迷宮災厄戦⑱-1~空飛ぶ箒と魔法の世界
●ファンタズム・メイジ
其処は地面のない、真っ青な空が広がる不思議の国。
大地のかわりに見えるのは、空飛ぶ箒が密集してできた島のような塊。その箒の島も常に移動しており、大空には様々な箒が飛び交っている。
その中心で飛んでいるのはアリスめいた姿をした少女、オウガ・オリジンだ。
彼女は空中で腕を組み、語りはじめる。
わたしは、『はじまりのアリス』にして『はじまりのオウガ』。
この世界で最も尊いのはわたし。
嗚呼、嗚呼。腹が、腹が減っている。アリス達よ、或いは猟兵とやら。その柔らかい肉と熱い血で、このわたしの腹を満たせ。
しかしただ喰らうだけでは興がない。おまえ達にわたしの力を見せてやろう。
さあ、飛べ。そして、底のない空に堕ちろ。
「――箒どもよ、わたしに従え」
オウガ・オリジンが一声掛ければ、周囲の箒が彼女の意のままに動く。
少女はその中の一本に飛び移り、颯爽と跨った。箒の尾からは星やトランプ、ハートの幻想が生まれ、青い空や白い雲の最中に散らばっていく。
其処に空飛ぶ箒を駆る魔法使いのオウガが現れ、オリジンを囲うように飛び回った。
「忌々しき猟兵共よ」
そして、オリジンはこの国に現れた者達に呼び掛ける。それは尊大さを感じさせる、絶対強者めいた声色だった。
「この国でわたしに勝てるものなら、挑んでくるが良い」
ハートのトランプを散らしながらオウガ・オリジンは胸を張る。
決して勝てまいと語るように、黒く塗り潰されて見えない口許を歪めて――。
●ブルーム・オブ・ハート
「みんな、魔法の箒の国にいるオウガ・オリジンを追って!」
迷宮災厄戦。この戦の首魁である存在が姿を現したのだと告げ、メグメル・チェスナット(渡り兎鳥・f21572)は仲間達に願う。
その国は空飛ぶ箒が密集してできた国だ。
何とも不思議な世界ではあるが、其処にオウガ・オリジンがいる現在、彼女の力を削ぐチャンスが訪れている。
「みんなを転送するのは箒が密集して島状態になっている所の上!」
その国には地面はなくて空しかない。
足場も箒密集地帯しかなく、その足場も箒が動くことでいずれはバラバラになってしまう。そうなる前に一本の箒を手に取り、言うことを聞かせて飛ばなければならない。
「どうやったら箒が言うことを聞くのかって? 簡単さ!」
メグメルは得意げに笑う。
そして、どうすればいいのかを語っていった。その方法は――。
「カッコいい名前をつけてやるんだ!」
可愛い名前でもいい、と付け加えた少年は箒の従え方について詳しく告げる。
たとえば『ファイアドラゴ2020』だとか、『ウサチャン号』や『リインカーネイション』に『幽幻鳳凰』、『いちごみるく』、『はぴはぴ☆ぴーち』などなど。猟兵の数だけ名前があるだろう。
君の名前はこれ! と示してやれば、箒は猟兵を乗せる最強の乗り物になる。
「後は箒に乗って戦えば良いんだ。箒での戦いなんて、何だか魔女になったみたいで不思議だよな。操縦は慣れてなくても箒の方がうまくやってくれるだろうから、みんなはオウガ・オリジンに思いっきり力をぶつけてくれ!」
そうすれば敵は倒せるはず。
空中での激しい戦いとなるが、全力を出して力を合わせれば勝利も掴める。
頼んだ、と告げたメグメルは信頼の宿った笑みを向け、転送の準備を整えた。
「それじゃ行くぜ! ゲート、アンロック!」
そして――魔法の箒の国に繋がる時計ウサギの路がひらかれ、戦いの幕があがる。
犬塚ひなこ
こちらはアリスラビリンスの戦争、『迷宮災厄戦』のシナリオです。
敵はオウガ・オリジン。戦場は魔法の箒の国となります。
こちらのシナリオは公開直後からプレイングを受け付けています。
描写は先着順ではなく、大成功判定の方から採用していきます。採用人数は特に決めていませんが、マスターページにて締め切りなどの情報を告知する予定なので、お手数ですがご参加前に確認頂けると幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
●プレイングボーナス
『空飛ぶほうきをうまく使う』
戦いの場は『空飛ぶ箒が密集してできた国』です。
オウガ・オリジンは箒に乗ったり乗らなかったり、普通にぶんぶん飛んでいます。
皆様の初期位置は箒が集まった島です。
この国には地面がなく、飛び交う箒を掻い潜ってバトルする必要があります。そのうちの一本を捕まえて言うことを聞かせれば、箒にまたがって空中戦ができます。
言うことの聞かせ方は『名前を付ける』ことです。
よほど変な名前でなければ成功します。一度付けた名前は変えられず、リプレイ内で連呼されることもあるので名付けは慎重に!
どんな形がいいかも選べるので、ご希望があればプレイングにてご指定ください。
なければ普通か、参加者様に合いそうな見た目を此方で選びます。
元から飛べる方も箒に乗った方が有利に戦えます。一度乗ってしまえば操縦は自動(あえて自分で操作してもOK)ですので思いっきり格好良く戦えます。
あなたらしい箒の空中戦を見せてください!
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』と魔法の箒』
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POW : ファイア・オブ・ハート
【ハートのトランプ】が命中した対象を燃やす。放たれた【ハートの女王の姿をした】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ファンタズム・メイジ
【空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 箒どもよ、わたしに従え
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法の箒】で包囲攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エドガー・ブライトマン
とびきり速い箒が良いな
ずうっと遠くまで飛べるくらいタフで、まるで流星のように翔ける
そんな箒はいるかなあ…… アッいた!なんだか逞しいヤツ!
ごきげんよう、そこの名もなき箒君
私の名はエドガー。この世界を守る王子様だよ
一緒に世界を救う旅に出ようよ
キミにぴったりな名前も考えてある
空飛ぶキミは、オスカーの弟分。ワイルド・スター君だ
いくよ、ワイルド・スター君!
箒に跨り、いざ戦いへ。今日はちょっとオスカーになった気分だよ
箒のスピードを活かし、剣を突き刺す威力をより高める
箒に乗った状態でも、踊るように戦えるかな
オウガもオリジン君も、あわせてこの剣で相手をしよう
ワイルド・スター君、最後までついてきてくれたまえよ
●勇猛なる星の箒
一面の空が広がる、果てのない国。
青空の最中を飛ぶ箒の島の中心に降り立ち、一歩を踏み出す。
「おっと」
不意に足元が揺れたことでエドガーは思わず声をあげた。足場になっている箒の柄がちょうど動いた瞬間に踏み込んでしまったようだ。
ごめん、と告げて先へ進んだエドガーは辺りを見渡してみる。この数多の魔法の箒の中から、此度の相棒を選ぶとなると難しい――と、思いきや。
「アッいた! なんだか逞しいヤツ!」
エドガーが所望していたのは、とびきり速い箒だ。
ずうっと遠くまで飛べるくらいタフで、まるで流星のように翔ける。そんな箒を想像していたのだが、願い通りの箒が数歩先にあった。
柄は隆々とした太い木の枝をそのまま折って流用したような出で立ち。
穂先は猛々しいほどにバッキバキの細枝の集まり。それでいて洗練され、鍛えあげられたようなフォルムになっているのでエドガー好みだ。
譬えるならば王族に付き従う近衛兵のような箒だった。
「ごきげんよう、そこの名もなき箒君」
『……!!』
箒は言葉を話せないが、自分に掛けられた声だと分かったらしく、穂先を動かして反応している。その傍に歩み寄ったエドガーは手を伸ばした。
恭しく、されど王子としての威厳も失くさぬまま、彼は語りかける。
「私の名はエドガー。この世界を守る王子様だよ」
王子様? と首を傾げるように箒は左右に穂先を揺らした。よく見れば、箒の胴締め上部に星の形をした飾りが施されている。陽を受けて煌めいた飾りの星を見つめ、エドガーは双眸を細めた。
「一緒に世界を救う旅に出ようよ。キミにぴったりな名前も考えてある」
エドガーがそう告げると、彼の頭の上に乗っていたツバメのオスカーが小さく鳴く。頷いたエドガーはしっかりと、箒にその名を告げていった。
そう――。
「空飛ぶキミは、オスカーの弟分。ワイルド・スター君だ」
その瞬間、ただの箒は自分だけの名を得た。
伸ばされた手に飛んできた箒の柄が重なり、早く乗って! という強い意思が伝わってきた。エドガーは馬に跨るように箒に跨る。
「いくよ、ワイルド・スター君!」
呼び掛けられたことで箒は一気に加速した。
いざ、戦いへ。
世界を救う旅に、と誘われたことでワイルド・スターも張り切っているのだろう。空の向こう側に飛ぶかのごとく、尾から光の軌跡を散らしたワイルド・スターは飛ぶ。
今日はちょっとオスカーになった気分だ、とエドガーが口にすると、服の中に潜り込んでいたツバメが何かを語るように鳴いた。
そうだね、と頷いたエドガーは強くワイルド・スターの柄を握る。
すると、前方に箒に乗ったオウガ・オリジンが見えてきた。頼んだぜ、と星の箒に告げたエドガーはレイピアを抜き放つ。
「猟兵が箒を引き入れたか。やってしまえ!」
その気配に気付いたオウガ・オリジンが魔法使いのオウガを呼び出した。魔女帽子を被ったオウガがエドガー達に迫ってくる。
しかしワイルド・スターは速度を緩めず、敵に突撃していった。
そのスピードを活かしてエドガーが剣を振るうことを自然に理解したからだ。刹那、魔法使いオウガが氷撃を繰り出した。しかし、その氷すら貫くエドガーの剣の切っ先がオウガに迫り――相手は一瞬で胸を貫かれる。
「次に行こうか」
消えていく魔法使いを見送ることなく、エドガーはオウガ・オリジンを追う。
ワイルド・スターは星を散らしながら翔けた。風の抵抗が箒にも掛かっていると察したエドガーは己のマントを脱ぎ捨てる。
その瞬間、星の箒は更に加速した。ち、と舌打ちをしたオリジンはエドガーの方に振り向き、ハートのトランプを撒き散らす。
それをレイピアで斬り裂くエドガーの姿は、まるで踊っているが如く優雅だ。
「おのれ……小癪な。おまえ、あの王子の行く手を阻んでおけ!」
だが、オリジンはその間に別の魔法使いを呼んだ。
目の前に敵が立ち塞がる中、更に戦う覚悟を抱いたエドガーは星の箒に呼び掛ける。
「ワイルド・スター君、最後までついてきてくれたまえよ」
勿論! というように箒が飛翔で以て応えた。
魔法使いを倒したら、またオウガ・オリジンを追うことになる。彼女が倒れるまで決してこの剣は収めないのだと決め、エドガーは剣の柄を強く握った。
星の箒と共に。
この戦場を何処までも翔け抜けていくために――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・レヴェリー
無数の箒から選ぶのは悩むけれど……そうね、辺りを大きな鳥のように飛び交う箒の中で一つ小さくて控えめな、駒鳥のようなあなた。
男の子か女の子か分からないし、あなたの『名前』は……『ロビン』
わたしは乗った子を意のままに操るみたいなのは無理だけど、息を合わせるのはちょっと自信があるの。基本はロビンを信じて動きやすいように重心を合わせつつ、時に飛び降りて空中でロビンに拾ってもらいながら、わたし達を追う魔法のほうきに対抗してわたしの持つ『四天の結晶』を放って【空平を飾る星夜】を発動
結晶で箒を撃ち落としつつ、軌跡が描いた魔法陣でオリジンを攻撃するわ
ぎゅっと大事に握っておけば、ロビンも連れて帰れるかしら……?
●少女と駒鳥
とん、と踵から降り立った空色の世界。
ぐらぐらと揺れて、動き続ける魔法の箒の足場は不安定だ。
アリスは両手を広げて均衡を取り、そうっと箒の島を歩いていく。足元にも箒、右を向いたら箒、左を向いても箒。何なら頭上にも魔法の箒が飛んでいる。
どれもそれぞれに違う素材で、違った形をしていた。
「たくさんあるのね」
真っ直ぐに切り出された柄のもの。木の枝をそのまま使ったような素朴なもの。
整えられた穂先のものや、乱雑に纏められただけの穂先になっているものまで、たくさんの魔法の箒が見える。
これほど無数の箒からひとつを選ぶのはとっても悩んでしまう。
アリスは傍を通り過ぎていった大きな箒を見送り、辺りを見回してみた。
「あの子は……?」
アリスはふと、箒の中に埋もれている小さな影に目を留めた。
それは決して目立つような箒ではない。しかし、箒の編み下げの部分に薄青のリボンが控えめに結ばれているのが気になった。
辺りを大きな鳥のように飛び交う箒の中でたったひとつ、ちいさな鳥のような子。
「ねえ、駒鳥のようなあなた」
『?』
アリスが呼び掛けると、ちいさな箒は不思議そうな仕草をした。自分が呼ばれたと分かり、振り向くようにくるりと柄の先をアリスに向ける。
「あなたは男の子? それとも女の子? もしかしたら、どっちでもないのかしら」
アリスは揺れる箒の島を一歩、また一歩と進んでいった。
そして、手を伸ばす。
「わたしと一緒に戦いましょう。あなたの『名前』は……『ロビン』」
可愛い駒鳥のようだから。
アリスがそう告げると同時に魔法の箒は個を得た。もうそれは、影に隠れていた唯のちいさな箒などではない。
たった今、世界にひとつきりの『ロビン』として生まれた。
伸ばされていたアリスの手の平に、駒鳥の名を抱く箒がそっと触れる。
リボンが風に揺れた様は喜びを示しているかのようだ。アリスは穏やかに微笑み、ロビンに颯爽と乗った。
両手で柄を握った瞬間、ロビンが青空を翔ける。
真っ直ぐに飛翔していくその尾は宛ら、本当の小鳥の翼のよう。
風になびく髪を片手で押さえたアリスは視線を巡らせた後、上空を飛んでいたオウガ・オリジンを見上げた。
「ロビン、あそこまで飛んでいける?」
アリスが問うと、ロビンは頷くように少し沈んだ後に一気に高く昇る。
此方の接近に気付いたオリジンは片手を上げた。
「箒どもよ、やれ」
すると個を得ていない箒達が幾何学模様を描きながら、アリス達の行く手を阻む。
オリジンまでの道が塞がれた。
それでもロビンは高く飛び、迫りくる箒達を躱す形で素早く動いていく。
「ロビン、お願いね」
信じるわ、と告げたアリスはしっかりと箒に掴まった。名をくれた礼か、それとも友達になれたことへの喜びか、ロビンは懸命に飛んでくれている。
アリスはオウガ・オリジンのように箒を意のままに操る術は持っていない。
でも、とアリスは前を見据える。
「わたしね、息を合わせるのはちょっと自信があるの」
従えさせるのではなく、一緒に。
ロビンが動きやすいよう重心を合わせていくアリスは、どうやっても避けきれない箒が迫ってきたことを察する。
「ロビン!」
其処から柄を蹴ってひといきに跳躍して、アリスは敵の箒を躱した。
飛び降りた空中にはロビンが回り込んできており、見事に着地とキャッチが決まる。
「わたし達からもお返しよ」
自分を追う魔法の箒に対抗すべく、アリスは四天の結晶を放った。
黎明に白日、黄昏と星夜。
それぞれの空の色を映す四結晶は眩く光り、空平を飾る輝きとなって巡っていく。
その軌跡は敵の箒を打ち落としながら、徐々に魔法陣を織り成していった。そして、陣が出来上がった刹那。
「この星の輝きは――」
「そうよ、あなたを穿つ一閃になるの」
オリジンが身構えた刹那、アリスの解き放った魔力の奔流が空に迸った。
だがオウガ・オリジンは自分が乗っていた箒や周囲の箒を犠牲にして結晶の軌跡の威力をいなしてしまう。
何とかダメージは通ったようだが、アリスは唇を緩く噛み締める。
「箒が……」
その間にオリジンは空高くに飛び、此方との距離を大きく離した。ロビンはその後を追って飛翔し、アリスに「まだまだがんばろう!」と告げるような仕草を見せた。
「そうね、ロビン。必ずこの戦いに勝って――」
あなたが良ければ一緒に帰りましょう。
ぎゅっと大事にロビンの柄を握り、アリスは決意する。
絶対に勝利を得てみせる。こうして今、共に絆を紡ぐ駒鳥の箒と共に。
大成功
🔵🔵🔵
九重・玄音
箒に名前、そうね……。
私はオウガ・オリジンを倒すためだけにここに来たの。この箒は、オリジンを倒すための相棒。私が奴を滅ぼすのなら、あなたはそうね……一緒に掃除してくれる?「エリミネーター」。
形状:自在箒
POW
箒に跨ってオリジンを追尾。相手UCが来た場合、箒から飛び降りて二手に分かれるように回避、その後空中で合流してサーフボードのように乗るわ。
オーバーキル・パッケージを展開して一斉発射、範囲攻撃でオリジンの動きを止めたところに、跨って加速。つかさず接近して指定UCを顔面にぶち込むわ。
もう二度と、誰の血肉も吸わせない。あなたは私の手で、滅ぶのよ。
【アドリブ・絡み歓迎】
エメラ・アーヴェスピア
今までとまた違ったフォーミュラね…まさにアリスラビリンスと言った所かしら
他の戦場も変わった所が多そうだけれど…やってみましょうか
…この場にある箒を使えば有利になるというのは判るわ
でもごめんなさい、私にとって「箒」となると一番は「コレ」なのよ
だから…不利になるかもしれないけど行かせてもらうわ
『蒼穹翔るは我が箒』!小型の狙撃砲を変形させ、まさに箒の様に【騎乗】するわよ
後は飛び回りつつ装備のガトリングや複合兵装で【空中戦】、オウガを撃滅しつつ油断した所を本体に『箒』で狙撃よ
…いつもはあえて兵器に名前を付けないのだけれど…今回だけは特別よ
…それじゃあ行くわよ、「摩天楼」!
※アドリブ・絡み歓迎
●自在箒と魔導砲
空が何処までも広がる不思議な世界。
魔法の国に転送され、空飛ぶ箒の島に同時に降り立ったのは玄音とエメラの二人。
常に飛び続ける箒の塊が島を作っているこの場所は、いずれ箒がばらばらになってしまって足場ではなくなる。
その前に協力してくれる箒を見つけるのが今のひとときだ。
「変わった場所ね……」
「ええ、それに今までとまた違ったフォーミュラね」
玄音が辺りを見渡すと、エメラは上空を振り仰いだ。その視線の先には遥か彼方で自由に飛びまわるオウガ・オリジンの姿が見えた。
見て、というエメラの声を受け、玄音も空の上に目を向ける。
「あそこにオリジンがいるのね」
「なにもかも不思議で、まさにアリスラビリンスと言った所かしら」
何にせよ今はやるしかない。
エメラ玄音は頷きあう。そして、玄音はパートナーとなる箒を探しに向かった。
玄音は足元や横に飛ぶ箒を眺めて考える。
ふと目に留まったのは真っ直ぐに伸びるスタンダードな自在箒だ。それに無駄な部分や装飾はなく、まさに箒らしい箒と呼べる。
「箒に名前、そうね……」
自分は現在、オウガ・オリジンを倒すためだけにここに訪れた。
となれば相棒となる箒もまた、オリジンを倒すための存在。長箒に手を伸ばした玄音はその柄をそっと握る。
「私が奴を滅ぼすのなら、あなたはそうね……」
まだ箒は何の反応も見せない。このままではオウガ・オリジンが号令を掛ければ忠実に従うだけの意思のない箒のままだろう。
そして、玄音は頭の中に思い浮かんだ名を告げる。
「一緒に掃除してくれる? さあ……」
――『エリミネーター』。
名が告げられたその瞬間、ただの箒は忠実なる玄音の相棒となった。
一方、エメラは敢えて箒を選ばない。
「……この場にある箒を使えば有利になるというのは判るわ。でも、ごめんなさい」
エメラは首を横に振った。
「私にとって『箒』となると一番は『コレ』なのよ」
――蒼穹翔るは我が箒。
エメラが腕を伸ばした先に浮遊型魔導蒸気砲が現れた。小型の狙撃砲は瞬く間に変形していき、まさに箒のようになる。
それに騎乗したエメラは、この行動が不利になるかもしれないと知っていた。
しかし今、傍には同じ猟兵の仲間がいる。パートナーを選んだ玄音がエリミネーターと名付けた箒に跨ったことを確かめ、エメラは飛び立った。
共に援護しあえば勝機も掴めるはず。
蒸気をあげながら瞬く間に飛翔したエメラに続き、玄音も空へと舞い上がった。
箒の島を抜け、更に上へ。
辿り着いた遥かな天空にはオウガ・オリジンが待ち受けていた。
「同時に来たか。いいだろう、相手をしてやろう」
尊大な態度で此方を見遣ったオリジンは大量のハートのトランプを周囲に散らす。鋭いカードが迫ってくることに気付き、エメラは咄嗟に軌道を変えた。
しかし、トランプの多くは玄音を狙っている。
避けきれないと判断した玄音は身を低くして、箒から手を離した。刹那、彼女は箒から離れ、それまで身体があった部分に鋭利なトランプが擦り抜けていった。
エリミネーターは落下していく玄音を追い、素早く下に飛ぶ。
そして、主に追いついたエリミネーターは玄音の足元に颯爽と現れた。その柄に足をかけた玄音は、そのまま箒をサーフボードのように乗りこなしていく。
更に反撃としてオーバーキル・パッケージを展開する。
其処からミサイルが発射されていく中、エメラは既にガトリングや複合兵装での攻勢に入っていた。オリジンはその攻撃に対抗するべく魔法使いのオウガを呼び、エメラに相対させていった。
魔法使いが杖を振ると、エメラの身に流星の魔力が迫る。
だが、それを避けられないエメラと魔導蒸気砲ではない。ひらりと避けたエメラは敵の頭上に舞い上がり、オウガをガトリングで撃滅した。
箒での狙撃は未だ終わらない。
オリジンに玄音の放ったミサイルが飛来していくタイミングでエメラも動いた。
「厄介なやつらだ」
不服そうにオウガ・オリジンが呟く。
青いエプロンドレスを揺らめかせて飛ぶ少女は、更にハートのトランプを放った。
その一枚がエリミネーターと共に上昇してきた玄音の腕に掠る。途端にハートの女王の姿をした炎が燃え上がったが、玄音は怯まない。
再び放ったミサイルはトランプよりも多く広がり、範囲攻撃となってオリジンの動きを一瞬だけ止めた。
好機を掴み取ったエメラは箒と共に翔ける。
「……いつもはあえて兵器に名前を付けないのだけれど、今回だけは特別よ。――それじゃあ行くわよ、『摩天楼』!」
そして、兵器に呼び掛けた瞬間。蒸気砲が轟音を立てた。
砲撃がオリジンを貫く中、加速した玄音が銃槍を大きく掲げる。真っ黒に塗り潰されたような顔面に向け、放つのは刺突攻撃と零距離拡散レーザー放射。
「ぐ、あああ――!」
二人の連携によって痛みを負ったオリジンは叫ぶ。
すぐに反撃が来ると察した玄音とエメラは敵から距離をひらいた。するとオリジンは囮と壁として新たな魔法使いのオウガを呼び、自らは二人から遠ざかる。
「これを倒したら後を追いましょう」
エメラは魔法使いを見据え、玄音も頷いた。
そして、玄音は飛んでいくオウガ・オリジンに然と言い放つ。
「もう二度と、誰の血肉も吸わせない。あなたは私達の手で、滅ぶのよ」
必ず撃滅する。
誓いにも似た感情を抱いた二人は、此処から更に続く戦いへ思いを馳せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん、何でもうスタンバっているんですか。
もう少し慎重に選んで・・・いたら間に合いませんよね。
それでこの子の名前は考えてないんですね。
どうせ、アヒルさんの名前を入れてないと怒るのだから、『ダックステイル』さんはどうですか?
ふええ、尾より嘴がいいって、私なりに考えて付けた名前なんですよ。
行きましょう、ダックステイルさん。
オウガ・オリジンさんの攻撃にはガラスのラビリンスで対抗です。
ガラスの壁が邪魔をして包囲攻撃ができないんじゃないですか。
そういえば、箒星って知ってますか?
箒星、つまり彗星は尾ができるんです、だから嘴じゃダメなんです。
そして、彗星は止まれません。
●彗星の仔
不思議な不思議な魔法の箒の国。
少しぐらつく足場に降り立ったフリルは、やる気いっぱいのガジェット――アヒルさんの様子に気が付いた。
「ふええ、アヒルさん、何でもうスタンバっているんですか」
足場になっている箒。横をすいすいと飛んでいく箒。
上空を自由に舞っている箒など、其処には様々なものが集まっていた。
しかし、この足場も飛んでいる箒の塊だ。
こっちだというように先に進んでいくアヒルさんを追い、フリルは少し慌てる。
「もう少し慎重に選んで……いたら間に合いませんよね」
そう、この足場はいずれはバラバラになってしまうもの。あれやこれやと空飛ぶ箒を吟味していたら、空に真っ逆さまに落ちてしまう。
するとアヒルさんは一本の箒の前でぴょこんと跳ねた。
「この箒ですか?」
それはスタンダードなごく普通の箒だった。まさに魔女や魔法使いが乗るのに最適と呼べるもので、乗り心地も悪くはなさそうだ。
この箒を従わせるには名を与えなくてはいけない。もし勝手に乗ってしまえば振り落とされるのが関の山。
「それでこの子の名前は考えてないんですね」
ふえぇ、と声をあげたフリルは頭を悩ませる。本当は可愛らしい名前が良いのだが、アヒルさんの名前を入れていないと怒られるはず。
だったら、と考えたフリルはアヒルさんに因んだ名前を思いついた。
「それでしたら、『ダックステイル』さんはどうですか?」
するとアヒルさんがフリルをつつく。
悪くはないが、どうやらもう一捻りが欲しかったようだ。しかし、フリルは敢えてこの名前を付けた理由がある。
「ふええ、尾より嘴がいいって、私なりに考えて付けた名前なんですよ」
アヒルさんの尻尾は可愛いですから、とフリルが告げるとガジェットは何となく納得したようだ。もしかすれば格好良いと言った方が受けが良かったかもしれないが、理解して貰えたなら一安心だ。
そうして、フリルは名前をつけた箒に手を伸ばす。
「行きましょう、ダックステイルさん」
名を呼ばれた魔法の箒はフリルを乗せ、オウガ・オリジンが飛び回っている上空へと向かった。激しい風に吹き飛ばされぬよう、フリルは箒に強くしがみつく。
どうやらオウガ・オリジンは他の猟兵に気を取られているようだ。これは好機だと感じたフリルは、自分の力を発動した。
途端に周囲にガラスのラビリンスが広がっていく。
「何だ?」
「これでガラスの壁が邪魔をして、包囲攻撃ができないんじゃないですか」
「おまえ……なかなかやるようだな」
オウガ・オリジンは周囲の箒を操ろうとしたが、フリルがつくった迷宮のせいでうまく機能しない。だが、敵もガラスを隔てた向こう側にいるゆえにフリル自身もまだ攻撃は出来なかった。
それでもめげず、フリルはぐっと箒を握る。これからオリジンの元に向かうために気合を入れたフリルは、ダックステイルとアヒルさんに呼び掛ける。
「そういえば、箒星って知ってますか?」
箒星、つまり彗星。
それは空を飛ぶ時に尾ができる。だから嘴ではダメだったのだ。そして――。
「彗星は止まれません」
勢いよく翔けたダックステイルは迷路を進むために物凄いスピードを出し始めた。
その名に恥じぬ彗星の如く在るために――。
そうして暫し、硝子の迷宮には「ふえぇ」という少女の叫び声と、尾を引く流星のような箒が風を切る音が響いていった。
大成功
🔵🔵🔵
煙晶・リリー
なるほど、なるほど。カッコいい名前を付ければいいのね
私の相棒は‥‥むっ!これ!これに決定!カッコいい!
名前は‥‥むぅ。箒。飛ぶ。‥‥ほうきぼし?
よし、星の箒(メテオロス)で決定!
箒で飛ぶために、マントと帽子もちゃんと着けてきたしこれで完璧!
《剣の惑星》を起動。斬撃で敵の攻撃を迎撃しつつ戦場を飛び回って
魔法使いのオウガを切り払いながらオウガ・オリジンに水晶弾を撃ち込んでいくよ
‥‥箒すごい。これ持って帰っていいよね?
オルヒディ・アーデルハイド
『華麗なる姫騎士』で変身して飛翔能力で空を飛び箒を追いかけ捕まえる
「キミに決めた」
「今日からキミは闇を照らす一条の光(夜明けのシューティングスター)だ」
ホフヌングランツェを想像力の力で箒と組み合わさ一帯化させ彗星っぱくする
跨って飛翔すると光の粒子と組み合わさってその後に白っぽい尾が残り
その見た目は白龍のようだ
〔魔力溜め〕て〔ランスチャージ〕で〔串刺し〕
飛び交う魔法の箒を〔貫通攻撃〕で撃墜していく
〔爆撃〕を加えた〔重量攻撃〕で隕石が落下したようなインパクト攻撃
●星の光
魔法の箒の国に降り立ってすぐ。
リリーは周囲の景色を見渡し、箒の島になっている足場を見下ろした。
「なるほど、なるほど。カッコいい名前を付ければいいのね」
少しぐらつく足元にはたくさんの箒が集まっている。しかし、この箒島は常に動いており、もう少しすればバラバラに飛んでいってしまうだろう。
その前にひとつの箒を選び、それに騎乗しなければ果てない空の中に落とされる。
「私の相棒は……」
リリーはきょろきょろと辺りを見渡す。
箒で飛ぶために、マントと帽子を用意してきたリリーは準備万端。すると少し前方にシャープな印象を受ける細身の箒が見えた。
魔法の箒には落ち着いた銀色のリボンが結わえられており、その中心に金色にきらめく星の飾りがついている。
「むっ! これ! これに決定! カッコいい!」
「気をつけて、後ろの方が崩れてきているよ」
其処に現れたのは華麗なる姫騎士に変身して、フワリンの加護を得て空を飛ぶオルヒディだ。リリーが立っている箒の島が徐々に崩れていき、足場がなくなりそうになっていることに気付き、注意を呼びかけにきたのだ。
リリーははっとして後ろを振り向く。
言われた通りに徐々に箒が四方八方の自由な方向に飛び、島がちいさくなっていた。急いで、と告げるオルヒディの声を聞き、リリーは箒の方に駆け寄る。
「待って、今すぐに名前を……むぅ。箒。飛ぶ。……ほうきぼし? よし!」
おいで、と箒を呼んだリリーは手を伸ばした。
そしてリリーはその名を呼ぶ。
「星の箒――『メテオロス』で決定!」
その瞬間、彼女の手に収まった箒が生を得たように活き活きと動きはじめる。リリーはメテオロスの上に飛び乗り、崩壊していく島から飛び立った。
「良かった」
彼女が無事に相棒を得たことを見届けたオルヒディは安堵を抱く。
そして、オルヒディはバラバラになってしまった島を構成していた箒達を見つめる。オルヒディはその中から気になった一本を追い、光を纏いながら飛んでいく。
「キミに決めた」
その一本はとてもシンプルで箒らしい箒だ。
しかしオルヒディはそれこそが一番良いと感じていた。よく飛んでくれそうで、宿っているものも真っ直ぐそうだ。
それは直感だったが、オルヒディがそう感じたゆえに間違いない。
そっと魔法の箒に手を伸ばしたオルヒディは、その子に相応しい名を告げるために口をひらいた。自分と共に戦うのだから名前はもう決まっている。
「今日からキミは闇を照らす一条の光――夜明けのシューティングスターだ」
オルヒディはホフヌングランツェと魔法の箒を想像力の力で組み合わせていく。瞬く間に一体化したそれは、一陣の彗星のような見た目に変化した。
「行こうか」
オルヒディが箒を呼び、跨って飛翔する。元から纏う光の粒子と箒の軌跡が合わさり、その姿は空を翔ける白龍の如く見えた。
ほんの少し先に上空に昇っていたリリーがオルヒディを呼び、さっきはありがとう、と告げる。礼には及ばないと首を振ったオルヒディが頷くと、リリーがはっとする。
「居たよ! あれがオウガ・オリジンだね!」
「まずはあの箒の海を越えよう」
リリーが示した先には自由に空を舞うオリジンの姿があった。敵は自分の周囲に居た意思無き箒を操り、猟兵を阻む壁代わりにしている。
「メテオロス!」
リリーが箒に呼び掛け、水晶ブレードをその身に纏わせた。飛び交う敵の箒を超高速旋回による連続斬撃で斬り裂き、リリーが先陣を切る。
巻き起こる風によって彼女のマントが激しく揺れた。その様子からは凛々しさが感じられ、オルヒディはそっと頷く。
そして、其処に夜明けのシューティングスターが続いた。
オウガ・オリジンは魔法使いのオウガを召喚している。それを排除しようと狙うリリーの援護を行うべく、魔力を溜めたオルヒディは勢いに乗せた串刺しで以て、周囲の敵箒を蹴散らしていった。
「こっちは任せて! オリジンをお願い!」
リリーは魔法使いのオウガを切り払いながら、オルヒディに願う。
「分かったよ。覚悟して貰うよ、オリジン」
「ふ、小娘ども……いや、少年か。おまえ達がわたしに何が出来る?」
答えたオルヒディに対して、オウガ・オリジンは不敵な声を紡いだ。
しかし、次の瞬間。
ホフヌングランツェの箒による爆撃が轟音を響かせ、重い隕石が落下したようなインパクト攻撃が見舞われた。
更に其処にリリーによる水晶弾が撃ち込まれ、オリジンの体が僅かに揺らぐ。
「なるほど、そうくるか」
されど敵は余裕を崩さず、傍に居た箒に跨ると更に上空に飛んだ。どうやら体勢を立て直すつもりらしい。
「追うよ」
「うん!」
オルヒディが呼び掛けると、リリーも大きく頷いた。
そして、ふたつの箒星は白く煌めく長い尾を引きながらオウガ・オリジンを追いかけていく。どんどん加速していく箒に掴まりながら、魔法の力の凄さを改めて実感した。
「……箒すごい。メテオロス、あなたを持って帰っていいよね?」
この戦いが終わったら、一緒に。
そう告げたリリーに同意するように、メテオロスは更に疾く空を翔けていく。
オルヒディもまた箒の頼もしさを感じながら、倒すべき敵を見据えた。
そして――戦いは続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅葱・シアラ
オウガ・オリジンと戦うと思ったら、今回は空中戦ですか
アリス・ラビリンスは場所によって色んな戦場で戦えるので少し楽しいですね!
箒を捕まえます、島がバラける前に、一本の箒にしがみつきます
暴れないで!
今から私とあなたは共に戦う相棒同士です!
私はシアラ!あなたの名は!
『ハピネス・ワルキューレ』!
私の姫からもらった名前です!
いきますよ、ハピネス・ワルキューレ!
箒に乗って飛びながら
「誰も知らない蝶の群れは」発動!
82羽の【神秘の蝶々】に【追尾能力】【爆発能力】【高速移動能力】を与え、箒に乗ってオウガ・オリジンに接近しながら、【高速詠唱】によって即座に相手にぶつけます!
勝ちますよ、ハピネス・ワルキューレ!
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン…漸く大ボスの登場か
戦場に着いたら目視で素早く動きまわる箒を吟味し、エギーユ・アメティストによるロープワークで捕まえ、名づけよう
そうだな…お前の名は「ラファール」、フランス語で「疾風」を意味する言葉だ
一陣の風となって私を奴の元に連れていけ
オウガ・オリジンと対峙したら装備銃器を一斉発射して牽制
相手が魔法使いを召喚したらこちらもデゼス・ポアを取り出しUCを発動する
ハッ!こいつは随分なじゃじゃ馬だな!
高速で動き回り魔法使いを切り刻みながら、オウガ・オリジンに高速で切り込みをかけて、UCと共に装備武器で追撃を行う
腹が減ったのだろう?
存分に食うがいい…文字通り、腹がはち切れるほどにな
●疾風と幸福
「オウガ・オリジンと戦うと思ったら、今回は空中戦ですか」
シアラは遥かに広がる空を見上げる。
アリスラビリンスの不思議な国の最中に降り立ったシアラは、この世界ならではの場所に感心を抱いていた。
戦場によって様々な様相があるので、戦い方の違いを思うと少し楽しい。
しかし、今はオウガ・オリジンとの大切な戦い。
気を引き締めたシアラが頷くと隣に誰かが転送されてきた。少しぐらつく箒の島の上に立ったのはキリカだ。
「フン……漸く大ボスの登場か」
キリカもまた、高い空の上で飛び回っているオウガ・オリジンを振り仰いだ。
シアラとキリカは其処に至るための力を得るべく、それぞれの方向に踏み出した。既に二人が乗る箒の足場は後ろの方から崩れかけている。
すべてがバラバラになって四方に飛んでいってしまう前に、此度のパートナーとなる箒を探さなければならない。
シアラは空に飛んでいく魔法の箒を見遣り、はっとする。
どうしてか、数多の箒の中のたった一本に惹かれた。駆け出したシアラは腕を伸ばし、崩壊しかけていた島の端から一気に跳躍する。
そして、あの一本にしがみついた。
名前を持たぬ箒はじたばたと暴れるが、シアラは決して腕を離さない。
「暴れないで!」
『……!!!』
箒はシアラを振り落とそうと抵抗した。しかしシアラはしっかりと箒を抱き締め、自分の意志と思いを言葉にしていく。
「今から私とあなたは共に戦う相棒同士です! 私はシアラ! あなたの名は!」
『……?』
箒に付ける名前は既に決めていた。
後は相応しい子を見つけるだけだったゆえ、シアラは凛と告げる。
「――『ハピネス・ワルキューレ』!」
その瞬間、激しく暴れていた箒が個を得た。振り落とされそうだったシアラを掬い上げるようにくるりと回った魔法の箒は大人しくなる。
この名前は、私の姫からもらった名前なのだと伝えると箒は嬉しそうに揺れた。きっとこの箒達は名を得ることが個を獲得する条件であり、契約の代わりでもあるのだろう。
「いきますよ、ハピネス・ワルキューレ!」
シアラがその名を呼ぶと、箒は天高く飛び上がった。
目指すはオウガ・オリジン。倒すべき敵の眼前まで迫るため、ハピネス・ワルキューレは空を翔けていく。
同じ頃、キリカもバラけていく島の上で箒を探していた。
キリカが狙うのは通常時でも素早く動く箒だ。かれらは未だ個を得ていない意志のない存在らしいが、きっと元のポテンシャルが戦闘でもものを言うはず。
キリカは目視で箒を吟味し、一本の箒に狙いを定めた。
「お前が良いな」
その箒は鋭く左右に振れながら飛び、稲妻や風を思わせる動きをしている。キリカは手にした鞭――エギーユ・アメティストを大きく振るい、一気に箒を絡め取った。
当然、魔法の箒は暴れる。
しかし蠍の尾とも称される紫水晶が箒の柄を捉えて離さなかった。華麗な鞭捌きで自分の方に箒を引き寄せたキリカは、柄を自らの手で握る。
足元の箒の島は徐々に崩壊していった。
だが、キリカはその前に魔法の箒に個としての名を与える。
「そうだな……お前の名は『ラファール』。疾風を意味する言葉だ」
『――!』
刹那、それまで暴れていた箒が意志を持ったように大きく跳ねた。その勢いに合わせて箒に乗り込んだキリカは絡めていた鞭を収める。
「いいぞ、そのまま一陣の風となって私を奴の元に連れていけ」
キリカの呼び掛けに応えるように高く飛翔していった。青空の向こう側に届くかのような勢いで高く、高く――。
ラファールとハピネス・ワルキューレ。
それぞれの箒と共に飛翔してきたキリカとシアラは、同時にオウガ・オリジンの元に辿り着いた。オリジンは別の猟兵から距離を離した後らしく、忌々しそうな声を紡ぐ。
「また猟兵か。いいだろう、捻じ伏せてやる」
「させるか」
「そうはさせません!」
キリカとシアラの声が重なった刹那、二人の周囲に幾何学模様を描く何本もの箒が現れた。対するキリカは神聖式自動小銃と魔導機関拳銃を一斉に発射して対抗する。それはオリジンへの牽制でもある。
同時にシアラも、妖精の国に住む神秘の蝶々を呼んだ。
「私の蝶精霊はどこだって無敵なんですよ!」
八十二羽の蝶々が敵の箒に向かい、迫りくるものを次々と爆破していく。爆撃から逸れたものも蝶が追い、箒軍団は次々と掃討されていった。
「おのれ……!」
そして、キリカの間にオリジンが呼び出した魔法使いのオウガが現れる。
キリカは慌てることなくデゼス・ポアを取り出した。すると人形は不気味に笑み、その刃が鈍く煌めいていく。
その間も飛び交う箒は風の如く。
「ハッ! こいつは随分なじゃじゃ馬だな!」
キリカは箒を乗りこなしながらデゼス・ポアにオウガを任せ、箒を打ち落としきったシアラと合流する。
狙うのはただ一点、オリジンのみ。
キリカは高速で動き回り、戻ってきたデゼス・ポアを切り込ませる。自らも機関拳銃を打ち放ち、追撃に入った。
「腹が減ったのだろう? 存分に食うがいい……文字通り、腹がはち切れるほどにな」
弾丸が容赦なくオリジンに撃ち込まれる。
ぐああ、と苦しげな声が敵からあがる中、シアラは更に蝶々を呼び寄せた。
しかしオリジンが新たな箒達を展開したことで、それらは盾と目眩まし代わりとなってしまう。身を翻したオリジンが逃げると察したキリカとシアラはその後を追った。
「行け、ラファール!」
「勝ちますよ、ハピネス・ワルキューレ!」
それぞれの箒に呼び掛けた二人は何処までも続く天空を翔ける。
その軌道は鋭く、そして凛々しく――確かな意志と共に煌めく軌跡を残していく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菱川・彌三八
エエト、すんなら…ちいと武骨な形だが、乗るにゃ丁度好さそうだ
いよし、お前ェは『舞鶴』だ
名と鶴の画を記そう
其の名に恥じねえ羽搏き、期待してるゼ
鶴の役割は、俺の足場
ちいと飛んだり跳ねたりする、始点にも着地点にもなってもらおう
炎は二手に分かれて躱すも出来るだろう
時には俺の陽動で、つられた敵の背後からぶつかるなんてのもアリだな
一人でこなすよりゃ戦いの幅が広がりそうだ
好いねェ
箒の群れを躱すンなら跨って身を低く
一たび抜けたら鶴の背に立つ
したが奴さんの正面、箒を足場に頭を通り越す様に跳び、反対から蹴りつける
飛んで離れた後の足場は鶴に任せた
此の空を自在に飛び、時に離れ、四方八方からお前ェさんを落しにかかるゼ
冴島・類
すごいすごい!
箒に乗って空で飛べるんですか?
あ…こほん
今回の戦い為だとはわかってますよ
でも、どんな箒君と出会えるかと思うと
弾むのはお許しを
沢山の可愛い、めるへん箒が横切る中
渋い、実用性に特化した竹ほうきがよぎる
僕には君しかいない気がする
目はないのに絡まった気がする視線
渋く、速く
ただ目的に一直線に
君は…はやて、疾風丸だ
気に入らないかな?なんなら、かっこよく
すーぱーはやて号でも可だよ
力を貸しておくれ
飛び乗り、走り出せば安定感がすごい
これならと、放たれるトランプにも
落ち着いて刀抜き…
そこに空の上では操れぬ
背の相棒の風の魔力をおろし
衝撃波込めた薙ぎ払いで打ち払い
疾風丸、追うよ
放った彼女まで、届かせる
●空舞う鳥と疾風の陣
訪れたのは真っ青な空が広がる世界。
一面に絵具を塗り拡げたような、何処までも続く天の色が目に眩しい。そして、そんな不思議な世界に浮かぶのは無数の魔法の箒達。
「すごいすごい! 箒に乗って空で飛べるんですか?」
「なんでェ、随分とはしゃいで。確かに大したモンだが……」
空飛ぶ箒の島上に降り立った類は瞳を輝かせていた。同時に転送された彌三八は、類のはしゃぎように微笑ましさを覚えている。
「あ……こほん」
はっとした類は姿勢を正した。もしひとりきりだったら少年のように無邪気に駆け出していたかもしれない。
箒はなんだか浪漫の香りがした。しかし、それに乗るのは今回の戦い為。
分かっている。分かっているのだが――。
「どんな箒君と出会えるかと思うと、心が弾むのはお許しを」
「そりゃそうサ。これだけありゃ目移りもすりゃあな」
気にするな、と告げた彌三八は先に踏み出す。今はしっかりとした足場になっている箒の島だが、いずれ此処もばらけてしまう。
さて、と辺りを見渡した彌三八に続き、類も自分の箒を選んでいく。
そして先ず、彌三八が見つけたのは樫の木の箒だ。
「エエト、すんなら……」
切り出された柄は白く塗られ、先端には朱色があしらわれている。しかし柄は波打っており、枝をそのままの形で活かしたらしいことが分かった。
「ちいと武骨な形だが、乗るにゃ丁度好さそうだ」
これがいいと感じた彌三八は樫の箒に腕を伸ばし、白い柄を力強く握る。
箒から警戒したような雰囲気が一瞬だけ伝わってきたが彌三八は躊躇わず、そのまま名前を告げてゆく。
「いよし、お前ェは『舞鶴』だ」
『……!』
すると箒から伝わっていた不穏な感情の色が一気に変わった。名を与えられたことで個としての意志と歓びを得たのだろう。
そして、彌三八は名と共に柄に鶴の画を記していった。同じく自分にも鳳凰を描き、飛翔の力を宿す。
「其の名に恥じねえ羽搏き、期待してるゼ」
舞鶴は彌三八の言葉に頷きを返すように少し沈み、さあ乗って、というように彼の手の中で元気よく動いた。
同じ頃、類も箒を選ぶために辺りを見回っていた。
星を宿す流星のような箒。可愛らしいピンクのリボンが結ばれた苺色のちいさな箒に、巨人が乗るような大きな箒と種類は様々。
たくさんの可愛い、めるへんとも呼べる箒が横切る中で類は或る箒に目を留めた。
「あれは……」
これまで見てきた箒よりも随分と装飾のないものだった。一言で言えば渋い。ただ実用性に特化した、竹箒と表すのが相応良い一本だ。
目の前に過ぎった箒に目を奪われた類は、待って、とそれを追った。
「僕には君しかいない気がするんだ」
まるで告白のような、真っ直ぐな言葉が類から紡がれる。自分に向けられた声だと察したらしい箒がくるりと柄を類の方に向けた。
箒に目はないのに、視線が絡まった気がして類はそっと微笑む。竹箒が横を擦り抜けていったとき、まるで風のように速かった。だから、と類は名前を与える。
「君は……はやて、疾風丸だ」
『!』
「気に入らないかな? なんなら、かっこよくすーぱーはやて号でも可だよ」
『!!』
対する竹箒は、どっちでも! というように類に擦り寄った。きっと疾風丸の方で良いだろうと感じた類は、その柄を強く握り締める。
「力を貸しておくれ。さあ、行こう」
類の呼び掛けに応えた疾風丸はその瞬間、大きく飛んだ。しかしまだ類は柄を握っただけで乗ってはいない。わ、と類が声をあげたことでハッとした様子を見せた箒は、彼を掬いあげるように自分に乗せた。
少しおっちょこちょいなのかもしれない竹箒に乗り、類は上空を目指す。
其処に舞鶴に乗る彌三八も並んだ。二人が向かう先にはオウガ・オリジンがいるが、その周囲にはハートのトランプが壁のように並んでいる。
「ちいと厄介そうなのが舞ってるな」
「気を付けながら突破しましょう」
彌三八と舞鶴、類と疾風丸は名前通りに鳥や風の如く舞い上がった。ただ目的に一直線に翔ける箒達に信頼を寄せ、二人はそれぞれに身構える。
互いに信じあっているからだろうか、類は箒の安定感をしかと感じていた。
「これならいける。……疾風丸!」
刀を抜いた類は箒に呼び掛ける。次の瞬間、跳躍した類が迫りくるカードを刃で斬り裂いた。落下していくが、素早く翔けた疾風丸が足元に回り込む。
類が箒に再び乗ったと同時に、彌三八の方にもトランプが舞っていった。
「鶴!」
短く箒を呼んだ彌三八は類がそうしたように飛びあがる。カードはそれまで彌三八が居た空中を擦り抜けていき、間一髪だった。
跳んだ先には舞鶴が先回りしており、彌三八は箒を足場として着地する。
舞鶴の役目は彌三八の足場の始点であり着地点。次からは呼び掛けずとも自ずと彌三八の動きを読み、合わせて動いてくれるだろう。
その間にもハートの女王の形をとった炎が類と彌三八に襲い来る。
箒と息を合わせた二人は炎が直撃しないよう立ち回っていった。
「おっと、」
トランプとの攻防が巡る中、彌三八は敢えてよろけたふりをして相手を惑わせた。そうすればハートのカード同士がぶつかりあって空中で散る。
「やりましたね!」
「好いねェ。さァて、奴さんとの対面か」
同時にカードを斬り裂いた類は、自分達の動きによって障害をすべて散らしたことを悟った。彌三八も頷き、オウガ・オリジンを見据える。
「舞鶴、翔べ」
「疾風丸、全力で!」
「箒どもめ……いいだろう、潰してやる!」
彌三八と類が箒の名を呼べば、オリジンが更なる炎を解き放った。
類と疾風丸は敢えて下へ。舞鶴と二手に分かれた彌三八は上空へと飛び、オリジンを翻弄するように四方八方へと翔けていく。
箒を足場にした彌三八は頭を通り越すように跳び、その反対から蹴りつけた。
ぐ、というオリジンのうめき声があがる。その瞬間を見逃さなかった類は背におった相棒、瓜江の風の魔力を降ろした。
刹那、鋭い風がオウガ・オリジンを吹き飛ばす。
「おのれ、お前ら……おのれ……!!」
恨み言めいた言葉を残し、アリスの姿をした悪鬼は天空から落ちていった。だが、まだ完全に倒したわけではない。
「追うぜ、こうなっちゃあ最後までやるしかあるめェ」
「はい、必ず此処で決着を……!」
彌三八と類は相棒箒と共に、落ちてゆくオウガ・オリジンを追っていった。
空の色は依然として眩く、戦いは更に続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ライラック・エアルオウルズ
魔法の箒とは、恒では縁遠くあるから
乗せて頂く前から、浮き立つようだが
ああ、然して、『格好良い名前』か
君は名前が欲しいのかい?
悲しき哉、僕は名付けが苦手でね
気に入るような名が浮かぶかな
君は鳥のように自由に空を征くから
矢張り、鳥の名?それとも、他が?
! ――そうだ、思い付いた
『ストレリチア』何て、如何だい?
鮮やかな鳥に似た美しい花の名
御気に召したら、乗せてくれる?
ふふ、僕まで鳥になったようだ
箒の子に跨がり、《空中戦》へ
箒に囲まれたなら《範囲攻撃》
花弁舞わせて足止めする隙、
《全力魔法》で箒に力添えて
速度上げて包囲抜け出し、
彼女に真直ぐと花弁放とう
御転婆も過ぎると、転ぶよ
――足下を掬われて、ね
●極楽鳥花と空の戦旅
浮足立つような気分を抱き、箒の島に降り立つ。
其処は空飛ぶ魔法の箒が集合した場所で、少しぐらつく足場が妙にふわふわした。
ライラックは足を踏み外さないように気を付けながら、様々な魔法の箒を眺めていく。恒では縁遠くあるから、箒に乗れると思うと少年のように心が弾む。
「ああ、然して、『格好良い名前』か……」
箒を従えるには名を与えることが必須だと聞いていた。片手を当て、指で顎先をなぞるような仕草をしたライラックは考える。
するとそのとき、まさに魔法使いの箒と表すに相応しい様相の一本が近付いてきた。おそらくは格好良い名前、という言葉に反応して来たのだろう。
「君は名前が欲しいのかい?」
『!』
箒はその通りだと示すが如く柄の先をぶんぶんと振っている。頷いているのかもしれない。ライラックはそっと笑み、そうかい、と双眸を細める。
「悲しき哉、僕は名付けが苦手でね。気に入るような名が浮かぶかな」
『!!』
いいから考えて、というように穂先を振る箒は可愛い。よく見れば編み上げ部分に青いリボンと白い布が結ばれており、まるでエプロンドレスのようだ。ううん、と考え込んだライラックは箒をじっと見つめた。
「君は鳥のように自由に空を征くから、矢張り、鳥の名? それとも、他が……」
実に悩ましい。
しかし、ふと鮮やかで色濃い金の髪のような穂先の色を見て思いついた。髪のようでもあるが、その色は花の彩のようでもある。
「! ――そうだ、思い付いた。『ストレリチア』何て、如何だい?」
それは極楽鳥に似た美しい花の名。
すると魔法の箒はライラックにひしっとくっついた。
「御気に召したかい……っと!」
乗せてくれるかを問う前にストレリチアは足の下に潜り込み、ライラックを持ち上げるように飛び上がった。
慌てて柄を掴んだライラックはお転婆な娘だ、と穏やかに笑う。
「ふふ、僕まで鳥になったようだ」
それじゃあ頼んだよ、ストレリチア。
そんな風に呼びかければ箒は天高く昇っていく。目指すのは原初のアリスであり、オウガでもある少女の元。
「見つけたよ」
「また猟兵か。わたしの邪魔をするな!」
横暴なハートの女王のように振る舞う少女とライラックの視線が交差する。
箒どもよ、とオリジンが周囲のものを呼ぶ。すると彼の周囲に幾本もの箒が囲っていった。それらを見渡したライラックは身構える。
そして、箒に対抗するように綴っていくのは花の詩。
淡いリラの花弁が舞う中、ストレリチアは突撃してくる箒を躱しながら飛ぶ。振り落とされないでね、と語るような動きで魔法の箒は懸命にライラックを乗せて飛翔した。
高く、更に高く。
上昇するストレリチアに身を任せ、ライラックは追ってくる敵箒に花を降らせた。
そして――。
「君にも花をあげよう」
アリスめいた少女にも真直ぐに花弁を放つ。
ち、と彼女が舌打ちをしたような気配がした。降りそそぐ花から逃げるように少女の姿をしたものは下へと飛んでいく。
「御転婆も過ぎると、転ぶよ。――足下を掬われて、ね」
此方と距離を離そうとしているらしい少女を追い、ライラックとストレリチアは何処までも続く空の最中を翔けていく。
ストレリチア、ともう一度その名を呼んだライラックは柄を強く握った。それは信頼の証の如き言葉だ。花の箒も応えるようにスピードをあげ、空に落ちていく。
必ず此処で、ひとつの決着をつけるために――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァルダ・イシルドゥア
宙を舞うのは
幼い頃からふたりの竜と共に親しんできたこと
恐れは、ない
箒の中のひとり
樫の木で出来たあなたへ手を伸ばし
『ギリス』
綺羅星の尾のように自由にそらを舞うあなたへ
星の光と名を添えて
どうか届けて、原初のアリスのもとへ
――我らは駆け抜ける星とならん!
如何に数多くとも、力で従えただけのもの
幾何学模様の軌跡を《見切り》
幾重にも重なる箒達の隙間を縫うように《空中戦》へ持ち込みましょう
いのちに貴賎はありません
雪解けを、芽吹きのときを待つ、すべてのいのちの燈りを
……否定することなど、誰にも出来はしないのだから!
箒星の軌跡を滑らせ、槍を躍らせた
地上で怯えるすべてのいのちへ
このひかりが、希望となりますようにと
荻原・志桜
挑めと言われて逃げるなんてできないよね
わたしたちは勝つよ。アナタのその自信を覆してみせる!
空へ投げ出され無数に翔ぶ箒へ手を伸ばす
名前、ええっと…『リバティ』!
キミの力を貸して!
安直だけど空を自由に翔けるなら名前はそれに因んだものが良い
何度か空を飛んだ経験はある
でも箒で飛ぶのはあまりなくて不安はあった
だけど――、
この子は優秀だね。わたしが思えば動いてくれる
大丈夫、一緒なら負けないよ
ねえ、リバティ
敵の箒よりも高く、高く飛翔できる?
にひひ、ありがとう
キミも見ててね。未来の大魔女になるわたしの魔法を!
丁寧に、けれど迅速に
自身の魔力を編んで矢を模した炎へ、魔力を更に込めて
タイミングを見極め放っていく
●自由と綺羅星
降り立った世界は魔法の力に満ちていた。
何処までも果てしなく続く青い空。其処に飛び回っているのは、数多の箒達。
その景色を見上げれば、わ、という声が落ちた。
しかしそれはひとりの声だけではなく、ふたり分。はたとした志桜とヴァルダは、自分達が同時に感嘆の声をあげたのだと気付く。
「ふふっ、すごい光景だね!」
「本当に不思議な景色ですね」
同じ箒の島に転送されてきた同士だと知り、志桜とヴァルダは微笑みあった。
そして、少女達は上空を振り仰ぐ。
遥かな天の向こうには箒を操り、トランプカードや魔法使いのオウガを嗾けるオウガ・オリジンの姿があった。
「挑めと言われて逃げるなんてできないよね」
「はい、必ず原初のアリスの元へ――」
ふたりはそれぞれに決意を抱く。
「うん! わたしたちは勝つよ。オウガのあの自信を覆してみせ……」
だが、不意に志桜の言葉が止まった。
その理由は、彼女達が立っていた箒の島の足場が唐突に崩れたからだ。
「……!」
途端にヴァルダと志桜は空に投げ出される。
鋭い風の音が耳元に届いた。しかし、ヴァルダは空を恐れてはいない。
宙を舞うのは、幼い頃からふたりの竜と共に親しんできたこと。ヴァルダは手を伸ばし、周囲を飛ぶ魔法の箒のひとつを選び取る。
それは樫の木で出来た、素朴ながらも確りとした箒だった。
「――『ギリス』。それが、あなたの名前」
綺羅星の尾のように光を纏い、自由にそらを舞うあなた。
そう呼び掛けたヴァルダの手の中に収まるように、樫の魔法の箒が寄り添った。
星の光の名を添えれば、ふたりの意志は重なる。
「どうか届けて、原初のアリスのもとへ。――我らは駆け抜ける星とならん!」
ギリス、ともう一度名前を呼べば、ヴァルダの身体を掬い上げるように箒がおおきな弧を描いて翔けた。
柄を強く握ったヴァルダはそのまま高く舞いあがる。
斃すべき者の元へ向かうために――。
それと同じ頃、志桜も空からひとつの箒を選び取っていた。
落ちていく感覚はこわい。もしかすれば、果てない蒼の中に永遠に落ち続けるのかもしれない。けれども傍には今、憧れた魔女が乗っていたような箒が飛び交っている。
「ええっと……そこの子!」
志桜が呼び掛けたのは、柄の先に赤いリボンが巻かれた一本だった。
一瞬だけ此方を向いたように動いた箒だったが、リボンを揺らめかせて遠ざかろうとしていく。しかし志桜は精一杯の声を紡ぎ、その子に名を与えた。
「――『リバティ』!」
その箒から感じられたのは自由への意志だ。
刹那、名を聞き届けた魔法の箒が落ちていく志桜のもとへ翔けてきた。名と意志を重ねることで契約が結ばれたらしい。
志桜の身体の下に潜り込んだ魔法の箒――リバティは勢いよく上昇した。
宙に浮く感覚をおぼえながら、志桜は明るく笑む。
「ありがとう。さあ、キミの力を貸して!」
名前は安直だけれど空を自由に翔けるなら名前はそれに因んだものが良いから。柄を握った志桜は、名を気に入ってくれたらしいリバティを指先で撫でた。
何度か空を飛んだ経験はあったが、箒で確りと飛ぶことはあまりない。これまでは不安もあったが、今はもう懸念など何処にもなかった。
「リバティ、あそこに飛んでくれる?」
『!』
動きで以て応えた箒は志桜が示した先へと昇っていく。その先にはヴァルダがいて、オウガ・オリジンを追っているようだ。
「とっても良い子だね。それじゃあお願い!」
魔力の相性が良いのか、自分が思えば箒はその通りに動いてくれる。志桜が追いついてきたことに気付き、ヴァルダは安堵を覚えた。
「行きましょう。禍々しい雰囲気がしますが……」
「大丈夫、一緒なら負けないよ」
ヴァルダの声を聞き、志桜は強く頷く。自分達だけではなく今はリバティとギリスが付いてくれている。
すると此方の気配に気付いたオリジンが不機嫌そうな雰囲気を醸し出した。
「箒どもよ、あいつらを打ち落とせ」
アリスめいた少女が片手を上げると、数多の箒が幾何学模様を描きながらヴァルダと志桜に迫ってきた。
頷きあい、即座に左と右に分かれたふたりは各々で対抗策を立てている。
「ねえ、リバティ。敵の箒よりも高く、高く飛翔できる?」
『!』
志桜が箒に願うと、できるよ、というような仕草が返ってきた。志桜はその様子に頼もしさを感じ、飛翔する箒に身を任せる。
「にひひ、ありがとう。キミも見ててね。未来の大魔女になるわたしの魔法を!」
箒に追われながらも天高く翔ける志桜達。
その姿を目で追った後、ヴァルダは素早く身を低くする。其処に迫った敵の箒が擦り抜けていった。
「如何に数多くとも、力で従えただけのものに負けはしません」
箒の軌跡を見切り、ギリスと共に宙を翔けるヴァルダ。幾重にも重なり、揺らめく箒達の隙間を縫うように動くギリスは、しかと主の意思を読み取っている。
短い時間であっても信頼は築けていた。
対するオウガ・オリジンは箒達を壁や盾にするように扱っている。
「いのちに貴賎はありません」
雪解けを、芽吹きのときを待つ、すべてのいのちの燈り。それを否定することなど、誰にも出来はしない。だから――。
「あなたを討ちます、原初のアリス……いえ、オウガ!」
ヴァルダが宣言した刹那、頭上から炎の矢が降りそそいできた。それは箒を貫き、オリジンにも迫っていく。
赤の炎と、深く燃えた蒼の焔が次々と傀儡箒を落としていった。
志桜が放った魔力だと気付いたヴァルダはそっと頷く。
「今だよ、一気に行こう!」
ヴァルダに声を掛けた志桜は丁寧に、けれども迅速に自身の魔力を編んでいく。炎へと更に魔力を込めた志桜は全力を放っていった。
「小癪な……猟兵どもめ」
「――我が身、ひかりの導となりて!」
忌々しげな言葉を落としたオリジンに対し、ヴァルダは凛とした声を紡いだ。
其処から箒星の軌跡を滑らせ、槍を躍らせる。其処に志桜が解き放っていく焔の矢が次々と舞った。志桜は箒と共に翔け、自らが抱く思いを声にする。
「絶対に、アナタの好きなようにはさせない!」
ふたりの少女と二本の箒。
自由を願い、綺羅星となるかのような一閃が空を裂く。
そして、ヴァルダは願う。
地上で怯えるすべてのいのちへ。このひかりが、希望となりますように――と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蘭・七結
空を自由に飛んで往けるだなんて
戦ごとだというのに心が踊ってしまう
目移りしてしまいそうな箒たち
どの子にしましょうか
あなた、それともあなた?
嗚呼、みぃつけた
大いなる天の色を零して飛ぶ、あなた
あなたがいいわ『ソラ』
共に往きましょう
うつくしい天を魅せてちょうだいな
あなたは真っ直ぐに、素早く飛ぶのが得意なのね
そんなあなたにおまじないをあげる
右手の指さきから溢す“あか”で呪文を描く
わたしとあなたの縁を結わうわ
さあ、どうぞ
あなたに風属性の魔力を授けるわ
誰よりも速く彼女の元へと往きましょう
風の力と速度、ふたつを重ね合わせて
彼女と使役するものを薙ぎ払う
あかい契りが足りないのならば
あなたが望むままに紡いでみせるわ
リル・ルリ
🐟櫻沫
箒に跨る……僕、尾鰭だから跨がれないや…
え?横乗りに?
それならできる!うん!行くぞ、櫻、ヨル!!
(櫻……大喜びだな…)
ぴょこんと横乗りになり(ヨルは後ろに跨り)
願いを込めて名を呼ぶ
行くぞ!『匣舟』!
空飛ぶ僕らの匣舟だ
こんな速く飛んだことがないから…落ちないようにしっかり箒に掴まって
泡沫のオーラで櫻宵を包んで守るんだ
僕の歌声が聴こえなくなるところまで、ひとりで飛んでかないでよね!
鼓舞を込めた歌声で紡ぐのは「魅惑の歌」
どんなに速く飛んでいても
君の刃がしかと獲物をとらえられるように
絡めとる、歌を響かせる
ヨルが僕を支えてくれてもいるから大丈夫
僕に気にせず思い切り斬っておいで!
君は守りの龍なんだ
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
きゃー!魔女みたいに箒に乗るんですって
わくわくするわねぇ
リルはお姫様みたいに横乗りしましょ
私、桜の魔女、櫻宵!
相棒の箒は『ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ号』よ!
はらり舞う桜吹雪と共に、
ひらりと箒に跨り、空へ
噫、心地いいわ!うふふ、リル
落ちないように気をつけるのよ!
ヨル、しっかり支えてるのよ
このままオリジンに魔法をぶちかましてあげましょうね!
リルの歌声が響く中
刀抜き放ち、破魔宿らせて衝撃波と共に薙ぎ払う
邪魔なものごと全て、蹂躙するように斬り裂いて美しい桜としてあげる!
桜花のオーラ防御で攻撃を防ぎ、見切り躱して―箒、頼むわよ
そのままオリジンを斬るわ
傷口があれば抉るように
あなたこそ、堕としてあげる
●空をゆく
不思議の世界に降り立てば、不安定な地面が揺れた。
否、これは地面ではない。魔法の箒が集まって出来た空の上の島だと知り、七結は興味深そうに足元を見下ろした。
「空を自由に飛んで往けるだなんて、すてきね」
一歩を踏み出していけば足場がぐらりと揺らめく。箒達の姿かたちは様々で、戦ごとだというのに心が踊ってしまう。
真白な自在箒。樹の枝をそのまま加工したような雰囲気の木箒。真っ直ぐな柄が印象的な竹箒。星飾りやヴェールで装飾された繊細で美しい箒。
目移りしてしまいそうなもの達を見渡し、七結は手を伸ばした。
「どの子にしましょうか」
向こうのあの子か、あちらのあの子か、それとも。
指さきは定まらず暫し宙を彷徨っていた。しかし、ふと七結の手が止まる。
「嗚呼、みぃつけた」
七結の瞳に映っているのは、大いなる天の色を零して飛ぶ細身の箒。
ねえ、あなた。
そう呼べば、自分に声を掛けられたと察したらしい魔法の箒がくるりと此方を向く。
「あなたがいいわ、『ソラ』」
名を与え、共に往きましょう、と告げれば箒――ソラは七結の手に収まった。
空色の中を翔けるソラ。
その姿を想像していると魔法の箒は七結の身体を掬いあげるように動いた。行こう、と誘っているようで微笑ましくなり、七結は眸を緩める。
「うつくしい天を魅せてちょうだいな」
そして、ソラは澄んだ青空の最中を颯爽と舞い飛んでゆく。
●桜花と方舟
一方、その頃。
別の箒島に転送されたリルと櫻宵は、相棒となる一本を選び取ろうとしていた。
「きゃー! 魔女みたいに箒に乗るんですって。わくわくするわねぇ」
櫻宵は意気揚々と、楽しげに箒の島を歩く。
上品な雰囲気の黒い箒や、美しい真白な箒。樫の木で作られた魔女らしい雰囲気の箒、更には華美な装飾が施された箒までよりどりみどり。
リルも櫻宵についていくが、その表情は何処か浮かない様子。
「魔女かぁ……でも……」
「あら、どうしたのリル」
「尾鰭だから跨がれないや」
自分の姿はこれでいいと思えるようになったけれど、この状況では人のような足がないことが少し引っかかる。しかし櫻宵は、そんなことなら、と穏やかに微笑んだ。
「リルはお姫様みたいに横乗りしましょ」
「え?」
「そうよ、リル。優雅に乗ると良いわ」
「それならできる! うん! 行くぞ、櫻、ヨル!!」
途端に元気になったリルは近くにあった黒い箒を選ぶ。気になっていた足のことを櫻宵が何でもないと言ってくれたから、とても嬉しくなった。
そして、櫻宵はリルと対になるような白い箒を選んだ。柄に桜色の結紐が結ばれているのが実に自分らしいと思えたからだ。
櫻宵は楽しげに双眸を細め、箒に凛と言い放つ。
「私、桜の魔女、櫻宵! 相棒の箒は『ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ号』よ!」
はらり舞う桜吹雪と共に、櫻宵はひらりと箒に跨った。名前を与えられた白の箒は櫻宵の動きに合わせてふわりと浮く。
(櫻……大喜びだな。魔法少女に戻ったみたいだ)
リルは微笑ましくなり、くすくすと和やかに笑った。そしてリルも黒い箒にぴょこんと横乗りになる。因みにはヨルはその後ろにちょこんと跨った。
そうして、リルは願いを込めて名を呼ぶ。
「行くぞ! ――『匣舟』!」
きみは空飛ぶ、僕らの匣舟。リルの宣言に頷くように魔法の箒が揺れた。
天に翔けて游いでいく相棒として、それぞれに箒を得たふたりは上空を目指す。
高く高く、空へ。
「噫、すごく心地がいいわ!」
「乗り物で飛ぶの、不思議だ」
ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ号を駆る櫻宵の隣に、リルとヨルが乗る匣舟が並んだ。うふふ、と上機嫌に笑む櫻宵はふたりに呼び掛ける。
「リル、落ちないように気をつけるのよ! ヨル、しっかり支えてあげて」
「きゅっきゅ!」
その声にヨルが応え、リルの背鰭付近をきゅうっと押さえた。きっとこれで大丈夫、というように胸を張ったヨルは可愛いあんよで箒の柄を掴んでいる。
こうして櫻宵とリルは上空へ向かっていった。
●天を翔ける
「……あら?」
七結は下の方で賑やかな声がしたことに気付き、視線を下ろす。
すると二本の箒が見えて、その上に乗っているふたりと目があった。その姿はよく知ったひと達で、七結は片手を振る。
「七結だ!」
「あなたも来ていたのね。折角だわ、一緒に行きましょう」
リルが手を振り返し、櫻宵が呼び掛けた。
ええ、と答えた七結は視線を天へと向ける。ふたりも倣って其方を見れば、頭上ではオウガ・オリジンと猟兵の戦いが繰り広げられていた。
「戦う前に、おまじないをあげる」
七結は真っ直ぐに飛ぶのが上手なソラを撫でる。そうして、右手の指さきから溢す“あか”で呪文を描いていった。
結わうのは、わたしとあなたの縁。
「さあ、どうぞソラ」
「七結の箒はソラっていうんだ。綺麗だね」
あかが結ばれた箒に風の魔力を授けられていく。その様を見つめていたリルは、いい名前だと褒める。そうね、と同意した櫻宵もちぇりぃ☆ぶろっさりぃ号を撫でた。
「このままオリジンに魔法をぶちかましてあげましょうね!」
さぁ、と七結とリルを誘った櫻宵は箒のスピードをぐんぐんとあげてゆく。
うん! と大きく頷いたリルもその後に続き、七結もソラと共に上昇する。落ちないようにしっかり箒に掴まって、誰よりも速く――原初のアリスの元へ。
風の力と速度、ふたつを重ね合わせれば目的の場所にはあっという間に辿り着く。
「ふん、猟兵どもは次から次へとわいてくるな」
七結とリル、櫻宵を見遣ったオウガ・オリジンは呆れたような声を紡ぎ、魔法使いのオウガを呼び出した。
咄嗟にリルが泡沫の防御陣を生み出し、櫻宵とヨル、七結を包み込む。
するとオウガ・オリジンは周囲の箒達を操り、三人を穿とうと狙ってきた。
「やれ、おまえ達!」
「簡単にやられるほど、あまくはないわ」
泡沫に守られた頼もしさを抱きながら、七結はソラを駆っていく。風の力を纏って飛ぶ魔法の箒はそれだけで魔法使いのオウガを斬り裂いていった。
其処に櫻宵も続き、刀を抜き放つ。
「行くわよ、ちぇりぃ☆ぶろっさりぃ号!」
「櫻! 僕の歌声が聴こえなくなるところまで、ひとりで飛んでかないでよね!」
「きゅー!」
「勿論よ、リル、ヨル!」
桜の魔女になりきった櫻宵は刃を大きく振るいあげる。
今の屠桜は宛ら、魔法の惨殺ステッキだ。一閃で配下オウガを斬り祓った櫻宵は、リルが謳い出した歌を背にして空を翔けた。
空の最中に響いていくのは、鼓舞を込めた魅惑の歌聲。
匣舟に揺られて、疾く速く飛んで――櫻宵の刃と七結のあかが、しかと獲物をとらえられるように、とリルは歌ってゆく。
絡めとって歌を響かせて、背にはヨルの存在を確り感じて。蕩かすのは原初のアリスではなく、彼女をとりまく世界そのもの。
リルの歌を聴きながら、七結も更なる攻勢に出ていった。
「邪魔なやつらだ……!」
「あかい契りが足りないのならば、あなたが望むままに紡いでみせるわ」
風にあかを乗せて、七結はオウガ・オリジンに対抗する。七結が右側から飛んだことを見遣り、櫻宵は左側からオリジンに迫る。
「あなたも美しい桜としてあげる!」
「違うな、おまえ達はわたしの腹を満たすモノとなるのだ!」
櫻宵が全てを蹂躙するように周囲の箒を斬り裂けば、桜花がひといきに舞った。
オリジンが放った炎は箒と一緒に素早く動くことで躱す。櫻宵と七結は相手を惑わせるように箒で宙を翔け、オリジンを翻弄していく。
リルはふたりを泡沫で守り、後押しをする歌を紡ぎ続けた。
「僕に気にせず思い切り斬って、結わいでおいで!」
櫻宵は大事な守りの龍で、七結は大切な友人だから。リルから感じる強い思いを受け、七結はそうっと微笑む
するとオウガ・オリジンが忌々しげな言葉を落とした。
「この……早く堕ちろ!」
「いいえ。空に落ちるのは、あなた」
「ええ! あなたこそ、堕としてあげる」
そして――七結と櫻宵の一閃が空中で交差した瞬間、原初のアリスの身が揺らいだ。
きっと後少し。
もう少しで原初のオウガを倒せるのだと察し、三人と一匹は深く頷きあった。
そうして、魔法の箒達は空を翔け続ける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サフィー・アンタレス
箒、か
随分とまあ面倒だが…必要なら仕方が無い
適当に近場にあったヤツを手に取る
おい
…無視か?
ああ、名前をつけるんだったか?
といっても、そういったことはどうでも良いんだよな
名前なんてただの分別の記号だろ
あー…
なんか月の飾りがあるし、ツキで良いか
おい、ツキ
俺をアイツの元まで運んでくれ
上手く乗れればそのまま戦いへ
落ちないよう注意をしながら
狙いを定め遠くから蒼炎を放つ
他の箒や猟兵には届かないよう細心の注意を
不安定な空中でも、冷静に対処すれば敵へと届くだろう
自動で飛ぶ箒の様は、まるで機械…
いや、まるで生きているようだな
これも不思議の国の力か
箒に炎は相性が悪いだろうが
燃えるようなヘマはしない
だから大丈夫だ
キトリ・フローエ
名前をつけてあげればいいの?
あたしが乗るのに丁度いい、小さめの子はいるかしら?
そうでなくとも相性の良さそうな子を見つけたら手に取って
あなたの力を貸してほしいの、ブルースター!
あなたにあげるのは、青いお星さまみたいなお花の名前
男の子でも女の子でも似合うと思うけれど、どうかしら?
あなたは今からあたしと一緒にお星さまになるのよ
さあ、行きましょう!
箒に跨って空へ
自分の翅を使わずに飛ぶ感覚は少し不思議で
でも、とっても新鮮!
操縦は箒に任せ、あたしはオウガ・オリジンとの戦いに集中するわ
花を食べてもお腹いっぱいにはならないと思うけれど
射程圏内に捉えたならしっかりと狙いを定め
全力籠めた夢幻の花吹雪の一撃を放つわ
●蒼星と銀月
其処は空の色が一面に広がる天空の世界。
ぐらつく足場に降り立ったサフィーは均衡を取り、箒の島の上を歩いていく。
「箒、か」
感じていたのは随分と面倒だということ。しかしこの世界に危機が迫り、必要だというのだから仕方が無い。
「そうだな。そこのお前、おい」
サフィーは様々な箒がある中から近場にあっただけのものを手に取った。だが、箒は何の反応も示さない。浮かんではいるが言うことは聞いてくれそうになかった。
「……無視か?」
『…………』
動かない箒を見遣り、サフィーは軽く首を傾げる。
そして、ふと思い立った。
「ああ、名前をつけるんだったか? といってもな……」
サフィーにとって、そういったことはどうでも良い事柄だ。名前など他のものと分別するためのただの記号に過ぎない。
どうするか、とサフィーが肩を竦めた時、箒に飾られた銀月のチャームが揺れた。
「あー……『ツキ』」
『!』
彼が徐ろに単語を呟くと魔法の箒は明らかな反応を見せる。これでいいか、と独り言ちたサフィーは箒の柄を握った。
「なんか月の飾りがあるし、ツキで良いか。おい、ツキ」
『!!』
呼び掛ければ、何故か箒が嬉しげに揺れる。こんな適当な名前でも気に入られたのだと感じたサフィーは上空を振り仰いだ。
遥かな頭上には猟兵と戦っているオウガ・オリジンの姿が見える。
「俺をアイツの元まで運んでくれ。いいか、ツキ」
『――!』
すると月の箒は、喜んで! というかのように此方を誘う。面倒くさそうに乗り込んだサフィーを連れて、ツキと名付けられた魔法の箒は天高く飛翔した。
同じ頃、別の箒の島にて。
キトリは翅を羽ばたかせ、強く吹く風に飛ばされないように箒を探していた。
「どれも大きな箒ばかりね」
きょろきょろと見渡してみても集まった箒島には人間サイズの魔法の箒しかないように見える。或いは巨人族が乗るような巨大な箒だったりと、キトリにはどう頑張っても乗りこなせないようなものもあった。
「あたしが乗るのに丁度いい、小さめの子はいるかしら?」
キトリはじっとアイオライトの瞳を凝らして探す。
すると重なった箒の間で何かがきらきらと光った。よく見てみると其処には微かに動いている小さな箒が見えた。
「いたわ!」
翅を羽撃かせて翔けたキトリは妖精サイズのミニ箒に手を伸ばす。
この子を見つけられたのは柄の部分に青のリボンと金色の星のチャームが結わえられていたからだ。星の輝きに導かれたと思うと、なんだか運命的なものを感じる。
「確か、名前をつけてあげればいいのよね?」
箒をやさしく握ったキトリは、リボンと星飾りを見た瞬間に浮かんだ名前をつけようと決めた。そして、箒へと呼び掛ける。
「あなたの力を貸してほしいの。ねえ、『ブルースター』!」
『!!』
キトリがその名を紡いだ瞬間、箒が元気よく動いた。名を与えられたことで個の意思を得た魔法の箒はキトリに寄り添う。
「気に入った? あなたにあげたのは、青いお星さまみたいなお花の名前」
きっと男の子でも女の子でも似合う。
どうかしら? とキトリが問うと、魔法の箒――ブルースターはまるで頷くように身を沈めた。其処に乗ったキトリは明るく笑ってみせる。
「あなたは今からあたしと一緒にお星さまになるのよ。さあ、行きましょう!」
そして、少女と蒼星は翔ける。
目指すは一直線、遥か上空にいる原初のアリスのもと。
空を翔け、風を切って奔る。
箒に跨ったキトリは、自分の翅を使わずに空を飛ぶ感覚に不思議さを感じていた。最初こそあまりの速さに驚いていたキトリだが、今や心は踊っている。
「こうやって飛ぶのってとっても新鮮! あっ、見て!」
はっとしたキトリはすぐ上空を示した。
アリスめいた姿をしたオウガ・オリジンは自由に天を舞い、ハートのトランプや数多の箒達を操っている。
するとキトリの後方にサフィーが飛んできた。
オリジンは接近してきたキトリとサフィーに気付き、肩を竦めるような仕草をする。
「また新手の猟兵どもが訪れたか。飽き飽きしてきたところだ」
「そうか」
サフィーは短く答え、魔法剣を一気に振るった。未だ距離はあるゆえにトランプは此方に届いていない。それゆえに先手が打てた。
解き放たれた蒼炎が宙に巡り、オリジンの操っていたカードを燃やしていく。
だが、其処に敵の箒が突撃してきた。
「危ないわ!」
咄嗟にキトリが杖を掲げ、サフィーに向かった敵を夢幻の花吹雪で穿つ。
はたとしたサフィーは死角から訪れた敵の箒がいたのだと知り、軽く首肯することでキトリへの礼とした。
「箒は数が多いから厄介だな」
「そうね、気を付けないと。それよりも大丈夫だった?」
「お陰様で」
問われたことに素っ気なく答えたサフィーだったが、キトリとしては大事がないならばそれで満足だ。行きましょう、と告げたキトリが蒼星の箒と共に翔ける後ろ姿を見遣り、サフィーは再び炎を紡いだ。
そうしている間にも、ツキは迫りくるカードを避けながら舞っていく。
自動で飛ぶ箒の様子はまるで機械――否、宛ら生きているかのようだ。対照的にオリジンの命令を聞き、従う箒には明確な意志が見えない。
もしかすれば、名を持たぬ箒と名を得た箒では何かが違うのかもしれない。
「これも不思議の国の力か」
サフィーは何となく納得し、ツキの柄を強く握る。
箒に炎は相性が悪いだろうが燃えるようなヘマはしない。そう語りかけたサフィーはまるで、だから大丈夫だ、と伝えているかのようだ。
その声に応えるようにツキが懸命に飛び、敵の箒に追いつかれぬよう翔ける。
「ブルースター、お願い!」
キトリも光り輝く花弁を解き放ち、周囲の箒やトランプを撃ち落としていった。箒が回避を担ってくれているので随分と戦いやすい。
それに、サフィーの炎もキトリにとっては良い援護だった。
「ねぇ、あなたはお腹が空いているの?」
「嗚呼、嗚呼。空腹だ」
「それじゃあ、お腹いっぱいにはならないと思うけれど、めいっぱいの花をあげる」
キトリはオリジンに強い言葉を向ける。
そして、合わせると告げたサフィーと共に全力を解き放った。
蒼炎と夢幻の花は重なり、舞い上がるようにオウガ・オリジンを貫く。ぐあ、とくぐもった声が響いたかと思うと、原初のオウガは身を翻した。
「逃げる気ね!」
「面倒だが……追うしかないか」
キトリとサフィーは頷きを交わし、飛んでいくオリジンを追いかけていく。
戦いは未だ続く。
けれども、この魔法の箒と一緒ならばきっと負けやしない。それぞれの思いを抱き、少女と青年は斃すべき敵を追ってゆく。
――決着まで、あと僅か。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユヴェン・ポシェット
魔法の箒の国…か。
名前ってのは大切なものだと昔、教えてくれた奴がいたな。
…あの時は…名前を呼ぶ者もいなかったから分からなかったが。
(触れた箒に)…なぁ、アンタの事「トゥーリ」と呼んでも良いか?今、アンタに優しい風を感じた気がしたんだ。だから「tuuli《風》」という名前をアンタに。
俺達と共にあの者の元まで行って欲しい。行こうミヌレ、そして頼むトゥーリ。
飛んでくるトランプには「avain」という果実を投げ、ぶつけて爆破させることにより相殺。
道を遮るなら、開くのみ。槍を手になぎ払い、貫き、前へ突き進む
オウガ・オリジンに対し、UC「ドラゴニック・エンド」使用。
真っ直ぐに一突き、そして竜の一撃を。
●一陣の風
「魔法の箒の国……か」
オウガ・オリジンによって作られた不思議の国に降り立ち、空を見上げる。
地面が何処にもなく、果てしない青空が広がっている世界。その最中に立つユヴェンは昔を思い出していた。
「名前ってのは大切なものだと、教えてくれた奴がいたな」
尤も、あの時は自分の名前を呼ぶ者もいなかったので意味は分からなかった。
しかし今のユヴェンには確りと理解できている。
ミヌレにロワ、タイヴァスにテュットにクー。そして、ユヴェン自身。
名があるからこそ尊いのだと思えた。
揺れる足場から一歩を踏み出した彼は、均衡を取りながら進んでいく。いま立っているこの場所は空飛ぶ魔法の箒が集まったもの。
うかうかしていては箒達が離れ、自分の身が空に放り出されてしまう。
そして、ユヴェンは或る一本の箒に目を留めた。
それは不思議な凛とした雰囲気を纏う、焦げ茶色の柄をした箒だった。ユヴェンは緑色の飾り紐が胴締め部分に結ばれた箒に触れ、そっと問いかける。
「……なぁ」
『?』
言葉を喋らない箒だが、首ならぬ柄を傾げる仕草をした。
ユヴェンはゆっくりと魔法の箒に語りかけ、己が考えた名を告げてゆく。
「アンタの事を『トゥーリ』と呼んでも良いか?」
『!』
「今、アンタに優しい風を感じた気がしたんだ。だから《風》という名前を――」
『!!!』
すると魔法の箒はユヴェンに擦り寄るように動き、その手にしかと収まった。そうか、と頷いたユヴェンは箒が名を気に入ってくれたのだと察する。
そして、上空に目を向けた。
「俺達と共にあの者の元まで行って欲しい」
振り仰いだ先には他の猟兵と死闘を繰り広げるオウガ・オリジンの姿が見える。頷くように体を動かしたトゥーリはユヴェンに、早く乗って欲しい! と語るかの如く足元に潜り込んできた。
「行こう、ミヌレ。そして頼む、トゥーリ」
ユヴェンは箒に乗り、竜槍となったミヌレに呼び掛ける。
同時にトゥーリの名を呼べば、魔法の箒は嬉しそうに跳ねた。そうして、箒は一気に天空に向かって飛翔していく。
すると接近に気が付いたオウガ・オリジンがユヴェンに狙いを定めた。
「近付くな!」
忌々しげな声と共に解き放たれたハートのトランプが此方に迫ってくる。しかし、ユヴェンは爆発果実を投げつけることでカードを爆破していった。
爆発の衝撃が散り、炎の残滓が空中に舞う。
されどトランプは更に生み出される。ハートの女王めいた姿になった炎が揺らめく中、ユヴェンはミヌレの槍を鋭く構えた。
「道を遮るなら、開くのみだ」
空を翔ける道を選ぶのはトゥーリに任せ、ユヴェンは炎を薙ぎ払う。
貫き、穿ち、ただ前へ突き進む。
そうしてトランプを抜けたユヴェンは真っ直ぐにオウガ・オリジンへと向かった。対する相手も素早く飛んでいるので追いつけるか否かが勝負所だ。
トゥーリは懸命に飛び、オリジンを追う。
緑のリボンが激しくはためく。翔け続ける箒は名を与えてくれたユヴェンに報いるため、限界を越えて飛ぶ気概らしい。
「行くぞ――ミヌレ、トゥーリ!」
強く呼び掛けたことで魔法の箒がオリジンの背に追いつく。
しまった、という声が相手から零れ落ちた刹那、全力を込めた竜槍の一撃がオウガ・オリジンの身を貫いた。
「おのれ……ただの宝石と箒の分際で……!」
オリジンはユヴェン達を一瞥すると、傷口を押さえたまま落下していく。
だが、倒れたわけではない。
離脱して体勢を整えるためにそうしたのだと気付き、ユヴェンはトゥーリの柄を強く握り締めた。追うぞ、という言葉に応えた魔法の箒は高速で飛ぶ。
風の如く舞う箒に信頼を抱き、ユヴェンは敵を見据えた。
必ず決着を付ける。揺るぎない思いを抱き、彼らは青い空の最中を翔けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
こんにちは、あなた
名前は奏楽——そら、は如何かしら
伸びやかに空を翔る様は
朗々と声を響かせる歌姫のよう
恭しく礼をし
ひらり騎乗
研ぎ澄ます第六感で
死角を補い
敵挙動も把握
まるで奏楽と連弾する心地で躱していく
労いと励ましに柄を撫で
華麗な跳躍に拍手と賛辞
地上すれすれの低空飛行から
一息に高みへ航ったり
アンダンテでゆるり逍遙かと魅せれば
急襲で眼前を薙いだり
変調にてオリジンを翻弄
奏楽の機動力は音域の広さに通じるみたいで
「ほぅ、」と感心しつつ
戦庭だと言うのに
ふくふく笑みが絶えないのは
心弾む音楽めいた飛翔が楽しくて
花を添えましょう
高速で詠い紡ぐ花筐で
空往く箒の軌跡に
煌めき輝く花の幻想
オリジンにとびきりの花束を贈ろう
シャルファ・ルイエ
箒が無くても飛べますけど、それはそれとして空飛ぶ箒は浪漫だと思うんです…!
この子だって思った子を捕まえて名前を付けますね。
お願いをして乗せて貰うのなら、きっといつもしている事とそれ程変わりません。
流星みたいに空を駆けるあなたには、シリウスって名前はどうでしょうか。
認めて貰えたら、よろしくのご挨拶も込めて握った柄を撫でておきます。
協力してくれるあなたに、敬意と感謝と信頼を。
横座りで《騎乗》して、操縦は箒任せ、避け切れない攻撃にはわたしの翼を尾翼代わりに使って回避行動の補助を。
垂直飛行にだって付いて行きます。
包囲攻撃を掻い潜れたら、《全力魔法》の【星を呼ぶ歌】で流れ星をオリジン達に降らせますから!
●風の歌姫
此処は空だけが広がる不思議な世界。
幾つもの箒が重なり島になった場所に降り立った綾は、その中のひとつに声を掛けた。
「こんにちは、あなた」
それは真っ直ぐな柄をした箒であり、澄んだ風の音を響かせている。
そっと箒に歩み寄った綾は腕を伸ばして魔法の箒を呼ぶ。
「名前は奏楽――そら、は如何かしら」
伸びやかに空を翔る様は、朗々と声を響かせる歌姫のようだったから。
『……』
そうすれば魔法の箒は穏やかな仕草で綾に近付き、その横に並んだ。綾は双眸を細めた後、恭しく礼をしてみせる。
与えられた名に満足したらしい奏楽は静かに高度を下げた。
其処へ綾がひらりと騎乗すれば、奏楽は一気に飛び立っていく。それから少し遅れて、綾が立っていた足場の箒達はばらけて四方八方に散っていった。
その理由は――。
「箒どもよ、わたしに従え」
上空から降りてきたオウガ・オリジンが名無しの箒達を操り、猟兵達を一気に蹴散らそうとしているからだ。敵が纏う重々しい雰囲気を感じ取った綾は身構える。
「――奏楽」
綾は箒の名を呼び、自分達に迫ってくる箒達を躱すように願った。
●流星のあなた
同じ頃、シャルファは箒の島を蹴って飛翔していた。
転送された矢先に足場となっていた箒がオウガ・オリジンによって操られたことで、急いで翼を広げて飛んだのだ。この世界の空は広く、風は激しい。
「危なかったです……!」
こうして、背の翼を羽撃かせて飛ぶことは出来る。
つまりは箒が無くとも戦闘は可能。果てない空に落ちてしまうこともないのだが、それはそれとして――。
「空飛ぶ箒は浪漫だと思うんです!」
シャルファは先に箒を選んで飛んでいった猟兵の後ろ姿を見上げ、ぐっと掌を握る。
周囲には名もなき魔法の箒が幾つも舞っていた。辺りを見渡したシャルファは自分が乗る為の箒を探していく。
このままオリジンに向かっても良いが、やはり互角に戦うには箒が必須。
「あの子は……」
気になる箒を見つけたシャルファは手をそっと伸ばした。
お願いをして乗せて貰うのならば、きっといつもしていることとそれほど変わらないはず。大丈夫ですよ、と箒に声を掛けたシャルファは淡く笑む。
翼を広げて追うのは、まるで流星みたいに空を駆け抜けて往く子。
「あなたは……そうです、シリウスって名前はどうでしょうか」
『!』
すると魔法の箒は名を気に入ったらしく、自らシャルファに寄り添ってきた。
「良かった。よろしくお願いしますね」
安堵を抱いたシャルファは初めましての挨拶の意味も込めて、握った柄を撫でた。其処に敬意と感謝と信頼を宿して、シャルファは箒に横乗りに座る。
そして、シリウスと名付けられた箒はオウガ・オリジンに向かって飛翔していった。
●はじまりの少女と魔法の箒
「猟兵どもめ、墜ちてしまうがよい!」
オリジンの声が空に響き渡り、綾とシャルファに数多の箒が迫る。
シャルファはシリウスと一緒に素早く側面に逸れ、綾は奏楽と共に上へと昇って敵の突撃を躱した。
「気を付けてください」
「はい、そちらも!」
同時にオリジンと相見えることになった二人は、其々に名付けた箒と共に高速で空を舞っていく。綾は第六感を研ぎ澄ませてオリジンの様子を探った。
飛び交う敵の箒達は遠慮なく綾やシャルファに突撃していきているが、その数が逆に此方の有利な状況を運んできた。
何故なら、敵箒の影に隠れることが可能だからだ。
綾は奏楽に死角を補って貰い、奏楽も綾が見ている方向を任せる。先程に出逢ったばかりのもの同士ではあるが、名を与えられたことで箒は綾を信じていた。
綾もまた、風を奏でる箒に親しみめいたものを覚えている。
それはシャルファも同じ。
自分が名前をつけた存在というだけで、まるでこれまでずっと友達であったかのような不思議な感覚が巡っていた。
そして、シリウスに身を任せたシャルファは風を感じる。
追いかけてくる敵の箒は身を反らして避け、どうしても避け切れない突撃には自らの翼を尾翼代わりに使い、全力で回避行動の補助にまわった。
「シリウス!」
シャルファがその名を呼べば、魔法の箒は垂直に飛ぶ。
数多の箒よりも高く、疾く――流星が天に昇るかのような光景が其処にはあった。
髪のかすみ草を風に散らしながら懸命に翔けるシャルファ。綾はその姿を振り仰いだ後、己も負けてはいられないと感じる。
そうして、綾は奏楽と連弾を行うかの如く敵の箒を躱していった。労いと励ましに代わりに柄を撫で、華麗な跳躍に拍手と賛辞を送る。
其処から敵の箒すれすれの飛行を見せ、ひといきに高みへと航った。
その様子はアンダンテ。ゆるりとした逍遙と見紛うほどに魅せたかと思えば、急襲で眼前を薙ぐ。奏でる音を変調として、オリジンが操る箒を翻弄していく。
「良いですね、奏楽」
奏楽の機動力はそのまま音域の広さに通じているかのようで、思わず感心の声が零れ落ちた。綾がそう感じていることと同じくして、シャルファも箒達の飛行が不思議な音楽のようだと思っていた。
戦場だというのに、綾の笑みが絶えないのはきっと――心が弾む音楽めいた飛翔が楽しくも感じるからだ。
其処へシャルファが星を呼ぶ歌を紡いでいく。
「あなた達の音に合わせて、わたしも歌いましょう」
――空を見て、手を伸ばして。今なら星にだって手が届く。
音を飾るように巡ったシャルファの力が、空から降る流れ星を呼び起こす。空を翔けるシリウスが星を導いていくように飛べば、敵の箒は次々と墜ちていった。
そして、流星はオウガ・オリジにも降り注ぐ。
「花を添えましょう」
綾は詠い紡ぐ力によって、空を往く箒の軌跡に煌めき輝く花の幻想を重ねた。
降る星。捧ぐ花。
さあ、今こそ――はじまりの少女にとびきりの星の花束を贈ろう。
シャルファと綾の力が淡く交差した瞬間、オウガ・オリジンの身体は鮮やかな彩で飾られた。其処に与えられたのは、終わりに続く道標。
魔法の箒を強く握った二人は頷きを交わし、近付く最後への思いを抱いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
兎乃・零時
アドリブ歓迎
箒がいっぱいだー!!
そうだよちゃんと飛びたかったんだ!
今の杖での跳び方さっぱりだから無理やり魔力放射で跳んでたし…
でもコツさえつかめば!役立つはず…!
箒はもうすっごいのがいいな!ごつくて強いの!
…いや俺様に合いそうなやつでもいいんだけどさ!
名前は…決めた!
クリスタル!
箒に魔力を籠め鼓舞
大丈夫
大丈夫だ!
越えられる、俺様達なら!
空中戦×空中浮遊
迫る攻撃は気合と魔力放射で粉砕!
当たっても服の耐性で耐え
限界まで速度を上げたなら箒と共に敵へ突っ込み
身に纏う魔力の硬度を上げて己自身を弾丸のようにし捨て身の一撃
音すら飛び越え置き去りに―――!
この箒…
俺様の杖とうまく同化とかしねぇかなぁ…ほしい…
●水晶の軌跡
「箒がいっぱいだー!!」
何処までも空が広がる不思議な世界で、少年は期待に胸を躍らせていた。
降り立ったのは魔法の箒が集合して飛ぶ島の上。
零時は辺りをめいっぱいに見渡し、様々な箒をひとつずつ確かめている。どれもが其々に違う形をしていて、魔力を纏いながら舞っていた。
「そうだよ、ちゃんと飛びたかったんだ!」
拳を握った零時の胸の奥には、箒に乗って飛べるという少し先の未来への希望が満ちていた。これまでも杖で飛んできたが、無理矢理に魔力の放射で補っていただけ。
しかし今、飛ぶために存在している魔法道具が目の前にある。
「コツさえつかめば! 役立つはず……!」
だから、と箒島の中心に駆けていく零時は真剣に箒を選んでいった。
乗りたいのは凄い箒。
強くてごつくて格好良くて、兎に角すっごくて、世界最速であれば文句はない。
零時は先ず細身の木で出来た箒の横を通り、巨人族が使うようなゴツゴツした箒を見上げた。明らかに強くて速いであろう巨大箒に心を惹かれつつも、あれはでかすぎるよなぁ、と零時は首を振る。
そして、零時が運命的に出逢ったのは――。
「あれだ!!」
ひとめ見た瞬間、零時はその箒の元に駆け出していた。それはターボジェットエンジンが搭載された魔導機械的な箒だった。
柄は強化セラミックスや合金めいた材質で、座りやすい搭乗部位もついてる。
穂先はというとホログラムで投影されており、水晶のように透き通っていた。はたして掃除が出来るのか謎だが、空飛ぶ箒なので機能性は別なのかもしれない。
まさに自分のためにあるもの。そんな気がして、零時は手を伸ばした。
「名前は……決めた! クリスタル!」
零時が名を告げた瞬間、エンジン音を鋭く響かせた機械箒が傍に寄ってくる。其処に飛び乗った零時は己の魔力を箒に込めた。
遥か上空にはオウガ・オリジンの姿が見える。素早く飛びまわるオリジンはかなりのスピードで猟兵達を翻弄していた。
行け、と零時が告げるとクリスタルは殆ど垂直に上昇していく。
「大丈夫。大丈夫だ!」
『……!!』
「越えられる、俺様達なら!」
箒は言葉を喋らないが、強い意思めいたものが柄越しに感じられた。零時はクリスタルと共に疾風の如く飛び、オリジンの元へ辿り着く。
「新手の猟兵か。……堕ちろ」
「ここまで来て、簡単に落とされるもんか!」
オリジンの言葉と共に、鋭く飛ぶトランプが零時に迫ってきた。強い言葉を返した零時はクリスタルと一緒に側面に逸れ、カードを躱す。しかし、箒に掠ったそれはハートの女王の炎となって更に襲いかかってきた。
「この……!」
零時は魔力を放射することで女王の姿を粉砕し、クリスタルは高く飛ぶことで炎の残滓から逃れていく。
しかし、オリジンも次々とトランプを放った。
ひとつずつの相手はしていられないと察した零時は箒を強く握る。そして、その意思を感じ取ったクリスタルが限界まで速度を上げていった。
風を切り、空を翔ける。
空気を押し潰すほどに疾く、音すら飛び越え置き去りにして。
「これで、どうだッ――!!!」
零時は箒と共に敵へと吶喊し、身に纏う魔力の硬度を上げた。それは己そのものを弾丸とした捨て身の一撃。
「……!?」
オウガ・オリジンの身が零時自身によって貫かれ、その身が大きく揺らいだ。
だが、舌打ちをした仕草をみせたオリジンは数多のトランプを広げると同時に身を翻す。逃げる気だ、と感じたときにはもう敵は遥か下へと降下していった後だった。すぐに追えなかったのは、今の一撃の衝撃が零時にも波及していたからだ。
「下だ! 追うぜ!」
クリスタルに呼び掛けた零時は敵を追う。
その最中、零時はふとクリスタルの最高の性能を思い、ぽつりと零した。
「クリスタル、お前……俺様の杖とうまく同化する気はねぇか……と、うわっ!」
『!!』
「そうか、良いのか。それじゃあ行こうぜ!」
すると箒は同意を示す如き仕草をして、零時が驚くくらいの動きをみせる。嬉しくなった零時は満面の笑みを浮かべた。
そして――少年は、この戦いを終わらせるための決意を固めてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
箒?あぁ、なるほど…空中戦ってことか
オーライ、そういうことなら引き受けるとしよう
名前、名前なぁ…ンッンー、そうだな
『ジャベリン』だ
どこまでも風を切って疾れよ、チューマ
さぁ、俺とレースをしようじゃないか
セット──『VenomDancer』
俺は箒に"立つ"…サーファーのようにな
追いかけてこいよ、ツーマンセルでな
空を駆け抜けながら、猛毒と鈍化のパルスで引き撃ちをし続ける
決して追いつかせず、じわりじわりと体力を削るんだ
…よし、頃合いだな
『ジャベリン』!反転だ!仕掛けるぞ!
ナイフを逆手に構えて、スピードを乗せてすれ違いざまに首を狙う
遅い、遅すぎる…一体誰がそうしたんだか
奈落の底で敗北を噛み締めてるといい
●風槍
広い空の青は何処までも続いていた。
果てしない世界の真ん中で、ヴィクティムは自分が降り立った足場を確かめる。
「箒?」
其処は常に動き続ける空飛ぶ箒が集まった場所だ。不安定な足元を見下ろしたヴィクティムは納得した。
「あぁ、なるほど……空中戦ってことか」
見れば少しずつ足場の箒が四方に散ろうとしている。ゆっくりしている暇はなく、この箒達が飛び去ってしまえば底のない空に墜ちていくことになるだろう。
「オーライ、そういうことなら引き受けるとしよう」
ヴィクティムは箒が密集している方向へと踏み出し、その中から適当な一本に手を伸ばした。しかしそれは雑に選んだという意味ではなく、この戦いの場に相応しいものという基準で選び取ったものだ。
黒に近い紫色の柄をした一本の箒。
その鋭くシャープなフォルムは、ヴィクティムが纏う雰囲気ともよく似ている。
ヴィクティムは少し考え、未だ無反応な魔法の箒を見下ろした。
「名前、名前なぁ……ンッンー、そうだな」
『?』
箒は言葉などは喋れないようだが、ヴィクティムが考え込んでいる様子を察して少しだけ近寄ってきた。名前に興味があるのだと気付いたヴィクティムは薄く笑う。
そして、浮かんだ名前を魔法の箒に告げた。
「決めた、『ジャベリン』だ」
『!』
「どこまでも風を切って疾れよ、チューマ」
その名を気に入ったらしい魔法の箒――ジャベリンはヴィクティムを主として認めたようだ。足元へと飛んできた箒は、乗って、というように左右に軽く揺れた。
その様子に頷いた後、ヴィクティムは遥かな天を振り仰ぐ。
眩い空の中心にはオウガ・オリジンの姿があった。舞うトランプや炎が迸り、数多の箒が操られていく戦いは激しい。
そして、ヴィクティムはジャベリンに飛び乗った。
「さぁ、俺とレースをしようじゃないか」
セット――『VenomDancer』
魔法の箒の上に立ったヴィクティムは、宛ら波に乗るサーファーの如くしかと構えて空の向こうへ翔けていく。
飛翔する箒は風の如く疾走り、瞬く間にオウガ・オリジンの元に辿り着いた。すると此方に気付いたオリジンが魔法使いのオウガを呼び出す。
「やってしまえ」
忌々しげに呟いたオリジンの声を聞き、オウガが素早く飛んできた。既にヴィクティムのヘイトプログラムは発動している。
「追いかけてこいよ、ツーマンセルで……いや、もっとか」
別の猟兵に向けられていた敵の箒郡までもがヴィクティムを追い、激しい波のように襲いかかってきた。
だが、ヴィクティムにとってはそれも織り込み済み。
箒を駆って空を走り抜けながら、猛毒と鈍化のパルスを解き放つ。引き撃ちを行い続け、敵を翻弄するヴィクティムとジャベリンは誰にも追いつかせぬスピードで翔けた。
其処から攻防は巡る。
じわじわと体力を削られていったオウガが箒から落ち、空の彼方に散っていった。
追ってきていた箒も随分と数が少なくなっている。
「……よし、頃合いだな」
『!』
ヴィクティムが静かな言葉を落としたことで、その意思を読み取った魔法の箒が待ってましたとばかりに反応を見せた。
そして、ヴィクティムは一気に呼び掛ける。
「――『ジャベリン』! 反転だ! 仕掛けるぞ!」
ナイフを逆手に構えた彼はジャベリンに最大スピードで翔けるように願い、オウガ・オリジンへとひといきに迫った。
すれ違いざま、ヴィクティムが狙ったのは首。されどそれを察したらしいオリジンもトランプを舞わせることで対抗した。
「させるか!」
「遅い、遅すぎる……一体誰がそうしたんだか」
「く……!」
ヴィクティムの刃はカードごとオリジンの肩を斬り裂く。少々ずれてしまったが傷を与えることには成功した。これならば次は首を掻き切ることも可能だろう。
だが、オリジンは勢いよく空に落下していく。
此方の次手を警戒してわざとそうしたのだと気付き、ヴィクティムはジャベリンに後を追うよう願った。
たとえこの世界に果てがないとしても、墜ち続ければ其処は奈落の底。
必ず敗北を噛み締めさせてやるのだと決め、ヴィクティムは風を切って翔ける。
唯只管、真っ直ぐに――。
大成功
🔵🔵🔵
樹神・桜雪
不思議な光景、箒がたくさんだ。
途中までは箒を伝ってオリジンの所まで向かおうとするよ。
足場がなくなりそうになったら箒を一本捕まえる。
お願いだから暴れないで。ええと、ええと…。
『ユウリ』!君の名前は『ユウリ』だよ!
……一瞬だけ親友がちらついて口走った名前。何故かとても大事だと思ったモノ。
その名前をあげるから言う事聞いて!お願い!
操縦はユウリに完全にお任せする。
そっちが箒をたくさん使うならボクだって…!
UCで箒を破壊、後にオリジンに反撃するよ。
回避はユウリにお任せして、攻撃に専念。薙ぎ払いや2回攻撃も駆使するね。
至近距離まで近づいたらこちらもUCを撃つよ。
なぜだろう、君が傍に居てくれた気がするんだ。
●君と一緒に翔ける空
歩く、歩く。
不思議な世界の真ん中で、箒の島をそうっと歩いていく。
「すごい光景……箒がたくさんだ」
桜雪は浮かぶ魔法の箒から足を踏み外さないよう、慎重に箒を伝っていった。少し上空にはオウガ・オリジンの姿が見えた。
このまま箒の島を辿っていけば、彼女のもとに辿り着けるだろうか。
少しでも近くへ、と考えた桜雪は少しずつ箒の島を登っていった。だが、次第に箒達はバラバラになって飛んでいく。
「わ、待って」
足場がぐらついて桜雪の体勢が崩れそうになった。どうやらこのままオリジンのところまでは行けないようだと感じたときにはもう、足場は数本の箒だけになっていた。
このままでは落ちてしまう。
地面がないこの世界では、飛べなければ永遠の空に落下し続けるだけ。
相棒は無事かもしれないが、自分だけは空の彼方に放り出されてしまうだろう。
はっとした桜雪は咄嗟に近くの箒を捕まえた。その箒は羽箒のような形で、大きな羽をあしらった真白な箒だ。その色は雪を思わせる綺麗な色だった。
しかし、魔法の箒はじたばたと左右に揺れて桜雪の手から離れようとする。
「お願いだから暴れないで!」
願ってみても魔法の箒は逃げ出そうとするのみ。
「ええと、ええと……」
慌てそうになる中、桜雪は魔法の箒の御し方を思い出した。そうだ、名前をつけるんだと気付いた桜雪は浮かんだ名を声に出す。
「――『ユウリ』!」
『!』
「君の名前は『ユウリ』だよ! この名前をあげるから言う事聞いて! お願い!」
その途端、暴れていた箒がぴたりと止まり、落ちそうになっていた桜雪をすくいあげる形でふわりと浮いた。
その名前は一瞬だけ親友がちらついたゆえに口走ったもの。
危機を経て、どうしてかとても大事だと思った名だ。桜雪は箒に真っ直ぐに乗り、かれがこの名を気に入ってくれたのだと察する。
「ありがとう。ボクと一緒にあそこに行ってくれる?」
桜雪がお礼と共に問いかけると、魔法の箒――ユウリは頷くように少し沈んだ。
そして、桜雪が示した上空へと一気に昇っていく。
いつの間にか天空高くへと舞っていったオウガ・オリジン。その傍へと馳せ参じるために箒は疾く翔けていく。
「空はユウリの方が得意だよね。後はお任せするよ」
敵へのルート選びや飛び方は箒に頼り、桜雪は強く身構えた。
すると此方に気が付いたらしいオウガ・オリジンが周囲の箒を操りはじめる。
「箒どもよ、わたしに従え。あれを蹴散らせ」
数多の敵箒が幾何学模様を描き、複雑に飛翔して桜雪達を包囲していった。だが、桜雪はそんなものに怯えはしない。
「そっちが箒をたくさん使うならボクだって……!」
――桜花雪月。
桜雪が放ち返したのは無数の桜硝子の太刀。霊力を帯びた刃は仄かに光りながら敵の箒を切り裂き、迫りくるものを次々と落としていく。
行く手を阻んでいた箒が太刀によって真二つに切り裂かれたことで、オウガ・オリジンへの道がひらかれた。
その一瞬を逃さなかった桜雪はユウリと共に翔ける。
「ユウリ!」
『――!!』
呼び掛けに答えた魔法の箒がフルスピードで疾走っていった。桜雪は桜硝子の太刀を周囲に呼び、駆け抜けると同時にひといきにオリジンへと迸らせる。
刹那、ぐあ、という短い声が敵から零れ落ちた。
見れば太刀の一本が彼女の腕に深々と突き刺さっている。しかし、オウガ・オリジンはそのまま身を翻して桜雪達から離れた。
「逃げる気……?」
はたとした桜雪はすぐにユウリに願い、その後を追うために飛ぶ。
素早く空を突き進むオウガ・オリジンに追いつくのは至難かもしれない。しかし、桜雪は箒と共に風を切って全力で進む。
大丈夫。
不安など少しもなく、必ず原初のオウガを倒せるという気持ちが湧いてきた。
――なぜだろう、君が傍に居てくれた気がするから。
だから負けられないんだ、と意気込んだ桜雪は魔法の箒の柄を強く握った。
そして、戦いは佳境に入ってゆく。
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
クラウ(f03642)と
ほうきで空をとぶなんて
まほうつかいみたいっ
いっしょに飛ぼう
わたしのつばさになって、『フリューゲル』っ
乗せてくれたらありがとうと笑って
箒に跨りクラウの元へ
ベルっていうの?
かわいい、クラウの花とおそろいみたい
この子はフリューゲルだよっ、ねー
ガジェットショータイム
魔法のステッキ
がリモコンの透明な巨大扇風機
おっけー、クラウっ
ステッキ振れば魔法のように突風で範囲攻撃
攻撃を避けるのは箒にしがみつき
トップスピードで
フリューゲル、すごいっ
風の範囲強さは自在
クラウの炎を煽ったり
オウガが進むのを妨害したり
一点集中
クラウの大玉を加速させ押し出すスペシャルな風
みんないっしょだもの、まけないよっ
クラウン・メリー
おずりん(f01136)と
箒さん!俺を乗せて!
ベルのような形をした箒にしがみつく
ふふー、君の名前は『ベル』だ!
ベル、一緒に力を合わせて戦ってくれるかな?
箒の上に立ち上がりバランスを保つ
えへへ、これなら両手で戦える!
おずりんの箒さんもカッコいい!
お名前はっ?
フリューゲル!とっても素敵な名前だ!
よーし、力を合わせて戦おう!
鳩さんお願い!
鳩を放ち爆破させ四本の黒剣をジャグリングしながら敵を狙い投げる
おずりん今だ!
わあ、おずりん魔法使いみたい!
その隙に敵に向って箒から落ちる
これなら逃げられないよね?
火の輪で敵を拘束しベルに拾ってもらう
ふふ、ありがとう!
一気に行くよ!おずりんの攻撃と共に大玉をどかーん!
●風翼と鈴鐘
澄んだ真っ青な空が広がる世界は不思議な心地がした。
雲ひとつない空の中に浮かんでいるのは、たくさんの魔法の箒達。以前に向かった眠りの国とは違う感覚に、オズとクラウンは心を躍らせていた。
「ほうきで空をとぶなんて、まほうつかいみたいっ」
「うんっ、魔法使いバトルだ!」
後で集合、と決めたふたりはそれぞれに相棒となる箒を探しに駆けていく。
白い箒に黒い箒、青空のような色をした箒もあれば、いろんな飾りをいっぱい付けている箒まで様々なものがある。
その中でオズが気になったのは、二本の羽箒を合わせたような魔法の箒だ。
薄青の羽根が重なっているフォルムの箒はゆらゆらと揺らめいている。オズはその子に手を伸ばして、明るく笑いかけてみた。
「いっしょに飛ぼう」
『?』
すると魔法の箒は不思議そうに羽根を動かす。オズは素直そうな箒だと感じながら、柄代わりになっている羽根の付け根の方に掌を添えた。
そして、名前を告げる。
「わたしのつばさになって、『フリューゲル』っ」
与えた名は翼という意味を持つ言葉。
魔法の箒はオズに寄り添うようにそっと動き、どうぞ乗ってください、と告げるが如くオズに触れた。更に笑みを深めたオズは其処に腰掛ける。
「ありがとう、フリューゲル。いこうっ」
翼を得たオズは空を見上げた。
――同じ頃。
クラウンは数多の箒の中から、とても賑やかな装飾やガーランドが飾られたものを選んでいた。パステルカラーの三角旗が連なる箒は見た目も楽しい。
胴締めの部分には印象的な赤と青のリボンが巻かれており、そして何よりも――穂先が可愛らしい鐘めいた形をしている。クラウンはひと目でそれが気に入っていた。
「箒さん! 俺を乗せて!」
『……?』
すると箒はガーランドを揺らし、クラウンから少し離れてしまった。しかしクラウンはその後を追い、ベルめいた箒にぎゅっとしがみつく。
「ふふー、君の名前は『ベル』だ!」
『!!』
すると恥ずかしがっていたらしい魔法の箒は途端に嬉しそうな仕草をして、名付けの主となったクラウンを快く乗せた。
「ベル、一緒に力を合わせて戦ってくれるかな?」
もちろん、というようにベルは軽く沈んだ。クラウンは立ち上がってバランスを取り、曲芸師の如く柄の上でくるりと回る。
「えへへ、これなら両手で戦える! 行こう、ベル!」
クラウンが呼び掛けたとき、その声を聞いて訪れたオズが箒と共にやってきた。
「わあ、そのこはベルっていうの? かわいい箒さんだね」
クラウの花とおそろいみたい、とオズが告げるとクラウンは嬉しそうに微笑む。そして、羽箒めいた箒を見て瞳を輝かせた。
「おずりんの箒さんもカッコいい! お名前はっ?」
「この子はフリューゲルだよっ、ねー」
「フリューゲル! とっても素敵な名前だ!」
互いの相棒を確かめたふたりは、しっかりと頷きあう。頼もしい仲間と一緒に戦えるならきっと負けない。そして、オズとクラウンは天空を目指して飛んでゆく。
遥かな天を舞うのは斃すべき敵――オウガ・オリジン。
「……また猟兵か」
スピードを上げて近付いてくる魔法の箒に気付き、オリジンは忌々しそうに呟いた。
そして、オリジンはトランプをクラウン達に解き放つ。
「きをつけてっ」
「大丈夫!」
オズの声にクラウンが答え、カードをひらりと躱した。素早く動いてくれたベルに、ありがとう、と礼を告げたクラウンはそのままハートのトランプを引きつけていく。
その間にオズがガジェットを召喚した。
魔法のステッキを手にしたオズは、それがリモコンになった透明な巨大扇風機を周囲に浮遊させていく。
「よーし、力を合わせて戦おう!」
「おっけー、クラウっ」
カードを蹴散らしたクラウンに合わせ、オズはステッキを振る。そうすれば魔法のような突風が周囲に広がっていった。
しかし、オリジンも魔法使いのオウガを呼び寄せることで対抗する。
「鳩さんお願い!」
対するクラウンは鳩達にオウガを阻むことを願う。すると魔法使いが杖を振って炎を解き放った。炎弾が此方に飛んでくると察し、オズは箒を呼んだ。
「フリューゲルっ」
そうすれば魔法の箒は高く飛び、炎が追いつけないスピードを出していく。すごいっ、とオズが褒めるとフリューゲルは得意げな仕草をした。
その様子を見て、ほっとしたクラウンは鳩を爆発させながら、四本の黒剣をジャグリングしつつオリジンへと迫る。
「おずりん今だ!」
「いけるよっ」
再びオズがステッキを振るうと、オウガとオリジンに風が迸っていった。敵の魔法使いはその勢いに吹き飛ばされ、オリジンは小さな呻き声をあげる。
「わあ、おずりん魔法使いみたい!」
「みんないっしょだもの、まけないよっ」
「それじゃあ、ここからが見せ場だ!」
箒で疾く飛び交いながら視線を交わしたふたりは、オリジンへの攻撃に移る。
「小癪な小僧どもが……!」
戦慄くオウガ・オリジンを見据えたクラウンは、ベルの柄を思いきり蹴った。敵に向かって箒から落ちる様はまるで自殺行為のように見える。だが――。
「これなら逃げられないよね?」
「なに……!?」
近付くと同時に火の輪で拘束したクラウンは、落下地点に回り込んだベルの上に華麗に降り立つ。
「まだまだこれからだよっ ねえ、クラウっ」
「ふふ、ありがとう! 一気に行くよ!」
其処へオズが一点集中で風を送り、クラウンが大玉を投げつける。大玉は風によって加速し、勢いよくオウガ・オリジンに向かっていった。
「……!!!」
刹那、オリジンの身を大玉が穿つ。
あまりの衝撃に彼女は均衡を崩し、大きくよろめいた。しかし何とか体勢を立て直したオウガ・オリジンは天高く飛んでいく。
「追うよ、おずりん!」
「うんっ」
逃しはしないと決め、クラウンとオズは魔法の箒と共にその後を追った。
風の翼と凛と鳴る鐘の名を得た箒達。彼らは主となったふたりに報いるように疾く、速く空を駆け抜けていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
桜・結都
グィーさん(f00789)と
箒に乗るのは初めてですね。うまく出来るといいのですけど
グィーさんの様子を窺いつつ、私も真似してみようと思うのですが……
ううん、箒の上に立つのは難しそうです
普通に跨ることにしましょう
名は、春風でいかがでしょうか
おだやかに、悠々と翔ける風のように
ええ、決まりましたよグィーさん
行きましょう
桜咲を振るい、『桜色の君』で桜の精へ助力を願いましょう
空での身のこなしは春風と精霊に任せます
慣れない感覚にもついて行けるよう、方向は見失わないように気を付けます
飛びながら桜霊符を散らし追い込みましょう
グィーさんの攻撃とタイミングを合わせ、雷魔法を撃ち込みます
グィー・フォーサイス
結都(f01056)と
ぴょんと跳んで一本の箒に両手で捕まって
くるんっと逆上りして箒の上に立つよ
不安定だったら跨るけれど僕は立ち乗りの方が得意なのさ
箒の扱いなら任せておくれよ
僕はアルダワの郵便屋だよ
結都は…無理しないでね
今日から君は僕の相棒!
フィンブルケニングだよ!
意味は大いなる鷹
結都は決まったかな?
春風かぁ
結都らしい名前だね
さあ行こう
フィンブルケニング!
万年筆型の杖を振って風魔法を纏って飛び出すよ
敵の攻撃はなるべく見切りたいところ
結都とタイミングを合わせて杖を振り振り
風を唸らせ敵の足止めさ
軍鳩くんたち、お願いするよ
軍鳩部隊、前へ!
目標は前方のオウガ!
さあ、君達の勇猛っぷりを見せつけておくれ!
●空を翔けて
見渡す限り一面の青。
空色の世界に降り立ち、辺りを見渡せば数多の箒が天を游いでいる姿が見えた。
不安定な足場で転ばぬよう気を付けながら、結都はぴょんと軽く跳んで先を行くグィーの後ろ姿を追っていく。
「箒に乗るのは初めてですね。うまく出来るといいのですけど」
「大丈夫さ、ほら!」
こうするんだよ、と告げたグィーはすぐ目の前に浮いていた、ちいさめの箒へと跳躍した。そうして彼はそのまま箒に両手で掴まる。
樫の木で出来た魔法の箒。宛ら鉄棒の如く、くるんっと逆上りの形で登ったグィーは箒の上に見事に立った。
「どう? 箒の扱いなら任せておくれよ」
少しぐらついてはいるが、グィーの立ち乗りは見事だ。
なんたって僕はアルダワの郵便屋だよ、と胸を張ったグィーの姿勢は安定している。
グィーに感心しつつ、その様子を窺っていた結都は淡い桜色のリボンが結ばれた箒に手を伸ばしてみた。しかし、結都には彼のような華麗な乗り方は難しそうだ。
「ううん、箒の上に立つのは難しそうです」
「結都、無理しないでね」
「大丈夫です。こうして乗ることにします」
普通に跨ることに決めた結都は箒に乗った。しかし、まだグィーの箒も結都の箒も、ただ浮いているだけで動こうとしない。
名前を付けるのが重要だと聞いていたふたりは、それぞれの箒に名を告げていく。
「今日から君は僕の相棒! フィンブルケニングだよ!」
グィーが名付けたのは、大いなる鷹という意味の言葉。凛々しい雰囲気を纏う魔法の箒にぴったりの名前だ。
そして、結都はというと――。
「名は、春風でいかがでしょうか」
おだやかに、悠々と翔ける風のようにと願いを込めた名を箒に与える。
すると魔法の箒はそれぞれに主を認めたらしく、先程とは違った雰囲気でふわりと飛び始めた。其処から感じられるのは箒の静かな意思だ。
一緒に飛ぼう、と言ってくれているのだと感じたグィーはぐっと意気込む。
そして、彼は結都の方に笑みを向けた。
「結都は決まったかな?」
「ええ、決まりましたよグィーさん。この子は春風です」
「春風かぁ。結都らしい名前だね」
「フィンブルケニングも格好良いですね」
互いの相棒の名を確かめあい、ふたりは遥かな上空を振り仰いでいく。遠くには自由に空を飛び回る少女――オウガ・オリジンの姿が見えた。
どうやら現在、彼女は猟兵達の攻撃から逃げ回っているようだ。
つまり、オリジンは追い詰められている。
そのように察した結都とグィーは頷きを交わし、春風とフィンブルケニングに高く飛ぶように願った。
「さあ行こう、フィンブルケニング!」
「春風、行きましょう」
ふたりがその名を再び呼んだ刹那、魔法の箒達は一気に飛翔していく。
速く、疾く、風の如く。
オウガ・オリジンのもとまで辿り着いたグィーと結都は、斃すべき存在を見据えた。
「おのれ、猟兵ども……」
忌々しい、と呟いたオリジンは周囲の箒を呼び寄せた。
主を守る壁になるかのように広がった魔法の箒達は、複雑な幾何学模様を描きながら変則的に飛んでくる。
「気を付けて、結都!」
「グィーさんもどうかお気を付けて」
左右に分かれたふたりは迫る箒を躱し、追いつかれぬように空を舞い飛んだ。
そして、隙を見出したグィーは万年筆型の杖を振る。其処から紡がれた風の魔法が敵の箒を貫き、真っ二つに斬り裂いた。
同時に結都も桜咲を振るい、桜の精へと助力を願っていく。
空を飛ぶルートや躱す身のこなしは春風と精霊に任せ、結都自身はオウガ・オリジンから意識を逸らさぬように努めた。
慣れない感覚にもついて行けるよう、そして方向を見失わないように。また、グィーに敵の箒が向かっていかないように、或る程度の相手を引きつけていく結都。
グィーは結都が自分を気遣ってくれているのだと察し、その分だけしかと攻撃に回ろうと心に決めた。
「今だ! 行くよ、結都!」
「はい、任せてください」
グィーの呼び掛けに結都が答え、ふたりはタイミングを合わせて各々の杖を振る。
唸らせた風が箒を一気に穿ち、桜の精が残った箒の動きを止めていった。その間にフィンブルケニングと春風は主のために疾く飛ぶ。
いい感じだ、と頷いたグィーはオウガ・オリジンまでの道がひらけたことに気付いた。
「軍鳩くんたち、お願いするよ」
――軍鳩部隊、前へ! 目標は前方のオウガ!
凛とした号令がかかった瞬間、軍鳩達が翼を広げてオリジンに突撃していく。
その援護として結都が桜霊符を散らし、オリジンを追い込む準備を整えた。
「そろそろ終わりにしましょう」
「嗚呼、嗚呼。どの口がそのようなことを言うのだ。わたしは、この世界でもっとも尊い存在だ。誰の指図も受けるものか!」
結都がそっと声をかけると、オウガ・オリジンは激しく反発する。かなり余裕がなくなってきているのだろう。
グィーと結都は更に攻撃の機を合わせるべく、高く高く飛翔した。
「さあ、君達の勇猛っぷりを見せつけておくれ!」
「この空の底に落としてみせます」
グィーの放つ軍鳩と、結都が紡いだ雷の魔法がオリジンをひといきに貫く。ぐ、とくぐもった声を零した少女は均衡を崩し、空に落下していった。
しかし、まだ体勢を揺らがせただけ。
「グィーさん、進みましょう」
「まだまだ終わりじゃないからね、全力で行こう!」
オリジンの後を共に追うことを決め、ふたりは魔法の箒達にそっと願う。
どうか最後まで、一緒に戦って欲しいと――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラビ・リンクス
聞き捨てならねェな
どの世界だろうと
世界で一番尊いのは。
ッンだよ早い物勝ちじゃん出遅れた
急げ急げと落ちかけながら1本の箒にしがみつく
名前、名前、名前ェ!?
だあァ暴れんな、エート、箒…魔女、恰好良い…
えーとえーとえーと
なっ…
ナユかなァ!?
…あとでなゆにゴメンしよ…
ナユ・カナァ箒様にご一緒頂いたら敵のもとへ
お前は俺のはじまりでもおわりでもナイ
俺の■■■じゃない
たった一人のための名前を騙る少女の影に
大鎌をふるって断罪を
トランプ兵を従えて
女王の■■として
この世界を壊されたら――帰れない
帰る場所になりつつある、その箒を
手放せない片手で握りしめながら
●ニセモノ■■■
――この世界で最も尊いのはわたし。
アリスめいた少女の姿をした者、オウガ・オリジンは確かにそう語っていた。
ラビはぴんと張り詰めた兎耳を僅かに後ろに下げ、とんとん、と何度か足元を踏み締める。降り立った箒の島から空を見上げ、ラビはオリジンを仰ぐ。
「聞き捨てならねェな」
その瞳には明らかな敵意と、不服そうな雰囲気が宿っていた。
ラビにとってあの少女はただの邪魔者に過ぎない存在だ。それに――。
(どの世界だろうと、世界で一番尊いのは)
其処まで思考が巡った瞬間、身体がぐらりと大きく揺れた。
考えは中断され、ラビは足元の箒達が離れ始めていることに気が付く。のんびりはしていられない。この箒が四方八方に散れば、ラビは果てしなく広がる空の中に真っ逆さまに落ちていってしまう。
ラビットホールも真っ青の、永遠の空の中にだ。
「ッンだよ早い物勝ちじゃん出遅れた」
急げ急げ、と箒の上を駆けたラビは少し落ちかけながらも、目に留まった一本の箒に手を伸ばして跳躍した。
「よッと!」
何とかしがみつけたが、箒はラビを振り落とそうとしてくる。
まさに魔法の空飛ぶ箒と呼ぶに相応しい見た目の箒は、まだオウガ・オリジンの支配下にあるらしい。
「名前、名前、名前ェ!? だあァ暴れんな、エート……」
しかし、咄嗟には名付けるための言葉が浮かばない。ラビは落とされぬようにしっかりと箒を抱き、思考をフル回転させていく。
箒、魔女、恰好良い。
「えーとえーとえーと、なっ……ナユかなァ!?」
思い浮かんだのは知り合いの名前。
あとで本人にゴメンなさいをしようと心に決め、ラビは箒に名を与えた。
「……『ナユ・カナァ』箒様!」
『!』
その瞬間、魔法の箒は落ちかけていたラビの身をすくいあげる。
うまく上に乗せて貰ったラビは、ご一緒頂けますか、と軽く冗談めかしながら語りかけた。するとナユ・カナァは頷くように体を沈め、ラビに同意の意思を示す。
おそらく名を与えたことで簡易契約が結ばれたのだろう。
「行こうぜ、敵のもとへ」
『――!』
ラビが呼び掛けると、ナユ・カナァは天高く飛び上がっていく。
疾く、風のように舞う魔法の箒はラビが敵視する存在に向かって一直線に飛んだ。
対するオウガ・オリジンは此方の存在を察する。
「箒どもよ、わたしに従え。やつらを全て蹴散らしてしまえ!」
その声と共にラビに有象無象の箒達が襲いかかってきた。ナユ・カナァはラビを守るために右へと大きく弧を描き、追ってくる箒を躱していく。
ラビは魔法の箒に信頼を抱き、自分は敵の首魁に集中することにした。
「お前は俺のはじまりでもおわりでもナイ」
――俺の■■■じゃない。
ラビの戦う理由はひとつ。誰にも解ってもらえずとも、唯一の存在のために。
たった一人のための名前を騙る少女の影に大鎌を振るい、断罪を与えるべくラビは箒と共に空を翔け抜けた。
トランプ兵を従えて、女王の■■として唯ひたすら。
この世界を壊されたら――帰れない。
だから、と。
帰る場所になりつつある、その箒を。手放せない片手で握りしめながら。
舞い上がった歪なトランプは敵の箒を切り裂き、オウガ・オリジンそのものをも貫かんとして空を素早く翔ける。
刹那、鋭利な一閃が少女の形をしたものを深く抉っていった。
そして、戦いは白兎によって終幕に導かれてゆく。
大成功
🔵🔵🔵
泉宮・瑠碧
…飛び交う箒達は
可愛く見えますが…
望んで、従っているのでしょうか…
影に隠れて居そうな一本の子…箒を手に
初めましてをしてから、乗せて欲しいお願いを
オリジンに逆らう事で、ごめんなさい
でも、箒の解放にもなれば…
お名前…星の尻尾、が良いです
ほうき星からお星様
あと、穂の部分も尻尾みたいで、可愛くて
箒を撫でて
…君が、折れたり、傷付いて欲しくは、ありませんので
君だけでも避けられる様に、お願いします
念の為、精霊に願い
周囲に風を巡らせておきましょう
私は静穏帰向で願い、祈ります
浄化を込めた氷の槍を作り
飛ぶ箒達を傷付けず、風で進路だけを変える様に
オリジンの飛行進路を風で定め、放つ氷槍と真っ向になる様に
…ごめんなさい
ルナ・ステラ
いつも使っている帚でなくても上手く乗れるでしょうか?
不安はありますけど...
世界のために力になれるなら!乗ってみせます!
沢山あると悩みますね...
【第六感】で選びましょうか。
(今、箒星のように光った箒が?)
お願いします。『コメット』さん!
—飛びやすいように、飛んでくれるんですね。
ありがとうございます!
敵対する帚は、『コメット』さんと力を合わせて避けたり魔法で倒したりしていきましょう。
タイミングを見計らってUCを発動し、オウガ・オリジンにも攻撃を試みます!
〈うまくいったら〉
協力してくれてありがとう!
(いつもの帚さん嫉妬してませんよね?あなたも大切だからね!また一緒に戦いましょうね♪)
●流星の箒と風時々たらい
転送された先はたくさんの箒が集まった浮遊島の上。
「いつも使っている箒でなくても上手く乗れるでしょうか?」
ルナはきょろきょろと辺りを見渡し、少しの不安を抱く。けれども今はこの世界を救うための戦いの最中。
懸念も不安も乗り越えて、勇気を持って挑むだけ。
同じくして、一緒の箒島に転送されてきた瑠碧も周囲の様子を窺っていた。
「……飛び交う箒達は可愛く見えますが……望んで、従っているのでしょうか……」
オウガ・オリジンの支配下にある魔法の箒。
それらは僅かな意思があるものや、意思が薄そうなものまで様々だ。
瑠碧は空を見上げ、アリスの姿をした少女が猟兵達と戦っている様を見遣る。ルナも倣って天を仰ぎ、決意を固めた。
「ですが、世界のために力になれるなら! 乗ってみせます!」
強く意気込んだルナはそっと踏み出す。足場はぐらぐらと揺れ、もう少しで箒達が散らばってしまいそうだ。
急がなきゃ、と思いつつもルナは迷ってしまう。
「たくさんあると悩みますね……」
ひとつずつ選んで吟味していては時間が足りない。それなら、と直感で選ぶことにしたルナはざっと周囲を眺める。
その瞬間、何かが箒の間できらりと光った。
(今、箒星のように光った箒が?)
そちらに駆け寄っていったルナは光の元に手を伸ばす。それは星のような雰囲気を持つ魔法の箒であり、ルナが乗るのにちょうど良さそうだ。
後は名前をつければよいのだと考え、ルナは箒を手に取った。
「お願いします。『コメット』さん!」
『!』
すると魔法の箒はルナに付き従うように寄り添ってくる。名前を気に入ってくれたのだと察し、ルナは明るい笑みを浮かべた。
(あっ、いつもの箒さんは嫉妬してませんよね? あなたも大切だからね! また一緒に戦いましょうね♪)
心の中で愛用の箒に呼び掛けたルナは、ぐっと魔法の箒の柄を握った。
同様に瑠碧も自分が乗るべき箒を探していく。
ふと目に留まったのは多く集まった魔法の箒の中で、影に隠れている一本の子。おいで、と優しく呼び掛けた瑠碧の声に反応した箒が影から出てきた。
「初めまして……」
乗せてくれますか、と問う瑠碧に対して魔法の箒はまだ何も反応を見せない。まるで何かを待っているようだ。
「オリジンに逆らうことになって、ごめんなさい。でも……」
名を付けることが箒の解放にもなれば、と考えた瑠碧はその子に相応しいものを考えていく。他の者を見ていると、箒は自分だけの名前を与えられることで明確な個と意思を宿せるようだ。無為にオリジンに従うよりはきっと、ずっと良い。
「お名前……『星の尻尾』、が良いです」
『!』
「気に入って、くれましたか……?」
その箒は穂の部分がまるで尻尾のようで可愛らしい。
ほうき星からお星様が生まれるようだと思ったから、その名前にしたのだが、どうやら魔法の箒は嬉しがっているらしい。
行きましょう、と瑠碧が告げると、星の尻尾はそっと背に寄り添った。
そのまま横乗りの形で腰掛けた瑠碧は空を仰ぐ。コメットに跨ったルナも瑠碧の横に並び、二人は一気に上空に昇った。
「飛びやすいように、飛んでくれるんですね。ありがとうございます!」
敵を見つけたなら後は一直線。
ルナがコメットに礼を告げる中、瑠碧は箒を撫でる。
「……君が、折れたり、傷付いて欲しくは、ありません。君だけでも避けられる様に、お願いします」
そう告げた瑠碧は精霊に願い、周囲に風を巡らせていった。
近付く気配と風に気付いたオウガ・オリジンは忌々しげに腕を振るい、周囲に飛んでいた魔法の箒達に命じる。
「箒どもよ、あいつらを蹴散らして落とせ!」
「コメットさん!」
はっとしたルナは箒を呼び、迫ってくる敵の箒を避けていく。回避は箒がやってくれるので、ルナはティンクルスターダストショットで敵を撃ち抜いていった。
星屑が空に散る中、瑠碧も星の尻尾と共に敵の突進を躱す。
そして、瑠碧は両手を重ねて祈る。
――帰ろう、還ろう……どうか、在るべき場所へ。
生を守り、悲しき過去の残滓を帰すという願いを精霊達に呼び掛け、瑠碧は祈り続けていく。其処から浄化を込めた氷の槍を作りあげた彼女は、飛ぶ箒達を傷付けないように細心の注意を払っていった。
風で進路だけを変えるように動き、狙いはオウガ・オリジンのみへ。
「いきます! 協力して一気にやりましょう!」
「……はい」
ルナから響いた声に合わせ、瑠碧はオリジンの飛行進路を風で定める。相手は猟兵達の攻撃を受け続けたことで相当に弱っているようだ。
瑠碧は放つ氷槍と真っ向になるよう風を調整し、オリジンへと一気に力を解き放つ。
「……ごめんなさい」
「お星さんたち、わたしに力を!」
瑠碧が謝罪の言葉を紡いだ次の瞬間、ルナが放ったシューティングスターの魔力が周囲に飛び交った。流星がオウガ・オリジンを貫いていく中、其処に魔法失敗の証のたらいが現れ、すこーんと敵に命中した。
「おのれ、おのれ……わたしを虚仮にして……!!」
オウガ・オリジンは怒り狂い、ルナ達に憎しみを宿した視線を向ける。
その顔は黒く塗り潰されていて表情は窺い知れないが、確かな眼差しを感じた。瑠碧とルナは強く身構え、オリジンの怒りに気圧されないよう心を強く持つ。
もうすぐ戦いが終わる。
そんな予感を覚えながら、少女達は斃すべき存在を見つめた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アニー・ピュニシオン
箒に乗って空を自由気ままに飛ぶ夢が叶ったわ!
ついでに私達、アリスにとって憎い仇の
お高くとまったあんちくしょーを殴り飛ばしてやるわ!
私の箒は、箒の尾から音符を出してる貴方に決めた!
名前は「タクトー」箒だけど私の指揮棒をよろしく
いざ、箒にまたがって短い空の旅へ
操縦の方はタクトーに一任するわよ
でも、危ない時は勘でカバーしつつ
オリジンさんに近づいていくとするわね。
沢山の箒や敵を切り抜けて、
オリジンさんと軽くお話出来るぐらいに近づいたら、
最高の見せ場はここだわ!
タクトーを両手できゅっと握りしめ「First Push」
二人をパワーアップして一気に加速し、
すれ違いざまにタクトーで全てを込めてぶん殴るわねっ!
●翔ける五線譜と魔法の音符
「――タクトー!」
激しい風が吹き抜ける空の最中、アニーの呼び声が響き渡った。
真っ青な空が何処までも続く世界でいま、少女は夢のひとつを叶えている。それは箒に乗って空を自由気ままに飛ぶという憧れの夢。
箒の尾から音符を出して翔ける魔法の箒。その箒はアニーにぴったりの相棒で、この世界に降り立ったときにひと目で気に入った子だった。
タクトーは最初こそ何も反応を見せない意思のない箒だった。しかし、アニーが考えた名前を受け入れた瞬間、個を得た唯一の存在となって少女に寄り添った。
アニーは転送された箒島が崩れる前にタクトーに乗った。
そして、現在。
アニーはタクトーに跨って大空の中を翔けている。
短い空の旅ではあるが、少女の心は躍っていた。此処が戦場でなければ、とても美しくて壮大な青の世界だ。
本当に夢のような場所であり、おまけに飛べば飛ぶほどに箒が描く音符が空に散って浮かんでいくのだから素敵だった。
形は箒だけれど、この子は私の指揮棒。
飛ぶ度に棚引く白い軌跡は五線譜代わりで、弾ける音符はメロディ。
そのように感じながら、よろしくね、と柄を撫でればタクトーは嬉しがっているような反応を見せた。アニーも楽しげに微笑み、箒の柄を握る。
アニーが振り仰いだ先には、オウガ・オリジンの姿があった。箒を乗り捨てて自らの力で飛び回るオリジンは、既にかなり疲弊している。
おそらく数多の猟兵の攻撃を受け続け、余裕がなくなってきているのだろう。
「次から次へと忌々しいにも程がある。箒どもよ、わたしに従え!」
オリジンはアニー達に向け、名もなき箒達を嗾けてきた。しかしアニーは慌てず、タクトーに身を任せていく。
迫りくる箒に対して低く飛んだ魔法の箒は、敵の突進を躱す。
そのままお願い、と伝えたアニーはオウガ・オリジンを瞳に映した。
「あなたは私達、アリスにとって憎い仇! お高くとまったあんちくしょーよ!」
「あんちくしょ……?」
「そうよ! おもいっきり殴り飛ばしてやるわ!」
オリジンが僅かに困惑する様子には構わず、アニーは思いを宣言する。
なおも意思のない箒は迫ってくるが、タクトーが高く跳躍するかのように一気に天に昇ったことで切り抜けられた。
アニーに傷をつけないよう、決して追いつかせない気概でいるのだろう。
相棒箒に頼もしさを感じたアニーは機を見計らう。オリジンとて簡単にやられる気はないらしく、アニーや猟兵から距離を取ろうと動き回っていた。
きっと簡単には追いつけない。
けれど、と決意を抱いたアニーは更にタイミングをはかっていく。
その一瞬後。
「最高の見せ場はここだわ! タクトー、いくわよっ!」
少女は己の中に眠る力をひといきに解放した。
それは味方全体の身体能力を大幅に強化するユーベルコードだ。アニー自身は約一分後に昏睡してしまう力だが、それで構わない。
何故なら――。
「私達はここで、絶対に勝つから!」
タクトーを両手できゅっと握りしめたアニーは、誓いを言の葉に変えた。
自分達を、そして周囲の猟兵を全力でパワーアップさせたアニーは一気に加速していった。目指すのは敵の懐。はっとした振り向いたオウガ・オリジンが慄く中、アニーは全力で突撃してゆく。
そうして、両者がすれ違った刹那。
「これで決めるわ! 悪いオウガなんて、空の底に落ちなさいっ!」
タクトーに全てを込めたアニーは身を翻し、舞い飛ぶ音符とくるりと回った勢いに乗せてオウガ・オリジンをぶん殴った。
「何、だと……!?」
アリスの姿をした者の身体が大きく揺らいだ。
自らコントロールが出来なくなったらしいオウガ・オリジンは空に落ちていく。
そして――。
●決着
「おのれ、おのれ……猟兵どもめ!」
オウガ・オリジンはただ堕ちる。果てのない空へ、底のない奈落へ。
その後を魔法の箒に乗った猟兵達が追い、落ちゆく敵に各々の一閃を叩き込んでいく。
魔法弾が弾け、刃が閃き、風が疾走った。
「どうしてだ、この世界でもっとも尊いこのわたしが、なぜ……!!」
自身が敗北したということを認められず、オウガ・オリジンは嘆く。しかし猟兵達は容赦などしない。
自らが名を付けた意思ある箒と共に、持てる限りの力を放ち続け――。
「嗚呼、あ、あ……」
やがて、青空の最中でオウガ・オリジンは霧散した。
邪悪な気配が消え、空の世界に満ちていた不穏な空気も同時に消え去る。こうして空の激闘は終わりを迎え、はじまりのオウガの魂のひとつが打ち砕かれた。
されど、戦いはまだ続く。
この世界が崩壊するのが早いのか、完全勝利を手に入れる方が先か。
訪れる未来のかたちはまだ、誰も知らない。
大成功
🔵🔵🔵