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霧を払う者達

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 夜霧へと飲み込まれた町。
 錆付いた柵や壊れかけた垣根、道に草は伸び放題。
 人が住んでいる筈なのに、まるで町そのものは既に死んでいるかのよう。
 その中を、たった1つの足音だけが響き渡る。
 足音は本当に散歩しているだけかのような歩調で、気負いなど感じられない。
 だが、それ以外は無音。
 死に体の町であるが、それでも息を潜め、その足音が通り過ぎるのを待っているかのよう。
 その足音が1つの家の前でひたりと止まった。
「ああ、今回はここにしようか」
 マスク越しの声はひどくくぐもっていて、その奥にある者の性別すらも分からなくさせている。
 そして、勝手知ったる我が家とでも言わんばかりに、玄関のドアを潜っていく。
「やあ。こんばんは、ご夫妻」
 声を掛けるマスクの人。
 その背後にはいつの間にか、衣擦れの音すら立たせぬ無数の人影。
 家主であろう男女は、ただ、震えてうずくまるのみ。いや、恐怖に泣き、小刻みに震えている。
 その様子は到底、その来訪を歓迎しているようではなかった。
「それでは、私は私の、君達は君達の責務を果たすとしよう」
 宣告。
 そして、鮮血と悲鳴が迸った。

「また1つ、罪が増える」
 場所はダークセイヴァーが世界の片隅。
 桃色の髪を躍らせ、リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)は集った猟兵達へ向け、依頼の説明を始める。
「領主たるオブリビオンが、己の領地へ自ら出向き、悪事を為す。よく聞く話であろう」
 だが、それは依頼をこなす猟兵達の話。
 実際に被害を被る領民達にとっては、他でもない己のこと。
 そして、通信手段が未発達であるが故に、他を知らぬ領民たちには他人事とはなり得ない。
「そこで行われるのは、領主たるオブリビオンによる気ままな殺戮だ」
 霧が出た日にのみ行われるそれ。
 領主自らが町へと現れ、直接家のドアを叩いていく。
 そして、決めた家の者を殺しては己の配下としていくというのだ。
 今回、介入できるのは犠牲が出る前。オブリビオンが町へと現れた時。
「だが、討ちやすい状況と言う訳ではない。領主は常にその周囲へ犠牲者達の残影を引き連れていることだろう」
 それはまるで見せしめのようでもあり、絶望を与えるためのようでもあり。
 そのため、領主へ肉薄するには、まず、その取り巻きを崩すことが肝要となる。
「残影を相手にしている時でも、時折、戯れに領主のナイフが飛んでくることもあるだろう。目の前の敵だけでなく、周囲にも気を配っていた方が良いであろうよ」
 取り巻きの排除と領主の打倒と為すべきことは多い。
 だが、猟兵達であれば達成しうるものである。
 そう信じて、リリトは猟兵達を見渡す。
「ああ、そして最後に。もしも全てを終えることができたのなら、町人たちのことも少しばかり、気にかけてやってくれぬか」
 命を脅かされ続けた町人達の疲弊は心身共に濃い。
 それ故、ただ領主から解放するだけでは駄目なのだ。
 町や畑の修復も勿論のこと、生きる気力を取り戻すことも必要不可欠。
 だが、解放したばかりの彼らだけではそれは困難。
 故に、猟兵の助けが必要となるのだ。
「妾も、その時になれば汝らを送り出すことから手も離れよう。手伝いの1つや2つぐらいは出来るだろう」
 ――どうか、頼まれてやっておくれ。
 最後にそう締めくくり、リリトは猟兵達を送り出すのであった。


ゆうそう
 オープニングに目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 オブリビオンの被害を食い止め、町人達の新たな旅立ちの時を支える。
 猟兵の皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしています。
 POW、SPD、WIZの種別は方向性に過ぎません。
 思うように行動してみるのも良いかもしれません。

 また、第2章、3章からの参加も勿論歓迎致します。
 遅参ということはないので、お気が向きましたら遠慮なく。
 そして、第3章にはリリトも参加していますので、1人での参加は……という方はお気軽にお声がけください。
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第1章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

須藤・莉亜
「終わった人たちに意味はないんだよ。さっさと消えて?」
敵になるなら被害者だとしても容赦無く殺す。…久々にイラッと来ちゃったよ。

召喚した首なし馬に乗って戦う。
スピード重視でヒットアンドウェイで攻撃して行く。
【第六感】を働かせ、周囲にも気を配っておく。

「死人は静かに寝てないとね?」
さあ、コシュタ、君にも張り切ってもらうよ。


マリア・ルイゼット
殺す責務、殺される責務か。
その通り。アタシはアンタを殺す責務を負って来た。出来れば大人しく殺されてくれ。それなら仕事が楽でいい。
…まあ無理だろうな。なら殺し合いだ。
まずはその邪魔臭い影から引き剥がしてやるとするか。

【怪力】【二回攻撃】を駆使して処刑人の剣で攻撃。既に傷付いている相手なら【傷口をえぐる】ようにして更にダメージを与えるようにする
残影の攻撃、特に無差別攻撃や領主からの横槍に注意しつつ【咎力封じ】を残影に放ち、攻撃力の低下を狙う
厄介な絶叫が来そうなら仲間に知らせて距離を置くよう声掛けを行う

【アドリブ歓迎】


ゾシエ・バシュカ
いろいろな世界に行けるようになって思ったんです。
わたしの生まれ育った世界なので、薄々気づいていたのですが
この世界、ほかと比べてもオブリビオンのやることがいちいち陰湿じゃないですか。
…やるべきことがシンプルになっていいですけど。

影の中から漆黒の影でできた『魂削ぎの剣』を引き抜いて敵陣に斬りこむ。
大きな攻撃や範囲攻撃を行なう仲間のために敵を引き付けて、防御的に立ち回ります。
黒剣との二刀流で、多少の傷なら激痛耐性と生命力吸収で耐えます。
「あれ(オブリビオン)を守るつもりなら、慈悲もかけないし憐れにも思ってあげません」
言葉にすれば本当になるから。魂を刻むこの剣ならば、きっと残影にはよく効くでしょう。



 町に暗雲たる霧がかかる。
 今日もまた、誰かが居なくなるのだと、住人が、町が、静かに怯えている。
 それを楽しむように現れた靴音1つ。
 ……いや、それだけではない。
 確かなる意志を宿した足音が幾つか。その靴音に対峙するように響いたのだ。
「おや、おやおや。珍しく、殊勝にもお出迎えがあったのかとも思えば……」
 漂う霧を挟んで対峙するは猟兵達。
 それを、大袈裟な仕草と共に領主――切り裂き魔・ナイトフォグ――は驚きを表す。
「殺す責務、殺される責務か――」
 予知の中で零されたナイトフォグの言葉を反芻するはマリア・ルイゼット(断頭台下のマリア・f08917)。
 眼鏡の奥に瞬く赤茶色の瞳。そこに見える光は理知的でもあり、これからの戦いの時を想うようでもある。
「――その通り。アタシはアンタを殺す責務を負って来た。出来れば大人しく殺されてくれ」
 ――まあ、無理だろうけどな。
 戦いの幕が落とされるを望むように、マリアが鞘より引き抜いたは武骨な大剣。その刃の色はただただ赤黒く。
 それはまるで――
「……私などよりも余程に血の味を知っているように思えますが?」
 ――命を吸い、より一層に紅の輝きを誇る妖刀の如く。
「さて、楽しませて貰おうか?」
 そして、ナイトフォグの揶揄するような言葉など、どこ吹く風。
 その身を断たんと、マリアはかの者目掛け、矢の如くに突き進む!
「ええ、楽しんでもらいますとも。楽しませてもらいますとも。そのために、まずはこの者達からお相手を」
 軽く両の手を叩き、まるで召使を呼ぶような仕草。
 それに呼応し、音もなく現れたのは無数の残影。
 ナイトフォグの手により犠牲となった老若男女を問わぬその影。
 しかし、青白い顔に生者へ向ける恨みつらみ、妬み嫉みと負の感情を湛えた瞳だけが共通していた。
「いいぜ。まずはその邪魔臭い影から引き剥がしてやるよ!」

「いろいろな世界に行けるようになって思ったんです。この世界、他と比べてもオブリビオンのやることがいちいち陰湿じゃないですか」
 ――わたしの生まれ育った世界なので、薄々気付いていたのですが。
 予知されていたことではあった。事前に知らされていたことではあった。
 そして、実際に現れた残影を目に留め、ゾシエ・バシュカ(蛇の魔女・f07825)は愚痴るように零す。
 それはもしかしたら、人に語らぬゾシエの過去に由来する経験があったからなのかもしれない。
 だが、戦いの火蓋は既に切って落とされたのだ。
 ならば、やるべきことは1つ。シンプルに。
 異なる色の瞳を瞬かせ、ゾシエは無手にて敵中――残影の群れへと飛び込んでいく。
 迫る青白い無数の手。
 その向こうに見える無数の瞳の色はどれも同じ。
「あれを守るつもりなら、慈悲もかけないし憐れにも思ってあげません」
 無手のまま――否、いつの間にやら引き抜いた漆黒の刃。
 数多の手が届く前に、ゾシエはそれをくるり手の中で遊ばせ――
「喰らえ、『魂削ぎ』」
 ――影が舞い、骸の群れは塵と消ゆ。
 それは、魂すら刻む必滅の刃。

「終わった人たちに意味はないんだよ。さっさと消えて?」
 呼び出した首なし馬――コシュダ・バワー――を駆り、戦場を駆ける須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)。
 その宣告はまさしく死の予言。
 いや、ある意味ではオブリビオンに囚われた魂の救済ともなるのか。
 凄まじい音を立てて駆けまわる姿は、まさしくデュラハンのようでもある。
 実際には莉亜に首はある。だが、小脇に抱えられている首は、果たして本物か偽物か。
 そんな疑問も相手が生者であり、なおかつ敵対するような状況でなければ抱いたのかもしれない。
 だが、ここは戦場であり、敵は死んだ者達の影。それに触れる者は今は居なかった。
 そして、莉亜自身も、内心の苛立ちを存分に敵へとぶつけているのだ。
 ――敵になるなら被害者だとしても容赦なく殺す。
 心の言葉はそのままに。
 しかし、その苛立ちはどこから来るものだったのだろうか。
 ナイトフォグの非道か。はたまた――
「死人は静かに寝てないとね?」
 死してなお働かされる残影に憂鬱を刺激されたのか。
 残影の群れを蹴散らすように突入を繰り返し、莉亜とコシュタは戦場を駆け巡る。

「おぉ、おぉ。憐れに思う気持ちもなく、ただひたすらに。お見事ですなぁ」
 ナイトフォグは高みの見物。
 次々と蹴散らされていくナイトフォグの群れを、それをなしていく猟兵達の活躍を、面白おかしく眺め見る。
「ですが、まだまだおかわりはありますからな。どうぞ、遠慮なく」
 その言葉は嘘ではないのだろう。
 倒された端から未だ尽きることはなく、残影は生じ続けている。
 刃が奔り、蹄の音が鳴り響く。
 だが、未だ戦いの時の終わりは見えない。
 その中で、マリアがはたと気づく。
 声が、残霊達の声が唱和され始めている。
「こいつは……厄介なものがきそうな感じだな」
 大気をかき混ぜるような一撃で残影を排除――残霊故に血の色が零れぬことに物足りなさを感じはしていたが、思うままに叩き潰せてはいるのでトントンか。
「纏まっていれば、一息に断つことも出来ますが……」
 応じたゾシエの刃の冴えは未だ衰えず、順調に撃破スコアをあげていく。
 未だ暖気運転。肩で息をするには早いというもの。
「なら、敵を纏めるのはアタシがやる。叩き潰すのは譲ってやるよ」
「では、見事に平らげてみせましょう」
 軽口のような応酬。マリアの方は猫被りも少しは入っているか。
 だが、その動きは淀みなく、悲哀の声を唱和し始めた残霊の群れへ目掛け、咎を封じる三種の縄を解き放つ。
 しかし、――
「彼ら彼女らの折角の声。邪魔をするのも無粋とは思いませんか」
 ――ナイトフォグの解き放つ刃がそれとぶつかり、封じるに至るを妨げていくではないか。
 臍を噛む猟兵。嗤う領主。唱和する悲鳴はより高く高く絶叫へと。
 ――そして、豪風が走り抜けた。
 それは凄まじい音を撒き散らし、駆け抜ける首なし馬。
 ナイトフォグのナイフを蹴り、弾き、コシュタと莉亜が壁となる。
「やるなら、今」
 短く、そして端的に。憂鬱を孕んだ音色が機会の到来を告げた。
 そこからはまさに阿吽の呼吸。
 妨げのなくなったマリアの封じは、悲鳴をあげる残霊達をぐるり拘束し、1箇所に封じ込める。
 そして、伸びるゾシエが影の刃。
 実体がない故に、その刃は所有者の意思に応え、集団を纏めて断つに相応しい長さに。
 影がするりと残霊達の身体を断ち抜けた。
 解き放たれる寸前であった絶叫は、残響だけを残して夜霧の向こうに溶け消えていったのであった。
 そして、拓かれる1つの道。
 ナイトフォグへ至る道がその姿を猟兵達に垣間見せ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
POW
戯れに無辜の民の命を摘み取るとは……

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】で
槍に聖なる炎の魔力を纏い攻撃力増大

【ダッシュ】で敵陣へ突貫する

聖槍を【怪力】にて縦横無尽に【なぎ払い】、残影の群れを吹き飛ばす
死してなお圧制者に囚われた憐れな魂よ、今こそ解放して差し上げます

憐憫に反応して肉塊の手を伸ばしてきたら、聖槍を振るい炎の【衝撃波】を起こして焼き尽くす

復讐の炎や絶叫の波動は各種耐性と【オーラ防御】【気合い】で耐える
あなたたちの無念、私が受け止め――必ず晴らしてみせます

槍の間合いを活かして残影を近づかせず、視界を保つ
強化された【視力】で投げナイフを【見切り】、槍で弾く(【武器受け】)


アスティリア・モノノフィシー
SPD
ただ殺戮されることを待つだけの町、生きた心地なんてしないでしょうね。
元凶となったオブリビオンを倒して解放しなければ!

私は残影に対してユーベルコードを使用し攻撃します。
「こんな悪夢、私が燃やしつくします!」
周囲に異変があれば両手の拳銃で威嚇射撃をしたりと、常に警戒します。

憐憫な感情は抑えることはできないと思います。
でも【絡みつく傷だらけの手】が来る方向にそれが来るよりも先にクイックドローで攻撃出来れば大きな痛手にはならないかと。

こちらの感情までそちらの攻撃手段の一つにするなんて…
でも、思い通りになんてさせませんから。



 戦場は1つところに留まらない。
 夜霧揺らめく通り道。
 それを照らすように残影の周りに浮かぶは鬼火。恨みを糧とし、燃え盛る冷たい焔。
 しかし、その中で1つだけ、まるで陽光のように暖かな焔があった。
「戯れに無辜の民の命を摘み取るとは……」
 金の穂先に灯る太陽。
 照らし出されるシスター服は清楚ながら、どこか艶やかに。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が邪悪を狩るために、ここへ馳せ参じたのだ。
 しかし、今相手にするのは邪悪の犠牲者。
 純粋なる邪悪であればこそ、苛烈な一面も見せようというものであったが、残影相手であれば、祈る者としても憐憫の情が混じるのは致し方のないことであったのかもしれない。
「おお、聖職者よ。彼らを憐れと思うならこそ、彼らのうちで祈りの一つでも捧げてあげては如何かな?」
「死してなお、圧政者に囚われた憐れな魂よ。今こそ、解放して差し上げます」
 嘲りを含んだナイトフォグの言葉が木霊す。
 それに応じた訳ではないだろう。
 しかし、オリヴィアは破邪の光もより強く、敵陣へと突き進む。
 鬼火が揺らめき、憐憫の情に呼応して現れた肉塊がその手をオリヴィアへ向けて伸ばす。

 悲哀の声が彩る通り道。
 死した者は永劫を悲哀で彩り、生きる者はいつか己がそうなることを悲嘆する。
「ただ殺戮されることを待つだけの町。生きた心地なんてしないでしょうね」
 残影と夜霧の向こう。ナイトフォグのはっきりとした姿は見えない。
 しかし、確かにそこへある元凶を見据え、アスティリア・モノノフィシー(清光素色の狙撃手・f00280)は打倒の決意を新たとする。
 己に合わせた魔法学園の服。橙の髪によく似あう清楚なそれが風に揺れた。
 滑らかな指先は荒事とは無縁のように見えて、しかし、その手に握る2丁の拳銃がそれを否定する。
 無数の残霊を前にしても、物怖じせず、退かぬ姿は生来のものか。
 はたまた、既に幾つかの世界を巡り、経た戦いの経験がある故か。
「これは可愛いお嬢さん。貴女も彼らを憐れんでくださるのかな?」
 夜霧の向こうから声がくぐもった声が響く。
 まだ生きたかっただろう。まだ死にたくなかっただろう。
 悲哀を零し、通りを彩る残霊達のその声に、哀しみを、憐憫を覚えるのを誰が咎められようか。
 しかし、その感情は残霊達への同化を促す異形の呼び水となってしまうのだ。
「こちらの感情まで攻撃手段の1つにするなんて……でも、思い通りになんてさせませんから」
 アスティリアが両の手に握った拳銃。それが静かに持ち上げられた。

「あなたたちの無念、私が受け止め――必ず晴らしてみせます」
「こんな悪夢、私が燃やし尽くします!」
 言葉は同時。そして、その手に宿すものもまた。
 駆ける勢い。力強く踏み込んだオリヴィアの聖炎が振るわれた槍と共に迸る。
 声を掻き消す号砲。焔の魔力が目にした異形を悉くに撃ち抜き、焼き尽くす。
 双つの焔による熱気は赤々と夜を照らし出し、その場を覆う霧を吹き散らす!
 見通しのよくなった通りの向こう。
 ナイトフォグの姿が2人の眼にはっきりと映し出される。
 ――次は貴様/あなただ。
 そう言わんばかりの眼差しを受け、ナイトフォグは静かに嗤う。
 憐憫の情を持つ者が、それでもその対象を討ちながら歩みを進める様子は楽しくて仕方がないと言わんばかりに。
 突き、払い、薙ぎ、吹き飛ばし。
 焔の尾を残光と残し、鬼火すらもその聖炎のうちに取り込みながら、オリヴィアは残霊の壁に道を拓く。
 撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
 憐憫の情は抑えられない。抑えられるものではない。ならば、片っ端から撃ち貫くのみ。
 悲哀の声すらも塗りつぶし、アスティリアは異形の肉塊をただの肉塊へと変え、道を拓く。
 彼方の場所に手が届くまで、あと少し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・クリスティア
……見飽きましたよ、こんな光景は。
えぇ、これがこの世界の現状と言うのは理解していますが……よくあることだからと言って、見逃す道理はありません。

霧が出ているのであれば好都合。街中と言うこともあり、身を隠す場所に不足は無いでしょう。
【地形の利用】【目立たない】を駆使して物陰に潜伏。
他の味方の交戦が始まったら、【援護射撃】【スナイパー】で支援射撃を行います。
味方のマークが薄い敵、攻撃態勢に入っている敵を優先して、他の味方が戦いやすいようにバックアップです。

せめて、これ以上の犠牲者が出る前に……あなた達にはここで終わって頂きますからね……!


あ、連携アドリブ等歓迎ですよ。


リーヴァルディ・カーライル
事前に防具を改造し、暗視能力と呪詛耐性を付与する
…憐れめば取り込まれる。同化しようと、手を伸ばす
聖者ならその手を掴んで昇天させる事もできるんだろうけど…
ごめんなさい。私は、その手を取ることはできない

【限定解放・血の波涛】の二重発動(2回攻撃)を主軸に戦闘
吸血鬼化して力を溜めた怪力を瞬発力に変え
行動を見切った敵の懐に入る
大鎌のなぎ払いと同時に傷口を抉り生命力を吸収する呪詛を付与した波動を解放する
…もう傷つくことは無い。眠りなさい、せめて安らかに…

攻撃後、わざと隙を作り奇襲するよう誘惑
第六感が危険を感じたら武器で受け、飛んできた先を追跡する
…犠牲者を矢面に立たせて自身は闇討ち
良いご身分ね、領主様?



 夜の闇はオブリビオンにのみ味方するものではない。
 それを利用する者、見通す眼でもって無効化する者、様々である。
 そして、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は後者であった。
 黎明の名を持つ礼装――他世界なら軍服ワンピースとして、1つのジャンルとなっている服――へ改造を施し、その眼でもって今を見通す。
「……憐れめば取り込まれる」
 蠢く過去の残滓達。
 恨みを燃やし、悲哀を口にし、同類を乞い願う者達。
 しかし、確かな犠牲者達。
「聖者ならその手を掴んで昇天させる事もできるんだろうけど」
 ――ごめんなさい。私は、その手を取ることは出来ない。
 小さな謝罪の言葉は風に流れ、リーヴァルディの胸の内にのみ留まる。
 憐れみをあげることは出来ない。だけれど、他に出来ることはあるのだ。
 構えた大鎌は過去を刻み、死という閉じた未来の到来を告げるもの。
 リーヴァルディの紫の瞳が、一瞬だけ、真紅へと変じる。
 ――疾駆。
 弾丸のような。しかし、弾丸にはあり得ざる機動。
 地を蹴り、柵を蹴り、壁を蹴り、縦横無尽に駆け抜けるリーヴァルディ。
 恨みの鬼火は流れ、その身を捕らえられず。
 絶叫が響く前に、その身は既に範囲の外。
 隙あらば、その身は即座に敵の面前。
「……限定解放――」
 真紅の瞳が残光残してゆらり。
「――薙ぎ払え、血の波濤……!」
 刃の抜けた道を、血色の波が駆け、拡がる。
 夜霧の、残霊達の、その身が二つに泣き別れ。
「……もう傷つくことはない。眠りなさい、せめて安らかに……」
 遅れて、しゃらりと耳飾りが揺れた。
 どこかで流れた熱気が夜霧を払う。
 赤に照らされ、惜しむように立ち尽くすその姿は、あまりにも無防備で――凶刃がその身を狙っていた。

「……見飽きましたよ、こんな光景は」
 夜の闇を、霧を、そして町を利用する者。
 伏して時を待っていたシャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は猟兵達の戦いをつぶさに把握する。
 その瞳を向ける先は残霊。
 そこに両親の面影を見たのだろうか。
 言葉には苦渋がにじみ出る。
「えぇ、これがこの世界の現状と言うのは理解していますが」
 夢見る先は故郷の奪還。
 しかし、未だならざるその夢に代わって、現実がそこにはあった。
 ――だからと言って、見逃す道理はありません。
 決意を胸に、シャルロットはスコープの先を見つめる。
 霧が隠し、宵闇が隠し、町の物陰がシャルロットを隠す。
 その姿を発見することは、そこに居ると分かっていても生半可なことではならなかっただろう。 
 いや、それはもしかしたら、抵抗する猟兵達への、搾取されるのみであった町からの、ささやかな加護でもあったのかもしれない。
 シャルロットはその身を敵に狙われることなく、伏せ続けられていたのだ。
 そして、不意に霧が晴れた。払われたというべきか。
 焔を扱う猟兵達の齎した熱気が、夜霧を払い、元凶の姿をシャルロットの前に晒す。
 その視線の先。ナイトフォグは無防備とも見えるリーヴァルディへナイフを――
「せめて、これ以上の犠牲者が出る前に」
 積み重ねてきた努力。その上に刻まれた射撃手としての矜持。
 それが空気の流れを感じさせる。
 それが弾をどこに通せばよいか、正確な道筋を教えてくれる。
 射撃音が町に響き渡った。
 ――投じられる直前、空間を奔った正確無比な一射がナイトフォグのマスクを撃ち飛ばした!

 硬質な音を立て、地に落ちたナイトフォグのマスク。
 手にしていたナイフは靄のように掻き消え、時を同じく、残霊の群れも同様の道を辿る。
「……犠牲者を矢面に立たせて、自身は闇討ち。良い御身分ね、領主様?」
 己を敢えて囮としたリーヴァルディ。
 それを知っていた訳ではないが、その機を見事に掴んだシャルロット。
 その成果が目前にはあった。
 顔を抑え、蹲るナイトフォグ。
 指先の間から見える瞳は怒りと屈辱に燃え、爛々と輝きを放つ。
 それは、猟兵達の刃がついにナイトフォグをその射程に捉えたことを意味していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『切り裂き魔・ナイトフォグ』

POW   :    ジェノサイド
【コートに仕込んだ隠しナイフ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ミスリーディング
【無数のトランプ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ミスディレクション
自身が装備する【ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鈴・月華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の活躍により拓かれた道。
 その先に蹲るナイトフォグは落ちた仮面を震える手で拾い、再び被る。
 だが、そのマスクは一部が破損し、その下にある素顔――以外にも女性のものであるそれ――を外気へ晒していた。
 昂ぶりを落ち着かせるように呼吸を繰り返すナイトフォグ。
「いやはや……いやはやいやはや、お見事。よもや、ここにまで届くとは」
 覗く瞳の色は真紅。
 その瞳の中に憎悪の焔は灯ったまま。しかし、表面上は取り繕ってナイトフォグは拍手を猟兵達へ送る。
 此度の元凶たる領主。
 しかし、その守りは剥ぎ取られ、猟兵達と同じ舞台に立たされたのだ。 
「最早、こうなっては致し方ない。私が自らやるしかないようだ」
 同時、ナイトフォグの身体から、自然とは異なる霧が溢れ出した。
 かの者を討てば、この地は解放へと至るだろう。
 今、猟兵達とナイトフォグとの戦いが此処に始まる。
シャルロット・クリスティア
……ビンゴ。
いかがですか?玩具と思っていた存在に手を噛まれた気分は。

……さて、流石に居場所はバレたでしょう。これ以上隠れているのは難しそうですね。
前に出ます。同類と思われるのも癪ですし。
抵抗の旗は未だ折れず、解放の灯は未だ消えず。真正面から宣戦布告です。

無論、狙撃手が正面から挑むなど愚策は承知。
コードを使用して回避は試みますが、多少の被害は覚悟の上です。
ですがそれで構いません。
その一撃の隙に、アンカーショットで狙撃。敵の身体をワイヤーで絡め取ります。
これで完全に動きを封じられることは無いでしょうが、多少なりとも時間稼ぎになりましょう。
それで十分。戦っているのは私だけではないですから。


マリア・ルイゼット
…お、美人さんじゃないか。ま、嗜虐の趣味に男女の区別はないしな。
なあ、弱い奴を嬲るのは…人殺しは面白かっただろ?だから今度はアンタが狩られる手番。殺される責務、さ。

アタシは挑発と陽動といくか。処刑人の大剣を【怪力】でぶん回し、霧の中でも目立つように動いて狙いが自分一人に向くようにする
「隠れてないと、人一人殺せやしないのか?」
案外可愛い所もあるんだな、と嘲笑ってやろう
霧の中からの不意打ちに注意しつつ、攻撃は【絶望の福音】で極力見切り、武器で受け流す
多少の傷は我慢だ、領主が弱ったアタシに狙いを定めてくれれば重畳
…どうした?獲物を追い込んだつもりか?相手はアタシ一人じゃないぜ?
【アドリブ歓迎】



 ナイトフォグの身体から生じ、揺蕩う霧は赤黒く。
 それはまるで、この地で犠牲になった者達の血霧のように。
「……ビンゴ。如何ですか? 玩具と思っていた存在に手を噛まれた気分は」
 身を潜めていた物陰より姿を現したシャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は挑発するように言葉を紡ぐ。
 その瞳に宿る青はこの地では見られぬ空の色。
 尊き願いを灯火と宿し、意思の光を瞬かせて宣戦布告をナイトフォグへと告げる。
「ええ、ええ。見事ですとも。ですが、その玩具を手中に収めれば、それも解決するというものでしょう」
 言葉を慇懃に取り繕い、平静を装うナイトフォグ。
 結ばれた視線の先、深紅と青の火花が散る。
「……ですが、そのまま鼠のように姿を隠していれば、狙われることもなかったでしょうに」
 ナイトフォグの翳す手にはトランプが1枚。
 まるで手品のように、はらりと振るえばトランプの紙が無数と宙に滑り落ちる。
 シャルロットの脳裏で福音の鐘が鳴り響く。
 ――無数の刃となったそれが迫りくる未来が見えた。
 瞬間、垣間見た未来。それが現実となる前に、シャルロットはその場を飛びのき――そして、無数の刃となったそれがシャルロットの元居た空間を奔る!
「愚策など承知の上です。しかし、だからといって無策という訳ではありませんよ!」
 そう。戦っているのは、シャルロットだけではないのだから!
「よう、美人さんじゃないか。だがよ、霧の向こうに隠れてないと、人一人殺せやしないのか?」
 福音の未来をみたのは1人だけではない。
 マリア・ルイゼット(断頭台下のマリア・f08917)は霧を蹴散らし、血霧よりもなお紅く、闇よりもなお黒い、処刑の刃をナイトフォグの背後から振り下ろす!
 舌打ちはどちらのものか。
 飛び退き躱したナイトフォグか、振りぬいた手応えの浅さを感じたマリアか。
「はん、逃げるのはお得意って訳だ。なあ、弱い奴を嬲るのは……人殺しは面白かっただろ?」
 弱肉強食。
 ナイトフォグが強かったからこそ領民は狩られていた。
「――だから、今度はアンタが狩られる手番さ」
 ならば、そのナイトフォグより強い者が現れたならば……?
 嘲りを隠さないマリアの言葉。
「……私が狩られる立場だと? 随分とふざけた言葉を……!」
 普段は霧の奥にあり、常に狩る立場だったが故。
 そして、撃たれたマスクと浅く斬り裂かれた傷の痛みがある故。
 その言葉の効果は余裕を奪うには覿面であったと言える。
 真紅の瞳に憎悪を燃やし、解き放たれ、地を抉っていたトランプがナイトフォグの指示に従い、再び宙を舞う。
 ――この程度の言葉に怒るとは、案外可愛い所もあるもんだ。
 胸中に呆れとも、嘲りとも言える言葉を秘めつつ、マリアは動かない。動く必要がない。
 何故なら――
「アナタが誰と、何と戦っているか、お忘れですか?」
 銃火が弾ける。
 それは的確に宙を舞う無数のトランプを撃ち落とし、撃ち落とし、撃ち落とす。
 シャルロット・クリスティア。そのガンナーの名に、腕に、一つとして恥じることはなく。
 ――その未来を視ていたからだ。
 マリアを害するトランプのみを撃ち抜いたシャルロットの動きは止まらない。
 持ち替えた銃は先端に銛の付いた銃――アンカーショット――それをナイトフォグ目掛け、撃ち放つ。
「このっ、鼠風情が……!」
 ナイトフォグの懐より抜き放たれたは、闇に溶け込むような黒のナイフ。
 そして、霧が揺らめいた。
 先程まであったナイトフォグがあった筈の空間を銛は貫き――
「悔恨に濡れて死ぬがいい」
 ナイトフォグの姿はシャルロットの真後ろ。
 シャルロットの耳に、振り下ろされるナイフの迫る音が聞こえた。
「それには少し早いってもんだろうよ」
 鉄と鉄がぶつかったような、硬質な音が響き渡る。
 それはマリアの護りとナイトフォグの刃が響かせた音。
 シャルロットを庇ったマリアのそれが命を繋ぐ。
 流れる血の滴が、1つ、2つと地に落ちた。
 そう連発は出来ないのだろう。ナイトフォグは霧に溶け込むことなく、飛び退き、猟兵の2人より距離を取る。
 礼を言うシャルロットに、気にするなとマリア。
 その向こうで、与えた手傷に少しばかりの余裕を取り戻したように見えるナイトフォグが視界に入った。
 だがしかし――
「……どうした? 獲物を追い込んだつもりか?」
「抵抗の旗は未だ折れず、解放の灯火も未だ消えず。アナタは選択を見誤ったのです」
 ――多少の手傷で怯む2人でなし。
 そして何より、この2人が狙っていたのは、その手による決着だけではない。
 時間稼ぎはもう十分。
 首魁の首を討ち取るべく、猟兵達の態勢もまた、整ったのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須藤・莉亜
「さて、と。切り替えて行こうかな。」
霊と違って楽しめる相手だよね?

まずはこそっと、自分の影の中に眷属の狼を召喚。
影から影へ移動できる彼に牽制に動いてもらい、隙が出来れば僕が大鎌で攻撃する。
狙いは首、無理なら手足。
狼くんと上手いこと連携して行こう。

ナイフは大鎌の【なぎ払い】と【範囲攻撃】を使いつつ出来る限り防御し、【吸血】と【生命力吸収】で回復も狙っていく。

「そういえば、ナイトフォグの血は味わったことないや。」
どんな味かな?気になる。


ゾシエ・バシュカ
あくまでお遊び、退屈しのぎの結果がさっきの犠牲者の山なんですね。
こんなのが相手なら、遠慮なく悪意をぶつけて構わない。
敵の真紅の瞳の中に憎悪が燃えているのがわかる。それがどうしたっていうんでしょう?
あんな眼で睨まれたってなにも怖くない。
わたしのと違って。

『魂削ぎ』を構え、多少の負傷は気にせず斬りかかります。
先ほどまでの戦いでこの剣の性質は見抜かれているかもしれませんが、実はこれは囮。本命は『邪視』のほう。
悪意の視線で不幸を招く。なにが起こるかなんてわたしにもわかりませんが。
一瞬だけでも崩せればいいんです。小さな綻びでも、致命の傷に広げてみせましょう。
わたしたちにはそれだけの力があるはずだから。



 血霧を吹き散らし、黒の狼がナイトフォグへと飛びかかる。
 その牙を手にしたナイフで捌き、受け流したナイトフォグは下手人の姿を探す。
 そして、その視線の先、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はあった。
 その身を預けていたコシュタの姿はなく、手にした白の大鎌のみが不気味に闇の中で浮かび上がる。
「やっぱり、これぐらいじゃ駄目だよね」
 いなされた攻撃。しかし、そこには微塵の動揺もない。
「それじゃあ、次はお願いするよ」
 応。と応える声はなく。
 しかし、宙より舞い降りた影――ゾシエ・バシュカ(蛇の魔女・f07825)が『魂削ぎ』を手に、ナイトフォグへと斬りかかる。
 その刃は影から生じたが故に、実体に見えて非実体。
 受け、払うといった防御は意味をなさないのだ。
 だがしかし、それは既に残影との戦いで見せていたもの。
「馬鹿正直には受けませんとも」
 故に、ナイトフォグはそれと打ち合うことは避け、躱す。
 そして、その逆襲と言わんばかりにナイトフォグのナイフが空間を裂き、ゾシエの身を断たんと。
 非実体の刃が故、逆にゾシエもそれを受けるに受けられず、浅く手傷を負いつつもその身を翻した。
 ゾシエより零れる血の色は真紅。
 奇しくも、ナイトフォグの瞳の色と同じそれ。
「1滴、2滴では足りませんね。もっと血の滴を流してもらいましょう」
 宙を撫でるような大仰な動作。
 しかし、その手が過ぎ去れば、そこには浮かぶナイフが十重二十重と。
 その刃が示す先にあるのはゾシエ。
 そして、猟犬の如くにそれが解き放たれた!
 が。
「霊と違って、楽しめる相手だね」
 ゾシエの前に割り込んだ影――莉亜が風を巻き込み、大鎌を振るう。
 刃がナイフを弾き、逆巻く風が壁となってナイフの軌道を乱していく。
 思わぬ結果に苛立ちを込める真紅の眼差し。
 それは、ある種、思い通りにいかぬことへ苛立つ子供の癇癪のようでもあり。
「大人しく針鼠となっていればよかったものを!」
 苛立ち、憎悪の籠った真紅の視線が、静かに見据えくる緑色の視線と絡み合う。
「わたしの瞳を、『視』ましたね?」
 ――こんなのが相手なら、遠慮なく悪意をぶつけて構わない。
 憎悪の瞳がどうしたというのだ。
 悪意持つ瞳であるのなら、それはゾシエにも授かっているもの。
「視ていますよ。視られていますよ。わたしの、瞳に」
 ただ静かな眼差しであるはずなのに、瞬間、ナイトフォグの身体に悪寒が走る。
 まるで、ナイトフォグの周囲だけ、空気が急激に下がったような。
 それはあくまで体感であって、世界は何一つとして変わってはいない。
 だが、ナイトフォグの何かが確かに変わった。
「な、なにを訳の分からないことを!」
 その怖気を振り払うように、ナイトフォグは再びに散らばったナイフを再起動させ、猟兵達を針鼠としようとする。
 だが、それはならなかった。
「――君の出番かな?」
 誰にも届かない程の小さな声で莉亜の声。
 それへ呼応したかのように、不意に、ナイトフォグの影が不吉に揺らめいた。
 しかし、その揺らめきは血霧が遮る影の中に紛れ、誰も――命令を下していた本人以外――気付けない。
 それは不運。ナイトフォグ自身が展開した霧さえなければ、気付けていただろう事柄。 
 ――ナイトフォグの足元。その影から現れた狼が、ナイトフォグの脚を、筋を切り裂き宙へと飛び出す!
 他の猟兵達が時間を稼いでいる間に呼び出されていた莉亜の血追い狼。
 それが、機を見たこの瞬間に、襲い掛かったのだった。
 綻びはここに生じた。
 思わぬ一撃に、ナイトフォグの意識に空白が生まれる。
 それは致命的ともいえる隙。
 不運が不運を呼び込み、連鎖し、綻びは致命的な傷へと昇華する。
 そして、狼は群れで動くもの。
 その主である莉亜がその隙を逃す筈もない。
 白い大鎌――血飲み子が、ザクリと、ナイトフォグの片腕に深い傷を刻んだ。
 白の刃に赤が混じり、味覚を共有している莉亜へとその味を伝えていく。
「そういえば、ナイトフォグの血は味わったことなかったけれど……苦い」
 大鎌に付着し、滴る血。
 その味は、どこかほろ苦いものであったようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
真紅の瞳…まさか、吸血鬼?
それとも私と同じ…ダンピール?
…ん。もし吸血鬼でも狩る理由が一つ増えるだけ
今まで行った悪行の代償を支払ってもらう

他の猟兵と連携して前に出る
…仮面の下の素顔は晒さないの、お嬢さん?
と挑発して存在感を放ち、攻撃を引き付ける
敵の攻撃を見切り、大鎌をなぎ払い武器で受ける
霧や死角からの攻撃は暗視と第六感を駆使して回避

隙を見せたら【限定解放・血の聖槍】を発動
吸血鬼化した怪力で掌打を放つと同時に
血と生命力を吸収する呪詛を宿した血杭を放つ
その後、力を溜めた血杭から無数の血棘を放ち、傷口を抉る2回攻撃を行う

聖槍は反転する。抉り喰らえ、血の魔槍…!

…体を刻まれる痛みを抱いて…滅びるが良い


オリヴィア・ローゼンタール
POW
先ほどまでの余裕はどこへ行きました?
仮面と一緒に化けの皮も剥がれたようですね
しかしその瞳――吸血鬼?

【血統覚醒】により吸血鬼を狩る吸血鬼と化し、戦闘力を増大させる
【属性攻撃】【破魔】で聖槍に纏った炎を更に強大化
そうであるならば――その邪悪な魂、一欠片も残さず焼き尽くすッ!

【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、霧も投擲もまとめて【衝撃波】で【吹き飛ばす】
強化された【視力】で投擲の軌道を【見切り】、【武器で弾く】
その程度の大道芸で、私たちを止められると思うな!

全霊を込めた【投擲】でその心臓を穿つ(【怪力】【槍投げ】【鎧砕き】【串刺し】)
この一撃、避けることも防ぐことも叶わぬと識れ――!



 片腕、片足に走る痛みへ身を引き攣らせるナイトフォグ。
「嘘だ、嘘だ嘘だ……!」
 そこに最初の余裕、慇懃な語り口というものはない。
 壊れたマスクから覗く真紅の瞳が、怒りや憎悪、怯えといった複雑な光を宿す。
「先程までの余裕はどこへ行きました?」
 ――仮面と一緒に、化けの皮も剥がれたようですね。
 その様子を冷たく見据えるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
 吸血鬼(ヴァンパイア)を狩る吸血鬼(ダンピール)たるその嗅覚が、ナイトフォグの素性を嗅ぎ分ける。
 そして、それに気付いているのはオリヴィア1人だけではない。
「その真紅の瞳……吸血鬼だね?」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、ナイトフォグのその素性を言い当てる。
 いや、リーヴァルディにとっては、それがそうであれば狩る理由が増えるだけで、どちらにせよどうするかなど、決まっていたのだけれど。
「五月蠅い! お前たちが来なければ……!」
 ナイトフォグの身体から零れ続ける命の滴。
 喰い、裂かれた手足は上手く言うことを聞かず。
 それでも、ナイトフォグは猟兵達への憎悪を糧に、散らばったナイフを念力により操る。
 その動きは精細に欠いてはいたが、その数だけは厄介であることに変わりはない。
 しかし、――
「やはりそうですか。そうであるならば――」
 身体に宿る鬼の血統。
 始まりは小さな種火。しかし、その内なる焔は熱く、全身へと広がっていく。
 オリヴィアの宿す双つの金色。それが朱く、紅く染まっていく。
 聖槍に、金の穂先に宿った焔が、瞳の色に応じるかのようにより熱く、より激しく勢いを増していく!
「――その邪悪な魂、一欠片も残さず焼き尽くすッ!」
 内なる血統を熾したオリヴィアの槍が、焔の尾を引きナイフの群れを蹂躙する。
 その熱は触れた端からナイフを弾き、融かし、その身に触れるものはない。
 周囲に漂う霧さえも、熱気の余波たる衝撃波に吹き散らされ、蒸発し、消えていく。
 体も心も熱い。
 だが、敵を、ナイトフォグを見据えるその瞳だけは、まるで氷のように冷たく、冷静に、全ての攻撃を見切っていた。
「その程度の大道芸で、私達を止められると思うな!」
 オリヴィアの焔が拓いた道。
 それへ連携するように進み出る影。
「……仮面の下の素顔は晒さないの、お嬢さん?」
 駆ける身は軽く。
 リーヴァルディの嘲りを含んだ声はナイトフォグの神経を逆なでとする。
 駆け来るリーヴァルディの姿は、嫌が応にも視界へと入り、その目を惹きつけるのだ。
 ――あれに対処しなければ、拙い!
 内心の焦り、傷の痛み、繰るナイフを途切れさせれば他の猟兵も進み来る。
「畜生風情がッ!」
 悪態が言葉となる。だが、事態が改善するはずもなく。
 ナイトフォグは手に残った隠しナイフ1本をまだ傷のない片手で走らせ、迎撃を執る。
 しかし、そんな苦し紛れの攻撃が、果たして通じるだろうか。
「……お粗末に過ぎる」
 通じる筈もない。
 リーヴァルディの手にした大鎌が、まるで生き物のように、その手足の延長かのように動き、ナイフを絡めとり、薙ぎ払う。
 ナイトフォグの手より弾き飛ばされるナイフ。
 腕はその衝撃に宙を泳ぎ、胴はまさしく伽藍洞。
「……限定解放――」
 紫の瞳がいつかのように、一瞬だけ真紅に染まる。
 大鎌を手放し、引き絞られた腕はまるで解き放たれる時を待つ弓矢の如く。
「――刺し貫け、血の聖槍!」
 人外の速度と力を持って放たれた掌打が、ナイトフォグの身を貫かんとする!
 瞬間、ナイトフォグは霧へと紛れようとして――
「この一撃、避けることも防ぐことも叶わぬと識れ――!」
「なっ!? がはッ!?」
 ――瞬間、全身全霊を込めたオリヴィアの、聖炎の灯った槍ナイトフォグの心臓を違うことなく刺し貫く!
 そして、破邪の焔はその熱でもってナイトフォグの身体を灼き、その周囲の霧を晴らしていく。
 聖槍に貫かれよろめく身体、逃げ道と考えていた霧は最早ない。
 揺れる視界の向こう。
 聖槍を投擲したであろう姿のオリヴィアが映る。
 それが最後の光景。
 そして、掌打がナイトフォグの身体へと、駄目押しとばかりに突き刺さる!
 衝撃に宙を跳ね、地面を削り、叩きのめされたように地へと伏せるナイトフォグ。
 だが、それだけでは終わらない。終われない。
 血の聖槍の真なる姿。
 リーヴァルティの吸血鬼化が解除されたことにより、放出された余剰な力。
 それが血の杭という形となって、ナイトフォグの身体を地へと縫い留める。
 そして、――
「聖槍は反転する。抉り喰らえ、血の魔槍……!」
 ――血杭は爆発するかのように、その身を茨の如く広げ、内から、外から、ナイトフォグの身体を刻んでいく。
 それはまるで、無数の手が、数多の犠牲者が、その身をナイフで刻んでいくかのようでもあった。
「――体を刻まれる痛みを抱いて……滅びるが良い」
 血の香りが風に漂う。
 ナイトフォグの姿は塵の如くと消え去り、最早なく。
 まるで墓標のように、その体を刺し貫いていった聖槍が地面へと突き立っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『日常を続けるために』

POW   :    巻き割りや耕作など、日々の仕事を請け負って村人の負担を減らす。

SPD   :    近くの森や川で狩猟採集を行い、当面の食糧事情を改善する。

WIZ   :    料理や芸事で村人を元気づけ、活力を養ってもらう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 町を覆っていた暗雲たる霧はない。
 夜天の空は煌々と輝く月と満天の星空を映し出す。
 恐怖の足音はもうなくなったのだ。
 息を潜め、猟兵達の活躍を見ていた住民たちが、恐る恐ると外へと出てくる。
 信じられないものを見た。
 その言葉を口には出しはしないものの、どの瞳もがそれを雄弁に語っていた。
 しかし、圧政から解き放たれた今、彼らは次にどうすればいいのかが分からない。
 今日だけを生き残ることをし続けてきた人々。
 明日を、明後日を、更なる未来を考えることの出来なかった人々。
 誰もの心が、身体が、疲弊しきり、未来を生き、より良い明日を迎えるための術を見失っていたのだ。
 さあ、最後の仕上げだ。
 彼らに道を示し、これからを生きる力を与えよう。
 それが出来るのは、猟兵達だけなのだから。
シャルロット・クリスティア
終わりましたね。
……っと、いえ、ちょっと違いますね。ここからが始まりでした。

ひとまずは、町の掃除と行きましょうか。
雑草や瓦礫の撤去。これだけでも雰囲気は変わりますから。
大丈夫ですよ。体力には自信がありま……いっつつ!

あー、大丈夫です大丈夫。掠り傷ですから。
たはは……普段は後衛に居るので、久々の手傷は沁みますね……普段から前衛をなさっている方々には頭が下がるばかりです。

皆さんに恩を売る気はないですけど、希望を持たせるには、立ち向かう姿をお見せするのが一番だと思ったもので。
まだ希望は残されている……そう伝えたかったんです。

さってと、早いところ終わらせちゃいましょうか!気分良く休みたいですからね!



「終わりましたね」
 霧の晴れた夜空を眺め、シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は独り言ちる。
 そして、ハッとして言い換えるのだ。
「……っと、いえ、ちょっと違いますね。ここからが始まりでした」
 そう。猟兵達にとっては、領主たるオブリビオンの討伐を終え、ここで終わりで間違いではない。
 だが、そこに生きる人々にとってはこれからが始まり。
 生ある限り続いていく明日が、命を脅かされぬ明日が続いていくのだ。
「それでは、ひとまずは町の掃除といきましょうか」
 気を抜くべき時には抜くけれど、張るべき時には張る。
 そして、今は後者だ。
 疲れもあったが、それも今は他所にやり、元気よくシャルロットは声を張る。
 町人達が遠巻きに見守る中、シャルロットを始めとした猟兵達が戦場の痕を片付けていく。
 瓦礫の撤去。壊れた石畳の交換。雑草もついでに抜いていこう。
 交換が必要なもの、資材が必要そうなものに関しては、時折、町の人達へ話しかけつつ、少しずつ行われていった。
 ――最初は警戒も含まれていた町人達の眼差しへ、次第に変化が訪れる。
 少しずつ、少しずつ整っていく町並み。
 それは最盛期の頃と比べるべくもないものではあるが、戦闘前よりは大分マシになってみえ始める。
 ――町人達の眼差しは相変わらず疲れていたが、その瞳の中に不思議なモノを見る彩が過る。
 だが、――
「――いっつつ!」
 ――抱え上げた瓦礫。その重さにシャルロットの細腕が、戦いによる酷使と負った傷により、ついに悲鳴を訴えた。
 抱え上げた瓦礫が地に落ち、大きな音響かせる。
 しかし、シャルロットは諦めない。
 震える腕に、身体に一喝し、再びそれを持たんと力を籠めるのだ。
 ――何故、この人達はここまでしてくれるのだろう。
 ――何故、諦めないのだろう。
 ――何故、何故、何故。
「皆さんに恩を売る気はないです。でも、皆さんは生きていて、命が、希望が残っているんですよ」
 傷の痛みはじくじくと。だが、それでもついに抱え上げた瓦礫を持ち、くるり振り向いたシャルロットは町人達へ向けて笑いかける。
 まるで諭すような言葉。
 それが、町人達のひび割れた心へと、ゆっくりと沁み込んでいく。
 ――流石に、久々の手傷は沁みますね。普段から前衛で頑張っている方々には頭が下がるばかりです。
 小さく零されたシャルロットの言葉。
 まだ齢13歳。再び背を向け、瓦礫を運び出したその背中はあまりにも小さくて。しかし、あまりにも大きく見えて。
 最初に動きだしたのは誰だっただろうか。
 隣に幼い子供を連れた男性だったか。それとも、女性だったか。
 シャルロットの抱えた瓦礫を支えるように傍へと駆け寄った。
 突然の援助に眼を瞬かせるシャルロット。
 だが、次の瞬間には、その表情に花咲くような笑顔を浮かべて。
「ありがとうございます……さってと、早いところ終わらせちゃいましょうか! 気分良く休みたいですからね!」
 それが呼び水となる。
 1人、また1人と、猟兵達の下へと駆け寄り、瓦礫の運搬や雑草の処理、町の補修へと。
 この世界に光の戻る日はまだ遠いのかもしれない。
 だがしかし、この町には確かに、闇を払う希望の灯火が齎された瞬間なのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
WIS
皆さん、お疲れさまでした
圧制の霧は晴れ、この地に自由を取り戻せましたね

明日を生きるために、まずは腹ごしらえからでしょうか(【料理】)
領主の館なら色々溜め込んでいるでしょうし、惜しみなく放出していただきましょう
他の方の狩りでお肉は充分なようですね
では私は、スープやシチューを作ります

リリトさんにお声かけをして、味見をしていただきたいです
貴重な香辛料もあったので、濃い目の味付けにしてみたのですが、どうでしょう?
お口に合えばいいのですが……

街の方々に振る舞います(【コミュ力】【パフォーマンス】)
さぁ、皆さん、今日は解放の記念日です
どうぞご遠慮なく召し上がってください



 町の修繕がひとまずの一段落を見せようとした頃、空腹を刺激する香りが広がりを見せる。
「皆さん、お疲れ様でした」
 響いた声は落ち着いた女性のもの。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)がその怪力で持って、大きな大きな胴鍋を持っての登場には、群衆の度肝を抜くものがあった。
 その傍らにはリリト・オリジシンの姿も。同じく、やや小ぶりではあるが、胴鍋を抱えている。
 だが、それもそれらの胴鍋から漂う芳しい香りとその正体に、あっという間に流れていく。
 地に置かれた鍋の中身は、オリヴィア特性のシチューと野菜を煮込んだスープ。
 煮込まれたそれの香りに、どこからか腹の虫が鳴り響く。
「明日を生きるために。そして、疲れた体には補給が第一。つまり、腹ごしらえです」
「生きるためには喰らう。当然であるが、大切なことだな」
 オブリビオンを前にした時とは打って変わり、その腹の虫へ穏やかに笑いかけるよ姿はまさしく聖職者のそれ。
 同意するようにリリトも頷いている。
 ――それらの料理の出所はどこから?
 1日を生きるのに必死であり、蓄財の量はあまり豊富とは言えない町。
 幾人かの町人が不思議そうに首を傾げている。
 だが、種明かしをすれば簡単なこと。
 あるところ――領主の館より頂戴したものなのだ。
 最早、その主人はおらず、腐らせるならばと色々と、そう、色々と頂いてきたのだ。
 だが、流石に1人で行くのは拙いと、オリヴィアが同行者に選んだのが手隙であったリリトであったということである。
 怪力持ちの2人。
 荷車も使い運び込んだのは野菜や肉といった食材に様々な資材。
 資材に関しては町の共用倉庫に放り込み、今まで料理に勤しんでいたという訳だ。
「圧政の霧は晴れ、この地に自由が舞い戻りました」
 料理を前に厳かに告げるはオリヴィア。
 ごくり。と、町人の喉が鳴った。
「――さぁ、皆さん、今日は解放の記念日です。どうぞ、ご遠慮なく召し上がってください」
「味は保証するぞ。この者の腕、並々ならぬ」
 町人へ振る舞う前に。と、オリヴィアの申請によるリリトの味見があったのだ。
 いや、もしかしたら大食いでもあるリリトの腹の虫がその芳しい香りに負け、オリヴィアが分け与えてくれたのか。
 だがしかし、オリヴィアの隣で語るリリトの満足気な顔を見れば、オリヴィアのその腕前は分かろうというものであった。
 暖かな湯気を湛えたシチューが、スープが町人の手に、手にと行き渡る。
 恐る恐る啜ったスープの味が口中に広がり――涙がこぼれた。
 嗚咽が広がっていく。
 町が整いを見せ、腹に暖かなものが入り、ようやく、ようやく解放されたのだという実感がわいてきたのだろう。
 老いも若いもなく、男も女もなく、全ての人が涙を零していた。
 それは安堵と、亡くなった者達への哀悼。
 町人達はついにオブリビオンの家畜からヒトへと戻れたのであった。
 そして、オリヴィアは祈りを捧げるようにしてそれを見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスティリア・モノノフィシー
急に与えられた明日という光に戸惑うのも無理はないですよね。

私は自分と年の変わらなそうな子、もしくはもっと小さい子達を連れて近くの森へ果物や木の実を探しに行きます。

見たことのある果物や木の実があれば一緒に食べたり、簡単な調理方法を教えたりします。
「食べる分だけ取っていきましょう。青い実はもうちょっと後で美味しくなるのを待ちましょう」
もう殺されるのを待つのではなく、生きるための楽しい待つということを感じて貰えたら嬉しいな。

果物や木の実は時期が過ぎたらなくなっちゃうように見えるけれど、また次の年には帰ってくるから。
色々な食材を年中探すのも楽しいと思いますよ?



 腹を満たし、安堵の中で眠りに就き、そして、当然のように明日/今日がやってくる。
 それは町人にとって当然であって、当然ではなかったこと。
 眠りから覚め、全てが元通りとなっていなかったことに安堵の息を零す者達が居たとして、無理からぬことであった。
「急に与えられた明日という光に戸惑うのも、無理はないですよね」
 大人達であってそうなのだ。
 感受性の強い子供であれば、今迄の当たり前がそうでなくなったことに戸惑うのも当然だろう。
 だからだろうか、アスティリア・モノノフィシー(清光素色の狙撃手・f00280)は自分と同年代、もしくはそれ以下の子供達を集め、郊外へと連れ出していく。
 町から然程離れていなければ、まだ魔獣達のテリトリーには引っかからない。
 そこで少しばかり、アスティリアは子供達の心のケアを行うのだ。
 普段と変わらない筈の世界。
 だが、少しだけその雰囲気は違って見えたのは気のせいか。
「それでは、少し探し物をしましょうか」
 アスティリアがピッと人差し指を立て、まるで先生のように。
 ――が、それもすぐに崩れて天真爛漫な親しみやすさが前に出る。
「なんて、大仰でしたね。皆さんが見慣れた果物や木の実なんかを探してみましょうね」
 少しだけ構えていた子供達に、笑顔を向け、何をするかの目標を与えていく。
 何をすればいいのか。それさえ分かれば子供達の動きは迅速だ。
 あっちこっちに散らばって、あれやこれやと探していく。
「これ、見たことあるかもー」
「あ、それなら食べれるよ」
 最初はオドオドと。だが、次第に明るく変化していった子供達の声。
 遊ぶということをするだけの余裕はなかった今迄。
 だが、これからはこういった光景も見ることが出来るようになるのだろう。
 それを感じつつ、アスティリアは子供達へと近付いていく。
「採り過ぎず、食べる分だけ取っていきましょう」
 あれは食べれる。これは食べれない。
 どうしたら食べやすくなるか。調理の方法はどうしたらいいか。
 子供達が見つけたものを題材に、アスティリアは知識を伝えていく。
「青い実はもうちょっと後で美味しくなるので、それを待ちましょう」
 それは今日を生き、明日を、未来を繋いでいくためのもの。
 彼らの、彼女らのそれがより良いものとなりますようにという願い。
「果物や木の実は時期が過ぎたらなくなっちゃうように見えるけれど、また次の年には帰ってくるから」
 そして、もう、今日に怯える必要性はないのだと、アスティリアは子供達に伝えていく。
 世界はずっと同じものではなく、変化していくものなのだと、伝えていく。
 幼い子供達にも分かる様に噛砕き、教え導くように。
 それが正確に伝わったかどうかは分からない。
 しかし、アスティリアの教えに力強く頷く子供達の瞳に最初の頃の戸惑いも、曇りもない。
 まだ小さく、頼りないものなのかもしれないが、確かな希望の光がそこには宿っていた。
 町を覆っていた暗澹たる霧は猟兵達の手により払われた。
 ――これからを生きる町人達に、そして、未来をより長く担うであろう子供達に、幸多からんことを。
 アスティリアはアメジストのあしらわれたイヤリングに触れながら、そう小さく零すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日
宿敵 『切り裂き魔・ナイトフォグ』 を撃破!


挿絵イラスト