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逆さまの雷槌

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み #ニトゥルス島 #島の座標N0IE06


●号砲を鳴らせ!
 今日のニトゥルス島の、天候は相変わらず荒れ模様の天候らしい。
 頬を殴る大雨、叫ぶように吹く強風はまるで嵐。
 そして空を走る遠鳴り。
 しかし島の海賊は、再建した甲板上でラッパ銃の空砲を陽気にバンバン撃ちまくる。
「祭りだ騒げ、野郎ども!」
 ウォオオオオ、と仲間たちの声が、後押し。
「――雷神祭の開幕だァ!!」
 足元から人体に無害な雷が、轟音とともに空へ駆け上がる。

●ライトニングライダー
「夏といえば海だな、ならば海といえば雷だろう?」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)の案内はやや解釈が捻くれていた。
「……ビーチは、ある。ただし島の内部で、船内に広がる広大な室内ビーチだがな」
 元々宇宙船として存在したはずの船の抱える、数ある居住区の一つ。
 島を一番知るだろう海賊団の団長に尋ねれば、きっと教えてくれるはず。
 砂も海水も、その部屋には大抵、望むものはなんでもあるだろう。
 どこかからか、島の外を泳ぐ魚が侵入していたり、島を仕切る海賊団すらしらないビーチの秘密を探るのも、悪くない。
 島民も海賊も猟兵のすることならば静かな時間を邪魔するものはないはずだ。
「それもいいだろうが……ニトゥルス島は、毎年足元から雷を放電する奇妙な日を雷神祭と称しているそうだ」
 島自体、普段から常にバチバチと微弱な電気が帯電してる不思議島だが、この日は特にバチバチしている。
 基本的にこの帯電は、静電気レベルだ。髪を浮遊させる程度しか、ない。
 生き物にも、体に全く無害で影響を与えたりしない。
 雨で体が濡れても、勿論、同様だ。
 島から発生する帯電は、生き物を傷つけないが……長年電気を蓄えた島の一部である機械が磁場を利用して浮いていたりする。人に影響を与えないが、機械は島と"反発"するような磁力を得ていくようになっているらしい。
「雷神祭の日は、"島自体"が電気を放電する日、ということらしいぞ。……なんでそうなるのか、というのは俺様にもわからんが。此処は気候が荒れた島だからな。蓄えすぎたモンを放出する日がないといけねェとかそういうモンじャねェか?」
 無害の雷が、主にニトゥルス島で一番見晴らしのいい甲板から空へ向けて駆け上がる。
 その際に、既に浮いてる板や、機械の破片。
 適当に新しく投げてみても、宙にとどまる不思議な現象。それらを足場に、雲の上へ駆け上がる度胸試しが海賊たちの夏の風物詩となっているそうだ。
「雷を波にみたてて、空で雷に乗る。そんな遊びも出来るッてーことだ」
 サーファーのようなことも、勿論出来る。
 空の波に乗る祭――それが、雷神祭。
 天の何かに祈るでも、未来に何かを祈るでもない。
 絶え間なく立ち上る轟音が、全てをかき消してしまうからだ。
 もしも普段言えない事を叫ぶなら、それも可能である。
「ライトニングライダー。島の海賊は、これにチャレンジするものをそう呼ぶそうだぞ」
 チャレンジするもしないも、遊ぶのも、勿論猟兵の自由。
 猟兵は島の海賊ではないので、島特有の度胸試しをする必要もない。
「落下や、降りる時の危険は考えなくて大丈夫だ。何の因果か、上空に駆け上がった者は絶対島の外の海に落ちるから」
 甲板に激突することは、絶対にない。
 常に天候が悪い島へ、雷が落ちないのと同じ現象だ。
 これは、この島の不思議な帯電と深く関係があるだろう。
「……そうそう。"空の上は晴れている"。うまく駆け上がった雲の上で、雲の海を眺めることもできるだろうさ」
 帯電が届く場所は全てがニトゥルス島の圏内。
 島も含めて空も、海の中も。全てが、そう。
「不思議の光景が選べる遊びが、水着で遊べる場所が此処にも在る。なあ、……てめェはこの島でなにをしたい?」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 猟兵たちの、ちょっぴり奇妙で不思議の夏休み。
 スペースシップワールドから落ちた島へ、ご案内。
 おかしな電気が体に帯電する『ニトゥルス島』へようこそ。
 水着で露出しているからといって感電したり感電対策は、必要ありません。
 この帯電はこの島特有の、なにかです。

 ・ニトゥルス島は、大雨大嵐が基本装備の天候の悪い島です。
 ・人体に無害な雷に乗る、ライディングを嵐の島で、楽しめます。
 (大声だしても、お連れ様くらいにしかその声は届かないかも)
 ・普通に船内のビーチで、遊ぶことができます。
 (プライベートな感じでバカンス的な奴も、出来るでしょう)

 上記以外のことは、参加を考えてくださる方の想像次第。
 水着か(普段着なのか)、出来ればプレイングの中で教えて下さい。
 UCを使うなども大丈夫。
 楽しく遊ぶ事を念頭に置いて頂けますと、幸いです。
 また、お声掛け頂いたときのみフィッダ(停ノ幼獣・f18408)が一緒に遊びます。

 以下、このシナリオでの諸注意を。
 このシナリオは、【日常】のみの1章構成のシナリオです。
 訪れる島は、既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
 オブリビオンとの戦闘が発生しないので、獲得EXP・WPが少なめとなります。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
宙夢・拓未
不思議な電気だな
俺の体内の、魔力を帯びた電流とも違うみたいだ

俺もこの島に長く滞在すれば、ふわっと宙に浮くのかな?
なんてな、そうもいかないさ

せっかくだから、チャレンジするか。例の度胸試しに
真紅のボードショーツ(水着)で行くぜ

宇宙バイク『Crimson-Blast』を【操縦】し走らせ
バイクごと【ジャンプ】を繰り返し、足場を飛び移っていく

無事に上空に到達できたら、雲海を見渡してから、バイクに乗ったまま雷の波に乗るぜ

轟音の中で叫ぶ!
「――人生、最高だあああっ!!」

降りる時は【不沈の紅】でバイクと合体して、機械のシャチになって、頭から海に飛び込むぜ

ふふっ、これで今日から俺もライトニングライダーだな



●空と海を制するレッドライダー

 大雨の中、雷神祭に訪れた宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)。
 天候が悪く、見上げる空は雷が走り、どこまでもどす黒い雲が広がっている。
 鳴り響く轟音に負けない雨脚――。
「……不思議な、電気だな」
 天気はそういうものかもしれないが、ニトゥルス島に踏み込んでから自分のものではないエネルギーの流れを、拓未は感じていた。
「俺の体内の、魔力を帯びた電流とも違うみたいか」
 ただ内側に入りこんでいるだけの、自然由来のエネルギー、なのか。
 島で特別何かに使われるものでもないようで、雷は空へと淡々と還っていく。
「まあいいか」
 機械が帯電すると、浮かぶと聞いたとおり。
 浮かんだものが幾つも視界に入ってくるが、足元から上に登る雷が通り抜ける度、物への浮力が常に、付与されるような気がした。
 ――先程見たときよりもわずかに足場が上にあるような。
「……俺もこの島に長く滞在すれば、ふわっと宙に浮くのかな?」
 サイボーグを機械に含むのならば、単体で浮遊能力を得られるだろうか。
 考えてみるが、すぐにあり得ないと思い至る。
「なんてな、そうもいかないさ」
 長い滞在を持って浮遊する"機械"になったとして。
 それはこの"島"でしか意味をなさないだろう予想が付く。
 拓未はここで足を止めるつもりは、勿論なかった。
「……お?今誰か落ちたか。せっかくだしな」
 雄叫びのような、悲鳴のようなものが空から海へどぼん。
 幾つか落ちた音が聞こえた気がするが、恐らく海賊団のチャレンジャーだろう。
「お?真紅のボードショーツ、いかしてんな!」
「分かるか?」
「勿論分かるとも!……おい、てめェら道を開けてやんなあ!」
 海賊団の団長が、声を張り上げると海賊団の面々が道を譲りだした。
 チャレンジ中の上空で浮遊する顔ぶれが、ニヤリと笑っているのが僅かにみえる。
「さあ、……行くぜ」
 カッ、と勢いよくハンドルを握り宇宙バイク、Crimson-Blastへ臨む拓未。
 魔導蒸気機械も初手から全開、フルスロットル。
 始めからややおかしいな浮遊感が、ある。僅かな助走の中、バイクの前輪を持ち上げて拓未が器用にジャンプを繰り出す。
 目標物は上空に点在すしているのだ、疾走ると跳ぶ。
 真紅のバイクのボディに稲妻の光が、幾つも並走するようにキラリと輝く。
「順番に跳ぶのもいいが、勢いに任せて行くのもいい!」
 ジグザクと、車体が乗れるギリギリの規模の足場。
 器用に登り進む拓未を、海賊たちが呆気にとられて見送っていた。足場は拓未の想像を越えて不安定だ。帯電のエネルギーだけで浮いているだけ。グラグラ揺れる。
 拓未が通り過ぎるとともに浮遊した足場が激しく揺れて何人かが落ちていく。ゴロゴロと激しい音がするもので、海に落ちた声や声援等は聞こえないものだが……。
「お先に失礼。またの挑戦を!」
 バイクで跳ぶ飛距離に足場が点在する以上、このまま踏み込んで行くことが出来る。追い越し車線はどこにもない。
 雷が張り巡らせる自由空路はもう、拓未の独走許している。
「これで……最後だ!」
 分厚い雲の向こう側。
 構わず突き抜けて飛び出すと、雲の上にまで浮遊した島の機械らしいもの、まだまだ上に点在していた。
「……まだ登れるっていうのか」
 下から見上げた時は黒々怒れる雲の群れだったが上から眺める雲海は、白く落ち着いている。
 静かなさざなみは海ではないので聞こえこないが。
 雲海の波間が時々ゆれて、全体的に雲が風に流されていく。
「いいや、これ以上はいい」
 浮遊した足場から、連続して走り続ける雷の波に飛び移る。普通ならば、感電に身を焼くものだがバイクに浮遊を齎して、拓未の姿は雷の道をジグザクと滑空の体制に入っていく。道なき道の気配を読みながら、ただ落ちるだけではない不思議の体験を継続して楽しむ。
「――人生、最高だあああっ!!」
 思わず叫んでしまいたくなる奇跡のライトニングコースター。
 道を走りながら下るだけでは終われない。
 宇宙バイクと更に風とアトラクションを楽しむならば、乗るではなく――。
「OK、準備完了だ。泳いでクライマックスまで楽しもう!」
 雷の白色が誰の目も焼いて晦ませた。
「……お?」
 誰かが思わず上げた声。見上げた空に、大きな魚影。
 空を裂き、海を裂く自由に泳ぎ回るその姿は、変形合体を行った機械のレッドライトニング。帯電の領空を泳ぎ、大きく大きく、島に向かって加速して雷を存分に浴びながら勢いよく島の外の海へ――ドボン。
 勢いのまま領海を暫く泳ぎ回って、海面から飛び出した魚影が飛び上がる。
「ふふっ、これで今日から俺もライトニングライダーだな!」
 拓未の挑戦に、ナイスファイトと海賊団から盛大な歓声が贈られるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
手頃な機械の破片に鉛による【武器改造】。
サーフボード型に形を整えて【騎乗】、ライトニングライダーとして参加。

この流動鉛が詰まったこの五体、海の世界は忌避してきたしそのせいでカナヅチだが、空の世界ならばこちらの領分。
【空中戦】能力の感覚を活かして、雷の波を乗りこなしてみせよう。
無論、参加したからには目指すは天高く。
ある程度【学習力】で波の塩梅を把握したら
居るであろう観客向けにカットバック等の【パフォーマンス】をしつつ雲海の上を駆け上がる。
この時に限り当方、サーファールパート。精々楽しむとしよう。

