ふるもっふ・わんわん・ちぇいす!
●リーダー候補生はペット扱いされているようです
「くそっ、やられた!!」
「どうした!?」
アポカリプスヘルの荒野に点在する、人々が寄り添って生活する『ベース』。
その一つ、『ガルマリーニ』と呼ばれるそこで、一人の男が力強く足元の土を蹴った。
何事か、と駆け寄ってくるベースの住人。彼らも『それ』を目にして、一様に瞳を大きく見開いた。
「農具が無い!?」
「豆もやられてるぞ!!」
住人たちがベース共用の倉庫の中を見て声を上げる。
中は荒らされてぐちゃぐちゃだ。農具は根こそぎ持って行かれ、豆の種や麦の種まで持って行かれている。残されているのは僅かな備蓄の豆だけ。こんなではもうすぐやってくる種撒きの時期に、とても対応できない。
「くそっ、豆どころか農具までやられたら、もうここでは生きていけないぞ!」
「やはり、前々から話していた移住計画を、実行に移した方が……」
日頃から強盗被害が頻発する場所だとしても、今回のは流石によろしくない。こんな危険な場所を離れ、新しい場所に移住する計画を実行に移した方が。
そんな話を大人たちが真剣に話す中、彼らの足元から声が上がる。
「あ、あのさ!」
「ん?」
声を上げたのは一頭の犬だった。もふもふもこもこした身体につぶらな瞳、愛らしい姿を皆にしっかと見せつけながら、それは人語で声を張り上げる。
「その……新しい土地を見つけるより、農具を取り返した方が、早くないかな?」
そう、真剣な表情で告げるそれを、住人たちはぱちくりと目を瞬かせながら見て。
そうして次々と、それの頭を優しく撫でていった。
「なんだミルコ、心配してくれてるのか? ありがとうな」
「大丈夫だ、お前は俺たちの話に口を出さなくてもいい」
口々に名前を呼びながら、大丈夫、心配はいらないと声をかける住人たち。
しかしミルコと呼ばれた彼――れっきとした賢い動物のミルコ・ザルディーニは、撫でられながらも不服そうに眉根を寄せていた。
「そういうんじゃ、ないんだけどなぁ……」
●荒れ果てた世界の何かが書けたようです
「こんな具合のイメージが浮かんで、一筆書いてみた次第なんだが。続きに興味のある人はいるかい?」
自身の書いた著作の書き出しを見せながら、ダレン・コリデール(紙の上にこそ救いあれ・f25540)はそう猟兵たちに切り出した。
文筆家の側面も持つこの羊が言うことには、アポカリプスヘルのとある『ベース』にて、住民共有の農具や豆の種が、盗まれる事件が発生したらしい。
今回被害に遭ったベースの名は『ガルマリーニ』。荒野の只中、開けた場所にあるせいか、今までもたびたびそう言う被害に遭ってきた場所だという。
「どうやら住民たちは、たびたび盗難や強盗の被害に遭っていたようで、疲弊していてね……こんな狙われやすい場所の『ベース』は廃棄して、新しい場所に引っ越そうとしているらしい」
曰く、こんな何度も襲撃されるような場所は廃棄して、新しい場所で心機一転頑張ろう、という意見が以前から出ていたらしく、それが今回の案件でより一層高まったそうだ。
とはいえ強盗から農具を取り返し、住み慣れたこの場所で頑張ろう、という意見も僅かながらあるらしく、賢い動物のミルコはその方向性だという。
住人にはペット扱いされて可愛がられている彼だが、立派な住人の一人。軽んじられていいはずはない。
「私が見るに、このミルコという少年にはベースを守り、導こうという強い意志がある。ついては皆に、彼の力になってもらいたいんだ」
そう言って、同じく賢い動物であるダレンは笑った。
『ガルマリーニ』で強盗を働いた連中は、幸いまだベース周辺をうろついていて、ミルコはそれを追いかけている。まずはミルコと合流し、強盗を追いかける必要がある。
「なにぶん、連中は農具を根こそぎ奪っていったからね。動きは遅い。その後も追うことも、さして難しくはないはずだ」
強盗団に追いつき、奪われたものを取り返すことが出来れば、強盗団は猟兵たちに攻撃してなんとかそれを確保しようとするだろう。それが、ミルコの力を発揮させる磨後ない機会だ。
「強盗団との戦闘には、もちろんミルコ少年も参加する。彼の力で強盗団を撃退し、農具や種を取り返したとなれば、ベースの皆も彼を見直すだろう」
強盗団は手製の武器で攻撃したり、多人数で囲い込んで遠距離からナイフで強襲するほか、巨大な戦車を取り出し騎乗することで攻撃してくる。
ミルコはサバイバルガンナーゆえ、武器は銃。遠距離攻撃こそ得意だが、距離を詰められると弱いだろう。その点も踏まえて、彼に立ち回り方を教える必要がある。
強盗団を撃破できたら、『ガルマリーニ』への凱旋だ。彼らもきっと、生活に必要な農具や種が奪われたままではつらいはず。戻って来たならその場所で頑張る気も起きるだろう。
「折角農作業の道具が戻ってきて、ベースの住人もその気になったんだし、ここらで君たちも手伝ってくるといいんじゃないかな? ミルコ少年が今後、ベースを率いるにあたって教えたいこともあるだろうから」
そう言って、ダレンは笑った。ミルコが先々この集団を率いていく際に、必要なこと、重要なことを教えることも必要だろうし、ミルコを支える周囲の人間を作ることも大事なはずだ。
ポータルを開きながら、羊は瞳孔が横倒しの瞳をすぅと細めて言う。
「さあ、準備はいいかな? ハッピーエンドを紡ぐかどうかは君達次第。吉報を期待しているよ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
わんこかわいいよわんこ。
かわいいは武器になるのです。このわんこは銃も使うけれど。
●目標
・ベース『ガルマリーニ』の問題を解決する。
●場面・戦場
(第1章)
アポカリプスヘルに位置するベース『ガルマリーニ』近郊の荒野です。
ベースから農具や作物の種を奪ったオブリビオンの強盗団を追いかけ、奪い返してください。
(第2章)
第1章と同じく、ベース『ガルマリーニ』近郊の荒野です。
少女強盗団が8人ほどおり、追ってきた猟兵とリーダー候補生に襲いかかってきます。
リーダー候補生に戦闘や指揮のよい指導が出来れば、戦いを有利に進められます。
(第3章)
ベース『ガルマリーニ』内部の畑です。
第2章で取り返した農具や作物の種などを使って、農作業のお手伝いをします。
リーダー候補生と共に、ベースの人々に生き抜く力を与えましょう。
●リーダー候補生
ミルコ・ザルディーニ(16歳・男)
イヌ(ポメラニアン)の賢い動物。ジョブはサバイバルガンナー。
もっふもふで可愛らしい顔立ちゆえに、ベースの住人からは侮られているが、実は人々を率いるに値するカリスマの持ち主。
得意技は足元からの近距離射撃。銃は口に咥える。
それでは、皆様の力の籠ったプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『奪られたら奪り返せ!』
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POW : アウトロー相手にはアウトロー風のやり方……つまり腕力がモノを言う!
SPD : 移動手段や先読みで、アウトローたちに追いつく、あるいは先回りする!
WIZ : 罠をしかけたり、だましたり、奇襲したり。容赦はしない!
👑11
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ケイティ・ネクスト
「犬もいいけど猫もいいにゃー。猫を崇めよー」
ケットシーとしての本来の姿、四足歩行でほぼ喋る猫と化した状態で猫を崇めさせるにゃー。
「にゅふふ、賢い動物さんにゃ? 猫は猫だにゃー」
何処からともなく集まる猫達に適当に捜索をお願いしておくにゃ。猫の目は欺けない。猫はいつでもそばにいる……ま、数は呼べるし誰かしら知ってるんじゃないかな。
「見よ、この荒れ果てた荒野にも……猫のさばきは突然来る」
猫がセンターになって、仲間の猫達と一緒に突然のダンス! 特に意味は無いけど、士気を盛り上げるにはこういうのもアリかにゃって。
「シャルウィーダーンス?」
ミルコちゃんも一緒に踊るにゃ。
アリスティア・クラティス
まあ!なんて可愛らしい『犬(ぽめ)!!』 …あーうん、こほん!
いえっ、何でもないわ。さあ、考えられる限りを尽くすわよ!
追いつくのは容易いと聞いたけれども、普通の駆け足ではミルコの足枷になってしまいそうね。それならば、ミルコに通信機を持ってもらって、強盗団と接触した時点で教えてもらいましょう。通信機の連絡が来たらUC『白馬の王子様』でミルコの元へワープ!
敵の集団を目視できたら『アリスランス』を敵の抵抗行動を防げる大きさにまで巨大進化、
折角『光り輝く白馬』なんて悪目立ちなものに乗っているのだし、馬上から『ランスチャージ』で、敵の中に飛び込んで駆け抜けて攪乱させるわ!
奪われたものは後できちんと回収!
スリジエ・シエルリュンヌ
ふふ、ダレンさんの書き出しにつられました。この物語をハッピーエンドにするために。
文豪探偵、推して参ります!
よし、ミルコさんと対等に話しましょう。
はじめまして、私はシエル。
ミルコさん、私とお年があまり変わらないんですね。でも、その志は年齢関係なく立派です!!ミルコさん、私にも手伝わせてください!
追跡は【桜小鳥探偵団】にお任せです!
急に進路を変えたり、隠れたりしても無駄です!この小鳥たちは、追跡をやめません!
天王寺・勇狗
SPD
わふーっ!!
何かしらをここから盗んでるんだったら、あちらこちらで、匂いが残っているはずなんだよー!
どれが、連中の残したのないかな?
匂い、わかったよー!
じゃ、追っかけていくよー!
【追跡】で、盗賊団のいる場所を追う。
ただし、感づかれないように、連中が見えたら、隠れながら【忍び足】で、こっそり遮蔽物を利用して先回り。
そんで、ここで、UC使用して、盗賊団に飛びかかる。
「あそこにあるの、返してもらうよー!!」
攻撃仕掛けようとしたときは、円盤投げて叩きのめす。
アドリブ歓迎
ベム・クラーク
アドリブ連携歓迎です!
「開発開墾の邪魔をするなど許せません!どれだけ大変だと思っているんですか!」
全力でアウトローを【追跡】し、発見と同時に【砲撃】、速度が落ちたらミサイル【誘導弾】【一斉発射】【吹き飛ばし】
「私は鎧装騎兵ですが、あなたたちの流儀に合わせましょう。いえ、遠慮は無用です。」
【フルバースト・マキシマム】
「新天地、聞こえはいいですが新たな生存圏を探すのはとても大変なのです。農具はすべて返してもらいます。」
バロン・ゴウト
ベースで頑張って暮らしてる人達から盗むなんてひどいのにゃ!
ミルコさんの為にも、ガルマリーニで暮らしている人たちの為にも、一緒に頑張るのにゃ、シトラス!
【地形を利用】して先回りし、強盗団が近づいたら【ライオンライド】で呼び出したシトラスに【騎乗】し、【ダッシュ】で近づいたら【先制攻撃】にゃ!
敵が動揺している隙に奪われた物を取り返し、【運搬】しながら【逃げ足】で敵から離れ、安全な所に物品を置くのにゃ。
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●ポメラニアンはもっふもふです
荒野の只中に建つベース『ガルマリーニ』外縁部、入り口付近にて。
「まあ! なんて可愛らしい『犬(ぽめ
)!!』」
アリスティア・クラティス(歪な舞台で希望を謳う踊り子・f27405)が瞳をキラキラ輝かせながら、開口一番そう言った。
声をかけられた当の本人、ミルコ・ザルディーニがそのどこにあるのか分からない首をこてんと傾げながら、後ろのアリスティアを振り返る。
「……ぽめ?」
「……あーうん、こほん! いえっ、何でもないわ」
わざとらしく咳ばらいをしながら気持ちを切り替えている間に、他の面々もアリスティアの周囲に現れた。
集団の中で最小サイズのバロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)が、憤慨しながらグローブをはめたように真っ白な手を握る。
「ベースで頑張って暮らしてる人達から盗むなんてひどいのにゃ!」
「開発開墾の邪魔をするなど許せません! どれだけ大変だと思っているんですか!」
対して、集団の中でぶっちぎりに巨大なベム・クラーク(ウォーマシンの鎧装騎兵・f27033)も憤慨していた。ガシャンガシャンと関節部がけたたましく駆動している。
その姿形も大きさもてんでバラバラな六名を見て、ますますミルコが首を傾げた。
「……えーと、ベースでは見たことの無い顔ばかりだけど、皆さんは?」
尤もな疑問を零すミルコ。彼の前にしゃがみ込んだのはスリジエ・シエルリュンヌ(桜の精の猟奇探偵・f27365)だ。
「はじめまして、私はシエル。ミルコさん、私とお年があまり変わらないんですね。でも、その志は年齢関係なく立派です!!」
ミルコの前脚を両手で包むように持ち上げて、スリジエは輝かんばかりの笑顔を見せた。
「ミルコさん、私にも手伝わせてください!」
「えっ、う、うん。ボク一人じゃ、追いつけるか分からなかったですし……ありがとう」
突然の申し出に戸惑いながらも、ミルコはスリジエに礼を述べる。尻尾はだらりと垂れ下がり、まだ了承するかどうかは迷っている様子だが。
「にゅふふ、賢い動物さんにゃ? 猫は猫だにゃー」
「わふーっ!!」
スリジエの脇からケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)がしゃなりとミルコの傍に寄れば、天王寺・勇狗(わんおーわん・f24448)も元気に鳴いてみせる。
ケイティは金色の猫、勇狗はダルメシアンな犬といった出で立ちだが、ケイティの種族はケットシー。今の姿は猫妖精としての本来の姿である。
笑顔を浮かべながら自分に接してくる猟兵たちに、ミルコはますます不思議そうな表情をした。
「……ボクの名前を知っているし、ベースでは見たことの無い種族の人もいるし……皆さん、何者なんですか?」
その言葉に、一瞬視線を交わす猟兵たちだ。
確かに、ミルコの名前はグリモア猟兵から聞かされている。ミルコが何をしようとしているかも、ベースで何が起こったかも知っている。当事者のミルコからしたら、なんで初対面の人間がそこまで、となるのも当然だ。
ミルコの前に屈んだままだったスリジエの手が、再びミルコの手を優しく包む。
「ちょっとお節介なストレンジャー……とでも言おうかしら。この物語をハッピーエンドにするために来たのよ」
「ハッピーエンド……」
文豪探偵たるスリジエが詩的な言葉でそう言えば、ミルコの黒い瞳が大きく見開かれる。彼女の言葉の後を継ぐように、アリスティアも胸を叩いた。
「ええ! ミルコが困っているのを見過ごすわけにはいかないわ! 考えられる限りを尽くさせてもらいたいの!」
二人の言葉に、残り四人の真摯な表情。
それを受けて、ミルコがはっきりと、大きく頷いた。
「わかりました、お願いします!」
「あら、素直だにゃ?」
存外あっさりと信用してもらえたことに、ケイティが小さく目を見開くと。
「じいちゃんから何度も言われました、『自分が困っている時に知らない人から手を差し伸べられたら、快くその手を取りなさい』って!」
すぐさまに猟兵たちを先導し、追いかける姿勢を取ったミルコが、力強く笑った。
●賢い動物はとても足が速いです
「待って!」
すぐさま駆けだそうとしたミルコを、呼び止めるのはアリスティアだった。
突然声をかけられ、しかもその場から動くそぶりも見せない猟兵たちに、ミルコは困惑した表情を浮かべる。
「どうしたんですか? 早く追いかけないとやつらが……」
「大丈夫、よく聞いてちょうだい」
困った表情のミルコに、アリスティアはそっと屈みこんで声をかけた。
「私たちが普通にミルコと一緒に追跡するのでは、私たちの存在が逆に足枷になってしまうわ。勇狗やケイティはともかくとして、走る速度が明らかに違うもの」
「はい。逆に私ではミルコさんを容易に追い越してしまいます。一緒になって走るのは、非常に非効率だと進言いたします」
アリスティアに同意しながらベムも言葉を発する。
確かにこの集団、走る速度が明らかにばらばらだ。これでは一緒になって追いかけるも何もない。
その事に気が付いたミルコが、しゅんと耳を伏せる。
「そうか……じゃあ、どうすれば」
「心配いらないわ。まず先に、相手の居場所を特定しちゃえばいいのよ」
ミルコの言葉に、アリスティアがにこりと笑う。そんな彼女の隣に、勇狗が駆け寄ってはぶんぶんと尻尾を振りつつ言った。
「農具をここから盗んでるんだったら、あちらこちらで、においが残っているはずなんだよー! どれが、連中の残したのないかな?」
その言葉に、ミルコが目を見開く。確かに闇雲に追いかけるよりは、においを辿る方が何倍も確実だ。
スリジエとケイティも揃って胸を張りつつ手を差し出す。
「私の桜小鳥探偵団で連中の追跡も出来るわ。発見したら、私にも伝わるわよ」
「猫の猫たちも捜索に駆り出すにゃー」
「チチッ」
「にゃー」
スリジエの腕にはたくさんの桜色をした小鳥が留まり、ケイティの周囲にはたくさんの猫が現れた。
その鳥たちと、猫たちが、すぐさまに追跡をするべく散開する。
目を白黒させるミルコに、次に声をかけるのはバロンだ。傍らには仔ライオンのシトラスも控えている。
「ボクもシトラスと一緒に追跡するのにゃ! シトラスと一緒ならミルコさんの全速力にも追いつけるにゃ!」
「あう!」
シトラスも、任せろと言いたげに一声鳴く。
つまりは、強盗団の追跡を行う面々、実際に強盗団を追いかける面々の、二手に分かれようというのだ。
納得が言った表情のミルコに、アリスティアが懐から小型の通信機を取り出して言う。
「そういうこと。そうして相手を見つけたら、私に連絡してくれたらすぐに駆け付けるわ。通信機は、使ったことある?」
「いや、持ったことないです……」
彼女の言葉に、しょんぼりした様子のミルコ。そこに助け舟を出したのはベムだった。
「そういうことでしたら、お任せください。私がミルコさんに同行し、通信役を担いましょう。ミルコさん一人くらいでしたら、問題なく乗せられます」
「さすがウォーマシン! お願いするわ」
ベムの申し出にぱんと手を打ちながら、アリスティアが通信機をベムに渡す。確かにベムの大きさなら、ミルコ一人乗せることはわけもないだろう。足も彼より早い。
と、そこに勇狗とスリジエが同時に声を発する。
「連中の痕跡、見つけたよー! においを覚えたから辿れるよー!」
「私の小鳥たちからも連絡が来たわ。ここから二キロメートル地点、北東の方角よ!」
「了解、追跡します。ミルコさん、お乗りください」
「あっ、はいっ!」
ベムが一本の足を差し出しつつ言えば、ミルコもそれに乗っかって。
そこから、怒涛の追跡劇が始まった。
●猛追撃の始まりです
強盗団が足を止めるきっかけは、まさしく唐突だった。
「犬もいいけど猫もいいにゃー。猫を崇めよー」
「な、なんだっ!?」
「猫!? なんで!?」
突然自分たちを取り囲むように現れた、大量の猫。そのうちの一匹が人間と同じように喋っている。
と、その猫たちが後ろ足で立ち上がって。
「シャルウィーダーンス?」
「「にゃー」」
突然ラインダンスをやり始めた。身軽にステップを踏み、くるりと回って一回転。
傍から見れば愛らしいダンスだが、ここは荒野のど真ん中。観客は今まさに逃げている最中の強盗団だ。突拍子が無いことこの上ない。
「な、なに、こいつら!?」
「突然踊り出して、意味わかんないんだけど!?」
事実、強盗団の面々も揃って大いに困惑していた。猫に取り囲まれているから身動きも取れない。
しかし、これはまさしく足止めされていることに他ならない。事実、強盗団の後方からは土煙を上げて、ミルコを背に乗せたベムが全速力で荒野を疾走していた。
強盗団が目視できるところまで近づいたところで、ミルコが声を上げる。
「強盗団、見つけた!」
「こちらも目視にて確認いたしました。ケイティさんおよび猫に気を取られて足を止めている模様。
勇狗さんとバロンさんも、それぞれ別方向から強盗団に狙いを定めています」
『オーケー、今行くわ!』
ベムからの報告に、アリスティアが答えると。
足を止めたベムの隣に、突如としてアリスティアが輝く白馬と共に降り立った。
「お待たせ!」
「わっ、アリスティアさん!?」
「まずは私が牽制いたします。アリスティアさんとミルコさんはその後に」
突然のことに困惑するミルコだが、ベムに促されて地面へと降りていく。このアリスティアの出現こそが、号砲の合図なのだから。
光り輝く白馬の輝きを目にしたケイティが、ダンスをぴたりと止めて、意味ありげににやりと笑ってみせると。
「見よ、この荒れ果てた荒野にも……猫のさばきは突然来る」
「「にゃーっ!」」
そんな意味深な言葉を残し、猫たちと一緒に散開。ばらばらに逃げて行った。
突然踊られたと思ったら逃げられて、困惑が頂点に達している強盗団は動けない。そこに。
「私は鎧装騎兵ですが、あなたたちの流儀に合わせましょう。いえ、遠慮は無用です。フルバースト・マキシマム」
ベムの放った大量のミサイルが、強盗団の周囲へと次々に降り注いだ。
「わーっ!?」
「ベースの戦車乗りの砲撃かー!?」
あくまでも牽制、強盗団にミサイルは当てていない。万が一農具や種まで吹っ飛ばしてしまっては問題だ。
突如ミサイルの雨を受けたことで、強盗団の足は完全に止まっている。今がチャンスだ。
「よし、行くわよミルコ!!」
「はいっ!!」
アリスティアに呼び掛けられれば、ミルコも駆けだす。だが白馬に乗ったアリスティアが、すぐさまにミルコを置き去りにした。
だが、これでいいのだ。アリスティアの役目は強盗団のかく乱。混乱の最中にいる彼女たちを、さらに混乱させるのが目的なのだから。
同様に、別方面からゆっくりゆっくり接近していた勇狗も、タイミングを合わせて強盗団に飛び掛かる。
「さあ、白馬のお通りよ!!」
「うらー! あそこにあるの、返してもらうよー!」
「「わーっ、新手だー!?」」
アリスティアと勇狗に引っ掻き回されて、強盗団はもはや自分たちが奪ってきた荷物のことなど頭になくなっていた。すっかり奪ったものを地面に放置して、アリスティアや勇狗に武器を向けている。
強盗団の様子を見て、ミルコも決意を固める。今こそ、奪い返す時だ。
「混乱してる……今なら!」
「ミルコさん、合わせるにゃ! ボクはあっちから回り込むから、ミルコさんはこのまま行くにゃ!」
「は、はいっ!」
速度を上げたミルコに、シトラスに乗ったバロンが駆け寄ってくる。バロンの言葉に頷けば、彼は左側面から回り込むように走っていって。
そして速度を調節し、ミルコは真正面から、バロンと同じタイミングで強盗団の中に飛び込む。
「ボクたちの大事なもの……返せーっ!!」
「ミルコさんやガルマリーニで暮らしている人たちの、生きるのに必要なものは、奪わせないにゃ!!」
口で種を収めた麻袋を咥えて駆け抜けると同時に、農具を収めた麻袋をバロンの手が掬い上げる。そのままのスピードで強盗団の集団を駆け抜ければ、いよいよ彼女らも奪い返されたことに気が付いた。
「わっ、なんだっ!?」
「あぁっ、奪った袋が!」
「農具も取られた!」
困惑しながら自分たちの足元に奪ってきたものがないことを見るも、その時には既に、バロンもミルコも集団から大きく離れた場所。
奪い返したものをしっかり持ったまま、二人は合流して大きく向きを変えていた。
「よしっ!」
「すぐに離脱にゃ! 安全なところに置くのにゃ!」
猛ダッシュでその場を離れ、付近の安全な岩場に向かって駆けていくミルコとバロン。
安全な場所はスリジエが確保してくれている。そこまで運べば、強盗団には手が出せないだろう。
しかし強盗団も、ただ黙って見ているわけではない。混乱の最中に、首領がミルコの背中を睨みつける。
「くそっ、すぐに――」
「新天地、聞こえはいいですが、新たな生存圏を探すのはとても大変なのです。農具はすべて返してもらいます」
「「わーっ!?」」
強盗団の首領が言うより先に、再びベムから放たれる大量のミサイル。着弾と共に、土煙がもうもうと舞い上がった。
成功
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第2章 集団戦
『少女強盗団』
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POW : 「一斉に掛かれ!」「囲め囲めー!」
【手作りや拾い物の雑多な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 「1班、2班で抑えろ!3班は回り込め!」
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【メンバーの誰かのナイフ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : 「おい、アレ出せ!」「は、はいっ!」
自身の身長の2倍の【車高の、履帯と砲塔を備えた戦車】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
👑11
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●強盗団はご立腹です
「くそーっ、せっかく危険を冒して奪いに行ったのに、全部台無しじゃないか!」
憤慨している強盗団の首領が、猟兵たちにナイフを向けてくる。そこに、奪い返したものを安全な場所まで運んだミルコが戻ってきて、合流しながら強盗団に立ち向かった。
「もうボクたちのベースからは何も盗ませないぞ、強盗団! 今日こそ退治してやる!」
銃を手に、勇ましい言葉を吐くミルコに、しかし強盗団はおかしなものでも見たかのように一斉に笑った。
「ハッ、たかが犬一匹で何が出来るっていうの? ペットは大人しくご主人様のところに帰りなさい!」
「うぅーっ、お前らにまでペット扱いされる筋合いはないぞ!」
ペット扱いされたことに、ミルコの体毛がぶわりと広がる。その姿こそ愛らしいが、彼は本気だ。本気でこの強盗団に立ち向かおうとしている。
すぐさまに彼は後ろを振り向き、猟兵たちの顔を見る。
「皆さん、すみません。このまま強盗団を退治するのに協力してください!」
その申し出に、猟兵たちもすぐさま頷いた。言われるまでもない、強盗団を退治するところまでが、仕事のうちだ。
●特記事項
・ミルコ・ザルディーニはサバイバルガンナーです。
口に銃を咥えて、基本的には遠距離から銃撃します。
得意技は駆け抜けながらのヒットアンドアウェイです。
アリスティア・クラティス
【POW】
外見が愛くるしすぎるのも悩ましいわね…でも、それで油断してくれているなら都合が良いわ。ミルコが『警戒されていないサバイバルガンナー』ならその初手が一番当たりやすいのではないかと思うの
その為、最初は歩兵仕様に『アリスランス』を進化『ランスチャージ』で強盗団の中を全力で駆け抜ける。首領への道を開け狙うから、ミルコに首領へ一撃入れてもらうことなどは可能かしら?
どちらにしろ、倒せる敵は突き薙いで敵陣を駆ける事になるから、追っ手対策に、駆け抜けたら少し走って敵を引きつけ、振り向きざまにUC『堅牢たる幻影水晶』発動
ここなら遠距離攻撃は撃ち放題、もしミルコなどの利用者がいてくれれば『鼓舞』で応援!
●愛くるしいものには油断するのです
完全に強盗団にも侮られているミルコ。その姿にアリスティアは小さくため息を吐いた。
「外見が愛くるしすぎるのも悩ましいわね……」
愛くるしいものはいい。見ているだけでほっこり、癒される。
しかし、場面が戦場となれば話は別だ。愛くるしい姿は油断を産み、軽視される。
ミルコ自身もそのことは分かっているようで、拳銃を咥えたまま器用にも喋っていた。
「本当です! でもだからって、バカにされるのは我慢がなりません!」
「そうよね。でも、それで油断してくれているなら都合がいいわ」
憤慨するミルコのぴこぴこ動く尻尾を見て、目を細めながらもアリスティアは手に握るアリスランスを進化させた。
歩兵仕様、いくらか軽量化され、ほっそりしたフォルムになったアリスランスを構えながら、足元のミルコに声をかける。
「ミルコ、サバイバルガンナーが一番攻撃を当てやすいのは、いつだと思う?」
「え? うーん……」
突然の問いかけにミルコは困惑した。しかしすぐに答えには至ったようで、真正面を見据えたままで口を動かす。
「相手に認識される前、ですか?」
相手に認識される前、油断していようがいまいが、狙撃手の位置、存在を感じ取る前。
そこが狙撃手にとっては、最大最高のチャンスだ。間違いない。
「その通りよ。今はまだ敵の数が多いから、あの首領も油断しているわ。私が道を開け狙うから、その隙に一撃、入れてもらえる?」
「えっ、ここからですか!? や……やってみます!」
アリスティアも頷けば、ミルコに発破をかけつつ足元に力を入れる。
一瞬戸惑ったミルコだが、ここは戦場、一瞬の迷いが命を奪う。すぐさま決意したミルコの前に、アリスティアが手をかざした。
「いい返事ね、行くわよ!」
手をかざしながら、願いを込める。味方を守り、味方の攻撃はすり抜ける水晶の壁。何人にも砕けない壁をここに。
「ここに生まれしは、幻よりいずる傾く天秤。我はその全てを搾取する!」
「わっ、障壁が!?」
アリスティアが駆けだせば、その足元があった場所からめきめきと水晶の壁が立ち上がる。透明な水晶、向こうの景色はよく見える。そしてミルコは、この壁越しに攻撃することが出来るという、ある種の確信があった。
そうこうする間にもアリスティアは全速力で突撃を敢行、アリスランスで突いて薙いで次々に強盗団を押しのけていく。
「てやぁぁぁっ!!」
「わっ、突っ込んできたぞ!?」
「迎え撃てー!!」
ナイフを片手にアリスティアに立ち向かう彼女たちだが、明らかに勢いに押し負けている。アリスティアのランスに押しやられるものが続出する中、遂に一人の腹部にランスが突き刺さった。
「ぐあっ!」
「アメリア! このっ……」
そのまま崩れ落ち、倒れながら砂と消えていく強盗団の一人。消えゆく彼女の名前を呼んだ強盗団の首領が、突っ込んでくるアリスティアを憎々し気に睨み、前進する。
しかしアリスティアはその横をすり抜けて通り過ぎた。目を見開いた首領がアリスティアの行く先を見た途端。
「そこです!」
「ぐっ!? どこから……!」
パン、と銃声が響き、強盗団の足から血が噴き出す。見れば、ミルコが見事に首領に一発、鉛玉を撃ち込んだ瞬間だ。
「いいわね、その調子よ!」
にっこり笑いながら、アリスティアがミルコに声を飛ばす。その声色は確かに明るく、ミルコの口元も緩めるものだった。
成功
🔵🔵🔴
スリジエ・シエルリュンヌ
アドリブ連携歓迎。
念のため、【桜小鳥探偵団】の展開継続…逃がしはしません!!
ミルコさん、勇ましいです。
もちろん、力を貸します!!
(こそこそ)
ミルコさん、相手のペット扱いを利用しましょう。
ペット扱いということは、侮っているということです。つまり、相手は油断してるんです!
不意を打つのも、立派な戦術ですよ。
あとは…その後の手ですね、私は近距離型ですから、ちょうどいい。
ふふふ、ミルコさん。私、パイプを敵に吹き掛けて足止めしますから、足止めされた敵を撃ってくださいね。連携です。
●仲間での連携は大事です
「ミルコさん、勇ましいです。もちろん力を貸しますとも!!」
「うん!」
ミルコが強盗団首領を的確に撃ち抜く姿を、横で見ていたスリジエはぐっとその拳を握った。ミルコもうまくいって誇らしそうだ。
しかし、相手はまだまだミルコをただの犬だと思っている様子。強盗団の見てくる瞳が何だか微笑ましいものを見るようで。
そんな視線に一瞥を返しながら、スリジエがそっとしゃがみ込む。
「ミルコさん、ペット扱いされているということは、相手は貴方を侮っているということです」
「つまり?」
侮っている、がいまいち分かりづらかったのか、首を傾げるミルコ。そんな様子に頬が緩むが、自分まで侮ってはいけない。しっかと気持ちを引き締めて口角を上げる。
「油断しているんです!」
ぐっと拳を握ったスリジエの表情に、ミルコは目を大きく見開いた。
油断している。自分が脅威にならないと思われている。
その事を理解したらしいミルコの体毛が、心なしかちょっと膨らんだ。怒っているらしい。
「不意を打つのも、立派な戦術ですよ。それに……不意を作るのも戦術です」
「不意を、作る?」
解説するスリジエに、もう一度首を傾げるミルコ。不意を作るとはどういうことか、と問うより先に、立ち上がったスリジエが手にパイプを持つ。
「そうです。やってみましょうか。私がこれから敵を足止めしますから、足止めされた敵を撃ってくださいね。連携です」
「は、はい!」
連携、の言葉に気持ちを引き締めたミルコが返事をするや、スリジエは一挙に駆け出した。もとより前衛型、敵に接近して立ち回るのは得意分野だ。
「さて……」
「このっ、させないぞ!」
手の中のパイプを口に咥え、手近な位置から自分に立ち向かおうとする強盗団の一人。戦車を召喚しようと動きを止めた瞬間。
「ふぅーっ」
「なんっ、げほっ、ごほっ!?」
そのタイミングを狙い、スリジエがパイプから黒い煙を吐き出した。薬効も何もない、ただの煙ではあるが、突然吹きかけられて困惑しない人間も、咳き込まない人間もいない。
しかして戦車を召喚することも叶わず、ぴたりと足を止める強盗団だ。
「うわ……ハッ、今こそチャンス!」
その明らかな隙を見つけ、逃すまいとミルコが拳銃の引き金を舌と歯で引く。パン、と乾いた音が鳴り、足止めされていた強盗団の一人の胸からごぽりと血が溢れた。
「あ……」
「そうです、よく出来ました」
「なるほど、前衛の人が身を挺して作り出した隙を逃さない。大事な仕事ですね!」
倒れ伏しながら砂へと還る強盗団を見やりながら、スリジエはミルコににっこりとほほ笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
見た目で侮るのは未熟者の証拠なのにゃ。小さな体の戦士の恐ろしさ、証明するのにゃ!
【POW】
【ライオンライド】で呼び出したままのシトラスとは別々に戦うのにゃ。
シトラスは遊撃役、ミルコさんが囲まれないように動くのにゃ。
ボクは敵が囲んできたら【盾受け】や【フェイント】を織り交ぜながら隙をついて【カウンター】で攻撃、敵の足を【串刺し】にゃ!
「ミルコさん、膝より下にいる相手は敵も攻撃しづらいのにゃ。だからその隙を狙って攻撃するのにゃ!」
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●小さい敵は与しにくいのです
さて、ミルコ以外にも小さい体躯を持つ猟兵は、この場に既にいる。
バロンもミルコより一回り体躯が大きい程度のシトラスと一緒に、敵陣に飛び込んで戦況をひっかきまわしていた。
「見た目で侮るのは未熟者の証拠なのにゃ。小さな体の戦士の恐ろしさ、証明するのにゃ、ミルコさん!」
「分かりました!」
動き回りながらミルコに視線と言葉を投げて、ミルコもそれに頷いて。そうして二人は再び駆け出す。
ミルコは敵に囲まれないよう動き回りながら銃を撃ち、シトラスはバロンを背の上に乗せずに自分を囲おうとする敵を狙って噛みつき、バロンもその合間合間を縫うようにしてどんどん動いては、盾にレイピアにと武具を駆使して敵の足を止めていた。
「シトラス、ミルコさんが囲まれないよう、しっかり動くのにゃ!」
「あぅー!」
そうする間にもしっかりシトラスに指示は飛ばして。バロンの声を受けたシトラスが、今まさにミルコに向かおうとしていた強盗団の一人に噛みついていく。
強盗団の首領はイラついていた。なかなか、思うように動かせてもらえない。
「くそっ、カーリン、ライオンを避けて回り込め!」
「はいっ!」
首領の指示を受けた一人の強盗が、シトラスを避けるようにぐるりと大回りで突っ込んできた。ちょうどスペースが開いたところに飛び込まれて、ミルコが慌てだす。
「わわっ、来るな!」
「慌てちゃ駄目にゃ、まっすぐ向かってくる敵は狙いやすいにゃ!」
焦って銃口を向けるミルコに、バロンの声が飛ぶ。鋭く飛び出したバロンが振るわれるナイフを掻い潜り、その足にレイピアを突き立てた。
「いっつ!?」
「ミルコさん、膝より下にいる相手は敵も攻撃しづらいのにゃ。だからその隙を狙って攻撃するのにゃ!」
「は、はいっ!」
足を止めた強盗。その隙を逃すわけにはいかない。一気に方向転換し、強盗に向けて奪取するミルコが、すれ違いざまに頭に銃弾を叩きこんだ。
「今だーっ!」
「ぐあっ、あ……」
そのままぐらりと身体が傾ぎ、消えていく強盗。レイピアを抜いたバロンが足から飛び降りると同時に、その姿は砂となって消えていく。
「カーリン!」
「いい感じにゃ、そのまま敵に距離を詰められないよう動くにゃ!」
「分かりました!」
頷き合って、再び二人は別々の方向に向かって駆け出した。
成功
🔵🔵🔴
ケイティ・ネクスト
「ねこです。よろしくおねがいしますにゃ」
9割猫モードでぺこりとお辞儀。
「選べ、猫を崇めるか、猫に屈するか。なお猫は前たちがどっちを選ぼうと知った事じゃない」
ダンシング猫がハンティング猫化!
「戦車など猫の前に無力」
履帯を爪で切り裂き、砲塔の中に潜り込み乗員を八つ裂きにする。
「猫の国は近づく、猫の裁きは近い」
もちろん、砲弾なんて当たるはずも無し。猫の爪で戦車ごと分解するにゃー。
「まあ、マジな話さ……小さくて接近戦強いのに大量に集られたら対応できなくねって話」
範囲攻撃には弱いけどにゃ。まあ、コイツは持ってないみたいだし。
●犬も猫も強敵なのです
「ねこです。よろしくおねがいしますにゃ」
再び、ぺこりと猫がお辞儀した。途端にざわつきだす強盗たち。
「さっきの猫だ!」
「選べ、猫を崇めるか、猫に屈するか。なお猫はお前たちがどっちを選ぼうと知った事じゃない」
それまでのおちゃらけた雰囲気とは一転、鋭いハンターの目つきをするケイティと猫たちに、びくりと身を強張らせる強盗たちだが。
相手は猫。猟兵ならともかく、ただの猫。
悲しいかな、彼女たちはまだまだ侮っていた。
「このっ、バカにしやがって! おい、あれを出せ!」
「は、はいっ!」
首領がしびれを切らした様子で、強盗の一人に指示を飛ばした。強盗が虚空から取り出すのは、巨大な砲を備えた戦車だ。
大きな硬い機械の登場に、銃しか武器の無いミルコが慌てだす。
「わわっ、戦車だ!?」
「慌てちゃいけない、でかい敵がさらにでかくなったからって、何も恐れることはない」
そう、静かにケイティが告げると。
その姿がミルコの前から瞬時に掻き消えた。
「戦車など猫の前に無力」
「にゃー!」
と、ほぼ同時に沸く猫たちの鳴き声。それと共に響くのは、金属をひっかくギャリギャリとした音だ。
ミルコは見た。猫たちが鋭い爪と牙を備え、戦車にわらわらと群がっているのを。
その戦車の硬く分厚い装甲が、戦車のゴム製の履帯が、どんどん切り裂かれていくのを。
そして履帯が限界を迎えたか、戦車の車体が突然傾いた。
「わわっ!?」
「カロリーナ、どうした!?」
途端に慌てた声がして、俄かに強盗たちも慌てだす。首領が声を張れば、戦車の中から悲痛な声が聞こえた。
「駆動部が、急に空転して……あっ、きゃー!?」
そのまま響き渡る悲鳴と肉を裂く音、漂う血の匂い。よいこはみちゃいけない。
「猫の国は近づく、猫の裁きは近い」
血まみれケイティが戦車の天井を開けて中から飛び出せば、限界を迎えた戦車の車体が、ばらばらのスクラップへと変じていった。
「あ、あ……」
「戦車が、バラバラに……」
残された二人の強盗は、信じられないものを見るような目でそれを見ていた。
悠然と戻ってきたケイティに、ミルコは尊敬のまなざしを向けている。
「す、すごい……」
「まあ、マジな話さ……小さくて接近戦強いのに大量に集られたら、こういうのって対応できなくねって話」
そう言って、ケイティはにこりと笑った。
成功
🔵🔵🔴
天王寺・勇狗
わふーっ!
盗むのは、駄目なんだよー!
そういえば、こいつら、オブリビオンだったよー!!
こうなれば、ぼくも、戦うんだよー!!
てなわけで、ぼくは、接近戦主体で、まず、遠くにいる敵を円盤で撃ち落としてから、近くにいる敵めがけてダガーで攻撃するよー。
そのあと、多数の敵を倒すために、速度を上げるためにシーブズ・ギャンビットを使用するんだよー!!
「僕達が本気出せば、あんた達なんて、イチコロだよー!!」
まー、ミルコはちっこいし、遠距離のほうが都合がいいかなって思うんだけどねー。
そういえば、どうやって撃ってるんだろ?
(咥えてるだけじゃ、発泡できないよね?これ)
アドリブ歓迎
アルタ・ユーザック(サポート)
ダンピールの16歳女性です。
ユーベルコードを使える場面では、指定したユーベルコードを使用し、直接攻撃系か精神攻撃系で敵を攻撃します。
一人称は「わたし」(ひらがな)です。口調は「~だわ」や「~だな」の様なものではなく、「○○…。」の様に…で終わり語尾に何もつけない口数少な目のクールタイプの話し方です。
服装・体型・容姿・持ち物などは、ステータスシートの参照お願いします。
上記内容以外は全てNGなど無しでアドリブ・連携などもOKです。
よろしくお願いします。
曽我部・律(サポート)
『この力を得たことは後悔していない……』
『私以外の人間が不幸になるところを見過ごすことはできないんでね』
『こういうのには疎いんだが……ふむ、こんな感じか?』
とある事件で妻子を失い、その復讐の為にUDC研究を続けているUDCエージェントです。ですが、UDCを強引に肉体に融合させた副作用として徐々に生来の人格は失われつつあり、妻子の記憶も彼らの写真によって辛うじて繋ぎ止めています。
多重人格者としての別人格『絶』は凶悪なオブリビオンの存在を察知すると、律に代わって表に出てきて戦います。その際、口調は『おい律……うまそうな匂いがするじゃねぇか。代われよ』みたいな凶悪な感じになります。
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
戦闘は確実性やオーバーキルより迎撃数を優先するので、全力魔法と範囲攻撃で少し広めに撃ってから時間差で仕留める。
もしくは単体攻撃にカウンターや鎧破壊攻撃を乗せつつ、連続して使って、一撃必殺を繰り返す。
「ここから先は行かせないよ、キリッ」
…ところで、なんでオブリビオン居るの?(前後の説明忘れた)
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
●盗むことはいけないことです
残り人数もわずかとなった強盗団たち。
彼女たちがぎりりと奥歯を噛む中、その前に立ち塞がる勇狗とミルコは、各々の武器を咥えながらけたたましく吠え掛かった。
「わふーっ! 盗むのは、駄目なんだよー!」
「そうです! 皆の使うものを盗んでいったら、皆が迷惑するんです!」
そうして二人が自分の武器を噛む歯に力を籠めた時、後方から唐突に何本ものマジックミサイルが撃ち込まれ、強盗団の足元に着弾。もうもうと土煙を上げた。
「「うわっ!?」」
「あれ?」
「そーそー、他人のモンに手を出したら泥棒って、よく言うでしょ?」
勇狗が後ろを振り返ると、そこにはこちらにびしりと指先を突き付ける、城田・紗希(人間の探索者・f01927)の姿があった。
思わぬ増援の登場に、ミルコの表情もパッと明るくなる。
「増援ですか!?」
「助かるんだよー!」
紗希から少々遅れるようにして戦場に立ち入った曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)も、ネクタイの首元を直しながらきりりと目尻を持ち上げる。
「遅ればせながら、ここから私も立ち入らせてもらう」
「わたしもお手伝いする……」
次いで現れたアルタ・ユーザック(クール系隠密魔刀士・f26092)も、表情を動かさないままに抜き放った魔法刀を握りしめた。
味方側に増援が出来れば敵側が不利になる。自明の理である。事実、強盗団の二人は明らかに困惑していた。
「くそっ、このタイミングで増援だなんて!?」
「何とかして対処するよ、ジュリア、回り込め!」
二対二だったのが一気に五対二。取り囲むのも容易ではないが、首領の声を受けて残り一人の団員が地面を蹴って駆け出す。
だが。駆け出してから程なくして、彼女の足元が大きくたわんだ。
「う、うん……うわっ!?」
「おっと、ちょうどいいタイミングで踏んでくれたね?」
その場所は、今まさに律が感覚共有体を動かした場所だ。柔らかい泥の形状をしたそれがちょうど、団員の足元に位置して彼女の足を掴んだのである。
沈みながら足が捕らわれて、団員は動くに動けない。
「く、あ、足が……」
「よっし今! いっけー!」
そこに、再び放たれるのは紗希のウィザード・ミサイルだ。広範囲に放たれる魔法の矢がまるで雨のように、強盗団の二人へと降り注ぐ。
足を捕らわれ、降るように攻撃を加えられ。身動きが取れない団員に、律の手にするレーザーキャノンの銃口が向けられる。
「動かない的には当てやすい……ふんっ!」
「が――」
一瞬の反動。次いで閃光。
極太のレーザーが放たれ、強盗団の団員を一瞬で飲み込めば、後には何も残らない。
「く、くそっ、こうなったら戦車――!」
焦った様子で、一人残された強盗団の首領が最後のあがきとして、戦車を召喚しようとするが。
その眼前にはすでに、アルタが刀を構えて迫っていた。
「させない……」
「わっ、なんっ!?」
刹那、刀が振り抜かれて。とっさに身を引いた首領が冷汗を垂らす。
ゆらりと刀を構えながら、アルタが刀を構え直した。
「あなたが何をしようとしているか、わたしには分かっている……」
「僕達が本気出せば、あんた達なんて、イチコロだよー!!」
その左方からは勇狗がダガーを咥えて飛び込んでくる。その刃を躱そうと身を引くより早く、ミルコの銃が遠方より首領の足を射抜いた。
「ボクたちのベースの生活を邪魔しようとしたこと……許しません!」
「な、くっ、この……!」
見事な連携、見事なチームワーク。
三人の動きは確実に強盗団の首領の動きを止め、行動を阻んでいた。
そして。
「これで……終わりだよーっ!!」
勇狗が地を蹴るや、一気に首領の首にダガーナイフの刃を突き立てる。
「あ……」
その一瞬で、刈り取られる強盗団の命。
血を噴き出しながら倒れ行く強盗団の首領の身体が、さらさらと乾いた音と共に消滅して、消えた。
敵の姿が消えたことを確認したミルコが、ようやっと緊張をほぐして口の力を抜く。
「ふぅっ……これで、全員倒せたでしょうか?」
「ああ、そのようだ」
「私の手にかかれば、こんなもんよ! キリッ」
「よく、頑張った……」
律が、紗希が、アルタが、口々にミルコの頑張りを称えて。
ミルコは誇らしげに、心底から誇らしげに胸を張った。
「皆さん……ありがとうございます! さあ、ベースに帰りましょう!」
そう口に出せば、止める者は誰もいない。猟兵たちはミルコと共に、ベース『ガルマリーニ』へと、奪われた農具や種と共に帰還するのだった。
「ところでミルコって、武器が銃だけど、どうやって引き金引いてるの?」
「あ、これですか? こう、牙をひっかけて、舌で押して、こう……」
道中で勇狗がミルコに質問を投げては、まるで何でもないことのように返されていたりも、していたという。
成功
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第3章 日常
『アポカリノーカ』
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POW : 体力なら余るほどある! 一作業員として、現場に協力する。
SPD : 農作に関する技術をあたえる。助言や指導、あるいは器具など。
WIZ : 珍しい農作物の種や苗などを供出。もちろん、生育に関する知識はある。
👑5
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●やっぱり暮らし慣れた土地が一番です
ベース「ガルマリーニ」に帰ると、大歓声がミルコと猟兵たちを出迎えてくれた。
住民たちも何だかんだ言って、飛び出していったミルコが心配だったようで。誇らしげで先頭を歩いてきたミルコを、寄ってたかって撫で回していた。
「いやー、まさかミルコがここまで頑張ってくれるやつだとは……」
「『自分で取り返しに行く!』って言った時は、無茶をするもんだと思ったがなぁ……」
住民たちが口々に言えば、ミルコもミルコでふんと鼻を鳴らし。外見からは想像も出来ない力強い口調で、しっかと住民たちに告げた。
「ボクだってやる時はやるんだからね! 農具も種も返って来たから、これで引っ越しはしなくてもいいでしょ!?」
「あぁ……」
「その通りだ。ありがとう、ミルコ」
ミルコの気迫に押されるようにして、住民たちも頷いて礼を言う。しかしミルコ、それでは満足しなかったらしい。後ろを振り向いて、猟兵たちに視線を向けた。
「お礼ならボクだけじゃなく、こっちの皆さんに言ってください! 皆さんのお力が無かったら、取り返すことは出来なかったんですから……」
自分たちにも言及されて、住民たちの視線がようやく猟兵たちに向いた。
実際、ミルコ一人では強盗団から農具や種を奪い返すどころか、彼女たちを見つけることすら覚束なかっただろう。
住民たちも、ミルコ一人の努力の結果でないことはすぐに分かったらしい。すぐに、猟兵たちへと頭を下げた。
「本当にありがとうございました。これで、また暮らしていけます!」
「まったくだ、ありがとう」
「よーし、心機一転、また真面目に農作業を頑張るか!」
そう言って、ミルコたちが取り返した農具を手に動き出す住民たち。
ベース「ガルマリーニ」の生活が、またこうして動き始めた。
●特記事項
・農具も種も無事に戻ってきて、ベースの住民たちはやる気を取り戻しました。
農作業のお手伝いや助言をしながら、ミルコや住民と交流しましょう。
バロン・ゴウト
無事農具や種を取り戻せたし、ミルコさんがとっても頼りになることがガルマリーニの人達にも伝わって良かったのにゃ!
さあ、最後に農作業のお手伝いをしていくのにゃ。シトラス、もうひと頑張りなのにゃ!
うーむ、日当たりは良さそうだけど、やっぱり土地は痩せてる感じなのにゃ。
だとすれば、大豆やサツマイモ、後はトマト辺りなら実りそうなのにゃ。
よし、種を植える前にまずはしっかり土を耕すのにゃ!
クワを振るうボクの隣で、シトラスも前脚で土を掘り起こすのにゃ。
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
ケイティ・ネクスト
「んにゃぁー、猫が農作業とかする訳無いにゃぁ。それよりイイモノあげるにゃん」
パンツの中から種を一つ取り出すにゃ。
「猫のお友達の種だにゃ。ここなら問題なく育つにゃ。こんな感じにー」
パンツの中から植物の蔦を生やすにゃ。どこから生えてるかは考えない方がいいにゃ。青少年の何かがアブナイ。
「ちょっと危ないケド、また盗賊とかが来たらコイツが撃退してくれるにゃ。食べられる実も成るしにゃー。ちゃんとお世話する人は見分けが付くから……まあ、水やりとかを忘れなければ世話する人は襲わないにゃ。出来た身を植えれば増えるけど……増やし過ぎてコレに拠点を乗っ取られないようには注意かにゃ」
アリスティア・クラティス
【POW】
知識は無い!技術も無い!!
ならば、このちょっと怪しい体力を、気力でカバー!
さあ、躊躇いなく服を汚し、汗水流して土と戯れる!素晴らしい――と、自己自賛する前に、流石に知識ゼロは躊躇われるわね……ここは素直に何をすべきか、ベースの人に教えを請いましょう。
全力で農作業を手伝いながら、自然な流れの中で世間話風に、こっそりミルコには内緒でベースの人たちから『ミルコ今掛けてあげたい言葉』や『ミルコにこれから期待すること』を聞き出しておきましょう。
ある程度聞いて休憩になったらミルコの元へ。ベースの人たちの言葉を伝えるわ。それらはきっと、ミルコに将来必要になる、未来の自信に繋がる言葉になると思うの!
天王寺・勇狗
わふーっ!
とりあえず、穴掘りとかしながら手伝うんだよー!
ともかくとして、耕せばいいのかなって思ったんだけど、肥料とか入れたほうがいいんじゃないかなーって思うんだけど。
なんていうか、ミルコだと毛に泥が付いて汚れてしまいそうな感じなんだけど。
まー、あとで、シャワーするし、いいかな。
ところで、このぐらいの時間になったら、御飯の時間かなー。
「このぐらいでいいかなー??」
アドリブ連携歓迎
スリジエ・シエルリュンヌ
アドリブ絡み歓迎。
ふふ、よかったです。住み慣れた土地を、離れずにすんで…。
私は農作業の手伝いをしつつ、住民と話しましょう。
ミルコさん、勇敢でした。だからこそ、私も助けようと思ったのです。
…ミルコさんも、このベースの一員なんです。軽んじては、いけないんです。
今からでも遅くないんです。むしろ、今からが本番になると思います。
この先もここで暮らすため、皆でこのベースを守り、育てていく。
それは、ミルコさんだけでなく、住民の皆さんの力も必要です。
またも危機が訪れたとき、私たちが来れるとも限りませんから。
その協力も、自分ができる範囲で構わないんです。
ふふ、私は自分ができる範囲だからこそ、戦ったんです。
●楽しい農業の時間です
荒野を吹き渡る風。
ギラギラと照り付ける太陽。
生命には優しくない環境ではあるが、それでも人は生きていく。作物を育てることもいとわない。
ベース「ガルマリーニ」の小規模だが整った畑を前にして、バロンはにこやかに笑っていた。
「無事農具や種を取り戻せたし、ミルコさんがとっても頼りになることがガルマリーニの人達にも伝わって良かったのにゃ!」
「ふふ、よかったです。住み慣れた土地を、離れずにすんで……」
スリジエも嬉しそうに微笑みながら、農作業の準備を進める住民にせっせと指示出しをするミルコを眺めていた。
住民曰く、ミルコの農作業での主な仕事はこの指示出し。畑全体を見回し、目を向け、住民の作業のバランスを取っていくのが役目だそうだ。あとは鋤を引いて耕すのもあるらしい。
「さあ、最後に農作業のお手伝いをしていくのにゃ。シトラス、もうひと頑張りなのにゃ!」
「あぅーん!」
張り切るバロンに、呼応するようにシトラスも鳴いて。その隣では手首足首に土が入らないようガードしたアリスティアが、ぐっと手を握っていた。
「躊躇いなく服を汚し、汗水流して土と戯れる! 素晴らしい!」
農作業の経験は無く、知識も若干怪しいが、それでも気合気力は十分だ。やる気があれば何とかなる、きっと。
「わふーっ! とりあえず俺も、穴掘りとかしながら手伝うんだよー!」
やる気で言えば勇狗も同様だ。彼も賢い動物、行える作業には限界があるわけで。
そうして、各々が各々の想いを持って、農作業にやる気を見せていた……だが。
一人だけ乗り気でない猟兵がいた。
「んにゃぁー、猫が農作業とかする訳無いにゃぁ」
「えぇっ」
ケイティである。
ネコ車の上に乗っかって丸くなり、とっととお昼寝を決め込むモード。ミルコが困惑してネコ車を見上げていた。
「猫はのんびりまったりしてるのにゃー。猫だから」
そう言って、ふわ~と欠伸をするケイティに、しょんぼりとしたミルコが尻尾を下げる。これは何を言っても、自発的に手伝ってはくれそうにもない。
だがしかし。
「そうか、猫か……」
「猫じゃしょうがないな……」
どうやら「ガルマリーニ」の住民は、ケイティの主張に納得したようです。猫つよい。
●的確な農業には知識と経験が必要です
ケイティはともかくとして、早速農作業を始めよう、と意見がまとまったところで。
「とりあえず、私たちは何を手伝えばいいかしら?」
アリスティアがさっと手を上げて、住民たちに意見を仰いだ。
農作業は初体験。それに、このベースでのやり方もあるはずだ。なにしろこの土地で、長いこと生き抜いている彼らである。
一人の住民が、目の前の畑を見ながら頷く。
「そうだな、今はちょうど豆の種蒔きをしようとしていたところなんだ」
「この土地は土が乾燥して硬い。水はけはいいが、作物によってはしっかり耕さないとならない」
その隣に立つ別の住民も、畑に視線を向けながらそう言った。
アポカリプスヘルは荒れ果てた世界。土地は乾いて痩せ、水はけはいいものの頻繁に雨が降るわけではない。しっかり人間の手を加え、作物が育つようにしてやる必要がある。
「つまり、土を耕すことと、豆の種を蒔くことが主なお手伝いになりそうですね」
スリジエの言葉に、住民もミルコも一緒になって頷いた。
この畑を耕し、鋤を入れ、そして種を蒔く。これが猟兵たちに求められる作業と言えそうだ。
と、バロンがさっと手を上げながら住民たちに声をかける。
「豆だけだと連作障害が心配だにゃ。トマトや、サツマイモも育ててはどうかにゃ?」
「なるほど、そういえば豆の生育が悪かったり、よく枯れたりするタイミングがあるな」
「確か倉庫に備蓄があったはずだ。持ってくる」
彼の言葉に、どうやら思い当たる節があったらしい。
マメ科の植物は同じ土地に何度も続けて植えると、連作障害を引き起こして立ち枯れを起こしやすくなる。地球ではだいたい、二年は間を置いて育てるのが常識だ。
ミルコによると、今までは三枚ある畑で豆、サツマイモ、トウモロコシを順繰りに入れ替えながら育てていたそうなのだが、どうしても種が手に入らない時などに、複数の畑で豆を同時に育てたことがあったらしい。
そうして、住民がサツマイモの種イモと、ミニトマトの種を備蓄分から持って来たところで、次に声を上げたのは勇狗だった。
「肥料とか入れたほうがいいんじゃないかなーって思うんだけど、何か使っているものはあるの?」
勇狗の言葉に、頷いたのはミルコだった。
「うちのベースでは、豆ガラを燃やした灰を主に使っているよ。あとは鶏糞も使うかな」
「豆を育てるときにはあまり使わないが、他の作物も育てるなら必要だな」
ミルコと住民の言葉に、勇狗もこくこく頷く。豆は必要とする窒素分の大半を根に共存する常在菌で賄うが、それでも土地に幾らか元肥は必要だ。他の作物ならもっとしっかり元肥を鋤き込まないとならない。
そしてそこからも相談を続け、大豆、トマト、サツマイモをそれぞれの畑で一枚ずつ育てることが決まり。
アリスティアが拳を高く突き上げて言った。
「よーし、それじゃやるわよ! 私とスリジエで肥料を撒いていきましょう」
「そこで俺とシトラスが穴を掘って、畝を作ったり土に空気を含ませたりすればいいんだな!」
「ボクも鍬を持って、畝作りのお手伝いをするのにゃ!」
「あぅん!」
勇狗が吠えればバロンもすぐに手を上げ、シトラスも付け足すように一鳴き。
「よーし、それじゃ、皆でがんばろー!」
そしてミルコが場を引き締めるように、大きく声を上げた。
と。
「あー、じゃあついでにちょっといいかにゃ? イイモノあげるにゃん」
ネコ車の上から降ろされ、箱の上で微睡んでいたケイティがちょいちょいと村人に手招きすると、おもむろに自身のパンツの中に手を突っ込んだ。
何をするのかと思えば、そこから引き抜いた手には植物の種が一つ、握られている。何故だかちょっと湿っていた。
「えっ、これは……」
「猫のお友達の種だにゃ。ここなら問題なく育つと思うにゃ」
「というかケイティさん、その種どこから――」
戸惑う村人の手のひらに種を乗せるケイティ。スリジエが不思議そうにケイティを見やると。
突然ケイティの「へそ」から、ずるりと蔦が伸びてきた。
「ひゃっ!?」
いきなり蔦がケイティの身体から出てきたことに、その場にいる全員が跳び上がった。
しかし当の本人は、全く平静な様子でにっこり笑い、伸びた蔦を手に持っている。
「こんな感じに蔦を伸ばすにゃ」
「き、寄生植物
……!?」
「大丈夫なのか、人間を襲ったりしないのか?」
口をぱくぱくさせるミルコの横で、種を受け取った村人が焦った声を上げる。
これで攻勢植物がベースの人々を襲い、ベースが滅茶苦茶になるのでは意味がない。
しかしケイティはゆるゆると頭を振って、ベースの入り口、柵の途切れる場所を指さした。
「襲うからこそのプレゼントにゃ。また盗賊とかが来たらコイツが撃退してくれるにゃ。
それに、ちゃんと自分をお世話してくれる人は見分けがつくから、ちゃんと皆で水やりをすればベースの人は襲わないにゃー」
「そ、そうか……」
どうやら、この攻勢植物をベースの防衛装置とするために手渡したらしい。世話をすれば襲わない、の言葉を聞いて、ガルマリーニの住民が揃ってほっと胸を撫で下ろした。
自分から生えた蔦を愛おしそうに撫でながら、ケイティが再び笑う。
「つけた実は食べられて、その実を植えれば増やせるけど……まぁ、増やしすぎてコレにベースを乗っ取られないようには注意かにゃ?」
「やっぱり危ないんじゃないですかー!?」
ミルコが悲痛な声を上げて、誰かが笑みを零して、笑い声が連鎖して。
結局、ベース「ガルマリーニ」の入り口付近に攻勢植物を植えて、また侵入者が来た時に対処してもらう方向で、意見は一致した。
●皆が力を合わせて仕事するのが農業です
「わふーっ!」
「あぅーっ!」
勇狗とシトラスが、ばばーっと土を跳ね上げながらどんどん畑の地面を掘っていく。
ミルコが鋤を引くのより、人間が鍬を入れるのより、何倍も速いスピードで土を掘り進めていく一人と一匹によって、鋤入れは住民たちが思っていたよりも早く進んでいた。
その後ろから住民と一緒に、スリジエが肥料を撒き、アリスティアが鍬で土を盛り上げ畝を作り、バロンが種を植えていく。
「このくらいでいいかなー?」
「ありがとうにゃ!」
「次はもう少し、ゆっくりめに掘ってくれていいぞ!」
早速一枚掘り終わった勇狗とシトラスが土にまみれながら言うと、住民が笑いながら隣の畑を指さす。ミルコも畑の外に積まれた木箱の上で、全体を俯瞰しながら勇狗に声をかけた。
「勇狗さん、シトラスさん、その調子です! そこの地面を掘り終わったら、次は隣の畑をお願いします! スリジエさん、そこの畑はイモが植わるので、豆ガラ灰より鶏糞中心で撒いてください!」
「了解だよーっ!」
「分かりました!」
矢継ぎ早に飛ばされる指示。勇狗がシトラスを連れて隣の畑に移ると同時に、スリジエが手元に抱える肥料の袋を取り替えた。
スリジエの後を追うように畝を作っていくアリスティアが、ふと立ち止まって汗をぬぐう。
「ふぅっ、畝を作るだけでも、結構な重労働だわ」
「どうしても前屈みになるから、腰が痛くなるのにゃ」
「そうだろう、ここは砂壌土だからな、畝を高く立てるのが難しい。イモを育てるには具合が良いんだがな」
後ろでバロンも、種イモを植える手を止めてぐっと身体を反らした。どうしたって農作業は前屈みになる作業が多い。腰や膝に負担がかかるものだ。
後方を振り返れば、まだまだミルコがあちこちに目を配り、どんどん指示を飛ばしている。その声には張りがあり、元気があるのが見て取れた。
「ミルコさん、活き活きしてるにゃ」
「そうね、とっても嬉しそうだわ」
バロンとアリスティアが顔を見合わせて笑えば、一緒になって畝を作っていた住民も、感心したように笑みを零す。
「ああ、今まではどこかおどおどして、周囲の顔色を窺うようだったのに、ハッキリものを言うようになった」
その言葉に、アリスティアが僅かに表情を緩めると、彼女の背後からスリジエの声が聞こえてくる。
「はい、ミルコさん、勇敢でした。だからこそ、私も助けようと思ったのです」
「スリジエ。肥料は撒き終わった?」
「終わりました。私も畝作りのお手伝いをします」
見れば、この畑の肥料は必要分撒き終えたようで。豆ガラ灰の入った袋と鶏糞の入った袋を手に、こちらを向いて立っていた。
軍手をはめた手が、そっと彼女の胸元に運ばれる。
「ミルコさんも、このベースの一員なんです。軽んじては、いけないんです」
「そうだにゃ! ベースの皆のために、勇気を出して頑張ったにゃ!」
スリジエの言葉に頷きながら、足元からバロンも声を張って。
その言葉を顔をきょろきょろさせながら聞いた住民が、ふっとため息をついた。
「そうか……あいつがなぁ。俺たちはどうも、ミルコの姿可愛さに囚われていたのかもしれん」
ミルコの見た目に、可愛らしさに囚われていた。可愛らしいから、前に立たせないようにしていた。
そんなきらいは、確かにあったのかもしれない。アリスティアが再び畝を作りながら頷く。
「そうね、ミルコの見た目に囚われてはいけないわ。彼のリーダーシップが、きっとこの『ガルマリーニ』の支えになるはず」
「はい、今からでも遅くないんです。むしろ、今からが本番になると思います。
この先もここで暮らすため、皆でこのベースを守り、育てていく。それは、ミルコさんだけでなく、住民の皆さんの力も必要です」
スリジエもそう告げて、自分の手に握る肥料の袋を戻すために畑の外へ。バロンも再び、畝に穴を開けて種イモを埋め始めた。
作業を続けながら、ふとアリスティアが住民に声をかける。
「ところで、ミルコに言ってあげたいこととか、期待することとか、あるなら聞くわよ? こっそりと、ね」
その言葉に、大きく目を見開いた住民だったが。伝えたい言葉には、さして悩まなかったらしい。すぐに表情を明るくして口を開いた。
「そうだなぁ……とりあえずは、あれだな。
『今年も作物をいっぱい実らせられるよう、しっかり管理してくれ。しっかり働いてみせる』だな」
その素直な言葉に、アリスティアの表情も自然と明るくなる。
「ふふっ、いいわね」
「うん、大事だにゃ」
バロンも後ろで、種イモを植えながらにっこり笑っていた。
そうして作業は着々と進み、一時間もすれば勇狗とシトラスは三枚ある畑の地面を全て掘り終わり、畝も畑二枚分は整え終わっていた。三枚目の畑の畝も、もうすぐ全て出来上がる。
そうして畝作りがもうすぐ一段落、というところで、ミルコの声が畑の外から飛んだ。
「皆さん、お疲れ様です! 畝作りが一段落したら休憩してください!」
その言葉に、住民の手も自然と動いて。程なくして三枚の畑に綺麗に畝が立てられた。
住民たちが握っていた鍬を畑の外に置いて、用意されていた麻布のシートの上に腰かける。そうしてしばらくは休憩時間だ。外からの協力者も交えて、話にも花が咲く。
そんな中、住民にお茶を渡して回っていたアリスティアが、ふとミルコに声をかけた。
「ねえミルコ」
「はい? なんでしょう」
浅い皿に水を張って、それをぺろぺろ舐めていたミルコが顔を上げると。
お茶を渡しながら住民と会話をしていた彼女が、にっこり笑って「それ」を話した。
「皆が、こう言っていたわ。『これからも期待している』『しっかり管理してくれ、しっかり働いてみせる』……って」
「え……」
その言葉に、ミルコの瞳が見開かれる。
アリスティアは作業をしながら、ベースの住民にミルコについて話を聞きつつ、彼に今後どんなことを望むのか、どんな言葉をかけてあげたいのかを、聞いて回っていたのだ。先程のお茶を渡す際の会話も、それ絡み。
ミルコ・ザルディーニは今後、ベース「ガルマリーニ」を率いる存在となるだろう。住民にも慕われる存在になるだろう。しかし、それにはミルコ自身に、やっていけるという自信が無くてはならないのだ。
「大丈夫、ミルコならきっと、この『ガルマリーニ』をいい方向に導いていけるわ。この言葉はきっと、ミルコに将来必要になる、未来の自信に繋がる言葉になると思うの!」
「そうですね、協力も、努力も、自分ができる範囲で構わないんです……ふふ、私は自分ができる範囲だからこそ、戦ったんです」
励ましの言葉を送るアリスティアに同調しながら、スリジエも微笑みながらミルコへと言葉を送る。
驚きに目を見張って、二人を交互に見つめるミルコ。その瞳が、僅かに細められると。
「……はい! ボク、頑張ります!」
二人の言葉に、ミルコもにっこりと笑みを浮かべて。
荒野のただなかに建つベース「ガルマリーニ」の新たな一ページが、こうして一人の賢い動物と共に始まるのだった。
大成功
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