帝竜戦役⑪〜激流の主
群竜大陸の中腹部、無限反乱瀑布。
地上の海もかくやと言う程の膨大な水が無数の渦をなして荒れ狂う中、
とりわけ巨大な渦の中心からそれは現れた。
黄金飛翔竜・女禍。
オブリビオン・フォーミュラ「帝竜ヴァルギリオス」配下の帝竜が一柱である。
並みの山々を優に超す体躯を起こして群竜大陸を睥睨する女禍の巨大な眼には、
しかし明らかな不快の色が浮かんでいた。
理由の1つは「カタストロフ」に向けての軍備が未だ整っていない事だ。
他の帝竜の手前、遅れは面子に関わる。プライドの高い女禍にとって何より避けたい事態だった。
そしてもう1つの理由は、この瀑布へ続々と向かってくる定命の異形、猟兵の存在である。
木っ端とはいえ力を有しながらオブリビオンの完全性・正当性を理解しようとしない、
救いようもなく醜い思考を持った有象無象。
「ならばこの暇に、我自ら教えてやるとしよう。その生命に微塵の価値もない事を」
●異世界なら自粛はいらないよね
「みんな大好きドラゴン退治の時間だぜ」
久しぶりに見るガン・ヴァソレム(ちょっと前流行ったアレ・f06145)は、下腹がちょっとぷよってしていた。
こいつマジでサボってやがった。
「や、やめて!オレ様のボデーにハレンチな目を注がないでッ!人を呼びますよ?」
気色悪いイヤイヤをするガンの下腹を構わず突き続けると、オブリビオンについての資料がバラバラと飛び出てくる。
「はぁ、はぁ……しゅ、しゅごいの……」
無駄に色っぽい声を出しながら資料をかき集めるガンの下腹は少しへこんでいた。
「奴さんは全長10㎞メタルボディ、まごうことなき大怪獣だ。
口ぶりからしてハナっから悪党みたいだから、気軽にぶっ飛ばせるな?」
気楽にぶっ飛ばしたいクチの猟兵の目が輝く。誰だって頭使うのはつらい。
「で、怪獣の攻撃だが……まずは手に持った珠から出すビームだな。
範囲が広いのが厄介だが、ご丁寧に知性体だけ殺すんだと。バカならワンチャンあるか?
あとは、お姉ちゃんに動かしてもらうと動きが良くなるらしい。マニアックだな。
それと、「火」だの「雷」だの属性付きの自然災害を起こす技か。
こいつも強力だが、詰め込みすぎのせいでよく暴走するらしいぜ」
説明を終えて資料をたたむと、また下腹がぷよんってした。こいつどこにモノしまってるんだろう?
「それから、でかいオブリビオンのお約束だ。連中は何故だか必ずこっちよりも先にユーベルコードを発動させてくるが、こいつをきちんと凌げばデカい隙ができる。狙うのはそこだな」
巨大な敵への対処を考えながら、猟兵達はグリモアの展開準備に入るガンの下腹がぶるんぶるん揺れるのを見ていた。
全然集中できなかった。
荒左腕
かなりのお久しぶりになります、荒左腕です。
いきなりの戦争中ですが、シンプルな純戦シナリオとなりますのでお気軽にご参加ください。
●「プレイングボーナス」について
本シナリオでは以下の行動に基づく行動をとることで有利な結果を得ることができます。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
敵の攻撃に対する防御や、攻撃の性質を突いた反撃の内容を盛り込んでいただくことで、より効果的な攻撃が可能となります。
女禍の攻撃については、OP及びオブリビオンのデータをご確認ください。
※具体的には「どんなUC・技能を使って対処」より「どんな理屈(既存のルールである必要は全くありません!)で対処」の方が活躍できると思います。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『帝竜女禍』
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POW : 抗体霊波光線
【宝珠から、知性ある生命体全てを殺す光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : まことのあるじ
【八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : 災厄の嵐
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
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秋月・信子
・SPD
確かに、ガンさんが仰っていたように怪獣さながらな巨体です
ですがもし本当に怪獣ならば、弱点はある筈です
アサルトバニー、グラビティコントロール発動
反重力制御での【空中戦】【水上移動】を可能とさせ、重力で作り出した足場で【ジャンプ】しながら帝竜の瞳を目指して翔け登ります
センサーで動きを【情報収集】しながら攻撃を【見切り】、操る妖狐は銃で尻尾を重点的に狙い牽制しましょう
帝竜の瞳をコアであるならば攻撃を加えたいですが、あの妖狐もどうにかしませんとなりませんね
竜を屠る概念を付与させた【鎧砕き】の魔弾『ドラゴンブレイカー』を次弾へイメージ
先に妖狐へ【破魔】の魔弾を与え、早撃ちで帝竜の瞳に撃ち込みます
「我の姿を見て尚挑むとは、愚かなり」
猟兵達の姿をその巨大な眼に捉え、女禍がひとりごちる。
「……では「あるじさま」よ、その力を連中に見せつけるのだ」
いつの間にか、その頭部には女性の姿があった。
背面に八尾を備え、白い長衣を纏った姿は伝承の妖狐であろうか?
だがその顔からは何の表情も伺うことはできない。
自身の身体を操らせて能力を高める術のための、形だけの主従だ。
「己が矮小さを思い知れ!」
しかし女禍の目論見通り、術の効果は十全に発揮されている。
山脈の如き巨躯が想像を絶する速度で飛翔し、猟兵達の先頭を走る
秋月・信子(魔弾の射手・f00732)目掛けて襲い掛かった。
「……アサルトバニー、グラビティコントロール発動!」
まるで崩落のような初撃をくるりと躱し、信子は無限氾濫瀑布へ飛び込んだ。
機動外骨格の各所に実装された姿勢制御装置が、荒れ狂う水流の上を滑るように信子を導く。そのまま回避に専念しつつ、彼女は敵の情報を探るべくセンサーの感度を上げた。
「情報通り怪獣さながら、ですね」
今のところ回避には成功しているが、あの巨体が今の調子で動き続ける限り有効打を与えることは難しいだろう。
はしたないと知りながらひとつ舌打ちをして、信子は戦場の構築を優先することにした。
女禍の頭上に立つ女性をロックし、愛用のハンドガンを構える。
「……ッ!」
弾丸は狙い違わず、妖狐が女禍の小角を握りしめる右腕を貫いた。
「嗚アァァァァァ呼!!」
甲高く耳障りな声と共に、女禍の動きが目に見えて鈍る。
少なくともこの能力に限っては妖狐にその本質があるというのは間違いないようだ。
信子は移動しながら次弾を装填する。戦いはまだ始まったばかりだ。
成功
🔵🔵🔴
ルカ・メグロ
オブリビオンが完全な存在?あんた、名前をジョーカーに変えたほうが通りが良いと思うぞ。
オウガとアイボウやってる俺が言うんだから間違いないぜ。
言葉だけじゃなく、戦って証明してやるよ!
■先制対処
「抗体霊波光線」「災厄の嵐」には「竜の抱擁」で周囲の地形(水や地面)を思いっきり叩きつけて跳ね上げ、光線や災害攻撃を防ぐ。
光線や炎ならそれで防げるだろうし、氷だったらそいつごとぶち破ってやるさ。
後は左腕を思いっきり叩きつけ、鱗を思いきし引っ剥がすだけだ。
その金ピカ、土産にもらってくぜ!
「オブリビオンが完全な存在?あんた、名前をジョーカーに変えたほうが通りが良いと思うぞ。
オウガとアイボウやってる俺が言うんだから間違いないぜ」
山のように大きな相手に真正面から啖呵を切るルカ・メグロ(ヴァージャ・コン・ギータ・f22085)。
「……?一文字も変わっていないではないか。頭の哀れな童め、オブリビオンの知性を受けよ!」
残念ながら英語圏の語彙がない相手には通じないジョークだったが、挑発は成功した。女禍が握る宝珠に膨大なエネルギーが収束し、ルカに向けられる。
「かかって来ぉい!いくぞギータ、全開だ!――竜の抱擁(アブラッソ・デ・ギータ)!!」
その左腕を振り上げた直後、宝珠より放たれる閃光がルカを飲み込んだ。
抗体霊波光線、「知性」ある生命体全てを殺す破滅の光。
「……あれ?」
「……何?」
……にも拘わらず、ルカは無傷だった。
全力の竜の抱擁。オウガと自身の意思が高いレベルでせめぎ合い、その全てを攻撃エネルギーに転換するその一瞬、各々の意識すらも暴力と転化したルカは閃光の破壊対象――つまり、知性――からたまたま外れていたのだ。
「は、ははっ!なんだかよくわかんないけど、お前の攻撃なんか効かないってこった!残念だったな!」
勝ち誇るルカを、しかし女禍は何故か憐れむように見ていた。
「そうか……童。本当に……莫迦だったのだな……?」
「おい何だその目はー!?それは!そういうんじゃないぞ!違うからな!」
憐れみの視線には気づいて激高するルカだが、生まれた隙を見逃すことはなかった。
巨竜の首筋にとりつくと、そのまま自分の背丈より大きな鱗を力任せに引き抜く。
「童ッ!!優しくしておればつけあがりおって!!」
「いつ優しかったんだよふざけんな!こいつは土産にもらってくからな!」
勝ち誇りながらも、ルカの胸はひどく大きなつかえを感じていた。
大成功
🔵🔵🔵
セゲル・スヴェアボルグ
広範囲とは言っても、光線なら動きは直線的だ。
回避は速度と的に厳しいだろうが、盾で防ぐぐらいなら何とかなる。
熱量が多いなら何重にでも具現化すればいいしな。
使えなくなった盾は容赦なくぶん投げるぞ。
盾を竜化させれば、そもそも生物ですらないドラゴンであるが故に、命を奪われる道理はない。
一気に飛んでいきたいところだが、流石に良い的になるからな。
盾竜の影に隠れつつ距離を詰めていくぞ。
その間も絶えず盾を投げ続け、死角を量産だ。
接近できたら火力重視で斧でぶん投げるか。
知性はあるかもしれんが理性はぶっ飛んだ奴らだ。
そう簡単に落とせはせんぞ?
「……がっはっはっは!こいつぁ一本取られたな!流石の小僧っ子だ」
まだ顔を赤くしているルカの後ろで、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は天を仰いで破顔していた。
頭空っぽの方が夢を詰め込めるとはいえ、知性を滅する攻撃にあんな対処法があったとは。
豪放などとうそぶいても、少年の無鉄砲には後れを取らざるを得ない。
この年にあって自分の未熟を知ることのできる戦場と戦友達へ、セゲルは心の中で深い感謝を捧げた。
「それじゃ次は爺ィの相手もしてくれよ、怪獣さんよ!」
言いながらセゲルは重盾【スィタデル】を展開(アンジップ)し、女禍へと真っすぐに突っ込んでいく。
「調子に乗るなよ、下等種の混ざり物が!!」
再び宝珠に光が灯ると、間髪入れず閃光がセゲル目掛けて迸る。
真っ向からこれを受けるセゲルだが、その刹那腕ががくんと重くなる……違う、感覚がない。
「やべえ!?」
「足りない頭で考えたつもりか、劣等。霊波の閃光は熱線に非ず、
不完全な知性の生命活動そのものを停止する浄化の光である」
女禍の哄笑が瀑布の大渦に響く中、セゲルはぎりりと歯を食いしばって笑って見せた。
「躓く石も縁の端――」
腕の感覚がなくなり、霊波光線の効果が胴体に至る寸前。
「……紡ぎし縁を、今ここに!!」
寸前で完成した術式「哮リ立ツ誓獣(ミスティスク・オユール)」。
セゲルの腕から離れた盾が竜の形を成し、閃光を防ぎながらさらに女禍へ向かってゆく。
「竜……否、紛い物かッ!姑息な」
「爺ィは元からずりィもんだろうがよ」
指摘通り、姑息な手だとセゲルも心得ていた。理性はなくとも人工の知性を持つ盾竜では、長くはもつまい。……そう、長くなくともいいのだ。
盾竜が動きを止める寸前、その背後から飛び出したセゲルの口に錨斧【イースヴィーグ】が咥えられていた。
動かぬ腕の代わりに全身の振りで投擲の構えを取る。
「もらったぜ!」
金属が衝突する、甲高くも重い音。錨斧の一撃が女禍の宝珠を砕いたのだ。
「許さぬぞ……下等が!!」
怒りに震える女禍が、宝珠の破片を粉々に握りしめた。
成功
🔵🔵🔴
黒城・魅夜
先制攻撃自体は已むを得ませんが
逆に言えばそちらから近づいてくれるということ
早業と見切り、第六感、スナイパーを使い
相手からの攻撃に交錯する一瞬をこの鎖で狙いましょう
もとよりそのただ一撃で倒せるとは思っていません
狙うは一点、龍そのものではなく、その操縦者
――の、さらに一か所
「尾」です
ふふ、龍のUCの条件は「八尾を備えた妖狐に操られること」
即ち、尾のうち僅か一本を斬り飛ばせば「八尾」ではなくなり
その条件は失われるのです
もちろん龍本来の戦闘能力も侮れませんが、それも十分に発揮できればのこと
ふふ、急激に力が落ちたことで動揺しましたね
その刹那の隙が命取りです
全ての鎖を叩きつけ、その輝く鱗を穿ち抜きましょう
「……頃合いですね」
黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)はある推論をもってこの戦場に赴いていた。
先ほどのルカを素通りした光線を見て、それは確信に変わる。
女禍の攻撃は強力だが、制約も大きいのだ。
「知性ある生命を殺す光線」は知性の抜けたルカをすり抜け、生命でない盾竜を 貫けなかった。この理屈が他の能力にも有効であるならば。
「木っ端共が、嘗めるな!」
棒立ちのように見える魅夜を見つけ、女禍が彼女目掛けて急降下した。
全長10kmとは思えぬ速度で開かれた顎が彼女の眼前に迫る。
「――愚か者の骸を糧に、咲き誇れ鋼の血華――」
女禍の牙が魅夜に触れる寸前、彼女手首を起点に無数の鎖が放たれ、女禍の牙をいなす。
鎖はそのまま女禍に絡みつこうとするが、女禍は瞬時に首を捻ってこれを躱した。
……躱したはずだった。
「ーーーーッ!?」
声にならない絶叫と共に、無限氾濫瀑布の上空に房毛のようなものが舞う。
魅夜が狙ったのは最初から女禍ではなく、その頭上で巨体を操る妖狐の尾、そのさらにたった1本だったのだ。
山ほどもある巨体で小さな猟兵達を捉える、すさまじい機動性。
その本質は妖狐の「操縦」ではなく、「八尾の妖狐」の存在そのものであった。
「「七尾」のあるじさまなら、どうかしら?」
魅夜の言葉を裏付けるかのように、女禍の動きが目に見えて鈍る。
「……馬鹿な!?」
先ほどまで荒波のように瀑布を駆け巡っていた尾に飛び乗って、魅夜は手にした鎖をまとめて叩きつけた。
「ふふ、急激に力が落ちたことで動揺しましたね」
金色の鱗が大量に砕け、女禍の巨大な単眼には明確な焦りの色が浮かんだ。
大成功
🔵🔵🔵
リズ・ルシーズ
【ニクス】で参加、アドリブ・連携歓迎だよ
【SPD】
竜が相手なら、ニクス製の兵器の良い宣伝になるよね!
ニクス製の高機動型の外部装甲を纏い光学【迷彩】を展開し、【リミッター解除】し一気に【空中戦】で敵に肉薄するよ。攻撃を避け狙うは妖狐
操る本体をどうにかすれば動きは鈍るはずだよね!
零距離まで肉薄して妖狐の動きの邪魔をし、そのまま【指定UC】を展開。宙に浮かぶ約70の量産型達、空から地に竜を落とすべく【集団戦術・制圧射撃】だね
アイン、銀、今の間にだよ!
2人に声をかけ【援護射撃】で【時間稼ぎ】だね。動きが鈍った所でアインと銀の攻撃に合わせて量産型達が敵に取り付き自爆による爆発【属性攻撃】で追撃かな
御堂・銀
【ニクス】
女禍……字は違えども中華の創造神と音を同じくする神龍か。
創造神の名に違わず大きいが討てぬ相手ではない。
筑後御堂守月銀、推して参る!
生命体を殺す光とやら、撃たせぬことは叶わずとも撃たれて耐えることは可能であろう。
我はヤドリガミ、命なき甲冑ならば肉の身を持つもの程効きはせぬはず。
先陣で切り込み、かの光線をまず我が身に集中させよう。陽動を掛け後続の僚友への圧力を減じるのだ。
我へ向かう光は太陽へ向け上昇することで陽光にて相殺を図る。
殺しきれぬ分を受けようが元より覚悟、そのままその光を弾きて臨界駆動の秘術を放つ。
狙うは宝珠、次いで妖狐! 無尽に燃え広がる月色大火にて悪神滅ぼさん!
「……ク、ははは、は!役にも立たぬ「あるじさま」よ!」
女禍は怒気を孕んだ声で一つ吠えると、尾を1つ失った妖狐を掴み上げ――噛み砕いた。
「――!?」
目を剥く猟兵達に気をよくしたのか、血の滴る口角を上げて女禍は嗤った。
「浅はかな木っ端共。「あるじさま」の替えなど、いくらでもいよう」
そう言い放つ女禍の頭に、首筋に、手首に、尾に、何人もの八尾を備えた人影が現れた。しかしいずれも痩せ衰え、ただ縋るように鱗にしがみついている。
「一番の器量良が使えなくなったのは惜しいが、出涸らしでもこれだけあれば木っ端共の相手はできよう」
「……お前ッ!!」
ぼろぼろの妖狐達を見た瞬間、リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)の理性が弾けた。
高効率のヒット&アウェイを実現したアルゴリズムを全てスキップし、リソースの全てを推進力に回して女禍へ肉薄する。
何故そんなことをしたのか、自分でも理解できない。
だが仮にも「あるじさま」などと名付けた存在を使い捨てて嗤うその顔が、とにかく許せなかった。
「そんな事言う奴が!あるじなんて言葉使うな
!!……「R-Series」ッ!!」
叫びと共にリズの身体が分身を繰り返し、女禍を包囲して攻撃を開始する。
妖狐達への攻撃は――どうにか手控えて水面に落とすことにした。
「その程度の攻撃が……何ッ!?」
複数の「あるじさま」による操作で機動力を確保したはずの女禍だが、対応しきれない。69機に拡散した怒りが、帝竜を凌駕したのだ。
「堕ちろッ!!」
リズ「達」の咆哮が一斉に女禍の体中を駆け回る。
無限氾濫瀑布を二つに裂いて、ついに女禍の首が水面に叩きつけられた。
「銀――ッ!!」
「応!筑後御堂守月銀、推して参る!」
絞り出すようなリズの叫びに呼応して、御堂・銀(筑後御堂守月銀・f26080)が躍り出た。
腰から愛用の刀「光芒千里」を抜き放ち、水面に横たわる女禍の頭に迫る。
「うぬも紛い物か!」
逆手に残った宝珠から、再び放たれる霊波光線。銀は構わずその中に飛び込んだ。
物体が本質となるヤドリガミを知性体として扱うか否かには、後々の議論が必要だろう。
しかし、この戦いにおいて大事なのは定義や論理ではなく、積み重なった事実だ。
信子の届けたデータ。ルカが穿ったユーベルコードの間隙。
セゲルが宝珠の1つを砕き、魅夜とリズによって水面に縫い付けられた女禍には、既に当初の力は残っていない。
しかして霊波光線は銀の生命を奪いきること能わず、その光を受け切った銀に最後の力を与えた。
「薄明の、暮れぬ白夜の月明かり……」
銀の鎧が白い炎となる。
「翳ることなく、君を照らさむ……!」
臨界駆動・白夜月世界(オーバーロード・ブレイズ)。
目が眩むほどの光熱に全身を焼かれ、女禍が苦悶に身をよじる。
「我が……この我が!?真理を介さぬ木っ端如きに?あり得ぬ……あり得ぬ!!」
「何が真理だ!決まってることはひとつだけ!」
「お前がここで、滅びることだ!!」
リズの銃弾と銀の刀が、女禍の単眼を撃ち抜く。
「う そ……だ ! ?」
黄金飛翔竜が断末魔と共に水底に沈んだ後。
無限氾濫瀑布はまるで初めからそうであったかのように静まり、
鏡のような水面に猟兵達の姿だけを映していた。
大成功
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