あ、着水は直前に青く燃える鉛の翼を展開し【空中浮遊】で避ける。
海を鉛で汚すわけにはいかんからな。



●ブルーウィングライダー

 鎧に雨が跳ねる音が数多く。
 強めに響く雨脚は、大雨との表現に相応しい。
「一応尋ねるが、この何らかの機械は何か重要なものだろうか」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の指差す先は、空の上。雷が通り抜けていくなかで、浮遊した不思議の破片。
『いいや?そうさなァ、鮫の歯とかで例えたらいいか?』
 あっけらかんと、島にあるものは誰のものでもないと匂わせて言い切ってみせる男。ルパートへ言葉を返してきたのは、海賊団の団長だ。
「成程。重要なものではない、といったところか。了解した」
 特別重要なものではなく、替えがきく。
 そんな機械の"破片"ならば、どうするも自由。
「では少々拝借を」
 足元にまだ留まっている機械も、そのうち反発して浮かび上がる。
 ならばと手を出して、武器改造を施す。
 破片の形を忘れさせて、サーフボード型に器用に形を整えて。
「ただの機械と言わせない形状で失礼」
 雷が上がる地点、というのは何処にでも存在すると事前に団長が説明をくれたが、特に多い地点。水のようにとめどなく上がり続けている地点というのもある。
 当然、チャレンジャーは此処から始めるものも多いが、ルパートがサーフボードをかざす頃には順番を譲られていた。
『こいつはきっとイイ波乗りを見せてくれる!』
『ヒュウ!アゲてこーぜ!』
 わくわくを抑えきれない海賊の面々が、盛り上がっているのを傍目に見ながら臆すること無く――リフトオフ。
 ルパートがボードに乗ると、不思議なことに本当に徐々に浮き上がる。
 暴れる雷の轟音に連動するように。ぐらぐらと本物の波のように、体を揺さぶる足場の揺れは確かに御すのが難しいと悟るものがあった。
 ――この、流動鉛が詰まったこの五体でも……容赦なく浮かぶか。
 空の海に漕ぎ出して、この島の不思議を存分に体験するルパート。
 ――海の世界は忌避してきたしそのせいでカナヅチだが。
「空の世界を舞台とするならば。こちらの領分だ」
 雷が疾走る衝撃を活かし、別の雷へ音を頼りに波に乗る。
 ボードに体重を傾けて、激しい轟音が鳴り響くほうへ突き進む。
『うぉお!鎧の旦那身軽だな!』
『すげえ!!あれを乗りこなすのか!』
 数々のオブリビオンとの戦闘のなかで空中を舞台に戦うこともある。
 空中戦の経験が、此処に活きていた。
「無論。参加したからには目指すは天高く」
 ――足場への馴染み、雷の衝撃。ふむ。
 何度か跳ねるように乗りこなしてみて、感じる。
 挑むものの体重、重さに雷は動じない。
 改造を施したサーフボードもいい塩梅だ。
「……だが」
 大分空を登ってきたルパートがニトゥルス島の甲板に視線を移すと、海賊たちが騒いでいるのが見えた。ずっとなんらかの声援などが飛んでいるのかもしれない。
 ――雷の音で聞こえないのがやや残念だ。
 サーフボードの先端をわずかに抑えるように身を屈め、雷の大波に備えて堂々とした素振りで雷の波を乗りこなす。白波の雷を縫うように、片手を雷を水面に見立てて触れてバランスを取りながら進み、雷にスプレーを発生させる。
 ヂヂヂと水しぶきのように散らして、身を反らし、素早く反転。
 ルパートが乗れば乗るほど、上がる雷の残光が上がる度に轟音が彩った。
「うむ。どうやら魅せれたようだな、手を振っているのが見える」
 サーファールパート、雨天決行緊急天空ショーは見事に決まった。
 雲海へこのまま駆け上がるのも、海賊たち観客には"雷を御するもの"すなわち、雷神にでも見えるだろう。
「……おお。荒々しい波間を抜けて、広がる色はただ白いのか」
 一息に雲の上に突き抜けて飛び出した雲海でルパートが見たもの、それは静寂の青と白い波。ざざざ、と心做しか波打つ音が聞こえてくるような。
「これは、このままの勢いで……」
 空の海にサーフボードで挑んだルパートだったが、隙間なくふかふかする雲に実体がない。中身のないものにサーフボードで乗りこなす事が叶わず、落下の道を辿る。
 上から下へ落ちる、いいや。
 駆け下りていくときに感じたのは、反発する強いエネルギー。どう操作しても、どう操縦しても言うことを聞かない磁石のように跳ね返される感じ。
「"絶対"というのはこのことか……!」
 背中に青く燃える鉛の翼を展開し、加速し続ける落下に急激な減速を掛ける。
 流れに逆らわずに踏ん張れば、落下と着水自体を避けられるはず。
「当方の鉛で、海を汚すわけにはいかんからな」
 荒々しいライトニングライダーが、ブルーウィングライダーへと名称を変えて、海に降り立つ。
 流れるような空中浮遊に、思わず技術点を叫ぶ出す海賊たち。
 ルパートの得点はとても高いだろう。遠くに見える甲板上の海賊たちの動作はどうもルパートに――"アンコール"を求めているようである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樹神・桜雪
※水着JCの服装

海賊のお兄さんたち久しぶり。元気そうでなによりだ。
相棒とまたきちゃった。

相変わらずバチバチとすごいね。
その辺を浮いている板や機械の残骸を伝って上に行ってみよう。ねえ、フィッダも一緒に行ってみない?声をかけるの初めてだけど、いい、かな?
途中足場が無いところはUCで嵐を呼んでジャンプ台代わりに使うよ。相棒もフィッダも捕まってね。

上についたら目の前に広がる雲海にただただ圧倒されよう。
すごいね、あの悪天候の上にこんな景色があったんだ。来て良かった。
君に声をかけた理由?たまには遊びたいなって。ダメだった?

そろそろ帰ろうか。
思いきって飛び降りればいいんだよね。多分大丈夫。紐なしバンジーだよ



●悪天候のflyaway

 久しぶりに訪れた樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)が眺めてみるニトゥルス島は、稲光と轟音が凄いが、どうやらあまり変わりはないようか。
 あの時とは大きく異なって、完全に夏休みスタイルを決め込んでいる桜雪。
 ばしばしと、浅めに被った麦わら帽子越しに雨の強さを知る。
「海賊のお兄さんたち、久しぶり」
『おうおうあの時の!今回はちゃんと観光か?』
「うん。だいたいそんな感じ」
 強風に帽子が飛ばされそうになるのを捕まえて、今度はきゅ、と深く帽子を被り直す。どことなく海賊たちの顔ぶれに新しい顔が増えているような気がして、遠きいつかの野望に向けて前進し見続けている海賊団なのだと改めて認識した。
『じゅりり!』
 いつかと同じくまんまる羽毛でころころ毛玉になっている相棒がパタパタ存在を主張した。人の言葉で顕すなら"此処にいるぞ"と言わんばかりに、――小さいが偉大なもこもこの胸を大いに張って。
『ハハ、そいつも元気そうだなァ!』
「相棒はいつも元気だよ。また、きちゃった。相変わらずバチバチとすごいね」
 鳥だろうとお構いなしで帯電を齎す様相も相変わらず。
 ぷかぷかと、奇妙なバランスで空へと湧き上がる雷槌のエネルギーを利用して浮かんでいる残骸の数々も、色んな意味ですごい光景だった。
 あの時よりも、空はとても賑やかな気がした。
「ねえ?避雷針代わりになってるバス停さん?」
「……いや俺様は好きで避雷針代行をしてるわけじャねェけど」
 先程から雷が彼の本体、バス停伝いに空へ散っていくのを見ていた桜雪。人体に無害だというので、直ぐ側でしゃがんで空を見上げている本人としてはなんとも言えない気分だろう。
 痛みなどは勿論ないだろうが、意図せず雷に好かれているようなものなのだから。
「ボクはこれから上を目指してみるけどね。ねえ、フィッダもどう?一緒に行ってみない?」
 控えめな勧誘。
「声をかけるのは初めてだけど……どうかな」
「なんだ。俺様とアンタは声掛けを躊躇う仲なのか?そんな事ねェと思うけど」
 返答を曖昧に、肩に掛けただけの海賊風な上着をはためかせて立ち上がる。
「こう見ると桜雪は意外と、背丈あるよな」
「……君って、突拍子もないっていわれない?」
 目元を緩めてニッと笑うフィッダ。
「今言われた!ハハハお先ィ!」
 颯爽と浮遊した足場に飛び乗り、とん、とんと空の階段を登っていく。
「あ。流石にそれはずるいよフィッダ……やっちゃえ、相棒!」
 後を追いかけるように、別の浮遊した足場を踏みしめて、雷の道を駆け上がる桜雪。シマエナガが風に乗り、尾をわずかに揺らして先を跳ぶ少年にすぐに追いつく。
 流石鳥。風の流れをすぐに把握していた。
 そして――少年の頭を連続して、容赦なく突くのだ。
「ああ痛い痛い!!酷いはどッちだ、桜雪!……と小さいけど凶暴な毛玉ァ!!!」
 ぎゃんぎゃん吠えているからか、悪天候の轟音でもよく届く声。
「先を急ぐからだよ。その先が見えてない?」
 フィッダの駆け上がる先に足場が見えない。
 浮遊の力が強すぎて更に上へ行ってしまったか、雷の道から外れて海へ落ちたか。
 想像はできるが、足場がないのは紛れもない事実。
 このまま行けば登り切る前に海へ真っ逆さまだ。
「――そこで"おすわり"して待っててよ」
「おい!さりげなくイヌ扱いすんな!」
 後から追いかけてくる桜雪に聞こえるように言い返す為かフィッダの足が、ぴたりと止まった。
 飛び跳ねながら、手に集中する桜雪が得意とするある属性のエネルギー。
 此処まで大荒れの空なのだ、別の自然現象が突然訪れてもおかしいことはない。
 Neve Granulosaで誘う暴風の"氷雪"。大雨と雷、時々、一時的に吹き付ける暴風雪があったとしても"ありえない"なんてことはないのだ。
「この風を背中に当てるから、相棒もフィッダもボクによく掴まってね」
「お前意外と、いい性格してるよな。言われたことないか」
 凍えそうなほどの暴風に煽られて、空を往く。
 足場もなければ浮遊する足場もない。
 暴発もあり得るドキドキのスリルへ同行者も巻き込んで、僅かな空中散歩だ。
「うん?今、言われたね」
 チチチチ、と同意か。それとも笑っているのか相棒が激しく囀る。
 賑やかな空の旅だ。すた、と浮遊した足場に足をつけてば一安心。
 随分と甲板が遠くに見えた。
「……ここ、もしかして雲の上かな」
「空は快晴。太陽が眩しいしそれに……」
「目の前に広がるこれが、"雲海"……」
 ただただ、白い広大なもこもこに、圧倒される。
 これがニトゥルス島の本当の空と、天空の海。
「すごいね、あの悪天候の上にこんな景色があっただなんて」
「悪天候だから余計に映えるんだろ。秘密の空の財宝、とかだッたりしてな」
「なんて言ったっけ……ロマン?があるね。それ。来て良かったよ」
 ざざざ、と波打つような音はあるが、手を伸ばしてもひんやりするだけ。
 雲の海は見て楽しむだけの、薄くて朧げな幻だ。
「……そうかい。相棒と楽しむのもよかッただろうに」
 ぼそりと呟かれた一言も、轟音が霞んでいると普通に聞こえた。
「……君に声を掛けた理由を気にしてる?たまには遊びたいなって。うん、それだけ。駄目だった?」
 桜雪の伏目がちな緑色が、じぃ、とバス停を見る。
 遊び仲間に誘っただけなんだけどな、という意図が伝わるかどうか。
「駄目なことねえよ?賑やかなのは特に大歓迎」
 ニッと笑って、返す少年。大丈夫伝わっていた。
「俺様は誰かを導くのが仕事なんでね、先導は特に直せない癖だ。許せ」
「許すも何も。いいんじゃない?それでも」
 そろそろ帰ろうか。
 どちらが先に言い出したことだろう。
 声を揃えて同時に、だったかもしれない。
「この上りは片道切符。降りる時は……」
「聞いたよ。思い切って飛び降りればいいんだよね」
「そうだが。この高さは普通に度胸が試されてんぞ……?」
「多分大丈夫。比較的安全な、紐なしバンジーだよ」
 言って即座に、上空から海に向けて飛び込む桜雪。
 有言実行とはいうが切り替えが淡々としていて、ほぼ即決だった。
「お前……潔すぎない!?」
 少し遅れて慌てて後を追うバス停が、水に飛び込む決心がつけられなかった事など可愛いもの。
 足場を利用して下る道を選んでいるのが遠くに見えた気がした。
 しかし、彼がわざわざ本体を甲板に置いてきた事を、桜雪は気づいている。
 ――仮初の体なら、大丈夫なんじゃない?
 なんて思いながら、先に着水。わずかに手で相棒に合図して、フィッダの後方をステルス追尾していた相棒が盛大な蹴り(当社比)を繰り出した。恐る恐る降りていたフィッダのバランスを大きく崩させて、体は問答無用に海へと真っ逆さまに。
「……落ちてきたら、なんていうかな」
 僅かな時間の猶予がある。
 桜雪は賑やかな同行者の反応を楽しみに待つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミツハ・カイナ
いやいや、これは中々の絶景じゃねぇか…!!
じっくり絵にも残したいとこだが…もっといい景色見れるって言うなら行くしかねぇよな

水着着用
自前のサーフボード片手に雷乗りに挑む
飛べない仲間だと思ってたが、一緒に空の先まで行けそうだな
なんの気なしに遊び心で描いたサーフボードのペンギンに笑いかけ
(羽が小さく飛べないオラトリオ)

さぁ、行こうぜ!
雷を乗りこなし、上へ、上へ
多少勝手は違っても意外となんとかなるもんだな
目指すは雲の上!
雷の大波を超え、雲を超えたその先で広がる青空に息を飲む
…ははっ、自力でこんなとこまで来れるなんて思わなかったなぁ
きっと、この空の色は一生忘れないだろうな
満足そうに笑みを浮かべて



●青空フリーバード

 大嵐の島。
 足元から沸き立つ雷の群れ。
「いやいやいや、これは中々に絶景じゃねェか……!!」
 不思議の光景に思わず、目的を忘れてただ筆を手にしそうになるミツハ・カイナ(空憬・f19350)。上空に向かって突き刺さるように疾走る雷を、その乱発している渦中で眺めることが出来るなんて普通あるだろうか。
 完全に絶縁体な服を着るなどの工夫を行えば不可能ではないだろう。
 いいや、今のミツハの恰好は誰がどう見ても夏のバカンスな様相だ。
 こんなに肌を晒す無防備な状態でも痺れ知らず。
 これは、奇跡の体験としかいいようがないのではないか。
「……我慢しろ俺。今日の目的はそれじゃあないんだ…………っ!」
 じっくり絵に残したい。
 その気持ちをぐっと、押さえつけて。
『遊びに遊んだら、残せばいいだろう?順番をつけるだけでいいんだ』
「海賊仲間にもそうやってアドバイスを出すのか?でもそうだな、そうするか」
 口から出ていた2つの葛藤にさりげないアドバイスを受けて、物事を順番に熟すこととする。うん。今決めた。
『海賊団の団長デスからねェ?悩みごとから何から何までお任せあれ、だ』
 ふんぞり返ってそういう団長にわずかに笑って返して、"機会があれば"とミツハはその場を後にした。
「だって此処からよりもっといい景色見れるって言うなら行くしかねぇよな。さてさて此処に取り出したるは……」
 自前の青空色のサーフボード。ミツハはそう、白と黒の"飛べない鳥"の姿を思わせる水着に身を包み、合わせて空を目指す者。
 バッチリキメた水着姿だ、空の海へ漕ぎ出すのにこれ以上適した姿は無いだろう。
「ライトニングライダーとかいうんだって?なら俺も――挑む!」
 スッ、と板を足元に置くと同時に雷に押されて空へと浮かぶ。
 ゆらゆら揺れるそれは、重力を感じさせない"波"に同じく御しがたい。
「気を抜いたらひっくり返そうだが……ははっ」
 サーフボードの絵柄と、目が合った。
「……飛べない仲間だと思ってたが、一緒に空の先までいけそうだな。なあ想像できるか?今なんて、一緒に"飛んでる"んだぜ?」
 流れに逆らえば島の外の海へ真っ逆さま。
 雷の波に乗り切れれば、疾走るエネルギーの勢いに押されて上へ上へと進んでいける。なんの気なしにサーフボード上に遊び心で描いたのは、紛れもないミツハだ。
 ペンギンも心做しか嬉しそうに見えなくもない。
「返事してくれたら、なんて言ってくれたんだろうな」
 ははは、と思わず笑いが溢れる。
 笑いかけたペンギンからの応答は勿論無いけれど。羽が小さく飛べないオラトリオが、――今まさに飛べない鳥の絵と一緒に"空の海を泳ぐ鳥になっている"だなんて。
「さあ……此処からもっと派手に行こうぜ!」
 身を雷の波に揉まれるだけはもう終わり。
 多少勝手が違っても、足の感覚が雷を"波"だと認識している。
「……案外、なんとかなるもんだな。よっ、と!」
 雷の勢いに任せて別の雷に乗り上がり、点々と上に向かって進んでいく。
 風も圧力もどちらも下から上へ吹いている。
 どこまでも、ノンストップで上へと進んでいける。
 止まったならば、なんて事は考えない。いいや、考えずとも分かる。
 身を竦ませたら最後待ち受けてるものはただ、海へドボン――それだけだ。
「ジグザクの波を抜けて目指すは、雲の上!!」
 最後のジャンプが雲の上に届いた。
 ふと、体に浴びていた雨が突然あがった気がするミツハ。
 ついでに、島へ来たときから見ていない太陽光が降ってきた気がして。
「――――」
 悪天候を進んできたからか、目がわずかに眩んでいたが慣れてみると息を呑んだ。
 空の上の天候は、雲の姿一つない晴れやかな夏空。
 青空を横切るものはなく、雨の姿もありはしなかった。
 そのかわりに、島へと雨を降らせる雲が広く広く雲海として白い絨毯を敷き詰めていた。ふわふわと、漂いながら無防備に風に飛ばされていく。
「……ははっ、自力でこんなとこまで来れるなんて思わなかったなぁ」
 ふわふわと浮遊した感触は、常に足にある。
 だから夢じゃない。しかし、こんなに高い世界に自分がいるなんて。
 ――確かに下のもいいが、ホントこれもいいな。隠された絶景だ。
 他に例えることのできない、穢れを知らないだろう果てしない青空。
 満足そうに笑みを浮かべて、自分のバランス感覚を信じてボードの上に座り込む。
「きっと、この空の色は忘れないだろうな」
 だから、気が済むまで目に焼き付けていこう。
 この素晴らしい光景を、見えぬ地上で"再現"する為に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジンガ・ジンガ
ご近所さんのスッフィちゃん(f14230)と水着で

ライトニングライダー?
ヤダー、俺様ちゃんこわァい!
そーゆー危ないコトはスッフィちゃんオヒトリサマでオネガイしま――って、ちょっとォ!?
俺様ちゃん少しでも死ぬ可能性のあるコトはノーサンキューだってば!
おいハナシ聞けよォ!

引かれた手を離し
適当な板をボードに雷に乗る
サーフィン、別にニガテじゃねーし
寧ろ朝メシ前じゃんよ
ヘタに一緒に乗る方がアブネーわ

昇りきった雲の上
眼前に晴天、眼下に雲海
……まァ、悪くはねーかにゃー……

前言撤回!
落ちる落ちてるてめェコラこの野郎ォ!!
絶対てめェクッションにしてでも生き残ってやっかんなァァ!!
いかねーよ!ぶわぁぁぁかッ!!


ダンド・スフィダンテ
楽しそうだからと連れてきたジンガ(f06126)と水着で

と言うわけで雷に乗ろう!
大丈夫大丈夫!ジンガ殿ならいけるって!
死なない!ここは不思議な力で死なない!安全!
(ぐいぐい押せ押せ!折角の不思議体験を一緒にやりたいいっぬの気持ち)

ジンガ殿には内緒だけど、俺様安全検証で来たからこれ二回目なんだよな。
一回目は酷いスッ転び方したけど!今回こそは!

(高く、高く!抜けた先で息を飲む。眼前に広がるは青、青!青!!)

ああ、美しいな。
思わず静かに呟くが、高度はジンガに足りていない!はっはっはっ!落ちる落ちる!

うははははは!!!
いいともいいとも!俺様の腕の中来る!?
はっはっはっ!!

(派手に飛ぶ水飛沫!夏!!!)



●楽しいことはそう"一緒に"

 ――集合は夏の様相で。
 確かにそんな言付けをご近所さんに貰った気がしたジンガ・ジンガ(尋歌・f06126)。だからこそ、バッチリ濡れる前提の服を着こなして訪れた。
 雷鳴、轟音が永遠と轟く激しい祭り開催中のニトゥルス島。
 今日に限っては、足元から雷が立ち登り続ける摩訶不思議の島だ。
「やあやあどうもスッフィちゃん。なんか、……たのしそーね?」
「うんうんとても楽しいから連れてきたんだよ」
 ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)の満面の笑み攻撃。
「というわけでだ、此処まで来たんだ雷に乗ろう!」
 前置きは不思議と何もなかった。ダンドはいつも唐突だ、突然祭の知らせをジンガはなんとなく疑いもせずに受け取ったものだが。
 今にして思えば、何故今此処まで来てしまっているのだろう。
「チャレンジャーは超格好いい名称を名乗れるっていうし!」
「確か"ライトニングライダー"、だっけ?やだー、俺様ちゃんこわァい!」
 嫌な予感がしなかったわけではない。
 むしろこんなゴロゴロ唸る甲板で、島の海賊たちが果敢に挑戦している姿を目にしたら!"なんかやらなきゃいけない空気"に呑まれる気がしていた。
『お客人も皆空上りに挑戦しよう』
 海賊団の団長の視線もそんなニヤニヤが含まれている気がしたので、ジンガは速攻で視線をそらしていたのに。
「大丈夫大丈夫!ジンガ殿ならいけるって!」
「そーゆー危ないコトはスッフィちゃんオヒトリサマでオネガイしま――って、ちょっとォ!?」
 ニコニコ笑顔のダンドの手が、がっしりとジンガの手を捕まえた。
 ぶんぶん振りほどこうとするが、この男。加減無く握り込んでいる!なんという馬鹿力!しかも、ジンガの顔をまっすぐに覗き込んでくる。
 やろうやろう、ねえやろう。
 ぐいぐいと際限無く押し押しの押しで言葉攻めを繰り出す気だ!さりげなくチャレンジ参加者として連れて行こうとしてるのが、分かる。何故なのか。
「俺様ちゃん少しでも死ぬ可能性のあるコトはノーサンキューだってばぁああ!」
「死なない!ここは不思議な力で死なない!安全!」
 バチバチしてるだけ!音だけすごくて全く痛くないから!
 落下も安心!全部安心!なにより島の海賊団の人たちの保証付き。
「折角だから。此処まで来たんだから。ジンガ殿最高!ヒュゥ!」
「おいハナシ聞けよォ!!」
 下手くそな口笛(口で言ってる)までつけるほどだ、どうしても一緒にやりたいという事だろう。握り込まれては退路がない。ジンガ流諦めは、此処にあり。
 引かれた手を大分力を込めてでっかいイッヌハンドの内側から逃し、適当な板をボードにして雷に乗る。
「……サーフィン、別にニガテじゃねーし。寧ろ朝メシ前じゃんよ」
「そうこなくては!あれ、俺様との相乗りは?」
 すかさず入るダンドの合いの手。
 しかしこの男には隠し事があるのだ。
 ――ジンガ殿には内緒だけど、俺様安全検証済みだからこれで二度目なんだよな。
 ――海賊団の面々がいうところでは、何度挑戦してもいいとの事だったから皆いい笑顔。検証初回、一回目は酷いスッ転び方したから団長殿のニヤニヤが俺様にも向いている…………!二度目はないさ、勿論。
 ――今回こそは、見事に華麗な雷捌きで渡り切る!
 決意ありき。この間僅かに数秒だ。男の回想は時間を要しない。
 これは笑顔の下に隠した、綿密な計画なのだ。
 誰もがニヤニヤしているのは、"知ってて隠して"いるのである。
「いやいやいやヘタに一緒に乗る方が普通にアブネーわ!」
 すいぃ、と体重を傾ける方向へボードの向きを定める。
 こういうバランスボードは、流れに逆らわず"乗る"事ができればそう簡単に落ちるものではないのだ。ダンドとジンガ、どちらも並走するように轟音の雷の波を飛ぶように跳ねて高度をアゲていく。浮力がどんどん付与されていく故に、何もせずとも島の甲板は遠くになっていくのだが――。
 目指す場所は、見上げるほどに高く。
 貫く光の届く先を目指し、光の波を散らしながらサーファーたちは上を目指すのだ。ずぼ、とおかしな音を二人同時に耳にした。
 ゴールテープと定めた雲の上へ、ピタリと同着でたどり着いてしまったのである。
「――――」
 消音機能が施された巨大な部屋に、侵入したようだった。
 悪天候なんて、幻のよう。
 二人の前に広がる雲海は、静かにざざざと小雨のような音をだすばかり。
「昇りきった雲の上はこうねえ……?」
 眼前に晴天を、眼下に雲海を。地上で見ることのない光景を、雷を利用して目にしたジンガの目元がわずかに緩む。
「……まァ、悪くはねーかにゃー…………」
 一緒に此れを見たかったという気持ちがわからなくもない、そんな気持ちに穏やかさを傾けたジンガ。
「ああ、美しいな」
 思わず静かに頷きながら呟くダンドの背丈は、こんなにも小柄だっただろうか。
 わずかばかり気が付くのが遅れたジンガ。
 自分よりも見上げるハズの大男の高度は、雷が疾走る浮遊域を外れている――。
「はっはっは!落ちる落ちる!」
「前言撤回!!!!落ちる落ちるっててめェコラこの野郎ォ!!!」
 ジンガの高度も、道を外れている。そう、ふたりともゴールを優先したことでルートを見誤っていたのだ。
 到達はしたが、とどまれない。後は見事に落ちるだけ。
 下に引っ張られる。どちらもが感じたことだ。自身が雷としておちるように海が運命を知らせるように引きずり込もうとしている。
「うははははは!!!!」
 ダンドはどこまでも楽しそうに笑っていた。落ちる時も諸共に。
 なあに下は海だ、着水するのは確定だと説明されていた。
 すこーし当たりどころが悪く海面にばちんと当たって痛いかもしれないけれど。
「……絶対てめェクッションにしてでも生き残ってやっかんなァァ!!」
「いいともいいとも!大歓迎だ!!俺様の腕の中来る!?」
 ふたりとも真っ逆さまの中で腕を広げてカモンとアピールするダンド。
「いかねーよ!ぶわぁぁぁかッ!!」
「はっはっはっ!!」
 こんな不思議体験の終わりに何を言ってるんだこの男たちは。思わずダガーによる素早い一撃を胸に投げ込んでやろうかと思ったジンガだったが少し遅かった。
 全てはダンドの満足げな笑い声に調子を崩されていたのだろう。
 収集がつかないままに猟兵二人が派手な水飛沫をぶち撒けて、捨て身の夏をエンジョイしていた――。
 ライトニングライダーの夏は、海に落ちるまでがワンセットなのだ。
 だからこそ、ダンドがきっと言うだろう。
 ――ジンガ殿!お見事。じゃあ次は水鉄砲片手に、"もう一回"!
 面白愉快な猟兵の夏は、まだまだ続く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリエ・イヴ
【契】水着
アドリブ◎

楽しそうな祭だな
…誰かいればもっと良かったんだが
家族か、あるいは―

視界に入った姿に目を細め
やっぱり俺は“運がいい”

よぉシェフィー!
祭りは楽しんでるか?
狩りの前のように気配を潜め
後ろから肩を組んで確保する

そっちは甲板だぜ
つまり、ソウイウコトだろう?
いや~秘めた想いがあるとはなぁ
俺のモノになりたいって告白なら大歓迎
逃げられないように手を鎖で繋ぎ軽口を叩きながら一緒に空へ
秘めた想いはない筈だが――『   』
小さく呟いた言葉は消えて
海へと還る

ハハッ!空からの海!最高じゃねぇか!
逆にシェフィーは…おお怖い
そんなに怒るなよ
俺と一緒の方が宝を見つけやすいだろう?
シェフィーの指輪を撫でる


シェフィーネス・ダイアクロイト
【契】アドリブ◎
普段着

島へ再訪
あれから変化がないか住民に話聞く
島全体を眼鏡のメガリスで観察
島を手中に収める野心は顕在
帯電で乱れた髪を梳く

この騒ぎに乗じ、不可解な現象を調査するのも悪くなかろう
未だ見ぬメガリス捜索も兼ねて(嵌めた指輪見て

通行不可の所は板や破片投げて道を作る
島偵察してると

…アリエ・イヴ(睨
邪魔をするな(手払う
私は祭を楽しみに来た訳では…

話聞かぬ彼に溜息

秘め事を叫ぶ?下らぬ

─貴様は私の父を殺した海賊の息子か?(全部消え

貴様、何と?
ッ…!?

上空に引っ張られ一緒に海へ落ちずぶ濡れ
銃口を奴の米神へ

今すぐ脳天撃ち抜かれたいのか
は?
島の宝はくれてやらん

鎖は破壊
結局二人で海中の宝探し
泳ぎは優雅



●"強運"

 靴音をわずかに鳴らし、男は自身が名を思い出させた島へ訪れた。
 一度目の来訪から、まだ数ヶ月。
「再訪」
 言葉短く、眼鏡のメガリス越しに目が合った海賊団の団長に、そう告げた男。
 シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)。
 夏であり、休暇であるはずの日も隙一つ無い立ち姿だった。
「あれから変化はないか」
 一瞬だけ視線がぶつかったからもういいだろう、という感じで、島全体をメガリス越しに観察し始める。
『変化といえば甲板を直したくらい……暮らしなんぞそう変わらねェさ』
「そうか」
 牙の鋭利な巨大魚が荒らしに荒らした風穴だらけの床や天井が確かに補強済みだ。
 突貫工事ではなく、時間が掛けられている。それくらいの日々が過ぎた証拠だ。
 男の抱く野心は、この島に未だ熱を持つ。
 手中に収めると定めた意はまだブレていない。まだ再訪してあまり時間は経過してないが、ふわりと浮いている髪を軽く梳いて在るべき姿に戻す。
「てめェのそれも相変わらずか」
 団長の声を聞いてはいるようだが、シェフィーネスの応答は薄い。
 再訪のチャンスを得たのだ。祭りの日?それなら好都合。
 このニトゥルス島の不思議は未だ数多く存在するはずだ。
 調査に時間を割くこのほうが男にとっては重要な目的として映る。
「ああ。島の散策を優先しても?」
 ――調査するのも悪くなかろう。
 言の葉に意味を少量だけ載せる。
 未だに見ぬメガリスが島の内部で眠っている事も考えられるのだ。
 シェフィーネスの指に嵌る指輪の出どころは、この島。
 団長の筆も、この島の海底から。どこからでも見つかる可能性が、ある。
『構わない』
 此度は誰かを付けると言わなかった団長。
 物好きのやりたいことを拒まない気質なのだろう。
『こんな日にも律儀なもんだなァ』
 そう言いながら、ニヤニヤと期待に胸踊らせる彼も相当の"変わり者"である。

 島の奥へ踏み込めば、形状自体が変わった扉、用途を忘れさられた朽ちた板。
 なんでもおかしな物があった。今日という祭の帯電で、どれもこれも島からの"反発"を付与されて、地味に浮いている。
 導いてやれば空の向こうに消えていくのだろうが――。
 用途不明の鉄屑の破片で埋まる暗い道があるが、やはり全て浮いている。
 払いのけるように道を作り、島偵察を続けていると――。

「おうおう。楽しそうな祭の気配を感じてたんだよ」
 シェフィーネスの耳に届いたのは、一方的な言葉だ。
 ふらりと自由で強運な道をただ歩いてきた誰かの言葉。
「……生憎、俺ひとりでふらりと来たからな。誰かがいればもっと良かったんだが」
 どうしたものか、と悩ましい溜め息をひとつ。
 言葉の主たる当人の目に映るものは島民たる住人か、誰とも知らぬ他人。
 ――家族か、あるいは――――。
 かちり。頭の中でパズルが嵌るような音を、男は聞いた気がした。
 その意味に思わず目を細め、口角が自然に上がってしまう。
 運命、などと言い換えるには単純過ぎるが、それでも笑みが溢れて止まらない。
 ――やっぱり俺は、"運がいい"。
 何しろ近くに見える、その姿。見間違えるはずがない。
 "丁度今しがた想像していた姿"だ。
「よおシェフィー!こんなところで祭を楽しんでいたのか?」
 わざとらしいようで、のらりくらりとシェフィーネスへと構い出す男アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)。
「……アリエ・イヴ」
 シェフィーネスの視線が一気に殺意を帯びた。
 睨めつけて、踵を返す。お前と話をする時間を共有する気がないと男は背を向けたのだ。殺気は体からも溢れている。自身へ言葉や視線で触ることを拒絶する絶対的な壁の存在を知らしめるように。
 アリエの気ままさはどこまでもフリーダム。
 そんなものはお構いなしだ。
 一瞬、得物を狩る獅子のように息を潜め、殺気以外まるで無防備な肩を捕まえる。
 旧い付き合いの友人の肩を抱くように、顔を寄せて。
「まあ待てって」
「邪魔をするな」
 無慈悲に手をアリエの払い、裏拳で殴らん勢いで跳ね飛ばす。
 殴ったところで邪魔をするアリエが悪い。シェフィーネスの手をよく見ているアリエが当たるはずもなく、攻撃にこそならなかった。
「私は祭りを楽しみに来たわけでは……」
「俺は知ってるぜ?そっちは甲板があるんだ」
 分け入っていく元宇宙船の船内、当然、抜け道などたくさんある。
 暗い暗い通路の向こうに隠されたものは、甲板へと直通の道。
「つまり、ソウイウコトだろう?いや~~秘めた想いがあるとはなぁ」
 雷の轟音に紛れて、言いたいことを吐き出してもいい。
 どうせ誰の耳にも正確に届かないだろうから。
 グリモア猟兵が得た情報はそう示していたと、言いたいところはその辺り。
「…………」
 話を聞かないのは相変わらず、そんな彼の行動にシェフィーネスから大きい溜め息が漏れた。
 ライトニングアトラクションとしての祭の別側面。
 雷神祭は懺悔大会でも告白大会の表面も、持つ。誰も秘するような事がないから、それを"そういう機会"として島民が利用しないだけなのだ。
「……秘め事を叫ぶ?下らぬ」
「――俺のモノになりたいって告白なら大歓迎」
 するすると手元に何かが絡みついた。
 アリエから距離を取ろうとするシェフィーネスの手を、鎖が絡みつき捕らえている。"強運"が、齎した単純な攻撃の回避を海の愛し子が祝福している。
 視認する対象は常にシェフィーネスだけ。
 話など一方的に打ち切って立ち去ることが唯一の、探索続行の道だった。
「一蓮托生だ、シェフィー。空へ上がるなら一緒だ!」
 アリエに一方的に連れて行かれる事を認めきれないシェフィーネスの反撃。
「誰が共に往くと」
「腕を犠牲にしてまで逃げたい?」
「……」
 にんまり。アリエの思うツボだった。
 探索は今は思考の隅において、"告白"とやらをするしかないか。
 どちらもが海賊。
 雷による乱舞も、二度目となると扱いも手慣れたものだ。
 浮遊した島の機械片を足場にするなど、造作もない。
 ゴロゴロと激しい稲光が島から上がる。上がり続ける。
 此処なら祭の趣旨にも合うはずだ。即席の手錠を話す気がないならシェフィーネスは祭の趣旨に則って、"何かは言わなければならない"雰囲気を肩に感じた。
「――貴様は、私の父を殺した海賊の息子か?」
 考えた末に出た告白は、雷槌が尽く消し潰した。シェフィーネスの思わず声に出た疑問はかき消えて声という音にすらならなかっただろう。
「何か今、言ったか?」
 図星。何かを言ったと顔に出したシェフィーネスへ、アリエは目元を細めて笑うのだ。丁度よく今床が光ったように見えた。ではこのタイミング。
『    』
 激しい雷の乱舞が、立ち上りながら稲光を伴ってアリエの言葉を抉って破壊した。
「貴様、何と?」
 聞き落としても読唇術で読み取れればいいと、見ていたシェフィーネスの目は当然眩む。読み損ねたアリエの告白。それは一体……。
「楽しくなって随分登っていたなシェフィー。次は向こうだ、さぁ往くか!」
「ッ……!?」
 大雨の中、島の雷を浴びるだけ浴びて満足したのかアリエが突然、空中の足場から飛び降りた。鎖で手を囚われたシェフィーネスは、当人が望まなくとも、自動的に体が引きずられて海へ。
 上からの理不尽な雨はまだいい。
 引っ張られて空へ飛び出すことで余計に濡れる羽目になったが置いておく。
 下の大海は今望むものではなかった。全身ずぶ濡れるつもりなど、無かったのだ、シェフィーネスには。
 アリエに絡め取られた手は片方。
 手は二本合って当然だ、その手が伸びる先にあるのは当然――。
 かちゃり。銃口を間近で笑う男の米上に突きつける。
「今すぐ脳天撃ち抜かれたいのか」
 どすの利いた、低い声だ。反論など許さない声色。
「ハハッ!空からの海!最高じゃねぇか!逆にシェフィーは……おお怖い」
 水は揺りかご。まるでそういうアリエは意に介さない。
「まあまあ。そんなに怒るなよ。俺と一緒の方が宝を見つけやすいだろう?」
「は?」
 不意打ちの、運をアピールされて思わず最短の聞き返しが口をついた。
 捕らえた手に嵌る指輪を、撫でるように微笑寄せるアリエのいいたいところの察しは付く。
 "此れを見つけられたのは俺の運があってこそ"。
「……島の宝は見つけたところでくれてやらん」
 突きつけた銃口で壊すことにしたのは、自信を囚えて離さない鎖。
 しなやかな鎖だろうとお構いなしに打ち砕いて、ようやくの自由を得たシェフィーネス。
「そこまで言うなら同行しろ、アリエ・イヴ」
「俺から逃れる次は何処へ?」
 大きく息を吸ってシェフィーネスが領海内へとダイブしていく。
 その姿をアリエが追いかける。優雅な泳ぎが示すところはやはり海賊。宝探しだ。運があるというなら、――。

 稲光を海面越しの上に感じながら感電を恐れること無く進む海底。
 どこまで息を止めて泳いでいただろう。
 アリエが指差して、シェフィーネスに何かを示した。
「――」
 このような荒れた海に双眼鏡、……いいや違う。
 単眼鏡同士が一つに縄で荒く束ねられているだけだ。
 ――これは、メガリス……?
 赤を主体に金の波紋のような模様の単眼鏡と、白色に青を稲光のように奔らせる意匠の単眼鏡。
 手にとって見るも破損はなく、錆もない。
 覗き込むと小さな小窓が捕らえた場所はどうやらどこかの陸地。
 不思議な力が何処かに覗き窓を創り出しているようである。
 アリエが今どのような顔をしてるかなど、シェフィーネスはどうでもよかった。
 ――やはり、まだこの島に宝は"存在"する。
 海賊たちはまた別の新手のメガリスを見つけ出すことに成功したのだ。雷神祭の中で誰もがその存在を知らない、雷神の秘宝を懐に隠して回収を手早く済ませる。
 この島以外にも何処かに秘された財宝の存在。
 手にした男の野心は、更に色を深くする。
 ――収めるまでに秘された部分を暴くまで。
 強運の男は、野心在るこの男がいつ自分の手中に墜ちるものかと視線から逃さず海面を目指すのだ――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月29日


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#グリードオーシャン
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#お祭り2020
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#ニトゥルス島
#島の座標N0IE06


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト