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この尊くも等しき世界のために

#UDCアース


●全て等しく
 全ての者に遍く救いを。
 全ての者に等しく幸福を。

「全ての者が等しく美しく生きられる世界を我は保証する者。故に名を『天秤卿』。強者を挫き、弱きを助ける。それが我等の教義」
 『天秤卿』リブラ―――醜悪ながらもどこか神々しい輝きを放つUDCであった。
 姿形は邪心そのものであったとしても、その声色は優しく、また語る言葉は正義に満ちているように思えた。
 全ての不平等を許さない。差別も、強者が一方的に利益を貪る行為も、何もかも許さない。世界はもっと美しいものであるはずだ。

 なのに世界には不平等が満ちている。

 強者は弱者を虐げる。持つ者と持たざる者がいる。
「コンテストなんて優劣をつけるものが蔓延っているのです! プラモデルは自由だ! なのに、道具や資材、技術を持っているものばかりが持て囃されている!」
「入賞したからといって、人を見下すやつ! 上から物を言うやつ! あんなやつらがのさばっているから自由が損なわれる!」
「少しばかり金を持っているからって、ひけらかすようなことばかり言う! 許せない! 不平等だ!」
 口々に言葉を発する信者達がいた。
 彼らの言葉は耳障りの良いものであったかもしれない。悪を糾弾する言葉であった。
 自分たちが恵まれないのは、優れないのは、何もかも他人が悪いのだと口早に語る者たちばかりであった。
 彼らは常に不満を持っていた。趣味であるプラモデルでさえ、優劣を付けられる。自分たちが出来ないことをできる連中が妬ましい。

 彼等の正義の根底にあるのは、自分がそうでありたいという裏返しだ。欲しがるばかりで、自分では何もしない。
 何一つ、一歩すらも踏み出さない自称弱者たち。
 苦労はしたくない。苦しみを味わいたくない。けれど、成功者たちの上澄みばかりを見てしまう。
 おこぼれに預かろうとしても、無駄なプライドばかりが先行してしまう。
「成程。不平等である。真に許せぬ不正義。汝らの怒りは正義の怒り。不平等を齎す強者たちこそ、排除されるべき者たち。汝たちの自由を、平等を取り戻すため―――これを授けん」

 彼らの手に『天秤卿』リブラから授けられたのは、白き人型。それは60cm程度の大きさを持った人型の模型たちであった。
 それは量産型邪神プラモデル。邪心の力を源に作成者たちの悪しき心を取り込んで強化されていく小型邪神である。
「その力を以て、汝らの憂う不平等を討ち果たすといい……汝らは正義である。天秤の傾きは正さねばならない。故に汝らは正義であり、あらゆる不平等を正すための使徒である」
 『天秤卿』リブラの歪な顔が微笑むように歪む。
 それは信者たちにとっては、至高の下知であった。信者たちは一斉に量産型邪神プラモデルを抱え、邪心教団本部である廃墟から飛び出していく。
 彼らは己の嫉妬心のままに暴虐の限りを尽くすだろう。歪んだ正義感と共に、他者を傷つける時、それは義憤ではなく己が最初に抱いた尊い心の欺瞞へと変わるとも知らずに―――。

●邪心教団を討て
 グリモアベースに集まってきた猟兵達に頭を下げて、微笑みと共に迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
 彼女はいつも一礼を以て、事件の概要を説明する。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はUDCアース……UDC、アンディファインド・クリーチャー、太古の邪神跋扈する世界です」
 UDCアースは現代地球そのものであるが、UDCの存在が確認された世界である。太古より続く邪神と眷属たちが日夜跳梁跋扈する闇が広がり、猟兵たちはこれを討たねばならない。

「ある邪神教団の拠点の情報を得ることができたために予知できた事件です。全ての者に平等を謡う邪神教団……今、彼らは信者が増え、UDCアースでの破壊活動に漕ぎ出そうとしています。勢力が大きくなってきた為に行動に移そうとしたことが予知に引っかかったようです」
 この邪神教団の信者たちは、皆、模型趣味やイラスト、文化的なものにおいて他者と競合し夢破れた者たちばかりである。
 そんな彼らに与えられたのが、量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』。この60cm大の模型を使ってUDCアース内で才能ある者や称賛されている者たちを襲おうと画策しているのだ。

 今回は彼らが邪神教団の拠点から飛び出す前に止めなければならない。
 彼らは今、信者が増え油断している。この機会を逃さず、教団を潰さなければならないのだ。
「はい、まずは教団信者たちが放つ邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』を討ち果たしましょう。数は多い上に、見た目と同じ様に全方位からの射撃などプラモデルとは思えない強力な攻撃を仕掛けてきます。それに数も多いのです……」
 ナイアルテは困ったように言葉を紡ぐ。
 邪神教団の信者と言えど、彼らは一般人である。彼らを傷つけずに、量産型邪神プラモデルであるヴァイスシュヴァルツだけを破壊しないとならない。
 彼らの心根は今、邪心教団の中心であるオブリビオン……UDC『天秤卿』リブラによって歪められている状態なのだ。

「ですので、教団の中心、UDC『天秤卿』を討ち果たせば、彼らも増幅され歪められた心を正しいものへと戻すことができるはずです。どうか、彼らの心の平穏のためにも、元凶である『天秤卿』リブラを倒して下さい」
 どうかお願いいたします、と頭を下げるナイアルテ。
 嫉妬心、猜疑心、様々なネガティブな感情に翻弄されるのは生きていく上で仕方のないことである。

「それと、皆さんには朗報なのですが、邪心教団の拠点は海辺の近くにあるのです。少しジトジトしてきた季節ではあるのですが、事件解決後は海で遊ぶ時間を設けることができます。ご褒美だと思って、是非おくつろぎくださいね」
 僅かばかりではあるが、戦う猟兵達に報いることのできる時間を用意できたことを無いアルテは喜んでいた。
 その微笑みのままに、猟兵たちを送り出す。

 歪んだ平等を掲げる邪心教団、その悪しき心を打ち砕くために、猟兵たちはUDCアースへと転移するのであった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はUDCアースでの事件になります。邪心教団の拠点が発見され、信者増加で油断している彼らを討ち果たしましょう。
 信者たちの放つ刺客、量産型邪心プラモたちを打ち払い、教団の中心であるUDCを撃破を目指すシナリオになります。

●第一章
 集団戦になります。教団拠点から意気揚々と出てきた信者たちが放つ量産型邪心プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちとの戦いになります。
 このプラモデルを放つ信者たちは一般人であり、UDCによって歪な正義感を増長させられているだけです。彼らを傷つけず、邪心プラモを破壊しましょう。
 そうすれば、彼らは正気に戻り、猟兵たちに害することはしないでしょう。

●第二章
 ボス戦です。この邪心教団の中心であるUDC『天秤卿』リブラを打倒します。
 全ての者に平等を齎す存在として君臨していますが、そこにあるのは歪んだ正義感です。何もかもが平等で、他者と自己が同じであることが真の平等であると宣言しています。
 そのためであるのなら、どんな非道をも許容するのです。妬み嫉みが生まれるのは、不平等であるが故と断じ、優れた者、持つ者からは一方的に略奪してよいのだと教義しています。
 これを討ち果たせば邪心教団は壊滅し、自然消滅することでしょう。

●第三章
 日常です。
 今回は邪心教団の拠点の近くが海辺ということもあり、時期は早いですが海水浴を楽しんでいただけます。
 海を眺めて心を癒やすのも良いですし、スキンシップと交流を兼ねてはしゃいでも良いでしょう。自由に過ごして頂いて構いません。
 また今回の限りお客様がグリモア猟兵であるナイアルテを誘うプレイングを掛けた場合は、少しだけナイアルテもリプレイに登場します。
 主役は皆さんのキャラクターなので、あくまでも端役程度に顔を出す位です。

 それでは邪心教団の画策する破壊活動を未然に防ぎ、歪んだ正義感を煽るUDC『天秤卿』リブラを討ち果たすシナリオになります。
 どうか皆さんのキャラクターの活躍の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』』

POW   :    フルバースト・ジェイル
【僚機と連携し、逃げ場を塞ぐ様な一斉射撃 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    オールレンジ・プリズン
【全方位 】から【ビット兵器】を放ち、【拘束ビームの弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    イーヴィルプラモエナジー・フルブースト
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【高濃度邪神プラモデルエナジー 】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
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「平等なる世界のために!」
 邪神教団の拠点から駆け出す信者たちの腕に抱えられた量産型邪神プラモ。その白い模型の人型は、彼らの邪な心を受けて強化されていく。
 彼らの心に巣食う妬み嫉み、他者を害する悪意が増長し、肥大化していく。
 それは誰の心にもあるかもしれない一点であった。

 だが、UDC『天秤卿』リブラによって歪められた正義感を振りかざす快感を覚えてしまっては、取り返しのつかないことになってしまう。
 歪んだ感情は、歪んだ心を生み出す。歪んだ心は、常に誰かを傷つける。

 だからこそ、猟兵たちは今、ここで彼らの増幅された邪な心を受け止める受け皿たる量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』を打ち倒さなければならない。
 ヴァイスシュヴァルツの瞳が赤く輝き、起動する。
「―――な、なんだ、あんたたちは! ぼ、僕らの邪魔をするのか!」
 信者たちは猟兵の姿にたじろぐだろう。
 だが、その心の怯えに反応するように機動した量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちは彼らの手を離れ、一斉に飛翔し猟兵たちを迎え撃たんと空を駆ける。

 信者たちの心は徒に煽られただけに過ぎない。
 彼らの心根を元に戻すためには、この教団を潰す他ない。他愛のないことかもしれない。けれど、UDCアースに跳梁跋扈する邪神たちの目論見を打ち砕くためには、こうした一歩一歩が大切なことなのだ。

 歪んだ心を打ち砕け!猟兵!
村崎・ゆかり
邪神プラモねぇ。最近は邪神業界も、信者獲得のために色々やってるってことか。
それじゃ、残らずぶっ潰しましょ。

あなたたち、他人の作ったプラモデルが許せないみたいだけど、その邪神プラモはいいの? あなたたちの腕前で、そのプラモは作れるのかしら? 出来ないなら、結局あなたたちの信仰するアレも嫉妬の対象じゃないのかしら?

心を揺らすのはこれくらいでいいか。
魂喰召喚で邪神プラモを薙ぎ切る。プラモの攻撃は、「全力魔法」の「オーラ防御」で防いで。
これなら持ち主に間違って攻撃が当たっても問題ないものね。今彼らの心を斬って傷つくのは歪んだ嫉妬心。

さあ、次々行くわよ。あなたたちが暴挙に踏み出す前に、解放してあげる。



 UDCアースにおいて、邪神教団とオブリビオンは密接に繋がっている組織である。
 彼らは日夜、人々を教団へと誘い込み悪しき教義に魂を囚え、堕落させていく。堕落への誘いは甘美なるものばかりであり、そのどれもが魅惑的なことばかりなのである。
 そのような誘惑に耐えうる者ばかりではないことは、人類の歴史を見ても道理であろう。
 だからこそ、今回発見した邪神教団は平等を説く教団でありながら、その本質は平等であるためであるのなら、悪しき事を為しても構わないという到底看過できないものなのだ。
 邪神教団の信者たちは口を揃えて言うだろう。
「同じ道具、同じものを使っているのに仕上がりに差がでるのは平等ではない。俺たちが知らない何か特別なことをしているに違いない。もしくは、審査員にコネがあるに違いない。どちらにせよ、許されることではない」
 彼らが駆け出す先に、一人の猟兵が立ちはだかる。

「邪神プラモねぇ。最近は邪神業界も信者獲得のために色々やってるってことか。それじゃ、残らずぶっ潰しましょ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は邪神教団の拠点から走り出した教徒たちの一団の前に立ちふさがる。
 彼らが抱えている60cm大の人形のような量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』が起動する。赤い瞳を輝かせ、猟兵であるゆかりを敵であると認識したのあ。

「あなたたち、他人の作ったプラモデルが許せないみたいだけど、その邪神プラモはいいの?」
 ゆかりは何体もの量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』が空へと飛び上がるのを視界に入れながら信者たちに問いかける。
 それは彼女なりの揺さぶりであった。邪神プラモである『ヴァイスシュヴァルツ』が信者たちの悪しき心を吸い上げて強化されているというのなら、彼らの心を揺さぶるのは効果的であったのかもしれない。

「あなたたちの腕前で、そのプラモは作れるのかしら? 出来ないなら、結局あなたたちの信仰するアレも嫉妬の対象じゃないのかしら?」
 その言葉は的を射ていた。
 けれど、信者たちは頑なに否定する。それを認めてしまえば、今までとこれから己たちが行おうとしたこと全てが間違いということになる。
 だから認められない。口々に違うと断ずるが、あからさまに勢いがない。

「心を揺らすのはこれくらいでいいか……急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
 ゆかりのユーベルコード、魂喰召喚(タマクイショウカン)が発動する。召喚した魂喰らいの式神を籠めた薙刀を振るう。
 ゆかりの回避する逃げ道を潰すように砲撃していたヴァイスシュヴァルツたちを薙刀で薙ぎ切る。
 量産型邪神プラモと言えど、猟兵の本気の一撃には尽くが切り捨てられてしまう。
 その薙刀が祓うのは嫉妬心。
 邪神教団によって歪められた心である。この薙刀の一撃は、肉体を傷つけることはない。このユーベルコードは戦闘意欲や抵抗心を支える魂魄のみを攻撃するのだ。

 ばらばらと邪神プラモが、元のプラスチックへと変わっていく。
「さあ、次々行くわよ。あなたたちが暴挙に踏み出す前に、解放してあげる」
 次々と空へと舞い上がっていく量産型邪神プラモたち。
 それだけ、この拠点には歪んだ嫉妬心を募らせた人々が多く募っているということだ。だが、すでに道筋は見つけられている。
 ゆかりの薙刀とユーベルコードであれば、量産型邪神プラモとそれを扱う信者たちの繋がりを断ち切れる。

 戦いはまだまだ始まったばかりだが、それでも光明は見えたのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒髪・名捨
邪神プラモねぇ…
どーでもいいが、それ既製品しかも完成済みを貰ったんだろ?
せめて素組でもいいからランナーから組み立てろよ…。
他人…他神?…が組み立てたのを片手に吠える遠吠えじゃねーだろそれ。
どーでもいいが。

●戦闘

とりあえず、信者にスタングレネードを『投擲』
閃光で『目潰し』音で『気絶攻撃』だ。めがー、めがーと悶えて気絶しているうちに邪神プラモをぶっ潰そう。
『オーラ防御』と覇気を込めた『覇気』で『武器受け』の二重バリアで銃弾を弾きつつ、プラモ一機…一体?づつ陸断で『踏みつけ』て潰す。
残骸は『焼却』して廃棄だ。
あ?素組みのプラスチックモデルは可燃ごみだが、塗装済みプラモは不燃廃棄物…知らねぇよ。



 最初に思った言葉は「どうでもいい」だった。
 彼は、黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は素直にそう思ったのだ。
 邪神教団が平等を謳おうが、信者たちがどれだけ嫉妬心をつのらせ、歪められ、自滅していこうが、どうでもよかったのだ。
 関心がないと言えば、それまでである。
 だが、彼らの暴挙が、この世界の平和を乱し、他者を徒に傷つけるのであれば……いや、それすらもどうでもよかったのかもしれない。

 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の砲撃が続く。それは逃げ道を塞ぐように僚機との連携を密に取りながら、名捨の回避行動を妨害し続ける。
「邪神プラモねぇ……」
 その連携は見事であった。なるほど、信者たちの悪しき心を吸い上げて動いているのだから、彼らの歪んだ正義感は増長するばかりだ。
 信者たちは名捨がヴァイスシュヴァルツの砲撃によって回避行動のコースを塞がれていくたびに歓声を上げる。
 溜息が出そうだった。

「どーでもいいが、それ既製品。しかも完成済みを貰ったんだろ?せめて素組でもいいからランナーから組み立てろよ……」
 名捨の言葉は、いっぱしのモデラーを気取った信者たちの心を揺さぶったのだろう。確かにプラモデルを嗜むのであれば、完成品を譲り受けただけで自身の手柄にはならない。
 だからこそ、名捨の言葉は酷く響いたことだろう。
「他人……他神?……が組み立てたのを片手に吠える遠吠えじゃねーだろそれ」
 どーでもいいが、と名捨は吐き捨てる。同時に彼の手にあったスタングレネードを信者たちの一団へと投げつける。
 閃光と盛大な音が周囲に広がる。それはあまりにも強烈であり、直視した者たちは目潰しを受けたようにのたうち回り、炸裂した音を受けた者たちは卒倒するように倒れてしまう。

「外野は黙らせた……あー……めがーめがーって悶えてるのは気にしないでおこう。さあ、今のうちに邪神プラモをぶっ潰す」
 すでに回避する道筋はヴァイスシュヴァルツたちの砲撃によって潰されている。
 だが、それで歩みを止める名捨ではない。その身を覆うオーラ、そして覇気、さらには武器を受ける技術でもって、放たれる銃弾を弾き飛ばす。
 直撃コースであった銃弾を弾き飛ばしながら、一体の量産型邪神プラモへと飛びかかる。

「んじゃな。―――あばよッ」
 彼のユーベルコード、陸断(リクダチ)。それは超高速かつ大威力の蹴撃である。射程が短いことを除けば、その蹴りによって砕けぬものはない。
 蹴り上げられた量産型邪神プラモの一体が、さらに追撃のかかと落としによって、地面へと踏みつけられ完全に潰される。
 踏みしめた大地がひび割れるほどの一撃に、地面が揺れ、踏み込んだ足の下でプラモの残骸が燃え落ちる。

「あ?素組のプラスチックモデルは可燃ごみだが、塗装済みプラモは不燃廃棄物……知らねぇよ」
 どちらにせよ、破壊する以外の選択肢はないのだ。
 後始末のことは後始末をする連中に任せればいい。己は、ただ邪神の徒である、かのプラモを破壊することに専念すればいいのだ。

 名捨の蹴撃が放たれるたびに、プラスチックの砕ける音が邪神教団の拠点に響き渡るのだた―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「未だ意思持たぬ付喪神未満の貴方達は、他者に使われることが幸せなのでしょう?善き方は専ら使うということをなさらないから…貴方達の願いは、また使い潰されることに向けられてしまう…お可哀想に」

「成功を買えなくなった時が、貴方達の終焉です」
UC「桜吹雪」使用
プラモのみ切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
回避出来ない攻撃は盾受けで被害を最小限に抑える

高速・多重詠唱で破魔と炎の属性攻撃も行う

戦闘後プラモを受け取った人達に
「貴方達は限界を越えるまで何かをした事はありますか?貰っただけのものからは、人と違う何かは生まれませんよ?」

「貴方達の願いが、何時か善き主人の元で満たされますよう」
破魔込め鎮魂歌捧げる



 平等を謳う邪神教団は、その歪んだ正義感を根底に持つが故に歪みきっていた。
 多様性も、互いに違う人間であるということも、何もかも受け入れられなくなった人々の受け皿として、『平等』という言葉は耳障りがよかったのだろう。
 そう、声高らかに平等を叫べば、己の側に正義があると思ってしまうのだ。言葉は、どこまで言っても、ただの言葉だ。
 言葉が力を持つ時、それは人間が言葉の意味を感じられた時に他ならない。
「この世界に平等を! 不平等であるから妬み嫉みが生まれる! 持つ者は持たざる者の気持ちを慮らないとならない!」
 思いやりを履き違えた言葉が投げかけられる。
 その言葉を受けて、量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の瞳は爛々と赤く輝き、邪神教団の外へと駆け出した信者の一団と共にUDCアースに住まう無辜なる人々を傷つけんと征くのだ。

 だが、そんな彼らの前に立ちふさがる者がいる。
 それは猟兵と呼ばれる世界に選ばれた戦士たちである。御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)もまた、その一人である。桜色の神が風になびく。
 彼女の視線は信者ではなく、量産型邪神プラモに注がれていた。
「未だ意志持たぬ付喪神未満の貴方達は、他者に使われることが幸せなのでしょう?善き肩は専ら使うということをなさらないから……貴方達の願いは、また使い潰されることに向けられてしまう……お可哀想に」
 それは消耗されるがゆえの宿命であったことだろう。
 きっとこの戦いで量産型邪神プラモたちが傷つき、損壊しても信者の誰一人として修復しようとするものはいないだろう。
 ゴミと同じ扱いとして打ち捨てられる未来が見える。

 だからこそ、桜花は悲しいと思った。
 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの攻撃は常に、その機体に内蔵された高濃度邪神プラモデルエナジー によって桜花を追い詰めていた。
 放たれる砲撃、斬撃、その全てが桜花の避けられぬ攻撃となって繰り出されるのだ。彼女の第六感や見切りがあったとしても、それはエナジーの続く限り、彼女の身へと届く。
「ほころび届け、桜よ桜」
 桜花のユーベルコード、桜吹雪(サクラフブキ)によって桜の花弁に変えた武器によって、致命傷は避けられているものの、これが続けばいずれ桜花が劣勢に立たされることは間違いない。
 けれど、桜花の眼差しは常に量産型邪神プラモに向いている。

「成功を買えなくなった時が、貴方達の終焉です」
 それは彼女自身の選択だった。物言わぬ道具として使い捨てられる運命の邪神プラモが消費するプラモエナジーを受け止め続けることによって、彼らの消耗を早めたのだ。
 それは寿命のようなものだった。エナジーが尽きてしまえば、いかに邪神謹製のプラモデルと言えど、ただのプラスチックの塊でしかない。
 桜花は敢えて攻撃を受け続け、受け流し、致命傷を避け続けることによって、プラモデルを傷つけること無く泥沼の消耗戦へと引きずり込んだのだった。

 全ての邪神プラモがエナジーを枯らし、大地へと失墜する中、桜花は信者たちへと歩み寄る。
 その瞳に映る彼らは桜花に怯えていたことだろう。確固たる自身を持つ桜花の瞳は、それだけでなにかも他者のせいにして、自身を棚上げにしてきた信者たちの身を貫く。
「貴方達は限界を超えるまで何かをした事はありますか? 貰っただけのものからは、人と違う何かは生まれませんよ?」
 その言葉は刃よりも深く信者たちの中にある歪んだ正義感、嫉妬心を切り裂いた。
 そう、人は自分の手で勝ち取ったもの以外は、砂上の城のように風化し、崩れていくしかない。
 だからこそ、己の限界を常に越えていかねばならないのだ。
 桜花は言葉少なに彼らを諭し、エナジーの枯れた邪神プラモたちを集め、破魔を籠めた鎮魂歌によって存在を骸の海へと返す。

「貴方達の願いが、何時か善き主人の元で満たされますよう」
 それは鎮魂歌であり、祈りであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇宙空間対応型・普通乗用車
不平等を憂うその気持ち、オレにもよくわかるぜ…
なんて言うとでも思ったか馬鹿が!
こちとら車だぞ!女の子と恋の一つもできない不自由な肉体だぞ!
それに比べりゃ人間なんて全員リア充だボケ!生きろ!必死になれ!

でなんだっけ?プラモがオールレンジでプリズンな拘束ビーム弾幕?
つまりビームを攪乱するフィールド発生装置を作っちまえば、
テメェらはただの無力なPSとPCとABSの塊ってわけだなぁ!
【ガジェットショータイム】で装置出して無力化しつつ、
轢き潰して燃えるゴミにしてやんぜオラァ!
悔しかったら近所の模型屋で真鍮線買ってきて、
ピンバイスで穴開けたのち接着剤でくっつけて修理してみやがれ!
意外と簡単だぞ!



 世の中には理不尽も不平等も溢れている。
 いつかの誰かが言った。人間は皆、平等に不平等だと。誰しもが不平等を抱えながら生きている。自分にはないものを持つ者を見れば、それは己の鏡なのである。
 他者からもまた自身は同じ様に見えているものであるのだ。
 だからこそ、人は他人が絶対に己とは理解し合うことのできない未知なる他者と共に社会で生きていけるのである。

 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の機体が空を舞う。それは邪神教団の信者たちの持つ邪な心を吸い上げて強化される。
 その力を持って、信者たちが妬み嫉む人々を蹴撃せんと飛び立とうとした瞬間、その者は現れた。
 エンジン音を鳴り響かせ、砂塵巻き上げて教団拠点へと走り込んでくる一台の普通乗用車―――宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)である。
 一見するとただの自家乗用車……にしか見えない。だが、彼はウォーマシンである。その名が表すとおり、陸海空、そして宇宙にまで対応しきる車両の形をとった猟兵なのである。

 だが、猟兵の姿はどんな姿であっても、人々に違和感を与えない。
「不平等を憂うその気持、オレにもよくわかるぜ……」
 自家乗用車が喋る。それでも猟兵である以上、彼の言葉に違和感を感じるものはいない。そういうものなのだ。
 そして、彼の語る言葉もまた、信者たちと同様であったのだろう。
「―――なんて言うとでも思ったか馬鹿が! こちらら車だぞ! 女の子と恋の一つもできない不自由な肉体だぞ! それに比べりゃ人間なんて全員リア充だボケ! 生きろ! 必死になれ!」
 感情のトップギアが入ったようにガタガタ車体が左右に揺れるほどに爆発する言葉。
 彼にとって自家乗用車の肉体こそが、変えようのない肉体である。
 だからこそ、人型である人間というだけで、それは恵まれたことなのだと力説する。その姿に信者たちは一斉に毒気を抜かれてしまう。
 生半可な説得力ではない……。

「……で、なんだっけ?うぉっと!プラモがオールレンジでプリズンな拘束ビーム弾幕?」
 その言葉通り、量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』が放ったビットから一斉に光線が放たれる。
 プラモエナジーを力に変えて熱線として放つのだ。その一撃を受けてしまえば、猟兵と言えど足を止めてしまう他ない。
 だが、宇宙空間対応型普通乗用車である彼は狼狽えない。
 ユーベルコード、ガジェットショータイムによって生み出された変な形のガジェット……そう、ビームをオーレンジで放つというのであれば、ビームを撹乱するフィールドを作り出せばいいのだ。
 すでに彼の肉体にセットされたガジェットはビームを撹乱し、霧散させていく。

「テメェらはただの無力なPSとPCとABSの塊ってわけだなぁ!」
 ビームを無力化した彼の肉体が走り出す。砂塵をもうもうと舞い上げ、その巨体で持って量産型邪神プラモたちを為すすべなく轢き潰してしまう。
 その圧倒的な蹂躙劇に信者たちは開いた口が塞がらない。いや、他の誰であったとしても、それは、そんな……途方も無い光景であったことだろう。
 バラバラに轢き潰された邪神プラモたちを前にして、彼は宣言する。

「悔しかったら近所の模型屋で真鍮線買ってきて、ピンバイスで穴開けたのち接着剤でくっつけて修理してみやがれ!」
 だが、目の前でズタボロにされた邪神プラモが散らばる光景は、信者たちにとって心を折るには十分なものであった。
 あ、やりすぎたかもしれん、と彼は思ったかも知れないし、思わなかったかも知れない。
 信者たちの心情を慮ったのかも知れない。ただ、最後にこう付け加えたのだ。

「意外と簡単だぞ!」
 その言葉に一斉に信者たちからは、
「いや! そんなわけないし!」
 とノリツッコミのような言葉が帰ってくるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

褒められるの嬉しいわよね
けど何をしても平等じゃ、きっと
あなたたちが褒められることもなくなっちゃうわ

人形作りは興味があるわ
好きなら作品の一部や
携帯端末に写真なんか入れてるんじゃないかしら?
見せて。どんなのがあるの?
『護り現』で身を守り攻撃を【見切り】ながら囁いて
隙に奪うか、優しい子から作品を覗けないかしら
面白そう。これは動くの?

得た姿を元に『鼓腹』発動
作品に化けてもらうわ
貰ったものより『彼ら』の方が素敵なはずよ
『護り現』を移して動かしたり気を引く

敵が鈍ったら、人形=狸たちの懐に忍ばせた『しっぽの針』を
擬似的な弾幕に見せて一斉発射
みんな同じなんて、つまらない
カッコいい人形、また見せてね



 最初のそれは単純な想いだったのかもしれない。
 誰かに認められたいだとか、持て囃されたいだとか、そんな複雑に入り組んだ感情ではなかった筈だ。
 なのに、いつしか単純な一つの想いであったものは、歪んでいく。それが人間の生きていく道筋だというのであれば、仕方のないことなのかもしれない。
 誰にも影響されず、与えず、ただ一人では生きていけないのが人間なのだから。だから、彼ら―――邪神教団の信者たちは、ある意味で最も人間らしい感情の発露を以て、己たちの心を鎧っていたのかもしれない。
「自分たちが認められないのはおかしい! こんなに自分たちは努力しているのに!」
 どうして認められない。どうして、認められるものたちのように自分たちも―――。

 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の機体が群れを成して空を飛ぶ。それらは一人の猟兵を追い回していた。
 ひらりひらりと風に舞う木の葉のように、バイオモンスターの巨躯を翻し躱し続けるジャム・ジアム(はりの子・f26053)の姿は、明色の植物と融合した羽根を美しく舞わせるのだ。
 ひらり、はらりとジアムが量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の砲撃を躱し、邪神教団の信者たちの一団へと舞い降りる。
「褒められるの嬉しいわよね。けど何をしても平等じゃ、きっと……あなたたちが褒められることもなくなっちゃうわ」
 彼女の言葉は真理であったことだろう。
 他者と違うからこそ、自分にない物を見る。他者は鏡である。自分の思い描く自分の像と他者の瞳に映る自身の像は違う。
 だからこそ、人は人を認めるのだ。

 ジアムの言葉は、邪神に歪められた平等という正義感に駆られた人々の心を徐々に溶かしていく。
「人形作りは興味があるわ。好きなら作品の一部なんかも……」
 見せてちょうだい、と微笑む。
 その微笑みは嫉妬心に苛まれた彼らの心を揺さぶる。どんなのがあるの?と純真無垢な笑顔を向けられては、人は邪険にできない。教えて、見せて。
 いつだって人間は教えたがりだ。
 だから、乞う言葉を否定することはあまりない。

「わあ―――」
 一人の女声が見せる携帯端末に浮かぶ画像。それを見て、歓声をあげる。面白そう、これは動くの?とジアムを覆うオーラ、護り現によって量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の砲撃を防ぎながら興味津々に覗き込むのだ。
 そんなジアムの様子に顔を赤らめながらも、表情がほころぶ信者。説明を一から聞く。楽しそうに語る彼らは、もはや邪神教団の信者などではなかった。
 ただ一人の趣味を語る人間だった。

「お願い。きて、おいで、あなたたち!」
 その彼らの作品に対する想いを受けて、ジアムはユーベルコード、鼓腹(ヘイワエノ・タヌキバヤシ)を発動する。ぽんぽこ狸たちが、ぽてぽてと地面に落ちるように転がり出て来て、整列する。
 なになに。なーに、と携帯端末の中の画像をタップしたりスワイプしたり。
 次々に狸たちは、見せてもらった作品たちへと化けていく。それは信者たちが作った作品達の姿だった。
 それを見た信者たちの瞳が潤むのをジアムは、はっきりと見た。だって―――。
「貰ったものより、『彼ら』の方が素敵なはずよ」

 そう、誰かの手から渡されたものより、自分たちの手で作り上げたものが尊いのだ。他の誰かがどう評価しようと関係ない。
 自分の手で作りあげたものは、その人にしか作れないたった一つなのだから。
 信者たちが思い出した想い。
 それは邪な心を原動力として動く量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの動きを鈍らせるには十分すぎる想いだった。

 ぽんぽこ狸たちが化けた『彼ら』の懐に忍ばせた、しっぽの針。それを一斉に解き放ち、棒立ちとなった量産型邪神プラモたちを一斉に打ち貫く。
 それは、ただジアムが群体オブリビオンを叩き、打ち倒すことよりも価値の在る出来事であったことだろう。
「みんな同じなんて、つまらない」
 ジアムは微笑む。
 他者と違うからこそ、自分を認識できる。自分と違う他者がいるから、誰かを認めることができる。
 ならば、それはとても尊いことなのだと。だから、ジアムは微笑んで言うのだ。

「カッコいい人形、また見せてね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
怒りや妬みは人として自然なお気持ちと思います
人ならばきっと誰もが
その強弱はあれど
心に闇も秘めているでしょう
それを煽り、破滅へと導かんとする
UDCのなんと邪悪なことか
信者さん達をその軛から解放してあげたいです

風の魔力で飛行

炎熱で空気を歪めてビームを曲射させつつ
疾風の加速分身で回避
回避できない時は
激流の円盾や旋風のバリアで防御

疾風を纏い加速
残像を残しながら接敵し
すれ違いざま
破魔の魔力付与しぺろぺろ

プラモデルの接着や関節の摩擦係数を操作して
一瞬でバラバラにしちゃいますよ♪



 邪神教団が謳う平等とは如何なるものか。
 いつだってそうだ。邪神教団のUDCがささやく教義は、甘く蕩けるような甘美なる言葉ばかりで綴られる。
 その甘やかな誘いに屈してしまうのは、人々の心に必ずある感情が揺さぶられるからに違いない。
「なんであいつだけが認められて、オレだけが認められないんだ……! オレの方がもっとできる! もっと上のはずなのに!」
 認められぬ自分。認められる他者。その違いに懊悩し、恨まなくてもよい者を恨み始める。当たり散らしては、他者を傷つけていく。
 その邪なる心を吸い上げて量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』は駆動する。信者たちの増長した嫉妬心を吸い上げて、勢いを増した群体オブリビオンは空を駆ける。
 全方位に射出されたビット兵器が、猟兵を追い詰めんと放たれる火線は、まさに網目のごとく。

「怒りや妬みは人として自然なお気持ちと思います。ひとならばきっと誰もが、その強弱はあれど、心に闇も秘めているでしょう」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、華美たる装いを翻し、自分を狙う火線を躱す。
 ケットシーである彼にとって、このような火線を躱すことなど造作もない。
「それを煽り、破滅へと導かんとするUDCのなんと邪悪なことか……!」
 彼にとって、信者たちはUDCに唆されただけに過ぎない。
 誰にだって在る心を徒に増長させられたのだ。怒りが湧いてくるのもしかたのないことである。
 その怒りを力に変え、風の魔力を身にまとった仄々の体が浮かび上がる。
 
 彼の操る炎熱でもって火線を歪曲させつつ、疾風の如き加速でもって分身しながら空を飛ぶ量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちを目指す。
「確かに、その感情を吸い上げて放つ攻撃は見事なものです。ですが―――!」
 疾風を纏う彼にとって、火線の砲撃は遅すぎた。
 加速し、接敵するすれ違いざまに破魔の魔力を籠めたユーベルコード、猫の毛づくろいによって得た力―――ペロペロなめる事によってプラモデル特有の問題……つまりは、接着や関節の摩擦係数を極限まで減らすのだ。

 摩擦係数を減らす。
 たったそれだけで何になるというのだろうか。否。相手が通常のオブリビオン……生物の如き特性を持っていたのであれば、有効な手段ではなかったかも知れない。
 だが、かの群体オブリビオンはプラモデルである。
 プラモデルであるが故に隙間や関節は剥き出しであり、その摩擦が極限まで減らされればどうなるか。

「一瞬でバラバラにしちゃいますよ♪」
 そう緩んだ関節、動かそうとしても摩擦が起こらない故にあらゆる関節部分が固定できないのだ。
 そうなってしまえば、あとはバラバラに空中で分解し失墜する他ない。
 プラモデルゆえの特性を見きった仄々の作戦勝ちであった。次々と毛づくろいをされるように摩擦係数を減らされ、量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちは何を為すこともできずに、尽くが分解されていくのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
平等。其れは“与えられるもの”に非ず……
己が力で“勝ち取る”ものにござる。
俺も、そうすることで今の地位を得られたのだからな。
■闘
大なぎなたを手に戦うぞ。
討つのはかの玩具のみ……一般人には決して手は出さぬ。

敵の集団に向かって【ダッシュ】し、放たれる一再射撃に
【衝撃波】を放って銃弾を弾き返してやろう。
道を塞がれたら、切り拓くまででござる。

敵の懐までたどり着いたら大なぎなたを力強く握りしめる。
そこから最大限の【怪力】を込めた大ぶりな【剣刃一閃】による
【範囲攻撃】で一斉撃破を狙うのだ。

弱きは沙汰される。それが拙者達“獣”の掟……
故に、強くあらねばならぬのだ……

※アドリブ・連携歓迎



 次々と量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の機体が空へと舞い上がっていく。その光景だけで、この邪神教団の信者の数が知れよう。
 それだけ誰しもが心の中に抱いている不平や不満、妬み嫉みを増長させられUDCの思うがままに操られようとしている。
 その感情を否定する者はいないだろう。誰かより優れたものを、もっと。その感情こそが、人間の進化を齎したと言ってもいいかもしれない。もっと、もっと、と際限のない高みを目指す気概こそが、人間を霊長の長へと押し上げたのだから。

 しかし、高く舞い上がる者在れば、地に這うことしかできぬ者が在るのもまた事実である。だが、空を飛ぶものに地に落ちろというのが平等であるというのであれば、それは否である。
「平等。其れは“与えられるもの”に非ず……己が力で“勝ち取る”ものにござる」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)にとって、それは当たり前のことであったのかもしれない。
 その言葉通り、彼はそうすることで今の地位を得られたのだから。だからこそ、彼は思うのだろう。
 本当に欲しいと思うものは、ねだってはならないのだと。どれだけ自身が傷つこうとも、勝ち取るために戦わねばならぬ時が必ず訪れるのだと。

 だからこそ、彼の振るう大なぎなたの業の冴えは鋭い。
「討つのはかの玩具のみ……!」
 邪神教団の信者である一般人に手を出すことはしない。猛禽の翼をはためかせ、僚機と連携し、こちらの回避ルートを封じてくる量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの砲撃を躱す。
「見事な連携……! しかし! 道を塞がれたら、切り拓くまででござる」
 逃げ道の断たれた砲撃のコースは清綱を捉え、撃ち落とすには十分な威力を持っていた。その火線と砲撃が彼に迫るも、振るった大なぎなたより放たれた衝撃波が、それらを一斉に弾き返す。

 その姿はまさに空を駆ける大鷲の如き姿でもって、量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの一団へと迫る。
 宣言通り道を自身で切り開く一撃でもって、肉薄した清綱の振るう大なぎなたの剣刃一閃は、自身の持てる最大の膂力で持って横薙ぎに振り払われる。
 裂帛の気合と共に放たれた一撃は、一瞬で周囲に浮かぶ量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの胴を薙ぎ払い、破壊しつくす。

「弱きは淘汰される。それが拙者達“獣”の掟……」
 それは清綱が常に常在戦場、戦いの日々に身を奥がゆえの言葉であった。その雄々しき姿を見上げる信者たちの瞳には、もはや濁った空は浮かんでいなかった。
 済んだ大空を飛ぶ清綱の猛禽の如き姿は、憧れを以て彼らの心に一つの光を灯したのかも知れない。
 それを知ってか知らずか、清綱は己を自戒するようにつぶやく。
「故に、強くあらねばならぬのだ……」
 これほどの力を持っていたとしても、高みを目指す気概。それこそが、猟兵である彼の原動力であったのかもしれない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
誰もが持つ負の感情を徒に増幅し己が走狗とする
彼らが加害者となる前に邪神を討ち果たし事態を収集しなくては…

なので皆様には速やかに道を開けて頂きたく
此度の私の敵は『天秤卿』リブラだけですので

センサーでの●情報収集で敵機体群の位置を把握
UCの意図的で緩やかな挙動で敵の一斉射撃の射線を誘導
攻撃開始と同時に挙動を変更
『誘導して造り出した』射線の穴を●見切り鋭くも最小限の動きで移動
巨体の被弾面積は●盾受け●武器受けでカバー

攻撃を躱しながら接近
剣や盾の●なぎ払いの反撃で一機ずつ着実に粉砕

制圧完了、ですが…
彼らの妬心を罪なしと断じ、被害者と扱う
この思考回路すら彼らが憎んだ『持てる者の傲慢』かもしれませんね…



 感情を持つ生命であるからこそ、その感情の振れ幅は豊かになっていく。
 それが悪しき事であるとは誰も思わない。しかし、その均衡を徒に乱すからこそ、人身は乱れ荒廃していく。
 此度のUDC『天秤卿』リブラの組織した邪神教団は、まさにその均衡を崩す行いを勧めていた。平等とは誰しもが持つ理想であるがゆえに、その言葉は劇薬の如く人々の心のひび割れた隅々まで入り込んでいく。
 その傷が大きければ大きいほど、耳障りの良い言葉は、人の心を惑わす。
 UDCはそこに付け込むのだ。
 その結果が、この邪神教団を巨大な組織へと変え、今まさに教義の通り、平等の旗印の元に人々は略奪と暴虐を尽くそうとする。

「誰もが持つ負の感情を徒に増幅し己が走狗とする。彼らが加害者となる前に邪神を討ち果たし、事態を収集しなくては……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の機械の体が一歩を踏み出し、持つ者を蹴撃線と駆け出した信者たちの一団の前へと立ちはだかった。
 彼らの手に抱えていた量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちが次々と彼らの邪なる心を吸い上げて起動していく。
 赤き瞳が輝き、それが本来プラモデルであることを忘れさせる圧倒的な存在感で持って空へと舞い上がるのだ。
「俺達の邪魔をするな! 俺たちは正しいことをしようっていうんだ! 本来なら俺たちに与えられる賞賛を我がものにしている連中を粛清してやるんだから!」
 信者たちは口早に立ち塞がったトリテレイアへと罵声を浴びせかける。彼らは邪神教団の信者といえど一般人である。
 グリモア猟兵の言葉、そしてトリテレイアの本来の目的と照らし合わせても、彼らを傷つける道理はない。

「皆様には速やかに道を開けて頂きたく……此度の私の敵は『天秤卿』リブラだけですので」
 だが、その言葉は空へと飛び上がった量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちから浴びせられる砲撃によって遮られた。
 トリテレイアのアイセンサーが輝く。土煙の中で尚、輝きを放つセンサーは敵機体群の位置を把握する。
 それは一対多数である数の不利を覆すには必要な情報収集である。機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)。それはユーベルコードの領域まで高められた高度な戦術モードである。
 彼の演算速度はすでに敵であるヴァイスシュヴァルツたちの砲撃を誘い込むように挙動を変更している。

 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちの砲撃によって、彼らはトリテレイアを追い込んでいると錯覚しているだろう。
 事実、傍目に見ている邪神教団の信者たちも信じて疑わない戦況の推移であった。
 次々と追い込まれるように砲撃がトリテレイアへと降り注ぎ、あわや回避不可能かと思われた瞬間、彼のアイセンサーが再び輝きを放つ。
「徒に速度に恃まず、敵を誘い、撃たれる前に射線から外れ、死角に移動……理論は単純、実行は至難。さて、私の予測演算で何処まで踊れるか……今ですね!」

 その動きは誰の瞳にも映らぬほどの最小限の挙動であった。たった一点。針の糸を通すかのような砲撃の穴。それを作り出すためのトリテレイアの挙動。
 そして、それを可能にした彼の演算速度でもって、回避不可能なる砲撃を回避せしめたトリテレイアの装甲には傷一つ付いていなかった。
「見事な砲撃。見事な連携……ですが、それだけです」
 トリテレイアの巨躯が飛翔し、剣が振るわれ、盾の大質量によって粉砕されていく量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たち。
 プラスチックの破片が飛び散り、あっけなく瞬時に破壊された群体オブリビオンたちは、トリテレイアが大地に着地するまでに全てが倒されていた。

「制圧完了、ですが……」
 邪神教団の信者たちは散り散りになって逃げ惑っていく。彼らの背中を追いかけることはせずにトリテレイアは思うのだ。
「彼らの嫉妬心を罪なしと断じ、被害者と扱う……この思考回路すら彼らが憎んだ『持てる者の傲慢』かもしれませんね……」
 だが、それでも救われた生命がある。
 その命題に解はないのかもしれない。それでも、その至上命題を抱える限り、トリテレイアが道を踏み外す事はない。
 その命題を抱えたまま、諸悪の根源である『天秤卿』リブラを目指し、拠点へと進むのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と

意外。結構バッサリ行くんだ
私もできない人の事考える性質じゃないけど

人を羨むなら徹底的にやったほうが効果あるよね
全力で走って転んだ状態のほうが、目標が遠く見える!

『セリカ、例え話が下手すぎるわ。つまり?』
相棒の魔剣がため息

シェル姉酷くない…?
目標なんて遠いほうが楽しい!足掻いて楽しもうぜ!って話

ま……出来るから、の視点かなあ、これも
立場変えて考えてみるの、やっぱ苦手だな

……アルトリウス君は容赦ねーなあ
ここは楽させてもらおうか

ゴーレム使って万が一誤射ると寝ざめが悪いし、
『蒼剣姫』を発動、魔剣を携えて、戦場を不規則な軌道で高速移動。
残った邪神プラモを魔剣の一撃で破壊!


アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と協働

優劣が嫌なら引き篭もって作れば良かろうに
幸い近年は趣味に没頭する時間に理解が進んでいるぞ

自身への攻撃は『絶理』『無現』で世界内の自身の存在を否定し影響を回避
戦況は『天光』で常時把握
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

破界で掃討
対象はオブリビオン
それ以外は「障害」故に無視され影響は与えない

高速詠唱を『刻真』で無限加速
多重詠唱を『再帰』で無限循環
更に『天冥』で因果を歪め、星の数ほどの魔弾を「目標に着弾した」状態で生成
目標とした全個体同時殲滅を図る

多少討ち漏らしがあっても、残りはセフィリカに任せて良いだろう



 人間社会が存在する以上、優劣の判断は常に付き纏う。
 何も難しく考える必要はない。自分と他者は違う人間なのだから、そこに上と下を見出すことをしなければいい。
 しかし、言葉は単純でも心は違う。
 しなくていい。その言葉を感じ取れるだけの心の余裕があるのならば、この邪神教団に集まった信者たちも、UDCの甘言を取り合うことなどなかったことだろう。
 だが、得てして人の心とはひび割れているものである。それが傷つきやすい痛がりな人間という存在であるのならば、尚更である。
 諫言は心に痛みを伴った染み渡るが、甘言は甘く蕩けるように染み込んでいく。
 だから、心地よい言葉にばかり耳と体を傾けてしまう。そうなってしまえば、心は転がるように堕落してしまう。

「私達は優劣をつけられたくないだけなの。ただ自分たちのことを認めてほしいだけなのに」
「それなのに他人はいつだって、上手だとか下手だとか、順位を付けたがる! 優劣をつけて誰かを見下したくなる! それが苦しいから!」
 信者たちは口々に己の心を吐露する。
 それは切実なる思いであったのだろう。けれど、それは言わば、何もしない。何かしてもらうことしかしない。
 与えられるのを待つだけの人間。そんな人間に人は何を与えるというのだろう。自分から与える者にこそ、人は何かを与えるのだから。

「優劣が嫌なら引きこもって作ればよかろうに。幸い近年は趣味に没頭する時間に理解が進んでいるぞ」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の言葉は、ばっさりと彼らの甘えを斬って捨てた。
 信者たちの抱えた量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』の赤き瞳が輝き、次々と起動していく。
 斬って捨てた言葉に傷ついたという顔をする信者たち。
「意外。結構バッサリ行くんだ。私もできない人の事考える性質じゃないけど……」
 アルトリウスと立ち並ぶ、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)もまた同じ心持ちであったのだろう。
 信者たちが何を持って、そこまで心の均衡を崩してしまったのかは理解できない。けれど、それでも其れが歪められた末に起こす衝動が誰かを害するというのならば、止めなければならない。

「人を羨むなら徹底的にやった方が効果あるよね。全力で走ってころんだ状態のほうが、目標が遠く見える!」
『セリカ、例え話が下手すぎるわ。つまり?』
 セフィリカが携える魔剣シェルファ、インテリジェンスソードたる意志が溜息を吐く。二人は仲の良い姉妹のようにやり取りを続ける。
 次々と起動し、舞い上がっていく量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たち。その数を見るだけで、邪心教団がどれだけ巨大な組織へと育ってしまったのかがわかることだろう。
 これだけの数の量産型邪神プラモが街中で暴れれば、どれだけの被害が齎されるか……。

 だが、彼らの量産型邪神プラモが街中へと飛び立つことはなかった。
 アルトリウスのユーベルコード、破界(ハカイ)が輝く。彼の周囲に輝く顕理輝光の一つ一つが役割を持って、そのユーベルコードを発動させる。
 漂う淡青の光は、アルトリウスの構築したロジックによって正しく起動する。
「残念だが、ここから先は、行き止まりだ」
 その言葉が合図となって、ユーベルコードより生成された障害を無視し万象を根源から消去する力を持つ蒼光の魔弾が星のように満天より降り注ぐ。
 その光に触れた量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちは尽くが破壊され、何か行動を起こす前に消滅していく。
 それだけの圧倒的な攻撃でも、打ち漏らすことはあるのだろう。いや、違う。アルトリウスの攻撃の前にユーベルコードによって多大なるプラモエナジーを消費して、回避することに成功した個体たちがいたのだ。

「シェル姉酷くない……?目標なんて遠いほうが楽しい!足掻いて楽しもうぜ!って話」
 もう!とセフィリカが魔剣との会話を切り上げた時、アルトリウスの放った蒼光の魔弾の雨が群体オブリビオンである量産型邪神プラモたちの一群を散々に打ちのめした光景が広がっていた。
「ま……できるから、の視点かなあ、これも。立場を変えて考えてみるの、やっぱ苦手だな……って、アルトリウス君は容赦ねーなあ」
 楽をさせてもらえてよかったなあ、なんてセフィリカは思っていたが、打ち漏らした敵がいるのを目ざとく見つける。
 アルトリウスはというと、残りはセフィリカにまかせて良いだろうと判断したようだった。それもまた一つの信頼の形であるのかもしれない。

「抜いたからにはね。終わらせようか」
 ユーベルコード、蒼剣姫(ソードプリンセス)が発動する。眼前に展開されるのは、無数の魔力壁。それは階段のように展開され、蒼きオーラを纏ったセフィリカに飛翔能力を与える。
 魔力壁は階段状にするだけではない。打ち漏らした量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちを取り逃がさぬ籠へと姿を変じ、その中へとセフィリカが駆け抜ける。
「ゴーレム使って万が一誤射ると寝ざめが悪いし! シェル姉、いくよ!」

 セフィリカは、まさに蒼き稲妻の如き不規則な閃光となって、戦場を駆け抜けた。
 一瞬の剣閃。
 蒼き残光を残して、セフィリカが地面へと着地する。その背後で邪心プラモたちが爆散し、骸の海へと還っていく。
 数瞬の出来事だった。アルトリウスの片端に立ち、セフィリカは魔剣を治めてて言うのだ。
「悪いけど、ここから先は行き止まりだ―――ってね」

 アルトリウスの言葉を借りてきた決め台詞は、ばっちり決まったのだが、肝心のアルトリウスはどんな反応を見せただろうか―――?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『天秤卿』リブラ』

POW   :    等しくあれ、我々のブラキウム
【自身の体を巨大な天秤】に変形し、自身の【赤く輝く鉱石のような物】を代償に、自身の【攻撃力と平等を求める歪んだ正義感】を強化する。
SPD   :    等しくあれ、我々のズベン・エス・カマリ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【対象が無意味な破壊のために使用した様に】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    等しくあれ、アストレアの名の元に
【召喚した冒涜的な輝きを放つ女神】から【対象が行った戦闘の光景を思い出す光】を放ち、【怨嗟の声等罪悪感を誘発する光景の脳内展開】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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 量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』たちを蹴散らし、邪心教団の拠点内部へと進撃した猟兵たち。
 拠点中心部にご神体の如く座していたのは、この邪心教団を作りあげたUDC『天秤卿』リブラそのもの。
 その醜悪なる姿は、邪心と呼ぶに相応しき姿であった。

「全ての者に遍く救いを。全ての者に等しく幸福を。これこそが人々に与えられた幸福追求の権利である」
 その言葉は耳障りが良かった。
 誰もが願うだろう。自身と自身の周りの幸福を。そして、他者の幸福を。
 幸福とは常に平等に人々の頭上に降り注ぐべきものであるというのなら、持つ者から奪い取ることなどしなくていいはずだ。
 現実には、平等はない。
 あるのは、生きとし生けるもの、人間全てが平等に不平等を甘受しているという事実だけだ。

 誰も彼もが痛みに苦しみながらも前を向く。
 その苦しみを、その立ち向かう意志を、甘言で全てなかったことにしてしまおうとするのが平等の名を語る『天秤卿』リブラの悪しき意志。

「我は『天秤卿』。我が与えるは完全平等なる世界。全てが均一。全てが同じ。人間の欲する争いのない平和なる世界の実現のために―――」
 禍々しき邪神のオーラが周囲に放たれる。
 それは見る者にとっては神々しき姿であったかもしれない。だが、あれはUDCである。

 世界を滅ぼさんとする悪意の塊。
 故に猟兵はあれなる偽りの平等を掲げる邪神を討ち果たさなければならないのだ―――!
村崎・ゆかり
こいつが邪神教団のご本尊ね。醜悪だわ。
平等主義がそんなに好きなら、半世紀前のソヴィエトへでも行けばいい。みんな平等に貧しくて、党幹部だけが肥え太った世界よ。
平等を掲げた政治体制でさえそんなもの。所詮、人間にとって真なる平等は死しかない。もっとも、死は平等でも葬式は不平等だけどね!
ああ、UDCのあんたには関係ないか。

「高速詠唱」「全力魔法」「魔力溜め」炎の「属性攻撃」「破魔」の不動明王火界咒で、討滅させてもらうわ。薙刀の切っ先に符を突き刺して、天秤状になったリブラに「串刺し」よ。
リブラの攻撃は「呪詛耐性」で防ぐ。
「赤く輝く鉱石」か。アルダワの大魔王を思い出させるけど……?
とにかく、燃えて尽きろ!



 平等を愛する心は在るか。
 全てが均一であることを受け入れ、平坦な道のりを歩むことこそが平穏そのものであると理解するか。
 醜悪なる姿はまさしく邪神である。『天秤卿』リブラと名乗るUDCは、その異様なる姿を持って顕現する。生物の骨格を模したであろう姿は、それらが正しく機能することはない。
 それは異質なるもの見せつけるための姿である。
 人間とは違う高次の者であると、人間が畏怖するための造形であると言っても過言ではない。故に、その姿の意味はただ畏れられるためだけにある。
「平等こそが均衡を保つ最善にして最高の手段である。全てを均し、一つにすることこそが、真なる平和への道。崇高なる平穏なる世界を作り出すための一歩である」
 その声が遥高みから見下ろすように告げられていた。
 そう、天秤を司る以上、その判決は絶対である。
 高次の者が低次の者へ告げる絶対なる宣告。

「こいつが邪神教団の御本尊ね。醜悪だわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の抱いた感想は、恐らく猟兵全員の代弁であったかもしれない。
 その他者を威圧するためにしかデザインされていないような威容は、ゆかりの感性を逆なでするものだった。
「平等主義がそんなに好きなら、みんな平等に貧しくて、それを管理する人間だけが肥え太った世界へ行けばいい」
 UDCアースじゃなくても良いはずだとゆかりは告げる。それは怒気に満ちた言葉だったかもしれない。ゆかりにとって、『天秤卿』リブラの掲げる平等は受け入れがたいものだった。

 『天秤卿』リブラの頭上に赤く輝く鉱石にひびが入る。それはかの『天秤卿』リブラを名の通りに天秤の形へと変形させる。
 それは骨と骨とで組み上げられた天秤である。
「我は平等の使徒である。人の心に不均衡が起こるのであれば、それは即ち不平等である。不平等があるからこそ、人心は乱れ、争乱が起こる。それは恒久平和を目指す我等の思うところではな―――」
 ゆかりのユーベルコード、不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)によって放たれた白紙のトランプから噴出する炎が『天秤卿』リブラの体へと絡みつくように燃え盛る。

 一瞬の拘束詠唱だった。彼女の上げる詠唱は圧縮された音になって響くだけである。破魔の力を籠められた炎は、邪神たるUDC『天秤卿』リブラの体を焼き続ける。
「所詮、人間にとって真なる平等は死しかない。もっとも、死は平等でも葬式は不平等だけどね!ああ、UDCのあんたには関係ないか」
 振るう薙刀の切っ先に符が突き刺され、破魔の力が強まっていく。
 彼女の言葉の内に燃え上がる炎は、今『天秤卿』リブラに絡みつく炎とは比べ物にならぬほどに燃え盛っている。
 そう、UDCである『天秤卿』リブラはオブリビオンである。過去の化身である彼らは、いずれまた復活する。
 それは定めであり、今の『天秤卿』リブラとは別の個体となっている可能性が高い。だからこそ、『天秤卿』リブラは平気な顔をして人々の心を乱し、悪しき心を増長させる。

 それがどんなに醜悪な行為であるかも理解せず、己の歪んだ正義感だけで行動を起こす『天秤卿』リブラをゆかりは許してはおけなかった。
「『赤く輝く鉱石』か。アルダワの大魔王を思い出させるけど……?」
 その疑問に解はない。しかし、ゆかりの薙刀は符に籠められた破魔の力とともに振るわれ、その歪な骨格で組み上げられた体を串刺しにする。
「とにかく、燃えて尽きろ!」
 串刺しにした薙刀の刀身に突き刺さった符から不浄成る物を灼く炎が噴出し、『天秤卿』リブラの体の内側から焼き尽くしていく。

 轟々と燃える『天秤卿』の体。白骨が瓦解し、崩れ落ちていくが未だ致命傷ではない。力は健在であると見てよいだろう。
 だが、不浄成る者。その悪しき心を宿したUDCの内側から焼き続ける炎は、『天秤卿』リブラが骸の海へと還るまで消えることはないだろう―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
「利いた風な口をきくなよ。
人心を惑わす詐欺師風情が。」
「不平等な世界。
だからこそ変化も成長も、進化も生まれる。
お前の理想は前に進む事を放棄した
限りなく死に近づいた世界だ。」

【残像】を作り敵周辺を移動し
デモニックロッドから闇の魔弾を撃ち牽制しながら敵を観察
女神を召喚したらそれを含め【範囲攻撃】の闇の魔弾で攻撃。

光を受けたら「…これは、今までの敵か。」
怨嗟の声を聴いても。
「俺は今までの戦いを後悔して立ち止まる事はない。
その戦いが罪だとしても
お前の様な見過ごせない悪を全て倒すまでは。」
決意示し冥空へと至る影を使用。
強化した拘鎖塞牢で敵の力を封じ
【全力魔法】を込めた【2回攻撃】
で再び闇の魔弾を放つ。



 轟々と音がする。それは空気を燃焼させる炎の立てる音だった。
 その音はUDCである『天秤卿』リブラの体の内側から燃え盛る炎だった。不浄成る物を焼き尽くさんとする炎は消えない。
 しかし、対峙するだけでわかる。『天秤卿』リブラの力は健在そのものである。未だ戦いは始まったばかりであり、さらなる追撃を持って、かの諸悪の根源を討ち果たさなければ、邪心教団を壊滅させる目的は果たせないだろう。
「理解に苦しむ。不平等は悪であろう。誰も彼もが妬み、嫉むことを忌避する。何故なら、それは不平等だからだ。平等であれば、誰も彼もが同じであれば誰も嫉妬しない。誰も害しない。そうであろう?」
 『天秤卿』リブラの言葉は確かに不平等を憂いていた。そして、ある意味で真実であったのかもしれない。

 だが、猟兵は知っている。
 それは甘言である。甘い囁き。己の歪んだ欲求、正義感を満たすための標的作りに過ぎない言葉であると。
「利いた風な口をきくなよ。人心を惑わす詐欺師風情が」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は目深に被った顔の奥でそう断じた。彼は惑わされることはない。
 そのような甘言が通じる相手ではないのだ。
「不平等な世界。だからこそ変化も成長も、進化も生まれる。お前の理想は前に進むことを放棄した限りなく死に近づいた世界だ」
 その言葉に『天秤卿』は嗤う。然り。然りであると。
 ここに来て初めて『天秤卿』リブラは嗤った。嘲笑った。

「そうである。死は平等である。死こそが絶対である。誰しもに訪れる。だが、我等は違う。星が輝く限り、再び姿を表す不滅の徒である。汝らの行いは徒労に終わる」
 フォルクのデモニックロッドから放たれる闇の魔弾が牽制となって『天秤卿』リブラへと吸い込まれていく。
 だが、それは牽制であるが故に決定打にはならない。
「等しくあれ、アストレアの名の元に」
 冒頭的な輝きを放つ女神が出現する。名をアストレア。それは天秤を司る神の名。その輝きはフォルクを撃つ。

「……これは、今までの敵か」
 フォルクの脳裏に浮かぶのは今まで戦ってきた敵たち。その怨嗟に満ちた声は、彼を責め立て続ける。
 心ある者であれば、誰しもが心に抱えるであろう敵を撃つ瞬間に抱く罪悪感。それがまったくなかったとしても、その心を蝕む一点となれば、そこから入り込んでくるのが邪神たちのやり口である。
 それはフォルクもまた例外では―――。

「俺は今までの戦いを後悔して立ち止まる事はない。その戦いが罪だとしても、お前のような見過ごせない悪を全て倒すまでは」
 そう、立ち止まれない。
 罪悪感よりも、使命感よりも、何よりも。己が立ち止まることを己自身が許さない。その感情は、どれだけ罪悪感を増幅させようとも覆ることのない決定的なものであった。
「冥府への門たる忌わしき影よ。その枷を外し闇の力を我に届けよ」
 フォルクのユーベルコード、冥空へと至る影(ディアボロス)によって、冥界へとつながるもう一つの自分の影が召喚される。
 影は己の力を高めるためのパスである。流れ込んでくる魔力によって強化された拘鎖塞牢……棺桶型の拘束具が一瞬では在るが、『天秤卿』リブラの動きを封じる。
 その一瞬だけでフォルクには十分だった。

「我は平等なる力の真理。汝には、平等を愛する心が―――」
 黒杖がユーベルコードによって送られてくる魔力を貪り食うように吸収して、闇の魔弾を放つ。
 それは先ほどの牽制とは比較にならぬほどの威力で持って、『天秤卿』リブラの体を打ち貫く。
「人間は正しさを愛する。だが、時に人は前に進むために間違えることもある。俺は立ち止まらないために、お前の言う『間違え』を侵し続けるだろう。だが、それは―――俺の決めたことだ」
 再び放たれた闇の魔弾は『天秤卿』リブラの言葉毎、貫く。
 その砕け散る骨格と共に地面へと失墜し、盛大なる轟音を立てる。それを見下ろしながら、フォルクは再び、立ち止まらぬ意志を示すように魔弾を放つのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
幸福ねぇ。
何が幸福で幸せなのかは人それぞれだろ?
あと知ってるか、『辛い』って中身が満たされると『幸せ』になるんだぜ。


●戦闘
『読心術』で『情報収集』お前の動きは見切った(『見切り』回避中)
今がチャンスだ。
『ジャンプ』してリブラの頭を『踏みつけ』頭部を『部位破壊』
ちっ硬いな。頭なだけにッ。

お前の正義とユーベルコードは俺が討つ。
『覇気』と『気合』あと色々を込めた神砕をユーベルコードに叩き込む。
身勝手な正義は唯の傲慢だ。オレ?そうだな傲慢だ。だからお前を倒す。だから何?
不平等だからオレは努力し前に行く
不平等だからオレは自由に生きられる。
不平等だからオレは幸福だ。
不平等だからオレは平和を満喫だ。
あばよ。



 闇の魔弾を受けて地面に失墜したUDC『天秤卿』リブラの体が軋むような音を立てながら、立ち上がる。
 その姿は畏れを抱かせるには十分なほどに異様な形をしていた。人間の骨が組み上がったような歪な姿。顔であると僅かに認識できる骨。
 頭上に赤く輝く鉱石は禍々しき輝きを放ち、その異質さを際立たせていた。
「何故理解しない。平等こそが幸福そのもの。誰とも争わなくていい。誰からも奪わなくていい。誰からも奪われることのない平穏無事なる世界である。幸福ではないのか」
 『天秤卿』リブラは嘆く。
 それは、猟兵が己の説く平等を理解しないことにではない。己の歪んだ正義感が認められないことに対して嘆いているのだ。

「幸福ねぇ……」
 一人の猟兵が呆れたように首をかしげる。黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)の姿は、ゆらりと影から現れるようにして、赤き瞳を輝かせた。
 それは奇しくも『天秤卿』リブラの頭上に掲げる鉱石にヒビが入り、輝きを増した時と同じくしてであった。
「何が幸福で幸せなのかは人それぞれだろ?あと知ってるか、『辛い』って中身が満たされると『幸せ』になるんだぜ」
 そう、その形は人それぞれである。
 注がれる幸せによって満たされる量もまた一人ひとり違うのである。だからこそ、万物に通じる幸せなど存在しない。
 誰もが幸せでないからこそ、誰かの幸せが満たされる。そうして世界は回っていく。

 歪な音を立てて『天秤卿』リブラの骨格が変わる。
 それは己の歪んだ正義感を強化するために『天秤卿』の名の通りに姿を変えるのだ。放たれる鋭い骨格の一撃。
 だが、その攻撃が名捨を捉えることはない。彼の読みは冴え渡り、攻撃を見切ってはミスを誘発させる。
 高く飛び上がり、『天秤卿』リブラの頭部を踏みつけるも、その硬さに舌を打つ。
「ちっ固いな。頭なだけにッ」
「我を足蹴にするか。平等の守り手にして象徴である我を」
 歪んだ正義感は、姿を天秤へと変えることによって益々力をましていく。
 だが、名捨は何もどうじることはない。

「お前の正義とユーベルコードは俺が討つ」
 彼のユーベルコード、神砕(シンサイ)が発動する。彼の持つ7つの美徳と気合、そして覇気を籠めた一撃は、その拳でもって邪神たる『天秤卿』リブラの体を砕くかに見えた。
 だが、このユーベルコードは肉体を傷つけるためのものではない。邪神を邪神たらしめる歪んだ正義感という邪心、そして、その体に持つユーベルコードを破壊する。
 それはつまり、その一撃を受けてしまえば、天秤へと姿を変え、強化された正義感を解除することと同義である。

「身勝手な正義は唯の傲慢だ。オレ? そうだな傲慢だ。だからお前を倒す。だから何?」
 名捨の拳は違わず『天秤卿』リブラの体を撃つ。
 ユーベルコード、神砕の一撃は、その天秤たる体をバラバラにし、ただの邪神たる体躯へと戻す。
「不平等だからオレは努力し前に行く。不平等だからオレは自由に生きられる。不平等だからオレは幸福だ。不平等だからオレは平和を満喫だ―――」
 歪んだ正義感は、その一撃の前には全てが無意味である。理不尽であると邪神は感じたかも知れない。不条理であると。
 だが、それこそが、名捨の持つ力である。不平等を謳歌し、平等を求めない。あるのは己の信念のみ。
 だからこそ、その一撃は『天秤卿』リブラの『平等』を打ち砕くにふさわしい拳であるのだ。

「―――あばよ」
 天高く名捨によって打ち上げられた『天秤卿』リブラの体は、強化された力を霧散させられ、著しく消耗させられたのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
禍々しいお姿です
争いのない世界と嘯きながら
他者を害し理不尽に奪うことをよしとするとは
語るに落ちたとはこのことです

十人十色とよく言いますが
一人一人が皆違って輝いているのが命です
誰もが同じ色
全てが均一の世界なんて御免ですよ
骸の海へお帰り頂きましょう

水の魔力で水鏡を展開し女神の光を天秤卿へ反射
さぞかし大勢の怨嗟が聴こえまるんでしょうね

もし光を浴びても
罪悪感をそのまま受け入れます
人なれば心に闇もまた持っています
それも含めて私自身
私の輝きです
惑うことはありません!

魔力の矢で攻撃
突風や水流で天秤のバランスを揺らし
炎で天秤の支点を溶かします

事後は天秤卿の安寧を願い竪琴を爪弾きます



 禍々しき姿。その威容は見る者に畏れを抱かせる姿であった。
 骨で構成された体。一体どのような生物であれば、このような骨格になるのか
そう思わざるを得ないほどに歪な体は『天秤卿』と名乗るには、醜悪な姿だった。猟兵たちの攻撃を受けて、地面に失墜するも、再び浮かび上がる。
「平等は世界を均す。一つにする。一つにして全であるのならば、争いも諍いも起きぬ平穏なる世界が生み出されるというのに、何故抗う?」
 『天秤卿』の声が邪神教団の拠点の中に響き渡る。
 それはUDC『天秤卿』リブラの持つ歪んだ正義感から来る言葉だった。理屈であればそうだろう。
 人間が一人であるというのなら、争いは起きない。人間が二人だけでも争いは生まれる。それはどうしたって自分と他者は違う人間であるからこそ起きるものである。

「禍々しいお姿です。争いのない世界と嘯きながら、他者を害し理不尽に奪うことをよしとするとは……語るに堕ちたとはこのことです」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)のその小さな体であっても、猟兵である以上、オブリビオンであるUDCに立ち向かう決意が在る。
 それは理不尽を許さぬ意志が小さな体を突き動かしていた。

「十人十色とよく言いますが、一人ひとりがみな違って輝いているのが生命です。誰もが同じ色、全てが均一の世界なんて御免ですよ」
 そう、生命に同じ形はない。
 同じ猟兵であったとしても、千差万別の姿を持っている。何一つ同じものはない。だからこそ、人の魂は輝き、人々の心を生きるための意志で満たすのだ。
 仄々はそれをわかっている。
 人はみな違っているからこそ、尊いのだと。
「何故わからない。何故理解しない。違うからこそ、争いが生まれる。違うからこそ不平等が生まれる。平等、平等、と人間は好きだろう。みんな同じ。みんなと一緒。なのに、自分だけが、と思うから他者から奪おうとする」
 召喚される冒涜的な光を放つ女神。その光は浴びた者に、これまでの倒してきた敵の怨嗟の声を響かせる。

「等しくあれ、アストレアの名の元に」
 その言葉とともに一層輝きを増す女神の光。水の魔力で水鏡を展開し、反射しようとした仄々だが、完全に光を遮断できなかった。透過する水であるが故に、その光を浴びてしまう。
 罪悪感がこみ上げてくる。喉元を内側からかきむしるような嫌悪感。だが、それでも彼は飲み込む。
「人なれば心に闇もまた持っています。それも含めて私自身。私の輝きです……惑うことはありません!」
 仄々のユーベルコード、トリニティ・ブラストが輝く。彼の周囲に生み出される魔力の矢。3つの属性を同時に操るユーベルコードによって炎の魔力の矢が『天秤卿』リブラの天秤の支柱を溶かす。
 さらに風の属性を持つ矢が巨躯のバランスを崩し、水の魔力の矢が次々と、放たれ続け、『天秤卿』の体をきしませる。

 魔力の矢は、轟々と雨のように放たれ続け、そして、安寧を願う竪琴を爪弾く音が邪神教団の拠点に響き渡る。
 それは仄々の優しさであったのかもしれない。
 例えオブリビオンであったとしても、安寧を願うのは、人の心のなせる業であるから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
人々に与えられた幸福追求の権利だぁ?
さっきから聞いてりゃ人、人、人…
さらっと人間以外の種族全般を下に置いてんじゃねぇぞゴラァ!
必死に生きてるシャーマンズゴーストや賢い動物を何だと思ってやがる!
謝れ!謝れ!そして死ね!

ここまで愉快な仲間の事をディスられたら、
もう【ベルセルクトリガー】するしかねぇよなぁ!?
天秤ってこたぁ攻撃や防御の衝撃で揺れ放題の動き放題!
それ即ち速く動く物!ベルセルクトリガーのいい的って寸法だぜぇ!
釣り合いが取れるもんなら取ってみろってんだこのヤジロベーが!
ケットシーやブラックタールの分も含めて、
後悔して許しを請うまで追突してやる!
理性がないから謝っても止まらねぇんだけどなぁ!



 UDC『天秤卿』リブラ、それは邪神教団の中心にして要である。
 このUDCなくして教団の設立は不可能であっただろうし、ここまで巨大な組織へと変貌を遂げることはなかっただろう。
 だが、それも猟兵たちによって防がれようとしている。拠点へと一気呵成に飛び込んできたのは、一台の自家乗用車……宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)である。
 タイヤが地面を踏みしめる音が響き、エンジン音が感情をあらわすかのように大きく拠点内部に響き渡る。
「人々に与えられた幸福追求の権利だぁ?さっきから聞いてりゃ人、人、人……さらっと人間以外の種族全般を下に置いてんじゃねぇぞゴラァ!」
 クラクションじみた怒声が響き渡る。フォグライトが明滅し、ライトが上向きになったりと忙しない。
 それだけ怒りを顕にしているのだ。

「我が求めるは平等。汝の言う種族という概念すらも均一にしなければならない。汝の怒りはもっともであろう。不満を覚えるだろう。不平をこぼすだろう。それを取り除こうというのだ」
 『天秤卿』リブラの体が歪む。輝く赤き鉱石がさらにひび割れ、その姿を天秤そのものへと変貌させていく。
 それは歪んだ正義感と戦闘力を強化するユーベルコードであり、自身が天秤であることを誇示するかのようだった。
 その姿に益々怒りを募らせる、普通乗用車。

「必死に生きてるシャーマン図ゴーストや賢い動物を何だと思ってやがる!謝れ!謝れ!―――ここまで愉快な仲間の事をディスられたら、もうやるしかねぇよなぁ!?」
 盛大にクラクションが響き渡り、最終武装モードへと変化していく。
 その姿はさらなる超攻撃力と超耐久力を獲得させ、理性を失わせるほどの強化となって、彼の車体を変貌させたのだ。
 天秤と自家乗用車が激突する。
 その衝撃で『天秤卿』リブラの天秤に変じた体が揺れる。
「天秤ってこたぁ攻撃や防御の衝撃で揺れ放題の動き放題!それ即ち早く動く物!いい的って寸法だぜぇ!」

 もはや理性は蒸発している。法定速度や法令遵守など知ったことではないとばかりに、その車体を激突させる。
 互いの体が軋む音が響き渡るが、ユーベルコードによって得られた超耐久力は恐るべきものであった。
 どれだけ激突しても凹み一つない。それどころか、当たり負けしているのは『天秤卿』リブラの方だった。

「釣り合いが取れるもんなら取ってみろってんだ、このヤジロベーが!ケットシーやブラックタールの分まで含めて、後悔して許しを請うまで激突してやらぁ!」
 どれだけ距離をとったとしても、瞬時に距離を詰めて激突する。
 例え、距離を取れたとしても、勢いの付いた鋼鉄の質量でもって突撃し続ける彼の攻撃は、『天秤卿』リブラをしても防ぎきれるものではなかった。

 仮にもし、ここで『天秤卿』リブラが謝罪をしたとしても、彼は止まることはなかっただろう。
 なぜなら―――。

「理性がないから誤っても止まらねぇんだけどなぁ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

あなたが惑わせたの?
行き場のない感情を歪ませるなんて、悪趣味ね

『護り現』を纏う『謎のレモン』を放ち、巡らせ威嚇【情報収集】
見切りながら『煌めく溶液』を蔦に数度に分けてふりまく
女神が現れたら
本体の動きを封じるべく『サイキックブラスト』で迎撃

戦いに後悔なんてないわ
あら、あの竜?あの時は狸たちが、頼もしい人たちが助けてくれた
でもあの子たちはきっと一人、抱えきれない感情に苛まれて
弄んだ貴方は、許せない

蔦に手を叩きつけ覚醒を促す
痛みあれど【毒耐性】で耐える
ねえ、さっきまいた薬、なんだかわかる?
巡らせた蔦を一気に敵へと収束させる
電気で毒になるお薬よ

悔しさも後悔も、ぜんぶ自分のものよ
指図しないで



 その巨躯のあちこちをへこませ、きしませながら『天秤卿』リブラの体が宙に浮かび上がる。
 その姿は猟兵たちの攻撃によって消耗させられていることが傍目に見てもわかるものだった。体の内側を灼く炎や、魔力の矢による損壊など見て取れるものが増えてきていた。だが、それでもまだである。
 UDC『天秤卿』リブラは健在であり、これを逃がすことはできない。再び蘇るのだとしても、今ここでかのUDCを止めなければ、さらなる無辜の人々が不当に奪われ、横暴なる略奪にさらされてしまう。
「持つ者より奪うは正当なる行いである。平等である。平等のためには如何なる行いも許容されるのである。これは正義である。持たざる者の正義の行いは、どんな法よりも優先されるべきものである」
 その言葉は、持たざる者たちの心を誘惑するには十分なものであったことだろう。理性が、道徳性が、その行いに歯止めを掛けていたとしても、甘言は心の隙間を縫って入り込み、人心を惑わせるのである。

「あなたが惑わせたの?行き場のない感情を歪ませるなんて、悪趣味ね」
 ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は明色の羽根を揺らしながら、『天秤卿』リブラの巨躯を見上げた。
 謎のレモンから放たれる蔦は護り現のオーラを纏いながら、張り巡らされる。『天秤卿』リブラより放たれる骨格の鋭い槍の如き一撃を躱しながら、煌めく溶液を蔦に数度分けて振りまき、触媒へと変える。

「否。我の行いは正義である。等しくあれ、アストレアの名の元に―――」
 冒涜的な輝きを放つ女神の姿が現れ、その光がジアムの体を打つ。
 同時にユーベルコード、サイキックブラストによって放たれた高圧電流が、本体である『天秤卿』リブラの体を打ち、感電させる。
 その一撃は、本体である『天秤卿』リブラの体の動きを止める。

 彼女の脳内に駆け巡るのは竜との戦い。
 幾度も闘い、その都度討ち果たしてきた敵。倒さねばならなかった敵である。
 だが、そこに後悔があるわけがない。己が戦う理由など、いつも自分のためではない。誰かのためだ。
 自分ではない誰かが傷つき倒れるのを嫌うからこそ、自身が前に立って戦う。この体はそのためにあるのだから。

「あら、あの竜?あのときは狸たちが、頼もしい人たちが助けてくれた」
 だからこそ、ジアムに罪悪感は訪れない。常に彼女の戦いは誇り在るものであったからだ。
 だが、邪神教団の信者たちはどうだろう。誰も彼もが皆、彼女のように強いわけではない。肉体は強くなることができるかもしれないが、心までは強く出来ないのだ。
 柔らかく、脆い、けれど儚いもの。それが心である。
 だからこそ―――。

「でも、あの子たちはきっと一人、抱えきれない感情に苛まれて……」
 信者たちの顔を思い出す。皆、表情が硬かった。暗かった。とうてい生命を謳歌しているようには思えなかった。
 そして、それを成したのは『天秤卿』リブラ。

「弄んだ貴方は、許せない」
 謎のレモンから這い出した蔦の一部がジアムの手を叩く。女神より放たれた光から痛みによって覚醒するジアム。
 見開かれた青い瞳が見据えるのは『天秤卿』リブラ。人心を弄ぶ邪神。
「―――ねえ、さっきまいた薬、なんだかわかる?」
 それは彼女が蔦にふりまいていた煌めく溶液である。だが、その効果は現れていなかった。
 では、一体なんであるのか。
 巡らせた蔦が一気に『天秤卿』リブラの体へと収束するように絡まる。彼女の手が蔦に触れる。
 再び放たれるユーベルコード、サイキックブラストによる高圧電流。それは、煌めく溶液を変質させる一手である。
「……電気で毒になるお薬よ」
 止める間ももなく、溶液が電流によって変質する。それはあらゆるオブリビオンを侵す毒となって、『天秤卿』リブラの体を蝕む。
 全身に染み込んでいく毒を受け、絶叫じみた咆哮が響き渡る中、ジアムは怒りをにじませた青い瞳でねめつける。

「悔しさも後悔も、ぜんぶ自分のものよ……指図しないで」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「完全なる平等を唱えば唱うほど、世界は不平等に近付きます。人には人種の差があり性差があり年齢差があり好悪の差があります。例え遺伝子から同一に管理しても、全く同一にはならないでしょう…人には、他者と違う自分を認められたいという、欲求がありますから」

UC「精霊覚醒・桜」使用
高速・多重詠唱で破魔と氷結の属性も上乗せ
敵の赤い宝石目掛け吶喊しシールドバッシュ
そのまま宝石砕いて向こう側まで突き抜けようとする

「平等になれば満たされぬ承認欲求が満たされる。甘美な誘いではありましょう。ですがそれを突き詰めれば、個人が自由意思で何もすることが出来ない世界になりましょう。貴方には何度でも骸の海へお還りいただきます」



 世界に不平等が溢れていると嘆く声がする。
 何故自分は人より優れていないのかではなく、何故劣っているのかと嘆く声がある。平等を叫ぶ声は数あれど、それが美徳であるとこしか教えてはくれない。
 美徳では在るが、誰もが平等ではないことを受け入れている。
 その言葉は持つ者だけが発することのできる特権である。平等であれ。みんな違って、みんな平等。
「故に人は平等を愛する。己の不利益は、誰かの利益であるというのならば、その利益は己のものである。今度は自分の番であると、己が良い目をみたいと願うのは当然である。だからこそ、争いが生まれる。妬み嫉み、他者から奪おうとする」
 だからこそ、完全なる平等が必要なのである。
 平和を謳歌するために平等は必須条件なのだと『天秤卿』リブラは、猟兵たちの攻撃によって傷つき消耗した体を再び宙に浮かび上がらせる。

 その言葉は耳障りがいい。
 平和。平等。どれもが正しいものだ。人は正しいものを愛する。だから、その言葉を愛する。欲する。
 故に人々の心は惹かれて乱されるのだろう。この邪神教団の信者の数を見ればわかる。
 だが、それに否と突きつけるのが猟兵である。
「完全なる平等を唱えば唱うほど、世界は不平等に近づきます。人には人種の差があり性差があり年齢差が在り好悪の差があります」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は拠点の中を一歩踏み出した。その言葉は真実である。
 人が生きる以上、自分と同じ人間は一人としていないのだから。
「例え遺伝子から同一に管理しても、全く同一にはならないでしょう……人には他者と違う自分を認められたいという、欲求がありますから」
 ユーベルコード、精霊覚醒・桜(セイレイカクセイ・サクラ)が輝く。桜花の全身を渦巻く桜吹雪が包み込む。
 彼女の意志に比例した戦闘力が増強され、桜吹雪に破魔と氷結の属性が上乗せされる。

 テニスルは破魔の銀盆。くるりと優雅に一回転し、彼女の掌の上に収まる。パーラーメイドらしい、彼女のとっておきである。
「我は精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさん!」
 一気に飛翔し、桜吹雪と共に舞い上がる桜花。
 それは季節外れの桜花嵐。
 『天秤卿』リブラの赤き鉱石目掛けて突貫し、銀盆を叩きつける。ひび割れていた鉱石がさらに大きく欠けていく。
「何故わからない。平等に成れば、飢えも乾きも、悲しみも憎しみも何もなくなるというのに。平等こそが絶対正義である。違うからこそ齟齬が生まれるのだと、それがわからないのか」
 『天秤卿』リブラが、己の正義感と共に言葉を発する。それは他者を慮る言葉であったのかもしれない。
 だが、根底にある正義感は歪んでしまっている。歪んだ正義は正しさを生み出さない。あるのは悲しみだけだ。

「平等になれば、満たされぬ承認欲求が満たされる。甘美な誘いではありましょう」
 そう、人の心に在る欲求には果てがない。底がないのだ。
 だからこそ、人は常に心の内にある欲求を満たすために生き続ける。
「ですが、それを突き詰めれば、個人が自由意志で何もすることができない世界になりましょう」
「それの何が悪い。何も起こらない。何もしなくていい。無為に時間だけを消耗する世界の何が悪いというのだ。人は前に進まない。ただ消費されていくだけの存在に成り果てるだけで、世界は波立つことなどない完璧なる静寂に包まれるというのに!」

 桜花は微笑むことをしなかった。
 それは停滞である。彼女の掌に持つ銀盆を押し込む力が、さらに籠められる。鉱石が砕ける音がする。
 桜花は停滞を良しとしない。それはあまりにも生きる実感のない世界である。
 猟兵であるからだとか、使命であるからだとか、そんなことは関係がない。彼女は彼女の意志で戦い―――。

「貴方には何度でも骸の海へとお還り頂きます」
 押し付けた銀盆毎、鉱石を砕き、その一撃を振り抜くのだった―――! 

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
完全平等なる世界…是非は兎も角、完全統一規格のウォーマシン等の被造物種族であれば実現可能かもしれません
そしてお気づきでしょうが、その理想の終着点は『平等を規定する為の天秤としてご自身の自我の喪失』…その覚悟だけはお認めします
…平等を謳いつつ裁定者として自我を保つ等、許されない筈ですから
(邪神の返答次第では大いに失望)

ですが、その理想に至る手段は悪辣の一言にして流れる血の量も許容は到底不可能
騎士として、持てる者の責務(ノブレス・オブリージュ)として
阻ませていただきます

天秤の可動部をセンサーでの●情報収集で●見切り●怪力での●武器受け●盾受けで攻撃受け流し
脆い可動部へUCの剣の一突き
天秤の機能剥奪



 赤き鉱石が砕け散る。
 それは猟兵の一撃によるものであった。代償にする鉱石を喪った『天秤卿』リブラの体は今まで以上の力を発揮することはないだろう。
 天秤の姿を取ってはいるが、鉱石なくば十全たる力は振るう事はかなわないだろう。だが、それでも『天秤卿』リブラの体は宙に浮かび、その歪んだ正義感のままに力を振るう。
「平等こそが全ての争いを根絶するものである。争いを憎むのであれば、不平等を憎むべきである。徹底して不平等を均しめれば、訪れるのは完全無欠なる世界である」
 その言葉は繰り返される。
 顧みようとすることもなく、歪んだ己の正義感だけを寄る辺にし、それを満たすことしか考えられない。
 それこそが邪神たるUDC『天秤卿』リブラの本質である。
 そこに相互理解という言葉は存在しない。あるのは、圧倒的支配欲だけである。

「完全平等なる世界……是非は兎も角、完全統一規格のウォーマシンなどの被造物種族であれば実現可能かも知れません」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は自身がウォーマシンで在るが故に一定の理解を示したのかも知れない。
 否。ただの可能性を精査しただけに過ぎない。可能か不可能か。可能性として、ありえるかもしれないと断じただけだ。ただ、それだけ。
「可能にしなければならぬ。人の生は短い。目まぐるしく入れ替わる生命は、徹底して平等を叩き込まねばならない。魂の根底まで、生命としての本質まで、ありとあらゆる生命に平等を刻み込まなければ、完全平和など」
 トリテレイアは、その言葉を最期まで聞くつもりはなかった。駆け出す。機械の体である駆動音が響き渡る。

「そして、お気づきでしょうが、その理想の終着点は『平等を規程するための天秤としてご自身の自我の喪失』……その覚悟だけはお認めします」
 構えた盾に叩き込まれる『天秤卿』リブラの骨格の鋭き槍の如き一撃。
 消耗激しくとも、未だ攻撃の力は弱まっていない。トリテレイアのアイセンサーが『天秤卿』リブラの体をつぶさに情報を収集し、数多の猟兵たちの攻撃を受けてもろくなっている可動部を見極める。
 トリテレイアにとって自我の喪失は恐るれるものであったのかもしれない。
 彼の記憶回路に残されている騎士道物語。
 それすらも失われるということは、トリテレイア自身を構築するもの全てを失うということ。即ちそれは―――死である。

 故に己の死を賭してでも成し遂げようとする『天秤卿』リブラに理解を示したのかも知れない。
 だが、返ってきた言葉にトリテレイアは落胆する。
「否。何故、高次の存在が自我を失わねばならぬ。低次の者の上に君臨するのが我等高次の者の務め。我等は見守るだけでは飽きたらぬ。もっと平等を。もっと、もっと、支配を―――!」
 その言葉でもって、トリテレイアは失望する。
 やはり、とも思ったかもしれない。『天秤卿』リブラの語る言葉は、理想ですらなかった。
 ただの欲望だった。歪んだ正義感を根底に持つ、ただの支配欲だった。

「やはり、悪辣の一言にして流れる血の量も許容は到底不可能。騎士として、持てる者の義務……―――ノブレス・オブリージュとして、阻ませて頂きます」
 ユーベルコード、機械騎士の精密攻撃(マシンナイツ・プリセッションアタック)が発動する。
 それはすでに狙いをつけた可動部の脆弱した部分を的確に狙う超精密攻撃。盾で攻撃を受け流しながらも、天秤の可動部、支点を打ち砕く剣の一突きが放たれる。

 砕けた支点は、その姿をもはや天秤としての機能を持つものではなくしていた。
「己の欲望のために己を天秤と騙る……大いに失望しました、『天秤卿』……私は私の責務の元、討たせて頂きます」
 大盾のシールドヴァッシュが質量を伴って『天秤卿』リブラの頭部を強かに打ち据え、その体を大地へと叩きつけるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と

君の徹底ぶり、カードゲーで神引きドローから即死コンボ決めてる感じよね
手心とか……いや、キャラじゃないね

全員平等な世界なんて、詐欺じゃん
平等を与える存在があるって時点で、それは一つ上の段階だし
結局皆に頭下げさせて見下ろしたいんじゃ?

あ、議論する気はないよ
宗教家の言葉は聞かないに限る!

動きを止めてくれるなら、アレが使えるね
《赤杖の魔女》!

魔剣を振るい、空間を割き
呼び出すは紅く彩られた女性らしさを感じる造形の鋼鉄の巨人

流行らせたプラモよりイケてるでしょ?

発動に時間がかかるのは欠点
だが一度その力を発動させればあらゆる熱量を操る鋼鉄の魔女!

ドッロドロに、溶けときなさい!


アルトリウス・セレスタイト
引き続きセフィリカ(f00633)と

神と呼ばれるものにはいつも言うが
俺は不信心だ

自身への攻撃は『絶理』『無現』で世界内の自身の存在を否定し影響を回避
戦況は『天光』で常時把握
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていようと消え失せるだろう

『刻真』で過程を無限加速し目標確認と同時に起動
『解放』を通じ全力で魔力を込め拘束力を最大化
且つ魔眼行使の瞬間を『再帰』で無限循環し、「常に新たな拘束を掛け続け」封殺する

封じたら維持に専念
好きに料理してやってくれセフィリカ



 邪神教団の拠点の内部ではUDC『天秤卿』リブラと猟兵との戦いが続いている。
 猟兵たちの活躍によって、『天秤卿』リブラの消耗は激しい。それだけ邪神たるオブリビオンの力は凄まじいのである。
 だが、それでも猟兵たちは臆すること無く戦いに挑んでいく。それは彼らが猟兵であるからではなく、共に並び立つ誰かが隣にいるからであったのかもしれない。
「君の徹底ぶり、カードゲーで神引きドローから即死コンボ決めてる感じよね。手心とか……いや、キャラじゃないね」
 セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)が共に戦ったアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の先程の戦いぶりを評して、そう言葉にした。
 凄まじい戦い方ではあったものの、それを真似しようとは思わないのだろう。アルトリウスは、手心と言われてもなんと答えていいのかわからない顔をしていたが、その瞳が教団拠点の中心部にて浮かぶ『天秤卿』リブラの姿を捉えた。

「我が求めるは完全平等なる世界。争いのない世界。猟兵が求めるは、同じではないのか? 我等が求めるは同一であるのならば、何故抗う。何故邪魔をする」
 その言葉は心底理解できぬ者への不理解を示すものだった。
 自身の考えは至高であり、他者の考えに何一つ思いをめぐらさない。それが絶対者として君臨し続けた邪神の末路であるというのならば、アルトリウスは言う。
「神と呼ばれるものにはいつも言うが、俺は不信心だ」
 にべにもなく切り捨てるアルトリウスの背後でセフィリカが声を上げる。

「全員平等なんて、詐欺じゃん。平等を与える存在があるって時点で、それは一つ上の段階だし。結局みんなに頭下げさせて見下ろしたいんじゃ?あ、議論する気はないよ。宗教家の言葉は聞かないに限る!」
 セフィリカの言葉は穿った言葉であった。それは『天秤卿』リブラの歪んだ正義感を根底にする欲望を見抜いていた。
 結局の所、平等を押し付けたいだけなのだ。目的ではなく手段。そして、己を高次の者であると騙る者が最後に至るのは、いつだって他者を自由にしたいという欲求。

「不敬なるぞ、猟兵―――等しくあれ、アストレアの名の元に」
 『天秤卿』リブラが召喚せしは、冒涜的な輝き放つ女神。
 だが、その輝きが二人を打つことはなかった。それよりも早く、アルトリウスのユーベルコードが輝く。
 魔眼・封絶(マガン・フウゼツ)。それは彼の心眼によって捉えられた周囲の全てを世界の根源から直に魔眼によって捉え、一切の行為を禁じるユーベルコード。
 彼の瞳に捉えられた者は、ユーベルコードの能力一切を封じられるのだ。

 その魔眼の輝きの前には、女神の放つ冒涜的な輝きも意味を喪わせる。
「―――淀め。お前の命運はすでに尽きた。何をしようとも無駄だ。永遠は合わせ鏡のようにお前を見ている」
 アルトリウスの魔眼の発露の瞬間は無限循環し、常に新たな拘束を掛け続ける。それは永劫の如き拘束。

 そして、彼の背後でセフィリカはユーベルコードを発動させる。
 アルトリウスが動きを止めてくれているからこそできるユーベルコード。その名を、赤杖の魔女(フェイムツェール)。
 その手にした魔剣シェルファが振るわれることによって開かれる次元格納庫より呼び出されるは熱量操作の術を操る悪魔……そのコアを核とした魔導ゴーレム。
「七虹最大の出力を誇るアブないやつ!お披露目しちゃうよ!」
 女性らしさを感じる紅く彩られた鋼鉄の巨人が次元格納庫より姿をあらわす。だが、その現界には時間が掛かる。
 その強大なる力故、相応の交渉が必要であるためだ。

 だからこそ、アルトリウスの拘束は決定的な有効打であったのだ。
「好きに料理してやってくれ、セフィリカ」
 応えるように一歩を踏み出す鋼鉄の魔女。一度発動してしまえば、あらゆる熱量を操る圧倒的な力と成る。
「流行らせたプラモよりイケてるでしょ?」
 その見事な造形は、鋼鉄の魔女と呼ぶに相応しき流麗なるものであった。その荘厳なる姿を見上げる『天秤卿』リブラには焦りが浮かんでいた。
 その圧倒的な力。振り上げる鋼鉄の拳を見上げることしか出来ぬ自身。

「ドッロドロに、溶けときなさい!」
 セフィリカの号令に応えるように、鋼鉄の魔女は、赤熱する豪腕を振るい、『天秤卿』リブラの巨躯を溶解させる一撃を放つ。
 熱波が二人を襲い、その風が晴れる頃、圧倒的熱量を伴った一撃を受けた『天秤卿』リブラの醜くも爛れた姿が現出する。

 二人のコンビネーションは、あと一歩まで邪神たる『天秤卿』リブラを追い詰めたのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
見つけたぞ……人々を惑わす禍つ神よ。
幾多の罪を犯した貴様の行く末は、死すら生温い。
その穢れた魂を在るべき場所へ送ってやろう。
■闘
『心切』に【破魔】の力を宿し、戦闘に入るぞ。

天秤が何を仕掛けてくるかは、想像がつかない……
ここは【野生の勘】を巡らせ、仕掛けてくる瞬間を
予測しつつ身構えるぞ。
攻撃を仕掛けられたらその動きを【見切り】つつ、
【武器受け】で弾きながらリブラへ接近を図る。

懐に潜り込んだら刀を非物質化させることで
【鎧無視攻撃】となった【夜見・改】を放ち、
その邪な心を斬り伏せる。

此の世は非情なもの……されど、その非情は
闘うことで覆すことができる。
故に俺は、現から眼を背けぬ。

※アドリブ・連携歓迎



 邪神教団の拠点を巡る戦いは最終局面を迎えていた。
 数多の猟兵たちの活躍により、『天秤卿』リブラを追い詰めているのだ。すでにその体は圧倒的熱量によって溶解し、もとより醜悪であった姿を焼けただれた姿へと変えていた。
 それでもなお、生存し骸の海へと還ることを拒む力には、オブリビオン……邪神であることの凄まじさを物語っていたかもしれない。
「平等……我が求めるは平等なる世界。この尊くも等しき世界のために……我は、平等を以て、世界を平穏へと導かねばならぬ」
 どれだけの攻撃を受けたとしても、『天秤卿』リブラは変わらない。不変であった。あるのは、己の根底にある歪んだ正義感のみ。
 ただそれを満たすためだけに人々の心を弄び、踏みにじってきたのだ。これの悪行を許せるはずもない。

「見つけたぞ……人々を惑わす禍つ神よ。幾多の罪を犯した貴様の行く末は、死すら生温い。その穢れた魂を在るべき場所へと送ってやろう」
 猛禽の翼を広げ舞い降りたのは、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)である。その手に携えた清綱の新たなる刀―――心切。
 その刀身に宿るは破魔の力。
 すでに『天秤卿』リブラの頭上に輝く赤き鉱石は破壊され、その体もまた天秤へと姿を変えることのできぬほどに関節部を破壊され、巨躯自体をも熱によって溶解させられている。

 もはや死に体である。だが、それでもかのUDCがオブリビオンである以上、油断することは出来ない。
 猛禽の翼を羽撃かせ、清綱は舞い上がる。鋭い槍の如き骨格で彼を串刺しにせんとする『天秤卿』リブラ。
 その襲い来る猛攻を野生の勘とも言うべき、勝負勘にて躱し、時に刀で受け流しながら清綱は飛ぶ。
「我は平等を愛する。我は平和を愛する。その事になんの咎があろうか。我が求めるは、誰しもが渇望して止まぬ平穏なる世界。平和そのものであるというのに」
 その言葉は耳障りの良い言葉だった。
 心弱りし者たちが聞けば、まるで救いの説法のように心に響いたことだろう。

 だが、清綱は違う。
 そのような甘言に惑わされることはない。常に戦い、勝ち取ってきた彼だからこそ至ることのできる極地がある。
「秘伝……夜見」
 彼のユーベルコード、夜見・改(ヨミ)によって、霊力が心切の刀身に籠められる。非物質化した刀身は、肉体を傷つける一撃ではない。
 それは霊魂のみを攻撃するためのユーベルコードだ。そして、その一撃が切り捨てるべきは、『天秤卿』リブラの持つ邪な心。

「此の世は非情なもの……されど、その非情は闘うことで覆すことができる」
 その流麗なる刀は確かに『天秤卿』リブラの邪心を切り裂く。一刀のもとに両断し、その根底にある歪んだ正義感を散り散りに切り裂くのだった。

「故に俺は、現から目を背けぬ―――」
 心切が鞘に収められた瞬間、その一刀を以て『天秤卿』リブラの巨躯は霧散し、骸の海へと還っていく。
「ア、ア―――この、尊くも、等しきせか、い、の―――ために……」

 その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
 この尊く、誰も不平等を平等に抱える世界に、何一つとして同じものがない世界に、同価値であると定めるための天秤は必要ないのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『廃墟の向こうの、海』

POW   :    全力で泳ぎ、はしゃぐ

SPD   :    スキンシップだ、交流だ

WIZ   :    海を眺めてのんびり

👑5
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 こうして邪心教団の拠点を巡る戦いは『天秤卿』リブラを倒すことによって終息した。
 幸いに邪心教団の拠点の直ぐ側は海水浴場だ。
 少し時期は早いが、それでも日差しを受けて波間煌めく海というものは、心躍るものであっただろう。
 戦い、疲労した体であったとしても、心は労るべきだろう。

 これから待ち受ける夏の前哨戦が、今此処に始まるのだ―――。
黒髪・名捨
海…か…。
記憶失う前のオレは…普通に海に泳いでたのかねぇ。

それがわかる日が来るといいんだがなぁ。

●海を眺めて…

別に疲れてるわけじゃあねーが…なんか泳ぐ気が起きねぇ。
別にカナヅチってわけじゃねーと思う…そーいや、記憶失ってから泳いだ記憶がねーな?
まーどうでもいいが。
とりあえず、普段の格好で浜辺を散策だ。つーてもさすがに出店がでるのはまだまだ先だな。
そーだな。海の恵み確保して海鮮BBQってのいいかもな…
(アーラーワルを『槍投げ』して銛突き魚確保)
磯部で確保した貝やカニ…カメノテ確保っと。
一緒に拾った流木を『焼却』して同じく拾った漂着ゴミのドラム缶を使ってBBQだ。
たまにはこーいうのもいいか。



 明るい日差しを受けて波間が銀色の輝く。
 そんな海を眺めていると、戦いの疲れというものも、どこか遠くへと消え去っていくような気がするかもしれない。
 波音を聞くだけで、何か心が落ち着くこともあるかもしれない。
 その光景に何を思うのかは、それぞれの胸に去来したものだけが知っている。

「海……か……」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)もまた海を見つめて、ぼんやりとつぶやく一人であった。
 記憶喪失の怪奇人間である彼は、自分が何者なのかわからない。
 だから、彼の心に今去来するものが海を前にして何かを感じさせていたのかもしれない。
「記憶失う前のオレは……普通に海に泳いでたのかねぇ」
 疑問は晴れない。けれど、今はそれに焦ることもなければ、急くこともない。グリモア猟兵が転移の時間を伝えに来るまで、のんびりしようと思えるほどには、自分はそんなに海が嫌いではないということだけはわかる。
 そして、こうも思う。
 海で泳いだ記憶。あるのか、ないのか。
 言わば今は自分の足元が見えない状態だ。今ある記憶が氷山の一角に過ぎないというのなら、名捨が今歩く道は山脈の稜線のようなものだ。
「それがわかる彼我来るといいんだがなぁ……」

 眺める海は穏やかで、見ているだけでぼんやりしてくる。
 別に疲れているわけではない。けれど、なんとなく泳ぐ気が起きない。
 泳げないというわけではない、という確証のない確信が胸のうちにある。まーどうでもいいか。そんなふうに名捨は思いながら、立ち上がる。

 浜辺を歩き出すと砂を踏みしめる感触が足に伝わってきて、少しだけ面白いと思ってしまうかも知れない。
 周囲を見回してみても、海の家などがあるわけではない。
「つーても、流石に出店がでるのはまだまだ先だな」
 少しお腹に入れても良いだろうと思っていたのだが、ないのであればしかたない。軽く頭を傾げてから、ふむ、と一人納得し名捨は磯へと在るき出す。
 手にしたのは短槍アーラーワル。
 普段であれば、オブリビオンに対する有効な投げる事に適した槍なのだが……、

「ほっ……!と……」
 息を潜めて岩場から投げつけられた短槍が銛突きの要領で魚を確保する。どうやら海鮮バーベキューと洒落込むようだった。
 次々と慣れた手付きで魚を突き、手に入れていく名捨。ポイントを変えるついでに貝やカニ……果てはカメノテまで確保してホクホクである。
「んで、こいつを、と……」
 あらかた海の幸をゲットした彼は、今度は浜辺で拾った流木を燃やし焚き火へと変える。手際の良さはサバイバルに慣れているからだろうか。
 同じく漂着ゴミであるドラム缶を使って即席ではあるがバーベキューの準備を整える。

 火の加減を見ながら焼き上がっていく海鮮物。
 当たりに美味しそうな匂いが漂い、磯の香りと相まって食欲をそそる。
「たまにはこーいうのもいいか」
 そんな風に思える程度に、この海は名捨の心を癒やしたのかもしれなかった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇宙空間対応型・普通乗用車
辛く苦しい戦いだったが、ようやく終わったな。
だが、この世に不平等が存在する以上、
また第二第三のリブラが現れないとも限らない。
オレたちの戦いは、きっとこれからも続いていくんだよな…

って感じで海辺で黄昏るオレってマジかっこよくね?
イケ車じゃね?女の子にチヤホヤされてもいいやつじゃね?
え?別にそんなことないって?

…クソッ!早速世の不平等がオレに襲い掛かってきやがった!
こんなカップル御用達の美しい浜辺だってのに!
オレときたら一緒に遊ぶ友達さえいやしねぇ!
これが邪教徒達が感じていた絶望の一端か…!

という寸劇で同情を誘いつつ、
ナイアルテを優雅な水中ドライブに誘ってみようと思うんだが、
ナイアルテはどう思う?



 UDCアースにおける邪心教団でのUDC『天秤卿』リブラとの戦いは終わりを告げ、ささやかではあるが、猟兵たちにも憩いの時間が設けられた。
 それはグリモアベースを介する転移の準備が整うまでの僅かな時間ではあったが、戦いに疲れた体と心を癒やすにはちょうどよかったかもしれない。

 そんな戦いに疲れた猟兵が一人……宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)は、日差しが入り込み波間が銀色に輝く海辺にて駐車していた。
 紫外線を反射する波間が、その綺麗に塗装された車体を照らし出す。フロントガラスがキラリと輝き、撥水性コートが施され水鱗一つ無い硝子の美しさを誇っていた。
「辛く苦しい戦いだったが、ようやく終わったな。だが、此の世に不平等が存在する以上、また第ニ第三のリブラが現れないとも限らない」
 それはどこか黄昏るような独白であった。
 確かに彼の言う通りである。オブリビオンである以上、今回倒したとしても、再び骸の海より這い出し、悪事を働く可能性がないわけではない。
「オレたちの戦いは、きっとこれからも続いていくんだよな……」

 それは戦いに疲れた猟兵の心を吐露するような言葉であった。
 姿形は自家用車そのものではあるが、その心根は他の猟兵と変わらぬものであったのだろう。人を見た目で判断してはいけない。

「(―――って感じで海辺で黄昏るオレってマジかっこよくね? イケ車じゃね? 女の子にチヤホヤされてもいいやつじゃね?)」
 見た目からはわからないが、内心はこんな事を考えていた。
 残念ながら、喋る車である。如何に猟兵が、どの様な姿をしていたとしても、周囲の人間に違和感は抱かせることはない。
 そう、たしかに魅力的な車種であろう。しかし、彼が思うようなことは……その、別にそんなことなかったって言いますかぁ……?

 まったくなかった。
 一見すれば普通の自家乗用車だから。その、女子ウケの良い海外車とか、そういうのだったら……という空気が流れる。
「……クソッ! 早速世の不平等がオレに襲いかかってきやがった!」
 ガッデム! そういうかのようにヘッドライトが明滅する。タコメーターがぎゅいんぎゅいん針をせわしなく左右に振られ、彼の感情の振り幅のようだった。
「こんなカップル御用達の美しい浜辺だってのに! オレときたら一緒に遊ぶ友達さえいやしねぇ! これが邪教徒達が感じていた絶望の一端か……!」
 彼の悲痛なる叫びは、海辺にて波間の音にかき消されるかと思われた。
 ちら。
 しかし、これは彼の寸劇である。計算である。同情を誘うための演技であるが、本心も混じっていたので、真に迫っていた。
 ちら。

「そういうわけで、ナイアルテを優雅な水中ドライブに誘ってみようと思うんだが、ナイアルテはどう思う?」
 ちら。
 視線が向いていたのは、グリモア猟兵であるナイアルテであった。
 え、とナイアルテが驚いたような表情を浮かべるも、すぐに微笑みを返す。
「私でいいのですか?ドライブ……はじめてです」
 でも、転移の準備もありますから、少しだけですよ、と彼女は付け加える。しかし、もうそれどころではない。
 早速ユーベルコード、水中走行モード(スイチュウソウコウモード)が発動し、その車体が変形する。

「耐圧装甲展開!気密性チェック完了!スクリューの調子と浮力調整……よし多分OK!っしゃ飛び込めー!」
「多分なのですか!?」
 ざぶん!と一気に海中に飛び込む。フロントガラスに広がるのは、波間より差し込む太陽光と水中のゆらめき。
 それは確かに彼の言う通り、優雅と呼ぶに足る光景であったことだろう。
 僅かな時間ではあったが、彼の言葉通り優雅な水中ドライブへと洒落込むのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
んーっ、終わった終わった。後はちょっと早いビーチを楽しませてもらいましょう。
愛奴召喚でアヤメを呼び出して、二人で楽しむわ。
あたしは紺の競泳水着で。アヤメはビキニなのね。むー、胸がある。あたしの式神の分際で。とか言いつつ鷲掴みに。

じゃ、まずは泳ぎましょ。
……さすがにちょっと冷たいわね。真冬の滝行に比べたら温いけど。
じゃれ合いつつ泳いだら、人目に付かない浜辺に移動。
アヤメ、たっぷり可愛がってあげるわ。

お互い水着を取り去って生まれたままの姿で絡み合い。
一杯気持ちよくなろ。
愛してるよ、アヤメ。
お互いの挙措は次第に激しく過激に。誰かに見られるかもしれないという危惧さえスパイスに。
帰ったらもっと楽しもう。



 夏というには早い季節ではあるが、海辺の風は心地よい。
 潮風がべとつくというほどではないが、それでも浜辺を散策するのは心地の良いものであり、戦いに疲れた猟兵たちの体と心を癒やすには十分なものであったかも知れない。
 UDCアースにおける邪心教団との戦いは終息し、つかの間の癒やしを求めるように猟兵たちは邪心教団拠点近くの浜辺へと繰り出していた。

「んーっ、終わった終わった。後はちょっと早いビーチを楽しませてもらいましょう」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)によって召喚された恋人にしたエルフのクノイチ、式神・アヤメと共に水着に着替えて少し早い海水浴を楽しむことにしたのだ。
 ゆかりは紺色の競泳水着姿。その美しいボディラインは見事なものであり、式神のアヤメからみても羨ましいと感じる滑らかな艶やかさを持っていたに違いない。

 一方、恋人である式神のアヤメはビキニ姿である。露出度の高い水着であるが、誇っていい体の肉付きは主人であり恋人であるゆかりをして羨ましいと思う。
「むー、胸がある。あたしの式神の分際で」
 なんて憎まれ口を言いながらも、結局お互いにお互いの美点を羨ましがるという睦まじい仲なのだ。
「私だって羨ましいって思うんですから、おあいこです」
 もう、と散々にくっつき合いながら、じゃれ合う。
 たったそれだけのことなのに、戦いに疲れた体が癒やされていくように感じるのだから不思議なものである。

 せっかくだし、と二人して海へと入り軽く泳ぐ。
 アヤメはクノイチを名乗るだけあって、さすがの身体能力である。
「ここまで追いつけますか?ほらほら~」
 笑いあい、真冬の滝行に比べたら、という比較対象が若干ずれているものの、心地よい波と海水に洗われて、互いの距離がどんどん近づいていく。
 心音が聞こえそうなほどに密着してしまうのは、やはり互いが愛おしいと思っているからだろう。
 どれだけ距離が近づいても近づき足りないと思ってしまう。
「愛してるよ、アヤメ」
 ゆかりの言葉はアヤメにしか届かない。それだけ密着しているからこそ、ささやくことのできる声量だった。
 小さな声であっても籠められる愛情の質量は、十分なものであっただろう。

 少し冷たい海水の温度も、もはや気にならない。
 お互いの瞳に映るのは、たった一人だけ。それ以外にはいらない。そう思えるほどの愛情の高鳴りを二人は感じていたかも知れない。
 どれだけの時間を重ねたとしても、どれだけの言葉を積み重ねたとしても。

 もう波の音も心臓の高鳴る音にかき消されて、聞こえない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「あの子達を忘れた貴方達は、きっとまた同じことをするのでしょうね…」

UC「桜の癒やし」使用
UDCエージェントや職員が回収に来るまで信者の身柄をそれとなくおさえておく

「あの…記憶操作する場合、齟齬が起きそうなものは、何一つ渡せないのでしょうか。自分に失われた何かがあると、想像させるものは」
「…そうですよね、すみません」
プラモの欠片でなくても、此処の砂でも全く関係ないハンカチでも
彼等に何かを考えさせる物を残したかった
今積んだ経験が0になり
彼等がまたリブラの呼び水になるだろうと思えることが哀しかった

この世界は私の世界より進んでいるけれど
不自由な面もやっぱりあって

「もうすぐ梅雨入りですね」
空を見上げた



 邪神教団は潰えた。
 UDC『天秤卿』リブラが猟兵達に破れたことにより、教団中枢は存在しなくなり、運営することは叶わないだろう。
 もとより邪神教団の信者たちは、ただ徒に己の心の中にある劣等感や正義感、そういった歪んだものを増幅されられたに過ぎない。
 人間であれば、誰しもが抱える心の闇と突かれただけなのだ。そして、このUDCアース世界において、UDCに関わる記憶というものは危険である。
 いつまた邪心召喚の呼び水になるかわからない。

 だからこそ、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はユーベルコード、桜の癒やしを発動させ、桜の花吹雪にて彼女が確保した邪心教団の信者たちを眠りにつかせる。
 ほどなくすればUDCエージェントや職員が彼らの身柄を回収しにくるはずだからだ。
「あの子達を忘れた貴方達は、きっとまた同じことをするのでしょうね……」
 それは確信のようなものだった。
 彼らの抱える心の闇がなくなることは絶対にない。小さくなったとしても、それが些細なきっかけでまた増長する可能性だってある。
 それは誰しもが抱える問題だ。

 だからこそ、桜花は彼らに何かを残したいと思ったのだ。
「あの……記憶操作する場合、齟齬が起きそうなものは、何一つ渡せないのでしょうか。自分に喪われた何かがあると、想像させるものは……」
 だが、それは許されることではないと桜花自身もわかっていたことだった。
 叶わない。
 彼女の心に広がるのは寂寞たる思い。忘れされられてしまうあの子達―――量産型邪神プラモ『ヴァイスシュヴァルツ』。あれが例え邪神の尖兵だったとしても、付喪神以前の彼らの中にあった何か……。
 考えても詮無きことであると桜花は頭を振る。

「そうですよね、すみません」
 プラモの欠片でなくても、此処の砂でも全く関係ないハンカチでもよかった。彼らに何かを考えさせる物を残したいと思った。
 彼女が恐れたのは、今回の積んだ経験が0になること。

 人は痛みを伴った経験を糧に成長する。
 だからこそ、痛みの記憶のない者には、何も残らない。あるのは、また同じ過ちを犯すかもしれないという危惧だけだ。
 彼等がまた『天秤卿』リブラの呼び水になるだろうと思えることが悲しかった。
 彼女の心を現すようにユーベルコードによって生み出された桜の花吹雪の花弁が回収されていく信者たちの衣服に潜り込んだり、ポケットの中に入り込んだりしたことを、彼女はまだ気が付かない。

「この世界は私の世界より進んでいるけれど、不自由な面もやっぱりあって……」
 悲しいと思う。
 哀切の気持ちは、誰かの心を慰めることがあるだろうか。そう考えてしまうと、彼等がまた呼び水とならぬことを祈らずにはいられない。
 そこまで人々の心が不自由であるとは思いたくない。

 桜の花びらが舞い散る。それは季節外れの桜吹雪。
 その中心で桜花はどのような表情をしていただろうか。
「もうすぐ梅雨入りですね」
 ぽつりとつぶやき、空を見上げた。
 その空に桜の花弁が舞い上がって、どこかへと飛んでく。

 きっと、いつか誰かの心が再び闇に囚われた時、その花弁が思い出させてくれることだろう。
 過ちに気がつくことができるのだと―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

海!遊ぶのよ!『鼓腹』で皆も召喚
裸足+軽装になり夏気分を満喫よ
砂の熱さが心配ね。『護り現』で狸たちを包む。道具に化けたり好きに遊んで!

信者の子たちは大丈夫かしら?
太陽を味わいながら羽を広げ【空中浮遊】、辺りを巡って様子を伺う
プラモデル、また楽しめそう?影から確認するだけでもいいし
元気があれば皆を連れて、続きも聞きたいわ
組み立て方、決めポーズも教えて
【念動力】で手伝いもできたら嬉しい、かっこよく飛ばしたり!

落ち着いたら海へ
飲み物でも買って小さなボートを皆で借りる
ナイアルテさんもいたら誘いたい
いつも転送ありがとう。すごく助けられてるわ
『ガラス蜘蛛』を帆にして海の上、くるりと巡る短い刻を



 夏にはまだ早いけれど、梅雨入り前の海は太陽の光を受けて銀色の波間を猟兵たちの瞳に映し出していた。
 邪神教団の拠点の傍の浜辺は、海水浴には早いせいか、人の姿もあまりない。猟兵たちの貸し切りと言ってもよかった。
グリモアベースを介して転移し、帰還する準備が整うまでの僅かなじかんではあるが、猟兵たちは戦いに疲れた体と心を癒やすために海辺へと繰り出すのだった。

「海! 遊ぶのよ!」
 ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は満面の笑顔でユーベルコード、鼓腹(ヘイワエノ・タヌキバヤシ)によって呼び出したぽんぽこ狸たちと共に裸足で浜辺へと駆け出した。
 狸たちも心做しか浮かれているようで、水着姿であったり、水中ゴーグルであったり、シュノーケルであったり……なんともまあバラエティ豊かな姿を疲労しつつ、ジアムと共に先取り夏気分を満喫しはじめた。
 素足で駆け出したものだから、日差しを受けた砂浜の熱さは、そこそこに足裏を焼くことだろう。護り現のオーラを狸たちにまとわせ、一応の心配は取り除いておくのだ。

 遊んで! というジアムの号令に、ぽんぽこ狸たちは一斉に、わっせろーい! と砂浜や海水にざぶんとダイブしたりともう夏気分ではしゃいでいる。
 そんな彼等を尻目にジアムは少しだけ、今回の戦いの犠牲者と言っても良い信者たちの様子を気にかけていた。
「信者の子たちは大丈夫かしら?」
 ふわふわと明色の羽根を広げて、空中を浮遊する。あら、と見かけたのは信者の一団だ。ジアムが退けた量産型邪神プラモを持っていた彼等だ。
 彼等はUDCエージェントやそれに付随する組織によって、今回の記憶を操作される手はずになっている。
 だから、嫌な記憶な残らない。

 影から見守りつつ、彼等の表情を見やる。暗い表情であったらどうしようとジアムは思っていたが、彼等の表情は出会った頃よりは晴れやかであった。
 それはジアムが戦いのさなかであったとしても、彼等のことを気遣った結果であろう。
 ジアムの屈託のない心が彼等の邪に染まった心を濯いだのだ。だからこそ、記憶を操作されたとしても、彼等の心の中に残る誰かが分けてくれた暖かい気持ちは、きっと由来も名前も知らぬままに残り続ける。
 それはきっと篝火である。
 暖かな心の光は、いつか誰かの心にも移りゆくことだろう。

 だから、ジアムはもう心配しなかった。
 彼等は彼等の。ジアムはジアムの人生がこれからも続いていくのだから。
「あら、こちらでしたか」
 いつもありがとうございます、と海辺でボートを借りようとしたジアムに声をかけたのはナイアルテであった。
 ほほえみながら頭を下げる姿はグリモアベースでも何度かみた光景だろう。
「いつも転送ありがとう。すごく助けられてるわ」
 互いにほほえみ合って、小さなボートに一緒に、とナイアルテを誘う。彼女は嬉しそうにほほえみ、是非、と共に波に揺られることになった。

 二人と狸を乗せたボートはゆらゆらと波間をゆく。
 ガラス蜘蛛―――水蜘蛛の泡のような銀の薄布が帆となって風を受け、くるりと巡る短くも美しい刻を楽しむ。
 それは思い出となって、これからも暖かい心の篝火を灯し続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
一般人の方に取り返しのつかぬ被害が無く幸いでした
これで安心して…

持ち込んだ水中用装備の駆動テストが行えます
水中での戦闘も近頃は増えた以上、経験は蓄積しておくべきなのですから

(海水浴や休息と何処までも縁遠く
戦い求めるは戦機の性か、はたまた御伽の騎士は万難を退けるべしという幻想故か
ざぶざぶと入水自殺の如く海に入り沖へ●水中機動)

直線、曲線、戦闘機動は確認終了
あとは装備をハッキングし限界突破した際の機動ですね

計測完了…?

(装備が想定外の機能停止、海の屑鉄として沈む機械騎士)

ナ、ナイアルテ様ー!

(陸のグリモア猟兵に緊急転移要請)

申し訳ございません…
以後このようなことは起こさぬよう努々…

(砂浜に正座)



 UDC『天秤卿』リブラによる邪神教団を巡る事件は終息を迎えた。かのUDCによって己の心の内にある邪なる心を増幅された信者たちが凶行に及ぶ前に事を収められたのは、不幸中の幸いであったことだろう。

「一般人の方に取り返しのつかぬ被害が無く幸いでした」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、事件の終息を喜んでいた。心残りもなく、こうして邪神絡みの事件が終わったことは喜ぶべきことである。
 それに今回は戦いを終えた後、すぐにグリモアベースへと戻るわけではないのだ。
 お楽しみといえば良いのだろうか。
 今回の邪神教団の拠点の直ぐ側が海辺であることも幸いし、時期ではないが少し早い夏気分を先取りして、海水浴でも、とグリモア猟兵であるナイアルテが教えてくれていたのだ。

 トリテレイアは、ならば、と意気込んでいた。
「これで安心して……」
 どん、と持ち出したのは水中用装備である。……なんて?
 想像していたのと違うお楽しみの仕方をトリテレイアは取り始める。駆動テストは大切なものであるが、あまりにも戦士の休息というものから遠ざかっているように思えた。
 もはやワーカーホリック。いや、ウォーマシンであるから、そういうわけでもないのだろうが……それは戦いを求める戦機としての性なのか。はたまた御伽の騎士は万難を退けるべしという幻想故か。
「水中での戦闘も近頃は増えた以上、経験は蓄積しておくべきなのですから……」
 ざぶざぶと入水自殺の如くトリテレイアの巨躯が海へと入り込んでいく。

 その光景を遠くから見ていたナイアルテは、心配そうな顔をしていたが、これも彼なりの休息の仕方なのだろうと声をかけづらいままであった。
 そんなナイアルテの思惑を知ってか知らずか、トリテレイアの水中機動は順調そのものであった。
「直線、曲線、戦闘機動は確認終了……ふむ、中々に良好な結果ではないですか」
 海中での機動は、問題ないようであった。海洋世界であるグリードオーシャンでの経験も蓄積されている結果だろう。
 ならば、あとは装備の限界を見極めなければならない。ハッキングし、装備の出力を上げていく。

 限界を越えた出力に置いて、どれだけの力を発揮できるのか。
 それはウォーマシンであるトリテレイアにとっては重要な事柄だった。数値化できているのであれば、自身の駆動の限界を正確に把握できる。
 生身の人間が反復練習を行い、己の体をしっかりと知ることと同じことであった。
「計測完了……―――?」
 無事に限界突破した装備の数値も確認できた、と安心したところで、装備から嫌な音が響く。
 出力が低下し、まさかの機能停止にまで陥ってしまったのだ。
「こ、これは―――」
 とてもまずい。
 非常にまずい。まさか海の屑鉄として沈む機械騎士などあって良いものだろうか!まさかここに来て、こんな非常事態に見舞われるとはトリテレイアも予測していなかったのだろう。
「ナ、ナイアルテ様ー!」
 海中にて、トリテレイアの緊急転移要請が響き渡り―――。

 砂浜に正座してびしょびしょになっているトリテレイアが、数瞬の後に確認されたのは言うまでもない。
 別に正座する必要はないのだが、ナイアルテが座ってくださいというから、トリテレイアは正座をとりあえずしたのだ。
「申し訳ございません……以後このようなことは起こさぬよう努々……」
 てっきり絞られると思っていたのだろう。
 だが、ナイアルテはほほえみながら海水に濡れたトリテレイアの装甲をハンカチで拭っていく。

「そんなに気にすることありませんよ。トリテレイアさんがご無事で何よりです。できれば、次からは声を掛けてくださいね?」
 そう微笑んで何度もハンカチをしぼりながらナイアルテはトリテレイアの装甲に滴る海水を拭うのだった。
 その間、ずっとトリテレイアは正座だったのだが、それはなんともおかしみのある光景であり、浜辺の注目を集めるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
(防波堤に佇む、陣羽織を脱いだ黒尽くめキマイラ)
禍つ神は散った。信者たちも、此れから前を向いて
歩いていけるといいな。
■行
【WIZ】
しかし、この海は美しい。この何も見えない青い風景が……
むむ?眺めていたら、突然隣にウミネコが現れた。

折角なので、俺の【動物と話す】力で会話を試みる。
『ごきげんよう、こんな所で何をなされているのだ?』
『俺?俺は仕事帰りだ。因みに人間ではなく、物の怪の類』
……おおっ、ウミネコ達が更に集まってきたぞ。

(などと会話を交わしていると)
『むむ、ナイアルテ殿。今は民族間対話をしているところで……』
あ、人相手にニャーニャー言ってしまった。
(『』はウミネコ語)

※アドリブ歓迎、不採用可



 夏というには時期を先取りしているであろう海水浴。
 しかし、戦いの後であるというのであれば、それは些細なことである。猟兵達は常に戦いに身を置くものであるが、こうして時には戦士の休息も必要であろう。
 UDC『天秤卿』リブラが中心となった邪神教団の拠点、その傍にある海辺の波は穏やかなものであった。
 その防波堤に佇むのは、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)である。
 陣羽織を脱いだ黒尽くめの姿は、日光を浴びるのはちょうどよかったのかも知れない。猛禽の翼を広げ、陽の光に当てるというのは存外心地の良いものである。
「禍つ神は散った。信者たちも、此れから前を向いて歩いていけるといいな……」
 ぽつりと呟き、信者の彼等の行く末を案じるのだ。

 清綱の眼前に広がる光景は、波立つ海原である。完全なる水平線ではないものの、その光景は自然の雄大さを感じさせるには十分であった。
「しかし、この海は美しい。この何も見えない青い風景が……むむ?」
 何をするでもなく、日光浴と海風を受けて涼んでいた清綱の隣に突然ウミネコが一羽現れる。
 あまりにも近い距離に思わず驚いてしまったが、清綱とてキマイラである。
 獣の因子があるのであれば、自然に住まう動物たちと気心が知れるというのもわからぬ話ではない。
 ふむ、と清綱は首を傾げてから彼の持つ動物会話の力を試みるのだ。
 このような出会いがあってもいい。世界とはそういう可能性に満ち溢れているのだから。

『ごきげんよう、こんな所で何をなされているのだ?』
 ウミネコの声が聞こえる。存外楽しいものである。こうして人間以外のものと会話が楽しめるのも、役得であるかもしれない。
『俺?俺は仕事帰りだ。ちなみに人間ではなく、物の怪の類』
 そんな風に一羽のウミネコと語らっていると、防波堤の周りにウミネコが多数集まってくる。
 その光景はある種、凄まじい光景であったことだろう。
 当人たちからすれば会話を楽しんでいるだけのことであるから、そこまで……と思うかも知れないが、第三者が見れば一体何事なのだと驚くことこの上ない出来事だ。

 ともあれ、ウミネコたちとの会話は楽しいものであった。
 常在戦場。
 それこそが猟兵たる清綱の持つ心構えであったかもしれない。けれど、戦いが終われば、つかの間の休息であるのだから、気を緩めてもいいかもしれない。
 それを油断というのであれば、それは心安らかなる時を過ごしていた証拠であったろう。
 こつ、と足音がして清綱が顔を見上げると、そこにはナイアルテの姿があった。
 グリモアベースにて転移を行う猟兵である。もう戻る時間だっただろうかと、清綱も声をかけようとして―――。
『むむ、ナイアルテ殿。今は民族間対話をしているところで……』
 あ、と清綱は口を噤む。
 今までウミネコたちと会話をしていたものだから、人間であるナイアルテには、『ニャーニャーニャーニャー』といった具合にしか聞こえなかったことだろう。

 ナイアルテは、その様子に微笑んでから、猫の手を作って。
「にゃーにゃー、にゃーにゃにゃーん」
 きっと清綱に恥をかかせぬようにと気を使ったのだ。もしかしたら、冗談のつもりだったのかもしれない。
 だが、自分でやっておいて非常に恥ずかしくなったのか、ぴしりと固まるナイアルテ。

 清綱はこの後フォローするために色々言ったが、ナイアルテは耳まで真っ赤にして「すみません」しか発することができなくなったのは、ある意味で良い思い出になったのかもしれない。
 ウミネコたちの笑い声のような鳴き声が、清綱を見送るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と

季節的には早いけど、十分泳げるかな
ついでにシェル姉も一緒にね!ほら、水着はシェル姉の分もある!

『なんで態々塩水に漬かる必要があるのよ、いや平気だけど。平気だけどね?』
いいから!ほらここは使い手権限で強引に―――

等と更衣室へ

キュートな赤い水着の美少女エルフにセクシーな黒ビキニ美女のシェル姉(人化して貰った)のご登場!

アルトリウス君、渚の可憐な華二輪を前に何かご感想は?なんてね

もー、感動が足りなーい!
でも、ありがと!褒められて悪い気はしないし!
水着の女の子を前に急に饒舌になる君じゃないか
……そもそも異性に興味あるタイプなの?
どっちでもいいけどね、よし、遊びに行こう!


アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と

海で遊べる、とナイアルテが言っていたな
折角だし泳いでみるのも良いか
セフィリカもその気になっているようだし

待っていると二人連れ立って来た
はて、と首を傾げるが、遣り取りから察するにもう一人がシェルファか
人型にもなれたのだろうと納得する

求められれば返そうと務めるが
感想。感想か
いざ言おうとすると難しいものだ
気の利いた言葉も知らぬので直截になるが勘弁してほしい

セフィリカも、シェルファも、とてもきれいだと思う
人目を引くというのだろうな

……?異性だからと興味を無くしたりはしないぞ
そうだな。遊ぶか



 邪神教団はUDC『天秤卿』リブラが討たれたことによって、自然消滅していくことだろう。
 それは戦いを終えた猟兵たちにとって、気がかりが一つ消えたということだった。UDCであるオブリビオンを討ち果たしたとしても、邪神教団が残っていれば、いつまた邪神である『天秤卿』リブラを現界させる呼び水となるやも知れないからだ。
 だから邪神教団が潰えたのは喜ぶべきことだったのだ。

 それに、今の猟兵たちには夏を先取りした海水浴を楽しめる時間が残されていた。
 グリモアベースへと帰還するための準備が整うまでの僅かな時間ではあるのだが、それでも戦いに疲れた猟兵たちの心と体をリフレッシュさせるには十分なのものであったかもしれない。
 そして、互いに背中を預けて戦ってきた二人であれば、楽しさはさらに倍増するというものである。
「海で遊べる、とナイアルテが言っていたな」
 ぽつりと、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)がつぶやく。そう、グリモアベースで今回の事件を解決するにあたって事前情報でグリモア猟兵がそう口頭で伝えていたのを思い出したのである。

 今の時期は少し夏には早い。
 だからこそ、狙い目であるとも言える。夏になれば、人でごった返す海水浴場も、今の時期ならば人の気配も多くはない。
 いるのは猟兵だけだ。
「季節的には早いけど、十分泳げるかな。ついでにシェル姉も一緒にね! ほら、水着はシェル姉の分もある!」
 そんな風に、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)がはしゃいでいたのをアルトリウスは思い出していた。

「折角だし、泳いでみるのも良いか。セフィリカもその気になっているようだし」
 アルトリウスはというと、先に準備を終えてセフィリカを待っていた。
 いつだってそうだけれど、こういう場合、いつも先に来て待っているのは男子である。女子には色々用意したりと準備があるのだ。
 そうやってアルトリウスが待っていると、二人の女性が連れ立って歩いてきた。
 はて、と首を傾げる。
 一人はセフィリカである。だが、彼女の傍らにある女性は一体……。

『なんで態々塩水に漬かる必要があるのよ、いや平気だけど。平気だけどね?』
 蒼い髪は、察するに魔剣シェルファの人型の姿であろう。人型になれたのだな、とアルトリウスは、そういうものかと納得していた。
 それはセフィリカのユーベルコードによって魔剣の真の姿を表したシェルファである。セフィリカと並ぶと仲睦まじい姉妹のようであった。

 セクシーな黒ビキニ美女のシェルファと……そして、キュートながら少女らしさを前面に出した赤い水着姿の美少女エルフ。
 彼女たちはアルトリウスの前に立っていた。
 これが一般人の男性であれば、誰もが羨む両手に花の状態である。なんとも羨ましい限りであり、男性諸君は血涙を流してアルトリウスを羨んだに違いない。
「アルトリウス組ん、渚の可憐な華二輪を前に何かご感想は?なんてね?」
 どう?と、とっておきの水着姿を披露する二人を前にして、アルトリウスの反応は微妙に淡白なものであった。

 いや、求められれば返そうと務めているのだ。
「感想。感想か……いざ言おうとすると難しいものだな……」
 ふむ、と考える。気の利いた言葉を知らない見であれば、どうにも言葉がうまく紡げないものだ。
 ひねり出した、というわけではないが、実直に言葉をアルトリウスは紡ぐ。
「セフィリカも、シェルファも、とても綺麗だと思う」
 その言葉は素直なものであり、直球であった。
 着飾らない言葉は、受け取り手にとっては淡白に見えたかもしれないが、それでも言葉を紡いでくれたことは素直に嬉しいと思うだろう。

「もー、感動が足りなーい! でも、ありがと!褒められて悪い気はしないし!」
 セフィリカはもう少し物足りないなという顔をしたが、一瞬で破顔する。暗い表情は似合わないし、それでも素直に言葉をくれたことは嬉しいのだから。
 ふふーん、とセフィリカとシェルファ二人でアルトリウスの隣に立つ。そのせいか、アルトリウスは微妙に周囲からの視線を痛く感じていた。
 居心地が悪い……までは行かずとも、それなりに何か空気を読むのだ。
「人目を引くというのだろうな……」
 それはセフィリカとシェルファの美貌を称える言葉に聞こえたことだろう。

 気を良くしたセフィリカは上機嫌で言葉を紡ぐ。
「水着の女の子を前に急に饒舌になる君じゃないか……そもそも異性に興味あるタイプなの?」
 それでも自分のために言葉を紡いでくれるのは女の子としては素直にうれしい。だから、そんなことを聞いてしまう。
 アルトリウスはいつものように狼狽える素振りもなく首をかしげる。
「……?異性だからと興味をなくしたりはしないぞ」
 その言葉は微妙にすれ違っていたが、今はそんなことはどうでもいいくらいに、彼等の目の前に広がる海は青く美しい。

 華やかな笑顔を浮かべながらセフィリカはアルトリウスの手を引く。
「どっちでもいいけどね、よし、遊びに行こう!」
 アルトリウスの体がセフィリカに引っ張られ、砂浜を駆け出していく。日差しを受けた砂が足裏を灼く。
 海風が二人の頬をなで、髪をなびかせる。
 その光景は二人しか知らない光景だった。そして、それはいつの日にか思い出となって思い返して、互いに笑い合う未来になるかもしれない。

 そんな予感がしながら、アルトリウスとセフィリカ、シェルファの少しだけ早い夏が始まったのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月04日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルム・サフィレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト