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終わりのない迷宮と学校の怪談

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●眠る学び舎
 きーんこーん、かんこーん……。
 夕暮れに鳴り響くのはかつては時を知らせた鐘。
 木造造りの校舎の一室、その教室の壁には日に焼け劣化した掲示物や習字などが貼り出されている。
『ありがとう! ◯◯小学校!』
 消えかけの文字が残されている黒板には、たくさんのこどもたちの寄せ書きが残されていた。
 そう、ここは廃校だ。かつて学び舎に通った子はひとりもいない。かわりにすみついたのは『学校の怪談』にまつわる妖怪たち。
 やがて日は暮れ――とっくに止まったはずの時計が3時を指して。
「さぁ! 私と遊びましょう!」
 校庭に降り立った狐狸の少女がにこりと笑うと、学び舎は瞬く間に巨大な迷宮と化し周囲のものを取り込みはじめたのだ。勢いは凄まじく、世界全てを飲み込むかのように。

●グリモアベースにて
「まぁそう言うわけで、周囲を取り込んで巨大な迷宮になった廃校舎にみんなには乗り込んで欲しいんだ。……うんごめん、深夜3時なんだ、ド深夜なんだ」
 グリモア猟兵アリステル・ブルーは申し訳なさそうに集まった猟兵たちに予知の内容を説明した。
「場所は最近見つかったカクリヨファンタズムなんだけどね。多分UDCアースの人とかは想像つくんじゃないかなぁ、朽ちかけた木造の廃校舎、そこが舞台」
 カクリヨファンタズムに、何故か最近この校舎が現れたらしい。最初は警戒していたものの危険性がないと判断したのか『学校の怪談』に由来する新しい妖怪に分類されるものたちが率先して住み着き出したようだ。
 そこまではよかった。
「そこにね。悪戯っ子な妖狐の女の子がやってきたんだ。学校って楽しいらしいもんね」
 きっと妖怪たちに悪戯をしかけて、きゃらきゃら笑ってはいおしまい! めでたしめでたし――そうなるはずだった物語は、悪辣な狸の骸魂があらわれたことで一変した。
 狸の骸魂は妖狐を飲み込むことでオブリビオン『狐狸』に変化を遂げたのだ。
「狐狸は化術を応用してね、校舎を大迷宮にしちゃったんだ。このまま放置すると迷宮、いや校舎かな? これがどんどん広がって世界が全部学校に飲み込まれてはい滅亡! みたいになっちゃうんだよね」
 軽いノリでカタストロフが起こるなんて困ったものだと付け足して、グリモア猟兵はいそいそと懐中電灯からカンテラ、ヘッドライトに浮遊する光源といったように色々な『灯り』を猟兵たちに差し出した。
「僕からお願いしたいのは、狐狸を退治して妖狐を救出することだよ」
 カクリヨのオブリビオンは骸魂が妖怪を飲み込んで発生する。つまり退治することで妖狐を救出できるのだ。
「僕の予知では、孤狸は校庭にいる。でもみんなを転送できるのは校舎内だけなんだ。迷宮内には『学校の怪談』にまつわる妖怪たちが閉じこめられている。彼らなら校庭への抜け道を知ってるはずだから、まずは彼らに接触して欲しい。校庭へ出たら当然敵も妨害を仕掛けて来るけど乗り越えて欲しい。その先に本命がいる」
 灯りを配り終えるとグリモア猟兵は転送の準備をはじめた。
「ほんとド深夜で申し訳ないんだけど……いってらっしゃい! 現地の事は任せました、どうか無事に帰還してください」
 消えゆく猟兵たちの背にその無事を祈った。


いつき
 閲覧ありがとうございます!
 はじめまして、新人MSです。皆様に楽しんでいただけるよう、精一杯努力いたします。
 戦闘より心情系が得意です。
 特にに明記がなければ、場所や流れ次第で連携やアドリブの可能性がございます。NGの場合指定頂けますと幸いです。

 その他連絡事項(キャパオーバー等)が発生した場合はMSページにてご連絡いたします。
 プレイング送信はお好きなタイミングでどうぞ!

●廃校舎について
 昭和〜平成初期の設備のある学校です。流石にPCルームなどハイテクな設備はありません。机や椅子、チョークなどの備品はそのまま残っています。
 迷宮化に伴い校舎は超強化されており窓ガラス1枚も割る事はできません。
 灯りは猟兵の皆様にお渡ししていますので、このシナリオでは特にプレイングに記載無くとも視界は良好、両手はフリーです。文字数節約にお使いくださいませ。逆に指定していただいてもかまいません。

●1章
 いわゆる『学校の怪談』関係の妖怪に接触してください。彼らに害意はなく『狐狸』に怯えています。接触時には防衛のため驚かせてくるかも…? ですが決して攻撃しては来ませんし、もちろん攻撃もしないであげてください。
 会いたい『学校の怪談』関係者がいればご指定くだされば、もしかしたら会えるかも?(不在だったりわからなかったらすみません)

●2章・3章
 妖怪たちの案内で校庭に出たところで戦闘です。
 集団戦→ボス戦の流れです。
 校舎内で利用できるものを使ったり、1章で妖怪たちに協力をとりつけたり、敵や妖狐に呼びかける等により戦闘が有利に進む事でプレイングボーナスがつきます。是非活用してみてください。

 それでは皆様、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『廃校舎の怪談』

POW   :    裏庭や体育館があるほうへ向かってみる

SPD   :    教室やトイレがあるほうへ向かってみる

WIZ   :    音楽室や理科室があるほうへ向かってみる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セレシェイラ・フロレセール
深夜3時の廃校舎、なにかが起こる予感しかないシチュエーションにワクワクしてしまう
はっ、いけないこれはお仕事
にょきっと出てきてしまった作家魂は一旦引っ込めて、と

学校の怪談は詳しくないんだよね
知ってるのは『音楽室のピアノ』くらいかな
誰かがピアノを弾いてるのか、ピアノ自体が怪異なのか
よし、音楽室に確かめに行ってみよう

音楽室のドアをドキドキしながらそうっと開けて
「誰か、いるの……?」
なーんだ誰もいないじゃない、空耳かなー
なにかされたら、にゃー!って盛大にびっくり
あなたがピアノを弾いてたの?
もう一回聴きたいな、とても上手だったよ

演奏を聴き終えたら抜け道も聞いてみよう
日常を取り戻してくるから、待っててね



●音楽室の怪談
 どこか遠くからポロンポロン……とピアノの音が聞こえる、

 灯りはあるとはいえ、この場所は深夜3時の廃校舎だ。今はかつての賑わいもなく、歩くのは桜を纏った少女ひとりのみ。
 小柄な彼女のふわふわと軽やかな足取りですら床は歩くだけでぎぃぎぃと鳴り、吹きつける風で窓硝子が時折がたがた音を立てた。
 なにかが起こる予感しかない。
 そんなシチュエーションに、少女――セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)はワクワクしてしまっていた。
 この後には一体何が起きるだろうか?
 例えばどこからか悲鳴があがったり、そこの暗がりから何かが飛び出してきたり――そう何も『怖いもの』が飛び出すとは限るまい。カクリヨファンタズムには数多の妖怪がいるのだから、なにか可愛らしい妖怪が姿を見せるかもしれない。
「はっ、いけないこれはお仕事」
 知らず弾むのは作家魂だ。桜の硝子ペンのヤドリガミである彼女にとって、何かを綴る事は大切な事である。しかし今はその時ではない。にょきっと出てきてしまったそれを惜しみながら一旦引っ込めて……彼女は歩みを止めて考えた。
 セレシェイラは学校の怪談は詳しくない。けれども『音楽室のピアノ』くらいならば知っている。
 ひとりでに曲を奏でだすピアノや、無人の部屋からピアノの音色が聞こえる、そういった話だ。誰かがピアノを弾いてるのかはたまたピアノ自体が怪異なのか……。
「よし、音楽室に確かめに行ってみよう」
 耳をすませば、今いる階より上からだろう、微かにピアノらしき音色が聞こえた。

 ポロン…ポロン…と奏でられている曲は、かの有名な作曲家のものだ。
「ここが音楽室か……」
 こちらに気付いているのか否か、未だ止まぬ演奏にセレシェイラは音楽室のドアをドキドキしながらそうっと開けた。
「誰か、いるの……?」
 ドアは古い校舎に反して静かに開いた。
 とたん途切れる音。
 月光が差し込む閉め切られた部屋の中、ピアノだけがぽつりと残されている。
「なーんだ誰もいないじゃない」
 空耳かなー。どうだろうか?
 桜色の瞳に映る室内はどう考えても無人だ、学校の怪談の通りに。
「さてどうしたものか」
 セレシェイラはそっとピアノのそばに近づいてみる。
 先程まで、まるで誰かが弾いていたかのように楽譜まで用意されている。ピアノ自体も良く手入れをされているようで、思わず綺麗な白黒の鍵盤に手を伸ばし――ひやり。
「にゃー!」
 と彼女は盛大な悲鳴をあげた、ついでに背後で似たような悲鳴がもうひとつ。
 首に残るひやりとした感触に振り返れば、セレシェイラ同じ背丈くらいの、西洋人形にも似た少女が目をまんまるにして「ごめんなさい」と口にする。
「おどろかせるつもりはなかったの」
 おずおずと少女が言うには、ピアノを守らなきゃと思ってセレシェイラを止めようとした結果、らしい。
 噂に聞く猟兵だと気づき、必死に敵意はないのと訴える少女に、セレシェイラはふわりと桜の花がほころぶように笑った。
「びっくりしたけど、あなたがピアノを弾いてたの? もう一回聴きたいな、とても上手だったよ」
 でもと戸惑う少女に驚かせた対価ならどうだろうかと提案すれば、それならば……とピアノの前に座って先程の曲を演奏をはじめた。

「なるほど、校庭への抜け道は非常階段なのか」
 演奏を聴き終えた後、セレシェイラが抜け道を聞けば少女は音楽室を出てすぐそばの非常階段がそうだという。迷宮化した学校には他にも『抜け道』はあるようだが、一番近いものを教えてくれた。
「桜色のおねえさん。お願いがあるの、あの子を助けて、わたしもお手伝いするから」
 ピアノは妖狐の少女と一緒に、音楽室の肖像画の妖怪たちから教えてもらっていたのだという。『狐狸』になった妖狐を取り戻すべく、肖像画や他の妖怪たちは向かったものの誰も還らない。
 少女に出来る事といえば、無事を祈りながら月明かり差し込む部屋で習った曲を演奏するのみだった。
「わかったよ。日常を取り戻してくるから、待っててね」
 きっと楽しい日常だったのだろう。肖像画たちはあ 曲を教え、少女たちが奏でる。
 優しく美しい日常を取り戻すため、セレシェイラは音楽室を後にした。

 どこか遠くからきーんこーん……と鐘の音が聞こえた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

廃校…
邪神達が潜む世界で深夜の学校に訪れた事はあるけれど…
ここはそれよりもっと…どこか古く…懐かしいような…
初めて訪れたのに不思議な気分だ…

[暗視と視力]を用いて視界を広げ[闇に紛れながら目立たぬよう]に
教室や廊下、トイレや階段などを探索して妖怪達を探してみよう

驚かせるのが妖怪達の礼儀…
ならば私も【変身譚】で骸骨へと変身し
[おどろかせる礼儀作法]を用いて出会った妖怪を
びっくりさせよう…!

驚かせたら謝りつつ[優しく慰め]てから
校庭への抜け道の[情報を収集]しよう…

懐かしい場所だけど…ここは私ではなく妖怪達の住まう場所…
彼らの安住の地を護る為にも、行こうか…!



●廊下の怪談

 迷宮化した廃校舎の廊下はどこまでも長く伸びていた。
 先程まで吹き付けていた風はいつのまにか止み、今は仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)が踏み出す度に軋む床材の音と少し遅れて響く足音だけが廊下に響くのみ。
「廃校……邪神達が潜む世界で深夜の学校に訪れた事はあるけれど……」
 同じ小学校でもここはそれよりもっと、どこか古く……懐かしいような……。たしかに初めて訪れたのに不思議な気分だった。建設された時代が違ったりするのだろうか? そんな事を考えながら、アンナは暗視と視力を用いて視界を広げ、校舎内に存在する闇を利用し紛れながら目立たぬように移動をしていた。
 深夜の屋内にしては視界は良好。
 音を立てぬようにそっと教室のドアを開けては中を確認し探索を続けていた。

(いないようね……?)
 しかしどの教室も空っぽか、机や椅子たちが取り残されたままか。そのどちらかが延々と続く。
 そもそも歩けども続くのは廊下ばかりで終りが見えない。進行方向から教室3つ分先は、もう暗視ですら見通せぬ闇に飲まれている。
 化かされているのではないか。
 ふと、そんな考えが浮かぶ。そもそもだ。先程から足音がひとつ、多いのだ。遅れて聞こえてくるそれは、アンナの足音ではない。
(驚かせるのが妖怪達の礼儀………ならば私も)
 それまでの何一つ変わらぬ動作で教室のドアを開けると、そのまま滑り込むように入り死角に潜り込む。素早くユーベルコード【変身譚】で骸骨へと変身し息を潜める。一定の間隔であとをつけていた足音の主は、姿を消したアンナに気づいたのか走り出した。
 さん、にい、いち――。
 タイミングをはかる。教室に飛び込んできた『足音』の背後を取ると、その肩に骨だけの手を乗せてやった。

 ぎゃっと悲鳴をあげたのは、少年の姿の妖怪だった。ふさふさのしっぽが見えているので、人間ではない。
 この状況でも驚かすことを忘れないしたたかな少年妖怪は、タイミングをはかって今アンナがしたように背後からそっと近づいて驚かせる、そんな計画をたてていたようだ。それは見事に失敗し、逆に驚かせられているのだが。
 目の端に涙を浮かべている妖怪に「すまないね」と謝りつつ、変身を解いたアンナは彼を優しく慰めてあげる。
「そういえば聞きたいのだけど……校庭への抜け道って知っているかな?」
 ようやく落ち着いたらしい少年――狸の妖怪はそれは知っているけれどと口ごもった。
「抜け道は知ってるけど。でもお姉さん危ないよ皆戻ってこないんだもの」
 聞けば少年は『学校』に遊びに来ている妖怪で、特に廊下や階段付近を好むものたちと仲が良かったそうだ。けれど『狐狸』となった妖狐を助けるために皆迷宮を抜け出し、そのまま戻ってこないのだという。
「それなら私は大丈夫よ、猟兵だから」
 アンナがいえば、少年はぱっと顔を明るくする。
「そっかー、お姉さんが猟兵さんなんだね。抜け道なら、教室を出てあっちだよ」
 そう言って教室から出た少年妖怪が指差したのは、暗視ですら見通せぬ闇の先――渡り廊下が見えた。
「あの向こうから校庭に出れるよ。気をつけてね」
「ありがとう、それじゃあ」
 彼に礼を言いながら渡り廊下を歩く。もう後ろから遅れて聞こえる足音はなく、ただギシギシと床材が軋むだけ。
(懐かしい場所だけど……ここは私ではなく妖怪達の住まう場所。彼らの安住の地を護る為にも、行こうか……!)
 そう決意して踏み出したアンナの耳には、きーんこーんと鳴る鐘の音が少しだけ近く聞こえた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
SPD
深夜3時…確かに学校の怪談にふさわしい時間だなぁ…
俺が元いた街にも学校とかはあったから、そういう話の一つや二つあったけど
ここは本当に出るんだな…幽世だから

俺が知ってるのは本当に有名な『トイレの花子さん』とかかな?
やっぱりトイレに行くと花子さんが出てくるのかな?
ふと何かの気配を感じ武器を手に取ろうとするが…
害意は感じない、むしろ怯えている?
「どうしたの?」
そっと話し掛け、何に怯えているのか話を聞いてみる
「俺は猟兵。ここに起きている異変を何とかしに来たんだ。」
焦らずゆっくりと、花子さんのペースで話をしてもらう
感謝と共に解決を約束する
可能なら「いざという時力を貸してほしい」とお願いしてみる


春霞・遙
学校の七不思議って学校によって違うこともあるらしいですよね。私が通った学校には二宮某の像はありませんでしたし。

古い学校というとスチームや誰かが机に残した落書きとか残っていたりするのかな。
【シャドウチェイサー】と共に学校の懐かしいもの巡りをして、妖怪に会えたら話を聞こうと思います。

お化け屋敷とか自体は大丈夫なんですけど、びっくり耐性はないです。
こんなことがあったら怖いなぁとか想像してドキドキしてると思うので、そこにいきなり現れるとか、唐突にがするとか、突然肩を叩かれるとか、そういうのはやめてくださいね?
顔にはでないそうですけど状況が状況なので間違って銃を向けるくらいはしかねないですから。



●トイレの怪談

「深夜3時……確かに学校の怪談にふさわしい時間だなぁ……」
 そう呟いたのは鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)だった。
 時間も廃校舎という場所も、そして木造造りのいかにも出そうな雰囲気がより一層『学校の怪談』の舞台にふさわしく思えた。
 灯りのある状態でこれなのだから、もしも暗闇に包まれていたならばこの状況はとても恐ろしいものだろう。
(俺が元いた街にも学校とかはあったから、そういう話の一つや二つあったけど、ここは本当に出るんだな……幽世だから)
 最近見つかったカクリヨファンタズムと呼ばれる世界では、様々な妖怪が確認されている。ひりょ自身、実際その様子を確認しているのだから。
(あれはすごかったな……。他に俺が知ってるのは本当に有名な『トイレの花子さん』とかかな?)
 学校にまつわる怪談で、おかっぱ頭に赤いスカートの少女とくれば……おおよその人間が『花子さん』を連想するのではないだろうか。
 そして、もし花子さんであればこの状況を見かねて力を貸してくれるかもしれない。
 そう考えたひりょは彼女がいそうな場所を探して、先が見えない迷宮と化した廊下を曲がる。窓からは月明かりに照らされた校庭が見えた。

 * * *

(学校の七不思議って学校によって違うこともあるらしいですよね。私が通った学校には二宮某の像はありませんでしたし)
 そんなことを考えながら、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は【シャドウチェイサー】と共に校庭の見える廊下を歩んでいた。
 地域も変われば怪談も変わるようで、例えばかの有名な『トイレの花子さん』を呼ぶにしろ3回ノックでよい地域もあれば、3階の女子トイレの奥から3番目といった細かい指定のある地域まであるのだから。
 所変われば品変わる、カクリヨにはカクリヨの『七不思議』や作法があるのかもしれない。
 遙は今、【シャドウチェイサー】と共に学校の懐かしいもの巡りをしながら、取り残されているであろう妖怪たちの姿を探索していた。教室を覗けば黒板や机の上に、当時のこどもたちが残したのであろう落書きや、廃校に至ったときの感謝の寄せ書きが残っていてとても微笑ましく思う。今やあまりみかけなくなった暖房用のスチーム暖房用のパイプが、壁にそって走っているのも懐かしさを誘う要因だった。窓際の席の子がお弁当箱を温めていたことをふと思い出す。そのパイプも今はヒヤリとして熱は持っていないのだけれど。
 遠くできーんこーん……と鐘の音がなる。同時に窓がガタンと音を立て、びくりとするのだ。お化け屋敷などは大丈夫でも、遙にはびっくり耐性がないのだ。
 廊下の角に差し掛かるとき、ふっと浮かぶのはこんなことがあったら怖いなあという想像だった。もし曲がった時にナニカがいたらどうしようか。
 ドキドキしながらシャドウチェイサーと共に角を曲がる。
 その先もまた、廊下だった。

 * * *

 ひりょと遙がばったりと出会ったのは、その矢先のことだ。
 月明かりに照らされた廊下の端と端、二人の間にはトイレを示すプレートが揺れていた。
「ええと、こんばんは、奇遇ですね」
 先に声をかけたのはひりょだった。対面にいる女性の姿をグリモアベースで見た覚えがあったからだ。シャドウチェイサーを連れた女性――遙も銃に手を添えながらもひりょのことを猟兵だと認識したのだろう。
「ええこんばんは」
 と返す。お互い距離を詰めながら、自然と視線を向けるのはトイレのプレートだった。
「トイレの花子さん目当てですか?」
「妖怪に会えたらいいなと、懐かしいもの巡りをしていたところなんです。でもここなら、会えそうですね」
 これまでもお互い廊下を歩いてきたけれど、空き教室はあれどトイレの姿はまったく見なかったのだ。であれば、ここが彼女の領域なのかもしれない。
 外扉の向こうには恐らく女子トイレの個室が並んでいるのだろうが、外からはなんの気配も感じることはできなかった。
「えーと、どうだったかな」
 流石に女子トイレに入るのは忍びなく、ひりょは外扉をコンコンコン、と3度ノックをする。深く息を吸い込んで。

 はーなこさん、あそびましょー。

 覚えのあるやり方で行う儀式に自然と2人の声が重なった。その瞬間だった、ふと何かの気配を感じたのは。お互い顔を見合わせて、念の為に武器に手を添える。扉を開けたのは遙のシャドウチェイサーだった。
 ギィと蝶番が軋んだ先、廊下から差し込む明かりに照らされて少女が1人立っていた。おかっぱ頭の黒い髪。赤い吊りスカート。不安げなそしてどこか怯えた様子で猟兵たちを見上げている。
「どうしたの?」
 遙とひりょの声が重なった。先に口を開いたのはひりょだった。
「俺は猟兵。ここに起きている異変を何とかしに来たんだ」
「皆には決して害は与えないよ、だから教えて欲しいの」
 武器から手を離して2人は問うた。ここで何が起きているのか、そして『抜け道』の存在を。
 
 少女――トイレの花子さん曰く、妖狐がやってきてからは毎日がとても楽しかったのだという。一緒に他の妖怪にいたずらをしかけてみたり、仕掛けられたり。
 けれど『狐狸』が現れてからは状況が一変した。古びた校舎は面影を残しながらも入り組んだ迷宮となってしまい、妖狐を助けるために抜け道を見つけて校庭へでた妖怪もいたが未だ誰も戻らない。
「抜け道はあっち」
 と指さすのはトイレの奥の窓だった。ここからなら校庭に出れるのだという。
「それじゃあ私たちは行くね。教えてくれてありがとう」
「絶対解決するから……それと」
 いざという時力を貸してくれないだろうかと、ひりょはお願いしてみる。
 少女は少しだけ緊張を帯びた顔で、わかったと返答を返した。
 2人の猟兵とそのお供は少女の妖怪に手を振って、窓枠に足をかけると『抜け道』の向こうに飛び出した。
 平穏を取り戻すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
【恋華荘】
いかにもですね…皆さんはぐれないでくださいね?

怪談のありそうな所…音楽室とか美術室とかを探して4人でいきますが…
「アイさん、独りで行くと危ないですよ」
さっきまで私の服を摘まんでたアイさんが気が付いたら先に進んでいて
「まゆさんもそんな急がなくても…」
私の腰にしがみついていたまゆさんまでいつの間にか前に
2人とも無言でずんずん進んでいくから違和感が…
「流江さんは隣にいますよね…?」
え、流江さんまですたすたと先に…!?

3人ともなんで無言なんですか…?
って、違う、いつの間にか動く彫像に入れ替わってるー!?

というか私が1人はぐれたんですね!?

その後、聞こえた悲鳴を頼りになんとか合流するのでした


白雪・まゆ
【恋華荘】

階段、美術室、理科室と回ってみますが、
「怪談さんと会えるということですけど、いないですね」

と、きょろきょろしていたら、
アイさんに「こっちです」と導かれ、
迷路になった校舎内をずんずん進んで行きます。

「アイさん、怖くないのです?」
普段は怪談とか苦手なアイさんなのですけど、
ひょっとしたらお化け絡みではないのでしょうか?

などど考えていたら、遠くからアイさんの声っぽい悲鳴が!?
あれ?でもアイさんここにいますですし!?

慌ててアイさんを呼び止めたら、人体模型!?
びっくりしておねーちゃんに抱きつきタックルしたら、
バラバラに!? こっちも模型でした-!?

る、るるる、流江さんは、ほんものですよね……?


アイ・リスパー
【恋華荘】
「が、学校の怪談ですかっ!?
い、いえっ、別に怖くなんてないですからねっ!」(お化けが苦手

とはいえ、はぐれないように、いちごさんの服の袖をギュッと握りながら探索しましょう。

「あっ、ちょっと、いちごさん、皆さん、そんなに早く進まないでくださいっ!」

職員室、用務員室、体育倉庫と回りますが……

「よかった、お化けに会わないですね。
……いえ、会えないと任務にならないのですがっ!
って、ところで、皆さん、なんでさっきから無言なんですか?」

お化けに会わないことにほっとしつつも、無言な3人が気になって顔を覗くと……
そこには、のっぺらぼうな3人が!

「きゃっ、きゃああああっ!」

学校に私の悲鳴が響くのでした。


彩波・流江
【恋華荘】

え?いちごさんではなく人体模型さんが変化しているのですか?

ふむふむ、今案内してくれてるアイさん…友達の模型さんと一緒についてきてしまったと…校内なら害のあるお化けも居ないそうですし大丈夫…ですよね
ふふ、分かりました、まゆさんには内緒にしておきます

と、ここでアイさんの悲鳴が…あっ
まゆさんのタックルで人体いちご模型さんがバラバラに…

「ま、まゆさん…猟兵パワーに任せて何という事を…」

一応模型さん達にとってはこの程度なんでもないようですが、まゆさんの反応が少し面白くって、ちょっと意地悪しちゃいます
周囲に浮かべていた光源の位置や明るさを調節して、私も実は幽鬼の類であると誤解させてみましょうか♪



●怪談~アイの話~

「が、学校の怪談ですかっ!? い、いえっ、別に怖くなんてないですからねっ!」
 そうちっとも怖くないんですから!
 お化けが苦手なアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)はそう主張したものの、いささか説得力にかけていた。その手はしっかりとはぐれないようにと彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)の服の袖をギュッと握りながら探索しているからだ。
 他の同行者は白雪・まゆ(おねーちゃんの地下室ペット・f25357)、彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)、皆同じ猟兵用の女子寮【恋華荘】に住まうメンバーたちだ。
「いかにもですね……皆さんはぐれないでくださいね?」
 いちごは皆にそう言って廃校舎内を進んでいく。
 床は今にも踏み抜きそうで、窓はガタガタ音が鳴る。時々きーんこーんかーんこーんと鐘の音が聞こえるのがより一層と不気味で恐怖感を募らせる。
 それなのに。
「あっ、ちょっと、いちごさん、皆さん、そんなに早く進まないでくださいっ!」
 他の皆は怖くはないのだろうか。ずんずんと先を歩いていくのに、アイはついていくのに必死だった。
 途中立ち寄った職員室と用務員室は空っぽ、体育倉庫――なぜかバレーボールが1つだけ残っている――と順番に回るのだが、ついにお化けに出会うことはなかったのだ。
「よかった、お化けに会わないですね。……いえ、会えないと任務にならないのですがっ!」
 ホッとするようなけれど、それではなんのためにきたのかわからない状況で――アイはふっと気づいたのだ。
「ところで、皆さん、なんでさっきから無言なんですか?」
 いつもはとてもにぎやかなはずなのに、気がつけばいちごもまゆも流江も無言のままアイの先を歩いている。もしかしてアイが気づかなかっただけで何かあったのでは? 心配になってアイは3人の顔を覗くべく歩みを早め――。
「なにかあったんです――きゃっ、きゃああああっ!」
 廃校舎内にアイの悲鳴が響き渡った。
 いつもの優しい3人ではなく、アイの前にいるのは目も鼻も口もないのっぺらぼうな3人がいたからだ!


●怪談~いちごの話~

「いかにもですね……皆さんはぐれないでくださいね?」
 彩波・いちごは廃校舎内を歩きながら同行者に声をかけていた。
 怪談のありそうなところ、音楽室や美術室を探して4人で校舎内の探索を進めていく……のだが。
「アイさん、独りで行くと危ないですよ」
 さっきまでいちごの服を摘まんでたアイは、気が付いけば先に進んでいる。怖がっている様子もない。
「まゆさんもそんな急がなくても……」
 美術室に入った後、いちごの腰にしがみついていたまゆまでいつの間にか前に出る。
 いつもにぎやかなはずなのに、今は無言で進む2人に、いちごは違和感を覚えた。緊張しているのだろうか、それにしてもこの2人はこのシチュエーションでこんな行動をしていただろうか。
「流江さんは、隣にいますよね……?」
 不安に駆られ呼びかけた流江までもが、いちごを追い抜きすたすたと先に進み始める。
「3人ともなんで無言なんですか……?」
 呼びかけてから、違うと気づく。廊下の闇に惑わされていたが、いつの間にか3人すべてが動く彫像に入れ替わってるのだ。しかも絶妙に背格好が似ている。
 いつ入れ替わったのだろうか、いやもしかして美術室に寄った時? あそこになら『彫像の怪談』にまつわるものがいてもおかしくはない。
「というか私が1人はぐれたんですね!?」
 どうやって合流したものだろうか。今から元来た道を戻るしかない? この深夜の廃校舎を1人で? けれどここで立ち止まっているわけにいかず戻ろうと決意した、その時だ。
「きゃっ、きゃああああっ!」
 廃校舎に悲鳴が響き渡ったのは。
(あれはアイさん!? なにかあったのでしょうか)
 お化けが怖いというアイが悲鳴を上げるというのはつまり、そういうことなわけで。けれどおかげで向かうべき方向がわかった。
「今、向かいますからね!」


●怪談~まゆと流江の話~
「怪談さんと会えるということですけど、いないですね」
「ええ、本当に。階段、美術室、理科室と回りましたが、さっぱりですね」
 まゆの疑問に流江が同意を返した。

 『学校の怪談』の有名所を回っているのだが、どこもその面影を残す部屋があるのみで、怪談も妖怪の気配すらない。これでは仕事にならないではないか。
「困りましたね」
 どこにいるんだろうかとまゆがきょろきょろとしていると、
「こっちです」
 とアイに手を取られ、校舎内をどんどん進む。まるでまゆをどこかに導くかのように。歩く速度に合わせて床材がギシギシ音を立てる。
「アイさん、怖くないのです?」
 彼女は怪談やお化けが苦手なはずで、現にグリモアベースでそのような反応を見せていたはずだ。
「ひょっとしたらお化け絡みではないのでしょうか?」
 深夜3時の廃校舎、怖がりそうなシチュエーションに対してこの反応であるのならば、お化け以外の何かしかありえなだろう。
「かもしれませんね。もしかして『抜け道』を見つけたのかも?」

 そう返したものの、気づいていた流江はそっと隣の『いちご』に囁いた。
(まさか……いちごさんではなく人体模型さんが変化しているのは気づきませんでしたよ)
 気がつけばいつのまにか皆ばらばらになっていたようで、見知ったはずのいちごも気がつけば入れ替わっていたのだ。変化の術らしきものを使っているようで、ぱっとみればいちご本人にしか見えないのだけれど。
 今まゆの手を引いているアイも、実は友達の人体模型らしくついてきてしまったようだ。
(校内なら害のあるお化けも居ないそうですし大丈夫……ですよね)
 まゆにはこの事は内緒にしておこうと流江は笑った。この迷宮を抜けられるなら幸いなのだから。

「きゃっ、きゃああああっ!」
 などど考えていたら、遠くからアイらしき悲鳴が2人の耳に届いた。
(あれ? でもアイさんここにいますですし!?)
 まゆはおかしいと考える、聞こえた声はアイのものだ。聞き間違えるはずがない。であるならば、今まゆの手を引いてるこれは一体なんなのだろうか。
「アイさん!?」
 呼び止めれば、振り返った姿はアイではなく、いつのまにか人体模型に入れ替わっている。先程まではアイの姿と声で喋っていたはずなのに!

 その後の様子を流江はしっかりと見ていた。
「お、おねーちゃん!」
 びっくりした様子のまゆはいちごに抱きつきタックルをし『人体いちご模型』は無残にもがらがらと音を立ててバラバラになる姿を。
「ま、まゆさん……猟兵パワーに任せて何という事を……」
 床に転がっている人体模型にとってはこの程度なんでもないようだが……。まゆの反応が少し面白くて流江はちょっとした意地悪を考えた。
 周囲に浮かべていた光源の位置や明るさを素早く調節しておく。やや足元や背後に光を漂わせ、影を纏うかのように。
(私も実は幽鬼の類であると誤解させてみましょうか♪)
 果たしてその企みは。
「る、るるる、流江さんは、ほんものですよね……?」
 振り向いたまゆの悲鳴によって成功へ至ったのであった。


●~合流~

 アイとそれからまゆの悲鳴のおかげで4人はなんとか合流できた。
 沢山の木製の靴箱がならぶ玄関付近でのことだ。
「まさか私とアイさんだけがはぐれてるなんて……」
 そう言ったいちごにはぴたりとまゆが、
「おねーちゃん、もうどこにも行かないでくださいね!?」
 と張り付いていて離れない。アイもしっかりとその袖を握りしめている。もう二度と離れないという強い決意が見える。
 その様子を微笑ましく思いながら、流江は皆に提案をした。
 もとに戻った人体模型が『抜け道』について教えてくれたのだ。
「なんと、この玄関が『抜け道』なんですって」
 その言葉にぱっと顔を輝かせたのはアイだ。
「では早速校庭に出ましょう! そうしましょう!?」
 よほどここにいたくないのだろう、先頭を行きかねないアイに続いて4人横並びに校庭への『抜け道』をくぐった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メグレス・ラットマリッジ
私は心こそ14歳ですが外見は多分ギリギリ危ういライン、
普段であれば、学校に通おうものなら怪談扱いは想像に易い。
折角の校舎という舞台です
人の名残を、今は妖の遊び場を見て回りましょうか。

怪談ですか……
校内を探索していればその内に出会えるでしょう、自力で抜け道を発見出来たら御の字です。
探索中に足音等の気配を感じたら興味をそちらにシフトして
付近の教室を調べたり痕跡を追います

未知の妖怪に対してどう話すべきか?
古今東西、交渉において大事なのは相手に対して真摯であることです
それは相手の流儀を理解する事だったり、約束を守る事だったり……
そういったことを念頭に協力を願います



●教室の怪談

「怪談ですか……」
 深夜の廃校舎を1人で歩いているのは、ボロボロのフェルト帽が特徴的なメグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)だった。
「まぁ校内を探索していればその内に出会えるでしょう」
 彼女はそう考えて探索を続けているのだが、理科室や美術室といった定番の場所から、家庭科室、図書室、図工室といった場所まで覗いてみても誰もいない。定位置にいない妖怪たちはどこにいるのだろうか? 階段や踊り場の鏡に期待して上階から下って来たのだが、どうやらハズレのようだった。
(……私は心こそ14歳ですが外見は多分ギリギリ危ういライン)
 普段であれば、学校に通おうものなら怪談扱いは想像に易いとメグレスは考えるが、しかし此度の舞台はカクリヨとはいえ折角の校舎だ。
(せっかくの機会、人の名残を――今は妖の遊び場を見て回りましょうか)
 いないものは仕方がないと階段に見切りをつけて、向かうのは教室が並んでいる廊下だ。どこかに何かしら手がかり残っているのではないだろうか。自力で『抜け道』を発見出来たら御の字である。
 床は今にも抜けそうな嫌な音を立てるのに、教室のドアだけは予想に反してするりと開いた。
 ひとつめの教室は折り鶴や紙飛行機それから折り紙が散らばっていたものの無人。ふたつめに入った教室には、
『いままでありがとう!』
 と黒板に寄せ書きがされている教室だった。思わず赤茶色の瞳を和ませてしまう。
 6年2組一同と添えられたそこには、楽しかったことがんばったこと、たくさんの思い出の出来事が思い思いの字で綴られている。廃校へ至った経緯はわからないが、こどもたちにたくさん愛されていたのだろう。
「妖たちもこれは残していたのでしょうか」
 最初の教室には遊んだ跡が残されていたが、この教室はどうやら手つかずのようだった。メグレスは静かにドアを閉めて次の教室へ向かう。
 その時だ。ぽーんぽんと少し先からボールが跳ねる音が聞こえたのは。
(2つ3つ先でしょうか)
 距離にして20メートルと少し先の教室だ。メグレスはそっと息を潜め、用心深く歩みを進める。
 その教室の前に辿り着くと、またぽんとボールの跳ねる音がした。ドアの曇り硝子から覗き込めば空っぽの教室にひとつ人影があった。
(未知の妖怪に対してどう話すべきか?)
 教室にまつわる怪談に何があったか考えながら、そっとドアをノックした。その向こうの気配が警戒に変わる。
(……古今東西、交渉において大事なのは相手に対して真摯であることです)
 それは相手の流儀を理解する事だったり、約束を守る事だったり、そこに何らかの思いがあれば大丈夫だろう。
「こんばんは、失礼しますね」
 静かにドアを開け教室に入れば、ボールを手に立ち尽くすのは10歳程の少年。やや強張った表情でメグレスを見上げる。敵意をない事をアピールしながら、メグレスは自身が猟兵である事を伝えた。
「ですから、あなたに危害を加える事はありません。私の目的は『狐狸』から妖狐を助けこの迷宮化を食い止めることですから」
 礼儀を尽くした言葉に少年は少し考えるようにわかったと頷いた。
「もうだめかなっておもってたから、お姉さんが来てくれてよかった。あの子を助けてあげて僕たちも手伝うから」
 かつて教室の日直当番や暦を変えるのをささやかながら手伝っていたという少年がこっちだよと示したのは、この教室の窓だった。校庭に面したそれは一か所だけ開ける事ができるようで。
「ありがとう、行ってきますね」
 開け放たれた窓から地面に降り立って、メグレスは一度だけ振り返って礼を告げると校庭に向かって走り出したのだ。

 もう鐘の音は聞こえない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『骸魂童子』

POW   :    怪力
レベル×1tまでの対象の【尻尾や足】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    霊障
見えない【念動力】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ   :    鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『抜け道』を使って校庭に出た猟兵たちの前に立ち塞がるのは、骸魂に飲み込まれたこどもの妖怪たちの姿だった。
 いやいやながら従っている者もいる様子。
 その奥には元凶である『狐狸』の姿が見えるが……まずはこの『骸魂童子』を解放してあげよう。


●集団戦について
 場所はやや広めの、UDCアースでは良く見かけるような校庭です。朽ち掛けの遊具や倉庫などの影になりそうな場所もあります。
『骸魂童子』は骸魂に飲み込まれ嫌々従っているこどもの妖怪のあつまりです。
 前章に引き続き灯りは手元にあり視界良好、両手共にフリーです。文字数節約にお使い下さいませ。この章から参戦の猟兵さんも同様でございます。
鳳凰院・ひりょ
WIZ
『骸魂童子』をひとまず何とかしないといけないみたいだな…
でも、中には骸魂に完全に飲み込まれていない子達もいるみたいだ
なら、助けられるかもしれない
助けられるのに助けないなんて、俺はそんな見過ごすような事は出来ないから

いやいやながら従っている個体の救出を試みる
花子さんとも約束した、この怪異の解決の力になるって

敵の攻撃を掻い潜り、物陰へ一旦身を潜める
そこで影の追跡者を召喚
「頼むよ、俺の影。相手を一瞬だけ引き付けて。無理はしないでね」
物陰から影の追跡者を飛び出させる
この際に隠密でなくわざと視認出来る様に行動させる
相手の注意が影に向いている所を退魔刀で攻撃
破魔・除霊の効果で骸魂からの分離を試みる



 骸魂に飲み込まれたこどもの姿の妖怪――『骸魂童子』は猟兵を待ち受けていた。

 月明かりに照らされた校庭へ辿り着いた鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は、その様子に胸を締め付けられた。
 "骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの"、それは猟兵の『敵』であるオブリビオンに他ならない。世界を滅亡させないために、必ず骸の海へ還さねばならない存在だからだ。
(『骸魂童子』をひとまず何とかしないといけないみたいだな……)
 全ての元凶は『狐狸』だと校内の妖怪たちも証言していた。けれど、今はそこまでたどり着くことができない。背後に控える『狐狸』を気にしつつも、渋々あるいは嫌々といった様子で従っているような、中には骸魂に完全に飲み込まれていない個体もいるようだった。
 それならば。
(助けられるのに助けないなんて、俺はそんな見過ごすような事は出来ないから)
 ひりょはそう考え、童子たちの中でも特に現状を嫌がっていそうな個体の救出を試みることにした。
 なによりも、彼は先程校舎内でトイレの花子さんと約束したのだ。
『俺は猟兵。ここに起きている異変を何とかしに来たんだ』
『絶対解決するから』
 この約束を違えることができようか?

 覚悟を決め敵の攻撃掻い潜り、ひりょはその個体の注意を引きつける。
「こっちだよ!」
 わざと真横をすり抜け校庭の遊具の合間を一息で走り抜けると、倉庫の陰へ一旦身を潜める。物陰から様子を伺えば、ひりょの潜伏している場所までわからなかったらしい骸魂童子が一体、その姿を求め彷徨ってる。どうやらうまく引きつけることができたようだった。
「頼むよ、俺の影」
 これは好都合だった、逃すわけには行かない。
 囁き、ひりょはユーベルコード【影の追跡者(シャドウチェイサー)】を発動させる。自身の足元、影が揺らめいて人の形を浮かび上がらせるのを確認し、指示を飛ばした。
「相手を一瞬だけ引き付けて。無理はしないでね」
 応えを返した<影の追跡者>は物陰から飛び出すと、わざと己の存在を見せつけるように走り出した。本来隠密行動も可能な影の追跡者がそうすることで、一瞬、骸魂童子の視線が釘付けになる。
(今だ!)
 ひりょ自身も物陰を飛び出し、全力で距離を詰める。
 手にするのは退魔刀『迅雷』、魔を退ける為に作られた一刀だ。
「破魔と除霊の力があれば……きっと!!」
 この妖怪から骸魂だけ分離することができるのではないか。
 祈りを込めた一撃は――。
「ありがとう」
 その場でしゃがみ込みながらも、確かな自由意志を持って笑っていた童子の姿が、作戦の成功を示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
目の前のオブリビオンたちは子供たちの妖怪で、戦いたいというわけではないんですね。それなら、一緒に遊びましょうか。
かくれんぼ、だるまさんがころんだ、鉄棒雲梯。放課後の校庭は友達がいればいくらでも遊んでいられますよね。でも、学校にいてはできない遊びだってきっとありますよ。友達だっていつか卒業してしまう。

「目立たない」ように「闇に紛れる」。そして、【仕掛け折り紙】で紙飛行機など飛ばして骸魂童子を遊びに誘います。
ある程度満足してもらえるか聞き耳もたない様子ならば「だまし討ち」で折り紙に【紙片鋭刃】を用いて攻撃。骸魂を追い出しましょう。



(目の前のオブリビオンたちは子供たちの妖怪で、戦いたいというわけではないんですね)
 積極的に攻撃を仕掛けてくるわけではない『骸魂童子』の姿を見て、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は考えた。
 オブリビオンは倒すべき敵ではあるが、何か別の方法があるのではないだろうか。
「それなら、一緒に遊びましょうか」
 そのうちの一体に遙は声をかけてみた。なにをして遊ぶのが良いだろうか。
 かくれんぼ、だるまさんがころんだ、鉄棒雲梯。ボールがあるならドッジボールにサッカー……浮かぶものは様々だ。放課後の校庭は友達がいれば、いくらでも遊んでいられる。おもちゃも遊具もなくたって、その身ひとつでかけっこに、鬼ごっこ。だってできてしまう。
 彼ら、彼女らにとっては、瞳に映る全てがおもちゃになるだろう。
「でも、学校にいてはできない遊びだってきっとありますよ」
 遙は諭すような声でそう言った。
 いつも遊んでいた友達だっていつか卒業してしまう。遊び場だった校庭は、いつかもう戻ることのできない思い出の場所へ変わってしまうのだ。
 その成長と共に。

 遙は目立たないように、校庭の闇を利用してその身を紛れさせた。
「命を持たない紙の鳥、散らず褪せない紙の花、くるりくるり、舞い踊れ」
 それは遙のユーベルコード【仕掛け折り紙】だ。ユーベルコードで紙飛行機を作り出すと、遙を探す骸魂童子の前をゆっくりと飛ばした。その視線を引きつけるように。
「こっちにおいで」
 紙飛行機を誘導しながら、集団から距離をとりその一体だけを誘い出す。
「ねぇみてごらん、あなたは何が好きですか?」
 折り紙でてきた花や折り鶴を次々と作り出すと、童子の前にふわりと漂わせる。いつも泣く子らの気をそらすために持ち歩いている折り紙が役に立ったようだ。
 少しだけ躊躇するような動作で童子が選んだのは、最初に見せた紙飛行機だった。
「ねぇ、聞いてもらえますか?」
 遙はトイレの花子さんと約束をしていた。
『皆には決して害は与えないよ』と。その約束が守られるべき時が来たのだ。
「私なら、あなたを捕らえている骸魂を追い出せます。私を信じてくれませんか?」
 童子は一度紙飛行機に視線を落とし、次に遙を見たときには何かを決めたようでこくりと首を縦にふる。
 浮かべた折り紙をひとつ手に取り、遙は素早くだまし討ちのように【紙片鋭刃】で童子を斬りつける。ガラスが割れるような音がして、童子から黒い靄のようなものが立ち上り、それは月夜へ消えていく。
 あとに残ったのは、正気を取り戻したらしい童子の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メグレス・ラットマリッジ
年端もいかない子どもに憑くとは厄介な。
嫌がってる相手にダクセ式の説得をすると、間違いなく世論を敵に回してしまいますね
私はエンターテイナーではありませんが、出る杭とならない程度に人の目を気にするのです。

やる気からして、本気で戦えば目も当てられない結果になる事は明白
もっと互いが傷つかない決着のつけ方があるはずです。
そう……ルールを決めましょう! 神聖なる学び舎を血で染めない為に!

というわけで合意が取れたら鬼ごっこやります、取れなかったらごっこじゃなくなります。
UCを使って姿を隠し、目視したら根気と健脚でどこまでも追いかけましょう。

何処に逃げたんですかねえ、あっちの方ですかねえ
みぃつけたあ



「年端もいかない子どもに憑くとは厄介な」
 メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は、子供の姿をしたオブリビオンに憤っていた。
 しかし、嫌がってる相手に"ダークセイヴァー式"の説得をすると、間違いなく世論を敵に回してしまう――それは絶対に避けなければいけなかった、今後の活動的にも。
「私はエンターテイナーではありませんが、出る杭とならない程度に人の目を気にするのです」
 お互いのやる気からすれば、本気で戦えば目も当てられない結果になる事は明白だった。なにせ、猟兵とオブリビオンという間柄だ。それならば。
「もっと互いが傷つかない決着のつけ方があるはずです。そう……ルールを決めましょう! 神聖なる学び舎を血で染めない為に!」
 何も武器と武器をあわせるだけが戦いではない、世の中には沢山の決着を付ける方法が幾通りもある。平和的に終わるやり方といえば何があるだろうか……迫るメグレスに骸魂童子が一歩足を引く。逃げの姿勢だ。
 それを見てメグレスは、とても良い案を思いついた。
「ええ、そうですね、鬼ごっこ。鬼ごっこをしましょう、どちらが鬼になりますか?」
 もう一歩、童子が足を引いたのをメグレスは見逃さない。相手が逃げる側、メグレスが追いかける側に決まった瞬間だった。
「では、私が鬼役をしますね。いいですか、10数えたら追いかけますからね」
 にこやかに赤茶色の瞳を和ませて笑う姿に本気さを感じ取ったのか、その骸魂童子は一目散に逃げていく。
 それでこそ楽しい鬼ごっこにふさわしい始まり方だ。
(――死は、いつだってすぐ側にある)
 しっかりきっちり10を数え終えて、発動するのはメグレスのユーベルコード【黄泉渡り(テリブル)】だ。その場から遊具までの距離を瞬間移動によって一瞬で詰める。視界の端で、童子の纏う着物の袖が遊具の陰に消えるのを目視する。
「そちらに行きましたか!」
 彼女は持ち前の根気と健脚でどこまでも追いかける。猟兵の体力と追跡能力を舐めてもらっては困るのだ。童子も彼女の存在に気づいたのかより一層、逃げる速度が上がる。相手も必死のようで、視線を切るように遮蔽物を利用し始める。
「何処に逃げたんですかねえ、あっちの方ですかねえ……」
 つぶやきながらも、メグレスはその行方をしっかりと掴んでいた。なにせ地面には足跡がしっかりと残っている。それは校舎際まで伸びていて……。逃げ切ったと思っているのか、安心したような童子の真後ろに【黄泉渡り】で立つ。
「みぃつけたあ」
 音もなく距離を詰められた童子は後にこう語った。
「とてもたのしそうな笑顔をしていた」と。

 なにはともあれ、鬼ごっこで負けた童子からは無事に骸魂のみが切り離されて、自由の身を得たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

元凶はすぐそこに…
だけど…まずは目の前の妖怪達を助けてあげないとね…

[破魔と除霊]を用いた霊剣を振るい敵群を攻撃し骸魂を切り捨てて
妖怪達を助けよう

[火炎耐性とオーラ防御]を纏い敵からの攻撃を霊剣による
[武器受けとなぎ払い]で炎を切り払おう

学校とは楽しいものらしいが…
私が聞いた話ではとても恐ろしい地獄のような場所とも聞いたぞ…
…受験地獄とな!

【公開処刑】で廃校舎から[呪詛]纏う大量のテスト用紙を召喚
敵に襲わせ体中に纏わり付かせて[生命力吸収によるマヒ攻撃]で
足止めして攻撃を重ねて追い払ってゆこう…

さぁて…悪戯はこれまでだ…逃がしはしまいぞ!



 今回の異変、元凶はすぐそこにいる。
 骸魂童子の向こう側、月明かりに照らされた校庭で『元凶』はこの状況を楽しそうに見ていた。童子と猟兵たちのやりとりを、まるで何かの演目でも見ているかのように。
「だけど……まずは目の前の妖怪達を助けてあげないとね……」
 仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は元凶『狐狸』から視線を戻す。
 相対するのはこどもの姿の妖怪だ。
 カクリヨにおけるオブリビオンは、妖怪が骸魂に飲み込まれることで発生する。であるならば。
(霊剣で骸魂を切り捨てて……妖怪達を助けよう)
 オブリビオンと化す原因を彼女が手にするのは霊剣『芙蘭舞珠』で斬れば、きっとこの状況から解放されるだろう。
 抜身の刀身は月明かりに照らされ、揺らめく炎のような波状の刃が一際目立って見えた。破魔と除霊の力が宿るこの退魔の霊剣であれば、骸魂を切り捨てることも可能である。
 戦闘体制に入ったアンナを見て骸魂童子は無数の鬼火を放つが、彼女は火炎耐性とオーラ防御を纏い、霊剣で受け止め、あるいはなぎ払い炎を切り払う。
「学校とは楽しいものらしいが……私が聞いた話ではとても恐ろしい地獄のような場所とも聞いたぞ……」
 そう、ただ友と遊ぶだけが学校ではないのだ。
 『学び舎』に通うこどもたちは、日々授業を受け知識を増やしていく。その過程で知識の定着を確認するため、あるいはより高等な学校へ進むための試験がある。
「その名も……受験地獄とな! ――これより処刑を行う」
 もちろんその地獄も世界差もあるのだが……。
 宣言と共にアンナはユーベルコード【公開処刑(エクスキューション)】で廃校舎に保管されていた大量のテスト用紙を召喚した。
 ひらひらと深夜の宙を舞うテスト用紙には、満点から10点だとか38点だとか、いわゆる『赤点』のものがちらほら交じる。難問に苦しみ時間制限に苦しみ悶ながらも乗り切った試験時間の結果、返却されたものがこれでは、テスト用紙に呪詛のひとつやふたつやみっつ、あってもおかしくはないだろう。
 宙に浮いた用紙は骸魂童子の体に纏わり付き、あっという間に白い塊となってしまった。
「さぁて……」
 呪詛を纏ったテスト用紙はじわじわと童子生命力吸収しマヒ状態に陥っている。逃げようともがくがそれは悪あがきにしかならない。
「悪戯はこれまでだ……逃がしはしまいぞ!」
 足止めは完全に成功していた。普段はどこかぼんやりしているアンナだが、この時の彼女は黒い瞳は爛々と輝き処刑執行人と化していた。霊剣を骸魂童子に向かって振り抜く――狙うは本体ではなく纏う骸魂のみ。
 切っ先は確かに骸魂のみを捕らえ、ガラスを斬るような手応えと共に澄んだ音を立て、黒い靄と共に散り消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白雪・まゆ
【恋華荘】

こどもの妖怪ということですし、
元凶は『狐狸』さんでしょうし、戦うというよりは、
めいっぱい遊ぶ方向がいいような気がしますですね。

ここは『だるまさんがころんだ』がいいと思うのです。

ゲームとはいえ勝負なのです。
『骸魂童子』さんたちといっしょに勝利して、
童子さんたちと骸魂を切り離せるように、しっかりがんばりますのですよ!

「流江さんにタッチすれば、わたしたちの勝利ですね!」

と、意気込んで臨むのですが、
落ち着きのなさと、おねーちゃん好きには定評があります。
気がつくと、流江さんではなく、おねーちゃんのほうへ。

そして、流江さんのコールが終わっても、
止まりきれずに何度も最初まで戻されてしまうのでした。


アイ・リスパー
【恋華荘】
「ええっ、妖怪の子どもたちと遊ぶんですかっ!?
む、無理ですーっ!」(お化けが苦手

ですが、仲間との相談で決まった作戦なので仕方ありません。
『だるまさんが転んだ』で一緒に遊ぶことに。

じゃんけんの結果、鬼が流江さんで、残りメンバーと妖怪の子どもたちで『妖怪チーム』ですね!

「では、流江さんには悪いですが、ここは『妖怪チーム』のために勝ちに行きますっ!」

【ラプラスの悪魔】で流江さんの行動を予測。
振り向くタイミングをコンマ1秒単位で読み切り、ピタリと動きを止めましょう!
ふっふっふ。これなら私に負けはありませんっ!

「って、これはっ!?」

近くの妖怪の出した霊障によって体勢を崩して倒れてしまいます。


彩波・いちご
【恋華荘】
嫌々戦わされている妖怪の子供ですか…
なら遊びで満足させてあげようかなと
『だるまさんがころんだ』ですね、いいと思いますっ

流江さんのコールに合わせてピタッと止まり…
止まりきれなかった童子が脱落して戻される中…私は止まったと思ったら…
「ごふっ!?」
まゆさんタックルを何故か喰らって…なんとか耐えたり
「う、動いてませんよ…?」

周りが脱落する中何とか最後まで耐えて
「タッチ、ですっ」
手を伸ばして流江さんの身体に触れ……むにゅん
「あ」
…触れた場所が、振り向いた流江さんの胸ー!?
思いっきり鷲掴みしちゃってますが……一応クリアですっ(汗

最後ちょっと締まりませんが、遊びで満足して骸魂浄化されてればいいなぁ


彩波・流江
【恋華荘】

「だーるーまーさーんーがーこーろーんー………だ!」

救うためとはいえ、無理やり従わされた子に攻撃するのは避けたいところでしたし、まゆさんに大賛成です
鬼役、精一杯努めさせていただきますねっ

一定のリズムで振り向きを繰り返しますが、あえて調子を外してみるのも必要でしょう

「はいっ、腕が動きました!」

「おや、足が震えていますが…まだ気のせいですね」

皆さん思い思いのポーズ等を微笑ましそうに眺めていると、もうすぐタッチされそうな距離に

「だるまさんがころん…だっ…あ、あらら?」

振り向いた時、最後まで残っていたいちごさんの伸ばした手が胸に掛かって…じ、事故もありましたが、骸魂童子の皆さんいかがでしたか?



 仲良く玄関である『抜け道』をくぐった恋華荘の面々が目にしたのは、月明かりに照らされた校庭で骸魂童子たちが戦う(いや遊ぶ?)姿、それから楽しそうに笑っている全ての元凶である『狐狸』の姿だった。

 最初に口を開いたのは白雪・まゆ(おねーちゃんの地下室ペット・f25357)だった。
「こどもの妖怪ということですし、元凶は『狐狸』さんでしょうし、戦うというよりは、めいっぱい遊ぶ方向がいいような気がしますですね」
 『骸魂童子』と『骸魂』さえ切り離せば元の妖怪に戻るのだから、戦うよりはそのほうがいいだろうとまゆは力説する。
 校庭を眺めるが遊具はあれど玩具になりえるものが、残念ながら手近には見当たらなかった。せめてボールのひとつでもあれば遊びの幅が広がってよかったのだが、総都合よく事は運ばないようだ。
「ええっ、妖怪の子どもたちと遊ぶんですかっ!? む、無理ですーっ!」
 すかさず反論するのはお化けが苦手なアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)だ。先程も気づけば皆と離れて1人で怖い思いをしたのだ、もう絶対いやですと力説する。
「ここは『だるまさんがころんだ』がいいと思うのです」
 ……のだがしかし、残念ながら道具が不要な遊びには沢山の種類があるのだ!
「確かに。それならすぐにできそうですし『だるまさんがころんだ』、いいと思いますっ」
 無邪気なまゆの提案に賛同するのは彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)である。
(嫌々戦わされている妖怪の子供ですか……なら遊びで満足させてあげようかな)
 せめて楽しい気分を味わってもらえればと妖狐の娘(?)は心優しく考えたのである。『骸魂童子』たちといっしょに遊んで勝利して、童子たちと骸魂を切り離せることができれば最高だ。
「では、じゃんけんで鬼役を決めましょうか」
 どうやら賛成派らしい彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)がそう提案し、
「「「「じゃんけんぽん!!!!」」」」
 と、妖怪そっちのけのチーム分けがはじまった。
 仲間との相談で決まった作戦なので仕方がないとばかりに、アイは覚悟を決めたようだ。この戦い負けられない。何故ならば鬼になれば『お化け』と向き合わねばならないし最悪の場合タッチされるからである。絶対に勝たねばならない戦いである。
 恨みっこなしの真剣勝負。
 熱いじゃんけん勝負の結果、鬼役は流江に決まり、残りメンバーと妖怪のこどもたちで『妖怪チーム』が結成されたのだ。

 こうして、
「だーるーまーさーんーがーこーろーんー………だ!」
 と流江のコールがはじまって、恋華荘に集う4人と妖怪たちによるだるまさんがころんだ勝負の幕が開けたのだ!

「では、流江さんには悪いですが、ここは『妖怪チーム』のために勝ちに行きますっ!」
 コールに合わせてアイはユーベルコード【ラプラスの悪魔(ラプラス・デモン)】を実行する。
(――初期パラメータ入力。シミュレーション実行。対象の攻撃軌道、予測完了です!)
 対象の動きをシミュレートすることで攻撃を予想し回避するそれは、今流江の振り向くタイミングをコンマ1秒単位で読み切っている。
(ピタリと動きを止めましょう! ふっふっふ。これなら私に負けはありませんっ!)
 1回、2回と毎度正確に読み切ってピタリと動きを止めることに成功する。隣ではまゆが最初まで戻されているようだが――このままいけば勝利は容易い。アイはそう確信するのだが。
「って、これはっ!?」
「はい、アイさんアウトです!」
 近くの妖怪の出した霊障に驚いて体勢を崩し、倒れてしまったアイは最初まで戻されてしまうのだった。

 そのほんの少し前、
「しっかりがんばりますのですよ!」
 と声をあげたのはまゆだ。
「流江さんにタッチすれば、わたしたちの勝利ですね!」
 と意気込み臨むのだったが、彼女の落ち着きのなさと『おねーちゃん』好きには定評があるだけあり、視線は鬼である『流江』ではなくおねーちゃんこと『いちご』をつい追ってしまう。
 おまけに体まで向かってしまい、まゆの体は勢いよくいちごにぶつかり「ごふっ!?」と小さな悲鳴(?)があがる。
「はいっ、まゆさんアウトです!」
「私は、う、動いてませんよ……?」
 何故かまゆにタックルを喰らっていたいちごは、なんとか耐えきって主張する。
 流江はそれも含めて、思い思いのポーズを取る『妖怪チーム』を微笑ましそうに眺めていた。
(鬼役、精一杯努めさせていただきますねっ)
 救うためとはいえ、無理やり従わされた子に攻撃するのは避けたいと考えていた流江は、まゆ提案の『だるまさんがころんだ』に大賛成だった。
 一定のリズムで振り向きを繰り返すが、あえて調子を外してみるのも必要だろう。
「だーーるーまーさーんーが、ころんだ! はいっ、そこ腕が動きました!」
 変則的なコールに対応できず止まりきれなかった童子を見つけては指摘し、
「おや、足が震えていますが……まだ気のせいですね」
 危うい動きをしてる童子を注視してはコールを繰り返していく。
 その中でもいちごはよく頑張っている方であった。止まりきれないまゆは、何度も最初まで戻されてしまうし、アイも妖怪と隣り合った時に『何か』が起こっては最初に戻り……を繰り返しているからだ。
 もう少しでこの遊びも終わりが見えるだろう、いちごが流江の背後まで迫る。
「だるまさんがころん……だっ」
 伸ばした手が流江の身体に触れ、
「タッチ、ですっ」
「…あ、あらら?」
 いちごの宣言と困惑したような声がしたのは同時だった。おまけにいちごの手にはむにゅんとした感触がしっかりと伝わっている。
「あ」
 と零したのはどちらだったのだろうか。
 なにはともあれ、鬼は確かにタッチされ、だるまさんがころんだ勝負は『妖怪チーム』の勝利だった!
(最後ちょっと締まりませんが、遊びで満足して骸魂浄化されてればいいなぁ)
 残る感触を思い出しそうになって、慌てて背後の骸魂童子たちの様子を見やる。
「これはうまく行ったようですね?」
 と流江が言うように、骸魂童子たちはどこか満足したような笑みを皆が浮かべていた。ぱりんと澄んだ音がして。
「これは浄化大成功ですねっ」
 同時たちから靄のようなものが立ち上っていく様にアイが歓声を上げる。
 いつのまにかいちごにぴったりとくっついているまゆも、発案者として満足そうな笑みを浮かべていた。

 こうして校庭に集っていた『骸魂童子』たちはすべて『骸魂』から解放されたのであった。
 残るはあと1人……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『狐狸』つかさ』

POW   :    どろどろどろん!
戦闘力が増加する【巨大なダイダラボッチ】、飛翔力が増加する【上に攻撃力も高い鎌鼬】、驚かせ力が増加する【百面相をする釣瓶落とし】のいずれかに変身する。
SPD   :    化術大迷宮
戦場全体に、【トラップ満載の、化術で変化した自分自身】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    三種の妖器
【宝珠の力による不動の呪い】【巻物から発動した幻術】【瓢箪から吹き出た毒霧】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 配下の者が消えて、少女は少しつまらなさそうに頬を膨らませた。
「なんだ、もう終わっちゃったのー?」
 もっと遊べると思ったのに。
 学び舎は瞬く間に巨大な迷宮と化したのも全部そのためだったのに!
 出口を求め迷宮と化した校舎内をさまよう妖怪たちの姿を見るのが楽しかった。

(でもそれはつらい)

 『抜け道』から出てきた比較的『大人』の妖怪たちやこどもの姿の妖怪まで巻き込んで、これだけの人数がいれば、もっと遊べると思ったのに。

(でもこれでよかった)

 なのにどうして。
 おもちゃはこわれてしまった。否、こわされてしまった。
 もう少女の言うことを決して聞くことはないだろう。
 少女はぐるりと校庭を見回す、忌々しい『アレ』を。少女ははじめて『アレ』をみるけれど、すぐに何であるかわかった。
 アレ――すなわち猟兵は敵だ、倒すべき敵だ。

(ちがうそうじゃない)

 少女は一転、名案を思いついたというような表情できゃらきゃらと楽しそうに笑いはじめた。
「でも『つかさ』と遊んでくれる人まだたくさんいるね! さぁ! 私ともっと遊びましょう!」
 猟兵で遊べばいいのだ。
 それはとても良い考えだと少女――つかさは思う。
 猟兵はつかさのおもちゃをこわしたのだから、こわれたおもちゃのかわりになるべきなのだから。
- - - - -
●3章プレイング受付は7/15(水)8:31~とさせてください。
詳細はマスターページにて。
●ボス戦について
 『狐狸』つかさ
 狸の骸魂に『妖狐の少女つかさ』が飲み込まれた事で生まれた『狐狸』のオブリビオンです。
 オブリビオンですので倒せば妖怪は解放されます。
 猟兵の流儀で全力で攻撃するもよし、はたまた囚われている妖怪に呼びかけて動揺を誘うもよし。お好きなアプローチを試みてください。
 また敵の反撃UCは対策を提示していただければ回避可能となります。例えば動揺を誘ってみたり……?
 これまでの過程で様々なプレイングボーナスが発生しております(マスターページ参照)
 ぜひご活用くださいませ。
- - - - -
鳳凰院・ひりょ
敵の攻撃は黄昏の翼発動し上空に逃げ回避を試みる
先の戦いで解放された童子達に協力を申し出る
学校という事は放送設備もあるはず
マイクを手に学校内で協力してくれる事になった妖怪さん達の元へ出向き皆の声を届けてほしい
学校の怪談に出てくる妖怪さん達はもしかしたらエピソードがある場所から離れる事が出来ない可能性がある
俺達が今いるこの場まで来られないとするなら、この方法くらいしかない
妖狐に妖怪達が呼びかければ状況が好転する可能性がある
花子さん達、この任務中に猟兵達が出会った妖怪さん達の力が必要だ
戦いの場へ赴く形じゃないので妖怪さん達に危害が及ぶ事もなくて済むだろう
皆で力を合わせて妖狐を取り戻そう!



「ごめんね、放送設備を知らないかな?」
 妖狐の姿に動揺している童子たちに、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は声をかけた。それとは別に頼み事をひとつ。
 古い校舎とはいえ何らかの放送設備はあるはず、その予想通り心当たりがあるのだろう、案内を申し出た童子の後にひりょは続いた。

 放送室に鍵はなく機材はそのまま残されていた。どうか動いてくれと祈りながらひりょは電源を入れ――ガチャンと音がして機材が稼働する。
 ほっとしたちょうどその時だ、1人の少女が駆け込んできた。黒い髪。おかっぱ頭に、赤いスカート――トイレの花子さんだ。
「来てくれてありがとう、花子さん」
 ひりょが頼んだのは、彼女をはじめ協力してくれる妖怪をこの場所に呼んでほしいという事。そう願ったとおりに彼女はやって来た。であるならば、ひりょも約束を果たさねばならないだろう。花子さんや妖狐たちが楽しく暮らしていた日常を取り戻すために。
「花子さん、もうひとつだけ頼みがあるんだ」
 機材を調整しあとはマイクをオンにするだけの状態にして、彼女に操作を教える。
「俺は校庭に戻るよ。絶対つかささんのことは取り戻すから、だから彼女に呼びかけてほしい。きっと状況が好転する。ここなら安全だから、花子さんと他の妖怪さんたちの声を彼女に届けて」
 願いに、おかっぱ頭の少女は頷いて緊張した面持ちでマイクの前に座る。それを確認したひりょは放送室を後に、校庭へ向かうのだった。

「もう、こんなことはやめよう?」
 校庭に駆け戻ったひりょは、狐狸『つかさ』を諭すように声をかけた。こんな誰も笑顔になれないようなことは、もうやめるべきだ。
「いやよ! もっと遊びたいもの!」
 つかさ――いや狐狸は、話し合いの余地はないとばかりに宝珠へ手をのばす。宝珠は光を帯び、巻物は幻術を発動させ、不動の呪いが靄となってひりょへ襲いかかる。
(――翼よ、今こそ顕現せよ!)
 しかし、靄がひりょを捕らえるよりもわずかに早く、翼を象った黒白のオーラが彼の身を包み深夜の空へ飛び立つ。
 彼の持つユーベルコード【黄昏の翼】の効果だ。
「これならどう?」
 狐狸は負けないとばかりに瓢箪を構える。
 その時だ。チャイムが鳴ってマイクのスイッチが入る音が校庭に響く。
『つかさちゃん、聞こえる?』
 ノイズを伴うマイクを通した少女の声に、狐狸は確かに反応していた。ぴんとした耳は声を拾い、視線がスピーカーを探して彷徨う。
(これなら、皆で力を合わせて彼女を取り戻そうだな)
 後は骸魂と切り離すことができればつかさを取り戻せるはずだ。
 入れ替わり立ち返り妖怪たちの声が響き渡る校庭に残るのは、動きが鈍った狐狸のみ。
 解放の時は近いだろうと安堵して、ひりょは骸魂を破るために退魔刀へと手を伸ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
いいですよ、遊びましょう。ただし、一緒に、です。みんなが遊んでいるところをひとりで覗いていてもつまらないでしょう。
あっちではだるまさんが転んだや鬼ごっこが楽しそうでしたね。どろけい、こおりおになんかでもいいですよ。それとも決闘ごっこをご所望ですか?

遊ぶつもりならルールに従い、負けてもごねるのはなしの約束の下、全力で遊びましょう。
戦うというのなら、杖術で戦います。つかささんが変身するならその度に【退魔呪言突き】で強化された効果を打ち消します。攻撃力ではなくデバフ目的なので代償は短くても良いでしょうか。

一緒に遊ぶのにズルはダメですよ。ルールを守ればみんな一緒に遊んでくれますから。



「私ともっと遊びましょう!」
 きゃらきゃらと楽しそうに笑う狐狸『つかさ』に、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は、
「いいですよ、遊びましょう」
 と返した。
「ただし、一緒に、です。みんなが遊んでいるところをひとりで覗いていてもつまらないでしょう」
 その口調は、まるで幼子に言い聞かせるような響きを帯びる。あれで遊びたい、これで遊びたい。わがまま放題でおもちゃがこわれて八つ当たり。狐狸の姿は実際駄々っ子そのものだろう。
 当の狐狸は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、一転新しいおもちゃを得たとばかりに満面の笑みを浮かべる。
「おねえさんが遊んでくれるの?」
「ええ。あっちではだるまさんが転んだや鬼ごっこが楽しそうでしたね。どろけい、こおりおになんかでもいいですよ。それとも決闘ごっこをご所望ですか?」
 どちらにせよ、遙は遊ぶつもりなら『ルール』に従ってもらうつもりだった。それは単純明快。
「負けてもごねるのはなしの約束の下、全力で遊びましょう」
 遙の言葉に狐狸はいいよと笑って木の葉を取り出した。お得意の化け術でも使うのだろう。
「それじゃあ、おねえさん。私と遊んでね!」
 どろどろどろんと、狐狸はユーベルコードで化け術を使う。少女の姿から変化したのは鎌鼬だ。あくまで戦う姿勢をみせる狐狸は、飛翔力を増加させ夜空へ飛び上がる。
「あくまで戦うつもりですか? 戦うというのならば……」
 遙は杖を手に相対し、飛びかかってくる鎌鼬を鮮やかな手付きでいなしていく。
(――長き刹那の無力を糧に。生者を屍に、祝福を呪いに、強者は地に臥せよ)
 密やかに発動させたのはユーベルコード【退魔呪言突き】だ。
 指定した期間使用する力を代償にするユーベルコードは、遙の杖に鎌鼬がふれるたびに、増加させた飛翔力を打ち消していく。
(デバフ目的なので代償は短くても良いでしょうか……)
 威力は求めていない。狐狸が増幅させる力を削ぎ落とすことができればよいのだ。みるみるうちに失われていく力に、
「なんなのよ、それ!」
 悲鳴を上げた狐狸は再び巨大なダイダラボッチへ、そして釣瓶落としへと姿を変えるも、そのたびに遙のユーベルコードが効果を打ち消し無力化していく。
 木の葉を握りしめた少女は、次々に無力化される化け術に呆然とした表情を浮かべる。
 色違いの瞳が遙の茶の双眸と向き合う。
「ねぇつかささん。一緒に遊ぶのにズルはダメですよ。ルールを守ればみんな一緒に遊んでくれますから」
 へたり込む少女に、遙は優しく言い聞かせるような口調で説いた。
(これでわかってくれれば良いんですけど)
 あとは骸魂と妖狐の少女を切り離すだけ。そうすればここには穏やかな日常が戻るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

いい加減にしろよ…
貴様の遊び…悪戯はもう終わりだ…
ここに住まう彼らの安住の地を…そして…その子も返して貰うぞ!!!

[存在感と威厳]を放ち敵を[おどろかし恐怖を与え]立ち向かおう

敵の作り出した迷宮に【絶望の福音】を用いて
襲い来る罠を[見切り、ジャンプとダッシュ]で回避してゆき突破しよう

迷宮を突破出来たら霊剣を振るい
[破魔、浄化、除霊]による一太刀を浴びせて
少女に憑いた骸魂を切り裂いて、少女を助け出そう…!

夜明けは…もうすぐそこに迫っている…
妖怪達とこの廃校舎に安寧を…!



「いい加減にしろよ……」
 それは、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)の低い低い声だった。ふだんのどこかぼんやりとした声色はなく、まるで怒りを抑えたかのような声だ。
 狐狸『つかさ』の言い分はあまりにもめちゃくちゃだった。
「貴様の遊び……悪戯はもう終わりだ……」
 罪なき妖怪たちを閉じ込めて、多くの妖怪たちを巻き込んで、怯え彷徨う姿をあざ笑う姿。これに怒りを覚えるしかなかった。
「ここに住まう彼らの安住の地を……そして……その子も返して貰うぞ!!!」
 炎獄の執行人と化した彼女はその存在感と威厳を放ち、さすがの狐狸は恐怖を覚えたのかしっぽをぶわりと膨らませている。
「い、いやよ、ここは私が先に遊ぼうと思った場所だもの」
 それでも食い下がる狐狸に、アンナはわざと恐怖を与えるに黒の双眸で睨みをきかせる。
(これでおとなしくしてくれれば良いのだが)
 恐らくそうはならないだろう。
 いつでも霊剣を抜けるように手を伸ばすことを忘れない。
 引く気を見せない狐狸は木の葉を握って一歩後ずさる。
「うるさいわ! あなたなんてこれで!」
 叫ぶ狐狸の作り出した化術大迷宮が具現化するのに合わせて、アンナはユーベルコード【絶望の福音】を発動させる。

 狐狸の生み出す迷宮には出口はひとつしかなく、かなりの硬度を持つ。トラップ満載のそこに閉じ込めてしまえばアンナを無力化できると考えたのだろう。
 完成した迷宮に囚われたアンナは、けれど悠々と笑ってみせ、躊躇することなく駆け出した。
 彼女が進む先にはたくさんのトラップが待ち構えていた。床が抜ける落とし穴に、突き出る槍、上から岩を落としたり、矢を発射したり――待ち構えるそれらを、アンナはダッシュとジャンプを駆使して軽々と飛び越え、射線を見切って避ける。
 ――10秒先の未来をまるで見てきたかのように予想し回避する、それが【絶望の福音】のもたらす効果だ。
 今の彼女にとって、仕掛けられた罠はすべて予想できるものである。落とし穴があれば飛び越えればいい。槍も矢も回避し、仕掛けスイッチは触れなければ何の障害にもならない。故に、彼女が迷宮を駆ける速度は1秒たりとも落ちることもない。
 狐狸の想定以上の速さで迷宮を突破したアンナは、霊剣『芙蘭舞珠』を抜いていた。
 破魔と浄化、除霊の力を宿す霊剣を用いれば、先程のように骸魂のみを切り裂き、少女を助けることができるだろう。
(夜明けは……もうすぐそこに迫っている……。妖怪たちとこの廃校舎に安寧を……!)

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩波・いちご
【恋華荘】

遊びたいのでしたら、私達が遊びのお相手を務めますよ
『1つだけ転がっていたボール』を手に、ドッチボールを提案しましょう
「では、ゲーム開始ですっ!」

…って、いきなりアイさんアウト―!?
むむ、遊びとはいえ、負けるわけにはいきませんしね…
なら、【異界の顕現】で四尾の邪神の依代体に変化して自己強化

こちらが勝たないと、士さんも帰ってこれませんからね、全力で勝ちに行きます
ダイダラボッチの全力ボールを胸で受け止め
大きいその身体はただの的ですよっ!
全力投げで積極的にアウトを取りに行きますっ

さぁ、あと少しで勝利……って、え?
増えた尻尾にボールがかすったー!?
…すみません、あとお任せしますー


アイ・リスパー
【恋華荘】
「狐狸のつかささん!
ここは私たちとドッジボールで勝負ですっ!」

一緒に遊べば、つかささんも満足してくれるに違いありません!
ここまでに出会った、石膏像、人体模型、のっぺらぼうの3人(?)の妖怪に、つかささんのチームに入ってもらって、4対4のドッジボールを提案します。

「ええ、つかささんが勝ったら、私たちを好きにしていいですよ?
その代わり、私たちが勝ったら、何でも言うことを聞いてもらいますからね!」(びしっ、と指を突きつけ

他の妖怪たちとチームを組むことで、つかささんも友達と遊ぶ楽しさを知ってくれるでしょう!

「さあ、いざ、勝負です!
って、あれ?」

運動音痴のため、いきなりアウトになるのでした。


彩波・流江
【恋華荘】

つらい思いをずっと抱えてらっしゃったんでしょうね…ならここは平和的かつ刺激的に遊びましょう!

これまで出会った妖怪の皆さんも含めてのドッジボール、負けられません!
瞬く間にアイさんがやられてしまったのは想定外でしたし、いちごさんまでもアウトになってしまいましたが…

転がっていくボールを素早く確保、ボールを放った後のつかささんに向けて間髪入れず投げ返します

お互いが取り組む真剣勝負、楽しいと感じてくれているでしょうか
誰に支配されることもなく、ただこうするだけで「楽しい」はすぐそこにあるんです!
ですから…みんなと一緒に、楽しみましょう!

私の神気をありったけ込めて、【不縛の理】を届かせて見せます!


白雪・まゆ
【恋華荘】

つかささんも、遊びたい派なのですね。
なら、めいっぱい遊びましょうなのです!

今回は、ドッジボールでいきたいと思いますのですよ!

チームとしてましては、
学校の妖怪チームvs猟兵チーム

……人体模型さん、
ぶつけたらまたばらばらになったりするのでしょうか?

のっぺらさんは……表情がわからないのが怖いですね。

って、つかささん!?
「だいだら変化しての全力ボールは危険なのです!?」

つかささん、
これからもみなさまとたくさんいっしょにあそぶためにも、
はやくこっちに帰ってくるのですよー!

最後は、なんとか猟兵チームの勝利で終わりたいですね。
つかささんは、返していただきますのですよ!



 まだまだ遊び足りないという様子の狐狸『つかさ』に、恋華荘の4人は顔を見合わせる。
「遊びたいのでしたら、私達が遊びのお相手を務めますよ」
「つかささんも、遊びたい派なのですね。なら、めいっぱい遊びましょうなのです!」
 最初に彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)がそう言って、彼女(?)にいつのまにかぴったりくっついている白雪・まゆ(おねーちゃんの地下室ペット・f25357)が言葉を続けた。
「つらい思いをずっと抱えてらっしゃったんでしょうね……ならここは平和的かつ刺激的に遊びましょう!」
 彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)は優しく穏やかな口調で話しかけながら、いつのまにかその手にボールを抱えている。
「狐狸のつかささん! ここは私たちとドッジボールで勝負ですっ!」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は、さてはて、どこかで見たような気がするそのボールを指差して、勝負をもちかけたのだ。
「一緒に遊べばつかささんも満足してくれるに違いありません!」
 アイは意気込みチーム分けを提案した。
 ここまでに出会った、動く石膏像や人体模型、のっぺらぼうの3人(?)とつかさによる『妖怪チーム』チームと恋華荘のメンバーで組む『猟兵チーム』に分けての、4対4のドッジボール大会だ。
 他の妖怪たちとチームを組み協力し合うことで、つかさも『友達』と遊ぶ楽しさを知ってくれるだろう。
指名された人体模型と石膏像はガタガタと揺れている、どうやら賛成しているようだ。
(のっぺらさんは……表情がわからないのが怖いですね)
 おまけに狙いが読みにくそうである。人体模型は……当たるとバラバラにならないのだろうかと、まゆは少しだけ心配した。
 対してつかさはあまり乗り気ではないようで、ほっぺをぷくと膨らませている。
「……乗り気ではなさそうですが、つかささんが勝ったら、私たちを好きにしていいですよ? その代わり、私たちが勝ったら、何でも言うことを聞いてもらいますからね!」
 びしっ、と指を突きつけアイは宣言する。
「なんでも? うーん……それならいいよ!」
 狐狸は楽しそうにそれを承諾した。
 勝てばなんでも言うことを聞いてくれる。
 それはとっても魅力的な響きがある。悪戯好きとしては乗らないわけにはいくまい。 
「では、ゲーム開始ですっ!」
 両チーム代表者によるじゃんけんで妖怪チームが先攻となり、宣言とともに試合がはじまる。
 ボールを手にしてるのはつかさだ。
「さあ、いざ、勝負です! って、あれ?」
 つかさが投げたボールはまっすぐアイを狙ってきて、ぺちーんと音を立てて地面に転がり落ちる。
「……って、いきなりアイさんアウトー!?」
 いちごが悲鳴を上げるが、そう――アイは運動音痴でもあるのだ。受け止め損ねたボールがぽんぽんと跳ねながら転がっていく傍らで、アイがしょんぼりとしながら外野へ向かう。
「次はこれでどうかな?」
 つかさは笑って木の葉を取り出すと、どろんと巨大なダイダラボッチへ変身する。自陣に転がっていたボールを拾い上げて、視線は次の"標的"を探す。
「ダイダラに変化しての全力ボールは危険なのです!?」
 まゆの静止もむなしく、無慈悲にも"標的"に向かってボールは投げられた。
(むむ、私狙いですか。遊びとはいえ、負けるわけにはいきませんしね……)
 ならば、といちごはユーベルコード【異界の顕現】で四尾の邪神の依代体に変化して自己強化をはかる。代償は大きいが、ここでいちごたちが勝たなければ妖狐の娘も帰って来ることができない。
「全力で勝ちに行きます!」
 ダイダラボッチの全力のボールを胸で受け止めると、
「大きいその身体はただの的ですよっ!」
 いちごもまた爆発的に増加した戦闘力を利用し、全力でボールを投げ、ダイダラボッチが姿勢を整える前に討ち取る――つもりで投げたものはガードされ、2人の間でボールは何度もいったりきたり。しまったと思ったときには、返されたボールはいちごをかすめて転がっていく。
「そっちの狐のおねえさん、アウトだよ!」
(ボールがかすったー!?)
 その指摘どおりいちごの増えた尻尾を掠めていったのだ。
「……すみません、あとお任せしますー」
 アウトになったものは仕方がない。狐耳をぺしょんとしながらいちごは外野に移動した。
 妖怪チームが4人に対して、猟兵チームは流江とまゆと劣勢となってしまった。
「アイさんがやられてしまったのは想定外でしたし、いちごさんまでもアウトになってしまいましたが……」
 流江は転がっていくボールを素早く確保し、ボールを放った後のつかさに向けて間髪入れず投げ返す。
「これまで出会った妖怪の皆さんも含めてのドッジボール、負けられません!」
 投げられたボールをしっかりキャッチし、瞬時に敵陣へ投げ込む。視線の読めないのっぺらぼうに苦戦しながらもなんとか石膏像と人体模型を外野に追いやり(そしてまゆの想像どおり彼(?)はやっぱりバラバラになってしまったので一時休止を挟み)、なんとか2対2へ持ち込む。
 外野からはアイといちごのがんばれコールが聞こえてきて、思わず微笑んでしまう。
(お互いが取り組む真剣勝負、楽しいと感じてくれているでしょうか。誰に支配されることもなく、ただこうするだけで「楽しい」はすぐそこにあるんです!)
 がんばりましょうねとまゆに呼びかけて、流江はユーベルコードを発動させる。
「これからもみなさまとたくさんいっしょにあそぶためにも、
はやくこっちに帰ってくるのですよー!」
「ですから…みんなと一緒に、楽しみましょう」
 流江自身の神気をありったけ込めた【不縛の理】をボールに乗せて、
「届かせて見せます!」
 投げたそれは見事につかさに命中したのである。
 残ったのっぺらぼうは、まゆと流江の猛攻にさらされ、あっけなく外野へ追いやられ見事に『猟兵チーム』の勝利で試合は終わった。
「わーい」
 といちごとまゆはハイタッチして、アイと流江はほっとしたように笑いあった。
「さあ、つかささんは、返していただきますのですよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メグレス・ラットマリッジ
空も白み始める、もういいでしょう。
此処までに十分遊んだはず、その子に身体を返してあげて下さい。
従っていただけないのならご愁傷様、少しばかり怖い目にあうことになるでしょう。

有利な場所を陣取る為にまずは校舎の中へ
巨人には高い階層の抜け道から
鎌鼬には狭い場所で
釣瓶落としは特に無し

それぞれに応じた状況で、奥の手を顔面に突きつけます
そう、百八の対魔アイテムの一つ『油揚げ』!
夢にも思わぬ好物に狐は注目、意表に意表を重ねて頭真っ白なところを
雷の音と光で卒倒させるってえ寸法ですよ!

朝が来たら夢から覚めるのがお約束
他の猟兵の方から何か言葉があるなら掛けてもらうのもいいかもしれませんね



「空も白み始める、もういいでしょう。此処までに十分遊んだはず、その子に身体を返してあげて下さい」
 ここに来てどれくらいになるだろうか。来た時には真っ暗だった空の色は徐々に白み始めている。その空を見上げながら、メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)はそう告げた。
 メグレスをはじめとする猟兵に、猟兵たちがやってくる前は妖怪たちと、もう存分に遊んで満足しているはずだ。そろそろこの悪夢を終わりにして、目覚めるべき時間がやってくる。
 それでも狐狸『つかさ』は耳をふさいで嫌だ嫌だと首を振って駄々をこねる。
「まだ、まだ負けてないもの。あきらめないんだから!」
 涙目の狐狸は木の葉を片手にユーベルコードを使う。恐らくこれが最後となるだろう。
「……従っていただけないのならご愁傷様です。少しばかり怖い目にあうことになるでしょう」
 煙にまかれてむくむくと大きくなっていく影を見て、メグレスはより自身に有利な場所を陣取る為に校舎の中へ駆け込んだ。あの様子では狐狸が最初に変身するのは巨大なダイダラボッチであろう。階段を駆け上がって屋上まで出たメグレスは、ダイダラボッチを見下ろしながら武器を構える。
『――貴方は自分の影にさえ怯えることになる』
 ユーベルコード【招雷】による落雷の一撃に悲鳴を上げながらも狐狸はどろんと鎌鼬に変化し、メグレスめがけてその飛翔力を活かして突撃してくる。が、その動きを見越して彼女は再び校舎内に身を滑らせた。何も相手に有利な場所で戦う必要はないのだ。階段を駆け下りて、その後を追う鎌鼬は狭い場所に誘い込まれ機動力を殺される。
「ほらこっちですよ」
 まるで鬼ごっこのように、メグレスは校舎内を駆け巡っていく。廊下の角を曲がってメグレスは狐狸を迎え撃つ。遅れてやって来た狐狸が追い付いたと笑うその顔面に"奥の手"を突きつけた。
 そう、百八の対魔アイテムの一つ『油揚げ』である。
「狐の大好物でしょう?」
 まさかこんな場所で目にするとは。
 夢にも思わぬ妖狐の視線は、確かに好物に釘付けになっていた。
(意表に意表を重ねて……)
 その隙をついて、メグレスは再びユーベルコード【招雷】を用いる。間近で炸裂する、その音と光によって狐狸は卒倒させられた。
 ぱりんと澄んだ音がして、じわりじわりと倒れた少女から靄が立ち上っていく。先程の戦闘――骸魂童子の時と同じだ。恐らく、妖狐と骸魂と引き離せたのだろう。
「朝が来たら夢から覚めるのがお約束ですからね」
 倒れた彼女を抱きかかえて、他の猟兵が待つであろう校庭へ向かう。
 道中すれちがう妖怪たちが心配そうな顔をして、メグレスの腕の中の少女を覗き込む。それに大丈夫ですよと笑いかける。
「他の猟兵の方から何か言葉があるなら掛けてもらうのもいいかもしれませんね」
 他の猟兵も、そして協力してくれた妖怪たちも、きっとこの子のことを心配しているだろうから。
 赤と青がきれいなグラデーションを描き始めた空の下で待つ人たちのもとへ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月19日


挿絵イラスト