俺が救った筈のヒロインが全員ヤンデレだった件
「はぁー、はぁー」
息を切らせて走る。どうしてこうなった? 俺は勇者なのに、俺は英雄の筈なのに。誰も傷付かない答えを出した筈だ、誰も犠牲にしない選択だった筈。
「あっ!」
木の根に躓いて転んだ、そう思った。いや、そうだったら良かったのに。木の根が、俺の足を掴んで転ばせているなんて気付きたくなかった、考えたくも無かった。
「く、来るな……」
あの女達が、来る。
「お、お、俺に、俺に近寄るなぁー!」
「一昔前にやたら流行ったヤンデレと言うジャンルは今はもうすっかり見なくなったな。今ではそういう重い女は地雷呼ばわりだ……さて、事件の概要を説明する」
集まった猟兵にホログラムで現地の映像を見せながら解説する(自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット。
「今回の事件はアリスラビリンスだ。見た目はアックス&ウィザーズっぽいんだがな……何と言うか、ティピカルRPGな国になっている。住人は皆モブだしな。居る事は居るんだが、視界に入らないというか、不自然に顔が認識できないというか、色違いなだけの奴が多いというか」
次に表示させたのは一人の青年。線が細く、挙動不審で自信の無さが表情に出ている。
「で、アリスはこの男、剣崎拓也だ。産まれはUDC。見ての通りのオタクだ。今時逆に珍しい位の典型的なタイプだな。まあ、この男は自分がこの世界に勇者として召喚されて、魔王を説得してこの国を救ったと思わされている……そうだ、勇者の仲間も、魔王も。全てオウガの仕組んだ茶番だ。とは言え、妄想力に優れたこの男の妄想を力にするユーベルコードはそれなりに大した物ではあるのだが」
男を囲うようにして、何人かの少女達が立体表示される。
「勇者の仲間として共に戦ったヒロイン達がオウガだ。まあ、実際の所は見た目が悪そうなだけで特に害の無い住人を虐めて魔物退治と言い張ってただけなのだが……拓也は完璧に騙されている。自分がこの世界に必要な存在で、自分はこの国を救うために産まれて来たのだとすら思っている……本当は食料兼玩具なのだが」
その背後に、これまた一人の少女。
「彼女が魔王役のオウガだ。事ある毎に勇者の前に現れては意味深な台詞を残して去っていくのでヒロインの一人と認識されている……狙い通りにな。転送後の状況は一通りの茶番劇が終わった後だ。勇者の活躍によって魔王と和解し、国は救われ、その功績を讃えて魔王を含むヒロインの中から結婚する相手を選ぶ、と言うタイミングだ。誰とのエンディングを選ぶか決める場面な訳だな」
豪華なお城でのパーティ。国が平和になった事を祝うお祭り。全てが偽りだが。
「しかし、拓也は誰も選ばない。全員を幸せにする、と言い切ってしまう。さあ、どうなると思う? 大団円のハッピーエンドか? ……ヒロインがオウガである以上そうはならんがな。選ばれなかったヒロイン達が全員私を選ばないなんておかしいと言って、力付くで自分を選ばせようとしてくる。連中の算段としては、誰かが選ばれたらそいつが独り占めだったのだろう。なので、自分を選ばせようとはしている。しかし、誰も選ばなかったら全員で山分けだ。一人の人間をバラバラにして山分けだよ。見事に一番マズい選択をする訳だな」
パーツごとに切り分けられ、オウガに食べられる。文字通りの意味で。
「諸君はこのパーティ会場に入れる。役回りは……まあ、好きにしたらいい。直接的な勇者の仲間と魔王のポジションは取られているが、他はいい加減だ。拓也もモブの顔など覚えていないし、なんかこういう人も居たような気がするとでも思ってくれるだろう。一先ずは拓也の信用を得た方がいいだろう。拓也も誰も選ばないと決めてはいるのだが、悩んではいる。何だったら自分が奪ってしまってもいい」
すっと、横に手を振り全ての映像を消すと椅子に座って偉そうに腕を組むレイリス。
「私は見えた事件を解説するだけ。実際の決断は諸君に委ねるさ」
そして、眼前に転送用のゲートを開く。
Chirs
ドーモ、Chirs(クリス)です。ヤンデレってすっかり見なくなりましたね。一時期はまってたクチですが、愛が重すぎるのもやはり良くはない様子。
恋愛ゲーム的な描写は頑張りますが、成人向け描写は例によってばっさりカット致しますのでご容赦を。相手はヘタレのチェリーボーイなので過激すぎても引いちゃいますしね。
なお、勇者の仲間(オウガ)の設定は特に決まっていないのでこんなヒロインを出して欲しいというプレイングがあれば登場させます。まあ、第2章でそれと戦って頂く訳ですが。特に指定が無ければなんか適当な清純系、妹系、クール系、ツンデレ系とかティピカルヒロインを適当に出します。
今回も第1章は会話劇が中心になるので口調や性格が分かり易いプレイングだとありがたいです。当然の様にアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんのやりたい恋愛デスゲームのお手伝いが出来れば良いなと思う所存でございます。
第1章 冒険
『あべこべアミューズメントパーク』
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POW : スタッフを蹴散らし、アトラクションを破壊する
SPD : アリスの下へと駆けつけ、安全を確保する
WIZ : アトラクションを逆に利用したり、いっそ楽しんでみる
👑11
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シャルロッテ・ヴェイロン
〇SPD
まぁね、あまり聞いたことのないような展開ですが。ていうか、普通は魔王を倒してEDでしょう?
とりあえず私は王宮仕えの賢者という役どころでいきますか。
――以降は【演技】で――
(「アリス」の前に現れ)よくやりました、勇者よ。まずは国の危機を救ってくれたことに感謝します。
(で、勇者が結婚相手を選ぶ場面になって)さて、勇者よ、この中から必ず一人を選び、それ以外はすべて殺すのです。そうせねば近い未来、再びこの国に災いが訪れるとの予言がありました。
さぁ、勇者よ、この国に真の平和をもたらしたいならば、その【覚悟】を示すのです!(と、大仰な【パフォーマンス】を交えて語ってる)
※アドリブ・連携歓迎
伊敷・一馬
不採用含め全て歓迎だ!
まずは信用を勝ち取るのだ。周りにいるモブの皆様を失礼ながら退けて接近だ!
なるほど、ヒロインを選ばなくてはイケナイ訳か。なのに選べず皆を救おうと…その優しさ、まさしくイエス☆
しかし自らに自信のない表れではないか有栖君!
(剣崎だべ)
そう、君には自信がないのだ。変わる心こそ人が美しくなるヒケツッ!
さあ私と一緒に声を大にして叫ぶんだ。私はカッコイイと!!
UC発動、貧弱なボディー君の体をマッチョにして有栖君にアピールしよう。
オウガなどにヒロインの座は渡さんッ。見よ、半永久的に不滅な美しきに勝るこのボディー!
んジャァアスティイーッ!!
(あ、セキュリティさん、こいつが変態だべ)
御宮司・幸村
すっきっとっか キライとかー
フフンフ…
おっと、これ以上はイケないー
そっかー、要はヒロイン(オウガ)以外に目を向けさせれば良いんだよねー?
拓也君、とりあえずゲームしよー
気分転換になるだろうしさ
恋人選びにゲームだとセーブして気に入らなければリセットしてやり直せるけど
リアルはそうもいかないじゃん?
そーこーで!
じゃじゃーん(ゲーム機とメモリー媒体を取り出す)
1回シミュレーションしようではないか!
拓也君なら大丈夫だろうけど、予行練習だと思って、ねっ!
とか何とか【言いくるめ】つつUC発動ー!
ファンタジーだからファンタジー系恋愛SLG
ときめいてしまえば、あとはキャラに命じて猟兵サイドで保護しちゃうよー!
木霊・ウタ
心情
最期に絶望を与える為
三文芝居とは
っとにオウガ共は性悪だぜ
拓也は素直な奴なんだろうな
…まあハーレムエンドは難易度高いけど
これを機に成長の手助けも出来たらいいけど
ちょっと欲張りすぎ?
手段
吟遊詩人っぽい役でパーティに
まずは拓也と
よっ勇者
お疲れさん
皆の期待に応えて大変だったな
勇者へアドバイス
自分の目で見ろ
で自分で決めろ
周りの期待はどうでもいい
周囲から好かれようが嫌われようが
自分は自分だ
何も変わらない
皆を助けたい、力になりたいって
思った気持ちは本物だ
それは忘れんなよ(ぐっ
ステージで今回の冒険?を歌い語る
ラスト近くはこんなフレーズ
そう皆は人食い鬼だったのです
ここからは鬼退治の物語の始まりだぜ(じゃん
鈴木・志乃
なんだこの地獄絵図。
恋愛ゲームは詳しく無いんだけどなァ……。
拓也の思考に待ったをかける
憔悴し切った住人を装う(UC発動)
勇者様お待ちください! 良かった、間に合って……。
まだお選びになってはいけません。
この国にかけられた呪いは解けていないのです。
貴方様が今まで倒して来られた者達は
昔呪いをかけられ悪魔となった人々
(高速詠唱で適当に過去の悲劇の映像をでっちあげ)
今彼方に坐す女性達も呪いがかかっています
このまま誰かを娶っても、娶らなくても
彼女らは貴方に牙を向けるでしょう
その証拠に、あの者らの表情をご覧ください
(適当に矛盾指摘やでっち上げ。これを解決するには倒すしか無いとか言う)
どうかご決断を…
●花嫁選び(全員地雷)
「ふぃひ、ふぃひひひ、こ、これで俺が、勇者で、花婿で……つまり、アレとかコレとか出来る訳だなァー? フィーヒヒヒ!」
祭り上げられた勇者、剣崎拓也は割とこんな奴である。
「リミ、ナナミ、コズピィ、ユノア、セリカ、ノノ、ヒナエ、ハナ……アアー! 誰にしようかなぁ、誰にしようかなぁ……」
共に戦った仲間達の姿を思い浮かべ、妄想する。
『もちろん、私を選んでくれるよね? だって、私がキミを見つけたんだから!』
『その、お兄ちゃんがいいっていうなら、いいよ?』
『コズピィを好きにしてもいいのだー』
『私を選ぶよね? 私を選ぶ、私が選ばれる、私以外ありえない、私を選ぶに決まってる……私を選ぶ』
『おっけー、タクのお嫁さんになるよ!』
『そう、私を選ぶんだ……意外、だけど嬉しいな』
『それ、言葉にしてもらっていいですか? ……先輩、本気じゃないですかぁ』
『…………好き』
「アアアアアー!? 選べない、選べないよぉぉぉ!」
ベッドの上で悶絶する勇者タクヤ。
「どうにかして全員俺の物に出来ないかな……」
誰も傷付けたくなかったとか言ってたけど本音はこんなもん。
●ときめかせるメモリアル
「すっきっとっか、キライとかー、フフンフ……おっと、これ以上はイケないー」
そうだね、歌詞は危ないからね。男は鼻歌を歌いながら悶絶する勇者の部屋の扉をノックした。
「拓也君、今大丈夫ー?」
「だ、だだだ、だれぞ!?」
部屋の中で何かガサゴソしている。ナニしてたんだお前は。
「な、な、なんの用だよ……俺は、勇者だぞ……?」
「とりあえず入ってもいいかなー?」
「…………ドゾー」
それなりに考えた後、許可を出したタクヤ。
「じゃあ、お邪魔するねー」
後ろ手に何かを隠し持ちながら入って来たのは御宮司・幸村(いいかげんサマナー・f02948)
「お、おっさん、誰? いや、てか、おっさん……?」
疑り深く挙動不審な勇者タクヤは即座に違和感を覚えた。この世界に来て以降初めて見たおっさんだ。中年男性が居ない訳じゃない。でも、どうにも全員同じ顔に見えるというか、不明瞭に顔を識別できないというか……まあ、相手の目を見て喋れない勇者タクヤにとってはあまり関係ない事ではあったが。
「ま、まさ、まさか……黒幕とかか!」
勇者タクヤなりに考えた結論らしい。とりあえず敵、とりあえず危険、とりあえず避けたい。
「いやいや、おじさんはただのおじさんだよー?」
「お、おれ、おれの傍に近寄るな……何の用、ですか?」
勇者と言う称号とは真逆にヘタレな拓也君。人見知りも激しいのでとりあえず敬語だ。
「拓也君、とりあえずゲームしよー。気分転換になるだろうしさ」
「は、ゲーム? 今ゲームって言った?」
好きな事には食い付きの激しい勇者。
「い、いやぁ、この世界でゲームって……ハード、無いじゃん」
「そーこーで! じゃじゃーん」
「おおおお、おま、おまそれ! ハードキター!」
幸村が後ろ手に隠し持っていた携帯ゲーム機を差し出すと凄い勢いで食い付いてきた。
「恋人選びにゲームだとセーブして気に入らなければリセットしてやり直せるけど、リアルはそうもいかないじゃん?」
「おま! リアルにそんな事したら鬼畜過ぎ! NTRとか俺のシマじゃノーカンだから!」
そんなこんなでつい夜が明けてしまった。
「ふうー、全実績解除完了」
「お疲れー、凄いねー?」
用意されたのはファンタジーだからファンタジー系恋愛SLG。幸村は事前にイベント前セーブデータを用意してあったが、勇者は「そんなのは無粋。全部自力でやるべきそうすべき」と鉄の意志力を見せて貫徹でフルコンプしたのだ。
「あー、ゲームはいいわー、選ばれなかったヒロインとか考えなくていいし」
「君、案外ちゃんと考えてるねー?」
「いや、だって結婚だよ? 鉄板は幼馴染だけど、だからこそ逆を選ぶべきってのもあるじゃん」
幸村ともすっかり打ち解けたようだ。
そんな事を幸村が考えていると使者がやって来た。
「勇者タクヤ様! 式典の準備が整っております。王の間へお越しください」
「え、あ、いや、ちょっとま」
「勇者タクヤ様! 式典の準備が整っております。王の間へお越しください」
「分かった、分ったよ……全く、嫁以外は本当に人の話を聞かないな……おっさん、ありがとな。久々にゲーム出来て楽しかったわ」
一夜の貫徹などなんのその。勇者は軽く身支度をしながら幸村に礼を言う。
「どういたしましてー」
……今この場で確保してしまってもいいけど、既に”条件”は満たしてある。他の猟兵の仕込みもあるだろうし、今はこのままリリースかなー?
そんな事を考えながら幸村も王の間へ一緒に向かう事にした。
●何事も筋肉で解決するのが一番
「勇者タクヤを称えよ!」
「タクヤ様!」「タクヤさま!」「タクヤさまー!」
「お、おお、おう……」
それなりに身なりを整えた勇者タクヤは民衆の歓声に軽く手を振って応える。
馬子にも衣裳だ。その貧相な体付きは鎧を着ると言うより鎧に着られているという感じだが、実はこの鎧は見た目相応の防御力はありながら普通の服並みに軽い。魔法の鎧だ。
宿屋から王の間へ向かう通りを歩いていると何かが群衆を掻き分けて近寄って来た。
「な、なな、なんぞ……?」
今度こそ黒幕か? あまりに都合が良い展開に元から疑問を抱いていた勇者はその腰に下げた剣の柄に手をかける。
「有栖君!」
近寄って来たのはひょっとこ頬っ被りの赤ジャージの平々凡々な男、伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)
いや、コレが黒幕はないわー、超ないわー。そう判断した勇者はそっと手を下す。
「話は聞かせてもらった。なるほど、娶るヒロインを選ばなくてはイケナイ訳か」
「そ、そ、そう、ですけど……いや、誰? 何?」
「ずばり、誰を選ぶ?」
「い、いや、こんな公衆の面前で……って言うか、今言ったらネタバレ過ぎだろJK」
「知っているよ、君は誰も選ばないつもりだ」
その内心を言い当てられてギクリと顔が引きつる勇者タクヤ。
「そ、そういう、こともある、かも……」
「選ばなければいけないのに選べず皆を救おうと……その優しさ、まさしくイエス☆」
「は、はあ……いや、そうと決まった訳じゃ」
「しかし、自らに自信のない表れではないか有栖君!」
「お前も話を聞かない系かよ! って言うか有栖君じゃねえし! 護業抜刀法とか……いや、近い事は出来なくはないけど」
強引に群衆を押しのけるわ、一方的に話を進めるわで、昨夜の幸村とのやり取りを思い出したのか語彙が荒くなる。
そして気付く。この男も、変だ。
「そう、君には自信がないのだ。変わる心こそ人が美しくなるヒケツッ! さあ私と一緒に声を大にして叫ぶんだ。私はカッコイイと!!」
ジャージの上半身が弾け飛ぶ! 一瞬にしてパンプアップする筋肉! 後光指すゴリマッショでダブルバイセップス! この男は変態だ!
「いやいやいや、意味が分からないですしおすし!」
「オウガなどにヒロインの座は渡さんッ。見よ、半永久的に不滅な美しきに勝るこのボディー! んジャァアスティイーッ!!」
サイドチェスト! キレてるよ! 肩にちっちゃいジープのせてんのかい!
「衛兵、衛兵ー!」
「な、なにをするだー!」
「話は詰め所で聞かせてもらう」
衛兵はオブリビオンではないので暴力で排除する訳にも行かず、連行される筋肉。
「アイルビーバック!」
「帰ってこなくていいから! 色んな意味で!」
●運命の選択
王の間には見知った仲間たちが集まっていた。
「リミ!」
「タク! いよいよだね……」
「そ、そうだね……」
「タクが選ぶんだからね。私に気を使わなくていいよ……でも、信じてるから」
「う……」
健気なリミの態度に思わず揺らいでしまう勇者タクヤ。
「えー? タクはセリカをお嫁さんにしてくれるんじゃなかったの?」
そこにセリカが待ったをかけた。
「ねえ、あの時誓ったよね? ……君を幸せにするって」
「いやいやいや、それ魔王だった君を説得するって意味だからね!?」
「ええー?」
不服そうに頬を膨らませるセリカ。
「私を選ぶよね? 私を選ぶ、私が選ばれる、私以外ありえない、私を選ぶに決まってる……私を選ぶ」
「ユノアさん、五段活用で迫らないで頂けますか」
「その、お兄ちゃんがどうしてもって言うなら……私達、血が繋がってないし」
「うん、繋がってる筈が無いんだよなぁ」
「タクが誰を選ぼうとも、お姉ちゃんは一緒だよ」
「うん、お姉ちゃんも平常運転だね」
『コズピィを好きにしてもいいのだー?』
「こいつ、直接脳内に……そう言いつつ君はいつでも好きに生きてるよね」
「…………」
「ハナはたまには何か喋って! 戦闘時の真言以外で!」
「ねえねえセンパイー、一体誰を選ぶんですかコノコノー!」
「ヒナエちゃんを選ぶよ」
「あ、嘘なんだ。そっかー、ヒナエ悲しい」
「え、ちょ、ま……それ反則」
一気に賑やかになる勇者一行。それを緊張の面持ちで見ている猟兵達。そう、このヒロインは全員オウガだからだ。このやり取りも全てが茶番。
「よっ勇者! お疲れさん。皆の期待に応えて大変だったな」
一行に声をかけたのは吟遊詩人を装った木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「いや、皆の為ならいくらでも頑張れるし」
仲間の前で虚勢を張っているのか、今までの自信が無い態度が鳴りを潜める。
「お祝いの歌を一曲弾かせてもらうぜ」
ウタはアコースティックギターを爪弾き弾き語る。
『自分の目で見ろ 自分で決めろ 周りの期待はどうでもいい
周囲から好かれようが嫌われようが 自分は自分だ 何も変わらない』
それが決断の時を後押ししたかのように。勇者タクヤは遂に決断の時が近いと感じる。
「よくやりました、勇者よ。まずは国の危機を救ってくれたことに感謝します」
王宮仕えの賢者に扮したシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が静かに語りかける。
「さて、勇者よ、この中から必ず一人を選び、それ以外はすべて殺すのです。そうせねば近い未来、再びこの国に災いが訪れるとの予言がありました」
「は……え?」
そこで、勇者の頭はフリーズした。全員、殺す……?
「何を、言って……」
「勇者様お待ちください! 良かった、間に合って……」
それを後押ししたかのようにどこか遠くから走り続けて憔悴し切った住人を演じている鈴木・志乃(ブラック・f12101)が王の間に飛び込んでくる。
「まだお選びになってはいけません。この国にかけられた呪いは解けていないのです」
「な、呪い……? え、そうなのセリカ」
「あ、うーんバレちゃった」
てへっとわざとらしく頭を小槌てセリカがお道化る。
「貴方様が今まで倒して来られた者達は昔呪いをかけられ悪魔となった人々」
高速詠唱で紡がれるのは人々が異形化し、モンスターにされる映像。
「え……? なに、これ」
「ふーん、そこまでバレてるんだ」
魔王セリカは地を蹴り、王座の上に立つ。魔王の豹変に只ならぬ物を感じた人々は我先にと王の間から逃げ出し始める! 衛兵を率いたひょっとこライダーが秘かにその避難を誘導し、この場に残ったのは勇者一行と魔王、そして猟兵。
「さぁ、勇者よ、この国に真の平和をもたらしたいならば、その”覚悟”を示すのです!」
「セリカと戦うだって……今更……どうして!」
「今彼方に坐す女性達も呪いがかかっています。このまま誰かを娶っても、娶らなくても、彼女らは貴方に牙を向けるでしょう」
「タク! そんな人の言う事を信じちゃ駄目!」
勇者一行、その仲間を装った彼女達は勇者タクヤを中心に陣を組む。
『皆を助けたい 力になりたいって 思った気持ちは本物だ それは忘れんなよ』
ウタの演奏がサビに入る。
「そう、だ……誰も、犠牲にはしたくない……!」
勇者タクヤは剣を抜く。蒼白く輝く、妄想の剣。それは、妄想であるが故に質量を持たず、妄想であるが故に折れる事は無く、ただ触れた物を消滅させる剣。
「お前達……何者だ。セリカの手下じゃないな」
その剣を手にした彼は、たとえ鎧に着られていようとも、紛れもなく勇者であった。
「今だね」
その時、虚空から現れた少女の小指が勇者の小指と繋がり、釣り上げられる! ナイスフィッシング!
「ごめんねー。君のヒロイン、彼女達じゃないんだわ」
その少女を呼び出した幸村がその事実を告げる。
「は……え?」
幸村の近くに降り立った勇者タクヤはその瞬間、信じられない物を見た。
嗤っているのだ。彼女たちが……長旅を共にした少女たちが。
「今の表情をご覧になられましたね。事実です、彼女たちはあなたを殺して食べるつもりです。そのままの意味で」
「勇者君、あまり聞いたことのないような展開ですが全部嘘だったんですよ」
もはや演技は不要、と志乃とシャルロッテが拓也を守る様に立つ。
「そんな、そんな事……」
拓也自身も心当る節があったのだろう。彼女たちが、秘かに囁き合っている所を。時折見せる異常性を。ヒロインとして見ていた時は愛嬌かとも思ったが。
「ねえタク、そんな人達の事を信じちゃうの?」
「リミ、どうして……」
「あーあ、嘘じゃないや。残念だなぁ」
「ヒナエちゃん!? どうして……嘘なんだろうこんな事!」
『あーあ、猟兵に無理矢理邪魔されるなんて考えてなかったの』
コズピィとヒナエが身の丈を越える巨大な武器を振りかざす。
「あ、ああ、あああ……」
剣が、拓也の手を離れ、尻餅をついて後退る。
「有栖君! 立ちたまえ、状況はシンプルになったと言える」
避難誘導を終えたひょっとこライダーが敢然と立ちはだかる!
「そう皆は人食い鬼だったのです。ここからは鬼退治の物語の始まりだぜ!」
ジャン! と演奏を締めくくりギターから焔摩天に持ち替えたウタも!
大成功
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第2章 集団戦
『閉幕のアリス』
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POW : ハートボム(打撃武器運用)
単純で重い【ハートボム】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ハートボム(投擲武器運用)
【接触地点で大爆発するハートボム】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : ハートボム(射撃武器運用)
レベル×5本の【愛】属性の【着弾地点を貫く、ハートボム】を放つ。
👑11
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●勇者と閉幕のアリス
「あ、あああ、あああああ……」
拓也は崩れ落ちたまま動けない。彼女達の実力を知っているから。
「私達の愛を」
「受け止められないタクなんて」
「いらない、よね」
殺される。あっという間に。いや、殺してくれるならまだいい。
『どかばきぐしゃーってするの』
「大丈夫、お姉ちゃんは味方だから……なるべく長く生かしておいてあげるから」
簡単には殺してくれない。
「お兄ちゃん」
「センパイ」
「どうして逃げるの? 逃げるなんておかしい。貴方が逃げる筈が無い。貴方は勇者だから。勇者は私達と戦う。そして、私は右腕がいいな」
「駄目駄目、そんな美味しそうな場所はあげないよ」
「……モツも美味しいよ」
自分を殺して食べる算段をしている!
「ああああああ!!」
嘘だ、妄想だ、こんなのはいつもの妄想なんだ……
シャルロッテ・ヴェイロン
まぁようやく、現実を受け入れたってことですね、自称勇者くん。
名もなき村人にも劣るようなヘタレ野郎のことなんざ、誰も本気で愛してくれるわけないってことに(掃きだめを見るような目でにらみながら答えてる。一応救出対象なのだが慈悲はない)。
さて、こんなモブ未満なファック野郎ですが、あなた方に喰わせるわけにはいきませんねぇ(当然、オブリビオンにはもっと慈悲はない)。
てなわけで、「ハートブレイク」なやつを食らわせてやりましょう。【先制攻撃・2回攻撃・一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃・誘導弾・破魔】
※アドリブ・連携歓迎
御宮司・幸村
とりま、拓也君?
昨日のプレイ見てて思った、お主…出来るな
ゲーマーに悪人はいないと思う訳
だからさーおじさんを信じて、少し籠もってて貰えるかなー?
(UC自宅警備室ポータブル発動)
さてと…本目はコレ!
ユキムラビックリショー!
POWタイプの集団戦
一撃が重いとなると…
理想
多数対単体に対応出来、かつ重い一撃をさらりと躱す機動力!
そう、戦闘機!!
アリス題材だとアレがいいよね!
当たらなければ意味が無い、なので装甲は最小限!
軽量化により航行速度は最・高・潮!
おじさんの戦闘機に疑う余地は無い!
理想の戦闘機だから、ボムは無限
更にパワーアップも上限状態!
まあ、無敵だけどちゃんと避けるけどね!
ゲーマーの誇示って奴?
鈴木・志乃
早業高速詠唱でタクにオーラ防御展開
落ち着かせるように声かけ
大丈夫、大丈夫だから落ち着いて深呼吸、ね。
私達は貴方を守る為に遣わされた騎士なんだから
もし古傷とかあれば高速詠唱で治しておくよ
今までの仲間が皆ヤンデレだった衝撃
それから追われる恐怖も分かるから
……いっそシリアスブレイクした方がいいよね?
第六感で行動を見切り回避
念動力で鎖を操作し締め上げる
自分の武器のリーチを活かして、積極的に足払いも狙って行くよ!
隙が出来たら高速詠唱で足止めして鎧砕き出来る魔改造ピコハンで早業2回攻撃する
そしてこれは、踏み躙られたアリスの分だ!
人の恋愛感情を弄ぶやつは恋愛感情で塗りつぶす!!
UC発動【精神攻撃、マヒ攻撃】
木霊・ウタ
心情
さあて鬼退治だ
覚悟しな
…にしても異世界転生ものをオウガも勉強してんだなー
拓也
今はどんな気分だ?
怒り
悲しみ
絶望
どれでもいい
その気持ちを込めて剣を振え
自分を騙し喰おうとしてる奴らと戦え
喰われたくなかったらやるしかない
俺たちが一緒に戦ってやる
お前の力は本物だ
奴らを消しちまえ
できると思えばできる
自分を信じろ
言っとくけど
また鬼に騙されんなよ
可愛い顔に注意な
戦闘
拓也を庇う
獄炎纏う焔摩天を振い鬼共を纏めて薙ぎ払う
敵の防御ごと砕く
炎が敵の武具を白熱させたり脆くしたりさせるぜ
防御は炎壁を生み出しつつ武器受け
受傷時は獄炎をくれてやる
トドメを拓也にさせてやりたいけど
拓也の安全を第一に
万が一に注意を払っておく
伊敷・一馬
不採用含め全て歓迎ッ!
有栖君、君の危機にアイム・バック!
見れば見るほど可憐な乙女たち…彼女らを傷つけるなどぉりゃああっ!
話ながら気合爆発、清廉潔白な正義タックルだ。
見るのだ有栖君、恐れるな。彼女たちは大地に足つく存在ならば同格!
君が倒せぬ道理なしっ!
(せっこい技の後に道理詐欺しないで欲しいだ)
さて、貧弱なボディー君では話にならない。マッチョも先程使ってしまったし、熱血ヒーロー・ガジェットアーツ!で仲間の援護を優先だ。
隙を見ればUC使用。
命短し恋せよ乙女。君たちにとって有栖君はスイーツ男子なのだな…たが食べさせる訳にはいかん!
食人はオウガになってから!
(おめーの目の前にいんのがオウガだぁ)
アイリス・レコード
大丈夫ですか!?
アイリス・レコード、助太刀に来ました!
【POW】
拓也さんを守るように前に出ます
多少の傷であれば「激痛耐性」で耐えてアリスランスで攻撃をし、拓哉さんが逃げる時間を稼ごうとします
ですが、複数やUC相手では耐え切れず、最初の「人助けの騎士」から「気弱で臆病な少女」に言動が戻り、オウガに追い詰められたところで恐れと怯えが最高潮に達し……
UCが発動、「アイリス」は消え、アイリスの中のアリス達の断片、顔も輪郭も曖昧な老若男女のアリス達が出現し、死への恐怖を拭う為に殺戮を開始します
戦闘が終われば「アイリス」に戻りますがその間の記憶はないので拓也さんが私に向ける怯えの原因も分らないでいます。
●ヘタレか勇者か
「まぁようやく、現実を受け入れたってことですね、自称勇者くん。名もなき村人にも劣るようなヘタレ野郎のことなんざ、誰も本気で愛してくれるわけないってことに」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が掃き溜めを見るような目で拓也を睨む。
「い、い、いや、いやだ……殺さないで、殺されたくない!」
「とりま、拓也君? 昨日のプレイ見てて思った、お主…出来るな」
御宮司・幸村(いいかげんサマナー・f02948)の差し出した小さな鍵。
「ゲーマーに悪人はいないと思う訳。だからさーおじさんを信じて、少し籠もってて貰えるかなー?」
触れた無抵抗な相手を避難させるUC。中は古今東西のゲームが遊べる、快適な部屋……剣崎拓也に取っては正しく渡りに船。断る理由なんて何もない提案だった。
「だ、だ、だが断る」
しかし勇者は断った!
「こ、こ、この剣崎、拓也は……所謂、オタクのレッテルを張られている……実績フルコンプしたゲームは数知れず……で、で、でも、立ち向かうべき場面は、知ってる……」
がたがたと震えながら、その手で何かを握る。その手の中には何もない。
「こ、こ、この剣崎拓也が最も好む事の一つは……絶対に断られる筈が無いという提案を、NOと断ってやる事だ!」
「へぇ、少し位は勇者らしい事も言えるんだ」
少しだけ、勇者らしい一面を見せた拓也にシャルロッテが心底意外そうに言った。
(言って、言ってしまった……!)
意外な勇気を見せた拓也だったが、
(か、完璧すぎる『だが断る』の状況に……思わず……!)
割と自分で言った事を後悔していたりするの。
「そこまで言うなら仕方ないねー」
幸村もそれ以上に勧めはせず、
「んじゃ、おじさんも頑張っちゃおっか」
幸村の思い描く理想のフィギュアサイズの戦闘機を作り出す!
(やっぱり守って貰っちゃ駄目ですかー!?)
「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて深呼吸、ね。私達は貴方を守る為に遣わされた騎士なんだから」
鈴木・志乃(ブラック・f12101)も拓也を守る様に立ち、オーラの防御膜を展開。
「今はどんな気分だ? 怒り、悲しみ、絶望。どれでもいい。その気持ちを込めて剣を振え。自分を騙し喰おうとしてる奴らと戦え。喰われたくなかったらやるしかない。俺たちが一緒に戦ってやる!」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が語りかけながら巨大剣『焔摩天』を構える!
「お前の力は本物だ。奴らを消しちまえ。できると思えばできる! 自分を信じろ!」
(今更つい言っただけとか言えない!)
「やれば……やればいいんだろう!」
イメージする、思い出す。この世界に来た時を、あの場所にあった物を。あれは、多分何の変哲もない街灯か何かだった筈……でも、あの時にあの場所で。それは確かに”剣”に見えた。
だからその剣を手に取った。蒼白く輝く、大きな剣を。
●幕は既に下ろされていた
「私達に、その剣を向けるんだ」
くすくす、うふふと嘲笑する、もはや本性を隠しもしない『閉幕のアリス』達。ハートを象った鈍器を各々の形でその手に握る。
「奪い様が無い物ね、その剣だけは」
「タクヤの妄想だもの」
「そう、あの時私を助けてくれたお兄ちゃん。なのに、今度は私を殺そうとするの?」
「う、うう……なんでだ、どうしてだよ……俺を殺すつもりならチャンスなんていくらでもあったのに」
「そうよねタクヤ。お姉ちゃんはずっとタクヤの事を見て来たから」
「タクヤは私を選ぶよね……タクヤが私を選ばないなんておかしい。タクヤは私を選ぶべきなの。私を選びなさい。私を選べ。え・ら・べ」
「やめろ、やめろやめろやめろぉ!」
「見れば見るほど可憐な乙女たち……彼女らを傷つけるなどぉりゃああっ!」
その会話を断ち切る様に伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)が気合爆発、清廉潔白な正義タックル!
「……止まれ!」
オウガの一人が真言の壁を展開するもUC未満の偽装能力では歯が立たず! バッファロー殺戮武装鉄道めいたタックルが障壁ごと轢殺粉砕!
「サヨナラ!」
爆発四散!
「は、ハナー!?」
「見るのだ有栖君、恐れるな。彼女たちは大地に足つく存在ならば同格! 君が倒せぬ道理なしっ!」
せっこい技の後に道理詐欺しないで欲しいだ、と誰かが呟いた気がする。
「だから有栖君じゃない!」
「よくもハナを殺したなぁ!」
オウガの一人が身の丈以上の巨大なハートを象った鈍器を振り上げ、振り下ろす! 軽々と!
「ジャストガード!」
光り輝くボーに変形した熱血ヒーロー・ガジェットアーツ! がそれを往なす! カウンターのミドルキック!
「ンアーッ!」
「命短し恋せよ乙女。君たちにとって有栖君はスイーツ男子なのだな」
大物の武器で至近距離戦は不利! 背面跳躍で距離を取ろうとするオウガ!
「たが食べさせる訳にはいかん!」
それを謎のポーズとともに発せられる閃光が照らす! 怯むオウガ!
「何の光!?」
「見るがいい、燃え尽きる程の……ぬぅうん……ジャスティーィイッ!!」
その一瞬の隙に高高度へと跳躍したのひょっとこライダーが自らを火の玉としたジャスティスカラテ奥義バーニングプレス! 燃え尽きちゃ駄目でねぇべか? と言う誰かのツッコミもなんのその!
「ヒナエ、ヒナエが……」
「さて、こんなモブ未満なファック野郎ですが、あなた方に喰わせるわけにはいきませんねぇ」
「邪魔者を排除してくれるのは良いのだけれど」
「私の邪魔をするのは許さない!」
ハートを象った銃と弓を手にしたオウガがシャルロッテに無数のハートボムを飛ばす!
「てなわけで、『ハートブレイク』なやつを食らわせてやりましょう」
ハートを砕く貫通属性の攻撃プログラム展開展開! 弾幕を張り返して押し返す!
「弾幕ならお任せってねー」
そこを突き抜ける白金の翼! 幸村の操る戦闘機だ!
「ランサー、ウッドペッカー一斉射!」
中距離対空ミサイル、短射程空対空ミサイルの一斉発射がオウガの本体に突き刺さる!
「ンアーッ!」
「フルチャージ完了、アサルトブレイカーはこう使うんだよ!」
最大までチャージされた荷電粒子ビームがその身体を貫く!
「サヨナラ!」
「ああ、ノノ……」
爆発四散!
「こんなの認めない、認めてなる物ですか、絶対に認めない、認めない、み・と・め・な・い」
「いい加減それも聞き飽きたんだよ!」
元々二人で拮抗状態を作り出していた物。片方が落ちれば押し倒されるのは必然! オウガ本体に攻撃プログラムが突き刺さる!
「くっ、こうなればそのうっとおしい奴だけでも!」
「おっと?」
狙いが幸村の戦闘機に向けられた! 全方位から迫るハート弾幕……避ける隙間は、無い!
「死ね!」
「当然ボムるよね」
機体から放たれる強烈な閃光がハートの弾幕を消し飛ばす! バスターグレネードだ!
「その硬直は頂く!」
「サヨナラ!」
シャルロッテの収束した攻撃用プログラムがオウガを貫く! 自爆コマンド強制実行! 爆発四散!
「ユノア……」
●おや、勇者の様子が……
「言っとくけど、また鬼に騙されんなよ! 可愛い顔に注意な」
『コズピィの邪魔をする奴はどかばきぐしゃーなの!』
小さな可愛らしい体躯のオウガが身の丈の倍はある巨大な鈍器を振るう。重さを感じさせない動きだが、振るわれる質量は本物!
「っと、まともに受けりゃただじゃ済まないか」
横薙ぎの一撃をウタは焔摩天で受ける!
「お前がな!」
カウンターで放たれる炎の壁!
『あつい! あついいい!』
滅茶苦茶に武器をぶん回すオウガ! 質量の殺戮螺旋装置!
『コズピィに酷い事したの!』
「そうかよ、じゃあそのまま退場しな!」
だが一瞬の隙を尽き貫き通す焔摩天の一突き!
『サヨナラ!』
爆発四散!
「……コズピィ……」
「お兄ちゃんの右手は私の物! 私だけの物なんだから!」
「今までの仲間が皆ヤンデレだった衝撃、それから追われる恐怖も分かるから……いっそシリアスブレイクした方がいいよね?」
オウガの右手に志乃の放った光の鎖が巻き付く!
「ヤンデレと言えば妹か、君色々間違ってない?」
鎖を引いて、体勢を崩した所を刈り取る足払い!
「きゃあ!」
「今だね!」
光の鎖と銀の糸が志乃の高速詠唱を受けて光り輝きオウガを雁字搦め拘束! 魔改造ピコハンによる連打、連打、連打の追撃!
「そしてこれは、踏み躙られたアリスの分だ! 人の恋愛感情を弄ぶやつは恋愛感情で塗りつぶす!! Just for you! Take this!!」
無数の光の鳩の群れがオウガを包み込む!
「あ、あ、いや、こんなのいやぁ……あ、あ、お兄ちゃんが、塗り潰されちゃう……」
「ナナ、ミ……」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん? ……大好き、だったよ、サヨナラ!」
極度の羞恥により爆発四散!
「大丈夫ですか!? アイリス・レコード、助太刀に来ました!」
そこに新たなエントリー者あり! アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)!
「たはは、参ったな。言っとくけど、私は強いからね?」
「望む所です!」
ハート型の二刀を振るう最後の『閉幕のアリス』リミ。アリスランスを構えて突撃しようとするアイリスの周囲に突然! ハートの弾幕が展開される!
「潰れちゃえ」
「その程度で!」
アイリスの体中に突き刺さるハート弾! それを気にも留めずに突撃続行! リミはこれを側転回避。反撃のハートボムを叩き込む!
「くっ、素早い」
「私は強いって言ったじゃん。ビシィ!」
爆発で飛ばされた先の頭上に巨大なハートボム! 更なる爆発の連鎖!
「はっ、嫌ぁ!」
「さっきまでの威勢はどうしたのかな?」
電撃的な速度での踏み込み、サイドキックがアイリスを蹴り飛ばし着地地点にまたしてもハートボム! 上空に高く飛ばされ、頭上から巨大なハートが落ちて来る! 回避不可能!
「だ、駄目……これ以上、は」
ハートに押し潰されるようにして地面に縫い止められるアイリス!
「何が駄目なのかなー?」
ハートの上に乗り、両手の二刀を激しく叩きつける!
「君、この中じゃ一番弱いよね。一人位潰さないと私達のメンツが立たないって言うか」
「駄目、やめて……死にたくない」
「何か言った? ねえ、もう一度言ってみなよ。私を倒すんでしょ?」
体重を乗せた激しいストンプ! アイリスの身体がハートに押し潰される!
「死にたくない……嫌、駄目、これ以上私を追い詰めないで……死ぬのは嫌」
「命乞い? 今更だなぁ」
「嫌だ」
「頑丈だなぁ猟兵。早く潰れてよ」
「嫌」
「ねえ早く」
「……」
アイリスが押し黙った。遂に重量が骨に達してその身体を粉砕されてしまったのか。違う、そうではない。少女の中で争いが起こっていた。手綱を握る争いが。
その急激な雰囲気の変化を訝しんだリミはハートから飛び離れる。直後! 凄まじい勢いでハートが押しのけられた!
「死んでたまるか」
「何、こいつ……」
「だから、殺さなきゃ」
アイリスの輪郭がブレる。少女が、少女の形を保てなくなる。
「こいつ、まさか同類?」
「「「「お前が死ね」」」」
アイリス達がリミに襲い掛かる! 剣、槍、斧、弓、銃、ナイフ、のこぎり、メイス。様々な得物を手にしたアイリス達はリミに殺到し、喰らい付く!
「たはぁ、参ったな……この手は使いたくなかったけど」
リミは素早く状況判断し、自信を巨大なハートで覆う。構わず武器を叩き付けるアイリス。ハートにヒビが入り、砕かれていく。
「ねえタク。私は、本当にタクが好きだったよ」
リミは、最後にタクに微笑んだ。
「さよなら」
リミを包むハートが爆発四散!
「リミ……」
●魔王
「さあ、後はお前だけだぜ、魔王さんよ」
ウタが焔摩天を突き付ける。
「高みの見物とは余裕だね、魔王役。ボコられる準備はいい?」
シャルロッテの周囲を攻撃プログラムが舞う。
「おじさんの残機はまだまだあるかんねー」
幸村の周囲で旋回する白銀の翼。
「それともシリアスブレイクされたい?」
志乃はその手に光の鎖を構え。
「食人はオウガになってから!」
ひょっとこライダーがカラテを構える。
「ふーん、勝ったつもりなんだ?」
魔王セリカは不敵に微笑んだ。
「ねえタク。この人達、タクを元の世界に送り返すつもりなんだよ」
「え……?」
猟兵達からすれば当り前の事実。しかし、誰も教えていなかったこの国からの脱出方法。
「タクはそれでいいの?」
「え……あ……」
「ほら、タクってば結局誰とも戦ってない。優しいんだから」
「それは……だって……」
「惑わされるな!」
ひょっとこライダーが一喝する!
「奴は有栖君を食べようとしている食人鬼! その事実に何ら変わりは無し」
「騙されちゃ駄目だ、拓也!」
「おじさん、君のゲーマーとしての勘を信じてるんだけどね」
「モブ未満なファック野郎でも、あなたに食わせる訳には行かないんですよ」
「食べなきゃいいんでしょ? ねえ、勇者さん。私の物になってと。この世界あげるから」
「だ、だ、だ、騙されない……それ、闇の世界って奴」
「そうだよー? 何が悪いの? 皆ともまた会えるよ。タクの望む世界をまた作ってあげる」
「また作る?」
志乃が訝しんだ。
「私、伊達に魔王じゃないから。この世界は全部タクの為に整えたんだよ。タクに気に入ってもらえるように全部配置して、タクのしたい事全部出来るようにイベントも用意して。大変だったんだよ?」
「ゲームマスター気取りか」
「気取りじゃないよ。私がゲームマスターだもの」
背景が、すべて消失する。
「猟兵、お前達はこの世界に入り込んだバグ。お前達さえ排除すればこの世界は全部タクの為に作り替えられる。ねえ、次はどんな世界で遊びたい? タクの願いを叶える為に、私はここに居るんだよ」
「帰りたくない」
「拓也!」
「帰りたくない! 元の世界に買えるなんて嫌だ! 勇者じゃなくても、何でもいい! 俺を、一人にしないで……俺を、助けてよ……セリカ」
「そうだよ、タクも私達と同じ、オウガになっちゃえばいい」
「あれ……どうなったの?」
そこに、一人の少女に収束したアイリスが出現した。リミの最後の笑顔が拓也の脳裏にフラッシュバックする。半歩、僅かに半歩だけ。拓也が身を引いた。
魔王にはそれで十分だった。
大成功
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第3章 ボス戦
『アリーチェ・ビアンカ』
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POW : 狂月招来(フルムーン・コネクト)
予め【獣の本能と己の狂気に身を任せる】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 狂気感染(パンデミック・ルナライト)
【あらゆる者を狂わせる月の光】を降らせる事で、戦場全体が【狂気に満ちた満月の下】と同じ環境に変化する。[狂気に満ちた満月の下]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 狂光軍行進曲(ルナティック・マーチ)
【人狼化し、それぞれの武器】で武装した【自身が喰い殺した者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【狼の幽霊の群れ】を召喚する。
👑11
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●捕まえた
電撃的な速度で動いた魔王はそのオウガとしての本性を晒し、拓也を攫って行った!
「しまった!」
「大丈夫だよ、バグを排除するまでこのゲームは終わらせないから。タクを仲間にするのはその後。タクは帰りたくないんだって。それなら私達とずっと一緒に居た方が幸せだよね」
『ハッタリだ』
そこに割り込む言葉あり! 猟兵にだけ聞える音声通信だ。
『アリスのオウガ化と言う事例は確かにある。だが、準備も無しに出来る事じゃない。ただのハッタリだ……と、言っても納得はしないだろうが。別に強引にゲートに投げ込めば君達としては事件解決ではある。それを忘れるな……結末を決めるのは、猟兵諸君だけなのだ』
木霊・ウタ
心情
最期の言葉や笑顔
全部魔王の演出だろ
拓也を惑わしやがって
救うぜ
物語はハッピーエンドでなくっちゃな
拓也
食人鬼は食人鬼だ
お前を騙してた奴だ
約束守るって思う?
箱庭の世界で飼われて満足か
未来の自分を過小評価すんな
己を信じろ
待ってくれてる家族とかいんだろ
気付いてないだけで
それに俺達がいる
あんたの世界には俺達も行けるんだ
戦友として一緒に拉麺喰おうぜ?
戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い砕く
防御は炎壁の盾&武器受け
拓也や仲間を庇う
あんたも随分な寂しんぼだな
魔王
海なら仲間や家族が沢山いるだろうぜ
事後に鎮魂曲
拓也をゲートへ誘う
結論は任す
もう魔王がいないし
戻るしかないだろうけど
美味い拉麺の店みつけとくから
奢れよ?
またな
シャルロッテ・ヴェイロン
バグはあなたでしょう、自称魔王のオウガくん。
それにそこの自称勇者だって、あなたの本性を知ってからもうドン引きですよ?
てなわけで、【指定UC(【破魔】属性を付与)】で、召喚された人狼ともども粉砕しちゃいましょう。【先制攻撃・2回攻撃・一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃・誘導弾】
近寄られたなら攻撃を【見切り】回避しつつ、【零距離射撃】で仕留めちゃいましょう。
――で、片付いたあとで忠告しておきましょうか。「異世界ハーレムなんて甘い願望は捨てろ」とね(最後までヘタレ野郎に慈悲はないAliceCVであった)。
※アドリブ・連携歓迎
伊敷・一馬
不採用含め歓迎ッ。
聞こえるかわからんが両手をメガホン形にして説得だ!
(メガホンてか火吹棒だべ)
有栖君、現実は辛い場所だ。だが君は留まれない。
何故ならば君はヒーロー、愛の戦士!虚構とは言え平和をもたらす勇者、進むべき道はひとつ。別の世界を救う事。
だから有栖君、これ以上聞き分けないとおケツを蹴っ飛ばすぞ!それが私のジャスティス☆
(脅しでねえか!)
戦闘は味方の援護射撃を中心にゴーゴー☆ジャスティライザー!で敵の注意を引く。
可能なら有栖君を探し確保したい所だ。
UC始動。
君がオウガ。この世界をゲームと思っているなら言わせても貰う。
ヤンデレは諸刃、クリアされず積みゲー化しちゃうぞ☆
(尚プレイヤーによるべ)
アイリス・レコード
彼の反応や、敵UCの影響で気落ち状態です
だから、口から出る、私の中のオウガの記憶に由来する発言にも無自覚で
「……それでも、オウガと共に、いちゃダメです」
「オウガは、同情や憐憫を持っても、同じ所に堕とすしかできない」
「救う事なんか、できない」
瞳が、赤く、輝いて
「それは、猟兵さんにしかできなくて」
「だから私は、私のできることを、します」
「笑い、泣き、怒り、嘆き、くるくる変わる虹色を、オウガの闇に染めさせはしない」
最後のセリフと同時、UCで仕掛けます
寿命?くれてやります
傷は激痛耐性で耐え、可能な限り手足への部位破壊を狙います
彼らの助けとなれるように
拓也さんの事は他の人に任せます
私では多分、無理なので
御宮司・幸村
アリスの暴走、か…
似てるねぇ、手口が…
アリスの目を覚まさせてやらなきゃな
UC発動
この空間内は電脳魔術師のテリトリー!
先ずは敵戦力の無効化と行こう
俺は幽霊の存在を否定するっ
つか、電子空間にオカルトはナンセンス
コレは時間稼ぎ兼足止め程度だろう
だが、その間に勇者君の目を覚ませばどうかな?
おい、拓也!よく見てろよ?
本当の世界、見せてやる!
電子空間からこの世界へハッキング
この世界の真実を映す
これでオウガの本性も解る筈だ
詳しい事知らんがカタ付けて帰るぞ
1人は嫌だ?
おっさんだけど、俺らはもうダチだろ
で、どうする?
この空間で俺がアシストすれば拓也の望む事を叶えられる
踏み出す勇気さえあれば、後は後押ししてやるぞ
●開戦の狼煙
「アリスの暴走、か……似てるねぇ、手口が……アリスの目を覚まさせてやらなきゃな」
御宮司・幸村(いいかげんサマナー・f02948)が静かに、力強く宣言した。
「バグはあなたでしょう、自称魔王のオウガくん。それにそこの自称勇者だって、あなたの本性を知ったらもうドン引きですよ?」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が挑発的に言い放つ。
この二人、年齢も性別も全く異なるが共にバトルゲーマー×電脳魔術士の似た物同士。だからこそ、ある違和感に行きつく。
「シャルロッテ君、気付いてるね?」
「幸村さんも気付いてましたか。でも、それとこれってどう繋がるんですかね?」
「剥がしてみれば分かるんじゃない?」
「やってみる価値はありそうですかね」
「何か策がある、と言う事だな?」
伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)が囁き合う二人の前に立って叫ぶ。
「ならば囮役は引き受けよう! 有栖君、現実は辛い場所だ。だが君は留まれない。何故ならば君はヒーロー、愛の戦士! 虚構とは言え平和をもたらす勇者、進むべき道はひとつ。別の世界を救う事。だから有栖君、これ以上聞き分けないとおケツを蹴っ飛ばすぞ! それが私のジャスティス☆」
「ひっ、お、脅したって無駄だぞ……!」
「私も、私に出来る事をやります」
アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)もまた、前衛役を買って出る。
「じゃあ直掩は俺が引き受けるぜ」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は焔摩天を正眼に構える。
「救うぜ、物語はハッピーエンドでなくっちゃな」
「殺される算段は済んだ?」
白狼の化生と化した魔王セリカ、もとい『アリーチェ・ビアンカ』が挑発的にウルフカラテを構える。
「始めてもいいかなぁ?」
「余裕だな。これから倒されるだけのオウガ風情が」
「君達の弱点をこっちで握っているからねぇ。身も心も。それに、私はもっと強いよ?」
「あなたが強いかどうかなんて関係ないし、興味もありません」
ひょっとこライダーがジャスティスカラテを構え、アイリス・レコードがアリスランスを構える。
「オウガは、同情や憐憫を持っても、同じ所に堕とすしかできない……救う事なんか、できない」
「だってさー? 酷いよねぇ。寄って集ってボコボコにする気だよ」
「ちょ、ご、強引すぎ……パワープレイかよ」
アリーチェ・ビアンカの元で手にしていた剣の事も忘れてそんな事を口走る拓也。
「救わなきゃダメですか、アレ」
「駄目です」
「やってみたらいいよ、猟兵!」
「猟兵ナメるなよ、オウガ!」
●狂人と狂人と狂人の殺戮
アリーチェ・ビアンカの遠吠えが響き、その背後から狂気に満ちた満月が現れ、あらゆる者を狂わせる月の光が降り注ぐ。同時に幸村の周囲からも膨大な01奔流が起こり、周囲を電子の海に沈めんとする。
戦場を形成しようとする二つのUCは宛ら大口径砲を撃ち合う戦艦の如く鎬を削る。
「まあ、こっちも数だけなら出せるけどねぇ?」
狂気に満ちた満月の下から錆び付いた剣、折れかけた槍、血の付いた斧、同じく血の付いた鋸などを手にした元アリスの亡霊を乗せた狼の幽霊の群れが現れ、猟兵達に襲い掛かる。しかし!
「俺は幽霊の存在を否定するっ! つか、電子空間にオカルトはナンセンス」
01電子の海に触れた亡霊は意味喪失して消滅! 電子空間にただの幽霊は存在できない。
「へぇ、雑兵じゃダメか」
群れと共に電子の海に突っ込むアリーチェ・ビアンカ。当然のように影響無し! それ所か自身が前線に出た事で電子の海を押し返して狂気の満月の領域を広めんとしている!
「伊達にGM名乗ってる訳じゃないからね」
「君がオウガ。この世界をゲームと思っているなら言わせても貰う。ヤンデレは諸刃、クリアされず積みゲー化しちゃうぞ☆」
当然、それを許す猟兵は一人も居ない。トンファー状に変形させた『ゴーゴー☆ジャスティライザー!』を構えてハイキックで迎撃するひょっとこライダー!
「ジャス! ティス!」
「イヤー! イヤー!」
「ジャス! ティス!」
「イヤー! イヤー!」
ミニマル木人拳めいたカラテの応酬! 正道を往くジャスティスカラテと野生の獣拳ウルフカラテが激しくぶつかり合う!
「この『アイリス・レコード』が相手になります!!」
狼の亡霊を振り切り、狂った満月に苛まれる事無く側面からのランス突撃で拮抗を崩したのはアイリス・レコード!
「こんな物は私には何の意味もありません!」
「もう狂ってるからね」
アリーチェ・ビアンカは素早くバックフリップで飛び退くと、両手を地に付けて反撃のドロップキック。だが、これを好機と見たアイリス・レコードの瞳が赤く輝く!
「笑い、泣き、怒り、嘆き、くるくる変わる虹色を、オウガの闇に染めさせはしない……!」
槍を放棄、両手に肉断ち包丁を構える。
「オマエを精肉してやる」
ドロップキックを正面から受け止め、両手の包丁を腿に叩き込む!
「オマエなんかただの肉なんだよ!」
救世の国のアリス、その一つ形。狂気に蝕まれず、狂気を狂気で上塗りする九死殺戮刃!
「思ったよりも、狂ってる!」
両足に確かなダメージを受けながらも飛び離れ後退するアリーチェ・ビアンカ。しかし、その先には既に回り込んだひょっとこライダー!
「今、私とボディ君は最高に燃えている。初めて私達が出会った祭りのリンゴ飴のように!」
その例えは分かるようでよく分からないが真っ赤に燃える怒りのオーラが先程の応酬で受けた負傷を顧みずすさまじい速度の断頭ハイキックを放つ! アリーチェ・ビアンカは辛うじてこれをブリッジ回避!
「んんむぅ、ジャァアスティイーッ、フラッシュ!!」
しかし、その動きを読んでいたとばかりにハイキックをキャンセルした抹殺踵落とし!
「ンアー!」
横強襲からの縦強襲、一人カラテクロスファイア! 当然、これで終わる筈も無く追撃のミドルキックを放ち、アイリス・レコードも回り込み二刀乱撃!
「寿命? くれてやります」
何たる自らの負傷を顧みない危険かつ決断的猛攻カラテアクションか!
「まだ、まだだ!」
二人の背後から襲い来る狼騎兵の亡霊。なおも追撃しようとする二人に質量で襲い掛かる。掴みかかろうとする狼騎兵を即座に切り払い蹴り払い排除するも一瞬の隙を作ったアリーチェ・ビアンカは後方に飛び退き離脱。
「今のは中々痛かった……酷い事するよねぇ、タク?」
「いや……お前、誰?」
「……え?」
●バトルゲーマー × 電脳魔術士
「道は俺が作る!」
獄炎纏う焔摩天は狼騎兵の亡霊を薙ぎ払い砕く! 猛り狂う劫火その物と化したウタの猛攻はアリーチェ・ビアンカを迂回する形で剣崎拓也に迫っていた。
「後衛って言ったって後ろで立ってるだけにも行かないしね」
01電子の海で切り拓かれた道を幸村が確保。
「昔のゲームじゃないんでね」
消滅しながらもなお突き破らんとする狼騎兵に攻撃プログラム展開を突き刺し、意味喪失させながらシャルロッテも進む。
「な、なな、なんでこっちに来るんだ!」
前線に釘付けにされているアリーチェ・ビアンカはこれに気付かない。何故か、それは今この三人は外からは01ノイズの塊として見えて、別な場所にダミーデータを表示してあるからだ。初歩的なトリックだが、短い時間を稼ぐには十分。
拓也を守る様に展開する狼騎兵は炎が散らし、プログラムの矢に貫かれ、電子の海沈んで消えた。
「辿り着いたぜ」
放たれた矢の如く迅速に拓也の元へ辿り着いた三人。
「食人鬼は食人鬼だ、お前を騙してた奴だ。約束守るって思う?」
「お、お、思わない……けど」
「箱庭の世界で飼われて満足か? 未来の自分を過小評価すんな、己を信じろ」
「だ、だ、だが断る」
「待ってくれてる家族とかいんだろ。気付いてないだけで。それに俺達がいる。あんたの世界には俺達も行けるんだ、戦友として一緒に拉麺喰おうぜ?」
「で、でも断る」
ウタの紡ぐ言葉を否定する言葉も借り物で、ただただ現実と向き合うのが嫌だ、何もかも投げ出して誰かに委ねてしまいたい……
「ダメだねこりゃ」
「ああ、このままじゃどんな言葉も通らない。おい、拓也! よく見てろよ? 本当の世界、見せてやる!」
バトルゲーマー × 電脳魔術士の二人が、HMDを、ノートPCを構える。
「「その心の鍵をハックして破る」」
拓也の心に、二人のハッカーが潜入を開始した。
●心の鍵
「思った通りだな」
「ああ、あからさまですね。雑な仕事だ」
電子化しニューロンの速度で動ける二人のハッカーは疑視化された錠前を見た。
「不自然な記憶の欠落、封印。何を縛ったのかは……開けて見れば分かる事ですかね」
「サイコ・ロックだねぇ。突きつける証拠品、持ってる?」
「コレ、じゃないですかね」
電子体のシャルロッテが手に出したのは二本のゲーム。とあるメーカーが出したアドベンチャーゲームと、その続編。
「ソレだろうね。じゃあとっとと破っちゃおうか」
「「くらえっ!」」
心の錠前が砕け散った。
――あれ? 俺は……何をしていたんだ?
うん、リミ? セリカ? ナナミ、ヒナエ……いやいやいやいや、ちょっと待てよなんだよコレは。どうして俺はこんな大事な事を忘れていたんだ?
おかしいだろこんなの。俺は何かされたのか? いや、されていたんだ。確かに、されていた。
――剣が、見える。
うん、この剣ってアレだよな。やっぱりどう見てもそうだよな……超誇大妄想狂。俺が? 好き過ぎて自分がなっちまったってか? 笑える様な、笑えない様な。
――世界が見える。
え、なにこれ怖い。人食い鬼ってマジか……俺、食われかけてたんだな。
今なら好きな事が出来る? そりゃ、魅力的だけど……今はいいかな。
――剣を手に取る。
重さが無い。だが確かにここにある、本物だ。これが本物ならなんだってできる。今やるべき事が分かった。
●Find the blue
手にした剣を掲げ、拓也は叫ぶ。
「……ど、どど、ど、○○の妄想力を……ナメるんじゃねぇぇぇえええ!」
拓也の心の中から帰還した二人の電子体が肉体に戻る。実際の時間としては1秒にも満たない。
「何だアレ、いきなり叫び出したぞ? 大丈夫か?」
三人の中で唯一事情を知らないウタが困惑して二人に聞いたが、二人のハッカーはサムズアップして答える。
「ばっちりオッケー、元ネタ通り」
「自分がただのヘタレ○○って事を思い出させただけですから」
そこにカラテ応酬から弾き出されたアリーチェ・ビアンカが転がり込んでくる。
「今のは中々痛かった……酷い事するよねぇ、タク?」
「いや……お前、誰?」
「……え?」
瞬時、視線を走らせて三人の猟兵の姿に気付く。もう、手遅れだが。
「お前が? 世莉架? いや何もかも違うだろ」
「何をした!?」
「何かしたのはお前だろ」
「やっぱりバグはあなたでしたね、自称魔王のオウガくん。文字通りに」
拓也が手にした剣が赤く煌く。
「お前は世莉架じゃない。って言うか全く似てない。似せる気も感じられない」
「た、タク……」
「そう呼べばそれでいいと思ってんのかオタク舐めんな」
「中途半端で明らかに別な意図が見えるコスプレって最悪だよねー」
「一番やっちゃいけない奴ですよ」
「タク! わかった、私はセリカじゃなくていい。それでも、貴方の望む者を私は作れる!」
「そうかよ。こんな風にか!」
拓也が赤く煌く剣を横に一薙ぎすると空間が裂けた。その裂け目から現れたのは……その手に拓也と似た剣を携えた少女達!
「どうよ、この再現度」
「うわぁ、イラストで見えない所までしっかり作り込んでますよこの人」
「さっきの偽物とは雲泥の差だねぇ」
「この剣はちゃんばらする為の物じゃない。妄想を現実に、その為の鍵だ」
『コキュートス』
青髪の歌姫が囁くと、瞬時に空間が凍結してアリーチェ・ビアンカを封じ込めた!
「もち、動くし喋る」
『私をハブるとは許しがたいな』
凛々しい長髪の女性が手にした大剣で氷ごと両断する!
「ぐ、はぁ!?」
致命傷には至らず! 猟兵とは違って威力が足りない。だが、既に状況は致命的に猟兵に動いていた。
「俺の記憶から一番好きなゲームの記憶を封印して、そのキャラを自分で作って侍らせたって訳か。何それマジ怖い」
「で、その封印をおじさんたちで解いたって訳よ」
「なるほど分からん」
「そんな事はもうどうでもいい」
ひょっとこライダーが、アイリス・レコードが。アリーチェ・ビアンカを包囲した。
「やっぱり最期の言葉や笑顔、全部魔王の演出だった訳だ。姑息な手で拓也を惑わしやがって!」
ウタが焔摩天と共に地獄の炎で空高く斬り上げ、
「攻撃プログラム展開。串刺し刑ですよ!」
シャルロッテの放った破魔プログラムが全方位から突き刺さり、
「超小型端末の通信網より衛星へ送信完了、各システムに問題なし。稼働と同時にエネルギー装填を開始。照準諸々微調整良し、発射!」
幸村が操作した次元衛星レーザーが天から撃ち貫き、
「ぬハぁあ……我が全力の正義と全霊の愛を……受けるがいい!」
「オウガは、同情や憐憫を持っても、同じ所に堕とすしかできない、だから」
ひょっとこライダーとアイリス・レコードが前後を挟んでお互いにも多少の攻撃を当てながらの超高速連撃!
「サ・ヨ・ナ・ラ!」
アリーチェ・ビアンカは爆発四散! 猟兵達の完全勝利だ!
●果てしない蒼空へ
元の世界に帰るゲートの前に、猟兵達と拓也が集った。
「……本当に、コレ、消えない? ってか、俺の寿命減ってない? 使っても大丈夫?」
「アリスが元の世界に帰ったからと言って一度目覚めたユーベルコードが消えたという話は聞きませんし」
「大丈夫大丈夫、おじさん信じて。おっさんだけど、俺らはもうダチだろ?」
「わ、わかった……とりま、帰るわ」
「異世界ハーレムなんて甘い願望は捨てろよ」
ジト目で睨むシャルロッテ。
「……あの、もっとキツめにオナシャス」
無言でローキックを叩き込む。
「ふひっ、ありあとあす!」
「美味い拉麺の店みつけとくから奢れよ? またな」
「あ、ああ……ラーメンは、好きだし……じゃ、じゃあな……剣崎拓也はクールに去るぜ」
蹴られた場所をさすりながら、拓也はゲートに消えて行った。
その後、剣崎拓也がどうなったかはここで語る事ではないだろう。ただ、彼は間違いなく元の世界へ帰って行った。その成果は確かな物だ。
一人のアリス適合者を巡るオウガの策略は失敗に終わり、日常へと戻って行った。その過程で彼が手にした力が今後何を引き起こすか。それもまた今は語る術を持たない。
彼の未来は、確かに紡がれたのだから。過去でも、今でもない、潰える筈だった未来が。
大成功
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