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迷宮災厄戦⑱-6〜真っ黒ピエロは宙を舞う〜

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン


 そのテントの中に地面はなく、どこまで続くかわからない虚空が広がっている。
 しかしなぜか大玉や三輪車、火の輪に人間大砲がまるで地面がそれらには存在しているかのように微動だにせず浮いていた。
「あははははははは!!」
 そんな異様な場所に吊り下げられているブランコの手すりにオウガ・オリジンが飛びつき全身を使って大きく揺らす。
 そうして最高点に到達した所で、オリジンは狂ったように笑いながら手を離して虚空を横切っていく。
 するとどこからともなく象に似た姿を持つオウガが突然現れた。
 飛んだ時には影も形もなかったにもかかわらず、狙い澄ましたかのように象のオウガの背中へ綺麗な着地を見せる。
「さぁさぁ、見てくれわたしを! 拍手を打て! 喝采を上げろ!」
 1人も観客がいないにも関わらずオリジンは大声を張り上げると、大袈裟なポーズを取って見せた。
「そのサーカス小屋には地面がなく、入った者は皆どこまで続くか分からない虚空に投げ出されてしまいます。これは空を飛べる人にも関係あるお話です。重要なので聞き逃さないでください。翼とかブースターがあるから平気ー、って入ると微動だにも出来ずに落ちて行きますからね!」
 ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)はそう言って問題のサーカス小屋の全景を撮った写真をテーブルの上に滑らせた。
「そんな場所で1人のオウガ・オリジンが演技をし続けていることが確認されました」
 この場所にいるオリジンは「跳ぶ」ことはあっても「飛ぶ」ことはない。これは先程言ったように他の生物にも共通しているため、オリジンの能力ではなくこの地の特徴であることが濃厚である。
 それを示すようにオリジンは演技中も休憩中もサーカス小屋の中にある様々な道具の上でしか行っていなかった。
 その代わりに虚空にはサーカスで使われる道具が浮いており、それに飛び移り続けることで移動することは出来る。もちろんオリジンが飛び移る前にその道具を占拠し、攻撃に転用することも可能だろう。
「さらにこれらの道具を使用すると不思議な力が起こって、普段よりも素晴らしい出来栄えになるそうです。ひょっとしたら普通に攻撃するよりも威力が出るかもしれませんね。もし腕に自信がありましたら狙ってみてはいかがでしょうか?」
 ただルウの調べによれば、このオリジンのユーベルコードはサーカスの演者を好きなだけ呼び出せる物だという。その演者も「足場」とカウントされていればオリジンが落ちることは無いだろう。
「なので演技を妨害しつつ、足場を一掃することがこのオリジンを討伐する鍵となるでしょう。説明は以上です。それでは、本日もよろしくお願いします!」
 そう言ってルウは小首を傾げて見せた。


平岡祐樹
 お疲れ様です、平岡祐樹です。サーカスは映像でしか見たことがありません。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
 このシナリオには、シナリオボーナス「サーカスの道具を利用して戦う」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と大サーカス』

POW   :    オウガ・サーカス
【サーカスの獣たちの姿をとったオウガ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    道化恐怖症
レベル×1体の、【頬】に1と刻印された戦闘用【ピエロ型オウガ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    クラップハンズ・フォー・スター
戦闘力のない【大サーカスの観客達】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【サーカスの道具が変形すること】によって武器や防具がパワーアップする。
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ナイ・デス
サーカス、ですか
どう動けば喝采を受けるのかは、よくわからない、ですが……

跳び移りながら戦えば、いいのですね……!

『イグニッション』

『地形の利用』浮かぶサーカス道具、それを足場に『怪力』で跳んで跳んでの『空中戦ダッシュ』
道具に乗っているより、跳んでいる時間の方が長いような勢いでオリジン目指す

ピエロが現れても『野生の勘で見切り』
【生命力吸収】する光を纏った黒剣の【鎧無視】する刃を、すれ違いに【カウンター】で切り裂いて
攻撃受けても【激痛耐性、継戦能力】すぐに地縛鎖のばし【念動力】で操り道具と繋いで復帰して

合体していても、正面から
光を螺旋回転させて『トンネル掘り』のように貫通して、オリジンへ刃を!



「サーカス、ですか。どう動けば喝采を受けるのかは、よくわからない、ですが……」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は小屋の前に立つと勢いよく駆け出し、虚空へと飛び出していった。
「跳び移りながら戦えば、いいのですね……! 『イグニッション』!」
 偶然近くにあった大玉を蹴飛ばし、炎がついてない潜り輪に掴まり、大砲を踏んづけて跳ぶ。
 目指すのはただ一つ、象の上で変なポーズを取っているオリジンのみ。
 そこへ奇怪な笑い声を放ちながら、転がる大玉の上でジャグリングをするピエロが迫ってきた。ピエロは両手で投げ回していた火炎瓶をナイに向けて投じてくる。
「邪魔、です!」
 野性の勘でそれらの動きを見切ったナイは、一切振り向かずに火炎瓶の火で着火した大砲から放たれた砲弾を踏み台にしてピエロのいる場所まで飛びついていく。
 そして黒い剣に生命力を吸収する光を纏わせるとすれ違い様に、投げられている物の隙間を縫うようにしてその首を撥ねた。
「おおっ、と」
 そのまま足場にしようとしていた大玉がピエロの亡骸と共に落ちていったのをみて、ナイはとっさに地縛鎖を伸ばして天井に吊るされたブランコに引っかけて落下を免れる。
 ホッとしたのも束の間。空中でゆらゆらと揺れるナイに向けて、どこからともなく現れたピエロ達が集まり、1つの巨大生物と化していく。
 1人1人と重なる度にその得物は大きくなり、手のひらサイズだったナイフもナイよりも巨大なサイズへと変貌していった。
「もう……次から、次へと……」
 オリジンの姿は巨大ピエロの顔に隠れて見えなくなってしまった。だがあの象のオウガが凄まじい俊足でも無い限り、どこら辺まで動けるかの予測はついていた。
「ダメで、元々。一撃で、いきます!」
 ナイは足を揺らしてブランコを動かす。そしてブランコを落とそうと巨大ピエロがナイフを投じたところで手を離す。
 そして体内から放つ聖なる光を黒剣を軸に螺旋回転させ、まるでドリルかのように巨大ピエロの体を撃ち抜く。
 肺の辺りにどでかい穴を開けられたピエロが虚空に落ちていく中、血と肉と骨に覆われた視界が晴れたナイの先には元の場所から一切動かずにオリジンが待ち構えていた。
「演技中は、観覧者の立ち入りは禁止だ」
 そう言って取り出したボウリングのピンでその一撃を受け止めると、強引に腕を払ってその軌道を逸らさせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

サーカス……曲芸のような戦場とは何とも厄介な
こういう戦いの経験は少ないですが、何とか戦う事にしましょう

トランポリンを蹴って『ジャンプ』、そこから空中ブランコなどに向けて鎖を伸ばす・巻き取るなど『ロープワーク』の要領でオリジンを『追跡』して攻撃を加えていく

移動中にフープなど使えそうなものがあればそれも鎖で手繰り寄せて『投擲』。まともなダメージは通らずとも行動の妨害

獣オウガの攻撃は鎖移動が間に合うなら回避、無理なら【死を告げる暗影】によって背後に転移する事で回避しつつ攻撃して撃破。更に足場代わりに蹴飛ばしてやる
それも無理ならタイミングであれば『オーラ防御』で防ぐ



「サーカス……曲芸のような戦場とは何とも厄介な。こういう戦いの経験は少ないですが、何とか戦う事にしましょう」
 トランポリンの上で足元を確認するかのように控えめに何度も跳んでいたクロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は足を折って着地する。
 すると周囲に張り巡らされたスプリングが伸び切り、反動でクロスの体を高々と宙へと弾き飛ばした。
「おおっ!?」
 思わぬ跳びように動揺しつつも、クロスは鎖を伸ばして宙にぶら下がっていたフープに巻きつける。
 そして強引に引っ張って千切ると、ボウリングのピンを振り切ったばかりのオリジンの後頭部に向けて投じた。
 完全に後ろへの興味を持っていなかったオリジンにフープが当たる。
 頭の位置は微動だにせず、特に痛そうな音もあがらなかったものの、クロスからしてみればまともなダメージは通らずとも行動の妨害になればそれで良いのである。
 その狙いはしっかりと功を奏し、オリジンはナイからクロスへと視線を移していた。
「小癪な真似を……餌の時間だ、やれ」
 そうしてブランコにぶら下がったクロスに向けて、突然現れたライオンの見た目をしたオウガが唸り声をあげる。
「ああ、やっぱりオリジン以外の演者は落ちないのか。面倒だな」
 虚空で四つ足で立っているオウガが助走をつけてクロスに向かって飛びかかってきた。しかしクロスは鎖を巻き上げると、オウガの描く放物線の最高点より上へ自分の体を引き上げた。
『逃げられない、逃れられない、逃さない』
 空振って落ちていくオウガに向けてクロスは影の魔弾を撃ち込む。
 空中で恨めしそうに体ごと振り返ったライオンの額で魔弾が弾け散ると同時に、ぶら下がっていたクロスの姿が消える。
『これが、俺が……死です』
 驚愕している間にオウガの背に移動していたクロスは大剣を振りかぶる。
 視界外からの一閃を体勢を変えるための物を持たない者が避けられるはずもなく、真っ二つにされたオウガの体が剣の風圧に煽られて互いに、クロスと接触することなく落ちていった。
「さて……あと当てられそうな物は近くにあるかな」
 一仕事を終えて落ち始めたクロスは再びブランコに鎖を引っ掛けると辺りを見回し、更なる投擲物の吟味を始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
流石にサーカスに参加した事はありませんが、映像なら見た事があります。
それらの【パフォーマンス】を真似ながら接近して行きましょう。
まずは空中ブランコで【空中戦】を。
飛び移る先がなければワイヤーをどこか他の道具に投げ絡ませて落ちない様にします。
そのままワイヤーで襲い来るであろうピエロを【捕縛】しても良いですね。
彼には足場になって貰います。
人の上に人が乗るのもサーカスっぽいでしょう。
後は【ジャンプ】でピエロを飛び越えつつ大玉を乗りこなし、【ダッシュ】で綱でも渡ればオリジンの近くにたどり着くでしょうか。
サーカスの道具のナイフを【投擲】してオリジンを的に張り付けにし、ユーベルコードで一撃入れましょう。



「流石にサーカスに参加した事はありませんが、映像なら見た事があります。それらのパフォーマンスを真似ながら行きましょう」
 他の世界に来て初めて「サーカス」という存在を知ったハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)はブランコの手すりにぶら下がりながら勢いをつけるべく、足を揺らしていた。
「手放せば大怪我、下手すれば死……。すごいですねプロの方々は」
 大きく振れるたびに手にかかる力が強まるのを感じていると、向かいのブランコに見覚えのある青ワンピースの少女が飛び移ってきた。
「乱入者がやや多すぎるようだな……そろそろわたしもオウガの上で立ちっぱなしとはいけないな」
 そしてハロの体が近づいたタイミングで手を離すと、どこからともなく取り出したボウリングのピンでハロの手を叩きにかかった。
 それを避けるべく咄嗟に手を離して落ちていけば、頭上で手すりが割れる音がした。
 ハロが回りながら辺りを見渡せば巻きつけられそうな品々がまだ多く有る。
 その中から明後日の方向を見ていたピエロの首にポケットから取り出した鎖を巻きつけて一気に引き寄せた。
「人の上に人が乗るのもサーカスっぽいでしょう?」
 跳び箱のようにしてピエロの頭を踏ん付けたハロは素早く鎖を回収しつつ、奥にあった大玉に着地する。
「う、おっ、とっ、とっ、と……!?」
 ついた衝撃で転がり出した大玉から落ちないように慌てて次の一歩を出せば、それによってまた玉は加速していく。
 しかし行きたい方向に向かって足を出せば制御出来ることが分かると、炎を吹いたり投擲してくるピエロ達の攻撃の合間を塗って高台にかけられた梯子の元までたどり着けた。
 高台には綱渡り用の綱が張られている。丸く細い足場の上には半壊したブランコにぶら下がるオリジンの姿があった。
 ハロは先程の大玉による走破の時にすり取っていたナイフを取り出すとオリジンを釘付けにしようと投じる。
 しかしオリジンはナイフを浴びてもテントの布まで吹っ飛ばされることはなくブランコから綱へとひらりと落ちてきた。
 だがオリジンがどうなろうと、次にどうするかは決まっていた。
『捉えられないほど、疾く!』
 綱の上を走りながら外套を脱ぎ、下着姿となったハロがオリジンの懐に飛び込む。
 そして服に引っかかり放しになっていたナイフを抜くと、その体を深々と抉り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
UC発動。一応これでも役者ですんで、舞台での立ち回りは一応、それなりは。

第六感で攻撃を見切りながら、あちらこちらに跳び跳ねますよ。歌唱しながら移動して、相手のリズムを狂わせられたらいいな。わざと相手の道具を揺らしてみたりとかね!

玉乗りの玉、空中ブランコ、綱渡り用ロープの上、オリジンの生んだ人なんかに恐れず跳んでいきます。とにかく止まらず駆け続ける。そうして念動力でジャグリング道具を回収し、高速詠唱で発火。燃えている道具をオリジンに投げつけます。

フラフープも燃やしちゃう。綱渡りの綱も可能なら燃やしちゃう。燃えたまま渡りきるの。
命を懸けたサーカス、なんて素敵でしょう?



「Ladies and gentlemen!Welcome to my showtime!!」
 天井に吊るされたスポットライトが鈴木・志乃(ブラック・f12101)を照らす。
 花形である自分を差し置いて目立とうとする志乃の姿に綱から落ちて来たオリジンの機嫌は急降下の一途だった。
「お前……何が『my』だ、ここはわたしの舞台だ!」
「一応これでも役者ですんで、舞台での立ち回りは一応、それなりは、ね?」
 第六感でオリジンやその取り巻きから放たれる攻撃を見切りながら、志乃は玉乗りの大玉、空中ブランコ、綱渡り用ロープの上、オリジンの呼び出したピエロと、恐れず跳んで、跳ね、移っていく。
「笑え、笑え、道化師達♪ 火の輪を潜る獣を仰ぎ♪」
 とにかく止まらず駆け続けているうちに楽しくなってきたのか、志乃は曲芸を交えながら歌い出す。その様にオリジンの気分はさらに逆撫でされた。
「……はやく、誰でもいい! あいつの息の根を止めろ!」
 花形であり座長であるオリジンの命令に周囲のピエロ達の目の色が変わり、さらに攻勢が増す。
 流石にこれ以上やられたら避け切れなくなると感じてきた志乃は飛んできた品々を念動力で止めた。
「はい、止めてみました」
 志乃は肩を竦めつつ浮かせたジャグリング用の道具に火をつける。そして火種が近くに無かったにも関わらず、突然ついた火に驚いた様子のピエロ達に向けて道具を一斉にけしかけた。
 投じられたよりも速い一撃を避け切れず、火だるまとなったピエロ達は虚空の舞台場を転げ回った。
「道具だけだとつまらないしなぁ……そうだ、フラフープ燃やしちゃおう」
 思いつくままに、潜る用の輪に火もつける。そして殴りかかろうとしてきたオリジンの右腕をバク転で避けながらそれを通り抜けた。
 そして燃え尽きて炭と化したピエロだった物を足場にして志乃は高台にたどり着く。
「あーと、綱渡りの綱も」
 自分が使った物と全く同じ物を足場として追いかけてくるオリジンを尻目に志乃は自分が立っている綱に火をつけると一目散にその上を走り出す。
 オリジンが梯子を上り切った頃には綱は焼き切れて落ち始め、綱が燃え尽きる前に対岸へたどり着けていた志乃は満面の笑みで振り返りながら腕を広げた。
「命を懸けたサーカス、なんて素敵でしょう?」
 完全にお株を奪うような振る舞いに、オリジンはわなわなと握った拳を震わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木々水・サライ
[アドリブ・連携歓迎]
サーカスか。ガキの頃は金がなくて見に行けなくて、こっそり裏口入場したっけなぁ。懐かし。
そんな俺が今度は演者か。いいねぇ、いいねぇ。

UC【着飾る白黒人形(ドレスアップ・モノクローム)】起動。【黒タキシード】に着替えた上で俺はボールに乗りつつ、手品でも披露するぜ。
その手品は様々だ。鳩を呼んだり、薔薇を取り出したり、手に持ったジャグリング道具を消したり、ハンカチの中から【黒鉄刀】と【白銀刀】を抜き出したり。

呼ばれた観客達に楽しんでもらったその後は、ボールに飛び乗りながら二つの刀でオウガ・オリジンに一閃だ。
たっぷり味わえ。2回攻撃した後に、刀の乱れ撃ちをな!!



「サーカスか。ガキの頃は金がなくて見に行けなくて、こっそり裏口入場したっけなぁ。懐かし」
 木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は外と内を分ける布をめくり、顔を覗かせる。
「そんな俺が今度は演者か。いいねぇ、いいねぇ」
「ふん、今新しい演者は募集していない。帰れ」
 冷たく言い放つオリジンに唇を尖らせたサライは一旦大人しく引き下がった。
「……ったく。ここはわたしがスターだ、花形だ、座長だ! 貴様らの立つ場は無いんだよ!」
 そうオリジンが叫ぶと何もなかったテントの外周に客席が迫り出し、そこへ座った様々な姿をした群衆が歓声をあげ始める。
「さあ、皆わたしを讃えよ! 訳の分からぬ乱入者に罵倒を浴びせよ!」
 そんな中、サライは騒ぎに紛れるように紳士的な黒い燕尾服姿に着替えて戻ってきた。
『この姿だと、少し動きづらいが……まあ、強化はあるからいいな』
 サライは偶然近くに転がっていた大玉によじ登ると何もない手を組み合わせる。そしてそれを解くと、中から一羽の白い鳩が飛び出し……落ちていった。
「……そっか、ここは飛べないんだったな。まあ、ルウが回収してくれるだろ」
 気を取り直し、サライは鳩と同じように何もない所から一輪の薔薇を取り出して近くにいた女性に投げ渡す。すると女性は手ではなく髪でそれを受け止めると、迷わずに口に運んで咀嚼し始めた。
「あははは、希望してた割にはお粗末な腕前ではないか! そんな物でわたしのサーカスに来た物を満足させるつもりだったのか? 片腹痛いわ!」
 オリジンがボウリングのピンをまるでミサイルのように何本も投じる。サライはそれを蹴り上げ、ジャグリングの道具とした。
「何、今はまだウォーミングアップだ。黙って手出ししてくるんじゃねえ」
 サライが手で受け止めようとする度にボウリングのピンが消え失せる。そして胸ポケットから取り出したハンカチを開き、何の変哲もないことをアピールした後、おもむろに右手を覆った。
「3、2、1!」
 ハンカチが翻った所から黒い刀身を持った刀が現れる。さらに反対の手にも同じことをすると、まるで鏡写しのように今度は白く輝く刀も現れた。
 ようやく観客席からどよめきが起きたのを感じながら、サライは別の大玉に飛び移りオリジンとの距離を詰めた。
「たっぷり味わえ、刀の乱れ撃ちをな!!」
 十字を切るように放たれた一閃は受け止めに入ったナイフを飛ばし、オリジンの舞台衣装を傷付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞠丘・麻陽
■方針
・同行:鞠丘・月麻(f13599)
・アド/絡◎

■行動
こういうのは得意とは言えないけど、頑張ってみるんだよ。

【慈光華】を使用、『ウェアキャット』の特性をコピーするんだよ。
これで、猫さんと同質の身体能力が得られるし、バランスの問題は『ブーツ』が有るから、サーカスの道具の間を跳び回るのも問題無いんだよ。

交戦の際には、召喚された『獣』達を対象に含めた『カルテットフォート』の射撃で[範囲攻撃]を中心に行うんだよ。
出来るだけ近づかせないようにするけど、接近されたら『柳陽天』で対処、形状は『動物調教用の鞭』にしておけばサーカスらしくなるかな、だよ?

後は、月麻ちゃんとお互いに補佐しつつ追い詰めるんだよ。


鞠丘・月麻
■方針
・同行:鞠丘・麻陽(f13598)
・アド/絡◎

■行動
正直なところ不慣れですけれど、頑張ってみますね。

【玉桂結】を使用して『女神の祭器』を召喚します。
着用することで『身体能力の強化』を行う首飾りですね。
これに『スカイダンサー』の技術を合わせれば、状況には問題なく対処出来そうです。

『金銀砂子』での射撃を中心に、接近されたら『蓬月天』で絡めて落とす形で交戦します。
何方にせよ、相手の『道化師』の跳躍を阻害することを優先して可能な限り[部位破壊]で脚を狙っていきましょう。

麻陽ちゃんとはお互いに補佐、移動時のフェイントに『空中ブランコ』をしてみてもよさそうでしょうか。

確実に叩いていきたいところです。



「正直なところ不慣れですけれど、頑張ってみますね。『大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より水鏡へと、その器をお与え下さい。』」
「こういうのは得意とは言えないけど、頑張ってみるんだよ。『大いなる豊饒の女神、《楽園の地》より紅鏡へと、象徴せし欠片の一つをお与え下さい。』」
 鞠丘・月麻(豊饒の使徒・月・f13599)と鞠丘・麻陽(豊饒の使徒・陽・f13598)はお互いに同じ神へ祈りを捧げる。
 すると月麻の元には一つの首飾りが天からもたらされ、麻陽の体のあちこちから黒猫の部位が生え始めた。
「これは…… 着用することで身体能力の強化を行う首飾りですね。これにスカイダンサーの技術を合わせれば、問題なく対処出来そうです」
「わたしも大丈夫! この跳躍力があれば月麻ちゃんにも負けなさそうだよ!」
「ぐっ……騒がしい女子め。お前たち、あいつらをとっとと引きずり出せ!」
 斬られた布の辺りを押さえつつ、オリジンが部下に指示を出す。ピエロ達は近くに現れた動物に飛び乗ると鞠丘姉妹に向けて走り出した。
「これはサーカスらしくはないですが……」
「エンターテインメントとしては満点じゃないかなっ、だよ!」
 麻陽は肩と腰の辺りに四門の砲台を構え、月麻は二丁の拳銃を手に持つと一斉に掃射する。凄まじい弾幕に不意をつかれた物は落ちていったが、残りの者達は対応して曲芸をしながら避け始めた。
「やっぱり撃つだけじゃダメですよね。では……」
 月麻は拳銃を手元で回して戻すと代わりに純白の絹布を出す。そして豪快に宙を舞うピエロに投げつけると、布はまるで意志があるかのようにその足に巻きついた。
 音も無い悲鳴をあげるピエロは強引に引き寄せられ、月麻の跳び膝蹴りを太腿に喰らわされる。
「動物調教用の鞭にしておけばサーカスらしくなるかな、だよ?」
 一方で空席となった獣の上に乗った麻陽は金属の鞭を取り出すとガラ空きの背中に向けて勢いよく振り下ろす。
 どれだけ暴れてもガッチリとホールドした太腿は外れない。獣は恐怖を感じて逃げさせるために炎がついた輪へ突撃していった。
「わーわーわー!」
 しかし背中から聞こえるのは楽しそうな歓声だけで、輪の中を何度も潜っても麻陽の体には傷一つつけることが出来なかった。
「ああ、もう、どいつもこいつも情けない……やはりわたしが直々に叩かなくてはならんか!」
 苛立ちの声をあげたオリジンは乗ったライオンの腹を蹴飛ばすと、ボウリングのピンをまるで野球のバットのように構えて月麻に迫る。
 しかしそれを顔面に喰らったのはピエロの方で、跳んで避けていた月麻は振り切られた小さなピンの上に見事に着地していた。
「この、小癪な!」
「月麻ちゃーん!」
 払われる前に飛び退いた月麻は空中ブランコを漕いでいた麻陽の足を掴んで、一気に距離を取る。
「あの、最初より高度が下がってませんか、これ?」
「獣さんから教えてもらったんだよ。調節の仕方教えるからその鞭で殴るのはもうやめてくれって」
 重力に従い、姉妹の体はオリジンの元へ勢いよく戻っていく。それが分かっているからかオリジンは配下を呼び寄せ、強引に受け止めつつ迎撃する姿勢を取っていた。
「どうする? このままいく?」
「いえ、相手は仮にもフォーミュラ。確実にこちらに有利な状況に持ち込みたいです」
 そう言って月麻は手元にある布を振ってみせる。麻陽は笑顔で頷くと砲門をオリジン達に向け直した。
「全門、撃つんだよー!」
 放たれた砲弾を一体の象が体を張って受け止め、吹き飛ばされる。しかしその体が視界から失われた先にあったブランコに姉妹の姿はなかった。
「何っ……!?」
 目を疑ったオリジンの首に衝撃が走り、急に空へと吊り上げられて飛んでいく。ピエロ達がその先へ視線を移せば、次のブランコに繋がれた白い布を掴む月麻と手を繋いだ麻陽が持つ金属の鞭が、オリジンの首に巻きついて締め上げていた。
 オリジンは手で鞭を掴み、脚をバタつかせるが金属の拘束は一切剥がれる様子はない。
 ピエロ達は慌ててそのブランコを下げようとするが、それよりも先にオリジンの抵抗が止んでしまった。すると狼狽えていたピエロ達の体が溶け始めた。
「わわわわっ!?」
 同時に支えにしていたブランコを始めとする用具も砂となって崩れ始め、姉妹の体はオリジンの死体と一緒に宙へ投げ出され、落ちていく。
 しかし気付いた頃には、2人は見覚えのあるグリモアベースの床の上で座っていた。
「た、助かったんですよね? 私達」
「よ、よかったんだよ……」
 姉妹は互いの無事を確かめるように手を合わせると深々と息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月28日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト