているのかわからない。でも、五年の歳月は伊達ではないのだ。田中さんと言葉を交わすことはなくても、葵桜にはなんとなく、田中さんの気持ちがわかる気がするのだ。
 そしていつも力を貸してくれるその優しさへの感謝の気持ちも。
「じゃあ、田中さん願い事は? 折角だし風鈴に願いを……」
 吊るされた風鈴を指差してそう提案した葵桜の言葉が全部言い終わる前に――大きな手が葵桜の頭を優しく撫でていた。
 田中さんのその行動の意味を紐解けば……。
「どゆこと? 気遣い不要ってこと?」
 いい子だね、とでも言うように頭を撫でられた葵桜が問いかけるも、もちろん答はなく。でも、霊だとしても差し出されたその手の優しさは両親に似て温かい。自分を大切に思ってくれていることがわかるから。
「んー、まいっか。それじゃ、今日は私が田中さんをエスコートするよ!」
 田中さんの心の内まではわからないけれど、葵桜だって田中さんのことを大切に思う気持ちは大きくて。優しく撫でてくれた手を繋ぐと、こっちだよと手を引いて。
「拒否権はなしだかんね?」
 悪戯っぽく笑うと、金魚すくいの屋台へと向かう。
「田中さんも一緒にやろう。釣りも上手な田中さんはきっと金魚すくいも得意だよね!」
 浴衣の袖をまくりながら、葵桜はポイを手に、素早く赤い和金をすくいあげる。一匹、二匹までは上手くいったけれど、三匹目をすくう前に破れてしまった。
 田中さんはというと、無駄のない動きで水面近くの金魚を次々とすくっていく。極力水に触れる時間を減らし、金魚に逃げられないような位置と角度でポイを差し込めば、面白いように手元の桶に金魚がたまっていく。
「田中さん釣りも上手だったけど、ここまで上手だなんて……」
 これは田中さんが苦手なことを探す方が難しいのではないかと思ってしまうほど、田中さんはあらゆるものをなんでもそつなくこなすのだ。
 少し大きな黒い出目金をすくったところで終了。もちろんすくった金魚は葵桜にプレゼント。
「田中さん楽しかった? 私はね、とーっても楽しかったよ!」
 兜の下は笑顔なんだろうかと想像はするけれど、きっと葵桜が楽しければ田中さんも楽しんでくれるに違いない。それは長年一緒にいてくれたからこそわかることで。
「よーし、次は射的だよ! 田中さんに負けないからね!」
 元気いっぱいの声を出して手を引けば。まだまだ楽しい時間は続いていく。
大成功 🔵🔵🔵

小雉子・吉備
骸魂に取り込まれた妖怪は、全員無事に救い出せて良かったけど

千早ちゃんと小夜ちゃんの様子を見届けたら、キビ達もどうしようかなっ?

取り敢えずは、ちょっと季節外れかも知れないけど、現世にあるキビの拠点の茶屋に飾る風鈴でも一つ買って

後は、なまりちゃんやひいろちゃんと一緒に屋台でも適当に回ってみるかな?

折角だしアリスラビリンスで出来た友達もUCで喚んじゃおうか。


「吉備ちゃん、ボクを呼んだり?と言うか此処は何処り?アリスラビリンスでもなければ、見覚えもない所だし」

チケちゃんは此処始めてだよね、此処はキビの第二の故郷とも言える幽世って世界だよ

今お祭りやってるけど、一緒に回る?

【アドリブ絡み掛け合い大歓迎】


●友達と一緒に
 平和を取り戻した幽世の風景。たくさんの屋台や風鈴棚に吊るされた風鈴が揺れる様を見て、小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は心から安堵する。助け出された妖怪たちもそれぞれお祭りを楽しんでいる様子だ。その中に風早と小夜が仲良く風鈴を選んでいる姿を見つけ、吉備もにっこりと微笑む。
 吉備の中には幽世に辿り着けなかった家族や同族の魂が寄り添っている。風早と小夜も骸魂の中でひとつになれたのかもしれないが、それぞれ別に生きる道があるのなら、バラバラになってでも妖怪としての人生を歩む方がいい。
 つん、と足元をつつかれたので視線を向けると、狛犬の【なまり】が心配そうに吉備を見上げていた。
「大丈夫だよ。キビはひとりじゃないから。なまりちゃんやひいろちゃん……みんなだってすぐそばにいるんだから」
 昔の記憶を思い出したことで少し感傷的になっていたのだろうか。猿の【ひいろ】も吉備の肩にちょこんと乗ってきたので、よしよしとその頭を撫でる。
「みんなの無事は見届けたし……キビ達もどうしようかなっ?」
 明るい声を出すと、ひいろが風鈴が売られている店を指差す。
「うん、そうだね。もう秋だから、これから飾るにはちょっと季節外れかもしれないけど……」
 現世にある吉備が拠点としている茶屋に飾る風鈴を探すのも悪くない。
「うーん、どれにしようかな……」
 あまりにもたくさんの風鈴がありすぎて選ぶのも一苦労だった。
「あ、こっちはなまりちゃんっぽい青だね。こっちはひいろちゃんの赤だよ」
 でも飾るなら一つでいいかと、さらに風鈴選びは難航し……最後に決めたのは、青と赤が混じり合い、マーブル模様になった美しいガラスの風鈴だった。
「素敵な風鈴が買えたよ。それじゃあ、みんなで屋台でも回ろうか?」
 そう言ったところではたと思い出す。先日の迷宮災厄戦で戦地に赴いた際に、仲良しの友達ができたのだ。ユーベルコードで召喚することができるから、せっかくなら楽しいお祭り、みんなで楽しみたい。
「アリスラビリンスからの縁と絆に基き……今日は戦場じゃないけど、チケちゃんキビの元に来て!」
 吉備の言葉に応えるように、すぐさま姿を現したのは、以前共闘した雉鶏精型着ぐるみの愉快な仲間のチケだ。
「吉備ちゃん、ボクを呼んだり?」
 ゆるキャラのような雉をデフォルメした愛らしい姿のチケは吉備を見て笑顔を見せるが、すぐに辺りをきょろきょろと見渡す。
「……と言うか此処は何処り? アリスラビリンスでもなければ、見覚えもない所だし……」
 不思議そうなチケに、吉備が丁寧に説明する。
「チケちゃんは此処始めてだよね、此処はキビの第二の故郷とも言える幽世って世界だよ」
「吉備ちゃんの故郷! この前はボクたちの故郷を助けてくれたから、張り切って役に立つり!」
「えっと、今日は戦いじゃないんだよ。たくさんお店が出てるでしょ? 風鈴祭りって言うんだよ。一緒に回る?」
「お祭り……!」
 辺りを見回しきらきらと瞳を輝かせたチケに、吉備はどんな屋台が出ているかを説明する。
「食べ物を売ってるお店や、遊んだりできるお店があるんだよ」
 りんご飴や綿菓子に焼きそばや冷やしきゅうりにフルーツ。金魚すくいや射的にヨーヨー釣りなど様々な屋台が並んでいた。
 ひいろが吉備の肩をつついて、指差した先には輪投げの屋台。
「ひいろちゃんやりたい? これならチケちゃんもできそうかな?」
 台の上に景品そのものが並んでいて、そこに輪を投げて獲得するというもの。景品には駄菓子やおもちゃなど子供が好きそうなものばかり。
「このわっかを投げれば良いり?」
「そうそう、狙いの景品に向かって投げるんだよ」
 ひいろが器用に投げておもちゃを獲得するのを見て、チケも翼の先っぽに輪を引っかけて、器用にえいと投げれば輪っかは駄菓子の元へとすっぽり収まった。
「これは故郷で見たことないりっ」
 郷愁を誘うパッケージのフーセンガムをしげしげと眺めるチケ。ちなみになまりは輪っかをくわえて、器用に投げては蒼い鉛に似た美しい鉱石を手に入れた。
「食べ物の屋台も見てみようか」
 またしてもひいろがここに行きたいと示したのは水餃子の屋台。
「ひいろちゃんは行きたいところがいっぱいあるんだね。でもせっかくお祭りだもん。みんなでたくさん楽しもう!」
「これがお祭り……吉備ちゃん誘ってくれてありがとう! とっても楽しいり!」
 お祭りはいつだって楽しいけれど、一緒に楽しむ友達がいるともっと楽しい。
 吉備たちは次々と屋台を巡っては心行くまで幽世のお祭りを楽しんだ。
大成功 🔵🔵🔵

九十九・白斗
【パラスとデート】
空に建物が浮き、巨大な満月が見える
「ここがカクリヨファンタズムか。初めて来たが良い景色だな」
横を歩くパラスに、空を見上げながらそう言った
リンリン
と風鈴が涼しい音色を奏でている

屋台で買った酒を飲みながらとりとめのない話をする
今回の依頼は結構心をえぐってくるような依頼だったらしいので、それには触れないでおく
ただ、何でもない話をしながら、屋台で買ったものを食べたり飲んだりしながら風に揺れる風鈴の美しさや音色を二人で楽しむ
それが心地よい

風鈴を贈りあう風習があるようなので屋台で買う
丸みのある金属製の風鈴
ガラスの風鈴は割れてしまうんではないかと思い、実用性を考えた
それをすっ、と差し出した


パラス・アテナ
【白斗とデート】
風鈴祭を二人で見て歩く
ここは儚い世界だからね
言葉一つで滅びを迎える
美しいのは世界が放つ最後の輝き故なのか
それとも強く生き残る命の逞しさ故なのか
沢山の風の音色を聞きながら
どうでもいい事を話して歩く

屋台で適当に買った料理を肴に酒を飲む
話題に出るのはとりとめのない話ばかり
明日には忘れてしまいそうな話題だけど
それがいいんだ
だからこそいい
何でもない時間
だからいいんだ

贈られた金属製の風鈴に笑みが溢れる
実用重視の白斗らしくて嬉しくなる
高く澄んだ音色が耳に心地よくて

贈り合うならアタシからも贈ろうか
美しい音色の華奢なガラスの風鈴
アンタは自分の身体に雑すぎる
それを割らないように
大切にすることだね


●月見一献
 妖怪たちが楽しむ風鈴祭りは夜を迎えても盛況だった。現代地球で失われた過去の遺物で組み上げられたこの幽世は、UDCアース出身の九十九・白斗(傭兵・f02173)にも、どこか郷愁を抱かせる。
 この世界では日常的に世界滅亡の危機が訪れる。この場所も先ほどまでは足元が崩れ去り、世界が崩壊しそうになっていたのだという。そんな世界に浮かぶ大きな満月を見上げ、白斗は満足そうに頷く。
「ここがカクリヨファンタズムか。初めて来たが良い景色だな」
 隣を歩くパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)も同じように空を見上げて呟いた。
「ここは儚い世界だからね、言葉一つで滅びを迎える」
 美しいのは世界が放つ最後の輝き故なのか。
 それとも強く生き残る命の逞しさ故なのか。
 たくさんの願いを乗せた風鈴が風に揺れて涼やかで美しい音色を奏でている。それを聞くでもなく聞きながら、二人は他愛もない話をしながら祭りの会場を歩いて行く。
「そういえば、パラスは浴衣を着ないのか? 確か仕立てたって言ってなかったか?」
 妖怪たちや一緒に来た猟兵たちが浴衣を着ているのを見て、白斗はパラスに問いかける。
「……まあ、一応用意はしてきたけどね」
「なんだよ、せっかくだから着たらいいじゃないか。何より俺が見たい」
「……だったらアンタも一緒だよ。そこで浴衣を借りられるそうだから」
 会場には浴衣を貸し出しする場所もあるようで。
「よし、浴衣デートだな。でも、俺に合うサイズの浴衣があるのか?」
「ここは妖怪たちの世界だよ。大男なんてざらにいるだろうさ」
 そうしてパラスが言ったように、大柄な上に鍛え上げられた筋肉に包まれた逞しい白斗の心配は杞憂に終わり、パラスは白地に落ち着いた花柄の浴衣、白斗は落ち着いた濃紺の浴衣に着替えると、飲食の屋台を巡っていく。
 ビールやワインもいいが、浴衣とこの景色に合うのは日本酒だろうと二人は屋台で売られている酒を吟味する。幽世で造ったという酒を、バーを営んでいるパラスは質問を交えながらあれこれ試して、気に入ったものを選ぶ。これなら白斗もきっと気に入る。
 川沿いにテーブル席が設置してあったので、二人は買ってきた酒とおつまみを広げて月と風鈴を眺めながら乾杯した。
「ここで買ったつまみも悪くないが、やっぱりパラスが作ってくれるつまみが最高だな」
「褒めたってここでは何も出せやしないよ」
 イカの姿焼きを口に運べば、パラスが選んでくれた酒が進む。美味しい酒やつまみがなくても、目の前に浴衣姿の美人がいればそれだけで充分幸せなのだが、そんな軽口のやり取りさえ楽しくてしょうがない。
 次々と移り変わる話題は本当にとりとめのないもので。
 今回の依頼では、過去の自分の記憶と向き合う必要があったらしいと知った白斗は、パラスがそのことで消耗しているのではと心配し、その話題には触れずに、敢えて馬鹿げた話やとりとめのない話を振った。五十年以上戦場を渡り歩いた歴戦の兵士である白斗には、女性が好むような気の利いた話ができるわけでも、若者のように輝かしい未来の話ができるわけではないが、明日忘れてしまうようなそんな話題が今の二人にはちょうどいいのだ。
(「こんな穏やかな気持ちはいつぶりだろう……」)
 パラスは『特別』をつくるわけにはいかなかった。いつだって自分の大切な人たちが自分のせいで死んでいくのを見てきたからだ。そんな死神を優しく抱き寄せて、自分のせいで死にかけても不運ではなく幸運だと笑い飛ばしてくれる人。その温もりに委ねてしまえば安堵で満ちていく。けれど決して消えない不安と恐怖は胸の奥底にあって。それでも今はこの何でもない時間が心地よくて、自然と顔に穏やかな笑みがこぼれる。
「そういえば、風鈴を贈りあう風習があるんだって?」
 先ほど見かけた妖怪の男女はお互いに風鈴を贈りあっていた。よし、それじゃあ見に行くかと立ち上がった白斗はパラスに手を差し出すと、風鈴が売っている店へと歩き出す。
「……たくさんあるな」
 風鈴祭りの名の通り、種類が豊富で選ぶのにも時間がかかってしまいそうだ。その中で白斗がパラスにと選んだのは丸みのある金属製の風鈴だ。ガラスの風鈴も繊細で美しいが、すぐに割れてしまいそうな気がして、実用性を考えた上での結論だ。
「おや、アンタらしいね」
 すっと差し出された風鈴を見て、パラスは思わず微笑んだ。実用性を考えたなんとも白斗らしい選択だからだ。揺らしてみると、金属製らしい高く澄んだ音色が耳に心地よく、目を閉じては何度もその音を繰り返す。
「ありがとう。……それじゃあアタシからも……」
 たくさんある風鈴の中からパラスが選んだのは、対照的な華奢なガラスの風鈴。金属製のものとはまた違う澄んだ優しく美しい音色が響く。
「アンタは自分の身体に雑すぎる。……それを割らないように大切にすることだね」
 白斗はその言葉に頭を掻きながら、持って帰るまでに割ったりしないだろうかと思いながらも重要な指令を受けたかのように重々しく頷く。
「パラスにもらったものを壊したりはしないさ……絶対にな」
 あまりに真剣な顔で呟くものだから可笑しくて。
 パラスがこらえきれずに口元を押さえて笑うと、まるで共鳴するかのように、数多の風鈴たちも澄んだ音を響かせながら揺れているのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