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迷宮災厄戦⑪〜世界で一番美しいのは

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●真実を告げる鏡
「真実の鏡、ね……」
 ここはアリスラビリンスの不思議の国の一つ。オウガ・オリジンに戯れに殺された、かつての忠臣「鏡の女王」の怨念が籠もった国。
 質問すれば答を教えてくれる「真実の鏡」があちこちに存在するその場所を歩きながら、雪のように白い肌を持つ美しい女性は、くすりと笑った。
「童話では魔法の鏡に世界で一番美しいのは誰かと訊ねた王妃がいたそうね。でも訊く必要なんかないわ。だって、世界で一番強くて美しいのはあたしに決まっているのだもの」
 その言葉には揺るぎのない自信が表れていて。誰におもねることもない凛とした誇り高さは彼女をより美しく輝かせているが、自分を特別な存在だと信じ、他者を見下す傲慢さもまた隠しようがなかった。
「誰が来ようと同じよ。鏡は真実を教えてくれる。居場所も弱点も……まあ、そんなものに頼らなくても、このあたしならひとひねりだけどね」
 世界を統べる力を手にしたと信じて疑わない白雪姫は、真実の鏡が数多並ぶこの鏡の迷宮で猟兵たちを待ち構えていた――。

●グリモアベースにて
「みんな、迷宮災厄戦もいよいよ大詰めね。考えることはたくさんだけど、ひとつひとつ攻略していきましょう」
 グリモアベースに集まった猟兵たちにエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)はそう告げると、真剣な様子で戦況を確認しては頷いた。猟書家を放置できないが、彼らを倒せばオウガ・オリジンが力を取り戻してしまう。だが彼らに繋がる道を切り開くことも必要だ。
「次に向かってもらいたいのは、あちこちに『真実の鏡』がある不思議の国よ」
 かつてオウガ・オリジンの忠臣であった鏡の女王だが、戯れに殺されたことからその場所には怨念が渦巻いている。その力によって、真実の鏡はこの国の中のことなら何でも答えてくれるというのだ。
「敵の居場所や弱点なんかも教えてくれるわ。でも、それは敵も同じこと。ただ、あなたたちを待ち受けるオウガ――『七罪』傲慢のスノーホワイトは、その名の通り傲慢な性格だから。そのおごりが油断に繋がるんじゃないかしら」
 スノーホワイトが待ち受けているのは鏡の迷宮。ところどころに広く戦闘もできる場所はあるが、見通しのいい場所ではないので、あちこちに存在する真実の鏡に敵の居場所を聞いて近づくといいだろう。もちろん敵もこちらの居場所を探っているので、出向かなくても遅かれ早かれやってくることだろう。
「鏡には何を聞いてもいいけど、この国の中のことしか答えてくれないし、戦いのこと以外を聞いている時間はないと思うわ」
 あとは敵も猟兵たちの弱点を鏡に訊ねることだろう。相手がそこを狙ってくることを見越して対策するというのも有効だろう。
「せっかく真実の鏡があるんだから、利用しない手はないわよね。オウガを倒して、この先の道を切り開いてね」
 エリシャは頼もしそうに猟兵たちを見つめると、力強く頷いて見せるのだった。


湊ゆうき
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」における⑪真実を告げる鏡の間のシナリオとなります。

 こんにちは。湊ゆうきです。
 何でも答えてくれる鏡があるといいなと思います。辞書代わりに。
 真実の鏡を利用して、オウガを撃破してください。質問は何をしてもいいですが、リプレイに反映するのが難しいものが多ければ採用できないこともあります。
 オウガは猟兵の弱点を鏡に聞くので、自分の弱点と対処法などをプレイングに書いてもらえると嬉しいですが必須ではありませんし、書いてないからと言って不利になることもありません。自由に戦ってください。
 遊園地のミラーハウス的な場所をイメージしていただけるといいかと思います。

 プレイングボーナスは「鏡に有効な質問をする」です。

 戦況によっては完結時期を調整するかもしれませんが、プレイングはOP公開後すぐに受付いたします。
 参加者が多数になった場合は全員採用の確約はできませんが、できる限りは書かせていただきます。
 それでは、ご参加お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『七罪』傲慢のスノーホワイト』

POW   :    常時発動型UC『世界で一番美しい者』
【世界で一番の美しさによる魅惑の魔力 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【美貌による魅了・洗脳効果と常時全能力低下】で攻撃する。
SPD   :    勇猛で忠実なる七人の小人(レジェンド・ゴブリン)
【高い戦闘力と殺戮技能を持つ七人の小人 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    スノーホワイト・ストーリー(白雪姫の物語)
【全てを魅了し、虜にする世界一の美貌 】【毒林檎に込められた魔女の魔力と魔法技能】【王子の愛による超再生、不死能力と身体強化】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフレミア・レイブラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

草野・千秋
この世界の白雪姫は傲慢な程に自分に絶対の自信を持っている
ある意味自分に自信があるのは羨ま……いいえ、こんなことを言ってはいけないですよね

僕の弱点を聞くのですか?
そうですね、予告しておくと防御力を上げるUCを使います、それと怪力なら自信が

僕は敵の事を聞いてみましょうか
相手がどのくらいの距離を持って、どの方向で近づいてくるのですか?遠距離がいいならスナイパー、一斉発射による遠距離射撃、近距離でやれるなら怪力、2回攻撃で殴るでしょう
僕は敵からの攻撃が来ると人様をかばうのが得意です、相手の注意を惹き付ける方法は?ヒーローとして名乗りを上げることにより敵に挑発、味方に鼓舞が出来るでしょうか?


大宝寺・朱毘
・弱点
ギターまたは演奏に使う手を封じられると大幅に弱体化する。

・鏡への質問
敵の居場所。

・戦闘
「おお姫様、あなたは世界一美しい……が、ロックじゃねぇなぁ」
【視力】を利してなるべく小人たちと白雪姫を視界に納め続け、【楽器演奏】の技術を活用して間断なく【衝撃波】の弾幕を放ち続ける。
ギターは頑丈だから狙われてもそうそう壊れないとして、手や指は厳しいか。もし負傷して手での演奏が困難になったら、歯ギターで対応する。
最悪、ギターなしでも【全力魔法】の【衝撃波】は撃てる。弱体化はするけど。
「いくらいいツラいいチチ持ってよーが、ハラワタが腐ってりゃ台なしってもんだ。ヨーグルトでも食っとけ」



●Twin Session
 そこはたくさんの鏡が織りなす迷宮のような場所だった。かつてオウガ・オリジンの忠臣であった鏡の女王が、戯れに殺されたことからあちことに怨念が渦巻いているという。この国のことならば全ての質問に正しく答えてくれるという真実の鏡はあちこちにあって。オウガであれ猟兵であれ、その質問に答えてくれるという。
(「この世界の白雪姫は傲慢な程に自分に絶対の自信を持っている」)
 UDCアースで駄菓子屋を営む草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)にとって、白雪姫は小さい頃に触れる童話のひとつ。美しい白雪姫だが、童話の中ではりんご売りに扮した王妃に騙されて毒りんごを食べさせられてしまう純真な存在として描かれている。決して自分の美しさを鼻にかけるような人物ではなかったのだが。
「ある意味自分に自信があるのは羨ま……いいえ、こんなことを言ってはいけないですよね」
 思わずそんな言葉が漏れ、千秋は首を横に振り苦笑する。幼い頃に家族を邪神とその配下に惨殺され、麻酔なしで望まぬ改造手術を受け、サイボーグとなった千秋だとしても。心までサイボーグのようにはなれない。弱きを助け、悪を挫くヒーローを目指して戦ってはいても、この手で全てを救えるわけではないと知っているから。だが、だからこそ、音楽活動においても人の心に寄り添う歌を作ることができるのだ。
「さて、敵はどの方向から近づいてくるのでしょうか。今どのくらいの距離がありますか?」
 近くにあった真実の鏡にそう問いかける。
『あなたに敵意を持った相手は2時の方向からこちらに向かっています。その距離は約400メートル』
「2時の方向?」
 なんだか古風な言い回しをするなと思って辺りを見回せば、天井に大きな円が描かれ、それが時計のように見えた。12時の位置は把握できる。おそらくそれが指し示す方向ということだろう。ただ、ここは迷路のように細い道が続いていて戦闘に適しているとは言えない。
「少し広い場所まで出てみましょうか。この先にありますか?」
『その道を壁沿いに右に進んでいけば開けた場所に出ます』
 千秋は頷くと、鏡の迷宮を進んでいった。

 同じころ、別の方向から鏡の迷宮を進む者がいた。
「真実の鏡、ねえ……」
 辺り一面に広がる鏡に映る自分の姿を見つめながら、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)はそっと独り言ちた。黒髪ショートカットの眼鏡の似合うクールで美しい少女がそこに映っていた。
 鏡に映る自分は見慣れている。それは朱毘が1036プロに所属するロック系眼鏡アイドルだからだ。朱毘としてはギタリストを目指していたのだが、人生とはいろいろあるもので、なんやかんやあってアイドルをやることになったのだ。
 真実を告げる鏡に誰が一番美しいかと問いかけると、この鏡は例のオウガだと答えるのだろうか?
「おお姫様、あなたは世界一美しい……が、ロックじゃねぇなぁ」
 ロックンローラーとして、そこはいまいち納得できない。それに朱毘がモットーとするのは、女の子らしい甘くて可愛い、人を笑顔にするようなスウィートロッカー。傲慢と高慢を絵に描いたようなお姫様には退場願いたい。
「とにかく、まずは居場所を探らないことにはな」
 そうして近くにあった真実の鏡のひとつにオウガの居場所を問いかける。
「敵はこちらの弱点を聞いてくると言っていたが……」
 朱毘の武器は鬼の面を模したボディを持つ、エレキギター型サウンドウェポンだ。ギターや演奏に使う手を封じられると苦戦は免れない。だが、そのことを念頭におくだけでもきっと相手の攻撃への対処法が見えてくるだろう。
 途中で見つけた真実の鏡に都度敵の居場所を聞きながら歩いて行くと、少し開けた場所に出た。ここなら多少は動き回っても大丈夫そうだ。
「あら、迷路に迷い込んだ子ネズミさんがこんなところに。うふふ、美しくて強いあたしに倒されに来たのね」
 そこには、童話の白雪姫とは似ても似つかない傲慢で美しいオウガがいた。相手もこちらの位置を把握していたからだろう、予想していたようにすぐさま攻撃を仕掛けてくる。
「さあ、勇敢で忠実なるあたしの小人たち、あの子のギターを壊してしまいなさい」
 スノーホワイトの言葉とともに、辺りに七人の小人が現れる。それは童話にある優しく親切な小人とは思えない、その瞳に暗い影を落とした殺戮衝動を抱えた小人たちだ。
「こっちの武器はご承知の通りってか……だが、近づけさせなければいいってことだ!」
 手に鈍器のようなものを持って迫る小人たちから距離を取り、朱毘は七人全員を視界に収め、【鬼気琴『鬼怒』】をかき鳴らす。
「こいつはあんまりご機嫌なサウンドじゃねえ……」
 アイドルとして活動しているときとは違う、ユーベルコードの力で魔力を込められた演奏は敵を撃つ強力な衝撃波となる。
「あたしの目に映る敵を滅ぼす、呪いの音だ……打ち砕け、ソニック・ワーミー!」
 魔力が込められた音が衝撃波の弾幕となって小人たちの進撃を阻止する。プロとして築き上げてきた熟練の演奏技術で間断なく衝撃波を放ち続ければ、小人たちは足止めを食い、迫ることができない。
「あらあら、やるじゃない。でもね、あなたの相手は小人だけではないのよ」
 小人たちとは離れた場所に素早く移動し、朱毘の視界から一瞬消えると、スノーホワイトは衝撃波を逃れ、朱毘へと迫る。
「ギターが壊せないなら、その手を使えなくしてあげる」
 手にした細身の剣が演奏を続ける朱毘の指に迫り――。
「させません!」
 そこへ盾を手に、完全戦闘形態へと姿を変えた千秋が朱毘の前に躍り出て、スノーホワイトの攻撃からかばう。
「あら、もう一人が近づいてることすっかり忘れてたわ」
「まさかもう交戦中とは……鏡は聞いたことしか答えてくれないので不親切ですね」
 ギターの音が耳に入り、急いで駆けつけてきたのだ。確かに千秋は敵の位置しか聞いていないが、敵が別の仲間に迫っていると教えてくれてもいいのにと思わないでもない。
「悪いな、助かったぜ」
「いえ、眼鏡のギタリストは他人とは思えませんし」
 自身も曲作りを行い愛用のギターで奏でる千秋はそう言うと、柔和な顔をきりりと引き締め敵を睨みつける。
(「鏡が言うことには、敵は自分に絶対の自信をもっている。相手の注意を惹き付ければ自ずと隙はできるでしょう。仲間と一緒なら……」)
 朱毘にだけ聞こえるようにそっと呟く。
「僕が注意を惹きます。その隙に」
 それだけで千秋の意図を察した朱毘もこくりと頷く。視界に小人とスノーホワイトの両方を捉え、いつでも攻撃できる準備をしておく。
「傲慢の罪に囚われた白雪姫……。僕――断罪戦士ダムナーティオーが相手してやろう。僕は負けられない……僕を信じてくれた人の為に!」
 名乗りを上げ、スノーホワイトを挑発する。その力強い言葉は自身だけでなく、仲間の気持ちをも奮い立たせる力があった。
「まあ、威勢がいいのね。うふふ、可愛がってあげるわ。このあたしの美貌でね!」
 世界で一番美しいのは自分と信じて疑わないスノーホワイトが、その美貌で相手を魅了し洗脳させ、能力低下を図ってくる。だが千秋も心に強い誓いをもって戦っているのだ。自分が信じた人のため、自分を信じてくれた人のためならば。どんな状況に陥ろうとも負けるわけにはいかないのだ。
 スノーホワイトの魅了を払いのけ、鏡が教えてくれたことを頭で反芻する。敵は自分に絶対の自信を持っているから、きっと千秋が攻撃をしてこなければ洗脳されたと思い込む。その隙をつくのだ。
「お前が世界で一番美しい、ねえ……」
 朱毘もまたその魅了には屈しない。もとより、スノーホワイトが魅力的などとは思えないのだ。大きくギターをかき鳴らし、視界を、思考をクリアにする。
「いくらいいツラいいチチ持ってよーが、ハラワタが腐ってりゃ台なしってもんだ。ヨーグルトでも食っとけ」
 言葉とともに衝撃波が放たれ、スノーホワイトを襲う。小人たちが彼女を守ろうと盾となり吹き飛ばされてはついに動かなくなった。
「さあ、そこのヒーローのあなた。次はあなたがあたしの忠実なる僕。あの娘をその銃でやっておしまいなさい」
 千秋が手に持った「秩序の崩壊」の名を持つ銃火器の銃口が朱毘へと向けられる。
「信じてくれる仲間に撃たれるなんてねぇ!」
 きゃははと嬌声を上げるスノーホワイトを【ordinis tabes】の一斉発射が襲う。千秋は高らかに笑い声を上げるスノーホワイトへと銃口を向けなおすと、遠距離でも確実に、その醜い心を曝す白雪姫を撃ち抜く。
「……どういうこと! あなた、洗脳されたふりして……!」
「洗脳されたと勝手に思ったのはお前だろう? ……鏡に訊ねてみればよかったのに」
 その自信と奢りが油断を生んだことにようやく気付いたのだろう。悔しそうな顔をしたスノーホワイトは、鏡の一つに手をやると、くるりとその裏へと姿を消した。一度態勢を立て直す気なのだろう。
 二人は頷きあうと、鏡にスノーホワイトの居場所を再度聞くと、そのあとを追いかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リアナ・トラヴェリア
傲慢なのが美しいとするのなら、それは思い違いじゃないかな。
それは単に力で従えてるだけだよね。…だからこのユーベルコードはその疑念が発生すると効果がないと思うんだ。…鏡はどう思う?

一番という証拠も、美しいという客観的根拠もない以上、その力は無意味だよ。もしあるとするのならそれは貴女が一人で自分に認めているだけ。
貴女は貴女に魅了されているだけの愚かな存在だよ。

魔術師の手でその「美しさ」を引き剥がすよ。
きっと貴女はこの事自体に耐えられない、怒りに満ちた剣なら返すのも簡単だから、切り返そう。

私は力で誰かを従える貴女がいちばん醜いと思うよ。



●鏡が映す真実
 そこは鏡の迷宮。鏡同士がお互いを映し合い、合わせ鏡が果てのない迷宮を作り出しているかのようだった。
 この迷宮にいるオウガは、自分を世界一美しいと信じているという。鏡は確かに美しい姿をそのままに映し出すだろう。けれどその心の醜さ、傲慢さまでは鏡越しでは見ることができない。
「傲慢なのが美しいとするのなら、それは思い違いじゃないかな」
 鏡に囲われた道を歩きながら、リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は、ここにいるというオウガのことを考えていた。美しさが傲慢さを招いたのか、傲慢だからこそ美しいと思い込んでいるのか。どちらにせよ、リアナにはその美しさは誇れる類のものではないと思う。
 それは単に力で従えているに過ぎない。誰かが美しいと心から思うのではなく、彼女の力に怯え、美しいと誉めそやさなければいけない状況を作っているだけだ。そのことにオウガは気付いているのだろうか。
 鏡に聞いた敵が使うユーベルコードは、世界で一番と自負する美しさにより相手を魅了するというもの。
「……だからそのユーベルコードはその疑念が発生すると効果がないと思うんだ。……鏡はどう思う?」
『その通りです。ですが彼女は自分に絶対の自信を持っています。そう簡単には揺るがないでしょう』
「……まあ、そうじゃないと、自分を世界一だなんて言わないよね」
 鏡に居場所を問いかけながら進んでいくと、遠くからギターの演奏が聞こえてきた。もう既に別の猟兵と交戦中なのかもしれない。だが、迷路のような鏡の道では最短距離で近づけるわけでもなく。そうこうしているうちに、音は止み、静かになった。
「敵の居場所は?」
『先ほどいた場所から移動しています。……こちらに向かっています』
「探す手間が省けたね」
 使い込んでいる黒剣を構え、迎撃態勢を取るリアナ。
「あら、こんなところにも迷い込んだ子ネズミさんが……ふふふ、知っていたけどね」
 余裕の笑みを浮かべる傲慢のスノーホワイトだが、彼女の豊満な肢体を魅力的に見せるドレスはところどころ破れ、ボロボロになっていた。
「あなたも可愛らしいけれど……世界で一番美しいのはあたしなの」
 妖艶な笑みを浮かべ、魔力によって魅了しようとするスノーホワイトを、しかしリアナは冷静に見つめていた。
「一番という証拠も、美しいという客観的根拠もない以上、その力は無意味だよ」
 あっさりと彼女の誇る美しさを否定する。
「もしあるとするのなら、それは貴女が一人で自分に認めているだけ」
「そんなことあるわけないでしょう? 誰もがあたしに魅了されて……」
 リアナはゆっくりと首を横に振る。
「貴女は貴女に魅了されているだけの愚かな存在だよ」
「あたしを愚かですって……!? 美しさと強さを兼ね備えたこのあたしを……!」
 そんなことを言われたことがないのだろう。激高したスノーホワイトは高ぶる感情のままリアナに細身の剣を突き出す。リアナはひらりと回避すると、ユーベルコードを発動させる。
「あなたが信じる『美しさ』を引き剥がしてあげるよ!」
 相手のユーベルコードを引き剥がす魔術師の手が、スノーホワイトへと伸びていく。世界で一番の美しさを誇る魅惑の魔力は相手を洗脳し、弱体化させるものだが、その力を失ったスノーホワイトが逆に能力を低下させていく。
「自分の信じる美しさを引き剥がされて……耐えられるかな?」
「……おのれ、よくも、よくも!!」
 憤怒の形相でリアナへと剣を閃かせるも、怒りに満ちた剣は返すのも簡単だ。リアナは黒剣を握りしめ、強く踏み込み剣を打ち返す。リアナにだって守りたい仲間がいる。世界がある。何かを守るには力は必要だ。でも――。
「私は力で誰かを従える貴女がいちばん醜いと思うよ」
 美しさの意味を履き違えた白雪姫は、自ら魔女になったのだろうか。それにすら気付かずに世界を統べる力を手に入れたと頂上から他者を見下して。鏡は表面しか映さない。だから気づけなかったのだ。その内面の醜さに。
 醜い心を露にするかのように、リアナの黒剣が傲慢な白雪姫を切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
●露(f19223)と。
限界突破の全力魔法で【姉妹達の軍行】を行使する。
召喚した『私』達に好きな場所へ自由に行けと指示。
そうそうオーラ防御と破魔を施しておかないとな。
…露。さりげなく一体を抱きしめるな…。
鏡には迎撃に適した場所を聞いて準備は整った。
さて。私達は鏡が教えてくれた場所へ行こう。

迎撃場所へついたら露に作戦を説明する。
魔術で召喚したのは人形だが私だ。
もし相手が私の位置を鏡で把握してくるとしたら…。
面白いだろう?鏡がどう返答するのか。
その時の相手の表情がみれないのは残念だ。

説明を終えてから露と距離を置く。
相手が鏡に露の位置を聞いた場合に私が居ては台無しだ。
相手が現れたら露のサポートする。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
突然召喚したと思ったらもう行っちゃうの?
一体くらいなら見つからな…バレちゃった♪
鏡に迎撃の場所聞いてそこに一緒に進むわ。

「わぁー。レーちゃんの意地悪さん」
ちびレーちゃん召喚の理由聞いての感想よ。
…相手の人ってこーゆー状況に強いかしら…。
なんだか不憫な気がしてきたわ。敵だけど。

それはともかく弱点もわかっちゃうの困るわね。
あたしは勿論レーちゃんだけど…れーちゃんは?
聞いたら『お茶が飲めなくなるのは困る』って。

えぇ?!レーちゃんまで離れちゃうの?
作戦ってことはわかるけど…嫌だわ~。むぅ。
鏡さんに何分くらいでどこから来るか聞くわ。
聞いてから数えて…時間丁度で【銀の舞】を。



●眩惑
 たくさんの鏡に埋め尽くされた迷宮。その一つ一つに映る自分自身を見つめ、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はぱちくりと目を瞬かせる。鏡がどんな質問に対しても本当のことを答えてくれるなんて。自分と同じヤドリガミとしての鏡は見たことがあるけれど、それとも違うのだろうか。
 そんなことを考えている横で、露の大好きな親友シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は真剣な表情で、リミッターを解除したかのような全身全霊の魔力を籠め、自身に似た戦闘用人形を召喚していた。その数は400体。
 それぞれが自由に動き出すと、シビラは自身と同じ顔を持つ姉妹たちに告げる。
「さあ、どこでも構わない。好きな場所に行くといい」
 これから敵と交戦するのだ。程々の強さを持つとは言え、攻撃を受ければ一撃で消滅してしまうだろう。それでも、少しでも役に立てばとオーラ防御と破魔を人形たちに施しておく。
「突然召喚したと思ったらもう行っちゃうの?」
 露がちびレーちゃんと呼んで可愛がっている人形があっという間に去っていくのを寂しそうに見送っているが、シビラは気付いた。その腕の中にさりげなく一体が抱きしめられていることに。
「……露。さりげなく一体を抱きしめるな……」
「……バレちゃった♪」
 これだけいれば一体ぐらいならバレないのではと思ったのだが、早々に突っ込まれ、露はえへへと可愛らしく舌を出すと、そっとちびレーちゃんを地面に下ろす。
「いってらっしゃい。……それで、敵さんはどうするの?」
 たくさんの人形を召喚したのはいいが、自分たちはどう動くのだろう。シビラに考えがあることはわかるが、露はまだその作戦の意図がわからなくて。
「よし、移動しながら説明しよう。鏡、敵を迎撃するのに適した場所を教えてくれ」
『その場所からまっすぐ進み、分かれ道をずっと左沿いに進んでいけば広い場所に出ます』
「わ、ほんとに答えてくれるのね」
 一瞬、いろいろと質問をしてみたい衝動にかられる露。シビラの家の場所を聞いてみたかったけど、そういえば答えてくれるのはこの国の中限定のことだったはずだ。質問は諦め、歩き出したシビラに遅れずについていく。
「敵は、こちらの位置を鏡に聞いて把握すると言っていただろう?」
「ええ、そうね」
「魔術で召喚したのは人形だが私だ」
 それは小さく多少デフォルメされた人形だとしても、それはシビラなのだ。
「もし相手が私の位置を鏡で把握してくるとしたら……面白いだろう? 鏡がどう返答するのか」
「わぁー。レーちゃんの意地悪さん」
 それは質問の仕方にもよるのかもしれないが。たくさんいるシビラの情報に敵が惑わされ混乱するとしたら。
「その時の相手の表情がみれないのは残念だ」
 しれっとそう言ってのけるシビラの横顔を見つめながら、露は敵ながら相手に同情してしまった。
(「……相手の人ってこーゆー状況に強いかしら……」)
 不憫に思いながらも作戦は理解した。
「そういえば、弱点もわかっちゃうって言ってたわよね。あたしは勿論レーちゃんだけど……レーちゃんは?」
 シビラはその問いに少しだけ考えを巡らせ、小さくぽつりと呟いた。
「……お茶が飲めなくなるのは困る」
「え、それだけ? むう、鏡さんは何て答えるのかな」
 あえて鏡にシビラの弱点を訊いてみたい気もしたが、本人に怒られそうなのでやめておく。それにいつだってシビラの言うとおりにしておけば上手くいったのだ。今回だってきっと上手くいくに違いない。
「さて、ここが迎撃に適していそうだな。だが、敵が露の位置を訊ねた場合、私が居ては台無しだ」
「えぇ?! レーちゃんまで離れちゃうの?」
 一緒だから心強いと思っていたのに。もちろん作戦だということはわかっているけれど、やっぱり嫌で。むう、と頬を膨らませてみてもシビラはすたすたと露から距離を置いて離れていく。
「やっぱりちびレーちゃんこっそり連れてきたら良かったなあ……」
 そんなことを呟きながら、敵が現れるのを待つ。
「ねえ鏡さん。敵さんはどのぐらいの時間でどこから来るの?」
『現在目的地を定めず移動中です』
「きっとちびレーちゃんたちのところね。でもきっといずれここに来るわよね」
 その時を待って、露はこまめに相手がこちらに向かっているかを鏡に訊ねる。そうして、鏡が告げたその予告時間と方向に敵を迎え撃つ。
「……全く、人形を大量に解き放ってこちらの目を欺くなんて……」
 いらいらとした調子で言葉を吐き捨てながら現れたのは、自分を世界で一番美しいと信じる傲慢のスノーホワイト。その美しい顔も、苛立ちに歪み、心の醜さが透けているかのようだった。
 現れたスノーホワイトへめがけ、露はダガーを手に駆け寄る。身に着けていた服を脱ぎ捨てれば、速度を増し、それはまるで銀色の軌跡を描く一陣の風の如く。
「弱点を突かれる前にやっちゃうわ!」
 完全に不意を突かれた形で露に迫られ、スノーホワイトは急所を避けるのでやっとだった。脇腹から滴る血を抑え、忌々しそうに露を睨む。
「人形……とは違う顔ね。こんな手にひっかかるなんて腹立たしい!」
「お前の弱点は、その力を過信しすぎるところだ。ほんの少し惑わせればこうしてぼろを出す」
 鏡に露と敵が交戦中であることを確認し、すぐさま駆けつけたシビラがにべもなく言い放つ。
「あなたね、あの人形の……」
 シビラにばかり気を配っていてすっかり露の存在を失念していたスノーホワイトの様子に、姉妹たち――人形たちの健闘を心の中で称えるシビラ。不意を突き、こうして相手に深手を負わすことができた。あとは露の補助に回ってこの傲慢な敵を骸の海に還すだけだ。
「過信してなんかないわ。あたしは世界一美しくて強いの……」
 そう自分に言い聞かせるように呟くと、脇腹の傷が癒えていく。白雪姫の物語にある美しき美貌と魔女の魔力、そして王子の愛による再生能力をその身に宿し、力を得ているのだ。けれどその代償に、目からは次々と血の涙をあふれさせている。
「あの人形のように消し飛ばしてあげる!」
 毒りんごに込められた魔女の魔力が嵐のようにシビラを襲うが、オーラ防御でその力を軽減する。露の弱点である自分を狙うのなら、相手は露への対処はおろそかになるだろう。ならばこちらは防御に徹するまでた。
「レーちゃんをいじめるのは許さないから!」
 シビラを狙うスノーホワイトへ、銀色の風が再び襲う。毒りんごを口にしても再び蘇った白雪姫だとしても、王子の愛なくしては何度も甦れはしないのだ。
 露の銀の斬撃がスノーホワイトの傷を深くしていく。
「こんな、はずじゃ……」
 焦りのようなものを見せはじめたスノーホワイトは、血の涙を流したまま背後の鏡に触れると、鏡がくるりと回転し、そのまま鏡の裏へと姿を消す。形勢不利を悟ったのだろう。
「ちびレーちゃんたちのおかげだね」
 無事に戻ってきた人形を露がぎゅっと抱きしめる。
「敵もかなり追い詰められているな……追うぞ」
「あ、待ってレーちゃん!」
 鏡に敵の消えた先を訊ねると、シビラはすぐさま動き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
鑑よ鑑。俺の年齢は何歳で、日本の何学何年生?(←15歳・中3)
うむ。貴方は本物だ。して、もう一回だけいいか?
■問
七人の小人の『動きのクセ』を教えてほしい。
後はそれだけ……

■闘
移動中は【野生の勘】を巡らせ奇襲を警戒、対峙したら
【神宿】を発動。
代償は【呪詛耐性】【激痛耐性】【毒耐性】で我慢だ。

事前に得た情報をもとに小人達の攻撃を【見切り】つつ
【残像】を見せて翻弄し、戦うフリをしながら本丸の
スノーホワイトの元へ【ダッシュ】で接近。
危ない時は【武器受け】で守る。

辿り着いたら『心切』手を掛け、【破魔】の力を
込めた一太刀で斬り伏せてやろう。
此の刀の美しさも、其方に負けてないだろう?

※アドリブ歓迎・不採用可



●彼女が信じたもの
 不思議の国に広がる鏡の迷宮。オウガ・オリジンに戯れに殺された、かつての忠臣「鏡の女王」の怨念が籠もったその場所に、問いかければ真実を告げる鏡があるという。
 数多ある鏡が、この場に転送されて来た猟兵の一人を映し出す。
 蛇の鱗と牙、猛禽の翼と爪、牛の角を持った長身のキマイラは、鍛えられた刀を携えた凛とした雰囲気を纏う剣豪だ。
 彼――愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は、真実を告げる鏡を半信半疑の面持ちで見つめていた。その真偽を確かめるべく質問を投げかける。
「鑑よ鑑。俺の年齢は何歳で、日本の何学何年生?」
 この不思議の国内部のことなら何でも答えることができるという鏡が、今現在ここにいる自分の情報を正確に答えられるか試してみたのだ。
『年齢は十五歳。日本における中学三年生に当たります』
「うむ。貴方は本物だ」
 猟兵となった今、このような不思議なことには慣れている。ともあれ、この鏡が間違ったことを言っていない以上、その答は信頼に値するということだ。その長身と大人びた風貌と落ち着きから、歳上に見られることの多い清綱の年齢を正確に当てたのだ。わかる人ならわかるかもしれない、中学生が制服としてよく着る学ラン風の改造服に陣羽織を羽織っているのだが、鏡がそのことをヒントとして受け取ったかまでは定かではない。
「して、もう一回だけいいか?」
 こういった不思議なものをむやみやたらに使うのはよくない気がして。最低限の質問に留めようと、清綱は一番知りたい情報を問いかける。それは、オウガが召喚する七人の小人たちの動きに関するもの。
「なるほど。情報、感謝する」
 それだけわかれば十分だ。相手もこちらに気づけば向かってくるだろう。そう考え、清綱は鏡の迷宮へと足を踏み入れた。

 鏡だらけの道中は、鏡合わせに映る自分の姿が永遠に続いているようで、得体のしれない深い場所に引きずり込まれそうな気さえする。相手の居場所を聞いてはいないが、必ず敵はこちらに向かってくるだろう。野生の感を働かせては、奇襲に備える。目に映る鏡の中に、自分以外の者が映るなら、いち早く気づくこともできるだろう。そうして警戒しながら進んでいると、少し開けた場所に出た。
「あら、子ネズミちゃん……と言うには少し大きすぎるけれど、待っていたわよ。ちょうど良かったわ。他の子ネズミちゃんを始末するのに、僕が欲しかったのよね」
 既に他の猟兵と交戦した後なのだろう。ドレスはボロボロになり、あちこち負傷している様子の傲慢のスノーホワイトだが、その口調はまだ余裕たっぷりだった。世界で一番美しく強い自分の敗北などありえないと思っているのだ。
「傲慢の罪に囚われた哀れな姫よ、貴女を救う王子は現れないが、せめてその罪から解き放とう」
 愛刀を手に清綱は目の前の敵を討つべく、ユーベルコード【神宿】を発動させる。天空舞う剣神、鬼の如き鍛冶神、雷を司る蛇神ら三柱の神の御霊をその身に宿し、自身を超強化するその力はもちろん強力ではあるが、その力の強さゆえ代償も大きく多用はできない。
 身体に神の力が巡っていくのを感じると同時に、毒を受けたかのように身体中から脂汗が滲み出る。手が震え、視界が滲みそうになるが、何とか耐える。
「あら、どうしたの? あなたが怪力の持ち主だってことはわかっているのよ。でも近づけなければ意味はないわ」
 スノーホワイトは見透かすようにそう言うと、勇猛で忠実な七人の小人を召喚する。高い戦闘力と殺戮技能を持った小人たちは、スノーホワイトの命令で清綱へと狙いを定める。
(「……来たな」)
 敵が小人を召喚することはわかっている。そして小人の動きの癖は鏡に訊ねたのだ。小人たちは防御を考えず、攻撃に徹して突っ込んで来る。そして危機が迫ればスノーホワイトを守ろうとする。
 ならば、まずは小人たちを相手にし、守らせる前にスノーホワイトへと一気に攻撃を仕掛ければいい。
「忠臣と言えば聞こえはいいが……この者たちも魅了されただけに過ぎないのかもしれないな……」
 少し憐れむように自我を失くした様子の小人たちを見つめ、そうして清綱は刀を振るう。攻撃一辺倒の動きは隙が大きい。天空舞う剣神の如く、宙を舞い、小人の一人を斬り捨てる。次々と鈍器を手に襲い掛かってくる小人たちを、次は雷の力を宿した一撃で痺れさせる。しかし倒し切ってしまっては相手の油断を誘えない。小人たちの攻撃を武器で受けつつ、追い詰められるように見せながらも残像を見せては相手を翻弄する。
「なかなかやるじゃない。でも小人たちにてこずっているようじゃまだまだね」
 敢えて小人たちを倒し切らずに攻防を繰り返していた清綱だが、スノーホワイトのその余裕な様子を見て、今だとダッシュで肉薄する。
「貴女は自分を美しいというが、それ以外のものを美しいと認めるのか?」
 鬼の如き鍛冶神の力を宿した一撃がスノーホワイトのドレスを切り裂く。致命傷を避けたスノーホワイトだが、余裕の表情を強張らせ、清綱を睨んでいた。
「美しい存在はあたしだけでいいの」
 細身の剣の切っ先を清綱に向け、憎々しげに吐き捨てる。数多の鏡が彼女の姿を映している。美に執着した傲慢なプリンセス。本当に彼女は自分が世界で一番美しいと信じられるのだろうか。
 倒すべきオブリビオン。けれど彼女もまた過去に囚われた哀れな存在なのかもしれない。ならば還そう。清綱の刀は魔を滅する。
 先ほどの一撃がスノーホワイトを痺れさせていた。動きが鈍くなったことに本人が気づく前に、清綱は動いていた。
 退魔の刀【心切】に破魔の力を乗せて、三神の力を宿した清綱の一太刀が傲慢な白雪姫を切り伏せた。
「……此の刀の美しさも、其方に負けてないだろう?」
 優しく問いかけられたその言葉に、返す言葉はなかったけれど。
 彼女は逝った。自分が信じた誇り高く美しい姿で。
 鏡はただ静かにその姿を映し出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日
宿敵 『『七罪』傲慢のスノーホワイト』 を撃破!


挿絵イラスト