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世界崩壊の刹那~ずっと逢いたくて、決して逢えない貴方(作者 るちる
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●カクリヨファンタズムにて
 その日。

 ミズチさんは空をお散歩しておりました(カクリヨファンタズムだから飛べるんです)。
 UDCアースでは妖怪とかUMAとか言われていたミズチさんがカクリヨファンタズムに逃げ込んできて幾星霜。この世界に逃げ込んできた他の妖怪たちと毎日楽しく暮らしていました。
 お空の散歩は趣味です。何故かというと、以前の主(飼い主とも言えるでしょうか)である天女様がよく連れていってくれたからです。その頃から空のお散歩はミズチさんのお気に入りでした。何故ってUDCアースに居た頃は自分では飛べませんでしたから。

 お空のお散歩はとても楽しいものです。たまにお友達と一緒にいったりして、これもまた楽しい。
 それでも……ふと思う時があるのです。

(天女様が一緒だったらもっと楽しいに違いないのに)

 ですが、天女様は時間の理に従って骸の海へ行かれてしまいました。もうお会いすることはできません。それは『自然の摂理』であり、ミズチさんも分かっていました。

 その日。でも。

 ミズチさんは出会ったのです。
 それはミズチさんの前方に光り輝くカタチとして姿を成しました。光が消えて、その場にいたのは……何をどうやってもお会いできないはずの御方。
「天女、様?」
「あなたは……ミズチ?」
 ミズチさんの声に振り向いた天女様は、以前と何も変わらない、ミズチさんの主である天女様でした。

 ただひとつ違うことがあるとすれば。天女様は骸魂だったのです。

 骸魂は妖怪を取り込んでオブリビオンと化します。
 天女様にミズチさんを傷つける意図はなかったでしょう。ただただこの世界の理(ルール)が働いただけでしょう。天女様は近付いてきたミズチさんを取り込んでしまいました。
 それでも。たとえオブリビオンと化しても。ミズチさんは天女様とまた一緒になることができたのです。

 その時、思ってしまったのです。呟いてしまったのです。

 『時よ止まれ、貴女は美しい』、と。

 それはミズチさんの本心でした。このままずっと天女様と居たいという。

 しかし、その言葉は……カクリヨファンタズムの世界の終わりを告げる『滅びの言葉』だったのです。

●グリモアベースにて
「おおっ、いいところに居た!」
 その声は頭上から。
 見上げると空から椎宮・司(裏長屋の剣小町・f05659)が降ってきた。どうやらどこかの世界から転送で帰ってきたところらしい。
 着地するや否や、司は駆け寄ってきて話し出す。
「悪いんだが、大至急カクリヨファンタズムに行ってくれないかい!?」
 必死の表情に緊急事態ということはわかるのだが、いかんせん状況がつかめない。そのことを告げると、司がハッとした顔をする。
「あ、ああ。そうだね。説明も無しにすまなかった。待ってくれ、ちょっと纏める」
 ふぅ、とひと息深呼吸。しばし目を瞑って開いた後、司が改めて告げる。
「カクリヨファンタズムで世界の崩壊が始まっている。そいつを止めて来て欲しい」

「幽世で酒を飲んでいたら予知が降ってきてね」
 それはミズチという妖怪が骸魂に取り込まれてオブリビオン化。その側から世界が崩壊するという光景であった。
「ミズチ、知ってるかい?」
 サムライエンパイアの文字なら『蛟』と書く。水に関係する神とも妖怪とも言われ、竜とも蛇ともみえる姿をしているという。
「このミズチ、とある天女の眷属だったらしくてね」
 UDCアースにいる頃は天女様の元で働いていたのだ。しかしUDCアースを離れる際に、ミズチは妖怪としてカクリヨファンタズムに、天女は自然の理に従って骸の海に行った……のだが。
「どうやら、天女が骸魂としてカクリヨファンタズムに帰ってきたみたいなんだ」
 そして運命が二人を邂逅させる。その邂逅はとても幸せなものであったはずなのに。骸魂と妖怪という関係がオブリビオンを生み出してしまったのだ。
「そして、世界も崩壊するっていうね」
 何とも言えない顔をする司。
 しかし、この話を悲劇として、このまま世界を終わらせるわけにはいかない。
「今なら、二人を引き剥がせば世界の崩壊を止められる」
 オブリビオンから妖怪を助け出すには、骸魂のみを倒すしかない。それはつまり、せっかく一緒になった二人を引き裂くということに他ならない。

「辛い役目を頼んじまってすまない。でも……頼む」
 司は言う。
 それはきっと世界のためでも、ミズチのためでも、望まずに骸魂となった天女のためでもあると。
「頼めるかい?」
 司の言葉が猟兵たちの間に響き渡る。

●再度、カクリヨファンタズムにて
 司に転送されてきた猟兵たちはカクリヨファンタズムの地を踏む。
 件のミズチと天女が邂逅している空の真下。ここから空へあがる必要がある。

 司の話を思い出す猟兵たち。
「不幸中の幸いってやつでね。崩壊中のカクリヨファンタズムは色んな概念も崩壊している」
 つまり、常識は良い意味で通じなくなっている。
 そこが『足場』だと認識すれば。空であろうと水の上であろうと踏みしめることができるし、その要領で空へ駆けあがることだってできる。もちろん、空である以上、飛ぶことを邪魔するものはいない。

 猟兵たちの道行を邪魔するのはただひとつ。空から降ってくるオブリビオンの欠片のみ。
「ミズチと天女の融合の副作用ってとこだ。空から水塊だったり雹だったり氷柱だったりが降ってくる」
 見た目通りの物質なら問題ないのだが、いずれもオブリビオンとしての力を有している。有象無象とはいえ、対策も無しにその身に受ければダメージは免れない。
「すっごく弱っちいオブリビオンだと思ってくれ。弾くなり吹き飛ばすなり、何か対策を打てば問題ないさね」
 そして、オブリビオンの元まで辿り着いて欲しい。

 その後は……猟兵たちに託す。





第3章 日常 『思い出食堂』

POW美味しい(楽しい、嬉しい)料理を注文する
SPD辛い、苦い(辛い、悲しい)料理を注文する
WIZ甘酸っぱい、ほろ苦い(恋や友情)料理を注文する
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ふと気づくと。

 ミズチは『いつもの』カクリヨファンタズムの空に浮かんでいた。本当にいつもの。

 ミズチの前には、猟兵たちがいた。確かに普段は見かけない存在だけれども、特段珍しいかと問われれば、そうでもない。

 そして……ミズチの前には確かに見たはずの、言葉を交わしたはずの、天女様の姿が無かった。

 そう、確かに声を交わして。そしてゆめうつつな中とはいえ、お互いの言葉を存分に語り合ったはずだ。それは遠い過去のことでは無く、ほんの少し前の出来事であったはずで……それはつまり。

 ――ああ、そうか。
 ――天女様はもう一度骸の海へ戻られたんだ。ひと時の逢瀬を終えて。

 全てを悟ったと思しきミズチに猟兵たちは声をかける。カクリヨファンタズムの崩壊を止めるために、倒すしかなかったと。

 ミズチは許してくれた。どれほど天女様に会いたかったとしても、会えたとしても。世界と引き換えに、なんてことをしたら、天女様に怒られると。
 だから笑って許してくれた。でもとても寂しそうな笑顔で。

 これでこの話はお終い。骸魂は倒されて、事件は解決しました。

 ……それでも。ミズチはその場に佇んで空を見渡している。しょんぼりした寂しげな雰囲気を纏いながら。『もう一度』がないものかと。

「お、ミズチ。どうした元気ないじゃないか?」
 そこに通りかかったのは一匹の妖怪。空飛ぶ大烏であった。ミズチの友達である。口を開こうとして戸惑ったミズチ。それを見て察した大烏が笑いながら話してくれる。
「そういや『思い出食堂』には行ったかい? あそこは行くべきだよ」
 と大烏さんオススメの『思い出食堂』とは。

 それは訪れた人の思い出を料理にしてくれる不思議な食堂。といっても、思い出と引き換えに料理が作られるわけでは無くて。
 そう、思い出が料理の味になる、と言えばいいだろうか? もちろん料理そのものの味が変わるわけではない。

 食べるということは糧にするということ。それは未来に向かって進む行為でもある。色んな思い出は過去に縛り付ける要因にもなるけれども、未来へ進む力となることもある。それをこの食堂は料理という形で手助けしてくれるのだ。

 思い出食堂自体は小さな食堂である。フレンチのフルコースが出てくるわけではないが、それでもお客さんの食べたいものは全力で応じてくれる。
 その時、ひとつ。思い出を添えて注文して欲しい。大丈夫、その思い出が無くなるわけではない。

 感動したり、驚嘆したり、笑い合った思い出は美味しい料理へと変わって。食べることで純粋に新たな活力となってくれるだろう。
 泣いたり、悲しかったりした思い出は辛い、苦い料理になるけれども。噛み砕いて飲みこんで、そうすれば乗り越えられるかもしれない。
 少し遠くてセピア色になっている恋や友情といった人生の一幕は甘酸っぱい、ほろ苦い料理になるけれども。噛み締めることで再び色鮮やかな想いとなって再び力となるだろう。

 食べることで、噛みしめることで。その思い出を鮮明に思い出すことができる。あるいは追体験と言ってもいいかもしれない。それを飲みこむことが、取り込むことが生きるということ。
 きっといま、ミズチに必要なのは、そういうことなのだ。

「猟兵さんたちと一緒に行ってきなよ。そこで食べて来れば元気も出るさ」
 大烏に促されてミズチは思い出食堂へ向かうことにする。
「猟兵さんたち、どうする?」
 ミズチが首を傾げながら問いかけてくる。

 もし、時間があるのなら。ミズチと一緒に思い出食堂へ行ってみませんか?
 あなたが注文するのは、どんな料理で、どんな味なのでしょう?

※補足
プレイングにて、食べたい料理とどんな思い出をかみしめるかを書いて下さい。
料理は普通のレストランとかで出てくるものでもいいですし、『思い出の味』といった記憶を頼りにしているものの再現もできます。
色んな思い出をかみしめることで、明日への活力にして下さい。

なお、ミズチはお誘いを受けた場合に、皆さんの選んだPOW、SPD、WIZに従って天女様との思い出を料理にする予定です。