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夢を見る豚

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●アルダワ魔法学園
 ここはとある学園迷宮。
「ベイビーたち、僕のそばから離れてはいけないよ。わかったね?」
「「「キャー! イーケメイン様ー!!」」」
 やけに顎の尖った男子学生と、その一挙一動にキャーキャー言う取り巻き女子たち。
 彼の名はイーケメイン・スゴイハン=サム・カオガイー・ビセイネェンという。
 なお、彼の出番はここだけなので別に覚えなくていい。長いのでイケメンとする。
「ここは危険な学園迷宮、ああだが僕の神剣スゴクヨクキレールにかかれば敵はない!」
「「「キャー! イーケメイン様ー!!」」」
 実用性がまったく感じられない両手剣を手にふぁさーっと前髪をかきあげるイケメン。
 そして一挙一動に歓喜の声を上げる取り巻きたち。キラキラ輝いていた。

「ほう……この迷宮に挑む者がいたとはな」
 その時! やけに渋かっこいいボイスとともに、ずしんと大きな足音。
 取り巻き女子たちは悲鳴を上げて、イケメンの背後に逃れた。
「出たな災魔め。貴様の命脈、ここで断たせてもらう!」
「「「キャー! イーケメイン様ー!!」」」
 ビシッ! かっこいいポーズをしたので取り巻きたちの恐怖も払拭された。
 油断なく身構えるイケメン。じりじりと漂うシリアスな空気。
 そして現れたのは……!!

「ならばこの俺様、暴魔王ネクロヴァリナスグローグが相手をしてやろう!1」
 ズシン!! ……現れたのは名前負けも甚だしい肥満体のオブリビオンだった。
 しかも巨体にはなんかうねうねもぞもぞ触手がまとわりついている。
「豚じゃないか」
「豚ですね」
「豚だわあ」
「豚じゃん」
「なんだとぉ!?」
 イケメン達の反応に地団駄を踏む暴魔王……長いのでウォークグルェート。
 うねうね蠢く触手にうわキモッとドン引きする女子達。まあ仕方ない。
「おのれ俺様をナメるなよ! おいそこのキラキラ野郎!」
 ビシィ、とイケメンを指差す。そしてべろんと舌なめずりをしつつグフフと笑った。
「そこの女どもはどうでもいい。お前、俺様と……シリアスなバトルをしろ!!」
「全力でお断りしたいところだが、ベイビーたちをお前に汚させるわけにはいかん!」
「どうでもいいって言ってるだろ!?」
 ウォークグルェート、長いので豚は反論するがイケメンは聞いちゃいない。
「災魔よ、この僕が成敗してやろう!」
「「「キャー! イーケメイン様ー!!」」」
 決まった……!! イケメンも豚も満足顔だ。え、なんでお前まで?
「そうこなくてはな! さあ、行くぞぉおおお!!」
 カッ! 両者のシルエットが、交錯した――!

●グリモアベース
「そのイケメン君全治二ヶ月だって」
 生きてはいたらしい。

 とまあそんなわけでグリモア猟兵の白鐘・耀、予知を伝えて曰く。
「どうみたってアレな見た目なのに、そいつはシリアスなバトルをしたいらしいのよ」
 身の程知らずも甚だしいが、実際に被害が出ているとなると問題は深刻だ。
 迷宮に踏み込んだら最後、突然現れた豚が無茶振り、割と強いのでボコボコにされる。
 学生の多くが心を折られているらしい。彼女にええかっこしたかった男子とか。

 しかもこの豚、ただ襲いかかるだけならともかく、相手にまでシリアスを求める。
「具体的には"もっとかっこいい技名を叫べ"だの、"なんか因縁を考えろ"だの……」
 なぜか女子生徒には手を出さないようで、結果として目撃証言は多数挙がっている。
 今まで通りすがりを襲っていたらしいが、ここに来て事情が変わった。
「……迷宮のど真ん中にね、スピーチ台が設置されたらしいのよ」
 心底呆れたため息。
 "耳の石像"と呼ばれたそれにはこう書かれているとか。

 『求む、シリアス!!』

「つまりねえ。そいつをぶっ叩くには、なんかこうかっこいい設定を披露する必要があるわけ」
 俺とお前は生き別れの兄弟! だとか。捏造だけど。
 お前は父の仇! だとか。捏造だけど。
 あとは『こんなシリアス展開はどうだ』とアピールしてもいいだろう。
 しかもこの豚、身の程知らずにも音声でダメ出しをしてくる。ウザい!
「どうせそのあともろくなもんがないでしょうね。まあ私行かなくていいんだけど!」
 けらけら他人事みたいに笑った。グリモア猟兵としてそれはどうなんだ。

 ともあれ豚が満足すれば、扉は開かれるだろう。
 そして障害を乗り越えた先では、ようやくこのわがままなオブリビオンとの対決が叶う。
「正面切っての戦いになるでしょうけど、あっちの流儀に付き合う必要はないわよ」
 不意打ち搦め手上等、なにせ相手はオブリビオンだ。
 しかしうまいことおだててやれば、豚もおだてりゃなんとやら。
 相手の気が緩んで、攻撃の隙が生まれるのは間違いない。
 あとはこう、アレげなモンスター扱いすると怒髪天になりそうな気配がある。
「オブリビオンも千差万別よねえ……ま、いいけど」
 耀は火打ち石を取り出し、カッカッと小気味いい音をさせた。
 それが、転移の合図となった。


唐揚げ
 需要と供給って難しいですよね。唐揚げです。
 オープニング、いかがでしたか。エッ、読んでない?
 そんな方のために、シナリオのまとめです。

●目的
 オブリビオンの撃破。

●敵戦力
 ウォークグルェート 1体(自称は毎回変わる。つよつよ)

●備考
 オブリビオンと戦うためには、それっぽいシリアスな設定をアピールせねばならない。
 ふてぶてしいことに相手には好みがある。ダメ出しされる可能性も。
 実際に闘う際にそれを貫く必要は、別にない。

 とまあこんな感じです。ネタシナリオですね。
 軽い気持ちでわちゃわちゃお楽しみいただければと思います。

 では前置きはいい加減にして。
 皆さん、シリアス展開を考えながらよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『愉悦を喜ぶ耳の間』

POW   :    ソウルフルに熱意を込め歌い話す。

SPD   :    論理的に、もしくはテクニカルに歌唱し述べる。

WIZ   :    情感豊かに歌い上げ、色褪せぬ思い出の如く語る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●学園迷宮にて
 そんなわけで学園迷宮。行ってみるとほんとにあった。
 どこからともなく、やけに渋かっこいいボイスが響き渡る。
「よく来たな挑戦者よ! この俺様、超魔王ダークドメスティック……」
 二つ名は割愛する。とにかくオブリビオンの声だ。
「俺様に挑むには資格が必要だ! お前たちにその資格があるかな……?」
 ものすごく酔っている感じの声だったという。

 ともあれこの厄介極まりない豚をすっとばすには色々手間がかかるようだ。
『シリアス求む!!』の力強いフォントが刻まれた"耳の石像"が鎮座している。
 いっそ挑発して怒らせたりするような手もありかもしれないが……?
 どのように相手を木に登らせるか、そのへんは猟兵次第だろう。
リゼリナ・ファルゼナ
ぱからぱからヒヒーンズババーンブルルーフッフー!(バイクの鳴き声)
正義の人狼黒騎士、ここに参上です! じゃんじゃんじゃーん!アイアムシリアス!イズザブラック(ナイト)!
もちろん私は愛と平和を愛する女王陛下の剣なので、正々堂々宣戦布告です!やあやあ超魔王ダ…ダク…えっ超魔王? ば、バカな…白鐘さんが言っていたのは暴魔王、超とかもうラスボスじゃないですかどういうことです……ハッまさか!?(白鐘さんの形見である眼鏡を取り出す)(レンズにうつるあの笑顔…)うおおー!貴様ー!まさか白鐘さんを!!1ゆるざん!!この絶対人狼騎士が黒剣シナナイにかけてお前を必ず大成敗してやりますビシィーーッッ!!
【POW】



●テンションが高すぎる
『不採用!!』
「ちょっと待ってください!?」
 ノータイムであった。
 そんなわけでバイクのエンジン音も誇り高く……エンジン音……?
 まあともあれ一番手としてやってきたのは人狼の黒騎士、リゼリナ・ファルゼナ。
 ぱからぱらからヒヒーンブルルーンフッフーシュビドゥワー!
 と謎のSEをどこからか出す名馬シュヴァルト丸(宇宙バイク)から飛び降りると、昨晩寝ずに考えたかっこいいポーズを披露した。シャキーン!
「私の名は」
『不採用!!』
「だから待ってください!?」
 ブー、ブー! とブザー音も激しく鳴り響く。拒否の圧が高すぎる。
 リゼリナは持ち前のハイパーポジティブシンキングで相手のガチ拒否を受け流す。
 そして名乗りを……ん? リゼリナさん、どうしてバイクにまた乗るんですか?

「ぱからぱらからヒヒーンブルルーンフッフーシュビドゥワー!」
 そこからやるんですね。
 シュバッ、スタッ。シャキーン!(寝ずに考えたかっこいいポーズタイプB)
「正義の人狼黒騎士、ここに参上です! じゃじゃじゃーん!」
 ブー、ブー! ブザー音はけたたましく鳴り響いている。
「アイアムシリアス! イズザブラック……(小声で)ナイト!」
 ブー、ブー! オブリビオンは頑張ってブザーを鳴らしてるが残念聞いちゃくれねえ。
「やあやあ超魔王ダ……ダーク、ダ……?」
 おやおやリゼリナさん今度はどうしたんでしょうか?
 かと思ったらわなわなと震え始めた。
「ちょ、超魔王!? 予知では暴魔王って聞いてたのに! 超ではもはやラスボスではないですかどういうことですか白鐘さん!?」
 残念、グリモア猟兵はいないのだ。いたとしてスルーだが。

 あまりにも斜め上すぎる反応だが、意外なことにこれが効いた。
『ほほう……我が二つ名に恐れをなすか。黒騎士が聞いて呆れる!』
 ノリノリだ。声だけは渋かっこいいのでなお質が悪い。
 哀れにもツッコミさんがディスコネクトしたこの空間では誰も止めてくれない。
 リゼリナはわなわなと震えながらメガネを取り出し……ん、メガネ? なんで?
「白鐘さん、あなたはこんな恐ろしい敵と戦って……!!」
 なにやら勝手にグリモア猟兵との絆を捏造しだした。
 眼鏡を位牌よろしく抱えながら、口で物寂しげなBGMを女泣きするリゼリナ。
 あの、付き添いの方はどちらに……。
「うおおーおのれ滅魔王グロンデスターアナイアレイター!! よくも白鐘さんを!!」
『そいつのことは知らんがその二つ名かっこいいな!』
 ガチ泣き中のリゼリナは黒剣を構え叫んだ! 脳裏によぎる友との記憶……!
 だが待ってほしい、すべて捏造である!
「この絶対人狼騎士が黒剣シナナイにかけてお前を必ず大成敗してやりますビシィーッ!!」
 ビシィーッ! シィーッ、シィー、ィー……(エコー音)

 間。

 ペレペレー!(なんとなく正解っぽいSE)
『いいだろう暗黒黒騎士リゼリナよ、相手になってやる! 合格!!』
「うおおお待ってろ龍邪王フンダラダッターヘンダッターこの人狼騎士が必ず正義の裁きをくれてぶげふっ」
 勢い余ってまだ開扉前の出口に顔から突っ込んだ。
 名馬シュヴァルと丸(宇宙バイク)は悲しげにスタンドされていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンシェ・ローム
なっ、なんてこと……!貴方はまさか……
魔王ダークバニラビーンズ?!
そんなっ封印したはずでは…!?
(つまり、わたくしの封印魔法はまだ不完全……だったということかしら…!)

そう……。
この世界でもまた貴方と出会ってしまいましたわね。とんだ腐れ縁ですわ。
でもっ…!次は貴方を完璧に封印してみせる!
さあ姿を表しなさい!!魔王チョコチップクッキー!



●どうしていちいち美味しそうな名前なのか
 きゅっぽ、きゅっぽ、きゅっぽ、たしっ。
 次なる挑戦者は可愛らしいケットシー、アンシェ・ロームだ。
 彼女は周囲を見渡してから、なぜか襟元を正し、こほんと咳払い。
「なっ、なんてこと! あなたはまさか、魔王ダーク――」
『そう、我こそは魔帝王ダーク』
「――ダークバニラビーンズ!?」
『そうそうあまくてちょっとほろ苦いや待てぇーい!!』
 ノリノリだった渋かっこいいボイスがツッコミを入れた。
「へ? なんですの?」
『なんだそのコクが合って甘そうな名前は!? 俺様そんなの名乗った覚えないぞ!』
 違ったかしら、と首を傾げるお嬢様猫。まあ当たらずとも遠からじ……か?
「美味しいんですのよ、バニラビーンズ。この学園の購買部にもあまーいバタークッキーがありますの!」
『お、おう』
「そのサクサクふわっと、それでいてしっとりした食感はもうたまりませんわ~!」
 うっとり頬を両手で抑えて、味わいを思い出すアンシェ。
 ぐぅうううう、とスピーカーから盛大な腹の虫が聞こえてきた。
『……よし。続けろ』
「食レポをですの?」
『シリアスをだよ!!』

 閑話休題。

 アンシェはシリアスな顔になり、叫ぶ。
「あなたはわたくしが封印したはず……一体なぜ!?」
 なるほどそういう設定か。因縁をもたせつつ相手を持ち上げるいいロールだ。
 いい気分になった豚はスピーカー越しに悪そうな笑い声をあげる。
『くっくっく、そのとおり。貴様の封印魔法もなかなかのものだったがな。たとえるならば……』
 沈黙。
『……あずきアイスぐらいには手ごわかったぞ!!』
「それよく破れましたわね」
『だいぶ苦労した! だが今ではこの通り自由の身だ、くくくく!』
 くっ、と歯噛みするアンシェ。決して甘くてひんやりつめたいあずきアイスの美味しさを想像して小腹が空いたわけではない。
 ……考えてみるとケットシーがあれこれお菓子食べるのはどうなんだろうか?
 多分大丈夫なんだろう、猟兵だし。

「まさか、この世界でもあなたと出逢ってしまうなんて……とんだ腐れ縁ですわ」
『むっ世界を超えた因縁か! いいぞそれ!!』
 豚的には大ヒットだったらしい。オブリビオンと猟兵だもんなあ。
「でも、今度こそあなたを完全に封印してみせるっ!」
 びしぃ! と石像にもふもふした肉球を突きつけるお嬢様。
 いいぞ、盛り上がってきた。豚もノリノリだ。
『はたして貴様に出来るかな? フハハハハハ!』
「できますわ! さあおとなしく扉を開きなさい、魔王……チョコチップクッキー!!」
 バァーン!!
『よかろう、この超覇王バナナミルクサンドがってだからなんで甘味縛りなんだ貴様はっ!?』
「うーん、わたくしもちょっとお腹が空いてきましたわ」
 とことんマイペースなお嬢様だった。
 それにしても25歳でお嬢……あっいやすいませんなんでもウワーッ!!

 そんなわけでロールプレイは終わったが扉は開かない。悩んでいるらしい。
『うーむ、悪くはないのだがいまいち呼び名が……』
「購買部のお土産、差し入れてあげてもいいですわよ?」
『はい合格!! 来るがいい戦士よ!!』
 ペペペレレレレレレレレレレー!(正解っぽいSEが連打された音)

成功 🔵​🔵​🔴​

テテルマイス・ミンスキパイア
おおアンタは、アンタは……!

覚えていないかい?昔、お前がまだ小さかった頃、森の中で見つけたお前は一人でプルプルと震えていたねぇ……親とはぐれてしまったお前をどうにもほっとけなくて、アタシの家に連れ帰ったのさ……

一緒に暮らしていく内にアンタは力を求め始めた。一人でも生きていけるようにね。アタシはその願いを叶えてやりたかった。だから、お前が望むならと色んな実験を行ったさ。……今のお前は、その時よりもずっと力をつけたようだね。

アンタが人に仇なすモノとなったなら、その責任はアタシにもある。せめて、アタシの手で引導を渡してやるよ……なんてのはどうだい?【WIZ】

〔容姿〕
黒三角帽と黒ローブ、童話の老魔女




 豚は悩んでいた。
 なにやら猟兵どもがここを嗅ぎつけたようなのだが、いかんせん面子がアレだ。
 ノリはわかってくれているのだがどうにも……。そんなわけで悩んでいた。
「しかし三度目の正直という言葉もある。次に期待だ!」
 気を取り直してマイクに呼びかけた。
「では三番目の方、どうぞご入室ください」
 面接かなんかか。

●ねればねるほど
「よっこいせっと、いやあ腰に来るねえ」
 えっちらおっちら現れたのは、とんがり帽子に黒いローブ。ま、魔女だ!
 しかも童話で悪だくみするけど最後にはしてやられるタイプの……!!
 腰をトントン叩きつつ現れたテテルマイス・ミンスキパイア。ヒッヒッヒとか笑っている。
『ええ……』
 さすがにこれには豚も面食らった。シリアスっていうかメルヘンでは?
 しかしテテルマイスはニヤリと邪悪な笑みを浮かべると、石像の前に立つ。
「あー……これ届かないねえ」
『あ、どうぞそばのお立ち台使って。腰悪かったら座ってもいいぞ』
「ありがたいねえ。ヒッヒッヒ」
 バリアフリー完備だったという。

「ってその声! アンタは、アンタは……!」
『おっ? おお、さっそくか! フハハハ、俺様の声に覚えがあるのか、ババ……おばあちゃんよ!』
 オブリビオンにもちょっと咎める良心があったらしい。
 テテルマイスはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。しかし静かに語り始める。
「覚えていないかい? まだ小さかったから無理もないかねえ」

 ここでコマの外が黒塗りになり、回想シーンが挟まる。

「ぶひぃ~、ぶひぃ~」
 暗い森の中、半ズボンにYシャツというショタいデザインの豚が膝をかかえて泣いている。
 少年、もとい少豚が震えているのは寒さだけではなかった。
『アンタは親とはぐれて一人で震えていたのさ……アタシが来たのも偶然さね』
 悪そうな魔女が現れると、少豚はびくっ! と怯えすくむ。
 しかしテテルマイス(イマジナリー)はニヤリと邪悪に笑い、怯える豚に手を差し伸べたのだ。
 それから、二人の生活は始まった……。

『一緒に暮らしていく内にアンタは力を求め始めた。一人でも生きていけるようにね』
 様々な修行シーンがカットアップで流れる。
 木剣を振るう豚。
 魔女の大鍋をぐるぐるする豚。
 本を読み漁る豚。
 はじめての獲物を嬉しそうに魔女に見せる豚……。
『アタシはアンタの願いを叶えてやりたかった。だから色々と手を貸してやったさね……』
 だがこのへんから回想の内容が妙になってくる。
 禁じられた書物をひとりで読み漁る豚。
 魔女の制止も効かずに呪われた道具を解き放つ豚。
 タンスの裏側に隠されていたへそくりをもぎ取る豚。
 その金を持って競馬場へ……いやこれはノイズだ。
 ともあれそんな感じで、だんだん豚の顔が悪い感じになっていく。触手も生える。
 でもこれ普通に薫陶受けた結果じゃないでしょうかテテルマイスさん。

 ……そして現在。

 テテルマイスは苦みばしった表情をした。そして言う。
「今のアンタは、ずいぶんと力をつけたようだねえ」
『…………』
 魔女は悲壮な覚悟を込めて語る。
「アンタが人に仇なすモノとなったなら、その責任はアタシにある。ならばせめて、この手で引導を渡してやろうじゃないかね」
 かつての弟子の非行を尻拭いする師匠!
 これは実に燃えるシチュエーションだ。さて豚の判定は?
『…………』
「…………」
『…………ぶぇええええ!! おばぁああじゃああああん!!』
 号泣だった。きったねえ声でぶひぶひ泣いていた。
『ぶぉおおお!! お、俺様は、俺ざまばなんで悪い奴なんだぁあああ!!』
 ぺれれれー! ぺれれれー! ぺれれれー!
『合格、合格だ! うっ、ふぐう……』
「イッヒッヒ、ありがとうよ。飴持ってってあげるからねえ」
『ぶぉおおおお!! おばああじゃあああああん!!』
 別の方向で刺さったらしい。なんだこれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
【実は本人、割と本気でシリアスやってます】
【思い切りぶち壊してください】

ちっ…ダチの行方を捜してここに来てみたが…
こんな浅い階層じゃ、心の声さえ届かないってか!
それでも、アタシは叫ばずにいられない!
「おーい!準!ここにいるのは分かってるんだ!
今から、アタシが助けに行く!どんな困難があってもなぁ…!」
どうなってんだよ!てめぇら、アイツをどうせ閉じ込めてるんだろ!
思わずサイキックブラストが漏れるかもしれないけど、
仕方ねぇよなぁ!
アタシはマジで、本気なんだからよぉ!



●友よ見てくれこのサイキックブラスト
「うーむちょっとスピーカー周り調整するか……」
 猟兵が途切れたのを見計らい、石像のメンテナンスに出てきた豚。
 小物とか全部自分で手入れしてるらしい。その努力はなんなんだ。
「やっぱり低身長の人にも配慮しないとな、うん」
 オブリビオンとは思えないバリアフリー精神を発揮している。
 まあそれもすべて自分のシリアスバトルのためなので、こいつはやはり敵なのだ。
 と、そこで石像のある部屋に続く扉がドンドンドン! と叩かれる。
「あ~すいません、いまメンテナンス中」
「おーい、おい! 準! いるんだろ? 準!!」
「は?」
 豚は唖然とした。扉を叩くのは熱血ライダー数宮・多喜である。
 彼女は友人である本見・準という人物を探し、東奔西走しているのだ。
 ……さすがにこんなところにはいない気がするんですが。

「準! アタシが助けに来たぞ、待っててくれ!」
 一方、扉の向こう側でシリアスな顔をしている多喜。
 さすがにメンテナンス中なので、豚はどうしたもんかなという顔をしつつ。
「(ガラッ)いやーすいませんいま石像のメンテを」
「喰らえサイキックブラストォー!!」
「ブヒィーーーッ!?」
 バリバリバリッ! と電光一閃、扉を開けた瞬間に豚の顔面に直撃だ!
 電撃で骨が透けながら吹っ飛ぶオブリビオン。多喜は構わず踏み込む。
「準! くそっ、どこにいるんだ。こんな浅層じゃ、アタシの声は届かないってのかよ……!」
 ぎりり、と拳を握りしめる。ぶすぶす焦げた豚はよろよろ立ち上がった。
「あ、あの、いまメンテ……」
「テメェ、準をどこに閉じ込めやがった!!」
「えぇ……」
 完全に話を聞いていない多喜に閉口する豚。
「アタシは何があってもあいつを助けに行く。たとえどんな困難があっても!」
 燃える決意と覚悟を秘めた瞳、そして言葉。豚は思わずワクワクした。

 でもちょっと状況がまずすぎる! 主に自分が不利すぎる!!
「すごく、すごくありがたいんですけど! よければ順番が来た時にアピ」
「うおおおサイキックブラストォー!!」
「ブヒィーーーーーッ!?」
 ピシャーン! 高圧電流を食らってまたしても吹っ飛ぶ豚。
 サイキックナックルが唸りを上げる。友よ、見てくれこの勇姿!
「アタシはいつだって本気(マジ)なんだ。絶対に心の声を届かせてもセルッ!!」
 彼女の四白眼がメラメラと正義と怒り、そして友情に燃え上がる。
 おお、素晴らしい青春……豚はよろよろ起き上がった。
「ぶ、ブヒィ……あ、あの、準さん? なんですけど」
「アンタやっぱり捕まえてんだね! どこにいるんだ!!」
 バリバリバリ! 両手に電光を纏う多喜。コワイ!
「いや上! 上にいます、さっき脱出したんですよ自力で!!」
「なんだって? それは本当かい!?」
 それもオブリビオンってやつの仕業なんだ。
 多喜は勢いよくもと来た道を戻る。友のために……!!
「こ、怖いよぉ、猟兵怖いよぉ……」
 豚は泣いた。こんな仕打ちってあるのかよ。

「って、いねえじゃないか! あの豚野郎、やっぱり準を……!!」
 上層。見事に騙された多喜は怒りに拳を震わせた。
 そして本来の順番で部屋に殴り込んだところ、なにか言う前に合格SEが鳴ったという。
 ……シリアスとは?

成功 🔵​🔵​🔴​


 ※先リプレイ中に致命的誤字がありました。お詫びいたします。
 ※多喜さんのセリフは『絶対に心の声を届かせてみせるッ!!』に脳内変換をお願いします。
 ※謹んでお詫びし、シリアスアピールオーディション、もとい冒険フラグ第1章を続けさせていただきます。
クラーラ・レイネシア
暴魔王ネクロヴァリナスグローグ?
ウォークグルェート?
超魔王ダークドメスティック?
(描写される名前を全部言って)
どれが本名なんだ?
えっとごめんな、俺馬鹿だからさー
一杯横文字並ぶと覚えきれなくてさ

まぁでも生徒達をボコボコにしてるんだってな
しかも、上から目線で駄目だしもするとか
つまり圧政者だな?
お前が圧政者だと言うのならば話は別だ
反逆者として圧政者たるにお前に反逆せねばならない
ぐだぐだ小難しい事を述べるまでも無い!
お前が圧政者という時点で!反逆者たる俺と戦う事は最初から決まっていたんだ!
さぁ扉を開けるがいい!雌雄を決しようじゃないか!!

扉開けなかったら開けてくれるまで反逆の拳で延々と扉を叩き続ける



●どうして拳で解決しようとするんですか?
 メンテナンス(というかオブリビオンがダメージから復帰する時間)完了後、第一の挑戦者は!
「えっとごめんな、俺馬鹿だからさあ。色々横文字並ぶとわかんなくなるんだよ」
 現れるなりそう言ったのは、クラーラ・レイネシア。
 勝ち気そうな口元に覗くギザ歯は、部屋の様子をモニタリングしているオブリビオンに『あっこれまた同じタイプの猟兵だな』と確信させるには十分であった。
 だが彼は心を奮い立たせる。ナメられたら負けだ……!
『では改めて名乗ってやろう。俺様の名は』

「圧制者だな?」
『えっ』
 会話のキャッチボールを全力で拒否されて目が点になる豚(INモニタールーム)。
「話は聞いてるぜ。お前、学園の生徒をボコボコにして回ってるんだろ?」
 クラーラは吐き捨てるように言った。
「しかも財布をカツアゲしたり、焼きそばパン買いに行かせたり、他にも色々やってるらしいじゃねえか!」
『そこまではしてねえよ!?』
 残念ながら届かない。オブリビオンと猟兵は天敵同士なので仕方ない。
「俺は反逆者だ。お前みたいな圧制者に反逆するのが俺の在り方だ!」
 そう、クラーラはアルダワ魔法学園のれっきとした学生。転校生ではない。
 故に彼女は憤っていた。必ずやかの邪智暴虐ななんとかいうアレをこううまいことサクッとせにゃならんとふんわり思っていた。
 クラーラには政治がわからぬ。この状況にあんまり政治は関係ないし、さらにいうと他の学問もだいぶわからんのだが、はっきりしていることがある。
「お前は俺の敵だァ!!」
 豚は頭を抱えた。

 とはいえもともといつかは闘う間柄である、それ自体はまあいいとしよう。
 豚は気を取り直してスピーカーから語りかけた。
『わかった。では俺様と闘うにあたっての意気込みなどを』
「ぐだぐだうるせえ!!」
『ぶひいいすいません!!』
 クラーラはビシッと指を……えーと相手がどこにいるかわからないので、とりあえず石像に突きつけた。
「小難しいことを言うまでもねえ。お前が圧制者で、俺が反逆者なら! つまりそういうことだろうが!」
 喧嘩をしようぜ! みたいなノリで拳から炎を滾らせる。
「そういうわけだ、さっさとここを開けな! 雌雄を決しようじゃないか!」
 最近覚えたかっこいいワードをキメ台詞にし、むふーんと満足げなクラーラ。
 しかし扉は開かない。なにせそういう冒険である。
『意気はいいのだが、もうちょっとこう因縁とか……』
「うるせえ黙れッ!!」
『ぶひいいいすみません!!』
 ガンッ! ガンッ!! ゴガッ!!
『えっ、あの何やって』
「うるせえ! 開けてくれねえならこっちから行くまでだ!」
 そう、クラーラはシンキングダイムほぼゼロで扉に殴りかかっていた。
 しかし学園迷宮は頑丈である。災魔の逆流に備えた守りは堅牢、びくともしない。
『バカお前手が砕けるぞ!!』
「うるせえ殴ればいつか行けるだろ! 黙ってろ!!」
『アイエエエすみません……』

 ガッ! ゴガッ!! ドカッ!!
 クラーラは殴り続けた。だんだんドアにヒビが入ってきた。
 あっやばい。豚は思った。
 このままだと自分も全身スライム状態になるまで殴り潰されると。
『……ご、合格ー! 俺様は貴様の意気込みに感動したー!!』
 ぺれれれー。
 空虚な合格SEが流れ、ドアが開いた。スカッと拳が空を切る。
「チッ、余計なことしやがって。覚えてろよ!」
『開けたのになんで恨まれるんだ!?』
 どう転んでも惨劇の予感は免れない。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守
(当たり前のように魔王以下略の横にいて)
魔王様、猟兵達は魔王様の恐ろしさを知りませぬ。聞け猟兵ども、貴様達が相対するは魔王(以下略)様であられるぞ。魔王様が本気を出せば海は干上がり地は八つに裂かれ天は墜ち世界は瞬く間に滅びるであろう。さあ眼を開きとくと見よ、そして平伏すがいい。

ささ魔王様、今こそはそのお力を知らしめる時にございます。世界に破滅をもたらし人々を地獄へと叩き落し彼奴ら猟兵を尻から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわせましょうぞ。

はい? 今はその時ではない? 力を持つ者、みだりにそれを揮うべきではないと……ははっさすが魔王様。この魔王様の腹心、御狐稲見之守は貴方に忠を尽くしましょう。


城石・恵助
ナーイスガイ!
ナーイスガイじゃないか!生きていたんだね!
僕の事がわからないのかい?
そうか…やはりあの時、大魔女ユーババの呪いから弟を庇い豚の姿になると同時に名を取られて記憶も失ってしまったんだね
キミの本当の名前はナーイスガイ・スゴイハン=サム・カオガイー・ビセイネェン
そう、キミが病院送りにしたイーケメイン・スゴイハン=サム・カオガイー・ビセイネェンの双子の兄さ
命を奪わずに済ませたのは、本当は弟を手にかけたくなかったから…そうなんだろう?
キミにこれ以上罪を負わせるわけにはいかない
僕とキミ達は特に何の関係もないが、必ずキミを止めてみせる

と語りながら豚カツと生姜焼きのどっちがいいかを考えています


最上・空
豚さん退治に美幼女が参戦です!

遂に辿り着きましたよ!魔王ヒレカツ定食!

購買のバタークッキーを大人買いし一人占めする悪行、空が許しませんよ! 今日のおやつはクッキーと決めていたのに、よくも買い占めしてくれましたね!絶対に許しませんよ!

さぁ!今すぐ!早急に!クッキーとチョコとベ-グルとスコ-ンとスフレとプリンを返品して下さい!……返さないなら、例えこの身が砕けようと、全美幼女力を開放して貴方を討ち滅ぼします!

全美幼女力開放!(「封印を解く5」&「オ-ラ防御5」で美幼女オ-ラを纏う)
さぁ!勝負の時ですよ!この美幼女が直々に貴方に引導を渡してあげますよ!魔王ささみカツ定食!

※アドリブご自由に


神元・眞白
【WIZ/アドリブOK/ネタ系?】
あれはとある昔の魔法学園でした。
雨は吹きすさび、雷鳴は轟き、学園は闇に包まれました。飛威、SE。

そしてウォークぐりゃーと、ぎゅれーと?ウォークで。符雨、エキストラ役。
ウォークは暇つぶしの様に歩きながら道沿いの生徒を人形に変えていったのです。
なんてひどい。なんて恐ろしい。わなわな。
そして、人形と化した生徒たちはグループを組んで、毎日ウォークへと遊びに行くのでした。
めでたしめでたし。……あれ、終わった。どうしよう。

……うん。話合えばきっと解決。まずは話を聞いてもらう状況に。
呼び鈴鳴らせば開けてくれそう?



●混ぜるな危険を実際にやるとこうなる
「なんかもう疲れてきた……」
 豚は疲弊していた。猟兵が予想以上にパワフルすぎたからだ。
「魔王様、どうぞこちらを」
「うむ、ありがとう」
 差し出されたお茶を飲む。心に染み渡る味がした。
「頑張るか……よし、行ってくる!」
「ええ、彼奴らに魔王様の恐ろしさをお教えしてやってくださいまし」
「うむ!!」
 意気揚々と放送用の部屋に向かう豚。
 ……何かが致命的におかしい気がする。

 一方、"耳の石像"部屋、またの名を面接室。
 意気揚々と石像の前に立つのは、最上・空。漲るドヤ顔パワーだ。
「さあこの全生徒が羨む美幼女、空が来ましたよ! 応えなさい魔王!」
 豚はちょっと期待値を上げた。
 少なくとも拳でドアを破壊しようとしてないし。
『ほほう、生意気な小娘だ……俺様のことを知っているのか?』
 空はふぁさーっとナイス角度で髪をかきあげ、そして当然といった顔で言い放つ。
「当然です、魔王ヒレカツ定食! 大人買いの罪、その身で購ってもらいましょう!!」
『なんて?』
 思わず素が出た。突っ込みどころが多すぎて理解が追いつかない。
「さあ、扉を開けなさい! それか購買部で大人買いしたお菓子を返品なさい!!」
『いやだからなんて?』
 豚は困惑した。ダメ出しどころではなかった。

 その一方で、空は仕方ないですねと頭を振ると説明を始めた。
「空は今日のおやつはバタークッキーと決めていたのです! それをあなたが……!」
『待て! 待った、お前の言いたいことはわかった!』
 本格的にこじれる前に待ったをかける豚。学習力があるらしい。
『たしかに俺様のもとにバタークッキーはある! だがこれは大人買いというほどでは……』
「おだまりなさい!」
『えぇ……』
 有無を言わさぬ声音だった。美幼女の恨みは深いのだ……!
 実態は多分普通に人気なので売り切れただけなのだろうが、空の耳には通じない。
 美幼女は決断的でなければいけないのだ。美幼女だから!
『そもそもだなあ、考えてみろ。俺様が迷宮の外に出れたら大問題だろ』
「むっ、それはたしかに!」
 至極当然の指摘であった。空は考え込む。では誰が空のお菓子を……!
『つまり俺様が学園に行けない以上、アリバイは成立しているのだ!』
 Q.E.D、論破です! どうする、美幼女!?

「いいや、それは違う!」
『な、何ぃ!?』
 颯爽たる声。現れたのはマフラーで口元を覆い隠した、眉目秀麗な青年であった。
 彼の名を城石・恵助という。彼には恐るべき秘密が隠されているのだが、今回はさておこう。
「たしかに今のキミは学園に来れない。だがもともとは学園の生徒だったのさ!」
「『な、なんだってー!?』」
 豚と空はハモった。恵助はぺらぺらとホラを並べ立てる。プロだ。
「その様子では、やはり僕のことは覚えていないようだね……ナイスガーイ」
『なんて?』
 思わず聞き返した。だがやっぱり聞いちゃくれねえ。
「ナーイスガイ・スゴイハン=サム・カオガイー・ビセイネェン……それがキミの本当の名前さ」
『なんて?』
「あ、それって魔王味噌カツ定食にやられた学生さんの名前ですよね!」
『いやお前もなんでいちいち美味しそうな名前で俺様呼ぶの?』
 例にもよって恵助と空は豚のツッコミを完全スルーして話を進める。
「そのとおり。イーケメイン・スゴイハン=サム・カオガイー・ビセイネェンはキミの双子の弟なんだ」
『えぇ……』
 そういえばそんなギラギラ野郎をぶっ飛ばした気もする、と思い返す豚。
 300文字内でフルネームを二つ分も盛り込んでくださったパワー、ありがたい!
 でもここからは略そう。
「あの日、大魔女ユーババから弟をかばい、キミは呪いをその身で受けた……」
「なんとなく名前も取られちゃいそうですね!」
「ああ、彼が美味しそうな名前を名乗るのはそのせいなんだ!」
 なるほど、と納得する空。
 豚は反論しようと思ったがもうやめた。

「キミが弟を殺さなかったのは、その記憶が残っていたからなのだろう?」
 あっ、ここだ! 豚は閃いた!
 極力悪そうな声で反応する!
『くっくっく……そんな男はもうこの世にいない。今の俺様は超龍王ドラ』
「おのれ、魔王串カツ定食!!」
 空がある意味抜群の合いの手でシリアスをぶっ潰した。
『いやそもそもな、無理があるだろう! 俺様はじゃあ豚になってどうしたというんだ、ええ?』
「それは……」
 恵助がわずかに答えに窮したその時。
「それは……とある昔のことでした」
 すごくいいタイミングで被せてきたのは、ミレナリィドールの神元・眞白だ!
「雨は吹きすさび、雷鳴は轟き、学園は闇に包まれました……飛威」
 パチン! と指を鳴らすと、どこからともなくメイド姿のからくり人形が現れた。
 そしておもむろに、やたらでっかいトタン板を取り出す。
 ガラガラゴロゴロ……端をつまんで揺らすと雷っぽい音が鳴り響いた。知恵だ!
 ちなみにもう一体の人形が、雨団扇と呼ばれるビーズつきの団扇を揺らして音を演出している。
「そして呪いを受け、豚になってしまったウォークぐ……ぐれーとウォーク?」
『いや俺様は魔皇帝カイ』
「ささみカツ定食です!」
「僕は生姜焼きもいいと思うなあ」
 空と恵助が絡むと音速で話がそれていく。豚は少し泣いた。
「ではポークにしましょう。彼は暇潰しとばかりに、多くの人々を人形に変えたのです。……符雨、エキストラ」
 雨団扇を振りながら、なんかこう人形に変えられたっぽい演技をする二体目の人形。なんだこれ。
「なんてひどい!」
「なんて恐ろしいことを……!」
 二人の観客はごくりと唾を飲んだ。ガラガラゴロゴロ、ザーザー(従者たちによる迫真のSE)
「そして、人形に変えられた人々は……」
「「『ひ、人々は!?』」」
「……なんだかんだ人形でもいいやってなり、ポークのもとへ遊びに行ったのでした」
「そ、そんな! 許せませんね魔王ローストポーク!」
「僕は豚カツも捨てがたいなあ」
 ちゃんちゃん。

『いやちょ、ちょっと、ちょっ待てぃ!!!!!!!!!!1!!』
 さすがにストップが入った。
 突然大声でどうしたの? みたいな顔で首を傾げる三人……と人形二体。
『終わってるやないけ! 話! 終わってるやないけーい!!』
「……ほんとですね」
「ナイスガーイにも友達がいたんだねえ」
「でも魔王サーロインステーキは空のお菓子を全部食べちゃったんですよ!!」
 話がジェットコースター並にこじれててもうわかんねえなこれ。

「はああああ、どうしてこうなるんだ……」
 再びオブリビオン席。豚はマイクを前に頭を抱えた。
「魔王様、ここはワシにお任せくださいましゾ」
「え? ああうん、じゃあお願いしようかな。うん?」
 ごく普通に席を譲りながら豚は首を傾げた。なんかおかしくね?

『聞け、猟兵ども。貴様らは魔王様の御力を何ら理解しておらぬ!』
「えっ、なんか女の人の声がしますよ!?」
「……オブリビオンって1体だけっていうお話でしたよね?」
「うーんやっぱり生姜焼き……えっ何、どうしたの?」
 困惑する三人。謎の声は続ける。
『魔王様が本気を出せば、海は干上がり地は八つに裂かれ、天は墜ち世界は瞬く間に滅びるであろう! そして貴様らはひれ伏すのだ!』
 ノリノリで魔王(豚)の性能を盛っていく謎の声。
『さあ魔王様、いまこそ彼奴らを……えっ、なんですか? お前誰だ? 何を申すのですか魔王様、そんなことよりささ、猟兵どもを……え、出てけ? いやだからワシはあなたに忠誠を誓うわなにをするやめろワシは神様じゃぞ』

 ブツン。音声が途切れた。

 ガラッ! 突然開くドア。
「グワーッ!」
 放り込まれてきたのは魔王第一の忠臣……もとい、御狐・稲見之守である。

 間。

「「「猟兵やないかーい!?」」」
『そうだよなんで俺様のところにいるんだよ!? 返品だ返品!!』
「バレてもうたか、てへぺろ☆」
 てへぺろではない。
 ともあれ、一同は無理やりオチをつけることにした。そしてごリ押すことにした。
 ゴォウッ! 空がなんかかっこいいオーラを纏う。
「美幼女力、開放……仲間を傷つけ、あとお菓子を買い占めた罪を償わせてみせます、魔王シュニッツェル!!」
『美幼女力ってなんだ!? あと全然俺様の話聞いてないな!!』
 そしてマフラーを巻き直しながらかっこいいポーズを取る恵助。
「うん。僕もキミを止めてみせるよ。初対面だし特に関係ないけどね」
『そこは因縁付けろよ!?』
 最後に眞白。擬音道具を持ったままのからくり人形たちと顔を見合わせ、考えた。
「……呼び鈴を鳴らせば、扉を開けてくれるかしら?」
『せめて少しは話を考えろーーーーーーっ!!』
「あ、ワシ抜け道知っとるゾ」
「「「ナイス!」」」
 豚は崩れ落ちた。オブリビオンの明日はどっちだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『地下に広がるアスレチック』

POW   :    己を信じて真正面から挑む。筋肉は君を裏切らない。

SPD   :    不安定な足場やロープを使い、効率よくゴールを目指す。

WIZ   :    アスレチックの並びやルートを調べ、最短の道を探す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●風雲オブリビオン城
 グゴゴゴゴゴ……。
 重々しい音を立てて石扉が開く。そこに待っていたのは……!

「フハハハ! よく来たな猟兵共、割と帰ってほしいがもうヤケだ!!」
 特設された悪そうな玉座から一同を見下ろす豚もといウォークグルェート。
 そして奴の元へたどり着くまでの巨大空間に広がる、複雑怪奇なアスレチックステージ!
「割と本当に帰ってほしいのだが、説明してやろう!」
 ばさぁ! と迷宮百均の雑貨で自作したマントを翻しつつ解説する。
「貴様らの信念は理解した……いや理解したくないのだがもうここまで来てしまったもんなお前ら! なので次は、体力だ!」
 精神の次は、体力。シリアスバトルをこなせるかの第二試練!
「俺様が苦節ウン年かけてこさえた、このアスレチックを越えられた者こそが、俺様とシリアスバトルをする栄誉を手に入れるのだ……!」
 全力で回れ右してほしそうな顔で豚は言う。足は震えていた。
「いいか、アスレチックちゃんと超えろよ! 抜け道とかするなよ!!
 無視されたら俺様マジ泣きするからな! いいな!!」
 逆に効果のなさそうな念押しをする豚。多分相当苦労したんだろう。

 長大なアスレチックには水場や懸垂、はたまた飛び石状の障害物など多種多様なステージが存在している。
 筋力、速力、もしくは悪知恵……持てる力を発揮して、アスレチックを突破せよ!

 ちなみに、割と抜け道もある!!
御狐・稲見之守
(当然のように玉座の横にいて)

猟兵達め、よもや此処まで辿り着くとは。しかし魔王様が作られたこの風雲オブリビオン城、容易く超えられることはありますまい。千の勇者が挑み力尽きていったこの魔城に彼奴らは苦しめられることでしょう。

ささ魔王様、ここはこの魔王様の懐刀、“魂喰い”御狐稲見之守にお任せください。必ずや彼奴らを血祭りに上げてみs(床がパカッと開き落ちていく)



●アウトー
「猟兵たちめ、よもやここまでたどり着くとは……」
 恐るべき女怪、魂を奪うものにして恐怖を与えるもの……。
 "魂喰い"の御狐・稲見之守は拳を握りしめた。豚の玉座の傍で。
「しかし魔王様、ご安心を!」
 オーバーな身振りで振り返る稲見之守。そして陶然とした様子で語る。
「魔王様手ずから建造された、この風雲オブリビオン城ならば! 必ずや彼奴らを退け、魔王様の御威光を示すことでしょうとも!」
「…………」
 豚は無言だ。
「まさか魔王様、奴らが試練を乗り越えてくるのでは……とお考えで?」
 稲見之守は頭を振る。
「千の勇者が挑み力尽きていったこの魔城、あのような連中が越えられるはずはありますまい」
 そして邪悪に笑った!
 意味深に爪が光る。よく見るとなんか悪役っぽいコスをしていた。
「万が一のことがあろうとも、ご安心くださりませ。魔王様の第一の懐刀にして忠臣たる、この妾が彼奴らを血祭りにあげましょうぞ!」
「…………」
「妾の最終奥義、血祭り残酷残忍凶悪うらごろし地獄巡りあらば! 猟兵など鎧袖一触、恐るるに足あっ」
 稲見之守の足元の床がパカっと開いた。
 彼女は落下した。
 床が閉まる。
「もうなんなの猟兵怖いよぉ……」
 豚は顔を覆った。さめざめ泣いた。

「透明化出来るからってはしゃぎすぎてもうた、てへぺろ☆」
 落下しながら稲見之守はカメラ目線でこつんと頭を叩いた。違うそうじゃない。
 落ちた先がどうなっているか? 多分普通に這い上がってくるから気にする必要はないと思う。

失敗 🔴​🔴​🔴​

リゼリナ・ファルゼナ
(一生懸命とっていたメモを見返して)えっとつまりまとめると…魔王はむかしテテルマイスさんを裏切り人々をお人形さんにかえて侍らかせ大魔女ユーババの双子?の弟のナイスガイ?さんをやっつけバタークッキーとか、圧政とか、白鐘さんや数宮さんのご友人をトンカツにして、側近の稲見さんを首にした…! 並べ立ててみると恐るべき悪行の数々…! 正義の剣を振るうに不足なしですね…!
もちろん私は正々堂々正面突破GOアヘッドです!いきますよシュヴァルト丸
グワーッ!(落ちる)
アバーッ!(コケる)
オエーッ!(腐ったパンを拾い食いしてお腹を壊す)
苦しい戦い…!だが正義の人狼騎士はくじけない…!(ユベコで突き進む!)【POW】


テテルマイス・ミンスキパイア
アタシのような年寄りにはちょいとばかしキツそうな道だねぇ。此処は抜け道を使わせてもらう……なーんて言うと思ったかい!正面から突破させてもらうよ、ヒーヒッヒッヒ!【WIZ】

と言っても、使うのはアタシの足じゃないけどねぇ。【シャズ】、ちょっと出てきておくれ!

アタシはシャズに乗って、シャズにアスレチックを駆けてもらうよ。道はすでに『視えた』。後は最短ルートを駆け抜けるだけさね。ああ、今回は空は駆けないよ。せっかくのアスレチック、空を駆けちゃ面白くないじゃないか。それでもお前の足なら……そうさね、30秒もかからないさ。だろう、シャズ?

「なに?もっと遊びたい?……アタシを向こうに下ろしてからならいいよ」


数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】

へっ、おとなしく通せばいいんだよ通せば。
なんか敵の方に見知った顔もいた気がするけど…まあいいか。
よし、きっちりコースクリアしてやろうじゃないのさ!

バイクで。

……おい。ちゃんとバイク用のコースも作ってるんだろ?
なぁ?答えは聞いてないけど!
もしバイク用のコースがあれば誰かと2ケツして突破する!
ちょっとくらいハードル上げた方が面白いだろ?
徒歩用コースしかない?そうかそうか、じゃあ突破だな!
とにかく超加速を生かして突っ走るぜ!
懸垂で飛び移るコースは大変だろうけど、
念動力でうまく捕まえながら勢いを殺さないように渡っていくよ!



●何もなかった
「……なあ今のって」
 数宮・多喜は思わず猟兵一同の方を見た。全員首を横に振った。
「そっか。気のせいだよな、うん!」
 多喜もだいたい察した。あの妖狐のことは忘れよう、次の章まで。

「さて、気を取り直して……きっちりコースクリアしてやろうじゃないのさ!」
 意気揚々と腕を組む多喜。豚はふふんと彼女を睨め下ろした。
「ほう、貴様にクリア出来るかな? ……ところでその隣の何?」
「あ? 何ってバイクだけど?」
 ドルルンドルルン。エンジン音をあげる宇宙カブJD-1725。
 ライダー用の手袋をきゅっとはめ直す多喜。乗るつもり満々だ。
「いやこのアスレチック乗り物は考慮してな……」
「ヒーヒッヒ! こいつは腕が鳴るねェ、あと腰もねェ!」
 この中で一番抜け道を使って邪悪に笑いそうなテテルマイス・ミンスキパイアが並ぶ。
 めちゃくちゃでっけえファンタジックな巨浪の背に乗っかったまま。
「いやおばあちゃん何それ!?」
「アタシの旧友だよォ。こいつに手伝ってもらうのさね」
「だから乗り物は考慮してないんだが!?」
 ぱからぱからヒヒーンズババーンブルルーフッフー!
 慌てる豚の叫びを遮る謎のエンジン音。エンジン音か?
「行きますよシュヴァルト丸! 悪の枢軸、トンカツ魔王を討つために!!」
 ビシッとかっこいいポーズを取るのはリゼリナ・ファルゼナである。
「へえ、いいバイクじゃないか! こりゃスピード勝負したくなるね」
「ふふんさすがです数宮さん我が名馬シュヴァルト丸の毛並みの良さにお気づきとは! テテルマイスさんのお友達もかっこいいですね!」
「ありがとうねえお嬢ちゃん、黒飴舐めるかぁい?」
 ドルンドルングルルルヒヒーンとエンジン音(あと鳴き声)をかき鳴らしつつスタートラインにつく三人。
 豚はしばし固まった。そして椅子に背を預け、深く泣いた……。

 そんなわけで多喜はコースを見渡す。バイク用なんてものは当然、ない。
「仕方ないなあ、じゃあ通常コースを突破するしか」
「うおおおお行きますよシュヴァルト丸ハイヨー!!」
「「えぇー!?」」
 ものすんげえ勢いでぶっ飛んでいくリゼリナ。彼女の目は正義に満ちていた。
(あの魔王はテテルマイスさんを裏切りあとえっとなんかトンカツ買い占め? とか人形劇? とか色々やったので悪者、つまり悪ですね! この人狼黒騎士リゼリナの剣で斬り伏せるに不足なしです!!)
 彼女の手の中にはびっちりあれこれ書かれたメモ用紙。
 バカ丁寧に猟兵たちのホラ話を全部まとめていたらしい。ツッコミさんはログアウトしている。
「正々堂々正面突破GOアヘッドでグワーッ1?」
 そして第一の関門プールステージに車体ごと突っ込んで落ちた。
「「えぇー……」」
 多喜とテテルマイスは唖然とし、そこでハッとなった。
 オブリビオンの用意した試練なのだ、失敗イコール死とかなのでは!?
「ああうん、リタイア者は別に引き揚げていいぞ」
「「アッハイ」」
 豚はだいぶ投げやりになっていた。そんなわけでリゼリナは救助された。

「仕方ないね……リゼリナ、後ろに乗りな。2ケツだ」
「えっいいんですか多喜さん優しいですねこのパン要りますか!?」
「いやいらないかな……ていうかなんだいそのパン明らかに腐ってないか……?」
「プールの中にあったので拾いました!!」
 満面の笑顔のリゼリナに、多喜はこれ以上何かいうのはやめようと決めた。
 そんなわけでびしょ濡れのシュヴァルト丸(バイク)は乾かしつつ、タンデムすることに。
「いきなり予想外のトラブルだねェ、こうでなきゃ面白くないよ。ヒッヒッヒ!」
 黒ずくめの魔女は笑う。リゼリナにお腹を壊さないよう薬を渡しながら。
 しわだらけの顔の奥、眼光は鋭い。昔レディースとかだったのかもしれない。
「シャズ、お前の足なら30秒もかからないだろう? 楽勝さね」
 その言葉にニヤリと笑うのは多喜である。彼女もいっぱしのライダーだ。
「へえ、そりゃアタシとコイツに勝負しようってことかい?」
 愛用の宇宙カブJD-1725のハンドルを叩く。テテルマイスは片眉を吊り上げる。
「競(や)ろうってのかい? 面白いねェ、ヒーヒッヒッヒ!」
 二人のスピード狂が火花を散らす……!
 豚はツッコミを諦めた。いっそ流れに乗ることにした。挑んではくれるし。
 リゼリナ? リゼリナはアホの子みたいな顔で腐ったパンを食べている。

「では行くぞ……スタートだ! もう勝手にしろ!!」
 豚が号令を下すと、宇宙カブのエンジンが唸りを上げる! フルスロットルだ!
「気合入れろよ相棒、いくぜ!!」
「シャズ、若いのに負けんじゃないよ? 匕―ヒヒヒ!」
「あっなんだかお腹が痛くアバーッ1?」
 ゴウッ!
 後方の悲鳴を完全無視してロケットスタートをキメた魔女とライダー。
 第一関門、プールステージ! 華麗なジャンプで突破!
「やるじゃないか婆さん、けどねぇ!」
 続く第二コースは飛び石ステージだ。足を踏み外すとけっこうな距離を落ちる。
 だが多喜は華麗なテクニックでカブを操り、これを飛び渡っていく!
「お前さんもねえ、ヒッヒッヒ!」
 追うテテルマイス、というかシャズ。こちらも速い!
 狼らしい俊敏さであっという間に第二コースを突破。ほぼ同時だ!
「多喜さん少しスピードを緩めグワーッ!? お腹の中身がオゴゴーッ!!」
 後方の悲鳴は聞こえていない。

 第三ステージ、第四ステージ……。
 魔女(と狼)、そしてライダー(と宇宙カブ)の2組のコンビのデッドヒート。
 本来頑張って二足で走り抜けるためのトラップとか障害物を物理的に破壊しながらのチェイスは、いよいよ終盤を迎える。
 リゼリナは青を通り越して紫の顔でぐわんぐわんスピードに揺られている。
「ヒッヒッヒ、けど次のステージは頂きだねェ!」
「なんだって? あっ、あれは!!」
 多喜は目を見開く。次の試練は……懸垂コース!!
 テテルマイスには、すでに勝利の道筋が"視"えている。
「さあシャズ、やっておしまい!」
 魔女っぽい台詞に応じて狼が跳躍、懸垂コースを……ああっ、こ、これは!
「な、何ぃ!? 懸垂部分の上に飛び乗っただとぉ!?」
 豚は身を乗り出す。
「ヒーヒッヒ、バイクじゃここまでは届かないだろう? 優勝はアタシのものだねェ!」
「くっ……」
「一体どうするというのか、数宮・多喜! 敗北を許してしまうのか!?」
 なんだかんだノリの良い豚は完全に実況者モードに入っていた。
 多喜は歯噛みする。だがここでブレーキを踏めば負けは確定だ。
 ゆえに彼女は……ハンドルをひねった。フルスロットルだ!
「あーっと、これはーっ!?」
「オゴゴゴーッ!?!?」
 その時誰もが驚愕した。多喜は、減速も跳躍もしなかった。
 彼女は懸垂部分のハンドルに、触れてすらいない。だがぶら下がっている!
「疾走サイキックライダー、それがアタシの二つ名さァ!」
 念動力である。彼女は念動力によって懸垂部分を支えにしているのだ!
 ターザンめいて弧を描く多喜。振り子運動によりスピードがアップ!
「ヒッヒッヒ、そうこなくっちゃねェ!」
 テテルマイスは笑う。着地したカブと狼が並んだ!
「さ、最後は直線コースだ! どうなる? 勝つのはどちらだ!?」
 豚の実況にも熱がこもる。猟兵たちは誰もが手に汗握った!
 リゼリナは口から出してはいけないものを出している! 忘れよう!
 そして……!!

「ゴーーーーーーールッ!! どっちだ? 勝ったのはどちらだ!!」
 なぜか用意されていた大型液晶に映り込むゴールカメラ。
 スローモーション再生されたその結果は……。
「ど、同時! 同時だ、全く完全の同時ゴール! 決着は引き分けだァーッ!」
 ギャリリリッ! と爪(そしてタイヤ)で地面をひっかきながら立ち並ぶ両者。
 多喜とテテルマイスはお互いに見つめ合い……そして互いに、笑った。
 どちらともなく手を差し出し、力強く握手を交わす。神聖な瞬間……!
 その足元にはリゼリナが転がっていた。
 およそ美少女キャラがしてはいけない顔をしていた。忘れよう。
「見事、見事だふたりとも、なんと素晴らしい走りっぷりか……!!」
 マイクを手に豚は男泣きした。素晴らしいバトルだった!
 誰かが拍手を鳴らした。アスレチック場が喝采に包まれる……。

 目的とか意義とか、なんかそういうのはみんな忘れていた。
 感動的なシーンではありがちなやつである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アンシェ・ローム
魔王ウォークグレープっ!今行きますわよ!
うーん、でも猫の足じゃゴールまで遠すぎますの……。えいっ、いでよカモカモ!

【カモーンカモカモ】
『でかカルガモ親子が召喚される。ヘルメットで武装された親カモの首には「横断注意!優しく見守ってね」の看板がぶら下がっている。
だいたいの障害は突撃して破壊。飛び石は【ジャンプ】で飛び、水場は泳いで移動。
懸垂では根性で渡る。進路妨害してくるアスレチックでは「まだ子供が通ってるでしょうが!」と親カモが威嚇する。』

そういえばカモさん、抜け道あるらしいですわよ?


神元・眞白
【WIZ/アドリブOK/ネタ系?】
(実況の様になぜかアスレチックを見渡せる場所を陣取って)
地下に広がるこの城を、人は「ポークランド」と呼ぶ。…呼ぶ?
今まさに、この城を巡って、壮絶なる戦いの火蓋が切って落とされようとしていた……。
勝つのはポークの意地か、それとも猟兵の執念か。…それとも。
挑戦者は幾数人。何人のチャレンジャーがこの茶ば……施設をクリアするのか。

どこかに案内図とか、看板とかありそうな予感。
あのポークが簡単に往復できるルートがありそう。
…アスレチック越えてほしいって言ってるし、じゃあ符雨頑張って。
簡単な所を進めばきっと大丈夫。なはず。


城石・恵助
あんなに足が震えて…可哀想に。

僕は器用でも頭がいいわけでもない、
彼の為にも正面から堂々とアスレチックに挑もう。
労働の後にいただくご飯は格別に美味しいものだしね。

これだけのアスレチックを作りあげるのは大変だったんだろうなぁ。
その苦労とジューシーポークハンバーグに想いを馳せながら、【気合い】を入れて【怪力】と【ミートハンマー】でアスレチックを破壊しながら進むよ。正面から堂々と挑むよ。物理で。

だってあんまり複雑なアスレチックってクリアするの面倒くさいし…。
あとおニューのUC使ってみたかったから…。
これね、固くて食べにくそうなお肉を柔らかくするのに使ってみようと思うんだけど。お前の肉とかな。
どうかな?


クラーラ・レイネシア
えっとさ俺の圧政者の定義って理不尽を強いる奴の事を指すんだけどさ
んと、こいつ只のちょっと迷惑だけど憎めないおっさんなんじゃないかなって思い初めてだな
オブリビオンだから倒さなきゃいけないんだろうけどさ
うん、普通に楽しんでクリアしようかなって思ったんだぞ
流石に壊すのは可哀そうかなーって

と言う訳で【クライミング】に【ジャンプ】を駆使してアスレチックを正当にクリアしていくぜ
力が必要な場所は【怪力】と【気合い】で乗り越えるぜ
あとは全力で楽しむ【勇気】があれば完ぺきだな!
悪知恵とか馬鹿の俺には無理だからな!
でもあれだ、不正をされたら壊しちゃうかもだな
不正は理不尽だからな、圧政には反逆をもって返すしかないね



●日曜の午後とかにやってるアレの感じで
「地下いっぱいに広がる広大なアスレチック場、人呼んでポークランド……」
「そんな名前つけた覚えないんだが。というかなんでまた俺様のとこに猟兵来てるの? ねえ?」
「今まさにこの城を巡って、壮絶なる戦いの火蓋が切って落とされようとしております……」
「えっ無視? てか何このマイクと席? なんか名札あるんだが?」
「勝つのはポークの意地か、それとも猟兵の執念か。あるいは……」
「他にあるの!? お前たちだけでトラブル十分なんだけど!?」
「さあ、いま残るチャレンジャーたちがスタートラインにつきました。実況は私、神元・眞白と」
「か、解説はこの俺様、邪神皇ダークマターグレートカイザーでお送りするぞ!!」
「……それにしてもこれ、壮大な茶番」
「お前が言うの!?!?!?!?!?!?!」
 眞白は完璧にセメントだった。豚は崩れ落ちた。

●ところ変わってスタート地点
「あんなに大粒の涙を流して……可哀想に」
 完全に他人事みたいな顔で実況解説席(元・豚の玉座)を見上げる城石・恵助。
 その隣では、クラーラ・レイネシアがバツの悪そうに頭を掻いていた。
「どうしましたの、クラッシャーさん?」
 アンシェ・ロームはまた微妙に名前を間違えていた。
 ゲンコツで扉開けようとしてたから無理も無いよね。
「クラーラだよ! いやなんつーかさ、いまいち調子が狂うっつうか」
「まあみんな好き勝手してるよね。でもキミは叛逆者なんだろう?」
 恵助の問い、クラーラは困ったように肩をすくめた。
「そうなんだけどさ、あいつただの迷惑だけど憎めないおっさんじゃね?」
「どちらかっていうと圧制されてる側ですわね。オブリビオンですけれど」
 翻弄している側にすら憐れまれる豚の明日はどっちだ? 骸の海だが。
 そんなわけでクラーラは微妙にモチベーションの置きどころに困っているらしい。
「どのみち倒すんだ、せめて彼のため正々堂々とこの試練を乗り越える。それが彼に対する敬意になるんじゃないかな?」
「なるほど、そっかそうだよな! よーし、やるぜ!!」
 クラーラは拳を握った。彼女にしては珍しく正攻法で行くつもりだった。
 恵助も拳を握った。彼の頭にはハンバーグのことと、破壊の手順しかなかった。
 アンシェはしばらく考えてカルガモを呼んだ。
 ……カルガモ!?
「「カルガモ!?」」
「カルガモですわー!」
 しかも親子だ。

●またしても実況席
「カルガモ!?」
「しかも親子。これはどう見ますか、ポーク?」
「ええ、そこで俺様に振るの……」
 何もかもが予想を飛び越えすぎてて困惑している豚だが、腕を組む。
「まああの大きさではまともに進めぬだろうからな、騎乗用というところか?」
「具体性に欠ける解説。まさに豚ね」
「辛辣すぎない!?」
 眞白は完全スルー。ところで彼女はアスレチックをどうするのか。
 ぱちんと指を鳴らした。しずしずと二体の戦術器が現れる。
「じゃあ符雨、頑張って」
 人形メイドは無言で礼をして、下に降りていった。か、替え玉……!!
 何か言いたげな豚だが、眞白が死霊の配下を召喚すると黙った。こわい。
「あっ。ご覧ください、各選手一斉にスタートを切りました」
 眞白はカメラ目線で語りかけた。無法とはこのことである。

●試練はこわれるよどこまでも
「いでよカモカモ、そしてゆけよカモカモですわー!」
 80cm弱のカルガモ親子の背に乗りゆうゆうとゴールを指差すアンシェ。
 よく見るとカルガモ親子の父親のほうは、なぜかヘルメットを被っている。
 そして妙に北の国にいそうな渋い顔つきをしていた。なんでだ。
「あーあ、ああああ、ああああーああ……!!」
 これは豚の嗚咽である。
 なんでかというと、カルガモ親子はものすごいチャージで障害物を突破(物理)しているからだ。
「あ、あれいいのか? さすがに可哀想じゃねえ?」
「うーん、多分圧制に対する反逆なんじゃない?」
「ようしそうかだったら俺も続くぜぇー!!」
 クラーラもロケットみたいにスタートした。そして壊れる障害物たち。
「うーん、やっぱりおろし醤油かなあ、いやデミグラスソースも捨てがたい」
 そして恵助も後に続く。
 棒が道を阻む。拳で砕く。
 大きな岩が転がってくる。拳で砕く。
 豚は震えた。明らかに肉を叩いて柔らかくする動作だったという。

「むっ、これは手強そうですわね」
 プールを普通にすいーって泳いだあと、アンシェと親子は立ち往生していた。
 立ちはだかるのはギロチン(ゴム製)のステージである。
「まあ急がず焦らず進むのが一番ですわ!」
 とことこ。やけに渋い顔の親カルガモがアンシェを乗せて先に突破。
 そのあとをよちよち歩きで子カルガモがついてくるのだが……。
 アブナイ! 小さな体めがけて振り下ろされるギロチン(ゴム製)!!
『ホタルゥ……!!(親カルガモの鳴き声)』
 ものすごい顔でギロチン(ゴム製)を威嚇する親カルガモ。まだ子供が通ってるでしょうが!!
 別にギロチン(ゴム製)は障害物なのでビビらないのだが、床の下で変な棒をぐるぐるしてた雑魚オブリビオンたちは話が違った。
 障害物が動きを止める。子カルガモ、いま感動のゴールです!
「うおおおおお! 圧制者めぇー!!」
 そしてクラーラが全部拳と足でぶっ飛ばしてきた。余韻とかなんもねえ。
「ホットプレートあったっけなあ……」
 恵助が残る残骸をふっとばした。床の下の雑魚オブリビオンたちは変な棒ごと爆発四散した。
 ……悪は去った!!

「各選手、順調。ゴールまであと少し」
「お、俺様の、俺様のアスレチックステージが……」
 人形メイドの符雨はそのあとを通ればいいわけで、障害物もクソもなかった。
「でも飽きてきた。ここでボーナスです」
 眞白が指を鳴らすと、背後に控えていた飛威がデデン! とフリップを出した。
 こ、これはアスレチック場の見取り図! そしてショートカット(抜け道)!
 ご丁寧に赤いマジックでぐるぐる丸が書いてある。無慈悲すぎる。
「……というわけで皆、頑張って」
「血も涙もないなお前ら!?」
 豚の慟哭は誰にも届かない。

 さて、これに拳をバキバキ鳴らすのはクラーラである。
「野郎……てめえだけズルするためにあんなもん隠してやがったのか!!」
 なんという圧制。これは間違いなく反逆不可避ですね。
「俺のこの勇気! 気合い! そして!!」
「ジューシーポークハンバーグ」
「と拳でぇ!! こんなふざけた圧制ぶち砕いていや待ていまのなんだ」
 恵助は献立とか合わせ食材は何にしようかとか考えながら坂道をぶち砕いて進む。
 クラーラも負けじと地獄の炎を滲ませ、駆け出す!
 懸垂! 全部燃やした上で飛び越える!
 飛び石! 足で蹴り砕いて粉々にする!
 平行棒! 根本からへし折って振り回す!!
「うぅおおおお!! 反逆者様のお通りだぁー!!」
 そびえ立つ絶壁。クラーラはそのまんまの意味で踏破した。
「ゲェーッ!? 両足を一歩ごとに壁に突き刺しながら垂直歩行をォー!?」
「待ってろよ圧制者……ぶちのめしてやるからなァ」
 バキン、ズボッ。
 メキョッ、ズボッ。
 すさまじい形相で壁を歩き上るブレイズキャリバー、怖い。
「これさ、おニューのユーベルコードなんだ。肉叩きに使えるかなって」
 恵助も怖かった。お前を叩くための拳だぞって顔に書いてあるし。
 豚は震えた。一番怖かったのは根性でクライミングするカルガモ親子だ。
「さあいま行きますわよ、待ってなさい魔王ウォークグレープ!」
「せめて名前は間違えないでくれよぉおおお!?」
 豚に逃げ場なし。惨劇の予感!!

「ではポークランド大レース、このへんで。実況は私、神元・眞白でした」
 カメラ目線で手を振る眞白。とメイド。
 背後ではアスレチック場が燃え上がり、崩壊していた。
 悪い夢みたいな光景である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ウォークグルェート』

POW   :    大斧の一撃 + 服破り + ずぶ濡れ
【触手から吐き出した粘液】が命中した対象に対し、高威力高命中の【防具を破壊する大斧での一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    触手乱撃 + 捕縛 + うごめき
【悍ましい触手】【粘液まみれの触手】【いやらしい触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    悲しき性質 + 壊アップ + 狙アップ
自身の【欲望が理性を上回る性質】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夢を見る豚
 砕かれた障害物。
 燃え上がるアスレチック場。
 そこら中に刻まれた走行痕……。
 幼稚園の砂場でもこんなことにならねえぞというカオスの中、崩折れる豚。
「う、うううう……俺様は、俺様はただシリアスバトルがしたかっただけなのに……」
 さめざめと泣く。ちょっと可哀想かもしれない。
 だがやつはオブリビオンだ。過去の化身、未来の破壊者。
 己の欲望を傲慢と押し付け、人々を傷つける。傷つけてきた。
 それは事実である。だが彼もまた……傷ついた。奪われた。

 豚ははっと気付いた。
 ならばこれは、取り戻すための戦いではないかと。
 己のロマンを。物理的に破壊されたアスレチックと、構築にかけた時間を!
 そして……己の、誇りを!!
「そうか、そういうことだったんだな……」
 豚は立ち上がる。本人的にはあまり使いたくない触手が這い回る。
「いいだろう、ならば貴様らに俺様の恐ろしさを教えてやる!!」
 ギラリ。オブリビオンの鋭い眼光!
「俺様は魔王でも豚でもない。ウォークグルェート……ウォークグルェートだ!!」
 体がバラバラになってもいつかは魂が大地に還りそうな鬼気迫る形相で叫ぶ。

 道楽に付き合うのはここまでだ。おぞましきオブリビオンを打ち砕け。
 なんだかんだでシリアスっぽくなるんじゃないかな? ならないかな!?
 答えは猟兵次第である。
御狐・稲見之守
折角用意したシナリオをプレイヤーのおちゃらけで潰されるGMの痛み、よくわかる……ハッ、一体ワシはなにを、ううっ頭が。

お前との魔王と部下ごっこ…楽しかったぞ(真の姿となって現れるが何処か寂しげな表情)

しかし止すのだ、まお…いや、ウォークグルェート。その触手を使ったが最後、お前はシリアスには帰って来れなくなるぞ。エロボスだスケベ豚だと後ろ指を指されてしまう。スケベ沼から逃れられなくなる。それでも、それでもお前は戦うというのか……?

なら止む無し、その道理をこじ開けてみよウォークグルェート! あさて、魅了の術で奴の理性を打ち砕こう。


アンシェ・ローム
「なんてすごい闘気…!やはりこいつもオブリビオン……。ですわ!」

【猫の毛づくろい】を使用。
(お腹が出てるし、足元は死角のはず…。)

「しかし負けるわけにはいきません。ここがあなたの墓となr…… あーっ!!?」
と、天を指し注意を引いてから敵の足元に滑り込む。
メイスで敵のスネを強打。怯んだら爪を立てて敵によじ登り後頭部を思いっきり殴打する。(気絶攻撃)

気絶したらUC【キャプチャーブレスレット】
その後「んー、そろそろかしら…?」と、UCを壁か他の猟兵へ向ける。

気絶しなかったらまた滑り込み、執拗にスネを狙う。

「オブリビオン……いえ、ウォークグルェート!遊んでいただけて楽しかったですわ!」


数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み・巻き込まれ大歓迎】
御狐様はさぁ…傾国の某狐?

…へっ。悪かったね、ウォークグルェート。
少しはアンタを勘違いしてたみたいだ。
アンタは準を攫っても監禁もしていない、そうだろう?
あんだけのコースを作り上げる苦労してる間に、
誘拐なんてできないだろうからね。
勘違いの詫びじゃないけどさ…その真剣勝負、受けた!

アタシはとにかく接近しすぎないよう、距離を開けて
カブを乗り回しながらサイキックブラストを放つ。
ちょうど触手を迎撃するような感じかな?

戦闘が膠着したかこちらに流れが傾いたら、
即座に【黄泉送る檻】を発動させて奴の動きを封じる。
とどめになればそれでよし、ならなきゃフルボッコタイムさね!


神元・眞白
【WIZ/アドリブOK/ネタ系?】
ひとつ、人の世はびこる悪が。
ふたつ、不屈の気合と根性で。
みっつ、見事な立ち回り。
よっつ、呼ばれて飛び出。
いつつ、今から本気出す。
むっつ、無情なこの惨状。
ななつ、涙なくては語れない。
やっつ、役目を思い出し。
ここのつ、この場で見せ場在り。
とお、説くも聞いて叩っ斬られる。
ありがとう、ポーク。惜(も)し(ろ)い人材を亡くしました……。

と、なりましたがきっと第2第3のポークが現れ、また挑戦者達を待ち構えるのでしょう。
飛威と符雨はアトラクションを記録して報告書に纏めて。
ポークがどれぐらい強いかは実地で試す方向性。


テテルマイス・ミンスキパイア
なんだいなんだい、いろんな名前を名乗ってるもんだから、てっきり自分の名前が気に入ってないのかと思ったよ。『ウォークグルェート』……ヒッヒッヒ、いい名前じゃあないか!これでようやくアンタ自身と向き合えるねぇ!全力で相手してやるよ!

アタシは引き続き【シャズ】に乗って行動するよ。今度は空を駆けてもらって、空中から【ウィザード・ミサイル】で遠距離戦を仕掛けるさね。狼の群れも呼んで、そっちは地上戦を仕掛けてもらおうか。触手にガブリと噛み付いてやんな!地上の狼に気をとられたら、今度はシャズの爪でバッサリさ!

「ヒッヒッヒ!アンタがこしらえたこの空間、有効活用させてもらうよ!なんたって全力の勝負だからねぇ!」


クラーラ・レイネシア
全年齢対応だから俺はエッチなのは良くないと思うぜ!
あいつそんなに触手大好きなのか?ちょっと可哀そうだなぁって思ったけどやっぱオブリビオンはオブリビオンだな

相手の攻撃は【勇気】を出して【オーラ防御】と【激痛耐性】で我慢する!
俺も女だから触手塗れと言うのは正直避けたい
いや、触手で喜ぶとかマジもんの変態だけだろ?
攻撃は【気合い】を込めた【怪力】による右の反逆の拳を叩き込む
更に【早業】による【二回攻撃】の左による反逆の拳を追撃でぶち込む
そのどちらも【衝撃波】を伴い相手の【生命力吸収】して確実に息の根を止めようとする
狙うのは顔面か股間かな、どっちも急所だし。でもばっちいかな?
でも触手だしな手加減とか無理


リゼリナ・ファルゼナ
耐え難きを耐え忍び難きを忍び、とうとうここまで来ましたよ皆さん…! さああの邪悪な銀河皇帝を打ち倒し、世界に平和を齎しましょう!! せーの、えいっえいっおー!!
もちろん【POW】です! 騎士たるもの正々堂々一騎打ち…一騎打ちは無理かなぁ…あの、じゃあ、みなさんと呼吸を合わせて団結します!ひっひっふーっていう、それ出産のときじゃないですか!破廉恥!破廉恥はダメダメだめです正義失格ですよ皆さん!えっ正義じゃない?えっ(夢中で食べてたごはんが無くなったコーギーみたいな顔)

とにかく白鐘さんとか、稲見さんの尊い犠牲を乗り越えてゲットした新たな力(初BUと初ICが届きました!)で倒します!


城石・恵助
皆過激だよねぇ…モグモグ

ん、これ?
これね、『出刃包丁』で切った触手を『ガスバーナー』で炙って『お醤油』かけたやつ。結構いける
アスレチックでもうお腹限界でさ。モグモグ

…こんな僕を。気味が悪いと、化け物だと蔑むかい?
何も好きでこうなったわけじゃない
元は普通の人間だったんだ。あの日奴らが…オブリビオンが現れるまでは
僕は許さない
僕から友を、居場所を、ただ人であることさえも奪った、お前達オブリビオンを
絶対に許さなゲェェェェップ

オブリビオンはこの忌むべき力で必ず喰らい尽くしてみせる
直近ではお前をこの戦闘後に唐揚げにして美味しくいただく
そのためにはそう…【ミートハンマー】だ!
〈怪力・気合・料理・大食い〉



●シリアス。
 いよいよ腹を据えたウォークグルェート、全身からすさまじい闘気と汗が漲る。
「なんてすごい闘気……やはりこいつも、オブリビオン……ですわ!」
 アンシェ・ロームはきわめてシリアスな表情で構えた。油断は出来ぬ。
 その隣、旧友シャズ(巨狼)に引き続き跨るのはテテルマイス・ミンスキパイアだ。
「ヒッヒッヒ、いい名前じゃあないかね。ようやくアンタと正面から向き合えるよ」
 これまで自称してきた(そしてスルーされた)通り名はあくまでネタ。いや彼は本気だが。
 なんにせよ、オブリビオンとしての名を名乗ったのはそういうことだ。
「悪いね、アタシはあんたのことを勘違いしてたよ。その真剣勝負、受けた!」
 数宮・多喜もまた、清々しい笑みを浮かべて拳を構える。
 親友の件は誤解だったと理解したらしい。ならば戦うまで!
 ウォークグルェートもまたニヤリと笑う。が、まだ猟兵はいる。
「とうとうここまで来ましたよ皆さん。準備はいいですねっ!?」
 キリッ! とした顔でリゼリナ・ファルゼナも同調する。真剣な表情だ。
 無理もあるまい。相手は恐るべきオブリビオン、相手にとって不足は……。

「さあ、あの邪悪な銀河皇帝を打ち倒し、世界に平和をもたらしましょう!」
「おい」
「えいえいおー!! えーいえーい、おー!!」
「おい待て!! 待てぃ!!」
 えっなんですか、みたいなアホ面を晒すリゼリナ。豚は頭を振った。
「違うだろ? 俺様違うだろ? さっきなんて名乗った俺様!!」

 間。

「……なんでしたっけ!!」
 豚は顔を覆った。

 いやいや気を取り直せばいけるはず、と構え直すシリアス陣だが……。
「お前! お前、それ! その触手なんだよ!!」
 ぎゃーぎゃーと騒ぎ出したのはクラーラ・レイネシアである。
「俺たち猟兵は全年齢対応なんだぞ! そういうえっちなのよくないぞ!」
 よくわからん台詞だが、豚も豚でしょんぼりする。彼だってシリアスしたい。
 でもできないんだ。だって触手だから、豚だから。哀しき性質とはこのことか。

「実際、お前の気持ちもわかるのだぞ。ウォークグルェートよ」
 なんか神っぽい雰囲気を纏い、御狐・稲見之守がフォローした。真の姿だ。
 その怜悧な美貌に浮かぶのは悲しげな笑み。何が彼女を曇らせるのか?
「お前との魔王ごっこも、なかなか楽しかった。なあそうだろう?」
「えっなんであれで俺様も楽しんでたと思えるの? ねえなんで???」
 豚はもはや恐怖すら感じた。なんなの猟兵理解できないこわいよぅ。
「お狐様はさあ……傾国の美女かなんか?」
 多喜が思わずツッコミを入れる。だんだんシリアスが崩れてきた。
「いまいち締まらないねえ、こう全力とか出すつもりだったんだけどねえ」
 テテルマイスも邪悪な笑みで困惑している。邪悪な困惑ってなんだ。
 なおアンシェは豚の足を攻めるつもり満々だった。肥満体は膝に来るからね。
 その後ろで、神元・眞白は二体の戦術器に報告書の作成を指示していた。
「アトラクションの様子とか纏めておきなさい。ポークは実地試験するから」
「それいまやることじゃないよな!?!?!?!?!」
 豚のツッコミももっともである。

 さておき。また緩んできた空気で、意外な人物が進み出る。
 城石・恵助だ。彼はおもむろにマフラーを下ろし、その口元を晒した!
「っ!? お、お前、その口は……!?」
「……こんな僕を。気味が悪いと。化け物だと蔑むかい?」
 怒りと哀しみを秘めた冷たい瞳で、青年は語る。
「僕だってもともとは普通の人間だったんだ。
 だがオブリビオン、すべてお前たちのせいで……運命は狂った」
 彼は憎む。オブリビオンを。過去からの破壊者を。
 ゆえに彼は戦うのだ。いいぞ、いい感じにシリアスになってきた。
 ところで片手に持ってる美味しそうなモノはなんですか城石さん。
「僕はお前たちを(ムシャ)許さない。友達を(ガツッ)僕の居場所を(ガジガジ)
 そして人であることさえ奪った(もぐもぐ)お前たちをゲェエップ」
「食うかしゃべるかどっちかにしろっていうか汚いな!?」
 ダメでした。
「そもそもそれなんですの……?」
 アンシェの問いかけに出刃包丁とガスバーナーを見せる恵助。咀嚼中なので。
 よく見ると豚の触手が一本ぶった切れてた。奴は悲鳴を上げた。

 もうどうすんだこれという空気で、今度は眞白が踏み出す。
 一同は大丈夫かほんとにという顔をするが、彼女はおもむろに唄いだした。
「ひとつ、人の世はびこる悪が~、ふたつ、不屈の気合と根性で~」
「アタシこれUDCアースの時代劇で見たことあるよ」
「おばあちゃん、しっ! しー!」
 後ろでヒソヒソしゃべるテテルマイスと多喜をよそに、人形は唄う。あと踊る。
「みっつ、見事な立ち回り……よっつ、呼ばれて飛び出して……」
「さっそく雲行き怪しくなってきてんじゃねえか」
 呆れ顔のクラーラ。さっさと殴りたそうにしている。
「あれ我もやってよいか? なあよいか?」
「やめといたほうがいいと思いますの……」
 うずうずした稲見之守を止めるアンシェ。どう足を潰すかのイメトレをしている。
「…………ここのつ、この場で見せ場在り~」
「いま飛びました、思いきり飛びましたよ! まさかユーベルコード……!?」
「うんキミもこの焼き触手食べておこうか」
 シリアス顔のリゼリナは恵助の触手焼きを食べているので黙りこくった。
「ありがとう、ポーク。おもし……惜しい人材を亡くしました……」
「まだ死んでないからなぁあ!?!?!」
 せめて戦わせろよ! と豚の叫びは悲痛なものだったという。

●シリアス!!
「とぉにかくだぁ!!」
 ズシン!! と石畳を踏み砕き、豚は叫んだ。大気が揺らぐ!
「やるといったらやるんだ! 貴様らは皆殺しだ!!」
 大斧と触手を構え、殺意を漲らせるウォークグルェート。もはや遊びは終わりだ。
「待て。その触手を使ったが最後、お前はシリアスに帰ってこれなくなるぞ」
 稲見之守のもっともな指摘。ウォークグルェートは……牙を剥いて笑った!
「知ったことか! 俺様はオブリビオンだからなあ!!」
「それがお前の覚悟か!! ではほいっとテンプテーション」
「「「ええええーーーー!?!?」」」
 誰もが驚いた。さっきまでの制止はなんだったの!?
 全身から放たれる魅了のオーラ。ウォークグルェートは……呵々大笑する!

「グゥワハハハハハ! 滾ってきたぞぉ、貴様ら全員」
「うるせぇバカ触手塗れなんざごめんだぁ!!」
「ブヒーッ!?!?」
 問答無用! クラーラの反逆の拳が反面にクリーンヒット!
「もぐもぐもぐもぐ!!(ダメですよ息を合わせて一斉攻撃しないと不意打ちなんて正義ではありません!!)」
 触手焼きを口いっぱいに頬張りつつリゼリナ曰く。でも彼女も武器を振り上げる。
「もぐもぐー!!(いろんな人々の仇ー!!)」
 まったく勘違いの正義の刃、黒風鎧装によって強化されたそれは強烈だ!
「よし決めた、唐揚げだ! お前は美味しく頂く!!」
 えっやだやめてください。あ、いやオブリビオンの話らしい。
 恵助も最後の一本を食べ終えると猛然と突き進み、パンチ! 拳! パンチ!!
「これはキャプチャーする余裕もなさそうですわね! いきますわー!」
 『猫の毛づくろい』によって摩擦係数を極限低下させたアンシェ。
 スケート選手もかくやの滑り込み、かーらーのスネに一撃! 豚悶絶!!

「ブッヒィー!? おのれ貴様ら触手をうわなんだこの狼の群れはグワーッ!?」
「ヒッヒッヒ! お前たち、やーっておしまい!」
 ガルルルル1 とテテルマイスの呼び声に従い、召喚された群狼が触手を食らう。
 空からはウィザード・ミサイル! こんがり焼けて狼たちも満足げだ!
 そのあとからも次々餌(ルビ:しょくしゅ)が飛び出してくる……が。
「そうはいかないよぉ! オラオラオラぁ!」
 多喜のサイキック・ブラスト! 触手は一切届かない!
「こりゃ一気に攻め込んだほうがよさそうだね!」
「く、くそぅ、ならばこの斧で」
「ほうれ魅了の術」
「ブッヒヒヒヒィ!! 滾ってきグワーッ!?」
 シリアスを許さない稲見之守。そして雪崩れ込む戦術器の軍勢!
 指揮を執る、というか後ろで号令を下しているのは眞白だ。物量は正義!
「とにかくたくさん。皆、行って」
 からくり人形はあとからあとから現れる。フルボッコを通り越してリンチである。
 なお新たな触手は、恵助の出刃包丁によりスパスパ切り落とされております。
 地獄絵図であった。

●シリアス? シリア……し、死んでる
 しかし豚、否、ウォークグルェートは笑っていた。
「フ、フハハハ……ブハハハハ、ブッヒヒヒヒ!!」
 猟兵たちの総攻撃にあって、もはや満身創痍。だが満足気に。
 猟兵たちはなんらかの攻撃を警戒し、距離を取る。だがなにもない。
「く、くく……楽しいなあ、戦うのは! ブヒハハハハ!」
 それは破滅的な笑みだった。己の欲望に忠実な者の声だった。
 ……オブリビオンとはそういうものだ。過去の化身、未来の破壊者。
 奴らは自らの望む過去で人々を、世界を塗り替える。そういう機構だ。
 だがそれゆえに……ウォークグルェートの哄笑は、どこか物悲しかった。
「さあ猟兵ども、我らの天敵よ!!」
 大斧を担ぎ、触手を繰り出し、涎を垂らしながら奴は言う。
「俺様はオブリビオンだ、貴様らの敵だ! さあどうする、どうするどうするどうする!!」

 アンシェは少しだけ表情を翳らせた。
 奴の言葉は、まるで最期を求めるように思えたからだ。
「……遊んでいただけて楽しかったですわ! けれど!」
「ああそうさ、圧制者は打ち砕く。この反逆の拳でなぁ!」
 クラーラが拳を握る。自慢の肉体に溢れる地獄の炎。
「ヒッヒッヒ、悪いが見逃せないねえ。ここで死んでもらおうかい」
 テテルマイスの周囲に無数の炎の矢。それは慈悲でもあったか。
「……せめて美味しく平らげてやるよ、オブリビオン」
 恵助もまた調理道具(ルビ:ぶそう)を構えた。どこか悲しげに。
「ななつ、涙なくては語れない。……やっつ、役目を思い出し」
 眞白は怜悧な無表情のまま、号令のために片手を挙げた。
 説き伏せる必要はなし、真っ向から叩き伏せるのみ。
「我らは道理の化身ぞ。無理を謳うならせいぜいこじ開けてみせよ」
 稲見之守の周囲に狐火が舞う。そして彼らと共に並ぶのは。

「真剣勝負を買ったからね。アタシたちの手で、黄泉に送ってやるよ!」
 多喜! その両手からサイキックパワーが、電光が溢れ出る!
「ashes to ashes,dust to dust……past to past!」
 エネルギーが収束していく。各々の最後の一撃もまた!
「うぉおおおお!! ならば死ねぇ、猟兵どもぉーっ!!」
 ウォークグルェートは武器を構え突撃する。迎え撃つ炎、拳、刃!
「収束せよ、サイキネティック・プリズン! これでとどめだぁーっ!!」
 そして電光。それらは空中で混ざり合い、光の槍となって敵を貫いて――。

●豚が見た夢
 ウォークグルェートはオブリビオンである。
 彼に"なぜ"はない。オブリビオンなのだから、それ"だけ"だ。

 己の欲望に従い、学生たちを甚振り。
 己の都合を強制し、多くの人々を巻き込み。
 己の能力に酔い、その他の意志を嘲笑ってきた。

 骸の海より来る虚無、永劫不滅の過去の化身。それがオブリビオンだ。
「ハハハハハハ! ハァーハハハハハハ!!」
 だから哀しいとか、そんな気持ちはなかった。
 悔いもない。いずれまた我は、我ではない我が蘇るだろう。
 そして次こそは奴らを倒してやる。我はそれを覚えていないが。
 ――そう。名前のとおりに忘却してしまうが。
「猟兵どもめ、覚えていろ! ハハハハハ、ハァーハハハハ!!」
 ……この時見た夢は、俺様と奴らだけのものだ。
 だから。
 猟兵の天敵は……最期まで笑って、光の槍に討たれて消えた。

●決着、そして
 ――静寂。
 オブリビオンは哄笑を遺して消えた。後には何も遺らない。
 猟兵たちは息を整え、互いを見合い……困ったように肩をすくめた。
「なんつーか、憎めないやつだったよなあ」
 と多喜。不思議と口元には笑み。
「ええ、間の抜けた方というか。もちろん敵ですけれどね」
 アンシェかく語りき。不思議な清々しさがある。
「食べれなかったのは残念だなあ。でもまあ、いいか」
 恵助はマフラーを巻き直した。その意図は伺いしれない。
「ヒッヒッヒ。また現れたら、今度もぶちのめしてやるさね」
 テテルマイスは邪悪に、けれど慈悲深く笑った。
「ケッ、あんな破廉恥野郎はもう勘弁だぜ。……圧制者でもなかったしな」
 クラーラは拳を握りつつ言う。彼女の基準は独特だ。
「正義は必ず勝つ、ですね!! はい! まさに騎士道です!!」
「リゼリナ殿は天真爛漫で楽しそうじゃナ。ま、それでよかろ」
 元の姿に戻った稲見之守は、端的に頷いた。そうだ、それでいいのだ。
「……じゃあ、帰りましょうか」
 眞白が言えば、戦術器たちが一礼して一同を出口へ導く。
 食堂に行きたいだとか、購買部に行きたいとか、また騒がしくなってきた。

 もはや彼らは振り返らない。
 役目は終えた。平和は取り戻された。だからそれでこの話は終わり。
 豚の見た夢も終わり。だがその否定まではしない。

 夢見ることは、きっと誰であろうと自由なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月31日


挿絵イラスト