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巡り合う運命と日常

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み #彩煌島

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●彩り
 コンキスタドールの支配から解放されたとある島。
 彩煌島と名のつくその島は、そう呼ばれる所以となる物が存在していた。
 それは、浅瀬に広がる珊瑚礁。その全てが硝子細工のように透き通った色とりどりで、明け方になるとキラキラと煌めくのだ。
 しかし、普段からそれが拝めるわけではない。断崖絶壁に囲まれた島の、ごく一部の浜辺からだけ、見ることが出来る光景なのだ。
 そういえば、そうだったな。光る水面を眺めながら、島民達は改めて、僅かな浜辺に訪れることが出来るようになった現実を――支配から解き放たれた現実を理解する。
 あぁ、そういえば。以前はこの時期に、硝子市をしていたではないか。
 海に広がる珊瑚。その欠片が流れ着いた浜辺のシーグラス。好きなだけ拾い集めて、お気に入りの瓶に入れて一年の息災を願う、ささやかな催しごと。
 解放された今、それをやらない理由はない。
 さぁ、忙しくなるぞと若い硝子職人が袖を捲る。
 そうして、硝子市の準備が賑やかに進められていくのであった。

●煌き
 硝子市なる催しがあるのだと。グリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)は楽しげに語る。
 それはグリードオーシャンのとある島での催し。硝子で出来た珊瑚礁が広がる海を有するその島は、かつては硝子細工が盛んだったのだ。
 かつて、というのは、コンキスタドールによる支配が敷かれる以前の話。
 腕のいい職人や伝統行事を取り仕切る年寄り達の多くが支配下に殺されてしまったために、少しばかり廃れてしまったのだ。
「けれど、今はそのかつてを取り戻そうとしている最中だ。彼らにとっての日常の集大成である硝子市を、やらない理由はないんだよ」
 おそらくはアックス&ウィザーズから落ちたと思われるその島は、荒野を切り取ったかのように断崖絶壁が居並び、日差しを遮る木々も少ない。
 そのため、島のごく一部である浜辺から連なる道に、水を張った硝子の屋根や色とりどりの硝子のパラソルを配置して、涼しげできらきらとした空間を作り出し、そこに市場を開いている。
 硝子市で主に並べられるのは、大きさも形も様々な瓶達だ。
 これは浅瀬に広がる珊瑚礁や、浜辺に眠るシーグラスを拾い集めたものを入れるための器。
 海や浜辺で出会った運命を、日常に閉じ込めて。一年の息災を願うお守りとして飾るのだと言う。
「瓶というけれど本当にいろんなものがあってね。中には金魚鉢のようなものや、風鈴のように吊り下げて飾れるものもあるみたいだよ」
 自らの手で拾い上げた運命を閉じ込めるにふさわしい日常が、そこにはあるはずだ。
 語り、よければそんな催しを訪ねてみないかと促した。
 硝子の珊瑚は通常のそれとは違った魔法的な存在で、多少拝借してもまたすぐに伸びてくる。
 島で扱う硝子細工の多くを、珊瑚を原材料として使っているくらいであるから、珊瑚礁がなくなる心配はない。
 海へもぐって直接珊瑚を採取するのもよし、浜辺で欠片を捜し歩くもよし。
 運命の品に合う日常を探してもいいし、逆にお気に入りの日常に詰め込む運命を探したっていい。
「楽しんでおいで。そうすることで、彼らの日常は取り戻されるだろうから」
 人助けも兼ねてるわけだが、気軽に行っておいで。そう言って、夏の日差しが眩しい島への道を開くのであった。


里音
 ※このシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
 【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

●シナリオについて
 荒野によく似た殺風景な島で、キラキラな硝子市を楽しもうというシナリオです。
 主に出来ることは海・浜辺で硝子の欠片を拾い、市場で硝子瓶を買って詰めること。
 海や浜辺で欠片を拾う場面、硝子瓶を選ぶ場面、拾う描写を省いて、水槽屋根や硝子傘の下で完成品を眺める場面など、硝子市にまつわる形であればシチュエーションはご随意に。
 どのシーンでも切り取りますが、一場面に絞ることをお勧めします。
 わいわいもしっとりもどちらでも問題ありませんが、公序良俗に反する内容は採用を見送らせて頂くこととなります。

●硝子の色々について
 硝子珊瑚、シーグラス、硝子瓶。どれもこれもが色も形も様々です。
 また、硝子市での瓶の定義は『物を詰めれる空洞があり、蓋があること』なので、瓶らしい形状をしていないものもあります。
 お好きな色形をご指定頂ければそのように。指定がなければ里音の方で良さそうな感じのチョイスをします。
 硝子の欠片を詰めることを想定しているためほとんど無色透明ですが、色付き瓶のご指定でも大丈夫です。

●その他
 エンティがその辺でふらふらとしております。
 お声掛けがありましたら、ふらっとお邪魔することも可能です。

 プレイングは【8/17(月)の8:31~】の受付と致します。締切は別途MSページなどでお知らせします。
 のんびり執筆の予定なので、再送等が生じる可能性も視野に入れて頂けますと幸いです。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルーシー・ブルーベル
【月光】

キラキラが眠る浜辺は宝探しみたいで楽しかった
だいじょうぶよ、ゆぇパパもケガはない?
ねえ見て!こんなに拾ったの
ポケットが重いわ

いれものを選ぶのね
ルーシーはこれに。浮き球、というの?
うすい緑色の、歪だけれどどこか温かくて丸いビン
その中にガラスを入れましょう
白も、緑も、赤も、水色も、色とりどり

その上にそうっと、
大きて丸くてやわらかな黄色と、小さな青のシーグラスを置くの
真っ白な紐で網かけをして、これで完成

パパのもステキね!
この黄色はパパににてるわ。うふふ
まあ。ルーシーに?いいの?うれしい。
あのね、これはルーシーが作ったの。受け取ってくださる?
パパに、ぜひ

この気持ちもビンに詰められたら良いのにな


朧・ユェー
【月光】

浜辺でキラキラと輝く硝子のカケラを集めた

足や手に怪我は無いかい?
カケラで君が傷ついてないか心配になりつつ
僕は大丈夫だよ、ありがとうねぇ

さて、どの瓶に詰めようかな?
ルーシーちゃんはどれにするかい?

一つ、砂時計の様な形の瓶を選び
色とりどりの綺麗のカケラを詰め込んで
そっと月の様な形の黄色のカケラや華の様な形の青いカケラも混ぜて
リボンで可愛く飾る

そっとルーシーちゃんへと渡す
君への贈り物

おや?僕に?
ルーシーちゃんと僕みたいでとても素敵だね、大切にするよ




 陽射しが照るほどに、きらきら、浜辺が煌いて見える。
 海から流れた贈り物。色も形も様々な欠片を沢山拾い集め、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はすっかり重たくなったポケットを嬉しそうに撫でる。
「足や手に怪我は無いかい?」
「だいじょうぶよ、ゆぇパパもケガはない?」
 流れ着いているものは全て硝子と聞く。角が取れて丸くなったものが殆どだったが、浜辺に伸ばした手や駆けた足に傷などついてはいまいかと朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が心配そうに声をかけたが、返されるのは満面の笑み。
 案じる声を添えられれば、自然と頬が緩み、綻んだ。
 ありがとうねぇ、と微笑むユェーの顔に、ルーシーも安堵のにじんだはにかみをこぼして。
 後に残るのは、きらきらが眠る浜辺で楽しんだ、宝探しのような心地ばかり。
「ねえ見て! こんなに拾ったの。ポケットが重いわ」
「本当だ。沢山拾ったねぇ」
 それでは、このきらきら達を詰める『日常』を探しに行こうかと。二人で連れ立った硝子市。
 屋台の屋根から台まで殆どが硝子で出来たその市は、荒野のような島の中、別世界のように煌いていた。
 その一つ一つに並べられた幾つもの『瓶』を眺めるルーシーの瞳は、はしゃぐように輝きながらも真剣で。歩調を合わせて共に眺めていたユェーもまた、ゆっくりと吟味して歩く。
「ルーシーちゃんはどれにするのかい?」
 少女の真剣な眼差しを追いかけてみたり、隣の台へ目を移したり。ゆるりと視線を巡らせたいたユェーの足元で、ルーシーがひょいと一つの瓶を手に取った。
 それは、薄い緑色をしたまぁるい硝子の球。
「浮き球、というの?」
 中が空洞になったそ硝子玉の形は浮き球というものらしい。くるくると眺めてみると、蓋のある位置が少しばかり歪な形にも見えるが、どこか温かさを感じるような気がして。
 これにする、と両手で抱えた。
 ルーシーが容れ物を無事に決めたのを見届けて、ユェーは自らも硝子の瓶を手に取る。
 それは砂時計のような形で、木枠の両端から中身を詰められる瓶。
 二人それぞれで選んだ瓶に、たくさん集めた硝子の欠片を詰めていく。
 白も、緑も、赤も、水色も、色とりどり。
 ルーシーがポケットの中身を浮き球一杯に詰め込めば、薄緑の容れ物は日の光を通して、硝子の欠片をきらきらと煌かせる。
 隣を見れば、ユェーの瓶も同じように、きらきらしていて。
 おそろい。ふんわりと微笑んでから、ルーシーは最後に、大きくて丸くてやわらかな色をした黄色と、小さな青のシーグラスをそっと置いた。
 きゅ、と蓋をしてしまえば、詰め込んだ硝子たちは浮き球の中でお行儀よく収まってくれる。
 真っ白な紐を、網目模様に。中身がよく見えるように荒い目で、けれどゆらゆら吊り下げられるようにしっかりと巻き付ければ、完成だ。
 ルーシーが一生懸命紐を掛けている傍らで、一足先に完成させていたユェーは砂時計を日の光に透かして見る。
 少女とそろいの色とりどりの中には、月のような形の黄色の欠片や、華のような形の青い欠片も混ざっていて。
 軽く揺すれば、月が輝き、華が咲いて。色とりどりの中でも美しく煌いた。
 最後に結わえたリボンの先端を、指先で揺すっていると、パパ、と声が掛けられる。
 ポケットの中身を見せた時のように、ねえ見て! と掛けられる無垢な声に視線を下ろし、合わせれば、仕上がった浮き球を掲げた満面の笑み。
「綺麗にできたねぇ」
「パパのもステキね!」
 よく見せてと市場の陳列から逸れ、硝子屋根の下で一息つけば、ルーシーはユェーの砂時計をじっと覗き込んで、見つけた月の欠片に、ぱっと瞳を輝かせる。
「この黄色はパパににてるわ。うふふ」
 きらきらした、ユェーの金色の瞳。その傍らに見つけた青い花は、もしかして自分だろうか。寄り添っているような様子が、とても嬉しい。
 にこにこと眺めているルーシーにふと笑みこぼして、ユェーは手にしていた砂時計を、そっと差し出し、その小さな手に握らせた。
「君への贈り物」
 受け取ってもらえるかな、と小首を傾げたユェーに、ルーシーは数度ぱちくりと瞳を瞬かせてから、破顔する。
「まあ。ルーシーに? いいの? うれしい」
 手の中に納められた砂時計を、大切そうに指先で撫でて。そっと、落とさぬように傍らに置いてから、代わりに自身が手掛けた浮き球瓶を、差し出した。
「あのね、これはルーシーが作ったの。受け取ってくださる? パパに、ぜひ」
 きれいにできたと思うの。とは、少し気恥ずかし気に。でも、得意げに。
 今度はユェーが瞳を瞬かせる番。
「おや? 僕に?」
 受け取ったそれには、とても目に付く黄色と青。
 あぁ、考えることは同じなのだなと優しい気持ちになりながら、ユェーは浮き球を見つめる。
「ルーシーちゃんと僕みたいでとても素敵だね、大切にするよ」
 微笑むユェーを見上げれば、心がぽかぽかと温かくなる。夏の陽射しとは違う、優しい暖かさ。
(この気持ちもビンに詰められたら良いのにな)
 そうすれば、きっと。暗がりでだってきらきら煌いて、見つめるだけで幸せな心地になれるのに。
 残念だけれど、見える形では詰められないから。ルーシーは砂時計を大切そうに抱えながら、その温かさをしっかりと感じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

泡沫・うらら
珊瑚を眺めるなんて
海へと潜れば時間を忘れてでも行える事やけども
折角やもの
陸でしか拾えない海から贈り物を、探しましょうか

ひとつ、ひとつ
海の欠片を拾い上げ
想うひとかけらを、探しましょう

裡に浮かべるは、陸で出逢った彼らの事
瞼の裏に焼き付く彼女らの表情を浮かべ

から、からり
海へも共に征ける瓶の中に想い出を詰め込んで
相応しいひとつを、拾っていきましょう

思って居たよりも嵩を増した瓶の中
からころ互いがぶつかり合い奏でる音を血赤の耳で拾って
なないろに輝くその眩しさに、目を焼かれてしまいそう

暗い昏い海の底
ひかりの届かない世界でもこれらは
――あなたたちは、輝いてくれるかしら




 ゆらりと尾鰭を揺蕩わせ、海へと潜るは簡単なこと。
 日の光に煌く珊瑚の海を泳ぐなら、その気にならずとも、時間を忘れて眺めていられるだろう。
 けれど今日は、折角だから。
「陸でしか拾えない海から贈り物を、探しましょうか」
 歌うように紡いで、泡沫・うらら(夢幻トロイカ・f11361)はきらりきらりと硝子の欠片が煌く波打ち際を歩いた。
 いくらか歩いては、屈みこんで拾い上げて。ひとつひとつ、ゆっくりと眺めては、そっと元の場所へと返して。
 そうやって、今の自分の気持ちにぴたりと寄り添ってくれるかけらを探した。
 日を浴びた砂は波をかぶっても幾らか熱くて、探る指先にも熱が移るけれど、海の中へ逃げ出したいとは思わない。
 陸で出会った幾つもの顔を裡に浮かべれば、彼らの生きる世界の熱は、どこか心地よくて。
 ふ、と伏せた瞼の裏に焼き付く彼女らの表情を浮かべれば、心は勝手に相応しい欠片を拾い集めていく。
 からり。硝子ばかりの市場で見つけた瓶に、かけらをひとつ。
 掌に収まるサイズの瓶に、硝子同士がぶつかる涼やかな音が響く。
 からり。ひとつ、ひとつと入れていく度に、瓶の中でいろんな音が反響する。
 綻ぶ笑顔は花の咲くようで、ああ、綺麗な黄色がよく似合う。
 涼やかに紡がれる声はころころと心地よくて、こんな風に透き通った青が思い描ける。
 優しく揺れる、君の髪色は。
 私を映す、君の瞳は。
 あぁ、あぁ、こんな色だった――。
 から、からり。
「……思ってたより、嵩が増してしもたかも」
 掌に収まる程度の瓶は、目立った装飾もなくシンプルで、その分詰めた色がよく見える。
 そんな瓶の中は、気が付けばたくさんのかけらに満たされていた。
 互いにぶつかり合う欠片同士が奏でる音を、血赤の耳が拾う。
 囁き合うような、笑い合うような。静かでもなく喧しくもない、心地の良い賑やかさ。
 幾つもの色が魅せるなないろは、とても眩しくて。目を、焼かれてしまいそう。
 瞳を細めて、見つめるほどに。うららの唇が、夢を紡ぐように優しい弧を描く。
 きゅ、と握って、胸元へ。瞳を伏せれば焼けるような輝きは瞼の裏に煌いて、からりと奏でられる音は、変わらず耳をくすぐって。
 指先の熱を優しく紛らせてくれる瓶の感触を確かめながら、うららは一歩、海へと歩を進める。
 海の底へも共に征ける瓶の中は、想い出に満たされていた。
 もう少し大きい方が良かったかな。それとも、これくらいが丁度良いかな。大切そうに眺めながら珊瑚礁が広がる海へと進んだうららの足は、ゆらり、尾鰭が揺れていて。
 ちゃぷん、と跳ねる波を感じながら、うららは一度だけ、日の光に瓶を翳した。
 陽射しを受けて、きらきら光るかけらたち。
 きれいなきれいな、想い出たち。
 暗い昏い海の底、ひかりの届かない世界でも、これらは。
「――あなたたちは」
 きらきら、輝いてくれるかしら。
 問いかけるように微笑んだうららの瞳に、きらきら、なないろが応えるように煌めいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
ふふ、素敵なきらきらがいっぱいね!

色とりどりの煌めきに光景に瞳を輝かせながら
市場で見つけた、両手で抱えるくらいの大きさの瓶と一緒に浜辺へ

一面の砂の世界からあたしが探すのは
ひとの爪くらいの大きさのシーグラスの欠片
青にピンクに黄緑に…空色もきれいね
色とりどりの硝子で瓶を満たして
一緒に砂を詰め込んでも素敵かしら?

エンティを見かけたら名前を呼んで
折角だから、あなたにもひとつ
この瓶に入れる硝子を選んでほしいの!
だいぶ小さいから、探すのは難しいかしら?
それなら大きくてもいいのよ
瓶に入れられなくても、今日の思い出になるもの!
お礼代わりに少し大きめの青緑色の欠片をあなたに
お互いに、素敵な一年になると良いわね!




 ふわりひらりと砂浜の上を飛べば、きらきら、ちかちか、陽光を反射する光と目が合う。
「ふふ、素敵なきらきらがいっぱいね!」
 キトリ・フローエ(星導・f02354)は色とりどりの煌めきに、その光景に瞳を輝かせながら、浜辺を飛んだ。
 両手で抱えるくらいの瓶は、人間からすれば香水瓶くらいだろう。それでもキトリにとっては一抱えあるその瓶を、職人は大切そうに手渡してくれた。
 何色を詰めようか。わくわくしながら砂浜を眺めて、キトリは一つ目、と桜色の硝子を拾い上げる。
 ひとの爪くらいの、小さくて少し平べったい、それでも変わらずきらきらした硝子の欠片。
 からん、と大事に瓶へ収めて、さぁ、次の色。
 青にピンクに黄緑に……空色もとても綺麗だ。
「一緒に砂を詰め込んでも素敵かしら?」
 さらり、硝子の隙間に砂を注いでやれば、きらきらな浜辺をそのまま掬い上げたようにも見えて。
 うん、と満足気に、キトリは瓶を陽射しに透かした。
 夏の太陽は眩しいけれど、色とりどりを通して見る光は、幾らでも眺めてしまえるほどに煌めいている。
 顔をほころばせ、もう少し入るかな、と瓶を抱えてまた飛び出した所で、ふと見つけた人影。
「エンティ」
 島への案内をしたエンティ・シェア(欠片・f00526)に声をかければ、彼は「おや」と振り返る。
「硝子市、楽しんでいるようで何よりだよ、キトリ嬢」
「ええ、とても! それで、あなたにお願いがあるの」
 ずいと差し出したのは色とりどりを詰め込んだ硝子瓶。綺麗だね、と覗き込む視線を見上げて、キトリは続けた。
「折角だから、あなたにもひとつ、この瓶に入れる硝子を選んでほしいの!」
「私に?」
 きょとん、とした顔をしてから、改めて瓶を覗くエンティは、小さな瓶にぴったりサイズの小さな欠片が幾つも集められているのを確かめる。
 それは、フェアリーであるキトリの目線でこそ見つけられるような欠片たち。
 勿論キトリ自身もひとと己とのサイズ差を自覚しているから、そろりと窺うように首を傾げる。
「だいぶ小さいから、探すのは難しいかしら? それなら大きくてもいいのよ」
 瓶には入れられなくても、今日の思い出になるには十分、と微笑むキトリに、エンティもまた微笑んで。
 少し待っていておくれ、と踵を返した。
 見送って、キトリはまた砂浜を飛び回る。
 探すのは、瓶に詰めるひとかけらではなくて。それより少しばかり大きい欠片。
 砂の上を飛び回って見つけたのは、綺麗な青緑色の欠片だ。
 綺麗な色を眺めていると、不意に、日差しを遮る影。振り仰げば、先程見送った彼の笑顔。
「ん」
 差し出した手が何かを持っているのを見止め、手を差し出せば、ころりと落とされる藍色の硝子。
 それは瓶の口をするりと通り、からん、砂に隠れた硝子達の仲間入りを果たす。
「まあ、見つけられたのね!」
「こう見えて探しものは得意でして」
 くすりと笑った彼の手に、キトリは先程拾った青緑色の欠片をそっと乗せる。
 お礼代わりに。微笑んだキトリは、硝子瓶を抱えてひらりと飛び上がる。
「お互いに、素敵な一年になると良いわね!」
 視線が合って、影から抜け出たキトリは、抱えた硝子瓶の色とりどりに照らされて――それ以上に、爛漫と咲かせた笑顔が映えて。きらきらと、煌めいて見えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御子神・緋梨
硝子市という催しが開かれるっていう話を聞いて、見に来てみたけれど。
硝子細工か…作る物は違うけど、モノ作りを生業とする人達がいて。作られたモノで人々が賑わって。…うん。こういう場所ってやっぱり素敵だな。
この催しを、もっと見て回りたい。

硝子瓶の中にシーグラスを入れて…願いを込めて、息災のお守りに…か。
誰かの為を想って、あるいは自分の願いを込めて。1つ1つ拾い集めたシーグラスを詰めていく。まるで、宝箱みたい。

…宝箱、か。私も欲しくなっちゃったな。
これだけ沢山の瓶達があるんだから、宝箱みたいな硝子瓶も探せば見つかるかな?
市場で探してみよう、私だけの願いを込める宝箱。




 かつてコンキスタドールの支配を受けていた島にて、硝子市という催しが開かれるという話を聞いた。
 その話は、御子神・緋梨(ヤドリガミの人形遣い・f28880)の興味をくすぐり、足を運ばせるに至って。
 並ぶ細工達の透き通った華やかさに、緋梨は感嘆の息を漏らすのだった。
 懐中時計のヤドリガミであり、自身も彫金の技術を身に着けた緋梨にとって、細工物は馴染み深く感じられる品。
 自分と作るものは違うけれど、モノ作りを生業とする人達が居て、作られたモノで人々が賑わって。
「……うん。こういう場所ってやっぱり素敵だな」
 見ているだけでわくわくと心が踊るような感覚に、緋梨はもっとこの催しを見て回りたいと、自然、ゆるりとした足取りで進み始める。
 居並ぶ屋台も硝子製。色付き硝子の屋根にたっぷりと蓄えられた水がゆらゆらと地面に色を付けている。
 その色に紛れぬようにと並べられた無色透明の煌めき達は、様々な形で、色々な大きさ。
 硝子細工の作業工程には明るくないが、自身が技術を有する彫金と同じで、繊細な作業なのだろう。
(蓋の部分に花の柄……これは融けた硝子を足して……? こっちは逆に窪んで……柔らかい間に、加工を……?)
 どのような技法で、とか、どのようなモチーフを、とか。ついつ作り手の視点になりながら、緋梨は様々な細工を手に取り、眺めては丁寧に戻し、次へと視線を移していく。
 一つ一つを真剣に見つめる緋梨に、店番は声をかけることはしない。
 誰かに勧められるのではなく、自らが選ぶことに意義があるのだというように。
 そうやって有意義に硝子市を楽しんでいた緋梨はふと、休憩スペースとして設けられた場所に、親子のような二人組みが並んで腰を掛けているのを見つける。
 彼らはそれぞれにジャム瓶くらいの大きさの硝子瓶を手にし、色とりどりに詰め込まれたシーグラスを見せあっていた。
 そう、この催しは硝子細工を取り扱う市であると同時に、海からの贈りものである硝子珊瑚やシーグラスを瓶に詰める行事でもあるのだ。
 海辺で見つけた運命の一品を、この島の日常である硝子細工の瓶に詰め込み、一年の息災を願う。
 誰かの為を想って、あるいは自分の願いを込めて。1つ1つ拾い集めたシーグラスを詰めていくのだ。
 それは、まるで――。
「まるで、宝箱みたい」
 透明な『箱』の中身はいつだって見ることが出来る。だからこそ、そこに沢山の思いを詰めて飾ることで、誰かや自分に込めた願いを感じることが出来る。
 ありがとうも、ごめんなさいも。さようならもまた会いましょうも。大好きも愛してるも、何だって。
「……宝箱、か。私も欲しくなっちゃったな」
 緋梨が見つけたあの親子は、揃いのジャム瓶の中にどんな思いを詰めたのだろう。
 見せ合う二人が笑顔なのだから、きっと素敵な思いなのだろうとは、察しが付くけれど。
 微笑まし気に見つめて、緋梨はその前をのんびりと通り過ぎる。
 硝子市の屋台はまだまだたくさん並んでいるのだから、きっと、緋梨が思い描くような宝箱のような硝子瓶だって見つかる気がする。
 どれくらいの大きさだろう。蓋にはどんな意匠が施されているのだろう。
 気に入りの宝箱を見つけたならば、それに詰めるシーグラスも探しに行かねば。
 何色を詰めよう。幾つ詰めよう。きっとどの色も綺麗で、幾つも詰め込んだならとびきりの煌めきになるだろう。
 考えるだけで、わくわくしてきた。
 ――そうは言いつつも、ついつい、他の硝子瓶にも心惹かれて足を止める緋梨。
 あれも良い、これも素敵だと目移りしていると、どこか嬉しそうな店番の笑い声が聞こえた。
「ごゆっくりどうぞ。時間は、まだまだたくさんありますから」
 微笑んだ店番が言う通り、時間は沢山ある。
 こうなってはもう、心ゆくまでこの催しを楽しみ尽くすしか無いだろうと納得して。緋梨もまた、笑みを返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
【荒屋】
飴玉詰めるそれのよな
丸い瓶を手に波打ち際へ

水に慣れぬ二人へ声を
このあたりなら危なくはないぞ

濡れて色違いの砂地に光る硝子探し
つい惹かれるは青の彩含んだ色
うむ、馴染み深い色なものでな

引いてゆく波の下には
ふと見えた、淡く、やわい萌黄色の欠片
…冴島とフェレスにそっくりだな
良く似たふたりの眸のいろに翳して
む、俺もいるのか
曇天色の硝子すらも陽の下に煌めいて

絵を見せてくれるのか、と問うた背に
悪戯に襲ってきた大きめの波飛沫は
しかと壁となり遮って
うむ、この通り大丈夫だ
少々塩辛いが

連れ立って歩く浜
胸の底の擽ったさは
波に攫われる砂の所為にして
終わらぬ夏をまた一片

潮騒と、かたちのない思い出までも
瓶が満ちるまで


冴島・類
【荒屋】
瓶にも色々ありましたね
吊るしたら綺麗と底が丸い雫型のを手に

ありがとうございます
落ちなければ平気です
心地いい波音に自然目を細め

ジャハルさんを追って探して
つい、手にする色を覗いて
青が好きなんですか?

引く波を見ていたら
あ、藍や柔らかい薄黄色を見つけ
フェレスちゃんご覧
詰めたら夜空みたいになるかな
桜色もある…

え?
顔を上げて顔を見合わせ
ああ、確かに似てるかな
それならこっちに…
黒と白の混ざった角の取れた硝子片を手に
ジャハルさんみたい

それは楽しみだ
宝物の景色を教えてくれようとするのに
耳を傾けていたら
突然の波に引っ張る間も無く
だ、大丈夫ですか!?
律儀な感想が面白くて

夏と一緒に
共に笑った思い出も詰め込んで


フェレス・エルラーブンダ
【荒屋】
ぎにうびん
……牛乳瓶!
おいしいのものがはいっていた瓶

みどり、すき
よつばのいろ
くろと、しろ、あおもすきだ
これはジャハル、これはるい
こっちは瓜江で、それから、それから

みずはすこしにがて
でも、ことしはみなそこのひまわりをみた
ジャハルとるいにもみせたくて
えをかいたから
かえったら、ふたりにみせ……わぶ!

すこしの飛沫に目を瞑る
守られたのだと知れば慌てたけれど
覗くくろい瞳が常よりやわらかだったから
るいと顔を見合わせて
『うれしい』になって、喉を鳴らした

なつはあついだけできらいだった
でも、みんながたのしいをおしえてくれたから
いまはすきだ

ぎゅうぎゅうに詰まったたからもの
どこにかくそう
これはないしょのこと!




 揃いで向かった硝子の市場。形も大きさも様々な硝子瓶を一通り眺めて、皆で、気に入りの一つを手に入れた。
「瓶にも色々ありましたね」
「わたしのはぎにうびん……牛乳瓶!」
 静かな声に明るい声。冴島・類(公孫樹・f13398)とフェレス・エルラーブンダ(夜目・f00338)が微笑ましい会話をしているのをちらりとだけ振り返り。
 飴玉を詰めてあったかのような丸い瓶を手に、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は一足先に波打ち際に訪れる。
 共に訪れたは二人水にはあまり慣れていない。広い海からたっぷりの水が押し寄せてくる波打ち際が恐ろしくないようにと、水に攫われない位置に少しばかりの足跡をつけてから、声をかける。
「このあたりなら危なくはないぞ」
 そんなジャハルの心遣いに、類は少しばかりの安堵とそれ以上の嬉しさを湛えた笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。落ちなければ平気です」
「そうか、並に急に足を取られることもあるから気をつけるといい」
 はい、ともう一度頷いて、類は瞳を細める。穏やかな波の音が心地よくて、つい、聞き入ってしまう。
 暫しだけ耳を傾けていれば、ジャハルが足元から何かを拾い上げるのを認める。
 摘み上げるようにして手にとった、青い色のシーグラス。それと、その色を見つめる視線の穏やかさ。
「青が好きなんですか?」
「うむ、馴染み深い色なものでな」
 つい惹かれるのだ、と柔らかに笑むその顔に、そうですか、と同じように笑んで。
 自分が惹かれる色は、と類は手にした涙型の瓶に詰める硝子の欠片を探すべく、視線を巡らせる。
 今はまだ、彩のない無色だけれど、これから幾つもの色をはらんでいく瓶。底がまぁるいこの瓶は、きっと吊るしたら綺麗だろう。
 思い馳せた類が波を眺めていると、ふと、引いていく波の下に色を見つける。
 そっと歩み寄って覗き込んだそれは、藍色。ざぁ、と音を立ててまた波が寄せて引いて行けば、新たに薄黄色も顔を覗かせた。
「フェレスちゃんご覧」
 じっ、と波の様子を見つめているフェレスに声を掛けて手招いて、類は足元に幾つも散らばる色とりどりを示した。
「詰めたら夜空みたいになるかな」
 桜色もある、と、次々に見つかる色を楽しげに見つけては、拾い上げて、眺めて。
 そうしている類を真似るように、フェレスもまた、屈み込んで砂浜に埋もれる煌めきを探り当てていく。
 まっしろでおいしいものが入っていた瓶にいれようと拾い上げたきらきらは、まっくろのまんまる。
 きれいだ、と手のひらに収めたフェレスの視界にきらりと過ぎったのは、みどりいろの光。
 ぱっ、と手を伸ばして拾い上げれば、陽光を受けてキラキラと光る宝石のような硝子に、フェレスは瞳を輝かせる。
「よつばのいろ」
 小さく呟いて、ふふ、と笑って。これもまた、手のひらに。
 夢中になって欠片を集め始めたフェレスを微笑まし気に類は微笑まし気に見つめていた。
「……冴島とフェレスにそっくりだな」
「え?」
 不意に聞こえた声に顔を上げれば、ジャハルが萌黄色の欠片を陽に透かして眺めていた。
 ほら、と手のひらに乗せて差し出されたその色は、見覚えがある。
 思わず見たのは隣の人。類はフェレスに、フェレスは類に、その色を見つけた。
 よく似た二人の眸の色。なるほど、と同時に破顔して、それから、フェレスは自分が見つけた色を手のひらに並べて行く。
「これはジャハル、これはるい。こっちは瓜江で、それから、それから……」
 くろを示し、しろを示し、あおを、あかを、きいろを、知っている誰かになぞらえて行く。
 その色を目にする度、共通の知り合いの顔が浮かんだもので。うん、うん、と一つずつ相槌を打っていた類は、フェレスの手のひらに乗っていた黒と白が混ざったような丸い硝子を指差して。
「これも、ジャハルさんみたいだ」
「む、俺もいるのか」
 どれ、と覗き込んできたジャハルは、示された硝子に一度、曇天を垣間見る。
 重く垂れ込めた暗い灰色の雲。だけれどそれも、陽光を受けて煌めいているのだ。
「ふむ、なるほどな」
 自然とほころぶ表情。和んでいると、ざぁ、と大きめの波が寄せてきて、フェレスの足元をわずかにさらう。
 びく、と思わず跳ねた体。手の中のものを取りこぼさぬようにぎゅっと握ったフェレスを案じるように覗き込めば、少女はじっ、と波を見据えている。
「みずはすこしにがて」
 率先して近寄りたいとは、あまり思っていないのが事実。
 だが、今年、フェレスは水底に咲くひまわりを見たのだ。
 その光景があまりにも見事で、美しくて、とにかくすごくて。
 ジャハルと類にも、見せたいと思ったのだ。
「えをかいたから」
「絵を見せてくれるのか」
「それは楽しみだ」
「うん、かえったら、ふたりにみせ……わぶ!」
 ふくふくと笑う小さな背を襲う、突然の大波。ばしゃん、と勢い良く跳ねた水がフェレスに降り注ぐのを見たが、微笑まし気に聞き入っていた類は、それ故に手を引くのが遅れた。
 だが、心配したようなことにはならなかった。フェレスに跳ねたのは少しばかりの飛沫だけ。残りは皆、ジャハルが壁となって防いでくれた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ジャハル、あたまからばしゃって……」
 守られたのだと知って慌てたフェレスの頭を撫でようとして、濡れていることに気が付いたジャハルは、代わりにひらりと手を振って微笑む。
「うむ、この通り大丈夫だ。少々塩辛いが」
 その感想が、なんだか、面白くて。
 そうやってわらってくれるのが、『うれしくて』。
 またしても顔を見合わせた類とフェレスは、どちらともなく、笑っていた。
 なつは、あついだけだと思っていた。けれどいまは。
 連れ立って歩く浜は、話す声と笑う声で賑やかになっている。気がつけばそれぞれの瓶はそれぞれが見つけた色で満たされている。
 傍らの誰かの色。心に描く誰かの色。引き寄せられる色は様々だけれど、心を寄せる理由は、少し、似ている。
 共に過ごすということに少しの擽ったさを覚えないでもないが、波に攫われる砂が、さらりさらりと音を立てるせいだろう。
 みながおしえてくれた『たのしい』が、なつをすきなものに変えてくれた。
 しあわせな心地は、きっと瓶の中にもたくさん詰まっている。
 共に笑った思い出も、大切なひとかけらとして。
 ぎゅうぎゅうに詰まったたからものを抱えて、フェレスはひっそり、思案する。
(どこにかくそう)
 これは、ないしょのこと。
 一緒に集めた沢山の思い出が、おしゃべりなくちびるから零れていってしまうのは、もったいないのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
亮ちゃん(f26138)と

硝子屋根ってゆーの、これ
うん、すげーきれい
そそぐ陽ざしが彩りのパラソルを通すから
赤に黄色に、彩られる彼女が煌いてみえて
亮ちゃんってなんか、夏が似合うネ
いぇい?ふふ、いいねえ
こっちまで元気になっちゃうわ

運命。亮ちゃんはさ、誰かを想って集めたりしたの?
それとも、自分自身の思い出として?
煌くおひさまみたいな彼女の答えが眩しくて笑った

ふは、それ、めっちゃいいな?
じゃあ俺のシーグラスくんたちは
亮ちゃんとの煌く今日の思い出だ

真夏の下の君のように
青空の下で涼し気に笑う君のように
風鈴みたいなまんまるな硝子を選んで
詰める、様々な彩

ん?おお、めっちゃ綺麗じゃん
夏の青を、閉じ込めたみたい


天音・亮
綾華さん(f01194)と

わぁ…綺麗だね綾華さん!
見上げた硝子が太陽の光を受けてきらきらしてる
うん?へへ、そうかな
夏は私も大好きな季節だから嬉しいな
夏女ですいぇい!

んー私はどっちもかな?
だって私の思い出は大好きな人達との思い出ばかりだもの
私の運命は私のものだけど
誰かと一緒に歩む日常の中にそれを見つけたい
今日綾華さんと一緒に見つけたシーグラスみたいに

綾華さんは?
聞きながら手に取ったのはコルクの蓋がついた
片手に収まるサイズの筒型の小瓶
私はこれにしようっと
このサイズならあの部屋でもきっと邪魔にならないだろうから

見て見て綾華さん!出来たよ!
海色のシーグラスを詰め蓋をした日常を
満足気にきみへ見せよう




 荒野のようなその島は、日差しを遮るものが少ない。聞いては居たが、実際に現地に立つとしみじみと感じたもので。
 ジリジリとした空気に、浮世・綾華(千日紅・f01194)が思わずつきかけた溜息は、感嘆の声に飲み込まれる。
「わぁ……綺麗だね綾華さん!」
 まるで別世界のような煌めき。陽射しをを受けて眩しいほどにきらきらしているその場所は、海へ続く道一帯が硝子製の屋台やパラソル、水を張った水槽で満たされて、ひんやりとした空気さえ漂っている。
「硝子屋根ってゆーの、これ。うん、すげーきれい」
 天音・亮(手をのばそう・f26138)の声に、一拍遅れて感嘆した綾華は、ようこそと笑む島民に迎えられるようにして、硝子市へと足を踏み入れた。
 心持ち涼しいと言うだけでなく、見上げれば太陽の光を受けた硝子がキラキラと煌めいていて、亮はつい、視線を巡らせあちらこちらと眺めていた。
 そんな亮に、パラソルを通した陽射しが降りれば、彼女自身が赤に黄色にと彩られて。
 それが、煌めいて見えて。
「亮ちゃんってなんか、夏が似合うネ」
 じりじりと暑い陽射しの下でこそ輝くような、溌剌とした雰囲気が、そんな印象を抱かせるのだろう。
 何気ない綾華の呟きに、亮は一瞬きょとんとするが、すぐに嬉しそうに笑った。
「うん? へへ、そうかな。夏は私も大好きな季節だから嬉しいな。夏女ですいぇい!」
 指を二本立ててVサイン。笑顔を彩る指先に、くす、と綾華もまた笑みをこぼす。
「いぇい? ふふ、いいねえ。こっちまで元気になっちゃうわ」
 亮を真似てピースをして見せて、顔を見合わせておかしそうに笑う。
 一頻り硝子の空間を堪能した所で、本日の目的はこの市場に並べられている硝子瓶。
 そこに詰めるためのシーグラスは、浜辺で沢山拾い集めてきた。運命と呼称されるそれが収められた場所をそっと撫でながら、綾華は硝子瓶を吟味する亮の横顔を見やる。
「亮ちゃんはさ、誰かを想って集めたりしたの? それとも、自分自身の思い出として?」
 運命の形は様々だ。そこにまつわる意味さえも。
 誰かを思って拾った欠片と、自分のために拾った欠片とでは、きっと、同じ色をしていても違って見える。
 自分のは、どちらだろう。気に入って拾い集めた色がどんな意味を持つかは、綾華にはまだ曖昧としか決められなかった。
 そんな綾華を見上げて、亮は思案気に首を傾げて。
「んー私はどっちもかな?」
 早々に至った結論に、パッと笑顔を咲かせる。
「だって私の思い出は大好きな人達との思い出ばかりだもの。私の運命は私のものだけど、誰かと一緒に歩む日常の中にそれを見つけたい」
 毎日は、自分で選んで決めた日々の繰り返し。けれどその中にはいつでも自分以外の誰かが居る。
 共に過ごす誰かとの、他愛もない日常こそが亮にとっての運命で。だから、今日選んだ欠片達だって、誰かを――傍らの綾華と過ごす楽しい時間を思って、自分の思い出にするためにと集められたものたちだ。
 そんな亮の回答が、おひさまみたいな彼女を一層眩しく見せて。綾華は思わず、声を上げて笑っていた。
「ふは、それ、めっちゃいいな?」
「綾華さんは?」
 尋ねながら、亮はコルクの蓋がついた、片手に収まるサイズの瓶を手にしている。
 私はこれにしようっと、と、筒型の硝子瓶を嬉しそうに見つめる亮の横顔は、やっぱり、きらきらしていた。
 とびきりの夏休みは、他愛もない日常の一幕。
 難しく考えるようなことなんて、なぁんにもなかった。
「じゃあ俺のシーグラスくんたちは、亮ちゃんとの煌く今日の思い出だ」
 どんな色を拾ったっけ。ふんわりとしか覚えていないけれど、どんな色だって、共に過ごす楽しさを伴って拾い集めたのだから、とびきりの煌めきを持っていることに変わりはない。
 さぁ、そんな彼らを詰める『日常』は――。
(――ああ……)
 これが良い、と。綾華は目線の高さに幾つも釣られた風鈴のような硝子瓶を目に留める。
 真夏の下の君のように。
 青空の下で涼し気に笑う君のように。
 風でゆらりと揺れるまんまるは、今日の思い出を詰めるのにぴったりな形だった。
 からん、からんと。音を立てて、彩を詰めていく。
 最後の一欠片を入れた所で、隣でも「よし」と短い声が聞こえて。
「見て見て綾華さん! 出来たよ!」
「ん? おお、めっちゃ綺麗じゃん」
 夏の青を、閉じ込めたみたい。
 綾華がそう称したように、満足気な笑顔が見せてくれたのは、海色のシーグラスが詰められた、手のひらサイズの夏景色。
 部屋の中でもきっと邪魔にならないだろうと選んだ大きさだけれど、拾い集めた硝子達を心ゆくまで詰めることができたのだから、十分だ。
 俺のはこんな感じ、と揺れる風鈴を見せて、やっぱり綺麗だねと笑い合って。
 夏の思い出を切り取った『日常』を手に、二人はもう暫し、硝子市を楽しむのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
※瓶の形はお任せ

へぇ、硝子の珊瑚礁か
グリードオーシャンも結構不思議なものがあるんだなぁ
せっかくだし、2人で綺麗だと思うものを
いっぱい瓶に詰めようぜっ!

オレはやっぱり赤…グラナトさんの色に似た硝子を探す
綺麗に赤く色づく硝子珊瑚や、赤い硝子の欠片
薄い赤じゃなくて焔のような赤…
グラナトさんと少しずつ瓶に入れていって
赤と青の硝子が混ざって綺麗だけど
何かが物足りない…

キラキラと金のように輝く硝子片を見つけて
瓶の中の硝子片に少し混ぜる
「ふふっ、これもオレとグラナトさんの色でしょ」
オレは赤がもっと好きになったよ


グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と
※グラナト水着は去年のもの
(硝子瓶はお任せします)

硝子で出来た珊瑚か…興味深いな。
マクベスは赤を集めるのかならば私が探す色は決まっているな。
(そう言って探し始めるもなかなか目当ての色はないようで)
青と言っても色んな青があるな…どれも美しいが目当ての色はなかなか見つからんか。
硝子が宝石に劣るわけではないがどの後もマクベスの青には勝てんな。

ん?マクベスが入れたのは金色か。
そうだな、マクベスの青は瞳の色だ。
その金は私だな。
あぁ、二人の色だ。
マクベスと出会ってからは好きな色が増えた。




 二人で選んだ硝子瓶を一つ。抱えて対面した海は、水面が太陽の光を反射して煌めいている。
 けれど、この海が持つ煌めきはそれだけではない。
「へぇ、硝子の珊瑚礁か。グリードオーシャンも結構不思議なものがあるんだなぁ」
 硝子の珊瑚礁。それこそが、この海を一層煌めかせる要員だ。
 波打ち際からは少しだけ伺える海底の色。目の上に手をかざして覗くようにしながら、マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は足元に寄せる波の冷たさにはしゃいだ声をあげる。
 慈しむような眼差しでマクベスを見守りながら、グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)もまた、不思議な煌めきを孕んだ海を見やる。
「硝子で出来た珊瑚か……興味深いな」
 しかも、通常の珊瑚とは異なり、多少欠けてもすぐに伸びて来ると言うのだ。
 即ち、この海の煌めきはいつまで経っても消えることはなく、島民達の日常を形作る糧であり続けるのだろう。
 海を眺める視線を少し下ろせば、足元には既に幾つかのシーグラスが見え隠れしている。
 色とりどりを眺めるだけでも楽しかろうが、今日は。
「せっかくだし、2人で綺麗だと思うものをいっぱい瓶に詰めようぜっ!」
 そう言ったマクベスの手には、先程手に入れたばかりの硝子瓶。
 縦に長い三角瓶は、ハーバリウムなどでよく見られる形だろうか。二人で選んだ色とりどりを詰めるのに十分なサイズを選んだのだ。これがどんな色で満たされるだろうと、マクベスは楽しげに笑う。
 水着の色は揃いの黒。せーので潜った海の中、二人は陽の光が届く浅瀬に、珊瑚が幾つも煌めいているのを見つける。
 綺麗だと思うものを、二人で。そう言ったマクベスは、様々な色の中から、一つの色を選び出す。
(オレはやっぱり赤……)
 目に留まるのは、やはりこの色。グラナトの持つ赤い色は、いつだってマクベスにとって特別で大切な色。
 花びらのような可憐な薄紅ではなく、焔のように力強い赤色が、マクベスの瞳を奪うのだ。
 彼に似た色の珊瑚をほんの少しだけ拝借して、瓶の中にからり。
 浜辺に戻れば、足元に見つけた赤い硝子の欠片も拾い上げてみる。
 先程の珊瑚より少し濃い赤色。あぁ、これも綺麗だなと微笑んで、またからり。
 そうして浜辺に残した硝子瓶と海とを往復する度に、マクベスは気がつく。
 自分が赤ばかりを入れている硝子瓶に、青い色が混ざっていることに。
 その青が何を意味しているか、なんて。今更聞かなくたってわかるから。ふ、と溢れるのは、幸せな笑み。
 そうしてマクベスが微笑んでいる間も、グラナトは海へ潜り、青い色の珊瑚を探していた。
 欲しい色は初めから決まっているけれど、己が望むような色はそう都合良くは見つからない。
 鮮やかな瑠璃色、深く濃い群青色、爽やかな空色。ひと口に青と言っても様々で、どれもきらきらと美しい。
 しかし、グラナトのお眼鏡にかなうかと言うと……やはり、比べる色が特別すぎるのだ。
(硝子が宝石に劣るわけではないがどの後もマクベスの青には勝てんな)
 ぱきり、拝借した青は、澄み通った海の色。
 妥協をするわけではない。この青も綺麗だと、そう思ったから、マクベスと共に詰める硝子瓶に入れたくなったのだ。
 浜辺に戻れば、思っていた通り、それ以上に沢山の赤が硝子瓶に詰まっているのだから、柔らかな笑みが浮かぶのは、仕方がないこと。
 そうして沢山の赤と青を詰めた硝子瓶を陽射しに掲げ、マクベスは二色が織りなすグラデーションにも似た煌めきを見つめていた。
 綺麗な綺麗な赤と青。
 けれど、なにか。
(何かが物足りない……)
 それが何かは何となく分かるけれど、はっきりとはしなくて。
 小首を傾げながら、何気なく見下ろした先に、きらり、マクベスは私を見てと主張するような煌めきを見つける。
「あ……」
 拾い上げたその色は、鮮やかな金色。
 あぁ、この色だ。暫し見つめて、からり、赤と青の中に少しだけ、金を混ぜる。
「ん? マクベスが入れたのは金色か」
「ふふっ、これもオレとグラナトさんの色でしょ」
 嬉しそうに見つめたマクベスの青色の瞳には、赤い髪に金の瞳をしたグラナトが映り込んでいる。
 青に混ざる、赤色と、ささやかな金。
「あぁ、二人の色だ」
 仕上がった硝子瓶も、二人の色が混ざりあっている。
 運命を幾つも幾つも拾い集めて、日常を作り上げている。
「マクベスと出会ってからは好きな色が増えた」
 硝子瓶と、それを抱えるマクベスとをいとおしげに見つめて、グラナトがそっと紡げば。
「オレは赤がもっと好きになったよ」
 傍らの笑顔が寄り添ってそう告げる。
 これからもきっと、二人の色は特別で、大切で。
 当たり前に寄り添って、日常を描いていくのだろう。
 同じ入れ物にたくさん詰めた、硝子の欠片達のように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

硝子珊瑚なんて初めてだ
海の下
どうなっているのか楽しみ
浜辺歩む君の横に寄り添い泳ぐ
絡む指先が嬉しくて
自然と綻び笑みが咲く

僕をとらえる金魚鉢のよう
僕は―瓶詰め人魚は戀をした――魚型の、風鈴のような瓶
海の珊瑚をとじこめて、空でちりんと歌わせるんだ

じゃあとってくるね!
ぽちゃんと海に潜って、美しい珊瑚を集めるんだ
白に水、桜と緑、紫――たくさん彩をとらえたならば櫻の所に戻る
君の集めた、陸のしぐらす、と僕の硝子珊瑚を半分こ
ふふ!一緒にゆらいでとっても綺麗!
嬉しくなって瓶を抱きしめる
寄り添う櫻宵に頭をこつり、かれの金魚鉢を覗き込む
2人で彩る世界はこんなにも

けれどそれより綺麗なのは
君の笑顔なのは内緒だよ


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

硝子市ですって
何処も彼処もきらりきらり
綺麗ねリル!
愛しい人魚と手を繋いで硝子の眠る浜辺を泳ぐように歩きゆく
どの瓶も素敵で悩んだけれど
私は口が桜型になった金魚鉢にしたわ
愛しい日々をすくって泳がせていられるように

リルのは可愛い風鈴だわ
美しい声でうたうわね

早速、お気に入りの瓶に詰めるシーグラスを集めましょ!
あっという間に海に潜っていったリル…じゃあ私は陸よ
桜色に水色、白に……朱色
とりどりの世界のシーグラスを金魚鉢に泳がせて
リルが拾ってきた硝子珊瑚と見せ合いっこよ
私達が拾った欠片を半分交換しましょ
海と陸、二つの世界がまじるよう

そうと寄り添い光に透かす
寄り添うような硝子万華鏡はきっと、幸せの彩ね




 荒野によく似た島の、ごく一部の浜辺へと続く道は、綺麗な硝子細工で彩られていた。
 何処も彼処もきらりきらり。眩しいほどではない華やかな煌めきに、誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)の瞳も煌めいていた。
「綺麗ねリル!」
 隣を歩くのは愛しい人魚。ゆらりと尾を棚引かせて寄り添い泳ぐリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)の手と指を絡めて眺めた硝子市は、一等美しく、きらきらとして見える。
 人が作り出した硝子の空間もとても綺麗だけれど、この島には自然にできた硝子の珊瑚礁があると聞く。
 泳ぐことには慣れているリルだって、そんなものを見るのは初めてで。海の下がどうなっているのか、楽しみに心が弾む。
 でもそれはきっと見たことのないものへの好奇心に対するわくわくばかりではなくて、櫻宵と共に居るからこそ。
 愛しい人と共に歩く道はいつだってきらきらしているものなのだ。
「どの瓶もとても素敵ね」
「うん、とっても綺麗」
 あちらの意匠も素敵だし、こちらの形も可愛いし。目移りしながらも、櫻宵は一つ、目に留まった瓶を手にとった。
 それは口が桜型になった金魚鉢。『瓶』なのだからぴったりとあう蓋はもちろんあるけれど、蓋を飾りにして開けておいたって勿論良い。
「これにするわ」
 すぃ、と。櫻宵は金魚鉢をリルの前に掲げる。
 きょとん、とした顔が、金魚鉢の硝子越しに見えて、くすり、微笑む。
「愛しい日々をすくって泳がせていられるように」
 金魚が一匹、悠々と泳げるくらいの瓶を嬉しそうに抱える櫻宵に、リルはぱちりと何度か瞳を瞬かせる。
 それはまるで、リルをとらえる金魚鉢のよう。
 だけれど、櫻宵は瓶の中にリルを入れても、きっと蓋をして閉じ込めたりはしないのだ。
 硝子越しの逢瀬なんかではなくて、いつだって隣に寄り添って、触れて、直接声を聞かせてくれる。
 だから、そんな櫻宵の瓶の中で泳げるならばきっと、幸せだろうと微笑んで。
 素敵だね、と自然と声が零れた。
 そんな『瓶詰め』の人魚が見つけたのは、空を泳ぐ硝子の魚。
 ちりん、と音を立てるのは、これも硝子でできた鈴。
 透明な音色に誘われるように手を伸ばして、戀する瓶詰め人魚――リルは魚型の風鈴を模した硝子瓶を手にとった。
 きっとこの魚は、櫻宵の金魚鉢の上でゆるりと泳ぎ、海の珊瑚をお腹いっぱい蓄えて、ちりんと涼やかに歌ってくれる。
「リルのは可愛い風鈴だわ。美しい声でうたうわね」
 ちりん。鈴の音色に引き寄せられた櫻宵と顔を見合わせて、くすり、笑い合って。
 お気に入りの瓶を選んだならば、後は沢山の彩りを詰めるだけ!
「じゃあとってくるね!」
 するりと中空を泳ぎ、そのままぽちゃんと海に潜っていったリルを見送り、櫻宵は一度だけ、空っぽになってしまった手のひらを見つめて。
 けれどすぐに砂浜を見渡して、陸に打ち上げられたシーグラスを探し始める。
 リルが海で硝子の珊瑚を探すから。
 櫻宵は陸で硝子の欠片を探すのだ。
 白はとっても目につく色。深い海の中でも清廉と煌めく綺麗な色。
 桜色は愛しい色。はらりと散った名残のように、砂に埋れる儚い色。
 波打ち際の水色は、同じ色。陸に流れた欠片は、人魚が手折った珊瑚の欠片。
 桜の後には緑が煌めく。艶々とした若葉色をそっとぱきり、ひとかけら。
 とろりと鮮やかな朱色が波に攫われていくのを拾い上げ、からり、瓶へとご案内。
 幾つも幾つも、思いつくままに集めた彩を、たくさん。
 深く高貴な紫を硝子の魚に食べさせて、いっぱいになった所でリルは陸へと戻っていく。
 ぱしゃん、と水の跳ねる音に顔を上げた櫻宵が、おかえりなさいと金魚鉢にたくさん詰めたシーグラスを見せた。
 海の欠片と陸の欠片。それぞれをたくさん並べて、はんぶんこ。
「珊瑚、とっても綺麗ね」
「しぐらす、も、きらきらして綺麗」
 あの色、この色。二人で集めた色とりどりを、半分ずつ混ぜ合わせて再び詰めた硝子瓶は、隔てられた二つの世界を混ぜた色で満たされる。
「ふふ! 一緒にゆらいでとっても綺麗!」
 嬉しそうに瓶を抱きしめたリルに、櫻宵はそうと寄り添い、金魚鉢を光に透かした。
 降り注ぐような陽射しが、色とりどりの硝子越しに二人を照らし、様々な色に染め上げる。
 こつり、リルがそんな櫻宵に頭を寄せて、同じ瓶を覗き込んだ。
 二人で彩る世界は、まるで万華鏡のように、角度を変えれば色も変える。そのどれもが美しくて、幸せな彩。
(嗚呼、でも……)
 ちらりと見た、櫻宵の顔。
 幸せそうに微笑み光を見上げる彼の顔が、どんな煌めきよりも綺麗だ、なんて――。
 それは、内緒。だってそれは、一番近くの僕だけの秘密なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
こんなに早くまたこの島に来られるなんてね
今まで訪れた中でも特に酷い支配を受けていた島だけど
早速復興に向けて動き出している
人々の逞しさを感じられるね
そうだね、いっぱい買い物とかしちゃおう

硝子市で色とりどりの硝子細工を見て回る
本当にユニークな形の瓶が色々あるねぇ
試験管やフラスコみたいな形のもの
星やハートといった可愛らしい形のもの
まるでウォータースライダーみたいに
ぐねぐね曲がりくねった形のものも発見
何を入れるんだろう…というのはともかく
職人技を感じられるね

よし、じゃあ俺はコレにしよう※内容お任せ
…あ、ほんとだーすっごく高いなー
俺の手持ちじゃとても足りないなー(チラッチラッ


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
以前この島を訪れた時は
血腥い闘技場の中しか見られなかったからな
島の様子や人々の普段の暮らしぶりまで
知る機会は無かったわけで
だから今日は存分に見て回って楽しむとしよう
戦うだけじゃなくてこういう催しを
満喫するのも立派な支援だ

腕のいい職人の多くは亡くなってしまったらしいが
若い職人達の作る硝子細工もどれも見事だな
少なくともド素人の俺はそう思う
お、このドラゴンが象られた硝子瓶とか良いな
さすがアックス&ウィザーズ由来の島だけある

それ、なかなか値が張るようだが
お前今日そんなに大金持ってきているのか?
…こいつ、最初から俺にたかるつもりで…!?
あーもう、仕方ないな!
何だかんだこいつに甘い




 この島を支配していたコンキスタドールは、己が最強であることを証明するために、島民に戦いを強いてきた女海賊だった。
 それを討伐する任に就いていた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、恐怖ばかりだった島民達がこんなにも早くかつての日常を取り戻し始めていることに、少しの感慨を覚える。
 色とりどりの硝子で彩られたその場所は、かつて訪れた闘技場のような血腥さは無い。
 どこまでも平凡で、少し特別な、日常の光景。
 伝統的な催しを早速蘇らせようとしている人々の逞しさを感じられるのは、尊いことだと綾は笑う。
 以前は人々の普段の暮らしぶりどころか、処刑場とかした戦闘場所以外を見て回ることすらできなかった。
 知る機会のなかった島の様子を、今日は見て回れる。だからこそ存分に楽しもうと、梓も笑って。
「戦うだけじゃなくてこういう催しを満喫するのも立派な支援だ」
「そうだね、いっぱい買い物とかしちゃおう」
 楽しげに足を踏み入れれば、島民達は彼らのことを覚えているようだった。
 それでも、今日はお喋りの日ではない。深々と頭を下げて感謝の意を表すと、どうぞごゆっくりと並べられた硝子細工へと意識を促す。
「本当にユニークな形の瓶が色々あるねぇ」
「あぁ、腕のいい職人の多くは亡くなってしまったらしいが、若い職人達の作る硝子細工もどれも見事だな」
 硝子市に並べられた瓶には、昔から保管されていた物も幾つかはあるのだろうが、今年のために作られた物が殆どらしい。
 どれがどれだかなんて、卓越した審美眼を持つわけでもない二人には見分けはつかない。
 けれどド素人だからこそ、純粋に様々な硝子細工に感嘆し、楽しむことが出来るのだ。
 試験管やフラスコのような実験器具に似たものは、どことなく単純な作りをしているように見えるけれど、星やハート型の瓶なんてどのように作っているのだろう。
 ぐねぐねと曲がりくねった形状のものはさながらウォータースライダーのようで、夏の情景にはぴったりだけれど、これは一体何を入れるのだろうか、なんて思案せずには居られない。
「砂とか?」
「水でも良いんじゃないか?」
 どれもこれも何かを入れて蓋をする『瓶』なのだ。形状の不可思議さはそれだけ何を入れようかというわくわく感も増す……ということなのだろうか。
 いずれにせよ、職人技を感じる品だ。作った者が単純にこういった物を作るのが好きで、ちょっとしたお茶目だったりしたら、それはそれで面白いなとと綾はくすりと笑みをこぼした。
「お、このドラゴンが象られた硝子瓶とか良いな」
 この島はアックス&ウィザーズの世界から落ちたと聞いたが、こういった装飾を見るとなるほどと思う。
 それ以上に、ドラゴンを相棒に持つ梓にとっては、親近感のようなものもあったりするかもしれないが。
(……いや、というかそれ、焔に似てるね?)
 感心したように眺める梓の隣で同じものを見た綾は、彼の肩にいつも居る炎の竜と容姿が似ているのに気が付いて、ちらと店番を見た。
 にっこりとしている女性は、何も言わない。
 けれどきっと、ここにある硝子瓶の幾つかは、そうやって瞳に焼き付いた情景を再現したものも、あるのだろう。
 察するからこそ、綾は肩を竦めて黙るだけ。
 梓と同じく、ただ純粋に硝子市を楽しんでいくだけだ。
 そうやって幾つもの硝子瓶を眺め歩いた綾は、一通りを見終わったのを確かめると、思案しながら引き返す。
「よし、じゃあ俺はコレにしよう」
 色々見たけどやっぱりコレが良いなって思ったんだよね、と取り上げたのは、先程梓が見て感心していたドラゴンの形。
 ただ、当然ながら細かな部分の多いその作品は、随分と値の張る品だったことを、梓はよく覚えている。
「お前今日そんなに大金持ってきているのか?」
「……あ、ほんとだーすっごく高いなー」
 わー、ほんとだーと値札を眺める綾の所作は、なんと言うか、わざとらしくて。
「俺の手持ちじゃとても足りないなー」
 チラッ、チラッ。向けられる視線も、やっぱり、わざとらしくて。
 彼に振り回されがちな梓が悟るまでに掃除感はかからなかった。
(……こいつ、最初から俺にたかるつもりで……!?)
 確かにそれは良い品だと思ったし、今日はいっぱい買い物していく予定で居たけれど。
 居たけれど!
「梓?」
 にっこり。ドラゴンの硝子瓶と共に小首を傾げる綾に見つめられては、梓には、否やとは言えないのだ。
「あーもう、仕方ないな!」
 何だかんだ、綾に甘い。
 そんな梓の性格をよく知っている綾へ、性質が悪いなと零した悪態は、どこ吹く風。
 じゃれあうようなやり取りに、ありがとうございましたと頭を下げた店番は、微笑まし気な顔で見送るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】
共に浜辺を

うわ…綺麗なもんだな
シーグラスって初めて見たわ
瑠碧姉さんは?
そっかよかった
一緒に探そうぜ

でもさ綺麗だけど
飴玉の…ような
いや何でも
…食わねぇし

これ…
空の青に似た硝子と海の青に似た硝子見つけ
空に翳し
(空は兄さんの…海は姉さんの目の色に似てる…かも)
大切な2人に似た色並べ
あーいや…こっち瑠碧姉さんの目の色に似てるかなって
大事な人たちの分も一緒に息災願ってもいいだろ?
大切そうに握り締め少し照れた様に
もう1個位青い奴ねーかな

俺は…
両方に見守って貰うみたいな方が嬉し…
って
…ありがとう

瑠碧姉さんは?何かいいの見つけた?

照れてそっぽ向き
…これも一緒にしといて
ハートに見えるシーグラス渡そうと


泉宮・瑠碧
【月風】
一緒に浜辺

シーグラス…
見た事は、ありますが…
他者の持ち物、でしたので
浜辺産とは、知りませんでした
…私も、探したいです

飴玉…理玖、食べたら駄目ですよ?
つい、小さく笑い

理玖の様子に、横から覗き込んで
…綺麗な青、ですね
私の目…?
なら理玖のも無いと、駄目です
一緒に青色探し

…もし、青いの、無かったら
私の青は、理玖の青にしてくださいね
そうすれば理玖、お兄さんと一緒、です

と、ありました
理玖へ、空と海の間の様な澄んだ青色を
…揃いました?

…これは、私の分
青色と橙色の二つの硝子を
両手で大事に包んで、照れ笑い
(私だけが持てる、君の色)

ハート…?
何だか、胸が痛い、ような…あれ?
赤面して俯き
…あ、ありがとう…?




 共に歩く浜辺。波打ち際で、少し冷たく感じる水が足元をくすぐるのがなんとなく心地良い。
 並んで歩く最中にも、幾つも砂の隙間に垣間見えるシーグラスを見つけて。陽向・理玖(夏疾風・f22773)はそれが陽光を返す煌めきが転々と続いている光景に、小さく吐息を漏らした。
「うわ……綺麗なもんだな。シーグラスって初めて見たわ。瑠碧姉さんは?」
 同じ光景に、きれい、と小さく零していた泉宮・瑠碧(月白・f04280)は、問う声に理玖の方へと視線を向け、思い起こすように小首を傾げる。
「シーグラス……見た事は、ありますが……他者の持ち物、でしたので、浜辺産とは、知りませんでした」
 自分ではない誰かの持ち物だったその欠片は、きらきらとして綺麗だった。
 こんな風に大量に点在している光景は、もしかしたら硝子の珊瑚礁を持つというこの海ならではの光景なのかもしれないけれど、こんな光景を見てしまったら、心が踊らないわけが、なくて。
「……私も、探したいです」
「そっかよかった。一緒に探そうぜ」
 顔を見合わせた瑠碧にそう微笑んで、波打ち際をのんびりと進んでいく。
 ころり、足元で波に転がされた欠片を一つ、摘んで拾い上げてみる。
「綺麗だけど……」
 薄紅色のそれは、見れば見るほどまぁるくて、きらきら。
「飴玉の……ような……いや何でも」
「飴玉……」
 思わず呟いた言葉があまりに情緒に欠けていると思ったのか、訂正した理玖だが、隣の瑠碧にはばっちり聞かれてしまっていて。
「理玖、食べたら駄目ですよ?」
「……食わねぇし」
 くす、と微笑ましげな顔でそんな風に言われてしまっては、つい、拗ねたようにそっぽを向いてしまうのも仕方のないことだ。
 わかってますよ、とくすくす笑った瑠碧から数歩、足早に離れた理玖は、未だ手にしていた飴玉に似た薄紅色をバツが悪そうにそっと浜辺に返し。
「これ……」
 代わりに、砂から顔を覗かせた青い色の欠片を一つ、拾う。
 それは、空の青に似た硝子の欠片。理玖が手のひらに乗せてまじまじと見ていると、もう一つ、よく似て違う青の色が転がってくる。
 そちらは海の青に似た色で。同じ青だけれど、随分と色合いが違う二つの色を、理玖は空に翳して、陽に透かす。
 ――似ている。
(空は兄さんの……海は姉さんの目の色に似てる……かも)
 大切な人、二人の色。理玖を真っ直ぐに見つめてくれる、違う色だけれど同じくらい優しい色。
 じぃ、とその青に見入る理玖の横顔を、見つめて。瑠碧は、そぉっと同じ角度から見上げるようにして、覗き込んだ。
「……綺麗な青、ですね」
 その声に、ハッとしたように視線を下ろせば、今しがた見つめていた硝子片と同じ色の瞳が、見つめている。
「あーいや……」
 こっちの、と。翳していた二つの内、海に近い色の青を示して、ちらり、理玖は瑠碧を見やる。
「瑠碧姉さんの目の色に似てるかなって」
「私の目……?」
 ぱちり、と瞬いた瞳。その双眸の方がよほど煌めいて見えたけれど、見比べて、やっぱり似てるなと理玖は思い、瑠碧は、理玖にはこんな風に見えているのかと思う。
「大事な人たちの分も一緒に息災願ってもいいだろ?」
 海で出会った運命を、日常に詰め込んで。一年の息災を願う催しだと聞いた。
 けれどそれは、何も自分一人のためのものではないはずだ、と。
 空と海を大切そうに握り締め、少し照れたようにはにかんだ理玖を、瑠碧は海色の瞳でじぃっと見つめて。
「なら理玖のも無いと、駄目です」
「え……」
「もう一つ、探しましょう」
 言うが早いかくるりと身を翻してしまった瑠碧に、理玖は照れくさそうに頬を掻いて。
 もう一つを、一緒に探し始めた。
 とは言っても、望む色がそうそう見つかるわけでもない。
 くるくる、視線を巡らせて、瑠碧は先程見つめたばかりの理玖の瞳を脳裏に思い描きながら、同じ青色を探す。
 大事な人たちの分も『一緒に』願うならば、理玖自身が居なければ意味がない。
 けれど、もし、望んだ青が、見つからなかったならば。
「私の青は、理玖の青にしてくださいね。そうすれば理玖、お兄さんと一緒、です」
 一度だけ振り返り、そう告げてまた青を探し始めた瑠碧の背中を、見つめて。
 俺は、と一度開いた口を閉じ、もう一度、少しばかりの躊躇いを含みながらも、理玖はボソリ、こぼす。
「両方に見守って貰うみたいな方が嬉し……」
「と、ありました」
 瑠碧に、聞こえていたのか、いないのか。どちらにしても理玖にだけ気恥ずかしさが残ってしまう独り言に、理玖は思わず、差し出された青色に身構えてしまう。
「……揃いました?」
 ぎこちなく差し出された手のひらに、ころん、と転がされたのは、空と海の間のような、涼し気な青色。
 彼女から見た、理玖の瞳。
「……ありがとう」
 揃った三種の青を、改めて握り締めて。はたと気が付いたのは、理玖のを探させてばかりで、瑠碧は自身の硝子を見つけられたのかということ。
 何かいいの見つけた? 問う声に、瑠碧はそっと手のひらに二色の硝子を乗せて見せた。
「……これは、私の分」
 青色と、橙色。その二色は、瑠碧の手のひらの上できらきらと煌めいて、それから、その手の中に、大切そうに包まれる。
(私だけが持てる、君の色)
 その、照れたような笑顔に。硝子と笑顔の、意味に。理玖は思わず、息を呑んで。
 先程から照れてばかりの顔を背けるように、またそっぽを向いた。
 ――けれど。
「……これも一緒にしといて」
 かろうじて横目で見つめ、少しばかりぶっきらぼうに差し出したのは、ハートの形に見えるシーグラス。
 受け取った瑠碧は、初めはきょとんとしたようにそのハート型を見つめていたけれど、なんだか、不思議と、胸が痛いような心地になって。
(……あれ?)
 青色と、橙色。君の色に添える、ハート。
 それは、君の――。
「……あ、ありがとう……?」
 赤面して俯いた瑠碧には、それが精一杯の、言葉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
水着着用

そうだアレス、どっちが綺麗な運命の硝子を拾えるか
勝負しようぜ
自信満々に笑って
宝探しの始まりだ

やっぱ勝つには最強の
世界で一番綺麗な色じゃねぇとな!
色は青か黄色
どっちもが一番いいな
同じような色合いの硝子を集めて一番良いものを探す
んー…中々これってのみつかんねぇな
…って、あ

どうだアレス!これなら間違いなく俺の勝ちだろ!
手のひらに大事に乗せた硝子を見せる
朝焼けの綺麗な天色に
白い1つ星のとっておき
こんなにアレスにそっくりな色なんだ間違いなく俺の勝ち
二人譲らず言い合って
…ふ、くくっ!
なんかおかしくなってきた
しょうがねぇ今回は引き分けだ

これ、星型の小瓶にいれてさぁ
並べて城に飾ろうぜ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
水着着用

宝探し勝負とは君らしいな
分かった、受けて立とう

運命なら…
やはり僕が思う一番綺麗で、好きな色で勝負したいな
探すのは深い青や紫系
色々候補は見つかるけれど
思い描く色とは少し違っていて…
…あっ

僕もこの色なら負ける気はしないよ
割れないようにと布に包んでいた硝子を見せる
光に透かせば青にも紫にも見える美しく深い色の硝子
一等星のような模様もあって、星空みたいだ
彼の言葉に此方も譲れまいと
僕が見つけたものだって綺麗だよ
こんなにも君の色によく似ているのだから…!
…ふ。あはは
何を言い合ってるんだろうね、僕達
ああ、そうみたいだ

いいね、市場で一緒に探そうか
…また一つ、君との思い出と宝物が増えたな




 夏の陽射しが煌めく浜辺。水着を着込んだ二人が対峙する。
「勝負しようぜ」
 不敵に笑うのはセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)。どこか踊り子のような装飾を持った夜色に金を縁取った水着で、自信有りげにアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)を見やる。
 対するアレクシスは、爽やかな白が眩しい水着で、セリオスらしい申し出に楽しげに笑う。
「分かった、受けて立とう」
 勝負内容は――どっちが綺麗な運命の硝子を拾えるか。
 さぁ、宝探しの始まりだ!

 ばっ、とそれぞれに飛び出した二人は、一先ずは浜辺に転がるシーグラスを眺め見る。
 硝子珊瑚の海から流れ着いてくる硝子の欠片は、どれもこれもが美しい色をしており、目移りしてしまう。
「やっぱ勝つには最強の、世界で一番綺麗な色じゃねぇとな!」
 だが、セリオスは自らが探すべき色を決めていた。
 ずばり、青か黄色。可能であるなら、どちらの色も含んだ硝子が一番だ。
 浜辺でシーグラスを眺めては該当する色を掻き集め、それでもまだ納得がいかなくて、しゃらりと音を立てる羽織を置いて、海へと潜ってみる。
 シーグラスよりも鮮やかにグラデーションを描いている硝子珊瑚を幾つも眺めて見るも、やはり、そう上手くは見つからない。
「ぷは。んー……中々これってのみつかんねぇな」
 濡れた髪を掻き上げながら首を傾げたセリオスは、どうしたものかと思案して。
 ふと、巡らせた視線の先に見えた色に、瞳を煌めかせて再び海へと潜った。

 一方でアレクシスもまた、浜辺に転がる幾つもの色の中から、自分の好きな色での勝負に賭けていた。
「やはり僕が思う一番綺麗で、好きな色で勝負したいな」
 彼が探すのは深い青や、紫系。
 どんな色か、より具体的な色合いはもうとっくに脳裏に描けている。
 己が探す運命だというのなら、その色以外、ありえないと思っていた。
 しかしやはり、セリオス同様、アレクシスも自らの望む『運命』とはそうそう巡り会えなくて。
 それらしいものを一つ拾い上げてみては、思う色と違うなと波打ち際へと返す作業を繰り返していた。
「僕の思い描く色とは少し違うな……」
 セリオスは海へ潜っていったようだ。やはり珊瑚の方が的確な色に会えるだろうか。
 思案しながら歩くアレクシスに、ざぶん、と大きめの波が打ち寄せて、ころり、ころり、幾つもの硝子が、一緒に転がってくる。

「あっ――」

 二人が見つけたのは、殆ど、同時のようなもので。
 浜辺へと戻ってきたセリオスは、自らが見つけたとびきりの一つを手のひらに乗せ、自慢気に差し出してくる。
「どうだアレス! これなら間違いなく俺の勝ちだろ!」
 落とさぬようにと大事に乗せたその硝子は、朝焼けの綺麗な天の色。その中に、白い一つ星がきらりと光る、とっておきの一欠片。
「僕もこの色なら負ける気はしないよ」
 対するアレクシスもまた、割れないようにと大切そうに布に包んでいた硝子を見せる。
 それは光に透かせば青にも紫にも見えるような、美しくて深い、夜色の硝子。
 一等星のような模様を持つそれは、まるで星空のような一欠片。
 どちらも、とても美しい色をしているけれど。
「こんなにアレスにそっくりな色なんだ間違いなく俺の勝ち」
「僕が見つけたものだって綺麗だよ。こんなにも君の色によく似ているのだから……!」
 俺の方が、いいや僕の方が。初めはそんな風に言い合って、譲れないと頑なだった二人だけれど。
 しまいに交わされる言葉が、アレスの色の方が、セリオスの色の方が、なんてものに取って代わっていて。
 はたと気が付いた二人は、互いに顔を見合わせた。
「……ふ、くくっ!」
「……ふ。あはは」
 なんだか、急におかしくなって。大事な欠片を握り締めて、二人して笑い転げていた。
「何を言い合ってるんだろうね、僕達」
「まったくな。しょうがねぇ今回は引き分けだ」
「ああ、そうみたいだ」
 君の色が美しくないわけがない。
 ――そう告げる、君の言葉が偽りの訳がない。
 結局は、二人で一番なのだ。
「これ、星型の小瓶にいれてさぁ、並べて城に飾ろうぜ」
 明けの星、夜の星。それぞれの色を、星型の硝子瓶にそっと詰めて、二つ並べて飾るのだ。
 セリオスのそんな提案に、アレクシスは大きく頷いて、それから、セリオスへと手を差し伸べる。
「いいね、市場で一緒に探そうか。……また一つ、君との思い出と宝物が増えたな」
 幾つあったって足りないくらいの思い出達。
 今日という日に、この島から連れ出す双つ星も、きっと素敵な一幕になるのだろう。
 語らう声に笑う声を重ねて、二人はそれぞれの宝物を握り締めながら、硝子市へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日


挿絵イラスト