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逸らしてもそこにあるもの

#カクリヨファンタズム #鎮魂の儀

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#カクリヨファンタズム
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#鎮魂の儀


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●そこにあるモノから目を逸らしたモノ
 にぃあ。にゃあ。ねこがなく。
 ごしゅじんさまをよみがえらせるために。
 にぃあ。にゃあ。
 しんでしまったごしゅじんさま。「きみにあげる」といって、うごかなくなったごしゅじんさま。
 けれどいつか、いっしょにそとをみるために。
 にぃあ。にゃあ。
 ごしゅじんさまをよみがえらせるため、ねこはやさしいたましいをさがします。
 さがします。さがしているから、もうほっといてくれ。
 おもいださせないでおくれ。
 ぼくは、ぼくがなにもしてないのに、ごしゅじんさまのたましいが、ぼくのなかにはいってきたことなんて。

●眼を凝らして見つめるもの
「おう。集まってくれたか、皆」
 コココココ。グリモアベースに集まった猟兵達を見て、アイリ・ガング―ルは笑った。
「さて、お主らに今回やってもらいたいのは、『鎮魂の儀の救援』じゃ。そもそも鎮魂の儀は知っておるか?」
 と辺りを見回し、
「まぁ、知らぬ者もおるか。簡単に言うと、この世界において、妖怪たちが現世から幽世へと向かう際に念願叶わず骸魂、みども達でいうオブリビオンじゃな、になってしまう事がある。その骸魂となった者達を鎮魂する事で浄化し、幽世の草花へと還すというのが鎮魂の儀式な訳じゃ。そして今、それが執り行われるという話があるのじゃが……」
 パン、と扇子で口元を隠し、
「それが失敗するという予知が出た。そういう訳でお主ら、鎮魂の儀に救援に行って、儀式を成功させて欲しい」
 との事だった。
「今回儀式が失敗する大本は、『彷徨う白猫『あられ』』という骸魂のせいじゃ。こやつはかつて、己の大好きなご主人の命を知らずに喰らってしまった事があっての?その事実を認められずに幽世へと向かって来ようとして、骸魂になった。今回の鎮魂の儀において、その事実と向き合わされようとして、認めがたいと拒絶したんやろうね。暴走してまう。それを止めて、鎮魂の儀を完遂させて欲しい」
 事実、猟兵達が儀式の場に向かった段階で既に骸魂たちが暴れ出しているらしい。
「そういう訳で儀式を行っている場に向かうにも、いくつかの障害がある。まず一つ目、骸魂の集団じゃ。『浮き笹舟』。水面に映る月に宿るあやかし。己の存在を認めて欲しくて水底に引き込もうとするこ奴らが障害になっておるのは、まぁ色々と示唆的やねぇ」
 声に笑みを乗せながらアイリは続ける。
「とかくこ奴らは言ってしまえば雑魚ではある。ささっと蹴散らすとよいよ。そいで蹴散らしたら、次は、『あられ』の作り出した『迷宮』が待っておる。此処を抜ければ儀式の場じゃが、問題はこの『迷宮』や」
「構造は単純。古書店の形をしておる。その古書店の中の、適当な本を取って読み切れば、儀式の場にはつくじゃろうて。た、だ、し」
 す、と今まで楽しげだった声が途端に静かになる。
「その本の内容じゃけど、『読んだ者が最も思い出したくない過去』となっておる。これはおそらく、『あられ』にとっても『主人の命を知らずに喰らった』事がトラウマになっているからやろうなぁ」
「さて、話を戻そう。本を読み切れば問題なく儀式の場にはたどり着ける。ああ、読み切る時間は勘案しなくてええよ。所謂精神世界の話、みたいなもんじゃし。それと、思い出したくない過去に耐え切れず、読み切る前に本を閉じてしまえば迷宮から弾き飛ばされ儀式上にはたどり着けないって流れやね。じゃからまぁ、頑張るといいよ。うん。過去にどう向き合うかはお主ら次第じゃ」
 そしてそのうえで、
「儀式の場についたら、あられが主祭司を取り込んで骸魂として大暴れしとる。こやつと戦い、暴れるのを止めて、鎮めて欲しい。そうすれば鎮魂の儀は問題なく完遂される。きっと戦う時にはお主らも、あられという『思い出したくない過去を思い出させようとするものを拒絶して暴れまわる者』にはかける言葉もあろうて。それがあやつの心に響くものなら、きっとそれも助けとなろう」
「ともかくも頼んだよお主ら。所詮過去は過去。目を逸らそうと確かにそこにあったものなのじゃ。それから逸らしたってどうにもならん。辛い話じゃけど、頼むでな」
 そういって年経た妖狐は疲れたように笑った。


みども
 どうもみどもです。よろしくお願いします。所謂心情系依頼的なアレです。その性質上及び参加人数によっては再送お願いする場合もありますので、ちょこちょこ自己紹介欄等はご確認いただけるとありがたいです。
 1章は集団戦。さっくり片付けましょう。
 2章は冒険。此処を突破できれば儀式上にたどり着けます。
 が、
 ・突破するのは古書店に置かれた本を取って読む事。
 ・ただしそこには「己の最も思い出したくない過去」が書かれている。
 ・それをどうにか飲み込んで読み切れば儀式上に行ける。
 という構成になってるので、2章はそれを踏まえたプレイングお願いします。
 そして3章はボス戦。己が主を喰らったという過去を思い出したくない猫と戦います。 ここで色々と猫の心に響く言葉を掛けてやれば、ボーナスになる感じです。
 そういう訳でお願いします。
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第1章 集団戦 『浮き笹舟』

POW   :    月宵の抱擁
自身からレベルm半径内の無機物を【月光を纏う水流】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    波渡りの嘆き
全身を【揺水の羽衣】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
WIZ   :    笹揺れの爪先
攻撃が命中した対象に【水に似た性質を持つ月光の輪】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【動きを阻むように絡み付く水流と紛れた光刃】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空亡・劔
骸魂の浄化はしないといけないわよね

あの状態って苦しいらしいからね

異変は明るく楽しく起こさなきゃいけないわ!(異変を起こしたい大妖怪だった

水面に映った月…本来なら切れないものだけど

今のあんたらなら…切れるわよ!

【天候操作】で…月明りを閉ざし雪を降らせる!意味あるか分からないけどね!

【属性攻撃】
氷属性を武器に付与!

【二回攻撃】で魔剣二本で剣刃一閃!

【残像】を残しながら回避するわ!

己に纏わりつく水に対しては
氷結地獄で凍らせては切り捨てるわ!

水に映る月…ああ
知ってるし…でも…
認められなくてもあんたらは確かにそこにあり続けるし
月のある限りは消えないじゃない

それにまぁ…結構綺麗よね(存在を認める


稲宮・桐葉
鎮魂の儀の救援とな。
妾も多少なりとてその道に明るいつもりじゃ。是非、助力したいのじゃ。

浮き笹船は一体一体お悩み相談しておる余裕はないのう。
その念から解き放ってやる事が鎮魂になると信じ…強制排除じゃ!
…存在を認められたいとな…。もし次の生があって満たされぬ想いに苦悩するならば妾の元へ来るがよい。妾が存分に認めてやろう。…ま、多少のお代は頂くがの!

戦いは、まずは弓による範囲射撃で痛手を与えたいの。
弽の力で矢に氷の属性を乗せ、動きを鈍らせれんかの?
乱戦になったら、妖刀を抜き接近戦じゃな。
ユーベルコードを使い、一気に畳み掛けるのじゃ!

※アドリブ、連携お任せなのじゃ!


ブルース・カルカロドン
喋り方:カタコト(映画以外の漢字は全部カタカナ)
●アドリブ絡みOK

参加させてもらうよ
『大好きなご主人の命を知らずに喰らってしまった』なんて聞いたら、ちょっと他人事とは思えない
ボクの場合は『知らず』にではなかったけれどね

まずは集団戦
狙うは殲滅、無理でも進路から追い払うぐらいはしたいね

さて、己の存在を認めて欲しくて水底に引き込もうとする敵か

いいよ、引き込まれてあげる
そして水底で知るがいい
自分達が何を敵に回したのか

UCで変身、形態は8m超えの巨大鮫
最もシンプルな恐怖の形

キミらは今からサメ映画の犠牲者だ
エンドロールにモブと書かれたくなければ、必死に抵抗することだね

「さあ、サメ映画をハジめよう」


高岩・凛
【アドリブ・連携歓迎】
お前と心中なんてご免だな、逝くなら独りで逝けってんだよ

「ハザードライバー」と「オーバードシフター」を使って【過速する最適化】を発動し、レボルハザード(ICの姿)になる。
『限界突破』した『武器改造』で物理法則を改変し、水面を走って接敵する。
後は蹴り飛ばすなり近くの味方が殴りやすいよう投げつけるなり、そんなとこかな……



 ―――どうして。どうしてあなた達は、分かってくれないのか。
 ユラユラ、ユラユラ。まるで海月のように、水霊たちが揺らめく。『浮き笹舟』と呼ばれる水霊の思いはいつしか形となり、古書店を背にして、そこへと続く道を水で満たした。
 《月宵の抱擁》。激しい水流が、その背後に連なる道を断つ。常ならば、その水流を渡る事は非常に難しかったであろう。

 しかし、
「お前らと心中なんてご免だな、逝くなら独りで逝けってんだよ!!」
 海月の群れに対して勇ましく上がった声が一つ。見れば、そこには水流を割り開いて進む、一つの影があった。
 顔に傷痕を残した美丈夫が如き佇まいは、高岩・凛だ。
 なるほど。無念を、どうか覚えておいて欲しいという思いを抱える事はだれしもある事だろう。そういう意味においてはむしろ、凛は覚えておいて欲しいと願われた。託された側だ。
 そしていつか託す側でもある。ならばこそ許せぬものがそこにある。
 だから今、ここに居る。
 
―――けれど、しかしどうして、荒れ狂う水流の上に、佇み、足を動かさずに進むことが出来るのであろうか。

「ハハハ。キミ、ヒタっている、コマるなぁ」
 見れば凛の足元の水面に立ち上がるは、背びれである。そう、高岩・凛は立っているのだ。ブルース・カルカロドンのその背に。
(『大好きなご主人の命を知らずに喰らってしまった』なんて聞いたら、ちょっと他人事とは思えない)
 水底へと誘わんとする水流に力強く抗いながら、今ここにはいない猫を想い、ブルースは進みゆく。
(ボクの場合は『知らず』にではなかったけれどね)
 きっとこの元ヴィランに、人間的な表情を形作る事が出来る機能があったならば、きっとそれは、皮肉気な笑みを浮かべていただろう。
 けれど今は、戦いの時だ。
 何よりも、だ。
(こういう事が多すぎる。安らかに、眠るべきだよ)
 直近だってそうだったのだ。恐るべき死霊術士との戦い。鮫をゾンビ鮫として使役するに、鮫たるモノの真なる恐怖を与えたばかりだ。
 それが今度は、己を見て欲しくて生ある者を奈落に引きずり込元うとするものが相手ならば、
「いくよ」
「ああ」
 眼下より聞こえた声に、凛もまた答え、

<HazerDriver!!!>

 その腰回りに、染み出るように撃鉄を備えた変身装置、〈ハザードライバー〉が顕現する。
 そしてさらに、どこからか取り出した〈オーバードシフター〉を取り付ければ、〈ハザードライバー〉自体が赤く輝き、

<LimitOver!!! Warning!Warning!>
 
 警告音でこれより行われる事が本来の機能を逸脱している事を示してきた。
「それがどうした!!!」
 関係ない、という風に右の手はドライバーのグリップを握り、人差し指が引き金にかかり、
「変身!!!!」
 
<Trigger off!>
 
 いうなり、握りしめた左手から、一気に装甲で包まれていく。変身時間はごく僅か。一瞬だ。その一瞬の間に、高岩・凛は高岩・凛から、

<Hazrd Completed!>

 ハザードライバーの電子音が鳴り、強化形態、<ハザード>へと変態する……!
 更には、

<Caution! OvereDShift! Three Two ……>

 それだけではない。ハザードライバーが危険な赤い光と警告音を発し、今しがた装甲された無機質なそれが、ぐにゃり、と有機的にゆがむ。
 そう、それこそが<オーバードシフター>の効果であり、UC、《過速する最適化/オーバーレブ・レディ》の効果だ。
「ぐっ……おおおおお!」
 当然、その身に変化を受ける凛自体に害がない筈もない。苦悶の声。なれど、
「俺に限界なんか無えんだよ…超えてやるよ!全部!」

<One……Ready>
<Shift,Completed!>

「レボル、ハザードォ!!!!」 
 裂帛の気合いと共に、有機的な装甲に包まれた異形の影が完成。
 
 その瞬間、


「ボクには、そういったおヤクソクなんてないからね」

「さぁ、『サメ映画をハジめよう』」

 《サメ映画のサメ》が、顕現する!
  改造手術で得た変身能力を駆使して、ブルースもまた変身を始める。それは、恐怖。始まりは世界的に有名な映画監督が作り上げられた虚構の恐怖であった。
 しかし幾年月を経て、いくつもの映画を経て、それは普遍たる恐怖としてその姿を顕す。
「ミナソコからシるといいよ」
「ジブンタチが、ナニをテキにマワしたのかを……!」
 瞬間、浮舟の群れの先頭が見たのは、大きく開いた口の中の、外側から十重二十重に並んだ鋭い歯だった。

「……!!!」
 口が閉じられる。巨大なサメの胃の中で、オブリビオンが骸の海へと還ってゆく。
 レボルハザードが暴れる。操られ、刃のようになった水流などなんのその。ひたすらに殴りつけ、振り回し、どんどんどんどん、数を減らしてゆく。
 二人にとって、群れる雑魚などは敵ですらなかった。

 だからこそ、

「あん?」
「なんだ!?」
 笹舟の群れが、二つに分かれる。水を操作する者達と、月光の輪を投げてくる者達に。
 UC、【笹揺れの爪先】だ。一度当たれば、その頭上に光輪を作り出し、追加ダメージを絶えず与えてくるこの攻撃が、数に任せて放たれる。
「いけるか!?」
「くっ!無理だね!」
 数が多い。多勢に無勢だ。二人が避ける事など、できはしなかった。
 そうなれば頭上に光輪が作り出され、
「「……!」」
 2人して歯を食いしばる。痛みに耐える。この攻撃から逃れるには、まずは敵のオブリビオンから逃れる事こそ重要なのだ。
 大きく後退する必要性は、二人とも理解していた。それでもダメージが足を捕え、そういしたならそれを隙と見た水霊達が襲い掛かる。
 明らかに危機的な状況。
 だからこそ、


――――禍事罪穢祓い清め給もうこと恐み恐み申す

 『祝詞/ことば』と共に、矢が降り注ぎ、今しがたブルースとレボルハザードに襲い掛かろうとしていた水霊達が消し飛んで行く。

「浮き笹船は一体一体お悩み相談しておる余裕はないのう」
 矢が降り注ぐ。降り注ぐ矢の中心は、ブルースとレボルハザードだ。その二人が、頭上に浮かんだ光輪でダメージを負わないように。丁寧に、丁寧に矢が降りかかってゆく。
「その念から解き放ってやる事が鎮魂になると信じ…強制排除じゃ!」
 言葉と共に矢の雨が止む。どうやら今の一連の攻撃で、ブルースとレボルハザードにUCを付与した水霊も倒されたらしい。気が付けば、二人の頭上にあった光輪が消えている。

 新手に対して警戒しているのだろう。一瞬の静寂。
「助かった」
「ありがとう!」
 二者二様に礼の言葉を述べながら後ろを振り返ればそこには、
「これくらいはお茶の子さいさいよ」
 と水面に立ち、得意げに笑って残心を取る稲宮・桐葉が居た。

「あ!あたし!あたしもいるんだから!!っていうか稲宮、あんたがここに立ててるのだって、最強の大妖怪たるあたしのおかげなんだからね!」
 ひょっこり、といった風情で桐葉の後ろから、彼女より少し背の低い少女が顔を出す。
 空亡・劔だ。
「えい!」
 言葉と共に、片手に備えた〈魔剣「二世氷結地獄」〉が書く文字は即ち『雪』と『氷』。
 なるほど見れば、いつのまになら空から雪が降ってきていた。

 そしてその振る雪が水霊達の作り出した水流に触れた途端、その表面が凍り、新たな『地面』を作り出す。
 これこそが、文字魔術。劔の修める業の一つだ。
「どんなもんよ!」
 ふふん!と胸を張るどうみたって幼い少女の振る舞いを、
「いやはや、空亡殿のお手前、誠に結構じゃのぅ」
 調子よく桐葉も褒めたたえる。この自称最強の大妖怪は、こうしておだててあげる方がよくよく力を発揮するのは、この依頼における僅かな付き合いでも重々承知していた。
 
「けれどよく考えたら、そこの……サメ?でいいのよね」
「サメだよ」
「サメは氷の上、滑れないわ……いえ、大丈夫!そこはこの最強の大妖怪がなんとかしてみせるわ!」
 さあそれでは劔の力で一気に地面を作ってこの笹舟達を突っ切り、古書店に進撃しようといった所、ふと思いついたように劔がブルースへと聞いた。なるほど、道理である。サメは、水中を泳ぐモノ。けれども、

「いいや、ダイジョウブさ。イくよ、リン」
 言葉一つ。その背にレボルハザードを乗せながら、尾びれを強く水流に打ち付けて、徐に氷の地面に乗れば、
「おサキ!」
 そのままスイスイと、先の方まで作った氷の地面を何喰わぬ顔でサメが滑っていった。
 そう、サメは、サメ映画のサメなのだ。最新のZ級サメ映画は、霊界バトルすら繰り広げているものならば、氷の上を滑る事など、訳もない。

「~~~~~!!!!!こ、この最強の大妖怪たるあたしを!!!」
 感情のままに、劔が魔剣で以て巨大な一文字を書き上げる。当然『凍』だ。
 そも、劔にとって、今の状況は楽しくなかった。
 骸魂は苦しいらしい。その、苦しいままで、異変を起こされたって、こちとら楽しくなんかないのだ。
「おいていくのは!!!!」
 文字魔術で作り出せれたそれが、〈魔剣『二世氷結地獄』〉へと吸い込まれ、そして剣をそのまま両手で握り、大上段に構える。
 切っ先は、前方。水霊達をなぎ倒しながら、凍らせた水面の終端が近づいているサメの方だ。
「やめなさい!!!!」
 剣刃一閃。冷気を纏った”斬気”が、先の方。サメを通り抜け、古書店の方まで伝わり、そこには、氷の道が出来ていた。


「これは……なかなか」
 その様に、流石の桐葉も心から感嘆の声をあげた。なるほど大妖怪というだけある。今この場で、劔は水流に足を取られぬ一直線の道を、作り出してみせたのだ。
「いくわよ桐葉」
 異変は明るく楽しく起こすもの。大妖怪を自認する劒としては、そこは譲れない所であった。だからこそ、今こうやって楽しくない異変を解決する。
 既に手には〈二世氷結地獄〉の他にもう一本、〈魔剣『ソラナキ』〉を携えて劔が征く。
 見れば、既にサメたちは古書店にたどり着いたらしい。

「おっとこれは、わらわもうかうかとは、してられないの!」
 そう言って桐葉は、劔の後ろについた。
 
 不思議と、地面の氷は滑らず、足を取られる事もなかった。きっと超常の力が働いてるんのだろう。深くは考えず、古書店までの道、次々と襲い掛かる笹舟達を前にして、劔と桐葉は、急造とは思えないコンビネーションで進んでゆく。
(ああ、なるほどのぅ)
 背中合わせに刃を振るう中で、桐葉は思う。今劔の刃に乗っているのはきっと、鎮魂と、そう。需要。
(なるほど、水面にあれども月は美しい、といった所か)
 刃を交わさず共、刃を合わせればわかる事もある。きっと、今戦いを共にする大妖怪は、名前の通り剣に近しい存在なのだろう。戦巫女としての感覚がそう告げている。
(ならばわらわも、相応しく、ゆこうかの)

 振るう刃は流麗に。握る手は優しく、心は神和ぐが如し

―――これより舞うは高貴なる太陽の女神を言祝ぐ舞い。
 
 今ここに太陽は昇らずとも、月がそこにあるのならば、陽もまたあるがゆえに。
 『祝詞/ことば』は確かに聞き届けられる。

―――八百万の神等よ我が舞い奉納奉る。
 舞の動きだ。お辞儀のように上半身をかがめる。水霊の攻撃が、今しがた上半身があった場所を掠めていった。桐葉の背を軸に、劔が場所を入れ替え二刀連撃にて水霊達を還した。

―――共に舞い禍事罪穢祓い清め給もうこと恐み恐み申す―――
 これにより【巫女神楽 ~神降しの舞~/ミコカグラ・カミオロシノマイ】は成る。
 そうしたならば、あとはもう進むだけだ。
 劔の動きに合わせて、踊るように比礼が舞う。劔の刃は触れたものを断ち切り、桐葉のそれは触れたものを還した。
 さすれば、当然、しばらくの後に古書店に着く。
 すべての水霊を還したわけではない。そもそも数が多い。さらには、後に続く者達もいるからだ。今しばらく、氷の道は残るだろう。
 それを渡ってこようとする者達には振り返らず、劔と桐葉は、先に入った凛とブルースを追って、古書店の中に入って行ったのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

節原・美愛
おお、如何にも悪霊って感じの敵!って思ったけど、
人魂とか勇者の残留思念とかを見た後だとインパクトに欠けるわね。


さてさて。水の体じゃあ、殴っても手ごたえなさそうだし…斬るか。
まずは妖弦"猫三味線"(偽)。"呪詛"の音色で、笹船の群れを狂気に誘う!
敵味方の判断を失って同士討ちを始めれば、羽衣の強化も相まってあっという間にズタボロになるはず。
後は弱って沈みかけの笹船を一艘ずつ、妖剣解放で真っ二つにしていけばお終いね。


『あられ』相手に狂気の演奏なんてしたくないし、先に発散させられる相手が出てきてくれてちょうど良かったかな。
この調子でどんどんいきましょ。


香神乃・饗
月は光がないと輝けないっすけど
輝いてなくとも月は月
そこにあるんっすよ

水底に行かなくとも存在しているって気づかせてやるっす!
さくっといくっす!

香神写しで武器を増やし
むやみやたらと攻撃して苦戦してるフリのフェイントをかけて調子づけてやるっす
水の衣でも何でもまとえばいいっす!
ひゃー、こんなに攻撃してるのにぜんっぜん効かないっす!めっちゃんこまずいっす!

攻撃が反ってきたら、乱戦の地形を利用して剛糸でからめとって
ちゃっかり敵を盾にして同士討ちの罠で月を割らせるっす!

痛いっすか!この痛みがここにいる、存在している証拠っす!
夢や幻なら痛くも痒くもないはずっす!
自分で自分を認めるっす!

詠唱は自由にどうぞっす!


トゥーリ・レイヴォネン
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

「邪魔しないでほしい、な。キミたちも、痛いの、やだよね? ……えーっと、うん。ま、いいか……」

目標
・まっすぐ「迷宮」への道を進む

行動指針
・連携先の作戦があれば素直に従う
・作戦がない、もしくはソロである場合、UCにて敵中の突破を試みる。UCによる攻撃を受けるなら結構。意識を自身に向けさせ隙を生ませたい
・移動の直接的な阻害をされた場合、肉きり包丁、素手、歯などによる攻撃を試みます
・強い子では無い

心情
・殴られて、切られて。そりゃ痛いけど、さ……? 耐えられないことはないし、面倒な相手っぽいし……まっすぐ、行こう。なんとかなる、よ、きっと



―――ゆらゆら、ゆらゆら。水霊が舞う。浮き笹舟は、大きく数を減らして、それでもなお、これより古書店に向かおうとする者達を拒むかのように。己の存在そのものを認めて欲しいと言うかのように。

「邪魔しないでほしい、な」
 先達が作った氷でできた道を踏みしめ、少女が疲れた声で宣言した。
 黒く変色した血で汚れきったコート。
 軍用ブーツに赤いマフラー。
 その右手には肉切り包丁を持って、トゥーリ・レイヴォネンはそこに立つ。

 一歩。踏み出した。当然のように笹舟が寄ってくる。攻撃が降りかかる。無視。いや、痛い。きっと。
「……えーっと、うん。ま」

 二歩。今度はより力強い歩み。手に持った肉切り包丁を振りかぶって、眼前の浮舟を脳天から叩き割った。
 その間に左右から降りかかる攻撃に、嬲られる。《波渡りの嘆き》は、骸の海へと還った仲間たちの嘆きを映す。受けた攻撃に比例した連撃が、体をめちゃくちゃに打ち据えて、痛い。
「ま、いいか……」
 そもそも、トゥーリは継ぎ接ぎだ。頭も良くない。強くだってない。だから出来る事は、多く無い。
 ただ、痛みに耐えて、進む。耐え切れない痛みではない。体がへこんで、継ぎ接ぎの肉が柔らかくなって、精々血が出る位だ。

(このままだと死ぬ、とか。死ぬかも、とか……)
 
 どうなんだろう。良く分からない。出来ない体で、出来る事をするだけ。また一歩踏み出した。滅多打ちにされる感覚。痛みは気付いたら、どこかに行っていた。 いや違う。これはきっと、痛すぎて感じてないだけだ。好都合。さらに一歩。

「あ……」
 と思ったら、弾かれた。傷に耐え切れなかった体から放たれた僅かに甘い一撃が、弾かれたのだ。それでもなお、トゥーリの体は、前に進む。
 強靭な意志によって決して後退しないという事を己自身で命じた単純な体は、その命令を愚直に実行するのみ、だ。
「これは」
 故にこそ、その歩みは眼前に敵が健在で在ろうと変わらず。今までは左右からの攻撃であったからこそ耐えられていた。
 倒してきた敵に比例する連撃が、更に正面からも襲い掛かるとするならば……
(どう、なんだろう?)
 まさしく絶対絶命。けれど一度終わった継ぎ接ぎの少女が考える事は、
(そう、いえば……砕けた、飴。ちゃんと……渡し、たかった……な……)
 そんな取り留めもない事で、


――― さぁさ神仏揃って御覧じろ。これなるは香神乃業なれば。
    一つが二つ        香神が映して数々の。
    二つが四つ        香神が映した数々に、以て偽りなどはなし。
    天地神明に誓って、香神が映した数々は、形あって影なすモノ。
    ならばこれこそ香神写し。 天地の玄妙、神辺に通じ変じる力なり―――

「ひゃー!!!めちゃんこやばいっす!!!」
 『祝詞/ことば』が終わるなり、金属音が辺りに響く。〈糸〉を結わえられた無数の〈苦無〉が、襲い掛かる笹舟の全ての攻撃を防ぎ切り、トゥールの横に、
 短髪で紅袢纏を纏った少年、香神乃・饗が降り立った。
「大丈夫っすか!?えーっと」
「トゥーリ・レイ、ヴォネン」
「レイさんでいいっすかね!?」
「うん」
「よっし!それじゃ、レイさんはそのまま前へと進むっす!その間の守りは、俺が!」
 連続して響く金属音。前に進み、攻撃はすれど防御に関してはされるがままだったトゥーリとは違い、饗は明確に己達の攻撃を防御しているのだ。
 さらには進めば進むほど、それは先に進んだ者たちによって数が減った笹舟達の群れの内側に入り込む事となり、今では攻撃が四方八方から飛んでくる。

「やばい!やばいっすよやっぱりこれ!!!せめてレイさんだけはお守りするっす!」
 流石に四方八方から攻め立てられてはたまらない、という風に焦った声で饗が叫ぶ。いまだ攻めに転じる事は出来ず、防戦一方といった風情だった。
「なん、で……」
「どうかしたっすか!?」
 そして饗の守りの中、トゥーリはなおも決断的に進んでゆく。今は、己が包丁を振るう必要はない。ただ、前へ。前へと進むだけでよかった。だからこそ疑問も出てくる。
「なん、で……」



「よわい、ふりを?」
「あ”……バレたっすか」
 その言葉に、悪戯がバレた小僧のように饗が少し後ろめたそうに二カッと笑い。
「まったくよ!!」
 女の声と共に、三味線の音が響く。トゥーリと饗にとってはなんてことのないその調べは、妖刀〈猫三味線(偽)〉がその名の通り、三味線に変化した状態で奏でられたものだ。
 そうなれば、当然の事として浮きの笹舟達は音色の狂気に誘われ、統率を失う。今までは四方八方間断なく降り注いだ攻撃にムラが出来る。
「バレバレだったらありゃしないったら!」
 そのまま、トゥーリと饗の後方から節原・美愛が三味線をかき鳴らしならが現れれば、更に攻撃にムラが出来る。

「こりゃ恥ずかしい限りっすね!けれどほら、お相手側は気付いてなかったっす!だから相手は油断して、俺達の周囲に集まって、」
 そしてその出来たムラを、饗の剛糸が縫ってゆく。笹舟達を纏め、縛り、行動不能にしていけば、
「こんな感じにお茶の子さいさいで十把一絡げっす!」
「それは確かにその通り……ね!」 
 そしてその塊を、饗が近づいてくる美愛の方へと放る。放られたそれを刀に戻した〈猫三味線(偽)〉で一閃。一気に笹舟の群れを断ち切った。

 そうしたならそのまま美愛はスピードを落とさず饗と、そしてトゥーリと並び、傷をそこかしこに付けた少女をちらと見て、
「ああ、成程。饗、あなた。先に行ったのはそういう事ね」
 どこか合点がいったように頷き一つ。そしてそのまま決断的に歩んでゆく少女に目線を合わせ。
「大丈夫?」
 返って来たのは頷きだ。それだけで美愛も少女がどういった性格なのかは分かった。なら、言葉はいらないだろう。
 やる事は決まった。
 視線を感じて、顔を上げる。饗がこちらを見ていた。頷き一つ。美愛と、饗と、トゥーリは、猟兵だ。だからこそ、『ここに居るべきではない』『ここから逃げろ』、とも言えない。
 
 けれど、まだ今回の依頼における本当の戦いは、先にある。ならば『戦力として期待する少女が、本番の戦いまでこれ以上傷付かないよう』立ち回る事くらいは、いいだろう。
 どうやら同じ結論に達したらしい風来坊の頷きを見て、饗は言葉もなく、ニカっと笑った。

 そこから先は一方的だ。饗が絡め、美愛が斬り裂き、進んでゆく。どんどんどんどん、周囲にいた浮きの笹舟達の数が減ってゆく。
「……!」
 勿論、トゥーリも何もしてない訳でない。眼前に現れた笹舟を断ち切り、ただ前へと進む。それでも、攻撃をひたすら受けていた先ほどの状況からすれば、とても楽だ。
 二人のおかげで。

「痛いっすか!この痛みがここにいる、存在している証拠っす!」
 笹舟の数は確かに減ってきていた。故に今では饗も攻撃に転じ、苦無で縛った笹舟を骸の海に返している。
「夢や幻なら痛くも痒くもないはずっす!自分で自分を認めるっす!」
 なるほど確かに。トゥーリは思った。それは、いつも自分が感じている事だ。だから、ここに居る。例え本当は怖かったとしても、『戦い/これ』しか知らないし、『痛み/それ』でしか知れないから。
「月は光がないと輝けないっすけど、輝いてなくとも月は月。そこにあるんっすよ」
 そんなにきれいなものなのだろうか。少なくとも、トゥーリは自分自身をそこまでのモノとは思っていない。

「如何にも悪霊って感じの敵!って思ったけど」
 一閃二閃。刃が翻る。翻るたびに、笹舟達の数が減る。丁度トゥーリを間に挟んで饗の反対側、そちらでは美愛が大いに刀を翻していた。
「人魂とか勇者の残留思念とかを見た後だと!」
 糸の拘束から逃れて、迫り来る攻撃を空中に背面飛びで避け、
「インパクトに欠けるわっ」
 月が如くに閃いた。
「ね!」
 そのまま美愛が着地と同時、笹舟が骸の海へと還ってゆく。

(おお……イン、パクトに。欠ける)
 ほとんど無意識で眼前の笹舟に肉切り包丁を叩き落とす。包丁はオブリビオンを捕え、そして消滅させた。
(大丈夫、通じる)
 依頼はこれで四度目だ。まだ、トゥーリの攻撃が通じなかったことはない。いつか、現れるのだろうか。
 茫洋とした不安を胸に、前を見やれば、古書店はすぐそこだ。

「大丈夫っす!」
 気付いたら、この通り道に存在した笹舟達はほぼいなくなったからだろう。饗が、隣に戻ってくるなり、トゥーリに声をかける。
「なに、が?」
 コテン。首を傾げる。
「そりゃ何かっす!」
「だいじょう、ぶ」
 ニカッとした笑み。根拠のない自信。意図が分からない。けれど分からないなりに、トゥールはその言葉を胸に抱きしめる事にした。
「怪我は増えて……ないわね」
 饗と同じく、敵をほとんど殲滅したからであろう。美愛が戻ってくるなり、トゥールの姿を見て、良かったという風にため息をついた。
 先ほどから、二人の意図は分かっていた。これ以上自分が怪我をしないよう、二人は動いていたのだ。
 理由が分からなかった。トゥーリは、継ぎ接ぎだらけのデッドマン。対して強くもなくて、けれど戦いしか知らないから、怖さを痛みでかき消して戦っているのに。痛みは、傷は仕方ない事なのに。どうして二人は痛みをなくすような真似を。

(どう、して)
 分からない。内心で首を傾げる。その理由が、トゥーリにとってどのような意味を持つのか。いまだ分からぬまま、3人は古書店に入って行った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九頭竜・聖
儘ならぬというのは現世も幽世も変わらぬのですね……
わたくしに力はありませぬが、それでもできることがあるのならば喜んでこの身を捧げましょう……

まずはこちらの皆様からでございます、ね
己を認められぬこと、その悲しみは何もできないわたくしにもよく分かります
ですが、それで他を呪うは悪しきというものでございます

どうか、どうか、御身の焔であの方たちの悲哀を焼き尽くしてくださいませ……

その場で跪き、祈りと共に龍神様へと願いを捧げ、燭陰様をお呼び致します
水の衣といえど龍の火の前では薄布と変わらなでございましょう


エリック・シェパルド
【夜狼】
思い出したくねぇ過去なんてアレしかねぇ……ぼやけた過去に向き合う時なのかもしんねぇな…
ああ、胸クソ悪ぃ…

『おお、お嬢もいたのか。んじゃ、今回も手伝わせてもらうぜ?』

UC発動でサリアさんと共に咆哮
『さっさとのされろぉぉ!!!』
『っ…お嬢は…大丈夫…そう、だな…』

あらかた倒せたら残りを警棒で【凪ぎ払う】ぜ
『ナイスだお嬢!』

サリアさんの攻撃で残った奴らがいたらデュラハンで近づいて棍棒で【鎧砕き】の一撃を
『撒けたと思った奴ほど狙われやすいんだぜ?』


サリア・カーティス
【夜狼】

ええ、こちらこそまたよろしくお願いしますわ。エリックさん。

……私に忘れたい過去などないと思っていましたけど……そうではないかもしれないとあの時わかって、それからどうもモヤモヤするわぁ……
いっその事ここで全て思い出してしまった方がいいのかしら……そしたら色々スッキリしてまた戦いに身を投じることが……(などと思考に耽る

……考え事を、しているのにちょろちょろワラワラと……ブレイズキャリバーたる私に不利なものを纏っているのも気に入らないわねぇ……!(対敵モードに

怒り任せに【人狼咆哮】を放ち敵を【なぎはらい】ましょうねぇ……!


伊達・クラウディア
アドリブ・連携歓迎。

大切な人の命を奪ってしまったという事実は重いものなのでしょう。経験のない我には想像もできません。
しかし、己が行いを認めぬということは、奪ってしまった命すら否定すること。
どのような形であれ、その事実という刃を突き付けるためにここは押し通らせていただきましょう。

幽世に無事にたどり着けず、骸魂となってしまったことは憐れと思う。
しかし、目の前に立塞がるならば斬って捨てるのみ。
【空中戦】【見切り】で攻撃をよけつつ敵を誘導し、ある程度固まったところをUCで【なぎ払い】。まとめて斬ります。

斬って捨てるとは言いましたが、貴殿らが月に宿るというならば、我が三日月にその存在を刻むとしましょう。


神元・眞白
【SPD/割と自由に】
幽世。初めて来る世界。……なんだか懐かしい雰囲気。
探検してみたいところだけれど、まずはやる事をやってから、ね。

自分の在り方を聞いてくる相手。誰しもそれは気になるもの。
でも、そのために他の人を巻き込むなんて。答え合わせは迷惑をかけずに。
せっかくの綺麗な月。せめて水面に写したままで解決までいかないと。

なぜ引き込もうとするのか。きっと理由があるはず。まずは聞いてみないと。
……でも、あまり良い答えはもらえなさそう。きっと探しているのに。
自分の立ち位置なんて皆ずっと探している。答えは見つかりそうで見つからない。
ごめんなさい。同じ場所に行くのはきっと先になりそう。



「それでは、まずは我が」
 ここはカクリヨファンタズム。その道筋もまるで迷宮のよう。よって、事実を述べるなら、『今回目指す、古書店への道は一つなどでは決してない』。
 故に、先ほど語った者達とほぼ同時刻、別の場所から古書店を目指す一段の中、伊達・クラウディアは雄々しく宣言した。
 視線の先には未だこちらに気付いていない浮きの笹舟の群れが居る。気付いていなければこちらの進路を妨害するなど思いつきもしない。ユラユラと中空を漂うその姿は、まさしく水面に映る月のよう。

(大切な人の命を奪ってしまったという事実は重いものなのでしょう。経験のない我には想像もできません)
「〈出羽国〉!!!」
  その言葉と共に、強化外骨格〈梵天丸〉がその身に備わり、背部のジェットパック、〈九曜紋〉が熱を持つ。見据えるは前方。想うはその先の猫の事。
(しかし、己が行いを認めぬということは、奪ってしまった命すら否定すること)
「離れていてください!」
 そう言って一歩前に出て、〈梵天丸〉の感覚器で探れば、己の後方に味方はいない。皆、横に避けていた。
 ならば、

―――≪独眼竜、戦闘システム限定解除≫
独眼竜が最初から超過駆動にて稼働を開始する。求められるのは、破壊力ではない、ただ、眼前に広がる空間を踏破する力。それを求め、演算が開始される―――


「はぁ……世界とは。このように不可思議な絡繰りもあるものなのですねぇ」
 バーニアをふかし、『射出態勢』を取るクラウディアを見て、驚いたように声を上げるのは、白い肌に烏の濡れ羽色の髪を持ち、黒の瞳を持った女、九頭竜・聖だ。
 どういう訳か、その身はどういう訳か、侍女服に身を包んだ金糸短髪の少女にお姫様抱っこの形で抱えらえている。神元・眞白の戦術器、符雨だ。
 そう、聖は今回、符雨に抱えられて移動する事になっている。己を抱える少女を見上げ、そちらの方にも眉根を下げた笑みを一つ。
「符雨様も、また絡繰り、とは。俄には信じがたい話です」
「いいさ。お嬢の頼みだからね」
「その通り。大切な従者をお借りさせて頂いて、ありがとうございます」

 静々とこちらへお辞儀する聖へ向かって、こちらは戦術器、飛威に抱えられた眞白は、コクリと頷き一つ。
「いいです。必要な事ですから」
 そう言うなり、静かな表情でしかし辺りをきょろきょろと見渡す。どうやらお嬢様は始めて来る幽世に興味津々の御様子であった。

―――≪ガジェット接続完了…機能拡張≫
 手に持つのは、〈鎬藤四朗吉光〉、高周波ブレードだ。適切な効果に適量の力を。独眼竜を通して、今一度、科学というプロメテウスの火によって、その刀身が鍛えなおされる。
 此度必要なのは威力ではなく、何より距離。その斬撃がより遠くまで届くように、刀身が赤く染まる―――


「……私に忘れたい過去などないと思っていましたけど……そうではないかもしれないとあの時わかって、それからどうもモヤモヤするわぁ……」
 眞白と、聖がクラウディアの右後方に避けたなら、丁度その反対側にもまた、二つの影があった。
 そのうちの一つ、耳の生えた髪も黒ければ服もまるで喪服のように黒く、ただ顔の青白さと赤い瞳と同じ色の髪飾りが夜空に浮かぶ紅い月を思い起させる人狼の女は、ブツブツと自分に言い聞かせるようにつぶやいていた。サリア・カーティスだ。
 そのうちに思い浮かぶのはつい先日の戦いで見た光景。在りもしないと思っていた己の過去。断片的な光景。広がる血の海。誰かを引き裂く、白い手。同じように抜けるような白の己の手。
 思わず女はかぶりをふった。
「いっその事ここで全て思い出してしまった方がいいのかしら……そしたら色々スッキリしてまた戦いに身を投じることが……」
 なおもブツブツ呟く女にしかし、
「おお!お嬢、今回も手伝わせて貰うからな!」
 快活に声をかける人影もまたあった。
 狼頭の人狼、エリック・シェパルドだ。


―――《空間踏破、承認…》
 今ここにて定義する『空間』とは即ちそのまま物理的な距離であり、然らばかつて無尽の命の『涯』すら演算したこの身が、踏破出来ぬ筈も無し。照準はロックされた。至るべき道筋も見えた。
 クラウディアが、ブレードを構えて半身に構える―――

(思い出したくねぇ過去なんてアレしかねぇ……ぼやけた過去に向き合う時なのかもしんねぇな…)
 苦虫をかみつぶしたような表情で、エリック・シュバルトは佇んでいた。狼のおまわりさんとして、普段はグリードオーシャンのとある島にて警邏をしている彼であるが、その彼にも、『かつて』というものが存在する。
 それはかつて彼自身否定している元ヤンな過去であったり、何より、
(ダークセイヴァーの時の……)
 そう元々エリックが居る『島』は、ダークセイヴァーの『土地』であった筈なのだ。ならば、その『土地の歴史』もある筈で。
(ああ、胸クソ悪ぃ…)
 だからだろう。今この場で、見知った顔を見つける事が出来る幸運には、心から感謝したかった。
「おお!お嬢、今回も手伝わせて貰うからな!」
「あら、エリックさん」
 あちらも知り合いを見つけて、顔をわずかに綻ばせる。その美しい顔に、やはり同族としてはドギマギしてしまう部分もあり。
「お、おう!ほら、お嬢乗りな」
 今回は速度勝負だ。故に持ち出してきた己の改造バイク、《デュラハン》の後部を差す。
「ええ、こちらこそまたよろしくお願いしますわ。エリックさん」
 そのまま、美しい人はバイクにまたがるエリックの後ろに座した。
「今回は、流石に鮫出すわけにもいかないからな」
「あら、サメさん。乗り心地良かったですのに」
 ころころと笑う女。しかしエリックは知っている。この黒い薔薇のように美しい女はしかし、それその通りに棘を狂気を孕んでる事を。
(しっかり見てやんねぇと)
 『おまわりさん』として、決意を新たにするのであった。

―――《今のあなたの手は全てに届きます―≫
「それでは皆さん!行きます!!!」
 クラウディアが、裂帛の気合いと共に宣言する。もはや演算はなった。ならばあとは実行するのみだ。踏み込む足に力を入れて、
(幽世に無事にたどり着けず、骸魂となってしまったことは憐れと思う)
「しかし、目の前に立塞がるならば斬って捨てるのみ!!!」
【機能拡張・空間踏破/キノウカクチョウ・クウカントウハ】、発動。
 爆音が響き、音の壁を越え、一気に笹舟の集団、その先頭へ接敵。
「……!?」
 完全な不意打ちに、敵は一切対応できず、
「貴殿らが月に宿るというならば、我が三日月にその存在を刻むとしましょう!!」


 斬

 目の前の空間ごと、一気に断ち切った。

「どうぞ!」
 そのまま開いた空間の先端部へとバーニアを吹かして無理やり突貫。先頭へ到達して、再び、

 斬

 浮き笹舟達の群れを、引き裂いて無理やり古書店へと道筋を作ってゆく。

「おおお!!!いくぜぇ!!!!」
 そしてその後ろに改造バイク、〈デュラハン〉で付き従い、スピードの関係から殿を聖と眞白が担い、5人はまるで鏃のように笹舟の中を突き進んでゆく。
 そう、速攻だ。
 集まった5人くしくも皆が相手のUCで重要視してたのは、【波渡りの嘆き】であたった。攻撃された回数だけ個々の敵の攻撃回数が増えるとあっては、いつかは群の手数に負けるかもしれない。
 そも鎮魂の儀が成功するなら、今此処にいる笹舟達もまた、浄化さえるのだ。故に前方の敵、最低限をクラウディアが切り開き、

「ああああああ!!ブレイズキャリバーたる私に不利なものを纏っているのも気に入らないわねぇ……!!!」
「調子出て来たなお嬢!いっちょやるか!!!さっさとのされろぉ!!!!」
 鏃の形を左右から押しつぶそうと笹舟達が迫る。それが心の琴線に触れたのか、サリアが雄たけびを上げれば、エリックもそれに楽しそうに同意。
「「■■■■■■■■■――――!!!!!」」
 【人狼咆哮/ウルブズ・ウォークライ】の二重奏が響き渡り、左右から先行するクラウディアとエリック達を分断しようとした笹舟達を吹き飛ばした。
(お嬢は……大丈夫そうだな)
 ひとしき咆哮した後、後ろに感じる気配を探れば、まだ叫び足りないという風に妖しい笑いを浮かべるサリアの雰囲気がある。
 まだまだ己もお嬢も意気軒昂。ならば後は後ろに任せるべきだ。

「それじゃあ第三弾、頼んだぜ!」
 エリックが後ろの二人に声を掛ければ、頷く気配が二つ、あった。


(儘ならぬというのは現世も幽世も変わらぬのですね……)
 己を認められぬこと、その悲しみを想い、聖は嘆いた。
 今しがたの咆哮で、眞白と己、その先に居るエリック、更には先行するクラウディアまでしっかり見通せることが出来るようになった。逆に言えば、そうするまでは見通せない程の笹舟達が居たという事で、それはつまりそれだけの無念がここには存在するという事。
 更にはそれすらも前座なのだ。
(ああ、それにわたくしが何とする事ができましょう)
 無理。不可能だ。そんな力など、ただの無力な少女であった聖には備わって等いない。
 出来る事とすれば精々、
(祈る事……)
「眞白様。今しばし、お時間を」
「分かりました」
「ありがとうございます」
 その言葉と共に、聖は手を組み、祈り始めた。
「『おいでませ、おいでませ……』」



「『おいでませ、おいでませ……』」
(祈りの言葉)
 その言葉を聞きながら、少女は己の準備を始めた。
 自分たちは後詰だ。前方、クラウディアとエリック達の間を遮ろうとしていた迫り来る笹舟達は放射状に放たれた咆哮によって吹き飛ばされ、今もなお混乱中で再び分断しようという動きは無い。 

 しかし、そうなってくると今度は追いすがってくる者達が問題となる。仲間たちを大なり小なり攻撃されたことによって、UCの力を以て暴力的な数の連撃を可能とする笹舟達が自分たちに後ろからでも追いつくことがあるとするなら、殲滅でなく突破を第一にしている自分たちはきっと数の暴力に呑まれてしまうだろう。
 そしてそれをさせない為に、神元・眞白は此処に居る。

「ねぇ、飛威は……いえ、飛威の在り方は、決まってるものね」
 己を抱える従者を見上げ、ぽつりと溢す。眞白本人が走るより、こうやって抱えてもらった方が早い。聖の方はUCの発動時、本来なら跪く必要がある。故に移動できない。だから二人は、戦術器に抱かれて、移動していた。
「はい。私は主の従者です」
 微笑みと共に返されるその言葉は、作られたものだからこそ、といった風情である。

(そう、よね……)
 その言葉にしかし、眞白は己と従者の違いを強く感じざるを得ない。
 眞白には、自分の在り方を悩む心があった。作られた己なれど、眞白はそれでも確かな『心』である。ならば、きっと魂もあるのかもしれない。であれば、いつかは今追いすがる者達を還す場所に、きっと自分も行くことになる。


(自分の在り方が気になるのはだれしも同じ)
 そこに、眞白の共感はある。けれど、だからこそ
(答え合わせは迷惑をかけずに。せっかくの綺麗な月。せめて水面に写したままで解決までいかないと)
 他人に迷惑をかける訳にはいかないのだ。だから、
「教えて。貴方たちが、なぜ水底に引き込もうとするのかを」

 無数の白金の符が振るわれる。召喚されるのは、無数の眞白。人形師、神元・眞白自作の自立人形の、未だ未熟故に完成に至らない未完成品たち。眞白自身の複製品。
 それが、後方から眞白達に追いすがろうとする笹舟達へと殺到し、眞白の下した命を元に、各々武器を手にしながら、笹舟達へと襲い掛かる。
『何故、引き込もうとするのか』
 と問いかけながら。
 けれど相手は所詮骸魂、オブリビオン。真っ当な答えなど返ってくる筈もなく、結果として笹舟と眞白の複製品の戦いが繰り広げられるのみだ。
(自分の立ち位置なんて皆ずっと探している。答えは見つかりそうで見つからない)
「ごめんなさい。同じ場所に行くのはきっと先になりそう」
 眞白がそうやって感慨に浸っていれば、
「成りました」
 厳かな聖の言葉が、返って来た。

「『おいでませ。おいでませ』」
 眼を閉じて、手を組み、少女のような人形の腕の中、哀れ生贄として喰われた少女の霊は、ただただ一心不乱に祈りをささげる。
(己を認められぬこと、その悲しみは何もできないわたくしにもよく分かります)
 それは、偽りなき本心であった。生きては生贄とされ、死してすら生贄となった少女が、己の生を他者から肯定された事など、『生きてて良い』と言われた事など、果たしてありはしただろうか。

「『偉大なる赤の龍神様』」
 その御名前は『燭陰様』。灼熱すら超える陽の権能は、例え水気であろうとむしろ消し飛ばそうものとなろう。さすれば、
(いかにその悲しみが分かれども、他を呪うは悪しき、でございます)
 少女は、無垢であった。愚かとすら言えるかもしれない。何せそれだけ悲惨な生を歩んできてなお、悪しきを誅するなどと。
 けれどだからこそ、その愚かとすら言える聖性が、御霊降ろしを可能としていた。
 少女の存在を糧に、過ぎた力が降臨する。


「『彼の者を御身の炎で清め給え』」
(どうか、どうか、御身の焔であの方たちの悲哀を焼き尽くしてくださいませ……)


「『成りました。おいでませ燭陰様』」


―――【壱之龍・燭陰/イチノリュウ・ショクイン】、破邪顕正―――

「な!?これは!?」
 その異常にまず気付いたのは、科学的観測を得意とするクラウディアだ。
 聖のUCが発動した途端、先行するクラウディアを頭部に置いて、殿の眞白と聖を尻尾に置くように、赤く半透明な竜の『神気/オーラ』が顕現した。
 そしてそれが、そのままなおも猟兵達に近づかんとする笹舟達に向かって、
「核!?」
 如何なる神秘か。厳密には酷似した波長をもつエネルギーが、爆音とともに、きめて小さい領域に、外側へと向けて放出された。
 そうなれば、その領域内に存在した笹舟達は当然消滅しており、いかにその周囲になお笹舟達がまだ残っていたとして、
「我らが古書店に着く方が早い……!」
 そしてそれは当然の事となった。
 
 まずは最初にクラウディアが。その少し後にエリックとサリア。そして最後に眞白と、明らかに消耗した様子の聖が古書店へと入ってゆく。
 そうしたならそこは迷宮。此度は物理的なそれでなく、心の迷宮であった。さぁ、本を取れ。そこに書かれた内容を、君たちは読み切れるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

平賀・廣葉
なんだか綺麗な……いえ、敵ですね
目を奪われているわけにはいけません
気を抜くと猫のことも考えてしまいそうですが、今は、まだ……

【巫覡載霊の舞】で神霊体となって戦います
攻撃を軽減する力がありますので、継続するダメージにも耐えやすいかと
また、衝撃波による攻撃ですので離れつつも出来ましょう
月光の輪を受けましたら、離れて別の対象を、と繰り返し舞います

『我が怨敵の死を喰らいませ、死屍喰み』

●アドリブ・絡み歓迎です


シズル・ゴッズフォート
認められぬ事実を見ないフリで先送りにし、後にその事実を突き付けられて苦悩する……
実に身に覚えのある話です

先達を気取るつもりはありませんが、似た苦しみは知っています故に
鎮魂、お手伝い致します

■SPD
●野生の勘をフル活用しつつ、楯と剣の●武器/楯受けでの攻勢防御
攻撃は正面からは受けず、避弾経始の要領で斜めに擦り流す
多少の傷や痛みは●激痛耐性で無視

水面に浮く笹舟と言えど、斬り裂き、圧せば壊れるでしょう
頭のような部分に核らしき物も見えますし、そちらを狙うのも検討しましょうか

UCで複製した大楯を叩きつける、ないし騎士剣で斬りつける
どちらが有効かは実際に試すまでは不明ですので、臨機応変に


鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
自覚がなくとも主を喰ろうたか
憐れだが、逃げて骸魂になったのはもっと憐れなものだ
それだけでは終わらせられまい

おいおい、退散するにはまだ早いぞ
この数を相手するには人手が必要だ、帰ってしまうのはちと困る
謙遜せずとも良い良い、まずは目の前の奴等だ
それでは遵殿、準備はできておるかな?
――では、参る!

敵は遵殿と連携し、各個撃破を目指す
近付けば水流に巻き込まれるだろうが、視力にて流れを読み
少しでも水流が緩やかな所へ移動しながら敵に接近
敵には剣刃一閃
接近時、攻撃を仕掛けてくるようであれば武器で受け止めてから反撃

あーむがじぇっとというものは随分と賑やかなものだなぁ
興味深いが巻き込まれぬよう気を付けねば


霞末・遵
【幽蜻蛉】
ここらじゃ珍しいことじゃあないけどね
外の方もいるし竜神様もいらっしゃるし
おじさんの出る幕はなさそうだな

あるのかい? しまったな。もっと遠くから見ていればよかった
竜神様のご指名とあってはおじさんも頑張らざるを得ないなあ
助太刀程度にもならないとは思うけど……頼みますよ、竜神様

とは言えこれを使えるのはわくわくするな
アームガジェットに銃器を内蔵していてよかった
うーむ、やはりかっこいい……いつまでも見ていられるなあ!

見ているうちに解決していればよかったが、さて
あの形状じゃ弾は効果が薄そうだ
だがまあ直接的なダメージを狙うものでもなし
数撃ってかすりでもすればそのうち静かになるさ。不思議とね


七獄・椿
「邪魔だ邪魔、仕事なのこれから。……足引きする気持ちも、わからんでもないがね」
呪詛の焔を纏っている刀、“狂い桜”を振い、浮き笹舟を攻撃する。
【呪詛】で構成された炎なら水で構成された肉も蝕めると考え、炎を振りまき周辺一帯を焼きながら進む。
「……認めて貰えないってのは、そんなに恨めしいかね。ま、私の気にする話でもないが」


兎乃・零時
アドリブ絡み諸々歓迎

鎮魂の儀は初めて聞いたな…

…知らずに、か
そっか
それは…うん、止めなくっちゃな!



存在を認めて欲しいって気持ちは分かるし…
よし、だったら認めて
その上で、『倒すべき俺の敵』として、全力で戦おっか!


そっちが変えて攻撃してくるってんなら…俺様はこうするとすっか

パル、薬!

薬を飲んで肉体変化!
宝石兎で戦うぜ!

…痛いのは我慢しときゃいいんだよ!

そちらが月光ならこっちは星光ってなぁ!

…実際はただの光だけども

兎の掌に光『属性攻撃×魔力溜め』

兎の脚フルで使って間合い詰めて【零距離射撃×全力魔法】

本日限り!

セット
星兎!

オーバーレイ
極大光線!

詠唱は水流を【逃げ足・ダッシュ】で避けてる時にやっとく!



「おいおい、遵殿。退散するはちと早いぞ。」
 場所は、先ほどの2グループ。それぞれとはまた違った場所より古書店を目指す6つの影在り。
 そのうちの一つ、長い鉄紺の髪に瑠璃紺の瞳を持つ偉丈夫、鈴久名・惟継が、傍らの顔見知りに呵々と笑い声をかけた。
「ハハハ。そりゃ、竜神様に猟兵のお歴々とあっては、おじさん出る幕もないと思いますがね」
 偉丈夫より背が少しだけ低く、こちらは自称おじさんの名乗りの通り、少し年経た雰囲気の霞末・遵が軽い口調で応えた。

「この数を相手するには人手が必要だ、帰ってしまうのはちと困る」
 のう、猟兵方?と声をかければ、それぞれがそれぞれ。頷いた。
 緊張しているのだろうか。鞘に入った大太刀を胸元で抱きしめ、平賀・廣葉はコクリと頷き、
「安心してください。この身に変えてもあなた方は騎士として守ります。故に存分に攻められるといい」
 幾度も戦いを潜り抜けた風格を漂わせて、シズル・ゴッズフォートはしかと頷いた。
「お仕事して金稼いでいかないといけないからね」
 と地獄を背負った女性、七獄・椿もまた、笑って応える。

「そうだ。出る幕は無いぞ!」
 そしてそれ以外の皆に、真っ向から反対したのは、兎乃・零時だ。いつかの大魔導士を目指す少年は、マントを翻し、遵へと背を向け。
「……止めなくっちゃな」
 それは、知らず己の主を喰った猫に対する哀切の情だったのだろうか。静かに少年が宣言して、前を見据えた。

「……しまったな。もっと遠くから見ていればよかった。竜神様のご指名に、層まで言われたとあってはおじさんも頑張らざるを得ないなあ」
 ましてや、少年が覚悟を決めて前を見据えているのだ。ならば、己ばかりがと引くわけにもかない。
 遵もまた、己のアームガジェットを起動させた。

「よし、ではどうする?」
 グリモア猟兵から依頼を受けるのはこれで二度目。そのうえで、己の義息子以外との共闘はこれが初。かつて邪神を封じた竜神は、異世界からの猟兵達のお手並み拝見とばかりに、楽し気に周囲に聞く。
「それは勿論」
 少年が、己の式紙パルから何やら薬をもらい、一気に飲み干す。
「俺様だ!!!」

(あっつ……!) 
 体がカッと熱くなってゆく。その熱さのまま、浮きの笹舟達がUCにて作り出した水流の渦へと突っ込んでゆく。
「うおおおおお……!痛てぇ……!痛てぇ……!」
 急速に体が変態してゆくのがわかる。そう、兎の容に。
 走りながら手足が兎の形へと。耳も生えて、そうそれはまさに『宝石兎獣人』といった風情。
 体が軋みを上げて、けれど
「『い、痛かろうが関係ねぇ!』」
 そう。なぜなら眼前には、『倒すべきと認めた敵達』が存在するのだから……!
「『俺様は何時だって、限界を超え続ける男だ!』」
 
 水流もなんのその。【宝石兎/クリスタリアンラビット・フォーム】によって無理やり飛び上がり、笹舟の集団、その先陣の眼前に無理やり着地。そうしたなら、あとはいつも通りの無茶だ。
 つまり、
「星兎/セット!」
 全力全開の、
「極大光線/オーバーレイ!!」
 零距離射撃だ。
「……!?」
 当然の事として、何かも分からずに笹舟達が集団で消し飛ばされ、水流にも間隙が出来る。そこに躍り出るは、

「ははは……!」
 霞末・遵だ。
「かっこいいなぁ!!!」
 見た目に寄らず、少年の心を持つ遵である。勿論一番好きなのはロボットであるが、さりとて『変身』を見て心滾らぬ筈もない。
 なれば、
「俺も……!」
 その背に背負った二本一対のアームガジェットに仕込んだ銃器を発射して、笹舟を打ち倒してゆく。
 とはいえ、弾だ。それは面の攻撃であり点の攻撃であるがゆえに、効率は悪い。
(弾じゃ効果は薄そうだ)
 事実であった。一発撃たれただけでは、すぐに倒れるモノでもない。それでも、
(数発かすりもすれば、そのうち静かになるさ。不思議とね)
 事実であった。かすった笹舟すら、何時の間にやら倒れ伏す。
 これこそが、遵のUC、《連鎖する呪い》であった。癒えない傷と、絶え間なく降りかかる不幸で相手を骸の海へと還す。
 
 故に効率が悪くとも次々と骸の海へと還せども、敵は多勢。現在前に出てきてる零時と遵だけでは対処もしきれず、機動力がある零時は兎も角、遵が水流にあしを取られ、
「あ!」
 一瞬攻撃が止む。そしてそこを逃す笹舟達ではなく、月光の輪が迫り来る。
(不味い……!) 
 アームガジェットに備え付けられた銃器が反撃する。当然光輪は撃ち落とされるが、
(数が多い)
 困った。カッコいいアームガジェットがカッコよく活躍してくれているのに、それだけでは足りない。
「滾ったな!?遵殿!それにしてもその”あーむがじぇっと”、随分にぎやかなものだなぁ。興味深い!」
 水流を己の眼力で見切り、かき分け遵の元へとやって来た惟継が、〈天時雨〉を《剣刃一閃》。迫り来る残りの光輪を叩ききった。

「ではいくぞ?」
「助太刀にもならないとは思うけど、頼みますよ、竜神様!」
 言葉と共に、付き合いのある二人だ。当然のように連携して敵を倒してゆくが、
「ふむ。攻撃が、激しいな」
 そう。攻撃力があるのは、当然惟次の方であるが、その惟次が迫り来る数多の光輪に線の斬撃で対処せねばならず、攻撃を担う遵の方が、点の攻撃に終始していた。
 危なげなく対処自体は出来ていたが、殲滅力が低い。このままでは進む事もまた難しい。
 それどころか、敵の攻撃はなお一層激しさを増している。
 【波渡りの嘆き】だ。味方が攻撃されただけ攻撃回数を増すその力は、こういった集団戦でこそ本領を発揮する。

(このままでは遠からずも、あり得るか?)
 歴戦の竜神が、内心で冷たい算盤を弾き始めた時、救いの手は盤外から齎された。

「こちらをお使いください!」
 凛とした女性の声が響き、
「なんだ!?」
 遵自身よりもアームガジェットが先に反応。飛来したそれをつかみ取った。
「盾!?」
 投げて来た元には、その言葉を受けて頷く、シズル・ゴッズフォートが居た。
 見れば、今しがた遵が受け取ったものと同じ、【彼岸蝶の大盾(スパイク付凧形大楯)】の大楯の複製を数多く浮かべて、佇んでいる。
 その威容はもはや小さな軍団とも評していい程であった。
 シズルのUC、《来たれ我が楯、我が証。万難を排す陣を此処に/インスタントイミテイト・ゴッズフォート》によるものである。

「助かったよ!」
 遵が礼を言って、惟継と攻守を逆転した。迫り来る光輪を、遵がアームズガジェットに備えた大盾で受け止め、笹舟達を惟継が切り捨てる。殲滅速度を上げながら、兎の速さで先行する零時に、追いつかんとする様を見て、

「行きましょう」
 鎧甲に身を包んだシズルが、決断的に一歩、踏み出した。
(認められぬ事実を見ないフリで先送りにし、後にその事実を突き付けられて苦悩する……)
 攻撃が迫り来る。それは今この場での恨みの返しでもあった。仲間が傷つけられた分だけ、散った分だけ攻撃回数が増えるそれはしかし、
(実に身に覚えのある話です)
 何ら、騎士の思索を遮るものではなかった。
 一歩踏み出す。付き従う大盾の群れは、そのまま笹舟をシールドバッシュにて吹き飛ばし、スパイクが核のような部分を突き刺せば、そのまま骸の海へと還っていった。
(なるほど、そこですか)
 感慨もなく、眼前、どうにか盾の群れを突破してきた笹舟の一体に剣を振るう。水面に映る月なれど、
 シズルの意識は徹頭徹尾、哀れな猫へと向いている。『逸らしてもそこにあるもの』に苦しめられ、苦しんだ事のある身ゆえに、先達とは言わずとも、必ずかける言葉はある筈だと、一歩、また一歩進んでゆく。
 目指すは古書店。零時や竜神とその知人と同じく、確かに、シズルは歩みを重ねていった。


「という訳で、どうする?出遅れた訳だけど」
 ケラケラと酒を呷って楽しそうに傍らの少女に声をかけるのは、七獄・椿だ。
 その言葉にビクリ、と肩をあげ、平賀・廣葉が反応する。
「あ!?いえ……!決して目を奪われていた訳では……!」
「成程、眼を奪われていた訳だ」
 ニィ、可愛らしい、というより香り立つような、獣のような美を顔に浮かべ、椿は微笑んだ。
「さぁそれじゃあ遅れた分は、取り返さないと、ね!」
「あ!待ってください!」
 廣葉がこっちに戻って来たのなら問題なかろう。そんな風に駆けだす椿を、慌てて廣葉が追っていった。

(さぁ、戦いだ)
 どこもかしこも、やる事は何も変わらない。
(近くはサムライエンパイアでの、復活した織田信長相手の斬った張ったの大戦)
 当然、戦いを生業としていた椿もまたその戦に参加していた。
 けれどそれが終われば当然のことして、
(エンパイアは平和になった)
 そうとなれば稼業で稼いでいくのも難しいとなった最中、よそ様の世界であれど戦えるのならば、
「悪い事はないねぇ!」

「さぁ!」
 気勢を上げる。地獄の右足を踏み出せば、爆炎が上がる。ブースターの要領で水流を飛び越えて一気に接近。
「取り残される怖さも、足引きする気持ちも分からんでもないがね!」
 そのまま、地獄の右足で着地。本来足を取る。動きを阻む筈の水流は、その熱量に『蒸発』した。
 右足がしかと大地を踏みしめ、左足も着地。そのまま〈禍血の太刀・狂い桜〉を抜き放つ。


「『一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部』」
 祝詞を以て、地獄の呪焔が刀身を這い纏わり、月夜を昼が如く明るく照らす。

「『禍災、絢爛』」
 而して妖艶。

「『中を取り持つ黒縄の風』」
 汝らは既に死した者。それが今更生ある者を害そうなどと、烏滸がましいにもほどがある。
 ならば受けよ。此れ成るは殺生の罪科在りしものが至る地獄。その先触れたる風はまた、熱く焼けた鉄の如し熱量を以て過去を灼き斬るであろう。

「『一切衆生蝕むが如し』!!邪魔だ邪魔、仕事なのこれから』」
 本丸はまだまだ先。ならば最小の力で、最大の戦禍を。
 妖刀の柄を両手で握って、焔獄の炎纏いしそれを、一気に振り回す。

「「「……!!!」」」
 それが、本質的に自分たちを害する者だと認識したのだろう。慌てた風に逃げてゆくが、
「無駄無駄」
 【刻罪・愛憎慚愧/スティグマ・ナラク・オディアーレ】は、逃がさない。ほら、今笹舟の一つの端に、焔が移った。
 そうすれば一気に燃え広がり、笹舟を燃やし尽くしてその火の粉が他の笹舟に燃え移れば、同じ末路をたどる。
 まるで【病毒/ウイルス】が如く。炎は笹舟達を焼いてゆき、
「……認めて貰えないってのは、そんなに恨めしいかね」
 この獄炎の出所である椿をどうにかすればいい、と睨んだのだろうか。猟兵達を攻撃していた笹舟以外の、そこかしこで浮遊し攻撃に加わっていなかった笹舟達が、椿を標的と定めた。
 
 月光の輪が、狙いを定める。燃え広がる炎はそういった笹舟すら焼き消すがしかし、なおも数が多い。
「ま、私の気にする話でもないが」
 前へと一歩。水流を蒸発させながら古書店へとさらに進む。
(7割か?)
 それくらいの数の光輪ははたき落とせる心算だ。残りは喰らって、まぁ大丈夫だろう。己の頑丈さには自信がある。

 だから、
「我が怨敵の死を喰らいませ、死屍喰み」
 その介入は完全に想像の埒外だった。
 

 燐光を纏った少女が、舞う。【巫覡載霊の舞】によって神霊体となった廣葉が、椿の前に躍り出て、己の身に月光の輪を受けながらも、多くをその手に持った大太刀で叩ききった。
「大丈夫!?」
 それでもなお己に向かってくる光輪を叩き落としながら、廣葉に近寄る。
「大丈夫でしょうか、七獄さん」
「椿でいいわ!それより……」
 廣葉の頭上には、月光の輪が 浮かび、それが霞むように振動するたび、廣葉の体に僅か、切り傷が出来ていた。
「……さっさと倒しましょう」
 椿は、悔いたり申し訳なく思う類の女ではなかった。即決果断。前を見据える。

「いえ、相手のUCの範囲内から出れば……」
「それじゃあいつまでたっても古書店にはつかないから、此処は進む!刀使い同士、合わせていくよ!」
「え、ええ……!」
 
 剛剣一閃、地獄の炎で水流を蒸発させ、椿が進む。その周囲を、流麗な神和ぐ舞にて、月輪を切り、弾き、そして近寄らんとする笹舟を廣葉が断ち切る。
 そうなれば轟々と燃え盛る獄炎は、舞い踊る巫女と刀を振るう女偉丈夫を彩る舞台装置が如しだ。
 ならば、もはや敵は無く。
「ついた、わね」
「はい」
 以外にも、椿と廣葉はこのグループの二番目に着いた、一番は当然、兎の機動力を活かした零時だ。変身の後遺症か、今は痛みにのたうち回ってるがほどなく復活するだろう。
 廣葉と椿、どことなく生暖かい目で見ていれば、ほどなくして竜神とその知人も水流を見切りながら移動する惟継の先導にて、古書店の前へとつく。
 
 その段階で復活した零時も含め、6人全員がたどり着けた形だ。誰ともなく、頷きあい、その扉を開いた。さて、猟兵達は己が過去に、向き合えるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『古書店へ行こう』

POW   :    手当たり次第に探す

SPD   :    素早く探す

WIZ   :    効率よく探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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二章からも参加大丈夫です。プレイングについては上の情報をご参照ください。
心情系の性質上、場合によっては何度か再送頂く場合もございます。ご了承ください。
また、18日と19日については、水着コンの関係上一切執筆が出来ませんので、ご了承いただければと思います。
なのでそこを跨ぐとお返しするのは20日月曜日から、という形になります。
他、何かお伝えする事項ありましたら随時自己紹介ページに記載しますので、そちらの方もご覧ください


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空亡・劔
あたしは最強の大妖怪よ!
過去なんぞに縛られる気はない!むしろ記憶ないし!
だから…そういう意味で思い出せるなら上等よ!(ぱらぱら

内容
己の主の手が己から離れる

そして…

時空を切り裂く魔剣は静かに眠っていた
しかし…人の想念…恐れ
新しき大災害たる妖怪の概念の中核となった
百鬼夜行の最後に現れる滅びの火の玉
その恐れの概念が魔剣を侵食し…本来人を護り恐るべき魔神を倒す為の剣が人への災害へと…堕ちる
そう定義され…

違う…あたしは最強の大妖怪よ!でも…滅ぼしたい訳じゃ…(手が止まりかけ

いいえ…少しだけ覚えてることがある…あたしの持ち手はもっと絶望してたけど…それでも戦ったって…!
ならこれで止まるわけにはいかない…!



「あたしは最強の大妖怪よ!」
 古書店の中、空亡・劔は高らかに宣言する。
 だからこそ過去に縛られる事は無く。むしろ記憶の無い己の身の内を鑑みれば、記憶を思い出せるのならば結構。
 それくらいの心意気で、少女の容を取ったヤドリガミは、己の過去を、垣間見る。

 ―――手が、離れる。
 魔劔たる己の持ち手の、手が離れてゆく。いかなる理由であろうか。ついに持ち手の心が折れたのであろうか。もしくは、遂にその命の灯が潰えたのであろうか。
 いずれにせよ確かな事は、魔劔は、『ソラナキ』は、ただ静かに新たなる主を望んで眠っていた、という事だけである。
 なれど、人の世の流れは早く、人の持ちうる想念もまた、大きかった。
 空亡とその主の逸話もまた、時代を経てうつろいゆく。
 強大なる力を振るい、多くの事を、大きく成したからであろう。それはいつしか、新たなる伝説となった。そして得てして、大いなる力は恐怖を生みやすい。
 而して、その伝説は、大妖怪の逸話であった。
 
 曰く、百鬼夜行の最後に現われたる火の玉。
 曰く、滅びを顕すモノ。
 曰く、最強の妖怪。
 曰く、其の名は『空亡』。

 本来、人の為に用いられ、恐るべき魔神を倒す為の魔劔が、人の畏れによって人に害なす魔性へと変性してゆく。
 白が黒へ、正義が悪へと堕ちてゆき……

「違う、あたしは……!最強!最強の大妖怪よ!!」
 己の在り方がかつての本質より捻じ曲げられたものだと見せつけられ、劔は思わず叫んだ。
 どういう事だ。なんだこれは。
 劔は、幼い。記憶がないと主張するという事は、それだけ無垢であり、だからこそ己の感情に素直でもあった。
「でも……滅ぼしたい訳じゃ……」
 感情はそう言っている。けれど、ここに書かれてる事が事実なら、自分はある種、滅ぼす事を望まれている。
 その事実を認めたくなくて、思わず、本を閉じようとする。

 けれど、
「いいえ、それでも!」
 ほとんど存在しない記憶の中に、僅かに残っている感触がある。それは、かつての主が己の柄を握った強さ。その強さはきっと……
「あたしの主はもっと絶望してたけど……それでも戦ったって」
 だから、
「あたしもここで、止まる訳にはいかない……!」
 そうして少女は読み切って、一歩無垢から、遠ざかるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九頭竜・聖
わたくしめの思い出したくない過去
それは生前のことに他ならぬでございましょう
何の力も才覚も持たなかった娘
多少見てくれが良いだけの娘が村の為に贄とされるというのは道理でございましょう
わたくしめもそれが村の、人の助けとなるのならば本望と、そう思っておりました

ですが、そこに恐怖がなかったというのならば嘘となりましょう
畏れ多き九頭龍様
あの御方に身も心も魂すらも喰われ、この身はあの御方のための慰み物に過ぎませぬ
逃げたいと、苦しいと……もう死にたいと思ったこともありましょう
ですが……この身にできることはこれしかないのでございます
ならば、受け入れるのが正しき理
そうでございましょう?



「知っております」
 思い出したくない過去など。そう、嘯いて九頭竜・聖は書を手に取る。
 そしてそのように述べたが如くに、書には文が連ねてある。
 曰く、そこには。

「生前のわたくしめ……」
 見てくれは、良かった。そう自覚はしている。見てくれは良かったから、皆が皆愛してくれた。いや、後々の事を考えると、皆が愛してくれたから見てくれが良かったのかもしれない。
 黒い髪に白い肌。伏し目がちに静かな瞳。農業なんてしたことが一切ない手は、細く、白く。機織りなんてした事のない手の先には美しく整えられた爪に、薄く紅すら塗ってあった。
 
 ただ、微笑んでるだけでよい。そう、言われた。そして聖もそれを受け容れた。 優しい子だったのだろう。皆が皆、そう言うのは己にきっと才が無いからだと。 これだけ与えられている事のに、自分自身が返せていないと思い、それを歯がゆく感じる程度には。
 愚かな子だったのだろう。優しく、愛されているその裏に確かな打算があった事に、最期の最後まで気付かず、今もなおそうである程度には。

 生あるものとしての、最期の記憶は、生贄となる時の記憶であった。才無しと己を断じた少女は、自身が竜神様の生贄となる事を、あっさりと受け入れた。多少見てくれの良い自分がそれで村の、人の助けとなれるのなら、と。
 けれど、だからこそ最後は恥じるものであったのも事実だ。
 
 恐怖があった。

 畏れ多き九頭龍様。

 迫る牙。喰われる体。それよりも恐ろしいのは、魂が侵され、所有物とされてゆくような感覚であった。今からお前の存在を慰み者とするぞ、という感覚。
 悲しくて、辛くて、いくら覚悟を決めようとも、齢十七の少女が耐えられるはずもない。
 だから結局、その最期は震えながら許しを請い、心の底から逃げたいと、もう許してくれと、ただ安らかに死にたいと願いながらその生を蹂躙されたのだ。

「正しく、ない……」
 少女の話を最後まで読み切り、頁を閉じて、ホゥ、と聖は息を吐いた。
 そう、正しくないのだ。なぜなら、この身の出来る事を、それしか出来ぬことを成したのだ。
 ならば、受け入れるのだ正しい理。そしてそれに恐怖する事は恥じ入るべきであり、だからこそかつての記憶は思い出したくもないようなものとして、残っていた。
「寒い、ですね」
 どうしてだろうか。どうにも、そうなる。震えが止まらない。
「正しい、正しき道理を、なすのです」
 受け入れるのが正しい事なのだ。そして今は、骸魂を還すのが正しき事。少女は、古書店から次の場所に移っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊達・クラウディア
思い出したくない過去の心当たりはないのですが、本が分厚い。何故?
中身を見れば納得。クローン元の記憶が綴られていた。

手足の血管を切り開かれる。
闘いを見世物にされる。
幽閉中に妻が亡くなる。
竜の血を継いだ領主が、竜の衝動に抗えず少女を喰らう後悔の記憶。

我の知る記録と合わないもの、我の知らない人物のものもある。
我を作った研究者はどれだけ雑多に組み合わせたのか、正気を疑う。

ですが、どのように作られていようが関係ない。
今ここにいるのは、伊達・クラウディア。全て我が礎として、進み続けるのみ!

最後のページには培養槽から出た後、全裸で梵天丸を装着して町を探し歩いた事が書いてあった。閉じるのを必死で我慢した。



「何故?」
 古書店の中、独り佇む伊達・クラウディアは自身が想像していた以上に分厚い本を前に、疑問の声を上げた。 
 そもそも、だ。己の記憶は、己の中に十全に存在する。フラスコチャイルドとして様々な偉人の遺伝子を掛け合わせ、優秀な兵士を作るというお題目の下生み出されたクローン体が己なのだ。89年と11か月培養されて、稼働を始めたのがつい最近。
 『生まれて』からこのかたの記憶は、そもそも忘れたいといったような記憶は存在しない。総てが新鮮で、飲み込んでいくべき記憶であった。
 だからこそ、
「思い出したくない過去などの心当たりなどないのですが」
 そうして書を開いてみれば、

―――過去が、爆発した。血が沸騰する。遺伝子が主張する。
 

                  明滅


             手足の血管を切り開かれる。

              闘いを見世物にされる。

              幽閉中に妻が亡くなる。

     竜の血を継いだ領主が、竜の衝動に抗えず少女を喰らう後悔の記憶。

「グゥ!!」
 脳裏を走る、知っている/知らない記憶の数々。思わず脚から力が抜けて座り込む。それでも本を読む事はやめない。まるで古傷が開いたかのような感覚。
「これは、思い出したくないというより……!」
 己の遺伝子に刻まれた記憶。いわば、前世の記憶とすらいっていいものであった。かつて、己を作り出した研究者がどれだけ雑多に遺伝子を組み合わせたのか。
 その事実に正気を疑おうとするも、今は己の正気を保っておくことの方が先決であった。
 なるほど、これは思い出したくないものだろう。囚われれば己を失う。
 けれども、

「今ここにいるのは、伊達・クラウディア!」
 もし、今此処に居るのが培養槽から出て来たばかりの少女だったなら、取り込まれただろう。
 診療所を営む大体合法阿片でぼーっとしてるちゃらんぽらんな女に拾われて、戦いを経験した。悪を斬る事を知り、宴を楽しむ事を知った。
 大地のような竜と死闘を繰り広げ、統べる竜の障壁を打ち破った事もある。宇宙にすら出た。
 短い生ながらも濃い体験が、少女を伊達・クラウディアたらしめているのだ。

 故にこの経験も礎とするのみ。むしろ過去の記憶がこうも浮かぶのは好都合だろう。新たなる戦闘経験として取り込んで、ドンドン読み進めていく。
 最後の最後、
「あっ!わっ!これ!これは無し!無しです!!!」
 顔を赤らめて思わずいつもの凛々しい声ではなく少女のような声で叫ぶ。終盤のページ。そこには、培養槽から出てきて、〈梵天丸〉を装備しながらもそれ以外は全裸で街を探してさまよいあるいた時の記憶が記載してあった。
 そこだけは、閉じないようにするのを、苦労した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神元・眞白
【WIZ/割と自由に】
……すごい。話には聞いていたけれど本当に場所が変わった。
迷宮と言えども迷わせるのは場所でなくて心って……こと。
そう、きっとあの白猫も迷ってる。似たもの同士ってところ。

本を開けばそこはあの場所?あの学び舎?
あの白猫と私も同じ。やった事は似ているけれど同じ事。
でも、思い出したくはないけれど、その事を受け止められるかはきっと違う所。

ごめんなさい猫さん。私はあなたと似ているけれど同じにはなれない。
私は過去じゃなくて今を。……あの人と一緒にこれからを過ごしていくから。
私は人形。完璧になるための人形。私の心は私のもの。
だからあなたは認めない。私の絶望はマスターの為にも希望に変える。



「……すごい。話には聞いていたけれど本当に場所が変わった」
 古書店に入った途端、その内部が外観からは想像できない程に拡張され、辺り一面が本に囲まれた情景に変わって、神元・眞白はただ感嘆の声をあげた。
 先ほどまで一緒に居た仲間たちはおらず、それぞれ別々に本を取っているのだろう。
「迷宮と言えども迷わせるのは場所でなくて心って……こと」
 だから、躊躇している暇もない。思い出したくない事なんて、分かり切っている。
 目の前の本を、手に取った。

 精緻な情景の描写が、眞白を、かつて、『あの時』へと誘ってゆく。それはあの学び舎での日々で、『稼働』を始めた己の炉心が熱を持ち、意識が芽生えてからの日々だった。
 マスターと過ごした日々は、楽しかったと思う。けれども、戦いを主とするその教えに、心はいつしか軋みを上げて、それでも眞白の体は、最新鋭の戦術器はその性能をいかんなく発揮して教えをその身に取り込んでゆく。
 そうしてついに、破綻の時は訪れる。
 
 暴走だった。
 
 己の真の力、隠された能力の実証実験の際、許容量以上に増した力は容易く暴れ、そして師を、己を作り出した者を、殺した。

(あの白猫と私も同じ。やった事は似ているけれど同じ事)
 どちらも己の大切な者をその手にかけて、此処に居る。ならば、違いは何とするだろうか。
 ありはしない。
 けれども、眞白は違うと言い切れる。なぜなら、眞白の頁をめくる手は止まっていないからだ。受け止められるか否か。猫は後者で、眞白は前者だった。

 本は、眞白が暴走して、その師を手にかけて虫の息だった師から今の名前を賜った所で終わっていた。
 読み終えて閉じる。
 ふと横を見れば、開いた扉から、光が差している。そこから出ていけ、という事らしい。
(私の心は、私のもの)
 完璧になるために生み出された人形は、胸に手を当てて一歩進む。
(ごめんなさい猫さん。私はあなたと似ているけれど同じにはなれない)
 人形に本来備わってない心を抱え、そのうちにかつての師の願いを抱きながら、歩んでゆく。
(私は過去じゃなくて今を。……あの人と一緒にこれからを過ごしていくから)
 そう、想いを、受ける。それはもはや人形というよりか、人間の仕草であった。 そしてそれこそが、師が望んだものでもある。
(だからあなたは認めない。私の絶望はマスターの為にも希望に変える)
 その決意に、肉の体を持つ者達とどれほどの違いがあろうか。少女は、認められぬモノを否定するため、古書店の外へと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霞末・遵
【幽蜻蛉】
そうだな、こういうのはひとりでこっそり読むものだ
竜神様ともなるとさぞ厚い本になるんだろうなあ
おっ、この本は装丁がなかなか好み
しかし長そうだな……軽いやつにしとくか

実際に一瞬だったからね
腕を毟られて死ぬだけの話に何頁も使わせちゃ書き手も困るってものさ
人間よりも多いけれど、それでも尺が足りないよ
その分痛かったけどね。うーん、痛かったなあ

だが客観的にこう見せられると、恐ろしいというより恥ずかしいな
おじさんもこの時は必死だったから記憶がどうにも曖昧で
こんなことになっていたのか……ふむ
うっかり読み耽ってしまった

でもほら、今はかっこいいアームがあるだろう
不便もしてないし満足してるよ。おじさんはね



「やっぱり。ここだよねぇ」
 その長い、酸鼻極まる描写が多分に含まれた書物を読み耽り、霞末・遵は苦笑と共に感想を述べた。いや、感想というよりは、己の予測が当たってた事に対するなんとも言えない納得の感情、というべきだろうか。
 思い出したくない記憶、なのだ。お互い隣でそれぞれに、という気分にもなれず、親しい竜神とは別れ、何とはなしに出来るだけ軽い装丁のモノを、と取り出し読み始めればそこには、

―――その腕を子供たちに毟られる蜘蛛の話が、書いてあった。

(ああ、これはちょっと。恥ずかしいな)
 恐怖よりも、それが強かった。眉根を下げて、一頁一頁を読み進める。当時は遵本人だってあまりに必死で、逃げるのに、生きるのに必死だったから、記憶があいまいで。
(こうして客観的に読むといやはや、なんとも)
 そこには哀れ子供達に弄ばれる蜘蛛の、虫の姿があって。けれど、どこか描写は単調だ。
(そりゃそうさ。ただ単に蜘蛛が腕を毟られて死ぬだけの話に、何頁も使わなきゃならないとあっちゃ、書き手も困るってもんさ)
 そういう事であった。
「その分痛かったなぁ」
 もはや終わった事だ。ある種、前世とすら言っていい話の事。
 だからか、感慨を込めて本を閉じる。
 あの時は痛かった、と。もうそれは終わったと、自分を納得させて。


―――嘘である。痛みは、今もまだある。それが体の痛みか、心の痛みかは別として。
 
 少なくとも、霞末・遵は今もなお、子供が怖い。いや、無垢が怖いと言ってもいいのかもしれない。
 無垢とは、純粋であり、穢れ無き様。そしてそれは即ち無知という事でもあり、無知は、容易く残虐な好奇心へと至る。
 そしてその好奇心の犠牲となったモノであるがゆえに、恐れは未だ心の中にあって。
 あの時、迫り来た大きな手はもはや己にとって小さく、幾ら逃げても追いかけてくる巨大な歩みをもはや自分には小さい一歩でしかない。
 けれど、それでも。子供は怖い。
「ははは……でもほら、今はかっこいいアームがあるだろう?」
 と己に言い聞かせる。6本のガジェットアーム。左右の腕の代わりとして常用する二本に、残りの四本はサブとして使っているそれ。
「不便もしてないし満足してるよ。おじさんはね」
 そういって、かつて哀れな蜘蛛だった者は笑う。痛みはない。そうやって、言い聞かせて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
古書店の迷宮とは面妖な
此処にある本を読めば良いのだろう?
目に留まった本が私にとっての「それ」を綴ったものなのだろう
遵殿も見つけられたかな?
では、また後で

さて
思い出したくない過去、か

本を開いて読み進めていく
竜神信仰が在った嘗ての世界の話
人々の為に戦い、願いを叶え
時には人と同じく食事を共にし、宴を楽しむ
そして、そして
邪神との戦いの末に力は失われた
最早嘗てのように力を振るうことはできず
届くはずの手は、以前よりも遠くなった

――そうか
最初を思い出してしまえば、繋がるのは変えられぬ現状

だが俺は、それさえも呑み込んで進まなければならない
俺の信念も、尽きた同士達の想いも、まだ終わってはいないのだから



「では、また後で」
 己の『本』を探しに移動した遵を見送り、鈴久名・惟継は古書店の本棚へと向き合った。
「此処にある本を読めばいいのだろう?」
 誰ともなくつぶやいて、すぐさま目に着いた本を手に取る。この世界に転移させて来た女の言によれば、手に取った本が『それ』になるとなれば、惟継にとって一瞬の躊躇もなし。
 なにせ、時間は限られている。思い出したくない過去一つ程度でつまずいていて、いかに守るべきものを守る事ができるであろうか。

 手に取ったそれは、和綴じの本であった。
「さて、思い出したくない過去、か」
 ただじっと、読み進めていく。
「ほぉ……これはこれは」
 とはいえ、そこには己の心の柔らかい部分が記されているのだ。いかに年経た竜神とて、感嘆の一つや二つも出てこようというモノ。

 そこには、神話が記されていた。

 かつて竜達が人と共にあり、人の畏れを受け容れ、人の願いを聞き入れ、人の前に立ち邪神と戦い、人の催す宴の主となり飲み明かす物語。
 そう、かつて、このカクリヨの『外』にある世界、UDCアースにおける過去だ。
 いまだ神秘が科学の影に隠れず、惟継達も零落していなかった時代の、楽しき過去。
(そうか、そういう事であるか)
 けれどそれは、この書物の結末ではない。まだ、中盤である。その事実だけで、惟継には察しがついた。
 だからこそ、読み進めていく。

 恐ろしき邪神共退け、人に感謝され、宴を楽しむ時間は、それからどんどん終わっていった。邪神共の勢力はドンドン力を増してゆき、竜神たちもそれに必死になって対抗する。人は死に、同胞たちも命果てる者すら出て来た。
 そうしてついに最終盤、決死の戦い。最後の決戦。己を含めた竜神たちは、ついにその力の全てを振り絞って、邪神共を打ち滅ぼす。
 そして頁の最後は、生き残り、零落し、力を失った竜神の成れの果てが、空を見上げて立ち尽くす所で、終わっていた。
 
(――そうか。最初を思い出してしまえば、繋がるのは変えられぬ現状)
 己の手のひらを見る。小さき手だ。かつてと比べてその力の何と矮小な事か。空を覆ったこの手はもはや己の視界から空を覆い隠す程度の力しか持たず、森羅に届いた筈の腕はもはや届かぬ事の方が多い。

(だが俺は、それさえも呑み込んで進まなければならない)
 邪神復活、その兆候が巷で溢れている以上、かつてと同じように人を守りし者であると自認する惟継が、留まる理由などありはしない。
(そう、終わってはいないのだ)
 その信念も、尽きた同士達の想いも。本を閉じる。気付けば、入って来た古書店の扉は開いている。そこを見据え、零落した守護神はひたひたと、進んで行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トゥーリ・レイヴォネン
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】
【無理の無い範囲で絡めそうであれば、前章の二人と絡めたらと思います】

「……よしっ、見るか……」

行動指針
・少しだけ躊躇した後、適当に選んだ本を開きます

トラウマ内容
・ガラス一枚挟んだ先で、業火に焼かれる少女の姿
・同じデッドマン、トゥーリのよく知るその少女は、本来苦痛を感じる機能をオミットされていたはず
・必死でガラスを叩くトゥーリ、諦めた風の少女が突然発狂したように熱がり悶えはじめ、そんな姿を初めて見る戸惑いと、親しい人が苦しむ事の精神的恐怖、思い起こされるトラウマ
・乗り越え方は、なんかうまいことお願いします…



「……よしっ、見るか……」
 継ぎ接ぎだれけの少女、トゥーリ・レイヴォネンは、静かにそう言って本を開いた。

 かつて、どこかで、ある時の事。まだ、トゥーリ・レイヴォネンが『産まれて』からすぐの事。
 耐久試験だったと、記憶している。ガラス1枚挟んで、デッドマンの少女がそこには横たわる。
 ガラス1枚隔てて、燃え広がる業火。焼かれていく体。それを無表情に見守る己。死ぬ、という事に対して意識が薄かった。
 そもそも、トゥーリも少女も、継ぎ接ぎの死体から作り出された体だし、特に目の前の少女は痛覚やその他諸々、ともかく、苦痛を感じる『機能』をオミットされていたから、トゥーリと同じように炎に侵されながらも、茫洋と横たわっていた。
 それが、どういう訳か。

「……!ッ!……ッ!」
 ドン、ドン、と耐火性強化ガラスを叩く。声は聞こえない。どういう訳だろうか。苦痛がオミットされている筈の少女が、何時しか悶え、苦しみはじめ、どうしてだろうか。
 初めて見た誰かの苦しむ姿を、どうにかしてやりたくて、見たくなくて……必死に声をかける自分が居て。

 その段階で、トゥーリは本を閉じたくなった。そうだ、自分は、自分にはそういう事があったのだ。思い起こされる根源的な恐怖。痛いのも苦しいのもつらい。何よりも、それが誰かに齎されるのが嫌だったのだ、自分は。

(ああ、そうか)
 だから、だからトゥーリ・レイヴォネンは、進むのだ。かつて、耐火性強化ガラスの先に居た彼女は、燃え尽きてしまったけれど、まだ燃え尽きてないものがある。
 そして燃え尽きてないものの為なら、トゥーリは自分の痛みや恐怖を抑え込んでしまえるのだ。
 だって、誰かが燃え尽きる様を見る事の方が、ずっと。ずっと、怖いから。

「ぐし……」
 無表情な少女の瞳の端に、涙が流れ落ちて、鼻声になる。嫌だ。これ以上捲りたくない。だってもう、思い起こされた記憶が告げている。この後は常ならぬトゥーリの叫びも虚しく、苦しみ悶えた女の子が炭になって、終わりなのだ。
「いや、だ……」
 けれど、でも。心に反して、頁を捲る手は止まらない。だって今、止めてしまえば、猫は、救うべきものが、救えなくなる。

 トラウマなんて、解決する術は知らない。そもそも癒えてない。体と同じように、心だって血を流したまま。
 だけれど、トゥール・レイヴォネンという存在は、進むべき道と目標があるなら、進めてしまう。
 だからほら、今も。
 ぐしぐしと涙を拭って、古書店から出ていく。癒されぬ疵を抱えたまま。哀れな死体は歩き続けるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

節原・美愛
POWで判定。

手に取るのは古ぼけた和紙の本。

思い出したくない情景:
故郷、サムライエンパイアの小さな羅刹の集落での自分。
読み書きはできたけど大人しく勉強なんてしてられず、
かといって道場での武術・剣術の訓練にも馴染めず。
燻りながら、同年代の友達と比べて劣等感を感じたりしてたこと。

乗り切り方:
故郷を飛び出してから出会った人たちを思い出す。
助けて感謝されたり、逆に助けてもらって感謝したり。
そういうのも結構楽しかったな、と。
「危ないことも失敗もあったけど、なんとかここまでやってきたっけ。」
「明日は明日の風が吹く。先だけ見て歩いてたって、それなりの景色は見れるでしょ」
と、酒の入った瓢箪片手に前向き思考。



 手に取ったのは、古ぼけた和紙の本だった。そこに、節原・美愛の過去がある。
 かつての話。風来坊の美愛が、まだ羅刹の小さな集落で育った頃のお話。
 
 いまは刀一本、三味線一丁で旅する風来坊とて、何も木の股から生まれた女という訳ではない。女にだって過去はある。
 そしてその過去において少女は、独りだった。誰が悪いわけでもない。いや、もしかしたら悪いのは本人なのかもしれなかった。
 読み書きが出来ぬ程勉学が苦手だったわけではない。ただ単に、大人しく机に向かうのが苦手だっただけだ。
 武術・剣術が嫌いだったわけじゃない。ただ、修行という名目で型に嵌められるのが嫌だっただけだ。
 つまる所、美愛は生粋の自由人で、だからこそ集落ではいつも独りであった。
 そしてそんな有様だから、芽が出ず燻って、いつもつまらなかった事を覚えている。

 なんてことはない、過去である。猟兵であれば、もっと悲劇的な過去なんてごまんとある。集落が滅ぼされた。そもそも殺された、愛する人を失った。大事な人をその手にかけた。
 もっと悲惨な、思い出したくない過去なんて沢山ある。
 けれど、美愛にはそれがない。幸せであった。
 そして幸せであったとしても、心に受けた傷は人それぞれのもの。
 かつて燻っていた集落での出来事は、『思い出したくない』と思う程、少女であった美愛の心に傷をつけたのだ。

(本当に、何てことないねぇ)
 苦笑と共に、『今』の美愛が感想を心の内に抱く。
 燻っていたのが嫌で集落を飛び出してからいろいろな事があった。猟兵になって、初めて戦争に参加して、奇声をあげる教師の抑えをしたっけ。その後海の世界で一暴れしてまた戦争。そこで英霊の助力を受けたり、山よりデカい怪物と戦って死にかけたり、色々とあった。
 助けて感謝されたり、逆に助けてもらって感謝したり。
「そういうのも結構楽しかったな」
 口に出して、微笑む。本に書かれた、小さな世界で燻ってる少女は、いつかもっと広い世界を知るのだ。
 蛙は井の中よりも大きな川を好んだという事。そしてそれには危険が付きまとう。危ないことも失敗もあった。それでもなんとかここまでやってきて、
「明日は明日の風が吹く。先だけ見て歩いてたって、それなりの景色は見れるでしょ」
 と、紙の上の彼女へ語り掛ければ、書は終わった。
「あらら、必要かと思ったけれど」
 傍らの酒が入った瓢箪を見やる。苦みは、酒で消すのがもっともだと思ったが、どうやらそれも必要なかったらしい。
 ならば今は歩くまで。風来坊は、本を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

稲宮・桐葉
最も思い出したくない過去とな
特に思い当たらぬし適当に選ぶのじゃ
薄い書ならば簡単に読み切れたりせんかの?


幼き頃、好奇心旺盛なわらわは、師の目を盗み鍵を持ち出した
向かった先は危険立入禁止の古い蔵
傷んだ壁の隙間から潜り込み暗闇を手探りで奥へ進む
闇に淡く光る銅鏡を見つけ呼び掛ける声に答えた時
呪物に封じられた異形が解き放たれた
わらわはそ奴に飲み込まれ…

あの時は師が助けてくれた
じゃが師は大怪我をし、それが元で戦えぬ体になった
わらわのせいじゃ…
されど師は「桐が無事で良かった」と微笑まれて…

師に報いるには、教えを受け継ぎ、師を超えること
全ての積重ねの上に今のわらわはあるのじゃ

※アレンジ・アドリブお任せします



「最も思い出したくない過去とな」
 カランコロンと下駄を鳴らし、軽快に稲宮・桐葉は書棚の中を歩く。はてさて、己にそのような過去などあったであろうか。
 どうやら適当に取った本が、『そう』なるらしい。
 ならば、
「薄い書ならば簡単に読み切れたりせんかの?」
 と、特に過去など思い当たらぬ身。幅が狭そうな書を一冊手に取り、読み始めた。

 あれは、幼い頃じゃった。未熟なわらわは、ある日。師の目を欺いて鍵を盗んだ。どこの鍵じゃったか、と?それはもう。立ち入り厳禁と言われていた古い蔵へと続く道を封じた鍵じゃよ。
 そこを開いて、奥の倉を見やる。鍵はついておらん。けれど痛んだ壁のすき間は、狐に変化すれば通れそうな程の大きさがあったから、事実その通りにした。その通りにして、入り込む。
 そうするとそこには銅鏡があったのじゃ。ふしぎと暗闇の中でも淡く光り輝くそれ。
 何とはなしに惹かれてそれを亡と見やっておると、どこからか、わらわを呼びかける声がする。
 気付いた時には応えておった。応えた時には、銅鏡に封じられていた異形が、わらわを飲み込んでいて……

 次に、覚えがあるのは、布団の上じゃ。寝かされたわらわを見て、安堵の笑みを浮かべる師。体の至る所に包帯を痛々しく巻いて、大怪我を負ったわらわの師。
 それが元で戦う事が出来ぬ体になって、当然無知と愚かさは叱られたが、戦う事が出来なくなったにも関わらず、最後は、『桐が無事でよかった』と微笑まれて……。

「そう……じゃったのぅ」
 パタリと本が閉じられる。確かに。この想い出は、思い出したくない過去であろう。なにせ己の愚かさのせいで、師が多くを失った出来事であるがゆえに。
(けれどまぁ)
「思い出したくないという認識と、忘れていない、という事実はまた別じゃ」
 そう、この出来事が自分の今の礎となっている。もしこのまま己が成らなければ、師の命がけの献身は無駄になる。
 師の全てを識り、超えてゆく事こそが、桐葉が師に報いる唯一の方法であるがゆえに。
 思い出したくない苦々しい思い出こそが今の桐葉を形作る最も根本であるがゆえに。
 だからこそ既に受け入れているのだ。
 苦笑と共に本を書棚へ戻し、古書店を出る。
 そう、『あられ』とて、受け継いだものがあるではないか。それを無為にするでないと、言ってやる者が必要である。なればこそ、わらわの出番であろう。
 妖狐は。颯爽とあるいていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
本探して読めばいいんだろ?
(がさごそ
そも俺様にそんな過去…
本あるな…??

まぁいっか
読む!


彼が故郷の艇に居た頃
舩に何故かある貿易船に故郷の人らと同行して商売へ

その交易先で兎乃が攫われました

本人は事態を認識してなかった
でも船の皆が鬼の形相で追いかけ
無時救出
なお兎乃自身はあんまり気にしていなかった
問題はその後

親や親戚とか諸々皆にめっちゃ怒られた

凄く怖かったし泣いた
あれほど怒られた事は無い
それ以来、兎乃の側には紙の兎が常にいる様に…


ヴァ――――!?

思わず叫んだ
(今の今まで忘れてた)

…だ、大丈夫だ
失敗は受け入れたうえで繰り返さなきゃ良いんだ…!
だから、うん!
俺様は大丈夫…
(もう怒られるのやだもん…!)



「うん?俺様にそんな過去?」
 古書店に入ってあっけからんと言い放つのは、兎乃・零時だ。
 最強の魔術師を目指す少年は、んー?と首をひねりながら書棚を見る。

 いや、勿論苦々しい過去は無数にある。そりゃかつての頃、己の未熟に嘆いた事はあるし、初めての依頼でひーこら言っていた覚えもある。
 そういった意味で恥ずかしい過去は無数にあるが、
(思い出したくないようなもの、ってわけでもないしな……)
 そう思いながら何とはなしに書棚に手を掛ければ、
「……取れた」
 そう、『本が、取れた』のだ。
 それはつまり零時自身にも思い出したくない過去がある、という事で……
「んん?っておい!?どうした、パル!?」
 その本を開こうとしたとき、全力で己の式紙である〈式紙パル〉が手をはたいて本を捲るのを阻止してきた。
「む……むぅぅ!まさか俺様が怖がるとでも思ってるのか!?見てろ!!」
 そしてある種保護者的なパルにそんな事をされたらむしろ本を開きたくなるのが人情というのもの。
 そうして、零時は本を開いた。

 ある日、ある所に、能天気な少年が居ました。星々の海を渡る船を住処とする少年は、一族の小舟に乗って、他の船に遊びに行きました。
 そしてそこで、

―――攫われてしまったのです。

 大人たちは大慌て。必死に鬼の形相で攫われゆく少年を取り戻し、その事の重大さが分からない少年はヘラヘラ笑っていたのですが、

―――当然の事として、お父さんやお母さん、親戚のおじいさんおばあさんにはちゃめちゃに怒られたのです。
 当たり前も当たり前。けれどそれが怖くて悲しかった少年にとってその時の想いでは、楽しかった旅行の思い出から、秘められるべき苦々しい思い出へと変わって―――

「ヴァ――――!?」
 それでも何とか読み切った現実の零時が、叫び声を上げた。
(い、今の今まで忘れてた……!)
 今にして思う。その当時の状況が、どれだけ自分にとって危機的であったか。当然怒られた恐怖もあろう。けれど記憶に蓋をしていたのはきっと、攫われたという事実に根源的な恐怖があって、
「いで!」
 その思考を中断するかのように、パルが零時の頭をはたいた。
「パル……」
 そう。その時だ。その一件があってから、パルが付いたのだ。そうなればさっきの反応も、納得がいく。つまりは守ってくれたという事で。
「大丈夫だ、パル」
 そう、零時は、当時の少年ではない。多くを経験して、己を守る術どころか、誰かを救う術すら知っているのだ。無力ではないという事実が、図らずもこの書を最後まで読み進める力を、無意識にでも零時に与えていた。
 そうして古書店を出ていく。
(だ、ダイジョウブだ。失敗は受け入れたうえで繰り返さなきゃ良いんだ…!だから、うん!)
「俺様は大丈夫…」
(もう怒られるのやだもん…!)
 そういう所は、少年のままであった。 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブルース・カルカロドン
ボクの最も思い出したくない過去

それはオブリビオンの襲撃によって
ボクのいた悪の映画会社が滅びた日のことに他ならない

あの日、ボクは徹底的に打ちのめされた
打ちのめされて、仲間たちが死んでいく中、
瀕死の首領だけを連れて逃げ出した

けれど結局、首領は助からなかった
人喰い鮫には誰かを助ける機能はなかった
ボクは助かった
彼女が自らを差し出してくれたから

無力感の中で喰らった血肉の味
思い出す度、死んでしまいたくなる

けれどその度、最後の指令が頭を過ぎる

『生きろ、カルカロドン』

「……わかってるよ。ソニア」

その指令はボクに立ち止まることを許さない
だから、歯を食いしばり、本を読み切って、先を目指す

さあ、クライマックスだ



 前提として、
「ぐぅ……!」
 ブルース・カルカロドンはサメである。それでどうして本をめくる事が出来るのか。
 鮫に読める本は無い。だからこそ、『文章が脳髄に直接叩き込まれる』。
 叩き込まれた文章が、そのままブルースをかつての過去に誘った。


 ブルースは、かつてヴィランであった。悪の映画会社にどんなサメ映画にも出演できるサメとして改造され、ありとあらゆるサメ映画に出演してきた。水中、空中、地中、さらに宇宙さえ泳げるようになった彼は、サメ映画の主役として、ありとあらゆる場所で人を襲った。
 そうしたなら当然ヒーローが出てくる。己の悪行を、阻止される事もあった。それで構わない。何せ自分たちは悪の映画会社。それでいい画が撮れるのならば、ヒーローだーって歓迎だ。
 そうやって面白おかしく楽しくも悪い日々を送っていたある時、

 虚無が降って来た。

 その瞬間まで、ブルースは知らなかった。この世界には、悪と正義の二項対立の他に、『過去』という、その二つが手を組んでさえ阻止せねばならないものがある事を。
 オブリビオンの襲撃。様々な世界で当たり前に引き起こされる事件が、ブルースの所属していた映画会社にも降りかかって来ただけの話だ。
 そして当たり前の事なので、当然のようにユーベルコードでしかダメージを与えられないオブリビオンに、ブルースの住処は蹂躙された。

 そして幸いにして、陸海空に宇宙、ありとあらゆる場所を泳げるサメは、逃げるのにうってつけだった。だから滅多打ちにされて、仲間が死んでゆく中、ブルースは瀕死の重傷を受けた己の首領を背に乗せて、傷だらけになりながらも逃げる事が出来た。
「ここまでだ。カルカロドン」
 そして結局は、そこまでだった。人を食い殺す鮫に、人を助ける機能など在りはしなかったから。
「ソニア!」
「喰え」
 首領の指令は簡潔だった。虫の息の己と、喰えば回復する重傷のサメ、どちらが生き残る確率が高いかなど、言うまでもなかったから。

「けど!」
「喰って……生きろ。カルカロドン」
「……ッ!」
 そうして、ブルースは肉を食べた。味はいつもと変わらなかった。けれどこんなに味気ないのは、きっと悲しさや悔しさ、無力感のせいだろう。

「……わかってるよ。ソニア」
 だから、その味は、忘れる事など無かった。例えもっとも忘れたいようなものであったとしても。牙を食いしばる。
 最期の指令が、立ち止まる事を許さないから。
 出口を見据える。その先には、己の無した事から目を逸らした猫が居るのだろう。
 さぁ、クライマックスだ。
「ヒトのアジをオボえたサメは、オソろしいぞ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サリア・カーティス
エリックさんと別れて一人で本を探しますわ。

前と同じ場面……いえ、引き裂かれていた方がまだ生きてますわね。男の、方?

「何故耳も尾も消えていない」「犬達を殺せば人狼病は治るはずでは」

は?

『彼女の「家族」は、物を与えるだけの父親でも、一見恵まれた環境に見える彼女を妬む使用人達でもなく、犬達だった』

『病の狂気の中にありながらも「家族」の事を心配していた』
(こんな事になるなら、大人しく鎖に繋がれずにいたのに)

『狂乱し、鎖を引き千切り、彼女は目の前の「父親」を…』

『「家族」を探すように屋敷を彷徨い殺し回るも、見つからず絶望して』

私は……自分で記憶を歪めて……「家族」の事を忘れて、いた……?(滲む涙



「男の、方?」
 その精緻な筆致が、サリア・カーティスに過去の記憶を呼び起こさせる。男が居た。良くいる男だ。サリアのように耳も持たず、尻尾もない。

 その男が、いらだたし気に何かを叫んでいる。
「何故耳も尾も消えていない!?」
 その言葉に同意するかのように、男の周囲に存在した使用人たちも言葉を口にする。
「ええ、ええ旦那様!確かに!『犬達を殺せば人狼病は治るはず』とお聞きしました」
 
「は?」
 冷たい声がサリアから放たれた。犬が、殺された。目の前の物を与えるだけで愛など与えて来ず、腫れものを触るかのように扱い、ただ己の面子の為に娘を飼っていた男はなんと言った?
 そしてその周囲にいる、令嬢として一件恵まれた立場にいる自分の境遇を憐れみ、されど妬んでいた使用人たちはなんと言った?

 殺したと言ったのだ。犬達を。そこには何の感慨も含まれず。
 だから、サリアの眼は紅く染まった。

 サリアにとって、元より心通わせぬ者達など、『家族』ではない。ただ病による狂気の中でも、ただただ『家族』のの安寧を願っていた。
 それが、毀されたと知って、

(ああ―――――)
 どうして、鎖に繋がれていたのだろう。そんな事、しても無意味だったのに。

 今もなおその身を縛るそれを破る。男の顔が恐怖に染まった気がした。関係なかった。白い手が奔る。肉を抉り、血に染める感触。むせかえるような鉄錆。すべてが遠い。
 ただ、狼が1人、吠え猛り、哭いていた。

 ズリ、ズリ。黒い衣は、血を吸ってなお黒かった。惨劇の後、辺り一面血に染まった中で、忘我の表情でありながら、透明な涙を流しながら、女が『家族』を求めて、ドレスを引きずりながら彷徨い歩く。
「何処……?どこ……?」
 散々ッぱら吠えたからであろう。そのこれは擦れ、小さなものだった。それでもなお、狼は『家族』を求めて彷徨い歩く。
 ああ、けれども惨劇が起きた後の館には、生命など在りはしないのだ。女のその、命以外は。

「ああ……!」
 思わず、読み終えてサリアは蹲った。最後まで読めたのはどうしてだろうか。自分でも不思議であった。
 けれどここに書かれている事実が真実であれば、
「私は……自分で記憶を歪めて…『家族』の事を忘れて、いた……?」
 という事になる。
 ならば、本を閉じる事など出来はしない。それは、大事な大事な家族を否定するという事で。
 ツ、と。透明な涙が零れ落ちる。
「私、私は……」
 この事実とどう向き合えばいいのか分からない。ただ今は、古書店の扉が「それでも」と急かすように開いているのみだ。
 今は依頼のただなか。蹲ってはいられない。涙をぬぐい。そちらを見やる。
「行きましょう」
 何より、誰かに会いたかった。今すぐにでも。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリック・シェパルド
古書をさっさと読んじまうか…クソッ、手が震えやがる

思い出すのはやっと人狼病を治す方法を掴めると思った瞬間に島が落ち、方法も情報も落下時に失った絶望

そして「もう手がかりは無ぇから諦めれば楽じゃないか」「いっそ託された願いも忘れてしまうか」という考えと全てを諦めた表情の俺だ

故郷で知らねぇ人殺しの罪を被せられた時に、殺ったかもしれないと思っちまった時と同じ顔…あん時の俺も否定してくれた家族を裏切ったんだ

俺は…嫌ぇなその人の顔は捨てた
だからこれは家族同然の仲間を捨てようとした馬鹿な男の話だ

今だけはそう割り振らせてくれ…この罪は態度で償ってこそだろ?

それに今だってしっかり見てやらねぇと駄目な奴がいんだよ



「クソ……手が震えてやがる」
 エリック・シェパルドは、己に見せつけられる記憶が、どのようなものか理解していた。そして理解しているからこそ、その震えが止まらない。けれど、なら。
「さっさと読んじまうか……!」
 事ここに至ってはそれ以外に選択肢はないのだから。

 盗んだ馬で走り出す。それはある種他の世界の者達から見れば滑稽であっただろう。
『そこバイクじゃないんだ』、と。しかし当然である。なぜならここはダークセイヴァー。そして盗んだ馬で走り出した者たちは皆、人狼病を患っていた。
 馬鹿笑いしながら、死にかけながら、人狼病の特効薬を探す日々。
 少年期のモラトリアムのようなそれは、何時しか本当に死人が出て、また一人、また一人と欠けて、ゆき、ついには……。

 それでも、それでも良かったのだ。なぜなら、最期、人狼病の特効薬を見つけたのだから。見つけてそれで、
「島に、落ちた」
 ダークセイヴァーであった筈のエリックが立つ場所は、グリードオーシャンになっていた。そしてその時、人狼病を治す方法も、何もかも失われたのだ。
 そこまで読んで、エリックは己の顔を撫でた。
 獣の、犬の顔は人のそれより表情が出ずらい。

 あの時、エリックは確かに絶望したのだ。『もう手がかりは無ぇから諦めれば楽じゃないか?』『いっそ託された願いも忘れてしまうか』と。酷い顔だったと思う。
 そしてその表情は、さらにかつて昔、身に覚えのない殺人の罪をかぶせられようとしたとき。己を擁護してくれた家族に比べて、自分はもしかしたら殺してしまったのではないか、と、己と家族を信じきれなかったときにも浮かべていた表情なのだ。
 だから、エリック・シェパルドは人の顔を捨てた。

 そうして、エリックは家族同然の仲間を捨てようとした馬鹿な男の話が書かれた本を読み終えて、閉じたそれを前に、瞳を閉じる。
 そう、今だけは割り切るしかなかった。
 何よりも、己が背負うべき罪を償うのに必要なのは、言葉ではなく態度と行いであるがゆえに。

「……よし」
 しばしの後、エリックは顔を上げる。過去がどうあれ、進むしかないのだ。
(何よりも)
 見ていないと心配な相手もいる。あのおしとやかな暴走機関車といってもいい彼女は、しっかりと自分と向き合えてるだろうか。
 そういった誰かに対する心が、今もなおエリックをこの地に立たせているものであった。
 だからこそ、古書店の扉は、既に開かれている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
アドリブ捏造苦戦歓迎

出遅れたから急いで来た、けど、本を読むだけ?
ふふん、読むのは得意だぞーっと適当に君に決めた!


特異な姿で産まれ忌み子として扱われた幼子の話
ただ一人、餌の様に与えられる麦と汁で食い繋ぎ、産まれ持った力を使って外敵の駆除を担当して生きて行く
やがてはその力を得る為、贄と狙われつつそこに住み続け、いつか認められ、受け入れられ、愛されるのを信じて、信じ続けていくお話


なんて可哀想なんだ、悲劇的だね、でもこれなんなんだろうね?
と、他人事
だって自分は世界さえ救えば救われるので似通ってない
この話の幼子は、憐れで、愚かで、救い難い子だもの

迎える結末は、惨憺たる物になるのだろう、本当に可哀想だ



「なんて可哀想なんだ、悲劇的だね」
 さぁ出遅れた、と急ぎどうにかこうにか古書店へたどり着いたまま、目の前にある本を手に取って読み終えた肆陸・ミサキの正直な感想だった。
 最初、本を手に取る時、『読むのは得意だぞー!』と喜び勇んでいた少女の瞳に宿るは、静謐と、疑問。

「でもこれなんなんだろうね?」
 そこに書かれているのは確かに己の事であった筈なのに、どこまでも他人事だ。
 
 そこには、ダークセイヴァーに産まれ堕ちた一人の幼子の話が書かれてあった。金赤の虹彩異色に白髪。衣食住足りて人は礼節を知る。ならば過酷なダークセイヴァーの共同体において、その異なる姿がどれほど疎まれた事だろう。
 忌み子として扱われたその子に与えられたのは、餌と見まがうような麦と汁のみ。そしてそれのみで、生まれ持った特異な力を使って、外敵の駆除という危険な役目を負って、どうにかこうにか生きてゆく。

 そしてダークセイヴァーにおいて力とは、オブリビオンの持ちうるものであった。ならば、力を使えば、それだけ危険度は跳ね上がってゆく。いつしか、彼らに提供されるべき贄としても狙われながら、それでも。それでもと、幼い心は、いつかこうやって力を振るっていけば、認められ、受け入れられ、愛されるのだというあり得ざる空想を抱き、戦ったのだ。
 
 それだけの、記憶。

「本当に可哀想だ」
 ぽつり、乾いた声で少女は呟いた。だって当り前じゃないか。人は、人以外を愛さない。異なる姿を持つ者が人を愛そうとしたとて、迎える結末は、惨憺たる物になるのだろう。そしてそれをミサキは、識っている。
 それを分かっていない幼子は、憐れで、愚かで、救い難い。
「可哀そう」
 かつて幼子だった少女は、かつての幼子にそう言い放った。
 胸に手を当て、顧みる。ならば、今の自分はどうだろう?
「うん……似ていない」
 そもそも、肆陸・ミサキは、ヒトを見ていない。

 いや、勿論猟兵として、 仲の良い人々はもちろんいる。助けてくれた同じ髪色を持つ少女にドギマギしたり、命そのものに鈍感な神に苛立ったりもした。
 けれども、救う対象はヒトではない。己の命を燃やして救うのは、世界だ。世界が救われるなら、ヒトも救われる。だから、それでいいのだ。世界を救われるのならばきっと、自分も救われるのだから。
「だから、似通っていない」
 その胸中がどのようなものであろうと、肆陸・ミサキはそう世界に宣言した。ならば今この世界には、その事実しか、存在しえないのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズル・ゴッズフォート
ふむ。「忘れてはならぬ事」、とは違うようで
強いて挙げる程のものは無いと思うのですが、読まねば進まぬと言うのならば臆する理由も無し
では、いざ……!


タイトルは「目覚めた日」
内容は非常に簡素
ある日、どういった理由からか。修羅と化した兄弟子が両親を襲い、自分はそれを後ろで守られ、見ていた事
そして、その戦いを見ていた己が、兄弟子の笑みと剣閃に惹かれた事
兄弟子を両親が退けた後それを悟った両親に何かをされ、自分がこの事件を忘れさせられていた事
纏めてしまえば、これだけのもの


―――バカな
義兄上は義姉上と共に、修行の旅に出て行った筈
……嘘だと断じる嘗ての過ちは犯しませんが、一体コレをどう受け止めるべきか……



「ふむ、思い出したくない過去、ですか」
 なんとも異な事を、とシズル・ゴッズフォートは思う。
 たしかに以前であれば、己の本性についてひた隠しにすればこそ、それを詳らかにされていたであろう。
 けれどその『忘れたい事』は、『忘れてはならぬ事』としてこの身に刻まれている。 例えその性がなんであれ、騎士たらんとする矜持に嘘は無いと叫ぶ事こそが大事であると、そう思っているがゆえに。
 つまり、今のシズルに強いて思い当る節もなかった。
 
「『目覚めた日』……」
 そのタイトルを見るまでは。どうやらそれがシズルが読むべき書物の名であるようで、思い当る節があるするならばそれは一つ。己の獣性が目覚めたあの日……なれば。
 徐に、頁を開いた。精緻な描写が、かつての情景をよみがえらせる。

 戦鬼が見える。剣に憑かれ、化外と成り果てた男が見せる擦れ捻じれた笑み。そう、それはかつて見た絵画の情景。それのみが印象に残っていたが、書は、当時の情景を事細かに描写する。
 剣で切り倒し、血を浴び、命を啜る。そのために特化した殺しの業を振るうのは、そう。兄弟子であったのだ。
 そしてその兄弟子に相対するのは、シズルの両親。そしてその時自分は、両親に守られていたのだった。
 戦いは、2対1の末、辛くも両親に軍配があがった。修羅へと堕ちた兄弟子が退き、安堵した両親が見たのは、

―――修羅と同じ、いやもしくはそれ以上に獰猛な笑みを浮かべる愛する我が娘の顔。

 瞬時真っ青になった二人は、娘が修羅の剣閃に惹かれた事を悟り、いかなる術かは兎も角として、今しがた起こった事の記憶を封じたのであった。
 纏めてしまえば、それだけの事。

「ご迷惑おかけしました」
 パタリと本を閉じ、かつて両親に迷惑をかけたという事実が恥ずかしいのか、顔を赤らめながら目を閉じて眉根を寄せ、シズルはここにはいない誰かへの謝意を述べた。
 なるほどこれは確かに。『かつての貴方』を認められなかった頃の自分であれば、途中で本を叩ききって迷宮を突破する事叶わなかっただろう。
 ならばこれも一つの成長、と一つ息をついて、思うのは
「義兄上は、義姉上と修行の旅に出ていったはず」
 
 ならば、この脳裏に浮かび上がる情景はなんなのか。
「問いただす必要は、あるかもしれませんね」
 嘘だと断じるかつての過ちを犯すつもりはないが、さりとてどう受け止めたものか……
 ともかく今は、救うべきを救う必要がある。騎士は、盾を手に取り、古書店を抜け出していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七獄・椿
「違う、これも違う、これも違う……だーっ!どれだ私の!?」

適当な本を手に取っては直感で違うと判断してその場に投げ捨てる。そうしていると左眼の炎、かつての友の怨霊がちりちりと蠢き小さな手を作ってどれを取るかを示す。

「ん?これ?ありがと」

本を開き、幻影に呑まれ、蘇るのは、焔、血、崩れる城郭、目の前で倒れ伏すかつての友。そして不自然な程美しい牡丹の花。

「……なぁんだ、ここか」

“私達”の思い出したくない事なら、そうなるだろうな。

しがらみを疎んだあまり捨ててきた代償。
まぁ、死んだ殺したの怨みは元々ない、友の怨みは背負った、それも全て殺して“終わった”話。

──寂しいな。でも、何度でもさよならだ、私の愛。



「違う、これも違う、これも違う……だーっ!どれだ私の!?」
 古書店に来て、まずは本を探しだす所から難航している女がいた。七獄・椿である。
 地獄の炎をその身。その瞳に宿した女は、どういう訳だか『己の本』を探す事に難航していた。本を取っては直感が『これでない』と否定して、そのたびに投げ捨てる。それをもう何度も行っていた。
「まったく、どうしたもんかね」
 他の仲間はもうすでに探し当てている事だろう。ならば、ここで足踏みをしている暇はないのだ。
 このままでは八方塞がりだ。どうしたものかと思案していると、
「お?」
 左眼の炎が、ちりちりと蠢き小さな手を作り出し、それが一つの本を取り出す。
「ん?ああ。ありがとうな」
 『かつての友』にそう告げて、本を開けば、そこに幻影が広がった。

 断片的なそれ。

『焔』『血』『崩れる城郭』『目の前で倒れ伏すかつての友』
 そして、
『不自然な程美しい牡丹の花』

「……なぁんだ、ここか」
 目の前に広がる光景を見て、椿はそう、独り言ちた。
「それはそうだよな。『私達』の思い出したくない事なら、そうなるだろうな」
 その言葉に、ちりちりと、左眼の炎が。かつての友人の怨霊が、瞬いて同意する。
 苦笑を一つ浮かべて、なだめるようにそれを撫でて、
「燃えるような恋だったさ」
 けれどそれにはしがらみがあって。だからそれを疎んじたところまではいいが、それで引き起こされたのは大惨事。
 死んだ殺したの惨劇が、その代償だった。

「それでもまぁ、全部終わった話だ」
 元々、己に怨みはなく、背負った友の怨みもすべて殺して終わらせた。
 だから今見ているのはすべてが終わった話。
 なるほど、だから忘れたくもなろうもの。

「酒が飲みたいねぇ」
 そうして残ったのは自分独り。口の中に広がるその寂しさを消すのは、酒が丁度良い。
「けれどまずはお仕事か」
 そうして本を閉じれば、そこは古書店。
 静かに、しかし丁寧に、本を戻す。そうして扉が開いた光の向うへと歩いてゆく。
「さようならだ、私の愛」
 もう終わった事なのだ。だからこうして思い出すたびに、終わりの言葉をなげかけよう。何度でも、何度でも。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『彷徨う白猫『あられ』』

POW   :    ずっといっしょに
【理想の世界に対象を閉じ込める肉球】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    あなたのいのちをちょうだい
対象への質問と共に、【対象の記憶】から【大事な人】を召喚する。満足な答えを得るまで、大事な人は対象を【命を奪い魂を誰かに与えられるようになるま】で攻撃する。
WIZ   :    このいのちをあげる
【死者を生前の姿で蘇生できる魂】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠香神乃・饗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 にぃあ。にゃあ。ねこがなく。
 ごしゅじんさま、ごしゅじんさま。
 たましいはどこにあるの?どうしてしんでしまったの?
 にぃあ。にゃあ。ねこがなく。

 古書店の先の広場にて佇むは白い猫。骸魂としての力を得たからか、大きな虎程もあるその体を深く伏せて、君達を威嚇している。さぁ、逸らしてもそこにあるものに、気付かせよう。


※3章は随時募集して書けるのからポンポン書いていく形になります。よろしくお願いします。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
空亡・劔
……あたしも
あたしを持ってずっと戦った主がいた

…禰宜…とも…ヴぃくたぁとも…そんな…名があたしの心の奥底に残ってる
でも…もういない
思い出せない

きっと…自我もまともになかった頃…だから

でも…それでも心に残ってる
戦ったという感覚が

あんたもそうじゃない?
記憶から目をそらしても…いいえ
分かってるから眼を逸らしてるの
…それでも…心に刻まれた物は消えないわ

それは…きっともっと苦しいの

【属性攻撃】で氷属性を武器に

UC起動
…防御強化
…あんたを人類の脅威と断じる……なんだか…悲しいな
あんたは…きっと人間が好きなのに

正面からぶつかり合う
【二回攻撃】で切り裂きながらも此方も受け止めぶつかり合う
ええ
是しかできないよね


エリック・シェパルド
【夜狼】
はぁ…胸くそ悪ぃ…

あっ、お嬢…目が赤ぇな
辛い思い出だったんだろうと思うだけで深くは聞かねぇ
野暮ってもんだ
だが優しく声をかけるぜ
『お嬢…美人が台無しだな。終わったらちゃんと冷やそうぜ?』
『吐き出してぇ事があったら聞くから、もう少し俺と戦ってくれねぇか?』


戦闘に入ればUC発動
鮫を召喚して突っ込ませる
あられのWIZで寝てる奴がいたら叩き起こしながら俺も突っ込んで棍棒で【貫通攻撃】だ!
『真実はテメェが一番知ってんじゃねぇのか?それをこんなだせぇ眠りで逃げんのは…主人に失礼じゃねぇのか?』
『嫌な真実を知るのは辛れぇし、逃げてぇってのも分かるけどな…向き合って初めて出来ることだってあんだよ。』


サリア・カーティス
【夜狼】

あら、目が……?(目が腫れてるのに気づいてなかった
大丈夫ですわ。ありがとうございます。

敵に思うところが出来たので、もちろん一緒に戦わせて貰いますわよ。

私の「家族」を呼び出されたなら私、今までとは別の意味で正気を保てなそう……なに人の家族を勝手に使いっ走りにしてるのかしらァ?!
質問? そんなの知らないわぁ

あの子達は私に攻撃はしてこないはずなので、その時点で偽物と断じるわぁ。【屍狼召喚】で蹴散らして【蹂躙】するわよぉ。命をあげる気は無いし攻撃されても【激痛耐性】で耐えるわぁ。

そもそも、主人を置いて、自分のした事も忘れてこんなことをしてる時点で、主人に対して不忠なんじゃないのぉ?



(ああ……そうか。見える。よ)
 どことも知れぬ揺蕩う場所で、空亡・劔は『理想/ユメ』を見る。
 そこには、確かにあったのだ。
(…禰宜……ヴぃくたぁ……)
 そんな名前が、魔劔の中には眠っている。
 劔の主。かつて、空亡・劔が空亡・劔として在る以前より、きっと己を振るっていた主。ああ、きっとこのまま振るわれれば幸せだっただろう。


                  けれど

「あんたも、そうじゃないの?/《脅威認定。人類を害するモノと承認します》」
 劔は『劔/ジブン』を握りしめた。

「記憶から目をそらしても…いいえ。分かってるから眼を逸らしてるの/《我が在り方を刮目せよ。祖は空を亡くすモノ。我が根源より流れ出る、原初、ヒトの畏れが空を割る》」
 言葉と『呪詞/コトバ』が重なり、『意志/オモイ』が刃として収斂する。

「…それでも…心に刻まれた物は消えないわ/《故に我が銘(な)は唯一つ。空亡劔……》」
 
 ここが、どういう場所だかはなんとなくわかる。今自分はきっと理想の世界に居る。つまり、何も考えずにただ、主に振るわれていればよい。そういった、世界。 それもまた一つの理想なのだろう。けれどそんなものがまやかしである事くらいは分かってる。
 さぁ目覚めの時だ。氷のように研ぎ澄まされた意志が刃に宿り、氷そのものの属を帯びる。
(目を逸らしてちゃ…きっともっと苦しいもの)
 故に、劔は、己の在り方を宣言する。


「《神殺しの大妖怪/ヒトビトノオソレノケンゲン》なり!!!」

――鈴と、鈴が鳴る。
 一太刀。《ずっといっしょに》によってつくられた理想の世界が破られた。
 そうしたなら眼前には大虎程の大きさもある『あられ』が。

(……これはッ!)
 違和感に気付くも二太刀目は既に振るわれている。何か不定形で非物理的なものが体に障る感覚。けれど斬撃は確かに『あられ』を捕えた。
 だが、
(浅い……!)
 たしかに『あられ』の体を切り裂いてダメージを与えた。しかし致命傷にはいたっていない。
 《このいのちをあげる》の効果だ。放たれた【死者を生前の姿で蘇生できる魂】は劔自身の記憶が曖昧であるせいで、ふわふわとした容しか取れなかったそれは、だからこそ劔の警戒を抜けて直撃した。

『にぃあ。にゃあ』
 可愛らしい声で猫が鳴き、剣呑な爪が振るわれる。
(なんだか…悲しいな)
 己が、人類の脅威と断じたその大猫の爪を防ぎ、眠気で霞む視界の中、『あられ』を見据える。
 防御力を強化していて正解だった。人類の脅威に対して特攻的な力を得るUCによって、例え眠気が襲おうとも劔の体に傷は一つもついていない。
(あんたは…きっと人間が好きなのに)
 でも、劔には正面からぶつかりあう事しか出来ない。爪を防ぎ、刃が奔る。けれど襲い掛かる眠気がドンドン、ドンドン瞼を重くしていって。
 ついには、
(あ―――――)
 意識が完全に遠のくその瞬間、

「「■■■■■■■――――!!!!!」」 
 『人狼咆哮/ウルブズ・ウォークライ』の二重奏が響き渡り、劔の意識は一気に覚醒した。
「……ッ!」
 ほぼ反射的に、眼前に迫り来ていた『あられ』の右前腕を斬りつけ一気に飛び退る。
「大妖怪であるあたしを起こすなんて、凄い目覚ましね!!」
 意識が落ちかけた事よりも、そういって劔は相手を上げた。

「ハハハ、そんだけ元気なら、大丈夫か」
 傍らに飛び退ってきた劔に対して、エリック・シェパルドは笑いかけた。
「フッ!当り前よ!だってあたしは、大妖怪だもの!」
 いつもながら胸を張る劔は、確かに元気そうだった。とはいえ、

「流石に疲れた。後は、お願い」
 全力でUCを使用して、その後は強制的に眠気を誘われたのだ。中々限界であった。
「頼むわ。エリックに、えーとサリア」
「おう、任せときな」
 狼のおまわりさんは少女の頭をポンポンと撫で、一歩前に出る。
「……」
 劔の言葉には応えず、共に現れた黒い女も、サリア・カーティスもまた、前に出た。

(ああ、確かに胸糞悪かったもんな)
 どことなく元気のない様に、エリックは内心で苦笑いをし、同意と納得の感情を得る。
 当たり前だ。自分がそうなら、きっとお嬢だってそうだったのだ。
「ちょっとは気が晴れたかよ?」
 だからこそ敢えて、『劔を助ける為に叫ぼうぜ』と提案したわけで、
「あッ!?えっ!?そう、そうね!?」
 と答える声はやっぱりどこか上の空。
 今度は明確に苦笑して、

「お嬢、拭っときな。美人が台無しだぜ」
「あ、あら?」
 拭いきれなかった雫が、まだその瞳には存在している。そしてその瞳が赤く腫れていた事も、サリアは今更気付いた。
(ああ、やっぱり)
 余裕がないんだな、とそう思う。

「大丈夫ですわ。ありがとうございます」
「そっか。なら、終わったらちゃんと冷やそうぜ?」
 優しい声で。その涙の訳を詳しく聞こうとする程、男は野暮ではなかった。
 だから今は、此処でなすべきことを。
「戦ってくれねぇか?」
「もちろんご一緒に」
 男の言葉に、叫んだことで少し軽くなった心のまま、女が答えた。
 心に確かにシコリは残っている。それだけの衝撃だった。けどそれは、この戦いが終わってから吐き出せばいいと思ったし、受け止めればいいと、そう思う。

 だから今は、

「《あなたのいのちをちょうだい》?」
「あげるわけないでしょう?!なに人の家族を勝手に使いっ走りにしてるのかしらァ?!」
 激情に駆られよう。女が叫ぶ。
 迫るは『あられ』によって召喚された、サリアのまがい物の『家族』達だ。犬の群がサリアに命を寄越せと迫り来る。それ自体があり得ない。
 お互いに己の命より大事だったのだ。ならば、愛しい犬達が己を苛もうとする事そのものが彼らに対する冒涜。

「『さぁ……一緒にあばれましょお……!』」
 《屍狼召喚/アンデッドウルフショウカン》によって呼びだされた屍狼に乗って、サリアが犬の群れへと突っ込んでゆく。
「お嬢はまっすぐいけ!!」
 敵のUCの性質は分かっている。だから、突っ込んでゆくお嬢がまっすぐ進めるように。出来るだけ犬を倒さないでいいように計らうのは、エリックの役目だ。
 鮫の嵐が吹き荒れる。

「真実はテメェが一番知ってんじゃねぇのか?それをこんなだせぇ眠りで逃げんのは…主人に失礼じゃねぇのか?」
 チェンソーが生えたサメと、犬が激突した。
「嫌な真実を知るのは辛れぇし、逃げてぇってのも分かるけどな…向き合って初めて出来ることだってあんだよ」
 だからこそ、エリックは此処に居るのだ。
 
 己の求めていた物が、大事なモノを犠牲にしてまで、大事なモノから託されたがゆえに走り続けて今まさに手に入れようとした物が、その手から零れ落ちてしまう絶望。酒に逃げることだって出来ただろうし、眼をそむけて腐る事だって出来ただろう。
 それでも、エリックは今此処に立っている。人の顔は捨てたけれど、それでも。
 
 過去に向き合ったものと過去に向き合わない者。その差は、激突する群の趨勢にも顕れていた。鮫の群れが、犬の群れを駆逐してゆく。
「だからお前も!自分を見据えろ!」
 おまわりさんは、優しかった。
「どうでもいいわぁ!!!」
 女は、無慈悲だった。
 
 犬の群は、鮫が殆ど請け負っていたとはいえ、群れの中を突破する以上、サリアだって迫り来る群を倒す必要がある。爪で引き裂く。屍狼が噛み千切る。
 そうして女は血に染まって、犬の群を突破した。
「フッー!!!」
 『あられ』が、威嚇する。
 まるで『あの日』の夜のよう。血に染まった女が、最大級の警戒を以て女を見据える大猫に対して、艶やかに笑った。

「そもそも、よ」
 サリアの乗る屍狼と、『あられ』どちらも地に伏せ、お互いとびかかる一歩手前だ。
「主人に対して不忠なんじゃないのぉ?」
 ニィ、紅が弧を描く。
「主人を置いて、自分のした事も忘れてこんなことをしてる時点で」
「……!」
 動き出しは、『あられ』の方が一瞬早かった。怒りに駆られた『あられ』の方が、より早くとびかかる。

「あらあら」
 だから、カウンターも綺麗に決まった。屍狼は地に伏せたまま、短く低く、前に飛んだ。そうすれば飛び掛かってくる大ぶりな攻撃は避けるのは容易で、それどころか、
「単純ねぇ」
 ゾブリ、と鈍い音がして、猫の腹が大きく切り裂かれる。
 そしてそのまま着地に失敗した『あられ』は、これは叶わぬと逃げ出した。
「目が曇ってると、大変ねェ」
 こんな事にもひっかるなんてと女は笑う。後は、他の仲間に任せよう。空を見れば月は蒼い。
「ああ、嫌だわ」
 気分はやっぱり落ち着かない。けれど、忘れているよりはずぅっと良かったと、女は深く、息を吐いた。


 

 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

稲宮・桐葉
あられよ…
それは『喰らった』のではなく『託された』のではないかえ?

ご主人の今際をわらわは知らぬ
じゃが、ご主人は今際の際にそなたと共に在る事を望んだ…
そなたを愛しておったからじゃろう
故に、そなたが何もしておらぬのに、そなたの中に入った…わらわにはそう思えるのじゃ

そなたの行いはご主人を慕うがゆえなのじゃろう?
案ずるでない
ご主人の魂は、しかとそなたが受け継いでおる
ご主人を必死で黄泉返らせようとする優しいそなたがの

そなたが慕い続ける限りご主人は、そなたの内で生き続けるのじゃ
じゃから…最後の最後まで、そなたを想い託された優しい魂、無為にするでないぞ

攻むるのは心が痛むのう…
じゃが、やるべきことはやらねばな


神元・眞白
【SPD/割と自由に】
誰にも、何にでも終わりはあるもの。それが無理でも道理でも。
それでも、いつまでも繰り返してはいられない。前を向くしか。
……そう、それがあの子と私の違い。受け入れる気持ちの違い。

人形に魂はある……けれど、誰かにあげられるものじゃなさそう。
ごめんなさい。きっと今の私はあなたを満足させられない。
だから、1人じゃなくて2人、3人でお相手します。私は、人形士だから。

魅医。あなたはあの時にいたけど、いなかった子。
必要なのはあの猫さんの心を癒す事。倒すだけ、帰すだけが方法じゃない。
私もできた事。きっと新しい希望を持てればあの猫もきっと。
大変だけれど今度は誰かに希望を与えないと。繋ぐために



「来よったのぅ」
「そうですね」
 傷付き、こちらへ逃げて来た『あられ』を目にとめて、稲宮・桐葉と神元・眞白は互いに言葉を掛けて、お互いにするべきことを成す為に動いた。
 即ち、
 眞白は一歩前へ。そして桐葉は一歩後ろへ。

『にぃあ。にゃあ。……どうか』
 《あなたのいのちをちょうだい?》猫が問いかけてくる。言葉と共に、顕れたるは、男が二人。
 年老いた男と年若い男。
 『師』と『マスター』。それぞれが桐葉と眞白にとって大事な。人。召喚されたそれは確かにまがい物だけれども、見知った顔と見知った声に見知った口調で、『いのちをちょうだい』と語り替え、襲い掛かってくる。

「ハハハ、まさかここでまやかしとはいえ師越えとはのぅ!『あられ』は任せたぞ!眞白!」
「分かりました」
 そう言って桐葉は楽し気に弦を引き絞った。迫り来る二人に対して、矢が一矢、放たれた。
 『師』と『マスター』の丁度中間点に放たれたそれはどう考えても当たるものではない。その筈なのに、『師』が前に出て、
『我が弓より放たれし矢から逃れる術無し!』
 『呪詞/ことば』と共に、弓矢が無数に分裂してゆく。《降神弓術 ~神懸かりの矢~》だ。分裂した矢はめいめい好きな方向に飛んでいくのではなく、念動によって操られ、『師』と『マスター』目掛けて進んでゆく。
 そうしてそれを、
「やはりのぅ!」
 『師』はこともなげに打ち払ってゆく。当然だ。こういった業は師から学んだのだ。
 ただ、
「そのUCがわらわの記憶の中にある『師』を再現するというのなら……」
 こともなげに打ち払っていた筈の『師』の動きが鈍る。だんだんと、矢が当たってゆく。
「当然じゃ、わらわが師の全てを知っているなど烏滸がましい」
 その上、
「わらわもまた、『師が知っておる時』よりも成長しておるからな?」

 一本、『師』が膝に矢を受けて明確に動きが鈍る。それを見て、眞白が動いた。
「飛威、魅医」
 言葉と共に金色の符、その内『鎧に身を包んだ騎士』と『弓を携行した遊撃手』が描かれたが放たれて、そこから侍女服に身を包んだ黒髪の淑女と、こちらもまた侍女服に身を包んだ茶色の髪の少女が現れる。
 膝に矢を受けた事で動きが止まった『師』の横をすり抜けてゆく。
 そうすれば当然、眞白を阻むのは『マスター』だ。
 ならば当然、眞白の戦術器の特性は知り尽くしている。なぜなら、未だ眞白は自立する人形の未完成品までしか作れないからだ。飛威も魅医もまた、『マスター』作品ゆえに。

「……!」
「そうでしょうね」
 だから、驚愕した。『魅医』いや、かつて違う名を持っていた戦術器は、射撃戦闘役だった筈。だから飛威と魅医の組み合わせあれば、近接戦闘用の飛威が前に出て、魅医は後ろから援護するのが一番の筈なのに、実際懐に飛び込んできたのは魅医だった。
 思わず応戦するも、魅医は目がいい。難なく避けて、大ぶりになって隙が出来た所に飛威のナイフが襲い掛かる。しかしそれは見慣れた動きだ。いなし、攻撃。核を直接破壊出来ずとも、壊せば一時的にでも行動不能に出来る場所は心得ている。
 過たずそこを穿ち、飛威から力が抜けた瞬間、

「飛威!」
「お願いします」
 『マスター』の攻撃を掻い潜って魅医がその体に触れ、眞白から得た癒しの力が飛威を癒し、体に力が戻る。想定していない。動き。
 大きく隙の出来た『マスター』はそのまま、飛威のナイフを諸に喰らって、露と消えた。
 その横を通り過ぎ、眞白は『あられ』を見据える。
「ごめんなさい。きっと今の私はあなたを満足させられない」
 『人形/この身』にも、魂はどうやらあるらしい。けれどそれは誰かにあげられるものじゃなさそうだ。

「あられよ…それは『喰らった』のではなく『託された』のではないかえ?」 
 己が『師』に矢の雨を降らせ、その存在を露と消しながら、桐葉が声をかける。
 血に塗れた大猫は、それでもわからぬ、とでも言うように警戒の声を上げた。
「誰にも、何にでも終わりはあるもの。それが無理でも道理でも。それでも、いつまでも繰り返してはいられない。前を向くしか。」
 だから、まずはそれを認めなさい、と眞白は言う。主の意志を代弁するかのように、飛威が『あられ』へと向かい、振り下ろされた血濡れの爪を防ぐ。
 そしてその懐に魅医が入ろうとして、

『フシャー!!』
 迎撃の爪。そしてそれを弾いたのは、桐葉の矢だった。
(攻むるのは心が痛むのう…じゃが、やるべきことはやらねばな) 
 純粋な桐葉の感情だった。しかし今回は、眞白が居る。だから心も楽だ。なおも威嚇する『あられ』へと向かって、優しく言葉をかける。
「ご主人の今際をわらわは知らぬ。じゃが、ご主人は今際の際にそなたと共に在る事を望んだ…そなたを愛しておったからじゃろう。故に、そなたが何もしておらぬのに、そなたの中に入った…わらわにはそう思えるのじゃ」
 自分の中に『ごしゅじんさま』が居る。それこそを認めたくが無いゆえに、大猫は暴れる。

「受け入れて」
 攻撃をいなす飛威と、どうにかその隙に『あられ』へと触れようとする魅医をサポートしながら、眞白は短く『あられ』へと声をかけた。
 そう、それがきっと自分と『あられ』の違いなのだ。
「そなたの行いはご主人を慕うがゆえなのじゃろう?案ずる出ない。ご主人を必死で蘇らそうとするそなたの優しさの中に、ご主人の魂はしかと受け継がれておる。そなたが慕い続ける限りご主人は、そなたの内で生き続けるのじゃ」
 その言葉に、大猫の爪が、一瞬惑った。
 明白な隙を魅医の瞳は逃さない。『あられ』の体に、触れて、

「そう。だからこそ、癒されて欲しい」
 癒しの力が、『あられ』に注がれている。
「最後の最後まで、そなたを想い託された優しい魂、無為にするでないぞ」
 優しく桐葉が言葉を掛ける。眞白が額に汗して、力を魅医へと注ぎ、それを魅医が癒しの力へと変換し、『あられ』へと送り込まれてゆく。
 癒すのは、心だ。傷ついた心が癒され、浄化されてゆく。それはつまり、鎮魂の儀式の代行で。
(大変だけれど今度は誰かに希望を与えないと。繋ぐために)
 眞白は、儀式の代行を、勤めきった。

 眼前に存在した『あられ』の体が完全に消えて、眞白がその場に座り込み、
「大丈夫かのう!?」
 桐葉が駆け寄る。眞白はコクリと頷き一つ。そのうえで周囲を見渡しても、オブリビオンの気配は消えていない。きっと、『あられ』は偏在しているのだろう。残りの『あられ』は他の猟兵がどうにかしてくれることを願って、二人は人並み去った事実に、深く息を一つついた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
なんとも悲し気な鳴き声よな
この声の主があやつということか

喰ろうた主を求め、悲しみに沈む声
憐れ……犯した罪も忘れ、癒えぬ痛みに泣いておる
もう泣くのも疲れたろう

遵殿、もう動けるかな?
――往くぞ

視力にて攻撃をなるべく回避
肉球を受けてしまおうとも、俺の理想の世界の末が今なのだ
閉じ込められようとも道は今に至る
遵殿が狙われた際は攻撃を仕掛けて妨害しよう

主が何故お前に与えたのか
何故、お前の中に存在するのか

これより神罰を下す
裁くのは忘れた罪のみ
今度からは主の魂と共に生きよ
……消えてしまうのは、余りにも惜しい

破魔の力を込めた神器解放、白猫へと放つ
彼の言うように過去だけでなく未来も見るといい
主と共に、な


霞末・遵
【幽蜻蛉】
ひとが死ぬのに理由なんてないんだけどね
どうしたものかな。おじさん困っちゃうよ
困って動けないから後は頼みましたよ。なんて言えたらなあ

おっと大きな生き物に触られるのは勘弁
おじさんも覚えてるから避けたくなっちゃうんだ
過去は役立てるものであって嘆くものじゃない
失敗あればこその発明だからね

ところでこれは未知のガジェットなんだけど
こういうのを見てるとやっぱり過去より未来だと思わないかい!
知らないものはいつだってわくわくするな!

猫君も知らないものを探してみたらどうだい
死んでしまったご主人様の気持ち、同じく死んだ身なら聞けるかもしれないよ
魂は一緒にあるんだろう。何事も試してみたらいいんじゃないかな



「遵殿、もう動けるかな?」
――往くぞ。


 偉丈夫が、鈴久名・惟継が傍らに座る霞末・遵へと言葉を掛ける。
「ハハハ」
(困って動けないから後は頼みましたよ)
「なんて言えたらなぁ」
 そう独り言ちて、白髪痩身の男もまた、『あられ』へと対峙した。

(大きな生き物に触られるのは勘弁なんだけど)
 過去を思い出すからだ。そしてそのような事、隣の竜神殿は勘案する訳もないのだ。

 だから二人、駆けだした。

 肉球が迫る。
「ハハハ!動けると言えど得て増えてはあるか!」
 迫る巨体に対する遵の恐怖など勘案しない竜神様であろうとて、事実として共に並び戦う遵の体が震え、止まるのであればそこには対処する。
 即ち、前衛が惟継で、後衛が遵だ。そうなると【理想の世界に対象を閉じ込める肉球】を惟継が受ける事となり、

「笑止!」
 パァン!理想の世界がはじけた。
「そも、この世界が俺の理想の涯よ!ならば今あるがままを視ずして何とする!」
 そして振るうは天時雨。鋭き刃がその身を割こうとすれば、当然猫も大きく飛び退って避ける。
 一旦仕切り直し。お互い睨みあって時が過ぎる。
『にぃあ。にゃあ』
 《いのちをちょうだい》と猫が鳴いた。
「悲しき鳴き声よな」
 犯した罪も忘れ、癒えぬ痛みに泣いていうというその事実に、惟次はただただ、憐れみを感じた。
「かたじけない」
 そしてその惟次の背にて、何やら準備していた遵が、声をかける。
「いいや。良い。それより、良いか?」
「勿論」

 言葉と共に、再び惟継が向かっていった。 
 先ほどの焼き直しだ。肉球が迫り、惟継が受ける。しかしそこからもう一歩。
「過去は役立てるものであって嘆くものじゃない」
 惟継の背後に居た遵が何かを『あられ』に放り投げた。
「失敗あればこその発明だからね」
 《ガジェットショータイム》が発動する。そうして『あられ』の前に現れたのは、

「ハハハ!ほら、凄いじゃないかこれ!いやまったく新しいというか変だね!」
「カカ!これはそりゃそうじゃろうな!猫だからのう!」
 巨大なメカニカル猫じゃらしだった。
『にぃや!?』
 骸魂は、今のその姿になってからついぞ触った事のない、楽しんだ事の無かったそれに目が惹きつけられる。思わず前足でパシリ、パシリとそれを追いかけて。
「こういうのを見てるとやっぱり過去より未来だ!」
「どんな未来か分かったもんじゃないがのぅ!」
「それでも知らないものはいつだってわくわくするでしょうよ!」
「確かにな!それを求めて、俺達も戦ったものだ!」
 そう言いながら、こちらから完全に注意がそれた状態を隙とみて、惟継が天時雨をどてっぱらに叩き込んだ。

 肉を引き裂く感触。血を流しながら、『あられ』が倒れる。ダメージが大きいのだろう。立ち上がるも、しずしずと近寄ってくる惟継に威嚇するばかりだ。
「これより神罰を下す」
 血を払い、天時雨を納刀する。
「裁くのは忘れた罪のみ」
 今この一太刀にて、思い知らしめよう。主が何故お前に与えたのか。何故、お前の中に存在するのかを。

「君も未知を探してみるといい」
 ガジェットをしまい込みながら、優しく遵が語り掛けた。
「死んでしまったご主人様の気持ち、同じく死んだ身なら聞けるかもしれないよ」
 優しく語りかけるその言葉は事実なのだろう。けれど、それでも知りたくない、とでもいうかのように、じりじり、じりじりと下がってゆく。
 苦笑。まぁ、そうか。そういうものだ。ひとが死ぬのに理由なんてない。幸せにベットの上で死ぬか、コンクリートの上で干からびて死ぬか、物も喰えずに飢えて死ぬか、それとも誰かのいたずらで死ぬか。
 死ぬのに理由なんてないのだ。ただそこに痛みと恐怖以外の何かがあるとするならば……
「魂は一緒にあるんだろう。何事も試してみたらいいんじゃないかな」
 なんと幸運なのだろう。エールを、遵は放った。

 そしてそれを、哀れにも皮肉と受け取ったのだろうか。『あられ』が怒りに任せて惟継へととびかかる。
「分からぬか。致し方なし。彼の言うように過去だけでなく未来も見るといい」
 悲劇にて、主の魂を喰らう事になった猫へと、天時雨は真の姿を見せる。
 即ち、

《神器解放》

 シャン、と音がなった。一太刀にて、切り捨てる。
「……消えてしまうのは、余りにも惜しい」
 故に神性が齎したのは骸の海へと還す滅びではなく、浄化するという救い。
「主と共に、未来を探すがよい」
 消えゆく猫を背に、静かに惟継は宣言した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シズル・ゴッズフォート
……私は、かつて見たくないものを直視し、その結果自暴自棄になりました
そんな私を引き止め、"在るが儘"を受け入れさせてくれた人が
……今、貴方が召喚したヒトです

あのヒトのように上手くやれる自信はありません
未だ研鑽途上の身。未熟は承知の上ですから

―――ですが。何もしない理由にはなりませんとも!

■SPD
楯と騎士刀の●武器/楯受けでの防御中心が基本戦術
多少の傷や痛みは●激痛耐性で無視


目を逸らすなとは言いませんとも
ですが、そうして目を逸らし続けて
……命まで差し出した貴方のご主人は、報われますか?

その方について私が何を言える訳でもありません
ですから貴方自身が考えるべきです
辛くとも、貴方とご主人の為にも


節原・美愛
目には目を、歯には歯を。猫には猫を…ってわけじゃないけど。
"猫の第六感"で勝負!
私の知り合いなら大抵力比べは好きなはずだし。普通に殴り合える…と思う…。

※説得
いつか再開するために、今はご主人様を弔ってあげよう?
辛いことだとは思うけど…今のままじゃ、きっと会えずじまいになっちゃうから。

それにほら、もうすぐお盆だし。
ひょっこり帰ってきてくれるんじゃないかな。
ずっとは一緒にいられなくても、きっと毎年、あなたに会いに来てくれるわよ。

魂を無事に解放出来たら、見送りに三味線でも弾いてあげようかな。
同じ猫の誼で、"猫三味線"も狂気の呪詛を控えてくれるでしょ、多分。



「それで、あれは”誰”なのさ」
 『あられ』に対峙する二つの影。風来坊然とした姿。節原・美愛に佇む、シズル・ゴッズフォートに問いかけた。
 『あられ』の前に佇み、こちらに刃を向けるのは、明らかに美愛が知らぬ『誰か』だ。そしてその誰かが、
「さぁ、命をくださいませんか?」
 深い紫色の裡に桜を湛えた髪がさらり、と流れる。豪奢な、それでいて花魁のように、誘うように大きく開いて着物を纏った、羅刹の女。 

 その圧に厳しい表情を向ける美愛の言葉に、シズルはコクリと一つ。頷いた。
「自棄になった私の”有るが儘”を受け容れてくれた方です」
「はっ!それは皮肉なものねぇ」
 いまだ己のあるが儘を見据える事の出来ない『あられ』が呼びだすには。
 スルリ、〈妖刀『三味線(偽)』〉抜く。こちらが剣先を抜けば、あちらもまたこちらに剣を構える。
 大太刀と妖刀がにらみ合う。
 ちら、と美愛は『あられ』へと意識を向けた。
(動かない?)
 いや違う。目の前に召喚されたその存在に、己の力の全てを注いでいるのだ。
(つまり目の前のコイツは……)
 ちら、と逸らした意識を目の前の女へ向けた。

「御首、馳走くださいませ」
 いつの間にか眼前で、鞘に納めた大太刀が今この場で振るわれようとしている。
(はやっ!?)
 ぞっとした。首周りに、ひやりとした感覚が奔る。《猫の第六感》が無ければ、反応すらできなかっただろう。
「えい」
 軽い言葉で刃が振るわれる。雷速の太刀。
(おも!?) 
 どうにか逸らした。体が沈む。明らかに隙だ。
「えい」
 またもや可愛らしい声。刺突が、奔り……
「節原殿!」
 そこでやっと、シズルの反応が間に合った。美愛と突きの間に、盾とシズルの体が挟まる。
 激音。
 二人して吹き飛ばされて、どうにかそれぞれで着地を取る。

「あら、『いのちをくださいませ?』」
 それを追撃してくるつもりはないらしい、羅刹の女は、悠然とその場に太刀、刃を振るった。その切っ先に、血がついていたらしい。
 その様を見て、無意識に美愛が頬に触る。僅かに切られていた。
「はは……おいおい。あれ本当に同業者か?」
 明らかに『練度/レベル』が違うその様に、どこか震えた声で美愛がシズルに聞いた。
「いえ。盾で受け止めたこの感触。確かにお強い方でしたがここまででは……」
 厳しい声でシズルが応えれば、
「成程つまり、あれだな?『あられ』の力も加わってると」
「そういう事かと」
 勿論、羅刹の女自体が『あられ』の召喚物だ、『あられ』と『羅刹の女』を足して2という事は無いだろう。現にあられはその場で動けないというのもある。
「よし!それじゃあ守りは任せたわ」
「承知しました。騎士の誇りを御覧に入れようとはいえ……」
 ニヤリと獣じみた笑みをシズルが浮かべる。
「蜂の一指しくらいは刺してごらんに入れよう」
「上等!」
 そうして二人は再び駆けだした。

「えい」
 軽い言葉で放たれた斬撃を、シズルが受け止める。
「ぐぅ!」
 羅刹の膂力に骸魂の力が加わったそれに思わず声が漏れる。けれどそれだけの価値はあった。
「そら!」
 大きく隙が出来た。がら空きになった胴へ鋭い美愛の太刀筋が迫り、大きく切り裂く。それでも骸魂に召喚された羅刹は血を流すことなく、とどまる事無く稼働する。
 シズルに防がれた大太刀を戻し、再び振るう。速く、重い。
 それでも、
「防げぬ訳では!」
 それこそ癖も太刀筋も何もかも、シズルの記憶から呼び起こされているものなら、シズルの防げぬ道理はなし。当初こそその増した力に戸惑ったが、慣れればなんという事は無い。これ以上の力と速さを、シズルは防いできたのだ。

 美愛の《猫の第六感》の攻めにシズルの防御。趨勢は決していた。
「そこ!」
 ついに美愛が足の一方を切り落とし、踏ん張れなくなったところを、
「受けたものはお返ししましょう!」
 【神塞流陸殲術・防楯の型 悪果応報撃/カルマフォース・ブレイク】が炸裂した。
 その一撃を受けて、記憶から再現された羅刹の女は消え去る。
 この戦いにおいて受けたエネルギーの何割かを放つそれは、シズルを後ろに吹き飛ばし、羅刹の女を吹き飛ばし、それと同時、美愛を前へ進ませる原動力となった。
「……!」
 次の行動をとらせない。UCで消耗していたせいもあるのだろう。『あられ』その一撃を避ける事も出来ずに、両断された。

 ピッと刀を振るって鞘にしまいながら、コチラへと向かってくるシズルに向かって、美愛は静かに声をかけた。
「終わったよ」
「そう、ですか」
 消えゆく大猫の瞳をよく見る為に、シズルがしゃがみこみ、静かに声をかける。
「目を逸らすなとは言いませんとも」
 目を逸らし続けた先達として、それを否定する事など出来はしない。
 けれども、
「そうして目を逸らし続けて……命まで差し出した貴方のご主人は、報われますか?」
『にぃや』
 たしかな感情のこもった言葉に、猫は唯鳴いて応えるのみだ。

 シズルの言葉を受けて鳴く猫に背を向けて、美愛は三味線となった己の妖刀をかき鳴らす。いつもは狂気へと誘うその調べも、今日ばかりは猫のよしみか、切なく、優しい響きだ。
「大丈夫だよ。必ず再開できるさ」
 ポツリと、言葉を漏らす。
「ほら、そろそろお盆だっていうしさ、きっとひょっこり帰ってくるって。ずっと一緒にいられなくたって、貴方に合いに来てくれるから」
 だから今は、安らかになりましょう?女の奏でる音は、そのように告げるかのようだった。
「そういう事もあるでしょう。しかしそれは、貴方次第」
 三味線の音を背にして、今一度、シズルは祈る。
「貴方自身が考えるべきです。何を考え、何を祈るか。辛くとも、貴方とご主人の為にも」
 その先に、幸せがある事を祈って。
 祈りが通じたのだろうか。美愛に致命傷を受けてから、その存在を薄めさせていた猫が一鳴き、消え去っていった。
 後には何も、残らなかった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ブルース・カルカロドン
肉球で触られて
理想の世界(過去の撮影現場)に閉じ込められた
巨大化したのは失敗だったなぁ……

脱出禁止のルール課されたし
幻のソニアの無茶振りで死にかけるし
困ったもんだ

けれど、まあ
別に脱出する必要もない

牙は無理でも言葉が届くなら
役者にとっては十分過ぎる

「ねえ、あられ」

笑うソニアに背を向けて
世界の向こう側に目を向けて
ボクを観ているであろう、あられに問いかける

「キミのたいせつなヒトはサイゴになにをおもったのかな?」

ボクの大切な人はボクに前を向いてほしかったようだけれど
キミの大切な人はどうなのかな?

嫌なものから目を背けていたら
いつか大切なものまで見失うよ

そうなる前に拾い上げろ
それが残されたものの責任だ


伊達・クラウディア
アドリブ・連携歓迎。

迷宮はなかなかの難敵でしたが、無事辿り着きました。
さぁ、あられ殿。次は貴殿が過去を受け入れる番です。

今も嘆き、苦しんでいるのかもしれません。しかし、何故主人が死んだのか、何故喰らってしまったのか。
過去を思い出し受け入れなければ、真の意味で主人のために悲しむことも、泣くことすらできません。
そして、悲しみばかりに目を奪われるべきでない。主人との良き思い出も多くあったはず。
それら良きも悪しきも全て抱えていくことが主人への手向けになるでしょう。

目を逸らすのはもう終わりです!剣豪パンチ!

【大倶利伽羅広光】で思いっきりぶん殴ります!



(ああ、これは、サワられたなぁ)
 そこがどこであるかを自覚して、ふわりと、ブルース・カルカロドンはそう思った。
 かつての情景。
 巨大化した己の体。
 脱出禁止のルールの中、悪の映画会社の首領であるソニアの無茶ぶりで死にかける日々。
(コマったもんだ)
 これでは牙も届かない。

 けど、

「ねぇ、あられ」
 あの日々の象徴のように、大笑いで無茶ぶりをかましてくるかつての首領に背を向けて、今ある現実へと目を向けて。
 役者は己の言葉を届ける。
「キミのたいせつなヒトはサイゴになにをおもったのかな?」
 ボクの大切な人は、ボクに命をくれた人は、ボクに前を向いてほしかったようだけれど。
 キミの大切な人はどうなのかな?

「イヤなものからメをソムけていたら」
 大切なものまで、見失う。だから目を凝らすのだ。
 そうすればほら、理想の世界は解けて行って……


「大丈夫ですかブルース殿!」
 そうして少女の声で、ブルースの意識は現世に復帰した。
 《サメ映画のサメ》でで巨大化した自分の背には、かつて乗せた女とは似つかわしくない少女が乗っている。
 しかも巨大化した己に負けないシルエットだ。別に少女自体が大きいわけじゃない。ただ、〈梵天丸〉を纏った伊達・クラウディアがそれだけシルエットが大きくなっているだけという事。
「一旦『あられ』と接敵して肉球を喰らったと思ったらこっちの呼びかけに応えなくなって!それでも体は動くからどうにかこうにか手綱を握った訳ですが!」

「ああ、すまない。スコしムービースターになっていた」
「ムービースター!?」
 古書店を偶々同じタイミングで出て、偶々『あられ』に対峙して、今。まだ相手にはダメージを与えてすらいないのだ。
「ところで怪我はありませんか?」
「モチロン。ダイジョブだよ……さて、『あられ』。ヒロいアげろ。それがノコされたもののセキニンだ」
 今までの能天気な雰囲気から、鋭い言葉がブルースから飛び出し、クラウディアもまた、『あられ』へと目を向ける。

「さぁ、あられ殿。次は貴殿が過去を受け入れる番です」
 己でありながら、己でない者の記憶を抱きしめて、クラウディアは叫ぶ。

≪独眼竜、起動。〈大倶利伽羅広光〉接続完了≫
 クラウディアの腕を覆う装甲が、ブースター付き打撃用ガントレットを接続される。

「今も嘆き、苦しんでいるのかもしれません。しかし!」
≪……機能拡張。〈大倶利伽羅広光〉ブースター点火≫
 ブースターが火を吹き、

「アブらないでくれるとウレしいな!!!」
 肉球を避けながら突進のタイミングを計るカルカロドンが叫ぶ。
 火が僅かにカルカロドンの表層に触っっていた。慌てて大きく拳を振りかぶるような体制を取り、
「失礼!……しかし、何故主人が死んだのか、何故喰らってしまったのか。過去を思い出し受け入れなければ、真の意味で主人のために悲しむことも、泣くことすらできません!!」

≪剣豪掌撃、承認≫
「そして悲しき想い出に覆い尽くされて見えなくなった、良き想い出にも目を向けるのです!」
「ヨくイった!マワるよ!」
 概ね猫の動きは見切った。だからこそ地上を泳ぐサメの動きも鋭くなる。飛び跳ねて横回転から尻尾を振って方向を転換、大ぶりの肉球を振り下ろして隙が出来た『あられ』に対峙する形になって、
「カみつくよ!」
「承知!」

≪あなたの拳は、過たず穿つでしょう―――≫
「良きも悪しきもすべて抱え込み、天に昇ってゆくといい!それこそがご主人様への手向けとなりましょう!」
 片手でブルースにしがみ付き、体を半身にして拳を叩き込む態勢になって、

「この胸に折れぬ刃あれば、拳も銃もビームもすべて刃なり!而してこれ即ち剣豪の業!『剣豪掌撃/剣豪パンチ』です!」
「ムチャクチャだね!」
「地上を泳ぐサメに言われたくないですがー!?」
「ハハ、イくよ!」
 地上を泳ぐサメが、強く、強くその尾を地面にたたきつけ、跳ね飛ぶ。
 今まさに飛び上がらんとしていた『あられ』に先んじて、鮫の強襲が襲い掛かった。

 ガブリ。そんな戯画的な音を立てて、刃揃った咢が大猫の肩へと食らいつく。そうしたなら丁度、振りかぶった『あられ』の眼前には、クラウディアのガントレットが、
「目を逸らすのは、もう終わりです!」
 叩き込まれた。

 不思議と、叩き込んだ腕にも、噛み千切ったブルースの咢にも、血も、肉の感触もなかった。ただ、綿あめのように、霧のように、ふわふわと、消えてゆく。
 見れば、吹き飛ばされた『あられ』もまた、同様に。
『にぃや。にゃあ』
 どこか、求めるように。けれど、安らかに、猫が鳴く。
 鳴いて、そして、チリンと鈴の音を立てて、消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九頭竜・聖
理想の世界、きっとそれはわたくしめにとって優しい世界なのでございましょう
ですが、それはわたくしめの生前となんの違いがありましょうか?
わたくしめはわたくしめに優しくしてくれた世界に報いるために身を捧げたのです
……その最期は決して誇れる、正しき在り様ではございませんでしたが
なればこそ此度は迷うことなく、再び身を捧げましょう

……なによりも今のあなた様をそのままにしておくのは偲びない
怨霊たる我が身が語るのは間違いやもしれませぬが、過去が未来を苦しめるなどあってはならぬのでございますから

彼の者の嘆きも苦しみも……その魂も
再び骸の海へと返して差し上げてくださいませ……高龗様

跪き、龍神様へと【祈り】ます


兎乃・零時
アドリブ絡み歓迎


…俺にも忘れた過去はあった
でもそれが合ったから此奴がいる


だから逸らしも忘れても
『過去』の先の『今/骸魂』がある

食った事は…変えられねぇ過去だ

…ただ、過去を見つめ直してそれをどう受け取るかは…お前次第だ

そーゆうの無理か?
受け入れられないか?
…だろうな

だから決めた
お前が過去を受け入れて落ち着くまで
ずっと!
俺様が!
攻撃喰らってでも傍に居てやる!
泣きたくなるような辛い事だけど!
認めないとお前が先に進めない!

だから!
まずは向き合え!
苦しかろうと!
前でも後ろで進まなくっちゃ始まらないんだから!!

召喚された奴のは光の魔力で【オーラ防御】!
攻撃は【激痛耐性×気合】で耐える

大事な…?…友達とか?



「ああ……」
 そこは、理想の世界だった。九頭竜・聖は静かに息を吐いた。どうやら『あられ』の肉球に触れられたらしい。頬が、少し痛む。それ以外はいつもの己で、そしてそこは、かつての場所だった。
 かつての村。聖の世界そのもの。誰もがたおやかな黒い髪をさらさらと流し、農業なんて一切した事のない綺麗な手を、その白い肌を、美しい顔を褒めたたえ、優しくしてくれる。
 それは即ち、

「かつてと、何の違いがありましょう」
 そう、何の才もない、ただ見てくれだけが良かった自分が、優しくされた。もしかするとその背後には初めから粘着くような後ろ暗い悪意や、打算があったのかもしれない。けれども、聖は綺麗なモノしか見ていないし、聖自体、綺麗なモノであった。
 だから、あの優しさに報いる為に。
 それでも、聖の人間としての部分が、醜くも晩節を穢し、正しくない在り様を披露してしまったが、ヒトとしての肉を捨てた妖怪のこの身となればこそ、汚名を雪ぐには相応しかろう。

『おいでませ、おいでませ』
 優しい場所で、理想の世界で、巫女が奉る。
(ああ……)
 それでも、此処は本当に優しい場所だった。何せ、傍らには、周囲には村人たちが居る。己をささげる場所を見てくれる。

『偉大なる黒の龍神様』
(聖は、聖は……)
 その御名前は『高龗』。迦具土神を斬った御刀の手上の血にて成りし神の写しなり。
 されば昏きを此処に、顕す。

『彼の者を御身の権能にて覆い給え』
(皆の役に、立てたでしょうか?)
 生贄となった事で、村はより豊かになっただろうか。己一人に向けられた笑みを、人々は互いに向ける事が出来るようになっただろうか。
 そればかりが、気掛かりで。でも、今は何より、
『我が身が語るのはお門違いかもしれませぬが、過去が未来を苦しめるなどあってはならぬのでございますから―――成りました。おいでませ、高龗』


―――【肆之龍・高龗/ヨンノリュウ・タカオカミ】、冥昏抱擁―――

 闇が、噴き出る。そうすれば理想の世界はすぐさま消し飛んで、

「うおおおお!?!?!?!?なんじゃこりゃああ!?!?!?」
「え!?」
 少年の声に、聖は初めてどうやら己のほかに誰かが居た事に気付いた。
 けれどどうしようもない。闇は、既に聖の眼前を覆い尽くして、
「あ!これ!あれだな!俺様以外のやつのUCだな!?確かになんか半球形あったけど、自力で出られたみたいだな。良かった!」
 闇の先から、声がする。けれど、見える筈もない。だって闇は、総てを覆い隠すから。

「うおおおお!!??『あられ』の体が半透明になってくぞ!?あ!これ闇!闇のせいか!?いやそれは正しい正しいけど、いいのか『あられ』!?もう満足か?前は向けるか?いいのか!?ってあっこらまてそっち行くな!!」
 少年の声が焦った声をあげ、聖は、大きな気配を感じた。きっと、『あられ』のものだろう。なるほど、どうやら神の齎した暗闇は、『あられ』を食い切ってないらしい。
 本当ならば逃げるべきだが、神に体を明け渡したこの身では、避ける事能わず、ただ受け入れるしかない。

 闇を引き裂いて、白い大猫が現れる。肉球が迫る。いや、爪だ。先ほどのようなUCに取り込むためではないそれ、ああ。そっちの方が聖には辛い。
(痛い、のでしょうか?)
 この体は、どうなのだろう。ただ祈る乙女はそのままの姿勢で受け入れようとして、
「間に合った!!!」
 輝く少年を見た。

「ヒー!?オーラがガリって削れた!ガリって削れた!……ああもう!パル!」
 宝石のように光り輝く少年が、鋭く声をあげれば、〈式紙パル〉が魔力攻撃で一旦『あられ』を後ずさりさせる。
 その隙に後ろに振り返り、
「大丈夫か!?」
 涙でぐしゃぐしゃになって、引き攣った笑みを見せながら、兎乃・零時は九頭竜・聖を見た。

「……なぜ?泣いてるのですか?」
 なによりもそこが疑問だった。戦うのなら、泣くのは正しくないのでは?純粋な疑問。ある種の無垢ゆえに己の正しさにこだわる聖には、割らなかった。
「そりゃ俺様だって……!ふんッ!汗!汗だこれは!」 
 零時の目端からポロポロポロポロこぼれるクリスタリアンのそれは、まるで宝石のようで。
「綺麗な汗ですね」
「そ、そうだろう!綺麗だろう俺様の汗は!」
 当然汗などではない。嘘だった。

 受け止める。聖が理想の世界の閉じ込められて、祈り始めた後に『あられ』と接敵した零時は、それを決意した。
 己の忘れた過去にも意味があった。例え忘れようとも、過去は現在に結果として結実する。
 それは、あられも同じ。食った過去は変えられない。そうだとしても、それをどうとらえるかはあられ次第。それが辛くて出来ないのなら、出来るまで付き合おう。
 それがどれだけ『あられ』にとってつらかろうと。
 そういった内容を啖呵を切って宣言したはいいが、言うは易し行うは難し。
 
 《あなたのいのちをちょうだい》でパルがコピーされるは、それでも何とか防御し続けるは、ヒーヒー言いながら『あられ』の攻撃をひたすら受け止めていた。
そうして、気付けば闇が世界を包んで、その一瞬の隙を突かれて『あられ』が聖へと向かい、それを何とか防いで、今に至る。

「とりあえず、えっと、聖だよな?待っててくれ。『あられ』を受け止めてくる」
「高龗様は降りていらっしゃいます。ですからもう、『あられ』の苦しみも嘆きもその魂も、骸の海に還るのです。なのにわざわざ危険を冒してまで『あられ』の攻撃を受け止めるのは、正しい事ですか?」
「大切な事だと思う」
 『涙/汗』をボロボロ流していた少年はそれでも言い切って、聖へと背を向け、闇の中に消えた『あられ』を見据えた。
 闇は、猟兵を害するモノではない。だから不思議と、暗闇の中の『あられ』の位置も分かった。

 そうして振り返らず、少年は闇の中に消えていく。

 にぃあ。にゃあ。ねこがなく。
 どうして、どうして。かなしみはとめどない。だっていきていたくなかった。ごしゅじんさまのいのちなんて、ほしくはなかった。
 ぼくは、ぼくがいきるなら、ごしゅじんさまにいきていて、ほしかったのに。
 
 にぃあ。にゃあ。ねこがなく。
 しょうねんのさけびが、こころが、ねこにかこをおもいださせる。ああ、ああ!なんて、ざんこく。
 ねこのなきさけぶこえはひびきわたる。
 なきさけんで、やがてねこはねむくなってきた。

 ああ、ねむい。おもえば、こんなにないたのはどれだけひさしぶりだっただろう。きづいたら、むなにずっとあったいたみもきえていて
 
 疲れた猫は、やがて蹲って目を閉じた。辺りは闇だが、不思議と寒さはない。ただ揺籃のように暖かい暗闇が、猫を包んでいた。それはまるで生まれる前の子宮のようで。もしくは、かつての飼い主の腕の中のようで。
 目を閉じた猫は、そのまま骸の海へと、還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月31日
宿敵 『彷徨う白猫『あられ』』 を撃破!


挿絵イラスト