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帝竜戦役⑱〜Love saves the world

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸 #挿絵 #トンチキシナリオ


●冷静と情熱の果てに
 戦場と呼ぶには、あまりにも場違いに思えるここは『サウナ珊瑚』なるものがそこかしこに生える温泉地帯。
 この温泉に身を浸した者は、例外なくある感情を爆発的に増幅させられるというから恐ろしい話であり。
 しかし、それを敢えて律し、制御し、耐え抜くことで、逆に戦闘力を一時的に上昇させられるのだから悪い話ばかりではない。

 そうして、今回猟兵たちの前に立ちはだかる敵は――爆発的な感情にすっかり支配されて、殺到してくるという。
 ――教えておくれ、その感情の名は何という?

●愛のカタチは人それぞれ
 グリモアベースの喧騒に負けぬよう、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)はパンと一拍両手を打ち合わせ、行き交う猟兵たちの気を惹こうと試みた。
 興味を持って話を聞きに来た猟兵たちを、最早暇人呼ばわりはすまい。ミネルバはぺこりと頭を下げると、早速予知の説明を始める。
「みんな、忙しいでしょうにありがとう。ちょっと、お願いしたいことがあって」
 そう言って背後に展開させたビジョンに映るのは、珊瑚と温泉という謎の組み合わせ。
「今回、攻略して欲しいフィールドは『冷静と情熱の珊瑚礁』。平たく言うと温泉が湧いてるから、そこに足湯なり肩まで浸かるなりして特殊効果を付与された状態で戦って来て欲しいの」

 ――合法的に温泉に入れる!?

「待って、お願い最後まで話を聞いて頂戴!」
 イエアアアアと拳を突き上げんばかりのテンションになりかけた猟兵が現れるのも止むなしだが、ここからが大事な話だとミネルバは必死にそれを制しようとする。
「あのね、この温泉に浸かるとみんなの感情が……その、人やモノに対する『好き』っていう感情が、めちゃくちゃ増大するの」
 クソデカ感情って分かる? そう言い添えて、ミネルバが真面目な顔で続ける。
「ほら、感極まるとオタクって顔を覆ってその場にしゃがみ込むじゃない。ソレよ」
 ちょっとその例えは分かりづらくないかい。言わんとすることは分かるんだけど。

 たとえば、好きな人への想いが限界まで高まるとか。
 あるいは、好きなモノへの情熱が最高潮に達するとか。
 恋とか愛とか、そういう枠にはまらない複雑な『誰か』に対する感情さえも。

 色々あると思うのよ、そうミネルバは髪を弄りながら続ける。
「いい? その感情のままに行動しちゃダメ。それを『抑え込んで』こそなの」
 今から自分が導くのは、間違いなく戦いの場。
 そこで上手に立ち回る術を、伝えなくてはならない。
「クソデカ感情を顔に出す程度ならいいわ、でもそれをグッと堪えて。そうすれば堪えた分だけみんなの戦闘力が一時的に上がるから」
 こんなあたまのおかしいバフ効果聞いたことないわという顔をしながら、ミネルバは集った猟兵たちの顔を見回す。
「一方の敵は……なんか、着ぐるみ愛が極まっちゃってこじらせた職人の末路、なんですって。一歩間違えばみんなも仲間入りよ、ホントに気をつけてね」

 敵のクソデカ感情をも上回る戦闘力を得るため、敢えて温泉に浸かり、増大した感情を抑え込んで手に入れた戦闘力をもって――圧倒せよ。

 ミネルバが雪の結晶を掲げると、いよいよ戦場への転移が始まる。
「クールにね、みんな。戦闘が終わったら、存分にぶちまけていいから」
 その結果に対して責任は取れないけど、そう言いながら温泉地帯への道を拓いた。


かやぬま
●ごあいさつ
 初めまして、またはお世話になっております。かやぬまです。
 感極まると「ハーーーーーーーーーーーーーー」とすぐ奇声を発するマンです。
 という訳で、皆様の熱い感情とそれを堪える精神力とを拝見したく思います!

●戦場の説明
 ★プレイングボーナス『「爆発的な感情」を発露させた上で、抑え込む。

 当シナリオでは『好き』という感情全般を取り扱います。
 ストレートに恋とか愛とか、愛着を持っている物品への感情移入でも。
 そういう枠にははまりきらない複雑な感情もあると思いますので、そういうクソデカ感情も大歓迎です。何なら他者ではなく自身への愛情でも構いません。
 でも、ぶちまけるのは我慢しましょう。内にグッと秘めてこそ、強くなれます。

 温泉に浸る度合いはお任せします、基本的には服のままざぶんと入っていただくイメージですが、水着姿で挑んで下さってもオッケーです。全裸はアウトだぞ!

 着ぐるみへの愛が限界突破したオブリビオンが相手です、冷静に対処しましょう。

●プレイング受付期間
 断章はありません、OPが公開され次第受付致します。
 お越し下さった方の人数次第では、受付〆切をご案内する可能性もありますので、MSページやツイッターをご確認頂けますととても有難いです。

 それでは、皆様の熱い『好き』の気持ちを武器に変えて。
 挑戦をお待ちしておりますね!
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第1章 集団戦 『ハッピー工房』

POW   :    最後の大仕事
自身の【手取りと心臓】を代償に、【召喚した愛する部下達と流れの職人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【敵をも魅了する着ぐるみ】で戦う。
SPD   :    最低の仕事
全身を【部下を代償に作った最高傑作のサメ着ぐるみ】で覆い、自身の【工房への愛と研鑽に費やした年月】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    閉鎖する工房、ワンマン・オペレーション
非戦闘行為に没頭している間、自身の【雇用者および周囲】が【ストライキを起こし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。

イラスト:まめのきなこ

👑7
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ベール・ヌイ
好き、大好き。
復讐に付き合ってくれると言ってくれた、あの時から、気になってた
一緒の旅団で、お昼寝して、ご飯食べて
思いが募っていって
あの時、鬼攻撃から庇ってくれた時、復讐よりもあの子を優先した
大好きなあの子…一緒にいたい、あの子

叫びたい気持ちを抑えて、グッと我慢して
【不動明王・倶利伽羅】を起動
刺して、丸ごと縛って、燃やし尽くす
相手の攻撃は「激痛耐性」で我慢

…戦争が終わったら、いっぱい甘えたいなぁ

アドリブなど歓迎です



●あなたとならばどこまでも
 ――おまえは、不幸せだったからな。
 宿敵たる禍々しき異形にそう言われたのを思い出しながら、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)はそっと足先を温泉に浸す。
 今は、どうだろうか。今も自分は、不幸せなのだろうか。
 一日の大半を眠って過ごすほどの妖狐の娘がその瞳をとろんとさせたのは、何も眠気のせいだけではなく。

(「好き、大好き」)
 予知されていた通りの『好き』という感情が、まだ半身も浸さぬうちからもうこれだ。
 ヌイは胸の奥がきゅっと締めつけられる感覚に襲われ、思い浮かべるのはただ一人の姿。ああ――そのひとも寝るのが好きで、最初から親近感は覚えていたけれど。
(「復讐に付き合ってくれると言ってくれた、あの時から――気になってた」)
 思えば他人の復讐に同行するだなんて、よほどのことがなければ起こり得ない。
 それだけ、互いの関係性が深かったと言う他にないだろう。
(「一緒の旅団で、お昼寝して、ご飯食べて」)
 何気ない日常の積み重ねこそが、想いを募らせていく切っ掛けになったに違いない。
 午睡から目覚めてすぐそこには、あなたがいて。
 美味しいご飯を二人一緒に味わうのは、幸せで。

 ――こんなの、好きにならないわけがない!

 ヌイが目を閉じれば、今でもありありと思い出せるあの光景。自分のものではない血飛沫に、『あの子』が何をしたのかを知った自分は。
(「あの時」)
 鬼の凶悪なる一撃より身を挺して己を守ってくれた、勇敢で優しい『あの子』。
(「復讐よりも、あの子を優先したヌイは」)

 好き、大好き。何度だって言える。
 大好きなあの子……『一緒にいたい』、あの子。

 ――ああ、この想いをぶちまけてしまいたい!
 でも――なんてこと。これを我慢しろだなんて。

『高らかに叫べばよろしい! 私は言うぞ、サメの着ぐるみを愛していると!』
 そうして、話に聞いていたオブリビオンが姿を見せる。
 サメだった。何故か、ヒレがカニのハサミになっているけれど、サメだった。サメが、着ぐるみ愛を叫んでいる。ちょっと脳内が混乱しそうな光景だった。
 それでもヌイは足を温泉から上げると、不思議と身体中に力が満ちていくのを感じる。
 なるほどこれが、爆発的な感情を堪えた結果ということか。
「駄目、言わない」
 ――ナイショだから。この想いは、向けられるべきあの子だけが知っていればいい。
 サメは鬼ではないけれど、「鬼殺」の銘を持つ刀を向けて。不動明王の真言を紡げば、刀身は倶利伽羅竜王の姿を模した炎へと――【不動明王・倶利伽羅(クリカラノケン)】!
『貴様! 火気厳禁だぞ!?』
 サメが困惑しながら愛する部下たちと流れの職人とを喚び出してヌイにけしかけるが、サメの着ぐるみ程度で今のヌイの心を揺さぶることなど出来ようはずがなく。

「刺して」
『ふぐぅッ!?』
 炎が収束して、サメ本体を貫き穿つ。
「まるごと縛って」
『熱い、熱い!!』
 炎はまるで鞭のように、ぐるりとサメの身体に巻きつき。
「……燃やし、尽くすッ」
『アアアアアーーーーー!!!』
 業火に包まれるサメは、ヌイが炎を引き抜き手元に戻したあともなおゴロゴロと地を転がって火を消そうと必死になっている。

(「……戦争が終わったら、いっぱい甘えたいなぁ」)

 ヌイ自身まだ若いというより幼いとまで言えようが、想い人はそれよりもさらに。
 そんな二人が……仲睦まじく……キャッキャウフフ……!?
 いいですねえ! どうか無事この戦役を乗り切って、存分にイチャコラして下さい!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
つまりそう
これは
世界への 愛――!!!

生きているものなら何でも好きだ
命が終わる瞬間もまた良い
淘汰も繁栄もその手で選ばれるが故に愛おしい
人間も動物も植物も大好きだ
人間が動物を追い詰めるのも森林を壊すのも
逆に動物や自然が人間を追い出すべく牙を剥くのも
生きるというのは美しいからな
だが死んだ後で生きているものを脅やかす者は何度でも無限に殺そうな
何故なら私は世界の味方であるが故に
この世界への 愛 今はぐっと堪えてくれよう

だが叫ぶぞ
これは詠唱だからな
幻想展開、【済生】
それでも、世界は愛と希望に満ちている!!
良しすっきりした。平常だ

さァかかって来るが良い!
私はここだぞ鮫……それ鮫かな?
まあいいや 鮫どもめ!



●ガチのマジで世界を救っちゃう愛
(「つまりそう、これは」)
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)はかっちりとした仕立ての良い服を着込んだまま瞑目し、めんだこチャンを頭に乗せて――かの温泉に身を浸していた。
 不動の姿勢で沈思黙考、その末に。ニルズヘッグは、カッと目を見開いた。

(「世界への、愛――!!!」)

 そう、眼前に広がるサウナ珊瑚とかいうなにいってだこいつ案件の光景さえも愛おしい。
 頭にめんだこチャンを乗せているのは、湯に浸してしまうと儚く散ってしまいかねないから。本当は抱きしめてその心地良さを堪能したいけれど、今は我慢の時。
(「そう、生きているものなら何でも好きだ」)
 ニルズヘッグは人に近い竜の姿でありながら、その行動理念は非常に独特であり。
 故に、ヒトという知的生命体が持つ、ある種の傲慢とさえ言える価値観をも超越する。
(「命が終わる瞬間もまた良い、淘汰も繁栄もその手で選ばれるが故に愛おしい」)

 世界を織りなすのは、生命だ。
 故に、ニルズヘッグは人間も、動物も、植物も、みな等しく――大好きだ。

 真顔で湯に浸り、最早底知れぬスケールの大きさとなった愛をひたすらに裡に秘め、ニルズヘッグは天を仰ごうとし、しかし頭上のめんだこチャンを思いやって、止めた。
(「人間が動物を追い詰めるのも、森林を壊すのも、逆に動物や自然が人間を追い出すべく牙を剥くのも」)
 それら全てが『美しい』。ヒトの目線からすれば残酷なように思えるそれさえ、そこから外れたところにいるニルズヘッグの目線からすれば、尊いものであったのだ。

「生きるというのは、美しいからな」
 頭に乗せためんだこチャンを慈しむように触れながら、ニルズヘッグは穏やかに笑む。
 その裡に、本当は抱えきれないほどの情動を――世界への愛を、いっぱいに湛えて。
 なあ、と。それはまるでめんだこチャンに語りかけるよう。
 愛らしくデフォルメされた巨大深海魚は言葉を返さないが、絶妙な手触りでニルズヘッグの手を包み込むようであり。
 珊瑚の向こうに、サメが見えた。骸の海より出でしもの、オブリビオン。
 アレをも慈しむか? 愛するか? 答えは否だ。
「だが、『死んだ後で生きているものを脅かすもの』は」
 ニルズヘッグはめんだこチャンを手で押さえながらざばんと湯から上がる。
「――何度でも、無限に殺そうな」
 にぃ、と。口の端を歪めて、愛するものを害するものへの敵意を隠さずに。

 ――何故なら、私は世界の味方であるが故に!

 そんな、世界そのものという途方もないものへのクソデカ感情を胸に抱いて。
(「この世界への『愛』、今はぐっと堪えてくれよう」)
 裡に秘めることでこそ、想いは力となってニルズヘッグを強くしてくれる。
 今や尋常ならざる力を得た氷竜は、挙動の怪しいサメのようなものを見て、実はこっそりと主と共に湯に浸っていた黒い蛇竜を呼び寄せる。
 主人大好きな感情をめっちゃ昂ぶらせた蛇竜は、いつも以上にもちもちと愛らしい仕草で『己を使って欲しい』と言わんばかりにその身を長槍へと変え、ニルズヘッグはひとつ笑むとそれをしっかりと握る。
 片手に黒い槍、もう片手の脇にはめんだこ。ニルズヘッグはそれでも誇らしげに長槍をサメっぽい何かに向けて告げた。
「さァかかって来るが良い! 私はここだぞ鮫……」
 それは本当に鮫かな? ニルズヘッグはいぶかしんだ。
 いぶかしんだが、それでも殺さねば。故に、改めて叫ぶ。
「まあいいや――鮫どもめ!」

『……』
 チクチクチクチク。
 サメたちは、一心不乱にサメの着ぐるみを作る作業に没頭していた。
「……良いのか、私はこれからユーベルコードを発動させるぞ」
 念の為、ニルズヘッグが問い掛けたが、作業にめっちゃ没頭しているサメたちからの反応はない。ちょっとさみしい。
(「これは、合法的に叫ぶ好機ではなかろうか? ああそうだ、これは詠唱であるが故に」)
 男は、思い付いてしまった。そして、黒き長槍を高々と掲げてみせて。

「幻想展開――【済生(ホッドミーミル)】」
 きぃん、と。鈍色の光が槍の穂先から放たれる。世界樹のふもとに広がる森は――。

「それでも! 『世界は愛と希望に満ちている』!!」

 背中に生えた竜の翼が力を得る。大切なものを守るためなら、空をも舞ってみせよう。
 ついでに合法的に力を得たまま世界への愛を叫べたのだから一石二鳥というもので。
 さあやってやるぞと思ったものの、サメたちは作業に没頭して、その周りを何故か雇用者や周囲のサメがストライキを起こすという本当に意味の分からない状況を生み出し、外部からの攻撃を無効にしてしまうのだ。

「……待てよ、裁縫に夢中になっているだけということは」
 世界に仇なす存在たり得ないのではないか?
 チクチクチクチク。サメたちはあくまでも着ぐるみ作りに夢中なご様子。
「嗚呼――」

 やはり世界は、愛と希望に満ちていた。
 ニルズヘッグは矛を収め、満足げにめんだこチャンを抱えて踵を返したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
温泉!風呂!

服着たままでいいんだよな?よし!
ひゃっほおおおーー!!(ざぶーん)

嗚呼もう温泉堪らない…
ラッコスタイルでプカァと浮いたままずっと漂ってたい…

他の猟兵もいるんだし、俺くらい浸かっててもいいじゃないか。
もう俺、このままお湯になりたい…

とはいえ、風呂入るのを邪魔されたくないな。
後で美味しい牛乳飲むために、少し我慢して戦うか。

UC【精霊召喚】で精霊様を呼び出して、精霊様には敵に縋りついてもらって、攻撃か妨害をお願いしたい。

手っ取り早く敵を倒したいんだよな。
敵の攻撃は、土の精霊様にお願いした[属性攻撃、高速詠唱、カウンター]で飛んでくる敵を叩き落としたい。

う〜もう1回温泉に浸かりにいくか〜


満月・双葉
【オーラ防御】を展開しつつ
【野生の勘】を研ぎ澄まし敵を警戒して【見切り】して、と
敵の数が多い場合は敢えて踏み込み【激痛耐性】で耐えつつ【敵を盾にする】戦法も

大根はね、よい食べ物
大根への愛を叫びます
鮫は新鮮なうちに調理すれば…
刺身に大根添えるのは何故か知ってます?
大根って食あたりがないそうで、『あたらない』の縁起物だそうです
磯辺餅に大根を添えるのは、胃に凭れやすい餅を食べる際に大根を共に食することによって消化を助け…
おっとここら辺りで大根愛をぐっと堪えて
過労死しそうな鮫の部下達よ、僕の(爆発の【属性攻撃】つき)特製大根を食べて元気出してくださいね!(大根【投擲】)

やーいこのブラック上司な鮫!



●たとえばこんな愛のカタチ
「温泉! 風呂!!」
 湯気と熱気あふれる温泉を前にして、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は妖狐の証たる耳と尻尾を興奮のままにぴこぴこぶんぶん忙しなく動かした。
 そんな都月を常と変わらぬ無表情――のように見えて、目だけ細めて『微笑ましい』という意思表示をこそり。満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)はくるぶしあたりまでを露出させて、テンションがダダ上がりの都月より一足先にと湯に浸す。
「ああ、これはなかなか」
「服着たままでいいって言ってたよな? よし!!」
 嫌な予感がした。生けるものの生命が視えるものの、研ぎ澄まされた直感であった。
 果たしてそれは見事に当たり。

「ひゃっほおおおーーーーー!!!!!」
 ざっぶーーーーーん。

 盛大な水しぶきを上げて、都月が温泉にダイブしたのだ。温泉の端に腰掛けていた双葉が、湯を真正面から浴びてずぶ濡れになる。
「……木常野さん」
 別に怒ってはいない、いないが。温泉に入るなら、こう、その。そういう顔をしていた。
 だが、都月は温泉の心地良さにすっかり夢中。うっとりとその身を湯に浸して、言うなればラッコスタイルでプカァと漂っている。
「嗚呼もう、温泉、堪らない……」
 願わくばどうかこのままで。まるでこの温泉のようにこんこんと湧き出てくるのは、そう――温泉への、愛!
 傍目から見れば、まるでグリモアベースでの説明を途中までしか聞かなかった子のように見えるかも知れない。実際、双葉はものすごく不安そうに見守っていた。
 しかしそこは抜かりない、様になっているラッコスタイルも伊達じゃない。都月は声に出さぬよう、心の裡でこう思っていた。

(「他の猟兵もいるんだし、俺くらい浸かっててもいいじゃないか」)
 いますね……そこでずぶ濡れになった、双葉さんとか……。
(「もう俺、このままお湯になりたい……」)
 愛するモノとひとつになって溶け合いたい。これは中々に極まっちゃってますね。
 ハーーーーーーー、と。大きく息を吐いた都月は、全身で温泉の心地良さを味わいながら、しかし膨れ上がる温泉愛を(これでも)懸命に堪えていたのだ。
 そんな都月の胸中を知ってか知らずか、双葉はそっと懐から大事そうに大根を取り出した。そう、大根だ。どこからどう見ても大根です本当にありがとうございました。

 何度でも言いますよ? 双葉さんは今、大根を愛おしそうに抱えています。

「大根はね――良い食べ物です」
 そう、一言だけ。双葉は、まるで我が子を慈しむ母親のごとく大根を抱えて、天を仰いだ。
 叫びたい、でも叫べないこの想い。大根への、限りない愛情。
 足湯のみならず図らずも頭から湯を浴びたことにより、それは際限なく膨れ上がる。
(「ああ、鮫ですか。鮫は新鮮なうちに調理すれば……」)
 食う、気だ。今やすっかり鮫と成り果てた、着ぐるみ生産者たるオブリビオンを。
(「刺身に大根添えるのは何故か知ってます? 大根って食あたりがないそうで」)
 それ即ち『あたらない』の縁起物だそうだ。クッ、ひとつ学んでしまった……!
 ちゃぷちゃぷと軽く足を揺らせば、温泉の効能がさらに染み渡るような心地がして。
(「磯辺餅に大根を添えるのは、胃にもたれやすい餅を食べるのに大根を共に食することによって消化を助け――」)
 ぴた、と。そこで双葉の足が動きを止める。
 浮いていた都月も、ざばりと立ち上がった。

「……風呂入るのを、邪魔されたくないな」
「そうですね、大根愛はここら辺でぐっと堪えましょう」
 都月と双葉の眼前には、何故かヒレがカニの鋏になったサメがいた。
『愛し合ってるかい!!!』
 やめろ! 歳がバレる!!
「イエーーーイ!!!」
 都月くん! ノッちゃダメ!!
 どうどうと双葉が大根を抱えながら、空いた片手で都月を制する。
「オッケー、落ち着きましょう。クソデカ感情は抑えてこそです。鮫を捌いたあとで存分に温泉に入って、上がったら牛乳で乾杯と行きませんか」
「……! わかった、風呂上がりの美味しい牛乳飲むために、少し我慢する」
 おっといけない、そんな顔で都月は気を取り直してサメに向き直る。対するサメも、鋏を打ち鳴らして迫ろうとしていた。
『猟兵よ、ここで会ったが百年目! 我が最高傑作を冥土の土産にするが良い!!』
 そうサメが言うやいなや、その身はただでさえサメなのに、さらにサメの着ぐるみに覆われるというよく分からない事態が起きた。
 アレです、お好み焼きとご飯を一緒に食べるのを関東の人間が理解できない感じです。
 だが、次の瞬間サメは高々と舞い上がり、まずはと都月に狙いを定めたではないか。最早サメが空を飛ぼうが、そういう世界を知っている猟兵たちは動じないが。
 都月も例外ではなく、怯むことなく。翠玉が嵌まった魔法の杖を掲げて叫ぶ。

「精霊様、ご助力下さい――【精霊召喚】!」

 今回、都月は敢えて『どの精霊様の力を借りるか』を定めなかった。いわゆる『お任せします』というヤツである。そうして、現れたのは――。
『温泉……サメ……ナラバ、私ノ出番デスネ……』
 たおやかな水の精霊が、すいと指を下から上に。するとたちまち温泉から水の柱が噴き上がり、まさに猛然と都月に迫ろうとしていたサメの土手っ腹を強かに打ち据えた!
『ギャーーーーーーーーーーーーーー!!!』
『……雑ナ、悲鳴デス……』
「あ、あの」
 おずおずと都月が水の精霊様に声を掛ける。
『……ドウシマシタ』
「お、俺。敵に縋りついてもらう程度でいいかなって思ってて……」
 まさかここまでバイオレンスな攻撃方法になるとは思っていなかったものだから、思わず正直な感想を述べてしまう都月。
 この妖狐の青年は、己の猟兵としての力量が既に頂点近くにあるということに気付いていないのかも知れない。ひとたび力を振るえば、凄まじいことになるのだ。
「……でも! 手っ取り早く敵を倒したかったから、その……」
 ぺこり、と。都月は全力で水の精霊に頭を下げた。
「ありがとうございます!!」
『……マダ』
 終わっていませんよ、そう笑って。軽く手を振り姿を消すと、交代するように今度は寡黙な土の精霊様が現れる。
『……攻撃ニ、備エヨ』

 一方、双葉が相手取るサメは恐るべきことに――己の心臓を貰ったお賃金と共に差し出すことで、愛する部下たちと流れの職人というイカれたメンバーを召喚したのだ。
 そいつら全員サメの着ぐるみ姿。控えめに言って可愛いが、魅了されてはならない。
『さあ行け我らがサメ軍団! その愛くるしさで猟兵をときめかせるのだ!!』
「僕と大根の仲を引き裂こうだなんて――」
 良い度胸です、そう吐き捨てるように言った双葉は。
 何ということでしょう、愛しい我が子も同然の大根を、おおきくふりかぶった。

「過労死しそうな鮫の部下達よ」
 これは、手向けである。
「僕の特製大根を食べて、元気出してくださいね!!!(訳:これでも喰らえ)」
 ぶぉんッ!!! ものすごい勢いで、大根が投擲された。
『特製大根とは――!!!』
 問うてはならぬことを問うたものの運命は、爆発大破。
 大根の直撃を受けたサメが、哀れにも吹き飛ばされて真昼の星となる。
 どうして大根が爆発するんですか? サメはそんな顔をしていた。そんなサメに向けて、双葉は煽る、煽る。
「やーーーーーーーい、このブラック上司な鮫ーーーーーーーーー!!!」
『ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ!!!』
 そこに、猛然と飛来する一体のサメ着ぐるみ。大根は最早手元にあらず、双葉は咄嗟に魔眼で対処しようとするが、眼鏡を外すという動作が挟まって一瞬遅れを取る。
 そこへ。

「土の精霊様ッ!!」
『……叩キ、落トス』
 都月の鋭い声と同時、高速で紡がれた詠唱に応じて、土の精霊様が地面から壁をそびえ立たせて盾と為し、サメから双葉を守ったのだ。

「……すみません、手間を掛けました」
 護られた。それは、本来ならば双葉にとっては苦い思い出であったが。
「一緒に、牛乳飲むんだろ」
 はにかむ都月の顔を見ていると、悪くはないとさえ思えるのは何故だろう。
 戦意を失い力なく横たわるサメたちを尻目に、都月はひとつ伸びをして言った。

「う~~~、もう一度温泉に浸かりに行くか~~~」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クシナ・イリオム
【アドリブ歓迎】
私の好きなもの…こう、
ああ、でも私は自分の装備が好きかな。
これは例外もあるけどほとんどが誰かから遺されたもので…綺麗に大切にしまいたくなるときもある

…でもね、この装備たちはみんな『私が戦いを生き残れるように』って託されたものだから。
好きな気持ち、そして大切にしたい気持ちを抑えて装備をかまえ
【弘遠なる捕食者】を発動
雇用者と隔離してUCの発動を阻止しながら
死の森を強行軍することによる消耗も装備の傷も気にせず敵を【暗殺】する

…きっと、これは装備より大事なものを守るためのものだから
だから、私はこれを使い潰して、先に進むよ


護堂・結城
好きなもの、好きなもの…お嫁様はここにいないし
やっぱり、戦場で共に戦う相棒、かねぇ?
吹雪、氷牙今日も一緒に大暴れするぞ

【POW】
氷牙を刀に変化させ【怪力・なぎ払い】で牽制
吹雪と共に【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の感情をメインに喰らい、敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ

「武器は手足の延長とはいえ、ナルシストとかいうのは勘弁な」

指定UCを発動、喰らった感情を武器に変え(物理)
【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
剣群を投げ込んでは炸裂させて【爆撃・衝撃波】で攻撃だ

戦闘が終わったら大切な相棒たちと一緒にはしゃいでくるか



●共に戦う相棒へ、あるいは兄弟へ
 温泉を堪能して、好きという感情を増幅させているとサメが襲ってくるという。そんなとんでもない状況でも、猟兵たちは一切動じることはなく。
 大好きな温泉に身を浸しながら、護堂・結城(雪見九尾・f00944)は思いを馳せる。眼鏡をかけたまま湯に入っても、存外見えるというのは不思議なもので。
(「好きなもの、好きなもの……」)
 闇に支配された圧政と抑圧の世界を生きる妖狐の青年は、外道殺しを生業とする。
 ならば血なまぐさい闘争を望むか? 答えは否だ、今は温泉に夢中なのだから。
(「お嫁様はここにいないし」)
 何ならちょっとだけさみしそうな素振りさえ見せちゃう。可愛くて蠱惑的な、同じ妖狐の若女将を想えば、互いに事情があったとはいえ、今ここに共に在れないことが惜しくて。
 よし、切り替えて行こう。愛しい恋狐のことは一旦横に置き、結城は再び考える。

「……やっぱり『戦場で共に戦う相棒』、かねぇ?」
 するとひょこりと顔を出すのは、「氷牙」の名を与えられた竜槍――いや、その枠さえ超えた、変幻自在のドラゴンアームズ。
 それに続いて、その名を「吹雪」という白竜も姿を見せた。二体とも、結城のお供を務める大切な『相棒』である。ただの武器やら道具やらの枠など、とうに超えたのだ。
 右に吹雪、左に氷牙。それぞれに頬にすり寄られ、温泉の効能もあって彼らへの愛情はあっというまに膨れ上がり。
「よしよし、吹雪、氷牙。今日も一緒に大暴れするぞ」
 ――きゅっきゅ、きゅっ。
 クッッッソ可愛い鳴き声で返す竜たちに、尋常ならざる愛着を炸裂させそうになるのをどうにか堪えて、結城はさあ行くぞとざばり音を立てて湯船にしばしの別れを告げた。

「……」
 気配を殺していた、という訳ではなく。ただ、少しばかり結城から離れた場所でそっと温泉を堪能していたクシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)は。
 それでも少なからず揺れる水面に翻弄されぬよう、表情ひとつ変えず――しかし内心は必死で、温泉の淵にしがみついていた。ああ、フェアリーは何かと大変だ。
 ここアックス&ウィザーズの世界では、フェアリーの人権が軽んじられることがしばしばあった。『密漁』などと称され、高値で取引された事実まで猟兵たちの報告書として残っている以上、それは目を逸らすことが許されないことだ。
 思えばクシナも、そうした蛮行の犠牲者にして生還者。
 境遇を同じくした幾多の兄弟の屍を越えて今、ここに居る。
 小さな体躯さえ暗殺の道具と為したクシナに、好きだ愛していると賛美すべきものがあるのだろうか。その表情から、うかがい知ることはできないが――。
(「私の好きなもの……こう」)
 一言に『好き』と言っても、その種類は様々だ。グリモアベースでの説明でもあったが、恋や愛だけにとどまらず、それはモノへの愛着でも構わない。
「ああ――でも私は、自分の装備が好き、かな」
 ようやく静寂を取り戻した湯の表面にまるでつま先で立つかのように、ふわりと背中の羽で舞い降りたクシナは無意識に『9-2』と刻印が施されたスリングショットを撫ぜていた。
 これだけではない、クシナが身につけた武器や防具、そのことごとくが――愛おしい。
 何故ならこれらは、例外こそあるけれど、ほとんどが誰かから『遺された』もので。本当は、大切にしまっておきたくなる時だってあるくらい。

「……でもね」
 クシナは誰ともなしに呟く。
「この装備たちはみんな、『私が戦いを生き残れるように』って託されたものだから」
 引き出しに後生大事にしまっておくべきではない、使われてこそであるもの。
 愛しき武具たちに身を包んだ己を一度抱きしめるようにすれば、水面に波紋が広がる。
 そうしてクシナは、想いをぐっと呑み込んで――飛び立った。

 先に気付いて温泉を飛び出した結城と、後を追うクシナの前には――サメがいた。

『よく来たな猟兵ども! 歓迎光臨だ! 我が手取りと心臓を代償にした可愛い部下と熟練の職人とのコラボレーションを堪能して死ねぃ!!』
「貴様のそのテンションは一体何なんだ!!?」
 およそ狂人、いや狂サメとしか思えない眼前の敵は、結城からすれば光の速さで外道認定できたが、それにしたってトンチキ度合いが過ぎるというもの。
 まあいい、殺そう。外道殺すべし、慈悲はない。古事記にもそう書いてあるしね!
「氷牙!」
 その名を呼べば、即座に主の意を汲んだ竜がその身を刀に変えて掌中に飛び込む。それをしっかりと握った結城は、大きく一度横薙ぎに振るってサメ着ぐるみ軍団を牽制する。
 吹雪は竜の姿のまま、結城とひとつ顔を合わせて頷くと――フィールド中に響き渡る声で歌う、歌う!
 吹雪がソプラノ、結城がアルト。男女混声――吹雪の性別はどちらかな? まあいいや、綺麗なお声をしているから。
 響く歌声は響く先から満ちる情動を、溢れた『感情』を喰らっていく。
 二体の竜を愛おしく思う結城自身のそれは余すことなく、そして敵であるサメのものさえも程々に。そうして得た感情は、結城の中を駆け巡って更なる力となるのだ。
『そうか、そうか! お前が愛するものは』
「武器は手足の延長とはいえ、ナルシストとかいうのは勘弁な」
 サメがニヤニヤとした様子で何か言いたげにしていたものだから、結城は念の為にと言っておく。人が己の得物を愛して何が悪い。まったくもって何も悪くなかった。

「と言うわけで、だ――『頭を垂れよ』」
 突然、結城が纏う気配が変わる。周囲には白き復讐の劫火を纏った剣の群れが生じ、結城の九尾がざわりと蠢く。刃たる氷牙の切っ先は敵へと。

「死はお前の名を呼んでいる、【雪見九尾の劫火剣乱(ナインテイル・ソードフレア)】!」
『な、な、それは……! 私たちの可愛い部下や職人たちを、どうするつもりだ!?』
 白炎の逆光で結城の眼鏡が光り、故にその表情はうかがい知れず。
 ただ、白き炎の剣ばかりが敵陣目掛け大量にぶち込まれて、哀れ着ぐるみ軍団は燃え上がり、消滅していくばかり。
『グワーーーーーーーーーーーーーーッ!!!』
 ひときわ大きな爆発が起きた。それに、サメが巻き込まれて遙か彼方へ吹っ飛んでいく。
 結城はちらりとクシナの方を見て、それから二体の愛しい竜へと。

「あちらも見届けて、戦闘が終わったら――一緒に存分にはしゃごうか」
 ――きゅっきゅ、ぴゅいっ。
 それはとても、愛らしい声が左右から上がった。

 一方のクシナは、別の個体と対峙していた。
 こちらはどうやら、着ぐるみ作りに没頭することで外部からの干渉の一切を遮断しようというらしい。ならば――!
「反するもの呑め死の呪い、森は生命の基盤にして生命の頂点なり――」
『な、何をする……!?』
 ああ、その手は最早針も布も持つこと叶わぬカニバサミだというのに。それでもなお愛する着ぐるみを作ろうとするサメが、ぞわりとした感覚に思わず周囲を見渡せば。

 ――【イリオム教団秘術・弘遠なる捕食者(コウエンナルホショクシャ)】。

 たちまち局地的に降り注ぐ鉛色の雨、それを浴びた大地はたちまちのうちに霧がかかった死の森へと変貌していく。
 己が身に纏った全てが愛おしく、しかしそれをしっかりと裡に秘めたクシナの戦闘能力は爆発的に向上しており、あっという間にサメ本体と喚び出した雇用者たちとを引き離す。
 途中激しい抵抗に遭いもみくちゃにされ、大事な防具に傷がついたのを感じたが――構うまい。クシナはその小さな身体で敵を翻弄し、サメを孤立させ、集中を妨げる。
『あああああ!!! ちょこまかと!!!』
 想いを遂げられないあまりに、サメがカニバサミで頭を掻いた、その隙を狙った。

 曰く『知り合いからもらった』スリングショットに、人間からすれば裁縫針程度のサイズのフェアリーサイズ投げナイフをセットする。
「――死んで、もらうよ」
 小さく呟いたクシナの声は、最早サメには届かない。鋭く放たれた針のようなナイフは、狙い違わずサメのエラの間に突き刺さり――あっという間に、その息の根を止めた。

 自らが生み出したからと言って、死の森に適性があるという訳ではなく。
 肩で息をするクシナは、相応の消耗を強いられていた。
 それでも、構うまい。こんな生き方しか出来なくても、『みんな』は、それを許してくれる。
(「……きっと、『これ』は装備より大事なものを守るためのものだから」
 傷がつこうが嘆くまい、それこそ道具の本懐であるが故に。

「だから、私は『これ』を使い潰して――先に進むよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・侑士
◎●

戦争中なのに今日は温泉に入っていいのか!
うーん、極楽極楽…
旅行で行った熱海を思い出すなぁ
露天風呂付客室で…妻の浴衣がよく似合ってて…
……はぁ俺の花(※妻の名前)マジ可愛い
いつも可愛いけどほんと可愛い
好き…(顔を覆う)
声に出して叫びたい
俺の嫁は可愛いし優しいし料理が上手いし…あー!とにかく好き!!
はぁはぁ…ダメだ俺…
声を出すな
我慢しろ
素数を数えて落ち着け…
ところで素数ってなんだっけ?
ハナカワイイだったか?

このままじゃいけない
戦闘だ!
銃を構えて目の前の敵を睨みつける(実際はにやけ顔)
まずはUCで敵の動きを鈍らせ
鈍ったところで乱れ撃ち
…こいつなんでヒレはハサミなんだろう
敵の攻撃はオーラ防御で凌ぐ


氏家・禄郎
あー、足湯はいいねえ
心がリフレッシュするんじゃー

おっといけない、仕事の時間だ
さっさと片付け

そうだった、私の感情が……ネリーへの思いがブレイクしてしまう、ここは耐えなければ!

――『思考』
このユベコは考えれば考えた分だけ行動が成功する!
つまり、この技を使い、私はネリーへの思いを思考する!

ネリー!
好きだ!
ネリー、愛している!
初めて会ったときから君の姿を、桜色の髪に後ろ髪を引かれてしまい、惹かれてしまった
この想い一言何て足りない
ネリーさーん
愛してる、結婚しよう
いつだって抱きしめた
想いを口にしたい
その為に僕は過去へ区切りをつけた
愛しているよネリー!

思考完了!

来い氷花
死ねえ!(ドラゴンランスで殺す)



●うちの嫁さんが一番かわいい
 男が二人、サウナ珊瑚でいい塩梅に温まった湯に足を浸していた。
 隣り合う男たち――城島・侑士(怪談文士・f18993)と氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は、若々しい身体で大きく伸びをしたり愛用の帽子を傍らに置いて大きく息を吐いたり、思い思いに足湯を堪能する。
「戦争中なのに今日は温泉に入っていいのか!」
「合法的に足湯を楽しめるとはね、悪い話じゃない」
 喜色を隠さぬ怪談文士に、探偵屋は跳ねた髪をくしゃりと掻いて返す。
「はぁ……旅行で行った熱海を思い出すなぁ」
「あぁ……心がリフレッシュするんじゃあ……」
 二人が嘆息し、天を仰いだのはほぼ同時。それが合図のようだった。

(「そう、露天風呂付客室で……妻の浴衣がよく似合ってて……」)
 侑士の脳裏に浮かぶのは、風呂上がりに浴衣とかいう破壊力抜群の格好を、自分だけに――アッ嘘です子供たちにもです――披露してくれた愛しの妻の姿。
 普段は下ろしている髪をアップにして露わになったうなじ辺りが、特に鮮烈に思い起こされるのは何故だろう。
(「……はぁ、俺の花、マジ可愛い」)
 ハイ足湯の効能がどんどん出てきましたよ! 敵には苛烈な侑士さんですが、ご覧の通り奥様にはめっぽう弱い! あとついでに娘にも甘い! うーーーんこれはパパ。

(「いつも可愛いけどホント可愛い……好き……」)

 ここでおもむろに侑士が感極まって顔を覆ったものだから、隣にいた禄郎も一拍遅れて我に返る。
「おっといけない、仕事の時間だ。さっさと片付け――」
 誰かが好きだとか、どうとか。そんなものは、過去のものと思っていたけれど。
 ひとつあった。ついぞ最近訪れた、二度目の春の話。
(「そうだった、私の感情が……ネリーへの想いがブレイクしてしまう」)
 意識した途端にもうダメだった。押し寄せる情動を堪えるように侑士の隣で頭を抱え、ここで耐えねばと必死に歯を食いしばる禄郎。

 ――【思考(コーヒーブレイク)】、それこそが今まさに必要とされる超常。
 考えれば考えた分だけ次の行動の成功率が上昇するならば、いくらでも考えよう。
(「ネリー! 好きだ! ネリー、愛している!!」)
 傍から見れば沈思黙考しているだけの禄郎だが、蓋を開ければとんでもないことになっていた。ものすごく自分に正直な男だった。
(「初めて会ったときから君の姿に、桜色の髪に後ろ髪を引かれてしまい、惹かれてしまった」)
 この想い、一言で言い表せだなんてとても足りない。いくら言葉を尽くそうと、なお足りない。何なら後方で転移の維持に全力を注いでいる本人にぶちまけたっていい――いや、止めて差し上げて下さい! 死んでしまいます!
(「ネリーさーん! 愛してる、結婚しよう!!」)
 予知した依頼でプロポーズされたのは初めてよ! でもいいわよ!! そんな声が聞こえたような、はたまた幻聴か。
 そう、隙あらばいつだって抱きしめたいし、想いを口にするのだって厭わない。
 そのために――禄郎は、過去へ区切りをつけたのだから。
(「何度だって言うからな、愛しているよネリー!!」)

 ――ざばぁ! と、勢いよく禄郎が一足先に湯から出る。思考――完了。
 それを見ることなく音だけで察した侑士は、負けじと愛しい妻へと想いを馳せる。ああ、この感情を声に出せないだなんてひどい拷問だなんてさえ思う。声に出して叫びたい!
(「俺の嫁はなあ! 可愛いし優しいし料理が上手いし! ……あー! とにかく好き!!」)
 何ならお前ら全員城島家に来い、紹介してやるからという勢いだった。
 そうしたら存分に見せつけてやるのだ、この愛しの嫁の魅力と、そしてそれが誰のものかということを。あああああああ花あああああああ愛してるううううううううう!!!

「――ッ、だ、……ダメだ俺……声を出すな、我慢しろ……」
 侑士は遂に胸元を無造作に押さえて息を荒げるまでに至る。極まってますねー。
 ていうか今の一連の様子、そこはかとなくえっちじゃないですかね……。
(「素数を数えて落ち着け……ところで素数ってなんだっけ? ハナカワイイだったか?」)
 色々な意味でこのままじゃいけない。そう侑士が目眩を覚えたところで、ナイスタイミングと言うべきかサメがのこのこと現れたのだ。
 よし、戦闘だ! イイ感じに高まった愛を力に変えて、存分に叩きつけよう!

『フッフッフ……我が部下たちを代償に作り上げた最高傑作(アーティファクト)、存分に味わうが良い!』
「……」
 侑士はレバーアクション式の散弾銃「パーキーパット D1963」を構えて眼前のサメを睨めつけた――つもりだった。実際は、とてもにやけたお顔をしていました。
『なにわろとんねん!』
「お前こそ何でヒレがハサミなんだ!!」
 言葉の応酬、その直後。侑士が器用にぶん投げた手枷・猿轡・拘束ロープのフルコースがサメを襲う! ハサミになっちゃった理由は一応ちゃんと設定があるらしいですよ!
 すっかり緊縛状態と化した無抵抗のサメに弾丸をぶちまけながら、侑士は思う。
(「今日の夕飯、花は何を作ってくれるのかな……」)
 久し振りに肉じゃがなんて良いなあ。侑士さんは、終始にやけ顔でございました。

 一方、別個体のサメが召喚した着ぐるみを着た部下サメたちや職人たちを相手に、氷雪の娘からの贈り物である氷竜を呼び寄せる禄郎がいた。
「来い『雪花』! ――(人の恋路を邪魔する奴は)死ねえ!!」
『ギャアアアアアアアアアア!!!』
 ドラゴンランスたる氷竜は、たちまちその姿を白銀の槍に変えて禄郎の手に収まり、有象無象共を雑に蹴散らすための力となる。
 何しろあれだけのクソデカ感情を裡に秘めて臨んだのだ、増幅された力は尋常ではない。
 仕事が終わったら、真っ先に会いに行こう。そんなことを頭の片隅で思いながら、禄郎さんにしては珍しい槍での戦闘に勤しんだのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
はーーー、いやいやどういう効果の温泉だよ!!
相変わらずなんか戦争で戦争らしからない依頼があるの謎だな…
好きが増幅……割と良くオレなってるから
(グラナトさんや兄貴分の新しい服や真の姿を思い浮かべ)
うん…たぶん耐えられると思う

うん、まぁまぁ癒される……?グラナトさ、んっ?!
(お湯の滴るグラナトさんかっこいい、セクシー…!!!)
感情を出さないように、スン…と無表情になってめっちゃグラナトさんを写メりたい欲を耐える

早く敵倒さないと耐えきれねぇ…!
UCを使用して炎属性攻撃、全力魔法、限界突破、鎧無視攻撃で防御関係なく燃やし尽くしてやる!

終わったら存分にグラナトさん写メる


グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と
なるほど温泉か…確かに疲れが取れそうだな。
グリモア猟兵の言ってたことはいまいち分からなかったが…力を得られるなら浸かるのもいいかもしれんな。

とりあえず浸かるか。
あぁ、心地良いなマクベ………ん゛!?(今日も愛しの青が可愛い…!)
なるほどこれか…。表情が緩みそうになるがそこは何とか耐えて見せよう。

…マクベス行けそうか?(感情に耐える姿も愛おしい)
UC【焔の矢】を【属性攻撃】炎で強化。
手早く終わらせよう。

ハーーー(戦う姿に思わず顔を覆って溜め息)
ん、何とかなったな。



●マクベスさんのグラナトさんフォルダがまた潤ってしまう
「はーーー、いやいやどういう効果の温泉だよ!!」
 一見するとドラゴニアンかと見紛うが、頭部にひょこりと生えた猫耳が合成種族――キマイラであると教えてくれる、そんなマクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)が両手を軽く挙げてツッコミを入れる。
 どちらかと言えばまだあどけなさを残す風貌のマクベスも、立派な歴戦の猟兵。これまでにも幾多の戦争を経験してきたが。
「相変わらず、なんか戦争で戦争らしからない依頼があるの謎だな……?」
 ゲームをクリアして来いとか言われたり、ぶんちょうさまが隕石になって降ってくるから何とかしてくれだとか。
 もしかして、グリモア猟兵っていうのは何かキメちゃってるのかとさえ思ってしまう。
 だが、まあ、事実として今ここにこうして、温泉がある訳で。

「なるほど温泉か……確かに疲れが取れそうだな」
 至極真っ当な所感を、グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は述べた。
「グラナトさんっ」
 愛しいひとの声を聞いて、それだけで声が喜色を孕むのは仕方がないことで。でも大丈夫? まだ温泉入ってないですよね?
 そんなこんなで、自分の一歩後ろにいたグラナトの方を振り返るマクベス。ああ、今日もカッコいいなあ。
 揃いのピアスも、贈った指輪が嵌まった位置も、好きを語り出せばキリがない。なお何度でも申し上げますが、マクベスさんはまだ湯に少しも浸っておりません。
(「『好き』が増幅……割と良くオレなってるから」)
 そうですね! なお最近マクベスさんの中でアツいのは、最近グラナトさんが新調したいわゆる中華風の装いや火翼を顕現させた炎と戦の神たる真の姿。どっちもヤバい。
(「うん……たぶん、耐えられると思う」)
 ホントですかぁ? 思わずそう意地悪く聞きたくなる愛らしさがこの少年にはあった。
 そこにかの神も惹かれて止まないのだろう、ベースで聞いたグリモア猟兵の言には今ひとつピンと来なかったのだが、結果的に力を得られるならば身を浸すのも悪い話ではない。
 ふむ、と薬指に紺碧の指輪が光る左手を顎に軽く添え、炎の神はひとつ頷いた。
「ではマクベス、戦に備えて湯に浸るとしよう」
 そっとエスコートするように、愛しの青に手を差し伸べる。それが、当然かのように。
「お、……おう」
 手に手を取って、その程度はもう幾度となく重ねてきただろうに。思わず強張った声で返事をしてしまったマクベスは猫耳を少し寝かせて、グラナトの微笑みを誘った。

 ちゃぽん、と。湯が温泉の淵にぶつかり軽い音を立てる。
 お互い水着は持ってはいるが、即戦闘になる可能性も考慮して、敢えて服のままで。
(「とりあえず浸かってみたが、確かに悪くない」)
 グラナトは何気なく――本当に何気なく、すぐ隣にいたマクベスを見遣った。視線に気付いたマクベスもまたグラナトの方を向き、本当に何気なく口を開いた。
「うん、まぁまぁ癒され、る……グラナトさ、」
「あぁ、心地良いなマクベ……」
 目と目が合った瞬間とか何とか、そこで二人が硬直した。

「「ん゛ッ!!?」」

 互いに、変な声を上げてしまった。それではここでまずはグラナトさんの方から。

 今 日 も
  愛 し の 青 が
 可 愛 い ! !

 基本的には精悍な表情を崩さないグラナトさん、なるほどこれかと表情が緩みそうになるのを鋼の精神力で何とか耐え抜いてみせる。さすが神様、自制心がすごい。
 だってすごいですよ、金髪猫耳少年という時点で既に殺傷力が高いというのに、それが温泉に浸かってほんのり頬を赤らめて自分を見上げるようにして来てなお耐えるとは!
 一方のマクベスさんはどうでしょう! ――生きてますか!?

 お 湯 の 滴 る グ ラ ナ ト さ ん
  か っ こ い い 、 セ ク シ ー ! ! !

 ――マクベスは。あまりのことに、スンッ……と無表情になった。
 具体的にはアレですね、プレイングと一緒に表示されている顔アイコンです。
 マクベスはめっちゃ頑張っていた。内なる『グラナトさんをめっちゃ写メりたい欲』をねじ伏せようとしていたのだ。
 そんな水も滴るいい男状態のグラナトはグラナトで、ともすれば突き動かされそうになる感情に耐える姿もなお愛おしいと、己まで煽られそうになりながらも。
「……マクベス、行けそうか?」
 遠くから姿を見せたサメを手早く退治すべく、努めて刺激せぬようにと声を掛けた。
「もちろん!(訳:早く敵倒さないと耐えきれねぇ……!!)」
 マクベスが勢い良く温泉から出ていくと、サメ目掛けてズンズンと突き進む。
『ハハハハハ! 貴様らも愛を叫びに来たか! ……ほうほう、ほうほう』
「何が『ほうほう』だ! こっちゃそれどこじゃねぇんだよ!!」
 無駄に察しが良いサメに、マクベスは容赦なく魔装銃【リンドブルム】を向ける。
 込める属性は愛しの炎、属性攻撃に全力魔法、そして色々な意味での限界突破、おまけに着ぐるみさえぶち破る鎧無視攻撃を乗せて――。

「防御関係なく燃やし尽くしてやる! 【ガトリングショット・エレメンタル】!!」
『火気厳禁っつったでしょーーーーーーーーーーーーー!!!』
 ここまで徹底的にぶちころがすつもりで来られては完敗です、哀れサメは消し炭へと。
 しかしこれは集団戦、もう一体のサメがマクベスの死角から迫る――!

「何を、しようと、言うのだ」
 グラナトの凄みを帯びた声と共に放たれたのは、まさしく神の権能――【焔の矢】。
 愛しの青には指一本触れさせぬと、愚かなサメをこれまた燃やし尽くした。
(「マクベスは無事か……しかしあのサメめ、思わせぶりなことを」)
 サメのくせに小癪なものだと、次いでマクベスが精霊銃で奮戦する姿を思い出して。

(「ハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」)

 グラナトさんは、全力でクソデカ溜め息を吐いて、両手で顔を覆ってしまいました。
 いいですねえ極まってますねえ! 恋する神様って存在がもうヤバい! 地の文が語彙力を失うレベルですよ!
 さて置き、マクベスがもう我慢ならないという顔でスマホを構えているではないか。
「……ん、何とかなったな」
「グラナトさんちょっと動かないで!!」

 カシャッ。カシャッカシャッ。カシャッ。
 響くシャッター音は、しばらく続いたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クリスティーヌ・エスポワール
双子百合恋人のニコ(f02148)と一緒
入浴用水着は南国柄ビキニ

「はぁ……」
ニコと一緒なのに、キスの一つもできないなんて!
普段からイチャイチャしてるけど、それはそれ!
今も肩は寄せてるけど、我慢、我慢……

「……んっ」
もだもだしてるニコ抱きしめたい!
好き、好き、ニコ、お姉ちゃん好き!
でも感情を出しちゃダメ、ダメ……!
うん、やっちゃお!
※赤面&無理矢理取り繕った真顔でアイコンタクト

【バトル・インテリジェンス】、カンフーモード起動!
「セイッ、ヤァァァァァッ!」
※鬱憤を晴らすように、二人で息の合ったエクストリームなキック!

さて、戦闘は終わったし……
「しよっ、ニコ……いっぱいらぶらぶ!」(だきゅー)


ニコレット・エスポワール
双子百合恋人のクリス(f02149)と一緒
入浴用水着は南国柄ビキニ

「うー…!」
…いっしょのスパ、なのに
クリスとの温泉なのに、温もりもすぐ隣なのにぃ
抱きついたり惚気けちゃイケないなんてっ
※肩寄せあいチラチラ見つつも必死に我慢

「はぅぅ…!!」
クリスといちゃいちゃしたい!
大好きな妹と人目も気にせず愛し合いたい!
でも声にすら出せないなんて、辛すぎる!
…もうヤダ!クリス、やっちゃお!
※赤面&涙目でアイコンタクト

「アイ・ヤー!」
※クリスの予備機を借りて【バトル・インテリジェンス】起動
※オブリビオンに息の合った飛び蹴り

戦闘後は…あーもう、我慢できない!
「クリスっ、いちゃいちゃちゅっちゅしよーっ♪」(がばぁ)



●百合の間に割って入る男は許されない
 かつてバトルオブフラワーズにおいて、天然物のツンデレ双子百合姉妹というエモを武器に戦い抜いたスペースノイドの姉妹がいた。
 姉のニコレット・エスポワール(破璃の黒百合・f02148)と、妹のクリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)。
 当時二人はまだ諍いが絶えずに、しかし仄かに互いを憎みきれずに、本気でとっ掴み合うこともしばしばだったが――今はどうだろう。
 揃いの南国柄のビキニに身を包み、肩は触れ合わんばかりの距離で、二人揃ってどこかもじもじしながらしおらしく温泉に身を浸しているではないか。

「はぁ……」
「うー……!」

 漏れる声は、ひとえにじれったさから。
 だって、せっかく一緒のスパなのに。すぐ隣にあなたがいるのに。
(「ニコと一緒なのに、キスの一つもできないなんて!」)
 クリスティーヌが堪えるように顔を覆う。その隣ではニコレットが天を仰いだ。
(「クリスとの温泉なのに、温もりもすぐ隣なのにぃ! 抱きついたり惚気ちゃいけないなんてっ」)
 ――想像をはるかに超えた、完璧に相思相愛な双子の百合姉妹であった。
 エッエッこれ一体何があったんですか!? ちょっと報告書追い切れなかったので今度是非教えて下さい! やべえな……禁断の花園じゃないですか……ハァ……。
 そんな二人は普段からイチャイチャしているけれど、それはそれ。ギリギリ許されるだろうと密かに肩を寄せ合って、そこで我慢するのだ。
 どちらかというとニコレットの方が、生来の性格からか耐えきれずにチラチラとクリスの方を見てしまうのだが、それでも必死に耐えていた。

 チラッ、と。数度目かの目線を送ったその時、本当に偶然、二人の目が合った。

「……んっ」
「はぅぅ……!」
 どんな拷問かな??? ニコレットはクリスティーヌとイチャイチャしたさに身をよじり、そんなニコレットの様子にクリスティーヌもまたもだもだする姉を抱きしめたい衝動に駆られる。
(「好き、好き――ニコ、お姉ちゃん、好き……!!」)
 ああ、でも理知的なクリスティーヌはその一方でこうも考える。
(「でも感情を出しちゃダメ、ダメ……!!」)
 湯の中で、膝の上に乗せた両の手をぎゅっと握りしめるクリスティーヌ。
(「クリスとイチャイチャしたい!」)
 一方のニコレットは、火の玉ストレートで愛情表現をするタイプだった。
(「大好きな妹と、人目も気にせず愛し合いたい!!」)
 それはもう、ド直球だった。あんなことこんなこと、いっぱいしたいじゃないですか。
 でも、それを声に出せないということが、こんなにも辛いことだったなんて。
 戦闘力が高まるというのならば、これからの戦いに備えて甘んじて受け入れなくてはならないが。その前に、自分たちがおかしくなってしまいそう。

『ハッハッハ、今度は双子の姉妹か! 可愛い水着じゃないか、是非私の着ぐるみを着てもらおう!』
 ――来た。倒すべき敵、憎き諸悪の根源。ハッピー工房の主、着ぐるみを愛するサメ!
 だが、今の敵のポジションはどう見ても『百合の間に挟まろうとする男』という、決して許されざる存在であった。いいぞ、存分にぶっ飛ばしていいぞ!!

(「……もうヤダ! クリス、やっちゃお!!」)
(「うん……やっちゃお!!」)
 ニコレットはおあずけを食ったことによる涙目で。
 クリスティーヌはむりやり取り繕った真顔で。
 しかし互いに顔が真っ赤なのは同じ、お揃い。アイコンタクトを取ると、ざばりと立ち上がる。
「クリス!」
「――使って、ニコ!」
 ニコレットの呼び掛けひとつですぐ意図を察したクリスティーヌは、即座に戦術ドローンの予備機を貸して寄越す。これで、二人揃って攻撃をする準備ができた。
『見よ、我が最高傑作の着ぐるみを――!!』
「うるっさい! 【バトル・インテリジェンス】――カンフーモード!!」
「行くよクリス!!」
 着ぐるみを纏いなお華麗に宙を舞うサメ着ぐるみをぶちのめすべく、ニコレットとクリスティーヌが完璧なユニゾンで、ドローンの導きのままに助走をつけて――。

「アイ・ヤーーーーー!!!」
「セイッ・ヤァァァァ!!!」
『アァァァァァァァァァ――』
 迎撃するような、息の合ったエクストリームな飛び蹴りをぶちかます!
 サッカーボールが敵陣遙かへと蹴り飛ばされるように、サメは遠く吹き飛んでいった。

 静寂が訪れた。やかましいサメは退治した。
 それはつまり――しばらくは二人っきりということに他ならない。
「……あーもう、我慢できない! クリスっ」
 がばぁ! 知ってた! 絶対こうなるって思ってた! ニコレットの熱い抱擁を、今のクリスティーヌは拒むどころか積極的に腕を回して受け入れる。
「しよっ、ニコ……いっぱい、らぶらぶ!」
「うんっ、イチャイチャちゅっちゅしよーっ♪」

 ちょっとね……大変申し訳ないんですが、ここから先はご想像にお任せしてもいいすか……? めくるめく、こう……禁断の双子姉妹の、アーーーーーーーーーーーーー!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

好きという感情かぁ
…あれこれ私にかなり刺さってるんじゃ…

壊れるくらい、ううん、壊れてでも愛したい!
私の魂が、貴方を欲しているの!
貴方とひとつになりたい、貴方の全てが欲しいの!!
うあぁ彼への好きが止まらない!
世界のど真ん中で愛を叫びたい!
だめ、抑えないと!
…鮫だ殴れぇ!

暴走寸前の気持ちを、鮫を殴るという行為で誤魔化す!
いや、鮫の遺伝子入ってる私だから複雑だけど、着ぐるみだからセーフ!

召喚された者を無視して、本体をサイコキネシスで引き寄せ月腕滅崩撃!
いつもなら掴んでから派生するけど、今回は殴り倒す!
鮫はサンドバッグだ!気持ちを誤魔化すサンドバッグだぁ!
だから頼む殴らせてぇ!


荒谷・つかさ
(さらし&褌なエンパイア水着スタイルで登場、普通に肩まで浸かる)
ふう……良いお湯。
やはり温泉はいいものね。
(見た目だけはいつも通り落ち着いた様子で入浴し、そのまま戦場へ向かい【螺旋鬼神拳】で攻撃する)


~以下、抑え込んだ内心~

ああああ我が最愛の妹ひかるかわいいわ天使だわむしろ悪魔的だわ天使のような小悪魔スマイル素敵よひかるただ純なだけでなく媚びを知ったあなたも愛らしいのそうよその狡さもいいの戦う時の凛々しくなった表情も素敵だわあんなに強くなって傷だらけでああ可哀想にお姉ちゃんが護ってあげるわ傷つけた奴はみんな殺してあげるからちゃんと言うのよ遠慮しないで何も心配ないのよ愛してるわひかるひかるひか(



●オラオラオラオラオラオラオラオラ(ほとばしる愛情表現)
「……」
「……」
 クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)と荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)は、相席するような形で並んで温泉に浸かっていた。
 クトゥルティアは蹄持つ脚や竜の翼を抱いたキマイラで、元々の衣装の布面積が少ないこともあって、そのままの格好で。
 一方のつかさは、胸部はさらしに下は褌というサムライエンパイアの由緒正しい格好で。
 それぞれ、ゆったりと肩まで浸かり――一見、リラックスしているように見えたろう。

 だが! ここで二人の思考を! 失礼しまっす!! ハイまずクーさんから!!

(「『好き』という感情かぁ……あれ、これ私にかなり刺さってるんじゃ……」)
 好きと言えば、クトゥルティアには想い人がいる。ひとつ前の戦争の舞台となった世界で学生兼猟兵を務める、ぷにぷにでむっちむちな愛らしいドラゴニアンの少年だ。
 引っ込み思案めいた所もあるけれど、やるべき時にはしっかり決めてくれる人。
 リードしてくれる人が好きだと、クトゥルティアとの相性は抜群で。そんな彼を想えば、一度転がり出したボールが坂をどんどん下っていくように――。
(「ああ、壊れるくらい――ううん、壊れてでも愛したい!!」)
 ばっしゃーん。思いの丈をぶちまけられない代わりに思い切り水面に叩きつけた両手が、派手に水しぶきを上げて隣にいたつかさの顔を少しばかり濡らす。
(「私の魂が、貴方を欲しているの! 貴方とひとつになりたい、貴方の全てが欲しいの!!」)
 両手はそのまま湯の中に沈めて、正座するような格好になっていた自身の膝の上へ。彼氏さん可愛くていとおしい感じしますものね、パッションも弾けちゃいますよね。
 堪えろ、という言葉が重くのしかかる。そんな殺生な。
(「うあぁ! 彼への好きが止まらない! 世界のど真ん中で愛を叫びたい!!」)
 キュッと下唇を噛んで耐えるクトゥルティアの横で、平然と湯に浸かるつかささん。
 次は! 貴女の! 番ですよ!!

「ふう……良いお湯」
(「ああああ我が最愛の妹ひかるかわいいわ天使だわむしろ悪魔的だわ天使のような小悪魔スマイル素敵よひかるただ純なだけでなく媚びを知ったあなたも愛らしいのそうよその狡さもいいの戦う時の凛々しくなった表情も素敵だわあんなに強くなって傷だらけでああ可哀想にお姉ちゃんが護ってあげるわ傷つけた奴はみんな殺してあげるからちゃんと言うのよ遠慮しないで何も心配ないのよ愛してるわひかるひかるひか」)
 ハイここまでノンブレスです! 本当にありがとうございました! 文字数の限界に挑戦して下さったことにも合わせて感謝致します!
 ひかるちゃんの方が先に彼氏さんが出来たりしましたが、つかささんは……そうですね、その毎度毎度あたまのおかしい成功度を叩き出す超絶怒濤のPOWを超えられるメンズでないとダメなんでしたっけ……。

(「だめ、抑えないと!」)
 限界を迎えそうになったクトゥルティアが咄嗟に顔を両手で覆った、その時だった。
『心臓を捧げよ! お賃金も捧げるぞ! 出でよ、我が愛すべき部下たち、そして流れの職人!!』
 こちらは着ぐるみへの愛を隠すことなくぶちまける、フリーダムなサメの登場だ。その姿を見てつかさはゆっくりと、クトゥルティアはざばんと湯から上がる。
 遂に、遂に。裡に秘めて我慢したクソデカ感情を合法的にぶちまけられる時が来た!
「……鮫だ! 殴れぇ!!」
「あら奇遇ね、殴りましょ」
 ごきりと指を鳴らす二人の乙女は、それはもう、何倍にも増幅された戦闘力(物理)でもって。とても殺る気に満ちていた。

「本体の方、殴りに行っていい?」
「ええ、だったら部下の方は任せておいて」
 クトゥルティアの申し出に、つかさは快く応じる。そうして、二人は同時に地を蹴った。
『な……ッ!?』
 突如包囲を突破して迫ったクトゥルティアに驚きを隠せないサメ着ぐるみ本体が声を上げる。至近距離で見るキマイラの乙女――その胸は豊満であった。
(「暴走寸前の気持ちを、『鮫を殴る』という行為で誤魔化す!」)
 言うてクーさんにも鮫の遺伝子が入っているのでちょっぴり複雑なキモチだが――。
(「これは! 着ぐるみだから! セーフ!!」)
 おっそうだな!!!(納得)

「抉り込むように……そこよ! 【螺旋鬼神拳(スパイラル・オウガナックル)】!!」
『アッ』
 つかさの超高速かつ大威力(POWにして615、怪力技能816)の一撃を喰らい、無事で居られるものなどいない。居てたまるか。
 着ぐるみ部下たちは鉄拳を喰らう先からか細い断末魔のみを残して、蒸発していく。
 ただでさえヤベー威力なのに、愛しい妹への溢れる愛情という戦闘力の増加を重ねたのだ。今のつかさに、敵はなかった。

「いつもとは勝手が違うけど、今回は殴り倒す! 【月腕滅崩撃(ブレイズ・オン・バスター)】!!」
『オウッフッ!!!??』
 クトゥルティアの左腕がサイキックエナジー……クラブショップ……ウッ頭が。とにかく、オーラに包まれて巨腕と化し、サメ着ぐるみの胴体をしっかりと捉えた。
 そのまま右手で着ぐるみが逃げないように鷲掴みにすると、左の巨腕をさらに二度、三度と振るってボッコボコにする。サメ着ぐるみは悲鳴さえ上げる暇がない!
「鮫はサンドバッグだ! 気持ちを誤魔化すサンドバッグだぁ!!」
『ア……ァ……』
「だから頼む! 殴らせてぇ!!」
 ボグシャァッ!!! とっても深い一撃が、サメ着ぐるみの顔……顔? うん、多分顔っぽいあたりにめり込んだ。

(「頼んでるけど、その前にもう殴ってるわよね」)
 ワンパンで部下や職人を黙らせながら、つかさはぼんやりとそんなことを考えていた。
(「ま、でも。やはり温泉はいいものね」)
 今度は普通の温泉に、ゆったりと浸かりたい。そう思いながら、拳を振るった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
◎◎◎◎(爆発感情:うちの子(扇に宿る火・水・風・地の精霊)かわいい)

周囲にところ構わず彼らの可愛さを語りそうになりますが、がまんがまん。いやちょっとだけなら…この愛らしい姿形
ぎゅーっと抱きしめたい
「おちつけー」「おち、ついて」「きゃー」「……つけ」
(軽くUC発動)
はっ……なんだか精霊達が引いているのは気のせいでしょうか?
と、とにかく戦闘です!

非戦闘だと攻撃が遮断されるなら…
着ぐるみ愛を語ってもらい、ここで没頭していると新たな着ぐるみ作れませんよ、とやる気を出してもらいます

これなら攻撃も届……すごいですね着ぐるみ愛を語る熱量
さっき私も……はい、すごく冷静になりました
真面目に精霊で攻撃します!



●当たり前のようで、当たり前でない幸せ
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)というヤドリガミの青年には、とかく桜が良く似合う。
 攻撃手段はもっぱら自身の本体たるからくり人形を操ったり、念糸や護符といった投擲武器を好む印象があった。
 だが、ここで明かされる新たなる一面、それは――。

(「う ち の 子 か わ い い」)
 鉄扇「四色精扇」に宿った地水火風・四大元素の精霊たち。それらをカイは、心から愛していたのだ。
 精霊の姿や性質というものは、術者によって様々だ。関係性も然り、支配し使役するものもいれば、敬って力を拝借するものもいる。
 カイはどうか。彼らを『うちの子』と呼び、隙あらばその可愛さを語ろうとするという。
 ――即ち、親馬鹿。腰のあたりまで例の温泉に浸かりながら、鉄扇が濡れないように細心の注意を払い、扇の上でぴょんぴょん跳びはねる小さきものたちをうっとりと眺める。
 グリモアベースでは「抑えろ」と言われたが、ああ、誰でもいいから聞いて欲しいし見て欲しい。この愛らしい姿形の天使っぷりを!

「……ちょっとだけ、いやちょっとだけなら……」
「おちつけー」
 揺らめく炎を宿したちっちゃいのは、きっとこれが火の精霊。確かにやんちゃそうで可愛い。
「おち、ついて」
 たどたどしい口調で、おどおどとカイの服の裾を引いてたしなめるのが水の精霊か。最近猟兵たちの仲間入りを果たしたセイレーンのような水の髪が可愛い。
「きゃー」
 こちらは止める気配があんまりなさそうな、黄緑色の薄衣を纏った風の精霊。可愛い。
「……つけ」
 いつの世も、土の精霊は寡黙なものなのだろうか。どっしりと構える姿もまた可愛い。

(「ハッ……なんだか精霊たちが引いているのは気のせいでしょうか?」)
 もしもそんなことになったら、割と真面目に一週間は寝込んで猟兵活動どころじゃない。
 カイは申し訳なさそうに扇の上を見ると、四体の精霊たちは一様にカイの後ろを指さす。
『アッ、着ぐるみ工房はストで閉鎖するんで……帰ってもらっていいすか……』
「やる気がない!?」
 精霊たちの指し示す先には――今まで猟兵たちの前に現れたサメとはかなり異質な、気だるい雰囲気を纏ったサメがいた。
「と、とにかく戦闘です!」
 鉄扇を構えれば、精霊たちもそれぞれ本領を発揮すべくふよふよ浮きながら構える。
 だが、肝心のサメと来たらカニバサミで何やら必死に作業をしようと夢中になり、その周りを(これ本当にどうして……って感じなんですが)雇用者や周囲のサメがわあわあ囲んで鉄壁の防御を敷いてしまうのだ。
 カイは少しだけ考え込み、すぐにサメに向けて声を掛けた。
「あの」
『……』
「その鋏の手では、着ぐるみ、作れないんじゃないですか?」
『……!』
 確かに、サメの身体の中でもとりわけ異質であったカニバサミは気になる所であった。
 故にカイは何気なく触れてみたのだが、それが結果的に突破口となった。

『……そう、この返り血塗れのカニバサミでは、最早愛しい者さえ抱くことが出来ない』
(「うわあ何か重い話になっちゃったぞ」)
 カイはちょっぴり後ずさりしそうになったが、何とか堪える。
『元々は、裁断用の鋏だったのだ……』
「……そんなに着ぐるみを愛していたのに、どうしてそんな姿に」
 問いながらも思う、ああ――きっと『愛していたから』道を踏み外したのだと。
 いっそ無邪気に着ぐるみ愛を語ってくれたなら、どんなにか良かったろう。
 殴り合った後で、互いの愛する者を自慢し合える、優しい世界があったなら――。

「わかりました……私も、冷静になれました」
 感謝します、と言い添えて。鉄扇を構えれば、カイの意に従うように精霊たちが舞う。
「愛しい者と共に在れる喜びを噛み締めて、貴方を倒します!」
 選んだ精霊は、容赦なく着ぐるみごとサメを焼く火の精霊。小さき身ながら大きな力を持つ精霊は、ごうっと炎を吹きかけて、哀れなサメを葬送した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラン・サリュドュロワ

マリー(f19286)と

マリー様、お気を確かに
邪な心に揺らいではなりません
真剣な顔で湯に浸かる主を案じ支える

<心の声>
俺の姫様が全世界でいちばんかわいい
光集め煌めく金髪、鈴のような声が鳴る可憐な顏
陽を知らぬ柔肌は深窓の姫君そのもの
これで実は…というのも興味深い
二人きりの時は少々そっけないのもいい
今なんて瞳が潤んでいて本当に愛らしい、天使か
来月予定の水着発注書にはこの魅力を余すことなく
<ここまで>

お色は白でよろしいですか?
─ハッ、つい口が…堪えていたのに恐ろしい効果だ
成程、アイスクリームも小物に追加しよう

なんと我が主の邪魔をするとは…
許せんな、万死に値する
御心を乱すものは俺以外、全て滅ぼそう


マリークロード・バトルゥール

アラン(f19285)と

湯に身浸せば体が糖を渇望する
…………チョコレートが欲しいわ
いえ大丈夫。わたくしは平気――、
言葉とは裏腹に唇をきつく噤んだ

……チョコレート。わたくしの甘い宝石
煌びやかな箱も銀箔包装も眺めるだけでも愛おしい
でも味わいが本質よ。風味も薫も多種多様。どれも繊細で魅惑的
舌上で解ける甘美を想像しただけで……あぁ…もう…っ!

語りたい衝動を耐えたところでアランと目が合った
え。ええ……ホワイトチョコも捨て難いわね
でも白ならバニラアイス――、
いえいいえ今はチョコの気分
浮気はいけないわ

むむむ、チョコアイスなら許され――ちょっと!
いま一世一代の葛藤をしていますの
邪魔しないで下さいまし



●去年の水着受付は6/12からだったそうです
「……チョコレートが欲しいわ」
「マリー様、お気を確かに」
 件の温泉に二人手を取り合って身を浸した瞬間、衝動のままにそう口走ったマリークロード・バトルゥール(夜啼き鶯・f19286)を、アラン・サリュドュロワ(王国の鍵・f19285)がやんわりとたしなめる。
 そう、今はどんな衝動に駆られようと――それを裡に秘めなければならない。
 さすれば与えられん、何者にも負けることのない、絶大なる力が。
「邪な心に揺らいではなりません――さあ」
 マリークロードの騎士たるアランが、至って真剣な顔で湯に浸かる主を案じその身を支える。精一杯の強がりか、その手をそっと押しのけようとするも、逆に己が手を添えるだけに留まって、思わず菫色の瞳を泳がせてしまう。
「いえ、大丈夫。わたくしは平気――」
 本当に? そう言いたげに顔を覗き込んでくる騎士から眼を逸らし、姫君は唇をきつく噤んでしまう。

 ああ、その仕草ひとつとっても。己も湯に身を浸しながら、アランはあくまで表情を崩さぬままに、こんなことを考えていた。
(「俺 の 姫 様 が 全 世 界 で い ち ば ん か わ い い」)
 そう、今まで渡ったどの世界の中でも。そしてこれから見出される世界がいくら現れようとも。マリークロード・バトルゥールという姫君は、アランにとっての全一なのだ。
 では、アランさんによるマリクロちゃんへの熱い想いをどうぞ!
(「光集め煌めく金髪、鈴のような声が鳴る可憐な顔(かんばせ)、陽を知らぬ柔肌は深窓の姫君そのもの」)
 隣で何やらぐぬぬと迸る感情を堪えているのが目に見えて分かる姿もまた愛らしく、マリークロードをちらと見遣ってアランはごく限られた人物のみ知りうる『秘密』を想う。
(「これで実は……というのも、興味深い」)
 巧みな変声術を使いこなし、日頃の努力もあり、見抜かれたことは皆無に等しいその『秘密』。己がそれを知っている、という事実ひとつとっても――昂りが隠せない。
 さらに、さらにだ。
(「二人きりの時は少々そっけないのもいい」)
 立場上、そういう状況に置かれるのは決して不自然なことではない。
 だがどうだ、敬愛する者が誰にも見せない、自分だけにしか見せない姿を持っている。
 そんな関係性を、想像してみて欲しい。控えめに言って――尊さが過ぎるというもの。
(「今なんて瞳が少々潤んでいて本当に愛らしい、天使か」)
 ああ、来月予定の水着発注書にはこの魅力を余すことなく――!

 一方、パッと見た感じ平常心を保っているように見えるアランの横で瞳を潤ませ必死に衝動と戦っているマリークロード。ねえねえ、今どんな気持ち? という状態である。
(「……チョコレート。わたくしの、甘い宝石」)
 矢印が! 双方向に! ならない!
 隣でこんなに崇め奉られているのに、対するマリークロードさんが想いを馳せるのはチョコレート……!
 まあでも余程の理由がない限り、チョコレートが嫌いな人類はそうそういないはず。
 ホワイト、ミルク、ビター、そして第四のチョコとして最近登場したルビー。
(「煌びやかな箱も銀箔包装も、眺めるだけでも愛おしい」)
 アッこれアレだ、バレンタインの時期にUDCアースあたりの百貨店で催されるフェアに行ったら絶対自分用に片っ端から爆買いしちゃうタイプだ。
(「でも味わいが本質よ、風味も薫りも多種多様。どれも繊細で魅惑的」)
 そう、どんなに凝った包装や形状をしていようと、最後にものを言うのはその味だ。
 安っぽいザラついた舌触りなど言語道断、純然たるカカオの結晶は文字通り口に入れた瞬間から優しく溶けて、幸せで満たしてくれるのだ。
(「舌上で溶ける甘美を想像しただけで……あぁ……もう……っ!!」)
 思えば、バレンタインという風習を猟兵たちが楽しむと聞いて、己もアランに手ずからチョコレートドリンクを振る舞ったひと時があった。
 ああ、甘美だったのはチョコレートだけではなく――そう、思わず隣のアランの方を見たとき。

「お色は『白』でよろしいですか?」
「え」

 しまった、という顔で、アランが遂に片手で口を押さえて目を逸らす。
(「――ハッ、つい口が……堪えていたのに、恐ろしい効果だ」)
 だが、幸いにもマリークロードの頭の中はチョコレートで満たされていたものだから。
「ええ……『それ』も捨て難いわね」
 明確にチョコレートという単語を出すのをすんでの所で回避しつつ、返す。
(「でも、白ならバニラアイス――いえ、いいえ今はチョコの気分! 浮気はいけないわ」)
 ぶんぶんとかぶりを振って、マリークロードが一途な想いを貫かんとする。
 その様子一つ見ただけで、アランには何となく一瞬の葛藤の理由に察しがついた。
(「成程、アイスクリームも小物に追加しよう」)
 いやあ、水着コンテスト楽しみですねえ! 期待しております!

『あの――そろそろ、イイですかね?』
 サメ着ぐるみが、珍しく空気を読んでいた。恐る恐る、アランとマリークロードにバトルしていいかと問い掛けるが。
「むむむ、チョコアイスなら許され――ちょっと!」
 なお、まだダメだった模様。確かにチョコアイスならば浮気にはならないなと、アランが微笑ましくマリークロードを見遣った後、すぐに主の思考を妨げたことを咎める。
「なんと、我が主の邪魔をするとは……許せんな、万死に値する」
『だから、一応確認したじゃないっすか!?』
 サメなりに気を遣った結果がこれだよ! お前の取り柄は着ぐるみ愛だけだからな!
「いま一世一代の葛藤をしていますの、邪魔しないで下さいまし」
 マリークロードとて、ただのやわな『おひめさま』ではない。侮ってかかる者が辿る末路は――これまたアランのみが知るところであった。
 だが、ここはお任せをとアランがざばんと湯から出て、サメへと踏み出した。
「御心を乱すものは俺以外、全て滅ぼそう」
「……アランったら」
 喚び出した小さき竜が氷花纏う斧槍に姿を変えれば、しっかとアランの手に収まる。さり気なく潜ませた独占欲めいた言葉に、誰が一番心を乱すものかと頬を膨らませて。
『ええい、出でよ着ぐるみサメ軍団! この心臓と手取りなら、いくらでもくれてやる!』
「温いな、あまりにも温い――」
 サメが捨て身で繰り出す部下や職人の召喚は、それらが全てサメの着ぐるみを纏って魅了を試みるという。だが、アランには少しも通じる気配がない。
「殿下、ここはお任せ頂けませんでしょうか」
 主の思考の邪魔はさせたくないが、ただ護られているだけというのも機嫌を損ねてしまわぬように。そう意向を問えば。
「――構いません、アラン」
 見せて頂戴、わたくしの騎士。
「御意――!」
 その武勇を、わたくしの為に。
『やめて! そのハルバードでうちの部下たちを一掃するつもりでしょう!』
「理解が早くて助かる、ならば疾く散れ!」
 ぶぉんッ!! 六花を散らして斧槍が振るわれ、容赦なく部下たちが薙ぎ払われる。
 そうして、その身を晒したサメ着ぐるみを斧の刃でしたたかに打ち据えた。

「ねえアラン、聞いてくれる?」
「ええ、何なりと。最早、邪魔をするものはおりません」

 ――終わったら好きなだけぶちまけていいから、そう言っていたもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜


えだまめは本当に可愛いですねえ
あとニッキーくん、お前も可愛い
雪山のロッジに潜んでるタイプのシリアルキラーだの
被害者の皮膚で作ったマスクを被ってる系のサイコパスだの
悪し様に言われてきましたが、血に塗れた姿は最高に可愛いですよ
よし、殺しますか!

人形達への好きの気持ちをグッと秘めつつ、気持ちのままに殺します
敵を戦闘行為に移行させる為にニッキーくん、敵の着ぐるみを剥ぎましょう
これは攻撃ではないですよ、ただ着ぐるみを破きたくて脱がしてるんです
ほら、我々も男ですから

僅かでも抵抗したら攻撃チャンスですね
ニッキーくんの熱烈なハグで動きを封じます
ついでにそのまま脊椎を圧し折らせます
あと私が妖刀で串刺しにします



●ニッキーくんは割とマジで可愛い
 サウナ珊瑚とかいうふざけた珊瑚には、実は驚くほどの価値があった。
 グリモア猟兵がうっかり説明しそびれたのがほとんど悪いのだが、財宝として考えると親指大のひとかけらでも、およそ金貨百枚――百万円相当で取引されるという。
 知ってたら取ったのに! という皆様にはまっこと申し訳なく。脳内設定で手に入れたことにして頂いて全然構わないので、ひとつ、何卒。

 さて、そんなサウナ珊瑚がもたらした感情を増幅させるという温泉に、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は二体の愛するからくり人形たちと共にゆったりのんびり浸かっていた。
 白柴の『えだまめ』は腕の中で、指に通した十環から伸びた糸の先の『ニッキーくん』は晴夜を包み込むように背後に。そう、晴夜はちょうどサンドイッチになっている形であった。
(「えだまめは本当に可愛いですねえ」)
 まだ湯で濡れていない、もふもふした白い毛並みをそっともふって、晴夜は柔らかい笑みを浮かべる。言葉に出して愛でてやれないのが惜しい、惜しすぎる。
 次いで晴夜はおもむろに頭を仰け反らせて、ニッキーくんの胸板あたりにコツンと頭をぶつけてそのつぎはぎで左右の色が違う顔を見遣る。
(「あとニッキーくん、お前も可愛い」)
 そう、可愛いのだ。人様からは『雪山のロッジに潜んでるタイプのシリアルキラー』だの『被害者の皮膚で作ったマスクを被ってる系のサイコパス』だの、それはもう悪し様に言われてきたが――。
(「お前が血に塗れた姿は、最高に可愛いですよ」)
 片手を伸ばしてニッキーくんの頬に触れ、晴夜はとてもいい笑顔をしてみせた。

 ――ああ、愛しのからくり人形たち。好きで好きでたまらない!

「よし――殺しますか!」
 いっそ清々しいまでに言い放ったものだから、物騒な台詞に聞こえないのがすごい。
 そう、晴夜は一切の躊躇なく、人形たちへの『好き』という気持ちを堪えて力に変えて――殺すのだ。
『申し訳ない、今ちょっと立て込んでるので』
 わあわあ、わあわあ。かつては裁断用の鋏だったというカニバサミで、出来もしないのに着ぐるみを作ろうと夢中になるサメ着ぐるみの周りを、ストライキを起こした雇用者たちが囲んで通すまいと騒ぎ立てる。
「ふぅん……そうですか、じゃあ」
 晴夜がこてんと首を傾げて、口の端を上げる。そういうことなら、こうしましょう。十の指を巧みに繰って、ニッキーくんをゆっくりと迫らせる。
『……?』
 ただならぬ気配が迫るのを感じて、サメ着ぐるみがふと顔を上げて見たものは。
 ニッキーくんの剛腕に薙ぎ払われる、己を守るストライキメンバーたちだった。
「非戦闘行為に没頭している間、外部からの攻撃を遮断するのなら」
 くい。糸が引かれ、ニッキーくんが拓けた道を大股で進み、サメ着ぐるみをおもむろに掴むと――。

 びりぃぃぃっ!

『アアアアア!!?』
 ならば『その気』にさせてやる、そう言わんばかりに、凄まじい膂力が着ぐるみを引き裂き剥いだのだ。
「これは攻撃ではないですよ、ただ着ぐるみを破きたくて脱がしてるんです」
 しれっと言う晴夜は、一切悪びれた様子もなく。しかし確かに『ただ脱がしているだけ』なので、だからこそサメは抵抗できずに甘んじて受け入れてしまったのだ。
『サメ相手に……薄い本案件みたいな真似を……』
 よよよと泣き崩れ、打ち震えるサメ相手に。
「ほら、我々も男ですから」
 ちょっと特殊性癖を疑われかねない発言で返す、晴夜さんでした。

 晴夜の名誉のために、記さねばならない。
 彼と、愛しのニッキーくんは、この後正しく戦ったと。
『おのれ、このまま黙って犯されてたまるか!』
「おや、抵抗しましたね? いいんですね?」
 ハサミを振り上げて迫ろうとしたサメを、ニッキーくんが文字通り『受け止めた』。
 それが何を意味するか、サメは程なくして知ることとなる。

 ――【死の抱擁】、ニッキーくんは優しいので、抱き締める相手を選ばない!

『グエエエエエエ!!!』
 ニッキーくんの剛腕の威力は、先程見せつけた通り。それが、まるで愛しいものを心から包み込んで離さないように――ぎゅうう、ぎゅううと!
 ぼぎり、と。何だか嫌な音がした。腕の中で抵抗をしていたサメが突然力を失う。
「あー、あんまり保ちませんでしたね。もう折れちゃいましたか、脊椎」
 ニッキーくんの熱烈なハグは、サメにはちょっとヘビーすぎたらしい。
 そして晴夜は温泉から出る時、確かにこう言った――『殺します』と!

「ニッキーくんは優しいでしょう? 可愛いでしょう?」
 熱い抱擁はどうでしたか、そう問うかのようにサメを見る晴夜。最早抵抗する気力もないのか、ぐったりしている。
「そんなニッキーくんを誰より上手に使うこのハレルヤを――」
 手には妖刀「悪食」、どれだけ喰らっても、まだ足りぬと刃が光る。
「褒めてくださって、いいんですよ!!」
 振り下ろされた妖刀は、サメの頭部を深々と貫いて。
 とても言葉を発するどころか、完全にその息の根を止めていた。

「褒めてくれないんですか? ――残念です」
 そう言って、晴夜は妖刀を引き抜きながら、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月汰・呂拇
妙な被り物に愛着か……
(すっと兜を取って見つめる)
理由は色々あるだろうさ。俺だって――ああ
思い出すだけで腹立つわッ!
何が生きる為、抗う為だ!
偉そうな事言ってさっさと死にやがって!

一体どうすりゃ良かったんだジジィ
アンタはもう何も喋っちゃくれない
俺は一人で今も戦っている……信じられるか?
ここじゃあデカいトカゲが親玉だとよ
アンタのねぐらの宇宙戦艦よりデカいのもいたぜ

――ってな
また思い出してやるよ
次会ったらこれまでの事全部聞かせてやる
てか俺の話を聞く時、いっつも面倒そうな顔をしてたよな

(兜を被り直して)
俺の、メガリスが……三つのメガリスが光って
一つの光に! これが……これがメガリスの力!
(相手は×ぬ)



●思わず背筋が伸びるシリアスな巨人さんが来たでござる
 ざばあぁぁぁぁぁん!!!
 サウナ珊瑚の温泉が淵から盛大にあふれ出たのは、515cmの巨体を誇る月汰・呂拇(ブラックフレイム・f27113)が湯に浸かったから。
 一時はがくんと下がった水位も、次第に元通りになっていく。アッ俺もしかして入ったら拙かったかなという顔を――呂拇が兜の下でしていたのは誰も知らない。
「妙な被り物に愛着、か……」
 ある程度水位も戻り、可変装甲戦闘服越しに伝わる温もりを感じながら、呂拇はスッと兜を脱いでそれを見つめた。
(「理由は、色々あるだろうさ」)
 俺だって――ああ、思い出すだけで腹立つわッ!
 兜を見れば、嫌でも。かつて『ジジィ』と呼び慕った育ての親を。
 だが、湧き立つ感情は怒りというのが相応しく。
(「何が『生きる為、抗う為』だ! 偉そうな事言って、さっさと死にやがって!」)

 ――いや、それは間違いなく『郷愁』。慕うが故の、素直になれない心の発露。

 ここではない、海賊どもが跋扈する世界で。呂拇はウォーマシンの老人に育てられ、守られ、遺志を継ぐように猟兵となり、今ここに居る。
 道楽で温泉でくつろいでいる訳ではないのだ。兜と向き合ったまま、呂拇は問う。
(「……一体、どうすりゃ良かったんだジジィ」)
 かつて『ジジィ』そのものだった残骸である兜は、最早物言わぬモノだ。
(「アンタはもう何も喋っちゃくれない」)
 誰もが驚く巨躯でもって、猟兵仲間からも一目置かれる存在となった。世界を奪い返すために戦う超常の力を得た。それでもなお、迷いは消えない。
(「俺は一人で今も戦っている……信じられるか?」)
 生きる為。抗う為。命ある限り、力ある限り――その背中を追うかの如く。

「ここじゃあデカいトカゲが親玉だとよ、アンタのねぐらの宇宙戦艦よりデカいのもいたぜ」
 湯の淵に両手を掛けると、天を仰いで言ってみせる。この程度なら、許されよう。
「――ってな、また思い出してやるよ」
 次会ったら、これまでの事、全部聞かせてやる。
 そうは言っても、呂拇が次に『ジジィ』に会う日は、まだまだ遠い彼方の話だが。
(「てか、俺の話を聞く時、いっつも面倒そうな顔をしてたよな」)
 そう、まだありありと思い出せる。何やかやで『好き』だった、『ジジィ』の顔を。

 呂拇は兜を被り直す。サメ着ぐるみに見せてやる素顔などないからだ。
 そして、思いを馳せる時間も、お終いだから。
『先程から何度も繰り出しているように見えるが! この技は捨て身の大技ッ! 喰らえ、我が愛しの部下たちと――』
「オーーーーーーーーーープンッッッ、メガリスッッッ!!!」
 言 わ せ る か よ ! そんな感じで台詞をぶっ被せて、呂拇は輝く三つのメガリスを一つに束ねると、全てを破壊する危険な光を身に纏う。
『なッ……攻撃が、効かないだと!?』
「何、根比べさ。おめぇが最後の大仕事をするってんなら、死ぬまで耐えきってやる」
 ――サメ着ぐるみは、この時点で『詰んだ』と言っても良かった。
 攻撃はことごとく無効化され、手駒は徐々に減っていき、心臓を捧げた己は――。

「これが……これがメガリスの力!」
 眩く光る呂拇が天を衝く拳を振り上げたその横で、サメが一体、息絶えていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ

好き。
こんな身だから恋とか愛とか疎い
だから増幅するのは歌に対する想いかと思ってた

これは……御伽の迷宮で出会った、
そして今も傍にいてくれる、きみへの想い?

きみは私のことを何も責めずに
私の歌を好きだと言ってくれた
励ますように寄り添ってくれる
楽しそうに色を生み出して
嬉しそうに瞬いてくれる……

……ずっと一緒にいたい
だって私は、きみを――


あれ?
でもこれってどういう意味の「好き」なんだ?

歌うことへの愛好と同じ?
それとも両親や親しい人への献身?
もしくは隣人の幼子に対する愛情?

……わからない
なのになんで、躰が熱い?

ッ、我慢だ我慢!
UCで行動を乱して呪瘡包帯で縛め上げて属性攻撃で燃やす!
火気厳禁? 知るか!



●報告書を読んで泣いたことを白状致します
 ――好き。
 そんな感情、己とは無縁かと思っていたけれど。
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は、己は『こんな身だから』と、恋とか愛とかそういったものとは無意識に距離を置いていたし、実際疎くもあった。
 故に、いざ依頼を引き受けてやって来てみたが、増幅される感情はきっと『好き』な歌に対する想いだろうと――そう、思っていたのに。

(「これ、は」)
 ここではない世界、御伽の迷宮で出会って。ああ――その名をよく覚えている。忘れるものか。己が目でその最期を見届けて、今も傍にいてくれる『きみ』への想い。

 ――ねぇ、わたし。
 ――あなたの歌、好きだった。

 ああ、きみは。私のことを、何も責めずにそんなことを言って。
 励ますように寄り添ってくれる、楽しそうに『色』を生み出して、嬉しそうに瞬いてくれる……。
 この手の中に、色持たぬ己を彩るようなひかりを遺してくれた――コローロ・ポルティ。
「……ずっと、一緒にいたい。だって私は」
 きみを、きみを――。

(「……あれ? でもこれって、どういう意味の『好き』なんだ?」)

 好意的であることは間違いない。だが、定義が曖昧だ。
 歌うことへの『愛好』と同じ?
 それとも、両親や親しい人への『献身』?
 もしくは隣人の幼子に対する『愛情』?
(「……わからない。なのになんで、躰が熱い?」)
 スキアファールの世界を、間違いなく彩るであろうその感情。他者が名を付けるのは傲慢が過ぎるというもの、いつか自身でその感情に名を付けるその日まで。
 ――しばし、悩める青年であってもらうべきだろう。

 ざばぁ、と。勢い良くスキアファールが温泉から出て行く。しっとり濡れた呪瘡包帯を絞っていると、程なくして例のサメがおもむろに作業に没頭し始める。
 もうこのまま帰っていいかな、悶々として戦闘どころじゃないんだ。そう言いたくなるのをグッと堪えて、スキアファールは首を振る。
「ッ、我慢だ我慢! こっちを向いてもらうぞ!」

 すぅ、と。ひとつ息を吸ったスキアファールからは、驚くほど伸びの良い歌声が発せられた。――【error code:(yotta)(ディスターブ)】、聞けよと念じた相手にのみ届く、平衡感覚やユーベルコードを狂わせ封じる歌声の内容は、秘密だ。
 ストライキを決行していた周囲のサメたちはバタバタと倒れ、サメ着ぐるみ本体が呆然と立ち尽くすばかり。
 そこへ、可能な限り水気を取った呪瘡包帯を鋭く投擲してサメ着ぐるみをぐるぐる巻きにしてやり、包帯を蝋燭の芯に見立てて炎の属性攻撃で一気に燃やす。
『ああああああまたそうやって火を使ううううううう!!!』
「火気厳禁――だったか? 知るか!!」
 知っていて着ぐるみに火を放ったのだ。うーんこれはなかなかの畜生。褒めてますよ!

「……はぁ」
 スキアファールさんが抱いてしまったこの感情、どこかでハッキリすると良いですね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
(水着姿でと温泉に浸かりながら)
あ~クソデカ感情ね、分かる分かる
よくあいつが「うさみよ…!!」って
顔を覆って感極まってるアレだな

俺の好きなモノ……それはもちろん
抹茶☆スイーツ!!
割と色んな依頼で語ってきたけどまだまだいける!
渋めの緑色、小豆の黒、白玉の白という
飾りすぎないお上品な出で立ち!
苦味と甘味の絶妙なハーモニー!
抹茶の度合いも、ほんのり風味から
本物のお茶のような本格志向まで
幅広く楽しめる抹茶!
ノー抹茶ノーライフ!

俺…この戦いが終わったら星羽珈琲店に行くんだ…
もちろんあいつも連れて行く!
一緒に抹茶ふらぺっち飲んで奢ってもらうんだ~♪

よし、ワルみっち軍団召喚!
空に逃げても容赦なく撃ち落とせ!



●うさみっち様の好きなもの
 2019年、夏。猟兵たちが集い水着姿を披露しあった『水着コンテスト』において、その幼児体型を通り越した赤ちゃん体型にジャストフィットする青白のグレコ水着を身に纏い、うさちゃん浮き輪とトロピカルジュースという必殺の小道具を添えて、颯爽と入賞の栄誉をかっさらっていったフェアリーがいた。
 その名を――榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)!
 今まさにうさみっちは、浮き輪でその身を浮かせながら温泉をスパ気分で堪能していた。
「あ~クソデカ感情ね、分かる分かる」
 カランカラン。ハイビスカスが飾られたジュースのグラスをひとつ揺らせば、氷が小気味良い音を立てた。
「よく『あいつ』が『うさみよ……!!』って顔を覆って感極まってるアレだな」
 サングラスでそのジト目の様子はうかがい知れないが、身近な人物に軽率に感極まる輩がいるのだなということだけは何となく理解できる内容だった。

(「ところで俺の好きなモノ……それはもちろん」)
 もちろん!?
(「抹茶☆スイーーーツ!!」)
 ですよね!! 知ってた!!
(「割と色んな依頼で語ってきたけどまだまだいける! 渋めの緑色、小豆の黒、白玉の白という、飾りすぎないお上品な出で立ち! 苦味を甘味の絶妙なハーモニー!」)
 もしかしなくてもこのうさみっち、食レポをさせると何気に凄かった。
 抹茶白玉あんみつのことを指し示すであろうその品評、実に見事である。愛がなければ抹茶白玉あんみつをここまで賛美することなど出来まい。
(「抹茶の度合いも、ほんのり風味から本物のお茶のような本格志向まで……」)
 ここでうさみっちは脳裏に今まで出会ってきた、そしてまだ見ぬ抹茶スイーツに想いを馳せて、両手で浮き輪をきゅっと握って思い切り羽を震わせた。

 ――ノー抹茶、ノーライフ……!!

 有り体に言えば、テンションがめっちゃ高まった。抹茶を愛する気持ちは力となり、抑え込んだ感情はうさみっちの全長18.2cmのちっちゃい身体中を駆け巡った。

『おや……? もう猟兵たちは居ないのか、せっかくサメ着ぐるみでおもてなししようと思ったのに』
 水面にぷかぷか浮かぶうさみっちに、遠目からでは気付かないのも無理はない。
 そんな油断しきっているサメ着ぐるみの気配に気付いたうさみっちは、ぶーんと飛び立ちジュースを安全な場所に一旦置いて、サングラスをクイッと上げた。
(「俺……この戦いが終わったら、星羽珈琲店に行くんだ……」)
 うわあ死亡フラグやめーや! そう思った、次の瞬間だった。
(「もちろん『あいつ』も連れて行く! 一緒に抹茶ふらぺっち飲んで、奢ってもらうんだ~♪」)
 アッこれは微塵も死ぬ気がありませんね! むしろ自分がサメに勝つことを信じて疑っていないポジティブシンキング! 何度痛い目を見ても懲りないフェアリーは格が違った!
『そ、そんな小さなナリをして……! そのサイズの着ぐるみを作るのは至難の技、しかしそれに挑戦してこそ職人というものッ』
 ようやくうさみっちの存在に気付いたサメ着ぐるみが、謎の使命感に駆られて負けじと己を高め、ついでに物理的にも高く――飛翔した。
『まずはッ! 採寸させて頂くッ!!』
「ぴゃあああああ!?」
 どう考えても変態さんとしか思えないサメ着ぐるみが迫る中、うさみっちは悲鳴を上げながらも――負けじとちっちゃなお手々を振り上げた。

「うさみっち様の一撃からは逃げられないぜ! 喰らえ、【でんこうせっかのワルみっちスナイパー(ウサミノ・ガンガン・ショータイム)】!!」

 説明しよう! ワルみっちとは、黒いスーツにサングラス姿のヒットマンスタイルをしたうさみっち軍団のことである! なお手にした銃はかやぬまの圧倒的知識不足のせいで大体水鉄砲や割り箸で出来たゴム鉄砲とか、良くてビビビの光線銃とかである。
 まあそんないろんな銃が、しかしユーベルコードであるが故に凄まじい威力をもってサメ着ぐるみを迎撃するのだ。割と真面目に痛い。
『あうッ! ホワァッ!!』
「あっ、反転して逃げた! ワルみっち軍団、容赦なく撃ち落とせー!!」

 ぴしぴし、ぴしぴし。ビビビビビ。
 サメが地に墜ちるまで、ワルみっち軍団たちは執拗に撃ち続け。
 その間うさみっち本人は、トロピカルジュースを飲んで高みの見物をキメていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。
SPD

いやー、温泉入れるたぁ良いじゃないの。…とは言えタダで入れるでもなし、サクッと倒して堪能するか。

というわけで、水着着用で湯へと入る。
あー、いい湯。……尊い。温泉の癒しマジ尊いわー。
アイシャもそう思うだろ?ってかアイシャが一番尊いわ。はー、好き。
アイシャがいてくれないとダメ人間なるわ。マジそばにいてほしい。
…けど言えない。抑えねえと戦えねえからな…。

アイシャに攻撃が来そうなら全力で庇うし、守る為に「ちょっと張り切ってみる」
いくら飛んでくるっていっても俺を狙うなら高度を俺に合わせなきゃならねえんだ。
ゆっくり物を見れるなら、カウンターも合わせやすいだろうよ。


アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
口調→華やぐ風 敵には通常口調

水着を着て温泉に入る
足がつかなくて溺れてしまいそうなので
ジノの掌に乗せてもらう
えへへ…ありがとう
あったかくて気持ちいいね
気持ちよさそうにしてるジノを見ると、嬉しくなる
好きだなぁ…ってしみじみ思う
いつも通り、思うだけで伝えることはない
こうして一緒にいられるだけで十分幸せ
でも温泉の効果かな、今は言いたくて胸が苦しい
大丈夫こんな瞬間は今までだってあった
抑えるのは得意なの

着ぐるみというワードを織り交ぜて話しかけ
UCで相手の技を封じる
好きなものの話って耳に入ってきてしまうものですよね
攻撃はジノに任せ、適宜embraceでジノを守る盾をつくってサポートする



●想いは密やかに咲いて
「いやー、温泉入れるたぁ良いじゃないの」
 そう率直な感想を述べながら、サウナ珊瑚がもたらした奇跡の、そしてちょっと風変わりな効能を持つ温泉に身を浸すのはジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)。
(「……とは言え、タダで入れるでもなし。サクッと倒して堪能するか」)
 そう思いながら、ジノーヴィーが両手で何かを掬うような仕草をしているのは、湯を手に取っているからだろうか。
 いや、それにしてはその姿勢を維持したままで――そして何より、慈しむように。
 いい塩梅で湯に浸り、かつ溺れないように小さきモノ、フェアリーの乙女、アイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)がその掌中に収められていた。
 ジノーヴィーは黒い水着を、アイシャは薄い青緑色の水着を。しっかりと準備万端、二人仲良く湯を楽しめるようにと、夏には少し早いが引っ張り出してきたのだ。

 ジノーヴィーの大きな手は――人間同士でも、きっと大きい方だろう。それは、とても頼もしくて。安心して身を委ねるように掌に乗って、アイシャは愛らしい笑顔で言う。
「えへへ……ありがとう」
 あったかくて、気持ちいいね。そうアイシャがジノーヴィーを見上げると、はあぁと肩の力を抜き切った、普段はとても見られないようなジノーヴィーの顔が見えた。
「あー、いい湯。……尊い、温泉の癒しマジ尊いわー……」
 心の底からリラックス、そんな心地がひしひしと伝わってくるものだから、アイシャは思わず掌にそっと手を置きながらくすりと笑んでしまう。
(「気持ちよさそうにしてるジノを見ると、嬉しくなる」)
 そう、『ジノ』と。名前を呼び捨てるのだって、口調を崩すのだって、ジノだけが特別。
 気付いてる? 今は、表に出せないけれど。

 ――好き、だなぁ……。

 しみじみと、アイシャは思う。
 思うだけで、伝えることがないのは、いつも通りだから大丈夫。
 こうして一緒にいられるだけで、十分幸せだもの。

(「……でも、温泉の効果かな。今は、言いたくて胸が苦しい」)
 きゅう、と。胸が締めつけられる思いをしたのは、決して初めてではなく。
(「そう、大丈夫。こんな瞬間は、今までだってたくさんあった」)
 だから、抑えるのは得意なの――。

 小さな乙女が、己の掌中で小さく俯くのを、ジノーヴィーは見逃さなかった。
 だが、敢えて問う無粋はせずに。ただ一言、これだけ言って。
「……アイシャも、そう思うだろ?」
 己はあくまでも、温泉が尊いという話をしているだけであって。
 なればこそ、真に尊いと思っているものこそ裡に秘めれば許されよう。
(「ってか、何が尊いってアイシャが一番尊い」)
 ハーーーーーーーーーーーーー、好き……。
 万感の思いを込めて、ジノさんが瞑目した。極まりきった男の姿だった。
(「アイシャがいてくれないとダメ人間なるわ、マジそばにいてほしい」)
 ある意味、アイシャさんがいるからこそダメ人間になるのでは……? そう訝しみたくなる光景ではあったが、そこはそれ。
 眉根を寄せて、衝動に耐える。
(「……けど言えない。抑えねえと戦えねえからな……」)

 このひと時はとても幸せな拷問のようで。
 解放されて楽になりたいのか、このままずっと互いを想っていたいのか。
 考えることが苦痛になりそうな、その時だった。

『今度こそ! フェアリーサイズの着ぐるみを作ってみせるッ!!』
 無駄な使命感に駆られちゃったサメ着ぐるみが、遠目から見ただけでアイシャの大体の寸法を把握したとばかりに、カニバサミを動かしてちっちゃい着ぐるみを作りにかかる。
「おい待て、今アイシャを何つう目で見てくれたんだ」
「落ち着いて、ジノ!」
 今さあ! 絶対ねっとりとした目で見ただろ! ぶちころがす!
 そんな感じの雰囲気になりそうだったのを、まあ戦うのは変わらないのだけれどと思いつつ、感情の爆発につながらないようにどうどうと鎮めるアイシャの姿があった。
「私に考えがあるの――任せて」
 そう言うやいなや、すいっと優雅に妖精の羽で宙を舞う。頼んでもいない着ぐるみ作りに没入するサメ着ぐるみの頭上を悠々と取ったアイシャは、丁寧に語りかけた。
「まあ、なんて素敵な着ぐるみなんでしょう!」
『……(ピク)』
 アッ、見事に反応した。手応えを感じたアイシャは、もう少しと話を続ける。
「完成が楽しみです、私が着られる着ぐるみなんて初めてで、嬉しいです……!」
 かなり話を盛ってみたがどうだろう――果たしてサメ着ぐるみは、感動に打ち震えてすっかり作業の手を止めてしまっていた。

 誰が気付いたか、これこそがアイシャの超常――【Generalpause(ココロノチカラ)】!
 メッタメタな話、今回の敵のユーベルコードを殺すにはうってつけな効果を持つ!
(「好きなものの話って、耳に入ってきてしまうものですよね」)
 ふふ、と。人差し指を軽く唇に添えてジノーヴィーの方を見る。
「ああ――やってやろうじゃねぇか」
 常は跳ねた髪も、今は温泉でしっとりと落ち着いて。
『――ハッ、お連れの君も忘れてはいないぞ! おもてなししてやる!!』
 我に返ったサメ着ぐるみがおもむろに天高く舞い上がれば、猛然と飛来するのをしかと見据えてジノーヴィーが舌打ち一つ――それが、合図だった。

 好きな子のためなら、男はどれだけだって。【ちょっと張り切ってみる】ものだ。
 右の掌を翳せば、浮かび上がる菱形の刻印。そこから生え出た刃が、サメ着ぐるみを迎え撃つ!
『シャアァァァァァァァッ!!!』
(「いいぜ、そのまま高度を俺に合わせろ……!」)
 移動速度や反応速度が爆発的に増大した今のジノーヴィーからすれば、サメ着ぐるみの突進さえも『止まって見える』。

 ――ぐさり。

『……グ、ァ』
 掌底の要領で脳天を貫かれて、サメ着ぐるみがひとたまりもなく絶命する。
 刃を引っ込めて手をひらひらと振ったジノーヴィーは、それを出迎えたアイシャ共々ユーベルコードの発動を停止させる。
 どうして二人仲良く寿命を削るユベコを持って来ちゃったんですか、命を大事にして下さいね!

「私が盾で守ってあげる必要、なかったね」
「……おう、楽勝だったからな」

 男たるもの、やっぱりカッコつけたいものだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
【螺子猫】◎

まぁ、綺麗な珊瑚!
見てマルコ!(彼の手を引いてはしゃぐ
ええ…でも頑張って我慢してみせるわ(ふんす

スカートの裾抓み静かに足湯へ
青のペディキュアが映え

ふふっ本当ね
程良い湯加減なの
…?(猫とそんなに戯れた事があるのかしら、と首傾げ

(マルコはマリアの大事な大事なお友達
素直でないけれど
知ってるのよ
いつもマリアを助けてくれて
本当に心優しい事を)

自分の口を両手で隠しマルコをガン見
震えつつ耐える
口許は緩む

敵と対峙

あなたの為に唄いましょう

UC使用
マルコの攻撃力更にup
竪琴で麻痺の糸絡めた旋律を奏で拘束
音の誘導弾で一箇所へ集め

逃げちゃ駄目なのよ
後は任せたわ

…猫さん、好きなの?マルコ
隠さなくてもいいのに


マルコ・トリガー
【螺子猫】◎
フーン、感情を抑える?
そんなの簡単でしょ
まあ、マリアは感情豊かだから大変かもしれないけど

それで足湯に入れって?
ハァ、温かいね。まるで猫に包まれてるみたいだ

猫はフサフサで愛らしくて自由で、こちらの思い通りにならない
それがたまらなく、心地よいんだ
今すぐフサフサを触りたいけどグッと我慢だ…ボク…

この事は誰にもマリアにも絶対言わないよ。ボクのイメージに関わるから

それで?サメ?
魚って事は猫の餌みたいなものだね

敵が散らばらないように射撃しながらボクの方に【おびき寄せ】よう
マリアもその方が歌いやすいよね
多くの敵が射程圏内に入ったら【飛鷹走狗】で一網打尽だ

帰ったら猫を思う存分…いや、何でもないよ



●蜜華と銃声
 華水晶の乙女ことマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)が、温泉地帯を生み出すサウナ珊瑚の『価値』を知るのは、自らも美しい宝石であるからか。
 水を温泉と化し、その成分が摩耗することもない不思議な珊瑚。取引される価値も高い。
 それをただ『美しい』と評し、共に見てもらいたいのはマルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)。
 男というにはまだ幼さが残る手を取って、温泉の方へ導いてははしゃぐマリアドール。
「見て、マルコ!」
「見てるよ。……フーン、『感情を抑える』? そんなの簡単でしょ」
 一方のマルコはあからさまに無愛想な様子で、つれない態度に見えるが。
「まあ、マリアは感情豊かだから大変かもしれないけど」
 ちら、と。マリアドールを見遣る金の瞳は決して冷ややかではなく。
「ええ……でも頑張って我慢してみせるわ!」
 ふんす、という擬音が聞こえそうな意気込みで両の拳を握ったマリアドールに、マルコは表向き感慨もなさげに目線だけを送った。

 マリアドールが優雅なドレスの裾をつまみ上げ、そっと静かに素足を湯に浸す。その様子を見ていたマルコは、自身も靴を脱ぎながら確認するかのように言う。
「……それで、足湯に入れって?」
「マルコも早く、程良い湯加減なの」
 華のように笑んで見せるマリアドールには、どうも毒気を抜かれるような気がして。
 嘆息ひとつ、くるぶしまで晒した素足をマルコもまた湯に浸す。
「ハァ――温かいね。まるで猫に包まれてるみたいだ」
「……?」
 マルコの独特な表現に、思わずマリアドールが小首を傾げた。
(「猫とそんなに戯れた事があるのかしら……」)
 至極、真っ当な疑問だった。

 ――そう、猫だ。
(「猫はフサフサで愛らしくて自由で、こちらの思い通りにならない」)
 マルコの脳裏に浮かぶのは、唯一の理解者にして友人たる黒猫の姿。
 猫は本当に人間の――いや、ヤドリガミの言うことだって聞かない。気ままにも程がある。気まぐれで、自分が遊んで欲しい時だけ寄ってきて、だが――。
(「それがたまらなく、心地よいんだ」)
 完全に下僕です、本当にありがとうございました。
 思わず猫に対するアレソレをぶちまけそうになるのを明らかに堪えている様子のマルコの横顔を見遣ったマリアドールは、そんな姿を微笑ましく思う。
(「マルコはマリアの大事な大事なお友達」)
 湧き立つ慈しむような感情は、つかず離れずの絶妙な距離感の上に成り立っている。
(「知ってるのよ、いつもマリアを助けてくれて、本当に心優しい事を」)
 つっけんどんな態度を取りがちで、時に誤解を受けることもあるけれど。マリアは良く知っているのだ、この短銃のヤドリガミの少年がどれだけ愛すべき友人たるかを。

(「マルコ」)

 心の中でその名を呼べば、恋とか愛とかそういったものを超えた親愛の情が膨れ上がる。
 慌てて両の手で己が口を隠して、しかし視線は隣のマルコへと。がっつりガン見である。
 どうしても口許が緩んでしまうのを悟られまいと必死に耐えながら打ち震えるマリアドールの胸中など露知らず、マルコは絡ませ組み合わせた両の指を額に当てて、これまた顔を伏せて必死に情動を堪えていた。

 猫。猫が可愛い。最高。今すぐあのフサフサを触りたい。

(「ダメだ、グッと我慢だ……ボク……」)
 こんな事、誰にも――例えマリアドールにだって、絶対に言えない。
(「何故って? ボクのイメージに関わるから」)
 ハァ、と。大きく息を吐いて誤魔化すようにした時。ヤツは現れた。

『ウェルカム、少年少女!!』
「……テンションの高いサメの着ぐるみが来たのだわ」
 カニバサミを振りかざして何故か嬉しそうなサメ着ぐるみを前に、ゆっくり足を湯から抜いてマリアドールが正直な感想を述べる。青のペディキュアが陽光を受けて煌めいた。
 サメ的にはきっと『着ぐるみが似合いそうな猟兵が来た』程度の認識だったに違いない。何せ相手は感情を遠慮なく爆発させている連中だもの、仕方がないね。
「それで? サメ?」
 マルコもよいせっと温泉から出て、自身の本体たる熱線銃を構える。
「魚ってことは――猫の餌みたいなものだね」
(「マルコったら」)
 思わず猫への愛情について言及したくなったマリアドールが、またしても口を押さえて辛抱する。訝しげな目線を送るマルコだが、今は戦わねばとサメ着ぐるみの方を向く。
『私が死んでも代わりはいるもの、だってこれは集団戦! という訳でこの心臓と手取りを代償に――』
「メタだなぁ」
 今度はマルコが率直な感想を述べる番だった。調子が狂いそうだが、サメ着ぐるみがサメ着ぐるみを召喚して迫るというある種の地獄絵図を見せられては、気合いも入ろう。

「あなたの為に唄いましょう――マルコ!」
 美しい声音が旋律を奏で、良き友の力となる。それを肌で感じ取ったマルコは、地を蹴って走り出して部下着ぐるみたちをおびき寄せるように駆け回るのだ。
(「君もその方が唄いやすいだろ――マリア」)
 互いが互いを思いやり、マルコが誘導した部下たちをマリアの竪琴が放つ麻痺の旋律が拘束する。そのまま一箇所に束ね上げられるように集められた部下サメたちは――。

「逃げちゃ駄目なのよ、後は任せたわ」
「ああ、一網打尽だ――【飛鷹走狗(タカハトビイヌハシル)】」

 マリアドールの戒めとマルコが銃から放った無数の熱線から逃れること能わず、部下サメたちはそのことごとくが焼き尽くされていった。
『いたいけな少年少女だと思ってたのに! もうやだ帰る!』
 次はお前が、と思いきや、何とこの個体は逃げ出してしまった。深追いする義理もない、どこかで別の猟兵に倒されることだろう。

(「帰ったら猫を思う存分……」)
「マルコ、……マルコ?」
「! いや、何でもないよ」
 ダイス目で00が出たらすごい猫に会えるという庵の片隅が恋しい、だなんて。
 たとえ友人たるマリアドールが相手でも、それだけは絶対に、言えなかった。

「……猫さん、好きなの? マルコ」
「……!!!」

 何故バレたし。いや何でバレないと思ったの?
「隠さなくてもいいのに」
 そう言って笑うマリアドールは、華やいでという言葉が良く似合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

芥生・秋日子

足湯気持ちいいですね。普通に好きですよ!
うーん、クソデカ感情抑えられますかね私…。

そもそも好きなものってなんでしょう。
本も好きですし、美味しい物も好きですし。異性や時には同性同士のあれやこれやも気になります。
一つになんて絞れません。でもこれ普通ですよね!?
今は、目の前に私の望むものがないので(ないですよね)
感情は抑えられている(たぶん)はずです。
あれやこれやが繰り広げられてたら、私たぶん普通にダメですね!?

サメさんにも愛を語っていただきます。そのハサミには意味があるのか!
私としてはヒレのほうが可愛いと思うのです。
答えを得るために【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】発動です。文字数!


佐那・千之助

人前で感情を抑えることなど朝飯前よ
さ、軽く力を頂くか(肩まで浸かる

muri
しぬほどすき

(感情と表情筋を繋ぐ神経を根性で切断
(吐いた息の熱も温泉の所為

他人にばかり優しくして、自分に全っっ然優しくしないひと
…だから私が優しくしたかった
癒して、笑わせて、愛して、幸せを教えて
あの不器用なひとが、人並みの幸せを渡ってゆけるように

そうしたら私は、傷を癒してほどけ落ちる包帯のように
役割を終えればいいと思っていた

その身を戦場で削り続けるというのなら
全ての世界を平和にして
戦を消そう

これもその第一歩か
傍迷惑な思いはゆめ洩らさぬようUCに込めて

…鮫の着ぐるみ、抱きしめたいが
可愛いもの好きの気持ちも我慢すべきか…っ



●あふれる想いは伝播する
 ちゃぽ、と。水音も心地良く、ブーツを抜いて素足を温泉に浸していた芥生・秋日子(普通の人・f22915)は溜め息ひとつ。
「足湯、気持ちいいですね。普通に好きですよ!」
 秋日子は隙あらば『普通』を主張するのだが、そも猟兵たる存在になった時点でもう埒外。強いて言うなら猟兵の中では普通というか、良識派というか、良心的なポジションなのかも知れない。多分。きっと。メイビー。
「うーん、クソデカ感情抑えられますかね私……」
 足を浸している温泉はごくごく普通に気持ちいいのだが、反動として何らかの『好き』という感情が増幅させられると言うではないか。

 ――けれど。
 ――そもそも『好きなもの』って、何でしょう?

 波紋広がる水面を見つめ、秋日子は自問する。
 本も好き、美味しい物も好き。異性や――時には同性同士のあれやこれやも気になっちゃう。とてもとても、一つになんて絞れない。
(「でもこれ、普通ですよね!?」)
 その通りだった。誰しもが誰にも譲れぬ『好き』を持っているとは限らない。
 それこそ秋日子のように『何事も程々に好き』という塩梅の者は多かろう。それは決して感性が鈍っているのではない、何でも美味しく頂けるという大らかな心の在り方なのだ。
 強いて、言うならだ。
(「今は、目の前に私の望むものがないので」)
 温泉には秋日子ひとり、さすがにサウナ珊瑚を相手に興奮する程の業の深さは持ち合わせていない。だって秋日子さんは普通の大正乙女だもの。
(「感情は抑えられている……はず、です」)
 起点となる感情の切っ掛けに迷うくらいなのだから、今はまだ。
 もしも、もしもだ。
(「……あれやこれやが繰り広げられていたらあ、私たぶん普通にダメですね――!?」)
 ああ、何事もなくて良かった! でもこのままだとパワーアップが得られない!
 そう、もだもだと己を抱くように『ダメになった自分』を妄想して。何ならそれでテンションをぶち上げて行こうかという勢いだった秋日子の前に、一人の猟兵が現れた。

 救世主とも呼ぶべきその名は、佐那・千之助(火輪・f00454)。橙の髪が日に煌めく美丈夫は、夜と闇とが支配するかの世界に於いても差し込む一条の光のようだった。
(「はぁぁ……すっごい人が来ちゃった」)
 両手を口に当てて息を呑み、無意識にかの人が温泉に入りやすいようにと身をずらす秋日子に軽く会釈をして、千之助は平然とした顔で湯に肩まで浸かった。
 千之助はここまで本気で余裕だったのだ。どうか信じて欲しい。
(「人前で感情を抑えることなど朝飯前よ――さ、軽く力を頂くか」)

 ――ちゃぷ。

 立てた水音は、どちらのものだったか。秋日子は千之助がどうなってしまうのかに注目していて微動だにしていない、ということは。
 気付けば、千之助が両手で顔を覆って、肩を震わせ懸命に何かを堪えているようだった。

 muri~しぬほどすき~

 ハーーーーーーーーーーーーーーーーーー、と大きく熱のこもった息を吐いたが、これはあくまで温泉が心地良いからであって。断じてクソデカ感情の発露などではない。
 愛と気合いと根性とで、千之助は感情と表情筋とを繋ぐ神経をカットしたのだから。

(「他人にばかり優しくして、自分に全っっ然優しくしないひと」)
 脳裏に浮かんで振り払えないのは、戦場こそを己が生きる場と定めた一人の男の姿。
 死ななければ上等、そう嘯いて。いつだって笑顔で――己を顧みることがないから。
(「……だから、せめて。私が、優しくしたかった」)
 こころも、からだも。癒して、笑わせて、愛して――しあわせを、教えて。
 ひとつになって蕩け合ってもなお、互いが自立した大人である以上は、完全に捕らえて離さぬという訳にも行かないのがもどかしく。

 ――あの不器用なひとが、人並みの幸せを渡ってゆけるように。

 そのための献身は厭わない、この身をそう――傷を癒してほどけ落ちる包帯のように。
 静かに役割を終えればいいと、そう思っていた。
 ああ、そうだ。その身を戦場で削り続けるというのなら。
 世界を渡り、全ての世界を平和にして、戦そのものを消し去ってしまおう。
 糸を繰り、黒い外套を翻し柔和な笑みで苛烈に戦う姿を否定はせぬが。
 それでも、身勝手でも、好きで好きで堪らないあのひとの幸せを――願う。

(「アッもう限界、好きがすぎる」)
(「ハッこれは……クソデカ感情を必死に堪える殿方の魅力的な姿……!?」)

 飛び火した。しょうがない。秋日子さんも千之助さんも悪くない。悪いのはこんなトンチキな効能をもたらす温泉です!
(「ねえねえねえねえ今何考えてるんです!? もしかして好きな人のことです!? 詳しく……いやいやいやいやそれはさすがに……ああでもめっちゃ興味あります!!」)
 なんちゃらが嫌いな女子なんていませんっていう稀代の名言がありますからね!
 それはさておきそろそろ限界だろうと思いまして、サメ着ぐるみを連れて来ました!

『何なんですか!? そろそろ残機もないんです!! 私はただサメの着ぐるみを作っていたいだけのサメ生だったのに!!』
 サメはまず千之助の方を見て、ストライキをする雇用主という謎の防御で背を向ける。
「戦を消し去る、これもその第一歩か」
 すごい、感情と表情筋との連動を完全に切ってる。身勝手だろうか、傍迷惑だろうかと思いながらも裡に秘めた想いをゆめ漏らさぬように。
 つかつかと、千之助はサメ着ぐるみを囲むストライキメンバーをおもむろに放り投げた。
『な……ッ!?』
「これ、攻撃とは違うからの?」
 そう、攻撃が通らないなら――それ以外の方法で気を惹いて、そこを叩くまで。

 ぎゅっ。

『アッ……』
(「あああこれは断じて浮気ではなくあくまで着ぐるみを愛でて抱きしめるという可愛いもの好きという趣味の一つの発露で、その、怒らんで欲しい!」)

 千之助が、サメ着ぐるみをぎゅうを抱きしめていた。呆然とするサメ着ぐるみは、ユーベルコードの展開を解いてしまっていたものだから。
「悪ぅ思うなよ――【千思蛮紅(センシバンコウ)】」
『ゴワッッッ』
 とん、と。サメ着ぐるみを両手で軽く突き放し、膨れ上がって限界を迎えそうだった想いを超常に乗せたらば。サメ着ぐるみはたちまち地獄の炎に包まれる!

「うーん、あれは間違いなく愛の炎……!」
 ご馳走様です、そんな顔で秋日子が千之助の方に手を合わせて拝んだ。そんな秋日子の背後からは、別のサメ着ぐるみが猛然と天より来たる。
『このまま終わってたまるかァァァ!!!』
「それはこちらの台詞です、サメさんにも愛を語っていただきます」
 目線だけを背後のサメ着ぐるみに向けて、秋日子が纏う気配が変わった。

「――『そのハサミには意味があるのか』!」

 さあ、さあ、我が問いに答えよ――【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】が故に! いつもユベコの文字数の壁に挑戦して下さって本当に有難うございます!!
『この、ハサミに触れるか……!』
「私としては、ヒレの方が可愛いと思うのです」
 今度こそサメ着ぐるみに向き直った秋日子の手には自著、曰く『ありきたりな物語』。
 開いたページから生じた情念の獣がサメに喰らい付き、答えを引き摺りだそうとする。
『あいたたたたた! このハサミは元々は裁断用の裁ちばさみだったんだ! この姿になると同時にヒレに成り代わってしまったんだ、もう人を傷つけることしかできない!』
 獣の顎があまりにも強烈だったものだから、サメ着ぐるみは正直に吐く。
「そんな……そんなエモい背景があったなんて」
 あったんだよなあ。よくぞ聞いてくれました。
「それはそうと、やっぱり転生――あっ、この世界ではそれナシなんでしたっけ!」
『ギャアアアアアアア!!!』

 残るサメ着ぐるみはあとわずか、猟兵たちの完全勝利は、もう目の前だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
好意が爆発ねー。変な方にならなきゃいいけど。
それにしてもあれは…サメ?俺的サメセンスが反応してないから違う気もするけど。
何であっても蹴散らさないとねー。

温泉には水着でどぼん。
…むっ、サメへの好意が爆発しちゃうかも。
サメさんいいよねー、色んな映画で大人気。扱う為の専用魔術まである位。
ちょっとおなかにどーんとすれば動かなくなるかよわさもとっても素敵。
肝おいしい。
そりゃもうここにいるサメ?みんなと遊びたい位だけど抑えなきゃ…
という訳で、愛を代弁してきてくれないかな空シャチのみんなー(UC発動)
最高傑作など何のその、寧ろ出来が良い程サメ…いいよね…感が増す気がするし。
れっつ狂宴!

※アドリブ絡み等お任せ



●ハッピー工房、終焉の刻
 言うてこれ集団戦だから、宿敵主のヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)さんが来て下さってもまだまだ続くんですけどね! まあ一つの区切りということで!
 という訳でヴィクトルさんです。シャチのキマイラです。ざぶんと軽く湯を溢れさせながら身を浸す姿がものすごく様になっています。
 なおヴィクトルパイセンの格好はとても似合っている水着姿です。新たな性癖に目覚めそうになるかと思いました。危ない所でした。
(「好意が爆発ねー、変な方にならなきゃいいけど」)
 のんびりとヴィクトルが見遣る方には、最早片手で数えられる程度の数にまで減ったサメ着ぐるみたちの姿があった。
(「それにしてもあれは……サメ?」)
 猟兵たちはここまで割とすんなり受け入れていたが、そもそも『アレ』を『サメ』と呼んで良いものなのだろうか。
「……俺的サメセンスが反応してないから違う気もするけど」

 ――サメセンスとは。

「何があっても蹴散らさないとね-」
 あくまで穏やかに言うヴィクトルは、サメセンスについては言及させない構えであった。
 そして、何やかや言っても温泉がもたらす効能には逆らえない、クッ。
(「……むっ、サメへの好意が爆発しちゃうかも」)
 ヴィクトルがつぶらな瞳をきゅっと瞑って衝動を堪えようと試みる。まるで縋るかのように、その手は無意識に首から提げた鍵のグリモアを握りしめる。
 大丈夫、考えるだけならむしろ後々力となる。ぶちまけなければいいだけで。
(「サメさんいいよねー、色んな映画で大人気」)
 コアなサメファンともなれば、サメ映画と聞いただけで椅子を蹴って立ち上がるほどのマニアも多い。もっとも、純粋な愛好というよりはクソ映画を愛でるちょっと歪んだ感覚の方が強いように見受けられるが、ここは有識者の意見が待たれる。
(「扱う為の専用魔術まである位」)
 ここでぶっちゃけると『鮫魔術師って何だよ(迫真)』という思いは今でも抜けませんね……。まあその、好きですけどコンセプトとか……でも、ホラ……。
(「ちょっとおなかにどーんとすればうごかなくなるかよわさもとっても素敵。肝おいしい」)
 うっとりと、それはもううっとりとした表情でヴィクトルは心からそう思いを馳せた。

 ここで、ヴィクトルのベースとなった生物を思い出して欲しい。
 シャチだ。『海の帝王』の名をほしいままにする、あのシャチだ。
 とある世界での近年の科学レポートでは、『海のギャング』と呼ばれるホホジロザメを襲って、その肝臓だけを食べるという衝撃の報告がなされたという。
 肝油。サメやエイなどの肝臓に含まれる液体から抽出した脂肪分から作られるそれを狙ってのことだろうとのことだが――まさか。

『イヤアアアアアアアアアア!!!!!!! シャチがいるうううううううううう!!!!!!!!!!!!!』
 自らの最高傑作である最強にして最高のサメ着ぐるみを身に纏ってなお、サメはヴィクトルを恐れた。ヴィクトルさんサイドとしてはむしろ愛しているレベルなのに。かなしい。
「う、ここにいるサメ……? サメでいいか、全員と遊びたい位だけど、抑えなきゃ」
 自らが行くと一騒動になりそうだ。そう判断したヴィクトルは、すいと手を掲げる。
「――という訳で、愛を代弁してきてくれないかな! 空シャチのみんなーーー」

 ――ざばーん! ざっばーん!!

 これぞ【空泳ぎたちの狂宴(スカイ・オルカ)】、温泉の中から次々と、尾びれの腹側に数字の『1』が刻印された宙を及ぶシャチたちが計71体も召喚される!
『ヤダアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
「そう言わないで、最高傑作だなんて寧ろ出来が良い程『サメ……いいよね……』感が増す気がするし」
 いいじゃないか、そんな笑顔で。ヴィクトルは心からそう言って空シャチをけしかける。
 ビシッ! ビシィッ!! と、飛び交うシャチが容赦なくサメを狙って飛び交い、サメ着ぐるみをじわじわと弱らせていく。
 決して嬲って弄んで、というつもりはない。これは愛、愛なのです。

「れっつ、狂宴!!」
『シャチだけはああああああああああああああああああ』
 宿敵にして天敵、最後にして最強の刺客、その名もヴィクトル・サリヴァン。
 完全に屠ることこそできなくとも、彼の手により、トンチキなサメ着ぐるみ軍団は今度こそ本当に制圧された。

 ありがとう猟兵さん! そしてお疲れさま猟兵さん!
 次は普通の温泉をゆったり楽しんで下さいね!!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月22日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト