水着コンテストしようぜ! 勝つのは俺様……世界一位様だ
●24時間年中無休、スーパーきまヒュ~健康パークはお前のこと……待ってるぜッ!!
キマイラフューチャーではおバズリ騒ぎが常である。あっちでイイネ、こっちでウルトライイネ。超・イイネスプリンクラーが稼働している此処は、スーパーきまヒュ~健康パーク。
元は普通(キマイラフューチャー基準)の温泉だったのだが、温水プールにジェットコースターや長蛇の流しそうめん掴みチャレンジなどなど、施設や遊具を増やしに増やしまくってよくわからん塊スピリットになった結果、超どデカい娯楽盛りだくさんアミューズメント温浴施設へとギガ進化してしまったそうだ。
そんなスーパーきまヒュ~健康パークでは、水着コンテストが開催されていた。
猟兵たちのコンテストをみた真似っこしたがりキマイラたちは、ぼくもわたしも審査員。
参加者のキマイラだってもちろんいるが、そんなことより審査員。
俺たちはイイネをもらうよりイイネをしたい。
「いいねー! かわいくて似合ってて素敵!」
「ありがとー! 審査頑張ってねー!」
「ね、ねっ。コンテスト終わったら、アイス食べにいこーよ! 波動球アイス食べるんだ~」
「知ってるそれ! 最近二百十六段まで積めるようになったやつだよね!?」
「誰だ!? 流しそうめんにスイカ流したやつは! 取れなかったからもう一回流してよ!」
「おい大変だ! 次はメロンよりデカいカブがくるぞ!?」
「ええ!? 体で受け止めるしかないじゃん!!」
わいわい、がやがや。ごろんごろんぎょえーっ。
カブに惜し負けたキマイラが悲鳴を上げたが、皆和気あいあいと面白おかしく過ごしている。
そんな楽し気な空間に釣られてやってきた一人の少年と、集団がいた。
「ここか。水着コンテスト会場は……」
彼の名はパスト。水着に着替えた彼は、オブリビオンだ。
水着姿でフランクフルトを持ち歩き、それを眺めて嬉しそうにペタペタと足を踏む彼は、それでもオブリビオンだ。
もっと言えばフォーミュラ候補だ。だって俺様目指しているもの、オブリビオン・フォーミュラ。
「あー君ィ! 水着コンテスト、参加しない?」
「もちろんするぞ。俺様は世界一位だからな! 当然、一位は俺様、パスト様が頂いていくぜ」
「一位? ……ああー。ランク付けとかそういうのはないよ?」
「……は?」
「うーん。強いて言えば、みんな一位? 楽しかったら優勝」
「……。……景品も何もないのか」
「参加賞でアイス積み放題チケット配布くらいかなあ。
まあ、こんなチケットなくても言ったら積み放題だから。記念に取っておくのはアリかも!」
失望。
パストの現状を表すにはこの言葉が最適だろう。彼はキマイラたちに幻滅した。
楽しいだけでいいのか。そんな腑抜けた考えは間違っている。
闘争心があってこそ、競争というものは盛り上がるのだ。
これは、決してCONTESTを名乗って良い代物ではない。
俺様はこんなちゃっちいOYUGI-KAIに出るために遠征しにきたわけではない。
「…………やる」
「あ、あー。えっと、景品はほら、オレがなんかあげるから、泣かな……」
「お前たち、面白楽しいことが好きなくせにつまんねー催しして恥ずかしくないのか?」
キマイラの気遣いに冷たい言葉を放ったパストは、息を吸う。
不安を感じ取ったキマイラはその場を去ろうとしたが、判断が遅かった。
「…………この俺様が、開き直してやる。
……本当の水着コンテストってものをお前たちに理解らせてやるよオ!!」
高々とコンテスト乗っ取りを宣告した彼は従えていた優勝候補とともに、水着コンテスト会場だけでなく温浴施設そのものを破壊しに回る。
流しそうめん機はひん曲がり、ジェットコースターは空の彼方へ。温水プールの底には穴が開き、壁にはカブが突き刺さってたりアイス屋さんはパストが召喚した龍によってアイスともども燃え尽きた。
唐突な破壊行為にキマイラたちは混乱して逃げ回るばかり。助けて猟兵! キマイラたち、どうなっちゃうの~!?
「今から此処が会場だ! そして俺様こそが……No1だ!!」
どうなるも何も、お前たちは俺様を崇めればいいんだよ。
新たなオブリビオン・フォーミュラだってな。
●猟兵ー! ふぁい、おー!
「……以上が、吾輩が見た予知になります。
いやはやー。恐ろしいものでありますね、自称フォーミュラのパストとやらは」
グリモアベースにて。ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)は自身が見た予知を猟兵たちに語っている。
場所はキマイラフューチャー。規模の大きい温浴施設が、オブリビオンによって破壊されてしまうという内容だった。
「とはいえ、まだこのような惨事は起こっておりません。
皆さんにはこの予知を未然に防いでもらいたく、現地に向かっていただきたい所存であります」
どうやらまだ事件は起きていないようで、ソルドイラが展開したグリモアの先ではキマイラたちがイイネをしあって盛り上がっている。
オブリビオンが現地に現れるまで、いささか時間もあるようだ。
「温浴施設を楽しむくらいには時間に余裕があると思いますし、せっかくだからどうです?
これから働いてもらうわけですし、大いに楽しんでも罰は当たりません。
パストは水着コンテストをメインと捉えているようですが、キマヒューの複合施設故に色々あります。それに加え、コンコンしたら可能性は無限大です」
規模が偉大すぎますよねえ。と、ソルドイラはからからと笑う。
転送先でどう過ごすかは、各々自由だ。
グリモアを展開させたソルドイラは、準備が整った猟兵から次第に現地へと向かわせるのであった。
拳骨
プレイング受付状況は、お手数をおかけしますが、マスターページをご確認ください。
●舞台
温水プールを中心に、遊具や出店、その他諸々がある遊び場です。
1章は、自由時間です。色々ありますので、何をするか何があるかは、言ったもん勝ちだと思います。
2章・3章では、水コン優勝候補との戦闘になります。
●雑記
拳骨です。2作目です。コミカルな依頼だと思います。
再送ナシで書き上げられます!と胸を張って言える実績がない故に、再送前提の姿勢を取らせていただきます。申し訳ございません。
お手数をおかけするやもしれませぬが、誠心誠意努めてまいります。よろしくお願いします。
第1章 日常
『コンコンしたらお湯が出た〜キマイラ温泉』
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POW : 湯もみ体験だ! 歌を歌って湯を揉んで、ネタにもなるぞ!
SPD : コンコン間欠泉?! コンコンしたら少し離れた場所で吹き上がるぞ。ダッシュだ!
WIZ : 心身ともに休めるのも大事だ。心の洗濯で、明日の活力にしよう。
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笹乃葉・きなこ
●アドリブとかお任せ
みずぎーみすぎーみすぎこんてすとー♪
へぇー。珍しいオブリビオンも居るもんだべなぁー。
ま、面倒ごとが起こる前にたっぷりこの施設を楽しませて貰うだべぇ♪
服装はもちろん今年の水着コンテストの水着!
て、ここ水着で活動しても大丈夫だべかぁ?
せっかくだから温泉使って、面倒ごとまでリフレッシュもしてぇけど
波動球アイスも気になるんだべなぁ。二百十六段まで詰めるアイスってどんなアイスなんだべぇ。積み放題チケットが配布されてるから名物なんかなぁ?
アイスをつんでから温泉につかるのも悪くねぇなぁ…。
あー、でも湯もみ。湯をもみもみするのも悪くねぇなぁ。楽しそうだもんなぁ。湯をもむの。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
[早着替え]で水着に着替えてやって来たよ…
この世界に来るのも久しぶりだね…
相変わらず派手で賑やかな場所だ…
いろいろあるけど…え、湯浴びじゃなくて…湯揉み?
揉むの…湯を?そういうものもあるんだ…すごいな未来世界…
じゃあ鉄塊剣をお湯に入れて揉むとしようか…
え…歌いながら揉むの…?
歌うのは得意じゃないし恥ずかしいけど…
[恥ずかしさ耐性]で我慢しよう…
ごほん…
はぁあ~
きまヒュイイとこ 何度もおいで~
はぁ超イイネェ超イイネェ~…
やっぱり恥ずかしいし結構体力がいるから疲れるね…
[継戦能力]で頑張ろう…
はぁあ~
きまヒュイイとこ おバズリ騒ぎ~
はぁ超イイネェ超イイネェ~…
…これいつまで続けるの?
●うぇるかむ とぅ ようこそスーパーきまヒュ~健康パーク!
スーパーきまヒュ~健康パーク、略してスキマパークは大体八つくらいのエリアで構成されている。メインはもちろん、施設に入場したらすぐ現れるどデカい温水プール。左右に伸びるそれぞれの道を進んでいけば、噴水公園やスパガーデンなどに繋がるらしい。
水温が三十度前後であろう流水プールの横を歩く笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は、ハイビスカスの髪飾りから流れる漆黒のサイドテールを揺らし、鼻歌を交えながら施設の中央へと歩き向かっていた。
「みずぎーみすぎーみすぎこんてすとー♪」
きなこは水コン一位を狙うオブリビオンらを珍しいと評価する。一体どこから水着コンテストの情報を入手したのだろうか。
自前の水着で参加しようとしているらしいから、なかなかのエンターテイナーである。しかし人を楽しませず、自分だけが楽しむのはスターの風上にも置けないし、腹いせに会場を破壊する癇癪持ちは面倒極まれり。
「……ま、面倒ごとが起こる前にたっぷりこの施設を楽しませて貰うだべぇ♪」
絞めれば大人しくなるオブリビオンのことを今考えるのは仕方がないし勿体ない。
どうせあっちからやってきてくれるのだ。迎撃準備を整えるためにも、まずはこの施設を楽しむのが乙なもの。
まずは温泉にでも浸かろうかと考えるきなこなのだが、ところで彼女が着ている水着、めっちゃ可愛いのである。
淡い空色をメインカラーに和風要素を取り入れたビキニスタイル。羽のような波線を描く袖と羽織、袖口が締まっているのがまた可愛いのだ。
小さな星々や太もものレッグポーチの黄色は柔くも存在感を放ち、さらにふんどしのような形態をしたビキニボトムスのグラデーションがとっても綺麗。
すれ違うキマイラたちはきなこに『カワ・イイネー!』と親指を立てて賛称する。きなこが彼らに手を振り返してみると、ヒーローのファンサによってキマイラたちは大喜びするしかない。
そんなキマイラたちの手元にはアイスやフライドポテトなどの食べ物が握られているのだが、二百六段まで積めるという波動球アイスを持つ者はいなかった。
二桁まで積んでいるトラのキマイラは見かけたが、流石に三桁台となると持ち運ぶのも容易ではないと推測される。
「波動球アイス、一体どんなアイスなんだべさ。積み放題チケットが配布されてるから名物なんかなぁ?」
アイスを積んでから温泉に浸かるのも悪くない。風呂上がりのアイスは良い物であるが、風呂に入る前に食すアイスも良い物なのだ。
どうしたものかと腕を組むきなこは、下唇を片手の親指でなぞる。それは彼女の癖で、さらにはユーベルコードであった。
アイスのタイミング。温泉の前か後か。そもそも未だ販売所を見ていない。風呂上がりのアイスが遠いところにあったらちょっぴり嫌である。しかし足先向かうは温泉沸き立つ源泉地。そういえば此処の温泉はくせのない、さらさらとした湯触りだとか。
「……ん。温泉の匂いだべぇ。あら、つまり此処がそうだべなぁ」
考えているうちにたどり着いたのはサムライエンパイア、にやってきたのかと勘違いする程に重厚感を放つ木造建築物。
飾られた提灯はイルミネーションのように賑やかに、優しい明りだったものは派手にネオンカラーで色づけられている。なんともミスマッチだが、未来的雰囲気があるような、ないような。
「はー、立派なはずなんだがなぁ…………ぽいといえば、ぽいんだべが」
玄関口である引き戸の周りには、アロハシャツを着たタヌキの置物やストレリチアの花を筆頭にしたトロピカルガーデン。
黒板看板には白いインクで『湯もみ、あるよ!』と、とてもシンプルな宣伝が書かれている。
「湯もみ」
湯もみとは、高温の湯を冷ますために木板などで空気を取り入れつつ湯をかき混ぜ、温度交換を行う作業である。
水を差してしまえば、温泉の効能が薄れてしまうがために編み出された方法だ。それに、ただ温度を下げるだけでなく、湯を柔らかくする効果があるらしい。
「湯をもみもみするのも悪くねぇなぁ。楽しそうだもんなぁ。湯をもむの」
きなこは引き戸を開けて、中へと入っていく。施設内はいたって普通のつくりをしていて、どこにもトロピカル要素がない事にきなこは少しだけホッとした。
●
更衣室から出てきた仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)はビキニクロスでスキマパークにやって来ていた。
手品のような早着替えを行った彼女が着ている、洋紅色をメインに金色をアクセントにした水着は美しくもあり、可愛いのだ。
ビキニトップスの薔薇の刺繍、ツタの形をした三連の紐は実に洒落ていて。日に照らされる薄布のパレオは金魚の尾のように。
麦わら帽子のリボンは親しみやすさを感じる朱色、首元のチョーカーからは青い炎が出ている気がするが格好いいから大丈夫だと思った。
『エレガント・イイネー!』や『ウツクシ・イイネー』とジャンルが統一してそうでされない賑やかイイネに、アンナは久々に訪れても変わらないキマイラたちのフリーダムな空気を体感する。
「いろいろあるけど……どうしようかな」
なんせ八つものエリアに分けられ、一日あっても制覇は厳しい規模のどデカい温浴施設。初見で行くと混乱して迷子になりやすいために監視員キマイラはプールサイドではない完全陸地だって見守っている。
困った時は現地民におすすめを聞くのが手っ取り早いのである。猟兵に話しかけられたクジラのキマイラと、キリンとフクロウが合体したキマイラの二人組ははしゃぎながらもアンナの質問に答えていたが、途中から雑談に代わっていってしまっていた。
「温水プールもいいんだけどね、温泉いいよ。温泉! 人気がなさ過ぎて逆に穴場スポットなの」
「中央にあるけど、あんまり行かないよねー。温泉はスパの方が近いから俺はそっちに行きがち」
「あー、距離はあるよね。あの周り何もないし……あ、でも湯もみできるのよ!」
「……ゆもみ?」
「うん、湯をもむの」
「揉むの……湯を?」
「うーんと、なんかねー。こう、まず踊る……踊るよね?」
「え、そんなのあったっけ。起源にまつわる話聞いた後、すぐ混ぜなかった?」
「あれ、そうだっけえ……?」
湯浴びではなく、湯揉み。さらには踊りもする、らしい。
(すごいな未来世界……)
想像がイマイチ難しい湯揉み。それを確認すべくアンナは施設の中央へと向かうことにした。
道中にキマイラは居れど、やはりどんどんその数は少なくなっているようで。微妙に長い道のりには休憩用のベンチがまばらに置いてあるくらいで、味気ないと言える通路だとアンナはぼんやり考える。
「いかがっすかー。アイスいかがっすかー」
(アイス? ……アイス屋さんだ)
道の向こうからやってきたのはパステルカラーの移動販売車。屋根には垂直に立てられたアイスとコーンのオブジェクトが飛び出すかのように生えている。そしてそのアイスクリームの先には目的地であろう湯が揉める施設が存在していた。
「今はアイスより、湯揉みかな……」
湯揉みを体験したら、アイスを食べるのも悪くないかもしれない。アンナはひとまずは第一の目的を達成すべく、アイス屋の間延びした呼びかけを背中で聞き届けた。
●
たまたま合流をした二人の猟兵は、この施設の管理を任されているらしいネズミのキマイラから湯もみの説明を受けていた。
「なるほど……湯もみって、木べらで湯をかき混ぜることなんだ」
「うん。こうねー、腕だけ使ってやるの。湯船からはちょっと身体遠ざけてー、近いと微妙になるんだよね」
「ふんふん、水吸ったら重くなりそうだべぇ」
「そうだね、重いよ! 歌は二回繰り返すから、最後の方はヘロヘロになっちゃうんだ」
歌を二回繰り返す。歌いながら揉むのだろうかときなこが聞いてみるとその通りらしく、踊りではないのかとアンナが問えば。
「踊りはねー、先々月だったかな。今月は歌強化月間!」
「歌強化月間」
「つまり、先々月は踊り強化月間だべ」
「先月は?」
「誰も来なかったから何も強化できなかった……だから猟兵さんたち来てくれて嬉しいよー!」
切り替えが早いのか、ポジティブシンキングなのかネズミのキマイラは一度は落ち込んだそぶりを見せるもすぐ立ち直って説明を再開する。
そんなに集客が少ないのだろうか。アンナもきなこも少しネズミのキマイラが心配になった。
「拍子木でカンカーンって音頭取ったらスタートでね。今から歌うから歌詞覚えてねー」
歌いながら木板を動かすネズミのキマイラに、二人は真剣に見つめるも不思議な歌詞になんとも言い難い感情になっていた。
なんだ、なんだこの、キマイラフューチャーって感じの、よくわからない。風土があるけど、洗脳されそうな感覚。
「こぶしが効いてるべー……歌詞は頭に張り付いて離れそうにないべさ」
「これを歌いながら……これを歌うのか。我慢、しよう」
「まあまあ、楽しんだもん勝ちだべぇ」
「はあいっじゃ、やってみよー!」
息を上げているネズミのキマイラは全身汗をかいており、それほどに体力を使うものであることを教えてくれた。
しかしどうやらこのキマイラ、体力は少ない方らしく、そんなキマイラでも湯もみはやり遂げられるのだ。
きなこに「すきま~」という文字が書かれた木板を渡し、同じものをアンナに渡そうとしたが、アンナはネズミのキマイラに断りを入れる。
「木べらじゃなくて鉄塊剣でもいいかな」
「わ、それ面白そうだな。いいよー!」
「ありがとう。歌うのは得意じゃないし恥ずかしいけど……ごほん……」
準備が整った三人。一人は鉄塊剣を持ち、一人は木板を持ち、そして一人は拍子木を持ち、カンカンと二回ずつ鳴らして合図を送る。
拍子木の音を聞き遂げた二人は手に持つ道具を左右に揺らすべく腕を上げて下げて、上げて下げてを繰り返して、先ほど教わった歌を歌い始めるのだ。
「はぁあ~ きまヒュイイとこ 何度もおいで~ はぁ 超イイネェ 超イイネェ~……」
「はぁああー きまヒュイイとこ おバズリ騒ぎー はぁ 超イイネェ 超イイネェー♪」
一人ではなく二人で行えば恥ずかしさの耐性も上がり大丈夫かと思ったが、アンナにとっては案外そうでもなかった。声が反響するのが予想以上にきた。湯を揉むことに集中して、湯の熱とともに恥ずかしさの熱も鉄塊剣で混ぜて消していく。
対してきなこは楽し気に木板を動かし揉んでいる。単純作業に見えるが、体軸を保ち、リズミカルに木板を動かすのはかなり体力がいる。野生児故か、疲労は蓄積されないのだが運動量はどんどん増える。
「はぁあ~ きまヒュイイとこ 何度もおいで~ はぁ 超イイネェ 超イイネェ~」
「はぁああー きまヒュイイとこ おバズリ騒ぎー はぁ 超イイネェ 超イイネェー」
かこん、がこんと一定のリズムで湯舟に叩き、音を出す。アンナもきなこも、額に汗を浮かばせながら歌っていく。そろそろ二回繰り返した歌も終わりに近づいていて、ネズミのキマイラが拍子木を鳴らしたことによって湯もみ体験は終了したのだった。
「はあい、お疲れさまー! いい感じ、すっごくいい感じ!
あれだねこれは、アイス屋のチケット九枚プレゼントだ。でもその前にお風呂浸かろうねー!」
木板を返却し、鉄塊剣を預けた二人はもみ立ての湯に浸かり、身体をリフレッシュさせる。汗を流した後に入る温泉は、ごくらくごくらくと言いたくなるものだ。
次に向かう場所は、アイス販売車のもとだ。少し距離はあるが、湯冷ましにはきっとちょうどいい道のりになるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガンズ・ハルモニア
んー
ガンソルジャーを底深プールの横に置く。
あ、武装は非武装だよ。サドンデスカッターとか危ないもんね。新しい遊具かな?ガンソルジャーの上に陣取る。
ふっふっふ。熱い。コートが熱い。でも脱がない。水着は着てもコートは絶対脱がない。やだやだ絶対脱がないもんね!あ、そこ、登るな。
そこらで調達した水鉄砲をピュー!
ガンソルジャーの上は私専用!登りたければ私と仁義なき水鉄砲勝負しろー!(ガキ大将ムーブ)
ワーワーギャーギャー
ちょっと待ってほしい。ここ逃げ場がないんだ。四方から撃つのはひきょぎゃー!!
ガンソルジャーの上から底深プールに堕ちる。
あ、コートが水吸って重い。水を吸った服は重い!沈むー!!
がぼがぼがぼー
●仁義なき戦い 素喜馬乱闘篇
両手にそれぞれ、己の得物であるレーザーガンによく似た形をしたクールな見た目の水鉄砲を持ったガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)は、川や入り江、滝つぼなどをモチーフに作ったプールが寄り集まるアクティブゾーンを訪れている。
彼女が持つ水鉄砲は先ほど売店で購入したもので、他にもブラスター型の水鉄砲を腰に装備している。銃弾はずっしりと重く、軽いプラスチックの本体に存在感を与えてくれる。
他にも手榴弾代わりになる水風船や、トルネードショットが飛ばせると売り文句のタンク型などが売店には置いてあったのだが、結局は使い慣れた形のものをガンズは手に取っていた。
「んー」
くるくると水鉄砲のトリガーガードに指を入れて回すガンズは水着を着て、その上にコートを着ている。
水着コートだ。水着とコートだ。それは想像力が豊かであればあるほどに破壊力が増すスタイルなのだ。
見えないものを見ようとしてコートの中身を観測するのは野暮だと思う。見えないからこそ予測ができ、真実という答えを求めて討論を起こす。
結果がわからない限り、可能性は無限大なのだ。正に『インフィニティ∞イイネ』である。
いいよね、水着コート。格好いいと可愛いの両立に二丁拳銃を加えたらスタイリッシュクールガンアクションが展開できそうだもの。
「なんだこれー、すっげぃロボじゃん?」
「マジン・イイネー……誰のだろう。下にレジャーシートがあるから私有物だよね。カコイイ」
ガンズは底深プールの横に大き目のレジャーシートを引いて陣地を張り、その上に非武装のガンソルジャーを置いてきていた。今やその周りにはキマイラたちが集まっており、鳥のキマイラと猿のキマイラが前に出てまじまじとガンソルジャーを観察している途中だった。
ガンソルジャーにはロマンがいっぱい積んである。兵器だって盛りだくさん。万が一、サドンデスカッターがオブリビオン以外の何かを切り刻んで不慮の事故が起きてしまったら危険が危ないダメ絶対。
ガンソルジャーの持ち主であるガンズは集うキマイラたちの間を潜って己が陣地へと帰還し、そしてガンソルジャーのてっぺんに素足で軽々とよじ登った。
ガンズに続いて鳥のキマイラが登頂を目指そうとするも。
「あ、そこ、登るな」
「えー。ダメー?」
「うーん……ダメー」
「ダメかー」
「ダメ。だが、そこはちょっと待ってほしい」
ダメだった。でも待っていると何かが起きるらしい。鳥のキマイラは素直に下から仁王立ちのガンズを見上げる。対してガンズはニコリと笑い、水鉄砲を構えたと思いきや射撃を放ったではないか!
キマイラの足元を狙ったそれは威嚇射撃である。今回は実弾ではないので相手にギリ当たるように撃っているぞ。
攻撃を受けた鳥のキマイラは水の冷たさに驚くも、笑いながらガンズの挑発に乗ることにしたようで。
「わっ! やったなー!?」
「ふっふっふ。してやった!」
ガンズは前を限界までに上げ閉じたコートの裾をなびかせ、周囲のキマイラたちに高々と宣告する。
「ガンソルジャーの上は私専用! 登りたければ私と仁義なき水鉄砲勝負しろー!」
●
「は、はわがーーーーー!!? が、顔面セーフだけどあばぼぼごっ」
「ああっと! 兄貴の顔面が猟兵のスナイプによって水まみはばももも!?」
「はっはー! 他人の心配をするとは優しいなあなた! だが私は容赦なく顔面に水をぶち当てる」
「うむむ。あの猟兵さん、足場が小さいはずなのに避けるし、水鉄砲の威力は小さいのに的確だー!」
ガンズ対キマイラズの決闘には有志のカメラが回されており、騒ぎを聞きつけた新たなる挑戦者が水鉄砲片手に参戦して勢いを増していく。
その様子を写真に納めればウルトライイネ感謝祭。明日の新聞の一面を飾りそうな写りの良さに、撮影者は強く頷くことしかできない。
さて、多少は被弾するも水なので大丈夫なガンズ・ハルモニア。この戦いに顔面セーフなどのルールは存在しない。最後まで立っている者が強いのだ。生き残った者が一番なのだ。
小さな足場ながらも回避行動を取れば身体はどうしても運動してしまう。すると筋肉が熱を発して身体が熱くなる。
つまり、熱い。長袖でコートの前は締め切っていて、通気性がよろしくない服装は熱が籠ってしまうので大変熱うございます。
それでもガンズは頑なにコートを脱ごうとしない。水着を着ていてもコートは絶対脱がない。
これは意地である。ここでコートを脱いで第二形態になるのもありっちゃありだが、今回はこのスタイルで行くと決めたのだ。コートだって水着です。これが彼女の完全形態といっても過言ではないのである。
「ふはははー!! どうしたキマイラたち! 此処に登りたくないのかキマイラたちー!
ふふ。……おっと、水風船。てい」
キマイラズを挑発して笑うガンズの頭上には並々と水を取り入れた桃色の水風船が飛んできた。
ガンズは焦らずにサッカーの要領で胸トラップを行い、足首に落として器用によそへと蹴ってみせる。
そこが唯一、ガンズが見せた小さな隙であり、キマイラたちにとってのチャンスであった。
「今だーーーっ! 撃て撃てーーーーーー!!」
「畳みかけろー! チャンスタイムだーー!!」
「う、うわーーーー
?!?!? いつの間に四方に分散していぎゃーーーー?!」
ガンズが気づけなかったキマイラたちの位置取り。それはガンズが水風船を対処しているうちに取られた行動だ。逃げ場がないガンソルジャーの上に居るガンズを討ち取るにはベストな作戦である。
キマイラ一人では猟兵には敵わないが、束になればこのように水遊びではなんとか猟兵を追い込めることができるのである。
「あ、コートが水吸って重い。水を吸った服は重いし、動きづらい!」
「乗り込めー! 今ならあのカッコいいマシンウォーカーに登れそうだぞ!!」
「近距離だ! ゼロ距離で撃ち込みだ! 被弾を恐れるなー!!」
「待てー!! ガンソルジャーには登らせない! が!! 射程距離が短くなって当てやすくなるのはこっちもおあっ!?」
つるり、と。無音だったが、確かにそんな音が耳に聞こえた。
その音を発したガンズは、ガンソルジャーから足を離して宙に浮いており、ガンソルジャーの横にあった底深プールへと独特な手段で向かっていた。
この場の全員が同じことを思っただろう。あっ、と声を出したであろう。
うっかり足を滑らせたガンズは冷静に沈むと判断する。次に、何故このようなうっかりが起きたのか、短い時間で高速に状況分析をし始める。
……足元、だいぶ水で濡れてたんだなあ。コートの水滴も結構落ちていた気がする。
そっかー。いや世界が横になったと思ったら逆さになろうとしていて、うんうん。頭は冷静だけど、反射的に叫んじゃうんだよねぇ。
「あ、頭から沈むーーーーーーーー?!!」
勢いよく水面にダイブしたガンズは、がぼがぼがぼーと泡を吹かせて下の方へと沈んでいく。この後泳ぎが得意な馬のキマイラ監視員が彼女を引き上げてくれるのだが、そこは割愛させていただく。
救助されたガンズが見たガンソルジャーの上では、四方向同時攻撃作戦を考えた鳥のキマイラが決めポーズを取っており、ガンズは鳥のキマイラを筆頭にキマイラたちへグッドサインを贈る。
「「グッドゲーム!!」」
そう思っていたのはキマイラたちも同じようで。猟兵とキマイラはお互いにイイネを交換し合い、大健闘を称え合ったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ナンバーワンズ』
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POW : ナンバーワン怪人・ウェポン
【ナンバーワン兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : トロフィー怪人・ジェノサイド
【トロフィー攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 金メダル怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【金メダル】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
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●NO RUNNING
とあるプールの一角を占領している集団がいた。彼らは事前にその領地を予約をして、己の陣地を築き上げていた。
音楽に合わせて規則正しく踊り狂う彼ら、または彼女らはすらりとしたグンバツの足を水面に浮かばせ声を上げる。
『一位になるのは俺だ俺だ俺だ俺だ〜っ!!』
『うおおおーーーーーっ!! 水着コンテストうおおおーーーーーっ!!』
『俺、優勝したらこの金メッキでできたメダルの頭をもぎ千切って……齧るんだ』
「はいお前らバーーーーーーカ!! バーーーーーーーーカ!!
これはシンクロだぞ!? 掛け声くらい合わせろよ打ち合わせしただろうが!!
……つか、それ掛け声ですらねぇ。野次じゃねーか!!」
サングラスをかけ、かき氷を食らっていた赤茶髪の少年ことパスト監督は頭を抱える。俺様が優勝するのは間違いなしだけど、こいつらが心配だ。
そこには決して仲間意識や部下を思いやる人情は含まれていない。俺様パスト様の足を引っ張るんじゃないかという疎ましさからくるものだった。
やんややんやと傍から見たらただの観光客な集団は紛れもなくオブリビオンこと怪人の集い。みんなそれぞれ自分に見合った水着を着ている立派な怪人たちのもとに、決戦の先触れが訪れる。
《ぴんぽんぱーーーーーおーーーん!! やっほーーーー! おいら、元気ー!!
よてーどーりに水着コンテスト、するよー! しんさ員も参加者もみんな集まれ~!!》
『うおおおおーーーーっ!! 水着うおーーーっ!!! カワイイ水着うおああああーーーっ
!!!!!』
『俺が一位になるんだよ
!!!!!』
『いいやオレだね!!!』
『先駆けは俺が一番だァ〜〜ッ!!』
うわあ、すんばらしく鍛え抜かれた肉体を全身黒タイツで包み、その上にオキニの水着を着用した怪人が、心はバラバラなのに体はシンクロしながらプールの底から這い出てきたぞ。
上司たるパストに一言もかけずに我先にと会場へ走り向かう怪人らに、わなわなと肩を震わせるパストは一人、大声でこれでもかと叫んだ。
「プールサイドは走っちゃダメだろうがーーーーーッ
!??!?」
その叫び声に反応した監視員がシンクロ暴徒陸上スイミングに気づき、現地にいる猟兵たちに助けを求めたのはすぐのことだった。
リカルド・マスケラス
「ウェーイ、チャラっと参上、チャラにちは〜っす!」
そんな感じで颯爽と登場
「勝つことなんて楽しむための手段の一つに過ぎないっす。例えば自分は水着のおねーさん達と楽しくキャッキャウフフできればそれで十分っすし」
前章はしっかり観賞させてもらいました
「さあ、今度はみんなでパーリィタイム!っすよ!」
【跳梁白狐】でコンテストに来てた人達を超強化して敵を追い払う。水鉄砲を【属性攻撃】で強化して【一斉発射】とか自分の技能で出来そうなことをぶっ放してもらう
自分は代償で動けなくなるので、強化したおねーさんあたりに頼んで代償の毒や呪縛を【浄化】してもらう
「そう、優しく。出来れば抱きしめてもらえると嬉しいっすね」
●ウシ、クジャク、ネコ! 水属性のキマイラ系コンボの誕生だ~!!
ナンバーワン怪人は走った。両手に白いテープを持ち、水コン会場へと走り続けていた。
怪人が手に持るテープはゴール直前に貼られるゴールテープであり、会場に着いたと同時にテープをその場で千切れば、晴れてナンバーワン怪人は輝かしい一位となるのである。
「ウェーイ、チャラっと参上、チャラにちは〜っす!」
全速前進のナンバーワン怪人の前に爽快と立ちはだかるは一体のヒーローマスクと三人の激マブチャンネーキマイラたち。
「うぇ~い、猟兵くん。怪人だよお。こわいねー」
「きょわわい。でもあたしリカルドのアニキと一緒に立ってます。映えるので!」
怪人の騒ぎを目にした監視員の要請を快く受けてくれたリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は、水着コンテスト会場にて水着とおねーさんを満喫しつつも此処に現れるであろう怪人、ナンバーワンズを待ち構えていた。
リカルドの現状は、両手に花だ。右にはグラマラスでダイナマイトなクジャクのキマイラおねいさん、左にはふかふかでふわふわなネコチャンキマイラ。
そしてリカルド本体はオソロで丸いサングラスをかけた牛のキマイラネーチャンの身体を拝借しており、ある種の天国を築き上げていたのだ。
チャラ男がコミュ力を発揮するとお花畑が出来上がるのです。どれもみんなきれいだね。
ここに来るまでは楽しく三人と一体でキャッキャウフフとアイス突っついたりスイカ突っついたりと非常にエンジョイしていました。プリも取ったしウチら完璧っしょマジ! と、リカルドを装着する牛のキマイラネーチャンの志がリカルドに伝わってくる。
そんなイケイケな四人組と対峙するはずのナンバーワン怪人はなぜか勝手にダメージを負っており、膝から崩れ落ちて床に手をついていた。リア充に耐性がなかったのか傷を負っている原因は判明しないが、床を叩きながら何かを叫んでいる。
『なんてこったああああああああああ!!! 会場にたどり着いた一位が……俺の一位が!!
三人いるから三位にも入賞できねえええーーーー!!!』
「ええ……もしかして、そんなことでダメージ入ったんすか?」
『そんなこと?! そんなことだって?! ナオン侍らせて一位の余裕を見せつけやがってーーー!!?』
「あと、ナンバーワンを名乗る者なら二位や三位で妥協するのちょっとカッコ悪いと思ったっす」
『うわーーーーー
?!?!?! こ、この一位ムカつく!!
こうなったら、お前を殺して俺がナンバーワンになるしか術がねェーーーーーー!!!』
「うーわ、この怪人面倒くさい類っす。耳は貸さずにチャッチャとやっつけちゃいましょ!」
「「はあーい!」」
リカルドのごもっともな突込みからなんともまあ、物騒で情けない言い草であろうか。
いともたやすく発狂状態となったナンバーワン怪人に対して早々に見切りをつけたリカルドは、ユーベルコード【跳梁白狐】を発動させる。それによりリカルドはマスクからスーツへと姿形を変え、主導権を装着者である牛のキマイラネーチャンへと託すのだった。
これにより牛のネーチャンはあらゆる攻撃に無敵となる。ついでにクジャクおねいさんとネコチャンキマイラも超強化されて戦闘準備万端だ。それぞれガトリング型、バズーカ型、ブラスター型の水鉄砲を構えていざ参らん。
「さあ、今度はみんなでパーリィタイム! っすよー!」
「うぇーい。バズーカ発射ぁ~!!」
まずはクジャクのおねいさんの一手。属性攻撃で強化させたバズーカはリロードなしで撃ち放題。
それはネコチャンキマイラも牛ネーチャンも同じこと。一斉発射される水の弾丸はガチの銃弾としてナンバーワン怪人を貫こうと一直線を描き集う。
超強化されている水の弾丸は二点バーストで発射されており、さらにはリカルドの念動力でホーミング仕様。多方面から遅いくる攻撃にハチの巣になりかねないナンバーワン怪人は自身の得物であるナンバーワン兵器を自慢しようとしていた。
こやつ戦闘で自慢などする余裕があるというのか。だから一方的にこれから攻撃を食らうのだ。
だが、ナンバーワン怪人が持つナンバーワン兵器の見た目は格好良かった。金ぴかでごてごてとしていていかにも成金な感じがまた味なレーザーガンだったが、持ち主のせいで陽の光を浴びることは叶わず、水の中へと沈むしかない。
『お、おわーーーーー
?!?!!? え、待って待って待って!?
せめて、ナンバーワン兵器をせめて見せびらかすくらいアピャモ”っボバモモモモワァーーッ!!』
おそろしくクソ雑魚なナンバーワン怪人。俺でなきゃ爆発四散を見逃しちゃうね。
プールの水で濡れていても立派に爆発オチを遂げた怪人だが、そんなことよりもチャンネーキマイラたちはユーベルコードの代償で全く動けなくなってしまっているリカルドを心配していたし、次に来るであろう怪人の襲撃に備えてナンバーワン怪人が現れた東の方向を警戒していた。
誰も彼の最期を見届けていないのある。やつは四天王クラスでもなんでもないスライム以下の怪人だったのだから。
白いテープが千切れていたことがせめてもの手向けであろうか。それよりもネコチャンキマイラに膝枕をさせているデバフマシマシしんどみヒーローマスクが気がかりだ。
「大丈夫? リカルドのアニキー」
「だいじょばないっすねー……こう、優しく。出来れば抱きしめてもらえると嬉しくなって……回復速度が、上がっちゃうんすよね……」
「ハグればいいのー? わかった!」
ネコチャンキマイラは実に素直ないい子ちゃんだった。しかし決して都合の良い女というわけではない。気まぐれな優しさがたまたま発揮された故の従順さです。ネコチャンカワイイ。
おっと、待ってください。リカルドさん、ネコチャンキマイラの柔肌にずいぶんと密着しているではありませんか。ネコチャンと牛ネーチャンに挟まれる気分はどういったものなのでしょうか。
ふわふわ……ふわふわしてるっすねー……あとネコチャン特有のいい匂いも。なんだろう、干したての布団が近いってよく言うけど優しい柔軟剤の、フローラル系が近いというか。あと牛のおねーさんの土を思わせるウッディ系の香水の匂いがすごく安心感を抱かせてくれて。
んまあ、とにかく、浄化されるどころかこのまま眠って天国行きかねないかなってレベルでみるみる回復して結構元気になれてるっす。
キマイラセラピーってすごい。改めてリカルドはそう思った。
「ね~。きゅーけいしてるところ悪いけど、第二波きたっぽいよ!」
「あにゃーん、水コンめちゃくちゃにするのマジ許せないよね。でも、リカルドのアニキ動ける?」
「毒も呪縛も超回復していけるっすよ!! いやー、助かったっす!! ここからは自分の本領発揮と行くっすよー!」
怪人が全員倒れるまでヒーローは倒れない。無敵でなくともヒーロータイムは続くのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ガンズ・ハルモニア
そこまでだ!
世界一位を名乗りながら、この疳癪、見過ごせぬ!
床に倒れて迎え撃つ
ふふふー、僕、土左衛門
戦いの末、水没して気力は死んだ。やりきったぜ。くいはない…
虚空に投影された「転送」のパネルをタッチ
プールの中に移動してたガンソルジャーへ自分を転送。操縦
(ざぱぁと空中浮遊で上がるガンソルジャー)
非武装で置いてたから非武装である。つまり『ロケパン』である
ブースターで機体を吹き飛ばし、ナンバーワンズ達を殴って蹴散らす!なんか残ってたのを掴む!回す!ぐるぐる
ところでさ、世界一位より、銀河一位の方がなんかスケール大きくない?つまり銀河皇帝だ。発射ぁ!!
(ナンバーワンズを掴んだ手が、空に向かって飛んでいく)
●
仁義なきキマイラブラザーズとの戦いの末に、ガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)は地に落ちた。床に倒れたガンズは土左衛門そのものだった。
決して彼女は溺れ死んだわけではないが、着用していたコートがいい具合に膨れてそれっぽい。
「ふふふー、僕、土左衛門」
なんだか詫び錆を感じる声色で笑うガンズはそのままナンバーワンズを待ち構え迎え撃つ。
気力は死んでも体力はまだ比較的生きてる。ギリギリ生きている。でも実はちょっと疲労が残っている。だが、全力で戦ったから悔いはない。
このガンズ・ハルモニア。世界一位を名乗りながらも器の小さすぎる癇癪を見過ごすわけにはいかぬのだ。
『な、なんだあこの土佐衛門!? 猟兵!? ……死んでね?!』
『不戦勝じゃんね? シード権じゃんよ? つまり俺たちがナンバーワンってことだな
?!?!?』
『金メダル怪人かしこーい
!!!!! 俺もナンバーワン
!!!!! ヒャッハー!!
このまま会場の中心でナンバーワンを叫んで、俺たちダブルナンバーワンが世界一位だってことを知らしてやろうぜ~~~?!?』
うわあ。思わず耳を塞ぎたくなるほどの声量で喋る怪人に、ガンズは渋い顔をしながら虚空に投影された「転送」という二文字が書かれたパネルをタッチした。
これで準備は万端なのだ。ガンズはいつでも迎撃可能。
転送先であるガンソルジャーは先ほど自身がダイブした底深プールの横から、その中にと沈めておいた。その理由はパワーを溜めるために、だ。
「……そこまでだ!!」
『……なにぃ?!? この水死体、しゃべるぞ!!』
『いいや!! 違うね!! この猟兵は生き……い、いない
!?!?』
『あえーーー??! さっきまでここに倒れてたじゃんよ?! ナンデ
……??』
慌てふためく二人の怪人にはガンズを探す。死んだと思ったら生きているパターンは相当厄介なのだ。大概がパワーアップして帰ってくるから気が気じゃないのだ。
そんな二人の怪人の予想は命中し、さらに大きく上回る。
ガタガタと揺れるプールサイド。上下左右に波立つプールの水面。小さな鼓動はだんだんと大きくなり轟音を唸らせるそれはガンソルジャーのエンジン音。
水しぶきを周囲に巻いて、深底プールから出でたる者、それはガンソルジャー。ガンソルジャーに搭乗した水着コートなガンズ・ハルモニアだ!!
「このガンズ、容赦せん!!」
あーん! ガン様が生きてた!
『YABEI MY BABY。ねえ怪人やばない? 大きさ的に不利じゃない??』
『なに弱気になってんだよお前それでもナンバーワン怪人か?! お前にゃ兵器があるじゃん!!
超巨大兵器対抗ビームガン、名付けてナンバーワン兵器が!!
ちなみに俺の金メダルだって相殺能力ぱないぜ』
『あ、いけそう!! 対抗って名付けられているなら勝てるわガハハ! 守ろうぜ、ナンバーワポルルアーーッ!?』
『なっナンバーワン怪人ーー!!!? 野郎、不意打ちなんてひきょ』
「うるさい!!!! あなたから先に飛んで、落ちろォ!!」
都合よくガンソルジャーによく効きそうな武器を持っている怪人は幸運クリティカルをたたき出したのだろうが、ガンズの方が素早さが高かった。
ユーベルコード【ロケパン】を発動させたガンズはガンソルジャーの右腕を一度引いて素早く押し出す。
近接攻撃である右拳が顔面にめり込んだナンバーワン怪人はパージした豪鉄の大拳と共にプールサイドの床で身を削りながら飛んでいってしまう。
抗議の声を上げる金メダル怪人にも余った左手でもういっちょ。戦いに卑怯も何もあるものか。なんなら非武装であるガンソルジャーに武器を向けるとは何事か!
先に敵意を向けたのは怪人なのだ。これは正当防衛。悪いことしようとしたのはそっちである。理にかなっているのだ!!
『ほばゔぁあああーーー
!!!?』
ナンバーワン怪人と同じ結末を辿ろうとした金メダル怪人は爆破四散! 金メダルで威力を相殺しようとしたが超火力に耐えきれずオーバーフローしてしまったのだ。汚い花火だぜ。
『き、金メダル怪ー人
!!!!!』
「む。生きてた! それと、おかえりー、右手と左手!!」
ヨロヨロと右手を押さえて帰ってきたナンバーワン怪人と爽快に飛んで帰ってきた両手。
これであの怪人に掴み攻撃が可能となるのだ! わあい追撃だ。ガンズ、追撃好き。
「ところでさ、世界一位より、銀河一位の方がなんかスケール大きくない?」
『ギンガ……ギンガム?』
「おっとおー、銀河がわからないとは。つまり、私のことだ。そう、ガンソルジャーは銀河強いから!!」
『なっなにーーー!!? それはつまり、お前の方が一位に近いって言ってるのと同じじゃあないか!! ま、負けられねえ!!!』
「そうだ、銀河皇帝だ。発射ぁ!!!」
出力全開でブースターで機体を吹き飛ばしたガンズはなナンバーワン怪人に突進し、そのまま全身黒タイツを掴んで空に浮上。
浮上する中抵抗するナンバーワン怪人を殴って蹴って押さえつけ、輝かしく光金色の頭を掴んで回して三半規管を破壊する!
『あにゃああああああん
!!!!! 脳みそバターになっちゃうのおおお
!!!!!』
「変な声出さないで!? ……おお、スキマパークが一望できる……」
高度限界までやってきたガンズの真下にはスキマパークが小さく写る。
六割、いや七割くらいが水場だ。カメラアイのピントを合わせれば怪人ナンバーワンズと戦う猟兵の姿が確認できる。あ、アイス屋さんじゃないかあれ。装飾のせいか目立つし目を惹かれるな……。
「……はっ。いけない、ついよそ見を」
ナンバーワン怪人に改めて目を向けるガンズことガンソルジャー。左手の獲物は逃げちゃいないし、逃げられない。
さあ、もう一度右拳を。高威力高命中のロマンあふれる右ストレートを!
「吹っ飛べ
!!!!」
ナンバーワンズを掴んだ手が、空に向かって飛んで花火を上げる。
帰ってきた右手の付け具合を確認したガンズは、地上に舞い降りて戦闘を続行するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
アイス美味しかったなぁ…あ…敵だ…
せっかく楽しんでたのに…なんだか腹が立ってきた…
さっさと倒そう…
何がナンバーワンだ…ワンワンワン喧しい…
犬のつもりか…?…犬のほうがずっと従順で賢いぞ!
[殺気]を放ち[恐怖を与えておどろかせ]敵群を萎縮させよう
【巨人力】による[怪力]で敵を持ち上げ
一般キマイラに迷惑にならないように[地形の利用]で
適当なプール目掛けて[投擲]してぶち込もう
逃げ出そうとする奴がいれば
鎖の鞭を振るい[ロープワークで捕縛]し捕え
次々と色んなプールに投げ入れてゆこう…
負け犬どもめ…そこで泳いで頭を冷やしていろ!
冷やす…か…またアイス食べたいな…
今は我慢しよう………アイス…
●
九枚ゲットしたアイス屋のチケットを数枚使用してオイシイアイスを食した仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、先ほど食べたフレーバーの味を思い出しながら水コン会場の警備に回っていた。
美味しかったなぁ、パリパリのチョコレートが入ったチョコアイスに、コーヒーシロップがかかったバニラアイス。別のカップに入れてもらったメロンフレーバーもまた、カラフルな色合いが食欲をそそらせた。それに口に含むとパチパチと弾けたのが面白かった。
トッピングでビスケットやフルーツを添えるのはもちろんだが、綿あめだって乗せられることには少々驚いたものだ。好奇心に負けて小さなラムネ雲を乗せてみたが、特に変哲もない一般的な綿あめで、しかし安定感ある美味しさだったと思えよう。
あの波動球アイスなるものは、時間やサイズを考慮すると完食が厳しく感じられたので見るだけに留めておいた。
『うおおおおおおおおおおおおーーーー!! ナンバーワンは俺だ俺だ俺だ俺だ
!!!!』
『この水着、良い水着。そう、つまり僕が一番ってことなんですね。はいナンバーワン!!』
『おいおいおい猟兵じゃあねーの!? 世界レベルの俺とやるってのかアーーーーン?!?』
うるさいのが来た。インテリムーブをちょろっとした怪人とチンピラ怪人も、いる。
ドコドコと全力疾走でこちらに向かってくる全身黒タイツに頭だけ金ぴか怪人に、アンナは少し怒っていた。だんだんと怒りが湧いてきたのだ。
せっかく楽しんでいたのにどうしてあの怪人らはその幸福を破壊しようとするのか。彼らもまた楽しもうとしているかもしれないが、それにしてはやり方や限度ってものがあるじゃないか。だから怪人なのか、だからオブリビオンなのだった。うん、さっさと倒そう。
ユーベルコード【巨人力】を発動させたアンナは神話の巨人兵が如く脅威なる大怪力を発揮することができ、物理的に対象に触れさえすれば掴んで持ち上げてバスケし放題なのだ。ダムダムとドリブルし続けて丸めてバターにすることだってできてしまう。巨人の力ってすげーんだ。
「……まずは、一人から」
『ニアッウワー?! 一番に捕まってしまったが嬉しくね~~!?!』
ああっと、さっそく怪人のうちの一人、トロフィー怪人がグワッシと捕まってしまったが慈悲はない。振り回されるうちに頭のトロフィーがどんどん丸まって金メダル怪人になろうとしています。まるで整形したみたいだあ。
『と、トロフィー怪人ーーーーーーーー
!!!!!!!!』
『畜生!! 俺と見分けがつかねえくらいになっちまってる!! パクリか?』
『クソ!! 倒された選手権ナンバーワンはあやつのものになっちまったか!! ならば、その次のナンバーワンは俺だ!!』
『あっズリィぞ!! ナンバーワンは俺だって決まっているんだよ!!』
『いいやナンバーワンは僕ですねえ!!』
『ナンバーワン!!!』
『ナンバーワン
!!!!!!!!』
『俺だけが
!!!!!ナンバーワン
!!!!!!!!』
ナンバーワンズの声には怪人特有のエフェクトがかかっている。それはくぐもってはっきりしないもので、さらに二重に三重にとディレイされていたりする。
それがはきはきとした口調でクソデカ音量が強制的に鼓膜を震わせると、聞こえる音を最低値にしたくなるもの。
加えてそんな迷惑音声が何人も発してしまえば耳にする者は頭痛がするほどに、騒がしい。
「……にが……何が、ナンバーワンだ。ワンワンワン、喧しい……」
眉間にしわを寄せたアンナは片腕を頭に持ってくる。ちょっと痛い。あいつらうるさい。
なんださっきからナンバーワン、ナンバーワン。犬のつもりか?
「犬の方がずっと従順で賢いぞ……!」
ナンバーワンズを一喝したアンナの声は剣先のように鋭く放たれた。小さくも大きくもない声量だったそれには確かに怒気と殺気が含まれており、耳にしてしまったナンバーワンズたちに恐怖を驚愕を与えている。
『ホワ
……?!? エ、コッワ……コワ……』
『待って、俺の相手あの猟兵? え、え』
『敵前逃亡が最も賢い。逃げるしかなくない? コワイ
!!!!!!!』
委縮したインテリは賢いのか戦線離脱を試みている。一時的に正気を失っているのか軽いパニック状態だ。見せしめとして活用できそうだと判断したアンナは鎖の鞭を振るい、ロープワークの要領で怪人を捕縛し捕えることに成功する。
『アパーーーーーーーーーーーーーー?!』
『ウ、ウワーーーーーー!?? インテリっぽいやつが捕まった!! なんかもうダメかもしれない』
『ああ、諦め選手権ナンバーワンを取られてしまった!!! ならば俺はこれから猟兵を打ち負かすナンバーワンだ! 俺は絶対ナンバーワンをあきっらメコス!?』
『アアーーーー?!? 隣の同僚がインテリと同じ方法でつかまろぶあ?!』
次々とぐるぐる巻きにされていくナンバーワンズ。入れ食い状態で釣り放題です。大漁であった怪人の塊の出来具合にアンナは一つため息を吐いた。
ビックボールになった今でもギャーワンわめく情けない怪人たち。とにかく、うるさいのだ。
「負け犬どもめ……」
疎まし気に目を細めるアンナに怪人が委縮している。それでもなお口が回る怪人たちをアンナは怪力で持ち上げた。
片手で持つその黒い塊は直径約二メートル。ドリブルはボールの形が崩れるのでできないが、片手だけで空に投げることは可能なのだ。
「そこで泳いで頭を冷やしていろ!!」
巨人のスマッシュ。それってもうGが、重力加速度がものすごいのだ。骨も内臓もきしんで宇宙ヤバい。
流星となった黒塊は埋め立て地予定のプールへと投げ入れられ、底に落ちたと同時に長い長い水柱を作り上げたのだった。
水しぶきを受け入れるアンナは、涼し気な表情でひんやりとした空気に身をゆだねる。思いだすのは先ほど食べたアイスたち。まだチケットは余っている。
「今は、我慢しよう…………アイス……」
今度は、波動球アイス。食べてみてもいいかもしれないな……。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『自称・水着コンテスト優勝候補』パスト』
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POW : こーゆーのもアピールになるから撮っとけよな!
戦闘中に食べた【お祭りグルメ】の量と質に応じて【グラビア撮影していたモブ敵達が興奮し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 誰がNo1か、お前ならキチンと言えるよなぁ?
対象への質問と共に、【指差した空】から【ぬいぐるみ龍『だいうるごす』】を召喚する。満足な答えを得るまで、ぬいぐるみ龍『だいうるごす』は対象を【炎ブレスと噛みつき】で攻撃する。
WIZ : 今から此処が会場だ!そして俺様こそがNo1だ!!
【猟兵のLv×10の数、水着姿オブリビオン】を降らせる事で、戦場全体が【水着コンテスト会場】と同じ環境に変化する。[水着コンテスト会場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
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●
猟兵たちの活躍により水着コンテスト優勝候補であった怪人ナンバーワンズは見事蹴散らされ、怪人らしい最期をそれぞれ遂げた。
その様子を安全圏にて鑑賞していたパスト、『自称・水着コンテスト優勝候補』パストは遂にステージに上がり、その水着姿を猟兵たちの前に現したのだった。
「あーあーあー。優勝候補たる者がこんなにもあっけなくやられちまうかよ。
これであいつら怪人名乗ってるわけ? ざっこ!」
水着姿のパストはとってもおしゃれボーイだった。
赤い羽織や水着のスリット。クロスラインがすごくかわいいのだ。靴もカワインですよ、靴が!
アクセサリーである首元のチョーカーや手首のバンクルも合わさり、全体的にまとまった雰囲気に色合いにと全てがパーフェクトスイムウェア。
自称ではあるが、水着コンテスト優勝候補を名乗るに相応しい装いの何様俺様パスト様はステージ外に散った元部下を一瞥しつつ、猟兵たちを赤茶色の瞳の中へと納め、捉える。
「まあ、いい。野次を飛ばすしか能のない邪魔者だった。
俺様が優勝する水着コンテストに向けての清掃活動、感謝するよ。猟兵」
俺様は弱い奴に興味はない。つまり、強い奴には興味がある。
さあ、猟兵。お前たちは争い甲斐がある強者だろう。俺様と競うべくこの場に足を運んだ水コン参加者だろう。
さあ、さあ。名乗りを上げ、己を存分に主張して見せよ。俺様と戦え。戦うのだ。
「始めようぜ、真の水着コンテストを。勝つのは……俺様だ!!」
リカルド・マスケラス
引き続き牛のネーチャンの身体を借りてバトルっす。今度は敵の攻撃を【かばう】できるようにブラックコートを羽織る
「水着にコートもアリっすかね」
「アピールタイム会場はここっすかね?」
などど言いながら戦闘を仕掛ける
「No1? そんなのこの戦いの勝者に決まってるっしょ!」
【猟兵絞狩刑】を仕掛ける。鎖分銅の【ロープワーク】で足元を拘束。その後、【グラップル】で極め技と絞め技を同時に仕掛ける
「このまま夢心地へgo to heavenっすよ!」
女の子の体と密着である意味天国?
ちなみに、だいうるごすのブレス受けたらパストくん共々攻撃受けるっすよね?
牛のネーチャンはダメージを肩代わりするから無傷っすけど
ガンズ・ハルモニア
掃除しないと汚れる一方だからね。頑張った。
…猟兵は掃除屋だった!今明かされた真実である。もっと感謝するが良い。
ガンソルジャーはいよいよもってプールに置いて来た。ここからは生身の勝負だ!(動き易くする為にコートの前を少し緩める。やっぱり脱がない)
てか何食べてんだよぉ!!『デジタルウェポン』:ミサイルポッド。
遠方のガンソルジャーからミサイルが飛んでくる。効果は周囲の温度を下げる!お祭りグルメ食べようとしてたので氷属性攻撃を放つ。
ひえっひえの中で食べる冷えた食べ物…やだ……食べたくない。
私は焼却ブレス攻撃用の息を肺に貯めて温度調整。
熱があるから一杯動ける!いくぞうらぁあああ(斬馬刀で斬りかかる)
●Swimsuit Coat.W
傲岸不遜に啖呵を切り、余裕綽々とフランクフルトに噛り付く『自称・水着コンテスト優勝候補』パストの前には立ちはだかるは二人の猟兵。
引き続き牛ネーチャンの身体を借りているリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)と、プール掃除を頑張ったガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)だ。
「掃除しないと汚れる一方だからね。頑張った」
「立つ鳥跡を濁さず、とか言うじゃないっすか。それに、まだ清掃は終わっちゃいないんすよ」
ブラックコートを羽織るリカルドは、自身を装着してくれている牛ネーチャンの身体を守る態勢に入る。そのブラックコートとはリカルドのヒーローコスチュームであり、装着者のダメージを肩代わりする役割を持つ。
イイ女の柔肌に傷を付けるなんてとんでもない。褐色やぞ、こちとら日焼けした褐色肌に三角ビキニとホットパンツやぞ。
破壊力は凄くても防御力を捨てたスタイル。だがしかしそれをコートで包んでしまえば無敵城塞の爆誕である。水着コートってのはな、その下に宇宙が広がっているんだ。
「水着にコートもアリっすかね」
「アリアリ。だって見てみなよ。お揃いだよ?」
「お、同志発見。おそろっち~?」
「「ウェーイ」」
ダブル水着コートがハイタッチした瞬間、「イイネ!」の合唱が周囲に響き渡った。今後スキマパークではしばらく水着コートが流行りのイイネスタイルとなるだろう。
リカルドと両手でハイタッチを行っていたガンズは身動きを取りやすくする為にコートの前を少し緩めていた。
み、みえ……るとでも思っていたのか。このガンズ・ハルモニア、脱ぎはせん。
望遠鏡をのぞき込んでも無駄である。そこから見える景色はステゴロファイト水着コンテストアピール合戦。参加者たる猟兵とオブリビオンが喧噪を起こし、キマイラともども唸りを上げ熱狂へと導かれた際に、イイネというエモーションがいくつも生まれるのだ。
「てか何食べてんだよぉ!!」
「あ? 何って……ソコで売ってるアイスクリームだろうが。見てわかるだろう」
指を指しパストに突っ込みを入れるガンズ。対して太々しい態度を崩さずに顎を使ったパストは先ほどのやり取りのうちにフランクフルトを食べ終え、次の食べ物にと手を付けていた。
パストの足元には竹串が転がっている。それにアイスのラッピングに使用されたものだと思えるレモン色の包装紙が落ちている。
こいつ、まさか。
「食ってやがる……ポイ捨てをしたにも関わらずッ!
この立ち食い野郎は、何食わぬ顔で今も呑気にアイスを食っているッ!」
ポイ捨て。それはごみの不適切な処理方法の一つである。
屋台が並ぶ道では床に落ちていたり、綺麗に切り揃えられた植え込みの中にわざわざ突っ込んで隠したりするマジ許せん良い子も悪い子もみんなやめようね悪しき行為である。やめようね!
「こいつはメチャ許せない行為っすよね~~~っ!!
屋台販売主であるキマイラの心を踏み躙るだけでなく、プール利用者たるキマイラへ与える不快感……コレが『No,1』のやることっすか!?」
「はンっ! 俺様は既に対価である金を払っている……わかるか?
俺様の所有物となった食糧についてとやかく物を言われる筋合いは無いねッ!!」
「……猟兵は掃除屋だった。今明かされた真実である」
聞く耳持たずの暴論を振りかざすパストにガンズは告げる。アイアムパーフェクトクリーナー。
ガンズは、ガンソルジャーをいよいよもってプールに置いてきた。ガンソルジャーは兵器であって水着ではない。故に、己の肉体と水着のみで勝負する水着コンテストには見合わないのだ。
そう、ここからは生身の勝負。
巨大な斬馬刀を手にしたガンズはこれから正しく真剣勝負を挑む。剣を向けられたパストは不機嫌そうに、しかし態度は変えずに猟兵たちに睨みを利かせる。
ガンズは斬馬刀を構えた。斬馬刀で己の体のバランスを取り、これから斬馬刀を使うぞと言わんばかりに鋭く尖れた刃先を赤茶色の瞳に嫌でもかと入り込ませる。
そこから繰り出される技は、刹那の一撃。
「あなたはもっと、私たちに感謝するべきだ……するが良い斬馬刀ミサイル!!」
「う、ォおお!?」
パストの頭上に影を作り、曲線を描きつつも真っ直ぐ降下するそれは、遠方のガンソルジャーから飛んできた無数のミサイル。
ガンズが繰り出した技、ゆーべるなこーどである斬馬刀ミサイルから生み出さr嘘です。彼女が発動させたユーベルコードは【デジタルウェポン】です。
今回、長年の研究を掛けて作られた効果と形状が毎回変わる未来人もびっくり特殊兵器は、周囲の温度を下げる効果を持つミサイルポッドだ。
斬馬刀を使うと思い込んでいたパストはモロに不意を衝かれてしまい、己に降りかかるミサイルたちを防ぐことが叶わなかった。
見事に攻撃を食らったパストは傷を癒そうとまだ残っているお祭りグルメに手を伸ばそうとした。が、無駄である。
パストの周辺には雪の結晶が舞うほどに銀世界が作られており、パストの髪や水着、足元の床から買い溜めしていた手付かずのグルメたち。それら全てが氷結してしまっていたからだ。
唯一無事なのは、アイスクリームくらいだろうか。それすらもすっかり凍り付いてしまっているが。
「チッ……んだよその技!? 斬馬刀を手に持つ意味がねぇだろうが!!
……ああ、畜生。食糧が冷えてしまった。食品サンプルかってレベルで硬くしやがって!」
「ひえっひえの中で食べる冷えた食べ物……やだ、食べたくない。
……てか、寒い!? 私は適温が一番好きなのに、どうしてくれるんだ!?」
「うるせェーーーーーー!!! オマエの好みなんざ知ったことか!!
つーか! つーかよ!? この状況作りだしたのオマエだろうがーーーーーーーー
!!!??」
これからグラビア撮影が行われるはずだったのに。孤軍奮闘とは世知辛いものである。
すっかり怒り頂点となったパストは天を指さし、水着コンテスト会場にいる者たち全てに問いかけた。
「誰がNo1か、お前ならキチンと言えるよなぁ?!」
傲慢な問いとともに、空からぬいぐるみ龍『だいうるごす』が降りてくる。今となってはパストにとって唯一であり、最後の配下だ。
質問とともに召喚された龍はパストがナンバーワンだと信じて疑わない。気高き龍とて、主と認めた者には従する。
「ぎゃおん~」
うーーーん、気が抜けるほどの間抜け声! 見た目も大変愛くるしく、鱗……否、毛はもっふりしている!
それでも柔らかそうな歯を生やした口から吐き出される炎の熱さは、竜の息吹にふさわしいものである。
そんな可愛くも強そうなだいうるごすに対してパストは信頼してる故に目もくれず、冷えた会場と同等の冷たさで命令を言い放った。
だから、パストは気づかなかった。せめて一度でも従者の顔を見ていれば、防げたことだろう。
ギャラリーであるキマイラ集団の中に潜伏した狐面ヒーローマスクがいた。忍び足でだいうるごすに近寄る小さな影があった。
だいうるごすに伸びた、鎖分銅。その龍の大きな瞳には、長くて白い尻尾が映っていた。
「だいうるごす、食糧を溶かしておけ。俺様が猟兵を叩きのめすまでにできるよなァ?」
「んぐぁ~~……ぐあぷっぷ、ぷあぐぎゃご!?」
「……、……だいうるごす。どうしっ
……!?」
「ウェーイ。アピールタイム会場は確かココだったはずっすよね?」
もう遅い。気づくのが遅かった。それは足掻けば足掻くほどにダメージが蓄積される技。リカルドが発動させた、ユーベルコード【猟兵絞狩刑】。
だいうるごすの柔らかそうな足元は鎖分銅のロープワークで拘束されており、リカルドのグラップルにようる極め技と絞め技を同時に受け入れてしまっていたのだ。
「ぎゃぷ、ぬぐっぎゃぎゃごぉ~~~!!」
「もがけばもがくほどに極まってくっすよ。無駄な抵抗はおすすめしないっす」
ロープと鎖を使ったホールド、両腕での関節へのクラッチ、両脚を使っての絞め技を同時に浴びるだいうるごすは混乱しながらも現状打破しようと必死に抵抗する。
しかし、タップアウトを狙う絞め技が完全に決まってしまえば、意識は段々とゆっくり薄れ落ちていく。
主人の命令を遂行することもできず、自身が捕まってしまうとは何事かとだいうるごすは己に喝を入れてみるが、それでも喉からは唾液のみが吐き出される。
態勢がきついのはお互い様。耐えて落とすのが先か、耐えて逃げるのが先か。
「このまま夢心地へgo to heavenっすよ!」
「ぎゃ…………ぶ……」
リカルドは畳みかけるチャンスを掴む。といっても、パストはガンズが抑えてくれるであろうから、このままだいうるごすへの拘束を解かずに状態を維持するだけなのだが。
リカルドは拘束の手を決して緩めることはしない。しかし、だいうるごすも同じこと。
龍は最期まで足掻き暴れ、もがき狂い、遅くも反撃のチャンスを作り上げたのだ。
「……ぐあっぐやぷやあああああ~~~っ!!」
「っ! ブレス攻撃できるってことは、噛みつきにも来るっすよねぇ当然!!」
血走った瞳に愛らしさなどは存在せず。そこに居るのはぬいぐるみ龍、だいうるごす。
決死の覚悟で吐かれた赤き炎ブレスはリカルドともども牛ネーチャンすらをも焼き尽かす勢いであればパストは優勢になれただろう。
しかし、それは叶わない。息絶え絶えのだいうるごすから放たれた火に包まれた牛ネーチャンだが、彼女はブラックコートのおかげで無傷で済んでいる。
対して装着者のダメージを肩代わりするリカルドだが、元々弱り切っていた龍の弱火なんぞ意外にも大したことがなかったのだ。そりゃちょっと熱いけど、十分に耐えきれるっすよこんくらい!
白目を向いただいうるごすは、ぐったりとした体をリカルドと重力に体重を預けてしまった。
「うおお、結構重たくなるもんっすね。
でも、女の子の体と密着である意味天国だったし、天国行きっすねー」
ゆったりとした言動でだいうるごすへの拘束を解くリカルド。その狐面を狙って振りかざされる手刀があったが、それは斬馬刀によって防がれる。
「ッチ。ナンバーワンたる俺様を差し置いて、二人そろって調子に乗りやがって……!! 」
「No1? そんなのこの戦いの勝者に決まってるっしょ!」
「減らず口を!!!」
舌打ちをし悪態をつくパストに対して、リカルドはあっけらかんと真理を付き、ガンズは高温の息を漏らす。
火を吹けるのはドラゴンだけの特権ではない。バーチャルキャラクターだって火を吹ける。多分、猟兵だし焼却ブレスくらい余裕で行けると思う。が、その火種を体内にため込み温度調整を行ったガンズは適温生物。熱があるから一杯動けちまうんだ。
「いくぞうらぁあああああああああ
!!!!!!!」
「クッソ……ここは逃げるが勝ちってやつか!!」
大層悔しそうな表情で英断を選択したパスト。そう、帰ればまた来られる。ロストした者は二度と帰ってこないが、それでもきっとまた好機は訪れる。
「でも、判断が遅いっすよ。本当に」
そう、遅かった。詰めが甘く、よそ見をしてばかりのパストの行動にはいちいち間があった。その間を猟兵たちは的確に突き当て、確実に一撃を叩き込み続けた。だからだろうか。パストの行動が手に取るようにわかったのは。
逃げるであろうと踏んでいたリカルドは鎖鎌を使ってパストの周囲に鎖の糸を張っていた。パストが動き、その巣に得物が触れた瞬間に捕縛は完了する。
迫りくる斬馬刀。真っ直ぐにパストを見つめる二つの青眼。
振り上げられた斬馬刀。背中には黒いサングラス越しに除く橙色の瞳と、こちらを向いていない狐の仮面。
風圧が押し寄せる。鉄の塊が押し寄せる。鋭い刃物が、やってくる!
「く、クソがああああああああああああッ!!」
蜘蛛の巣で暴れるパストは、手痛い渾身の一撃を食らう。このまま終わってなるものか。終わらせてやるものか。
勝つのは俺様なんだ。俺様が一番なんだ!!
鎖を引きちぎったパストは、猟兵たちには目もくれず一直線に逃げおおせる。どこへ向かったかは、判っている。
オブリビオン向かうところに、猟兵はいるのだから。そして、逆もまた然り。
「やったか? と、フラグを立ててみる」
「いやー……逃げた、っすね。火事場の馬鹿力を発揮されるとは」
「任せても大丈夫だと思うけど、追撃する?」
「しましょしましょ、やるなら徹底的にっすから!」
憤怒のナンバーワンを放っていくのは大変マズイことになるでだろう。リカルドとガンズはキマイラを安全圏へ誘導しつつ、終戦へとバトンを回すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
…奴が首魁か…どこかで見た事あるような…まぁいいや
さっさと叩き潰し…水着コンテストとアイスの続きを堪能してやる!
鉄塊剣を振るい回し[存在感と威厳]を放ちアピールしよう
[環境・地形耐性]でコンテスト会場に我が身を馴染ませ
召喚した水着姿のオブリビオンは鉄塊剣の[範囲攻撃]で蹴散らそう
ナンバーワン…
そこに至る資質が貴様にあるか…見せてもらおう…
【公開処刑】によりネットに強いハッカーキマイラ集団を召喚
敵のSNSや動画等での言動行動を[情報収集]し
過去に行ったアレな呟きやソレな行いを大々的に公開
公然と見せつけ晒上げてやろう…!
これで世間に名と顔は知れ渡っただろう…?
満足したかい、ねぇ…坊や?
●Pride
スキマパークことスーパーきまヒュ~健康パークの入り口には二つの塔があり、その間には大きなアーチがある。
それは検問機能を備えており、武器を所有している場合は必ず引っかかってしまうのだが大半はそこに悪意はなく、少し防犯意識が強かったり、単に格好いいから装備していただけ、などと平和なものだった。
武器を持たずに悪意だけを備えてやったきたにもかかわらず、尻尾を撒いて逃げるオブリビオンをはじくために、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は受付広場にてパストを待ち構える。
あのオブリビオンらは、存在は悪であれど水着コンテストを楽しむ気持ちは本物だったかもしれない。だからと言って、邪悪をそうやすやすと許すわけにはいかないのだ。
スキマパークの出入口はここしかなく、劣勢になると逃走する小賢しいオブリビオンフォーミュラ(自称)は、必ず此処に現れるとアンナは踏んでいた。
前方に現れたる赤茶髪がアンナの読みを証明する。本当はこの場所以外にも外に出る経路はあるのかもしれない。しかし、先に戦っていた猟兵が上手く誘導を行ったことによって正解は一つとなる。
「……奴が、首魁か。……どこかで見た事あるような……」
アンナは過去の戦いを思い出す。傲慢な態度に過剰な自惚れは確かに見覚えがあり、記憶も残っている。
あの時は確か……動画を、撮ってて。
最後には、パストの情けない姿をキマイラフューチャー全体に放送されていた。
編集された動画は一度しか見ていないけど、映像のインパクトは残っている……。三回か四回くらい、同じ場面を繰り返し映していた。かな……。
今この場にいるパストと、アンナが過去に戦ったオブリビオンは姿形が似ているだけで全くの赤の他人かもしれない。
だが、同じ顔で同じ声。似たような性質に、だいうるごすそっくりのぬいぐるみ龍。……そんな自分を思わせる誰かが勝手に恥ずかしい行動を取っていたら、オブリビオンでなくても己の顔を覆いたくなるだろう。
加えて、自分がナンバーワンだと疑わない純粋ともいえる凶暴的な傲慢さを持つパストにとって、身に覚えのない負け戦というものは相当こたえるはずだろう。
「まぁ。いいや……。さっさと叩き潰し……水着コンテストとアイスの続きを堪能してやる!」
そう、これらの戦いはパストや怪人が勝手に引き起こしたものであり、本当の水着コンテストは未だ開始されていないのだ。それにアンナの手元にはまだアイス屋のチケットが残っている。
美味しかった。また食べたい。食べよう、全フレーバーを制覇する勢いで。
「猟兵……! ソコをどけ。俺様は帰るんだ!」
「……坊や、迷子だろう? 向かうべき場所は、骸の海だ」
「生きた心地がしねぇプールなんて泳ぐ価値もねーんだよ!!
……まあ。もう、いい。お前さえ突破出来たら……俺様はNo1なんだ」
狼狽しつつもプライドで動き続けるパストが息を切らしながらも姿を現す。この日のために用意した水着の羽織はどこかに吹っ飛んでしまったし、アクセサリーも紐が千切れてしまっていた。バッドスイムウェア。
水コン一位を捨てたパストだが、闘争心だけは燃やし続ける。天に拳を突き上げた彼は、最後の一撃という勢いで部下を召喚させることに成功した。
「今から此処が会場だ! そして俺様こそがNo1だ!!」
『イッチイイイイイイイイイイイ!!! イチイニョッキ!』
『ナンバーワン! ナンバーワン! オマエガイチイノセカイイチイィ!』
空か降り立つそれらは、復活を遂げた怪人ナンバーワンズ。金ぴか頭に全身黒タイツ。足だけでなく身体もグンバツな怪人たちはその上に水着を思い思いに着て、またもうるさくワンワン吠える。
その数なんと八百九十体。受付会場、とんでもギッチギチです。
「ナンバーワン……。そこに至る資質が貴様等にあるか……見せてもらおう……」
頭上にすら湧き降り注ぐ怪人ナンバーワンズを、アンナは受け止めてやらんと鉄塊剣を振るい回す。アンナの怪力によって重量を感じさせない鉄塊剣だが、その攻撃の重さは衝撃波を生み出すほどに重重しく、怪人ナンバーワンズは鉄塊剣に触れることもできずに場外へと吹き飛ばされてしまう。
場外に飛ばなかった者は密集した人込み、怪人込みの中に突き刺さり、またはぶつかってしりもちをついたりと数の多さが仇となっている現状だ。
存在感と威厳を放つアンナは怪人たちに恐怖を与える。怖気づいた怪人からやられていく。勇気を無謀とはき違えた者から執行される。
「は、ハハ! いいぞお前たち! その間に俺様は帰路につけるわけだからなァ!!」
圧巻。パストも少なからず恐怖を感じてしまう攻撃の波。怪人で作られたビッグウェーブに乗るしかねえと直感で思ったパストは怪人を板にして飛び乗った。
なんてやつであろうか。自分さえよければいいと言っているようなものだ。
「……お前たちの上司は、お前たちを見捨てるようだが」
これ以上、戦う意味はあるのかと。
真実は怪人たちの傷口をえぐる。殺気を含んだ物言いは怪人たちを串刺しにする。
次々と戦意を喪失する怪人たちは、鉄塊剣の攻撃範囲にいたものから蹴散らさせる。それはもちろん、パストが乗っていたビッグウェーブさえも崩壊させた。
「あ! お、おい!! なにやる気無くしてんだよお前ら!?」
パストを慕うものがいれば、その波は気合いによって保たれていたかもしれない。しかし、それを崩したのはパストただ一人。
コミュニティの崩壊の原因はたった一人だけ。アンナは隠れようとした事実を告げただけなのだから。
逃走に失敗した者に闘争心は残っているのだろうか。確実に自分が勝てる試合しか行わない闘争心とは、根性なしの幼稚である。
「お前の名と顔は、世間に知れ渡っている」
「……なに?」
「きっと、満足するだろう……」
アンナはユーベルコード【公開処刑】を発動させ、執行を開始する。
アンナが召喚せしはネットに強いハッカーキマイラ集団。
仕事もバリバリ熟せるスーパーネットサファーな彼らにとって、対象のSNSや動画等での言動行動を情報収集するのは朝飯前、エナドリ後。
受付広場にも備えられている巨大なモニターに映し出されたのは過去に行ったアレな呟きやソレな行いだった。ちなみにこのモニターは普段は広告がたくさん映し出されていたりする。
「うわ、うわああああああああ?!? なんだよそれ!? それな、なうぇええええええええ!」
!ああっと! パストには 効果が 抜群だ!
コレはえぐいぜ。パスト本人の情けない姿はもちろんなのだが、結構部下を捨て駒扱いしたり無理くり働かせたりと、今と変わらず数多くのパワハラを行っていた。やだ……こんな上司やだ……。
パストに召喚された怪人ナンバーワンズの生き残りはしょんもりした。もうすごい顔がしわくちゃになっていた。
『俺の上司ハズレじゃん……死しか救いないじゃん?』
『やってらんねーーー。還ろうぜェ骸の海。あっちで水コン再開しようや』
『オー。カエロカエロ。……ジャア、ダレガイチバンキタクデキルカキョウソウスル、カ』
『……うおおおおおおおおーーーーーーーー一位うおおおおおおおおお
!!!!!!』
『俺が一位になるんだよぉ
!!!!!!!!!!!!』
『オウチ!!!! オウチ!!! ウミヘピョオオオオオオオオオオオオン!!』
『死って救いじゃん……』
明るい会話だが、自害しながら行っているので絵面がひどく地獄である。
中にはどうせなら執行人に処刑されようと自首しに来た怪人もいたので、鉄塊剣で殴ったら笑顔で爆発四散した。なんともいえない花火であった。
さて、公然に見せつけられ晒上げられてしまったパストは涙目で歯を噛みしめる。対してアンナは挑発としてわざとらしく笑ってみせた。
「ねぇ、坊や……満足したかい?」
「俺様のサティスファクションがこんなところで終わっていいはずがねええええええええ!!!」
パストの判断力は低下しきっていた。だが、半狂乱的にアンナの腕に噛み付く行動は本能からくるものだった。
炎獄の執行人は少年の頭を掴み、引きはがしたかと思えば地面に叩きつける。背中を足で踏みつけられ、暴れ狂うも固定される少年の姿を、錆色の乙女が冷たく見下ろしている。
「……お前は……傲慢が過ぎた……」
傲慢。それは大罪の一つに含まれる感情や欲望である。
大罪は決して罪悪そのものではない。それは人が進化するための教えだと思う。
しかし、行き過ぎた欲望は身を亡ぼす。膨れ上がった感情は肉体では抑えきれずに具現する。
それが悪として産み落とされるか、善として誕生するか。無として返るかはその者に滞在する可能性の力によるのだろう。
「これより処刑を行う……」
「……ッショウ。畜生があああああああああああああああああ
!!!!」
鉄塊の如き巨大剣が、傲慢に相応しい小さなライオンの首を刎ねた。
●このあとめちゃくちゃ集団行動した
受付広場にて。猟兵たちの活躍によってオブリビオンは討伐され、スキマパークは破壊されることなく無事に水着コンテストを開催することができたのだった。
しかし、ここはキマイラフューチャー。怪人を倒した猟兵のもとにはキマイラたちがすっごい集まってくる。そんなすっごい人だかりの中心に立つのはもちろん、猟兵。
「え、エ―――!? え噓、あの動画に出てたのって猟兵様?! あ、あ。あくしゅ、握手してもらってもいですか……」
「うん……」
「おあ、おあ。ありがとうございますぅ……!!
あー……やばいやばい泣く。泣くわあ……コケコッコーーーーーーーーーー
!!!!!」
あ、泣くってそっちなんだ……と、握手を求めてきたニワトリのキマイラのむせび泣きにアンナはちょっぴり動揺した。急に、叫ばれるとは思わない。
それに、ちょっと……結構、熱い。キマイラたちの熱気でじんわりと汗をかいてきたアンナはぽつりと。
「アイス……」
呟かずにはいられなかった。
アイスを食べたら、プールにも、また温泉も、行ってみよう……。それ以外にもいろいろあるんだよね……この施設は。
24時間年中無休、スーパーきまヒュ~健康パークは今日も元気に運営中です!
今日は水着コンテストするんだよ! 飛び入り参加は面白いから、みんなのこと待ってるよー!!
大成功
🔵🔵🔵