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きみの香は(作者 志羽
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●きみの香は
 鼻をくすぐる香がある。
 さて、これは――何の、香だったか。
 そうだ、この香は彼女の香だ。一緒に様々な事を学んで、共に店を開いた彼女が好んで纏った、香り。
 いつも側にある当たり前の香じゃあないかと、男は笑う。
 ふらふらとした足取りで、近付いていつものように傍で過ごす。
 この香の調合を、彼女は教えてくれなかった。私だけの特別よ、と言って。
 その香りは――淑やかで、静かな、花の香りだったことは覚えている。
 この香を生み出すにはどうしたらいいのかと考えながら、男は力なく微笑む。
 しかしこの香りをどうして、欲していたのだったか。
 傍にあるというのに、何故つくろうとしていたのか。
 彼女になじむこの香を、どうして、何故――いや、もうどうでもいいと思考は鈍る。
 その傍にいる事で己の命が削られていることを気付いているのか、いないのか。
 幻朧桜の並ぶその中で――男の傍らでひとつだけ、違うすがたのものが揺らめいていた。

●予知
 サクラミラージュで、ある男が影朧を匿っているのだと、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は紡いだ。
「匿っているのか、囚われているのか……どっちともいえるんじゃけどね」
 その男は、街で香の店を営んでいる。
 かつては、妻と二人で営んでいたのだが彼女はもともと体も弱く、病気で亡くなってしまったのだという。
 そうして男はしばらく店を閉めていたのだが――最近また店を開きはじめ。
 近所のものたちはほっとしたのだが、身体は日々、衰えている様子。いつ倒れてもおかしくないような様子のようだ。
 それを心配して、近所の者達は声をかけるが男は大丈夫と答えるだけ。
「その店主の男は、店が終わればすぐに家に帰らずにふらふらとどこかに行くそうなんじゃ」
 近所の者達がそれを追うものの、いつも同じ場所で姿が見えなくなるというのだ。
 それは幻朧桜の小径でとのこと。
 おそらく、そのどこかに影朧もいるのだろうと嵐吾は言葉紡ぐ。
「影朧によって男が狂わされているのは確かじゃから、このまま放っておくわけにはいかん」
 店を訪れ男のひととなりを情報収集をするもよし。その後、男が向かう先を追っていけばそのうち影朧のもとへ辿り着けるだろうと嵐吾は続けた。
「皆には最後まで男を追って、そして――影朧に対処してきてほしいんじゃ」
 説得しても言葉通じぬものかもしれない。はたまた、その言葉が届く相手かもしれない。
 それは、きっと対してみなければわからぬことだろうと言って嵐吾はその手でグリモアを輝かせるのだった。





第2章 冒険 『迷桜の小径』

POWとりあえず白昼夢を見てみる
SPD白昼夢をじぃっと観察してみる
WIZ白昼夢を詳しく調べてみる
👑11

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 やがて、店の営業時間が終わる。
 店の戸締りをして、ふらりふらりと歩み始める。
 彼が向かっているのは――幻朧桜の小径。
 ざぁ、と風が靡いて幻朧桜を揺らす。微かに広がるのは桜の香り――けれどふと、違う香りがした気がした。
 それは何の香りか。
 その香りとともに広がるは白昼夢。
 幻朧桜の枝葉に映る、白昼夢だ。
 それは、願望。
 こうありたい、こうあればいい――そう、例えば件の男ならば、亡くなった妻と共に未だ続く、幸せな時間の光景。
 その光景に導かれるように、彼は幻朧桜の中へと誘われるように消えていく。
 そして、この場に訪れたものたちの上にも、それは現れるのだ。
 嘗ていた誰かと得ていたかもしれない、時間かもしれない。
 はたまた共にいるものと迎えたい光景かもしれない。
 幻朧桜の花々の上に現れる光景は揺れて、姿を変えて惑わせようとしているのか、それとも奥へ導こうとしているのか。
 目に見えるものがすべてではないのだろうけれども誘う先は一体どこか。
 ざぁと風が吹いてもその白昼夢は消えることなく、幸せな時間を紡ぐ。
 その光景を見続ける事が、幸せか、それともそうではないのかは――見る者によるのだろう。