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四葩の花と蒼時雨(作者 犬塚ひなこ
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●巫女は喚ぶ
 来たれ。来たれ。
 そぼ降る雨の雫と共に神楽を舞い、彼のひとを呼ぶ。
 此れは憎悪か、愛か。
 この気持ちの根源は何処から来たのか、もう何も判らない。
 けれど、ただひとつを忘れぬように。記憶に留めるように、神の国へ祈り舞う。
 降りゆく雨の如く、大地に思いを染み込ませよう。雫を受けてひらく四葩の花の如く、紫陽の色彩を咲かせよう。
 花のひとつが宿す蒼にも似た色の瞳。その双眸を細めた羅刹の巫女は曇天の空を仰ぐ。

 ――忘れなければ、帰って来られるから。

●梅雨の或日
 神社の境内に咲き誇る紫陽花は今年も見頃を迎えていた。
 ひとりで其処を切り盛りする宮司は唐傘を差し、紫陽花の手入れを行っていく。
 参道の両側に咲く紫陽花、境内の裏手に広がる紫陽花の園。そして、その奥に遥か昔から存在する名もなき神を祀る社まで、ずっと続いていく紫陽花。
 そのひとつずつを丁寧に見回る彼は、今の季節のこの仕事を誇りに思っている。
 淡い青に薄紅、鴇色。
 秘色や二藍、濃い紫。
 様々な色合いに染まる花々は美しく、雨の中でこそ息衝くかのよう。
 そして今日も神社奥の社まで向かおうとしたとき、宮司は妙な気配に気が付く。小雨が降り頻る紫陽花の園に、何かが浮かんでいた。
 火の玉のような炎を纏っているそれらは宮司を見つけると静かに近付いてくる。
 何も危険な様子などないように思えたが、それは紛れもない魑魅魍魎だ。幻影の怪火は宮司に纏わりつくように細い手足を伸ばし――そして、彼は幻想に囚われた。

●紫陽花と手水舎
「クラゲの火の玉と、羅刹の巫女。それが今回現れた魑魅魍魎達です」
 グリモア猟兵のひとり、ミカゲ・フユは此度に予知された事件について語る。
 場所はとある小さな神社。
 普段は近くの村住まいの宮司が管理する穏やかな場所なのだが、この季節になると紫陽花が美しく咲くということで評判の神社だ。
「紅い鳥居を潜った先の参道の両側に紫陽花がいっぱい咲いているんです。その先には紫陽花が浮かべられた手水舎があって、とっても綺麗でした。本殿の奥には広い紫陽花の園もあります。そっちもすごく見応えがあるみたいです」
 その日は生憎の雨だが、それでこそ紫陽花が印象的に見られる。
 魑魅魍魎、即ちオブリビオンが出てくるまでは時間があるので、手水舎で手を清めてから暫し境内を散策してみるのも悪くはない。
「宮司さんや近隣の村の方々には、その日に神社に近付かないようお願いしてあります。境内には皆さんだけですので存分に楽しんでください。それから、その後に魑魅魍魎の退治をお願いします」
 今は店の者には出払って貰っているが、境内の片隅には野点傘と床几台が置かれた茶屋もある。其処に団子や茶を持ち込んでゆっくりするのも良いだろう。
 午前は紫陽花を楽しみ、午後は紫陽花の園に現れる使者を倒しに向かう。
 そして、その奥に現れるという羅刹の巫女と対峙しにいく。これが大まかな流れだと話したミカゲは更に語る。
「水晶宮からの使者とも呼ばれる海月さんは幻を魅せてくるようです。見えるものは様々で、過去の光景だったり、いるはずのない人が見えたりするみたいです」
 幻影は千差万別。
 ときには記憶にない出来事が浮かぶこともあるという。
 敵自体の力はそれほどでもないが、幻を生み出す力は厄介だ。
 しかし、心を強く持てば抜け出せないものではないのだと話したミカゲは、今回の首魁である羅刹の巫女について話す。
「彼女は神を迎え入れる儀式――神楽舞を踊っていました。何を呼んでいるのか、誰を呼んでいるのかはわかりませんでした。けれどこのままだと関係ない人が巻き込まれて、何処かに連れて行かれる……そんな未来が視えています」
 それゆえに放っておくわけにはいかない。
 よろしくお願いします、と告げた少年はそっと頭を下げ、皆に討伐を願った。





第3章 ボス戦 『壱岐』

POW ●魂神楽
【神を迎え入れる儀式である神楽舞】を披露した指定の全対象に【この儀式を邪魔してはいけないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●物忌ミ給ヘ
レベル×5体の、小型の戦闘用【式神】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ ●ヨモツオロシ
【底の国より出でし神々】【恨み残した幽鬼】【自然に宿る魂】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は奇鳥・カイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魂神楽と黄泉降ろし
 雨が止んだ。
 それまで聞こえていた雨音は途切れ、今は紫陽花の葉や萼から雫が滴る幽かな音が時折響くだけとなった。紫陽花の園を越えた先には古びたちいさな社がある。
 鎮守神が祀られた場所なのだろう。
 其処から鈴の音が聞こえた。
 普段はひっそりとしているであろうその場所には、ひとりの鬼巫女がいた。神楽舞を踊っている彼女が手にした鈴が、しゃらり、しゃらりと厳かに鳴り続ける。
 暫し舞を続けていた羅刹の巫女は猟兵達の到来に気が付き、ゆっくりと動きを止めた。
「ようこそ、いらっしゃいました」
 丁寧な口調と柔らかな物腰で、此方を迎え入れた彼女は恭しく礼をする。
 そうして巫女は猟兵達を見渡した。
 違う。違う。この方々は違う。ひとりずつの様相を確かめた羅刹の巫女――壱岐は緩やかに首を横に振った。
「御出下さったところ申し訳ありませぬ。わたくしは彼のひとを呼んでいるのです。皆々様方が此処にいらっしゃっては、彼の方は御出にならぬでしょう」
 それゆえにお引取り下さい。
 彼のひとが誰であるのかは語らぬまま、壱岐は静々と告げた。
「わたくしは彼の方を神の国へ送らねばならぬのです。どうか、なにとぞ邪魔立てなさらぬようお願い申し上げます」
 つまりは此処から去れと告げているようだ。
 大人しそう見えても彼女は魑魅魍魎の類い。近い未来に何かしらの被害が出ると分かっているゆえ、引き返せと云われて素直に聞くわけにはいかない。
 此方が帰らぬと察した壱岐はそっと瞼を閉じた。
「……そう、ですか。ならばわたくしも戦わねばなりませぬ」
 帰らぬならば帰すまで。
 神楽鈴を再び鳴らした羅刹の巫女は瞼を開いた。その瞳には静かながらも確かな敵意が宿っている。
 しかし、帰るのは猟兵達ではない。
 骸の海から蘇り、いずれは世を乱す存在に成り果てるしかない巫女の方だ。双方の視線が交差し、避けられぬ戦いが始まる予感が巡る。
 そして――雨上がりの社にて、あらたな戦いが幕をあけた。
 
●魂神楽と黄泉降ろし
 雨が止んだ。
 それまで聞こえていた雨音は途切れ、今は紫陽花の葉や萼から雫が滴る幽かな音が時折響くだけとなった。紫陽花の園を越えた先には古びたちいさな社がある。
 鎮守神が祀られた場所なのだろう。
 其処から鈴の音が聞こえた。
 普段はひっそりとしているであろうその場所には、ひとりの鬼巫女がいた。神楽舞を踊っている彼女が手にした鈴が、しゃらり、しゃらりと厳かに鳴り続ける。
 暫し舞を続けていた羅刹の巫女は猟兵達の到来に気が付き、ゆっくりと動きを止めた。
「ようこそ、いらっしゃいました」
 丁寧な口調と柔らかな物腰で、此方を迎え入れた彼女は恭しく礼をする。
 そうして巫女は猟兵達を見渡した。
 違う。違う。この方々は違う。ひとりずつの様相を確かめた羅刹の巫女――壱岐は緩やかに首を横に振った。
「御出下さったところ申し訳ありませぬ。わたくしは彼のひとを呼んでいるのです。皆々様方が此処にいらっしゃっては、彼の方は御出にならぬでしょう」
 それゆえにお引取り下さい。
 彼のひとが誰であるのかは語らぬまま、壱岐は静々と告げた。
「わたくしは彼の方を神の国へ送らねばならぬのです。どうか、なにとぞ邪魔立てなさらぬようお願い申し上げます」
 つまりは此処から去れと告げているようだ。
 大人しそう見えても彼女は魑魅魍魎の類い。近い未来に何かしらの被害が出ると分かっているゆえ、引き返せと云われて素直に聞くわけにはいかない。
 此方が帰らぬと察した壱岐はそっと瞼を閉じた。
「……そう、ですか。ならばわたくしも戦わねばなりませぬ」
 帰らぬならば帰すまで。
 神楽鈴を再び鳴らした羅刹の巫女は瞼を開いた。その瞳には静かながらも確かな敵意が宿っている。
 しかし、帰るのは猟兵達ではない。
 骸の海から蘇り、いずれは世を乱す存在に成り果てるしかない巫女の方だ。双方の視線が交差し、避けられぬ戦いが始まる予感が巡る。
 そして――雨上がりの社にて、あらたな戦いが幕をあけた。
 
逢坂・理彦
君にとって大事な神楽舞なのはわかるけれど…俺はそれを止めねばならない。
君の呼ぶそれがか君そのものかが他の誰かを害してしまうから。

君の神楽舞を止めるのだから…そうだね。
代わりに俺が神楽を舞おう。
もちろん君の呼びたい人を呼ぶためじゃない。
君を骸の海に送るためのものだ
UC【狐神楽】
【破魔】と【祈り】を載せて。
【早業】で【なぎ払う】
【武器受け】からの【カウンター】
敵攻撃は【戦闘知識】と【第六感】よる【見切り】


●奉納神楽
 雨上がりに鈴が鳴る。
 神聖な音色を響かせて舞う鬼巫女を前に、理彦は双眸を緩く細めた。
 邪魔をしないでください、と言わんばかりに羅刹の女は神楽鈴を鳴らし、静かな敵意を顕にしている。
「君にとって大事な神楽舞なのはわかるけれど……」
 理彦は頭を振った。
 彼女が誰を、そして、何を呼びたがっているのかは分からない。
 大切な理由があるだろうことだけは分かっているが、おそらくは問いかけても簡単に答えてはくれないだろう。
 そのうえ、彼女は既に魑魅魍魎のひとつと化した身。
 猟兵である理彦達と彼女はどうあっても真には相容れぬものだ。
「俺はそれを止めねばならない」
 宣言めいた言葉を落とした理彦は身構えた。
 羅刹の巫女が鈴を更に鳴らすと、恨みを残した幽鬼が現れる。巫女のようにはなれず、ヒトの形を成せないまま顕現したものなのだろう。
 力を受けた巫女には霊の呪縛が絡まったが、相手の力はかなり強化されている。
「君の呼ぶそれか、君そのものかが他の誰かを害してしまうから」
 理彦は浮遊する幽鬼が此方に向かってくることを察し、地を大きく蹴った。纏わり付いてくるそれらは見るだけで心を締め付けてくるかのようだ。
 それもこれも恨みが強く感じられるゆえ。
 何にせよ、巫女の動きを止めなければ力は収まらないままだろう。
「君の神楽舞を止めるのだから……そうだね」
 ふと思い至った理彦は壱岐を見据え、狐神楽を舞うことを決めた。瞬く間に狩衣姿に変身した彼は墨染桜に霊力を纏わせてゆく。
「代わりに俺が神楽を舞おう」
 もちろんこの力は彼女の呼びたい何かを呼ぶための舞ではない。
 理彦と壱岐。
 双方が鳴り響かせる鈴の音が重なり、不思議な雰囲気が辺りに満ちていった。
 そう、これは――。
「君を骸の海に送るためのものだ」
 しゃらりと舞う神楽に破魔の力と祈りを載せて、理彦は力を紡ぐ。
 手にした薙刀で風を斬るように、しなやかに。穏やかながらも隙は決して見せぬ動きで以て幽鬼を受け止めて薙ぎ払った。
 鈴の音が鳴る。
 ふたつの舞の音色は厳かに、戦いの最中に響き渡っていく。
 
成功 🔵🔵🔴

黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

いったい誰を呼んでいるんだろう?
「送る」って言ってるが過去に降ろしてそのまま放置してしまった、と言う事なのかなぁ。

まずはUC五月雨と合わせて出来るだけの柳葉飛刀を投擲し、式神を落とす。俺自身が壱岐に接近するだけの間ができればいいので全部落とす必要はない。
その隙に存在感を消し目立たない様にし、壱岐に接近。直接胡でマヒ攻撃を乗せた暗殺を仕掛ける。
仕留めきれなくても、マヒが入って他猟兵の手助けになればいい。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれない物理攻撃は黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性、オーラ防御で耐える。


●送還の意味は
 羅刹の巫女が舞を踊り、鈴を鳴らす。
 その瞬間、瑞樹たち猟兵の前に物忌みの式神が現れ始めた。
「流石に数が多いな」
 瑞樹は周囲に浮かんでいる式神達を数えようとしてすぐに止める。その理由は数える時間が惜しいほどの量が此方に向かってきたからだ。
 右手に胡、左手には黒鵺。
 先程の戦いと変わらぬ二刀流で以て式神に挑む瑞樹。彼は迫りくる式神に向けて素早く刃を振るった。胡は真上に斬り上げ、黒鵺で横薙ぎに敵を散らす。
 それらは一撃で散るほどに弱いものではあるが、如何せん数が多すぎた。
 その間にも鬼巫女、壱岐は神楽鈴を鳴らし続けている。
「いったい誰を呼んでいるんだろう?」
 瑞樹は純粋な疑問を浮かべた。
 確か彼女は先程、『送る』と言っていた。それを呼び出して待っているということは、過去に降ろした何かをそのまま放置してしまったのだろうか。
「どうなのかなぁ、聞いても答えてくれないよな」
 瑞樹はふと独り言ちる。
 元から一人言におさめようと思っていた通り、壱岐に声は届いていなかった。その代わりに更に呼び起こされた式神が瑞樹に襲いかかってきた。
 これではいくら斬ってもきりがない。
 それならば数には数で勝負だとして、瑞樹は力を紡ぎあげていった。
 五月雨――途切れずに降りゆく雨の如く、彼が複製していくのは自身の本体である黒鵺の刃だ。其処に合わせて出来る限りの柳葉飛刀を投擲すれば、式神が先程以上のスピードで地に落とされていった。
 散りつつ、半分に千切れながらも迫ってきた個体もいる。
 瑞樹は的確に相手の軌道を見極め、胡で以て式神の残滓を斬り伏せた。そして、式神を散らすことで出来た射線へと駆ける。
 狙うは壱岐の喉元。
 彼女に接近するだけの間ができればいいので全てを落とす必要はなかった。
 未だ周囲を飛び交っている式神の合間を抜け、瑞樹は壱岐を真っ直ぐに捉える。息を殺し、存在感を消して目立たないように――。
 瑞樹は一気に壱岐に迫ると同時に胡による直接攻撃を仕掛ける。
 一閃が巫女に見事に入った。しかし、相手は羅刹。その身体からは想像できぬほどの怪力で以て胡が押し返された。
 咄嗟に自分から後ろに下がって敵の力をいなした瑞樹は身を翻す。
「やはり仕留めきれはしないか」
 されど刃に込めた麻痺の力が相手に巡った手応えはあった。これが他の猟兵の手助けになればいい。そう考えた瑞樹は更に斬り込む隙を窺う。
 瑞樹は再び呼び起こされた式神を察して、その体当たりを見切って躱した。回避しきれぬ相手は黒鵺を振るうことで軌道を逸して受け流し、そのまま反撃を叩き込む。
 鋭い式神の一閃が瑞樹の頬を裂く。
 痛みは耐え、瑞樹は式神の壁の向こうに佇む羅刹の巫女を見据えた。
 暫くはあの式神達を蹴散らすべきだろう。胡と黒鵺を握り直した瑞樹は、壱岐から意識を逸らさぬまま戦場に飛び交う式神に刃を差し向けた。
 そして、戦いは続いていく。
 
大成功 🔵🔵🔵

篝・倫太郎
【華禱】
人待ちのオブリビオン、か――

たった1人を待つ、ってのは
夜彦の主を思い起こさせるな……

でも、あれは夜彦の主じゃない
あの、綺麗な人じゃない
今を生きてる人達に害を及ぼす前に還そうぜ

拘束術使用
舞を舞わせない為のに鎖で先制攻撃と同時に拘束
拘束を確認したらダッシュで接近して破魔を乗せた華焔刀でなぎ払い
以降はフェイントを交ぜつつ攻撃

拘束から逃れるようならUCを再度使用して確実に動きを止める
敵の攻撃は見切りと残像で回避

待ち人はきっと過去に居るぜ?
そこに送ってやるからさ、還んなよ

もしも、この女のように……
夜彦の主が人待ちのオブリビオンになったとして
俺達は同じように還せるだろうか

そう思うけれど言葉にはせず


月舘・夜彦
【華禱】
オブリビオンになって尚、人を待ち付けていると
普段はあまり気にしないというのに、艶のある美しい髪は今は主を思い出す
先程の事といい、過去を思い出す
――参りましたね

それでも刃は向けねばならない
相手がオブリビオンだからこそ、そしてその想いが
誰かを殺めてしまうものになってはならないからこそ

神楽舞に警戒し、十分に舞えぬように接近戦
あとは鈴の音も合図として見極める
神秘的な舞に心震わせられようとも、刃を決して鈍らせてはならない
彼女に同情する想いよりも、悲しみを終わらせる
私にはその覚悟がある

倫太郎殿と連携して距離を維持
視力にて動きを読み、倫太郎殿の攻撃を防ぐまたは躱した所に
追い打ちで早業の抜刀術『神風』


●二人の距離
 何かを待ち続け、喚んでいるという鬼巫女。
 その対象が人間であるのか、それとも神と呼ばれしものなのかは不明だ。
 曰く、彼のお方と称される誰かの正体を突き止める気はなかったが、倫太郎はふと考えを巡らせた。
(たった一人を待つ、ってのは夜彦の主を思い起こさせるな……)
 倫太郎で身構えている彼に横目で視線を向ける。
 夜彦もまた、羅刹の巫女を見て思うことがあった。
 魑魅魍魎となっても尚、何者かを待ち続けている存在。普段はあまり気にしないというのに、艶のある美しい髪を見た夜彦は嘗ての主を思い出していた。
 それはきっと幻を見たからだ。
 過去を思い出した夜彦は肩を竦めながら、ぽつりと呟く。
「――参りましたね」
 倫太郎はその言葉から夜彦の思いを感じ取り、首を横に振ってみせた。
「あれは夜彦の主じゃない。あの、綺麗な人じゃない」
「……はい」
「今を生きてる人達に害を及ぼす前に還そうぜ」
 彼からの言葉に頷きを返した夜彦は刃を構えてみせる。それが過去と記憶、現状を切り分けた証だと感じた倫太郎は薄く笑んだ。
 夜彦は巫女を見据える。
 己にどのような思いがあろうとも、刃は向けねばならない。
 相手が魑魅魍魎だからこそ――そして、その想いが誰かを殺めてしまうものになってはならないからこそ。
 刹那、倫太郎が拘束術を解き放った。
 舞を舞わせない為に伸ばした不可視の鎖が壱岐を貫かんとして迫る。災いを縛る鎖は彼女が持つ神楽鈴を絡め取らんとして巻き付いた。
 その瞬間を狙って駆けた倫太郎は破魔を乗せた華焔刀で一気に薙ぎ払う。
 だが、相手も羅刹。
 その見た目に似合わぬほどの怪力を持っており、鎖を腕の一振りで弾き飛ばした。
「どうぞ、邪魔をなさらぬよう」
 静かで丁寧な言葉と共に視線が返される。
 しゃらん、と鈴の音が鳴ったが、そのときにはもう倫太郎に続いた夜彦が素早く抜刀して切りかかっているところだった。
 神風の如き鋭い一閃が振るわれ、羅刹の巫女を斬り裂く。
 しかし、ほぼ同時に素早く物忌みの式神が相手の周囲に浮びあがった。このままでは夜彦も自分も式神の奔流に巻き込まれると察し、倫太郎は横に飛ぶ。
「これじゃフェイントも掛けられないな」
「隙は必ず出来るはずです」
 夜彦は倫太郎の声を拾い、完璧なものなどないのだと語ってみせた。
 ああ、と首肯した倫太郎は再び見えぬ鎖を解き放つ。だが、壱岐とて此方の動きを見切れぬわけではないようだ。
 身を反らし、更に神楽鈴を鳴らした彼女は更に多くの式神を呼び寄せた。それでも倫太郎は怯まず、夜彦と共に式神を蹴散らしていく。
 神秘的な舞に心を震わせられようとも、刃を決して鈍らせてはならない。
 彼女に同情する想いよりも、悲しみを終わらせる。
 ――私にはその覚悟がある。
 夜彦は胸中に強い思いを抱き、夜禱を振るい続けていた。倫太郎は何とか隙を突こうと狙い、戦場を駆けて素早く立ち回っていく。
 そして、羅刹の巫女に声を掛けた。
「待ち人はきっと過去に居るぜ? そこに送ってやるからさ、還んなよ」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
 すると壱岐が訝しげに問う。
「そりゃあんたが過去から蘇ったものだから――」
「……違います」
 壱岐は哀しげに首を横に振った。
 どうやら待ち人は過去になどいないと言いたいようだ。
 しかしそれ以上は語らず、彼女は更に神楽を舞っていく。夜彦は逆に、巫女には現世に何か遺したものがあるのだと察する。倫太郎殿、と名を呼ぶだけに留めた彼はこれ以上は過去について語らぬよう目配せを送った。
 分かった、と答えた倫太郎は壱岐との距離を計りながら、不意に思う。
(もしも、この女のように……)
 夜彦の主が彼女の如く人待ちのオブリビオンになったとして、自分達は同じように還せるだろうか。考えは言葉にせず、倫太郎は華焔刀を切り返す。
 夜彦もまた、倫太郎と連携しながら双方の戦いやすい距離を維持していった。
 迫り来る式神の動きを読み、倫太郎へ攻撃を防いだ夜彦は抜刀術を放つ。神風の一閃は式神を散らせながら見事に巡った。
 されど、夜彦が刃を振るう度に新たな式神が生み出され、此方に向かって襲いかかってくる。その勢いは壱岐の力が弱るまで収まらないだろう。
 戦いは未だ終わらない。
 それならば共に最後まで戦い続けるだけだ。
 互いの距離を意識しあい、頷きあった二人は戦場を果敢に駆けていく。
 
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

天御鏡・百々
神社の巫女……にしては、邪気が強すぎるな
彼の方が誰かは知らぬが、どうせ邪悪なる企みであろう
汝を成敗し、この神社に平穏をとりもどすとしよう!

黄泉の国の神々に、怨霊の類いを宿すか
やはり相容れぬ力を使うようだな

『真実を映す神鏡』を使用する
我が力にて元の壱岐に戻し、強化を解除してやろう

そして、ユーベルコードを封じたところに
真朱神楽(武器:薙刀)で一閃だ!
(破魔110、なぎ払い35、浄化20、神罰5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG


●鈴と鏡と神楽の舞
 響く鈴の音は澄み渡っている。
 しかし、舞を踊る巫女の方はどうだろうか。百々は飛び交う式神と羅刹の舞を見つめながら、双眸をそっと細めた。
「神社の巫女……にしては、邪気が強すぎるな」
 少なくとも、この社に仕える者ではないことは一目で分かる。
 おそらくは骸の海から存在が滲み出した際に、偶然にも此度の神社に辿り着いたのだろう。被害を出しながら彷徨うようなことはなく、この場に留まってくれたことは不幸中の幸いかもしれない。
「彼の方が誰かは知らぬが、どうせ邪悪なる企みであろう」
「……邪悪。其方から見ればそう映るのやもしれませんね」
 羅刹の巫女、壱岐は百々の言葉を聞いて顔を上げた。否定するのでも肯定するのでもない曖昧な態度だったが、百々にはちゃんと分かっている。
 此方が悪と断じるものも、相手方からすれば正義。
 その逆もまた然り。
 それゆえに百々は戦いを挑むだけ。和解は出来ぬ相手だと分かっている以上、勝敗を決めるのは武力と信念のぶつかりあいだ。
「汝を成敗し、この神社に平穏をとりもどすとしよう!」
 百々は意気込みを言葉に変え、神鏡としての己の力を顕現させてゆく。
 その間に壱岐は黄泉から霊魂を降ろしていった。底の国より出でし神々の残滓めいた、おどろおどろしい力が彼女を包み込む。
 呪縛が壱岐を包み込んでいるが、相手の力は膨大なものになっていった。
「黄泉の国の神々に、怨霊の類いを宿すか。やはり相容れぬ力を使うようだな」
 その力は神聖とは呼べない。
 元より怨霊を呼ぶ類の者だったのか、それとも骸の海に沒んでから変容したのか。それすら聞けず、きっと本人も答えようとはしないだろう。
 怨霊の力が巡る。だが、それもまた百々の狙い。
「我は真実を映す神鏡なり!」
 ――幻術も変化も、鏡の力で全て暴いてくれよう。
 宣言と共に百々は両手を広げた。その胸の前に光り輝く鏡が現れ、壱岐の姿をはっきりと映し出す。
 真実を映す神鏡は彼女が纏った神々や怨霊の力を瞬く間に消し去っていった。
「な、これは……?」
「見たか、これが我が力だ」
 壱岐は神霊による強化が解除されたことで驚きの声をあげる。
 同時に己の身体が縛られていることを察し、何とか抜け出そうと足掻いた。しかし百々はすかさず地を蹴った。
 式神が舞う戦場を駆け抜け、真朱神楽を振り上げる。
 朱色の薙刀が雲間から覗いた薄い太陽の光を反射して煌めいた。その瞬間、巫女の身体は刃によって切り裂かれる。
 されど、羅刹の巫女も捕縛から何とか抜け出した。
「邪魔はさせません。何度向かって来られようとも、わたくしは……」
「我とて、幾度戦いが巡ろうとも退くものか」
 両者の視線が重なる。
 壱岐は神楽鈴を、百々は真朱神楽をしかと握り――此処から更に続いていく戦いへの思いが強められていった。
 
成功 🔵🔵🔴

春霞・遙
なるほど、不本意に送られるほうはこのような気持ちなんですね。
とは言っても最後まで流されるわけにはいかないので抗わせてください。
神殺し、鬼返し、魂鎮め、逝くものの道を照らす篝火をあなたに捧げます。

神楽を邪魔してはいけないと感じても、神楽に惹かれて来たモノを退治ることはできるでしょう。
木の杖で黄泉から降ろされたモノたちを「吹き飛ば」すつもりで「なぎ払い」や「気絶攻撃」等攻撃を仕掛けます。
彼女を傷つけるモノを「破魔」の力を込めて【悪霊祓いのまじない】します。

ここではない別のトコロでまごう事なきその人とまみえてください。そして出会えたならば何処へなりとも。


●祓いの枝
 雨上がりの空の下で鈴が鳴る。
「なるほど」
 羅刹の巫女との戦いが巡る最中、遙は静かに頷いた。
 他の猟兵に向けて解き放たれた式神が遙の横にも迫ってくる。それらを躱した遙は身構え直し、己の思いを言葉に変えた。
「不本意に送られるほうはこのような気持ちなんですね」
 木の杖を振るって式神を穿った遙は頭を振る。
 喚び、送り還す。
 それが此度の敵である羅刹の巫女、壱岐の力なのだろう。先程に受けた海月の力にも何処か似ていると感じながら遙は相手を見据える。
「とは言っても最後まで流されるわけにはいかないので抗わせてください」
 神殺し、鬼返し、魂鎮め。
 逝くものの道を照らす篝火を、あなたに。
 ――夏至の夜を汚す悪しきものを追い払え、聖なる炎を消す水の流れを探し出せ。
 詠唱と共に悪霊祓いのまじないが捧げられ、ハシバミの枝が戦場に舞う。その間も羅刹の巫女は神楽を踊った。
 流れるような仕草で舞う神楽は美しい。
 ハシバミの枝は外れたが、遙にとってはそれでも構わない。
 巫女は黄泉の神々や怨霊を次々と降ろしていく。その舞は邪魔してはいけないと感じさせるものであるが、遙は心を強く持った。
 たとえあの舞に心が揺らがされようとも、戦いを諦めるまでには至らない。それに神楽に惹かれて来たモノを退治することは出来る。
 遙は木の杖を再び振るった。
 彼女の狙いは、降ろされたモノたちを吹き飛ばすこと。
 この地に宿る力の流れを感じ取った遙は一気に力を込めた。薙ぎ払う一閃によって、壱岐に力を与えているモノがまるで気絶するかのように落ちていく。そして、羅刹の巫女に与えられていた力も剥がれ落ちた。
「あの力は、彼女自身も傷つけているのですね」
 身を削ってでも喚びたいもの、彼のお方とは誰であり、何なのか。
 問いかけはしない。問うたとしても、よほど上手くやらなければ答えてはくれないだろう。それでも巫女が自分で自分を傷つけることは見ていられない。
 そう考えた遙は、壱岐に纏わりつくモノたちを薙いだ。
 破魔の力を込めて悪霊を祓う。
 ハシバミの枝が再び解き放たれたことで、まじないは更に巡った。
 尚も此方に向かってくる式神を地に落としながら、遙は羅刹の巫女を見つめる。戦いの最中であるというのに、彼女の眼差しは何処か遠くを見ているように思えた。
 無論、相手からの攻撃も激しい。
 壱岐が更に呪縛と神の力を纏おうとしていることに気付き、遙は木の杖を握った。
 何度、抵抗されようとも力を振るい続けるだけ。
「ここではない別のトコロでまごう事なきその人とまみえてください。そして出会えたならば何処へなりとも」
 それが今の遙が巫女に告げられる最大限の言葉だった。
 そうして、遙の紡ぐ悪霊祓いの力は更に巡り続けていく。雨は止んだが神楽鈴の音色は泣いている。何故だか、そんな風に思えた。
 
大成功 🔵🔵🔵

蘆名・臣
月守(f19326)と共に
アドリブ、マスタリング歓迎

_

──悪いな、お姫さん。
お前を置いて、帰るわけにはいかないんだ。

▼戦闘
月守との連携を意識し、彼女を庇うことを最優先
月守は傷を負うことを厭わない。危なっかしくて見ていられない
「…あまりおてんばするなよ、月守」

敵からの攻撃をさばきつつ、しかるべきタイミングにてユーベルコード【鬼刃双破】を発動
…女に暴力を振るう趣味は無え。
だが、護るべきものを見誤ってはならない。
無意識に狂いそうな手を叱咤し、狙うは鬼巫女──
──然し真の狙いは奴の足場
鬼巫女を斬るのと同時に、月守へ好機を繋ぐ。

_
(彼女が昏睡状態に陥った後は抱きとめて、
目が覚めるまで彼女の護衛に務める)


月守・ユア
臣さん(f22020)と
アドリブ大歓迎

「彼のひと…というのは、君にとってとても大切なひとなんだね

でも、残念だ
その儀式を続けることは叶わない
大人しく骸の海へ、おかえり」

戦闘
臣さんと連携
傷を厭わず戦好きの狂人のように攻撃を打ち込む
「ははっ
なら、そのおてんばの背中預けるよ♪」

”先制攻撃、高速詠唱”
呪花と月鬼の刃に呪詛を込めてUC発動

ダッシュで敵に接近
敵の攻撃には武器受けをし
臣さんが作ってくれる好機を逃さない
敵を狩り尽くす殺戮衝動に身を任せて切り込む
傷口をえぐり、踊るように刃を振るい敵を蹂躙する

事後
UCの代償で昏睡状態に至る
代償が解けるまでは彼に任せる
「転がしておいてもいいからね~」なんて言葉を添えた


●月蝕と鬼刃
 水溜まりに雫が跳ねた。
 それと同時に神楽鈴が、りん、と鳴る。波紋を作っていく雨の名残から視線をあげ、ユアは巫女を見据えた。
「彼のひと……というのは、君にとってとても大切なひとなんだね」
 誰かを、或いは何かを呼ぼうとしている羅刹。
 彼女とユアの視線が一瞬だけ重なった。巫女は何も答えぬまま、神を迎え入れる神楽舞を踊り続けている。
「でも、残念だ。その儀式を続けることは叶わない」
 大人しく骸の海へ、おかえり。
 ユアは静かな声色で羅刹の巫女、壱岐へと語りかける。その隣には臣が控えており、同じように壱岐を見つめていた。
「――悪いな、お姫さん」
 お前を置いて、帰るわけにはいかない。
 ユアの隣で己の思いを言葉にした臣は強く構える。刹那、他の猟兵に向けて放たれた物忌みの式神の一部が臣達の元にも迫ってきた。
 ユアは敵の配下らしきそれらを察知し、真正面から駆けていく。
 やはりな、と肩を落とした臣はその後を追った。鋭く地を蹴って彼女に追いついた一気に前に出た。そして臣は一閃を振るい、襲ってきた式神を地に落とす。
 もし臣がこうしていなければ、ユアは傷だらけになっていただろう。式神の力はそれほど強くはないので致命傷には至らないだろうが、それでも傷は傷だ。
「……あまりおてんばするなよ、月守」
 ははっ、と笑って答えたユアは敵を蹴散らしてくれた臣に視線を返す。
「なら、そのおてんばの背中預けるよ♪」
「任されたが、過信はするな」
「勿論!」
 それでも信頼しているといった様子でユアは臣を追い抜いていった。残っている式神がユアを狙っていたが、臣がそれを許すはずがない。
 刃では届かぬと察した彼は咄嗟に二丁拳銃を構えた。災禍の子と星の獣、それぞれの名を宿す銃の引き金をひけば、鋭い弾丸が式神達を貫く。
 まさに彼が背中を守ってくれていると感じながら、ユアは鬼巫女との距離を詰める。
 その頃には相手も降ろした神や幽鬼の力を纏っていた。
 刃が振るわれるが、羅刹の巫女は宿した力で以てそれを跳ね返す。
「どうか、邪魔はならさぬよう」
「邪魔をする心算はないよ。でも、その力を確かめてみたくてね!」
 巫女が語る言葉に対し、ユアは首を振る。
 そして呪花と月鬼の刃に呪詛を込め、己の力を解放した。身に宿る月と死が満ち、命を蝕む魔力が広がってゆく。
 ユアが薄く笑んだと思った瞬間、これまで以上の疾さで刃が振り下ろされた。
 宛ら戦好きの狂人の如く――否、そうとしか見えぬほどの連撃が壱岐に見舞われて続けている。臣は周囲の式神を散らしながら彼女の様子を確かめた。
 壱岐も反撃に入っている。
 しかし、ユアは防御など一切行うことなく立ち向かっていた。
(危なっかしくて見ていられないな)
 臣は彼女の傍に駆ける。
 ユアは羅刹と打ち合い、殺戮衝動に身を任せて切り込んでいた。その素早さは目を瞠るほどのものだが、臣は知っている。
 彼女の勢いはいつまでも続かないものであり、代償があるのだと――。
「しぶといですね。これで如何でしょうか」
 羅刹の巫女が幽鬼の力を振るい、衝撃を放つ。
 臣はユアの前に咄嗟に踏み込むことで庇い、銃の代わりに抜いた刃で以て敵からの攻撃を見事に捌いた。
「……女に暴力を振るう趣味は無え。だが――」
 護るべきものを見誤ってはならない。
 臣は無意識に狂いそうな手を叱咤し、鬼巫女を狙う。
 振り下ろした鬼刃を見きったらしい壱岐は一閃を避けた。然し臣の真の狙いは相手の足場だ。単純であるからこそ重い一撃が地面に叩きつけられる。
 それによって土と石が弾け飛び、大きな衝撃波となって迸った。
 今だ、と臣が目配せを送る。
 それを受けるやいなや、ユアは臣が作ってくれた好機に飛び込んだ。決して逃さない。逃すはずがない。
 傷口を抉り、踊るように刃を振るえば蹂躙のひとときが巡る。
「く、う……」
「これで――」
「月守!」
 壱岐とユア、臣の声が重なった。
 そろそろ時間切れだ。ユアに呼び掛けた臣は代わりに前に出ることで、壱岐からの反撃を受けた。そのまま彼女を守る気概を見せた臣と鬼巫女の視線が交差した。
 その瞬間、横合いから別の猟兵の一撃が飛んでくる。はっとした壱岐は臣達から離れ、其方の対応に追われていく。
 臣が振り向いたとき、ユアの意識は途切れかかっていた。
「後は任せようかな。適当に転がしておいてもいいから、ね……」
「そんなこと……」
 するものか、と告げる前にユアは昏睡状態に陥る。倒れゆく身体を抱きとめた臣は、無茶をする、とちいさく呟いた。
 然し、確かに自分は彼女に後を託されたのだ。
 それにユアも羅刹の巫女へと痛打を何度も与えていた。あの連撃が戦いの行方を左右したと言っても過言ではないだろう。
 臣は己を律する。
 後はユアの意識が戻るまで彼女の護衛に務めるのが自分の役目だ。
 目を閉じて眠るように意識を失っているユア。その髪が目や口元に掛かっていることに気付き、臣は指先でそっと髪を払い除けてやる。
 たとえ自分が傷付こうとも彼女を絶対に守り抜くと決め、臣は戦場を見渡していった。
 そして、再び鈴の音が響く。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

世母都・かんろ
【烟雨】
ゆめが晴れて
紫陽花の彩が綺麗だった
首を横に振るその人の瞳が
寂しいほど凛としてたから

あな、た、は
誰、を、送ろう、と、して、いる、の

答えてくれなくても
今のわたしは
あなたを還すのが、役目

叶、さん
わたし
うたう、ね


ビニール傘を転がして
走り去ったきみのこと

今でもゆめに見て泣くの
あなた振り向いてくれやしない

いつか愛してやれるかしら
きみがぼくにしたように
ぼくがぼくをぼくとして

ねぇまた夏が来た時は
わらってください
傘をまわして

きっと虹が煌めくわ
誰も彼もの心にいつか

ねぇまた
夏が来たら


歌を
パフォーマンスを
ダンスを
精一杯の力に乗せて
黄泉の巫女のおまじないより
烟るかみさまを助けるために

わたしのうた
きいて、居て


雲烟・叶
【烟雨】

ま、譲れないもの同士がぶつかるんなら、勝った方が残るのが道理と言うものですねぇ
丁寧に語り掛けた所で、敵は敵

……成長しましたねぇ、甘露のお嬢さん
促すより先に甘露が選択をしたのが、少しだけ嬉しい
その目線が成長を見守る親のようなそれだとは、親を持たぬヤドリガミは気付かない

多分、きっと、三千世界でたったひとり
この娘だけが、悍ましいはずの凶悪な呪物を、恐れられるべき物を、かみさまとまろい響きで示すのだ
すみませんね、あんたの舞を見るよりあの子の歌の方が好きなので

負の感情なら海月の夢の被害者から拾えますから
不快に感じた己の負も、燃料代わりに
強化した【呪詛、生命力吸収、吸血、継続ダメージ】をありったけ


●甘雨に蠱烟
 願って、望んで、夢から連れ出してもらった。
 ゆめは晴れて、雨はあがっている。紫陽花の彩が綺麗だった。戻ってきた情景の美しさを感じながら、かんろはその先に佇む人影に目を向ける。
「あな、た、は」
「……」
「誰、を、送ろう、と、して、いる、の」
「…………」
 途切れがちな声で問いかけてみる。対する羅刹の巫女は答えなかった。
 彼女は誰かを喚んでいる。きっと未だ呼ぶことすら出来ていない状態だ。されど、魑魅魍魎と化した彼女が行うことはいずれ世を破滅に導くのみ。
 叶はかんろの隣に立ち、頭を横に振る。
「ま、譲れないものがある者同士がぶつかるんなら、勝った方が残るのが道理と言うものですねぇ」
 相手はオブリビオン。此方は猟兵。
 丁寧に語り掛けた所で両者は敵同士でしかない。首を横に振るその人の瞳は、寂しいほどに凛としていた。
 かんろは叶と壱岐を交互に見遣る。
 返答はいつまで待っても望めないだろう。しかし、答えてくれなくても変わらない。
(今のわたしは、あなたを還すのが、役目)
 夢の世界のような声はない。
 望んだままのものは、自分で振り払ってしまった。それはこの戦いに挑むため。即ち、今の自分に与えられた役目を果たすためだ。
 かんろの眼差しは真っ直ぐに、鬼巫女に向いていた。
「叶、さん」
「ええ」
「わたし、うたう、ね」
 名を呼ばれ、叶は静かに頷く。
「……成長しましたねぇ、甘露のお嬢さん」
 促すより先にかんろが自ら選択したことを宣言したのが、少しだけ嬉しかった。
 その目線が成長を見守る親のようなそれだとは、叶自身は気付けない。理由は彼が親を持たぬヤドリガミであるからなのだが、親という概念は彼とて僅かに理解していた。この胸の奥に宿る感情が、幼い頃の自分を育てた人達――穏やかな頃の老夫婦と同じだということも、今の叶は知ることができないまま。
 しかし、彼がかんろに向けた視線には嘗ての彼らに似た優しさが宿っている。
 それに――。
 多分、きっと、三千世界でたったひとり。
 この娘だけが、悍ましいはずの凶悪な呪物を、恐れられるべき物を、かみさまとまろい響きで示すのだろう。
「すみませんね、あんたの舞を見るよりあの子の歌の方が好きなので」
 叶は儀式としての神楽舞を踊る鬼巫女に宣言する。
 それと同時に瞼を閉じたかんろが、花唇をゆっくりとひらいた。
 そして、詩が戦場に紡がれはじめる。
「――♪」

 ビニール傘を転がして 走り去ったきみのこと
 今でもゆめに見て泣くの あなた振り向いてくれやしない

 いつか愛してやれるかしら
 きみがぼくにしたように ぼくがぼくをぼくとして

 ねぇまた夏が来た時は わらってください
 傘をまわして
 きっと虹が煌めくわ 誰も彼もの心にいつか

 ねぇまた
 夏が来たら――

 雨を謡うかんろの歌は高らかに響き渡る。
 叶はその声を聞きながら、呪詛を紡いでいく。同時に不快に感じた己の負も燃料代わりに燃やして呪いを強める。
 叶が力を溜めているのだと気付き、かんろは更に歌った。
 精一杯の力に乗せて、黄泉の巫女のおまじないよりも烟るかみさまを助けるために。
 かたや、黄泉の神を呼ぶ巫女舞。
 かたや、夏を望んで愛を歌う唄。
 邪魔をしてはいけない。聴き続けていたい。双方の力は相反するものであり、音となって重なり、ぶつかっていく。
 そして――其処に呪詛が交じることで決着は付いた。
「くっ……これは……?」
 壱岐の体勢が揺らぎ、神楽舞が中断される。羅刹の巫女は呪詛を跳ね返しながら恨みの幽鬼を呼び出してその身に纏った。
 代償としての血を流しながらも、此方に対抗しようとする巫女の意思は強い。
 だが、叶は決して加減などしない。
「さぁて、いきますよ」
 更なる呪詛を放つべく、叶は腕を伸ばした。彼処へ、と示すように指先が壱岐に差し向けられる。そうして巡った呪いの力は巫女を蝕んでいった。
 かんろは壱岐から目を逸らさぬまま、叶のために歌い続けると決める。
 今だけはしゃぼん玉の瞳は揺らがない。すぐ隣に、彼が居てくれるから。
「――わたしのうた。きいて、居て」
 其処から更に、伸びやかな歌声が響いていった。
 雨上がりの空に煙が揺らぐ。謳われる詩にはちいさくとも確かな思いを込めて。
 均衡を保ちながら重なるふたつの力は戦いが終わるまで止まらない。
 そうして、歌と呪に宿る思いは巡ってゆく。
 祈りをきみに。夢をあなたに。願いはいつか、彼方まで。
 巫女の願いも望みも、あの夢のように叶えられはしないけれど。どうか静かな海に還れますようにと、願いを込めて――。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

樹神・桜雪
【WIZ】
あなたも誰かを呼んでるんだね。なんの為かは知らないけど。
でもその儀式はダメ…だよ。

関係ない人を巻き込んじゃう。それはダメ。
ごめんね、止めさせてもらうよ。

相手の動きを見てから仕掛けにいこう。
薙刀で2回攻撃かつなぎ払う。
ボク自身の防御と回避はあまり考えないけど、傍に仲間がいるなら積極的にかばうね。
ボク自身への攻撃はカウンター狙う。
ヨモツオロシにはUCで対処。神様を降ろした相手だもん。出し惜しみはしないよ。全力かつ捨て身でいこうか。

……そこまでして連れていきたい人がいるの、少しだけ羨ましいな…。
ボクも彼を待っていたかった、な。
…何でもないよ。ただの人形の感傷だよ。


●逢いたかったひと
 巫女は誰かを求めて呼んでいる。
 会いたい。再び巡り逢いたい。そう願って、彼女は神楽鈴を鳴らして舞う。
 どうしてか桜雪には分かった。
 羅刹の巫女、壱岐は自身の記憶が朧げなのだろう。それゆえに神楽という儀式でそのひとを招こうとしている。
「あなたも誰かを呼んでるんだね。なんの為かは知らないけど」
 言葉で示したように桜雪もまた、記憶の彼方にいる親友を求めているからだ。
 でも、と桜雪は羅刹の巫女を見つめた。
「その儀式はダメ……だよ」
 静かに待ち続けるのならば構わない。けれど関係ない人を巻き込んでしまう可能性があるならば看過は出来なかった。
 それはダメ、ともう一度言葉にした桜雪は己の思いを宣言する。
「ごめんね、止めさせてもらうよ」
「いいえ、続けさせて頂きます」
 華桜を構えた桜雪は相手の出方を窺った。しゃらん、と鈴が鳴る。その途端、黄泉から降ろされた神や幽鬼の力が巫女を包み込んでいった。
 その力は代償を必要とするものらしい。
 呪縛が壱岐に絡まったが、それ以上に強い力が巡り始めている。
「あれは拙いかも……」
 はたとした桜雪は地を蹴った。薙刀で彼女に纏わりつく幽鬼を切り離すように刃を振るう。衝撃を乗せて薙ぎ払えば、僅かに手応えを感じた。
 このまま続ければ力を削ぐことも可能だ。
 されど、敵とて反撃を行ってくる。桜雪は敢えて防御を捨てるつもりで立ち向かおうと心に決めた。あの幽鬼の力は回避にまわるよりも、正面から突っ切った方が良い。
 これもまた桜雪の戦い方だ。
 壱岐が振るった衝撃波を華桜で受け止めた桜雪は、地を強く踏み締める。
 そして、桜雪は力を発現させていく。
 ――桜花雪月。
 此処に魔を絶つ刃を。求め人を照らす道しるべとして、闇を断つ力を。
 往く道を照らす一閃になるように、と静かな思いを込めた桜雪は一気に踏み込んだ。
 壱岐との距離がこれまでで一番近付く。
 神様を降ろした相手であると分かっている以上、出し惜しみなどしない。全力かつ捨て身で進んだ桜雪は思いきり刃を振り下ろした。
「甘いですね」
「それはどうかな?」
 桜雪の一閃を受け止めた巫女は勝った気でいた。しかし、それは揺動。一瞬後、彼の背から幾本もの桜硝子の太刀が現れた。
 鬼巫女の身体に刃が突き刺さり、着実に力を奪い取っていく。
「う、うぅ……」
 巫女が呻き声をあげながらも抵抗する中、桜雪はぽつりと呟いた。
「……そこまでして連れていきたい人がいるの、少しだけ羨ましいな」
 ボクも彼を待っていたかった、な。
 そんな言葉を落とした桜雪は首を横に振り、何でもないのだと口にした。そう、これはただの人形の感傷に過ぎないのだから。
 今はただ、哀しき巫女を骸の海へと送ろう。
 
大成功 🔵🔵🔵

葵・弥代
【POW】
鈴の音。あっちからか。
……違う?誰かを待っているのか?
その相手がヒトか。ヒトならざるものなのか知らんが。
帰れと言われて帰るわけにもいかない。
俺たちにもやらねばならんことがある。

刀を抜き相手に切先を向ける
見目に騙され手を抜くことはできない
手を抜けば被害がでること必須だと知っているからな

舞う時間は終いだ。
アンタも骸の海へと還れ。

多少だが舞には精通している。素直に良いものだと思う
しかしその舞に込められたものが、祈り捧げているものが天に届けられるわけにもいかない

足を止めそうになる不可思議な感情を無視して一歩を踏み出す
舞を中断させるべく強く刀を握り鋭い一閃を振るう
その四肢のいずれかを頂戴しよう


●舞と朧月
 鈴の音を聞き、顔をあげる。
 弥代が真っ直ぐに見据える先には神楽を舞う羅刹の巫女の姿がある。
 彼女の表情は物憂げで、喩えるならば人待ち顔だ。弥代に視線を返した鬼巫女は一言だけ、違う、と口にして顔を背けた。
 弥代は巫女の様子に首を傾げ、待ち人は何なのかを考える。
「……違う? 誰かを待っているのか?」
 その相手がヒトか、それともヒトならざるものなのか。相手はそれを語ろうとしないだろうし、此方も無理に聞くことはしない。
「お戻りください」
「いや、俺たちにもやらねばならんことがある」
 羅刹の巫女、壱岐から告げられた言葉に首を振った。そして弥代は紫雲の名を抱く刀を抜き放つ。その切先は真っ直ぐに壱岐に差し向けられていた。
 相手は見目こそ穏やかな巫女だが、羅刹であることは分かっている。
 外見に騙されて手を抜くことなどはできない。
 下手に手を抜けば巫女を逃し、この先で必ず不幸が巡る。いずれ被害が出る未来だけは続かせてはいけない。
「舞う時間は終いだ。アンタも骸の海へと還れ」
「お断り致します。わたくしは、彼のお方に逢うために戻ってきたのです」
 還る場所は過去の昏い海ではない。
 そう言っているように思え、弥代は白群の瞳に彼女の姿を映した。対する巫女は神楽鈴を鳴らして舞を踊る。
 神を迎え入れる儀式は妙に神聖なものに思え、弥代は一瞬だけ目を奪われた。
 邪魔をしてはいけない。
 そんな感情が満ちていったが、弥代は瞼を閉じた。
 多少ではあるが舞には精通している。過去に舞扇子として使われていたことを思い返した彼は、巫女の舞が素直に良いものだと感じていた。
 神楽舞には思いが込められている。
 あの芸妓のように、職人を――誰かを想って舞うものだ。
 しかし其処に込められたものや、祈り捧げているものが、天に届けられるのを見過ごすわけにはいかなかった。
 己の感情は押し込めて蓋をして、弥代は踏み出す。
 抗えないものではない。足を止めそうになる不可思議な思いは無視をして、ひといきに相手との距離を詰めた。
 巫女が呼んでいた式神が此方を阻むために迫ってくる。
 刃を振りあげることでそれらを斬り裂いた弥代は、壱岐に迫る。踏み込むと同時に更に振るわれる刃。それによって起こった風圧が鬼巫女に届いた。
 流石の巫女も弥代に対応せざるを得ず、神楽鈴を振るって刃を受け止める。
 羅刹であるゆえに彼女の力は強かった。されど、弥代とて力を緩めることはない。鍔迫り合いの如く拮抗する刃と鈴。
 間近で視線が重なった瞬間、巫女が後ろに下がった。
「逃すものか」
 弥代はすかさず追い縋る。相手が体勢を立て直す前に横薙ぎに振るった剣刃の一閃が、壱岐の腕を穿った。
「く、ぅ……このわたくしが倥るとは……!」
 更に後方に下がった壱岐の腕からは夥しい血が流れ出ている。未だ倒すには至らないが、彼女を揺らがせる一撃は入れられた。
「その腕、次は貰い受ける」
 壱岐との距離を計った弥代は戦いが終わりに向かっていると察する。
 彼女の望むものが他にあろうとも、今の自分に出来るのは骸の海へと彼女を送ることのみ。すまないな、とちいさく告げた弥代は紫雲を構え直した。
 そして、其処から更に戦いは続いていく。
 過去となった存在を、真に在るべき場所に還す為に――。
 
大成功 🔵🔵🔵

五条・巴
誰を待っているのかは知らないけれど、
僕では役不足かな?
望んでいなくとも、僕も見てもらうけれどね

現れた式神の数々にとびきりの夢を、景色を見せてあげる

明けの明星

数で応戦した弓矢で雨雲すらも打ち消して
君を夜空へ導こう
そして雲間から覗く先
月の在処を、僕の居場所を示すよ

君の瞳が閉じるその時まで、僕を映していたなら
それでいいんだ。
君を撃つ僕のことを、忘れないでいて。
とびきりの愛を囁くような、やわい懇願を矢に込めて

僕はここにいる。
君が証明して。

ああ、このあとは晴れるかな?
雨上がりの夜空はとても綺麗なんだよ

紫陽花を見て、下を向いてここまで来た
帰りは夜空を見て歩こうか


●明け星と空
 彼女が誰を待っているのかは知らない。
 けれど、と前に踏み出した巴は羅刹の巫女に問いを投げかけてみる。
「僕では役不足かな?」
「いいえ、貴方ではありません」
 すると壱岐は首を横に振った。律儀に答えを返すところから見るに、元より丁寧で誠実な者だったのだろう。しかし今の壱岐は魑魅魍魎と化している。
 過去に沒んだはずの存在は、現在と未来を侵す世界の敵になっているのだ。
 そう、と答えた巴は幾度か瞼を瞬かせる。
「どっちにしろいいよ。望んでいなくとも、僕も見てもらうから」
「…………」
 羅刹の巫女は巴の言葉に首を傾げたが、すぐに神楽鈴を鳴らした。どのような相手であっても待ち人ではないのならば帰すだけ。
 相手からそんな意思を感じ取った巴は静かに身構えた。
 周囲には他の猟兵に向けて放たれた数多の式神が飛び交っている。身体を反らすことでそれらを躱し、巴はそっと告げた。
「とびきりの夢を、景色を見せてあげる」
 ――明けの明星。
 紡ぐ力は導きとなる。それは安らかな眠りを齎すもの。ネリネが舞う中で見る夢は、明日へ導く優しい雷だ。
 放つ弓矢で雨雲すらも打ち消して、巴は応戦する。
「君を夜空へ導こう」
 そして、雲間から覗く先を。
 月の在処を、僕の居場所を示す。そうに宣言した巴は壱岐を見つめる。
 彼女は神楽を舞っていた。
 底の国の神を降ろし、自らの身体に呪縛を齎しながらも巫女は力を紡いだ。猟兵に対抗する鬼巫女は弱ってきている。
 式神を呼ぼうにも猟兵に邪魔をされた壱岐は徐々に追い詰められていた。巴も力を放ち続け、戦いの一助になるよう立ち回っていく。
「君の瞳が閉じるその時まで、僕を映していたなら……」
 それでいい、と巴は語った。
 ――君を撃つ僕のことを、どうか忘れないでいて。
 とびきりの愛を囁くような、やわい懇願を矢に込めて打ち放つ。そうすれば矢は鬼巫女の腕に突き刺さり、痛みに息喘ぐ悲鳴が響いた。
 僕はここにいる。
 君が証明して。
 ねえ、と呼び掛けた巴は躊躇なく、岐の力を削いでいく。巡る戦いは激しく、されど猟兵の有利に進んでいっていた。その際に巴はふと思う。
「ああ、このあとは晴れるかな?」
 雨上がりの夜空はとても綺麗で美しい。それに月も見えるだろう。
 此処までは地に咲く紫陽花を見て、下を向いてここまで来た。だから帰りは空を見て歩いて帰ろう。そう決めた巴は視線を巫女に向け直した。
 先ずは彼女を骸の海に返そう。
 眼差しが自分に向けられていることを感じながら巴は彗星の如き矢を放った。
 その軌跡は美しく煌めき、戦場に迸ってゆく。
 
成功 🔵🔵🔴